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2015年5月28日 化学物質のリスク評価検討会の「第2回有害性評価小検討会」

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成27年5月28日(木) 15:30~


○場所

中央合同庁舎第5号館共用第8会議室


○議事

○大前座長 それでは次、スチレンをよろしくお願いします。

○平川化学物質評価室長補佐 資料1-8を御覧ください。物質名、化学式、構造式は表のとおりです。物理的化学的性状ですが、外観は無色、黄色の油状液体です。沸点は145℃。蒸気圧は20℃で0.67kPa。融点は-30.6℃です。生産量は200万トン以上。用途はポリスチレン樹脂、合成ゴム、不飽和ポリエステル樹脂など。あとは、合成樹脂塗料に使用されているということです。

 重視すべき有害性です。発がん性ですが、「ヒトに対する発がん性が疑われる」としています。各評価区分ですが、IARC、産業衛生学会とも2Bとなっており、代謝産物についてはIARC2Aとしています。

 発がん性以外の有害性ですが、順番に、生殖毒性は「あり」、神経毒性は「あり」、遺伝毒性は「あり」ということです。生殖毒性については妊娠620日にスチレンを16時間吸入ばく露したWistarラットを用いた生殖毒性試験において、300ppmばく露の親動物における体重増加抑制、妊娠期間の延長及び死産児の増加が見られ、大脳のホモバニリン酸及び5-ヒドロキシインドール酢酸濃度の減少と共に、空中立ち直り反射、切歯萌出、開眼の遅延が認められたとのことです。神経毒性については、スチレン濃度が50ppmを超えた場合は、神経影響が持続をする。濃度影響関係としては、20100ppmのスチレンばく露後には末梢神経伝達速度と知覚振幅の低下が起こるとのことであり、遺伝毒性については陰性と陽性の結果は、それぞれに出ていますが、総合的には遺伝毒性を有すると判断するものです。

 次に、閾値の有無ですが、「なし」としております。根拠は、本物質に遺伝毒性があるため、そのように判断したものであります。ここで閾値がなくて変異原性が認められるもので、過剰発がんレベル1×10-4 レベルが定められる場合には、一次評価値の設定につながりますが、この物質については調査した範囲内では算定根拠となる数値が得られていない状況です。

 次に、神経毒性に関する動物試験データです。根拠としては、右上と同じ内容です。神経毒性に関しては、発がん性以外の有害性を中心に評価を行う物質の場合に沿って、一次評価値に相当するものを求めることとしますと、そこに書いてあるLOAEL50ppmであり、労働補正としては時間の補正が8分の8、日数補正を5分の5として、不確実係数はUF10LOAELからNOAELの変換が10であることから、評価レベルは5ppmとなります。

 次に、許容濃度等です。ACGIHではTLV-TWA20ppmTLV-STEL40ppmと、1997年に設定をしています。根拠としては、ヒトを対象とした管理された吸入試験及び労働環境におけるスチレンばく露による中枢及び末梢神経系への影響に関する研究結果を基に刺激の可能性を最小限にするためということです。日本産業衛生学会においては許容濃度を20ppmと、1999年に設定をしています。根拠としては、次に示すところのデータに基づいてばく露による神経機能障害を引き起こす可能性がないであろう濃度として、20ppmを提案するというものです。

 以上のことから評価値()ですが、一次評価値としては、「なし」としています。理由としては、発がん性を示す可能性があり、閾値がなく、遺伝毒性がある場合で、生涯過剰発がんの10-4 レベルに相当するばく露濃度が設定できないためということです。次に、二次評価値ですが、20ppmとしています。理由としてはACGIH、日本産業衛生学会いずれも、この濃度を勧告しているという状況を踏まえているものです。説明は以上です。

○大前座長 ありがとうございました。スチレンもたくさん使われている物質ですが、いかがでしょうか。神経毒性の所の知覚振幅というのは、これはアンプリチュードのことですか。元の評価書のほうも知覚振幅と書いてあるので、それがそのまま、こっちに来ているのですけれども。でも、ピークが下がるのでしょうね。きっと。そういう意味でしょうね。

 いかがでしょうか、何か御意見、あるいは御質問。10-4 レベルに相当する数値は見つからなかったので、作れないということで、一次評価値は「なし」になっています。

○西川委員 細かいところになるかもしれませんけれども、遺伝毒性が「あり」となっています。それで、どういう試験が実施されているかについて見てみますと、明確にプラスになっているのは、in vitroの染色体異常試験のように見受けられて、これだとさっきの「判断できない」というものと、余り差がないようにも見えるのですが、これは何というか。

○大前座長 183ページに、確かに先生がおっしゃるように、プラスマイナスとかマイナスとか、プラスがちょこちょこと。

○西川委員 括弧付きのプラスとかあるのですが、専門家が判断されたところですので、それは尊重しますけれども、さっきと余り差がないように印象を受けたものですから、念のため質問しました。特に議論していただかなくても結構でございます。

○大前座長 これで判断されたということなので、ちょっとあれですけれども、何とも言わないですけれども。今、先生がおっしゃったようなことは、ちょっとありますけれども、一次評価値はないので、作れないので仕方ないと思うのですけれども、二次評価値は一応、ACGIHも産業衛生学会も20としています。それから年度は10年以上も前ですけれども、似たような年度でなっていますので、これはこれでよろしいですか。はい。それでは、どうもありがとうございました。それでは、次のテトラクロロエチレンをお願いします。

○平川化学物質評価室長補佐 資料1-9を御覧ください。物質名、化学式、構造式ですが、これは表のとおりです。物理的化学的性状ですが、外観は特徴的な臭気のある無色の液体です。沸点は121℃、蒸気圧は20℃で1.9kPa、融点は-22℃です。生産量は約12,000トンです。用途はドライクリーニング溶剤、フロンガス製造、原毛洗浄、溶剤、セルロースエステル及びエーテルの混合物溶剤、金属機械部品などの脱油脂洗浄に使用されているということです。

 重視すべき有害性ですが、発がん性については、「ヒトに対して恐らく発がん性がある」としています。各評価区分ですが、IARC2Aで、産業衛生学会が2B。あとは、そこに書かれているとおりです。

発がん性以外の有害性ですが、それぞれ申し上げますと、生殖毒性については「判断できない」。神経毒性については「あり」、遺伝毒性については「あり」としています。生殖毒性の根拠ですが、ヒトの疫学調査からは明確な生殖毒性は判断できないというものです。動物実験による生殖毒性試験結果では、胚・胎児への軽度な影響が見られたが、母体毒性も見られている。産業衛生学会では生殖毒性3群に分類されているというところから、「生殖毒性あり」とは判断できないとしています。神経毒性については米国で2つのばく露の可能性がある集団、すなわちドライクリーニング業者が入居している2つのアパートの住民及びドライクリーニング業者の入居しているデイケア施設の従業員について、神経学的機能が評価をされています。ドライクリーニング営業時に終日捕集された大気中のテトラクロロエチレン濃度の中央値は、アパートでは1.4mg/m3 、デイケア施設では2.2mg/m3 でした。対照の抽出によるバイアスの可能性はありますが、視覚コントラスト感度の平均スコアは、ばく露群でそれぞれの対照群よりも有意に低かったことを挙げています。

 遺伝毒性ですが、トリクロロエチレンが微量混入したテトラクロロエチレンに職業的にばく露したヒトにおいて、リンパ球の染色体異常の頻度が高く、陽性と判断されるなどを加味して「あり」と判断をしています。

 次に、閾値の有無ですが、「なし」としています。根拠は本物質に遺伝毒性があるため、そのように判断したものです。ここで、この物質についてはユニットリスクが定められており、これにより過剰発がんレベルの算出を行うことができ、労働環境としての補正を入れて、1.92mg/m3 となっています。なお参考までに、神経毒性に関して一次評価値に相当する評価レベルを求めることとしますと、LOAEL1.4mg/m3 から労働補正として、時間補正8分の8、日数補正5分の5として、不確実係数はLOAELからNOAELへの変換10ということから、10として計算し、0.02ppmとなります。

 次に、許容濃度です。ACGIHではTLV-TWA25ppmTLV-STEL100ppmと、1993年に設定をしています。根拠としては、100200ppmでの長期のばく露から生じるかもしれない不快症状や自覚症状の可能性を最小化して、安全マージンを提供すると共に、麻酔様作用のリスクを最小化するために、それぞれ勧告され、潜在する肝臓障害を防ぐ際に広い安全マージンを提供することになっているというものです。

 日本産業衛生学会においては、許容濃度検討中となっています。また、皮膚と接殖することにより、経皮に吸収される量が全身への健康影響又は吸収量から見て無視できない程度に達することがあるということで勧告されており、生殖毒性は第3群となっています。根拠としては、テトラクロロエチレンのヒトについてのクリーニング従事者において、生殖影響についての症例報告や疫学研究はあるが、この物質のばく露との関係は明確ではない。また、動物実験において影響が認められたとの報告があるが、否定的な結果も報告されており、第2群とするほど明らかな影響があるとは言い難いと判断しています。

 以上のことから、評価値()ですが、一次評価としては、0.282ppmとしています。理由としては、発がん性を示す可能性があり、閾値がなく、遺伝毒性がある場合で、テトラクロロエチレンのユニットリスクから発がんの過剰発生リスク、10-4 に相当するばく露濃度を算定した評価レベルです。次に、二次評価値は25ppmとしています。理由としては、ACGIH25ppmを勧告していることであります。説明は以上です。

○大前座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。先ほどの遺伝毒性に関しましては、参考資料の217218ページに一覧表が載っていますけれども、これも結構マイナスが多いように見えますが、225ページにヒトのデータが1つありまして、225ページの187行目に遺伝毒性というものがございまして、これでドライクリーニング屋さんの従業員で調べると、ヒトではどうもありそうだというようなことがあったので、遺伝毒性があると判断したと記憶しております。むしろ、動物よりはヒトで、ヒトのデータを優先したというか、そういう形だったと思います。それを基にして、ユニットリスクから求めますと、一次評価値が0.282ppmと。二次評価値は産業衛生学会はありませんので、ACGIH25ということで、25というような案ですが、いかがでしょうか。今はほとんどドライクリーニング用には使っていないですよね。昔はもう、ドライクリーニングというと、これに決まっていましたけど。でも今は石油系の溶剤だと思いますけれども。

○西川委員 実験結果から遺伝毒性はほとんど陰性という記載もありますけれども、ヒトでのデータから「遺伝毒性あり」としたのですが、これ、ばく露したのは本当にテトラクロロエチレンであるという保証はあるのですか。

○大前座長 一応、書いてあるのは、トリクロロエチレンが0.110.43%で、あとはテトラだというので、ドライクリーニング屋さんですから、そのほかの溶剤は余りないとは思うのですよね。多分、ほとんどがテトラだったのではないかと思いますけれども。

○西川委員 そうですか、分かりました。結構です。

○宮川委員 記憶がはっきりしていないのですが、産衛学会の許容濃度で、検討中というのを公的に発表しているということがあるのでしたか。

○大前座長 あります。これと、それから、塩ビを検討中です。それから、NO2 SO2 が検討中です。

○宮川委員 検討中ですか。それで実際にやっていて、表にそういう記載でも入っているわけですね。

○大前座長 検討してもらっています。一次評価値は0.282、それから二次評価値は25でよろしゅうございますか。ありがとうございました。では次のトリクロロエチレンをお願いします。

○平川化学物質評価室長補佐 資料1-10を御覧ください。物質名、化学式、構造式は表のとおりです。物理的化学的性状です。外観は特徴的な臭気のある無色の液体です。沸点は87℃、蒸気圧は20℃で7.8kPa、融点はマイナス73℃です。生産量は約43,000トンです。用途ですが、金属機械部品などの脱油脂洗浄、フロンガス製造、溶剤、羊毛の脱脂洗浄などとなっています。

 重視すべき有害性です。発がん性ですが、「ヒトに対して発がん性がある」としています。各評価区分です。IARC1、産業衛生学会は2Bとなっています。その他の評価区分については以下のとおりです。

 生殖毒性については「判断できない」ということです。根拠は、ヒトの症例や疫学研究でトリクロロエチレンの生殖毒性を明確に示した研究は見当たらない。一部の動物実験において、催奇形性、次世代影響等も認められてはいるものの、トリクロロエチレンの生殖毒性は明らかでないという報告も多い。産衛学会では、生殖毒性第3群に分類しているという根拠で「判断できない」としています。

 神経毒性については「あり」ということです。神経毒性については、スイスのトリクロロエチレン脱脂槽を用いる作業所の50人の作業者の健康調査が実施されています。濃度は1335ppmの範囲で、多くの作業者において中枢神経系関連の所見が報告されています。自律神経系への影響を示唆するような障害も報告されており、精神状態の検査において、トリクロロエチレンにばく露された場合に何らかの精神機能の低下、記憶の低下、情緒不安定が40ppm、平均で言いますと、85ppm以上の濃度で高い頻度で生じたということが根拠となっています。

 遺伝毒性については「なし」ということです。トリクロロエチレンの遺伝毒性試験では、in vitroで復帰突然変異試験や遺伝子突然変異試験などで、代謝活生化なしで陰性、代謝活性化ありで陽性、陰性両方の結果が、姉妹染色分体交換試験で弱い陽性、染色体異常試験でも陰性ということでした。in vivoですが、姉妹染色分体交換試験、小核試験、不定期DNA試験などでいずれも陰性ということでした。一方、ヒトです。トリクロロエチレンばく露で姉妹染色分体交換が増加したという報告もありますが、症例が少なく陰性の報告もあると。以上のことから、遺伝毒性なしという形での判断をしています。

 次に、閾値の有無ですが、「あり」としています。根拠は、本物質に遺伝毒性がないため、そのように判断をしたものです。ここで、発がん性の閾値がある場合は、試験で得られた無毒性量に不確実係数を考慮して求めたレベルを一次評価値として評価することとなっています。

 そこで、まず発がん性に関するデータにおいては、LOAEL50ppmとなっています。根拠としては、フランスにおいて、腎細胞がん患者と対照群で腎細胞がんとトリクロロエチレンのばく露との関連性が分析をされています。喫煙及びBMIで調整した腎細胞がんのオッズ比を比較し、ばく露濃度50ppm以上の場合に、BMI、喫煙及び切削油でない他の油類への職業ばく露で調整したオッズ比が2.70ということも踏まえて設定をされています。これに不確実係数として、がんの重大性、LOAELNOAELへの変換を合わせて100で計算したところ、評価レベルは0.5ppmとしたところです。

 戻って、神経毒性に関しては、スイスのトリクロロエチレン脱脂槽を用いる作業所の50人の作業者の健康調査を根拠とし、LOAEL20ppmとなっており、不確実係数はLOAELからNOAELへの変換分を10で計算し、評価レベルは2ppmとなっています。

 次に、許容濃度です。ACGIHは、TLV-TWA10ppmTLV-STEL25ppm2007年に設定しています。根拠は、トリクロロエチレンの慢性ばく露は、主にラットにおいて腎臓毒性と腫瘍、マウスにおいて肝臓と肺の腫瘍を引き起こす。また、それ以外の部位での腫瘍について幾つかの報告があるということです。動物実験における疾病のほか、ヒトへのばく露でも100ppm以上の濃度で、めまいや倦怠のような可逆性の中枢神経系の影響を引き起こしたとあり、症例-対照研究は、トリクロロエチレンの高濃度の長期間のばく露は腎臓がんの発生頻度を増加させることを示しているというもので、これらの影響の可能性から保護するというものです。

 日本産衛学会におきましては、許容濃度は1997年に25ppm、発がん分類は第2Bが勧告されています。以下に示すところの研究報告から、当時の許容濃度50ppmでは神経影響の現れる可能性が大きいと判断をし、改定をしたというものです。

 以上のことから、評価値()です。一次評価値としては0.5ppmとしています。理由としては、腎細胞がんとトリクロロエチレンばく露との関連性の分析から算定した評価レベルというものです。次に、二次評価値です。10ppm又は25ppmとしています。理由としては、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)が、中枢神経系影響及び腎毒性とがんを含む他の影響の可能性から保護する濃度として、TLV-TWAとして10ppmを勧告。一方、日本産業衛生学会が、神経影響を考慮し設定した許容濃度25ppmを勧告していることから、いずれかが妥当と考えるものです。以上です。

○大前座長 ありがとうございました。トリクロロエチレンはいかがでしょうか。これは、産業衛生学会は今年、グループ1に提案したのでしたか、宮川先生。 

○宮川委員 ちょっと記憶にないです。

○大前座長 どちらでしたか。審査より前でしたか。今年はまだやっていませんでしたか。

○宮川委員 確か、格上げになったような。

○大前座長 格上げになりましたよね。

○宮川委員 はい。

○大前座長 すみません、2A1か今、ちょっと記憶が定かではないので。いずれにしても、今回のこれには直接は関係しませんが。発がんは有意にオッズ比が上がったところをLOAELとして、それでLOAELNOAELの変換とがんの重大性両方で100UFを使って0.5ppmで、これを一次評価値というふうにしていますが、よろしいですか。それから、二次評価値はACGIH2007年で10ppmで、産業衛生学会は1997年、10年ぐらい前で25ppmですので、通常は新しくて低いほうということですから10ppmを取りますが、10ppmでよろしいですか。では、特に御異論がなければ、新しくかつ低い数字の10ppmということで二次評価値はよろしいですね。

○津田委員 素人の質問で悪いのですが、これは1だからヒトのばく露事例があるわけですね。

○大前座長 はい。

○津田委員 その場合の発がんの用量と、この今の10ppmと比べた場合どうなるのでしょうか。

○大前座長 その発がんの計算のデータの左側の所で、フランスの事例で、これはマッチングですから症例対照研究ですね。症例対照研究で濃度が一応出ていまして、その濃度ごとのオッズが有意になるのが50なので、ここら辺がヒトのデータでは使われているのかということだと思うのです。

○津田委員 50ppm以上で発がんしたという。

○大前座長 はい、有意になったということです。

○津田委員 そうですね、はい。

○大前座長 ですから、それを今回使ったということです。トリクロロエチレンは結構昔から腎がんは出ていたのですよね。

○津田委員 そうですね。

○大前座長 何で今頃になって1になったのか、もっと昔から1でもよかったのではないかと思うのですが。それはともかくとして、ようやく1になったという感じがとてもするのですが。では、一次評価値が先ほどの0.5ppm、それから二次が10ppmということで、この委員会は決定ということにします。次は、MIBKをよろしくお願いします。

○平川化学物質評価室長補佐 資料1-11を御覧ください。メチルイソブチルケトンの物質名、化学式、構造式は表のとおりです。物理的化学的性状です。外観は特徴的な臭気のある無色の液体。沸点は117℃から118℃、蒸気圧は20℃で2.1kPa、融点は-84.7℃です。生産量は約57,000トンです。用途です。硝酸セルロース及び合成樹脂、磁気テープ、ラッカー溶剤、石油製品の脱ロウ溶剤、脱油剤などに使用されているということです。

 次に、重視すべき有害性の発がん性です。「ヒトに対して発がん性が疑われる」としています。各評価区分です。IARC2Bで、産業衛生学会は情報なし。その他の区分は以下のとおりです。

 発がん性以外の有害性です。生殖毒性については「判断できない」ということです。根拠ですが、ラット及びマウスによる催奇形性試験の報告では、重度の母体毒性が認められた濃度で、これは3,000ppmでありますが、胎児毒性が見られたが催奇形性は見られなかった。一方、ラットでの二世代試験の報告では、母動物に影響が見られた程度でF1及びF2世代に影響は見られなかった。以上のことから、生殖毒性は「判断できない」としています。

 神経毒性です。「あり」としています。2時間で10mg/m3 及び200mg/m3 のメチルイソブチルケトンをばく露した結果、10mg/m3 を比較対照として心拍数、SRT、単純計算テストに影響はなかったが、ばく露による中枢神経症状の発症と強さが200mg/m3 より増加したというのが根拠となっています。

 遺伝毒性です。これは「なし」としています。根拠としては、in vitro試験系において細菌を用いた復帰突然変異試験で、代謝活性化系の有無にかかわらず陰性、マウスリンパ腫細胞を用いる遺伝子突然変異試験では代謝活性化系添加で陰性であったが、無添加では高用量で遺伝子突然変異の発生頻度が有意に増加したものの、用量相関はなかった。ラット初代培養肝臓細胞を用いる不定期DNA合成試験、及びラット肝臓細胞RL4を用いる染色体異常試験でも陰性であった。一方、in vivo試験系では、マウスを用いた小核試験で骨髄細胞に小核を誘発しなかったということから「なし」としています。

 閾値の有無です。「あり」としています。根拠は、本物質に遺伝毒性がないためそのように判断したものです。

 ここでまず、発がん性に関するデータです。NOAEL900ppmとしています。根拠としては、雌雄のF334/Nラットにメチルイソブチルケトンを16時間、週5日、104週間、全身吸入ばく露した結果、腎尿細管腺腫及び腎尿細管腺腫又は腎尿細管がんが1,800ppmの雄で有意に増加したとあり、また、B6C3F1マウスにも16時間、週5日、105週間、全身吸入ばく露をした結果、肝細胞腺腫及び肝細胞腺腫又は肝細胞がんが1,800ppmの雌雄で有意に増加したことから設定されたものとなっています。これに不確実係数として、がんの重大性、種差、更に労働時間の補正を行ったところ、評価レベルは6.75ppmとなります。神経毒性に関しては、右上の内容が根拠となり、NOAEL2.4ppmとなっており、不確実係数はなく、労働時間補正を行い、評価レベルは0.6ppmとなります。

 次に、許容濃度です。ACGIHでは、TLV-TWA20ppmTLV-STEL75ppm2010年に設定しています。根拠としては、ボランティアにおける軽い運動中のメチルイソブチルケトンばく露試験で200mg/m3 90分から120分のばく露後、中枢神経系症状の発生とその強さの増加が見られているということで、TWAが勧告され、被験者12人によるメチルイソブチルケトンの15分間ばく露試験で、200ppmで目に対して刺激性があり、200ppmを超えると鼻と喉に対しても刺激性があり、8時間耐えることのできる濃度は100ppmとの報告に基づき、短期ばく露に関連して粘膜の刺激を防ぐためのSTELが勧告されたというものです。日本産衛学会においては、許容濃度は1984年に50ppmが勧告をされています。根拠については、以下の6つの治験などから勧告をしたものです。

 以上のことから、評価値()です。一次評価値としては6.75ppmとしています。理由としては、閾値のある発がん性の場合で、発がん性に関する動物試験により導き出された無毒性量から不確実係数を考慮して算定した評価レベルとしています。次に、二次評価値です。20ppm又は50ppmとしています。理由としては、米国産業衛生専門家会議が中枢神経系の症状を防ぐために20ppmを勧告しており、日本産衛学会は健康障害防止のために許容濃度として50ppmを勧告しているということのいずれかが妥当と考えるものです。説明は以上です。

○大前座長 ありがとうございました。これはちょっと間違っていますね。神経毒性の所です。男女各6人で2時間の2.4ppm49ppmの実験をやっているのですが、これは2.4ppmを比較対照群としているので、0ppmではないのですよ。ですから、これは、2.4NOAELではないですね。2.4LOAELでしょうね、もしやるとしたら。本当は0ppmの所と比較しなくてはいけないわけなので、2.4と比較してこれがNOAELというのは少し理屈はおかしいですね。本文はこう書いてあるので、本文から写すのは間違っていないのですが、本文が間違えましたね。リスク評価書がちょっと間違っていたと思います。

○西川委員 その試験ですが、中枢神経症状と言っているのは疲労感だけのような感じですが、それで神経毒性と言ってよろしいのでしょうか。

○大前座長 本当に、例えば疲労感と書いてあるだけですし、それから、2時間ばく露ですから、もともと通るような情報ではないですね、多分。ですから、本当は、今回は情報がなかったという書き方のほうがいいのでしょうが。先生のおっしゃるとおりです。ちょっと、この神経毒性の所は書き方を変えたほうがいいと思います。「あり」は「あり」でいいと思うのですが、その根拠でNOAEL2.4ppmというのはやはりまずいので、むしろ計算できるような情報はなかったみたいな書き方がいいと思います。

○角田化学物質評価室長 参考資料2-11の、293ページが該当するのですが、クの所に「神経毒性」とありますが、3つポツがあって、真ん中のものが今のものです。

○大前座長 そうですね。

○角田化学物質評価室長 「例えば、疲労感」というような表現しかないのです。

○大前座長 やはり、少なくとも0ppmと比べないとNOAELとかという話にはならないので。ですから、ここの所はむしろ情報がなかったみたいな形に書き替えたほうがいいと思います。いずれにしても採用しないデータなので、一次評価値、二次評価値の判断には関係ないデータではあります。それで、一次評価値が先ほどの動物実験データで「閾値あり」ということで、種差とがんの重大性のUF100を使って計算すると6.75ppm、二次評価値は、ACGIH20ppm、産業衛生学会は50ppm2つありますので、どちらかを選択しなくてはいけないということになります。産業衛生学会が1984年、それからACGIH2010年で、圧倒的にこちらのほうの情報が、利用量が多くて正しいということ、しかも濃度も低いということもありますので、二次評価値は20ppmでよろしいですか。ありがとうございました。そうしましたら、この物質は、先ほどの神経毒性の所の書き振りは変えなくてはいけないということはありますが、一次評価値が6.75ppm、二次評価値が20ppmということで決めさせていただきます。

○角田化学物質評価室長 この左下のデータも削除ですね。

○大前座長 そうですね、そう思います。そうしますと、一応これで予定物質はおしまいですね。皆さんの御協力で非常にスムーズに予定が終わりました。一番最初の酸化チタン(ナノ)は、30番の文献をちょっと見てみるという課題は残っていますが、その他に関しては、数字に関しては原案どおりという形で決めさせていただきました。

 今日の残りのテーマですが、次回の予定でしたか。

○平川化学物質評価室長補佐 それでは、今後の予定です。本日の有害性小検討会において予定していました11物質の一次評価値、二次評価値の検討が終わりましたので、63日の評価値の検討については中止という形でお願いできればと考えています。その後、第4回ですが、623日の火曜日、午後130分から経済産業省別館302会議室において、がん原性試験結果の評価についての検討をしていただくことになります。あとは、参考ですが、化学物質のリスク評価検討会ということで、第1回目が平成27619日の金曜日の午後3時半から、厚生労働省の12階専用第14会議室で行います。議題は、「平成26年度リスク評価物質のリスク評価書の検討」ということ、第1回目です。引き続きの第2回目が77日の火曜日、午後3時半から経済産業省の別館1104会議室です。721日の火曜日の午後2時半から、農林水産省三番館共用会議所の大会議室で第3回目のリスク評価書の検討ということで予定をしています。今後の予定については以上です。

○大前座長 63日の第3回がなくなったということですと、623日が第3回になりますか。そういうことでいいのですね。

○角田化学物質評価室長 そうです。

○大前座長 分かりました。ということで、今後の予定は、この委員会については623日、それから、あとは、参考として評価検討会が3つあるということです。以上で、今日予定しています議事は全て終わったと思いますが、その他、何か事務局からありますか。

○平川化学物質評価室長補佐 特段ございません。  

○大前座長 ちょっと待ってください。

○江馬委員 今まで気付かなかったのですが、生殖発生毒性で、Fischerラットを使ったデータが結構出ていたのですが、繁殖率が非常に悪いので、通常生殖発生毒性試験には使いません。多分、背景データもほとんどないと思います。催奇形性に関する背景データもほとんどないので、Fischerラットを使った生殖発生毒性を見るときは少し気を付けたほうがいいかと思います。

○大前座長 繁殖率が悪いのですか。  

○江馬委員 妊娠率から交尾率、出産率、離乳率、全部悪いです。性周期を判断できません。通常のSDとかWistarというのは4日か5日の周期できちんと性周期を見れるのですが、それが判断できません。生殖発生毒性に使う動物としては不向きです。

○大前座長 例えば、ガイドラインに従って生殖発生毒性試験をやる場合は、そうすると、Fischerラットはもう使わないような状況になっているのですか。

○江馬委員 通常は使いません。

○大前座長 そういうことではないのですか。そういうことでもないのですか。

○江馬委員 ガイドラインでは系統まで指定していません。

○大前座長 していない、そうなのですか。

○江馬委員 専門家は通常使わないです。化学物質の試験でこのラットを使ったデータはあることはあるのですが、特別に使わなければならない理由は特にないと思います。

○大前座長 そうしますと、生殖発生毒性に関しては、このFischerラットとSDなりWistarのデータが並んでいれば、むしろFischerラットを少し外して考えたほうがいいということですね。

その他、事務局よろしいですか。では、今日は長い時間どうもありがとうございました。予定より1時間くらい早く終わったのがラッキーだったと思います。どうも今日はありがとうございました。


(了)

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