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2016年9月7日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

○日時

平成28年9月7日(水)16:00~


○場所

厚生労働省講堂


○出席者

出席委員(16名)五十音順

奥 田 晴 宏、 加 藤 総 夫、 金 子 明 寛、 川 上 純 一、
神 田 敏 子、 木 村   剛、 杉     薫、 鈴 木 邦 彦、
内 藤 幹 彦、 野 田 光 彦、 古 川   漸、 増 井   徹、
◎松 井   陽、○松 木 則 夫、 村 田 美 穂、 山 田 清 文
(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(5名)

佐 藤 雄一郎、 武 田 正 之、 林   邦 彦、 平 石 秀 幸、
平 安 良 雄

行政機関出席者

武 田 俊 彦 (医薬・生活衛生局長)
森   和 彦 (大臣官房審議官)
山 田 雅 信 (医薬品審査管理課長)
佐 藤 大 作 (安全対策課長)
宇 津   忍 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
林   憲 一 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
猿 田 克 年 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○医薬品審査管理課長 定刻となりましたので、ただ今から「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中、御参集いただき誠にありがとうございます。

 本日の委員の出席状況についてですが、佐藤委員、武田委員、林委員、平石委員、平安委員より欠席との御連絡をいただいております。また、鈴木委員より1時間程度遅れるとの御連絡をいただいております。現在のところ、当部会委員数21名のうち15名の委員の御出席をいただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。

 それでは松井部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。

○松井部会長 皆さん、こんにちは。本日の審議に入ります。まず、事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告をお願いします。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しております。議事次第に記載されている資料1~14をあらかじめ、お送りしております。

 このほかに、資料2-3「議題2 カーバグル分散錠200mg、資料2-1の1.7 同種同効品一覧表」の差換え資料、資料9-2「ブリリンタ錠 第一部会(2016年5月27日開催)での御指摘及び機構の対応」、資料10-2「関連学会の先生方からの御意見」、資料10-3「ミカトリオ錠に対する医薬品第一部会での御指摘に対する回答」、資料15「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料16「専門委員リスト」、資料17「競合品目・競合企業リスト」を配布しております。

 続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。資料17の1ページを御覧ください。「リクラスト点滴静注液5mg」ですが、本品目は「骨粗鬆症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 2ページを御覧ください。「カーバグル分酸錠200mg」ですが、本品目は「N-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症、イソ吉草酸血症、メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症による高アンモニア血症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 3ページを御覧ください。「リアルダ錠1200mg」ですが、本品目は「潰瘍性大腸炎(重症を除く)」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 4ページを御覧ください。「ミケルナ配合点眼液」ですが、本品目は「緑内障、高眼圧症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 5ページを御覧ください。「エビリファイ錠1mgほか8規格」ですが、本品目は「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 6ページを御覧ください。「ウプトラビ錠0.2mg、同錠0.4mg」ですが、本品目は「肺動脈性肺高血圧症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 7ページを御覧ください。「ジャクスタピッドカプセル5mgほか2規格」ですが、本品目は「ホモ接合体家族性高コレステロール血症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 8ページを御覧ください。「プリズバインド静注液2.5g」ですが、本品目は「ダビガトランの抗凝固作用の中和」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目は、なしとしております。

 9ページを御覧ください。「ブリリンタ錠60mg、同錠90mg」ですが、本品目は「アテローム血栓症の発現リスクが特に高い陳旧性心筋梗塞」及び「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

10ページを御覧ください。「ミカトリオ配合錠」ですが、本品目は「高血圧症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。長くなりましたが以上です。

○松井部会長 ただ今の事務局の説明に対して何か御意見はありますでしょうか、よろしいですか。

 それでは、本審議会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、委員の皆さんの御理解を得たものといたします。委員からの申し出状況についての報告をお願いします。

○事務局 各委員からの申し出状況については次のとおりです。議題1「リクラスト」は退席委員:なし、議決には参加しない委員は木村委員、杉委員、村田委員です。議題2「カーバグル」は退席委員:なし、議決には参加しない委員:なしです。議題3「リアルダ」は退席委員:なし、議決には参加しない委員は木村委員、杉委員、村田委員です。議題4「ミケルナ」は退席委員:なし、議決には参加しない委員は木村委員、杉委員、村田委員です。議題5「エビリファイ」は退席委員:なし、議決には参加しない委員は木村委員、杉委員、村田委員です。議題6「ウプトラビ」は退席委員が木村委員、議決には参加しない委員が杉委員、村田委員です。議題7「ジャクスタピッド」は退席委員:なし、議決には参加しない委員が木村委員、杉委員、野田委員、村田委員です。議題8「プリズバインド」は退席委員:なし、議決には参加しない委員は木村委員、杉委員です。議題9「ブリリンタ」は退席委員が木村委員、議決には参加しない委員が金子委員、川上委員、杉委員、野田委員です。議題10「ミカトリオ」は退席委員:なし、議決には参加しない委員が木村委員、杉委員、野田委員、村田委員です。以上です。

 なお議題9「ブリリンタ」について、木村委員におかれましては競合品目の申請資料作成関与委員に該当し、本来であれば審議開始に先立って御退席いただくところです。しかし、5月27日開催の医薬品第一部会において、循環器専門の委員が不在の中で継続審議となった経緯がありますことから、「薬事分科会審議参加規程第5条第2項」の「申請資料作成関与者である委員等は当該品目についての審議又は議決が行われている間、審議会場から退出する。ただし、当該委員等の発言が特に必要であると分科会等が認めた場合に限り、当該委員等は出席し意見を述べることができる」の「ただし」以下を適用し、ブリリンタの投与対象である急性冠症候群の治療について御専門の木村委員の御意見を伺うことが必要と思われます。発言が必要だと御判断いただけるかという確認をお願いいたします。

○松井部会長 専門家としての発言が必要と思われます。御意見をいただいたあと、退席していただくことにして、委員の皆様はよろしいでしょうか。ありがとうございます。よろしければ、議題9では木村委員には冒頭に御意見をいただいたのち、退席していただくことにいたします。ほかに事務局からの説明で特段の御意見はありますでしょうか、よろしいですか。

 よろしければ、皆さんに御確認いただいたものとして議題に入ります。今日は審議事項は10議題、報告事項は4題と多数になっています。しかも、お気付きのように、議題9と議題10は再審議、再々審議の議題です。このディスカッションまで皆さん方が疲れないよう、フレッシュな気持ちで、無事重要なディスカッションに参加していただきたいと思います。早速、議題1について、機構から概要を説明してください。

○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、医薬品リクラスト点滴静注液5mgの製造販売承認の可否等について機構より御説明申し上げます。

 本剤はビスホスホネート系薬剤であるゾレドロン酸水和物を有効成分とする年1回投与の注射剤です。ビスホスホネート系薬剤の経口剤では、服用後少なくとも30分は横にならないなどの制約によってコンプライアンスを長期間維持することが困難であるとの観点から、投与頻度の少ない経口剤や注射剤の開発が行われております。

 本剤の海外の承認状況につきましては、2007年8月に米国で閉経後骨粗鬆症、同年10月に欧州で骨折リスクの高い閉経後骨粗鬆症の治療薬として承認され、2016年6月現在、世界115か国以上で承認されております。

 なお、国内では、同じ有効成分の4mg製剤であるゾメタ点滴静注が、2004年に「悪性腫瘍による高カルシウム血症」、2006年に「多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変」の効能・効果で承認されております。

 本品目の専門協議では、資料16に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。以下、本剤の有効性及び安全性について臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性については、審査報告書の14ページの表5及び15ページの図1を御覧いただければと思います。骨粗鬆症患者を対象とした国内第 III 相試験において、主要評価項目とされた投与24か月間の新規椎体骨折の累積発生率について、本剤群のプラセボ群に対する優越性が示されました。

 安全性については、審査報告書24ページから41ページの「7.R.2 安全性について」の項に示しましたように、急性期反応、腎機能障害、低カルシウム血症等の個別の事象について検討した結果、適切な注意喚起等がなされれば本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。

 製造販売後調査につきましては、審査報告書55ページの表50を御覧ください。目標症例数1,000例、観察期間3年間の特定使用成績調査を実施し、急性期反応、腎機能障害、低カルシウム血症等の安全性に係る情報、並びに腎機能障害患者及び男性患者における安全性及び有効性に係る情報が収集される予定です。

 以上のとおり、機構での審査の結果、「骨粗鬆症」を効能・効果として本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。本剤は新効能及び新用量医薬品であり、再審査期間は4年、製剤は劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。それでは、委員の先生方から御質疑をお願いします。いかがでしょうか。

○金子委員 お尋ねいたします。歯科におきましては、いわゆる顎骨壊死が問題になるわけです。海外の比較試験で3例認められておりますけれども、これらのグレードはどの程度のものだったのか、お分かりになれば教えていただきたいと思います。

○松井部会長 ちょっと、よく聞こえませんでした。

○金子委員 顎骨壊死のグレードです、3例出ているので。

○医薬品医療機器総合機構 すみません、ちょっと確認させていただきますのでお待ちください。

○松井部会長 先生の御質問の趣旨は重症度ということですよね。

○金子委員 そうです、そのような分類がありますので。

○医薬品医療機器総合機構 重症度ということで、よろしいでしょうか。

○松井部会長 分類に沿った御説明を御希望なさっています。

○医薬品医療機器総合機構 重症度は今現在調べているのですが、顎骨壊死について審査報告書34ページで記載させていただいております。

○松井部会長 34ページのどの辺ですか。

○医薬品医療機器総合機構 34ページの一番上の部分です。海外試験で、本剤投与後に顎骨壊死の疑いがある患者が3例認められております。その危険因子として、口腔衛生不良、歯周病などの歯性感染症又はコントロール不良な重度の糖尿病を有する患者であったというところで、この3例は、抜歯や歯周病などの既往歴を有する、あるいは口腔衛生が悪い状態の患者であったという現状です。

○松井部会長 その下の文節にも、顎骨壊死に関連する事象が50例報告され、重篤例は47例だったと書いてあるように思います。これは先生の御質問の趣旨と合いますか。

○金子委員 多分、それほどひどくはないと思います。海外の治験のデータの例が3例あったということで、どの程度の壊死が起こっているのかを知りたかっただけです。

○医薬品医療機器総合機構 今、確認させていただきまして、独立判定委員会で確定した顎骨壊死の疑いがある1例については中等度、もう1例の程度としては軽度とされています。残りの1例につきましては、重症度がこちらには記載されておりませんが、合併症や感染部位の処置など、いろいろな要因が重なって生じているということで本剤による影響かどうかというのは評価することが困難という結論になっております。

○金子委員 お願いとしては、これを見ますと、いわゆる内服剤と異なりますので、例えば歯科を受診する時、こういうものをちゃんと守っていただかないと、患者さんにとりましては何を打たれているか分からないという方もいらっしゃいます。要するに、それを販売の時には徹底するようにしていただければと思います。

○医薬品医療機器総合機構 投与については1年に1回投与になりますので患者カードというものを携帯していただいて、他の医療機関でリクラスト点滴静注液が投与されていることが分かるようにさせていただいております。ありがとうございます。

○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。

○神田委員 年1回の投与ということで非常に間隔が長いので、非常にびっくりしました。これは骨組織の中に移行して滞留して、1年間ずっと継続してずっと効果があるということですよね。そういったことによってコンプライアンスの向上が期待できるということは分かりました。ただ、重要な基本的注意として、投与後に副作用の発現に注意をして、次回投与までの間も患者の状況を十分観察することとなっています。ということは、十分な観察というのは、具体的には患者としては例えば定期的にお医者さんに行って観察を受けるということを意味しているのかというのが、一つの質問です。

 もう一つは例えば、そこで副作用が発見された場合、まだ打って間もないのに副作用が出てきたという時にはもう既に骨組織の中にそういった薬剤が入っていって、適切に対処したとしても、またその後も薬剤が効き続けるわけなので、同じような副作用が繰り返されるのかどうかという素人の心配なのですが、そこはどうなのでしょうか、そういった副作用が繰り返される心配はないのでしょうか。

○松井部会長 いかがですか、神田委員の二つの御質問に対して。

○医薬品医療機器総合機構 1点目については、添付文書の1.8の「重要な基本的注意」の()のことを御指摘いただいているのだと思います。読み上げますと、本剤の投与間隔は1年と長いことから以下の点に注意するという所で、本剤投与後には副作用の発現に注意し、次回投与までの間も患者の状態を十分に観察することと注意喚起させていただいております。この観察期間ですが、実臨床では大体1か月から3か月毎に患者さんが来院することを申請者としても想定しています。

 実際に、試験における安全性の評価頻度につきましては、同じ添付文書の臨床試験成績の項に一つのめどとして記載させていただいております。具体的には添付文書の7ページ、「臨床試験成績」の項に、なお書きで記載しており、国内第III相臨床試験の安全性評価頻度を、治験薬投与開始前、開始時、3日後、何週間後、何か月後というような形で、臨床試験での評価頻度はこうでしたということを参考に記載させていただいております。また、医療現場における資材等で、投与後も患者さんの状態を十分に観察してくださいという注意を施すことを予定しております。

 また、本剤は年に1度の投与であり、途中で中止できないという御指摘をいただいています。そのことも考慮いたしまして、添付文書の4ページの「効能・効果に関連する使用上の注意」の2番目の所に、本剤は1年に1回間欠投与する薬剤であり、本剤の有効成分であるゾレドロン酸水和物は骨に移行して長期間にわたり体内に残存する。本剤の各投与前に問診・検査を行うなど患者の状態を十分に確認した上で、そのベネフィットとリスクを考慮し、本剤による治療が適切とされる患者さんを対象に、本剤を投与してくださいというような注意喚起をさせていただいております。

 また、本剤の安全性の面で、海外の市販後の状況から急性腎不全を起こすことが知られております。そのような場合、本剤を投与するに当たっては、本剤を投与する前にしっかりと腎機能や脱水状態、あるいは腎毒性を有する薬剤や利尿剤などの併用薬について問診・検査を行うなど、患者の状態を十分に観察してから本剤の投与の適否を判断してくださいというような注意喚起を4ページの警告欄に記載し、注意喚起をさせていただいております。

○松井部会長 いかがでしょうか、神田委員。

○神田委員 ありがとうございます。1年に1回ということで、単純に随分、楽になるという印象を持ったのですが、今お聞きすると、やはりその間にもいろいろ気を付けていかなければいけないということです。例えば今、1か月に1回という注射があるわけですが、それでも1年と同じように投与後には観察するというお薬なのでしょうか。というのは、コンプライアンスが向上するという点ですとか、利便性が上がるというような点において、1か月よりも1年のほうが優れているというか、そういう面があるのかどうかお聞きしたいのも、ひとつありますが、その辺はいかがでしょうか。

○松井部会長 いかがですか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より少し補足させていただきます。ビスホスホネート製剤ではないのですが、骨粗鬆症薬で6か月に1回という薬剤が既にあります。本剤の専門協議において、投与間隔が長い場合に実際の医療現場での観察頻度を専門委員の先生方に確認させていただきましたところ、骨粗鬆症については、たとえ投与間隔が長い薬剤でも、全般的に1~3か月の間に、来院してもらっているということでしたので、今回の品目についても同じような対応がなされるのではないかという御意見がありました。それから、先ほど御説明させていただきましたように、きちんと観察してくださいということを注意喚起させていただいております。

 臨床成績において、投与後の期間別に、投与後3日以内とそれ以降で投与後の経過に応じて有害事象が増えるのか、また初回投与後や2回目投与後の有害事象の発現状況を確認いたしました。その結果、初回投与で、特にビスホスホネート製剤でよくみられる急性期反応の発現割合が高い傾向にありますが、海外では9年間継続投与されている試験成績もあり、その中では投与期間の延長に伴い有害事象の発現が高くなるという傾向は認められておりません。

 今回の薬剤というのは、海外試験にはなりますけれども、大腿骨近位部の骨折抑制が認められている薬剤の一つです。大腿骨近位部の骨折が起きてしまうと、やはり寝たきりになってしまうなど予後にも影響することになります。そういうリスクの高い患者や、なかなかコンプライアンスの悪い患者さんに対しては意義があるのではないかと考えております。

○神田委員 分かりました、ありがとうございます。1年というのは初めてになりますよね。ですので、十分に注意しながら使っていただけたらと思います。

○松井部会長 ありがとうございました。ほかにございますか、よろしいでしょうか。議論も尽くされたと思いますので議決に入ろうと思いますが、よろしいですか。

 なお、木村委員、杉委員、村田委員におかれましては、利益相反に関する申し出に基づきまして、議決への参加を御遠慮ください。

 本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として、薬事分科会に報告いたします。

 それでは、議題2に移ります、よろしくお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料2-1、2-2、医薬品カーバグル分散錠200mgの製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。なお、事前に送付させていただきました1.7の同種同効品一覧表に修正がありましたので、資料2-3を当日資料として配布しております。

 本剤の適応対象であるN-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症は、尿素サイクル異常症の一つであり、NAGS遺伝子変異によりN-アセチルグルタミン酸が合成されないことで、高アンモニア血症を呈する常染色体劣性遺伝疾患です。また、イソ吉草酸血症、メチルマロン酸血症及びプロピオン酸血症は、有機酸代謝異常症に分類され、アミノ酸代謝経路における酵素欠損により中間代謝物である有機酸が蓄積し、蓄積した有機酸がNAGSを拮抗阻害することにより、高アンモニア血症等を生じる常染色体劣性遺伝疾患です。

 本邦において、NAGS欠損症患者の報告はなく、イソ吉草酸血症は3人、メチルマロン酸血症は62人、プロピオン酸血症は30人と報告されており、本剤は希少疾病用医薬品に指定されています。

 本剤の有効成分であるカルグルミン酸は、N-アセチルグルタミン酸の構造類似体であり、尿素サイクルを活性化することにより血中アンモニア濃度を低下させる薬剤です。

 本剤の海外の承認状況は、NAGS欠損症による高アンモニア血症について、2003年に欧州、及び2010年に米国で承認され、2016年6月現在、世界42か国で承認されており、海外では第1選択薬として位置付けられています。イソ吉草酸血症、メチルマロン酸血症及びプロピオン酸血症による高アンモニア血症については、2011年に欧州で承認され、2016年6月現在、世界39か国で承認されています。

 以上の背景から、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において、開発支援品目に選定されました。本品目の専門協議では、資料16に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。

 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性については、審査報告書25ページの表11を御覧ください。国内第 III 相試験に、イソ吉草酸血症患者1例、メチルマロン酸血症患者1例、プロピオン酸血症患者2例が組み入れられ、個別症例ごとに検討した結果、本剤投与による血中アンモニア濃度の低下が認められました。NAGS欠損症患者は組み入れられませんでしたが、審査報告書27ページ表14及び、28ページ表16に示しますように、NAGS欠損症患者対象の海外レトロスペクティブ研究で、本薬投与による血中アンモニア濃度の低下が認められました。また、審査報告書31ページ表24に示しますように、イソ吉草酸血症、メチルマロン酸血症及びプロピオン酸血症による高アンモニア血症患者対象の海外レトロスペクティブ研究についても、いずれの疾患においても、本薬投与による血中アンモニア濃度の低下が認められました。以上の国内外の成績を踏まえ、本剤の有効性は示されたと解釈して差し支えないと判断いたしました。

 安全性について、審査報告書35ページから36ページの「安全性について」の項に記載しましたように、海外市販後において、現時点で特に問題となる新たなリスクは認められておらず、海外添付文書と同様の注意喚起を適切に行うことを前提に、本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。

 なお、国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、再審査期間中の全投与症例を対象に使用成績調査を実施して本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じる旨の承認条件を付すことが適当と判断しております。以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。

 本剤は希少疾病用医薬品であり、再審査期間は10年、原体及び製剤は毒薬・劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品・特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しています。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

○松井部会長 御意見を伺う前に、小児科医の委員として発言をさせていただければと思います。ここに挙げられている4種類のアミノ酸代謝異常は、どれも非常に希な病気です。細胞の中の尿素サイクルのサイクルを回す酵素に遺伝子欠損があり、その結果、アンモニアが蓄積してまいります。蓄積した結果、新生児期に重症例では中枢神経系にダメージを起こして死亡する例も少なくありません。より軽い例でも、重篤な神経学的後遺症を残します。その高アンモニア血症の発作を抑えるために、このような薬が開発されたわけです。この発作を抑えて生体肝移植をすれば、神経学的に予後を期待できてダメージの少ない例が最近少しずつ増えてきております。以上が、私の紹介です。委員の先生方から、何か御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。特に御意見はありませんか。

○加藤委員 報告書の32ページに、安全性の有害事象に関する記述があります。この中で、因果関係について「関連あり」と判断されたのは神経系障害であると書いてあります。また、下の死亡例の中でも、死亡例で神経系障害、特に呼吸停止と併記してありますが、当該症例は、本薬投与前から神経系障害が認められということです。まず一つは、神経系障害の死亡例、あるいは神経系障害と書いてあるのは、例えば呼吸不全であったり、自律機能、呼吸機能の障害と考えられるのか。もしそうである場合には、それに対して例えば換気を人工的に維持するなり、あるいは自律神経系の機能を何らかの形で保全するなり、サポートをするような注意喚起がどこかで必要ではないか、あるいは、そのほうがよいのではないかと考えました。特に今のところ、神経系障害が起こる可能性があるとか、それに対して何らかのバイタルを保つような対策を練るというようなことは添付文書などに記述されていないように思いますので、何かそのような必要がないかどうかを伺いたいと思います。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 すみません、質問の意図を確認させてください。今御質問いただいたのは、審査報告書32ページの表25の下3行目の、死亡例のうちの神経系障害が投与前から認められて、投与中止6日後に、高アンモニア血症に伴い神経系障害を発現した症例という所の詳細を確認したいとの意図でしょうか。それとも、この症例は海外レトロスペクティブ研究の症例になりますので、なかなか詳細な情報はないのですが、本剤投与を中止したために、恐らく高アンモニア血症を発症してしまったと思われます。投与中止しないとか、患者の状態に応じて何らかの処置ができるような注意喚起をしているのかという意図でしょうか。

○加藤委員 一つの意図は、後半のほうです。そのような注意喚起をする必要はないかということと、もう一つは、32ページの一番上の段落です。有害事象の中に因果関係があると判定された副作用として神経系障害があるとあります。その神経系障害というのは、例えばその次の段落の死亡例にあるような呼吸停止や重篤な症状につながり得るものであれば、注意喚起が必要ではないでしょうかという二つです。

○医薬品医療機器総合機構 このレトロスペクティブ研究というのは、イソ吉草酸血症、メチルマロン酸血症、プロピオン酸血症による高アンモニア血症患者のレトロスペクティブ研究になります。この症例の詳細については、もうこれ以上はなかなか難しいのですが、1.8.4の添付文書案の用法・用量に関連する使用上の注意の2番で、これらの患者に対しての注意喚起を記載しております。こちらには、投与中は定期的に血中アンモニア濃度等の臨床検査値や臨床症状等を確認して、継続投与の必要性をきちんと検討してくださいということを記載させていただいております。高アンモニア血症の急性増悪が認められる場合もあるかと思いますので、そちらについては4番目に、高アンモニア血症の急性増悪が認められた場合は他の治療を検討してくださいということを、注意喚起させていただいております。

○松井部会長 よろしいですか。先生の御質問に私がお答えできるかどうか分かりませんが、ほとんどが、より多数が新生児型で、高アンモニア血症と同時に細胞でも低酸素血症を起こします。その結果として、クレブスサイクルも回らなくなり、神経細胞に不可逆的なダメージを起こしますので、一旦家に帰って元気になってというよりは生後間もなく急変することが多いので、一般の方に注意喚起というのは必ずしも大きな要素ではないかもしれません。加藤先生、よろしいでしょうか。

○加藤委員 先生のおっしゃることは、よく分かります。そういう意味では、非常にまれな疾患でもあり、また適応となる患者の層が限られているのも分かるのですが、32ページの添付文書にどう書くか、ということで、要するに、高アンモニア血症が非常に増悪することによって神経系障害が起こるのか、それともこの薬物の副作用として神経系障害が起こるのかが分かりにくいです。副作用として神経系障害が起こるのかが分かりにくい、副作用という項目に神経系障害が副作用として起こるというような書き方がしてあるので、高アンモニア血症のコントロールが悪くて増悪するということなのか、それとも別に、この薬物の副作用として神経系障害が起こるのかが、もちろん完全に明確にするのは難しいとは思いますが、そこが分かりにくい記述かなと思うのです。

○松井部会長 いかがですか。

○医薬品医療機器総合機構 先ほどの繰り返しになる可能性、あるいは松井先生からの情報提供、サポートの繰り返しになる部分があるかもしれません。基本的には原病の問題が主体と考えられます。この剤において、薬理作用、あるいは既に得られている成績から、副作用として神経系の障害が増強するというようなデータを拾うことは、なかなか難しいと思います。しかし、一方では、御指摘いただいた試験が、レトロスペクティブに観察された事象を寄せ集めたものであり、個々の症例自体の記録は非常に貧弱なものから比較的豊かなものまであります。多くの場合においては極めて簡潔的な記載で、神経系の障害により脳死のような障害が起こった、あるいは、患者又は患者の御家族の希望により治療が中断され、そこで終了になったというものをまとめておりますので、要約として示した場合には、このような記載の形態になってしまいます。根本的には一番最初にお答えさせていただいたように、薬理作用によって障害が増強すると考えるよりは、原病側の問題として障害が発現して、あるいは薬効が足りなくて、高アンモニア血症が持続し先ほどのお話にあったような脳障害に至り死亡に至ったということが、恐らくは経緯であろうと考えております。

○松井部会長 よろしいですか。ほかにありますか。それでは、御質疑がないようですので議決に移ります。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは、議題3に移ります。機構から、概要を御説明ください。

○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料3-1から3-3、医薬品リアルダ錠1200mgの製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。

 潰瘍性大腸炎は、下痢、粘血便、腹痛及び発熱などを伴い、再燃と寛解を繰り返す炎症性腸疾患です。活動期の重症例に対してはステロイド剤、免疫抑制剤、血球成分除去療法などが行われ、活動期の軽症例や中等症例、及び寛解期にはメサラジン製剤が広く用いられます。メサラジンは、大腸の病変局所で抗炎症作用を発現しますが、製剤的な工夫を行っていないメサラジンを経口投与した場合、多くは小腸で吸収されるため、大腸への到達量が少なくなります。そのため、メサラジンに製剤的な工夫を施したペンタサ錠や、アサコール錠が既に承認されています。

 本剤は、徐放化された素錠を腸溶性コーティングし、メサラジンを大腸に送達するとともに、持続的にメサラジンを放出するよう設計された製剤です。本剤の用法は、1日1回であり、申請者は、服薬アドヒアランスの改善が期待できるとして本剤を開発しました。

 海外では、本剤は2016年2月現在、米国及び欧州を含む37か国において、重症を除く潰瘍性大腸炎を適応として承認をされています。本品目の専門協議では、本日の配布資料16に示します専門委員を指名いたしました。

 有効性に関して、報告書10ページの表11を御覧ください。活動期潰瘍性大腸炎患者を対象とした国内試験において、本剤4.8g群のアサコール錠群に対する非劣性が検証されました。また、報告書12ページの表5を御覧ください。寛解期の潰瘍性大腸炎患者を対象とした国内試験において、本剤2.4g群のペンタサ錠群に対する非劣性が検証されました。以上より、本剤の有効性は示されたと考えました。

 安全性について、報告書1011ページの表12及び表13、並びに報告書12ページの表16及び表17を御覧ください。活動期及び寛解期いずれの国内試験においても、対照薬群に比べ本剤群で有害事象が増加する傾向は認められませんでした。また、報告書16ページの表20を御覧ください。本剤の長期投与時にも、対照薬群に比べて本剤群で有害事象が増加する傾向は特に見られませんでした。したがって、本剤の安全性については、既承認の経口メサラジン製剤の添付文書に準じた注意喚起をすることで差し支えないと考えました。

 以上の審査の結果、「潰瘍性大腸炎(重症を除く)」を効能・効果とした本剤の有効性は示され、本剤の安全性は許容可能と考えられたことから、承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。本品目は新剤形医薬品に該当し、再審査期間は4年、製剤は劇薬・毒薬のいずれにも該当せず、生物由来製品・特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しました。薬事分科会では報告を予定しています。御審議、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○松井部会長 委員の先生方から、御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。特に御質疑はありませんか。ないようでしたら、議決に入りますが、よろしいですか。なお、木村委員、杉委員、村田委員におかれましては、利益相反に関する申し出に基づいて、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題について、承認を可としてよろしいですか。

 御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは、議題4に移ります。機構から御説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題4、資料4、医薬品ミケルナ配合点眼液の製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。

 本剤は、β遮断薬であるカルテオロール塩酸塩、以下、カルテオロールと略します、及びプロスタグランジンF2α誘導体であるラタノプロストを有効成分とする配合点眼剤です。今般、本剤の緑内障及び高眼圧症に対する有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。なお、各有効成分の単剤は、いずれも国内外で承認されていますが、本剤は201510月現在、海外では承認されておりません。本申請の専門委員として、資料16に記載されております4名の委員を指名いたしました。

 以下、審査内容について、臨床試験成績を中心に説明いたします。まず、本剤の有効性について、審査報告書別紙11ページ表6及び、12ページの表7を御覧ください。緑内障又は高眼圧症患者を対象に、ラタノプロスト単独投与群と本剤群とを比較する第 III 相試験、以下002試験と略します、並びにカルテオロール単独投与群と本剤群とを比較し、参照群としてラタノプロスト及びカルテオロール併用群を設定した第 III 相試験、以下003試験と略します、が実施されました。表6に示す002試験の結果、及び表7に示す003試験の結果から、主要評価項目である投与8週後のベースラインからの眼圧下降値について、002試験では本剤群のラタノプロスト群に対する優越性が示され、また003試験では本剤群のカルテオロール群に対する優越性が示されました。なお、003試験において、参照群であるラタノプロスト及びカルテオロール併用群と比較して、本剤群の眼圧下降効果は同程度であることが確認されました。

 次に安全性について、審査報告書別紙16ページの表9を御覧ください。002試験及び003試験の結果を併合した本剤群における有害事象の発現割合は、ラタノプロスト群及びカルテオロール群と比較して高い傾向が認められましたが、ラタノプロスト及びカルテオロール併用群と明らかな差異は認められませんでした。また、本剤群で認められた事象は、いずれも軽度又は中等度であり、002試験及び003試験において本剤群でのみ認められた点状角膜炎、眼瞼炎等の事象は、いずれもカルテオロール又はラタノプロストの臨床試験、又は製造販売後の使用成績から既知の事象でした。以上より、本剤投与により、新たな安全性上の大きな問題が生じる可能性は低いと判断しております。

 最後に、本剤の配合意義について、審査報告書別紙12ページからの「7.R.1 本剤の配合意義及び臨床的位置付けについて」の項を御覧ください。点眼剤の併用療法では、適切な間隔を空けずに点眼した場合、先に点眼した薬剤が後から点眼した薬剤に洗い流されるため、他の点眼剤と併用する場合は5分以上の間隔を空けて点眼する旨の注意喚起がなされていることを考慮すると、本剤は患者の利便性向上に資するものと考えております。

 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は、新医療用配合剤に該当することから、再審査期間は6年、製剤は毒薬又は劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品に該当しないと判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から、御質疑をお願いします。

○松木部会長代理 配合剤について、このような点眼薬、輸液、外用薬については、やはり患部での濃度を一定にするのはなかなか難しいので、その配合の意義は結構あると思います。そこで質問ですが、今までの緑内障治療薬も、眼圧低下を指標にしてきましたから仕方ないといえば仕方ないのですが、βブロッカーと、房水の産生抑制と眼房水の排出促進の薬を組み合わせたら、眼内圧が低下するのは当たり前といえば当たり前なわけです。ですから、それだけを指標にして、これからもずっとやっていっていいのかと。やはり、根本的な緑内障が本当に治っているかどうかを見るべきではないのですか。今は正常眼圧の緑内障が非常に増えているわけですから、そういう人たちに対しても有効かどうかを検討すべきだと思います。これを続けていくと、永遠に眼圧を下げる薬イコール緑内障治療薬として出てくるのではないでしょうか。

 それから、眼圧の上昇というよりは、神経変性性疾患だという認識が高まっています。これは、緑内障治療薬が出てくるたびに言っている意見だと思うのですが、そういうものを対象にしていかない限り、余り画期的な薬は望めないのではないかと思います。

 もう一つは、βブロッカーとの組み合わせですと、チモロールとの組み合わせは既に出ているわけですが、チモロールよりはカルテオロールのほうがいいのだ、あるいは同等だという判断なのですか。その2点をお願いします。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 1点目の御指摘については、これまでも今回と同じような評価がなされていることも踏まえますと、今後検討させていただく課題になるかと考えております。御指摘をいただいた旨は、申請者にも伝えさせていただきたいと思います。

 2点目については、審査報告書にも記載させていただいているのですが、13ページになります。カルテオロールは、チモロールと比較しますと、心循環器系、呼吸機能、眼刺激作用、血中脂質に対する影響が小さいことが知られておりますので、そのような点で利点があると考えております。

○松井部会長 今のお答えでよろしいですか。

○松木部会長代理 1点目が非常に重要で、多分、申請者に伝えても、どのような方向でスクリーニングしたらいいのかが、なかなか難しいところだと思います。ですから、機構が相談の段階で、もう少しイニシアティブをとって、神経変性性疾患だというような範疇で薬の開発を進めていかないと、やはり眼圧のほうだけになってしまうと、結局同じことの繰り返しになると思います。

○松井部会長 松木委員がおっしゃるのは、眼圧だけではなくて、長期予後などの指標と比べて配合したほうがいいのかどうかと。

○松木部会長代理 以前は、眼圧上昇によって、眼圧が上がるから神経が圧迫されて緑内障になるというような考えでしたが、今は正常眼圧でもかなり緑内障が出てきているのです。ですから、緑内障の考え方として、神経変性性疾患であるというような感覚で、それを防ぐという方向でよろしいと思います。眼圧は上げないよりは下げたほうがいいと思いますが、画期的な新薬を目指すならば、そのような方向でいかないと、今を超えるような薬は絶対に出てこないと思います。

○松井部会長 今の松木委員の御主張について、委員の先生方から特段の御意見や反論はありませんか。基本的に賛成であると判断して、よろしいでしょうか。もしそうであれば、この第一部会としてそのような発言があった旨、議事録に残して、機構も関わる問題が起きたときに、そのような対処をしていただくことにしたいと思うのですが、機構から何か御意見はありますか。

○医薬品医療機器総合機構 緑内障治療薬の医薬品開発における薬効評価についての御意見を頂いたと考えております。やはり、現状は眼圧下降が評価項目としては主要な評価項目なのだろうという認識ではおります。神経変性性疾患であるということも踏まえて、どういった評価指標が今後望ましいのかという点については、頂いたコメントの趣旨を踏まえて、今後の相談業務等に当たっていきたいと考えております。御指摘ありがとうございます。

○松井部会長 課長、それでよろしいでしょうか。

○医薬品審査管理課長 御意見ありがとうございました。これは、新薬の開発のやり方になろうかと思います。現時点では、緑内障治療薬について、国内では臨床評価ガイドラインのようなものはありませんが、諸外国の状況を踏まえ、また専門の学会の先生方の御意見を伺い、時間はかかるかと思いますが、検討はさせていただきたいと思っております。

○松井部会長 松木委員、それでよろしいですか。ほかに御意見はありますか。

○加藤委員 今のことに関連して、確かに正常眼圧でも、眼圧下降がリスクファクターを減らすことによって進行を抑えうる、という有効性を示したレポートもあります。製造販売後の検討調査でここに書いてあるのは通常と同じように観察期間1年間ということですが、緑内障の疾患のスパンが5年、10年と長いということを考えて、実際に長期投与になることも考えて、もう少し長期の販売後調査も視野に入れるべきではないかということをコメントしたいと思います。

○松井部会長 よろしいでしょうか。ほかに御意見がなければ、議決に入ろうと思いますが、よろしいでしょうか。なお、木村委員、杉委員、村田委員におかれましては、利益相反に関する申し出に基づきまして、議決への参加を御遠慮ください。

 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。

 異議がないと認めますので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは、議題5に移ります。機構から、御説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題5、資料5、医薬品エビリファイ錠1mgほかの承認の可否等について、機構より御説明いたします。

 本剤は非定型抗精神病薬であり、海外では2016年6月現在、自閉性障害に関連した効能・効果で米国など10の国又は地域で承認されており、本邦では2006年1月に錠剤及び散剤が「統合失調症」の効能・効果で承認されて以降、「双極性障害における躁症状の改善」及び「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」の効能・効果の追加、並びに、内用液及び口腔内崩壊錠の追加がそれぞれ承認されております。なお、持続性筋注製剤が「統合失調症」の効果で承認されておりますが、審査報告書別紙4ページの承認時期は、「2015年5月」ではなく、「2015年3月」の誤りです。訂正させていただきます。今回の申請効能・効果については、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で、医療上の必要性が高いと評価され、2012年4月に申請者に対して開発要請が行われた後、臨床試験が実施され、今般、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。本申請の専門委員として、資料16に記載されている6名の委員を指名しております。審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。

 有効性について、審査報告書別紙11ページの表5を御覧ください。国内第 III 相試験の主要評価項目であるFASでの最終評価時の異常行動チェックリスト日本語版(表では「ABC-J」と記載しています)の興奮性下位尺度スコアのベースラインからの変化量について、プラセボ群と本剤群との間で統計学的な有意差が認められました。

 次に、安全性について、審査報告書別紙16ページ、表の11を御覧ください。傾眠がプラセボ群と比べて本剤群で多く認められたことから、添付文書における注意喚起を継続するとともに製造販売後調査で発現状況について検討することとしております。その他の有害事象の発現割合は、既承認効能・効果における臨床試験成績と比較して、同程度又は低い傾向でした。

 次に、効能・効果について、審査報告書別紙24ページ、一番下の段落を御覧ください。最新の診断基準における記載や国内外臨床試験における対象年齢などを踏まえ、効能・効果を「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」とした上で、原則として6歳以上18歳未満の患者に使用するよう注意喚起することが適切と判断いたしました。

 次に、用法・用量について、審査報告書別紙26ページ、一番下の段落を御覧ください。国内第 III 相試験の結果から、開始用量を1mg/日、推奨用量を1~15mg/日とすることに問題はないと判断いたしました。

 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。今回追加する効能・効果及び用法・用量に対する再審査期間は4年と設定することが適切と判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。委員の先生方から御質疑をお願いいたします。

○古川委員 御説明をいただいたんですけども、16ページの表11の傾眠傾向というのが自閉症では非常に高いですよ。そのほかの、うつ病・うつ状態、あるいは、双極性障害とか統合失調症も非常に高いですけど。これは病気による違いなのか、あるいは、うつ病・うつ状態と、これは年齢はどのくらいの。要するに、小児のうつ病・うつ状態なんですか。表の見方なんですけど、表11のうつ病・うつ状態の年齢ですね。年齢は大体統一して、こういう傾向が見られるということでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。うつ病・うつ状態を含め、今回申請された効能以外の既承認効能・効果は、全て成人で試験を行っております。ですので、自閉性障害のみが小児を対象としたものになります。

○古川委員 ですから、自閉症が高いというのは、病気の違いなのか、年齢による違いなのかは分からないということでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 先生から御指摘のとおり、どちらの要因なのかは、はっきりとしないということです。ただ、これだけ発現率が高いので、やはりきちんと患者さんに注意することは必要だろうと考えておりますので、市販後調査で発現状況を確認することはもちろんなのですが、患者向けの資材の中にも、発現に注意するよう、きちんと記載し、注意喚起することとしております。

○古川委員 それともう一つ。これは興奮してということなので。発達障害でいうと、どうしてもADHDも出てくると思うんですけど、こういう、ADHDの衝動的なものですね。こういうようなものにも効果があるのか、ないのか。勉強してもよく分からないのですが、教えていただければ。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。今回、効果が確認されたのは、あくまで自閉スペクトラム症の興奮性に対するものですので、ほかの疾患に対する興奮性については確認されておりません。その点についても、きちんと資材で注意喚起する予定となっております。

○松井部会長 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。

○内藤委員 21ページの表17に関しての質問です。海外の試験が二つありますが、その中で一番頻度の高かった有害事象が、疲労ということになっています。20%程度の割合で疲労を感じるという方が出ているのですが、国内の第 III 相試験ではそういう事例が1件もありませんね。これがなぜなのかなと、ちょっと不思議に思ったのです。だから、海外の試験と国内の試験で、患者さんに対する聴き取りのやり方が多少違っていたのか、あるいは、同じような聴き方をしたにも関わらず、例えば、日本人と海外の方では疲労に関する捉え方が違っていて、それで有害事象として捉える頻度が全く異なってしまったのか、あるいは全く別の事情があるのか、そこら辺のことを、もしお分かりだったら教えていただきたいと思います。ただ、この薬の審査そのものは恐らく影響しないと思うのですが、もしそういうことがあるのだとしたら、国際共同治験を計画したり、あるいは、その結果を解釈するときに注意が必要かなと思いましたので、気になって質問させていただきました。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。御指摘の点については、我々のほうでも原因は分からないのですが、例えば、疲労と少し似たような症状と考えられる倦怠感ですと、国内第III相試験でも6.4%報告されておりますので、似たような症状が全くのゼロだったというわけではないと考えております。

○内藤委員 聴き取りの仕方とかは、全く同じように聴いているんですね。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。詳細までは分かりませんが、基本的には同じやり方で有害事象は収集されていると考えております。

○松井部会長 ほかによろしいですか。

○松木部会長代理 リスペリドンのときは5~18歳が原則で、こちらは6~18歳という、その違いはどこから来ているのですか。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。御指摘の点につきましては、国内の第III相試験で対象になった患者の年齢の下限が、リスペリドンの場合は5歳で、本剤の場合は6歳でしたので、本剤ではリスペリドンと異なり、年齢の下限は6歳として設定させていただきました。

○松木部会長代理 もう1件は、易刺激性というか興奮性は、周りにとっては迷惑みたいなところがあって、それで、これが治るというのは、周りからすればいいのかもしれないですけど、ただ、本当に原疾患に対して、治っているかどうかというところは疑問なところがあるわけですよね。だから、このような薬を使うことによって、その原疾患への治療の対処が遅れてしまうのではないだろうかと。周りの迷惑がちょっと減ればそれでいいんだというような、かつての統合失調症の治療薬のような感覚なのですけれども、その辺を危惧するのです。スペクトラムの自閉症のうちの易刺激性のところだけを抑えるというのは、それなりに意義があることなのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。やはり我々としても、安易に薬で症状だけを抑えているようなことはよろしくないと思っておりますので、あくまでも自閉スペクトラム症に対する治療の中心は療育などの非薬物療法ですので、その点についてはきちんと資材に書いて注意喚起することを考えております。

○加藤委員 添付文書の1.8効能・効果の所に、先ほどから問題になっている年齢の所で、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の場合ということで、「原則として6歳以上18歳未満の患者に使用すること」で、「原則として」と、ここに書いてあるのですけれども、これがちょっと気になりました。それで、審査報告書の24ページに議論の途中が書いてあって、実際問題として、真ん中辺りにも書いてありますけれども、成人期においてもASDの患者さんで成人期の興奮性というのは、ぴったり18歳で終わるということはあり得ないので、継続していることが多いとあり、その場合には、こういう抗精神薬の治療というのは実際に推奨されている場合もかなりあるわけです。患者さんの団体からの希望などでも、18歳でバタッとその薬を使えなくなるのは困りますということが、ほかの薬物で前にあり、年齢の制限を撤廃することについてここで審議したことがありました。そのとき、ここで「原則として」というふうに書いてあるのは、その下には漫然と投与し続けるのはよくないという機構の考えを述べられているのですけれども、「原則として」ということは、18歳を超えたらその日から、どうしても症状として残っている場合は適応外として出すとか、「原則として」という言葉の含みが、実際には、そういう患者さんがいる場合にはどうしたらいいのかというのが、混乱するかなと思うのですが、いかがでしょうか。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。「原則として」と付けた理由についてですが、例えば高校生などの場合は、18歳の誕生日になった時点で、いきなり投与を中止してしまうことは現実的に困難であるということも考えて、「原則として」ということを付け加えさせていただいております。ただ、いつまでも続けることに関しては、やはり成人での有効性、安全性というのは確立していないので望ましくないことから、「原則として18歳未満」ということと、漫然と投与しないようにという注意喚起をさせていただくことで、その点について対応しようと考えております。

○加藤委員 医師としては、例えば20歳前に出すというようなことを実際に聞いたときに、適応外として漫然ではないことを確認していれば出してもいいと暗に言っていることになるのでしょうか。そこは難しいところかと思いますけど、ちょっと混乱するかなと思います。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 申し訳ございません。質問のほう、もう一度よろしいでしょうか。

○加藤委員 例えば、この場合なんかですと、適応外として処方する際に、リスクとベネフィットを考えた上で医師の監督下に処方するというようなことはあると思うのですけれども。「原則として」と書いた場合、例えば18歳を超えていると、19歳とか20歳の場合には、おっしゃられたように漫然と長期にわたって投与しているわけではないことを医師が確認した場合に、処方する場合は適応外として処方すればいいということで、安全性は確立していないけれども、医師の監督下であれば、ベネフィットがあれば処方してもいいということなんでしょうか。これははっきりとは言えない部分もあると思うのですけれども、実際にはそういう患者さんがものすごく多いと思うのですよね。

○松井部会長 いかがでしょうか。機構からの御意見を伺う前に、村田委員、どんなふうに、この点についてお考えですか。お聞きしてもいいですか。

○村田委員 大変難しい問題だと思いますが、ある年齢から使い始めて、薬を使って非常に調子がいい方というのは一部には必ずおられるわけですね。その方たちが18歳になったからといって、いきなりそれを止めて、仮に同じような薬で、成人で認められている薬は多分ないのかなと思うのですが、もしあったとして、それに代えてうまくいくかというと、いかないことのほうが多いように、経験的には思うのですね。そういうことを考えますと、やはりここは、「原則的には」という言葉は、現実的にはかなり重要で、それは付けておいていただくべきではないかなと私は思います。

○松井部会長 ありがとうございます。機構から何か。よろしいですか。

○安全対策課長 安全対策課です。添付文書の「原則として」の解釈についての御質問というふうにお伺いしているのですが。先ほど審査部のほうから説明を申し上げましたけれど、科学的に見たときに、この薬の使用を18歳のところで切って、それ以降は使えないというのは使いにくい状況です。今、先生からも御説明がございましたように、やはり継続して投与する必要がある患者さんがいらっしゃるということかと思います。過去にもこういった事例はありました。「原則として」というのを付けない場合に、保険上も査定されるとか、いろいろな問題があったと聞いております。この「原則として」を付けることによって、あくまでそこは、投与するかしないか、これは投与される先生方の裁量になりますけれども、そういった余地を用法・用量と、効能・効果の中に付けさせていただいているということです。適応外というのが適切かどうかというところは、議論があるところだと思いますけれども、言ってみれば、全くの適応外というものとはちょっと取扱いが違うものとしてお考えいただいてよろしいのではないかなと思っています。

○松井部会長 いかがでしょうか。ほかの委員の先生方も、そういう含みを持たせるという、科学的ではないかもしれませんけども、そういうことで、御承認といいますか、御承知いただけますでしょうか。課長、よろしいですか。

 ありがとうございます。それでは、そういう含みを持たせるということで、この「原則として」というのは残すことにしたいと思います。ほかに御意見はございますか。それでは、ないようですので、議決に入りたいと思いますが、よろしいですか。なお、木村委員、杉委員、村田委員におかれましては、利益相反に関する事例に基づきまして、議決への参加を御遠慮ください。本議題につきまして、承認を可としてよろしいですか。

 ありがとうございます。それでは、御異義がないようですので、承認を可として、薬事分科会に報告いたします。

                                ( 木村委員退室)

○松井部会長 それでは、議題6に移ります。機構から説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料6、医薬品ウプトラビ錠0.2mg、同錠0.4mgにつきまして、機構より説明させていただきます。

 本剤はプロスタサイクリン受容体作動薬であるセレキシパグを有効成分とする経口投与による肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療薬です。本剤は2016年5月現在、米国及び欧州の6つの国又は地域で承認されています。今般、国内外の臨床試験成績を基に、「肺動脈性肺高血圧症」を申請効能・効果として製造販売承認申請されました。本申請の専門委員として、資料16に記載されております委員を指名しました。

 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書での記載と順番が前後しますが、審査報告書53ページを御覧ください。海外ではPAH患者を対象としたプラセボ対照二重盲検試験が実施されました。本試験における主要評価項目は審査報告書の54ページの表29に示すような、臨床的悪化又は死亡に関するイベントが最初に発現するまでの時間と設定されました。試験成績については、審査報告書の55ページの表31、及び図1のイベントが最初に発現するまでの時間について、本薬群とプラセボ群の間に有意差が見られました。

 次に、審査報告書の48ページを御覧ください。国内においてはPAH患者を対象とした非盲検非対照試験が実施されました。有効性については、審査報告書の49ページの表25に示すように、主要評価項目とされた16週時における肺血管抵抗(PVR)のベースラインからの変化量について、ベースラインと比較して有意な低下が認められました。また、PVRの変化量は海外臨床試験成績と同程度でした。これらを踏まえ、海外臨床試験成績を利用して日本人での有効性について推定することは可能と判断し、日本人においても本剤の有効性が期待できると判断しました。

 続いて、安全性について、審査報告書の64ページ以降を御覧ください。審査報告書の64ページの表36から67ページの表40にかけて示していますように、国内外の臨床試験で認められた本剤投与に伴う低血圧、出血等の有害事象は類似しておりました。臨床試験での発現状況や既承認類薬の状況などを踏まえ、本剤投与時の有害事象については既承認の類薬と同様の適切な注意喚起を行うことにより、臨床上大きな問題とはならないと判断しております。製造販売後調査については、国内での治験症例が限られていることから、全投与症例を対象とした使用成績調査を実施することを承認条件とすることが適切と判断しております。

 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。

 本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、原薬及び製剤は、毒薬及び劇薬、並びに生物由来製品又は特定生物由来製品のいずれにも該当しないとすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 いかがでしょうか。委員の先生方から御質疑をお願いします。

○松木部会長代理 肺動脈性肺高血圧症に関しては、エンドセリンとかNOがターゲットの薬というのがあると思うのですが、それらと比べて、この薬の位置付けというのはどのようになるのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 本薬はプロスタサイクリン受容体の作動薬であり、作用機序が既存の薬と異なりますので、本剤単剤での治療も可能ですし、先ほど先生から御指摘いただきましたような、ほかの作用機序の薬と併用して使うことも可能と考えております。

 PAHの治療ガイドラインでは、最近では、発症早期の段階から積極的な治療を行うことが提唱されていますので、既存薬と作用機序が違うもので、経口投与できる本剤が医療現場に提供されることは、早期からの併用治療を開始する上でも有用であると考えております。

○杉委員 肺動脈性の肺高血圧症は非常に難しい治療を要すると思います。予後も非常によくないのですが、この55ページに載っている表31の効果ですが、本薬剤とプラセボを比べて有意差はあるというもののイベントはかなり多いと思うのです。

 だから、ある程度イベントを抑えられるということが、効果があると判断してよろしいのですね。

○医薬品医療機器総合機構 そうです。原疾患を治すというものではありませんが、予後を少しでも改善するといったものです。

○内藤委員 今の55ページのKaplan-Meierの図ですが、この下の数値に、censoredという数値がありますが、これは観察中に何らかの原因で除外された人の数と理解しているのですが、非常に数が多いです。これは具体的にどういう原因で除外されたのかを説明してください。

○医薬品医療機器総合機構 いろいろあるのですが、打ち切りになっている理由として、原疾患が悪化して他剤への治療に切り換えた例とか。

○内藤委員 それはイベントになるのではないですか。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘のとおりです。手持ち資料では細かいところは分からないのですが、何らかの理由で止めた人ということになっています。詳細は、確認してから後ほど回答させていただくということでよろしいでしょうか。

○内藤委員 お願いします。

○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。特にございませんでしょうか。ほかになければ議決に移ってよろしいですか。

 議決に入ります。なお、杉委員、村田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮ください。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、薬事分科会に報告いたします。それから、先ほど、うっかりして申し上げませんでしたが、利益相反に関する申出に基づいて、木村委員に討論の間は別室で待機していただいたのですが、審議が終了しましたので、木村先生に入っていただきたいと思います。よろしくお願いします。

                              ( 木村委員入室)

○松井部会長 議題7に移ります。機構から概要を御説明ください。

○医薬品医療機器総合機構 議題7、資料7、医薬品ジャクスタピッドカプセル5mg、同カプセル10mg20mgにつきまして、機構より御説明いたします。

 本剤はロミタピドメシル酸塩を有効成分とする高コレステロール血症の治療薬です。本薬の作用機序につきまして、資料1.5の4ページを御覧ください。本薬は、ミクロソームトリグリセリド転送タンパクに対する阻害作用を介して超低比重リポタンパクのアポリポタンパクBへのトリグリセリド転送を抑制することにより、肝臓から血漿への超低比重リポタンパク分泌の抑制及びそれに伴う血漿中低比重リポタンパクコレステロール(以下、LDL-)濃度の低下をもたらすと考えられています。

 本剤は2016年4月現在、米国及び欧州を含む38か国で承認されております。今般、国内外の臨床試験成績を基に、「ホモ接合体家族性高コレステロール血症」を申請効能・効果として、製造販売承認申請がなされました。本品目の審査に関しまして、専門委員として資料16に記載されている委員を指名しております。

 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。審査報告書の46ページを御覧ください。国内第 III 相試験として、ホモ接合体家族性高コレステロール血症患者を対象とした非盲検非対照試験が実施されました。有効性について、審査報告書の48ページの表21を御覧ください。本薬5mgを開始用量として1日1回投与し、各被験者の忍容性に応じて、最大60mgまで漸増可能な用法・用量で試験を実施したところ、主要評価項目である投与26週時におけるLDL-Cについて、ベースラインと比較して有意に低下が認められました。また、ホモ接合体家族性高コレステロール血症を対象とした海外第III相試験においても同様の有効性が認められております。

 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書の59ページの表31を御覧ください。国内外の臨床試験において肝機能障害が多く認められておりますが、多くの場合は肝機能のモニタリングを定期的に行い、肝機能に異常が認められた場合は減量又は休薬を行うことで、本剤の投与の継続が可能でした。したがいまして、本剤投与中は定期的な肝機能モニタリングを実施することが重要と判断しており、具体的な内容は資料1.8の添付文書において、注意喚起しております。

 また、審査報告書の63ページの表33を御覧ください。国内外の臨床試験において胃腸障害が多く認められておりますが、これらのほとんどは軽度又は中等度であり、その多くは用量調整又は投与中断により回復しております。しかしながら、これらの胃腸障害は、本剤が小腸での脂肪吸収を抑制することにより生じると想定されるため、本剤投与中は低脂肪食の摂取の遵守が重要と判断し、添付文書において注意喚起及び資材の作成等を申請者に指示しております。

 本剤の用法・用量について御説明いたします。審査報告書の66ページの下から4行目以降を御覧ください。国内第 III 相試験は最大60mgまで増量可能という規定で実施されましたが、60mgを投与し続けることができた患者はおらず、日本人患者における本剤の最大耐用量は40mgであったこと等を踏まえ、本邦における最大用量は40mgとすることが適切であると判断しております。製剤販売後調査については、国内での治験症例が限られていることから、全投与症例を対象とした使用成績調査を実施することを承認条件とすることが適切と判断しております。以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。

 本剤は希少疾病用医薬品であることから再審査期間は10年、原体は毒薬、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品又は特定生物由来製品のいずれにも該当しないとすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松井部会長 御質疑を伺う前に、この薬剤の作用機序についての御説明はありましたでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 1.5の4ページを御覧ください。MTPは、肝臓と小腸に存在しており、肝臓におけるVLDLの合成及び小腸でのカイロミクロンの合成に関わっているタンパク質です。本薬がMTPを阻害することによって、肝臓で生成されるVLDLの産生量が減少することで、LDL-Cの前駆体であるVLDLが減少するので、LDL-Cも減少するという作用機序になっております。

○松井部会長 今までにはないメカニズムによる薬剤と考えてよろしいですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。これまでにない作用機序の薬剤になります。

○松井部会長 委員の先生方から、御質疑をお願いいたします。

○山田委員 1.8の添付文書()について質問させていただきます。2ページの2番の「重要な基本的注意」の()()です。()では、胃腸障害を低減するため、本剤服用中は低脂肪食を摂取するよう指導すること。()では、ビタミンEとか、 α リノレン酸、リノール塩酸、エイコサペンタエン酸等を毎日摂取するように指導することと記載されておりますが、これを患者さんに分かりやすく説明するためには、何か資料等の準備が必要かと思いますけれども、その点についての状況を教えてください。

 もう1点は、1.11の「医薬品リスク管理計画書()」の32ページの「ジャクタスタピッド処方に当たっての確認書」があります。そこの中に、「医師が記入の上、MRに提出してください」という中に、「胃腸障害」という項目で、「管理栄養士の指示に従って、食事療法として低脂肪食等を指導する」「ビタミンE、リノール酸等を毎日摂取するように指導する」というのがありますが、これも先ほどと同じ趣旨で簡単には指導できなくて、患者さんが分かりやすい資料が必要だと思いますので、その辺の状況を教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 まず、胃腸障害の際の低脂肪食について御説明いたします。まず、この低脂肪食については、御指摘のとおり、患者さんに単純に食事中の脂肪の割合として20%を守ってくださいということでは、なかなか指導は難しいということは理解しております。したがいまして、申請者には、治験を実施した施設の管理栄養師、実際に栄養を専門にしている先生方と相談し、どういう資材であれば患者さんに対して適切に指導できるか、また実際に栄養師が指導をする上で、どういう資材であれば指導しやすいのかといったところを検討の上、資材を作成しているところです。

○山田委員 販売までには準備されるということですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。販売までには必ず準備して、お渡しできるようになっております。

 また、ビタミンE、リノール酸等の栄養素の吸収が低下するので、毎日摂取するように指導することという点については、現時点の計画として、これらが含まれているサプリメントを申請者が用意し、そのサプリメントが本薬と一緒に患者の手元に渡るような方策を考えております。患者は渡されたサプリメントを摂取することで、これらの栄養素を適切に投与されるようになっております。

○松井部会長 ホモ接合体家族性コレステロール血症の患者は、日本に何人ぐらいいると想定されますか。

○医薬品医療機器総合機構 現在、ホモ接合体の患者さんは難病に指定されており、特定疾患医療受給者証を受けている患者さんは166名です。

○松井部会長 委員の先生方、人数もお考えいただきたいと思います。ほかにいかがでしょうか。

○野田委員 国内の臨床試験は、目標に達するまで用量を増量するというプロトコルだったという理解でよろしいのですよね。

○医薬品医療機器総合機構 国内の臨床試験の用量としては、安全性を見ながら60mgまで上げていくというものです。

○野田委員 それは目標に達するまでは、60mgを上限に最大耐量まで漸増していくということですか。

○医薬品医療機器総合機構 目標に達するまで漸増していくのですが、有害事象とのバランスを確認しながらということです。

○野田委員 増量に伴って有害事象が出現したということでしたが、それは主に肝機能異常ということですか。安全性の問題には、胃腸障害と肝機能障害の問題と、主なものが二つあるように見えますが、どちらで止まったケースが多かったのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 想定されるものとしては両方が想定されるのですが、今回の臨床試験では主に胃腸障害を理由に増量がされなかったと考えています。

 実際、今回は40mgの患者さんが1例おりますが、その患者さんは一時的に60mgに上げたものの、1週間もしないうちに下痢が発生して、また40mgに落としたという状況もありますので、症状としては胃腸障害が原因だと考えております。

○野田委員 今回のものの中では、胃腸障害がメインだったということですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○内藤委員 この疾患に対するお薬で、アメリカで核酸医薬品でmipomersenというのが承認されていますが、欧州では推奨しない形になっていると思うのです。日本で、mipomersenの開発が進んでいるかどうかについては、知見をお持ちであれば教えていただきたいのですが。

○松井部会長 この薬とは全く違うものですね。

○内藤委員 ただ、対象疾患が同じなので、同効の薬が今後、開発される可能性があるのかどうかについての質問です。

○医薬品医療機器総合機構 mipomersenに関して御説明させていただきますと、開発の相談としては機構として受けておりますが、その後、企業のほうでどういった進捗をたどっているかまでは追えておりません。開発の意思はあったというところだと思います。

○松木部会長代理 本質的なところではないのですが、1.7の同種同効品一覧の文字が余りにも小さすぎますので、今後、資料を用意するときには、もう少し読める字の大きさにしてもらいたいと思います。

○医薬品医療機器総合機構 申し訳ありません。次回以降の品目で注意したいと思います。

○松井部会長 ほかにございますか。議決に入ります。なお、木村委員、杉委員、野田委員、村田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきます。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。

 異議なしと認めます。承認を可として、薬事分科会に報告いたします。

 それでは、次の議題8について、機構から御説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題8、資料8、プリズバインド静注液2.5gにつきまして、機構から御説明させていただきます。

 本品目の有効成分であるイダルシズマブ(遺伝子組換え)は、ヒト化モノクローナル抗体フラグメントであり、抗凝固薬であるダビガトランに特異的に結合することにより、その抗凝固作用を速やかに中和する薬剤です。今般、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社により、国内外臨床試験の成績及び日本人も参加した国際共同第 III 相試験の中間成績に基づき、製造販売承認申請がなされました。海外では、201510月に米国で、同年11月に欧州で承認されて以降、2016年7月現在、9の国又は地域で承認されております。

 なお、本剤は優先審査に指定されております。本品目の審査に関しまして、専門委員として資料16に記載されている委員を指名しております。

 審査の概略について御説明いたします。審査報告書の28ページの下を御覧ください。まず、国内外第 I 相試験において、ダビガトラン濃度が定常状態にある健康成人に本剤を静脈内投与したとき、投与直後に非結合型総ダビガトラン濃度が定量下限付近まで低下し、ダビガトランにより延長した血液凝固パラメータも正常値上限に回復することが示され、ダビガトランの抗凝固作用に対する本剤の中和効果が確認されました。

 審査報告書の42ページの下を御覧ください。国際共同第 III 相症例集積試験では、ダビガトランで治療中の、生命を脅かす出血又は止血困難な出血を発現した患者、及び緊急手術又は処置施行患者を対象に、本剤2.5gを2回、計5gを静脈内に投与したときのダビガトランの抗凝固作用に対する中和効果が検討されました。本試験の中間集計時点において、本剤が投与された患者は243例であり、うち日本人は4例でした。

 審査報告書の44ページの中段を御覧ください。有効性の主要評価項目は、希釈トロンビン時間(dTT)及びエカリン凝固時間(ECT)に基づく、本剤投与後4時間以内の最大の中和効果とされ、評価対象症例における最大の中和効果の中央値はいずれも100%でした。

 審査報告書の46ページの中段を御覧ください。日本人の評価対象症例においても、本剤投与後4時間以内の最大の中和効果は100%であり、患者数が限られていたものの、日本人集団においても全体集団と同様の有効性が示唆されたものと判断いたしました。

 安全性については、審査報告書の58ページから59ページを御覧ください。本試験では、13例に血栓性イベントの発現が認められました。本剤自体が血栓形成促進作用を示す知見は得られていないものの、もともと血栓リスクを有する患者がダビガトランを服用しているため、抗凝固療法の中断が、血栓塞栓症の発現リスクを高めるおそれがあります。本試験において血栓性イベントを発現した症例のうち12例は、イベント発現時に抗凝固療法が再開されておりませんでした。したがって、基礎疾患による血栓リスクを考慮し、本剤投与後、臨床的に可能な場合には、速やかに抗凝固療法の再開を考慮する必要がある旨を添付文書で注意喚起することといたしました。

 また、臨床試験における日本人患者数は限られていることから、製造販売後には、本剤を使用した全例を対象とした使用成績調査の実施が必要と判断し、承認条件としております。

 以上のような検討を行った結果、機構は、「以下の状況におけるダビガトランの抗凝固作用の中和、生命を脅かす出血、又は止血困難な出血の発現時、重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時」を効能・効果として、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。

 本剤の再審査期間は8年とすることが適切と判断しております。また、原体及び製剤は毒薬又は劇薬に該当せず、生物由来製品に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 御質疑をお願いいたします。

○杉委員 説明いただいたように、中和してダビガトランの作用をなくすということで、その際に凝固能が亢進するという事象があるのではないかという気がするのですが、そのために抗凝固薬を出血が止まった後で再開していないと血栓塞栓を起こしてしまったという説明があったと思うのです。出血が止まって、すぐに抗凝固薬をやるというのは、なかなか難しいところだと思うのですが、具体的にはどのようにするということを明示することはありますでしょうか。今のお話だと、出血が止まって、すぐに抗凝固をやっていない症例が血栓塞栓を起こしたというような表現だったと思うのですが、臨床的には非常に難しいと思うのです。

○松井部会長 何かマーカーのようなものがあるといいですかね。

○杉委員 そうですね。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 本剤自体が血栓塞栓リスクを亢進することはないと思っておりますが、もともとダビガトランを飲んでいる患者さんにおかれましては、塞栓リスクを有していますので、抗凝固作用を中和することによって血栓塞栓症のリスクが高まるといったことは起こりうると考えております。

 本剤を使う場合には、生命に関わる重大な、緊急的な状況になっていると考えておりますことから、中和することによって血栓塞栓症を起こすリスクを踏まえても中和が必要な患者さんに、投与していただくということが一つあると思います。

 次に、いつ始められるかということに関しては、明確なカットオフ値ですとか、何かのデータを見てということは申し上げられませんが、出血された患者さんを診られている先生方が、出血後、臨床的に始められると判断された場合には、ダビガトラン以外であれば抗凝固薬はいつでも再開可能と考えております。

 また、ダビガトランに関しましては、中和剤であるイダルシズマブが体内にある状況ですと、再開しても抗凝固作用を発揮できない可能性がありますが、24時間たちますと、イダルシズマブが体内から十分に排出されるということが分かっておりますので、ダビガトランにつきましては本剤投与後24時間を目安に再開は可能です。

○杉委員 大体の意味するところは理解いたしますけれども、1度ダビガトランで出血した方に、またダビガトランを使うということはまずあり得ないと思います。そうすると、ほかのDOACの3種類は機序が少し違いますし、2時間ぐらいでピークに達して効いてくるということなので、ほかのものを使えばいいという意味合いでよろしいのでしょうか。

 もう一つは、先ほど凝固能を亢進するかどうかというのは、私たちも昔はワーファリンのことで分からなかったのですが、ワーファリンを止めると脳梗塞を起こす人が多い。今まではワーファリンを使わなければ全然、脳梗塞も起こさなかったのに、ワーファリンを使って、止めたら脳梗塞が多い。リバウンドがあるのかと思っていたら、そうではなくて、ワーファリンのINRが1.2とか1.3ぐらいに下がると、逆に凝固能が亢進するという現象が最近言われて、多分それなのだなと思ったわけです。

 ですから、ダビガトランについても、もちろん出血を止めるための中和というのはいいのですが、そういう点を見て検討されるようなことを、会社のほうに言っておいたほうが、今後においていいのではないかと思うのです。そのように思いました。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。使用成績調査は全例で実施いたします。投与後4週間ほど追跡させていただき、血栓塞栓イベントの発現状況及びその患者背景についても精査させていただきたいと考えております。

○松井部会長 その点につきまして、木村委員から何か御発言はありますか。

○木村委員 ワーファリンに比べると、比較的出血の少ないケースなのですが、重篤な脳出血、緊急手術のときには必要な薬剤ですので、適切な注意喚起の下に判断すればいいのではないかと思います。

○松井部会長 ほかに何かございますか。よろしいですか。議決に入ってよろしいでしょうか。なお、木村委員、杉委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきます。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告といたします。

 議題9に移ります。機構から概要を御説明ください。

○医薬品医療機器総合機構 議題9、資料9、ブリリンタ錠60mg他の製造販売承認申請の可否等について、機構より御説明します。

 本品目は、本年5月部会の御審議で、経皮的冠動脈形成術が適用される急性冠症候群に関する効能・効果について、日本人が参加したアジア共同第III相試験の成績の解釈を含め、効能・効果を限定した際に、本剤の有用性があると判断した理由、患者数、適切な情報提供資材について整理の上、再度、医薬品第一部会にて御審議いただくこととされていました。御指摘に関する補足資料として、当日配布資料9-2を配布していますので、こちらに沿って御説明します。

 補足説明資料スライド2を御覧ください。本剤の有効成分であるチカグレロルは、選択的かつ可逆的に血小板のADP P2Y12受容体を阻害する抗血小板薬です。まず海外では、急性冠症候群患者約18,000例を対象とした国際共同第 III 相試験(以下、PLATO試験)が実施され、有効性の主要評価項目とされた心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合エンドポイントの発現率での抑制効果について、国内外における標準治療薬であるクロピドグレルに対する本剤の優越性が検証されています。この試験成績を基に、現在、欧米、アジア諸国を含む100を超える国又は地域で承認され、本剤は急性冠症候群患者における抗血小板薬2剤併用療法の際に用いる標準薬の一つとして、国内外の標準薬であるクロピドグレルと同等の位置付けで広く使用されています。PLATO試験には日本は参加しておらず、本試験に参加していた主要な地域が再度検証試験に参加することは望めないこと、急性冠症候群患者での心血管系イベントの発現率が低いこと等を考慮すると、日本人を組み入れて心血管イベントの抑制を検証可能な規模の臨床試験で実施することはほぼ不可能な状況であり、日本は、経皮的冠動脈形成術が適用される急性冠症候群患者を対象に実施可能な規模で行われたアジア共同第III相試験に参加し、日本人における有効性及び安全性を可能な範囲で確認した上で、海外のPLATO試験の成績も踏まえて、日本人での有用性を推定する開発しか取り得ませんでした。

 参加患者約800例、そのうちの約90%を日本人が占めるアジア共同第 III 相試験において、海外のPLATO試験と同じ有効性主要評価項目の発現率は、本剤群10.2%、クロピドグレル群8.1%、本剤のクロピドグレルに対するハザード比は1.47であり、本薬群とクロピドグレル群の点推定値の位置関係がPLATO試験と異なった原因は見出されませんでした。

 先の部会では、本日は御欠席の林委員より、日本人が参加したアジア共同第III相試験の成績が大規模な海外のPLATO試験と異なる傾向となったにもかかわらず、日本人でも本剤が有用であると判断した理由の詳細について御質問を頂きました。

 補足説明資料スライド3を御覧ください。日本人における本剤の有用性の判断について示しています。アジア共同第III相試験における有効性主要評価項目に関する成績は、期待されたものとは言い難い結果であった一方で、冒頭で御説明したとおり、アジア共同第III相試験は、実施可能性から、統計学的な検証が可能な規模ではなかったこと、海外のPLATO試験の結果から、ハザード比を0.84と仮定した場合、ハザード比の95%信頼区間の上限がおよそ1.67になり得る規模であったことから、当該試験成績のみをもって日本人で本薬の有効性がないとまでは判断できないと考え、当該試験の主要評価項目以外で得られた成績も精査しました。統計学的な検証を目的とした海外のPLATO試験において、国内外で共に標準薬とされているクロピドグレルに対する本薬の有効性が検証され、海外ではクロピドグレルと同様に標準治療薬として使用されていることに加え、アジア共同第 III 相試験では、約85(670)の患者でステントが留置されており、現在、抗血小板薬2剤併用療法が標準治療とされているステント留置後に、本薬群の約300例においてステント血栓症が1例も発現しなかったことも考慮すると、本薬は一定の有効性は期待できる薬剤であると判断でき、日本人においてのみ本薬のリスクがベネフィットを上回るとまでは判断すべきではないと考えました。

 ただし、アジア共同第III相試験では、有効性のみならず安全性についてもクロピドグレルに比べて本薬で劣る傾向が示されていたことを踏まえると、日本人におけるリスクベネフィットバランスはクロピドグレルより劣る可能性が否定できないことから、本邦では本薬をクロピドグレルに置き換わる薬剤と位置付けることが妥当とは言えないと判断しました。

 以上の点に加えて、本薬は、既存のP2Y12受容体拮抗薬(いずれもチエノピリジン系抗血小板薬)とは異なる化学構造を有し、異なる阻害様式及び副作用プロファイルを有することも考慮し、抗血小板薬2剤併用療法の適用が適切であるが、クロピドグレル等のチエノピリジン系抗血小板薬が副作用等により使用できない患者に限れば、それらの代わりに用いる抗血小板薬という位置付けで本薬を臨床現場に提供する意義はあると判断しました。なお、これらの機構の判断根拠が明確になるよう、審査報告書()にあるような修正を審査報告書に施すこととしました。なお、先に申し上げたように、林委員は本日御欠席のため、事前に以上の対応などについて御説明申し上げて御了解いただいています。

 また、本剤をこのような臨床的位置付けで医療現場に提供するに当たり、医療現場で本剤の適切な投与対象の選択が行われるよう、補足説明資料スライド4のように、医療従事者向け資材において、投与対象の選択に関する具体的な情報提供を行う予定です。

 ほかにも、先の部会にて、申請者が推定した使用患者数の根拠について御質問を頂いていましたが、申請者が実施した循環器専門医を含む医師を対象としたアンケート調査において、承認申請に用いた国内外の臨床試験成績及び類薬が使用できない場合に制限する効能・効果案を提示した上で、既存薬から本薬への処方移行を希望する割合を調査したところ、約%であったという結果から、年間の急性冠症候群患者数を考慮し、□□□例と推定したとのことでした。

 また、先の部会での御審議の後に、内藤委員より、審査報告書の表162024283235は、「メジャーブリーディングが最初に発現するまでの期間」という表題になっているが、表に記載されているデータは期間ではなく発現例数やハザード比となっており、表を理解するのに苦労した。Confusingなので修正をお願いするとの御意見を頂いています。いただいた御意見を踏まえ、審査報告書()にあるような修正を審査報告書に施すこととしました。

 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会にて再度御審議いただくことが適当であると判断しました。

 なお、本剤の再審査期間は8年とすることが適当であると判断しています。また、製剤は毒薬又は劇薬に該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。以上です。御審議のほどよろしくお願いします。

○松井部会長 ありがとうございます。最初に、内藤委員からの御質問でしたか、審査報告書53ページの表16の文言は、内藤先生ではなかったですか。違いますか。

○医薬品医療機器総合機構 表題について修正の希望の御意見を頂きまして。

○内藤委員 はい、これは私からの質問です。

○松井部会長 内藤先生、それでよろしいですか。

○内藤委員 はい、これで結構です。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。

○松井部会長 では分かりました。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。

○松井部会長 さて、今の御報告に関して御質疑をお願いしたいと思います。

○木村委員 クロピドグレルなどのチエノピリジン系の抗血小板薬が、副作用などによって使用できない患者さんというのが実地の臨床でどのくらいいるのかということについてコメントするようにということでしたので、コメントさせていただきます。臨床現場では、そういう患者さんというのは実際にはそれほど多くはないのですが、一定数、冠動脈ステント留置症例の1%前後はおられるかと思います。冠動脈のステント留置術においては、P2Y12の受容体拮抗薬の投与というのは必須と位置付けられていますので、このチエノピリジン系の抗血小板薬が使えない場合は臨床現場は非常に混乱する状況になるので、少数例に対する適応ですが、非チエノピリジン系の抗血小板薬というのは有用であろうと考えています。以上です。

○松井部会長 この林委員の御質問に関しては。分かりました。それでは、最初に申し上げたように、木村先生、ほかに何かコメントはございませんか。ではまた、別室で御待機をお願いします。恐れ入ります。

                                 ( 木村委員退室)

○松井部会長 いかがでしょうか。この最初の部分です。林先生の御質問に関して、林先生は今の機構からの説明に対して納得されたということでしたが、委員の先生方はいかがでしょうか。

○杉委員 今はステント留置して、その期間はともかく6か月とか1年の間、2剤の抗血小板薬を投与するということが一般的に行われています。それは、一つはバイアスピリンのようなアスピリン系、そしてもう一つが、ここにあるクロピドグレルのようなチエノピリジン系を使っているというのが実情です。ただ、先ほど木村先生もおっしゃったように、非常に少ないパーセントではありますが、やはり2剤を使っていてもステント内腔が閉塞してしまうような症例もあります。それは途中で気付いても、もう他に使いようがないということになりますので、こういう薬は希少な症例ではあっても是非必要だろうとは思っています。

○松井部会長 ほかに、この点について、薬剤の有用性について、何か御意見がありますか。私から質問をしたいのですが、PLATO試験にどうして日本は参加できなかったのでしょうか。そこに大きな問題、反省すべき点があるのではないかと私は伺っていて思うのです。今後こういうことがないようにするにはどうしたらいいのか。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えします。直接的な原因は、海外に比べて日本での開発の開始が遅れていたところがありまして、この試験に乗れなかったというところです。

○松井部会長 開発が遅れ。

○医薬品医療機器総合機構 日本人での本薬の検討の開始が遅れたことによって、この第III相試験に参加するための情報が十分に得られていない状況であったために、この試験には参加できませんでした。こういう大規模臨床試験に参加することの重要性に関しては、この領域においては認知されてきているものと考えていますし、最近の品目においては、海外に遅れることがないように開発を進められるようにしている企業も増えてきています。やはりイベントを検証する試験は世界で1回しかできないことが多いので、今後も、そこに日本人も参加できるように企業にお願いしていきたいと考えています。

○松井部会長 もう二度とできないわけですね、PLATO試験というのは。

○医薬品医療機器総合機構 されないことが多いと思います。

○松井部会長 そうですね。ほかにございませんか。よろしいでしょうか。そうしますと、質問事項についてもお答えがありましたし、質問された先生方も納得されているということですので、これをもって議決に入りたいと思うのですが、よろしいでしょうか。なお、金子委員、川上委員、杉委員、野田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮ください。それでは、本議題を承認を可としてよろしいでしょうか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。別室で御待機の木村委員をお呼びください。

                                 ( 木村委員入室)

○松井部会長 それでは、議題10に移ります。

○事務局 申し訳ございません。今、御審議いただいたブリリンタについて、今、効能・効果が二つ申請されていて、陳旧性心筋梗塞のうちアテローム血栓症の発生リスクが特に高い患者という、1.の効能・効果と、今、御説明して御審議いただいた経皮的冠動脈形成術が適用される急性冠症候群の二つの効能・効果で申請されていまして、この二つについて本日、御審議と御承認を頂いたということで。

○松井部会長 今、御承認を頂いたのは2.についてであって。

○事務局 2.で。

○松井部会長 1.についても。

○事務局 はい、恐れ入りますが、1.についても、改めて御承認をお願いしたいと思います。

○松井部会長 それについては、前回のときに委員の方の御承認を得ているわけですね。それでは、1.2.について御承認を得たということを委員の先生方に確認すればよろしいということになりますか。

○事務局 はい。

○松井部会長 ありがとうございます。いかがでしょうか。よろしゅうございますか。

 ありがとうございます。それでは、その1.2.の両者について御承認を得たということにいたします。

 議題10について、事務局から概要を説明してください。

○事務局 議第10、資料10、医薬品ミカトリオ配合錠について、医薬品審査管理課より説明させていただきます。本剤は、アンジオテンシン II 受容体拮抗薬であるテルミサルタン、カルシウムチャネル機能の拮抗薬であるアムロジピンベシル酸塩、及びサイアザイド系利尿薬であるヒドロクロロチアジドの3つを有効成分とする配合剤です。今般、テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg、ヒドロクロロチアジド12.5mgを配合する本剤が、高血圧症を効能・効果として製造販売承認申請されました。

 本申請は、配合医療を検討いたしました二つの臨床試験成績を基に申請されております。一つの試験が、テルミサルタン80mg及びアムロジピン5mgで、十分な降圧効果が得られない高血圧症患者を対象として、ヒドロクロロチアジド12.5mg又はプラセボを追加投与する無作為化二重盲検並行群間比較試験。もう一つの試験は、テルミサルタン80mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgで、十分な降圧効果が得られない高圧症患者を対象として、アムロジピン5mg又はプラセボを追加投与する無作為化二重盲検並行群間比較試験です。共に有効性に関して、対象群よりも有意に降圧しており、安全性上の新たな懸念も認めませんでした。

 本品目は、4月部会の審議において、3成分を配合することの妥当性と臨床現場での必要性が十分に説明されていないとの御指摘を頂き、継続審議となりました。そして、5月部会の審議で、資料10-3のスライド10にお示しいたします疑問点に関しまして検討を行いました。その上で専門医あるいは学会の意見をまとめた上で審議することが妥当との判断を頂き、継続審議となりました。本部会開催に当たり、日本高血圧学会と日本循環器学会に御意見を頂けるよう、お願いいたしました。

 資料10-2を御参照ください。こちらは、日本高血圧学会からの御返答をお示しいたします。日本高血圧学会からは、「個々の品目の審査に関わることに関して、学会全体に意見を述べることは困難である」という御見解を頂いた上で、理事・幹事・評議員等の先生方から高血圧の専門家としての御意見を頂きましたので提示させていただきます。その中では、配合錠により臨床現場で恩恵を受ける患者や状況は存在し、アドヒアランスの維持や向上、降圧コントロールにおいて有用であるとする意見がある一方で、本配合剤が臨床現場に提供されるに当たり、臨床現場での配合剤の適正な使用法、特に非高血圧症専門医における配合剤の使用については懸念する御意見を頂きました。

 日本循環器学会からの御回答をお示しいたします。資料10-2の最後のページを御確認ください。配合意義、配合剤の有用性及び必要性に関してアンケートによる調査を頂いております。配合されている3剤を同一用量で長期に継続する症例の割合は少ないのではないかという御指摘を頂く中で、総合的には本配合薬の3種類の薬剤の配合意義は高く、有用性も期待され必要性も認められる範囲であるとして御回答いただいております。

 資料10-3は、5月部会で提示させていただきました資料に関して御指摘の点を踏まえ、修正・加筆を行いました。修正部分は赤字でお示ししております。資料10-3の2ページを御覧ください。本剤の配合成分の組合せが臨床現場において有益な組合せなのかという点に関して機構で利用可能なデータベースを用いて更に解析を行い、その結果を追記いたしました。また、配合剤の臨床的な意義に関して追加の論文の検索結果を行い、修正・追記いたしました。そして、配合剤が臨床現場に供給されることで生じ得る利益と不利益に関して、配合剤に関する厚生労働科研の研究報告を基に記載し、それに対する対策を加筆いたしました。

 スライド3ページを御覧ください。株式会社日本医療データセンターが提供する健康保険組合のレセプトデータをデータソースとして用いました。4ページ目を御覧ください。20052014年の間に、ARB又はACE阻害薬、カルシウム拮抗薬と、利尿薬の3医薬品の同時処方が少なくとも1回ある患者で、かつ、1年以上追跡されている患者、表の対象集団 2. 8,694 例のうち1年以上同一成分・用量の処方が継続されている患者は、61%の5,314例でした。この5,314例のうちミカトリオ配合錠に含有されるものと同じ成分、かつ、同じ用量の処方が1年以上継続し得た患者は、表の対象集団4で1.62%でした。

 5ページを御覧ください。2剤、若しくは3剤の配合剤を同量の単剤併用使用と比較した論文を検索いたしました。6ページにお示しします論文No.1の最近のメタ解析においては、降圧効果と副作用の頻度に差がないという結果です。論文No.4では、複合エンドポイントで、単剤併用使用が勝るという結果がありました。それ以外の論文では、降圧効果、服薬アドヒアランス、コストの面で配合剤に前向きな見解が報告されております。

 7ページを御覧ください。配合剤が臨床現場に供給されることで生じる利益と不利益について列挙しております。こちらは、北里大学の成川氏を主任研究者といたしまして、平成26年度に実施された配合剤に関する厚生労働科研の研究報告です。主に、生活習慣病の高血圧、糖尿病の2剤配合剤について、医師及び薬剤師に対してアンケート調査を行った結果となります。配合剤のメリットとしては患者の服薬上の利便性や服薬アドヒアランスの向上という点で、デメリットとしては用量調節が困難であることや、在庫管理の問題などが挙げられました。

 8ページを御覧ください。以上を踏まえまして、本剤の適正使用に当たっては、以下のような方策を考えております。添付文書に従った使用を遵守するように資材を作成の上、前治療も考慮して配合剤で安定して治療可能と思われる患者の選択を行うことと、各配合成分に由来する副作用について注意喚起し、非高血圧専門医が配合剤を使用する可能性に配慮いたしまして、降圧薬治療の一般的治療を含む適切な情報提供を行うよう、企業に指導する予定でおります。また、自社製品への処方誘導のような形でのプロモーションをしないよう、企業に指導させていただきたいと存じます。

 なお、9ページ以降の参考資料に関しては、5月部会で提示いたしましたスライドを示しておりまして、その際に御指摘を受けた点を赤字で修正・追記しております。御参照ください。以上、説明になります。御審議の程よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ただいまの説明について、御質問、御意見はありますか。

○松木部会長代理 今までの議論を通じて臨床現場で、結構この3剤の併用療法が行われていて、その配合剤に対して意義があるのは確認ができたと思うのです。ただ、前回のときに指摘したのですが、今回、配布された資料10-3の14枚のスライド、結局、今回提示された配合剤の用量の組合せが一番使われているものかというところでは、これは、実はそうでもないというデータなわけですよね。だから、ほかの用量の組合せもあるということです。

 例えば、資料10-2、これは高血圧学会の先生からの指摘で、非専門医のほとんどは3剤の併合のメリットを知らないので、これをやると、3剤を追加すべきというということでは知識が広まってよいということが書かれているので、逆に言うと、これがスタンダードになってしまうのではないだろうかということを少し懸念したのです。ただ、よくよく考えてみると、このデータは、健保組合のデータだということですね。だから、高血圧症の治療でほとんどを占めていると思われる高齢者のデータが非常に少ないという理解です。ですからここで、このデータによって占められた用量の組合せが、必ずしも高齢者でも常に使われているとは限らないという理解なので、今回のミカトリオ配合の用量が、ある程度スタンダードだとして理解でよろしいのでしょうか。あるいは、木村先生、杉先生が、これが非常にいいんだということを言っていただければ、それでいいのですが。

○松井部会長 まず、事務局から聞きますか。どうでしょう、機構のほうは、今の御質問に対して。

○事務局 審査管理課から回答させていただきます。今の御質問に関しては、臨床現場でのスタンダードということなので、松木先生の御指摘のように、可能であれば木村先生と杉先生から御意見を頂くほうが適切かとは感じます。

○木村委員 この3種類の薬剤ですが、テルミサルタン80mg、アムロジピン5mg、ヒドロクロロチアジド(サイアザイド系利尿薬)12.5mgは、それぞれの薬剤としては標準的な投与用量で、最もよく使われている用量だと思います。ただ、こういった3種類を併用する患者は、かなり難治性の高血圧の患者なので、用量調節をして、更にコントロールをよくすることが必要になるケースが多いので、画一的なドーズは使いづらい面も出てくるかとも思いますが、一方で循環器系の患者が本当に服用薬剤数が多いのは非常に大きな問題になっています。そういう意味で、コンプライアンスを高めたり、患者の利便性を高めるというメリットも一方ではありますので、そういった形で、このドーズが適切な患者においては使用できると考えております。

○松井部会長 いかがですか、杉先生。

○杉委員 この問題は大変で、今まで2剤の配合剤がずっと出ていて、かなりの数が出ました。そして、もう1剤、何か加えないと血圧がうまくコントロールできないという意味合いから、これができたと思うのですが、実際には固まった種類のものをポンとやるよりも、幾つかのものを出して、つけては、また引いてということがかなりあります。それは、血圧が季節変動もかなりあることもありますし、いろいろな条件で血圧は変わってまいりますので、1種類だけをずっと投与することは、ある方にだけそれをずっと投与することは余りないように思います。そのようなことからしますと、ここでどのぐらいの対象がいるのかというと、かなり低い対象のパーセンテージだったと思うのです。%ちょっとだったと思うのですが、それを1年間ずっと投与し続けるかというと、それは非常に難しいと思います。

 ただし、今、木村先生も御指摘のように、薬の数が非常に多いことがかなりありますので、服用の数ですね。ですから、それを少しでも減らすところがあれば、それはそれで患者には貢献できるのだろうと思っています。ですから、血圧のコントロールは別剤で、ある程度やっておいて、それがこの薬にある程度合致するものであれば、その1剤にすればいいと思いますし、もちろん最初からこの薬を使うべきでは当然ないと思いますので、ある程度この薬に合う症例であれば、それに持っていくことが妥当だろうと思います。

○松木部会長代理 分かりました。この用量の組合せがスタンダードで、ずっと使われることではなくて、現場の医師が判断して使うだろうということでよろしいでしょうか。

 まとめの意見みたいなところになりますが、今回の配合剤の審査を通じて、今までの新薬などの審査とは違う視点でやらなくてはいけないのだろうというのは、皆さん思ったと思うのです。ですから、新薬の場合は、たとえ効果が少なくても臨床現場に新しい選択肢を出すと。だから、それによって絶対に恩恵を受ける患者がいるわけですが、配合剤の場合には、臨床現場に選択肢がないわけではなくて、複合処方を出せばよいというだけなわけですよね。だから、2剤、3剤を配合して1剤にするかどうかということだけなので、それをただ単に、臨床現場の新しい選択肢という感覚で審査をするのは少し問題があると思います。

 配合剤の効果について、新薬と同じように治験のデータとかを結構審査していたのです。ただ、作用機序が異なる薬を使えば効果が足し算になることは容易に想像できるわけです。プラスアルファが出れば一番いいのですが、相乗効果の判定はなかなか難しいところもあります。臨床現場で複合処方が行われていることは、それなりに経験があるということですので、そのことだけを一生懸命審査していくというよりは、審査の重要な点が臨床現場でどのぐらい必要とされているかというところになると思うのです。ただ、そのデータを今までと同じように申請者に出させていると、申請者は必要だと思って申請してくるわけですからネガティブなデータを出すわけがないので、それは厚労省とか機構が客観的にそれを判断するような材料を持っていないといけない、臨床現場において必要かどうかと。ですから、今回、学会に投げて、学会から一応回答を頂いたというのは非常に良い事例になるのではないだろうかと思います。

 先ほど言いましたが、厚生労働省が、この薬の組合せが、日本でどのぐらいの数の処方をされているかを全く把握する術がないというのは非常に問題だと思います。医薬品第一部会の役割と離れてしまうかもしれませんが、そういうデータを把握する方向を考えていただきたいと思います。それが多分、日本の医療行政を変えていく一つの根拠になると思います。

 あと、アンケートでも、経済的負担の軽減できることを表現している人がいるのですが、一番最初のときに指摘したように、単剤ではジェネリックがあるが、配合剤ではジェネリックがないのでということになると、逆に医療費としては高くなってしまう可能性もあるわけです。ですから、医薬品第一部会の役割ではないかもしれないのですが、薬価を付けるとしたら、そのことも配慮すべきということを附帯意見として付けるぐらいのことは是非していただきたいと思います。少し偉そうにまとめさせていただきましたが、多分、それは先生方もコンセンサスがあるのではないかと思います。

○野田委員 まとめ的なものの後で恐縮ですが、私は未だに、この3剤の配合剤に対して、循環器の先生お二方の御意見はありましたが、現場で降圧薬を処方している立場から言うと、二つの意味で非常に困ることがあります。一つは、減薬がしにくいということです。結局、戻したら、また数が増えて、処方できる全種類の組み合わせが採用薬に入っていたりするわけではないので、ドーズダウンするとき、しにくいこと。もう一つは、本来これは余りあってはならないことですが、配合剤の成分の一方を他のお医者さんが、出していたりして非常に分かりにくいことが起こっているのです。なので、これは外的制限を付けるべきだと思うのです。同じ量で1年間、同じ処方がなされた場合に、この薬剤を処方してよいとか、そういった安定的処方であることを外的に担保するものがないと。今でも非常に混乱が生じていると私は思うのですが、これは一つの意見であって、議事録にとどめておいていただければよいということではありますが、未だに私はそういう立場ではあります。

○内藤委員 資料10-3の7枚目に「供給されることで生じる利益と不利益について」というのがまとめてあります。この中に薬剤師に対するアンケートの中で、デメリットとして「在庫管理は困難」と書いてあります。今日、いただいた競合品目・競合企業リストを見ますと、一番最後に「現在、開発中の品目で3剤の配合剤が二つある」ということが書かれています。ということは、今後また、こういう3剤の配合剤の開発とか、承認申請がどんどん出てくる可能性があるわけです。そうすると、在庫管理がますます困難になるというデメリットの部分が強調されてくる気がするのですが、そういうことに関して、これは多分、審査管理課の立場というか御意見をお伺いしたほうがいいのかという気がするのですが、どういうふうに対処していくつもりなのか、その方針なり何か御意見があればお聞かせいただきたいのですが。

○野田委員 高血圧学会の先生で、かなり長文で書いていらっしゃるお二方がいらして、「医師E」という先生のおっしゃっていることは、かなり現状に近いと思うのです。処方の間違いは、本来は許されないことではありますが、これだけ配合剤が増えてきて、今も3剤併用のものが新たに検討中ということになりますと、私どもも神様ではありませんので、どうしても不可抗力的なことが、その蓋然性が増えていくと思うのです。だから、そういったことをできるだけ減らす考え方がないと、医療安全の面から、かなり問題なのではないかと私は思っている次第です。以上、少し付け加えさせていただきます。

○神田委員 私は専門家ではないので感想的になるとは思いますが、必要性を、本当に必要なのだろうかと最初から思っていたわけです。それは使い勝手と、減薬がしにくいという御意見はありましたが、そういったことで適切な治療との関係で使いにくいのではないかと思っておりました。今回、こういった新たな学会の意見とかいうことで出されておりますが、今、これは御報告を受けて拝見しましたが、むしろ懸念、これをもってして、確信を持って必要だと思えるかという目で見ましたら、幾つか懸念する、あるいは、疑問点ということで指摘されている部分については、やはり重く受け止めるべきではないかという感想を持ちました。適切な治療とか、意見の中には、かえって混乱するとか、使い勝手が悪いという形の意見が、半分以上の方からそういった指摘がなされていることについては、こういったことで、確信を持って必要だとは、この指標では思えないと感じました。

 例えば、自社製品への処方誘導のような形でプロモーションしないよう、企業に指導するといった類いのことが書かれてありますが、これはそういう気持ちはあっても、実際にはそういったことはなかなか難しい部分もありますし、見えない部分もあるので、こういったことをもってして大丈夫だとも言い難いという感想を持ちました。

 もう一つ、前回のときに配合剤についての範囲の資料を頂きました。四つの事項が挙げられておりましたが、そういったところについても、今回のような議論の中から、この四つでいいのか、あるいは、もう少し具体的に分かるような、結構、漠とした表現なので、この辺の見直しも必要かと、少しまとまりませんが、今、そういったいろいろなことを感じました。

○松井部会長 課長に御意見を伺う前に、山田先生、この配合のことについて何か御意見はありますか。

○山田委員 厚労科研のアンケートにありますが、在庫管理が困難ということについて、先ほどコメントされました。背景も少し分かりませんので、どういうことが要因で、在庫管理が困難というふうに、このデメリットの所に書かれているのか、私にはすぐには理解できないのです。一般的には、例えば長く合剤に含まれている薬剤が使用された後で、この合剤が処方されることになるのだとは思いますが、それでも副作用が出たときに、どれが原因の薬剤かを同定しにくいとか、そういうことはあるのではないかと思います。一方で、それぞれ単剤で使うよりも薬価が安くなれば、それはそれなりにメリットはあるのではないかと思います。医療上の安全とか、そういうことに関しても工夫をすれば担保することは可能ではないかと個人的には思っております。以上です。

○松井部会長 管理課長、いかがですか。

○医薬品審査管理課長 この問題については、4月、5月の部会に引き続き、3回にわたり御審議いただきまして誠にありがとうございます。いただきました種々の御意見については、私どもといたしましても受け止めさせていただき、できることを今後やっていきたいと思っております。この剤については、一応、ある一定程度の組合せ用量それぞれについて、使用実積があり、なおかつ明確に、有効性・安全性を否定する情報はないということもありますので、こちらでお認めをいただければ承認ということになろうかとは思いますが、頂きました御意見を踏まえまして、添付文書あるいは資材については、よく吟味させていただきたいと思います。その上で適切に指導させていただきたいと思います。

 配合剤全体の基準といいますか、配合の意義をどのように評価するのかについては、明確な基準を作るのはなかなか難しいところではありますが、少なくとも3剤の高血圧治療剤については、ここまでいろいろ御議論いただきまして、恐らく製薬業界においても、これは余り簡単ではないということは伝わっているとは思いますが、今一度、私どものほうでも若干整理をさせていただいて、明確な線を引けないかもしれませんが、こういった留意点があることは検討させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○松井部会長 それは、検討して、その上で承認するかどうか決めるという意味ですか。

○医薬品審査管理課長 多分、開発中のものは、そう多くはないと思いますが、一つ申請中のものがあるやに聞いていますので、取りあえずは、その次のものが来るまでの間にそういった検討をさせていただきたいと思います。

○松井部会長 しつこいようですが、では、この薬剤については認めてという意味ですか。

○医薬品審査管理課長 もちろん、この場で強い御反対がなければということですが。

○松井部会長 原則として、この会議は多数決ということではなくて、全員一致を旨として今までやってきたわけですが、いかがですか。今日、この薬剤、ミカトリオを認めるかどうかについて、もう一度委員の先生方の御意見を聞きたいのですが。

○松木部会長代理 このままでは明確に否定する理由はないという消極的な賛成になってしまうかもしれないのですが、ただ、野田先生がおっしゃったように、どのような状況で使われているのかは、これをかなりウォッチしていく必要があると思うのです。ですから承認条件として、もう少ししっかりした追跡調査をするとか、そのようなことはできるのでしょうか。要するに、この配合剤を使う前に、患者にどういう背景があって、その患者に対して使ったかどうかが確認できることを追跡することは可能でしょうか。そういうことがあれば、この薬はちゃんと処方されているということの確認が取れていけばいいのではないかと思います。

○松井部会長 ほかの委員の先生方、いかがですか。

○神田委員 私は必要性がないのではないかと申し上げましたが、それは別に絶対駄目ということではなくて、今日いただいた資料で、確信を持って、そこを私自身が判断できないということでありました。ただ、これだけ準備していただいたり、御説明など、いろいろな意見も出ておりますので、最終的には賛成いたします。

 それからもう一つ、これは3成分を配合用量で併用して安定している患者さんが切替えを考えるということが、審査報告書の()のほうでは書かれておりますが、添付文書のほうにはそういったことは詳しく書いていないと思うのです。添付文書のほうで言うと、結局この3成分を併用している場合という表現にとどまっていますので、では併用していれば切り替えていいのかということにも読み取れますので、併用して、つまり安定している状態になったら切り替えましょうという報告書と、ちょっとニュアンスが違うような気がします。そういった所も少し、もし必要であれば、きちんと伝わるような形にしたほうがよろしいのではないかと思います。

○松井部会長 併用を調節した上で、配合剤にスイッチするということですね。ほかに御意見はありますか。

○杉委員 先ほど私もちょっと意見を言いましたが、結局、今、意味するところはそういうことであります。今の先生と同じようなところです。要するに、コントロールしていくわけですから、血圧のコントロールで、ある程度長い期間、その三つのものを使っていてコントロールできているという人に使えばいいということだろうと思います。ですから、この薬を発売してはいけないというような、全くの反対ではありません。ただし、諸手を挙げて賛成というわけでもないということになります。

○野田委員 私もそういう意味では同意見ですが、ある程度の期間安定というところの「ある程度」に、もうちょっと期間の目安を付けていただけると、もっといいかなと思います。6か月以上とか何かそうしないと、何をもって安定とするかというのは、なかなか、お一人お一人違う所もあるのではないかという気はいたしますが。いずれにいたしましても配合剤の元の各々のもので安定しているときに切り替えるのみというぐらいにしていただいたほうが、混乱は少ないのではないかと思います。

○松井部会長 課長、それは制度上、そのようにすることはできるのでしょうか。

○医薬品審査管理課長 制度というよりは、この剤をどういう場面で使うかということを、この場で、そのほうが、より望ましいという御意見であれば、それに従って使用上の注意を改訂するというようなことは可能です。

○松井部会長 ほかに御質問、御意見はありませんか。

○鈴木委員 今、別の所で検討されている最適使用推進ガイドラインは、こういう場合には適用されないのですか。

○松井部会長 最適使用推進ガイドライン。いかがですか。

○医薬品審査管理課長 一応、最適使用推進ガイドラインとして我々が考えていたのは、非常に作用機序が新しくて、これまで使用経験が余りなかったものを対象とするようにということで考えておりましたので。今回のこれの場合には、ちょっと既に成分としては、よく使われているものであり、それをどのように使われるかと、配合剤だからということはあるかもしれませんけれども、そこをどうするかということですね。

○鈴木委員 2回連続して継続審議になったし、専門家の意見もよく見ますと、全員賛成ではないですね。意見がかなり分かれている部分もありますので、使用をある程度限定して、こういうものをどんどん作っても余り会社の売上げには貢献できませんよというぐらいのメッセージを出したらどうですか。そういうものを付けて出していただければ、それを中医協でも尊重してもらえるように、審査管理課なり、我々のほうからでも、話をすることはできると思います。

○松井部会長 そうしますと、鈴木委員のおっしゃるのは、今日の審議会では、この薬剤を認めて、その上で。

○鈴木委員 認めないというわけにはいかないと思うのですが、一定の条件を、ここで意見として付けて出したらどうでしょうか。ある程度限定するということですね。3剤で安定している場合ということです。

○松井部会長 そうですね。

○鈴木委員 例えば、半年以上とか。

○松井部会長 今の御意見に対してどうでしょうか。反対意見は特にありませんか。それでは今日、このミカトリオの配合錠の審議については認めて、そしてその上で、今後は安易にこういう申請ができなくするような勧告といった意見書を提出すると。そしてそれを残すということで、いかがでしょうか。

○鈴木委員 そうですね。この薬に対して意見を付けるということです。それが今後につながっていくと思います。

○松井部会長 そのような結論にしていいでしょうか。ともかく、このミカトリオ配合剤については認めるけれども、それに対して。

○医薬品審査管理課長 このものをどのような場面で使うかについて、ちょっと確認させていただきたいのです。現在の用法・用量に関連する使用上の注意では、3剤を既に併用して使っているものを配合剤に切り替えることのほかに、2剤を併用していて効果不十分な場合にも、この配合剤に切り替えるという使用方法も一応容認しているのですが、それはやはり制限すべきだということでよろしいでしょうか。

○松井部会長 いかがですか。

○野田委員 2剤プラス1剤を、別々の薬剤で、ある程度、半年なり。

○松井部会長 併用してですね。

○野田委員 併用して、安定していたら切り替えるという形になるのではないでしょうかね、やはり。

○川上委員 多分、現場の処方の実態は様々だと思うのです。もちろん非専門医の先生もいらっしゃれば、専門医の先生として相当処方し慣れている方もいらっしゃると思います。そうしたときに、2剤配合剤として具体的にはミカムロ配合錠BPを既に使っていて、あとは低用量の利尿薬を追加したいというときに、今まで使っていたミカムロ配合剤BPから今回のミカトリオ配合剤に切り替えて使ってみたいという、専門医の処方の場合もあり得るかと思うのです。

 そういう際には、安全性の懸念などもいろいろありますが、本当に処方することが必要な先生や、配合剤から配合剤への変更が必要な患者さんを疎外するまでの使用上の注意を追記してしまうのは、薬剤の選択に制限を加えてしまうような気もするのです。

 ですから、認めるのであれば、専門医の先生も含めてある程度いろいろな使い方ができる状態で認めつつ、企業等には情報提供やプロモーションの在り方を別途に指導していただく、また、意見を付けるのであれば、別途に付けるような形で承認するのもよろしいかと思います。余り最後まで縛りを付け過ぎるというのも、いかがなものかという気もいたしました。

○鈴木委員 それだと何もしないのと同じだと思います。これだけ議論したのですから、これからはそういう薬には何らかの制限がかかることも有るということをメーカーの方にも理解していただかないと、こういうものが次から次と、これからも出てきます。そういう薬を出されても余りメリットはないということを理解していただいたほうがよろしいのではないでしょうか。

○松井部会長 ほかに御意見はありませんか。これは結構重い決定だと思うのですが。

○野田委員 やはり新しい薬を外から付け加えるときに、コロッと全部変えれば、下がり過ぎたときにまたややこしいことが起きるわけですので、普通は、常識的には付け加えたい成分を外付けで処方して。

○松井部会長 併用してですね。

○野田委員 併用して、それで至適な血圧のところに持って行って配合剤に切り替えるということが、一般的に他の配合剤の場合でもそういうことだと思うのです。仮に2剤の場合でも、それが常識的な考えだと思いますので、その線に沿った処方の仕方にしていただいたほうが、私はよいと思いますけれども。

○松井部会長 ほかにありますか。しつこいようですが、もう一度、確認しますけれども、今回のミカトリオ配合剤については、大多数の方は認めるという御意見でしょうか。いや、やはり認めなくて、どういう手続を踏むかをもっと時間を掛けて考えるという御意見なのでしょうか。

○内藤委員 反対意見というか、注意喚起をしたのですが、私は認めてもいいと思います。ただし、野田委員のおっしゃるように、ある一定期間併用で、非常に容態が安定している患者に限って切り替えるというような形、それが結果的に鈴木委員のおっしゃったように、似たような配合剤の申請が今後出てくることを抑えるメッセージになると思います。ですから、この用法・用量の所に使い方をきちんと制限するという記載があったほうがいいと私は思います。

○松井部会長 今の御意見で、我々の、このコンセンサスとしていいですか。反対はありませんか。

○加藤委員 反対ではありませんが、提案をしたいと思います。添付文書の用法・用量に関連する使用上の注意の1ページに 1. 2. がありますけれども、この 2. の記述を、先ほどの「血圧と併用している場合」を「併用して効果が安定している場合」と、ちょっと文言を変えて、これは 2. ではなくて 1. へ持ってくるとか何か工夫すると、今の議論が生かされたままで、この内容で承認可能かと思うので、 1. 2. を逆にして、文言を変えることを提案したいと思います。この 2. は、先ほどから議論のある3つの組合せで、既に効果がある場合ということを暗示していると思うのですが、どうなのでしょうか。

○医薬品審査管理課長 今の御意見をまとめると、一応、原則としては、その3剤を併用している患者の中で、ある程度安定している患者さんを主たるターゲットとして、併用から3剤配合に切り替えるのが原則であると。そういう趣旨で、用法・用量に関連する使用上の注意を改訂するということでよろしいでしょうか。

○松井部会長 その場合に、医薬品第一部会で出した結論を、医薬品第二部会とも当然、擦り合わせなければいけないことだってありますよね。それは大丈夫ですか。

○医薬品審査管理課長 今のところ、医薬品第二部会の担当品目で、この種の同じ効能の3種類の薬剤を配合するというものは出てきておりませんし、開発中という話も聞いておりませんので。

○松井部会長 分かりました。それでは、この会の今日の決定事項を口頭で述べます。それに対して賛否を問います。よろしいですか。

 本日の再審議になってましたミカトリオ配合錠については、これを承認する。ただし、医薬品第一部会の責任において制限を付ける。その文章においては、今後、検討する。そして、この医薬品第一部会に報告してもらうということで、先生方、よろしいでしょうか。反対はありませんか。では、そのようにさせていただきます。よろしいですか。

○鈴木委員 その文章ができるまで、承認は保留するわけにはいかないのですか。どのような文章になるか分からないので、是非、確認したいと思いますが。

○松井部会長 ほかの先生方、どうですか。

○鈴木委員 そんなに大変ではなかったら、今作ってはどうですか。難しいですか。

○松井部会長 いや、先生、それはよく考えたほうがいいと思います。

○医薬品審査管理課長 大まかなところとしては、用法・用量に関連する使用上の注意の2.で、原則としてテルミサルタン80mg、アムロジピン5mg及びヒドロクロロチアジド12.5mgを併用しており、病態が安定している患者に投与するというように変えれば、一応いいかと思います。

 さらに、細かい適応をどうするかと、適正使用をどうするかということについては、別途、私どもとしても高血圧関連の学会等に適正使用のガイドラインを作成するようにお願いしてみたいと思います。使用上の注意は一応そのような文言で変えるということでよろしければ、この場で承認の可否を御判断いただき、詳細な条件などについてどう考えるかに関しては、もう少し時間を頂いてガイドラインを検討することでいかがでしょうか。

○松井部会長 いかがでしょうか、鈴木先生。よろしいですか。

○鈴木委員 そのガイドラインというのは、最適使用推進ガイドラインに相当しませんか。これから薬食審も関わっていくわけでしょう。

○医薬品審査管理課長 もちろん適正使用を推進するためのガイドラインという位置付けでありますが、こちらの部会のほうに、できたものは御報告したいと思います。

○鈴木委員 これから薬食審も最適使用推進ガイドラインを、学者等のグループの作成と並行して、こちらからも意見を言えるようになっていくようです。それが決まった際には、薬食審としてもそれを守るようにという意見を付けることになるようですので、これはある意味ではその前触れというか試行みたいな感じですね。

 ですから、私は薬食審としてしっかり言ってもいいと思います。今までは、どんどん通してしまっていたので、後で中医協で薬食審は何をやっていたんだということになっていますから。もはやそれでは済まされないのです。超高額な薬をどんどん通してしまって、薬食審は何をやっているんだという議論になっていますので、今後は薬食審としてもしっかりした意見を言っていく必要があると思います。

○松井部会長 ありがとうございます。それでは、これで最後にしましょう。

○内藤委員 安定しているという期間について、今、審査課長のお話がなかったような気がするのですが、6か月程度という、ある程度の期間を明記したほうがいいのではないかと思います。高血圧学会の先生の意見にもありましたが、夏になると血圧が下がる患者さんがそれなりにいらっしゃるということなので、季節が変わっても安定しているという場合に適応になることを出したほうがいいのではないでしょうか。

○医薬品審査管理課長 お言葉ですが、この場で6か月や3か月と決めていただけるのであれば、それは尊重したいと思いますけれども、今すぐに6か月がいいというようなことは決められないと思います。その件については、先ほども申し上げたように専門の学会の先生方に御議論いただいて、ガイドラインの中で記載させていただければと思います。

○鈴木委員 そのガイドラインは、学会の案ができたら是非この薬食審にもお知らせいただいて、ここで最終的に確認させていただくようにしたらよろしいのではないですか。

○松井部会長 当然そうだと思います。よろしいですね。それでは議決に入ろうと思いますが、よろしいでしょうか。このミカトリオ配合錠について、注意書きを改めた上で、承認を可としてよろしいですか。

 ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは、報告事項をお願いします。

○事務局 申し訳ありません。事務局から1点補足します。先ほどの事務局からの説明が不足しておりましたが、本剤の再審査期間は4年、製剤は劇薬に該当、生物由来製品と特定生物由来製品のいずれにも該当しないということで判断しております。承認の可否と併せて、これも御確認いただいたということとしたいと存じますが、よろしいでしょうか。

○松井部会長 はい。それでは、報告をお願いします。

○事務局 報告事項議題1、ポリドカスクレロール1%注2mL、同3%注2mLの製造販売承認事項一部承認変更について、報告いたします。資料11を御覧ください。本剤は非イオン性の界面活性剤であるポリドカノールを有効成分とする注射剤であり、本邦では2006年に、一次性下肢静脈瘤(伏在静脈瘤の本幹を除く)の硬化退縮の効能・効果で、本剤の液状硬化療法が承認されております。

 今般、カイゲンファーマ株式会社より伏在静脈瘤の本幹を含む一次性下肢静脈瘤に対する本剤のフォーム硬化療法に関する効能・効果及び用法・用量を追加する医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤によるフォーム硬化療法の伏在静脈瘤の本幹を含む一次性下肢静脈瘤に対する有用性は、医学薬学上公知に該当すると判断し、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。

 続いて、報告事項議題2、献血グロベニン- I 静注用500mgほか2規格の製造販売承認事項一部変更承認について報告いたします。資料12を御覧ください。本剤は乾燥ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリンGを有効成分とする注射剤であり、現在、「無又は低ガンマグロブリン血症」等の効能・効果で承認されております。

 今般、日本製薬株式会社より「ギラン・バレー症候群(急性増悪期で歩行困難な重症例)」の効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。機構における審査の結果、本剤を使用して差し支えないと判断いたしました。なお、資料15の一覧表において、本製剤が生物由来製品と記載されておりますが、正しくは特定生物由来製品です。おわびして訂正します。

 次に、報告事項議題3、トレシーバ注フレックスタッチ及び同注ペンフィルについて報告します。資料13を御覧ください。本剤はインスリンデグルデク(遺伝子組換え)を有効成分とする持効型インスリンアナログ製剤です。今般、ノボノルディスクファーマ株式会社から、注射時刻は原則として毎日一定とするが、必要な場合に注射時刻を変更する臨床試験成績が追加され、製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断しました。

 続いて、報告事項議題4、医療用医薬品の再審査結果について報告します。資料番号は14-1から14-5で、こちらはいずれも医薬品再審査確認等結果通知書となります。資料14-1は一般的名称は、トシリズマブ(遺伝子組換え)、販売名はアクテムラ点滴静注用200mgほか2規格のリンパ増殖性疾患であるキャッスルマン病に伴う諸症状等の効能・効果に係る再審査結果。資料14-2は、一般的名称はランソプラゾール、販売名はタケプロン静注用30mgの承認に係る再審査結果。資料14-3は、一般的名称はランジオロール塩酸塩、販売名はコアベータ静注用12.5mgの承認に係る再審査結果。資料14-4は、一般的名称はカンデサルタン シレキセチル/アムロジピンベシル酸塩、販売名はユニシア配合錠LD、同HDの承認に係る再審査結果。資料14-5は、一般的名称は、オルメサルタン メドキソミル/アゼルニジピン、販売名はレザルタス配合錠LD、同HDの承認に係る再審査結果です。

 こちらの品目について、製造販売後の使用成績調査、及び特定使用成績調査等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。報告事項についての説明は以上です。

○松井部会長 何か御質疑はありますか。特にありませんでしょうか。それでは、この報告事項については御確認を頂いたものといたします。

 本日の議題は以上なのですが、事務局から何か報告はありますか。

○事務局 次回の部会は、1031(月曜日)午後3時から開催する予定ですので、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 それでは本日は遅くなりましたが、これで終了といたします。どうもありがとうございました。

 


(了)

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課 課長補佐 清原(内線2746)

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