ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(安全衛生分科会)> 第92回労働政策審議会安全衛生分科会(2015年7月24日)




2015年7月24日 第92回労働政策審議会安全衛生分科会

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成27年7月24日(金)10:00~


○場所

厚生労働省 専用第12会議室(中央合同庁舎第5号館12階)


○出席者

委員:五十音順、敬称略

明石 祐二、犬飼 米男、岡本 浩志、小畑 明、栗林 正巳、新谷 信幸、鈴木 睦、
土橋 律、中澤 喜美、中村 節雄、縄野 徳弘、半沢 美幸、水島 郁子、山口 直人
田久氏(勝野委員代理)

事務局:

土屋 喜久 (安全衛生部長)
美濃 芳郎 (計画課長)
田中 敏章 (安全課長)
泉 陽子 (労働衛生課長)
森戸 和美 (化学物質対策課長)
安達 栄 (調査官)
野澤 英児 (建設安全対策室長)
井上 仁 (産業保健支援室長)
毛利 正 (主任中央労働衛生専門官)
角田 伸二 (化学物質評価室長)

○議題

(1)労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱及び労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(2)林業・木材製造業労働災害防止規程変更案要綱について(諮問)
(3)その他

○議事

○土橋分科会長 定刻になりましたので、ただいまから「第 92 回労働政策審議会安全衛生分科会」を開催いたします。

 本日の出席状況ですが、公益代表委員では桑野委員、城内委員、角田委員、三柴委員、労働者代表委員では辻委員、使用者代表委員では中村聡子委員が欠席されております。なお、勝野委員の代理として、全国建設労働組合総連合の田久様が出席しております。

 それでは、早速一つ目の議題に入ります。議題 1 「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱及び労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案要綱」について、諮問事項ですが事務局から説明をお願いします。

○角田化学物質評価室長 資料を御覧ください。資料 1-1 が政令案及び省令案の要綱と諮問です。その中身についてまとめたものが資料 1-2 ですので資料 1-2 を中心に御説明したいと思います。

 まず、新たに 2 つの化学物質を労働安全衛生法施行令、特定化学物質障害予防規則等で規制する改正です。資料 1-2 1 ページを御覧ください。化学物質管理の体系図です。左が物質の分類、右がそれに応じた規制の程度を示しております。△の部分は上から規制の程度が強い順になっております。一番上の段は石綿等で、製造禁止とされているものです。 2 段目は健康障害が多発し、特にリスクが高い業務がある物質、特別規則による個別規制がかかっているものです。その下の段は特別規制で規制されておりませんが、一定の危険・有害な物質で、日本産業衛生学会や ACGIH (米国産業衛生専門家会議)で許容濃度等の勧告があるものです。一番下の段は危険性・有害性が確認されていない化学物質です。

 以上が区分ですが、このうち下から 2 段目のものについてはその有害性を踏まえ、順次、国においてリスク評価を行っております。その手順は、リスク評価の対象物質に選定すると、その物質について製造取扱事業者の方々から作業内容、消費量等のばく露作業報告を提出していただき、それに基づいてばく露実態調査を行い、そのばく露評価と有害性評価を合わせて左上の部分、リスク評価を行っております。リスク評価は初期評価と詳細リスク評価の 2 段階で行い、リスクが高いと判定されれば必要な措置を検討して、作業態様等高いリスクが確認されれば一つ上の段に移り、特別規則による規制を導入するという仕組みです。要綱案の 2 物質、ナフタレンとリフラクトリーセラミックファイバー (RCF) については現在、下から 2 段目の段に入っていることを左下の吹出しで示しております。これを今般、一つ上の段に移して発がん予防の観点からの規制を追加するものです。
 2 ページを御覧ください、 2 ページはナフタレンのリスク評価及び措置検討結果です。上の点線の枠の中にリスク評価の結果の概要があります。発がん性等の有害性を有するナフタレンを含む製剤等の製造・取扱業務については、労働者の健康障害のリスクが高いとの評価となり、ばく露リスク低減のための健康障害防止措置の検討が必要になりました。その下、対象物質の性質等ですが、 152 事業場からばく露作業報告が提出され、ナフタレンは染料中間物や合成樹脂等、多様な用途に用いられております。身近なところでは衣類の防虫剤にも使われております。常温では特徴的な臭気のある白色固体で、国際がん研究機関 (IARC) の発がん性分類では 2B 、すなわちヒトに対する発がんの可能性があるとされております。

 その下のリスク評価結果では評価値を設定し、ばく露実態調査の結果と比較してリスクを判定しています。この評価値は、注 3 にありますように労働者が毎日ばく露した場合でも健康に悪影響はないだろう、と推測されている濃度を産衛学会または ACGIH の許容濃度等から決定しております。ナフタレンでは 10ppm が設定され、ばく露実態調査結果と比較したところ、 17.3ppm と評価値を超えるばく露が確認されました。このため、健康障害防止措置の検討を行うべきとされたものです。

 その下が健康障害防止措置の検討結果です。ナフタレン及びナフタレンを含む製剤その他の物を製造し、また取り扱う作業についてはリスク評価の結果を踏まえ、健康障害を防止するため、特定化学物質障害予防規則の特定第 2 類物質と同様、作業環境測定の実施や発散抑制措置等を講じることが必要とされました。また、ヒトに対する発がんのおそれがあることから、 30 年間の作業の記録の保存等が必要になります特別管理物質と同様の措置を講じることが必要になったものです。
 3 ページを御覧ください。リフラクトリーセラミックファイバーのリスク評価と措置検討結果です。上の点線の枠の部分、発がん性等の有害性を有する RCF を含む製剤等の製造・取扱業務については、労働者の健康障害のリスクは高いとの評価となり、ばく露リスク低減のための健康障害防止措置の検討が必要となりました。ばく露作業報告は 398 事業場から提出されました。用途の例に記載がありますが、 RCF は工業炉のライニング材、防火壁の保護材などに使われている不燃性、繊維状の固体です。これも IARC で発がん性が 2B に分類されているところです。

 評価値を 0.2f/cm^3 に設定し、リスク評価を行った結果、評価値を超えるばく露が確認され、健康障害防止措置の検討を行うべきとされたところです。

 その下が健康障害防止措置に係る検討会における検討結果です。 RCF 及び RCF を含む製剤その他の物を製造、または取り扱う作業について、特化則の管理第 2 類物質と同様の措置を講じることが必要とされました。また、ヒトに対する発がんのおそれがあることから、 30 年間の作業の記録の保存等が必要となる特別管理物質と同様の措置を講じることが必要となったものです。

 さらに、 RCF を断熱材等として用いた設備等の施工・補修・解体等の作業については、短期間の作業である場合が多い反面、作業の性質上、発じんのおそれが高いため、発散抑制措置等による作業場の管理を基本としつつ、呼吸用保護具の着用を義務付けるなどのばく露防止措置、また湿潤化等による作業場外への飛散防止措置の規制化が必要とされたところです。こうした措置検討結果が 2 物質について取りまとめられましたので、必要な措置を位置づける政省令改正を行うものです。

 その改正案の概要ですが 4 ページをお開きください。まずナフタレンですが、改正の内容の部分を御覧ください。政令においては特定化学物質の第 2 類物質に追加し、その結果、作業主任者の選任や作業環境測定の実施、特殊健康診断の実施の義務付けがなされるものです。また、名称等の表示や配置転換後の特殊健康診断を行うべき有害な業務に追加をいたします。

 次に特化則ですが、第 2 類物質のうち特定第 2 類物質に位置づけます。ただ、一部の業務については特化則の適用を除外することとしております。密閉式の工程で取り扱っている場合の試料採取やローリーへの注入等、ばく露リスクが低いと考えられる1、2の作業や蒸発量が少なく、やはりばく露リスクが低いと考えられる3の作業ですが、こうした作業を適用除外にしていることを書いております。

 その下、特化則の規定により局所排気装置の設置、容器の使用、作業・貯蔵場所への関係者以外の立入禁止、漏洩の防止、洗浄設備の設置、緊急時の医師による診察・処置、保護具の備付け等の義務付けがなされることとなります。

 作業主任者は特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習の修了者から選任する。それから特殊健康診断の項目を設定する、さらに作業環境測定結果、健康診断結果、作業記録等の 30 年保存等の義務付けがなされる、これが特化則の規定です。施行期日は平成 27 11 1 日を予定しておりますが、一部の規定については必要な経過措置を定める予定です。

 次のページはリフラクトリーセラミックファイバーです。政令についてはナフタレンと同様です。特化則ですが、第 2 類物質のうち管理第 2 類物質として位置づけます。特化則の適用除外となる業務も設定しております。 RCF 等の粉じんの発散を防止する処理が講じられたものを取り扱う業務を除外しています。バインダー、つまり結合剤ですが、これを混ぜてボードなど一定の形に成形したものなどのことです。ただ、そういうものを切ったりする場合は発じんしますので適用除外にはなりません。

 規制の内容ですが、局所排気装置の設置、容器の使用、立入禁止措置、洗浄設備の設置、緊急時の診察・処置、保護具の備付けなどが義務化されるところです。また、作業主任者の講習、特殊健康診断の項目、作業環境測定結果等の 30 年保存が規定されるところです。

 このほか、 RCF については窯、炉等の断熱耐火材として施工・補修・解体・破砕する作業について発じんのおそれが高いことから、有効な呼吸用保護具の使用や作業場所からの飛散防止措置を義務付けることとしております。施行期日についてはナフタレンと同様です。
 6 ページを御覧ください。上記 2 物質の改正に加え、合わせて改正する事項があります。まず改正の趣旨です。屋内作業場において 1,2- ジクロロプロパン、これは重量の 1 %を超えて含有する製剤その他のものを含みますが、その 1,2- ジクロロプロパンによる印刷機その他の設備を清掃する業務について、労災認定状況を踏まえて健康管理手帳の交付要件の変更を行うものです。健康管理手帳はがん等を生じるおそれがある有害業務に従事した労働者について、離職後の健康管理を行うため、都道府県労働局長が交付する手帳です。なお 1,2- ジクロロプロパンは胆管がん事案を踏まえ、既に平成 25 年に政省令改正がなされ特化則で規制されているものです。

 今回の改正ですが、現行の交付要件は労働安全衛生規則第 53 条で当該業務に 3 年以上従事した経験を有することとされていますが、これを 2 年以上に改正するものです。改正の理由ですが、矢印の右側にありますけれども、平成 26 11 月までの労災認定事例のうち、最小ばく露期間は 2 年以上 3 年未満であること等を踏まえ、健康管理手帳の交付要件を見直すことが適当であると「労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会」で結論が出たためです。施行期日はこれも平成 27 11 1 日を予定しています。

 最後の 7 ページですが、先ほどの 2 物質についてリスク評価の対象物質として選定をしてからリスク評価措置検討に至る過程をフロー図で示したものです。このような過程を経て検討してきたということで参考として付けているものです。以上の改正につき、政令案と省令案の要綱についての諮問資料が先ほどの資料 1-1 です。資料の説明は以上です。

○土橋分科会長 ただいま御説明いただいた要綱案の審議に移りたいと思います。御質問、御発言等ございますでしょうか。

○半沢委員 資料 1-2 6 ページにあります 1,2- ジクロロプロパンに関していくつかの質問と御意見を申し上げます。今回、健康管理手帳の交付要件を当該業務の従事経験 3 年以上から 2 年以上に短縮する内容になっております。そもそも、この「 3 年以上」の根拠がどのようなものだったのか教えていただきたいと思います。と言いますのも、 2012 年に大阪の印刷会社で従業員に胆管がんの患者が相次いだことを受け、翌 2013 年にこの 1,2- ジクロロプロパンを特定化学物質障害予防規則の特別管理物質に指定した点は記憶に新しいところです。当時、問題の発覚から約 1 年という短い期間で特別管理物質に指定されたということは、それだけ 1,2- ジクロロプロパンと胆管がん発症との因果関係が強く認められたからであると考えております。今回、交付要件を従来の従事経験 3 年以上から 2 年以上に短縮するということですが、後追いで規制を強化するのではなく、当初から幅広に対応すべきではなかったかとも思うところです。 6 ページの矢印右側には、労災認定事例のうち、最小ばく露期間が 2 年以上 3 年未満であることを踏まえて要件を見直すということが記載されています。これに関して、労災認定はされなかったけれども、これよりも短いばく露期間での労災申請がなかったのかどうか教えていただければと思います。また、今後、最小ばく露期間が 2 年未満の労働者が労災認定されるような可能性がゼロではないと思っています。もし、そういった場合にはどのように対応となるのか、見解を教えていただきたいと思います。以上です。

○井上産業保健支援室長  1,2- ジクロロプロパンの健康管理手帳の交付要件については、平成 25 6 月に開催した「労働安全衛生法における特殊健康診断等に関する検討会」の結論を踏まえ、平成 25 年に労働安全衛生規則に定められたものです。この 1,2- ジクロロプロパンに関し、平成 24 年度に労災認定された労働者はその時点で 16 名いらっしゃいました。その従事経歴のばく露期間ですが、最大が 13 2 か月、最小で 3 8 か月、平均で 7.6 年ということでした。これを踏まえ、その時の検討会では交付要件を従事経歴 3 年以上とすることが適当であるということが結論として得られたものです。こういったことを踏まえて平成 25 年にはこれを交付要件と定めたものです。

 今回、 2 年にするということですが、労災認定がその後され、全体で 30 名の方が認定されています。その中の 1 名の方に 3 年未満の方がいらっしゃったことを踏まえ、今回、検討会を踏まえ 2 年に改正するというものです。今後は労災認定状況を見て、 2 年目を待たずということが事案として出てきた場合はまた今回と同様、専門家による検討会を踏まえ、見直す必要があるという結論が得られた場合には規則の改正を行いたいと考えております。

○半沢委員 今後の可能性としては更に見直すこともありうるということですね。労災認定はされなかったけれども、これよりも短い期間で労災申請された事例はあるのでしょうか。

○井上産業保健支援室長 その件数については手元にございません。健康管理手帳の交付についてはそういった申請があったと聞いております。

○半沢委員 健康管理手帳の交付申請についてはあったのですね。

○井上産業保健支援室長 健康管理手帳の申請についてはございました。

○半沢委員 健康管理手帳の申請者で、当該業務の従事経験 2 年未満の方もあったということですか。

○井上産業保健支援室長 はい。

○半沢委員 状況については承知いたしました。対象範囲を広げていくこと自体、今回の改正の内容としては健康を確保する目的に沿ったものなのだろうと思っていますので妥当だとは考えております。検討の結果ということですので状況としては理解をしたいと思います。是非、改正内容を関係をする事業者に対して速やかに周知徹底をして、広く健康を守れるような形で周知をしていただきたいですし、労働者に対して健診の呼びかけをきちんと行っていただけますようお願いしたいと思います。以上です。

○土橋分科会長 よろしいですか、ほかにいかがでしょうか。

○田久氏(勝野委員代理) 今回のナフタレンや RCF といった物質を特化則に上げ、労働者の健康障害の防止につなげようという評価は労働者側としては本当にありがたいと思います。要望ですが、特にセラミックファイバー、 RCF に関して言うと作業、施工や補修、解体などをする時、発じんのおそれがあるということであれば、やはり労働者に対しても注意喚起を促すような表示も含め、是非対策が取れるようにしていただきたいと思います。そういった部分では資材に対しての表示なども是非検討していただいて、労働者側からも危険が分かるような体制を是非考えていただければと思っています。お願いしたいということであります。

○角田化学物質評価室長 今般、労働者の健康障害を防止するための措置ですので、事業者の皆さんに的確に対応していただけるよう十分な周知に努めていきたいと思います。労働者の方への注意喚起ということも、特別管理物質ということになりますと作業場への掲示も必要になってまいります。そういうことを通じて周知がなされるように努めていきたいと考えております。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○新谷委員 諮問案件ですので総括的な意見を申し上げたいと思います。本日提起された内容、化学物質の有害性については今日現在での調査結果、治験データに基づく内容ということですので、今後新たなデータなりを入手された際には速やかな判断を引き続きお願いしたいと思っております。この点について要請をしておきたいと思います。

 また、ただいま質疑をさせていただいた 1,2- ジクロロプロパンについては、社会問題になった事案です。これについて今後の労災申請の状況、労災認定の状況を注意しつつ、有害業務に従事した労働者の離職後の健康管理を確実に行うよう、厚生労働省においても対応の徹底をお願いいたします。改めての意見を申し上げ、労働側としては本日の諮問案件について了承したいと思います。以上です。

 

○土橋分科会長 ほかにはよろしいでしょうか。それでは当分科会としては議題 1 「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令案要綱及び労働安全衛生規則等の一部を改正する省令案要綱」につき、妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。

                                 (異議なし)

○土橋分科会長 ありがとうございます、それでは事務局で手続をお願いします。

 次の議題に移ります。議題 2 「林業・木材製造業労働災害防止規程変更案要綱」について、これも諮問案件ですが、まずは事務局から説明をお願いいたします。

○美濃計画課長 林業・木材製造業労働災害防止規程の変更について御説明します。諮問の要綱は資料 2-1 です。資料 2-2 を用いて概要を説明します。資料 2-2 4 ページを御覧ください。今回の改正の経緯としては、平成 27 3 月に開催された労働災害防止団体運営評価会議において、労働災害防止規程の見直しを行うとの指摘に対して、林業・木材製造業労働災害防止協会(林災防)として、平成 27 年度の総代会に上程予定との取組状況を報告しました。こうした経緯を踏まえて、労働安全衛生関係法令の改正内容等を林災防で検討した結果、林材業の労働災害防止の更なる促進を図るべく、今回の規程の変更を行うこととしています。

 資料 2-2 1 ページにお戻りください。まず、「労働災害防止規程とは」とあります。これは、労働災害防止協会が、労働災害の防止に関する設備や作業の実施方法等について講ずべき具体的措置などを自主的に設定するものです。労働災害防止団体法に基づいて設定しているものであり、協会の会員にはこの規程の遵守義務が課せられることになります。

 主な変更点としては、会員に対して、リスクアセスメントの具体的な取組や熱中症予防について規程に明示するほか、行政指導であるチェーンソーの取扱い等について義務付けるなどにより、林業の安全性対策を強化したいというものです。

まず、リスクアセスメントの普及定着については、作業が多様化する中にあって、更なる取組が求められています。こうしたことから、林災防が作成した簡易リスクアセスメント記録書を 2 ページの参考 1 に掲げていますが、簡易アセスメント記録書を努力義務として導入することで林業への定着を目指すことが 1 点目です。
 2 点目、熱中症対策については、林業においても、過去 10 年間に熱中症により 10 名の方が死亡災害として亡くなられています。そこで、林材業においても、暑さ指数の活用、作業環境管理、労働衛生教育等の熱中症対策について新たに努めることとしています。

 それから、前回のこの規程の改正、平成 20 年の改正以降、制度改正や行政により発出された最新のガイドライン等を反映して、木材伐出機械等による危険防止措置が盛り込まれています。具体的には、車両系木材伐出機械や簡易架線集材装置について、作業中の飛来物や転倒等による運転者や周辺作業者への危険を防止するための措置を新たに設けるものです。その他の改正等についても所要の規程の整備を行うこととしています。

 また、その他として、屋外作業が主たる作業となることから、蜂刺されによる重篤なアレルギー反応を起こす可能性のある作業者の方には、アドレナリンの自己注射器の携行を義務付ける内容が盛り込まれています。

なお、参考資料として、先ほど申し上げた簡易リスクアセスメント記録書がどういうものか、あるいは、車両系の木材伐出機械や集材装置はどのようなものかをそれぞれ添付しています。

説明は以上です。 

○土橋分科会長 よろしいですか。それでは、ただいま御説明いただいた要綱案の審議に移りたいと思います。質問、発言等ありますか。

○犬飼委員 今回、林業・木材製造業労働災害防止規程を変更することについて、この規程は、いわゆる上乗せ規程ですので、改正が行われることは大変結構なことだと思います。ただ、その効果が直接波及するのは林業・木材製造業労働災害防止協会の会員のみということになります。

 確認しておきたいのですが、今回の改正規程が遵守されてその内容が直接影響される林業・木材製造業労働災害防止協会の会員というのは、いわゆる林業・木材製造業に携わる労働者のどれぐらいの比率になるかが 1 点目です。

 それから、会員以外の事業者、労働者に対してどのような周知を行う予定であるか、この 2 点を伺いたいと思います。

○美濃計画課長 まず 1 点目の会員の比率についてです。労働者の割合としては 4 分の 3 程度です。 2 点目の非会員に対する働き掛け、取組に関してですが、林災防においては、安全パトロールなどを通じて非会員事業場に対して協会への加入も促すなど、都道府県支部による会員加入の促進に努めています。また、労働災害防止団体法に基づいて、協会の業務として非会員事業場に対しても労働災害防止に係る指導を行っています。行政においても、こうした団体の取組が円滑に行われるよう、必要な支援等を行っていきたいと思っています。

○犬飼委員 今、 4 分の 3 程度というお話があったのですが、総務省統計局の経済センサスに基づいて事業所の規模を見ると、林業は全体で 1,814 事業所、 1 名から 9 名が 1,164 事業所、 10 名から 29 名が 589 事業所となっています。すなわち、 96 %が 29 人以下ということです。この規模の事業体ですから、今言われたようなことを本当に周知し切れるかという心配事が 1 つあります。それから、私たちも関係団体ですので規則そのものを全部読ませていただきました。今回の安全衛生分科会資料には載っていないのですが、例えば、チェーンソーの切創防止の防護衣の着用の義務付けも行われます。それから、アドレナリン自己注射器、いわゆるエピペンの携行も義務化になるのですが、そのためには、まず血液検査をして陽性反応者に対してアドレナリン自己注射器持たせることとなると思うのです。ということになると、会員においては、遵守しようとすると大変な経費増加になるのです。一方、会員でない場合は遵守義務はないわけですから、そこに安全に関する 1 つの違いが出てくるわけです。ですから、よほどの決意を持って会員以外に対して指導しないとこれはできないと思っています。

 災害を見ても、先ほどの規模ですので、本来ならば、例えば度数率だとか強度率だとか、私たちはそれを注視しながら安全指導を求めていきたいと思っています。しかし残念ながら、強度率を見ると、例えば、平成 21 年度は 7 倍だったものが、平成 22 年度は 14 倍、平成 24 年度は 25 倍という状況です。なぜこれほど乱高下するかと言うと、強度率というのは動向調査ですので 30 人から 99 人しか調べていないのです。ということは、私が言った 29 人以下の 96 %の事業所は今の災害には全く反映されないわけです。そのため、私たちが見つめているのは千人率です。千人率を見ても、今、だいたい全産業の 12 倍ぐらいです。これがずっとほとんど変わっていません。よって、安全に対する指導を今回の林業・木材製造業労働災害防止規程改定を契機に是非強めていただきたいという思いがあります。

 先ほどいろいろな周知の方法はあると言われましたが、是非、会員以外への周知を広げていただきたい。残念ながら、今年 7 7 日現在の災害を見ても 15 件の重大災害が林業で起こっているのです。そのうち会員であるのは 5 名です。ということは 10 名の方は非会員。速報値ですからここは正確な数字かどうか分かりませんが、非会員のほうが非常に多いということですから、ここに手を付けなければ千人率で 12 倍というのは阻止できないわけです。この辺のことを考えていただきたいと思っています。

 労働組合は、日本国内でなく、国際労働運動としてもグリーン・ジョブ戦略というのを掲げ、今、一生懸命に提唱しています。気候変動など地球環境問題への対策、産業・雇用の場として、持続可能な林業を営むためには魅力的な林業でなければならない。そのためには、安全で快適な環境の林業職場でなければいけないということです。是非、林業労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成の促進ということであるわけですから、魅力的な林業であるための 1 つの不可欠要素としての安全、ここのところを厚生労働省においては、今回の改正内容を是非林業労働者全般に及ぶように、非会員に対しても周知徹底を、林業・木材製造業労働災害防止協会等々と連携を図ってやってほしい。何か、林業・木材製造業労働災害防止協会の方もかなり経費が少なくなって大変苦心しているそうですので、是非、その辺も含めて連携強化を図ってやっていただきたいということを要望しています。

○美濃計画課長 確かに、小規模の事業場が多いというのはおっしゃるとおりです。林業事業場の規模別ですと、 4 人未満の事業場の割合が全体の 66 %であると思います。そうした状況の中にあって、今回の規程の改正を 1 つの大きな契機として、会員加入の促進や労働災害の防止に努めていきたいと思っています。林災防の関係で申し上げますと、国からの補助事業として中小規模事業場の安全衛生サポート事業というのがあり、これはまさに業界全体の底上げを図っていこうというものですので、こうした事業も活用しながら、労働災害の防止に努めていきたいと思っています。

○土橋分科会長 ほかにいかがですか。

○新谷委員 諮問案件ですので、これについても総括的な意見を申し上げたいと思っています。ただいま諮問頂いた内容については、林業・木材製造業に従事する労働者の安全衛生を向上する施策であるという理解で受け止めています。ただ、今、労働者代表委員の犬飼委員が指摘した内容は、林業に従事する労働者の問題を非常に端的に捉えたと思っています。中小零細の事業者が多いとか、事業者の団体でのカバー率が 100 %近くいっていないことがあって、なかなか集団指導という面でも難しさはあるとは思います。ただ、林業での労働災害の発生率は保険料率に見られるように非常に高い産業、業種ですので、今回御提案いただいている内容を、事業者並びに労働者に対してきっちりと周知をされて実効性のある取組をしていただきたいということをお願い申し上げて、労働側としてはこの諮問内容について了承したいと思います。以上です。

○土橋分科会長 その他よろしいですか。

○水島委員 内容については異論ありません。要綱の第三の見出しですが、例えば「一車両系木材伐出機械による危険防止措置」とあります。これは車両系木材伐出機械による危険を防止する措置という御趣旨と理解しますが、当該機械自体に危険防止措置を設けるとも読めなくもないように思いました。できましたら誤解のないような文言にしていただきたいという意見です。

○土橋分科会長 事務局側、いかがですか。

○美濃計画課長 御指摘を踏まえて、今後の条文化に当たっては、そうした点も踏まえて条文化したいと思います。

○土橋分科会長 ほかよろしいでしょうか。それでは、当分科会としては、議題 2 「林業・木材製造業労働災害防止規程変更案要綱」について妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。

                                   (異議なし)

○土橋分科会長 ありがとうございます。それでは、事務局で手続をお願いします。

 最後に、議題 3 「その他」です。事務局から報告があるとのことですので、お願いします。

○美濃計画課長 委員の皆様のお手元に「初の安全衛生優良企業を認定しました」と題されたプレスリリース資料を配布しています。これについて御説明します。安全衛生優良企業公表制度の運用については、本年 3 24 日の分科会において御説明、御報告しました。その後、 6 1 日から本制度を運用していますが、早速申請があって、 6 30 日までに全国で初めての認定がなされました。 7 8 日に厚生労働省の運用するホームページの専用サイト、「職場のあんぜんサイト」において当該企業名を公表し、併せて、報道発表もお手元にお配りしている資料のように行いました。今後も、この制度が広く活用されるよう普及に努めていきたいと考えています。委員の皆様におかれても、制度の周知等御協力をお願いできればということです。報告は以上です。

○土橋分科会長 何かありますか。よろしいですか。

○新谷委員 この認定制度については、飴と鞭のうち、飴のほうの施策として展開をされるわけですが、これはどんどん進めていただきたいと思っています。ただ、認定企業が 1 件であるところがやはり気になっています。申請がもともと来ていないのか、申請は来ていたけれども認定要件に合致しなくて落ちてしまったのか、あるいは、今後の周知によって、この制度が活用されるのか。これをいろいろな企業の PR に使っていくことが本来狙っていた趣旨だと思いますので、小さく産んで大きく育てるということをお考えなのかもしれませんが、ちょっと意外に少ないな、という感じがしたので、今後の取組方針についてお聞かせ頂きたいと思います。

○安達調査官 今、御指摘のあった点ですが、この制度は 6 月に都道府県労働局で認定申請を受け付けています。今回の発表の後にもまた認定された企業もあって、主な局に聞くと、認定申請についてはポツポツ出てきている状況です。特に大きな企業になると、この制度は事業場単位でなくて企業単位ですので、一定の審査期間も要ると聞いています。ただ、御指摘のとおり、できるだけ多くの企業の認定をしていきたいと考えているので、今後とも制度の周知は進めていきたいと考えています。あと、認定を受けた企業に対するインセンティブといったことについても今後さらに検討を進めていきたいと考えています。

○新谷委員 質問した点はまだお答え頂いていないのですが、全国で申請があったのは 1 件だけなのですか。そこを教えてください。

○安達調査官 申請は複数出てきています。 6 月に認定されたのが 6 月中は 1 件だということです。

○新谷委員 ということは、申請があったけれども認定要件に合致しなくて認定されなかった企業はまだ残っているということなのでしょうか。

○安達調査官 現在審査中のところも複数あります。

○新谷委員 分かりました。

○土橋分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。それでは、これですべての議題が終了しました。本日も熱心な御議論をありがとうございました。

 最後に、事務局から連絡事項をお願いします。

○美濃計画課長 本日も熱心に御議論いただきまして感謝申し上げる次第です。御了解いただいた諮問案件につきましては、早急に所要の手続を進めさせていただきます。次回の分科会については追って御案内いたしますので、よろしくお願い申し上げます。以上です。

○土橋分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。なお、議事録の署名については、労働者代表委員は縄野委員、使用者代表委員は鈴木委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。本日はお忙しい中、ありがとうございました。


(了)

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