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2015年8月28日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

○日時

平成27年8月28日(金)13:00~


○場所

航空会館201会議室


○出席者

出席委員(14名)五十音順

 奥 田 晴 宏、 加 藤 総 夫、 金 子 明 寛、 神 田 敏 子、 
 杉      薫、 鈴 木 邦 彦、 武 田 正 之、 内 藤 幹 彦、
 野 田 光 彦、 平 安 良 雄、 古 川    漸、 増 井    徹、
◎松 井   陽、○松 木 則 夫
(注)◎部会長 ○部会長代理
参考人1名

欠席委員(7名)

 川 上 純 一、 木 村   剛、 佐 藤 雄一郎、 林   邦 彦、
 平 石 秀 幸、 村 田 美 穂、 山 田 清 文

行政機関出席者

 成 田 昌 稔 (大臣官房審議官)
 森    和 彦 (審査管理課長)
 宇 津    忍 (安全対策課長)
 矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
 俵 木 登美子 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
 他

○議事

○審査管理課長 定刻の1分前ではございますが、予定されている先生方がおそろいになったようですので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中、また、若干足下の悪い中、先生方には御参集いただきましてありがとうございます。

 まず、新しく部会委員に就任された先生を御紹介いたします。東邦大学医療センター大橋病院循環器内科教授の杉薫委員です。

○杉委員 どうぞよろしくお願いします。

○審査管理課長 ありがとうございます。本日の委員の御出席についてですが、川上委員、木村委員、佐藤委員、林委員、平石委員、村田委員、山田委員より御欠席との御連絡を頂いております。現在のところ、当部会委員数21名のうち14名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。なお、本日、審議事項の議題7「コパキソン」に関して、独立行政法人国立病院機構新潟病院副院長の中島孝先生を参考人としてお呼びしております。到着は1時間ほど遅れると御連絡を頂いておりますが、議題の順番から言いますと、十分、間に合うと見込まれます。

 それでは、松井部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。

○松井部会長 早速ですが、本日の審議に入ります。まず、事務局から配布資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告をしてください。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しております。議事次第に記載されています資料1~12については、あらかじめお送りさせていただいております。このほか、資料13「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料14「専門委員リスト」、資料15「競合品目・競合企業リスト」、資料16-1「イグザレルト錠の効能追加に対する第一部会でのご指摘及び機構の対応に関する補足説明資料」、資料16-2「イグザレルト錠の添付文書」を配布しております。

 本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、資料15となります。本日は審議事項が多いことから、個別の品目ごとの御報告は省略させていただきますが、本日、審議事項の議題1~11まで、いずれも同様の効能・効果を有する薬剤がありますので、1ページから11ページにそれぞれ掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。

○松井部会長 今の御説明に特段の御意見はありますか。それでは、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、委員の皆様の御了解を得たものといたします。

 それでは、委員からの申出状況についても報告をお願いします。

○事務局 各委員からの申出状況について御報告いたします。議題1「ムルプレタ錠」、退席委員なし、議決には参加しない委員、武田委員、野田委員、平安委員。議題2「イグザレルト錠」、退席委員なし、議決には参加しない委員、金子委員、杉委員、武田委員、野田委員、平安委員。議題3「ベンテイビス吸入液」、退席委員なし、議決には参加しない委員、杉委員、武田委員、平安委員。議題4「トラクリア小児用分散錠」、退席委員なし、議決には参加しない委員、金子委員、杉委員、武田委員、平安委員。議題5「ラミクタール錠小児用」、退席委員なし、議決には参加しない委員、金子委員、杉委員、武田委員、野田委員、平安委員。議題6「イフェクサーSRカプセル」、退席委員、平安委員、議決には参加しない委員、金子委員、杉委員、武田委員、野田委員。議題7「コパキソン皮下注」、退席委員なし、議決には参加しない委員、杉委員、武田委員、野田委員、平安委員。議題8「ピートルチュアブル錠」、退席委員なし、議決には参加しない委員、杉委員、武田委員、野田委員、平安委員。議題9「ザガーロカプセル」、退席委員なし、議決には参加しない委員、金子委員、杉委員、武田委員、野田委員、平安委員。議題10「マリゼブ錠」、退席委員なし、議決には参加しない委員、杉委員、武田委員、野田委員、平安委員。議題11「エクメット配合錠」、退席委員なし、議決には参加しない委員、武田委員、平安委員。以上です。

○松井部会長 ただいまの事務局からの説明に、委員の先生方から何か御意見はありますか。よろしいですか。よろしければ御確認を頂いたものといたしまして、早速、議題に入ります。本日は審議事項は11議題、報告事項は1議題になっています。

 それでは、審議事項の議題1に移ります。議題1について、医薬品機構から概要を御説明ください。お願いします。

○機構 議題1、資料No.1、医薬品ムルプレタ錠について、機構から説明させていただきます。本剤の有効成分であるルストロンボパグは、塩野義製薬株式会社により開発されたトロンボポエチン受容体アゴニストであり、骨髄前駆細胞から巨核球に至る過程における細胞の増殖及び分化を促進し、血小板数を増加させる薬剤です。慢性肝疾患患者では、内因性トロンボポエチンの産生低下などの様々な要因により、血小板減少症が認められる場合が多く、そのような患者に観血的手技を施す際には、出血予防のため、血小板輸血が必要となることがあります。本剤は、血小板減少を伴う慢性肝疾患患者が待機的な観血的手技を受ける際に、計画的に血小板を増加させる薬剤として、本邦では20 年より臨床開発が開始され、今般、国内臨床試験成績等を基に、待機的な観血的手技を予定する慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善に使用する薬剤として承認申請されました。本品目の審査に関して、専門委員として、資料14に記載されている委員が指名されました。

 審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書40ページをご覧ください。国内第III相試験として、血小板減少を伴う慢性肝疾患患者90例を対象に、予定する観血的手技の9~14日前から、本薬3mgを1日1回、7日間経口投与したときの観血的手技実施前の血小板輸血回避率について、プラセボに対する優越性を検証する二重盲検試験が実施されました。血小板輸血の必要性は、観血的手技の実施直前に判定されました。

 有効性について御説明いたします。同じく審査報告書40ページの下を御覧ください。有効性の主要評価項目である初回の観血的手技前の血小板輸血回避率は、本薬群79.2%、プラセボ群12.5%であり、プラセボに対する本薬の優越性が示されました。

 本薬の安全性については、審査報告書42ページをご覧ください。国内第III相試験における有害事象の発現状況からは、本薬投与時の安全性に重大な懸念は認められないものと判断いたしました。なお、本薬による過度の血小板数の増加は、血栓塞栓症を生じるリスクの1つとなることが想定されます。本薬の国内臨床試験では、プラセボ群と比較して、本薬群で血栓塞栓症に関連する有害事象が増加する傾向は認められませんでしたが、慢性肝疾患患者では、門脈血栓症等の血栓塞栓症を生じやすい状態であること、観血的手技に伴い、血栓塞栓症のリスクが高まる場合があることも考慮し、審査報告書6567ページの「血小板数の過剰増加を予防するための方策について」の項に記載していますように、国内臨床試験での規定に準じた血小板数のモニタリング及び投与中止基準を規定することが適切と判断しました。国内第III相試験の結果、及び血小板輸血には供給量の問題、感染症のリスク等が存在することも踏まえると、本剤の臨床的な有用性は認められるものと判断いたしました。

 以上のような審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を8年とすることが適当であると判断しております。また、原体及び製剤は、劇薬及び毒薬並びに生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。御承知のように、慢性肝疾患、特に代表的なものは肝硬変あるいは、肝の大きな腫瘍などですが、これを切除する、あるいは、門脈圧の亢進に対して、消化管出血を予防するといったような外科的処置が頻繁に用いられており、これは大きな問題の1つになっております。委員の先生方から御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。血小板の減少に対して、増加を期待するという薬剤です。特に御質疑はありませんか。よろしいでしょうか。

 特に問題がないということであれば、議決に入ろうと思います。なお、武田委員、野田委員、平安委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題について、承認を可としてよろしいですか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 議題2に移ります。事務局から御説明をお願いいたします。

○機構 議題2、資料No.2、イグザレルト錠の製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。本品目は、本年2月の当部会での御審議にて、初期治療期の用法・用量及び出血リスク並びに安全対策について整理の上、再度、医薬品第一部会にて御審議いただくこととされていました。御指摘を踏まえた検討結果について、補足説明資料として、資料No.16-1を配布しておりますので、こちらの資料を中心に御説明いたします。本品目の審査における検討には、専門委員として、資料14に記載されている委員に御参加いただきました。

 資料No.16-1のスライド2をご覧ください。イグザレルト錠は、本邦では2012年1月に、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制の効能・効果で既に承認されており、今回の申請は、深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症(以下、VTEと総称)の治療及び再発抑制の効能・効果及び用法・用量を追加するものです。

 スライド3をご覧ください。まず、今回の申請効能・効果であるVTEの治療及び再発抑制における本薬の初期治療期の用法・用量は、非弁膜症性心房細動患者に対する用量として本邦で承認されている15mg1日1回の2倍の用量である15mg1日2回を3週間投与する設定であり、日本の臨床現場に提供した場合に、出血性有害事象が多発することが懸念されるとの御指摘がありました。15mg1日2回という初期治療期の用法・用量に関する検討は次のとおりです。

 本申請での投与対象であるVTEは、既承認効能のように、将来の血栓塞栓症の発症抑制を目的とする投与とは異なり、正に血栓が存在して血管が詰まっており、早急な治療が必要な状況にあり、かつ、血栓・塞栓イベントのリスクも高い状況にあります。本剤と同じくVTEの治療に用いる活性型血液凝固第 因子阻害薬であるフォンダパリヌクスでも、VTEの初期治療では、整形外科手術施行患者でのVTEの発症抑制での用量の2~4倍の用量が用いられていることからも、治療効果と初期の血栓・塞栓イベントリスクを重視した本剤の初期治療期の用量設定の考え方自体に、大きな問題があるとは言えないと考えております。

 3週間という初期治療期の期間については、先の部会で、国内外における現行のヘパリン等を用いた初期治療の捉え方からは、やや長く感じられる旨の御指摘もありましたが、申請者が国外第III相試験計画時までに得られていた「発症初期3週間程度は、血栓・塞栓イベントリスクが高い」とのデータに基づいて設定されており、スライド4に示したような、この設定根拠を支持するデータが報告されています。実際に初期3週間は15mg1日2回を投与するとの用法・用量で行われた国際共同の国外第III相試験において有効性が検証され、安全性も対照薬と比較して大きく異なる結果ではありませんでした。この国外第III相試験成績から、当該用法・用量の妥当性は示され、開発コンセプト自体に大きな誤りはなかったことが示されたものと考えます。

 スライド5をご覧ください。既承認の非弁膜症性心房細動では、日本人では15mg1日1回であり、海外の20mg1日1回との曝露量の国内外差などを考慮した設定であったのに対し、VTEに対する初期治療期では、国内外同じ15mg1日2回としたことに疑問があるとの御指摘も頂いておりました。確かに、国内第III相試験計画時までに得られていたデータによると、15mg1日2回投与時の曝露量は、日本人では白人よりやや高くなるため、慎重に投与すべき用量であると考えられましたが、疾患の重篤性及び緊急性に基づくと、発症初期には十分に有効性を担保できる用量を選択する必要があるとも考えられ、急性症候性VTE発症初期における有効性担保の観点から、本剤の有効性が検証された国外第III相試験の用法・用量以外を推奨できる根拠はないこと。スライド6に示しているとおり、既承認の1日1回投与時とは異なり、15mg1日2回を白人VTE患者に投与したときの曝露量と比較して、日本人VTE患者での10mg1日2回投与時の曝露量は低いと推定されたこと。また、国外第III相試験のアジア人、中等度腎機能障害といった曝露が上昇することが想定される部分集団でも、15mg1日2回の安全性が許容可能であったことなどより、初期治療期での用法・用量として国内第III相試験で設定することが妥当と判断できる用法・用量であったと判断しております。

 スライド7をご覧ください。国内第III相試験の少数例での検討結果をもって、日本人の安全性を評価することで十分とは思われないとの御指摘もありました。この点については、まず本邦ではVTEの発症患者数が少ない上に、特定施設へ患者が集中するという状況でもなく、国内で血栓・塞栓イベント発現率をエンドポイントとした検証試験はもとより、安全性について十分に検討できる規模の試験を実施することも困難であるという実施可能性の問題がありました。このような状況下で実施された国内第III相試験は、少規模ではありましたが、既承認の類薬の開発での日本人データと比較して小さい規模ではなく、国内第III相試験における15mg1日2回群の安全性は、国外第III相試験と同様に、対照群と大きく異ならず、有効性についても、国外第III相試験と矛盾しない成績が得られました。以上より、初期3週間は15mg1日2回投与、その後は15mg1日1回投与との用法・用量は、本邦の医療現場に提供する用法・用量として妥当であると推定できるものと判断いたしました。

 しかしながら、先の部会での御指摘を踏まえ、初期治療期に出血リスクが高まる可能性を十分考慮すること、及び、特に出血の危険性が増大する恐れのある背景因子を有する患者では、想定されるリスク・ベネフィットから、本剤を適用すべきか十分検討することが重要であることを、これまでに増して強く注意喚起する必要があると判断いたしました。

 具体的にはスライド8にお示ししたとおり、添付文書の警告の項にその旨の注意喚起を追加し、国内外第III相試験におけるこれらの出血の危険性が増大する恐れのある背景因子に関する出血の部分集団解析結果については、医療従事者向け資材において情報提供することとしました。さらに、製造販売後調査においては、特に初期治療期における出血リスクの評価を早期に行える体制とし、追加の注意喚起の必要性の検討及び医療現場への情報のフィードバックが可能な計画といたしました。

 なお、以上の先の部会後の検討結果については、全ての専門委員により御支持いただいた上での機構の判断ですが、先の部会で上記の安全性の懸念を主に御指摘いただきました小川前委員にも御説明し、御理解いただいた旨、御回答を得ております。

 以上のような検討を行った結果、患者の安全性確保のための方策を追加した上で、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会にて再度御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤の再審査期間は、既承認効能の再審査期間の残余期間とすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。

 なお、本日御欠席の山田委員より事前に御意見を頂いております。「前回審議において、初期治療期に15mgを1日2回投与することの安全性確保、出血リスクに懸念があるとコメントいたしました。今回、機構の指導により、添付文書の警告に出血リスクに関する注意喚起を追記する等の対策がなされたことにより、安全性対策は格段に向上したと思います。この注意喚起に加えて、添付文書に、15mgを1日2回投与した際の薬物動態パラメータを記載してはいかがでしょうか。原案では1日1回の投与データしか記載されておりません。初期治療期の薬物動態パラメータを追記することは、医療現場に必要な情報を提供するとともに、安全対策上も有益と思います」との御意見を頂いております。

 頂いた御意見を踏まえ、添付文書に国内第III相試験の母集団薬物動態解析から得られた15mg1日2回投与時の薬物動態パラメータ推定値を追記することといたしました。資料16-2の添付文書5ページを御覧ください。追記案については下線の部分となっております。この対応についても、山田委員に御説明し、御了解を頂いております。以上、御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 NVAFの患者さんと、VTEの患者さんにおいては、リスクも重症度も対応も違うべきではないかということと、そのリスクをいかに広く知らしめるかということが問題であったように思います。2人の御発言をなさった先生からは、この対応でよろしいということです。早速ですが、杉委員から御意見があれば、述べていただきたいと思います。

○杉委員 私も、非弁膜症性の心房細動にはこの薬もかなり使っております。やはり最近、注意しなければいけないことは出血性の合併症、特に消化管出血があるように思われます。ただ、この下肢の血栓症に使うとすると、2倍量を3週間使うというところですが、やはりそこが少し懸念するところです。ただ、今の御説明のとおり、ある程度網羅できているもので安全確保できるものであれば、そして、腎障害の余り強くない方に使えるということであれば、使ってみてよろしいかと思っております。

○松井部会長 ありがとうございます。

○鈴木委員 説明は伺いましたが、高齢の患者では、ということがありますが、日本人の場合は年齢制限はないはずですから、かなりの超高齢者の方でも使う場合があると思うのです。そういう、年齢によるリスクというのもあるのではないかと思うのです。そういうものがどうなのかということがあります。

10mgを2回、15mgを2回ではなくて、10mg15mgとかもあると思います。とにかく血中濃度を上げればいいのだというものでもないと思うのです。その辺りについてもう少し細かい検討をされたほうがいいのではないかと思うのです。注意して使用しながらでもやむを得ないのかもしれません。何となく、この10mg15mgの差よりも、白人の15mgと日本人の15mgの差のほうがはるかに大きいので、そこが気になりますので、もう少し丁寧な対応が必要ではないかと、御説明を聞いた上でも少し感じるということを申し上げます。

○松井部会長 ただいまの鈴木委員の御質問に対して、まず年齢に関してはいかがですか。

○機構 国内外第III相試験における高齢者について、部分集団解析を行いましたけれども、その結果から、本薬群で対照群を上回るほどの出血リスクは示唆されておりません。ただ、やはり若年患者と比較しますと、本薬による出血リスクが高い傾向はありますし、やはり加齢による一般的な生理機能の変化も考慮すると、高齢者への投与時には安全性上の注意を払う必要があると考えており、今回、警告の項に、高齢者も含めて注意喚起したところです。

○鈴木委員 高齢者というのは、実際に使われた方は何歳から何歳の方なのか教えていただけますか。

○機構 試験に入られた方ということでしょうか。

○鈴木委員 そうです。

○松井部会長 特に高齢者で何歳以上とか、そういうことではないのですか。

○機構 データを探している間に少し御説明いたします。今回提出された資料の中では、75歳を区切りとして部分集団解析を行い、高齢者への安全性はどうなのだという検討がなされております。この添付文書()の4ページの5.の所に「高齢者への投与」ということで、これはNVAFを対象とした国内第III相試験の話ですが、75歳以上の患者では、75歳未満の患者と比較して臨床的に問題ある出血の発現率が高かったというような情報提供をしておりますが、その検討結果を踏まえまして、この記載に準じた対応が必要ではないかと考えております。

○機構 申し訳ありません。細かい数値は今すぐには分からないのですが、国内外第III相試験には、75歳以上の患者さんも1015%含まれていたというデータはございます。

○鈴木委員 そうすると、高齢者というか、75歳以上ですから日本で言うと後期高齢者ですね。その辺りが「高齢」と言うだけだと分かりにくいかもしれません。今、杉先生のお話にもありましたように、出血の合併症で消化管出血などが出ますと、高齢者の場合は、それで命を落としかねないような場合もあるかもしれませんので、そこはもう少し慎重にされたほうがいいのではないかと思いますし、「高齢」ということだけではなくて、そういったデータがあるのでしたら、そういうリスクについても、もう少し丁寧に説明されたほうがいいのではないかと思います。

○機構 ありがとうございます。年齢に関する部分集団解析の結果や、出血の出方については、医療従事者向け資材のほうに、どれぐらいの年齢層の人が入っていたかという情報も含めて情報提供させていただく予定となっておりますので、そちらを見ていただきつつ、そのほかの患者背景の因子も影響してくるかと思いますので、医療現場で総合的に判断いただく際に御注意いただければと考えております。

○鈴木委員 そういうふうによくおっしゃるのですが、現場の説明会などを聞くと、そこは細かい所には書いてあるのですが、やはり売りたいですから、余りリスク、リスクと言うと売れなくなってしまいますので、さらっと流すのです。よく読めば小さく書いてあるのですが、そういうことが現実には起きています。お隣に専門家の先生もいらっしゃいますから、どのようにされたらいいか、先生の御意見を是非、確認していただきたいと思います。

○杉委員 分かりました。まず、下肢の血栓症に使ったことはないものですから、実際のところは私どもも、条件に合えば通常は15mgを日本人の成人に使っています。どこから10mgにするかということですが、やはり、腎機能をまず考えます。ただ、高齢になりますと、絶対に腎機能は落ちてきますので、80歳以上では絶対に10mgを使っているというのが実情です。

○鈴木委員 現場ではそのように工夫されていることを、もう少し尊重すべきではないのかと思います。いわゆる違う適応症での使用の例があるわけですから、その辺りが少し高用量を売りたいということが前面に強く出すぎているような気がしますので、もう少し慎重にということを強調する必要があるのではないかと思います。わが国では年齢制限がないわけですから、80歳でも90歳でも100歳でも使っていいわけでしょう、当然そのままでいいというわけではないですね。もう少し超高齢社会に対応できるようにすべきではないでしょうか。これは命に関わる場合がありますから、もっと丁寧にしたほうがいいと思います。

○機構 御指摘ありがとうございます。この品目の投与に関しては、特に何かのカットオフ値を設けるというわけではなくて、特に注意するものとして、腎機能と年齢と体重を要素として挙げており、これらの実際の値と、あとは、個々の患者さんが持っている出血素因と凝固の進み具合といったところを全て勘案して、そのバランスをみて投与していただくというのが、専門の先生方の御判断かと理解しております。その辺りについては、今回追記いたしました警告の欄にも、我々としては書き表しているつもりなのです。先生のおっしゃったことを申請者にも伝えまして、この辺りをきちんと余すことなくしっかり情報提供していただくようにお願いしたいと思います。

○松井部会長 よろしくお願いいたします。もう1つ鈴木先生の御質問がありますね。

○鈴木委員 その件については、せっかく専門家がいらっしゃる訳ですから、前に指摘された小川先生の後任でもありますし、確認を取っていただきたいと思います。以上、よろしくお願いします。

○松井部会長 それは部会長確認ということでよろしいですか。

○鈴木委員 部会長からで結構です。

○松井部会長 杉委員に。

○鈴木委員 はい。

○松井部会長 承知いたしました。それから、もう1つありましたね。白人と日本人とでは違うのですから、もう少しきめ細かくということですが、これも同じ延長線上の御指摘と理解してよろしいですか。

○鈴木委員 そうです。白人の方とはこんなに違うのかという気が改めていたしましたので、何でも海外でやったものを持ってくればいいというものではないと改めて感じました。その意味で日本人の症例は重要であると思います。特に日本の場合、高齢化が進んでおり、高齢といっても欧米の高齢とは桁が違う可能性もありますし、しかも日本は薬を使いやすい国民皆保険の国ですので、そういうリスクも考えていただきたいということです。

○松井部会長 何でも外国のものを持ってきているとは私は思いませんが。

○鈴木委員 そのままでというのは問題があると思います。費用対効果の議論ではそういう話もありました。

○松井部会長 ありがとうございます。ほかにございませんか。

 それでは議決に入ろうと思いますがよろしいでしょうか。なお、金子委員、杉委員、武田委員、野田委員、平安委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。

 本議題について承認を可としていいでしょうか。ありがとうございます。では、そのリスクの説明について鋭意、案を練っていただきたいと思います。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 議題3に移ります。議題3について、医薬品機構から概要を御説明ください。

○機構 議題3、資料No.3、医薬品ベンテイビス吸入液10μgの製造販売承認の可否等について機構より御説明いたします。

 本剤は、プロスタグランジンI誘導体であるイロプロストを有効成分とし、携帯用のネブライザーを用いて吸入する肺動脈性肺高血圧症(以下、PAH)の治療薬です。本剤は2015年6月現在、欧州、米国を含む70以上の国又は地域で承認されています。今般、国内外の臨床試験成績を基に肺動脈性肺高血圧症を申請効能・効果として製造販売承認申請がなされました。本品目の審査に関して専門委員として、資料No.14に記載されております委員を指名いたしました。

 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書の4445ページを御覧ください。海外においては、PAH患者を対象としたプラセボ対照二重盲検試験が実施されました。審査報告書45ページの中段に示すように、主要評価項目とされた12週時における6分間歩行距離が、10%以上改善し、WHO機能分類が1クラス以上改善する、PAHの臨床的悪化、又は死亡が認められないという3基準を全て満たす被験者の割合について、プラセボ群に対して、本剤群で有意に被験者の割合が高いという結果が得られました。国内においては、日本人PAH患者を対象とした非盲検非対照試験が実施されました。審査報告書の4849ページ表24に示しますように、主要評価項目とされた12週時における肺血管抵抗はベースラインと比較して低下が認められました。国内臨床試験については、日本人PAH患者数が少ないことから、非盲検非対照試験として実施されております。

 また、先行して実施されていた海外臨床試験と実施時期が10年以上異なっており、疾患分類が変遷したこと、医療環境が変化したことなどから、併用薬の規定などの試験デザインに違いが認められています。しかしながら、国内外ともに治験薬投与開始前から併用薬の種類及び1日量は、一定にするように規定されていたことなども踏まえ、海外臨床試験成績を利用して日本人における有効性について、推定することは可能と判断いたしました。

 国内臨床試験での肺血管抵抗係数及び6分間歩行距離について海外臨床試験での成績と比較した結果、同程度の改善が認められていたことから、外国人同様、日本人においても本剤の有効性が期待できると判断いたしました。

 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書58ページの中段以降を御覧ください。表30に示しますように、海外臨床試験である「ME97218試験」においては、失神に関連する有害事象が認められております。国内臨床試験である「15503試験」では、失神に関連する有害事象は認められませんでしたが、失神が起きたときの転帰の重大性や、失神が認められた患者でのリスク因子が明確になっていないことを考慮し、添付文書上で失神に関する注意喚起を行っております。また、本剤は、血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用を有することから、添付文書上で低血圧並びに出血及び血小板減少に関する注意喚起を行っております。

 本剤は吸入剤であるという特性を踏まえ、慢性閉塞性肺疾患、気管支喘息、急性肺疾患を合併しているなど、気道疾患を有する患者を慎重投与としております。

 製造販売後調査については、国内での治験症例が限られていることから、全投与症例を対象とした、使用成績調査を実施することを承認条件とすることが適切と判断しております。

 以上のような審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体は毒薬、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品又は特定生物由来製品のいずれにも該当しないとすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。これは杉委員、大人においては、大分多数の御経験がおありなのでしょうか。

○杉委員 この領域の疾患は、前は余り注目されなかったのですが、最近は診断能力が上がったというか、かなり症例数は多くなっているのが実情でございます。ですから大人においても、そういうことです。ただ、小児においてはこの吸入が、かなり有効だというのは聞いております。

○松井部会長 ありがとうございます。特に御意見はありませんか。松木委員、いかがですか。よろしいでしょうか。

○松木部会長代理 はい。

○松井部会長 特段の御質疑はないようでしたら、議決に入りますが、よろしいでしょうか。それでは、議決に入ります。なお、杉委員、武田委員、平安委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。

 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので承認を可とし、薬事分科会に報告いたします。

それでは、議題4に移ります。機構から議題について説明をお願いします。

○機構 議題4、資料No.4、医薬品トラクリア小児用分散錠32mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。

 本剤は、エンドセリン受容体拮抗薬であるボセンタン水和物を有効成分とする肺動脈性肺高血圧症(以下、PAH)の治療薬であり、国内で既にPAHの治療薬として、成人の用法・用量が承認されているトラクリア錠62.5mgと同一の有効成分を含有しています。今般、小児PAH患者が服用しやすい味で、小児の体重ごとに用量調節しやすいように4分割可能な本剤が開発され、国内外の臨床試験成績を基に肺動脈性肺高血圧症を申請効能・効果として、製造販売承認申請がなされました。本剤は2015年7月現在、欧州、スイス及びメキシコで承認されております。本品目の審査に関して専門委員として、資料No.14に記載されております委員を指名いたしました。

 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。審査報告書14ページを御覧ください。日本人小児PAH患者6例を対象とした非盲検非対照試験が実施されました。有効性について、審査報告書15ページ表7に示しますように、主要評価項目とされた12週時における肺血管抵抗係数(以下、PVRI)、こちらのベースラインからの変化量について、平均値では僅かな低下が認められたものの、中央値では増加が認められました。少数例での検討を行った本試験成績のみから、日本人小児PAH患者での有効性を評価することは困難と判断したため、海外臨床試験3試験の成績も併せて評価することといたしました。審査報告書17ページ表10に示しますように、外国人小児PAH患者において、投与12週時におけるPVRIについてベースラインからの低下が認められました。また、小児PAH患者に本剤を投与したところ、審査報告書20ページ表14に示しますように、12週時におけるWHO機能分類はベースラインからおおむね改善、あるいは不変であり、また、他の試験では、審査報告書22ページ表16に示すように、試験終了時におけるPVRIについて、ベースラインからの低下が認められました。

 国内の臨床試験においては、本剤の有効性は明確に示されておりませんが、少数例での検討であったことから、個々の症例の肺血行動態パラメータについて詳細に検討したところ、審査報告書28ページの最終段落以降に示しますように、6例中2例で有効、1例で不変と判断できました。

 PAHは希少疾病であり、小児患者数は更に少ないこと、小児では先天性心疾患に伴うPAHの割合が多いため、手術に関連して緊急的に治療を開始する場合もあること、国内においては、成人に対して適応のあるPAH治療薬が使用されている実態があることなどから、日本人小児PAH患者に対する有効性を明確に示すことができるような規模の臨床試験を実施できなかったことは、やむを得ないと考えております。

 一方、海外の臨床試験では、本剤の有効性が示され、肺血行動態パラメータの改善傾向は成人と同様でありました。成人では、日本人PAH患者におけるボセンタンの有効性が認められており、成人と小児で、PAHの病態や治療に差異はないと考えられることなどを考慮すると、外国人同様、日本人小児PAH患者においても、本剤の有効性が期待できると判断いたしました。

 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書30ページ表21を御覧ください。成人と小児のPAH患者で、ボセンタンの安全性プロファイルに大きな違いは見られないことから、現時点では、小児においても既承認製剤であるトラクリア錠62.5mgと同様の注意喚起をすることで、臨床使用において適切な対処が可能と判断しております。一方で、臨床試験で検討された症例数は極めて少ないこと、小児PAH患者では、成人よりも長期にわたってボセンタンを服用することが想定されることなどを考慮し、本剤の処方は、小児のPAH治療に十分な知識及び経験を有する医師のもとで、本剤の投与が適切と判断される患者について適用を考慮する旨を添付文書上で注意喚起しております。

 製造販売後調査については、国内での治験症例が限られていることから、全投与症例を対象とした使用成績調査を実施することを承認条件とすることが適切と判断しております。

 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は希少疾病用医薬品に該当しますが、同一の有効成分を含有するトラクリア錠62.5mgが既に成人のPAHに対して2005年4月に承認されており、標準的治療として、国内において約10年の使用経験を有することから、本剤について、10年にわたって長期の使用成績に関する調査を実施する必要はないと判断しております。そこで、再審査期間は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の規定に基づき、6年を超え10年を超えない範囲として、6年1日と設定することが適切と判断しております。製剤は劇薬に該当し、生物由来製品又は特定由来製品のいずれにも該当しないとすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 それでは、委員の皆様から御質疑をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

○内藤委員 国内の第III相試験ですが、症例数が少ないという事情があるにせよ、全く効果がなかったわけですね。そういう理解でよろしいですか。それで間違ってないですか。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○機構 個別症例の結果を確認したところ、6例中2例が有効で、1例が変わらず、3例が効果なしというように機構としては判断しております。

○内藤委員 個別に見ると2例は有効だったということですか。

○機構 はい、そうです。

○内藤委員 海外の第III相試験も、症例数はそんなに多いわけではないですね。体重群で別々に分けて、それぞれで見ると、5例とか6例で、それで非常に明確に変化が出ているので、何でこういう結果が国内で再現できないのかが、ちょっとよく理解できないのですけれども。

○機構 あらゆる角度で、こちらも後付けで解析を行いましたが、ちょっと明確な原因のほうは分からなかったということが実情です。

○内藤委員 はい。

○松井部会長 今、内藤委員の御指摘は重要な点だと思いますが、ほかの先生方はいかがでしょうか。この海外の6症例は、これですね。

○機構 国内が6症例です。

○松井部会長 ごめんなさい。表19は国内ですね。

○機構 そうです。

○松井部会長 これを見ると、特発性の肺高血圧症の4例と、先天性心疾患に伴う肺高血圧症、遺伝性肺高血圧症となっていますが、先天性心疾患に伴うというのは、これは私の理解だと、比較的に小児循環器疾患の中では多いように思いますが。これはどういう心疾患ですか。つまり、私がお聞きしたかったのは、先ほどの内藤委員の質問と同一線上ですけれども、どうして症例数が集まらなかったのかという理由を知りたいと思っておりますが。

○機構 やはりPAH自体が希少疾患ということで、最近は大分診断の精度が上がってきて、早めに発見されるようにはなったのですが、この治験をやっているときの状況と、あとは小児ということもありまして、どうしても組入れがなかなか芳しくなかったというところが、かなり大きい理由となっております。同時期にほかの治験が動いていたとか、そういうところもあるのですが、なかなか小児のこの疾患を対象とした治験として、組み入れるのが難しかったというのが実情です。

 今、先天性心疾患の原因が何だったかというところは、手元にデータを持ち合わせていませんが、いろいろな考察をした結果、特に特発性だからこの薬が効くとか、先天性に効かないとか、そういうことではないと判断しております。小児のPAHの原因疾患として多いのが、特発性と先天性と遺伝性ということで、そこが成人のPAHの原因疾患と少し異なっておりまして、検討していないものについては、今、添付文書上で注意喚起させていただいております。「1.8添付文書()」の効能・効果に関連する使用上の注意のところです。

○松井部会長 1.8の添付文書()

○機構 はい。1ページの左側のカラムの効能・効果に関連する使用上の注意において、特発性、遺伝性、それから先天性心疾患に伴うもの以外に有効性及び安全性は確立していないということで、海外のほうも、これ以外のPAHは検討しておりませんので、そういう形の注意喚起をさせていただいているところです。

○松井部会長 いわゆる、これは二次性で原発性ではないのですが、先天性心疾患で肺高血圧を起こすので一番多いのは、心室性中隔欠損なのですね。多分これは、そういうものは除いてあるのではないかと思ったものですから、この先天性心疾患というのは何ですかというようにお聞きしたのですけれども。今はこのことは置きまして、ほかに御質疑はありませんでしょうか。

○杉委員 私は専門ではないですが、今の議論の中で、肺動脈性肺高血圧症に適応があるということで良いのですね。血栓性肺高血圧症は適応でないということですね。肺動脈性肺高血圧症もありますが、先天性心疾患による肺高血圧症も非常に苦しい思いをしている状況だと思います。それと別に血栓性肺高血圧症は今回の適応に入っていないのですね。

○機構 はい。今回は入っていないです。

○杉委員 分かりました。

○松井部会長 いかがでしょうか。それでは杉委員、私が先ほどチラッと言った二次性の、いわゆる心室性中隔欠損による肺高血圧は、これは除いていいということですね。そうするとやはり、症例数を集めるのは非常に困難であろうと推測できます。ほかに委員の先生方からは。

○奥田委員 用法・用量に関する使用上の注意の所で、添付文書の4.と5.で、既存製剤と比べてBA、溶出性は同じかもしれませんが、BAはとにかく違うということが書かれていて、それを踏まえて、切替えを行う場合は十分に注意してくださいという記載があります。これは、具体的にはどういうことをイメージされているのですか。今まで小児で効能としては認められないけれども、普通製剤を使われていた方が現実にいらっしゃって、その方々に対する注意ということですか。その辺の4.、5.の関係を少し説明していただきたいのですが。

○機構 今御質問いただいたとおり、既承認のほうの「通常、成人には」という用法・用量で承認されている製剤についても、医療実態としては、既に小児に対して結構使用されているというところがありますので、そういった患者さんが今回小児用の製剤が承認されたことで、そちらに切り替える場合に、曝露量が変わる可能性があるということが1点と、あと、何らかの理由で、この小児用製剤から今まで承認されていた製剤に切り替える場合にも、また同じようなことが起こるということで、注意喚起させていただいております。

○奥田委員 そういう実態があるということを踏まえての記載ですね。

○機構 そうです。

○奥田委員 分かりました。

○松井部会長 ほかにありますでしょうか。そうすると、先ほどの内藤委員の御質問のところに戻ってくるわけですが、有効であるとする報告が海外からある。日本では必ずしも十分な症例数はいろいろな理由があるにせよ、集まらなかったと。そういう段階で、これを日本でも有効な例はあり得るのですから、認めようではないかということに関する是非ですね。内藤委員、それでよろしいですね。そういう御質問だったと思います。

○内藤委員 はい。何か民族的な違いとかで、日本人では余り効かないというようなことが考えられるのかどうかにもつながると思います。ただ、成人に対しては、既に有効であるという実績があるわけですね。

○機構 はい。

○内藤委員 ですから、そういうことも多分なさそうだということであれば、いいのではないかと思います。

○松井部会長 今の点について、いかがでしょうか。内藤委員の御意見で良いということで、委員の先生方、御判断なさいますか。ほかに御質疑がなければ議決に入りますが、いいのでしょうか。よろしいですか。それでは、議決に入ります。この件に関しては、金子委員、杉委員、武田委員、平安委員におかれましては、利益相反に反する申出に基づき議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。

 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないと認めます。承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは、議題5に移ります。医薬品機構から議題について概要を説明してください。

○機構 議題5、資料No.5、医薬品ラミクタール錠小児用2mgほかの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤の有効成分であるラモトリギンは、英国Wellcome Foundation社、現GlaxoSmithKline社において、抗てんかん薬として開発されたトリアジン骨格を有する化合物です。海外では2014年9月現在、米国、欧州等の100以上の国又は地域で承認されており、今回の申請効能・効果である定型欠神発作については、欧州主要国等で承認されております。本邦では、200810月に他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)、強直間代発作及びLennox-Gastant症候群における全般発作に対する抗てんかん薬との併用療法の効能・効果で承認され、その後2011年7月に双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制、2014年8月にてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)及び強直間代発作に対する単剤療法の効能・効果で承認されております。

今回申請の定型欠神発作に関する開発は、2011年6月より臨床試験が開始され、今般、製造販売承認事項の一部変更承認申請が行われました。本申請の専門委員としては、資料No.14に記載されております4名の委員を指名しております。

審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。

 まず、有効性についてです。審査報告書17ページの上から9行目の「2)国際共同第III相試験における本剤の有効性について」の項を御覧ください。定型欠神発作を有する日本人及び韓国人小児てんかん患者を対象に、非盲検非対照試験として実施された国際共同第III相試験における発作消失率は35.0%であり、事前に想定した発作消失率44%と比較して低い結果となりました。発作消失率が低かった要因の1つとして、国際共同第III相試験においては、因果関係が否定できない発疹が発現した場合には治験を中止することが規定されておりましたが、海外臨床試験では当該中止基準は設定されておらず、中止基準が有効性評価に影響を及ぼしたことが考えられました。また、公表文献において、本剤の発作消失率は29.536.8%、他剤の試験ではあるもののプラセボの発作消失率は4.8%と報告されており、国際共同第III相試験で認められた発作消失率35.0%は、報告されている本剤の発作消失率と同程度であり、プラセボよりも高値を示していました。さらに、本剤は複数の海外臨床診療ガイドラインにおいて、定型欠神発作に対する治療薬として推奨されていることも踏まえると、日本人てんかん患者における定型欠神発作に対する本剤の有効性は期待できるものと判断いたしました。

 次に、安全性についてです。審査報告書21ページの表5を御覧ください。定型欠神発作に対する単剤療法の臨床試験においては、発疹、薬疹等の皮膚障害の発現割合が高い傾向が認められたため、皮膚障害の発現については十分な注意喚起が必要と考えております。審査報告書26ページ中ほどの「()製造販売後の検討事項について」の項を御覧ください。本剤については、本年2月4日に重篤な皮膚障害による死亡例の集積を受けて、安全性速報が発出され、更なる適正使用の徹底を図るため、添付文書の警告の項が改定されておりますが、今回の効能追加に当たり、当該対応に加えて、用法・用量を遵守させるため、医師及び患者向け資材を作成するとともに、重篤な皮膚障害の初期兆候が発熱、咽頭痛などの感染と誤診されやすい症状であること、13歳以下の小児では重篤な皮膚障害の発現率が高いことが示されていることから、皮膚障害が早期に発見され、治療されるよう、医療従事者に対して広く情報提供を行う予定としております。

 以上の審査を踏まえ、本剤のてんかん患者の定型欠神発作に対する単剤療法に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新効能及び新用量医薬品であり、今回追加される効能・効果及び用法・用量に対する再審査期間は4年とすることが適切と判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。

○松井部会長 それでは委員の先生方、御質疑をお願いいたします。いかがでございましょうか。

○奥田委員 皮膚障害と有効性の関係をコメントされていらっしゃいましたけれども、それは皮膚障害が起きた人は効くということを言っているのですか。

○機構 発作消失率の算出方法ですけれども、本剤が投与された被験者のうち、有効用量の維持投与期間の間、発作が発現しなかった被験者の割合を発作消失率として算出しており、因果関係が否定できない発疹が発現し治験を中止された被験者は、発作消失率の算出に当たっては失敗例として扱うことになってしまいます。このように、有効性に直接関係ない部分が発作消失率の最終的な数値に影響してしまったとことが、海外臨床試験成績と差が付いた理由ではないかと考えられております。

○奥田委員 分かりました。

○松井部会長 この重篤な皮膚障害と申しますのは、27ページの中毒性表皮壊死融解症及びスティーブンス・ジョンソン症候群を含むものだと考えます。ほかにいかがでしょうか。平安先生、いかがでしょうか。

○平安委員 双極性障害、成人ですが躁うつ病で既に使われていると思いますけれども、今、確かに用量の設定とか、あるいは急激に増量した場合とか、あるいは量が多すぎた場合に、皮膚疾患が発生しやすいということで、注意喚起がなされていると思いますので、その辺りは子供さんの場合は、もう少し慎重なほうがいいのかどうかというのを、皮膚やアレルギーに関しては専門ではないのですが、その辺りの検討はされているのかが心配です。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○機構 小児において、重篤な皮膚障害の発現率が高いという報告もございますので、小児に対する用法・用量の遵守というのは、成人よりも徹底しなければいけないと考えております。ただし、小児の用法・用量は、体重換算用量になっており、実際の投与量が分かりにくいので、何キログラムの患者には何ミリグラムから始めてくださいという体重換算表を資材として作成し、医療機関に配布する予定です。このような方策を通して用法・用量を遵守させるよう働き掛けていきたいと考えております。

○平安委員 スピードですが、どのぐらいの期間で上げていくかというところは、大人と比べて何か基準があるのでしょうか。

○機構 漸増期間ですが、成人ですと維持用量に達するまで6週間から7週間程度かかりますが、今回小児の臨床試験では、個々の被験者で維持用量に達するまで数箇月程度かかっておりますので、小児の方が維持用量に達するまでに時間がかかるものと思います。

○松井部会長 ほかにございますか。特にほかに問題点はないでしょうか。それでは議決に入ってよろしいですか。

 議決に入ります。なお、金子委員、杉委員、武田委員、野田委員、平安委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議なしと認めますので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは議題6に移りますが、平安委員におかれましては利益相反に関する申出に基づき、議題6の審議の間は恐れ入りますが別室で御待機いただきたいと思います。それでは、機構から御説明をお願いいたします。

○機構 議題6、資料No.6、医薬品イフェクサーSRカプセル37.5mgほかの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤の有効成分であるベンラファキシン塩酸塩は米国ワイス社、現ファイザー社で創製されたセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であり、海外では1997年6月にスイスで承認されて以降、2015年4月現在、米国、欧州等、91の国又は地域で承認されております。本邦では1995年5月からワイス株式会社、現ファイザー株式会社により臨床試験が開始され、20 月にワイス株式会社より、うつ病・うつ状態に対する承認申請が行われましたが、主要な臨床試験として実施された非劣性試験において本剤の有効性が認められなかったことから、20 月に一旦承認申請が取り下げられました。その後、申請者によりプラセボ対照試験が実施され、今般、うつ病・うつ状態に対する本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。本申請の専門委員としては、資料No.14に記載されております9名の委員を指名しております。審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。

 まず、有効性及び用法・用量についてです。審査報告書59ページの表36を御覧ください。国内第III相試験における主要評価項目であるFASにおける最終評価時のハミルトンのうつ病評価尺度(表中では「HAM- 17 」と略しております)の合計スコアにおいて、本剤75mg(表中では「本剤L群」と略しております)のプラセボ群に対する優越性が検証されました。一方で、本剤75225mg(表中では「本剤H群」と略しております)のプラセボ群に対する優越性は検証されませんでした。審査報告書64ページの表41を御覧ください。こちらの表41にお示ししておりますとおり、副次評価項目として設定されていたMontgomery-Asberg Depression Rating Scale(表中では「 MADRS 」と略しております)や概括重症度(表中では「CGI-S」と略しております)などにおいて、プラセボ群に対する統計学的な有意差が認められました。さらに審査報告書79ページの表57及び表58を御覧ください。こちらの2つの表にお示ししておりますとおり、75mgを超えて本剤を増量した場合に症状が改善した患者が一定数認められ、増量時の安全性にも大きな懸念は認められなかったことから、本剤の推奨用量は75mg、最高用量は225mgと設定することが適切と判断いたしました。

 次に安全性についてです。審査報告書66ページの表44及び67ページの表45を御覧ください。本剤投与時には傾眠、浮動性めまい等の中枢神経系有害事象やセロトニン症候群関連の有害事象が認められましたが、発現割合は既存の抗うつ薬と大きく異なりませんでした。また、審査報告書72ページの表50及び表51に記載しておりますとおり、本剤投与時には自殺企図、自殺行動等の自殺関連有害事象が認められておりますが、海外製造販売後安全性情報及び米国食品医薬品局における臨床試験に基づく解析結果からは、既存の抗うつ薬を上回るリスクは示唆されておらず、ほかの抗うつ薬と同様の注意喚起を行うことで問題ないと考えております。以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。

 本申請は新有効成分含有医薬品であり、再審査期間を8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。

 なお、審査報告書に誤記載がございましたので、訂正させていただきます。審査報告書86ページの最後の行を御覧ください。承認条件として、「医薬品リスク管理計画を適切に策定の上、適切に実施すること」と記載されておりますが、「適切に」が重複しておりますので、「医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること」に修正させていただきます。以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。

○内藤委員 20 年に一旦承認申請が行われて、そのときには有効性は認められなかったにも関わらず、今回改めて申請が行われたということですが、前回との違いを説明していただけますか。

○機構 20 年の申請時に提出された資料というのを審査報告書56ページ、57ページに記載させていただいております。ミルナシプラン対照比較試験という形になっております。審査報告書57ページに、HAM- 17 反応率を書かせていただいており、上から本剤L群、H群、ミルナシプラン群(MIL群)と並んでおり、有効性の評価としてはミルナシプラン群(MIL群)と本剤H群、H群というのが、本剤の75150mgの群になりますが、この間で非劣性を検証するという試験でした。

 一方で、この試験の中で本剤L群として、一番上にありますが、こちらが本剤の18.75mgを投与する群でした。こちらを参照群として置いていたのですが、この18.75mgというのが、当時、うつの患者に対してプラセボを投与した場合に自殺されてしまうリスクがあると考えられており、なかなか日本の臨床現場においてうつの患者にプラセボを投与する試験を実施することができない状況にありました。そういった状況下で、有効性を示さない用量として、この18.75mgを本剤L群に設定していたのですが、こちらで反応率が74.8%。74.8%の患者でうつ症状が改善したという状況になっており、本剤H群、実用量群で72.2%の反応ということで、有効性が示されると考えていた用量が、有効性を示さない用量よりも効かないという結果が出てしまったという試験成績でした。

 この成績をもって、この薬がうつに対して有効であるという判断が困難であったので、当時はこの成績を基に、1度取り下げていただいております。

 その後、日本の医療現場でもこういったうつに対してプラセボを使っていく試験が徐々に理解を得られるようになって参りましたので、今般、プラセボ対照試験を実施いただき、75mgについてはプラセボに対して主要評価項目について統計学的な有意差を認めているという試験成績になっておりますので、その点をもって本剤の有効性は示されたと判断させていただいております。

○内藤委員 確認ですが、L群とH群のドーズが前回と今回では違うわけですね。

○機構 はい、異なっております。分かりにくい報告書で申し訳ございませんでした。前回のミルナシプラン群については、L群というのが18.75mg、H群が75150mg群です。今回の表36については、L群が75mg、H群が75225mgになっております。

○内藤委員 標準的な投与量というのは、どれぐらいなのですか。

○機構 有効性が示されている75mgを標準的な用量とさせていただいております。ただ、225mgまで増量いただいた場合に、特に重症の患者等で改善される患者が認められており、その改善の傾向がプラセボと比べて、本剤を225mgまで上げていただいた群で多かったというデータをもって、75mgの1用量だけではなかなか現場で使い勝手が悪いということもありますので、最大用量として225mgまでを付けさせていただいているというところです。

○内藤委員 海外での標準用量はどのぐらいなのですか。

○機構 海外でも同じような形で、アメリカですと75mgから225mgの間で使える、欧州ですともう少し用量が高くなっており、75mgから375mgまで使用できるような状況になっています。

○内藤委員 海外でも高い用量で明確な有意差は出てこないのですか。

○機構 この薬剤ですが、もともと速放錠がありまして、速放錠の段階では、ある程度用量反応関係が認められたというデータで、1度海外で承認をされております。その後、徐放錠を作った段階では、海外では可変用量の試験しか実施されておりませんで、明確な用量反応関係を見られる試験は海外ではありません。速放錠の段階でドーズ・レスポンスが見られましたということをもって、ある程度増量効果もあるのではと私どものほうでも評価はさせていただいております。

○松井部会長 MADRS スコアとHAM-D 17 スコアの違いは何ですか。

○機構 HAM- 17 MADRSは、どちらもうつの症状を評価するスケールになっております。ただ、それぞれを構成する項目は、17項目と10項目からなっていて、抑うつ症状を中心的にどちらも評価する指標ですが、それに対して食欲の低下、体重の変動あるいは不眠症状のようなものが、それぞれ占めるウエイトが違っている評価指標になっています。

MADRSのほうが、一般論として抑うつ症状をよりシャープに見られると言われているところがあり、それに対してHAM-Dのほうが項目数も多いということもあり、周辺症状も包括的により見やすいような評価指標になっています。

 抗うつ薬の臨床試験では、この2つの評価指標が非常にメジャーな評価指標として使われており、どちらかを主要評価項目に置いていただき、もう一方を副次評価項目として置いていただくという開発を、現在私ども機構からは指導させていただいております。

○松井部会長 ほかに御質疑はございますか。

○加藤委員 用量反応関係について伺いたいのですが、いろいろな有効性の試験、あるいは有害反応の試験において、必ずしもドーズ・レスポンス関係が成立しないというか、むしろ高用量のほうが反応が弱かったり、低用量で反応が有効であったり、ただ用量を上げることによって反応性が高まるだけではない例がかなりあるように思うのです。

 それをどうやって考えたらいいのかといって、どこに書いてあったのか見失ってしまったのですが、「用量によってノルアドレナリンのuptakeとセロトニンのuptakeに対してのaffinityが変わるのだ」という記述があったような気がするのですが、それは今までのSNRIと比べて非常に重要なことで、用量によって、副反応にしても有効性にしてもどういう副作用が出るかというspectrumが変わるという情報は、ものすごく重要なのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。

○機構 御指摘いただいたとおり、本剤については増量していった場合、特に225mgを境い目として、ノルアドレナリン作用が強く出やすいという傾向が、海外でも文献報告等でございます。資料の1.8で「添付文書()」と書いておりますが、こちらの「用法・用量に関連する使用上の注意」の1.になります。「本剤の投与量は、必要最小限となるよう、患者ごとに慎重に観察しながら調節すること」と書かせていただいており、理由として「増量により不眠症状、血圧上昇等のノルアドレナリン作用があらわれるおそれがある」という形で、本剤について、特にこのように注意喚起をさせていただいております。

 それから情報提供資材として、1.11のRMP案の一番後ろになるのですが、こういった資材を付けさせていただいております。この中で、今回臨床試験の中で、特に225mgに増量した場合に不眠症状が現れてしまったというところが、75mgから225mg群において、プラセボ群との統計学的な有意差が示されなかった理由の1つとして、申請者のほうで考察しておりますので、こういった推移図を出させていただいております。この中で225mgに増量した場合に、その部分でHAM-Dの各指標が少し悪化する傾向が認められていますということは書かせていただいております。

 こういった情報提供資材と、先ほどの添付文書の記載と併せて、この剤の特徴的なプロファイルというのを臨床現場で正しく理解して使っていただけるように、しっかりとした情報提供を申請者にはお願いしているところです。

○加藤委員 逆に言うと、例えばセロトニン症候群であるとか、セロトニンに関連した副作用、有害反応というのは低用量でも出やすいのだというような情報提供は要らないのでしょうか。確かに、高用量にした場合に非常に強くなるのはノルアドレナリン関連の副作用であるということは実際にあるでしょうし、実際に用量が高いわけですので起こりやすいでしょうけれども、セロトニンに関しては低用量のときでもそういうことが起こりやすいという、spectrumが変わるのだということは情報としては要らないのかと感じられたのですが。

○機構 御指摘ありがとうございます。低用量でも高用量でも、セロトニンの受容体に関連する作用というものは一定程度認められるところですので、低用量だからこそ特に多いという状況にはなっておりません。そういうもののプロファイルとして、低用量から出てくるというところは加藤先生のおっしゃるとおりなのですが、低用量のみで注意すべき事項というわけではありませんので、この剤を使っていただく際には、低用量から高用量までセロトニン症候群は認められるという形で、そこは現場に情報提供はさせていただくとしております。

○松井部会長 ほかにございますか。

○松木部会長代理 多分、抗うつ薬の開発の難しさということを表していると思うのですが、この薬に限らない全般的なことなのですが、効能・効果として、うつ病、うつ効果という括りが余りにも大きすぎるのではないかと思うのです。多分、いろいろなタイプの患者を含んでしまっているのだと思います。

 それから、同じ患者でも病気の進行度によって、かなり変わってきているのではないかと思うのです。ですから、今回効かなかった患者、効いた患者、ノンレスポンダーとレスポンダーを分けていくという考え方で、実際に現場で長期投与をしないと効くかどうか分からないわけですね。ですから、かなり無駄な投薬があるわけなので、あらかじめ効きそうな患者、そうでない患者をコンパニオン診断薬などでそれを分けて有効な患者にだけ投与していくというなら、トータルで医療費も減らすことができるし、患者の負担も減らすことができます。トータルで売れなくなってしまうかもしれないので、製薬会社はやりたがらないと思うのですが。そういう方向で、開発の早い段階からそういう指導をしてやっていかないと、抗うつ作用という大きな括りだけで従来の開発方法を踏襲してもブロックバスター等は全然出てこないと思います。ですから、いきなりテーラーメードのような感覚でいくとか、そういうことをしたほうがいいのかと。

 今回の薬も結局既存の薬と比べてそれほど強くはない、こういうものをたくさんそろえて、その中から臨床現場で判断していくというのは非常に大変なことだと思うので、そういうようなことを機構とか厚生労働省に考えていただければと思います。この薬に関してということではなくて、全般的なことだと思いますが。

○松井部会長 重要な点だと思います。ほかにございますか。なければ議決に入ろうと思います。

 金子委員、杉委員、武田委員、野田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮ください。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。異議がないと認めますので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。別室で御待機されている平安先生にご帰室いただきます。ありがとうございます。

 議題7に移ります。本議題には中島参考人においで願っております。本議題についての発言をこの後にお願いしますので、よろしくお願いいたします。議題7について、機構から御説明をお願いいたします。

○機構 議題7、資料No.7医薬品コパキソン皮下注20mgシリンジの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤の有効成分である、グラチラマー酢酸塩は、L-グルタミン酸、L-アラニン、L-チロシン、L-リシンが一定の比率で重合した種々の長さの合成ポリペプチド酢酸塩の混合物であり、イスラエルのワイズマン研究所によって創製されました。海外では1980年から臨床試験が開始され、多発性硬化症(以下、MS)に対する治療薬として、201410月までに米国、欧州を含む59の国又は地域で承認されております。

 本邦では、□□月からテバファーマスーティカル株式会社によって、臨床試験が開始されましたが、被験者の組入れが難渋したことから、□□月末までの登録症例をもって、臨床試験への患者登録が打ち切られました。その後、2013年にテバファーマスーティカル株式会社から申請者である武田薬品工業株式会社に□□□□□□□□□□、今般、申請者より製造販売承認申請が行われました。なお、本剤は2009年3月に希少疾病用医薬品に指定されているほか、2010年5月には、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、医療上の必要性が高いと評価され、開発要請が行われています。本申請の専門委員としては、資料No.14に記載されています9名の委員を指名しております。

 審査内容について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。まず有効性について、審査報告書38ページの表14を御覧ください。国内第II相試験は、目標症例数50例のMS患者を対象として計画されました。試験の早期中止までに登録された17例の患者について、主要評価項目であるMRI検査におけるT1ガドリニウム増強病巣総数の投与前から投与後の変化率は65.66%であり、投与前からの減少が認められました。

 また、審査報告書51ページの表25ですが、国内第II相試験(MS-GA-402試験)における年間再発率の変化量は、海外で実施されたプラセボ対照比較試験(01-9001/9001E試験と9003試験)と比べて遜色のないものでした。

 以上の結果から、国内第II相試験は、少数例の登録をもって早期中止されており、当該試験成績に基づき日本人MS患者における有効性について議論することは困難ですが、海外第III相試験では、本剤のMSに対する有効性が確認されており、現時点までに得られたデータから、日本人MS患者と外国人MS患者で有効性が大きく異なる可能性は示唆されていないことから、日本人MS患者においても本剤の有効性は期待できると判断しております。なお、日本人MS患者における有効性を速やかに確認し、当該情報を医療現場に提供することは必須だと考えられることから、審査報告書73ページ、表41を御覧ください。こちらの表にお示していますとおり、本剤が投与された全症例を対象として2年間の観察を行い、年間再発回数等を確認する全例調査を課すとともに、中間小計を取りまとめて公表することとしております。また、審査報告書74ページ、上から4行目のとおり、承認のあった日後、4年までのデータを医薬品リスク管理計画に基づいて取りまとめ、その結果を3か月以内に規制当局に提供するよう、承認条件を付す予定です。

 次に、安全性について、審査報告書55ページ、表28をご覧ください。本剤投与時には、血管拡張、胸痛、呼吸困難、動悸、頻脈等の症状を特徴とする、注射直後反応が認められますが、日本人MS患者において発現割合が高くなる傾向は示唆されませんでした。注射直後反応はほとんどが軽度、又は中等度の事象であり、一過性で自然消失するとされていますが、過敏性反応と類似した症状が現れることがあるため、添付文書において鑑別の必要性について注意喚起を行うとともに、詳細な情報を情報提供資材に記載し、情報提供を行うことが適切と判断しています。

 以上の審査を踏まえ、製造販売後の全投与症例を対象とした使用成績調査の実施と中間報告の規制当局への提出を承認条件として付した上で、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は再発寛解型多発性硬化症における再発頻度の軽減を予定する効能・効果として、希少疾病用医薬品に指定されましたが、多発性硬化症の再発予防を効能・効果とした場合でも、希少疾病用医薬品への該当性を有すると考えることから、再審査期間は10年、原体及び製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。

○松井部会長 引き続きまして、中島参考人、よろしくお願いいたします。

○中島参考人 私は国立病院機構新潟病院副院長の中島孝と申します。30年以上、多発性硬化症を含む難病医療に携わってきました。また難病医療研究を行ってきましたので、本剤の多発性硬化症治療上の必要性と位置付けについて参考となる意見を述べたいと思います。

 多発性硬化症治療薬として本剤は世界で初めて承認された薬剤です。したがって海外では長い使用実績があり、海外の標準的な治療アルゴリズムでは、我が国で既に認可されているインターフェロンβ製剤には2剤、1aと1bがありますが、これと並んで第一選択薬に位置付けられています。本剤は1日1回投与と、注射頻度の多い薬剤ですが、インターフェロンβ製剤と比較して安全性プロファイルが良いため、日本でも臨床上必要なお薬と考えています。なぜなら、既存のインターフェロンβ製剤には、注射後のインフルエンザ様症状、うつ症状といった特徴的な副作用がありまして、特に若年の患者など、仕事をしている患者さんには大変つらい副作用で、投与中止に至るケースが少なくないこと、及びインターフェロンβ製剤には、中和抗体が発現する問題があり、この2つの理由で使用ができない患者さんが一定数存在しているからです。現在我が国ではインターフェロンβ製剤が投与継続できなくなった患者には、第二選択薬とされている、フィンゴリモドやナタリズマブを投与することになりますが、それらは日和見感染や重篤な中枢神経系感染症である、進行性多巣性白質脳症、これはPMLと申しますが、このリスクがあることから、実は大変悩ましい問題となっています。インターフェロン製剤を投与できない患者さんが、相対的に危険な第二選択薬に移行するだけでは、治療選択肢上、大変困るというのが、本剤が治療選択肢として必要となる理由です。

 本剤が使えるようになると、インターフェロンβ製剤が使えない患者に使うということで、現状が改善されるのですが、それに加えて初発の患者さんではインターフェロンβ製剤を含む選択肢が増えます。本剤のほうが安全性上の問題は少ないと思われておりますが、本剤のほうが注射回数が多く、先ほどの治験結果の御説明からも、日本人患者さんでのエビデンスレベルは高いとは言い難い状況にありますので、患者さんごとに、携わる神経内科専門医が選択して、患者さんと話し合って、いずれかを使用することになるのではないかと思われます。以上です。

○松井部会長 ありがとうございます。委員の皆さんから、御質疑をお願いいたします。

○松木部会長代理 臨床の現場で重要な選択肢が増えるのは非常にいいことだと思うのですが、この作用機序が分かっているのになぜポリペプチドのいろいろな配列のものがカクテルみたいに入れるのか。何かもうちょっと特定の配列とか、特定な長さとかはないのですか。やはりこういうカクテルみたいな感じではないと効かないのですか。

○機構 松木先生の御指摘のとおり、機構の審査の中でもこの配列、この比率、あるいはこの長さというものがどれぐらいクリティカルなのかというようなところは審査をさせていただいています。例えば今回、4種類のアミノ酸を重合させていますけれども、そのうち、種類が欠けた種類を重合させたようなものを作っても、うまく多発性硬化症の予防効果は認められない。あるいは、これより□□ペプチド鎖になってくると、また有効性が減弱してしまうというようなところが認められており、この配列、この比率、この長さというところで何かうまく機能するポリペプチドになっていると。ただ、その中でどの部分がクリティカルなのかというようなところは海外、イスラエルで作っていただいて、これまで20年弱作っていただいているところですが、なかなか特定はされてきていない、かつ基礎研究からもそういった情報は上がってきていないというところです。

 品質管理の点からは、何がクリティカルなのか分かっていない状況での製造になってきますので、製造ロットごとにモデル動物に投与して、実際に薬理作用を確認をして出荷するというような、かなり厳密な管理もされていますので、ある程度一貫した有効性が恒常的に担保されているのではないかと考えております。

○松井部会長 中島先生、追加はございますか。

○中島参考人 特に追加はありません。

○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。

○内藤委員 メカニズムについて、もし何か分かっていたら教えて下さい。ここにはいろいろなメカニズムが書かれていますけれども、先ほどのどういう成分がどういう作用を持つというようなことは一対一の対応では全然説明できていないということなのですが、どういうメカニズムで多発性硬化症の症状を緩和するのかとか再発を予防するのかについて、どの程度分かっているのかということに関してはいかがでしょうか。

○機構 審査報告書の17ページの下側に「本剤の作用機序について」として記載しております。今回の多発性硬化症については、自己免疫疾患でして、ミエリンに反応するT細胞が身体の中でできてしまって、それによって軸索が損傷されるというような病態を持っています。このお薬を投与していただいた場合に、次の18ページにいきますが、皮下投与されますと本薬が抗原提示細胞の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のクラスII分子に、他の抗原と競合して結合するとします。その中で抗原としてこのお薬の断片が提示されることで、ほかの抗原で特異的なT細胞の活性化を阻害する作用があると考えられております。

 もう1つ、このMHCクラスII分子上に抗原として提示されることによって、本薬に反応するT細胞を末梢のほうに誘導してきます。本薬の組成というものがミエリンの組成に類似するようなものを持っていまして、それでもともとミエリンを攻撃していたT細胞を末梢のほうに誘導してくることができるのではないかというように考えられています。それによって中枢のミエリンに対する抗炎症作用を示すのではないかと考えられています。この2点が一応、本薬の主な作用機序として考えられているところになっています。ただ、先ほどお話ししたとおり、抗原提示細胞にどういった配列が結合することによってそれがクリティカルになっているのかというところまでは、今の時点では判明していません。

○内藤委員 先ほどロットごとに活性を確認した上でとおっしゃっていましたけれども、実際にロット間の差というのはどの程度認められているのですか。

○機構 審査報告書の9、10ページの部分に、ロット間のばらつきについてプロットした図を載せています。この9ページの図が分子量分布であって、ある程度広い幅でもって分布しています。先ほどお話ししたとおり長さによって有効性が異なる傾向はもう確認されていますので、この中で、こういった製造のばらつきがあります。

 それからアミノ酸配列について、10ページに、こちらも散布図を書いていますが、一定の範囲内である程度、製造ロット間で変動はしてきます。逆にこれぐらいの幅で現状製造できているということは分かっていますし、この中で傾向を大きく外れてきたようなものが製造された場合には、なぜそういったものが製造されたのか、そしてそれを出荷していいのかというようなところは、製造業者のほうでしっかり判断をして、流通管理をするというようなことが説明されています。そういった観点で、通常の分布の範囲をしっかり確認しながら、それから外れないようにという管理と、あとは製造方法そのものを基本的には変更しない。変更した場合には、再度、特性解析という□□□□□とか、□□□□□□□□□□□とかそのようなものをしっかり確認いただいて、ものの特性が変化をしていないというようなことを確認いただくということでもって、ある一定の範囲のものを恒常的に作れると。

 どれぐらいが越えるとクリティカルかというところは、今の時点では明確に判明はしていませんので、これまでの通常製造の範囲内で作れているというようなところをもって管理をさせるというようなところは、今回、審査の中でさせていただいたことになります。

○内藤委員 活性のロット差というのはいかがでしょうか。

○機構 基本的には、□□試験をやっていまして、その□□試験の判定基準はかなり厳しい基準になっています。この□□試験というのは□□□□□□というような□□□□□□□□□□□□になるのですが、そちらで□□しなかった□□という形でとってきますので、ある程度明確に分かるような判定基準でもって、この薬剤が□□□□□がどれぐらいいたというようなところに判定基準をもってきます。どれぐらいバラついたのかというところについても、審査の中で確認はしていますけれども、□□、お薬を□□□□□□がいるのですが□□というようなところの変動は見られても、それ以上大きくずれてくるようなバッチというものは基本的には認められておりません。たまにそういうものが出てきた場合には、それは当然規格に適合しない形になりますので、そういったものは出荷されない形になっています。

○内藤委員 活性の上ではそれほどばらつくものではないと、そういう理解でよろしいですか。

○機構 はい、そのように理解しております。

○松井部会長 中島先生、何か付け加えることはありますか。

○中島参考人 追加すべきものはありません。

○奥田委員 今、品質の話が出ていたので、2点お伺いしたいのですが。1点は、□□試験をされて出荷をするので、そこのところで最後の防波堤になっているとは思うのですが、通常そういう□□試験は原薬のところで試験を設定しそうな気もするのですが、これは製剤のところで設定をしているのですね。その辺についてどういう理由でそのようにされたのかを聞かれたことがあるのかどうかを1点。

 もう1つは、12ページの1段落の最後の所で、「今後は品質の一貫性を十分に担保できるよう、品質管理体制を改善すべきと考える」と、これは結構きついものの言い方をしているなと思うのですが、具体的に何か指導をされているのですか。例えば現地に、テバのほうで作っている、そのテバに対する指摘というように考えていいのですか。具体的に何か指導をされたのでしょうか。

○機構 まず1点目の製剤のほうで活性の試験をやっているというところですが、かつて海外で承認された、1996年になりますが、その時点では原薬のほうで活性の試験を実施しておりました。ただ、原薬の製造サイトを増やす等の作業がその後行われまして、その過程で製剤製造所で活性を評価したほうが、製剤製造の部分でまた失活をする可能性等もありますので、そういった観点で製剤のほうで評価をするということで、テバのほうで考えられて移されたというように回答をいただいています。

 それから、今回こういった試験成績等、確認をさせていただいていますけれども、かなりばらつきがあり、なかなか一定にコントロールしていくのが難しい製剤になっていますので、テバのほうでもしっかり管理をいただくというところですが、審査の過程で、武田薬品工業からも、もう少しこうやったらいいのではないかというような知恵も出していただきながら、最終的にどういった管理戦略を採用するのがいいのかと、かなり詳細に議論させていただいています。最終的にテバのほうでもしっかり変更管理や逸脱管理をやっていただくことにはなるのですが、武田薬品のほうでも毎年しっかり確認をしましょうと、品質の取決めの観点等もしっかり詰めていただいて、そういったことをやるようにという指導をさせていただいております。

○奥田委員 分かりました。そうするとこの最後の「品質管理体制を改善すべきと考える」というのは、武田薬品に向けてのメッセージでもあるということですね。

○機構 御指摘のとおりです。

○奥田委員 分かりました。

○松井部会長 ほかに御質疑はないでしょうか。それではないようですので、議決に入ります。なお、杉委員、武田委員、野田委員、平安委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 中島参考人、どうもありがとうございました。                            

○松井部会長 続きまして、議題8について機構から御説明をお願いします。

○機構 議題8、資料No.8-1と資料No.8-2ピートルチュアブル錠250mgほかの製造販売承認の可否等について機構より御説明いたします。本剤は有効成分をスクロオキシ水酸化鉄とする薬剤です。慢性腎不全患者の高リン血症に対する治療薬として開発をされています。消化管において、本剤と食物由来のリン酸イオンが結合して、消化管からのリン吸収を抑制すると考えられております。本剤は、本年5月現在、欧米等の35か国において承認がされています。本品目の専門協議では、本日の配布資料No.14に示す専門委員が指名されております。

 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。血液透析患者における有効性に関して、報告書の32ページの表18になります。第III相試験の主要評価項目である、最終評価時の血清リン濃度において、本剤群のセベラマー塩酸塩群に対する非劣性が検証されており、血液透析患者における本剤の有効性は示されたと機構は考えました。

 次に腹膜透析患者における有効性に関して、報告書42ページの図4に示されていますように、本剤の投与により、血清リン濃度が低下し、管理目標値に維持される傾向が認められたこと等から、腹膜透析患者における本剤の有効性は示唆されたと機構は考えました。

 続いて安全性に関して、報告書33ページ表19ですが、血液透析患者を対象とした第III相試験において、本剤群においては下痢の発現が比較的多く認められたところです。

 続いて、いろいろ飛んで恐縮ですけれども、36ページの表22、腹膜透析患者を対象とした一般臨床試験においても、本剤群において、下痢の発現が多く認められたところです。この下痢の発現ですが、いずれも軽度又は中等度で、必要に応じて減量や休薬等を行うことにより、安全性は許容可能と考えました。また本剤は鉄の含有製剤でして、臨床試験において、血清フェリチン値やヘモグロビン濃度が上昇する傾向が認められているものの、これまで得られているデータでは、臨床的に問題となる鉄の過剰症は認められませんでした。以上より、本剤の安全性につきまして、許容可能と考えますけれども、下痢等の胃腸障害、それから鉄の蓄積が及ぼす影響については、製造販売後調査において引き続き情報収集をする必要があると考えております。

 以上、機構での審査の結果、透析中の慢性腎臓病患者に対する本剤の有効性は期待でき、また安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、承認して差し支えないと判断をいたしまして、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。

 なお、本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも毒薬及び劇薬に該当はせず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断をいたしました。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○松井部会長 委員の先生から、御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。特にありませんか。

○松木部会長代理 1点だけ。鉄の上昇がちょっと懸念されるということですが、これは薬そのものがどのぐらい吸収されるかというデータはあるのですか。ラットのアイソトープを使ったようなデータが示されていたと思うのですが、ヒトでこの原薬が血中にどのくらい出てくるかとかそのようなデータはあるのですか。あるいはヘモジデローシスのようなことも考えられますか。

○機構 、資料の1.8「添付文書()」の6ページ、「薬物動態」項の「吸収(外国人データ)」をご覧下さい。鉄(標識体)の取り込みは健康成人では0.43%、保存期の慢性腎臓病患者では0.06%、血液透析患者は0.02%となっており、吸収が少ないデータとなっています。

○松井部会長 よろしいですか。

○松木部会長代理 はい。

○武田委員 今の添付文書の4ページ、重要な基本的注意の所で、一番下から3行目、「本剤は消化管内で作用する薬剤であるが、本剤の成分である鉄が一部吸収されるため、血清フェリチン等を定期的に測定し」と書いてありますが、病名なしで、いきなりフェリチンを定期的に測定すると、恐らく保険の査定になると思うのですが、この辺はどう解釈したらよろしいでしょうか。

○機構 御指摘ありがとうございます。試験の中でやはり若干フェリチンが上がっているようなこともありますので、私どもとしては安全に使っていただく観点から、必要だと思っています。この点について関係の部署とも調整をさせていただきたいと思います。

○松井部会長 ほかにありますか。特にありませんが、議決に入ってよろしいですか。

 それでは、議決に入ります。なお、杉委員、武田委員、野田委員、平安委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。御異議がないようですので承認を可として薬事分科会に御報告いたします。

 それでは、議題9に移ります。医薬品機構から概要の説明をお願いします。

○機構 議題9、資料No.9、医薬品ザガーロカプセル0.1mgほかの製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。本剤の有効成分であるデュタステリドは、テストステロンをジヒドロテストステロンへ変換する1型及び2型5α還元酵素の阻害薬です。今般、男性における男性型脱毛症患者を対象とした国際共同第II/III相試験により、当該患者に対する本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、医薬品製造販売承認申請がなされました。

 なお、デュタステリドを有効成分とするアボルブカプセル0.5mgが、本邦では2009年7月に前立腺肥大症を効能・効果として承認されております。2015年6月時点において、デュタステリドを有効成分とする製剤は、海外100か国以上で承認されておりますが、男性における男性型脱毛症の効能・効果については、韓国のみで承認されております。

 本品目の専門協議では、本日の配布資料No.14に示します専門委員を指名しております。以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。

 有効性に関しては、報告書15ページ、表10を御覧ください。国際共同第II/III相試験の主要評価項目である投与開始24週後における頭頂部の直径2.54cm円内の毛髪数のベースラインからの変化量について、本剤0.1mg及び0.5mg群では、プラセボ群に対する優越性及びフィナステリド1mg群に対する非劣性が検証されました。続いて、報告書15ページ、表11を御覧ください。日本人部分集団においても、全体集団と一貫した結果が認められました。以上より、機構は本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 安全性に関しては、報告書16ページ、表12を御覧ください。国際共同第II/III相試験における有害事象の発現状況を示しております。プラセボ群及びフィナステリド1mg群と比較して、本剤0.1mg及び0.5mg群で、臨床上大きな問題となる有害事象及び発現傾向は認められませんでした。

 続いて、報告書22ページ、表15を御覧ください。日本人部分集団において、全体集団と比較して、特異な事象及び発現傾向は認められませんでした。以上より、機構は本剤の安全性は許容可能と判断いたしました。ただし、本剤の比較的発現頻度の高い副作用である性機能関連事象、及び本剤がアンドロゲンを抑制することで発現が想定される乳房障害等の発現リスクについては、患者向けの資材等を用いて十分に情報提供するとともに、製造販売後調査等で情報収集することが必要と考えました。

 以上、機構での審査の結果、男性における男性型脱毛症患者に対する本剤の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本剤を承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。なお、本申請は、既承認の効能・効果とは異質の効能・効果を追加する新効能・新用量医薬品としての申請であることから、本申請に係る再審査期間は4年と設定することが適切と判断いたしました。また、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断いたしました。薬事分科会では、報告を予定しております。機構からの説明は以上になります。御審議、どうぞよろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から、御質疑をお願いいたします。

○金子委員 19ページの表14を見ますと、日本人とアジア人はやはり他の人種と比べて有効率が悪いような気がいたしました。また、有効性が日本の試験ですと、副次目的という御説明でしたが、これは民族差といったことなのですか。また、副作用についても、勃起不全などが日本人が、より顕著に、いわゆる有効性が低くて副作用が日本人だと高いという薬剤のようなのですが、そういう民族差があるのかを教えてください。

○松井部会長 いかがでしょうか。

○機構 まず、本薬の薬物動態について、審査報告書8ページ表5に記載しております。本薬は日本人で血中濃度が高い傾向が認められましたが、日本人の平均年齢が高く、また平均体重も軽かったことが原因と推定されております。PPK解析の結果、血中濃度については、人種差はないものと推察されております。

 続いて有効性についてですが、審査報告書19ページから議論しております。19ページの表14に記載しているとおり、日本人部分集団では相対的に毛髪量の変化が小さい傾向が認められましたが、ここのデータのばらつき、患者間の脱毛の進行度合い等の複数の要因の他に、民族間の毛包及び毛髪密度の差異が影響しているのではないかと考察されております。その考察については、審査報告書20ページに記載しております。

○松井部会長 20ページのどこですか。

○機構 20ページの1段落目に、その旨を記載させていただいております。日本人部分集団において、確かに相対的にヒスパニック等の部分集団と比べて有効性の大きさは小さい傾向が認められましたが、毛髪数の変化量について全体集団と日本人部分集団の間で問題となるような大きな差異はみられなかったことから、日本人での有効性は期待できるものと判断しております。

○松井部会長 よろしいでしょうか。

○金子委員 はい。

○武田委員 これは、もともと前立腺肥大症でかなり使われている薬で、使用上一番問題なのは前立腺がんですね。添付文書を見ますと、使用上の注意の2番目の重要な基本的注意の所に、かなりPSAを測れとかいろいろ書いてあるのですね。ところが、臨床試験では全くこの辺りは調べられていないのです。しかも、18歳から65歳ということは、40歳を超えると前立腺がんの発生率は上がりますので、その辺りのデータが全くないというのは、私はちょっと信じられないのですが。

○機構 まず、本薬の発がん性について、非臨床で検討がされております。遺伝毒性試験成績から遺伝毒性は陰性であることが示されており、またマウス及びラットのがん原性試験成績からは前立腺がんの発現増加等は認められておりません。

 本薬の0.5mgについては、前立腺肥大治療薬のアボルブカプセルとして既に市販されておりますが、市販後の安全性情報において前立腺がんの発現について特段大きな問題となるようなことは確認されておりません。

○武田委員 この薬は、もう10年近く使われており、前立腺がんの予防試験も全世界で行われ、いろいろなデータが出ていまして、まだ確定していないのですが、悪性度の低い前立腺がんは減らすけれども、悪性度の高い前立腺がんを増やすらしいという危惧がありますね。この試験のときに、例えば30歳代後半から40歳代以上の人が入った場合に、投与前にPSAを測ってそのがんの疑いがないことを確認しているかという点と、それからその経過中に長期試験の場合、PSAが一旦下がってまた上がった場合は、がんの疑いが非常に強くなりますから、そういうこともチェックされていないというのは、ちょっと信じられないのですが。

○機構 国内臨床試験においては、PSA値が2.0ng/L超である患者やPSA値に異常がある患者は除外基準とされており、がんの疑いがあるような患者は試験に入らないように適切に設定されておりました。

○武田委員 たとえ2.0以下でも、投与後にPSAは最高値の半分以下に下がって、それを維持している場合にはいいのですが、半年以上たってからまた増加してくる場合は、がんの疑いが出てくるということは、これは常識的なので、その辺りのデータが全く示されていないのが、ちょっと引っ掛かります。

○機構 PSA値は、組入れのときにも患者を組み入れるかどうかの判断に使っていますが、試験期間中も定期的に測っていました。確かに臨床試験の実施期間は最大でも1年間ということで、先生がおっしゃるように長期といっても高々1年ということですので、十分にPSA値がその後どうなったかというのは残念ながら追えていないですが、市販後で長期投与したときに、先生がおっしゃるような懸念がないかというのは、しっかり確認させていただきたいと考えております。

○松井部会長 よろしいですか。確認させていただきたいと。

○武田委員 確かに、添付文書にしっかり書いてあるので、恐らく大丈夫だとは思うのですが、既に既存薬としてのフィナステリド、プロペシアを投与されている患者で、PSAを全く測っていなくて、家族に前立腺がんがいて自分のPSAを測ったら結構高いという方が時々来るのですね。ですから、この辺りをかなりしっかりアナウンスしていただかないと、見落とす可能性がたくさん出てきますので、その辺りはよろしくお願いいたします。

○松井部会長 先生がおっしゃるのは、添付文書以外にも指導のための文書に明記されるべきだという御意見ですね。

○武田委員 恐らく、これは保険適用薬ではないでしょうから、自費医薬品になるわけですね。そうしますと、普通のクリニックではない所で扱ったりする。男性脱毛症専用クリニックとか、そういう所だと、恐らく前立腺がんの話はほとんどしないで投与してしまうのですね。そうすると、実際にがんの方がそこで治療されてしまって、PSAは下がってしまって分からなくなってしまうという方が出てくる可能性が非常に高いですし、実際ありますので、そういう注意喚起はしっかりやっていただきたいと思います。

○松井部会長 委員の皆さん、今の点についてはよろしいですね。では、1つよろしくお願いいたします。

○野田委員 例えば、臨床検査データ異常などの記載がないのですが、そういったものはなかったという理解でよろしいのでしょうか。

○機構 副作用については、一番見やすいのが、資料の1.8の添付文書の所、ここがまとまっているかと思いますので、添付文書を御覧ください。2枚目の4.副作用の欄に、今回実施された国際共同治験の副作用のまとめが書いてあります。先生から御指摘がありました、臨床検査値異常を含む副作用という所でまとめてあるのですが、主に検査値異常があったのは総症例120例中20例、16.7%でした。

○機構 試験の中では特に大きな臨床検査値異常はありませんでした。ただ、先ほど御指摘があったように、既に前立腺肥大症の治療薬として使われている中で、検査値異常としては肝機能異常というのが出ており、表のその他の副作用において、同じ成分で出ているものとして情報提供をさせていただいております。

○野田委員 そうすると、幾つかの臨床検査については、その情報が取られているという理解でよろしいのですね。

○機構 御指摘のとおり、臨床試験では臨床検査値を測っています。高い頻度と問題になる事象がなかったというところで審査報告書には書いておりませんが、情報は採られています。

○野田委員 ありがとうございました。

○松井部会長 ほかにはありますか。

○松木部会長代理 多分、フィナステリドのときにも同じような議論があったと思うのですが、このような薬が必要かどうかというところですね。有効性は一応あるのですが、別にフサフサになるわけではないですし、過剰な期待を与えてしまうというところで、ちょっと問題かもしれません。ただ、ここに書いてあるように、表現が難しいですが、男性型脱毛症に対する風当たりが強すぎることが、日本においては結構諸外国に比べて強いような印象があるのですね。ですから、グローバル化を目指すというようなところもあるので、多分厚労省などが中心になって、特に女性に対してもう少し風当たりを弱めるとか、そういうことをやることのほうが。非常に僅かなところで本当に有意差があった程度で、何かちょっと過剰な期待を抱かせるのは、何か無駄な投薬をまた増やすような感じになるような気がします。むしろ、女性に対するエデュケーションをやったほうがいいのではないかという気がいたします。感想です。

○松井部会長 ほかにありますか。それでは、がんに関する注意書を適切な形で、説明文書で充実させるということです。以上で、質疑を打ち切ってよろしいでしょうか。それでは議決に入ります。なお、金子委員、杉委員、武田委員、野田委員、平安委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮ください。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。異議がないようですので、承認を可として、薬事分科会に報告いたします。

 それでは、議題10に移ってください。

○機構 議題10、資料No.10、医薬品マリゼブ錠の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤は、ジペプチジルペプチダーゼ-(以下、DPP-)の阻害薬であるオマリグリプチンを有効成分とする糖尿病治療薬です。DPP-4阻害薬として、9成分目になりますが、本年1月に御審議いただきましたザファテック錠に続き、2剤目の週1回投与製剤となります。海外の承認状況ですが、2015年6月時点において、海外において本剤は承認されておらず、□□□□□□となっております。本品目の専門協議では、資料No.14に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。

 有効性についてですが、審査報告書51ページ、表28を御覧ください。単独療法の国内第III相試験において、主要評価項目とされたベースラインから投与24週時までのHbA1c変化量について、プラセボ群に対する本剤25mg群の優越性が検証されました。また、連日投与のDPP-4阻害薬であるシタグリプチン50mg群に対する非劣性も示されております。また、52ページ、図1に示しましたように、本剤の単独療法において効果の持続性も示されております。併用療法について、審査報告書56ページ、図2に示しましたように、国内第III相併用療法長期投与試験において、効果の持続性が確認されております。

 安全性については、審査報告書61ページから70ページの安全性についての項を御覧ください。臨床試験における有害事象及び副作用の発現状況、並びに62ページから70ページに記載いたしました低血糖等の個別の事象について検討した結果、適切な注意喚起等がなされることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断しております。

 また、審査報告書70ページ、適正使用に係る方策についての項を御覧ください。本剤は、週1回投与であり、過量投与や服薬を忘れることの可能性が想定されます。本剤が誤って連日投与されることがないよう注意する必要があることから、添付文書において、週1回投与製剤であり、同一曜日に服用すること、飲み忘れた場合の対処方法等の適正使用に係る情報を記載するとともに、パッケージ付きPTPシートに服薬時期や服薬上の注意事項を直接表示するようにしております。

 以上のとおり、機構での審査の結果、2型糖尿病を効能・効果として本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であるため、再審査期間は8年が適当であると判断しております。なお、原体及び製剤はいずれも毒薬、又は劇薬に該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。野田委員、いかがですか。

○野田委員 特にありません。

○松井部会長 ほかにありませんか。

○内藤委員 週1回の投与で可能になったメカニズムについて、ちょっと説明していただけますか。

○機構 本薬の反復投与時の消失半減期というのが、約80時間程度と説明されており、比較的長い半減期を有するという点があります。また、同社が販売しております連日投与製剤であるシタグリプチンと比較いたしますと、より低い血中濃度でDPP-4阻害活性を発揮し、臨床的に意義のあるDPP-4阻害活性を維持しているというこの2点から、週1回投与が可能になっているということと理解しております。

○内藤委員 先ほど、過剰投与の問題を少しコメントされておりましたが、薬を飲んだ直後のピークレベルは、過剰投与に相当するようなレベルにはいかないのですか。

○機構 審査報告書の72ページ表40に示しますように、投与開始後の有害事象の発現状況を確認させていただいており、本剤群では投与1日目の発現割合が高くなっていますが、プラセボ群でも同様の傾向が認められておりますので、プラセボ群と本薬群の間に投与後の経過日数別の有害事象の発現状況に違いはないということを確認しております。

○松井部会長 よろしいですか。ほかにはありますか。それでは、議決に入ります。杉委員、武田委員、野田委員、平安委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきます。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは、最後の審議議題に移ります。議題11について、機構から概要を説明ください。

○機構 議題11、資料No.12、医薬品エクメット配合錠LDほかの製造販売承認の可否等について、機構より説明いたします。本配合剤は、DPP-4阻害薬でありますビルダグリプチンとビグアナイド系薬剤でありますメトホルミン塩酸塩を有効成分とする糖尿病治療薬の配合剤です。2型糖尿病の治療においては、1剤で効果が不十分な場合、作用機序が異なる薬剤を併用することは一般的であり、ビルダグリプチンについてはメトホルミン塩酸塩で効果不十分な場合の併用療法が既に承認されております。なお、本配合剤については、2015年6月現在、120の国と地域で承認されております。本品目の専門協議では、資料No.12に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。

 以下、本配合剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性については、審査報告書15ページの表2を御覧ください。メトホルミン塩酸塩で効果不十分な日本人2型糖尿病患者を対象に、ビルダグリプチンを併用投与するLMF1301試験が実施されており、主要評価項目であるベースラインから最終評価時までのHbA1c変化量について、メトホルミン塩酸塩単独投与に対するビルダグリプチン併用投与の優越性が示されております。

 また、ビルダグリプチンで効果不十分な日本人2型糖尿病患者を対象に、本配合剤を投与するLMF1303試験が実施されており、こちらは審査報告書18ページの表6に示しますように、主要評価項目であるベースラインから最終評価時までのHbA1c変化量について、ビルダグリプチン単独投与に対する本配合剤投与の優越性が示されております。

 さらに、審査報告書20ページの図1に示しますように、ビルダグリプチンの「2型糖尿病」の効能・効果に係る承認事項一部変更承認申請時に提出されました国内併用療法長期投与試験において、長期投与時における効果の持続性が確認されております。

 安全性については、審査報告25ページから28ページの()安全性についての項に示しますように、国内外の臨床試験における有害事象及び副作用の発現状況、並びにビルダグリプチンにおける国内の製造販売後調査や国内外の市販後の安全性情報等から、適切な注意喚起等がなされることを前提とすれば、本配合剤の安全性は許容可能と判断しております。

 また、医療用配合剤の承認要件への該当性については、審査報告書の22ページから24ページを御覧ください。1)配合意義の科学的合理性の項に記載のとおり、ビルダグリプチンとメトホルミン塩酸塩の併用療法に一定の臨床的有用性が認められ、当該併用療法と生物学的に同等と判断される本配合剤の配合意義の科学的合理性は示されており、患者の利便性についても2)に記載のとおり、服薬アドヒアランス等の向上が期待できるものと判断いたしております。

 以上のとおり、機構での審査の結果、本配合剤を承認して差し支えないという結論に達しており、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。本配合剤の再審査期間は4年、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では、報告を予定しております。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から、御質疑をお願いいたします。野田先生、何かありますか。

○野田委員 特にありません。

○松井部会長 この配合剤のことですから、松木先生の意見を聞かないわけにはいかないと思います。

○松木部会長代理 やはり、作用機序が異なるものを2つ合わせれば、片方よりは強く出るというのは当たり前のことなのですが、併用療法と配合剤で、23ページの下から6行目、「治療効果とアドヒアランスを併用療法と配合剤との間で比較したメタアナリシスでは、併用療法の患者よりも配合剤治療の患者でHbA1cは低く」ということが書いてあるのですが、これは一応機構としては認めたということですか。

○機構 こちらは申請者の説明であり、類薬の状況も踏まえたアドヒアランスです。本配合剤におけるアドヒアランスについては、臨床試験では検討されておりませんが、本配合剤のアドヒアランスを製造販売後調査で調べ、情報収集をしていきたいと考えております。

○松木部会長代理 結局、今までの議論と同じことになってしまうわけですね。ですから、1つを認めたら次も認めざるを得ないということで、また結局どんどんいろいろな組み合わせで出てくるかもしれないというところですね。ですから、配合剤で幾つかメリットがあるとしたら、薬物動態はそろえることができるという、製剤の工夫などで一つ一つで飲むよりはピークをそろえられるとか、血中濃度を持続するというようなメリットと、あとは最近問題になっている飲み忘れ、残薬が減るという可能性はあると思うのです。ただ残薬の場合、ものすごいたくさんの薬の数ですから、そのうちの2つが1つになっただけでトータルとしてはそんなには数は変わらないと思うので、どのぐらい効果があるかは分からないのですが。やはり配合剤が出てきて「はい、どうぞ」というのは何かここでも何回も議論されているところですが、どこかで何かしてほしいと思います。

○松井部会長 ほかにありますか。それでは、議決に入ります。武田委員と平安委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきます。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 報告事項に移ります。事務局からお願いいたします。

○事務局 資料No.11-1から資料No.11-4を御覧ください。報告事項議題1、医療用医薬品の再審査結果について報告いたします。資料No.11-1については、販売名はプラビックス錠、コンプラビン配合錠の再審査報告書。それから、資料No.11-2は、販売名ファブラザイム点滴静注用、資料No.11-3は、販売名ビ・シフロール錠、資料No.11-4は、販売名セトロタイド注射用の再審査報告書となっております。これら4品目については、製造販売後の使用成績調査等に基づいて再審査申請が行われ、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はないと判定されております。以上です。

○松井部会長 何か御質疑がありましたら、どうぞ。よろしいですか。それでは、今の報告事項については御確認いただいたものといたします。本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。

○事務局 次回の部会について報告いたします。次回の部会については、1030()、午後5時から開催とさせていただく予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。

○松井部会長 それでは、本日はこれにて終了といたします。長い間、御苦労さまでした。ありがとうございました。


(了)

備  考
   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 井本(内線2746)

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