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2015年9月30日 第9回HTLV-1対策推進協議会

健康局結核感染症課

○日時

平成27年9月30日(水)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第14会議室(12階)


○議題

1 HTLV-1総合対策の概略と現状について
2 報告事項
 (1)インターネット等で販売される母乳に関して
 (2)希少がん医療・支援のあり方に関する検討会での状況報告について
 (3)臓器移植後に伴うHTLV-1関連疾患発症の実態について
3 HTLV-1関連疾患研究課題の成果について
 (1)HTLV-1関連疾患の原因遺伝子の探索
 (2)抗HTLV-1ヒト免疫グロブリンによるHTLV-1の革新的感染予防モデルの開発とその有効性の検討
 (3)臨床試験、発症ハイリスクコホート、ゲノム解析を統合したアプローチによるATL標準治療法の開発
4 その他

○議事

○結核感染症課長補佐 ただいまより、第 9 HTLV-1 対策推進協議会を開催いたします。はじめに、構成員の変更並びに本日の出欠状況について御報告いたします。今日の資料セットの最後の1枚紙、参考資料 2 を御覧ください。この協議会の構成員は 2 年ごとの任期とさせていただいており、平成 27 9 月の改選をもちまして伊川構成員の後任として内田構成員、林構成員の後任として稲葉構成員、林田構成員の後任として吉田構成員に、本協議会に御参画いただくこととなりました。本日は構成員 15 名中 14 名に御出席いただいており、吉田構成員からは欠席の御連絡を頂いております。また、本日は参考人として京都大学大学院医学研究科ゲノム医学センターの松田文彦教授、国立感染症研究所血液・安全性研究部の水上拓郎室長に御出席いただいております。事務局の異動についても御報告いたします。 9 19 日付けで結核感染症課長が井上から浅沼に異動になりました。

 次に、配布資料の確認をいたします。議事次第、配布資料一覧、構成員名簿、座席表のほか、資料 1-1 、資料 1-2 、資料 2 7 、参考資料 1 2 を御用意しております。配布資料一覧と照らして不足等がありましたら、事務局にお申し付けください。

 それでは、冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。以降の議事運営は渡邉座長にお願いいたします。

○渡邉座長 まず、本日の議題を確認します。議題の 1 HTLV-1 総合対策の概略と現状について」、議題の 2 が報告事項として「 1. インターネット等で販売される母乳に関して」「 2. 希少がん医療・支援の在り方に関する検討会での状況報告について」「 3. 臓器移植後に伴う HTLV-1 関連疾患発症の実態について」、議題の 3 HTLV-1 関連疾患研究課題の成果について」として、「 1.HAM の発症に関わる遺伝因子の探索」「 2. HTLV-1 ヒト免疫グロブリンによる HTLV-1 の革新的感染予防モデルの開発とその有効性の検討」「 3. 臨床試験、発症ハイリスクコホート、ゲノム解析を統合したアプローチによる ATL 標準治療法の開発」、議題の 4 「その他」を予定しております。構成員の皆様には、円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたします。

 それでは早速議事に入ります。議題の 1 、「 HTLV-1 総合対策の概略と現状について」ということで、事務局より資料 1-1 1-2 の説明をお願いいたします。

○結核感染症課長補佐 資料 1-1 のスライド番号に沿って説明いたします。 HTLV-1 総合対策の概略と現状として、スライドの 2 HTLV-1 総合対策の骨子です。推進体制協議会について推進しているわけですが、重点施策として大きく 5 点、感染症予防、相談支援、医療体制、普及啓発・情報提供、研究開発の推進ということで、それぞれの進捗状況を御報告いたします。

 次のページのスライド 3 4 です。まず感染予防対策として大きく 2 つ、妊婦の HTLV-1 抗体検査、保健指導の実施、保健所における HTLV-1 抗体検査と相談指導の実施とあります。 4 枚目のスライドが「妊婦健康診査における HTLV-1 抗体検査の実施状況」ということで、資料の中ほどにありますように、 1,476 の市区町村全てにおいて、 HTLV-1 抗体検査を実施しているという状況です。

5 枚目のスライドを御覧ください。「 HTLV-1 母子感染対策事業の各都道府県における取組状況」ということで、今年の 4 1 日現在の状況です。 HTLV-1 母子感染対策協議会の設置状況については、設置済みの部分が 37 から 39 、未設置が 10 から 8 となっております。また、「 HTLV-1 母子感染関係者研修事業の実施状況」は、医療従事者の部分が 33 から 35 に実施済みが増えており、相談窓口従事者についても 34 で実施されております。次に「 HTLV-1 母子感染普及啓発事業について」です。普及啓発実施済みの所が 36 から 38 に増えています。スライドの 6 枚目がそれを総括した都道府県別の一覧表で、黄色い部分が前年度より改善している部分です。

 スライドの 7 枚目が、「保健所における HTLV-1 抗体検査及び相談事業の実施」です。平成 23 年度から特定感染症検査等事業において、 HTLV-1 の検査と相談ができるようになっております。検査・相談実績は 7 枚目のスライドの囲みにありますとおり、平成 26 年度は検査件数 170 件、相談件数延べ 443 件、 ATL HAM 相談がそこにある数字のとおりとなっております。

 続いて「相談支援について」ということで、 9 枚目のスライドです。相談支援のために相談の手引き・マニュアル等の作成をしており、こちらにある手引きと保健指導のマニュアルを研究班により作成し、周知しているところです。

10 枚目のスライドです。相談窓口については、各自治体や医療機関等に設置をお願いしておりますが、相談窓口登録数が平成 27 9 月現在で 1,430 か所です。窓口数がそれぞれ一般、 ATL HAM 、母子感染とあり、括弧内の数字が昨年の数字で、その比較がそちらになっております。

11 ページが医療体制です。スライドの 12 枚目ですが、医療体制の整備のために研究等、ガイドライン等をやっております。精度の高い検査法の開発の研究班について、診断法の実用化に向けた研究を進めているほか、診療体制の整備ということで HTLV-1 情報サービスで、相談・診療可能な医療機関の情報や臨床研究の参加医療機関のデータベースなどを情報提供しております。

 また、研究班では診療ガイドラインの策定をしております。スライドの 13 枚目を御覧ください。 HAM の診療マニュアルについては、平成 24 年度の研究班で作成して周知をしておりますが、現在、この改定に向けて調査研究を継続しているところです。

 スライドの 14 枚目ですが、 HTLV-1 関連疾患に対応できる診療機関・臨床研究機関について、こちらにあるそれぞれの医療機関の情報を HTLV-1 情報サービスで検索ができるということで、情報提供をさせていただいております。

15 枚目のスライドが「普及啓発・情報提供事業について」です。 16 ページにありますように、 HTLV-1 のポータルサイトを厚生労働省のホームページに設置し、診療情報や医療機関の情報などにアクセスできるように、情報提供をしております。

17 枚目のスライドが「 HTLV-1 の情報サービス」です。研究班でそういった情報を取りまとめていただいて、一般の方向けにも医療機関の情報を検索していただけるように提供しております。

18 枚目以降が「研究開発の推進」です。 19 枚目のスライドですが、この HTLV-1 関連疾患の研究については、新興・再興感染症に関する研究事業、難病・難治性疾患克服研究事業、がん対策推進総合研究事業及び次世代育成基盤研究事業など、それぞれの領域でそれぞれの関連研究をしており、合計で 10 億円の研究予算となっております。平成 27 年度に採択している研究の一覧が 20 ページ以降にあります。 20 枚目のスライドが、がん対策推進事業関連、 21 枚目が難治性疾患政策研究関連、 22 枚目が新興・再興感染症の研究事業関連、 23 枚目が成育疾患克服等、次世代育成基盤研究の関連となっております。資料 1-2 が昨年度末までの関連研究の成果の概要を一覧にまとめたものですので、後ほど御覧いただければと思います。事務局からの説明は以上です。

○渡邉座長 ただいまの説明に対して、御意見等がありましたらお願いいたします。

○森内構成員 スライド 6 の○△×の説明で、△は既存事業で対応ということですが、×から△になっている意味がよく分かりません。既存事業があったのなら、もともと×という回答にはならないと思います。これがどういう意味かよく分からないので、御説明をお願いできますか。

○母子保健課生殖補助医療対策専門官 前回、 10 都道府県においては今まで HTLV-1 の対策事業をやっていないという報告を受けておりましたので、昨年度末に各県にヒアリングをしたら、実はやっていたということになりました。しかし今まで×が書かれていた以上、そこを分かりやすくするために△にしておりますので、実際はやっておられたという認識で相違ないと思います。

○齋藤構成員 富山大学の齋藤です。スライド 6 4 つとも×の所が、長野県と静岡県の 2 県です。大分減ってきたのですが、静岡県の産婦人科医会の会長と浜松医大の教授にお願いして、今年度から設置するということを約束していただいております。長野県にもお話したのですが、「症例がいない」などと言って全く取り付く島もないので、やはりこれは厚生労働省のほうからも少し前向きに考えていただきたいという形で、お話をしていただきたいと思います。

○渡邉座長 今御発言がありましたが、厚生労働省から地方自治体に対して何らかの働きかけをするということは、現実的にあり得ることでしょうか。

○母子保健課生殖補助医療対策専門官 恐らく個別の県にということではなく、ブロック会議等々、各都道府県を回ってお話や行政説明をするときがありますので、そのときに改めてお願いするということを各県でもお願いしておりますから、その一連のお願いを引き続きしていくということになります。ですから全く対応できないというわけではないのですが、改めてお願いするというような立場です。

○岩本構成員 前にも聞いたかもしれないのですけれども。もちろん全国的に均一に発生する感染症でないというのはよく分かりますが、この対策のスライド 6 に関係して、慢性の感染症であって、そこから ATL HAM が出てくるわけだから、 HTLV-1 感染というプレバレンス(有病率)が大体どのぐらいあって、現在インシデンス(罹患率)としてはどのぐらいあるということが少しデータになっているほうが、そのことに関してどの県では対策ができている、あるいはいないというほうが分かりやすいように思うのです。ブロック別でもいいです。このブロックに関しては有病率が何人ぐらいで、罹患率としてはどのぐらいあって、それが HTLV-1 感染及び ATL なりの病気の発症に関する疫学的な数字として見えないならどこに問題があるのか、見えるのならそれを示して頂いた方が分かりやすいように思います。

○渡邉座長 私の理解としては、プレバレンスに関するきちんとした全住民の情報を取る作業というのは、現実には難しくてできませんが、それに代わるものとしては献血者の抗体陽性率というのが現実的に把握されていて、地域別にデータを出すことは可能な状況になっているというのが基本だと思います。

○岩本構成員 感染症法には入っていないのですか。

○渡邉座長 入っていないと理解しています。

○岩本構成員  5 類とかにも入っていないのですか。

○渡邉座長 では、これは確認をしていただいて、後で正確なお答えをいただきます。

○岩本構成員 私も入っていないような気がします。

○渡邉座長 私も入っていないような気がするのです。同じような意味で発症の報告とか、そういったことは義務付けられていませんので、そういう臨床統計ができてないのだと思います。

○岩本構成員 報告ベースで実際にどのぐらいあるかないかを把握することと、推定でどのぐらいの患者が出ているのかということが両方あるのが、できればベストです。報告ベースと研究ベースで数字を見ながら考えないと、現実の対策はなかなか打っていけないのではないかと思います。

○渡邉座長 御指摘ありがとうございます。

○内田構成員 大分県では結構以前から妊婦の HTLV-1 抗体を調べております。毎年毎年陽性率を出すという作業はできていないのですが、節目節目である程度は。ただ、住民全員という形の把握は、当然できておりません。妊婦の中でどれぐらいの陽性率かというのは、こういった事業を通じてある程度把握は可能です。

○渡邉座長 それ以外に何か御発言はありますか。先ほど岩本先生から御指摘があったような、基本的な情報をきちんと拾い上げるという体制をどのような形で組むことができるかというのは、今後検討すべき課題だと認識します。

○岩本構成員 住民全員の状況を調べるのは不可能に決まっています。既にある報告された数字をもとに、今現実に起こっている感染や病気の発生はどのぐらいなのかを推定する研究が必要だと思います。既に診断を受けて把握されている方が大体どのぐらいいらして、対策を打ったら新規感染や新規発症が減っているのか減っていないのかという推定と両方が必要です。どの感染症もできているわけではないし、慢性感染症は難しいのですが、報告システムと事実を推定する研究、そういうものが両方必要だと思います。

○渡邉座長 疾患に関して ATL とか HAM とか個別のことになると、それぞれの研究班で一生懸命調査をやっているのですが、法的に報告の義務などがない場合には、基本的にアンケート調査の回収率が非常に低く、正確なというか、本来の情報がなかなか把握しにくいところがあるかと思います。希少がんとの関係で、その辺がどういうように取り扱われるのかは今後様子を見る必要があるのではないかと思います。

○岩本構成員 基本は HTLV-1 感染ですよね。

○渡邉座長 おっしゃるとおりです。

○岩本構成員 基本が HTLV-1 感染にあり、そこから ATL HAM が発症してくるという全体像でとらえる必要があります。

○渡邉座長 その視点で見るのが非常に大事だということですね。すみません。この間の私の発言は座長としてではなく、一構成員としての発言です。ほかに御発言はありますか。

○永井構成員 今の件ですが、スライドの 20 番に厚生労働省の研究事業として、 HTLV-1 キャリアと ATL 患者の実態把握という課題があるわけです。そういう意味では研究班としてやられているはずだし、そこから報告があるのではないかと思うのです。

○結核感染症課長補佐 先ほど感染症法上の位置付けについて確認しました。届出疾患にはなっておりませんので、件数はないのですが、献血の陽性率や妊婦検診の陽性率が把握できるかどうかについては、改めて確認させていただきたいと思います。また、研究ベースでは今御指摘があったように、キャリアの方については以前の厚生科研で約 107 万人という推計値があります。

○渡邉座長 先ほど御発言がありましたように、キャリアと患者の実態把握というのは、研究班で取り組んでおりますが、方法論的にはやはり限界があるために、正確な実態をつかむには、なかなか大きな障害があるというのが現状だと思います。その都度分かった範囲でいろいろな情報が、報告書にまとめて記載されております。ただ、岩本先生からの御指摘は、やはり慢性ウイルス感染症という視点から、全体像をきちんと把握する基礎になる数字を捉えていくという視点から、きちんと取組を整備したらどうかというご発言だと思いますので、その点はまた御検討をよろしくお願いしたいと思います。

○小森構成員 日本医師会の小森でございます。確か 2 年前のこの協議会で佐竹先生が、全国の献血者の陽性率を。ただ、あれは 8 9 年前の方を対象にしていたのです。その後の研究を継続してされていらっしゃるのであれば 2 年ごととか毎年とか、そういう報告をしていただければ、年次推移も分かるのではないかと思いますので、是非御検討いただきたいと思います。

○渡邉座長 一応そういった研究班にも関係している立場で、私から御報告させていただきます。一度あの時点で整理した後に、全国の感染者数推定の作業は行われておりません。そろそろ 10 年近くなりますので、もう一度見直す時期に掛かっているかとは思います。ただ、中谷課長補佐からも御発言がありましたように、献血者のデータに基づいた推定値が 107 万という数字が出てきますが、当事者側から見ますと、これがどうも一人歩きをしているという感じが否めません。

 というのは、献血者のデータというのは「ヘルシードナーエフェクト」と言って、実態を非常に低く見積もってしまう、アンダーエスティメーションするということが常識です。 6 月に開催された HTLV-1 の領域の国際学会における、アメリカのパブリックヘルスの専門家の発表でも、ヘルシードナーエフェクトというのは実態の 5 分の 1 、つまり HTLV-1 感染や HIV 感染は 5 分の 1 しかつかまらないので、住民のデータはそれを 5 倍して考える、これが疫学の常識だと、その会場で堂々と話しておりました。 HTLV-1 キャリアが 5 倍の 500 万人もいるかと言われると、私どもも実態としてはおかしいと思いますが、やはり 107 万という数字が一人歩きをし過ぎている感じが致します。あくまでも献血者のデータであるということは踏まえておく必要があると思います。医師会の小森先生から御指摘がありましたように、たとえそういうデータであっても定期的に見直して、きちんと報告していくという取組は、私としても必要であろうと考えております。

○永井構成員 細かいことを言ってすみませんが、妊婦の陽性率は、きちんと全国的に発表されているものとは違うのですか。

○齋藤構成員 妊婦のデータは4年前に発表させていただきました。その各年代ごとの陽性率というのは、先ほどの献血の推定率とほぼ一致しております。ですから 5 倍というほどではないのですが、その献血者の値というのが、やはり日本人のキャリア実態数を反映しているのではないかとは思われます。ただ、これはあくまでも妊婦のデータですので、高齢者については分からないのですが、若年者についてはほぼ一致しておりました。

○永井構成員 各都道府県の対策が十分でないという話のときに、この県の妊婦の陽性率がという話はできないということでしょうか。

○齋藤構成員 それはできます。産婦人科医会の先生方から日本の分娩数の約 7 割、 70 万件ぐらいのデータを集積し、各県で集積しております。恐らく十分そのデータのバリューはあると思いますので、そのデータをもって、例えば全くやっていない県はどのぐらいのキャリア数がいるかを推定することは可能だと思います。

○渡邉座長 献血者から推定された感染者の比率と、妊婦の実際の検診の中で得られているデータが非常によく一致するというのは、大変興味深いことですが、もう 1 点忘れてはいけないことは、年齢とともに抗体陽性率が高くなるということです。これは少なくとも社会環境要因のみでは説明できない、まだ我々の知らない理屈があるというように考えておくべきであると思います。若年者の抗体陽性率が低いことと、この若年者の抗体陽性率が高齢になってもそのまま維持されるとは限らない事実は、認識しておくべきだろうと思います。これはいわゆる発展途上国である中南米諸国における抗体陽性率の分布も、若年者が低くて高齢者が高いという先進国の日本と同様のパターンを示しております。

 更に覚えておいていただきたいのは、日本ザルにも同じウイルスがいるのですが、サルにおいても若年者は抗体陽性率が低く、高齢者は高いということです。したがって、何らかの形で感染が顕在化して抗体陽性になるか、あるいは大人になってからの水平感染が起こっているというのは、確実に事実として存在するだろうということです。我々人間の場合は水平感染の実態がだんだん明らかになってきておりますので、若年者の抗体陽性率と全体の抗体陽性率の議論はそういう点を踏まえて、きちんと議論すべきだろうと考えております。以上、補足です。

○森内構成員 スライド 6 に関しては取りあえず母子感染対策の問題ですので、先ほど齋藤先生もおっしゃったようなデータを、きちんとこの表にも出すような形で一覧をまとめ、それぞれの県の担当者にお渡しするといいのではないでしょうか。例えば、長野県も人口が結構ありますので、分娩数は 2 万ぐらいあるのですよね。

○齋藤構成員  1 6,600 くらいです。

○森内構成員 そうであれば多分、少々キャリア率が低いと言っても確実に毎年おられるわけですから、「いない」とか「相談がない」というのは受皿がないから相談ができないという事実に当然なるはずです。ですから是非、次回からはこの表にその数字を加えていただければと思います。

○岩本構成員 もう 1 点は、 HTLV-1 に感染した後、非常に長い期間を経過して ATL を起こしたりするわけですので、例えば妊婦検診で診断された方の経過をどのようにフォローできるかという検討ですね。例えば、経過のフォローアップが医療費としてもフィージブルかどうかということも検討が必要だと思いますが、本人が自分は一度 HTLV-1 感染の診断を受けたということを知り、年に 1 回あるいは 2 年に 1 回の血液検査なり、できるだけ最小限の検査をしていって、早めの ATL 発症をつかまえるという医療間の橋渡しが必須と思います。妊婦の時の診療と今度は白血病を起こしたときの診療では、全く医療状況が異なる、この橋渡しをどのように作っていけるか、そういうところについて、今までに何か手は打たれているのでしょうか。もし陽性になった方がいた場合、その方のその後の診療ということです。

○渡邉座長 私が答えていいのか。 ATL の専門家の塚崎先生にお答えいただければいいかと思って迷ったのですが、私の理解している範囲では、今おっしゃった問題点は、まだきちんと解決されていません。これまでは母子感染ということで感染予防の視点から、妊婦の検診といろいろな介入が行われてきましたが、そこでいつも齋藤先生が御指摘になっておられるように、母親が感染していると宣言されたことに対して、その後のケアの体制が非常に抜けているので、それをどうしようかという議論は意識されて議論はされております。しかし具体的なきちんとした対応がまだできていないし、対策が決まっていないというのが現状です。

○齋藤構成員 富山大学の齋藤です。追加させていただきます。妊婦は検診をしてキャリアというのが分かったときに、まずは最初に母子感染を防ぎたい、お子さんにこの感染を移したくないということは強く望まれます。そこで母乳を選択されるのですが、その後にふと我に返って、「では、私はどうなるのですか」ということを必ず質問されるのです。産婦人科医にとってその質問が非常にきついと言いましょうか、本当にどうしてあげたらいいか分からない。本当に 20 数年来、こういうことでずっと悩んできたのです。やはり ATL が発症してからの治療も大事ですが、発症を予防する研究についても是非、実際に産婦人科医の立場から強くお願いしたいと思います。

○岩本構成員 そこのところのシステムは必要ですね。

○渡邉座長 その件を塚崎先生からお願いいたします。

○塚崎構成員 国立がん研究センターの塚崎です。今日は後で ATL の治療の最近の動向についてお話しいたしますが、実際に ATL という診断を受けても低悪性度の病態であるときには、ウォッチフルウェイティング、高悪性度になるまで経過を慎重に観察するということが今は標準治療です。そういうことからすると、先ほど齋藤先生からお話があった発症予防も大変重要ですが、ある意味、今は低悪性度 ATL に対して経過観察しかできないという状況を両方合わせて、そこに解決策を見いだしていくという研究が今、少しずつ進んでおります。ですから、そういう点を踏まえ、妊婦のほうへも還元できればと思います。

○渡邉座長 それに関連して、私も一構成員として補足させていただきます。発症リスクの評価ですね。キャリアの方々からどの人たちがその病気を起こすのかということに関する研究もずっと継続して、リスクの評価の研究が進んでいます。今はっきり言えることは、少なくともキャリアの 4 分の 3 の方は一生 ATL を発症しない。それは判定がほぼ確実にできる。 4 分の 1 の方がリスクグループであるというところまでは明確に言えます。ただ、それを御本人に伝えることができないのです。その理由は、ハイリスクとされた 4 分の 1 の方にとっては、「有効な治療法のない致死的な病気を将来発症しますよ」と告知された様に受け取める可能性があるということです。つまり発症予防あるいは適切な治療法が確立していない以上、「あなたはリスクがあります」と言うことは、「将来、深刻な状況になりますよ」と告知することと同じに受け止められかねないので、現場では今、それを一番悩んでいるところです。

 更にやれることは、 4 分の 1 の中でも実際に発症するのは更に少数ですから、より研究を進めて、本当のリスクグループを絞り込む作業と、そのリスクグループに対して疾患の発症予防ができる手段を開発する、これに尽きると思います。そこが準備できない限り、リスクをキャリアの方になかなかきちんと説明できないという状況が続いていて、非常にジレンマを抱えています。我々の現在の研究レベルではだんだんリスクグループが分かって、実は「キャリア」と言われても一生心配要らない方が大多数なのですが、それが言えないというのが今の状況になっていると思います。

○木下構成員 今いろいろな議論が出たとおり、妊婦の抗体をチェックして、陽性妊婦に対してその後フォローアップする場合に今座長からお話がありましたように、ハイリスクのグループとそうでない者とで全く分からないわけですから、将来についての話や心配に対して答えるときには、ハイリスクと同じような対応をせざるを得ないのです。実は、 4 分の 3 というローリスクのために全く問題のない方たちに対しても、そういう対応をせざるを得ないというのが実状だと思います。

 前にもここで議論がありましたが、抗体陽性の妊婦の方々にしてみればとにかく事実を知りたいという思いは非常に強くございます。もしもハイリスクであると判明しても内科の専門医を中心に、それに対応するような仕組みさえできていれば、現実的にはより注意深い観察をせざるを得ないわけですから、抗体陽性妊婦の希望に対しては応えてあげるということでの方向性は、是非お考え願いたいと常々思っております。

 と申しますのは、岩本先生から言われた予後、疾患がどのぐらいあるかということを調査することも大事ですが、抗体陽性の方が本当にどのようになっていくかを知り、全体像を見るという意味では、抗体を持った方たちの経過を知ることは必要です。ハイリスクかどうかの検査研究レベルだというお話ですが、この辺は皆様方と御検討願い、患者が希望するのなら、その検査の意味も含めてリスクの高い検査ではあるけれども御説明願って、患者の同意のもとで検査をすることを考えていただきたいと思います。

○山野構成員 神奈川県の母子感染対策協議会では、産婦人科のそれぞれの代表や小児科の代表の先生方と私どもが参加して、妊婦でそういう心配がある方、受診を希望される方の受皿づくりという形で、何らかの拠点みたいなもの、受診機関というものをきっちりとつくることによって、産婦人科の先生方が困らないものがつくれるのではないかということで、キャリア外来というのをやっています。そこで受皿がありますということを、県一同の産婦人科の先生方にもきちんとアナウンスすることをやっております。母子感染対策協議会という中で、そういう体制をどうするかというのを各都道府県できっちりと議論していただくのも、この会議の 1 つの大きな役割ではないかと思います。

 実際に希望されて紹介いただいた患者、キャリアの妊婦というのは、先生がおっしゃったように今の状況をきちんと説明するとか、希望があったら検査をして、その結果を御説明することでかなり安心されます。やはりそういう体制づくりがあれば、陽性と告知された妊婦のきちんとしたフォローアップ体制というのは構築できると思います。

 一方で、実際に陽性と告知された妊婦にどれぐらいそういうニーズがあるかというのが、なかなかキャッチできないということで、今回キャリアネットというキャリアの登録システムをつくりました。そこにたくさん入っていただいて、実際のキャリアの方のニーズがどれぐらいあるのかというのを把握しようという研究が、内丸先生の研究班でスタートしております。

○がん対策・健康増進課長 今の立場と言うより、元感染症課長の立場ですが、資料 1-1 9 ページに、「相談の手引き・マニュアル等の作成」というのがあります。その 1 つ目の「 HTLV-1 母子感染予防対策医師向け手引き」というのは、齋藤先生が主任研究者で報告書を作成し、その中でこういったマニュアルを作られているようです。それが「妊婦に対する HTLV-1 スクリーニングの進め方、 HTLV-1 キャリア妊婦に対する結果の説明」という内容なので、これが正にそういう内容だったのではないでしょうか。

 まず検査を進めるときに、恐らく産婦人科の先生だと思いますが、メリットとデメリットがあるのではないかと。結果が分かって仮に陽性だとなったら、場合によっては母子感染も防ぐことができるかもしれない、子供を守るというメリットがある一方、事実上お母さん、その妊婦がもしかしたら将来 ATL になるかもしれないということも、告知しないといけないという 1 つのデメリットですね。そのようなことを説明してくださいということが書いてあるのではないかと想像するのです。あるいは結果の説明でも、「陽性でした」とお母さんに説明するときに、例えば将来 ATL になる確率は 20 人に 1 人というような数字を伝えながら、きちんと事実を伝えていき、かつ多少の不安も取り除きながらということが書いてあるのではないかと想像するのです。むしろ齋藤先生にフォローしていただいたほうがいいかなと思います。

○渡邉座長 では齋藤先生、よろしくお願いします。

○齋藤構成員 実は、これにはメリットもあるのですが、かなりデメリットもあるのです。全く突然にキャリアという形で説明を受けるわけです。当初は皆さん方、やはり驚かれますので、精神的なケアもきっちりしていただきたいということは、こちらに十分書いてあります。ただ現実問題としての時間経過を見ますと、自分がキャリアであるということを知って驚き、いろいろなことをインターネットなどで調べられます。それでだんだん恐怖心が出てくるということになります。

 説明はしているのですが、やはり一番多い質問は「将来、中高年になってからどのような形で検診をすればいいのですか」「どういった形で初期発見できればいいのですか」「予防する方法はないのですか」というこの 3 つに尽きます。まずお子さんへの感染を防ぐということは、皆さん方も非常に理解力が高く、非常に満足度も高く、私たち産婦人科医も説明してやりがいがあるのですが、その後の御自身の健康状態については、説明するのも非常に苦労しているという状況です。それからある程度道筋が見えてくれば、ハイリスクかローリスクかを分ける方法があります。ハイリスクの方については、こういった予防があるのですということが提示できて、初めて母子感染を予防するために妊婦にスクリーニングするという意味合いが出てくると思います。本当はメリットもあるのですが、今のところはデメリットもかなり多いということは申し上げられると思います。

○渡邉座長 時間も大分過ぎましたので、この件に関しての議論はここまでとさせていただきます。先ほど岩本先生から御指摘がありましたように、感染と疾患の実態をしっかり把握するように、もう一度体制を見直していく必要があるというのは、非常に大事なポイントです。あとはキャリアに対する対応の仕方をもう一度きちんと見直して、リスクやフォローアップ体制というのをもう一度検討した上で、マニュアルの上にも反映させていく必要があろうかと考えました。

 それでは議題の 2 の報告事項、 1 番の「インターネット等で販売される母乳に関して」ということで、事務局から資料 2 の説明をお願いいたします。

○母子保健課生殖補助医療対策専門官 母子保健課の倉澤と申します。資料 2-1 を御覧ください。割と大きな報道でしたので、御存じの方も多いかと思われますが、インターネット等で販売される母乳についての報道がありました。具体的な概要は、インターネットで販売される新鮮な母乳をうたった商品を複数の検査機関で分析したところ、少量の母乳に粉ミルクと水を加えた可能性が高い偽物と判明したということで、販売業者によると、用途は母乳風呂用など、 1 10 件程度の購入の問合せがあるということです。品質や安全性を保証できず、飲用を控えるようアピールしているが、飲むかどうかは自由と説明しているというような報道がありました。

 記事に書かれているような個別の事案については、当課でも業者に連絡等していますが、連絡がつかないような状態です。承知はしておりませんが、インターネット等で販売される母乳は、提供者の既往歴や搾乳方法、保管方法などが不明であり、病原体や医薬品の化学物質等が母乳中に存在していた場合には、乳幼児の健康を害する恐れがあるということで、インターネット等で販売される母乳の危険性について、妊産婦や乳幼児の養育者に対して自治体を通じて注意喚起するとともに、地方自治体において母乳の販売をしている事業者を把握した際には、事業実態を確認の上、必要な指導を行うよう通知を発出しております。

 一方で、乳幼児の栄養摂取は、いたずらにその母乳のみにこだわらないで、必要に応じてミルク等も使っていくことが望ましいことも併せて周知していくということで資料 2-1 にあるとおり、通知を発出したという経緯です。以上です。

○渡邉座長 ただいまの御説明に対して、御意見等がありましたら御発言をお願いいたします。森内先生、小児科の現場で、こういったことが話題や問題になったりしたことは実際にありましたでしょうか。

○森内構成員 この報道が出る前からこのような(母乳のインターネット売買の)話を聞いておりましたので、日本小児科学会でも何らかの注意喚起を促そうかと検討していたところで、ちょうど毎日新聞の記事が出たという経緯があります。その後、産科婦人科学会や小児科学会等々でも、こういうことについて注意するような声明が出ています。

 ただ、一方で、産婦人科医や小児科医の中で母乳の重要性を強く訴えるグループは以前から「母乳で最低 6 か月間まるまるいってほしい」と強張しています。それ自体、お乳が出ないようなお母さんたちに対するプレッシャーになっています。それから、もちろん、このキャリアの方たちを含め、あげたくてもあげられない人たちへの、いろいろなプレッシャーをかけていることにもなりますので、ある意味では同じ小児科の中でも、母乳に対する思い入れの異なる 2 つのグループのせめぎ合いと言うと変な言い方ですが、そのような側面もありまして、なかなか学会として足並みをそろえて強く言うことができないのが現状です。医学的に大事なところは、皆さん一致していますが、その基本姿勢として、「駄目ならミルクでいいのだ」というのと、「母乳が出るように頑張りに頑張り抜いて、それでも駄目なときには、初めてミルクにしてもいいのだ」という姿勢の違いについては、なかなかスタンスがすっきりしていないところです。

○渡邉座長 ありがとうございます。そのほか御発言はありますでしょうか。

○木下構成員 この話は、禁止するとか、いけないだけで済ませればそれは簡単ですが、本当に母乳が必要だという場合に、もちろん善意でもらうのは良いのですが、ある程度のコストも掛かって提供する仕組みはあっても、悪くはないかなと実は思います。という意味は、輸血と同じように厳重な管理のもとであったら、なぜ、いけないのかと思うのです。つまり、本来あるべきことではないというのはよく分かりますが、どうしても必要だという医学的に見ても、あるいは、本当に御本人のことも含めて必要というのであれば、そのような前向きなことも検討してもいいのではないでしょうか。ほかの人の母乳をあげるということ自体は悪いわけではないですから、この抗体陽性の方たちもやはり、他人の母乳を飲ませたいと思います。何もかも駄目だと言うよりは、可能性として御検討願ってもいいかなと思います。

○渡邉座長 ありがとうございます。

○森内構成員 これは HTLV-1 の板橋班のほうで既に取り組んでおります。板橋班の委員のお一人である水野先生(昭和大学)で既に日本初の母乳バンクの取組が進んでおります。海外にも北米やヨーロッパにかなり大きい母乳バンクがあります。そのほか世界中に、ブラジルとか、いろいろ熱心な所がありますけれども、そこではきちんとしたドナーの選定から、そのドナーに対する検査等もありますし、搾乳指導もきちんと行った上で、集まってきた母乳は基本的にはパスツリゼーション、低温殺菌加工をすることにより、混入しているウイルスがいてもそれは完全に殺す、もちろん雑菌も殺すという形での提供をしています。ただ、未熟児などで、むしろ生乳をあげるのでないとうまくいかない、母乳のメリットの部分が(パスツリゼーションで)なくなるのは困るという場合には、様々な病原体のキャリアではないということの確認に加え、さらに通常は調べていないサイトメガロウイルスも未熟児の場合には問題がありますので、それも無いということを確認した上で、生乳をあげる形を取っている母乳バンクもあります。ですから、ニーズに応えて、きちんとした管理のもとで、本来のお母さんの母乳が出ない場合でも、赤ちゃんにとって一番良い栄養方法であり、また、感染防御等々の点でも優れたものである母乳をあげるという試みは、一応スタートしています。ただ、そういう管理はものすごくお金が掛かります。だからこそインターネット販売というのは、そういうことを全部ずぼらにやって、しかも水増しして販売しています。きちんとした管理のもとで行うのはすごく費用の掛かることですが、どの体制で行えば、(木下構成員が)おっしゃられるようなことができるのかは恐らく、水野先生たちの研究を通して明らかになるでしょう。それが何とか日本でもできるということであれば、もっと大きな組織として、若しくは、あちらこちらのブロックでも似たような取り組みをすることによって、赤ちゃんにとって望ましい栄養方法に近づけるのではないかと思います。

○渡邉座長 ありがとうございます。

○菅付構成員 私はスマイルリボンの活動の中で HAM の患者会の運営をやっております。 HAM を発症した患者の中に、南九州の出身ではなく、感染の理由に全く覚えがないという方を調べてみますと、もらい乳をしたという方が結構いらっしゃるのです。このようにインターネットの母乳のことが問題になり注意喚起されれば、HTLV1キャリアや、周囲の人たちが、もらい乳に対しても注意するのではないかと思ったりもしております。もらい乳で HAM を発症した患者がいるという現実を知っていただきたいと思い発言いたしました。

○渡邉座長 ありがとうございます。いろいろと御発言がございますが、少し時間が押していますので、この部分についてはここまでとさせていただきます。

 引き続き、報告事項 2 「希少がんの医療・支援の在り方に関する検討会での状況報告について」、資料 3 の説明を事務局にお願いします。

○がん対策・健康増進課長 がん対策・健康増進課長の正林でございます。資料 3 に基づいて説明いたします。希少がんについて、まず、がん対策推進基本計画の中を見ていただくと、 2 ページの左下の分野別の施策の成果や達成度を測るための個別目標の所に、希少がんのワードが入っています。これは具体的にどう記述されているかというと、 3 ページ目に、取組むべき施策として、希少がんについて記載があります。赤字の所で「適切な標準的治療の提供体制、情報の集約・発信、相談支援、研究開発等の在り方について検討をする」と、こういったことが計画の中で盛り込まれています。

 この計画を受けて、「希少がん医療・支援の在り方に関する検討会」というものを 3 月に立ち上げて、 8 月に報告書がまとまったところです。検討会のメンバーに渡邉先生にお入りいただきました。 ATL のことも当然、御議論いただく予定でお入りいただきました。

4 ページ、報告書の中では、まず現状と課題を指摘しています。例えば専門的な医師、医療機関の所在が分かりにくいとか、それから、希少がんホットラインが存在して非常に有用ですが、周知がされていないとか。患者団体の存在は重要だけれども、認知できない患者もいらっしゃるとか、病理診断は診断が難しい、専門性の高い医師の不足。それから、拠点病院について、相談支援体制が十分ではない。医療の提供体制の情報が分かりづらい。研究については、症例が少なく、研究が進みづらいといった数々の現状と課題が指摘されています。

5 ページは、そういった現状と課題に対応するためにということで、施策が具体的に示されております。病理診断については、バーチャルスライドを用いたカンファレンス、病理コンサルテーションシステムのコンサルタントの増員や事務局の整備、コンサルテーションにおける費用負担の在り方についての検討。それから、人材育成であれば、必要な集約化を推進し、希少がんの経験を蓄積した医療機関の確保等、そこでの教育。拠点病院や専門性の高い医療機関、医師によるかかりつけ医等に対する普及啓発。それから情報の集約・発信では、登録実務者への研修等の強化、がん情報サービスで希少がんに関する情報を集約、提供。質の高い最新の情報を集約し、必要な情報を患者に提供できるようにする。相談支援では、国立がん研究センター相談員研修に希少がんを盛り込む。それから、希少がんホットラインと連携するなど、適切な対応ができる相談員の教育、確保。研究開発では、必要な集約化を推進し、研究を進めやすい環境の整備。 AMED でも引き続き希少がんの研究を整備。研究については、患者参画の仕組みを検討といったことが施策として具体的に示されております。

 最後の所で、検討の場ということで、国立がん研究センターを事務局として、「希少がんワーキンググループ」を設置することも盛り込まれています。ここでは、特定のがん腫に絞って希少がんに関する最新情報の収集・提供、ガイドラインの推進や、評価項目の検討などを、この WG で具体的に検討していき、最終的に希少がんの医療支援体制を構築していくといったことになっております。以上です。

○渡邉座長 ただいまの説明に関して、御意見等がありましたらお願いいたします。

○岩本構成員 非常に大事なことだと思いますが、ただ、もう 1 個問題は、妊婦健診で診断されたところから、“希少がん”としての発症がいよいよ現実になるまでの間をどうするかですね。 HTLV-1 感染から発症に至る間のここの対策自体についても、少し方針を見せていただくほうがいいなと思います。

○岩本構成員 希少がんの担当者がやるのか、どこがやるのかはよく分かりませんが。

○岩本構成員 要するに、もう少し全国的に必要ですよね。希少がん発症までの経過観察は決して希少ではないわけですね。 100 万人を超える感染者がいて。

○渡邉座長 定義上は、疾患としては希少のグループに入ります。

○岩本構成員  100 万人のある方がおられて、ある程度いろいろな所へ散っていて。

○渡邉座長  ATL の発症率からして、希少がんに分類されます。

○岩本構成員 その方々をどういう所で健診していくのかという体制はやはりいるのではないかという気がしますが。それを希少がんの担当がやれるわけではないと思います。

○がん対策・健康増進課長 そうですね、 ATL は非常に数が少なく、希少がんの範疇かなと。当然この後の WG でも議論はされます。先生がおっしゃっているのが HTLV-1 のキャリアと、例えば妊婦健診などで言われて。

○岩本構成員 それをいつまでも産婦人科の先生が診続けるのは余り適当なことではないですね。そこを橋渡ししていくような地域的なりのシステムが要るのではないかという気がします。御本人のケアも含めて。健診システムというのは、その人数が 100 万人と考えられるのだったら、それに対して、どういう所に健診センターがあればいいのかというような話は、日本の医療インフラを考えれば可能ではないですか?そんなにお金は掛かるように思いませんが。

○がん対策・健康増進課長 恐らく、先ほどの議論と同じテーマかなと思います。

○岩本構成員 そうだと思います。

○がん対策・健康増進課長 結果が陽性で、告知され、先ほどのようなマニュアルに従って、多分、産婦人科の先生がどう告知をし、それからフォローアップについては、どちらかというと内科になるかと。

○岩本構成員 内科か、いわゆる総合診療医でもいいのではないかと思いますが、誰かがある程度フォローしていく、あるいは機関でフォローしていくということが、必要でしょう。例えば、住所が変わっても別の所で受けられるシステムはあったほうがいいように思いますけれども。それが安心にもつながるような気がします。

○渡邉座長 私は検討会のメンバーで議論に参加していた立場から追加発言です。基本的には希少がんと言っても、疾患ごとに非常にそれぞれの特性があって、診断がうまくできない、専門医がいない。いろいろ問題をそれぞれ抱えていますが、議論を聞いていますと、 HTLV-1 ATL の領域は、その希少がんの中でも非常に特殊なもの、立ち位置にあるという認識をいたしました。それは以下の 2 つの意味です。

1 つは、 ATL に関しては、このような形で取組が既に動いていて、いろいろな体制、情報発信も含めて独自に動いているというのが 1 つのポイントです。

 もう 1 つは、他のがんと違う大きな特徴として、発症予備群が明確に把握できる。つまり、感染者以外からは ATL は発症しないわけですから、そこから更にハイリスクのグループの所を今言ったような形で、どうやって絞り込んでフォローアップをしていくかという課題で、やはり独自のユニークな疾患特有の個性があると考えます。

○岩本構成員 申し上げているのは、発症リスクの高い人を同定していく研究は大事だと思いますが、まずやはりシステムとして、その方々が診療を受けられる体制が必要でしょう。その中からリスク研究とかが出てくるのだと私は思います。

○渡邉座長 研究の話ではなくて、そういう特性があるので、 WG の中で特性を踏まえて、適切な体制、先生が今おっしゃったようにフォローアップの中間のところですね、そういったことも含めての議論が、今後行われることを私は期待しております。がんの立場からそういうことに取り組んでいただけるかなと期待はしております。私はこの様な理解ですが、 WG で更に具体的な議論が行われる可能性があるという理解をしておりますが、それでよろしいでしょうか。

○がん対策・健康増進課長 そうですね、 WG の中で、少なくとも ATL 1 つの論点にはなると思いますが、どこまで議論するかは、がんセンターと相談する必要があります。

○渡邉座長 ありがとうございます。

○塚崎構成員 もう 1 つ、 ATL HTLV-1 に関して言うと、希少とは言っても、その偏在性が日本でもかなりあるわけですから、そこへの対応が必要なことが、ほかの希少がんとは異なった点だと思います。そこも含めて是非、御検討いただければと思います。

○渡邉座長 ありがとうございます。

○木下構成員 今の質問の関連で、教えていただきたいのですが、最初にリスク因子を見たときに、問題ないようなローリスクというのは、将来もほとんど発症しないということであって、中間段階というか、こういった徐々に悪くなっていくような場合はないのでしょうか、最初からハイリスクだったら、その方は高い確率で発症するということでしょうかあるいはハイリスクであっても、軽度、中等度、重度のように、段階を追うようなタイプの疾患なのでしょうか。

○渡邉座長 私、一応、構成員の立場でお答えできる範囲でお答えすると、答えはまだないというのが正しいと思います。今、研究途上であると言うことが、まず総括的な答えになります。ただ、印象としては、これまで見ているデータでは、後で松田先生からもお話がありますが、やはり遺伝的な背景という、発症の感受性というか、そういったものがあるのではないかという印象はあります。

○木下構成員  HLA のような問題も関係するということですね。

○渡邉座長 そういうことですね。ですから、発症のリスクのあるグループとないグループがクロスしないような印象を、今のところは持っております。ただ、結論はまだ出ておりません。

○木下構成員 分かりました。

○渡邉座長 ありがとうございます。

○山野構成員 岩本委員がおっしゃったような受皿という意味では、キャリア外来は非常に重要だと思います。産婦人科の先生に例えば ATL らしさがあるのかどうかを御判断いただくことは、とても難しいことになりますので、やはりキャリアの方を今度は内科に紹介していただき、キャリアと分かった段階で更に ATL の専門家に診ていただく必要があるかとか、そういう部分の判断は検査すれば分かる状況なので、例えば、全国的な拠点が各都道府県に希少がんのネットワークができてくるのであれば、そういう所でそのキャリア外来の受皿のような形で産婦人科、あるいはほかのキャリア、献血でキャリアと分かった方も含めて、そのような受皿というところになっていけば、そこで検査をすれば次につながるという体制は作れるのではないかと思います。

○渡邉座長 ありがとうございます。

○菅付構成員 患者側から発言させていただきます。山野先生の病院がやっていらっしゃるキャリア外来は、必要だと思いますが、まだ全国では数箇所しかありません。また、キャリアから、くすぶり型へ移行して、そこから ATL を発症したとして、血液内科へ回されるのですが、血液内科での診断が ATL と告げられたけれども、まだ治療の段階ではないといわれて、どうしていればいいのかわからないといった相談を受けます。例えば 1cm ぐらいの腫瘍があっても、もう少し大きくなるまで様子を見ましょうと言って放っておかれるのです。その間の精神的なフォローが全然なされていない所が多いのです。そういった人たちへの精神的フォローと、治療方法についてもう少し細かく配慮ができないかと思います。 HTLV-1 総合対策の中で、いまだやらなければならないことが非常に多いと思います。協議会の中で詰めて話合いをしていただきたいと思います。

○塚崎構成員  ATL の治療については、私が先ほど少し申しましたように、低悪性度の ATL 、くすぶり型とか、慢性型の ATL に対しては、無治療でも年余にわたって無症状のことがあるので、経過観察、医学会的にはウォッチフルウェイティングと言って、慎重に見ながら病状が進んだ時点で治療を開始していくという方針をとります。きちんと患者さんへ病気のことについて御説明をした上で、この方針を提示します。治療をするタイミングがきたらそこで治療開始し、それまでは慎重に経過を見ましょうということで、理解いただければ、患者さんは放っておかれたとは感じられないと思います。ですから、そこは血液内科医がもっと患者さんときちんとお話をした上で、経過観察の治療法を選択することについての説明、情報共有の上の治療法の選択ということが必要だと思います。

○菅付構成員 塚崎先生のように優しくきちんと説明してくださる先生だけならよいのですが、 ATL は命に関わる白血病ですとだけ言われて、あと、何の説明もされないという相談が結構多いのです。その先生が ATL という病気を詳しく御存じないのではないかと不安になって、こちらに相談がかかってくるという現状があります。先生同士も情報を共有して、しっかりと対応していただければと思います。

○渡邉座長 ありがとうございます。厳しい御指摘ですが、正にそういう問題点があろうかと思います。それをどうやって改善していくかということも含めて、希少がん対策の中でも研修とか、そういったカテゴリー、コンサルティングの体制や情報も、いろいろなものを整備していくことが問題になろうかと思います。

○塚崎構成員 少しよろしいでしょうか。日本血液学会でもガイドラインを作成していまして、その中でも低悪性度 ATL に対しては、ウォッチフルウェイティングが標準治療であることを明示しておりますし、基本的には、血液内科医はそれに従ってと診療しているわけです。東京大学の内丸薫先生の班が作っている HTLV-1 の情報サービスという HP にも ATL を診療している施設ということで登録されているものがあります。やはりそういう所でも情報提供しながらいろいろガイドラインに書いてあることについても共有しながら、そして、新しい臨床研究についても、更に共有しながら血液内科医が対応していくことが重要だと思っております。

○渡邉座長 いろいろ議論は尽きませんが、ちょっと時間が押してきていますので、この件に関してはここまでとさせていただきます。ありがとうございました。

 次に、報告事項 3 「臓器移植後に伴う HTLV-1 関連疾患発症の実態について」、山野構成員から資料 4 の御説明をお願いいたします。時間が押していますので、なるべく短くよろしくお願いします。

○山野構成員 よろしくお願いします。臓器移植後に伴う HTLV-1 関連疾患発症の実態について、御説明します。簡単な基礎知識ですが、臓器移植の場合はこのように臓器を提供する方をドナーと呼びます。臓器の提供を受ける方はレシピエントと呼ばれます。 HTLV-1 の感染状態というのが陰性の方の移植というのは余り問題がないと思うのですが、この陽性の方から陰性の方に移植が行われたり、あるいは陰性の方から陽性の方に移植が行われたりということで、そういう部分でどういうリスクがあるかということをまとめております。

 本日の内容は HTLV-1 が陽性ドナー D + )から陰性レシピエント R - )への生体腎移植についてのデータと、陽性レシピエントへの臓器移植に関するデータと、臓器移植後の感染の判定における PCR の検査の重要性に関するデータをお話して、今後の課題についてまとめたいと思います。

 これは 60 歳の男性で、うちの病院に紹介されてきた方ですが、移植前は抗体陰性です。抗体陽性の御家族から生体腎移植を受けまして、 10 か月後には両足筋力の低下を自覚し、 12 か月後には歩行可能時間が 1 時間未満と、 18 か月後にはかろうじて起立できるが、ほぼ歩行不能という形で、 21 か月後に抗体陽性と判明して、 HAM という診断があり、うちに紹介があった患者さんです。

 現在の生体腎移植でのドナーのガイドラインでは、 HTLV-1 の検査というのは、陽性の方から陰性の方への移植というのは禁忌になっておりません。死体腎移植は禁忌になっているのですが、生体腎移植が圧倒的に日本の場合は多いのですが、そういう現状で、まだ禁忌になっていないというのが現状です。

 この陽性ドナーから生体腎移植 D+/R- が禁忌ではないとされることの想定される理由ですが、これはやはり一般の HTLV-1 感染者のデータから HTLV-1 に感染しても発病は、 ATL 5 %、 HAM 0.25 %で非常に少ないということが知られている。また、垂直感染者の感染から発病までの潜伏期間が 40 年から 60 年というような報告があるということで、移植によって感染しても多くの人は発病しないのではないか。あるいは万一発病しても 50 年先で、腎移植のメリットのほうが上回るのではないかというふうに考えられていたのではないかと推察されます。これが本当に正しいかどうかということの調査結果がないという形でこのように思われていました。

 では、実際に D+/R- の腎移植によって、レシピエントの HAM の発症率はどれくらいかというのを調べるために、まず当院で把握している D+/R- の腎移植の HAM の症例をまとめますと、 2000 年から 2013 年に移植を受けた方だけに限っていますが、それだけで既に 5 例をきちんと把握しています。全員移植前のこの HTLV-1 の感染状態は( - )で、移植から発症までの期間というのが 1 年以内であるとか、 2 年とか 5 年とか、非常に早いです。また、 HAM の発症後の病状の進行ですが、通常歩行不能になるのに、一般の HAM の方は 18 年かかるということが疫学的に分かっていますが、 3 か月とか、 1 年以内とか、非常に発病後歩行不能になるのが早いと。両手杖歩行になるのに、一般は 13 年がこの患者さんは 1 年以内とか、片手杖歩行になるのに、一般の HAM の患者さんは 8 年なのに 2 年以内とか 3 年以内とか、ですからこのように移植後早期に発症して、さらに発症後も急速に進行するという傾向が高いというのが、この腎移植後の HAM の特徴であります。

 では、実際にどれぐらいの感染ドナーから移植が行われているかというのを調べるために、腎移植の臨床統計集計というものを 2000 年から 2013 年の集計を全て調べたところ、合計で 64 例が HTLV-1 のドナーであったということが分かっております。

 さらに重要でありますのは、このように約 20 %から 60 %の方は、この抗体検査を実施していなかったという実態が分かりました。そこで、この検査を実施していない方にどれくらいのドナーがいるかというのを推計するために、佐竹先生のこれまでの報告がありますので、一般の感染率から換算しますと、大体 36 人ぐらいはこの検査をしていない方に HTLV-1 陽性ドナーがいるだろうと推計されましたので、合計で先ほどの 64 例とを足しまして 100 例の母集団がいるということで、恐らく約 100 例位の HTLV-1 陽性のドナーから、この 13 年間に移植を受けて、少なくとも 5 例は HAM が発症している。最近、さらに 5 例以上いるということが分かってきております。ですから、最低 5 %ということで、一般の HTLV-1 感染者の生涯の発症率が 0.25 %からすると、この 10 年以内に、既にもう 5 %以上発症しているということです。

 実際にこれまでの文献での移植後 HAM case reports をまとめますと、 HAM の発症例はほとんどレシピエント( - )です。ですからもともとは感染していない方に移植によって感染して、 HAM が発症している。いずれもやはり移植から発症までの期間が短いという傾向があります。

 では、海外のガイドラインはどうなっているかと言いますと、イギリスのみ、 Endemic area の出身者には検査を実施すべきとなっていまして、感染ドナーからの移植は禁忌となっております。その他は EU であるとかアメリカはまだこの扱いに関する記載がないというのが現状ですので、 Endemic area である日本の対応というのは早急に検討する必要性があるだろうということで、このような結語のようなことが分かりました。

 これを平成 26 10 月ごろに厚労省に健康危険情報として報告させていただきまして、すぐ厚労省のほうが対応してくださいまして、この 12 12 日に厚労省から注意喚起の Press Release を出していただきました。

 さらにこの情報について厚労省が移植学会のほうに働きかけてくださいまして、日本移植学会から、会員施設に腎移植症例の HTLV-1 検査を実施するようにと、またリスクの説明、陽性レシピエントの厳重なフォローアップというのを周知してくださっています。

 さらに厚労省のほうで湯沢班という移植学会の理事の先生が代表の研究班が立ち上がりまして、そこで調査を進め、結局先ほどの腎移植臨床登録調査をより詳細に解析しまして、合計で 67 例が、先ほど 64 例といいましたが、 67 例が D + )で、さらに D + )から R - )はそのうちのたった 23 例ということで、検査未試行の割合を含めますと、 30 例ぐらいということで、 30 例のうちに 5 例以上が発症しているということですから、約 20 %ぐらいの HAM 発症率ということに、どうやらなりそうだということが分かっております。

 今度は陽性レシピエントの臓器移植のデータですが、陽性レシピエント( + )は、ほとんどの報告が ATL の発症になっています。この陽性レシピエント症例のケースシリーズをまとめたものがあるのですが、主なのは腎移植と肝移植があるのですが、肝移植だけが 26 例中 4 例が発症しているというデータがありますが、そのレシピエント( + )が臓器移植後にこの ATL を高率に発症するかどうかというデータはまだないです。ただし、観察期間が 1 つの報告だけ 8 年というのがありますが、他の報告はいずれも 5 年以内ということで、 ATL の潜伏期間というのを考えると、十分な観察期間とは言えないのではないかという気がします。

  似たような報告ではアメリカからの報告があり、この 81 例からの肝移植で、 HTLV-1 に感染していてもしていなくても、予後に関係はないという報告があるのですが、アメリカなのでまず確認検査をやっていないということで、偽陽性が含まれる可能性があるということと、 HTLV-1,2 も区別できていないという報告なので、あとは観察期間が短く観察期間の中央値が 0.62 年ということで、これはデータとしての信憑性はいかがなものかという報告です。

 また、日本から 1 つ報告がありまして、この D+/R+ 、あるいは D-/R+ を全て見ますと、まだこれも観察期間は平均 4 年なのですが、 26 名中 4 名と。その予後に差はないという報告なのですが、これも観察期間が十分といえるのかというような問題点があるのが現状です。以上がレシピエント( + )に対する移植のデータのまとめです。

 また、臓器移植後の感染の判定における PCR 検査の重要性ですが、これはもう簡単なのですが、結論から申し上げますと、臓器移植レシピエントは HTLV-1 に感染しても長期に抗体検査陰性の場合がありますので、感染を確認するためには、 PCR の検査が必須であります。この方も臓器移植後、 36 か月以上抗体検査は陰性なのですが、プロウイルスは陽性で ATL を発症している。この外国からの検査でも、これは 626 日ですから、約 5 年ぐらいは抗体が陰性ですが、ウイルスが陽性で、 ATL を発病しているというような症例の報告があります。以上をまとめますと、 D+/R- の生体腎移植は HAM のリスクが非常に高い。移植のメリットも踏まえた、やはり正確な調査の実施と、論文化に基づく日本移植学会からの指針の作成、あるいは関連学会からの指針の作成、ガイドラインの作成が非常に重要とも言えますので、それは急務であり、引き続き研究の継続が重要ではないかと考えております。また、 R+ の臓器移植に伴うリスクは十分な観察期間の研究が存在しないために、現在のところ実態が不明というのがありますので、長期的な追跡調査というのが可能であれば望ましいと思います。また、移植後の HTLV-1 感染の診断には PCR の検査が有用ですので、 PCR の検査が保険承認されるまでは、研究による支援がこれも必要であろうと。感染者が多い日本からの質の高い研究の報告が世界的に求められております。この間の HTLV-1 国際学会でも、この問題は非常に重要であるということで、かなり高い関心がみんなから寄せられております。以上です。

○渡邉座長 どうもありがとうございました。この御発表に関して御意見等ございますでしょうか。今、大体その問題点と今後の課題というものをまとめていただきましたので、それを今後、具体的にこれからどう取り組んでいくことができるかというのが課題かなと思いますが、菅付さん、どうぞ。

○菅付構成員 すみません、患者会から一言。母親の腎移植を受けて、手術は成功したものの、数年後に HAM を発症して車椅子生活になり、日常の生活が非常に不便になって、仕事も辞めざるを得なくなったという男性が実際にいらっしゃいます。その父親の方から相談を受けて、訴訟を起こしている段階だとおっしゃっていました。そして、その御本人はこんなことなら透析を続けていたほうがましだったと言われております。この問題はきちんと精査して、適切な対応をしていただきたい。よろしくお願いいたします。

○渡邉座長 ありがとうございます。塚崎先生どうぞ。

○塚崎構成員  ATL に対しての同種造血幹細胞移植のときに、同胞で HTLV-1 キャリアの方から行う場合にも、同様の議論があります。結論から申しますと、やはりいろいろな合併症、免疫反応が起こる合併症、 GVHD と言いますが、それを減らす意味からいうと、 HLA が合った同胞間の移植は骨髄バンクドナーからの移植よりもベネフィットがあります。しかし HTLV-1 キャリア同胞から移植した後で、 ATL の再発ではなくて、もらったウイルスで ATL を発症したことが複数例報告されています。そこで造血幹細胞移植のガイドラインでは、ウイルス量が多いキャリア同胞からの移植は推奨していません。ほかの移植とはちょっと違った話になっていますが、造血幹細胞移植においては、 HTLV-1 キャリア同胞からの移植というのは、ある意味制限を設けてガイドラインで示しています。

○渡邉座長 ありがとうございます。すみません、だいぶ時間が押してしまっているので、ここで次の課題にいかせていただきます。次の議題 3 について各研究班からの研究成果について発表いただきますが、 3 つありますが、ちょっと本当に申し訳ないのですが、時間が押していますので、まず御発表をそれぞれいただいて、まとめて質疑応答という形にさせていただきたいと思います。それでは最初に、 HAM の発症に関わる遺伝因子の探索について、松田参考人から、資料 5 の説明をよろしくお願いいたします。

○松田参考人 京都大学の松田です。私どもは AMED に移管されましたが、難病の遺伝子研究拠点の 1 つでありまして、様々な難病の原因となる遺伝子を同定することを目標として研究をやっています。その中に HAM が入っていまして、 HAM で私たちは随分と長く遺伝解析をやってまいりました。 HAM を遺伝解析する 1 つの大きな目的は、遺伝因子を見いだすということでありますが、それに加えまして山野先生の研究班と前向きの臨床試験をやっておりますが、それに関して前向き、つまり時系列のデータを集めて臨床試験のデータを解析することによって、薬が効く人、効かない人でどういう特徴があるかというようなことも含めてやっていきたいと考えております。

 これまで実際に集めた検体なのですが、 HAM の検体は 812 検体ありまして、大体全国の患者さんが 3 千数百名だということだと思いますので、そのうちの 4 分の 1 ぐらいを集めている。これ以上集めるということは、どの先生方にお願いしても、もうこれでほとんどマックス集まっている。あとは患者会の御協力をいただかないといけないと思いますが、非常に大きなコレクションです。

HTLV-1 のキャリアのコレクション、 ATL のコレクションもありますが、今日お見えになっている塚崎先生、山野先生をはじめとする全国で HAM ATL 専門に診ておられる先生方から検体をいただいて研究を行っています。

 この研究の一番難しいところは、もう皆さん御存じだと思いますが、 HAM とか ATL を発症している患者の方、あるいはそのキャリアの方が、いわゆる大きな日本人の集団として、そのうちの均等に全部に分布するわけではなくて、特定の集団に集約しているということがあります。これを見ていただいてお分かりのように、日本人を集めてこういう集団になると、私たちが研究に用いたのはごく一部のこことここ、結果としてこういうところだったというのが分かりますが、大体九州の検体をずっと追うような感じの集団でありまして、私たちがほかの研究に使うために集めているいわゆるポピュレーション・コントロール、対照群というのがそのまま使えないのです。それを使ったらどうなるかというと、これを見ていただいたら分かりますが、多くの染色体に有意な関連を示すピークが出てきて、これは明らかにインフレしたピークでありまして、本当の遺伝子、原因に関わる遺伝子ではなくて、遺伝的に少し違う集団を比較しているから、こういうものがシグナルとしてたくさん出てくるということです。ですから、私たちが組んだ研究では、 HTLV-1 にかかってもおかしくない環境にいるのだけれども、ウイルスの感染をしていない人と、した人との比較というのはできません。どうしてかというと、そういう環境にいますが、かかっていない人の集団が集められないというのがあります。ですから、あくまでも、私たちがやることというのは、かかっても、今のところ発症していない人たちと、病気を発症した人の比較です。これはまとめのところにも書いてあります。その比較をしてみまして、そうすると、先ほどのように高い所にいろいろなピークは出てきたりはしません。ですから、遺伝的にわりと均質な集団でかかった人と、かかっていない人の差が見えてきているということになります。

 今日はもうこのピークだけに注目していただきます。昔から HAM HLA の発症というのは関係があるというスタディは幾つか過去の研究でありますが、私たちがやってもそこのところにきれいな関係が出てまいります。そこを詳しく見ていくと一体何が分かったかというと、 HLA のこの Class1. Class2. の領域、両方の領域にこういうようにザーッとピークが出てくるのです。恐らく特定の HLA HAM の発症に関係があるということが分かりました。

 それが分かった上で、最近皆さん御存じだと思いますが、次世代シークエンサーというのがありまして、高速に HLA を含めいろいろな遺伝子のタイピングが正確にシークエンスすることによってできますので、シークエンスしてみたのです。 HLA ABC と、 DR DQ DP 6 個をシークエンスしたら、そこでシークエンスの結果、患者 420 例、対照群 533 例を比較すると、この DRB1 の特定のアレルに非常に強い p 値が出てくる。 B DQB1 DRB1 の特定のアレルにもピークが出てきます。

 実はこれは 4 つに出るのではなくて、この DRB1 の特定のアレルと非常に遺伝的に関連の強い、つまり専門用語でいうと連鎖不平衡の関係にあるようなアレルがこういったアレルでして、結局はよく見てみると、この DRB1 のアレルを持つ人が有意に患者で多いということが分かりました。

 では、 DRB1 のそのアレルも含めて、いろいろ見たときに、どのアミノ酸が大事なのか、 HLA というのは抗原を提示する分子ですから、アミノ酸の少しの変化によって提示の仕方が変わってくるわけです。人によって違うのですが見てみると、抗原結合ドメインのある場所のアミノ酸がロイシンの人、バリンの人、セリンの人、アスパラギンの人、プロリンの人、こういう人たちが集団の中にいますが、ここにロイシンを持つ人が HAM の患者に非常に多いということが分かったわけです。

 この次のデータが一番重要なデータなのですが、そのロイシンのアミノ酸残基をホモザイゴートで持つ人、つまり、それに対応する DRB1 のアレルをホモザイゴートで持つ人が、ほかのヘテロの人、ほかのアリルを持つ人に比べたら、明らかにこのプロウィルス量が高いのです。これは今回、非常に面白い結果となったと。これはどういうことか、解釈は今後いろいろな実験をしないと分かりませんが、まず、 HLA で恐らくこのロイシンのアミノ酸残基を持つアレルを持つ人は、免疫学的にウイルス抗原の提示、あるいは免疫応答が恐らく甘いのだと思うのです。うまく提示できない。免疫がアクティブに応答できない。ホモザイゴートの人にそういう人があって、ヘテロの人はかまわないのです。どうしてかというと、 HLA は共優性ですから、どっちかのアリルが上手に抗原の提示ができれば免疫応答が起こりますから、このホモの人だけにそういうことが起こっているわけです。これが非常に重要なところで、恐らくこのロイシンを持つようなキャリアの人に、例えば将来的に HAM を発症、あるいは ATL の発症率が高くなるというような傾向が今後の研究によって明らかになればいいと思っているのですが、まだ、現在のところはそこまではいっておりません。

 これは恐らく非常に重要な知見であろうと思います。先ほどの山野先生のお話と合わせて少し考えますと、 HTLV-1+ のドナーから - のレシピエントに移植したときに、レシピエント - の人で HAM を発症する人が多いという話がありましたが、 HLA のアレルを調べてみたいのです。といいますのは移植をした後は免疫抑制剤を使いますから免疫系が抑えられている。その上に、やはり抗原の提示がうまくできないような人は、二重にウイルスの感染に対しての免疫応答が悪くなると思うのです。ですから、例えばそれを調べてここに書きましたが、この 2 つ目が一番重要なのです。 + のドナーから - のレシピエントの腎移植あるいは肝移植をしたときにどうなるか、発症がどうなるか、非常に高い率で発症するというお話でしたが、これはドナーもレシピエントも HLA のタイピングはすでに終わっているのです。移植のときにタイピングをしますから。ですから、レシピエントの中にどういうアレルが多かったのか、あるいは発症した人が本当にロイシンを持つような DRB1 のアレルを持っていたかどうかということを調べるというのは非常に重要だと思います。

 今後、そういうスクリーニングすることによって、そこでこのペアは恐らくすることは非常にまずいだろう、これならば大丈夫なのではないかというようなことも、ゆくゆくは分かってくるのではないかと考えています。どうも御清聴ありがとうございました。

○渡邉座長 どうも松田先生、ありがとうございます。先ほど申し上げましたように、続いて発表させていただきます。次に「抗 HTLV-1 ヒト免疫グロブリンによる HTLV-1 の革新的感染予防モデルの開発とその有効性の検討」ということで、水上参考人から資料 6 の説明をお願いいたします。

○水上参考人 国立感染症研究所血液・安全性研究部の水上と申します。よろしくお願いいたします。私たちの研究は HTLV-1 の感染防止を目指した薬を作るということで、抗 HTLV-1 ヒト免疫グロブリンに着目して研究開発を行っております。この製剤は、私たちが初めて開発したわけではなく、実は以前からこういった製剤を開発しようという試みはありました。例えば、原料血漿の問題、その安全性の問題とか、いろいろなことがあって、最終的にこの製剤が感染の方や患者さんに届くことはありませんでした。

 我々は、このいわゆる古典的なグロブリンに再注目して、何とかこれをマーケットに出して、感染者に使えるツールとしてできないかということで、最新の化学的なアプローチを用いて、その有効性と安全性を再確認し、製剤化に持っていくことをこの研究班の目的としております。

ATL の話は、もう皆さん御存じだと思いますので、少しスキップさせていただきます。問題になってきますのは、近年 ATL の患者さんは献血の話ですが、 107 万人と若干減ってはいるものの、逆に都市部では増えており、国としても総合対策をやって、この会議でもその話がされています。

 感染予防に関しては、輸血のスクリーニングも実施されています。そして、母子感染の防止も母乳から人工乳へと。全国一律の妊婦抗体検査が導入されて、かなりの対策がされています。

 一方で、断乳しても、 3 %程度感染するという問題があり、告知された方には治療オプションがあるのかということで、現状としてはない。それ以外にも針刺し事故等や緊急事態に対する治療オプションもないということから、何か感染予防法を作る必要があるということで、我々は日本赤十字社と協力して、ヒト免疫グロブリンの有効性を細胞培養、感染細胞と非感染細胞を混在させることによって感染が成立する、ミミックする系があるのですが、その系で行いました。そうしますと、実は非常に興味深いのはロットによって感染性の有効性に違いがあることが分かりました。非常に PVL の高い、感染価の高い方から採った血漿は当然有効性が高くて、そうではないものは、ちょっと低いものもあったということが分かりました。

 これはシンシチウム形成という別のアッセイで感染の抑制能を評価しているのですが、これは普通に Jurkat 細胞と感染細胞を混ぜますと、シンシチウムはトランスフォーメーションさせるのですが、そこに陽性血漿を入れますと、完全にシンシチウムが抑えられます。これに関してもよく見ると、有効性の高いものと低いものがあって PVL の高いものは非常に効果が高い。どのぐらい高いと統計学的にも良いかというのを見ると、 PVL4 以上というものを集めると、非常に感染価の抑制、シンシチウム形成の抑制が有効だったということが分かりました。

 我々は実際に HTLV-1 の陽性血漿からグロブリンをほぼ GMP レベルとまでは行かないのですが、それに近い形で精製して、シングルピークのグロブリンを作り、アッセイを行い、 30 種類のグロブリンを評価しました。そちらにお配りしたものは網掛けが見えにくくなっていますが、プロバイラルロードの高いもの順に並べています。こちらにシンシチウムの阻害率や感染価の抑制率という形で出していますが、 PVL の高いもの、これは私たちは High Quality と言っていますが、シンシチウムの 95 %以上を抑制できて、 PVL の感染も 85 %以上抑制できるものを High Quality と言います。これはやはり高い所に出てきます。

 逆に言うと、 Low Quality と言って、 80 %以上で PVL の患者の 30 %抑制と比べてみますと、下のほうに出てくるということですので、クオリティーに差があるのではないかと考えています。

 次に、最近、こういった感染モデルの中で免疫不全マウスにヒトの細胞を移植して、ヒトの血液系だけをヒト化するというヒト化細胞、ヒト化マウスというのがありますが、そこにこのような感染細胞を入れることによって、 HTLV-1 感染をミミックすることができるのですが、そこでグロブリンを入れることによって、この感染が抑制できるかということを検討しました。これはそれのプロトコールで、感染細胞を移植する 5 日前と 3 日前に打っていますが、そういった形で感染させました。

 これは安全性を見ているのですが、コントロールの IgG を打っても、ヒトの CD4 細胞、 CD8 細胞というものが各組織末梢血、腹腔内、脾臓でちゃんと定着しておりまして、これは当然 HTLV-1 の陽性血漿から採ったグロブリンですが、それもきれいな定着が認められます。血液学的な変化はイムノグロブリンの接種によっては、ほとんど認められませんでした。

 では、その有効性はどうだったかを見ますと、これが感染してから 11 日目を見ているのですが、末梢血中、脾臓の細胞、腹腔内の細胞という形でコレクトしていきますと、グロブリンを入れていないもの、いわゆる通常の HTLV-1 陰性の血漿から精製してきたグロブリンではウイルス価が 100 とか、 50 という形で、各組織にばらつきはありますが、 HTLV-1 陽性の血漿から精製したグロブリンは、ほぼ 100 %感染が抑制できています。細胞集団だけ採ってきても確認はできるということが分かります。

 各組織への感染細胞の浸潤を CD4 陽性、 Ki67 強陽性、 CCR4 陽性、 IL-2R α陽性、 CD30 陽性という形で、脾臓ですが、感染組織ではこういった細胞が非常にたくさん浸潤しているのですが、グロブリンを添加したほうに関しては、こういった細胞はほとんど見られません。また NK 細胞と、恐らく ADCC 活性を有しているということなので、 NK 細胞のインフィルトレーションも脾臓中ではたくさん認められます。

 実際に感染している細胞が本当にいるかということで in situ hybridization を行いますと、やはりグロブリンを入れていないほうに関しては、 HBZ Tax といったものを発現している細胞も多数認めました。省略しますが、同じようなことが肝臓、肺においても認められ、グロブリンを接種することによって感染を予防し、更に各組織への浸潤も見事に抑えられることが分かりました。

 長期的にどこまで抑えられるかということで、このモデルが大体 1 2 か月ぐらいを検討するのに最適なモデルなのですが、我々が見ている限り、 60 日ぐらいまで見ても投与後の感染は起こってこないということで、基本的には感染前に投与する製剤の投与法に関しては、非常に有効である。

 実際に感染後に投与したらどうかということで、これは感染後 30 日前後で打った 1 つのデータですが、 100 ぐらいのものを 50 ぐらいまでに落とすことができます。 Day20 というもう少し初期の段階で打つと、どのぐらいまで落とせるかということで限りなくゼロにまで落ちてくるのですが、ゼロにはならない。完璧にはプロテクションはできない。

 では、もっとあとになるとどうなるかということで Day60 をやったのですが、 Day60 になると、全く効果がなくなってしまうということなので、やはり感染前あるいは感染初期、感染の中期ぐらいまでに関しては、非常に高い有効性がありますが、細胞の状態が変わってきますと有効性が落ちてきます。

 どうしてそういうことが起こるかということで、 Day60 の感染細胞を採ってきて、 HTLV-1 gp46 の発現を見ますと、ほとんどの gp46 の発現は、いわゆるウイルス抗原が発現していない。更に Tax HBZ の発現を in situ FACS という方法で検討しますと、ほとんどの細胞が Tax HBZ の発現が抑制されている。さらに、その組織を採ってきて、組織を見ますと、確かに CD4 陽性の細胞集団もいるのですが、こういったグラニュローマライクルのジュールみたいな形で線維芽のような細胞が集まって、組織構造が全く変化してしまっている。さらに、 CD25 CD30 の発現は全くロストしてしまっているということで、グロブリンを使いますと、感染細胞はこのように NK を含めた ADCC 活性等で除去できるのですが、ある程度時間がたつと、このような組織の再編等が起こってくることと、ウイルス抗原等の発現が落ちて、ここからある意味で潜伏期のような形ができてきているのではないかと考えています。そういうことで感染後の投与に関しては、部分的に有効ということで結論を得ています。

 先ほど Low Quality のものはどうなのかということで、かなり低いものを投与しました。そうしますと、こちらは High Quality のもので、 30 日間見ていますが、感染価は一切上がってきませんが、 Low Quality になると 30 日ぐらいになってきますと、幾つかの固体で PVL が上がってくる固体が出てくるということですので、やはりこういったクオリティーの、いわゆる原料血漿の基準は非常に重要ではないかと我々は考えています。

 実際の接種法ですが、 IV だけでやったらどうかとか、感染後何時間まで実際に有効かということを現在、オンゴーイングで進めています。現状では IV だけでも接種前に関しては 100 %コントロールできる。接種後に関しては現在検討しておりますので、どこまで 100 %抑えられるか。少なくとも数時間ぐらいは行けることが分かっています。現在の成果としては、スクリーニングの系を作って、原料血漿基準として PVL4 以上のものを使えば感染は抑制できるのではないかということで、ヒト化マウスを使って有効性を確認しました。

 今回、新しい発見としては、感染後数十日では、ある程度部分的に有効性があるのではないかと。この辺のメカニズム等も含めて解析して新しい治療薬としての可能性も検討していきたいと考えております。本年度から AMED から研究費を頂きまして、これをどうやって製剤に持っていくかということで、これはまだ研究結果が出ていませんので、これからやることについて若干お話させていただきます。

 ウイルス陽性、いわゆる HTLV-1 の陽性の血漿からそういった製剤を作ることになりますので、非常に高い安全性が求められるということで、我々の班では、ウイルス安全性を確認するような試験法の開発や、安全性を確認するということを検討していきたいと思っています。

 もう 1 つ大きな我々研究班の売りは、霊長類を用いた有効性・安全性の確認と母子感染予防を含めた感染防御ができるのではないかと考えております。一般的に感染血液由来の免疫グロブリンとかサイトメガロとか B 肝とかいろいろあるのですが、現在の法律では生物由来原料基準というのがありまして、一応製造過程において不活化又はちゃんと除去されていることが確認されて、承認書に記載されていれば製造してもよいということになっています。

 そこで我々としては、製造プロセスの中で、どういう所にウイルスが濃縮して、あるいはどういう所に出てくるかという基本的には白血球除去した血液から作りますので、凍結保存した血漿から最終的に作ってきますので、感染性は非常に低いと考えられるのですが、リスクがどういう所にあるかを、様々な試験法で検討するとともに、さらに感染細胞を大量にスパイクして実質以上に入れてみて、実際にウイルスクリアランス能がどのぐらいあるかを確認して、現在の基準で安全性を確認するということを考えています。

 あとは作られた製剤がどういった方に使えるのかということも、この研究班の中で検討していきたいと考えています。陽性だが、抗体価が低い妊婦などには、もしかしたら使えるのかもしれないし、場合によっては母乳感染ということを考えれば、長期母乳をやると決められた方などにも使えるかもしれません。人工哺乳でも 3 %感染するということは、経胎盤とか子宮内とか産道感染の可能性も絶対否定できないこともありますので、そういう方には補助的な治療として使えるのではないか。これはあくまでもエビデンスに基づいて仮説として立てているわけではありませんので、そもそもこういったエビデンスをどのように集めていくかということも含めて検討していきたいと思います。

 ニホンザルは HTLV-1 の非常に似て、抗原をクロスする STLV-1 というレトロウイルスがありまして、こちらでは PVL の高いものでは母子感染が起こっているという断片的なエビデンスが得られています。

 これらを用いて、こういう母子感染が起こっていることを現在確かめ中です。実際はここに HTLV-1 のイムノグロブリンが交叉することが分かっておりますので、これを投与したときにちゃんと陰性になるのかとか、生まれた子供に投与することによって感染を防止できるのか、阻止できるのかということを検討していきたいと思っています。

 最終的にこの製剤が本当に我々の考えているものが患者さんや使われる医師のニーズに合っているかということも含めて、東京大学の医科学研究所の内丸先生に班に入っていただいて、実際のキャリアや医師に相談させていただき、リスクベネフィットの検討や製剤化として何が問題があるか、どういうものを作ったほうがいいかを検討していきたいと考えています。以上です。

○渡邉座長 それでは、最後に「臨床試験、発症ハイリスクコホートとゲノム解析を統合したアプローチによる ATL 標準治療法の開発について」、塚崎構成員から資料 7 の説明をお願いいたします。

○塚崎構成員 時間が押していますので、お手元の配布資料を用いてキースライドを中心に御説明したいと思います。

 私は渡邉先生から御紹介いただいた班で臨床試験を行っています。今回は ATL に関する臨床試験の動向について話をするようにということでしたので、それをまとめてみました。それぞれのスライドの右下に番号が振ってあります。

3 番に ATL の特徴を書いておりますが、世界の中で先進国である日本以外では多発地域はありませんので、日本において治療研究を進める必要があります。今日は ATL に対しての化学療法、移植療法、そして免疫療法の開発について御紹介したいと思います。

 まず、一番大事なこととして、スライド 4 にありますように、 ATL は臨床病型に基づいて治療方針を決める。これが先ほどのガイドラインにも載っていますが、病型分類に従って低悪性度の ATL と高悪性度の ATL に分けて、その中で低悪性度に対してはウォッチフルウェイティング、高悪性度の場合は同種移植が可能な年齢かつ臓器予備能が十分であれば、化学療法後に移植をやっていきます。それに対して、高齢者に対しての標準治療法は確立していません。

 スライド 5 は、私も属している JCOG (日本臨床腫瘍グループ)の中のリンパ腫グループで 1970 年代から ATL を含むリンパ腫に対して、どういう試験を継続的に行っていき、その中で ATL の治療法をどう開発してきたかということを御紹介したいと思います。

 最初に見ていただくと、 ATL に対しては臨床試験を 1990 年代までやっていないように見えます。実はそうではありません。それまでの間はアグレッシブ非ホジキンリンパ腫の中に ATL は組み込まれている。裏を返すと、層別化治療が余りされず、 B 細胞性であっても T 細胞性であっても、悪性度が高いような非ホジキンリンパ腫に対しては、同じ治療が行われていたのです。その結果を解析し、 ATL の治療成績が B 細胞性のリンパ腫よりも悪いということが分かりました。それで ATL に対して JCOG9109 という 1991 年から行われた試験からはじめて ATL 、特にアグレッシブ、高悪性度の ATL を対象として行われましたが、当時の新薬を使っても治療成績は改善しませんでした。 JCOG9303 という次の試験は、 6 枚目のスライドにある VCAP-AMP-VECP という 8 剤の抗がん剤を使った強力な治療法を当時使えるようになった G-CSF という正常白血球を増やす注射を併用して行う治療法の第 2. 相試験です。その成績が有望だったので、引き続いて 3 つ目の臨床試験として JCOG9801 試験が、 6 番のスライドにある有望だった VCAP-AMP-VECP CHOP-14 (普通だったら、 CHOP というのは 3 週ごとに行うものを、 G-CSF を併用して 2 週間ごと、 14 日ごとに行うもの)との比較試験を行いました。こういう第 3. 相比較試験を行って、初めて本当により良い治療法、標準治療を開発することができます。 ATL を含めた T 細胞リンパ腫という希少疾患に対して、世界で初めて行われたこの第 3. 相比較試験の結果が 6 番のスライドに示されています。

 結論から申しますと、少しだけですが、 VCAP-AMP-VECP のほうが、 CHOP-14 よりも成績は良いという結果が出ました。それは 3 年生存率で見ますと、 24 %と 13 %ということで、上回っていたのですが、ただ重要なこととして上回っていた VCAP-AMP-VECP 療法の治療成績も、ほかの造血器悪性腫瘍に比べるとまだ不良な成績だと言えます。

 先ほど申しました同種造血幹細胞移植が ATL に対して有望であるということで、スライド7にあるような JCOG0907 試験という ATL に対しての同種移植の試験を行っています。その大きな根拠になったものの 1 つ(スライド 8 )は高齢者 ATL を対象としたミニ移植と言われる抗がん剤の量は減らして、その分、免疫抑制剤を多くすることによって免疫療法としての同種移植の治療効果を期待するということで、これは九州がんセンターの岡村先生、鵜池先生たちが、平成 12 年からずっと継続的に厚労科研で行われてきた治療成績です。サマリーの生存割合がスライド 8 の右側にありますが、これは有望な成績が出ております。先ほどの化学療法よりも良好で 30 %を上回って生存曲線にプラトー、平坦なものがある、すなわち治癒が期待できるということが示されました。

しかしながら、これはあくまでも探索的な、パイロット的な試験で、同種移植が行われた方だけの治療成績として、 30 %以上の人に治癒が期待されることが示されています。

 一方、現在行われている JCOG0907 試験(スライド7)では、導入の化学療法として VCAP-AMP-VECP を行った後に積極的に同種移植療法をやっていこうという治療戦略が本当に優れたものであるかどうかを検証する第 2. 相試験として、移植ができた人もできなかった人もトータルで治療成績を評価します。 110 例を目標として、 2010 年から行われていますが、現在 40 例で、 3 分の 1 程度が登録されています。

 同種移植というのは免疫療法です。すなわち HTLA (白血球の血液型で移植抗原)が合ったドナーから注入された T リンパ球が ATL 細胞を免疫学的に攻撃することが分かっています。一方、患者さんの免疫担当細胞である T 細胞を試験管の中で ATL の原因ウイルスである HTLV-1 Tax で刺激することによって自分の T 細胞を活性化したものを、その後、また自分に点滴で戻すという免疫療法についての臨床試験(スライド9)があります。九州がんセンターの末廣先生が中心となって行われている第 1. 相試験の結果が、つい最近「 British journal of hematology 」に掲載されましたが、あくまでもパイロット試験です。 3 名の ATL の患者で、まず大事なこととして、安全性がしっかり確認できたということ。そして有効性が期待できるような部分寛解に導入できたことと、さらには実際に試験管の中で調べてみると、 Tax 特異的な T 細胞応答も誘導が確認できたということで、第 1. 相試験ではそういう有望な結果が出ましたので、この次のステップの臨床試験が継続されています。一方、企業を主体として新しい薬もスライド 10 にあるように開発されつつあります。

 スライド 11 ですが、これは御存じの方も多いと思いますが、 ATL に対しての新しい治療薬として抗体医薬の抗 CCR4 抗体( Mogamulizumab )が日本で基礎・臨床開発されたものが、今は保険適用があります。図示するように ATL 細胞の表面に CCR4 という抗原があります。それに対しての抗体を日本の企業が開発し、その抗体が赤い所にくっ付きますと、そこに抗体を介して細胞、傷害性の T リンパ球、 NK 細胞がやってくるという抗体薬による治療法が、薬の至適用量を設定する第 1. 相試験という単剤での試験で 30 %の奏効割合が出たということがあって、同定された1 mg/kg でスライド 12 にあるように、単剤での第 2. 相試験を行ったところ、 26 例の患者に対しての奏効割合としては 13 例で 50 %で効果が出ています。注目していただきたいのは、病変として末梢血、皮膚、リンパ節で見てみると、抗体が流れていく末梢血では 100 %効いています。それに対してリンパ節では 25 %の奏効でした。

 一方、スライド 12 の下を見ていただくと、抗がん剤による化学療法では、リンパ腫型では 54 %、急性型では 27 %で、抗がん剤は細胞が分裂して増えている。リンパ節の細胞には効きやすいが、末梢血、急性型には少し効きにくいことが分かっておりました。

 そこで、この 2 つの治療法を併用することがスライド 13 にありますように、 CCR4 陽性の高悪性度 ATL を対象に併用療法と Mogamulizumab は併用しない、化学療法だけの比較試験をしたところ、完全寛解割合が、 52 %対 33 %で、やはり抗がん剤だけではなくて Mogamulizumab を併用したほうがよかったという結果をもって、昨年度この抗体医薬は初発の ATL に対しても保険適用となりました。

 スライド 14 には、現在進行中の日本での治験を中心に御紹介していますが、幸いなことに、 ATL を含む T 細胞リンパ腫に対する日本での新薬開発動向は活発です。ここで注目してほしいのが ATL 以外にスライド 14 の右下に書いてある TCL というのは T 細胞リンパ腫、 PTCL は末梢性 T 細胞リンパ腫、 CTCL は皮膚 T 細胞リンパ腫というように、少しずつ ATL とオーバーラップする疾患群も対象にして臨床試験が行われており、その中でも抗体医薬、核酸類似薬、免疫調整薬、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、以上はいずれも一般的な抗がん剤よりも副作用が比較的少ないことが分かっています。

一方、その下に 3 つありますが、プロテアゾーム阻害剤は一種の抗がん剤で、福岡大の石塚先生たちが厚労科研を用いてボルテゾミブの医師主導治験を行いました。つい最近、「 Cancer Science 」に論文化されましたが、残念ながら、約 10 例で有効例が 1 例しかなかったということで、それ以降の治療開発は断念されています。

しかし重要なことは、希少疾患である ATL に対して、企業による新薬開発がなかなか進まないことも多い中で、残念ながら効果はないという結果になりましたが、厚労科研を用いての医師主導試験できちんと確認を行って、 Negative な結果が 1 つ検証されたと言えます。一番下にあるワクチンは副作用が少ないということで期待されておりますが、フランスで開発されているものについて、日本でももうすぐ始まる予定です。

 スライド 15 には先ほどから何回か出てきている右側が厚労省のホームページ、左側が内丸班の HTLV-1 情報サービスです。ここにおいても ATL に対しての臨床試験、 HAM に対してもそうですが、これは最新情報が公開されておりますので、患者さんたちも比較的容易に詳細を見ることができるという状況です。

 スライド 16 ATL 診療についての国際的合意の概要です。海外においては ATL に対してインターフェロンとジドブジンの併用( IFN+AZT )療法が有望だということが、これまで主張されてきていますが、実は海外では希な疾患ということもあって、後方視的な研究が多くエビデンスレベルは決して高くありません。しかしながら、これは日本ではまだ保険適用がなかったので、現在、私が AMED のグラントを頂き、低悪性度 ATL に対しての標準治療であるウォッチフルウェイティングと IFN+AZT 療法の比較試験を行っています(スライド 17 )。これは目標 74 例で、 2013 年から開始しておりまして、現在 15 例が登録されているという状況です。

この試験には低悪性度の ATL で、現在ウォッチ・アンド・ウエイトをされている患者さんも登録できますので、菅付さんにも御相談しまして、患者会のホームページでも公開していただいていますし、血液内科学や皮膚科学の学会の HP でも公開していただく中で、最近、登録施設が九州で増えたこともあり、少しずつ登録が増えております。

 もう 1 つ、ここのスライドにはお示していないのですが、この臨床試験をするに当たって、バイオ・バンク・ジャパンと JCOG が提携していますので、検体をバイオ・バンキングする中で、臨床試験に参加した患者さんたちのバンキングされた検体を用いて治療奏効性がゲノム異常と関わりがあるのではないかということを解析しております。その際には、実際にこういう臨床試験に入られた方以外にも、渡邉先生が継続的に行っている JSPFAD というもう 1 つ別のバンキングがありますので、そこのバンキングに登録された低悪性度 ATL 、更には HTLV-1 キャリアの方の中のハイリスクキャリアの方とも併合解析を行う中で、層別化治療を行うことができるようなゲノム異常等の同定を AMED の研究の中で行っております。

 もう 1 つ、この臨床試験で御紹介したいことは、スライド 18 番にあります。()これまで臨床試験の中では保険適用がある薬剤しか、医師が臨床試験として行うことができなかったのですが、新たな制度の中で先進医療 B として ATL に対する IFN+AZT 療法についての本試験が承認されておりますので、その承認された全国の施設において、この臨床試験を行っています。この臨床試験の結果で有用性が検証されたら、これをガイドライン等に記載し保険適用拡大をはかっていく。これまで企業が主体として新薬開発をすることが多かったのですが、医師が中心となって臨床試験を行い、その上で適用拡大を行っていきたいと思っています。

JCOG のホームページでは全てのがんについて、標準治療、 JCOG での臨床試験、それ以外の組織の臨床試験に分けての現在の治療開発動向を図示しています。スライド 19 は今年の 8 月に更新した最新版を ATL について示しています。右端に低悪性度 ATL 、高悪性度 ATL と区別した上で、初発か再発かについての標準治療は左側に書いてあります。先ほどご説明した JCOG0907 試験と JCOG1111 試験をそれぞれ高悪性度と低悪性度 ATL を対象に行っています。それ以外の他の組織の試験も、そこに記載されているようなものがあります。こういうものをマップとして患者さん、ご家族と医療従事者へ提示しながら、臨床試験へのリクルートを進めています。

 最後のスライド 20 番に示すように、疫学データから日本には現在約 107 万人いらっしゃる HTLV-1 キャリアの中から今後 20 年間で 2 万人 ATL の方が発症すると推定されています。

もう 1 つ重要なこととしては、 ATL 患者の急速な高齢化が進んでいます。臨床病型分類によって ATL の治療方針は決まっていますが、それを更によりよく規定する必要性もあるかと思いますし、より重要なこととして、新しい治療法の開発が必要です。

 下の 2 つのポツが最終的に一番大事なところだと思います。 ATL という希少疾患、特に ATL の場合は希少疾患の中でも特性に応じた診療体制の集約化が今後必要になってきます。そして、並行して患者に分かりやすい診療、連携体制を継続的に整備する必要があると思います。以上です。

○渡邉座長 大変時間が押してしまい、本当に申し訳ないのですが、幾つか御意見を伺う時間を取りたいと思います。

○森内構成員 いろいろありますが、 1 つだけお願いします。水上先生の受動免疫に関することで質問をさせていただきます。特に母子感染に関することで気になることがあります。まず、当然抗体量が多いものを使えば有効性が高いだろうというのは推測されますが、更に質的な評価というと変ですが、どのウイルスタンパクに対するものがいっぱい含まれていればというデータもあるのでしょうか。そうであればまたロットの選び方も変わるかと思いますが。

○水上参考人 今回のスクリーニングでは、既に gag とか env に関しては非常に高い。そもそも高いものを選んでいますので、そこが最低前提条件となって、プラス PVL が高いものが非常に良いという形で、今、我々のほうではデータを持っております。

○森内構成員 あと実際に使っていく中で、例えば周産期になって分娩のときの母子感染もあり得るということで周産期にお母さんにやった場合でも、当然 IgG ですので生まれた後、母乳に移行するということは多分ないだろう。といって、これを児のほうに投与すると、子供にやっている間はワクチンを接種できなくなるというデメリットも当然出てくる。その辺りを含めて、どのような予防デザインを検討されておられるのかどうかをお聞きしたいと思います。

○水上参考人 現状でもまだワクチンのほうが開発途中ということもありますので、できるものから使えるものを出していくと。その中でツールが集まってきたところで、またそのプロトコールを検討していくということです。

○森内構成員 ワクチンというのは( HTLV ワクチンではなくて)ほかに子供たちが受けていくワクチンのことです。この製剤はモノクローナル抗体ではなく、通常の IVIG の中で抗体価の高いロットのものを使ってやる。その結果、ほかに子供が受けるべきワクチンを、 IVIG が投与されている間は受けることができないということのデメリットが当然出てきます。そういうことまで、研究デザインに中で検討されているかということの確認です。

○水上参考人 現在はそこまではまだ検討項目に入れておりません。霊長類を使った実験の中で、そこも含めて検討していきたいと思っております。

○岩本構成員 松田先生に 1 つと、塚崎先生に 1 つ質問です。松田先生への質問は、スライド 11 番で大変面白い話をありがとうございました。スライド 11 番の DRB1 のデータは読み方を教えていただきたいのですが、 HAM を持つ患者さんと、 HAM のない HTLV-1 の患者さんを比べた場合、 DRB1 のアレル頻度が約 2.45 倍高かったと読めばよろしいのでしょうか。そういう読み方ではないのですか。

○松田参考人 これはアレル頻度、 アレルカウント(頻度)というところで、 HAM の患者さんには 13.1 %、キャリアの人は 5.8 %で。

○岩本構成員 約 2 倍ですね。

○松田参考人 ええ。これはオッズですから、これを持っている人が HAM になり、どのぐらいなりやすいかというのを考えたときに 2.45 倍だということです。

○岩本構成員 質問は DRB1 をホモ、若しくはヘテロで持つ人と、 DRB1 のない HTLV-1+ の方との比較をした場合、 DRB1 陽性者での HAM の頻度がどのぐらい高いかという質問です。

○松田参考人 それはできます。これは一応アレルの頻度だけでの計算ですので。

○岩本構成員 それはもっと高い。

○松田参考人 私はデータをよく覚えていませんが、恐らくリセッシブなモデル、つまりこのアレルをホモザイゴートで持つ人と、それ以外というので、 HAM HTLV-1 でやると、相当高い大きい違いが出てくると思います。

○岩本構成員  DRB1 がある場合とない場合は比較できるわけですね。

○松田参考人 はい、そうです。

○岩本構成員 そうすると、かなり高い値になりますね。

○松田参考人 そうです。ただ、問題は DRB1 のアレルというのは、この表でお示ししたとおり、そんなに頻度が高くなくて、感染者の中にホモザイゴートの人というのは余りいない。ですから、どのぐらいパワーが得られるかというのは統計学的なものです。

○岩本構成員 だけど、 2 倍の差ではないですよという話ですね。

○松田参考人 そうです。

○岩本構成員  2. 何倍の差ではないですね。

○松田参考人 だと思います。

○岩本構成員 塚崎先生がウイルス療法の臨床試験をされることは非常に敬服致します。患者さんにとっても良いことだと思います。 HAM ATL の海外での分布を考えると、途上国で医療事情も日本より遅れている国が多いのではないですか?私は専門が HIV ですので、逆転写酵素阻害薬で AZT よりはるかに安全な薬、効果も高い薬があるわけです。 HIV 用として作られた薬ですが、患者さんに対してそれを全部臨床試験しようということではなくて、例えば日本で使える HIV の逆転写酵素阻害薬のどれが HTLV-1 に一番親和性があるかを試験管の中で、確められているでしょうかという質問です。

○塚崎構成員 まずは AZT ATL に対して効果がある機序として、本当に逆転写酵素のところで効いているのかということで実験データ等でも議論があります。むしろ AZT が抗がん剤的な機序、 AZT は正常リンパ球減少を起こすのでそういったことがあって効いているのではないかという議論があります。ですから、先生がおっしゃられた所に関しては、基礎データを取ることが重要だと思いますが、臨床的に AZT とインターフェロンの併用療法が有望だという報告から、それを臨床的に本当に有用なものかどうかを検証しています。

 一方、幾つかの抗 HIV 薬が単剤でも効くのではないかということがあって、逆転写酵素ではありませんが、京都大学の高折先生たちのグループが医師主導の治験をもうすぐ始めようということで、そちらも動いております。

○岩本構成員  AZT はもともとマウスの抗腫瘍剤として見付かっています。それが結局逆転写酵素を抑えていましたというのが、マウス白血病ウイルスを使ったときの実験で、 AZT は実際、抗腫瘍薬として最初の報告はそういうことだったと思います。 AZT はかなり細胞毒性が強いので、 ATL では逆転写

酵素作用ではなく、細胞抑制効果が逆に効いているかもしれないということですね。

○木下構成員 教えていただきたいのですが、松田先生の HLA のタイピングの所でハイリスクキャリアの場合には発症したのは、今のお話で分かりますが、ハイリスクキャリアについてはどうなのかなということと、臨床的な指標で非常にハイリスクであるということと同じで、 HLA のタイピングとどのような関連があるのか教えていただきたいのです。

○松田参考人  1 つは私が見て、これが一番肝心なデータですと申し上げたのは、プロウイルスの量と HLA の特定のアミノ酸、これは実は HLA DR の場合は抗原結合のバインディンググループの中のある場所に特定の系列を持つものは、 DRB1 のこの系列しかありませんから、この系列と同じと考えていただいたらいいと思います。要するにこの系列の DRB1 遺伝子をホモで持つ人は、ヘテロで持つ人、あるいは持たない人に対して、プロウイルス量が非常に高いということです。それはどういうことかというと、抗原認識とか免疫反応がうまくいってないというのが結果として感染細胞を血中で増やしているということになっているのではないかと思います。ですから、私たちがこの研究で集めた検体はあくまでも HAM の患者という診断がついた検体というものでしか集めていません。プロスペクティブなデータが付いているとか、プロスペクティブに何かができるという検体ではありませんが、断面で見た場合にこういう結果が見えてきたということは、今後 HTLV-1 のキャリアが 100 数万人おられるということでしたから、そういう人たちのデータは一番いいのは、少なくとも HLA DRB1 だけはタイピングしておいて、プロスペクティブにそれを見てみるという方法だと思います。

 移植に関しては先ほども申しましたように、移植のドナーとレシピエントの HLA の型はチェックされているはずなので、移植学会の先生方と連携させていただいて、移植後に HAM を発症したような人は人数が少ないので、なかなか統計的に有意であるかどうかを議論するのは難しいのですが、ある程度の傾向は分かると思いますから、発症した人に DRB1 の特定のアレルを持っている人がいたかどうかということを確認するところから始めたいと思います。

○渡邉座長 どうもありがとうございました。いろいろと御議論は尽きないようですが、一応御発表に関しての議論はここまでとさせていただきます。最後に一般的なこの協議会に関して、今後のことに関しまして御発言はありますか。

○菅付構成員  2 つあります。 1 つは、鹿児島県の例を申し上げますが、キャリアの平均は 10 %以下で、新規の母子感染率も非常に下がってはいるのですが、 60 歳以上のキャリアは県民の 30% を超えております。これから高齢化社会へ向けて、 ATL HAM 発症というのは、減っていくとは考えられません。そこで必要なのが感染リスクの高い成人キャリアに対してのフォロー、発症予防ワクチンの開発が必要ではないかということです。

 もう 1 つは、局長にお尋ねしたいのですが、 10 億円の予算が付いて、素晴らしい研究の成果がいろいろと上がりつつあります。この協議会も含めてですが、今後この継続性のお約束はできるものなのでしょうか。お聞きしたいと思います。

○健康局長 課題がある限り、それは必要ですから、対策なり、研究の推進なりを。今お話をいろいろお聞きして、それぞれ課題もあるし、進行中の研究などもあることは分かりましたから、引き続き取り組んでいく必要があると思っております。

○菅付構成員 ありがとうございました。

○渡邉座長 司会の不手際も有りまして、大変時間が遅くなってしまい申し訳ございません。ほかに御発言がなければ、本日は以上で終了とさせていただきます。

 構成員の皆様におかれましては御出席いただき、誠にありがとうございました。次回のテーマについては、事務局と相談の上、決めさせていただきたいと思います。その他、事務局から何かありますか。

 それでは、本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)

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