2016年3月14日 相談支援の質の向上に向けた検討会(第1回) 議事概要

社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課地域生活支援推進室

日時

平成28年3月14日(月) 17:00 ~ 19:00

場所

厚生労働省専用第23会議室(東京都千代田区霞ヶ関1-2-2合同庁舎5号館6階)

出席者

沖倉 智美 (大正大学人間学部教授)
小澤 温 (筑波大学人間系教授)
佐藤 進 (埼玉県立大学名誉教授)
島村 聡 (沖縄大学人文学部准教授)
田村 綾子 (聖学院大学人間福祉学部准教授)
近江 雅喜 (障害児・者相談支援事業全国連絡協議会)
菊本 圭一 (特定非営利活動法人日本相談支援専門員協会代表理事)
冨岡 貴生 (公益財団法人日本知的障害者福祉協会相談支援部会)
上條 浩 (横浜市健康福祉局障害福祉部障害福祉課課長)
三浦 貴子 (社会福祉法人愛隣園)
土屋 幸己 (公益財団法人さわやか福祉財団)
原田 重樹 (一般社団法人日本介護支援専門員協会副会長)

議事

 
【相談支援専門員の資質の向上等について】
・ 利用者や家族からは、利用するサービス事業所に直接話をするより、相談支援専門員という第三者が入ることで、うまく行っているとの声も上がっている。
・ 介護保険のケアマネとの連携が必要だと思っており、障害と介護の人材育成については、共通する部分もある。
・ 相談支援専門員は3万人必要という試算があり、まだ半分程度しか充足していない状況であり、モニタリングが追いついていない体制である。
・ 指定特定相談支援事業所の相談支援専門員の配置人数は 1.9 人であり、多くの事業所は特定事業所加算の対象もなく、モニタリング頻度も十分ではないため、ビジネスモデルとして継続することが困難な状況。
・ 初回は戸惑う利用者もいるが、2回目以降は、利用者や家族にも安心感が芽生え、サービス事業所には直接相談しにくいことも、相談支援事業所なら相談できるということで、家族の精神的な負担感が軽減される効果にもつながっている。
・ サービス事業者にとっては、対応が難しい利用者について、自分のところだけで全て抱え込む必要がなくなり、良くなったとの声もある。
・ プランを作成することで、地域のニーズが顕在化され、不足する社会資源なども明らかになる効果もある。
・ 現状では、計画を作成することに重きが置かれてしまっているため、過去に示されたケアガイドラインにある相談支援ができず、サービス調整を主とした、言わば「事務的なケアマネ」にならざるを得ないところがあり、これが形骸化することが心配。
・ 計画の質の問題に関しては、「質」の考え方の整理が必要であり、本人の生きがいややりがいなどの評価も考慮する必要がある。
・  相談支援専門員は、どのような意図(考え)でどのような支援(行動)を行っているのかを、具体的に説明する力が必要である。
・ 研修の実施にあたっては、主催者側の目的や意図が、受講者に伝わるものにする必要がある。
・ ミスマッチ、制度設計が異なるため、見立ての手法も異なる。生活ニーズの把握を主眼とするか、サービス調整を主眼とするかによっても異なる。
・ 相談支援を何年でやれるようになるのかと言った研究をしたことがあり、8年程度は必要との見解もある。現状はあまりに早く現場を去ってしまう場合が多く、ビジネスモデルにはならず定着率が低いところもある。環境・能力作りのプロセスといったものについて、議論していく必要があり、また意思決定支援のプロセスの導入も必要である。
・ 質にバラツキがある。サービス調整のみを実施している場合は力がつかない状況にあると思うが、業務多忙で OJT も追いついておらず、質の高い人材を引きつける上でお金も不足している。介護のケアマネと比べても研修時間が短く、試験もないため、これらの点について議論できれば。
・ 黒字で運営できている相談支援事業所は少なく、法人の本部会計から補填している事業所もあり、事業所によっては1人で200名を見ている事業所もあるので、介護保険のような35名に1人の配置などを検討できればと思う。また、基幹相談支援センターが増えない事情についても原因分析できればと考えている。
・ 相談支援の質を上げるためには、資格要件を引き上げることと、評価する仕組みを導入することの他に、スーパービジョンも必要。
・ 全方位的なインテーク・アセスメントが重要と考えている。現状はデマンドプランになってしまっており、そのあたりのスキルを強化する必要がある。また他職種の連携を通じて質の向上を図る必要もある。
・ 介護も障害も同じケアマネジメントの世界であり、対人援助職としての基本的なスタートラインは一緒ではないか。制度設計が異なるので、アプローチやアセスメント手法が多少異なるが、アセスメントを充実し、課題分析や政策提言までを行える人材を育成するにあたっては共通の研修の場も必要ではないか。

 【相談支援体制に関連する事項等について】
・ 身近な相談支援、総合的な支援、専門的な支援等の重層的な相談体制が必要だが、それぞれの役割について整理が必要。
・ 相談支援の評価は非常に難しい。
・ 総合相談窓口やゼネラルコーディネーターを配置して重層的な支援体制を構築するべき。
・ 基幹相談支援センターで総合相談機能が果たせるよう、位置付けを考え直す必要がある。
・ 相談支援に関する機関の名称がたくさんあり、分かりにくくなっている。
・ 障害の分野の相談支援を検討するのか、全世代対応型のコーディネーターを検討するのか整理する必要がある。
・ ケアマネジメント技法に重きが置かれてきている現行の人材育成カリキュラムについては、サービス等利用計画のあり方も含めて議論する必要がある。給付管理の視点でプランの質を見るのか、自分らしい生活のあり方という視点でプランの質を見るのかの議論が必要。
・ 事例をチームで解決するチームアプローチが必要であり、(自立支援)協議会をきちんと位置づける必要がある。
・ 相談支援専門員が計画相談に集中すると社会資源を生み出すといったことが脇に追いやられる。高齢領域でいうところの、地域包括ケアを担う場所である(自立支援)協議会や相談支援事業所で、相談支援専門員は何をするべきなのかという議論も必要である。
・ 総合的な窓口は必要だが、当事者は身近な場所で身近に感じる相談員になんでも相談できることを希望しているので、ゼネラルな窓口と専門的な窓口を組み合わせて体制を検討するべき。また、自己決定や意思決定を重視して欲しいという声が多い。
・ 基幹相談支援センターについては各市区町村で作られているが、1か所で総合的な機能を持たせるということを市町村任せにするものではない。
・ 障害児のプランはセルフプランが多いので、潜在的な発見が見逃されていることを懸念している。
・ 潜在化しているニーズをくみ取れる視点を含めた相談支援体制を構築することが必要である。
・ 相談支援体制を議論する前に、障害児者の生活のリズム、豊かさ、地域生活について、目指すべき方向性を明確化して役割を検討するべき

(了)