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2016年2月17日 (平成28年2月17日) 第2回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成28年2月17日(水)13:30~16:30


○場所

エッサム神田ホール(東京都千代田区神田鍛冶町3-2-2 2階201)


○議事

 

○司会者 (鈴木) それでは、定刻になりましたので、ただいまより「平成27年度第2回化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーション」を開催させていただきます。

  本日、司会を仰せつかっております、テクノヒルの鈴木と申します。まことにふなれな司会になりますが、宜しくお願いいたします。

  本日は、2月の御多忙中のところ、時間を割いていただきまして、当コミュニケーションに参加していただいて、本当にありがとうございます。

  まず初めに、資料の確認をさせてください。

  まず最初に、ステープルどめのレジュメでございます。これがきょう使わせていただきますレジュメでございます。

  続きまして、ナフタレン、リフラクトリーセラミックファイバーについてのパンフレット、ピンクのものが一部でございます。

  それから、A4のピンクと水色のアンケートがございます。

  まず、ピンクにつきましては、この次の休憩時間に回収いたしますので、もし差し支えなければ御準備をしておいていただいて、公演が終わった後のときに回収させていただく準備をしておいていただければと思います。

  それから、水色のアンケートにつきましては、きょうのお帰りの際に回収させていただきます。よろしくお願いします。

  特にピンクのほうは、きょうのリスクコミュニケーションの中で多くの議論、また、御意見をいただきたいと思っておりますので、なるべくたくさん書いていただくと大変ありがとうございます。

  それから、はがき大のこの赤と青のカードなのですが、これは進行途中に使わせていただきますので、また次の進行のところで御説明させていただきます。御準備のほうを宜しくお願いします。

  本日の趣旨でございますが、このリスクコミュニケーションにつきまして、働く方の健康障害を防止するために、厚生労働省が行っております化学物質のリスク評価に当たりまして、関係する事業者の方、また、事業の団体の方等との情報共有、意見交換を行うために実施しております。

  本日は、いろいろな御意見をいただいて、今後の行政の方向性を含めまして、御意見を頂戴したいということが主目的でございます。

  この事業ですが、厚生労働省が平成27年度職場における化学物質のリスク評価推進事業で、私どもテクノヒルが受託をさせていただいておりまして、昨年度につづき運営させていただいております。本日はお世話になります。

  これから本題に入らせていただきますが、お手元のレジュメのスケジュールどおり、スタートさせていただきます。

  まず「リスク評価の結果(平成27年2月および8月とりまとめ)について」というタイトルで、厚生労働省の検討会であります化学物質のリスク評価検討会で行われました検討内容につきまして、化学物質のリスク評価検討委員でいらっしゃいます、慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室教授の大前和幸先生に御講演を25分いただきます。

  その次に「昨年度のリスク評価を踏まえた特化則等の改正について~ナフタレン、リフラクトリーセラミックファイバー~」というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質評価室長の角田伸二様から御講演を40分いただきます。

  以上の講演を聞いていただきまして、20分の休憩をいただきます。その間に、1回目のピンクのアンケート用紙を事務局で回収させていただきますので、このピンクのアンケートをそれまでに書き上げていただければと思います。

  この中には、御感想、疑問点、御質問されたい点などをお書きいただきまして、会場内におります事務局の者にお渡しいただくか、こちらのほうで回収いたします。

  この御意見につきまして、この内容を踏まえて、後半の意見交換をスタートさせていただきますので、たくさんの御意見をいただければと思います。

  意見交換につきましては、コーディネーターを長崎大学の広報戦略本部准教授の堀口逸子先生にお願いしておりまして、パネリストとして基調講演をいただいた先生、大前先生、角田室長、それから、厚生労働省の方に1名お入りいただきまして、疑問点についてお答えいただくことになっています。

  意見交換につきましては、1時間ほどアンケートにお答えいただいた質問について御回答いたしまして、それ以降、直接、御質問について足りない部分をお受けする形でやらせていただきます。

  当講演会につきましては、後半の意見交換を含めて、議事録作成のために録音をしております。あらかじめ御了承いただければと思います。

  ただ、厚生労働省に対する報告の中では、お名前は割愛させていただきますので、個人名ですとか個人情報がそこで漏れることはございませんので、感じたままの御意見をいただければと思います。

  あと、御質問のときにはマイクを持って御質問いただくような形になると思います

  全体の終了は、4時半をめどに、今、考えております。

  以上が大体のスケジュールでございます。

  お手元の資料で足りないところはございませんでしょうか。大丈夫でしょうか。

  まず初めに、1つ目の基調講演「リスク評価の結果(平成27年2月および8月とりまとめ)について」につきまして、大前先生にお願いいたしたいと思います。

  大前先生、宜しくお願いいたします。

 

基調講演

「リスク評価の結果(平成27年2月および8月とりまとめ)について」

 

○大前 皆さん、こんにちは。慶応大学の大前でございます。よろしくお願いいたします。

  前半25分でリスク評価の結果ということで、お手元のレジュメの後ろのほうにありますように、酸化チタンと三酸化二アンチモンについてお話をいたします。

 

(スライド1)

  まず、きょうの目次でございますけれども「2.リスク評価制度について」を前半でお話しいたしまして、3番目に先ほど言いましたような評価結果についてお話をいたします。

 

(スライド2)

  御存じのように、労働現場で扱われている化学物質の数は非常に多くございまして、5万種とも6万種とも言われております。毎年1,000を超えるような新規届出があるということで、これらを全部個別に把握しながら健康障害の防止等々をするのは非常に難しい状況になっているのは当然でございます。

 

(スライド3)

  これは休業4日以上の業務上疾病の発生の状況ですけれども、最近、徐々に減ってきてはおりますけれども、そんなに急激に減っているわけではない。まだ年間200万人くらいの方が4日以上の休業をしている状況が残念ながらございます。

 

(スライド4)

  労働安全衛生法では、その化学物質に対しまして、一番厳しい製造禁止という化学物質から、一番下のSDSの努力義務があるという化学物質まで、これだけたくさんの種類の毒性のレベルといいますか、健康影響の強さによって、さまざまなタイプの規制をしていることになります。

  一番下になりますけれども、新化学物質に関しましても常にSDSの努力義務になるところから始まっていくことになっております。特別則と言われる規則がございまして、有機則とか、鉛則とか、特化則とか、それがこのグリーンのところ、ここから上がいわゆる特別則という形で規制されている。

  ある意味、過去にそれなりの健康障害を起こしてきたというタイプの物質になるわけです。

 

(スライド5)

  今までの化学物質対策は、ハザードベースという考え方でやっておりまして、すなわち、何か起きるか起きないかということです。何か起きたことによって、それで初めていろいろなタイプの規制をするのが今までのタイプだったのですけれども、最近は、平成18年度以降、もう10年くらい前になりますが、ハザードベースをやめようと、リスクベースで規制をしていこうという考え方に国が方針を変更いたしました。

  その結果に基づきまして、事業者が自主的な管理をするとか、あるいは、国もみずから物質を選択しまして、それのリスク評価をして、リスクが高いという判断をされたものに関しましては、リスク管理の方向に持っていくということで、18年から考え方が変わっております。

 

(スライド6)

  もう少し具体的に言いますと、これは健康リスク評価の一般的な手順を示した概念図ですけれども、リスク評価の部分とリスクの管理をする部分とに大きく分かれております。

  リスク評価とは何かをやるかといいますと、まず、その特定の物質の何が起きるかということ、健康影響の観察、有害性同定で何が起きるか、その健康影響はどれくらいの量で起きるかということを調べます。

  一般的には、特にこういう行政などでやられる評価の場合は、いっぱい文献を集めます。化学的な情報を集めます。これをまとめ上げるという形でやります。何がどれくらいの濃度で起きるかということがわかった時点で、一切、どれくらいばく露しているのか、労働現場の濃度はどれくらいなのかということを測定しまして、現在、労働者の方はどれくらいリスクを持っているのかということを決めてやるということです。

  このリスクが小さければ、それでおしまい。要するに、現在の日本では、労働現場でこの化学物質のリスクは小さいので、特にリスク管理、行政で規制をする必要はないということで、ここで終わります。

  でも、残念ながらある程度のリスクが確認された場合は、どのように管理をしてやりましょうかということで、行政のリスク管理の委員会でさまざまな決め事をするわけです。その決め事に従って具体的な国からの管理が示されることになります。

 

(スライド7)

  これは似たような図ですけれども、まず、一番最初に何を選ぶか。どういう物質に関して国がリスク評価をするかということです。

  どこの会社でどれくらい使っているかということをやりまして、それで何が起きるか。この前のものと全く同じですけれども、リスク評価をやりまして、もしリスクがあるということになりましたら、健康障害防止対策、すなわち、リスク管理のための対策について検討するということで、こちらの一番下のところがリスク管理のスキームで、この上の部分はリスク評価のスキームになります。

 

(スライド8)

  実際にどんなことをやっているかといいますと、27年からでございますけれども、この27年から、まず一番最初に、どういう化学物質を選ぼうかということの企画検討会があります。ここで方針を決めたり、あるいは、毎年選択する物質を決めます。

  そこで物質が決まりますと、今度はリスク評価の委員会に行きます。リスク評価の委員会は2つに分かれておりまして、有害性の評価、すなわち、どれくらいの量で何が起きるかというところの委員会、小検討会ですけれども、それと実際にどれくらいばく露しているのかということをはかる検討会、この2つに分かれております。

  このピンクのところでリスク評価がされまして、その結果、もしリスクが大きいということになりますと、化学物質の健康防止措置に係る検討会がリスク管理の検討会になるわけです。だから、リスク評価の検討会が、親検討会が1つありまして、2つ目のリスク評価をする検討会が、有害性とばく露の両方の小検討会がありまして、その結果によって措置検討会に行って、ここで具体的な規制措置が決まるという体制になっております。

 

(スライド9)

  これも似たような図で、繰り返しになりますけれども、では、化学物質をどんなものを選ぶかという、一番最初の選ぶ方針としては、一つは、検討会のメンバーはそれなりの専門家の方がいらっしゃいますので、今度はこの物質をやる必要があるのではないかと。必要性です。

  もう一つは、パブリックコメントと書いてありますけれども、周りからのいろいろな情報です。これはやったほうがいいのではないかという御意見です。その両方をあわせて何をやろうかということで決めるのが企画検討会になります。

  それから、先ほどのリスク評価の検討会、リスク管理の検討会を通しまして、報告書をつくって最後に報告するということで、ここの6月から行きますと、2年間ぐらいかけているわけです。

 

(スライド10

  これは先ほどと同じなので、省略します。

 

(スライド11

  もう少し詳しく評価のスキームを見ますと、リスク評価に関しましては、2段階評価をしております。1段階目を初期リスク評価、2段階目が詳細リスク評価ということで、この2段階でリスク評価をやっております。

  初期リスク評価の時点では、まず、ばく露を評価します。

  今まで労働環境は作業環境測定ということで、場の管理、場の濃度を測定するということがメーンでやられておりましてたけれども、もちろんまだやっておりますが、リスク評価の場合は、それではなくて、ばく露そのものを測定するというばく露評価の考え方でやっております。

  この中に絵がありますけれども、これは何かといいますと、実際にばく露評価したら、この赤い線と青い線の2本の横線がありますけれども、この赤い線が二次評価値といいまして、これを超えると労働者に何らかの健康影響が来る可能性があるという数字、具体的には、日本でいいますと許容濃度という数字がありますし、アメリカですとTLV-TWAという数字がありますけれども、ああいう数字です。

  ああいう数字がこの二次評価値になりまして、実際にばく露を測定したところ、二次評価値よりも高い数字が出ている。

  今、赤線が5本引いてありますが、5人のうち3人は二次評価値よりも値が小さいのだけれども、2人が二次評価値を超えているようなばく露をしているということがわかりますと、これはやはりリスクが高いねということになりますので、詳細評価に移りましょうということになります。

  このブルーと黄色は、いずれも二次評価値を超えていないレベルなので、労働環境のばく露が高くはないのでリスクは小さいねということで、ここでおしまいになります。

  それぞれ、リスクは低いということと、現時点でリスクは高くないと2つに分けて書いてありますけれども、いずれにしましてもここでおしまいです。

  高いのがわかりますと詳細評価に移りまして、もう一回ばくろをもう少したくさんの場所で会社ではからせていただくということです。

  それから、この間、少なくとも1年くらいのギャップがありますから、この間にもちろん何か新しい情報があれば、それは追加するということでもう一回やってみたら、やはり高いねということになりますと、この高い原因は何なのかという要因解析をやります。

  もしこの要因、高い原因が特定の会社の特定の場所だけみたいに決定できれば、そこだけちゃんと管理すればいいということで、国全体としての管理は要らないねということになります。それがこちらの特定事業場の問題ということで、当該事業場の指導とか監督ということで済んでしまう。

  でも、どこの会社にも共通して要因がありますねということになりますと、やはりこれは共通しているので、各社ごとの指導・監督ではなくて、やはり国として指導・監督する必要がありますねという判断をされてここに行くわけです。リスク低減措置を検討するということになります。

  繰り返しますけれども、初期リスク評価をやってリスクが高いと、もう一度確認のために詳細リスク評価をやってまたリスクが高ければ、このリスク管理の委員会に行くということです。

  リスクが高くても、要因解析をやって特定の事業場だけだったらそっちには行かないのですけれども、やはり共通した部分があるとしたら、全体としての管理が必要だということで、リスク管理の委員会に行くわけです。

 

(スライド12

  このリスク判定の手順ですけれども、ここにありますように、一次評価値、二次表値です。

  一次評価値とは何かといいますと、発がん等を考える場合とか、生殖毒性、神経毒性、いわゆる特殊毒性と言われる分野ですけれども、そういうものを考えてつくる数値が一次評価値です。

  この一次評価値とは、この数字超えたらすぐどうのこうのということではなくて、潜在的なリスクがあると考えていただきたい数値ということです。

  二次評価値は、先ほど言いましたように、これを超えると労働者に対して健康障害を起こす可能性がある数値、許容濃度とかACGIHTLV-TWAの数値ということで、ばく露評価がこの一次か二次かどこにあるかということを見ているということです。

  繰り返しになりますが、ここで重要なことの一つは、今、はかっているばく露濃度、ばく露評価は、作業環境を評価しているのではなくて、個人のばく露を評価しているというところで、作業環境測定法で決まっているような、ああいう形の評価の仕方をしていない。つまり、管理濃度がありますね。管理濃度で評価しているわけではないということです。

  これは今までの作業環境測定法の精神とちょっと違うところです。

 

(スライド13

  リスク評価結果ですけれども、これは平成27年2月、8月の報告書で出てきたものです。

27年は、初期リスク評価をこれだけの物質についてやりました。そうしましたら、アルファ-メチルスチレンとか、2-エチルヘキサン酸、フッ化ナトリウム、クメンについては、ばく露濃度は高くないということなので、リスクは低いですねということでここでおしまいになりました。

  もう一つ、クロロメタンと塩化アリルに関しましては、やはりばく露濃度が結構高いですね、先ほど二次評価値を超えているようなレベルになっていますねということなので、詳細リスク評価に回ったというのがこの2物質になります。

  それから、詳細リスク評価も実は同時並行でやっていますので、そちらではナノ粒子の酸化チタンと三酸化二アンチモン、酸化アンチモンに関しましては、詳細リスク評価をやっている最中だということになります。

  このグルタルアルデヒドはもう少し前から来たのですかね。これも詳細評価にかかっていたものですけれども、これに関しましては、特に詳細評価をやった結果、作業工程には余り高いばく露がないということで、ここで終わりになりました。

  この2物質に関しましては、リスクが高く措置を要するということで、健康障害防止措置の検討、すなわち、リスク管理の検討会に回っている最中だということになります。

 

(スライド14

  今度は、具体的な物の話になるのですが、酸化チタン(ナノ粒子)です。

  これは二次評価値が0.3mg/㎥と切りました。個人ばく露の最大値が二次評価値を上回ったという結果になりました。

  実際には、個人ばく露濃度の最大値が1.644と、0.3と比べると随分高いです。こういうばく露が観察されたものですからリスク管理のほうに行っているということです。

  具体的には、酸化チタンを製造している事業場における充填、袋詰めの作業、ここら辺で濃度が高いことがわかったわけです。

 

(スライド15

  これは酸化チタンの物性ですね。これはちょっと外します。

 

(スライド16

  さまざまな有害性を評価いたしまして、発がん性に関しましては、例えば、IARCはグループ2Bにしております。ヒトに対する発がん性が疑われるというレベルです。

  急性毒性、皮膚刺激性、ここら辺は余りないのですけれども、反復投与毒性では、肺機能障害が起きる可能性があるというリスク評価結果になっております。

 

(スライド17

  許容濃度が、ACGIH10、ただし、これはトータルの酸化チタンで、日本産業衛生学会がナノに関して0.3という数字を勧告しておりますので、二次評価値はナノをターゲットにしているということもありますから、産業衛生学会の0.3を採用しているということです。

  一次評価値は発がんから計算している数字です。

 

(スライド18

  ばく露評価結果ですが、920の事業場から4,000くらいの作業報告がありまして、6万人弱くらいの方が仕事をしているのだそうです。

  実際に測定したのが15事業場で、46人の方にパーソナルサンプラーを付けていただいて濃度を測定したということです。

 

(スライド19

  その結果ですけれども、ばく露濃度の最大値の対象物質の製造をしているという事業所が9事業所、35人がやっているわけですが、その中の最大値が1.644であったということです。

  それから、他製剤の製造を目的とした原料の使用としては6事業場11名で、この場合は0.1ということで非常に低かったということで、0.3を超えていることになります。

  ここにもう一つ数字があります。これは何かといいますと、この1.644というのは、実際にはかった最大値になります。1.353はこの46人のデータの分布を見て、上から5%、95%値といいますけれども、分布を変えてみて、高いほうから5%のところの数字を計算してやりまして、これはあくまでも計算値ですが、その数字を計算してやって、その数字が1.353という数字だったということです。

  これも0.3を超えているということで、要管理になっているということです。

 

(スライド20

  これは実際のデータです。二次評価値がここです。だから、このくらいの方が2次評価値を超えているばく露を受けているということです。

  これは高いほうから20名並べてありますので、46名全員のデータではないのですけれども、高い順番に右から並べてやるとこんな形になっているということです。

 

(スライド21

  したがって、酸化チタンにつきましては、0.3を超えていることもあって、かつ、先ほどの重点とか袋詰めとかという作業工程が共通している。特定の会社だけの問題ではないということでございますので、健康障害リスクがあるということで、何らかの措置をする必要があることになったというのが酸化チタンになります。

 

(スライド22

  もう一個、三酸化二アンチモンです。

  これにつきましては、二次評価値が0.1mg/m3 、ばく露評価の結果が、個人の最大ばく露が0.4mg/m3 でした。

  先ほど言いました計算で出してきた上から5%の数値、95%の値が0.59mg/m3 でした。

  したがって、両方とも0.1mg/m3 を超えているということで、同じようにリスク管理のほうに行くことになりました。

  二次評価値を上回った作業は、製造・取扱作業のほぼ全ての作業が含まれるということで、特定の会社の特定の場所ではないということなので、要因分析から全体としての管理が必要だということになったわけです。

 

(スライド23

  これは三酸化二アンチモンの物化性状ですね。生産量が6,845万トンですか。随分たくさん使っている物質ですね。

 

(スライド24

  それから、これは有害性評価の概要ですけれども、発がん性に関しましてはIARCも多分ヒトに対して発がんの可能性があるという評価をしているということです。

  急性毒性は幾つかありますけれども、刺激性/腐食性の中で三酸化二アンチモンは皮膚に付着しますと皮膚炎を起こします。アンチモン皮疹というものを起こします。これは非常に有名な事実で「夏場や高温作業」と書いてありますけれども、汗をかいて、そこのところにくっつくのです。そこで皮膚が弱い人は湿疹を起こすという物質です。そういう意味で刺激性/腐食性がある。

  目も同様です。

  感作性はない。アレルギー性はないということです。

  反復ばく露は、これはやはり肺機能が障害されそうなのです。ヒトのデータでも肺機能障害を起こしている。じん肺ということも起きているということなので、これは肺機能障害はありそうだということです。

  このようなものです。

 

(スライド25

  許容濃度としては、アメリカは0.5mg/m3 、日本は0.1mg/m3 ということで、どちらを選択するかという問題になるわけですけれども、この場合は基本的には数値の低いほうをとることが原則になっております。要するに、安全側を見るという意味です。

  両方ともそれぞれ根拠があって、それから、ヨーロッパのほうの0.5mg/m3 で根拠があるのですけれども、今回の場合は0.1mg/m3 を採用したということです。

  一次評価値は残念ながら計算できませんでした。発がんに関する一次評価値を本当はつくれればよかったのですけれども、それはないということで、一次評価値はない状況で進んでおります。

 

(スライド26

360事業場から869の報告がありまして、述べ大体1万人弱ぐらいの方が三酸化二アンチモンに携わっていらっしゃるということです。実際に測定したのは12事業場の39人に対して測定をしております。

 

(スライド27

  これがその結果でして、対象物質を製造している製造工場が4事業場がありまして、そこの12人の方で測定しますと、最大値が0.343であるということです。

  それから、それを原料として使っている事業場も7事業場がありまして、18人の方に対して測定しましたが、最大値が0.4であるということです。

  難燃剤のほうは0.042と1桁くらい低いという状況でした。

  最大値が、今、言いましたように0.4が最大値で、先ほどの分布から見た計算値が0.59ということで、いずれも0.1を上回っていることになります。

 

(スライド28

  実際上はこんな感じです。

  この中でちょっと修正してほしいのですけれども、ここに酸化炉と揮発炉と2つの言葉があるのですが、これは同じです。両方とも揮発炉と考えてください。酸化炉と揮発炉は別物かというと、実は同じものなので、そこのところはちょっと修正しておいてほしいのですけれども、上からいきますと、8人の方が0.1を超えているくらいのばく露がある状況でありました。

 

(スライド29

  二次評価値を8名が超えたということです。計算上も0.1を超えているということで、リスクは大きいということです。

  ここに「酸化炉、溶融炉」と書いてありますけれども、この「酸化炉」は先ほどの「揮発炉」と同じですので、両方同じものだと思って読んでください。

  これとこれは、ばく露の濃度が高いことが測定されました。ここは「揮発炉」と書いてありますね。ちょっと言葉がごちゃごちゃしていますけれども「酸化炉」と「揮発炉」は同じですので、そのように見てください。

  ここら辺の作業も、特定の会社の作業ではなくて、どこの会社でも共通だということで、全体としての管理が必要であるということになったのです。

 

(スライド30

  今、三酸化二アンチモンに関しましては、リスク管理の委員会、ばく露防止措置等の健康障害防止措置の委員会で検討している最中になっております。現在進行形になります。

 

(スライド31

  以上が今までの結果で、今度、27年度にばく露実態調査をやって、当然まだこの報告書はできていないのですけれども、その中で、詳細リスク評価では酸化チタンと塩化アリル、初期リスク評価の中ではこのようなものに対してやっている最中で、そのうち報告書ができることになります。

 

(スライド32

  今後の予定ですが、これは上のほうの四角は今までやった部分で、下の部分は今後の予定になります。

  選定する企画検討会で今度はこのようなものをやりましょうということになりましたものですから、来年度に関しましては、このような物質をターゲットにしてリスク評価、初期リスク評価あるいは詳細リスク評価が始まることになります。

 

(スライド33

  具体的なリスク評価の報告書は、皆さんにお配りした資料のホームページにありましたので、ここに行っていただけると実際の中身を見ることができますので、ぜひごらんになっていたただきたいと思います。

 

(スライド34

  以上でございます。

  ありがとうございました。

 

○司会者(鈴木) 大前先生、どうもありがとうございます。皆様、大前先生は大変御多忙中のところをきょうもお時間をさいていただきまして、拍手のほうで御礼申し上げたいと思います。宜しくお願いいたします。
                           (拍手)

  これで第1項のほうは終わりました。先ほどから重ねて申しわけないのですが、先生のほうから、今、リスク評価の制度について、それから、リスク評価結果についてということで酸化チタンのナノ粒子と三酸化二アンチモンのお話がありました。

  これにつきまして、先ほどの赤いアンケート用紙に、御質問、疑問点、それから、御意見、御感想の記載をお願いいたします。今、もしあれでしたら、仮にメモでも書いておいていただいて、その上に上書きしていただければと思います。

 

基調講演

「昨年度のリスク評価結果を踏まえた特化則等の改正について~ナフタレン、リフラクトリーセラミックファイバー~」

 

○司会者(鈴木) 続きまして、厚生労働省安全衛生部化学物質評価室の角田室長に、昨年度リスク評価結果を踏まえた特化則等の改正について、ナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバーについて御講演をいただきます。

  角田室長、よろしくお願いいたします。

 

○角田 御紹介いただきました、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室の角田でございます。

  本日は、このリスクコミュニケーションに参加いただきまして、まことにありがとうございます。関係の事業者の皆様を初めとする御参集の皆様におかれましては、日ごろより私どもの施策の推進に御協力くださっておられますことに厚く御礼申し上げます。

  このリスクコミュニケーションですが、冒頭にお話がございましたとおり、双方向の意見交換の場ということで開催させていただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

(スライド36

  化学物質評価室では、毎年、化学物質のリスクの評価を行っておりまして、リスクが高いと判断された物質につきましては、健康障害防止のための措置の検討をいたしまして、必要な措置を法令で定めているところでございます。これは先ほどの大前先生の御説明にもありましたとおりでございます。

  今年度のリスク評価の報告、昨年の夏に取りまとめられました報告でございますけれども、大前先生のただいま御説明がありましたが、私が御説明しますのは、一昨年にリスク評価の報告が取りまとめられましたナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバーにつきまして、政省令が改正されまして、昨年11月1日に施行されましたので、それを御説明したいと考えております。

  資料の中で、きょうはお手元にパンフレットもお配りしておりますけれども、資料の中でパンフの該当ページなども記入しておりますので、また後ほどあわせてごらんになっていただければと思います。

 

(スライド37

  説明の中身は、リスク評価の仕組みとこれまでの経過、3番目、特にこれがメーンですが、法令改正の概要でございます。

 

(スライド38

  これは先ほどの大前先生の資料にも類似のものが載っていましたので簡単に触れるにとどめますが、化学物質の管理の体系でございまして、左下にナフタレン及びリフラクトリーセラミックファイバーがございますが、下から2番目のところに位置づけられていた物質でございまして、これを左上の国のリスク評価というところに持っていきましてリスク評価をした。

  その結果、上から2段目のところの特別規則による個別規制の対象物になったという御理解をいただければと思います。

 

(スライド39

  これはちょっと省略いたしますが、先ほどの御説明にもございましたとおり、リスク評価につきましては、ばく露の評価と有害性の評価と2つをあわせて実施しているところでございます。発がん性などの有害性が確認されても、現場でばく露測定をした結果、ばく露リスクが低いことになれば、それはリスクが低いという判断になるというところでございます。

 

(スライド40

  これは今回規制された2物質のリスク評価の経過でございまして、大分前から取り組んできて今に至っていることをまとめたものでございます。

  平成20年、21年にリスク評価の対象物質として選定されたものでございますけれども、これは国際がん研究機関、IARCの発がん性分類が2Bということで、ヒト発がんの可能性があるということで、それを踏まえて選定されたところでございます。

  その後、年間500キロ以上の製造または取り扱いがある事業者の皆さんに、ばく露作業の報告を上げていただきまして、その中からばく露が高いと思われる事業場を選んで実態調査を行った。

  その結果をリスク評価報告書に取りまとめたということです。

  下から3段目のところにリスク評価報告書の取りまとめということで、先ほどの大前先生の御説明がありましたとおり、初期評価と詳細評価と2段階で評価をしているところです。

  その後、措置検討会で報告書を取りまとめましたのが、それぞれ平成27年2月でございまして、政省令改正は公付が去年8月と9月、施行が2711月でございます。スタートしてから政省令改正に至るまで、かなり時間がかかっています。

 

(スライド41

  リスク評価の結果でございますが、これは先ほど類似のものがありましたが、これは26年度に報告がまとめられたものでございまして、このうち、詳細リスク評価のナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバーについて「リスクが高く措置検討を要す」と右のほうに書かれておりまして、これを受けて検討したところでございます。

 

(スライド42

  これは少し細かくて恐縮ですが、リスク評価の結果と措置検討の結果ということでまとめているところでございます。

  ナフタレンは常温で白色の固体ということで、防虫剤などにも使われているのは御存じのとおりですが、染料の中間物や合成樹脂など、多くの用途に用いられているものでございます。

IARCの発がん性分類が、先ほど申し上げました2Bでリスク評価の対象としたところでございます。

  リスク評価の結果、リスクが高かったわけですが、その意味は、先ほどの御説明にもありましたとおり、評価値とばく露実態調査で把握した個人ばく露の最大値を比較しまして、評価値を超えるばく露が確認されたところでございます。

  ここで申し上げています評価値は、先ほどの御説明の二次評価値で、規制が必要かどうかということをこの二次評価値で判断しているところでございます。

  ナフタレンは、実際の測定の最大値は評価値を超えていなかったのですけれども、リスク評価のルールによりまして、区間推定値が評価値を超えたということで高いばく露と判断されたところでございます。実際の測定値のばらつきを踏まえて、どのくらいの区間で最大ばく露が想定できるかということを推定しました結果、その推定値の上限の部分が評価値を超えたというところで、リスクが高いと判定されたものでございます。

  そのため、引き続き措置検討を行ったわけですが、その結果、特定第2類物質と同様に、作業環境測定の実施や発散抑制措置等を講ずる必要があるとなったわけでございます。

  特定第2類といいますのは、がんなどの慢性疾患だけではなくて急性中毒を防止する措置が必要なグループと御理解いただければと思います。

  特別管理物質という発がんを踏まえた特別な管理が必要なグループがありますが、ナフタレンもそのような措置が必要だという結果になったところです。

 

(スライド43

  リフラクトリーセラミックファイバーでございます。

  リフラクトリーセラミックファイバーは、この「用途の例」にございますが、工業炉のライニング材や防火壁の保護材、高温用のガスケット・シール材などで使われているものでございます。アルミナとシリカを主成分とする非晶質の人造鉱物繊維で、そういった用途で用いられているところです。

  これもIARCで発がん性分類が2Bとされているということで、リスク評価の対象としたところでございます。

  これについても、ばく露実態調査の結果、評価値を超える個人ばく露が確認されたことから、必要な措置の検討をしたところです。

  リスクの高低の判定ですけれども、現場で測定した個人ばく露濃度を評価値と比較しまして、評価値を超えればリスクが高いということは先ほどと同じですが、この評価値は、注3にあるように、ACGIHや産衛学会の許容濃度等から決定しております。RCFの場合は、ACGIHが設定しているばく露限界値を二次評価値としているところでございます。

 

(スライド44

  今回の改正の中身でございますけれども、改正したものは政令と省令、それから、関係する告示などで、ごらんのとおりでございます。

 

(スライド45

  改正の中身を簡単にまとめまして、それぞれ政令と特化則、省令でございますが、特定化学物質障害予防規則を特化則と書いてありますが、それぞれの条文でどういうことを書いているかということでまとめたものでございますので、御参考にしていただければと思います。

 

(スライド46

  中身については、飛ばします。

 

(スライド47

  次の今回の改正の概要というところで御説明したいと思います。

  これは、分類としましては、特定化学物質の第2類物質で、特別管理物質、表示対象物質、SDS交付対象物質という分類になるわけでございますけれども、主な規制としましては、ここでそれぞれ項目ごとにまとめているものでございます。

  括弧内は関連規定ということで、法律なり政令なり省令のどこに書いてあるかという条文をまとめたものと、今回、改正になったものがどの部分かということを下線であらわしているところでございます。

  容器・包装への表示で、これは安衛令、政令18条で対象物質を規定しておりますけれども、これが改正になっています。

SDSの交付でございますけれども、これは別表第2の2が一部改正になっているところでございます。安全データシートを付する対象物質が規定されておりますけれども、その関係の改正でございます。

  発散抑制措置(局所排気装置の設置等)でございますが、これは特化則の4条と5条が関連しております。

  それから、局所排気装置の性能ということで、これは特化則の第7条ですが、関連して性能に関する告示がございますので、これが改正され、ナフタレンは10ppm、リフラクトリーセラミックファイバーは0.3本/cm3 という形になっています。

  作業主任者の選任、作業環境測定、特殊健康診断や特別管理物質としての措置ということで、それぞれ規定に追加されているところでございます。

  赤字で書いてある部分は、特別管理物質としての措置が必要になっているものです。

  施行日は平成2711月1日で、経過措置としましては、猶予期間を設定しているものについてまとめているところです。

 

(スライド48

  これから個別の物質ごとに御説明をさせていただきますが、まず、ナフタレンでございます。

  ナフタレンは、まず、容器・包装への表示でございますけれども、ナフタレン、これを重量の1%以上含有する製剤その他のものを容器・包装に入れて譲渡、提供する場合は、容器・包装に次の事項の表示が必要ということで、これは去年11月1日から適用になっているところでございます。

  表示事項としましては、次のとおり、丸数字1から丸数字8まで書かれてございます。注書きで※印が3つほどございますが、これは労働現場の規制という観点から、一般消費者の生活の用に供するためのものを除外するという規定でございます。

  それから、既にラベル等がある場合がございますので、2711月1日時点で既に存在するものについては、28年4月30日までは適用除外ということになっているということです。

  平成28年5月31日以前に譲渡し、または提供する場合は、改正労働安全衛生法施行前の規定に基づく丸数字1~丸数字8の表示事項が必要ということで書いております。

  これは労働安全衛生法の改正で、成分表示が28年、今年の6月1日から義務ではなくなるわけでございますが、それまでの間は表示が必要という意味を書いているのが※印の3つ目でございます。

  文書の交付等、2番目でございます。

  ナフタレン、これを重量の0.1%以上含有する製剤その他のものを提供する場合は、安全データシート(SDS)の交付などにより次の事項の通知が必要ということで、これは丸数字1から11まで書かれているとおりです。

  従来も対象になっておりましたので、特に今回改正ということではございません。

 

(スライド49

  それから、ナフタレンの規制の対象となる作業と含有率ということでまとめています。ナフタレンと、これを重量の1%を超えて含有する製剤その他のものが対象となっておりまして、ナフタレン等を製造し、または取り扱う作業が規制対象でございます。

  ただし、適用除外業務ということで、下に書かれておりますが、液体状のナフタレン等を製造し、または取り扱う設備からの試料の採取の業務、それから、液体状のナフタレン等を製造し、または取り扱う設備から液体状のナフタレン等をタンク自動車等に注入する業務、3番目でございますが、液体状のナフタレン等を常温を超えない温度で取扱う業務ということで、これらが特化則の適用除外業務になっております。

  これは措置検討会で検討しました結果、これらの業務についてはばく露リスクが低いということで除外対象になったところでございます。

  例えば、密閉系の工程で、サンプリング等の取扱作業ではばく露リスクが低いという測定結果がございますので、そういうものを考慮したり、あるいは、ナフタレンは蒸気圧が小さいので、常温では蒸発量が少なくてばく露リスクは低いとか考えられることから、液体状のナフタレンを常温を超えない温度で取り扱うものを除外にしているところでございます。

  常温は施行通達で概ね35℃を超えない程度の温度ということを、下の※印でまとめているところでございます。

 

(スライド50

  それから、発散抑制措置でございますが、ナフタレンの製造、取扱作業について、発散するガス、蒸気に労働者がさらされることを防止するため、次の措置をとることが必要ということで、1つ目は、対象物の製造工程、製造設備を密閉式の構造とするところでございます。

  2番目ですが、製造工程以外の対象物のガス、蒸気が発散する屋内作業場でここに発散源を密閉する設備、局所排気装置またはプッシュプル型換気装置を設けるということでございます。その措置が著しく困難なときなどは、全体換気装置を設ける等の措置が必要になってくるところです。

  3番目で、局所排気装置等の要件なり点検なり届出等を特化則で規定しているところでございます。

  4番目で、除じん装置の設置でございますが、対象物の粉じんを含有する気体を排出する、製造設備の排気筒、局所排気装置、プッシュプル型換気装置には、粉じんの粒径に応じた除じん装置を設けることという規定になっております。

 

(スライド51

  ナフタレンの製造、取り扱いに係る作業主任者は、どういう資格の方を選任するかということと、職務が何かということをまとめています。

  職務につきましては、作業に従事する労働者が対象物に汚染され、吸入しないように、作業の方法を決定し、労働者を指揮すること、それから、装置を点検すること、保護具の使用状況を監視することで、これについては、平成2911月1日より適用ということで、2年間の猶予期間が設定されております。

 

(スライド52

  ナフタレン等の製造、取り扱いに係る漏えい防止のための措置ということで、これは特定第2類物質に係るものでございますけれども、漏えいの防止措置、漏えい時などの異常時・緊急時のための措置、点検、労働基準監督署への届出等という規定が適用されます。

 

(スライド53

  特別管理物質としての措置でございます。

  一番下に特別管理物質とは何かということをまとめておりますが、人体に対する発がん性が疫学調査の結果、明らかになったもの、動物実験の結果、発がんの認められたことが学会等で報告されたもの等、人体に遅発性効果の健康障害を与える、または治ゆが著しく困難であるという有害性に着目し、特別の管理を必要とするものとなっておりまして、上の1、2、3と赤字で書かれていますようなことが必要であるとなっているところでございます。

  遅発性の有害性があることから、記録も30年間保存となっているところでございます。

 

(スライド54

  これは作業環境測定でございます。

  製造、取扱いを行う作業場では、作業環境測定とその評価、結果に応じた適切な改善を行うことが必要とされておりまして、6カ月以内ごとに1回、定期に、作業環境測定士による作業環境測定を実施し、

  結果について、一定の方法で評価を行い、評価結果に応じた適切な改善を行う。

  測定の記録、評価の記録を保存します。

  管理濃度は10ppmで、試料採取方法は個体捕集方法、分析はガスクロマトグラフ分析方法でございます。

  これは平成2811月1日より適用されます。

 

(スライド55

  健康診断でございますが、ナフタレン製造、取扱作業に常時従事する労働者に対しまして、健康診断を行うことが必要で、健診項目を一次健診と二次健診に分けてまとめておりますので、御参考にしていただければと思います。

 

(スライド56

  次に、リフラクトリーセラミックファイバーの規制でございます。

  容器・包装への表示、それから文書の交付等はナフタレンと同じでございますけれども、まず、容器・包装への表示は、同じように重量の1%以上含有する製剤その他のものを容器・包装に入れて譲渡、提供する場合は、次の事項の表示が必要ということでまとめているところでございます。内容は先ほどのナフタレンと基本的には同じでございます。

  文書の交付等は、重量の0.1%以上含有する製剤その他のものを提供する場合は安全データシートの交付などにより次の事項の通知が必要ということとされております。

  従来もSDSの対象物ではあったのですけれども、これまでは人造鉱物繊維ということで、RCF以外のものも含むものとして、重量の1%以上を含有する製剤その他のものをSDSの交付対象にしていたところでございます。これについて、RCFだけ取り出しまして、それを0.1%以上で設定したところでございます。この裾切り値につきましては、GHSの発がん性の分類などを踏まえて設定しているところでございます。

 

(スライド57

  対象物と除外業務でございますが、リフラクトリーセラミックファイバーとこれを重量の1%を超えて含有する製剤その他の物が対象でございます。

  リフラクトリーセラミックファイバー等を製造し、または取り扱う作業、製造・取扱作業が規制の対象でございます。

  リフラクトリーセラミックファイバーは、これも施行通達でもまとめておりますけれども、国際がん研究機関で発がん性分類が2Bとなったシリカとアルミナを主成分とした非晶質の人造鉱物繊維ということで、アルミナファイバーやアルカリアースシリケートウール(AES繊維)は含まないということでございます。

  特化則の適用除外業務でございます。

  リフラクトリーセラミックファイバー等を製造し、または取り扱う業務のうち、バインダーとはリフラクトリーセラミックファイバーの発じん防止に用いられる接合材等でございますが、このバインダーによって固形化されたものその他のリフラクトリーセラミックファイバー等の粉じんの発散を防止する処理が講じられたものを取り扱う業務は適用除外になります。

  ただし、括弧書きで書いていますとおり、当該物の切断、穿孔、研磨等のリフラクトリーセラミックファイバー等の粉じんが発散するおそれのある業務を除くとされています。

  今回、いろいろと法令改正でも御質問が多いのですけれども、特にリフラクトリーセラミックファイバーはどういうものが対象になるかということについては、いろいろと御質問も多い状況でございます。

  例えば、固形化されていないブランケット状のものは除外になるのか、クロスにブランケットを封入したものは除外になるのかという御質問もありますけれども、固形化されていないものは基本的に除外にならないと考えておりますし、例えば、クロスにブランケットを封入しているものは、これはやはりクロスのすき間とか、クロスを通じて発じんする場合があるかどうかで、発じんする場合は適用除外にならないと考えております。対象物については、今、申し上げましたとおり、いろいろと御質問も多いのですけれども、具体的な製品を踏まえて判断する事項もあるかとも思いますので、個別の質問は該当する労働基準監督署に御照会いただければと考えております。

 

(スライド58

  発散抑制措置でございます。

  1つ目は、対象物の粉じんが発散する屋内作業場におきまして、発散源を密閉する設備、局所排気装置またはプッシュプル型換気装置を設けることになっております。

  それから、局所排気装置及びプッシュプル型換気装置の要件、点検、届出等につきましては、ごらんのとおりでございます。

  除じん装置の設置も、これも先ほどのナフタレンと同様でございます。

 

(スライド59

  作業主任者も、先ほどのナフタレンと同様でございますので、省略させていただきます。

 

(スライド60

  呼吸用保護具、作業衣または保護衣の規定でございますけれども、この御説明をする前に、1つ飛びます。

 

(スライド61

  この特殊な作業等の管理というところを先に御説明したいと思うのですけれども、特化則は、普通、製造または取扱業務を規制対象としているのですけれども、RCFにつきましては、一部の業務については発じんのおそれが高いということで、特別な規制を設けているところでございます。それが丸数字1~丸数字3の業務でございます。全体で、製造、取扱業務を丸数字1~丸数字4の4つに分けられると思うのですけれども、そのうち丸数字1~丸数字3については特別な管理を必要とするということで、その中身を下の表の中にまとめたものでございます。

  第1項のところで、作業場の床等は、水洗等によって容易に掃除できる構造のものとするとか、粉じんの飛散しない方法で毎日1回以上掃除をするというのは、丸数字1~丸数字4の全部に○がついておりますが、全部で必要になります。

  第3項第1号、作業場所をそれ以外の作業場所から隔離する。

  第3項第2号、労働者に有効な呼吸用保護具及び作業衣または保護衣を使用させるとのが丸数字1~丸数字3についています。

  第4項の第1号と第2号が丸数字3の業務だけについているところでございます。

  丸数字1の業務は、一番上のところに書かれておりますが、RCFを窯、炉等に張りつけること等の断熱または耐火の措置を講ずる作業ということで、リフラクトリーセラミックファイバーを工業炉などに施工する作業でございます。

  2番目は、その施工したものを補修したりする作業でございます。

  丸数字3のところは、それを解体したり破砕したりする、除去なども含みますけれども、それが丸数字1~丸数字3の作業でございます。

  この丸数字1~丸数字3の作業は、措置検討の過程で特に発じんのおそれが高いということで規制された業務でございますので、通常の製造、取扱業務に係る措置に加えて、さらに特別な管理を行うこととしたことでございまして、それがここの第3項第1号、第2号に書かれているところでございます。隔離するとか、保護具などを使用させるというところでございます。

  隔離するという中身につきましては、具体的な部分は施行通達の中にも書かれておりますけれども、ビニールシート等でほかの場所に粉じんが飛散しないように覆うとかでございます。

  ただし「隔離することが著しく困難である場合」と書かれておりますけれども、その場合は別の作業場所において作業に従事する労働者に適切な呼吸用保護具を着用させたり、湿潤化措置を講ずることでも可能であるとなっております。

  工業炉ですと、配管の関係とかもありまして、隔離することが難しい場合もありますので、このような規定を設けているところでございます。

  それから、第3項第2号で、有効な呼吸用保護具及び作業衣または保護衣を使用させるということで、これも発じんのおそれが高いことに対応した措置でございます。

  第4項でございますけれども、この丸数字1~丸数字3のうち、特に丸数字3につきましては、解体、破砕等の作業ということで、発じんのおそれが特に高いこともありますので、第4項の第1号、第2号に係る湿潤な状態にする等の措置、切りくずを入れるためのふたのある容器等の配備をするといった措置が加わっているところでございます。

  ここで、有効な呼吸用保護具及び作業衣または保護衣を使用させるというところの有効な呼吸用保護具が、1つ前に戻っていただいた資料でございます。

 

(スライド60

  次の作業を行う際に、呼吸用保護具及び作業衣または保護衣の使用が必要ということでまとめておりますが、先ほどの丸数字1~丸数字3までの作業でございます。

  真ん中のところに○がありますが、100以上の防護係数が確保できる呼吸用保護具であることということで、例示としまして、例えば、以下のものが含まれるとしております。粒子捕集効率が99.97%以上の全面形の面体を有する電動ファンつき呼吸用保護具、それから、半面形のものにつきましても、ごらんのとおりの規格を示しておりまして、これは労働者ごとに防護係数が100以上であることが確認されたものとしております。

  措置検討の中で、炉の施工に関する測定結果を検討したわけでございますけれども、それを踏まえますと、管理濃度の水準を踏まえて、防護係数がこのレベルのものが必要であることが結論づけられましたので、このような規定にしているところでございます。

 

(スライド62

  特別管理物質としての措置でございますが、これは先ほどのナフタレンと同様でございますので、これは省略させていただきます。

 

(スライド63

  作業環境測定でございます。

  これも同様の規定でございます。6カ月以内ごとに1回ということで、定期に測定することになっております。

  工業炉の施工、補修、解体は、ここで言っている6カ月の長期にわたって行い、必要になる測定間隔を超えて作業が続くケースは余りないのではないかと考えております。

 

(スライド64

  これは特殊健康診断でございますが、先ほどと同様にまとめているところでございます。

 

(スライド65

  作業記録の例でございますが、これは先ほど特別管理物質については、作業記録を整備して、30年保存するとなっておりますけれども、その具体的な例としまして、御参考ということでまとめたものでございます。

  これは、労働者の氏名ごとに、右上に氏名が書かれておりますが、人ごとにまとめる場合の例でございますので、このようなものも御参考にしていただければと考えております。

 

(スライド66

  次が、これは粉じん障害防止規則との関連ということで、これも御参考にまとめたものでございます。粉じん則などでは、特定粉じん作業、粉じん作業を規定しまして、必要な措置を求めているところでございますけれども、RCFの製造、取扱業務につきましても、一部の業務がこれらに該当する可能性もありますので、その場合は両方の措置が必要になってくることをまとめたものでございます。

 

(スライド67

  経過措置につきましては、ちょっと細かくまとめておりますが、時間の関係もありまして、飛ばさせていただければと思います。

  政令と省令ごとにまとめてございます。

 

(スライド72

  特定化学物質の分類と措置内容というところで、第1類、第2類、第3類となっておりますけれども、今回、赤字で真ん中のところに「ナフタレン等」「リフラクトリーセラミックファイバー等」と書かれておりますが、それぞれのところに位置づけられたというところで、青色になっている枠のところは、特別管理物質ということでございます。

 

(スライド73

  「おわりに」で、今回、皆様、事業者の方やその関係者の方が多いと思いますが、ナフタレン、リフラクトリーセラミックファイバーの製造・取り扱いに当たっては、今回の法令改正に基づく措置が必要であることをまとめたものでございます。

  法令に基づく必要な措置を講ずれば製造・取り扱いは可能ですので、製造・取り扱い自体が禁止されているわけではございません。

  それから、代替物質への切りかえを検討する場合もあるかと思うのですけれども、その場合も当該物質について十分なリスクアセスメントを行う必要がありますので、その点もいろいろ御検討いただければと考えております。

 

(スライド74

  厚生労働省のホームページの掲載情報でございますが、法令改正の中身につきましては、新旧対照表、施行通達、パンフレット、リスク評価報告書、措置検討会報告書をまとめて掲載しておりますので、ここでより詳細な資料等は御確認できるかと思います。

  その他参考資料というところで、先ほど大前先生の御説明にもありましたばく露評価やリスク評価をどのように行うのかというルールにつきましては、ここにも載せておりますので、これもまた御参考にしていただければと思います。

  一番下は、これまでリスク評価を行ってきた物質がどのような物質があるのかという一覧表がございまして、その中で法令で規制したものとか、リスクが低くて終了したものとか、その結果もまとめて入れておりますので、これも御参考にしていただければと思います。

 

(スライド75

  若干超過しましたが、御説明は以上でございます。

  ありがとうございました。

 

○司会者(鈴木) 角田室長、どうもありがとうございました。宜しく

  ここで、講演は終了とさせていただきます。

  ここから15分休憩をいただきまして、予定どおり2時40分でございますので、2時55分からコーディネーターを含めて再開したいと思います。

  つきましては、後半の意見交換をやるために、現在お手元にありますピンク色のアンケート用紙に御質問をお書きいたきまして、できましたら、手を挙げていただきましたら事務局でいただきますので、よろしくお願いいたします。

  それでは、今から15分、2時55分までお休みとさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

(休  憩)

 

○司会者(鈴木) それでは、後半の意見交換会を始めさせていただきます。

  先ほど申しました赤と青の厚紙をお手元に御用意ください。

  後半は、4名の方が演台のほうに入らせていただきます。

  皆さん、お疲れだと思いますが、これから始めさせていただきます。

  本日のコーディネーターは、先ほど御紹介させていただきました、長崎大学の広報戦略本部准教授の堀口逸子先生にお願いをします。よろしくお願いします。

  パネリストですが、基調講演をいただきました慶應義塾大学の大前先生、厚生労働省労働基準局の角田室長、もう一人、厚生労働省から北村化学物質情報管理官でそれぞれ始めさせていただきます。宜しくお願いいたします。

  予定では4時ぐらいまでと思っておりますが、いただいた御質問について先生方から御質問に対する御回答、ここからスタートさせていただきたいと思いますので、皆様、よろしくお願いいたします。

  それでは、堀口先生、宜しくお願いいたします。

 

○堀口 それでは、早速、始めさせていただきたいと思います。

  いただいた質問から進めていきます。

  まず、リスク評価全体にかかわることから始めますが、「ばく露リスクがあるとはどのような意味でしょうか。この御講演で発言がありましたが、この際のリスクとは何を意味するのか。労働現場では保護具を着用している場合は、ばく露リスクは正確には判断ができないと思われます」というお話ですが、大前先生、よろしいでしょうか。

 

○大前 おっしゃるとおりです。ばく露というのは定義が決まっておりまして、作業者の口の周りの空気の濃度をばく露濃度という定義があります。

  したがって、今、後半にありましたマスク、保護具をつけますと、実際のばく露濃度と作業者が吸う濃度に乖離が出ます。実際に作業者の吸う濃度と違うので、そういう意味では、ばく露濃度がすなわち作業者のリスク濃度ではダイレクトではないことになります。

  ただ、現在の段階ではばく露で評価していることでやっておりますので、そういう意味ではギャップはあります。

 

○堀口 それから、そのリスク評価の対象物質に関する御質問ですけれども、「国によるリスク評価は、640物質を全て実施していくのでしょうか。640物質でひとまず完了するのでしょうか」という御質問です。

 

○角田 先ほどの図の中にもあったのですけれども、リスク評価はどういう物質を選定していくかということだと思うのですが、私どもは、今、重点にしておりますのは、発がん物質を中心に選定をしているところでございます。

  先ほど2B以上のものということで申し上げたのですけれども、基本的にIARC(国際がん研究機関)で2B以上の分類になったものについては、リスク評価の候補としてリスク評価の企画検討会の中で検討していただく。

  その際に、実際に2B以上になったとしても、余り使われていないものまで対象にするのかという議論もありますので、その際に、いろいろと用途としてどういうものに使われているかとか、製造量なり生産量、輸入量とか、そういうものがどのぐらいあるのかということも踏まえて選定をしています。

 

  それから、有害性は発がんだけではなくて、最近は重篤な健康障害ということで神経毒性、生殖毒性、あるいは呼吸器感作性で肺機能の障害などが出てくるようなものとか、そういうものも対象にしているということで、640のパイの中から順次そういった観点で選んできているところでございます。

 

○堀口 ありがとうございます。

  今の御回答は、もう一ついただいていた、「リスク評価対象物質について発がん性にかかわる物質の国によるばく露評価はおおむね終了したのでしょうか。また、まだ評価物質が残っているのでしょうか」という御質問の御回答にもなるかなと思いますが。

 

○角田 御存じのとおり、国際機関などでの有害性評価は毎年行われております。例えば、IARCでも毎年新たな分類がモノグラフで公表されていますので、新たに2Bという格付けになるものも当然出てくるので、私どもはそういった海外の情報なども踏まえて、その中でリスク評価の対象にするかということを検討している状況でございます。

 

○堀口 それから、「有害性の一次評価値については、参考情報との御説明でしたが、発がんが1万人に1人発生するときの濃度でもあり、一次評価値を超え、二次評価値未満の場合は、発がんが1万人に1人以上発生する可能性があります。この考え方について、国民との合意形成(パブコメ)は行われたのでしょうか。

  一次評価値の持つ意味(リスク判定)に対して、もう少し補足説明をいただけたら幸いです。」

  大前先生、お願いします。

 

○大前 皆さんのお手元の資料の7ページの上の図ですけれども、ここに一次評価値とは何かということが書いてございます。

  今、御指摘のように、10の-4乗、1万人に1人、閾値がないタイプの発がんの場合ですけれども、その数字が公にされていれば一次評価値として取り上げております。

  それと二次評価値の間には1万人に1人云々かんぬんという議論は確かにあります。そこに関しましては、特にこのリスク評価委員会では、その間の濃度はどうしようかと。要するに、その間の濃度が出た場合に、例えば、これを詳細評価に持っていく云々かんぬんという議論はしておりません。

  それが実態です。

 

○角田 一次評価値と二次評価値は、先ほどの御説明にもありましたけれども、一次評価値は、言ってみれば、十分にリスクが低い水準であると考えておりまして、現場のばく露水準、先ほどリスク評価の手法が、ホームページのURLが、私の資料の最後のところにありましたが、そこのリスク評価の手法というところ、それから、ばく露ガイドラインというところに細かく書いてありますので、後ほどごらんになっていただければと思うのですが、一次評価値は十分にリスクが低い水準で、現場のばく露水準がこれを上回っている場合二次評価値での判定に進むというスクリーニングの意味があると考えていただければと思います。

  二次評価値は、それを超えるばく露が確認されれば、基本的に法令での規制措置の検討に進むということでございます。

  一次と二次の評価値の間の部分は、義務となる法令での規制までは必要ないのですけれども、各事業場において適切な対応をとっていただくことが必要な部分であると考えております。

  先ほど、一次評価値の発がんリスクの10の-4乗について、パブコメなりそういった御意見をお聞きしているのかという趣旨の御質問があったかと思うのですけれども、リスク評価の手法、ばく露評価のガイドラインの中にもフロー図がございまして、その中で10の-4乗を超えるものについての扱いなどについてもまとめておりまして、そういうばく露のガイドラインを実際につくるときに、皆さんの御意見をパブコメで聞いたりしております。

 

○堀口 ありがとうございます。

  「リスクアセスメントで判断された低リスク物質を扱う労働者は、本当に健康障害を起こす可能性は低いのでしょうか。

  作業工程が変わればばく露評価結果は変わると思われ、何年かごとにチェックする必要があるのではないでしょうか」という御質問です。

 

○大前 おっしゃるとおりで、作業方法が変われば、同じ物質でもばく露の濃度が変わってきます。

  今回、このシリーズでやっているばく露評価の段階でばく露のレベルが低くて、リスク評価で安全だと言われた物質も、当然、状況が変わって二次評価値を超えるばく露が出てくれば、それは健康障害を起こすリスクはあります。

  したがって、何年かに1回やったらどうかという御意見は正しいと思うのですが、なかなか現実的には難しい状況だと思います。

 

○堀口 ありがとうございます。

  また追加で御質問の場合は、一旦、終わってから、皆様にお時間を差し上げますので、お願いいたします。

  次は、物質の話になってきますが、「酸化チタン(ナノ粒子)を規制する際に、当該物質に対するばく露防止対策の基本は、以前通達されているナノ粒子に対するばく露防止対策となるのでしょうか。」

 

○角田 ナノマテリアルについて、平成21年の通達のことをおっしゃっているのかと思うのですが、取り扱いにおける留意事項を、予防的措置ということで通知をしているものでございます。

  その段階ではまだ十分にデータ等がないこともあって、ある程度、予防という観点から、いろいろ指導しているというもので、通達でございますので、特化則等での規制と違って、罰則が適用されるとか、義務化されるようなものではございません。

  今回の酸化チタンにつきましては、ナノ粒子としてのリスク評価の報告を、先ほど大前先生の御説明にもありましたとおり、まとめておりまして、これは評価値を超えるものが出ている実態にあるわけでございますが、それ以外の酸化チタンですと、ナノ粒子以外のものもございますので、そういったものとあわせて、再度、リスクを評価しまして、どういう部分を、どういう措置で規制するのかということも含めて検討していかなければならないと考えております。

  もちろんそういう以前に通知しているものも踏まえつつということはあるかと思いますけれども、基本的には、今回、新たにリスク評価をした中身に応じて必要な措置を、そういう取りまとめになれば、検討していくことになるかと思います。

 

○堀口 「粒子状物質(酸化チタン)のリスク評価は、粒子のサイズに加えて、結晶構造、表面修飾の有無も考慮する必要があるのではないでしょうか」という御質問です。

 

○大前 おっしゃるとおり、ルチル型とアナターゼ型という差もありますし、当然、粒径が違えば表面積も違うということもあります。

  修飾に関しては、今、何とも私もよくわかりませんけれども、それによってそれぞれ違うということですが、今、存在しているデータの中では活性が強いほうのタイプのデータしかない。非常にデータの分量は少ないのですけれども、そういう状況の中でやっておりますので、現段階では、数十ナノメートルくらいだと思いますけれども、そこら辺のデータで評価していることになります。

 

○堀口 それから、「ナノ粒子の作業環境測定法は確立されているのでしょうか」という御質問です。

 

○角田 ばく露実態調査を行うに当たりまして、個人ばく露測定の測定手法を確立してやってきておりますので、その方法については、実際に適用できる技術はあると考えております。

 

○堀口 それから、「酸化チタンや酸化アンチモンを樹脂(ポリマー)に添加材として加え使用する場合があります。樹脂中に含まれるこれらの有害性は、単品で扱う場合と異なると考えています。

  樹脂材料(混合物)の危険、有害性はどのように考えればよいか。粉体などの単なる混合物とは異なるはずだと思っているのですが」という御質問です。

 

○大前 そういう議論も実は出ておりまして、粒子の中に混ぜ込んだ状態のものは、樹脂の表面には多少は出ているのでしょうけれども、そういうものの扱いと単純な粉体の扱いは分けたほうがいいのではないかという議論はしております。

  ただ、まだ最終的に結論は出ていない状況でございます。

 

○堀口 それで、「アンチモンの質問に行きたいと思いますが、アンチモンの許容濃度、EU0.5mg/m3 に対し、日本は0.1mg/m3 で日本のデータを採用していますが、安全サイドに立つ以外、根拠データは正しいのでしょうか。」

 

○角田 三酸化二アンチモンの評価値の御議論だと思うのですけれども、これは産衛学会のほうで2013年に勧告をしまして、1年たちまして2014年に確定されたものを採用しております。

  前回、12月のリスコミでも同様の御質問が出たのですけれども、産衛学会が0.1という水準で許容濃度を設定されたのは、これは両方ともヒトのデータでございますが、心臓毒性や皮膚炎の発症のデータでございますとか、ラットの吸入ばく露試験における肺クリアランスの機能低下等を踏まえまして、1991年に産衛学会が許容濃度として出されておりました0.1mg/m3 は、妥当であるという結論づけをされておりますので、その結果を評価値として採用しているところでございます。

 

○大前 追加になりますけれども、EUの使っている元データと産衛学会が使っている元データは結局は同じです。だから、元データの信頼性に関しては両方とも変わらない。

  何が違ってくるかといいますと、そこにどのような不確実係数を使うかという考え方のところで数字が違ってきているということです。元データに関しては、同じです。

 

○堀口 ありがとうございます。

  同じ方の御質問で、「実測すると時間も費用もかかるので、ちょっと私は存じていないのですが、ECETOC TRAなど、モデルで試算していますでしょうか」という御質問です。

 

○角田 ばく露実態調査につきましては、実際に現場で測定をしておりますので、そういったモデルを使って試算することはございません。

  実際にばく露作業報告が出てきた事業場の中から、どういうところに調査に入るかということを絞り込むに当たりましては、いろいろとコントロールバンディングの手法なども使ったりとかはしておりますけれども、現場に入って実際に行う測定は、実際に個人ばく露を測定してやっている状況でございます。

 

○堀口 「三酸化二アンチモンについて、規制の対象になるのは、三酸化二アンチモンのみでしょうか。複合酸化物はどうなるのでしょうか。」

 

○角田 三酸化二アンチモンということで、現在、リスク評価をしているところでございますので、その結果を踏まえて、規制するという必要な措置が出てくれば、それを行うものは三酸化二アンチモンだけでございます。

  当初は、ばく露実態調査はアンチモン及びその化合物ということでスタートしたのですけれども、三酸化二アンチモンで非常にばく露水準が高かったことや、IARCで国際がん研究機関での発がん性評価が2Bになっていますのは、三酸化二アンチモンでございますので、そのものに絞って、今、リスク評価を行った結果、先ほどの結論になって、現在、措置の検討をしている状況でございます。

 

○堀口 多分お答えになったと思うのですが、「リスク評価結果の資料にアンチモン及びその化合物などの記載になっていますが、これだと三酸化二アンチモンより安定なものを含んでのデータになっていることはないと思うので、どのようにして三酸化二アンチモンの根拠のデータになっているのか、教えていただきたいです」と。

 

○大前 この答えは、使っている情報自体が三酸化二アンチモンを使った実験なので、根拠データは三酸化二アンチモンのデータであるということでよろしいですか。余り意図がよくわからなかったものですから。

 

○堀口 まだ回答が不十分でありましたら、また後ほど御質問していただければと思います。

  酸化チタンの質問を1つ忘れていました。済みません。

  「酸化チタンのナノ粒子は、ばく露濃度が二次評価値を超えており、リスクが高いと判断されます。一方、非ナノ粒子については、リスクが高くなかったと記憶しております。

  これらの状況を踏まえ、酸化チタン全体の規制のあり方について、現時点で説明可能なことがあれば御教示ください」とのことです。

 

○角田 ナノ以外の酸化チタンにつきましては、これから評価値をどうするかという検討も必要になってきますので、それを含めて全体を評価していくことが必要になると思いますので、今の段階で個別に申し上げられることはございません。

 

○堀口 「酸化チタンの今後の詳細リスク評価はどのように進んでいくのでしょうか」という御質問があるのですが。

 

○角田 ナノの評価はまとまりましたので、あと、今年度も一部ナノ以外のものについてのばく露の実態も調査しておりますので、それを踏まえて28年度以降になると思いますけれども、評価値を設定して、全体の評価を行い、その中でのナノの評価は出ていますので、それとあわせて検討しまして、規制が必要であれば、どういう規制をしていくのかということを検討していくことになるかと思います。

 

○堀口 それから、ちょっと戻って申しわけないのですけれども、「リスク評価の結果が新たに出てきた化学物質評価情報によって修正(見直し)された事例はありますでしょうか。」

 

○角田 今、全てを確認したわけではないのですけれども、そういった価値でリスク評価を再度行ったとかという例は、承知している限りではございません。

 

○堀口 「リスク評価でのリスクの高い低いの判断は、二次評価値のばく露実態調査結果との関係のみでなされるという理解でよいでしょうか。」

 

○角田 基本的にはそうなのですが、ただ、他の事業場との関係において、それが工程に共通なリスクがあるということが言えるかどうかということも当然判断いたします。

  要するに、その事業場だけ特に何か要因があったのでそこだけが高かったということかもしれませんので、そういったことは当然考慮して判断します。

  ただし、判定自体の基本は、二次評価値と個人ばく露の結果です。要するに、個人ばく露の最大値とその区間推定値を比較しての高いほうをばく露最大値として、そのばく露最大値と二次評価値を比較するという形が基本でございます。

 

○堀口 次に行きます。

  「特化則の適用除外について、ナフタレンを含む液状物質のサンプリングは適用除外とのことだが、サンプルを実験室で分析などに用いる場合は、35度以下でなければ適用除外にならないのでしょうか。少量の取り扱いでも」と書いてあります。

 

○北村 御質問にあるとおり、適用除外作業は、規則に列挙しているとおりですので、設備、装置からのサンプリングの業務は適用除外ですけれども、そのサンプリングしたものを使ってほかの取り扱い業務を行うということであれば、液状のナフタレンの常温としての上限の温度が、目安ですけれども、35度となっていますので、それを超えた場合は適用除外にはなりません。

  特化則には、少量取り扱いという考え方は基本的にありません。

 

○堀口 「リフラクトリーセラミックファイバー、RCFについては、炉などとして使用した場合、徐々にクリストバライトを変化すると記載されていますが、これらの物質、生成する可能性のあるトリジマイトは、摩砕することにより、細胞毒性、線維増殖性、発がん性を消失するので、廃棄するこれらの物質を摩砕する方法をとることも考慮されてはと考えます。」

 

○大前 RCFは熱が加わることによってクリストバライトに変化しますけれども、クリストバライト自体は純粋なシリカです。シリカというのは、じん肺、いわゆる珪肺を起こす物質で、珪肺を起こせば発がん性もあるということですので、クリストバライトになるからといって安全になるわけではないことは知っておいていただきたいと思います。

  摩砕する云々かんぬんは、ちょっと私はそこら辺がよくわからないのですけれども。これは、要するに、表面さえ消してしまえばいいかという意味ですか。済みません。私はこれの意味がとれない。

 

○角田 もし、今、特に差し支えなければ、追加で御説明いただければ。

 

○A氏 

  細胞の実験でございまして、私どもがやりました実験はかなり昔の実験でございますが、石英を中心にしましたじん肺症の問題から、いろいろな物質を加熱しまして、細胞毒性とか、線維増殖性を見ているような実験をしております。

  その場合に、クリストバライトになりましたり、トリジマイトになりますと、線維増殖性とか、発がん性も強くなってくるというのは一般的に言われているかと思いますが、細胞を摩砕いたしますと、表面構造が変わってまいりまして、かなり毒性も減りますし、線維増殖性も減ってまいりますので、こういったものがクリストバライトになるということが書いてございますので、クリストバライトよりも二酸化チタンの線維のほうが、毒性は私は低いと思うのです。二酸化チタンは、細胞毒性とか、細胞実験の場合には、コントロールのダストとして使うものでありまして、ほとんどイナートなのです。

  だけれども、これがナノになっているからいろいろな問題があるのだと私は認識しております。

  それで、ここでこういうクリストバライトになりましたようなものは、もっと大きさは大きくなっているかもしれないとも理解はいたしますけれども、私はクリストバライトはやっていないかもしれないのです。随分昔の実験なものですからちょっとあれなのですけれども、トリジマイトに関しましては、少なくとも摩砕いたしますと細胞毒性はうんと減ってまいります。

  そういうことを考えると、こういった物質の処理というときに、大々的にナノとして取り扱うよりは、その物質を集めて摩砕をかけてしまったほうが毒性が少なくて余り新心配しなくてもいい状況で処理できる可能性かあるのではないかと思いますが、私自身も随分前にやった実験なので、その資料は持ってきていませんので、前に、早稲田の先生にはこのことをお話ししたことがございます。

 

○堀口 名古屋先生ですね。

 

○A氏 トリジマイトは確実に摩砕すると毒性が減りますから、そういった危険性があるなら、一度その物質を集めて摩砕をかけてしまえば、アスベストでもそういったことはあるのですけれども、細胞毒性なりそういったものはかなり変異原性にしても減ってきますので、そういったところの実験なり、私はこの物質については実験したことはございませんので、はっきりしたことは言えないのですけれども、そういった方向性を考えると、余り危険なものとして取り扱わなくてもいい可能性があるということが言えるのではないかなと思って、ちょっと書かせていただきました。

  参考意見として、以上でございます。

 

○堀口 ありがとうございます。

  何か先生方のほうから補足はありますか。

 

○大前 RCF自体が繊維状のもので、そんなに固いものではないと思うのです。それを熱がかかってクリストバライトに変性をして、それを廃棄するときに、多分、全部を変性する前に多分廃棄されると思うので、もともと性能がなくなってくると思いますから。

 

○A氏 要するに、この場合には、私が考えているのは二酸化チタン自身も非常にイナートの物質ですけれども、それがナノのような非常に小さいものになってきたときには、問題があるということだと理解しております。

 

○大前 それはおっしゃるとおりだと思います。

 

○A氏 二酸化チタン自身だったら、普通の2ミクロンとか1ミクロンとかというものでしたら、まず、イナートダストとして考えると思うのです。私どもはいつもシリカなどを使うときに、条件のコントロールとして実験をしているわけですから、そういうことを考えますと、この物質がクリストバライトに変わってくるというところを重く考えたほうがいいだろう。

  恐らくこれがどのくらいの大きさのものになっているかということも確かめたほうがいいかなと思います。恐らく凝集してきていると思うのです。クリストバライトになるときに。だから、ナノの状態ではないのではないかと思うのですけれども、その辺はいかがでございましょうか。実験のあれが私は存じませんので、大変失礼なのですけれども。

 

○堀口 先生、どうぞ。

 

○大前 実際にどういうサイズで廃棄されるのか、私もよく存じません。ナノサイズなのか、あるいは十分に大きいサイズなのかということは、ちょっと私も存じませんので、申しわけありません。

  酸化チタンに関しましては、大きなサイズは先生がおっしゃったように、昔はイナートということで、さんざん使っておりまして、それがナノになった瞬間に表面積の問題か何かわかりませんけれども、いろいろな障害が出てくるということです。

  ただ、そのクリストバライトがどのサイズなのかという情報が実はありませんので。

 

○A氏 要するに、炉ですから、炉にしますと、恐らく小さいままではないだろうと私は思うのです。そうすると、その処理とか、その対策は炉だけに限るわけではないので、今、おっしゃっていることはもちろん非常に重要ですけれども、炉の場合だったら全部はがして一度大きさを見るなりして、もしおっしゃるようにクリストバライトになっていることが非常に問題であるのなら。クリストバライトは磨砕すれば少し細胞毒性は減ってきていますし、それの線維増殖性を私のほうも見ていないかもしれないのですが、少なくとも名古屋先生にもお話ししたのですけれども、トリジマイトになるのです。

  トリジマイトを摩砕いたしますと、細胞毒性が減りますので、ですから、細胞毒性が減りますと、ほとんどそれと線維増殖性はパラレルに来ているという実験は持っておりますので、この場合も炉についてはそういったことを考えられてもいいのかなということの参考意見でございまして、決定的なことを、今、やっておりませんので、申しわけございません。

 

○堀口 ありがとうございます。

  御参考の意見を承りました。

  「炉の話ですが、RCFの特殊な炉の修理、炉修を半年に1回、2日間程度実施する場合でも、特化則で適用されるのですか」という御質問です。

 

○北村 先ほども御説明したとおり、取扱量というよりは、リフラクトリーセラミックファイバーの粉じんにばく露するかどうかということが問題になるので、特化則の措置の中には健康診断のように、常態として取り扱うかどうかという判断が必要な措置もあるのですが、特化則自体の適用があるかどうかという話であれば、あるということになります。作業主任者の選任とかは必要になってくると思います。

 

○堀口 「局所排気などの発散抑制の設備化が困難な作業に対しては、事例として特化則としてどのような措置、対応が講じられていますか。

  また、局排などの設備化が困難なところでも管理濃度は適用されるのでしょうか。」

 

○北村 管理濃度が適用になるかどうかは、まずは作業環境測定が行えるかということになりますけれども、屋外であればその管理濃度がそもそもはかれないという場合はあります。

  局所排気装置の設置のについてですが、特化則においては、設置が困難な場合はこの限りでないという条文になっておりまして、例えば、臨時の作業、出張のような作業のように、局所排気装置が困難な場合は、労働衛生保護具で対応するようにということが規定されております。

 

○堀口 それから、「弊社では半導体電子部品を取り扱っておりますが、全てのお客様より、ナフタレン、RCFの含有の有無の問い合わせがあります。含有、不含有、含む、含まれないの調査報告は必要なのでしょうか。」

 

○北村 お客様がそういうものを求められた際にということでしょうか。サービスとして対応するというのはあり得るのかもしれませんけれども、法令上しなければいけないかどうかということは、調査をしてまで含有率を調べるかどうかということは、製造メーカーでない限りは義務ではありません。

  ナフタレンもRCFSDSの交付対象物質ですので、含有されている場合はそれの旨を提供する際に製造メーカーなり輸入されているかもしれませんが、その大もとのところから記載された書面を受け取っているはずなので、そこの部分を確認していくことになります。全ての事業者が自社の製品に含まれているかどうかを全て調査するという義務はありません。

 

○堀口 「『常時従事する労働者』という表現の『常時従事』とは、どの程度のことを言うのでしょうか。」

  リスクが高くなるばく露量に達するおそれのある時間と物質ごとに計算することは、理屈の上ではできると思いますが、物質ごとにそれを考えるのは大変ではないかと思いますと。

 

○北村 この常時従事するという表現は、特化則にかかわらず、いろいろなところで規定されていますけれども、これにつきましては、各事業場の取り扱いの状況等によって変わってきますので、これについては、具体的に、これであれば常時です、これであれば常時ではありませんというところは、本省のほうではお答えすることは困難です。特定化学物質にばく露している実態があって、その常時従事するかどうかの判断を迷われるときは、最寄りの労働基準監督署にお問い合わせいただければと思います。

 

○堀口 芳香族アミンによる健康障害の防止について2つぐらい来ています。

  「発がん性に関する労働者のリスクに関係する芳香族アミン類としては、1、IARCの発がん性評価が2B以上で、既に特化則のなどの規制を受けているもの、ベンジジン、オルトトリジン、ジアニシジンなど7物質、IARCの発がん性評価が2B以上で安衛法のリスク評価の結果、リスクが低いまたは高くないと評価されているもの、オルトアニシジン、オルトトルイジン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノトルエン、メチレンジアニリンなどで、3番目として、IARCの評価はないが、ACGIH等で発がん性があるとされているもの、2,4-キシリジン、パラトルイジン、アニリンなどが知られています。

  昨年12月に、長期に、IARCの発がん性評価が2B以上で、安衛法のリスク評価の結果、リスクが低いまたは高くないと評価されているもの、それから、IARCの評価がないけれども、ACGIHなどで発がん性があるとされているものの2つに相当する芳香族アミン類5物質について取り扱っているまたは取り扱ったことのある事業場において、健康診断の実施と事後措置の徹底を図るという通知が出ました。

  これは、過去にこれらの物質を取り扱ったことのある労働者を特化則相当の基準で膀胱がんの発症の有無を事後管理するということでしょうか。」

  また、通知に記載された以外の芳香族アミン類(ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノトルエン、メチレンジアニリン等)についても、改正安衛法のリスクアセスメント実施義務の対象になっている場合には、オルトトルイジンと同様の事後措置を行う義務または努力義務があるのでしょうか。

 

○北村 12月に厚生労働省のほうで報道発表していますとおり、芳香族アミン類によるばく露が疑われる、労働者の方々で膀胱がんが発生したという事案がありました。

  ただ、これについては、まだ何が原因物質であったかということも含めて調査を進めている段階です。

  今、この芳香族アミン類について、これ以上、御報告できる部分はありませんので、これで終わらせていただきたいと思います。

 

○堀口 「28年6月より義務づけられる化学物質のリスクアセスメントについては、特化則などの特別規則の対象物質については、規則に定める具体的な措置内容の状況確認、リスクアセスメントの実施内容になるという説明を受けています。

  安衛法で、平成18年度以降、リスク評価が実施された物質については、このリスク評価結果を引用することがリスク評価、リスク管理措置になるという理解でよろしいでしょうか。」

 

○角田 リスク評価結果は、特定の事業場について実施したものではございませんので、ばく露実態調査を踏まえて、そのリスクを全体的に評価したものでございますので、今、おっしゃっているリスク評価という結果がどういうものかがわからない部分もあるのですけれども、リスクアセスメントの実施義務の対象となりました物質につきましては、リスクアセスメントについてのいろいろな手法を、今、講習会でもホームページでもいろいろと6月1日の施行に向けて提供しておりますので、そういったものの中身を御確認いただいて対応していただければと考えております。

  ここの意味がよくわからない部分もあるので、補足等がもしあれば、それをお願いしたいと思います。

 

○堀口 その後段のほうの、「リスク評価結果の変更が必要になるような状況が生じていると思われる場合、新たにばく露状況を見直すなどのリスク管理内容の見直しが必要になるのでしょうか。」

 

○角田 それは、いろいろと実態を調査をし、その状況を踏まえて、新たにリスクを評価することも含めて必要な対応が出てくる可能性はもちろんあるかと思います。

 

○堀口 違う方から、研究員として働いていたというところまで、御質問が2つ来ていますので、読み上げさせていただきます。

  「化合物リスクアセスメント義務化に際し、現在、使用している化合物の使用条件が変わるときは、同じ化合物でもアセスメントが必要と理解していますと。製造ではなく研究の場合、条件検討をする際は、一つの化合物に対し数十の条件を実施します。

  これもリスクアセスメントの対象として捉えなければならないのでしょうか。(ドラフト内での使用で、500ミリリットルから2リットル程度、作業時間は変化しないとして)という御質問と、多分研究されていた方なのですが、20年以上前に研究員としてベンゼンや塩化メチレンなどの有害物質を扱っていました。

  現在、これらの扱いに対し、特化則の健康診断を受けています。20年以上が経過し、これらの有害物質が体内から検知されることはありますかということと、20年以上経過して、これらの物質からがんが発生することがありますか」という御質問です。

 

○角田 前段の部分で、取り扱いの変更というお話があったかと思うのですけれども、新しい物質を新規に採用したり、変更したりする場合は、当然リスクアセスメントが必要になってくるということはありますが、製造、取扱業務の作業の方法とか作業手順を新規に採用したり、変更したりするという場合もリスクアセスメントが必要になってきますので、それに即して御判断いただくということかと思います。

 

○大前 後半の部分ですけれども、ベンゼンあるいは塩化メチレンは有機溶剤ですから、そんな長い間体内にはとどまっていないのです。

  でも、問題は、それを扱っているときに、DNAについては傷がどうなるかという問題なので、今はなくても傷が残っていれば、ひょっとしたらがんになる可能性はゼロではないと考えてください。今、体の中に物が残っているかどうかではなくて、そのときに傷がついたかどうかという考え方をしていただきたいと思います。

 

○堀口 なので、30年間保存が必要ということかと思います。

  「現行のリスク評価制度発足後も、職業性の発がんが発生しています。現行制度に何か施策を加えるべきでしょうが、お考えはありますか」という、ざっくりとした御質問なのですけれども。

 

○角田 先ほど大前先生の御説明にもあったのですけれども、従来はどちらかというと、いろいろと問題が生じてから後追い的に規制するという流れであったのですけれども、それを18年度から計画的に、特に有害性の高いものは現場のばく露実態を調査して、それに応じて規制していくという方式に変えているわけでございますので、私どもの今の問題意識としましては、そういう対象となるようなものについては、速やかにリスク評価をしていくということが、今、一番大事と思っています。

  ですから、有害性の情報について、海外も含めていろいろな情報を集めて、そういった中から有害性が高いものについては選定して告示をしてばく露作業報告を上げていただくということを速やかにやっていかなければならないということが課題だと認識しております。

  ただ、当然これはばく露の実態を調べるにも、予算もお金も人手も当然かかる話でもございますので、そう簡単にどんどんやるわけにはいかないのですけれども、そういう制約の中でも、優先度の高いものから重点的にやっていかなければいけないと考えているところです。

 

○堀口 その物質の選定をしたりする検討会に入っておりますが、厚生労働省の予算の範囲内で選んでいるので、そうそう1020もたくさんリスク評価を進めるわけにはいかないので、評価の物質がふえれば、それはもっと加速度的になるのかもしれないですけれども、現状では厳しい状況かなと思います。

  ということで、今、皆さんからいただきました御質問に関しては、全て読み上げさせていただきましたが、まだお時間がありますので、追加の御質問などがありましたら挙手をお願いできればと思います。

  それで、特に所属などをおっしゃっていただく必要はございませんので、何でも結構です。御質問をフロアから承りたいと思います。

  いかがでしょうか。

 

○角田 ちょっと補足させていただきます。

  先ほど言い忘れてしまったのですけれども、この場の質疑についても、議事録公表ということで、厚労省のホームページに載ります。それは御承知おきいただければと思います。

  ただ、その際は、先ほどもありましたが、お名前はAさんとかBさんとかとなりますので、別に名前で特定されることはございませんが、ホームページに載ることは御了解いただければと思います。

 

○堀口 皆さん、御質問はいかがでしょうか。

  どうぞ。

 

○B氏 先ほど先ほど過去に有害物質にばく露した場合に、DNAが傷つけられてがんが引き起こされる状況というお話があったのですけれども、30年間保存とあるのですが、具体的に、簡単にお話しいただけると、どういう状況でそういうがんが誘発されるのか。もし可能なら教えていただきたいのです。DNAの傷とキーワードです。

 

○大前 DNAが傷つきますと、人間は修復能を持っていますので、そこでDNAの傷を治してしまうことも幾らでもあります。

  でも、残念ながら修復能を超えてついた傷が、長い間残っていまして、その細胞がずっと生き続けていて、あるとき、何らかのきっかけでそれがDNAの細胞がたくさんふえ始めます。それでがんになる可能性があるということなのです。

  それは検査してもわからないのです。がんが大きくなればわかりますけれども、細胞のDNAが傷ついているというのは、検査のしようがないものですから、結果的にがんになってある程度わかるようになるまでは何もできない。

  したがって、定期的に見ていきましょうということなのです。

 

○B氏 ありがとうございます。

 

○堀口 ほかに御質問はございませんか。

 

○C氏 先ほど、樹脂中に塗り込まれた有害物質の危険有害性は粉状とは違うという議論もあるという話でしたけれども、その議論が最終的にどういうところまで行き着いたところの結論はどういうところを見ていれば出てくるのかなということを知りたいのです。

 

○北村 三酸化二アンチモンでお話しますと、今、三酸化二アンチモンの健康障害防止措置をどうするかということで検討会をしております。その中で、ナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバーもそうですが、適用除外はどうするか等について検討をしています。

    今後の健康障害防止措置の検討会の議事録等を見ていただければ、これについては対象になるのだな、ならないのだなというところはわかると思います。

 

○堀口 その検討会は、公開なのですね。

 

○北村 公開で行っています。

  企業の機密事項を扱うときに限って特別に非公開で行うことはあるのですが、基本的には公開で行っております。

 

○堀口 よろしいでしょうか。

 どうぞ。

 

○D氏 先ほど質疑の中で現在の個人ばく露測定の方法について、ナノ粒子に対応しているという発言がありましたけれども、実際は個数濃度とかの評価が重要だと世界的には流れているのですけれども、今回は質量濃度ではかったということで、十分なのか。それとも、個数濃度も今後は検討しながら進めていくのか。そこら辺はどのような感じになるのでしょうか。

 

○大前 先ほどのナノ酸化チタンの場合は、これはまだ個数ではなくて重量になります。

  そこで重量をはかるのがいいのか、個数をはかるのがいいのか、あるいは、表面積で選ぶのかというのは、まだ議論がたくさんあるところでどれがいいかというのはまだちょっとわからないので、とりあえず今できる方法は、重量が一番簡単なのです。だから、とりあえず今はそれでやっている。

  将来的に表面積が何だかんだという情報が出てくれば、また多分変わると思います。

 

○堀口 よろしいですか。

 

○D氏 はい。

 

○堀口 ほかにありませんか。

  まだ時間がたくさんありますが。

  どうぞ。

 

○E氏 先ほどの質疑の中でどなたかの御質問で「常時従事」という話が出てきたかと思うのですけれども、それは、例えば、何か特定の化合物を扱う場合に、その従事する人は健康診断をしてくださいとかとあるということですけれども、先ほどの常時従事のお話からすると、常時従事していなくて、ごくまれにそういう物質を扱うことがあって、ばく露量がそのリスクが考えられる量から十分に低いと判断される場合は、健康診断の対象ではなくなるという解釈でいいものなのでしょうか。

 

○角田 常時従事に該当するか否かの話だと思うのですけれども、それは作業日数とか、作業時間等で判断していく必要もあると思いますので、個別に検討することが基本になるかと思いますので、その場合は、先ほど申し上げました事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に御確認いただければと思います。

 

○E氏 ありがとうございます。

 

○堀口 なので、作業記録をきちんとつけなければいけないということなのですね。

  ほかに御質問はありますか。皆さん、いかがでしょうか。

  どうぞ。

 

○F氏 従来も申し上げたことの繰り返しになりますが、有害物質ばく露作業報告からリスク評価を経て特化則の対象になるという流れをとりますと、ばく露作業報告が実施された時点でものの危険有害性を考えて、代替されてしまったものを過去に使った人間が、特化則の対象になった時点で、突然法規制の対象になることが起こると思うのです。ですので、20年以上前にエチルベンゼンで塗装をしていた人とか、塩化メチレンで物をはがしていたような人間は、ここ数年の規制のばく露評価の対象にならないのです。

  それで事業を廃止してしまうケースがそういう場合には多いのですけれども、事業を廃止した人に対して、突然、特殊健康診断の実施義務が発生していて、それが会社の方の理解を得られなくて、何とか試験研究だとかと言って、会社の方が逃れようとするケースがあると思うのです。

  それで、昨年度からお願いしていますけれども、特化則の対象になって、要するに、さかのぼって過去に取り扱っていた従業員に対して、がん関係の健康診断をしなければいけないものはこれですよということを、まとめたパンフレットみたいなものをつくっていただけると、そういう過去に塩化メチレンで払拭をしていたとか、エチルベンゼンの塗装作業をしていたような人間がずっと配置転換後に来ていてがんになっているとか、あと、トルイジンを昔は使っていたのですけれども、膀胱がんになられたみたいな方の労災申請が円滑に進むような気がしますので、そのようなパンフレットの作製をお願いできませんでしょうか。これはお願いでございます。

 

○角田 お話のとおり、当該業務に常時従事させたことのある労働者の方には、配転後も健診の対象となってまいりますので、そこは当然必要になってきます。

  以前もお話がございましたので、きょう、またそういう御要望なりがあったことはお伝えしたいと思います。

 

○堀口 ほかにありますか。

  いかがでしょうか。大丈夫ですか。

  そうしましたら、きょう、皆さん、御質問いただいたということで、時間がまだありますけれども、本日はこれで終了させていただきたいと思います。

  皆さん、どうも御協力をありがとうございました。

 

○司会者(鈴木) 先生方、どうもありがとうございました。拍手で宜しくお願いいたします。

(拍手)

  以上で、第2回の化学物質のリスク評価に係るリスクコミュニケーションを終了させていただきます。

  大変御多忙中のところ、皆様、御参集いただきまして、活発な御意見、御要望をいただきまして、ありがとうございます。ことしは6月1日から640の化学物質のラベルSDSの拡大がございます。皆様も大変お忙しくなると思いますが、宜しくお願いいたします。

  今日はありがとうございました。


(了)

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