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2016年9月14日 第5回大学附属病院等のガバナンスに関する検討会

○日時

平成28年9月14日(水)


○場所

TKP赤坂駅カンファレンスセンター14A


○議事

○医療政策企画官 定刻になりましたので、ただいまから、第5回「大学病院等のガバナンスに関する検討会」を開催させていただきます。

 構成員の皆様方におかれましては、御多忙のところ本検討会に御出席いただき、まことにありがとうございます。

 なお、本日は草刈構成員、山口構成員より御欠席の連絡をいただいております。

 お手元の資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表のほか、議事次第にありますとおり、資料1、参考資料1と2がございます。また、これまでの検討会資料についても青いファイルにまとめて置いてありますので、適宜御参照いただければと存じます。資料の欠落等がございましたら、事務局にお申しつけください。よろしいでしょうか。

 それでは、以降の進行は座長にお願いいたします。

○田中座長 皆さん、こんにちは。

 ここから議事に移ります。資料1「大学附属病院等のガバナンスについて(とりまとめ(案)」を事務局から説明していただいた後、私たちで議論を行います。

 では、よろしく。

○医療政策企画官 事務局でございます。

 これまでの議論を踏まえまして、とりまとめ(案)をまとめさせていただきました。読み上げます。

 

基本的な考え方

○ 特定機能病院は高度かつ先端的な医療を捷供する使命を有しており、そうした医療を安全に提供するために、より一層高度な医療安全管理体制の確保がなされる必要がある。

○ 特定機能病院の大宗を占める大学附属病院は、大学という高等教育・研究機関の一部門として、医学教育を施し、医学研究を行う場であると同時に、高度かつ先端的な医療を国民に提供する医療機関であるという特殊な性格を有している。このため、他の医療機関と比べると、組織として同時に医学教育、医学研究、高度医療の提供という3つのミッションを持ち、また、複雑なガバナンス構造を有することになっている。

○ 本検討会としては、そうした中であっても、国民の生命・健康を預かる医療提供施設として、高度な医療安全管理体制を確保することがなによりも優先されるべきことを、全ての議論の出発点、大前提として確認する。

○ こうした観点からは、特定機能病院が高度かつ先端的な医療を提供する使命を果たす前提として高度な医療安全管理体制を確保する必要があることにつき、法的にもその理念を明確にすることが考えられる。

○ 管理者(病院長)は、医療安全の確保に関する法的責務を負っており、管理者には医療安全管理について十分な知見を有し、継続したリーダーシップを発揮できる者が選任される必要がある。そうして選任された管理者が、権限と責任を持って病院の管理運営に取組めると同時に、管理者を含めた病院職員間で相互牽制が機能するような、適切な意思決定のあり方を含むガバナンス体制を構築する必要がある。

○ 医療安全の確保に責任を負う管理者(病院長)が、病院運営に指導力を発揮し、医療安全等を確保できるようにするため、医療法上、病院の管理運営に係る職務権限を有することを明確化する一方、開設者も、管理者の適切な選任を含め、管理者が医療安全管理等を適切に行うことを担保するための体制確保に責任を負うものとすべきである。

○ 大学附属病院をはじめとした特定機能病院については、上記の考え方に則り、その意思決定のあり方を含めたガバナンス体制、管理者の選任等について、以下のとおり大きく改革を行うことが必要であると考える。

○ 本とりまとめを踏まえて、厚生労働省においては、直ちに、特定機能病院の承認要件の見直し等について、法改正を含めた必要な検討を進めるべきである。法改正事項以外は、省令等の特定機能病院の承認要件等に組み入れることで、大学・病院の内部規程等の改正を求めることになると思われるが、特定機能病院の関係者においては、法改正前であっても、本とりまとめの各項目について法人・病院の体制、内部規程等を総点検し、自主的に対応を進めていただきたい。その際には、国民の信頼に足る診療体制の再横築に向け、あらゆる面で過去のしがらみと決別し、改革を断行する意気込みをもって行っていただくことを期待する。

 

1.病院としての適切な意思決定を行うための体制

(1)開設者と管理者(病院長)の関係等

1 管理者の職務権限の明確化

○ 特定機能病院の管理者は医療法上様々な責務を担っているが、病院における管理者(病院長)の権限が弱いと、医療安全等の確保に十分対応できないことが懸念される。

○ ついては、医療提供の責任者である管理者(病院長)が病院運営に必要な指導力を発揮し、医療安全等を確保できるよう、医療法上の位置づけも含め、管理者(病院長)が病院内外に対し、病院の管理運営に係る職務権限を有することを明確化するべきである。併せて、医学部との権限・運営上の関係等を含め、病院の管理運営のために必要な一定の人事・予算執行権限を有することを明確化するべきである。

2 管理者の理事会等への参画

○ また、開設者に対し、病院側の意見を反映させられないと、医療安全の確保等に支障を生じることがありうる。法人運営における病院の重要性、医療安全を前提に高度な医療を提供する必要性に鑑み、病院運営に関する重要事項が審議・決定される際には、法人の理事会・執行役員会等の会議に管理者(病院長)を参画させ、病院側の意向が勘案されるようにすべきである。

 

(2)病院内のガバナンス等

1 病院運営会議(合議機関)の設置

○ 病院内において各診療科の権限が大きいために縦割りの弊害が生じること、病院の運営管理に係る権限を有する管理者(病院長)の独断専行の双方を牽制する必要があるとの指摘がある。

○ このため、医師、看護師といった多職種の病院幹部が病院の管理運営に係る重要事項を審議する合議体として「病院運営に関する会議」を位置づけ、その場での審議内容については、その性質にもよるが、原則、職員に周知することにより、適正な病院運営を確保するべきである。

○ この会議には、必要に応じて外部専門家を参画させるべきである。

 

2 管理者(病院長)をサポートする体制の充実

○ 一診療科の出身にすぎない管理者(病院長)が、他の診療科長に対してリーダーシップを発揮しようとしても、管理者(病院長)1人だけで病院の管理運営状況を把握するには限界がある。そのため、副院長に加え、院長補佐、企画スタッフ等、管理者(病院長)をサポートする体制(管理者(病院長)が任命するポスト)を充実・強化していくことが重要である。その際、必要に応じて外部専門家を参画させるべきである。サポート体制については、病院の内部規程上、副院長等の役割を明確化することが求められる。

○ また、病院のマネジメントを担う人員については、病院の運営管理に精通するよう、適切な人事・研修による育成を図っていくことが重要である。

 

2.管理者(病院長)の資質や選任方法等

○ 医療提供の責任である管理者(病院長)が医療安全等を確保し、病院運営に指導力を発揮する前提として、管理者(病院長)にはその職責を果たす上で最もふさわしい者が選任されることが必要である。

○ これまでの管理者(病院長)の選考では「当該学部の教授会の議に基づき、学長が行う」としている教育公務員特例法第3条に由来する慣行等から、医学部教授会等での選挙の結果がそのまま選考結果となる場合が多く、選考プロセスの透明性が必ずしも確保されてこなかった、また、学閥その他の内部事情に左右され、医療安全管理経験を始め管理者に必要な資質・能力の優劣を反映する結果にならないおそれがあるといった指摘がある。

○ 他方で、選挙を実施せずに管理者(病院長)を指名する場合であっても、指名に至る選考プロセス次第では、管理者(病院長)に最もふさわしい者が適切に任命されているとは限らないとの指摘もあったところである。

○ 具体的に学長等がいかなる選考手続を定め、どのように選考するかは、各大学のガバナンス構造等を踏まえつつ、学長等が定めるべき事柄であるが、特定機能病院における医療安全確保の最終責任者たる管理者(病院長)については、選挙等によったのでは医療安全管理経験を始め管理者に必要な資質・能力の優劣を反映する結果にならないおそれがあるため、そうしたやり方によって選任するのではなく、以下のとおり、透明性が確保され、適格な管理者が選考されるプロセスによるべきである。

1) 法令で求められる医療安全管理業務の経験があることに加え、組織マネジメントの資質・能力など、自院の管理者(病院長)に求められる資質・能力の基準を予め定めて公表する。

2) 候補者がその基準に照らして適任かを、外部有識者も含めた選考会議といった合議体で審査する。

3) 2)を踏まえ、任命権者が自らの責任において選考を行い、その結果については、選考の過程、基準に照らした選考の理由とともに遅滞なく公表すべきである。

 

 上記3要件を満たす選考手続を採ることにより、明確な基準に照らし、病院関係者や外部有識者による評価を踏まえつつ、任命権者は選任することになる。また、選考プロセスの透明性を確保することで、適正な選考であったかは事後的にも検証可能となることが期待される。これにより、病院運営に指導力を発揮し、医療安全等を確保できる、医療提供の責任者として最もふさわしい者が各特定機能病院の管理者(病院長)に選任されることを強く期待したい。

 

3.病院運営に対するチェック・牽制等

○ 管理者(病院長)が権限を行使しやすい仕組みを設ける一方、管理者(病院長)による病院運営の適正性を担保することが必要との指摘がある。院内では「病院運営に関する会議」を通じて相互牽制を図るほか、以下のような取組が考えられる。

1 外部有識者を含む理事会・監事等によるチェック

○ 医療安全については、外部有識者が過半を占める監査委員会の設置を始め、種々の内部統制を強化する措置が講じられたところであるが、病院運営全般については、外部有識者を含む法人の理事会、監事等が、管理者(病院長)からの報告聴取の機会等を通じ、病院運営管理に対するチェック機能を果たしていくことが重要である。

2 コンプライアンスに係る体制の整備

○ 管理者を含めた病院職員が全ての法令等を遵守し、社会規範を尊重するとともに、診療等が常に高い倫理性を持って行われるよう、病院外の法人全体における対応も含めた、内部規程や組織体制、通報窓口といったコンプライアンスに係る体制の整備が不可欠である。

○ コンプライアンスに係る取組については、形骸化しないよう、遵守状況を踏まえて取組の有効性を検証し、適時に見直す必要があることに留意が必要である。

3 内部規程の公表や業務報告書を通じた情報開示の推進

○ 病院の運営状況について情報開示を進めることは、地域を含めた病院のステークホルダーに対して必要な情報を提供するという観点にとどまらず、自らを律し、適正なガバナンスとコンプライアンスを確保する観点からも重要であり、上記各項目に係る法人や病院の内部規程を公表し、病院運営や管理者(病院長)の選考プロセス等の透明化を図っていくほか、厚生労働大臣に提出している業務報告書を通じた情報開示を推進していくべきである。

 以上でございます。注釈については省略させていただきました。

 

○田中座長 ありがとうございました。

 ただいま事務局が読み上げてくださったとりまとめ(案)について、御意見を伺います。御発言をお願いします。

 どうぞ、市川構成員、お願いします。

○市川構成員 日本医師会といたしましては、この案に関しまして、かなり評価させていただいております。

 その中で、基本的な考え方の○の4番目の最後に「法的にもその理念を明確にすることが考えられる」とありますけれども、法的という部分に関しまして、大学病院のみに限ったものであれば結構ですけれども、それが一般の医療機関等にも関することがあることは若干問題だと思います。その点を御教示いただきたいと思います。

 それから、○5の下から3行目の最後に「管理者を含めた病院職員間で相互牽制が機能するような」とありますけれども、ここはどうなのでしょう。職員でお互いに見張れるような感じ。一言で言うと、言い過ぎかなと思われます。

 あと、続けてよろしいでしょうか。

○田中座長 はい。

○市川構成員 4ページ目は、この委員会の一番肝となる部分でしょうけれども、1)の「法令で求められる医療安全管理業務の経験があることに加え」とありますけれども、今回の検討会そのものが医療安全ということを中心としたものと考えておりますので、ここの部分だけ独立させていただきたい。要するに、項立てをしていただきたい。ですから、1)、2)、3)、4)になるかもしれませんけれども、これが中心、医療安全の経験をしっかりと踏んだ方が管理者となることを強調していただきたいと思っております。

 以上、気がつきましたところを申し上げました。

○田中座長 3点御指摘がありました。

 いかがですか。

○医療政策企画官 1点目、御質問だったと思いますが、1ページの上から4ポツの特定機能病院が高度な医療を提供する前提として高度な医療安全管理体制を確保する必要がある。この旨を法的に明確にということでございますので、医療安全管理体制はもちろん全ての医療機関にしっかり必要だと思いますが、高度な医療を提供する特定機能病院について、高度な医療安全管理体制を求めるということですので、ここで考えているのは、特定機能病院の規定に対して、そういった手当てをすべきなのではないかと思っています。ただ、医療安全は特定機能病院に限らず重要だというのは当然ですし、医療法にもその関連の規定がたくさんあるのだと理解しております。

○市川構成員 ただ、法律ができてしまいますと、それが結構ひとり歩きする可能性もあるものですから、そこは十分考慮していただきたいということであります。

○田中座長 ほかはいかがでしょう。

○医療政策企画官 2つ目の御指摘で、相互牽制については5番目だと思いますけれども、想定していますのは、単に管理者が権限を持ってどんどんやっていけばいいということではなくて、後のほうで出てきます病院運営会議で、ガバナンス構造的には独走はちゃんと牽制する必要があると2ページの下のほうにございますけれども、その関係の記述がここにはございませんので、それをうまく表現したくて書かせていただいたところです。

○市川構成員 そこは十分よく理解しておるのですけれども、相互牽制、職員間の対立を生むような表現は、余り感心しないなというのが意見です。

○医療政策企画官 今の点につきましては、ほかの方々の御意見も全て伺った上で、また表現を直す必要があれば考えたいと思います。

○市川構成員 4ページ目。

○医療政策企画官 御指摘の4ページの3要件のところ。医療安全管理業務の経験がマストであって、大変重要だということはよく理解しておりますが、資質・能力の基準として、何よりもこれが大前提としてあるのだぞと。後の部分は、それぞれの病院で必要な資質・能力を加えるような形だと認識しておるのです。なので、この部分は、この行として1つ成立しておるような気がしておりまして、その点、御理解を賜れればと思うのですが。

○市川構成員 結局、今回、医療安全のための検討会である以上は、しかも新しく病院管理者を選ぶ。そのときの大前提である医療安全管理の業務の経験があるということは、「加え」という巻頭言じゃない、必須だということをぜひお考えいただきたいということであります。

○医療政策企画官 もともとの文章は、医療安全管理業務の経験が大前提と原案で書かせていただいたのですけれども、どういった方法での修正を求めていらっしゃるのか、具体的におっしゃっていただけると大変ありがたいなと思います。

○市川構成員 検討会の第1回目のときに資料5としていただいた「特定機能病院における医療安全対策等のガバナンスの強化について」というパワーポイントがありましたね。その中で、医療安全管理部門、それから医療安全管理責任者というところに経験した人間が来るべきではないか。非常によくまとめられたポイントですから、ここのところをもう少し強調するような、本検討会の意見として出されるための一つの手法として、独立させるのがいいのではないかと考えたわけであります。

○総務課長 総務課長でございます。

 今、市川構成員から御指摘いただいているところでございますが、まず事実関係としましては、今、特定機能病院の管理者につきましては、6月に行いました承認要件の見直しで、医療安全管理業務経験があることを必須化している。これは、もう事実としてそうなっています。法令上の要件として、そうなっているということを、まず各病院が病院長に求められる資質・能力の基準を決めるときに、当然書くべきであるということを趣旨として書かせていただいているということでございます。

 したがいまして、もう少しきちんと病院長たるもの、医療安全管理業務の経験があることが必須であるという趣旨を明確にすべきだということであれば、その部分を少し修正することにさせていただければと思いますけれども、この1から3のところが今回の選考に関連しての透明性の確保のためのプロセスを記載しているところでございますので、業務経験があるという要件そのものを一つの項目として立ててしまうと、ほかの項目との並びがいささかよろしくないのではないかという点が、事務的に懸念している点でございます。

○市川構成員 はっきり言って、それ以下の部分は病院長としては当たり前ですね。マネジメントと管理者に求められる資質。これは、別にこういう特定機能病院の病院長に限らず、病院長として当たり前のことだし、もっと言えば、ほかの企業のトップとしても、当然求められるべきことであって、特定機能病院の病院長として必要なのは、特に医療安全管理業務ではないかと思う。それは、もちろん議論いただいた上で結構ですけれども、医師会としては、ここを特に強調したいと思っております。

 以上です。

○田中座長 楠岡構成員、お願いします。

○楠岡構成員 今の市川構成員の御指摘の点ですけれども、事務局の御説明もよくわかるので、もしそこを明確にするのであれば、簡単な修文にはなりますけれども、既に法令で求められている医療安全管理業務の経験があることに加えとしてはどうでしょうか、大前提として既に省令で求められていますので、そのことを明確にした上で後半をつけ加える形でもよいのではないかと思います

○医療政策企画官 ありがとうございます。

 必須という単語を使うとか、表現ぶりをちょっと工夫させていただきたいと思います。

○田中座長 4ページのプロセスの話の前提として、市川構成員の言われたことを少し強調することでよろしいですか。

 もう一つ、市川構成員から意見が出て、事務局からほかの委員の意見を伺いたいと言っていた相互牽制という言葉については、ほかの方々はいかがですか。やや違和感があるとの御指摘がありましたが。

 矢野構成員、お願いします。

○矢野構成員 職員間の相互牽制という言葉ですが、職員間というのは個人の間でというニュアンスがあって、どうかと。必要性は私も理解できる。病院の中に内部牽制の仕組みがあることはすごく大事なことだと思うので、いわゆる個人間でと捉えられるような言葉遣いを払拭して、組織の中で内部牽制とか内部統制といった言葉はほかで使われていますけれども、そういう言葉に変えたらどうかというのは、私も感じるところであります。職員間というのは、ちょっと気になるところです。

 もう一つ、私は長い間、医療安全に携わってきた者として、医療安全というのは当たり前のことであって、ただ、それが十分になされていなかったという現実がある。今後、このとりまとめを医療安全の視点でのガバナンスとするのであれば、医療安全を文言に入れるのはいいのかと思いますけれども、ガバナンス全体とすると、何となく医療安全に偏っていると個人的には感じるのです。もちろん今回は、目的やきっかけそのものが医療安全に絡んでいることなので、医療安全を強調するのは重要かとも思いますが。

 ただ、実際にきっかけとなった出来事等を考えますと、医療安全というキーワードも大事なのですが、医療倫理という考え方も重要かと。私、大学病院をサーベイなどで訪問することがあるのですが、仕組みとして医療安全はできていて、みんな関心は持っている。医療倫理というキーワードだと、若干関心が薄い。研究のほうは一生懸命やっているのですが、臨床現場の臨床倫理は手薄になっている。臨床倫理を幅広く考えると医療安全はその一部のような気もするので、私自身は病院長の資質として医療安全管理責任者の経験があると狭く特定していいのか疑問に思います。倫理委員会の経験者ではだめなのか。法令に基づく医療安全の経験者というのは、どの範囲を言うのか。いわゆる医療安全委員会の委員長でもオーケーとか、より幅広くということになりますか。

○保健医療技術調整官 このたびの見直しで管理者に医療安全管理の経験を求めることになったわけでありますけれども、今、通知で例示しておりますのは、医療安全管理責任者に加えまして、医薬品安全管理責任者の経験、医療機器安全管理責任者の経験。また、医療安全管理委員会の構成員としての業務。また、医療安全管理部門における業務などを経験として挙げているところでございます。

○矢野構成員 とすると、余り縛られないかわりに、あいまいな感じでもある。でも、病院長の資質として重要なのは医療安全だけではないし、このあたりが現実的かとも思いました。今の文言だけだといろいろ解釈があるので、範囲をきちんと示せればいいのかと思います。

○保健医療技術調整官 このたびの見直しで管理者に医療安全管理の経験を求めることになったわけでありますけれども、今、通知で例示しておりますのは、医療安全管理責任者に加えまして、医薬品安全管理責任者の経験、医療機器安全管理責任者の経験。また、医療安全管理委員会の構成員としての業務。また、医療安全管理部門における業務などを経験として挙げているところでございます。

○矢野構成員 とすると、余り縛られないかわりに、ほわっとした感じでもある。でも、医療安全だけじゃないし、この辺がもしかしたら現実的かなと思いました。だから、その文言だけだといろいろ解釈があるので、そういう範囲をちゃんと示せればいいのかなと思います。

○田中座長 市川構成員の提起した問題については、職員間と表すとプライバシーの監視ような、個人間の行動規制のような感じがするけれども、内部統制は必要だから、そういうニュアンスにしたらどうかと言っていただきました。

 それから、医療安全管理業務については、特定の仕事ではなく、安全管理業務一般であるとの説明が事務局からありましたので、狭い意味ではないようですね。

 野村構成員、お願いします。

○野村構成員 今の矢野構成員の御質問で、私、ちょっと思ったところがあるのですが、法令で要求されているミニマムスタンダードとしての経験というのは、かなり広いということが今、わかりましたので、ある程度どこでも引っかかりそうな感じの条件かなと思うのです。ここで書いている1)というのは、それを踏まえた上で、うちの病院としてはどのぐらいの医療安全の経験というのを求めるかということも、あらかじめ基準の中で考えなきゃいけないことじゃないかなと思うのですね。

 自分の病院としては、こういう分野で、こういう活動をしてきた人にやってもらうことにしましょうということも、もし含めるとすると、ここを「加え」にしてしまいますと、この前の部分は、法律で決まっているものをクリアしているという条件だけであって、そのほかの経験についての基準が示されるかのように読めますので、やや修文の必要性があるのかなと逆に思いました。

 要するに、医療安全の経験についても、それぞれの病院ごとにミニマムスタンダードはクリアしているのは、法令上ですから当たり前。ただ、それに加えて、うちの病院はこういう方針でいきますよということを決めるからこそ、適任者が選ばれるということになると思うので、そこはこの文章だと読めないような気がしますから、少し御検討いただければありがたいなと思いました。

○田中座長 ありがとうございます。法令は、あくまでミニマムスタンダードで、それを超えることは病院の自由だとのご指摘です。当然ですね。病院ごとの決定権。

 松井構成員、お願いします。

○松井構成員 先ほど市川構成員から御提起くださった問題の1ページ目の上から5番目の○の相互牽制のところですが、今、問題提起いただきまして、少し考えてみました。確かに、ここはかなり一般的に病院職員間で相互牽制と書いてあるので、表現としてはややびっくりするところもあるのですけれども、後の表現を見ておりますと、これは運営会議を設置して会議体でチェックするイメージだという理解でよろしいのかなと拝見いたしました。

 そうだとすると、この運営会議は幹部職員など、相応の立場の方が出てくるわけですから、そういう一定の職責を負った人間が合議体を通じてチェックするのだということだと思います。このことを前提として以上の表現をそのまま使うと言葉がひとり歩きしないかなという感じがした次第です。もし理解に間違いがあれば、御指摘いただければと思います。

 もう一点、質問させていただきたいのですけれども、3ページの上から4行目、病院運営会議には「外部専門家を参画させる」でありますとか、あるいは次の○2の管理者(病院長)をサポートする体制の充実の中に、「必要に応じて外部専門家を参画させる」とあります。これに対して、4ページの3番の○1には「外部有識者」という言葉が出てきております。この「外部専門家」と「外部有識者」とは言葉が違っておりますが、ここは何かニュアンスの違いがあるのか。そこをお伺いできればと思っています。

 よろしくお願いします。

○田中座長 質問は「外部有識者」と「外部専門家」が同じか違うかです。それにお答えください。

 それから、相互牽制の意味合いは、下のほうにある運営会議のことであるから、趣旨はわかるけれども、言葉をちょっと工夫したらとの意見でした。

 どうぞ説明してください。

○医療政策企画官 相互牽制につきましては、いろいろアドバイスをいただきまして、ありがとうございます。いずれにしても言いかえたいと思いますが、中でも検討してみます。

 もう一つ、「外部有識者」と「外部専門家」のところですけれども、外部有識者を含む理事会等のところの有識者というのは、本当に幅広い方が想定されるのに対して、病院長をサポートする体制あるいは病院運営会議の中での外部専門家と言ったときには、例えば医療経営といった関係の専門家が想定される、そうした違いが若干あり得るのではないかと考えております。

○田中座長 はい。

○野村構成員 今の松井構成員の2つの質問について、私がちょっと感じたことを発言させていただきたいと思いますが、まず最初のほうの相互牽制の話です。

 1つには、中核となっているのは会議体による牽制の話だと思うのですが、ほかにも通報窓口とかも一応書かれてはいるわけですね。例えば、5ページの上から2行目ぐらいにコンプライアンスの内部統制の一つとして通報窓口といったようなものもあるので、どちらかというとお互いに人任せにせずに、気がつくことがあったら声を挙げながらみんなで管理していきましょうみたいな話だと思うのです。

 ですから、会議体にだけ限定するのは、私はやや狭いかなと一瞬思いました。だから、表現ぶりのほうとして、過度に内部でお互いに足の引っ張り合いみたいな感じのニュアンスにならないような、そういう建設的な表現が必要だということはわかりますけれども、場面を限定してしまうのはちょっと狭いかなと一瞬思いました。

 それから、私も若干の質問も含めてということになるのですけれども、今回のガバナンスの全体イメージというのは、理事会によるガバナンスというのと、病院の中にある会議体によるガバナンスというものがどう整理されているのかが、いま一つよくわからないところが若干ある。ややいいところどりになるというか、病院の中でしっかりやっていなければ、これは理事会のほうでやっている話ですからとか、逆に理事会のほうが強くやろうとすると、これは病院の話ですからみたいな、両方にとって逃げ道が与えられてしまうような感じの書きぶりになっているのかなという気もします。

 ですので、そもそもどういうふうに病院のガバナンスを管理するのが理想形なのかということが、もう少し議論されてもよかったのかな、されるべきなのかという感じがします。いろいろなモデルがあると思いますけれども、例えば人事や労務管理みたいな話というのが本当に大学の理事会に上がってくるのかどうか。経営マターだということで病院でもしやるのだとすれば、そこにお医者さん以外にそういったことの専門性のある人がいるのは何となく必要な感じもしますし、千葉大のケースで2回目のときに御紹介いただきましたような、外部からの経営に関する専門家を招くという手法もあるのかなという感じがします。

 さらに、例えば予算につきましても、大枠は恐らく理事会で決めるのだと思いますけれども、具体的な執行として、例えばどんな機器に優先的に予算を使っていくのかみたいなことは、病院の中で決めていくことだと思うのですが、そこのガバナンスの仕掛けというのが、この運営会議と言われているものだけで本当に大丈夫なのかどうか。ここにもうちょっと牽制機能のあるようなマネジメントにふさわしい組織形態というものが、理想形としてあるのかどうかということを少し議論していただくと、先ほどの松井構成員からの御質問にあった、外部有識者と外部専門家というものの概念の違いも出てくるのではないかと、私は個人的にちょっと思いました。

○田中座長 理事会と病院との関係についての問いかけがありましたが、これについてはいかがですか。

 梶川構成員は別件のことですね。関係することですか。お願いします。

○梶川構成員 では、今のことを。挙手したときは相互牽制のところだったのですけれども、私がイメージしているところと少し違うことなのかどうかがわからなくなってきたものですから。

 1つ目の相互牽制の、最初に市川構成員がお話になられた部分で、論点がちょっとずれてしまうかもしれないのですが、この文章の前段のほうは、この全体の検討会で管理者が集権的に責任を持って管理してもらいたいということを、この○の5つ目、そうして選任された管理者が、責任と権限を持って病院運営に取り組めるようにという形の趣旨を強く感じるのです。

 その後ろのところになりますと、牽制というワーディングが使われているのが代表なのですが、逆に分権的にというか、相互の意見はよく聞いてくださいねという部分。これは、後ろのほうに留意して集権的に責任を持って決めてほしいという御趣旨なのか、両方、全く同値なのかというところが、私には少しわかりづらいところがある。

 それと運営者会議につながるところがございまして、この運営者会議というのは、ある種、業務運営の会議だとしますと、それが相互牽制という機能はもちろんあるのですが、普通の会社で言えば、例えば事業部長会議とか執行役員会議のような形ですと、イメージとして相互牽制ということになじむのかは疑問です。もちろん、一定の反対意見というのは許容することですけれども、むしろ業務運営上の連携を強めて、全体運営がより効率的・効果的に回っていくというイメージをこの会議体には持っていたもので、ある意味では、ガバナンスというワーディングは、経営の専門の先生から言われると違うかもしれないですけれども、この会議は病院長のマネジメントの会議なのかなと感じております。

 その部分は、より病院運営が効果的にいくとなると、牽制というより

連携というニュアンスがこちらに入っているものではないのかなということだったもので、私のイメージで、どこをどういうふうに御整理いただかなきゃいけないのかな。内部通報とかについては、牽制のたぐいではないかと思うので、ちょっと発言が混乱してきたのですが、全体のトーンが集権的な方向で、まず責任を持てという話だとすると、最初の文章の牽制というのは、なお書きとか、留意してほしいというニュアンスでもいいのかなという気がしたというところでございます。

○野村構成員 私も会社をずっと見ていますので、会社のイメージからいくと想定外の話が書かれている気がします。ただ、もともと組織上は病院長の独任制の仕掛けがスタートラインになっていて、そのことが例えば医局長の方々の中に非常に力のある方がいて、その方に病院長の牽制が届いていないというところから、暴走する事件が起こったというのが問題の背景にあり、他方で、全く逆に、とんでもない病院長が権力を持って、それで暴走する可能性もあるということをどう是正するかというのが、恐らく前提の課題になっていると思います。

 そこで一つの解決策として合議体というものを設けると、暴走する人に対して、そこでお互いの牽制が働いたり、そこで問題が明らかになることが期待できるのではないかというレベルの話になっていまして、私はその次の段階として、本当にマネジメントをする仕掛けということで考えるとすれば、まさに執行の効率性を追求するチームワークのための会議体であるべきであって、それに加えて牽制するモニタリングボードみたいなものが存在しているのが理想形だと思います。それを病院の中に置くのが、現状から言うと、1つも2つも先に飛んでいってしまっている感じがあるので、今ここで牽制みたいな話がごちゃごちゃに入っているのではないかという印象があるのです。

 だとすれば、私は、将来像としては、牽制がきき、また連携も図れるマネジメントの本来の仕組みというものが理想としてはあると。だけれども、そこを目指す一里塚として、とりあえずは今までの独任制の弊害を合議体でカバーしていきましょうみたいな話なのかなと理解しています。

○梶川構成員 御説明ありがとうございました。

 私は、実はこの外部有識者を含む理事会・監事会という、病院長の独走を防ぐ、その横についたガバナンス。コーポレート・ガバナンス・コードでも、社外取締役という部分がむしろこちらに近いような形で、ある一定の集権された方が、マネジメントは効率的にやるけれども、その独走を防ぐ仕掛けとしては、この外部有識者を含む理事会・監事等によるチェックというところにガバナンスをかけられるのかなというイメージを持っていたものですので、先ほど野村先生がおっしゃられた会議体の位置づけみたいなもので、今、御説明をお聞きして、そこの前の段階で両方の機能のある運営者会議が存在しているのだと解釈させていただければ、そういうことかなという理解はできます。

○田中座長 今のお二人の説明を聞いていると、非常によくわかったのではないでしょうか。何を効率よく行い、何をしっかりと統制、ガバナンスをきかすかをめぐる2つの話が整理されて理解できました。それがもう一つ伝わらない文章であるという歯がゆさを言っていただいているのだと思います。

 どうぞ、お願いいたします。

○山本オブザーバー 発言させていただきまして、ありがとうございます。

 私、議論を伺っていて、ちょっと混乱するのは、医療安全という今回の会議の大前提の部分と、それ以外のマネジメントの部分と、ちょっと話が混戦しているかなという印象がございます。

 医療安全という観点から言えば、大前提は権威勾配を取り払う。全ては患者さんのことを考えて、教授だろうが、1年生の看護師だろうが、薬剤師だろうが、何だろうが、これはおかしいと思えば、それは権威勾配を抜きにして意見を言うし、耳を傾けるし、それに対して対策をとる。これが医療安全の大前提だし、私はこの相互牽制というのはそういう意味合いなのかなという理解をしております。これは、言葉としてはとにかく、フラットな関係でなければ医療安全は達成できないというのが基本だと思います。それは、そういう理解をしていけばいいのかな。ただ、ほかの例えば人事とか経営とかお金のやりくり云々というのは、企業の経営とか、そういう部分につながるのかなという私自身の感想です。

 ですから、医療安全重視でいけば、相互牽制というと他人のあらを探すことになりますが、そうではなくて、おかしいと思ったことはどんどん言うし、耳を傾けるという権威勾配のない体制、それが患者さんのためになるというニュアンスがもうちょっと出るとよろしいのではないかなというのが感想でございます。

○田中座長 ありがとうございます。

 楠岡構成員、お願いします。

○楠岡構成員 3ページ目の上のところで、ガバナンスのために合議体を置くということで、「病院運営に関する会議」というものが書かれているわけであります。前回も申し上げましたけれども、病院の中には既に病院運営会議みたいなものがあるので、先ほど野村構成員からお話があったような執行役会議のような性質であることがもうちょっと明示的でないと、とりようによっては、もう既に存在しているという話になってしまって、意図することが正しく伝わらないのではないかというところが1つ危惧するところであります。

 もう一つは、先ほどの外部専門家と外部有識者との話ですが、この外部専門家は一体何の専門家なのかがよくわからない。要は、経営の専門なのか、医療安全の専門なのか、あるいは医療に関する一般的な知識の専門なのかというのが、もう一つよくわからない。別の見方からすると、一般の人、要するに患者の代表者も、経営の中で、こういう観点がないと患者さんが来ませんよとか、安心できませんよという意見を言うという立場もあるので、この専門家というのがどんな専門家を想定しているのかが、もう一つよくわからない。

 その意味では、むしろ外部有識者的なほうが、少し漠然とはしますけれども、逆に言うと特別な専門家ではないという意味ではいいのかもしれないというのが1つであります。

 もう一つは、先ほどの外部取締役ということを考えますと、その前にある「必要に応じて」というより、むしろ積極的に外部の人を入れる方がよい。ただ、執行会議ですので、そこに外部の方が入ってくるのがいいのか悪いのかというところは、特に病院ですので、一般の企業体とは少し違うところもあるかと思います。

 そこのところを考えて、本当に外部取締役を参加させる的な意味を持っていて、あえて、別に監査役とかを置くのではなくて、外部取締役で牽制をかけるということであるならば、むしろ必要に応じてではなく、必ず入ってもらうというのも一つの考え方ではないかと思います。このあたりが、どう整理すればいいのかがちょっとわかりにくいかなというところです。

○田中座長 効率的な運営のための執行役的な会議と、牽制を含む取締役会、あるいは理事会と評議員会とか、そういう関係がよくわからないとの御意見です。

 事務局、何かお答えはありますか。

○医療政策企画官 今の一連の御議論を伺っていて、イメージが皆さん、あると思うので、その関連でいろいろな意見がそれぞれ生じているのかなと思います。

 この場でどうこうとはなかなか言えないところでもありますが、野村先生の言われた執行と監督。今、この執行と監督が1つになってしまっているというか、もともと法人として見れば、当然、法人の理事会があり、それが本来のボードとしてある。当然、病院だけ別法人化すれば、それはそれでガバナンスだけは完結するのですけれども、他方で医学部との関連、3つのミッションがあって、大学と離れることはちょっとどうなのかというのはあると思うので、基本的には大学の中にある、法人の中にあるという前提で、今回、議論がされている。

 ただ、大きな存在といいますか、医科単科大学であれば理事会で相当いろいろ言われたりするのでしょうけれども、総合大学でなかなかそこまで行き届かないところもある場合に、大企業もそうだと思いますけれども、かつては事業部制であったり、カンパニー制であったり、バーチャルにある程度自主性を持たせて、だけれども、そこで一定のガバナンス構造を考えるということもあると思います。ですので、企業であってもいろいろな試行錯誤がされていて、子会社にするのか、中にいるけれども、ある程度何か機能させるようにするのかということだと思います。皆さんの御議論を伺っていて、頭の整理も若干できた気がしますので、ここはよく考えてみたいなと思います。

 病院運営会議についても、診療科長がずらっといて、毎週やるようなものもあるでしょうし、月1あるいは半年に1回、重要なことを決める会議のときも、各内部規定を見ているといろいろありますので、どうしてもイメージが異なってきてしまうと思うのですけれども、一つの考え方としては、病院運営会議はより通常の運営を扱う会議として、外部の専門家も別に入れずに、日々の業務についてやっていただく。そこで病院長もリーダーシップをしっかり発揮していただく。

 他方で牽制という意味では、医療安全について監査委員会を今回、つくることになりました。そこで過半が外部の人になっていますので、それを医療安全に限らず、執行面をチェックするような体制により発展させて、そちらに外部の方、まさに外部有識者ですけれども、たくさんいらっしゃるので、そこで牽制していただくというか、チェックしていただくという形も1つの案としては、あるのかなと思います。いずれにしても、ご意見を踏まえ、今の書きぶりの微修正ということなのかどうかわかりませんけれども、よく考えてみたいなと思いますし、また御相談したいと思います。

○田中座長 医療安全については、この会で全ての病院が行うような形をしっかりと提言したい。これは、皆さん一緒ですね。職員一人一人が通報するようなことも含めて、医療安全こそが今回の最大のミッションであることは問題ない。

 一方で、経営のあり方については、国が全ての病院はこういう形で会議体を持てと命ずるのは言い過ぎだと、私は思います。財務調達をどうする、資金調達をどうする、どういう医療機器を買うか、ほかのどこの病院を提携するかにかかわる会議をどうしろなどは、それは個別の病院の責任であって、成功も失敗も個別の病院の責任に属することで、国が手取り足取り言う時代ではないですね。ただ、ここであくまで医療安全について、きちんと牽制機能があり、職員が声を挙げる機能があり、場合によっては患者代表の声を聞く。そこに注力してつくっていけばいいのだと思います。

 どうぞ、お願いします。

○野村構成員 座長のおまとめは、私はもちろんそのとおりだと思いますし、経営について手取り足取りというのはおかしいと思います。ただ、物の考え方としては、結局は経営が余りうまくかないと、医療安全もそれによって足を引っ張られるという問題があって、経営のしっかりとした体制を整えることは医療安全の前提でもあるという感じもしますので、そこは医療安全だけをここでは議論しましょうということにはきっとならないだろうと思っています。

 それから、私の専門の会社法というものがもしこの世に存在しているとすれば、基本的にはこういう形の組織形態にしなさいということは法律で書いてあるものですので、場合によっては、理想のガバナンス形態というものがあり得るのであれば、それは一つのモデルとして、もちろん例外を許容する形で、自分たちで変則的にするにせよ、デフォルトルールとしてはこんな形というのがあるのかなという気はなきにしもあらずであります。

 先ほど事務局のほうでおまとめいただいたので、もう一度お考えいただければと思いますが、確かに監査という制度がありますので、そこをうまく使うという考え方もありますけれども、むしろ複数のミッションを与えてしまいますと、そこがまた力を失ってしまう可能性もあります。

 それは、そのことに関する専門家がそこに集中しているということが、本来、仕事・役割が分担していると有効活用できる人たちは、そこに属性が出てくる可能性もありますので、てんこ盛りにするよりは、経営については経営についての、カンパニー制というお話が先ほどありましたけれども、ああいったバーチャルな形の組織形態も1つあり得るのかなと。何が理想なのかというのは私が決めることじゃありませんから、皆さん方の御意見を少し聞いていただければありがたいなと思います。

 その理由というのは、例えば大学には図書館みたいなものがありまして、そこにも通常、図書館長というのがいるのですけれども、それと病院長を同じに扱っていいのかと考えると、大分違うだろうなという感じがします。図書館であれば、理事会の予算措置の中で、それぞれの先生方のいろいろな要望を聞きながら図書の充実を図るという程度であれば、それは牽制を理事会に委ねてしまってもいいような感じもしますけれども、病院業務については、もうちょっと独立性のあるカンパニー的なものとして理想形を描いていただくことがいいのではないかなと個人的には思っています。

○田中座長 一昔前は、図書館長は名誉職でありまして、大学の中でとても名誉があったのですが、今はメディアセンターなどと言って、むしろ大学内の情報システムの中枢になっているので、若手の大学全体の運営にかかわる人がなるようになりました。確かに、先生が学生のころはわからないけれども、私が学生のころは、図書館長は功なり名を遂げた老教授がなっていらっしゃいました。今のメディアセンター長のほうが病院長に近いかもしれません。情報システムは組織の安全にもかかわりますし。

○野村構成員 済みません、ありがとうございます。

○田中座長 経営がちゃんとしないと医療安全がない。それはそのとおりです。そこは骨格として同意いたします。

 ほかにいかがでしょうか。

 私も1つ、つまらないことで、3ページの○2の次に「一診療科の出身にすぎない」は、言葉が悪いような気がします。大学の学長でも一学部の出身にすぎないので、「出身である」ぐらいで、ここまで低く言う必要もないかなと感じました。

○医療政策企画官 承知しました。

○田中座長 どうぞ。

○松井構成員 また確認で申しわけないですけれども、先ほど事務局からの説明を伺っていまして、2ページから3ページにかけての(2)の○1の病院運営会議の位置づけ方というものについては考え直すという理解でいいのでしょうか。この文章は、○1の最後の文で、管理者の独断専行を牽制するために病院運営会議を置く。4ページを見ると、病院運営会議を通じて相互牽制を図るということで、明らかに牽制組織として位置づけてあるのですね。先ほどの話だと、そこはもう一回検討しますということだったので、ここは差し当たり、今の議論の対象にはならないということでしょうか。

○田中座長 お答えいただけますか。

○医療政策企画官 済みません、先ほど考えを求められたので、ちょっと思いついたことを申し上げてしまったのですけれども、これまでのここでの御議論、前回もそうですが、その中で独断専行、相互牽制の機能を持たせるべきじゃないかといった御意見があり、それで、現状、こういった形になっているものと承知しています。

○松井構成員 そうしますと議論がぐるぐる回ってしまって、議論の焦点がわからなくなってしまうのですが、病院運営会議は病院長(管理者)の牽制のための組織として位置づけつつ、かつ、そのほかにどういう機能を持たせるかは各病院の裁量に委ねられる。ただ、少なくとも病院の管理運営に係る重要事項は審議する。こういう理解でいいでしょうか。

 なぜこの点にこだわっているかと申しますと、「外部専門家に参画させるべきである」ということがさらっと書いてあるのですけれども、これは外部専門家ということで、特定の専門性を持っている方が入るということでよいのか。あるいは、牽制組織というのであれば、先ほど楠岡構成員がおっしゃったように、有識者として、ある特定のステークホルダーなり利害関係者を念頭に置いた人間を入れなきゃいけないということになります。以上のような次第で、この点の位置づけは制度の仕組み全体に全部影響してくるのです。

 ここが揺らいだままだと、いつまでたっても議論がぐるぐる回るだけなので、そこをもう一回事務局が引き取って、「こういう形で位置づけます」という御提案が後日出てくるのか、あるいは、今日、ある程度全体をまとめていく方向でいくのか、このあたりは確定したほうがいいのではないかという気がしています。

○医療政策企画官 2ページの病院運営会議の設置の1ポツにありますとおり、縦割りの弊害が生じること。それに加えて、2つ目の独断専行の牽制の役割も果たす必要があるだろうという御議論がありました。その双方を踏まえて病院運営会議というものを位置づけて、最終的に適正な病院運営を確保すべきだということで、両方の意味を持った形で会議を位置づけていると理解しております。このあたりについて、各構成員の方々から、こうすべきだとか、こういうふうに考えるべきだという御議論をいろいろしていただけると、むしろありがたいかなと、こちらとしては考えております。

○野村構成員 もう既に議論で、違うことをみんなが考えているということが明らかになっていて、先ほどお話があったように、執行をスムーズに行わせるための会議だという位置づけになってしまうと、恐らく現に存在しているのです。普通、病院でいろいろなことをやるときに会議なしでやっているとは考えられませんので、もう既にあるねという話で終わってしまうと困りますねという御意見がさっきあって、私もそうだと思いましたので、これは新たに、今までないような相互牽制の会議体を要求する文章だと読むと。そうなると、松井構成員がおっしゃられたように、そこは外部専門家ではなくて外部有識者と読みかえるというのが一つの方向感で、先ほどそういう御意見があったのかなと思います。

 そう思わずに、会社で言うと、業務執行、執行サイドのほうの効率性を高めるための会議として位置づけるのだとすると、それだったら、今あるものをそのまま残しておけばいいね、メンバーをちょっと変えればいいねという話になりそうなので、そこがどっちがいいのかということを今、議論するということなのかなと思いました。私、個人的には、牽制の機関を新設することが望ましいと思います。

○田中座長 ありがとうございます。

 矢野構成員、どうぞ。

○矢野構成員 病院内のガバナンス等というタイトルで運営会議という言葉が出てきていますけれども、ガバナンスという言葉は、マネジメントとかリーダーシップとかモニタリングとか、いろいろな意味が混じっている面もあって、ここではマネジメントの範疇の中で、外部の常識的な判断を多少入れるといった程度であり、モニタリングを強調しているわけではないと思うのです。

 モニタリングについては、3番の病院運営に対するチェック・牽制等で触れている。その中で、理事会とか監事等によるチェックというものがありますけれども、「特定機能病院における医療安全対策等のガバナンスの強化について」には監査委員会というものがあります。私はこれを見たときに、内部監査なのか、外部監査なのか、よくわからないと思いながら見ていたのです。厳密に言えば、内部監査の仕組みをここに入れようということになると、モニタリングについては、この項目でうまく定義したほうがいいのかと。

 2番目の運営会議については、マネジメントを中心とした役割の中で、偏らないマネジメントができることを強調すべきかと。ここでモニタリングを強調すべきかどうかは議論が必要と思いますけれども、内部にモニタリングを中心とした別の会議体を大学病院に設けるべきというのは、可能なのかなと思いました。

○田中座長 いろいろと読める報告書案になっているようですね。

 ほかの御意見、いかがでしょうか。

 市川構成員、お願いします。

○市川構成員 先ほどのお話にもかかわるのですけれども、本来、病院運営委員会を管理者の独断専行でとめるようなことはあり得ないです。もし本当にそうであれば、先生がおっしゃったような監理委員会。外部から呼ぶというのであれば、外部の人間が監督するような、それが正しいあり方であって、運営委員会というのはあくまで病院の運営にかかわることをやっているものですから、病院長にストップはまずかけられない。それをここに記載するということは、全くもってあり得ないことを想定している。省内でかけられないのと同じです。

 だから、それに対して、外部の監査委員会みたいなものをつくるのが、1番の病院運営委員会と、2番の管理者をサポートする体制の充実というのは、全く逆の性質を持ったもので、外部にそういう独断専行をとめるような働きを持たせたほうが実をなすと思います。

○田中座長 楠岡構成員、お願いします。

○楠岡構成員 現在の大学病院での意思決定がどういうふうにされているかというのは、かなりいろいろなタイプがあると思うのですけれども、非常にオーソドックスなのは、昔の教授会の流れを引き継いでいて、病院運営委員会なるものがあって、各科の科長から、看護部長とかコメディカルからの代表者が来て、それこそ50人規模の会議が意思決定機関、最高決定機関になっていて、結局、病院長が何かをやろうと思ってもなかなか決まらないというか、あるいはあらかじめ決まったことを、そこで追認するしかないような形で、本当の意味のマネジメントに関する最高機関と言えるのかどうかというのがある。

 それを変えるというか、実際は院長と副院長とか各部門のトップの人たちの10人ぐらいのところで、あらかじめ何か相談していて、そこからおろしているという形になるのでしょうけれども、そういう意味では、逆におろしたときにすごく声の強い方がおられて、その人がおっしゃると方針が変わってしまうこともあり得る。

 もともと大学では民主主義ということがすごく大前提にあったので、とにかく全員参加型でないと決められないというのが今までの流れにあった中で、病院運営のようなものになってくると、もう少し意思決定を少人数で、しかもよく状況をわかっている者たちで分析しながら決める。そういう意味での執行機関みたいなものを持たないと、これだけ複雑なことをやっている中で、それは難しいのではないか。

 ただ、そういう意味での合議体を既に持っておられて、しかもそれを病院の規則の中に書かれておられるところは、今までどおりでいいと思うのですけれども、そういうものがあっても規定として定められていないところは、そういうものを持っていただいて、やっていただくということを進めるような方向づけが1つ要るのではないか。ただ、うちはみんな集まって、うまくやっているよというところもあるかもしれない。そういうところにまで、それを押しつけるかどうかはちょっと難しいと思うのですけれども、現実の中では、そういう少人数での意思決定機関がどうしても必要なのではないか。

 そこに外部の人を入れて牽制するのか、それは内部の意思決定機関であって、外部牽制というのは別にするかというのは、また別の議論になってくるのではないかと思います。

○田中座長 ありがとうございます。

 野村構成員、お願いします。

○野村構成員 私は今のお話を伺って、執行の仕組みにもかなり課題があるのだなということがわかりました。ですから、執行の仕組みがもうちょっと効率的にしっかりとできるものが必要だということを、この病院運営会議のインプリケーションとして考えておられる方もいるということはよくわかりました。ですから、そこもちゃんと書くべきだと思います。

 他方で、私は市川構成員がおっしゃられたことも同意しておりまして、何と言ってもモニタリングの仕掛けというものがある程度必要なのかなと思っています。それにおいて、もともと法令が要求しています監査委員会というのは、医療安全ということにミッションが絞られていて、しかも省令の中では少なくとも年2回という。イメージとしては、常設というよりは、たまに来て、それが医療安全ができているかどうかをやっているだけでも許してもらえるような最低基準になっています。これでいいかどうかという感じもしないわけではありませんので、ここにいろいろなミッションを上乗せしていくのか、それとも意思決定に対しての日常的な牽制機能を持つような仕掛けというものを置く必要はないのかということを、少し詰めてみる必要があるのかなと思います。

 逆に、医療安全のほうがもうちょっと頻度よく開かれていて、定期的に業務の執行状況について監視するようなものだとすると、頻度はむしろそっちが少なくて、医療安全のほうの頻度が多いのかもしれませんし、そのあたり、もうちょっと整理した上で、執行の合理性のある会議体の仕組みと、それからモニタリングのあり方をもう少しここにわかりやすく書いたほうがいいのではないかと思いました。

○田中座長 整理、ありがとうございます。

 どうぞ、お願いします。

○松井構成員 病院運営会議というところで何を決めていて、何を目的にするのかというところが、実はややはっきりしていないところがあるのではないかと思います。医療安全が究極の目的になるという点には多分了解があると思いますけれども、それも病院運営会議が直接、医療安全事項について、逐一何かを決めるというのではなく、先ほど野村構成員がおっしゃっていたように、経営問題や重要事項等をきちんとコントロールする中で、病院長その他の業務執行が適正に行われ、それによって医療安全も究極的には達成されていく。多分、このようなイメージのほうが現実的ではないかという感じがしています。

 そうだとしますと、医療安全のためにこの運営会議が必要なのだというのは、ちょっと議論を見誤ってしまうところがあると思います。まずは病院長ないし病院の管理運営の適正化を図るために、重要事項をここでチェックする。その意味でモニタリング機関であるわけです。また、重要な業務執行に関しては、業務執行の意思決定としての機能も持っている。このような位置づけを与えることが必要ではないでしょうか。

 そうだとすると、私自身は、既に各大学病院や病院で、このような類似の意思決定機関なり組織を持っているときに、今回のタスクに応じて少し組みかえていくということはあってよいのではないかという気がしております。このあたりについては、報告書を読んだ病院側が何をすればいいのかが、もう少し具体的に明らかになるようにできるといいかな、と思いました。

○田中座長 梶川構成員、どうぞ。

○梶川構成員 この病院運営会議につきまして、2つの側面があるというのが非常によくわかりました。私は、こういう検討会である種の規範性を持たせるコードとなっていくとすれば、どちらかというとモニタリング的な機能を持つ機関をイメージされることなのではないかと思います。

 逆に、執行の効果性という機関は、ある意味では病院管理者のかなり自由な設計の範疇に入るのではないか。そういうプラクティスがありますよ。できたら、そのほうがいいかもしれませんよという程度のお勧めという意味では、執行効率の会議という表現をしていくということもあるのですが、少し規範性を持たせるとすると、社会・公益に対する医療安全ということなので、どちらかというとモニタリング的な機能の機関をこういう形に定めました。だから、やってくださいということのほうが、たてつけとしてはいいのではないかと思います。もし1つであれば。

 これは、自分が運営している立場、私どもの業界も意外と似ていまして、今、私どもの業界のガバナンスコードをつくろうという話になっていたりするのですけれども、そのときに、今のような公益を確保するというコードでないと、という意味で、私は運営責任者の立場として、運営の効率という話は、責任者として裁量の中に入れて、さらに外の目で、全体の動きや職業専門として社会的ミッションに合う形。これは、自分の人事権とか指示命令権のある方ではなかなか難しいので、外の方を構成員とした組織で自己の運営を担保してもらう、公益性を担保してもらう。そういうたてつけなのではないか。

 私どもの業界はこれからなのですけれども、感じたりしているところがありまして、私は運営効率というのは、ある程度病院長に委ねられるのではないか。おっしゃられたように、今、もうありますよというのは、それを説明してもらう形で、全然ないところは、自分たちの運営形態について、この後もありますが、事業報告書じゃないですけれども、ディスクローズしながら世に問うていくという形も考えられるのではないかと思った次第です。

○田中座長 わかりやすい整理、ありがとうございました。報告書に、世の中の全ての病院はこうすべきだと論ずるところと、後で開示するのは別として、ある程度病院の裁量にかかわる日常的な管理運営のところは別だとの御意見です。

 先ほど野村構成員が言われた、この検討会のもととなった事件ですね。特定の部門に院長のコントロールがきかなかった。それについては、この話だと、どういうふうに理解されますか。

○野村構成員 恐らく両方の課題が出ていたのだと思います。先ほどもあったように、50人の会議が行われていても、その会議では恐らく暴走はとめられなかったと思いますので、執行サイドのところの会議体がしっかりすることが大事だと思います。他方において、病院長だけではモニターできないという問題、あるいは外部の人がいれば気づくこともあると思いますので、そこは独断専行になっているのではないかとか。そこが聖域化されているということは、外の人から見るとよくわかりますので、何でみんな遠慮しているのだろうという感覚が入り込んでくれば、牽制がきいたのではないかと思います。ですから、モニタリングのほうは非常に重要視されていくべきことかなと思います。

○田中座長 そこがマストであり、かつ外部の人も入っているほうがいいとの整理をお二人からしていただきました。

 いかがでしょうか。今のような理解でよろしゅうございますか。

 どうぞ、お願いします。

○山本オブザーバー 今、お話が出たのは国立大学病院の件と承りましたが、1つ問題は、ストラクチャーがあっても、先ほどどなたかがお話になりましたが、倫理の問題。それに所属する人たちの考え方の問題が追いついていかないと、幾らストラクチャーをつくっても、今回の特定機能病院の要件見直しも、主にストラクチャーの面です。そこに所属する人間が、先ほどちょっと申し上げましたが、権威勾配なしに自由に物が言える、あるいは自由に物を聞く心を持っているかどうかということで決まってくる。そうすると、幾らモニタリングだ、何だとストラクチャーを積み重ねていっても、最終的にはそこに所属する人間がマインドを持たないと、何ら牽制機能が働かない。

 例えば、特定の大学の話をすれば、恐らく医療安全のシステムはあったし、ストラクチャーとしてはそろっている。ただ、そこに情報がそもそも上がってこなかった。権威勾配がきいていて、おかしいよという発言あるいは考え方がどこかで権威勾配でとめられてしまって、そのストラクチャーにちゃんと乗ってこない、流れに乗ってこないということが一番。

 そこに上がってこないことには、例えば運営会議で外部委員を入れようが、どうしようが、最初の引っかけるところの心の問題、倫理の問題と言えばいいのでしょうか、そこがちゃんと機能して、それぞれが思っていないと、結局はどんなストラクチャーを積み重ねても、例えば運営会議に仮に医療安全の外部のオーソリティーに入っていただいたとしても、そこは全く機能してこないのではないかと思います。医療倫理をどう徹底していくか、これはストラクチャーでなかなか解決がつかないのですけれども、そこが重要じゃないか。だから、運営会議に外部の専門家を入れるというのは、私自身、なかなかイメージしにくいし、どういう方に入っていただければ機能していくのか。

 病院長がすごく無茶苦茶な人で、自分の思っているとおりで暴走する人であれば、もちろんきくかもしれませんが、この前起きたような事例を防ぐためには、医療倫理という原点に立ち戻ることこそが重要。では、ストラクチャーでどうすればいいのだという話はなかなか難しいと思いますけれども、そういう感想を持ちました。

○野村構成員 言うまでもないことだと思いますが、私は別に倫理を否定しているわけではなく、ストラクチャーがあれば倫理は要らないとは言っていません。当然のことながら、逆も同じで、倫理があればストラクチャーは要らないというロジックではないと思いますので、我々が詰めるべきところとしては、ストラクチャーの理想像も考えなきゃいけないし、当然、倫理も考えなきゃいけない。

 内部統制に関する世界的モデルはCOSOキューブという考え方ですけれども、そこの最上位概念は統制環境と言われている、いわば倫理を含めたものの文化でありまして、それとPDCAサイクルも含めたストラクチャー、一体のものとして理解されていますので、ここを切り離して議論することは、私の専門性からいけば議論としては余り成り立たない。これは相まって両方で成立するものなので、ストラクチャーのない倫理だけで物が成功したという議論は余りないかなと思います。

○梶川構成員 そういう意味では、私ども、職業専門家と言われる世界の者でございますが、倫理、使命感がメーンです。

 病院長が考えられることは、倫理は研修したからどうなるというわけではないですけれども、どのように気持ちを持ち続けさせるかという仕組み自身が組織の仕組みなのではないかと思いますし、それをどういうふうにモニタリングしていますよということも、組織が社会に説明していく上ではすごく重要だと思いますので、そのストラクチャー自身がちゃんと動いているということも含めて、これは経営のあり方だというところまで責任を持っていただくということだと、そうした目的論としてモニタリングという意味であると思います。

 ですから、仮に病院運営会議で第三者として、そのストラクチャーを動かしている、また構成員が職業的使命に向かって、常時意識を持っているかということを、病院長はどういうふうに確認しているかということを確認させていただくということが第三者としての役目になるのではないかと思います。ちょっと言葉が過ぎるかもしれませんけれども、専門家の端くれとして思いました。

○田中座長 楠岡構成員。

○楠岡構成員 案の2ページの1の病院としての適切な意思決定を行うための体制の○1で、管理者の職務権限の明確化の最初の○の後半で、病院長の権限が弱いと、医療安全等の確保に十分対応できないことが懸念される。ここがそもそもの議論の始まりで、そして、その次の3行目あたり、管理者(病院長)が病院内外に対し、病院の管理運営に係る職務権限を有することを明確化すべきである。

 実際、医療法の中では、管理者は病院長ということになっていて、本来、いろいろな権限を持つべきですけれども、一般の病院のように、病院長、イコール開設者とか、あるいは病院長がある意味パーマネントポジションで、その下との権限関係がはっきりしていればいいのですけれども、大学病院の場合は、病院長というのが任期制であって、交代することもあることと。それから、今までうまくいくときは、特に問題なく来ていたこともあって、病院長の権限というものをある意味明文化したような規定とか、あるいはそれをサポートするような組織、あるいは意思決定を行う場合の会議について、余りそこが明文化されていない。

 それから、明文化という意味では、病院長の権限も、どれだけ権限があるかも余りはっきり書かれていないというのが実態。

 この話とは別ですけれども、臨床研究中核病院の枠組みをつくるときに、研究不正が大きな問題になっていたので、病院内での臨床研究体制の中で病院長に責任を持ってもらうと同時に権限を与えないといけない。それで、臨床研究病院になるためには、病院長に病院内の人事権を持ってもらう。ところが、いろいろなところから言われたのは、教授任命権は病院長になくて、総長にあるのでできないとか、あるいは問題が起こったときの懲戒処分も総長権限、学長権限で、病院長には権限がないという話。

 そういう大がかりな話ではなくて、少なくとも病院の中で閉じたシステムとして、例えば教授の任命権は学長かもしれないけれども、診療科長の任命権は病院長に持ってもらう。そして、教授、イコール診療科長ではなくて、教授の方がもし診療科長にふさわしくなければ、ほかの方を診療科長にできるような権限を病院長に渡す。

 それから、これは研究に関した話ですので、ある人が臨床研究において不正を行った場合に、いわゆる懲戒処分というのは学長でないとできないけれども、例えば病院内で研究を3年間停止させるみたいなことは、これは病院長でもできるので、そういう意味での懲戒的な権限も病院長に持ってもらう。そういうことを病院の規定の中に書き込んでいただくということを臨床研究中核病院の承認要件の一つに入れていて、各病院、それに対応していただいている。

 今回は、病院の運営にかかわる非常に大きな話。研究がマイナーという話ではないですけれども、非常に大きな枠組みになるので、そこまで求めるかどうかということはなかなか難しいことですけれども、少なくとも臨床研究中核病院で求めているような内容のことを少し含んだような形、もうちょっとそこを明示化しないと、なかなか伝わらないのではないかというのが気になるところです。逆に、そう書いてしまうと、そこがひとり歩きしてしまうのも、また懸念されるところで、そこをどういうふうにするか。

 そのような意味で、このような合議体を置いてとか、そういうところが出てきているのだと思いますけれども、その辺をどううまく調整するかというところだと、今、感じているところです。

○田中座長 ありがとうございました。

 どうぞ、山本オブザーバー。

○山本オブザーバー 先ほどの倫理とストラクチャーの件は、よくわかりました。私の理解としては、倫理を院内に徹底させることを病院長がみずからやっているかどうかを、外部の目で見ていただく必要性、そのストラクチャーを生かし切っているかというところを見ていただく必要はあるのかなということは感じました。

 それから、今、楠岡先生からお話があった臨床研究中核病院で、診療科長の任免に関する件ですけれども、ほとんどの大学病院は、教授を診療科長に任命することはできるのですが、やめさせることができるという規定がないのです。実は、千葉大学は今まさに臨床研究中核病院に応募している最中ですから、そこは規定改正を全て行って、まさに先生がおっしゃるように、何か不都合がある。実は、臨床研究に限らず、診療上の点でも業務遂行に支障がある場合は、それを免ずることができるという規定も設けました。

 これは、全ての大学病院でそれが自動的にできるかどうかは難しいところがあるので、この臨床研究にかかわらず、ほかの面でも診療科長にふさわしくない、ある診療科の責任者としてふさわしくないと病院長が判断する場合には、そこに手が突っ込めるような権限は持たせたほうがよろしいのではないかと考えます。医学部の教授会と病院との綱引きというか、力関係というのは大学によって異なりますので、私どものところみたいにきれいに規定改正ができるところだけとは限らないと思いますので、そこはお考えいただく必要があるかなと思います。

○田中座長 先進的事例をありがとうございます。

 意見が余り出ていませんでしたが、管理者の選任方法についての記述について、特に御意見ございませんか。先ほどの医療安全、4ページの1番については幾つか意見がありましたが。

 市川構成員、どうぞ。

○市川構成員 今までの議論を聞いておりますと、やはり医療安全というものが今回のポイントと思われますから、ぜひそこは項立てをお願いしたいと思っております。

○田中座長 一わたり御意見が出たと思いますが、事務局は今までの意見をとりまとめることは可能ですか。もちろん、意見は意見でいいと思いますけれども、それを本文に入れ直す工夫については、何となくめどがありますか。

○医療政策企画官 いろいろ御議論、ありがとうございました。

 小さいものから大きいものまで、いろいろいただきましたが、頑張って調整させていただきたいと思います。

○田中座長 どう書いても理解は完璧に一緒にはならず、私はこう読むとの見方があり得るのですけれども、これではまずいと感じる点は残してはいけない。だから、ある幅の理解の中で読めるようにでき上がればいいと思います。きょう、さまざま発言いただいた点について留意して、最終的にとりまとめることになりますが、頑張っていただくしかないですかね。きょうの議論を聞いていると、かなり理解が深まったし、皆様の言っていらっしゃる意味がどこに位置しているかもよくわかりました。ありがたいことです。

 どうぞ。

○梶川構成員 選任方法でなくてもよろしいですか。

○田中座長 はい。

○梶川構成員 小さなことですが、最後の情報の開示のところでございます。私、事実関係がわからないもので、業務報告書の情報開示を推進していく。この情報の中に、財務の状況というのは入っているものなのかどうかということをお聞きしたい。

○医療政策企画官 御質問、ありがとうございます。

 現時点で考えておりますのは、例えば承認要件に今回、落とし込んでいく項目が多数あろうかと思いますが、それはまさに承認するタイミングでしかかかってこないと思います。ただ、継続的なフォローアップというものが必要ですので、同様に求めていかなきゃいけないものについては、その業務報告書を通じて報告いただく規定がございますので、そちらを活用してとっていきたいなと思っているというのが1点です。ですので、御意見いただいておるのですけれども、財務については大学全体の中でやっていただくというのが、まずあるのかなということで、現在は含んでいない形になっております。

 あと、この業務報告書を通じた情報開示の趣旨として、若干派生的な話でありますけれども、現在、特定機能病院について、厚生労働省のホームページのページがないのです。厚生局任せで、それぞれのところに各病院のリンクはあるのですけれども、特定機能病院の関連、御議論もそうですし、ルールもいろいろありますし、それのためのウェブページというものが最低限必要だなと。そこから各大学につながる、各大学の業務報告書のページに飛ぶといったことについても内々検討している。そのあたりを念頭に置いております。申しわけございません、今のところ財務については含まない形で考えておりました。

○梶川構成員 そうしますと、これはお願いに近い内容ですけれども、大学のほうでも情報開示をされていると思いますが、そこからのリファレングも含め、少しわかりやすい形で、こういう一つの組織としてガバナンスを問うているときに、財務の情報は、経営資源の配分であったり、セグメントの話であったり、非常に有効な情報だと思います。もちろん学校のほうで考えていただければと思いますが、いずれにしろ、わりやすいリファーをしていただく形というのを今回、考えていただければという思いはございます。

 これは、病院自身の損益状況、また大学からどのように御支援をいただいているかということは、社会がきちんとつかんで、今、病院経営自身が非常に大変でいらっしゃるという現状というのが社会的にわかる形がすごく必要でしょうし、それによって将来的により経営が合理的になる方向で社会が。これは難しい問題なのですけれども、診療報酬を問うというのは社会的合意から出てくるものだと思いますので、そういった説明にもなっていく形に資するのではないかという気が、門外漢としてはそう思いますので、ぜひお願いできたらと思います。

○田中座長 この報告書で言う、言わないは別として、本来、財務諸表は外部から見えるようになっているべきですね。私も同感です。厚労省のホームページに特定機能病院のデータの情報が載ることは、大変いい方向ですね。それも工夫してください。

 どうぞ、楠岡構成員。

○楠岡構成員 財務に関しても公表するというのはいいと思います。ただ、設立母体によって会計基準が違うので、母体が違うもの同士をぱっと見ただけでは、なかなか比較できないところもあるので、その辺は少し留意して見ていただくということを考えておかないと、公立大学の場合は市町村の会計とか公企業体会計になっていたり、あるいは国立大学は大学法人の会計ですし、私立大学は違う会計ということがあるので、そこはある程度注意は必要ではないかと思います。

○梶川構成員 今の点に関しまして、我々の業界としても社会的責任の一端を感じるところでございまして、今、鋭意努力をし始めようとしているところでございますので、意見が戻ってきたような形でございますが、わかりやすさというのが、これからの適切な持続可能性のある社会保障というテーマでは非常に重要だと認識しておりますので、今の御意見は受けとめさせていただいて、業界挙げて努力させていただければと思います。

○田中座長 ほかによろしゅうございますか。

 本日いただいた大変貴重な御意見、分析的な御意見もありましたし、こうすべきであるという踏み込んだ御意見もありました。それらを踏まえて、一応とりまとめ案をつくります。その作成過程については、私に一任いただいてよろしゅうございますでしょうか。

 

(「異議なし」と声あり)

 

○田中座長 全部細かく書けるとは思いませんけれども、できる限り皆様の声を集約した形でとりまとめ案を作成いたします。一任していただいたところで、本日の議題については議論を終了いたします。まことにありがとうございます。

 事務局から、ほかに何かお伝えすることはありますか。

○医療政策企画官 特にございません。今後につきましては、改めてまた御連絡、御相談したいと思います。

○田中座長 とりまとめ案ができたら、当然皆様にお送りするわけですね。

○医療政策企画官 はい。作成後、改めて皆様にお送りして、御確認いただきたいと思っております。

○田中座長 本日は、これにて終了いたします。

 半年間にわたり、構成員並びにオブザーバーの方々、大変深い理解に基づく熱心な御議論を頂戴いたしました。どうもありがとうございました。


(了)

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