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2016年2月5日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

○日時

平成28年2月5日(金)13:00~


○場所

厚生労働省専用第22会議室


○出席者

出席委員(16名)五十音順

奥 田 晴 宏、 加 藤 総 夫、 金 子 明 寛、 川 上 純 一、
神 田 敏 子、 佐 藤 雄一郎、 鈴 木 邦 彦、 武 田 正 之、
内 藤 幹 彦、 野 田 光 彦、 林   邦 彦、 平 石 秀 幸、
増 井   徹、◎松 井   陽、○松 木 則 夫、 山 田 清 文
(注)◎部会長 ○部会長代理
参考人1名

欠席委員(5名)

木 村   剛、 杉     薫、 平 安 良 雄、 古 川   漸、
村 田 美 穂

行政機関出席者

中 垣 英 明 (医薬・生活衛生局長)
森   和 彦 (大臣官房審議官)
山 田 雅 信 (審査管理課長)
宇 津   忍 (安全対策課長)
俵 木 登美子 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。本日の委員の出欠についてですが、木村委員、杉委員、平安委員、古川委員、村田委員より欠席との御連絡を頂いております。また、野田委員より若干遅れるとの御連絡を頂いております。現在のところ、当部会委員数21名のうち、15名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。

 本日は、審議事項、議題1に関して、日本赤十字社医療センター肝胆膵・移植外科肝移植外科部長の菅原寧彦先生を参考人としてお呼びしております。よろしくお願い申し上げます。以降の議事進行は松井部会長にお願いいたします。

○松井部会長 本日の審議に入ります。まず、事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告をしてください。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日は席上に議事次第、座席表、当部会委員名簿を配布しております。議事次第に記載されている資料1から資料8をあらかじめお送りさせていただいています。この他に資料9「審議品目の薬事分科会における取扱い等の()」、資料10「専門委員リスト」、資料11「競合品目・競合企業リスト」を配布しております。

 本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストを、資料11に基づいて御報告いたします。各品目の競合品目選定理由は次のとおりです。

 1ページでリツキサンです。本品目はABO血液型不適合腎移植・肝移植における、抗体関連型拒絶反応の抑制を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 2ページはイーケプラです。本品目は、他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 3ページはリスパダールです。本品目は小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 4ページはサインバルタです。本品目は慢性腰痛症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。

○松井部会長 事務局からの説明に関して、特段の意見のある方はいますか。よろしいようでしたら、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものといたします。委員からの申出状況について報告してください。

○事務局 

 各委員からの申出状況について御報告いたします。議題1のリツキサン注ですが、退席委員はなし。議決には参加しない委員は武田委員、平石委員。議題2のイーケプラ錠ですが、退席委員はなし。議決には参加しない委員は武田委員、野田委員、平石委員、山田委員です。議題3のリスパダール錠ですが、退席委員はなし。議決には参加しない委員は武田委員、平石委員です。議題4のサインバルタですが、退席委員はなし。議決には参加しない委員は金子委員、川上委員、武田委員、野田委員、平石委員です。以上です。

○松井部会長 今の説明に御意見はありますか。いかがでしょうか。よろしければ、皆さんに御確認を頂いたものとして議題に入ります。本日の議題は審議事項が4議題、報告事項は4議題です。早速、審議事項の議題1に移ります。議題1について機構から説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、医薬品リツキサン注10mg/mLの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について機構より御説明申し上げます。ABO血液型不適合移植は、ドナーからレシピエントに持ち込まれた血液型糖鎖抗原を介した抗原抗体反応により、移植臓器における壊死等が起こり、移植臓器の廃絶に至ります。海外と異なり、日本では脳死移植ドナーが少ないことから、腎移植及び肝移植では生体移植の割合が高く、また生体移植は原則親族間で行われることから、日本では海外に比べてABO血液型不適合移植が多く行われています。本薬は、抗CD20モノクローナル抗体であり、B細胞を傷害することにより、一時的に体内のB細胞を枯渇状態にするため、ABO血液型不適合移植における抗体関連型拒絶反応を抑制すると考えられます。本邦では、2000年頃からABO血液型不適合腎移植で従来行われていた、脾臓摘出に代わる手段として使用され始め、近年では、ABO血液型不適合肝移植にも使用されています。本邦における使用実態を踏まえ、特定非営利活動法人日本移植者協議会より、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に対して要望書が提出され、ABO血液型不適合の腎移植における液性拒絶反応の抑制の効能・効果について、厚生労働省から開発要請が行われました。

 申請者は、国内においてABO血液型不適合腎移植患者を対象とした臨床試験を実施し、また腎移植に次いで国内における生体移植の実施件数が多い肝移植についても、日本肝移植研究会による、本薬の国内使用実態調査の結果、国内外の成書及び公表文献等に基づき、本申請内容に含めることが可能と考え、今般の申請に至りました。なお、本薬は2015年5月25日付けで、ABO血液型不適合腎移植及びABO血液型不適合肝移植における抗体関連型拒絶反応の抑制を予定される効能・効果として、希少疾病用医薬品に指定されています。本品目の専門協議では、本日の配布資料10に示します専門委員を指名いたしました。

 審査の概要です。有効性に関して、報告書12ページの本文中ほど16行目辺りを御覧ください。「腎移植国内試験(PPS)」から始まる段落です。ABO血液型不適合腎移植を対象とした国内臨床試験における抗血液型抗体による抗体関連型拒絶反応の無発現率、腎生着率、生存率は国内公表文献で報告されている成績と同程度であり、また従来ABO血液型不適合腎移植で実施されてきた脾臓摘出を行った場合の成績にも劣らないと考えられました。したがって、ABO血液型不適合腎移植における抗体関連型拒絶反応の抑制に対する本薬の有効性は期待できると考えました。ABO血液型不適合肝移植については、臨床試験の実施可能性なども考慮し、国内使用実態に関する公表文献から、有効性を検討いたしました。報告書13ページの上から3行目を御覧ください。2013年及び2012年国内使用実態調査の結果から、本薬はABO血液型不適合肝移植においても、腎移植国内試験と同程度の有効性を期待できると考えました。

 次に安全性について、報告書14ページを御覧ください。ABO血液型不適合腎移植の国内臨床試験及びABO血液型不適合肝移植の国内使用実態調査で認められた有害事象は、いずれも本薬の既承認の効能・効果において、添付文書で注意喚起されている事象であり、既承認効能・効果と比べ、ABO血液型不適合腎移植及び肝移植において、安全性プロファイルが異なる傾向は認められないと考えました。したがって、腎移植又は肝移植に対して、十分な知識・経験を持つ医師の下で使用されるのであれば、既承認効能・効果に対する使用時に加えて、新たな安全上の問題が生じる可能性は低いと考えました。ただし、臓器移植においては、複数の免疫抑制剤が併用され、過度の免疫抑制状態が続くことから、投与後は慎重に患者の状態を観察し、感染症発現時には速やかに対応するなど、感染症の発現には十分注意する必要があると考えました。

 まとめです。以上のような機構での審査の結果、ABO血液型不適合腎移植及び肝移植における抗体関連型拒絶反応の抑制に対する本薬の有効性は期待でき、安全性は許容可能と考えられたことから、臨床試験が実施されていないABO血液型不適合肝移植については、一定数の症例に係るデータが蓄積されるまでの全症例を対象とした、製造販売後調査に係る承認条件を付した上で、承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。なお、今回追加する効能・効果は、希少疾病用医薬品に指定されているため、当該効能・効果及びその用法・用量について、再審査期間は10年とすることが適当と判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松井部会長 本議題については、菅原参考人に出席を依頼しています。菅原参考人から、本議題について御発言をお願いいたします。

○菅原参考人 ABO血液型不適合腎移植・肝移植ですが、本邦では脳死ドナーというのは非常に少ないものですから、どうしても近親者ドナーからの移植、すなわち生体間移植が割合として非常に多いわけです。一方で血液型適合、若しくは一致のドナーからの臓器の生着率が良いということは古くから知られています。問題はそういう方がいない場合にどうするかということです。生体移植しかほとんどないという状況では、少し生着率が落ちるかもしれないけれども、不適合移植を考えるということがあります。

 その中で、不適合移植での問題点を克服するために、様々の抗凝固療法とか、免疫抑制法などが行われていたわけですが、やはり成績がいまひとつということでした。このリツキサンを移植前に投与することによって、液性免疫拒絶を十分に排除できることが分かっておりますので、ABO血液型不適合移植を適応として使用するということでいいのではないかと思います。

○松井部会長 ありがとうございました。委員の皆さんからの質疑をお願いいたします。

○武田委員 私自身も腎移植は行っております。現在、日本で行われる腎移植は大体年間1,500例前後です。そのうち統計上4割ぐらいが今はABO血液型不適合移植と言われていて、ルーチンの移植になっていますので、是非こういうものを認めていただきたいと思います。

 添付文書()の記載内容について質問があります。申請資料1.8添付文書()の6ページの上から3行目の「効能・効果及びその選定理由」の項の記載です。「なお、ABO血液型不適合移植は主に生体移植として実施されるが、ABO血液型不適合移植の脱感作療法において本薬を用いることにより、抗体関連型拒絶反応の抑制が期待できることから、効能・効果に生体移植を明記する必要はないと考える」と。これは脳死とか、あるいは心臓死での献腎移植でもこういう場合が行われるのですけれども、原理としてちょっと引っかかる所があります。

 申請資料1.8添付文書()の「使用上の注意()及びその設定理由」の項の12ページの8番にアンダーラインが引いてあります。「ABO血液型不適合腎移植・肝移植に用いる場合、本剤の投与量及び投与回数は、患者の病態に応じ適宜調節すること。投与時期については下記を目安とする」と。その次の「ABO血液型不適合腎移植の場合は、原則、移植術2週間前及び1日前に2回点滴静注する」と。これは、あくまでも生体移植を考えたプロトコールで、脳死とか心臓死での献腎、あるいは肝臓提供の場合、2週間前の投与は不可能ですので、ここに「原則」と書いてあると思うのです。

 そうすると、別に生体に限らず、脳死とかそういうので治療を行ってもよいが、もしもそういう場合はこの2週間前というのは全くおかしいので、その辺の追記があったほうが分かりやすいのではないかと思うのです。下手すると、2週間前になぜ投与していないかということで、保険適用ではないという指摘を受ける可能性がないわけではないです。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○菅原参考人 脳死移植の場合は、血液型不適合で行うというのは全く不可能ではありませんが、現状では恐らくほとんど行われていないと思います。優先順位といいますか、要するに腎移植や肝移植を受けるレシピエントの臓器不全の程度や、適応疾患等で、移植を受けられる優先順位が決まるわけです。血液型不適合になるとこの優先順位が下がってしまいます。したがって、非常に脳死のドナーソースが不足しているという状況では、血液型不適合で脳死移植を受けるというのは困難になっています。しかし、内容としては御指摘のとおりかと思います。

○武田委員 肝臓は脳死でないと無理ですが、腎臓の場合は脳死でないほうが多かったのです。そうすると、たまたま希望者が拒絶して私はやらないと希望を撤回した場合に、そういう腎臓が別の、血液型が合わないほうへ行くこともあり得る。実際に報告でこういうことが行われていますので、そうすると2週間前というのは無理です。その辺は何か条項を入れておいたほうがいいのかと。腎臓に関してだけです。肝臓はまずそういうことはないと思います。

○松井部会長 事務局はどうでしょうか。

○新薬審査第一部長 御質問ありがとうございます。確かに生体移植を主な評価材料として拝見してまいりました。先生からも御指摘いただいたとおり、あくまで目安ということで、生体腎移植の中でも、患者さんの御都合、体調により投与回数、時期が動くことがあります。そういう意味ではこの中で読めると考えております。また、添付文書にはなりませんけれども、必要に応じて資材などを準備することもできますので、そのような形で対応させていただければと思います。

○松井部会長 武田委員よろしいですか。

○武田委員 はい。

○松井部会長 他にございますか。

○内藤委員 移植に関しては余り詳しくないのでナイーブな質問なのですけれども、移植前に抗体でBリンパ球をパージするということで、移植の生着率が高くなるということは期待できると思うのですが、この投与スケジュールを見ると追加して投与する必要はないわけですね。なぜ追加投与は必要ないのでしょうか。

○菅原参考人 このモノクローナル抗体の効果は、かなり長期間継続します。ただし、患者様によっては、移植後に液性免疫拒絶の反応が起きて、追加投与しなければいけないということも中にはあるかと思います。移植前の投与が原則ですけれども、移植後にも投与はあり得るのではないかと思います。

○松井部会長 よろしいですか。

○内藤委員 はい。

○松井部会長 私から1点お聞きします。審査報告書の13ページの上から3行目、「ABO血液型不適合肝移植における2013年の国内実態調査では、成人及び小児における移植1年後の」うんぬんという件があります。それが「拒絶反応の無発現率は90.9%及び100%」と書かれています。私の理解するところ、小児においても、2歳未満であればリツキサンを使わなくても拒絶反応の頻度はそれほど上がらなくて、使わなくてもいいというようにしてまいりました。「小児における移植1年後の」という、この「小児」は何人の患者さんを対象としたかを教えてください。もし2歳未満の方がたくさん含まれていたら、この有意差を比べるのに余り意味がないのではないかと思います。

○医薬品医療機器総合機構 事務局よりお答えいたします。審査報告書10ページを御覧ください。こちらが、先生がおっしゃいました2013年の国内実態調査の結果です。上から3行目、「本薬が投与されたのは」から始まる所ですけれども、「小児4例(1歳3か月~5歳3か月、中央値3歳)」。文献ですので、これの情報の限りになるのですけれども、これを拝見すると、あながち幼すぎる子供さんだけということもないのかと思い、こちらから評価することは可能と考えました。

 小児に関するデータについては、審査報告書の18ページの表7に記載したような小児の患者さんにおける有効性・安全性に関する主な公表文献を調べました。表7を見ると、4歳、13歳、9歳という辺りの年齢の子供に使用されているということです。実態調査に加えて、こういう公表文献の情報も加味して評価し、小児の患者さんの有効性も評価できると判断いたしました。

○松井部会長 菅原参考人から御意見はありますか。

○菅原参考人 おっしゃるとおりです。リツキサンを使う前のABO血液型不適合移植の成績を見ると、年齢によって非常に差があります。肝移植研究会のデータでは、例えば0~2歳だと、それほど適合移植と大差なかったという結果があります。ですから、非常に若年といいますか、例えば0~2歳の患者さんの場合は、適応に関しては慎重に検討するということは言えるのではないかと思います。

○松井部会長 武田委員お願いいたします。

○武田委員 本日お配りいただいた資料11の競合品目のリストのことでの質問です。競合品目が三つ挙がっていて、1はプログラフカプセル等、2はネオーラル、3はセルセプトと書いてあって、競合という場合は、このリツキサンを使った場合にこの競合品目を使わなくなるという意味かなと解釈しました。通常のプロトコールで、リツキサンを使ってこのプログラフ、セルセプトを使わないということはまずないので、どうしてこういうものが挙がってしまったのか。下から3行目に、「投与量の調整が相互に行われる可能性もあり」と書いてあるのは確かにそのとおりですが、リツキサンだけで移植が終わるとは到底思えないです。やはり、こういうものは競合品目に入れるべきではないと思うのです。

○松井部会長 機構からお願いします。

○新薬審査第一部長 御指摘ありがとうございます。一義的には企業のほうで判断をしていただいてということで、今回は多少広めに取ったということですが、このような御意見があったことをお伝えします。また、私どもも今後確認の際に配慮してまいりたいと思います。

○松井部会長 武田先生よろしいですか。

○武田委員 はい。

○松井部会長 他にございますか。

○川上委員 添付文書()の最後のページの右側カラムの上から数行目辺りの()から下線が引かれています。そこの文章で、「肝移植については」の後に「国内での使用経験が極めて限られていることから」とあります。厳密に言うと、使用経験が限られているというよりも、むしろこれは「国内での臨床試験をしておらず、実態に基づく承認であるため」といった表現のほうがより正確な気がするのです。10例、20例での治験のときには、例えば「治験症例の数が極めて限られているから」というような書き方をするのですけれども、「国内での使用経験が極めて限られている」というのは、医療従事者に適切な情報提供ではないように思います。全例調査は、もちろんすべきだと思うのですけれども、その根拠としてこの書き方はいかがでしょうか。例えば、同様の他の薬剤でも、こういう書き方で統一してあるなら良いと思うのですけれども、適切かどうかをお尋ねしたくて質問しました。

○新薬審査第一部長 ありがとうございます。今御指摘を頂いたように、ある程度定形の文章で出ている所もあります。確かにウルトラオーファンのようなものに比べれば、実際国内で経験はあるということなのですが、今回は従来の文言を使わせていただいたということです。基本的には移植をされる先生方は御専門の先生方が多いので、実態はよくご存じかと思いますが、全例調査にも御協力を頂きたいと思います。

○松井部会長 川上先生よろしいですか。

○川上委員 はい。

○松井部会長 先ほどの小児のことについて菅原参考人にお聞きします。「体表面積1平方メートル当たり375 mg」と書いてあります。これを小児にもそのまま適応するということではなくて、適宜減らしていくという意味と受け取っていいでしょうか。文献のPediatric Transplantationの中には、「200mg/平方メートルが適切である」という結論が書かれているように思うのです。200mg375mgというのは非常に差があるものですから、何か注意喚起をすることが必要かと思いました。

○菅原参考人 文献によっては375mg/平方メートルで使用したというものもあるということで、この文章の中には「375」と書いてあるかと思います。先生がおっしゃるとおり、用量に関しては適時その患者さんの状況に応じて減らすということでいいのではないかと思います。

○松井部会長 機構のほうもそれでよろしいですか。

○医薬品医療機器総合機構 事務局から補足いたします。菅原先生がおっしゃってくださったとおりです。文献の個々の症例などを確認すると、低用量では、その後で抗体価が上がってしまったという文献も散見されます。そういう文献も認められますので、やはり375mg/平方メートルという、投与され得る最大の用量を承認用量とし、その後は患者さんの状態に応じて減量するという方向が、医療現場の使い方に一番即しているのではないかと判断し、このような用法・用量に今回はしているところです。

○松井部会長 他にございますか。よろしいでしょうか。私も含め、委員の先生方からの御質疑が満ちたと思いますので、これを議決してよろしいでしょうか。武田委員、平石委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきます。本議題を、承認可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告といたします。菅原参考人、どうもありがとうございました。

                                ( 菅原参考人退席)

○松井部会長 議題2について、機構から概要の説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料2、医薬品イーケプラ錠250mg他の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。本薬は、抗てんかん薬であり、海外では201510月現在、てんかんに関連する効能・効果で104の国又は地域で承認されており、強直間代発作の併用療法については、83の国又は地域で承認されております。本邦では2010年7月に「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する抗てんかん薬との併用療法」の効能・効果で承認されて以降、小児に対する用法・用量とドライシロップ剤の追加、部分発作(二次性全般化発作を含む)の単剤療法に係る効能・効果の追加が承認されております。また、2014年7月には、注射剤が一時的に経口投与ができない患者における本薬経口製剤の代替療法として承認されております。今般、強直間代発作の併用療法に係る有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更申請が行われました。本申請の専門委員としては、資料10に記載しております4名の委員を指名しております。審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。

 まず、有効性ですが、審査報告書8ページの表2を御覧ください。他の抗てんかん薬で十分な効果が認められない強直間代発作を有する成人患者を対象として、他の抗てんかん薬に本薬を上乗せしたときの有効性及び安全性を検討するため、国際共同第III相試験が実施されました。主要評価項目であるFASでの治療期間における併合観察期間からの週当たりの強直間代発作回数減少率について、プラセボ群と本薬群の間に統計学的な有意差が認められました。また、審査報告書9ページの10行目を御覧下さい。他の抗てんかん薬で十分な効果が認められない強直間代発作を有する小児患者を対象とした国内第III相試験も実施されており、有効性評価項目であるFASでの治療期間における併合観察期間からの週当たりの強直間代発作回数減少率は45.47%であり、本薬投与により改善傾向が示唆されております。

 次に安全性ですが、本薬の主な有害事象について、審査報告書1619ページに記載した中枢神経系有害事象、血液障害等を検討しましたが、既承認効能と比較して、強直間代発作を有するてんかん患者において、本薬の安全性に関する新たな問題は認められていないと考えております。

 以上の審査を踏まえ、本薬の「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作」に対する抗てんかん薬との併用療法に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は、新効能医薬品であり、再審査期間は錠剤及びドライシロップ剤では4年、注射剤では、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に係る効能・効果を承認した際の再審査期間の残余期間(平成32年7月3日まで)とすることが適切と判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。

○松木部会長代理 毒性のQT延長ですが、審査報告書の16ページの表8の長期投与では、小児のQT延長が、例数は少ないのですが、2例(18)見られていますが、小児だからトルサード・ド・ポワントは余りないだろうということなのでしょうか。その前のページの表7の短期投与では、QT延長の項目がないのですが、これはそもそも最初から見なかったということですか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御質問いただいた点について、御説明いたします。本薬の小児の対象の臨床試験では、心電図QT延長が2例認められたという結果になっています。この結果は機構でも確認しておりまして、これまでの臨床試験において、心電図QT延長がどの程度発生し、発現していたのか確認しております。その結果、本薬を投与した場合に、すごく高くなっているという状況は認められておりませんでしたので、これまでの安全性プロファイルとも大きく異なるところはないと結論いたしまして、今回、特に項としては立てなかったという状況になっています。初回承認時の薬理試験についても、本来必要なものは実施されておりまして、その中でもQT延長に関するリスクは強く示唆されている状況ではありませんでしたので、その辺りも加味して、今回この症例について、添付文書等に注意喚起をするような状況には至っていないということです。

○松木部会長代理 では、小児ということは特に認識しないでということですね。

○医薬品医療機器総合機構 はい。御指摘のとおりです。小児も成人も含めて、リスク評価を再度しましたが、そういったリスクのシグナルは、今のところは上がっていないと考えております。  

○松木部会長代理 報告書の9ページの真ん中のバイタルサインの所で「QT間隔の延長が1例で認められ、投与継続中に消失した」という1例というのは、どの1例になるのですか。この2例の中の一つということですか。

○医薬品医療機器総合機構 審査報告書1516ページに書いておりますのは、主な有害事象ということで、発現割合が多かったものについて記載をしております。一方で9ページに書いておりますバイタルサインについては、有害事象で挙がっている、挙がっていないに関わらず、施設基準値上等で異常と認められたものについて、異常があったと事実を記載している箇所になっています。ですから、審査報告書上の1516ページの表と成人の臨床試験で認められたバイタルサインのQT延長というところは必ずしも対応していないという状況になっております。

○松木部会長代理 分かりました。細かいようですが、添付文書()17ページというか、添付文書の2ページの真ん中の今回の追加の下線が引いてある所で、小児の所で、「心電図QT延長(15.4)」とありますが、違う数字なのかと思ったら、その上のほうに症例は13例と書いてあって、審査報告書の16ページのほうは11例なのですが、どれが正しいのですか。

○松井部会長 いかがですか。

○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の16ページに記載しておりますのは、長期投与試験の部分でして、審査報告書の8ページ目から記載しております国内第 III 相試験が実施された後です。9ページ目の下側から、長期継続投与試験というのが記載されているかと思います。こちらに移行された小児患者は11例ということで、審査報告書の16ページの表については、その症例がきているという状況になっています。一方で添付文書には、長期投与試験の部分と、その前に発しておりました第 III 相試験と併せて、患者としては延べ13例という状況になりますので、その症例数がきています。

○松井部会長 ほかにいかがですか。なければ議決に入ってよろしいですか。それでは、議決に入ろうと思いますが、武田委員、野田委員、平石委員、山田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。それでは、本議題につきまして、承認を可としてよろしいですか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として、薬事分科会に報告といたします。

 それでは、議題3に移ります。

○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料3、医薬品リスパダール錠1mg他の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤は、非定型抗精神病薬であり、本邦では1996年4月に統合失調症の効能・効果で承認されて以降、内用液、OD錠、持続性筋肉内注射剤が追加で承認されております。今回の申請効能・効果である小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性については、医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議で、医療上の必要性が高いと評価され、201012月に申請者に対して開発要請が行われました。その後、臨床試験が行われ、今般、本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。海外では201510月現在、自閉性障害又は自閉障害に伴う易刺激性の効能・効果で、米国など16の国又は地域で承認されております。本申請の専門委員としては、資料10に記載されている5名の委員を指名しております。

 審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。有効性について、審査報告書14ページ表9を御覧ください。国内第 III 相試験の主要評価項目であるFASでの最終評価時の異常行動チェックリスト日本語版、表では「ABC-J」と記載していますが、易刺激性(興奮性)サブスケールスコアのベースラインからの変化量について、プラセボ群と本剤群との間で統計学的な有意差が認められました。

 次に安全性について、審査報告書19ページ、表14を御覧ください。因果関係が否定できない有害事象として、表の中段よりやや上に記載していますが、傾眠、食欲亢進及び体重増加がプラセボ群に比べて本剤群に多く認められ、その発現割合は既承認の成人統合失調症の臨床試験成績と比較しても高い傾向が認められました。そのため、既に添付文書に記載がある傾眠については、従前の注意喚起を継続するとともに、製造販売後調査で発現状況について検討することとし、また食欲亢進及び体重増加については、本剤が成長に影響を及ぼす可能性が考えられることから、漫然と長期にわたり、投与しないよう注意喚起を行うこととしております。

 次に効能・効果について、審査報告書27ページ「2)本剤の効能・効果について」の項を御覧ください。国内第 III 相試験では、当時の診断基準に基づき、自閉性障害患者を対象としていました。その後、診断基準が改訂され、試験実施当時の診断基準における自閉性障害、アスペルガー障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害が同一の疾患単位として「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」に統一されたことから、機構としては、改訂された診断基準に基づく表記とすべきと判断しました。審査報告書34ページの()本剤の効能・効果及び用法・用量を御覧ください。この機構の考えは専門協議においても支持され、さらに、改訂された診断基準では、自閉スペクトラム症と自閉症スペクトラム障害が併記されているものの、最近の関連学会における使用状況等も踏まえ、効能・効果を自閉スペクトラム症とすることが適切と判断しております。また、対象となる年齢について、国内第III相試験は5歳以上18歳未満の患者を対象として実施されており、18歳以上の患者を対象に本剤の有効性を検討した臨床試験成績はないこと、小児期と成人期では病態が異なると考えられることから、効能・効果に「小児期」と表記した上で、効能・効果に関連する使用上の注意で、原則として5歳以上18歳未満の患者に使用するよう、注意喚起することとしております。

 以上の審査を踏まえ、本剤の小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に対する効能・効果及び用法・用量の追加を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新効能医薬品及び新用量医薬品であり、今回追加する効能・効果及び用法・用量に対する再審査期間は4年と設定することが適切と判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松井部会長 それでは、委員の先生方、御質疑をお願いします。

○加藤委員 先ほどの5歳以上18歳未満の患者に使用することによる注意に「原則として」という言葉が付けてあります。この「原則として」というのはどういう含みを持っているのか。要するに、実際には自閉症スペクトラムの状態が連続的に18歳を超えて続いている場合もありますので、そういう場合にも適応外とせずに使えるということを「原則として」という表現で示しているのでしょうか。もしそうだとしたら「原則として」という表現だけはその意図が伝わらないのではないかということが一つです。それに関連して、市販後調査において、18歳以上の症例は数が増えていますので、その成長例に対しての処方の可能性については、今後どのように調査していくのかという2点を伺いたいと思います。

○医薬品医療機器総合機構 まず、1点目の「原則として」と付けた背景に関してですが、専門協議の中でも、18歳以降でも自閉スペクトラム症に伴う易刺激性が認められる場合もあるとの意見も示されたのですが、易刺激に対して、環境因子の影響も大きく、小児期と成人期では病態も異なるということで、小児期で認められた有効性をそのまま成人期に外挿することは困難と結論されました。その上で18歳以降の自閉スペクトラム症に関しては、小児期と病態が異なるため、既存の治療で対処可能な場合もありますが、少なくとも環境に変化がない同じ学年の間に18歳の誕生日を迎えた時点で直ちに投与ができなくなるということは治療に支障を来すことがありますので、効能・効果に関連する使用上の注意で「原則として」ということを入れることによって、治療上、臨床上大きな問題がないように配慮したということが「原則として」という文言を付け加えた背景となっております。今後の18歳以上の成人期の臨床開発についてですが、現時点では計画はされておりませんが、現場からのニーズを踏まえて開発を検討していただくよう、申請者に伝達したいと思います。

○松井部会長 いかがですか、今の「原則として」のニュアンスは。

○加藤委員 そうですね。例えば自閉症スペクトラムの中で、メチルフェニデートなどが承認されたときに、患者の会から、幼少期から使い続けているものの、成人になった後で使えるものがないので、何とか成人期までに適応拡大をしてほしいという背景があったと思いますが、それに敷衍して考えると、この場合は、例えば19歳、20歳の方で、もっと前から使っているという方に適応するときは適応外処方にしなくてもいいというニュアンスなのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 基本的に18歳の誕生日を迎えた瞬間に直ちに投与を中止する必要はないと考えておりますが、19歳、20歳になっても、いつまでも続けて使い続けていることに関しては、我々としては原時点では推奨はできないと考えております。

○松井部会長 何年もというわけにはいかないということです。

○加藤委員 状況はそうだというのはよく分かりますが、患者の方々とか市販後調査というのでも、その後の現実についての状況の調査は必要かと思いますので、コメントします。

○医薬品医療機器総合機構 市販直後調査や製販後調査などの状況も踏まえて、ニーズが高いようであれば、積極的に開発を検討していただくよう企業には伝えたいと思います。

○松井部会長 ありがとうございます。ほかにいかがですか。

○内藤委員 剤形に関する質問です。今回の小児に対する用量を見ると、1日1回0.25mgから開始するとなっていますが、添付文書を見ると、1mg錠とか2mg錠、3mg錠とあります。もう少し少用量の剤形のものはどのような用意のされ方があるのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 錠剤の添付文書の1ページの右側の真ん中の辺りの四角で囲んだ箇所を御覧いただければと思います。錠剤の注意事項として「0.25mg単位での調節が必要な場合は、内用液又は細粒を使用すること」と記載しておりまして、0.25mgの投与の場合には細粒、若しくは内用液を御使用いただくことを考えております。

○内藤委員 それは薬局で細かく分包したものを個別に用意して患者に渡すということですか。製品として0.5mg用量のものは用意されていないのですか。

○松井部会長 分包のものはという意味ですね。

○内藤委員 はい。

○医薬品医療機器総合機構 まず、0.5mg単位でしたら、OD錠に関しては0.5mg錠もありますので、OD錠で対応いただけますが、0.25mgに関しては分包品などはありませんので、薬局等で分けていただくしかないかと思います。

○内藤委員 薬局できちんと分包していただければ問題はないのですが、実際に使う場合に0.25mgから開始するということだと、0.25mg単位で使う頻度が高いことが想定されますよね。そうしますと、0.25mgずつの分包というか、そういう製品をあらかじめ用意しておいたほうがいろいろな意味で便利というのと、薬局でのトラブルの回避につながるのではないかという気がしますが、いかがですか。

○医薬品医療機器総合機構 現時点で、すぐに分包品などを用意できる状態ではありませんので、本日いただいた御意見を企業に伝え、開発の必要性について、現場の意見を聞いて判断するよう、指導したいと思います。

○松井部会長 参考までに山田委員にお聞きしたいのですが、分包というのは薬局で可能なのですか。

○山田委員 もちろん可能です。

○松井部会長 内藤委員、よろしいですか。

○内藤委員 結構です。

○松井部会長 ほかにいかがですか。

○佐藤委員 今の御質問の続きですが、内用液は0.5mLからしかないように思います。0.25mgの場合、細粒を使用することになるのは分かるのですけれども、内用液は使えないように思うのですが、いかがですか。

○医薬品医療機器総合機構 分包品以外に瓶包装製品もありますので、そちらでも御利用いただけるのかと思います。ただ、御指摘のとおりだと思いますので、「内用液又は細粒を使用すること」と書いてありますが、実際には細粒を使用することの方が多いのではないかとは考えております。

○松井部会長 ほかにありますか。

○山田委員 審査報告書の23ページです。表19の下に「本剤を小児期の自閉性障害患者に投与する際には、定期的に安全性及び有効性を評価し」とあって、添付文書()にもそのように記載されておりますが、臨床現場ではもう少し具体的に記載をしていただいた方が対応が取りやすいかと思います。この小児期の定期的というのは、具体的にはどういう頻度でやったらいいのかということを、提案されるのでしょか。

○医薬品医療機器総合機構 長期投与に伴って懸念されるのが体重、身長などにもなりますので、通常の小児科の診療の中で体重、身長を確認されている頻度で確認していただくというところしか、定期的に確認する内容として我々から具体的に御提示できるような頻度はないところです。

○山田委員 よく理解できますが、できれば定性的な表現ではなくもう少し、より具体的な表現でしていただいたほうが、現場ではやりやすいかと思いますので、御検討いただければと思います。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。今後ほかの品目も含めて、こういった注意喚起を行う場合は、なるべく具体的になるように検討していきたいと思います。

○松井部会長 ほかにいかがですか。

○平石委員 今の件に関してですが、山田委員が御指摘されたように、添付文書2ページの左の欄に、「定期的に安全性及び有効性を評価し、漫然と長期にわたり投与しないこと」と記載されていますが、漫然に投与しないということは、中断を考えるべきだということです。その中断のタイミングは、あくまで主治医の判断に任せられるものと理解してよろしいですか。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘のとおり、主治医の判断で症状が軽減してきたら投与を中止するか否かを判断していただきたいと考えております。小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に対する本剤の使用というのは、あくまでも補助的なものであって、自閉スペクトラム症の治療は非薬物療法が中心に行われており、薬物療法はその補助として行うものですので、症状があるときなどに行うのが適切であると考えております。

○平石委員 追加ですが、長期投与でなされた治験があると思いますが、最大の期間はどのぐらいだったと理解してよろしいですか。

○医薬品医療機器総合機構 長期投与試験については、試験としては1年間の投与を行っております。原則としては、短期間投与にとどめていただきたいというのはあるのですが、現実として長期投与をせざるを得ない場合もありますので、そういったところで安全性を確かめる意味で、試験としては1年間の投与を行ったというところです。

○松井部会長 よろしいですか。ほかにいかがですか。

○神田委員 小さなことですが、5歳から18歳までの間、その年齢を決めた上で、その間だったら体重によって用量を決めるということですよね。例えば1620kg未満の患者、2045kg、それから45kg以上ということで区切っていますが、17歳と言いますと、大人で、かなり成人と変わらない体重の方もいるわけですが、ここは45kg以上という形で、何キロ未満で上限を決める必要はないということでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 上限につきましては、45kg以上の患者でも上限用量を本剤3mgとしております。体重当たりの用量ではなく、1日当たりの投与量として3mgを上限としていますので、体重の上限に関しては特に決める必要はないと考えております。

○松井部会長 よろしいですか。ほかにありますか。特になければ議決に入ろうと思いますが、よろしいですか。武田委員、平石委員におかれましては利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮ください。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは、議題4に移ります。機構から説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題4、資料4、医薬品サインバルタカプセル20mg他の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤の有効成分であるデュロキセチン塩酸塩は、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であり、海外では2015年7月現在、うつ病、糖尿病性神経障害に伴う疼痛などの効能・効果で104の国で承認されており、今回の申請効能・効果である慢性腰痛症に伴う疼痛に対しては、米国を含む29の国又は地域で承認されています。本邦では2010年1月に、うつ病・うつ状態で承認されて以降、糖尿病性神経障害に伴う疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛の効能・効果でも承認されております。今般、日本人における慢性腰痛症に伴う疼痛に対する本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。本申請の専門委員としては、資料10に記載されている6名の委員を指名しております。

 審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。まず、有効性についてです。審査報告書5ページの表1を御覧ください。慢性腰痛症と診断され、非ステロイド性抗炎症薬(以下NSAIDs)に対し、効果不十分の患者を対象に国内第 III 相試験が実施されました。主要評価項目であるFASでの投与14週時のBrief Pain Inventory、表では「BPI」と表記していますが、BPI疼痛重症度(平均の痛み)のベースラインからの変化量について、本剤群とプラセボ群との間に統計学的な有意差が認められました。

 次に審査報告書の23ページ、表24を御覧ください。国内第 III 相試験ではNSAIDsに対し、効果不十分の患者のみを対象としていましたが、海外臨床試験ではNSAIDs未治療例も対象としており、NSAIDs未治療例における本剤群とプラセボ群との間で統計学的な有意差が認められています。以上よりNSAIDsによる治療歴に関わらず、慢性腰痛症に伴う疼痛に対する本剤の有効性は期待できると判断しております。

 次に、安全性についてです。審査報告書の31ページ、下から3行目の「また機構は」で始まる段落を御覧ください。慢性腰痛症患者における本剤の安全性プロファイルは、国内外の臨床試験成績から、既承認効能・効果と大きな差異はないと考えられましたが、NSAIDs、アセトアミノフェンなどの既存の疼痛治療薬と異なり、本剤を含む抗うつ薬は自殺及び敵意・攻撃性に関連する有害事象の潜在的なリスクを有することから、安易に使用されないよう、本剤を慢性腰痛症に伴う疼痛に用いる場合には最新の診断基準を参考に、慢性腰痛症と診断された患者にのみ投与を考慮する旨を注意喚起することとしています。また、添付文書において、疼痛に対して本剤を投与する場合は、自殺念慮、自殺企図、敵意・攻撃性などの精神症状の発現リスクを考慮し、本剤の投与の適否を慎重に判断する旨も注意喚起することとしています。

 さらに、審査報告書の32ページの()「医薬品リスク管理計画()について」の項を御覧ください。慢性腰痛症は既承認の効能・効果に比べて患者数が多いため、本効能追加により本剤が使用される患者層が急激に広がると考えられます。このような点を考慮し、本剤の特性や適正使用に関する注意事項を記載した資材を作成し、当該資材に基づいて本剤の使用に際し、特に注意が必要な事項を医師及び薬剤師に説明し、本剤を処方する医師から内容を理解した旨の署名を得ること、必要に応じて精神科医、心療内科医に診察を依頼するよう、慢性腰痛症に伴う疼痛に対して本剤を処方する医師へ働きかけること、医師及び薬剤師に対し、患者及びその家族に対する服薬指導の必要性及び内容について情報提供をし、患者及びその家族に対して説明するよう依頼すること、整形外科領域及び精神科領域の関連学会と協力して、医師向けの説明会や講習会を開催し、本剤の特性や適正使用に関する注意事項について周知することなど、審査報告書に記載している適正使用推進のための方策を講じることとしております。

 以上の審査を踏まえ、本剤の慢性腰痛症に伴う疼痛に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新効能医薬品に該当するものであり、今回追加される効能・効果に対する再審査期間は4年とすることが適切と判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いします。

○加藤委員 これは整形外科医が抗うつ薬を処方するという、今まで現場では経験のないことなどがいろいろ起こる可能性を考えるべき薬剤です。整形外科に腰痛でかかった場合に、NSAIDsを最初に投与しないケースはほとんどないだろうと思うのです。まず伺いたいのは、添付文書()の7ページの右側のカラムの()に、「長期投与試験」というのがあります。()()の慢性腰痛症に伴う疼痛ということで新しく載った項目で、上の二重盲検の方には「NSAIDsの効果が不十分な慢性腰痛症患者」と書いてありますが、()の「長期投与試験」のほうには、そういうことが何も書いてないのです。ですからNSAIDsの適用歴や有効性に関しては、どのような集団なのかが分からないというのが一つです。それから、ここに出ているデータは、先ほどの報告書の中のどれに当たるものなのかが分からないので教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 まず1点目の長期投与試験の患者に関しては、NSAIDs効果不十分患者以外の患者も含めて試験をしております。

○加藤委員 併用の人も入っているのですか。なぜそれが分からなくなったかというと、報告書の23ページの表25の「国内長期継続投与試験」というのが、これに相当するデータなのかと思って見ていたのです。これは併用有り無しの2群に分けて、それぞれの有効性を評価していると思いますが、この添付文書()に出ているのは、NSAIDsを併用しているのかしていないのかが全く書いていないのです。恐らく整形外科医として一番悩むのは、NSAIDsと同時に出していいかどうかというところではないかと思うのです。それに関する情報として、これでは内容が伝わりにくいと思うのですが、どうでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただいたように、23ページの表25というのは、国内の長期投与試験の結果を示しております。こちらについては併用も可として試験をしておりました。

○松井部会長 併用してよろしいという意味ですか。

○医薬品医療機器総合機構 併用は可能と考えております。

○加藤委員 データとしてはそうだと思うのですが、この添付文書()を整形外科医が見たときに、NSAIDsについて何か書いてあるかと思って探していくと、書いてあるのは唯一、「併用注意」の表の最後に、非定型抗精神病剤、フェノチアジン系薬剤というのが出ています。その最後の所に、アスピリン等の非ステロイド系抗炎症剤が出血傾向が増強する薬剤ということで、「併用注意」となっています。それらの所にNSAIDsの話が全く出てこないのです。特段の消化器障害でもない限り、現状として慢性腰痛症で病院に行った場合には、NSAIDsがまず第一選択で処方されると思うのです。そういう場合にデュロキセチン、サインバルタを併用で使っていいのかどうかという判断が、現場では非常に困るのではないかと、この添付文書()を見ていて思ったのですが、いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘のように、出血傾向が増強するおそれがありますので、そのリスクを踏まえ、必要であれば併用していただくことも可能と考えます。しかし出血傾向が増強するおそれがありますから、その場合は切り替えるという選択肢もあるかと思います。

○加藤委員 恐らくそこが現場で一番混乱すると思うのです。資材を医師と薬剤師に提供するところでも、併用に関してと、市販後調査もすることになっておりますので。とにかく現状としては、慢性腰痛症にNSAIDsを投与するのは当たり前のことですが、その場合に併用して続けていいのか、どう切り替えたらいいのかということを、もうちょっと分かりやすく、いろいろなリスクやベネフィットも含めて資材でうまく説明しないと、新しい治療法の恩恵になかなか患者があずかることができないと思いますので、御考慮いただきたいと思います。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。資材の中でどのような対応をするか、検討させていただきたいと思います。

○内藤委員 今の議論にもあったのですが、かなりリスクのある薬だという印象があります。この薬は慢性腰痛症の治療薬として、どうしても必要な薬なのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の31ページを御覧ください。()の「効能・効果について」で箇条書きで書かれております。専門協議の中で出た意見ですが、消化器系疾患の診断技術の進歩により、NSAIDsによる消化器・消化管の粘膜病変や潰瘍形成の発現頻度が高いことが指摘されているなど、NSAIDsに関して消化器系の障害というのが現在、大変注目されているところです。そういったところで本剤のように、NSAIDs以外の慢性腰痛症に対する治療薬というのが、現場から望まれているものだと考えております。

○内藤委員 ほかに代わり得る薬はないのですか。

○医薬品医療機器総合機構 例えば、オピオイド剤などが代替薬剤として挙げることができるかと思いますが、オピオイドに関しては依存性の問題もありますので、そういったリスクのないものが望まれているというところで、本剤が開発されたという背景があると思います。

○内藤委員 分かりました。

○神田委員 医薬品リスク管理計画()で、32ページです。「適正使用を推進するために」ということで、七つのポツがあります。その中で「本剤を処方する医師から内容を理解した旨の署名を得る」というのがあります。それだけ大変な薬なのかと思います。本剤を処方する医師は、かなりたくさんいらっしゃるのではないかと思うので、しっかりやっていただかないと困ると思いますけれども、現実的にそういった署名を得ることが可能なのでしょうか。大変だと思うのです。そういうことを改めてお聞きしたいのと、この薬以外でもそういった対策は取られていて、実際にそういったことが可能だということが分かればいいのですが、気になったものですから御説明をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 こういったものの前例はありませんが、企業も今回の効能追加に当たって、どの程度使用患者数が増えるのかということも分かった上で、企業からこういった提案がされてきているので、実際に実施することは可能と考えています。ただ、市販直後調査の中で行いますので、市販直後調査になりますと、基本的に全施設に回ることになりますので、ある程度はできるのではないかと考えております。

 

○鈴木委員 先生方が御懸念されているように、整形外科の先生や内科の先生がお出しになると思いますので、これを安易に使うということが問題になる場合もあるのではないかと思います。報告書の4ページを見ると、欧州医薬品庁では「ベネフィット・リスクに否定的な見解が出され、慢性腰痛症の効能は承認されていない」とありますので、ヨーロッパではそのような見解が示されたのだろうと思います。米国を含む29の国又は地域では承認されているとのことですが、処方する医師に何らかの研修とか、専門医にのみ処方ができるように、医師の範囲が限定されるということはないのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 例えば、使用できる医師に制限を設けるということでしょうか。そちらに関しては我々も内部で検討したのですけれども、サインバルタカプセルに関しては、既に流通していることから、現時点で流通制限を掛けるということは、なかなか現実的ではないと考えておりますので、先ほど説明したように、本剤を処方する医師に対して、きちんと適正使用に関して必要な情報を説明して署名を得ることで、ある程度医師の知識などはカバーしたいと考えております。

○武田委員 米国添付文書を見ますと、1ページが「HIGHLIGHTS OF PRESCRIBING INFORMATION」と書いてあって、これはフルのインフォメーションではないので、きちんと見ろと書いてあります。そのちょっと下に太い四角で、「WARNING:SUICIDALTHOUGHTS AND BEHAVIORS」と書いてあります。つまり「自殺企図の人は気を付けろ」と書いてある。3ページには「FULL PRESCRIBING INFORMATION」ということで、ここにも一番上に「WARNING」と書いてあります。アメリカは自殺に気を付けろと相当厳しく言っていますが、日本の添付文書()では、そういうものが上のほうに全くない。自殺しそうだということは書いてないですよね。これはどう考えたらよろしいでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 添付文書()の1ページの左下の枠囲みの所を御覧ください。「効能・効果に関連する使用上の注意」で、「抗うつ剤の投与により、24歳以下の患者で、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため、本剤の投与に当たっては、リスクとベネフィットを考慮すること」と記載しております。また、2ページの左上の2ポツ、「重要な基本的注意」の()から()までで、自殺リスクに関する注意喚起をしております。抗うつ剤ではクラスラベリングとして、日本ではこのような注意喚起をさせていただいております。

○武田委員 ただ、米国ではウォーニングが一番厳しく書いてあって、日本の場合は1ページの上のほうに肝機能障害や禁忌と書いてあるだけで、自殺企図などは何も書いていないのです。やはりこちらのほうに厳しく書くべきではないでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 この件に関しては、これまで抗うつ薬の自殺に関する検討がかなり行われております。抗うつ薬に関するクラスラベルとしてこのように記載するよう、添付文書の記載に関しては取り決められております。今日あった意見に関しては、今後の検討課題とさせていただくことになるかと思いますが、現時点ではこの形で注意喚起をしているということです。日本における注意喚起としてどうあるべきかというところを、これまでいろいろと検討して、このような形になっているというように御理解いただきたいと思っています。

○安全対策課長 時期は私も記憶が定かではないのですが、SNRIなどの抗うつ剤を使って自殺企図が問題になったことがあり、そのときに一連の注意事項について検討し、添付文書の改訂をし、現在の記載となっていると記憶しております。それ以降、特に記載内容で改訂した方がいいなど、そういう事情は今のところ出ておりません。今後とも発生状況などを見て、必要があれば必要な対応を取っていきたいと思います。どうもありがとうございました。

○内藤委員 最初の加藤委員のコメントにもありましたが、精神科のお医者さんは多分、このお薬によく慣れていらっしゃって、そういう患者さんを診なれているので、いろいろな対応が取りやすいのだと思います。これを今回の適応拡大で整形外科のお医者さんが患者さんに処方することになったときに精神的な兆候を、異常かと思われるような兆候を整形外科の先生がきちんと見抜けるのかどうか、そこのところが危惧されます。

 いろいろお医者さんに対する教育や啓蒙活動をするということは、もちろん当然必要なことだとは思うのですが、整形外科の先生が診ていると専門外のことなので、十分患者さんの様子を把握できるかどうかということに関して非常に不安を覚えます。ですから、先ほど、どうしてもこのお薬は腰痛治療薬として必要なのかという質問を申し上げましたが、このリスクに対して、このお薬がないとどうしようもないというほどのお薬なのかということに関して少し疑問が残ります。

○松木部会長代理 自殺念慮とか自殺のリスクですが、多分うつ病の患者さんに投与した場合には、それがリスクになると思うのですが、健常人の腰痛の人にもリスクになるのですか。私の知識では多分、健常人で自殺念慮というのは、この薬の副作用としては起こってこないと思うのですけども。

○医薬品医療機器総合機構 一つの可能性としてそういう可能性も考えられますが、実際に腰痛、うつ病以外の患者さんでも自殺リスクはないのかと言われると、なかなかそれを完全に否定することは難しいと思いますので、やはり同じようなリスクがあると考えて、安全対策を行うべきと考えております。

○加藤委員 ただいまの内藤委員のコメントと松木委員のコメントに加えたいと思います。まず、松木委員のコメントですが、慢性疼痛はうつ病のハイリスクファクターだということが分かっているので、慢性疼痛を持っているかなりの方がうつ症状としても診断できるということがあるので、そういうことを考えると今の医薬品機構の答えのとおり、腰痛の患者でもうつ病のリスクを考えておくべきだというのは妥当であると考えられます。

 それから、内藤委員の先ほどの質問にありました、これ以外にこういう所で使える薬はないのですかということです。審査報告書()31ページにあるように、専門委員の方が御意見を出していて、その専門委員の意見の3のうちの2番目にあるように、運動器の疼痛が慢性化すると、中枢性感作により神経障害性疼痛に移行するというのは疼痛学では共有されている認識です。

 そうすると、神経障害性疼痛というように診断名が変わるという可能性がある。例えばプレガバリン、商品名で言うとリリカは、整形外科領域ではNSAIDsが効かない場合に、神経障害性疼痛と診断していいだろうということで、リリカを処方するということは非常に多く行われていて、そのリリカでも効かないという場合もあるし、NSAIDsで効かない患者さんもかなりいるわけです。痛みは単一の機構ではなく、患者さんごとに様々な機構で訴えられるということもよく知られています。その場合のオルタナティブとして、デュロキセチンが、使える場があると考えられると思います。

○松井部会長 ありがとうございます。ほかに御発言はありますか。

○野田委員 糖尿病性神経障害による疼痛でも使っているわけですが、これに対してそれほど広く使われているかというと、個人的な印象としてはそういうわけでもないと思います。また私の知る範囲で、それによって自殺念慮を起こしたということは、個人的な経験の範囲内では今のところ周囲にはないということになろうかとは思います。

○平石委員 先ほど来、いろいろな攻撃関連性の有害事象、自殺などが問題になっていますが、結局、慢性腰痛症の臨床試験においてN数がどれくらいで、投与期間が何か月であったのか、その期間の中においてこういう自殺念慮など、有害事象が認められたのかということを、ここで確認しておいたほうがよろしいかと思います。

○医薬品医療機器総合機構 審査報告書の4ページを御覧ください。短期投与試験の中では本剤群232例に対して14週間の投与がされております。4、5ページのところに記載しております。更に審査報告書の6ページに国内長期継続試験の結果が書いてあります。治療期が50週間、プラセボ群からの継続例と新規例で合わせて110例に新しく投与されており、自殺に関連する有害事象の発現は認められておりません。

○平石委員 だからといって有害事象の発現を否定はできないのですが、そういう情報だけ共有しておけばよろしいのかなと私は個人的に思いました。どうもありがとうございました。

○松井部会長 盛んに御発言が出たわけですが、その自殺念慮のことです。私は司会をしていて思いますが、やはりこれは重大なことで、それが欧米の注意喚起にも表れていると思います。この添付文書の中に入れなければいけないということではありませんが、やはり相当の注意喚起を出していただきたいということは委員の先生方の総意のように、先生方よろしいでしょうか、受け取りましたので是非、御検討を願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。

○審査管理課長 本品目の審査に当たっては、ただいま御議論いただいたような懸念があるということで私どもも十分認識しており、時間を掛けて申請者との間でも協議を続けてきております。その結果として、今、リスク管理計画()ということで審査報告書の32ページに記載の対策を取るようにということで、私どもからも申請者に十分準備をしてしっかりやるようにという指導をしております。

○松井部会長 よろしいでしょうか。

○松木部会長代理 短期が14週というのは随分長いと思うのですが、審査報告書の27ページの図2の説明が少しよく分からないのですが、2、3週ぐらいでもう効果が出始めているということですか。短期でも14週投与しなければいけないという根拠は何なのですか。

○医薬品医療機器総合機構 14週とした根拠としては、欧州では疼痛に対する短期投与試験の目安として12週と言われており、更に今回の有効用量である60mgまで漸増するのに2週間掛かるということで、合わせて14週と設定されております。

○松木部会長代理 先ほどからリスクに対する議論があるので、投与期間の目安みたいなものを提示すると、多分効果がある人はもっと早く出てくると思うので、漫然と投与しないという形にしたほうがいいのではないかと思います。

 それと、慢性腰痛の患者さんは非常に多いので、やはり爆発的に、どのように宣伝するのかによってだと思うのですが、使われると思うので、その辺は機構ではなく厚生労働省で十分、ウォッチしていただければと思います。作用機序を考えると多分、慢性腰痛だけではなくて疼痛全般に効いてくると思うのです。これは興味なのですが、なぜ慢性腰痛をターゲットにしたのですか、患者が多いからということですか。

○医薬品医療機器総合機構 企業の開発戦略に関するところですので、なかなか機構からは正確な答えはできないところではあります。日本で慢性腰痛症の開発を行った理由としては、アメリカなどでも、慢性腰痛症を含む疼痛に対して効能を持っているという点が一つあるのかと思いますし、先生がおっしゃられたように患者数が多いということで開発されたのかと考えております。

○加藤委員 最後に一つだけ細かい所ですが、先ほど松木先生がおっしゃっていた27ページの図2について細かいことを伺います。このグラフを見るとプラセボ群でも有意な下降を示していると見えるのですが、それでよろしいでしょうか。

○松井部会長 図2ですね。

 

○医薬品医療機器総合機構 この絵なのですが、先行試験に入っていた患者で本剤群及びプラセボ群ともに、投与開始時と比較して、BPI変化量は有意な減少が認められております。

○加藤委員 0週のところから始まっている丸印もプラセボ群ですよね。この方々が17週ぐらいからずっと星印が付いているのは、これはプラセボを最初から投与した群でも有意差が出ているということ、そういう読み方で合っていますか。

○医薬品医療機器総合機構 「●:継続例(プラセボ群)」と書いているものは長期投与試験の前に組み入れられていたプラセボ対照試験においてプラセボを投与されていた群の成績です。これらの患者では、投与開始時と比較してBPI変化量は有意に減少しています。

○松井部会長 よろしいですか。

○加藤委員 はい、分かりました。

○鈴木委員 少し資料を詳しく見ましたが、25ページ以降で、ヨーロッパでなぜ否定されたのかというと、うつや自殺念慮、攻撃性だけではなくて臨床的意義に否定的な見解が示されたり、効果の持続性について限定的な評価であり、本剤の長期投与時の有効性が十分検討されていない、高齢者における有効性・安全性についても十分に示されていない等、かなり本質的なところで余り効果がないのではないかという判断がされているようです。それを一応、否定しているようですが、そのリスクを踏まえても使わなければいけない薬なのかという気が改めてしてくるのですが、いかがですか。もっと限定的な使用とか、そうした強調すべきリスクがあることを入れる必要があるのではないかと思います。

 整形外科の先生も皆さん医師として必要な研修は受けていらっしゃいますから、一般的な話は御理解いただいていても、慢性腰痛は長期投与が前提になりますので、長期的な管理もしっかりしていく必要があると思います。漫然と投与といいますが、結局、漫然とした投与になるので、それを前提として考えていく必要がある薬ではないかと思われ、ヨーロッパの判断は重いのではないかという気がいたします。あえてそれを覆し、承認する積極的な理由があるのでしょうか。

○松井部会長 いかがですか、機構として。

○医薬品医療機器総合機構 機構としては、EMAでは不承認とされておりますが、審査報告書でも議論しているように今回、ヨーロッパでの不承認後に国内で実施された臨床試験成績も踏まえると臨床的意義は説明されていると思いますので、承認して差し支えないのではないかと考えております。

○松井部会長 私の不手際もあったのかもしれませんが、大分、議論が長引いておりますが、私としてはここで議決をしようと思うのですが、反対意見はありますか。

○審査管理課長 今の鈴木先生の御指摘も十分理解できるところですが、この薬剤については説明をしたとおり、既承認の腰痛症に対する治療薬と作用機序が異なるということで、既承認の薬でなかなか対処が困難な患者さんもおられますので、そのような患者さんに対する選択肢としては必要なものであろうと考えております。ただ、御指摘のように漫然と投与されることを防ぐことは必要不可欠と考えますので、今後、資材や申請者による研修の内容等も含めて十分検討したいと思います。ありがとうございます。

○内藤委員 今、うつ病を対象にして年間にこの薬が処方されている患者さんはどのくらいなのか、それから、もし腰痛の治療薬として認可されたら、その患者さんがどのくらいに増えると予想されるかということについてコメントを頂けますか。

○医薬品医療機器総合機構 申し訳ないのですが、具体的な数値は持ち合わせておりません。慢性に限らず急性も含むのですが、腰痛症患者ですと数千万人という単位でいることになりますが、恐らくうつ病の患者さんであるとか、糖尿病性の慢性神経障害に伴う疼痛の患者さんなどを合わせても数百万人ぐらいだと思いますので、患者数的にいえば、その程度の差があると思います。

○内藤委員 今でも数百万人がこの薬を投与されているのですか。

○医薬品医療機器総合機構 本剤が投与されている患者さんではなくて、うつ病の患者さんなど、全体を含めてということです。ただ、恐らく、それでも10倍程度の開きがあると思いますので、使われる規模も今回の効能追加に伴って、単純に考えればその程度の規模の増加はあるのかもしれませんというところです。

○内藤委員 過去のいろいろなお薬の有害事象の例を顧みてみると、例えば、イレッサの例は皆さん御存じだと思いますが、急激に多くの患者さんに処方されて、間質性肺炎で亡くなる患者さんがでて、それが大きな問題になりました。それから、自殺に関連することだと今、タミフルを若い人には処方しないということで、今、その危険性について再検証が進んでいると思います。そういうことを踏まえると、急激に多くの患者さんに使われるような状況は、特にこういうリスクの高いお薬の場合、できるだけ避けたほうがいいと思います。ですから、何らかの方法でもう少し、処方する患者さんの数をかなり限定する形の対策を取って、大きな問題がないということが確認された後で処方される患者さんの数を増やしていけるような工夫をしていただけないかと思います。

○審査管理課長 今考えている安全対策の中で、処方される医師の登録、医療機関について段階的に拡大するということが考えられるかと思います。ただ、一方で、もう既にこれは承認されて販売されている医薬品ですので、そこは余り厳密にここでなければいけないという縛りは難しいかと思いますけれども。できるだけ、そういう工夫ができないかということについては申請者に伝えたいと思います。

○松井部会長 ありがとうございます。それでは、第一部会としての態度を表明しないわけにもいきませんので、議決に入ります。その際に金子委員、川上委員、武田委員、野田委員、平石委員におかれましては利益相反に関する申出に基づいて議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。これは大事な評決ですので、挙手をお願いします。本議題について、今日の討論に基づいて承認を可としてよろしいとお考えの方は挙手を願います。7人、よろしいですね。では反対の方、2人。それでは、当部会は慣例的に多数決で決めていないのですが、このような票数の結果、承認を可とする意見が多数を占めた。ただし、今日あった議論については、しかるべき形で分科会で報告していただくということで、よろしいでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、報告議題に移ってください。

○事務局 資料5です。医薬品キックリンカプセルです。本剤はビキサロマーを有効成分とする経口リン吸着剤で、現在は「透析中の慢性腎不全患者における高リン血症の改善」の効能・効果で承認されております。今般、アステラス製薬株式会社より保存期の慢性腎臓病患者に対する臨床試験成績が追加され、この6ポツにあるとおり「透析中」という文言がなくなり、「慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」に効能・効果を変更する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。

 議題2のトリプタノールです。資料6です。本剤は三環系抗鬱薬で、現在は精神科領域におけるうつ病・うつ状態及び夜尿症を効能・効果として承認されております。本剤については、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成27年7月31日に開催された本部会における事前評価も踏まえて、今般、日医工株式会社及び沢井製薬株式会社から末梢性神経障害性疼痛の効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。

 議題3です。医療用医薬品の再審査です。資料7-1~7-4です。まず、資料7-1です。一般的名称はテルミサルタン/アムロジピンベシル酸塩、販売名はミカムロ配合錠AP及びBP。資料7-2です。一般的名称はゾルピデム酒石酸塩、販売名はマイスリー錠。資料7-3です。一般的名称は塩酸セルトラリン、販売名はジェイゾロフト錠。資料7-4です。一般的名称はタクロリムス水和物、販売名はプログラフカプセルです。

 これらの品目については、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査、製造販売後臨床試験等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品医療機器法第14条第2項第3号に掲げる承認拒否事由のいずれにも該当しない、すなわち効能・効果や用法・用量の変更が必要ないカテゴリー1と判断いたしました。

 議題4です。資料8です。希少疾病用医薬品の指定の取消しについてです。届出者はグラクソ・スミスクライン株式会社で、医薬品の名称はozanezumabです。中止の理由は臨床試験において期待された有効性が示されなかったためということですが、詳細は「参考」と書いてある資料を御覧ください。

 まず、1ポツのozanezumabについてです。本薬はミエリン関連神経突起伸長阻害因子であるNogo-Aに特異的に結合してNogo-Aの生物学的機能を中和又は無効化するヒト化IgG1型モノクローナル抗体です。2ポツの開発の経緯です。作用機序や非臨床試験、また、第 I 相臨床試験の成績から、このお薬は平成25年5月13日にALSを予定される効能・効果として希少疾病用医薬品に指定されました。2ページです。3ポツの開発中止に至った経緯です。平成2412月より実施されていた国際共同第II相試験の結果が表1のとおりで、主要な有効性評価項目、主要評価におけるJoint Rank Scoreにおいてプラセボ群と本剤群の間に統計学的な有意差は認められず、また、副次評価項目であるALSFRSが図1、また、図2に生存率の図がありますが、こちらでも有意差が示されていないものの、プラセボ群のほうがいい成績であったという結論が得られました。

 この結果を踏まえて、本剤のALSに対する開発中止が平成27年4月に決定され、平成27年8月14日に開発中止届が提出されており、そしてオーファンの中止届が平成271217日に提出されました。4ページです。本剤の開発中止の決定については、治験参加施設の医師のほかに患者団体や学会にも報告しており、理解を得られているところです。よって本剤の本効能・効果に係るオーファンの指定を取り消すことといたしました。以上です。

○松井部会長 それでは、報告議題1~3について何か御質疑はありますか。特にありませんか。議題4についてはいかがですか。よろしいですか。それでは議題1~4については委員の先生方の御確認を頂いたものといたします。本日の議題は以上なのですが、事務局から何か報告はありますか。

○事務局 次回の部会は、2月24()午後5時から開催の予定ですので、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 それでは、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を終了いたします。どうも御苦労さまでございました。

 


(了)

備  考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬・生活衛生局 医薬品審査管理課 課長補佐 清原(内線2746)

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