ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 平成28年度化学物質のリスク評価検討会> 平成28年度 第2回化学物質のリスク評価検討会 議事録(2016年7月7日)




2016年7月7日 平成28年度 第2回化学物質のリスク評価検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成28年7月7日(木)10:00~


○場所

経済産業省別館114各省庁共用会議室(1階)


○議事

○穴井化学物質評価室長 定刻となりましたので、ただいまより第2回化学物質のリスク評価検討会を開催いたします。本日はお忙しい中、御参集いただき、誠にありがとうございます。本日は内山委員、原委員が所用により御欠席です。なお、本日の会議ですが、リスク評価委員会の各委員の先生方に加え、特別参集者として櫻井治彦先生と「労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会」との連携を、より一層密にするという必要性から、圓藤吟史先生にも御参画いただいております。

 それでは、以下の議事を座長の名古屋先生にお願いします。よろしくお願いします。

○名古屋座長 それでは、事務局から資料の確認をよろしくお願いいたします。

○穴井化学物質評価室長 上で1点留めになっている1ページ目の議事次第の裏側に資料一覧があります。資料1として「オルト-トルイジンに対する今後の対応()」、「オルト-トルイジンに対する今後の対応()-オルト-トルイジンリスク評価書-」と目次は書いております。これが29ページまでつづられております。それに続いて31ページから参考資料1で開催要綱、39ページから参考資料2として、平成19年度のリスク評価検討会の報告書の抜粋、最後に参考資料3として47ページから「事業場における発がん性のおそれのある化学物質に係る健康障害防止対策の徹底について」という通達を載せております。以上です。

 もし何かありましたら、事務局にお申し入れ願います。よろしくお願いします。

○名古屋座長 資料の確認等よろしいでしょうか。それでは、本日の議事に入りたいと思います。事務局から、資料1「オルト-トルイジンに対する今後の対応()」についての説明をお願いします。

○米倉化学物質情報管理官 3ページからの資料1を御覧ください。「オルト-トルイジンに対する今後の対応()」です。オルト-トルイジンリスク評価書となっております。5ページからが具体的な内容となっております。1の物理化学的性質の(1)基本情報です。名称オルト-トルイジン、別名2-アミノトルエン、2-メチルアニリン、化学式としてはC7H9Nです。構造式は図のとおりです。分子量は107.15CAS番号が95-53-4となっております。労働安全衛生施行令別表第9、名称等表示・通知すべき有害物とされております。

(2)の物理的化学的性状です。外観ですが、特徴的な臭気のある無色の液体、空気や光にばく露すると帯赤茶色になります。比重は1.01です。沸点は200℃、融点はα型が-16℃、β型が-24.4℃となっております。蒸気圧は34.5Pa、これは25℃のときの値です。蒸気密度は3.7、引火点は85℃、水溶解度は100mLに対し1.62g、オクタノール/水分配係数は1.43となっています。

(3)の生産・輸入量、用途です。製造・輸入量は2014年のデータですが、840tとなっております。用途としてはアゾ系及び硫化系染料、有機合成、溶剤、サッカリンとなっています。

2の有害性情報です。(1)の発がん性です。こちらはヒトに対して発がん性があると評価されております。根拠としてはIARCのデータですが、アメリカのゴム添加剤製造工場の1,749人を対象としたコホート調査等でヒトで膀胱がんを起こす十分な証拠があり、実験動物(マウス、ラット)で発がん性の十分な証拠がある。発がんには代謝活性化、DNA付加物形成、DNA損傷が関係するということです。

 次のページ、各機関の評価です。IARCについては、今、説明したとおりですが、以前は2Aとされていましたが、2012年に1となっております。ACGIHにおいては1996年にA3と区分されております。産衛学会は2016年に改訂提案がされており、第1群とされております。DFGにおいては2006年にカテゴリー1とされております。閾値の有無ですが、以前は「あり」とされていたのですが、現在は「なし」とされております。根拠としては遺伝毒性があると判断されたことによります。

(2)の発がん性以外の情報です。眼に対する重篤な損傷性/刺激性については「あり」です。根拠としては、ウサギで強い眼の刺激と角膜の腐食が報告されています。なお、ヒトでは情報はありません。皮膚感作性、呼吸器感作性ですが、報告はありません。生殖毒性については判断できないとされております。根拠として、現行の基準に照らして妥当な試験報告はないが、ラットに13週間、5,000ppmを混餌投与した試験で、精細管の変性、精巣相対重量の増加が見られております。遺伝毒性、発がん性があること、メトヘモグロビン血症の二次的影響を考慮すると、生殖毒性の可能性があるとされております。神経毒性は「なし」です。根拠ですが、頭痛、疲労、めまい、悪心などの症状は血中メトヘモグロビン濃度の上昇に伴い認められる症状であり、神経毒性の根拠とはしておりません。遺伝毒性は「あり」とされております。根拠ですが、in vitroでは細菌による変異原性試験については、条件によるプラス又はマイナスの報告があるが、染色体異常、小核及び異数性については陽性であること、in vivoではラットで末梢血赤血球に小核を、肝細胞にDNA結合を誘起し、マウスでは骨髄細胞に姉妹染色分体交換を起こすことが根拠とされているところです。

(3)の許容濃度等です。ACGIHではTWA2ppmSkin1982年に設定されております。オルト-トルイジンへの職業ばく露に対するTLV-TWAとして、アニリンとの類似性及び間接的ニトロベンゼンとの類似性により、2ppmを勧告するとされています。この値は、主としてメトヘモグロビン血症を、また、皮膚、眼、腎臓及び膀胱の刺激を防止するために設定するとされております。オルト-トルイジンは皮膚吸収が大きく、全身に健康影響を及ぼすと報告されていることから、Skinの表記を指定しております。オルト-トルイジンはメトヘモグロビン誘起物質として、BEI(ヘモグロビンの1.5)が勧告されております。

 日本産業衛生学会については、1ppm、経皮吸収が1991年に提案されております。日本産業衛生学会はすでにオルト-トルイジンについて、発がん物質第2Aに分類しております。したがって許容濃度はできるだけ低濃度に保つこととしてもよいが、アニリンの許容濃度が現行1ppmであること、また、実際的な管理面を考慮して許容濃度は1ppm、皮膚吸収注意を付して提案されているところです。

 それからMAKです。こちらはH1986年に設定されており、2007年に追補されております。BAR(生物学的モニタリング)ですが、尿1L当たり0.2μgオルト-トルイジン(加水分解後)が、2009年に設定されております。オルト-トルイジンは実験動物で発がん性を示し、ラットで膀胱がんが見られております。コホート調査ではオルト-トルイジンにばく露した労働者で膀胱がんの発現率が有意に高く、発がん性はカテゴリー1に分類されております。オルト-トルイジンは他の芳香族アミンと同様に皮膚に容易に浸透し、皮膚保護クリームの使用により皮膚浸透が更に高くなるとされております。オルト-トルイジンは安全なばく露レベルが算定できない発がん物質である。ほんの少量が経皮吸収されても発がんリスクの増加は考慮すべきであり、記号表示H(経皮吸収)は保持するとされています。オルト-トルイジンはヒト及び動物で遺伝毒性のある代謝物に代謝される。ラット13週反復投与試験で精細管の変性、精巣相対重量の増加が見られたとのことです。オルト-トルイジンはin vitroで染色体異常、小核及び異数性を誘導し、in vivoではラットで末梢血赤血球に小核を、肝細胞にDNA結合を起こし、マウスでは骨髄細胞に姉妹染色分体交換を起こす。これらのデータから生殖細胞変異原性はカテゴリー3Aとされております。

NIOSHについてはCaSkin]、OSHAについてはPEL5ppm,Skin、それからUK WEELではTWA0.2ppm,Skとされております。

 続いて、3のオルト-トルイジンの製造・取扱状況です。こちらは平成27年度現在でオルト-トルイジンを製造・取り扱っている27事業場について、全国の労働基準監督署が調査・把握した結果です。こちらは13ページも御覧いただきつつ確認してください。対象事業場におけるオルト-トルイジンの主な用途ですが、「他の製剤等の原料としての使用」です。年間の製造・取扱量については「500kg未満」が15%、「500kg以上1t未満」が11%、「1t以上10t未満」が44%、「10t以上100t未満」が15%、「100t以上」が15%でありました。製造・取扱作業の従事者数については「5人未満」が41%、「5人以上10人未満」が30%、「10人以上20人未満」が15%、「20人以上」が15%でした。また、オルト-トルイジンを取り扱う作業ですが、「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」が70%、「サンプリング、分析、試験又は研究の業務」が19%、「充填又は袋詰めの作業」が11%であり、発散抑制装置、保護具の使用状況は、こちらは複数回答ですが、「密閉化施設」が28%、「局所排気装置」が14%、「呼吸用保護具」が28%、「保護衣等」が30%です。

8ページに戻ってください。4です。独立行政法人労働者健康安全機構、労働安全衛生総合研究所による福井県の化学工場における膀胱がん発症に係る調査結果の概要を記載しております。詳細については別添3ですが、本文中の内容で説明します。1つ目の○ですが、過去の取扱状況について関係者に聞き取りした結果です。オルト-トルイジンを含有する有機溶剤でゴム手袋を洗浄して繰り返し使用することは、多くの労働者が行っていたこと、夏場は半袖の化学防護性のない一般的な服装で作業していたこと、作業の過程で、オルト-トルイジンを含有する有機溶剤で作業着が濡れることがしばしばあったこと、作業着が濡れた直後にシャワー等で体を洗い流さなかったこと、一部の作業について直接手指でオルト-トルイジンに触れていた等、オルト-トルイジンに皮膚接触する機会があったものと推察しています。また、事業場では20年近くにわたり、有機溶剤に関して労働者の尿中代謝物測定を実施するとともに、作業環境測定を実施しており、これらの結果から、当時は有機溶剤に関し、呼吸器からの経気道ばく露を含めたばく露レベルが高かったことが推察されております。そのためオルト-トルイジンについても皮膚からのばく露だけでなく、経気道ばく露があったことが推察されております。

2つ目の○です。オルト-トルイジンの取扱いに係る作業の再現において、作業環境測定や個人ばく露測定を実施したところ、許容濃度と比べて十分小さい濃度であったことから、オルト-トルイジンの経気道ばく露は少ないと推察されております。また、粉体の製品については保護具の着用状況等から体内に取り込んだ量、経気道や経口については、小さいと推察されております。さらにオルト-トルイジン以外の芳香族アミンについては、呼吸器から吸い込む量、経気道ばく露は少ないと推察されております。

 続いて、3つ目の○です。聞き取りや作業方法等の確認により、原料としてのオルト-トルイジンの仕込み作業、製品の洗浄作業、乾燥機への投入作業等において経皮吸収の危険性が確認されております。

 その次の○です。過去の作業を再現した調査に参加した多くの作業員について、就業前と就業後にそれぞれ尿中代謝物を検査した結果、オルト-トルイジンが増加しており、ゴム手袋に付着していたオルト-トルイジンの量と、就業前後の労働者の尿中のオルト-トルイジンの増加量に関連が見られております。

 最後の○です。作業に使用したゴム手袋を、オルト-トルイジンを含む有機溶剤で洗浄し、再度使用することを繰り返し行ったため、内側がオルト-トルイジンに汚染されたゴム手袋を通じ、オルト-トルイジンに皮膚接触し、長時間にわたり労働者の皮膚から吸収、経皮ばく露していたことが示唆されております。

 今まで説明した14をまとめたものが、5のオルト-トルイジンに対する今後の対応です。オルト-トルイジンはIARC(国際がん研究機関)における発がん性分類はGroup1(ヒトに対して発がん性がある)となっております。

 福井県内の化学工場で発生した膀胱がんに関する労働安全衛生総合研究所による災害調査において、現在の作業及び過去の作業におけるばく露防止対策が不十分であり、労働者が当該物質にばく露していたということが示唆されております。

 また、全国の労働基準監督署において、オルト-トルイジンを製造し、又は取り扱う事業場の状況を確認したところ、相当数の事業場において多くの労働者がオルト-トルイジンを取り扱う作業等に従事している実態が明らかになっております。このため、職業がんの予防の観点から、オルト-トルイジンの製造・取扱作業について、制度的対応を念頭に置いて、「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」等において、具体的措置を検討することが必要であるということで、案としております。以上です。

○名古屋座長 その他17ページ以降は、労働安全衛生総合研究所で調査した結果が出ているとのことです。我々もリスクの中では、この資料についてということだと思いますが、39ページにあるように、平成19年にオルト-トルイジンのリスク評価をしていたのですが、42ページを見ていただくと分かりますように、二次評価値に比べてばく露がものすごく低い。2桁低いということで初期リスク評価で終わったと思います。そのときに経皮吸収がありますから、事業所に対しては経皮吸収を気を付けてくださいということで、リスク評価は終わったと思います。そうした中で調査の所を見ていただければ分かりますが、ばく露が低いにもかかわらず、こうしたことが起こっているということで、いろいろ調査していただいてみると、どうも経皮吸収ではないかという疑問が報告されたということだと思います。それらをまとめて、これに関して御質問等ありましたら、どうぞよろしくお願いします。今日は、安衛研の調査については詳しい説明はしませんが、鷹屋先生は調査に行かれたのですよね。

○鷹屋委員 行きました。

○名古屋座長 もし何か、これについて御質問等ありましたら、行かれた鷹屋委員がいますので、御質問等していただければ有り難いです。

 ちょっと聞いていいですか。9ページに今後の対応という、多分これは間違いなく健康障害防止措置の検討が必要になるのだと思いますが、ただ、全国の労働基準監督署において調べてみると、多くの労働者がオルト-トルイジンを扱う作業等に従事している実態が明らかになったと書いてあるのですが、結局、疾病が起こっているのは福井しかない。ということは、ほかの所の取扱いと福井と、何か違うことがあったのか、同じなのか。その辺は分かるのですか。ここに書かれている文章から考えてみると、多くの労働者がオルト-トルイジンを取り扱っているということだけに。

○穴井化学物質評価室長 設備や作業実態など、ほとんど同じような設備を使って同じような作業をしているということは、ここから分かっているということで、それから類推すると、気を付けなくてはいけないのではないかというのが最後の結論になっているということです。

○名古屋座長 福井が特別な作業をしているわけではなくて、おしなべて同じ作業していたのでしょうということでよろしいですか。分かりました。ほかに何か。

○津田委員 いつ頃から使われ始めたのでしょうか。まだ、がんがそれほど発生していないといっても、例えばアスベストみたいに40年もかかることがあるから、いつ頃からというのは大事だと思いますが。そうでないと、今、発がん性が無いといっても、それはそうであるかどうか、はっきり分からないと思います。

○奥村化学物質対策課長 説明いたします。分かっている範囲では昭和63年より後には使われております。ちょっとその前も使われていると思うのですが、確認します。

○若林中央労働衛生専門官 事業場の調査を行った際に、オルト-トルイジンの取扱いの期間についても聞いております。ちょっと精緻にお話というのは難しいかもしれないですが、かなり昔からということであれば、今、直近で見えるものとしては、昭和29年から扱っている事業場もあるということは伺っております。

○名古屋座長 昭和29年。

○若林中央労働衛生専門官 実際、やはり染料や顔料ですので、先生方、御案内のとおり、昔から国内でいろいろな用途で使われているということもあったのではないかと思っております。

○名古屋座長 例えば胆管がんなどもそうだったのですが、福井で扱っている、要するに作業者がそれを扱ってから何年後に発症したということがある程度出ていて、扱っている年数も8年なら8年で出ていて、要するに濃度はどれぐらいでしょうという形が出ているのです。この場合は、各発症している人はどれぐらいの年月、そういうものを扱って発症しているかというデータはあるのですか。取扱いしている勤務年数というか、どれぐらいオルト-トルイジンを扱っているということはないのですか。

○奥村化学物質対策課長 あります。今、福井の事業場で発症している方は、1991年から使っている方、1990年から使っている方などがいます。

○名古屋座長 27年。ほかにどなたか。初めての事例ですので、疑問のところはどんどん聞いていただければ。

○江馬委員 6ページの生殖毒性の所ですが、下の2行、「遺伝毒性、発がん性があること、メトヘモグロビン血症の二次的影響を考慮すると生殖毒性の可能性がある」という、この文章は要らないと思うのですが。

○名古屋座長 判断できないという所が。

○江馬委員 判断できないということでいいと思います。判断できないのは、基準に照らして妥当な報告がないということで判断できないということですよね。

○名古屋座長 そうですね。分かりました。それでは事務局、よろしくお願いいたします。あと、ほかにお気付きの点はありますでしょうか。

○西川委員 ちょっと細かいことになるのですが、遺伝毒性について平成20年の検討会では、総合的に考えて遺伝毒性はないという判断でしたが、今回は遺伝毒性「あり」、したがって閾値「なし」という判断がされているのですが、8年の間に新しいデータが出てきて、その判断が変わったということなのでしょうか。

○名古屋座長 それでいいのですか、事務局。

○穴井化学物質評価室長 そのように考えています。

○西川委員 決定的な試験データが出てきたということですか。

○穴井化学物質評価室長 根拠となるデータのバッググラウンドを持ってきていないので、申し訳ありません。

○西川委員 もっと基本的なことなのですが、発がんのメカニズムについては、どのように考察されているのですか。

○若林中央労働衛生専門官 発がんのメカニズムについては、今、やはり、なかなか不明瞭なところもあるという中で、実際にこのような大きな社会的に注目を集めるような状況で、いわゆる非常に精致な、代謝経路であるといったものについては、これから学識者の方々に研究をお願いするということで考えているところです。ただ、恐らく先生方の御案内のとおり芳香族アミン系ですので、そのような体内動態を示すのではないかと考えております。

○名古屋座長 これからという形。

○津田委員 既に職場でばく露というのはアメリカの例等で報告されているので、それと比べて現状で今、福井の例では多いか少ないかということをしっかり考察しないと、これをどうするかというのは出てこないと思うのですが。既にアメリカではたくさん論文が出ているので、ネガティブもポジティブも。それをしっかり比べて現状のエクスポージャーとどうかということをしないと、答えが出てこないのではないかと思うのですが。

○奥村化学物質対策課長 膀胱がんの自然発生率に対して、福井の事業場の労働者数の中での発生の割合は、相当高いと考えられます。極めて高いという疑いが出ております。

○名古屋座長 それは従業員数全体に比べて発症した例が多いということですか。

○奥村化学物質対策課長 ……。

○名古屋座長 ほかの事業場はそのぐらいいるけれども、出ていることは出ているのですか。やはり福井だけなのですか。

○奥村化学物質対策課長 ほかの事業場でも同じような健康障害の例があります。

○名古屋座長 でもやはり、特異的に福井は多いということなのですか。

○奥村化学物質対策課長 そうですね。

○若林中央労働衛生専門官 一般的に膀胱がんの関係については先生方御案内のとおり、がんセンターの情報だったと思うのですが、10万人当たり24人というのが一般的な膀胱がんの発症率となっておりますので、それから見ると福井県の事業場の関係で言えば、やはり従業員が何万人もいらっしゃるような状況ではないので、かなり特異的に高いということは言えるのではないかと思います。

○圓藤()委員 今年ですか、安衛研が調査なさったときに、別の有機溶剤濃度も測っていらっしゃるのですか。

○鷹屋委員 予備調査のときには測りましたが、今回は測っていないです。

○圓藤()委員 というのは、過去において別の有機溶剤だけ測っていたわけですね、有機溶剤。その濃度に対してオルト-トルイジンがどのぐらい入っているかと考えられると、今回、別の有機溶剤濃度を測って、それとオルト-トルイジンとの比で、過去のばく露がどのぐらいかと推定できるのではないかと思ったのですが。

○名古屋座長 それはやられていないということですね。

○奥村化学物質対策課長 お手元の26ページ、報告書の10ページにあります。「過去の」の下から7行目ぐらい、過去の作業環境の結果を見ると、有機溶剤として100ppmを超えており、高い濃度であることがあったと。ですから、オルト-トルイジンそのものは作業環境測定されていないのですが、この配分でかなり高かったという推測がされます。これぐらいだと思います。

○圓藤()委員 それをもうちょっと推測値を上げるためには、今回の測定値は非常に低いとなっていますよね、オルト-トルイジンの。それは2か月休んでいて、しかも工場がきれいになってから測定しているものですから、以前のばく露とは全然違うわけですよね。ですから、その過去のばく露を推定するには、別の有機溶剤濃度が有効ではないかと思ったのですが。

○名古屋座長 累積していた有機のあれがない、2か月経って、やっていないから、新しくきれいになった状態での測定でしたということですよね。先生が言われた限り、別の有機溶剤はやっていないので推測はできませんということですよね。

○圓藤()委員 もう1回測ればいいと思う。

○名古屋座長 このまま、やられる可能性はあるのでしょうか。委託されないと駄目なのでしょうか。

○鷹屋委員 これはあくまでも労災があったということで、私ども厚生労働省から調査に入っているわけですが、そもそも圓藤()先生がおっしゃった、過去の実態とは違うという御意見はもっともなのですが、逆に言うと、当然、今回の調査を再現するに当たっても、過去そのままにやって作業者の方がいろいろなものにばく露されるというリスクは最小限に抑えた上で、当然会社の方はいろいろ対策を取っている状態ですので、例えば過去を推定するために、過去と同じような作業を再現してまた測るということは、ちょっと考えられないと思います。

 比例関係に単純にあるものではないと思います。使っている有機溶剤の濃度がこれぐらい減って、その中でオルト-トルイジンはこれだけだったから、過去の有機溶剤はこれぐらいの濃度があって、そのときの何倍ぐらいのオルト-トルイジンが飛んでいったか。と言いますのは、単純にオルト-トルイジンを溶かした有機溶剤などではなくて、有機溶剤の使い方が、例えば生成した中間体の洗浄であるといった使われ方をしていますので、例えば別の有機溶剤の量を減らすと、有機溶剤全体の濃度は減りますが、例えばそれに伴って、当然一緒に出てくる未反応のものなどの割合が必ずしも一定ではないので、あえて、そういったことを再調査して、ばく露の推定の精度を上げられるかどうかということが、これは研究者としての意見ですが、少し疑問に思います。

○大前委員 27ページの尿中代謝物は別の有機溶剤だと思うのですが、別の有機溶剤の分布の表が載っておりますけれども、最近は例えば分布31%、それから平成3年辺りは9%なので、単純に、少なくとも今回測っていれば相当高かっただろうという推定はできるのではないかと思うのです。ただ、パラレルには。もちろんこれは、あくまでもパーセントなので、単純にはいきませんが、相当高かっただろうと。分布28%が26%ですから、23を合わせたら35%ぐらいは分布比から外れているので、随分高かったのだろうと思いますけれども。多分その頃は保護具なども、今と比べたら余りやっていなかったでしょうから。

 もう1点いいですか。7ページ、オルト-トルイジンを使っている27事業場を調査されているのですが、この27事業場の中には膀胱がんの症例はなかったのか、あるいは膀胱がんの症例を探さなかったのか、どちらでしょうか。27事業場に関して調査されているわけですが、このときは膀胱がんの症例はピックアップするということでやらなかったのか、あるいはなかったのか。

○若林中央労働衛生専門官 調査においては、当然ながらオルト-トルイジンを取り扱っている事業場について取扱いの状況、それとともに、やはり今回のような事案が発生しておりますから、そういう意味では、いわゆる膀胱がんの方がいらっしゃるかどうかということまで確認はしております。ただ、その辺りは実際、過去のことということもありますし、御案内のとおり膀胱がんについては喫煙によっても発症するということで、直近でしたら有名人でもなられている方がいらっしゃるような状況ですので、因果関係は、ちょっとその辺りは不明ということではありますが、当然ながらその辺りの調査もしておりまして、若干、退職者の方などに、膀胱がんに罹患しているようなケースもあるというように聞いております。

○宮川委員 質問があるのですが、せっかく現場に行った先生がいらっしゃいますので、お聞きします。9ページの上から3つ目の○に「オルト-トルイジンを含む有機溶剤で洗浄し」と書いてありますが、これは洗浄しているうちに、それでコンタミされたということではなくて、何かわざわざオルト-トルイジンを入れた製品があって、それを使っていたということですか。

○鷹屋委員 両方違います。結局、溶剤を使います。それで反応します。それで反応も洗浄も使います。結局、洗浄の最後は、新しく買ったばかりの有機溶剤で一番きれいにするのですが、最初のうちの未反応物とか、違う反応がいっているような、比較的、一番最初に洗浄する目的では、工場内で蒸留して、もう一度きれいにした有機溶剤を使うのです。もともと原料として入っているオルト-トルイジンを極限まで落とさなくても、また使うものなので。

 ただ、シンカンのレベルでは十分な濃度です。私どもはそれも頂いて測ってみました。例えば、現実に製造の感覚からいくと、99.9%というのは非常にきれいな溶剤ですが、これを裏返していくと100ppm入っているわけです。そういった意味で入っているということで、製造側の感覚としては、蒸留して大体きれいになっているものであるけれども、例えば、それを使って、裏返してオルト-トルイジンがどれぐらい残っているかを精密に分析してみると、少し残っているということで、それが今回の場合のばく露の主たる原因ではないかと、私どもの研究所では一応そういうふうに考えています。

○名古屋座長 不純物として残っている量が少ないのだけれども、扱っている量が多いから、トータルとしてばく露は大きいという解釈でよろしいのですか。

○鷹屋委員 そうです。

○宮川委員 その場合、作業者の方は、そこにオルト-トルイジンが多少は入っていることは考えていたのか、それとも、そういうことは考えていなくてお使いになっていたのかが、もう1つの質問です。

 さらに、これは数年前の古いリスク評価ですか、42ページにあるように調査されているわけですが、ということは、こういうことが行われているということで、この物質については、ある程度リスクがあるかもしれないことを、従業員の方々は御存じの状況だったのでしょうか。その辺りはいかがだったのですか。

○鷹屋委員 リスクの有無に関してということなのが、定量的にどれぐらい危ないものかに関しては、逆に言うと、正確には答えかねます。全く知らないわけではないくらいの感覚ではないかと。

○大前委員 手袋のところで25ページに表5がありました。「手袋の汚染状況」というのがあるのですが、この手袋の汚染状況を測ったのは、どういう測り方をされたのですか。手袋が汚染したのか、あるいは、この手袋自体に透過性があって吸収されたのか、そこら辺はどう評価されたのですか。

○鷹屋委員 これは表面の拭き取り等ではなく、全量は測定機に掛けられないので、手袋そのものの重さを測り、例えば指先と指の真ん中とか、ある程度、完全に禁止とは言いませんが、そういう状況で切り取った試験片から抽出しオルト-トルイジンを測っているので、大前先生がおっしゃったように、表の布と裏の布とか、そういった厳密な調べ方はしていません。

 ただ、実際に手袋を当該企業から御提供を受けたときに、割と作業をして、そのまま集めてきましたというものは、ポリ袋に入っていたものを開くと、有機溶剤が表面にあってまだ湿っぽいというか、そういったことが感じられる状態で付いていたのです。ただ、手袋そのものは、その時点でも新しいもの、古いものはあったのですが、表面はだんだん悪くなってきますが、これは普通の天然ゴムの例えば材料の質感から言うと、輪ゴムとか、そういった感じの手袋だったのですが、こういう一番濃度が高いものでも、膨潤して白くてぶかぶかになっているとか、そういった状況ではなかったです。だから、そういった意味で、結局、手袋全体で取ってしまったので、手袋の内側の濃度は本当のところどうだったかに関しては、逆に押さえきれていないということはあると思います。

○大前委員 そうすると、当然、皮膚接触ですから、手袋の内側に付いたものが接触して入ったのだろうと、そのような仮説というかだと思うのです。そうすると、今おっしゃったオルト-トルイジンが入っている有機溶剤で手袋をじゃぶじゃぶ洗って、それを乾かしてというのか繰り返し使うときに、その残っているものが入ったのか。あるいは作業をするときに入ってしまうという、そういう作業状態ではないのですか、内側に入ってしまうというか、手袋はこのような長い手袋。

○鷹屋委員 そうではない。このくらい。結構、分厚い感じの手袋なので、それこそ手袋をこう着けるときに外側を持ったりとか、先にはめるときは、多分、外側を持ったりとか、そういったことがあるのではないかとは思うのですが。

○大前委員 作業中に中に入るとことは、まずそれはない。考えなくていい。作業をやっている最中に、オルト-トルイジンを含んだ有機溶剤が中へ入ってしまって、それでばく露をしていると、そういうことは余り考えなかったですか。

○鷹屋委員 例えば、ちょこっと付けるとか、そういう作業はありませんでした。見る限り、ノズルを持って操作してスラリーを洗浄したり、あとは、例えばスラリーを工具を使ってかき取るとか、そういった作業ではありません。そうすると、結局、製品と未反応のオルト-トルイジンを含む有機溶剤が付いた感じということはあるので、それの洗浄とか。必ずしも浸透してではなくて、そういった作業によって、経皮に入るというか実際触れてしまう可能性はあるのではないかと思います。

○奥村化学物質対策課長 資料の25ページ、表5ですが、手袋が汚染しているのに、尿中代謝がゼロの方がいますが、確かこの方は二重の手袋をしていって、御自分で薄い手袋を下にして、その上で今まで使っていた手袋を使って作業をしていたと。この方は尿中代謝がないということで、やはり手袋の内側からのがあったというのが推測されると聞いています。

○圓藤()委員 手袋は、その日に新たにおろしたのでしょうか、それとも以前からの手袋を使っておられるのでしょうか。

○鷹屋委員 1日分ではありません。と言いましょうか、逆に時系列から言いますと、私どもは調査をして、気中濃度が低いということで、私の上司等が向こうの工場責任者等に再度聞き取りをしている過程で、手袋を見たほうがいいのではないかということになり、結局、実際、調査のときと言いましょうか、こういった災害事例が出て、作業を中断する前のときから使っていた手袋も含めて提供を受けていますので、相当期間使っているものが多いと思います。

○圓藤()委員 相当期間使っているということは、その手袋は以前の実態を表していると考えることができるのではないかと。それに対して安衛研が行かれた調査のときは、外部から調査が入りますというので、その日だけ特別な非常にきれいな状態で作業していたと考えられますので、そちらは今までの実態とかなりずれているのではないかと思います。そうすると、手袋は多分何回も、何か月も使っているとするならば、オルト-トルイジンは残留して残っているのだけれども、別の有機溶剤は蒸発して飛んでいくと。だから、手袋はオルト-トルイジンがかなり付着したまま残った手袋であろうと、そういうことは考えられるのではないかと思って、手袋だけが以前のばく露した状態を表しているのではないかという気がします。

○名古屋座長 先生が言われるには、25ページのデータを見ていると、ゴム手袋の汚染は、多分、以前のものを使っていると、濃度はもう少し高いのではないかというお考えでよろしいのですか。

○大前委員 今のそのタイミングですが、先ほどの話だと、仕事を2か月ぐらい休んでいて、それでやったということは、その手袋は2か月あれば当然乾いていると思うのです。そうすると、手袋の中のオルト-トルイジンはほとんどゼロの状態で測っているのではないかと思うのですが。それで粉が残っているというのは、中に浸透しているものが残っているという話なのか。

○若林中央労働衛生専門官 オルト-トルイジンですが、先ほど説明がありましたように、蒸気圧が余り高くないという状況なので、なかなか揮発しにくい物質ではないかと考えています。

○大前委員 蒸気圧はパスカルで25℃で34ですよね。ヘクトにすると0.3hPaだから、蒸発しにくいですが、それほど蒸発しにくいものでもないですよね。だから、ppmで相当上のppmまで行くと思うのです。別の有機溶剤と比べたら、圧倒的に蒸発しにくい。でも、2か月放っておいていたら、なくなると思うのですがね。

○若林中央労働衛生専門官 あと、過去の接触機会、オルト-トルイジンの話ですが、労働安全衛生総合研究所が作った報告書の本文の27ページのローマ数字の5で、当該企業の管理部門及び労働者に対する聞き取り調査結果なので、客観的な測定という話ではなく、過去はどうだったのかということについて、労働者の方に確認をしたという結果があり、その関係情報を整理した丸数字1~4までのものが分かった状況です。

 丸数字1については、先ほど来から御議論いただいているゴム手袋の関係ですが、その結果としてオルト-トルイジンが含まれていた蒸留の有機溶剤を用いての洗浄は、かなり多くの労働者が行っていたと。その手袋について、いろいろな手袋に対して洗浄していたということです。

2番目としては、先ほど少しお話が出ましたが、就業前後で、尿中の代謝物、尿中のオルト-トルイジン量が、増減がゼロという方もいらっしゃいます。その方について書かれているのが丸数字2ですが、こちらの方について、先ほど奥村からも申し上げましたように、当日、耐溶剤性の手袋を外側に付け、その内側に薄手の手袋を装着して作業しているということで、明らかに防護性の高い保護具を使用していたということで、ここは過去の実態とは少し違う部分という状況です。

3番目ですが、これはかなり過去の話にはなりますが、夏場、福井ですので、なかなか暑い気候でもあるとは思うのですが、夏場、半袖で作業している状況の中で、先ほど鷹屋委員からも御説明がありましたように、結晶掘り起こし作業とか、あとは有機溶剤による洗浄作業で、飛沫が上体に飛び散ることがあります。また、どうしても有機溶剤に濡れていますので、乾燥機に掛ける工程がどうもあるようですが、そちらに製品を投入する際に、「ろ布」に体をどんどんと押し付ける形で作業し、それで作業着が濡れることがしばしばあったと。その作業着を濡らしたものは、有機溶剤もありますが、恐らく反応しきれなかったオルト-トルイジンも含まれているのではないかということで、先ほど申し上げた保護手袋からの経皮のばく露と、あとは、各種反応であるとか、作業による飛沫のばく露、また、そういったろ布に体を密着させる、若しくは接触することによるばく露と、そういった機会が過去にどうもあったのではないかということを、一応、労働安全衛生総合研究所の報告書ではまとめているということですので、参考までに御紹介させていただきます。

○大前委員 余りにも手袋に執着し過ぎるのは、まずいのではないかと思うのです。それこそ今の丸数字3のおっしゃった所はそうですが、半袖でどうのこうのとか、作業着がどうのこうのとかというのはあるので、今回は手袋に注目されて報告されていますが、それはいいと思うのですが、少なくとも手袋だけに執着するのは、余りに甘いと思うのです。

○名古屋座長 多分行かれて、ばく露濃度を測定してみたら、かなり低過ぎるので、でも病気は起こっているからという形で、多分。

○大前委員 今のBの人の話ですが、これもよく分からないのは、「原料である99.9%のオルト-トルイジンを取り扱っていたにもかかわらず」とありますが、これはもともと原料ですから、その原料を直接触るはずはないですよね。そうすると、もともとこの人は、作業の形態としてオルト-トルイジンにばく露することがほとんどなかった人ではないですか。99.9%は、あくまでも原料の1つとしてパイプか何かで行っているだけですから、この99.9%は意味がないですね。だから、単純に扱ってなかっただけではないかという気がするのです。

○名古屋座長 要するに、製造工程の中で直接粉体を扱うのではなくて、パイプを使って入れてしまいますから、そこにばく露はないということで、確かに、ばく露もいろいろ……。

○大前委員 だから、99.9%を触れると危ないからということで二重にしたのだと思うのだけれども、でも実質的にはオルト-トルイジンのばく露がない作業なのではなかったですかね。だから、尿中に出てこなかった。

○名古屋座長 でも、多分、経皮がなかなか評価できないので、1つのよりどころとして手袋だという形になったのかと思います。

○大前委員 Bの例をもって経皮吸収なのかなどということは言わないほうがいいです。

○若林中央労働衛生専門官 補足させていただきますと、先ほど大前委員がおっしゃっていたばく露がないというお話ですが、一応、測定結果については、22ページになるのですが、表2に「個人ばく露測定結果」も載せさせていただいており、一番左側のIDが、人をアルファベットで模式化したものですが、Bについては、オルト-トルイジンの移し替えの作業において、相当少ない状況ではありますが、ガス状のオルト-トルイジンの個人ばく露測定は0.053と。先生がおっしゃるように非常に低い状況ではあるところですが、全くゼロではないといった状況です。先生がおっしゃるように、多分ほとんど原液を触ることはないとは思います。一応、そういう結果を見ているということです。

○名古屋座長 ありがとうございます。

○圓藤()委員 これは、作業前と作業後の増減量だけですよね。作業前が高かったことはないのですか。そして増減量としてゼロとなったということではないのですか。半減期が分からないので、何とも言えないのですが。

○鷹屋委員 この方に関しては、もともと高ければ、また別途報告書に記述。現実に、作業は測った日の数日前から、結局、1日だけでは程度的に工場の状態になりませんので、私どもの2回目の調査、止まっているときに現状を見て、では実際に測りましょうと言ったときには、2日前から同じ作業をやっていた。もちろん、当然、朝の採尿の結果の高い低いもありました。正に先生がおっしゃるように、半減期があるにしても、高い人はやはりばく露が高いのではないだろうかといって、基のデータが手元にないところであやふやなことは言ってはあれですが、記憶では、変化が高い人は、比較的基のデータも決して低くなかったという記憶はあります。

 特別に高い人がいなかったので、多分、この変化率で整理できるだろうと、私たちみんなはデータを見て判断した状況です。特別にもともと、どんと高くて、だけど変化がないという人はなかったという記憶しています。

○清水委員 確認ですが、先ほど7ページの一番下の2行の所で、大前先生が27事業場の御質問をされていて、ほかでどうだったかということですが、実際にほかの事業場で同じような手袋をして、あるいは半袖でやっていたか、その辺の細かな調査はなされているのですか。

○若林中央労働衛生専門官 保護具の使用状況については、使用というか用意の状況という意味ですが、調査では確認していますが、実際にこういった精緻な、例えば保護具の管理の状況がどうだったのかとか、繰り返し使っているのかとか、着用状況について、例えば指揮する方若しくは作業主任者の方が確認しているのかとか、そういった精緻な使い方についてまでは確認していないと。あくまでも保護具を一般論としてオルト-トルイジン等々を扱う際に、扱っていますかという確認です。

 現在取り扱っている所もありますし、調査の過程ではもう扱っていませんという所もある中での調査ということもあり、そこまで精緻に、保護具がどういう使用状況だったのかまでは、今現在データはないという状況です。ただ、そういう取扱いのときにどういうふうに、局所排気装置を使っていますかとか、保護具を使っていますかとか、保護具についてもどういう種類、呼吸用保護具か、手袋か、保護衣かという確認についてはさせていただいていると、そういった状況です。

○大前委員 平成19年でしたか平成20年でしたか、そのときのトルイジンの調査は42ページに載っていまして、二次評価値より随分低いということです。実際に測定した会社の中には、福井の会社も入っていると考えていいですか。それは分からない。

○米倉化学物質情報管理官 お答えできないです。

○大前委員 入ってる入ってないにかかわらず、今の平成20年ぐらい調査も、ばく露濃度は非常に低いと。今回も低いということで、一致しているわけですよね。したがって、9ページの5の上から4行目に、「現在の作業及び過去の作業におけるばく露防止対策が」とありますが、ばく露防止対策としては、経気道の防止対策としてはそれほど悪くなかったわけですから、これは「経皮ばく露対策としては」という「経皮」という言葉を入れるべきではないかと思うのですが。

○名古屋座長 よろしいでしょうか。ここの所に加えるかどうかですね。

○小嶋委員 福井では、「労働者5名に膀胱がんが発生した」とあるのですが、既に退職した人には発生していないのでしょうか。

○若林中央労働衛生専門官 退職者についても、発生している方もいらっしゃいました。

○津田委員 同様規模の同じような会社で、そういう事例はあるのですか。これは1社だけですね。この5名が出たのは、これは特定の地域なのでしょうか。

○奥村化学物質対策課長 1つの事業所です。

○津田委員 ほかで同規模の同じ製品を作っている所でも、同じことは起こっているのでしょうか。

○奥村化学物質対策課長 我々がこれまで報道で発表している中では、ほかの事業場でも発症は確認されています。ただ、その因果関係等は明らかではないというところです。

○津田委員 同じような製品を使っている所でもあるということですか。

○奥村化学物質対策課長 過去にオルト-トルイジンを取り扱ったことがあるものは、幅を広げて事業場を調べたところ、労働者あるいは退職者に膀胱がんの発症者がいたと。ただ、そこまでです。どのようなばく露があって、何が原因だとかいうのは分かっていません。

○米倉化学物質情報管理官 先ほど大前先生から経皮だけではないかという御意見があったのですが、そこについては、8ページの1つ目の○、「過去の取扱状況について関係者に聞き取りをした結果」ですが、「また」以下の所ですが、事業場では20年近くにわたり労働者の尿中代謝物測定を実施するとともに、作業環境測定を実施しており、それらの結果から呼吸器からのばく露を含めたばく露レベルが高かったことも推察されておりますので、必ずしも経皮だけではないのかなと安衛研の報告書では判断されています。

○大前委員 でも、数字から見たら、随分低いわけですよね。許容濃度の10分の1とか、100分の1とか、少なくともここに書いてある数字は、平成20年くらいの数字も今回の数字も、ばく露濃度としてはとても低いわけですよね。もっと昔のことは分かりませんが。

○名古屋座長 測定結果の前のデータがあればですよね。平成20年の、だから、ここの測定図、平成19年に我々がリスク評価した前の中でどうだったかと。そのときにもしかして作業環境測定があって、それが高かったらこの話になるということですね。

○圓藤()委員 過去は有機溶剤の濃度が高かったわけですよね。ですから、それから類推する必要があろうと思うのと、今回の調査のときは、有機溶剤の濃度を測ってないけれども、低かったと推定されるのですね。そうしますと、過去のオルト-トルイジンが高かったことがあり得るのではないかと。だから、こういう推定はしてもいいのではないかと思います。今回、確かにオルト-トルイジン濃度は低かったけれども、それが過去をそのまま反映しているとは思えない実態があろうという気がします。

○名古屋座長 できたら、ここにありますように「作業環境測定を実施しており」と書いてありますので、その結果はどこまでのデータがあるのか。それはトルイジンかもしれない、別の有機溶剤かもしれませんが、何かその辺が分かると、今の話の中にきちっと出てきますよね。そこは是非示せるものがあったら、何かあったら。ここに20年近くにわたり有機溶剤を取扱う労働者を対象に行った、特に、「作業環境測定を実施しており」と書いてあります。その結果によって有機溶剤は高いと書いてあります。そこがどのぐらいの濃度だったかと分かるデータがあったら、いいかと思います。もし可能であったら。

○圓藤()委員 それは先ほどの27ページに有機溶剤の分布が書かれていますので、過去はこういうふうに高かっただろうと。これはもう少し丁寧に書いていただければもっと有り難いのですが、それと現在の有機溶剤の実態がどうかというのとを比較することで、ある程度分かるのかという気がするので、現在の有機溶剤の尿中代謝物の濃度はどうなのかは、やはり測っていただくほうが有り難いという気がします。

○名古屋座長 ここの27ページにあります、安衛研の報告書ですね。我々は、別にもう1つ資料として提出していただければという形です。それをこの委員会にしますか、それとも、また措置検討会で、それを引き抜いて検討するという形でよろしいのではないかと思うのです。要するに、ここでは、そこにありますように、措置検討会の中に持っていく形にはするのだと思いますが、だから、そのときに今日の議論で出てきたデータがあったほうが、より詳細な検討ができますので、そのときに添付するという形でよろしいでしょうか。できる範囲でよろしくお願いしますという形で、よろしいでしょうか。

 あと、ほかに何か議論したいことはありますか。ここで議論したことを、できましたら、ここに最終的にありますように、今後、措置検討会に持っていっていただく中で、それを踏まえて措置検討会の中できちっと検討していただければと思いますので、意見がありましたらどうぞ。

○津田委員 これは動物実験から言いますと、過去のものはみんな経口投与なのですね。それで、臓器が一定しないぐらいに多臓器に発がんしているということで、動物における結果では発がん性については十分な証拠となっているので、吸入経路がごく微量でも、長いこと掛かれば、発がんとか、そういう障害の出る恐れがあるので、吸入を除外しないように十分に考慮した方策が必要だと思います。

○名古屋座長 経皮だけではなくて、全てということですね。

○津田委員 はい。この物質は経口投与で多臓器標的性発がん物として、分かっていますので、ヒトの場合で、ほかのルートも発がんするというようなこともあります。実際には吸引ばく露しかないと思うのですが、他の経路もあり得ないことはないと思います。

○名古屋座長 ほかにありますか。そうしますと、最終的にはそこのことは、9ページに書かれていません。今日した議論を踏まえまして、職業性がんの予防の観点から、オルト-トルイジンの製造・取扱いについて、制度的な対応を念頭に置いてということで、措置検討会に具体的に検討してもらうという形でよろしいでしょうか。できましたら、今日、議論した内容と、あるいは添付する資料等がありましたら、措置委員会へ出していただいて、そこで検討するという形でよろしいでしょうか。

(異議なし)

○名古屋座長 ありがとうございました。そうすると、今日の議論は、ここまでという形でよろしいですか。そうしましたら、事務局から今後の予定等の説明をよろしくお願いします。

○平川化学物質評価室長補佐 次回の化学物質のリスク評価検討会における日程ですが、リスク評価検討会においては、次回、平成28年度ばく露実態調査物質に係るリスク評価などを議題として行う予定とさせていただきますので、改めての日程調整ということでさせていただければと思います。よろしくお願いします。

○名古屋座長 ありがとうございます。今は前半が一応終わって、この次は後半という形ですよね。

○平川化学物質評価室長補佐 そうです。

○名古屋座長 2期にわたりましたので。いろいろな意見が出て、多分、措置検討会に送ることができたと思います。そうしましたら、本日のリスク検討会を閉会します。本日は、どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 平成28年度化学物質のリスク評価検討会> 平成28年度 第2回化学物質のリスク評価検討会 議事録(2016年7月7日)

ページの先頭へ戻る