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2016年1月27日 第4回 透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会 議事録

労働基準局

○日時

1月27日(水)13:00~15:00


○場所

中央合同庁舎第5号館共用第6会議室


○出席者

荒木 尚志(座長) 石井 妙子 大竹 文雄 垣内 秀介
岡野 貞彦 小林 信 高村 豊 鶴 光太郎
徳住 堅治 斗内 利夫  中村 圭介 中山 慈夫
長谷川 裕子 水口 洋介 村上 陽子 山川 隆一
輪島 忍

○議事

○荒木座長 それでは、定刻より少し早いのですけれども、委員の皆様おそろいということですので、ただいまより第4回「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」を開催したいと思います。

 委員の皆様におかれましては、本日も御多忙のところ御参集いただきまして、ありがとうございます。

 本日ですが、鹿野菜穂子委員、小林治彦委員、土田道夫委員、水島郁子委員、八代尚宏委員は御欠席です。

 続きまして、お配りしました資料の確認を事務局よりお願いいたします。

○松原労働条件政策推進官 資料の御確認をお願いいたします。

 本日の資料は3点ございます。資料No.1「労働相談及びあっせんの概要」、東京都産業労働局様のものでございます。

 資料No.2「各労働紛争解決システム相互の関連性やアクセスについて」

 資料No.3「労働紛争解決システムの現状」

 以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、本日の進め方ですけれども、これまで本検討会では、個別労働紛争解決システムについて、社労士会や弁護士会の取り組み、労働局、労働委員会、そして労働審判制度についてヒアリングと意見交換を行ってまいりました。

 このほかに、行政が行う個別労働紛争解決システムとしまして、都道府県の中には労政主管部局で相談やあっせんを実施しているという例があります。

 本日は、以前委員から御指摘もあったのですが、まず、東京都の労政主管部局が行う労働相談及びあっせんについて、概要資料を東京都から提出していただいておりますので、事務局より紹介いただき、それについての意見交換を行いたいと思います。

 その後で今回の議題である各労働紛争解決システム相互の関連性やアクセスについて、資料2に沿って事務局から説明をいただき、全体的な御議論をいただく。そういう流れで進行していきたいと思います。

 それでは、事務局から東京都の労政主管部局で行っている労働相談及びあっせんについて、配付資料1に沿って紹介をお願いいたします。

○松原労働条件政策推進官 資料No.1をごらんください。都道府県におきましては、労働委員会におきまして個別労働紛争の解決を図っているところもございますが、一方で、労働委員会ではなく、いわゆる労政事務所のようなところで解決を図っている例もございまして、その例として東京都の例を本日お出ししたということでございます。

 簡潔に御説明させていただきます。資料No.1、3ページをごらんください。東京都は非常に大きなところでございますけれども、労働相談件数につきましては、年間で5万3,104県というのが最新の平成26年度の数字でございます。近年はほぼ同じような数値で推移しているという状況でございます。

 4ページをごらんください。「(2)労使別にみた労働相談件数」でございます。平成26年度をごらんいただきますと、労働者からの相談が全体の4分の3程度でございまして、使用者のほうからが約2割という状況でございます。

 (3)の表3をごらんいただきますと、労働組合の有無ということで、労働組合のあるなしによって労働者、使用者のそれぞれの相談件数が書かれている状況でございます。

 続きまして、5ページをごらんいただきますと、男女別の相談件数は、男性が女性を上回っているという状況でございます。

 下の「(5)契約形態別にみた労働相談件数」でございます。やはり正社員が一番多うございますが、非正規の関連相談が全体で1万7,000件ほどございまして、契約形態がわかった相談の38.5%、4割弱を占めているという状況でございます。

 6ページをごらんください。「企業の規模別にみた労働相談件数」でございます。一番上の枠をごらんいただきますと、30人未満の小規模企業の労使からの相談が1万2,245件ということで、全体の2割強を占めているという状況でございます。

 7ページをごらんください。「産業別にみた労働相談」でございます。表9をごらんいただきますと、「サービス業(他に分類されないもの)」が一番多うございますが、これを除きますと、「卸売、小売」「医療、福祉」などが相談件数としては多くなっているという状況でございます。

 めくりまして、8ページをごらんください。労働相談の内容でございます。内容につきましては、表11をごらんいただきますと、項目として「退職」というものが一番多くなっておりまして、「職場の嫌がらせ」「解雇」というものが多くなってございます。

 8ページの一番下に「相談の多い項目の細分類」というのがございますので、退職ですとか解雇の別というのがわかるような形になっておりますので、御参照ください。

 めくりまして、10ページをごらんください。相談の受理形態でございます。こちらは、全体5万3,000件ほどのうち64.2%が電話によるもの。来所が19.7%、1万件ぐらいでございます。

 (2)の所用時間でございますが、労働相談1件当たりの平均所用時間は約20分程度ということで、全体の約8割の相談が30分未満で終了しているという状況でございます。

 次にあっせんの状況の御説明に移りたいと思います。17ページをごらんください。今まではいわゆる相談でございましたけれども、ここからはあっせんの状況についての内容でございます。

 (1)でございます。労働相談のうちあっせんに移行したものは、平成26年度、625件ということでございまして、近年500件から600件程度で推移しているという状況でございます。

18ページをごらんください。表25は解決内容別あっせん解決件数。重複がございますけれども、ごらんいただくと、金銭にかかるものが約5割、解雇・退職にかかわるものが27.0%、3割弱という状況になってございます。

 (4)の規模別あっせん件数をごらんいただきますと、こちらも相談と同じような傾向がございまして、30人未満が34.6%でございまして、100人未満の企業が全体の5割弱という状況になっております。

19ページをごらんください。「2 あっせんに要した日数」でございます。あっせんに要した日数としましては、10日未満が31.8%、1019日が21.1%ということでございまして、おおむね3週間以内に5割以上の事案が決着を見ているという状況でございます。

20ページ、表31をごらんいただきますと、あっせんの上位3項目につきまして挙げさせていただいております。「解雇」「賃金不払」「退職」というものが多くなっているという状況でございます。

21ページ以降はあっせんの事例を載せていただいておりますので、こちらのほうは御参照いただければと思います。

27ページ以降は労働相談のテーマ別ということで、パート・アルバイトの労働相談の項目、34ページからは派遣労働者の労働相談の項目、39ページからは外国人労働相談の項目などを載せていただいておりますので、御参照いただければと思います。

 最後の69ページに東京都の労働相談情報センターの案内というものを載せさせていただいておりますが、こちらにおきましては、「来所相談(予約制)」と書いておりますけれども、飯田橋のセンターを中心として、全体で6カ所で相談を受け付けているということでございます。一番上にございますが、それとは別に電話相談というものもやっているという状況でございます。

 簡潔でございますが、資料No.1の御説明とさせていただきます。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの説明について何か御質問等あれば、お願いいたします。どうぞ。

○中山委員 中山ですが、簡潔な御説明ありがとうございました。

 ここに書いていないので、わからないという答えなのかと思うのですが、念のため。19ページに「あっせんに要した日数」とあるのですが、回数がわからないのです。日数もそうですし、回数も重要かと思うのですけれども、ほかのページをずっと通読していませんが、これには出ていないのでしょうか。

○松原労働条件政策推進官 回数につきましては、こちらのほうでも把握しておりませんので、もしわかりましたらまた御説明したいと思いますので、御容赦ください。

○中山委員 了解いたしました。ありがとうございます。

○荒木座長 水口委員、どうぞ。

○水口委員 水口です。

18ページの資料「解決内容別あっせん解決件数」ということで、内容別で「金銭」と「解雇・退職」という項目の関係なのですが、「金銭」というのは、例えば残業代請求とかそういう事件の解決ということでよろしいかと思うのですが、「解雇・退職」がどういう内容で解決しているのかというのはわからないのでしょうか。

○松原労働条件政策推進官 最終的に解雇・退職というものがどういう形で解決しているかということについてまでは、正確には把握できておりません。

○村山労働条件政策課長 若干補足でございますが、先ほどの説明でも具体的な事例を資料の21ページ以降に掲載しているということを御紹介しましたけれども、委員の御質問の点については、24ページから25ページを見て下さい。25ページの10番の「あっせん結果」には、「会社が、整理解雇を撤回した上で金銭補償を行い、相談者が、会社を退職することなどで合意に達した」等々の事例も載せられております。こうした事例について、複数の性格を持った事案につきましては、重複計上も含めて集計したのが先ほど御指摘の解決件数の表になります。

○荒木座長 よろしいでしょうか。

○水口委員 ありがとうございます。

○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。中村委員。

○中村委員 誤解されたら困るかと思って。東京都は労政行政がしっかりしているところなのですね。以前は労政事務所が8ぐらいあったと思うのですけれども、今、かなり集約されて少なくなっていて、ほかの都道府県はこのサービスがもっともっと少ないと思います。したがって、全国的に見て、都道府県レベルで都道府県の部局がやっているこういうサービスが普通に受けられるということはないというふうに想定されたほうがいいかと思います。東京都はちょっと特殊ではないかなと考えています。

○荒木座長 その点は、データ等はありますか。

○村山労働条件政策課長 網羅的に整理した資料はございませんが、中村委員御指摘のように、これだけ、多数の専任の職員の方が直接相談等を行う専門的窓口をたくさん持っているという点で、東京都の取り組みは全国的に見ても特徴的なものです。同時に、ほかの都道府県でもかつてあった同様の相談窓口が徐々に縮小する傾向にあると思います。

 一方、他の行政分野の相談窓口とともに大ぐくりにした行政センター等において労働相談も行っている都道府県庁もあるものと承知しておりますが、その数も減少傾向にございます。いずれにしても、都道府県が自主的に取り組まれている事業であり、網羅的な統計はございませんが、全体的な傾向として縮小傾向にある。東京都はその中で際立って体系的に、かつ職員が直接行う形で相談・あっせんを行っているという点に関しては、中村委員御指摘のとおりと認識をしております。

 以上でございます。

○荒木座長 ほかにいかがでしょうか。村上委員。

○村上委員 質問です。17ページにあっせんの流れというのが書いてございますが、労働相談情報センターに労働相談に来られて、労使で自主的に解決が難しそうだということであれば、あっせんに進むということですけれども、このときに、労働局の相談の場合には、あっせんの定型の申立書、申請書がありましたが、東京都ではそのようなものがあるのでしょうか。

 あと、同じ17ページの下の表では解決率について示されておりまして、大変高い解決率なのですが、この要因はどういうことなのかということがもしおわかりになれば、教えていただければと思います。

○村山労働条件政策課長 お答え申し上げます。まず、村上委員からの御質問1点目の様式があるのかという点でございますが、特段、都の規則で定めた様式があるわけではないと都庁へのヒアリングで確認しております。これは先ほど中山先生からの御指摘の点とも絡むわけでございますけれども、労働局で行っているあっせんの場合については、以前村上委員からのお求めもあり、本検討会で資料配付させていただいた省令定めのあっせん申請書の様式があるわけでございます。都においては、そうした特段の要式行為化はしておりませんで、電話等での相談からあっせんに柔軟に移るようなケースも含めて、都民、住民の立場に近いところで柔軟に取り組まれているというところが一つ特色なのかなと考えております。

 2点目の解決率が高い要因でございます。統計のとり方等については前回御議論がありましたが、その上で、この高い解決率を支えていますのが、先ほど中村先生からも御指摘のありました、長年にわたって都がやっている労働相談あるいはあっせんが都内の企業にもとても重く見られていて、都のセンターから電話がかかってきたときに、企業でも真摯に御対応されている。そういう積み重ねもありますし、また、先ほど御指摘のあった、労政畑の職員の方々のスキルの受け継ぎなど、人的なネットワークというものが受け継がれているところも一つ寄与しているのかなと、私どもが都庁の方々からお話を伺った上で感じているところでございます。

 以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、東京都の件については以上といたしまして、本日の本題に入りたいと思います。

 先ほども触れましたとおり、労働紛争解決システムについては、民事訴訟を除いては一通り意見の交換等を行ってまいったところです。また、次回の検討会では、諸外国の労働紛争解決システムについて有識者からヒアリングを行うという方向で調整をしています。そこで、諸外国の制度についてヒアリングを行うに当たって、これまでのヒアリング等を通じて意見を交換してきた日本の各労働紛争システムの全体を俯瞰して御議論いただき、委員の皆様の理解を深めて、次の検討会の議論につなげるのが有益であろうかと考えます。

 そこで、今回は、これまでの委員の御発言や日本の労働紛争解決システムについて、改めて整理した資料を事務局のほうに用意していただきました。その資料を参考にしつつ御意見を承れればと考えております。

 そこで、事務局より日本の各労働紛争解決システムの相互の関連性と、そうした各システムのアクセスについて、配付資料2に基づいて説明をお願いします。

○松原労働条件政策推進官 資料No.2「各労働紛争解決システム相互の関連性やアクセスについて」をごらんください。

 4ページをごらんください。いつもお出しさせていただいている図でございますけれども、個別労働関係紛争、右のほうでございますが、これまでヒアリング等々を行いまして、都道府県労働局の対応、都道府県の対応、労働審判制度、あとは上にございます企業内紛争解決システムについて御議論を深めていただいたところでございます。本日は、これらを含めた全体的な内容につきましてもう一度整理をして御説明させていただきます。

 6ページをごらんください。これまで本検討会で御議論いただきました中から事務局のほうで今回の議題に関する委員の皆様方の御意見を抜き出させていただいたものでございます。こちらも簡単に御説明させていただきます。

 第1回でございます。1つ目の○でございます。多様なシステムは整備できているけれども、それぞれの関連性が不十分。各行政のADRから司法の訴訟制度に移る際に、円滑にステップアップできるようにするための制度の整備が必要という御意見でございます。

 また、下のほうでございますけれども、諸外国ではイギリス、本日、後で御説明申し上げますけれども、ACASなどのように制度的に整備している例もあるので、そういう制度的対応についても検討すべきという御意見でございます。

 2つ目の○でございます。労働相談につきましては、各紛争解決システム間の連携という意味でうまく活用していくべきではないかという御意見でございます。

 3つ目の○でございます。あっせん、労働審判、訴訟などさまざまな紛争解決システムは補完的に結びついており、全体の制度をよりよくしようという総合的・包括的視点が強く求められるという御意見でございます。

 4つ目の○でございます。あっせんや労働審判に行っている労働者の方はごく一部であって、ほとんどが泣き寝入りしている。さらなる有効な解決手段が考えられるのではないかという御意見でございます。

 下から2番目の○でございます。労働審判制度につきましては、現状ではアクセスについての障害がある。労働審判や訴訟をやるときは弁護士に依頼しないといけないため、中小企業労働者については、費用など経済的なハードルがあるという御意見でございます。

 一番下の○でございます。個別労働紛争の解決を有効に機能させるためには、アクセスの改善、時間、手間、費用の問題を解決するというのが有効である。あとは、ADRだともっと早い手続で解決できるということで、ADRの一番必要かつ有効な要件をうまく生かしていくべきではないかという御意見でございます。

 7ページでございます。

 第1回の続きです。1つ目の○でございます。紛争の発生をどう未然に防ぐかという議論も必要ではないかという御意見。

 今の点に関連いたしまして、紛争予防の中では苦情処理というものも含めて考えるべきではないかという御意見。

 最後の○でございますが、パワハラ、人事考課というものにつきましては、企業内での解決が適当であって、企業内の紛争処理という点では非常に重要という御意見でございます。

 続きまして、第2回でございます。

 1つ目の○でございます。労働局と労働委員会を比べた場合の御意見でございますが、事案がこうだから労働局あっせんがいい、または労働委員会あっせんがいいという割り振りはなかなか難しいのではないかという御意見でございます。

 2つ目と3つ目は同じような御意見でございますけれども、いわゆる当事者の解決手段の選択の問題を取り扱うべき。ベストプラクティスというものを関係者がうまく共有できるような形を考えることが必要。当事者と手段とのマッチングが不十分であるという御意見でございます。

 一番下は、社労士会からヒアリングをした際の御意見でございます。社労士会ADRというものは夜間や土曜日にも対応している点で労働局とは違うのではないか。社労士会ADRでは打切り通知書を送付する際に、労働審判や裁判の案内を同封して対応しているという御意見でございました。

 続きまして、第3回でございます。

 1つ目の○でございます。いわゆる民事訴訟が提起された場合に、裁判官が職権で労働審判に付せるかどうかという論点があり、これは非常に重要な論点。審判制度が機能しているからこそこの点を議論していくべきという御意見でございました。

 次の○でございます。労働局や裁判所、弁護士会等々の様々なツールがあることを紹介してもらったけれども、こうしたツールがより活用されるためには相互の連携をとることが必要ではないかという御意見でございました。

 続きまして、9ページをごらんください。こちらもこれまでのおさらいでございますけれども、近年の各労働紛争解決システムの整備につきまして、簡単にまとめさせていただいたものでございます。

 真ん中をごらんください。行政でございますが、まず個別労働関係紛争解決の促進に関する法律が平成13年にできております。

 右のほうの背景をごらんいただくと、企業再編、就業形態の多様化等に伴い、個別的労使紛争が増加する一方、行政の対応としては、それまでは労働基準法に基づく労働局長の助言・指導制度のみであったため、行政における当事者間の調整機能を高めるため、都道府県労働局におけるあっせん等の機能整備が行われたということでございます。

 続きまして、一番上の民間のところでございます。いわゆるADR法と言われております裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律が平成16年にできております。こちらに基づきましてヒアリングを行った社労士会等が対応なさっているということでございます。

 こちらの背景でございますが、司法制度改革審議会において「国民が、訴訟手続以外にも、それぞれのニーズに応じて多様な紛争解決手段が選択できるよう、ADRの拡充・活性化を図る」とされたことを踏まえて制度が創設されたものでございます。

 最後に一番下の司法でございます。労働審判法、前回御議論いただきましたけれども、こちらが平成16年に整備されております。

 この背景でございますが、右をごらんいただくと、個別労働関係紛争について、労働行政においては、個紛法により、相談・助言・あっせんサービスが整備されたが、司法システムにおいては特段の整備がされていなかった。

 労働関係事件の専門性、事件動向等を踏まえると、訴訟手続に限らず、簡易・迅速・柔軟な解決が可能なADRも含め、労働関係事件の適正・迅速な処理のための方策が必要であるということが背景となっております。

 続きまして、10ページをごらんください。これまで御議論いただきましたけれども、現在の労働紛争解決システム全体のイメージというものを事務局のほうでつくらせていただきました。完璧に網羅できている訳ではございませんが、あくまでもイメージとして、御議論に資するものとしてごらんいただければと思います。

 一番上に「様々な苦情や個別紛争の発生」というものがございまして、右のほうで「企業内での解決」があります。事前の場合もあると思いますが、企業内での解決を行っている場合もあります。

 一方で、相談はどこに行くかというのが次の赤い枠にございます。企業外の労働組合に相談したり、法テラス、労政主管部局・労働委員会、都道府県労働局という形で相談窓口がございます。とれている数字で一番多いのは、都道府県労働局の年間100万件ほどの数値でございます。

 この後、あっせんがございまして、もちろんあっせんを経ずして労働審判に行きましたり、民事訴訟に行ったりする例もございますが、このあっせん機関を、ヒアリングさせていただいたように、3つほど書かせていただいております。一番多いのが労働局のあっせん、5,010件という申請件数でございますが、それと労働委員会、先ほど御説明した労政主管部局によるあっせんというものが、合わせて年間1,000件程度新規受付がございます。

 あとは、民間ADR機関として社労士会のみでございますが、新規受付件数が200件程度という状況になっております。

 こちらの後に前回ヒアリングをさせていただいた労働審判制度を記載しております。こちらは新規受付、年間3,400件程度ございまして、処理している既済というものも3,400件程度ございます。

 労働審判制度の中身でございますが、調停によるものが約2,300件。労働審判が行われたものが630件程度でございまして、このうち異議申立があったのが355件という状況になってございます。

 労働審判制度とは別スキームとして民事調停というシステムがございますので、こちらを右のほうに書かせていただいております。労働事件に限った数値がございませんので、記載させていただいておりません。

 これらの手続を経由して、もしくは紛争が起こった後、直接民事訴訟に行く場合がございますが、年間の新受受付は3,200件程度となっておりまして、終局が約3,000件、和解が約半分程度でございますけれども、1,600件、判決が976件という数字になっております。

11ページでございます。今までヒアリング等々をさせていただいた中のあっせん等の主体を一番左に書かせていただいておりますが、この効果や根拠法等を簡潔にまとめたものでございます。

解決効果のところをごらんいただきますと、民間から行政は調整的な効果になっておりまして、司法のほうをごらんいただくと、労働審判が調整的効果と判定的効果両方をあわせ持つ形になっている。民事訴訟については判定的な効果をもっていると整理をさせていただいております。

 そのほか、今までヒアリングで聴取した内容につきましては、右のほうに書かせていただいておりますので、御参照いただければと思いますが、費用につきましては、行政については無料になっておりまして、社労士会などは無料のところと、一部お金を取っているところもでございます。

 司法のほうは一定の手数料を取っているという状況でございます。

 続きまして、12ページ、13ページをごらんください。個別の労働紛争解決システムを整備する一番端緒になりましたとき、平成12年の「個別的労使紛争処理システムの在り方について」という報告書を参考までにおつけいたしました。

 下線を引いておりますけれども、このときの整理としましては、まだ余りシステムが整備されていないときであったということを頭に置いていただきますと幸いでございますが、複数の機関がそれぞれの機関の性格に合った機能を持って、当事者がこれを選択できる複線的なシステムが適当であるとともに、利便性、効率性の観点から、多段階の機能が一つの機関に備わり、連続的に利用できることが望ましいが、備わっていない機能については、相互に連関を図ることが必要。

 その下でございますが、「紛争処理の機能の在り方」としましては、「できる限り相談窓口のワンストップ化を図ることが適当」とされまして、一番下でございますけれども、「地域の労使団体等による解決をはじめ、幅広い機関・団体でそれぞれの特徴を生かしたサービスが充実されることが望ましい」という形でこの当時整理されておりまして、おおむねこれに沿った形で整備が図られてきていると認識しております。

13ページは、法律が通りました段階での国会の附帯決議ですので、御参照いただければと思います。

 続きまして、14ページ、15ページをごらんください。行政による紛争解決制度で、消費者紛争解決システムを参考として出させていただいております。さまざまな事案がある中で、消費者紛争解決システムにおきましては、いわゆる事案が重たいかどうかということに重点を置いて、事案の振り分け、担当する機関の振り分けをしているということで、例を出させていただいたものでございます。

 2)のところをごらんいただきますと、「独立行政法人による消費者紛争解決システムの特徴」と書いておりますけれども、独立行政法人の紛争解決委員会におきまして処理しているものにつきましては、2をごらんいただきますと、「消費者紛争のうち、被害状況や事案の性質に照らし、その解決が全国的に重要であるもの(重要消費者紛争)を扱う」ということにしておりまして、それ以外につきましては、全国の消費生活センターのほうで処理をするという扱いになっているということでございます。

 申請件数につきましては、15ページをごらんいただければと思います。

 また、このシステムは「消費者ホットライン」というものをつくっておりまして、ワンストップでの案内窓口という形になっております。

 続きまして、16ページ、17ページをごらんください。「司法による紛争解決制度」ということで、例として民事調停手続というものをつけさせていただいております。委員からの御発言を、先ほど御紹介申し上げましたけれども、いわゆる付調停というものを参照にしたらどうかという御意見もございましたので、その例としてつけさせていただいております。

 民事調停でございますが、「民事調停は、民事に関する紛争について、話し合いによりお互いが合意をすることで紛争の解決を図る手続」ということでございまして、ゴシックになっている○の3つ目でございますけれども、地方裁判所が取り扱う民事調停事件としましては、当事者の合意により申し立てられた事件のほか、訴えを受け付けた裁判所が適当であると認めたときに職権で調停に付した事件ということになっておりまして、一度民事訴訟、裁判のほうに行った場合につきましては、裁判官の職権におきましてこちらの民事調停というものの手続をすることが可能という手続になっておりますので、システムとして紹介をさせていただきます。

 件数につきましては、17ページにつけさせていただいておりますので、御参照いただければと思います。

 本資料の最後、18ページ、19ページをごらんください。先ほど座長から次回海外の国のヒアリング等を行うというお話をいただきましたけれども、その参考になるということもありつけさせていただいております。我が国におきましては、労働事件を初めとする民事紛争に関しましては、裁判所に訴えを提起する前に行政機関等に調停やあっせん等を申し立てることを必須としている制度はございません。一方で、諸外国の中には、労働事件に関しまして、裁判所に訴えを提起する前に行政機関などに調停やあっせん等を申し立てることを義務づけている国もございます。

 例えばということでイギリスですけれども、周辺事情、国民性等々も違うということはもちろん前提でございますが、イギリスにおきましては、雇用審判所の係属件数が非常に多くなったということで、増加に伴いまして制度改正が行われてきております。

 具体的には、企業内の紛争解決の促進のための措置としての行為準則を定めることですとか、あっせん調整機関ACASの紛争処理促進も進められております。

 まず、2013年には、それまで無料でした雇用審判につきましては有料化を行ったということ、2014年には、雇用審判の提起前にACASへのあっせん申請を行うことが義務化されているという状況でございます。

 同じような形で扱っている制度がございますのがスペイン、デンマーク、オーストラリアでございますので、こちらを御参照いただければと思います。

 最後の19ページでございます。諸外国における紛争件数と日本の件数をつけさせていただいております。日本に比べまして、諸外国の紛争というのは、一部そうでもない国もございますが、傾向として司法で処理している件数が非常に多くなっているというのが見てとれるかと思いますので、御参照いただければと思う次第でございます。

 以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございました。

 非常に多様な制度がありますので、それを整理していただいたということです。

 それでは、ただいまの事務局の説明について、各紛争解決システムの相互関係、あるいはアクセスという問題の整理もありましたので、皆様から御意見、御質問をいただきたいと思います。鶴委員、どうぞ。

○鶴委員 どうもありがとうございました。

 私も当初第1回から各紛争解決機関の有機的な連携が非常に重要であるということを申し上げてきたのですけれども、事務局のほうで非常に明快な形でおまとめいただきまして、大変ありがとうございます。

 今、申し上げたい点は大きく分けて2点ございます。

 1点目は、12ページ、今から15年前に「個別的労使紛争処理システムの在り方について」というものをまとめていただいたときの当初の基本的な考え方、先ほど御説明いただきました。一言で申し上げますと、もう一度ここに書いているような原点に立ち戻る必要があるのかなと思っています。

 現在、下線に引いていだたいた複線的なシステムというのはかなりできてきていると私も理解をしているのですが、複線的なシステムがあるだけではなくて、「相互に連関を図ることが必要である」ということなので、これまで15年の中で複線的な、それぞれ役割を果たすということはできてきたのですが、さらに連関ということをこの段階でしっかり考えるところに来たのかなと思っております。

 もう一つ、相談窓口のワンストップ化というところがありますけれども、これについても、多分都道府県の労働局というところが、数としては圧倒的な最初の窓口になっているというところなので、ここからどういうふうに振り分けるのかというのが非常に課題になっているなと思います。

 連携なのですけれども、現在の仕組みの中で、先ほど事務局が御説明いただいたように、訴訟に行った場合、裁判所の職権で調停に付すということが現実的に行われているということなのですが、これも、これまで申し上げたように、振り分けとして必ずしも訴訟というところが適切ではない、また、いろいろ議論をやっていって、例えば労働委員会とか労働審判、こういうところで議論していただいたほうが適切ではないか、そういうものがあれば、うまくそういった仕組みも並行的に考えるということをぜひ御検討をお願いできればなと思っております。

 これが大きな1点目でございます。

 2点目は、一番最後の19ページ、国際比較の部分なのです。先ほど座長のほうから、国際比較については次回事務局からプレゼンテーションがあると伺っていますけれども、ここの数字を見ていくと、これはこれまでも議論されて、例えばヨーロッパを見ると、司法での解決件数、行政も含めて、日本と全然桁が違う。10万件レベル。日本は数千件ということで、この国際的な比較の数字を見て、日本は諸外国に比べてこれだけ低い数字なので、日本は訴訟とかそういうのが余り好きではない、基本的にはそんなに大きな問題はない、うまくいっているのだというふうな議論のされ方を時々私も耳にするのですが、どうなのかなと私は思っております。

 というのは、19ページの日本のほうを見ていただくと、民事上の個別労働紛争相談件数というのが238,806件。やはり10万件のレベルあるわけです。そうすると、先ほど申し上げた各紛争解決機関というところがより使いやすくなって、より連携がうまくいくと、もっと潜在的にそうしたものが使われる、結果として件数がふえていくということも当然あり得るのだと。なので、最初から件数が少ないから別にいいのだということではなくて、潜在的な需要というのは多分まだまだかなりある。だからこそもう少し使い勝手をいろいろよくしていくといったところがかなり重要であるということが、19ページの表の見方ではないのかなと個人的には考えています。ちょっと感想ということで申し上げました。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。斗内委員。

○斗内委員 ありがとうございます。

 今のことにも少し関連するかもしれないのですが、私からも意見を申し上げます。前段で先ほど東京都の労働局のあっせんの概要のお話がありました。資料2にまとめられている中身につきましても、4ページからありますように、非常に多様な労使の紛争解決があるなかで、労働局における総合労働相談コーナーというのは、「入り口」の一つだというふうに認識ができるのかなと思っております。

10ページにある「現在の労働紛争解決システム全体のイメージ」という図を見ますと、都道府県労働局の総合労働相談コーナーへの相談件数が、全国で103万件ほどある中で、19ページの表では、先ほどご説明がありましたように、民事上の個別労働相談件数は24万件になっているという理解をさせていただいています。そのうち、労働局あっせんの申請件数が5,000件というふうに御理解をさせていただいております。

 そういう意味で、実際の窓口での相談員の方の御対応につきまして、わかる範囲でお教えいただければなと思っております。事案によっていろいろな解決方法、選択肢を提示しているのか、または、多様な紛争解決の仕組みがございますので、それぞれの事案に応じてそういった紛争解決手段を紹介するということで処理をされているのかどうか、相談員の実務面にかかわりますが、おわかりになる範囲でお教えいただければなと思います。

○荒木座長 今のは都道府県労働局の話ですね。

○斗内委員 そうですね。        

○荒木座長 それでは、事務局、いかがでしょうか。

○大塚室長 地方課の大塚でございます。

 今の御質問に関して申し上げます。職場で生じるトラブルといいますのは、御案内のことかと思いますけれども、その発生原因とかその進捗状況がさまざまでありますし、また、労使それぞれに法の抵触も含めて責任の度合いがどの程度あるのかとか、あるいは解決に向けて労使の姿勢、あるいは話し合いの状況、実にさまざまなものがございまして、総合労働相談コーナーに寄せられる相談につきましても23万件というような数字、御紹介いただきましたけれども、全てが必ずしも紛争として表面化したものとは限らないのが現状でございます。

 公表資料ではないのですが、238,806件の民事上の個別労働紛争相談件数がありますが、このうち紛争状態にあるものといたしましては、集計したところ7万6,094件でございまして、残りの162,712件につきましては、必ずしも具体的な主張とか利害の対立に至っていないものでございました。

 こういったこともございますので、総合労働相談コーナーに相談が寄せられた場合の対応でございますが、相談員の基本的な姿勢といたしましては、まずは相談者の主張をよく傾聴するということでございます。その上で、その相談内容が個別事案、事業所名を特定されていて、かつ行政その他の第三者に何らかの対応を求める、そういった個別事案である場合には、具体的に御利用できるサービス、労働局であれば、助言指導・あっせんもございますし、労働委員会のあっせんもございますし、あるいは裁判所の諸手続もございますし、財政的な問題を抱えている方については、法テラスでの扶助の制度もございますので、関係機関の特徴をまとめた一覧リーフレットを全局で作成しておりますので、それをお示ししながら御案内している。そういう実務の取り扱いを行っているところでございます。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 水口委員。

○水口委員 水口です。

 労働局のあっせんについてなのですが、資料No.3の9ページに雇用終了に関する紛争の解決状況、いわゆる解雇事件の相談件数等が載っています。これを見ると、労働局、個別労働紛争解決制度における解雇に関する相談・あっせんというのが、相談件数が3万8,966件、約3万9,000件あるのです。ところが、このうち、あっせん申請件数は1,392件ということになります。解雇紛争、解雇に関する紛争というのは、まさに解雇が発動されているときですので、我々実務家から見ると、当事者の対立が表面化をして顕在化しているケースなのだろうと思うのです。

 そういう意味では、紛争の成熟性という観点からすれば、これらの事案は紛争として成熟しているというケースなのだろうと思うのですが、それにもかかわらず、あっせん申請件数が1,392件ということで、その申請件数が少ないというのが非常に気になっています。これは一般の労働相談全体ではなくて、解雇事件に限定したものなので、労働局に解雇で相談してきた労働者が、労働局のあっせん委員会に申請する件数が1,392件というのは極めて少ない。これに対して、労働審判における解雇等に関する申立ては、新受件数で1,747件あるわけですね。この中には、比率はわかりませんが、労働局のあっせんで不調だった場合に流れているものもあるのではないか。

 その意味では、個別労働紛争解決制度における解雇に関する相談件数に対して、あっせん申請件数がわずかだということ、この差が何に起因するのか。その原因として、あっせん申請を促すような形の相談になっていないという懸念もあると思うのですが、このあたりをどう分析されていますか。

○大塚室長 今の水口委員の御質問についてでございますが、正確なところ、3万9,000引く1,392件の差がどうしてこれだけ生じるのかというのを定量的に分析したものというのは、残念ながらないわけでございますけれども、労働局の対応といたしましては、解雇に限らず、こういった具体的な相談があった場合で、かつ進捗具合からしてこれは何らかの第三者の手助けが必要だろうという場合には、一覧リーフレットに載っておりますような労働局の助言指導・あっせん、その他の手続を紹介しているというのは、先ほど申し上げたところでございます。

 そういった手続を御案内しても、なお利用されない労働者の方というのも一方でおるわけでございまして、例えば労働局のあっせんを利用せずに別の手続に移行される方、あるいは労働局でもらったアドバイスをもとに、もう一度自分でやってみる方、さまざまな方がおられるかと思います。ただ、具体的な3万件余りの方々が個々具体的にどうなのかというのは、申しわけございませんが、ちょっとわからないところでございます。

○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。中村委員。

○中村委員 僕のわずかな経験なのですけれども、労働相談に入るときには、相談員の人が自分の案件が何であるかが明確にわかっていると考えないほうがいいと思っています。何かわからないけれども起こっているとか、何か問題が起こってどうしたらいいのかわからないというのがほとんどだと考えて、確定すると裁判とかに行けるのだけれども、そうでない場合は、自分の案件がどうであるかわからないというのがほとんどだと。

 何を言いたいかというと、システムの連携を図るとか設計をするというときに、前提としては、みんな自分の事件が何であって、まずここを通過して、次にここを通過してということを考えておられるのかなと思うのだけれども、もともと自分の事件が何であるかわからない人に対して、その全体像をお示ししても余り意味がなくて、司法の中の連携を図るとか、そういうのだと非常に効果的だと思うのですが、それ以外、全体像を設計するというのは、相談の実務から言うと余り得策ではないかなという気はしています。

 司法の中の連携を図るというのはいいかなと考えていますけれども。

○荒木座長 ありがとうございます。

 大竹委員、どうぞ。

○大竹委員 資料2の10ページの図について質問なのですけれども、さまざまな苦情や個別紛争が発生して、それから今、中村委員がおっしゃった点にかかわるかと思うのですが、相談者がどれかを選んで相談しに行っているということなのですけれども、その間にワンストップでここに行ったらどうかということを指示できる機関が多分日本にはあると思うのです。解雇紛争については、例えばハローワークが必ず解雇が発生したのを把握するわけですから、そこからこういうところに行ってはどうかというふうな案内が現状なされているのか、あるいはこういうところとの連携は既にあるのかというのを教えていただきたいのです。

 それから、ほかの国についても、労働者がよく知っていて、いきなり相談窓口に行っているのか、間を支援するようなシステムが入っているのかということがもしわかれば教えてください。

○荒木座長 ワンストップサービスというのがどういうふうに機能しているかということも含めて、少し御説明いただくのがよいかなと思いますが、いかがでしょうか。大塚室長。

○大塚室長 ワンストップサービスの観点で申し上げますと、確かにハローワークに求職の相談に行ったときに解雇に関する相談がある場合もあります。その場合には、多くはハローワークでは労働基準監督署の総合労働相談コーナーを御紹介し、そこでいわばワンストップ的な対応をするということを行っております。具体的に解雇に至った状況ですとか背景事情などもお聞きした上で、それが民事上の個別紛争として対応すべきときには労働局の助言・指導、あっせん、その他の仕組みを事案に即して御紹介しつつ、対応する。

 それが仮に労働基準法の例えば解雇予告手続の違反とか労基法違反の場合には、労働基準監督署の総合労働相談コーナーでは、そのまま後ろにいる労働基準監督署の方面に取り次いで、そこで必要な指導を行う。そういった形で総合労働相談コーナーを中心にワンストップサービスを行っているのが現状でございます。

○荒木座長 長谷川委員。

○長谷川委員 まず、労働者からすると、会社から「あなたを解雇します」と言われた場合には悩むわけですね。一晩悩んで、恐らく家族や友達に相談したり、職場の人にいろんなことを話したりするわけです。そうすると、例えば職場の人が「労働基準監督署に行ったらどうか」とか、紛争解決システム制度をあまり知らない人だと、「ハローワークに行ったらどうか」とアドバイスすると思います。アドバイスを受けて、労働基準監督署に行けば、総合労働相談コーナーがあるので、そこで来訪目的を相談すれば、この場合にはこの紛争解決システム制度を利用したらどうかと言われて、そこの仕組みにたどり着けると思うのです。

 また、ハローワークに相談に行った場合には、現在のハローワークは人が多く非常に親切に対応してくれます。ハローワーク内に案内をする担当者がいて、例えば「解雇されたのだけれども、その相談で来た」と相談すれば、その担当者は、「ここはハローワークなので、解雇の相談の場合にはここでなくて、労働基準監督署に行ってください」と言うのです。現在、ハローワークと労働基準監督署が一緒のところはないので、相談者が「労働基準監督署はどこにありますか」と訪ねれば、例えば八王子市の場合には、「労働基準監督署はこちらの地区にありますから、そこに行ってください」と教えてくれるわけです。その説明を受けて、労働基準監督署に行けば総合労働相談コーナーがあり、そこでの相談窓口担当者は、労働基準監督署に勤めたOBやいろんな労使関係のことを知っているような人など、様々な経験を持った相談員なので、その人のところで具体的な相談が始まるのだと思うのです。

 そして、実際の相談窓口の対応としては、先ほど説明があったように、まず何を言っているのかというのを聞く。傾聴というのはそういうことだと思います。「解雇されたのか」、「解雇といつ言われたのか」など、相談者の話を聞いたうえで、その後、相談員が事実関係を少しずつ整理して、いろんなアドバイスをしていくのだと思うのです。そのアドバイスを受けて、すぐ怒る人もいれば、アドバイスの内容をゆっくり考える人といろいろいるわけです。

大体の場合、労働基準監督署の総合労働相談コーナーでは、相談事由が基準法の違反の事件なのか、それとも民事上の事件なのかというのを見て、このケースであれば、労働局であっせんを行っているので、あっせん申請をしたらどうかとアドバイスしたり、また、弁護士費用がかかりますけれども、労働審判という紛争解決システムもありますよとか、アドバイスしたりしていると思います。このようにして、相談事案を各紛争解決システムへと振り分けていくのだと思うのです。

 そういう意味では、総合労働相談コーナーは、何らかの形で解雇された人は、1回は行く場所だと思います。ただ、1回でスムーズにそこまでたどり着く人と、友達とか職場の人に相談し、いろんなことを手探りしながらたどり着く人がいます。多くの人は最終的に総合労働相談コーナーにたどり着くので、労働相談100万件という件数は、まさにその総数だと思うのです。しかし、先ほどから鶴委員や水口委員の発言にあるように、相談件数は100万件あるにもかかわらず、その相談を振り分けていったときに、なぜ最終的に民事上の紛争が紛争処理機関のところに来ないのか。その原因としては、相談を受けた窓口の人のアドバイスが適切でないので相談員がもっとスキルアップしなければいけないのか、それとも、弁護士費用がかかるから労働審判に行かないといった費用の問題なのか、色々な要因が考えられます。その辺りは私自身もやもやしていて、少し調査や研究といった原因の検討・分析が必要なのではないかなと思います。

 あと、先ほど鶴委員から、国際比較の話がありました。確かに、司法制度改革の初期の段階、労働審判制度や都道府県労働局のあっせん制度を導入された頃は、労働相談が100万件あるのに、こういう紛争が解決されないでいるのは「泣き寝入り」だと言われていました。しかし、労働審判制度ができたという効果は多く、制度導入時に想定した以上の受任があるのが現状です。そういう意味では、日本の労働者も、以前のようにもう泣き寝入りはしないで外部の紛争解決機関を利用するという風潮が比較的広がってきたのではないでしょうか。

 そのように考えると、さらに現在ある紛争解決システムのどの部分をどう改善するのかという点については、まさにこの検討会で少し検討したほうがいいのかなと思います。

 あと、紛争解決における行政と司法の連携との論点についても、諸外国の制度の比較も含めて、これからこの検討会において議論を深めていくべきだと思います。

 最後は少し余計なことを言ったかもしれませんけれども、以上です。

○荒木座長 ありがとうございます。

 高村委員。

○高村委員 今、長谷川委員から弁護士費用の問題について発言がありました。仮に、現在ある紛争解決システム制度間での連携が図れたにしても、弁護士費用という問題がアクセス障害の大きな問題として残るのだろうと思うのです。

 また、泣き寝入りの話もありましたが、これだけ有効に機能し、高い評価をされている労働審判制度があっても、弁護士費用という問題が障害となって、そこにアクセスできないという実態もかなりあるのではないかと思います。

 そういう意味では、裁判等の司法手続に参加したくても、経済的にちゅうちょしてしまうという人たちが現実にいるわけですから、労働組合もそうした費用の問題について何らかの援助制度を設けなければならないと考えました。こうした議論の中から、私ども連合東京も「労働裁判支援基金制度」という制度を設けております。細かい制度の詳細は省きますが、この制度は連合の組合員、この中には、例えば解雇を受けたということで相談に来られて、私どもに個人加入をされるという方も含めて、費用の面でちゅうちょしている人たちを援助しようとするもので、1人当たり50万を限度とし、返済について原則は1年、最長2年として、私ども連合が費用を立てかえるという制度です。現実に、この制度は活用されています。

 そうした弁護士費用をどのように援助するかという点で、これまでも法テラスにおける民事法律扶助の問題がありました。その中でも特に、弁護士費用などを立てかえをする代理援助の問題について見てみると、平成25年度の法テラスにおける代理援助の実施決定件数が104,000件ちょっとだったと思うのですが、そのうち事件別の内訳を見てみますと、労働事件というのは2.7%でしかないという実態があります。私自身、法テラスの代理扶助に関しては、どういうふうに審査がなされて、どういう決定がなされているのか、そのシステムを含めて全くわかりませんが、事件別の内訳という数字を見ますと、労働事件にかかわる代理扶助は、全体のわずか2.7%でしかないのです。これは余りにも低過ぎるのだという感じがしていまして、法テラスの代理援助制度の問題については、代理援助の審査の状況を含めて、実態がどうなのかということを踏まえた議論も必要ではないかと思っています。

 さらに、費用という面で申し上げますと、労働審判制度は、代理人をつけるということを義務づけている制度ではないわけです。ですから、本人申立ての労働審判も可能なのですが、実際には最長でもわずか3期日という短い期日の中で争点整理をし、証拠調べもして結論を出すとなると、相当な法的知識、経験を持った人がそこにいなければ十分な対応ができない。結果として、多くのケースの場合、労働審判の申立てにおいて代理人弁護士を選任することになっているのだと思いますが、しかし、先ほど申し上げたように、弁護士費用というのは一つのアクセス障害となっていることも事実です。そこで、労働審判法4条第1項のただし書きで、裁判所が許可すれば弁護士以外も代理人につくことができるという規定があるので、この規定を活用できないかと考えます。これはなかなか認められていない実情にあると聞いており、現実問題難しいのかもしれませんが、有効に機能し、高い評価を受けている労働審判制度をより広く利用してもらおうということを考えた場合には、こうした規定についても一度踏み込んで議論をする必要があるのではないと思っています。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 輪島委員。

○輪島委員 ありがとうございます。

 資料2でございますけれども、大変よくまとめていただいて、事務局に感謝をしたいと思っております。特にこれまでの議論のところで、関連性、アクセス関係を中心的にまとめていただいて、それを踏まえて資料の10ページ目、全体のイメージ、よくできているのだろうと思います。

 私もその中で連携とかいうことが必要だと申してきまして、今、議論を聞いていて、10ページの上から2つ目のオレンジ色以降の整理という話だろうと思うのです。しかし、これに加えてもう少し申し上げたかったのは、青いところ、問題が発生したところで、先ほど長谷川委員もおっしゃいましたけれども、どうしたらいいのだろうという人がどこにアクセスするのかということが非常に大事だと思っています。右側の「企業内での解決」ということもこれまでの議論で出てきており、例えば企業の中で言えば、苦情処理とか相談室を設置しておりますので、まずそこに行くということもあるでしょうし、企業内の労働組合に相談するということもあろうと思います。

 そういう方法もあると思うのですが、適切な相談機関にたどり着くためには、青いところのステージで、当たり外れがないようにニュートラルな手段で仕分けをして、適切なところに行くという、アクセスポイントがはっきりするような仕組みがまず大切なのではないかなと考えているところです。これは私案でありますけれども、厚生労働省が携帯電話やスマートフォンに対応するアプリを作り、当事者が希望する項目、例えば土・日に相談したいですとか、無料のほうがいい、早く解決したいといったことを入力することにより、どこに行くのが適切ですねという割り振りみたいなものをそのアプリがニュートラルにアドバイスするような仕組みがあると、労働者もアクセスしやすく便利なのではないかと考えています。

 以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございます。

 山川委員。

○山川委員 今、輪島委員からお話のありました企業内の関係等について、2点ほど申し上げたいと思います。

 資料2の12ページの平成12年の研究会の中で、第2として「企業内での自主的解決について」と挙げられて、幾つか提言があって、その中に「企業内での自主的解決についての啓発、情報提供などの支援を行うことが適当である」と書かれているのですが、これがどの程度現実に政策として実現されたのか。それほど実現されていなかったのではないかという感じがしているのです。

 諸外国、例えばイギリス等は、企業内での苦情処理について、かつて義務づけをしていたのですが、余りうまくいかなかったということで、行為準則をつくるということにしております。

 日本でも特区構想のときに出てきた雇用指針は、ややそういう色彩を持っているかなと思いますので、そういった企業内での解決についてどう考えるかというのも検討の対象に含まれるかと思います。

 また、苦情処理と予防の関連性というお話を前にしたことがありますけれども、個別の、例えば上司が従業員の苦情にどう対応するかということ、例えばアメリカ等では、人事管理の中で「コンフリクト・マネジメント」という用語があって、それで上司に対していろんなトレーニングをする。それは上司の役割の一つの大きなものである。職場内での利害対立を調整する役割をする。日本では、どういうわけか、人事管理の中でコンフリクト・マネジメントを専門的に研究されておられる方は、こう言ったら失礼かもしれないのですが、余りおられないような感じもいたします。

 こういった予防的な管理、あるいは先ほどの輪島委員との関連で申しますと、法の周知を職場レベルで徹底するということもあろうかと思います。これはしょっちゅう申し上げているのですけれども、アメリカの職場に行くと、ポスターが張ってあるのです。そのポスターの中には、法律の概要とともに、もし問題が起きたら、雇用機会均等委員会の無料電話番号はこれですとか、そういうことが書いてある。あるいは厚生労働省のホームページのアドレスはこれですと書いてあって、職場レベルでの周知がポスターを通じて義務づけられているということもある。情報提供ですけれども、そのような形で、企業内での苦情処理、ないし予防面も含めるということは検討対象として考えられるかと思います。

 もう一点が、監督署がその下にちょっと書いてあるのですが、今のところ年間4万件台の申告件数があると思います。紛争解決とは次元の違う話なのですが、実態は重なっているといいますか、労基法違反の紛争を実際には是正勧告への対応という形で解決しているので、円が2つ重なっていて、法違反の是正と紛争解決が実はかなり重なる部分があって、監督署の対応によって紛争が解決しているということもある。この研究会はそちらを直接対象とするものではないと思いますけれども、紛争解決に当たっての監督署の役割というのも一方で視野に入れておく必要があるかと思います。

 ちなみに、昨年の2月、ILOJILPTの共同の会議、紛争解決の会議をしたのですが、その中でもILOの関心事項の一つは、紛争解決制度と労働監督制度の相互補完関係はどのようなものかということでしたので、そういう点も、法律でどうこうするという話ではないかもしれませんけれども、一方では視野に入れておく必要があるかなと思います。

 以上です。

○荒木座長 徳住委員。

○徳住委員 今後の議論においては、資料2の10ページにまとめられたイメージ図を見ながら、問題点を深めていくことが大切だと思うのです。鶴委員がおっしゃったように、潜在的問題は眠っている可能性があるのではないか、私もその可能性があると思っていて、その可能性は本当にそうなのかということが一番大きな問題だと考えます。その点で言うと、先ほど厚労省から説明がありましたが、このイメージ図にある総合労働相談センターの相談件数自体は労働紛争的な相談と単なる相談の総数ということなので、問題は前者の労働紛争的な相談がどれぐらいあるかを分析する必要があると思います。都道府県労働局の総合労働相談センターができる前は、そもそも相談する場所がほとんどなかったのです。労働者は会社から解雇された場合には、ほとんど泣き寝入りだったのだけれども、現在は、相談に行く段階まで来ているのです。歴史的にはそう見るべきだと思うのです。

 その中で、都道府県労働局の総合労働相談コーナーがワンストップサービスの中心になりつつあって、それ自体はいいことだと思います。ただ、それ以外に連合の労働相談も年間1万数千件受けていると聞きますし、また、私は労働弁護団にいますけれども、そこにくる相談件数も、1万数千件ありますし、東京都の総合労働相談センターにくる相談件数も相当あるわけですよ。このような紛争的な労働相談件数が大体どれぐらいあるか、もしおわかりになれば教えていただきたいのです。その数字を見た上で、最終的な解決制度としては第三者機関、民間ADRと司法制度があると思うのですが、そこに至るまでに淘汰したもの、解決したものが大体どれぐらいあるかと見ないと本当の議論ができないし、そこを見通すことができないとしても、大体こういう傾向ではないかということはこの検討会での認識が一致しないと共通的な問題が語れないのではないか。

 また、一番大きな問題は、先ほど水口委員が指摘されましたが、都道府県労働局のあっせん申立件数が相談件数の割に1,000件台にとどまっている点であり、その原因は何なのかを悪いとかいいとかの問題ではなくて、はっきり確認しないと、今後の論議が進まないのではないか。

 もう一つは、相談を経た後、第2段目の民間ADRと裁判所の各制度の関連性が次に問題になってくると思うのですけれども、平成12年度の制度ができたときには「複線化を目指す」ということを言っただけで、その後は関連性をつけないで制度が運用されています。現在関連性をつけるためにはどうするかと議論しているのですが、例えば都道府県労働局のあっせんと労働審判制度とを取ってみても、両制度を関連づけるというのはなかなか難しいと思うのです。

 というのも、あっせんの場合は、申立書は紙1枚であり、そこに大体の内容を記載します。そして、あっせん手続き内で、両者の意見を聞きおいて、そして審理をやるのです。

 これに対して、労働審判の場合は、書面を一括提出するということで、主張書面も立証書面も労働側も使用者側もそれぞれが申立書と答弁書といった相当な書面を出すわけです。申立一つとっても、両者の制度間には、その落差が物すごくあるわけです。片一方は当方の意見を聞きおくだけで、こちらは権利義務関係を定めるべく詳細な書面を提出したうえで審議するのです。このように実際上は落差がすごくあるなかで、関連性をつけるというのは、物すごく技術的に難しいのではないか。

 ですから、この問題は相当な英知を集めて実務家が考えないとなかなか乗り越えるのは難しいと思うのです。しかし、この議論をしなければ、恐らく紛争的な問題を抱えた相談者が何十万といるなかで、最終的に各紛争解決システムに行き着く人が数千人にしかならない現状は変わらず、この問題が根本的に解決しないのではないかと思うので、その点は2つの場面で分けて議論し、きちんとした共通認識と解決方法を考える必要があるのではないかと思っています。

○荒木座長 ありがとうございます。

 中山委員。

○中山委員 中山です。

 今まで皆様方のお話を聞いていろいろと勉強になりました。私のほうも今のさまざまな御意見を踏まえて、今、既にある個別労働紛争の解決システムとの相互間の関連で私の考え方を申し上げたいと思います。資料2の10ページで全体像が出ておりますが、私が実務でかかわっている中で、基本は、行政の労働局の総合労働相談コーナーが基点で、その中で紛争性のある相談も相当あるわけですが、次に労働局のあっせん、これ以外に助言指導もあるわけですが、そういった申立を含めて順番に上がっていく。先ほどその件数の落差が問題だというお話がありました。確かにいろんな要因があって、一律には言えませんが、先ほど来指摘されていないところで補足したいところを申し上げますと、紛争性のある相談でもあっせん申立に至らない要因は事案の筋ですね。つまり、とりあえず相談して紛争を何とかしたいと思うけれども、いろいろアドバイスを聞いたら、これは無理なのだなと、あるいは誤解とか知識の不足とか。もちろん、逆の場合もありますよ。解雇は無効だとはっきりする場合もありますが、相談からそれ以上行かない要因として、こういう事案の筋といいますか、それが大きな原因の一つにあるのではなかろうかと思っています。

 行政のあっせんから今度は司法機関の労働審判、本訴へ。これは手続上連続していない。これも問題かというところですが、私自身は、個別的労働紛争の行政と司法の今の建付けは一応うまくいっていると思います。ですから、これで十分だというのでなくて、ブラッシュアップする、いろいろな見直しを検討するというところはいいのですが、今の制度で、労働局のあっせん制度などはできたのは15年前ですか、それから労働審判はおおむね10年前です。まだその程度の新しい制度で、10年、15年やってきたところでどうかと言えば、非常に有効に機能して、いい建付けになっていると思います。

 もう一つ、行政と裁判所のかかわりで申し上げますと、解雇紛争ならその事案の軽重、複雑さが、裁判所に上げるかどうかの大きな要因になっていると思います。その事案によって、もちろん本人の御意向もありますけれども、先ほど労働審判でいろんな準備をしなくてはいけないと。本訴であれば、もっと厳格な証拠の手続の中で証人尋問も行われるのですね。事案によっては労働審判を経ないで、直接本案訴訟を起こすケースももちろんあるわけです。その選択などは、以前から担当の弁護士がよく本人と相談して、専門知識を生かして適切なところへ誘導しろというふうに言われているわけです。その中で、紛争性があるからといって、具体的な紛争の事案で、使用者が全て負けているか、逆に労働者が全て勝っているかというと、本案訴訟の統計でも恐らく解雇事件で勝敗率は5割前後だと思いますよ。

 ですから、さまざまな事案の筋や軽重などがありますから、決して上に行くほど件数が少なくなるから、その件数の差が泣き寝入りだとか、潜在的な紛争があることを意味しているとはいえないと思います。そういうものもあるかもしれませんが、それが全てではないので、私としては、今の手続の中、かなりよく機能しているのではないかと思います。

 最後にもう一点。行政と司法のリンクですが、労働審判制度は平成18年4月に施行になって、そこではあっせんと審判という判定がビルトインされているのです。先ほど鶴委員から裁判所の本案訴訟と労働審判のかかわりを言われましたけれども、通常は判定型の機関が判定の手前であっせん型、調整型の機関に付するということはあります。そこでだめならまた判定型の機関に戻るというやり方をするわけです。

 ところが、労働審判というのは、調整型と判定型がビルトインされた制度なものですから、本案裁判所が事件を労働審判委員会へ付するというのは、現行制度を見直すなり何なりしないと難しいかなと思っております。

 以上です。                               

○荒木座長 ありがとうございます。         

 水口委員。

○水口委員 冒頭の説明の中で民事調停手続について説明があったのですが、ちょっと誤解を招くかなと思いますので、私のほうの認識をお話しさせていただければと思います。

 資料No.217ページに民事調停の件数が出ていますが、これは説明の中で触れられているとおり、労働事件を指すわけではなくて、全ての民事事件についての民事調停です。これは私の経験、ほかの弁護士の先生方もそうだと思いますが、労働訴訟で本訴を出してから調停に付されるというケースは、私はあったことがないし、ないのだろうと思っています。

 平成23年4月から、個別労働関係紛争の民事調停事件というのを東京簡裁裁判所だけが取り扱うようになったのです。それまでは通常の一般民事調停ということで実施されていたのですが、裁判所のほうから、労働関係の事件も増えてきたということで、労働法の知識・経験を有する弁護士を調停委員とする運用がなされています。東京簡裁については、弁護士会の6人の労働法専門の弁護士が出ており、調停委員は2人体制でやるので、多く場合は、弁護士と社労士の方が多かったですが、個別労働関係紛争に特化した民事調停を実施しました。

 私は平成23年4月から2年間調停委員をやりましたけれども、平成23年4月からは100件ぐらいが新たに申し立てをされて、処理件数は80件ぐらい、調停成立が多分49%ぐらいだったと記憶しています。要は、調停において労働事件を念頭におき、さらに労働法の専門的知識なりを持っている調停制度というのは、東京簡裁の調停だけなのです。それも調停成立率がそのぐらいになっているという意味では、訴訟の場合に民事調停を活用するというのは、今の制度システムの中では労働審判がありますので、労働事件ではほとんど活用されていない。

 調停が成立しなければ、また本訴にいかなければいけない、あるいはまた労働審判にいかないといけないということになりますので、民事調停自身を労働訴訟の中で位置づけるというのは、日本の今の現行制度の中では屋上屋を架すみたいな感じになるのではないかと思っているところです。

 今度諸外国の制度について触れられると思いますが、ドイツは労働裁判所が全部解決される仕組みであり、さらに第1回期日を和解弁論という形でやるということで、調停機関が別にあるというわけではありませんので、この点は日本ともまた違うということになっていると思います。民事調停がこれだけ活用されているので、労働訴訟についても民事調停に付するという論理は、今の実務ではほとんど実効性がないかなというのが私の意見です。

○荒木座長 長谷川委員。

○長谷川委員 山川委員がおっしゃった企業内の紛争処理なのですけれども、これは少し研究が必要ではないかなと思うのです。例えば現行でも評価制度を導入したところでは、この評価制度に対して苦情があるときは、苦情処理委員会といった、苦情を申し立てる先を設置するというふうになっているなど、そのような苦情処理制度が個別にはあるのだと思うのです。

 現行でも労働組合のある企業では、労使で苦情処理委員会などをつくっているところもあると思います。

 メンタルなどで困っている人は、そのような企業内の紛争処理システム先に相談してもいいと思います。しかし、メンタルの相談というケースを考えた時、メンタル不調が会社に知られてしまうと配置替えや降格をされるので、「会社にはそれを報告しない」という条件をつけて会社の外のカウンセラーに委託するなど、そういう個別の仕組みについては幾つかパターンがあると思うのですが、それらの仕組みがどのように機能しているかという調査は今のところないのではないかなと思うのです。

 ただ、以前、JILPTの調査で、「いろんな相談は誰にしますか」というものがありました。労働組合としては少し恥ずかしく、また、非常に衝撃的だったのですけれども、労働組合でなくて上司に相談するということでした。このように、上司に相談するというのは、一般的にあるのだと思うのです。

 ただ、上司に相談することと、企業の中で苦情処理制度とがそれぞれあって、どちらを利用するかというのは、恐らく労働者は区別するのだと思うのです。制度を使うとなると、必ず報告書が書かれたりするので、そのことで不満を持っている場合もあります。また、苦情があるという話がその人の上司のところに来ると、それはそれで次のいろんな問題が起きてくることもあるので、そういう苦情処理制度をつくったときは、そこに労働者はアクセスしないのではないかなと思うのです。

 私も組合の現役時代に苦情処理の窓口を担当して、苦情処理がどういうふうに行われるかというのは自分でも経験があるのですけれども、これらに関してはもう少し研究が必要なのではないかなと感じました。諸外国の例として、イギリスでは、企業内の紛争解決の促進のための措置として行為準則を定めるも、うまく機能しなかったと聞いていますので、なぜイギリスでうまく機能しなかったということを少し研究、検討が必要なのではないかなと感じました。

○荒木座長 鶴委員。

○鶴委員 先ほど私が若干提案をさせていただいて、幾人かの委員の先生方からお話もいただきまして、もう少し趣旨をお話ししたいなと思います。

 ドイツ型というのは、もしそういうのが実現可能であれば、ある意味では非常にわかりやすい仕組みなのかなと思っていて、これが日本で実現可能かどうなのかということについては、また専門の先生方からお話をいただければと思っているのですけれども、私の問題意識は、最初振り分けのところが理想的な振り分けになっているのかということなのです。それがいい振り分けになるように、きょうもワンストップ、最初のところできちっと適切なアドバイスができるかどうかということが多分大きな議論になっていると思うのですが、もしそれが適切な振り分けをできなかった場合に、その後、それをどういうふうに修正ができるのかということも私としては問題意識を持って考えてきたつもりなのです。

 それが少し問題になるのは、本来ならば労働審判に行き、そこで解決できる話が、本訴のほうに行ってかなり多大なコスト、時間がかかる。それは労使双方にとって、もちろんそれをやるべき案件はあると思っていますけれども、本来はそこに行くべきでなかったものが行っているような状況がある。そこが完全にうまくいっているのであれば私も全く納得なのですが、そうでない場合、途中でどういう修正の仕方があり得るのかなと。そうしたときに、途中で裁判官なり裁判所の判断で調停的なものに付す。

 もちろん、調停的なものに行って、そこでもうまくいかなくて、また最後判定的だと。こういうのは最後まで本訴のほうでやるべきだということなので、そういうことがあるというのは問題だと思っているのですけれども、修正をしなければいけないということが出てきた場合に、そういう問題も含めてどういう機動的な対応があり得るのか。これがもともとの問題意識なので、実はこういうやり方をやれば、それは余り心配することはないですよとか、別のやり方があるのではないでしょうかというような御提案があったら、ぜひ委員の先生方から御教示をいただければなと思います。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございます。

 山川委員、どうぞ。

○山川委員 先ほどの長谷川委員の御意見ありがとうございました。私も昔のJILPTの調査に参加して、苦情処理委員会が余り使われていないということと、むしろ使わないことがある意味で意義があるといいますか、組合の役員の方に聞いたら、苦情処理手続に行くと大ごとになるから、大ごとになる前に片づけるのが組合の職場委員のスキルだと。それはまさにそのとおりかなと思った次第です。ですので、もし使いやすいシステムをつくるとすれば、もうちょっと大ごとにならないようなシステムがあるのかなと思います。

 あと、会社でつくったシステムで比較的使われているのは内部告発といいますか、公益通報の手続で、あれはなぜ使うかというと、直接上司を通さないで担当部局に行くということと、非常に秘密を守られているということで、安心して使われているということがあるのかなと思いますので、そうした制度設計はいろいろ検討する必要があるのかなと思います。

 もう一点は、今、鶴先生のお話との関係で、資料2の19ページのアメリカについて若干の補足になります。司法のところで紛争件数がないのですが、連邦地方裁判所の雇用関連の事件数は大体3万件程度ということで、そんなに多くはありません。情報として申し上げたかったのは、アメリカでは、裁判所によって違いますが、裁判所附属ADRというのが使われているところがありまして、調停に付する。義務的な場合と任意的な場合とがあるのですが、ちなみにニューヨークの南部地区連邦地方裁判所では雇用差別事件は調停前置になっています。

 もう一つ、割と労働審判に似ているシステムがあるのは勧告仲裁。何か論理矛盾のような言葉ですが、裁判所が労働事件について仲裁のような手続に付して、その仲裁を担当する人たちが一種の勧告的な仲裁案を出す。従わなくても強制力はないということですが、これはちょっと労働審判に似ている感じかなという感じがします。

 何でそういうことをしているのかは2つ理由があると思います。1つは、アメリカの場合は訴訟が非常に問題がある。長期化したり、コストがかかったり、多数訴訟が起きるとか。そういう訴訟のデメリットを減らすためにADRというものを裁判の手続の中でも入れたというのが一つの背景。もう一つは、恐らく労働関係の専門家の知識・経験を生かすということで、この2つが背景となっているかと思います。

 日本の場合は、どちらの事情を考慮するかというのは、制度設計をするときに考慮することになるのかなと思います。

 以上です。

○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。村上委員。

○村上委員 先ほど鶴委員から労働審判と通常訴訟との関係のお話がありましたけれども、10年間労働審判員をやっていた私の感覚で言いますと、事案の中身というよりは、「申立人が3回以内で解決したいということを望んでいるかどうか」というところが、審判を選ぶか、通常訴訟を選ぶかの大きな要素になっているのではないかと思います。もちろん証拠の問題などもあるかと思いますが、そのような観点で手続きを選択されているのではないかという印象を持っております。3回以内の解決ということではなくて、きちんとやっていきたいという方が通常訴訟を選んで、そうであるけれども、通常訴訟の手続き内でこの辺で解決したいとなったときには、多分和解の手続を進められるということもあるかと思います。実情はそのような感じではないかと考えております。

 それから、先ほど来ずっと御議論のあった10ページのイメージ図に関して、なぜ総合労働相談コーナーに来た民事上の労働相談があっせん申請にならないのか、少ないのかという問題については、いろんな要因があると思います。ただ、「利用者がどのような気持ちであっせんを選ぶのか、それともあっせん申請しないで諦めるのか」というような利用者の声もきちんと聞かなければ、制度の問題だけではなかなか解決しないのではないか、よりよい方策を考えられないのではないかと思っております。私も、企業外の労働組合への相談対応も何年間かしてまいりましたが、その中でもこの場合には訴えていけば解雇無効だと思えるような事案であっても、なかなか立ち上がれない労働者の方もいらっしゃったり、そこまで時間をかけられないとか、エネルギーが要るのでそこまでいけないという方々もいらっしゃったり、あるいは私生活でさまざまな問題を抱えているとか、そういう方もいらっしゃったりしました。また、先ほどあったような労働相談に行ったものの、対応した方に「難しいよ」と言われたとか、そんな方もいらっしゃるかと思いますので、可能であれば総合労働相談コーナーに来られた相談者の方へのアンケートなども、ぜひとっていただけないかと考えております。

 以上です。

○荒木座長 垣内委員。

○垣内委員 付調停ないし付労働審判の制度に関連にしてなのですけれども、まず付調停に関してですが、御説明等で既に出てきているかと思いますが、調停手続と訴訟手続の基本的な違いは2点にまとめられるかと思うのです。

 1点は、調停は訴訟と違って、基本的には合意による解決を目指す手続である。

 もう一つは、調停は基本的には調停委員会で行いますので、裁判官ではない民間から来ている調停委員の知見等をそこで活用することができるということで、付調停をするという場合にはいずれかあるいは双方を念頭に置いて、そうしたメリットを期待して付調停するということかと思うのですが、そのうち第一の合意による解決を目指すという点に限って申しますと、基本的には訴訟手続内でも裁判官がみずから和解を勧めるということは可能ですので、むしろそちらのほうが効率的であるということも十分あり得ることでして、実際に現在地方裁判所の事件で付調停になっているのは、単に合意による解決が望ましいからということよりも、むしろ調停委員の知見、これは本日配付いただいている資料2の16ページのところで事務局からも御説明をいただいておりますけれども、とりわけ建築、IT、医療などに関してそういうことが期待できるということで利用されていることが多いのかと思います。

 それを踏まえて、労働審判との接続について考えますと、労働審判も第一次的には合意による解決をまず試みるというところがあり、これは調停と共通するところがあるわけですけれども、しかし、それだけでは和解勧試との関係で労働審判の独自性が必ずしもないかもしれないということになりますので、労働審判に付するということが合理性を持つとすれば、労働審判の場合には、審判委員会に労使双方が関与しているという点のメリットをどの程度大きく見るかということかと思います。

 もう一点、付調停に関しては、あくまで原告は第一次的には判決を求めて訴えを提起しているということがありますので、原告の裁判を受ける権利を保障するという観点から、一定の段階、具体的には争点整理が完了した段階になりますと、これは当事者双方の合意がなければ付調停はできないという縛りがかかっているわけですけれども、労働審判に付するという制度を考える場合にも、先ほど村上委員のほうからも御指摘がありましたが、仮に一定程度合理性のある判断を申立人あるいは原告がして訴訟なり労働審判を選んできているというときに、その判断にもかかわらず別の手続を職権で始めるということであれば、それについて少なくとも付調停と同等の制約を考える必要があるのかもしれないということは感じております。

 以上です。

○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。

 石井委員、どうぞ。

○石井委員 石井でございます。

 付調停について経験がございますので、その説明をと思います。

 大分古い話で、労働審判もまだ導入されていなかったときに、東京地裁の22部、調停部がいろいろな部から事件を付調停してくださいというふうな動きをしたことがございます。大きな司法改革の流れの中で。

 当時、22部に労働省のOBの方も調停委員としていらして、数件来て、私も2件ぐらい担当いたしましたが、成立したのですけれども、その後音沙汰がなくなりました。そこはお話を聞いたわけではありませんが、やはり和解したほうが早いと裁判官のほうで思われたのではないかと思いました。

 労働事件の場合、訴訟でも話し合いによる解決が何よりということで、裁判官がいろいろな和解のテクニック、技法等を研究されていますので、その点では手続選択として付調停が必要ということはないと思っております。

 労働審判に付すのはどうかというのは新しい問題ではありますけれども、当事者がそれなりに手続のメリット・デメリットを検討して、白黒つけたいということで訴訟に行ったのであれば、労働審判に回すというのはなじまないのではないかと思います。

○荒木座長 ありがとうございました。鶴委員。

○鶴委員 たびたび申しわけございません。

 もう一つ背景を申し上げると、結局、訴訟の中で和解というのがかなり幅広く行われているわけですけれども、和解という手続自体は確かに迅速性があるし、それはそれなりに裁判官がいろいろ御配慮されてうまくやっているということも十分認識しているつもりなのですが、よりフォーマルな形で最後決着したほうがいいのではないのかなということを考えるようなところもあるのですね。なので、ここは現状の和解というものが全てすばらしいやり方で、問題点というのはないのか。最後労使双方の第三者が入るような形で、もう少し納得感のあるような解決の仕方をやったほうがいいようなケースがあるのではなかろうか。和解調停というメリット、デメリットというところを考えるというところが一つのポイントだと思うのです。

 ドイツ型みたいにまず和解ができるかどうかというところから始めるということであれば、さらにスピードアップするような仕組みなのかなと。そういう意味では、一つ検討するものはあるのだと思うのですけれども、この議論を申し上げている背景というのは、そもそも和解というのをどう考えるのかということにも問題意識を持っているということをお伝え申し上げたい。

 以上です。

○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。中山委員。

○中山委員 中山です。

 今、鶴委員のほうから本案訴訟での和解について、フォーマルなのかどうかというお話が出ましたが、実務でやっていますと、いろんな論点はありますけれども、まずこの事案の事実関係、証拠に照らしてどういう事実が認められるか。それに基づいて法律的な判断をするわけですが、事実認定で勝負がつくというのも相当あるわけで、従って、それに基づいて和解をしようかというときに、調停に付すると証拠に基づく事実認定の部分というのは共有できないわけですから、そこら辺は専門的な知識経験を持っている労使の方とか専門家がかまないと本来のフォーマルな和解ができないというふうには考えておらないので、参考までに申し上げます。

○荒木座長 ほかには。垣内委員。

○垣内委員 和解との関係に関連しまして、仮に付労働審判制度というものを検討する場合に考えるべき一つの問題点として、付された労働審判手続にどの裁判官が関与するのかということは、検討課題としては出てくるのかなと思っております。現在の一般的な付調停ですと、自庁調停というのも法律上は可能ですけれども、特に専門知識を期待してということでありますと、これはそういった調停委員会に付すると。ですから、受訴裁判所の裁判官の目から見ますと、事件が自分の手を一旦離れるという形になるかと思います。そこが自分でやる和解勧試とは非常に大きく異なるということかと思います。付労働審判という制度を考えたときに、その労働審判の審判官となる裁判官は、受訴裁判所の裁判官なのか、それとも全く別の裁判官なのかということによって、制度の実際の運用の仕方、機能の仕方が相当変わってくる面があろうかと思いますので、そのあたりもいろいろな選択肢があり得ることを踏まえて御検討いただくのがいいのかなと思います。

 以上です。

○荒木座長 ほかにはいかがでしょうか。大体御意見はいただいたということでよろしいでしょうか。

 非常に有益な御議論をいただきました。私もお聞きしておりまして、労働者が自分が直面している苦情とか不満をどこに持っていけばいいのか、まずそこのところが大事な問題だという議論があったと思います。そのときにどこかに相談に行って、ああ、これはここに行けばいいというふうな振り分けをしてくれる人、そこをまずきちんとしていくことが大事だというふうな印象を持ちました。

 その中で、山川委員がおっしゃったように、苦情にも2種類あって、1つはコンプライアンスの問題で、違法状態が生じている、法違反であるという紛争、苦情の問題と、もう1つは長谷川委員がおっしゃったように、査定が不適切ではないかとか、そういう法違反の問題とはならない苦情。でも、労働者は自分の苦情がいずれの問題なのか、わからないわけですから、そういうものをうまく仕分けをしてくれるような仕組みがあれば、その後の処理もうまくいきそうです。

 それから、どこに行くかという点については、その紛争処理システムがどういう解決をしてくれるのか、その効果が問題となります。11ページにもありますが、解決効果が調整的、すなわち、あくまであっせん案とか調停案の提示であって、当事者が受け入れないことには解決しないという調整的な答えを出す機関なのか、それとも労働審判や訴訟のように判定をしてくれる機関なのか。それによって、その機関に行くか否かということも当然かかわってくるわけで、それを振り分ける方も、当該当事者の意向という話もありましたが、それも踏まえて、その紛争処理機関がどういう解決効果を持つ機関なのかをきちんと提示してあげることが重要なのかなという気がしました。

 その後で、鶴委員がおっしゃったように、どこに行くかを決めるのは当事者ですから、当事者がある紛争処理機関に行ったところ、実は、ここに来るのは余り適切ではなかったというときにどうするか。そういうことがさらに問題となるのかなとお聞きしたところです。

 いずれにしても、苦情等を踏まえ、労働者が適切な紛争処理機関にアクセスができて、その後の連携をどう考えるかということについて大変有意義な御議論をいただいたと思います。

 それでは、本日は以上ということにいたしまして、最後に、次回の日程について事務局からお願いします。

○松原労働条件政策推進官 次回第5回の検討会の日程でございますが、3月上旬を目途としまして現在調整中でございますので、確定次第、開催場所とあわせまして御連絡させていただきます。

 以上でございます。

○荒木座長 それでは、第4回の検討会は以上で終了といたします。

 本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。


(了)

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