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2015年11月30日 第67回社会保障審議会年金数理部会 議事録

年金局

○日時

平成27年11月30日(月)14:00~17:00


○場所

全国都市会館 大ホール


○出席者

山崎部会長、宮武部会長代理、翁委員、駒村委員、佐々木委員、田中委員、野上委員

○議題

(1)被用者年金制度の一元化と今後の年金財政
(2)年金数理部会の公的年金財政状況報告等の取り組みについて

○議事

○下島首席年金数理官 本日は、会場の皆様方には、御多忙の折、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。

 定刻になりましたので、ただいまより第67回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。

 初めに、皆様方のお手元の資料の確認をさせていただきたいと思います。

 議事次第、座席図のほか、次のとおりでございます。

 資料1は「被用者年金の一元化について」(厚生労働省年金局年金課資料)。

 資料2は「被用者年金の一元化 歴史的な一元化の実現をどう評価するか 公平性・安定性・効率性の視点で」(宮武委員資料)。

 資料3は「年金数理部会の活動について」(事務局報告)。

 配付資料は以上でございます。

 次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、浅野委員、牛丸委員が御都合により御欠席でございます。御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。

 それでは、以降の進行につきましては、山崎部会長にお願いいたします。

○山崎部会長 本日は、会場の皆様方には、御多忙の折、お集まりいただき大変ありがとうございます。

 今回の年金数理部会は、セミナー形式により開催いたします。公的年金財政をめぐって、数理的な視点を中核としながら幅広く正確な情報を発信することにより、多くの方々に、公的年金の制度や財政に対する理解及び年金数理部会の活動に対する理解を深めていただくことを旨としております。

 本日の議題は、「被用者年金制度の一元化と今後の年金財政について」と「年金数理部会の公的年金財政状況報告等の取り組みについて」であります。本年10月に被用者年金一元化法が施行されましたが、一元化に係る過去の経緯を振り返りつつ、今回の一元化の内容について、もう一度理解を深める機会といたしたいと思います。また、一元化に関連して取り組んできました当年金数理部会の活動内容についても、あわせて再認識する場にできればと思います。

 今回は、年金局の間年金課長からの被用者年金一元化の内容の紹介、当部会の宮武部会長代理からの講演、事務局からの年金数理部会の活動についての報告の後、意見交換を行うこととしました。

 本日の進め方ですが、年金課長からのお話、宮武部会長代理の講演及び事務局の報告を計1時間10分程度お願いし、15分程度の休憩の後、意見交換を17時まで行いたいと思います。なお、その際には、できれば会場の皆様からの御意見やコメントもいただければと思います。

 それでは、カメラの方はここで退室をお願いいたします。

 

(報道関係者退室)

 

○山崎部会長 それでは、年金課長から「被用者年金の一元化について」話していただきます。間年金課長、御登壇ください。

 我々も、スクリーンを見る都合から席を移動いたします。

 

(各委員 席を移動)

 

○間年金課長 皆様、こんにちは。ただいま御紹介いただきました厚生労働省の年金課長でございます。今、山崎部会長から、被用者年金の一元化について内容の御紹介をと、ファクトの御紹介をと仰せつかっておりますので、後ほど評価のほうは宮武先生からお話があろうかと思いますので、それについてお話を申し上げたいと思っております。

 きょう1130日は、1年に1度の年金の日でございまして、そういうときに、こうやって、これまでの来し方を振り返ってみるということも大変意義深いものではないかと思っております。

PP

 きょうのお話は被用者年金の一元化ということでありますけれども、いささか個人的なことを申し上げますが、私は今年、15年ぶりに年金局に戻ってまいりまして、この間の大きな制度の変更、制度改正というのは大変感慨深いものがございます。考えてみれば、財政再計算のたびに保険料率が、例えば2025年には28%になる、いや29%になるというようなことで大丈夫なのかと、そして、国家財政に与える影響はどうなのだといったようなことが議論されておりましたし、被用者年金一元化の問題につきましても、これはやらなければいけないと言いながらも、なかなか難しいなというような状況であったわけであります。

 きょうお話しさせていただくことは、社会保障・税一体改革の中での到達点として、一つは、これはきょうの本題ではありませんので簡単に済ませますけれども、16年改正による新たな財政フレームが完成をしたということでありましょうし、もう一つは、何と昭和59年の閣議決定から延々と議論してまいりました被用者年金の一元化が今年10月1日に施行されまして、その完成を見たというところが大きな点だろうと思っております。

PP

 お手元の資料を見ていただいたほうがよろしいかもしれませんが、これが財政フレームの話であります。多くの方は御存じであろうかと思いますけれども、大変重要なことは、この財政フレームの中で保険料の上限を決めたと。厚年につきましては18.3%というものを決め、積立金も有限均衡方式にしまして、国庫負担も2分の1にして、そして年金額を考えていく。現在受給されている高齢者の世代と将来の高齢者の世代、そのバランスをどのようにとっていくのかが議論できるようになったということであります。その仕組みとしてのマクロ経済スライドが、今年4月に制度導入から10年たって初めて発動する環境が整ったということが、大きな到達点であろうと思います。

PP

 そして、御案内のように、社会保障給付費の半分は年金給付でありますので、そこがどのような動向になっていくのかというのは、国家財政に大きな影響を与え得るものでございました。これに対して、今回の国庫負担2分の1も入れながら、そして年金の給付を全体的に均衡させていくという仕組みの中で、GDP比に対する年金給付の伸びは、やや微増というところに落ちつくようになって、今後の社会保障給付費という国家財政との関係においては、医療や介護のほうのことをよく考えていかなければいけないステージに移ったと。むしろ年金に関しては、保険料率を固定することによって、将来入ってくる年金給付に使える額が決まったということになりますので、例えばいわゆる支給開始年齢の問題などにつきましても、従来のような年金財政をどうするかという観点からではなくて、支給できる総額は決まっているわけですから、年金財政を軽くするというような議論ではなくて、あくまで高齢期の働き方の観点からどうしていったらいいのかということが議論できるようになった。

 年金は、保険料率に限らずいろいろな変数があって、多元連立方程式を解くようなものでありますけれども、そのうちの一つのパラメータが固定化されたことによって、いろいろな議論が整理できるようになってきたなと感じているところでございます。

PP

 そして、年金につきましては、従来、共済年金というものがあったわけですが、今年の10月から、皆、厚生年金の被保険者であるということでございまして、まさに2号被保険者と同じ4,000万人規模の厚生年金の仕組みとなった。考えてみますと、昭和17年に厚生年金がスタートしたときには約360万人の被保険者でありました。基礎年金を導入した昭和60年当時も大体2,700万人で、その後、平成に入ってからも、大体3,200万人から3,400万人の間を前後しておりましたけれども、それが4,000万人という規模まで大きくなった。これは年金制度の安定性を考える上で非常に重要なことであると考えております。

 1号被保険者とか2号被保険者とか3号被保険者というのは、ここにいらっしゃる皆様方、多くの方は御存じかと思いますが、今回、共済の公務員が厚生年金に入ってきたことによりまして、1号厚年とか2号厚年とか3号厚年とか4号厚年という言葉ができております。1号厚年は従来の厚生年金の被保険者ですし、2号厚年は国家公務員、3号厚年は地方公務員、4号厚年は私学共済の組合員ということで、そのような幅の広い議論になってきたということでございます。

PP

 これにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、社会保障・税一体改革の中で最終的に仕上がったものでございまして、これは平成24年に、当時民主党政権でありましたが、自民党、公明党との3党協議を経て、いろいろな形で変わったのでありますが、被用者年金につきましては、基本的にこのままの形で平成24年8月10日に成立をしたということでございます。

PP

 この被用者年金の一元化につきまして、経緯について簡単に触れておきたいと思います。

PP

 端を発しますのは、基礎年金を創設しました昭和60年改正のときの閣議決定が昭和59年2月24日になされています。この昭和59年の閣議決定の中で、高齢化社会の到来と社会経済情勢の変化に対応し、公的年金制度全体の長期的安定と整合性のある発展を図るため、公的年金制度の一元化を展望しつつ、次のような改革を推進するものとするとして、1番に、要するに共通の基礎年金を支給する制度にするのだと、国民年金はそのようにした上で、厚生年金は報酬比例にするのだといったようなことが書かれておりまして、その最後の項目に、昭和61年度以降においては以上の措置、さまざまな改革を踏まえ、給付と負担の両面において制度間調整を進める。これらの進展に対応して年金現業業務の一元化等の整備を推進するものとし、昭和70年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了させると、このようなことが閣議決定をされております。

 以後、これはなかなか重たい課題でございまして、累次の閣議決定、あるいは改正法附則での検討規定なども経まして、平成19年には被用者年金一元化法案が国会提出に至りました。残念ながら、平成21年の解散によって一旦廃案になっております。これが、先ほど申し上げました社会保障・税一体改革の中で、この19年法案をベースに考えるよという方針が出まして、提出をされ、先ほど申し上げました平成24年8月10日に成立をしたということでございます。かなり長い間の議論がありました。この間、やはり公務員制度改革、あるいは官民格差の是正といった大きな流れがあって、このようなことが実現したと考えております。

PP

 この一元化法につきましては、これは後ほど御紹介しますので、こういった主要項目で改正が行われたということでございます。

PP

 ポイントは、この制度図にありますように、これまでの職域の部分が切り離されまして、いわゆる2階部分について、厚生年金になるということでございます。この10月以降、新規裁定の方については、公務員期間しか持たない方であっても厚生年金が出ていくという形になっています。そうした上で、この上の部分につきましては後ほど御説明しますけれども、旧職域が残っている部分がありますが、今年の10月以降の期間については、年金払い退職給付というものが別途出るという形になったわけであります。

 そして、これは公務員や私学共済の人のイメージでありますけれども、ここの厚生年金については、支給事務自体は共済組合が行うということになったわけであります。

PP

 今回の被用者年金一元化の主たる内容は、財政を一体化していくとかいうようなものもいろいろあるのですけれども、ポイントは、やはり官民格差の是正ということであったろうと思います。

PP

 従前は、こちらにございますように、同じ被用者なのだけれども、制度が職域ごとにいろいろ分立している。これは歴史的な経緯があって、もともと公務員は特に恩給に端を発しているわけでありますので、そういった面でいろいろ違いがあったと。2階部分についての給付設計は同じということになっておりましたけれども、保険料率でありますとか、3階部分を含めた給付水準、給付設計が異なっていたと。

 これを今回の改正の中で、厚生年金に合わせていくのだと。具体的には、公務員や私学教職員の保険料率とか給付内容を、企業で働くサラリーマンと同一にしていくというのが基本的な考え方としてできております。

PP

 保険料率についてでありますけれども、いろいろ階段が描かれておりますが、この黒い太い線が厚生年金の料率で、平成29年から18.3%になっていくということで、今は引き上がっている途中ということでございます。これに対して2・3号厚年というのは、すなわち国家公務員と地方公務員のグループでありますが、こういう階段であるところは、ここで一緒になっていく。4号につきましても、これはまだ被保険者あるいは受給者全体として制度が若いということもあって、料率が今まで低かったわけですけれども、ここも上げていって、この段階で最終的に18.3%に固定するという形で、そろえるという形にしたわけであります。まず、入りのほうをそろえる。上げていくスピードとの関係で、公務員については民間よりも1年おくれの平成30年、私学の場合には平成39年に18.3%に統一するということになっております。

PP

 給付のほうの一番のポイントは、この3階部分、職域部分を廃止するということであります。この職域部分は、これも御存じの方は多いかもしれませんけれども、この2階部分の2割に相当する部分が職域部分として従来払われております。ここの部分について、基本的に廃止をするということでございます。

PP

 どういう仕掛けになっているかといいますと、もう一つ、退職手当のほうも下げる、退職金も下げるという話がございまして、こちらの左側の下の絵のところにあります。これは人事院の平成24年3月に公表された調査でありますけれども、この時点で、調査は50人以上働いておられる企業で、実際に回答のあった3,614社の数値を平均すると、退職一時金と企業年金を合わせまして2,547万円であると。これに対して、退職手当と職域部分を合わせた公務員分が2,950万円で高いということで、ここを調整するということが既に別途なされています。これで、退職手当をまず下げたと。400万円余りもぐっと下げる。その中に職域部分がおさまるような形に設計をされているので、この新しい仕組み、被用者年金一元化後、年金払い退職給付というのがございますけれども、それはこの高さの内側におさまってくるように設計されているということでございます。

 平成27年9月までの公務員期間など、共済の期間を持つ方については、この職域部分というものが出ますけれども、平成2710月以降の期間を持つ方については、わずかながらでもだんだんと年金払い退職給付というのが支給されるようになってくるような仕組みになってございます。

PP

 この年金払い退職給付につきましては、細かい説明をいろいろつけております。簡単に申し上げますと、この左下のところを見ていただきますと、従来は終身の3階部分があったわけでありますけれども、これは終身年金と有期年金をあわせ持ったものということで、有期年金は、ここは20年と書いていますが、10年または20年の選択になっておりまして、一時金も可能なのですけれども、あとは終身年金の高さの少ないものと組み合わせる。このような仕組みで考えられているということであります。こういう形で、まず全体的な高さにつきまして、官民格差をなくしていくというのが給付面での大きな内容であります。

PP

 それから、制度的な差異につきまして、細かい点で違いがありました。もともと共済年金は退職年金であったと、厚生年金は老齢厚生年金であったという名前からも若干うかがえますように、退職に伴うお疲れさんということで出すものと、そうでないものということで、制度の生まれが違っていたということもあって、細かいところでいろいろ違いがございました。

 例えば、被保険者の年齢制限につきまして、これは皆様御案内のように、厚生年金は70歳までということになっておりますが、共済のほうは一律に、もちろん公務員としての一端の退職の年限はあるにしても、共済年金に入れる人の年齢制限はないということでございました。ただ、私学共済につきましては、70歳以上の方については基本的に加入者でないものとみなすという形で年齢制限があったわけで、厚年と同じようでありましたけれども、基本的にそういう差がまずあったというのが1番目であります

 2番目に未支給年金の給付範囲につきましては、ご覧のように、亡くなった方と生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹または3親等内の親族とありますが、共済年金のほうは遺族ということ、または遺族がないときは相続人という形で、相続人を意識したような規定になっておりました。

 3番目に老齢給付の在職支給停止に関しまして、ここはやはり公務員を退職したか、しないかということから違いがありまして、老齢厚生年金は在老が、いわゆる低在老、高在老とあるわけでありますけれども、共済の場合には、退職共済年金受給者が共済組合員と再びなったような場合については、低在老と同じような仕組みが入っていたということであります。他方、公務員で働いていて退職共済年金を既に受給している人が厚生年金被保険者となった場合には、高在老と似たような仕組みが入っている。これをそろえていくということをいたしました。

 具体的に何が違ってくるかというと、一番大きいのは、老齢厚生年金を今度、公務員のOBももらうようになるわけでありますけれども、そういった方が厚生年金の被保険者になった場合に、今度、低在老がきいてくる。65歳未満の方についての28万円のところで折れていく、一部支給停止が生じるという仕組みが今度、きいてくるということになっておりまして、今年の10月1日以前から、年金をもらいながら厚生年金被保険者であり続けた方については、一定の経過措置を設けながらも、こうやって厚生年金とそろえていくといったようなことをやっているわけであります。

 4番目に障害給付の支給要件につきましても、公務員の仕事の特性とも言えるかもしれませんけれども、保険料納付要件がなかったわけでありますが、これについても保険料納付要件を同じように課していく。

 遺族年金の転給につきましても、先順位者が失権した場合には、厚年の場合には次順以下の者については支給されないわけでありますけれども、これはいわば相続権と同じようなもので、次順者に支給されるというような仕組みになっておったわけであります。

 他方、6番目の女子の支給開始年齢について、厚生年金のほうは男子の5年おくれということでやっているわけでありますけれども、共済年金につきましては男子と同じスケジュールになっていたものを、経過措置を設けながら、基本的には全体として厚生年金にそろえていくということが行われるようになりました。

 このように、保険料率もそろえる、給付の高さもそろえる、給付の内容もそろえていくというような形になっております。

PP

 この一元化後、どのようになっていくかということですけれども、これは実務的な観点から、共済組合が年金制度の中でも実施機関として一定の役割を果たすという形になっています。特に、御案内のように短期給付、医療保険のほうの給付も行っておりますので、そういう意味で事務的な効率性を考えて、共済組合を年金制度の中におきましても生かしていくという形にいたしております。

 この2番目の赤いところに書いてありますように、一見奇妙に見えるかもしれませんが、共済組合は、徴収した厚生年金保険料、それから管理運用する1・2階積立金等に応じて厚生年金勘定に拠出金を納付します。つまり、共通財源としてこれを使いますといって、まず厚年特会のほうに出してまいります。そういう形で厚生年金の保険給付に要する費用等を全体として分担します。では、実際に支給するときにはどうなるかというと、共済組合等が行う厚生年金の保険給付に要する費用等は、厚生年金特会の勘定のほうから交付金として共済組合等に交付されて、そして、受給者の方にお支払いをするという形になっているわけであります。こういう形で、厚年勘定のところで全体的に一旦まとめるという仕組みになっています。

 そして、一元化された厚生年金制度全体を通じた財政検証を定期的に実施して、特に2階の部分について、しっかりとしていることを確認していくということになっているわけであります。今後は厚年全体として見ていくことが求められてきますし、しっかりとした管理運用が必要だと考えています。

PP

 これをやる場合に問題になったのは、積立金が共済にもそれぞれもちろんあったわけでございますけれども、共済年金は、いわゆる1階、2階、3階の区分なく保有しておりましたので、では一体どこが厚生年金の共通の費用として負担すべき部分なのだろうかということについて、区分がなかったということであります。これを決めなければいけない。もっと言うと、共済で独自の部分、3階部分の既裁定の分があるわけですから、そういうところの財源と分けてちゃんと管理して、これは1・2階で使うのだということをちゃんと意識しておかなければいけないということでありました。

 そこで、ここはこういうルールにしております。共済年金の積立金のうち、一元化前の厚生年金における積立比率に相当する額を共通財源として仕分ける。要は、厚年のほうで何年分保有しているのだろうかというのを計算いたします。単年度で1・2階の支出見込み額と、その時点における年度末における積立金見込み額、この比率を4.9年と見込まれたわけでありますが、これと同様のものを国共、地共、私学、それぞれ仕分けをしておいてくださいと。これは共通の財源ですよというふうにしたわけであります。この合計が、それぞれ左側にありますように都合29.2兆円という大きな規模のものが仕分けられ、他方、旧厚年のほうの積立金につきましては、164.8兆円がそれに相当するものとして確保されるようになりました。

 先ほどちょっと申し上げましたが、これが仕分けられたのはわかったけれども、この残りがどうなるかといいますと、この一番下のところに注3で書いてございますけれども、残りは旧3階部分の処理に充てるということで決まっているわけであります。逆に言えば、前回の数理部会などで共済からも報告がありましたけれども、その部分がちゃんと回っているのかどうかも確認をしていくということになったわけであります。

PP

 では、その積立金はどうなるのかということでありますが、積立金は、実は同じ考え方に立って、それぞれの実施機関、積立金を運用する機関が運用するということにいたしております。GPIFに全て集めてしまうというのではないですが、考え方はある程度そろえて、そして、各実施機関がその考え方をそろえつつも、それぞれの独自性も発揮しながら、適正な年金給付を確保するために必要な運用をしていくということにいたしております。

 そのためにこんなプロセスを経ておりまして、まずは最初に、この共通財源となる積立金の運用について、厚労大臣、財務大臣、総務大臣、文科大臣、関係大臣4大臣が共同で基本指針を策定いたしております。そして、この指針に適合するように、GPIF、国共連、地共連、私学事業団が、各運用主体のポートフォリオを定めるに当たって参酌すべき資産構成の目標(モデルポートフォリオ)というものを共同で策定いたしております。

PP

 どんなモデルポートフォリオかといいますと、こういう内容でございまして、これはGPIFに御関心を持っていただいている皆様方は御存知かもしれませんが、現在において、昨年からこのような割合で、従前に比べますと国内株式、外国株式の割合が高まっておりますけれども、こういった中で、パッシブ運用、アクティブ運用を組み合わせながら、必要な資金の運用を行っていくということにしたものであります。

PP

 こういうモデルポートフォリオに沿って、今度はGPIF、国共連、地共連、私学事業団が個別の管理運用方針を作成して、各所管大臣の承認を得て、そして運用する。ややこしいかもしれませんけれども、基本的な考え方をそろえながら、それぞれが運用していくということにしたものでございます。

 これは25年度ベースでありますけれども、時価ベースで厚年では123.6兆円、国家公務員では7.6兆円、地方公務員では39.8兆円、私学では3.8兆円。これらにつきまして、積立金が運用されているということになってございます。

PP

 これは先ほど御説明したとおりであります。

 以上のとおり、繰り返しになりますけれども、昭和59年から大きな課題になっておりました被用者年金一元化は、まさに現実のものとなり、今年10月から動き出しております。この1215日には、被用者年金一元化後の最初の年金支給が行われるということでございまして、これもしっかり実務を回していかなければいけないなと思っているところでございます。この姿形につきまして、財政は実質一元化されている。実施機関は分かれておりますけれども、いろいろな考え方は全部そろったということでございまして、相当な程度の一元化の形ではないかと思います。

 若干余談のようになりますけれども、健康保険におきましても、実は共済組合の組合員も法律上は被保険者と位置づけられておりまして、ただ、共済から同様の給付が行われる場合には、健保本体のほうからは支給しないというルールになっております。これから見ますと、厚生年金のほうは、まさに1号、2号、3号、4号の被保険者となり、厚生年金保険料を払っていただき、そして、厚生年金を受給していただくという意味において、相当な形ができたのではないかと考えております。

 先ほどの16年改正の財政フレームとあわせまして、今後の年金制度の当面の姿形はできたということでございますので、今後、残された課題はまだたくさんございます。パラメータが固定されたと先ほど申し上げましたけれども、そういった中で、高齢期の就労と年金の問題、支給水準の問題、あるいは高額所得者の高齢者の年金給付の問題、そういった問題についても引き続き議論し、適切な対応をしてまいりたいと考えております。

 私の説明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。

 

(拍手)

 

○山崎部会長 ありがとうございました。

 年金課長は席にお戻りください。

 続きまして、宮武部会長代理の講演を行いたいと思います。宮武部会長代理、御登壇ください。

 それでは、事務局から宮武部会長代理の紹介をお願いします。

○下島首席年金数理官 それでは、宮武委員の御経歴につきまして、簡単ではございますが、御紹介させていただきます。

 当部会の部会長代理である宮武剛氏は、昭和43年、早稲田大学第一政治経済学部を御卒業後、同年、毎日新聞社に入社、平成11年に埼玉県立大学保健医療福祉学部教授、平成19年に目白大学人間学部教授、平成24年に目白大学生涯福祉研究科客員教授に就任され、現在に至っておられます。また、現在、一般社団法人日本リハビリテーション振興会理事長を兼務しておられます。さらに、社会保障制度改革国民会議委員、財政制度等審議会国家公務員共済組合分科会会長、財政制度等審議会財政制度分科会及び同国家公務員共済組合分科会臨時委員等の重責を歴任しておられます。なお、当年金数理部会におきましては、平成18年1月から委員として御尽力いただいております。

 以上でございます。

○宮武部会長代理 宮武でございます。私の役割は、今回の被用者年金一元化をどう評価するかということです。その際、公平性、安定性、効率性という3つの面でどうかということを、私なりに報告申し上げます。

PP

 まず最初でございますが、1984年の閣議で公的年金制度全体の一元化ということがうたわれたわけでございます。その線に沿って、翌年には国民年金法を改正いたしまして、基礎年金制度が創設をされました。1階部分の一元化と言われているわけでございます。どの制度に入っていても、老後の基本的な生計費については、同じ負担で同じ給付という公平性を前面に打ち出した改革でした。それは、実は農林水産業が衰退をして、国民年金の加入者が先細りになるという危機を踏まえて、実態としては、国民年金の救済策でもあったわけです。年金史上まれに見る名手と言っていいかと思います。

 その後の一元化の歩みは、厚生年金によって、財政危機を迎えた制度の救済が相次いだわけです。国鉄、電電、専売が吸収合併され、農林共済がその後合併された。共済組合の間でも、国家公務員共済の先行き不安ということを考えて、地方公務員共済との間の財政単位の一元化が図られました。段階的な保険料の統一と財政調整によって、両組合の財政の健全化を図ったわけです。こういう流れを見ていますと、一元化というのは、財政危機に陥った制度を救済してきた歩みということが言えるかと思います。

 ただ1つ、全的統一を図る動きも確かにございました。民主党政権のもとで報酬比例一本の体系に切りかえて、税財源によって最低保障年金をつくる一元化構想でありました。ただ、自営業と被用者の間の所得の概念、実態の違い、あるいは自営業の所得把握が難しい、さらには3号被保険者という存在があって、その方たちがどっと最低保障年金の対象になるという、いかほど公費がかかるかわからない。そんな問題点が当然ながら出てまいりました。そして、制度の切りかえ自体も40年以上かかるということで、構想段階で崩れていったわけです。

 そして、今年の10月、被用者年金一元化という形で到達点に達しました。

PP

 近年における動向を少し詳しく見ますと、2001年の閣議決定において、被用者年金の「統一的な枠組み」という文言が出てまいります。このころは個別に財政危機に陥った制度はなかったですが、その中で「統一的な枠組み」とは何かということが、当事者間においては自問自答する課題になったわけであります。

 その回答は、5年後、2006年の閣議決定で出てまいります。同一の報酬であれば同一の保険料を負担して、同一の公的年金給付を受けるという公平性が、ここで政策目標として大きく打ち出されたと考えていいかと思います。その線に沿いまして、当初、被用者年金一元化法案が出され、2009年に一旦廃案になりましたが、ほとんど同じ内容のものが2010年の民主党政権下で成立し、201510月、自民党政権下で施行されたという運びになります。

 これを見ておりますと、主要政党間においては、被用者年金一元化は合意を得て進められたことが分かります。もう一点は、官民格差に対する根強い批判、あるいは年金記録問題に代表されるような制度に対する不信とか不安、これを払拭するためには、制度全体の信頼を取り戻さなければいけない背景のもとに、被用者年金一元化が進められてきたのだろうと思います。

PP

 被用者年金一元化を公平性の面から見た場合、どう評価できるかでございます。当年金数理部会は、2004年の年金の改正時に、公平性とは何かということに対して、同じ年金給付に対する保険料水準に差がないことということを挙げております。そして、それを実現するためには、被用者年金制度の財政単位の一元化を図るほか、この保険料の差を完全になくすことはできないということも指摘をしております。

 あわせまして、当時、厚生年金は最終的に18.3%に上限固定するという流れの中で、国共済、地共済、私学の保険料率は、2020年以降も16%台にとどまるという試算を打ち出したことは、この保険料の格差に対して大きな一石を投じたのであろうと思っております。そして、保険料は、先ほど間課長が申されたように、18.3%で次第に統一されることになりました。

 もう一つの不公平性というか、それは官民格差の部分でございますが、もともと恩給時代の制度を源にしているのが職域年金ですので、その残滓とも言えるものがありました。3階部分のいわゆる職域部分は今回廃止になりまして、新しい3階部分については、完全な積立方式の、いわば民間の企業年金に相当する仕組みを設けようということになりました。追加費用も削減をされ、遺族年金の転給とか在老制度の厚生年金との差異も全て厚生年金を基準にそろえるということで、ここで公平性は大きく高まったのではないかと私は思っております。

PP

 次に、安定性の面でどう見るかということになります。これも年金数理部会は、安定性というのは、給付水準が急激に引き下げられるおそれとか、あるいは老後の基本的な部分が支えられなくなるおそれがないことという定義をこれまで掲げてまいりました。2004年改正の段階を踏まえまして、保険料が上限固定をされ、マクロ経済スライドという手法で緩やかに給付水準を調整していき、所得代替率50%は確保する。そういう財政フレームの定着と今回の一元化を踏まえまして、新しい定義を出しております。「持続可能性と給付の十分性が将来にわたり、ともに保たれている状況にあること」ということであります。

 具体的な評価ポイントとしては、共済組合はそれぞれ実施機関として残りますので、実施機関ごとに将来にわたって積立金が枯渇することなく給付を確実に行えること。もう一点は、被用者年金の安定性というのは、基礎年金の給付水準を決定する国民年金の安定性をあわせて確保するということ。この2つがポイントになります。これについては、後ほどもう一度触れることにいたします。

PP

 そこで、とりわけ安定性に寄与するものは何かということでございますが、保険料率の統一というのは大きな意義があると思います。共済側は、報酬全体18.3%を乗じて新しい共通財源へ拠出することになります。賃金が比較的高い共済側に対して応能負担の原則が適用されるということになるわけです。従来、基礎年金は頭割りの拠出でございますので、比較的賃金が高い組織は割と安い費用負担で済んだわけでありますけれども、今回の応能負担の原則の徹底によりまして、新しい厚生年金の中では完全な報酬比例の形の拠出となって、従来の高賃金者ほど負担が低いという逆進性は解消されると見ていいと思います。

 1つ注意しておくべきことは、比較的高い共済側と合体することによりまして、所得代替率が下がるということになりますので、ある意味では、守るべき所得代替率50%に近づく時期が早まるというリスクが副作用として生じてくるかもしれません。

 それから、積立金の配分・移管でございますが、厚生年金の積立比率を基準にして共済側から共通財源に移管されるということです。御承知のように、積立比率は保険料の収入なしに積立金で何年分の給付財源を持っているのかという指標です。厚生年金は4.9年分ですので、それに合わせて共済側が共通財源へ積立金を移管することになります。

 これまで3公社の救済合併の際、それから農林共済の救済合併の際にも、実は確定給付分というのが基準にされて、積立金が移管された経緯がございました。確定給付分というのは、積立方式であった場合に、再評価分であるとか、スライド分を除いて積立金として義務的に積み立てておかなければいけない金額をあらわしているわけでございまして、世代間扶養対応部分を除いて、積立金対応部分だけを持ってこいという形の仕切りでございましたが、既に有限均衡方式に全体が切り換わる中では、確定給付分は現実にはなかなか区分けができない事情があったのではないかと見ております。

 同時に、これまでの救済合併というのは、一種、持参金とよく言われましたけれども、困っているところを吸収合併してあげるのだから、ちゃんと持参金は持ってこいという方式でございました。現に、国鉄とたばこの場合は、積立金の確定給付分が足りずに、事業主が新たに負担をして持参金を用意したという経緯もございました。今回は3共済ともに、特に財政危機を今、迎えているわけではございませんので、いわば対等合併ですので、その中で分担金としては積立比率が一つのよい指標になったのではないかと思います。

PP

 次に、3共済が新しい厚生年金グループに加入することによって、約440万人の被保険者の増加をもたらして、これは当然ながら、母集団の安定をもたらすと考えていいと思います。共済側は、従来の一種の恩給時代の残滓と言える特典を剥がされたり、あるいは追加費用の削減に遭ったりということで、不平不満をもちろんお持ちになっていると思います。しかし、中長期的な被保険者の激減という危機を事前に回避できたというのは、共済側にとっても大きな意味を持っていると思います。

 組合員数の推移見込みをここに載せてございます。国家公務員、地方公務員、私学共済とも、2040年ぐらいの時点で既に2割近い組合員の減少が見込まれております。2110年になりますと、いずれも3分の1ぐらいになりまして、自衛官も警察官も姿を消していくようなすさまじい少子化の図が描かれているわけでございます。もちろんこれは、現在の総人口に占める各組合員の人数の比率をそのまま将来に投影した場合の図です。少子化を克服すれば、この将来の投影図ももちろん大きく変わるわけであります。そういう意味では、我々の年金制度どころか社会全体に対する警告というものが、この推移見込みが示していると思っております。

PP

 最後は効率性を見た場合、どう評価すべきかということでございます。共済組合は実施機関として残って、各種の業務を続けます。積立金についても、共通財源と旧職域の部分、そして新しい積立方式、この3種類の運用を続けることになります。現実に健全な運営をしているところから、年金業務、積立金の運用業務だけを切り分けるということになりますと、むしろそれはコストがかかりリスクが発生をする。今のままやらせたほうが効率的であるという判断であったかと思います。現実的な対応策であったと思います。言ってみれば、機能的な統合にしたわけであります。ただ、実質的には保険者として残って、その間で財政調整方式になるわけでございますので、それをどう評価するかということになるかと思います。

 年金数理部会の議論の中で、山崎さんが大変貴重な提言をなさって、ああ、そういうことかなと思ったことが1点ございました。例えば、公務員共済の場合は保険料の収納率は完璧に100%ですね。私学もおそらくほぼ100%。しかし、厚生年金の保険料収納率は98%ぐらいということになりますと、その差はどうやって実務上調整をされるのかななどという御意見を聞いていて納得したわけであります。そういう問題点が残ります。

 それから、実施機関ごとに決算をすることになり、それをまとめて公的年金として、いわば連結決算をするわけですので、第三者がチェックしていくということも、もちろん必要になってくる。それが年金数理部会のこれからの役割かと思っております。

 それと同時に、共通財源を分散管理することは是か非かという問題も起きてくると思います。もちろん、共通の運用方針、そして共通のポートフォリオに基づいて運用がされるわけですので、余り大きな差はないけれども、ぴったり合うわけではないわけですので、各実施機関で丈比べをしていくという緊張関係をもたらすというメリットはあるかと思います。

 しかし、もう一歩踏み込むと、ある実施機関がほかの実施機関よりも多くの運用益を得たとしても、それは自分の懐に入らないわけでございます。共通財源へ拠出するということになりますと、知恵を出し、汗をかくというインセンティブが生じるのかどうかなという疑義が残ると思います。

PP

 最後でございますけれども、残された課題は何かということであります。被用者年金の一元化によって、公的年金の一元化は完了したのかどうか。今の時点が終着駅なのか、あるいは途中駅なのかという議論はやってみる必要があるかと思います。

 これから先の制度の安定性、給付の十分性を図るときに一番気がかりなのは国民年金になります。マクロ経済スライドの適用によって老齢基礎年金の給付水準は将来的に実質3割減に陥っていく。これで給付の十分性が担保できているのかということは、最も気がかりな点でございます。

 また、100年先までも1年分の積立金が残っているのかどうかということになりますと、今回の財政検証は8通りのシナリオを描いておりますが、その中で、労働市場参加が進まない、経済情勢も非常に悪いというケースHを見ますと、2026年度には所得代替率が50%に達し、その後も機械的に給付水準の調整を続けて行うと、国民年金は2055年度には積立金がなくなって、完全な賦課方式に移行していくという、いわば最悪のシナリオを描いております。そういうことがないことを祈りたいわけでありますが、そういうことも想定をして、これからの年金の運営をしていかなければいけないこともまた確かであります。1階部分は積立金がなくなる。2階部分はまだあるよ。それでいいのか。亡くなった塩川正十郎・元蔵相が特別会計に関して名言を吐いておられますけれども、それをもじって言えば、1階でおかゆをすすっているのに、2階ですき焼きを食っている。それでいいのか。そういう1階と2階の関係性というものを、これからどう考えるのかということであります。

 第2点としては、大規模化、母集団の拡大は、もうここで限界、頂点に達したわけであります。頂点に達していながら、少子化というものは全体の年金制度にもそのまま襲いかかってくるわけでありますので、中長期的には全体の被保険者数はやはり減ってまいります。しかも、財政検証で所得代替率50%を維持するという場合は、労働市場の参加進展が条件でございまして、2030年で労働力率は男性60代後半で67%、女性が子育てなどのために職場を離れざるを得ないM字カーブに当たる2544歳あたりでも80%台後半ぐらいの高い労働力を前提としているわけですので、こういう目標が達成できなければ、安定性は確保できないわけです。

 これらの問題についてどういう解決策があるかについては、財政検証のオプションでも例示がされております。

 国民年金の加入期間を40年から45年に延ばす。これは明らかに給付の十分性を確保できる人々をふやすことができる有力な方策であると思います。

 また、短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大をさらに強化していくということ。これもまた、老齢基礎年金だけに頼らない人々をふやしていく。勤め人でありながら勤め人扱いされていない方たちを正当に遇していくということも含めまして、極めて大事な取り組みだろうと思います。

 また、マクロ経済スライドをデフレ下においてもフル発動していくということは、早く調整を終えて、そして積立金をより若い世代に残してあげるためにも必要な方策だろうと思います。こういうことが当面大きな課題になる。

 もう一つ、もっと先の問題として、私は、1961年度に国民皆保険体制をスタートさせたとき、自営業者向けの国民年金をつくった。しかし、自営業の所得把握は難しいということで、「当面の間」はということで保険料は定額にされたわけですが、これが半世紀を超えてもなお是正されていない。低所得者に対しては大変逆進性の高い定額の保険料でありますし、こういう形の保険方式の年金を持っている国はどこにもないわけでして、永遠の宿題にしていいのかということも、やはり問われると思います。何とかマイナンバー制度等の普及や強化によって定率負担にできないのかということであります。

 それと同時に、1階部分の一元化は割と早い時期に済ませ、31年がかりで2階の一元化を実現した。しかしながら、1階と2階部分の関係性についてはどうか。互いにその間に財政調整を行う必要はないのか。あるいは将来的には1階、2階部分の一元化が可能ではないのか、かなり長いスパンで見た大きな宿題は残ったのではないかと思っております。

 以上、30分ということでございますので、ほぼ時間を費やしました。

 御清聴ありがとうございました。

 

(拍手)

 

○山崎部会長 ありがとうございました。宮武部会長代理は席にお戻りください。

 続きまして、事務局、よろしくお願いします。本日は、会場の皆様に向けて、演台からお願いします。

○下島首席年金数理官 首席年金数理官でございます。少しお時間をいただきます。

PP

 現在の年金数理部会は、御承知の方も多いと思いますけれども、平成13年の年金制度の一元化の閣議決定の要請に基づきまして、設立されたという経緯がございます。しかしながら、実際には、昭和55年に設置されました旧総理府社会保障制度審議会年金数理部会が前身になっているということで、現在の数理部会は、そのときの業務をいわば引き継いで行っているということでございます。

 以来、現在に至りますまで、年金数理部会は公的年金の財政、制度の安定性及び公平性につきまして、専門的・中立的な立場から制度横断的に、さまざまな検証、分析、評価をし、また、さまざまな情報提供、提言を行ってきたわけでございます。特に年金制度の一元化につきましては、大きな役割を果たしてきたわけでございます。本日は、若干のお時間をいただきまして、年金数理部会の活動につきまして、簡単に事務局から御紹介させていただきたいと思います。

PP

 現在、年金数理部会が行っている事業は大きく2つでございます。一つは、毎年度の決算の検証です。もう一つは、5年に1度、各制度が財政検証・再計算を行います、こちらの財政検証。厚生年金、国民年金が平成16年の改正以後、平成21年から財政再計算という言葉を使いませんので、年金数理部会の財政検証はレビューという言葉を添えさせていただきますけれども、従来からそういった決算、財政計算の検証、レビューを行ってきているということでございます。

 いずれも、まず各制度からいろいろデータを提出していただいて、担当者からヒアリングをさせていただくということ。それから、数理部会でいろいろな分析、検証を行って、こういった報告書を取りまとめてきたという経緯でございます。

PP

 次に、年金数理部会で行っている具体的な分析について、幾つか御紹介させていただきたいと思います。

 まず、公的年金制度の横断的な分析ということで、3ページの図は、公的年金制度の主な財政的なお金のやりとりをお示ししているわけでございますけれども、ここでは被用者年金一元化前の形でお示ししてあります。まず、基礎年金につきましては、各制度が拠出金を拠出する。一方で、一部交付金という形で返ってくるということ。それから、国共済、地共済におきましては、平成16年に財政単位の一元化が達成されています。独自の財政調整を行っている。それから、今回の被用者年金の一元化で廃止されましたけれども、旧JRJT共済に対する支援というものが行われている。

 このように各制度、公的年金制度間においてはいろいろなお金のやりとりが発生しているということで、各制度の財政状況を単純に合算しても、なかなか制度全体の財政が見えない、実質的な収支が見えないというような問題があります。

PP

 数理部会では、このようないろいろ複雑なお金のやりとりの要素を排除して、制度全体での実質的な収支というものを従来から作成して、お示ししているということでございます。

PP

 続きまして、財政状況の指標化についてでございます。年金数理部会では、従来から、いろいろ指標を使って財政の特徴をお示ししているということで、この財政指標によって各制度の大まかな財政状況の特徴がわかるということでございます。ここでお示ししているのは例示ですけれども、例えば年金扶養比率、これは老齢年金の受給者に対する現役の被保険者数の割合といいますか比率、何人で老齢年金の受給者を支えているかというような指標でございます。

 それから、総合費用率。こちらは、賦課方式で各制度が運営したらどれぐらいの保険料率になるかという指標でございます。

 それから、独自給付費用率は、今の総合費用率のうち、2・3階部分の費用率ということでございます。

 それから、収支比率は、収入に対する支出の割合。

 それから、積立比率。こちらは、先ほどから一元化の際の積立金の仕分けというような形で使われたということですけれども、このような指標を従来から数理部会では用いているということでして、例えば人数面で見ましても、あるいは費用面で見ましても、国共済、地共済につきましては、厚生年金よりも言ってみれば成熟化が進んでいるように見えるわけですけれども、一方で、積立比率を見ますと、積立金の水準は国共済、地共済、特に地共済が厚生年金よりは積立金を持っているということです。そういうことで、一概に一つの指標で財政状況が語られるということではなくて、こういった指標を組み合わせて、総合的に各制度の財政の特徴を把握するということに使ってきているわけでございます。

PP

 こちらは、被用者年金一元化を踏まえて、一定の割り切りのもとで被用者年金全体の財政指標をつくってみたということで、先ほどの各制度の財政指標と比べまして、一元化するとどのように財政状況が変わるのかがわかるということでございます。

PP

 それから、次が積立金の実績と将来見通しとの乖離分析でございまして、実績と将来見通しとの乖離分析というのは数理部会のいろいろな分析の中でも非常に重要な分析になるわけでございます。とりわけ、積立金の乖離分析というのは非常に重要ということでございますけれども、例えば、25年の積立金の実績と将来見通しとの乖離は次のような考え方で行われているわけでございます。

 まず、将来推計の足下の21年度の積立金の乖離がどのようであったかということ。2番目としましては、2225年度の名目運用利回りが将来見通しと異なったことの影響がどうだったか。それから、2225年度の運用収入以外の収支残が将来見通しと異なったことの影響はどうだったかと、大きく3つにまず分解する。

 さらに、この(B)です。名目運用利回りの乖離の分につきましては、さらに詳細に分析できるということで、名目運用利回りの中で名目賃金上昇率相当分とそれを上回る分、実質運用利回り、スプレッドとかと言っていますけれども、そのように分けて、それぞれの影響を見る。それぞれに相当する運用利回りが異なったことの寄与を見る。

 (C)でございますけれども、その他の収支残ということで、こちらも名目賃金上昇率が異なったことの影響。それから、名目賃金上昇率以外の要素が異なったこと。さらに、人口要素が異なったことの影響というように分解することができるという、こんな分析を数理部会ではやっているわけでございます。

PP

 その結果がこちらでございます。個々の数字はご覧になっていただければと思います。

PP

 さらに、積立金の乖離結果によって、将来見通しに比べまして、財政状況がよくなったのか、悪くなったのかということが評価できるわけでして、そちらの評価を行っているわけです。ただし、名目額としてのそのままの積立金の乖離では、必ずしも財政状況の好転・悪化が評価できないということでして、年金数理部会では、このような考え方で積立金の分析を行うことで財政評価を行っているということでございます。

 まず、公的年金においては、保険料や給付費など収支両面とも、長期的にはおおむね名目賃金上昇率等に応じて増減すると言うことが一応できる。

 したがって、積立金が財政検証・再計算の見込みから乖離しても、その乖離が名目賃金上昇率の予測と実績の乖離の範囲にとどまっている限り、長期的な財政の均衡には大きな影響がないと言えるわけでございます。

 そこで、将来見通しにおける名目賃金上昇率等の前提と実績との乖離の影響を反映させた積立金。反映させたといいますか、要は将来見通しの名目賃金上昇率の前提を実績の賃金上昇率に置きかえて、その影響を排除して、積立金の推計値を計算し直すということをやっているわけです。この計算し直した積立金が評価の基準となる積立金額というものでございまして、これを用いる。

PP

 こちらと実績との比較をする、そういう形で財政状況の評価、見通しに比べて実績がどうなっているかと。よくなったのか、悪くなったのかという評価をしてきているということでございます。

PP

11ページは、25年度末の財政状況の評価結果ということで、これは厚生年金の場合ですけれども、当初の将来見通しが100だったのに対して、評価の基準となる積立金額、計算し直した積立金額が推計される。これに対して実績がどうだったかと。この場合ですと、実績のほうがよかったと。要するに、名目賃金上昇率が低かったがために、財政的にはこんなに積立金がなくてもこれぐらいでよかったものを、実際にはこんなに持っている。そういうふうに分析してきているということでございます。

 なお、こういった積立金の乖離分析による財政状況の評価方法ですけれども、近年にあったようなデフレ状況下においては、先ほどありました給付は名目賃金上昇率に応じて増減するというような前提が、必ずしもそういった原則が成り立たない状況が実際に生じてきているということが一つあります。

 また、予定されたマクロ経済スライド調整が発動しなかったというようなことの影響についても、こういった分析だけですと十分評価ができないといった面もあるように思われます。したがいまして、年金数理部会としましては、財政分析の手法のさらなる改善等につき、引き続き、検討、工夫を行っていきまして、これからも国民にとりまして有用な情報が提供できればと考えているところでございます。

PP

 現在、年金数理部会では、26年財政検証・再計算のレビューを行っております。各制度からのヒアリングを先月までに終了しまして、鋭意、分析、取りまとめ作業を行っているところでございます。

PP

 最後に、被用者年金一元化後の年金数理部会の財政検証について、少しコメントさせていただいと思います。

 今回の被用者年金一元化につきましては、各制度が実施機関ということで残って、いわば一種の財政調整を行いながら、実施機関ということで各制度がそれぞれ保険料を徴収し、給付を行い、積立金を運用していくというようなことでやっていく仕組みでございますので、導入された財政調整等の一元化の仕組みが今後適切に機能し、実施機関ごとに将来にわたり積立金が枯渇することなく給付が確実に行えるか。そういった検証をしていく必要があるのだろうと思います。

 それから、もちろん、被用者年金一元化後の新厚生年金、大厚生年金について検証していく必要があるということで、各制度が取りまとめる決算状況を総合的に取りまとめて、数理部会で検証していく必要があると考えております。

 今後とも、年金数理部会としては、このような世の中に求められる有用な分析、評価、提言、そういったことをやっていきたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。

 以上でございます。

○山崎部会長 ありがとうございました。

 ここで一旦休憩といたします。

○下島首席年金数理官 これより15分間の休憩といたします。再開は1540分からといたします。よろしくお願いいたします。

 

(休  憩)

 

○山崎部会長 それでは、休憩前に続き、部会を再開いたします。ここからは、委員同士の意見交換の後に、会場からの御意見やコメントをいただければと思います。

 いろいろ用意している話題はあるのでございますが、意見交換の順序といたしましては、簡単に今回の一元化までの道のりを振り返った上で、本論は今回の一元化をどう評価するかということ。そして、特に年金財政にどのような影響を与えるかということあたりを議論していただき、その上で、今後の残された課題まで話し合うことができればと思います。そして、この間、年金数理部会がどのような役割を果たしてきたのか、一元化後の新たな役割はどういったところにあるのかと、こういう順序で話を進めてまいりたいと思います。

 宮武さんが、途中駅なのか、終着駅なのかという、考えてみるとかなり深みのある発言をされたのですが、同じようなことは、一里塚なのか、最終的な到達点なのかということを、政策の渦中におられた方も最近口にしておられました。

 私は、昭和50年代あたりからずっとこの間を振り返ってきまして、相当な高いレベルまで上り詰めつつあるなという感じがいたします。ただ、何事も、そうは思ったけれども終わっていなかったというのも歴史の真実なのだろうと思うわけでございますが、きょうの話は、昭和59年の閣議決定がスタートラインで、翌年、基礎年金が導入されて、10年後には一元化を完了させるというのが昭和59年の閣議決定のスケジュールでございました。それが、昭和60年、1985年の基礎年金の導入から30年後、やっとここまでたどり着いたというわけでございまして、当初のスケジュールからすると20年もおくれたということになります。基礎年金を創設すること自体が、それまで10年くらい、大きな議論を経たわけでございますが、この2階の一元化というのは、非常に時間がかかったと思います。

 農林共済を統合するに至った審議会として、公的年金制度の一元化に関する懇談会というものがありまして、平成13年にそれを受けて閣議決定が行われているのですが、被用者年金一元化は21世紀初頭の間に完了させるとありまして、これは誰もいつのことかわからないのですね。何も書かないわけにはいかないから書いたというようなスケジュールでございまして、21世紀半ばではいくらなんでも遅いだろうと。それより早い時期にという漠然とした感じでございました。

 私自身は、四半世紀という言葉がありますから、2025年頃までにはということかなと漠然と思っていました。高齢化の進展ということを考えても、2025年あたりまでには何とかしなければいけないのではないかと思っていたのですが、当時の感じからすると、それよりも早く着地したという感じがしております。

 実は、宮武さんの報告にもありましたが、基礎年金の一元化後の被用者年金制度間の調整というのは、財政問題が契機になって統合を進めたということでございますが、今回は対等合併である。そういう意味では画期的だったと思うわけでございますが、平成16年のマクロ経済スライドを導入した年金法の改正があったわけでございますが、その改正法の附則で一元化の検討を引き続き行うという規定が入りました。当時、年金福祉施設の問題だとか、あるいは政治家の年金未納の問題があり、そして民主党が、全制度、1階も2階もない単一の制度に統合し、さらに、最低保障年金を入れるという意欲的な構想を出していて、それへの対応として、自公としては、被用者年金の一元化というものを急がざるを得なかったのではないかという印象を持っております。

 ちょっと話が長くなりましたが、この間の経緯を振りかえって、それぞれ委員の方から印象のようなのものがありましたら。私は、相当高いところまで登ってきたなと言ったのですが、宮武さんの話だと、まだまだ先はあるよという、その辺の幅があることかと思いますが、いかがでしょうか。

 野上さんから。

○野上委員 この間の動きから振り返りますと、破綻年金の救済という面もありますが、どちらかというと、高い年金を受けておられる方の統一化の動きというのもあったのかなと思います。

 今回、被用者年金一元化ということなのですが、その中で給付も保険料も統一されたということですが、かといって、いろいろな職域の中で、公務員の方もおられるし、民間もおられますし、民間の中も正規、非正規というのもございます。その辺の格差というのは厳然としてあるわけで、それを一つの制度の中でいろいろ目配りしながらやっていくというのが今後の課題ではないかと思います。この辺がまた今までよりもさらに難しくなってくるのではないかなという感想を持っています。

 以上でございます。

○山崎部会長 田中さん、いかがでしょうか。

○田中委員 一元化については、マスコミ報道以上のことを余り勉強していないのですけれども、印象としては、海外でこういった一元化という動きが必ずしもあるわけではなくて、職域による縦割りの制度というのがいまだに公的年金では多いと思うのです。このように、ある意味では大胆に官民同じ制度でつくり上げたということは、日本は非常にそういう意味で平等志向の強い国なのかなというのをまず感じました。

 とはいうものの、そもそも官民格差ということが最初に言われて、その後、民主党の新年金構想というものがあって、そのときにもう一元化法はできていたのですが、その後廃案になって、そしてほぼ同様の法案が成立したということで、数年間無駄にしたなという思いもあります。

 ということで、今回の到達点は到達点でいいのですが、ちょっと不徹底なところもあって、やはり共済組合そのものはもちろん残るわけでして、それ自体はそれでいいと思うのですが、いろいろな意味での業務の重複とか運用も分散化していることから、今後、改善すべき点がまだ残っているのではないかという印象を持っております。

 以上です。

○山崎部会長 いかがでしょうか、佐々木委員。

○佐々木委員 きょうは年金課長とか宮武委員のお話を聞きまして、一元化が構想されて、早かったのか遅かったのかはわかりませんが、やはり20年、30年と非常に長期のスパンといいますか、そういうことで非常に関係の方のいろいろな御努力があったのかなと、改めてきょう御説明を聞いてそう思いました。

 ただ、この一元化も含めて、これからより超高齢化社会の中でいろいろな克服すべき、年金だけをとっても一元化以外にいろいろな問題が多くあると思うのですが、そういうことをどのようにやっていくのか。そういう現状とか方向性、これは国民の理解も得ながらどのようにやっていくのか。その辺が非常に重要だと、きょう改めて思いました。

 以上です。

○山崎部会長 翁委員、いかがですか。

○翁委員 私も、今回の被用者年金一元化につきましては、範囲の拡大による年金財政の安定化とか、先ほど細かく御説明がございましたけれども、例えば官のほうの退職手当の引き下げによって官民格差を是正するといった取り組みにようやく成功してきておりまして、非常に大きな一歩だと思っております。

 もちろん、先ほど年金課長の御説明のところで、積立金の概算仕分けが非常に問題で議論があったということで、20ページのところで御説明がありました。例えば仕分けの際の積立比率の4.9年というところで共通財源化をしたというようなことの仕分けの仕方とか、先ほど御説明がありましたけれども、各年金によってそれぞれ積立比率も、また成熟度も違う中で、どのように分けることが本当にフェアなのかということについては、いろいろな議論があり得ると思っております。ただ、こういった形でスタートしたということについては非常に大きな一歩だと思っております。

 ただ、私も、まだ途中駅ではないかなと思っております。いろいろな課題があると思っておりますが、それは次の御質問のところでしたいなと思います。

○山崎部会長 駒村委員。

○駒村委員 日本の年金制度の戦後の歴史は、人口増加社会と高成長を前提にして、制度ばらばらというか、職域ごとにばらばらにしてきた前半部分の歴史があるわけですね。これは共済グループだけではなくて、厚生年金基金も含めてばらばらにやってきたというところが、この低成長と人口減少、高齢化社会を前にして、これはまさに宮武先生の言葉のとおりでございますけれども、安定性という点から、ばらばらの単位では成り立たなくなってくるという不安です。

 それからもう一つは、公平性という点で、官民格差の問題や基礎年金の低所得者グループと高所得者グループでの再分配、効果というところで、安定性と公平性を改善した効果が今回の一元化にあるのではないかと思います。

 ただ、効率性という点では、やはり運用がばらばらで行われているということが、果たしてどういうことになってくるのか、ここは一つ課題かなと思って見ています。

 これは今後の課題でありますけれども、私も宮武先生とかなり近い見方を持っているのですが、基礎年金の水準が、基礎年金の財政構造上、マクロ経済スライドが100年後に積立金1年分持つまで調整し続けてしまうという構造になっている、ここの課題が大きくなってくる。こうなってくると85年フレームが今後どうなっていくのかというのは、ちょうど85年改正から30年たっているわけですけれども、どう考えるかという時期に、もしかしたら次のステップで考えなければいけないのかなという印象も持っているところです。

 以上です。

○山崎部会長 宮武さん、既にお話しいただいたのですが、皆さんの話を聞きながら何か感じておられることを。

○宮武部会長代理 30年間で被用者年金の一元化に達したわけでありますけれども、やはり振り返って見ると、産業構造と就労構造の激変というのは物すごく大きな波であって、かつては国鉄一家とか電電一家といって不沈空母のように言われていた集団がもたなくなっていくことのすごさを感じます。また、国家公務員も地方公務員も、潰れるわけがないわけですけれども、少子化という大波の中では、あらがいがたい状況になっていって、統一する方向へ向かわざるを得なかった。そのすごさを感じると同時に、単純に安定性を求めるだけではなくて、公平性を前面に掲げて、この一元化に到達したというのは、関係者の知恵であり、当事者それぞれに我慢を随分されて、やっと到達したのだなという感慨は覚えるわけです。

○山崎部会長 最近、官民格差という言葉を急に聞かなくなりましたね。これは今回の一元化がかなりきいているのでしょうかね。

 実は、昭和50年代初頭から始まる話なのでございますが、1つは、当時、福祉年金の受給者が非常に多くて、また、国民年金も期間の短い受給者が非常に多くて、そういった経過的な低い年金をどう底上げしていくかという話と、一方で、官民格差で追加費用ということの本当のことがわからないまま、政治家の間で膨大な隠し財源が共済組合に流れているという話もございましたが、それは別にしても共済年金と厚生年金の格差をどう解消していくかという話、この2つの流れから基礎年金が創設され、さらに今回の一元化に向かう流れができていったのだろうと思うのですが、そういうことになると、今回、追加費用も削減し、かつての恩給期間についても思い切ったメスを入れたわけですね。これは受給者の方、対象になった方にとっては大変な御不満のようでございますが、ある意味で既得権にも大胆にメスを入れたということでございます。

 それから、大体どこの国でも公務員グループは恩給を残しているところもありますし、あるいは職域年金として相当いいものを持っているのが普通でございますが、それも今回、完全に整理してしまったということですね。

 今回の職域加算を廃止する前の段階で話をしますと、正確に言うと平成18年の人事院調査よりも前でございますが、基礎年金を入れたときに、2階部分の共済は基本的に厚生年金に準じた仕組みにして、その上に3階部分として公的年金としての職域加算を設けた。それから、公務員の退職手当は民間の退職一時金と企業年金とのバランスをとっていた。つまり、人事院が民間の企業年金・退職一時金の調査をしまして、年金については一時金換算して、それとの比較で公務員の退職手当を決めてきたのです。

 したがって、60年改正の時点では、相変わらず職域加算部分だけ公務員のほうが恵まれていたわけでございますが、平成18年の人事院調査以来、退職給付という概念で民間の一時金、企業年金と公務員の職域加算と退職手当の合算額の均衡をとるという考え方になりまして、これは実は、先ほどありました平成18年の閣議決定と同じ時期なのです。この時点で公務員と民間との間が賃金、公的年金、そして退職給付、全てにわたってバランスをとるということになりまして、かなり徹底して公平な措置をとったということでございますが、どこの国でも公務員は別だよねという話をよく聞くのですが、この辺、翁さん、いかがですか。公務員だけは、やはりどこの国でもいいのだと。

○翁委員 よく把握しているわけではないのですけれども、公務員は別になっている例もあるのではないかと思います。

○山崎部会長 ですよね。

 駒村さん、どうですか。

○駒村委員 そういう国もあるかと思いますけれども、先ほども宮武先生がおっしゃったように、まさに就業構造と人口構造がそれを許さないぐらい厳しい状態に来ているのではないかと思います。

○山崎部会長 これが一つの日本的な到達点かなと私は思っております。長い間、官民格差が議論されてきた中では、相当な達成をしたのかなと思っております。

 それから、既に今回の一元化の評価の話になっているのでございますが、少し不徹底な部分があるのかなという話がありましたが、田中さん、そんなことを言っておられましたね。

○田中委員 先ほどの積立金運用の部分なのですが、おそらく共済組合の業務を一元化すれば、もちろん効率的な面もあるし、効率的ではない面もあるのかもしれませんが、事積立金運用については、いくつも組織をつくって運用させるということはおそらく非効率であって、そこを一元化したほうがいいのではないかと私は思っています。

 ただ、ひょっとして、もし競争させようという場合は、いくつかファンドを分けて、それぞれ競争させて、それなりのインセンティブを与えるとか、そういったことをやらない限り、何のために運用しているのかと。運用している担当者の意欲というのがそがれてしまう危険性もあるし、そこはやはり見直していかれたほうがいいのかなと思っています。

○山崎部会長 という話なのでございますが、翁さん、いかがですか。

○翁委員 私も同じ意見を持っておりまして、やはり給付と負担というのはそれぞれ一元化したわけですが、運用はそれぞれが行うということで、もちろん、基本ポートフォリオという形でそろえるわけでございますが、それぞれの年金によって微妙に違ってくるわけですね。そういたしますと、先ほどまさに宮武先生がおっしゃったように、まず、インセンティブの問題というのは非常に大きいと思います。結局それが共通財源のところに集約されてしまうとすると、運用をうまくやっていこうというインセンティブが働きにくいというのが非常に大きな問題としてあると思いますし、また逆に、損失がどこかのところで出てしまうということも、例えば東京電力の例などもありますが、非常にそうした株式を多く持っていたとか、そういったことがあったときに、その損失の帰属はどうなるのだと。そういったことも含めて、やはりここの運用のところというのは課題があるのではないかと思っております。

○山崎部会長 うなずいておられる方が多いのでございますが、野上さん。

○野上委員 一般論としては、運用というのは、分けて運用しても一緒に運用しても、同じポートフォリオで同じような考え方でやれば同じような結果が出るので、まとめてやったほうが効率的ですねというのは、それはそうだと思います。ただ一方で、実際問題として全体を一緒に運用するとなると、例えば190兆円を、今言われているのはフォワードルッキングなリスク管理で、というと、かなりリスク管理に力を入れるような趣がありますが、実際問題としては将来のシナリオに基づいて運用するということですので、そうなると単一シナリオで190兆円動かすというとてつもない大事業になってくるわけでございまして、こうなってくると、やはりリスク管理の観点からは、ある程度分散してやっておいたほうがいいのではないかという議論は当然あるのではないかと思います。

 例えば、今、大きく言って4つ、細かく言うともっと細かく分かれているようですが、その中でリスク管理の面で違う考えでやっておられるところも現にあるわけで、その辺はやはり一種の牽制効果みたいなものがあるのではないかと思っております。

○山崎部会長 佐々木委員、いかがですか。

○佐々木委員 なかなか難しい議論だと思うのですが、ただ、今回もポートフォリオの大きな変更があったわけですね。従来、内外の株式2割を今回は5割、ちょっと運用の幅がありまして、もう少し大きいのかもしれませんが、基本的にはポートフォリオをどう考えるかということが非常に大きな課題だと思うのです。それを分割したからどうかということは、どうなのかなということもありますし、その辺は分けるメリットももちろんあるだろうと思うのですけれども、基本的にはポートフォリオをどう考えるかということが、私は一つ大きな課題かなと思います。

 決して今回のポートフォリオの変更が悪いということではないのですが、運用の成果というのは、大体ポートフォリオの分け方、決め方によって相当数が決まるというのが一番のベースですから、そこをどう考えるかということが大きな課題かなと思います。もちろん、運用の効率性からいうと、統一した組織でやるのが基本かなと思っています。

○山崎部会長 御意見ございますか。

 どうぞ。

○宮武部会長代理 共通の指針、基本指針は、厚生労働大臣、財務大臣、総務大臣、文科大臣が共同で決定をする。ポートフォリオについても、GPIF、国共連、地共連、私学事業団が話し合う。そこは、やはり話し合えば、余り冒険的なことはできない形になるのかなと。私自身は、現在の運用の半分を株式に投入するというのはすごく危ういことをなさっていると思っているものですから、むしろそういう談合になった場合は、この種のリスクが高い構成を慎重な形にしていく方向にかじとりがきくのかな、勝手に思っているだけです。そういうものかどうかはわかりません。むしろ佐々木先生にお聞きしたいぐらいです。

○山崎部会長 我々はこの問題の専門家ではございませんけれども、1つは、分散運用というメリットはやはりあるのではないかという議論はしてきたわけでございます。しかし、基本ポートフォリオが1つであって、しかも株式の割合が非常に高いという、ポートフォリオそのもの、基本方針そのものが問題だということになると、GPIFその他関係者に考えていただかなければいけないということかと思います。

 さて、その他、今回の一元化の評価で、財政単位は1つになりましたけれども、今、運用の問題がありましたが、実施機関がそれぞれ併存しているということについて、これは不徹底だという声もあるのですが、いかがでしょうか。それぞれ共済の事務組織がそのまま残っているということでございますが。

 どうぞ。

○翁委員 当面は、今ある組織が今までのことをやっておりますので、こちらで厚労省の年金課長の資料にもございますように、効率的であるというのは理解ができるのですけれども、将来的にこの4つの組織が事務処理をずっと併存してやっていくのかということは、今後検討してもいいのではないかなと、もう少し一元化していくということを考えていってもいいのではないかと考えます。

 というのは、今までも雇用市場の変化ということはいろいろ出てきていましたけれども、公務員から民間になったということで、いろいろ雇用が流動化していくということが出てくると、このままであると、先ほどの御説明で、一人の人が年金機構からも、また共済からも支払いを受けるというような形になっていくわけでございますね。そのようなことを考えましても、ずっと今のままでいくのかということについては検討の余地があるのではないか。新規に入られた方は、例えばもう一つのところでやっていくことに切りかえていくとか、そういうことをいつかのタイミングで考えていくということを検討してもいいのではないかという感じを持っております。

○山崎部会長 御意見ございますか。

 駒村さん。

○駒村委員 先ほども分散型の問題、効率性としてどうなのかと。先ほど運用の話があって、私も運用は2つ評価軸があるので、ばらばらにしてしまったほうが、もしかしたら先ほど宮武先生がおっしゃるような牽制機能みたいなものがあるのか、運用方針が組織によって違いますから、そういうところの違いが出るのか、それとも運用競争するとかえってゼロサムゲームになってしまうようなことが起きるのか。ちょっとこの辺はわからないですけれども、徴収と給付については、当面、今のほうが効率的とおっしゃっている。それはそうだと思うのですけれども、例えば今後、適用拡大を非正規に行った場合、共済の中にもかなり非正規の方がふえているところもあるわけですね。そういうところは、ある人は同じ仲間なのに1号で、ある人は2号、3号、厚生年金は2号、3号、4号というふうに区別するようなことをやり続けるのかどうなのか、それが本当に効率的なのかどうなのかというのも試金石になってくるのではないかと思います。

○山崎部会長 今、駒村さんがおっしゃった、霞が関の中央官庁にも厚生年金、協会けんぽの被保険者の方がたくさんいるはずでございます。そういう意味では、それは共済組合の適用の問題かなと私もかねがね思ってきておりまして、その問題は私もあると思っているのです。

 実は、翁さんがおっしゃった点なのですけれども、共済組合というのは短期も持っております。それから、住宅資金の貸付等の福祉事業もやっております。したがって、事務組織を全て年金機構に移管したとしても、それほど人手は減らないということがあります。

 それから、今、年金機構はいろいろな難しい問題を抱えているのでございますけれども、共済組合はそれぞれ組合としてはきちんと、それほど大きな問題なく、そういう意味では効率的に業務を実施していただいていると思うのです。その部分をわざわざ年金機構に一方的に放り出すというのは、かなり冒険だなという気がするので、むしろ効率的な事務処理という観点からは残したほうがよかったのではないかという気が私はしております。

 ただ、宮武さんがおっしゃったように、今回の統合というのは、確かに共済組合員にも厚生年金を適用し、厚生年金の保険料を徴収し、そして、共済組合から厚生年金の給付をするということになっていて、ラベルは全て厚生年金になったのですが、実態は保険者としての機能をそのまま残している。つまり、保険料の徴収から、標準報酬の決定も当然そうですし、記録の管理、それから公務員等の職域にいる間に係る厚生年金の給付も全て実施機関である共済組織が行うのですね。そういう意味では、実質的には保険者をそのまま残して機能的な統合を行ったという形になるのかなと思いまして、非常にうまく処理したなという感じがしております。

 その他、どうぞ、田中委員。

○田中委員 今の件ですが、山崎先生の御発言に賛同いたします。おそらく今おっしゃったように、年金だけではなくて、その他業務がかなりあるということで、現状では組合としてやられたほうがむしろ効率的であると思います。

 ただ、翁委員がおっしゃったように、例えば年金数理担当者のヒアリングを見ても、非常に少人数でやっておられるということで、むしろ業務の質の高度化とか、例えばIT化とか、そういったところがどうしても民間企業に比べて非常におくれているような印象があります。ですから、そういった意味では、それは国と地方とは言わず、IT化や業務内容の高度化などについて、どこか政府で音頭をとって進めていかれれば、業務内容の一元化と言わずとも、業務の効率化というのはもっとできるのではないかと思います。

 以上です。

○山崎部会長 ありがとうございました。

 今後の課題というようなところまで、少し話を移したいのでございますが、どうもとてもではないけれども到達点ではないと、まだまだ残された課題が大きいという話になりそうなのでございますが、もう一度、宮武さんのほうからこの辺をお願いできますでしょうか。

○宮武部会長代理 全体的な被用者年金の一元化後の課題ということですね。

○山崎部会長 そうです。

○宮武部会長代理 公平性も安定性も効率性も、仕組みとしてはでき上がったのだと思います。ただし、公平性の面において、例えば職域部分の廃止をして、新しい3階部分を創設された。それは完璧な積立方式で、民間の企業年金に相当する部分になり、名前も年金払い退職給付とされております。そういう内容が社会全体に理解されているのかどうか。官民格差をめぐる議論の中には、いわれなき批判というのも結構あるのですね。よく公務員の方は我慢なさっているなと思うような、要するに的外れの議論もある。この新3階についても、きちんとPRしていかないと、またぞろ何か廃止をして同じものをつくったみたいな印象を持たれる怖れもあるので、ここはやはりきちんと説明を十分になさらないといけないのではないかと思っております。

 それから、安定性の面について言うと、先ほど申し上げたように、新しい持続可能性と給付の十分性をポイントとして、2つの視点で点検されるわけで、実施機関ごとに積立金が枯渇することなく給付を確実に行えるということ。これはやはり、被用者年金だけではなくて、国民年金の側にも視野を広げていかざるを得ないのだろうと。いみじくも、被用者年金の安定性というのは、国民年金の安定性の上に乗っかっているのですよと、こういう評価ポイントがある限り国民年金は別ですよとは言えないわけで、その最も制度にとって脆弱な国民年金の部分に対してどういうアプローチがこれからできるのかということは、やはり大きな宿題として残っていると思います。

 それから、母集団を拡大することは、当然ながらリスク分散可能な、要するに大きな集団をつくって、そこは頂点に達したのだけれども、その頂点に達した中でさえも、少子化という大波にはなかなか抗しがたいものがあるわけで、どう克服するのか。年金制度で解決できることは限りがあるわけですけれども、やはり年金制度の中でできることはやっていかなければいけない。そんな点が、おそらくこれから先の大きな課題であって、冒頭陳述のところで申し上げたように、1階部分の一元化をやって、2階部分の一元化もやったけれども、1階と2階との関係性はこれからどのように考えていくのか。それは非常に大きな宿題だろうと思っています。

 私も、回答があるわけではないのですけれども、やはりここの部分に踏み込んでいくような問いかけをやって、具体的な方策を考えていかざるを得ないのかなと思っています。

○山崎部会長 1階の一元化を完了し、そして、2階部分の被用者年金の一元化を完了して、これで従来のスケジュールからいうと一元化は完了ということなのでございますが、宮武さんもおっしゃったように、1階部分の基礎年金の水準が相当なスピードで落ちていく。所得代替率50%は何とか確保されたとしても、基礎年金が基礎年金としての機能を果たせなくなるという懸念ですね。これは皆さんほとんど共通に持っているわけで、やはり当面はオプション試算で出されているような方向で急いで対応していかなければいけないのではないかと思いますけれども、いかがですか。

 どうぞ。

○野上委員 その点は全く同意見なのですが、さらに言いますと、現役時代に高額所得者の方、いわゆる高い年金を受け取っておられる方と低い年金の方で平均寿命を比べると、かなり差があるというのは事実でございます。基礎年金の部分が小さくなってきますと、どうしても社会保障制度としての再分配機能はどんどん弱まっていくという構造にございまして、要は、公的年金といえども長生きした人が得するのは当たり前の話で、結果だけを見るとそれはいいのですが、ただ、実態として、高い年金を受け取っておられる方のほうが長生きしやすいということも事実で、そこら辺を今後はどうしていくのかなと。

 あるいは、今までは官民というレッテルがありましたので、その差が見えやすかったわけでございますが、今後はそのレッテルがなくなる中で、例えば高い年金を受け取っておられる方と低い年金の方の格差を注意深く見ながら制度設計、あるいは支給年齢をずらす場合も、その辺も目配りしていかないといけないのではないかというのは、今後の課題として感じております。

○山崎部会長 今おっしゃったのは、各共済組合からも報告を受けたわけでございますが、今回の財政検証で、それぞれ平均寿命、死亡率が出ていますね。正確な記憶はございませんが、1号の方の純粋自営業グループの方の死亡率が高かったですね。公務員の死亡率が比較的低いという、そういったことをおっしゃっているのですね。

○野上委員 今の制度の一元化前の制度で言いますと、一番長生きされるのは私学共済の方でございまして、2番目が国家公務員、3番目が地方公務員の方、4番目が民間の厚生年金、一番短い寿命の方が国民年金という順番だと思います。

○山崎部会長 わかりました。

 そのほか、田中委員。

○田中委員 いわゆる1号被保険者の問題だと思うのですが、自営業というグループと、最近ではどちらかというと非正規雇用の割合がふえている。それから、20歳から就職までの学生も入っていると思うのですが、要するにいろいろな方が入っていて、一部は弁護士や公認会計士のような専門職で高給の方も入っておられる。非常に多くの職種の方が入っておられて、自営業そのものはむしろ減少ぎみで、そういった意味からは、基礎年金とか国民年金問題は自然に解消されるようにも見えるのですが、非正規雇用の問題が実は多くて、そういう人が細切れの年金になるわけですね。通算されても、これは大学などでもそうなのですが、例の派遣法、5年勤めたら正社員になるというルールが逆に適用されて、3年で雇用打ち切りというケースで、全部つなぎで働かれる方がどんどんふえているのです。そうなると、やはり年金権を得るのに非常に大変な時代になっておりまして、まずは雇用の問題が解決しないと、実際は年金問題も解決しないのかなと思っております。

 ですから、言いたいことは、やはり年金だけ考えていてもだめではないかという話と、むしろパート等非正規雇用者の適用拡大の問題があるのですが、厚生年金にできるだけ入れる人をもっともっと大胆に入れていくような政策がないと、なかなかそれは難しい。しかも、正社員で雇用するということを義務づけるようなことをしない限り、なかなか1号被保険者問題は解決しないのかなというような印象を持っております。

○山崎部会長 駒村委員、どうぞ。

○駒村委員 4点ほど挙げたいと思います。

 1つは、今回の被用者年金一元化と厚生年金基金の見直しで、職域年金の位置づけと厚生年金基金が改廃されることによって、はっきりと公私年金の役割分担が見えてきたというのは1つあるかと思いますので、今後は、公的年金の水準を補うような私的年金の拡充ということが1つ。

 それから、先ほど年金課長から、年金の支給開始年齢は財政安定のためにはもう使わなくてもいいと、これはそのとおりだと思うわけですけれども、これは一歩間違えると、支給開始年齢の議論はもう必要ないのだと、こう勘違いされてしまう可能性があるわけです。マクロ経済スライドを食いとめるためには、66歳、67歳というふうに標準開始年齢を上げることによって、マクロ経済スライドの期間を短縮することができるという効果もあるわけですから、今後の社会保障の担い手の問題や長寿化による労働人口の確保の問題を考えれば、やはり2025年以降の支給開始年齢についても、頭のどこかには入れておかなければいけないと思います。

 これが2つありまして、もうあと2つほどあるのですけれども、1つは、やはりマクロ経済スライドが30年ぐらいかかけて30%、基礎年金の給付水準を対賃金比で下げていくということで、基礎年金に対するマクロ経済スライドに下限がない。50%の代替率の中身を説いていなかったということが問題になる。これがさらに、今も議論がありましたけれども、非正規労働者の増加とくっついていくとどういうことが起きるのかということを考えなければいけない。

JILPTの発表だと、いわゆる就職氷河期、1990年代半ばから2000年代前半の10年ぐらいで、いわゆる団塊ジュニア世代が中心ですけれども、この世代で男性、それから未婚の女性、合わせて150万人の非自発的不本意非正規がいるという情報があるわけです。この人たちの年金が一体どうなっているのか。きちんと年齢にふさわしい年金形成が行われているのか。この150万人がそのまま、まともな年金を形成しないまま20年後に突入すれば、生活保護制度はとんでもないことになる。そこにマクロ経済スライドが追い打ちをかけるわけですから、20年後にマクロ経済スライドがきつくなるというわけではなくて、年金政策の改革の効果は時間がかかるわけですから、起き得る問題が予測されている以上、適用拡大はすぐ打たなければいけないと思います。

 やや悲観的な部分もあるのですけれども、先ほど野上委員がおっしゃったように、一方では寿命は所得階層の差がある。一方では長寿に対応しなければいけない。格差が拡大する。雇用の流動化が進んでいくということを考えると、果たして年金の対応だけで生活保護への流入を本当に食いとめることができるのかどうなのか。所得保障政策、生活保障政策として2枚しかカードがないという中で、それで対応できるかどうかというのは心配です。そういう意味でも、早い時点で適用拡大の準備はしたほうがいいと思っていますので、厚労省にはぜひ進めていただきたいなと思います。

 以上です。

○山崎部会長 短時間労働者の適用拡大、それからデフレ下のマクロ経済スライド、それから60歳以降の基礎年金の期間の延長ということが出されておりますが、今、受給開始年齢というか、支給開始年齢というか、駒村さんはあえて支給開始年齢の引き上げと言われたのですが、その辺はちょっと宮武さん、よろしいですか。

○宮武部会長代理 間年金課長がまさにおっしゃったように、保険料率の上限を固定するわけでありますから、全体の収入は横ばいになり、その横ばいになった原資の中でどう配分するかという、配分の世界に年金が入ったわけであります。私は、社会保障制度改革国民会議の議論でも、支給開始年齢という言葉自体がおかしいのではないかと指摘した。現実に日本の年金制度は、60歳から69歳満杯までの間でいつでも受け取ることができる。早取りすれば額は少なくなり、遅取りすれば額が上がる、そういう受給の選択は今でも可能である。ただ、その中で、より多く年金額を受け取る遅取りの人たちが極めて少なくて、その面で機能していないところが問題である、遅取りをふやす方策を考えていかなければいけないと申し上げたのです。

 現在の支給開始年齢を引き上げようと言っている論者の方の多くは、65歳時点で受け取れる年金額を67歳までお預けするという給付水準の引き下げの意味で、年金支給開始年齢の引き上げということをおっしゃっている。それはマクロ経済スライドで緩やかに給付水準を調整していく流れの中に、さらに加速をして年金の給付水準を大きく引き下げることになる。しかも、その大きく引き下げる対象は、これから年金を受け取る方であって、既裁定者には及ばないわけですね。新規裁定者に直撃する改悪になっていくと言ってもいいかもしれませんね。そこが問題でありまして、その整理をやらないことには、支給開始年齢の引き上げという言葉だけが先走っていて、その実態については、それぞれの論者が違った立場で主張をしている、そういう構造が今、見られるのではないでしょうか。

○山崎部会長 うまく整理していただいたと思います。要するに、事実上、60歳から70歳までの間で自由に受給年齢を選べる仕組みになっているのだけれども、おそらく言われている支給開始年齢というのは、所得代替率50%を確保できるかどうかという指標としての基準年齢なのですね。それが今は65歳に置かれていて、あえてその支給開始年齢を上げるということになると、宮武さんのおっしゃったような懸念があるということなのでしょうね。駒村さんもそれは承知なのですね。

○駒村委員 もちろんわかっております。

○山崎部会長 さて、最後になりますが、この間、年金数部会が果たしてきた役割、そして今後期待されることについて、一言ずつお願いしたいと思います。

 翁委員からお願いできますか。

○翁委員 年金数理部会は、先ほど御説明があったように、毎年毎年きちんとしたそれぞれの年金が運用され、財政的に持続可能かどうかということを数理的に検証しているわけでございます。ただ、社会経済動向というのが非常に大きく変化していて、きょうもいろいろ御発言がありましたが、労働市場の変化とか、特に非正規化の話とか、自営業者の質の変化というようなことも御指摘ありました。また、高額所得者と低所得者では平均寿命が異なるというような大きな変化も見られてきておりますし、少子化も引き続き非常に進んでいるという中で、これまで以上にそういった環境変化にどのように年金を持続的にできるかということを、よりフォワードルッキングな観点から見ていく必要があると思います。また、今回の一元化について、今回のヒアリングでもいろいろ課題が見つかりましたけれども、各制度が、検証のテクニックなどに関しても情報交換をして、より実効性のある一元化につながっていくように検討を進める必要があると思います。

 また、年金数理部会ではありますけれども、今いろいろ御発言がございましたが、年金のところでできることについてはいろいろと提言をしていくということが必要だと思いますし、また、幅広い視点から、例えば少子化への対応、働き方への対応、そういったことについても目配りしながら議論を進めていくことが大切かなと思っております。

○山崎部会長 野上委員、いかがですか。

○野上委員 今回は、年金の一元化という観点から数理部会の課題を考えてみたのですけれども、先ほど来、議論がされているように、民間の生保でもそうなのですが、事務も含めて全部一緒というのは現実的には無理なわけで、今までどおり共済組合ごとに運営されていくというのが現実的な対応というのは確かです。

 ただ、財政制度は一緒になるわけで、そこで一番懸念されるのは、やはり親方日の丸的に、ありていに言うとモラルハザード的な動きをされるというのが一番問題なわけで、そうなってくると、民間の言葉で言いますと、本社機能を強化してモニタリングしていくというのが実は必要でございまして、そのあたりで数理部会として一翼を担っていければいいのではないかと思ってございます。

○山崎部会長 田中委員、お願いします。

○田中委員 年金数理部会はどちらかというと、会社で言えば決算のようなことをずっとやっていたということなのですが、その中で、やはりちょっと今のところ欠けていると思われるのは、安定性という言葉で多少チェックはしておりますが、リスク管理という機能がまだ弱いのかなと思っております。ということで、年金数理部会内部でも議論はされておりますが、より年金制度に内在するリスクを評価して分析していく。簡単な例を言えば、出生率あるいは死亡率、あるいは経済前提でもいいですが、そういったものが1単位変化したらどれぐらい財政の悪化をもたらすかとか、そういったセンシティビティ分析をすることによって、より政策提言に結びつくような発信ができる。そういう機能をもっと果たすべきだと思います。

○山崎部会長 佐々木委員。

○佐々木委員 年金制度というのは非常に長期の課題で、今回の一元化というのは非常に長い時間がかかったわけですけれども、人口をとってみましても、明治から考えて100年で約4倍に増加してきましたし、成長も非常に大きな成長だったわけです。ただ、今後、人口を見ても、いろいろな前提の置き方によりますけれども、半分であるとか、それから、なかなか大きな成長というのは見込みにくい。ですから、ここの2000年を境に非常に大転換の時代だろうと思うのです。

 大きくパイがふえてきた時代、それはいろいろな給付も考えられたのですけれども、今後はいろいろな意味で問題が噴き出てくるのではないか、浮かび上がってくるのではないかと思います。先ほどの生活保護の問題とか、基礎年金の財政の脆弱性とか非正規雇用、そういうところに問題の端を発しているのではないかということです。今後、年金財政を中心にして、現状とか方向性について、特にやはり国民の皆さん方によりわかりやすいディスクローズ。それが毎年、あるいは5年置きの検証ごとに理解できるような検討をして説明していく、お話ししていくということが、より重要かなと思っています。

○山崎部会長 宮武委員。

○宮武部会長代理 私は、十数年前に年金数理部会の委員をやれという要請を受けまして、当時、本当は断ったのです。私は足し算と引き算しかできないのに、年金数理の委員なんて務まるわけがないですよと申し上げましたら、当時の年金数理官は本当に立派な人で、あなたに年金数理がわかると思っていませんと、と言われまして、重々御承知なわけですね。私たちがやっている数理は、わかるのか、わからないのか、あなたの立場でわからないならわからないと言ってください。わからないということに答えるのが私たちの仕事でありますし、私たちのやっている仕事を世の中に伝えてほしい、こういうことでありました。重々御承知でございまして、その上でなったわけであります。

 十数年務めまして、もう今年度でお役御免になるわけでありますが、いまだによくわからない。わからないのですけれども、年金数理部会が膨大な統計資料をもとにして現状を精密に分析し、未来への投影図を描いておられる作業を毎年見せていただいて、頭の下がる思いがしております。この仕事は被用者年金一元化が終わった後も間違いなく続くわけでありますし、私はむしろ、社会保障制度審議会のもとに独立機関としてあった年金数理部会のかつての姿にもう一度組織の位置づけも変えたほうがいい。そういう第三者的な機能が果たせる年金数理部会であってほしいと個人的には思っております。

○山崎部会長 駒村委員。

○駒村委員 数理部会の役割、先ほども宮武先生から紹介されたこの制度の持続可能と給付の十分性をチェックするという役割があると思います。そういう意味では、私も、宮武先生がおっしゃるように、持続可能性については中立的な立場から、経済前提も含めて厳しくチェックする。もう、冷たいぐらい厳しくチェックする必要があるのではないかと思います。それによって制度の信頼性が上がってくると思います。

 それから、給付については、やはりマクロ経済スライドの効果をきちんと慎重に評価する必要がある。その上で次の対応がもし必要になってくるならば、それについても何らかのメッセージを出す。

 先ほど宮武先生がおっしゃったような国民年金と厚生年金の財政調整的なものや財政統合的なものでとどまるのか。あるいは、徴収方法が違うのだから財政統合してしまうのはどうかという考え方もあるかと思います。そういう道もあるかもしれないと思いますけれども、いずれにしても、まず当面は、マクロ経済スライドの効果をきちんとチェックすることによって十分性を確保できるかを慎重に評価する必要があるのではないかと思います。

○山崎部会長 ありがとうございました。

 具体的に年金数理部会が財政検証にどのような役割を果たしたかということについて、一言だけ補足しておきますと、前回の平成21年の財政検証に関しましては、国民年金の財政について、納付率を80%と仮定しておられるわけですが、現実との間に大きな乖離があるということで、もう少し実態を踏まえた分析が必要であると指摘しました。これは今回の財政検証で改善されておりまして、現在のまま60%で推移した場合、あるいは今後65%程度まで上がった場合と、非常に現実的な仮定を置いておられると思います。

 それから、共済組合の被保険者数の見込みですが、先ほど宮武さんの報告にありましたように、前回は生産年齢人口が減少すれば、そのまま公務員も減るという仮定だったのですけれども、まさか自衛官や警察あるいは消防が減るわけないので、そういう意味で、今回は人口の減少に応じてというふうになっておりまして、その辺も少し改善していただいたのかなということでございます。

 それから、経済前提で将来にわたって一定の数値がずっと続くという仮定も、現実には景気変動があって、デフレ下でマクロ経済スライドが機能しないこともあるので、その辺ももう少し複数の見通しを出してはどうかという指摘をさせていただいて、今回それを全て反映させていただいております。ありがとうございます。

 あと1つ、確率論的な将来見通しを無理を承知でお願いしていたのですが、やはり今回も難しいということでございました。これは今後に残された課題かなと思っております。

 長々と我々の間で意見交換してきたのですが、会場から、そういうわけでございますから、今後の財政検証等に生かせるようなコメント、御意見をいただければ幸いでございます。いかがでしょうか。

○下島首席年金数理官 会場から御発言をいただく方に、あらかじめいくつか留意事項につきまして、お願い申し上げます。

 1点目ですけれども、御発言いただく方は、マイクの場所まで移動して御発言をお願いいたします。2点目ですが、本日の議題に関連した内容について御発言をお願いいたします。3点目ですが、より多くの方に御発言いただくため、発言事項につきましては1つか2つにしていただき、発言時間につきましても、他の皆様への御配慮をお願いいたします。4点目ですが、御発言は後日、議事録として、厚生労働省のホームページにも記載されることになりますので、御了解いただきたいと思います。

 以上でございます。

○山崎部会長 どうぞ、挙手をお願いいたします。どなたからでも。

 どうぞ、こちらのマイクまでお願いします。

○質問者 ニッセイ基礎研究所のナカシマでございます。きょうはどうもありがとうございました。私から2点、質問させていただきたいと思います。

○山崎部会長 できたら質問というより御意見をいただきたいのです。今後、生かしたいものですから。どうしてもということであれば、質問でも結構ですが。

○質問者 実は質問したかったのは、先ほど皆さんから数理部会の活動について、今後の課題というのをいただいたのですけれども、今回の一元化との数理部会の関与について、どのように感想をお持ちなのかというのをお伺いしてみたかったなと。特に、数理部会の役割というのは、先ほど首席年金数理官からはレビューを中心に紹介されたのですが、もともとはこの一元化に対して数理的な観点から検討するという事項も入っていたはずなので、それも踏まえてどのように感想をお持ちかというのをお伺いしたかったなと思います。

 あと、もし意見をということであれば、先ほどから皆さんから出ている今後についての御意見は、まさにそのとおりではないかと思っております。先ほど数理官からでしたか、今後の役割の中で被用者年金各制度の財政についての目配せというのはあったのですが、やはりもう一つ、国民年金も含めて確認していただくというのが大きな役割ではないかと思っております。

 私からは以上です。

○山崎部会長 宮武さん。

○宮武部会長代理 私から答えにくいことではあるのですけれども、被用者年金一元化の内容を詰めて成案を得ていく過程というのは、当事者間での話し合いで今回は進められたわけでありまして、外部にオープンにされて、進行状況を我々が逐一知るというような形の進め方ではなかったのですね。この種の話をまとめるとき、利害が錯綜する中で大衆討議にかけるよりも、当事者間でプロが具体的に進めていったほうがいいという判断であったのだろうと私は見ているわけです。

 その中で、年金数理部会は、逐一その議論に参加をしたことは全くありませんし、出る権限もなかった。ただ、一元化を目指さなければいけないさまざまな現状と将来予測については、年金数理部会のさまざまなデータが参考にされたのだと私は思っております。

 この点は、私の理解不足であれば、下島首席年金数理官のほうから補足説明してください。

○下島首席年金数理官 僣越ながら御説明申し上げたいと思います。

 実は私、平成1719年ごろ、一元化の議論にタッチしたことがありまして、その当時のことを思い出しますと、平成17年に、平成16年の各財政再計算のまさに数理部会の検証のためのヒアリングが行われていたわけでございますけれども、当時、負担の公平性ということで、1・2階分までの保険料換算は幾らなのかということを数理部会に提出が求められたということで、それをまさに国共済のヒアリングが行われた日の前後に各マスコミに、共済の1・2階までの保険料換算率が大々的に報道されたということがございます。当時は郵政解散中でして、その後、自民党が大勝するわけですけれども、当時の小泉総理大臣が、いろいろ大勝した後に指示を出しました。その一つに、被用者年金一元化を検討せよという指示がございまして、まさに官邸主導で平成1719年ごろの被用者年金の一元化が議論された記憶がございますが、そのきっかけというのが、年金数理部会が求めていた公平性のための諸データということであったかと思います。

○山崎部会長 先ほどの宮武委員の報告にもありましたけれども、2004年の年金数理部会の報告で、職域部分を除く保険料率相当分の差は被用者年金制度の財政単位の一元化を図る方法をとらない限り完全になくすことは困難と言い切っているのです。つまり、基礎年金の拠出金は、それぞれの制度が頭割りで負担するということになっておりますから、報酬水準の高い共済グループは非常に軽い負担になっているということを言っておりまして、それは財政単位の一元化を図らない限り解消できないと数理部会は言い切っているのですね。

 そして、今、下島さんがおっしゃった閣議決定というのは、同一の報酬であれば同一の保険料負担をし、同一の公的年金を受けるという公平性を確保するというのが閣議決定で、その流れで被用者年金一元化をしたわけで、そういう意味では大きな役割を果たしていたのかなと思います。そういうことですね。

 ほかにございますでしょうか。どうぞ。

○質問者 きょうは大変興味深いを話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 私はコジマといいますけれども、今はこの会には日本年金数理人会の会員として申し込んでおりますが、実際は全くの個人ということでございます。

 きょうのお話の中で、今後、年金数理部会にやってもらいたいなと思ったことがあります。具体的には、先ほど来、話の中で、マクロ経済スライドがきいてくると、いわゆる基礎年金の部分のスライドがかなりきいてしまって、マクロ経済スライドの効果で基礎年金の給付がすごく圧縮されてしまいますよ、そういう問題がありますというお話がありました。それはある意味、そうやって決めたのではないのと、私は最初からそういうものではないかと思っている部分がありまして、それはそれで、ではどう解決するかといったときに、この場の中で発言を聞いていると、私の予想しない回答がどんどんいっぱい出ているような気がしました。

 1つ気になっておりますのは、いわゆる自営業者の方だけをとれば、国民年金の保険料の納付率は60%ですね。これを100%にしたら一体この問題は解決するのか、しないのかというようなことをちゃんと、もし研究されているのであれば、それも公表してもらいたいような気がいたします。できるかできないかを先に考えて、こんなことできっこないでしょうということを言ってしまったら、何も調べることができないような気がするのです。

 なぜ私が気になるかといいますと、先ほど来、財政調整だとか、国民年金の財源のほうに別の2階部分の年金から財源調整をするという話と、ある意味、被用者年金をどんどん厚生年金の被保険者に入れていくという話を考えますと、非常に変なことが起こってきまして、例えば自営業者の人は給与から天引きされるわけではないですから、自由に保険料を払わなくてもいいのですけれども、厚生年金になった人は給与天引きでどんどん取られてしまうわけです。非常に所得が少ないような非正規の人も強制加入させて、当然給与から天引きすることはできますけれども、払う保険料から見れば非常に微々たる保険料で、基礎年金の国民年金の保険料を払うよりも低い保険料を払いながら、基礎年金の給付はちゃんともらえる。さらに、物すごく薄っぺらい報酬比例の年金ももらえる。そういう構造になるわけです。

 そういう構造になったこと自体が非常に不公平だなと私は思いますけれども、不公平を容認するかどうかはまたもう一つ別の問題ですが、そうすることによって自動的に国民年金の加入者がどんどんふえていって、要するに厚生年金の被保険者がふえていって、全体がふえてくるから何となく財源調整がしやすくなっています。そのような構造に持っていくのはいい方法なのかなというのは、国民的な理解が要るのではないかという気がするのです。この場で回答をもらうわけではなくて、こういうことをちゃんと研究して話してくださいというのを年金数理部会にやってもらいたいということです。

 私個人の意見を言えば、もともと18.3%にしろ、国民年金の保険料は1万6,000幾らで頭打ちというのを決めたにしても、それは長いこと固定してやっていきますよということだったのではないかと私は最初から思っているのです。本当に給付が成り立たないほどなったのだったら、給付の改善はなしに、やはり保険料を上げるかどうかという選択肢も国民に問うべきことなのではないかと。そういう問題提起も年金数理部会でやってもらうほうがよろしいのではないか。それはできるとかできないということではなくて、そういうことをやってもらいたいなという形で、先ほどの中立的な組織がいいということであれば、私もますます賛成だと思います。

 以上、私の意見でございます。

○山崎部会長 ありがとうございました。

 単一の制度に自営業者もサラリーマンも包括してしまうことの難しさというのは多くの人が意識しておりまして、理念的にはそうだろうが、現実には難しいねということで、国民会議の報告書も、近いか遠いかは別にして、将来の課題として位置づけ、当面は現在の枠組みのもとで改善していこうということになっております。

 それから、最初におっしゃいました納付率の問題なのですが、前回は80%まで上がるという仮定を置いております。今回は割と現実的なのですが、いずれにしても、納付率それ自体では所得代替率に大きな影響はない、つまり未納の人にはその期間分の年金は支払われないということになりますので、財政的には余り大きな影響はないということです。

○駒村委員 マクロ経済スライドの基礎年金へのきき方は、当初予定していたものとは違いますね。

○山崎部会長 それは駒村さんがお答えになりますか。

○駒村委員 マクロ経済スライドで基礎年金が3割落ちてしまうというのは、当初期待していたものとはちょっと違うのですね。当初、2004年に出たときには、御存じかもしれませんけれども、厚生年金も基礎年金も大体2割、ほぼ平衡にきくはずだったのですけれども、結局デフレ期のマクロ経済スライドをとめていましたので、その結果によって、この2015年の検証結果ではこれだけの基礎年金が悪化するということが明らかになった。これは2014年の検証の中でその説明が入っていますので、これは意図しなかったものであるので慌てているということでございます。

○宮武部会長代理 保険料率は固定されたと言うのだけれども、現実に財政的に制度がもたなくなったら、それは引き上げよと、できるできないは別に、それが筋だろうとおっしゃった最後の御発言について、年金数理部会は、現状を分析して、現状の分析の上で将来の投影図を描くというのが役割ですので、政策提言をやるわけではないのです。もう積立金も枯渇し、所得代替率も50%を割り込むよという警告を発することはできるわけですが、それに対して、その対策として保険料を引き上げよということを言う権限は持っていないのです。

 個人的には、本当に困ったら、18.3%の固定というのは法律で決めたことですから、国民にもう一回信を問うて、その保険料率を引き上げるということは法律改正すればできることであって、それが必要であればやるべきだと私は思っていますけれども、年金数理部会の役割ではないということは、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

○山崎部会長 年金数理部会の仕事ではないのですが、法律上は、次の財政検証まで、つまり5年以内に所得代替率が50%を下回る可能性があるときには給付と負担の関係を見直すということで、おっしゃるとおり、場合によっては保険料を上げる、あるいは50%という基準を下げるようなことも含めて議論することになっているわけですが、将来相当下がるけれども、当面は、少なくとも5年以内にはそういう事態には至らないということで、法律の規定は発動されていないという状況でございます。

 そのほかはございますでしょうか。

 本日は、初めに、年金課長から「被用者年金の一元化について」と題して御説明いただくとともに、宮武部会長代理から「被用者年金の一元化 歴史的な一元化の実現をどう評価するか 公平性・安定性・効率性の視点で」と題して主に3つの視点からの一元化に関する評価について貴重な御講演をいただきました。また、後半は、年金数理部会の委員、さらには会場の皆様を含め、意見交換をしてまいりました。

 きょうのテーマである被用者年金一元化につきましては、昭和59年の閣議決定から30年以上の長い道のりを経て、今年10月に施行されました。この間、基礎年金の創設や公務員共済における財政調整など、一元化に向けた取り組みがなされてきたところであります。その中で年金数理部会の果たしてきた役割についても、一定の評価がなされているものと感じております。一方、被用者年金一元化が施行された現在も引き続き、各共済組合等で事務処理や積立金の管理が行われているところでございます。今後の年金数理部会では、こうした実施体制や本日の議論も踏まえ、毎年の財政検証の分析評価、そして財政検証・財政再計算の検証を進めてまいりたいと思います。

 ということで、ちょうど時間になりましたので、このあたりで終了いたします。

 年金数理部会では、今後も財政状況について注視してまいりたいと思います。

 また、今後の財政状況報告の作成や財政検証の検証に当たりましては、本日いただきました御意見も踏まえ、進めてまいりたいと思います。

 どうもお疲れさまでした。

 

(拍手)


(了)

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