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2017年3月27日 新型インフルエンザ等対策有識者会議 医療・公衆衛生に関する分科会(第8回)

健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室

○日時

平成29年3月27日(月)15:30~17:30


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題

(1)新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬のあり方について
(2)その他

○議事

○山崎室長補佐 定刻になりましたので、ただいまから「第8回新型インフルエンザ等対策有識者会議医療・公衆衛生に関する分科会」を開催いたします。

 初めに、委員の皆様の出席状況を御報告します。

 委員18名中、本日は14名の出席です。河岡委員、櫻井委員、戸田委員、朝野委員から御欠席の御連絡をいただいております。

 なお、井戸委員の代理として、兵庫県健康福祉部健康局薬務課の稲田課長様に御出席いただいております。

 現時点で定足数以上の委員に御出席いただいておりますので、会議が成立いたしますことを御報告いたします。

 それでは、新委員を御紹介いたします。公益社団法人日本医師会常任理事、釜萢敏様です。

○釜萢委員 釜萢でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○山崎室長補佐 独立行政法人国立病院機構三重病院臨床研究部長、谷口清州様です。

○谷口委員 谷口でございます。よろしくお願いします。

○山崎室長補佐 なお、大変悲しく残念なことなのですが、感染症やワクチンの研究の第一人者として、この「医療・公衆衛生に関する分科会」の審議に御尽力をいただきました庵原俊昭先生におかれましては、昨年2月21日に御逝去されましたことを御報告します。慎んでお悔やみを申し上げ、御冥福をお祈りいたします。

 カメラの撮影はここまでとさせていただきます。

(カメラ退室)

○山崎室長補佐 それでは、以降の議事進行を岡部分科会長にお願いいたします。

○岡部分科会長 年度末のお忙しい中お集まりいただいて、ありがとうございました。この会としては随分久しぶりに開いたようなので、あちこちで同じようなメンバーが会ってはいるのですけれども、この会としては初めてなので、釜萢委員あるいは谷口委員の御紹介がありました。

 それから、庵原先生のことも触れていただいたのですけれども、昨年でもう1年以上はたっているのですが、庵原先生はいろいろなところにいい御意見をいただいたり、随分引っ張っていただいたりして助かりました。分科会としてはこのニュースは初めてなので、時はたっていますけれども、庵原先生に御冥福の意をささげたいと思いますので、黙祷でよろしいでしょうか。

 では、黙祷をお願いします。

(全員起立 黙祷)

○岡部分科会長 お直りください。ありがとうございました。

 それでは、会を開催したいと思いますけれども、きょうは今まで随分いろいろなところで議論してきたのですが、ファビピラビルのあり方にある程度の方向性がついてきたということで、この会でも経緯、議論をいただければというのが主な趣旨になります。

 それでは、いろいろな資料の配付の確認を事務局からお願いします。

○山崎室長補佐 議事次第、委員名簿、座席図のほか、資料及び参考資料1~2をお配りしております。議事次第の資料一覧と照らし合わせた上で不足等がございましたら、事務局にお申し出ください。

 以上でございます。

○岡部分科会長 ありがとうございました。議論の最中でも、もし不足がありましたら、お伝えをお願いします。

 それでは、先ほども申し上げましたように、きょうの議事は「()新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬のあり方について」「()その他」ということになっていますので、「()新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬のあり方について」に入りたいと思います。

 資料を用意していただいているので、事務局から山岸補佐よろしくお願いします。

○山岸室長補佐 それでは、事務局から資料の説明をさせていただきます。

 まず、資料の説明に入る前に、新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について、大枠のところを確認のために参考資料1の最初の6ページぐらいを使いまして、説明させていただきます。「新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について」という資料でございます。「新型インフルエンザ対策における抗インフルエンザウイルス薬の備蓄について()」の部分だけ使いまして、説明させていただきます。

 抗インフルエンザウイルス薬の備蓄方針に関する議論の背景と経緯でございます。平成27年度に「厚生科学審議会感染症部会」と「新型インフルエンザ等対策有識者会議医療・公衆衛生に関する分科会」で、備蓄方針について議論を重ねていただいております。それを踏まえまして、以下のようにとりまとめられております。

 現行の備蓄方針としましては、当面の備蓄目標については平成21年の備蓄方針を踏襲することとし、引き続き国民の45%相当を備蓄目標とする。

 ただし、近年の人口動態や市場流通の増加を鑑み、以下のとおり変更ということで、備蓄目標量を5,700万人分から5,650万人分。流通備蓄分、企業のほうで担当していただいている部分を400万人分から1,000万人分に変えております。

 もう一つ、備蓄薬剤の種類は多様性を持たせることになっております。従前タミフル(オセルタミビル)とリレンザ(ザナミビル)の備蓄だけだったところを、タミフルのドライシロップ、それから、ラピアクタ、イナビルといった国内で供給されているお薬もそれぞれの対象者に対して適切に対応できるようにということで備蓄されております。

 さらに、備蓄薬剤の割合というところは市場流通割合や想定している新型インフルエンザウイルスによる疾病の重症度等を踏まえることになっております。

 3ページ、備蓄の検討をする際に考慮する点としまして、こちらは「厚生科学審議会新型インフルエンザ対策に関する小委員会」の「医療・医薬品作業班」で出させていただいた資料ですが、このようなことを検討するとされております。被害想定、薬剤の有効性・安全性、備蓄中の薬剤の配分、市場流通の状況、薬剤耐性ウイルスの発生状況、実際の臨床現場での使用状況・ニーズ、諸外国における備蓄状況と使用期限、コスト等ということでございます。

 4ページで、現在備蓄されている抗インフルエンザ薬、アビガンについての概要がこちらに示されております。

 5ページ、きょうお話しいただく抗インフルエンザ薬であるアビガンの概要について簡単にまとめたものになっております。富山化学工業(富士フイルム子会社)が開発したインフルエンザウイルス用の薬剤で、既存のノイラミニダーゼ阻害薬と違い、ウイルスの遺伝子複製を抑制することで、インフルエンザウイルスの増殖を阻害する(RNAポリメラーゼ阻害剤)でございます。

 現時点では、季節性インフルエンザに対するヒトにおける有効性は限定的に確認されております。

 一方、全ての動物試験(マウス、ラット、ウサギ、サル)で催奇形性が認められており、安全性の懸念が存在するということでございます。

 このような状況を受けまして、平成26年3月、抗インフルエンザウイルス薬として新型または再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、既存薬が無効または効果が不十分な場合で、国が使用すると判断した場合のみ使用することとして薬事承認されております。添付文書上は、妊婦または妊娠している可能性のある婦人への投与は禁忌とされております。

 アビガン(ファビピラビル)に関して、これまで新型インフルエンザ対策においてどうするかという議論について6ページにまとめております。

 1つ目「厚生科学審議会感染症部会新型インフルエンザ対策に関する小委員会 第2回医療・医薬品作業班」(平成27年6月9日開催)において、薬事承認条件に定められた有効性・安全性に関するデータが提示された段階で、改めて備蓄の是非等について作業班会議で議論すると合意されております。

 2つ目「厚生科学審議会第3回新型インフルエンザ対策に関する小委員会」(平成27年9月11日開催)において、薬事承認条件で付されている臨床試験における有効性・安全性のデータがそろい次第、引き続き備蓄の是非等について検討するととりまとめられています。その際、重症患者に対する有効性や薬物耐性に関するエビデンスが重要とされております。

 「厚生科学審議会第12回感染症部会」(平成27年9月18日開催)において、本剤について議論の整理が行われ、薬事承認条件で付されている臨床試験における有効性・安全性のデータがそろい次第、引き続き備蓄の是非等について検討するととりまとめられています。

 それから、企業側の臨床試験における有効性・安全性に関するデータの提出を受けて、「厚生科学審議会新型インフルエンザ対策に関する小委員会医療・医薬品作業班」において、本剤のあり方について臨床的な観点から審議を行っております。これは平成28年度1125日から計4回開催しております。

 また、作業班の審議を受けまして「厚生科学審議会新型インフルエンザ対策における小委員会」において、本剤のあり方について公衆衛生的観点から審議を行っております。それが2月から2回開催されております。

 さらに、「感染症部会」で本日審議されまして、こちらに御報告させていただく次第です。

 続きまして「資料」で御説明申し上げます。

 こちらで、先ほどの経緯を簡単に3点にまとめてあります。その後「感染症部会」までの議論でまとめられたところについて記載されております。さらに、四角の中が議論のまとめですが、その経緯について「補足」で細々としたところを補足されております。

 「1.経緯」につきましては参考資料で説明申し上げましたので、「2.議論のまとめ」から始めさせていただきます。

 作業班会議における新型インフルエンザ対策における本剤のあり方に関する議論をもとに、以下のとおり整理されております。整理されていますのは、新型インフルエンザが発生して国が使用を判断したときに使用されるということで、本剤の使用判断の基準はどうなっているのか。それから、備蓄する必要があるかどうか。あと本剤の対象者はどのような者が考えられるのか。それから、実際に使うに当たって、医療現場で必要な診療ガイドラインや知見の集積の必要性ということで、大きくまとめられております。個別のところについて順に説明申し上げます。

 まず、1つ目「本剤の使用の判断・基準」でございます。

 本剤を使用する可能性があるのは、原則、感染力・病原性の強い新型インフルエンザが発生し、かつ、ノイラミニダーゼ阻害薬4剤(オセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビル、ペラミビル)全てに対して耐性が認められるような場合ではないかとまとめられております。

 さらに、国は、新型インフルエンザ発生後速やかに、感染力、病原性、抗インフルエンザウイルス薬の耐性・感受性に関する疫学情報、ウイルス学的情報、臨床医学的情報を収集し、総合的なリスク分析に努め、速やかに本剤を使用するか否かを判断する必要があるのではないかと。

 なお、国における本剤の使用の判断を迅速にするために、新型インフルエンザ発生後、専門家の意見を速やかに聞くなどの手順をあらかじめ決めておくべきではないかとまとめられております。

 次に、2つ目「備蓄の必要性」でございます。

 備蓄の必要性については、ノイラミニダーゼ阻害薬4剤全てに耐性を示すウイルス株が出現するリスクは低いが、出現する可能性は否定できないため、備蓄している既存のノイラミニダーゼ阻害薬と作用機序の異なる本剤は、既存薬の備蓄とは別に備蓄する必要があるのではないかとまとめられております。

 さらに、本剤は、平時には市場に流通しておりません。ほかの薬と同様、製造に数カ月程度かかることが見込まれております。こういったことから、製剤として備蓄し、一定量は直ちに備蓄を実施する必要があるのではないかとまとめられております。

 さらに、本剤は、胎児における催奇形性が懸念される薬剤であることから、厳格な流通管理を行いつつ、必要時には迅速に供給するため、国が備蓄するべきではないか。なお、保管は、リスク分散及び迅速に供給できるよう調整を行うべきではないかとまとめられております。

 さらに、実際備蓄するに当たって、備蓄量は以下の投与対象者を踏まえて検討してはどうかということでまとめられております。

 実際、新型インフルエンザで使用する場合の現在想定されている投与対象者として、3つ目の「投与対象者」に書かれております。

 本剤の投与対象者は、患者のリスク・ベネフィットを考慮しつつ、免疫抑制状態にある患者等のハイリスクグループの成人で、かつ、重症患者及び重症化することが予想される患者に限定すべきではないか。なお、本剤の催奇形性を踏まえ、妊婦への投与は禁忌とすべきではないか。また、小児に対する本剤の安全性及び有効性については未確認であることから、現時点では小児に使用するべきではないのではないかとまとめられております。

 続きまして、本剤は、既存の抗インフルエンザ薬のように市場で流通しているものではございませんので、安全性及び有効性の知見のデータが限られているということでございます。新型インフルエンザ発生初期は、感染症指定医療機関に入院した患者に限定するべきではないか、そういった専門性の高いところに限定するべきではないかという御意見をいただいております。

 さらに、実際に使用するに当たっての診療ガイドラインや知見の集積の必要性ということで最後にまとめられております。こちらは、本剤の催奇形性等の安全性に懸念があることや、現在までに得られている安全性及び有効性の知見を踏まえて、新型インフルエンザ発生前に新型インフルエンザ発生時の使途、投与対象者、投与方法等を示す診療ガイドラインを作成すべきではないか。

 さらに、本剤の安全性及び有効性の臨床的な知見が限られていることから、新型インフルエンザ発生後速やかに安全性及び有効性の知見・情報を収集する体制(臨床試験等)を整備し、新たに得られた知見・情報をもとに診療ガイドラインを適宜見直すべきではないかとまとめられております。

 「補足」で、個別に専門的な先生方の御意見をまとめております。

 まず「本剤の使用の判断・基準」ですけれども、1つ目、本剤は、平成26年3月に抗インフルエンザ薬として、新型または再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、既存薬が無効または効果が不十分な場合で、国が使用すると判断した場合のみ使用することとして薬事承認されていると。催奇形性への懸念や限られた安全性及び有効性に関する知見、具体的には※に書かれているとおりでございます。現時点ではノイラミニダーゼ阻害薬に耐性になった場合に、患者への投与が行われる可能性があるのではないかということを、作業班から専門疾患の先生方に「感染症部会」でとりまとめられております。

 具体的な耐性の話として、タミフルとラピアクタといったお薬については、耐性ウイルスが極めて少ない割合であるが既に出現しています。一方、リレンザとイナビルは耐性ウイルスは出にくいと考えられています。

 また、耐性ウイルスであっても抗インフルエンザウイルス薬に対する感受性低下の程度が低い場合など、臨床的効果に差がない場合もあるので、疫学、ウイルス学、臨床医学的な知見を総合的に勘案することが重要だと言われております。

 それから、耐性ウイルスは、薬剤に耐性化した遺伝子変異の影響で野生株に比べて感染伝播効率は低下すると。そのため、多剤に対する耐性ウイルスが自然発生する場合を仮定すると、複数の薬剤耐性遺伝子変異に加えて、感染伝播効率の維持のための新たな遺伝子変異が必要だと。これらの複数の遺伝子変異が短期間で起こる可能性は低いことから、初めから多剤に対する耐性ウイルスが流行する可能性は低いと考えられております。一方、バイオテロや事故など、初めから多剤に対する耐性ウイルスが発生する場合も想定すべきであると言われております。

 免疫異常症あるいは免疫抑制剤を投与しているなど、免疫抑制状態にある患者さんは免疫機能が低下しているために、体内のウイルスが排除されにくく、ウイルス増殖が長引くために、新たに耐性ウイルスが出現しやすい。一般的に耐性ウイルスは出現当初は伝播能力が低く、直ちに拡大することは考えにくい。しかし、まれに感染伝播能力を補完する別の遺伝子変異を獲得し、広く感染伝播する可能性は否定できないとまとめられております。

 さらに、本剤の使用判断については、安全性・有効性に関する知見が限られていることから、慎重に行われるべきであり、新型インフルエンザ発生初期に「新型インフルエンザ対策に関する小委員会」等に属する専門家において、疫学、ウイルス学、臨床医学的な観点から総合的にリスク分析を行うことが必要ではないかとまとめられております。

 「備蓄の必要性」についてですけれども、耐性ウイルスの出現への対応として、多種類の薬剤または本剤のように作用機序の異なる薬剤の存在は、臨床的観点から重要と考えるとまとめられました。

 さらに、本剤は、平時には市場に流通していない。製剤化に数カ月かかる可能性を踏まえて、新型インフルエンザ発生時に本剤を使用する医療機関の供給が迅速・適時に行われるよう、危機管理に適した保管・流通体制を整備する必要があるという御意見をいただいております。

 さらに、新たな薬についても引き続き、今後の新型インフルエンザ対策に資するかどうか注視する必要があるという御意見をいただいております。

 「投与対象者」については、本剤は、抗インフルエンザ薬として一定度の有効性が期待できる。ただし、本剤は、多数の投与実績がある既存の抗インフルエンザウイルス薬と比べて、安全性及び有効性の知見が少ないことから、現時点において投与対象者については、リスク・ベネフィットバランスを考慮して限定するべきである。免疫抑制状態にあるインフルエンザ患者は、免疫機能が低下しているということで、こういったリスクが高いのではないかと言われております。

 作業班の専門家の先生から御意見をいただいたところでございますが、全動物試験で催奇形性が認められており、本剤を妊婦に投与した場合、胎児に対する催奇形性が最も懸念される問題である。妊婦は一般にインフルエンザウイルスに感染すると重症化しやすい傾向にあるが、本剤の胎児に対する催奇形性のリスクを上回る治療効果が確認されていないことから、原則、本剤の妊婦への投与は禁忌とすべきと考える。なお、本剤の胎児に対する催奇形性については、知見が限られている現状では、妊娠初期の胎児への影響のみではなくて、妊娠後期まで考慮すべきと考えております。

 あと、小児に対しては、本剤の安全性及び有効性について未確認ということで、現時点では成人に対してのみ投与可能と考えるべきだと。

 それから、ハイリスクグループへの重症化予防効果、重症患者への治療効果や粉砕・懸濁等の経口以外の投与方法における安全性及び有効性については未確認ということで、使用する場合には留意が必要であると。

 さらに、本剤は内服量が多いため、重症化した患者に経口投与するのは難しいということも留意する必要があると。

 さらに、本剤の安全性及び有効性の知見が限られていることを踏まえて、新型インフルエンザ発生初期における本剤の供給は、新型インフルエンザに対する診療が適切に実施されて、かつ、安全性及び有効性に関する知見の集積が適切に行われるよう、感染症の専門家が従事しており、感染症に対する診療体制が整備されている医療機関である感染症指定医療機関に限定すべきではないかと御検討されております。

 最後に、知見の集積とその共有ということで「診療ガイドラインや知見の集積の必要性」でございます。

 本剤の安全性及び有効性を踏まえて、事前に診療ガイドライン等で本剤の投与適応者や投与方法等について具体的な指針を示す必要があるが、個別の患者の状況に応じた迅速な治療の必要性を踏まえ、医師の裁量に留意した上で、診療ガイドラインの位置づけを決定する必要がある。

 本剤の安全性及び有効性の知見が限られていることを踏まえて、新型インフルエンザ発生前に作成される診療ガイドラインでは、投与対象者を限定すべきと考えるものの、新型インフルエンザ発生後に得られた新たな知見・情報をもとに、投与対象者を広げるかどうかも含めて、本剤の適切な使用方法について検討し、パンデミックの中であっても可及的速やかに診療ガイドラインの改訂に生かすべきであるといった御意見をいただいております。

 事務局からの説明は以上です。

○岡部分科会長 どうもありがとうございました。

 今、事務局からも御紹介があったように、この議論は既にいろいろなところで行われていて、厚労省の中の「新型インフルエンザ対策に関する小委員会」の中にワーキンググループがあって、ワーキンググループは大久保憲先生にお願いして、技術的な検討をかなりやった結果を小委員会のほうで再度議論して、先ほどですけれども、その親会の「厚生科学審議会感染症部会」で議論をされたというのが、今回は内閣官房の新型インフルエンザ対策の公衆衛生分科会での議論だということになります。きょうの結果は、内閣官房の有識者会議で承認をいただく、あるいは再度議論いただくというプロセスになっているので、今までの会議で幾つか既に出席されている先生も多いのですけれども、そこに出席されていなかった先生、メンバーでなかった先生あるいはたまたま用事があって出席されなかった先生もおりますので、ぜひ活発な御意見をいただければと思います。

 先ほどの「感染症部会」でも、私は小委員会の委員長として事務局の後に補足的な説明をしたのですけれども、委員会で言われているのは、これは決してタミフルやリレンザとか、通常多く流通している薬が備蓄されていて、それに置きかわるような形で広く使われるものではないだろうというのが共通認識ではなかったかと思います。

 それから、対象が限定されるということは小委員会でも議論がありましたけれども、先ほどの部会でも幾つか疑問がありました。そもそもこれを備蓄していいのかどうかという御意見は「感染症部会」でも出ていました。

 それから、現在のところは必要だというようなコンセンサスは得られたわけですけれども、量的な問題は今一応想定されている中ではあるのですが、予算問題であるとか、製造のキャパシティーであるとか、いろいろなことで決めなくてはいけないので、量的なところまでは踏み込んでいないというのが今の段階です。

 そして、被害想定というか、いろいろなシナリオをつくって、大きい場合、小さい場合といったことで西浦先生の研究班でそれが行われているので、その結果としてはいろいろな目標数値設定が少し変わってくる可能性はありますけれども、それは来年度いっぱいぐらいかかるので、すぐにそれにシフトするわけではないけれども、そのうち考慮して、さらに備蓄を検討する必要があるかもしれないということ。

 それから、現在はきょう話題となるアビガンについては承認を得られているのですけれども、承認前の新しい薬もあるので、もしそういうものが出てきたならば比較考慮しながら、これについても議論を行っていくということだと思います。

 それから、エビデンスが十分にある薬剤ではない。特に、重症例や何かについても確かにそうですし、小児に使わないというのは小児で治験が行われていないといったこともあります。それについては、できたら治験をしたほうがいいのではないかという意見は、部会でも、その前の小委員会でもいただいております。

 そういったことを話しながらここの会議に至っているのですけれども、今申し上げましたように、今まで委員会に出ていた先生方、あるいは欠席だった先生方、きょう初めてこの話に参加される先生方、どうぞ御遠慮なく疑問であるとか、あるいは御意見をおっしゃっていただければと思います。よろしくお願いします。

 といってもなかなか出にくいので、まず亀井委員からきっかけをつくってください。よろしくお願いします。

○亀井委員 私は、初めてこのアビガン関係の会議に出させていただくのですけれども、先ほど事務方から御説明いただきましたが、「資料」の中で四角で囲まれている○が4つあるのですが、判断・基準であったり、備蓄の必要性であったり、投与の対象者は専門家機関に委ねるしかないわけでございまして、我々基礎自治体としてはどうこうということはないわけですけれども、4番目の○の「診療ガイドラインや知見の集積の必要性」という中でいろいろ書かれているのですが、事務的な流れもしばらくしたら示されるのかどうかわかりませんけれども、これを使う分については、まずは感染症指定医療機関等で使われるのか、それともいきなりいろいろな医療機関でこれがかなえられるのかということもお聞かせいただきたいし、これまでの新型の感染症のときには、どういう手順で行われていたのかというのをお知らせいただければと思います。

○岡部分科会長 これは事務局のほうからですかね。

 それから、前の2009年の新型インフルエンザのときは当然アビガンはなかったわけで、当時はタミフルのストックをどうやって使うかという議論もあったので、それも含めて事務局から御説明いただけますか。

○山岸室長補佐 まず、診療ガイドラインですけれども、実は従前は厚生科学研究、今はAMEDの研究で新型インフルエンザに対する診療ガイドラインという大枠のところで診療ガイドラインをつくっていただいております。その中でやるかどうかはあれですけれども、例えば、タミフルなどの新型インフルエンザの使い方についても、そちらの診療ガイドラインのほうで記載していただいていますので、そちらで例えば、既存のガイドラインに追加するような形で、実際に使いやすいものをつくっていただくということを検討していきたいと思っております。

 それから、使用する場所ですけれども、「投与対象者」でも記載させていただきましたが、一番最初の部分では、少なくとも専門性の高い先生方がおられる感染症指定医療機関で使用していただくことを考慮しております。そちらは事務局が考えているというよりは、先生方に御意見をいただきまして、専門性が高い、設備がちゃんと整っている、データがとりやすいといったところで、今「感染症部会」までで御意見をいただいているところは、そういった十分できるところに限定して使ってもらうべきではないかと言われております。

○岡部分科会長 先ほども、指定医療機関からお出でになっていた味澤先生は、そういった制限があるのはむしろ妥当ではないかという意見をおっしゃっていました。

 では、事務局からどうぞ。

○長谷川室長 診療ガイドラインの作成でございますが、具体的には来年度の4月以降、こちらにも書かれていますが、備蓄が認められた場合、急ぎ対応するようにということでございますので、専門家の先生方と御相談しながら作成をと考えております。

○岡部分科会長 それと2009年のときのタミフルを放出する決定とかストックの具合に比べると、今度のアビガンについてはどうするかというところだと思いますけれども、その御説明もお願いします。

○山岸室長補佐 アビガン特有のことでございますけれども、催奇形性などのリスクがありますし、どのくらい効くかというデータについても、まだ市場に流通していない薬で情報も限定しているところですので、先ほどもお話がありましたけれども、専門家の会議体、「感染症部会」までだと、例えば「感染症部会」の下にある「新型インフルエンザ対策に関する小委員会」は、新型インフルエンザに係る公衆衛生の先生であるとか、感染症の専門医の先生であるとか、ウイルス学専門の先生もそろっていますので、そういったメンバーでやるというところで、今後のスキームはまだ決まっていないところですが、検討してあらかじめ判断する枠組みを考えていきたいと思っております。

○岡部分科会長 2009年のとき一番最初に出たときに、タミフルを放出するのはどこがやるのかというのは、実はそのときになって初めて議論して、一体だれが決めるんだということがありました。実際には、厚労省の新型インフルエンザ対策グループが決めているのですけれども、専門家のほうから言えば、いつの間に決まっちゃったのといったようなことがありました。そういう経験も踏まえて、今回の速やかに使用する場合には、最初の○に書いてありますけれども、感染力であるとか、病原性であるとか、耐性、遺伝子情報だけではなくて、感受性に関する疫学情報、ウイルス学的情報、それから、実際にラボ上は耐性があるということがあっても、臨床上は使い得るといったことはほかの薬でも経験があるので、そういった総合的なリスク分析を専門家にちゃんと相談してほしいということも委員会からのコメントでした。

○山岸室長補佐 事務局から追加で、そういった判断を先生方にしていただくに当たっては、感染研などでやっていただいているサーベイランスなど、非常に広い範囲内でさまざまな知見が集まってきますので、そういった疫学情報、臨床情報、ウイルス学的情報も、いち早く厚生労働省に集めて、先生方の判断に資するような情報を提供して判断していただくことを考えております。

○岡部分科会長 ありがとうございました。

 永井委員どうぞ。

○永井委員 全日本病院協会の永井です。

 先ほどの亀井委員の質問とかぶるのですけれども、例えば4つの○があって、一つ一つの基準や判断、必要性、対象者等々は理解できるのですが、さっきのタミフルをどうするのかという話を含めて全体の流れが何となく見えてこない。個々のものが出たときは対応するとさっきの説明であるのですけれども、それが全体の流れのどの部分にあって、どう対応して、それが次にどう連携してどうなるかという全体像がなかなか見えてこないような気がするのですけれども、そのあたりはいかがですか。

○山岸室長補佐 アビガンに対してですけれども、「感染症部会」までの先生方に御意見をいただいたものを先ほど岡部分科会長からも御説明いただきましたけれども、まず、これがタミフルやリレンザといった既存の抗インフルエンザ薬にかわるものではないだろうと。どちらかというと、例えば、ある程度限定された重症患者さんや、そういったポピュレーションに対して投与されるものであることを踏まえて、リスク・アンド・ベネフィットバランスを考えて新型インフルエンザ発生後に使うか使わないかを判断するというのがまずスタートするところです。

○永井委員 そのあたりの流れが、全体的に見えるようなものが何かあればいいのではないかと思うのですが。

○山岸室長補佐 今後そちらのほうは事務局としても詰めていくところですけれども、まず、新型インフルエンザが発生して、速やかにそういった専門家に御意見をお聞きするようなところは設定していくものだと考えております。ただ、その時点、その時点で判断することになるので、判断の情報は不確実なものもありますから、そういったものも含めて先生方に見せて御意見をいただいて、新型インフルエンザ発生時に引き続き使うタイミングであるかどうかを判断していただいて、そういうときが来れば使われるものと。

 その際に、流通体制についても、必要な場所にすぐ供給できる体制を整備しておくべきという御意見を先生方からいただいておりますので、全国の感染症指定医療機関などに迅速に供給できる体制は別途整備しておくと考えております。

○岡部分科会長 今までのメンバーではなかった先生方で、南委員はたしか早く退席されるので、もし何か意見があったら今のうちにどうぞお願いします。

○南委員 ありがとうございます。私も前に御説明をいただいて大体理解したつもりでございます。本当に実際に起こったとき、この薬剤が必ずしもタミフルやリレンザにかわって広範に使われるものではないという大どころの理解とか、そのあたりは国民にも広く周知していただいたら混乱がないのではないかと思っておりまして、特に異議はございません。

○岡部分科会長 ありがとうございました。

 川名委員は今までメンバーではないですよね。もし御意見がありましたら。

○川名委員 防衛医大の川名です。

 今まではどちらかというと行政的なお話だったと思うのですが、私は臨床的な観点から述べさせていただきます。

 資料を読ませていただきまして、大筋では全く異議はありません。大体このとおりでよろしいと思いますけれども、各論的なところで述べさせていただきますと、まず1つは、治療の可能性ということです。この薬は催奇形性が問題ということになりますが、逆にいうと催奇形性以外には高尿酸血症ですとか、余り大きく問題になるような有害事象は報告されていませんので、そういう意味で使える可能性は検討していくべきだろうと思いました。

 それから、資料の中に書いてありましたが、オセルタミビルのような既存薬との併用の可能性についても何か展開がありそうな気がしますのでそういったところ、あるいは重症者、あるいは発症してから少し時間がたってからでも効果が期待できるのではないかとか、さまざまな可能性が指摘されています。そのようなところについてはここで検討するべきことではなくて、むしろガイドラインで検討すべきことかもしれませんが、注目されます。

 あと、バイオテロというようなことが書かれていました。インフルエンザウイルスがバイオテロに使われるかというのはまた別の問題だと思いますが、危機管理上その可能性は低いと決めつけてしまわないで、議論の俎上に上げて良いと思いました。

 あとは、今回の議論の中では特段取り上げられていませんけれども、臨床的な観点から言うと、予防で使用する可能性についても興味があるところではあります。

 以上です。

○岡部分科会長 ありがとうございました。

 稲田課長が代理でおいでになっているのですけれども、初めてだと思うので、もし御意見がありましたら。

○稲田課長 私のほうから2つお願いと、1つ疑問な点がございます。

 あくまでも私どもは行政ということなので、例えば、過去の子宮頸がんワクチンの件など一旦やろうとして中止になったとか、そういう例も持っているものでお尋ねさせていただきたいのですけれども、1つは、リスクコミュニケーションの関係でございます。ここに書いていただいている分につきましては、一応、医療側と受ける患者さん側という形になっておりますが、この想定を見ましたら、例えば、病原性が高く感染力が高いインフルエンザで、しかも、既存の薬剤が全く効かないというような状態でハイリスクの方に使いましょうというストーリーになっているのですけれども、ハイリスクではない方にとっては何も治療薬がないという状態でございます。その状態でハイリスクの方にだけお使いになるということは、バランスを考えた場合に、ハイリスクではないけれども薬がないのだったらそういう薬を使わせてほしいと思う方も当然おられるわけですが、それでもやはりハイリスクの方だけに使うということをちゃんと説明できなければ、社会的な不安をもたらすことになると思いますので、それは十分にリスクコミュニケーションしていただきたいというのが1点でございます。

 それから、投与につきまして、例えば1万分の1のような重大な事象が起こった場合でも、それが2例目で起こった場合と、9,999例目で起こった場合とでは社会全体の反応の仕方が全く異なってくると思われます。そういう意味でも、例えば投与の計画につきまして、ある程度明確にしておいた基準で、こういう場合は続けていきますよということをある程度しておかないと、不都合な事例が最初に起こってしまうと、計画全部が崩れてしまうことにもなりかねませんので、この辺は明確な基準をつくられたほうがよいのではないかと我々行政の者は感じているところでございます。

 もう一つは、感染症指定医療機関に入院した患者に限定するということでございますけれども、H1N1のときの経験でございますが、すぐに感染症指定医療機関が満杯になってしまいました。特にこの仮定が、感染力が低かったらいいのですけれども、感染力が高く病原性の強いインフルエンザを想定しておりますので、例えば、2009年のときはすぐに感染症指定医療機関の病床は満床になってしまいました。仮定のとおり、感染症指定医療機関に入っているハイリスクグループの方にだけ投与するとなりましたら、他に受け入れていただいている医療機関では、アビガンが全く投与できないということになってしま いますと、実態面として不都合が生じるのではないかと思います。本当に感染症指定医療機関だけでおさまってしまうような流行速度であったらいいのですけれども、恐らくそれ以上のスピードで流行するのではないかと思いますので、ここは感染症指定医療機関に限定するのは現実的に厳しいのではないかというのが1点です。

 あともう一つ、データをとるのにハイリスクグループだけのデータと、リスクの低い方のデータがなくて、アビガンに対する安全性を本当にとれるのかという疑問がございますので、4点申し上げましたけれども、以上が気になっているところでございます。

○岡部分科会長 では、事務局からお答えをお願いします。

○山岸室長補佐 まず、リスクコミュニケーションにつきましては、ちょっと観点が違うかもしれませんけれども、添付文書上それぞれ使用するに当たって本来のリスクとベネフィットについて、書面をもってちゃんと説明するようにということもございます。また、診療ガイドライン等も踏まえまして、そういった適切なリスクコミュニケーションというのは続けていくものと考えております。

 2点目が、公平性の話と感染症指定医療機関の話が同じ論点だったかと思いますけれども、まず、新型インフルエンザ発生初期というのは海外発生期であるとか、国内発生早期で、そもそも一番最初の時点、国内で蔓延しているような時期でないところをまず書いております。その後どういうように使用するかは、そのときに得られた知見を踏まえて、より広い対象者に必要であるということであれば、そういったところに供給する体制であるとか、また診療ガイドラインの変更等で対応していくものと考えております。

 それだけではなくて、この際の備蓄というのは初期の対応ということでして、実際は平時にはつくられていないために初期の対応は備蓄でやらざるを得ませんけれども、ある程度こういった耐性ウイルスが広く蔓延するような事態でしたら、メーカーさんにつくっていただいて供給するということを急ぎするという体制で、供給についてはある程度配慮してやっていきたいと考えております。

○岡部分科会長 平等性は随分前にも議論があったのですけれども、結局、もし平等にやるのだとなると、ワクチンと同じように全国民にとか、外来数から割り出して国民の45%分という膨大な数字が出てくる中で、万が一のとき、しかも、しょっちゅう起こり得るようなことを想定しているわけではないので、そうするとどうしてもある程度数的な制限が要るとなると、さあ優先順位はどれでしょうとなった結果なので、おっしゃるようにそこは本当にリスクコミュニケーションで、こういう限定的な薬ですよと。また、効果も実は定かでない部分があるので、むしろ逆に広く使っていただくのは場合によっては危険を伴うかもしれないし、思ったより効果が出ないということもあるので、それが限定的になったという経緯があります。おっしゃるように、そこは本当に一般の方にできるだけわかるように説明を、特に行政の方にもわかっていただかないと、行政から住民の方に説明ができないということがあるので、その辺はぜひ事務局も書いていただいて、決まりましたというだけではなくて、その辺をぜひやっていただければと思います。話の経緯はそのようなことがありました。

 質問は大体大丈夫でしょうか。

○稲田課長 今のところはよくわかりました。私も、全体はもちろん賛成でございます、何ら異論はございません。ただ、繰り返しますが、国全体では発生初期でございましても、例えば、前の新型インフルエンザのときも兵庫県では感染症指定医療機関の病床が満床となるわけです。国全体からしたら本当に少ない患者です。そのときに、感染症指定医療機関だけと限定されましたら、実際の運用としてかなり厳しいものがあります。

○山岸室長補佐 こちらの文脈で言っている感染初期といいますのは、 今、稲田課長からおっしゃっていただいたような状況は、その時期を過ぎているような体制と考えていますので、その前の体制ということで考えております。

○岡部分科会長 非常に早い段階だと思います。ただ、本当に耐性がわかってくるのはずっと後のほうなので、しばらくたってから使うということになったときに、さっきのパンクしてしまうというのは別の準備というところでやらなければいけないことなので、きょうの議論からちょっと外れますけれども、足りなくなるということは確かにあると思います。ただ、坂元委員からも強くあったのですけれども、これは自治体がストックするものではなくて国がストックするので、ある特定の県だけが発生ということで、なおかつ耐性が強いということであれば、そこには国から回るという形で、自治体がそれぞれのところでストックするという考え方はなしにしているということですが、事務局からさらに何かありますか。

○山岸室長補佐 あと、リスク・アンド・ベネフィットバランスの話もございますので、発生初期であっても、ある程度広がってきた段階であっても、この薬剤の対象になる薬が限定される段階という場合であれば、感染症指定医療機関ということになると思います。その辺はフレキシブルにガイドラインの改訂になりますけれども、状況と情報を踏まえて対応していくということで検討したいと思います。

○岡部分科会長 今、坂元委員のお名前を出したのですけれども、たしか最後の議論では坂元委員と押谷委員が出席されなかったと思います。意見はいただいているのですが、一応それも踏まえて御意見があればどうぞ。

○坂元委員 この薬の難しいところは、既存薬が無効または効果が不十分という判定だと思います。通常のタミフルなどを使っていても効かない患者もいると思うので、そこでだれがどうやって効果不十分と判定するのかという問題が1つあるのかなと思います。それが集団としてどのくらい効かない数が出てきたときにこの薬を供出するかとか、それから、耐性という問題ですが、このアビガンの添付文書を見ると、インフルエンザ様の症状が出たら速やかに投与することと限定的に記載されているんです。ということは、効かないから途中でアビカンに変えるということが添付文書上許されるのかどうかという解釈もあるので、もちろんこれは自治体が到底判断し得る内容ではないと思うので、自治体が備蓄するには適さないということは私も意見として申し上げたのですけれども、逆に、今、稲田課長がおっしゃったように、感染症医療機関に限定すれば、そこにはかなり専門家がいるかと思います。けれども、一般の医療機関で使いたいとかいろいろ言ってきたときに、だれがどう判断してやるかという問題、また患者さんが確かに感染症指定医療機関からあふれる可能性もあるので、その辺の判断根拠と納得性をちゃんとする必要があるだろうなと感じております。

 以上です。

○岡部分科会長 ありがとうございました。

 事務局から何かレスポンスはありますか。

○山岸室長補佐 まず、国の判断基準というところでとりまとめにも書いてありますけれども、基本的には、ほかのインフルエンザ薬が無効または効果不十分というのは、薬事承認の審査のときでも原則耐性のことを議論されていましたので、耐性の議論がベースにあるのだろうと思います。ただ、小委員会、感染症部会でさまざまな御意見をいただいたのは、ウイルス学的な遺伝子の耐性だけでなく、ウイルス学的な表現型みたいなものもありますし、臨床、疫学情報、総合的なリスク分析をすることも重要ということで、そこを専門家の先生方にちゃんと御議論いただいて判断していただくという仕組みをあらかじめつくっておくというのが必要だろうと。判断が難しいというのは事実ですので、そういったことを判断していただくところを速やかに立ち上げて、準備していくということが必要であるということで御意見をいただいていますので、そちらは引き続き進めていきたいと思っております。

○岡部分科会長 押谷委員、御意見があったらどうぞ。

○押谷委員 この文章は「何とかではないか」「何とかではないか」という部会の提言みたいな形で出されるということなのだと思いますけれども、最終形がよく見えてこなくて、この中を見ても相矛盾するような内容も書いてあって、例えば最初の「本剤の使用判断・基準」の1番目は、全てアンドで書かれていて、感染力・病原性が強くて、かつ4剤に耐性の場合に限るとしか少なくとも私には読めないのですけれども、一方、次のところを読むと、かなりいろいろなことを引っくるめて検討すると。上に書いてある全てがアンドで結ばれているような話とは全然違う形で書かれていて、先ほど稲田課長からも出ましたけれども、次のページにいくとハイリスクグループに限るみたいな、ここでまたアンドがつけられているという非常に限定的な、○の1つ目とハイリスクを結ぶと、アンドでずっと結んできて非常に限定的にしか使えないとしか読めなくなるような気がするのですが、一方で、○の2つ目を見ると全く違う考え方で書かれていて、このあたりの最終形がどうなるのかがよく見えてこないということがあります。

 この薬はいろいろな問題点があって、条件つきで承認されているということがあって、いろいろ書きづらいところもあるのだと思いますけれども、使うシナリオとしては恐らく、必ずしも4剤耐性とかそういう話ではなくて、非常に病原性の高い新型インフルエンザが発生して、多くの患者が臨床現場でどんどん亡くなっていくというような状況で、どんなオプションでもいいから試してみたいというような、そういう意味では非常に限定的な条件なのかもしれませんが、非常に条件の悪いときに、しかも、何らかの形で例えばどこからか限定的であっても、この薬がある程度そういう患者にも有効だというようなデータが出てきたときに、日本初の薬で全く日本は持っていない、それでいいのかということが一番考えられるシナリオなのかなと思います。

 そうすると、本来は○の2つ目に書いてあるような、いろいろな条件を考えた上で最終的な判断をするというのが、最終的には正しいアプローチなのかなと思いますが、一方で、ここにはアンドで全部結ぶような書きぶりもしてあって、そうなると先ほど言ったような非常に重症患者がたくさん出て、たくさんの人が臨床現場で亡くなっていくような状況で、この薬がもしかしたら効くかもしれない、そういう条件でもアンドで全部結ばれていると使えないということになってしまっていいのかという気はします。

○岡部分科会長 事務局から何かありますか。

○山岸室長補佐 まず、薬事承認のところで薬事・食品衛生審議会といったところで御議論をいただいてきた経緯がございますので、その前提に従って、有効性・安全性について評価された上で、こういったところで認めるということがありますので、それを前提に議論を進めさせていただいたところでございます。それを前提にどういった使い方があるか議論させていただきました。使用対象では、そういうところを考えております。

○岡部分科会長 恐らく、押谷委員は最後のほうにおっしゃったような、別に耐性がなくてもリスクが高ければ使ったほうがいいじゃないかというような御意見だと思います。小委員会等々で今までやってきた議論の中でのコンセンサスは、薬事法上の承認もあるし、ここは耐性というのが大前提で、そこに加えてリスク分析はアンドだけれども幾つかの要素を持って、たった1つの要素だけで決めるわけではないという御意見があったので、このリスク分析という言葉が入っている。

 それから対象も、先ほどの稲田課長からの御質問と同じなのですけれども、全部を対象とするわけではなくて、その中でさらに限定していくといった流れにはなっています。ただ、大もとの重症例に効くかどうかというのは、先ほどの「感染症部会」でも質問が出まして、そこのエビデンスはあるのかというと、ないんです。実際には重症例には、ついこの間H7で使われたのではないかという話はありましたけれども、単発例だったのでデータとしては出ていないのではないかと思います。そのデータのない中でやるというのは矛盾もあるのですけれども、そこはエキスパートの考えとしては、ある程度あったほうがいい。ただ、これは私の意見ですが、もっとそれを広げるにはエビデンスが必要で、本来はもっと知見がないとできないのではないかと思っています。

 どうぞ。

○押谷委員 恐らくその知見を得るためには、病原性の高いパンデミックが起きてみないとわからないというのが実際のところだと思います。そういうことをするためにも、ある程度の備蓄は必要だろうと思います。

 もう一つ言うと、ハイリスクグループというのがありますけれども、ここで言っているのは、ハイリクスをどうやって定義するのかという問題もありますが、免疫不全などの一般的なハイリスクのことを指しているようにとれるのですが、例えば1918年のスペインインフルエンザは、ハイリスクの人たちも亡くなっていますけれども、主に亡くなったのは一般に言われているハイリスクグループの人たちではなくて、健康な若い成人が死者のかなりの部分を占めているということもあって、そういうことを考えると、ここもハイリスクと限定してしまっていいのかという問題はあるかなと思います。

○岡部分科会長 川名委員どうぞ。

○川名委員 私も既存の抗ウイルス薬が効かない重症患者さんというのが、多分アビガンの最初に使われる方になるのだと思います。薬が効きにくいあるいは効かないという定義ですが、マスで効かないということと、個で効かないということがあると思います。恐らくここで議論しているのはマスに関することだと思います。しかし一方臨床の現場ですと、重症のインフルエンザ肺炎患者が入院してきて、ラピアクタを使った、タミフルを使った、でも効かない、人工呼吸器がついて、下手するとこの人は死んでしまうという状況になったときに、アビガンは使えないのかという話が必ず個々のケースとして出てくると思います。マスとして効く、効かない、個として効く、効かない、どちらに使うのかという議論もしておかなければいけないと思います。まとめの最後に「知見の集積の必要性」と書かれていて、安全性及び有効性の知見・情報を集積する体制と書いてありますが、もしパンデミックが起こったときに、ファビピラビルという薬がマスとして効くのか、効かないのかというのをできるだけ早く、臨床的な有効性を評価するシステムが絶対に不可欠で、それが多分その後の使用のトレンドを決めていく可能性があると思いました。

 以上です。

○岡部分科会長 パンデミックが出てからももちろんデータはとるけれども、その場合はデータとしては遅いので、これは私の考えですけれども、やはりシーズナルインフルエンザがある程度モデルとして、エビデンスとして固めておいたほうがいいのではないかと思うのですが。

○川名委員 そう思います。

○岡部分科会長 谷口委員どうぞ。

○谷口委員 まとめていただいた事務局の方もそうでしょうし、我々もみんな、いま一歩すっきりしない文章であるのは、アンサートゥンティ(uncertainty:不確定要素)というのが非常に多くて、よくわからない部分が結構ある。けれども、期待感もあるというところだろうと思います。ただ、今回の備蓄というのは、不確定要素も全て含めた備蓄なのだろうと思いますので、それを受け入れた形で備蓄を考えればいいのではないかと思います。ただ、その不確定要素を次に重度のパンデミックが起こるまで待つというのは、この薬を開発した国としていいのかなと思われます。先ほど先生もおっしゃいましたけれども、実際には季節性でもノイラミニダーゼインヒビターを使っても重症になる人はいるわけです。ただ、そういった場合に使うかどうかというのは、また難しい問題だと思いますが、今はパンデミックの委員会ですので、ここで議論すべきかどうかわかりませんが、ただ、プリペアードネス(preparedness:事前準備)としては不確定要素を埋めるような努力は今後していくべきではないかと考えます。

○岡部分科会長 ありがとうございます。

 最初のワーキンググループからおられた委員は小田切委員だけではないかと思いますけれども、何か補足の意見等々ございますか。

○小田切委員 小委員会でも大分議論になったのですけれども、基本的に現行のノイラミニダーゼの4薬剤に対して耐性というのは、今のところ世界ではないわけです。オセルタミビルとペラミビルには耐性があるけれども、ザナミビルとかラニナミビルというのは感受性は若干下がる程度なので、感受性のクライテリアを戦略的にきちんと固めておかないと、それは当然ですけれども、備蓄量をどうするかという問題にもかかわってくると思うので、そこはもう少し詰める必要があるだろうと思います。

 後半にも書いてあるように、使う対象もかなり限定していることを考えれば、備蓄量の議論にもかなり大きくかかわってくるかと思います。

○岡部分科会長 最終的な備蓄量は、医学的なものだけではなくて、製剤としてのキャパシティーであるとか、日数であるとか、さらにはお金の問題が絶対絡んでくるだろうと思うので、どのくらいというところまではまだ決められないので、今のところその中で広く使われる薬ではないという限定で、備蓄量はまた別のところでさらにディスカッションを続けるということだと思いますが、今おっしゃったようなことと、メルクマールになるような数字については、さらにほかのものもいろいろ考えていかなければいけないところだと思います。現在何パーセントが必要だというところまでは持っていけないと思いますが。

 大石委員どうぞ。

○大石委員 私も、これまでの議論には加わってきているのですけれども、なかなか想定がしにくい新型インフルエンザの発生で、感染力・病原性がアンドでつながっている文章ですけれども、いろいろな想定が織り込まれていると思います。そして、そのウイルスが4剤耐性であると。これもまたシナリオであって、備蓄ということをどう考えていこうかということをこれまで議論してきたわけで、今後、備蓄をしたアビガンをどうやって使うかについては、診療ガイドラインで相当議論する必要があろうかと思います。量も含めて、発生した新型インフルエンザの規模もありますよね。指定医療機関だけで足りるのかというのはおっしゃるとおりでありまして、その辺は相当な議論が必要になってくると思いますけれども、今のまとめは多分、備蓄にゴーサインを出すかどうかということだろうと思います。いろいろなポイント、議論すべきことが残っていることは事実だと思います。

○岡部分科会長 丸井委員どうぞ。

○丸井委員 私も同じようなことを思っていました。4つの○の中で、時間順が当然ながらあります。今までの発言の中にありますように、対象者をどうするか、あるいは実際に現場でどうするかという話はそのときのことで、まず備蓄をするかしないかというのが今の時点の話であると思います。それをどのように運用していき、いざ事が起きたときにどのように判断しながらやっていくかということになります。そういう意味で、今考えるべきことと、備蓄を始めてから実際にどう使うかという話をするという二つを少し整理して、まず今すべきことを議論したほうがよいと思っておりました。

 もう一つは、先ほど押谷委員からもありましたけれども、全てアンドでいくというあたりも多分、この薬のもともとの薬事承認から始まっているということです。また、例えば耐性も先ほどもありましたけれども、個体レベルなのか、集団としてなのかという判断の仕方が非常に違ってくるところでもありますので、それは整理する必要がもちろんあると思います。しかし、先ほどのように時間順で考えていくと、白い○の2つ目が、まず議論すべきところなのではないかと思っています。

○岡部分科会長 ありがとうございました。

 そのときに不明・不足の部分を前提にしてやっているので、その場になって全部エビデンスが要るのか、あるいはないまま動くのか、幾つか求めなければいけないことがあるのですけれども、今、丸井委員におっしゃっていただいたように、最大限まず決めなくてはいけないことは、今までの委員会では基本的には備蓄をしようという合意で、各論の問題点が幾つか出ている中で、1つは診療ガイドラインといったところ、それから、備蓄量については先ほどの予算面、その他でもう一回議論が要るだろうと思うのですけれども、そういった問題点の提起が幾つかあったと思いますけれども、備蓄をすることについては今のところ余り反対意見はないと思うのですが、よろしいでしょうか。

 使い方等々については今の議論が出てきているので、そこはさらに詰めていく必要がある。ただ「何とかではないか」「何とかではないか」というのは、いつまでたっても問題提起をしているだけみたいなので、もう少し決まったような形を書いてもいいのではないかと私も思うのですが、押谷委員はそういう意味ですよね。例えば「耐性がみられるような場合ではないか」ではなくて、これは最終的な文章としては「耐性がみられるときに使うべきであると委員会は考えてきた」というように少し直せないかなと。賛成なのですけれども、ほかに今みたいな御意見はどうでしょうか。

 釜萢委員、今までも意見はいただいているのですけれども、臨床現場を抱えているというところも含めて、何か御意見があれば。

○釜萢委員 先ほどからお話が出ておりますように、判断をするために必要な情報がかなり限られて、まだ不確実な中でやらなければならないということが、今回のこのミッションの非常に難しいところだと思います。備蓄の方向でまず考えるに当たって、もう一度薬事承認のときの適応を見てみますと、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効または効果不十分な、新型または再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断したときとなっているわけで、この国の判断の根拠が今、求められているわけですけれども、結局エビデンスを蓄積するのが、実際に新型インフルエンザが起こってしばらくしないとどうしようもないというのは、やはりよくないと思います。それで、備蓄をするに当たっては、先ほど稲田課長さんからもお話がありましたけれども、使いたいのにもかかわらず供給できないという事態は、これは予算の問題もありますが、可能な限りそういう事態が起きないような体制を模索すべきだと私は思います。

 しかし、一方で、エビデンスを何とか得るための努力が必要で、どういう手続が必要なのか今すぐにはわかりませんが、季節性のインフルエンザにこの薬を治験薬として使って、季節性のインフルエンザにおいての効果がどうなのかというのを、もう少し蓄積するといことはできないのかどうか。これは新型でなければ効かないということではないだろうと思いますので、そのあたりができるような工夫を一方でやりながら、何が起こるかわからない、危機はいつ来るかわからないということからすれば、備蓄を速やかに決断し、必要な量がなるべく確保できるようにするという施策をとりながらやるということが必要だと思います。

 以上です。

○岡部分科会長 ありがとうございました。

 あとは宇田委員、御意見がありましたら、地域のほうということも含めて。

○宇田委員 ありがとうございます。これまでの議論で、備蓄に関しては国のほうで備蓄していただいて感染症指定医療機関で使用していただく。その使用のタイミングについては、ガイドライン等を作成したアウトカムを使っていただくという流れで、ぜひそうしていただきたいと思うのですけれども、そのプロセスの中に自治体が全く関与しないことが想定されるかというと、そうあってほしいのですけれども多分そうはならないのではないだろうかと。例えば、先ほど来出ているとおりエビデンスの集積、例えば、国がどこかの県の感染症指定医療機関にアビガンをリリースして、それを使うと。それで結果がどうなったのかといったようなところを、使った感染症指定医療機関の自治体が全く関与していない、承知していないということはあり得ないだろうと思いますし、情報はきっちりと共有しておいていただきたいと思います。

 場合によっては、地域の医療機関あるいは関係者からいろいろな情報を国に直接求める場合もあると思いますけれども、都道府県庁あるいはいろいろな情報を仕入れて、その地域の保健所とかそういうところに、どういう状況なのか、これはどういう治療を行って、その結果がどうなのか、国はどういう動きをしているのかといった問い合わせ等もあるのではないかと思います。なので、果たしてどこまで自治体が関与することが考えられるのか、具体的なプロセスがわからないのですけれども、多分フェーズが進めば患者の数もふえてきて、いろいろな状況の変化はあり得ると思うのですが、エビデンスの集積だとか、あるいは関係機関、とりわけ医療機関や行政機関等に説明をするとか、いろいろな役割が自治体、保健所には発生する可能性もあるので、国と自治体あるいは保健所とのそういう状況というのは、かなり国がパニックになっている状況だと思うので、少なくともパイプをきっちりとしておいていただく必要はあるのかなと。ここには書いてありませんけれども、今後の課題かなと思いながら聞いておりました。

○岡部分科会長 ありがとうございました。

 事務局から何かありますか。

○山岸室長補佐 確かに、感染症指定医療機関も含めて新型インフルエンザ対策においては自治体、保健所等にさまざまお願いするところがありますし、例えば、アビガンを用いて治療する場合があったとしても、それは新型インフルエンザ対策のスキームの中でさせていただくところなので、行政、自治体といったところもどういった手順でやっていくかというオペレーションマニュアルのようなものや、定点みたいなものは詰めていくというのは我々として今後考えていかなければいけないと考えます。そちらもまた引き続き、診療ガイドラインとともに進めていけるように考えていきたいと思います。

○岡部分科会長 ありがとうございました。

 押谷委員どうぞ。

○押谷委員 ちょっと細かいことになるかもしれないですけれども、今の議論の中にある感染症指定医療機関でいいのかということも、一方で考えておかなければいけないのではないかと思います。ここで本当に必要なのは、きちんとしたエビデンスが出せるような専門家がいて、データマネジメントがきちんとできるような病院である必要があると思いますけれども、感染症指定医療機関となっているところでも必ずしもそういう体制ができていないところもあります。多分かなりあると思います。一方で、専門家はいるけれども感染症指定医療機関に指定されていない、例えば大学病院などもあるわけです。

 この間、別のところで議論していたのですけれども、少なくとも私が想定しているような事態は、重症者からいかにエビデンスをとるかということなのですが、そうすると、ICUとかそういう体制が整っているところからしか、こういうエビデンスは出てこないのですが、感染症指定医療機関の中には、これもかなりの部分ICUや重症患者を診るような体制になっていない、少なくとも感染症の患者で重症化したような人たちを診るような体制になっていないところがかなりあると私は思っているのですが、そういう中で、ここで感染症指定医療機関と限定してしまっていいのかどうか。そういうところから本当にエビデンスが出てくるのかというところは議論しておく必要があるのではないかと思います。

○岡部分科会長 指定医療機関に問題ありというのは2009年のときにもありましたし、それ以外にもエボラのときに露呈したといった問題も出ているのですけれども、ただ、そこを充実させたり、感染症を診るというのはこの委員会としてはそういう注文をつけるということで、実際の議論はここではできないと思います。ただ、現状で感染症指定医療機関と限定したほうがいいのか、あるいは重症者を診るところ、これも議論が少しあったのですけれども、例えば、大学病院OKということになると、最初の段階である新型インフルエンザあるいは疑いが強ければ、大学病院は診ないで送るんですよね。それから、全国の100ぐらいある大学病院が全部OKかといったら、またまたそこも難しくなってしまうので、指標として感染症指定医療機関をとりあえず置いてあるわけです。

 永井委員どうぞ。

○永井委員 私の病院も感染症指定医療機関なのですが、一種、二種含めて6,000ベッドくらいしか多分なくて、病院自体も500600ですので、感染症の専門医がいる病院イコール感染症指定病院ではない、設備基準等々いろいろありますので。先ほどのお話ではないですけれども、アビガンを使えるといったら、感染症指定医療機関に患者がどんどん来られても困ってしまうわけです。実際は感染コントロールという形で地域で感染症の専門医と認定看護師含めていろいろ動いていますので、そういう地域の枠を使って、表向きは感染症指定病院に患者を入れて、きちんとしたエビデンスのあるデータを出して、国の体制の展開等々の準備が必要なのではないかと思います。それはパンデミック以外の流行性のインフルエンザの重症例を含めてですが。

○岡部分科会長 そうすると、今の「何々ではないか」のところに置かざるを得ない部分もあるのですけれども、先ほど事務局がオペレーションマニュアルといったことをおっしゃっていましたが、診療ガイドラインというと実際の現場の診療のどのくらいを何日間というイメージが出てくるのですが、それだけではなくて、今言ったような対象の医療機関がこれでいいのか、4剤耐性は薬事法上で大前提になるんですね。行政がどういう動きをしていくかというのはシミュレーションをやってみないとわからないけれども、例えば、川崎市で生じたときは県がやるのか、市がやるのかという問題もまた出てきてしまったりするので、そういうオペレーションを含めたところは、もう一つ診療ガイドラインとは別の議論をしていただくと。診療ガイドラインはエキスパート・オピニオンでしょうから、それも別途まとめて、どういうグループでやるのかはまだ多分決まっていないと思うのですけれども、それはある程度事務局に構想があるようですから、それをやっていただいた上で、大前提としての備蓄についてはそうあるべきであると。幾つかの細かい部分については、さらに議論を深めてもらいたいというようなところが委員会の結論でいいでしょうか。

 文章としては少し練り直さなければいけないところがあるみたいですけれども、基本の考え方で幾つか御意見は出てきていますから、それは臨床現場もそうだし、公衆衛生からも出ているので、そこを十分考慮していただいて、最終的なものをつくっていきたい。基本線は、1つの備蓄の中に非常に不明の部分であったり、推測の部分もあるけれども、今の段階では限定された量はやはりあったほうがいいのではないかということでよろしいでしょうか。

 川名委員どうぞ。

○川名委員 備蓄するかしないかというところがテーマだとすると、もちろん備蓄は必要だというのは私も賛成です。しかしどうしても各論から入っていかないと、どのくらい必要なのかという話にならないので、ついつい各論の話になってしまうのです。例えば、先ほどの感染症指定医療機関だけで診ることになると、備蓄量も少なくていいかもしれない。そうではなくて、もう少し広くするということになれば備蓄量も多くなると思いますので、どういうところが診療に関与するのかというのは検討しておかなければいけない部分だろうと思います。

 例えば、特定機能病院は、未承認薬については未承認新規医薬品等評価委員会をつくって、審査してからやるということがルール化されたと思うのですが、感染症指定医療機関以外でも未承認新規医薬品等評価委員会で審査できる体制があるところには、要望があればそちらにも薬を回すとか、ほかのいろいろな枠組みがあると思うので、そういうところも考慮されてもいいのではないかと思います。そうすると、恐らく使える施設がもっと広くなる可能性もあって、そういうところも考慮していいのではないかと思いました。

 以上です。

○岡部分科会長 ありがとうございました。

 ほかに全体的にございますか。丸井委員どうぞ。

○丸井委員 小さいところではありますけれども、先ほども四角の中と「補足」との関係もよくわからないなと思っていました。例えば「補足」もいろいろ表現があって、「これこれと考える」とか「これこれではないか」「必要ではないか」とかあるのですが、実は先ほど来のお話の感染症指定医療機関の部分、これでいくと4ページの真ん中あたり「診療ガイドラインや知見の集積の必要性」の1行上ですが、これだけは「限定する」と断言しています。このままの文章でこの先行くとは思いませんけれども、これだけ読むと感染症指定医療機関以外ではあり得ないということになりそうです。ほかの項目は大分緩く書いてあるのに、ここだけは断言しています。全体として文章がこれから変わっていくのかと思いますけれども、その辺の対応を考えていく必要があると思います。

○岡部分科会長 そこだけがむしろ限定的になっているということがあるので、そこも含めて。

 事務局、お願いします。

○長谷川室長 さまざまな御意見ありがとうございます。この薬剤は、もともと薬事承認で大変厳しい条件がつけられておりまして、そうした中、班会議、小委員会で御議論を重ねていただきました。そういう意味では、当初私ども事務局が結構限定的に書いたところ、さまざまな委員の先生からさまざまな想定があり得るのではないかという御議論の中で、例えば、具体的には最初の四角囲みの最終的に本剤の使用の判断に関しては、国の担当者のみで決めるのではなくて、きちんと専門家と総合的なリスク判断の中で行うべきだという条件がついております。

 また、先ほどから実際の新型インフルエンザ、特に今回の4剤耐性ウイルスの発現状況についても、さまざまな想定が可能ではないかと。例えば、海外で4剤耐性が発生して、その第1例が日本に入ってきた場合については、恐らく感染症の病棟等のみで対応が可能であろうが、もし、新型インフルの大規模発生時に国内で第1例が発生した場合どうなるのか。恐らくそのようなさまざまな御意見をいただいていると思っております。

 そういう意味では、きょうは備蓄が必要かどうかという是非についての御議論でございまして、私どももきょうさまざまな御議論をいただき、実際に新型インフルの医療の対応を考えるに当たってはさまざまな想定が必要だと思われますので、今後診療ガイドラインの議論の中、また、行政向けの議論の中で詰めていく必要があるかと思います。

 また、私どもが今のところ書いておりますのは、感染初期はという限定をかけさせていただいて、感染初期については感染症指定医療機関に入院いただき、そこに供給すべきという形で記載しておりますが、今後さまざまな状況を考えながら御議論させていただければと考えております。

○岡部分科会長 ありがとうございました。

 それから、きょうは余り議論には乗っていないのですけれども、薬事法上の承認も含めて、それから、ほかの小委員会等々でも現代の段階で広く使われないというのは催奇形性の問題があって、催奇形性のある薬というのは基本的には市場に余り出ないと思います。それがあっても、なおかつあえて必要であるという限定が備蓄の考え方だと思うので、そういうことも含めて一応備蓄については必要だけれども、オペレーションの部分、診療現場で使う部分については、ガイドラインあるいはオペレーションマニュアルといったことで、引き続き事務局のほうでも案を練っていただいて、専門家の間での検討をするということにさせていただきたいと思いますが、それが感染症部会等々から上がってきた意見を見た有識者会議の中の医療・公衆衛生分野の意見としてまとめておきたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○岡部分科会長 ありがとうございます。ほかの委員の方々もうなずいておられるので、異議なしということにいたします。

 最後に、今のまとめで室長はどっちみち継続してやらなければいけないようですから、引き続き頭の中に入れておいていただいて、あるいは局長と課長、何か最後にコメントがありましたら、どうぞ。

○福島健康局長 どうもありがとうございました。議論を聞かせていただきました。

 最後に岡部分科会長にまとめていただきましたけれども、もちろん我々もいざというときにはできる限りの現場で使っていただきたいという思いもある反面、どうしても催奇形性の話がネックになっています。ついては、厳重な流通管理やあるいは使用される先生方、さらには患者さんにしっかりその点を御理解いただいた上で使わなければいけないという制約もございます。そういう意味で、感染症指定医療機関の限定という話があったのですが、もちろん局面が変わってきて新型インフルエンザが想定されるものが広がってしまえば、それは感染症指定医療機関にとどまらない話になると思います。その点について、この文章の中でもいろいろありますが、新しい治験や情報をもとに適宜投与対象者を広げるなども含めて、適切な使用方法について検討することとなっておりますので、そういった観点を持ちながら、きょういただいた意見を踏まえて、上の委員会に話を上げさせていただきたいと思います。

○岡部分科会長 ありがとうございました。

 局長はよろしいですか。どうもありがとうございました。

 それでは、さっき申し上げましたようなことをこの委員会の結論として、この先は有識者会議が今月末にたしかあると思うので、私はそれにも出ますので、今の議論も加えて説明をしたいと思います。どうも似たような人が出てくるので、そのときは大体議論が理解いただけると思います。

 あと、事務局から、この次こととか何かアナウンスはありますか。

○山崎室長補佐 特にございません。

○岡部分科会長 それでは、少し時間は早めですけれども、議論は熱心にいただいたということで、これで終了にしたいと思います。どうもありがとうございました。


(了)

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