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2015年12月25日 第108回労働政策審議会職業安定分科会 議事録

職業安定局総務課

○日時

平成27年12月25日(金) 13:30~15:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 厚生労働省職業安定局第1・2会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

○阿部分科会長 第108回労働政策審議会職業安定分科会を開催いたします。議事に先立ちまして、当分科会に所属する委員の交代がありましたので、御報告いたします。当分科会の労働者代表委員として新谷委員に代わりまして、日本労働組合総連合会総合労働局長の村上委員、澤田委員に代わりまして、全日本自治団体労働組合書記次長の青木委員が就任されております。本日の委員の出欠状況ですが、公益代表の岩村委員、橋本委員、労働者代表の青木委員、勝野委員、使用者代表の鈴江委員、深澤委員が御欠席です。

 それでは、議事に入ります。最初の議題は、「雇用保険部会報告について」です。本件については昨日開催された雇用保険部会において、報告が取りまとめられております。本日は雇用保険部会部会長の岩村委員が御欠席ですので、事務局より御報告をお願いいたします。

○雇用保険課長 私のほうから資料No.1-1、資料No.1-2について説明申し上げます。資料No.1-1が「雇用保険部会報告書」です。資料No.1-2が「雇用保険制度関係資料」で、これは後ほど御覧いただければ有り難いと思っております。

 資料No.1-1ですが、雇用保険部会において今年84日から昨日まで検討してきたところですが、「今般、その結果を別紙のとおり取りまとめたので報告する」ということで、報告書が付いております。

1ページから概要のみをかいつまんで説明いたします。第1としては、今回の雇用保険制度見直しの前提となる現状が書いてあります。2つ○がありますが、1つ目として最近の雇用情勢は改善傾向である中で、雇用保険の受給者数については減少傾向になっておりますが、少子高齢化が進展する中で、若年者、高齢者、女性、障害者等の雇用を進めていくことが求められている。そういう中で、雇用保険制度としての適切な対応が求められているというのが1点目です。

2つ目の○ですが、最近の雇用保険の収支状況について見ますと、おおむね安定的に運営されており、平成26年度末の積立金残高は約63,000億円弱です。こういった中で雇用保険の財政運営についても、そのあり方を検討するということが大きな背景です。

 第2ですが、「見直しの背景」があります。これについては、1ページの1つ目の○で、前回の2年前の雇用保険部会報告ですが、基本手当の水準や今後の暫定措置の取扱い、65歳以上の方への対処といった検討を求めたいという背景があります。一番下の○ですが、今年6月末の閣議決定において、例えば65歳以上の高年齢者の雇用の推進であるとか、働き手個人が「セルフ・キャリアドック(仮称)」を受けた際の個人への支援策の検討があります。

2ページですが、今年11月下旬の「一億総活躍社会」の関係がありまして、介護休業給付の引上げの検討、高齢者が働きやすい環境の整備と併せて、雇用保険の適用年齢の見直しといったことが挙げられていたわけです。

 次に第3です。見直しの方向が報告書の中心で、これについて順次、説明申し上げます。「1 基本手当の水準及び平成28年度末までの暫定措置について」ということです。これは先ほど申しましたとおり、前回の平成25年雇用保険部会報告においても、引き続き検討事項となっていたわけです。一番下の○ですが、基本手当については、基本手当受給者の再就職状況、あるいは再就職時賃金等について検討したわけですが、平成12年及び平成15年に大きな改正があり、その検証を2年前に行ったところです。その2年前と比較して大きな変化はなかったということですが、労働者代表委員の方々からは給付水準や給付制限期間の見直しを行うべきという意見があり、使用者代表委員の方々からは、基本的に前回と受給者の状況等は大きく変化はないことから、見直しの必要性がないという意見をそれぞれ頂いているわけです。

3ページの一番上の○ですが、平成28年度末までの暫定措置が幾つかあります。2つ目の○ですが、基本手当の水準については、1つ目の○の暫定措置の取扱いと併せて、引き続き、今後のあり方について検討すべきであるとなっております。3つ目の○ですが、特定受給資格者の基準について、そこに書いてあるような幾つかの事例について、特定受給資格者に新たに入れるべく基準の見直しを行うべきであるということです。

 「2 就職促進給付について」です。(1)再就職手当ですが、早期再就職した場合に、支給残日数の一定割合を一時金で出すものですが、平成23年に見直しをやった際に、政策効果が見られているということで、今回も安定した再就職に向けたインセンティブ強化という観点から見直しをしてはどうかということです。具体的に4ページの1つ目の○ですが、支給残日数3分の1以上の方については給付率を50%から60%、支給残日数3分の2以上の方については60%から70%に、それぞれ10%引き上げることをすべきであるということです。

(2)ですが、その他の就職促進給付について、マル1は移転費及び広域求職活動費です。これはいずれも、安定所の紹介により広範囲の地域にわたる就職をした場合の実費相当の旅費であるとか引っ越し費用を支給するものです。2つ目の○ですが、UIJターンの促進という観点からも、移転費については一定の拡充を行う。広域求職活動費については、距離要件の緩和を行うべきであるということです。

 マル2のその他ですが、今、移転費、広域求職活動費の対象になるケース以外にも、例えば受給者が就職面接に行かれる場合に、子の一時預かり費用とか、短期の資格講習等に要する費用等を対象にしてはどうかということです。5ページの一番上の○ですが、早期再就職インセンティブの強化という観点から、就職促進給付のあり方について検討に着手すべきであるという意見を頂いているわけです。

 「3 65歳以上の者への対処について」です。(1)現在の考え方ですが、昭和59年改正当時において、65歳以上の方を原則適用除外ということにしたわけですが、その際の考え方としては、65歳の方については労働生活からの引退過程にあるという整理で、65歳以後に離職した場合でも、再びフルタイムの求職活動を行う方は少ないといった理由が主な理由です。

 しかしながら、5ページの一番下の○ですが、現在の状況を見ると、65歳以上の方の雇用者数であるとか、完全失業者数、ハローワークにおける求職者数等については、最近いずれもかなり伸びを示しているということで、状況は変わっているのではないかということが1つあります。

6ページの上の○ですが、私ども制度面での対応として、パート労働者に対する適用拡大をやってきたわけです。平成元年に「短時間労働被保険者区分」を作ったわけですが、それを平成19年に廃止して、現在、週20時間以上は適用要件となっておりますが、簡単に申しますと20時間以上は常用労働者というのが雇用保険制度の整理です。制度上の差異が20時間以上の中ではなくなっているということからすると、6ページの2つ目の○ですが、59年改正当時の整理については、現在においてそのまま維持するのは困難ではないかということで、新たに65歳以上の方について雇用保険の適用対象にすべきであるということです。

 次の○ですが、65歳以上の方の求職経路等を見ると、就職希望とか就職に至る経路等も多様であって、例えば4週間に一遍といった定期的な失業認定には必ずしもなじみにくいということと、年金を受給しつつ働く方もいらっしゃるということで、給付については一時金にするということと併せて、引き続き年金と併給できるようにすべきであるということです。一方、モラルハザードを防止する等の観点から、失業認定の取扱いについては見直しをすべきであるという意見を頂いているわけです。

(2)雇用保険料の扱いです。現在64歳以上の方が雇用保険料免除の対象になっているわけですが、例えば今後これを維持しますと、66歳から70歳まで雇用された方については、その期間について保険料を全く納付せずに給付がされるという場面が出てくるわけで、そういったことからすると、今回の見直しを機に、徴収免除についても廃止することを考えてはどうかということです。

7ページの○ですが、「業種によっては雇用保険料の徴収免除の廃止の影響は少なからず生ずる可能性がある」ということで、具体的には3年程度を想定しておりますが、一定の経過措置を設けるべきであるということです。

(3)高齢者雇用の促進の観点からの支援策です。1つ目の○ですが、徴収免除の廃止に併せて、例えば65歳以上の高齢者を一定割合以上雇用している事業主の方への助成措置を検討すべきであるということです。これは直接的に保険料分の助成ということではありませんで、多数の65歳以上の方を雇用する場合には雇用管理上、それなりの経費がかかったりする場面もあるのではないかという考え方です。

 次の○ですが、高齢者の雇用には健康や安全衛生の管理に一定のコストが生ずると。これは各種調査でもそうなっておりますので、こういう場合の助成措置を導入すべきであるということです。

 「4 教育訓練給付について」、労働者が自らのキャリアについて主体的に考えて、これに即して能力開発に取り組むことを支援するということです。一番下の○ですが、教育訓練給付制度において、労働者が自己負担で企業外のキャリアコンサルティングを受けた場合に、その費用の一部を助成するべきではないかということです。

8ページの「5 育児・介護休業給付について」です。1つ目の○ですが、育児休業制度及び介護休業制度について、雇用均等分科会において、例えば介護休業の分割取得であるとか、有期契約労働者の育児・介護休業の取得要件の緩和、あるいは育児休業の対象となる「子」の範囲の追加等について、今週の前半に報告書が取りまとめられたと承知しております。これを受けて、育児休業給付及び介護休業給付においても対象とすべきであるということがまず1点です。

8ページの下の○ですが、介護休業給付について、現在、給付率は休業前賃金の40%ですが、これを67%に引き上げるべきであるということです。併せて9ページの一番上の○ですが、介護休業給付については、今、算定について、その人を基本手当の受給者とみなした場合の賃金日額を用い、上限額を設定して算定しております。これが現在、3045歳以上の日額の上限を使っているわけですが、実際の介護休業給付の受給者の年齢分布を考えた場合に、4565歳未満の水準にすべきではないかということです。

9ページの「6 財政運営について」です。(1)ですが、現在の雇用保険料率については10/1000、原則14/1000ですが、弾力条項が発動されており、現在、暫定的に10/1000です。こうした中で、次の○ですが、平成26年度の差引剰余は約2,000億円で、平成26年度末積立金残高は約63,000億円弱です。こういう中で、リーマン・ショック時も含めて過去10年間ですが、平均的な雇用情勢から想定すると、その際の収支均衡となる保険料は大体12/1000です。仮にこれを基本となる料率とした場合に、来年度から弾力条項を発動して8/1000に引き下げたケースを想定して試算を行うと、おおむね安定的な運営ができるということで、平成28年度以後、原則となる保険料率は12/1000、弾力条項を発動して、これを8/1000とすべきであるということが結論です。

10ページの(2)雇用保険二事業の財政運営です。一番上の○ですが、平成28年度においては弾力条項が自動的に発動されて、料率が3/1000に引き下がるわけで、引き続き効率的な制度運営に努めるべきであるということです。

(3)国庫負担ですが、平成19年度から暫定措置として法律の本則の55%に引き下げられているわけです。これについてはマル1の2つ目の○ですが、雇用保険法附則第15条において、「できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で国庫負担に関する暫定措置を廃止するものとする」、すなわち本則に戻すべきであるといった規定があり、これに基づく措置を講ずるべきであるというのが結論です。マル2の求職者支援も同様です。

 「7 その他」ですが、(1)でマルチジョブホルダー等の話が書いてあります。1つ目の○ですが、労働時間の把握方法や失業の判断といったことは引き続き存在するわけですが、11ページの1行目から、「諸外国の状況を含めて適切に実態の把握を行い、技術的な論点を考慮した上で、雇用保険の適用のあり方と併せて引き続き議論していくべきである」ということです。

(2)高年齢雇用継続給付については、引き続き中長期的な観点から議論していくべきである。(3)求職者支援制度については、これは先般、職業能力開発分科会においても幾つかのあり方が報告されたわけですが、引き続き安定した就職の実現に向けた支援のあり方について検討すべきであるということです。少し駆け足で恐縮ですが、私からは以上です。よろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 本件について、御質問、御意見がありましたら御発言ください。

○斗内委員 今ほど御報告いただいた雇用保険部会報告について発言いたします。まず、本報告は先ほど分科会長からもありましたように、雇用保険部会での議論を踏まえた上で、当分科会に提出されたものと受け止めさせていただいております。10ページにある「国庫負担について」の部分ですが、ここにもありますとおり、この内容は労使共通の認識の下、前回の201312月の部会報告でも記載された内容であると認識しております。国庫負担については雇用対策に対する政府の責任を示すものですので、求職者支援制度も含め、一日も早く法律の本則に戻すべきであるということです。厚生労働省におかれましては、是非とも現行の暫定措置を廃止する道筋を付けていただきたいということを意見として申し上げさせていただければと思います。是非よろしくお願いいたします。

○雇用保険課長 10ページに記載したとおりで、正に今、斗内委員のおっしゃったとおりです。特に雇用保険法附則においても、国会の意思として、その方向性が出ているわけですので、当然ながら、私どももその方向で検討すべきであると思っております。

○斗内委員 是非お願いします。

○阿部分科会長 ほかにいかがでしょうか。これ以上、御質問、御意見がないようですので、当報告は雇用保険部会の報告として了承してもよろしいでしょうか。

(了承)

○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、当分科会として本件は了承したということにしたいと思います。事務局より今後の手続について、説明をお願いいたします。

○雇用保険課長 ただいま御了承いただきました雇用保険部会報告書に基づいて、今後、雇用保険法の改正については要綱等の整備ということで進めていくところです。これについては、年明けの御議論をお願いする予定ですが、雇用保険料率の引下げの関係等がありまして、早急に作業を進める必要があるかと思っております。

 通常のスケジュールでありましたら、まず分科会を開催して、法律案要綱を諮問した上で雇用保険部会において御議論いただいて、その意見を踏まえて再度分科会を開催し、答申をお願いするという手はずになりますが、今回は時間的な関係もありますので、また分科会委員の皆様方の御日程を考慮いたしまして、あらかじめ雇用保険部会において法律案要綱について御意見を頂戴した上で、その意見を踏まえて職業安定分科会において御議論いただくことをお願いできればと考えております。よろしくお願い申し上げます。

○阿部分科会長 特段、皆さんから御意見はないですね。進め方については、このようにさせていただきたいと思います。

 それでは、2番目の議題、「雇用対策基本問題部会報告について」に移ります。本件については、先日開催された雇用対策基本問題部会において、報告が取りまとめられております。雇用対策基本問題部会の部会長は私が兼ねておりますので、本件についても、事務局から御報告をお願いします。

○高齢者雇用対策課長 資料2-1、「雇用対策基本問題部会報告書」の1枚目をめくっていただきまして、2枚目が鑑になっております。生涯現役社会の実現に向けた雇用就業環境の整備に関する検討会報告書の当面求められる施策の方向性を中心に、本年10月以降、計3回にわたり精力的に検討を進めていただき、1218日にこの報告書がまとまりました。

 「別添のとおり、厚生労働大臣に建議すべきである」という結論になっております。1枚めくり、報告書の中身について簡潔に説明いたします。タイトルは「今後の高年齢者雇用対策について」です。冒頭部分については、高年齢者雇用対策、制度あるいは実態について、現状についての記述がなされておりますが、ここは割愛いたします。

 最後の「当部会においては」という所ですが、「このような問題意識の下、今後の高年齢者雇用対策として取り組むべき施策等について検討を行ったところであり、その結果は以下のとおり」ということで、「この報告を受けて、厚生労働省において、法的整備も含め所要の措置を講ずることが適当と考える」という結論になっております。

 最初の「1 企業における高年齢者の雇用の促進」です。(1)企業における高年齢者雇用については、平成24年の高齢法の改正を踏まえて未実施企業に対する指導の徹底により、希望者全員の65歳までの雇用確保措置が確実に実施されるようにしていくとともに、改正法施行後における高年齢者の雇用動向等を把握することが必要であるとしております。(2)65歳を超える高年齢者の雇用の確保については、高年齢者を多数雇用する事業主や高年齢者向けに健康管理制度等を導入した事業主等高齢者の雇用確保に積極的に取り組む企業に対する支援が必要であるという結論を出しております。(3)雇用確保措置の対象とならない高齢の有期雇用労働者への対応は引き続きの課題であって、当面は、有期雇用労働者については、「反復継続して契約の更新がなされているときには、期間の定めのない雇用とみなされることがある」とされていることを周知していくことが重要である。また、65歳までの雇用機会確保を図るため、無期雇用への転換を図る事業主を支援して、これを促していくことが必要であるとしております。

 続いて、「2 中高年齢者の再就職の支援」です。(1)高年齢者の就職支援については、特に60歳代後半の高齢者にとって、ハローワークが重要な入職経路となっている現状を踏まえ、ハローワークにおける65歳以上の高齢者に対する就職支援を強化していく必要があるとの結論を出しております。(2)また、自社内にとどまらずに活躍の場を探す高齢者については、人手不足に悩む地域の中小企業やNPO等における雇用に繋げていくことも重要であり、このため、労働者本人の意向を最大限に尊重した上で、産業雇用安定センターによる出向・移籍のあっせん機能を活用していくことが必要であると結論を出しております。

 「3 地域における多様な雇用・就業機会の確保」です。(1)高齢者の就業機会の確保において、地域の果たす役割は重要であるという観点から、地方自治体が中心となって、地域の実状を踏まえた高齢者雇用のあり方を協議、推進していくため、協議会を設置することができるようにし、その設置促進を図ることが必要であると結論を出しております。(2)においては、協議会の構成員としては、関係行政機関、シルバー人材センター、労使関係者、社会福祉協議会、地域の金融機関、NPO等、地域における高齢者の就業機会確保に関係する関係者を幅広く含めることができるようにすることが必要であると結論を出しております。(3)また、協議会においては、地域の高齢者の就業機会に関する計画等の作成に関することやその実現のために必要な事業の実施に関することについても協議を行うことが適当であり、国としても、地域の主体性を尊重しつつ、協議会が定めた事業の実施に対する支援や取組状況のフォローアップ、普及促進等を行うことが必要であるとしております。

 次ページの「4 シルバー人材センターの機能強化」です。(1)シルバー人材センターの機能強化を図ることが重要であり、従来からの職域にとどまらず、人手不足分野や育児支援等の現役世代を支える分野に今後とも積極的に展開していくことが期待されると結論を出しております。(2)シルバー人材センターが取り扱う就業については現状で、臨時的かつ短期的又は軽易な業務に限定されているが、シルバー人材センターの目的は堅持しつつも、より長く働きたい高齢者の就業ニーズ等にも対応することができるよう、この取扱業務に係る要件は緩和することが適当であると結論を出しております。

(3)ただしその際、取扱業務に係る要件の緩和を行ったことにより、労働者保護を害することになったり、民業を不当に圧迫することや地域の労働市場へ重大な影響を及ぼすことのないよう、マル1~マル4の措置を講じる必要があります。マル1要件緩和は、シルバーの業務のうち、就業者の適切な保護の観点から、職業紹介事業及び労働者派遣事業に限って実施すること。マル2要件緩和の実施は、シルバーの指定・監督権限を有する都道府県知事が、厚生労働省が定める基準に適合すると認められる場合に、対象となる業務の範囲や地域を指定することにより可能とすること。マル3都道府県知事が要件緩和を実施する地域等の指定を行うに当たっては、要件緩和を行おうとする業務に関する地域の関係者の意見をあらかじめ聴取するとともに、広域的な雇用情勢や労働力需給への影響等の観点から国の関与を必要とすること。マル4要件緩和を実施する地域等の指定は解除することができるものとすること、という結論を出しております。

(4)シルバー人材センターを通じた就業について、会員である高齢者の適切な就業環境を確保することも重要である。このため、派遣・請負の区分に関する基準や会員の就業条件等に関すること等、シルバー人材センターが業務運営に当たって、発注者、会員それぞれとの関係の中で留意すべき事項について、適正就業確保のためのガイドラインとして示していくことが必要である。なお、シルバー人材センターが行う労働者派遣事業及び職業就業紹介事業については、許可ではなく届出により事業を実施することが可能となっているため、シルバー人材センターの適正な事業運営を確保していく必要があるとしております。以上です。

 

○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは、本件について御質問、御意見がありましたら御発言ください。

○林委員 ただいま御報告いただきました内容は、雇用対策基本問題部会での議論を踏まえて、本日、当分科会に部会報告が提出されたものという認識をしております。また、部会報告を踏まえて、今後は高年齢者雇用安定法改正の議論を行うものと認識しておりますが、高年齢者の雇用施策の議論にあたっての労働側の考え方を申し上げます。

 まず、高齢者雇用施策の具体化にあたっては、65歳までの確実な雇用の確保、また65歳以上の就労ニーズの多様性への柔軟な対応、また労働者保護を最大限尊重することが必要であると考えております。また、シルバー人材センター事業の機能強化においても、労働災害の防止策や、偽装請負などのトラブル防止策を強化することも必要であると思っております。

 加えて、これまでも雇用対策基本問題部会等において労働側より意見してまいりましたが、高年齢者の雇用促進議論を公的年金の支給開始年齢引上げ議論に繋げないということも、きちんと担保していただきたいということを意見として申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 御意見として承りたいと思います。ありがとうございました。その他いかがでしょうか。特によろしいでしょうか。

 それでは、特に御意見、御質問はこれ以上ないようですので、労働政策審議会長あてに本報告を報告したいと思いますので、報告文案の配布をお願いしたいと思います。

(報告文案配布)

○阿部分科会長 ただいま配布いたしました報告文案により、労働政策審議会長あてへ報告するということにさせていただいてもよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。これをもちまして、厚生労働大臣に対する建議となりますので、御了解をいただきたいと思います。事務局より今後の手続についての説明をお願いします。

○高齢者雇用対策課長 先ほど建議をいただくことになりました「今後の高年齢者雇用対策」については、今後、事務局で法律案要綱を作成いたしまして、本分科会で御議論をお願いする予定としております。段取りについては先ほど雇用保険課長から説明がありましたように、雇用保険制度と同様に、あらかじめ雇用対策基本問題部会において法律案要綱について御意見を頂戴して、その意見を踏まえて1月中を目処に職業安定分科会において御議論をいただくようにお願いしたいと思っております。以上です。

○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは、次の議題に移ります。次の議題は「勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律(青少年の雇用の促進等に関する法律関係)の施行等について」です。

 本件については、本日付で厚生労働大臣から労働政策審議会会長あて諮問を受けており、本日開催された雇用対策基本問題部会において、報告が取りまとめられておりますので、事務局より御報告をお願いいたします。

○若年者雇用対策室長 「青少年の雇用の促進等に関する法律第十一条の労働に関する法律の規定等を定める政令案要綱」等について御説明いたします。資料3-11ページが厚生労働大臣から労働政策審議会あての諮問文です。法律の施行に関して政令1本、省令1本、告示2本について審議会の御意見を求めるものです。

 主にお手元の資料3-13-3を使いながら御説明をいたします。資料3-13ページ目が「政令案要綱」です。これは「ハローワークにおける学卒求人の不受理対象」となる労働関係法令違反の条項を定めるもので、対象条項を列挙しております。内容については、資料3-3を使って説明いたします。

1ページです。「対象条項」は新卒一括採用という特殊な雇用慣行や心身の発達過程、及び家族形成期にあるといった青少年に固有の事情を踏まえて、「過重労働の制限等に関する規定」として労働基準法、最低賃金法から強制労働の禁止、賃金関係、労働時間、休憩、休日、有給休暇の関係の規定。「仕事と育児等の両立等に関する規定」として男女雇用機会均等法、育児・介護休業法から出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等、妊娠中、出産後の健康管理措置、育児休業、介護休業の関係の規定、所定外労働等の制限、妊産婦の坑内業務の制限等、男女同一賃金の原則、性別を理由とする差別の禁止、セクハラ等の規定。「その他青少年に固有の事情を背景とする課題に関する規定」として、労働基準法から労働条件の明示、年少者に係る労働基準の規定を定めております。政令の施行期日は平成2831日としております。

 続いて、省令案要綱について説明いたします。資料3-15ページです。省令案要綱では主に3つの事項を定めております。1つ目は、「学校卒業見込者等の詳細」です。第一の一と二が該当箇所です。「学校卒業見込者等」とは、学校のほか省令に定める施設として専修学校を卒業見込みの者、そのほか省令で定める者として公共職業能力開発施設の職業訓練修了見込者、6ページのイ~ニです、学校又は専修学校を卒業した者、いわゆる既卒者、職業訓練修了者、各種学校、外国の教育施設の卒業見込者又は卒業した者とすると定めております。

2つ目の省令事項は、「三 求人の申込みを受理しないことができる場合」についてです。内容については資料3-32ページ目です。「求人不受理の対象条項」は、先ほどの政令で定めておりますが、対象条項に係る違反の程度は労働基準法及び最低賃金法に関する規定について、マル1過去1年間に2回以上同一条項の違反について是正指導を受けている場合、マル2社会的影響が大きいケースとして公表された場合、マル3対象条項違反により送検され、公表された場合、(2)男女雇用機会均等法及び育児介護休業法に関する規定については、法違反の是正を求める勧告に従わず、公表された場合としております。

 また、「不受理期間」については違反の程度の(1)マル1とマル2及び(2)マル1の場合は法違反が是正されるまでの期間に加え、その後さらに違反を重ねないことを確認する期間として、是正後6か月経過するまでを不受理期間とすること。(1)マル3の場合、法違反に関し送検され、公表されたケースについては、送検後1年間は求人を不受理とした上で、その時点で是正後6か月を経過していないときは、是正後6か月時点まで不受理期間を延長することとしております。

 また、右下の囲み部分ですが、これは上のパターンの1年に2回以上、同一条項の違反をし、不受理になったものの当該違反を是正した後に送検、公表された場合の不受理期間を記載しております。送検、公表の場合は、1年の不受理期間と申しましたが、このケースでは、法違反の是正から送検までの期間を12か月から減じた期間、具体的には是正後6か月たって不受理が解除された後に送検された場合は、送検から6か月不受理とする。そのほか、是正から3か月の時点で送検された場合は、12か月から3か月減じた9か月間について不受理期間を延長するという形になります。省令案要綱の条文に沿った不受理のパターンは、次の3ページに図示しておりますので後ほど御覧いただければと思います。

4ページです。省令案要綱の3つ目の事項は、「職場情報の積極的な提供について」です。まず、「情報提供項目」を定めております。()の募集・採用に関する状況として、過去3年間の新卒採用者数・離卒職者数、過去3年間の新卒採用者数の男女別人数、平均勤続年数。()の職業能力の開発・向上に関する状況として、研修と自己啓発支援の有無及び内容、メンター制度の有無、キャリア・コンサルティング制度と社内検定等の制度の有無及び内容。()の企業における雇用管理に関する状況として、前年度の月平均所定外労働時間の実績、前年度の有給休暇の平均取得日数、男女別の前年度の育児休業取得対象者数・取得者数、役員及び管理的地位にある者に占める女性の割合としております。

 最後の「役員及び管理的地位にある者に占める女性の割合」を除く、これらの11項目について通常の労働者に係る募集・求人を行う場合は通常の労働者に係る情報を通常の労働者以外の募集・求人の場合は通常の労働者以外の労働者に係る情報をまとめて出していただくこととしております。

 「情報提供方法等」は、メール、インターネット、書面その他適切な方法により行うこと。学校卒業見込者等が情報提供を求める場合、メール又は書面その他適切な方法により、マル1氏名及び住所又はメールアドレス、マル2学校名及び在学年又は卒業年月、マル3情報提供を希望する旨を企業に明示すること。企業は情報提供の求めがあった場合は()から()3類型毎にそれぞれ1つ以上の情報提供をすることを定めております。省令の施行期日は平成2831日としております。以上説明しました内容を省令案要綱の形で資料3-1にまとめております。

 資料3-35ページです。大臣告示の「青少年雇用対策基本方針()」です。本方針は平成28年度からの5か年の運営期間で、現行の勤労青少年福祉対策基本方針は今年度末をもって廃止いたします。

6ページです。主な内容をかいつまんで説明いたします。第二の「二 学校卒業見込者等の就職活動からマッチング・職場定着までの支援」の()在学段階からの職業意識等の醸成として、3つ目のポツですが、学生・生徒に対して労働法制に対する知識等の周知を図るため、国は、都道府県労働局及び公共職業安定所による講師の派遣、労働法制に関する基礎的な知識をまとめた冊子の提供等を積極的に行うこと、労働に関するトラブルに適切に対処できるよう総合労働相談コーナー等の相談窓口を周知することを定めております。

7ページです。()マッチングの向上等による学校卒業見込者等の職業生活への円滑な移行、適職の選択及び職場定着のための支援として、1つ目のポツ、法に基づく認定制度や若者応援宣言事業により、中小企業の情報発信を支援し、企業規模等にとらわれない職業選択を促すこと。2つ目のポツ、学校卒業見込者の採用枠について、既卒者が学校等卒業後少なくとも3年間は応募できるように努めること等について定めた事業主等指針を活用し、既卒者が正規雇用に応募する機会を広げる取組を促すこと。3つ目のポツ、労働条件等の明示に関する規定等の周知徹底を図ること。

 後段ですが、「青少年雇用情報の提供について履行確保を図るとともに、公共職業安定所が学校卒業見込者等求人の申込みを受理するに当たっては、全ての青少年雇用情報の提供を求めること。青少年雇用情報の求めを行ったことを理由とした不利益取扱いに係る相談等必要な取組を進めること。4つ目のポツ、公共職業安定所において、求人不受理の措置を着実に実施すること等を定めております。

8ページです。「三 中途退学者・就職先が決まらないまま卒業した者に対する支援」です。1つ目のポツ、中途退学者に対しては、中途退学に際して、関係機関が連携して、就職支援機関、職業訓練機関等に関する情報を提供し、継続的に支援を行うこと。2つ目のポツ、就職先が決まらないまま卒業した者については、卒業直後の支援の充実を図ることを定めております。このほかフリーターを含む非正規雇用で働く青少年の正規雇用化に向けた支援を行うこと、企業における青少年の活躍促進に向けた取組に対する支援を行うこと、雇用管理改善に向けた支援を行うこと。

9ページの()です。青少年の採用及び育成に積極的な中小企業の情報発信を支援するため、法に基づく認定制度等を推進し、公共職業安定所等において重点的にマッチングを行うこと。ワーク・ライフ・バランスの改善を促すこと。職業能力の開発及び向上の促進を行うため、職業訓練を推進するとともに職業能力検定の活用の促進、職業人生を通じたキャリア形成支援を行うこと。ニート等の青少年に対し、地域若者サポートステーションにおいて、職業生活における自立促進のための支援等を実施すること。地域における青少年の活躍促進として、いわゆる「UIJターン就職」を積極的に支援することを定めております。

11ページです。最後に、「事業主等指針改正案」についてです。「事業主等指針」については、平成2831日施行分として、概要の赤字部分を追記するものです。具体的には12ページ、第二は「事業主等が青少年の募集及び採用に当たって講ずべき措置」です。「青少年の雇用情報の提供」に際して、ホームページ等での公表、会社説明会での提供、求人票への記載等により全ての項目を情報提供することが望ましいこと。具体的な項目について情報提供の求めがあった場合、特段の事情がない限り、求めがあった項目を提供することが望ましいこと。情報提供の求めを行った者に対して、求めを行ったことを理由とする不利益な取扱いをしないこと。予め提供する情報を整備し、求めがあった場合、速やかな情報提供に努めること。

 第四は「職業紹介事業者等の講ずべき措置」です。「青少年雇用情報の提供」に関して、新卒求人を受理する際に、青少年雇用情報の提供を求めるとともに、全ての青少年の雇用情報を提供するよう働きかけることが望ましいこと。個別に照会を行った学校卒業見込者等について、求人者に明示する必要はないことに留意すること。募集情報提供事業者は、就職支援サイトに、新卒者募集を行う企業の青少年雇用情報が可能な限り全ての項目について掲載されるように取り組むことを定めております。

 また、「労働関係法令違反の求人者への対応」として、公共職業安定所が不受理とすることができる求人者からの新卒求人を取り扱わないよう、職業紹介事業の取扱職種の範囲等の届出を行うことが望ましいことを定めております。以上が資料の説明です。

 

○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは、本件について、御質問や御意見がありましたら御発言ください。

○清水委員 若者雇用促進法のうち、201631日施行に係る内容が本日諮問されていると思っております。資料3-1で示された政令案要綱、省令案要綱、青少年雇用対策基本方針、そして指針改正の告示案要綱は、雇用対策基本問題部会での議論を踏まえ作成された内容と受け止めております。

 厚生労働省におかれましては、若者雇用促進法の実効性を高めるため、企業への周知、指導の徹底はもちろんのこと、当事者である学校卒業見込み者等や学校関係者等への周知を含め、万全の対応を図っていただきたいということを発言させていただきます。よろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○高橋委員 単純な質問なのですが、青少年雇用情報の関係です。資料3-34ページに今日御説明いただいた資料が載っておりますが、「募集・採用に関する状況」の最後の項目、「平均勤続年数」とありますが、平均勤続年数は「募集・採用」とは直接には関係ないのではないか。むしろ、どちらかといえば、「企業における雇用管理に関する状況」に分類するのが適当なのではないかと思うのですが、なぜ「募集・採用に関する状況」として「平均勤続年数」が分類されているのかを教えていただければと思います。

○阿部分科会長 事務局、御質問ですので、お願いいたします。

○若年者雇用対策室長 「平均勤続年数」をこの「募集・採用に関する状況」に分類をしている背景としては、我が国においては「新卒一括採用」という雇用慣行があります。ですので、採用というものは基本的に退職された方を補填する形で新卒者の採用が行われていると理解をしております。そういったことから、企業における平均勤続年数がどのくらいかということが、「募集・採用に関する状況」を理解する上で参考になるのではないかということで、ここに分類させていただいております。

○阿部分科会長 高橋委員、いかがですか。

○高橋委員 ちょっとよく分からないのですが、決まったことなので。

○阿部分科会長 多分、イの所に「離職した者の数」があって、その関連で「平均勤続年数」ということもあるのかなと私は理解しているのですが、高橋委員がおっしゃっていることはもちろんそのとおりだとは思います。ここで、ハの「平均勤続年数」をここに置いたというのは、その前のイの「離職者数」と関連して平均勤続年数という議論があったということからかと思っております。もちろん、高橋委員の意見はそのとおりかと理解するところではありますが、いかがですか。

○玄田委員 この辺りの部会での議論は、必ずしも正確に記憶しているわけではないのですが、青少年にとってもっと必要な情報は何だろうかと考えたときに、その会社で働くときの見通しはどうなのだろうか。そこには、「過去3年間」というのは比較的短期的な見通しで、3年ぐらい働ける人たちが自分の近い先輩でどのぐらい定着しているのかということと、もう少し長期を見た見通しでその会社で働いたときには大体どのぐらいみんな働いているのだろうかという2つが青少年にとって必要な募集に関する情報だろうと。もちろん、平均勤続年数は従業員の年齢構成などにも影響を受けますので、それを踏まえて考えていかなければならないのですが、今日は部会でも議論がありましたが、平均年齢については別のハローワークの情報と組み合わせることによって、平均年齢を見た上での勤続年数の動向で、比較的長期にわたる働く見通しとして、その企業においてどのぐらい働けるのだろうかということの募集に必要な情報として、平均勤続年数は比較的ニーズのある情報なのではないかと。加えて、恐らく企業にとってもこの平均勤続年数という情報を提供することにそれほど過酷なコストがかからなければ、こういう情報は恐らくニーズとして重要なのではないかといったような議論から、こういうことになったようには記憶があります。

○小野委員 資料3-34ページを議論されていると思うのですが、資料3-111ページの五の()のイ、ロ、ハの3累計は資料3-34ページの()()()に該当すると思います。11ページを見ますと、イは「青少年の募集及び採用の状況に関する事項」なのです。ロは「職業能力の開発及び向上に関する取組」です。ハは「職場への定着の促進に関する取組」なので、やはり勤続年数としては「取組」ではなくて、「状況」の所に入れるのがいいのではないかと私も思っております。

○高橋委員 別に、私が平均勤続年数を入れることを反対しているわけではなく、単に整理上の問題をお聞きしているだけですので。

○阿部分科会長 高橋委員がおっしゃっていることは、全くそのとおりだと私も理解しております。今回は、このように整理をさせていただいたということです。ほかの委員の皆様、いかがでしょうか。

○太田委員 これは結構だと思うのですが、()()()の部分が新規学卒者に関する話になっていますので、()が新卒者を採用した場合に新卒者の何らかの数値であると誤解を与えると、少し困るかなと思います。その辺りは、「雇用する労働者の」と書いてあるので、まず間違いはないかとは思うのですが、例えば「雇用する労働者全体の」とか、何らかの補足を書いてもいいのかなという気はしないでもないです。

○阿部分科会長 事務局、いかがですか。

○若年者雇用対策室長 その辺りについては、御覧になられる学生の皆様がきちんと御理解いただけるような形で、法律の内容については学生向けに周知のリーフレットや解説を用意していこうと考えております。しっかりと御理解いただけるような記載を工夫して、周知徹底を図ってまいりたいと考えております。

○阿部分科会長 いろいろと御意見があると思いますが、一応、こういう整理で行ってきましたので、このようにさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。その他、いかがでしょうか。

 特にないようでしたら、当分科会は厚生労働省案を雇用対策基本問題部会からの報告のとおり、妥当と認め、その旨を私から労働政策審議会会長に御報告申し上げたいと思います。よろしいでしょうか。それでは、報告文案の配布をお願いいたします。

(報告文案配布)

○阿部分科会長 お手元に配布された報告文案により、労働政策審議会会長あて報告することとしてよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○阿部分科会長 それでは、そのように報告させていただきます。

 次は、「地方分権(ハローワークにかかる方向性)について」の議題に移ります。事務局より説明をお願いいたします。

○公共職業安定所運営企画室長 ハローワークをめぐる地方分権の報告です。資料No.4を御覧ください。1ページは、平成19年に地方分権の改革推進委員会で、ハローワークの地方分権が扱われて以来、ハローワークはずっと全国知事会の地方分権要望の主要事項の1つとして続いてまいりました。こちらは、昨年度の政府の閣議決定です。(i)と(ii)にありますように、ハローワークの無料職業紹介事業については、まずは国と地方の連携強化を進めながら、事務・権限の移譲等について引き続き検討を進めるとされております。これを上書きする今年の分権の閣議決定が、1222日にありました。ここで、ようやくハローワークについて政府の取組の方向性が定まりましたので、本日の御報告です。

 閣議決定の本文は、参考資料の7から9ページに付けておりますが、少々細かいものですので、2ページ目に付けました1枚紙の資料で説明申し上げます。今般の整理の大前提ですが、ハローワークと地方公共団体のそれぞれの無料職業紹介事業のあり方について、国がやるのか、地方がやるのかということよりも、まずは利用者の利便性の観点から整理いたしました。これは全国知事会など、地方の執行団体とも調整済みの案です。

 「ポイント1」については、「雇用対策法」などの改正により、首長と都道府県労働局長の間で締結する雇用対策協定を法定化し、その範囲内で首長が労働局長に対して要請できる仕組みをつくるものです。これに基づき要請を受けた労働局長は、合理的な理由がある場合を除いて業務に反映させるよう、必要な措置を講じることになります。そして、もしも労働局長が要請を受け入れなかった場合は、これは首長は更に厚生労働大臣に対して要請することができるという仕組みを考えております。

 「ポイント2」ですが、これは職業安定法の改正により、地方公共団体による無料職業紹介事業の規制を緩和するものです。現行制度では、地方公共団体が無料職業紹介事業を行う際には、届出が必要で、これに伴い事業責任者を選任していただいたり、帳簿の備え付けや変更届けなどの義務もありますし、また事業停止命令の対象ともなっております。しかしながら、地方公共団体は住民の福祉の増進を図るための主体であり、意図的に求職者等の搾取を行うようなことは考えにくいものですから、今般、届出要件を廃止し、通知でよいことにするという内容です。これは、あくまでも地方公共団体の職員による直営の場合に限り、民間委託で行うような場合については、従来どおり民間の有料職業紹介事業者への規制がもちろんかかる内容にしております。

 また、法改正事項ではありませんが、「ハローワーク」という名称について、これまでは要領上で公共職業安定所しか使えないこととしてまいりました。しかしながら、地方から大変要望が強かったものですから、例えば「何々県版ハローワーク」などと、国のものと誤認しないように明確にしていただくことで、自治体直営の場合に限って「ハローワーク」という名称を使っても差し支えないのではないかと考えているところです。

 今般の法令の改正により、地方公共団体はこれまでより自由に無料職業紹介を行えるようになるわけですが、当然ながら、法違反があった場合は地方自治法に基づいて国が是正の要求をすることができるようになっております。また、地方公共団体はこれを受けて、是正を行う法的義務を負うことになっておりますので、引き続き国による関与はしっかりと続くことになります。

 「ポイント2」の(2)に書いておりますように、求人情報のオンライン提供は現在も実行上で行っておりますが、地方公共団体に対するものは法律に書き込んでまいりたいと考えております。(3)は、全国知事会長の京都府知事をはじめ、地方側から大層強く要望のあった点ですが、地方が行う無料職業紹介事業の場で、国の雇用保険サービス等もワンストップで提供してもらえないかという点でした。これは利用者の利便性を考え、ハローワークの定員や行政ニーズがどのぐらいあるかという兼ね合いも考えながら対応していきたいと考えております。

 「ポイント3」については、現行の一体的事業の位置付けに関する点です。現在は全国で155の地方公共団体で一体的事業を行っております。これは、例えば市役所の生活保護の窓口の隣に小さなハローワークの窓口を設けまして、国の職業紹介と自治体の業務とを一体的に提供するもので、自治体からの評価も大変高いです。これの開始時には、まずは当面3年間ほどやってみて、その後ハローワークの地方移管を検討するというような位置付けでしたが、今般はハローワークを移管しない方向性で固まったものです。また、この一体的事業自体は評価も高いものですから、移管までの臨時とされてきた位置付けを恒常的に今後も行っていく事業として位置付けるものです。

 「ポイント4」は、今申しました1から3の実施に当たって、国の支援を列挙いたしました。地方公共団体の職員研修に対して、国から講師を派遣したり、人事交流を行ったり、また既存の地域雇用対策の諸事業もあります。それから、好事例の共有を本省中心でやっていくといったこともあるかと思っております。この取りまとめに関して全国知事会からは「今後地方側と十分協議し、地方の実情に即した具体的な制度設計とすることを求める」というふうに知事会長名の声明が出されておりますので、引き続き運用に向けて地方側の意見も聞いていきたいと考えております。

 以上申しましたとおり、今般、閣議決定された方向性が、ハローワークはそのままで、地方の自由度は高めて、更に国と地方の連携を一層強化していこうというものになりました。こうした結論に至ったのが、労政審がハローワークの地方移管はすべきでないというお考えで終始あったこと。それからハローワークの利用者であり、また雇用保険料の拠出者でもあります労使の御意向が非常に重要な決め手であったことも、併せて御報告申し上げたいと思います。

 今後、雇用対策法と職業安定法の改正案については、内閣府が次期通常国会に提出する地方分権の一括法案に盛り込んでまいりたいと考えております。追って、労政審安定分科会にお諮りしたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上です。

○阿部分科会長 それでは、本件について御質問、御意見がありましたら御発言ください。

○森下委員 今、御説明を頂きまして、地方分権、ハローワークにかかる方向性についていろいろとあるのですが、資料42ページ目、「ハローワークに係る地方分権の方向性」として、「利用者の利便性を高めることを第一義として、国と地方の連携を抜本的に拡充した新たな制度を構築」をすることは重要な取組であると私も考えております。しかし、一体的な実施施設において、国による雇用保険の失業認定や、職業訓練の受講指示などの手続を行う際に、自治体の希望を踏まえて国の職員の配置や巡回等も積極的に取り組むとあります。その財源について、最後に御説明があったと思いますが、やはり地方自治体が全面的に負担していくのかというような疑問があります。

 ハローワークの業務を見ますと、財源については「雇用保険二事業」ということで、予算での事業が多いわけですから、この辺について事業の適正化について、今後、当安定分科会のほかに、雇用保険二事業に関する懇談会等で十分な議論が必要ではないかと、事業者の立場としてはお願いをしたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○公共職業安定所運営企画室長 かしこまりました。ありがとうございました。おっしゃるとおり、本来であれば、地方からの希望があれば、地方に人件費分も見ていただけないものかということも併せて考えているところですが、これは地方公務員法や国家公務員法の枠で何ができるかをしっかり見てまいりたいと思います。併せて、地方から希望があってもニーズが見込まれないとか、置くことの意味合いがどれほどあるのかという点も大事ですので、こうしたところも個別事案として一つ一つ見ながら進めてまいります。

 御指摘のありましたとおり、労政審と二事業懇においても、費用がかかるもの等についてはきちんと御意見を伺った上で進めてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○森下委員 是非よろしくお願いいたします。

○阿部分科会長 その他、いかがでしょうか。

○松原委員 私から1点、御意見を申し上げたいと思います。御説明いただきました2ページ目には、「ハローワークに係る地方分権の方向性」が示されております。労働側としては、ハローワークの運営は国の指揮監督と責任において全国を通じて一体的になされるべきだと考えております。今回の内容はハローワークの全国ネットワークを維持しつつ、ハローワークの利用者である求職者・求人者の利便性向上、それから地域のニーズに合った雇用対策に資する可能性があるものだと受け止めております。

 資料の一番下にも記載がありますが、「今後、労働政策審議会の議論を踏まえる」と記載もされております。今回示された方向性が、真にハローワーク利用者の利便性向上につながって、また地方における職業安定行政の後退をもたらさないものであることを、今後の議論の中において確認をさせていただきたいと思っておりますので、意見として申し上げたいと思います。

○阿部分科会長 その他、いかがでしょうか。

○鎌田委員 2ページ目の「ポイント2」の(1)「地方公共団体が無料職業紹介を行う際の届出を廃止し、民間事業者と同列に課されている規制や監督を廃止する」という所ですが、今の説明ですと、職業安定法において無料職業紹介事業について、許可、届出と書かれておりますが、地方公共団体が行うものについては職安法の適用がある無料職業紹介事業であることは変えないということですか。その上で、通知でいいということでしたが、ただし地方公共団体が民間に委託をして行うものについては、今のルールの例外になるということは、地方公共団体の事業として行っているものを、職業紹介として行うことを民間に委託した場合は、その委託された事業者が民間職業紹介事業として許可を取得するという整理でよろしいのでしょうか。確認です。

○公共職業安定所運営企画室長 1点目の事業かという点については、引き続き地方公共団体が行うものについても、職業紹介事業です。ですので、職業安定法の範疇の中で行っていくことになります。そして、民間委託になった場合には、そもそも地方公共団体が自ら行う無料職業紹介ではなくなってしまうものですから、また何らかの法の抜け穴のような形があってもいけないと考えているものですから、委託の場合には民間の有料職業紹介事業者としての規制をしっかりかけて、その範疇でやっていただくとしております。

○玄田委員 今の関連ですが、多少、想定問答的になりますが、では、委託は駄目だとなった場合に、派遣契約して、一時的に地方自治体の職員になって、その人たちがなさる場合には、どのように考えればよろしいですか。

○公共職業安定所運営企画室長 まず、地方公務員法において、派遣によって一時的に地方公務員になることは難しいと考えております。ただ、地方公務員として非正規の形で雇った上で、事業の主体としては、例えば就労支援課や労政課といった主体が全体の計画を立てた上で行うことは、十分にあり得ると考えております。

○玄田委員 派遣ではないとして、出向もないかもしれませんが、今の説明ですと、いわゆる臨時採用の場合にはあり得るということですね。

○公共職業安定所運営企画室長 どういう形であっても、地方公務員法上で地方公務員としての方が行うこと。そして事業の計画自体も丸投げでどこかに作ってもらうわけではなく、マネジメントそのものがきちんと実態として地方公共団体によって行われていること、これが確保されれば構わないと考えております。

○阿部分科会長 先ほど御説明がありましたが、できる限り法の抜け穴がないように、しっかりとやっていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○公共職業安定所運営企画室長 かしこまりました。ありがとうございます。

○阿部分科会長 その他、いかがでしょうか。特に御質問、御意見がないようでしたら、本日の分科会はこれで終了いたします。本日の会議に関する議事録については、労働政策審議会運営規程第6条により、分科会長のほか、2人の委員に署名を頂くことになっております。つきましては、労働者代表の清水委員、使用者代表の河本委員にお願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。


(了)

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