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2015年10月30日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

○日時

平成27年10月30日(金)17:00~


○場所

厚生労働省共用第6会議室


○出席者

出席委員(12名)五十音順

奥 田 晴 宏、 金 子 明 寛、 神 田 敏 子、 鈴 木 邦 彦、
内 藤 幹 彦、 野 田 光 彦、 林   邦 彦、 平 石 秀 幸、
古 川   漸、◎松 井   陽、○松 木 則 夫、 山 田 清 文
(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(9名)

加 藤 総 夫、 川 上 純 一、 木 村 剛、 佐 藤 雄一郎、
杉     薫、 武 田 正 之、 平 安 良 雄、 増 井  徹、
村 田 美 穂

行政機関出席者

中 垣 英 明 (医薬・生活衛生局長)
森   和 彦 (大臣官房審議官)
山 田 雅 信 (審査管理課長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
俵 木 登美子 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

○議事

○審査管理課長 薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催させていただきます。本日はお忙しい中、また夕方遅い時間にお集まりいただき、ありがとうございます。

 本日の委員の出席についてです。加藤委員、川上委員、木村委員、佐藤委員、杉委員、武田委員、平安委員、増井委員、村田委員より、御欠席との御連絡を頂いております。現在のところ、部会委員数21名のうち、12名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告申し上げます。

 続きまして、事務局に人事異動がありましたので、御報告させていただきます。まず厚生労働省です。10月1日より局名が医薬食品局から医薬・生活衛生局へ変更となっております。医薬・生活衛生局長の中垣です。大臣官房審議官の森です。次に、機構です。審議役の林です。新薬審査第三部長の加藤です。また、本日は欠席ですが、審議役が猿田となっております。最後に私は審査管理課長となりました山田でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 それでは松井部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。

○松井部会長 本日の審議に入ります。事務局から配布資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告してください。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しております。議事次第に記載されています資料1~4をあらかじめお送りしております。このほか当日配布資料として、資料5「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料6「専門委員リスト」、資料7「競合品目・競合企業リスト」、資料8として、「医療用医薬品に係る先駆け審査指定制度の対象品目について」を配布しております。

 続きまして、資料7「競合品目・競合企業リスト」を御説明いたします。各品目の競合品目選定理由については次のとおりです。資料7を御覧ください。

 「レクサプロ錠10mg」ですが、本品目は「社会不安障害」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。

○松井部会長 ただいまの事務局からの説明に何か御意見、御質問はございませんか。よろしいですか。それでは、委員の皆さんの審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての御了解を得たものといたします。

 それでは、委員からの申出状況についてお願いいたします。

○事務局 各委員からの申出状況は次のとおりです。議題1のレクサプロ錠は、退席委員、議決には参加しない委員はございません。なお、医薬品第二部会において、委員からの寄付金や契約金等の受取について、本来であれば年度区切りのところを誤って年区切りで申告され、申告の訂正がありました。特段審議には影響はありませんでしたが、今後、寄付金や契約金等の受取については、年度区切りで御申告いただきますよう、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 今の説明に関し、御意見や御質問はございませんか。よろしいですか。よろしければ、皆さんに御確認いただいたものとし、議題に入ります。

 本日は審議事項が1議題、報告事項が3議題となっております。審議事項の議題1に移ります。機構から御説明をお願いいたします。

○機構 議題1、資料1、医薬品レクサプロ錠10mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。

 本剤の有効成分であるエスシタロプラムシュウ酸塩は、デンマークで合成された選択的セロトニン再取り込み阻害薬です。2014年2月現在、欧米を含め、海外の98の国又は地域で承認されており、今回の申請効能である社会不安障害については、欧州主要国など84の国又は地域で承認されております。本邦では2011年に「うつ病・うつ状態」の効能・効果で承認されており、今般「社会不安障害」の効能追加のための承認申請が行われました。

 本申請の専門委員としては、資料6に記載されている4名の委員を指名しております。審査内容について、国内第III相試験の成績を中心に説明させていただいた後、本剤の用法・用量について説明させていただきます。

 国内第III相試験における有効性については、まず審査報告書の4ページの表1を御覧ください。主要評価項目である投与12週時におけるLiebowitz Social Anxiety Scale日本語版(表中ではLSAS-Jと略しております)の合計スコアのベースラインからの変化量のプラセボ群との群間差は本剤10mg群で-3.9、本剤20mg群で-9.8であり、本剤10mg群のプラセボ群に対する優越性は示されませんでした。また、本剤10mg群のプラセボ群に対する優越性が示された場合に限り、本剤20mg群のプラゼボ群に対する優越性を検討することとなっていたため、本剤20mg群のプラセボに対する優越性は検討されておりません。

 申請者は、本剤の有効性について次のとおり考察しております。まず、審査報告書の8ページの表3を御覧ください。国内第III相試験の主要解析は最終評価時の値で欠測値を補完するLOCFにより行われておりましたが、異なる欠測値の補完方法や解析方法で解析したところ、LOCF以外の3つの解析方法では、いずれも本剤10mg群のプラセボ群に対する優越性が示されました。これらの結果から、中止例が有効性評価に影響を及ぼしている可能性が考えられました。

 続いて、審査報告書の8ページの表4を御覧ください。本剤10mg群及び本剤20mg群ともに、10mgから投与を開始しているものの、本剤10mg群でのみ投与開始1週以内の中止例が多かったため、当該中止例を除外した解析を実施したところ、本剤10mg群とプラセボ群との群間差は-5.1となり、本剤10mg群のプラセボ群に対する優越性が示されました。

 次に審査報告書13ページの表9を御覧ください。国内第 III 相試験における副次評価項目である臨床全般改善度(表中ではCGI-Iと表記しております)及びそれによる反応率について検討したところ、いずれの評価項目においても本剤10mg群のプラセボ群に対する優越性が示されました。

 続いて審査報告書21ページの表20を御覧ください。国内長期継続投与試験において、重症例やSSRI又はSNRIによる社会不安障害(表中ではSADと略しております)の治療歴あり、SAD以外の精神疾患の併存ありの部分集団においても、増量することなく本剤10mgで維持された被験者が認められております。さらに、審査報告書12ページの表8を御覧ください。海外第 III 相試験では、本剤5、10及び20mg群のプラセボ群に対する優越性が検討されましたが、LOCFにより欠測値を補完した解析では、国内第 III 相試験と同様に、本剤10mg群のプラセボに対する優越性は示されませんでした。しかしながら、ほかの二つの解析方法では優越性が示されており、また本剤5mg群ではいずれの解析においても優越性が示されております。

 以上を踏まえた有効性に関する機構の結論として、審査報告書13ページの下から11行目の「機構は」で始まる段落を御覧ください。機構は、本剤20mgの有効性について、海外第 III 相試験で本剤20mgのプラセボに対する有意な改善が示されていること、国内第 III 相試験で検定の多重性は考慮されていないものの、本剤20mg群のプラセボ群に対する優越性は示されていることから、本剤20mgの有効性は十分に期待できると考えております。一方、本剤10mgの有効性については必ずしも明確ではないものの、一部の患者では効果が得られる可能性はあると判断しております。

 次に安全性についてです。審査報告書20ページの上から3行目の「機構は」で始まる段落を御覧ください。本剤の安全性プロファイルを検討した結果、社会不安障害患者とうつ病・うつ状態(文中ではMDDと表記しております)の患者で大きな差異はないと考えられましたので、安全性は許容可能と判断しております。ただし、QTc間隔延長リスクについては、同じく審査報告書20ページの表18を御覧ください。本剤はQTc間隔延長リスクを有することが知られており、うつ病・うつ状態の審査時に、QTc間隔が本剤の血漿中未変化体濃度の増加に伴い延長する傾向が認められておりますが、社会不安障害を対象とした国内第III相試験においても、QTc間隔の変化量に僅かですが用量依存性が認められました。したがって、本剤の用法・用量の設定においては、この点を考慮する必要があると考えました。

 用法・用量については、審査報告書21ページの上から3行目の「機構は」で始まる段落を御覧ください。有効性の観点からは、より明確な結果が得られている本剤20mgを推奨用量に設定すべきと考えております。一方で、QTc間隔は本剤の血漿中未変化体濃度の増加に伴い延長する傾向が認められていることを考慮しますと、本剤を使用する際は必要最小限の用量を投与すべきと考えております。非重症例や、SSRI又はSNRIによる治療歴がない患者、SAD以外の精神疾患を併存していない患者などの一部の患者では、本剤10mgでも効果が得られる可能性があること、欧州における通常用量は本剤10mgであることを踏まえると、本剤の用法・用量は、本剤10mgで投与を開始し、十分な効果が得られなかった場合に20mgに増量するよう設定することが適切と考えております。

 以上の審査を踏まえ、本剤の「社会不安障害」に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。

 本申請は新効能医薬品であり、今回追加される効能・効果に対する再審査期間は4年とすることが適切と判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松井部会長 今の御説明は、かなり有効性についての説明が多かったように思いますが、安全性に関してはこれでよいという、いかがでしょうか。

○機構 機構よりお答えいたします。安全性に関しましては、既存の効能・効果と大きな差異は認められませんでしたので、許容可能と判断しております。

○松井部会長 それでは、ただいまの機構の御説明に関して、委員の皆様方から御意見、御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。

 有効性に関して幾つかの分析の手法を用いているように思いますが、その有効性と用法・用量の設定に関して、林先生から何か御意見はございませんでしょうか。

○林委員 有効性に関して、確かに幾つか解析がなされています。その最大の理由はプライマリーのやり方をしたら有意差がなかったということだと思いますが、少し細かなところが、審査報告書の7ページの「本剤の有効性について」の1.ですが、基本的には中止でデータがない例をどのように扱うかというところで何種類かの解析をされているということだと思います。

 申請者の方はLOCFと呼ばれる方法をプライマリーに設定されていて、ほかの方法でいろいろと試してみたということで、これをやれば絶対に大丈夫だという方法がないがためにいろいろな方法を試すというのが、現在の考え方で、いろいろやってみて、どの方法もバイアスが入る可能性があるのだけれども、どの方法をやってみても結論は同じだということを確認しましょうというのが、基本的な態度だと思っています。

 この場合、たまたまプライマリーのやり方では有意差がなくて、ほかのやり方でやると差が出るということだったのかなと思います。

 この用量の10mgをどう考えるかだと思うのですが、プライマリーの解析の方法で有意差がなかったから、すぐさま10mgでは駄目だという考え方ではなくて、適宜増減というところがあるので、いずれにしろ効かなかったら20mgに移行することを合わせて、10mgということでもいいだろうと結論されていると理解しています。

○松井部会長 アクセプタブルであるということですね。

○林委員 そうではないかと思います。

○松井部会長 この点について、ほかの先生方からいかがでしょうか。

○内藤委員 社会不安障害ということに詳しくないので御説明をお願いしたいのですが、どういう症状がこの病気として認識されているのかということと、薬の有効性に関してスコアが数値として出されていますが、このスコアはどのように出したのかについて、説明してください。

○機構 社会不安障害の症状ですが、人前で話をしたり、そういったことに対して恐怖感を感じ、また避けるようになってしまい、普通の社会生活に障害が出てしまうというような病態になります。スコアに関しては、例えば人前で電話を掛けることに対しどの程度恐怖を感じるかというのを、0から3の4段階で、患者に質問をして答えてもらったり、その状況をどの程度回避するのかを4段階で評価をします。評価項目としては、人前で電話を掛ける、少人数のグループ活動に参加する、公共の場所で食事をするといったことに対し、どの程度恐怖を感じたり、それを避けようと行動するのかというものを0から3の4段階で評価していき、合計点として評価することにしているのが、主要評価項目として用いたLSAS-Jという評価項目です。

○内藤委員 そうすると、基本的には患者本人の自己申告でスコアを付けているということなのですか。専門の医師が患者を診察し、そのスコアを付けるという形ではないのですか。

○機構 質問をして答えていただくのは患者ですが、ただ単に質問すればいいというものではなくて、具体的にきちんと状況を思い浮かべてもらい、質問するような形で、インタビューガイドなども作成されております。

○内藤委員 分かりました。

○松井部会長 ほかにどうでしょうか。

○平石委員 安全性についてお伺いします。20ページの表18で、国内の臨床試験において用量依存性に未変化体の濃度に従って、QTcの間隔が延長するということですが、このQTcの間隔というのは心電図上の変化ですよね。臨床的にはどういった帰結に結び付くのかという質問です。例えば不整脈を惹起するとか、場合によっては心停止がくるとか、そういった有害事象の発生についてはいかがでしょうか。

○機構 QTc延長の最終的な臨床症状としての帰結に関しては、先生から御指摘のあったとおり、心停止、不整脈、特にtorsade de pointesと呼ばれる致死性の不整脈のリスクが、QTcが延長すると上がると言われております。

○平石委員 そうすると安全性に関しては、QTcの延長は認められたけれども、臨床的には今お話にあったような、重篤な有害事象の発生は観察されていないという理解でよろしいでしょうか。

○松井部会長 これは重要な問題だと思うのですが、いかがですか。

○機構 審査報告書の19ページを御覧ください。表17に、国内臨床試験における心血管系の有害事象の発現状況を示しております。こちらのとおり、動悸、心電図QT延長、血圧上昇、第一度房室ブロックなどが認められていますが、致死的な不整脈や心停止などは臨床試験の中では認められておりません。

○平石委員 この治験はどのぐらいの期間で実施されたかということが重要です。つまり、長期投与することになりますと、こういった心電図上の変化が重篤な臨床的な帰結に結び付くようなリスクはないのかという質問です。

○機構 先ほど示した表ですが、二つの試験の結果を示しており、一つが左側のMLD551131試験が短期の投与試験で、投与期間が12週間です。一番右側にあるMLD551141試験が52週間で、1年間投与した試験です。一般的に臨床開発の中では、長期投与試験としては1年間の投与試験で安全性を確認するということになっておりますので、そのガイドラインに従った安全性の評価がされていると考えております。

○松井部会長 今の平石委員の御質問に関係して、これはうつ病あるいはうつ状態に対して、市販後にこの薬剤が投与されていますよね。その中で、先ほど平石委員が御指摘になったような、心停止を含む重篤な状態というのは報告があるのでしょうか。

○機構 本剤が2011年に発売されてから2014年までのデータが手元にございますが、その中でtorsade de pointesが合計で2例、心停止が1例認められております。ただ、QT延長のリスクのある患者などに関しては、QT延長が認められている患者に関しては、添付文書の中で禁忌に設定しており、不整脈又はその既往歴のある患者やQT延長を起こすことが知られている薬剤を投与中の患者、またうっ血性心不全、低カリウム血症の患者など、QT延長のリスクのあるような患者に関しては、慎重投与に設定しております。

 また、曝露量が増加するような患者に関しては、20mgではなく10mgを上限とすることが望ましいという形でも注意喚起させていただいておりますので、QT延長のリスクに関しては、既に十分な注意喚起がなされているものと考えております。

○松井部会長 委員の先生方いかがでしょうか。QT延長に関して機構の御説明は、うつ状態・うつ病に対する投与と同様の注意を払って投与すべきであるという御趣旨だったと思いますが、いかがでしょうか。それでよろしいというお考えでよろしいですか。それでは松木先生、お願いいたします。

○松木部会長代理 データの解析方法なのですが、合計スコアをパラメトリックなデータとして扱って統計検定していますよね。だから、0、1、2、3というスコア付けをしたときに、0と1、1と2、2と3の間が定量的に同じであるということがないのに、このデータをパラメトリックで解析していいのか。普通は有効か否かということで判断しているのだと思うのですが、こういう試験を組んだのは、そもそもどうなのかなという気がするのですが、その辺はどうですか。

○機構 この試験の実施の際には特に検討されていないのですが、LSAS-Jを以前に使った臨床試験の前には、合計スコアと症状の相関を確認しており、合計点として扱うことに問題ないことを確認した上で現在臨床試験の中で使われているという状況です。

○松木部会長代理 その症状を線形データとして定量化するというのは、非常に難しいと思いますよ。何かができるとか、こういう条件ではできるとか、そういうような条件でやっていて、それに当てはまるからというようなことだと思うのですが、結局、スコアを平均値プラス標準偏差というデータで表した時点で、これは正規分配をするという大前提に入っているわけですが、そうではないわけですよね。しかも、この合計スコアというのは、いろいろな項目を全部足し合わせてやっているわけですから、それぞれの項目において0、1、2、3と、ほかの項目の0、1、2、3が同じ意味をなさないと、こういう解析は全然意味をなさなくなってくるわけです。

 だから、むしろそれぞれの一つの項目において有効であったかどうかという解析のほうがいいのではないかと思うのですが、専門委員で山口先生が入っているわけですが、山口先生はOKしたのですか。

○松井部会長 二つの御質問がありました。いかがですか。

○機構 まず山口先生からは、この点については御指摘は受けておりません。

○松井部会長 もう一つはいかがですか。

○機構 LSAS-J合計スコアは、1点、2点という刻みで、連続した数値ではないのですが、例数が多い場合には正規分布に近似して、連続量と同様に解析して問題ありませんので、この解析を用いたことに大きな問題はないと考えております。

○林委員 山口先生の代わりではないのですが、一般に、確かに順序の尺度で、例えば1、2、3、4ぐらいまでというのは、その平均を取ったりということは普通はやらないと思います。

 尺度解析の中で、実は私はLSASをやったことがないので分からないのですが、一般に、そういった四つとか五つの順序のカテゴリーの合計を取るということをすると、いわゆる普通の連続値として扱っていいような形に徐々になっていくというのは知られていて、多分LSASを最初に開発したときに、そのようになっているということを、いわゆる妥当性、信頼性の確認をされたものを日本語版にされていると思うので、合計値に関してはそれほど心配はないのかなと思っております。

○松木部会長代理 数を増やしていくと、だんだん正規分布に近付くということですか。そうすると、13ページの表9のCGI-Iというのもスコアですよね。この平均が2.8とか2.6というのは、スコアが1、2、3、4とかぐらいのもので、これで平均と標準偏差を出して検定するというのが、これは今のお話からすると、やはりおかしいのではないですか。これは順位検定とかノンパラメトリックな検定をすべきだと思うのですが。

○松井部会長 表9に関してですが、いかがですか。

○機構 このCGI-Iのスコアの変化量に関しての解析の御指摘についてです。ここで御説明しているとおり、分散分析で実施しているのですが、評価例数が大きい際にはノンパラメトリックな解析と結果に大きな違いがありませんので、こちらについてもこの解析結果に大きな問題はないと考えております。

○松井部会長 林先生、それでよろしいですか。

○林委員 実は、このCGIの点数の構成を理解していないのですが。

○松井部会長 CGIは12ページの脚注に。

○機構 12ページの下の脚注の所にあり、7段階の評価になっております。

○林委員 なるほど。確かに微妙なところだと思います。申請者の方は順序としての解析も多分されているのではないかなと。そうでもないのですか。つまり、いわゆる分散分析の形ではなくて、Kruskal-Wallisとか。若しくは順位を数字として扱った分散分析とか。

○機構 手元に資料がないのですが、こちらは副次評価項目として設定されていたものですので、何通りかの解析方法で頑健性を見るというところは計画されていなかったと記憶しております。

○松木部会長代理 多分、ほかが合計スコアの平均で出しているので、副次項目のところをこれもそれで出してしまったのだと思うのです。これは数値が非常に飛んでいるものですので、これを平均値±標準偏差で出しても意味がないのです。つまり、正規分布をしているかどうかという仮定は。これは絶対に片方のほうが詰まっているわけだから、正規分布のしようがないわけなので。

 質問が変わりますが、反応率でも出しているのですが、これは反応率などのほうがいいと思うのですが、それとは別にして、この場合の反応率、悪化したような人もいると思うのですが、そういう人は引いているのですか。この反応率はどのように出しているのですか。

○機構 反応率の定義に関しては12ページの下の注釈の4)に書いております。CGI-Iが「1:著明改善」又は「2:中等度改善」であった被験者の割合ということで、改善が見られた人の割合ですので、それ以外は不変又は悪化の患者になります。

○松木部会長代理 たとえ悪化があったとしても、改善した人がいれば効果があったということなのですか。

○機構 この指標としては、改善した人がどれだけの割合いたのかという指標になります。

○松木部会長代理 今回はこれでいいかもしれないのですが、効果があったかどうかの判定はもう少し慎重にしてほしいというか、特にこのうつなどの場合には、かなり患者個人ごとに違うので、全部ひとまとめにして全体のところで効くかどうかという判断はなかなか難しいと思うのです。もともとそのように治験を組んでしまったらしようがないのかもしれないのですが、治験を組む前に個人差を抽出できるような方向へ指導をしていったほうがいいのではないかと思います。

○松井部会長 ほかの委員の先生方はよろしいでしょうか。今後は注意してほしいという御意見だと。今の点、あるいはほかの点につきまして、何か御質疑はございますか。よろしいですか。

 まず、この統計的な手法の正当性からそれの解釈、反応率についての解析も必要ではないのかといったような意見が出たと思いますが、以上の討論に基づき、議決に入ってよろしいでしょうか。それでは議決に入ります。本議題につきまして、この薬剤の承認を可としてよろしいでしょうか。御異議はありませんか。当第一部会としては、これを承認とすることでよろしいと判断いたします。承認を可として、薬事分科会に報告いたします。

 それでは報告事項に移ります。事務局から御説明をお願いいたします。

○事務局 それでは資料2です。報告議題1の医薬品献血グロベニン関係の報告をいたします。本剤は、乾燥ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリンを有効成分とする注射剤でして、現在ステロイド剤が効果不十分な天疱瘡等の効能・効果で承認されております。6の効能・効果を御覧ください。今般、日本製薬株式会社よりステロイド剤の効果不十分な水疱性類天疱瘡の効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。

 続いて資料3です。報告議題2のウトロゲスタンについて御説明します。本剤はプロゲステロンを有効成分とする腟用カプセルです。不妊治療の過程で調節卵巣刺激を施行される患者では黄体機能が低下するため、黄体補充が必要となります。本剤は生殖補助医療を受ける患者において、黄体補充、妊娠の成立及び維持を目的に投与されます。本品目については、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議による開発企業の募集を踏まえて、体外授精・胚移植を施行予定の日本人女性を対象とした本剤の臨床成績等を基に、今般、富士製薬工業株式会社より製造販売承認申請がなされました。機構における審査の結果、6の効能・効果にあるとおり、本剤を「生殖補助医療における黄体補充」の効能・効果で承認して差し支えないと判断しました。以上です。

○松井部会長 ただいまの説明について、御質疑が委員の先生方からおありでしょうか。ございませんか。それでは報告事項の議題1と議題2については御確認いただいたものといたします。報告事項の議題3について説明をお願いします。

○事務局 資料4です。「医療用医薬品の再審査結果について」御報告します。こちらにあるのは医薬品再審査確認等結果通知書です。資料4は一般的名称は「ペルフルブタン」、販売名は「ソナゾイド注射用16 μ L 」です。こちらの品目については、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査等に基づき、再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果や用法・用量の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。以上です。

○松井部会長 ただいまの説明につきまして、何か御質問、御意見ございませんか。よろしいでしょうか。それではこの議題3について御確認いただいたものといたします。本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありませんでしょうか。

○事務局 1点ほどございます。資料8です。先駆け審査指定制度については、本年4月より試行的運用を開始して、今月27日に3ページにある六つの医薬品を対象品目として初めて指定いたしました。この6品目は全て開発途中のものですが、今後この品目が承認申請された際には、本部会又は第二部会で承認の可否について御審議いただくことになりますので、本制度について簡単に御紹介したいと思います。

 まず、資料7ページです。7ページ目以降の資料については、本年3月30日に行われた薬事分科会の資料です。こちらのスライド2にあるとおり、この制度は平成26年6月に取りまとめられた先駆けパッケージ戦略の重点施策の一つとして掲げられており、本年4月から試行的に運用を開始したものです。

 次に8ページです。スライド3の一番上の黒枠内にあるとおり、この制度は世界に先駆けて革新的医薬品等を日本で早期に実用化するため、日本での開発を促進することを目的としてスタートしたものです。この制度の対象品目として指定された場合は、例えばこのスライドの真ん中にある3.ですが、全て優先審査扱いとして、総審査期間の目標値は通常品目では12か月なのですが、それを6か月にするということのほか、その下にある . にあるとおり、承認までに必要な工程の総括管理を行う審査パートナーを機構で設けるなどの特典を受けることができるとなっています。

 そして実際の指定の手続については10ページです。ページの下のスライド8です。まず、ステップ1に記載のとおり、本年度は試行的運用として、公募形式で実施させていただいたところで、運用方法については今年4月1日に通知を発出して定めております。その後、ステップ2のヒアリングやステップ3の評価と順位付けの後、ステップ4の指定と分科会報告という形に進んでまいります。

 それでは1ページに戻ってください。スケジュールに書いてありますが、4月1日の運用方法の決定の後、1か月間の周知期間を置き、5月に企業から指定品目の登録が申し込まれました。こちらについては2の()にあるとおり、全部で56品目の申込みがありました。この56品目について6月の半ばから品目ごとに事務局でヒアリングを行い、予備的審査により、指定要件とありますが、指定要件については3.の 2に1~2ページにかけて四つの指定要件、例えば . として治療薬の画期性、 . として対象疾患の重篤性、 . として対象疾患に係る極めて高い有効性、そして4.が一番重要なのですが、世界に先駆けて日本で早期開発・申請する意思。この四つの要件を明らかに満たさないであろうというものをふるいにかけて、8月7日から21日にかけて正式な指定申請を受け付けました。正式な指定申請があったのがこの2.の()にあるとおり50品目となっております。その後この50品目について9月から10月にかけて機構で事前評価を行い、この四つの指定要件に照らして特に優れていると判断される品目を相対評価で選び、3ページにある六つの品目を選び、5ページにあるとおり公表いたしました。

 なお、指定前には事前に薬事分科会の委員の先生方に御報告させていただいております。冒頭にも申し上げましたとおり、この6品目は全て開発途中のものですが、今後の開発により、例えば、この四つの指定要件を満たさなくなった場合は、指定を取り消すこともあり得ます。また、この制度の趣旨は、開発の早期段階から対象品目に指定して、開発を進捗管理したり、審査期間を早めたりすることにありますので、承認審査の中身を変えることではありません。したがって、これらの品目が承認申請された際には、通常品目と同様に本部会又は第二部会で有効性や安全性を御評価いただき、承認の可否を御判断いただきたいと考えております。事務局からの説明は以上です。

○松井部会長 ただいまの説明について、委員の先生方から御質問、御意見はございませんか。

○奥田委員 私は品質を見ることが多いのですが、この方法では承認審査6か月ということですので、品質の部分を審査して、製造方法を確定して、それからGMPのための資料を作るというようなことだと、6か月はかなり詰まってくるのではないかと思うのです。そういう意味で、より前に倒して、欧米ではINDの段階でかなりクォリティの所は決まっていると聞いているのですが、そういう形で前に倒さないと、結構、後でロープ際に追い込まれてくるのではないかという気がするのですが、その辺はいかがでしょうか。

○事務局 それにつきましては8ページのスライド4を御覧ください。ここに今までの通常の承認審査の場合と今回の先駆け指定制度を受けた場合とでどう変わってくるのかを書いておりますが、先駆け指定制度の対象品目については、まず治験をやった段階で、もちろん第III相試験を別途後にやることになりますが、その間に事前評価を新たに設けておりまして、そこで品質など、例えば非臨床試験、要するに治験以外の部分を事前に評価をしてしまうということなので、実質の審査内容は通常品目と同じであり、もちろん有効性、安全性、品質は先駆け審査を受けたからといって変わるものではございませんので、そういった仕組みを考えております。

○奥田委員 分かりました。これは欧米、アメリカでやっているINDの制度に近いものが入ってくるというニュアンスで捉えてよろしいですね。

○事務局 そうです。

○奥田委員 ありがとうございます。

○松井部会長 ほかの委員の先生方、いかがですか。私から質問したいのですが、これはあくまで企業が推挙する医薬品に関するものですね。

○事務局 はい。

○松井部会長 学会あるいは学術団体と言ってよろしいでしょうか、そういう所からの提案を受け入れる制度が別に以前にあったような気がするのですが、これはもうあくまで企業だけということでしょうか。

○事務局 多分、先生がおっしゃったのは未承認薬検討会議ではないかと思いますが、こちらのほうは、やはり最終的に企業が製造販売業として売ってもらわないと困るので、なかなか企業としてのパートナーがいないものなど、オーファン制度も一緒なのですが、なかなか指定することとしては難しいのかなと考えております。

○松井部会長 そうすると学会は企業を。

○事務局 そうですね。学会の場合は例えば、海外で承認をされている薬など、海外で未承認の薬ももちろんありますが、いろいろな文献や医師主導治験なりでデータを集めていただいて、別途、未承認薬検討会議がありまして、そこでこれは医療上の必要性は高いということになりますと、企業に対して開発要請として開発してくださいという、そういう制度もあります。

○松井部会長 了解しました。ほかにいかがでしょうか。特にございませんか。それでは事務局のただいまの御報告については御確認をいただいたものといたします。ほかに委員の先生方、あるいは事務局から、御意見、御報告はありますか。ありませんでしょうか。それでは事務局から次回の予定についてどうぞ。

○事務局 次回の部会は1127()午後5時から開催させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 それでは本日はこれにて閉会といたします。どうも先生方、御苦労さまでございました。

 


(了)

備 考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬・生活衛生局 審査管理課 課長補佐 清原(内線2746)

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