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2014年2月13日 平成25年度第2回管理濃度等検討会議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課環境改善室

○日時

平成26年度2月13日(木) 15:30~17:30


○場所

中央合同庁舎第5号館専用第17会議室


○議題

ジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト(DDVP)等の管理濃度の検討について等

○議事

○沖田係長 これより、平成25年度第2回管理濃度等検討会を開催します。本日は大変お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。

 事務局に異動がありましたので、紹介させていただきます。化学物質対策課長は森戸に代わりました。環境改善室長は徳田に代わっております。このほか、化学物質情報管理官が高村に代わっているのですが、所用のため後ほど参ります。

 初めに、主催者を代表して徳田室長から御挨拶を申し上げます。

○徳田環境改善室長 改善室長の徳田でございます。私は昨年の7月に人事異動で就任いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。各委員におかれましては、大変お忙しい中、この検討会に御協力いただきましてありがとうございます。御承知のように、先般、いわゆる措置検討会で専門家に集まっていただき、発がん性のある有機溶剤10物質、DDVP等について検討いただいて、その報告書が公表されております。今後、行政としましては、この報告に基づいて、関係法令の改正を予定しております。

 本日は、これらの物質について、測定に係る事項について御意見を伺うのと、前回、第1回の検討会において引き続き検討することとされた事項について、併せて御検討をお願いできればと思っております。限られた時間の中で、御議論いただく内容は結構盛りだくさんとなっておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

○沖田係長 ここからの議事は座長にお願いしたいと思います。

○櫻井座長 議事進行を務めますので、よろしくお願いいたします。最初に、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○沖田係長 「平成25年度第2回管理濃度等検討会会議次第」が一番上にあると思います。次ページに「配付資料一覧」とあり、資料番号2-1から2-8まで、参考資料として2-1から2-4まで用意しております。1ページから資料番号2-1「平成25年度第1回の検討結果について」。3ページから資料番号2-2「検討対象物質の概要」。7ページから資料番号2-3「詳細リスク評価書(ジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト)」。43ページから資料番号2-4「発がんのおそれのある有機溶剤の今後の対応」。55ページから資料番号2-5「平成25年度化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会報告書(2)」。85ページから資料番号2-6「発がんのおそれのある有機溶剤(特別有機溶剤)に係る作業環境測定評価方法について」。87ページから資料番号2-7「ニッケル化合物の管理濃度の見直しの留意点(論点)」。最後に資料番号2-8「局排の性能要件の見直しについて」。以上がメインの資料となります。

 このほか参考資料として一部、机上配布がありますが、参考資料2-1「作業環境の測定基準・評価基準の改正」。9ページで参考資料2-2DICHLORVOS」のACGIHの資料が入っております。21ページも同じくACGIHの資料ですが、参考資料2-3として「CHLORFORM」以下、有機溶剤10物質の関係が入っております。113ページに参考資料2-4「ニッケルおよびニッケル無機化合物」の産衛学会誌の論文等が入っております。配布資料は以上になります。

○櫻井座長 皆さん、お手元にそろっておられるでしょうか。大丈夫なようですので、本日の議題に入ります。今日は平成25年度の第2回目ですので、議事(1)1回検討会での検討結果について、事務局から説明をお願いいたします。

○沖田係長 資料番号2-11ページ「平成25年度第1回の検討結果について」です。第1回の検討会で検討いただいた結果として、1,2-ジクロロプロパンについて、管理濃度等を設定していただきました。その結果として、管理濃度は10ppm、測定方法は試料採取方法を固体捕集方法、あるいは直接捕集方法とする。分析方法は、ガスクロマトグラフ分析方法とする。局所排気装置の性能要件としては、制御風速とすることを決めさせていただきました。前回の検討会の中では固体捕集方法だけ議論いただいたのですが、後日、把握した情報を基に御相談させていただいて、直接捕集方法を追加するという運びになったことを、この場にて報告申し上げます。

2点目のN,N-ジメチルホルムアミドについては、従来、捕集方法に問題があったということで提案いただいて、委託事業を踏まえた結果で、直接捕集方法から固体捕集方法に変更するという了解をいただきました。

3点目、ニッケル化合物について、水溶性・不溶性の性状の違いによって許容濃度が異なる提案がある状態があり、それを表現するために、ここにあるような水溶性と不溶性、2通りの立て方をするのではなくて、こういった数式によって表現できないかという御提案を頂いたところです。これについては、また後ほど議論していただきます。

4点目は、ベリリウム及びその化合物について、規制の在り方について今後、検討するという報告を申し上げたところです。以上です。

○櫻井座長 何か御質問、御指摘事項はありますでしょうか。特にないようですので、議事(2)に進みたいと思います。今回は3つありまして、1つがジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト(DDVP)の問題。2つ目が発がんのおそれのある有機溶剤10物質の課題。3つ目はニッケル化合物が検討対象になっております。最初にDDVPについて、事務局から説明をお願いいたします。

○沖田係長 資料の3ページ、資料番号2-2「検討対象物質の概要」の1番目にDDVPが書いてあります。物質名としてDDVPと略して申し上げますが、正式名称がジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト(CAS62-73-7)です。主に農薬とか家庭用殺虫剤として使われており、現在のところ管理濃度未設定の状態です。日本産業衛生学会も現在のところ設定はありませんが、ACGIH0.1mg/㎥という基準を設定しております。その他として、発がん性としてはIARC2Bという報告を頂いております。概要は以上です。

○岸室長補佐 私から、リスク評価の結果等について説明します。資料番号2-37ページからになります。これはジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト(DDVP)の詳細リスク評価書です。次ページから評価書の中身に入っていきます。物理的性状については、名称はジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト、別名としてはジクロルボス又はDDVPとなっております。労働安全衛生法施行令別表第9の対象物質、つまりSDSを表示する対象物質となっております。物理的化学的性状としては、外観が特徴的な臭気のある無から琥珀色の液体。比重は1.4、沸点は140℃、蒸気圧は20℃で1.6Pa、引火点は80℃以上です。

 生産・輸入量は、2007年までは農薬として135.5トン、原体として作っておりましたが、2011年の統計資料によると原体の生産は中止されております。わずかに50%の乳剤が50kg未満で作られているような状況です。

 有害性評価の結果としては、常温で液体であり、一定の蒸気圧があるということで、蒸気の吸入ばく露が問題となるということ。皮膚への刺激性や経皮ばく露による有機リン中毒症状を生じることや、吸入、経口、経皮、いずれのばく露経路においても神経毒性が発現することから注意が必要となっております。

 重視すべき有害性としては、ヒトに対する発がん性があるということで評価しました。根拠としては、IARC2Bであること、また日本産衛学会でも第2群のBであることなどが根拠となっております。発がん性以外の有害性としては、急性毒性では吸入の毒性が低い値が出ており、GHSでも急性毒性の吸入や蒸気で区分1となっているところです。そのほか、皮膚感作性があるということ。これもGHSで区分1となっております。

 次ページですが、神経毒性についても、DDVPによりコリンエステラーゼ活性が阻害され、種々の神経毒性が発現されるということで、神経毒性についてもGHSは区分1となっているところです。許容濃度等はACGIHTLV-TWA0.01ppmであること。皮膚に対する経皮吸収に注意が必要であることが付されております。根拠としては、この値はコリン作動性影響から作業者を安全に防護するための十分な余地を与えるものであること。TLV-STELを付すには十分なデータは得られていない。経皮ばく露により有機リン中毒症状を生じていることから「Skin」の表記を付すとなっております。産衛学会では許容濃度の設定はなし。DFGMAKでは0.11ppmということでの設定がされております。

 リスク評価においては、一次評価値は評価値なしで、これは閾値が判断できないことから評価値なしとしております。二次評価値は0.01ppm(0.1mg/㎥)ということで、ACGIHが提言しておりますばく露限界値を二次評価値としたところです。

 次にばく露評価です。有害物ばく露作業報告の報告を求めたところ、これは平成19年度の実績で平成21年に報告を求めましたが、13の事業場から39の作業について報告がなされました。作業従事労働者は223(延べ人数)です。取扱量の合計は402トンでした。これも延べ数です。主な用途としては、「他の製剤の製造を目的とした原料の使用」、主な作業の種類としては、「ろ過、混合、撹拌、混練又は加熱の作業」「充填又は袋詰めの作業」「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」等がありました。作業時間としては、月20時間以下の作業が85%、局排の設置がなされているのが100%、防毒マスクの作業がなされているのが74%という状況です。

 この報告を基に、次にばく露実態調査を実施するわけですが、まず平成22年度にばく露実態調査を行いました。これは有害物ばく露作業報告のあった報告から、コントロールバンディングにより、ばく露レベルが高いと推定される事業場を選定して測定をしたわけですが、実際に測定ができたのは2つの事業場で、8人の労働者に対する個人ばく露測定を行うことができました。この結果、1つの事業場の3名については二次評価値である0.01ppmを上回るばく露が確認されたということで追加調査、つまり詳細評価を行う必要があるという結論が得られたところです。

 それにより、平成23年度に追加調査を行ったところです。これにおいてはDDVPを混合する殺虫剤の製造を行う1事業場と、DDVPの板状の蒸散剤の殺虫剤を成形加工する事業場、1事業場の計2事業場について追加調査をし、5人の労働者の個人ばく露測定を実施したところです。その結果、板状の蒸散型殺虫剤を成形加工する事業場3名について、二次評価値を上回るばく露が確認されたという結果が出たところです。そのうち、1の事業場については、成形機のトラブルがあったため、もう一度調査をするのがいいだろうということで、平成24年度にもう一度、同一の板状の蒸散型殺虫剤の成形加工をする事業場に対して調査を行ったところです。

 丸数字2ですが、3年間のばく露実態調査における5事業場、延べ19人の個人ばく露測定の結果です。測定データの最大値は0.627mg/㎥、全データの区間推定上側限界値は1.022mg/㎥という結果が出たところです。

 ばく露の高い作業の詳細としては、3年間のばく露実態調査の結果、8時間のTWAで二次評価値を超えたのは平成22年度の1事業場で3名、平成23年度の1事業場で3名、平成24年度の1事業場で延べ6名というところで、最大0.627mg/㎥のばく露は確認されたということです。それらの用途については、いずれもDDVPを他の原料と混合溶融し成形加工することにより、板状の蒸散型殺虫剤を製造する用途であったということです。

 注意する点としては、同じページの下側にある「特に」ですが、成形加工の工程においては、DDVPと樹脂等を加温すること、また板状の加工や小さく切断することによって表面積が大きくなることから、包装されるまでの間にDDVPが作業場内へ発散しやすい状況であることが考えられるということで、加温することや表面積を大きくすることで、より発散しやすい状態になっていくということです。

 リスク評価の結果については次ページです。測定した延べ19人中、延べ3事業場、延べ12人で二次評価値を超えたということや、個人のばく露濃度の最大値が二次評価値を上回る0.627mg/㎥であること、区間推定の上側限界値も1.022mg/㎥であったということです。分布についてのグラフは下にあります。

 これらを踏まえ、判定の結果としては、他の製剤の製造で対象物質を含有する製剤の成形加工、包装の業務において評価値を上回るもので、リスクが高いという判定が得られたところです。それ以外の作業については二次評価値を上回るまで至っていないということで、リスクは高いとまでは言えないとなったところです。

 結論は次ページです。ばく露の高い作業の詳細とその要因解析の結果、リスクの高い作業としてはDDVPを含有する製剤の成形加工又は包装の業務が確認され、当該業務のばく露のレベルは、二次評価値0.1mg/㎥を超えるものであったこと。また、その要因を解析したところ、DDVPを含有する製剤の成形加工又は包装の業務については作業工程に共通する問題であり、当該作業工程については健康障害防止の措置の導入が必要であることと考える。また、DDVPについては、皮膚の刺激性、経皮ばく露による有機リン中毒症状や神経毒性が指摘されており、健康障害防止措置の検討に際しては、開放系で作業する場合における皮膚の保護等の措置を併せて検討する必要がある。

 一方、DDVPを含有する製剤の成形加工又は包装の業務以外の業務については、個人ばく露濃度が二次評価値を超えるような状況にないため、ばく露による健康障害のリスクは比較的低いと考えられるものの、DDVPを製造し又は取り扱うその他の業務においても、当該業務に従事する労働者に対する自主的なリスク管理を行うことが望ましいというまとめとなっているところです。

 リスク評価については、以上の結論が出されたところで、これに基づいて、次に措置検討を行ったところです。それについては資料番号2-555ページです。これは昨年726日から計4回、検討を進めてきたところです。

 検討結果の概略は57ページです。健康障害防止措置の検討結果ですが、ジクロルボスについては、これを含有する製剤を用いた成形加工又は包装の業務において、リスク評価において個人ばく露の測定結果が二次評価値を上回り、ばらつきを考慮した区間推定上側値も、二次評価値を大きく超えるばく露が見られたことから、健康障害防止のため、特定化学物質障害予防規則の「アクリルアミド」と同様に、作業環境測定の実施や発散抑制措置等を講じることが必要である。また、ジクロルボスの有害性を勘案し、作業記録の保存(30年間)等が必要となる特化則の特別管理物質と同様の措置を講じることが必要である、ということでの結論が出されたところです。

 より詳細な検討シートについては、65ページに「健康障害防止措置の検討シート」ということで、作成しております。これについては、67ページにもあるように、関係団体からの意見聴取に2つの団体からも意見聴取を行い、作業実態などを踏まえて、より適切なばく露防止措置、健康障害防止措置がどれであるかということを検討したところで、内容としては68ページにあるような表の対応になっております。対象物質はDDVP、対象の作業としては製造・取扱いの作業のうち、成形加工、包装の作業。適用除外の作業としては、それ以外の作業ということで、下の表に各措置が書かれており、チェックが入っているところが講ずるべき措置であるということです。液体であることから、先ほども申し上げましたアクリルアミドと同様に特定第2類の措置によるものが妥当であろう。特別管理物質によるものが妥当であろうということとなっております。

 この中で、「作業環境の測定」については実施をすること、記録を残し30年間保存すること、結果に基づく措置を行うことということでチェックが入っておりますので、測定方法や管理濃度などを決めていく必要が生じるものです。

 また、上に戻りますが「発散抑制措置」についても、局所排気装置の整備というところでチェックが入っておりますので、局排の性能要件を定める必要が出てくるというものです。このようなことで、それを129日に公表したところですので、今後、関係法令の改正作業に着手していくこととしております。簡単ですが、以上です。

○櫻井座長 事務局からの御説明の内容について、何か御質問があればどうぞ。当検討会の課題としては、管理濃度の決定、測定方法の決定、局所排気装置の性能要件の決定と、3つの課題を順次、御審議いただく予定ですが。

○松村委員 現在このDDVPが製造もなく輸入もないということですが、製造・輸入の禁止が掛かっているということでしょうか。

○角田化学物質評価室長 特に禁止が掛かっているということではありません。実際に家庭用の殺虫剤とか文化財用の殺虫剤という、例えば家庭用とか事務所用ですと、吊して蒸散させるようなものが製造されております。

○松村委員 在庫はあって、それを使っているという状態ですか。

○角田化学物質評価室長 ということもあるかと思います。

○松村委員 そうですか。分かりました。

○中明委員 いろいろと御検討いただいておりますが、今年の1月の「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」の報告が、今ここに御出席の先生方が検討していらっしゃるので、何だかんだ言うつもりはないです。ただ、実際に現場は先生方、見られましたか。実際に測定するときの現場、個人ばく露評価にしろ何にしろ。

○名古屋委員 これは中災防に委託されているので、我々はそのメンバーではないので。でも、菅野先生はその委員会のメンバーですよね。

○菅野委員 行っていません。

○名古屋委員 中災防が委託されて、そこで測定して結果の報告を受けるというだけなので、現場には行っていない状況です。

○櫻井座長 検討会には、いつも測定の現場へ行った人たちも来ておられて。

○中明委員 現場の様子が少し分かったほうがいいのかなと思って聞いていたのです。8時間の個人ばく露評価をやってもどういう形で、39人のうち、せいぜい78人のオーダーで、それで出てきたものについて、123で決めてしまっていいのかなというのが1つある気がしていまして。そうすると、もっと現場をよく見て、それで判断できればと思ったのですが、それはもう中災防のメンバーが行って測ってきたから、それは信用してくださいということと考えていいわけですね。

○名古屋委員 もうこれはルールで決まっていますよね。要するに有害物ばく露作業報告により集められた化学物質について、その全部集めたデータから初期リスク評価を行う事業場等を選定するために、その中で、コントロールバンディングの手法を用いて一番高い事業場の作業のばく露濃度測定を行い、初期リスク評価を行います。初期リスクが終わって、その作業で二次評価値を超えているものがあったので、詳細リスク評価のための測定を行い、最終的なリスク評価を行います。要するに今までずっと何物質もやっている、そのルールに従ってやっているという形ですよね。

○菅野委員 この物質の場合、14ページの表と図がありますが、上側の上下の推定値ですね。これが二次評価値の10倍あるわけです。これはかなりリスクが高いと判断されるのではないかと思います。

○中明委員 これは作業によって濃度にかなりばらつきがあるということですね。

○菅野委員 ばらつきがあるということも言えますが、通常の作業環境ですと、95%の人が管理濃度を超えないようなレベルになっているのが管理区分1ですから、それが10倍ぐらい高いということです。

○櫻井座長 これは3年にわたって測定しておりますね。必ずしも同じ事業場ではない、数か所ですよね。

○菅野委員 はっきり記憶しておりませんが、同じ所もあったかもしれませんけれども。

○櫻井座長 若干含まれているけれども。繰り返し繰り返し高い濃度が設定された。

○中明委員 ところが、作業がある。

○櫻井座長 そうですね。

○中明委員 でも、トータルとすれば、95%以下の人が大部分だということ。

○菅野委員 下側から数えて95%では1mg/㎥にばく露される危険性があるということですよね。ですから、かなり高いばく露になる可能性があるということですので、ほかの作業環境の規制値の決め方と同じようにすると、やはり加味したほうがいいということになると思いますけれども。

○中明委員 管理濃度を決めるときには、それなりのバランスを考えたほうがいいというように判断するわけ。だから、このまま今までで言えば、ほとんど。

○菅野委員 それは私が個人的にお答えすることではないと思いますけれども。

○櫻井座長 管理濃度を決めて。

○中明委員 許容濃度に近いような数値を出してきたわけですね。日本とアメリカの数値で、どっちか低いほうを取りましょうということになってきているわけだから。

○櫻井座長 そうですね。

○中明委員 それでやむを得ないといえば、やむを得ないと思うのだけれども。

○櫻井座長 その課題で移ってよろしいでしょうか。管理濃度を決定する。いかがでしょうか。管理濃度としては、ACGIH0.1mg/㎥というのを勧告していて、日本産業衛生学会では勧告はないですね。今までのやり方が妥当だと思っておりますが、そのいずれかの低いほうの数値を、特段の問題がなければ大体採用していると。

○沖田係長 資料41ページにジクロルボスの標準測定分析法がありますので、御覧ください。今申し上げたとおり、許容濃度としては、ACGIHのほうが0.1mg/㎥を挙げております。その下にサンプリングとして、SKC捕集管を使って、固体捕集法によるサンプリングを行っています。このときのサンプリングの方法として、1分当たり1Lを個人サンプラーで集めると。作業環境測定の方法で、1定点10分で測定すると10L集めると。10L集めた状況ですと、下にある精度の欄の定量下限ですが、採気量が10Lあれば、0.9μg/㎥という精度を得ることができますと。これは0.0009mg/㎥という意味合いになりますので、ACGIH0.1mg/㎥を採用するとしても、10分の1以下は十分に精度を測定できるということになっております。以上です。

○櫻井座長 その情報も含めて、0.1mg/㎥とすることで、よろしいでしょうか。

○名古屋委員 今まで大体、第二次評価値を管理濃度としていることがずっときていますので、ここで変えることはないと思います。

○松村委員 ここのSKC捕集管というのは、ガラス繊維のフィルター、これは微粒子用の捕集ですよね。XAD-2というのは、蒸気の捕集だと思っていいのですか。そうすると、気相と粒子固相と、両方の状態で空気中にあり得るという意味ですか。

○櫻井座長 そのとおりだと思いますね。

○小西委員 両方採る管です。

○松村委員 両方採るということですね。

○小西委員 そうです。

○松村委員 でも、常温では液体なのでしょう。

○小西委員 いや、ベーパー(Vapor)で出てくるのではないですかね。

○松村委員 ベーパー(Vapor)ですか。

○小西委員 もともとは。

○菅野委員 ほかの物質と混ざっていますので、純品は液体かもしれませんが、出てきたときにですね。

○松村委員 埃にも吸着するという意味ですか。

○小西委員 ガラス管のこれ自体は、私も詳しいこと分からない。先ほどのACGIHはインハラブル粒子としてという前提が付いていますよね。ということで、この両方を使ってトータルを取るという意味でいいです。どうなのですか。捕集管との関係がちょっとよく分からないので。

○菅野委員 インハラブルということとは違うと思います。

○小西委員 ちょっと違っている。その定義はイコールになっていないですよね。ただ、ここのメインに使った、最後の参考に書いてあるOSHA62というメソッドですが、これはこれと全く同じ捕集管を使っているのですよね。

○松村委員 そうですか。

○小西委員 ただ、ここはGC-MSを使っているのですが、OSHAのほうはFPDを使う形になっていますよね。

○菅野委員 そうですね。MSで問題ないと思いますけれども。

○小西委員 MSでいいと思うのですけれども、FPDでもOSHAの方法論でいくと、比較的安定して採れるという、回収があるということで、産学測定基準だとそこまでは指定しませんから、ガスクロマトグラフということでいいのだと思うのですが、FPDでも採れるのであれば、FPDでもできるような形で、実際の方法を公表するときは何か入れておいたほうがいいのかなという気がします。

○松村委員 リンが入っているからということですね。

○小西委員 はい。FPDのディテクターになっていますよね。どうなのですか。そこがちょっとよく分からない。

○名古屋委員 これが委員会に出てくるときに、中災防が全部、ちゃんと分析のトレースをしているのです。また、中災防の委員会では分析方法についても検討していて、その検討に基づいて現場測定を実施している分析法が、これは出てきているから、現状ではこれだけだと思う。もしやるのだとしたら、そこのところを検証して公開する。

○小西委員 限定すると、GC-MSでしかできないということになってしまうので、そこのところで「FPDは駄目なんですか」と言われたときに困るかなという気がしたのです。もともとの文献がFPDの文献を利用されているので、FPDの検討結果というのはないのですか。

○名古屋委員 ないと、ここに出てきているだけだと思います。

○菅野委員 ただ、MSよりもFPDのほうが一般的に使われているということはないと思います。

○小西委員 今の現状ではね。

○菅野委員 はい。MSのほうがFPDに比べれば広く使われていると思います。

○小西委員 それを変えた何か特別な理由があるのかなという気がしたものですから、あえて元の文献はFPDと書いてあったのをGC-MSで使った、何か感度が悪いとか、そういうのがあったのかなと思ったものですから、それでちょっと今お話したのです。

○松村委員 でも、NIOSHの分析法はGC-MSになっているわけでしょう、OSHAFPDで。

○小西委員 OSHAFPD。下に参考でOSHAのナンバーが書いてあったものですからね。

○櫻井座長 今、測定方法についての御議論をいただいているわけですが、その他ありますでしょうか。実質的には、これは全部ガスの状態で測定されておりましたね。熱が掛かって。

○松村委員 脱着溶媒で溶解して液体から分析するわけですよね。分析するときには溶液をGC-MSに注入して、気化した状態で測っているのかなと思いますけれども。

○中明委員 中災防で測ったときに、どのような方法でやったわけですか。ここに書いてある方法でやっているのですか。

○菅野委員 はい。

○名古屋委員 中災防の委員会では、測定に際し、何の方法でやりますかというところを検討していって、そして海外の分析法の場合、トレースしてこれでやりましょうと決めて、それで現場へ行っていると聞いています。だから、分析については検討していますし、ばく露評価小検討会などでも分析の人がいて、この方法でいいですよと、ちゃんとチェックはされています。

○芹田委員 質問があったかもしれないのですが、ばく露を受けている所が加温するところでばく露が多い。要するには蒸気になっているはず。それが粒子をつかまえるという感じで、グラスファイバーフィルターとガス体をつかまえるための方法は、これで保証されていると考えていいのでしょうか。

○松村委員 そうだと思います。

○菅野委員 この捕集管は、XADという吸着剤の前面にグラスファイバーが入っているということで、同時に粒子若しくはミストの条件が存在しているのが両方、捕集可能というものです。

○櫻井座長 先ほど菅野委員もちょっと言及しておられましたが、ベーパーとパーティクルということですが、事実上このものそのもののミストが存在することは考えにくいけれども、その他の空気中の粒子に表面に吸着している可能性もあるということなので、一応ちゃんと両方測ると。でも、実質的にはほとんどベーパーのものだけだったようなことだったと思います。

○菅野委員 と思いましたが、それ以外のものの存在を完全に否定するわけにもいきませんので、こういう方法にならざるを得ないということです。

○櫻井座長 小さなことなのですが、この濃度の表現はppmを先に出していたり、mg/㎥を先に出したりというように、統一がとれていないのですが、ACGIHmg/㎥(0.01ppm)となっている。ドキュメントではそうなっていて、一般にすぐ手に入るリストではppmは一切書いていない、mg/㎥だけ。これは似たような農薬は全部そのように統一されております。(IFV)と書いてあるのです。Inhalable Fraction and Vaporと。ACGIHは昔はppmで出していたのですが、ある時期からmg/㎥。この種のものは全部統一しておりますが、それは正しいだろうと。

 まず、DDVPの管理濃度は、値は0.1mg/㎥ということで、よろしいですか。測定方法については、別添4に記載されている、試料採取方法は固体捕集方法、分析方法はガスクロマトグラフ-質量分析法と細かく言うのでしょうか。事務局の案としては、ガスクロマトグラフ分析方法となっております。それでよろしいのですね。含んでおりますからね。ということで、よろしいでしょうか。

(異議無し)

○櫻井座長 御異議ありませんので、そのようにさせていただきます。

○小西委員 今の別添4ですが、例えばサンプラーがSKCという社名が入っている。これはやはり出すときは社名を除かないといけないのではないかと。

○櫻井座長 これは社名なのですか。

○小西委員 SKC、会社の名前ですね。

○櫻井座長 やめて何か表現しないといけませんね。

○菅野委員 もちろん、その懸念はあるのですが、右側を御覧いただくと、機器分析の装置も会社名付きなのですよね。

○櫻井座長 会社名をなくすことはできないということですね。

○菅野委員 カラムも、これは番号で書いてありますが、率直に言って、これをインターネットで調べると、どちらの会社の製品かが分かってしまう。逆に一般名で書くのは確かにニュートラルなのですが、SKC捕集管若しくは同等品というように書けば、実際に測定する方も分かりやすいですから、それが規則に反しなければ、そのぐらいがいいのではないかと思います。規則上、特定の商品名を出すのはいけないということでしたら、もちろんニュートラルな名前がありますので、そちらに変えて。

○松村委員 さもなければ固体捕集法。

○小西委員 これはSKCだから、固体捕集法は別にSKCだけではないかもしれないです。

○松村委員 でも、固体捕集法というのが一般名なので。

○小西委員 こういう機構のものというのは本来でしょうね。何ミリの何を入れてという。

○松村委員 ダイオキシン用のサンプラーなども同じようですね。

○小西委員 パフを入れてやる。

○櫻井座長 ちゃんとした文章としては、固体捕集方法と書いておいてください。

○小西委員 測定基準のほうはそれでいいのです。固体捕集法でガスクロマトグラフですから、基準のほうは問題ない。具体的に分析を示すときには、これが必要なのかもしれないですけれどもね。今、菅野委員が言われたように、同等品と入れておけば、別にほかのメーカーを外す意図ではないのでしょうけれども。

○菅野委員 そのほうが親切かとは思います。規則にのっとってやっていただくほかないと思います。

○櫻井座長 そういう方向で、よろしくお願いいたします。次に、局所排気装置の性能要件です。事務局から特に説明がありますでしょうか。

○沖田係長 こちらは特定化学物質として規制される予定ということで、特段差し支えなければ、抑制濃度による方法ということでよろしいのではないかと考えています。以上です。

○櫻井座長 特化物は基本的に抑制濃度で。その数値は管理濃度に等しい数値ということですね。

○沖田係長 そうですね。一致しています。

○櫻井座長 そうでなくする理由は特にないと思います。よろしいですね。本件については、抑制濃度とするということで結論とさせていただきます。

○名古屋委員 ただ、1点お願いしたい。抑制濃度でいいのですが、抑制濃度の測り方が昔作ったときからちっとも変わっていないので、あの方法で、現場では測定できないケースも見受けられるので、早い時期に1回検討してほしいなとのお願いです。

○櫻井座長 それは課題としてよろしくお願いします。

○松村委員 これはDDVPについてだけではなくて。

○名古屋委員 全部です。濃度の測り方。

○櫻井座長 あれはちゃんとどこかに出ているのですよね。それはまだ改定していませんからね。

○名古屋委員 一番最初から。

○櫻井座長 そのままになっている。他に特になければ次の議題に移ってよろしいでしょうか。次の議題は、「発がんのおそれのある有機溶剤10物質について」です。事務局から説明をお願いいたします。

○沖田係長 資料の3ページから5ページにかけて説明していきます。検討対象物質のDDVPの次の、クロロホルム以下の所です。クロロホルムについては、試薬、抽出溶剤に使われていて、現在、管理濃度の指定が3ppm、これは日本産衛学会の3ppmと一致しています。四塩化炭素については、5ppmで定められており、これも日本産衛学会と一致しております。ACGIHのほうにも5ppmで一致しております。1,4-ジオキサンについては10ppmで、これも日本産衛学会の10ppmと一致しております。

4ページで1,2-ジクロルエタンについては、10ppmで日本産衛学会と一致しております。ACGIH10ppmで一致しております。ジクロルメタンについては、管理濃度50ppmで、日本産衛学会の50ppmACGIH50ppmと一致しております。スチレンについても同様に、管理濃度が日本産衛学会とACGIH20ppmと一致しております。1,1,2,2-テトラクロルエタンについても、同じく1ppmで日本産衛学会とACGIHに一致しております。

 次のテトラクロルエチレンなのですが、これは現在管理濃度50ppmという状況にあるのですが、日本産衛学会は数値設定をしていない状況にあり、なおかつACGIH25ppmと管理濃度の方が高くなってしまっている状況にあります。

 トリクロルエチレンは、管理濃度が現在は10ppmで、日本産衛学会の25ppmよりは低く設定されておりますが、ACGIH10ppmと一致しております。メチルイソブチルケトンについては、管理濃度が20ppmで、これも同じように日本産衛学会の50ppmを下回っていますが、ACGIH20ppmに一致しております。

 したがって、この10物質のうちテトラクロルエチレンだけが管理濃度が高めに設定されている状況にあります。概要の説明は以上です。

○櫻井座長 その他に細かい説明があるのではないですか。

○事務局 詳細のリストは今から御説明いたします。

○高村管理官 発がんのおそれのある有機溶剤10物質についてのリスク評価検討会での検討内容について、御説明させていただきます。資料番号2-4、通し番号43ページを御覧ください。「発がんのおそれのある有機溶剤の今後の対応」ということで、リスク評価検討会で報告書を取りまとめていただいております。発がんのおそれのある有機溶剤としては、44ページの真ん中辺りの1の所で、国際がん研究機関(IARC)で発がん性が12A又は2Bに区分される有機溶剤ということで、こちらの10種類の有機溶剤について検討していただいております。今回御検討いただいた業務については、45ページの上の「対象となる業務内容」の所で、有機溶剤中毒予防規則第1条第1項第6号に掲げる有機溶剤業務について、ばく露の状況について御検討いただいております。

 これについてのばく露の状況の検討結果は、47ページ別添1にまとめております。(1)物性から推測されるばく露リスクとして、これらの有機溶剤については沸点が低く常温での蒸気圧が高いために、作業の状況により労働者に高濃度のばく露を生ずるおそれがあるものが含まれているとされております。

(2)作業環境測定の評価結果から、これら有機溶剤10物質全てに第2管理区分、第3管理区分に評価された現場があるということで、そういうものが認められたこと。53ページに管理区分について取りまとめております。具体的にはトリクロルエチレンについては29.3%、ジクロルメタンについては22.8%もの作業場で、第2管理区分又は第3管理区分の評価が認められたということです。

(3)有機溶剤等健康診断の結果として、有機溶剤等健康診断においては、有機溶剤の種類により生物学的モニタリング検査の対象であるスチレン、テトラクロルエチレン、トリクロルエチレン全てにおいて分布3に区分される代謝物の検出が認められたということで、ばく露量が多いと考えられる健康診断の検査結果が含まれているということでした。

 こういう状況が確認されたことから、これらの発がんのおそれのある有機溶剤10物質について、有機則で規定する有機溶剤業務については、労働者のばく露が懸念される状況が明らかであることから、45ページの今後の対応の所で取りまとめてあります。これら10物質を製造し又は使用する有機溶剤業務を対象として、記録の保存期間を延長するなどの措置を講ずる必要があるという検討結果を取りまとめていただいております。

 リスク評価検討会の検討結果を踏まえ、7月から健康障害防止措置に係る検討会のほうで、健康障害防止措置について御検討いただいております。こちらについては資料番号2-5に報告書をお付けしております。資料番号2-558ページの(3)に措置検討会での検討結果についてまとめてあります。発がんのおそれのある有機溶剤10物質については、発がん性という有害性を勘案した規制を行うことが必要である。特化則の特別管理物質と同様の以下の措置を講じることが必要であるとし、措置内容として、1作業記録の作成。2記録の30年間の保存。この記録というのは特殊健康診断結果の記録、それから作業環境測定の測定結果と評価結果の記録、作業記録です。3名称、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意事項及び使用保護具の掲示。4事業廃止時の記録の報告。5発がん性という有害性に応じた含有率(裾切り値)の見直し。現在、有機則における裾切り値は5%となっておりますが、これについて1%とするということで、健康障害防止措置の検討会で御検討いただいております。

 具体的な措置内容の整理表については通し番号の75ページに、発がんのおそれのある有機溶剤の「健康障害防止措置の検討シート」ということで資料として付けております。この措置の検討に当たっては76ページにある、業界団体からのヒアリングを行って検討を進めております。具体的には印刷、化学工業、化学繊維、鉄鋼、金属、機械工業等の関係団体59団体に意見照会を行い、36団体から回答を頂いたアンケート結果等を踏まえて検討しております。その他関係団体からのヒアリングということで、検討会に御出席いただいて意見を伺っております。

 具体的な発がんのおそれのある有機溶剤に関する措置の整理表は78ページにまとめてあります。発がんのおそれのある有機溶剤については、特化則の「エチルベンゼン等」かつ「特別管理物質」として考える場合ということでまとめてあります。発がんのおそれのある有機溶剤の含有量が1%超えである場合と、発がんのおそれのある有機溶剤含有量が1%以下、かつ発がんのおそれのある有機溶剤と有機溶剤の含有量の合計が重量の5%超えという場合の、2つのパターンに分けて考えていただいております。

 表の真ん中辺りに注丸数字1、注丸数字2で示しておりますが、注丸数字1として設備、換気装置の性能と保護具については有機則における措置内容を準用、ということで御検討いただいております。注丸数字2では定期自主検査、点検、補修等についても有機則の準用ということで御検討いただいております。混合溶剤の測定についても注丸数字3ということで、有機則の準用をするということで御検討いただいております。

79ページでは、「有機溶剤中毒予防規則における措置の整理表」ということでまとめていただいております。注丸数字4で、対象物質と有機溶剤の含有量の合計が重量の5%超えのものについては、既に措置済みの措置について含有率(裾切り値)を1%とする形で、引き続き措置を行うとして、検討会で御検討いただき、結論付けられております。こちらが、リスク評価検討会での検討内容と、措置検討会での検討内容です。

 なお、この10物質については今回のリスク評価で御検討いただいた対象が有機溶剤業務ですが、その他の業務については、本年1月から3月までに御報告いただくこととなっております「有害物ばく露作業報告」の結果に基づいて、別途ばく露実態調査を行い、それらの業務も含め、来年度以降リスク評価を進めることとしております。その結果により、必要に応じて追加の規制等も今後検討を行うこととしております。以上です。

○櫻井座長 これで説明事項は終了いたしました。その内容について御質問等がありましたらお願いいたします。

○松村委員 こういう規則の運用がどのようになるかということですけれども、30年間ばく露、あるいはその作業そのものの記録や健診の記録が出るわけです。その記録を持っている人がどういうがんになるか、ということまでは特定していないわけですか。例えば、胆管がんの場合には、まとめて同じがんが出たということで労災認定の対象になっています。しかし、こういう有機溶剤の場合のがんというのは特徴があると一般に考えられているのでしょうか。こういう記録がどのように将来有効に使われるのかということがよく見えないのですけれども。

○櫻井座長 疫学の情報がみんな不十分であるために、IARC1になっていないわけです。動物実験でだけ発がん性が認められているわけです。動物実験で認められた発がんの臓器がヒトに外挿できないのが現状なので、どこに発生するかは全く誰にも予測ができない。

○松村委員 実際にそういう記録を持っている人が、将来どこかのがんが出た場合に、職業性であると判断されるのか。それだけでは分からないですよね。

○櫻井座長 恐らくそれだけでは判断できないと思います。約40%の方は必ずがんになる。

○松村委員 そうですね。

○櫻井座長 でも、記録がなければ何も新しい情報が得られませんので。

○松村委員 はい。それで疫学データとしてはビッグデータの一部になるのかもしれませんけれども、非常に有効な情報だとは思います。

○櫻井座長 そうですね。

○松村委員 個々の人について、これがどのように生きるのかというところがよく見えないような気がします。

○櫻井座長 将来、はっきりしたときに使えます。

○松村委員 使えますか。

○櫻井座長 はい。他の疫学情報が明確になったときに使えてくるわけです。

○松村委員 それから、こういう作業歴があっても、作業環境とか作業の管理がきちんとしていれば、実際のばく露は少なく抑えられる可能性があるわけです。その辺の区別は健診結果で出てくるということですか。そういう取扱い作業をしていても、きちんと環境管理ができるとか、あるいは防護ができていれば吸入しなくて済むわけですよね。そういうのは、実際にはばく露はないという状態が保てればですよね。その辺の区別は記録としてはどこに出てくるのですか。健診結果に出てくるのですか。

○高村管理官 個人ばく露の状況については実際にデータ等の記録がないのですが、作業環境測定の結果からと、実際には一定程度管理された状態で作業がされていることが記録の結果ということでは残るかと思います。

○松村委員 分かりました。

○櫻井座長 ですから、高濃度ばく露で発がんが疫学的に証明された場合、そういう濃度にばく露したのかそうでないのかということが、記録があれば後から判断できるわけです。低い濃度にしかばく露していなかったかどうかということ。

○松村委員 そうですね。

○小西委員 有機溶剤の作業環境測定が義務付けられて、それから評価が義務付けられてから、過去のデータからずうっと管理区分の推移を見ていくと、有機溶剤はあるところで割合が止まっているのです。第1管理区分があるところまでいってから、その後第2管理区分、第3管理区分の割合は余り変わっていないのです。これで見ると、そういうのが影響しているのかと思います。これで、そういう形のきちんとした対処をすることによって、有機溶剤の管理区分の第1がもう少し増えていってくれるのかなという期待をしています。有機溶剤のところは余り変わっていない。

 もちろん管理濃度は変わってきているのですけれども、あまり幅が変わってきていないということになると、その取扱いだとか、そういうところについてまだきちんと管理されていない部分が多いのかなと思います。こういう形で管理して、第1管理区分が増えてくれる傾向が出てくるといいと思います。

○櫻井座長 何かありますか。

○明星委員 これ自体はよろしいと思うのですが、ある物質に重い枷を掛けるとこれを使う意味がないということで、違う物質を探すということを避ける、今すぐという意味ではないのですけれども、その方策を長期的に考えないと。エチルベンゼンを使っていた理由もそうだと思うのですけれども、それが駄目ならまた次の物質へ行く。そういう繰り返しが止まる方策がないと、多分これからはもうこれを使わないという結論が出るだけで終わってしまうのではないかという懸念もあります。

○高村管理官 もちろんそういう傾向があるということで、具体的に特別規則の対象ではない物質を使ってしまって、それを安全な物質ということで誤解して使うようなケースもこれまでに見られていたかと思うのです。そういう特別規則の対象となっていない物質を使う場合について、これまで労働政策審議会の安全衛生分科会でも御議論いただいてきました。一定の有害性のある物質については、リスクアセスメントを義務化するという形で、義務化について御検討いたただいて、使う物質の有害性、それからリスクの高い低いについて調査をしていただいた上で御使用いただくということの義務化についても御検討いただいて、今そういう方向で法案についても検討しているところです。そういうことも併せて、単に特別規則の対象でないものは安全で、そのまま何もせずに使うことを助長するのではなくて、リスクと有害性等に応じた対応をしていただくような形で、今現在新たな法令等について検討しているところです。

○小西委員 過去に作業環境測定の有機溶剤の対象物質が17物質だった時代がありました。特にトリクロルエチレンは測定対象だったのですけれども、1,1,1-トリクロルエタンは測定対象になっていなかったときに、脱脂洗浄剤としてのトリクロルエチレンは測定をしなければいけないから、クロロセンに変えようとなったことがあります。その後、有規則で測定対象物質が47物質になったときに、それだったらまたトリクロルエチレンを使おうと。脱脂洗浄力が違うということで元へ戻った、ということが過去にはありました。だから、両方そういうこともあるのかなと思います。

○松村委員 私は、IARCなどが発がんをアラートしているような物質については、あらかじめ全部リストアップして、日本の政府としても公表することもあり得ると思っています。

リスクアセスメントというのは高い教養を要する労働衛生管理だと思うのです。そういう専門家が、日本の中小企業にいるかというのは疑問なのです。あらかじめ、こういう物質は危険だと見せてしまうことができないかなと、私は密かに思っております。

○森戸化学物質対策課長 私どもも、行政からの発信の仕方を考えなければいけないと思っています。今、私どもがいろいろ言っておりますのは、できるだけ許容濃度が定まっている物質をむしろ使ってくださいと。要は、有害性が不明な物質よりも、許容濃度がちゃんと決まっている物質を使ってくださいという言い方もしています。今回このように規制になりますけれども、これはいろいろな蓄積で、許容濃度がしっかり定まっている物質ですので、その辺がうまく伝わるように、リスクコミュニケーションの問題もあるのかもしれませんけれども、うまく伝わるようにしていきたいと考えております。

○櫻井座長 考え方の非常に大きな転換ですよね。むしろ、ちゃんと分かっていて、有害性があるものが大部分なので、無いものを探すよりも、有るものをちゃんと知っていて使う。他に何かありますか。

○中明委員 これは、本省でこれからどう考えていくかということになるのだけれども、発がんのおそれのある有機溶剤10物質を挙げました。その管理は含有率0.1%以下ぐらいで管理しようかという話みたいです。そういう方向でいくのだろうと思うのです。

 ただ、塩素だとか、臭素だとか、フッ素だとか、ハロゲン系の元素というのはほとんど発がん性はあるのだろうと私は思っています。今出てきているのはみんな塩素が絡んでいます。そうしたときに、このままでこういって、私はどちらかというと、これは特定化学物質(特化物)にしてやるというのが1つの方法だろうと思うのです。確かにいろいろ言われるように、それこそ現場サイドでは困る部分が出てくると思うのだけれども、いたちごっこで、出たから規制しようとか、こうなったからこうしようということではなくて、もっとベーシックに基本的なところで考えてほしいのです。それは言われているように、化学物質管理の問題で、だから少しよく考えていってほしいということなのです。その辺の方向性はどうなのですか。

○櫻井座長 そういう方向で。

○中明委員 座長がおっしゃられたように、毒性の強いものについてはなるべく使わないような方向でというのが1つはあると思うのです。そういう方向でいくには、少し縛りをきつくしてしまう。現場サイドではきついかもしれないけれども、縛りをきつくするというのも1つの方法です。塩素を含んだ有機溶剤については特化則マターにしてやるのも1つの方法かなと、私は感じています。

○櫻井座長 同じことを考えていますね。

○高村管理官 今回、検討いたしました発がんのおそれのある有機溶剤については、措置検討会での検討結果では特化則のエチルベンゼン等、かつ特別管理物質として規制をする方向で結論付けていただいておりますので、そういう形で今後進めていきたいと考えております。

○櫻井座長 当面、急いでまずこれをやる。有機則のままでできることを今やる。

○中明委員 リスク評価検討会だとか、措置検討会だとかいろいろ委員会を作ってやっているとは思うのです。管理濃度等検討会にそういう情報がパッと入ってきて、それでどうするのと言われても、どういうプロセスでこういう数値が出てきたという説明がないと、こういう会議で説明する必要もないのだけれども、情報があれば、それはそれでいいと思うのです。情報がない所でこのように進んでいっていますよというのは、現場というか、私は全部知っているわけではないから、どんな委員会があってどうやっているかというのはいつも注意しているわけでもないし、ちょっときついかなと思います。

○角田化学物質評価室長 物質の選定については企画の検討会がありますので、そこで先生方の御意見を聞いて、今おっしゃったような有害性が高いものについて物質を選定しているという形で毎年選び、それを年度末にばく露作業報告の物質として告示するという形でやっています。その時に実際に物質の選定の過程でもパブリックコメントをして、どんな物質をやるべきかということを一般の皆さんからも集めてやっています。

 今やっているのは、先ほどから議論があるIARC2B以上とか、あるいは発がん性だけではなくて、生殖毒性とか神経毒性とか重篤なものについても順次評価を進めていく形でやっております。その中でこの10物質については、胆管がん事案のジクロルメタンということもありましたので、これに関連して、同じ2B以上のものについても併せて規制していく方向で進めているという形です。

○松村委員 作業環境管理の方法なのですが、有機溶剤は特に低沸点のもので、印刷業界のように蒸発面が非常に広くて、溶剤の使用量も多くてというと、ものすごい蒸発量になります。これは局所排気といっても、管理濃度以下にするのはお金もかかるし、技術的にも大変なのです。それで、今は呼吸保護具がどうしても必要になってきている面があると思うのです。その場合に必ずしも防毒マスクが全能ではなくて、ジクロルメタンなどは本当にすぐに破過してしまうので、送気マスクになります。送気マスクは告示の対象になっておりませんので、送気マスクが何かという定義はJISしかないのです。

 私もJISに関わっておりますので、JISの送気マスクの中を見てみたら、2002年が最終改正で、内容にやや問題があります。このままで送気マスクと言われても不都合な点もあるというか、不安な点もある気がしております。それで、保安用品協会と呼吸用保護具工業会に早急に送気マスクのJISの見直しをするように申し入れております。そういうわけで、呼吸用保護具も必須になってくるだろうと思います。最近、通達などでは一つ一つの物質について呼吸用保護具の種類とか、手袋とか防護服の種類を指定したりしているものもあります。単に有効な呼吸保護具というよりはずっといいのですけれども、送気マスクといってもいろいろあり、至急JISで直せるところは直したいと思っております。できれば国の性能保証というのか、その対象になっていくといいと思います。

○櫻井座長 それを念頭に置いて、健康障害防止措置検討会の課題でもあるし、ある程度話が進んでいるのかなと思いますが、これからということかもしれません。

 そろそろ、決めるべきことを決めていただきたいと思います。この有機溶剤10物質の管理濃度です。これは既に説明がありましたように、特化則の規制対象にする方向で今後進みますので、それを念頭に置いた上で、管理濃度を決めるということです。先ほど表もありましたけれども、10物質については、現に管理濃度が決まっているわけです。そのうちテトラクロルエチレンだけについては管理濃度が現行50ppmですけれども、ACGIH25ppmになっていますので、これについて管理濃度を50ppmから25ppmに変更すべきか否かについて御意見を承ります。

○名古屋委員 今までのルールだと、管理濃度が開かれている間に、ACGIHと日本産衛学会が濃度を変えた時には検討にしましょうと。それで大体低い値を取りましょうとなっています。

○櫻井座長 昔からそういうルールで進めておりますので、特段問題なければ。そうではあるけれども、当然ある程度個別に考慮いたしますが、基本的に全てそういうことで決まってきております。なお、テトラクロルエチレンは50ppmだったのを、日本産衛学会では検討しなければならないということで、一旦それを抹消してまだ新しい数字を勧告していない状況だったように記憶しております。ACGIH25ppmという数字を、前はもうちょっと高かったものを25ppmに変更して現在に至っている状況です。それについては、どこかに参考資料にありましたよね。何ページでしたか。

○沖田係長 89ページです。

○櫻井座長 ACGIHの提案理由書が89ページから94ページまであります。92ページにヒストリカルな変遷も書いてあります。1992年にプロポーズしています。1993年に25ppmと決まっております。主として自覚症状を重視しています。25ppmであれば、頭痛、めまい、眠気というような自覚症状に関する訴えを最小限にするのにある程度の安全性を見込んで25ppmにするということです。その後、特に新しい情報もないのでそのままになっています。25ppmでよろしいですか。

(異議無し)

○櫻井座長 そのように決めさせていただきます。

 そのように変更した場合、現状の試料採取方法と分析方法を変更する必要性があるかどうかについてはいかがでしょうか。

○小西委員 分析のほうはないですね。

○菅野委員 データはありませんけれども、濃度が10ppmレベルですので、実用上は全く問題ないと思います。

○櫻井座長 専門家の御判断として、問題ないとおっしゃっておられますので、テトラクロルエチレンの管理濃度については25ppmに変更し、試料採取方法、分析方法については変更なしということでよろしいですか。

(異議無し)

○櫻井座長 それでは、そのようにさせていただきます。

 その他の有機溶剤9物質の管理濃度、測定方法、分析方法については変更なしということでよろしいですか。特段今の段階で変更しなければならない理由は見当たらないと思いますので、変更なしということにさせていただくということでよろしいでしょうか。

(異議無し)

○櫻井座長 それでは、そうさせていただきます。

 次に、有機溶剤10物質の混合溶剤の評価方法についてです。これは管理濃度の立場からですが、濃度をどう評価するかという評価方法について事務局から説明をお願いいたします。

○沖田係長 資料番号2-685ページです。「発がんのおそれのある有機溶剤に係る作業環境測定評価報告について」ですが、エチルベンゼンや1,2-ジクロロプロパンと同じようなやり方で測定を評価すると考えた場合を書いてあります。ここで挙げているのは、ジクロルメタン、スチレン、メチルイソブチルケトン、キシレン、トルエンの混合溶剤が存在したと仮定した場合に、実際どのように評価していくかということです。「ジクロルメタン測定と評価」と四角でくくっています。その次は「スチレン測定と評価」とくくっていますが、この枠の一つ一つが測定と評価とお考えください。

 そうしたときに、ジクロルメタンについて特化物と指定して、ジクロルメタンを特化物として見るという1つの測定と評価、ジクロルメタンが有機溶剤として混合溶剤になっているということで、ジクロルメタンとキシレン、トルエンと混ざった状態の測定の評価をする。それが同じようにスチレン、メチルイソブチルケトンについてもそれぞれ評価していくということで、ジクロルメタンからトルエンまで5種類混ざった状態で、5物質なのに6回測定評価しなければいけないことになります。

 これは、前に御議論いただいたときに、メチルベンゼンと1,2-ジクロロプロパンは混ぜて使わないことを前提にやっているので、こういう評価の仕方でも問題なかったのですが、実際この測定評価の方法では、混合有機溶剤全体としての見かけの有機溶剤という評価が全然なされていない状況にあります。この方向を見直して、下半分の図にあるようにジクロルメタン、スチレン、メチルイソブチルケトンといった特定化学物質そのものを評価するところは変えませんが、全体の部分を混ぜ込んだ見かけの有機溶剤として評価する、一本全体で見るという評価にまとめたいというのが1つの御提案です。こうすることによって、作業環境の評価をするときには測定機関も説明がしやすいというか、依頼者にとってもこのほうが理解しやすいというメリットが期待できます。以上です。

○櫻井座長 今の御説明について、分かりにくいところもあるかと思いますが、何かありましたらお願いします。

○小西委員 以前から、混合物の評価については大分議論した記憶があるのですが、本体自体が混合になっている物ということだと思うのです。しかし、混合になっていなくても、同じ作業場で使っている場合には、そこで働いている人はみんな吸うわけです。吸うときは混合物として吸う。今までの定義は、恐らく既に混合されている物を使っている場合という形で混合の評価は行われてきていると思うのですが、ここで書かれている物質は、必ずしもみんな混合されることはほとんどないのではないかと思います。その辺りが、有機溶剤だけならGC-MSを使って分析するのであれば、1回測定してそれだけ単独でやるか足してやるかというのは、そんなに大変なことではないのだろうと思いますが、そこが印刷やいろいろな所で出てきたのは、空気中に飛んでいるものの混合と扱うのか、溶液で混合されていなかったら混合として扱わないのかというのは、議論が相当あったと思うのです。しかし、人間が吸ったときには同じではないかと思います。

 もう1つ、混合物で出ているものが、そのままの蒸気圧で空気中に出てくるとは限らないという問題もあります。総合的に評価するのは反対ではないのですが、そういうところも今後きちんと詰めていかなければいけないのではないかと思います。

○櫻井座長 見直しの方向性として提案されているのは、例えば4種類の物質の混合で、最初から混合であろうと、そうでなかろうと、ばらばらでも同じ場所で出ているとした場合に、4つそれぞれ測定しますね。それぞれのばく露限界値の比を出して、それを全部足して、1を超えなければいいという判断にしようというわけですね。今までずっとやっていたこと、基本はそうですね。

○小西委員 そうですね。

○松村委員 ACGIHも、基本的に混合物の場合にはそういう評価をしなさいということになっていますね。

○櫻井座長 相加性と考えて。

○松村委員 ただ、検知管で混合有機溶剤は分離できないのです。分離できないで色の長さだけで見るときには、簡易方法でまとめたものがありましたが、余り理論的な根拠にはなりませんね。

○小西委員 3種類の検知管を使ってやるというものですね。

○櫻井座長 それは特殊ですね。そういう場合が起こったときに考えることで、基本的にはそれぞれ測定すると。

○明星委員 結果としては、見直しのほうが厳しくなりますかね。

○小西委員 これは数字のマジックみたいなものなのですが、例えば混合物として評価した場合に、有機溶剤の種類が5種類や6種類になったら1を超えるのです。ほとんどの場合1を超えるという管理の仕方になるのです。1を超えると、管理濃度を超えることになりますね。

○櫻井座長 そうすると、恐らくやや安全サイドに行き過ぎる可能性はあるということですね。そういうことがないような形になっているのですか、上のが余りよく理解できていないので。

○菅野委員 私も理解できなかったのですが、有機溶剤をまとめて評価するというのは、共通の毒性があるからという前提ですね。

○松村委員 そうですね。

○菅野委員 ですから、1番に書いてあるのは、ジクロルメタンもスチレンもMIBKもキシレンもトルエンも有機溶剤としての毒性を示すという前提なのに、混合物のとき1個減らしていることになりますね。それは評価の仕方がおかしいので、2番の評価分析はあり得ないと思います。有機溶剤として全部まとめて評価するのと、特定化学物質として1個ずつ評価するのを両方ともやらなければいけないということなので、これでよろしいと思います。

○岸室長補佐 現行の規定では、エチルベンゼンや1,2-ジクロロプロパンの規定は、単品のものと、かつ混合物のものとで評価しなさいということで、2通りになってしまうので、それが有機溶剤にまで当てはめてしまうと、上のようなおかしな図になってしまうので、それは現実的ではないと。混合物であれば混合物として評価するというのは、作業環境測定の正しい考え方だと思いますが、エチルベンゼンができたときに2通りの測定の考え方ができてしまったために、そこに矛盾が生じているのです。

○櫻井座長 エチルベンゼンも、個別に測って管理濃度を比較しますね。ほかのものもあったら、それを付け加えても低いかどうかを調べようとしているのですね。そうすると、全く同じではないですか。

○高村管理官 今回、発がんの恐れのある有機溶剤を特化則に移すということで、混合溶剤の混合する有機溶剤から除かれてしまって、エチルベンゼングループに入ることで1番のような変な形の。本来、混合物の有機溶剤側として、混合物として測るべき有機溶剤が特化則のエチルベンゼンということで、単体で、かつ残った有機溶剤との混合物、それ全部を含む混合物として測れないというか、そういう変なことになってしまう図なのです。

○菅野委員 エチルベンゼンが決まったときに、そのようになっているとは思いもしないで、2番のようになっていると思っておりました。

○櫻井座長 有機溶剤としてまとめて評価することは、実際できないのですね。

○菅野委員 見直しの方向性と書いてある方向性になるように、法律を変えていただければよろしいかと思います。

○高村管理官 はい。

○松村委員 この場合、評価を合算できるのは、有機溶剤と特別有機溶剤で別にするということですか。

○菅野委員 特化物になっても、有機溶剤の性質はもともとあって、それが変わったわけではないので、有機溶剤としても評価するということでよろしいのではないでしょうか。

○松村委員 ターゲット・オーガンが同じならば、という言い方ですね。最終的に慢性毒性なのかどうか分かりませんが、急性毒性を考えれば、大体麻酔性とか、そういうことかと思いますが。

○櫻井座長 実際はターゲット・オーガンが違うものもありますね。だから、本当は独立で評価してもいいケースもあると思いますが、安全サイドを取って相加性を考えるしかないわけですね。

○明星委員 その場合、エチルベンゼンはどこに行くのですか。

○櫻井座長 ここには入らない。

○明星委員 入れておいたほうがいいのではないですか。

○松村委員 そうですね。

○櫻井座長 入る。

○小西委員 導入ですが、上のほうが特化則としての評価ですね。上の3つはそれぞれを評価すると。有機溶剤としては下の箱で、評価は今までどおりということですね。

○岸室長補佐 そうです。

○名古屋委員 特化だけでいいのでしょうね。

○菅野委員 確認ですが、先ほど3回測定と評価をするという御説明がありましたが、測定は1回でいいと思いますが、それでよろしいですね。

○櫻井座長 要するに評価だけ、計算だけの話ですからね。それでは、その件はよろしいですね。事務局案どおりとさせていただきます。

 次の議題はニッケル化合物です。事務局から説明をお願いします。

○安達副主任 繰り返しになりますが、資料番号2-11ページを御覧ください。最初に御説明があったかと思いますが、今年度第1回の検討会において、ニッケル化合物について御議論いただきました。ニッケル化合物については、化合物の水溶性・不溶性によって許容濃度が異なるので、現行の管理濃度の設定とは全く異なる形でリスク管理をすべきではないかということで、いろいろ御議論いただきました。その中で、特に水溶性をどう判断するか、それに応じた管理濃度をどう設定するかについて御議論いただき、特に溶解の部分については非常に重要なポイントなので、よくまとめるようにということで、今回新たに論点をまとめました。

 資料番号2-787ページを御覧ください。委員の皆様には次のページに、同じ紙ですが、事務局のメモ書きを書いたものがあります。前回以降いろいろ検討し、また関係者からの御意見もあり、そういう論点をまとめました。重複もありますが、大きく5点あります。1つ目は、一番重要と考えておりますが、水溶性とする範囲の考え方を、規制するに当たって整理をする必要があるということです。根拠となるACGIHや産衛学会の許容濃度などを参照するときの「水溶性」の定義をどう考えて、この管理濃度を決定するときにどう当てはめていくかということです。例えば「水溶性」「不溶性」「難溶性」など、論文によっても言葉が使い分けられているので、評価に当たっては少し明確にしておく必要があるというのが、1点目の水溶性の範囲です。

2つ目は、ニッケル化合物の水溶性判定の方法として、前回、クエン酸アンモニウム溶液を用いた方法を御説明しました。一方で、ニッケル化合物の種類は非常に多種多様なものがあるので、こういった方法以外にどういう方法が考えられるのかというのが2つ目の論点です。

89ページ、91ページに、前回お示ししたニッケル化合物の分析測定方法について書かれています。水溶性か不溶性かによって管理濃度を異なるものとすると、作業環境測定の結果がどちらであるかを判定する必要があるということで、前回は国際的にも非常に多く使われているクエン酸アンモニウムの溶解方法をお示ししました。ただ、いろいろなデータを見ると、一般的に純水への不溶性が認められても、クエン酸アンモニウムには一定の溶解が認められる物質もあるということですので、規制をするに当たってその度合いをどのように反映させるかというのが2つ目の論点です。

 机上配布ですが、93ページに英文の論文を添付しております。96ページですが、ニッケル化合物の溶解のデータが出ております。図1ですが、棒グラフの奥が水への溶解性、手前がクエン酸アンモニウムの溶解の度合いです。いろいろなニッケル化合物についてデータがありますが、左の硫酸ニッケルから始まる3物質はそれぞれで整合していますが、炭酸ニッケルなど傾向が異なるデータが出ているものもあります。

 次のページ、図2は肺への吸入を想定した、肺液に見立てたものの溶解のデータです。これは溶解度は違いますが、各化合物において、傾向としては同様のものが見られております。

 資料番号2-7の論点に戻ります。3つ目の論点は、単一のニッケル化合物のみを取り扱う場合の当該判定の要否についてです。通常、作業環境測定を行って評価をするということは、当然、使っている物質を分かった上で行うものです。このため、例えば、溶解度によって管理濃度を変える場合に、特定の事業場が自分の所は完全に不溶性、酸化ニッケルだけしか使用しない、あるいは発生しないということであれば、不溶性のデータを使うということで差し支えないかどうか、逆に溶解性の高いもののみを取り扱うということであれば、その情報だけでも差し支えないかどうかという、取扱上の問題も検討していく必要があるということです。

4つ目の論点は、ニッケル化合物の粒度分布とリスクとの関係についてです。例えば、ここではニッケル化合物の粒度分布と溶解度が異なることがあるのであれば、そこも見ていかなければいけないということです。単一のニッケル化合物で粒度分布が小さくなると、仮に溶けやすさが増すとなると、同じ物質でも管理濃度を変えていく必要があるとすると、論点3についても考慮が必要になってくるのではないかということです。

5つ目の論点は、14の論点を踏まえ、最終的に水溶性、あるいは不溶性という大きな2つの中での管理濃度の値を設定していくと、今の論点も踏まえた上で決定をしていかなければいけないということです。作業環境測定では、測定点が複数出てくることになります。単一事業場として溶解度を一定にするのか、測定ポイントによって溶解度に応じて管理濃度も設定し直さなければいけないのかということも、論点としては出てくるのかもしれません。

 最後に、管理濃度の設定方法についてです。仮に単一の化合物ではなく、複数の化合物を使った場合に、複数の溶解性を持つものをサンプリングしたときにどうするかを考えていくと、大きくハザードが違う中でうまく管理濃度を設定していかなければいけないということで、問題提起のような話になりますが、前回以降課題を整理して、論点を5つ出しましたので、是非、忌憚のない御意見を頂き、検討を深めていきたいと考えております。以上です。

○櫻井座長 議事進行が不適切で、時間が足りなくなる恐れもありますが、最後に決めたいことが2つ、3つありますので、これに割ける時間が限定されておりますが、できるだけたくさん御意見を賜りたいと思います。

○中明委員 先送りにしてください。これは、今すぐには結論が出ないと思います。簡単にはいかないと思います。

○櫻井座長 時間を掛けないと、難しい課題ですね。

○菅野委員 水溶性のニッケル塩と不溶性、あるいは難溶性のニッケル塩という区分けになっていますが、動物実験をするレベルでは、ニッケルの溶液は濃度が高いので、不溶性だとニッケルが余り溶けきらないので不溶性と。したがって、毒性も低く出る。ただ、実際に規制するときは、その濃度ですぐに影響が出るような規制値ではないので、例えば2桁とか3桁ぐらい下の値なわけです。そうすると、難溶性のニッケル塩といっても、そのぐらいのレベルには十分に溶けてしまうということなので、水溶性というのも、化学物質として水溶性というのは古来の水溶性で濃度が高いので、それは一切やめて、溶けるものを水溶性とする。溶けなかったものを不溶性とするということでよろしいのではないかと思います。

 管理濃度ですが、石英のコンテンツと同じ式になっていますが、水溶性と不溶性では毒性のターゲットも違うし、メカニズムも違うということですね。そうすると、まぜこぜにして評価することはできないと思います。

○名古屋委員 前回は、同じだから式でいいと。

○菅野委員 お送りいただいた溶解度を調べた論文によると、水溶性のニッケルは発がん性がないと。不溶性のものが発がん性だということでしたので、それを信じるとターゲットが違いますから、1つの式で評価することはできないのではないかと思います。

○名古屋委員 前回、明星委員がそういう話をされていて、前回はこの資料はなかったけれど、同じだからシリカと同じ扱いでいいという形にした覚えがあります。もし、それが違うのであれば、やり方が違って、この式ではなくて個別でやるべきだと思います。

○櫻井座長 ばく露限界値を設定した根拠は、肺がんではなくて、肺の炎症なのですよね。

○菅野委員 肺がんは入っていないということですね。

○櫻井座長 入っていません。ですから、それは難溶性であっても水溶性であっても同じなのです。だから、相加性が成り立てばこの式になるのです。

○明星委員 1点だけ、人の論文をどうこう言うのは余り良くないかもしれませんが、この論文を頂いたので、私のコメントとしては、肺の表面の液体はpH7よりは高いというのはそのとおりだと思います。

○櫻井座長 7.4ぐらいですね。

○明星委員 ただ、マクロファージが粒子を貪食した後は、pHを低いほうに向けて(酸性にして)処理するのがマクロファージの戦略です。したがって、7で溶けない、だから、それでいいというこの論文の論旨については、私は半分ぐらいしか信じないということです。これより前の論文もも見たのですが、このダトカ法の原典を見ても、なぜpH4.4にしたかは書いていないのですが、マクロファージ中のリソソーム内のpHは大体5ぐらいと言われています。肺全体としては中性なのですが、リソソーム内は酸性であるということも一般的な知識なので、論文の論旨については半分ぐらい正しくて、半分ぐらい違うと思います。前の人達などが何で4.4にしたかもよく分からないのですが、それはそれで理屈はあるかなと思います。

○櫻井座長 先ほど菅野先生がおっしゃった濃度が薄い場合と濃い場合は、その場合は当てはまらなくなるのですね。

○明星委員 そうですね。

○櫻井座長 マクロファージが食べて、その中での問題だから。だから、可溶性と難溶性は。

○明星委員 分け難いところがある。

○櫻井座長 分け難いということは、同じ意見なのですね。でも、本当にどうしても溶けないものもありますね。

○菅野委員 例示されている物質は少ないですが、実際にはもっとたくさんあると思いますので、どう考えていいか分かりませんが。

○櫻井座長 そうすると、例示されている炭酸ニッケルが分かれ道ですね。それは、マクロファージの場合は溶けると考えるのですか。4.4で溶かしているのですが。

○明星委員 という理解もあるかなと。でも、ここでは決め難いと。

○櫻井座長 今ここで決めるのは難しいですね。何らかの別の検討が必要ですね。

○菅野委員 あと、この論文は単一物質としてあった場合の溶解性を調べているだけなので、現実には混合物かもしれないので、クエン酸を使うのは鉄があったときに鉄が沈殿するのを防ぐ効果もあるのだそうで、実用的にはどのぐらい効くのか分かりませんが、そういう効果も考えないと、どれがいいかは決められないと思います。

○櫻井座長 それでは、今日は時間が足りないので。

○安達副主任 管理濃度に新しく溶解度という尺度を初めて入れるので、慎重に検討しなければいけないので、もしお気づきの点があれば、個別でも結構ですので、次回までにお知らせいただければ論点を練り直しますので、よろしくお願いします。

○櫻井座長 次回に回し、あるいは場合によってはほかに何か検討の場を設けるとか、その辺りを事務局で御検討ください。

 それでは、最後に3つほど「その他」がありますので、事務局からお願いします。

○沖田係長 1点目はベリリウムの件ですが、前回議論いただいて継続検討となっていましたが、今現在、ベリリウムの疾病事案の情報収集を行っております。検討いただくに当たり、その情報を十分に集めて整理し終わった上で、また議題に挙げたいと考えております。2点目は、安達から説明します。

○安達副主任 先ほど、発がんの恐れのある混合有機溶剤の御議論を頂きまして、ありがとうございました。今回、初めて有機則から特化則に移る物質が出てくるので、作業環境測定士の資格の問題が出てきます。これは、こちらの委員会で直接議論するテーマではありませんが、事務局としてはできるだけ円滑に運用が進むように、現状の実態も踏まえながら検討することにしているので、御報告です。

○中明委員 余り変わらない……。

○櫻井座長 今の事務局の説明については、特に何か御意見はありませんね。事務局で御検討いただいて、その結果、混乱のないように方法を考えていただくということでお願いします。1点目のベリリウムの件は、情報を整理していただいて、次回以降の検討とします。3点目をお願いします。

○沖田係長 3点目は、資料番号2-8「局排の性能要件の見直しについて」です。物質として2つ、3,3'-ジクロロ4,4'-ジアミノジフェニルメタンと、ベータープロピオラクトンを挙げております。こちらは既に管理濃度が決まっており、特化物に入っているのですが、我々として物質の見直しをする中で、特化物なのに制御風速のままでいる状態にあるので、ほかの特化物との整合性を図り、抑制濃度に移すのが適切かと考えておりますが、それでよろしいでしょうか、という御提案です。

○櫻井座長 よろしいでしょうか。

(異議なし)

○櫻井座長 それでは、皆さん了解ということですので、そのように進めてください。

 以上で、本日の検討会の予定の議題は全て終了しました。ほかに特になければ、これで終わりとさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。


(了)

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