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2016年5月31日 「第4回 労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」議事録

○日時

平成28年5月31日(火)10:00 ~ 12:00


○場所

厚生労働省 中央合同庁舎5号館19階 共用第8会議室


○議題

(1)労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の診断項目について
(2)その他

○議事

○小林中央じん肺診査医 本日は、大変お忙しい中、御参集いただきまして、まことにありがとうございます。

 定刻となりましたので、ただいまより第4回「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」を開催いたします。

 カメラ等の撮影はここまでとさせていただきます。

 本日は、黒澤委員、高松委員、宮原委員が所用のため御欠席です。

 また、小林委員の代理として、福田参考人に御出席いただいております。

 これ以降につきましては、座長より議事をお願いいたします。

○山口(直)座長 おはようございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○小林中央じん肺診査医 それでは、配付資料の確認をいたします。

 議事次第、資料1、資料2、参考資料1、参考資料2、参考資料3でございます。そのほかに道永委員提出資料が2種類ございます。

 不足する資料がございましたら、お知らせください。

○山口(直)座長 よろしいでしょうか。

 本日は盛りだくさんでありまして、本日御検討いただく項目は、血圧、胸部エックス線と喀痰検査、腹囲、身長、体重、視力、聴力等の検査、既往歴及び業務歴の調査、自覚症状及び他覚症状の有無の検査、そして血中脂質検査について再度お諮りしたいということであります。

 最初に、腹囲に関する医学的知見の評価などを行っております「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」での検討の状況について御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○瀧村労働衛生管理官 それでは、参考資料1をごらんください。「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」における腹囲の検討状況について説明をいたします。

 まず、1ページ目の横長の表は、第5回の特定健診検討会の資料となります。網掛けをしたところが「課題あり」とされた点です。腹囲に関しましては「精度/有効性」のところで「測定精度に懸念があることが課題。内臓脂肪蓄積を簡易にはかる指標としての有用性はある」とされております。

 「カットオフ」値につきましては「メタボリックシンドロームの診断基準等によって示されているが、国際的な基準と一致していない」としております。

 また、事後措置の対象者は「国際的な動向として、腹囲・BMIが第一基準ではなく判定基準の一つとして扱われている。腹囲・BMIを第一基準とすることで、特定保健指導の対象となる女性が少なく、女性が保健指導を受ける機会が限定されている」とされております。

 次のページが第6回検討会で配付されました第5回検討会の概要になります。第5回検討会では、厚生労働科学研究の「特定健診・保健指導におけるメタボリックシンドロームの診断・管理のエビデンス創出に関する横断・縦断研究」の結果について報告があり、それを踏まえた検討結果となっております。

 四角で囲まれた1つ目の◎ですが、虚血性心疾患・脳血管疾患は、腹囲にかかわらず血圧、血糖、脂質等の危険因子と関連している。

 詳細な説明につきましては、枠の下の(腹囲による虚血性心疾患・脳血管疾患の発症リスクについて)に書かれております。

 2点目は、肥満者では内臓脂肪の蓄積が危険因子を増加させる主たる原因であり、腹囲は内臓脂肪の減少を図る特定保健指導の対象者を効率的に抽出する簡易な手法であるとされております。

 この詳細な説明は、下の(腹囲の位置づけについて)に書かれております。

 3点目ですが、非肥満者で危険因子を保有する者に対しては、危険因子を増大させている原因を特定し、介入可能な方法を検討する必要があるとされました。

 こちらは、下の欄の(非肥満の危険因子保有者に関する対応について)に書かれております。

 次の第6回の検討会の資料は、8ページ目からをごらんください。

 こちらは、第5回の検討会でさらなる情報が必要との意見を踏まえて、厚生労働科学研究の追加分析の結果に関して提出された資料です。

 8ページの下ですが、1番は、平成17年に定められましたメタボリックシンドロームの診断基準について書かれております。

 2番目は、平成20年度から「メタボリックシンドロームに着目した特定健診・特定保健指導」が実施されている、3番目は、平成1921年度にかけて行われました先行研究、平成2226年度にかけて行われました本研究について記載がされております。

 次のページからが解析結果になります。

 9ページ目の上が「保健指導レベル別にみた全循環器疾患の年齢調整ハザード比」になります。男女ともウエスト周囲長とBMIの基準をともに満たさず、リスクファクター数ゼロの者を対照群としたときに、「情報提供レベル」では、リスク数がふえるとハザード比が上昇する傾向にあります。「動機づけ支援レベル」では、ハザード比は男性で1.97、女性で2.32と高くなっておりますけれども、ウエスト周囲長とBMIの基準を満たさず、リスクの数が2以上のグループよりは低くなっております。

 その次の解析対象者の特徴と、その次のページのメタボリックシンドロームのリスクファクターの特徴については割愛させていただきます。

 その次の10ページ目の下の表は、ウエスト周囲長とリスクファクター数の関連になります。ウエスト周囲長が増加するに伴い、メタボリックシンドロームのリスクファクター数は増加し、リスクファクターが1を超えるカテゴリーは、男性・女性とも現行の基準値と合致したとされております。

 その次のページからが「ウエスト周囲長・BMI・リスク数別にカテゴリー化した場合の全循環器疾患のハザード比の表」になります。

 まず、男性(年齢調整なし)の4064歳について、リスク数としては、0・1・2・3・4とありますが、リスクは血圧、脂質、血糖値、喫煙をとっております。ただし、喫煙のみのリスクの場合は除いてあります。この表で見ますと、リスク数が増加するとハザード比が上昇する傾向にありますけれども、例えばウエスト周囲長が85cm未満と以上を比較した場合に、ハザード比に一定の傾向が見られないことを示しております。

 その下の表が、男性(年齢調整なし)の6574歳を対象としており、リスク数ゼロ、ウエスト周囲長85cm未満の欄を見ますと、既にここでハザード比が3.99となっておりまして、これは高齢の影響のみをあらわしていると考えられます。

 次のページが、男性(年齢調整あり)の表でして、4064歳と6574歳を区別しております。それぞれの年齢層で、ウエスト周囲長85cm未満、BMI25未満かつリスクファクター数ゼロを対照群として解析をされております。

 次の13ページの上が結論になります。男性の場合、4064歳のカテゴリーでは、リスクファクター数が多いほど心血管疾患発症リスクが高いことが示唆されております。

6574歳のカテゴリーでは、心血管疾患発症リスクは年齢そのものの影響を受けることと、一つでもリスクファクターが存在すると心血管疾患発症リスクが高い傾向にあることが示唆されております。

 その下のスライド以降が、女性に対して同じように解析を行った結果です。15ページの下のスライドが女性を対象に行った結果の結論になります。

 女性の場合は、4064歳のカテゴリーでは、リスクファクターが一つでも存在すると心血管疾患発症リスクが高い傾向にあること、リスクファクター数が多いほど心血管疾患発症リスクがおおむね高い傾向にあることが示唆されております。

 女性の6574歳のカテゴリーでは、男性と同様に、心血管疾患発症リスクは年齢そのものの影響を受けること、一つでもリスクファクターが存在すると、心血管疾患発症リスクが高い傾向にあることが示唆されております。

 次の16ページの上の表は「保健指導レベル別にみた全循環器疾患の年齢調整ハザード比【男女別の解析】」になりまして、女性のウエスト周囲長の基準値を85cmに変更した場合の解析結果になります。その下は80cmに変更した場合の結果になりまして、その次の17ページの下の表は、女性の解析においても、対照群として男性の厳密な対照群を用いた場合の結果になっております。

 その次の18ページの上のスライドが結論になっております。

 絶対的な心血管疾患発症リスクを男女間で比較するために、女性の解析においても、男性の厳密な対照群を用いた解析を行ったところ、女性ではいずれのカテゴリーにおいても、絶対的な心血管疾患発症リスクが低いことが示されております。

 以下、資料が続いておりますけれども、本日の議題と関係が余りございませんので、4ページにお戻りいただけますでしょうか。

 こちらが、第7回の検討会で示されました第6回の検討会の概要になります。

 ただいまの報告等を踏まえまして、腹囲につきましては、四角で囲んだ1点目でございますが、循環器疾患による年齢調整死亡率等を低減するため、特定保健指導の対象となっていない非肥満の危険因子保有者に対して、特定保健指導の対象者と同等程度の介入を実施すべきとされております。

 2点目ですが、非肥満者を含めた保健指導対象者の選定・階層化基準においては、血圧、血糖、脂質等の危険因子による循環器疾患の発症リスクが高い者を抽出し、腹囲等により対象者を選定し、対象者に適した介入方法を選択することが望ましいとされております。

 その際、従来との継続性の観点からは、腹囲が基準以上の者については従来の介入方法を選択するとともに、腹囲が基準未満の者については新たな介入方法も定めることが妥当であるとしております。

 腹囲の基準値は、男性85cm以上、女性90cm以上で現行と同様とされております。

 報告は以上でございます。

○山口(直)座長 ありがとうございました。

 後で腹囲については十分な検討をしたいと思いますが、ここで、ただいまの御説明に御質問がございましたら、お願いしたいと思います。

 よろしいですか。それでは、後で検討したいと思います。

 次に、資料1について、事務局からよろしくお願いいたします。

○塚本産業保健支援室長 私からは、資料1によりまして、本日の検討対象であります血圧の測定などの健診項目の現状、概要について御説明させていただきます。

 まず最初は、「血圧の測定」ですが、雇い入れ時の一般健診、定期健康診断ともに必須の項目。

 有所見率が平成2年の7.1%から平成26年の15%と増加。

 元年の通達では、「血圧の測定」は労働者の血圧の状態を若年から定期的に把握し管理することが必要であることから省略不可とした。

 次は、「胸部エックス線検査」についてでございますが、雇い入れ時の一般健診、定期健康診断では20歳、25歳、30歳、35歳、40歳以上は必須の項目。

 有所見率は平成2年の1.6%から平成26年の4.2%と増加。

 エックス線検査は、平成18年の検討会報告におきまして、40歳以上などで呼吸器疾患などの一般的なスクリーニング検査として胸部エックス線検査を実施することが適当とされたことなどから、以下の省略基準にて実施。

 医師が必要でないと認めるときは省略することができる者として、20歳、25歳、30歳、35歳の者を除く40歳未満の者で、次のいずれにも該当しない者として、(ア)として、学校、病院、診療所、助産所、介護老人保健施設、または特定の社会福祉施設における業務従事者。

 (イ)ですが、じん肺健診が3年に1回となりますじん肺法第8条第1項または第3号に掲げる方。

 また、平成22年の通達におきましては、胸部エックス線検査の省略に関しまして、医師が判断する際に必要に応じて懇談会報告書を参考とするとしております。

 この報告書によりますと、胸部エックス線検査の実施に関しましては、(イ)から(ニ)に書いてございますが、結核罹患の可能性が高いと考えられる多数の顧客と接触する場合など、結核罹患率が高い地域における事業場での業務、結核罹患率が高い海外地域における滞在歴、(ニ)としまして長時間労働による睡眠不足など、これにつきましては、一般に結核の感染リスクが高いと考えられることから、医師が検査の省略について判断する際、特に留意すべきとしております。

 また、そのほか個別の既往歴の調査などで、免疫力の低下が疑われる状況にあり、結核の感染リスクが高いと考えられる場合などにつきましては、省略の判断の際に特に留意すべきであるとしております。

 次は、「喀痰検査」につきまして、医師が必要でないと認めるとして省略可能な場合ですが、胸部エックス線検査によって病変が発見されない場合、また、結核発症のおそれがないと診断された者、20歳、25歳、30歳、35歳の者を除く40歳未満の方で、胸部エックス線検査で省略できないとされました先ほどの学校、病院、診療所等の業務従事者などに該当しない方。

 有所見率につきましては、平成2年の1.0%から平成26年の1.9%と増加。

 次は「腹囲」についてです。

 まず、雇い入れ健診は必須です。

 定期健康診断が、35歳を除く40歳未満の方、妊娠中の女性など、あとBMI20未満である方、BMI22未満でみずから腹囲を測定し、その値を申告された方につきましては、医師が必要でないと認めるときは省略可能となっております。

 また、平成20年の通達におきましては、マル1といたしまして、脳・心臓疾患発症の危険因子の一つとして肥満があるが、BMIよりも腹囲が肥満リスクの指標としてすぐれていることから項目に追加。

 また、マル2の腹囲の検査でございますが、メタボリックシンドロームの診断基準に基づき、立位、軽呼気時、へそレベルで測定を実施。

 マル3の腹囲の簡易な測定方法ですが、腹囲の測定については、腹部露出等の労働者のプライバシーへの配慮を行う必要性があることから、簡易な測定方法を導入することとし、具体的には、着衣のまま測定することを認めるとともに自己測定を認める。また、着衣の上から測定した場合は、実測値から1.5cm引いた値とする。

 次のマル4の実施の手順につきましては、腹囲の省略基準にBMIを用いる観点から、身長、体重の測定を健康診断の最初の段階で行い、BMIの値を計算した後に医師の診察を行うことが望ましい。

 次のマル5の事後措置につきましては、従前からBMIのみで事後措置を求められていなかったのと同様に、腹囲のみで事後措置を行う必要はないとしています。

 次は「身長、体重、視力及び聴力の検査」についてですが、体重、視力、聴力は雇い入れ時の一般健康診断、定期健康診断ともに必須の項目。

 身長につきましては、雇い入れ時健診、定期健康診断で20歳未満の方は必須、20歳以上の方は医師が必要でないと認めるときは省略可。

 聴力の有所見率でございますが、平成2年の1,000Hz5.1%、4,000Hz8.2%から、平成26年では1,000Hz3.6%、4,000Hz7.5%と減少しております。

 また、聴力検査と視力検査の意義ですが、労働者の機能的能力の一つとして評価し、適正配置に資することなどとしております。

 次に、BMIを算出するためには身長が必要で、身長の検査を行わなくとも把握できるときは、医師が判断した場合に限り省略可能であるとしております。

 また、「聴力検査」は、1,000Hz4,000Hzの周波数で、一定の音圧の音が聞こえるか否かの検査。この1,000Hzの音は日常会話の音域代表、4,000Hzの音は高齢化に伴い、早期聴力低下が起こる音域の代表としております。

 また、「聴力検査」はオージオメーターを使用して実施としております。

 次の「既往歴及び業務歴の調査」は、雇い入れ時の一般健康診断、定期健康診断ともに年齢にかかわりなく必須の項目。

 昭和47年通達では、「既往歴」「業務歴」は、直近に実施した健康診断以降のものを言うとしております。

 また、平成20年の通達におきましては、特定健康診査におきまして、「既往歴の調査」の項目の中で「服薬歴及び喫煙習慣の状況に係る調査」を行う中で、定期健康診断において義務ではないが、従来から聴取している場合が多いこと、また、特定健康診査の対象者の抽出に不可欠なことから、引き続き、聴取をお願いしたいとしております。

 次は「自覚症状及び他覚症状の有無の検査」についてですが、雇い入れ時一般健診、定期健康診断ともに必須の項目。

 自覚症状、他覚症状の有無の検査には、当該労働者が就業予定の業務に応じて必要とする身体特性を把握するための感覚器、呼吸器、消化器、神経系、皮膚、運動機能の検査が含まれ、その検査項目の選定は、当該労働者の性、年齢、既往歴、問視診等を通じた所見などもあわせて医師の判断に委ねられるものとしております。

 また、「自覚症状」に関するものは、最近において受診者本人が自覚する事項を中心に聴取し、本人の業務に関連が強いと医学的に想定されるものをあわせて行う。

 また、次の「他覚症状」に関するものにつきましては、受診者本人の訴え及び問視診に基づき異常の疑いのある事項を中心として医師の判断により検査項目を選定して行う。この際、医師が本人の業務に関連が強いと判断した事項をあわせて行うとしております。

 また、「一般健康診断ハンドブック」におきましては、「自覚症状及び他覚症状の有無の検査」は、問診によって明らかにされた既往歴、業務歴、生活状況、家族歴、自覚症状などの調査結果、職場巡視の所見、作業環境測定の結果などを照合しつつ、視診、打聴診、触診を行い、これら全体を検討して、次に行うべき検査項目を選ぶのが基本的な流れなどとしております。

 資料1につきましては、以上でございます。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 資料1のただいまの御説明に対して、何か御質問がございましたらお願いいたします。

 福田さん、どうぞ。

○福田委員 福田です。

 6ページの今お読みいただいた最後の自覚症状及び他覚症状のところで、「その検査項目の選定は当該労働者の」云々とありますが、同じような文言がどのところにも、次に行うべき検査項目は医師の判断に委ねますが、この検査項目というのは何を意味するのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 雇い入れ時健診では、消化器とか神経系、皮膚、などの検査としています。また、問視診に基づいて視診、打診、聴診などを全部又は、選んで行うとしています。ただ、資料6ページの上の3つは通達ですから、省令事項の解説という位置づけになります。最後のところは、あくまでも望ましいやり方を示したものとなります。

○福田委員 この書かれている検査項目というのは、いわゆる診察ということで理解してよろしいのですか。診察を検査項目というのは、いささか文言的にはよくわからないのですが。

○武田労働衛生課長 これは、その前のところで「視診、打聴診、触診を行い」とありますので、いわゆる理学的検査、すなわち診察とご理解頂ければと思います。例示してある基本的な診察項目の他、さらにその他の必要と思われる診察項目ということも含んで、「つぎに行うべき検査項目」として少し広目な意味になっているのではないかと考えております。

○福田委員 では、例えば一般法定健診で認められていない血液検査を医師の判断で、例えばこの方は特別に何か調べようとか、それは可能ということなのでしょうか。

○武田労働衛生課長 この一般健診のところで求められているもの、これは通達やこのハンドブック等で今まで示されているものを基本としてプラスアルファであるものも含んでいるということの検査、すなわちここでは診察という話なので、何でもかんでもというようなものでは当然ないと考えています。

○山口(直)座長 先生、よろしいですか。

○福田委員 正直言ってよくわからないです。

○塚本産業保健支援室長 そういう意味で、ここの部分については医師の裁量に基づいてやるということになっていますので、後ほど論点で御説明させていただきたいのですが、どういう考え方で、どういうやり方がいいのかについても、一定程度御議論していただくということも必要ではないかと考えております。逆に言うと、今までこれだけしか書いていない、この中で行うという意味では、非常に理解しにくいところもあると思いますので、ここは少し御議論いただければと考えております。

○福田委員 ありがとうございます。

 委員長、もう一つ。

○山口(直)座長 どうぞ。

○福田委員 あと、2ページの「喀痰検査」のところですが、医師が必要でないと認めるときは省略可能である。胸部エックス線検査によって病変の発見されない者、胸部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者は、喀痰検査は省けると。実際、胸部エックス線は、御存じのとおり、検査会場で見ることはできません。後日、これはセンターに戻るなりして、そこで初めて所見がわかるわけですから、これはどのように解釈すればよろしいのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 定期健康診断の中は特殊健康診断と違って、一次健診、二次健診という階層構造をとっていない中で、どちらかというと、この喀痰検査のところは二次健診的な要素が入った項目という位置づけになるのではないかと思います。そういう意味では、若干時間差があって行う項目という位置づけになるかと思います。

○福田委員 それでは、例えば後日疑いがあるよということで、それを法定健診の項目として医師ができるという判断でよろしいのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 そうだと思います。

○福田委員 ありがとうございました。

○山口(直)座長 先ほどの第1点目の検査項目というのは、今の例もありましたけれども、医師の判断でいろいろ省略可というものがあるので、それについては、医師の判断抜きで機械的に省略してしまうのではなくて、ちゃんと医師の判断をきちっとして、省略できるかできないかということを見定めて検査項目をちゃんと選べと、私はそういうふうに勝手に読んでいたのですけれども、ここはそういう意味ではないのですか。

○塚本産業保健支援室長 ここも、あくまでも医師がということになりますので、出てきましたエックス線の画像等をもとに、医師が判断しなければいけない、これを画一的に他の事務の担当の方がおやりになっては絶対にだめだというところです。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

○森委員 今のご回答は、質問の主旨とかみ合っているように聞こえなかったので追加で質問させていただきます。医師の省略可は、本来健診のプロセスのどこで判断をすべきということなのでしょう。

○塚本産業保健支援室長 これは、たしか第2回目の資料で、森先生の御質問でお示しさせていただいた部分だと思いますが、あの中では、血液検査を代表の例にして資料を出されていましたが、たしか健康状態の経時的変化と自他覚症状の状況等を勘案して判断することが重要であるといった趣旨で書かれていたと思います。今まで所見がなく続いているのかとか、問診をやった際に、問題なく何も引っかかるものがないということを判断して、では引き続き省略とか、省略してはだめだと判断していくことが当時想定されていたと考えております。

○森委員 そうすると、本来の流れだと、例えば産業医がいて、これまでの経過の中でこの人は省略しないほうがいいだろうという判断が事前にあり得るし、逆に省略可となっていたとしても、診察する医師の判断で省略しないということを最終的に決めることもあり得るという理解でよろしいのですか。

○塚本産業保健支援室長 そうですね。本来の流れですと、当初は、プランニングの段階では、経時、経年変化から見て省略可能かなと思いながらも、実際に労働者の方とお会いすると、非常に問題があるというところで判断を変えるというのは想定されていたと思います。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ。

○中澤委員 2ページ目にある結核についてですが、(イ)(ロ)(ハ)(ニ)とありますけれども、(イ)と(ロ)というのは基本的にはどんな事業場を想定しているものなのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 (イ)につきましては、これは結核の罹患の可能性が高いと考えられる多数の顧客と接触する場合等ということで、そういう顧客の方と皮膚が接触するとか、同じ空間で働く場合、(ロ)ですと、例えば当時の検討会の中のデータですと、10万人当たりの結核の新規登録患者数が、例えば長野が10人に対して大阪府が50人といった、地域的には非常に格差があると議論されております。

○福田委員 今の質問で、よろしいですか。

 厚労省の方からはなかなか言いづらいと思うのですけれども、実際、健診を受け持っていますと、パチンコ屋さんなどが割と多いのですね。やはり密閉空間で、かなり大勢の方がいらっしゃる。ですから、うちの経験例では、パチンコ屋さんで集団発生という例は多うございました。あとは、いわゆる風俗系の仕事ですね。やはりそういうところが多い。あと、おっしゃったように地区によってかなりばらつきがあって、例えば、げすな言い方をすると、日雇い労働者さんなどが集まっているところでやると、かなり人数が高くなります。

○中澤委員 (ハ)(ニ)については、それぞれ事業場だとか、個人の作業、あるいは業務によって峻別はできます。(イ)(ロ)については、今お伺いすると理解はできるのですが、企業ベースのところでそういうものがあるのかないのかというのは、なかなかわかりづらい部分があります。逆に、そういうことが前提になければ、なかなか配慮ができず、項目が有効に機能するのかどうかというのは少々理解しにくい部分であります。

○塚本産業保健支援室長 これにつきましては、今回の資料からは割愛しておりますが、何度か検討会で調査・研究を行っていますので、そこでの議論とか、検討会報告書を省略の際には御活用いただき、御判断いただくことを想定しています。報告書が膨大なものですから、ここでではつけておりませんが、現場の先生方にはそういう形で対応いただいていると考えております。

○山口(直)座長 ほかによろしいでしょうか。

 続きまして、資料2に論点案をまとめていただいていますので、こちらの説明をお願いいたします。

○塚本産業保健支援室長 論点案、資料2をごらんいただけますでしょうか。よろしいでしょうか。

 まず、「1 血圧の測定」ですが、文献レビューでは、精度、有効性ともに確立。

 高血圧につきましては、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」では、脳・心臓疾患の危険因子の一つ。

 第2回にプレゼンをいただきましたが、森教授の調査では、調査対象のうち一定の産業医の方が、収縮時血圧、拡張期血圧を就業制限に活用するとした調査結果もあるとされております。

 これらから、定期健康診断におきましては、血圧の測定は、高血圧が脳・心臓疾患の危険因子の一つであり、就業上の措置において活用していることなどから、引き続き、現行の健康診断項目を維持してはどうかというのが1つ目です。

 次の「2 胸部エックス線検査、喀痰検査」についてですが、まず、胸部エックス線検査は、結核などの呼吸器疾患等の一般的なスクリーニング検査。

 喀痰検査は、結核の早期発見等を目的とした検査。

 あと、胸部エックス線検査の必要性、対象者等につきましては、平成17年の改正結核予防法の施行等に伴いまして「胸部エックス線等のあり方検討会」などにおいて調査・検討が行われた結果を踏まえたものであり、当該調査・検討から約10年経過。

 次に、第2回目にプレゼンをいただきました大久保教授の研究では、調査対象の産業医等においては胸部エックス線検査を主に結核対策などに活用しており、グローバル化等に伴う人材の流動性の高まりにより必要性は高まっているなどと回答した調査結果。

 これらから、定期健康診断におきます胸部エックス線検査、喀痰検査につきましては、本検査の必要性対象者等に関する調査・検討から約10年経過していることなどから、知見の集積等に努めるとともに、現行においては、従前の調査・検討等を踏まえて、引き続き、現行の健診項目等を維持してはどうか。

 以上がエックス線等です。

 次は、「3 腹囲の検査」でございますが、これはまた後ろに資料もつけておりますが、「高血圧治療ガイドライン2014」では、まずメタボリックシンドロームが心血管病の危険因子、また、このメタボリックシンドロームにつきましてはウエスト周囲径が一定以上で脂質値、血圧値、血糖値のうち2項目以上が一定の値以上を診断基準としていることから、腹囲は、他の因子とあわせて心血管病の危険因子の一つ。

 また、文献レビューでは、測定精度に懸念があることが課題。ただ、内臓脂肪蓄積を容易にはかる指標としての有用性はある。

 また、「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」におきましては、先ほども御説明させていただきましたが、基本的な項目であります腹囲の測定につきまして、保健指導対象者の選定などにおいて、血圧、血糖、脂質等の危険因子によると循環器疾患の発症リスクが高い方を抽出し、腹囲などにより対象者を選定し、対象者に適した介入方法を選定することが望ましいなどとされております。

 これらから、定期健康診断におきましても、腹囲は、他の指標とあわせて心血管病防止のための就業上の措置において活用できることなどから、引き続き、現行の健康診断項目を維持してはどうか。

 次が、「4 身長、体重、視力、聴力の検査」でございますが、これにつきましては、文献レビューでは、身長、体重、BMIは、精度、有用性とも確立。

 また、BMI25以上の肥満は、「高血圧治療ガイドライン」では、心血管病の危険因子の 一つであり、BMIは身長、体重から算出。

 視力検査、聴力検査につきましては、労働者の機能的能力を評価して適正配置に配慮するためのもの。

 これらから、定期健康診断におきましても、身長、体重、視力、聴力の検査は、就業上の措置において活用が期待できることなどから、引き続き、現行の健診項目を維持してはどうか。

 以上が4番目です。

 次に、「5 既往歴及び業務歴の調査」ですが、まずは定期健康診断におきましては、罹患している疾病、健康状態を把握し、当該疾病が業務によって増悪しないよう就業上の措置を講じること。また、健康の保持のため保健指導に努めることなどが期待されているが、これらを効果的に行うためには、既往歴、業務歴の調査はどうあるべきか。

 また、次の「6 自覚症状及び他覚症状の有無の検査」ですが、他覚症状に関する検査は、受診者本人の訴え、問視診に基づき、異常の疑いのある事項を中心に医師の判断により検査項目を選定して行うとされていること、また、自覚症状、他覚症状の有無の検査により把握した情報により、健康診断項目の省略の可否を判断することなどが期待されているが、これらを的確に行うためには、自覚症状、他覚症状の有無の検査はどうあるべきか。

 以上が6です。

 次に「7 血中脂質検査について」ですが、これは再度御検討いただきたいと考えている項目です。

 まず、(1)の特定健康診査などに関します検討会におきましては、まず、中性脂肪、随時採血であったとしても、虚血性心疾患、脳血管疾患の発症予測能があり、健診項目として活用可能。

 次に、2)LDLコレステロールール直接法はほぼ日本でしか用いられておらず、測定精度に関する懸念が国際的に指摘。ただ、適切な試薬を使用して精度管理が行われれば、臨床検査としてのLDLコレステロール直接法自体の使用は可能。

 国際的なLDLコレステロールの評価はフリードワルド式で行われている。しかし、この式は中性脂肪を減じる項があるために、高トリグリセライド血症、食後の中性脂肪高値の状況ではLDLコレステロールを過小評価する可能性。

 これらから、空腹時採血であれば、フリードワルド式で算出されるLDLコレステロールも使用可能。

 また、日本人のHDLコレステロールは諸外国よりも高く、総コレステロールのみで評価するとリスクを過大評価。

 次に、nonHDLコレステロール、これは計算式で出すものでございますが、日本の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012」では既にスクリーニングとしての診断基準が示されている。したがって、特定健康診査の保健指導等では、日本人のコレステロールの評価はnonHDLコレステロールが望ましいという方向で検討されていると聞いております。

 つまり、特定健康診査、特にこれは健康局の検討会ですが、血中脂質、つまりLDLコレステロール直接法は、検査項目から廃止して、総コレステロールを健診項目に追加する方向で検討していると聞いております。

 (2)は、資料1の後ろのほうに載せておりますが、日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2014」では、高LDLコレステロール血症などの脂質代謝異常は心血管病の危険因子の一つであるとしており、また、空腹時採血によりLDLコレステロールはフリードワルド式で計算していく。また、トリグリセライドが400mg/dl以上、また、食後採血の場合はnonHDLコレステロールを使用して計算した上でLDLを求めるといった対応が示されております。

 これらから、「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」におきましては、 LDL直接法は適切な試薬を使用して精度管理が行われれば、臨床検査としてLDLコレステロール直接法自体の使用は可能であるということを前提に、国際的なLDLコレステロールの評価は計算式で行われるフリードワルド式であるといったことなどから、LDLコレステロール直接法を健診項目から廃止し、総コレステロールを健診項目へ追加する方向で検討されておりますが、これらについて、私どもの定期健康診断等においては、どのように取り扱うべきかについて御議論いただきたいと考えております。

 以上でございます。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 御質問があろうかと思いますが、それぞれの項目ごとに御検討いただいて、そこで御質問がある場合にはいただくといったスタイルでいきたいと思います。

 よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○山口(直)座長 では、1番から順番に「血圧の測定」から。論点案では、現行の健診項目を維持してはどうかということでありますが、御意見がありましたら、お願いしたいと思います。

 土肥先生、どうぞ。

○土肥委員 血圧を定期健康診断項目として維持することに賛成いたします。血圧については、動脈硬化性疾患のリスクであり、いろいろな意味から必要だと思うのですが、今の血圧の測定というのは、方法や回数が決められていないという状況にあります。特定健康診査のほうは2回をとった平均を使うということになっているわけですが、ここの定期健康診断では、1回はかって低ければ、もうそれで終わりということになりますので、逆に、隠れ高血圧を見逃す可能性を持っている測定方法かなと思います。高ければ、その後、精密検査をしましょうとか、何回かはかりましょうというふうに流れていくわけですが、低いとそこで終わってしまうので、項目として何かきちっと書くかどうかは別にして、望ましい方向性としては、やはり複数回を測定して平均をとるとか、そういうことを追記することによって、血圧測定の信頼性を上げていくという方向性が必要ではないかなと思います。

○山口(直)座長 事務局からございますか。

○塚本産業保健支援室長 これにつきましても、特定健康診査と項目の重複がある部分でございますので、今回出た御意見も踏まえて、ここの部分は少し特定健康診査の部署とすり合わせを行って、最終的にどうするかというところを、次々回以降御検討いただきたいと考えております。

○山口(直)座長 岡田先生、どうぞ。

○岡田委員 土肥先生がおっしゃいましたように血圧は必須項目であると思っておりますし、もう一つは、低血圧の方が正常血圧になって脳出血を起こす例というのが過去にありましたので、やはりトレンドを見ておかないと、血圧というのは、ただ単に高血圧学会が正常範囲であるという血圧を見ても予防はできないと思っております。

 私どもも、以前の会社では、前年度に比べて血圧の値が10%以上上がった場合には、一応因子が何かないかということを確認するということ、特に高血圧に関しては極めてリスクが高いわけですから、そのあたりはきちっと血圧管理はしていかないといけないと思っておりますので、ぜひ毎年きちっとはかっていくということが必要であると思っております。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 森先生。

○森委員 先ほどの血圧の測定方法に関して、特定健診に関してどのような議論をされているか確認させていただきたいことが1点あります。最近、事業場で行われる健診では、必ずしも医療者が測定せずに、自動血圧計ではかった結果を持ってこさせて、それを転記する場合があります。自動血圧計で計った自己測定の血圧と医療者がはかった血圧というのは本来正常値が違うというのが基本的な概念ですので、それを分かった上で判定すればいいのですが、実際にはそのようにはなっていない状況です。そのあたりの方法論と判定に関する課題についても議論されているのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 確認しますが、たしか行われていなかったのではないかと思います。投げかけを行っていきたいと考えています。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 それでは、方法については事務局のほうでまた御検討いただくことにしまして、血圧の測定自体は検査項目として維持ということでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○山口(直)座長 それでは、次にまいりたいと思います。

 「胸部エックス線検査と喀痰検査」でありますが、こちらにつきましても、現行の検査項目等を維持してはどうかという論点案でございますが、これについて御意見がありましたらお願いします。

 山口さん、どうぞ。

○山口(健)委員 自動車総連の山口です。

 意見というより質問です。ここに「知見の集約等に努めるとともに」と記載されておりますが、ここの意図を少し確認させていただきたいと思います。平成17年から10年が経過したということでこういうことを書かれているのではないかと思うのですけれども、時間が経過していようがいまいが必要なものは必要だと思います。そしてそれ以上に、エックス線自体がもたらす受ける側のリスクを意図しておられるのかもしれませんけれども、少しこの記載の意図を教えてください。

○塚本産業保健支援室長 この部分ですが、前回、平成20年当時に検討された中で、例えば、医師が省略の御判断をいただくときに、例えば、罹患率が高い地域における事業場の業務などの留意事項が幾つか列挙されております。これは当時の知見に基づいての判断です。例えば、これがほかにも留意事項が必要になってくるとか、また省略基準が現行の状況でも妥当であるかとかなどについては、一定の知見の集積があれば、ピンポイントで示して、より必要性が高い方を省略せずに行うという方向に持っていくことができます。このための調査、知見の集積を図っていくということなどが考えられるかと思います。

 あと、この検査が他と違いますのが、特定健康診査の項目になっていません。ほかの項目は健康局がある程度エビデンスを集積し評価し、方向性はある程度いただくことができるわけですが、この検査はそれができないということもありますので、同様のことができるような知見の集積が必要ということで、論点案のところには追記させていただいたところです。

○山口(健)委員 では、先ほどの資料1の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)と書かれたことなどについて、より知見を集めるという意図で書かれているという理解でよろしいですね。

○塚本産業保健支援室長 これはあくまでも例ですが、留意事項や省略基準はこうすべきといったことが示される可能性はあるかと思います。

○山口(健)委員 理解しました。

○山口(直)座長 では、砂原委員、どうぞ。

○砂原委員 砂原でございます。

 この胸部エックス線のことなのですけれども、近年、被曝等の関係から、検査自体を拒む労働者もいるという話もございまして、必要性について今一度考え直してもらいたいと思います。結核については、一般的な感染リスクというのが特定できることも踏まえて、現在の胸部エックス線検査の有効度についてきちんと検証を今後行っていただきたいなと思っております。

 感染症法で結核の対象となっている施設、じん肺健診の対象にならなければ、医師の判断で省略も可能ということもありますので、すべての事業場に義務付ける定期健診項目とするべきなのか、費用対効果の観点も踏まえて検討していただけないかなと思います。

 胸部エックス線に限りませんが、実際、海外等から、ここまで幅広く健診をやらないといけないのかという御指摘をいただくようなケースもございます。ますます、グローバル化が進む中、海外のステークフォルダーにご理解いただくことも必要なため、日本と諸外国で、こういう職域の健康診断について求められているものがどのような差があるのかという比較表をお示しいただいて、最終取りまとめの際には比較表を活用しながらまとめていければと思います。

 やはりエビデンスの有無で項目に追加する、もしくは削除するという判断を行うことが重要であると思います。また、国際競争に打ち勝っていかなければならない中、諸外国との制度比較を行いながら、定期健診項目として追加するとか削除するとかいった議論をしていければと思いますので、御配慮いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

 以上です。

○塚本産業保健支援室長 少し検討してみたいと思います。

○山口(直)座長 土肥委員。

○土肥委員 まず1点目は、胸部エックス線につきましては、結核を対象とした健診であるという面については、そのとおりでよろしいかと思うのですが、今の御意見のように、ほかの健診との比較、もしくは効果ということを考えるのであれば、がん検診としての意味について考える必要があるのではないかなと思います。それは、日本の国としてがん対策を推進しているという状況の中から、そういう意味を含めて、胸部エックス線の検査について、今後についても、今についても、どうあるべきかという検討もあわせてされることが重要かなと思います。

 もう一点でございますが、定期健康診断においては「胸部エックス線検査」と単純に書かれているわけでございますが、じん肺健診においては「胸部エックス線直接撮影による」と書かれております。ここで書いてある胸部エックス線検査とじん肺健診における胸部エックス線検査について、これは差があるものなのか、ないものなのか、ただ言葉の問題だけなのかということについては、どのように理解をすればいいのかということをお教えいただきたいというのが2点目でございます。

○塚本産業保健支援室長 2点目の今回定期健康診断で示しております胸部エックス線ですが、間接撮影また直接撮影、またアナログ、デジタル、これを示していない状況です。これは場面、場面に合わせて、例えばじん肺健診のかわりのところですと、それに準拠した方法が期待されます。

 ここにつきましても、ある程度方向性を今回の検討会で示していただくということがあり得るのかなと思っております。

○山口(直)座長 福田先生、どうぞ。

○福田委員 今、間接は、148の健診機関でほとんどやっていません。ほとんどデジタルです。ですから、今、全衛連の精度管理でもモニターの精度管理に移っていますので、間接でやっている健診機関というのはあるかどうか。

 もう一点なのですけれども、胸部レントゲンは先生がおっしゃられたように、肺がんが一つにございますけれども、もう一つあるのは心臓血管陰影なのですね。ですから、経団連の委員から出たように、ただ単に結核を見ているだけではなくて、やはり大動脈弓の映りで石灰化があると。すると、これは心血管病変の代表的なものですから、単に結核が云々だけではなく、やはりそちらのほう、心臓血管、循環器、場合によっては肺水腫とか、そういうものが見つかります。ですから、余り矮小化して結核だけにフォーカスを当てるのはいかがなものか。それから、平成20年のときにも、全衛連からそういう御意見を差し上げたと思うのです。

 以上です。

○山口(直)座長 この「知見の集積等に努めるとともに」というところは、何か計画といいますか、研究班を設けるとか、何か未来に向けて具体化していく御予定はありますでしょうか。

○武田労働衛生課長 現時点において、具体的な計画というものを持っているものではないのですけれども、今、ここで御議論もございましたように、知見の集積というのは、先ほども例が出ましたような省略基準についてはこれぐらいでいいのか、目的もしくは結果的に所見として見えてくるものについて、どのように評価するのかとか、いろいろあると思いますので、改めまして、検討会で御議論をいただいた結果を踏まえまして、そこはまた別途考えていきたいと考えております。

○山口(直)座長 ありがとうございます。先ほどのエビデンスのこととか海外との比較等も含めて、検討を進めたほうがよいというニュアンスのことを、例えばこの検討会の最後の報告に加えていただくことをお願いできたらと思います。

 その上で、今回の検討会としては、胸部エックス線と喀痰について、現行どおり維持ということでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 それでは、次に進みたいと思います。

 3番目は「腹囲の検査」でありますが、御意見、御質問がありましたら、お願いしたいと思います。

○福田委員 先ほど、労働衛生管理官の方から御説明いただいたのですが、腹囲は絶対条件ではなくなってリスクの一つに格下げになった、そんなことでよろしいでしょうか。

○瀧村労働衛生管理官 健康局の検討会では、特定保健指導の対象者を選定する場合に、リスクファクターで選定をする。その上で、腹囲の結果で内容を変えていってはどうかという提案がされております。

○福田委員 もうちょっと教えていただきたいのですけれども、その保健指導の内容が腹囲によって変わってくるのですか。

○瀧村労働衛生管理官 はい、そうです。

○福田委員 具体的にはどんなイメージなのでしょう。

○瀧村労働衛生管理官 具体的には、肥満に対する指導と、それ以外の例えば喫煙に関する指導とか、そういった分け方をするという結論だったかと思います。非肥満者の指導としては、リスクファクターは喫煙というファクターが出てきているので、それに対する指導も考えられるだろうということでした。

○福田委員 実際に手前どもだと、特定保健指導を年間5,000人ぐらい診ているのですけれども、今回の見直しで、その保健指導の内容が腹囲によって変わるのでしょうか。それとも、保健指導の内容そのものは現行どおりでも構わないのでしょうか。

○瀧村労働衛生管理官 保健指導の内容そのものについては、まだ検討会では検討されていないと思います。

○山口(直)座長 先ほど説明してくださった資料1では、非肥満者向けの指導法を検討するとどこかに書いてあった記憶がありますが、ちょっとどこかは忘れてしまいましたけれども。その辺も引き続き情報収集していただくということでお願いしたいと思います。

 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ。

○土肥委員 この中で、腹囲の測定については、基本的には動脈硬化性疾患のリスクの保健指導をする際に、まずは肥満から保健指導するのか、それ以外の要素について保健指導するのか分けるのに有効であるというのが結論だと思います。

 そういう意味では、3ページの腹囲検査の最後のところに書かれている文章がちょっと気になるのですが、「これらから、定期健康診断においては、腹囲は、他の指標とあわせて、心血管病防止のための就業上の措置」というのは、就業上というのは保健指導を指しているという理解でよろしいのでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 それだけではなくて、2ページ目の最初のほうになりますが、現行ではメタボリックシンドロームの定義は変わっておりません。少なくとも高血圧ガイドラインの中では、メタボ自体は心血管病の因子であって、メタボリックシンドロームの定義の中でウエスト周囲径があって、それプラス血圧、血糖、脂質のうち2項目が一定基準ということになっていますので、あくまでも今回の特定保健指導のやり方の変更の検討はあったとしても、現行ではメタボリックシンドローム、この高血圧ガイドラインの変更とはなっておりません。現状では、ほかの要因と一緒に、少なくとも心血管病の危険因子の一つであるということから、その観点からの就業上の措置とともに努力義務としての保健指導が事後措置ということは、現行の特定健康診査の検討があっても変わってないものと考えております。

○土肥委員 今までの特定健診側のデータを見ていると、腹囲はほぼ関係なくて、逆に言うと、高血圧、高脂血症、糖尿病の指標がはっきりとリスクファクターと言っているのに近いわけですから、腹囲を含めて、就業上の措置に関係していくというのは、逆に言うと今は変えて、リスクファクターの保健指導の対象者を上手に選定するための一つの指標として活用していくというのが合理的な気がするのですけれども、書きぶりの問題だけかもしれませんし、我々の認識の違いということになるのかもしれませんが、腹囲をやはり就業上の措置に活用していくという流れは、現場の産業医にとっては非常に理論的に流れがつくりづらいものですから、そういう表現ではないほうがいいのかなと思ったというだけでございます。

○塚本産業保健支援室長 特に、ここは従前からも議論がありましたが、腹囲だけでなくて他のファクターも含めて、つまり腹囲が悪いからだけではなくて、腹囲も所見があり、ほかにも所見あり、総合的に見るとリスクが高いですからという形の使い方というのは、引き続き現行と変わらないのではないかなと考えております。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 山口委員、どうぞ。

○山口(健)委員 山口です。

 先ほど、腹囲の簡易な測定方法についてプライバシー云々の御説明もあったのですけれども、現実問題、やはり息をとめてしまう人が多くおられると思います。腹囲の測定について、どういう実態で実施されているかというのは診療所それぞれだと思うのですけれども、一声かけるだけでそういうことをやめる人も多いと思います。健康診断として腹囲の測定を維持するのであれば、意図的にそういうことができてしまうということを踏まえた上で測定すべきだと思います。プライバシーには配慮しつつということではなく、あくまでも健康リスクを事前に潰すという趣旨で考えれば、自分のためにもそこは素直に測定を受けて欲しいということだと思います。ぜひそういうことにつながるような測定方法をしっかりと維持していくことが大事だと思いますので、発言だけさせていただきます。

○山口(直)座長 事務局からはよろしいでしょうか。

 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ。

○岡田委員 私はもともとウエスト・ヒップ比とインシュリンの感受性をずっと大学院で研究していたのですけれども、会社に入ってから全員にウエスト・ヒップ比をはかっていたのですけれども、なかなか測定が難しいという状況があって、いろいろウエスト、ヒップ、BMI等検討しましたら、40歳まではウエスト・ヒップ比と有所見率は相関するのですが、40歳以上はウエストと有所見率が相関しなくなって、BMIのほうの相関率が高くなってしまったのですね。だから、40歳以上は要らないと思って廃止したら、法律で決まって、また入れたのですけれども、本来40歳以上の方は、ウエストとラインのああいう変化というよりは、むしろ体重そのものがリスクになっているので、若い人たちは確かにウエストとヒップの比とか、ウエストの値が有所見率と相関がありましたので、ちょっと言い過ぎかもわかりませんが、腹囲というのは医師の判断でもいいのかなと思っているのですけれども、いかがでしょうか。

○山口(直)座長 ただいまの岡田委員の御意見について、何かございますでしょうか。

○福田委員 実際に腹囲をはからせていただいている健診機関の代表としては、先ほどの山口委員と岡田委員からありましたけれども、うちは原則全部へそを出して、男性がはかるより女性がはかったほうがいいので、それからはかり方もコツがあるのですね。ちょっと話をしながらふっとはかるとか。ですから、それは各健診機関でいろいろやっていると思います。

 それから、岡田先生がおっしゃったウエストとヒップの比のところですけれども、これについては、私は残念ながら余り知識がないものですから、ただ、全体の流れでいって、やはりウエストというのは内臓脂肪を反映するのは確かだと思います。ウエストが必須項目でなくなって、他のリスクファクターの一つになったということですから、少し格下げにはなったと思うのですね。現行のままでよろしいのではないかと考えます。

 以上です。

○山口(直)座長 土肥先生。

○土肥委員 健康診断そのものは、法律に基づいて国が実施するというものではございますが、対象者のためのものでもあるという視点が大事だと思うのですね。そういう意味では、理論的には、私は、腹囲が定期健康診断の中に入る必要性は低いと思ってはおりますが、対象者から見れば、特定健診に関する法律で腹囲を求められて、定期健康診断で腹囲を求めないといったところで、実際に事業者と対象者の間で、一方はするしないということが起こるのは非常に不合理だと。したがって、対象者の目から見れば、定期健康診断というのは、ある一定の方向性を持って一致していることが適当だと考えるので、腹囲については賛成するという立場でございます。そういう視点も大事ではないかなと思います。

○山口(直)座長 岡田委員、今の御意見でよろしいですか。

○岡田委員 私は別に腹囲の測定を否定しているものではありませんので。

○山口(直)座長 それでは、腹囲につきましても、現行の健診項目として維持という論点案でよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○山口(直)座長 続きまして、「身長、体重、視力、聴力の検査」に進みたいと思います。これにつきましても現行どおりという論点案でありますが、御意見あるいは御質問がありましたら、お願いいたします。いかがでしょうか。

○福田委員 全く関係ないかもしれませんが、ちょっとよろしいですか。

 昔、小学校のころに座高をはからされていたのですけれども、今は座高というのはやっているのですか。学校保健局か、よくわかりませんが。

○道永委員 それは私が答えられます。

 学校保健担当で、ことしから健康診断マニュアルが変わりました。座高は省略してよろしいということで省略しています。

○福田委員 座高は一体何を見たかったのですか。

○道永委員 すごくいろいろな歴史があるのですが、昔は体格、体の長さがいいほうが、要するに戦争などで強い、そういうイメージもあったらしいです。

○福田委員 胴長のほうがいい。今と逆ですね。

○道永委員 そうです。

○福田委員 余計なことをどうも済みません。

○山口(直)座長 どうぞ。

○岡田委員 身長が「必要でないと認めるときは省略可能である」という文言が非常に気になりまして、例えばBMI25になるかどうかという瀬戸際のときに、ちょっと伸ばすと肥満を逃れられるとか、いろいろな問題もあるのですけれども、それは置いて、年とともに身長というのは低くなってきますので、それをもって、やはりBMIを正しく測定するという場合に身長と体重はペアではないかなと思うのですが、毎年はかっていますと、確かに身長というのは、何でこの年で伸びるのかという人もいるわけですけれども、よくわからないのですが、もちろん午前中の健康診断と決めていますから、午後は健康診断は行っておりませんので、はかる測定時間は一緒なのですけれども、やはり身長も毎年毎年微妙に変わってきて、それは受健者、働いている方にとって、前回は同じ体重であるのに肥満と言われたのに今回は肥満と言われなかったとか、零点の差でいろいろ出てくるのですけれども、身長がもし1回はかってずっと一緒というのは若干問題があるので、年齢とともに身長も少し低くなってくることも考慮して、中高年の中年太りなどもチェックする意味で、できたら身長も毎回はかっていただいたほうがいいのかなと私は個人的には思っております。

○山口(直)座長 いかがでしょうか。

 どうぞ。

○土肥委員 この身長、体重、視力、聴力の中では、聴力に関しては、1,000Hzが会話帯で4,000Hzが高音域であるということで測定をされているわけです。高音域が下がってくる疾病としては騒音性難聴があって、騒音性難聴は、騒音に関するガイドライン等で測定を義務づけているということであります。高音域については、年齢によってゆっくりと下がっていくということだけを見ているということになりますので、1,000Hzの検査の方法を通常の会話法であるとか、何か別の方法に置きかえることによって、簡単に言うと、聴力は一般健康診断から別の方法で代替してしまうということも理論的には可能ではないかなという意見を持っているのですが、いかがでしょうかということです。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 いかがでしょうか。

 森先生。

○森委員 今のご発言はあえて論点を出されたと認識しているのですが、騒音の健診は実態としてどこまでされているのでしょうか。8時間の許容レベルである85dBを超えたら必ず実施されるといった実態にはなっていません。例えば、パチンコ屋さんで騒音性難聴健診をやっているか。パチンコ店で測定するとおそらく90dBを超える騒音がありますが、健診が行われているような実態にはなっていないと思います。一般健診における騒音測定の目的は、加齢の変化というものの影響だけとせず、このような騒音による影響を評価することも考慮したほうがいいのではないかと思います。

○土肥委員 わかりました。

 そういう意味では、そういう状態があるとするのであれば、逆に、ちゃんとオーディオメーターで一定の検査を5年に1回だとか入れていくという方向性が妥当であって、今のまま置いておくことの妥当性とは少し合わない部分を感じるのですが、その点についてはいかがですか。

○森委員 私は、騒音性難聴がほかの健康影響に比べると小さいものだとはとても思えません。騒音性難聴は不可逆性の影響なので本来もっと重視しなければならない。一方で、例えば有害物の特殊健診を短い時間でも使えば義務づけられていることを考えると、騒音に対してはやはり規制は甘いと個人的に思っています。

 日本には、騒音性難聴と接触性皮膚炎について、本来の発生率がうまく把握できていないという課題があります。余り重要性が認識されていないまま、ここまで来ていると思いますが、問題は存在していると考えています。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 先ほど、岡田委員から身長はずっとはかったほうがいいのではないかという御意見もありましたが、それにつきましては、はかってはいけないということではないのですよね。やはり医師による省略が可能ということですので、普通何か省略せずにはかっているところが多いような気がしますけれども、それはどうですか。

○福田委員 実際には、乗っていただくと自動的におりてきて、体重と身長と体脂肪率が出てしまうものですから、省いている機関はないのではないかと思います。

 それから、先ほどの騒音性難聴のところについては、特殊健康診断等の絡み、騒音環境ですよね。ですから、少し広い視点からも御議論をまた願って、私は現行でお示ししていただいたものでよろしいかと考えております。

○山口(直)座長 ほかによろしいでしょうか。

 論点案で、現行の健診項目を維持してはどうかということですが、それについて御了解いただけますでしょうか。

(「はい」と声あり)

○山口(直)座長 では、次に進みたいと思います。

 5番目、「既往歴及び業務歴の調査」について、御意見、御質問がありましたらお願いしたいと思います。

 土肥先生、どうぞ。

○土肥委員 既往歴、業務歴の調査の中で、やはり既往歴という言葉の表現されるものが一般的な既往歴、現病歴という医学的に使われている用語と違っているので、これは何らかの整理があったほうがよろしいかなと。それは、これから病気と就業の両立支援を考えたときに、御本人が正しくいろいろな疾病を申し出るということに基づいて行われていくことが多いわけでございますから、やはり現病歴をきちんと聞いていくとう姿勢を明確に出すほうがよろしいかなと考えます。

○山口(直)座長 いかがでしょうか。既往歴及び現病歴という感じですか。

○土肥委員 はっきり言ったほうがいいのではないか。

○山口(直)座長 という御意見ですが、表現の仕方は事務局で考えていただくとして、そんなことを検討していただくということでよろしいでしょうか。

○塚本産業保健支援室長 はい。

○山口(直)座長 砂原委員、どうぞ。

○砂原委員 家族の病歴等についてなのですけれども、医学的には有用であるということはよくわかるのですけれども、個人情報でもありますので、その扱いについては、十分な配慮が必要ではないかと考えております。今後、家族の病歴等が問診に盛り込むべき項目として妥当なのか否かという議論も必要ではないかと感じました。

 以上です。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 家族歴については。

○塚本産業保健支援室長 この部分につきましては、資料1の10ページ目と11ページ目、これは私どもの「一般健康診断ハンドブック」で示させていただいているものです。

 ここに「(5)生活状況に関する調査(参考)」と、右のほうに「(6)家族歴に関する調査(参考)」とありますように、ここの部分については、あくまでも任意の、個々の事業場に応じて御判断いただき、実施するというものですので、現行の法定の健康診断の中では、この2つの部分についてはあくまでも任意であるという位置づけです。

○山口(直)座長 よろしいでしょうか。

 特定健康診査のほうで、服薬歴と喫煙歴ということがありますが、これは先ほどの資料1ですと、平成20年の基発で御協力願いたいとなっているということですが、この辺についても、もしも御意見がありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

 私は、業務上の配慮にもかかわるので、服薬歴についてはきちっと聴取をしたほうがいいのではないかなと個人的には意見を持っていますが、いかがでしょうか。

 道永委員、どうぞ。

○道永委員 服薬歴と喫煙歴というのは特出しで、必ず聞くというふうにしていただければと思います。先ほど、胸部エックス線で、いろいろと結核というのが出ていますけれども、内服のお薬で生物製剤だとかステロイドをずっと飲んでいる方というのはすごく危険なのですね。そのためにも、とても必要だと思っています。

○山口(直)座長 やはり喫煙歴もきちんととるべしということですよね。

 ということですが、いかがでしょうか。

 岡田委員。

○岡田委員 服薬については絶対に必要で、例えば震災があったときに従業員を派遣するのですけれども、どんな薬を飲んでいるかというのを把握していないと、就業上の措置や長期に派遣ができないわけです。特に、現地で薬がなくなるとかということもありますので、抗がん剤とかステロイドとか、そういうお薬を飲んでいる場合には派遣を取りやめないといけないということもありまして、それは会社として、産業医として、服薬がきちっと管理できていないと、現地でまた労働災害が起こる可能性が危惧されますので、そこは私も全員が現在、服用中の薬があれば持参するようにということで、産業医はそれを診察中にチェックをして記録する。もしくは薬剤師がおりますので、薬剤師がそれをチェックするという形で、一応情報入力するという形にしております。これはぜひとも必要であろうと思います。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかはいかがでしょうか。

 土肥先生。

○土肥委員 服薬歴については聴取するということは重要だと思っているのですが、当然知られたくない服薬歴を持っておられる方も、知られたくないという意味は、例えば御本人はメンタルヘルス上の問題で薬を飲んでいるのだけれども、そういうことは知られたくないとか、そういう場合がございますので、どのような書きぶりにするかをよく考えないと、先ほどの個人のプライバシーとの関係において、病歴もそうなのですけれども、全てを知らなければならないという前提ではないという部分で考えられたほうがいいのかなと思います。

○岡田委員 服薬については、やはりきちっと調べておかないと、御本人がこの病気ですといって出してきた薬が、メンタルの場合は全く違う薬を出してくるのです。この場合は、産業医は正しい判断が本人の申告だけでできない場合がありますので、明らかに私は睡眠障害ですと言っていたら、統合失調症の薬を大量に飲んでいることがありまして、主治医の先生は睡眠障害と言っています。「別名は何ですか」と言ったら、「統合失調症です」と。関係会社の場合はいろいろ方がいらっしゃって、そこのリテラシーの問題もあろうかと思うのですけれども、その方たちをどのようなところに配置するかということも含めて、やはり医師である限りは、薬物の副作用も含めて就業上の措置を講じないといけないので、その薬をもって事業主に報告することはなくて、就業上の配慮という形で措置をすればいいのであって、プライバシーは絶対守るというようなスタンスを保てば、これは大丈夫ではないかと思っております。

○土肥委員 先生のおっしゃるとおりの部分はたくさんあると思うのですが、全ての薬を把握するということの難しさと、今の定期健康診断の事業主と産業医と本人の情報の共有の仕方という根幹的な部分から考えてそういうことを考えていかないと、今の法律の枠組みで、単純に全ての病気を言いなさい、薬は全部言いなさいというのは、個人情報の保護上、ちょっと気にかかるかなと思います。もちろんそういう方向性があるべきだとは思うのですが、今の法律の枠組みだと、少しプライバシーの保護について問題が出てくる可能性を持っていると思います。

○山口(直)座長 森先生。

○森委員 私も土肥先生の御意見に賛成なのですが、岡田先生のおっしゃっていることも確かにと思います。実態としては、自己申告なので正しく聞けないということですが、一方で、就業配慮するときは、恐らく何も面接もせずに就業制限をかけるということはできないでしょうから、健診後にもう一度面接を行って、しっかりと関係を築きながら話を聞くことが必要で、そうすれば詳しく薬の内容も聞けることになるのではないかと思います。一般健康診断の後に事後措置があることを前提に、服薬に関しては、一般健康診断においては、自由意思で答える項目として位置付けることが現実的ではないかと思います。

○山口(直)座長 では、事務局からお願いします。

○塚本産業保健支援室長 先ほどの個人情報の取り扱いのところですが、これは検討会の後半で御議論いただきたいと考えております。例えばですが、事業主の方が就業上の措置を講ずるために知るべきところと、それ以外の生のデータ等については、例えば医療関係者に限定するとか、社内の特定の産業保健スタッフに限定するとか、例えば現行の個人票の裏面は事業者だけ、表面は、というようないろいろの工夫の余地はあると思いますが、これらのご検討と併せてもう一度御議論いただくということは必要ではないかと思います。ただ、方向性としましては、両立支援等をやっていくに際しては、なるべく正しく労働者の方の疾病の把握すれば、それに対してのアクションがより正確になっていく一方で、現行では個人票が全て事業者の方に伝わるような体系になっておりますので、その辺を十分に検討しながら、今回御議論いただいた部分についてもあわせて検討し、最終的な結論をいただければと考えております。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 今のような計画でよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○山口(直)座長 そうしましたら、業務歴及び既往歴のところにつきましては、ちょっと名称を考えていただくということと、今お話がありましたプライバシーの保護との関連をどのように整理するかということについて、事務局にお願いしまして、健診項目としては現行どおりということで進めたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(委員首肯)

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 続きまして、6番目、「自覚症状及び他覚症状の検査」につきまして、御意見、御質問がありましたらお願いしたいと思います。

 いかがでしょうか。

 宮本委員、お願いします。

○宮本委員 余り本質的なところではないのですけれども、最近は特殊健診とかでいろいろと項目が出てくると、「自覚症状及び他覚所見」となっているのですが、他覚症状という言い方があちこちに出てくるのですけれども、これはどこかで用語が変わったのか。他覚だと所見ではないかなと思うのですが、文言だけの問題なのかもしれませんが、ちょっと御確認いただければと思います。

○塚本産業保健支援室長 これは、ちょっと私どもで検討させていただければと思います。よろしくお願いいたします。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 最後に「どうあるべきか」という問いかけで論点案が終わっているのですけれども、この辺についても御意見がありましたらお願いいたします。

 はい、岡田先生。

○岡田委員 ここの6ページ目の最後の文章、(一般健康診断ハンドブック 労働省労働衛生課編」というのが一番最後に「自覚症状及び他覚症状の有無の検査」とありますけれども、以前ちょっと議論になったことなのですけれども、視診、打聴診、触診というのが一般的に通常の定期健康診断でこれは全て行っているかというところに関しては極めて疑問があって、この書きぶりですと、要は、既往歴、業務歴、生活状況、家族歴、自覚症状調査、さらに職場巡視、作業環境測定の結果などを照合した上で、異常がある人は視診、打聴診、触診を行うという解釈でよろしいのでしょうか。要するに、医師として、視診はできるのですけれども、いわゆる打聴診、触診というのは、一般的には異常がない人はしなくてもいいという解釈なのでしょうか。実は、産業医の会で某先生が、これはそういう意味だと主張されて、私は聴診器を持たずにやるのだということをおっしゃっておられたのですけれども、その辺の見解でありますけれども、ちょっとお聞かせいただきたいのですが。

○塚本産業保健支援室長 この部分については、あくまで通達のほうでは医師が選定をして行う。先ほどの資料の最後に書いていますのは、望ましいやり方として生活状況とか家族歴を任意で入手し、それも含めて実施する旨の記載になっています。

 あと、具体的な視診、打診、聴診、触診につきましては、資料1の14ページ目からですが、これを見ますと、こういう場合にはこういうことをやったほうがいいよ的なことがいろいろと掲げられているかと思います。

 あともう一つ、ここでの役割ですが、例えば、化学物質を扱う場合で特殊健康診断の項目になっているものについては項目が定められておりますが、そうでないものについては、例えばある程度、MSDS等を見ながら、こういう症状が出る可能性が高い。これらを念頭にして、視診、打診、聴診等を行っていただくということも期待されます。これらも平成元年当時のものになりますので、現下の状況からするとどうだというところを打ち出していただくということは必要ではないかなとは考えております。

○岡田委員 全衛連さんのほうはどうされておられるのですか。一般の中小企業さんの健康診断のときに、聴打診とかいうのは一般的にやっておられるのでしょうか。

○福田委員 医師なし健診は健診ではないので、全例診察はしております。

○岡田委員 ありがとうございます。

 私どもは、僧帽弁逸脱症とか、そんな雑音が時々聞こえるので、結果として心臓超音波で僧帽弁の逸脱がちょっと見つかった年がたくさんあったもので、やはり聴診というのは雑音を診る上では極めて重要だと思っておりましたので。

○武田労働衛生課長 事務局のほうからの補足でありますけれども、おっしゃるとおり、本質論ではないのですけれども、文言的に、例えば今、岡田先生のほうから御指摘があった「照合しつつ」などは、これは第一段階としてそれでやってその後にというのが必ずしも読めない場合もございますし、やりながらとか、それを合わせて行いながらという理解もできると。ただ、全般的に、何を意図しているのか非常に文言的にわかりづらいというところがございます。今回はまたこういう形で御意見をいただきましたので、どういうものが基本的な構造として現場にお示ししていくことが必要なのかということも考えて参りたいと思っております。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 そうしましたら、最初に宮本委員からの名称についての指摘がございました。

 それから、具体的な方法について、どの辺まで書き込めるかというのもありますが、その辺について、事務局のほうで整理をしていただくということでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○山口(直)座長 それでは、7番目の「血中脂質検査」について御意見、御質問がありましたら、お願いしたいと思います。

 道永先生、どうぞ。

○道永委員 それでは、日本医師会からの資料を2つ出していますけれども、「日本医師会臨床検査精度管理調査結果報告書 測定試薬別分布図の推移」ということで、この資料を御用意いただければと思います。日本医師会の見解ということでお話しさせていただきます。

 まず、3点ございます。まず、この特定健診スタート時に、総コレステロールが除外されました。それで非常に現場が混乱したという事実がございます。あと、現在善玉コレステロール、悪玉コレステロールという考え方が国民に普及しているのが現実だと思っております。先ほどから、この案の中に載っておりますが、LDLコレステロール直接法も今は精度が上がり、試薬を選べば問題ないということを踏まえ、LDLコレステロールは残していただきたいと思っております。

 ここで資料をごらんいただきたいのですが、毎年臨床検査精度管理調査を実施しております。今年度が50回目です。参加施設は約3,200施設、検査項目は合わせまして49項目となっています。

 本日の提出資料は、平成20年度から27年度までのLDLコレステロールの測定試薬別の分布図の推移となっています。

 まず、1ページの下をごらんいただきたいと思います。これが平成20年度の結果です。ごらんのようにかなりばらついていることがわかります。

 右下5ページをごらんいただきたいと思います。上の図が平成27年度ですが、結果としては非常に集約していることがおわかりになると思います。これはその下からの高濃度の資料についても同様のことが言えます。

 従って、LDLコレステロール直接法も精度が上がっているので、試薬を選べば問題ないことが言えます。このことから、脂質検査は現行どおりでよろしいと日本医師会は考えております。

 以上です。

○山口(直)座長 道永先生、ありがとうございました。

 ほかにはいかがでしょうか。

 柳澤先生、お願いします。

○柳澤委員 一つお聞きしたいのですけれども、このデータは空腹時の中性脂肪と食後の中性脂肪の両方を含めてはかっているのですか。

○道永委員 全て含んでいると思います。そこまで個別のものはないので。

○柳澤委員 例えば、中性脂肪が200未満、あるいは200400未満、400以上、とランク分けして測定したというデータはないのでしょうか。というのは、これらのデータを一緒くたに処理すると相殺される可能性があるので。

○道永委員 それは多分データがあるので、まとめることはできると思いますので、それはちょっと宿題として持っていきたいです。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

○柳澤委員 あともう一つは、学会がnonHDLを使用するということでガイドラインをまとめています。それで、特定保健指導のほうが、学会のガイドラインに沿って項目の見直しをするということで今、進んでいるのだと思います。にも関わらず、一班健康診断のほうでは、今までと同様にLDLだけで評価するとしたときに、その整合性は取れないのではないかと思います。皆さんに御意見をお聞きしたいと思います。

○山口(直)座長 土肥先生、お願いします。

○土肥委員 脂質検査につきましては、これから学会基準が出てきて、指針が出てくるわけですね。ただ、まず1点目としては、実際にその指針が多くの臨床家に浸透するまでには時間がかかるという点がございます。実際に今、nonHDLだと言っていますけれども、それが本当に浸透するまでにガイドラインというのは時間がかかるというのが1点ございます。

 そういう意味で、私は、今回の改正において、総コレステロールとLDLHDLを一定期間はかって、その後合わせていくという方向性を持たないと、逆に、対象者の目から見ると、前回はいきなり減らされた、今回いきなり変わるということになります。そうすると、対象者にとってはわかりやすい健康診断であるということが重要なので、項目をふやすこと自体は比較的簡単なのですが、減らすときには、やはりきちんと考えて、段階的に施策をやっていかないと対象者が混乱するということが起こると思います。

 そういう意味では、最終的には、学会の指針に合わせるのがリスク上の管理からも妥当だと思うのですが、一定期間LDLを置くことには賛成いたしますというのが私の意見です。

○山口(直)座長 ほかにはいかがでしょうか。

 はい。

○宮本委員 今の土肥委員の話にちょっと反論なのですけれども、これは項目としてはLDLは残しておくと読めるのですけれども。ただ求め方が実測を止めて、フリードワルド式で出すか、もしくはnonHDLで代用して+30を基準にするというふうに読めるのですが、健診項目としてはLDLを残しておくという理解でよろしいのですか。

○福田委員 これは廃止と7ページに書いてありますよ。

○宮本委員 直接法を廃止するのだけれども、LDLという項目をとっておいて、その出し方がフリードワルドという意味ではないのですか。私はそう見たのですが。

○山口(直)座長 事務局、どうぞ。

○塚本産業保健支援室長 メタボリックシンドロームの場合は、脂質値はトリグリセライドとHDLです。ただ、私どもの方は、資料にもあります脳・心臓疾患のリスク評価、高血圧ガイドライン等では、低HDL、高LDL、高トリグリセライドとなっておりますので、もし、このままこれを活用するならば、HDLLDLもトリグリセライドもとっていきます。ただし、学会の指針の中では、そのHDLのほうが式で出す。式が使えないときは、従前は直接法が有用とされていましたが、これが最新の動脈硬化学会のガイドラインでは、nonHDLを出して、先ほどの値はLDL30に近いから引いて出すようなことが示されています。もし、この脳・心臓疾患のリスクの評価を行うとするならば、従前どおりHDLLDLとトリグリセライドはとっていく。ただ、LDLを計算式でというのが一つの方法ではないかと思います。

○山口(直)座長 いかがでしょうか。

 はい。

○土肥委員 結局、測定する項目としては何だという理解をしたらいいのか、いまだにぴんと来なかったのですが。

○塚本産業保健支援室長 一つの案としては、資料1の21ページ目を見ていただければ思います。表2の下のほうの「3)脂質代謝異常」は低HDLと高LDLと高トリグリセライドの3つです。この3つの中の、例えばLDLコレステロールのほうはどうやって判定するのかというのが23ページの同じ学会のガイドラインです。下のほうに書いていますが、空腹時でLDLコレステロールはフリードワルド式で計算します。TG400超えとか、食後採血の場合にはnonHDL-Cを出して、基準はLDL30とする。

 もし引き続き、先ほどの脳・心臓疾患のリスク評価の方法で行うとするならば、3つを引き続きとっていく。ただ、そのとるための数値としては、総コレステロールがないとnonHDLも出せませんし、フリードワルド式でLDLも出せませんということになります。もし、このとおりでいくならば、個人票あたりにはLDLHDL、中性脂肪が書いてあって、さらに生データの総コレステロールがあって、多分さらに再現性という意味でいくならば、これは随時でとったか、空腹時でとったかというところのデータで初めて数値が出せます。次年度でも確認できるようなものになるのではないかと考えております。

○山口(直)座長 はい、土肥先生。

○土肥委員 できるだけ定期健康診断の項目はシンプルにつくったほうがいいのかなと思うのですね。例えば、空腹ではないから、では直接法のLDLをとる、トリグリが高ければLDLは計算されないという人が出てくるという意味でよろしいのですか。

○塚本産業保健支援室長 いいえ。これは現行の学会で示されている方法でいくと、空腹時でとれなければ、もうこれはnonHDLで、nonHDLを出して、それはLDL30とほぼ同じなので、nonHDLを引いて30を引けばLDLというような関係になっています。ただ、平成19年のときには、空腹時とか、トリグリセライドが高いときは直接法が有用であるとされていました。どちらかというと、空腹時の採血が行われていない場合もたくさんあるというところで、直接法がかなり前面に出たとお聞きしております。

○山口(直)座長 今までの議論をちょっと復習していたのですけれども、前々回のこの特定健診・特定保健指導のほうの資料で、文献レビューの結果、予測能というエビデンスを比較した論文で、nonHDLの予測能のほうがLDLよりすぐれているという論文が21件、両者差がないという論文が14件、LDLのほうがすぐれているという論文はなかったというエビデンスが提示されていたと思うのですね。ですから、私ども、この1点から、エビデンスという観点から、総コレステロールに戻したほうがよろしいのではないかなと考えましたが、いかがでしょうか。

 はい。

○岡田委員 私ども、LDLの導入のときには、測定値がまだ不安定であるということで、ずっとTCをはかっているのですね。当時、健診機関さんにお聞きしたら、精度管理から言うとTCHDLTGはかなり確かである、LDLは非常に不安定であるということから、今、導入して、先ほども御指摘がありましたように中性脂肪は1,000を超えますと、LDL30とか40と、極端な異常値が出てきまして、3040出てくると低LDLコレステロール血症になりまして、今度は高血圧管理を厳しくしなければいけないと、サーキュレーションの論文等がありますので、その事実を突きつけられると非常に怖いもので、やはりTCというのはきちっとはかっておかないとということで、従業員の健康診断の経年変化には全て総コレステロールをずっと実測値で今、渡しております。それのほうが、見ていますと、非常に安定感があって、HDLもそこそこ、たばこであるとか運動とか、肥満度に応じて変化していますので、やはりこのTCHDLTGはきちんとこれからも見ておいて、LDLは先ほど土肥先生がおっしゃったように参考値とするかどうかというのは、しばらく決めていただいたら、切りかえるのであれば、そこで切りかえてもらったほうが楽かなと。企業としても、データ管理をたくさん持つというのは大変なことなので、何万人のデータを何十年もずっと持っていますので、今後もまたふえる、減るということになりますと、システム変更だけでもちょっと大変なもので、できたらここはきちっと決めていただいて、今後の将来的なビジョンも含めて、御検討いただいたらありがたいと思います。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 最初に道永委員から御説明いただいたように、多分、日本の検査機関は臨床検査の手法としてLDL直接法を非常にブラッシュアップしてくださったという経緯があると思うのですね。ですから、検査精度の問題でLDLはよくありませんという整理の仕方は、私は余り賛成ではありません。そうではなくて、やはり予測能という意味でどうかということですよね。脳心血管のリスクをやはりきちっと管理するというのがこの辺の一番の目的になりますので、そういう意味で、この論点案でいってはどうか。さらに、高血圧学会のガイドラインにLDLというのも取り上げられていますので、それについてはフリードワルドできちっと対応するということでいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、また最後に総まとめがございますけれども、きょうの時点ではそういうことで整理をさせていただけたらと思います。

 それでは、7番まで行きましたので、本日の検討課題は以上ですが、「その他」としまして、道永委員からクレアチニンについての情報提供がございます。

 お願いいたします。

○道永委員 前回出席できなかったので、クレアチニンについて、やはり日本医師会の見解をお話しさせていただきたいと思います。

 もう一つの資料をごらんください。

 議事録を拝見させていただきました。尿たんぱく検査については、当日配付された資料2の論点案の案2、案3で、案2の意見が少し多かったように理解しておりました。ここで、クレアチニンの必要性について意見を述べさせていただきます。

 下にページが振ってありますので、3ページ、参考資料というところをごらんください。

 既に御承知のことと思いますが、昨年7月に、医療界、経済界、医療保険者等によって、民間主導で健康寿命の延伸を目指し、「日本健康会議」が発足しております。

 4ページ目をあけていただきたいと思います。こちらに実行委員の名簿がございますが、経済界の方々もメンバーに入っておられます。

 次に、5ページをごらんください。この会議ですが、「健康なまち・職場づくり宣言2020」を公表し、その中には生活習慣病の重症化予防への取り組みが明記されております。

 ここで9ページに飛んでいただければと思います。本年3月24日、日本医師会、日本糖尿病対策推進会議、厚生労働省の三者が、糖尿病性腎症重症化予防に係る連携協定を締結いたしました。詳しい内容については、後でごらんください。

CKDは、進行すると患者本人のQOLを著しく低下させるのみならず、将来の医療費へも強く影響します。

 ここで、また13ページにいっていただきたいと思います。ハイリスク者への補足等、適切な医療介入があれば、透析患者を10%減少させると計算されております。そうしますと、将来的には5年間で460億円規模の医療費節減効果も期待できます。将来を見据え、国を挙げて糖尿病性腎症重症化予防に取り組もうとしている中で、血清クレアチニン検査を導入することは時代の要請であると考えております。ぜひとも必須項目として入れていただければと思っています。

 次に、14ページにありますが、御存じのとおり、血清クレアチニンを測定することによって、その年齢、性別から腎臓の働き(GFR推算値)をネットで簡単に算出できます。この表に載っておりますけれども、原疾患・GFR区分・尿たんぱく区分によって、CKDの重症度や脳・心血管疾患発症のリスクがわかるようになっております。保健指導などの事後措置、健康教育にも活用でき、予防に役立つと考えております。

 また6ページに戻っていただきたいと思います。同じく「健康なまち・職場づくり宣言2020」に基づき、経産省と厚労省が連携しながら、健康投資、健康経営の促進を図っていきます。大企業、中小企業それぞれに評価基準を設け、「健康経営銘柄」については既に実施されております。また、健康経営有料法人認定制度も今後、実践に移行する予定とされております。労働者の健康を守ることは企業経営の健全性の向上にも資するものであり、健康に対する投資という観点からも、クレアチニン検査は導入していただければと思っております。

 以上です。ありがとうございました。

○山口(直)座長 ありがとうございました。

 尿たんぱくも含めて腎機能につきましては、次回の検討課題ということですので、またその場で御議論いただけたらと思います。

 その他、委員の皆様から御意見等ございますでしょうか。

 どうぞ。

○砂原委員 全般を通じての話なのですけれども、健診項目の見直しにあたっては、十分なエビデンス、従来の健診項目との代替可能性、事業主の負担可能なコストや期待できる効果などを踏まえて、また、小規模事業所まで対象とした罰則規定を科される定期健康診断項目に追加して運用していけるのかといった運用面も十分に加味して、御検討いただきたく存じます。

 脳・心臓血管疾患の生活習慣病の予防、増悪防止はすごく大切なことだと思います。今、道永先生がおっしゃったとおり、そういうものを国民的課題として認識し、対処していくことの重要性は論を俟ちません。一方で、いたずらに健診項目をふやすということではなく、労働者本人の行動変容の喚起とか、そういう自覚もやはり必要な要素があるのではと感じております。私生活に関与するという部分に配慮する一方で、そういう点も加味した議論を行い、事業者の安定配慮義務をいたずらに広げるということにならないような配慮をいただきたく、よろしくお願い申し上げます。

 基本的に、我々企業は医療機関ではございませんし、健診項目の拡大というのは、産業保健と医療の境界というところを見にくくする部分もあるのかもしれません。貴重な経営資源の無駄遣いにならないよう、きちんとその辺を整理していければと思っております。

 最後に、先ほどちょっとお話もしましたけれども、諸外国においてこのような定期健康診断的なもので事業主に課せられているものはどういうものがあって、日本と比較してどうなのかというのをぜひ御提示していただくようお願いいたします。

 以上です。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかには。

 では、柳澤先生、その次に森先生。

○柳澤委員 ただいまの道永委員の御発言なのですけれども、前回クレアチニンのことが議論になりまして、私自身もいろいろと調べてみたのですけれども、日本のデータで糖尿病に特化した場合に、GFR60以下の場合、尿たんぱく陰性が約11%あるのですね。あと海外の文献では、2015年に、今日はその文献を持ってきておりません、GFR60以下で尿たんぱく陰性が糖尿病の場合には3050%あるという報告がきちんと出ています。ですから、そういうことも次回いろいろ考えていただいて、議論いただければと思います。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 森先生。

○森委員 今あった海外の情報を集めるときに、恐らく健診項目だけ集めても、やり方が全然違うので余り意味がないものになるのではないかと思います。私が見学したことがある、例えばオランダとかベルギーの健康診断は、医師が1人15分とか20分かけて個別に問診して、それぞれの労働者の健康障害要因への曝露状況やその他の要因をもとに検査項目を設定して実施するということが行われていました。圧倒的にコスト高の健診をやっています。そのような健診方法と日本の健診方法を、項目だけで比較しても、実態は分からないことになります。そういったことまで含めないと、比較しても余り良い情報が得られないのではないかと思います。産業保健制度そのものが随分違っているということもあるので、その辺は慎重に比較しないといけないかなと思います。

○山口(直)座長 ありがとうございます。

 ほかはよろしいでしょうか。

 御議論ありがとうございました。最後に事務局から今後についてお願いしたいと思います。

○小林中央じん肺診査医 本日は熱心な御議論をありがとうございました。

 次回日程は、7月28日木曜日14時から17時となっております。正式な開催案内は改めて送付させていただきます。

 また、本日の議事録につきましては、各委員に御確認いただいた上で公開することとさせていただきます。

 本日の検討会はこれで終了します。どうもありがとうございました。


(了)

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