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2016年8月5日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録

○日時

平成28年8月5日(金)10:00~


○場所

厚生労働省専用第12会議室


○出席者

出席委員(17名)五十音順

○新 井 洋 由、 奥 田 真 弘、 川 上 純 一、 川 崎 ナ ナ、 
 菊 池   嘉、 鈴 木 邦 彦、 関 水 和 久、 田 島 優 子、 
 中 島 恵 美、 中 野 貴 司、 濱 口   功、 半 田   誠、 
 前 崎 繁 文、 増 井   徹、 森 田 満 樹、 山 口 拓 洋、
◎吉 田 茂 昭
 (注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(4名)

大槻 マミ太郎、 清 田   浩、 田 村 友 秀、 山 本 一 彦

行政機関出席者

武 田 俊 彦 (医薬・生活衛生局長)
森   和 彦 (大臣官房審議官)
山 田 雅 信 (医薬品審査管理課長)
佐 藤 大 作 (安全対策課長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

○議事

○医薬品審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」を開催いたします。本日は暑い中、またお忙しい中、御参集いただきまして、誠にありがとうございます。本日より新たに当部会に御参加いただく委員の先生がいらっしゃいますので、御紹介させていただきます。川崎医科大学小児科学教授の中野貴司先生です。本日の委員の出席状況についてですが、大槻委員、清田委員、田村委員、山本委員より、御欠席との御連絡を頂いております。田島先生が少し遅れておられるようです。現在のところ、当部会委員数21名のうち16名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。

 続きまして、事務局に人事異動がありましたので、御報告いたします。まず、厚生労働省ですが、医薬・生活衛生局長の武田です。なお、6月21日より、当部会の事務局であります審査管理課の名称が変更となりまして、医薬品審査管理課となっております。次に、佐藤安全対策課長です。医薬品医療機器総合機構のほうですが、本日は欠席ですが、審査マネジメント部長が野村、安全管理監が宇津となっております。よろしくお願いいたします。以上です。

 それでは、吉田部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 早速、本日の審議に入りたいと思います。まず、事務局から配布資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告をお願いいたします。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しております。議事次第に記載されている資料1-1から資料13をあらかじめお送りしております。このほか資料14審議品目の薬事分科会における取扱い等の案、資料15専門委員リスト、資料16競合品目・競合企業リストを配布しております。

 続きまして、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リスト、資料16について報告いたします。資料16の1ページ、リフキシマ錠200mgですが、本品目は肝性脳症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 2ページ、デザレックス錠5mgですが、本品目はアレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 3ページ、トレアキシン点滴静注用25mg、同点滴静注用100mgですが、本品目は慢性リンパ性白血病を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 4ページ、オプジーボ点滴静注20mg、同点滴静注100mgですが、本品目は根治切除不能又は転移性の腎細胞癌を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 5ページ、クリゾチニブですが、本品目はROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 6ページ、ロミデプシンですが、本品目は末梢性T細胞リンパ腫を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 7ページ、RO5534262(ACE910)ですが、本品目はインヒビターを有する先天性血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 8ページ、ピノルビン注射用30mgですが、本品目は頭頸部癌、乳癌、胃癌、尿路上皮癌(膀胱癌、腎盂・尿管腫瘍)、卵巣癌、子宮癌、急性白血病、悪性リンパ腫を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。

○吉田部会長 ただいまの事務局からの説明に、特段の御意見等ありますでしょうか。

○菊池委員 今回から競合品目の選定基準みたいなものがしっかり書かれているようになりましたが、これは前から書いてありましたか。販売とか、いろいろ根拠で。いつもこれでどうしてこの3品目なのだろうなというときがあったのですが、ここまで明確に書かれると非常にいいなと思いましたのでコメントですが、前から書いてありましたか。

○事務局 以前から記載しております。

○吉田部会長 ほかにございますか。ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものといたします。

 それでは、委員からの申し出状況についての報告をお願いいたします。

○事務局 各委員からの申し出状況については、次のとおりです。議題1、リフキシマ錠、退室委員なし、議決には参加しない委員は山口委員。議題2、デザレックス錠、退室委員なし、議決には参加しない委員は奥田委員、中野委員、前崎委員、山口委員。議題3、トレアキシン点滴静注用、退室委員なし、議決には参加しない委員は山口委員。議題4、オプジーボ点滴静注、退室委員は山口委員、議決には参加しない委員は前崎委員。議題5、クリゾチニブ、退室委員なし、議決には参加しない委員は前崎委員、山口委員。議題6、ロミデプシン、退室委員なし、議決には参加しない委員は中野委員、山口委員。議題7、RO5534262(ACE910)、退室委員なし、議決には参加しない委員は山口委員。議題8、ピノルビン注射用、退室委員なし、議決には参加しない委員は前崎委員、山口委員。以上です。

○吉田部会長 今の事務局からの説明に、特段の御意見等ございますか。ないようですので、皆様には御確認いただいたものとし、議題に入りたいと思います。本日は、審議事項8議題、報告事項5議題となっております。

 それでは、審議事項の議題1に移りたいと思います。議題1は継続審議案件ですので、事務局からは前回での論点を踏まえた上で概要の説明をお願いします。

○事務局 議題1、資料1、医薬品リフキシマ錠200mgの製造販売承認の可否等について、事務局より説明申し上げます。本品目は、本年5月の当部会での御審議にて継続審議とされ、結核菌の耐性化について整理の上、再度、当部会にて御審議いただくこととされておりました。御指摘を

踏まえた検討結果について、補足説明資料として資料1-4という1枚紙を中心に説明いたします。

 資料1-4、リフキシマ錠200mgに係る部会後の対応についてです。1.当該品目リフキシマ錠の概要についてですが、一般名がリファキシミン、効能・効果は肝性脳症における高アンモニア血症の改善としております。2.前回の部会での御指摘ですが、主に丸1から丸3の3点について御指摘を頂きました。1点目が当該品目に対する結核菌の耐性化とリファンピシンとの交差耐性の発現リスクについて、2点目が耐性化リスクを最小化するための方策について、3点目が結核菌のリファンピシン耐性化に関するサーベイランス状況の把握と活用についてです。これらの御指摘について、3.にそれぞれ対応を記載しております。

 まず、丸1の結核菌の耐性化、リファンピシンとの交差耐性の発現リスクの評価についてですが、一つ目のポツのとおり、リファキシミンに対する主な耐性機序がリファンピシンに対するものと同様であるため、作用機序・耐性機序の観点からはリファンピシンとの交差耐性が生じる可能性はあると考えられます。一方、二つ目のポツ以降の理由により、現実的には結核菌のリファキシミン耐性化及びリファンピシン耐性結核菌の増加に対する懸念は小さいと考えております。理由の一つ目は、リファキシミン耐性化は細菌の遺伝子変異が原因であるため、仮に腸内細菌がリファキシミン耐性を獲得しても、結核菌に耐性が伝播することがないこと。理由の二つ目は、肺結核患者において適切な治療が行われ、菌数が抑えられていれば、突然変異による耐性獲得の可能性も低くなるため、リファキシミン耐性化を誘導する可能性が低いと考えられること。1ページ目の下から3行目に記載してあるとおり、パスツール研究所の報告では、結核菌数が10の7乗超に達しないとリファキシミンに対する耐性菌は発現しないとされておりますが、そのような菌数では結核を発症している状態となりますので、通常の診療で結核症として診断され、リファンピシンを含む結核治療を受けている可能性が高いと考えております。

 2ページ目、理由の三つ目は、逆に不顕性結核菌感染患者の場合は、耐性変異を発現するのに十分な結核菌数がないため、耐性結核菌が出現する可能性は低いと考えられ、以上より結核菌のリファキシミン耐性化の懸念は小さいと考えております。

 丸2耐性化リスクを最小化するための方策についてですが、丸1で説明しましたとおり、リファキシミン耐性の結核菌が発現する可能性は低いものの、リスクを最小化するため、結核症の合併患者にリファキシミンが使用されることによるリファンピシン耐性化を防止することを目的として、本剤の添付文書の重要な基本的注意に以下のような文言を記載することとしております。「本剤は抗酸菌に対しても抗菌活性を示し、他のリファマイシン系抗菌薬と交差耐性を示す可能性がある。他のリファマイシン系抗菌薬に対する結核菌の耐性化を防ぐため、肺結核及びその他の結核症を合併している肝性脳症患者における高アンモニア血症に対しては、他の治療法を選択すること。」

 丸3結核菌のリファンピシン耐性化に関する情報収集のためのモニタリング方法についてです。結核は感染症法において二類感染症に指定され、全ての患者の発生について保健所への届出を行うこととされております。また、それらの情報は結核予防会結核研究所疫学情報センターの「結核登録者情報システム(通称、結核サーベイランス)」によって集約され、薬剤感受性検査結果も含め、その集計結果が公表されております。一方、リファキシミン投与経験のある新規の結核患者は極めて希なケースと考えられ、そのような患者におけるリファンピシンに対する感受性データを経年的に収集することは現実的に不可能であるため、医薬品リスク管理計画における安全性監視活動として、先ほどの結核サーベイランス等の公表情報を継続的に確認し、リファンピシンへの薬剤耐性率の変動を把握していくことが適当と考えております。

 以上の対応方針について、前回部会において御指摘いただきました清田委員にも事前に御説明をし、御了解を頂いております。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 ということなのですが、今日は問題点を指摘された清田委員が御欠席ということですので、前崎先生、何か追加のコメントを頂ければと思うのですが。

○前崎委員 実際にリファンピシンの耐性が起こることは、現実的にはかなり少ないと思います。腸結核で、この薬が使われたときに、極めて希に起こる可能性があるかもしれませんが、肺への移行性は良くないので、かりに肺結核に使われたとしても、結核菌が耐性化することは極めて少ないと考えます。ただ、添付文書に結核に対する注意を明記しておかないと、結核合併例に使用することは望ましくないと考えます。

 サーベイランスについては、結核菌の耐性化は、多剤併用でなく単剤するなど間違った治療によって耐性化することが多いので、この薬剤で耐性となることは極めて少ないと思います。また、現在は感染症法の二類感染症で結核菌の薬剤感受性も報告することになっていますので、その結果から監視していけばよろしいのではないかと思います。

○吉田部会長 ということだそうです。この他に、委員の先生方からのコメントはありますか。

○関水委員 対応の丸1の2番目に書いてあることは、訂正を要すると思います。細菌の薬剤耐性形質について、プラスミド上の遺伝子ではなく、染色体上の遺伝子変異に原因がある場合には菌から菌へと伝播しないというのは間違いです。染色体上の耐性変異は、トランスダクションによって他の菌に伝播します。したがって、この条項は訂正されるべきだと思います。結核菌に本剤に対する腸内細菌が獲得した耐性変異が伝播することはないと断言していますが、これは科学的に問題ですね。これは削ったらどうですか。

 それから、結核菌が存在しているところでこの薬剤が使用された場合は、ある確率で必ず耐性菌が出るはずです。人の体で本当に結核菌の耐性化が問題になるかどうかについて、今コメントがありましたが、この薬を使って、この薬に対する耐性な結核菌を作るということは、試験管の中では極めて容易であるということは了解しておられますね。確認させて下さい。。

○前崎委員 おそらく、実際の臨床ではこの薬剤と結核菌が接触するという状況は、極めて希なことと思います。

○吉田部会長 よろしいでしょうか。それでは、削除ということでお願いします。ほかにありますか。

○菊池委員 これは一般論のことなのですが、今の文書を使用上の注意の中の重要な基本的注意に入れるということで、これは禁忌ではないということですね。そういったところの添付文書の全般的な扱い方のこういう部分の順序といいますか、そういうものの基本的な方針というのは一貫してあるのでしょうか。

○新薬審査第四部長 添付文書のどこの項目に書いていくかという点については、内容からみて重要と考えられる項目は前段に配列するようされています。先生の御指摘のここに書いてある内容は実は禁忌に相当するのではないかというところですが、先ほどから議論がありましたように、ヒトの体中では実際に起こる可能性はかなり低いというところがありますので、禁忌にするほどではないけれども、やはり注意は必要だろうというところで、重要な基本的な注意の項での記載が適当ではないかと考えました。

○吉田部会長 その考え方に何かルールがありますか。

○新薬審査第四部長 明確なルールというものはないのですが、さすがに禁忌とするほどではないだろうと判断したところです。

○吉田部会長 そういう判断だということですね。だそうです。よろしいでしょうか。ほかにありますか。ないようですので、議決に入りたいと思います。なお、山口委員におかれましては、利益相反に関する申し出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは、議題2に移ります。議題2について、機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料2、デザレックス錠5mgの製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。本剤の有効成分であるデスロラタジンはヒスタミンH1受容体拮抗薬であり、クラリチン錠10mg等として既に承認されていますロラタジン製剤の主要活性代謝物です。今般、ロラタジン製剤と同様のアレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)に伴うそう痒に関する効能・効果で申請されました。本剤は、海外では2016年6月現在、120か国以上で承認されております。本申請の専門委員として、資料15に記載されております8名の委員を指名いたしました。

 主な審査内容について、臨床試験成績を中心に簡単に説明いたします。審査報告書33ページ、7.1、通年性アレルギー性鼻炎患者を対象とした国内第III相試験の項を御覧ください。通年性アレルギー性鼻炎患者を対象としたプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験では、有効性の主要評価項目である投与2週後の4鼻症状合計スコアのベースラインからの変化量は34ページの表17のとおりであり、プラセボ群と本剤5mg群及び10mg群の各対比較において、いずれも統計学的に有意な差は認められませんでした。その要因として、申請者は軽症の部分集団ではスコアの改善が認められなかったこと、通年性アレルギー性鼻炎患者では日常的に鼻症状が表れていること等から、症状の変化を精度良く捉えられなかった可能性がある旨を説明しております。

 審査報告書34ページ、7.2、季節性アレルギー鼻炎患者を対象とした国内第III相試験の項を御覧ください。先ほどの考察を踏まえ、試験計画を見直し、季節性アレルギー性鼻炎患者を対象としたプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されました。本試験において、有効性の主要評価項目である投与2週間の平均4鼻症状合計スコアのベースラインからの変化量は35ページの表18のとおりであり、プラセボに対する本剤5mg群の優越性が検証されました。なお、本剤の臨床試験におけるプラセボとの群間差は-0.83であり、類薬の臨床試験成績と同程度の有効性成績が得られたものと考えております。

 以上の臨床試験成績、季節性アレルギー性鼻炎と通年性アレルギー性鼻炎では、原因抗原の違いはあるものの発現機序及び病態に大きな違いはなく、抗ヒスタミン薬については季節性アレルギー性鼻炎と通年性アレルギー性鼻炎のいずれに対しても治療薬として使用されていること、審査報告書39ページの表23に示します海外の通年性アレルギー性鼻炎患者を対象とした臨床試験において、本剤5mg群のプラセボに対する優越性が示されていること、既に承認されているロラタジン製剤の日本人の通年性アレルギー性鼻炎患者を対象とした国内第III相試験において、ロラタジン10mgのプラセボに対する優越性が示されていること等を踏まえると、原因抗原の違いにかかわらず、アレルギー性鼻炎患者に対する本剤5mg群の有効性は期待できると判断いたしました。

 審査報告書35ページ、7.3、慢性蕁麻疹患者を対象とした国内第III相試験の項を御覧ください。慢性蕁麻疹患者を対象としたプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験では、有効性の主要評価項目である投与2週後の痒みスコアと発斑スコアの合計のベースラインからの変化量は36ページの表19のとおりであり、プラセボに対する本剤5mg及び10mgの優越性が検証されました。また、40ページの表24のとおり、湿疹・皮膚炎及び皮膚そう痒症患者を対象とした国内非盲検非対照試験において、いずれの疾患群においても投与12週後まで痒みスコアの改善傾向が認められたこと等を踏まえ、蕁麻疹及び皮膚疾患に伴うそう痒に対する、いずれに対しても本剤の有効性は期待できると判断いたしました。

 次に、審査報告書41ページ以降の7.R.2、安全性についての項を御覧ください。国内外臨床試験における有害事象の発現状況は41ページの表25及び表2642ページの表27のとおりであり、既に承認されているロラタジン製剤及び他の抗ヒスタミン薬と比較して新たな安全性上の懸念は示唆されていないと考えております。

 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体は劇薬に該当し、製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないものと判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 ありがとうございました。それでは委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○関水委員 表の18について、質問させていただきます。プラセボ群との差が、有意であるということですが、統計学は恐らくペアード試験、一つ一つの患者さんに対する結果を示していると思います。6.93±1.93という結果が、右側のプラセボよりも低いということは、全数の比較では、統計学的有意な差が出るはずはありません。ペアード試験による統計調査に違いないと思うのですが、いつもこのような表が出ているときに、この点が全く記載されないので、これを初めて見た人は、どうして有意の差が、p値として0.001であるとして出てくるのかと非常に不思議に思うはずです。この点について、説明はありますか。まず、これはペアード試験の結果ですか。

○医薬品医療機器総合機構 これはpaired検定ではございません。

○関水委員 それでは、6.93±1.93の、1.93は何ですか。標準誤差ですか。両者で統計学的有意の差が出るということはないと思います。これは計算間違いなのではないでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 表の下の脚注を御覧ください。各ベースラインの変化量については、-1.40は平均値、±のあとの1.83は標準偏差、括弧の中は例数を示しております。

○関水委員 統計学的誤差の指標であるp値が0.001というのは、非常に低いですね、何と何の差が統計学的に有意なのですか。

○医薬品医療機器総合機構 プラセボ群の変化量-0.60と、5mg群の変化量-1.40との比較です。

○関水委員 -1.40-0.60といって、±1.83と書いてあるではないですか、これが標準誤差かあるいは絶対誤差か分りませんけれども、そのような状況で2つの群に、統計学的な有意の差があろうはずがないと私は思います。

○医薬品医療機器総合機構 統計解析は注釈C)に記載しておりますとおり、今回はモデルを使った解析を行っており、このプラセボ群と本剤群の変化量の比較を行いますと、ここに示しておりますようなp値になります。

○関水委員 それは個々の患者に関してやったに違いないと思います。全数の検査で5mgとプラセボ群について比べたわけではないと思いますが、いかがですか。

○新薬審査第四部長 先生のおっしゃられるpairedテストというのは、同じ患者さんの前後の比較になるので、先ほど担当から説明しましたように、これはプラセボ群と実薬群のベースラインからの差について検定を行っています。

○関水委員 それで実数として実際にp値が0.001になるのですね。間違いないのですね。

○新薬審査第四部長 はい。

○関水委員 これは非常に不思議な結果だと私は思います。この点について、どなたか統計学の専門の方、私が間違っている点について、ご指摘いただけますか。

○吉田部会長 山口先生、何かコメントありますか。倍以上よくなっているからということですか。

○山口委員 はい、基本的には先ほど機構の説明したとおりで、-1.40-0.60-0.83ぐらいという値が下のプラセボ群との差にも出ているので、基本的には変化量に関して群間比較を行っているという考え方でいいかと思います。あと1.83とか。

○関水委員 先生、私が聞きたいのは、-1.40±1.83となっているわけです。それぐらいの誤差がある群間誤差は、p値で、0.001になるはずがないと思うのですが。

○山口委員 でも、1.83というのは標準偏差なので、標準誤差で考えますと、大体ルートN分の1と考えればいいので、今225ぐらいなので15ですか、だから15で割った値ぐらいが標準誤差になりますので、そうすると差は出てくるのではないでしょうか。

○関水委員 では、それは私が、統計学に無知であることに起因して質問したことになりますが、それは分かりました。

 違うことを質問してよろしいですか。本薬については、ロラタジンが先行薬としてあって、それのメジャーな代謝物だということですが、こういうものは一般的なルールとして、ロラタジンとの優位性、少なくとも非劣性であることについてはデータとして示さないとおかしいと私は思うのですが、全く示されていません。この点が示されていなくても主要代謝物について、新薬として承認するということになっているのですか。

○医薬品医療機器総合機構 基本的なルールから言いますと、プラセボに対して本剤の優越性が示されれば、本剤の有効性はあるものと判断できると考えております。

○関水委員 有効性があるということは統計学的有意の差があるということから判断されたとのことですが、そこは分かりました。私が伺ったのは、そこのことではありません。もう既にロラタジンというのがあるわけです。そのメジャーな代謝物が本薬だと分かっているわけですね。それについて、申請してこれは新薬だという主張は、私はおかしいと思います。このような代謝物を新薬としてもよいという考え方、あるいはクライテリアがあるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 基本的には化合物の化学構造が違えば、新有効成分となりますので、ルール上は新薬という扱いになると思います。

○関水委員 そのような妥当性は、全ての人が認めることではないと思います。

○医薬品医療機器総合機構 薬事上のルールでは、化合物の化学構造が違えば新薬になるということになっておりますので。

○吉田部会長 では、ある一つの薬ができました。それをAという名前で売りました。その後、それを加水分解してBという名前の薬を作りました、という場合、それもまた同種同効の新薬として売ることができてしまうのですか。これをどんどん進めて、例えばBの一部を分解してCを作ってというようにしたら、何でも新薬になってしまう。という解釈でいいですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい、そうです。

○吉田部会長 だそうです。

○関水委員 新薬にするのはいいのですが、作用メカニズムが全く同じである、ロタラジンとの優位性があるかどうかについて、全くデータがありません。それは問題だと思うのですが。

○医薬品医療機器総合機構 本剤の承認の可否の判断に関して、特に、ロラタジンとの比較は求めておりません。

○関水委員 求めておられないという態度は問題なのではないでしょうか。

○吉田部会長 ご質問の趣旨は、前の薬に比べて、何かいいことが起こったと、だからこの薬を新薬として認めるというなら分かるけれど、前の薬との比較を一切しないでおいて、いきなり、プラセボと比較して差が出たから、これも新しい薬として認めますということでいいのだろうか、ということなのだろうと思います。だって、新薬となれば旧薬より高い薬価だって付けたりするわけではないですか。そうすると、医療ニーズとしては前の薬でいいものを、ただ加水分解しただけで、新規開発品としてより高く売れてしまうという姿はおかしいのではないか、ということになりませんか。少なくとも、前の薬に比べて、何かこういうアドバンテージが予測されたのでこういう開発をしましたというようなコンセプトがないとおかしいのではないかと、そういうことですよ、言いたいことは。

○医薬品医療機器総合機構 本剤の長所というと、類薬と比較して特筆するような部分は余りございませんで、いろいろ確認しましたけれども、データからはロラタジンと比較して大きく変わる部分はないと考えております。ですので、基本的には同じような位置付けで使われる薬かと思います。

○吉田部会長 例えば吸収が早いとか、あるいは毒性が少ないとかそのようなこともないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 体内動態から見ても血中デスロラタジン濃度は、本剤5mgとロラタジン製剤とでほぼ同程度と考えております。

○吉田部会長 すると、自ら作った旧薬と新薬とが市場で競合し合うわけですね。だから両方ともに売れることは多分なくて、一定規模の市場の例えば半分を、自分自身が食べちゃうことにもなるので、大きな目で見れば余り関係ないよと、そういう考え方なのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 ロラタジンは別の会社が製造販売の承認を持っていますので、経営戦略等を加味して開発されたものと考えております。

○新井部会長代理 ラットでは、ロラタジンよりも5割ぐらい強かったという文章がどこかにあったと思うのです。ラットの話ですが、ちょっとは違いはありそうだと。

○吉田部会長 何かいいことがあるのではないかということで開発したのだろうと私も思いたいですし、関水先生のお話はもっともだと思うけれども、新薬申請のときにはその辺はあえて問わないのですね。

○医薬品医療機器総合機構 臨床試験で必ず類薬との比較を行わなければ承認できないかと言われると、そうではないと考えております。

○吉田部会長 はい、分かりました。よろしいですか。

○奥田委員 ちょっと知識として教えていただきたいのですが、こういう承認申請をされる場合に、例えばロラタジンを対照薬とした臨床試験をして申請されてくるという場合があり得るのかどうか、そういう申請をされた場合に、承認審査が可能なのかどうかというのはどうなのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 例えばロラタジンより劣らないというような試験といったものでしょうか。

○奥田委員 そうですね、今先ほど求められたのはそういうことだろうとは思うのですが、要するにプラセボの対象ではなくて、その対照薬にそういう先行薬との比較だけでその承認申請をされてきた場合に、審査ができるのかどうかと。

○医薬品審査管理課長 先生がおっしゃられるように、プラセボとの差が十分大きいような領域の場合には、実薬を対象として、非劣性試験のみで認めるという場合もありますけれども、このようなある程度プラセボ効果があって、そのプラセボと実薬の差がそれほど大きくないような場合には、我々の立場としてはむしろプラセボとの優位比較を優先して考えているというのが現状です。恐らくロラタジンの活性代謝物ということですし、また大体ロラタジンの半量で同じぐらいの効果が得られるというものですので、ロラタジンとの間で比較をすれば恐らく同じような成績が出るだろうと思いますけれども、ただ、その成績だけで認められるかというと、そこは少し微妙なところがありまして、もっともよろしいのはプラセボをかませて、3群比較で実薬及びそのプラセボと比較をするというような試験デザインをすれば、そこがよりはっきりするとは思います。我々の承認の基本的な姿勢として、まずはプラセボよりも優位で、有効性がきちんと証明をされるということを優先しているというところです。

○吉田部会長 そのほうが明快だということですね。はい、分かりました。だからプラセボが倫理的におけない場合は実薬と非劣性で比べることもあり得るというお話だと思います。よろしいでしょうか。ほかにありますか。

○菊池委員 これは12歳以上でとなっていますけれども、200試験と201202204でかなりの人数で入っていますけれども、12歳からというか、小児領域の人たちがどれぐらい含まれているかは把握されていますか。

○医薬品医療機器総合機構 審査報告書47ページを御覧ください。表31ですが、国内臨床試験の比較試験に含まれた小児の例数を提示しておりまして、トータルで34例組み入れられております。

○菊池委員 そうするとこの200何番の試験を全部足した比率でいうと、かなり少なそうな感じがするのですが、それでもいいのですか。

○医薬品医療機器総合機構 今回、12歳以上を対象とした臨床試験の中で有効性が確認されておりますので、12歳以上に対する有効性はあるものと判断していいかと考えております。

○菊池委員 この中で、これは安全性と有害事象ですけれども、12歳から17歳の中でも有効性が確認されているということですか。

○医薬品医療機器総合機構 資料を確認させていただきますので、少し時間をいただければと思います。

○吉田部会長 今のような話が出てきたのは、多分この申請のとき、204試験が16歳以上とか、試験によってエントリーする年齢が変わっているからなのですね。この辺りは機構のほうで相談されたときに年齢は下を揃えるようにとか、何か指導はできないものなのですか。子供を対象にする場合、12歳とか13歳だとなかなか試験の内容が理解し難いということがあって、1617歳にしたほうがきっちりとした成績が得られるからというような、試験をやる側の都合で年齢を決めたような気がするけど。

○新薬審査第四部長 機構で行っている対面助言で相談いただければ、年齢を揃えたほうがよいのではないかという議論はできるのですが、相談を申し込んでいただけなければ、特に安全性上の問題がない限りは会社から提出された試験計画のまま進んでいくということになります。

○吉田部会長 そういうことだと、我々としては、例えば海外のデータとかひっくり返しながら、12歳と16歳の間が読めるか読めないかというような推定で、認可の可否を決定せざるを得なくなってしまいます。こちら側の都合なのかもしれませんが、やはり根拠がもう少し明快であってほしい。例えば、12歳以上を成人として試験を組むようにというような指導はできないものですか。それは無理筋で、あくまでも申請者の考え方を重視せざるを得ないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 今回、試験開始事前に対面助言に来ていただければそういった議論も申請者とできたと思いますけれども、季節性アレルギー性鼻炎の試験に関しては、企業のほうで検討の上、このまま試験を実施されたので、年齢が試験間で違ってしまったということになります。

○吉田部会長 そういうことをするのなら、例えば16歳以上しか認めないというような話にはできないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 その部分について、審査報告書48ページに記載させていただきましたけれども、今回の申請に関しては、蕁麻疹では12歳以上を対象に有効性を示されておりますし、海外においても12歳以上を対象とした臨床試験が行われております。また、海外の試験ですが、12歳から17歳と成人で体内動態の大きな違いはないということと、ロラタジン製剤においても、小児と成人で同様の曝露量が得られており、12歳以上の小児であれば成人と同様の用量で承認されているというところも踏まえますと、今回、季節性アレルギー性鼻炎の試験対象が16歳以上であったから1215歳を切りましょうというところまでではなく、12歳以上という形で認めることは許容できるのではないかと考えたところです。

○吉田部会長 分かりました。菊池先生の御質問の答えは出ましたか。

○医薬品医療機器総合機構 蕁麻疹の試験ですと、プラセボ群の変化量は-3.29、本剤5mg群で-2.14なので、この試験に関しては本剤群でプラセボ群を上回る傾向は認められてはおりません。ただ、1群、6例、7例ですので、この部分集団の結果で小児での有効性を議論することも、なかなか難しいと考えております。

○菊池委員 分かりました。私はいつもこういうのを見ているのは、この薬が12歳以上と言っている以上は、機構でしっかりそこは審査すべきだと思っているので、どれだけの人がいて、どのような形で審査をされたのかということをちょっと伺いたかった部分です。

 更にちょっと意地悪ですが、最初に通年性のものでは優越性がないということになって、季節性に、それで16歳に変えていますよね。それは時間的な変化で、プロトコールを変えていますよね。16歳からとして、季節性で優越性が認められたということで、最終的にはどっちもいっしょになって、アレルギー性鼻炎でオーケーという形になっていますし、慢性のアレルギーに対してやっているのに、「慢性」という言葉がいつの間にか切れて、蕁麻疹全部にオーケーということになって。最終的にはそう痒症に関しても、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症)、そう痒症オーケーというようになっているので、すごくこれは企業側に有利なというと変ですが、そういう形で易しくなっているような気がして厳しさが足りないのではないかなと、ちょっと思ったのですがいかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 抗ヒスタミン薬は何剤か承認されていますけれども、アレルギー性鼻炎に関しては、季節性又は通年性のどちらかの疾患群で検証的試験を一つやっていれば、アレルギー性鼻炎という効能・効果で承認されているところです。また、皮膚疾患に関しても慢性蕁麻疹を対象として評価して、蕁麻疹という効能・効果で承認されております。皮膚そう痒に関しては、蕁麻疹の結果を外挿しながら、非盲検非対照試験である程度の有効性が認められれば、現在の効能・効果を付している所です。そのような状況も踏まえますと、提出された臨床データパッケージから、現在の効能・効果を付けることは可能と考えております。

○菊池委員 この報告書の中で通年性の鼻炎に対しては、優越性がないと謳っているところで、それが消えてしまうのなら、その部分は季節性の鼻炎にしか効かないというように言ってもいいわけですよね。そこの辺をそのようにオーケーしてしまっているというのはいかがなのでしょうか。説明にはなっていないような気がするのですか。

○医薬品医療機器総合機構 先生のおっしゃるとおり、通年性アレルギー性鼻炎の国内試験に関しては、有効性が示されてはいませんが、先ほど申し上げたように、季節性アレルギー性鼻炎との違いは抗原の違いでして、症状等には大きな違いはありません。また、抗ヒスタミン薬ということを考えると、薬理学的にはいずれにも効くだろうと考えられて使用されているところもあります。あとは海外では、通年性アレルギー性鼻炎を対象として3試験行われており、その中の2試験で有効性が示されており、ロラタジンにおいても通年性アレルギー性鼻炎を対象とした国内臨床試験で有効性が示されているところを考えますと、先ほど先生が言われた、国内臨床試験の1試験で有効性が認められなかったことをもって、アレルギー性鼻炎の効果を、季節性のみに限定するというところまではしなくてもよいと考えたところです。

○吉田部会長 よろしいですか。ロラタジンの適応と違って、本薬だけが認められているところはなくて、大体同じなのですか。

○医薬品医療機器総合機構 有効性の成績ですか。

○吉田部会長 そうそう、適応症は。

○医薬品医療機器総合機構 ロラタジンの通年性アレルギー性鼻炎の臨床試験のプラセボとの群間差は-0.91です。

○吉田部会長 そうではなくて、適応症がロラタジンと全く同じということで、このような形になったのではないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 ロラタジンというよりは、抗ヒスタミン薬の開発における臨床データパッケージがほぼ今回のような形で開発が行われておりまして、いずれの疾患も、これまでの抗ヒスタミン薬における効能・効果の考え方も踏まえて判断したものです。

○吉田部会長 メーカー有利に解釈しているのではないか、というご指摘については、確かにそういう印象はあるけれども、少なくともロラタジンの成績があるので、それを明確に否定するような、つまり、薬効が反対方向に向いているようなことがなければまあいいだろうというように判断されたのかなと、私は思ったのですが。

○森田委員 全然違う立場から、私はこの種の薬を使っている一般の使用者ですけれども、ずっと飲んでいて、例えばお医者さんに新薬ができたよと言われて、お薬を換えるときに、そのメリット、ベネフィットというのを説明していただくわけです。例えば効き目はもちろんですが、安全性とかあと眠くならないとか、ここで書いているのですが、いろいろ見ていてもそんなに変わりがなくメリットがない。もう一つ使っていて思うのは、やはり薬価で、コストの話はここではしないのかもしれませんが、そういった面で、例えば新薬で効き目は同じだけれども安くて、もっとこれから、ずっとこれから飲み続けるのに全体が安くなるとか、そういった社会的なベネフィットみたいなメリットとかあるのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 我々からコストの話を議論するのはなかなかし難いと考えております。先ほど申し上げたように、眠気の発現率がプラセボと本剤5mgでほとんど変わらないとか、食事の影響を気にしなくていいとか、そういう特徴はあるのですが、ほかの抗ヒスタミン薬と比較して何か優れているところがあるかと言われると、そういうことはないと考えておりますので、本剤については、類薬とほぼ同じような薬と言えるだろうと考えています。

○森田委員 では、新薬で変えてみてくださいといったときに、特に何かこれがいいよという説明はできないという話ですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい、そう考えております。

○森田委員 はい、分かりました。分かるけれども、そういうものをどんどんと増やしていっていいのかなと。

○吉田部会長 でも、企業の論理としては、既に同効薬があるにも拘わらず、かなりのコストをかけてまで、同じような効果しかないものは作らないですよね。

○森田委員 はずですよね。

○吉田部会長 ですから、例えばこの薬でも、私はコストのことは詳しくは分かりませんけれども、何かもっと安くできるとか、あるいはもっと短時間にできるとかということがないと、企業のインセンティブが働かないと思うのです。そういう意味でいうと、新薬として出す以上は、前より何か有利な点があるはずだろうということで、先ほどの議論になったのですけれども。

○森田委員 そういうことがもう少し見えたり、透明性が出てくれば、新薬をそれでも増やすということの説明がしやすくなるのではないかなと思ったので、あえてこのような質問をさせていただいたわけです。

○医薬品審査管理課長 おっしゃられるように、このものについては、先行薬としてロラタジンがありますので、それと有効性、安全性等についてはほぼ同じものだろうという認識だろうと思います。ただ、先ほどから言っているように、代謝の影響を受けにくいとかいうことはありますので、その点はある程度はメリットになるかもしれません。

 それからコスト面については私どもの立場では明確なことは言えませんけれども、一つは原薬の成分の量が半分になりますので、その分のコストの削減というのはメーカーの側からはあるのかもしれません。それから値段については、薬価の決め方として、類似の既承認の薬がある場合には、その既承認の薬の値段と比較をして薬価を付けるという仕組みになっておりますし、先行する薬剤が類似薬としてたくさんあれば、そのたくさんあるうちの一番価格の安いものに合わせるとか、そういうルールがありますので、いずれにしてもこれが市場に出るときに、従来のものより高くなることは恐らくないだろうと思います。

○吉田部会長 よろしいでしょうか。

○川上委員 用量について教えていただきたいのですが、ロラタジンの方には、症状により適宜増減の記載があると思うのですが、こちらの薬剤にはそれがなくて5mgで固定されています。臨床試験では5mg10mgでなされていますし、長期投与試験では増量基準に合った患者は94例中66例と、約3分の2の患者が10mgで長期投与試験をされている実態もあります。投与量は5mg固定でよろしいのですか。

○医薬品医療機器総合機構 今回5mgのみを選択した理由としては、慢性蕁麻疹患者さんを対象とした第III相試験で5mg10mgで有効性に差がなかったこと、更にその試験では10mgのほうが眠気の発現率が若干高かったことを踏まえて、5mgのみを選択して申請に至ったという申請者の説明です。

○吉田部会長 ということは10mgを使うと適用量をオーバーするという格好でカットされるというか、そういうことになるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 そうです。

○吉田部会長 それでは困るということを、川上委員は仰りたいのでしょうか。特にないですか。よろしいですか。

○川上委員 既存薬の方は適宜増量が可能だけれども、この新薬は増量ができないので、既存薬のほうが臨床上、使い勝手が良いというような説明にも使われ兼ねないかと思ったので、一応確認した次第です。

○医薬品医療機器総合機構 その可能性もあるかもしれないですが、今回は10mg自体の意義というか、安全性等のリスク・ベネフィットを考慮して、5mgのみが申請に至ったものと考えております。

○吉田部会長 むしろ10mgを設定することのほうが、論理的におかしいということになるわけですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○吉田部会長 分かりました。ほかによろしいですか。ないようですので、そろそろ議決に入りたいと思います。なお、奥田委員、中野委員、前崎委員、山口委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは議題の3に移ります。機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料3、医薬品トレアキシン点滴静注用25mgの製造販売承認の可否等及び医薬品トレアキシン点滴静注用100mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より説明させていただきます。

 本剤の有効成分であるベンダムスチン塩酸塩は、アルキル化作用とプリン代謝拮抗作用を期待して創製されたベンゾイミダゾール誘導体です。現在、本剤は再発又は難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫に対して承認されております。今般、慢性リンパ性白血病(以下、CLLと略す)の効能・効果等の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。

 本剤は、平成24年5月当医薬品第二部会での審議を経て、CLLを予定される効能・効果として、希少疾病用医薬品に指定されております。また、平成2211月に開催された第6回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議での検討を踏まえて、同年12月に厚生労働省から申請者に対して、CLLに対する開発要請がなされております。

 本品目の専門協議に参加いただいた専門委員は、資料15にあるとおり4名の委員です。

 以下、臨床試験成績を中心に、審査の概要を説明いたします。今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、未治療のCLL患者を対象とした海外第III相試験及びCLL患者を対象とした国内第II相試験の成績が提出されました。

 有効性については、審査報告書12ページの本文の下から5行目以降、14ページの上から8行目以降及び31ページの上から13行目以降に記載がございます。未治療のCLL患者を対象とした海外第III相試験において主要評価項目とされた無増悪生存期間について、chlorambucil群に対する本剤群の優越性が示されたこと等から、CLL患者に対する本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 安全性については、審査報告書18ページの上から1行目以降及び31ページの下から12行目以降を御覧ください。CLLに対する本剤の使用時に注意すべき有害事象は、既承認の効能・効果と同様であり、造血器悪性腫瘍の治療に対して十分な知識と経験を持つ医師による有害事象の観察や管理等の適切な対応により忍容可能と判断いたしました。ただし、日本人における検討症例は限られており、製造販売後には使用成績調査の実施が必要であると考えております。以上の審査の結果、機構は慢性リンパ性白血病を効能・効果として本剤を承認することは可能と判断いたしました。

 本剤はCLLに関して希少疾病用医薬品に指定されていることから、CLLについて再審査期間を10年とすることが適当と判断いたしました。また、剤形追加に係る医薬品であるトレアキシン点滴静注用25mgについて、トレアキシン点滴静注用100mgと同様に製剤は劇薬に該当し、生物由来製品又は特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しています。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○半田委員 待ちに待った薬だと思うのですが、もともと慢性リンパ性白血病というのは治癒はなかなか目指せない疾患と言われているのですが、添付文書の臨床成績の書き方について質問させていただきます。

 国外の第III相試験の結果が添付文書の22ページの左側の(2)の下にあります。これは第III相試験のプライマリーエンドポイントであるprogression- free survivalが記載されているのですが、審査報告書の16ページから17ページには、その後のOSの最終解析データが示されており、これでは対照薬との間で差は出ていません。この書き方だと非常によく効くということで、少し偏っているように思えます。もちろん専門家が治療するものですから、その辺は十分に分かっていると思うのですが、一般的な見方すると偏った書き方かなと思います。要するに、いいところだけを書いておいて、その辺のところは全く書いていない。

 プライマリーエンドポイントというのは大事だと思うのですが、臨床成績の表示の仕方というのはどのように考えて、どのように判断されているのか。これはもちろん企業側のことだと思いますが、どうなのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 添付文書の臨床試験成績の項の記載内容は審査チームで確認しており、基本的には主要評価項目の内容を記載しています。

 今回、この疾患に対してOSを見ることも重要だと判断していますので、審査報告書にはOSの結果も記載させていただきましたが、OSの有意差を求めることを目的とした試験ではありませんので、添付文書にOSの結果を記載するまでは不要と考えています。

○半田委員 そういう明確なルールがあるわけですね。ただ、医療側から言うと、もちろん専門家に任せるのですが、添付文書というのは、やはりきちんとした有効性を示すような臨床データ、エビデンスは出しておいたほうがいいような気もするのです。私であれば、これはOSまで入れてもいいのかなと思ったのですが、いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 結果に基づいて判断すべき事項がある場合は、記載することもあるのですが、今回は、添付文書における記載は必要ないと思っています。

OSの結果に関する情報提供が必要とのことですので、資材等での情報提供は可能と考えております。その点については申請者に指示したいと考えております。

○吉田部会長 「ただし、OS (全生存期間)では差がなかった」ぐらいは書いてもいいのではないですか。

○医薬品医療機器総合機構 他の品目においてもPFSを主要評価項目としており、OSに十分な検出力がない場合には、OSの結果を添付文書に記載するよう指示はしていない状況です。

○吉田部会長 17ページの図表を見せてもらうと、90か月までみていますから、全経過が7年半ということになりますが、それで、50%生存期間はというと7年ですよ。要するに、すごくSlow Growingというか、なかなか死なない病気ということが言えます。普通のがんだと、コントロールがどんと下がって差が出るのですが、コントロールの予後も良いので差が出ないのです。かなり長いスパンの病気でOSの差がなくなるというのは乳がんでもそうですが、普通のことだと思うのです。だから、長期生存が多くて、OSには差がなかったと書いても何の不思議もないし、別に効能の限界をあげつらうというような意味があるとも思えませんが、その辺の取り扱いはお任せします。コメントということでご理解ください。ほかにございますか。

○半田委員 この臨床試験は、いわゆる海外の標準の治療薬のクロラムブシルですよね。これを対照にしていますね。ただ、我が国では承認されていません。あとフルダラビンという薬は一応承認されているのですが、国内第II相試験ではフルダラビンです。あとフルダラビンを使えない症例、あと難治性あるいは進行性の症例を対象としているのですが、この未承認薬を対象とした場合の扱いというのは、もちろんこの中にも議論されているのですが、最終的にどのようなお考えで承認されたのかお聞かせください。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘のように第III相試験における対照薬であるクロラムブシルは本邦において承認されておらず、本邦においてはCLLに対して主にフルダラビンが使用されています。また、フルダラビンと本薬を比較した試験成績は得られておりません。

 本邦における標準的な治療としてはフルダラビンを含む治療であると考えており、現状の治療体系を踏まえましても、提出された臨床試験成績に基づいて評価できるのは、フルダラビンが適応にならない患者に対する有効性であると考えています。したがって、本剤はフルダラビンの適応にならない患者に対する薬剤であるとの位置付けと考えており、効能・効果における使用上の注意では、「本剤以外の治療の実施についても慎重に検討し、適応患者の選択を行うこと」という注意喚起をさせていただいております。

○半田委員 要するに、こちらがファーストラインとして使われるということも当然出てくると思うのです。フルダラビンとの間で有効性等が全く検証されていないというところなので、もちろん先ほどから言うように、これは専門家が使うものなので、そこは全部分かってはいると思うのですが、その辺に混乱があるのかなという感じがあります。添付文書では特に何も規定していませんから、ファーストラインから使うこともできるわけですね。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘のとおり、効能・効果においては既治療の患者に限定していません。未治療の患者においてもフルダラビンが適応にならない患者が存在し、海外ガイドラインにおいて、当該患者に対しては、本剤が適応になると推奨されているので、効能・効果において既治療の患者に限定しないこととしました。

○吉田部会長 承認後に、フルダラビンとのHead to HeadでどちらにSurvival Meritがあるかということを、臨床研究として検証されるというのはいいと思うのですが、我々にとってはこれが承認に値するかどうかの判断基準が問題だと思うのです。

 つまり、未承認薬をコントロールに持ってこられたときに、我々はどうしたらいいかということなのですが、差がない場合は非常に難しいとしても、これだけ差が出てしまうと、もうプラセボコントロールだと思えばいいのではないかと。変な話ですが、海外では治療薬なのだけれども、プラセボと思えば、我々としてはすっきりと、PFSでコントロールよりこれだけ有意な差があるから効能として認めていいのではないか、というように整理できるかなとも思ったのですが、駄目ですかね。

 要するに、これだけの差が出れば、コントロールが未承認薬の場合であっても、一般論として有効性ありと判断してもいいのではないかということなのですが、その辺りの考え方は大丈夫ですか。

○医薬品医療機器総合機構 部会長から御説明いただいたとおり、これまでも本邦未承認薬を対照薬とした臨床試験成績に基づき承認した薬剤があります。海外の標準的な治療に対する優越性を示した薬剤について、有効性が示されたと判断できると考えております。

○吉田部会長 ほかにございますか。

○関水委員 今、添付文書の話がありましたが、添付文書で臨床成績というのがあって、部会長が言われたように、survivalでは有効性が特にない。それについて添付文書の22ページの臨床成績を見ると、奏効率は89.7%、マントル細胞リンパ腫については100%、その右側の1年無増悪生存率は70%、90%と書いてあります。

 これはここの段階で議論することではないのかもしれませんが、添付文書を見て、専門の医師が御覧になれば分かるのだということですが、22ページを私が見た限りでは、この薬はすごく良く効くのだという印象を持ちます。それにもかかわらず、サバイバルでは差がないというのは不思議です。これは誤解を招く添付文書になっていませんか。

○医薬品医療機器総合機構 今、御指摘いただきました再発又は難治性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫及びマントル細胞リンパ腫については、初回承認時に審査した内容であり、今回は慢性リンパ性白血病について審査をさせていただきました。

 今回はPFSが主要評価項目ですが、PFSで有意差があった薬剤について、必ずOSで差が付くというものではありませんので、この薬剤を使う専門家から、PFSで有意差があるので、OSも差があるとの誤解を受けることはないと思っております。

 ただし、得られたOSの結果は重要だと考えておりますので、その結果については情報提供させていただきたいと考えております。

○吉田部会長 添付文書というのは、インターネットなどで患者は見ることができるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 公開しておりますので、見ることは可能です。

○吉田部会長 そうすると、誤誘導する可能性はなきにしもですね。ここでは、専門家が見るものだからと言っているけど、患者さんや家族がインターネットで探し出してきて、すごく良い薬だということで、オーバーな期待を持ってしまうとか、あるいはそういう薬を使ってくれる医師を探し回るということが、もし起こったら、具合が悪いと思います。いくら専門家向けだといっても、一般の方も見ることを意識しておいたほうがいいのではないかと思うのですが。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。添付文書の記載については、他の品目との整合性もありますが、申請者にはこの成績に基づいて、不適切な使用がされることがないよう、正しい情報に基づいて使用していただけるよう、対応するように伝達します。

○吉田部会長 もっとクールに言うと、関水先生がおっしゃったように、医師に見せるためなら宣伝的なことというか、「このようにすごい薬なのだ」などと言う必要は全然ないわけで、淡々と書いてあればいいような気がします。従って、利点をことさら強調するような書き方はやめてほしい、と言っておいた方がいいのではないでしょうか。今後の注文ですが、よろしくお願いします。ほかにございますか。

○新井部会長代理 審査報告書を見てのコメントです。まず、これが化合物かどうかもよく分からない、中を見ていくとアルキル化剤かと。では、どこにこの物質の構造があるのかとずっと見ていると、添付文書の中で初めて見えます。

 審査報告書というのは、構造式を書く書かないは、前の2つはどちらもきちんと書いてあったのですが、これは書いていない。何か書かない理由というのがあるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 新有効成分の品目については、構造式等、全て提示しておりますが、今回は既承認の薬剤に対する効能追加ですので、このような薬剤については、構造式等を記載していない状況です。

○新井部会長代理 そういう基準があるということですか。

○医薬品医療機器総合機構 はい。

○新井部会長代理 分かりました。

○関水委員 化合物の構造式について、私は絶対に出すべきだと思います。薬の議論をしているときに、化学構造を見ないで、議論するのは、化学構造について全然興味のない人にとってはどうでもいいかもしれませんけれども、薬について議論する上では極めて大切です。これが全ての基本になっていると言っても過言ではありません。にもかかわらず、化学構造が示されてない。構造を言葉では書いてあるのですが、それから構造式を描くことは、簡単ではありません。医薬品に限らず、構造式は薬に関する有機化学的議論の出発点ですので、この審議会で検討する全ての医薬品について、出すべきだと思います。

○吉田部会長 例えば審査報告書11ページ目というか、頭の所にでもいいからきちんと示して欲しいということですか。

○関水委員 はい。

○吉田部会長 そういうことです。大したことを言っているわけではないのです。ここに載せてくださいというだけです。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただき、ありがとうございます。審査報告書のフォーマットにかかわる内容だと思いますので、検討させていただきたいと思います。

○吉田部会長 ほかにございますか。御意見もないようですので、議決に入ります。なお、山口委員におかれては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 議題4に移ります。山口委員におかれましては利益相反に関する申出に基づき、議題4の審議の間、別室で御待機いただくことといたします。

                                 ( 山口委員退室)

○吉田部会長 議題4について、機構からの概要説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題4、資料4、医薬品オプジーボ点滴静注20mg他の製造販売承認の可否等について、機構より説明させていただきます。

Programmed cell death-1(以下、PD-1と略す)に対する免疫グロブリンG4サブクラスのヒト型モノクロナール抗体であるニボルマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする抗悪性腫瘍剤です。現在、本剤は根治切除不能な悪性黒色腫及び切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対して承認されており、今般、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌の効能・効果の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。平成28年4月時点において、本剤は腎細胞癌に係る効能・効果にて37の国又は地域で承認されております。

 本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は資料15にあるとおり、4名の委員です。以下、臨床試験成績を中心に審査の概要を説明いたします。

 今般の承認申請では、主な臨床試験成績として、国際共同第III相試験(以下、25試験と略す)の成績が提出されました。なお、日本人患者における有効性については、国際共同治験に関する基本的考え方に関する事務連絡等に基づき、25試験における全体集団と日本人集団との間での一貫性の観点からも検討しておりますが、日本人症例数を考慮し、主要評価項目の結果だけではなく、副次評価項目の結果等も踏まえた上で評価しました。

 有効性については、審査報告書6ページの本文の上から5行目以降、9ページの上から1行目以降及び23ページの上から13行目以降を御覧ください。化学療法歴を有する根治切除不能又は転移性の腎細胞癌患者を対象とした25試験において、主要評価項目とされた全生存期間について、プラセボ群に対する本剤群の優越性が示されたこと等から、日本人を含め、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌患者に対する本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 安全性については、審査報告書の12ページの上から14行目以降及び23ページの下から11行目以降を御覧ください。腎細胞癌に対する本剤の使用時に注意すべき有害事象は、既承認の効能・効果と同様であり、がん化学療法に十分な知識と経験を持つ医師による慎重な観察、過度の免疫反応による副作用を考慮した鑑別診断や管理等により、対応可能と判断いたしました。ただし、日本人における検討症例は限られており、製造販売後には、本剤を使用した全例を対象とした使用成績調査の実施が必要であると判断し、承認条件としております。以上のような審査の結果、機構は根治切除不能又は転移性の腎細胞癌を効能・効果として本剤を承認することは可能と判断いたしました。

 本剤は新効能医薬品に該当することから、再審査期間は平成331016日までの残余期間とすることが適当であると判断いたしました。薬事分科会には報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。

○鈴木委員 オプジーボは今非常に注目を集めている超高額薬の一つになります。今回も適応が拡大されようとしていますが、作用機序からすると更に拡大が進むのではないかと思います。価格についてはここは議論する場ではないとされていますが、一方で本年7月27日の中医協で最適使用推進ガイドラインの案が示されて、今年度の試行例としてオプジーボが含まれていますので、それについて少し説明をしていただいたほうが委員の先生方は議論しやすいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○医薬品審査管理課長 御指摘いただきましたように、オプジーボについては非常に高額であるということで、医療保険上の取扱い等について、先般の中医協でも御議論いただいたところです。

 私どもとしましては、中医協でも提案させていただきましたように、最適使用推進ガイドラインを、今後関係する学会等の御協力も頂いて作成していきたいと考えております。その対象の一つとして、今年度は試行的にオプジーボを対象とする予定にしております。

 したがいまして、今回御審議いただいている腎細胞癌についても、この最適使用推進ガイドラインを既承認の適応と同様に並行して作っていきたいと考えているところです。

○鈴木委員 そうすると、中医協では今後最適使用推進ガイドラインを見ながら価格などを議論していくわけですが、薬食審では、最適使用ガイドラインはどのような位置付けになるのでしょうか。それは別途議論を進めておきながら、ここは従来どおりリスク・ベネフィットだけで議論するということではどうなのかと思うのですが、その辺の関係はいかがでしょうか。

○医薬品審査管理課長 今回のオプジーボについては、既に承認された薬剤ですし、最適使用推進ガイドラインについてもこれから検討するところですので、今この場でどういったものということをお示しするのは困難ですが、いずれ作成が進んだ段階で、1度御報告はさせていただきたいと思います。

 それから、今後新しく申請されるような薬剤の中でも、特に新規作用機序の医薬品であって、有効性の発現の仕方、安全性プロファイルが既存の医薬品と大きく異なるようなもので、多くの患者に広く使われるようなもの、それが推定されるようなものについては、承認審査と並行して、このガイドラインを作成していきたいと考えておりまして、そのための体制の整備等も必要だと考えております。

○鈴木委員 ということは、対象となる薬の場合には、最適使用推進ガイドラインを参考にしながら、ある程度ここの審議を進めていくということになると理解してよろしいですか。

○医薬品審査管理課長 はい、そのように理解していただいて結構です。

○鈴木委員 要するに、問題になるのは適応をここで決めた場合、価格は先に決めるにしても、そこが従来のようにはいかず、これまでは広く適応を認めていたわけですが、それが先にいって最適使用ガイドラインで、それと違った適応が推奨された場合には、中医協で保険適用とするものと、保険適用にならないものができてしまい、いろいろな問題が生じるので、それはやはり一体で、大きく言えば保険局と医薬・生活衛生局、もっと下部で言えば、中医協と薬食審が連携しながら、この議論は進めていく必要があると思いますので、よろしくお願いします。

○医薬品審査管理課長 分かりました。御指摘のとおりですので、私どもも医薬・生活衛生局ですが、保険局とも連携をして進めていきたいと考えております。

○吉田部会長 今、鈴木先生がおっしゃっていることは、今回、腎癌への適応拡大を認めるとしても、その際には最適使用推進ガイドラインを遵守してほしいという希望を、例えば部会として出せるかどうかということを含めての御質問だと思うのです。そこを、あえて言うのか、言わなくても分かるという話なのか、我々の立場としては、ある程度意思表示をしたほうがいいのか、管轄外なのだから黙っているべきなのか、その辺はいかがでしょうか。

○医薬品審査管理課長 この場で御意見を頂ければ、私どももそれを受け止めて、ガイドラインの作成をしていきたいと思っております。ただ、まだ現物ができておりませんので、その点は御容赦いただきたいと思います。

○吉田部会長 一つお話しをさせて頂くと、私どものような青森の地方病院でも、9月に9億円弱の補正予算を組まざるを得なくなったのですが、そのうち8億円はオプジーボの購入費です。補正だけで8億ですから全額でとなると、ものすごい額になります。ということで、この薬は有効性もさることながら、経済的にも革命的と言えます。現在、肺がんに次いでメジャーな癌種への適応拡大が進行中ですが、今後の展開を考えると、本薬の適正使用については確かにきちんとした対応が図られるべきだろうと思います。薬価や適正使用は、本来我々の業務外の事案ですが、私としては鈴木委員の言われるように、承認に際しての希望を、部会としてのコメントとして出していきたいとは思うのですが、いかがでしょうか。

 よろしいですか。特に反対がなければ、鈴木委員の言われるように、そういったガイドラインに従って、適切に取り計らってほしいということを希望として出したいと思います。よろしいでしょうか。では、そういうことで一つよろしくお願いしたいと思います。ほかにいかがでしょうか。

○関水委員 私としては、どうしてそんなに高いのか非常に疑問に思うのですが、それはそれとして、これはプラセボで試験をしていませんが、何か事情があるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 冒頭で私の説明に間違いが1点ございましたので、訂正させていただきます。対照群をプラセボと説明してしまったのですが、今回の対照群はエベロリムスという薬剤です。

○関水委員 プラセボをやらなかった理由、あるいはやらなくてもよい理由というのは、何かあるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 この試験の対象患者が腎細胞癌の2次治療以降という患者で、その患者に対して治療効果が全く期待できないプラセボを投与するのは倫理的な問題もありますので、一般的に広く、標準的に使われているエベロリムスが選択されています。

○関水委員 私は薬の評価として、プラセボがないというのは問題があると思うのです。倫理的に問題があるので、プラセボのデータがないというのは、当然なのですか。このようなプラセボのデータがない薬を使いたくないという人はたくさんいると思います。

○医薬品医療機器総合機構 説明を補足させていただきます。今回対照群のエベロリムスという薬剤は、プラセボに対する優越性が検証された薬剤です。プラセボに対してエベロリムスの優越性が検証されていて、そのエベロリムスに対して本剤の優越性が検証されておりますので、プラセボと本剤を直接比較しなくても有効性は説明できているものと考えております。

○関水委員 私はそういう論理は絶対に認めないという立場からあえて申し上げますが、少なくともそのことは書いたほうがいいですね。こういう論理で、これの有効性があると考えられると。エベロリムスはプラセボより有効だということについては、文献を引用して説明することは可能であると思います。

○医薬品医療機器総合機構 はい。審査報告書の9ページの7.R.2.1「対照群の設定について」をご覧ください。先ほど述べたエベロリムスが、当時、日本と諸外国の診療ガイドラインにおいて、標準的な治療として推奨されていたことから、対照群として設定された旨を記載させていただいております。

○関水委員 それは私が議論していることと違います。今指摘して下さった箇所に、「プラセボはエベロリムスよりも有意な差がある」というデータが示されているのですか。

○医薬品医療機器総合機構 プラセボと比較してエベロリムスの優越性が検証されたというデータはありますが、審査報告書には記載していません。

○関水委員 それを書くべきだと言っているのです。ここに書いてあるエベロリムスというのは「推奨されている」と書いてあります。推奨されているというのと、プラセボでやった実験があるというのは意味が違います。

○医薬品医療機器総合機構 おっしゃる点は理解できました。確かに、このガイドラインの中には書かれております。我々は審査報告書をなるべく簡潔に記載したいと思い、現在はこういう記載をさせていただいているのですが、先生の御指摘を踏まえまして、今後は書き方についてより明確になるような検討をさせていただきたいと思っています。

○関水委員 プラセボに比べて優位性があるということは、先ほど医薬品審査管理課長が言われたように、新薬として承認されるためには、ないと全体に駄目なわけですね。ですから、これが担保されているという論証が、読んだ人に明確であるべきだと思うのです。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございました。御意見を頂戴いたしましたので、今後検討させていただきます。

○吉田部会長 書き直しをよろしくお願いいたします。これはエベロリムスが「推奨されていた」ではなくて、「エベロリムスのプラセボに対する優越性が確認されていたことから」を書けばいいということです。ほかにございますか。

○鈴木委員 私どもの中医協の委員に報告しなければならないので確認したいのですが、最適使用推進ガイドラインについては、できたものを遵守するようにという意見を出すということもありますし、ガイドラインに対してもう少しこういうことをしたらいいのではないかという意見も、ここで出していくと理解してよろしいですか。

○医薬品審査管理課長 そのような機会を設けたいと思います。

○鈴木委員 分かりました。

○吉田部会長 今後は恐らく、使い方が大きな問題になると思います。日本ではこれまで、画期的な新薬、例えばCPT-11とかイレッサが出たときには、夢の新薬として乱用され、薬害問題となって誰かが死んでいます。適応をきちんと守らないからなのですが、オプジーボの場合もいろいろな合併症が報告されていますので、ガイドラインをかなりきっちりと守らせることが不可欠と思います。ほかにございますか。

○川上委員 臨床試験の結果についてです。日本人の部分集団の結果が、今回の適応では全体の結果と乖離があるというか、見かけ上は効いていないような傾向になっており、それについては事後解析をされて全体結果と大きな傾向は変わらないという結論が得られていると思います。

 添付文書の臨床データの所を見ると、単純な日本人部分集団のカプランマイヤーしか載っていないので、そういった背景が分かりにくいかと思うのですが、添付文書の記載はこの程度でもよろしいというお考えでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 添付文書については、先ほどの議論もありましたが、なるべく簡潔に試験成績を書いているところです。添付文書以外にも、患者、医療従事者向けに、資材等を作りますので、先生の御指摘を踏まえて、その中で、どういうプロセスで日本人でも期待できると考えたのかについて説明するような工夫をさせていただきたいと思います。

○吉田部会長 よろしいですか、ほかにございますか。それでは意見もないようですので、議決に入ります。なお、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。別室で御待機されている山口委員をお呼びください。

                                 ( 山口委員入室)

○吉田部会長 それでは議題5に移ります。事務局から概要説明をお願いいたします。

○事務局 議題5、資料5、クリゾチニブを希少疾病用医薬品として指定することの可否について事務局より御説明いたします。資料の評価報告書のタブです。報告書1ページ中段です。申請者はファイザー株式会社、予定される効能・効果はROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌となります。

 まず、1ページ目の対象患者数について御説明いたします。本邦における肺癌の総患者数は146,000人と報告されております。そのうち非小細胞肺癌は80%程度を占めるとされています。更にROS1融合遺伝子を有する患者は非小細胞肺癌の1~2%と報告されていることを踏まえると、ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌患者数は1,2002,300人と推定され、患者数が5万人未満という基準を満たしているものと考えております。

 次に2ページ目からの医療上の必要性について御説明いたします。ROS1融合遺伝子は融合遺伝子やEGFR遺伝子変異と相互排他的な変異と報告されています。従って現状としてROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌に対してはEGFR遺伝子変異やALK融合遺伝子を有しない非小細胞肺癌と同じ治療が行われており、1次治療として白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法、二次治療としてドセタキセル等による化学療法が行われていますが、予後不良です。本剤はROS1のチロシンキナーゼを阻害する作用を有しており、ROS1融合遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌患者に対して高い有効性が期待できます。以上より本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に開発の可能性について御説明いたします。本邦では化学療法歴のない、または1~3次治療の治療歴のあるROS1融合遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者を対象に、本剤の有効性及び安全性を検討することを目的とした国際共同第II相試験が実施中であり、中間解析の結果、奏効率は69.3%でした。以上より本剤の開発の可能性は高いと考えております。以上より希少疾病用薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。よろしく御審議のほどおの願いいたします。

○吉田部会長 それでは委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。患者数が1,200人~2,300人ぐらいということと、ROS1シグナル伝達経路の阻害により有効性が期待できる。奏効率が69%もあるということと、アメリカでもう既に承認されているということですので、3条件はクリアしていると思われまますが、いかがでしょうか。よろしいですか。御意見ないようですので、議決に入りたいと思います。なお前崎委員、山口委員におかれましては利益相反に関する申し出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは議題6に移ります。議題6につきまして事務局からの概要説明をお願いします。

○事務局 議題6、資料6、ロミデプシンを希少疾病用薬品として指定することの可否について事務局より御説明いたします。資料の評価報告書のタブです。報告書1ページ中段です。申請者はセルジーン株式会社。予定される効能・効果は末梢性T細胞リンパ腫となります。まず、1ページの対象患者数について御説明いたします。末梢性T細胞性リンパ腫の総患者数は2,000人以下と報告されており、患者数が5万人未満という基準を満たしているものと考えております。

 次に1ページ下段からの医療上からの必要性について御説明いたします。未治療の末梢性T細胞リンパ腫に対しては、シクロホストファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用投与を中心とした治療が行われていますが、大部分の患者で再発することが報告されています。また再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫については多剤併用化学療法、CCR4陽性例に対してはモガムリズマブの単独投与、CD30陽性の未分化大細胞リンパ腫に対しては、ブレンツキシマブ、ベドチンの単独投与が実施されていますが、いずれの治療においても予後不良であり、新規の治療薬が求められております。以上より本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に開発の可能性について御説明いたします。本邦では再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫患者を対象に本剤の有効性及び安全性を検討することを目的とした第I/II相試験が実施中であり、当該試験の主要評価項目とされた奏効率は42.5%でした。また海外において未治療の末梢性T細胞リンパ腫患者を対象とした第III相試験が実施中であり、当該試験結果を踏まえて本邦での未治療の末梢性T細胞リンパ腫に対しても開発を検討する予定で、本剤の開発の可能性は高いと考えております。

 以上より希少疾病用薬品の指定の3要件を満たしていると考えております。よろしく御審議のほどお願いいたします。

○吉田部会長 はい、この本薬についても患者数が2,000人以下で、T細胞リンパ腫に対しては新薬の開発が望まれているということ。それから開発の可能性についても国内、国外で試験が既に開始されている。CRも出ているという状況のようです。特に御意見ございませんか。それでは議決に入りたいと思います。なお中野委員、山口委員におかれましては利益相反に関する申し出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは議題7に移ります。議題7につきまして事務局からの概要説明をお願いします。

○事務局 では議題7について御説明いたします。議題7、資料7のRO5534262を希少疾病用薬品として指定することの可否について、事務局より御説明いたします。資料の評価報告書の1ページ中段です。申請者は中外製薬株式会社で、予定される効能・効果はインヒビターを保有する先天性血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制となります。

 まず、1ページの下段の対象患者数について御説明いたします。平成27年度の全国調査において、本邦における先天性血液凝固第VIII因子欠乏症、すなわち血友病Aの患者は4,986名であり、インヒビターを保有する患者はそのうち102名と報告されております。以上から患者数が5万人未満という基準を満たしているものと考えております。

 次に2ページ、医療上の必要性について御説明いたします。インヒビターを保有する血友病A患者の治療にはインヒビターが第VIII因子を阻害するということなので、第VIII因子を迂回して血液凝固を行うという、いわゆるバイパス治療、バイパス製剤が用いられております。バイパス製剤は出血時の止血を目的とした投与の他、出血の予防をも目的とした定期的な投与にも用いられておりまして、本邦では活性化プロトロンビン複合体製剤である「ファイバ」が定期的な投与が可能なバイパス製剤として承認されています。当該製剤は血漿分画製剤であることから、原材料由来の感染症リスクが潜在的に存在をしています。

 一方、本剤は第VIII因子の機能を代替する遺伝子組換えヒト化二重特異性抗体です。遺伝子組換体なので、適切に管理されたチャイニーズハムスターの卵巣細胞以外のヒト動物由来原料が製造行程内に使用されていないということから、原材料由来の感染リスクが極めて低減されていると言える製剤です。既存の製剤と比べて高い安全性の確保が期待されているということから、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に本剤の開発の可能性について御説明いたします。本邦ではインヒビター保有及び非保有の血友病A患者を対象に本剤の有効性・安全性を検討することを目的とした国内第I相、第II相試験が実施されております。当該試験で年間出血頻度がインヒビターを保有する血友病A患者11例全てで減少しており、平均年間の出血頻度は28.4回から2.3回に減少しているという結果が得られています。

 安全性についても、重篤な有害事象3件が報告されているうち、本剤との因果関係は全て否定されています。現在の第III相試験は安全性・有効性を検討することを目的として現在実施中です。以上より、本剤の開発の可能性は高いと事務局では考えております。

 以上、希少疾病用薬品の指定の3要件を満たしていると考えておりますが、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

○吉田部会長 本薬も対象患者数が102名ということと、あるいは遺伝子組換えヒト化二重特異性抗体であり、原材料由来の感染症伝播リスクが極めて低減されている。開発については現在、国際共同第III相試験が展開中であるということで、3条件をクリアしているように思われますが、委員の先生方から御意見、御質問等々ございますか。ないようでございますので、議決に入りたいと思います。なお山口委員におかれましては利益相反に関する申し出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは議題8に移ります。議題8につきまして事務局からの概要説明をお願いします。

○事務局 それでは審議事項議題8、ピノルビン注射用30mgの毒薬または劇薬の指定の要否について御説明申し上げます。事前に配布した資料に一部誤植がありましたので、本日差し換えの資料を配布しております。それでは資料8、3ページ、概要です。本剤の有効成分のピラルビシンは抗悪性腫瘍薬です。こちらは既承認薬としてピノルビン注射用10mg、同20mg。それからテラルビシン注射用10mg、同20mgがあります。こちらについては現行の薬機法の施行規則におきまして、1バイアル中ピラルビシンとして20mg力価より多い場合には毒薬として指定がされており、20mg力価以下の場合には劇薬として指定されております。

 今般、膀胱癌等に対して承認されている現状の治療方法からすると、臨床では1回当たり30mgを投与するケースが多いことから、今般、剤形追加ということで入れ目違いのピノルビン注射用30mgが申請されております。こちらについては現行の規定上からは毒薬に該当します。しかし当該製剤でのLD50値は換算すると約480mg/kgとなり、毒薬指定基準に当たらない値を示すことになります。そのため当該製剤を3.に示すような施行規則の改正により毒薬の指定から除外して、劇薬とすることが適当と考えております。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 それでは委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。何かございますか。川崎先生、特に何かございますか。よろしいですか。特に御意見ございませんか。なければ議決に入りたいと思います。なお前崎委員、山口委員におかれましては利益相反に関する申し出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは報告事項に移ります。報告事項について説明をお願いします。

○事務局 事務局より報告事項1~6について御報告いたします。お手元の資料9~13を御覧ください。報告事項議題1、医薬品アフィニトール錠2.5mg及び同錠5mgの製造販売承認事項一部変更承認についてです。本剤は哺乳類ラパマイシン標的タンパクを介した細胞増殖シグナル等を阻害し、腫瘍細胞の増殖を抑制すると考えられている抗悪性腫瘍剤であり、現在は根治切除不能又は転移性の腎細胞癌、膵神経内分泌腫瘍、結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫、結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫及び手術不能又は再発乳癌の効能・効果で承認されております。

 今般、ノバルティスファーマ株式会社から効能・効果の膵神経内分泌腫瘍を、神経内分泌腫瘍へ変更する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、本品目を承認して差し支えないと判断いたしました。

 続いて報告事項議題2、医薬品イナビル吸入粉末剤20mgの製造販売承認事項一部変更承認について御報告します。本剤はラニナミビルオクタン酸エステル水和物を有効成分とする吸入剤であり、現在はA型またはB型インフルエンザウイルス感染症の治療及びその予防の効能・効果で承認されています。今般、第一三共株式会社よりA型またはB型インフルエンザウイルス感染症の予防の効能・効果に対する用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。機構における審査の結果、本品目を承認して差し支えないと判断いたしました。

 次に報告事項議題3、医薬品スピリーバ1.25μg、レスピマット60吸入の剤形追加及び同2.5μgレスピマット60吸入の製造販売承認事項一部変更承認について御説明いたします。資料11です。本剤の有効成分チオトロピウムは長時間作用性抗コリン薬であり、チオトロピウム5μg1日1回投与の用法・用量として重症持続型の気管支喘息に関する効能が平成26年に承認されております。当時の審査において、重症度が比較的軽度の喘息患者に対しては、チオトロピウム2.5μg1日1回投与とすることが適切と判断したものの、2.5μg1日1回投与が可能な製剤は開発されていなかったことから、早急に開発するよう申請者に指示しておりました。今般、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社より2.5μg1日1回投与が可能なスピリーバ1.25μgレスピマット60吸入の剤形追加とともに用法・用量及び効能・効果を変更する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。

 続いて報告事項議題4、医薬品ゼローダ錠300の製造販売承認事項一部変更承認について報告いたします。本剤は手術不能又は再発乳癌、結腸癌における術後補助化学療法、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌、胃癌を効能・効果として承認されております。本剤については医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成28年2月26日に開催された本部会における事前評価を踏まえて、今般、中外製薬株式会社から直腸癌における補助化学療法の効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、本品目を承認して差し支えないと判断いたしました。

 最後に報告事項議題5、医薬品バリキサ錠450mgの製造販売承認事項一部変更承認について報告いたします。本剤はバルガンシクロビル塩酸塩を有効成分とする製剤であり、現在は後天性免疫不全症候群患者等におけるサイトメガロウイルス感染症の治療に関する効能・効果で承認されております。本剤については医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成28年2月26日に開催された本部会における事前評価を踏まえて、今般、田辺三菱製薬株式会社より造血幹細胞移植を除く臓器移植におけるサイトメガロウイルス感染症の発症抑制に係る効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。機構における審査の結果、本品目を承認して差し支えないと判断いたしました。以上、長くなり恐縮ですが、事務局からの説明は以上でございます。

○吉田部会長 それでは委員の先生方から御質問がありましたらお願いします。効能・効果、用量の追加とか、未承認薬の公知申請とかですが、よろしいですか。

 それでは報告事項については御確認いただいたものといたします。ということで本日の議題は以上でございます。事務局から何か報告はありますでしょうか。

○事務局 次会の部会は9月9日()、午前9時半から開催させせていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 それでは御苦労さまでございました。今回の部会では、新薬の開発、審査に関する考え方が幾つか整理できたような気がします。御協力ありがとうございました。それではこれにて終了させていただきます。

 


(了)

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課 課長補佐 清原(内線2746)

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