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2015年12月25日 第3回透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会

労働基準局労働条件政策課

○日時

12月25日(金)9:00〜11:30


○場所

専用第12会議室


○出席者

荒木 尚志(座長) 石井 妙子 大竹 文雄 垣内 秀介
岡野 貞彦 小林 信 小林 治彦 高村 豊
鶴 光太郎 徳住 堅治 斗内 利夫 長谷川 裕子
水島 郁子 水口 洋介 村上 陽子 八代 尚宏
山川 隆一 輪島 忍

○議事

○荒木座長 それでは、定刻となりましたので、第3回「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、早朝より御参集いただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は鹿野菜穂子委員、土田道夫委員、中村圭介委員、中山慈夫委員は御欠席となっております。

 また、岡野貞彦委員は30分ほどおくれて御到着という予定と伺っております。

 それでは、お配りしました資料の確認を、事務局よりお願いいたします。

○松原労働条件政策推進官 おはようございます。配付資料の確認をお願いいたします。

 まず、資料がNo.1〜4までございます。No.1につきましては、前回委員よりお求めのあった資料ということで「紛争調整委員の選任状況について」という資料でございます。

 資料No.2でございますが「労働審判制度について」。

 資料No.3でございますが、労働審判員の村上陽子様から御提出いただいている「労働審判制度について」。

 資料No.4でございますが、こちらも労働審判員の武田幸雄様から御提出いただいている「労働審判制度について」。

 続きまして、参考資料が3つございます。

 参考資料1が「労働審判制度についての意識調査 基本報告書」でございます。

 参考資料2でございますけれども「労働審判制度(仮称)の制度設計の骨子」というのが一番上のペーパーでございます。

 参考資料3でございますけれども、参集者名簿でございますが、長谷川裕子委員の役職のほうがお変わりになったということで配付をさせていただいております。

 資料のほうは以上でございますけれども、皆様、よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○荒木座長 それでは、本日の議題に入ります。

 今回は前回委員からお求めのあった資料について御確認いただいた上で、労働審判制度についてのヒアリング等を行いたいと考えております。

 本日の進め方ですけれども、まず、事務局より、前回委員よりお求めのあった紛争調整委員の属性等について、資料No.1に沿って、また、労働審判制度の概要について、資料2に沿って説明をいたします。その後、村上委員及び武田幸雄様から御説明をいただいた上で、質疑応答と意見交換を行う。最後に、全体を通して、何か御意見があれば御議論をいただく。そういう流れで進めたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

○荒木座長 それでは、事務局より紛争調整委員の属性等について、配付しております資料No.1に基づいて御説明をお願いします。

○松原労働条件政策推進官 資料No.1の「紛争調整委員の選任状況について」をごらんいただければと思います。

 前回、委員より、紛争調整委員の属性ですとか、どのような方が選任されているのかということがわかる資料と、もう一つは、どのようなあっせんの申請書等の様式があるのかという御質問がございまして、今回御用意させていただいたものでございます。

 まず、1枚目の「紛争調整委員の選任状況について」でございますけれども、法律の第7条第2項におきまして「委員は、学識経験を有する者のうちから、厚生労働大臣が任命する」とされております。

 この「学識経験を有する者」が、産業社会の実情に通じ、法令や判例、企業の人事労務管理について専門的知識を有するものであり、具体的には、弁護士等の法曹関係者、学者、社会保険労務士、人事労務管理の実務に携わった経験を有する者であると解しており、幅広い人材から紛争調整委員会の委員として適当と判断した者を都道府県労働局長からの推薦を受け、大臣が任命しているという形になってございます。

 下のほうをごらんいただきますと、その属性を分けて書いておりますが、弁護士の方が71.7%、学者の方が8.7%、社会保険労務士の方が17.6%となっておりまして、右のほうが合計欄でございますけれども、男性が64.3%、女性が35.7%という形になってございます。

 次の「あっせん申請書」「あっせん開始通知書」につきましては、厚生労働省令のほうで定められております。

 簡単ではございますが、資料No.1につきましては以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、続きまして、事務局より労働審判制度の概要について、配付資料2に基づいて説明をお願いします。

○松原労働条件政策推進官 続きまして資料No.2をごらんください。3ページ目からが資料の内容になってございます。

 前回、前々回にまたお出しさせていただいた資料でございますけれども、紛争につきましては集団労働紛争と個別労働紛争がございまして、今回は一番下に太く書いておりますが「裁判所における非訟手続としての労働審判制度(平成18年4月施行)が整備されている」ということで、こちらについての御議論をいただくという形でございます。

 4ページでございます。こちらもおさらいとなりますけれども、右側の「個別労働関係紛争」の「個別紛争の発生」のちょうど真下あたりでございますけれども、さまざまな選択肢がある中で、労働審判制度というものが一つ、紛争解決の手段として位置づけられているということでございます。

 中身につきましては、後ろの資料で御説明させていただきます。

 続きまして5ページでございますが、こちらも前回お出ししている資料でございますが、集団労働紛争と個別労働紛争で、個別労働紛争のほうが近年非常に数が多くなってきておりまして、雇用終了に関する紛争は、労働審判の45.4%という形になっているというものでございます。

 6ページ目をごらんください。こちらから労働審判制度の御説明に入りたいと思います。

 まず、労働審判制度導入の経緯でございますけれども、平成13年から司法制度改革審議会で検討が始まっているということで、その当時の背景を書かせていただいております。

 社会経済情勢の変化に伴いまして、企業組織の再編や企業の人事労務管理の個別化の進展というものが、当時は進んでおりました。

 矢印のところでございますけれども、個別労使関係事件を中心に労働関係訴訟事件が急増し、労政事務所、労働基準監督署等の行政機関に、非常に数が多い件数の相談がなされておりました。

 こうした増加する個別労働関係紛争について、労働行政におきましては、個別労働関係紛争解決促進法を、平成13年でございますけれども、制定・施行いたしまして、相談・助言・あっせんサービスを整備いたしました。この当時、個別労働関係紛争解決の司法システムにおける対応が必要という議論がございました。

 3つ目の●でございますけれども、労働関係事件につきましては「1.雇用・労使関係の制度や慣行等について、各職場、企業、あるいは各種産業の実情に基づき判断することが求められ、労働関係事件を適正・迅速に処理するためには、そのような制度や慣行等についての専門的知見が必要となる。」「2.労働者の生活の基盤に直接の影響を及ぼすものであり、一般の事件に比し、特に迅速な解決が望まれる。」という整理がされておりました。

 最後の●でございますけれども、我が国におきましても、このような労働関係事件の専門性、事件動向等を踏まえ、訴訟手続に限らず、簡易・迅速・柔軟な解決が可能なADRも含め、労働関係事件の適正・迅速な処理のための方策を総合的に検討する必要があるとされております。こちらは司法制度改革審議会の意見書等からとらせていただいております。

 7ページをごらんください。少し時系列的なものを整理させていただきました。

 ただいま平成13年当時の状況を御説明いたしましたが、13年6月に司法制度改革審議会の意見書が出されまして、2つポツがございますけれども「・労働関係事件に関し、民事調停の特別な類型として、雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する労働調停を導入すべき。」「・雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の導入の当否、労働関係事件固有の訴訟手続の整備の要否について、早急に検討を開始すべき。」とされました。

 これを受けまして、平成14年2月に司法制度改革推進本部の労働検討会が設置されまして、平成1512月まで31回にわたり議論が行われた状況でございます。

 その結果でございますが、平成15年8月に、労働関係事件への総合的な対応強化についての中間取りまとめが出されまして、裁判所における個別労働関係事件についての簡易迅速な紛争解決手段として、労働調停制度を基礎としつつ、裁判官と雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者が当該事件について審理し、合議により、権利義務関係を踏まえつつ事件の内容に即した解決案を決するものとする、新しい制度、この当時は仮称でございますけれども、労働審判制度の導入が提案されてございます。

 この後、平成1512月に労働審判制度の制度設計の骨子、労働審判制度の概要というものが公表され、こちらが参考資料2につけているものでございます。

 平成16年4月に労働審判法が成立し、平成18年4月に施行されたという時系列でございます。

 8ページをご覧ください。8ページと9ページが当時の主な論点と、労働審判制度が実際にどうなったかということを書かせていただいているものでございます。

 まず「対象となる紛争」でございますが、個別労働関係紛争のみを対象とするか、集団的労働関係紛争をも対象とするかという議論でございましたが、個別労働関係民事紛争のみを対象とするという整理になっております。

 次に「解決を図るべき主な紛争」についてでございますけれども、右側のほうをご覧いただくと「基本的に、比較的内容が単純ではあるが係争利益は必ずしも小さくない事件の解決に適している」という形で整理をされております。

 次に「民事調停法上の民事調停との選択」でございます。こちらは制限がございませんで、両者とも選択可ということになってございます。

 次に「専門家委員」でございますけれども、右のほうをごらんいただくと「労働審判員が調停及び労働審判に関与」するということでございます。「・労働関係に関する専門的な知識経験を有する方」「・中立かつ公立な立場」に基づいて参画するということになっております。

 次に、「労働審判手続を民事訴訟に前置させるか否か」でございます。こちらにつきましては「必ずしも訴訟提起に先立ち、労働審判手続を経なければならないわけではない」という整理でございます。

 その下も関連でございますが「訴訟提起後、職権により、労働審判手続に付することができるか否か」につきましても、特段の規定がございませんで「民事調停法上の民事調停と異なる取扱い」となってございます。

 9ページをご覧ください。「主な論点」のほうでございますけれども「調停・審判不成立の場合の調停手続において提出された資料の取扱い」でございますが、当然に民事訴訟に労働審判のものが引き継がれるものではないという整理でございます。なお、当事者及び利害関係を疎明した第三者につきましては、労働審判事件の記録の閲覧等を請求できるという形になっておりまして、こちらにつきましては、民事調停法上の民事調停と同様の取扱いとなっております。

 「労働審判委員会による裁定的な手続」は、労働審判委員会は審判官と審判員2名により構成されますけれども、こちらにつきましては「期日における審理の結果、調停に至らない場合、労働審判委員会は、審理の結果認められる当事者間の権利関係及び労働審判手続の経過を踏まえて労働審判を行う」ということになっております。

 「解決案の効力」につきましては「調停が成立した場合、労働審判に対する適法な異議の申し立てがない場合、裁判上の和解と同一の効力」を持つとされております。

 「訴訟手続との連携」でございますけれども「労働審判に対する適法な異議の申し立てにより、労働審判手続の申し立ての時に、訴えの提起があったものとみなす」という形でございます。

 「手続の迅速化」につきましては「原則として3回以内の期日」で行うということになっております。

10ページは今、申し上げたものを少しビジュアル化したものでございますので、説明は省略させていただきます。

11ページをごらんください。ただいま御説明いたしました内容をコンパクトにまとめたものでございます。

 労働審判制度につきましては、労働関係民事紛争を対象とした、裁判所における紛争解決手続でございます。

 ○が3つございますけれども、まず、非訟事件でございまして、調停の話し合いを円滑に行う必要があることから、手続は非公開でございます。

 次に、委員会は、民事訴訟の例により、証拠調べを行うことができる。

 3つ目でございますが、当事者を含みますけれども、労働審判官の呼び出しを受けた関係人が正当な理由なく出頭しないときは、過料の制裁がございます。

 2でございますが、審判官(裁判官)以外に、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名が手続に関与するということになっております。

 3でございますが、原則3回以内の期日で審理し、権利関係を踏まえつつ、事案の実情に即した柔軟な解決を図ることになっております。

 4でございますが、調停において合意が成立した場合、裁判上の和解と同一の効力を有しております。また、労働審判がなされまして、当事者から適法な異議の申し立てがなかった場合には、その労働審判は裁判上の和解と同一の効力を有する。一方で、適法な異議の申し立てがあった場合につきましては、その労働審判は効力を失い、労働審判手続の申し立てのときに、地方裁判所に訴えの提起があったものとみなすということとされております。

12ページをごらんください。前回、前々回にもお出ししている資料でございますけれども、一番右が労働審判でございます。このページは年度で整理させていただいておりまして、次のページ以降に出てきますものが年でございますので、少し数値が異なっていることをまずお含みおきください。

 審判につきましては現在、26年度につきましては3,496件という形で、3,000件を超える数でございます。

 解決率は下のほうをごらんいただくと、緑の線でございますけれども、審判につきましては8割ぐらいの解決率があるということでございます。

13ページをごらんください。地方裁判所別の労働審判事件の新規の受け付けの件数でございます。

 平成26年の一番右下をごらんいただくと、3,416件でございます。大体3分の1ぐらいが東京の1,053件です。

 あとは100件を超えておりますところを紹介いたしますと、横浜、埼玉、千葉、大阪、名古屋、右にいきまして福岡、札幌ということで、やはり大都市が多くなっているという傾向にあるようです。

 次の14ページをごらんください。本日ヒアリングをさせていただきますけれども、労働審判員の任命状況でございます。平成26年4月1日現在でございます。全体で総数は1,475人でございます。女性が64人ということで、4.3%でございます。

 平均の年齢でございますが、60.8歳で、下のほうをごらんいただくと、6067歳以降を見ますと、大体こちらで7割ぐらいになっております。この傾向は労使ともに大きく変わりはございません。

 その下の代理人の選任状況でございますが、こちらは真ん中をごらんいただくと、申立人が労働者であることが多いわけでございますけれども、申立人が弁護士代理人を立てているパターンが83.6%でございます。

 これに対する相手方が、同じように弁護士代理人を立てるのが72.7%という形でございまして、両者とも弁護者を立てている割合が高くなっているという状況でございます。

15ページをごらんください。労働審判手続の事案の類型でございます。

 1番目の円グラフをごらんいただきますと、労働審判につきましては解雇・雇止めが45.4%。民事訴訟につきましては、解雇・雇止めが28.2%ということで、割合的には労働審判が、この解雇・雇止めの割合が高くなっているという状況でございます。

 下のほうをごらんいただくと、制定当時に一般的に労働審判制度の対象として適していると考えられる事件類型でございます。●が3つございます。

 まず、1つ目でございますけれども「●複雑な事件を除いて迅速に紛争を解決することを目的とした制度といえ、比較的内容が単純ではあるが係争利益は必ずしも小さくない事件の解決に適している」とございまして、どのような事件かということを下の*に書いておりますが「*例えば、争点がさほど複雑でなく当事者も多数でない、解雇事件、賃金・退職金等請求事件、配転・出向に関する事件等」でございます。

 次の●でございますが「逆に、当事者が多数、事実関係が錯綜、争点が複雑といった事件、膨大又は緻密な立証が要求される事件には原則として適さない」ということでございます。こちらも例としましては、例えば、人数が多くなる整理解雇、セクハラ・パワハラや差別的取扱い、就業規則の不利益変更、労災等に関する事件などでございます。

 一番下でございますが「●一方で、最初から訴訟手続で争うほど複雑困難な事件ではないものの、相談・あっせんといった簡便な手続では解決を図りにくいような比較的複雑な紛争にも対応できる制度」と整理をされております。

16ページをごらんください。労働審判事件の新規の受け付けの件数でございますが、こちらは平成18年にできた当時からの数の推移でございます。

 一番右の平成26年のところをごらんいただきますと、合計で3,416件ございます。そのうち、非金銭、いわゆる解雇などの事案の地位確認のパターンが1,529件、一方で、金銭、賃金、退職金などを争うものにつきましては、1,825件ということでございます。

 こちらのほうは(注)の3にございますが、重なりはございません。

 続きまして、17ページでございます。労働審判手続におきます各期日におけるイメージと審理期間でございます。3回で原則審判を行うことになっておりますが、まず、当事者において事前交渉、事前準備を行うことを前提といたしまして、第1回期日におきまして労働審判委員会が、争点整理と必要な証拠調べを実施いたしまして、評議をして心証を固め、当事者に調停案を提示して積極的に調停を試みます。

 第2回、第3回の期日でございますけれども、第1回期日で調停案を提示できなかった場合、調停案を提示して積極的に調停を試み、調停が成立しなければ、労働審判に至る形でございます。

 下の左側でございますが、期日の実施回数の調停成立のところをごらんいただきますと、第1回、第2回、第3回と書いておりますけれども、何回目で成立したかというのをごらんいただければと思いますが、調停は第1回、第2回までで7割程度の調停が成立している状況にございまして、労働審判の異議申し立てなしにつきましても、6割程度が2回目ぐらいで大体解決をしているという状況になっております。

 右の審判の審理期間でございますけれども、6カ月以内というところから上のほうを見ていただくと、ほぼ9割が6カ月以内で審理期間が終わっているという形になっておりまして、一番下、平均審理期間は74.8日ということになっております。

 続きまして、18ページをごらんください。労働審判手続における審理期間の比較でございます。民事裁判、労働関係訴訟事件との比較でございますが、左側が労働審判事件の審理期間でございます。先ほど御説明いたしましたが平均では、74.8日。あとは一番右の26年あたりになりますと79.5日でございますけれども、大体80日ぐらいで審理期間が推移しているということでございまして、下のほうをごらんいただくと、先ほども御説明申し上げましたが、6カ月を超えるようなことはほとんどないという形になっております。

 一方、右側のほうでございますが、労働関係訴訟事件の審理期間でございますが、12カ月のところから横にのびてきておりますが、平成26年で14.3カ月でございます。最近の傾向としましては、1年を超えるものが若干増えているという状況にございます。

 続きまして、19ページでございます。「労働審判」の特徴をまとめさせていただいております。多少今までの御説明と重複いたしますが、御容赦ください。

 3つ●がございまして、1つ目ですが、審理の結果、調停(話し合いによる解決)に至らない場合、労働審判委員会は、労働審判(事案の実情に即した解決案)を行うという形になっておりまして、2つ目でこの審判に際しまして、当事者から適法な異議がない場合、労働審判は裁判上の和解と同一の効力を有します。

 労働審判手続は、調整的性格も加味された権利関係の判定作用と、相当な解決案の策定を通じた形成作用という2つの作用を内包した手続でございまして、そこに調停という作用が組み込まれた複合的な性格の手続といえると整理をさせていただいております。

 3つ目の●でございますが、この審判内容につきましては、権利関係を踏まえたものである必要性がございますが、必ずしも申立事項に限られず、労働審判委員会において柔軟に定めることができるものでございます。

 ※のところでございますが、その労働審判の主文につきましては、通常の判決に類似したもの(判決主文型)と調停条項に類似したもの(調停条項型)がございますけれども、現実には、労働審判委員会が双方に調停案として示した内容を労働審判の主文とする「調停条項型」がとられることが大半でございます。

 次の※でございますが、解雇無効と考えられる場合に、労働審判委員会が、復職ではなく、退職を前提とした金銭的解決を内容とする労働審判をすることができるかという点については議論がございます。ただ、実態としましては、解雇権濫用に当たるか否かなど、権利関係に基づくルールに照らした判断を踏まえる必要性があるものの、手続の中で、労働者が必ずしも現職復帰を望んでおらず、使用者も金銭解決に反対でないとみられる場合には、金銭補償を内容とする判決内容を定め得ると考えられております。

 下に2つポツがございますけれども、これにつきましては、制度創設時におきましても反対意見もございました。司法制度改革推進本部労働検討会におきましても、委員から、解雇の事案では申立人が現職復帰を望んでいる場合には金銭補償を内容とする解決案を定めるべきではないとの意見、雇用関係の存否が争われている場合に二者択一のような解決案しか出せないようなことでは硬直的過ぎるのではないかという意見が出されておりました。

 ただ、実務的なところでございますけれども、解雇無効が争われた事案で成立する調停の大部分は、労働者の退職と使用者による解決金の支払という方向性のものになってございます。

 最後に20ページでございます。終局事案の状況を経年別に整理させていただいております。

 こちらも一番右の合計のところをごらんください。調停成立が一番多うございまして、1万7,337件、70%でございます。

 労働審判は合計4,538件でございまして、異議申し立てがなかったものを全体で割った割合が、一番下のほうの*2でございますけれども、7.1%でございますので、労働審判と調停成立で8割弱の解決が図られているという状況でございます。

 資料No.2についての説明は以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの事務局からの説明につきまして、何か御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。

 高村委員、どうぞ。

○高村委員 ありがとうございます。

 先ほど御説明いただきました資料1の5ページに、被申請人に対するあっせん開始通知書がございます。あっせん開始通知書の「4 留意事項」の(2)の下のほうに「あっせんの手続は、参加が強制されるものではなく」という文言が入っていますが、こういう文言が入ることによって、「あっせんに参加をしなくてもいいのだ」という方向に誘導するようなことになってはいないかと私は思っております。

 今、御説明のあった、資料No.2の12ページをごらんいただきますと、個別労働関係紛争解決制度あるいは労働審判の解決率についてのグラフがございます。このグラフを見ると、労働局のあっせんの解決率が一番低いという実態になっているわけですが、このように労働局のあっせんの解決が低い大きな要因として、いわゆる手続開始の段階で、相手側があっせんに参加することを拒否するということが大きな要因になっているとも言われております。

 それは言いかえれば、参加率を高めれば解決率も高まるということにつながっていくのではないかと思えます。私は一昨年の11月末で東京都労働委員会の委員を退任したものですから、現時点の具体的な数値は持ち合わせておりませんが、例えば東京都労働委員会における調整事件、これはいわゆる集団的労働紛争のあっせんになるわけですが、相手方が初めの段階、すなわちあっせん手続に参加をしないというケースは比較的少ないと記憶をしております。

 それはどういうことかといいますと、東京都労働委員会の事務局が、相手方に対して粘り強くあっせんに参加することを促すという努力をしておりまして、結果的にこのことによって、あっせん手続に初めから参加しないという割合が小さくなるということにつながっていると思います。

 したがって、私はこのあっせん開始通知書にこのような文言を記載する必要が果たしてあるのかという点について、大きな疑問を持っております。本来は、むしろ参加率を高め、解決を高めるべく、できる限り被申請人にこのあっせんに参加をしていただくことを促す努力をすべきではないかと思っておりますが、その点についてお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

○荒木座長 ありがとうございます。

 事務局から大塚室長、お願いします。

○大塚室長 地方課の大塚でございます。

 今し方、高村委員か御指摘のありました点については、もっともだと思われる面もございます。

 まず、あっせんの開始通知書におきまして、殊さらに任意である旨が強調されているのではないかということでございますけれども、これは制度創設時にさまざまな議論がありまして、この個別紛争解決制度に基づくあっせんは、あくまでも労使当事者の自主的な解決をサポートするものという位置づけでございますので、それゆえに任意ということになっております。

 ただ、あっせんの参加率が低いという御指摘はもっともでございまして、私ども労働局のあっせんにつきましては、他方当事者、多くは使用者側ですけれども、これが参加しないことによって打ち切りになっている割合が平成26年度においては38.3%になっております。

 これにつきましては、不参加率をより低くする、参加率を高めるという取り組みは必要と考えておりまして、私どもはこのあっせん開始通知書をあっせんの申請の他方当事者に送る際には、あっせんの手続をわかりやすく記したリーフレットを送付することとしているとともに、最近は電話などで労働局から積極的なあっせん参加勧奨を行うようにしているところでございます。これによって、あっせんの参加率を高める取り組みをしているところでございます。

 資料2の12ページの、あっせんの解決率の低さについての御指摘もございました。こちらにつきましては、申し上げていいのかわかりませんが、注1〜3をごらんいただきますと、計算方法が違うということが明らかになるかと思います。

 労働委員会と労政主管部局のあっせんにつきましては、分母のあっせんの処理件数、総数から不開始と取り下げを両方除いております。これに対しまして、注3のほうに書いてございますように、労働局のあっせんは取り下げしか除いておりませんので、不開始が分母に加わったままでございます。仮にこの注1と同じような計算方法をとって計算した場合には、労働局のあっせんは平成26年度で66.9%にのぼると試算しております。

 私からの説明は以上でございますけれども、労働局のあっせんについて、参加率が低いという御指摘はもっともでございますので、これに対する取り組みを今年度は集中的に進めているところでございます。

 以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございました。

 事務局から補足的に説明をお願いいたします。

○松原労働条件政策推進官 参考資料1の御説明を失念しておりまして、大変申しわけございません。簡単に御説明させていただきたいと思います。

 労働審判制度についての意識調査は、この労働審判制度について、実際行われた後にどのような認識を皆様が持っておられるかということを調べたものでございます。

 3ページをごらんいただくと、この調査の概要がございまして、2010年の7月から11月の間に、全国の裁判所の労働審判手続で調停が成立し、または労働審判の口頭告知が行われる期日において、出頭した当事者(申立人・相手方双方)につきまして、裁判所より調査のお願いをして、その後に調査を行ったというものでございます。

19ページをごらんください。今、申し上げた調査の概要でございますが、労働者の方がこの調査では62.6%、使用者が37.4%ということになっております。

24ページをごらんください。労働審判における立場ということでございますが、労働者側が申し立てたのが99.3%ということで、労働者が申立人になるパターンが非常に多くなっています。

 続きまして、31ページをごらんください。申立時の労働者の在職状況について、雇用関係の有無について争っていた、そもそも退職していたという方が同程度でございます。

 続きまして、34ページでございます。労働審判の申し立て前の相談先についての調査でございますが、労働審判申し立て前の相談につきましては、35ページをごらんいただきますと、労働者のほうは「1 家族・親せき・個人的な知人」「2 会社の同僚や知人」「6 弁護士の法律相談」「8 法テラス」というものが多くなっておりまして、使用者側のほうは「顧問弁護士」、「社労士」などが多くなっているという状況でございます。

 続きまして、37ページをごらんください。「問9 行政的紛争解決制度の利用」ということでございますけれども、どういう形で労働審判のほうに行ったかと、経由したかということでございますが労働者の方は「1 労働局の相談窓口」「2 労働局の助言・指導」「3労働局の紛争調整委員会」という形の順番でパーセンテージが多くなっているという状況でございます。

 続きまして、42ページ、43ページでございますが「問11 労働審判手続に関する情報入手先」というところでございますが、43ページの図11-1をごらんいただくと、労働者の方のほうでございますが「6 弁護士(会)」、あとは「9 労働局、労働基準監督署、労働委員会」から情報を得ているというパーセンテージが高くなってございます。

 少し飛びまして、54ページと55ページでございます。「問18 労働審判手続の過程・経過の評価」でございますけれども、図18-1、図18-2をごらんいただきますと「2.証拠を十分に提出できた」「5言葉はわかりやすかった」「7迅速に進められた」というのが、労使ともに評価している部分でございまして、一方で否定的な回答が多いのが「3.相手の主張・立証を十分理解できた」ということにつきましては、否定的な御意見が多くなってございます。

 続きまして、74ページをごらんください。「問30 労働審判手続の終結形態」について、図30-1、図30-2あたりにございまして、やはり調停が成立したという回答が非常に高い割合になっているという状況でございます。

 続きまして、83ページをごらんください。労働審判の結果の有利・不利ですが、図34-1でございますが、労働者が「有利・やや有利」だと自分たちで感じているのが61.2%で、対しまして使用者のほうですが「不利・やや不利」だと思っていらっしゃる方が52.7%という状況でございます。

 続きまして、86ページの問36でございますけれども、今の状況も踏まえてというか総合しまして、労働審判結果に対する満足度ということで、労働者が満足しているのが約6割、使用者のほうが満足していないのは52.5%という状況になっているということでございます。

 最後に89ページをごらんください。問37付問というところでございますけれども、労働審判の特徴についての御意見でございます。

 特徴につきましては、図37-3をごらんいただくと「1 裁判所で行われる手続」「2 法的な権利関係をふまえた制度」という回答が、労働者のほうは多くなっておりまして、使用者のほうの回答としましては「7 当事者本人が口頭で説明」「10 裁判よりも柔軟な解決が可能」というふうに答える使用者が多くなっているという状況でございます。

 その他につきましては、御参照いただければ幸いに存じます。

 以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、引き続き、ただいまの御説明を踏まえて何か御意見等は。

 鶴委員、お願いします。

○鶴委員 ありがとうございます。

 事務局の御説明を聞いておりまして、私もこの労働審判制度というのは非常にうまく制度設計がされて、実際に機能しているということがわかる御説明をいただいたと思います。

 これは一つ、いろいろ御議論があるところだとは思うのですけれども、19ページの一番最後のときに、解雇無効と考えられる場合においても、この労働審判においては、労働者が現職復帰を望んでいない、使用者も金銭解決に反対でないという場合は、金銭補償を内容とする審判内容を定め得るということで、ある意味で納得感と柔軟性をあわせ持つ制度なのだということが非常によくわかると思います。

 今後、この中で議論を進めていく中で、労働審判制度とは非常にいい制度なので、もう少しこれがさらに活用されるということを目指すべきではないかといったときに、この労働審判で処理される件数というものが、今、3,0004,000ぐらいのところにあるわけですね。それがより活用しましょうといったときに、今後どれぐらいふえていく可能性があるのか。それが4,000を超えて5,000というところまではなかなかいくことがないのかもしれませんけれども、やや懸念されるのは、そうしたときに人的資源のリソース、裁判官、労働審判員のリソースというのが十分確保できるのかといったことも、また、きょうこれからいろいろお話を伺う中でも御議論があるのかもしれませんけれども、そのリソースの制約というものはどうなのだろうかということも、いろいろ制度設計をしていく上で非常に重要なポイントではないのかと考えております。

 もう一つの点なのですけれども、先ほど事務局のほうから御説明があった8ページの一番下の2つのポイントなのです。それで、この検討会でも各種紛争解決機関、制度の有機的な連携が重要であるというのが、私は一つ、統一的なテーマにもなっていると思うのですが、ここでは訴訟と労働審判制度というのがどういうふうにうまく連携ができるのかということについて、やはり少し議論をする必要があるのかと。

 特に8ページの一番下に、訴訟を提起した後に労働審判手続を付与するのか。これは規制改革会議でも訴訟と労働委員会の連携ということも申し上げて、同じように労働審判ということも、私は少し連携というものを考え得る。

 まだ海のものとも山のものともわからない、どうなるかといったときにこの制度設計をやられたときには、いろいろな御議論が多分あったのだと思うのですけれども、今、かなりうまく機能しているということであれば、この辺ももう一度考える必要がありますし、労働審判と訴訟との案件のうまい仕分けということをいろいろ考えていくと、前置の問題というものもいろいろ議論になってくる部分というのは当然あるのかと、お話を聞きながらそういうふうに思いました。

 以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございます。ほかに御意見は。

 徳住委員、どうぞ。

○徳住委員 資料2の15ページの【労働審判制度の対象として適していると考えられる事件類型】の2番目の●に、適していない事例として、「整理解雇、セクハラ・パワハラや差別的取扱い、就業規則の不利益変更、労災等に関する事件等」と書いてあります。これは恐らく労働審判制度がスタートしたときに、裁判所が公にしたものがここに記載されていると思われます。10年経過しますと、この実情は全く違ってきています。ここで適していないとされている、整理解雇、セクハラ・パワハラ、労災の事件については労働審判でも結構取扱われ、適切に解決しています。特にセクハラとかパワハラについては、使用者側の代理人も、「労働審判委員会が和解金額を提示しするのは大変有効だ。」という考えをお持ちの方がほとんどです。整理解雇事件についても複数人の申立事案、例えば13名とか、そういう整理解雇事件も一気に労働審判で解決することが現実に行われています。労災事件は難事件に見えますが、安全配慮義務違反の損害賠償額について、労働審判委員会がざっくりした解決案を出して大体解決している実情があります。そういう点では、この不適切事案の例示は、労働審判制度がスタートしたときのもので、このまま載せるとミスリードになる可能性があると思います。

○荒木座長 ありがとうございます。重要な御指摘かと思います。

 ほかに何か御意見はございますでしょうか。

 垣内委員、どうぞ。

○垣内委員 意見ということでありませんで、少し御質問させていただきたいのですけれども、今、話題にのぼりました労働審判制度の対象としてどういう事件が適しているかという問題について、現在は基本的に申立人がどういう手続を選択するかを判断しているということだと思うので、実際に実務を御存じの弁護士の先生にお聞きするのがいいのかもしれないですけれども、現在はどういう事件を、例えば訴訟でこれをやろうとか、あるいはこれは労働審判でいこうという判断をされているのか、それがきょうの資料の15ページで書かれているようなものとどの点で重なっていて、どの点でずれているのかというあたりについて、知見をお持ちの先生がいらっしゃいましたら、少しお聞かせいただければありがたいと思います。

○荒木座長 実情についてのお尋ねでありますけれども、この後、実際は労働審判委員をされている方のヒアリングもございますが、まずは申立人側の関係ということでもありますが、どなたか。

 水口委員、どうぞ。

○水口委員 弁護士の水口です。

 私は労働側ですので、申し立てる場合がほとんどです。本訴と労働審判では、解雇事件や雇止め事件の場合には、何よりも御本人当事者の意向によります。御本人が早期に解決をしたい場合には、やはり労働審判が一つ最適な申し立てになります。

 あと、プロの弁護士として3回以内という限定した労働審判手続で心証を労働審判委員会に持ってもらわなければいけない。そうなると、証拠の関係で、実質的には第1回、第2回目の審判手続が勝負ですから、そこで労働審判委員会に申し立て側に有利な心証を形成できるような証拠なり主張関係があるかどうか。この点の見極めが非常に重要です。

 いかに早期の解決を当事者が望んでいても、不利な解決では仕方ありませんので、やはり事実関係を究明しなければいけなかったり、法律上の争点が難しいものになると予測する場合には、時間がかかっても本訴を選択することになります。

 そういう意味では当事者の要求と、今、申し上げた主張・立証上の課題、そのバランスで総合的に判断してくことが、申立人側の弁護士の考え方だろうと思います。

○徳住委員 労働審判制度を選択する基準は、1つ目は、職場復帰なのか、金銭解決でもいいかという本人の要求です。労働審判は労使が合意に達せないとだめなので、合意を達成する可能性があるか、が2つ目です。3つ目が平均解決期間です。2カ月半という迅速性は魅力です。

 これは労働側だけではなくて、使用者側にももメリットです。労働審判制度のように2カ月半で解決するのであったら、ある程度自分たちの主張を譲歩してでも解決するメリットがあるということです。

 今回余り議論になりませんが、労働審判制度は労働訴訟類型の間口を大変広げたました。今までの訴訟類型で見られなかった、例えば有期雇用契約労働者の育児休業権を確認するとか、会社を辞めるときに社員持株会の株を解消しろとか、多様な類型が出てきています。

○荒木座長 ありがとうございました。

 労働審判の実情についての話にも入ってまいりましたので、そろそろ次の議題に移りたいと思います。

 次は労働審判員経験者からのヒアリングということでございます。本日は、労働審判員の御経験もおありということで、村上委員、それから武田幸雄様からのヒアリングを行いたいと思います。

 まず、村上委員より、労働審判員の経験を踏まえた御説明をお願いしたいと思います。

○村上委員 ありがとうございます。

 本日は労働審判制度について御説明する機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私は2006年4月の労働審判制度の発足時より、東京地方裁判所所属の労働審判員を務めております。

 本日は資料No.3のレジュメに沿いまして、主として私自身の労働審判員としての経験をもとに、労働審判制度についてお話ししたいと思います。

 なお、この10月以降は、事件は担当しておりませんことを申し添えます。

 まず、労働審判制度の特徴でございますが、労働審判制度の概要と状況については事務局から御説明がありました。労働局のあっせん、労働委員会のあっせん、通常訴訟などとの異動を中心にして、特徴として5点ほど挙げられるのではないかと思います。

 1点目は、労働審判手続は現在50の地裁と2つの支部で行われているということでございます。労働局は都道府県において1カ所ずつ、労働委員会は東京、兵庫、福岡を除く道府県で1カ所ずつであるという点で多少異なっております。

 2点目は非訟事件であり、通常訴訟とは異なり、非公開の手続であります。

 3点目は労働審判官と2名の労働審判員で構成する労働審判委員会が事件に当たるという点でございます。労使推薦の労働審判員が関与する点では、労働委員会のあっせんと共通しておりますが、労働審判員は「中立かつ公正な立場」であることが法律で求められております。

 4点目でございますが、労働審判員には研修機会があります。初めて任命された労働審判員を対象に、「労働審判研修会」が行われます。また、地裁ごとに全員を対象とした年1回の「労働審判員研究会」が行われています。

 5点目ですが、原則として3回までの手続であるという点です。あと1回あれば調停が成立する可能性があるという場合などは4回に及ぶこともありますが、原則3回以内ということは、ほかの制度との大きな違いであると思います。

 次に事件処理の流れについて、簡単に御説明いたします。

 具体的な事件の流れはレジュメの図のとおりでございます。申し立てから第1回の期日までは、労働審判規則で40日以内とされております。労働審判員には担当事件が決まると申立書が送付され、その後相手方から答弁書が提出されると、答弁書が手元に届くということになっております。

 労働審判の第1回の期日の前には、30分程度、労働審判委員会による事前評議の時間が持たれています。この事前評議の段階で、事件の概要や争点、見通し、疑問点、確認すべき点、進行方法などを整理いたします。申立人、相手方の双方がそろって審理がスタートすると、事前評議での確認をベースにして、事実関係の確認や争点の整理を、労働審判官を中心に行っています。その後、当事者双方に退席してもらい、労働審判委員会で評議を行い、多くの場合は申立人・相手方のそれぞれから、どのような解決を望むのかなどについて話を聞き、調停を試みます。

1回で調停が成立する場合もあれば、3回までかかることもございます。

 次に資料の裏面にいっていただきまして、労働審判員としての経験から幾つかの点を御説明いたします。

 まず、労働審判員としての経験からは、紛争事案の傾向として、3つの点を挙げることができます。

 1点目は、事案の多くは複合的であるということです。不当に解雇されたと考えた労働者は、解雇無効と労働審判確定までの賃金の支払いとともに、多くの場合は未払い残業代を請求しております。在職中に未払い残業代の請求をするケースもないではありませんが、全体の中では少ないのではないかと思います。

 また、2点目は制度創設の当初は、先ほどもございましたが、「比較的内容が単純ではあるが、係争利益が必ずしも小さくない事件が適している」と想定されていたようですが、実際はパワハラやメンタルヘルス関係の事案ですとか、労災の事案もありますし、正確な時間外労働時間数を認定するのには時間がかかるはずの未払い残業代、あるいは退職金をめぐる取締役の労働者性などといった、さほど単純ではない複雑な事案も労働審判で解決をしているところであります。

 また、3点目は、結果として金銭解決をしているケースがほとんどかと思いますが、申立人の主張を聞くと、金銭の支払いを受けることではなく、「自分が受けた権利侵害について、使用者に非があることを認めてもらいたい」というケースや、「どうしても元の職場で働きたい」と願う申立人のケースもございます。

 次に、審理の迅速化のために留意していることは何かについてです。こちらで3点ほど挙げていますが、申立書と答弁書を読んで時系列に整理し、書証も事前に見て、自分なりに事件を把握した上で、審判委員会で十分に評議することや、審理においては当事者の主張をよく聞き、事件と直接関係がないように思えることでも質問して、なぜこのような紛争に至ったのかということを理解するということを心がけております。

 このように事前に準備をして、主張を聞き、事件全体を理解することが、結果として事件の解決に役立っているのではないかと考えております。

 ただ、このようなことは、必ずしも「審理の迅速化」のために行っているというわけではありません。3回以内に解決できるものは解決するという姿勢で臨む中で、1回目の期日でほぼ心証を形成することが必要であるため、そのためにこれらのことを心がけているということであります。

 次に解雇紛争等における解決金決定に当たって、何を判断要素としているのかということです。これについては、最も大きな要素は、その解雇・雇止めが無効なのか否かということであります。

 また、水口委員が前回指摘されていたように、合理的理由はあるけれども相当性のない解雇である場合と、合理的な理由すらない解雇である場合とでは、やはり判断は異なります。

 なぜ解雇・雇止めが無効か否かということが最大の判断要素として扱われるのかといえば、労働審判法第1条及び第20条により、労働審判は当事者間の権利関係を踏まえつつ、事案の実情に即した解決を図る制度とされているからです。

 裁判制度では、権利関係について白黒つけますが、事案の実情に即した柔軟さはありません。また、労働局でのあっせん制度では、権利関係を踏まえるために必要な主張・立証を当事者に尽くさせるという手続は設けられていません。労働審判制度では、当事者の権利関係を踏まえなければならないことが制度上義務づけられているので、最大の判断要素として解雇・雇止めが無効か否かを位置づける必要があります。その上で、事案の実情に即した解決を図るために、さまざまな判断要素についての検討が必要になります。

 例えば、解雇無効と考えられる場合であっても、労働者に非があるケースもあれば、そうではない場合もあります。8020で会社に問題がある場合と、4951のような場合など、それぞれの事案は多様であり、それぞれが別物であります。

 さらに訴訟に移行した場合に、それぞれが抱えるリスク、例えば訴訟費用であるとか、主張・立証の程度であるとか、精神的、時間的な負担なども考えられます。

 解雇されてから賃金が払われていない期間や、解雇後の就労や生活の状況、代理人の有無なども勘案します。

 また、勤続年数を考える場合もありますが、中途採用後に短期間で合理的な理由もなく解雇されたような場合には、勤続年数は考慮されていません。

 企業規模も考慮されることがあります。大企業に勤める中高年の方が解雇された場合には、別の大企業に再就職することが難しく、賃金が大幅にダウンすることは珍しくありません。一方、中小零細企業に勤める方が解雇された場合には、同じような企業に再就職して、前と同じ程度の賃金を得られる場合もあります。こうした企業規模格差と、これに伴う再就職の困難さや賃金水準の低下の不利益性なども考慮されることがあります。

 続いて4番目になりますが、労働審判制度に対する評価であります。労働審判制度は「司法制度改革のヒット商品」といわれることがあります。この評価の背景には、何よりも、平均75日程度の時間で8割という高い解決率を実現していることがあると思います。

 訴訟は期間が長く、負担も大きいという中で、それとは異なる制度として権利義務関係を踏まえつつ、短期間で和解もできる手続が整備されたことは、利用者のニーズに沿っていたものと思われます。

 利用者から見ると、東大社研の調査結果でも見られるように、手続のプロセスに対する評価が高くなっています。調停成立の場では、申立人だけではなく、訴えられた側の相手方からもお礼の言葉をいただくことが多いのですが、裁判所において法的な判断を示され、その判断を踏まえて話し合いで解決していくプロセスにある程度の納得感を得られているのではないかと感じています。

 また、労働の現場の常識や職場でのトラブルの予防、解決の経験を生かすという労働審判員の役割から考えると、職場における差別やいじめ・嫌がらせなど、より複雑な事案にこそ労働審判員の関与は求められるのではないかと思います。

 5点目で、労働審判制度などに関する課題であります。この点は私が連合本部に在籍し、全国の労働審判員からの話を聞く機会もありますので、自分の経験に加えて、そのような方々からの声も踏まえて意見を述べたいと思います。

 1点目は困難な事情を抱える当事者のサポートが必要ではないかということです。申立人だけではなく、相手方が外国人であるケースもあり、これまでは代理人が通訳をされたケースを経験しておりますが、労働審判手続に対応できるだけの十分な日本語能力がなく、代理人に依頼する資力もない場合には、通訳がつけられるというサポートも検討しなければならないのではないかと思います。また、障がい者の方への人的なサポートや、資力のない方への弁護士費用の問題など、制度をより利用しやすくする環境を整えることも求められているのではないかと思います。

 ドイツやフランスの労働裁判制度の利用者が年間40万から60万人いることと比較しても、日本の労働審判制度はまだまだ利用しにくい制度と言わざるを得ません。

 2点目は関係者の労働紛争への理解です。労働審判の事件においては、労働事件を扱った経験のない代理人に委任されているケースにも遭遇いたします。労働関係の専門性を踏まえて、通常の民事訴訟とは別の手続として労働審判制度が創設されており、また、3回以内の手続であるという点を踏まえれば、労働事件の特徴をより深く理解いただくことが重要ではないかと考えます。

 3点目は労働審判員がブラッシュアップしていくための機会が必要ではないかという点です。冒頭述べましたように、裁判所主催による年1回の研究会は行われていますが、事例の研究や経験の交流、法改正の情報提供などについては、多くの審判員から要望を聞くところです。法務省、厚労省など、関係機関の皆様にもぜひ御検討いただきたいと思います。

 最後に労働審判制度に携わっている中で感じていることは、中小・零細企業の経営者の皆さんの中には、基本的な労働法のルールが理解されていない場合もあるということです。学生などに対するワークルール教育の重要性の認識は広がってきておりますが、人事部や専任の人事担当者が不在の企業経営者の皆さんにも理解していただくということが、紛争の防止につながるのではないかと思います。

 また、先ほど来話題になっておりますが、労働局のあっせん申請をしたけれども、会社が不参加であったために労働審判を申し立てたというケースには幾つか遭遇しております。いずれの手続が適切であるのかという点は一概には言えませんが、制度がより活用されるようにするためにも、また、早期解決の機会をなくさないというためにも、会社側にもできるだけ参加を求めていくことが必要ではないかと感じているところでございます。

 以上、簡単ではございますが、労働審判制度の説明とさせていただきます。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、引き続いて武田幸雄様にお願いしたいと思います。きょうはお忙しいところありがとうございます。

 武田様は長らく日本興亜損害保険会社において、人事労務管理の業務に携わられた方であり、同社御退職後も現在に至るまで労働審判員をお務めです。

 武田様、審判員の経験を踏まえた御説明をよろしくお願いいたします。

○武田幸雄氏 恐れ入ります。

 ただいま御紹介いただきましたとおり、私自身は損害保険会社の出身でございまして、労働審判員は約6年、そして簡裁のほうで民事調停員、あるいは司法委員を仰せつかっており、同じような形の調停、和解の関係もさせていただいております。

 自己紹介的になってしまいますが、会社生活を40年近く勤めてきたわけですけれども、10年ほどは人事部に在籍し、中間管理職として勤めてまいりました。そのときの顧問弁護士の先生から、「今度、労働審判制度ができたのでどうですか?」というお話を頂戴して、6年前に労働審判員になったという経緯がございます。

 そういう訳で、特に労働審判員を代表するとか、労働審判制度に関し何かの役割を果たしているということではなく、使用者側推薦の審判員としては平均的な審判員なのかと思っていますので、その点は御承知いただきたいと思っております。

 レジュメを用意させていただきましたので、日ごろ感じている点を御紹介といいますか、御報告させてもらいたいと思います。

 労働審判制度の特徴は、これまでも十分お話が出てきまして、皆様も十分御承知のことではないかと思っていいますが、一応6つほど特徴を整理して挙げさせてもらいました。

 ここに出ている特徴につきましては、法律の中から拾い出したキーワードでございますが、この点以外に特徴が3つほどあります。3つの秘密兵器とか、あるいは3種の神器という言い方で、3つの制度が審判制度に組み込まれているということが言われているようでございます。

 一つは口頭主義ということと、証拠については一括提出主義、そして、審尋主義という3つの方式がこの制度にビルトインされている。この点がこの制度を確立させた大きな要因ではないかということをおっしゃっている先生もいらっしゃいます。大変印象深く思っております。

 レジュメに書いてあります6つです。個々の説明は必要ないのかと思いますけれども、法の1条、13条、17条のほうにその内容が特徴として示されております。

 審判員の多くは、使用者側は特にそうなのかもわかりませんけれども、現役を退いた方が大変多くいらっしゃっています。私と同じように、現役時代には人事労務の経歴を有している、そういう方が審判官と他の審判員と一緒に解決に向かっているということでございます。

 訴訟と同じように証拠を揃ええているということで、その証拠をもとに権利とか義務関係を把握しながら解決がなされているというところは、皆さん御承知のところではないかと思います。

 3つ目の迅速さということが、先ほど来お話が出ていますけれども、何よりも当事者双方、申立人にとっても、あるいは相手方の会社にとっても、ある程度の期間は読める、2カ月半ぐらいで終わる、このメリットは大変大きなところではないかと思っております。

 次は、証拠の提出が職権で行われているということです。そして、この条文にはあらわれていないのですけれども、この検討会のテーマにも関係するということになろうかと思いますが、不当解雇とか解雇無効という判断がなされたときに、職場復帰することなく、金銭による解決がなされて、それをもって終了しているということも大変大きな特徴なのかと思っています。

 最後は審判の進行です。民事調停とか司法と比べますと大きな違いかと思います。審判官は専ら自ら進行を行っていますので、権威ある手続になっているのかと思います。1回目の期日には、20分ないし30分程度、事前評議が行われております。その場におきましては、フランクに皆さんとお話しすることができるのですけれども、実際に審判が始まりますと、その審判廷においては審判官が専ら中心となってリードして進めていく訳ですから、我々審判員が発言する機会は若干後退し、現実には審判員の発言もないという状態もあったりするという話も聞いております。

 この点では、民事調停の場合ですと,調停委員自身が実際にその案件をどうまとめていくか、かなり汗をかきながらやる部分もありますが、労働審判の場合には審判官の指揮のもとに我々も動いていますので、その場でのプレッシャーといいますか、負担感というものに若干違いがあるのかという気がしております。

2番目の紛争事案の傾向ですが、資料では、一応立ち上げ時と昨年度の2つの時点での比較で、どう変化があるかというところを見ています。

 地位確認事案が半数ほどを占めている点に大きな変化はありませんが、真ん中の賃金等の件数が10%程度増えているというところが特徴的かと思います。未払い残業代の請求が多く含まれてきているということではないかと思われます。

 私自身も直近で扱った2件は、やはり残業代の問題でした。会社は申立人を管理者と見立てて採用し、残業代を払っていませんでした。退職した後にしばらくたってから、やはり残業代を請求するということで、最近の裁判の傾向といいますか、管理職に対する厳格な運用ということで、そのときの審判官もこれは管理職に当たらないということを伝え、残業代の支払を命じました。会社のほうは相当ショックだったようなのですが、3回目のところで了解しました。かなりの金額を払うような結果になり、最近の例としても印象に残っている事案でございます。

 また、数字そのものはあまり開示されていませんが、残業代の関係では在職中においても請求がなされているというお話も聞いたりしております。

 3番目の判断要素というところに移ります。示しました5つぐらいを、複合的あるいは総合的という言い方になるのですけれども勘案しながら判断しています。

 終わってみますと、ケース・バイ・ケースということで、幅寄せの部分はありますし、きちんと方程式的に数字の成り立ちが明解に示されることは余り無く、わからない部分がございます。ケース・バイ・ケースと言わざるを得ないのかと思っております。

 1つは、権利義務関係です。当然この辺を踏まえていかなくてはいけないのですけれども、そのために私ども労働審判員が事案そのもの全体をしっかり把握する必要があり、双方納得のいく解決を目指すため、そうした心構えを審判員は持っているのではないかと思います。

 東京地裁のケースですが、申立書と答弁書が手元に郵送で送られてきます。証拠書類は付いてきません。審判員においても証拠書類を見ないと、見当違いな質問をしてもいけませんので、証拠書類を把握するために事前に裁判所に赴いて閲覧させていただいています。したがって、平均2回で終わるような案件であればプラス1回、3回の登庁ということが実態としてはあります。また、答弁書が届いていないようなケースの場合には、さらにまた行くことになりますが、事前の資料の読み込みを果たしているというところでございます。証拠そのものは大変な分量にもなりますので、コピーを受け取るということは大変なのかわかりませんが、よく証拠の説明書という形で一覧にしたものがございます。一覧表には何のための証拠だということも付されていますので、事案のイメージが湧きやすく、証拠の一覧表も申立書あるいは答弁書に添付していただけたらと思うところがございます。

 こうした提出資料によっても心証が形成される訳ですが、申立人、相手方のどちらが勝ち筋なのか、あるいは負け筋なのかといったところ、この心証が提出資料とか審尋の中で形成されていきます。一番神経を使うといいますか、心証形成のところがやはり、解決金の判断要素には大きく影響しているのではないかと、今までの御説明の中でもあったと思います。

 次に、実際の具体的な計算に向けてはやはり解決金算出のベースになるのは月収の額なのかと思います。細かい話になりますが、3の相手の支払能力が低い場合には、分割払いとなりますし、月収の何カ月分と丸い数字にするとか、未払い残業代でも何割ぐらいにするかといった計算で、ざっくりした形の結果が示されるということも多々あることではないかと思います。

  就業状況、長い勤めなのか入社したばかりなのか、あるいは配偶者、家族がいるのか、そういうことも検討の対象として加わることがあります。

 事前評議の中で、素人考えでこういう点の勘案はどうなのでしょうかと、申立て事項に含まれていない要素について提示することもありますが、審判官のほうからそこは必要ないでしょうと言われますと、なかなかそれ以上は踏み込めない場合もございます。

 最後ですが、あっせん、審判、そして本訴に移行して和解となりますと、代理人への報酬も加味されて解決金が高くなりますが、ケースによっては実際に正味として受け取る額は変わらないのではないかという気がするときもございました。

 明らかに解雇無効というケースの場合では、一定の類型化による解決金の設定というのもあるのかもわかりませんけれども、実際には痛み分けが多いのではないでしょうか。交通事故ですと6対4とか7対3という過失割合の関係を勘案しますが、そういった要素も絡み合った複雑なケースもあり、設定はなかなか難しいのかと思います。

 損保の世界では、『赤本』とか『判例タイムズ』というものが使われまして、それを共通言語として調停、話し合いが行われますが、果たして労働審判版の赤本的なものを策定できるのか、ケース・バイ・ケースということを最初に申し上げましたけれども、要素が複雑に絡み合う労働問題においては難しいかと、直観的にはそう思った次第でございます。

 次は迅速化です。大きなメリットということで、迅速化のために留意しているということをお話しさせてもらいます。

 他の司法の手続と比べた場合、御承知のとおり、スピード感のある進行がメリットして受けとめられています。進行指揮そのものはこれまでの説明のとおり審判官が行いますので、この点では、審判員の果たす役割は余り多くは期待できないのかという気がしています。審判官は始まるときに、最初に当事者双方に対して3回の期日で終わりますから、とかなり強調されてお話しされます。双方への協力もお願いしつつ、審判制度の説明の中で一番強調していられるのではないかという気がしております。

 1番に書きましたとおり、審判制度では規則19条の証拠の提出期限、あるいは規則27条でも、2回目までには証拠の提出を終えるということが決められていますので、客観的な資料をもとに1回目、2回目のところで我々も事案を把握させていただいています。

 審判員としては、審理がスムーズにいくように進行を妨げないように、手元にない証拠資料などを、先ほどもお話ししたとおり、裁判所に行きまして十分読み込むことにしています。事案の整理にあたり、ほとんどの方が控室で一生懸命になって資料を読み込んで、時系列、あるいは表にするなどして、事案の内容を把握していると思います。

 1回目の期日が大体2時間から3時間ぐらいになりますので、半日を目安に審判の日の行動というか予定を組んでいます。

 1回目にかなりのエネルギーを使って争点の絞り出しを行っていまして、その日のうちに調停を試みるということも多く行われています。特に使用者側のほうですけれども、ある程度のところまでしか自分の権限を持っていないという当事者も往々にして出てくることがございます。その場合には決裁権限のある当事者に電話できるようであればお願いし、電話で可否を聞きだすということもよくあることでございます。仮に3回目が設定されたとしても、その3回目のときには大体答えを持ってくるということで終わることが、私の場合は多かったのかという気がしております。

 5の評価ですけれども、研修のときの裁判所の説明では自らもかなり高い評価しているという内容のお話がよくあります。4番目のところをごらんいただきますと、企業側にはやや不満の声があるとされています。先ほど東大社研のレポートのお話の中でも出ていたと思いますが、会社は解決金を支払う立場なので満足しているということはなかなか言いにくいのかと思います。また、大企業など労務管理をきちんとしているところのスタンダードで行われますと、大体相手方は中小企業、零細企業の方が多いですから、当該企業の慣行といいますか慣例とはかなりギャップがある結果になって、その辺も自分たちのことをわかってくれているのかとの思いも中にはあるのではないでしょうか。全体としては評価されている訳ですけれども、申立人と比べた場合には、比較の問題でやや不満の声があるのかと受けとめております。

 最後に、審判制度の課題を申し上げたいと思います。自分自身の思いの一端を4つほどにまとめさせていただきました。

 1番については、繰り返しになりますが、審判官が専ら進行を指揮しますので、審判員の発言の機会が少ないという点が現実にございます。結果に対する我々の充実感とか自信を得るためにも、ある程度の役割分担とか発言の機会などのバランスも一考の余地があるのではないかと思います。また、審判員の発言が何もないということになりますと、審判員への評価にもつながる部分もございますので、発言機会あるいは役割分担といったところも、審理を進める中では必要なのかと思います。

 解決案がまとまり調停条項を読み上げて終わる訳ですけれども、その後3人でその案件についてのミーティングといいますか、金額の決定、進め方、双方への働きかけなど、事後評議が行われますと、審判員にとっては今回審判にかかわったということの納得感といいますか、その次につながるような自信にもなりますので、わずかでも時間を頂戴できればいいと思っている次第です。

 2つ目ですが、紛争で当然の話なのですけれども、申立書と答弁書では正反対の主張が組み込まれております。権利が真っ向からぶつかっている訳ですけれども、審判期日前に代理人同士の交渉の場というものがあることによって、お互いの言い分のニュアンスがつかめるのではないか、譲歩の余地もある程度見出すことができるのではないかと思います。事前に代理人の間での交渉を行うこともある程度あってもいいのではないかという思いでございます。

 労働審判では互譲の精神ということを持ち出すことは余りありません。若干違和感を覚えることなのかもわかりませんが、調停の成立に向けてはそうした訴えも時には必要と思われます。調停は互譲による合意の成立を図って、自主的な解決を試みるということでございますので、法の第1条にも示されているとおり調停を試みる場合、こうした働きかけがあってもいいのかということで、つけ加えさせていただきました。

 3点目は労働審判員の稼働率という問題なのです。現在、東京地裁には使用者側推薦で194名の審判員が在籍しているとお聞きしております。大体年間で審判員一人当たり四、五件の案件を担当しています。先ほど話したとおり、第一線を離れた審判員が多いものですから時間もあるわけで、モラールの維持に向けて、また、経験を積む意味からも、もう少し事件を担当してもいいのではないかと思う次第です。

 先ほど案件が増えた場合の対応についてのお話もありましたけれども、審判員は年四、五件ということでは若干物足りなさを感じている部分があります。もう少し案件を担当して、自分のスキルもアップして納得感というか充実感を持つような形もあっていいのではないかという思いでございます。

 4点目は先ほど来お話がありました広報活動です。労働問題の関係者の間では非常にこの制度が機能しているという認識は当然あるわけですけれども、件数が3,500件前後ということで推移しております。他の地方裁判所を含めると伸びているのかもわかりませんけれども、東京地区は件数が横ばい、高止まりしているのではないかと思うところがございます。今一度制度の有効性とかメリットを広く周知していく必要があるのではないかという思いをしております。

 関係者の皆さんは御努力されているということは十分わかっておりますが、会社側出身の私のほうから掘り起こしとか、寝た子を起こすような話をするのもおかしいかもしれませんが、適正な人事の労務管理の遂行が企業内に定着していくということは、労働紛争の未然の防止にもつながる訳で、きちんとした成長を目指すためにも広報活動の充実はぜひお願いしたいテーマです。先ほどのアンケートの結果でも、企業においては、申立があってこの制度を初めて知ったというところの御説明がありましたが、その辺で会社側に対しても十分広報活動が必要なのかと思っております。

 最後になります。

 東京経協のリードで年1回ぐらいですが、審判員同士の交流が任意に行われています。守秘義務の関係もあって集まることは難しいのかもわかりませんが、審判員同士の情報交換の場、あるいはノウハウの蓄積ということで相互交流の必要性を感じます。 調停制度の場合ですと、調停委員の組織がきちんとしており、それぞれの裁判所に協会があって、全国の組織もあって、そういうところで研修とか、あるいは裁判所との意見交流とかということもございます。裁判所に直接的な我々審判員の声を聞いてもらう機会というのは、年1回の研修のときに全体の中ではありますけれども、ざっくばらんに審判員がどう思っているかというところを話す機会がないと言っても過言ではありません。そういう声を裁判所なり関係機関に伝えるためにも、ぜひ裁判所、法務省の方には場づくり、機会づくりを御一考いただければと思っている次第でございます。

 御清聴ありがとうございました。

○荒木座長 ありがとうございました。

 労働審判員を御経験のお二人から、大変貴重な報告をいただきました。

 それでは、ただいまの御説明について、御質問等ございましたらお願いいたします。

 大竹委員、どうぞ。

○大竹委員 お二人の審判員の方にお聞きしたいのですけれども、解決金の決定に当たって留意されていることは、お二方ともお話しいただいたのですけれども、2つ質問があって、こういう大まかルールというものは審判員の間で、あるいは審判員ではない弁護士の方も含めて、大体どの程度共有されているものなのかという感覚を教えていただければということが1つ目です。

 2つ目は解決金の提案について、審判の進行は裁判官、審判官が主導するとお二方ともおっしゃったのですけれども、そうすると提案を大体決めるのは、審判官が主に決めるのか、やはりかなり審判員の方々の意見が強く入って決まってくるものなのかということも教えていただければと。

 この2点です。

○荒木座長 今の2点について、どちらの方からでも結構ですが、いかがでしょうか。

 武田委員、お願いします。

○武田幸雄氏 

 大まかなルールの共有化ですけれども、特段そういう話があるかといえば、事案の相場を参考書から得たり、検索でヒットさせることはあるかもしれませんが、審判員同士での共有、あるいは審判官との間でルール的なものが存在するとは思われません。世間一般ではどうなのか、月収の何カ月分ぐらいなのかというところは、把握して臨むことがありますけれども、その当事者との話し合いの中で自分なりに形成し、事前評議の中でそれぞれ意見の交換をしているというところでございます。

 進行を決めるに当たって、審判員がどう働きかけるかということでございますが、私の印象ですけれども、実際には審判官はその事案に対して相当ご自身で組み立てをなされています。また、裁判官の多くは、「どうぞ御意見を出してください。」、「どう思われますか?」ということで話を投げかけていただきます。それまでに調べ上げた結果に基づいて、審判員から自分なりの意見を出して提案内容、解決案を協議していただきますが、進行そのものは審判官が決めていらっしゃるのではないかと思います。途中で、1回目、2回目の中で、私のほうから中間評議をしませんかという提案をする場合もございます。、

○荒木座長 村上委員、どうでしょう。

○村上委員 1点目について、大まかなルールがどの程度共有されているかの問題なのですが、解雇の場合は心証が大事だろうということは共有されていると思いますが、それ以外のことについて何かルールがあるとは私自身も認識はしておらず、ケース・バイ・ケースで考えているのではないかと思います。

 2点目は、解決金の額を審判官がリードして決めていくのかというご質問ですが、そういうことではないと思っています。審尋を終えた後に評議を行うわけですけれども、そのときに、「この場合はどんな解決が考えられるのか」という相談をいたします。また、当事者はどうしても職場復帰したいのか、それとも、職場復帰は望んでいるけれども、一定の金額を得られれば調停で解決してもいいということなのかということを踏まえたうえで、当事者から先に、それではそのときの解決金の額というのはどの程度なのだということを伺うケースもありますし、審判委員会の中で話し合うケースもあります。

 審判委員会においては、審判官がお話を振ってくださいますけれども、解決金について審判官が何カ月でしょうということを出されることは必ずしもありません。例えば、「解雇無効なのだけれども、労働者にも非があるというときにはこれぐらいの解決金かな」といった話を3人でしているということであります。

 以上です。

○荒木座長 斗内委員、どうぞ。

○斗内委員 ありがとうございます。斗内でございます。

 私も労働審判員を務めさせていただいておりまして、その経験から少し、今の点についてお話をさせていただければと思っております。

 労働審判員を務めておりましたというお話をさせていただきましたが、現在はお休みをいただいております。先ほどの資料2にもございますように、労働審判手続きにおける審理期間のデータを見ますと、第2回期日までで7割ぐらいが解決成立しているということでございます。その点で、私は今現在、まだ現役で本業がありますので、その第2回期日がなかなか設定できず、そのことによっては申立人または相手方に御負担をかけるということはいかがなものかと思い、お休みをさせていただいているというのが正直なところです。本来ならもっと速やかに、少ない期日で解決できるのではないかと思っております。

 先ほどからずっとお話がありますように、私の経験からも、第1回期日のときに相当、半日をかけまして申立人、相手方のそれぞれの言い分をお伺いさせていただいております。双方の当事者からいただく申立書、答弁書というのは真っ向対立をしておりまして、それぞれ片一方ずつ読み始めると、一体どちらが正しいのだろうというところがあります。そのため、半日という時間の中で事実関係やお互いが言った言わないとかいうことも含めまして、いろいろなことをヒアリングさせていただいて、心証を固めていく・争点を見出していくという作業を進めさせていただいているというところでございます。

 また、単に解雇無効を争うというよりは、残業代未払いとかパワハラですとか、いろいろなことが複合的に混在している事案が非常に多いと思います。ただ、単に解雇無効ということになりますと、地位の確認という請求になってまいります。ですから、そのときの請求額等はもともと発生をしていないということになりますが、その間の相手方、申立人等々と色々な話し合いをする中で、やはり不幸にして職場復帰は難しいということになりますと、その1回目期日の最終段階で労働審判委員会としての心証をお伝えをし、「次回期日までにはどういうことを望むのか」、「最終的に金銭で解決するとすれば、申立人はどう考えるのか」、それから、相手方に対しても、「現時点ではこのような状況で、このままではなかなか難しいところがあるのではないか」といったことを権利義務の関係から御説明した上で、次回期日までに考えてきていただきたいとの旨をお話させていただきます。

 その上で第2回期日に入りますと、いわゆる内容を御確認させていただいて、合議にて、和解に向けて調停作業に入っていくということになってまいります。このような流れを見ますと、一概にルール化というものが難しいということでございます。

 第1回目のときにもお話をさせていただきましたが、集団的な労働紛争におきましても、個別的な労働紛争におきましても、やはりケース・バイ・ケースなのだと思っております。事案はケース・バイ・ケースですので、それぞれの事案において、個々の事情をどうそしゃくしていくかということを見ながら、最終的な金銭解決のところの和解案を見出していくという作業を行っているというところです。

 実際には、100%どちらかが悪いということはなかなかございませんので、そういったところを踏まえながら、私ども労働審判員は審理を進めさせていただいております。このようなことから、労働審判制度は比較的納得性の高い制度という評価を受けているのではなかろうかと思っております。

 私の経験を少しお話しさせていただきました。ありがとうございます。

○荒木座長 ありがとうございます。

 八代委員、どうぞ。

○八代委員 貴重な御説明ありがとうございました。

 大竹委員の御質問のフォローなのですが、ケース・バイ・ケースと言っても、解決金の決定について、やはり何か大まかなルールはあるのではないでしょうか。

 今は月収の何カ月分ということなのですが、何カ月分をどう決めるかというときに、海外では例えば勤続年数というのが一番大きな要因であって、去年雇われた人と何十年も働いていた人では当然補償金の額は違うのではないかと思われます。逆に定年間近の方だと、ある意味で本人が幾ら地位確認を望んでも、会社が定年までの給料を払えば、もうそれは事実上職場復帰はできないわけですから、どこかで勤続年数と非線型の関係があるのではないか。

 もう一つは、職場復帰か和解かということですが、これもある意味では金額次第ではないか。素人考えからすれば、労働者のほうはまず職場復帰を求めて、使用者側がどれくらいそれに対して補償するかで、やはり少しずつ考えが変わってくる場合がる。やはり勤続年数というものが鍵になるのではないでしょうか。

 また、交通事故と同じような過失相殺の場合もあるのではないか。この点は、当人の人事評価が使用者側から出されればそれも考慮されるのかどうかということも、ぜひお聞きしたいと思います。

 労働者側が金額を提示するとしても、最後は労働審判官が、自分の考えに基づいて、大体何カ月分ということを言われるのではないかと思うのですけれども、それについても個別ケースで教えていただければと思います。

○荒木座長 ありがとうございます。

 今の点について、御発言はございますでしょうか。

 村上委員、どうぞ。

○村上委員 3点御質問いただきましたけれども、一つ目の勤続年数の点につきましては、先ほど申し上げましたとおり、勤続年数は解決金額の算出にあたって考慮することもありますけれども、必ずしも考慮されることではないと思います。

 例として、中途である程度のキャリアの方を採用したものの、やはり気に入らなかったということで突然解雇するというケースがあります。そのようなケースにおいては、別に勤続年数がかかわるということではなくて、前の会社を退職してまで再就職してきて、すなわち、ヘッドハンティングに近いような形で転職してきてもらったのにもかかわらず解雇したということが、合理的な理由もなく解雇したということであれば、勤続年数は短くてもそれなりの金額になっていくということはございます。よって、解決金の算出にあたっては、特段勤続年数ということが重視されているということではないのではないかと考えております。

 また、職場復帰か和解を選択するのは、その時の解決金額次第ではないかということですが、必ずしも金額次第でもなくて、どうしても戻りたいという方は、使用者側がかなりの多額の金銭解決案に応じたとしても、「いや、絶対に戻りたいのだ」ということで調停になるような事案もなくはないというのが現状です。よって、必ずしも解決金額次第ではありません。

最後のご質問について、金銭解決の場合にその金額を労働審判官が決めるということではありません。お話しされるのは労働審判官であり、このようなときにはこういうケースがありましたということを、評議の中で労働審判官から教えていただくことはありますけれども、中身は労働審判委員会の3人で決めており、労働審判官が1人で決めているということではございません。

 以上です。

○荒木座長 どうぞ。

○武田幸雄氏 

 人事評価のところは一つありまして、労働者の勤務実態がどうだったかということを証明するために、人事考課の提出を会社のほうが行います。こういう考課だった、そして、その上司とか周りの方の陳述書、この辺も出てきて、その労働者がどういう勤務実態だったのかということを証明しようと、会社のほうは当然する訳です。

 それから、私が扱った中では実際に会社に戻ったケースはないのですけれども、最後の最後まで会社に戻りたいということをかなり強く主張したケースは1件ありました。辞めた会社の福利厚生ですとか給与の問題とか、次の就職先にはどうしてもそこまでのレベルの会社はないということだったようなのです。審判官、そして我々労働審判員も、果たして戻った場合どうなのでしょうか、とお話して説得した覚えはございます。

 それから、勤務年数ですが、月収の額が当然あり、それと勤続年数をどうリンクさせて解決金を導き出すかというところは、今お話があったように、実際には無かったかと思います。長かったからこのぐらい出そうか、あるいは短かったからこうなのかというところの話は、勤続年数が少し長いという話は出しますけれども、それに基づいて解決金がどう反映されたか、あるいは影響されたかというところの経験は余りなかった感じがしております。

○荒木座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがですか。

 高村委員、どうぞ。

○高村委員 先に発言させていただきます。

 現在、解決金額の基準の問題に議論が及んでいるのですが、これまでこの検討会の中でも、当事者双方にとって納得のいく解決ということが何人かの方から語られておりますし、第1回の検討会で水口委員から、「金額の問題もあるけれども、双方が納得いく解決というのは、解決に至るプロセスが大事なのだ」という御発言もありました。

 私は労働審判員に携わった経験は一度もございません。ただ、東京都労働委員会では数多くの事件に携わってまいりまして、東京都労働委員会の場合はできる限り和解でという姿勢で事件に臨んでおります。和解で解決を図る場合には、それぞれの当事者の置かれた事情をきちんと踏まえ、双方の思いをきちんと聞く中で、お互いの主張の溝を埋めながら、解決する側が情熱を持って、また知恵を出しながら、双方の溝を埋めながら合意にもっていくということを行ってきました。

 個別の労働紛争においても、私は同じだと思っています。先ほど村上委員の発言、また、東大社研の調査でも、労働審判に対する評価として、そのプロセスに高い評価がなされております。

 そういうことを含めて考えますと、双方が納得いく解決を図るためには、解決に当たる側がそのような思いで紛争解決のためにいかに努力をするかということが第一義的に求められているものであって、画一的に基準を設けて二者択一的な解決をすることが、果たして双方が納得いく解決に繋がるかということになると、私はそうはならないだろうと思っています。

 そういう意味で、双方の主張の溝を埋めながら紛争解決にもっていくというプロセスが最も労働審判においても大事ではないかと思っているものですから、実際の労働審判に当たられている武田さんから、ぜひその点についてお聞かせいただければと思います。

○荒木座長 水口委員も関係するような御発言ですか。それとも、別の論点ですか。

○水口委員 解雇の金銭に関する話ですから、今のご発言とはずれるかと。

○荒木座長 そうですか。

 それでは、まずは武田様、よろしくお願いします。

○武田幸雄氏 

 プロセスが大変大事だということはおっしゃるとおりでして、私自身もそのような思いでして、調停とか司法のところでも双方納得感のある解決を目指すように研修等で指導を受けています。労働審判の特徴として示されていることで目にしたことがあるのですけれども、審判官、そして労働審判員の方も傾聴の姿勢をもって臨んでいる点は特筆するところではないかと思います。訴訟においては、よくそんなことは聞いていない、命令したのかしないのか、そこだけ聞いているのだ、といった話が聞かれる訳ですが、労働審判の席上ではそういった審尋が行われるということはなかったと思います。

 それぞれ丁寧に申立人、相手方から事情を聞いていることから当事者の納得感につながるのではないでしょうか。事案に柔軟に対応するということでは、職場の状況は我々が実際に働き、あるいは労務管理している中で、問題点を大体類推できるといいますか、推測できる部分があります。それはそういう点では大変だったのでしょうね、と相槌を打ちながら審理をすすめる場合もあります。

唯今、大変貴重な御意見をいただきましたけれども、研修とか、あるいは審判員の交流の中で、どういう形で皆さんが臨んでいるかというところをお互いに知り合いたいと思います。やはりそうなのか、自分が思っていることもやはり正しかったのだということを意見交流の場など確認できる機会があれば、よろしいのかという気がしております。

○荒木座長 ありがとうございます。

 鶴委員、どうぞ。

○鶴委員 今、ルールかプロセスかどちらなのですかという、二者択一みたいな話になっているのですけれども、私は少し違うのではないかと思うのです。

 私は両方とも非常に正しいと思っていまして、それはなぜかというと、労働審判それぞれのところで、まさに審判官と審判員の方々が非常に丁寧にやられている。こういう事実は、いろいろお話を聞いてそうだろうなと納得をしております。

 ただ、先ほど大竹委員がおっしゃったように、何か共通の考え方というか、そういうものがあるのですかという場合には、必ずしもそうではないということになると、全く同じ事案でも、それぞれのところで別の結果が出てくる可能性がある。そういうことに対する公平性というのはどういうふうに考えるのでしょうかと、そういう議論も当然あるのです。

 ここではしっかり皆さんやっている。周りから見てもそういうふうに見える。ただ、そういうこともあり得るということを考えると、私は両にらみでやっていくべきだということなのです。

 それから、勤続年数の話というのは非常に難しい議論があって、先ほどお話があったように、村上委員が非常に貴重なお話をしていただいて、アウトサイド・オポチュニティーの問題なのです。つまり、自分が解雇されて、それでは、どこに行くのかと。非常に賃金が下がる場合だと、それは解雇ということが起きたものに対して補償はしてあげなければいけない。それが余り変わらない人と、それが大きく変わる人については違った対応が考えられるべきだというお話だったと思います。

 それを考えると、定年まであと何年か、そのアウトサイド・オポチュニティーの関連で、むしろ定年までの年数に応じて考えなければいけないという考え方も当然ある。一方、もともと何年働いたかというところで考えなければいけない面。そうあると、勤続年数をどう考えるのかということは非常に難しい。

 ヨーロッパと比較すると、日本の場合は40代以上は賃金がどんどん上がっていきますので、ヨーロッパと同じような年数で、例えば月数でやると、非常にその額が大きくなってしまうというような違いもあります。

 なので、ここはいろいろ、例えば欧米との違いとか、日本のある意味の特殊性とか、そういうところもしっかり見ながら、ただ、勤続年数というものが実際に日本の場合はどうなっているのか。心証というのをコントロールした上で、そういうものが果たして効いているのか効いていないのかということについては、さまざまな皆様のお話をいろいろ聞きながら、そこはしっかり考えていかなければいけない部分だと思いますので、いずれにしても、どちらがどちらということではなくて、両方考えていくべき課題かと思っています。

○荒木座長 水口委員、どうぞ。

○水口委員 大竹委員や八代委員から、労働審判での解決金を決めるルール的なものは何だろうかという質問がありました。その点で私の認識を話させていただいて、村上さんや武田さんの審判員の経験からどうか、御意見をいただければと思います。

 労働審判の場合、解雇事件では、地位確認請求と、これに賃金支払請求を求めるわけです。「請求の趣旨」、あるいは「申立の趣旨」では、例えば、賃金が毎月40万円であれば、「地位確認」とともに請求の趣旨として、「会社は労働者に対して毎月何日限り金40万円を労働審判確定までを支払え」と、本訴だったら「本訴確定まで支払え」と請求するわけです。

 その上で、労働審判委員会が、裁判所がどう解雇が無効であるか、無効という心証を持ってくれるかどうかです。労働側であれば、それを見きわめて、復職ではなくて金銭で退職してもいいと考える場合には、調停で解決金、本訴なら和解金を提案します。

 一方的に労働審判委員会が金額を決めるのではなくて、まず復職しないで金銭解決する場合に、解決金額のボールを投げるのは申立側、労働者側なのです。解雇の有効無効の争点につき、第1回期日で、ある程度心証を労働審判員が形成した段階になって、労働審判委員会のほうが、「これは解決についての、あくまで復職を求めるのか、金銭解決もあり得るのか、その考え方を聞かせてください」ということを労働者側に聞いてきます。労働者側は労働審判委員会が有する心証を踏まえて、それでは、「復職でなく、金銭解決で退職するときには、労働者側は、これだけの金額を払うのであれば退職に応じる」と答えるわけです。

 その際、解雇が無効だと労働審判委員会の心証を獲得しているということになれば、バックペイは当然で、バックペイにプラスして、将来の雇用継続を断念して退職するのだから、その分の補償金が幾らなのかということを、基本的には申立労働者の要求に基づいて要求します。私であれば、解雇無効であれば数年分を要求するのは当然だと思いますので、そういう金額を要求します。

 それを踏まえて、労働審判委員会は、おなかの中にそれなりの腹案があるのかもしれませんけれども、それをその場にすぐ出すということではなくて、「それでは、相手方、使用者側のほうがどういう考えなのか聞いてみます」ということで、使用者側のほうの考えを聞くのです。

 使用者側のほうも、合理的に行動する使用者であれば、「負け筋」、つまり解雇は無効とされると思ったら、ある程度のお金で解決したほうがいいと考えて、ある程度の金額案が出てきます。

 両方の具体的な金額の回答があったときに、その調整を労働審判委員会が、解雇が無効であるかどうなのかということの心証を踏まえて公正な調整をします。かつ、労働審判委員会は、相手方の支払能力や相手方の調停受諾可能性、申し立て側の譲歩可能性を見ながら、心証とともにさまざまな要素で考えて、最終的に両者の考えの「幅寄せ」をして調停合意をさぐります。最終的に、両当事者が一致しない場合に、労働審判委員会が調停案の金額を出す。こういうのが実際の実務だというふうに私は思っています。

 腹の中では裁判所なり裁判官なりが一定の案をお考えになっているかもしれませんが、労働審判は、非訟手続ですけれども、実質的には訴訟活動ですので、当事者活動、弁論主義が妥当するところです。要は申し立て側の要求、使用者側のほうの考え方、つまりコストとリスクをどう考えるのか。ここで最終的に解決金額が判断されていくものです。

 そういう意味では、ルールが全くないかというと、基本的には地位確認を求めていくと、月々の賃金請求を基礎として、解雇無効の場合にはバックペイは当然、退職するとなれば、その将来分についての解決金がいくらになるかは、まさにケース・バイ・ケースとしか言えないだろうと思います。

 私も2,000万を超えるような解決金になるような場合もあれば、それは100万円の場合もあります。場合によっては解雇が有効という心証がもとになれば、1カ月分でも納得せざるを得ないというケースだってあるわけです。これはやはりケース・バイ・ケースなのだと思います。

 このような認識で良いのか、審判員の方にコメントをいただければと思うのです。

 もう一つは、この機会に申し上げると、労働審判の段階での調停、労働審判、そして、労働審判に異議を申し立てて本訴にいく場合の三段階があります。この3段階は、ばらばらではないのです。調停で7割の調停成立が可能だというのは、労働審判委員会で調停がだめなら審判が出るということが控えているから、調停が成立をするわけです。つまり、どういう審判が出るのかイメージをして、審判によるか調停で解決しましょうということになります。

 労働審判について、この資料の最後のページに異議率が出ています。労働審判施行の当初段階では7割近く異議が出ていたのですけれども、その後、平成26年は56%しか異議が出ていないのです。だんだん異議が減ってきています。

 相手方、使用者が異議申し立てをするかどうかは、本訴でどうなるのかということを考えてやるわけです。つまり、労働審判で、例えば解雇無効に出て、本訴で同じ証拠でやったら、これは負けると、合理的に考える使用者はそう考えます。使用者側の弁護士さんもそう指導されると思います。

 そうなれば、本訴に移れば手続に1年ぐらいかかり、解雇無効になれば、当然、1年分のバックペイを払うというリスクを使用者が負います。さらに将来の分も月々、本訴確定まで払えというふうになります。

 そのコストとリスクを考えて、当事者は労働審判に対して異議申し立てをするかどうかと考える。これは当たり前といえば当たり前なのですが、つまり労働審判の段階で調停審判、それから本訴、それぞれのコストとリスクを考えて、ケース・バイ・ケースで考えている。

ここからは私の意見ですが、これを下手な統一的・画一的な解決基準をつくってしまうと、例えば本訴をやったほうがトクだと、本訴をやったほうがより解決金額が大きくなるのだとと考える人も出かねないわけです。解雇無効を判決で獲得して、バックペイにプラス解決金をもらいたいということになりかねません。

 そうなると、労働審判で今、平均74日で8割解決しているという運用が壊れかねないということを、私は非常に危惧します。調停、審判、本訴、これが有機的に連関して労働審判手続の運用が機能している、労働審判がワークしているという視点を忘れてはいけないのではないかと思います。

 以上です。

○荒木座長 ありがとうございます。

 関連して八代委員、どうぞ。

○八代委員 今の水口委員の御説明は非常にわかりやすくて、ありがとうございます。

 ただ、最初に労働者側が金額を提示するということは、今のお話を聞くと、余り労働側に得ではないですね。場合によっては使用者がそれをのんでしまったら、もうそこで終わってしまう。だから、それは使用者が大企業か中小企業かによりけりですけれども、かなり支払能力のある大企業なら、むしろ地位確認で攻め立てて、最後に使用者側から具体的な金額を言わせたほうが、労働者側に有利だと思います。特に本訴の場合につながるのであればなおさらではないか。ただ労働者側の言い分と使用者側の言い分の金額を言わせて、調整できるということはごく一部ではないかと考えるのですが、その点も踏まえてコメントいただければと思います。

○荒木座長 それでは、調停に至るプロセスの実情のお尋ねもありましたので、労働審判員のお二人からいかがでしょうか。

○武田幸雄氏 なかなか難しい感じがするのですが、申立書のほうには当然、金額が設定されて、何カ月分に加えて慰謝料というか損害賠償的なものも入って申し立てられるわけですから、出発点として一つの金額がある程度イメージされるのかという思いがしております。

コストとリスクのお話がありましたけれども、その辺はやはり審判委員会の中で心証形成ができて、白か黒かのニュアンスを審判官から使用者側のほうにも伝わる部分がございます。また、特に個別の場合には厳しく伝えることになりますので、その段階でコストとリスクをどう考えるかということも、会社のほうは代理人と控えの場で時間を持つケースがかなりあるのではないかと思います。

 どちらのほうから金額が出されるかということでは、当然交互方式で申立人と相手方と別々に、個別に話を聞いてそれぞれの本音の部分を聞き出すということが、必ずといいますか往々にして行われます。申立人、相手方からこの程度までであれば、あるいはこれ以上は引かないというところを聞き出すことが委員会としては大変大事なところなのかと思います。相手方が中小企業、あるいは零細企業なのかを見て、果たして払えるのかどうかというところも十分聞き出して、そしてどういうふうに話を投げかけるかというところも、労働審判委員会3人で話し合うことも結構あるのではないかと思っております。

○荒木座長 村上委員、いかがですか。

○村上委員 全てのケースということではありませんけれども、プロセスについては水口委員が御紹介されたようなプロセスを踏むケースが多いです。

 先ほどもお話ししたかもしれませんけれども、1回目の審尋が終わった後に評議をして、心証はこういう感じだという整理をした後、では、解決についてどのように考えているのかということを申立人からお伺いすることのほうが多く、どうしても戻りたいのか、戻りたいというよりは早く解決したいのかというようなお話を伺います。その際に、多くの場合は条件を提示されるので、そこは踏まえながら調停をしていくということになります。

 もちろん、バックペイ、すなわち解雇された日から解決する日までの賃金の支払いというものも考えます。ただ、解雇されてから期間がすごく経ってから、例えば解雇後2年ぐらい経ってから申し立てる方もいらっしゃるので、そのような場合には必ずしも2年分ということではありませんけれども、ある程度のバックペイの分は考えるということが多いかと思います。

 先ほど鶴委員から、「全く同じケースで解決金が異なるのは公正とは言えないのではないか」というお話もあったのですが、全く同じケースというのがないものですから、同じ解雇であってもそれぞれの理由ですし、職場環境もそれぞれ違いますので、やはり全く同じケースというのはないのではないかと考えております。

 私自身が経験した中でも1,000万円を超える金額で解決した場合もありますし、2万円ぐらいを10回ぐらいの分割払いというようなことで解決したようなこともあります。それは、その方々の賃金がどれぐらいの水準だったのかということもありますし、どのような事案の中身だったのかということですとか、支払い能力とか、さまざまなことを考えながら成立した中身がそのようなことだったということであります。

 以上です。

○荒木座長 まず、石井委員からお願いいたします。

○石井委員 使用者側の代理人から補足です。実感としてなのですが、解決金の提案についてですけれども、主に「使用者側としてはお金を払って解決するという道はおありですか」と聞かれて、「申立人がこう言っています」というよりは、むしろ「幾らぐらいとお考えですか」という投げ方をされて、こちらのほうで固まっていなければ、「裁判所のほうからお出しください」とか、「申立人はどう言っていますか」と聞くこともありますけれども、会社として考えるところを出して、すり合わせていくというようなのが多数派ではないかと思います。

 調停でも調停技法、あるいは調停の民事解決機能の強化ということで、最近では調停員のほうから提案するのが望ましいという司法研究の結果も出されている。解決率が高いという結果が出されているようですけれども、委員側から提案するとは限らず、それぞれのを聞いてすり合わせというのが多いかと思います。

 それから、プロセスという点について、先ほどに少しお話が戻りますけれども、労働審判が始まって印象的だったのは、最初のヒアリングのときに両方同席の上で事実関係を確認する点です。

 斗内委員からもお話がありましたが、半日かけて聞くのは同席なのです。調停ですと、交代のことが多いので、最初労働審判もそうなのかと思いましたら、同席で、問題点を、この点はどうなのだということを詰めていくなかで、それとなく心証も開示されるということで、同席ということが解決率アップにかなり寄与しているところがあると思います。

 その点を、先ほどプロセスの点でお話が出たときに申し上げようかと思ったので、順番が逆になりましたが今、追加いたします。

○荒木座長 徳住委員も、関係する全体的な話になってきていますので、お願いいたします。

○徳住委員 石井さんの話につながるかどうかはわかりませんが、今までの議論を踏まえて意見を述べさせてもらいます。

 鶴委員から勤続年数がかかわってくるのではないかという話がありました。確かにヨーロッパのケースを見ていると、勤続年数を重視していまが、我が国の労働審判なり裁判制の中で、勤続年数が全く考慮されていないかというと違うと思いますが、ほとんど重視されていないというのが実情だと思います。

 それはなぜかと私なりに考えてみますと、日本の場合は退職金制度があり、辞めるときに退職金の中に勤続年数が包括的に収斂されて、勤続年数は退職金で処理されているという感覚が恐らくあるからだと思います。

 ですから、鶴委員が言われるように、定年間近であと3年しかない人の解決金をどうするかという場合と、試用期間の1カ月、2カ月の短期間雇用の解雇の場合の解決金には勤続年数が影響してきますが、その他の場合は勤続年数は主要な要素になっておらず、勤続年数の属性をケース化するのは大変難しいと思われます。

 2人の労働審判員から、「和解案の金額について、ケース・バイ・ケースで総合考慮して判断して決める。」との話がありました。「和解案の金額がケース・バイ・ケース」であることを考慮する上で、我が国の解雇の有効性判断が権利濫用法理であることと、解雇の類型の多様性の問題をきちんと見ていく必要があります。労契法16条で定める解雇権濫用法理で解雇の有効性が判断されますが、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」は評価を含む規範的要件であり、多様な判断要素について事実を当てはめて総合判断することになります。従って、労使の主張が激しく対立する場面と なります。

 解雇の有効性を解雇権濫用の法理に基づき判断する場合、1つの論点でも多角的な意見が労働者側からも使用者側からも出て、それを総合判断するということですから、そこの判断を一刀両断で決めつけることは、今の時点ですごく危険だと思います。。

 また、和解案及びその金額を考える上で、解雇の多様性も看過できません。労働者に非違行為がある場合、労働者に労働能力がない場合、会社の経営の都合によって解雇する場合、組合の役員などを解雇する場合など、解雇類型によって、その有効性の判断および和解の水準が異なってきます。解雇が有効、無効と言いながらも、さらに割合的なものを裁判所が言うということは、この問題にに関連してくると思います。解雇は無効と判断できるが労働者だって悪いところがあるでしょうという場合は割合的なものが出てきますし、解雇は有効と判断できるが使用者のやり方はひどいではないかというときもあり、ケース・バイ・ケースで適切な判断をする必要があります。従って、解雇の類型と手続のやり方で一刀両断に和解金額を決定したり、制限することは今の時点ですごく危険だと思います。

 例えば、私が担当し事件で、ある管理職が悪いことをしたとして懲戒解雇され、マスコミでも大きく発表されました。

 ところが、実際は会社の副社長以下が非違行為を行っており、その責任を管理職におっかぶせたことが判明しました。当然解雇無効であり、その場合の和解金額は、8千数百万円で解決しました。このように、解雇の類型によっても、和解金額は異なってきます。従って、今の時点で、労働審判がスタートして10年しかたってない時点で類型化を図るということは、ケース・バイ・ケースの枠組みを壊して、信頼性を損なうと思います。

○荒木座長 お二人の審判員がおいでですので、確認したい点として、一つは石井委員から御提示がありましたけれども、審尋といいましょうか、双方同席でやられているのか、それとも交互になされているのかということが一つ確認したい点です。

 もう一点は、もし解雇が無効であるとしても、解決としては金銭解決が望ましいといった場合に、その金銭解決のイニシアチブです。労働審判委員会のほうから、これは金銭解決が望ましいのではないかということが提示されて、それから始まるのか、それとも当事者に、とりわけ申立側の労働者に、これは金銭解決という解決も想定内ですかと、そういうことから始まるのかと、その辺の実情について、もし、御経験から何か御発言があればお願いしたいと思います。

○村上委員 1点目なのですけれども、第1回期日の審尋は全員で行います。本日の資料2の10ページに図が出ておりますように、期日における審理は審判官と審判員が3人並び、四角い場合もありますけれども丸いテーブルに申立人、相手側、そして双方代理人が全てそろった状態で事実関係の確認などをしていきます。

 ですから、そういう確認をする中で、審判委員会として何を重視しているのかということが相手方、申立人双方に伝わっていくというところがありますので、あえて心証を開示しなくても、そこである程度伝わっていくということもあるのではないかと思っております。

 それから、金銭解決の場合に誰からイニシアチブをとっていくのかということについては、水口先生もおっしゃいましたけれども、労働審判委員会から「金銭解決はどうですか」ということは申し上げなくて、やはりどのような解決を想定されているのかということを申立人、相手方双方からお伺いした上で、申立人のほうから、「会社に戻りたいけれども、早く解決するためには一定の金銭を支払ってもらうことでも解決することは考えます」というお話をいただいたところからスタートすることが多いです。

また、石井委員からご発言のあった調停案の提示についてなのですが、たしかに最近、労働審判委員会から何か出してほしいということを言われるケースは多くなってはきておりますが、それは最後の最後の段階の話で、ある程度御要望などを伺いつつ調整していくということになっています。

○荒木座長 武田様はいかがでしょうか。

○武田幸雄氏 労働審判制度が民事調停なり家事調停をルーツとしているとお聞きすることもありますが、現在はどちらかというと調停制度のほうに労働審判のやり方といいますか、効果のあるところを取り入れようとしている傾向があると受け取っております。裁判官が民事調停の席に入るということも、私が調停委員を始めた頃に比べたら多くなっておりまして、民事調停の強化に向けて解決率の高い労働審判制度の良いところを反映させている感があります。

 労働審判制度は、最初から当事者全員が揃って証拠に基づいて、この点はどうですかとお互いに確認しながら進めていきますので、ある程度心証形成に向けて証拠の正しさとか、事実関係の確認をかなりそこでやっていきます。そして、お互いの本音を聞く段階になって、それでは交互に聞きますので一旦引いてくださいという形になります。今お話があったとおり、地位確認を求めているのですけれども、本音のところではどうなのですか、というところで、金銭解決があればお受けしたいという話が出るケースが多い実態ではないでしょうか。その辺から、それではレベルとしてはどうなのかというところを聞き出して、それに基づいて審判委員会の中で検討し、相手方の会社のほうに伝えて説得する、こうしたケースがかなりのウエートを占めてやられるのではないかと思っております。逆に、ケースバイケースで相手方から用意できる額を先に聞き出すこともあります。

 金銭解決においては、やはり支払い能力という部分があります。大企業が相手方として出てくるケースは余りないので、経営そのものも大変困っていて、現実に100200万の支払いが果たしてできるのかどうか、聞き出さないとなりません。申立人においても、会社の事情というものはある程度わかっている筈です。申し立てはしたけれども、果たしてあそこの会社の厳しさでは支払いが大丈夫か、逆にあそこは支払えないと言っているけれども、絶対金はあるのだというところの話も出てきたりします。

 そして、場合によっては審判委員会としての案はこういう形ですので双方検討してくださいと宿題的なものを投げかけて次回期日を迎えるということがあります。

 以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございました。

 山川委員、どうぞ。

○山川委員 それでは、確認的に2点だけお伺いしたいと思います。非常に有益なお話をいただきました。

 1点は心証が重要だということでしたが、運用上、何らかの形での心証の開示は、おおむねなされているということでよろしいかどうか。その際の心証というのは、解雇が有効か無効かという、いわば100かゼロかということではなくて、程度問題的なことも含めて考えて開示されているのか。これが1点です。

 もう一点が少し別の話で、労働審判員の研さん、交流の機会をというお話でしたけれども、これは私としてもスキルアップ、あるいはスキルの平準化とか、スキルの継承という点にも、また、システムの透明化という観点にも資するかと思うのですが、それぞれ労働側、使用者側という話はあるかと思いますが、労使でコミュニケーションを共有するといいますか、それを行う場というのは、この労働審判制度にとって有益かどうか、その2点をお伺いしたいと思います。

○荒木座長 垣内委員、どうぞ。

○垣内委員 済みません。今、お尋ねの心証の点と関係いたしまして、そもそも審判員として、解雇は無効であるという心証を持たれる案件というのがどの程度あるのかということを、もし何か御感触があればあわせて教えていただければと思います。

○荒木座長 それでは、あわせて今の点を、審判員の方からいかがでしょうか。

○村上委員 山川先生の1点目の心証の開示については、双方いらっしゃる場ではっきりと解雇無効という話まで言うことは余りないのかもしれませんけれども、別々にお話しするときにはある程度のことをお伝えしますし、どういう点でそういう判断になったのかということをお伝えしています。

 ただ、訴訟になったときには、こういう点もリスクとしてあるのではないか、また、主張・立証が十分でない場合やこういう証拠が出てくるとここの判断がひっくり返ることもあるのではないかというお話はさせていただいています。

 それに関連して、垣内先生の御質問ですけれども、大体申し立ての時点において解雇無効であるということを強く信じて、代理人もつけられて申し立ててこられる方が多いので、ほぼ解雇無効の事案であると思います。

 ときどき4951のように、どちらかという判断がつきにくい事案もないわけではありませんけれども、これまででそのような事案は1件ぐらいしか経験しておりません。

 交流機会については、労働審判を務めていて、使用者側の労働審判の委員の方とお話しする機会が大変多いのですけれども、その機会は大変重要で貴重だと思っております。使用者側から見た場合に、どういう点を気をつけて判断をしているのかとか、人事部での御経験などをいろいろ教えていただくことがありまして、そのような点からも、労働者側の審判員で集まるだけではなくて、労使の審判員がそれぞれ交流するということは大変重要だと思っております。

○武田幸雄氏 心証形成の結果について、我々がどう思っているかというところの開示を明確に行うことはケースバイケースという気がしています。

 あなたのほうが悪いのですよといったような、きちんと白黒はっきりさせることもありますし、どちらかというと玉虫色的な言い方になることもあります。

 ただ、先ほどお話ししたように、残業問題のところで管理職に当たるかどうかというところは、今の裁判、判決の傾向を代理人の方もつかんでいらっしゃいますね、このケースにおいては管理職ではありません、残業代の対象になります、とはっきりはさせました。

 個別に話をするときには、例えば会社側に対してこの問題は本訴に移行した場合には厳しいですね、ということはお話しすることがありますが、双方が揃ったところでの明解な話というのは、案件による気がしております。

 もう一つ、交流のところは、先ほど私も報告しましたけれども、事案の解決が終わったところで、の意見交流があると、ご一緒した審判員の方もそう思ったのか、あるいはそういう知識をお持ちの方なのだなと確認ができることになります。労働者、使用者の代表ということで来ているわけではなくて、中立的な形でその場には臨んでいるわけなので、案件を一緒にした機会に同席で話し合って意見交流、あるいは考え方の確認をするということは、我々にとってもいいことなのではないかという気がしております。

 以上でございます。

○荒木座長 ありがとうございました。

 輪島委員、どうぞ。

○輪島委員 ありがとうございました。大変参考になる意見を聞かせていただき、感謝を申し上げます。

 労働審判制度というのは非常に世の中に定着をしていて、よい制度ということで評価ができるのではないかと、私どもも考えているところでございます。

 私どもは企業の労使関係、人事管理に精通した方、先ほど資料2の数字ですと737人を労働審判委員として推薦する事務をさせていただいております。そういう意味でも、このように評価をしていただいている仕組みがワークしているということが、非常に有意義ではないかと思っております。同時に、さらに認知度を高めていくという努力が必要ではないかと思っているところでございます。

 それから、先ほど鶴先生がおっしゃった点で、審判員の方が1件につき3回でやると、年4件ぐらいできるのです。そうすると、約750人として年間3,000件で、今の件数をカバーするということであります。私どもが使用者側委員の方から話をお伺いしていると、年間10件ぐらいはできるのではないかと聞かれます。まだまだ肩が温まる程度ということですので、これから増えていくということであれば、ひとり年間10件として7,500件でございますので、まだまだ余力はあるのではないかと思っているところです。

 もう一つ、私どもとして課題と思っているのは、今は68歳の定年ということで、68歳以上の再任が認められないのですが、60歳定年前後ぐらいで就任をしていただくと、1期2年でございますので、3期ぐらいやっていただくと精通してきて、いろいろなところで能力を発揮していただく土壌ができると思います。やはり2期4年では短いような気もしますし、1期目では実力を発揮する前に退任になってしまうということもあります。今や、生涯現役社会でございますので、もう2年ぐらい延長していただいて、実質的に70歳ぐらいまでできるような仕組みを、法務省か厚生労働省にお願いをしたいと思っているところでございます。

 それから、質問でございますけれども、前回第2回目のときに個別労働紛争の関係の解決の手段の方法として、労基署とか労働局とか都道府県、裁判所、前回は弁護士会とか社労士会ということで、さまざまなツールがあるということは御紹介をいただいたのですけれども、武田先生にお伺いをしたいのですが、それらが相互にどうやって連携をするのか、連携をどうやってつくるのかということについて、何かお考えがあれば教えていただければと思っているところでございます。

 以上でございます。

○荒木座長 私の不手際で定刻を過ぎておりますので、簡単に武田様からお答えいただいてということにいたしましょう。

○武田幸雄氏 制度相互間の連携ということでしょうか。

○輪島委員 現在、制度上いろいろな仕組みがあると思うのですけれども、私個人の問題意識とすれば、最初に紛争といいますか、課題を感じるときに、どこかに行くと、適切なところに紹介をしていただけるという仕組みが必要なのではいなかと思っております。今、労働局とか労働審判とか、いろいろな窓口があるのですけれども、個別にどこに行ったら適切に自分の問題が解決されるのかというところがわかるような仕組みが何とかならないか、そういうものが必要なのではないかと感じているのですけれども、その点について何かお考えがあれば教えていただければという趣旨でございます。

○武田幸雄氏 各制度の連携ということですと、お話の中にもありましたとおりそういう連携の仕組み、制度というより、先ずはアクセスという部分の検討は有ってもいいかと思います。どこに行き着くと、今の自分が抱えている問題が解決あるいは相談できるのかへの対応です。それぞれの制度がオーバーラップしながら連携というより別個な感じで機能しております。調停でも労働審判でもそうなのですけれども、一般的には、法テラス、行政の相談会経由というのが一番多いのかという感じはしております。あっせんを経て労働審判にきているという案件もあります。

困っていることがそういうことであれば、ここがベストなルートですというエスコートするようなところがあってもいいのではないか、また、そういう紹介も広報活動の中に組み込まれて、それぞれの紛争解決機関がお互いに各制度のことを理解して周知していくことも必要ではないかと思っております。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、定刻を過ぎておりますのでこの辺にしたいと思いますけれども、本日はお二人の審判員の方から大変貴重な御報告をいただき、ありがとうございました。

 最後に、次回の日程等について、事務局から説明をお願いします。

○松原労働条件政策推進官 次回、第4回の検討会の日程でございますが、1月下旬を目途に現在調整中でございます。

 確定次第、開催場所と合わせまして、皆様に御連絡させていただきます。ありがとうございます。

○荒木座長 ありがとうございます。

 それでは、第3回の検討会は以上で終了といたします。本日はどうもありがとうございました。


(了)

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