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2016年8月4日 第7回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会

医政局医療経営支援課

○日時

平成28年8月4日(木)14:00~17:00


○場所

厚生労働省専用第20会議室(17階)


○出席者

委員

内山部会長代理 大西委員 斎藤委員 花井委員 深見委員 藤川委員 本田委員

○議題

(1)国立研究開発法人国立成育医療研究センターの平成27年度業務実績評価について
(2)国立研究開発法人国立国際医療研究センターの平成27年度業務実績評価について
(3)その他

○配布資料

【国立成育医療研究センター】
資料1-1 平成27年度業務実績評価書(案)
資料1-2 平成27年度業務実績評価説明資料
資料1-3 平成27年度監査報告書
【国立国際医療研究センター】
資料2-1 平成27年度業務実績評価書(案)
資料2-2 平成27年度業務実績評価説明資料
資料2-3 平成27年度監査報告書
(参考資料)
国立成育医療研究センター平成27年度財務諸表
国立国際医療研究センター平成27年度財務諸表

○議事

 

○医政局医療経営支援課長補佐 

定刻となりましたので、ただいまから第7回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会を開催いたします。委員の皆様には、大変お忙しい中お集まりいただきまして、誠に有り難うございます。

 それでは、本日の会議資料の確認をお願いします。本日は成育医療研究センターと国際医療研究センターの2件の議事がありまして、資料1-1から1-3までが成育医療研究センターの資料で、資料2-1から2-3までが国際医療研究センターの資料となっております。参考資料といたしまして財務諸表がそれぞれございます。資料の不足、乱丁等ございましたら、お申し出ください。

 本日は福井委員と祖父江委員が欠席と伺っております。それから、本日、永井部会長が欠席ですので、部会長代理の内山委員に議事進行をお願いいたしたいと思います。それでは、よろしくお願いします。

○内山部会長代理 

それでは、国立成育医療研究センターの平成27年度業務実績評価について議論していきたいと思います。初めに、「研究開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1及び1-2に係る業務実績及び自己評価について、議論したいと思います。まず、法人から御説明いただきまして、その後に質疑応答という流れで進めていきたいと思います。時間が限られておりますので、ポイントを絞っての御説明をお願いいたします。それでは、よろしくお願いいたします。

○国立成育医療研究センター研究所長

 では早速、評価項目1-1について、私、研究所長の松原から御説明させていただきます。お手元資料、資料1-24ページを御覧ください。順に御説明させていただきます。まず、4ページの「独創的な研究及び基盤的・重点的研究の推進」について御説明させていただきます。

 丸1として、有機的な連携による独創的な研究の展開の代表的な例といたしまして、そこにIRUD-Pと書いてあります。これは全国規模の「小児希少・未診断疾患イニシアチブ」というAMEDの研究事業でございます。全国から原因不明の成育疾患の試料を頂いて、次世代シーケンサーを用いて全遺伝子を網羅的に解析する体制を整備し、たくさんの症例を解析してまいりました。既に1,400人を超える症例の検体を解析いたしまして、次世代シーケンサーを用いて遺伝子解析をしております。この結果、幾つかの新しい病気あるいは新しい病気の遺伝子を既に発見しており、これは全国規模に推し進めております。丸2基盤的・重点的研究の推進について、「成育コホート研究」というのがございます。これは後でまた御説明させていただきます。

4ページの右側、医療に大きく貢献する研究成果ということで、5ページにかけて「注目」と書いた赤い印がありますが、その個別のことを御説明させていただきます。まず最初は、小児の腎臓の腫瘍の1つである腎明細胞肉腫。これは小児の腎腫瘍の2番目に多い病気ですが、これに一貫して認められる遺伝子の異常を世界で初めて同定いたしました。発見してみると、この病気に起こっている遺伝子変容は全部この遺伝子であるということが、私たちの20例の報告以外にも各国からの追試で確認されており、いわゆる遺伝性の疾患としてこの腎臓の腫瘍が起こっているということが分かりました。現在この遺伝子の異常について機能を解析しており、将来的には診断だけではなくて、治療法の開発に結びつく、そういう糸口が見つかったというふうに考えております。この成果はNature Geneticsという国際誌に掲載されております。

5ページに移っていただきます。5ページの左上に、「微量の涙でアレルギー性結膜炎を診断できる画期的な方法を開発」と書いてあります。これは、アレルギー性結膜炎の診断をこれまではいろいろな症状とかそういったもので診断していたわけですけれども、涙に含まれるペリオスチンというタンパクを調べることで、非常に客観的に診断できると、そういうことを発見したということで、これは知的財産として登録しており、いずれは診断薬としてマーケットに出ていけるのではないかというふうに考えております。

 次に、「アレルギー炎症を惹起するマスト細胞が自然免疫システムでは炎症を抑制することを発見」ということを書いてあります。どちらかというと基礎医学的な発見ですが、これまでマスト細胞というのはアレルギーの炎症を引き起こす悪者として考えられていたわけですけれども、これが自然免疫システムでは、逆に炎症を抑制するということを発見いたしました。これは今後、様々な医学研究の発展に寄与する発見だと考えております。

5ページの右側のところに、「国際共同研究において、世界中の人々に対する各種疾病の負荷を様々な指標で数値化し、「Lancet」に掲載された、3本の論文」と書いてあります。これは国際共同研究で様々な疾患、それから医療・公衆衛生上のリスク因子、こういったものを解析して、国際共同研究で「Lancet」に発表した論文が出ております。昨年出たばかりですが、引用回数が既に300回を超えているものがありまして、非常に公衆衛生的にインパクトの高い研究成果を出せたというふうに考えております。

 次に、「重点的な研究・開発戦略」ということで、6ページを御覧ください。左上の、次世代を担う子供と家族の健康の確保に関する研究の推進ということで、小児期に発症するアレルギー疾患の発症予防を行ったというような研究です。これは乳幼児に多いアトピー性皮膚炎、日本では非常に増えておりますけれども、この発症に関して、保湿剤の塗布でアトピー性皮膚炎の発症を減少することを実際に証明したということで、これまで個別にはそういうことが言われていたわけですけれども、きちっとしたランダム化比較試験で証明したのは世界で初めてです。論文は発表したばかりですが、既に引用回数が57回ということで、非常に注目されております。これに関連した論文もこれからどんどん出て来るということです。

 丸2の、研究組織形態の更なる柔軟化、企業等との連携の推進等による総合的な研究・開発の推進ということでは、まず最初に「エコチル調査事業」。環境省が主体となっております子供の健康と環境に関する全国調査ですが、これは成育がメディカルサポートセンターを設けて、中心的役割を担って調査をずっと進めております。2番目の妊産婦とそのパートナーのメンタルヘルスに関しては、世田谷区と愛知県で共同で行ったものです。妊産婦だけではなく、そのパートナーがこういった妊娠・出産・育児に関連して様々な問題があるということを指摘したもので、これは大きく新聞雑誌等でも取り上げられています。その他、そこに書いてありますようなこともやっております。

6ページの右側を御覧ください。総合的な研究・開発の推進による原著論文発表数の増加ということで、平成27年度の原著論文の発表は369本ということで、前年度に比べても非常に大きな増加を示しております。この中心となっているのは英文論文の増加でして、世界に向けてこういった研究成果を発信しております。

 次に「成育疾患の本態解明」ということで、幾つか挙げています。まず、バイオバンク事業の推進です。成育医療研究センターでは、成育疾患に関係する貴重な検体を保存していくバイオバンクというのがあります。そこに保存されていく様々な珍しい症例の解析を並行して行っておりますが、次世代シーケンサーを用いて、新規の疾患責任遺伝子を貴重な検体の中から発見しております。そこに丸1~丸5まで書いてありますが、非常に珍しい疾患ですが、こういった病気の新しい遺伝子を同定いたしております。

7ページを御覧ください。丸2生育疾患の発症機序や病態の解明につながる研究の推進ということで、診断の困難な新生児・乳児消化管アレルギーの診断方法の開発と書いてあります。最近、新生児・乳児消化管アレルギーは非常に重篤なアレルギーで、成長障害を起こすものですが、日本では急激に、世界的にも増えております。今までは簡単な診断法がなく、専門医でないと判断できなかったのですが、この疾患において血液中の2つの物質、IL-33TSLPが増えているということを発見いたしました。今後こういった血液を用いたこの病気の迅速診断ができる、そういったものにつながっていくだろうと考えておりまして、論文発表しております。それから、倫理審査。知財等を含む体制の充実も逐次行っております。

 「成育疾患の実態把握」ということでは、まず丸1として成育疾患の実態を把握する疫学研究の推進として、赤字で書いてありますが、成育コホート研究を実施しております。これは成育で出生したお子様とその親御さんをずっと何十年も追いかけていって、いずれは成人のメタボリック症候群、認知症、うつ病などの精神疾患の病因、そういったものまで、発症との関係まで追跡したいということで、50年、60年を見据えての研究を進めております。これについては7ページの右上にありますように、最初の第一コホートは平成15年開始しましたが、その追跡率が82.6%、10年たっておりますが非常に高い追跡率を保っております。また、第二期のコホートも追跡率が93.4%ということで、非常に類を見ない高い追跡率を維持しており、これを引き続き成育では続けていきたいと考えております。

 患児データベースの構築及び成育疾患の実態把握については、赤字で書いてありますように、特に小児慢性特定疾患治療研究事業。これは厚労省の大きな事業として行われているわけですが、これについてのヘッドクォーターとしてデータベース化、それから疾患ごとの様々な見直し、成育はそういったものの主体を担ってこの事業に参画させていただいております。

8ページを御覧ください。「高度先駆的及び標準的な予防、診断、治療法の開発の推進」ということで、幾つか挙げています。丸1成育疾患の治療や予防に直結する臨床研究の推進としては、まず先天性免疫不全症に対する遺伝子治療の体制整備です。これは生まれつき免疫力がないために、非常に重篤な症状を呈して、致死的な、死に至る疾患です。これについては既に先年度、慢性肉芽腫瘍の遺伝子治療を成育で日本で初めて行いましたけれども、引き続き別の病気、ウイスコット・アルドリッチ症候群という病気にも実施しようということで、逐次準備を進めております。

 それから、鶏卵アレルギーの発症予防です。卵アレルギーというのは小児のアレルギー疾患の中で非常に大きな、特に食べて非常に重篤な症状が出るというようなことがありますので、その予防というのは喫緊の課題ですけれども、その予防について、卵を離乳早期から与えると鶏卵アレルギーが8割減少したという、大変驚くべき成果を出しております。今、ハイ・インパクト・ジャーナルに投稿中で、恐らくそこで出版できるのではないかと考えておりますが、これは世界初の非常にすばらしい業績だというふうに私たちは考えております。

 右側、小児がん等臨床研究の推進ということで申し上げます。成育では従来より小児がんの中央診断業務体制を整備しております。全国の各医療機関、大学病院から寄せられる小児がんの検体について、非常に専門的知識を持って中央診断実施しております。小児がんは大人のがんと違い、非常に珍しいということ、専門性が高い知識を持たないとなかなか本当の診断は難しいということで、成育が中心となって全国の医療機関にこれを提供しております。ちなみに、小児の固形腫瘍、固形がんの大体15%がよその施設で正しい診断は行われていないということがありますので、成育の果たす役割は非常に大きいと考えております。

 その下に書いてありますが、難治性ネフローゼ症候群を対象としたランダム化比較試験を行い、治療法の検討も行っており、この成果も海外の一流誌に掲載させていただいております。

9ページを御覧ください。「成育疾患研究の実用化体制の構築」ということです。まず、再生医療・遺伝子治療というのは成育の研究所でも非常に力を入れているものですが、これについて逐次体制を強化して進めております。まだ再生医療に関しては、人への応用段階には成育領域では至っておりませんが、近々に臨床研究に移りたいというふうに考えております。

 少し飛ばして9ページの右側のところ、「医療の均てん化手法の開発の推進」ということで、小児診療部門のガイドライン作成の推進等を行っております。まず、「小児慢性特定疾病の診断の手引き」。小児慢性特定疾患などは最近見直しが非常に行われて、追加疾患とかいうのが出てきておりますが、その診断について、はっきりした手引きは今まで存在しなかった疾患も多うございました。それについて成育が中心となって整備してまいりました。2番目にありますけれど、世界保健機構、WHOと協力いたしまして、妊娠中の感染症、妊婦健診、それから特に最近はジカ熱です。こういったガイドライン作成に当たり、その基となる系統的レビューを行うとともに、WHOに研究室長を送り、国際パネルメンバーの一員として貢献して、既にこれらもガイドラインとして外に出ております。

10ページを御覧ください。左側のところ、人材育成ツールの開発等々ですが、「情報発信手法の開発」ということで、特に丸2を御覧ください。科学的根拠に基づく政策提言の実施に資する研究の推進ということで、特に昨年度から新たにタンデムマスという新しい手法が導入され、日本で生まれた100万人の赤ちゃん全てに新生児マススクリーニングを現在行っておりますけれども、旧来は6疾患しかスクリーニングしなかったのを、今は約20の病気をスクリーニングできるようになりました。各地域で、新しいほうの導入に伴ない、その精度管理にいろいろ問題が出てまいりました。そこで成育が中心になってこの精度管理を行うとともに、実際にそれぞれの施設に人が出向いて教育指導を行うなどということも進めております。かい摘まんで申し上げましたが、評価項目1-1について、御説明させていただきました。

10ページの右側のところ、もみじの家の設置については病院長のほうから御説明お願いします。

○国立成育医療研究センター病院長

 続いて病院長から、10ページの右側から御説明させていただきます。丸4の重い病気を持つ子供への生活・教育支援については、「もみじの家」という医療型の短期滞在施設。いわゆる在宅ケアを必要とする子供の数が急激に増えてきておりまして、これは厚労省・文科省のデータでも2年前の2.5倍とかいう形で増えてきております。在宅ケアを行っているお子さんたち又はそれのケアをしている母親、父親、またはその兄弟を支援するという目的で、短期滞在型施設を昨年度に建築。民間から100%の御寄附を頂きまして、やっと家を建てることができ、この4月下旬から患者受入れを開始して、現在、順調に受け入れてケアを開始することができております。後でまたこれを御説明させていただきます。

11ページに移ります。評価項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備という所です。先ほど研究所長から御説明がありましたIRUD-P、すなわち小児希少・未診断疾患イニシアチブを開始するにあたって、病院側もきちんとこれに対応しなければならないということで、メディカルゲノムセンターの設置を昨年度決定しまして、今年度、具体的にそれが活動し始めております。横断的な診療科としては、ここに記載しております診療科が現在協力して、検体を集めているところです。

 次に、治験・臨床研究における研究所と病院の連携です。お互いの交流を図るという目的も含めたセミナー・連携会議は、昨年度は82回ほど開催しております。

 次に、「研究・開発の企画及び評価体制の整備」です。研究・開発の企画及び評価のための体制構築としては、毎月1回倫理委員会等に提出された案件を審議し、それがシーズになり得るかどうかを、毎月開催しているいわゆるシーズ候補ヒアリング。それがシーズという候補になり得るのだったら、ヒアリング行うということで、研究所、病院長、病院等から委員を出して、毎月検討することを行っております。

 次に、「企業等の連携の強化」においては、昨年度は企業間との共同研究契約締結数は26件、その前の年と同じでありました。当センターの小児試験ネットワークを介しては、企業の主導治験8件をやっておりますが、前年度と変わりないということです。そのほか治験実施可能性調査等は平成27年度は17件ということで、件数は極端には増えておりませんが、少しずつ社会に認知されてきているように思われます。

12ページ、「共同・臨床研究数」と書いてありますが、これは共同受託研究数です。ここのグラフにありますように、平成27年度実績としては企業との共同研究及び受託研究数は63件で、前年度と比べてある程度増えております。

 次に知的財産の関係ですが、知的財産の権利化を図ることを目的にして、昨年度は知財・産学連携室長を新たに採用いたしました。特許案件、特許取得は2件のみです。体制強化としては、臨床研究開発センターに知財・産学連携室長を採用して、一応、発明や契約の相談49件というふうに、大変多くやる人がいるということで、前年度から約44%増加するほど案件が増えております。右側に行きまして、職務発明委員会に関する審査件数です。職務発明委員会に審査が掛かった件数は昨年度は8件ということで、大きく変化はしておりません。

 V「倫理性・透明性の確保」です。倫理審査委員会等に関しては、これは倫理審査委員会は当IRB、別途開いており、倫理審査委員会は、情報というものは14回更新、IRB7回更新し、きちんとホームページで情報公開をしております。また、一番顕著なのは、昨年度7月から倫理審査委員会では事務審査処理、事前の審査処理がたくさんあったのですが、全部の電子化を図り、委員への迅速な資料提供が可能になったということです。

13ページに移ります。研究倫理に関する意識・知識の向上に関してです。昨年度は、研究倫理に関する意識・知識の向上を図るための講習会を10回実施しております。当然、この講習会に参加というのは、倫理委員会の臨床研究の申請のためには必須項目としており、きちんとほぼ全員がこれを受講しているという形です。それとは別途、治験に関しては、治験責任・分担医師を対象としてGCP教育研修を標準業務手順書を作成して、昨年度の6月から執行しております。

 次に、「競争的資金を財源とする研究開発」です。これはどのような書き方で申請書作成の仕方をするとうまく獲得しやすいかとか、そういう具体的な項目も含めてセミナーをやっております。その効果はまだ出てないのですが、昨年度は一応199,500万円を競争的資金を獲得しておりますが、残念ながらその前と比べたら若干減っております。

 右側、これはFirst in Human/First in Childですが、平成27年度からもう少し体制を整備するということで、臨床研究企画室長、先ほど申し上げました知財産学連携室長及びデータ管理室長を新たに採用して、臨床研究の体制をきちんと整えました。一応、平成27年度には4件の医師主導治験の開始を準備しており、今年度、順調に症例登録を開始する予定です。なお、First in Human/First in Childの実施は、子供でなかなかそう簡単ではございません。昨年度は実施しておりません。

14ページ、医師主導治験の実施数ですが、昨年度は3件ということです。3件の内容は肺動脈へのステント、あとは重症川崎病に対するシクロスポリンの治療、肝芽腫に対するテムシロリムスの治験と、3項目です。

 先進医療の承認については、昨年度は難治性頻回再発型又はステロイド依存性ネフローゼ症候群に対するミコフェノール酸モフェチルというものに関しては先進医療を獲得しており、1件ということです。

 右側に行きまして、臨床研究の実施に関してです。昨年は倫理委員会で承認された件数ですが255件ということで、顕著な数が前年度に比べて増えております。治験は30件ということで、ほぼ同数です。なお、当病院、研究所も含めて作成に関わった診療ガイドラインの数は、昨年度は18件ということで、これも順調に数が伸びております。

15ページ、治験・臨床研究の実施です。臨床研究体制の整備、教育・研修については、ここに記載しましたように、臨床研究教育セミナー、臨床研究開発セミナー、次にあります臨床研修必須セミナー、各段階におけるセミナーを各々14回とか7回とか9回、結構頻回に開催しております。そのほか知財セミナー、臨床研究ハンズオントレーニングということをやっておりまして、これは大変全職員から好評を得ております。そのほか、臨床試験コーディネーター、データマネージャーとかいう臨床研究に関わる人たちの研修も、スキルアップを図っております。

 次に、臨床試験対象薬、これは成育での独特な試みだとは思いますが、小児用製剤ラボというものを設置しまして、治験薬GMPに適合するよう機器及び標準業務手順書を整備し、酢酸亜鉛の小児製剤開発に向けて、その治験薬のプロトタイプを昨年製造し、安定性試験などを実施、治験薬の規格を決定し、治験薬製造の準備を昨年度終えたところです。酢酸亜鉛の医師主導治験については、PMDAと相談しながら今年度中には開始、準備がほぼ整いまして実施する予定にしております。

 右側に行きまして、シンポジウムの開催等を通じた開発促進です。これは日本小児科学会の研究活性化ワーキンググループと一緒になりまして、日本小児科学会の学術集会でワークショップを開催したり、日本小児循環器学会、小児アレルギー、小児薬理、日本臨床試験学会等々と協力していただいてシンポジウムを開催して、小児医療における臨床研究の開発を宣伝しております。その効果もあってか、臨床研究相談窓口でもその前から設定はしてあるのですが、昨年度は43件、顕著な増加を示しております。

 次に、小児治験ネットワーク等を活用した多施設共同研究の推進です。小児治験ネットワークを利用しまして、小児と薬の情報収集ネットワークというものを整備しました。これは結構時間が掛かったのですが、昨年度末にやっと稼動し始めまして、小児医療専門施設4施設、小児専門クリニック全国33施設からの患者データの送受信を開始できることとなりました。これは世界で初めての自動的な情報収集システムです。昨年度末時点では、あっという間に27万人、延べデータですが収集することができるようになりました。この利活用においては今後の課題となっており、今後きちんとしていかなければいけないと思っております。

 次、治験に関する情報の公開・発信については、小児循環器学会の臨床試験委員会と共同しまして、具体的な活動を行うことを宣伝したり、小児治験ネットワークとそのほかの小児関連学会、または都立病院ネットワーク、国立病院機構ネットワーク等と連携をきちんと昨年度はしました。あとはセンターのホームページに治験の実施、参加募集中の治験の公開をしており、小児における臨床の治験に関する情報公開発信をしているところです。評価項目1-2はここで終わりになります。以上でございます。

○内山部会長代理

 ただいま御説明がありました事項について、委員の皆様から御意見、御質問等がありましたらお願いします。

○深見委員

 全体的に研究から治験まで、非常にバランスよく堅実に進めているという印象を持ちました。まず、幾つかありますけれども、IRUD-Pについてお伺いしたいと思います。これはAMEDを介した共同研究だと思いますが、これはゲノムベースのものでしょうか。次世代シーケンサー等々というお話だったのですが、難治性のこういう疾患の原因を、ゲノムの立場から解析するということでよろしいですか。

○国立成育医療研究センター研究所長

 そのとおりです。ゲノムに焦点を絞って解析するということです。

○深見委員

 そうしますと、シーケンサーの配列に依存しているか、又はエピジェネティック等々依存しているか、そういったところが分かってきたときに、次に遺伝子治療というようなことも計画にもなっています。遺伝子治療も最近、クリスパー等々が出てきて、実際にヒトでのゲノム編集というのも近未来ということで、現実的になってきているのかなと思います。

 そういったところに対しての、少しいろいろな方向性の変更というのでしょうか、今までやってきたことに加えて、新しい技術をベースにした、方向性というものをどのように考えているかを、まず、お伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国立成育医療研究センター研究所長

 新しい治療法としては、御指摘のように、例えばゲノム編集というものが出てきておりますが、まだヒトに応用できるほどの精度はありません。それから、遺伝子治療に関しては、現在世界で成功しているのは、免疫不全症関連については非常にうまくいっていますが、ほかの領域の疾患に関しては、まだなかなか、やはり成功例が少ない。それはもちろん研究としてやっておりますが、患者さんに応用できる段階に達しているものはまだないと思います。

 むしろ、遺伝が関与している疾患では、それ以外のアプローチによる、それぞれの疾患がどうして起こっているかということを具体的に詰めることによって、既にマーケットにある薬が実はよく効くといった例がいろいろと出てきておりますので、やはり様々な方向性で治療へのアプローチをしていきたいと考えております。

○深見委員

 そうしますと、こういうIRUDで行っているところを、これは共同研究ですので全国的なものだと思いますが、そういったことをベースにした連携の中でのという。

○国立成育医療研究センター研究所長

 そうです。まず入口のところ、今、希少遺伝性疾患は8,000種類ありますが、そのうちの4割はまだ原因が分かっておりません。ですから患者さんにとっては全く闇の中に置かれた状況ですので、そこでまず何が原因で起こっているのか、そこを突き止める。そこにまず、フォーカスをしているという状態にあります。そこから先、どう治療に結び付けていくかというのは、全国の難病の研究班がたくさんありますが、そういった所にうまくつなげていって、それぞれの病気を研究していくという、まず入口のところをやっているというのが状況です。

○深見委員

Nature Geneticsの成果も面白いかなと思って拝見していたのですが、体制としてはそういった中から発展させてということとは全く別なことと考えてよろしいですか。

○国立成育医療研究センター研究所長

 研究費としては、やはり別の所から。結局、IRUD-Pでは遺伝子で突き止めるところまでしか研究費としては出ていないのです。そこから先は、やはり動物モデルを作ったり、相当やはり手間暇やお金が掛かる研究があります。そういったものは続々と見つかってくる。全てに成育で対応できないので、これは全国の様々な難病の研究班にお渡しして、それぞれの所でやっていくということをとっているという現状です。

○藤川委員

 幾つかあるのですが、例えば論文数や研究数など、前の中期目標期間からずっとお聞きしていて、非常に努力した結果が数にも明らかに表れているなと、まずは感じております。今期は新しい目標期間の初年度ということもあり、いろいろなことを整備していらっしゃったことが、前中期期間の最後ぐらいから徐々に芽を開き出したと感じるところがあって、新しい年度に入ったということもあり、この新しい期間に関する課題というか、こういうことを目指していきたいというような、どういうところに主眼を置いているのかというようなところを、まず大きな話としてお聞きしたいという点が1つです。

 それから、細かい話として、6ページの原著論文発表数という所で、369と出てきていますが、それと別に縦形のA4の紙のところで、2015年、英文論文数が286と書いてあるのですが、これとレジュメの6ページの英文の緑の317というものの関係がどうなっているのかという点が、ちょっとよく分からなかったという点が1点です。

 それから、希少疾患に対していろいろな研究をされるというのは、センターとして重要な役割だとも思っているのですが、それと反対の話として非常に多くの患者さんに効率よく、広く効果がある治療するということもすごく大事なことかなと思っております。小児を対象にしているという点からも、これから長い人生において苦労がない、そういう効果的な治療をするということも、非常に大事なのかなという点で、アレルギーの疾患とか、鶏卵のアレルギーの予防につながるような、非常に素人でも「おお」と思うような結果を出していらっしゃるという点で、すごいなと思ったのですが、いずれも患者数がどれぐらいいるのかというところが分かると、非常に効果も分かるので、そこも教えていただきたいという点です。

 それから、いっぱいあってすみませんが、もう1つ。15ページのネットワークを活用した共同研究というところなのですが、こうしたことはほかのセンターでもいろいろと手掛けていらっしゃると思うのですが、小児に関しては世界で初めてだとかという御説明がありましたが、他のセンターにおいて同じようなデータを収集する過程で、自動的に収集できるというような仕組みはほかではないということなのですね。そこがちょっと分からなかった点です。あと、クリニック33施設というのが多いのか少ないのか、よく分からなくて、その辺りも教えていただきたい。

 情報を集めて、では、利活用をどうするのかということは、非常に重要なことだと思うのですが、そこがまだ分からないという点は、データを集めることから始めるのが、こういうものはスタンダードなのかというところが、ちょっと素人で分かりませんでした。いろいろありますが、教えてください。

○国立成育医療研究センター研究所長

 幾つか御質問を頂きました。まず、最初の御質問に関して、私からお答えします。成育の研究姿勢はどちらの方向を向いていくかということですが、なかなか一言では申し上げにくいのですが、私としては2つあると思います。1つはやはり成育だけでやっていくのではなくて、全国の小児や周産期のいろいろな医療機関、研究の所と上手な連携をしていく。そして成育が調整役を行いながら盛り立てていくということを考えております。どうしても、大学の中でも小児科あるいは産科というのは非常に小さな科で、やれることは非常に限られております。でも、全体としては非常に大きなパワーになりますので、成育はコーディネーションを行うということは重要だと思います。

 もう1つは、やはりゲノム編集、遺伝子治療、そのほかの再生医療もあります。遺伝子改正もありますが、やはり先端的な技術をどんどん成育で推し進めていく。特に大学などでは、小児科というのは非常に小さな組織で、先端技術を真っ先に取り入れていくことが難しいので、やはり成育が先鞭を切って、そういう新しいものを次から次へと取り入れていくと。そこにやはり果敢に取り組んでいきたいと考えております。全体としてはそのようなことを考えております。

○国立成育医療研究センター副所長

 論文数に関してお答えします。論文数ですが、こちらで6NCのまとめとして集計されているものは、厳密な定義があり、ウエブ・オブ・サイエンスというデータベースで、Article(原著)と記載されているもののみを記載するようにという指定がありました。

 一方、こちらの資料に記載してある論文数は、それ以外のウエブ・オブ・サイエンスデータベース以外の英文論文も含みます。あるいは、原著の一種ですが、Letter to Editorといって刷り上がりページ2ページ以内の論文も含めております。2ページ以内の論文といっても、最近ではオンラインのデータがかなり付属していますので、実際にそれをダウンロードすると10ページぐらいの原著論文並みの論文も結構あります。

 例えば、Journal of Allergy and Clinical Immunologyは、インパクト・ファクター12.5の雑誌のレター・トゥ・エディター、昨年度、4つあります。これは、6NC集計のほうには含まれておりません。

○国立成育医療研究センター副所長

 卵アレルギーの患者さんの数ですが、子どもの食物アレルギー全体で、大雑把な数値なのですが、5年前が2.5%、最近では5%という数値が出ております。そのうち8割近くが卵アレルギーです。大部分は1歳未満に発症するので、今回の結果の卵アレルギーが8割減ということは、将来的に食物アレルギーが8割減になる可能性があるということです。これはまだ審査中ですので発表できない数値ですが、かなり査読の感触としては非常にいい感触を得ておりますので、恐らく数か月以内に受理されます。来年度の成果になると思うのですが、発表できると思います。

○国立成育医療研究センター病院長

 では、小児と薬の処方、これは厚生労働省、いわゆる小児治験ネットワークが作ったものがあったものですから、これを利用して何とか薬に対する副作用をキャッチできないかということで、それで厚生労働省の事業としてこちらが受託することになりました。これに関しては、患者さんがいらっしゃったときは、問診も全部iPadでやってもらうようなシステムで、それによって入力してもらうと自動的にそれが吸い上げられる。あとは検査データも自動的に吸い上げることができる。年齢情報も全てそうです。それを各施設において、たまった情報を匿名化したアットランダムで示す、それをこちらが吸い上げるという形をしています。

 ですから、各施設にその機械を置かなくてはいけないということになり、1つは予算の関係です。これは100床以上の小児用施設が本当は全部で3334ありますが、まだまだ、これはどうしてもお願いに行くと、個人情報はどうなるのかということがあり、何回も何回も足繁く通って御納得いただいて、それでもって契約が結べたのがこの4施設ということで、これはまだ少ないと思っています。

 クリニックに関しては、日本医師会のほうに出向き担当理事のほうと御相談して、やはり倫理的なもの、情報開示ということを1回は御説明して、御理解を得て、それで日本医師会のほうの承諾を得たということです。あとは日本小児医会に御協力を得て、33施設全国からですが、ただ、これも残念ながらお金の制約があり、33施設しかできなかったということです。

 御希望してくれる、いわゆる子供の医療は、風邪とかワクチンとか、いわゆる病院ではできないほかのいろいろなものを、やはりクリニックが大変大きなファクターを占めていますので、どうしても小児科医の御協力を得たいのですが、どうしてもやはりお金のことで33施設だけで、御期待に添えないでいるのが今の現状です。

 ですから、大人のほうでもMID-NETというのが同じようなことをやっていたのですが、残念ながら先行していて、完成してデータ回収・収集したのは、日本小児が最初でした。そこで今、大人のほうと、こちらのシステム同士でちょっとやり取りしながら、一緒にやっていくということになっています。こういうシステムは各世界でも試みられたのですが、このように自動的に集まっていくというのは、これは世界で初めてです。

 今後の利活用については、これまた新しく厚生労働省と相談して、全体の小児科学会等も含めて一緒に。すごいデータなものですから、今度はビッグデータになってきますので、ちょっと素人では扱えないようなデータになってくる。その処理も含めて、何が問題で何が限界で、その辺も明らかにしながら、どういう活用をしていくかということを、倫理的なことも含めてですが、今後検討しましょうということになっております。

○斎藤委員

 今回のレジュメは大変読みやすく、今までのペーパーと比べて全く違う、受ける印象も正直言って全く違います。コミュニケーション能力は、実態だけではなくて、どうそれを伝えるかというところですので、今回、このように分かりやすく、しかもポイントをきちんと押さえていただいたというのは、大変よかったと思います。こういうコミュニケーションの努力を我々に対してだけでなく、患者様、御家族の方にも是非、続けていっていただきたいと思います。

 質問をしたいのは、1-2のほうですが、Sの評点を付けていらっしゃいます。ただ、中を見てみると、確かに立派な業績ではありますが、前年度よりも下回る成績のものもあったりして、この数値を見ているとSが付けづらいのですが、どこをもってSと評価したのか。12つポイントを絞って、お話をもう一度頂ければ有り難いです。

○国立成育医療研究センター病院長

 御指摘はごもっともです。ただ、私どもとしては、昨年度に初めて臨床研究とはどういうことをするのか、どのようにしたらやっていけるのかと。あとは臨床研究の研究申請、いわゆる研究費を申請するのにはどうしたら獲得しやすいのかという、まず、そこの教育を始めようということで、15ページに書きましたが、たくさんのセミナーを開始しました。

 結構これが受講者数も多くて、教える側も大変な努力で、毎週どこかで何かをやっているということで。これは現在はセンターの外からも受講したいという希望者が大変多くて、それをどうするか。小児科領域の小児科を対象としたことも含めてですが、今回の小児科学会、ほかの学会も含めて開催していますが、昨年度はセンター内での、やはり若手から、フェローから、あとは一応レベルまで対応した臨床研究の影響、それによって大分、意識改革ができました。これは今までやりたかったのですが、初めてやったということで、自己満足ではないのですが、これはよかったかなと私自身は思っております。

 あとは、やはり薬の開発です。自分の所で薬を具体的に製薬会社と共同して、自分の研究所にその薬を作製する機械を置いて、それでGMPにのっとったものを開始することがやっと昨年度に具体化して、それである程度、今年度に開始することができました。コントロールに使う薬を昨年度に作り始め、それがやっと今年度、酢酸亜鉛というものを自分の所の研究施設で作って、それを治験に持っていくという、これは多分どこのナショナルセンターでもやっていないことだろうと思います。それが具体的にできるようになったということだろうと思います。具体的には開発部長から御説明申し上げます。

○国立成育医療研究センター開発企画部長

 例えば、14ページの左側の上を御覧いただくと、医師主導治験の実施数があります。一応、中長期計画では5件、1年に1個ぐらいいければいいかなと考えていたのですが、いわゆる子供の治療はなかなか企業が乗ってこなくて、採算性の問題、治験者数の問題、治験の実施期間の問題等があり、やはり医師が必要だと思ったものをやっていかないといけないという状況があります。その案件が平成27年度では既に3件実施されており、いずれも重症な病気に対する医師主導治験であります。医師主導治験というのは、医者が基本的に全てをやらなければいけないので、そのフォローアップとか時間的な浪費が非常に多いというところがありますので、これは注目に値するのではないかと思います。

 それから、臨床研究推進医師主導治験を含む全体数を見ていただいても、前年に190であったものが258とかなりの増加をしております。さらに、その下の治験件数、企業治験というものがあり、これが2927と書いてあります。この数字がどれぐらい大変な数字かと申しますと、平成27年度の初めにPMDAのまとめた資料によると、日本で実施されている小児の臨床試験数は23という数字があります。

 この23が確かな数字ではないという注意書きはあるのですが、クリニカル・トライアル・ドットコムという世界的な情報を発信する所に登録されている数が23とあります。それに比べると、更に6件から4件多くなっているという状況です。いろいろな市販後治験を含めて、いろいろな治験を活性化して実施しているということから、実数として表れていると思います。以上です。

 

○本田委員

 私も今回のはとても読みやすくて、どこがポイントか、とても分かりやすかったので、素人でも成果がある程度は「なるほど」と感じられたのは大変有り難く思いました。それは同じなのですが、先ほどの御質問の回答に関わるところで1点伺いたかったのが、15ページの臨床試験対象薬の開発に関してです。小児のお薬というのは大変難しいし、企業もなかなか手を出してくれないと聞いているのですけれども、お答えにあったとは思うのですが、小児の薬ということを企業以外でやっている施設というのは、ここだけなのですか。

○国立成育医療研究センター開発企画部長

 病院の中でこういった製剤施設を持っているのはうちだけですので、大学は少しあると思いますが、基本的にはうちだけです。

○本田委員

 これは持っていないと困ることは、具体的に何ですか。

○国立成育医療研究センター開発企画部長

 通常の病院では、ないと思います。それは先ほども申したように、企業が治験薬を提供してくれるから特にはないと思います。ところが小児の場合は、成分もさることながら、剤形を特殊なものにしないとなかなか飲めないということで、治験は進まない。そういったものに対しては企業も開発意欲が湧かないという状況ですので、やはりこういったものを小児施設で作って、剤形を考えて、違った剤形で自分たちの所で治験を進めてデータを作るということは、非常に開発にとって大事だと考えております。

○本田委員

 あと、もう1つだけ。これはもしかしたら、次の1-3の医療の提供に関わることかもしれませんが、1-1の項目で大変すばらしい成果をすごくいっぱい挙げていらっしゃると感じたのですが、例えば6ページの、アトピー性皮膚炎の発症を保湿剤塗布のみで減少して証明したことを、広く一般の小児のアレルギーをやっているような病院や医療機関に、こういうことをやりましょうと。ガイドラインで書いているといわれても、なかなかやらないかもしれないので、どのように広げていくかなどの取組は、引き続きあるのでしょうか。

○国立成育医療研究センター副所長

 その点についてお答えします。アトピー性皮膚炎予防研究は平成26年度、201410月に発表された論文成果で、各誌、テレビでも報道され、大きな影響がありました。本来であれば、エビデンスとするためにはこれと同じような研究を何本かやって、Systematic Reviewという総合的解析を行った上で、その結果がガイドラインになっていくわけです。ただ、余りにも反響が大きくて、また、同時にアメリカとイギリスのほうで同じような成果、保湿剤のみで3割から5割のアトピー性皮膚炎の発症が減少するという成果が発表されました。

 また、アトピー性皮膚炎の発症が減少すると、その後の食物アレルギーも減少するということも大きく報道されましたので、ガイドラインとして発表される前に、例えば横浜市の保健指導で、赤ちゃんに対して、スキンケアを積極的に推奨しているなどの影響が出ております。私たちとしては、保湿剤で特に副作用とか重大な問題はないので、黙認しているという状況です。

○内山部会長代理

 ありがとうございました。小児科という限られた領域の中で、更に人員も予算も少ない中で、英語論文数や臨床研究等が大幅に伸びておられることに、私も敬意を表したいと思います。臨床研究等々について知りたいことがあったのですが、今年は委員からもお褒めの言葉があったように、大変充実した資料で、読むだけで私も分かりましたので、次に移りたいと思います。

 それでは続いて、医療の提供等「その他の業務の質の向上に関する事項」の評価項目、1-3から1-5について議論したいと思います。先ほどと同様の流れで、まず法人から御説明いただき、その後、質疑応答ということでお願いいたします。それでは、よろしくお願いいたします。

○国立成育医療研究センター病院長

16ページ、評価項目1-3から始めます。まず最初に、医療提供に関する事項ですが、「高度・専門的な医療の提供」です。まずは専門的な先進医療が1件、先ほども申し上げましたが、ネフローゼ症候に関する先進医療が1件認められましたので、その症例と登録を開始したということです。

 先天性免疫不全に対する遺伝子治療は、その前にも慢性肉芽腫症に対して遺伝子治療をやったのですが、もう1つ、今度はウィスコット・アルドリッチ症候群というものに対して、今年度行うことのために、昨年度はその下準備といいますか、PMDAとの事前面談等を含めて、製薬会社との交渉も含めて、いろいろな委員会の準備をして、やっとその了承がほとんど得られてきましたので、今年度、開始することができるような状況になっております。今年度の秋には開始したいと考えております。

IRUD-P、遺伝子治療の診断体制に対しては、各診療科を横断的に検体を集めて、窓口を作って、それに対してやっていくということです。無侵襲的出生前遺伝学的検査、いわゆるお母さんの血液を採ってその胎児の遺伝検査をするということですが、昨年度は1,072件、きちんと遺伝カウンセリングをしながらやっていくということで、この数字をやっております。

 周産期医療に関してですが、胎児治療として、胎児の横隔膜ヘルニアに対して、胎児治療を行う臨床治験を昨年度4件実施しております。分娩件数ですが、昨年度は2,199件、もう2,200回になるのですが、ちょっとこれ以上できないほど限界の数に来ています。ハイリスクはこのうち62%ということです。

17ページ、小児がんに関してです。新しい治療法のレジメンを当センターが関して作ったのが昨年度は2件ということです。先天代謝性異常に関しての治療は、肝細胞を生体肝移植で余った肝細胞を、倫理委員会又は患者家族に御承諾を得て使わせていただいているものですが、その細胞を生後間もない子供に門脈から入れて注入して治療を行うものです。これを2件、特に問題なくやっております。今後はES細胞から作成した肝細胞を何とか、今後、臨床応用にしていきたいと考えております。

 あとは、どうしても、やはり私どもの病院の使命としては、生まれて1か月以内の新生児期の赤ちゃんの外科的な疾患、それも外科単独疾患ではなく、当然なのですが、2つか3つの違った種類の手術しなくてはいけない患者さんがたくさん入ってきますので、何とか新生児外科疾患の充実を図ろうということを1つの目標にしています。ある程度、このような形で、心臓、整形外科、形成外科、脳外科、眼科、外科、歯科、泌尿器科では、ある程度は全国から患者さんが集まってきますので、このような多くの新生児の手術をすることができました。死亡率も大変誇るべきもので、小さく思っています。

 肝臓移植に関しては、生体肝移植、昨年度は68件、亡くなった患者さんは1例のみです。ですので、98.5%の生存率、これは世界でトップです。日本の小児の生体肝移植の8割前後はうちでやっていると思います。

 次に、18ページに移ります。シーズに関してですが、これは一応、臨床試験というものをやっているのがEBウイルス、経胎盤の不整脈治療、ステロイドということで、3件やっております。

 「臨床評価指標を用いた医療の質の評価」については、現在、日本小児総合施設協議会、小児用ベッド数100床以上を持った施設が集まった協議会があります。その事務局が当センターにあるのですが、その協議会に御協力を得ながら、小児の医療に適したクオリティ・インディケーターを開発している最中です。今年度秋にはそれが具体化する予定です。その協議会を利用して、小児感染管理ネットワークというものを立ち上げ、ここに書き上げた、いわゆる耐性菌等に関するいろいろな指標を作って、それを小児病院での情報を共有することを開始しております。

 「患者等参加型医療の推進」という所ですが、セカンドオピニオンを行うことは当然であり、これは毎年どんどん増えていって昨年は176件ということでした。総合案内には看護師1名を増員して、来院してくださっている患者さんの家族に対する案内をきちんとするということと、当然のことながら、患者の満足度調査は毎年行っております。

19ページ、「チーム医療の推進」です。昨年度は多職種の連携によるカンファレンスは、4種類の職種以上のカンファレンスが年間延べ483回行っております。

 先ほどちょっと出ました「もみじの家」についてです。やはり私どもの病院で手術を、重症な患者さんが運ばれてきたり、事故、溺死等運ばれてきますが、どうしても生命を助けても、やはり後遺症を残す患者さんはいらっしゃいますので、在宅ケアを行う子供さんが増えてきたことに対応して、小児在宅医療に関する人材養成、開業先生たちへの在宅技術講習会、当医院の医者のことや特別支援学校の先生方への教育などの授業や講演を行って、小児医療の在宅を推進しております。

 次に緩和ケアですが、小児がん拠点病院というものの事業があります。中央機関にもなっているのですが、小児がん患者、最近は大体50名ぐらいは入院していますが、その緩和ケア。特に脳腫瘍が増えてきていたので、その緩和ケア、子供の緩和ケアというものを立ち上げて、「こどもサポートチーム」を設置しました。具体的に、もう昨年度から活躍しております。

 前年度から子供の心の診療ネットワーク事業中央拠点病院ですので、当然のことながら子供の心に関しては重要なものとして対応しております。

 次に小児救急医療ですが、私の病院には搬送専門のチームがあります。いわゆる1時間、2時間かかって搬送されて来る患者さんが多いこと。心臓が止まりかけて来る患者さんも多いものですから、搬送中に病態が悪化することを極力恐れております。それで救急車の中で治療したいということもあり、それで搬送チームというものを作って、できる限り依頼のあった病院には搬送チームを送っております。昨年度は逆に言えば、ヨーロッパから来た患者さんを人口呼吸器を着けてベルギーまで搬送しております。

 年間の救急患者受入数は35,000人ぐらい、救急車は3,200台ぐらいです。東京都では大きな問題になっている子供の外傷、骨折。これは、今までたらい回しでしたが、やはりよくないということで、わざわざ整形外科と相談して、取りあえずは1回は来てくださいということにして、常時、手術ができるような体制を整えました。

20ページにまいります。「医療安全対策の充実強化」。これも医療安全は大変重要なところで、昨年度はきちんとインシデント報告を徹底する。アクシデントも当然のことですが、20ページの上に書いてありますが、昨年度は全体のインシデント報告数は4,310件、そのうちの医師の報告件数257件。これは私としてはもう少し増えてほしいところですが、少なくとも5年前と比較して2.5倍までは増加しております。あとは、ナショナルセンター同士の、お互いに訪門した総合チェック。また、国立病院機構の病院との総合チェックを図っております。

 次に感染対策です。感染対策は常時ICTが活動しており、モニタリングをしております。手洗いの実施率や医療感染に対する現場でのチェックなどをきちんと毎回、毎月やっております。講習会は、医療安全及び感染対策に関する研修会を年6回ということです。

 診療支援者配置ですが、一応、医師事務作業補助者は昨年度16名ということで、薬剤師の病棟配置はNICU、小児がんセンターのほうには配置はしております。

 次に21ページです。医療の提供に関する事項ですが、これは「効果的かつ効率的な病院運営」というところで、一応、目標を定めておきました。一応、目標数には達しているというところですが、平成27年度の実績、毎月平均271件の手術件数、病床利用率76.8、在院日数10.6、これは短くなってきています。入院実患者数376.4、前年度より比べれば、昨年度は大分数字がよくなってきていることは明らかです。

22ページにまいります。「リーダーとして活躍できる人材の育成」に関しては、昨年度は、研究所のほうですが、医科歯科大学の教授に1人、あとは聖路加国際大学の看護学科の教授に1人、聖徳大学児童学部の教授に1人転任しております。

 次に、国際的に通用する人材の育成としては、連携大学院等結んだ所からは4大学から6名の学生を受け入れております。外国からの研修受入体制を整備しておりますので、研修生は外国からは35名の研修生、臨床研究員14名、共同研究員37名を受け入れております。また、国外の小児病院等、12か国16施設から84名の見学者を受け入れており、当センターからは5か国7施設の現地へ技術指導に行っております。

 次に、臨床研究支援者の育成ですが、これはCRCがどうしても小児病院にはいませんので、何とか小児病院のCRCを育成したいということで、当センターが中心になって小児病院のCRCの研修プログラムを作成して、これを基に今年度から開始したところです。

 リーダーの人材育成、これは特にフェローの人たちに国際学会で発表していただきたいということで、渡航費を何とかセンター経費としたところ、昨年度は国際学会での発表が67回ということになっております。

 「モデル的研修・講習等の実施」についてですが、これは「成育医療研修会」という名前で多職種、いわゆる医師だけではなく看護師、診療放射線技師、検査技師等を含めたあらゆる職種があらゆる場面を考えて、医療研修会を開催しております。

23ページにまいります。次に各種セミナーの開催ですが、これは前にちょっと出ましたので省きます。臨床研究に関するセミナーをこのぐらいやったということです。英語論文、これは先ほども出ていましたので、特に大きなことはここでは申しません。各職種研修の開催、これも先ほど申しましたが、成育医療研修会の具体的なところです。そのほか産科を対象とした研修、NICUの医者の研究等も含めてやっております。小児がん拠点病院事業としてのソーシャルワーカー、臨床心理士の研修会種々、ここに書いたとおりです。

24ページ、国内外の小児病院等との交流ですが、昨年は新たにカナダのトロント小児病院と締結し、ワシントンの小児病院、ソウル大学等と交流を図っております。あとは国内だと都立の小児総合医療センターと合同で年2回、それぞれの若手医師を相互に派遣して研修をしております。

 次に、国内の小児病院に指導者を8名派遣したり、ほかの小児病院から研修などで32名を受け入れております。各臨床診療科のどこから何名受け入れたかは、ここに書いたとおりです。各小児病院又は大学病院から、このような感じの数字で研修医を受け入れております。次に24ページの右側下のほうですが、後期研修医は毎年14名、小児科専門医を目指して14名を受け入れております。

 次に25ページですが、「国への政策定義に関する事項」です。ここではやはり大きなものとしては、もみじの家、いわゆる医療型短期滞在、介護保険というのは子供にはありませんので、在宅ケアを行っている患者家族の支援というのは全く希薄な状況です。それによってもみじの家というものをモデルにしながら、どのような形で子供たちの在宅ケアを行って、子供たちの支援を行っていけるか。これは次回にある福祉医療の同時開催に向けて、やっていこうと思っております。

 また、移行期医療、大人になった小児期疾患の患者さんの移行外来に関しても、まだまだ体制ができていませんので、成育を中心にして研究をしております。これも昨年から研究を始めましたが、厚生労働省のお陰で始めることができましたので、これは日本全国に発信していきたいと考えております。

 次に、医療の均てん化です。やはりネットワークの運用等に関しては、私ども小児と産科の病院ですので、どうしても小児総合医療施設協議会、JACHRIが中心になってくるところがあります。これらの病院を全部合わせると小児用ベッドが約5,500床を有するので、それを利用して種々の臨床試験、臨床治験を行っていく。種々のクオリティーインディケアを作っていく。小児臨床検査に関する人たちへの支援をしていく。そういうことをやっていきたい。今、事実、ここに書いてあるところができつつあるところです。

 小児慢性特定疾病の「診断の手引き」というものを、小児学会と連携して昨年度作成したところで、これはホームページにも出ております。

 次に26ページですが、情報の収集・発信です。これは特に小児慢性特定疾病情報センターはうちに事務局があり、これを運営して情報発信し、小児慢性特定疾病の診断に関して、あとはいろいろな所で患者さん用、医師用として情報発信をしております。

 次に、ずっと「妊娠と薬情報センター」は成育に事務局があるのですが、やっと軌道に乗ってきて、全国津々浦々とまではいきませんが、全国に協力してくださる病院ができ、何とか全国達成が整い、昨年度は電話の問合せが3,865件、あとはそういう授乳相談を含めて、全体の電話、そのうちは回答数が2,000件と、このような数字で電話相談をやっているところです。小児と薬の情報収集ネットワークについては、先ほど御説明したので省きます。

27ページですが、国際貢献に関しては、新生児医薬品開発のための国際コンソーシウムのデータベースに関して開始したということと、コクランワークショップを3回開催したということ。カナダのトロント病院やワシントン小児病院、海外の小児病院との締結を図って、特に中国の小児病院や韓国等を含めて医師のメディカルスタッフの交流を図っております。先ほど申しました海外からの受入れはこのような数です。特に海外からの医師の研修の受入れは、ここに書いた、眼科、小児科、内分泌・代謝科、循環器等からこのぐらいの病院から、このような数の人間を受け入れるということです。

 「公衆衛生上の重大な危害への対応」、昨年度は保健所・東京防災救急協会、東京都と一緒になり、新型インフルエンザ等感染症が発生したときを想定した訓練を初めて行いました。この写真にある、ものものしいものですが、はっきり申して、いかに子供への対応が全くできないということが分かりました。今後新たにこれを作成し直さなくてはいけないことが分かりましたので、今後、これに対応していこうと思っております。

 一応、1-5までは以上です。

○内山部会長代理

 ありがとうございました。それでは、ただいま御説明がありました項目につきまして、御意見、御質問等お願いしたいと思います。

○大西委員

 大変広範囲な分野にわたってすばらしい活動をされているというのがよく分かりました。自己評価の所でSを掲げていましたけれど、医療の提供の所だったかと思います、16ページです。これも、お話を伺うだけでも非常にすばらしい成果を上げておられるというのがよく分かるのですが、評価の指針によりますと、目標を量的にも質的にも上回る顕著な成果も求められていますから、この辺りで、是非、量的にも質的にも上回る顕著な成果だという事例を少し具体的に教えていただければと思います。

○国立成育医療研究センター病院長

 このSというのは、まず私が一番強調したいことは、ここには出ていないのですが、昨年度、ほかの大学病院から私どもに紹介されて入院した患者さんは1,600人です。大学病院からです。ほかの小児病院から紹介された入院患者さんは380人になります。ということは、いわゆる「目標に顕著に上回る成績」とありますが、私どもはこれ以上ないほど高度なことを、逆に最後の砦として頑張っている。ということは、大学病院、小児病院の全国から信頼されていると自負しています。ですので今、自分たちの目標を掲げてここまでというのは、なかなか顕著になっている所は言いづらいところがありますが、このくらいのレベルにすることだけでも大変なことだと思っています。

 かつ、私どもに送られて来る患者さんは単一の疾患は少ないです。心臓に病気があって、消化管に病気があって、脳に病気があるというのがおよそ私たちの所に来ます。儲かるのはありません。心臓だけでしたら儲かりますが、儲かるのはほかの病院でやります。やりたくないのでうちに送られてくる。でもうちのトリダンは全部やりますが。そうすることで、結局そういう患者さんが集まって。

 ただ患者数は少ないと言っても、重症度はものすごいものです。NICを見ても分かると思います。この数字に出ないことがたくさんあります。うちのNICはほかの病院のNICと、とんでもなく重症度がものすごい、戦争のような状況です。ICもそうです。そういうことで、まずは数字に出ないところの努力というものを、私はこれをきちんと評価していただきたいと思っています。とんでもない戦争をやっています。

 かつ、亡くなる人は少ない、ほとんどいません。ただ、皆さん元気になって帰るかと言うとそうでもない。どうしても障害を持って帰すお子さんがいらっしゃるので、そこで私たちは何をやっているのだということです。そこで出たのが、やはりその1つの解決策としてもみじの家でした。それが高度先進をやる医療の者としての、やはり両輪の1つだろう。命を助けることだけが全てではないということです。ですので、もみじの家をきちっとしてきたということは、やはり、私はこれは大きなSの評価として値するものだろうと思っています。

 もう1つ、先進で言えば、1つはやはり生体肝移植。これはどうしても私どもの売りではあります。日本での小児の生体を78割やっていますし、68例やって1例しか亡くなっていません。ただこれは病院だけでできるものではない、研究所があるからできます。研究所の研究費を、大きな金額を使ってEBウイルスとか、いろいろなものの研究で即座に検査が出してくれますので、それで患者さんが助かっている。これは、残念ながらこの体制をとっているのは成育しかできませんので、それだけ良い成績が取れているので、外科医がうまければ生体肝移植がうまくいくことはあり得ないです。やはり体制です。研究所、病院の、病院だけで、麻酔科、ICU、あとは消化器内科も含めてですが、全ての体制が絶えず動いて初めてこのくらいの、赤ちゃんでさえも助かる生体肝移植。

 ですので今、肝芽腫という肝臓のがんがありますが、転移さえなければ肝は取ってしまうのです。私も若いときはそういうことは浮かびませんでした。肝芽腫なんて転移していなければ取ってしまえ、お母さんかお父さんからもらえばいいだろうという話になります。ちょっと発想が異なってきました。それがいいかどうかは倫理的には分かりません。今、それが一応標準的な指針になっています。ところで、それは絶対ほかの病院では真似できないだろうと思っています。それを事故なく、ほとんど事故なくやっているところを何とぞ御了解いただければと思います。

○内山部会長代理

 今後は是非そういうことも書いていただいていいと思います。どうもありがとうございました。

○本田委員

 今の御説明はとても分かりやすくて、本当に今、御質問があったからなるほどと思ったのですが、そういうのはちょっと読み取れなかったので、聞かせていただいて大変よかったと思います。1つ、もみじの家の件の質問なのです。今、医療の高度化、更に先生方の努力のお陰で助かる命は増えているけれども、在宅の医療的ケア時への支援というのが大変注目されているかと思うのです。もみじの家のスタートによって、今後、国なり社会なりにどういうことを訴えていきたいと考えているのですか。

○国立成育医療研究センター病院長

 これは何回も出ましたので。とにかく、命は助かったけれども、何らかのディスアビリティを持ってお家に帰って医療を継続しなくてはいけなくなってしまった場合、どうしてもお母さんが仕事を辞めていきます。お母さんが全員辞めていきます。か、いろいろな家庭の崩壊もあります。そこを何とかサポートしない限りは、やはり高度先進の医療をやってもそれは片手間だろう、それは手落ちだろうと私ども現場は感じていました。ですので、それを何とかやっていきたい。その具体的な形としてもみじの家を作りましたが、これは成育だったからできたというわけではありえない。これは問題の解決にはならないだろうと思っています。

 もみじの家のような施設を全国の都道府県に少なくとも1か所は作ってもらわないと、これは日本として、成育の使命には全然達していないと考えています。そのために、もみじの家というものをモデルにして、これが黒にもならない赤にもならない程度で、それでもってどのような体制、いわゆる医療費助成でも、介護保険をどうするか。今、子供に介護保険はありませんので、そういうことも含めて福祉的にどういうサポートをしていただければ、ある程度こういう公的なサポートがあれば、黒字にならないけれど何とかとんとんで施設の運営ができるという体制。いわゆる補助金、こういうものがあればいいという、その制度設計をして提案していくことが一番の私たちの最終的な目標で、かつ、それによってお認めいただければ、各都道府県でそれを利用して作っていただきたい、それが最終目標です。

○深見委員

 周産期医療、小児医療、聞く度に本当に大変で、疾患のその種類も多く、更に小さい体でやっている。そこのところの大変さというのは非常によく分かります。技術の進展に伴って、高度化が進めば進むほどやはり負担もいろいろ増えてくる現状があると思うのです。助かる人も増えて、もちろん生きていることは望ましいのですが、それに伴って、非常にたくさんの技術的なものも発展すればするほどいろいろな負担も大きくなってくる。

 そういう中で、例えば、先ほども再生医療、遺伝子治療というところも出てきているのですが、いろいろな広範な所を包括的にやることがミッションであり、そこのところの重要性というのは重々よく分かっている上で、そのまま今後どうやっていくか。多分こういうことがずっと続けられるかと言うと、なかなか厳しい現状もあると思うのです。やはり人が、人的な補強がたくさんあればそれはもちろん可能だと思うのですが。

 例えば、ある程度受け入れる部分もあれば、切り離していくと言った選択するものを選んでいくこともしていかなくてはいけないのかという印象も持つのです。例えば、このところの部分だったらほかの何科でもいい、例えば、再生医療のこういう部分はうちでやらなくてもよい、そういった方向性というのはあるのでしょうか。それとも、今のまま、やはり包括的にやる重要性、もちろんそこはすごくよく分かるのです。包括的にやはりやっていくことこそが重要なので、そういう方向性というものもやはり堅持しなければいけないと考えるかをお伺いします。

○国立成育医療研究センター病院長

 うちがやっていることは大したことでもありません、世界的に見れば。これは欧米の小児病院は普通にやっていることです。ですので、いわゆる世界的に比べればトップかと言えばトップではないのです、日本ではトップですが。しかし、これはほかの普通の、今私がここに書いたトロントとかワシントンは普通に淡々とやっています。ですから、そういう医療をやはり供給しなくてはいけないだろうと思っています。

 あともう1つ、これはなくてこれがあってもいい、といったことは子供ではあり得ません。何があるからこういうものができるか、再生医療ができるかとなるとICUがあるからです。NICUがあるからです。心臓が止まったら誰かが助けるからです。何かがあったら誰かが助けるからです。ですので、全身管理ができない所には高度医療はあり得ません。ですから、何かが抜けたら何かを捨てて何かをやるということは、この小児医療ではあり得ないだろうと私は思っています。それを欧米の小児病院は淡々とやっています。淡々と普通に当たり前のように。ただ、どこを、疾患別にするのではなくて、有機別にするのではなくて、重症度でいくことはあるだろうと思っています。

○深見委員

 疾患ごとにやるのは、もちろんできないということはよく分かるのです。小児ですので、いろいろなことが絡んでいるし、いろいろなことが連携しなければいけないということもよく分かるのです。ですから移植ももちろん重要なのですが、そういう中で、淡々とという、その淡々とというそのことの重要性をよく分かっているからこそ、その淡々ということが破綻しないためにどうしたら良いのか。重要なことですが、例えば、医者のほうから見れば、負担の大きさが、今の若い人たちにはなかなか受け入れて、小児科もそれから産婦人科も少なくなっている現状で、人的にたくさん集められるという現状でもなかなかないだろう。そういう中で、私としては本当に淡々とやっているところに頭が下がる。そのところは重々分かった上で、将来にわたってもその淡々さが続けられるのかという心配をすごくしてしまいます。

○国立成育医療研究センター病院長

 面白いことに、ほかの大手の小児病院はべット数を減らしました。それは、やはり小児病院の在り方と、地域の病院の在り方の役割を分担したからです。そういう意味では、例えば、今後はここはうちでやりましょう、この病気は。この病気の治療のこの部分はうちでやりましょう、あとはある程度落ち着くから地域の病院でやって、地域の小児科でやれますねと。いわゆるそういうほかの地域の病院とうちの主要な小児病院との役割分担でいくのが、今後としては可能性が一番高いのではないかと思っています。ですので、そういう意味では、今後はきちんと全部やるのではなくて、小児病院が全部診断から治療から重症の治療から、あとは退院してまでの治療とかよりも、一番食付きの所だけうちでやって、あとは役割分担で地域の病院にお願いすることのほうが、現実として、いわゆる仕事量も少なくしてかつということになります。

 そうすると、では経営的にどうなのだという話になってくるので、経営的にきちんとそれでサポートしてくれるのならばそれが一番いいだろうと思っています。ただ、経営上どうしても赤字を出すなと言われていますので、そうすると、それは今後それとの引き合い、兼ね合いになってくる、現実的にはそういう話になってきます。

○藤川委員

 短くて結構なのです。1-41-5に関して、以前より大変緻密にいろいろ書いていただいたが故に、何が重要なのかが少し分からなくなってしまった面があって、これをAとするためのポイントの120という計画値以外にも質的に何か必要な部分があると思いますので、短くて結構ですので教えてください。

○国立成育医療研究センター病院長

 やはり一番の人材育成に関しては、最近はだんだんと、これは本当は2年前からあったのですが、国外からきちんと外科医が来て、それで特に生体肝移植の技術を学んで帰るとか、あとは、小児科も最近は来ていますし、そのほか、代謝・内分泌科もそうですが、きちんと外国からの医師を受け入れて研修をしているところが一番大きいことです。あとは、各大学病院の小児科医局から今、研修を受け入れている所もあります。それで、やはり各大学病院でできなくなってきた部分がありますので、そのできない分野の所の研修をうちが担っていることがこの2年で顕著になってきたのだろうということで、その貢献は私自身は大変大きなものだろうと。いわゆる、小児科医を作るための国内の、経験しなくてはいけない疾患をきちんとうちだったら経験できるというところで、ほかの大学からの研修がだんだん増えてきているところがやはり一番大きなものではないかと思っています。

○内山部会長代理

 ありがとうございました。評価に当たっては、質的あるいは量的な評価の両方が求められていますので、それに関連した委員からの御質問がこれまでも幾つかあったものと思っています。

 それでは続いて、「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項」の評価項目2-1から4-1について議論したいと思います。先ほどと同様の流れで法人から御説明いただいて、その後、質疑応答ということでお願いします。それではどうぞよろしくお願いします。

○国立成育医療研究センター企画戦略局長

 企画戦略局長の大森です。時間が限られていますので、手短に御説明をしたいと思います。まず、評価項目2-1、効率的な業務運営に関する事項の28ページです。効率的な業務運営を推進するために、組織体制の強化、それから紹介率、逆紹介率の向上、適正な人事配置等に取り組んだところです。紹介率、逆紹介率については、28ページのグラフにあるように、平成27年度は紹介率94.7%、逆紹介率は42.2%と目標を達成しました。また人事配置について29ページにあります。これらの取組、医師、薬剤師についてはこのような取組をしました。看護師の離職対策については、専門・認定看護師の養成課程の受講生の増加、二交代制の導入等の取組を行ってきましたが、離職率は前年度に比べやや改善し15.5%という結果でした。

 次に、29ページの右下から、「効率化による収支改善」があります。当センターでは、理事長を筆頭に、各部門の幹部で構成する経営改善のワーキンググループを開催して、運営の効率化と収支改善方策を継続的に検討・推進してきました。

 次ページ、法人として、職員数、人件費、委託費の増を原則認めない。投資は、費用対効果が高いものや、医療安全上支障が生じるものに限定することなどの方針の基に経営改善に取り組んだ結果、40ページ、ここに平成27年度の損益計算書が示されています。平成27年度の経常収支率は95.1%、経常収支差12.9億円の赤字となりましたが、平成26年度に比べて7.3億円の改善。総収支差で見ると8億円の改善を行いました。

30ページに戻ります。具体的な支出の削減については3031ページ、また、収入の確保については31ページのVに示してあるとおりです。時間の関係で説明は省略します。

32ページ、電子化の推進です。電子化については、情報セキュリティの向上、あるいは情報発信という観点及び経営改善の観点からこのような取組をしてきました。

 次に評価項目3-1です。財務内容の改善に関する事項です。まず33ページ、自己収入の増加に関する事項についてです。臨床研究相談窓口、先ほど説明がありましたが小児用製剤ラボ、そういうものを活用した企業等との共同研究。あるいは受託研究の推進。また、小児治験ネットワークを活用した治験の推進。右下に、先ほどの説明にもありましたが、外部の競争的資金の獲得。こういうことに努め、自己収入の増加に取り組みました。

34ページ、資産及び負債の管理に関する事項です。言うまでもなく、平成27年度は非常に厳しい経営状況であったということで、施設・設備の投資については最小限にとどめたために、長期借入れは行わず、固定負債は約定どおりの償還を行いました。また短期借入れ、それから不要財産の処分は行わず料金も発生していません。

35ページ、評価項目4-1、その他業務運営に関する重要事項について簡単に説明します。まず、法令遵守等内部統制の適切な構築についてです。監査については、内部監査計画に基づいて、平成27年度については、外部資金による研究費等の経理、契約に関する事項。3つ目として財政投融資等の実施、監査後のフォローアップ、この3つを重点に置いて計14回の内部監査を実施しました。ほか、監事による業務監査、会計監査人による外部監査を実施しました。

 契約については、原則として一般競争入札にすることにして、契約金額ベースで88.62%ということで、前年度とほぼ同水準でした。また、少額随契を除いてやむを得ず随意契約をしたものについては、その内容を公表し透明性の確保に努めました。

 また、当センターではコンプライアンス室を設置しています。コンプライアンス室においては、法的問題に対する助言や問題解決。窓口における相談として平成27年度123件の相断に応じました。そういう相談、研修会の開催、ニュースレターの発行、そういうコンプライアンス活動に積極的に取り組んだところです。

37ページ、その他の事項についてです。その他の事項については、既に説明して重複したところもありますので、人事について追加的に申し上げます。当センターでは、医薬品や医療機器の開発、実用化に向けた出口戦略の強化、あるいは新たな発想に基づく研究を推進するという観点から、PMDAから新たに1名の職員を受け入れ、また1名を出向させたほか、AMEDとの人事交流として3名を出向させました。新たにクロスアポイントメント制度の導入に向けて、平成28年度2名の予定をしていますが、それに向けて関係機関との調整を行ったところです。

 以上、非常に駆け足ですが、評価項目2-1から4-1までの説明をしました。参考までに、財務諸表等を3940ページに添付しています。以上です。

○内山部会長代理

 ありがとうございました。それでは、ただいま御説明がありました項目について、御意見、御質問等がありましたらお願いします。

○斎藤委員

 赤字に終わったとはいえ、大変赤字幅を削減して、私でしたらSAを付けるだろうと思うところをBにしているというのは、ここがまずかったのでちょっとAは付けづらいという何かがあったのかと思うのですが、それは何か教えてください。

○国立成育医療研究センター企画戦略局長

 いや、決してそういうことではなくて、経営陣、職員一同できることは全てやるという姿勢で、あらゆる経費の削減の努力、一方で収入増加対策として診療報酬収入をはじめ、未収金の減等のあらゆる取組をやったということです。ですから、Bと付けたのは、結果的に見て赤字決済になったのでBと評価したということであって、取組について落ち度があるということではありません。

○大西委員

 同じ趣旨なのです。外部資金をかなり活発に集められたと思うのですが、それは財務処理の中でどこに反映されていることになるのでしょうか。業務収益の中に入るのでしょうか。20億円ほどになりますね。委託費になるのですか。

○国立成育医療研究センター総務部長

 業務収益、補助金等収益及びその他に計上されています

○大西委員

 左のほうは費用ですね。ですから右の中に入っているので、補助金と収益か、この上の3つに、その他にも入るのですか。

○国立成育医療研究センター総務部長

 はい。

○大西委員

 これを含めて数字が全体増であると。

○国立成育医療研究センター総務部長

 はい。

○大西委員

 分かりました。ありがとうございます。

○藤川委員

 寄附の収入というのはどの辺りに書いてありますか。

○国立成育医療研究センター開発企画部長

39ページの損益計算書の右側、経常収益のその他の所です。

○藤川委員

8.8億円。これ寄附ですか。

○国立成育医療研究センター開発企画部長

 これの全部でなく一部です。

○藤川委員

 知り合いの方のお孫さんが非常に特殊な病気になられて、お金もそこそこある方だったので、その研究者に寄附をしたいと、治ったから寄附をしたいと思ったけれども、なかなかそういうシステムがない。何だ、しようと思ったのに残念だと言ってされなかったという事例があったのですが。

○国立成育医療研究センター病院長

 いや、ホームページには全部書いてあります。

○藤川委員

 それは特定の方にもできるのですか。

○国立成育医療研究センター病院長

 できます。

○藤川委員

 こちらのセンターではない所でそういうのがあったのですね。ではこちらはできるということですね。

○国立成育医療研究センター病院長

 もう今、ホームページを見ればすぐに分かるようなシステム、それは命だと思っていますので。きちっと。

○藤川委員

 もう、とにかくやりやすいというか。

○国立成育医療研究センター病院長

 はい、容認しています。

○藤川委員

 少しでも集められるというか。年寄りがふるさと納税するお金があったらこういう所に寄附していただきたいと私はとても思っているので、とにかく宣伝をしていただきたいと思います。

○内山部会長代理

 それでは、「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他の業務運営に関する事項」については以上といたします。

 次に、まず法人の監事より、業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明を頂くとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントをお願いしたいと思います。最初に事務局から法人の監事及び監査報告について説明をお願いします。

○国立成育医療研究センター監事(石原)

 監事の石原です。発言の機会を頂いてありがとうございます。監査報告については資料1-3にまとめています。また、先ほど来、委員からも評価を頂いたように、中長期目標というのは、収支相償の安定的経営ということになっていますが、それに向けて効果的・効率的に実施されていることを報告したいと思います。

 

○内山部会長代理

 ありがとうございました。続いて、法人の理事長から日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントを頂ければと思います。よろしくお願いします。

○国立成育医療研究センター理事長

 理事長の五十嵐でございます。今日は業務実績の評価をしていただきまして、誠にありがとうございます。お話を通じていろいろ御理解いただけたと思います。私どもは国際的にも優れた医療を目指していますし、それから、均てん化と言いまして、日本全国の医療の模範になるように、あるいはその人たちに医療を提供するという重要な使命があると思いますので、これについて引き続き頑張っていきたいと考えています。

 特に、優れた医療をやるためには優れた研究が必要ですので、その両方が一緒になって頑張れるという体制がこのナショナルセンターの体制ではないかと思います。しかしながら、私どもがいる所というのは非常に複雑な所でして、医療とか医学研究というのはいろいろな矛盾だとか危険性が常に表裏一体です。例えば、人を対象とする研究を行って成果を得るというのは一体どういうことなのかとか、医療や医学を通じて社会に貢献するというのはどういう意味があるのかという、そういう基本的なところに立脚しながら、そして患者さんの要望に応えていくことをしなければいけないと常々考えています。

 このいろいろな矛盾の中で、特に小児医療はこれまで不採算部門ということでなかなか社会の光が当たらなかったところですが、これも含めて、私どもが努力することで社会を変えるという、今回のもみじの家の事業もそういう意味も持っているということを先ほど御説明しました。いろいろ困難な状況にはありますが、何とか大学病院ではできない医療についても頑張っていきたいと思います。経営的な問題は非常に頭の痛いところですが、何とか自助努力でこの経営改善をすることも大きな目標にしたいと考えています。今日はいろいろ御意見を頂きまして本当にありがとうございました。

○内山部会長代理 

 ありがとうございました。ただいまの御発言内容について、御意見、御質問等がありましたらお願いします。よろしいでしょうか。

 それでは以上で、国立研究開発法人国立成育医療センターの平成27年度業務実績評価に係る議論については終了いたします。ここで5分間休憩を取りたいと思います。委員の皆様は時間になりましたら御着席ください。どうもありがとうございました。

 

(休 憩)

 

○内山部会長代理

 よろしいでしょうか。国際医療研究センターの平成27年度業務実績評価について議論していきたいと思います。初めに「研究・開発の成果の最大化に関する事項」の評価項目1-1及び1-2に係る業務実績及び自己評価について議論したいと思います。法人から御説明いただき、その後に質疑応答という流れで進めてまいりたいと思いますが、時間が限られておりますのでポイントを絞って御説明お願いいたします。よろしくお願いいたします。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 今日は資料2-2のポンチ絵の資料を使って説明したいと思いますので、お手元に準備をお願いいたします。1ページです。左下に当センターの理念を書いております。人間の尊厳に基づき医療・研究・教育・国際協力の分野において、我が国と世界の人々の健康と福祉の増進に貢献するということになっており、ここで医療研究といわれておりますが、特に当センターでは特性を踏まえた研究、あるいは実用化を目指した研究を行っております。

2ページです。先ほど説明した理念の基に、どのような組織でこういうものを進めているかという基本構造をお示ししております。研究所、2つの病院、国際医療協力局、看護大学校を組織とする基本構造です。下の基本構造では、特に感染症、糖尿病・代謝性疾患、肝炎・免疫疾患を対象に研究を進めております。

6ページです。評価項目1-1、研究・開発に関する事項(担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進)です。肝炎、エイズ、感染症、糖尿病等の領域で、その特性を踏まえた成果を上げているということを説明いたします。

 左側の丸1は肝炎の成果です。我が国のC型肝炎の慢性肝炎患者の約70%を占めるインターフェロン治療が効きにくいHCVC型肝炎の遺伝子系1型に対する薬を国内で第3相試験を行い、その結果を「The LANCET Infectious Diseases」に報告しております。その後、C型肝炎の特効薬のハーボニー、ソバルティともに新薬に承認され、その結果、日本肝臓学会のC型肝炎のガイドラインにも結果が反映されました。

 下の丸3、丸4、HIVに関する研究の内容です。まず、上ですが国内企業の「ヤマサ」と共同開発した抗HIV核酸系逆転写酵素阻害薬について、ヨーロッパで第1相臨床試験が行われ、週に1度の内服でこれまでにない強力な効果が見られ、副作用が少なく耐性発現も認められないということが報告されております。また、丸4もHIVの薬ですが、HIVプロテアーゼ阻害剤となり得る化合物について、国際特許を出願したという成果を出しております。

7ページの上です。疾病に着目した研究です。当センターは世界に先駆けてジカウィルス感染症の尿検体による診断を報告。あるいは三日熱マラリアに関しては、休眠原虫を殺滅する唯一の薬の臨床治験に参画し、平成27年度の国内製造販売承認に貢献。糖尿病ですと、不安定1型糖尿病に対する膵島移植に対して、厚生労働大臣の承認等を受け、レシピエントを登録、ドナーは待機している。あるいは糖尿病学会と共同で診療録直結型全国糖尿病データベース事業を立ち上げ、29施設に参加いただいているということを進めております。

 一番下です。国際保健医療協力に関する研究に関しては、平成27年度は平成28年の伊勢志摩サミットに向けてユニバーサルヘルスカバレッジに関する研究を実施しました。また、こういう成果は7ページの一番上にありますが、グラフで示しますように掲載論文の被引用数という形で成果が出て着実に増加しており、特に掲載論文数については中期計画の250を大きく上回っているという現状です。

8ページです。これは評価項目1-2、研究・開発に関する事項の中で実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備です。特に一番上の実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備という所では、まず、これは平成287月から設置されたものですが、ゲノム医療開発・推進組織としてメディカルゲノムセンターの設置を進めました。

 丸3に書いてありますが、そのほかメディカルゲノムセンターと両輪のような形で進むバイオバンクがあります。これについては着実に参加同意取得が増えてきておりますが、特に当センターではここに書いてあるようにエイズ患者330例、肝炎・免疫センター等の受診者750例という当センターの特色を生かしたもののバイオバンクへの御参加もいただき、充実を進めております。

 下に書いてあるとおり、研究所と病院、共同研究という形を取ることがあり、右側の上のグラフですが、これは連携を強化して研究所、病院等との連携ということで共同研究24件ということを数字でお示しできます。また、下のグラフですが、外部機関等との共同研究が27件ということで、両方とも中長期計画の10を大幅に上回る成果が得られております。

2番目の丸です。産学官等との連携強化です。先ほど説明したような国内企業の「ヤマサ」との共同研究もありますし、丸2ですが、「ニコン」との共同プロジェクト、これは連携ラボを研究所内に設置して研究を行っております。丸3です。これは医工連携ですが、20件のマッチングに成功して、そのうち1件の共同開発プロジェクトが進行、あるいは外部資金を獲得できているという成果があります。丸4です。これはJAXAとの共同研究で、発展途上国のユニバーサルヘルスカバレッジということで、生活習慣病等の観察、フォローについてJAXAとの共同研究という形を進めることが今できております。

 知的財産の管理強化及び活用は、ここに青でお示ししているとおり、抗DNAウィルス活性を示すヌクレオシド誘導体は「ヤマサ」で、骨格筋面積の評価方法は「味の素」ですが、出願という形で成果を得ております。

9ページです。First In Human試験を視野に入れた治験・臨床研究体制の充実・強化です。まず数字ですが、NCGM全体で倫理委員会に承認された臨床研究は、383件実施しております。平成27年度の計画では年間200件ということですが、大幅に上回っております。また、そのうちセンターにおいてプロトコールを作成したものは260件、約68%となっております。治験については新規受託がセンター病院で19件、国府台病院で4件、計23件ということで、これも計画の17件を上回っております。うち、国際共同研究、一番上のグラフですが、センター病院は14件、更に平成27年度の治験の収益が1.9億円です。

 丸4、これは多施設共同の医師主導治験を1件行っております。ここに内容を書いておりますが、モノエタノールアミンオレイン酸塩を使用するバルーン閉塞下逆行性経静脈塞栓術による胃静脈瘤治療の有効性及び安全性の検討です。そのほか医師主導治験が1件、これは重症川崎病を対象にしたもので、共同施設として実施されたものです。

 そのほかに丸5、先進医療B2件を実施しております。内容はFDG-PET/CTの不明熱診断への応用、これはガリウムSPECTとの比較研究ということで、多施設共同研究の主たる施設として実施。また、単施設試験として腹膜偽粘液腫に対する減量切除術と周術期腹腔内化学療法に関する前向き試験を実施しております。丸5の上に書いてあるとおり、計画ではこれらが合計3件以上ですが、今お話したとおりこの目標を達成できております。

 丸8です。膵島移植については京都大学の特定認定再生医療委員会から、また、血管新生医療については東京医科歯科大学から承認を受けて、特に後者の血管新生医療については、平成283月末に末梢動脈疾患を有する第1例から骨髄液を採取し、間葉系の細胞の培養・増殖を開始しております。

 丸9の作成されたガイドラインとして、22件は当センターの職員が関わって採用されたものです。中長期計画は目標が12件となっておりますので、これも目標を大幅に上回っております。

 また、一番下に書いている倫理性・透明性の確保については、NCGMの倫理委員会が倫理性・科学的妥当性を適切に判断できる倫理委員会として、厚生労働省の医政局長より認定されました。この認定されている倫理委員会は、平成27年度末で全国で15委員会のみとなっております。以上の結果を踏まえて、評価項目1-1及び評価項目1-2については自己評定でSを付けております。説明は以上です。

○内山部会長代理

 ただいま説明のありました事項について御意見、御質問等がありましたら、お願いいたします。

○大西委員

 様々な成果を上げておられることがよく分かりました。1-1の所で、この資料2-1を見ると中期計画期間ということですが、定量的指標という所に、感染症その他の疾患の解明と医療推進に大きく貢献する研究成果を12件以上とする。これに相当する平成27年度の成果はどれに相当するのか教えてください。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 特に丸1に関するような事項が例に挙げられると思います。概要資料6ページの丸1に関する所です。

○大西委員

 ハーボニー、ソバルティの治験の。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 特にこういうものが代表になりますけれども、ここの1の横に赤字で書いてありますが中長期目標期間中12件という中で、この5件が特に当たるものですが、一番上に挙げているものが代表的なものです。

○藤川委員

1-11-2に関しては、特に研究所のセンターにおいた非常にコアとなるような中身だと思うのですが、そして、求められているものとしては成果を非常に求められている部分が多いと思います。1-1は今御説明いただいたように5つ、特に1番などは担当領域の特性が出ていると思います。1-2の御説明が、こういうことをしました、数値は超えておりますとか、そういう御説明が非常に多かったです。成果という点で少し分かりにくい部分が多かったので、成果が何なのか、Sと言えるような成果は何だったのかということをもう少し御説明いただきたい気がいたしました。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 例で申しますと、例えば概要資料9ページで、先進医療Bがあります。腹膜偽粘液腫に対する減量切除術は、実は腹膜偽粘液腫という腫瘍は日本でいうと100人に1.5人ぐらいの発生頻度で、なかなか治療法がないということ。それに対して特に先進医療Bということで、当センターが治療法を全国に先駆けて実施しております。これは実用化に向けた研究の成果ということで、かなり大きいものではないかと考えております。

○藤川委員

 もう少したくさん欲しいかという気がするのですが。

○国立国際医療研究センター国府台病院長

 概要資料9ページの丸4の多施設共同、BRTOは胃の静脈瘤破裂で、藤川さんが主に静脈瘤が破裂したら、それを止める方法がないのです。BRTO20年以上前から日本の医療現場では使われておりますが、まだ保険診療に承認されていなかったのです。それを今回NCGMが主導して医師主導治験で、もうPMDAが承認する寸前まで至ったのです。これはものすごいことだと思います。今まで国もできなかった、いろいろな所が主導して、学会もできなかったのですが、これは非常に実用化というか、すごく評価に値するものだと自負します。

○藤川委員

 これは、患者は多いのですか。

○国立国際医療研究センター国府台病院長

 結構多いです。47都道府県で当然ながら現在でも、今日でも胃の静脈瘤破裂の方がおられます。私たち消化器内科医は、そういう方に対して内視鏡で止血するのですが、根本的な治療はこのBRTOで、その静脈瘤を小さくします。専門的になりますが、すごく多いです。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 例えば概要資料9ページの丸8の所にあるような血管新生医療についても、閉塞性動脈硬化症やバージャー病と言われるような下肢の切断に至るものに関して、現時点のスタンダードでは全身麻酔をして御自身の細胞を取って、それを治療に使うということはやっているかもしれませんが、採取する骨髄液を少なくして間葉系細胞の培養を、増殖を開始して治療するという試みも、今後これが発展していくと、かなり臨床的にも実用化として有用なものになると考えられると思います。

○深見委員

 今、質の点を御説明していただいたのですが、今回、すごく数が伸びたという印象が非常にあります。例えば、7ページの論文被引用数や、9ページのグローバル治験の推移、ガイドライン数の件数等が伸びているということは、非常に評価できることだと思います。逆に、なぜこのような急に増えるのだろうというか、こういう難しい状況の中で急に増えるということが、少し若干何に起因しているのかと思うところもあります。

 論文被引用数もすごく重要な要素だと思いますが、1つの論文に基づくものなのか、それとも幾つかの論文、例えば、Nature Geneticsの成果を挙げておりますが、飛び抜けたものがあって数を押し上げているのか、少しそこの辺の状況を説明していただけると有り難いです。

○国立国際医療研究センター理事

 概要資料7ページの掲載論文数を見ていただくと分かりますように、やはり年々増えてきているという印象を持っております。やはり、研究所や研究開発法人としては成果を公表することが大切だということを常に言っております。また、それのための様々なサポートをセンターとして、やっているということがあります。

 論文の被引用数に関しては、掲載論文が増えてくるとある意味で自動的に増えてくる数ですので、特別に急激に増えているという印象ではありません。これは、当然、昔の論文はなかなか引用されなくなってきますので、年が変わるとともにインパクトの高い論文が増えてきているという意味に取っていただいたら良いと思っております。

○臨床研究センター長

 グローバル治験数が増えているのは日本の中のすう勢でもあり、世界の同時開発ということで、日本全体で国際共同治験が増えているということも反映されていると思います。

○本田委員

 私は一般人なので、ここに書いてある言葉だけではよく分からないということがあります。特に1-11-2は研究開発の部分でのスーパーで、量と質ということを問われていると思うのです。量はこのように増えているということは、なるほど数字は語っているのでしょう。質として1-15つ挙げているものでも、どれでもいいのですが、世界トップクラスのこのような質なのだということを、何か奥床しい感じがするので、このようにすごいのだということが分かるようにどれか少し教えてください。

○国立国際医療研究センター理事

 では、国際がもともと奥床しいようなのですが、まず概要資料6ページの丸1に関しては、御存じのように新しい薬ができてC型肝炎をほぼ撲滅できるようになったという、そのときの臨床試験を行ったセンターとして、私どもの肝炎・免疫研究センターは非常に重要な役割をしたということを示すものだと思います。薬を開発したのは私どもではありませんが、日本人に使えるということを示したということは非常に重要なことだと思います。

 丸2に関しても、Nature Geneticsという国際的にインパクトの高い雑誌に発表されたものですが、これは東南アジアの人々を含めて32万人の生活習慣病の患者を集めて、その遺伝子を調べることによって、どういう人が高血圧・生活習慣病になりやすいか、あるいは腎臓疾患が起こりやすいという相関を示したという意味では大変大きなインパクトがある仕事だと考えております。

 丸3、丸4、丸5に関しても、私どものミッションのひとつは感染症や肝炎等に関して有効な治療法の開発ということです。既にHIVの薬などを幾つか作られておりますが、耐性ウイルスの出現や脳内のエイズに効果が少ない等、様々な問題がありますので、新たなものを自分たちで、あるいは国内企業と共同して開発し、これの特許を出願する、さらに第1相臨床試験までいっているということは大変重要な成果で、間違いなく国際的だと評価できると思います。

○本田委員

 ちなみに、ハーボニーが大変すごい薬だということは理解しております。これを国内の患者に治験した、国際共同治験の日本の取締りみたいなことをやったという理解でいいのですか、

○国立国際医療研究センター理事

 海外で開発されたものが必ずしも日本人に合うかどうか、副作用がどうかということは、やはり調べないといけませんので、日本の1つの中心になったと考えてください。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 特に「The LANCET Infectious Diseases」論文のファーストオーサーが当センターの先生ですので、そういう点も評価していただければと思います。

○国立国際医療研究センター理事

 ついでにもう1つ言いますと、丸2のNature Geneticsに発表された国際共同研究の論文も世界で32万人、もちろん多施設の共同研究なのですが、第1著者、第3著者が私どもで、さらに責任著者も私どものセンターであるという意味では、中心的な役割を果たしたと言えると思います。

○深見委員

 メディカルゲノムセンターの準備が終わって、昨年度の評価ということなので準備ということになるかもしれませんが、ゲノムの総合的な解析という意味で設立、準備されたのだと思います。このセンターにおける位置付けといいましょうか、今後ゲノムの解析又はゲノムを基にした治療が非常に期待される中で、メディカルゲノムセンターを通して今後の発展性をどのように位置付けているのかということをお話してください。

○国立国際医療研究センター理事

 深見先生はよく御存じのように、ゲノムの研究は今まで随分多かったわけですが、それを医療の現場に実用化しようというのがメディカルゲノムセンターで、私どもは、まず病院の中に臨床ゲノム診療科を作り、様々な患者に相談し、その患者の同意を得た上で試料を頂いて、研究所や外部機関でDNAの配列決定をする。その結果を、倫理的側面への配慮や遺伝カウンセリングをしながら、最終的に本人に返していくという準備ができつつあります。私どもとしては、感染症や肝炎を中心的に進めていくことになると思います。糖尿病や生活習慣病等の多因子疾患に関しては簡単に結果が出るものではありませんので、引き続き研究として進めていくということになるかと思います。

 また、比較的早く進むと思うのはファーマコゲノミクスという意味で、最適と思われる薬剤を決めたり、それまで体重や年齢だけで決めていた薬剤の量を、その患者の遺伝子に合わせて適正量を与えていくということも、現在、一部の薬剤では行われておりますが、更に広げていく必要があると思っております。

○深見委員

 そうすると、例えば薬の量の調節等を含めて、現場への還元も考えたセンターという理解でよろしいですか。

○国立国際医療研究センター理事

 はい。それが多分、一番重要なことになるかと思っております。

○内山部会長代理

 臨床研究ですばらしい成果を上げておられると思います。これだけの成果を上げるためのスタッフの数や、専門的なバックグラウンドを持つスタッフをそろえておられるのかなど、教えてください。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 当センターは研究所と病院が一体で運営されておりますので、実際、病院の医者が研究に関与できるということがかなり大きい。これは6ナショセン共通かもしれませんが、そういうことが上げられると思います。

○内山部会長代理

 医師は現場と結び付いたアイディア、あるいは実際のニーズがあると思います。それを支える生物統計の専門家や、具体的な実験テクニックを持ったドクター以外の方などはいかがでしょうか。

○臨床研究センター長

 臨床研究センターの渡邉です。生物統計家については、非常に専門的な知識を有する生物統計家が現在2人おります。また、統計学的に数理研究の疫学に非常に詳しい方も数名いらっしゃいます。そのほかにPMDAの技官を務めていた薬事専門家といっていい方も数名、現在臨床研究センターにおります。プロジェクトマネージメント、データマネージメントに詳しい方も多数臨床センターに所属しております。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 ちなみに、常勤研究者数は80人、常勤医師数が201人ですので281人という常勤の数は出ております。

○内山部会長代理

 それは、それぞれ独立して、兼務はないということでしょうか。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 常勤ですが兼務です。病院と研究所の両方で働けるということです。

○内山部会長代理

 分かりました。それでは、「研究開発の成果の最大化に関する事項」については以上です。続いて、医療の提供等、「その他の業務の質の向上に関する事項」の評価項目1-3から1-7について議論したいと思います。先ほどと同様の流れで法人から御説明いただき、その後、質疑応答ということでお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 概要資料10ページを御覧ください。医療の提供に関する事項です。個別にバラバラに説明すると体系的になっていないという感じを受けられるかもしれませんが、これは医療政策の一環としてセンターで実施すべき高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療の提供ということで、各高度・専門医療の提供、救急医療の提供、国際化という事項が立っており、それぞれのものに対して、それぞれ何をやっているのかという説明をいたします。

10ページの上の高度・専門的な医療の提供です。丸1に挙げているのは、エイズ患者の治療成功です。ここに一定の数字が出ておりますが、毎月90%以上、年間平均で93.1%の治療成功率という数字を出しております。丸2ですが、平成27年度は合計4例のMERSの疑似症の受入れを行っております。

 先ほどと少し説明がかぶるのですが、丸5では医師主導治験を2件、うち1件は当センターが主施設です。丸6に関しては、先ほど説明した先進医療について記載しております。なお、3番目に書いてある自動多項目同時遺伝子検出システムを用いた敗血症の早期診断、これは先進医療Aですが12月をもって症例の登録が終了して、本年4月に薬事承認がなされました。

 救急医療についてです。都内の状況です。下の左にお示ししておりますが、救急車で搬送の患者の件数は11,049人ということで応需率94.3%です。これは都内でトップレベルのランクを維持しております。また、右上に三次救急の件数を示しております。1,126件ということで年々増加しております。救急の度合はどうかということを丸2に示しております。高度総合医療を要する多臓器不全を伴った重症感染症患者に対する集学的な集中治療を実施し、計画では80%のものが91%の救命率を達成しております。また、国府台病院においては精神科が特徴の病院ですが、精神科の新入院患者のうち重症身体合併症患者の割合が16.8%、これは計画では7%以上ということなので、計画を達成しております。

11ページの一番上です。国際化に伴い必要となる医療の提供についてです。これは、センター病院が平成279月に都内で初のJMIP、これは外国人患者受入れ医療機関認証制度の認証を取得しました。また、今年の1月にJQ(日本医療機能評価機構)の審査を受け、今年の4月に認証を取得して、今後想定される外国人患者の増加に対応することを考えております。また丸3に示すとおり、医療機関における外国人患者受入れ環境整備事業で拠点病院に選定されております。

 また、感染症として当センターは特徴があるわけですが、丸4のトラベルクリニックでは、ワクチン接種、総初診患者数の実績を下にお示ししております。海外渡航者の医療に関して、一定の成果や大きな貢献をしているということが考えられると思います。少し数字が上下しているのは、下に※で書いてあるとおり、ブラジルのワールドカップの開催と東京でのデング熱のアウトブレイクによって、予防接種や患者数が一時的に動いたことが理由で書いております。下の右側、セカンドオピニオンの実施件数は、年間の計画が200件ですが345件を実施しております。

12ページです。チーム医療の推進では様々なチームを立ち上げ、運用して医療を進めていることを上に記載しております。真ん中の入院時から地域ケアを見通した医療の提供です。真ん中のグラフ、真ん中と一番右にそれぞれセンター病院と国府台病院の数字が出ており、紹介率、逆紹介率ともに着実に向上しております。また、国府台病院においては、近隣医師会を対象としたオープンカンファレンスも実施しております。

 一番下の医療安全管理体制の充実についてです。当病院ではリスクマネージャー69人のほかジュニアリスクマネージャー109人を配置しております。また、医療安全管理室が全死亡事例を把握して問題事例の検証を開始しております。赤字で書いてある丸5は、院内研修会です。センター病院では4回開催して職員の受講率職員100%で、国府台病院は8回開催して受講率100%で、計画の年2回以上という研修会を超える回数を実施しております。以上の事項をもって自己評定ではSを付けております。

13ページです。1-4の人材の育成に関する事項です。まず、1番目、リーダーとして活躍できる人材の育成という観点では、平成29年度、これは開始の時期がいろいろ取り沙汰されておりますが、日本専門医機構における専門研修制度に向けて基本領域を19領域、基幹施設として12領域、連携施設として6領域に対応する準備を開始して、順次専門研修プログラムを申請している状況です。

 また、将来の臨床試験を推進するリーダーの育成を目的として、NCGM-NIHのクリニカル・フェロー・シッププログラムを新たに設置いたしました。そのほか、丸3に記載しておりますとおり、いろいろな大学と医学研究、教育研究の一層の充実を図るため連携協定を結んでいるという状況です。実際、博士課程に在籍している者、あるいは客員教授として登録されている者が出ております。

 下の○です。モデル的研修・講習の実施についてです。まず、日本の保健医療を世界に展開するための研修事業、医療技術等国際展開推進事業を厚生労働省から受託して、13か国で28の研修事業を実施しております。詳しいことは後ほど説明いたします。また、エイズ、肝炎、糖尿病、児童精神はそれぞれ当センターの特徴ですが、様々なレベルや内容で研修会を開催しており、右のグラフにお示ししているとおり中長期計画30件のところ74件の研修会等を開催しております。自己評定はAとしております。

14ページです。1-5、医療政策に関することです。国等への政策提言に関する事項では、ここに書いてあるとおり様々な審議会や委員会等に専門家として職員が出席して提言を行っております。また丸2に示しているとおり、WHOの総会あるいは国際会議にも政府の代表団の一員として出席して、政府の対処方針策定等に専門的な見地から積極的に寄与しております。

 大きな○の2番目、医療の均てん化並びに情報の収集及び発信に関する事項です。特にHIV・エイズに関しては、本省の疾病対策課と合同で全国の8ブロックの拠点病院協議会を各ブロックで実施しております。また、肝炎情報センターでは、全国70の肝疾患診療連携拠点病院の情報共有を支援するとともに政策研究を実施しております。また、糖尿病情報センターでは、国民向けの情報提供並びに医療従事者向けの糖尿病標準診療マニュアルの作成や研修講座を定期的に開催しております。

3番目の○、情報の収集・発信についてです。まず、数字は右のグラフにお示ししてあるとおり、ホームページのアクセス数が1,578万件で計画の1,400万件を上回っております。これは、今年の3月にホームページを全面的にリニューアルして見やすいものにしております。特に右下に囲ってあるものがHIV、感染症、肝炎等の当センターの特徴の部分のアクセス数の内訳です。

 そのほか、15ページにお示ししておりますとおり、パンフレットあるいはメディアセミナーを開始、各種研修会を実施、織田記念国際シンポジウムという国際的なシンポジウムを実施したり、医療関係者等を対象とした病院のグローバリゼーションというシンポジウム。また、市民公開講座、これは「糖尿病の明日を考える」というものを実施しており、情報の収集・発信に努めております。

 更に公衆衛生上の重大な危害への対応に関しては、特定感染症病床を有するということから先ほどもお話したとおり、MERSの疑似症患者を受け入れたり、新感染症を想定した院内合同訓練を実施しております。これは計画では1回ですが2回行っております。ここに関しても自己評定はAとしております。

16ページです。医療政策の推進等に関する事項で、国際協力に関する分野です。先ほどお話したとおり「医療技術等国際展開事業」を受け入れておりますので、研修生の受入れが13か国で研修生が242名、専門家の派遣が235名となっております。実際、展開事業がどのような国で、どのような内容で行われているのかということは、16ページの左側の下の図にお示ししております。また、途上国からの研修生は、今の展開事業も含めて433名の受入れを行っております。

 そのほか、母子保健や疾病対策、保健システムの強化ということで各国に専門家を派遣しており、展開支援事業も含めて短期で235人、長期で21人ということで派遣しております。これらの数字の状況は、真ん中の右上にありますが、専門家の派遣状況が256人、研修生の受入れが433人ということで、6年計画での数字を着実にこなしていける状況にあると考えられます。

 また、右下の図では、NCGMの保有する国際ネットワークについて記載しております。ここで御覧いただけますようにMOUを結んでいる所は赤い色で示しており6か国、このほか緑色の枠でお示ししているようにフランス語圏ではアフリカ人材育成ネットワーク、更に東南アジアの看護助産師の制度づくり等を支援しております。そのほか、上に戻りますが、HIV・エイズに関しては新しいガイドラインにNCGMの研究成果が引用されるという貢献、これは下です、失礼しました。17ページの一番上に書いてありますが、当研究の成果がガイドラインに反映されるということで、この国際協力に関しても自己評定はSを付けております。

○国立国際医療研究センター統括事務部長

 引き続きまして、評価項目1-7、看護に関する教育及び研究について御説明させていただきます。看護大学校における教育の充実ですが、丸1の国家試験の合格率は100%でした。各NC、高度専門医療研究センターへの就職率は94.1%ということで、計画を大幅に上回っている状況にあります。特に丸4の現任者教育の関係ですが、短期研修9コースを実施、計画上6コース以上ということ。

 良質な学生確保のための情報提供では、丸1のオープンキャンパスについて年6回、公開講座2回、それぞれ実施させていただいています。公開講座等の参加者の数について右下の表に示していますが、27年度は1,812人の参加です。26年度と比して約300人の増加、数値で申し上げれば120%を超える参加者がありました。丸3の入学試験ですが、定員100人に対して倍率5.9倍ということで、年々、増えている状況にあります。

 研究の推進ですが、特に丸3に書きましたように、NCの看護職員に対し臨床看護研究の指導を11件行い、国内学術誌等で4件の研究成果を発表するに至っています。丸4の大学校の教員の論文件数ですが、登録7件、そのうち3件が国際学術誌に掲載となっています。

 以上、大学校の業績です。自己評価をAとさせていただいています。よろしくお願いいたします。

○内山部会長代理

 ありがとうございました。ただいま御説明がありました項目について、御意見、御質問等がございましたら、よろしくお願いいたします。

○深見委員

12ページの「医療安全管理体制の充実」の所でリスクマネージャー、またジュニアリスクマネージャーという所です。普通、どのぐらいいるのかあまり知らないのですが、ちょっと見るとかなりの人数がいるのかなという印象です。これはどういった人たちで構成されているのかという点と、こういったミス等々を未然に防ぐという意味では情報の共有化というものが重要かと思います。こういうところから出てきた情報というものが、どうやって未然に防ぐところで活かされているのか。そこのところをお伺いしたいと思います。

○国立国際医療研究センター病院長

 ありがとうございます。病院長の大西です。私たち、2年ぐらい前に大きな事故を起こしました。それで医療安全体制を根本的に見直しまして、リスクマネージャーが全部で確か170人ぐらいいたと思いますが、ジュニアリスクマネージャーを作ったというのが1つ大きな特徴です。普通、リスクマネージャーというのは少し上の人なのですが、もっと現場に近い若い方、要するに現場の最先端にいる方に情報を周知すると同時に、現場から上げてもらうということで、現場にいる若い方をジュニアリスクマネージャーとして入れたということが、1つ大きな改革です。

 その方々が、そういう経験を基に教育をするという意味もあって、そういう方々から会議の場で意見を上げてもらったり、レポートを上げてもらったりする。そこで上げてきたいろいろな事例は、月、23回やっているリスク分析小委員会というのがあるのですが、そこで少しヒヤリとするような事例は全部検討して、その結果は必ず毎週やっている幹部会に報告し、理事長、病院長以下、病院の幹部がその事例を把握できるような体制にしています。それでみんなで対策を立てて、それをまたいろいろなリスクマネージャー会議や委員会、あるいは他のいろいろな手段がありますけれども、e-ラーニングを使ったりといった形で教育しています。

 例えば、リスクマネージャー会議の出席率は9495%で非常に高いのですが、残った5%をどうするかも問題なので、やむを得ず出なかった人には必ず医療安全管理室から電話をして、直接資料を渡して説明し、100%になるようにしています。あと、リスクマネージャー会議で討議された事項は、必ず現場に持ち帰っていただき、現場で全て内容を伝達し、資料も見てもらい、必ず見ましたというサインを全部集めていただいて、必ず全員が見る。そういったような情報の周知・伝達、あるいは情報を上げるような手段を構築しています。そんなことを、今、やっています。

○深見委員

 ジュニアの人たちは現場の若い方ということですが、その構成はお医者さんとか薬剤師。

○国立国際医療研究センター病院長

 全ての職種が入っています。

○藤川委員

1-6の評価項目で、これも何人出したという数字の面はいろいろお聞きしたところですが、これによってどのようなアウトカムがあったのか。国際的に、例えばこういう病気が抑えられたとか、こういう予防接種が増えたとか、そういうようなところをもうちょっと教えていただきたいと思います。Sですのでよろしくお願いします。

○国立国際医療研究センター国際医療協力局長

 医療水準の低い所に、直接、医師を派遣しておりますが、例えばエボラが発生したときに行っておりますし、今回も黄熱病がアフリカで発生して、そこにスタッフを政府全体の一員として派遣し、予防接種のためのプロジェクトに従事しておりますが、それで何人減ったかという評価はなかなか難しいと思います。さらに、現地の研修生を受け入れたり、医療教育専門家として派遣したりするなど、どちらかというと指導的な人を増やすということですので、それによって病気の発生率がどのくらい減り、患者が減ったかというのは、間接的なことであり、なかなか難しいところがあります。

 非常に定性的なことで申し上げると、例えば概要資料16ページの最初にある国際展開推進事業、これは27年度から始まったのですが、例えばベトナムにおける病院の放射線、薬剤部門強化のプロジェクトにおいて、ベトナムの技術者に対して撮影技術とか画像の質といった事業を行うと、当然、日本のほうが経験もあり技術も優れているので、是非、そういうのを継続してほしいといった形の声は届いています。では、それによって肺結核の人を発見したか、そこまでは正直分からないところではあります。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 追加で、概要資料7ページの資料を見ていただきたいのですが、研究と被りますので数字的なものは研究的なもので成果が出ています。ここで見ていただくと、例えばラオスにおけるワクチンの使用の研究を行い、温度管理が悪く効率が低くなっていることを突き止めた結果100万ドルの予算が確保されたとか、カンボジアで初の1歳児健診を行って、新生児死亡率がプロジェクト開始後3年で1割低減したとか、数字としては出ていませんけれども、先ほどお示ししたとおり、海外拠点6か国、8か所でMOUが締結され、現在、科学的なエビデンスに基づく共同研究を行政に反映させるといったことを進めている。数字で言えるとすればこんなことになるかと思います。

○藤川委員

 先ほどからアピール度が低いという話はあったのですが、出しましたというだけでなく、具体的な成果が難しいものであっても、もう少し丁寧な説明をしていただいたほうがよろしいかなという気はいたしました。ありがとうございます。

○大西委員

 趣旨として同じようなところですが、1-3の医療の提供の所もSの御評価を頂いていますけれども、これにつきまして、Sというのは目標を量的にも質的にも上回る顕著な成果が認められ、かつ、定量的指標においては120%、かつ質的に顕著な成果と、非常にハードルが高めになっているものですから、これが裏付けられるような事実をもう少し教えていただければと思います。数字の所は微妙に120%というところに、超えているものも1個だけありますけれども。

○国立国際医療研究センター企画戦略局長

 数字の所はお示ししたとおりで、これが正直な数字ですけれども、例えば国際化に伴い必要となる医療といった国際認証である点、これを2つ取っているということは数字で示せない、質的なもので非常に優れているものでなはいかと考えられます。また、数字と重なりますけれども、国府台の精神科の重症身体合併症患者の受入れといったものは、中身も非常に優れているものではないかと言えると思います。トラベルクリニックに関しても、これは当院の特徴ですので、特に数字で目標ということではありませんけれども、着実にこういったニーズがある所に対応しているということも、質的なものとして挙げさせていただければと思います。

○国立国際医療研究センター病院長

1つ追加させていただきます。国際化ということで、実は国際診療部というのを設置したのです。それによって窓口が非常にクリアになったので、他院から引き受ける場合は非常に分かりやすくなったと言われて、結果的に外国人の患者さんの受診が、今、大分増えてきています。ただ、増えてきているので中国語対応とか通訳の配置等で少し苦労はしていますけれども、その辺の整備も、今、進めているところです。

○内山部会長代理

 ありがとうございました。よろしいでしょうか。それでは、「その他の業務の質の向上に関する事項」につきましては以上といたします。続きまして、「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項」の評価項目、2-1から4-1について議論したいと思います。先ほどと同様の流れで法人から御説明いただき、その後、質疑応答ということでお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○国立国際医療研究センター統括事務部長

 概要資料18ページからになります。業務運営の効率化に関する事項です。最初に、効率的な業務運営体制について、先ほどお話が出ましたが、丸1に書きましたように、国際診療部を平成274月に設置しています。丸2にありますように、センター病院に人間ドックセンターを平成28年度設置ということで、今年の5月からセンター化されていますが、そのための準備をしています。丸4に記載している医師、医長の採用者等については、人材の流動性を促進して医療の向上に寄与することを目的として、平成276月から5年を超えない任期ということで、新たな任用者に任期を付けて採用を行い、平成27年度は11人という状況でした。

 次の○の効率化による収支改善について説明します。収支改善については病院のほうの改善が必要ということで、診療報酬基準の新規取得等に取り組んでいます。その結果、丸2ですが、平成27年度の医業収益は316.5億円ということで、平成26年度より23億円の増を達成しています。丸3の主な取組としては、施設基準では病棟薬剤業務実施体制加算をセンター病院、国府台病院ともに取っていますし、特定集中治療室管理料31など上位基準を取得しました。それから、新入院患者の増ということで右のほうに図を示しています。センター病院、国府台病院ともに年々、着実に新入院患者数が増加している状況にあります。

 次に費用の関係です。こちらについては材料費等の購入努力ということも考え、これは平成277月からの契約ですが、医療材料の購入額を一定率、従来価格より引き下げて契約する内容で、コストの削減に取り組んでいます。平成27年度で約18,000万円程度の改善が図られたところです。後発医薬品の使用比率については、センター病院82.7%、国府台病院69.6%ということで計画を達成している状況にあります。一般管理費の節減ですが、これも平成26年度と比較して約700万円、6.2%の削減が図られていて、右側の図に示すように平成26年度と比して6.2%の減となっています。

19ページに移ります。電子化の推進による業務の効率化です。ここでは特にネット関係の環境の整備、安全の推進のため、平成27年度においてoffice365を導入し、業務効率化の推進を図っています。

 次に評価項目3-1に移ります。財務内容の改善に関する事項です。ここにつきましては、特に自己収入の増加に関する事項の取組を平成27年度に行いました結果、特に寄附金については対前年度1,900万円増、受託研究費については対前年度3,700万円増、競争的研究費については23,200万円増、受託実習等についても400万円増ということで、これらの自己収入増加の面でトータル、対前年度29,200万円の増が図られている状況にあります。

 評価項目4-1のその他業務運営に関する重要事項については、特に丸2に書きましたように内部統制システムの規定を整備し、内部統制委員会を平成27年度は2回開催しています。

 次は20ページ、エイズ裁判の和解に基づく対応に関する事項で、HIV・エイズ患者の診療実績です。入院患者数延べ5,763人、1日平均にしますと約16人、外来患者数延べ11,327人、1日平均にしますと約46人の患者の診療を行っています。

 ちょっと飛びますが、3つ目の○の人事システムの最適化です。ここについては年度計画にも掲げていますが、クロスアポイントメント制度を適用したということで、実際はこの4月からですけれども、2人の方がこの制度で赴任している状況にあります。丸3の人事交流等の実施ですが、国立病院機構等とトータルで30人近い人員の人事交流、それ以外にもPMDAAMED等の人事交流の実施をしています。

 その他の事項について説明させていただくと、平成27年度の新たな取組として、理事長と職員の意見交換等のためのタウンホールミーティングを開催しています。平成27年度には4部署で計4回実施させていただき、いろいろな意見集約等をした上で、業務の効率化を図る流れができたと思っています。丸2はセンターのミッションの達成に向けてということで、理事長特任補佐会議を月2回開催し、いろいろな検討事項を議論している状況にあります。

 それらを踏まえて、平成27年度の財務状況等です。21ページになります。右側の損益計算書を御覧いただきたいと思います。右から2つ目の平成27年度の当期総損失は19億円ということで赤字の状況にありますが、これらの要因等々については次ページで説明させていただきます。

22ページの平成27年度の経営改善です。平成26年度の経常損失は13.1億円という状況でしたが、平成27年度に改善に取り組んだ結果、医業収益等においては23億円の増が図られています。その他の収益増、これは研究収益、研修収益、寄附金、補助金等々の収益で12.6億円の増が図られています。一方、運営費交付金の収益が▲13.5億円でマイナスに動いています。これらの収益を上げるためにも、費用関係で材料費の増とかいろいろなものが費用として出ています。特に給与費の増についても診療報酬体制強化のための増員ということもあり、人件費等を投じて収益を上げたわけですが、トータルの結果において運営費交付金収益の減13.5億円が影響し、平成27年度の経常損失は18.7億円という形になっています。

 経営改善上、業務実績上の事業の数値的なものを23ページに用意しています。センター病院、国府台病院、右のほうに研究開発、国際協力、看護大学校等々の数値があり、括弧書きが対前年度になりますが、ほぼ対前年度を上回る実績になっている状況です。このような経営改善をしたにもかかわらず、平成27年度の経常収支につきましては95.6%ということで終わっています。

 以上、財務の状況等を含めて業務の効率化の説明です。よろしくお願いします。

○内山部会長代理

 ありがとうございました。ただいま御説明がありました項目について、御意見、御質問等がございましたら、お願いいたします。

○藤川委員

 運営費交付金の問題は、どこのセンターも同じように大問題ですけれども、こちらでも13.5億円減って、これが減っていなかったとしても純損失全体が消えるわけではない。黒字になるわけではないということで、既に医業収益自体も相当頑張ってここまで伸ばしておられるわけですし、販管費も切り詰められるところは切り詰めていらっしゃると思います。これ以上の策として、運営費交付金のことを除いたとしてもトントンに持っていけるような策はあるのでしょうか。

○国立国際医療研究センター統括事務部長

 当センターの特徴として、年度計画はマイナスの計画ということでスタートさせていただいていますが、なぜこのような年度計画かと申しますと、独法移行後、急激な施設整備、医療機器整備を行い減価償却の額が非常に高い状況にあります。今後、それを改善していくためには、収益を上げて償却比率を下げていくことを行わなければならないのですが、そこは一気にできるものではないので、だんだんと通常の経営体質になっていくのかなと思っています。一般に言う医業現場の減価償却比率というのが、平成26年度では約13.8%ほどあるわけです。本来だと人件費、材料費等々を含めていきますと、減価償却比率は78%が適当ではないかということもありますので、今後、設備投資等々をきちんとした計画を持ってやっていく方針で、計画もプラスにできるような計画を作っていきたいと思っています。

○深見委員

 この国際医療研究センターの特徴でもある国際協力、それから国際協力に当たって研修生の受入れや派遣をたくさんやっていらっしゃるところが、1つの大きな特色だと思っています。今年度から国際診療部を作ったということが、経営の面で財務状況に対してはどういった影響があったのか、お伺いしたいと思います。

○国立国際医療研究センター病院長

 まだ収益の大幅増というところにはつながっていないのですが、はっきり言って外国から来た方というのは、言葉の問題や通訳の問題、いろいろな書類の問題で手間がかかります。外国からある医療を求めてきた場合、多くの施設もそうですが、120円、2倍という形で取っているのです。当院ならではの医療を提供する患者さんを、今後、増やしていって、例えば特別個室も使っていただいて収益増につなげていきたい。人間ドックの話も先ほど出ましたが、人間ドックは聖路加と並んで日本で一番古く、昭和29年に当院は作っていますけれども、最近は活発な活動ではなかったので総合病院の良さを生かし、そういった外国の方も含めてたくさん来ていただきたいということで、人間ドックをこの5月に大きくしたのです。今、例えば中国の方を含めて相当数がこれからいらっしゃる予定もあり、ドックの方は1.5倍ぐらいの料金に設定しています。そういったことで先ほどの経営改善の話ではないですが、そういったことにもつなげていけたらと考えています。

○深見委員

 ミッションという意味で設立したのかなという理解でした。もちろんそれはあると思いますが、むしろ赤字になるのかなと思っていましたけれども、そういうわけでもないという理解でよろしいですか。

○国立国際医療研究センター病院長

 恐らく今後は増えていくのではないかと思っています。当初はいろいろ手間がかかって大変でしたが、通訳を整備したり電話通訳とか、その過程でいろいろ苦労はしていますけれども、今後、伸びていくと。外国の方に適切な医療を提供するというのも当院のミッションだと思いますので、今、その整備を一方で進めているということです。

○内山部会長代理

 大西先生、先ほどの質問で御発言もあったようですが、よろしいですか。

○国立国際医療研究センター病院長

 今後の施策はないかということだったので、今、いろいろ考えているのですが、保険診療もデータをオープンにして一生懸命やっていますけれども、マイナス改定だったり消費増税もあったりして、頑張ってもトントンぐらいなのです。ある意味ではドック、その他の自由診療部門を、これから強化していきたいと考えていて。実際、都内の多くの大病院は、人間ドック等の自由診療がかなり大きなウエイトを占めていると私は理解しています。そういったことを進めていきたい。それが1つです。

 あと、いろいろあるのですが、私たちの病院はジェネラルホスピタル、総合病院というのが1つの大きな特徴で、それをベースにしたいろいろなミッションを果たしていく。国際感染とか救急とかいろいろありますけれども、今、そういう考え方でやっています。その総合医療もまだまだ弱いところが実はあるのです。少しそれを強化していき、特に外科系で麻酔科医の確保とかいろいろありますが、その辺をこの1年、2年で強化する予定です。そうすることによってかなり病院の体力といいますか、経営的なことや質的なことも含めて病院の質が充実するのではないかと思って、その辺の整備を進めようと考えています。

○大西委員

 診療のほうはいろいろ工夫されているということもあると思いますが、外部資金の導入といいますか、特に研究分野においては既に20億円近いお金を集めておられると思います。今後の方向として、よりそれを増やしていく。若しくは、より増える方策をお考えになっているとしたら、もう少し教えていただけますか。可能性も含めてですけれども。

○国立国際医療研究センター理事

 外部資金は、基本的に得たものは研究に使うということですので、収益性はそんなに期待できるものではありません。しかし、外部資金はこの数年間、確実に増えていて13億円だったのが15億円になり、今、20億円近くなってきている。その分でできる間接経費とかがありますので、そういうものはいろいろな事務経費とか様々なものに使えていけるだろうと。これは、もちろんこれから更に増やしていきたいと思っています。

○内山部会長代理

 ありがとうございます。あと、外来収益が大幅に伸びていますけれども、これは何か工夫された結果でしょうか。それとも、同時に高額な薬剤の使用等々も関係しているのでしょうか。教えていただけますか。

○国立国際医療研究センター病院長

 外来のほうですね。先ほどのハーボニー、ソバルディの影響がかなりあります。ものすごく高い薬で18万円というのがあって、去年の9月ぐらいから国府台も含めてがんがん使いましたから、外来のほうは見かけ上、ちょっと上がってしまいました。ただ、その後、かなり皆さんの御尽力で安く仕入れるようになったり、いろいろなことがあったので、だんだんと落ち着いていくのではないかと思います。

○内山部会長代理

 ほか、よろしいですか。それでは、「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項」につきましては以上といたします。法人の監事より、業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントをお願いしたいと思います。それでは、法人の監事から御説明をお願いいたします。

○国立国際医療研究センター監事(水嶋)

 監事の水嶋でございます。平成27年度の監査報告についてですが、私どもの監事の監査報告は資料2-3に添付しています。これは621日付けで理事長宛 に提出し、同じものが627日に大臣宛に提出されています。報告内容全般は基本的に昨年と同様ですが、本年度の監査報告から、独法通則法の改正による事項、すなわち内部統制システムの整備、運用について監査対象とし、監査意見を付しています。

 監査の結果ですが、報告書2に記載のとおり、業務監査、会計監査とも特段の指摘事項はございません。業務運営は法令等に準拠し、財務諸表等に関しても、会計監査人の監査結果は相当である旨の監査意見を表明しているところです。

 次に、法人の財務面から見た課題について少し触れておきますと、先ほども藤川委員から質問がありましたように、財務諸表を御覧いただくとお分かりになると思いますが、本年度決算において19億円の欠損金を計上しています。年度末では繰越欠損金は72億円にも達している状態になっています。法人のこうした厳しい財務状況を、監事として重大な関心を持って受け止めているところであります。本件に関しては過年度からの欠損金計上の構造的な要因を分析した上で、対策を検討するように執行部に申入れを行っているところです。監事としても今後の法人の取組を注視してまいりたいと思っています。以上、簡単ですが、監事の報告とさせていただきます。

○内山部会長代理

 続きまして、法人の理事長より日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等についてコメントを頂ければと思います。よろしくお願いいたします。

○国立国際医療研究センター理事長

 ただいまお話がありましたように、私どもとしましては現在の経常収支が一番大きな問題だろうと考えています。先ほど既に藤川委員から御質問があって少しそういう議論をしたところですが、運営費交付金の削減というのは非常に大きい問題です。そういう意味で私どもの現状を御理解いただいて、厚生労働省のほうに今の運営費交付金を最低限確保していただく。それが1つです。

 もう1つは、先ほどお話がありましたように減価償却費の問題があります。現在では、減価償却費率がセンター病院も国府台病院も大体14%程度と非常に高くなってしまっていて、これは国の時代に計画されたいろいろな病棟や外来等の建築が、実際には独法化した後にそういうものが起こったということで、ちょうどそのピークを私どもは平成26年度、国府台病院では平成27年度に迎えています。センター病院では平成28年度には、今のままでいきますと減価償却費率が8.8%ぐらいです。ただし、国府台病院では平成31年度になってようやく10%を切るということで、少し国府台病院では厳しいのですが、10%をめどに新しい医療機器の投資とか、そういうものをよく考えてやっていきたいと考えています。

 もう1つ大きな問題は、平成26年度から平成27年度にかけて運営費交付金で約9.5億円と、10億円近く教育研修費というところで削られています。この教育研修費というのは、臨床研修医あるいはレジデント・フェローの費用です。今のままでいきますと、現在の臨床研修医の方、レジデントの方、フェローの方を今までどおり雇うだけで、9億円から10億円の赤字が毎年出るわけです。それを病院の利益で補うのは非常に大き過ぎるということで、削減をしなければいけないのではないか。多くのナショナルセンターの中で私どもが唯一、臨床研修医を雇用している所なのですが、それも削減するか中止しなければならないし、診療あるいは臨床研究に非常に重要なレジデント・フェローの数を削減しなければいけない。これは私どもの活動にとって致命的になりますので、この辺をどうしようかということを非常に迷っています。以上です。

○内山部会長代理

 ありがとうございました。ただいまの御発言内容につきまして、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。

○国立国際医療研究センター病院長

 今のに関連して雑駁な数字をお話しておきますと、臨床研修医を昨年は11人ほど減らし、いろいろな理由で絞らせていただいたのです。それでも70人弱いて、年間に約4億円かかっています。今、3年目、4年目、5年目のレジデントが100人、6年目、7年目、8年目のフェローが50人です。その150人の人件費が大体10億円です。両方合わせて14億円ぐらいという状況です。今後は専門医制度も始まります。そうすると、いろいろなプログラムでまた定員が変わってくるので、かなり激変が起こると予想されますから、その辺を睨みながら適正な募集定員を模索しなければいけないと思っています。

 ただ、御存じのように今度の新専門医制度というのは、かなり大学中心のプログラムが組まれていて、大学のほうへ逆にまた回帰していくというような動きです。最初の初期研修医制度は大学から離れていったのですが、今度は回帰する動きがあって、既に当院の在籍者も残らないで戻りたいという人が増えてきていて、研修医やレジデントは不安を抱えています。人数が混沌としているような状況の中で適正な規模を十分に議論し、新専門医制度に向けてトータルの臨床研修医、レジデント・フェローの人数を、どこがセンターとして提示するかということを考えたいと思っています。

○内山部会長代理

 ありがとうございました。今後の課題も含めて御説明いただいたと思います。よろしいでしょうか。それでは、国立国際医療研究センターの平成27年度業務実績評価に係る意見につきましては以上といたします。以上で本日の議事を終了いたしました。事務局から今後の流れについて連絡をお願いいたします。

○医政局医療経営支援課長補佐

 今後の流れについて御連絡いたします。本日、御議論いただきました業務実績評価につきましては、この後、当部会における御意見や法人の監事あるいは理事長のコメントなども踏まえまして、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について法人に通知するとともに公表いたします。決定した内容につきましては、後日、委員の皆様方にもお送りいたします。最後に、本日、配布した資料の送付を御希望される方は机上にそのまま置いていただき、御退席いただきますようお願いいたします。事務局からは以上です。

○内山部会長代理

 それでは、本日は以上とさせていただきます。長時間にわたり熱心に御議論いただきまして、ありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 国立研究開発法人審議会(高度専門医療研究評価部会)> 第7回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会(2016年8月4日)

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