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2016年3月8日 第95回労働政策審議会安全衛生分科会

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成28年3月8日(火)10:00~


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館9階)


○出席者

委員:五十音順、敬称略

明石 祐二、岡本 浩志、栗林 正巳、桑野 玲子、城内 博、杉山 豊隆、辻 英人、
角田 透、土橋 律、中澤 善美、中村 聡子、中村 節雄、縄野 徳弘、半沢 美幸、
三柴 丈典、 村上 陽子、水島 郁子、水田 勇司、山口 直人、田久氏(勝野委員代理)

事務局:

加藤 誠実 (安全衛生部長)
秋山 伸一 (計画課長)
野澤 英児 (安全課長)
武田 康久 (労働衛生課長)
森戸 和美 (化学物質対策課長)
塚本 勝利 (産業保健支援室長)

○議題

(1)労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(2)事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドラインについて(報告)
(3)その他

○議事

○土橋分科会長 ただいまから第 95 回労働政策審議会安全衛生分科会を開催いたします。本日の出欠状況ですが、使用者代表委員では鈴木委員が欠席されております。なお、勝野委員の代理として、全国建設労働組合総連合の田久様が出席しております。中澤委員は所用のため 11 時頃に御退席される予定です。

 まず最初に、前回の安全衛生分科会で3名の委員が就任されたことを申し上げましたが、前回御欠席されていた水田委員より一言御挨拶をお願いします。

○水田委員 森林労連の水田と申します。よろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 カメラ撮影等はここまでとさせていただきます。

 議題に入ります。議題 (1) 「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱について」、諮問案件です。事務局から説明をお願いします。

○塚本産業保健支援室長 資料 1-1 が省令案要綱と諮問、その内容をまとめたものが資料 1-2 です。お手元にございますでしょうか。資料 1-2 を中心に、労働安全衛生規則の一部を改正する省令案について、御説明いたします。

 まず、改正の趣旨について、資料 1-2 の1を御覧ください。労働安全衛生法においては、常時 50 人以上の労働者を使用する事業場については、産業医を選任するよう義務が課されていますが、産業医の事業場における役職については規定がなく、これまで理事長などの法人の代表者、病院長などの事業場において事業の実施を統括管理する方が、産業医を兼任している事例も見られています。こうした法人の代表者などが産業医を兼務した場合、労働者の健康管理と事業経営上の利害が一致しない場合も想定されることから、産業医としての職務が適切に遂行されない恐れがあります。これらを踏まえて、前回の分科会において御報告させていただきましたが、平成 27 10 月の安全衛生部長の通達により、理事長などの事業者の代表者、病院長などの事業場の代表者を産業医として選任している場合には、早期に改善する必要がある旨の注意喚起を行い、改善を図っているところです。さらに、労働者の適切な健康管理の観点から、これらの改善を確実なものとするため、法人の代表者などが当該事業場の産業医を兼務することを禁止するよう改正するものです。

 2の改正の内容です。事業者は産業医を選任するに当たり、法人の代表者又は事業を営む個人にあって、当該事業場の運営について利害関係を有しない方を除いた法人の代表者、事業を営む個人、また事業においてその事業の実施を統括管理する者を産業医として選任してはならないとしております。括弧書きにより、法人の代表者、事業を営む個人の方が、他の事業場の産業医となることを禁止対象から除外しております。

 3の施行日です。新たに医師が産業医の資格を取得するための研修を受講する場合なども想定され、これらに一定の時間を要することなどから、平成 29 年4月1日からの施行予定としています。これらの内容を省令案要綱としてまとめたものが、資料 1-1 の2ページ目です。以上が資料の説明です。

○土橋分科会長 ただいま御説明いただいた要綱案の審議に移ります。質問等はございますでしょうか。

○村上委員 前回も通達の御報告を頂いたときに指摘をさせていただいたのですが、私どもとしては、今回の改正について、その方向性は良しとしておりますが、そもそも使用者の利益を代弁する者は産業医を兼任するべきではないと考えております。

 そのようなことから1点確認したいのですが、資料 1-1 の別紙の省令案要綱の中で、1の1、1の2、1の3とありますが、3の「事業場においてその事業の実施を統括管理する者」についてです。これについて、先ほど例示として病院長という御説明がありましたが、例えば、企業の代表取締役ではなくて、企業の取締役、医療法人の副理事長、病院の副院長、又は施設の副施設長というような方々は、この「事業の実施を統括管理する者」に該当するのか該当しないのかということについて、確認させていただければと思います。

○塚本産業保健支援室長 先ほど御指摘いただいた副理事長、会社の役員などの立場にある方を産業医として選任することですが、企業によっては産業医の方を役員などとして経営戦略に参加させて、それらの意見をより効果的に健康管理に係る措置に反映させている例もみられており、これらの取組を阻害すべきではないこと、また、産業医の方が役員などであっても、勧告すべき対象者が確実に存在しているということから、今回の案では対象としておりません。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○水田委員 今回の改正を受けて、厚生労働省にはその内容についてきちんと周知徹底をお願いしたいと思います。

 それと、産業医について全体でも 13 %、 50 99 人規模の事業所では約2割で選任されていない状況になっています。一方で、近隣に引き受けてくれる医師がいないという実態もありますから、そういった実態も踏まえて、厚生労働省には産業医の選任について事業所に対する一層の働き掛けの強化と、産業医のなり手の拡大ということも併せてお願いしたいと思います。

○塚本産業保健支援室長 まず周知徹底ですが、これについては該当する事業場に対してアンケート調査の送付などを行いながら、改善を促しているところです。また、パンフレット、ホームページでの掲載などについても幅広く行っていきたいと考えております。

 次に、産業医の未選任事業場ですが、平成 22 年の統計で産業医を選任している事業場は 87 %です。これらにつきましては、労働基準監督署等が行っている定期監督、また、個別指導などの際に確認し、未選任だった場合については指導を行うなどの対応を行っているところです。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、当分科会としては、議題 (1) の「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱について」妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。

                                  ( 異議なし )

○土橋分科会長 それでは、事務局で手続をお願いいたします。

 次の議題に移ります。議題 (2) 「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」についてという報告事項について、事務局から説明をお願いします。

○塚本産業保健支援室長 資料2を御覧ください。事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドラインの作成について御説明いたします。

 本年 2 23 日に、この両立支援のガイドラインを作成し、プレスリリースし、公表しております。このガイドラインですが、労使、医療関係者などから構成されるガイドライン作成委員会を開催し、検討して作成したものです。中身は、事業者の方が、がん、脳卒中などの疾病を抱える方に対し、適切な就業上の措置や治療に対する配慮を行い、治療と職業生活が両立できるようにするための事業の取組などをまとめたものです。

 ガイドラインの内容は、2ページ目の別紙1を御覧ください。まず、このガイドラインの背景と現状です。がんの5年相対生存率が向上するなど、治療技術の進歩により「不治の病」から「長く付き合う病気」に変化しているところです。また、仕事を持ちながら、がんで通院されている方は約 33 万人を数えるなど、仕事をしながら治療を続けることが可能な状況も見られるところです。

 一方で、糖尿病患者の約8%の方が通院を中断しています。その理由として、「仕事などが忙しいから」が最多の 24 %であるなど、仕事上の理由で適切な治療を受けることができないケースも見られるところです。

 私病であっても、就労することにより疾病が増悪しないよう、必要に応じて配置転換などの就労上の措置や配慮を行うことが必要です。

 しかし、従業員の方が私傷病になった際、企業の方が従業員の適正配置や雇用管理等に苦慮する事業場の割合が 90 %であるなど、治療と職業生活の両立に悩む企業が少なくない状況にあり、疾病に罹患した労働者の治療と職業生活の両立が重要な課題となっております。これらを踏まえて、ガイドラインを作成したところです。

 次に、具体的な両立支援の進め方です。下のほうの囲みを御覧ください。まず第1に、労働者が事業者へ申し出ます。具体的には、労働者から主治医に対して一定の書式を用い、自らの業務内容などを提示します。この情報を参考に主治医が一定の書式を用いて症状、就業の可否、時短などの望ましい就業上の措置、定期的な治療時間の確保などの配慮事項を記載した書面を作成します。そして、労働者がこの書面を事業者に提出します。

 第2は産業医などの意見の聴取です。具体的には、事業者が労働者から提出された主治医からの情報を産業医などに提出し、就業上の措置、治療に対する職場での配慮に関する意見を聴取します。第3は、就業上の措置などの決定と実施です。具体的には、事業者が主治医、産業医などの意見を勘案し、労働者の意見も聴取した上で、就業の可否、作業転換等の就業上の措置、通院時間の確保などの治療に関する配慮の具体的な内容を決定・実施します。その際には、これらの具体的な支援内容をまとめた「両立支援プラン」の作成が望ましいとしています。

 次に、真ん中の両立支援のための環境整備です。労働者、管理者に対する研修などによる意識啓発、労働者が安心して相談や申出を行えるような相談窓口の明確化、短期間の治療が定期的に繰り返される場合などに対応するための時間単位の休暇制度、時差出勤制度などの検討や導入、主治医に対して業務内容等を提示するための様式、主治医から就業上の措置に関する意見を求めるための様式の整備、また、事業場ごとの衛生委員会などにおいて、両立支援に関する調査審議を行うことなどを示しております。

 次のページです。がんについて、別途留意事項を掲載しております。具体的には、治療の長期化、予期せぬ副作用による影響に応じた対応、がんの診断を受けた労働者がメンタル不調に陥ることからのメンタルヘルス面への配慮などを示しております。

 次のページを御覧ください。まず、真ん中の囲みの所です。このガイドラインについては、厚生労働省労働基準局長、職業安定局長、健康局長の連名で、事業者団体のみならず、医療関係団体などへも協力依頼を行うとともに、各労働局、労働基準監督署などからも周知などを行う予定です。また、下側の囲みですが、労働者健康福祉機構の産業保健総合支援センターにおいて、今後具体的な両立支援に関する支援を実施する予定です。1ですが、企業関係者また産業保健スタッフのみならず、主治医などの医療関係者をも対象としたガイドラインの解説、具体的な取組方法などについての研修会などを開催する予定です。

 2は、主治医の方を含む両立支援に関する関係者からの相談対応、3の企業に対する個別訪問による支援、4の労災病院の治療就労両立支援センターなどと連携し、労災病院などの患者の就労継続、職場復帰の支援に関する事業場との連絡調整などを行う予定です。以上です。

○土橋分科会長 ただいま説明いただいた内容について、質問等はございますでしょうか。

○半沢委員 今回取りまとめられたガイドラインについては、労働側からも策定の過程に関わってきたものですので、是非各職場で活用していただき、疾病を抱える労働者が退職せずに治療に関わっていくことができるようにしていただきたいと考えております。

 別紙3にあるように、3月 10 日に東京でセミナーを開催の予定、また、その後4月以降、都道府県労働局等で周知の取組が進められるということです。是非こういった取組は積極的に進めていただき、たくさんの人に御参加いただいて、この内容が各職場に定着するような取組を進めてもらいたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○杉山委員 より職場に近い段階での周知徹底に向けて取組を行う上で、1点お願いしたいと思っています。 20 ページ、 21 ページに (2) で「利用可能な支援機関」と掲載されています。今回のガイドラインは、いわば全国共通版だと思いますので、このような記載にならざるを得ないのかなと思っていますが、職場で活用してもらうためには、単純に「がん診療連携拠点病院」「精神保健福祉センター」「産業保健総合支援センター」という記載をするのではなく、より使いやすくするために、それぞれの個別の名称、所在地、連絡先なども記載した形にすべきではないかと思っております。検討をお願いしたいと思います。

 もう1点です。治療と職業生活の両立を職場で実施しようとすれば、一般論でカバーしきれない側面が多いと思いますので、是非好事例などについても広く知ってもらえる機会を設けていただければと思っております。

○塚本産業保健支援室長 最初の、具体的な利用できる病院や機関についてですが、これはガイドライン作成委員会でも出ております。これは全国版の最低限のものということでこういう形になっておりますが、具体的に各地域で普及を図る際には、各都道府県等で利用可能な機関についても明示した上での普及が必要になってくると思います。また、好事例についてもガイドライン作成委員会でも出ており、会社の好事例、労働者、関係機関の好事例などについても蓄積し、これを広範に共有していただくように取り組んでいきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

○山口委員 大変重要な取組で、今後うまく機能することが求められると思います。

 その中で、やはり臨床の主治医、現場の主治医の先生の御理解が極めて重要だと思います。実際にいろいろ事例をお聞きしますと、主治医によっては患者の希望のとおりに意見をお出しになる先生もいますし、逆に「そんな会社のことは知らない」というような形で、全く拒否反応を示すような先生もいらっしゃると聞いております。

 ですから、先ほどの御説明で医療団体等に周知していくということがありましたが、大変重要だと思います。やはり現場の臨床の先生方に御理解していただく取組も重要だと思いますので、是非よろしくお願いいたします。

○塚本産業保健支援室長 今回、このガイドラインの普及に際しましては、会社だけの取組でなく、医療関係者、特に主治医の方の御理解が重要だと考えております。これにつきましても、産業保健総合支援センターにおいて、企業、産業保健スタッフに加えて、医療関係者も対象にし、研修やセミナー等で具体的なガイドラインでの取組方法、考え方、どのように所定の様式に記載していくかなどについて普及を図っていきたいと考えています。非常に重要なポイントだと考えております。

○土橋分科会長 ほかによろしいでしょうか。それでは、最後の議題に移ります。議題 (3) 「その他」ですが、事務局から報告事項があるとのことですので、お願いいたします。

○秋山計画課長 議題 (3) 「その他」について、資料 3-1 、資料 3-2 に基づいて説明申し上げます。資料 3-1 ですが、前回 1 月の分科会でも報告した続報で、現時点の追加の報告です。

 資料 3-1 の表紙ですが、染料・顔料の中間体を製造しております福井県の事業場で、オルト - トルイジンをはじめとした芳香族アミンという化学物質を取り扱う作業に従事されていた複数名の労働者が、膀胱がんを発症した事案が発生しました。これを踏まえて、厚生労働省では業界にアラートを発するとともに、緊急的な対応として、膀胱がんとの関連があるとされておりますオルト - トルイジンを取り扱うと考えられている事業場について、労働局、労働基準監督署で調査を実施しております。現時点まで把握できた状況を第一報、第二報という形で、それぞれ1月 22 日、3月4日に発表させていただいたところです。

 資料 3-1 、第一報の別添です。「全国調査の概要」ですが、これは緊急にやるべきものと、その次にやるものと、2段階に分けて調査をしております。昨年の年末から、労働基準監督署の職員が事業場に立ち入って、オルト - トルイジンの取扱状況、労働者・退職者で膀胱がんの病歴がある方がいるかどうかといったことについて、調査を実施しております。優先的に急いでやるべきものとして、本省のほうで把握しておりますオルト - トルイジンを取り扱っていると考えられる事業場、これは経済産業省への届出がありまして、直近の届出で全国 38 の事業場で取り扱っているだろうと把握しておりますので、ここについてまず先に調査をしろというように指示しております。

 これに続いて、調査2として2つ書いてありますが、過去にオルト - トルイジンを取り扱っていたと考えられる事業場、また労働基準監督署が様々な機会に個別指導や調査に行きますので、その際に独自にオルト - トルイジンを取り扱っているのではないかと把握している事業場、この1、2を調査1の次に実施すべきだというように進めたところです。この第一報については、基本的には調査1の結果を先に発表したものです。

 「 2. 調査1の結果等」ですが、 (1) 監督署の調査結果として、全国でオルト - トルイジンを取り扱っていると考えられる 38 か所に行ったところ、現在でも取り扱っている所が 17 か所、過去に取り扱っていた所が 10 か所でした。合わせて 27 か所が現在又は過去に取扱いがあったところで、実は取扱いがなかった事業場が 11 か所ありました。次の○は、現在又は過去に取扱いがあった 27 の事業場について、それぞれどのような取扱いだったのか、取扱状況や、ばく露機会について内訳を書いたものです。説明は省略いたします。

 次ページ、裏面ですが、この過程で労働基準監督署が対象になった 38 の事業場に対して、膀胱がんの病歴を有する方、労働者・退職者を問わず状況を確認し、聞き取りで確認できた範囲で把握できた状況として、1つ目 A 事業場で退職者 1 名、 B 事業場で労働者1名、合計2名の膀胱がんの病歴がある方がおられたことを把握しております。

 3 . として1月の段階だと調査1を取り急ぎ報告をまとめたものを発表しましたが、この時点で調査2、すなわち過去に取り扱っていたと考えられる事業場と、監督署の方で独自に取り扱っているのではないかと把握している所についても、分かった状況については発表したほうがよいだろうということで、調査2についてはその時点で分かった状況として発表したものがこの3 . の所です。その段階で、 C 事業場で労働者1名と退職者2名、 D 事業場で退職者1名、合計4名が膀胱がんの病歴を有するという情報を把握したところです。ただ、この中には過去に取り扱っていた所もありますので、製造工程に従事した経歴が確認されていない方もおられますし、状況は様々でした。引き続き調査するということで発表しております。

 4 . 相談窓口です。もともとは福井の事業場ですが、オルト - トルイジンを扱っている事業場は全国にありますので、健康障害に不安を持つ労働者・退職者・家族などからの相談窓口として、独立行政法人労働者健康福祉機構に専用のフリーダイヤルを設置したというのを、この時点で発表しております。

 3ページの福井県の事業場に係る対応ですが、これは第二報でまとめて説明いたします。以上が1月 21 日時点で分かっておりました第一報について、取り急ぎ発表したものです。

 資料 3-2 です。これが3月2日時点、直近の状況について1月の段階では分かっていなかったことを追加的に報告したものです。別添の1ページ目は省略して2ページの内容から説明いたします。先週、公表した第二報ですが、基本的には2段階目で調査をした調査 2 の結果報告ですが、調査1で対象になった 27 事業場、調査1でオルト - トルイジンが現在又は過去に取扱いがあった事業場の中で、2 . の記載にあるとおり、オルト - トルイジンの取扱作業に従事経験がある労働者・退職者、このような方に対して、膀胱がんの健診の実施とか受検勧奨、実施結果の報告を求めました。この過程で、新たに E 事業場の退職者1名が膀胱がんの病歴を有していることを把握したということです。また、健診の結果については、この時点までに 11 事業場、 225 名分の結果報告があり、その中では膀胱がんの所見があった方はおられなかったということです。

 3 . は調査2の現時点での把握内容です。これは調査1に引き続いて実施した、過去に取り扱っていたと思われている所と、監督署で独自に把握している所で、ここについては対象になった事業場が 30 か所です。 30 事業場の調査をしたところ、1、2、3とあって、現在取り扱っている所が7か所、過去取り扱っていた所が 17 か所、取扱いがなかった所が6か所でした。したがって、現在又は過去取り扱っていたのが 24 か所となります。この 24 か所について、第一報と同じように取扱いの状況などについて分類した内訳が2つ目の○です。こちらの説明は省略いたします。

 3ページです。調査2で対象になった 30 の事業場に対して、監督署の方で膀胱がんの病歴がある労働者・退職者の状況を確認しました。聞き取りに基づく範囲で把握した状況ということで、第二報分として新たに F 事業場で退職者 1 名が膀胱がんの病歴があることを把握しました。ただ、この方についてはオルト - トルイジン以外の物質、ほかの物質の取扱いに起因するものだということで、過去に労災認定がされていたという事案です。

(2) ですが、現在又は過去にオルト - トルイジンの取扱いがあった 24 の事業場に、取扱作業の従事経験のあった方に対する健診の実施と結果報告を求めました。これについては、現時点までに9事業場、 101 名分の結果報告があり、膀胱がんの所見があった方は G 事業場で退職者1名という結果状況です。

 4 . です。これまでに調査を行った調査1、調査2を受けた今後の対応ですが、まだ労働者・退職者に対する健診が完了していない事業場もあります。特に退職者になりますと連絡がつきにくいところもありますので、そういった事業場や、まだ結果の報告を完全にされていない事業場について、引き続き事業場に対して健診の実施、受検勧奨と実施結果の報告を求め、把握に努めたいと思っております。また、第一報、第二報で報告した膀胱がんの病歴を有する方が把握された事業場については、特に健診の速やかな実施、実施結果の報告を求めて、ほかの労働者の健康診断結果等を踏まえて、引き続き必要な対応を行ってまいりたいと思っております。

 4ページ目の5 . ですが、もともと昨年 12 月に報道発表した発端になった事業場、これは福井県の工場ですが、この企業と、関連の工場に係る対応です。 (1) の福井県の事業場に係る対応としては、現在、独立行政法人労働安全衛生総合研究所が 12 月にも予備的な調査を行っておりますが、 1 20 日、 21 日に本格的な調査にまいりまして、採取した試料の分析等を実施しております。厚生労働省としては、引き続き研究所と連携しながら、オルト - トルイジンを中心に原因の究明を行いたいと考えております。また、この事業場を有する企業に対しては、福井の事業場の労働者・退職者全員に対する膀胱がんの健診を実施するよう指導しております。この結果、新たに労働者1名に膀胱がんの所見があったことを把握しており、既に公表している分も合わせると、ここの福井の工場では労働者5名、退職者1名に膀胱がんの所見があったということです。

(2) ですが、この福井県の事業場を有する企業が有する工場部門があります。ほかの2つの工場でも、過去に福井県の事業場と同様にオルト - トルイジン等芳香族アミンを原料として、染料・顔料の中間体を製造していたことが分かっております。また、現在は取扱いがないということです。この2つのうち1つの事業場は、第一報で退職者1名が膀胱がんの病歴を有するとして公表した D 事業場です。この退職者は、オルト - トルイジンの取扱作業に従事経験があること自体は分かっておりますが、 30 年以上前のことだということで、残念ながら資料もないため、詳細な把握がなかなか困難だということです。また、この企業に対しては、福井の工場だけではなくて、これら関連事業場において、オルト - トルイジンの取扱作業に従事経験がある労働者・退職者に対する膀胱がんに関する健診の実施を指導しております。現時点では、膀胱がんの所見があった方はゼロです。

 6 . です。労災請求の対応として、3月2日現在、福井県の事業場、工場の5名から労災請求がなされております。労災請求事案については、厚生労働省本省において専門家による労災認定に関する検討会を開催することとしております。内容は以上ですが、参考として5ページ目に第二報までのまとめ、調査1、調査2、また A B C D E という記号も出てまいりましたので、調査1、調査2で分かったことについて、表の形式でまとめたのが5ページです。御参考に供していただければと思っております。事務局からの説明は以上です。

○土橋分科会長 ただいま御説明いただいた内容について、質問等ありますでしょうか。

○辻委員 昨年末に今回の件が公になって以降、ここまで調査し、結果を取りまとめていただきました。その中で、特にこのオルト - トルイジンは以前から発がん性が指摘されていた物質でもあります。にもかかわらず、今回のような事態が発生したということは、管理が不十分な状態を放置していたのではないかとも考えられます。今御説明のありました第二報の5ページにある一覧表の下の部分を見ると、 A B C の3事業場については、現時点では健診実施結果は未報告ということです。また、 E G の2事業場については、現在、退職者に対する健診を実施中、 F 事業場については今後、退職者に対する健診を実施予定とのことです。これら不確定要素のある事業場の結果などが判明次第、速やかに公表していただくとともに、本分科会にも報告いただくようお願いいたします。以上です。

○土橋分科会長 計画課長、お願いします。

○秋山計画課長 今の御指摘、誠に重たく受け止めております。健診結果をまだ報告いただいていない所、また、健診実施中の所もありまして、これは引き続き、早急な実施と報告を求めたいと思っておりますし、またいろいろなことが判明次第、公表もしたいと思っておりますし、分科会にも報告をさせていただきたいと思っております。

○縄野委員 資料 3-2 の第二報の4ページを見ますと、現在、労働安全衛生総合研究所において、原因の究明を引き続き行っているとあります。現時点においては、まだ詳細部分までは判明していないと思いますが、資料 3-1 、第一報の 2 ページを見ると、福井県の事業場は密閉化されていない製造設備であったということですので、この福井県の事業場における発生原因を早急に究明していただいて、他の事業場も含めた再発防止を図ることが重要であると考えております。また、当然のことながら、今回の芳香族アミン関連で労災認定申請があった場合は、迅速な対応を行うとともに、労働安全衛生総合研究所における原因究明の動向も併せて、新たな措置を講ずることが必要となった場合は、早急に本分科会で議論していただくようお願い申し上げたいと思います。以上です。

○土橋分科会長 計画課長、お願いします。

○秋山計画課長 ただいまの御指摘についても、真摯に受け止めたいと思っております。労働安全衛生総合研究所は、ただいま分析、調査、報告の取りまとめを行っておりますので、できるだけ早く報告を取りまとめて発表したいと思っておりますし、また、他事業場も含めて、再発防止措置を取っていきたいと思っております。労災については部署が違う等がありますが、我々厚生労働省全体としても労災請求事案については、当然、因果関係の調査は必要ですが、できるだけ早く迅速な対応をしたいと思っております。また、結果的に新たな措置が必要となった場合には、結果等についても本分科会に御報告、御相談しながら対応したいと思っております。

○村上委員 第一報、第二報について確認させていただきたい点があります。製造過程でオルト - トルイジン取扱いのある事業場を対象に、取扱状況とばく露機会について聞かれた結果が、報告されておりますが、実際どのように取り扱われていたのかということについては、それぞれ事業場を確認されているのでしょうか。労働安全衛生総合研究所で原因究明されているということですが、現実の取扱いの状況を把握しないと、なかなか再発防止ということにもつながらないのではないかと思っておりますので、その点をちょっと確認させていただければと思います。

○土橋分科会長 化学物質対策課長、お願いします。

○森戸化学物質対策課長 監督署が実際に行きまして、どのように取り扱っていたかというのを確認しております。例えば、密閉された設備で行われているというのは、配管の中でそういうのは取り扱われていてサンプリングのときだけやるとか、そういうことも確認して、そのような分類で今回も報告させていただいております。

○城内委員 今回の芳香族アミンのがんに関するだけのコメントではないのですが、予防医学的な観点からコメントしたいと思います。今まで様々な化学品によって職業病、がん等が発生してきています。患者さんの多くは情報を知らなかったとか、知らされなかったという場合がほとんどです。残念ながら、以前の胆管がんの場合もそうでしたし、今回の膀胱がんもそうなのですが、ラベルの貼付義務が掛かっていない物質でした。危険有害性を労働者自身がしっかり知るということが重要だと思っているのですが、残念ながら以前はそうはなっていなかった。ここ 10 年ぐらいの間に法整備がかなり進みました。それで、ラベルの貼付もかなり進んだのですが、まだまだ十分とは言えない状況があると思います。こういう患者さんが発生することは非常に残念なわけで、防止という観点から二度とこういうことは起こさないためにも、是非ラベルを活用する、普及することに力を入れていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 化学物質対策課長、お願いします。

○森戸化学物質対策課長 胆管がん問題を踏まえた検討会において、ラベルの対象範囲を拡大するという法令改正をさせていただいて、今年の6月1日から施行となっています。この徹底をしっかり図っていきたいと考えております。

○田久氏(勝野委員代理) 単純な質問なのですが、密閉されていない状況があるということであると、近隣に対するとか、そういう所の影響というのは、私自身、ちょっと物質的なものが分からないというのがあるのですが、そういったことはないと考えてよいのですか。

○森戸化学物質対策課長 私どもは所掌ではないのですが、福井県が環境という観点から調査したところによると、その福井の事業場において、環境の点については問題がなかったと聞いております。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。皆様からもありましたが、化学物質による健康障害は非常に重大な問題となってきていると思います。今後の施策ではリスクアセスメントという枠組みも加えて進めていくこととなっておりますが、実際この案件について、どういう状況で発生したか、その辺りはしっかりと御調査いただきたいと思います。ほかはよろしいでしょうか。それでは、本日の全ての議題を終了しました。熱心な御議論をありがとうございました。最後に、事務局から連絡事項をお願いします。

○秋山計画課長 本日も熱心に御議論いただきまして、ありがとうございました。御了解いただいた諮問案件については、早急に所要の手続を進めさせていただきたいと思っております。次回の分科会ですが、追って御案内させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。なお、議事録の署名については、労働者代表委員は村上委員、使用者代表委員は岡本委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。本日は、お忙しい中ありがとうございました。


(了)

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