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2016年4月28日 医療保護入院等のあり方分科会第2回議事録

社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課

○日時

平成28年4月28日(木)14:00~16:00


○場所

東京都千代田区霞が関1-2-2
厚生労働省 専用第14会議室(12階)


○出席者

岩上構成員、江藤構成員、太田構成員、柏木構成員、久保野構成員
山本構成員、澤田構成員、白川構成員、千葉構成員、中原構成員
野沢構成員、平田構成員、本條構成員、仲野参考人

○議事

○山本座長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会第2回医療保護入院等のあり方分科会」を開催いたします。

 構成員の皆様方におかれましては、ご多忙のところをご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

 初めに、資料の確認と本日の出欠状況につきまして、事務局からお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○占部課長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。

 資料1は「入院中の処遇・退院等に関する精神障害者の意思決定及び意思の表明の支援について」でございます。

 資料2は、平田構成員の提出資料でございます。

 資料3は、白川構成員の提出資料でございます。

 以上について、足りない資料がございましたら、事務局までお申しつけいただければと思います。よろしいでしょうか。

 次に、本日の出欠の状況でございます。野沢構成員から欠席とのご連絡をいただいております。

 また、構成員の代理として、1名の方にご出席をいただいておりますので、ご紹介申し上げます。

 吉川構成員の代理で、日本精神科看護協会業務執行理事の仲野栄さんです。

○吉川構成員代理仲野氏 仲野と申します。よろしくお願いいたします。

○占部課長補佐 なお、本日事務局におきまして、別の公務のため、分科会途中での出入りがありますことについて、ご承知おきをいただければと存じます。

 事務局からは以上でございます。

○山本座長 どうもありがとうございました。

 それでは、議事に入りたいと思います。

 本日は「入院中の処遇・退院等に関する精神障害者の意思決定及び意思の表明の支援について」ということで、精神医療審査会のあり方も含め、主に入院中の権利擁護についてご議論いただくこととしております。

 まず、事務局からの説明の後、精神医療審査会について平田構成員、白川構成員から提出資料がありますので、それぞれ15分程度でご説明いただきまして、その後、全体について順次ご議論をいただくという予定でおりますので、よろしくお願いいたします。

 まず、資料1について、事務局より説明をお願いいたします。

○占部課長補佐 それでは、資料1についてご説明をさせていただきます。

 事務局におきまして、これまでの経緯も含めまして、議論の前提となる基本的な資料をご用意させていただきました。

 まず、2ページをご覧ください。前回の精神保健福祉法改正の前に取りまとめられました平成24年6月の「入院制度に関する議論の整理」におきまして、いわゆる「代弁者」について提案されて以降の精神障害者の意思決定支援に関連した検討会、あるいは研究事業の状況について、こちらで簡単にまとめさせていただいております。

 以下、個別の内容につきまして、資料に基づきまして、順次ご説明をさせていただきます。

 3ページは、【新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム(第3R)】「入院制度に関する議論の整理」の概要でございます。

 この中で、医療保護入院の見直しに伴いまして、保護者による同意を必要としない入院手続とするということとあわせて、権利擁護のため、入院した人は自分の気持ちを代弁する人を選べることとするということで左下に書かれております。

 このいわゆる代弁者につきまして、詳しくは5ページをご覧いただければと思います。その役割といたしまして、1つ目の○のところですけれども、本人の権利擁護のための仕組みとして、自分の気持ちを代弁し、病院などに伝える役割をする代弁者(アドボケーター)を選ぶことができる仕組みを導入するべきとされております。

 一方で、このページの4つ目の○のとおり、代弁者を選ぶ際に必要な手続については、検討課題ということにされております。

 また、その代弁者の関与し得る手続等々については、必ずしも明らかになっていないという状況でございます。

 こういったこともございまして、前回の平成25年改正法の概要ですけれども、次の6ページの一番下のところに「検討規定」とありまして、「退院等に関する精神障害者の意思決定及び意思の表明の支援のあり方について検討を加え」ということで、検討規定が盛り込まれております。

 次の7ページは、平成26年7月に取りまとめた「長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策に係る検討会」の報告書の概要でございます。

 こちらでは、左側の「2.長期入院精神障害者本人に対する支援」ということで、本人の意向に沿った地域移行に向けた支援を徹底して行うということが、この中で提言をされております。

 次の8ページと9ページにつきましては、こうした入院時の地域移行支援に関連して、現在の障害者総合支援法の中で、相談支援に関するサービス等を整理した資料ということでございます。

 続いて、10ページ及び11ページですけれども、精神障害者の意思決定支援に関する近年の調査研究についてまとめた資料でございます。

10ページの一番上ですけれども、平成24年度に実施された「精神障害者のアドボケイトを担う人材及び精神障害者における成年後見制度のあり方について」ということで、この中では、アンケート調査及びインタビュー調査を実施して、代弁者の定義について提案する一方で、代弁者機能については、権利擁護全体の制度設計の中で議論すべき課題ということで、引き続き調査研究が必要としております。

 この10ページの下の方をご覧いただければと思いますけれども、精神保健福祉法の前回改正以降、平成26年度及び27年度に「入院中の精神障害者の意思決定及び意思の表明に関するモデル事業」を実施しております。27年度の研究事業につきましては、26年度の事業の成果や課題を踏まえまして、アドボケーター機能について検討するためにモデル事業を実施し、この結果を踏まえて、意思決定に関する基本的考え方等についてガイドラインという形でまとめております。

11ページがそのガイドラインの概要でございます。このガイドラインにおきましては、アドボケーターの定義につきまして、上から2つ目にございますけれども、「アドボケーターとは、精神科病院に入院している者にとって、入院生活での困り事に対して信頼できる相談相手で、入院中の『説明が得られない』『聞いてもらえない』ことに対しても、本人の立場で気持ちや状況を理解し、必要に応じて代弁することで、本人が自分の気持ちに正直に生き、主体的に精神科医療を受けられるように側面的に支援する者である。アドボケーターは、本人の話を先入観なく理解し、利害関係のない人がその任を担う」としております。

 ガイドラインにおきましては、こうしたアドボケーターを養成するための研修のあり方、あるいは実際に導入するに当たっての手続のあり方等について、あわせて提案を行っております。

 以上が精神障害者の意思決定支援に関する調査研究ですが、続いて、12ページをお願いいたします。

 精神障害に限らず知的障害等も含めて、意思決定に困難を抱える方の意思決定支援という観点から、障害者総合福祉推進事業における調査研究を行っております。障害者総合支援法においては、例えば第42条におきまして、指定障害福祉サービス事業者及び指定障害者支援施設の設置者に対して、サービス提供における意思決定支援への配慮を規定しているなど、サービス提供の際に、障害者がみずから意思決定を行うことの確保及びそれを支援していくことが法律等において規定されております。こうした意思決定の支援に向けて、「意思決定支援の在り方及び成年後見制度の利用促進の在り方に関する調査研究」ということで、平成25年度から3カ年にわたって研究事業を実施しておりまして、平成27年度の研究成果といたしまして、意思決定支援ガイドライン(案)を取りまとめております。

 ガイドライン(案)の内容につきましては、13ページ以降に記載をしております。ここでは、意思決定支援の定義につきまして、「知的障害や精神障害(発達障害を含む)等で意思決定に困難を抱える障害者が、日常生活や社会生活等に関して自分自身がしたい意思が反映された生活を送ることが可能となるように、障害者を支援する者が行う支援の行為及び仕組み」としております。

 意思決定を行う内容については、上から2つ目の箱にございますけれども、生活、人生、生命のそれぞれの領域に分けて整理をしておりまして、それぞれの内容に応じて、本人を中心にしてどのようなチームメンバーによって支援していくかということを考える必要があるとしております。その上で、支援に当たって必要な合理的配慮、あるいは留意点について整理をしております。

 こうした基本的な考え方に則りまして、支援の現場で求められる内容に応じた具体的な留意点について、14ページ及び15ページの資料に記載をしております。この意思決定支援ガイドラインにつきましては、今後、事業者向けの研修等での教材として、意思決定支援の現場における活用を進めていくことを検討しております。

16ページ以降になりますけれども、精神障害者の権利擁護に関連する制度の一つといたしまして、成年後見制度についての資料をつけております。成年後見制度は、認知症、知的障害、精神障害などによりまして、物事を判断する能力が十分でない方について、本人の権利を守る「成年後見人」を選ぶことで法律的に支援する制度ということで、本人の判断能力に応じて、後見、保佐、補助の3つの類型がございます。

 成年後見制度につきましては、平成12年の施行以降、高齢化の影響もございまして、その利用者数については年々伸びてきているということで、17ページをご覧いただきますと、平成26年末時点の数字になりますけれども、直近の全体の利用者数につきましては、18万人を超えているという状況でございます。

19ページの申立人と本人との関係を見ますと、最も多いのは子ということになっておりますけれども、本人及び親族による申し立てが困難である場合の市区町村長申し立ての数が2番目に多く、5,000件ちょっとという状況でございます。

 この市区町村長申し立てにつきましては、20ページをご覧いただきますと、年々増加傾向にあるということが見てとれるかと思います。

 こういった成年後見制度の利用がふえていく中で、その担い手の確保につきまして、22ページの法人後見、あるいは23ページの市民後見人の育成ということで取り組まれているという状況でございます。

24ページ以降ですけれども、地域移行等に関連する社会資源といたしまして、ピアサポーターについての資料をつけております。

 ピアサポーターにつきましては、入院中の精神障害者の方に対して、当事者独自の視点に立った支援が可能であるという指摘がありまして、26ページになりますけれども、障害者総合支援法の見直しに向けた社会保障審議会障害者部会の報告書におきましても、今後の取り組みといたしまして、その質を確保するために人材を養成する研修を含め、必要な支援を行うべきとされているところでございます。

 以上が、この分野についてのこれまでの検討の経緯、あるいは関連する社会資源に関する資料ということでございます。

 その上で、まさに今回からご議論をいただくのですが、検討に当たっての視点として、どういった点に留意していくのかということで、27ページにお示ししております。一般論といたしまして、医療保護入院や措置入院は、本人の同意を得ることなく行われる入院制度であって、人権擁護の観点から、入院中の意思表示、あるいは権利行使を制限されないような支援が本人の状態や意向に応じて必要となる場合が想定されます。

 他方、意思決定・意思表明の支援につきましては、これまでご紹介をさせていただきましたとおり、さまざまに議論が展開されておりますので、今後の検討に当たっては、入院中の当事者にとって実際にどのような機能が求められていて、これに対してどのような社会資源を活用して対応することが適切なのかというところを踏まえて検討を進めていく必要があるのではないかと考えておりまして、こういった形でお示しをしております。

 以上が、入院中の意思決定支援等に関する資料でございます。

 続いて、精神医療審査会に関する資料についてご説明をさせていただきます。29ページ以降をご覧いただけますでしょうか。

 精神医療審査会につきましては、精神科病院の管理者からの医療保護入院の届け出、あるいは措置入院者及び医療保護入院者の定期病状報告、それから入院中の者やその家族等からの退院請求または処遇改善請求について、それぞれ入院の必要性、あるいはその処遇の妥当性について審査を行うこととされております。

 審査会については、合議体で構成されておりまして、1合議体当たりの委員は5名、都道府県知事が精神科医療の学識経験者を2名以上、精神障害者の保健または福祉の学識経験者を1名以上、法律に関する学識経験者を1名以上、それぞれ任命することとされております。

 実際の精神医療審査会における審査の手続的な流れについて、請求から審査までと審査後の流れに分けて整理したのが30ページ以降の資料になります。

30ページ及び31ページが、退院請求及び処遇改善請求の審査の場合、それから32ページ及び33ページが、定期病状報告及び医療保護入院の届け出に関する審査の場合ということで、それぞれ手続的な流れをお示ししております。

 近年の審査状況のデータについて、34ページ以降に資料をおつけしております。

 このうち、34ページですけれども、全体の審査件数については増加傾向にありまして、また、そのうちおおよそ3分の2程度が医療保護入院時の届け出に係るもの、3分の1程度が医療保護入院中の定期病状報告に係るものであります。

 また、少し飛んでいただいて37ページですけれども、処遇改善請求及び退院請求時の請求受理から審査結果の通知までの平均日数をまとめた資料でございます。こちらをご覧いただきますと、概ね30日程度で推移をしております。通知上は、退院及び処遇改善請求がなされて、概ね1カ月以内に審査が行われることが必要としておりますので、概ねこれに沿った状況となっているということでございます。

 駆け足になって恐縮ですけれども、資料1の説明については以上でございます。

○山本座長 どうもありがとうございました。

 続きまして、提出資料について平田構成員からご説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○平田構成員 それでは、私のほうから「精神医療審査会制度の現状と課題」と題して情報提供いたします。

○山本座長 資料2でございますね。

○平田構成員 資料2です。

 私は、全国精神医療審査会連絡協議会、全審連と訳しますけれども、そこの専務理事をやっております。

 まず1ページ目は制度の歴史です。精神医療審査会制度は、入院中の精神科の利用者の方々の権利擁護の基軸的な制度ということになっておりますけれども、1987年に精神保健法が制定されたときに、任意入院制度、精神保健指定医制度と並ぶ目玉として制定された制度です。北欧が発祥地と言われているOmbudsman制度、行政に対する苦情処理委員会ということになりますけれども、この制度がモデルになっております。

 その後、その背景には精神科の病院における人権軽視、あるいは不法行為というものが多発して、社会問題になっていたということが背景になっておりますけれども、この制度ができた後もなかなか解消はいたしませんでした。2002年の法改正、2006年、2013年と法改正のたびに、審査会の機能は少しずつ強化をされてきたということになっております。

2013年、平成25年の改正では、保護者制度の廃止に伴って医療保護入院の見直し、入院同意を撤回した家族等の退院請求を明記したということがあります。それから、精神医療審査会の運営マニュアルが10年ぶりに改訂されまして、各地の運営要綱の均てん化を図るということが行われておりました。さらに、指定医による精神医療審査会医療委員に向けた研修の費用、退院請求等の意見聴取にかかる費用の国庫補助という制度的なバックアップが行われております。

 3ページ目以降に現状をお示しします。

 合議体委員は、ご覧のように年とともに増えてきております。合議体の数もふえておりますし、1合議体当たりの人数も増えております。医療委員の比率が、2006年に3人から2人以上というふうに、ほかの非医療委員にシフトするということが行われまして、若干ではありますけれども、医療委員の比率が少し減る傾向にあります。

 4ページ目は、退院・処遇改善請求の審査件数の推移です。先ほどの厚労省の資料の35ページの退院請求の件数と数が違っておりますけれども、これはなぜかというと、後で説明しますけれども、受理件数と審査件数とのギャップなのですね。報告によって多少これはずれます。

 私が根拠とした数字は、毎年行ってきた厚労科研の審査会の事務局に対する直接の調査の回答から集計しました。件数はご覧のように、どんどん右肩上がりでふえております。新たな入院件数に大体パラレルなのですね。入院から間もない時期での退院請求が多いですから、在院患者数よりも入院件数に影響を受けやすいということで、入院件数の上がりも示しましたけれども、その右肩上がりの上がり方は、入院件数よりも大きく上がっているということです。

 ただし、5ページに示したように地域差がかなりあります。47都道府県と20の政令市別に、年間の退院及び処遇改善請求の審査状況、件数と審査を開始した件数と別々に書いてあります。

 「不審査決定」とありますけれども、これは、審査の請求はしたけれども、途中で取り下げる、あるいは退院になってしまう、それから任意入院に移行するということで、審査要件が喪失するということで審査には至らなかった件数ですね。ご覧のように各自治体によってばらばらです。それから、審査の日数と不審査の比率をあらわしたものが、ちょっとつけ加えた散布図ですけれども、緩い正の相関がある。要するに、時間がかかると、不審査の比率が上がる傾向にあるということを示しております。

 6ページに、今、言った受理件数と審査開始の件数の違いについて書いてあります。26年度は受理が3,432プラス前年度からの繰り越しを足して、3,700件ほどの受理がありましたけれども、そのうち不審査になったものが28%、3割近くが取り下げないし要件喪失ということで、審査をされないという決定になりまして、審査が開始されたのが2,500件です。

 審査をした結果、現状継続というのは、退院の請求の却下に当たるのですけれども、92.3%、退院勧告をしたのが0.8%、入院形式の変更が4.5%ということで、ほとんどが退院請求が通らないというのが現状なのですけれども、これについてどう評価するかはいろいろと意見が分かれるところだと思います。

 それから、「精神医療審査会制度の意義と課題」、これは今さら言うまでもないのですけれども、7ページにまとめました。

 意義は、法の設立、創設の趣旨でありますけれども、閉鎖系になりやすい精神科の病院の透明性を高める。臨床的には、入院間もない患者の安全感の補強です。外の審査会と連絡がとれる、あるいは弁護士等が会いに来てくれる。これが保証されるというのはかなり臨床的には意味があると考えられます。医療者にとっては、みずからの医療の自己点検の機会を提供する、あるいは今やっている医療をサポートするセカンドオピニオンを提供するという役割もあります。

 一方、課題としましては、書類審査の場ですけれども、審査をする側とされる側が同席することがあります。医療委員ですね。中立性が不完全であるということは前々から指摘されておりました。ただし、専門性という立場から見ますと、病院所属の医師も必要であろうと私は考えております。ただ、この中立性が不完全のために、書類審査等におきまして、医療内容に踏み込んだ意見表明を躊躇する場合があるということですね。

 それから、イギリス、フランス等の審査会制度に比べますと、病院の自己申告ということになるわけですけれども、書類審査が偏重されております。2014年度は1回の合議体の平均の書類審査件数が145件、最大は357件です。2時間程度の審査会でこれだけの書類に目を通さなければいかぬわけですね。それに比して、入院者への面接頻度が低い。先ほどの退院請求の審査の頻度から逆算しますと、非自発入院の在院者50人に対して、年間1回程度の面接が医療審査会の委員によって行われるだけである。この辺は、英仏に比べると低いという数字が出ています。それから、意見聴取までの期間が長い。平均35.2日。審査決定までに5週間ほどかかっています。このうちで一番長いのが意見聴取までの期間なのです。これが長いために、実質的に不審査になってしまうケースがある。これは、審査を受ける権限が実質的に制限されていることになるのですね。これは事務局の職員、あるいは合議体委員が不足しているためであります。

 8ページは、参考までに英仏と日本の精神科在院者数等の比較をしたものです。人口は英仏は日本の約半分ですけれども、在院患者数はご覧のように日本よりもかなり少ないです。さらに、非自発入院の比率が随分違うということです。日本の医療保護入院の件数は、一番新しいところで1年間に17万件の新たな医療保護入院が発生するということで、英仏に比べると2桁ぐらい違っています。

 9ページには、精神医療審査会が改善勧告を発すべき事象ということで、これも私見がまじっておりますけれども、今までの研究成果をまとめたものです。

 1番、2番が本来の法に規定された審査会の機能です。法令が守られていないことに関しては、やはり改善勧告をする義務があります。

 それから、過剰な行動制限に関しても勧告する義務があります。

 3、4、5は少し踏み込んだ意見であります。

 患者の尊厳を傷つける慣習です。女性が入浴しているときに男性職員が立ち会うとか、蔑称を常用するといった、意見聴取の場で患者さんの話を聞くと、時々こういう話が聞けます。それから、処遇改善請求の中にこういうことが入ってくる場合もあります。

 4番目が標準外医療のチェックです。医療保護入院の適用に疑問があるケース、あるいは多剤大量長期投薬、診断と治療法の不適合などが、書類審査や退院請求等の意見聴取で判明することがあります。

 5番目も治療的なことでありますけれども、治療的不作為です。例は少ないですけれども、入院している患者さんが薬を飲んでくれないので投薬はしていませんということで、数カ月間隔離はしているけれども、治療はしていないというケースも時に見られる。あるいは、依存症、発達障害等のケースで、治療プログラムが特にないのに、漫然と長期の閉鎖処遇をしているというケース、あるいは、退院、行動制限緩和への努力がどう見ても不足であるということも、審査会がやはり改善勧告すべきであろうと思っています。

 次の10ページに改革案、私案でありますけれども、地方と全国組織とに分けて書きました。かねてより審査会制度の問題点として独立性、中立性、専門性というものが不足ではないかという意見がありますので、それに沿って具体的な中身が書いてあります。

 独立性に関しては、精神医療審査会を、例えば労働委員会等と同等の組織的な独立性を追求すべきではないか。それから、中立性に関しては、委員の任期・選考基準の明確化、病院に所属しない医療委員の配置を義務化すべきではないか。これはなかなか難しい面もあるのですけれども、ただ、病院の経験が全くない医療委員も困るという面もあります。

 専門性の強化としましては、事務局をふやすこと、合議体委員の研修制度を新設すること、あるいは審査会の権限の明確化、前のページで示したような改善勧告の権限をちゃんと持たせるべきではないか。あるいは、今後「重度かつ慢性」患者の認定の場面でも、審査会が関与してくる可能性があります。

 全国組織は、現在全審連というのが任意団体としてありますけれども、これを法人化して専従の職員を配置すべきではないか。あるいは国庫補助をしていただきたいということです。会員の会費だけで賄われている、年間50万円程度の小さな会計規模でありますけれども、もう少し膨らませていただきたい。

 それから、事務局が現在は日精協会館にあるわけですけれども、これは中立性という観点から多少問題がある。事務局はよく働いてくれるのですけれども、外から見た場合に中立性に疑問が生じるので、弁護士会館等に移すべきではないかと考えます。

 専門性の強化としては、全審連に専従の専門委員を配置すべきであって、そこで、例えば地方の審査会から上がってきたクレーム、苦情といったものを中央として助言する、検討するという機能を持たせたらいかがかと。あるいは、研修会の開催、年次報告書の作成等をしてもらう、これが改革案です。

11ページ以降は、次の白川委員の報告と関連するかもしれませんけれども、今回の法改正でいろいろな問題があぶり出されたので、それに対する解決策の一つとしての公的保護者制度の提案ということであります。全審連の役員会で検討した事項に沿って、ちょっとご紹介いたします。

 今回の法改正で、市町村長同意の要件が限定されてしまったということで、入院手続に若干の混乱を生じております。ここに書いてあるようなケースです。首長同意ができなくなったために、医療保護入院がスムーズにいかなくなってしまったというケースが若干出てきております。ただ、この首長同意が復元すれば問題がなくなるのかと言われると、そうではないと考えられるわけです。同意責任が今回は家族等と広がって、裁判所の選任は要らなくなりましたけれども、果たしてそれでよろしいのか。医療保護入院というのは、一時的にせよ市民権の制限を伴うわけでありまして、これに見合う責任というのが同意者にはあるのではないかという問題意識から、公的保護者制度の提案をした次第です。

12ページ以降に具体的に書いてあります。精神保健専門員(仮称)を国が指定する。地域で仕事をする精神保健福祉士、看護師、保健師、心理職等の職種を想定しております。一定の研修を受けた人を専門員として国が任命する。

 この人たちが何をするかというと、まず入院を希望する家族等が保健所等の窓口に相談をして、精神保健専門員を紹介してもらう。専門員が状況をある程度調査する。それで、精神保健指定医と医療機関を確保するということです。

 4番目として、13ページですけれども、専門員は原則として指定医の診察に立ち会う。それから、入院が必要であると指定医が判断した場合は、これに同意できるかどうかを吟味した上で、同意できる場合は同意書、告知書、入院診療計画書等に署名をする、こういう制度です。入院時の手続はこういうところです。こういう時間がない場合は、例えば救急医療の場面などの場合は、応急入院という形で72時間以内にこういう手続をとるという提案です。

14ページが精神医療審査会の役割ですけれども、この専門員の紹介、入院同意の妥当性を速やかに判断するという役割を負うことにします。

 それから、医療保護入院中の利用者の権利擁護と早期退院の促進を図ることも精神保健専門員の義務と考えております。具体的には、生活環境相談員らと協議して退院に努める。それが実現困難な場合には、退院支援委員会に参加して意見を述べる。それから、処遇改善請求、退院請求の精神医療審査会に請求する権限を持つということを考えております。こういった費用は国が支給するということです。

 9番目として、これは附帯事項ですけれども、年間約13万件、これは今、17万ぐらいにふえていますけれども、この医療保護入院の全てにこの制度を適用するのはちょっと困難であるということで、当面は首長同意の医療保護入院、新規の医療保護入院の約1割未満ですけれども、ここに限定してスタートして、徐々に拡大すべきではないかという提案です。

 最後に、この制度の意義と問題点を書きました。

 意義をまとめますと、医療への導入、入院同意に対するご家族の負担を軽減するという意義が1つあります。

 2番目が、医療保護入院の決定を第三者評価で補強する。現状は家族等が入院に同意することになっていますけれども、ご家族は第三者的な立場にはなれないわけですね。ですから、中立的な立場から医療保護入院に同意するという意義があります。

 3番目は、首長同意というのは法的に非常に脆弱ですし、実務上も全く責任がないわけですね。行政職員は面会の義務もありません。そういった問題を解消するという意義があります。

 課題としては、精神保健専門員を規定したとして、果たして人員が確保できるかどうかですね。何とかできるのではないかと我々は考えております。

 2番目は、選任方法が曖昧ではないか。裁判所が関与すべきではないかという意見です。

 3番目は、専門員の選任あるいは継続を当事者が拒否した場合にどう対応するか。

 4番目が、専門員の権限と責務が不明確ではないかということです。

 5番目は、再入院の場合どうするか。退院後の専門員の役割というのは、そこで終わるのかどうか。

 最後に、この専門員が入院中の患者の権利擁護の機能を担うべきであるというのだけれども、これは入院した当事者が選べない制度ですから、権利擁護の責務を果たして遂行できるかどうかですね。それに対しては、権利擁護というのは、やはり公的保護者のみが担うべきではなくて、先ほどのアドボケーターの役割であるとか、あるいは審査会以外の弁護士の関与であるとか、地域のOmbudsman制度もありますけれども、こういう機関が重層的に担うべきであろうと考えます。

 以上です。

○山本座長 どうもありがとうございました。

 次に、白川構成員からご説明をお願いいたします。

○白川構成員 それでは、私から話をさせていただきます。精神医療審査会の事務局を全国の精神保健福祉センターのほうで持っておりますので、それを代表した形でお話をさせていただきます。

 資料3になります。平成27年度の全国精神保健福祉センター長会の調査から話をさせていただきます。2点実務的な部分をお話しさせていただきたいと思います。

 1点目になりますけれども、医療保護入院における家族等の同意の問題点と、2点目は精神医療審査会の委員確保の問題になります。

 それでは、おめくりいただきますが、2ページ目になります。1点目の調査につきましては、鳥取県のセンターの原田所長に取り仕切りをお願いいたしました。

 3ページ目になりますけれども、医療保護入院の退院請求件数になりますけれども、21年~26年の数になります。請求が1回の方も2回の方も、年度を追うごとに緩やかに増加傾向があります。ただ、25年、26年にかけてですが、26年につきましては1回の請求が減少、2回以上の請求については増加ということで、今回の法改正によってふえたとは言い切れない状況にございます。

 処遇改善請求におきましても、右肩上がりであることは変わりないのですが、25年、26年ということで、請求件数は減ったりということもありますし、2回に関してはふえているということもありますので、法改正による影響は明確ではありません。当初、法改正によって、この請求件数というのはぐっと伸びるだろうという予想をされておったのですけれども、そういうことにはなりませんでした。

 各センターから家族等の入院同意事例において問題がいろいろあるという声が上がりましたので、26年4月の法改正施行後から27年7月までの問題事例の調査を加えて行っております。

 6ページ目を見ていただければよろしいのですが、問題事例といたしまして、110件の例が集まっております。事例ごとに見ますと、家族等がかかわりを拒否するということが一番多い形になってございます。

 一例を挙げておきますが、7ページ目になります。統合失調症の50歳代の方の例になりますけれども、幻覚妄想状態が再燃して、措置入院までは必要ないものの入院治療が必要な状況ということになってしまいました。同居しているお父様は認知症で、娘の入院の同意に対しては「はい、はい」とは答えるのですけれども、現実的には入院治療というものに対しての理解が全くできずに、同意者になり得るのは困難ということをそのとき立ち会った医者が判断しております。残る家族等に該当する弟がいるのですけれども、なかなか連絡がとれなかったという状況もございますし、半日かかってようやく電話連絡がついたのですが、入院の同意を拒否されて、結果的には医療保護入院に至らなかったというような例がございます。このような場合、前であれば、市町村同意による入院ということだったのですけれども、今回の法改正後、入院医療が必要と精神保健指定医が判断しても、首長同意ができないという形に変わっているということになります。

 弟は十数年来本人との交流がなくて、このような関係にある家族等の判断が入院の決定に大きな影響を持つということは、人権上やはり非常に大きな問題があると考えています。この事例では、適切な入院医療の確保が課題ということになりました。

 こういう例を踏まえまして、審査会の調査等からも問題事例が相当数あって、入院患者の人権擁護と適正な医療保護のためには、精神医療審査会の役割は非常に大きいと考えられました。

 これらを踏まえて、適正な人権擁護を担保すべく、精神医療審査会のかなめをなす委員の状況がどうなのかということを続けて調査をさせていただきました。

 次に、2点目の調査になります。10ページをおめくりいただければと思います。精神医療審査会の委員確保に関する調査をさせていただきました。岡山県のセンターの野口所長を中心に調査を行っております。

 目的になりますが、26年4月の改正法の施行によって、精神医療審査会の機能が強化されるということが目指されたわけですけれども、実際のところはどうなのか。約2年を経た時点での審査委員の確保の状況等はどうなのかということで、今年の3月に調査を実施させていただきました。

 調査対象は、精神医療審査会の事務局を持っております全国の精神保健福祉センター、69になりますけれども、東京都につきましては3センターが合同で審査をしているということがございますので、1センターとして計上しているという形になります。調査の内容につきましては、こちらに書いてあるとおりでございます。回収率は98.5%という形になってございます。

11ページを見ていただきますと、医療委員についてですけれども、規定数に比べまして、やはりちょっと少ない形になっておりますし、予備委員につきましても不在のところが多いということになります。

 おめくりいただきまして、法律家委員になりますが、同様にやはり規定数よりも実数のほうが少ないという形になっておりますし、予備委員もいないセンターが多いということになります。

 次の13ページになりますが、有識者委員につきましては、規定数と実際の数がほぼ一致した形になってございます。ただ、予備委員につきましては、やはりいないセンターが多いということになってございます。

 いずれにしましても、規定数に比べて委員の数は少なくて、予備委員も不在のセンターが多いという状況でございます。

14ページが合議体数についてまとめたものになりますけれども、3合議体のセンターが26、2合議体のセンターが19、4合議体のセンターが15という形となってございます。

 合議体の開催数がその下に書かれてありますけれども、年12回ということで月1回ペースの開催が多いということになります。26センターがそういう形になってございます。

 審査件数になりますけれども、見ていただきますとおり、かなりばらつきがあります。どこのセンターかというのは消してございますけれども、多い順で並べているという形になります。平均的には4,000件ほどの審査をしているということになります。

 退院請求と処遇改善請求、これは厚労省のものにも出てきておりましたけれども、26年につきましては平均32.7日かかっているという状況がございます。

16ページが、審査件数の今後の見込みということですけれども、見てのとおり、ふえてきているというのは、これまでの厚労省の資料も含めて出てきているところでございますけれども、やはり増えていくだろうと半数は考えているということでございます。

 今後の合議体のほうはどうなのかということなのですが、やはり問題視して直近で変えていくというところがあることはあるのですけれども、非常に少なく、現状維持の形になってございます。

 委員の依頼方法ですけれども、医療委員と有識者委員では、専門団体・機関選定と、専門職集団あるいは機関+個別の依頼が多いという形になってございます。

 なお、ここには載っておりませんけれども、各依頼方法と委員確保の困難さということでクロスしてみますと、個別に委員をお願いするというセンターほど、医療委員の確保という部分では困難度が高いということが出ております。

 次に18ページが、退院請求・処遇改善請求時の実地審査委員を確保するための工夫ということになりますけれども、実地審査ですが、予定スケジュール外での迅速な委員確保が求められて、委員の負担も大きいのが現状ということになります。委員確保のための工夫では、日程調整で審査委員の負担軽減を図るなどの委員確保を図っている状況が示されております。

 委員の確保状況ですけれども、19ページになります。医療委員、法律家委員、有識者委員があるのですが、やはり医療委員の確保の困難さが目立っているという状況でございます。

20ページが実地審査の確保状況ということになるのですが、退院請求・処遇改善請求の実地審査の委員の確保というのは非常に困難な状況というのは、このグラフでわかってまいります。大変困難、やや困難というところを見てみますと、いずれの委員も困難で、特に医療委員、法律家委員というのは困難な状況になってございます。

21ページが審査委員の確保の今後の見通しということなのですけれども、医療委員につきましては、やはり非常に悪化するだろうという見込みが大きく出ております。審査件数もどんどん増えていくということと負担が非常に大きくなっていくということで、この委員の確保の悪化の見通しがなされているところでございます。

 医療委員の確保の工夫ということになるのですけれども、当初、精神療法の加算等で診療報酬の付加がなされて、功を奏するかと思われたのですけれども、23ページになるのですが、効果が非常にあったというところは8%にとどまっていて、確保に関しては限定的な効果しかなさなかったということになります。

 そういう点を踏まえまして、下のほうになるわけですが、医療委員の確保に必要な方策にどういうものがあるのかということで聞き取りをしておりますけれども、指定医の継続要件等に公的業務を加えるとか、あるいは医療委員依頼方法で専門団体、大学等の依頼が確保しやすいということもありますので、専門職団体とか大学等の機関に委員を出す義務や制度が有効ではないかという意見もありました。

26ページに飛んでいただきますけれども、医療委員の確保が困難という点では、自立支援医療とか手帳の審査委員も協力していただけていなくて、委員の確保に難渋しているという状況がございます。

 この2つ目の調査をまとめますと、精神医療審査会は、精神保健福祉法改正にて入院者の人権擁護と医療の質の確保のために強化するということが目指されたわけですけれども、医療委員を筆頭として委員の確保に難渋するという傾向が全国的に見えておりまして、精神医療審査会の強化という部分では、今後も慎重な検討がやはり必要ということになろうかと思います。精神保健指定医の継続要件とか、あるいは審査会等の公務への参加を要件とするということを考えていただくとか、委員を出す専門機関とか大学にはインセンティブをつけて対応していくということが必要かなと考えております。

 最後になりますけれども、医療保護入院における家族等の同意につきましては、首長同意の運用については変更が必要なのではないかと思っています。

 精神医療審査会は、精神障害者の人権に配慮して、その適正な医療を確保する大変重要な機関であるので、今後も機能強化というのは一層求められていくと思います。現状としては、審査会の委員の確保が非常に困難なことが多くて、この部分をきちんと強化していく必要性があろうかということになります。

 以上でございます。

○山本座長 どうもありがとうございました。

 それでは、これより意見交換を行いたいと思います。本日ご議論いただく問題につきましては、入院中の意思決定、意思表明の支援という論点と、精神医療審査会の論点と2つあると思いますので、一応これを2つ分けて、入院中の意思決定、意思表明の支援に関する問題をまずご議論いただきまして、引き続いて、精神医療審査会についてご議論いただきたいと思います。

 なお、時間が限られておりますので、ご発言をされる際にはなるべく簡潔にお願いしたいと思います。

 まず、入院中の意思決定、意思表明支援に関して、どなたからでもご意見をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 どうぞ。

○澤田構成員 前にも申し上げましたけれども、代弁者は必要ありません。本人の声を聞いてくださいということです。理由は繰り返しませんけれども、1つ付け加えさせていただきます。代弁者がいても、代弁者が帰った後で注射される、保護室に入れられるというのが変わらないのであれば、代弁者がいても何も言えないのは変わらないと思います。小手先の制度をつくるのではなくて、患者を抑圧する、自尊心をずたずたにするのをやめていただきたいと思います。

 それから、密室に小さい穴を一つあけても風通しはよくならないということです。

 以上です。

○山本座長 どうもありがとうございました。

 今のご意見に関しまして、どなたかご意見はございますでしょうか。代弁者が必要な方もいらっしゃると思いますので、一応ここでは澤田構成員のご意見をいただきまして、代弁者についてのご議論を進めていきたいと思いますので、よろしくご了承いただきたいと思います。

 太田先生、どうぞ。

○太田構成員 代弁者制度が全体として要らないと言うつもりはありませんが、一体どういう患者さんに対して代弁者が要ると思っているのかというのをもう少しクリアにされたほうがいいのではないかと思います。

 一例として、自分で退院請求できるという患者さんを考えると、その人に代弁者をさらにつける必要があるのか。その退院請求について、医者がもうちょっと入院しておいたほうがいいよと言うのは医者としてあるであろうとは思います。もう一度入院が継続されるということも結果としてあると思います。ただ、既に退院請求をやるというぐらい意思は表明されていて、もしそこで代弁者をつけるとすれば、何だかよくわからない、理由を十分には整理できていないが退院請求は出せる、このようなときに代弁者がより医者が理解しやすいロジックをつくり出して代弁するというのならば役に立つかもしれませんが、やはりそこで注意しないといけないのは、医者がわかりやすいというロジックを使ってというところである種の合理化をする、そのときに、その合理化は翻訳の際にもともとの患者さんの気持ちから外れる可能性があるということです。

 もし、患者さんが退院請求をするぐらい嫌がっている、入院治療の必要も極端に高くない、そういう場合には、そもそも退院請求まで至らずに医者のほうが解放するという現実があるのであれば問題は少ないし、実は代弁者も要らないということになりますね。そこで医者が頑張る、やはりもう少し治療したほうがいいと。いわば正規のルートとしての退院請求に出てくるというときに、代弁者をつけるかどうかということは、先ほど言った理由からすると、やはりもうちょっと考えたほうがいいだろうと思います。

 逆に、何となく意思表明もできなくて、何を考えているか本意がつかめないという患者さんがいたとして、その人に代弁者がつく、それは何か意味があるように見えるのですが、お医者さんが本意をつかめないという患者さんに対して、代弁者のほうがうまくその本意をつかめる可能性がなぜあるのか。かつ、それは第三者が見たり医者が見たりしたときに、セカンドオピニオンとしてより尊重に値すると思えるロジックがなぜ存在するのかというのが次によくわかりません。

 代弁者というのは、私の業界だと弁護士が典型になりますが、弁護士はクライアント本人から委任を受ける、つまりそれによって信頼を与えられて、先ほどの医者のロジックで言えば、裁判官がわかりやすいロジックに組みかえるという役目を負うわけですね。そのときには、本音を忖度しつつ法律論を考えていくという役目があるわけですが、いまひとつ本音がよくわからないという患者さんを念頭に置きますと、その依頼行為というものを設定できない。そうすると、その代弁者というのは、なぜ代弁できるだけの信頼を与えられているということをどこから認識するのかということが問題となり、やはり論拠として弱いと思うのですね。

 それでも何か代弁者のようなものが要るだろう、要するに医者の完全な支配下に置かれて不透明になる。この問題意識はわかります。でも、そのときはもはや代弁者ではなくて、職権活動として、いわば外から介入していくべき存在であり、公的保護者制度というのはそういう意味では理解しやすい。むしろそれは何らかの形で委任を受けるかどうかにかかわりなく活動する職種だとすれば、わかりやすいだろうと思います。

 だから、代弁者と言って、何となく意思表明をする人が必要だというところまではわかりますが、どのタイプの患者に特に必要だと考えているのか。どのタイプの患者を念頭に置いて考えて、何を代弁してもらうのか。また、代弁できるという、業界ではラポールとか言ったりすることもケースワーカーのほうであるようですが、その信頼関係をどこから調達してくるのかというのをもう少しクリアにして、その局面で何かがあるのだったら必要だろうと思いますが、最初から必要か必要でないかという一体的な判断はなさるべきではないだろうと思います。

○山本座長 どうもありがとうございます。

 今の太田先生の議論で何かご意見がある方はいらっしゃいますか。どういうタイプの患者について必要なのかという点について、いかがでしょうか。

 澤田構成員、どうぞ。

○澤田構成員 ありがとうございました。太田構成員のご意見に全く同感でございます。

○山本座長 ほかはいかがでございますか。

 どうぞ。

○岩上構成員 岩上です。

 厚労省の資料1の10ページ目に調査研究事業が書かれていて、平成24年度は神奈川県の精神障害者地域支援団体連合会が調査をしているのですが、既に退院された方々にアンケート調査をしたところ、6割の方は代弁者は必要だということで回答している。何をしてほしいかということについては、寄り添って自分の話をきちんと聞いてほしい、そして、必要なことについては医療機関に自分にかわって話をしてほしいと、結果として出ていますので、代弁者制度があればいいということではなく、基本的には医療機関の人員配置等の問題等もあるので、そこは手厚くするのは大前提だと思います。

 しかし、その上で話をしたい、聞いてほしいというのはどういうことかというと、医療機関側はもうきちんと権利支援をしていく、そういう方針のもと支援はしているけれども、入院自体は医療機関の医師が決定を下しているので、その中でご本人が入院を決めた方々の意見をきちんと聞けるかどうかという問題があって、多くの方々は医療を進めていく中で信頼関係をつくって退院に向かっていくということはあるけれども、中には医療不信のまま進んでいく。そのときに必ずしも退院請求をするというわけではなくて、その間にもう一度人との信頼関係を取り戻すプロセスが必要で、そのために、この枠組みでは意思決定支援のモデル事業が行われてきたということがございます。

○山本座長 ありがとうございます。

 太田先生、いかがですか。

○太田構成員 先ほどの話がよく示していると思うのですが、代弁してほしい人が6割いる、それは事実として私も受け入れますが、問題はそこで期待されている機能は何かというのは、我々は独立に考える必要があるだろうと思います。

 お話を聞いていると、医療機関への不信があり、何か寄り添う形でもっと自分のことを親身になって世話をし、ある種、本音を医療機関にうまく伝えてほしいということがあったときに、場合によっては闘うことも辞さずという権利擁護という文脈で捉えるのか、あるいはセカンドオピニオン的な機会がほしい、セカンドオピニオンの先生も合理的だというのであれば、なるほど信用してもいいという形で捉えているのか。

 セカンドオピニオンを求めるとかいうのは、法律家的な発想からすると、闘うことも辞さずという権利擁護とはやはり違うだろうと思います。かつセカンドオピニオンがなぜセカンドであるということに意義があるかというと、医療機関への不信というものをおっしゃいましたが、要するに病院組織内部にいる人だと困るわけですね。だからアドボケイトのように見えるわけですが、お話を聞いている限りでは、外にいて、その合理性をチェックしてくれる別の人ということになると、それはセカンドオピニオンも含めて、どことなく私にはチーム医療の発想で考えられているような気がします。もちろん、ある種の外部を巻き込んだチーム医療のようなものが必要であるという意見は尊重できますが、そういうチーム医療的な制度と場合によっては闘うことも辞さず、そのときの弁護士的な役割をしてもらう制度と、これはやはり文脈を少し分けて考えられたほうがよろしいのではないかという気がいたします。

○山本座長 どうもありがとうございます。

 それでは、この代弁者というのは一体どういう役割を果たすべきなのか、どういう機能を果たすべきなのかということについてから、少し議論したほうがいいと思いますので、この点について、そもそもこれは平成26年6月の第3ラウンドでも議論がされたのだけれども、必ずしも明らかではなかったということなのですね。ここでの議論というのは、どこまでなされたのでしょうか。事務局、いかがでしょうか。「必ずしも明らかでなく」と2ページに書かれているのですが、ここでは果たすべき役割についてどういう議論がなされたのですか。全然議論はなされなかったのですか。どうでしょうか。

○占部課長補佐 第3ラウンドの議論ですけれども、簡単に申しますと、もともとここでの代弁者についての議論は、資料の3ページをご覧いただければと思いますけれども、入院制度とのセットで、権利を擁護する人を整理する必要があるだろうというところで出てきたと理解をしております。左側の下のところですけれども、保護者による同意を必要としない入院手続とするということで、その際に、同意によらない入院ということになりますので、入院中の権利擁護のために、本人の権利擁護をする存在をもう一つつくるべきではないかということで、自分の気持ちを代弁する人を選べることとするという議論が出てきたと理解をしております。

 その上で、どのような人に代弁者としてかかわってもらうかというところですけれども、まず、先ほどの入院制度との関連で言いますと、4ページの(1)の下から2つ目の○ですけれども、ここでは「本人の権利擁護のための仕組みとして、入院した人は自分の気持ちを代弁し、病院などに伝える役割をする代弁者を選ぶことができることとする」と書いております。そういった意味で申しますと、先ほどの議論にも少しありましたが、本人の意向を何らかの形で正確に聞き取った上で病院などに伝える役割ということで、それ以上に代弁者が具体的にどういった行為を行うかというところについてまでは、この段階では明確には議論されていなかったということでございます。あくまで入院制度とのかかわりの中で、こういった存在をつくってはどうかというところで議論されていたものということでございます。

○山本座長 自分の気持ちを代弁するというのは、結局かなり広い概念ですよね。先ほど太田先生がご指摘になったように、そこに幾つかの違う要素というか、そういうものもちょっと含まれてくるのではないだろうかと。そのうち、どの部分までアドボケーターの役割として考えていくのか。そこをはっきりさせないと、役割とか、それに対する対象者もはっきりしないということになりますので、その点はいかがなのでしょうか。

 どうぞ。

○本條構成員 やはり代弁者という定義がはっきりしていないところに問題があるのではないかなと思います。この代弁者というのが出てきた背景は、保護者制度をなくすということによって、入院をさせるべき判断といいますか、そういうものを代弁者に与えるというところからなったのではないかと思いますので、そもそもそういう点から言いますと、私は反対であります。やはり本人の意思というものが大変重要になってくるのではないか。

 ただ、権利擁護と太田先生もおっしゃいましたけれども、そういう意味から言いますと、やはり法的な素養がある方が、権利の擁護の面から代理人といいますか、そういう代弁者というのもあってもいいのではないかなと思います。それを家族がするということは、とてもできない。というのは、家族というのは、本人と時には利益相反の関係になりますから、本人の権利擁護者には正直言ってなれないのではないか。また、家族が入院あるいは治療方針などの同意というものを本人にかわって行使するということは非常に責任も重いですし、そういう権利もないと私は思います。

○山本座長 どうもありがとうございます。

 では、千葉先生。

○千葉構成員 少し整理をしていただかないと話が混乱するように思うのですが、入院時の入院手続における場合の権利擁護の話、そこで代弁者というのか、それとも入院してから、入院中の療養に関して本人のいろいろな思いや要望を代弁するのか、そこのところは全く違う話だと思うのですね。そこのところについて、きょうのプレゼンの中で、平田先生のところで公的代理人の話があったものですから、ちょっと代弁者制度のところがぼやけたといいますか、拡大してしまった議論になっているように思うのですが、本来は、もともと今まで代弁者について話し合われてきたいろいろな経緯は、入院中の患者さんの意思の代弁をするのだということが問題なのであって、今、お話しになったような入院時の手続としてのお話とは代弁者は違うので、そこら辺のところは整理をして進めたほうがいいと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

 本日は入院中の権利擁護に限定して、入院時の問題は前回の議論でございますので、今回は入院中についての権利擁護ということに絞ってご議論をいただきたいと思います。

 先生、いかがですか。

○太田構成員 別に前回の議論を蒸し返すつもりはなく、入院中の権利擁護で結構なのですが、入院中と言いますと、出ていきたいと言う人がいますので、退院時の権利擁護なのか、入院は是認していて、その代弁者も入院は是認する役割しか演じないということになるのか。そういう代弁者が患者にとってどう見えるか。要するに、医者とぐるになって、自分を出ていかさないやつだという前提で代弁してくれる、その程度の存在だと思って患者さんが信頼してくれるとして、それは役に立つ代弁者か等々はやはりお考えになったほうがよろしいかと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

 入院中といっても、どの場面でどういう役割を果たすのかということが一つはっきりしていないものですから、そこをはっきりさせる必要があるのだろうと思うのですね。それについて、何かご意見がある方はいらっしゃいますか。

 どうぞ。

○澤田構成員 代弁者の定義とか機能とかもそうなのですけれども、権限といいますか、代弁していただいたら、どのくらい患者の要望が通るのか、そこも重大だと思うのですけれども。

○山本座長 どうもありがとうございます。

 何かいかがでしょうか。

 入院中ということであれば、一番考えられるのは処遇改善請求とか退院の請求ということですよね。そういうことが権利擁護ということで考えらえているのではないかと私自身は思っているのですが、それ以外にも権利擁護という範囲において、何かございますでしょうか。

 一応私が考えたのは、処遇改善請求を本人にかわって行うとか、あるいは退院が必要になっているのだけれども、本人はできないので退院請求を行うということが一つの権利擁護の典型的な例だと考えていたのですが、それ以外はどうですか。

○千葉構成員 退院請求はご自分でもすることが可能なわけであって、誰かに頼まなければできないという話では全くないですし、言いにくい処遇改善請求のほうは、もうちょっとこうしてほしいなというところをそれとなく誰かに言ってほしい、どうも遠慮があるとか、いろいろな形はわかるのですけれども、退院請求ということになれば、ダイレクトに自分がまずすることができるわけで、その意思のある方が誰かに頼んで行わなければならないというような制度にはなっていないので、そこの部分はお話の中に違和感はあります。逆に、本人が意図しないのに代理人が退院請求をするというのもまた変な話ですし、ですから、あくまで本人の意思の存在があって、代理人が退院請求のお手伝いをする。「お手伝いする」はわかるのですけれども、「かわりにやる」は何だか不思議な気がするということです。

 それから、権利擁護だけではなくて、例えば退院をして私はこういう生活をしてみたいのだ、こういう思いがあるのだと。一人で住みたいから始まって、さまざまのことがあって、それが自分のことをうまくまとめてお話ができない方とかがおありになるわけで、そこにまさしく寄り添ってお話を聞きつつ、こう思っているようなことがあるみたいであるといったところを、ああそうだったのか、そんな思いを持っていたのは知らなかったというふうに医療関係側のほうがわかってもらえるような、そういう代弁といったことも含めて、役割はかなり広いのではないかなと。あくまで本人が望めば、そういう方々を利用することができるというか、お願いして、それに対してそういう道があるということが大切なのではないかなと思います。

○山本座長 ありがとうございます。

 千葉先生のお考えだと、もう少し広く捉えるべきだと。精神保健福祉法上の権利行使だけではなくて、代弁者といいますか、アドボケーターというのですか、これをもう少し広げて役割を考えていくべきだというご議論だと思うのですが、それについてはいかがでございましょうか。

 どうぞ。

○太田構成員 出ていきたいとか、明確な処遇改善請求をするとかという話ではなくて、治療上の要望を少し伝えるとか、千葉先生がおっしゃったようなことを医者にうまく伝えてあげるという役回りの人がいたほうがいいのではないかと。特に、意思表明について困難を抱えている患者さんも多いだろうしということはよくわかるのですが、これは私は素人でお聞きしたいのですけれども、精神障害ではないよくある病気に対する治療行為についても、入院していてそういう希望を持つということはあろうかと思います。そういうときには、私の素人趣旨だと、看護師さんとか、あるいは医療ソーシャルワーカーとか、やはり病院組織でいいわけですよね。そのときに、アドボケートの機能を持っているが、外部に置かずに、その病院が自発的に普通は反応するだろうという期待をして世の中動いていっているような気がするのですが、そのときに、外部性がこの領域において強く求められるとすれば、それは一体どういう理由によるのでしょうか。

○山本座長 千葉先生、それはいかがですか。

○千葉構成員 精神障害で入院をされている方の意思の表明というのは、ある意味曖昧であり、またご自分の中でもまとまった形にきれいに整理されることが不得意な方々も随分おられると思います。ですから、じっくりとその方々とお話をしていることによって本人の気持ちも固まってくる、あるいはこういうことが言いたかったのだよというふうに、逆にそこの経過の中でご本人が自分ではっきりした形になっていくというような支援も必要なのだろうなということを含めて、そこに寄り添っていく、ここで言えばアドボケーターという役割を果たすということなのだろうと思います。

 また、これは医療をサービスとして提供している側のほうがもっと細やかに、一人ずつに思いを聞いて対応していくということはとても大切なことなのだろうと思いますけれども、物を言わない方というのは余り手が入らない。どちらかというと、かなり声高に、あるいは主張される方のほうにどうしても視点がいってしまうということがあって、静かな患者さんほど余りそういうところに手が入っていかないというのが今までの我々側の反省でもあって、申しわけないですけれども、そこを補完してくださるような方々があるのだったら、あるに越したことはないということだと思います。

○山本座長 どうぞ。

○太田構成員 そのロジックはよくわかりますが、それであると、やはりチーム医療的な発想ですよね。ある種、医者のお手伝いと言ったら悪いですけれども、医者がちょっとほかの患者にリソースを使わないといけないところを、よく話を聞いて面談してほしいというような役割ですよね。だから、それは重要な役割ではあると思いますが、アドボケーターの中の文脈でも、ちょっと違う文脈ではないかなという気がするのですけれども。

○千葉構成員 医療側からのお手伝いだというようなイメージなのか、それともご本人のお手伝いだというイメージなのかによって、そこの部分はちょっと違うのではないかなと思うのです。

○山本座長 でも、それはどちらから見るかの違いではないですか。

○千葉構成員 今の太田構成員のお話が、医療側のお手伝いという形のほうの視点で見ておられましたし、チーム医療ということになると、医療サービスをする側のほうからの視点になりますけれども、そうではなくて、この問題は受ける側のほうの視点で見るべきなのではないかなということでお話をしています。

○山本座長 太田先生は、そこまでアドボケーターの役割としては入れるべきではないという。

○太田構成員 単に、分けておいたほうがいいと思っています。つまり権利擁護というのは、私だとどうしても弁護士になりますが、それは要するに医者と闘ってでもその人の権利を守る。それがないと信頼してもらえないわけですよね。弁護士が、相手方と「ここら辺が落としどころですよ」と言って、いつひっくり返って丸め込むかということになっては困る。そこは、弁護士がある種の信頼関係に基づいて「これ以上やっても負けますから」と丸め込むことももちろんあるでしょうけれども、いざとなったらこの人は最後まで闘ってくれる人だという信頼は別途必要な局面がある。だから、私はどちらかにしろというよりは、だったら2つ分けておけばいい。アドボケーターA、アドボケーターBという2つのタイプを置くべきであろう、そういうことです。

○山本座長 役割が違いますからね。

 一応をそれを分けて議論したほうがいいのではないかと思うのですが、これは両方必要ですよということはあるかもしれない、最終的にはそうなるかもしれませんが、一応役割が違いますので、今、太田先生が言われたように、A、Bでも結構ですので、ちょっと分けて議論していくというのはいかがですか。

○千葉構成員 私の理解が、あるいは何人か理解できているかどうかお聞きしたいのですが、A、Bに分けるというのは、1つは権利擁護という問題の人と、それから患者さん自身、ご本人の支援というような問題とを分けるという意味でしょうか。

○山本座長 どうぞ。

○太田構成員 片方は権利擁護で、それが支援と全く無縁だというのはおかしいだろうと思います。要するに、患者さんの利益のために存在するのだけれども、そのときの権限、あるいは機能するコンテクストを分けて考えておいたほうがいいということです。医者との協力関係を前提にし、患者さんとの協力関係を前提にし、間を取り持つような感じの機能になってしまうかもしれないアドボケーターAタイプと、場合によっては、医者と闘ってでもその人のために、そちらの側にしかいないということになってしまうアドボケーターBタイプと分けておいたほうがいい。1人の中でやると、この人の中に利益相反が生じる可能性があり、あるいは患者さんからも医者からも信頼してもらえない。その結果として動かない。やはりその人の持っている役割というものをきちっと認識するということが、この人はこういう役割を演じるはずの人であるということで、やはり全員から信頼を得るということにならないかということです。

○山本座長 千葉先生、いかがですか。

○千葉構成員 我々が自分たちでやっているところで言うと、そこのところに余り線引きがない、シームレスにつながってしまっているものですから、分けろと言われたときに、どこで分けるのだろうという混乱を逆に持ってしまっているのですが、その両端のところだけから言えば、今、先生が言うように違うだろうという話にはもちろんなると思うのですけれども、そこのところのつなぎ目はないのかというと、そんなことはないので、タイプを分けようねという話になったときに、分けられない事象が山ほど出てきてしまうよねという話になってきていて、両端のところからいけばというか、特に「闘うんだ」のところからいけば、それは別に依頼をすれば、そういう方々は自分たちで弁護士さんなり何なりに依頼することができるというところはあると思うのですね。極端にそちら側にいってしまう、その端っこのほうというのは。ただ、そうではなく、もっとマイルドに解決をする方法の部分の中、こう思っているのですよ、闘うぞというところまでではなく、その部分で本人がそう思っているのなら、そういうことを思っているのだけれども伝えにくい、思っているから行動を起こすのだというところは、もちろん代弁者は要らないわけですよね。そこの部分なのだと思うのです。

○山本座長 澤田先生、今のあれでいかがでございますか。

○澤田構成員 私は30年以上患者をやっておりますけれども、この30年以上の間に、患者仲間から考えがまとまらなくて言えなかったとか、うまく言えなかったとかという話はただの一度も聞いたことがありませんし、読んだこともありません。何度も何度も聞いたり、読んだりしたのは、何か言うと注射される、保護室に入れられる、薬をふやされる、退院が延ばされるということです。

○山本座長 どうもありがとうございます。

 では、太田先生、今のことについて。

○太田構成員 千葉先生のご意見は、私にはこのように聞こえるということで述べます。千葉先生のご意見は、両極の中で、闘う気になったら幾らでも装備があって、これに対して闘わないけれども、もうちょっとうまく伝えたいというところに対する装備が弱いので、その部分のことを考えてほしいと。私はそのことについて反対はしていなくて、そのときにはそれを期待する、それしか期待しないということを意識して議論するべきであって、それは私には両極あるタイプの、千葉先生のおっしゃるマイルド型を優先的に議論してほしいというお話に聞こえて、それはそれで構いません。ただ、そのときには、あくまでもマイルド型でしかないということを認識して議論されたらいかがですかということです。

○山本座長 今、お2人の議論は大体内容はわかってきたと思いますので、ほかの先生方のご意見はいかがでしょうか。余り時間もありませんので、ほかの先生方からも。

 では、岩上先生。

○岩上構成員 澤田構成員がおっしゃっていることと私は全然違う意見なのですけれども、今の千葉先生の話もそうなのですけれども、意思を表明する前段階を必要としていらっしゃる方がたくさんいらっしゃって、やっと病院と違う立場の人に会えました、会ったことによって日本語を思い出しました、お話しする機会を得たことによって、私は実はこういうふうに考えているのだと言えるようになった人たちがモデル事業の中ではたくさんいらっしゃる。

 その中で、モデル事業としては、医療側につくということではなく、そこで極端に大きな支援をすることではなく、ご本人が思っていらっしゃることで、ご本人の同意が得られることについて医療機関にお伝えする。それが治療に生かされるかどうかというのは医療機関の判断である。その上でもっと、私は不法な入院をされているので闘いたいということであれば、それもお伝えして、お伝えすれば医療機関はそのための手だてを打つ。もう一度、今回の入院がどういう入院であったか説明していただいて、それに対して精神医療審査会に退院請求できる、その説明をもう一度していただく。その繰り返しですよね。ただ、それを求めている患者さんというのが非常に多い。

 それをしなかった結果どうなったかというと、長期入院の方が生まれていき、あるいは入退院を繰り返しているということが今まで行われていたので、基本は医療機関の人員配置はきちんとやっていくのだけれども、意思表明ができないという現実に対しての手だてとして、このモデル事業は今まで行われていて、これは基本的には必要なものだと思います。

○山本座長 ありがとうございました。

 では、本條構成員。

○本條構成員 こういう問題が出てきた背景は、先ほど太田先生から一般医療との違いというお話がありましたけれども、一般医療におきましてはインフォームド・コンセント、これは本人と家族、主に本人が第一義的には説明と同意を求めるものだと思いますが、そういうことが精神科の場合は余りなされていないというか、そういうものができにくい状況にある。一般医療でも、お医者さんと患者というのは、やはり権力関係というのですか、患者としてこういう治療方針でというか、そういうことはなかなか言えない立場にあるわけですから、それを適切なインフォームド・コンセントがなされていればいいのですけれども、それを擁護していくという意味においては、私は必要ではないかと思います。その前提として、ご本人及び家族に対して、入院時手続だけではなく、入院中の治療、あるいは入院生活についても人権が十分配慮されているかどうか、そういう点も権利擁護していく必要があるのではないかと思います。

○山本座長 どうもありがとうございました。

 ほかはいかがですか。

 すみませんが、あとお一人ぐらいで。

○吉川構成員代理仲野氏 この代弁者の話が出たときに、いわゆる法律的云々というのがちょっとわからなかったので、私がイメージしたのがチーム医療をさらに本人さんに寄り添うような形でするための支えみたいな一つではないかなと思っていました。

 岩上さんの事業とかもお手伝いさせていただいたら、ご本人が同意していなくて入院された、そのときには看護師が中心になってきちんとお話を聞くとかということをしないといけないというのはわかっているのですが、3交代で入っているとか、ぎりぎりのマンパワーでやっていると、どうしてもなかなかそこに至らず、本来の意味でご本人にゆっくりお話を聞かせていただくという時間がとれないという現状があるのです。ただ、それをきちんと看護師が解消できていないという実態もありますが、だから、そこを補強するためというようなイメージでしたので、こういう役割をとる人がいると、ご本人が余り抵抗なくというか、本当はこう思っているとか、本当はこうだったのだということを教えていただけるのかなと。そういう役割なら有効ではないかと思います。

○山本座長 そういう役割を果たすべき人もいるのでしょうね。また別のタイプもいるのではないかということだろうと思うのです。要するに、闘っているのでも、患者自身の権利擁護をするというのはちょっと違うのではないだろうか。それはやはり分けてきちっと議論したほうがいいのではないかというのが太田先生のご趣旨だと思うのですが。

 どうぞ。平田先生、簡単に。すみません。

○平田構成員 代弁者制度について、私は特にはっきりした意見を今まで持っていなかったのですけれども、審査会制度との共通点がやはりあると思うのですね。何が共通しているかというと、外部評価の機会を提供するということではないかと思います。非自発入院が強要される条件についてはこの間お話ししましたけれども、やはり良質な医療が提供されるということが、自分の意に反した入院を受け入れる条件の一つだと思うのです。

 ただ、今の日本の精神科の医療、特に入院治療の現状は必ずしも均質ではありません。どこの現場もみんな同じような医療が提供できるという現状にないわけですよね。それから、個々の医療機関、医療者は一生懸命限られた条件の中で努力していい医療を提供しようとしても、できない場合もあるわけですね。主観的には一生懸命やっているつもりでも、あの病院とこの病院と大分違うでしょうというのが外から見ればわかるわけですね。

 だから、良質な医療、あるいは適正な医療を提供するという、精神医療審査会の役割もそれなのですけれども、審査会は今、白川さんからもお話があったように、機能は限局的ですよね。すごく限られています。処遇改善請求を受理するかどうかというところも行動制限がやはり中心になってしまって、医療の中身まではなかなか立ち入れないという現状があるわけですから、外部評価の一つの手段としてアドボケーター的な役割というのは、精神医療審査会の機能を補強するというわけではなくて、多層的に、重層的にそういう評価とか権利擁護のシステムがあったほうがいいと思いますので、その中の一つに組み込んでいく方向を考えればいいのではないかと思います。

○山本座長 貴重なご意見、どうもありがとうございました。

 きょうは、アドボケーターというのはどういう人を言うのですか、どういう役割を果たすのですかという入り口の議論していただきまして、その点ではある程度議論ができたと思いますので、この点についての議論はこのぐらいにいたしまして、次に精神医療審査会に関して、残った時間でご議論いただきたいと思います。

 どなたからでも結構でございます。

 どうぞ。

○太田構成員 事務局にお願いしたいのですが、ある程度、白川先生と平田先生の資料で出てくるのですが、退院勧告とか、ある種の認容率と、認容したときに変更しなさいといったときに、退院請求を受けて変更するのと定期報告を受けて変更を勧告するのと、それぞれどういう相関があるかがわかる資料というのを出していただけないかと思うのです。これだと日数と件数はわかりますが、例えば行政上の不服申し立てを議論するといったら、当然認容率はどのぐらいで、どういうタイプの認容が一番高いかとかいうのも普通我々は示されて議論をしますので、不服審査そのものではありませんけれども、類似の機能を果たしているので、ちょっと出していただけませんか。

○平田構成員 認容率というのは、どういうものですか。

○太田構成員 例えば、お示しくださった退院請求の審査状況の中で、審査を開始していて、例えば形式勧告とか退院勧告というものが出たら、それは我々の業界だと申し立てがある程度実を挙げたということで、「認容された」というような感じで言います。その程度の意味です。

○山本座長 事務局、いかがでございますか。

○占部課長補佐 今、手元にある数字はちょっと限定的ですので、またそこについては整理してお出しをさせていただきたいと思います。

○山本座長 どうもありがとうございます。

 いかがでしょうか。

 はい、どうぞ。

○千葉構成員 平田先生といつも全審連のほうではご一緒なのであれなのですが、わかっている内容をもう一度改めてここでお聞きしてお答えをいただきたいと思っているのですけれども、全国の精神医療審査会の運用の仕方、マニュアル等につきましても、一度調査をしたことがあるかと思うのですけれども、全国的にかなりばらつきがあって、どうも手順そのものが一定の均一な運用の形になっていないということを感じたことがあるのですが、その辺のところはいかがなのでしょうか。

○平田構成員 一昨年でしたか、法改正に伴う審査会の運営マニュアルの改訂の作業の中で全国調査をしたわけですね。全国の審査会から各審査会ごとの運営要綱というものを取り寄せまして、みんなで手分けして比較して、国が出しているマニュアルとの相違点みたいなものを比較したことがありますけれども、余り一致していないのですね。ばらばらなのです。その辺がこういう審査状況の地域差というものを生み出す一つの要因になっているかなという印象がありましたので、その研究報告では、全国の審査会に対して国のマニュアルにできるだけ準拠したものをつくるべきであるという勧告をした覚えがあります。国からも多分通知が出ていますよね。

 それが果たして実行されているかどうかというのは、やはり何年かに一遍はモニタリンしなければだめでしょうね。まず各地の運営要綱が国のマニュアルにどれぐらい準拠しているかということを3~4年に1回ぐらいは調査すべきだろうと思います。そんなにまだ変わってはいないのではないかと思います。

○山本座長 千葉先生、よろしいですか。

○千葉構成員 ありがとうございます。

○山本座長 ほかはいかがでございましょうか。

 どうぞ。

○平田構成員 先ほどの太田委員の認容率に関してですけれども、私の資料の6ページ目、審査をしても実際に退院の要求が通るのは、入院者の側から見ると1%未満である。それから、入院形式も含めてせいぜい5%未満しか自分たちの意見は取り入れられないのではないかというこの数字だけを見て、審査会の機能というのは全くの形式的な審査であって、要するに権利擁護のシステムがあるのですよということのアリバイ証明的な制度にすぎないのではないかという意見もあるわけですね。

 ただ、一方で、余りに退院勧告が多かったり、あるいは処遇改善命令がやたらに多いというのは問題であろうと。私は、10%を超えてしまったら、制度設計を根本から見直さなければいけないということのあらわれだと思っていますので、この数字が低いからといって、審査会制度の存在理由が低くなるということは決してないと考えています。

○山本座長 どうぞ。

○太田構成員 もちろんそれはそのとおりであって、そのことを言おうとしているわけではありません。せっかくだから言いますが、お話を聞いていて、この低い中に、大量の書面審査しかしていないということとの連関はどの程度あるのかというのが気になりました。それから、書面審査だけでも一件一件やろうとすると、実は理由を書かせるだけでかなりしんどい。我々の業界では理由提示、理由付記と言いますが、判断の理由を一個一個書かせるだけでも、コントロールの実が上がると言われています。この月1回2時間で何千件という形で見て、1回につき400500見ていそうだと。

○平田構成員 140件。

○太田構成員 2時間140件だとすると、1回1件1分とかいうことになってしまいますね。

○平田構成員 全員が見るわけではないです。

○太田構成員 そのときに、定型の文句で「これは当たりません」とか、「あなたの申し立ては認められません」とかやっているのか、それとももうちょっときちっと「あなたの言い分はかくかくしかじかですが、なお、これこれの理由で認めません」と言っているのかによっても大分信頼度は変わるだろうと思います。そこら辺をせっかくですから教えていただけますか。

○平田構成員 書類審査は、これは管理者が書く書類なのですね。入院者が書く書類ではありません。管理者が、医療保護入院を決定したとき、それから継続を長期間、1年以上している、その医学的な根拠を論証するための書類です。それがちゃんとつじつまが合っているかどうかをチェックするだけのシステムです。上手に書き方をマスターしていれば、まず通る。だから、自己申告にすぎない。書き方次第で、上手下手があって、下手な人は返戻されるわけですよ。そういうのが現状です。

○千葉構成員 ちょっと誤解があるようなので、いいですか。別に擁護するのではなくて、今のお話のやりとりの中でちょっと違うなと思って聞いていましたけれども、退院請求は140件を1回にやっているわけではないのです。全部の医療保護入院等の定期病状報告書等が全部でがさっと1人当たり140件、1日でやらなければならないということで、退院請求は退院請求で別に上がってきますので、それについてはその部分を全委員で審議するということになっています。それから意見書も、主治医も病院管理者も、それから前であればご家族でしたけれども、今それがなくなっているのでしょうけれども、それも一緒について出てきてということですので、審査の仕方がちょっと違うので、今の話はどっとくる医療保護入院の入院報告だったり、定期病状報告だったりということですので、一緒にしないでください。

○山本座長 ちょっと区別しないといけないですね。

○太田構成員 せっかくですから、もう少し実務のことをお伺いしたいのですが、そのときに、例えば定期報告を受けて、まだ入院の必要があるということを承認する、あるいは退院請求を受けて入院の必要があると認定するというときに、これはちゃんと審査会のほうから患者さんにじかに通知が行くのですか。その通知には、ある程度きちっとした、1行2行ではない、もうちょっと長い理由が付されているのですか。

○平田構成員 書類審査には、通常は返事は出ません。よほど問題がある場合は、審問権とか調査権がありますので、退院請求、処遇改善請求がなくても、委員の判断で病院を訪問して調査することは可能ですけれども、通常は返事は書きません。退院・処遇改善請求等に関しては、審査の結果、これは6種類しか選択肢がないのですけれども、それを伝えることと、理由を書く場合と書かない場合があるのですね。附帯意見をつける場合とつけない場合があります。附帯意見をつける場合は、請求した患者さんに対する意見と、管理者に対する意見、ご家族に対する意見というふうに三者分けて書く場合と、何も書かない場合と、何も書かない場合のほうが圧倒的に多いと思います。

○山本座長 それでよろしいですか。

○占部課長補佐 若干補足をいたしますと、手続上、審査後の実際にどのような形で患者に対して伝えるのかということですけれども、資料1の31ページをご覧いただきますと、これは退院請求等の場合ですけれども、審査を行った結果につきましては、幾つか類型がありまして、退院請求の場合ですと、(1)のマル1~マル5のそれぞれの類型がございます。こういった結果について、形式としては、審査会から都道府県知事ないしは指定都市の市長に対して通知をし、都道府県知事・指定都市の市長から、実際に請求をした請求者ないし精神科病院の管理者に対して、その結果の通知等を行うという格好になっております。

○太田構成員 ちょっと条文を今、確認できないので、行政手続法の適用はありますか。

○占部課長補佐 行政手続法の適用はあります。

○太田構成員 では、理由提示とか、一応その水準でなされるのですか。

○占部課長補佐 すみません、ちょっと確認をさせていただければと思います。

○山本座長 退院請求とか処遇改善請求に対しては、理由を付さなければだめではないですか。理由は書くのではないですか。

○平田構成員 その理由は、だからこの5つの中から。

○山本座長 その結果だけではなくて、結果に至った理由を。

○平田構成員 そうですね。なぜ入院が必要であるかということの理由は、選択肢が幾つかありますよね。ただ、それはほんの数行ですね。1行で終わったりします。

○山本座長 よろしいですか。時間になってきましたので。

 これはまだもう少し続けなければいけないと思いますので、一応、平田先生がまとめていただいた「精神医療審査会制度の意義と課題」というものがございまして、それでまた地方と全国で表に分けていただいているのですが、特に課題について、ほかの方々から、これ以外にも何か課題があるとか、ここは何かおかしいのではないかとか、そういうご意見をいただいて、今後の議論につなげていきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。

 はい、どうぞ。

○澤田構成員 すみません、課題とか疑問ではなくて、同感なのですけれども、11ページの「2.同意責任の曖昧化」に同意いたします。それと、飛んで申しわけないのですけれども、資料3の8ページのマル3にも同意いたします。家族の同意というのは土台無理だったと思います。ほとんどのご家族の方は十分な知識がないと思われますし、気が動転していると思われますので、とても冷静に客観的、合理的判断ができるという状態ではないと思いますので、ご家族に不当な重荷を負わせるのはもうやめましょうと申し上げたいです。

○山本座長 ありがとうございました。

 いかがですか。

○太田構成員 10ページのこの表ですか。

○山本座長 はい。

○太田構成員 それでしたら、私は一つだけお伺いしたいことがあります。地方審査会について、労働委員会等と同等の組織的独立性を追求するべきだとお書きです。独立性を確保すると、一般に中立性、自立性も高くなるだろうと言われているのですが、この地方自治法の仕組みでいくと、いわば知事の諮問機関から独立の執行委員機関と言われている教育委員会のようなものにするべきだという主張だと理解できるのですが、同時に、そのときには知事のような選挙で選ばれる首長部局から独立させる必要があるということが一番重要になってくるわけですね。例えば、教育委員会であれば、教育の自立性、あるいは教育の中立性などを議論しますし、都道府県公安委員会も警察の中立性。あるいは、この労働委員会というのは、それに比べると、知事がというよりも、要するに明確な民事紛争にかなり近いので、裁判所類似というイメージがあるのですね。

 そのことでいくと、精神医療審査会というのは公害審査会とちょっと似ていて、どの程度知事から独立させておく、なぜ知事部局からの独立性を追求する必要があるのかというのは、私にはちょっとまだわかりにくいのですね。その下の中立性とか専門性に関しては、なるほどおっしゃるとおりだろうと私も思いましたけれども、その部分、なぜこの労働委員会等と同等である必要があるとお考えになっているのか、何か実質的な理由があれば教えていただけますでしょうか。

○山本座長 平田先生、これはまた継続して議論したいと思いますので、ちょっと簡単にお答えいただけますでしょうか。

○平田構成員 厳密に言うと、精神医療審査会は知事の諮問機関ではないのですね。確かにもう少し独立性が高いはずなのです。なぜ知事部局から独立させるべきかというと、知事が精神科の病院に対して監査の義務を負っているわけです。監督義務があるのです。それから、保健所とか行政の場合は、今度は患者さんの治療に関して病院に依頼するとか、依存と言ったら変ですけれども、病院を頼りにする場面がたくさんあって、なかなか中立性が保ちづらいということがあるものだから、きちっと独立させるべきではないかという議論です。

 イギリスですと完全に独立していて、地方の審査会で、例えば退院請求が認められなかったら上告できるわけですね。裁判所がやるわけですから、裁判所が精神保健審判という形で、司法の中でこの議論がなされるものだから、上告制度があって最高裁までいけるのですね。そこまで司法に準じてというところまでいかなくても、それに近いような労働委員会、あるいは教育委員会等のように、知事部局からの独立性はあったほうがいいのではないかという意図です。

○山本座長 申しわけありませんが、簡単にお願いします。

○太田構成員 一言言っておきますと、措置入院の場合には訴訟で争えるということを考えると、この場合も本当は訴訟のルートに乗せるということを明確化したほうがよろしいのではないかとは個人的に思っています。

○山本座長 ありがとうございました。

 あと1分ぐらい、ほかの先生方から何か特にこれだけは言っておきたいということはございますでしょうか。

 よろしいですか。

 本日は、長時間にわたってご議論いただきまして、本当にありがとうございました。

 その他、きょう以外で今後検討していくべき論点についてご意見がありましたら伺いたいと思うのですが、いかがでしょうか。

 よろしいですか。

 それでは、意見がないようでしたら、最後に、事務局のほうから次回の分科会の日程等について説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○占部課長補佐 次回の当分科会の日程につきましては、また決まり次第、事務局からご連絡申し上げます。

○山本座長 どうもありがとうございます。

 本日はお忙しい中、長時間にわたって熱心なご議論をいただきまして本当にありがとうございました。

 それでは、これをもちまして「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会第2回医療保護入院等のあり方分科会」を閉会したいと思います。

 どうもありがとうございました。


(了)

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