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2016年1月22日 第94回労働政策審議会安全衛生分科会

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成28年1月22日(金)13:00~


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館9階)


○出席者

委員:五十音順、敬称略

明石 祐二、岡本 浩志、勝野 圭司、城内 博、杉山 豊隆、鈴木 睦、辻 英人、
角田 透、土橋 律、中澤 善美、中村 聡子、中村 節雄、半沢 美幸、三柴 丈典、
村上 陽子、水島 郁子、山口 直人

事務局:

加藤 誠実 (安全衛生部長)
秋山 伸一 (計画課長)
野澤 英児 (安全課長)
武田 康久 (労働衛生課長)
森戸 和美 (化学物質対策課長)
奥村 伸人 (建設安全対策室長)
塚本 勝利 (産業保健支援室長)
毛利 正 (電離放射線労働者健康対策室長)

○議題

(1)労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱及び労働安全衛生規則の一部を改正
する省令案要綱について(諮問)
(2)改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の創設等を踏まえた関連指針等の
改正等について(報告)
(3)産業医の選任の改善について(報告)
(4)東京電力福島第一原子力発電所廃炉作業等における安全衛生管理対策の実施状況等
について(報告)
(5)その他

○議事

 

○土橋分科会長 定刻になりましたので、ただいまから第 94 回労働政策審議会安全衛生分科会を開催いたします。

 本日の出欠状況ですが、公益代表委員では、桑野委員、労働者代表委員では、縄野委員、水田委員、使用者代表委員では、栗林委員が欠席されています。また、山口委員は所用のため、 14 15 分頃に御退席される予定です。

 まず最初に、資料 8 の労働政策審議会安全衛生分科会委員名簿を御覧ください。平成 27 11 24 日付で、労働者代表委員の新谷委員、犬飼委員、小畑委員が退任され、同日付で、日本労働組合総連合会の総合労働局長でいらっしゃいます村上様、全日本運輸産業労働組合連合会の中央副執行委員長でいらっしゃいます杉山様、全日本森林林業木材関連産業労働組合連合会の副中央執行委員長でいらっしゃいます水田様のお三方に就任いただいております。それでは、水田委員は本日は御欠席されておりますので、村上委員、杉山委員から一言御挨拶を頂きます。

○村上委員 御紹介いただきました、新谷の後任の村上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○杉山委員 運輸労連の杉山と申します。よろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 よろしくお願いいたします。また、 7 月の第 92 回安全衛生分科会開催以降、事務局の安全衛生部に人事異動がありましたので、事務局から一言ずつ挨拶をお願いします。

○安全衛生部長  10 1 日付で安全衛生部長を拝命しました加藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○計画課長 同じく、計画課長を拝命しました秋山と申します。よろしくお願いいたします。

○安全課長 同じく、安全課長として建対室長から異動しました野澤と申します。引き続き、よろしくお願い申し上げます。

○労働衛生課長 同じく、衛生課長として着任いたしました武田と申します。よろしくお願い申し上げます。

○建設安全対策室長 建設安全対策室長でまいりました奥村と申します。よろしくお願いいたします。

○産業保健支援室長 産業保健支援室長に着任いたしました塚本です。よろしくお願いいたします。

○電離放射線労働者健康対策室長 電離放射線労働者健康対策室長の毛利正でございます。よろしくお願いします。

○土橋分科会長 それでは、カメラ撮影等はここまでとさせていただきます。 1 つ目の議題に入ります。議題( 1 )「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱及び労働安全衛生法規則等の一部を改正する省令案要綱について」(諮問)の説明を事務局からお願いします。

○化学物質対策課長 化学物質対策課長でございます。私から議題( 1 )「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱及び労働安全衛生法規則等の一部を改正する省令案要綱について」を御説明いたします。資料 1-1 が政令案要綱及び省令案要綱となっておりますが、文字ばかりで分かりにくいので、資料 1-2 を用いて説明させていただきます。

 資料 1-2 1 ページを御覧ください。三角形で現行の化学物質に関する規制を示しております。その中ほどに矢印があります。今回の改正は、 ACGIH (米国労働衛生専門家会議)が許容濃度を勧告し、確定した物質の一部を労働安全衛生法施行令別表 9 に追加するものです。このため、最初に別表 9 の位置付けについて簡単に説明させていただきます。

 化学物質につきましては、労働安全衛生法制定時から化学物質を取り扱う事業者(ユーザー)に有害性の調査等の努力義務が課せられており、ユーザーたる事業者は、調査の結果に基づいて労働者の健康障害を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととされておりました。しかしながら、ユーザーの中には小規模事業場もありますし、また、日頃、化学物質と関わりが少ない事業場もあります。そういったことによって十分な有害性の調査ができないことが考えられること、メーカーなどの譲渡者は十分な情報を持っていると考えられることから、平成 11 年の法改正により安全データシート( SDS )の交付制度が設けられたところです。これによりユーザーの調査能力に関係なく国際的に評価された有害性情報等がメーカー等の譲渡者からユーザーに法的な根拠を持って伝えられることになり、この情報を基にユーザーはリスクアセスメントを行って安全に使用できるというようになったところです。

 平成 17 年の法改正により危険性についてもリスクアセスメントが努力義務とされたことに伴い、施行令別表 1 の危険物のうち別表 9 の対象となっていなかったものが平成 18 年に追加されております。また、今回の法令改正により労働者にも危険・有害性情報が伝わるようラベル表示の対象とし、胆管がん事案では情報が伝わっていましたが、リスクアセスメントが実施されていなかったことから、リスクアセスメントの実施についても義務化されたということになっております。

 2 ページ目を御覧ください。したがいまして今回の政令改正では、昨年 9 月に取りまとめられた報告書を踏まえまして、国際的に有害性の評価が確立し一定の有害性が明らかになった 27 の化学物質、沃化物のように群となっているものもありますが、これらを別表 9 に追加することとしたものです。先ほど申し上げましたように、これまで化学物質関係の法令改正がありましたので、別表 9 に追加することにより、 SDS の交付のみならず、上段の改正の趣旨の所に書いてありますように、これによりラベル表示とリスクアセスメントの実施も併せて義務付けられるということになるわけです。

 なお、アルミニウムにつきましては、改正の内容の政令の所に書いてございますが、粉状でなければ輸送時と運搬時等の有害性がないため、ラベル表示につきましては粉状のものに限るとしているところです。

 次に、省令案要綱について御説明申し上げます。昨年の 5 20 日に開催されました安全衛生分科会でも御説明申し上げましたが、ラベル表示対象物と SDS 対象物につきましては、 GHS (化学品の分類および表示に関する世界調和システム) の有害性クラスにより裾切値が労働安全衛生規則に規定されております。例えば、発がん性が区分 1 であれば、ラベルも SDS 0.1 、生殖毒性が区分 1 であれば、ラベルは 0.3 SDS 0.1 、皮膚感作性が区分 1 であれば、ラベルは 1 %で SDS 0.1 というような形で、それぞれの有害性クラスによって裾切値の考え方が違います。今回もこの考え方に従い、追加する物質について新たに裾切値を規定することとしているところです。

 施行期日につきましてはラベルの作成が必要となりますので、昨年の改正同様、準備期間を公布から約 1 年見ることとし、来年の 3 1 日とすることとしております。また、施行時に流通過程にあるものについては経過措置を設けることとしております。これにつきましては、同年の 8 31 日までは適用しないこととしているところです。

 今回、追加する物質につきましては、 4 ページにその一覧を載せております。また、 5 ページに省令で定める裾切値について、それぞれ載せているところです。どうか御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○土橋分科会長 それでは、ただいま御説明いただきました要綱案の審議に移りたいと思います。質問等はございますでしょうか。

○辻委員 資料 1-1 1-2 で諮問されている内容につきましては、化学物質のリスク評価に係る企画検討委員会における専門家の知見を踏まえたものであることに加え、ラベル表示、安全データシート交付、リスクアセスメントの実施の 3 点において、より安全な化学物質管理に資することから、労働側として了承したいと思います。

 また、これに付随して意見、要望を 2 点申し上げたいと思います。 1 点目は、別表 9 に追加されることとなりました 27 物質を取り扱っている事業場及びそこで働く労働者に対する周知に力を入れていただきたいということです。 2 点目は、今回、継続して検討を行うこととなりました 12 物質につきまして調査、検討を進め、早急にその取扱いについての結論を導き出していただきたいということです。

 なお、今回、継続して検討を行うこととなった 12 物質についてはいつ頃その結論がこの分科会に報告されるのか、現時点での見通しをお聞かせいただければと思います。

○土橋分科会長 最後に質問がございましたが。

○化学物質対策課長 第 1 点目の趣旨につきましては、十分尽くしていきたいと考えております。第 2 点目ですが、報告書にありますように GHS 区分がないということで国が定めるというようなことですので、実は今年度の委託事業により今、 GHS 区分の決定を行っているところです。この状況につきましては、 3 月に予定されています企画委員会においてその報告をさせていただきたいと考えております。後の政省令の改正につきましては、またその企画委員会での御議論によって決定されるものと考えているところです。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、当分科会といたしましては議題( 1 )「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱及び労働安全衛生法規則等の一部を改正する省令案要綱について」妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。

(異議なし)

○土橋分科会長 ありがとうございます。それでは事務局で手続をお願いいたします。

 それでは次の議題に移ります。議題( 2 )「改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の創設等を踏まえた関連指針等の改正の報告について」、事務局から説明をお願いします。

○産業保健支援室長 産業保健支援室の塚本です。私からは、ストレスチェック制度の創設などを踏まえた 4 つの関連指針の改正、 2 つの通達の改正・発出について御報告いたします。資料 2 を御覧ください。

 まず 1 ページ目です。 1 の、いわゆる THP 指針の改正ですが、健康測定としてストレスチェックの結果を利用する場合には労働者本人の同意が必要であること、健康測定として労働者のストレスを調査する場合にはストレスチェックとは異なる簡易な方法とするなどの留意事項を設けております。

 次は、 2 、健診結果に基づく事業者が講ずべき指針の改正です。健診結果に基づく就業上の措置について、医師の意見聴取などの法令上の手順に従わない。医師の意見と内容・程度が著しく異なる措置を実施する。健診結果の結果を理由とした不当な動機による配置転換などの不利益な取扱い、を行ってはならないことなどを新たに規定しております。また、派遣労働者への健康診断に基づく就業上の措置においては、派遣先の協力が必要な場合は、派遣元は本人の同意を得た上で派遣先に協力するよう要請する。派遣先は、派遣元から要請があった場合には必要な協力を行う。派遣先は、派遣元から協力があったことなどを理由に労働者の変更を求めてはならない。派遣労働者の一般健康診断に関する情報を派遣元は本人の同意を得ず派遣先に提出してはならないなどの規定を設けております。
 2 ページ目を御覧ください。 3 、心の健康保持増進のための指針の改正です。心の健康づくり計画において、ストレスチェック制度の位置付けを明確にすることや、メンタルヘルスケアなどを通じて把握した労働者の心の健康に関する情報を理由として、不当な動機による配置転換などを行ってはならないことなどを規定しております。

 次は、 4 、ストレスチェック、面接指導、事後措置に関する指針の改正です。派遣労働者に対するストレスチェック、面接指導において、派遣労働者に対する就業上の措置のため派遣先の協力が必要な場合は、派遣元は本人の同意を得た上で派遣先に協力するよう要請することとし、派遣先は、派遣元から要請があった場合には必要な協力を行うことや、派遣先は、就業上の措置に関して派遣元から協力要請があったことなどを理由に派遣労働者の変更を求めてはならないことなどを新たに規定しております。

 次は、 5 、個人情報に基づき健康情報を取り扱うに当たっての留意事項に関する通達の改正です。まず、健康情報の例示としてストレスチェックの結果などを新たに追加するとともに、健康情報は機微な情報であり、事業者は労働者の健康確保に必要な範囲を超えて取り扱ってはならないことや、法令に基づく場合を除き労働者の健康情報を取得する場合は、あらかじめ本人に利用目的を明示し、本人の同意を得なければならないことなどを新たに規定しております。

 次に 6 、医師が情報通信を用いて長時間労働者とか高ストレス者に対して面接指導を行う場合の留意事項に関する通達です。医師による面接は、原則として直接、面談によることが望ましいところですが、労働者の心身の状況を把握し必要な指導を行うことができる状況で実施するのであれば直ちに法違反にはならないという考え方を示すとともに、面接指導の方法を衛生委員会などで調査、審議を行い、労働者に周知することなどの留意事項を示しております。以上です。

○土橋分科会長 ただいま御説明いただきました内容につきまして、質問等はございますでしょうか。

○杉山委員 今回、御報告のありました改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度の創設に伴う指針等の改正については、いずれもストレスチェック制度が職場において円滑に実施されるようにする観点から必要な施策が整理されたと受け止めております。ストレスチェック制度は新たな制度ですので、施行状況を踏まえ今後も、必要に応じて適宜、指針等の改正を実施していただきたいと思っております。また、ストレスチェック制度についてはメンタルヘルスという非常に機微な課題も関連することから実施に当たっては健康情報や検査結果などを適切に取り扱うこと、情報提供においては本人同意が必要であることを徹底すること、こうしたことから労働者のプライバシーの保護又は不利益取扱防止については、改めて周知徹底を図っていただきたいと思っております。

 また、ストレスチェック制度だけではなくて産業保健活動において重要な役割を果たす産業医について、平成 22 年の労働安全衛生基本調査によると、全体でも 13 %、 50 名から 99 人規模の事業所では約 2 割で産業医が選任されていないことが明らかになっています。これは 5 年に 1 回の調査ですが、厚生労働省として各事業所における産業医の選任の状況について随時把握できるような体制にあるのか、その辺についてお聞きしたいと思います。

○産業保健支援室長 まず最初にこれらの指針の改正ですが、当然のことながら労働者を取り巻く状況などを踏まえまして、改正の必要性については随時検討してまいりたいと考えております。

 また、周知については非常に重要なポイントだと思います。私ども、種々の媒体を作成し、局署等を通じて周知等を図ってまいりたいと考えております。

 最後の質問の産業医の選任の把握ですが、これにつきましては届出制度があります。また、日々、労働基準監督署が定期監督や個別指導なども行っておりますので、これらの機会を活用した選任の確認、指導なども行っているところです。産業医は非常に重要な役割を担っておりますので、これらの活動等を通じて産業医の選任の徹底を図ってまいりたいと考えております。

○土橋分科会長 ほかに御質問等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは次の議題に移らせていただきます。続いて、報告事項ですが、議題( 3 )「産業医の選任の改善について」を事務局から説明をお願いします。

○産業保健支援室長 資料 3 を御覧ください。産業医の選任の改善に関する通達の御報告です。

 産業医の事業場における役職につきましては、法又は規則で制限が設けられていないことから、企業の代表取締役又は医療法人の理事長、病院の院長などの方が産業医を兼務している事例が見られるところです。しかし、労働者の健康管理は一定の費用を伴うもので、事業者を代表する方や事業場にて事業の実施を統括する方が産業医を兼務した場合、労働者の健康管理よりも事業経営上の利益を優先する観点から、産業医として職務が適切に遂行されないおそれも考えられます。また、法や規則においても、これらの方が産業医を兼務することを想定していないところです。さらに、これらについて、国会においても質疑がなされているところです。これらを踏まえて、平成 27 10 月の安全衛生部長の通達により、医療法人の理事長などの事業者の代表者、病院長などの事業場の代表者を産業医として選任することは、そもそも適切でなく、選任している場合には早期に改善する必要がある旨の注意喚起を行い、改善を図っているところです。さらに、これらの改善を確実なものとするため、通達の内容の規則化、省令化を年度内に行うべく検討しているところであり、今後、本分科会において御審議をお願いしたいと考えております。以上です。

○土橋分科会長 ただいま御説明いただきました内容について、質問等はございますでしょうか。

○村上委員 今の御報告に関して、報告内容は報告内容として受け止めたいと思っておりますが、産業医の選任の改善について資料 3 1 ページ中ほどに記載がありますように、企業の代表取締役や医療法人の理事長、病院の院長等が産業医を兼務しているという事例は、やはり産業医の制度としては適切ではないと考えておりますし、そのような認識を示していただいたということは、実効性ある健康管理の観点からは適切な対応ではないかと考えております。

 それに加えてですが、資料 3 2 ページ目に列挙されているような、代表者、医療法人の理事長、病院の院長という方々だけではなくて、副院長の方とか、病院長ではなくても実質的に勤務されている人の監督をするような方々が産業医を兼任されているという事態は余りよろしくないかと思っておりますので、その点については労働側として懸念があるということだけお伝えしておきたいと思います。

○土橋分科会長 ほかに。

○岡本委員 確認ですが、「以下の者を産業医として選任している場合は早期に改善する必要がある」と書いている中の 2 に「事業場においてその事業の実施を統括管理する者」ということで、病院又は診療所の院長などと書いてありますが、これは病院又は診療所の院長が自分の病院の労働者を兼ねるのが駄目であって、別の事業所の産業医を兼ねるのは全然問題ないですよね。これだけを読むとそこまで読み取れないのですが。

○産業保健支援室長 はい、自らの病院の院長の方が自らの病院の産業医をやるということは駄目、という意味です。

○岡本委員 利益相反しなければよいということですね。

○産業保健支援室長 はい。

○角田委員 私はちょっと気になっていることがあります。医師については、もともと医師法という別の法律があり、その中に医師の務めとして公衆衛生の向上に寄与する、と明記されていることは、どなたも御存じと思います。したがいまして、利益を優先するような運営をすること自体、医師法の記載とやや矛盾するのではないか、という気がいたしますがいかがでしょうか。

○労働衛生課長 先生が御指摘のとおり、公衆衛生の向上に寄与する非常に重要な立場を担っているということが医師法でも記載されており、基本的に医師の皆様方にとってもそこのところは非常に大きなベースの部分になっていると理解しております。ただ、今こちらでも御説明させていただきましたが、それがベースにあった上で、事業者に勧告する立場にある産業医が事業経営を代表する者であった場合に、労働者の健康管理と事業経営上の利益が必ずしも一致しない場合も想定されるということですので、先ほども御説明申し上げましたように、産業医にあります勧告権にも鑑み、早期の改善をお願いするという意味合いです。まず、医師の公衆衛生上の向上に資するということがベースにあるということ、これについては先生がおっしゃるとおりであり、そのように認識しております。

○土橋分科会長 ほかにいかがですか。よろしいですか。それでは次の議題に移ります。続いて、議題( 4 )、「東京電力福島第一原子力発電所廃炉作業等における安全衛生管理対策の実施状況について」(報告事項)について事務局から説明をお願いします。

○電離放射線労働者健康対策室長 資料 4 、東電福島第一原発廃炉作業等における安全衛生管理対策の実施状況等について説明をします。東電福島第一原発では、廃炉汚染水対策の作業が行われており、構内では毎日 7,000 人もの方が従事をしているという状況にあります。
1 ページにこの状況について示していますが、平成 26 年の労働災害、休業 4 日以上の負傷者の推移をそこに入れていますが、平成 26 年に労働災害が増えたこと、平成 27 年には死亡災害が 2 件発生しているという状況にあります。その右側には、被ばく線量をグラフ化していますが、被ばく線量の総計は高止まりの動きになっているということです。
  2 ページは、東電福島第一原発構内における休業 4 日以上の死傷者数の推移です。平成 27 年の 6 人は、まだ確定していない数字です。
  3 ページは、平成 26 年度以降の休業 4 日以上の労働災害を個別に示すものです。転倒災害とか転落が多くなっています。死亡災害は、平成 27 1 月のマンホールからの転落と 8 月のバキュームカーのハッチに頭部を挟まれるという災害です。
  4 ページに、これまで発生した休業 4 日以上の死傷災害の分析を記載しています。業種別では、その他の建設業、電気通信工事業、機械器具設置等の工事が多くなっているということ。事故の型別では、転倒、墜落、転落が多い、事業場規模別では、 30 人未満の小規模の事業場が多いということです。被災者の経験年数については、 3 年未満というところと、一方で 20 年以上経験を積んでいる方にも多くなっています。被災者の年齢では、 40 代、 50 代の中高年齢層が多いことなどが挙げられます。

 こうした災害発生状況を受け、廃炉作業等に従事をする作業員の健康・安全を守る対策について、 5 ページ以降にまとめています。全般的な安全衛生対策として、安衛法等で定める安全衛生管理体制、教育などを求めるとともに、電離則に基づく線量測定等の被ばく管理を行っています。

 また、法定事項のみではなく、東電福島第一原発に対しては、昨年 8 月に局長通達で「東電福島第一原発における安全衛生管理対策のためのガイドライン」を策定し、法令で定められた以上の実施事項を盛り込み、対策の強化をしています。
  6 ページは、事業場に対する指導状況です。福島労働局において、原発の構内で作業を行っている事業者に対し、随時監督をしており、毎月 2 回以上の立入調査を実施しています。平成 27 9 月末までの実績で、 217 事業場を監督して、違反件数が 225 件になっています。また、災害防止に関する要請としても、 1 月、 8 月の発生を受け、災害防止に関する要請を副大臣等から行っています。
  7 ページは、ガイドラインのポイントを示しています。東電と元方事業者が一体となった管理体制の確立、リスクアセスメント、安全衛生教育の実施、 3 番目は工事の発注段階からの被ばく低減対策の検討及び実施、 4 番目は被ばく線量管理、健康管理対策、 5 番目は厚生労働省への報告という柱立てになっています。これらにより、東京電力に対しては、発注者としての立場のみならず、第一義的な責任の下に、東電、元方が一体となった安全衛生対策を実施するように定めており、構内の状況を最もよく知る東電が作業計画の作成などに関する支援を事業者に行うように指導しています。
  8 ページには、ガイドラインの主な実施状況を示しています。安全衛生協議組織として、東電と元方事業者が毎週協議会を開催し、連絡調整、災害の発生分析及び再発防止対策などを協議しています。

 また、東電が体験型訓練施設を設置し、元請、関係請負人の事業者を含め危険体感教育を実施しています。

 放射線関係については、管理区域への入域に際しては、作業者証と個人線量計の携行が必須とされており、作業終了後に個人線量計を返却すると。その際に個人の被ばく線量計の情報が線量管理システムに自動的に入力されることになっています。

 また、作業ごとに放射線作業に係る計画書を作成することになっており、これには計画線量として総線量、個人線量の最大量、線量低減策などが記載されることになっており、これを東電の放射線管理部門において確認、承認された後に作業が開始されることになっています。また、このうち一定線量以上のものについては、地元の監督署、本省も確認をして、必要な指導をしています。

 一番下には、労働環境改善として、 5 月から大型休憩所の運用が始まったということを書いています。構内の線量が低減した所から順次全面マスク着用エリアを縮小している状況です。
  9 ページには、東電福島第一発電所の作業員に対する長期健康管理に関する取組を示しています。震災後、平成 23 3 12 月までの間、被ばく限度を一時的に 250mSv に引き上げていましたが、その間に作業をしていた緊急作業従事者は 2 万人弱となっています。これらの方々については、個人ごとの被ばく線量、健康診断結果等のデータを厚生労働省でデータベース管理しており、また、 50mSv を超えて被ばくした方については、白内障に関する目の検査、 100mSv を超えて被ばくした方には、がん検診、甲状腺検査などの実施をしており、離職者など一定の方には、国が費用を負担している状況です。

 引き続きこれらの取組を着実に実施することにより、廃炉等の作業に従事する労働者の安全と健康の確保に取り組んでまいります。以上です。

○土橋分科会長 ただいま御説明いただいた内容について、質問等はありますか。

○半沢委員 東電福島第一原子力発電所の廃炉に向けた作業は、一企業のみならず我が国全体に関わる課題であり、改めて安全第一を旨とした作業を進めていただきたいと思っています。その上で、資料 4 に関して質問を 1 点と要望を 1 点申し上げます。

 質問ですが、資料 4 1 ページの右下のグラフを見ると、被ばく線量の高い労働者数が平成 27 3 月で突出しています。事故から 4 年を経過した時点で、なぜこのような高い数値になっているのかについて、教えていただければと思います。

 もう 1 点の要望についてですが、資料 4 4 ページを見ると、労働災害の分析がされています。業種別では、その他建設業に含まれる電気通信工業、機械器具設置等が、事業の規模別で見ると 50 人未満の所が、また、経験期間別で見ると半年未満と 20 年以上が、さらに、年齢別で見ると 40 50 代が、契約関係では下請が、それぞれ労働災害は突出して多いことが分かります。該当する労働者の数そのものが多いこともあろうかとは思いますが、これだけ労働災害の発生状況の傾向が明らかになっているわけですので、労働災害の多い層に力点を置いた対策というか、廃炉作業における労働災害の減少により一層力を入れていただきたいと思います。

 東電福島第一原発ガイドラインをお作りいただいたということです。この内容について、例えば、元請に対しても要請徹底をすることも含めて、隅々まで徹底をしていただきますようお願いしたいと思います。また、再三申し上げてきたことではありますが、この廃炉というこれまで前例の少ない作業に取り組む必要があるわけですので、高度で専門的な知識を有する労働者をいかに長期的に確保していくのか、また、どのようにして特定の労働者に被ばくを集中させないかということが、非常に重要な視点であると考えています。このような労働者の確保と安全に関わる施策については、事業者に任せるのみならず、雇用労働分野を所管する厚生労働省が、ほかの府省庁とも連携をしながら、十分な検討を行って対策を講じるべきであることを改めて申し上げて、対応をお願いしたいと思います。以上です。

○電離放射線労働者健康対策室長  1 点目の御質問に対してです。平成 27 3 月に被ばく線量が多くなっている点について、原因はこのときの工事内容が、原子炉建屋周辺も含めて、むき出しになった土をコンクリートで覆う作業を集中して行っているためです。この作業を行うことで、それ以降の労働者の被ばく線量が低くなる効果があるということでして、そういう作業が集中的に行われた月で突出しているということです。先ほども申し上げましたが、作業における被ばく線量については、作業計画を出させて、事前に確認をしており、必要な被ばく措置をとるように指導しているということです。
  2 点目の要望については、お聴きしましたので、もちろんガイドラインも含めて我々のほうでしっかり対応していきたいと思っています。

○山口委員 資料の 3 ページに事実関係を詳しく記述なされていますが、その原因といいますか、ここをこういうふうにしていれば防げたというふうなルートコーズといいますか、その辺の分析について、なされていたら、傾向とか何かありましたら、教えていただきたいと思いますが。

○建設安全対策室長 個別の災害について、原因と対策をまとめている資料はないのですが、例えば死亡災害については、それぞれ事故に至った原因と災害防止対策を講じているところです。例えば、死亡災害の 1 19 日のマンホールから墜落という点ですが、これについては、マンホールの形状がよくなかったと。タンクの上から落ちてしまうような形状だったので、こういったところが災害につながったのではないかと。さらに、労働者の経験が浅かったので、そういった災害が起こったのではないかということで、それぞれ東電と関係事業者に対策を講じてもらっているところです。そのような形で、個別には対応ができている状況です。

○山口委員 多分、会社は分析を当然やっていると思いますので、その辺の情報を集約して、何か全体的に足りないところ、対策の確立ということを書かれていますが、行政の視点でこの辺を改善すると、予防につながるのではないかという辺りについて、もうひとつ踏み込んでやっていただけるとよいのではと感じましたので、発言しました。

○建設安全対策室長 分かりました。また、災害を引き続き分析し、有効な対策を検討して御報告したいと思います。

○土橋分科会長 ほかにいかがですか。よろしいですか。それでは、最後の議題に移ります。議題( 5 )「その他」ですが、事務局から報告事項があるとのことですので、説明をお願いします。

○計画課長 私から資料 5 と資料 6 について、御説明申し上げます。議題「その他」として、資料 5 6 7 3 つがあります。そのうち資料 5 です。「第 12 次労働災害防止計画の実施状況」の関係の資料です。一番上の四角にもありますとおり、昨年 6 月、当安衛分科会において、 12 次労働災害防止計画の実施状況、平成 26 年分の実際の状況、統計数字等を御報告しています。

 その中でこの 1 つ、本日お出しした一枚もの、「化学物質による健康障害防止対策」の中で、目標として危険有害性の表示と SDS の交付を行っている化学物質製造者の割合、これについて、平成 26 年の数値が昨年 6 月の段階では取りまとまっていませんでした。これが一番上の四角にあるとおり、平成 27 9 月に平成 26 年労働安全衛生調査として公表されましたので、本日、このような形で御報告申し上げます。四角の中にありますとおり、この目標に対して平成 26 年の数値ですが、ラベル表示が 47.7 %、 SDS の交付が 48.0 %、これについて本日、追加として御報告申し上げるものです。

 資料 6 です。これは、昨年 9 30 日に労働者派遣法が改正されて施行されています。これに伴い、安全衛生関係の指針の部分について改正したものの御報告です。裏面を御覧いただきますと、一番下に参考として書いてあります。派遣法の改正の折、国会審議の際に参議院の厚生労働委員会で附帯決議が付いています。その中の「八、その他」の 2 として、派遣労働者の関係について、指摘があります。 3 行目ですが、「派遣労働者の安全衛生について派遣元事業主と派遣先が密接に連携する旨を派遣元指針及び派遣先指針双方に規定すること」、こういった御指摘です。もう 1 つは、一番下ですが、安全衛生教育に関して、「派遣元事業主及び派遣先による安全衛生教育の実施の徹底を図ること」。この 2 つについて、指摘を受けたわけです。

 これを踏まえて、表に戻っていただいて恐縮ですが、附帯決議を踏まえて関連の指針の 2 つと局長の通知を改正しています。関連指針ですが、 2 つあり、 1. 「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」、もう 1 つが 2. 「派遣先が講ずべき措置に関する指針」です。これはいずれも表、裏の関係ですが、例えば、 1. 「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」については、派遣元事業主は派遣労働者が従事する業務に係る情報を派遣先からちゃんと入手して、雇入れ時、作業内容変更時の安全衛生を適切に行うようにするということ。また、健診結果に基づく就業上の措置を講ずるに当たって、派遣先の協力が必要であれば、派遣先に対してその実施に協力するよう要請すること。こういったことなど、派遣先と必要な連絡調整等を行うことと、こういった文言を追加して改正を行っています。
2 は、この表、裏の関係で、派遣先についても、同様に必要な協力や配慮を行うことといった規定を加えています。

 裏の 3 ですが、平成 21 年に発出した労働基準局長通知の一部改正についても、同様の趣旨でして、派遣元事業者、派遣先事業者が各自、又は連携して実施すべき重点事項について、例えば、特別な教育、連絡の徹底などについて改正をしたものです。資料 6 は以上です。

○化学物質対策課長 次に、資料 7 について、御説明申し上げます。資料 7 の別紙 1 を御覧ください。ここにありますように、昨年 12 3 日に 5 名の労働者が膀胱がんに罹患している状況について、事業場から所轄の労働局に報告があったところです。労働者はオルト - トルイジンなど 5 種類の化学物質から染料・顔料の中間体を製造する工程において、原料を反応させる作業、生成物を乾燥させ製品にする作業に共通して従事していたことが分かったところです。

 このため、表の発表文に戻っていただきたいのですが、ここにありますように、予防的観点から、化学関係業界に当該事業場で取り扱われた芳香族アミンの使用について、ばく露防止措置が十分であるか、あるいは健康上の問題が発生していないかどうかということについて確認するよう要請を行ったところです。

 また、一番最後の所ですが、緊急対応として、現在、私どもがオルト - トルイジンを取り扱っている、又は取り扱っていたというふうに把握している事業場に対して、局署による調査・指導を行っています。以上です。

○土橋分科会長 ただいま資料 5 6 7 について、説明いただきました。これらの内容について、質問等はありますか。

○辻委員 今回のオルト - トルイジンなどの芳香族アミンばく露によると思われる膀胱がんについては、 2012 年に発覚した 1-2 ジクロロプロパン、ジクロロメタンばく露による胆管がんの問題を連想させる部分があります。現在、芳香族アミン 5 物質を使用している事業場に対して、各都道府県労働局が調査中ということですが、可能な限り早期に調査と分析を行って、本分科会などへの報告を行っていただきたいと思います。また、当然ではありますが、労災認定申請があった場合には、迅速な対応を行っていただきたいということ、加えて、新たな措置が必要となった場合には、早急に本分科会において議論することを要請します。以上です。

○計画課長 ただいま頂いた御意見についてですが、我々も胆管がん事例のときの教訓を旨として、対応に全力で当たっているところです。まず、今、オルト - トルイジンなどを扱っている事業場は約 40 弱把握しており、昨年末から全国の局署で調査・指導を行っています。今、まさに調査結果の取りまとめをして、できるだけ早く発表したいと思っており、また、その報告を踏まえて本分科会にも御報告したいと申し上げます。

 また、 12 月に発表した化学工場についてですが、労働安全衛生総合研究所で調査を行っており、これは科学的な調査ですので、少し時間は掛かるかもしれませんが、こちらも調査結果が取りまとまり次第、専門的な検討を経まして、また、こちらの分科会にも報告をしたいと思っています。また、労災補償についても、当然、その科学的な原因究明も待たなくてはいけない面はありますが、できるだけ迅速に対応できるようにしてまいります。

○土橋分科会長 ほかにいかがですか。よろしいですか。議題は以上ですが、全体を通して何かありますか。よろしいですか。それでは、これで全ての議題を終了しました。本日も熱心な御議論をありがとうございました。最後に、事務局から連絡事項をお願いします。

○計画課長 本日も熱心に御議論いただきまして、ありがとうございました。本日、冒頭、議題( 1 )で御了解いただきました諮問案件については、早急に事務局で所要の手続を進めたいと考えています。また、次回分科会については、追って御案内差し上げますので、どうぞよろしくお願いします。

○土橋分科会長 本日の分科会はこれで終了します。なお、議事録の署名については、労働者代表委員は辻委員、使用者代表委員は明石委員にお願いしますので、よろしくお願いします。本日は、お忙しい中ありがとうございました。


(了)

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