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2015年10月30日 第68回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会議事録について

職業安定局 雇用開発部 高齢者雇用対策課

○日時

平成27年10月30日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 職業安定局 第1・第2会議室(中央合同庁舎第5号館12階)


○議事

○阿部部会長 定刻となりましたので、ただいまから第 68 回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会を開催いたします。

 議事に先立ちまして、当部会に所属されます委員の交代がございましたので、御報告申し上げます。労働者代表委員の才木委員に代わりまして、情報産業労働組合連合会政策局長の北野委員です。

○北野委員 北野です。どうぞ、よろしくお願いいたします。

○阿部部会長 次に、本日の委員の出欠状況を報告させていただきます。公益代表の欠席は、森戸委員です。使用者代表の欠席は、川上委員。労働者代表は、近藤委員、小倉委員、芳野委員が御欠席ということです。なお、玄田委員、猪熊委員は出席の御連絡を頂いておりますので、追い追いいらっしゃると思います。

 開催に当たって、生田職業安定局長より御挨拶を頂きます。

○生田職業安定局長 職業安定局長でございます。本日、皆さん大変お忙しい中、当部会に御参集いただきまして、本当にありがとうございます。

 本日の議題でございます高齢者雇用対策につきましては、この場でも以前、御議論いただきました。平成 24 年の改正高年齢者雇用安定法に基づきます希望者全員の 65 歳までの雇用確保をはじめといたしまして、現在様々な取組を進めております。

 一方で少子高齢化が進展する中で、意欲と能力のある高年齢者の方が、長年培った知識や経験を生かして、 65 歳を超えても働き続けることができる生涯現役社会の実現が、ますます重要となってきております。こうした中、本年 6 5 日に「生涯現役社会の実現に向けた雇用・就業環境の整備に関する検討会」の報告書が取りまとめられまして、例えば、労働者が 65 歳以降も企業において活躍するための環境整備ですとか、地方自治体を中心とした地域のネットワークの構築、あるいはシルバー人材センターの機能強化など、当面求められる施策の方向性等につきまして提言を頂きました。

 委員の皆様には、これからこの部会におきまして、高年齢者の方が年齢に関わりなく働ける社会の実現に向けまして、今後の高年齢者雇用対策に必要な施策の在り方等につきまして御議論いただきたいというふうに考えております。

 政府におきましても、生涯現役社会の構築、あるいは高年齢者に多様な就労機会を提供していくことは非常に重要な課題になっておりまして、 1 億総活躍社会を目指して全力を挙げて取り組むべきという考えでございます。

 委員の皆様におかれましては、大変お忙しいところ本当に恐縮でございますけれども、何とぞよろしくお願い申し上げます。

○阿部部会長 ありがとうございました。それでは議事に入りたいと思います。本日は局長からの御挨拶にありましたように、「高齢者雇用対策について」を議題とさせていただきます。本日は第 1 回目ということで、全般的な御議論をお願いしたいと思いますが、まず最初に、今回の検討全般を通じての背景となる高年齢者を取り巻く現状、及び今後の高年齢者雇用の検討課題などについて、事務局から説明をお願いします。

○渡部高齢者雇用対策課長補佐 それでは、資料 1 から 3 について御説明いたします。資料 1 「高年齢者を取り巻く現状」ということで、整理をさせていただいております。時間もありますので、ポイントのみ簡潔に御紹介させていただきます。

1 4 ページまでが、高齢化の現状等について整理をした資料です。 1 ページ、人口の推移です。現在 2014 年で 1 2,708 万人の人口が、 2060 年には 9,000 万人を割るということが見込まれる中で、真ん中の折れ線、高齢化率ということで、 65 歳以上人口割合については、現在の 26.0 %が 39.9 %まで見込まれるという状況です。

2 ページが、人口ピラミッドの変化で、 1990 年から 2060 年にかけて団塊世代ですとか、団塊ジュニアの世代が高齢化していく状況が見て取れるかと思います。

3 ページ、労働力人口の推移です。資料の赤い部分、 60 歳以上の労働力人口に占める構成比が拡大してきているというのが見て取れるかと思います。

4 ページ、就業率の推移です。真ん中ほどにある紫のラインが 60 64 歳の状況です。 2006 年、点線を引いてある部分ですが、高年齢者の雇用確保措置が義務化されたことを受けて、そこで就業率が大きく上がって、その後も上昇を続けて、 2014 年には 60.7 %という状況でございます。また、その下のライン、水色のラインの 65 69 歳という部分についても、年々上がってきておりまして、直近 2014 年では 40.1 %という状況になってございます。

 資料 5 6 ページは、高齢者の働く理由についての資料です。 5 ページ、いつまで働きたいかといった調査ですが、 65 歳を超えて働きたいという方が、 70 歳ぐらいですとか、働けるうちはいつまでもという方を合わせて 5 割を占めるという状況です。

6 ページ、働く理由です。緑色の部分、「生活の糧を得るため」というのがいずれも高くなっているわけですが、 65 69 歳といったより高齢になっていきますと、「健康にいいから」ですとか、「いきがい、社会参加のため」と答える方の割合が増えているという状況です。

7 ページですが、こうした中で、現行の高年齢者雇用対策の体系・考え方です。大きく 3 つの柱で考えております。 1 つ目が右下の円の部分で、企業や企業グループ内での 65 歳までの雇用の確保ということです。こちらは、高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者雇用確保措置を着実に実施していくこととしています。

 もう 1 つがその左側の円で、高年齢者の再就職支援という部分です。企業の継続雇用という仕組みがありますが、やむなく離職をした方ですとか、高年齢者雇用確保措置として 65 歳までの確保措置が義務付けられていますが、ここでは定年制度の対象となる正規労働者が対象となる制度ということですので、その制度の対象とならない非正規の方については、右の円の部分では対応し切れないというところがあります。こうした方については、ハローワークでの就職支援とか、様々な助成金を活用しながら支援をするということに取り組んでおります。また、今後については、今申し上げた非正規の方などの問題もあります。こういう方については、 60 歳を迎える前に正規転換を図るということで、雇用確保措置の対象に向けていくということを考えていく必要もあるかと思っています。

 もう 1 つが上の円です。こちらが最近特に重要になっていると思いますが、「生涯現役社会」の実現に向けた取組ということで、企業に対する支援とか意識啓発、またシルバー人材センターを通じた高年齢者の雇用機会の確保ということに取り組んでいるところです。

8 ページが、平成 28 年度の高年齢雇用対策関係の概算要求の概要です。全体で 270 億円の予算を要求していますが、 4 つあります。 1 つは、「企業における高齢者の雇用の促進」ということで、こちらは高年齢者の雇用安定助成金などについて、 65 歳以上の雇用者数に着目した拡充を図るといった内容を盛り込んだところです。

2 点目が、「高齢者の再就職の促進」ということです。こちらはハローワークで 65 歳以上の求職者支援に重点的に取り組む「生涯現役支援窓口」といったものを設置して、更に就職支援の充実を図りたいという考えです。

3 点目が、「地域における多様な雇用・就業機会の確保」ということです。こちらは、地方自治体を中心とした地域のニーズを踏まえた多様な雇用・就業機会の掘り起こしなどを行う事業を新たに展開していきたいと考えています。

4 点目が「シルバー人材センターの機能強化」ということです。こちらは、シルバー人材センターが地方公共団体ですとか、地域の経済団体と連携をした上で、新たな就業機会を創造するような事業を創設していくことなどを盛り込んだところです。

9 ページが、「高年齢者雇用安定法の概要」です。高年齢者雇用安定法ですが、大きく 3 つの部分からなる法律になっています。 1 つが、「定年の引上げ等による安定した雇用確保の促進」ということで、 60 歳未満の定年の禁止とか、 65 歳までの雇用確保措置について規定がされています。 2 つ目が、「高年齢者等の再就職の促進等」ということです。こちらは企業が実施をする再就職援助措置とか、多数離職届、求職活動支援書等について規定をした部分です。 3 つ目が、「シルバー人材センター」で、シルバー人材センターの指定に関することとか、その取扱いの業務について規定をしています。

 続いて、 10 12 ページが、企業における高年齢者雇用に関する資料になります。 10 ページが、「高年齢者雇用確保措置の実施状況」です。最新の状況、平成 27 年の状況については先週 10 21 日に公表したところです。これによりますと、 31 人以上規模の企業の高年齢者雇用確保措置の実施企業割合については 99.2 %、また希望者全員が 65 歳以上まで働ける企業の割合は 72.5 %、更に 70 歳以上まで働ける企業の割合は 20.1 %となっております。

11 ページ、「高年齢者雇用確保の課題」ということです。特に課題はないとする企業も多かったものの、高年齢者社員の担当する仕事を自社内に確保するのが難しいとか、管理職の社員の扱いが難しい、また、処遇の決定が難しいといった声が多くなっています。

12 ページ、「 65 歳以降の雇用の取り組みに必要な支援」ということです。多いのが上 2 つですが、人件費等の経費助成とか、個人の健康管理への支援といったものが多くなっています。

 続きまして、 13 15 ページが、再就職支援の関係で用意した資料です。 13 ページ、「高年齢者の希望職種」ということで、こちらはハローワークに新規求職を申し込んだ方の希望職種になります。男性・女性に分けて資料がありますが、どちらとも多いのは、やはり運搬・清掃等の職業となっています。また、女性に特徴的なところで、事務的職業を希望する方が多いということと、女性ではほとんど希望がないのですが、男性で希望が多いのが、輸送・機械運転の職業というところで特徴が見られるかと思います。

14 ページ、「高年齢者の転職入職者数の推移」ということで、平成 12 年から平成 26 年まで、平成 12 年の数値を 1 としたときの増減で見ております。オレンジ色のラインが 65 歳以上の方ということで、平成 12 年に比べると 5.25 倍というところまで増加しているという状況です。

15 ページも同様の観点の資料になりますが、「ハローワークにおける高年齢者の就職状況の推移」ということです。平成 17 年度を 1 としたときの値ということで見ております。折れ線部分が就職件数、棒グラフのところが新規求職者数ということで、いずれも緑色の色を付けているところが 65 歳以上となります。就職件数で見ても 3.15 倍、新規求職数で見ても 2.23 倍というところで、非常に 65 歳以上の方が増加しているという状況です。

16 19 ページが、地域における雇用に関する資料です。 16 ページ、「地域人づくり事業を活用した各地域の取組状況概要」です。現在、全国 10 か所でモデル的に高年齢者の就職促進等の事業に取り組んでいただいています。 16 ページは全体像をまとめた資料ですが、この中から柏市と福岡県の事例を御紹介させていただきます。

17 18 ページが柏市の例でございます。柏市においては、柏市と UR 都市機構、それから東大といったところが協働でプロジェクトに取り込んでおります。農、食、保育、生活支援・福祉といった 4 つの側面から 8 つの就労事業モデルを創造して、高年齢者の生きがい就労を促進しているという取組です。

18 ページにあるように、事業展開に当たっては、セカンドライフ支援を行う関係機関を「柏市セカンドライフネットワーク会議」という形でプラットホーム化をして、ここが司令塔的な役割を果たした上で、高年齢者とボランティア、就業、企業、学習、それから健康・運動といったような幅広いニーズに対応した情報提供とか、マッチングを行っているところです。

 続きまして、 19 ページが福岡県の事例になります。こちらが「 70 歳現役社会づくり」ということで、多様な就労へのマッチング支援など、高年齢者の就職を促進しているということですが、こちらも柏市同様に、プラットホームとして「福岡県 70 歳現役社会推進協議会」といったものを組織しまして、その上で、総合支援拠点としては「福岡県 70 歳現役応援センター」といったところで高齢者と企業・ NPO 団体等々のマッチングを行っているということです。

20 ページ以降については、シルバー人材センターの関係の資料を準備しました。 20 ページが、「シルバー人材センター事業の概要」です。会員としては、おおむね 60 歳以上の高年齢者を対象として、事業内容としては家庭、事業所、官公庁から、その地域に密着をした臨事的かつ短期的又は軽易な就業機会を確保して、これを希望する会員に提供するといった事業です。平成 27 3 月末の時点で、全国に 1,272 団体こうした団体があり、会員数は 72 万人となっています。会員の月平均就業日数は 9.7 日、配分金の平均額が 36,747 円という状況です。

21 ページ、センター会員の年齢別の状況です。真ん中の円グラフに示しておりますが、男女とも、 65 69 歳ですとか、 70 74 歳の層で会員の 6 割以上を占めるという状況です。また、 75 歳以上の会員も 25.6 %と非常に多く存在しているということです。

22 ページ、「シルバー人材センターの就業分野」です。一般作業群ということにしている清掃、除草とか、チラシ配布といった業務が一番多く、就業延人日ベースで全体の 55 %を占めるという状況です。また、管理群ということで、ビル管理ですとか駐輪場管理の業務も多く全体の 21 %という状況です。また、請負なのか派遣なのかというところでも割合を書いていますが、一番下にありますように、請負が 97 %、派遣に関するものが 3 %というのが現状です。

23 ページ、シルバーの派遣事業の状況です。平成 16 年に高年齢者雇用安定法の改正によりまして、シルバー人材センターが派遣を取り扱うことが可能となったわけですが、そこから年々取扱い件数等増化してきていますが、先ほども申しましたように、全体に占める割合としてはまだ 3 %程度という状況です。主に活用されている事例を挙げていますが、育児支援分野では保育士の補助ということで、早朝保育とか延長保育の部分で活用いただいているケースとか、あとは介護補助ということで、送迎業務等、そういうところで高年齢者が活用されているという状況があります。

24 ページが、最近のシルバーの取組事例です。職域拡大等、取り組んでいるということで、草刈りですとか、そういう伝統的な職域が多いわけですが、育児支援とか学童支援に取り組むセンターですとか、そこに例を挙げましたが、直方市の「のぼり旗作成」とか、養父市の「温石米」といったように、それぞれのセンターで得意な分野を伸ばすということも取り組まれているところです。

 また、就業拡大の部分では、民間企業とコラボレーションした広域受注ということで 2 例ほど挙げています。関西基盤の大手スーパーのほぼ全店舗に複数のシルバー連合から会員を派遣しているケースとか、大手複写機メーカーから全国の保守契約先の業務を、複数のシルバー連合から会員を派遣するという形で対応しているという例が出てきています。

 また、会員の拡大ということでは、大企業の OB 会へ働きかけるというようなこととか、就業機会のほかに、ボランティア活動等も組み合わせて会員に提示するといったようなことで、シルバーの活動を PR するという取組にも取り組んでいるものが出てきているということです。

25 ページ、「シルバー人材センターが行う仕事」について具体的なイメージを持っていただければと思いまして、長浜市シルバー人材センターの例を紹介させていただいております。長浜市については、人口 12 万人、シルバー会員が 1,500 名ほどと、そういった規模のセンターです。企業・官公庁から受ける仕事と、一般家庭から受ける仕事として、こんなものがあるということを御参照いただければと思います。

26 ページ、「臨・短・軽について」ということです。シルバー人材センターは、臨時的・短期的又は軽易な業務を取り扱うとされております。この規定がどうなっているかということについて整理をしたものです。まず、高年齢者雇用安定法の中で、臨時的かつ短期的なもの又はその他の軽易な業務を取り扱うということが規定されているところです。これを受けて、労働省告示のところで、この「軽易な業務」については、業務の処理に要する 1 週間当たりの時間が労働者の 1 週間当たりの平均的な労働時間に比し、相当程度短いものということが示されています。また更にそれを受けて、職業安定局長通達で、それぞれの業務について、臨時的・短期的な業務については、おおむね月 10 日程度、また軽易な業務については、おおむね週 20 時間を超えないことを目安とするということを定めています。

27 ページ、就業時間の拡大についての動きの 1 つとして、国家戦略特区の関係を御紹介させていただきます。こちらは経緯として、兵庫県養父市からシルバー人材センターの会員の労働時間の拡大ができないかという要望がありました。週 20 時間までというところを、週 40 時間ぐらいまで可能としてほしいということで、理由としては、過疎地域がゆえに労働力不足であって、 60 歳以上の人口が極めて多い。そうしたところの活用が必要だというところと、民業圧迫が生じるほど民間企業がそもそもいないということ。また、より多くの仕事を高齢者に提供することは、シルバー事業の精神にも合致するだろうといったようなことでした。

 こうしたことを受けて、青の点線で囲ってある部分ですが、区域の労働力需給状況等から民業圧迫の恐れがない場合については、週 20 時間を目安とする「軽易な業務に係る就業」に加えて、それ以外の就業、具体的には 40 時間の就業ということを想定していますが、そのようなことについても派遣事業を行うことを可能とするということを決定して、この内容の国家戦略特区法の改正法が前回の通常国会で成立しているというところです。

28 ページ、この「臨・短・軽」要件の緩和ですとか撤廃の要望についてです。こちらは、今年に入り、シルバー人材センターの 1,319 拠点にアンケートを行った結果です。請負、派遣、紹介ということで 3 つ分けていますが、請負、派遣について、要件の撤廃又は緩和を希望している所が 6 割程度になっているということです。

29 ページ、その要件の緩和の度合ですが、「臨時的・短期的な業務」については、 10 日という目安でやっていますが、 15 日ぐらいまで緩和というところが最も多くなっています。また、 20 日以上というところも多いという状況です。「軽易な業務」、週 20 時間というところでやっておりますが、こちらについては 30 34 時間というところが最も多く、また、 25 29 時間ですとか、 40 時間以上といったところも一定程度回答があったというところです。

30 ページ、こちらは緩和・撤廃を望む理由は何か、また民業圧迫の懸念についてどう考えるかというところを聞いたものです。緩和等望む理由については、やはり会員がそういうことを希望するといったことですとか、発注元からの要望があるということが多くなっています。また、民業圧迫の懸念については、シルバーセンターの回答としては、それはないとするところが多くなっています。

 資料 1 については、説明以上です。また、説明はいたしませんが、参考資料として、この他にもいろいろ資料を整理していますので、適宜参照いただきながら、御議論いただければと考えております。

 続きまして、資料 2 について御説明します。こちらは「生涯現役社会の実現に向けた雇用・就業環境の整備に関する検討会」ということで、平成 27 2 月から 6 回開催をし、本年 6 5 日に報告書として取りまとめいただいたところです。

 「生涯現役社会実現の必要性と基本的視点」ということで、 65 歳以降においても、働く意欲のある高年齢者が、年齢にかかわりなく生涯現役で活躍し続けられるような雇用・就業環境を整えていくことが必要不可欠であるといった認識の下に、その下にありますように、 (1) 企業における高年齢者の雇用の促進から (5) シルバー人材センターの機能強化まで、 5 つの柱で現状の課題等、今後求められる施策の方向性について取りまとめをいただいたものです。ここにそのポイントがそれぞれまとめられていますが、こちらは次の資料 3 と重なる部分がありますので、説明はそちらのほうで兼ねたいと思います。

 ということで、引き続いて資料 3 について御説明します。こちらは「生涯現役社会の実現に向けた今後の高年齢者雇用の検討課題について」ということで、事務局で整理をした資料です。 1 回目の議論をしていただくに当たり、検討課題となるであろうといった事項をゴシックの字体の所で整理をし、また、先ほどの生涯現役の検討会の報告書で、当面求められる施策の方向性ということでまとめられたものを、参考ということで明朝の部分で書いたという形で整理をしました。

 「総論」ですが、今後の高年齢者雇用対策を進める上での課題をどう考えるかということと、どのような観点から施策を展開していくべきかを挙げました。

 「各論」については、 1 つ目が「企業における高年齢者の雇用の促進」ですが、 65 歳以降の雇用・就業機会を確保するために、企業においてどのような取組を推進すべきか、また、そのためにどのような支援が必要かとしました。検討会の報告の中では、 65 歳以上の高年齢者を雇い入れたり、多数雇用することを支援することとか、継続雇用を実現する制度を設けることを支援すること。また、健康管理の在り方を含めた人事管理施策の在り方とか、雇用環境整備・雇用管理改善を促進することといったことが挙げられています。

2 点目、「中高年齢者の再就職の支援」です。中高年齢者の再就職支援としてどのような支援を行っていくべきか。また、そのときハローワーク、民間職業紹介機関はどのような役割を課たすべきかを挙げました。こちらについては、検討会の報告の中では、ハローワークが実施をしている再就職促進のための基本的な取組を強化することとか、ハローワークで 65 歳以上の高年齢者を対象とした窓口を設けるといったことで、きめ細かな支援を行うこと。また、企業が雇入れとか、試行雇用後の採用、出向・移籍など、様々な形態で中高年齢者を受け入れることを支援していくべきといったことが挙げられています。

3 点目が「地域における多様な雇用・就業機会の確保」ということで、高年齢者雇用に関し地域の果たす役割は何か。また、地域の高年齢者雇用のニーズに的確に対応するために、どのような仕組みが必要か。こうした地域の取組を全国的に普及・促進していくために何が必要か。国はどのように関わるべきかということを挙げました。

 検討会報告の中では、地方自治体を中心とした地域のネットワークの下に、地域の多様な形態による雇用・就業機会を掘り起こして、企業退職者等に提供する取組が全国で展開されるようにすること。そのための協議体の設置促進を図ること。また、既存事業の分析をした上で、そうしたものを全国へ周知していくことといったことが挙げられています。

 最後、「シルバー人材センターの機能強化」です。シルバー人材センターに期待される役割は何か、それに応えるためにどのような方向で機能強化を図っていくべきか。また、いわゆる「臨短軽」要件の緩和についてどう考えていくのか。どのような地域で実施されるべきものか。また、シルバー人材センターの行う請負、紹介、派遣といったところで、それぞれどう考えるべきか。また、民業圧迫や地域の労働市場への影響という関係をどう考えるのかということを挙げました。

 検討会の報告の中では、センターが積極的に就業機会・職域を開拓していくことを促進すること。また、そうした中で補助金等におけるインセンティブを強化すること。育児支援分野等で就業拡大を促進すること。また、「臨・短・軽」要件の緩和については、民業圧迫の懸念等を念頭におきながら緩和等の可能性を検討することが挙げられています。

 こうした点について、委員の皆様から幅広く御議論いただきたいと考えているところですが、現時点での事務局の考え方としては、今、こちらに挙げた事項のうちシルバー人材センターのいわゆる「臨・短・軽」要件について、その緩和の可能性を検討することといった部分と、また、地方自治体のネットワークを構築するための協議会の設置促進を図ることといったこの 2 点については、高年齢者雇用安定法の改正につながり得るものではないかと考えています。

 具体的にそのための仕組みをどのようにしていくかについては、この部会での議論を踏まえて検討することと考えていますが、現時点での事務局の考え方としては、シルバー人材センターについては、生涯現役社会の実現に向けた環境整備として、より長時間の就業を希望する高年齢者のニーズに対応していくために、こうした「臨・短・軽」の就業時間の要件を緩和し、高年齢者の就業機会を確保する上での選択肢を広げることは、施策の方向性にも沿ったものではないかと考えています。

 その際に、民業圧迫等のおそれについては、事前に地域の関係者の意見を聴取した上で判断していくこととか、地域の労働市場に与える影響等の点で問題がないかといったことを確認する措置を設けるということとか、あとは、仮に問題が生じたときには、速やかにその緩和の措置を停止することができる仕組みを設ける必要があるのではないかと考えています。また、この要件緩和については、労働者性の観点とか労働者保護の点で問題となることのないように、労働者派遣と職業紹介の部分に限って認めることが適当ではないかと考えています。

 もう 1 点の地域の協議会については、地域の関係者が密接に連携をした上で、高年齢者雇用の取組を進めていくといったことで、そうした協議体の設置促進を図ることは意味があることだと考えています。その際に、単に議論を行うだけにとどまらず、地域の高年齢者雇用に必要な具体的な事業展開等についても、その協議会の場で議論される仕組みとしていくことが必要だろうと考えています。事務局からの資料の説明は以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。今後の議論についてですが、まず本日、資料 3 として今後の高年齢者雇用の検討課題を事務局で整理していただいていますので、これに沿って議論を進めていきたいと思います。その際、本日、全体を 3 つのパートに分けて、第 1 に総論部分、続いて各論のうちの 1 「企業における高年齢者の雇用の促進」と 2 「中高年齢者の再就職の支援」を議論いただいて、最後に 3 「地域における多様な雇用・就業機会の確保」、 4 「シルバー人材センターの機能強化」という具合に、 3 つに分けて議論をしたいと思います。

 まず、先ほど事務局から資料 1 2 3 と御説明いただいたわけですが、これについての質問も含めて、第一に総論の「今後の高齢者雇用対策を進める上での課題」について、御意見があればお願いします。どなたからでも結構です。

○紺谷委員 資料 1 9 ページで質問ですが、「高年齢者雇用安定法」の関係です。 1 つ目の○の「定年の引上げ等による安定した雇用確保の促進」の枠の中に、※の「高年齢者雇用確保措置の実施に係る指導を繰り返し行ったにもかかわらず何ら具体的な取組を行わない企業には勧告書の発出、勧告に従わない場合は企業名の公表を行う場合がある」という所ですが、こうした指導等の実施状況について、実績が分かっていたらお答え願いたいのですが。

○福士高齢者雇用対策課長 ※の所に公表等々があったのですが、これは最初指導をして勧告をして公表するという手順を踏みます。そういう中で、今、未実施の所が今年で言えば確保措置 99.2 %なので、まだ 0.8 %残っているというところがあります。大体、企業にして 1,200 社ぐらい。ここについては、まずハローワークにおいて、そういう未実施の企業に対して指導に行きます。それに従わない場合においては勧告、更に勧告に従わない場合は公表という形で進めていますが、今のところ公表に至っている所はありません。勧告もほぼない状態でして、ハローワークが指導すれば、皆さんは大体応じてくれるのが今の現状です。これをどうしてやっていくかというと、ある程度重点を決めて、 1,200 社のうちの今年度の後半でやろうとしているのは、その 15 %を重点実施企業と決めまして、大体 180 社について訪問をしながら指導していくという形で、その指導を強化していると、今、そういう現状にあります。

○阿部部会長 紺谷委員、よろしいですか。

○紺谷委員 ありがとうございます。「高年齢者雇用安定法」の改正によって 2006 4 月施行では雇用確保措置が義務付けられて、 2013 4 月施行では継続雇用制度の対象者を限定する仕組みが廃止されたわけですよね。その結果として、 10 ページには雇用確保措置を実施している企業の割合が全体で 99.2 %、 51 人以上で 99.4 %という高い数字は出てはいるのですが、ここはしっかり残りも含めて法令遵守がされるよう、厚労省におかれては指導を徹底していただきたいのが 1 つです。

 それと、本日の資料は 65 歳以上の高年齢者にスポットを当てて部会を持たれており、 65 歳以上の高年齢者の雇用促進自体は否定をしないのですが、高年齢者雇用を議論するに当たっては、希望者全員の 65 歳までの雇用確保について、 2013 年の法改正以降 2 年半、まだ 3 年弱ということもありますので、 65 歳までの雇用確保について必要な議論は行うべきではないかと、意見として申し上げたいと思います。

○阿部部会長 ありがとうございます。

○福士高齢者雇用対策課長 先ほども申し上げましたが、まだ 0.8 未実施があるので、ここの部分については 100 %を目指して徹底的に実施していきたいと思っています。

○阿部部会長 ほかにいかがですか。

○北野委員 情報労連の北野と申します。どうぞよろしくお願いします。私からは 65 歳以上の就労について、本日、参考資料 1 15 ページに「高年齢者の生活の主な収入源」というデータが示されているのですが、例えば男性の 65 69 歳では 91 %が公的年金を主な収入源にしているということですので、これから 65 歳以上の論議になるのかも分かりませんが、 65 歳以上の所得保障は基本的には公的年金がカバーしているということは、論議に当たり留意しておくべき前提条件ではないかと思っています。

 その上で 65 歳以上の就労希望については、少し一部の例ではありますが、職業安定分科会の雇用保険部会で、これは 10 14 日、第 105 回部会ですが、高年齢求職者給付金に関するアンケート調査、これは平成 25 年度に高年齢求職者給付金を受給した 65 歳以上、 6,000 人程度を対象にしたアンケート調査の結果です。調査は自営の仕事に就いたという方については除いておりますが、就労希望について 45.1 %の方が無理のない範囲で仕事をしたい、 8.8 %の方が条件の良い所があれば就職したいという回答です。一方で正規の社員・職員として働きたいという回答の方が 1.9 %と極めて低い状況です。

 今後、事務局にお願いですが、 65 歳以上で就労する方はもちろん健康や生きがいという理由もありますし、更に収入を得るためという方も存在しており、これはもう様々だと思っていますので、 65 歳以上の方のニーズを分析し論議すべきだろうと思っています。そういう意味では、現在 65 歳以上で働く方のニーズを分析した資料の提供、一部はありますが、もう少し分析した資料や、今後 65 歳以上で働く方の就労ニーズを分析した資料、こういうものも是非提出をお願いしておきたいと思っています。なお、今後の論議において、年金の支給開始年齢の問題とは切り離して論議をするということは、労働側としては当然だということを申し上げておきます。

○阿部部会長 ありがとうございました。事務局から特にありますか。

○福士高齢者雇用対策課長 資料は、 65 歳以上も働きたいというのは大体全体で 5 割いるという資料ですとか、その辺は付けているのですが、もう少し細かいところであれば、そういう資料を探してみたいと思います。

○阿部部会長 では、お願いします。

○村上委員 総論ですが、先ほどから労働側委員が申し上げているように、 65 歳以降の働き方ですが、 65 歳までの雇用確保は必ずしも十分ではないのではないかと考えています。高年齢者雇用確保措置は一応入れた場合でも、継続雇用制度の対象となる基準を労使協定で設定できる制度も廃止しましたが、基準に関しては継過措置も残っていて、そのためきちんと雇用はつながらないといった声もあります。そうしたところをまずきちんとやっていくことが先ではないかと、私たち労働側としては考えています。さらに、その関連で申し上げますと、いわゆる有期特措法も議論し、労働契約法の無期転換ルールに関する特例を設けたというところではありますが、特例を設けるということであれば、 65 歳までの雇用確保はしっかりやっていくことが必要ではないかと。 65 歳までしっかりやった上で 65 歳以降のことを考えていくのが筋ではないかと思っていますので、総論についてはまずその点を申し上げておきたいと思います。違う点についてもよろしいですか。

○阿部部会長 はい。

○村上委員 資料についての質問です。資料 1 20 ページに「シルバー人材センター事業の概要」があり、それ以降の資料でも請負がほとんどであって、派遣、職業紹介は少ないというお話でした。請負の場合、この図で言うと仕事の発注があって、2はセンターから会員に対して仕事を依頼して、それは請負契約だというところですが、実際、請負で働いている皆さんはどのぐらいの時間働いているのか。また、月平均の配分金の収入について記載があるのですが、シルバー人材センターはどれぐらいの金額で仕事を請け負って、シルバー人材センターから会員にはどれぐらいの請負の報奨金が支払われているのか、といったデータはないのでしょうか。そこを教えていただければと思います。

○阿部部会長  1 点、質問がありましたので、事務局からお願いします。

○福士高齢者雇用対策課長 後の部分を先に答えたいと思うのですが、請負の場合は、全体の請負額がありましたら、大体 8 10 %を手数料で取って、残りは皆さんの人数で報奨金という形の中で分配される形になります。ただ、派遣になると、そこに労災保険料が入ってくるので、それはいろいろシルバーで取決めをしているのですが、手数料は、大体倍にはなると。ですから、 20 %ぐらいになると聞いています。それと、そこに「 9.7 日」と書いていますが、これは請負と派遣が大体一緒の形で 9.7 日ということになっていますので、別ということになると、今のところ取っていないので、また次回でも御提示します。

○玄田委員 別の観点で。御説明がありませんでしたが、総論として 1 つ感じたことを申し上げます。参考資料 1 40 ページ、「雇用動向調査」の結果、「年齢別入職経路」を改めて拝見しますと、今、 65 69 歳の就業率が 4 割に達して、就業率は順調に拡大しているということを前向きに捉えているところですが、実際、これはどういう経路で入職しているかを見たときに、改めて、特に 60 代後半というと、ハローワークは極めて重要な入職経路になっていることは、まず認識として持っておかなければならないと。広告等々が非常に重要な壮年層に比べて、公的な入職経路が就業機会の確保に極めて重要だということは、いろいろなことを議論する前提であるべきだと思っています。

 一方で、もう 1 つ気になるのは、 65 69 歳は縁故の割合が他の年齢層に比べても非常に高いと。 60 代前半に次いで高いのが 60 代後半であるということで、ハローワークでなければかなりパーソナルな関係の中で仕事を探されていると。逆に言えば、パーソナルな関係を持っていない、ある種、孤立気味の方々にとっては、就業がある意味では難しい立場にあると。高齢者の雇用を考えるときに、「多様性」という言葉とか「個別の違い」が強調されるのは当然だと思いますが、一方で多様性の中でも不利な状況にある、特にそういういろいろな関係性の中で孤立気味の方々がいるという問題を解決しないと、本当の意味での多様性とか生涯現役の議論はできないと。

 そう考えたときに、特に前の会社との差引きを考えますと、 65 69 歳は 20 %近くが会社返りで非常に人間的な関係で仕事を探されている。私は、多分、シルバー人材の意義を考えるときには、シルバー人材はこういうパーソナルなリレーションシップを超えて、非常に広くいろいろな方々に機会を提供する意味が大きいと思いますので、是非、この辺りの経路を踏まえて総論辺りの議論をしていただければと思います。

○阿部部会長 ほかにはいかがですか。私は個人的な意見を申し上げるとすれば、総論では、今後の日本社会の人口構造の変化と労働市場にとって、それがどういう影響をもたらすのかを考えていって、今回議論して法改正まで視野に入っているということでしたが、それは比較的短期的なことかもしれませんが、むしろ今後、例えば資料 1 2 ページ目で 2060 年になると、人口ピラミッドが相当逆ピラミッドの形になっていって、若い人たちがいなくなり、相対的に高齢者が多くなることがこれで見えています。

 確かに今から 2060 年というと相当先の話かということではありますが、これまでの私の個人的な見解とすれば、企業の人事労務管理も、労働市場の、良い言葉が出てこないのですが、労働市場での雇用管理とか、法律とか、そういったものはすぐには変われないので、 2060 年を視野に入れながら、一つ一ついろいろなことをやっていきながら、そのときに合わせた労働市場の整備とか、企業の人事労務管理の整備とかを考えていく必要があるのかと。ほかにも、例えば女性の活躍といっても、何年もずっとやってきても、いまだにまだこのような数字なのと言う方もいらっしゃいますよね。 30 年ぐらいやっていると思いますが、それでもなかなか変われないことを考えると、もしかしたら高齢者の雇用管理とか、高齢者の雇用政策も、すぐには変われないだろうという視点もあるのかという気はしています。

 そういった中で今回いろいろ書いてありますが、次の各論の所で、例えば人事管理政策の在り方全般について研究・検討を強化するということは、そういうことかと感じています。そういった意味で、総論としては、人口の構造変化をよく考えた上で施策を展開していくことは、非常に大事なポイントだろうと私は思っています。皆さん、それはその上で議論されているとは思いますが、そこは大事な点ではないかと思います。

 そうなので、これから資料をいろいろと御準備いただくとは思うのですが、先ほど北野委員から 65 歳以上のニーズということでお話がありましたが、確かに短期的にはそれでもいいと思いますが、長期的に考えると、例えば年金の受給が、今後、多分減っていくだろうと言われていたり、若者の雇用の在り方も変わっていくかもしれないとか、非正規社員が増えていくとか、そういったことを考えた上で、高齢者の対策はどうあるべきかも少しにらんでおいたほうが、私は個人的にはいいのではないかと思っていますので、 65 歳以上のニーズ、今出ているところでもそれほど正規の就業希望がないとかいうことはあるかもしれませんが、後 10 年、 20 年たったらどうなっているのかは、まだいろいろと検討する余地もあるのではないか、 65 歳以上のところでは検討していることもあるのかとは個人的には思っています。

○玄田委員 今、部会長がおっしゃったことの関連で、気になるというか、もう少し長期を見据えてというのは全くおっしゃるとおりで、資料 1 13 ページの「高年齢者の希望職種」を拝見しますと、特に今 60 代後半では、分類 K の「運搬・清掃等」が非常に多いですし、実際、我々が日頃、日常生活の中で高齢者の方々にこういう仕事を担っていただいていることで、非常に利便を得ていることが多く実感するところだと思います。

 ただ、一方で今年のある種の流行語にもなりましたが、「 AI 」とか「ロボット」が恐らくかなりよそより早い段階で日常生活に浸透してきたときに、様々な予測がなされていますが、この運搬・清掃の分野は、ロボット化の導入の可能性は比較的早いのではないかと言われているところであって、今、もしかしたら家庭内でも清掃のものがありますよね、ああいうことがもっと非常に早く入ってくると、今の我々が日常的にサービスをしている、こういう高齢者の仕事の部分が、もしかしたらあるとき急速に転換していく可能性もあり得ると。そうなったときに、生涯現役をどう捉えるかといったときに、こういう仕事はいつまでもあると見なすのか、もっと予想外のことが早く起こってくると見なすかと言うと、私も部会長もおっしゃったように余り安穏とはできなくて、早めの展開を考えていく。

 そういう意味では最近の労働研究雑誌に中馬宏之さんがお書きになった自己変化能といいますか、生涯、年を取っても変わっていくのは非常にしんどいのですが、そういう状況の中で変われるような、ある種の能力開発のようなことは、かつての想像以上にも重点的に考えなければならない状況を、前向きに捉えるような総論とか各論になるといいということは、今、部会長の話を伺いながら思いました。

○阿部部会長 ありがとうございました。

○鎌田委員 総論について意見を申しますと、高齢者雇用対策に、私は実は違和感を持っています。なぜかというと、雇用対策というと雇用労働者、指揮・命令を受けて働く方たちをどう増やしていくか、極論を言えば正社員をどう増やしていくかという観点からものを考えがちですが、それはそれで大切なことだと思うのですが、現在、委託とか請負で働いている方は、こういう高齢者に限らず、かなり広がっているわけです。すなわち、労働市場の中での働き手は、従来のような会社に雇用契約で雇われて働いている方以外も、少しずつ広がっていっています。しかし、立法政策の中では、そういった方たちを視野に入れた施策は、実は不足をしているわけです。

 そうした中で、特に高齢者に関しては、シルバーということで請負で働く人を対象に、今まで 1 つ大きなスキームを持って取り組んできた。それが後ほど各論で問題になってくるとは思いますが、つまり高齢者雇用対策といった場合に、雇用という意味は、就業、様々な働き手を全体として取り込んで、就業環境をどう整えながらその人たちの就業機会を確保していくかと、そういう観点で考えていく必要があると思います。何か非常に狭く考える必要はないと思っていて、私の理解では、そういう意味で雇用対策という場合、就業対策を含めた広い視野に立った視点ではないかと思いますし、そういう観点で施策を考えていく必要があるのではないかと思います。

○阿部部会長 ありがとうございました。

○小野委員 すみません。ボランティアとか、 NPO の研究をやっている立場の人間からちょっと総論に関して言わせていただきます。今、鎌田先生がおっしゃったようなことにも関わるのですが、今回、地方の観点が入っているのは非常に重要なことだとは思います。ただ、どちらかというと、それ以外のところの論点のほうが結構前面に出ているような気がします。予算配分を見ても、地域のほうがかなり低いところもありますので、私としては、高齢者が自分自身のためにただ働く、生活のためにただ働くというわけではなくて、これまで培われてきた知識であったりとか経験であったりとかというのは、これは社会にとっての宝でもありますので、そういう宝をいかに地方で有効に生かすかという観点を強く持っていただきたい。その働くという在り方は、ただの雇用という形よりも、自分自身で働いたり、あるいは雇用の枠を超えて、ある意味、有償ボランティアであったりとか、無償ボランティアも視野に含めて、そういうところも議論をしていく必要があるのではないかと思っています。

 やはり、その方が培われてきた人的資本をいかに生かしていくかという観点を強く持って政策を進めて欲しい。特に地方は、まだ 65 歳といったらかなり若手なのですよ。私も地方をいろいろ研究で回ったりもしましたが、 65 歳といったらまだヒヨッコだと皆さんおっしゃるぐらいの状況ですから、地域での 65 歳以上の働きのニーズというのはあるのではないかと考えています。

○阿部部会長 ありがとうございました。

○猪熊委員 総論で一言だけ申し上げたいと思います。生涯現役社会の中で、労働力も不足してくる中では、やはり、高齢者の方にきちんと活躍してもらうことが非常に重要だと思っています。全人口の 25 %を占める 65 歳以上がやがて 40 %になり、 100 歳以上の 6 万人の方たちが今後、 70 万人前後に増えるという予測がある大変な超高齢・超長寿社会においては、高齢者の能力・意欲を生かすのは非常に重要だと思います。

 働く環境がすごく変わってきている中で、、産業構造もすごく変わってきているる中で、高齢期になってそれから更に働きたいと思った場合、職業訓練とか能力開発というのがとても大事だと思います。人の一生で見ると、本当を言うと、いきなりスウェーデンのようにはいかないかもしれませんが、働いてまた大学に戻るとか、働いて専門学校に行って技能・知識を身につけて再び労働市場に戻ってくるとか、そういうことを繰り返した結果として、高齢期になってもきちんと働けるという視点も大事なのではないかと思っています。

 生涯現役社会の実現に向けた報告書、参考資料 2 を読ませていただいた中で、 9 ページ目の真ん中ぐらいですが、 60 64 歳の継続雇用者に尋ねると、「 60 歳以降の職業生活について考える研修」を 45 歳以上の従業員を対象に行う必要があったとする者が 75.9 %に達していて、もう少し早期から受講したいという労働者側のニーズが強いことが分かるとあります。 40 代後半ぐらいからそういうことを考えることを、企業側も働く側もできるような仕組みがもっとあればいいなと思います。早い時期から生涯に向けて働くことを意識して、必要に応じて、 1 か月とか 3 か月とか、大学に戻るなり、研修機関に行くなりということができると、とてもいいと思います。

 それと、質問 2 点よろしいですか。資料 1 6 ページの「高年齢者の就業理由」という所があって、これは、 60 64 歳では「生活の糧を得るため」が最も多いが、 65 69 歳では「健康にいいから」といったものが増えるという資料があります。あと、参考資料を見ると、 75 歳以上の就業継続意向で、「年金だけでは生活できないので、なお働かねばならない」という人が 2 割ぐらいいるとあります。年金が低くて生活のために働かなければいけない高齢女性が増えているという話を聞くことがあるのですが、生活の糧を得るために働かなければいけない高齢者が増えているのかどうかがわかる資料が男女別であれば、教えていただきたいという質問が 1 点です。

2 点目は、養父市の例が出ましたが、シルバー人材センターの「臨・短・軽」をもっと拡大してほしいという自治体の声はほかにもあるのかということがもし分かれば教えてください。以上です。

○阿部部会長 では、御質問ですので、お願いします。

○福士高齢者雇用対策課長  1 つ目の部分なのですが、それについては、今、資料を我々としてはちょっと調べさせていただきたい、調べてみたいと思います。 2 番目の養父市みたいな所が、ほかに要望があるのかという御質問ですが、秋田県仙北市が養父市同様に希望しています。また、高齢化率が非常に高くなっているような所でやりたいという意向を持っている自治体もあるということは聞いています。

○猪熊委員 ありがとうございました。

○阿部部会長 総論の部分でほかに。

○喜勢委員 若干、感想めいた意見です。先生方がおっしゃるように、やはり、雇用構造とか、それから就労者の意識の問題という、少し中長期に考えて議論をされることは非常に大切な論点だと思いますし、この問題は、やはり社会全体で雇用をどのように確保していくのかと、高齢者も含めて確保していくのかと。ここは高齢者の話ですから、高齢者の雇用の場を確保していくのかというのが非常に重要な論点になってくると思います。

 企業の立場から申し上げれば、政策の議論をされているということですので、現実の問題として、我々企業にどういうことが要請されていくのかとか、それに伴って社会の仕組みがどうなってくるのかということを、具体的に論点を絞って議論をしていただきたいという、ちょっとお願いといいますか、そういう視座での議論を是非深めていただきたいと思います。以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。それでは、正に次の各論に入って。

○村上委員 先ほどからの総論部分ということで、 65 歳以上の方、高齢者の方は、これまでの経験などを生かして社会貢献していくような意味合いもあるのではないかと。そのことについては、私ども労働側もそのとおりだと思っていますが、議論の中では請負ですとか、有償ボランティアという話がありましたが、労働者保護の観点からも労働なのか労働でないのかというところのしっかりとした線引きが必要だと思っています。

 実際、私ども連合で労働相談などを受けていますと、有償ボランティアとして介護施設などに行っているけれども、朝何時に来て、何時までいてくれとか、週 3 日来てもらわないと困るとか、実態としてそういった指揮・命令を受けているような人たちもいるわけです。シルバー人材センターでの請負も、全てとは言いませんが、中にはそのような事例もあり、就業機会の確保というのはもちろん大事ですが、その中で、労働者として働いてもらいたいのであれば、やはり労働法の規制がきちんとかかっているということにしていただかないと、そこは、公正労働基準というものが本当にないがしろになってしまうのではないかという心配を持っていますので、その点を申し上げておきたいと思います。以上です。

○阿部部会長 分かりました。では、各論に進みまして、 1 番の「企業における高年齢者の雇用の促進」と「中高年齢者の再就職の支援」というところに入っていきたいと思います。これについて、御意見あるいは御質問等があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○坂下委員 各論に入りましたので、質問いたします。まずは、今後の進め方と資料 3 の性格、あるいは位置付けについて教えて下さい。

 資料 4 を見ますと、審議スケジュールは年内に 3 回程度が予定されており、この場で議論をする具体的な論点は次回示されるということを踏まえますと、この資料 3 というのは、部会長も御出席された清家先生の会合での御議論の (2) を除いたものが全部入ってきているものですので、ざっくばらんなフリートーキングをして、具体的な論点が提示されるのは、次回ということだと理解しているのですが、そのような理解でよろしいのでしょうか。

○阿部部会長 では、事務局お願いします。

○福士高齢者雇用対策課長 そういう御指摘がありますので、次回に、論点はしっかり整理した形の中でやりたいと思います。

○坂下委員 ありがとうございます。その上で、まず 1 つ目の「企業における高年齢者の雇用の促進」に関して質問します。検討会の中で示されている方向性を見ますと、いずれも企業に対する規制的な対応というよりは、助成金や好事例の情報提供といった、企業の自主的な取組を後押しする支援を検討していこうと書かれていると認識しています。その方向性は非常によろしいのではないかと思います。

 先ほども、 65 歳までの雇用確保の話が出ていました。それはもちろん法律で決まっていることですので、それを満たしていない方々については行政でしっかりフォローしていくということでよろしいかと思います。この場では、恐らく 65 歳以降の対応について検討をしましょうということだと認識しています。その部分に関して企業に求めるのであれば、それはやはり、企業の自主的な取組を促すものとなることが自然であろうと思っていますので、ここに書かれている方向性は評価できると思っています。以上です。

○阿部部会長 ありがとうございます。ほかにいかがですか。

○鎌田委員 中高年齢者の再就職支援の所、とりわけハローワーク、民間職業紹介が、 65 歳以上の高齢者を対象にしてどのような施策を今後考えていくかという観点からです。先ほど来の私の総論との関連で言いますと、働き方というのは多様で、雇用にかかわらず、いわゆる労働法上の労働ということにかかわらず、広く働く機会を求めておられる方がいるということです。それで、先ほどの資料 1 のデータを見ますと、ハローワークを通じた高年齢者の就職状況の推移が 15 ページに、 65 歳以上の方については右肩上がりでどんどん就職件数が伸びていると、これはこれで非常に良いなと思うのです。

 私の理解ですと、ハローワークは、雇用労働者だけの雇用求人を提供しているのであって、いわゆる委託型の就業というのはハローワークは提供されていないと思うのです。民間企業は、民間ですから委託型の様々な求人情報を提供されている。ちょっとこれ、ハローワークでどうされているのかというのは正確なところよく分からないのですが。

 そうしますと、 65 歳以上で、例えば、つまり働く人にとっては、雇用で働くのか、雇用以外だけれどそういう就業で働くのかというのは、恐らくそれほど大きな違いは感じていないと思います。もちろん、労働法上の保護は別ですけれども。要するに、働く就業機会の確保という観点から言うと、いろいろなチャンスが欲しいと、また、様々な自分のニーズに合わせて多様なチャンスが欲しいということだと思うのです。そうしたときに、現在、ハローワークはシルバーに関して民間とは、特に雇用以外の働き方について、かなり違った仕組みになっているのではないか。それはどうなっているのですか。もしそうだとすれば、そういったことに、国としての関わりはどう考えたらいいのですか。

○阿部部会長 では、お願いします。

○福士高齢者雇用対策課長 まず民間は、 65 歳以上の高齢者に対して積極的に紹介なりする部分というのは、専門的知識を持っている人、技能を持っている人に関しては積極的にいろいろ紹介とか派遣とかはしていると我々は聞いています。ハローワークという部分については、先ほど、正規雇用ばかりでなくてアルバイトも当然ありますし、パートの求人も当然あるのです。そういう中で、そこに合致する人たちは、なるべくハローワークで相談しながら職業紹介に結び付けていくという形で今、進めています。

 それで、先ほどもう 1 つ、請負的なものとか、もう少し短時間でいいのです、もう少しスポットで働きたいのですという人に関しては、そういう人がハローワークに来た場合については、シルバー人材センターでこういうことをしていますからという紹介をしています。逆に、シルバー人材センターに来て、私はもっとフルで働きたいのですという人に関しては、ハローワークのほうにそういう求人がありますからお願いしますという形の中で連携は取っています。役割的には、 65 歳以上の大部分はハローワークないしはシルバーでやって、民間は余り介入していないというのが多分、現状だと思います。

○阿部部会長 意見でいいのですか。

○鎌田委員 それでいいのですかという気がします。それは意見です。

○阿部部会長 多分、次のところだと思います。「地域における多様な雇用、就業機会の確保」ということで、幾つか事例は出ていますが、それについてどう考えるのかというのは、次の所で御議論いただきたいと思います。

○小野委員 資料 1 11 ページ「高年齢者雇用確保の課題」で、自社内で、高齢者をそのまま雇用していくことについてですが、一番課題で多いのが、仕事を自社内に確保するのが難しいということだと思います。いろいろ企業に調査などで話を聞きますと、やはり、高齢者の方に残っていただくのはいいのだけれども、自社内でどうやって仕事を配分するかが難しい。きちんとした仕事がないまま給料だけ払うようなこともあるそうです。

 先ほど言いましたが、これはものすごい損失で、経験であったりとか、人的資源を無駄遣いしていることになっているわけです。そういう状況で、企業の方からどうしたらいいのかという相談を受けることもあります。地域とか、 NPO とかで人が不足している所があるので、そういう所と連携して、その人を出向させて、給料半分払って NPO と折半してやればどうですかという話をするのですが、それを実現させるアイディアがないのです。こういうことを見ると、本当にもったいないと思うし、やりようによっては幾らでもやりようがあると思うのですが、そういうノウハウがないがために人材を無駄にしてしまっていることがあると思います。

 ですので、自社内だけで何とかするという考え方から、その人材をもっと地域であったりとか、外に向けてどう活用していくかという観点が必要ではないのかなと。それに及んでは、給料を折半するであるとか、助成金をそのように設けるとか、いろいろなアイディアがあると思うのですが、そこを何とか解決していけば、もう少しここの部分が広がるのではないかと考えています。

○阿部部会長 ありがとうございました。ほかに御意見。

○玄田委員  1 の企業の雇用促進の所に関連して、やはり資料 2 (2) の下の 2 つ目の○の部分、高齢期を迎える前から、どう円滑かつ納得のいくような賃金及び雇用の体系を作れるのかということを改めて指摘したいと思います。参考資料 1 17 ページに書かれている、「標準労働者の賃金カーブ」の絵を改めて拝見しますと、もうかつて使われた年功賃金という言葉自体が既に終焉を迎えている感すらするわけで、これからは賃金の山をどう描くかと。もっと言えば、ピークを、定期昇給が大体今、 50 歳ぐらいがほとんどでしょうから、むしろ、この 50 歳を超えてからどういう賃金体系を描くかによって、 60 代以降のことが決まることの認識と共有と課題を広く広げていくことが、多分、恐らく重要だろうと。

 先ほど御指摘のあった企業に問う取組で、やはり、人件費の問題を抜きにして雇用促進という話はできないわけですから、むしろこの辺りをどう円滑にしていくのか。賃金については、もちろん労使の個別の決定でありますが、比較的こういう賃金の下げ方について、もしかしたら中小企業の一部の企業などは、大変先ほどのノウハウという面も含めて御苦労されているかもしれません。確か今、既にキャリア・コンサルタントを企業内部で活用できるような体制づくりというのはたくさんなされていると思いますし、もっとオンザジョブサーチのような形で、 50 歳を超えた人たちが将来の設計を考えるときのハローワークの活用の仕方とか、その辺りがどれだけ、もう勝負は 60 代ではなく 50 代からだという社会認識を広げていけるのかというところが、実は、この一番目と二番目の再就職支援を含めて重要であるということを改めて感じる次第です。以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。

○福田委員 玄田先生のお話がすごくもっともだなと思うのは、私のほうは、建設業に長年携わっていて、建設業の失敗の例をやはりほかの企業でもしてはいけないのかなと。その 1 つは、先ほど言った賃金カーブ、職人の賃金カーブというのは、大体 45 歳をピークにして下がっていくのです。職人も、高齢者もいなくなる、若手もそういう賃金カーブでは来ないということがあるので、他産業もそのようになっていくとやはり大変なことになっていくかなという感じはちょっとします。以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。ほかにいかがですか。

○穂岐山委員 我々の団体は主に中小企業、とりわけ小規模な企業が非常に多いです。 65 歳以上の雇用を考えた場合に、御案内のとおり、大企業に比べて、非常に人材面でもなかなか新採も入ってこないという事情がありまして、法律の規定は一応 65 歳となっているのですが、特に製造業などでは 65 歳以上でも元気な方、特に熟練工の方などは活用している例が多いわけです。そのような企業はそれでいいのですが、今度は逆に企業の体力があれば別なのですが、特に規模が小さいゆえに、中小零細の中で新しい仕事を作ってということになると、現実的にはなかなか難しいのではなかろうかと考えています。

 一方で 65 歳を過ぎると、今度は逆に、就業形態は別として、高齢者の方々はやはり働き続けたい、となってくると、一番現実的な考え方としては、これ以上企業内部での活用というのはある程度限界があるとするならば、そして、高齢者の方々にも能力差もあれば、体力差があるなど、いろいろな事情がありますので、例えば、シルバー人材センター機能の拡充をやるとか、そのほかで言うと、多様な働き方を推進していくとか、そういうところで受皿を作っていくのが、少なくとも中小零細においては、リアリティのある施策ではなかろうかと考えています。

○阿部部会長 ありがとうございました。ほかに。

○坂下委員 資料 3 2 の「中高年齢者の再就職の支援」の所に関して申し上げます。玄田先生も御指摘されていましたとおり、高齢者においては縁故等による再就職が多い中で、公的部門の役割が重要だという御指摘はそのとおりだと思います。また、そうした中、鎌田先生からもこれに関する貴重な御指摘があって、考えていかなければならない論点だと改めて感じたところです。

 まずハローワークについては、検討会では、 65 歳以上の高齢者を対象とした窓口を設けるなど、特別な対応をしていくことが考えられるのではないかと提案されています。仮にそういう方向で議論していくとして、 65 歳以降の高齢者のマッチングは容易ではないと思います。したがって、情報を確実に蓄積していただいて、より効果的にハローワークが機能していけるようなものを継続的に議論していくことが、今後はより必要になってくるのではないかという印象を持ちました。

 加えまして、労働市場において重要な役割を担っていると、とりわけ使側が思っていますのが、ここの 1 ページの最後にある産業雇用安定センターです。検討会ではあっせん機能を強化すると書かれており、是非、この場でも検討したいと思います。次回でも結構ですが、どのようなことを検討していけるのか提示していただきたい。例えば、今ですと、現役世代の出向・移籍を手掛けていると思いますが、この場で議論するのは 65 歳以上の層ですので、もう少し具体的な論点を示していただければと思います。以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。ほかはいかがですか。

○玄田委員 すみません、度々で。 2 番目のハローワークの役割、情報提供というところでやはり気になります。この会でも以前議論しました若者の雇用促進について、職場情報の提供を積極的に進めるという大きな流れが生まれたわけですが、その背景としては、比較的職業知識の乏しい若者への情報提供というのが理由だったと思います。

 一方、高齢者については、確かに職業知識は比較的十分にある一方で、恐らくかなり大幅な職業内容の転換というのを迫られるケースも非常に多いだろうと。逆に言えば、これまでずっと培ってきた仕事と全く様相の異なった仕事にチャレンジするというのは、非常に精神的にもストレスの大きいことではないかと。そうなったときに、知識はあるけれども全く新しいことにチャレンジするときに、一体そこはどういう職場なのかという、高齢者にとっての職場情報の提供というのは、何が一番求められていて、何が効果的なのかということは、それぞれ議論していってもいいだろうと。

 若者の場合には、過去 3 年の離職率がどうとか、非常に若者の関心の部分が社会的にも共有されていますが、高齢者がいざ、先ほどおっしゃったように別の仕事に就く場合に、どんな情報が一番必要とされていてということは、もちろん賃金とか労働時間のこともありますが、他のこれまでの高齢者がどういう働き方をしたのかということについて、どういう情報が必要かということは、もしかしたら、小野さんがいらっしゃる JILPT などでもそういう研究があるのかもしれませんが、高齢者の再就職にとって必要な情報提供ということを、職場情報の提供という点は、やはり、今、議論していくべき課題ではないかなということを思いました。以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。いろいろ出てきましたが、私は玄田委員の今のお話に付け加えさせていただくとすると、職場情報の提供というのも 1 つのやり方だと思いますが、例えば、 65 歳以上でインターンシップという言葉が馴染むかどうか分かりませんが、そういったインターンシップですとか、あるいは派遣ですとか、そういう方策もあるのかなと、お話をお聞きして思いました。そういうことも、もしかしたら検討する余地があるかなと思います。

 さて、このところでなければ、次の、関連しますが、 3 番目の「地域における多様な雇用・就業機会の確保」と、 4 番「シルバー人材センターの機能強化」について御質問、御意見がありましたらお願いしたいと思います。

○福田委員  4 番の「シルバー人材センターの機能強化」ですが、私もシルバー人材センターを使ったことがあります。シルバー人材センターで仕事をしてもらって、期待される役割、使う身とすれば、まず安い、仕事も非常に丁寧だというのが私の印象です。

 そんな中で、資料 1 20 ページの下の「現状」で、月平均の就業日数が 9.7 日、月平均の配分金の収入が 3 6,000 円で、随分少ないのではないかと考えます。 20 時間から 40 時間の就労にしたいと言っているのですが、私が考えるのに、今の感じでいくと、すごく高収入のシルバーの人もいれば、低収入のシルバーの人もいます。

  もう 1 つは、時間の配分が、働く日数よりもすごく少ないのではないか。例えば 1 時間とか、そういうのを調べてもらいたい。かなり高収入の人と低収入の人、それから時間的にどれだけの時間を働いているのか。先ほど福士課長からお話があったのですが、働きたい人はハローワークに行ってもらう。それだったら、別に 40 時間にしなくてもいいのではないか。 40 時間だったら、週 5 日として、 8 時間あります。私はシルバー人材センターは 40 時間にしていいと思いますが、そういうのでは発展性がないかなと思います。以上です。

○福士高齢者雇用対策課長 今の件ですが、 20 時間から 40 時間というのは、上限を 40 時間にするという考え方で、別に 20 時間から 40 時間にしても 25 時間でも構わないという状況なので、上限が 40 時間になるという考え方ということだけ御理解いただきたいと思います。

○阿部部会長 福田委員がお聞きになりたかったのは、労働時間のばらつきで、だから 20 時間で張り付いている人はどのぐらいいるのかとか、それより短い人はどのぐらいの割合で、所得も高い、低いがいて、どのような分布になっているのかということだったと思うので、もし資料が用意できればお願いしたいと思います。

○福士高齢者雇用対策課長 分かりました。

○阿部部会長 ほかにいかがですか。

○小野委員 シルバー人材センターのことが出たので、そのことについてです。民業圧迫に関することで、労働者派遣事業をやっている民間の派遣会社で高齢者派遣をやっている所があると思います。そんなにマーケット的に大きな広がりは見せていないという状況もあるとは思います。なぜそのようになっているのかというのは、なかなか利益を上げるのが難しいからではないかと推測されるところでありますが、高齢者派遣を民間でやっている所を考えると、シルバーが参入してくると、本当にそこがなくなってしまう可能性もあるので、そこの部分の棲み分けをどう考えるためにも、高齢者派遣について、どういう状況になっているかを調べていただければと思っています。

○福士高齢者雇用対策課長 今言われたように、高齢者派遣は我々も都心の所を調べに行きました。やっていたのは、もともと銀行の OB を集めて高齢者派遣をやっている部分と、特に技能を持った方だけを集めて高齢者派遣をやっている所で、あとは派遣会社へ行って、ほかに高齢派遣をいろいろやっている所はありませんかと聞いたら、余り知りませんということでした。東京でもそういう状況ですので、特に地方において高齢者をターゲットにして派遣をやっている所は、数少ないと我々も認識しています。もし調べられるものがありましたら、調べてみたいと思っています。

○阿部部会長 それでは、お願いします。

○北野委員 私も民業圧迫という点については、慎重な論議が要るのだろうと思っています。今日の資料 1 27 ページに養父市の事例が出ていましたが、ここは国家戦略特区で、週 20 時間ではなく週 40 時間になったということで、若干、要望理由の中にも、民業圧迫を生じ得るほどの民間企業がないので週 40 時間にしましたという理由はあるのですが、これはもう少し具体的に、どのような判断があって民業圧迫の恐れがないという判断になったのか教えていただきたいと思います。

○福士高齢者雇用対策課長 養父においては、 60 歳以上が 40 %以上いるということです。これは兵庫県の山のほうの市ですが、高齢者において派遣会社がない。まして高齢者についてもやっていない。あそこの地域は若い人は全部町から出て、ほかの地域に働きに行っている。そういう中で働く人の環境も壊さないし、残っているのは私どもの所は高齢者だと。シルバーの会員率が結構高くて、シルバーに会員がいっぱいいるので、我々はシルバーを活用したいのだという意味合いから、そのような形で今回ここが決まったのです。民業圧迫がないというのは、確かに高齢化率が高いといった要因があります。

○北野委員 市場競争がないから大丈夫だということだと捉えたいのですが、仮に今後シルバー人材センターで、今回、要件緩和をしていくとなると、全国それぞれ違うと思いますが、どのような理論、ロジックで民業圧迫がないということが言えるのか、示せるのか、若しくは果たしてそういう測定評価が可能なのか。この辺りもどのように考えられているのか、お聞きしたいと思います。

○福士高齢者雇用対策課長 先ほども申し上げましたように、地域の関係者の意見を聴取した上で判断する中で、労働市場に与える影響等に対して問題はないかという判断でやっていくわけですが、今のところ、それがどういう指標を基にしていくかというのは、我々としても非常に難しいと考えております。

 ただし、何らかを示していかなければいけない。となれば、その地域における求人の充足状況とか、シルバーが要件緩和を実施しようとする業務等の同種の職業等においての求人状況、高齢化の状況など、指標を示しながらやっていくのかと思っていますが、まだ、今のところ、どのようなものを使ってというのは今後の課題だと思っています。その点についても我々はなるべく早めにお示ししたいと思っていますし、こんなのを使ったらいいのかなという御意見があれば、我々も是非聞かせていただきたいというのが本音です。

○北野委員 ありがとうございました。そういう資料を作れるのかなというのは疑問です。ただ、市長が言ったからというだけでは駄目だなということでありますので、是非、御検討をお願いしたいと思います。

○阿部部会長 ほかにいかがですか。

○坂下委員 関連することですが、使用者側としても同じような疑問点を持っております。「臨・短・軽」の要件を緩和するという話と、民業圧迫の問題をどう解決していくかというのは密接不可分でありますが、特に民業圧迫の部分がよくイメージが湧きません。冒頭の事務局の説明で、 3 の「地域における多様な雇用・就業機会の確保」の協議体については、次回にもう少し分かりやすく、イメージしやすい、また議論しやすい資料を提出いただきたいと思います。

 その上で単純な疑問ですが、資料 1 22 ページの、「臨・短・軽」の「軽」については 20 時間を 40 時間にしていくことが考えられるという御提案でしたが、今時点で派遣の就業形態は全体の 3 %程度です。 65 歳以上の雇用の機会をどう促進していくかという課題の中で、要件を緩和した場合に、この 3 %という数字がどのように動いていくのかイメージが湧きません。この資料を見る限りでは、派遣で割合が高い職種は、清掃、チラシ配布等の一般作業群、もしくは教育、翻訳等の技術群ですが、これらに対する市場的ニーズが本当にあるのかどうか疑問です。つまり、民間事業者の競争相手がいないという話がありましたが、それには相当の理由があるのではないかと思います。したがって、我々が目指すべき方向性である 65 歳以降の就労確保を考えたときに、どのぐらい効果が見込めるのか、今頂いている資料のみではなかなか見えてこないので、もう少しイメージが湧くようなものがあるといいのではないかと考えます。

 そうした中で、とりわけ家事と介護、育児支援の職域を拡大したらどうかということも論点に書かれているのですが、 22 ページですと請負と派遣の内訳の記載がありません。統計上の技術的な問題かもしれませんが、何か議論できるデータがあるのであれば、あるいは作成可能であれば、次回で結構ですのでお示しいただけると議論が進みやすいのかと思った次第です。

○紺谷委員 各論 3 の参考には、先ほど坂下委員が触れていた協議体の話が書かれているのですが、地域における多様な雇用・就業機会の確保にあたり、協議体の設置促進については必要だろうと考えています。ただその際に、地域の関係者の創意工夫を活かしていくべきだろうと考えていますので、そういった意味で協議体には労使の参画を確保するよう規定していただきたいと思います。意見として発言させていただきました。

○阿部部会長 ほかにはいかがですか。

○村上委員 各論 4 のシルバー人材センターに関連してです。民業圧迫の点で、小野委員から高齢者派遣で競合するのではないかというお話があったのですが、競合するのは高齢者派遣だけではなくて、一般の派遣の人たちとの競合もあるかと思いますので、資料を出していただくのであれば、そのような範囲ででデータを取っていただきたいということが 1 点です。

 それから、シルバー人材センターそのものは、生きがいみたいなところから事業が出発していて、どちらかといえば福祉政策的なところから出発したと労働側としては理解しています。今回、資料 1 にもありましたが、「臨・短・軽」要件の緩和であるとか、保育とか介護といった業種で拡大していくという内容というのは、ここで議論している労働政策側にぐっと振子を振っていくようなことではないかと思っています。つまり、シルバー人材センター事業の位置付けを大きく変えることになるのではないかと考えており、そういうことを考えると、かなり慎重な議論が必要だと考えております。

 先ほど派遣や職業紹介についてであれば、週 40 時間もあるのではないかというお話がありまして、労働側としてはかなり慎重な立場でおりますが、仮にそのようなことをするのであれば、競合する職業紹介事業者とか労働者派遣事業者と同じように、シルバー人材センターの労働者派遣も許可制をとるべきだと思っています。シルバー人材センターだけが届出でよいということにはならないと思っていますので、その点、意見を申し述べておきたいと思います。

○鎌田委員 私は 3 4 ですが、シルバー人材センターはどちらかというと福祉的な色彩、生きがい推進という機能を持っているものから、雇用就業確保のツールとして機能しているのが現実だと思っています。ですから、そういった側面をしっかり水面下で処理をするのではなくて、正面から議論をしていくべきだというのはそのとおりだと思います。

 基本は何と言っても、 65 歳以上の高齢者が何を望み、どうしたらそういう人たちが望むような働き方ができるかということを基本に考えることしかないと思います。そうすると、ニーズは様々ですが、 1 つには就業機会を確保したいというニーズがあるということ。それと同時に、就業環境を適正なものにしていくことが大切だろうと思っています。そのために例えば「臨・短・軽」要件の緩和ということで、 1 つは就業機会の拡大ということで提案されているのだと思いますので、その点については私は賛成します。

 ただ、そういう観点から言いますと、幾つか要望があります。 1 つは派遣に限って拡大するとおっしゃっていましたが、先ほど来、データで見ますと、派遣の占める割合はかなり小さいのです。そうすると、請負という形態で就業確保をどうしていくかということが問題になるのではないかと思います。この問題を今回の中でどうするのかということは、今、意見を言うこともないのですが、 65 歳以上の高齢者の視点に立てば、こういう問題は実際に機能して、何が役に立つのかということで言えば、請負、委託での働き方について、どう就業を拡大していくかという観点は考えていかなければいけないのではないかと思います。

 民業圧迫とか緩和のシステムについては、地域の協議会を設置しながら、その中で考えていくということでした。ですからこの協議会の中で、地域の中でいろいろな考え方、いろいろな選択肢が取れるように枠組みとして提供したらどうだろうかと思っています。

 先ほど来、労働者性とか労働法の適用という話がありますが、つまり、就業環境の適正化あるいは労働法の適正な適用は、現在のシルバーの中での働き方の中でも裁判が起こっていますので、それはそれで議論していく必要があると思いますが、だから拡大は駄目なのだということは、議論の筋が少し違うのではないかと思っています。

 つまり、労働者性あるいは労働法の適用という問題で言えば、別途、紛れがないようにすることが大切だということと、もう 1 つは、例えば請負や委託で働いている方が怪我をした場合に、その方たちの保障はどうするのか。現在は労働法の適用はないわけですから、労働保険は適用がありません。だけど、実際に怪我をされているわけです。そういう人たちをどのように支援したらいいのかということは大切な課題だと思いますので、そういうことは考えていかなければいけないだろうと思っています。以上です。

○小野委員  3 4 の両方に関連することで、例えば先ほど来、話が出ているシルバー人材センターの民業圧迫の話ですが、報告書の中でもビジネス的に乗せていけるようなことが書かれていたような感じがします。むしろビジネスで儲けるとか利益を出すというよりも、非営利だから、非営利でできるビジネスに限るとしてしまったほうが民業圧迫という観点もなくなるだろうし、現在シルバー人材センター、一般社団法人とか、一般財団法人でやっていますが、ある意味でこれを公益社団とか、公益財団という形にちゃんと認定してもらった上で、派遣業をやるという形であれば、私はこれは理想的ではないかと思っています。かなりハードルは高くなるのですが、例えばそのようになってくると、収支相償の中でどういうビジネスが地域に根差して、儲からないが必要だからやらねばならないかということが考えられるので、組織をどうするかという観点からも議論していったほうがいいのではないかということがあります。

3 については、シルバー人材のこととは離れるのですが、今日私がここに来て絶対言おうと思っていたことは、どう企業から地域に人材を戻していくかという議論です。恐らくその受入れ母体は協議会であったり、 NPO になって、現場の仕事であったり、今まで管理職をやっておられた方が、急に現場の仕事をやるようになったということがあるわけです。先ほど玄田委員が新しいチャレンジになるとおっしゃったことと通じるのですが。

 調査で見た中では、 60 歳以降で NPO だったり、地域の非営利組識に入職して賃金をもらって働いている人の割合は少ないのです。要はボランティアでやる、無償でやるという人は結構いるのですが、 60 歳以降、地域に入って賃金をもらいながら働くということになると、それよりも前の段階で乗り入れを考えていかなければいけないということになるので、政策的に何歳ぐらいから 65 歳以降の賃金労働につなげるか、地域での労働につなげるかというのは、本当に 50 歳ぐらい、あるいは 40 歳代後半ぐらいから刺激をかけていかないと、絶対 65 歳で賃金労働につながる、地域につながる労働というのは生まれないと思います。ですから、もう少し早い年齢からの企業に対する働き掛けであったり、本人に対する働き方であったり、先ほどおっしゃったインターンみたいなものとか、そういうのも含めて地域については検討していただきたいと思っております。

○阿部部会長 その他、いかがですか。

○村上委員 先ほどシルバー人材センターの話がありましたので、もう一度労働側の考え方を述べたいと思います。検討会報告の 20 ページにも、シルバー人材センター事業を拡大して機能強化していくときの懸念として、「『臨・短・軽』要件の緩和等の検討は、仮にそれを行った場合に、一般的な雇用労働との関係や会員の労働者性をどのように考えるか、あるいは、センター会員のほうが民間事業者に雇用される労働者に比べて人件費コストが安いということになると、民業圧迫や雇用の形をゆがめるという懸念が生じないかなどの点に留意しながら行う必要がある」と、きちんと述べていただいております。私ども労働側はこの指摘内容こそが大変強い懸念の部分です。

 ということで、 65 歳以上の高齢者にどのような働き方があるのかというニーズに応える観点はもちろん必要ですが、シルバー人材センターの在り方を考えるときにはそれだけではなくて、雇用労働者全体の働き方の問題にもかかわるものとして、全体を考えなければならないと考えております。

 また、 3 の地域の協議会を関与させることで様々な懸念がなくなるのではないかという説明だったかと思いますが、協議会だけでは不十分だと思っておりまして、国として何らかの基準がなければ、地域に全て任せてシルバー人材センターの機能を拡大するという話ではないのではないかと考えております。

 それから、働き方の多様化ということで、地域包括ケアシステムが入ってから、有償ボランティアの活用はかなり頻繁に文書などにも出てきています。その中で起きているのが、実質は労働者ですがボランティアとして仕事をしているという方々の問題です。鎌田委員からも労災の問題などがあるではないかということで、それがないから反対というのはいかがなものかとご指摘いただいたのですが、今の問題を解決する機会も術もないままに安易に拡大することは、労働政策として無責任な部分があるのではないかと私としては考えており、その点もきっちり議論をさせていただきたいと思っております。以上です。

○猪熊委員  1 つ質問です。資料 1 30 ページ、シルバー人材センターの「臨・短・軽」要件の民業圧迫の懸念の調査で、「民業圧迫のおそれはない」とか「圧迫するおそれがある」とありますが、恐れはないという答えは、なぜ恐れがないと考えたのかいうことまで聞いているのかどうか。若しくは、恐れがあるということは、なぜそのように考えるのかということを、もしこのアンケートでやっていれば教えていただきたいと思います。

 基本的に、特に介護・育児の分野は人手が足りなくて、そのような所でやってくださる方を広げていくのはいいと思いますが、ファミリーサポート事業などで活動している方もいるでしょうし、民業圧迫の観点については、もう少し判断材料となるような資料があるといいなと思います。民業圧迫の恐れ、若しくはほかに似たような事業があるのかどうかという資料を、次回、もし可能であればもう少し出していただければ有り難いと思います。

○福士高齢者雇用対策課長  30 ページの資料ですが、右側は圧迫の恐れがないと答えているのは、シルバー人材センターが答えているので、多分そういうもめ事がない。今は余り民業圧迫という形の中で、事業者とシルバーがもめているという例は我々もほとんど聞きません。ですから、そういうもめ事がないという所は、多分民業圧迫の恐れはないと書いていて、若干軋轢を生んでいる所が下の数字かなと我々は思っています。昔はどちらかというと、剪定とか襖張りなどで民間ともめたという部分は結構あるのですが、この頃はもめたという話は我々も余り聞いておりません。

○猪熊委員 収入体系とか働き方のニーズが全然違っていて、派遣で本格的に働きたい人は、一般の派遣会社などに登録するし、シルバーでもう少し時間を伸ばしたいという人はそこまでの働き方の時間ではないというようなことですか。

○福士高齢者雇用対策課長 もう少し働きたいという人は、多分年金を掛けていない方とか、国民年金で厚生年金に比べて低いので、そういう収入の低い方が、もう少し時間を延ばして働きたいというのが多いのだと思います。我々が聞いているのは、働き方として、シルバーは週 3 日ぐらい働きたいという人たちが非常に多くて、 3 4 日でいいということです。ただ、一部の人たちに、もっと働きたいという人たちも結構おりますので、その辺に応えていくという部分と、業側から、例えば 40 時間であれば、今は 20 時間の人が 2 人行っている状況なのです。どちらかというと、対人業務などは 1 人のほうがうまくいくので、そういう中で時間ももう少し延ばしてもらえませんかという要望を我々は聞いております。

○小野委員 有償ボランティアの労働者性について、以前、私は研究しておりました立場から申し上げます。有償ボランティアの労働者性を、いわゆる指示・命令であったり、職場で備品を使うとかという労働者性を測る裁判所での判断が何項目かあって、それについて有給職員と無償のボランティアと有償ボランティアというので、どのような労働者性のポイント分布になるかを調べました。有償ボランティアは有給職員と無償ボランティアのちょうど真ん中ぐらいに労働者性のポイント数が来るというのが分かりました。

 ただ、ボランティアで重要なところは意識です。今の働き方を本人がどう考えているか。ボランティアの働く動機は、ほとんど社会貢献活動だったり、何かの役に立ちたいと思い働き出す人が多いのです。ですから、その意識の部分の分布も測ったところ、有償ボランティアの意識のポイントの分布は、ほとんど無償ボランティアと変わらないというところがあります。ですから、一概に有償ボランティアが労働者性が強いから排除すべきだという御意見は、そこは研究であったり、調査であったり、皆さんとの議論の中で判断していかなければならない問題だと思いますが、やはり、ある程度広がりを持たせて議論をすることが必要かと思います。

 研究の中で最終的な落とし所は労災の問題が非常に大きいので、そこの部分はきちんと担保した上で、安全衛生面を確保した上で有償ボランティアという働き方を見守る必要があるというところで、私の研究は締めくくらせていただいています。その辺を御参考までにお話しいたしました。

○阿部部会長 いろいろお話したいという方もいらっしゃるかもしれませんが、私のタイムキーピングがまずかったせいか時間を超過しつつあります。本日はこの辺りで終わりにしたいと思います。活発な御議論を頂きまして、本当にありがとうございました。

 本日は様々な御意見を頂きましたので、事務局にはこれを一旦整理していただきたいと思います。次回以降の日程について、事務局から説明をお願いします。

○渡部高齢者雇用対策課長補佐 資料 4 「検討スケジュール ( ) 」をお付けしております。本日、第 1 回目は 10 30 日に開催いたしました。次回は 11 13 日金曜日、 2 週間後を予定させていただければと思っております。部会長からも話がありましたように、本日の議論について必要な資料を整理いたしまして、併せて議論が進めやすいような論点を整理した上で臨みたいと思っております。その上で、 12 月中旬頃、報告書の案について議論をし、取りまとめまでできればと思っております。議論の状況によっては、 12 月下旬に予備日を設定させていただき、議論の状況を見ながら対応させていただきたいと思っております。

○阿部部会長 ただいま御説明いただきましたが、今後の日程についてはそのように進めていきたいと思いますが、皆様よろしいでしょうか。

 では、そのように進めさせていただきたいと思います。次回の部会ですが、事務局から本日の議論を踏まえた今後の施策の方向性等について論点を整理していただいた上で、更に具体的な議論を進めていきたいと思います。次回開催の詳細については、後日、事務局から御連絡いたします。本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。

 本日の署名委員は、村上委員及び喜勢委員にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。


(了)

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