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2017年1月11日 第5回「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」議事録

労働基準局 労働条件政策課

○日時

平成29年1月11日(水)16:00〜18:00


○場所

厚生労働省共用第6会議室(3階・日比谷公園側)


○議題

時間外労働の実態等について(意見交換)

○議事

○今野座長 ただいまより、第5回仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会を開催いたします。本日は、小畑委員、黒田委員、島田委員が欠席です。山田委員は、遅れて到着されるということです。

 本日の議題ですが、前回に引き続いて、時間外労働の実態等について意見交換をしたいと考えております。まず、事務局から資料の確認をお願いします。

○中嶋調査官 本日の資料は、議事次第、座席表。資料1は、第1〜第4回検討会での各委員の主な御意見。資料2は、「過労死等ゼロ」緊急対策。それから参考資料の、計5点です。不足がありましたらお申し付けください。

○今野座長 カメラ撮りはここまでとさせていただきます。本日の進め方ですが、まず資料1で、第1〜第4回検討会の各委員の主な御意見を整理してありますので、資料を事務局から説明していただいた後に、皆さんの御意見を頂きます。その後に資料2の「過労死ゼロ」緊急対策について事務局から説明をしていただき、更に議論をしていきます。まず、事務局から資料1の説明をお願いします。

○中嶋調査官 資料1は、前回お出ししたものをベースに、前回第4回検討会でいただいた御意見を追記したものです。追記した所には下線を付しております。具体的に、前回は「特定業種・職種への対応」を中心に御議論いただきましたので、主に資料の8ページの記載についてアップデートしてあります。

 8ページで追加した部分は4ポツ以下になります。トラック運送業界について2点まとめてありますが、個々の企業の努力だけでは解決が難しいので、業界関係者を集めた協議の場など、公的取組が必要という趣旨の御指摘。その際には、荷主側のインセンティブに訴えかけるような工夫が必要との御指摘を頂いております。

 次のポツで医師に関しては、アメリカの研修医について労働時間に限度を設けるよう各病院に要請したことによって、無駄な作業の削減など、見直すきっかけになったということ。

 次のポツの建設業については、建築基準法の中で厳しい規制があって、それと連動させて元請に責任を持たせているという御示唆をいただきました。

 さらに下の2つのポツは、現在、限度基準告示の適用除外とされている業務についての見直し。最後のポツの、下請構造やアウトソーシングの問題について、省庁横断的に議論していく必要性、という点について御指摘をいただきました。適宜御参照いただければと思います。

 続いて参考資料について御説明いたします。1ページから7ページが、医療従事者の勤務環境改善についての資料です。改正医療法に基づく勤務環境改善の取組については、前回も質疑の中で少しお答えさせていただきましたが、改めて資料の形で整理をして、お示しするものです。

 2ページは法律規定です。概略を申し上げます。2ページの一番上の条文の第30条の19には、病院や診療所の管理者については、そこに勤務する医療従事者の勤務環境改善に資する措置を講ずるように努めるという旨があります。また都道府県については、上から3つ目の第30条の21に、医療従事者の勤務環境の改善のために必要な支援や拠点の確保に努めるという旨の規定があります。厚生労働大臣については、上から2つ目の第30条の20で、病院や診療所の管理者が講ずべき措置に関する指針を定めて、各病院などにおける努力の後押しをしていくということが規定されております。

 今、申し上げましたような規定に基づく現場の取組を図解したものが1ページになります。1ページのポンチ絵の中ほどに、スタッフが集まって話合いをしている絵。それから少し下辺りに、PDCAのサイクルが回っている感じの絵があります。ここにあるのは、各病院内で、勤務環境の改善に向けて現状分析、課題の抽出や、その改善に向けて計画的に取組を進めていただく。その際にどのような対策が有効であるかということは、厚生労働省が策定する指針であるとか、より具体的な取組例を示した手引きを参考に考えていただくという仕組みを図解しています。

 都道府県の関わりについては、このページの下のほうから、言わば下支えをするような形で矢印が出ておりますけれども、医療勤務環境改善支援センターを設置し、労務管理と医療経営の両面から、専門的なアドバイスなどを通じて各病院での取組を支援していくものです。

 具体的にどのような勤務環境改善策があるのかについては、4ページを御覧ください。このページでは、厚生労働省がまとめた手引きの中で、勤務環境改善に向けて、どのような取組メニューが示されているかをまとめたものです。例えば一番上の箱の中で、(1)働き方・休み方改善では、労働時間管理として、1回当たりの最長勤務時間の削減。夜勤負担軽減策(夜勤明けの早帰り等)。勤務と勤務の間隔の確保など、勤務特性、職務特性も踏まえた形で取組メニューを示しています。

 すぐその下に、医師の負担軽減策をまとめています。ここには、多様な勤務形態、チーム医療の徹底、多職種との連携、業務分担、ICT機器による負担軽減、地域医療連携といった取組メニューがあります。

 その下は、看護職・コメディカルの負担軽減です。健康・安全に配慮した夜勤・交代制シフト(仮眠時間の確保、夜勤回数の制限、夜勤専従者の雇用及び配慮等)などを示し、各医療機関での取組を求めています。

 5ページには、個々の医療機関において行われている好事例について掲載してあります。今、申し上げたような取組メニューの実施も含め、勤務環境の改善に向けて各医療機関で取組が進められておりますので、その成功した事例の紹介をしております。

 6ページと7ページでは、直近の動きとして、医師・看護師等の働き方ビジョン検討会について御紹介しております。7ページに検討会の趣旨などについてまとめてあります。簡潔に申しますと、今後の医療のあるべき姿と、そこでの働き方に関する大きなビジョンを議論するための検討会です。ここでは、今後の医療供給の在り方、偏在対策、医師養成数などが議論されるわけですが、それに当たって現在の医師の勤務実態、あるいは働き方の意向などをきちんと把握しておくことが必要であるということで、この年末に医師の勤務実態などに関する全国調査が行われております。

 今後、その結果を集計、分析した上で、働き方を含めて将来の医療ビジョンにいかしていこうという取組が進行中ですので、その旨の御紹介です。医療関係は以上です。

 8ページは、月80時間を超える36協定の締結状況と、労働時間の状況についてまとめたものです。表1が、月80時間を超える特別条項付き36協定を締結している事業場の割合について、業種・業務ごとの数値を並べたものです。表の左側から製造業、運輸交通業といった具合に、業種ごとの数字が並んでいて、ばらつきもありますが、中ほどの8.7%が業種計での数字になります。その右側は、建設業、自動車運転の業務、新技術、新商品等の研究開発の業務といった、時間外労働の限度基準告示の適用除外業務における数値です。

 表の下半分、表2、表3も同様の表の作りです。実際に月80時間を超える時間外労働を行う事業場の割合を示したものです。月80時間を超える協定の締結割合、またそのような労働の実績のいずれについても、適用除外業務で高い割合となっています。

 9ページでは、株式市場との関わりについてです。これまでの議論の中で、長時間労働の削減や仕事の進め方の効率化といった企業の努力が、株式市場あるいは労働市場で積極的に評価される環境を作っていく取組が重要であるという御指摘をいただきました。ここでは、こうした取組として健康経営銘柄を紹介させていただきます。これは、従業員の健康管理を経営的な視点で捉える、いわゆる健康経営に取り組んでいる企業について、5つの評価項目、このポンチ絵においては(1)〜(5)という番号を付していますが、(1)経営理念・方針、(2)組織体制、(3)制度・施策実行、(4)評価・改善、(5)法令遵守・リスクマネジメントという枠組みから評価するものです。(1)は健康経営が経営理念・方針に位置付けられているかという観点。(2)は健康経営に取り組むための組織体制が構築されているかという観点。(3)以下としては、健康経営に取り組むための制度があり、施策が実行されているか、健康経営の取組を評価し改善に取り組んでいるか、法令を遵守しているかという観点から、国内全ての上場企業を対象とするアンケート調査への回答を分析評価し、優れた企業を業種ごとに1社、計25の健康経営銘柄として選定しているものです。その中では、長時間労働者への対応、過重労働防止に向けた取組も評価項目として加わっております。そういう意味で、健康経営銘柄として総合評価される中で、企業の努力が株式市場で積極的に評価される仕組みとされております。

 下半分は、なでしこ銘柄についてです。これも、今、申しました健康経営銘柄と同様の仕組みによって行われております。その中で1か月当たりの平均残業時間というものが評価項目の1つに位置付けられておりますので、こちらも併せて御参照いただければと思います。私からは以上です。

○今野座長 今、説明していただいた資料について、御質問、御意見はありますでしょうか。

○守島委員 参考資料の8ページの右下の図で、「新技術、新商品等の研究開発の業務」というカテゴリーがあって21.7%という数字が入っています。この内容がもう少し具体的になるといいかなと思います。いわゆる理系の研究開発のようなものを意味しているのか、それとも事業開発というか文系の仕事も含まれているのか。多分含まれているのだと思いますけれども、その辺のブレイクダウンがあるかないかということも含めて、もし何か分かれば教えてください。

○今野座長 どうですか。

○中嶋調査官 こちらの「新技術、新商品等の研究開発の業務」は、先生がおっしゃられたような形で、文系の方であっても、この開発に関わっていくような方についても入ってくるわけです。実際に調査に入っているときには、そこのところの詳細なブレイクダウンまで取らせておらず、こういう業務に該当するものがあれば、それを拾ってくるようにということでやってしまっております。そういう意味では概念的に含まれているのだけれども、そこまでのブレイクダウンを数字としてお示しできない点をお含みおきいただければと思います。恐縮です。

○守島委員 ありがとうございます。

○今野座長 他にはいかがでしょうか。意見でもいいです。

○大久保委員 健康銘柄の紹介がありました。健康経営は、特に大企業ではキーワードとして意識している経営者が多いと思っています。どういう形で健康経営と長時間労働という点を進めていくのか。方法論は、まだそれほどしっかりと出来上がっている感じがしないのです。例えば、労働基準局では、一昨年の12月からストレスチェックを始めていて、もう1年ちょっとたっているので、そろそろいろいろなデータ分析が進んできているところではないかと思うのです。例えば高ストレス者の実態と、長時間労働の関係性がどうなっているのか。基本的な分析が更に進んで、健康経営を推進していくときの経営側としての切り口が、よりエビデンスベースで見えてくるといいと思います。

 特に重要になるのは、いわゆるプレゼンティズムと言われるものです。会社に仕事に来ているのだけれども、体調が悪かったり長時間労働で疲れている状態で、生産性が上がらない状態が続く。仕事をしながら生産性が低い状態がずっと続いていることは余り望ましくない。もともと長時間労働と生産性の問題というのを今回はセットして議論したほうが、企業にとっても説得力があるということがあったと思うのです。このプレゼンティズムというのは、言葉としては随分浸透し始めてきていて、企業内でもよく聞かれるようになってきています。

 プレゼンティズムを測定するということに関して言うと、まだまだ手法論というのはそんなに整備されていなくて、テクノロジーを使って、例えばウエアラブル端末を使って、自分のプレゼンティズムみたいなものが見られるということになってくれば、疲れている状態で残業をやっても生産性が上がらないとか、むしろ一旦家へ帰って、リフレッシュした状態で明日の朝頑張ろうという判断ができます。そういうデータ分析やテクノロジーというものを組み合わせて、より進化した状態で、この長時間労働の問題と健康経営の問題というのは取組が進められるといいと思います。単なる感想です。

○今野座長 昔から労働科学で疲労の問題というのはずっとやっていました。大体、フィールドはトラックの運転手とか、現業系が多かったですけれども、そういった分野で何かないのですか。良い道具を開発するとか。でも、他方では生産性を測定してあげないとならないですよね。

○大久保委員 ストレスチェックのほうで、何かこのことに関連する示唆とか情報が出てきているのではないかという質問なのですけれども、何かありますか。

○村山総務課長 労働安全衛生法に位置づけられたストレスチェック制度ですが、大久保委員からありましたように、平成2712月からの施行後、最初の1年間が終わって、監督署に企業から実施状況を上げていただいて、いま分析中です。今、直ちに施行後1年間を通じて、どういう状況か端的にお示しできなくて恐縮なのですが、これはしっかりと分析した上で、世の中にも発信していきたいと思っております。

 その上で、委員の御意見との関係で重要と思うのは、ストレスチェックの実施者には、個々の労働者に対して実施していただいた上で、結果を職場ごとに集団的に分析し、その集団的な分析結果を事業者(会社)に提供し、会社は、それを基に職場環境の改善ひいては生産性の向上につなげていただくということを1つの狙いとしているものです。制度の仕立てとして、法律の条文上も、ただ単に診断を一人一人やってそこで終わりではなくて、集団分析という視点が入っています。そこの点も含めて、今いただいた御示唆も含め、どういう形で1年目の分析を発信していくのかということについて、持ち帰らせていただければと思っています。

○大久保委員 是非、データ分析を進めていただきたいと思います。当時は、確か長時間労働との関係で言えば、長時間労働者に関しての情報は企業側から産業医に伝えるというようなことも、確か年末から施策としておやりになっていると思います。そこと連動性を図っていくことも非常に重要だと思います。あとは、ストレスチェックで高ストレスという判定結果が出ても、個人の側がその産業医の面談を受けてみようとか、あるいは企業の人事といろいろと相談してみようというように個人側がアクションを取らないと、実際には高ストレス者の状態のまま放置されてしまう。現状ではそういうことになりやすい状態になっていると思うのです。その人たちに対して、どういう施策が打てるのかというところも重要なテーマになってくると思います。私はこの長時間労働の問題と結構密接な関連があるのではないかと思っています。

○今野座長 他にはいかがでしょうか。

○守島委員 今の問題に関しては、多分、東大の島津さんとか川上さんの研究室が結構やられています。最近聞いた発表だと、マネージャーに対する、いわゆるストレスマネジメントの訓練をやった結果、従業員の、部下のストレスのレベルが下がったという結果が出たという報告を聞いています。そういう意味では小規模な実験であるとか、分析は進んでいるのだろうと思います。ただ、総務課長もおっしゃったように、まだまだ始まったばかりですから、まだデータが積み上がっていないので難しいのだろうと思います。

○今野座長 労働時間と生産性については黒田さんがデータを出されていました。50時間を超えると限界生産性はずっと落ちてくると。あれが個別企業のデータであるとすると、各経営者もこれはまずいという話になるのだと思うのです。山田さん、その前の議論を聞いていなくても平気ですから、何か御意見があればどうぞ。

○山田委員 言いたいときには手を挙げます。

○今野座長 他にはいかがですか。

○大久保委員 もう1つ、この長時間労働の問題との関連でちょっと気になっているのは、働き方改革で9つの項目を提示して、今年3月にプランを出していくということですが、年末に同一労働同一賃金に関するガイドライン案が出たことと、もともとその以前からの賃上げに関する要請ということもあって、この正月はいろいろな企業の方と話をしました。コスト負担が増える話がいっぱい出てくるのだという受け止め方を基本的にはされているのだと思います。

 そこで長時間労働を削減するというのは、残業代の手当を減らす話ではなくて、減らすためには人の手当をしなければいけないということも考えれば、その部分だけコストアップ要因にもなります。全体として働き方改革は、長期的にはともかく、短期的にはコスト負担増につながっていくということなのだろうと思うのです。そう考えると、どういう形で働き方を変えることを通じて、労働生産性を上げていけるのかという、企業に工夫の余地が残された状態でうまく考えてあげないと、現実的には企業負担が重くて、なかなか実践的な成果が出せないということになってしまいやすいテーマかなと、改めて最近感じております。

 以前、この中での議論にもあったとおり、労働時間の上限規制の問題を考えるときには、セットで弾力化の問題と例外の問題を考えるのだという話が、座長からもそういう整理があったと思います。一般的に言えば、労働時間の上限規制の話ばかりが、法的な規制として企業経営者にはドンと来る感じなのです。ただ、働き方の弾力化の問題というのをセットでメッセージを出していくことはすごく大事なことだと思っています。その中でいけば、より生産的な働き方を追求できるようなルールづくりというのも大事です。以前私も1回触れましたけれども、変形労働時間制が、どのようにやったらちゃんと実質的に労働者の労働条件を担保された状態で生産性を上げられるのかという議論については、もう少し深い議論があったり、あるいはそこに関する案の発信があったりということもあったほうがいいのかということも、一連の働き方改革の議論が進んでいく中で、改めて感じております。

○今野座長 他にはいかがでしょうか。経済学的に言うとどうなるのだろうかと思っていたのです。山田さんに聞いたほうがいいですか。黒田さんから50時間を超えると限界生産性が落ちるというデータが出たわけです。それは、労働時間を短くしろと。それはいい。そうすると1人当たりの生産性は上がる、それはいいのです。もし、その他の条件が全部一定だと、生産量は落ちるのですよね。ということは、経営戦略上は事業規模を縮小して生産性を上げろというシナリオになってしまうのかなと思う。そうなると、なかなか取りにくいなと思ったのです。そこで全体の生産性が上がればそういうことはないのですけれども、静態的に考えるとそういうシナリオになってしまう。多分、日本の企業は量で勝負するという志向が残っているとすると、そこの問題がどうしても残るかなと思うのですが、そういう見方でいいのかなと思うのですけれども、どうですか。

○山田委員 正にその他の条件を全て一定にすると、恐らくそういうことになるということだと思うのです。ただ、今は日本自体が現実に直面している問題というのは人手不足の問題、あるいは労働供給自体が結構限界に来ていることなのです。我々は労働時間の議論をしていますけれども、結局、労働供給量掛ける1人当たりの労働時間ということで、労働供給が制約されているということは、実は労働時間自体が制約されているというように読み換えてもいいわけです。そのときに、確かに労働供給量を総量として一定で、それ以外のやり方を全て同じようにしていれば、もちろん生産量は減るということだと思うのです。

 量の問題ではなくて、もう1つの質の問題。いわゆる物量ではなくて、例えば経済学で言うと実質という概念なのですけれども、あるいは実質と言わなくても名目ベースの収益性と言ってもいいと思うのです。ある意味考え方によったら、これを機会に生産性の低い、あるいは収益性の低い部分を、一気には難しいかもしれませんけれども減らしていって、より収益性の高いところにシフトしていけば、全体としては生産性が上がり収益性も上がるということはあり得るわけであって、そこの意識は簡単な話ではないと思うのですけれども、改めてこれを機会に、恐らく経営サイドなり、マネージャーサイドがそういうことを考えないと駄目だということと、当然新しいことをやっていくことになると、働くほうも意識を変えて、新しいスキルを身に付けないと駄目だということです。これを機会に収益性の向上とか、要はその業務自体の取捨選択をやっていくというメッセージを同時に出していくことが重要なのではないかと思います。

○今野座長 黒田さんのあのデータというのは、結局そういうことを言っているのですよね。だから、何でもかんでもやるのはいい加減にしたら。ここから先は生産性は落ちるのだから、ここの収益性の低い業務はやめていったらということですよね。他にはいかがでしょうか。また皆さんの御意見を聞く時間はありますので、続いて資料2の「過労死等ゼロ」緊急対策についての話を聞いてから、もう一度議論したいと思います。事務局から説明をお願いします。

○村山総務課長 今、座長から御指示のありました資料2「過労死等ゼロ」緊急対策という資料について御説明します。

 この「過労死等ゼロ」緊急対策は、厚生労働省として打ち出した長時間労働・メンタルヘルス対策のパッケージです。契機になったのが、大手広告代理店での若手社員の過労自殺の事案が大きな社会的な関心を呼んだことであり、緊急的な対策の打ち出しが強く求められてきた状況中で取りまとめたものです。この「過労死等ゼロ」という言葉ですが、過労死等防止対策推進法という法律に基づく大綱が閣議決定されており、その中で将来的に過労死等ゼロを目指すという文言を政府として決定しております。そして、将来のことではなくて、できることをどんどんやっていく緊急な対策を講じていくという姿勢で、こういう打ち出しにいたしました。取りまとまったものは、先ほどのお話にも出ていました1226日の長時間労働削減推進本部という、参考資料にもあるとおり、厚生労働大臣をトップとする省内の本部において決定をしたものです。

 本検討会では法制度における労働時間の上限規制等の問題について御議論を深めていただいているわけですが、緊急対策のパッケージというのは、例えば省令の改正とか通達を発出するとか予算措置を講じるとか関係機関と連携するといった行政運用で対応できるものについて、できるものから早く実施するため取りまとめたものです。大枠を決定いたしましたので、今後準備が整ったものから順次実施する、すなわち、通達であれば調整が済めば発出する、省令であれば所要の審議会等の手続を踏まえて省令の改正の上で施行する、予算措置を講じるものについて予算を執行していくといったことを進めていきたいと考えております。

 1ページ。概要は3つの大きな柱からなっております。1つが違法な長時間労働を許さない取組の強化として、監督指導の徹底等です。2つ目がメンタルヘルス対策、そしてパワーハラスメントの防止対策のための取組の強化。3つ目は本検討会でも御議論を深めていただいている商慣行や取引の問題なども含め、社会全体で過労死等ゼロを目指す取組の強化です。以下、例えば1(1)が次のページ一番上の表題の1(1)とひも付けられています。そして、具体的な内容は2ページ以降で、現状がこうなっているのを新しくこういう取組をやっていくことを考えているという形の資料構成になっております。

 2ページ1(1)、労働時間の適正把握の徹底についてです。まず現状ですが、厚生労働省の労働基準局長の通達として、都道府県労働局長に対して、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準が、平成13年4月6日付けで発出され、これに基づく指導を全国の監督官が行っているということです。この基準の具体的内容は、使用者に適正な労働時間管理を行う義務があることを明記した上で、労働時間の適正な把握のため、使用者による現認又はタイムカードやICカードなどの客観的な記録を基礎とする確認を原則としつつ、実際には労働者の自己申告による把握を行わざるを得ない場合もあるので、そうした場合、適正な自己申告を行うよう労働者に十分説明することとか、あるいは自己申告した労働時間が実際の労働時間と合致しているか、必要に応じて使用者は実態を調べてくださいといった内容を通達し、これに基づいて指導を行っているというものです。

 新たな取組として、今回の事案をめぐる様々な皆様からの提起を踏まえ、使用者向けに労働時間の適正把握のためのガイドラインを新たに定め、より具体的に使用者に講じていただくべき措置を明確化しようと考えております。そのガイドラインの中身です。1つは、客観的な手法で把握した実際の労働時間と、自己申告した労働時間の大きな乖離があるような場合には、実態調査をきちんと行うことを求めガイドラインにしたいということです。もう1つが、使用者の明示又は黙示の指示によって自己啓発等の学習とか研修の受講をしていた時間については、労働時間として取り扱わなければならないということを明確化するとともに、「等」としておりますが、適切に把握した労働時間を賃金台帳に記入していただくことを含めて、使用者にしっかり講じていただくことをガイドラインにしたいということです。これは、通達の改正による対応を考えているということです。

 3ページ。1(2)長時間労働に係る企業本社に対する指導です。現状として、長時間労働に関する労働基準監督官の監督指導とは、事業場単位で行うことが原則になっている旨を書いています。労働基準法は、働く現場の法律です。昔の工場法の流れを汲む、現場密着の形での監督指導が行われているということです。一方で、参考資料1を御覧いただくと、「3.監督指導・捜査体制の強化」と書いてあります。急成長して多店舗展開している小売業とか飲食店などの企業において、全社的な経営方針の下で、共通の労務管理状況をめぐる労働時間に関する法規制に対する違反の行為が多数の事業場で発生している実情が、現実にはあるわけです。こうした場合、なかなか個々の店舗の使用者に是正勧告をしても、企業全体のマネージメントが改善するわけではない面もあります。こうした場合に事業場を個々に是正勧告していく手法より、企業単位で対策を求めていくことが必要になってまいります。そうしたことから、過重労働事案に対する特別チームを編成して、そうした企業に重点を置いて全社的な視点で対応し、最終的には書類送検に至っている事例が資料にある5事例であり、最近こうした手法もとり始めているということです。

 また今回の大手広告代理店の事案は、本社事業場で事案が起こり、社会的な関心が高いことも踏まえ、個別の判断として企業本社に対する監督指導を実施してまいりました。具体的には所管の労働局長が本社の幹部を呼び出して様々な対策を講ずるように指導する、本社や支社にほぼ同時期のタイミングで一斉に立入調査をするといった対応を取ってまいりました。その上で、新たな取組として、近年の監督手法の流れの中で、例えば36協定を超えた時間外労働を行わせているといった違法な長時間労働が複数の事業場で行われている場合、企業に対する是正指導を企業単位で新たに実施していくことを通達し、全国的に実施していきたいということです。具体的には企業の幹部に対して、長期間労働の削減や健康管理、パワーハラスメントの防止対策を含めたメンタルヘルス対策について指導し、全社的な立入調査によって、きちんと是正されているかどうか確認していくことを考えています。

 全社的な企業単位での対応という文脈でつながるのか、4ページ、1(3)、是正指導段階での企業名の公表制度の強化です。現在の状況は先ほどの参考資料1の4ですが、平成27年5月から、社会的に影響力の大きい企業、具体的には大企業が違法な長時間労働を複数の事業場で行っている場合に、一定の基準の下、是正指導の段階で企業名を公表するという対応を講じています。具体的には4ページのように、現在の要件は月100時間を超えるとともに、労働基準法32条等に違反する違法な長時間労働が10人以上、又は働いている方が4分の1以上行われている事業場が1年間に3つ認められた場合には、指導段階で是正指導している状況も含め、社会への情報提供として、要件を明確化した上で、公表しております。その実績は参考資料1のとおり、1件にとどまっており、国会の審議の中で、明確な基準を設けつつ、公表対象を拡大できないのかという御議論がありました。そうしたことも踏まえた新たな仕組み拡大のポイントですが、現行の要件のうち、まず、月100時間超としているのを月80時間超に拡大します。考え方としては、重点監督の対象拡大と同様に、脳・心臓疾患の労災認定基準の中で単月要件の月100時間ではなくて、複数月の平均の月80時間超を意識して、80時間超に拡大するということです。それから過労死等・過労自殺等、脳・心臓疾患とか精神障害の労災の認定が行われて支給決定した場合なども対象に加えるということです。その上で、こうした違法な長時間労働や労災認定が2つの事業場に認められた場合に、先ほど申し上げた1(2)の企業単位での本社の指導を実施し、その上で是正されない場合には公表していく。この2つの措置を組み合わせることによって、企業側に見直しの機会を行政指導も絡ませながら与えて、その上で直っていない場合には公表するという流れで拡大をしていくというのが1つ目の○です。

 同時に、より深刻な、違法な月100時間超と過労死・過労自殺等が2事業場に認められた場合には、ただちに企業名を公表することを考えております。

 5ページ。先ほど申しました1(2)と、今申しました1(3)を組み合わせて、現行と比べてこうなりますという図解です。現行は、上段のとおり、違法な長時間労働が、先ほど申しました要件で3事業場ある場合には、労働局長の指導と併せて企業名を公表しております。

 一方、新たな仕組みは、(1)違法な長時間労働として、月80時間超に拡大し、(2)として、過労死等・過労自殺等で労災の支給決定が行われていて一定の要件に当てはまる場合に、(1)や(2)が2事業場あれば、まず企業幹部を呼び出して指導して、その上でそれがきちんと正されているかどうかを全社的に立入調査をし、それでもなおまた同じような事案が引き続きあったという場合には、これは労働局長による指導、そして企業名の公表を行うということです。それからもう1つ、より深刻な事案についてというのは、一番下で(1)+、(2)+と記されていますが、月100時間超のもの、あるいは実際にその労災によって命を落されている、あるいは自殺を図られた方がいらっしゃって、かつ法違反があるようなものについて、これが(1)+と(2)+で2事業場、又は(2)+が2事業場の場合には、労働局長が直ちに指導、企業名の公表の上で、更により厳しい対応を求められる場合には書類送検で送検時の公表というところです。以上のようなことで、本社に対する企業単位の対応を強化するということが2つ目の柱になっています。

 今申しましたのは、どちらかというと社会的に影響の大きい大企業についての話でしたが、1(4)は、むしろ中小企業を含めてという話です。36協定未締結の事業場に対する監督指導の徹底についてですが、本検討会の中でも初回あるいは2回目の御議論の中でデータの紹介をお聞きいただいて、基本的な36協定が締結されていないとか、そもそも存在を知らないという使用者がいらっしゃるのかというお話も出ました。そうした一番ベースになる未締結の事業場に対し、監督指導を徹底していきたいということです。具体的には、毎年10月に地域別の最低賃金を改定し、周知を徹底的にやるわけですけれども、にもかかわらず、それに合わせて最低賃金に貼り付いているような方の賃金が引き上がっていないケースも少なからずあって、毎年、年度の第4四半期、1、2、3月の時期に最低賃金の履行確保を重点とする監督を全国で行っています。手法としては、監督署に賃金台帳などを持って来ていただき、集合監督の手法で、会議室等へ集めて、書類を徹底的にチェックしてきます。最低賃金に満たない場合には、きちんと支払っていただくという監督指導を一斉にやっております。昨年度も約1万3,000の事業場に対して行い、92%ぐらいが29人以下の事業場ということで、影響率の大きい事業を選んでやっていて、いろいろな問題も出てまいります。今年度は、この機会を捉え、36協定の締結がきちんとなされているかどうかも、最賃の話と併せて集中的にチェックをかけていくということです。1つ目の柱は以上です。

 6ページからが2つ目の柱です。2(1)メンタルヘルス対策に係る企業本社に対する特別指導です。メンタルヘルス対策というのは先ほど大久保先生からもありましたように、企業でも意識が高まっているということで、平成19年の調査で何らかのメンタルヘルス対策を講じていらっしゃいますかと聞くと、実施事業場の割合が33.6%ぐらいのだったのが、平成25年になると法制度の改正も影響しているとは思いますが、60.7%で実施しているということです。これを当面80%にもっていこうというのが政府の目標になっております。ただ、課題は内容の面であり、対策が教育研修や情報提供にとどまっているケースが多くて、なかなか個別の課題を抱えた方に対する支援ということまで体系化して行われている所は、企業規模とか業種、業態の問題もありますが、少ない現状にあります。国会等の御議論の中でも、こうしたところをよりきめ細かくという御意見が出ています。現状は、メンタルヘルス対策に関しても労働衛生面からの指導は事業場単位で、監督署の安全衛生を司る担当がやっておりますけれども、これについて新たな取組としては、複数の精神障害の労災認定があった場合には、企業の本社に対して、パワーハラスメントの防止の問題も含めて個別の指導を行っていきます。特に過労自殺を含む事案については、新たに改善計画、こういう仕組みは労働安全衛生法の中にありまして安全衛生改善計画と言っていますが、その計画策定させ、1年間継続的な指導を行っていくことを考えております。以上は、かなり限られた要件の所に重点的に行う対策で、投網をかけて広く行う対策としては、時間外・休日労働が月80時間を越えるような事業場等に対しては、参考資料1の1のように、重点監督として、メンタルヘルス対策に関わる法令、例えば衛生委員会をきちんと設置して開催していただいているか、面接指導を長時間労働者で疲労の蓄積を感じて申し出た人にきちんと行っていただいているか、あるいは先ほど大久保先生からあったストレスチェックについてきちんと実施していかれているか、そういうことを確認して、これは専門的な支援も重要ですので、各都道府県に、独立行政法人の労働者健康安全機構が設置している産業保健総合支援センターによる訪問指導の受入れを強力に進める等の対応を取っていきたいということです。以上が6ページ目です。

 7ページ。2(2)はパワーハラスメントの防止に向けた周知啓発の徹底です。背景として、精神障害の労災認定は平成27年度で472件ですが、最も多い類型としては、仕事の量や質、業務量の急増に伴う長時間労働の負担の急増などに起因するものが多いわけですけれども、それに次いで、特別な出来事、いわゆる生死に関わる傷病に直面するといったものと並んで多いのが、「いじめ、嫌がらせ」などの対人関係をめぐることに起因しての精神障害、うつ等の発生という類型で、これが84件になっており、これへの対策が強く求められています。現状ですが、民事の話で、決めになる取締り的な法律で決定する世界とは少し違い、対策が今まではなかなか難しかったという面がありました。そこで検討会等で御議論いただいた結果を踏まえて、パワーハラスメントの定義や類型あるいは最近の裁判例とか、対策の枠組みについて示して、具体的な就業規則の例、あるいはアンケートを取り、実態把握をするのはこういうやり方があるとか、研修のプログラムはこういうのがお薦めというようなマニュアルを作成し、こうしたものをセミナー等で周知するということに重点を置いて対策を進めてまいりました。しかし、これはどちらかというと、意欲ある事業者の方々に対して、集まっていただければ周知をするところにとどまっていたきらいがなくもありません。そうした中で新たな取組としては、メンタルヘルス対策に関わる、先ほど申しました企業とか各事業場への個別指導等の際に、併せてパワーハラスメントに関してもこうしたマニュアル等を活用して、その必要性や要望解決のために必要な取組等を含めて指導を行っていくことをこれから始めたいと考えているところです。

 2(3)、ハイリスクな方を見逃さない取組の徹底です。月100時間超の時間外・休日労働をされる方の労働時間とか、それがどなたかというような情報について、事業者が産業医に毎月提供し、それによって産業医が、長時間労働をやって疲労があると申し出た方に対する面接指導について効果的にやっていただくことが可能になってきますので、必要な情報を産業医に集約する仕組みを作りたいということです。事業者に義務をかけるということの関係から、労働安全衛生法の関係の法令、具体的には省令を改正する必要がありますので、その作業を急いで新年度から実施したいと考えています。また過重労働等の問題のある事業場については、長時間労働者全員への医師による緊急の問診等の実施を、都道府県労働局長が指示できる制度についても整備していきたいということで、これも併せて取り組んでいきたいと考えております。

 最後に3つ目の柱、8ページの、社会全体での取組の強化です。1つはこの検討会でも繰り返し御指摘がありますように、個々の企業や個々の事業場に対して、長い労働時間の問題には、取引関係、商業慣行等々も絡むので、なかなか長時間労働それだけで解決しないという問題があります。そうしたことも含めて、事業主団体に対して協力要請を行っていきたいと考えています。その中には、先ほど来申し上げています適正な労働時間の把握や36協定の適正の締結届出とか、メンタルヘルス対策、パワーハラスメント防止対策、取引慣行(短納期発注、発注内容の頻繁な変更等)の是正等についてお願いをしていくことも働きかけていきたいということです。

 (2)です。労働者の方々が気軽にきちんと御相談できる窓口を整えていくことが重要ですので、現行週6日、夜間・休日に相談を受け付けるホットラインというのを開設して、問題のある事案は監督署の方面へ取り次いでおりますが、これを全日稼動にするということです。予算措置を伴いますので、予算成立後、新年度からはいつでも取り次げるような体制を整えていきたいということです。

 (3)として、労働基準法等の法令違反で公表した事案のホームページへの掲載です。少し分かりづらい記載になっておりますが、労働基準法等の法令に違反して、先ほどで言うと、書類送検された事案については、公表は行っておりますが、公表のやり方が紙媒体でやっている所とホームページに掲載している所と、全国的にばらついておりますので、ホームページで一定期間きちんと掲載することに取り組んでいきたいということです。ちなみに年間の送検件数は平成27年で966件です。

 以上が今回の事案を通じて省として緊急に決定した対策で、具体化はこれからですけれども、あえて御紹介した趣旨としては、今後の法制度について御議論を深めていただく本検討会の中でも、実際の運用というものが伴っていかないと、法改正の意味がないではないかという話を繰り返しいただいております。現行の規制でも、運用というのは、状況によってこのように年度の途中であっても打ち出すこともあれば、様々な工夫とか社会情勢の変化によった対応も取っているということなど、少し実際の行政がどのように動いているかを見ていただいて、また御議論を深めていただく素材にしていただければということです。雑駁な説明ですが以上です。

○今野委員 ありがとうございました。今の説明で御質問はありますか。

○小曽根委員 2点あるのですが、もしお決まりでしたらお教えください。まず1点目が、2ページの1(1)労働時間の適正把握の徹底、その中の新たな取組の2つ目の○の内容として(1)「実労働時間と自己申告した労働時間に乖離がある場合」とお書きいただいています。この「乖離」はどの程度をお考えなのかというところを教えていただければと思います。1時間であれば、それはやはり乖離があるということになろうかと考えますが、それが果して30分なのか15分なのか、2、3分でも5分でも乖離とするのか。企業側が運用面で気にされる点かと思いますので、目安があれば教えていただければというのが1点目です。

 2点目が、7ページの下のほうの2(3)のハイリスクな方の所です。これの2つ目の○ですが、「過重労働等の問題のある事業場については、長時間労働者全員への医師による緊急の面接」とお書きいただいています。このときの長時間労働者はどの範囲で考えられていらっしゃるのか、もし何か目安等があれば教えていただければと思います。

○村山総務課長 いずれも具体的な通達等の内容は「緊急対策」を踏まえて検討中ですので、今の段階で何か具体的に決まっておりません。その上で、乖離に関して、客観的に把握したと言いながら一方では在社時間的なものに近いものと、自己申告した時間の間に全く乖離がないこともないだろう、という指摘もあると思いますので、そうしたことも含めて、通達の内容についてよく検討していきたいと考えております。

 2点目に関しても、具体的にどのような基準にするか、労災認定基準等を勘案し、新年度に向けてしっかりと検討していきたいと考えております。

○平野委員 意見です。先ほどの2ページの2つ目の○ですが、労働者の実労働時間と自己申告した労働時間に乖離がある場合、使用者は実態調査を行うことということで、自己申告した労働時間というものの考え方は、これでいいのか。残業時間について、残業というのは自己申告するものなのかということです。

 残業というのは、通常は事前に労働者が残業していいかどうかを上司に申請して、上司がその必要性を判断して認めた上で残業をしていいとするわけですが、それが通常の企業の残業時間管理だと思うのです。

 実態としては自己申告ということなのかもしれませんが、残業はあくまでも上司の命令あるいは認定によるものなので、むしろここの表記というのは「実労働時間と上司が認定した労働時間」としないと、残業というのは本人の責に帰するのだと読み取られないかという懸念があるのですが、それはいかがでしょうか。

○村山総務課長 おっしゃるとおりで、現状の局長通達においても、基本的に使用者が労働時間を適正に把握するなど、労働時間を適切に管理する責務を有しているとしており、これが出発点です。先ほど口頭でも申し上げたかもしれませんが、使用者が講ずべき措置として、労働日ごとの始業と終業時刻を確認して、これを記録することは、使用者にまずきっちりとやっていただくべきということです。また、残業させる際にもきちんとした手続を取っていただくことが、原則であるということです。

 その上で、平野委員からも「実際にやってもらわざるを得ない面もあるのかもしれませんが」というお話もいただきましたが、客観的な現認や記録が全ての局面で及ばずに自己申告制によらざるを得ない場合について、どのようにやっていくのかということが、今次の事案について国会等で指摘された点です。そうした指摘の中で、36協定の協定時間の枠内でとどめるような運用が現存している指摘などもある中、より原則に近付けてきちんとしていくということをやっていきたいという趣旨です。文言については、御指摘があったところを含めて、今後通達を策定する段階でよく考えてみます。

○山田委員 同じ2ページの「新たな取組」の(2)です。使用者の明示又は黙示の指示により自己啓発等の学習や研修をしていた時間は労働時間だと認める。そうすると、逆に使用者の明示とか黙示の指示はない、あくまでも自主的な意思によるものは労働時間としては扱わないと読めるわけですが、そこの線引きは曖昧な感じの部分もあると思うのですが、これに対しては何か一定の考え方というのはあるのでしょうか。

○村山総務課長 まず、事務局からお答えして、詳しい法学の先生もいらっしゃいますので、さらに御指摘いただければと思います。

 山田委員がおっしゃるように難しいことを書いているのは、正に難しいことが問われているからだと考えています。おおむねはっきりと申し上げられると思うのは、使用者が実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁など、不利益な取扱いの強制は一切なく、本当に自由参加のものですというものの中には、労働時間にならないというケースはあるだろうと思います。一方で、明確な指示として、「業務に関連する学習として受講しろ」ということだったら労働時間に当たると。これもはっきりしているところだと思います。

 問題は、その間に難しいところもあるという点で、例えば黙示の指示によりという「黙示」について、その参加が義務的かどうかということについては、裁判の場などでいろいろな形で争われ、様々な個別のケースに即して、いろいろな判断が出ているところだと理解しています。そういう中で、どういう書き方を具体的にしていくのかということについては通達に向けて詰めていきたいと思っていますし、またせっかくの機会ですので、委員の皆様からも御意見を頂戴できればと思います。

○荒木委員 何が労働時間かは、なかなか難しい問題で裁判でも争われるところです。今の2ページの下の方の(2)を読んで、こういうことであればわかりやすいのかなと思うのは、使用者の明示の指示によって自己啓発等の学習をやったと。自己啓発なのだけれども使用者の明示の指示による場合は、労働時間であっていいだろう。他方、明示の指示はないのだけれども、黙示の指示で、しかし業務に関連する研修を受講したという場合も、業務関連性は高くて明示的ではないけれども、当然、皆受けるという感じで受講しているという場合も、労働時間となっていいだろうと思います。

 それに対して、使用者は命じていないのだけれども、自己啓発で何かを学習したことまでも労働時間となるかというと、これは裁判になった場合にはかなり微妙ではないかと思われますので、これは組合せの仕方によって労働時間性が肯定される場合と否定される場合とあり得ると思いますので、その辺は注意深く記載された方がいいという印象を持ちました。

○村山総務課長 御指摘いただいたところを踏まえて、明示と黙示、後ろの組合せについても、個々の裁判例を注意深く見て、今後の通達をしっかりとしたものにしたいと思います。

○大久保委員 意見と質問です。今の自己啓発の案件ですが、一連の今回の過労死の問題などで出てきている案件は、新入社員のところが割とフォーカスで出てきていると思うのです。あれは、ある種のパワハラ的なものが結び付いていると思うのですが、実質的には日本の企業の中の一部に、新入社員の導入教育として、かなり基本から、一から鍛え直すのだということで、かなり厳しく指導して、作ってきたものに全部駄目出しして、もう一回やってこいという形にして、家に持ち帰らせて散々長時間労働させる。OJTというのか導入教育というのかよく分かりませんが、そういうところの労働時間が適切に計上されているのかどうかというところが大事だと思っていて、(2)で書いている内容は、うまくそれをカバーできているのかどうかが心配になったので、その辺りはどのようなメッセージになっているのかというのが質問です。

 それ以外の質問も併せてさせてもらいます。今まで事業所ごとに見てきたところから、特に複数の事業所で同じような問題が発生している場合は、企業単位の問題だと捉えて監督指導していくという大きな考え方があると思うのですが、例えば複数の事業所というものは、小売りとか飲食のようなケースで多いフランチャイズチェーンの事業所の場合は法人は分かれるのですが、性格的には事業所と非常に似た性格を持っていると思うのです。そこの取扱いはどうするのでしょうか。これが2つ目です。実際にそういう事件があったと思います。

 3つ目です。労働時間の適正把握ということがされているのですが、これも働き方改革の関連で出てきている副業の問題についての労働時間の通算で把握するところの問題に関して、これに関連して何か着手するという計画はあるのでしょうか。以上の3つについてお尋ねします。

○村山総務課長 まず、今回特にこういう方向でと世の中に打ち出すために、やや力点を置くところ、社会的に指摘されているところを意識しながら書いている文書ですので、新しく作るガイドラインの中では、先ほど大久保委員がおっしゃいましたように、単に自己啓発と研修だけではないというのはおっしゃるとおりで、古典的な裁判例になるかもしれませんが、業務のため衣服の着脱に要する時間などについても整理し、過去の裁判例等から言えることをきちんと言っていく方向で検討していきたいということです。これが1点目です。

 2点目についてですが、事業場から企業へということで、これもこの資料の作り方がそこを強調したいという作り方になっているわけですが、労働基準行政のベースは各事業場に対して、現場の安全衛生であり、労働時間管理であり、賃金の適切な支払いといったことを担保していく行政なので、個々の事業場単位がベースですが、その上で企業単位という考え方もケースによって取り入れていくという考え方です。フランチャイズの問題については、企業間の問題となることをどう整理していくのかは難しいところもあると思いますし、今日は大変重要な御指摘をいただいたということで、持ち帰って考えていきたいと思っております。

○土屋審議官 副業の話については、省内では私が担当して検討を進めているということもありますので、私からお答えさせていただきます。

 まず、副業・兼業については、お話もありましたが、実現会議の中で議論のテーマとして取り上げられて、第2回のときに御議論が出ています。その中で、方向性としては副業・兼業を多くの企業では禁止している所が多いわけですが、一方で、個人から見ても企業から見ても、それがステップアップにつながる面、あるいはセカンドキャリアといったものに結び付いていく点があるのではないかという観点から、そういう意味でこれを進めていったらどうかという御議論があります。その一方で、副業・兼業により、長時間労働に結び付かないように労働時間管理をどうしていくかもきちんと考えていく必要があるというのが、実現会議の中の御議論ですので、その方向で、これから進めていく必要があるのではないかと思っています。

 具体的には、労働時間に関しては、労働基準法の中に「事業場が異なる場合でも通算する」という規定が既にありまして、私どもの解釈としては、事業場が異なるというのは企業間が異なる場合でも通算の対象になるというのがこれまでの解釈です。一方でそれを具体的にどうやるのかについては、非常に難しい問題があって、むしろ今までそこに具体的な整理が及んでいない状況なので、今、申し上げましたような実現会議の御議論の方向性の中で、労働時間の把握を2つ、3つの異なる事業場にわたってやっていくのは具体的にどうやるかという手法を含めて、これから検討し、それを織り込みながら、副業・兼業をどう企業に受け止めて、どういうことに考慮していただきながら進めていただくかということをまとめてみようと思っています。

○今野座長 副業でITなどをやるとしたら、多分、副業先は業務請負ですよね。雇用関係ではない場合はどうするのですかね。そういうのは面倒ですね。

○土屋審議官 おっしゃるとおりのところはあります。まずは、我々も雇用プラス雇用のパターンについて、頭の整理をしてみようと思っています。

○今野座長 他にいかがでしょうか。

○平野委員 8ページの(2)の労働者に対する相談窓口の充実で、これ自体はいいと思うのですが、実態としてどうなのかということも含めて教えていただきたいのです。職場でいろいろと問題があったときに労働基準監督署に労働者から言いに行くわけですよね。これというのは、労働者としてみれば制裁されるのではないかと。すなわち、これは結構怖いことですよね。今までにいろいろと問題が起きたときの労働基準監督署の把握というのは、現実的にどうなっているのでしょうか。

 それから、労働者としては制裁の問題は恐怖としてあると思うので、その辺のことはどう考えておられるのでしょうか。

○村山総務課長 実際に労働者保護を図っていく上で重要な御指摘だと思います。申告に関しては労働基準法上も、きちんと不利益取扱の禁止を位置付けて、御懸念のようなことはないようにやっているわけではありますが、なお実際にお名前を出して申告するか否かとか、話をより具体的に聞かせていただけないかという局面になると、それはちょっとという実態は確かにあるということです。しかし、そこはきちんと聞かせていただいて、必要な対応を取ることに努めているというのが、第一線の現状ということです。

 数字的に申しますと、年間で基本的に監督署の管内情勢、行政上の課題などを踏まえて、計画的に監督に行く所というのは年間10数万件ある一方で、申告の形で持ち込まれて、監督に行くという、いわゆる申告監督も3万件弱ぐらいあるという状況にあります。そういった意味では労働基準監督署というのは問題に直面した労働者に駆け込んでいただき、その権利を保全していくための重要な機能を果たしているものと思います。

 その上で、「こういうのも最近はあるようだけれども」と言っていただいた8ページのような対応の状況については、先ほどの参考資料1で見ていただきますと5.で「情報の提供・収集体制の強化」ということで、平日夜間とか土日に労働条件に関する電話相談窓口「労働条件相談ほっとライン」に掛かってくる相談が3万件弱あるということです。監督署も官公庁なので対応は平日の昼間の時間帯になってしまい、そこでは相談し尽くせない部分について、こういう形でお声を受けています。

 あと、逆に労働者の方から言いにくいところだけども、違法な疑いがあるものは事前につぶしていこうという観点からやっているのが2つ目の○で、インターネットによる労働条件に係る違法の疑いのある事業所情報の監視の取組です。こちらはかなり監督指導にもつながっております。相談にできるだけ来ていただきやすくする、垣根を低くすることとともに、相談に来ていただくまでもなくする事前の対応ということにも、今はIT化も進んでいる中で新しい対応もしているということですが、なお平野委員がおっしゃるように、申告される方のお気持ちの問題というのは重要な問題ですので、今後ともよく考えていきたいと思います。

○今野座長 社内的には、まず人事をしっかりしろと。その次に組合もしっかりしてほしいと。そこで拾われないと出てくるということだと思います。他にいかがでしょうか。

○中嶋調査官 この議題に関して本日御欠席の小畑委員よりコメントをお預りしていますので、読み上げさせていただきます。

 「過労死等ゼロ」緊急対策の5ページの企業名公表制度の強化の図に示された新たな仕組みは重要と考えます。長時間労働削減、健康管理、メンタルヘルス(パワハラ防止対策)につき、企業幹部の呼出指導がなされ、全社的立入検査、企業名公表、書類送検までの流れが今年から強化されるとの内容ですが、これが一定のインパクトを持つであろうことは、昨年末に大きく報道された過労自殺に関する書類送検に大きな注目が集ったことからも予想されます。効果が確認できれば、更に範囲を広げ、そのために必要な体制の整備を展開することが、新たに作られる法制度の履行を確保する上でも重要と考えます。以上のコメントをいただきました。

○今野座長 他にございますか。

 これをやると、どれだけ工数は増えるのでしょうか。業務量はすごく増えるのです。どうですか。

○村山総務課長 当然、対策として世の中に打ち出す以上は、一定のシミュレーションを行いますが、かなり重点化して監督官の人員を投入しなくてはいけないというのは事実です。

 もう1つは、行政組織全体の簡素効率化が求められる中で、その中において労働基準監督官は増員しているとは言いながらも、IT化対応でなるべく省力化していくとか、あるいは他の機関と連携して効率的にやっていくといったことをしながら、一方で長時間労働対策は今一番求められている対策だと思いますので、きちんとそこに手が回るようにしていくことは大変重要だと思います。監督署の体制の問題と併せて考えていく必要があると思います。

○今野座長 監督官の長時間労働が常態化したら問題ですよね。

○荒木委員 例えば4ページの企業名公表制度の所で、違法な長時間労働が月100時間超等となっています。参考資料1の1.の長時間労働が行われている事業場に対する監督指導の徹底では、月100時間超の残業が行われているとなっております。企業名公表の場合は100時間超とか80時間超というのは、全て時間外労働がということではなくて、違法な時間外労働に限っているという理解でよろしいですか。

○村山総務課長 おっしゃるとおりです。より詳しく書いてあるのが5ページで、そういったところの誤解がないようにということで、左側に労基法32条、35条、37条違反と書いていますが、更に具体的にはどのようなものであるのかは5ページの一番下に書いています。御確認いただければと思います。そういう違法でかつ長いものについてが、この企業名公表制度等の方でして、先生からもう1つ指摘のあった参考資料1の1.は、疑われる事業場に監督に入って、労働基準関係法令違反が認められたのは、1万185のうちの7,798ということで、残りの事業場は指導等は行っているかもしれませんが、直ちに法違反ということはないということです。

○荒木委員 それと関連して、よく過労死基準で単月で100時間とか、2〜6か月前の平均で80時間超という場合の80時間とか100時間というのが、残業時間と言われております。この時間の数え方と、労基法上の時間外労働の数え方は違っていると私は理解しております。そうしますと、現場は非常に混乱する可能性があって、過労死基準の80時間を参考にという議論もありましたが、そのときの時間数の評価が違うのは、現場だと混乱して理解しかねませんので、そこをどうしたらいいのか。場合によっては統一するとか、そういうことも考えないと混乱が生じるかなと、そこが懸念されました。

○村山総務課長 今の荒木委員の御指摘は、例えば休日労働の部分についてオンカウントするのかどうかという点です。具体的には、労働基準法の体系ですと100とか80といっているのは時間外の36協定がベースになっている時間数ですので、これは残業時間の話です。一方、今日の資料でも、柱立ての2の方は時間外・休日労働ということで、こちらは純粋に身体の負荷の観点からの話で、労働安全衛生法上の体系とか労災補償保険法上の体系につながってくるものなので、時間外・休日労働になっているということです。

 あえて考え方の整理ということで申し上げますと、時間外・休日労働と比べても、時間外だけで100時間というのはより長いので、そういったところについては徹底した対応を取っているということは、一応の整理として矛盾はないかとは思いますが、おっしゃるように、そもそも我々自身の説明の仕方も十分でないのかもしれませんし、わかりやすさを求められる中で、どのように考え方を整理していくのかは中期的な課題として大事かなとは認識しているところです。

○今野座長 他にいかがでしょうか。

○守島委員 意見です。7ページにパワハラという議論が出てくるのですが、パワハラという事象自体は非常に問題で、企業の中ではあるべきではないと思いますし、それが様々な形で過労死につながっていくという事情はあるのだと思いますが、このように書いてしまうと、先ほど大久保委員も言われたような、行き過ぎた指導、きつい指導のようなものをどちらに分類するのかというのが、逆に上司や企業のいいように取られてしまう可能性があるのではないでしょうか。例の広告会社のケースが起こったときに少しだけヒアリングをやったのですが、私はパワハラだという前提でお話を伺っていたら、必ずしもパワハラではないようなのです。

 したがって、厳しい指導があったということは確かなようなのですが、それが本当にパワハラというカテゴリーに入ってくるかというのは難しい問題で、そういう意味では法的な基準を設けるという意味では重要な話だとは思いますが、多少厳しい指導というか、行き過ぎた指導というような概念を、ここに入れるかどうかは別問題として、こういう議論のときには設けておいた方がいいのではないかという感じがしました。

 それは先ほど大久保委員がおっしゃった新卒というのもそうですし、一般的な育成指導、OJTの中での行き過ぎた指導という議論があるのではないかと思いました。

○今野座長 他にいかがでしょうか。よろしいですか。

 それでは、村山さん、ありがとうございました。いろいろな質問が出ました。

 残された時間ですが、今日の前半で広く御意見をいただいて、今のところでは過労死に関連する議論をされましたが、これまでもいろいろ議論してきましたので、そのことを踏まえて皆さんに、今、感じられていることについて御意見をいただきたいと思っています。この部分は言い残しているということ、あるいはこの部分は強調しておきたいということがあったら、一通りお聞きしておいたほうがいいと思っておりますので、お願いいたします。荒木委員からお願いいたします。

○荒木委員 第2回か、第3回に少しお話をさせていただきましたので、余り言い残したことはありません。今日の資料1の最初の発言は多分私の発言だと思いますが、長時間労働規制というのは、健康確保、公正競争の観点、ワーク・ライフ・バランスと、この3つの目的があるだろうということで、それぞれの目的に照らして長時間労働規制をする場合も、その基準を考えなければいけないだろうと思っています。

 健康確保の場合は、長時間労働はやはり許されないだろうという基準になるでしょうし、公正競争とかワーク・ライフ・バランスの場合は、言わば働き方改革という観点からの基準になるでしょう。この場合に大事なことは、労働時間は有限であり、つまり総量というのはやはり規制しないといけないということで、総量を規制するということは、ある時期にたくさん働いたら、ほかの時期は休むということです。働いたら休むということを促すような規制をしないといけないだろうと思います。

 大久保委員が言われた弾力化というのは、実際の実施の方法だと思います。そうすれば、有限であれば、有限の時間の中での時間当たりの生産性を上げるという方向に企業の考え方を誘導するという、そういう役割が労働時間規制に今は必要とされているということではないかと思います。

 今日のお話にもありましたけれども、実は限度基準というのがありますが、限度基準の適用の除外とされている業態が、建設、自動車運転、研究開発等とあります。そういう上限規制を入れる、あるいは総量規制を入れるという場合には、今、除外されている業種についてどうするかということを考えなければいけませんが、これはやはり業種によって特殊性、長時間労働の原因が違うという話がこの研究会でも出ました。そうすると、実際の現場、実情を反映した議論をやらないと、余りに一律の規制であっては、実際、実効性がないということになりかねません。そのためには、現場の労使の意見をよく聞きながら、その基準というものを考える必要があるだろうと思います。やり方も、一律に法がやるという場合もありましょうが、EUなどでは国柄が違うときに、EU指令で一定の基準を作るのです。しかし、いきなりそれは実施できないという場合には、それに代わる同じような目的を達するような措置を自主的に作れば、法の基準に合致したものとして認めるというやり方でその国の実情に合った政策目的の実現を促す、そういうアプローチをしております。そういうことも長時間労働削減計画を作って実施する場合には、その運営の仕方、PDCAがきちんと回っているかということをチェックしながらやらせるというアプローチもあるのかという気がしました。

 この研究会では、36協定が結ばれていないとか、そういう非常にプリミティブな法違反がかなり広範に見られるということがありました。実は、社会全体として長時間労働について許容されていると言うのでしょうか、許容しているのではなくて、違法な、36協定も結んでいない、時間外割増を払っていない、払っていないがゆえに放置されているという状態が広範に見られるということでした。やはりそこは法をきちんと重視させるということが、まず必要です。時間外労働には割増賃金が発生しコストが掛かるのです。コストが掛かる、あるいはこれ以上働けないということがあれば、その顧客に対してもこれ以上はできないということがあったり、あるいは取引費用に上乗せして請求するということがなされなければいけないのです。それが放置されているということでは、やはり問題だということで、これは労働行政の基本として、きちんと法遵守を徹底する。そのためには、その基準を分かりやすくして、過労死の基準のときは、単純に週40時間を超えるところが全部カウントされているように思います。変形労働時間でやったとき、60時間、20時間、60時間、20時間という場合には、40時間を超える20時間のところは時間外労働ではないのですが、過労死のときにはその40時間を超えた部分は、時間外労働でなくても過労死の認定のときにはカウントすると聞いております。そこで時間外労働と過労死の時間外労働のところが合致していない部分がありますので、その辺りも混乱しないような手立てをしながら、法遵守を徹底するということが必要かと思います。

 こういう労働法制を使いながら、同時に社会の意識改革、長時間労働というのは許されないという社会改革、意識改革をする。それを見直すような方向での議論が必要かと思っております。

○今野座長 ありがとうございます。荒木さんがおっしゃった資料1の最初の所ですが、長時間労働規制の趣旨は、健康確保、公正競争の観点、ワーク・ライフ・バランスの改善であり、これがいつも判断のベースになるということで、それはいいのですが、今回、ずっと皆さんと議論していると、何と言うのですかね、攻撃的長時間労働規制、つまり黒田さんの話は、長時間労働をやめれば生産性が上がるのだからそういう意味の「攻撃的」、何かそういう意見はいろいろ出たと思いますね。だから生産性を上げる手段として、労働時間、長時間労働規制を考えるというのも、何かこの4番目ぐらいに入れたらどうだろうか。言葉はいろいろ考えないといけませんが、そういう意味で「攻撃的」と言ったのですが、そのようなことも1つあっていいのかと、今ちょっと思ったので追加させていただきます。それでは、大久保委員、どうぞ。

○大久保委員 言い残したことと、2つ言わせていただきます。1つ目は、今、話題になった冒頭の長時間労働規制の目的は何かというか、その背景は何かということです。なぜ今、長時間労働規制なのかというときに、1つは、労働市場からの要請があるのだと思うのです。人材不足という状況の中で、給料を増やすからあと1時間余計に働いてくれ、と言ってもなかなかやろうという人がいない状況です。労働環境とか労働時間を健全にしないと、人員確保ができません。

 それに加えて、書いてあるとおり、当然、生命の安全は大事ですし、衛生の問題、それから健康の側面等、社会的要請として、長時間労働の改善というものに踏み込んで考えなければいけないという、そういう側面があるわけです。

 もう1つは、多分、生産性を向上し続けるとか、そこの事業運営がサスティナブルであるとかということを求める。これはある種、株主なども関心を持っている資本市場からの要請としての側面もあるのではないだろうかと思います。そういう多面的な背景があって、長時間労働規制という問題を、まさに今、大きなテーマとして議論しているのではないかというような認識を踏まえたらどうかというのが1つ目の意見です。

 それと、もう1つは、資料1の1ページの所に書いてあることですが、インターバル規制の話です。インターバル規制は、要するに法律を通じて全体的に企業に求めるのは、なかなか難しいということだろうと思いますが、一方で、今回の長時間労働の枠組みというのは、特に長時間労働の課題になる業界を特定して、その業界特性や職務特性に合った対策を立てようということが進んできているわけです。特にシフトを組んで動かしていくような職業領域などでは、インターバル規制というのは、極めて有効に機能するケースもあるのではないかと思っていまして、全ての企業に一律に網を掛ける法ではなく、むしろ業界別の対策を立案していく中で、うまくインターバルというものも活用していくということを視界に置いて取り組んだらいいのではないかと思っています。以上、2つです。

○今野座長 今、大久保さんが言われた第1点目は、私が言ったことと似ているのでしょうか。

○大久保委員 はい。

○今野座長 そうですね。企業経営者にとっても、全然悪いことではないではないというメッセージの4番目の基準だと思います。では、平野委員、どうぞ。

○平野委員 今野座長がおっしゃった、いわゆる時間当たり生産性を高める契機にするということが重要だと思います。私は1回目のときにも日本的経営の話をしましたが、ここで学術的な専門用語を使うのは適切ではないかもしれませんが、いわゆる無関心圏。企業からのいろいろと拘束性に関わる命令に対して労働者が疑義を差し挟まず受容する範囲という意味です。いわゆる命令を当たり前のこととして受け止めていくという意味で無関心なわけですけれども、一方で、企業にとって従業員の無関心圏が広いとが非常に使い勝手がいいわけですから、それによって企業は能率という企業の便益を獲得してきたという面があると思います。つまり無関心圏の拡張というのが、日本的経営においては競争力につながった。一方で、大久保委員がおっしゃったように、労働市場の変化によって、無関心圏が狭くなっている人たちがたくさん出てきた。制約を伴う労働者、つまりこれまでのように無関心でいることができなくなった労働者が非常に増えてきたということです。そうすると、やはり労働時間の問題に踏み込まざるを得ないということなのです。そうであるならば、今後の企業経営は、従業員の無関心圏の縮小を前提として、労働時間規制の問題を時間当たり生産性の向上を戦略的に高める契機にしていくという経営の努力が必要ということだと思います。

 一方で、労働者の観点から見ると、自立的キャリアという言葉がありますが、経営者に対して、もっとカウンターパワーですね。労働者自身が意識の面でも自律性を高めていくことができないと、多分、労働時間問題というのは本当の解決に至らないと思います。

 そういう意味で言うと、例えば最近ですと、厚生労働省の管轄でいろいろとやっているセルフ・キャリアドックとか、キャリアコンサルティングの活動によって、労働者の自律的キャリア意識の涵養というものを図ろうとしているわけですが、セルフ・キャリアドッグと労働時間規制の問題をもう少し連携して取り組んでいくということも必要だと思います。今は切り離されてしまっていると思いますが、管轄しているのが両方とも厚生労働省なので、そういう意味では連携していくことも具体的な方策になり得るのではないかと思いました。

 あと、もう1つ具体論で言うと、労働時間規制の問題は企業の競争力、経営にとっていろいろと足かせになるといけません。それはどういうことかというと、企業の業務においては、業務の繁閑の波動性というのが当然あり得るわけですから、柔軟性をある程度確保した労働時間規制というのが必要だと思います。例えば、20年ぐらい前に変形労働時間制を入れてうまく解決したように、残業時間についても柔軟性を担保した施策というか、規制の考え方というのが非常に重要である。つまり年単位の変形労働時間制もあるわけですから、残業時間も月当たりで帳尻を合わせるというのではなくて、年単位で帳尻を合わせていくということも重要であると思いました。以上です。

○今野座長 ありがとうございます。では、小曽根委員、どうぞ。

○小曽根委員 今、皆様方がおっしゃられている長時間労働規制の趣旨・目的というところでは、時間当たり生産性を前面に出していくのがよろしいのかとも考えています。これまでの検討会で皆様のお話を伺う中で、私個人としては、これらをどのようにしたら現場の人事担当者が、あるいは働いている方々が真摯に受け止め、それを守っていくのかという観点で捉えていたところもあります。

 何回目かの検討会のときに、労働時間に対してはマネージャーが果たす役割が大きく、マネージメントの問題である程度は労働時間を短くすることもできるのではないかというお話を差し上げたことがあったかと思います。それももちろんそうなのですけれども、やはりそれだけではなくて、実際に働いている方々もなぜ長時間労働がよくないのか、長時間労働が規制される理由をしっかりと知る必要があります。

 実際に当社でも労働時間に関するルールが様々に変わってきています。マネージャーからルール変更に関する説明がありますが、ルール変更に至った理由まで説明すれば、働く側も納得できるのです。ですから、先ほど荒木委員からも御指摘がありましたが、80時間、100時間の時間外労働のカウントの仕方も、労働者、マネージャー双方に分かりやすい方法で知らせるための、それこそガイドラインなのかもしれませんし、説明なのかもしれませんが、そういった方法も併せて考えないと、実際にはうまくいかないのではないかと懸念するところです。

 最後に1点です。厳しい指導はパワハラかどうかというお話が先ほどありましたが、今、それは現場が大変悩んでいるところです。ここまで厳しく言うとパワハラと言われてしまうのではないかと、教える側がどうしても一歩引いてしまう傾向が出てきています。パワハラかどうかを線引きすることは非常に難しいとは思いますが、果たしてどうしたらいいかというのが、現場で教える立場にある者の大きな悩みの1つになっています。以上です。

○今野座長 小曽根委員の先ほどの2番目の、働く人自身の自覚の問題が重要だということですが、結局、時間当たり労働生産性の問題の意識を持つかどうかということですよね、結局。だらだら働いていればいいというものではないだろうという話。

○小曽根委員 そうなのです。ただ、働いている方々が時間当たり生産性という概念をどれほど持っているかという疑問もあります。例えば、工場のラインでは数値的に捉えることができるためわかりやすいかもしれませんが、そうではない仕事に就いている場合だと、何をもって生産性なのかという点から曖昧です。労働生産性を上げれば企業の競争力が上がるなどといったことまでしっかり説明をする。その説明に納得できないと、時間に対する意識は大きくは変わっていかないのではないかと考えています。

○今野座長 ありがとうございます。それでは、山田委員、どうぞ。

○山田委員 2回目のときに、やや包括的なお話をさせていただいて、そこで強調したかったのは、労働時間制の仕組みというのは、雇用システムの中に位置付けられているものであり、雇用システムというのは、産業システムであったり、あるいはそれ以外のシステムと関連している。ですから、一部分だけいじっても、なかなか動かないのだという、そこを改めて強調したいと思います。

 そのときに、1つは、先ほど来も委員の皆さん方がおっしゃっているように、環境は大きく変わってくる中で、これはもう変えていかないと駄目。労働時間というのは制約があるものだということが大前提になる。それはそうなのですが、そのときに、特に1つ目は労働時間のあり方は産業の在り方と非常に密接に関係していますので、具体的には、この検討会の中でも運輸のケースがかなり具体的に紹介されていたと思いますが、あのような仕組みをもうちょっと前広にやっていくということをしていく必要があるのではないかと思います。

 もう1つは、これもなかなか難しい問題ですが、能力育成と労働時間との関係です。今、これは非常に難しい問題になっていて、日本の場合はかなり誤解の部分があったということだと思いますが、長時間労働が能力育成につながるという考え方がまだかなりあり、浸透しているし、今までもそれが残っているというのが実態だと思います。これは時代環境が変っていくなかで、変えていかないと駄目なわけです。では、そのときにヨーロッパはどうなのだというと、労働時間が短いことを前提に能力育成がされているわけです。ヨーロッパの場合は、教育と労働というものの峻別というか、ある程度明確に分けて、教育の仕組み自体も、例えばドイツあるいはスイスとかであるようなデュアルシステムのような、かなり明解な形で教育の中に職業能力が育成されるような仕組みをビルトインしているからこそ、うまくいっている面があるのではないかと思います。だから日本も恐らく、長期的にそういうことを考えていかないと駄目なのではないかと。中期的な話で教育の仕組みと雇用との連携、ここをやはり考えていかないと駄目なのではないかと思います。

 ただ、これには一定の時間がかかる。今日、途中で、労働時間と自己啓発の線引きについて質問させていただいたのも、そこなのですけれども、決して悪用しては駄目ですし、悲惨な事件が繰り返さないような形にもしていかないと駄目なわけですが、ただ、現実問題として、まだ日本の社会の多くが変わっていない状況で、私も今の段階でここを具体的にどうしたらいいかということをはっきりは言えないのですが、何らかの工夫をしながら中長期で能力教育と労働雇用との連動の仕組みを構築すると同時に、短期的にそこの部分のソフトランディングを図るような何らかの工夫を考えていかないと、長期的に見てうまくいかないのではないかと。このはっきりした答えが出なくて申し訳ないのですが、そういう問題提起ということをさせていただきたいと思います。

○今野座長 山田さんがおっしゃった運輸の例で、各業界別の特殊性があるから業界できちんとやってくださいという話は、考えてみると、ヨーロッパだと業界別の特殊性の配慮というのは、産別交渉でずっとやっているわけで、日本はそういう仕組みはないから、山田委員が言われたように、今の運輸の例のようなものをもっと広げなければいけないかもしれないと思いました。それでは、最後に守島委員、お願いいたします。

○守島委員 今日も幾つかそういう議論が出たと思いますが、労働時間規制という話をしていくと、最終的には小曽根委員も言われたように、現場でそれが実行されなければいけない。現場でそれが実行されていくために何が問題かというと、1つは皆さん方がおっしゃっている個人の意識という問題があるのだと思います。ただ、そこは私の感覚としては、特に若い人を中心に変わってきたという感じがしていて、他の選択肢があれば、それなりに、他のところに移っている。それがもっと若い人的に見てもいい仕事であれば移っていくという時代になってきたのだと思います。ですから、そのようなときに何をしなければいけないかというと、労働市場の流動化を、ある程度今よりも進めていくということは必要で、そこがネックになって、結果的には今の仕事にスタックせざるを得ないというか、そこに落ちつかないといけないという状況があると思います。

 1つは、労働市場の流動化というのは、こういう問題にも1つの大きな解決策になると思います。かつ、企業の情報が提供されるということも重要だと思いますが、それが重要だと思います。

 もう1つは、日本の人事の在り方というものを根本的に変えていかなければいけない側面というのは出てきている。先ほども育成の話は何度も出ていましたが、あとは、採用の在り方とか、あとは人事評価の在り方とか、多分そういう議論になってくる。それは法律でどうこうできるという話では必ずしもないのですけれども、そうなると皆さんの御意見の中にもありましたが、ワーク・ライフ・バランスとか女性活用の話の中でよく使われた、いわゆる事例を積み上げていくというか、好事例を積み上げていくというようなことを通じて、そのような知識を共有していく。若しくはこういうことをやったらうまくいったのだというような情報を提供していくということも必要だと思います。そこは必ずしも法律で何かできるということではないので、もう少しソフトアプローチのようなものが必要なのではないかと思いました。以上です。

○今野座長 ありがとうございました。それでは時間ですので、本日の議論はここまでとさせていただきます。最後に時間と日程等について事務局からお願いします。

○中嶋調査官 次回、第6回の日程については調整の上、改めて御連絡させていただきたいと存じます。

○今野座長 それでは、終了いたします。長時間、ありがとうございました。

 


(了)
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