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2015年9月25日 「第1回 産業医制度の在り方に関する検討会」議事録

○日時

平成27年9月25日(金)10:00~12:00


○場所

三田共用会議所 講堂


○議題

(1)産業医制度について
(2)その他

○議事

 

○中村室長補佐 本日は大変お忙しい中、また足元の非常にお悪い中、大勢お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。

 定刻になりましたので、ただいまより第1回「産業医制度の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 カメラ撮影は、ここまででお願いします。

(報道関係者退室)

○中村室長補佐 本日は第1回の検討会ですので、事務局のほうから委員の御紹介をさせていただきたいと思います。

 相澤委員でございます。

 石田委員でございます。

 圓藤委員でございます。

 大神委員でございます。

 川上委員でございます。

 甲田委員でございます。

 小林委員、本日代理として河上様にお越しいただいております。

 小松埼委員でございます。

 清宮委員でございます。

 高松委員でございます。

 竹田委員でございます。

 土肥委員でございます。

 浜田委員でございます。

 増田委員でございます。

 三柴委員でございます。

 道永委員でございます。

 森委員でございます。

 本日、井伊委員、輪島委員、中澤委員、天木委員が所用のため御欠席となっております。

 続きまして、事務局側のメンバーも紹介したいと思います。

 岡崎労働基準局長でございます。

 土屋安全衛生部長でございます。

 泉労働衛生課長でございます。

 井上産業保健支援室長でございます。

 前田主任中央じん肺診査医でございます。

 私、中村と申します。よろしくお願いします。

 では、開会に当たりまして、初めに、岡崎局長から御挨拶を申し上げたいと思います。

○岡崎労働基準局長 労働基準局長の岡崎でございます。

 産業医制度の在り方に関する検討会を開催することにいたしましたところ、委員の皆様方には、それぞれ御多忙の中、委員をお引き受けいただきまして、ありがとうございます。

 産業医につきましては、昭和47年、労働安全衛生法の成立に伴いまして、新たに制度として発足いたしました。それ以降、企業におけます産業保健の関係で、産業医の皆様方にはいろいろと御尽力をいただいてきているということでございます。そういう中で、従来、当初はどちらかというと有害業務への対応というのが中心だった時代もありましたけれども、だんだんそういう対応がなされていく中で、一方では職域におけます健康確保ということが重要になってきております。また昨今では、労働安全衛生法の改正に伴いまして、ストレスチェック制度も導入されたわけでありますが、働いている方々のメンタル面での対応というのも非常に重要な課題になってきております。メンタル面だけではなくて全体の健康政策を進めていく中で、職域で何をしていくかということも重要な課題ではないかと思っております。

 そういう中で、四十数年たつわけでありますが、産業医制度、大きな見直しをこれまでしてこなかったという状況もございますが、ここで一度、関係の皆様方にお集まりいただきまして、より時代に即した産業医あるいは産業保健制度のあり方というのを検討する必要があるのではないか、このように思った次第でございます。

 産業保健につきましても、いろいろな方々、企業の皆さん、働いている方々、そして産業保健にかかわるさまざまな専門職の方々がおられるわけであります。そういう中で、やや人数が多くなったのは、そういう産業保健制度、産業医にかかわる皆様方が非常に多いということの証左ではないかと思いますし、それがある意味で産業医制度の重要性を物語っているのではないかと思っているところでございます。

 皆様方それぞれの立場からいろいろな御意見があると思います。忌憚のない御意見を出していただく中で、将来に向けて、より一層産業保健、労働者の健康に寄与するような制度にしていきたいと思っておりますので、ぜひ皆様方の御協力をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○中村室長補佐 なお、本日、局長は所用により途中退席させていただきますので、御了承いただければと思います。

 続きまして、座長の選出を行いたいと思います。事務局といたしましては、相澤委員に座長をお務めいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○中村室長補佐 ありがとうございます。

 では、相澤先生、どうぞよろしくお願いいたします。座長席のほうに、よろしくお願いします。

(相澤委員、座長席へ移動)

○中村室長補佐 それでは、以降の議事の進行につきましては、相澤先生にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

○相澤座長 相澤でございます。皆様方の御指名によりまして、議長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 ストレスチェック制度が12月から実施されますので、講演会等で話す機会が多いのでございますが、産業医の仕事が非常に過密になってきているという話を随分聞きます。これからもストレスチェックの施行により産業医の仕事はふえると思いますけれども、産業保健の中心であります産業医の仕事がこれからますますその内容が濃くなって、また、適正に行われるようなことが必要だと思います。産業保健支援室が中心に今回ストレスチェック制度をつくられたわけですので、その第2の矢として産業医制度を検討するということでございます。皆様方の活発な御意見をいただければ大変ありがたいと思います。

 私ごとでございますけれども、かなり高齢でございますので、何か事があるとこの会の進行が妨げられると思われますので、職務代行をつくっていただければと思います。森先生が学識経験者として参加されておりますので、森先生に職務代行をやっていただければと思います。よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○相澤座長 ありがとうございます。それでは事務局で手続きをお願いいたします。

 それでは、事務局から、資料の確認と本検討会の趣旨、あるいは今後の進め方について御説明をお願いいたします。

○中村室長補佐 本日はお手元に2種類の資料を配らせていただいておりまして、1つは「第1回産業医制度の在り方に関する検討会」ということで1枚つづりにしております。こちらに資料1~6をとじ込んでおりまして、一番最後に参考資料もあわせてとじ込んでおりますので、御確認いただいて、もし漏れとかがございましたら、事務局のほうに言っていただければと思います。

 それから、もう一枚、机上に配付させていただいております「第一回産業医制度の在り方に関する検討会への意見」ということで、日本看護協会から出されている意見書もお手元にお配りしておりますので、こちらもないということがありましたら、事務局のほうまで言っていただければと思います。よろしいでしょうか。

○相澤座長 資料はよろしいですか。何か御質問ございませんか。大丈夫ですね。

○中村室長補佐 続きまして、この検討会の進め方につきまして、資料1の開催要項で簡単に御説明させていただきます。

 「趣旨・目的」につきましては、先ほど岡崎のほうからもございましたように、今回のストレスチェック制度の導入に伴いまして、産業医の職務がふえている、負担がふえているのではないかという議論もある中で、改めて産業医の位置づけとか役割について検討しようというものでございます。

 要綱の2の「検討事項」のところに書いてございますけれども、この検討会では、「産業医の職務の範囲」「保健師等の医師以外の産業保健スタッフの役割」「小規模事業場における労働衛生管理体制の強化」「事業者と産業医の関係」「その他」の事項について検討を進めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

○相澤座長 いかがでしょうか。何か御質問ございませんか。

 それでは、議論に入ります前に、産業医制度のこれまでの経緯と現在の制度の概要につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。

○中村室長補佐 続きまして、お手元の1枚つづりにあります資料2という横長の資料に基づいて簡単に、これまでの産業医制度の移り変わりと、現在どういう制度になっているかということを御紹介したいと思います。

 資料2をごらんいただきますと、もともと産業医制度は、昭和13年にできました工場法の中で工場医ということで始まった制度でございまして、その後、労働基準法のほうに引き継がれまして、この当時はまだ産業医という位置づけにはなっておりませんでしたけれども、昭和47年にできました労働安全衛生法の中で初めて産業医ということで法律に規定されたということでございます。

 その後、昭和63年に、産業医の職務に健康診断の結果に基づく措置などが追加されるというような見直し、平成8年には、産業医に対して一定の要件を求める、それから、事業者に対する勧告権が付与される、また、50人未満の事業場に対しては、産業医等による健康管理の努力義務が規定されるといった見直しが行われております。

 その後、平成17年、27年と続きまして、長時間の面接指導制度の導入、今回のストレスチェック制度の導入ということで、この2つが産業医の職務として追加をされたという経緯をたどってきております。

 続きまして、めくっていただきますと、これは既に皆様御承知のことかと思いますけれども、現在の産業医制度がどのような形になっているかというものでございます。基本的に産業医は50人以上の選任ということになっておりますけれども、一定の有害業務がある場合は500人以上で専属の産業医を置くということが義務になっている、それ以外の一般の事業場においては、1,000人以上の規模のところで専属の産業医を置くということになっております。50人を切る規模でありますと、先ほど申し上げましたように努力義務ということで、医師または保健師による健康管理ということになっているということでございます。

 その下に産業医の職務として1から7まで挙げておりますけれども、健康診断に関する業務、作業環境の維持管理、作業管理、その他の健康管理等々の職務が現在の法令で規定をされているということになってございます。

 それに加えまして、その下にございますけれども、月1回の定期巡視というものが産業医の職務として規定をされているということになってございます。

 めくっていただきますと、こういった仕組みの中で、今、実際の選任状況はどのようになっているかということがこちらの資料になっております。全体の選任率ということで見ますと87%となっておりますけれども、5099人のところの選任率を見ていただきますと、ここが80%にとどまっているということでございまして、100人を超えるところはおおむね95%以上という状況になっているということでございます。

 さらにめくっていただきますと、同じ労働安全衛生基本調査という中で調査をしたものですけれども、産業医が実際にどのような活動に関与しているかというものの調査データでございます。

 こちらは、さらにもう一枚めくったところにある横棒のグラフを見ていただきますとわかりやすいのですけれども、産業医が関与した業務といたしましては、健康診断の関係の業務が多くを占めている状況になっているということでございます。こちらも参考としてごらんいただければと思います。

 続きまして、1枚おめくりいたしますと、資料3がございます。これは産業医にかかわらず、労働衛生管理体制が現在の仕組みでどのような形になっているかということをまとめたものでございます。まず、職場の安全衛生管理を統括する者ということで、業種によって設置の基準が違っておりますけれども、総括安全衛生管理者という者を100人以上、300人以上、1,000人以上、業種ごとに置くということになっております。それとは別に、今御説明した産業医を置く。そのほか、50人以上でありますと衛生管理者を選任、50人を切る10人以上のところでは安全衛生推進者を置くという形になっております。

 これが人に関する規定でございまして、それ以外の仕組みとして、皆様御存じのとおり、50人以上では安全衛生委員会、50人未満では、それにかわるものとして労働者の意見を聞く機会を設けるといった規定がございます。

 その他、一定の有害業務がある場合は作業主任者を置く。

 こういった形で労働衛生管理というものが行われる仕組みになっておりますけれども、後ほどの論点でも出てきますが、それぞれの総括安全衛生管理者ないし産業医なりの役割分担や連携というところは、現在の規定では余り明確になっていないということでございます。

 続きまして、おめくりいたしますと、資料4に参ります。こちらは規模ではなくて、有害業務のある事業場、ない事業場で、法令上の健康管理対策というもので何に取り組まなければいけないかということを整理した表でございます。色をつけた部分が義務の事項となっておりまして、基本的には有害業務のあるなしにかかわらず全ての事業場で義務になっているというものが、一般健康診断、長時間の面接指導、あと、ストレスチェックにつきましては、下の※で書いてございますけれども、これに関してだけ50人未満のところが努力義務という形になっております。これ以外に有害業務のある事業場のみの義務として、特殊健康診断というものが設けられているということでございます。

 簡単でございますけれども、現在の仕組みについて御説明させていただきました。

○相澤座長 ありがとうございました。

 それでは、今の資料につきまして、何か御質問がございましたらお願いいたしたいと思います。よろしいでしょうか。

 どうぞ、土肥委員、お願いします。

○土肥委員 まずは、50人未満における医師の活用の状況とか、そういうことについては何か資料が存在するのでしょうか。従業員が50人未満のところにおいて、医師、保健師がどのように活用されているかということについての資料が存在するのでしょうか。

○中村室長補佐 保健師については資料がないかもしれないのですけれども、産業医について50人未満でどのぐらい選任されているかといった調査データは恐らくあるかと思いますので、今は手元にございませんが、次回以降、御紹介することは可能だと思います。

○土肥委員 今回のことを考えると、50人未満のところに産業保健の枠組みをどのようにさらに厚く届けるかというのは重要な課題だと思うので、そこの事実認識が必要かと思いました。

○相澤座長 大変貴重な御意見ですので、現在の資料があればよいですが、もしなければ、これからまた調べなければいけないでしょうね。ありがとうございます。

 ほかはいかがでしょうか。

 どうぞ、高松委員、お願いします。

○高松委員 ありがとうございます。

 2つあるのですが、1つは資料1の5ページ「産業医の選任状況」でございますけれども、これは50人以上で選任義務があると思うのですが、この2割選任されていないところに対しては、どのように御省のほうで捉えていらして、どういう対応をされているのかなというのがあります。それと、50人未満のところの実態、選任している数値がわかればおしえていただきたいというのが、まず1つ目です。

 2つ目は6ページですが、事業所の規模別の数値が出ているのですけれども、どうしても我々労働側とすると、規模によっての傾向値を見たいので、規模全体を按分した数値も出していただけると、6ページの表は規模ごとに100%でやっていらっしゃいますけれども、そういう規模全体から見た数値は出るのかどうか。

 以上2点、御質問でございます。

○中村室長補佐 まず1点目の御質問ですけれども、当然、産業医の選任義務というのは罰則つきの義務ですので、50人を超えているにもかかわらず産業医が選任されていないところについては、それぞれ現場の監督署が厳しく指導して、選任を促しているという状況にございますけれども、他方で、すぐに産業医が見つからないといった事情もございまして、すぐに100%にできるかというと、そこは難しい面もあるかと考えております。

 2点目の御質問につきましては、6ページは規模別のデータになっていると思うのですが、これ以外にほかのデータがということでしょうか。

○高松委員 規模全体から見た数字というのは、要はn数が欲しいのです。規模別のn数がわかる数値はないかと。

○相澤座長 いかがでしょうか。事業所の規模別のそれぞれの数でしょうね。それは多分出ているのでしょうから、次回にでもいただければ。

○中村室長補佐 規模別の事業場数というのはわかりますので、今は手元にないのですけれども、次回以降に御紹介できると思います。

○高松委員 お願いします。

○相澤座長 もう一つ、50人未満の事業所の産業医の選任についてですね。それは先ほどと同じ。

○中村室長補佐 先ほど土肥先生からの御質問にありましたけれども、事務局のほうで調べたいと思います。

○相澤座長 よろしくお願いします。ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ、増田委員、お願いします。

○増田委員 11ページの資料4「事業場における健康管理対策の概要」で、左から3列目のところに一般健康診断結果に基づく保健指導とあるのですが、より優先すべきは、健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針で示された、通常勤務か就業制限、要休業といった就業判定だと思いますが、そちらを挙げていないのは何か意味があるのでしょうか。そこを確認させてください。

○中村室長補佐 ちょっと資料のつくりが悪かったかもしれないですけれども、この一般健康診断という中に事後措置まで一応全部含めて書いてしまっていると理解いただければと思います。

○相澤座長 よろしいですかね。ありがとうございました。

 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、資料でまたお気づきの点がありましたら、後ほど御指摘いただければと思います。

 それでは、本題でございますけれども、議論を進めるに当たりまして、事務局のほうで論点をまとめていただいておりますので、資料5について説明をお願いいたします。

○中村室長補佐 事務局のほうから、一応論点案ということで、ここに限定してということではないのですけれども、議論を進めるための材料として、資料5に論点メモを提示させていただいておりますので、こちらについて御説明させていただきます。

 まず、論点の1つ目として挙げておりますのが「求められる労働衛生管理について」ということでございまして、冒頭、局長からもございましたけれども、産業医制度ができてから大分時間がたって、産業現場の実態とかニーズも変わってきているのではないかという問題意識も踏まえつつ、現在それぞれの事業場で求められている労働衛生管理とは何なのか、それが業種別でどう変わっていくのかということについて一度整理をして、議論をしてみてはどうかというのが1つ目、2つ目でございます。

 現在の労働衛生管理というのは、作業管理、作業環境管理、健康管理の3管理ということで進めておりますけれども、この3管理を一体どういう形で進めていくのが最も効率的なのかということもあわせて御議論いただくとよろしいのではないかというのが1つ目の論点でございます。

 2つ目に掲げている論点でございますけれども「産業医に期待される役割について」ということでございまして、1つ目の論点の中で、特に医師である産業医という立場にある方は、どういう役割が期待されているのかということです。1つ目と2つ目の論点にございますけれども、全ての事業場で共通的に求められる役割、それから、有害な作業があるようなところで医師である産業医が果たすべき役割は何なのかということの整理をしてはどうかというのが1つ目、2つ目の論点でございます。

 3つ目に掲げておりますのは、例えば健康診断を実施する医師とか他の医師がいる場合の連携の仕方であるとか、後で出てきますけれども、保健師なり看護師なりのほかの産業保健スタッフとの役割の分担、それから、それ以外の実務にかかわる方。こういった方々との連携とか役割分担という考え方が今の法令には余り明確に書かれておりませんので、その中で産業医がどういう役割を担っていくべきなのかという整理も必要なのかなということで、論点として挙げさせていただいております。

 4つ目の論点は、若干個別具体的になりますけれども、現在、有害業務のあるなし、それから事業場の規模にかかわらず、月1回、産業医が職場を巡視するということになっておりまして、衛生管理者は週1回ということになっておりますけれども、この一律の基準がその現場の実態に本当に合っているのかどうかということも論点になるのかなということで挙げさせていただいております。

 3番目の論点でございます。「医師以外の産業保健スタッフの役割について」ということでございまして、これは1番、2番の論点と続いていく論点でございますけれども、看護職(保健師、看護師)の方が産業保健の業務の中でどういった役割を果たしていくことが必要なのか。それから、技術専門職(衛生管理者、労働衛生コンサルタント、作業環境測定士等)の方々の役割はどこにあるのかといったこと。こういったことを踏まえて、チームとして産業医とそれ以外の看護職なり技術専門職なりが連携、役割分担をして、職場の健康管理なり労働衛生管理を進めていくことについてどう考えていくのかということも論点として挙げさせていただいております。

 裏のほうに行っていただきますと、4番目として、これは少し違った視点での論点を挙げさせていただいております。先ほど少し御質問もありましたけれども、50人未満の産業医の選任義務がない事業場の労働衛生管理をどうやって充実していけるのかといった論点でございまして、まず初めに、50人未満のところではどういった問題点があるのかということを整理した上で、今、法律で義務がかかっている健康診断なりその事後措置、それから長時間の面接指導、これを着実に実施していくためにはどういった方法が考えられるのか。

 もう一つは、50人ということで基準が設けられております産業医、衛生管理者、衛生委員会の設置基準について、どういうふうに考えていくのか。これを引き下げるべきなのかどうなのかといった論点。

 4つ目にございますのは、こういった設置基準の引き下げをどうするかということにかかわらず、現状でも、小規模事業場の健康管理の充実を図るために、どういったリソースを活用して充実していけるのかといった新しいアイデアなり取り組みが何かないのかということも御議論いただけないかということで論点として挙げさせていただいております。

 5番目に挙げさせていただいております「事業者と産業医の関係について」ということでございますけれども、こちらは今、法令上は産業医になれない方というのは特に制限がございませんで、例えば事業者、法人の代表者などでも産業医になることは禁止されていないわけですけれども、他方で、産業医には事業者に対する勧告権がございますし、事業者のほうは、その勧告を受けたときはそれを遵守する義務があるということで、この産業医と事業者との関係はどういう関係であるべきなのかという考え方の整理も必要なのかなということで論点として挙げさせていただいております。

 6番目「その他」の論点として3点ほど挙げさせていただいておりますけれども、(1)にございます産業保健サービスを提供する外部機関の質の確保についてということで、これは今回のストレスチェック制度の導入もございまして、企業に対してさまざまなサービスを提供する機関が出てきている。その中で質の確保というのを心配する声もございまして、まず、そもそもこの産業保健サービスを提供している機関の全体像を把握できていないという現状にありますので、どういったサービスがそもそも行われているのか。それから、それぞれのサービスの中でどういったことが課題になっているのかということを一度整理してみる必要があるのではないかということで、論点として挙げさせていただいております。

 (2)に書いてあります遠隔による労働衛生管理活動のあり方ということにつきまして、実は先日、今回のストレスチェック制度の導入に伴いまして、テレビ電話などを使って面接指導を遠隔でやる場合の考え方と基準を示させていただきました。この面接指導だけにかかわらず、例えば職場巡視なり、遠隔でできるような産業保健活動があるのか、そもそもそれを遠隔でやっていいのか、どういった範囲まで認めるべきなのか、こういったことが議論の一つの論点になるのかなということで挙げさせていただいております。

 最後に挙げておりますのは、産業医やその他の産業保健スタッフが現場で必要な能力を身につけていくために、その資質向上についてどういった課題と方策があるのかということで挙げさせていただいております。

 かなり広範な論点を挙げさせていただいておりますけれども、時間をかけてじっくり御議論いただければと考えております。

 以上であります。

○相澤座長 ありがとうございました。

 議論に入る前に、日本医師会で産業医に関するアンケートを実施されておりますので、道永委員からその結果を御説明お願いできますでしょうか。

○道永委員 それでは、資料6をごらんいただきたいと思います。今、お話がありましたように、日本医師会では、このストレスチェック制度が始まるのに際しまして、産業医の果たす役割がますます重要となり、ストレスチェック制度の実施に当たってどのような課題があるのかを把握するということを目的に、5~6月にかけてアンケート調査をいたしました。調査の対象ですが、日本医師会認定産業医の中から無作為で抽出した1万人の方々です。有効回答は4,153名と、かなり高い回答率を得ることができました。

 1枚おめくりください。アンケート調査の結果ですが、簡単に御説明いたします。

 まず、専門等についてです。産業医としての経験年数は「1020年未満」が1,350名、「20年以上」という方も779名。ただ、「経験なし」という方が276名いらっしゃいます。

 専門診療科等は、やはり「内科」が多く、次に「外科」の先生となっております。「整形外科」の先生もかなり取っていらっしゃいます。あと、「精神科」「心療内科」ということで200名以上の方が産業医として資格をお持ちになっております。

17ページをごらんください。産業医活動の有無ですが、現在、4,153名のうち「産業医活動を行っている」先生は2,578名、62%です。その中で「産業医活動を行っていない」方がいらっしゃるわけで、その回答のあった1,543名の内訳では、「本業が多忙で時間・余裕がないため」という方が60%、「産業医として働く事業所がないため」35%という回答でした。

 産業医としての活動形態ですが、産業医活動を行っている2,578名の方のお答えでは、嘱託産業医というのが77%と一番多くを占めております。

18ページをごらんください。産業医としての活動状況です。

 まず、産業医業務に従事する時間と業務全体に占める割合ということで、月当たり「2~5時間未満」というのが946名で一番多くなっております。業務全体に占める割合としては「0~1割未満」ということで1,114名でした。

 産業医活動を行っている事業場の数ですが、1~3がほとんどを占めていらっしゃいます。かなりたくさんお持ちになっている先生もいらっしゃることがわかりました。

19ページをごらんください。産業医活動を行っている事業場の業種・規模ですが、「製造業」が一番多く、「その他のサービス業」がその次になっております。事業場の規模は「100299人」「5099人」が一番多くなっておりました。

 事業者に対する意見陳述の状況ですが、意見を伝達し、それに対し事業者が対応してくれていますというのが1,938名です。

 他の専門職との連携という中では、「看護師」「保健師」が多くなっております。

20ページ、産業医の契約についてです。産業医契約の平均的な契約期間は「1~2年未満」がほとんどを占めています。

 あと、契約額も伺いましたが、1万円から6万円未満というのがほとんどを占めていらっしゃいます。

21ページ、産業医としての活動の内容です。職場巡視の実施状況、先ほどからお話がありまして、毎月1回ということが義務になっておりますが、「12回」が594名です。「1回」あるいは「2回」の方がちょっと多いようでございます。1回当たりの巡視時間は「1~2時間未満」というのが一番多い結果でした。

 職場巡視以外の活動の実施状況ですが、衛生委員会の年間出席回数は「1回」「2回」が多くなっております。1月当たりの活動時間ですが、先ほどの22年の回答とほとんど同じだと思いますけれども、一般健診の結果確認、保健指導、長時間面接指導、1時間から3時間ぐらいを当てているというお答えでした。

 続いて22ページですが、やはりこれも同じです。労働者の相談対応あるいは健康教育等、「1~2時間未満」という方が多かったです。

 もう一つですが、23ページになります。所属部署・課題についてということで、所属する部署ですが、専属産業医または兼務産業医として産業医活動を行っている先生711名のうち、「経営側」に属している方が249名、「産業保健・安全を所管する部署」にいらっしゃる先生が194名でした。

 次に、課題ということで伺いました。専属産業医または兼務産業医として産業医活動を行っている方々の「業務の量が増えている」「専門的な知識が必要な業務が増えている」という回答が多かったです。

 あと、兼務産業医として産業医活動を行っている580名の方に伺いましたが、「他の業務(役職)が多忙で、産業医活動に十分な時間を割けない」というお答えが一番多かったです。

 簡単ですが、アンケートの調査結果について御説明させていただきました。

○相澤座長 ありがとうございました。大変詳細な調査をしていただきまして、この委員会にも大変役に立つ資料だと思います。

 これにつきまして、きょうは初めての会でございますので、今まで御自分の立場から感じていらっしゃることとか、この資料についての御質問あるいは御意見でも結構だと思いますけれども、どうぞ御自由に御意見をいただければと思います。

 森委員、どうぞ、お願いします。

○森委員 論点がかなり挙がっていますが、論点として成り立つのではないかと思っていることが2点ございます。1点は、何を産業医とするかという定義です。現実に日本の中で活動している産業医には、産業医を専門として行っている産業医と、医師会認定産業医の資格を取り臨床診療の傍ら産業医活動を行っている産業医がいます。近年、産業医に対する要求が高まり、後者の産業医からは確かに仕事が増えて大変だという声がある一方で、産業医を専門として行っている産業医からは、むしろ役割が拡大してやりがいが出てきているという声もあります。この二種類の産業医を一つの産業医として本当に議論してもよいのかという疑問があります。私は、この二種類の産業医について、どちらかが必要という意見ではなく、どちらも重要だという認識です。諸外国も見てみますと、先進国ではほとんど日本産業衛生学会の専門医レベルの産業医のみを産業医として位置づけていますが、日本の制度では、9万人もの医師が日本医師会認定産業医の資格を取得しており、大変裾野が広くなっています。このことも大きな長所です。ただ、この二種類の、そもそも専門性の度合いが異なる産業医を一まとまりで議論していくというのは、かなり困難だと思います。ぜひ、専門医の位置づけをどうするのかについても、検討いただければと思います。

 現在、日本産業衛生学会で認定している産業医の数は500人ぐらいですが、この500人が1ヶ月に100時間以上活動をしているとすれば、1カ月に例えば3時間、4時間の活動を行っている認定産業医の1万人以上に相当するサービス量に匹敵するわけですから、決して小さい数字ではないということです。

 もう一つの論点は、産業医制度ができて昭和47年と比較して、新しい仕事や業種がいろいろと出てきており、当時の製造業中心であった産業構造とは違った状況が出てきているのは事実ですが、企業内の事業場の位置づけが非常に多様化をしていることも大きな視点です。例えば私はメーカーの販売会社の嘱託産業医をしていますが、九州全体が一つの本部となっていて、各県に支社、さらには多くの営業所があります。いわゆる分散型の事業場ですが、一つ一つを事業場としてカウントしてサービスすること自体が難しくなっています。例えば、異なる事業場に上司がいるなど、指揮命令関係と事業場という単位に大きな矛盾が生じているというのも事実です。そのようなことを前提に選任のあり方も議論をしていく必要があるとおもいます。大規模事業場と小規模事業場で分けることが多いのですが、小規模事業場にはかなり多様性が出てきています。その点を少し検討いただければと思います。

○相澤座長 ありがとうございました。これはよろしいですね。

 それでは、土肥委員、お願いします。

○土肥委員 事業所と産業医の関係についていう中で、産業保健サービスを提供するというのが産業医の仕事であって、選任をされるということが今の産業医の中心的なやり方になっている。もちろん、医師等という形でかかわることは可能だと思うのですが、ただ、小規模事業所が出てきたとき、選任という形でかかわるのか、それとも、産業保健サービスを何かの機関が一体として、個人で産業医選任を受けずに産業医の仕事も供給してしまえるというような形をもっと明確に打ち出していくのかによって使い方が変わってくるのではないかという気がするのです。

 そういう意味では、嘱託産業医という医師という立場の仕事をどう考えるかということも重要だと思うのですが、産業保健サービスの中で産業医業務をどう提供していくのかというのも重要なポイントではないかと思うので、そういう見方についてのあり方を考えるということも視点として要るのではないかという気がいたします。

○相澤座長 産業保健サービス、例えば健診機関とかそういったものの中で専属産業医を考えると。

○土肥委員 つまり、健診機関の中の医師が嘱託産業医として選任されて産業医をするという仕組みではなくても、それは産業医が選任されているのと同じだと認めてしまって、サービスを全部提供するのだと、そういう考え方もあり得るのかなと。そうすると、たくさんの事業所を一遍に見ることも可能だし、選任のいろいろな基準も、今の法律のままでもできるのかなと思ったりするところもございます。

○相澤座長 そういったことも議論に加えたいということですね。先ほど森委員から御指摘がありましたけれども、専属と嘱託で大分違うのではないかということで、この議論をすることも大事ですし、先ほどの日本医師会の資料の中では一緒に入っていたような感じなので、これを分けて。

○森委員 私がお話したのは、専属と嘱託という違いではなくて、産業医の、産業医学や産業保健についての専門性の違いをもとにした定義です。産業医活動の違いや困難性は、時間の問題だけではないのだろうと思います。

 私は、これまで欧米諸国の専門医制度を調べてきましたが、ほとんど大学院修士レベルの研修を受けた上で、専門医資格を取って産業医活動を行っています。特に、自主管理を前提とした活動を行っている国では、そのような専門性のある産業医を想定していることが多いのが現状です。韓国でも、特定の業務はそのレベルの産業医が行うことを規定しています。 一方で、日本は認定産業医が数万人もいることが特徴で、同程度の教育研修を受けた産業医を活用する制度を持っている国もアジアの中にはあります。日本はその両方をとって、とてもいい形のバランスなのだと認識しています。

しかし、その二種類の産業医に、産業医はどこまでの内容の仕事を要求してもいいのか、専門医のレベルでは、例えば専門医試験の内容を見ても分かりますが、法令上の役割を果たすことは当然としながら、さらにプラスアルファ、自主管理的な産業保健活動を展開していくことが期待されています。一方、認定産業医の場合には、法令上の基本的な役割を果たすことが期待されている状況で、同じ産業医といっても明らかにその専門性が違うので、そのことを2つ一緒にしたまま、議論は難しいのではないかと思います。二種類の産業医に別々の役割を規定すべきかどうかはわかりせんが、少なくとも産業医には専門性が異なる二種類があるということを認識した上で議論をしないと、そもそも産業医には何を期待できるか、という段階から、議論がずれていく可能性があります。

 前者の専門医のレベルの産業医の数も、十分ではないと思いますが、これまで日本産業衛生学会や産業医大などが努力して、やっと500人を超えるところまで持ってきました。この500人という数字は、サービス提供時間から考えると決して小さな数字ではないところまで来ていると思います。したがって、そのような議論も必要と思っているところです。

○相澤座長 わかりました。

 どうぞ、労働衛生課長、お願いします。

○泉労働衛生課長 労働衛生課長です。

 今回の論点のつくり方、議論の方向としてこんなふうにお願いしたいと思って実はつくったのですが、まず、誰が何をするということの前に、そもそも職場の健康、労働者の健康のためにどういうサービスというか、どういう中身の管理が必要なのかということをまず御議論していただいた上で、そのサービスを提供するためにはどんな人がそこにいるのかという順番でお願いしたいと思っています。ですので、1ではまず、誰がではなくて、何をというところから議論していただきたい。

 それから、論点の2のほうで、その中で産業医がやるところ、それも広くとった場合に期待される大きな意味での産業医がやるべきことと、ここだけは産業医にやってもらいたいというところ、そこを少し議論していただこうかと思っています。その議論を通して、今おっしゃったような専門性の違いというのも出てくるのかもしれませんが、最初からそこを2つに分けてしまうとちょっと方向性が違ってしまうかと思っておりますので、できればこういう論点でお願いしたいと思っております。

○相澤座長 これは最後に議論になるかもしれませんけれどもね。

 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 どうぞ、川上委員、お願いします。

○川上委員 ありがとうございます。

 産業医制度について、もし何か御検討されるのだったら、ぜひこういうオープンな場でやっていただきたいと常々思っておりましたので、非常にすばらしい場を設けていただいたなと思いますし、参加させていただいたのは大変光栄に思います。

2011年に日本学術会議が労働・雇用・安全衛生に関する提言を出していまして、その中から幾つか今回の論点に関係するところを拾ってみますと、随分重複があるのですけれども、一応プライオリティーをつけるのに便利かと思いまして御紹介をしたいと思いますが、1つは、産業保健のなすべきことについては自主管理型の体制に、つまり、法で決まったことをするのではなくて、事業所の中で自主的な管理を進めていくということを中心にすべきだというのが記載をされています。

 それから、産業保健については、きょうここで出た懸案のように、産業医の業務がふえてきていますし、産業医一人でカバーできないこともふえていますので、チーム体制を組むことというのが強調されていることの一つだと思いますし、それと関連して、外部労働衛生サービスの確立、特に中立な立場で事業所に産業保健が提供できるILO161号条約のような基準に基づいたサービスのあり方を検討すべきだというのが入っておりました。

 あと2点ですけれども、産業医の教育訓練をもう少し充実する必要があるのではないかということが提言に入っていまして、あとは産業看護職、衛生技術者の法的な立ち位置について検討したほうがいいというのが入っておりましたので、御参考までに御紹介いたしました。

○相澤座長 今回の議論の進め方と大分かぶっているといいますか、似ているわけですね。ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

 どうぞ、甲田委員、お願いします。

○甲田委員 労働安全衛生総合研究所の甲田でございます。

10年目ですので、その前は大学にいたので、多分ここにいらっしゃる先生と同じように産業医学を研究し、産業医もやった経験はあります。その後、うちの研究所に移りまして、感想というか、最近、非常に思っていることなのですけれども、うちの研究所産業現場や行政等から依頼されるのは、いろいろな事業所で発生した災害だとか、事故だとか、そういうものの原因分析です。中には中毒だとかもありますし、最近は、うちは過労死センターを立ち上げましたので、過労死の事案の分析が必要だとかいう形で現在取り組んでおります。

 そういうところから見ますと、都度都度と言ったら変な話ですけれども、産業医の姿が見えないことがあるのです。例えば何でこんな中毒が起きてしまったのだろうということを考えると、多分、新しい知見もあったりだとか、今までの衛生管理だとかいう形で足りない部分もあるのだろうなと。この方の病気になるプロセスだとか災害が起こるプロセスの中で産業スタッフはどう関与していたのだろうなと。これは医師だけではなくて、先ほどちょっと出ていましたけれども、外部の機関だとか作業環境測定、それから、化学物質であれば、そういう化学物質の情報を管理してコミュニケーションするようなスタッフだとかいうことになるのですけれども、これらが機能していない、あるいは存在していないというのが最近やはりかなり目立つ。我々のところに入ってくる事案ですので、そういう事案の最たるものが大きな災害になると、胆管がんでも何でもそうなのでしょうけれども、そんな感想を強く抱きます。

 そうなってくると、論点の1にあるような、事業場を問わず労働者のニーズは本当に何なのかということと、それから、業種別のニーズをもう一度改めて洗ったほうがいいような感じがいたします。特に感じているのは、いわゆる化学物質のリスク管理は非常に難しくなってきていますので、そのリスク管理を、どういうスタッフがどういう立場でやって、その中で、例えば産業医がどういうふうに関与していくのかということを整理されたほうがいいと思いますし、それがなかなか現場の労働者に行っていないというところが非常に、言ってみれば衛生管理の欠点として、最終的には中毒だとかの事案の災害につながっているような感じもいたします。

 そのほか、最近、多分業種としては非常に多いサービス業、運輸というところの問題点も十分洗えていないような感じもしますので、そういうところから発生する健康問題といいますか、ひいては労働者の健康問題にはね返るわけですけれども、そういった課題の洗い出しがまだちょっと不十分な感じがしています。

 もちろん、うちの研究所はそういうことを課題にしてやっていますので、できればそういうものは提供するということを考えております。そういう問題意識が1つです。

 もう一つは、論点の中にありました産業医の役割のところ、5番目の「事業者と産業医の関係について」というところで、最近いろいろと労働衛生の統計を見ても、一つは介護の腰痛が非常にふえているというのはよく言われることなのですけれども、片方で言うと、医療や介護作業という形で腰痛の問題。それだけではなくて、置かれている環境からいろいろとリスク要因が多い、労働者へのストレスが多いということを言われています。そういうときに気になるのは、事業者が産業医をやられているという場合です。本当にそれでいいのかなというのは単純に疑問には思います。

 そういった観点からいうと、産業医の独立性になるのかもしれませんけれども、そ中立的な立場にある産業医、あるいは外部機関の中立的な者が健康管理とか、情報管理とか、労働衛生管理に携わって、いろいろなアドバイスをしていくような形を考えてもいいのかなというのを最近ちょっと考えております。

 以上です。

○相澤座長 ありがとうございました。

 業種別に考えるということと、事業者イコール産業医という形の問題点、その辺を検討したいということでございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ、石田委員、お願いします。

○石田委員 私は、コンサルタント事務所を開業して30年近くいろいろな事業場にお邪魔して、いろいろ話を聞いたりしているのですが、課長さんが言われた1番の「求められる労働衛生管理について」というところに限って発言をしますと、作業管理、作業環境管理、健康管理というこの3つの管理の分類というのは、もうぼちぼち終わりかなと、そんな場合じゃないぜと。時間の管理だとか、ストレス管理だとか、業務量の管理とか、あるいは有給の消化を含めた休日の管理とか、こういうところもどんどん出てきているわけですので、縛りをこの3つに限定するというのは、もうぼちぼちやめたほうがいいかなと。

 今の衛生管理者の方たちの試験などを見ていると、3管理というところから勉強し始めるわけですが、厚生労働省がもうそんな時代ではないと、いろいろな管理の仕方があるのだというところで汎用、分類をもっともっと広げてもらうといいなと。そうすると、企業のほうは、衛生管理者一つをとってもやはりみんな兼業です。人事をやったり、あるいは環境のことをやったり、安全衛生をやったりということで、これだけ多様化しているのに1人の人、産業医ばかりではなくて衛生管理士さんそのものも相当ハードな職務をやらされているというのが現状なので、そろそろ法整備で、こういうものはこういうものの部署で対応してくれとか、あるいはこういう資格制度を新たに設けて、こういう人たちはこういうことに対応してくれというようなことがあってもいいかなと私は感じています。

 以上です。

○相澤座長 ありがとうございました。

 ある程度専門職を活用するといった御意見だと思いますが、大変貴重な御意見をありがとうございました。

 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ、三柴委員、お願いします。

○三柴委員 私も論点に挙げていただいている1点目に絞って考えをお伝えしたいのですが、泉課長がおっしゃったように、まず現場で何が起きているのか、どう変わっているのかという認識をベースにすべきだとすると、以前にも「産業医・産業医科大学のあり方に関する検討会」など類例の検討の機会があったと思うのですが、そのときにも国際化とか労働者の高齢化や非正規化、さまざまな環境条件の変化は指摘されていたと思うのです。では、今、何が変わったのかということを考えたときに、やはり経営形態とか雇用形態が職場でさらに変化しているのだろうなと。経営形態は先ほどもお話にあった分散化というようなものがあるし、雇用形態や就業形態については、やはり労働の集約化なりがさらに進展しているだろうと思います。

 そういう中で、産業保健やそれを担う人材が対応能力を十分フォローアップできているかということが問題としてあると思うのですけれども、私自身も産業保健スタッフの方々に講演活動等をさせていただくことがありますが、例えば12次防のお話を差し上げたときに、安全面などに関するお話には余り傾聴していただけなかったのです。具体的な特定はしませんけれども、ある地方で嘱託の先生が多い場でした。他方、ストレスチェックの話とか、御自身にかかわるような裁判例の話とか、そういうところについてはよく傾聴していただけるというところを考えると、森先生から、産業医にも幅があって、そこは踏まえないといけないというお話がありましたけれども、改めて総合力が必要な仕事なのだろうと。そのために医師であるぐらいのスペックが必要だという面もあるのかなと考えるところです。いずれにしても、現場がどうかという議論が最初に必要かと思います。

○相澤座長 ありがとうございました。

 土肥委員、お願いします。

○土肥委員 もう一点。産業医に期待される役割という中において、今の法律等は、産業医に何をしなさいという措置を義務づけているのが多くて、もちろん努力義務としても義務づけているわけですけれども、実際にはこれだけ科学者が集まっている世界で、行われた措置の効果があったのかどうかということを検証する仕組みは、法律の中には、文面を読む中ではないと考えられます。ただ、これだけたくさんの問題が出てきて、実際にたくさんの事項が行われるのであれば、やったことに対して効果があるかどうかということについて検討することも、当然やった側の義務として何かあったほうがいいのではないかと。そうでないと、健康診断においても健康診断の有効性がどうかという議論が再燃するようなことが起こるわけですから、施策としてのPDCAを回していく上で、努力義務として少なくともやっているようなところは、法律としてやれと言っていることに対してそれを評価することについて、これはお国がすべきことかもしれませんが、努力義務としてやれと言っている部分については、産業医が自主的に、もしくは企業が自主的にやっている部分ですから、それについての効果や評価というものも一緒にやりなさいとしておいたほうが、例えばサービス機関がAという施策をするときに、その効果が評価をされている。そうすると、その評価に基づいてAという施策を選ぼうとかいうことが可能になっていくので、そこまでもし踏み込めるのなら、踏み込んでおいたほうが将来の全体の枠組みがよくなるような気がするということです。

 以上でございます。

○相澤座長 エビデンス・ベースド・産業医ということですね。ありがとうございます。

 ほかはいかがでしょうか。せっかくの機会ですから、ぜひ一言ずついただきたいと思います。

 どうぞ、三柴委員。

○三柴委員 環境変化の重要な要素の一つに国際化はあると思いますので、そこも無視はできないと思います。

○相澤座長 外国からの労働者とか、逆に外へ出ていくということですかね。

○三柴委員 そうですね。インバウンドもアウトバウンドもあると思いますけれども、いずれにしても、そこに寄り添う産業保健というのは考慮しないといけない。

○相澤座長 ありがとうございます。

 ほかはどうですか。

 浜田委員、どうぞ。

○浜田委員 現場、職場の立場からいいますと、今、直面している問題で、ストレスチェックの対応についていろいろ議論しているのですけれども、一番相談事というか問い合わせが多いのが、特に地方からが多いのですが、産業医の先生が見つからないのです、という問い合わせが非常に多くあります。どう探せばいいのか探し方がわからないとか、そういう問い合わせもございますので、その他の部分になるかもしれませんけれども、広報の仕方というか、産業医の先生はこういうふうに探すのですよというような、もう少し広くわかりやすい広報の仕方も最後のほうには議論していただけるとありがたいと思います。

○相澤座長 そうですね。先ほどの産業医の実態調査だと仕事が見つからないという産業医がいて、これはまさにミスマッチですね。ありがとうございます。

 どうぞ。

○道永委員 今のお話ですけれども、原則的には、その事業場の属している地区医師会がございまして、そこにお問い合わせいただければ、名前は違うかもしれませんが、産業医部会というものがありますので、そちらから御紹介いただけることになると思います。医師会と個人の産業医の先生と事業場の3者で顔合わせといいますか、ちゃんと契約をすることが原則になっていますので、そちらを御利用いただければと思います。

○相澤座長 既にやっておられるけれども、もうちょっと大々的にやるという話も一部ありますね。ありがとうございました。

 どうぞ。

○小松埼委員 私のほうから、資料5、13ページ「1求められる労働衛生管理について」の部分で、全ての事業場に必要な衛生管理は何かという部分は論議がしやすいのかなと思うのですが、事業場の特徴に応じて必要となる労働衛生管理という部分は、事業の業態というのはさまざまでございまして、私ども連合に加盟していている業種だけでも、造船があったり、鉄鋼があったり、また建設があったりと、そういったものすごく幅の広い事業の特徴に対応していく、そういったことをこの場で論議していくとなると、現場で今どういう問題が起きているのかということを非常に深く掘り下げていかないと、細かい部分までは行き届かないのかなと思うのですが、この事業場の特徴に応じたという範囲をどこまで絞って論議していくのかについては、これから話を進めていく中では重要になると思うのです。そのあたりは、例えばどのあたりまで掘り下げるおつもりがあるのかということを聞いておきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○相澤座長 どうでしょうか。

 どうぞ、労働衛生課長、お願いします。

○泉労働衛生課長 実際に、例えば扱っているものとか、そういうものに応じたやり方というのは個別の規則で定まっておりますので、そういった個別のことよりはむしろ、例えば有害業務がある職場かどうかとか、そういった大きなくくりがまず特徴としてあるのかなと思いますが、さらにそれに加えて何か必要な考慮点があれば教えていただきたいと思います。むしろ今の法律は、有害業務というものを特定して、それに関して細かく規定しているということでございますので、それ以外の留意点があるのであれば、つけ加えていく必要があるかと思います。

○相澤座長 小松埼委員、よろしいですか。何か御提案があればまた。そういう感じでいいですか。

○小松埼委員 これからお話しされていく中で、例えば働く者の立場から、私からは恐らくものづくり産業で働く者の立場がメーンになるかと思うのですけれども、そういった部分で、現場の現状がどうなのかとか、そういったことをお伝えできると思いますので、現場視点での意見をこれからも述べさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○相澤座長 ありがとうございました。

 いかがでしょうか。現場という面ではどなたか。

 どうぞ、竹田委員、お願いします。

○竹田委員 私は、嘱託産業医の先生方とよく話をする機会を持つのですが、やはり今回のストレスチェック制度に関しても、新しいルールができるとどう対応していいかという情報を得たりとか、トレーニングを受ける場が不足しているという感じを持っています。例えばメンタルヘルス対策も、どこに行って勉強したらできるようになるのかということの情報がしっかり伝わっていない、あるいはそういう機会がなかなかとりにくいということもありますので、今回のような産業医制度のあり方を新たに検討して、また新しい枠組みをつくると、それに対応できるような産業医をどうやって育てていくか。あるいはその資質向上というのも後半に挙がっていますが、そこもしっかりセットで準備をしないと、嘱託産業医の先生方も非常に産業医をやること自体に負担感を感じて離れていってしまうのではないかという危惧がありますので、この資質向上の枠組みもしっかりあわせて検討いただければなと思っています。

○相澤座長 ありがとうございました。

 大変大事な視点ですが、日本医師会とか日本産業衛生学会にやっていただけるような話題というのはどうでしょうか。

 道永委員、いかがでしょうか。

○道永委員 先ほどのアンケート調査でも御報告しましたけれども、やはり嘱託産業医の方がとても多くて、今、竹田先生がおっしゃったように、ストレスチェックに対する危惧を皆さん持っていらっしゃいます。それで、もう産業医をやめたいという声も聞こえてきますので、そういうことがないように、日本医師会はちゃんと支援していきたいと思っております。

 あと、質の向上ということで、これは法律改正になった後になると思いますけれども、質の向上の研修会ですが、今、認定産業医の生涯研修でいろいろなカリキュラムの変更もしております。それに合わせてつくり変えていければなと思っております。

○相澤座長 ありがとうございます。

 圓藤委員、いかがでしょうか。ほかのことでも結構です。

○圓藤委員 多数の先生方が非常に重要な点を指摘されましたので、大変な労力がかかりますが、それら全部を議論していかなければいけないと思います。

 産業保健の100年ぐらいの歴史でいろいろなことをやってきた中で一つの重要な視点は、全員参加という言葉があったように、専門職ももちろんですが、経営者側も、労働者側も、一人一人が、全ての人が参加するものでなかったら、どんなきれいな絵を描いてもうまく回らないだろうと思います。その中で専門職、専門性を生かした産業医制度を再構築する必要があるだろうと思います。今までも十分やってきた。それの成果は非常に上がっている。しかし、完璧でないというのは事実で、甲田先生がおっしゃったように、災害やらいろいろな事件は産業医の顔が見えないところで起こっているのであって、見えるところではそんなに大きなことは起こっていないということも事実でありますので、うまくいっている事業場とそうでない事業場、やはりレベルの差があろうと思いますので、そういうことを意識した上で効率のいいシステムをもう一度つくり直してみようと思っております。

 学会のみんなにも呼びかけて、いろいろな提案をするようにと、私のほうに集約して、また次回以降発言させていただきたいと思います。

 以上です。

○相澤座長 ありがとうございます。期待しております。

 大神委員、いかがでしょうか。

○大神委員 本日は貴重な場に参加させていただき、ありがとうございます。産業医の先生方には、いつも産業保健活動を牽引していただき、大変感謝しております。

 私どもの会は、事業者、それから労働者への産業保健サービスを支援する保健師が集まっている会で、歴史はまだ浅く設立8年目の会でございます。私たちの視点から話題提供させていただきます。今まで議論されたこととかなり重複する内容になるかもしれません。私たちは生活という枠組みから現場を捉え、労働者の意見、事業者の意見をお聞きし、課題を捉えています。昨今、やはり職場が高齢化してきている実態を肌で感じ、この先本当に日本の労働はどうなっていくのかなと危惧することがあります。私たちは、人々が生き抜くことを支援するというスタンスもございますので、現時点の課題だけではなくて、先々どうなっていくのだろうかという思いも持ちながら活動する重要性も欠かせないと考えます。

 現場で活動していると、確かに非常に産業保健活動のできている職場もあれば、産業医の先生にそもそもどんなことを期待したらいいのですかと相談されたり、そもそも産業保健、労働衛生という言葉がよくわからないという率直な意見をいただくような職場もあったりという実態を感じています。

私たちの職種はコーディネート能力のある職種だと思いますので、チームとして全体でどのような活動成果を上げるかということを意識しておりますが。先ほど「3管理ではもうないかな」と言われたのは大いにうなずけた点でした。やはり3管理というと、穴埋め的に対応することが多い実態があるように思います。もう少し融合させて対応していくにはチームでの対応が必要で、私たちもそこをサポートする立場として力添えしたいと思っております。

 ご意見までで失礼いたします。

○相澤座長 ありがとうございました。

 今回、井伊委員が御欠席ですけれども、看護協会から意見書をいただいておりますので、事務局から御説明いただけますでしょうか。

○中村室長補佐 お手元にこの1枚の紙を配らせていただいておりますけれども、日本看護協会からの御意見ということで3点ほどいただいておりますので、御紹介させていただきます。

 まず1点目ですけれども、労働者の健康については、事業所内の対応のみでは完結できない課題が多くなっている。事業所外での支援についても包含して議論をしていく必要があると考えるというのが1点目にいただいている御意見でございます。

 2点目にいただいている御意見でございますけれども、1つの課題である「治療と職業生活の両立支援」というのも、本検討会の論点に加えるべきではないかという御意見をいただいております。

 3点目の御意見といたしまして、論点に入っておりますけれども、「産業保健サービスを提供する外部機関」について、ぜひ実態調査を実施してほしいという意見もいただいておりますので、御紹介させていただきます。

○相澤座長 ありがとうございました。

 既に委員の皆様方から御意見いただいているところもかなりあると思いますが、2番目の「治療と職業生活の両立支援」というのは、労働福祉事業団、機構ですかね。あそこで大分やっていますね。これに御関心のある方はおられますでしょうか。

○中村室長補佐 では、簡単に最近の行政の動きとして御紹介させていただきますと、実は産業保健の場で、病気を抱えた方の就労支援をどうするかというのが大きいテーマになってきておりまして、この支援を職場の中でどうしていけるのか、それから、外の医療機関も含めて、そういった方々との連携のあり方をどういうふうにしていけばうまくいくのかということで別途検討会をやっております。企業向けのガイドラインづくりというのも今、実は進めているところでして、こういった中で、産業保健の中での病気を抱えた方への支援、それを産業保健スタッフとしてどう支援していくのかということも含めて、一つの議論のテーマにはなるかと考えております。

○相澤座長 それでは、検討課題の一つに入れるということでよろしいですね。ありがとうございます。

 どうぞ、労働衛生課長、お願いします。

○泉労働衛生課長 検討課題そのものに入れるというよりは、例えばこの「求められる労働衛生管理について」の中に、先ほどおっしゃったように労働時間の問題とかいろいろな問題があるという中の一つとして上がってくるのかなと思いますので、ここにどこか項立てするというよりは、この中のコンテンツに入ってくる問題かなと考えます。

○相澤座長 わかりました。

 どうぞ、三柴委員、お願いします。

○三柴委員 ちょっとまとめたようなお話を差し上げると、1点目については、企業での産業保健に対する見方というのも当然、さまざまな条件の変化の過程でシビアになってきている。役に立つ産業保健への要請が強まっているだろうと。その前提で、成果の見える化ができれば一番いいのですけれども、これは非常に難しいので、例えば嘱託の方については、医師会の調査結果からしても、今はやはり健診関連の業務が中心になっているけれども、これはあくまで基礎データであって、それをより打って出る産業保健につなげていくことが次の課題なのだと思うのです。つまり、データをとりました、ならどういう問題があって、1次予防なりに生かすにはどうしていったらいいのか。それは結局、事業に詳しくなる、事情を知っていくということにつながると思うのですが、それを次の展開として打ち出さなければいけないのではないかと。もちろん制度、人、物のインフラ整備が基本になるでしょうが。

 専属の方については、これは森先生らが取り扱われている課題だと思いますけれども、企業内で産業保健体制を確立して、その専門性と職場内外での連携を深めていくということが、既にされているところが多いにせよ、一層の課題になってくるのかなと思いました。

 以上です。

○相澤座長 大事な御意見をありがとうございます。

 どうぞ、森委員、お願いします。

○森委員 すごく自分の頭の中で矛盾している感じがしているのですが、確かに先ほどあったチーム医療の在り方や、3管理を超えた本質的な現場における問題に対して整理していくことは重要ですし、事業場の実状に応じて自主管理的な考え方で参加型の労働衛生を展開していくべきだと思いますが、一方で、限られた時間で産業医資格を取得している認定産業医にとって、果たして自主管理的な産業保健活動に適切に対応できるだろうかという疑問があります。私たちもかなりの量の認定産業医研修会のプログラムを提供しています。最近では、産業医活動の特定のテーマについて行う実地研修に力を入れています。例えば健康診断の事後措置として就業上の判定をどのようにやるか、作業環境測定の結果に基づき産業医の意見はどのように書くかといったテーマです。すでに50時間の研修を受け、認定産業医の資格を取っている先生方でも、研修前に「そもそもあなたたちはどの程度、この活動を行う自信がありますか」と聞くと、すごく自信がない状態ですが、約2時間の研修で、「これなら自分もやってみることができる」というレベルまで上がります。この実態を見ていると、自主管理が重要と考えながら、すごく矛盾した考えが出てくるのは、産業医活動をもっと具体的に定義して、それができるようになるための方法論はこれですよといった研修を行うことが重要だということも事実だということです。自主管理と法令上の役割の規定の2つを合わせて、結果的に現実の場面で産業医活動が展開できるようにしていくかが必要ではないかと思います。

 現行の法令上の産業医の役割を細かく活動ベースで分類していくと、これはどこかでまた発表させていただければと思いますが、たしか45項目の活動が定義されます。それぞれに対して1時間半から2時間の実地研修をやると、多くの産業医が、かなりの活動項目について「これならやってみよう」というレベルまで上がっていくことが期待できることを検証しました。すべての項目について研修を行うと、トータルで実地研修が120時間ぐらい必要になります。これは、50時間の基礎研修を修了していることが前提での話です。現実の研修時間とは随分乖離はしていますが、いずれにしても活動項目を具体的に定義することも挙げていくことと、自主管理の話は両方並列していかないといけないと、思っているところです。

○相澤座長 ありがとうございます。

 どうぞ、川上委員、お願いします。

○川上委員 先ほど日本学術会議の御紹介をしたのですが、私自身も嘱託産業医をしていて、今までの先生方の御議論を聞いていて、少しだけ本音を落としていったほうがいいかと思うので、発言させていただきたいと思います。

 産業医の一番大事な仕事は、産業保健チームのリーダーであることではないかと私自身は感じていまして、一方で、現在どうしても医師の裁量権とか安全配慮義務における医師の法的な重要性が注視されているので、医師がストレスチェックの医師面談をしなければいけない、あるいは長時間労働の後の医師面談をしなければいけないと、医師が使われる場面が非常に多くなって、医師がそういう個別の業務に縛られてしまっていて、どうやって経営者をその気にさせるかとか、安全衛生委員会を上手に回すかとか、あるいはどうやって労働者の気持ちをつなげるかということの作業ができなくなっているのは少し問題ではないかと思っています。そういう意味では、個々の業務に余り産業医を縛りつけずに産業保健を職場の中で回していくようなシステムができると気持ちがよいなと思っています。

○相澤座長 大変大事な御指摘だと思います。

 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ。

○石田委員 お手元の資料の4ページで、産業医の職務というのが法律で決められているわけですが、第1番目はやはりドクターだなというところが決められているのですが、2号、3号になってくると、ここら辺の実態はどうなのだという作業環境管理とか作業管理についてというところ。これは7ページの業務の割合、関与した部分を見ると、法律では決められているけれども、実際は余り作業環境とか作業の管理などはここのグラフには出てきていない。やはり法律で決めたけれども、そろそろ産業医の先生にはここは無理なのではないかと。あるいは4ページにある職務を少し見直して、メンタルのこともどんどん出てきたので、ここの職務のところは改定する必要があるのではないかと。現実はなかなか、私も産業医の認定講習で現場を紹介して、工場に協力してもらって、1回20人とか30人とかに参加してもらって、先生方、どうですか、作業環境管理、この事業場のこの現場はどうですかと案内しても、やはりレベルというか、ばしばしこういうところが問題だよねという指摘をしてくれる先生が非常に少ない。

 産業医はこれからどんどん、先ほどお話がありましたように、これからの労働衛生管理というとドクターが中心、大将になってもらわないと困るのですけれども、ちょっと役割が多過ぎる、職務が多過ぎるのではないかと。ちょっと特化して、ここはもうほかのスタッフに任せるような文面になってもいいかなと、そんなふうに感じるのですけれども、また御検討いただきたいと思います。

○相澤座長 ありがとうございました。

 専門家で、例えばコンサルタントというのもありますので、清宮委員、どうですか。コンサルタント会の会長をされていますが。

○清宮委員 常々私も事業場へ行って、今、石田さんが言われたようなことを感じていますので、そこはコンサルタントとして関与できる部分がかなりあると思います。関連でちょっと質問をさせてもらいます。

 道永さん、先ほど森さんが9万人ぐらいの産業医がいらっしゃるということを言われましたが、現在産業医は9万人ぐらいいらっしゃるのでしょうか?

○道永委員 日本医師会の認定産業医は9万を超えています。ただ、5年で更新なのですけれども、実際にそれをやっている先生は6万7,000人だったかと思います。

○清宮委員 その差はどういうことなのでしょうか。

○道永委員 結局、産業医の資格をお持ちになって、今お話があった50単位を取りまして、認定産業医の資格をいただいて、その後、5年ごとに更新をします。それを続けていらっしゃる先生が6万7,000人ということです。

○清宮委員 ありがとうございます。

 あと、先ほど医師会の資料2の中で産業医が関与した業務の割合によりますと、もちろん健康診断関する業務が圧倒的に高いのですが、かなりの時間をメンタルヘルスに関する相談や長時間労働者への面接指導の割合がそれぞれ3割近くを占めています。

○道永委員 今の産業医の先生方は、本当にメンタルヘルスに対する対応にすごく時間がかかって、もちろん長時間労働の面接もそうなのですが、ほとんどそれで仕事が終わってしまうようなことは伺っています。だから、なかなか今決まっている職場巡視が行われていないというのが現実ですので、そこはちょっと変更できればなと思っています。

○清宮委員 実態がそういう状態の中、今度ストレスチェックが入ってくると、面接指導業務がもっとふえることが予測される状況で、私がふだんおつき合いしている産業医の人たちは非常に不安に思っているのです。ただし、このストレスチェックというのは、うまくやっていけたらいいよねという意見も多いのです。私たちも、日ごろそういうことで事業場に対しては、ストレスチェック制度に対しての説明であるとか、準備であるとかを前向きに推奨しているのです。

 産業医の実態について申し上げますと、私、実はきのうもある事業場で安全衛生委員会があって、もちろん産業医の先生と一緒なのですけれども、午前中は職場の巡視をして午後から安全衛生委員会に出席しました。そうした中で、メンタルの問題については時間外になってしまうのですね。では、どうするかという話になって、3人の相談者がいましたが、産業医は開業医の先生なので、後ほど時間を言うから直接医院に来なさいということを言っていただいて処理することができました。現実には、そういう産業医の先生はむしろまれではないかと思うのです。医師会データの中に活動を行っている事業場数が30事業所とかいう人も何人かいらっしゃって、それは具体的にどうしていくのだろうと、私たちの立場からいえばそういう懸念があるのです。また、6万7,000人の産業医がいらっしゃるのになかなか産業医が選任できないという現実もあります。先ほど質問がありましたけれども、私たちも現実に産業医紹介すべく各郡市医師会に紹介依頼するのですが、適切な産業医の方がなかなか見つからないケースが多いのです。このことについて、コンサルタントが産業医の職務をサポートすることで、その負担を減らすということも必要なことだと思います。

 産業医の活動の現状についてもう少し紹介させていただきますと、常時働く人が1,000人以上の規模になって専属の産業医を選任しようと思うと、どこへ相談しに行っても、専属産業医を希望する産業医はいないよと。いないよというのは、多分、名の通った大企業であればすっと見つかるのかもしれないですけれども、1,000人いるから大企業と言われても、派遣社員であったり、パートであったりした人がかなりいて、そういう事業場では専属の産業医を選任することはなかなかできない状況なのではないかと思います。

 ですから、そのあたりも含めて、常時働く人が1,000人を超える規模というのは、ちょっとしたところで結構多くあるのではないかと思うのです。本当に専属の産業医が来てくれるかどうかということが非常に問題です。フィーに対して十分かどうかはわかりませんけれども、それなりに事業場では内部的には処理して、とにかくルールで決まっているから、また、監督署の指導も受けるから専属産業医を選任しようと決意しても、なかなか現実には見つけられないという状況も見受けられます。

○相澤座長 よろしいですか。ありがとうございました。

 どうぞ、高松委員、お願いします。

○高松委員 ありがとうございます。

 1つ目の論点のところでございますけれども、今回、14ページには4番目の論点で「小規模事業場における労働衛生管理の強化について」を掲げていただいて、本当にありがとうございます。ストレスチェック制度の検討時ときにも労働者側からいろいろお願いして、50人未満のところを検討会報告書にも記載いただいたのですけれども、小規模事業場については非常に大事な論点だと思っていますので、50人未満の強化はやっていただきたいと思います。

 1つ目の論点に包含されていると思うのですが、今、清宮委員からも出ましたけれども、企業規模によって働く側というか、現場の部分での違いが大きく出ておりまして、結局1,000人以上の専属産業医がいるところであれば、先ほど川上先生がおっしゃったようなチームでしっかりとやっていただくということが、労働側からも要請してきっちりやっていける可能性は高いのですけれども、何かとコストの問題も含めて経営側も大変でございますので、1,000人未満のところと、さらには100人未満ぐらいのところで、企業規模別にできる可能性と実態というのはばらつきが多く見られるものですから、1つ目の事業場の特徴であるとか業種というところに、有害業務の有無ということも当然入ると思うのですけれども、それ以外にも事業場の規模、あるいは最初にお話の出た小規模、多展開をしているようなところも数多く我々のほうで抱えておりますので、そういう課題に対しての法律的な対応も含めて、今後の方向性みたいなものを論点として御検討の中に入れていただけるとありがたいなと思っております。よろしくお願いいたします。

○相澤座長 大変重要な御指摘だと思います。

 竹田委員、お願いします。

○竹田委員 この検討会の中でこれから十分議論されると思うのですが、2番の「産業医に期待される役割について」のところにもかかわるかもしれませんが、ぜひ私はこの中で大事にしていただきたいと思うのは、事業場の中にいる唯一の医師ですから、例えばリーダーになるというのも非常に大事ですし、医学的なというよりは、健康管理面で対応するのは大事だと思うのですが、作業管理とか作業環境管理に関しても、私は、医師としてしかできないことはあると思うのです。そういうトレーニング、そもそも私が受けてきたこともありますけれども、それが何なのかというのを明確にしていないので多くの先生ができないだけだと思います。

 例えば優先順位が高いこととかはほかにもあるかもしれないですが、必要なことは何かというのを全て出して、医師にしかできないことは事業場の中で何なのかというのをしていかないと、そこに医師がかかわる必要もなくなっていってしまうということもあると思いますから、産業医制度である以上は、産業医にしかできないことは何なのかということも意識をして、議論をさせていただければなと思います。

○相澤座長 ありがとうございました。

 作業環境管理、作業管理についても、医師としてのきちんとしたものがあればやれるのではないかという御意見です。

 どうぞ、大神委員、お願いします。

○大神委員 医師でない立場として、医師でしかできないことを痛感しているものがございます。それはやはり就業上の医学的判断、そこが究極の産業医にしかできないところだと思います。実際、私個人も今、小規模の事業場に行っていますが、認定産業医を取られた先生方は本当に短時間で産業医業務に携わられている実態があるのを感じます。日常の臨床の場面に割く時間が非常に多い中で、現場に来られると、先ほど森先生もおっしゃったように、日常の臨床の業務とはかなり異なる視点でいろいろやらなければいけないことがある。その状況下でどのように仕事と健康の関連する課題等を整理してよいかわからない、職場の何をどのように見たらよいのかわからないといった質問をお受けすることが多々あります。「先生、ここはこういう職場だから・・・」という通訳的なところは私たちでできるのですが、例えばこの健康状態の方がこのまま働き続けるというのはどうなのかといった医学的判断からの勧告権をお持ちなのは医師の先生なので、諸状況を整理した情報をお伝えし、「先生、(医師として)どのように判断されますか?」と、尋ねざるをえません。

 昨今、たとえば、営業現場であっても、エリアを定めていない職場で非常に長距離を車の運転をされる労働者だったり、有害業務ではないけれども、この健康状態で、この治療状況で、このまま働き続けるのはどうなのだろうと思うような労働者の方は少なからずいらっしゃいます。やはり医師の先生に行っていただきたい究極の業務は、就業上の医学的判断に尽きるのではないかと思います。

 医師以外の職種は、周辺のところを埋めたり通訳的なことができます。もちろん産業保健全般に造詣が深くて、実効性ある支援活動が幅広く適切に実行できる産業医の先生方には、その能力を発揮していただきたい一方で、短時間でしか対応できない先生には、医師でしかできない業務をしっかりしていただけるような仕組みにできると、事業者にも労働者にも非常に望まれる活動になるのではないかと思います。

○相澤座長 ありがとうございました。

 どうぞ、森委員、お願いします。

○森委員 今のお2人の竹田先生、大神先生の意見には全く賛成です。産業医が事業場で何らか役割を果たす時に、現場を知らない、現場を理解していないという状態では、職務適性の判断もできないということになります。産業医が、例えば局所排気装置のところに行って、この風速がどうだという指摘をする場合もありますが、多分それはほかの職種、またはもっと適した専門家がいると思います。しかし、有害業務を行っている現場を把握している、またはストレスチェックの全体像を把握している、とにかくどのような職場で、どういう働き方をしていて、何が起こっているかを知らない状態では、産業医の個別の役割を果たすことは、とても厳しいと思います。

 産業医の職場巡視では、今のようなリスクアセスメントのようなプログラムが基本の時代に、新たに産業医がそこで問題点を何か指摘をすることが仕事なのかというと、そのような役割を果たさなくてもよいかもしれません。しかし、職場巡視をすることによって、労働者の働いている現場を知っていることは大変重要で、知っているからこそ、例えばメンタルヘルス不調の人が職場に戻ってきた、心筋梗塞の治療を受けて戻ってきたときに、そこで適切な判断ができることになります。職場巡視は一つの活動例ですが、現場理解ということは非常に重要で大前提であり、産業医の業務に作業環境管理や作業管理についても残す必要があると思います。

○相澤座長 職場巡視の目的ですね。健康管理を行う上での職場巡視も重要だよと、おっしゃるとおりですね。

 経営側から河上さん、いかがでしょうか。

○河上氏(小林委員代理) 商工会議所のほうで相談が来る内容を言いますと、やはり産業医の活用に慣れていないような事業所が多いなという感じがいたします。ストレスチェックの御相談も多いのですけれども、どちらかというとストレスチェックそのものというよりも、安全衛生管理体制であるとか、産業医の先生の役割とか、そういった根本の質問や相談が多いのかなということで、やはりまだ知れ渡っていないのかなと。

 あと、経営層の理解に温度差がありまして、こういった安全衛生の話をよく知っている人だけではなく、また、それぞれ衛生管理者はいるとしても、その人が余りコミットしていなかったり、そういった差が非常に多いなというのを今、感じているところでございます。

 以上です。

○相澤座長 ありがとうございました。

 あとはいかがでしょうか。あと20分ぐらいありますけれども、何か一言。

 どうぞ、三柴委員、お願いします。

○三柴委員 私は医師ではないので、ちょっと引いた立場から産業医制度や産業医の先生方と触れさせていただいてきて、いつも、産業医が医師である意味は何かとずっと悩んできたのです。今のところ、どうもそのスペック、要するに医師になれるぐらいのスペック、また、その後経験を積んでいくスペック、それと現に蓄積した経験と説得力というのが、実は実務上も制度上も大きい意味を持っているのかな、という感じがしています。今、例えばフランスでも、ここまでもお話があったように、産業保健に関わるチームをつくって、産業医はそのリーダーになるという方向で制度改変が進んでいっています。その際、医師としてリーダーシップを発揮する鍵は何かといったら、やはり就業判定機能なのですね。就業判定機能というのは、結局ほかのいろいろな要素とかかわってくる、職場を知るということも当然にかかわってくるから、やはり核になるのかな、とは思います。

 それらを基本として、更に打って出るならば、企業内での産業保健制度の企画から分析、PDCAを回していくサイクルのかなめとして活躍していくということになるのだろうとは思うのですけれども、いずれにしても、かなめとして動く以上は幅広な問題を扱っていかなければいけないわけだから、臨床の先生以上にいろいろな職種、いろいろなタイプの方とかかわっていくべき仕事なのかなと感じます。あくまで、非医師からの意見です。

○相澤座長 大変重要な指摘だと思います。

 いかがでしょうか。

 どうぞ、高松委員、お願いします。

○高松委員 ありがとうございます。

 論点に包含されているとは思うのですけれども、実はストレスチェック制度をつくったときにもそうでしたが、治療と職業生活の両立等支援の検討でもそうなのですけれども、これは産業医の役割というよりも、いわゆる使用者側、経営者側の役割になると思うのですが、結局、外部の医師の医療、治療を受けたところとの産業医を使っての連携というところをかなりしっかりしていく必要があるのではないかと思います。治療と職業生活の両立等支援の際にも重要になってくるのは、実際に治療を受けた外部の医師から、産業医を通して企業側、あるいはそこで働く職場の皆さんの理解を得るということが両立していく上で非常に大事なのでございますけれども、なかなかそういう連携がうまくできていない。特に産業医とそこまでコミュニケーションをとっていくことが実際にできるかどうかも含めてこれからも課題になっていくわけです。ストレスチェックも、外部に委託した医師と産業医との連携、コミュニケーションも非常に大事なのですが、そこにはそれぞれの経営者という視点でのかかわりが非常に重要になってくると思いますので、医師と産業保健スタッフという検討課題もありますけれども、産業医を通じての外部との連携についての何らかの検討もしていただけるとありがたいなと思っております。

 以上です。

○相澤座長 特にメンタルヘルスの就業復帰のこととか、そういう場面で非常に大事なことだと思います。ありがとうございます。

 どうぞ、竹田委員、お願いします。

○竹田委員 今の外部との連携に関しては、産業医を初めとして産業保健スタッフもしっかりかかわって、理解してやっていかなければいけないというのは、むしろ私は当然のことと思ってきていたのですが、その理解や実施が足りないようであれば、それはまた専門家の中でやらなければいけないことです。

 もう一つ、外部との連携の場合、例えば外部の医療機関で治療している主治医の先生たちにも理解いただいたりとか、あるいは今もお話があったように事業者の方にも理解いただいたり、それだけではなくて、労働者の方にも理解いただかないと、自分が健康を害したときに、例えば産業医に相談しに行っていいかどうかわからないという方も少なからずいらっしゃるので、今、検討会の論点の中で上がっていることについて、ここにかかわる人全てにどうやってその内容を伝えていくかというのも非常に大事なことかと思います。事業者だったり、労働者だったり、関連する外部の機関ですね。医療機関を初めとした機関に、どうやって産業医が機能しているのか、機能させることができるのかということも伝えていくということは必要かなと感じます。

○相澤座長 大変大事な指摘だと思います。ありがとうございます。

 どうぞ、甲田委員、お願いします。

○甲田委員 今まで産業医の業務の質だとかその仕事、資質の議論が大分されていて、その中で言うと、その他の視点のところで、私は先ほど言ったように、事業場に入って産業保健サービスという目から見る機会が多いので、どんなものが必要なのかなとよく見るのですけれども、2つ挙げられていて、多分重要になるのだろうと思うのは、もう一つ、外部機関のサービスのかかわり方とか、あるいはこれらのサービスの提供のあり方が、やはり見ているとかなり足りないような感じもいたします。十分育っているのかどうなのかという議論もしないといけないと思います。基本的には外部の労働衛生機関の情報をどう事業所で共有していくのかというような仕組みづくりも多分大事になるのだろうなと。

 それから、2つ目の論点というのは、やはり真面目に議論しなければいけないような気もします。遠隔で産業保健活動がやられることの有効性。どういうものをリモートというか、遠隔でやったほうがいいのか。要するに、これだけ小規模事業所がかなり多くなってきて、先ほど言ったように産業医を立てるだとかいう形で、カバーできないものを実際どうやってカバーするのか。前の論点とも重なるところだと思うのですけれども、共通する業種だとか、同じ地域エリアだとか、産業医の共同選任事業のように一部過去にやられていたことがあると思うのですけれども、そういったものを仕組みだとか制度としてもう一度生かして、そのときにどういうサービスが本当にそこで必要なのかというところを議論することが必要かと思います。あまねくということではないですけれども、小規模事業所だとか、エリア的に非常に中山間部、私も前、非常によくわかるのですけれども、都市部以外のところでは非常にそういう産業保健サービスを受けられない事業所というのが実際あったりいたします。それから、業種によってはそういったサービスの存在する知らないことも多分あるのだろうと思うので、そういった論点も、この場で少し議論していただければ、4番とかにもかなり波及するので、いいのではないかと思います。

 ですから、多分次回以降になると思うのですけれども、今までの経緯とか課題というのもある程度整理して、議論できればいいような気がいたします。

 以上です。

○相澤座長 ありがとうございました。

 土肥委員、お願いします。

○土肥委員 産業医のこれからを検討する際に、やはりこれからの日本が高齢化して、後期高齢者を前期高齢者が支えていくような仕組みの中で生きていかなければいけないわけですから、健康経営的な観点で一つの役割を産業医が担っていくというような考え方を含めて、役割の認識とか共有を行っておかないと、余り役割を切り刻んでいったりし過ぎると、そういう観点が落ちていかないかという不安を持つ。つまり、幅広く大きく捉えた上で、やり方はいろいろあると思うのですけれども、たくさんの仕事をしなければいけないから産業医の仕事のここを切っておこうというのはちょっと考え方が違っていて、大きく捉えた上で、こういうものが得意な先生と、こういうものが得意な先生と、こういうものが得意な産業医の先生方がいるよねというような考え方をしたほうが、全体の統合性を考えるといいのではないかという気がいたします。

○相澤座長 ありがとうございます。

 どうぞ、増田委員、お願いします。

○増田委員 最初に「産業現場の実態やニーズを踏まえ」とあるのですが、そのニーズに関するところの視点がもうちょっとあったほうがいいのではないかと思いましたので、発言させていただきます。例えば、弊社は全国展開しているスーパーで、50人以上の店舗ばかりですので産業医を選任しております。法定の定めで月に1回、産業医による職場巡視をやってくださいということになっています。ところが、これはちょっと批判のそしりを受けるかと思いますが、職場巡視をやってもらって、職場環境の改善にすごく役立ったという指摘をもらったことはほとんどないのです。けれども、法令の規定があるので実施してもらわないといけない。一方で、現場ではメンタルヘルスの問題で困っています。勤怠が乱れていて、ちゃんと仕事をしないで問題行動を起こしている従業員がいてどうしたらいいか、現場は悩んでいます。そういったところに時間を割きたくても、どうしてもまずは職場巡視、次に健康診断の事後措置と、現場が求める活動と産業医が実施する活動に乖離が生じている状況がございます。

 いま申し上げたのは端的な一例でして、作業管理、作業環境管理はなくてもいいというわけではないのですが、ある程度事業場の特性、業種などによって優先順位というのは変わってくると思いますので、そのあたりをもう少しフレキシブルに変えられるような視点を入れていただけたらと思います。例えば月に1回の活動という規定がありますが、小売業の場合、誕生月健診ではなく、大体店舗毎に一斉に実施しております。すると、ある時期に健診の事後措置が集中します。残りの月はそれほど発生しません。それであるならば、月1回ではなくて、例えば年12回にして割り振るとか、その辺の裁量は少し持たせていただければということを感じたりしております。「ニーズを踏まえ」という文言が入っていますので、そういった論点も入れていただければと思いまして、発言させていただきました。

 以上です。

○相澤座長 ありがとうございました。

 今回初めてでございますので、広範にわたって貴重な御意見をたくさんいただきまして、ありがとうございました。専属の産業医と嘱託の産業医ということもありましたので、先ほどのアンケートは単純集計でございましたけれども、分類された産業医のクロス集計もできれば日医のほうでやっていただければありがたいと思いますが、よろしいでしょうかね。

 それから、各界の代表の委員の方が出ておられますけれども、やはり現場のニーズとか、そういったことをもうちょっと詳しく知る必要もあると思いますので、そういった団体等のヒアリングをこの委員会の次回の委員会でやっていってはどうかと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですかね。ありがとうございました。

 きょうはいろいろな御意見をいただきまして、多様化しております職場に対応するような産業医のあり方ということで大変貴重な御意見をいただきました。専門家にある程度任せるところは任せて、また、産業医もチームのリーダーとして働くような機能、あるいは事業場外の機関との連携、あるいは医療機関との連携ということも大事です。また、産業医の質を高めるための研修というのが非常に大事だということでございますけれども、何を中心にして研修をしたらいいのかということもこれからの議論になると思います。本日は大変貴重な御意見をたくさんいただきまして、どうもありがとうございました。

 それでは、事務局から、次回の予定等についてお願いいたします。

○中村室長補佐 たくさん御意見をいただきましたので、一度事務局のほうで整理させていただいて、次回以降の議論につなげたいと思います。

 次回の日程はまだ決めておりませんで、また先生方と調整させていただいて、決めさせていただきたいと考えております。

 事務的な御連絡なのですけれども、きょう、委員の方々のお手元に出欠表を配らせていただいておりますので、お帰りになる前にそちらを記入していただきますよう、よろしくお願いいたします。

 それでは、本日の検討会はこれで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。


(了)

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