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2015年5月28日 化学物質のリスク評価検討会の「第1回有害性評価小検討会」

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成27年5月28日(木) 13:30~


○場所

中央合同庁舎第5号館共用第8会議室


○議事

○角田化学物質評価室長 本日は大変お忙しい中御参集いただき、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、平成27年度第1回有害性評価小検討会を開催いたします。

 まず委員の異動について御報告いたします。池田委員に代わり、千葉大学薬学研究院遺伝子薬物学講座教授の千葉委員が就任されております。

○千葉委員 千葉大学の千葉と申します。どうぞよろしくお願いいたします。薬物動態の中の代謝を専門としております。

○角田化学物質評価室長 本日は清水委員が所用により御欠席でございます。それでは、座長の大前先生に以下の議事進行をお願いいたします。

○大前座長 第1回の有害性評価小検討会を開催します。最初に事務局から資料の確認をお願いします。

○平川化学物質評価室長補佐 1枚紙の議事次第の裏が「資料一覧」です。こちらを御覧いただきますと、資料関係と参考資料関係の2つに分かれております。

 まず資料の関係です。資料1から資料3まではひとまとめにとじております。まず、資料1「ばく露実態調査対象物質の評価値について」です。物質ごとにA3版、片面1ページでまとめております。酸化チタン(ナノ粒子)が資料1-1です。続いて塩化アリルが資料1-2、クロロホルムが資料1-3、四塩化炭素が資料1-41,4-ジオキサンが資料1-51,2-ジクロロエタンが資料1-6、ジクロロメタンが資料1-7、スチレンが資料1-8、テトラクロロエチレンが資料1-9、トリクロロエチレンが資料1-10、メチルイソブチルケトンが資料1-11です。

 その次が資料2「平成27年度リスク評価の実施予定について」、1枚紙で12ページ目です。今回の検討対象の物質については下線で示しております。続いて資料3「今後の予定」も1枚紙で13ページ目です。

 参考資料関係です。参考資料は1から参考資料5となっており、委員の皆様には参考資料2と参考資料3は、それぞれひもとじになっております。参考資料1「リスク評価検討会(有害性評価小検討会)参集者名簿」が1枚の資料です。

 次に、参考資料2「有害性評価書」、右下に通しのページ番号を振っていますので、そちらのページ数で物質ごとに確認をお願いいたします。まず、参考資料2-1が酸化チタン(ナノ粒子)で、中身を総括した有害性総合評価表が29ページに付いております。参考資料2-2が塩化アリルで47ページからです。有害性総合評価表が61ページからです。参考資料2-3がクロロホルムで65ページから、有害性総合評価表が87ページからです。参考資料2-4が四塩化炭素で91ページから、有害性総合評価表が119ページからです。参考資料2-51,4ジオキサンで125ページから、有害性総合評価表が137ページからです。参考資料2-61,2-ジクロロエタンで141ページから、有害性総合評価表が170ページからです。参考資料2-7がジクロロメタンで、これについては枝番があり、174-2ページからで、有害性総合評価表が174-22ページからです。参考資料2-8はスチレンで175ページから、有害性総合評価表は202ページからです。参考資料2-9のテトラクロロエチレンが2011ページから、有害性総合評価表が237ページからです。参考資料2-10のトリクロロエチレンは245ページから、有害性総合評価表が273ページからです。参考資料2-11のメチルイソブチルケトンは281ページから、有害性総合評価表が297ページからです。

 参考資料3は委員の方のみの机上配布です。許容濃度等の関連資料です。通しのページ数を振っており、表紙も付けておりますので、そちらで御確認をお願いいたします。酸化チタン(ナノ粒子)ACGIH1ページから、日本産衛学会が5ページからです。塩化アリルはACGIH11ページからです。クロロホルムはACGIH21ページから、日本産衛学会が25ページからです。四塩化炭素はACGIH31ページから、日本産衛学会が43ページからです。1,4ジオキサンはACGIH47ページから、日本産衛学会が53ページからです。1,2-ジクロロエタンはACGIH57ページから、日本産衛学会が61ページからです。ジクロロメタンはACGIH63ページから、BEI81ページから、日本産衛学会が93ページからです。スチレンはACGIH103ページから、BEI121ページから、日本産衛学会が137ページからです。テトラクロロエチレンはACGIH159ページから、BEI165ページから、日本産衛学会が177ページからです。トリクロロエチレンはACGIH185ページから、BEI195ページから、日本産衛学会が213ページからです。メチルイソブチルケトンはACGIH225ページから、BEI233ページから、日本産衛学会が239ページからです。

 参考資料4「国が行う化学物質等による労働者の健康障害防止に係るリスク評価実施要領」は、裏表4枚で8ページの資料です。

 参考資料5「リスク評価の手法(平成26年改訂版)」は、裏表3枚、6ページの資料です。資料は以上です。足りないものがありましたらお知らせいただきますようにお願いいたします。

○大前座長 審議に入ります。今日の審議の目的は、全部で11物質の一次評価値、二次評価値を決めることです。今日は2回分ですので途中で1回休みを入れますが、4時間の連続操業ですので、よろしくお願いいたします。

 最初は酸化チタンのナノです。事務局から説明をお願いします。

○角田化学物質評価室長 今の資料の中で、資料2という全体の表がありましたので、簡単に触れてから酸化チタンに入ります。

 資料2です。フローになっており、これが平成27年度にリスク評価の実施を予定している物質を挙げているものです。一番左に「報告対象物質」とありますが、リスク評価の流れとして、まず物質を選定して、その物質を一定以上製造、取り扱っている所にばく露の作業報告を上げていただきます。それが一番左です。それを受けて真ん中の所で「詳細リスク評価」「初期リスク評価」とありますが、初期ということでまずリスク評価をして、高いことが確認されたら詳細なリスク評価を2年目に行うという形でやってきております。それぞれがこういった状況になっているということです。それから、それに該当する物質が一番右にあるもので、これらをこれからリスク評価していく形になっております。

 下線を引いた酸化チタン、真ん中の辺りから少し下にある塩化アリル、一番下の箱の9物質、有機溶剤であったものですが、これらの物質について本日、評価値を御検討いただくというものです。評価値を御検討いただいたものは、これからリスク評価の取りまとめを行っていくというものです。それ以外のものについては、既に評価値を決めているものもありますし、これから決めていくというものもございますが、本日の検討は下線部の物質ということです。

 酸化チタンの評価値について御説明いたします。資料1-1です。このような様式で案の取りまとめをしておりますので、この様式に沿って御説明いたします。

 物質名は酸化チタン(ナノ粒子)です。化学式はTiO2 です。物理化学的性状は、白色の結晶性粉末です。生産量等については、ナノ酸化チタンということでルチルとアナターゼの合計ですが、13,490トンです。用途はルチル型とアナターゼ型で若干違っております。ルチルは化粧品、塗料、トナー外添剤、ゴム充填剤等です。アナターゼ型は光触媒等の利用です。

 以下、有害性について取りまとめております。「重視すべき有害性」という欄です。発がん性です。「ヒトに対する発がん性が疑われる」ということで、IARC2Bと分類しています。IARCは「ヒトに対する発がんの可能性がある」という分類です。根拠としては、疫学的研究は不十分な証拠ですが、動物実験では十分な証拠があるということで2Bという評価になっています。ほかの外国の評価機関の評価については、下に書いてあるとおりです。

 一番右の欄にいきまして、生殖毒性です。「判断できない」ということです。生理的ばく露と異なる手法や投与量で行われている方法がほとんどであるので、必ずしも信頼できる評価レベルとは言えないことから、生殖毒性については判断できないということにしております。神経毒性については、「判断できない」ということです。二酸化チタンのナノ粒子2.5510mgkg/日をCD-1マウスの鼻腔に90日間連続投与して、脳障害を検討したとところ、脳内に蓄積し、脳内のグリア細胞の増殖亢進や壊死領域を認め、海馬細胞のアポトーシスを認めた。同著者の同じ実験の論文によって、マウスの脳で酸化的ストレスの亢進と神経膠細胞の増殖亢進や出血を認めた。ただ、これらの論文は過剰投与していることが考えられること、また論文の内容に関して問題点も指摘されていることから、判断できないということです。遺伝毒性については、複数のin vitroの小核試験、in vivoの小核試験、遺伝子欠失試験で陽性を認めるので、遺伝毒性ありと考えるということでまとめています。ただし、TiO2 のように、難溶解性の粒子における遺伝毒性は核に対する直接作用よりはフリーラジカルが引き起こす間接的遺伝毒性が関与するという整理です。

 左の下にいき、閾値の有無は「あり」という整理をしています。遺伝毒性試験の今の結果を踏まえた判定です。

 その下の「発がん性試験に関する動物試験データ」です。これはLOAEL10.4mg/m3 ということで整理しています。これはWistarラットに二酸化チタンナノ粒子を乾式分散により18時間/日、5/週、24か月間、全身吸入ばく露し、腫瘍発生ラット数は100分の19、非ばく露群より有意に高かったということです。二酸化チタンのクリアランスに関するデータはありませんが、恐らく過負荷の状態で腫瘍形成には粒子の過負荷が関与すると考えているということです。唯一の長期吸入ばく露試験であるのでLOAELとして採用をしたというものです。これを踏まえますと、評価レベルは0.023mg/m3 ということです。

 その隣の許容濃度等です。ACGIHと日本産業衛生学会で数値が設定されており、ACGIHTLV-TWA10mg/m3 です。これはナノ粒子に限らず、二酸化チタン全体を対象としております。これは、ラットに粉末を吸入ばく露させた慢性試験において250mg/m3 投与群で肺への炎症及び扁平上皮がんの形成を認めた。なお、10mg/m3 の投与群では肺の既存の構築は保たれており、線維化の進行や不可逆的な病変も認められないと。また、疫学的調査では、二酸化チタンのばく露と呼吸器疾患との間には関連性がなかったと報告されております。さらに、二酸化チタンへの職業ばく露が肺の線維化、発がん若しくは他の健康影響との関連を示す確実な証拠はないと。こうしたことから、TLV-TWA値として、10mg/m3 を勧告するということです。二酸化チタンの発がん性を調べた動物実験は、陰性若しくは結論に達していないことから、これらの結果を基に二酸化チタンはA4に分類するということです。SkinSEN表記あるいはTLV-STELを提言する十分なデータはないということです。

 その下の二酸化チタンナノ粒子ということで、日本産業衛生学会が0.3mg/m3 を示しております。根拠は、二酸化チタンナノ粒子に関する疫学的報告はない。動物ばく露試験では10mg/m3 の長期吸入ばく露により、ラットで肺腫瘍の発生が増加したがマウスでは増加しなかったことから、ラットにおける発がんはoverloadにより慢性炎症から上皮化生を由来するラット特有のものであると考えられるので、採用しないと。Bermudezらの亜慢性試験は13週間ですが、これにおいて2mg/m3 のばく露濃度はoverloadではないこと、肺にほとんど影響もないことからNOAELと考えたということです。ILSI Workshop reportに基づいて種差の不確実係数を3としたこと、更にばく露期間が短いことによる不確実係数を2とすると、ヒトに影響を及ぼさないばく露濃度は0.33と推定されるということで、結論として二酸化チタンナノ粒子の許容濃度は0.3mg/m3 と設定しているというところです。そのほかの関連する許容濃度等については、下にあるとおり、NEDOのプロジェクトで試算されたもの、NIOSHのもの、ECのものもございます。御覧のとおりの値です。

 そして、一番右の下の欄で評価値の案です。一次評価値はリスクが十分に低いか否かの指標ということで、行政指導の参考として活用しているものですが、一次評価値を0.023mg/m3 ということで設定したらどうかという案です。この数値については、左下にある発がん性試験に関する動物試験データから、そのLOAELから計算した0.023mg/㎥を採用したらどうかというものです。二次評価値については、0.3mg/m3 ということです。理由としては、産衛学会が疫学的研究や動物ばく露研究から総合的に判断して、許容濃度として0.3mg/m3 を勧告していることです。

 この資料1-1の説明は以上ですが、若干補足します。この資料1-1を作るに当たり参考にしましたのが、先ほど御紹介した参考資料2の「有害性評価書」と、その中に「有害性総合評価表」というものがありますので、こういったデータを踏まえて、今回のこの評価値の表を整理したところです。有害性評価書については、国の委託事業で、平成26年度までに検討し、その成果として取りまとめたものです。

 もう1点補足しますと、一番右に評価値の案ということで、一次評価値、二次評価値が書かれております。参考資料5の「リスク評価の手法(平成26年改訂版)」という資料があります。こちらを御覧ください。参考資料5はリスク評価を行う手法について、その手順等を有害性評価小検討会で検討したものですので、皆さんも御承知のものですが、その5ページの2「二次評価」のア「二次評価値の決定」という所があります。二次評価値は先ほども書いてありましたが、健康障害防止措置の規制等が必要か否かという判断の根拠になるものですので、現場のばく露水準がこれを超えていれば、これはリスクが高いのではないかという判断にいく可能性が高いものです。

 その二次評価値の決定は参考資料の5ページです。2の「二次評価」のア「二次評価値の決定」の()許容濃度又はTLVが設定されている場合です。原則として設定されている次のいずれかの濃度を選定すると。両者の値がある場合、両者が一致している場合はその値を、また、両者が異なっている場合には最新の知見を考慮して、いずれかの値とするという形で設定しております。次のものとして、aとして日本産業衛生学会が勧告している許容濃度、bとして米国産業衛生専門家会議が提言しているばく露限界値ということで、まずは産衛学会とACGIHの許容濃度等で設定がある場合は、それを踏まえて決定しましょうと。それがない場合、()以降については、ほかの機関のものを使うとか、あるいは試験の無毒性量、NOAELから設定して使うとか、決定の手順が以下に書かれておりますが、こういった形でルールを決めて、二次評価値なりを決定しているというものです。

 それで先ほどの様式に戻っていただきますと、「許容濃度等」という所で、特にACGIHと日本産業衛生学会の数値を整理し、これを踏まえて二次評価値を決定しているところです。以上です。

○大前座長 ただいまの御説明に対して、何か御質問あるいは御意見はいかがでしょうか。

○西川委員 資料1-1の一番右の上のほうです。真ん中の神経毒性に関して、下から23行目に、過剰投与と論文の内容に関して問題点が指摘されているとありますが、この論文はChemosphereという論文で、それなりにきちんとした論文だと思うのですが、どういう問題点が指摘されているかについて教えていただきたいのです。

○角田化学物質評価室長 まず、参考資料232ページに「神経毒性」があり、同じような記載があるのですが、それを書いているのが17ページから18ページです。先ほどの表1-1にも書かれているのですが、参考資料17ページの下のクの「神経毒性」の記載です。ここが、ばく露量が明確に記載されていないということもありましたので、そういったことも踏まえた整理になっております。

 それと、次のページの上から5行目からの括弧書きに、本文献はSociety for Biomaterialsの機関紙に掲載されているため本評価書に加えたが、仏OMNTから、同著者のグループから同様の内容が他のジャーナルに発表されたこと、文献の不正確な引用、方法の記述不備などが指摘・公表されているということもございますので、こういったことも踏まえて先ほどのような整理にしております。

○西川委員 よく分かりました。

 あとは、下の真ん中の産衛学会の「根拠」の3行目の所に、「ラットにおける発がんはoverloadにより慢性炎症から上皮化生を由来するラット特有のものであると考えられるので、採用しない」とありますが、この「採用しない」というのはどういうことですか。

○角田化学物質評価室長 参考資料35ページに、産衛学会が2013年に二酸化チタンナノ粒子の許容濃度を提案された資料が載っております。最後の9ページを御覧ください。左の下に5「許容濃度の提案」とありまして、そこから右上のほうにいきます。「動物ばく露試験では、10mg/m3 の長期吸入ばく露により、ラットでは肺腫瘍が増加したがマウスでは増加しなかったことから、ラットにおける発がんはoverloadにより慢性炎症から上皮化生を由来するラット特有のものであると考えられるので、採用しない」ということで、この数字自体は許容濃度の提案の考慮には入れなかったという趣旨だと理解します。

○大前座長 そのほかにいかがでしょうか。

○津田委員 今の件で私も同じように思ったのですが、ここの記載は正しくないと思います。「ラットにおける発がんはoverloadにより慢性炎症から上皮化生を由来するラット特有のものであると考えられるので、採用しない」とありますが、実際に評価した論文元では、腺がんも有意の差で発生していますので、化生から生じる扁平上皮腫瘍だけとは言い切れないと思います。これはVolume-93ですが、私は出ていまして、私が担当であったので調べましたが、きちんと腺がんも出ているという論文もありましたので、この記載は正しくないと思います。

 それで、参考資料2-116ページの「発がん性」の所を見ると、引いてある論文はHeinrichの論文だと思うのですが、元を見ないと分かりにくいのですが、415行目の所から「Wistarラット」で始まります。ずっとそれを読んでいくと、腺がんが発生して有意の差であると書いてあります。その次が、429行目から「同様に」と始まりますが、これはマウスだからですが、そこにHeinrichと書いてあるのですが、この論文はマウスとラットの両方でやったのかどうかよく分からないのですが。前のものもHeinrichであったような気がするのですが、どうでしょうか。

○大前座長 確かそうだったと思います。

○津田委員 そうすると、ここに「腺がんが増えた」と書いてありますね。

○大前座長 これはラットですか。

○津田委員 マウスでは違ったけれども、ラットのところで。

○大前座長 ラットもありましたか。ああ、そうだ、これですね。

○津田委員 腺がん100分の13に対し、対照群217分の1と書いてあります。これが間違っているのかどうかは、元を見ないと分からないのですが。

○高田委員 参考資料2-122ページのHeinrich1995年の文献のタイトルを見ますと、Wistar ratsmiceと書いてあります。

○津田委員 ラットに腺がんが出たということですね。

○高田委員 2つの種類でやっているのではないかと思います。

○津田委員 そういうことですね。元を見ないとあれですが、両方でやっているのですね。

○高田委員 タイトル上だと、そのように。

○津田委員 このHeinrichというのは、434行から上の所なので、この記載と合わないということになります。

○宮川委員 今の点ですが、基本的に日本産業衛生学会の許容濃度の提案理由に書いてあるところに疑問があるというのが、お二方の先生から出されたということですので、逆に言うと、それなりに評価に使えるという御意見だと思うのです。そうだとすると、今回この一次評価値に使ったもの、こちらはそれを使うべきだということで使われているということです。そうすると、一次評価値はこのままでよくて、二次評価値のほうが、産衛のものをここで使わないということにすると、ACGIHのナノではないものしかなくなってしまうということなので、非常に困ったことになります。そこを暫定的にどうするか、仮に産衛の許容濃度提案理由書に不備があるとしても、そこをどうするかというところがポイントだと思うのです。

○大前座長 こういうのはoverloadで正確にしたあとは、腺がんは出ないものなのですか。

○津田委員 特に、異物を吸入した場合に扁平上皮化生が起こることは分かっているのです。そして、扁平上皮がんは出ます。それは、がんであるかどうかはいろいろな議論がありますが。それから、腺がんもこの場合は出ているので、それを無視することはできないと思います。

○大前座長 それは、今の線維化の母地になっているわけではなくてということですか。

○津田委員 そうですね、別です。腺がんが出るのは、ラットでは自然発生は極めて低いです。マウスはかなりあります。しかも、この頻度でいうとかなり出ていて、13%です。これはもうバックグラウンドより、はるかに高いです。これと同じように、同時にカーボンブラックも評価されたのですが、同じ議論がありました。カーボンブラックでも扁平上皮化生と似たようなことが起こるのです。扁平上皮化生が起こって、それからがん化したので、直接その作用ではないというような議論も、オブザーバーであるインダストリーの方から出ていたのですが、結局、公平に見て腺がんも出ているということで、発がん性ありとなって2Bになった経緯があります。

○西川委員 そもそも「上皮化生」と書いてあるのですが、これが本当に扁平上皮化生なのか、あるいは腺様化生なのか、少し曖昧な点もあります。

○大前座長 許容濃度の提案理由に該当する文献は30番の「ILSI risk science institute workshop participants」という報告書で、workshop consensus reportでこういうことが書いてあるから、そのようには取らなかったという書き方をしてあるのですが、このレポートの結論もそういう意味で少し怪しいということですか。

○津田委員 そう思います。これは、そのまま取ると扁平上皮化生であってということですね。そういう結論にしてあるので、そうではないです。腺がんが出ていますから。

○西川委員 本当に扁平上皮化生なのか、あるいは腺様化生という腺がんの前駆病変のようなものかもしれないし、どちらにしても扁平上皮化生であれば、なぜラット特有かというところも理解できないし、ヒトでは当然、扁平上皮化生をバックグラウンドに扁平上皮がんが発生することはありますので、これは全体として曖昧な感じがします。

○大前座長 そうしますと、先ほどの30番の論文の中身というか、その問題ということになりますか。

○津田委員 そうですね。

○大前座長 今、津田先生がおっしゃった問題はあるのですが、いかがしましょうか。一次評価値、二次評価値を取りあえず決めなくてはいけないというのはあるわけですが、そういうことで産衛の今の0.3をキャンセルしますと、二次評価値がないということになってしまいます。ACGIHは二酸化チタンはトータルでしたので、これを使うわけにはいかない。

○角田化学物質評価室長 去年のリスク評価の検討会で検討しましたときに、NOAELで計算して決定した0.15という二次評価値を、お示しした経緯がございます。そのときに委員の先生から、これは産衛学会で提案が出て、許容濃度が決まっているのでそれを入れて再度整理し直したほうがいいのではないかという御意見が出て、リスク評価報告はある程度まとめたのですが、引き続き検討になっているという経過がございます。今回は特に産衛学会の0.3という数値がナノの数字として出されたものですから、それを活用して整理して入れたのですが、そうするとNOAELからまた検討するのかという議論とか、その辺もクリアしないといけなくなってくるということです。

○大前座長 いかがしましょうか。この数字が出てこないと、その次の評価ができないということになりますので、二次評価値は是非作りたいと思うのですが、30番の文献の解釈に疑義があるというところはあるわけですが。

○津田委員 そうですね。

○大前座長 この疑義の部分については、今ここでは議論できないので、また産業衛生学会に戻さないといけないのではないかと思います。

 それからもう1つ、繰り返しになりますが、このリスク評価の事業自体は基本的には二次文書をメインに使うということでやっていますので、許容濃度委員会の提案をここで持ってきているということになるわけですが、そこに今言った文献30番の読み方に瑕疵があるのではないかということです。それで1年延ばしますか。

○角田化学物質評価室長 今の御意見を踏まえて文献をもう一度確認をして、いずれにしても産衛学会の値か、去年のような知見から出たもので決めていかないとなかなか進まないと思いますので、その上で御判断いただくことになるかと思います。

○大前座長 そうしましたら、今日の段階ではこの0.3を採用しておき、先ほどの30番の文献を精査していただいて、産衛学会の解釈に何らかの齟齬があったとしても。

○津田委員 この中での矛盾が生じているから、グループ2Bというのは動物に対して十分な証拠があるということですので、その事実に対して、ここでは「動物実験で陰性若しくは結論に達していない」ということになっていると、矛盾するということになります。

○大前座長 これも前回出たかあるいはほかのリスクの委員会で出たか記憶がないのですが、overloadをどう考えるかというのがいつもありますよね。

○津田委員 はい。

○大前座長 その前の10mg/m3 overloadというのはよろしいですか。この数字をoverloadと考えるというのはどうでしょうか。

○津田委員 ほかのデータがそうはないので、何とも。ほかの低いドースなどもいろいろあれば言えるのですが、吸入ばく露というのはお金がかかる試験なので、そうはたくさんはないのです。やや高いだろうという議論はありました。

○大前座長 許容濃度委員会の提案理由の8ページに図1というのがあり、これが難溶性低毒性化学物質の用量と腫瘍発生率です。酸化チタン、タルク、カーボンブラック、その他にも幾つかの物質が書いてあって、こういうものの濃度と、ラットの肺がんの発生率を見ると、データを単純にプロットするとこのようなカーブになっていると。したがって、右側のワッと上がっているのはoverloadではないかというのは、そういうような結論に産衛学会はしているのです。だから、この10というのをoverloadと見る。例えばスケールでいくと、一番右側が100で、その次が10ですので。ごめんなさい、これは単位が違いますね。

○宮川委員 もっと大きなものが参考資料2-137ページにあります。

○大前座長 失礼しました、これは濃度ではないですね。横軸が単位が違うので、10mg/m3 とは直接比べられませんね。いずれにしても、こういうデータがあるので、やはりoverloadと考えなくてはいけないかというようなことで、多分取らなかったのではないかと思うのです。産業衛生学会の議論のときは、そういう判断であったのではないかと思います。

 「上皮化生に由来するラット特有のもの」という所は、今、先生がおっしゃったように瑕疵がある可能性がありますが、10mg/m3 ということに関しては、overloadではないかという議論だったと思います。したがって、取りあえず2を取ったと。2はネガティブな結果だったので、2から始めたということになるわけです。Heinrichですね。ということですので、今のoverloadをどう考えるかという意見は、少し議論はあるのかもしれませんが、もしそうだとした場合には、2から始まっているので0.3はおかしくはないだろうと。10と書いてあるのは、先生がおっしゃったとおり瑕疵があるかもしれないという判断で、0.3ということでよろしいですか。いずれにしても30番の文献はもう一回きちんと見るというのは大前提ですが、見ていただいて、また何らかの議論すべきことがあれば、また元に戻っていただくということで、取りあえずは0.3でよろしいですか。

○西川委員 私はそれでいいと思いますが、この文書が問題なのは、overloadだけで済んだことを、化生まで引き合いに出していることではないかと思います。そういうことで数値的には0.3でいいかと思います。

○津田委員 発がん性に対して「陰性」と書いてあるのは、ちょっとやはり。

○大前座長 「陰性」というのはどこですか。

○津田委員 これは事実と異なるということになります。これはそういう意味ではないですか。

○大前座長 それはACGIHのものですか。

○西川委員 ACGIHのものですよね。

○宮川委員 これは1992年のナノを対象にしていないものだと思います。

○大前座長 今、先生がおっしゃったのはACGIHのほうの文書の下から2行目の所ですか。

○津田委員 そうです。これは関係ないのですか。

○大前座長 これは別の機関ですので関係ありません。

○津田委員 分かりました。ここでいうのはナノだけの話ですか。

○大前座長 そうです。

○津田委員 そうすると、データは極めて少ないですね。

○角田化学物質評価室長 酸化チタン自体もリスク評価はまだ全部は終わっていないのですが、酸化チタンのリスク評価をしたときに、特に現場でのばく露水準がナノで非常に高かったということがあり、まずはナノにきちんと絞ってリスク評価をしましょうということになっています。ナノでリスク評価をした後、また全体の粒子も含めて再整理するという必要はありますが、取りあえずはナノを急いで評価するという形にしています。

○津田委員 恐らくこのHeinrichの論文だけだと思います。

○大前座長 そうですね。だから、102からしかスタートができないという。

○津田委員 探してもそんなにないと思います。

○大前座長 取りあえず2からスタートしている数字で、0.3は取りあえずいいだろうということでよろしいですか。

○津田委員 もう1件です。アナターゼとルチル型とありますが、どちらとも特にいわずに、引っくるめてという意味ですね。

○角田化学物質評価室長 そうです。内容的に特に仕分けをしているわけではないです。文献なども両方のもののデータが載っていますので。

○津田委員 要するに、これは光化学活性のあることがアナターゼがいいということですので、それでもって使っているので、動物実験でやる限りは、皮膚でない限りは、光は当たっていないので活性にほとんど差はないです。それは私どもの研究でも、既にそういうのを出しております。こういう動物の中に入れた実験を評価するときには、ルチル、アナターゼを使ったということはいいのですが、余り差は出ないと思います。差を付けて評価する必要はないと思います。

○大前座長 ありがとうございました。酸化チタンに関しては、一次評価値は先ほどの0.023、二次評価値は0.3で進めます。30番の文献については精査をしてもらうということでよろしくお願いします。次に塩化アリルをお願いします。

○角田化学物質評価室長 資料1-2です。物質名の塩化アリルはいろいろ別名があります。化学式はここに書いてあるとおりです。刺激臭あり、無色の液体、沸点は45℃。蒸気圧は39.3kPaです。生産量等用途ですが、製造輸入量は6万トン。用途は、アリル誘導体化合物に使うとか、あるいは除草剤、殺虫剤などの農薬原料、鎮静剤、麻酔薬の医薬原料、香料原料、その他などとなっております。

 重視すべき有害性ですが、これは「ヒトに対する発がん性が疑われる」ということで整理をしております。根拠としては、IARCではグループ3ですが、塩化アリルの投与によって、F344/DuCrj(Fischer)ラットでは、雄の膀胱に移行上皮がんの発生増加が認められ、がん原性を示す明らかな証拠であると考えられた。また、甲状腺の濾胞状腺腫の発生増加も認められたというところで、こういったことを踏まえて、発がん性の分類を「ヒトに対する発がん性が疑われる」という表現にしております。疑われるという表現は、GHSの表現と合った形で整理しております。

 重視すべき有害性の右の欄は「発がん性以外」で、生殖毒性については「判断できない」ということで、300ppmの吸入ばく露で胎児の化骨遅延、これはラットです。それから吸収胚の増加、これはウサギで見られましたが、母動物に対する毒性影響に起因すると考えられて、他の試験報告からも塩化アリルの生殖毒性の有無は判断できないということで整理しております。神経毒性については、アリルスルホン酸ナトリウム製造工場における塩化アリルへの慢性ばく露で、慢性多発神経障害を認められたという報告もありますので、これは神経毒性は「あり」ではないかということで整理しております。遺伝毒性は「あり」ということです。根拠は、ネズミチフス菌、大腸菌、UDS試験で陽性、CHL染色体異常試験で強い陽性、in vivoの優性致死試験でも陽性を示したということで「変異原性あり」というように判断しております。

 左下のほうで、閾値の有無については「遺伝毒性あり」ということを踏まえて、「変異原性あり」と考えられるということで、閾値はないという整理をしております。

 その下に、○で生涯過剰発がん1×10-4 レベルに相当するばく露濃度について「厚労省は」ということで、以下、書いてあります。これは、化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会の資料で、塩化アリルの「がん原性指針から算定した評価参考値について」という資料がありますが、その中で、過剰発がんレベル、10-4 レベルに相当するばく露濃度を0.056ppmと算定しております。この塩化アリルについては、がん原性試験を実施しており、その結果を踏まえて平成23年にがん原性指針で指導しました。法令では規制しませんが、そういう発がんの可能性があるものについては指針によっていろいろと必要な事項を指導するというスキームがあり、その指針を発したときに、この生涯過剰発がんレベルに相当するばく露濃度ということで、0.056ppmを算定しているという経過がありますので、それを記載したものです。

 反復投与毒性に関する動物試験データは、NOAEL100ppmということですが、これは、ラットに塩化アリルを050100250ppmの濃度で、16時間、週5日、90日間で吸入ばく露した試験で、雌雄ラットの100250ppmに腎臓の皮質尿細管上皮細胞の細胞質の顆粒の軽度の増加及びエオシン染色性の増加、尿細管の障害が見られ、250ppmにすると、尿細管の壊死が見られたということで、100ppmで見られた変化は、生理的適応反応の範囲ということで、NOAEL100ppmにして、それから評価レベルを試算したところ、7.5ppmになりました。

 真ん中の許容濃度の所ですが、ACGIHTWA1ppmを設定しております。この根拠は、労働環境でのばく露から推奨されております。この値は動物への吸入ばく露実験において、肝毒性と腎毒性が認められていることによるもので、、STELはまた肺と眼への刺激を最小限とすることになっております。TWA1ppmで、STEL2ppmです。産衛学会では「設定なし」ということで、ほかの機関では、御覧のような形で設定されております。

 一次評価値については、左にあった0.056ppmを設定したらどうかという案です。二次評価値については、ACGIHTWA1ppmを適用して、これを二次評価値としたらどうかという案です。説明は以上です。

○大前座長 ACGIHTWA1963年で、随分古いのですが、これしかないというので、産衛学会もドイツも設定はしていない。NIOSHOSHA1を使っていますので、同じ数字です。それから、一次評価値については、ルール上、国際機関等々になりますが、厚労省の化学物質による労働者の健康障害防止検討会も、ここの数字は使おうということになっておりますので、これを持ってきまして0.056ppmということですが、御意見はいかがでしょうか。

○江馬委員 生殖毒性の所ですが、この物質については「母動物に対する毒性影響に起因すると考えられ」とありますが、起因するかどうか分からないので、このような断定的な表現は、やめたほうがいいと思います。母体毒性に起因するというのはほかの物質にも書いてあるのですが、例えばジオキサンの「母体毒性のある濃度での影響であり、生殖毒性ありと判断する明確な根拠とはならない」と、このぐらいの表現のほうがいいのではないかと思います。

○大前座長 今、おっしゃったジオキサンは、資料1-5ですね。このような表現にしたほうがいいだろうと。

○江馬委員 資料1-65ページ。関与はしているでしょうけれども、分からないので、この程度の表現でいいと思う。

○大前座長 ありがとうございます。そのような表現で。そのほかはよろしいでしょうか。一次評価値、二次評価値、この物質に関しては、1963年とちょっと古いですが。

○宮川委員 江馬先生の御指摘の点ですが、そのような記載をするときに、ここで作る文書に関しては、「起因するものではない」というような言い方ではなくて、今、江馬先生がおっしゃったような言い方でするということですが、例えば資料2-152ページの179189に、「著者は母動動に対する毒性に起因するもので、塩化アリルの直接的影響ではないとしている」。これは、著者がそのとおりに書いているときや、それを引用するときには、そのままでよろしいということですね。

○大前座長 著者が言っている分には、そうですよね。

○江馬委員 それはそれでいいと思います。

○大前座長 ありがとうございました。塩化アリルに関しては一次評価値0.056ppm、二次評価値1ppmということでよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。次に、クロロホルムをお願いします。

○角田化学物質評価室長 資料1-3です。このクロロホルム以下の9物質については、昨年、特化則を改正しました。もう1物質あり、全部で10物質ありますが、従来、有機溶剤として、有機則で規制していたものを、いずれも発がん性のIARC評価で2B以上ということから、特化則のほうに移し、所要の規制を導入することにしたという経緯があります。そのように制度化はされておりますが、今、規制している業務については、有機溶剤業務が対象となっておりますので、それ以外の部分について規制する必要があるのかといった、その業務以外の部分について、検討する必要があります。実際、ばく露の現場での測定なども、従来はやっておりませんでしたので、平成26年度から現場でのばく露測定をやっております。そこで今回、評価値を決めて、検討していくというものです。

 クロロホルムですが、化学式、構造式は御覧のとおりで、物理的化学的性状は、特徴的な臭気のある揮発性で、無色の液体です。製造輸入数量は48,782トン。用途は、フッ素系冷媒、フッ素樹脂の製造、溶剤といったところです。それから、有機合成、アニリンの検出、血液防腐用、医薬反応溶媒、農薬反応溶媒、試薬です。

 発がん性については、「ヒトに対する発がん性が疑われる」ということで、根拠としては、IARCではグループ2B、発がんの可能性があると分類していることです。クロロホルムの発がん性に関するヒトでの信頼できるデータは見当たらないが、動物実験では、マウスやラットでの腎尿細管の腫瘍や、肝細胞腫瘍が認められており、実験動物では、クロロホルムの発がん性を示す多くの証拠が得られています。それぞれ関係機関の評価区分は御覧のとおりです。産衛学会は2Bです。

 その右の欄は、重視すべき有害性の発がん性以外ですが、まず生殖毒性は「あり」ということで整理しております。根拠ですが、妊娠615日目のWistarラットにクロロホルムを吸入ばく露した試験です。母体の体重増加の縮減が10ppmで認められ、胎児では30ppmから、体重と頭殿長の減少が認められたということで、これを持って「あり」というように整理しております。

 神経毒性は「あり」ということで、中枢神経の機能低下が、急性吸入毒性の主な症状であり、430ppm4時間吸入ばく露したラットで、明らかな(significant)半麻痺状態が認められたということ。また、マウスでの経口投与では、主要な変化として、運動失調、鎮静及び麻酔等の急性の神経症状が見られました。遺伝毒性は「なし」ということです。根拠ですが、マウスの腹腔内投与による骨髄細胞の小核試験では陰性、ラットでの腹腔内及び経口投与による骨髄細胞の染色体異常試験では陽性でした。SalmonellaEscherichia coliを用いた変異原性試験では、ほとんどが陰性であったということで、それで総合して「遺伝毒性なし」と判断するということです。

 左下の閾値の有無について「あり」ということで、これは遺伝毒性物質に該当しないtためです。これは「あり」ということで、NOAEL5ppmとしておりますが、雌雄のマウスとラットにクロロホルムを6時間、5日、104週間の吸入ばく露をした試験で、雄マウスの3090ppm群で腎細胞腺腫・がん発生数の合計が、90ppm群で腎がん発生数が有意に増加しているということで、NOAEL5ppmにしています。これを踏まえると、評価レベルは0.037というように計算ができます。

 生殖毒性が、先ほど「あり」ということで、それを使って試算をすると、NOAEL10ppmですので、母体の体重増加の抑制が10ppmから認められました。胎児では300ppmで生存胎児数が減少し、30ppmから体重と頭殿長の減少が認められました。胎児の体重減少と頭殿長の減少の結果に基づき、吸入ばく露の児の発生毒性に関するNOAELとして、10ppmを採用したということで、この10ppmから試算すると、1ppmが評価レベルということになります。神経毒性に関するデータは、評価値を設定できるような情報はなかったということです。

 許容濃度の所ですが、まずACGIHですが、これは1987年に10ppmということで設定されております。ラットに7時間、5日、6か月間の吸入ばく露した試験で、2530ppmでは臓器の毒性は生じなかったが、50ppmでは腎障害と肝障害が生じ始め、この臓器障害が出始める50ppm5分の1の値ということで設定されたものです。次に、日本産業衛生学会です。これは3ppmということになっています。げつ歯類の吸入毒性試験における肝臓又は腎臓の非腫瘍性病変を予防すべき影響として、2年間の毒性試験の無毒性量から許容濃度値を求めると、肝臓を標的臓器とした場合、無毒性量がマウスとラット共に30ppm(脂肪性変化)です。一方、クロロホルムの毒性の発現には、CYP2E1による代謝産物の生成が重要ということで、ヒトでは肝臓で代謝生成物が多いと考えられ、肝臓を標的臓器として種差を踏まえて3ppmというようにしています。

 評価値の案ですが、まず一次評価値については、発がん性に関する動物試験により導き出した無毒性量、NOAELから不確実係数を考慮して算定した評価レベルで、0.037ppmということです。これは左に2つの試算がありますが、上のほうを採用しております。

 それから、二次評価値ですが、これは1ACGIH10ppm又は2産衛学会の3ppmと書いております。先ほどのルールにもありましたが、両方の値が異なる場合、それを踏まえて検討ということですので、この2つについて御検討いただければと考えております。説明は以上です。○大前座長 御意見、御質問はありますでしょうか。

○江馬委員 生殖毒性ですが、これも母体毒性の認められる投与量で児動物、胎児への影響が認められているので、前の2つの物質と横並びに考えたら判断できないか、なしか、ということになるのではないでしょうか。

 もう1つは、下の一番左の生殖毒性に関する動物試験データですが、ここでは、胎児のNOAEL10として、その10を採用しておりますが、母体毒性の低下が10ppmで見られているので、母体毒性のNOAEL3ppmになると思いますが、これはなぜ、この値を用いないのでしょうか。という2点です。

○大前座長 先ほどの2物質の横並びだと、母体毒性があるものは取らないというか、数字として整合性はないという、そういう御意見ですけれども。

○宮川委員 母体毒性のNOAELと胎児のほうのNOAELの影響を単純に比較しているのではなくて、多分、この原案を作ったときの議論では、どの程度の母体毒性で、胎児の影響がどうかというところを総合的に判断していたような記憶があります。個別にはよく覚えておりませんが、確か1つ前のほうの物質は、母体でもって死亡例が報告されているとか、結構いろいろ臓器の毒性が出ているというのに対して、クロロホルムのほうは、体重抑制程度ということなので、母体毒性を重視しなくてもいいのかなと。ただ、子供のほうの毒性は、確かに3ppmでも尾椎の骨化数の減少とか、胸骨分離の低下が書いてありますが、ここは総合的に判断して、特に頭殿長のほうに注目して、単なる骨化の遅延などは採用しなかったのかなと。総合的な判断でこの辺りの、その数値が適当ではないかという議論であったような気がいたします。

 個別に専門家の江馬先生に見ていただいて、そこが不適切というのがあるのであれば、もう一回見直してもいいかと思いますが、一律にLOAELNOAELでもって比較するという判断ではないということは、私はそれが合理的だなと思っています。

○大前座長 生殖毒性のときは、なかなか議論は難しいですよね。要するに一義的に。

○江馬委員 そうですね。どの程度の母体毒性が胎児に影響するかを判断するのは難しいと思います。

○大前座長 そうですね。

○江馬委員 普通の生殖発生動物への母体毒性のパラメーターは限定的なので、普通の毒性試験のように詳しくないので、そこも分からないと。

○宮川委員 同じように、GHS分類の判断をするときには、判断が難しいので困ったときには区分2に分類するというのが国連の規則に書いてありまして、明らかな母体毒性があるというのは、10%以上の母体の死亡とかというような例の記載があったかと思いますので、そのようなものも参考にしながら判断するのがよろしいのかと見ています。○大前座長 この場合は、体重の増加が少し抑えられたという程度なので、そのような大きな母体毒性がないであろうということで、今回、これを使ったということ。

 それから、二次評価値ですが、ACGIHと産衛が103で違うのですが、ACGIH1978年、産衛学会が2005年で、随分年度が違うので、これは産衛のほうを取るということでよろしいでしょうか。Yamamoto et al.2002年の論文は当然、ACGIHで引いていないわけですから。よろしいですか。

○千葉委員 種差を踏まえて3ppmとしたという記述がありますが、この根拠としてCYP2E1の、ヒトでは肝臓での代謝物の生成量が多いということで、ラットとヒトの間に種差があるということが根拠で3ppmとしたという種差の部分ですね。そこが、どのデータに基づいて、種差の危険性を評価したかが1点と。

 もう1つは、このようなグルタチオンで抱合されるような代謝活性化体が出てくるときに、解毒するグルタチオンの量が、げつ歯類では肝臓の中で多いのですね。ヒトと比べるとかなり多いので、通常、こういう活性代謝物が出てくるときの解毒の評価をするときに、ラットやマウスは非常に使いづらいので、グルタチオン枯渇剤を使ったりして評価することが多いのですが、こういったような安全性リスク評価をするときに、ラットのデータを使った場合に、ヒトとのリスクを評価するときは、ラットの安全性をもっと許容度を低くして考えないと、ヒトの場合は、ラットよりずっとリスクが高いというように考えられますので、その点を考慮して、安全性評価が必要かなというように思っているのですが、いかがでしょうか。

○大前座長 グルタチオン抱合の経路だと、ラットのほうが強いから、ヒトに当てはめる場合は、ヒトのほうが厳しくなければいけないと、そういうお話ですよね。

○千葉委員 そうですね。

○大前座長 CYP2E1のほうは、いかがなのでしょうか。

○千葉委員 この表現では、ヒトでCYP2E1による代謝活性が高いというようになっておりますが、本当にそうなのかということ。どういうデータを根拠にそのようなことを言われているのか。私は余り差がないというように思っていたものですから。確かにアルコール摂取などをしている人では肝臓のCYP2E1が増えていて多い可能性が十分考えられますが、通常、そういうことはない。動物とヒトで本当に差があるのかなということ。

○大前座長 この参考資料328ページの左側の列の「許容濃度の提案」の2段目ですが、クロロホルムの毒性発現にはCYP2E1による代謝産物の生成が重要であると。ミクロソームを用いたうんぬんかんぬんによれば、内部ばく露量としてのクロロホルム代謝産物生成能は肝、腎共にマウス>ラット>ヒトであった。要するに、ヒトのほうが弱いということですかね。これですと、ヒトのほうが弱いから、厳しく届け出たというような、そういうような方向に考えていいということですかね。

○千葉委員 ここは、そう書いてあります。

○宮川委員 書いてある所が分からないのです。資料1-3の横長の日本産業衛生学会の提案理由書で抜き出した部分というのは、これは、許容提案理由書の抜き出しですよね。その許容提案理由書の基の所が、25ページから見始めたのですが、どこにあるか分かりません。最後のほうの28ページの「許容濃度の提案」の所で、それに該当するパラグラフが、別な物質を間違って見ているのだったら。げつ歯類の吸入毒性試験におけるうんぬんかんぬんというパラグラフが、28ページの左のほうにありますか。

○北村化学物質情報管理官 5の第1パラグラフの途中から始まります。

○宮川委員 途中からですか。

○北村化学物質情報管理官 「量反応関係を明らかにした疫学知見はないことから、」以降ですね。

○宮川委員 3ppmというのは分かっていますか。つまり、このようなものを抜き出すときは、塊で抜き出していただかないと、途中、論旨がずれることがありますし、影響の強さのことに関して言うと、先ほどのCYP2E1の代謝については逆のことがどこかに書いてあったような。28ページの真ん中辺りでは、肝臓と腎臓とも、マウス、ラット、ヒトの順というように書いてあるので、その辺をトータルで見ると、この抜き出しと論旨が違ってきてしまうので。

○大前座長 ちょっと違っていますね。この表現だと、ヒトが一番弱いというような表現ですよね。

○千葉委員 この記述を見ると、PBP系モデルと書いてあるので、全体的に個体レベルの解析があったということだと思いますが、そうなると、CYP2E1からの活性代謝物の生成速度と、それからグルタチオンの解毒速度と全部トータルで評価した結果、ヒトが一番遅い、一番弱い。ラット、マウスは活性が高いという評価です。その機構としては、グルタチオン抱合能がラット、マウスが非常に高い。グルタチオンレベルが高いからということで、CYP2E1が原因ではない。量が多いことが原因ではないという可能性も考えられるので、ここの記述にあるCYP2E1のレベルを考慮して、ヒトでは安全性を高く見積ってという記述は、ちょっと合わないような気がいたしますが。

○大前座長 今、宮川委員がおっしゃった、ここの所の文章とここの文章が、ちょっと違っていますよね。

○宮川委員 ただ、最後から3番目のパラグラフで、「以上、動物実験の結果」の所が代謝能はヒトで最も低いと考えることから、3ppmということになっている。

○大前座長 いずれにしても、ヒトが弱そうだというような方向ですから、10という、デフォルトというか、不確実係数を使っているということは、妥当ということですね。ここの文章は少しおかしいけれども、最終的に3を出しているそこの数字の算出に関しては、おかしくはないということで考えてよろしい。10倍かどうか分かりませんが、それは、いつもその話なので。

○千葉委員 そうですね。実際に10倍でいいかどうかは分かりませんけれども。

○大前座長 デフォルトをいつも使っておりますが、何らかの根拠があれば当然大きくしたり、小さくしたりするので。では、二次評価値は、今のところの抜き出し方も少しおかしいのですが、二次評価値は産衛学会の3を使うということでよろしいですね。

○角田化学物質評価室長 表現ぶりは直すようにいたします。

○大前座長 よろしくお願いします。次に、四塩化炭素をお願いします。

○西川委員 細かい所ですが、資料1-3の一番右の生殖毒性の4行目で「体重増加の縮減」とありますが、左のほうでは「抑制」とあるのです。普通、抑制ですよね。

○大前座長 抑制ですよね、そうですね。

○西川委員 もう1つは、下の真ん中の産衛学会の所で、この「皮」は何ですか。

○角田化学物質評価室長 これは経皮でのばく露があるということですね。

○大前座長 経皮での注意マークです。

○西川委員 分かりました。

○大前座長 それでは四塩化炭素をお願いします。

○角田化学物質評価室長 四塩化炭素です。物質名、化学式は御覧のとおりです。物理的化学的性状ですが、特徴的な臭気のある無色の液体ということで、沸点は76.5℃、蒸気圧が12.2kPaです。生産量等は、生産量が5,342トン、輸入量は314トンです。用途としては、ワックス樹脂の製造です。

 発がん性については、これはIARC2Bです。日本バイオアッセイ研究センターによる試験で、ラット及びマウスに対する吸入ばく露の試験系において、25ppm以上の濃度のばく露群で肝臓腫瘍。これは肝細胞腺腫と肝細胞がんの発生が認められており、マウスでは更に吸入ばく露の試験系において、25ppm以上の濃度のばく露群で肝臓腫瘍(肝細胞腺腫、肝細胞がん)と副腎褐色細胞腫、5ppmばく露群で肝細胞腺腫、これは雌のみでの発生が認められているということです。各評価区分は、こちらに書いてあるとおりです。

 発がん性以外の有害性です。生殖毒性は「判断できない」ということで、吸入ばく露や経口投与により胚・胎児に影響が見られたが、明らかな母体毒性による二次的な影響と考えられることから、生殖毒性ありとは判断できないとまとめております。

 神経毒性は「あり」ということです。根拠は、ヒトに四塩化炭素20mg/L(3,200ppm)の濃度にて5分間ばく露したところでは異常を認めなかったが、30mg/L(4,800ppm)濃度の2.5分間ばく露では5分後に傾眠、40mg/L(6,400ppm)濃度の3分間ばく露では振戦、傾眠、その後よろめき歩行が認められたと。さらに、最高濃度である89mg/Lの濃度の0.8分間ばく露では、意識が喪失したというところです。

 遺伝毒性については「判断できない」ということで、in vitroの試験の多くは陰性ですが、ガス状態の四塩化炭素をばく露した場合はAmes陽性、in vivo試験の多くは陰性であるが、ラットの肝臓で小核陽性であったということで、いろいろな結果があり、判断できないということです。

 左下の閾値の有無としては、「判断できない」ということです。根拠は、本物質は遺伝毒性は判断することはできず、閾値についてないとは言えないということです。神経毒性は、評価値を設定できる情報は得られていないということです。 

発がん性に関する動物試験データをその下に参考としてまとめてあります。LOAEL5ppmです。これはラット及びマウスで四塩化炭素の蒸気をばく露した実験で、104週間の全身ばく露です。この試験結果に基づいて、LOAEL5ppmとしています。マウスでは25ppm以上のばく露群で、肝細胞腺腫と肝細胞がんの発生頻度が雌雄共に有意に増加し、5ppmばく露群の雌では肝細胞腺腫の発生頻度49例のうち8(16)が対照群よりも有意に増加し、背景データの範囲を超えるものでした。さらに、25ppm以上のばく露群の雄と125ppmばく露群の雌で副腎褐色細胞腫が有意に増加した。5ppmばく露群では雌マウスの肝細胞腺腫を除いて、これらの腫瘍の発生頻度は対照群と同等であったということです。このLOAEL5ppmをベースに試算したところ、評価レベルとしては0.005ppmということです。

 許容濃度等ですが、ACGIHTWA5ppmSTEL10ppm。これは1993年の設定です。これは5ppmTLV-TWAが推奨されるということで、(1)げっ歯類、霊長類及びヒトにおける研究で肝臓が最も感受性の高い組織であることが判明しており、1020mg/kg未満、あるいは10ppm未満では肝臓毒性が認められていない。(2)血中動態の検査から、肝臓毒性を予測でき、さらに、(3)PaustenbachらのPBPKモデル計算よりげっ歯類で肝臓毒性の徴候が認められない用量と同等の職業ばく露は5ppm濃度であったということによります。アルコール飲料の消費や肝臓疾患を有した労働者では該当しないが、10ppmTLV-STEL10mg/kg以下の用量で発がん性が認められていないことに基づいています。Stewartらの皮膚吸収データはSkinの表記を支持するということで、以上により5ppmを設定しております。

 日本産衛学会は、同じく5ppmということで設定しておりますが、根拠としては、1日当たり6時間で数週間反復ばく露した試験系で、ラット、イヌ、サルは10ppm、モルモットは5ppmで肝臓の脂肪化が認められたが、1ppmではモルモットでも肝障害は認められなかったと。さらに、四塩化炭素を数10ppm濃度で吸入する職場において中毒を示した事例では、作業環境を10ppm以下に抑制したところ異常を認めなくなった。四塩化炭素は健康なヒトの皮膚を通して吸収されることが確認されている。これらの結果から、肝障害を指標として、5ppmが提案された。さらに、肝障害が肝がんの発生に先行することから、肝障害の防止が肝がん発生も防止できると考えられる。生殖毒性に関しては、母親に対する肝臓毒性を指標にして、胎児毒性を予防できるかどうかは判断できないということです。他の機関の数字は御覧のとおりです。

 一次評価値ですが、発がん性を示す可能性があって、遺伝毒性が判断できず、閾値が不明ということですので、一次評価値は「なし」という案で整理しております。二次評価値ですが、ACGIHも産衛学会も5ppmで設定しておりますので、5ppmという案で整理しております。以上です。

 

○大前座長 どうもありがとうございました。いかがでしょうか。先ほどの生殖毒性は参考資料2-1120ページに生殖毒性のまとめの表があります。それを見ると、母体毒性として体重と摂餌量の減少、ALTの上昇や肝臓の肉眼的異常及び肝臓重量の増加など、肝臓毒性が認められたと。これで母体毒性が原因だろうということがここには書いてあります。

 一次評価値は、閾値の有無が判断できないことから、閾値があると仮定した場合の参考値が左側の0.005ですが、その判断ができないので、一次評価値を設定できない。二次評価値は、産業衛生学会もACGIH5ppmなので、これでどうかということですが、いかがですか。

○西川委員 遺伝毒性試験はAmesが陽性、ラットの小核が陽性ですが、判断できないというのがよく分からないのですが、その辺りを教えていただけますか。

○大前座長 その遺伝毒性の一覧表が105ページから107ページにずらっと載っております。ここでプラスになったり、マイナスになったりいろいろしていて、クエスチョンマークもあったりということで。

○角田化学物質評価室長 そうですね。104ページから。

○大前座長 こういうのをどういうふうに判断するかということです。それで判断できないということだと思います。こういう物質はガス状でばく露する場合と、液体として入れてある場合と、評価の方法は変える必要がありますか。よく言われるのは、添加している場合は、37℃に温めるのでどんどん出ていってしまって、実際はばく露しないのではないかと時々言われるのですが、それに対してガス状であれば、ガスとしてはあるので、多分、閉鎖空間の中でやっているのではないかと思いますが。そんな話を前にどこからか聞いたことがありまして。

○津田委員 標準的なやり方というのはないのですか。

○大前座長 どうなのでしょうか。標準的には液体ですか。液体が多いのですよね。

○津田委員 普通は入れてしまうのですが、こういうガス状のものの変異原性を見るときに、一定のガス圧にしてやっているのではないですか。

○大前座長 バイオアッセイセンターでは、ガスはガスでやっているのですよね。テトラバックでしたか、あれに放り込んでやっていますが、それがスタンダードか、私もよく分からないのですが。

○西川委員 幾つか既に試験が実施されているにもかかわらず判断できない。それではどういう試験をやれば判断できるのですかということが質問したかったのです。専門家が判断されたことですので尊重したいと思います。

○大前座長 そういうことで、今回は一次評価値は「なし」で、二次は5ということでよろしいですか。ありがとうございました。次は1,4-ジオキサン、よろしくお願いします。

○角田化学物質評価室長 

1,4-ジオキサン、資料1-5です。物理化学的性状ですが、特徴的な臭気のある無色の液体ということで、沸点は101℃、蒸気圧は3.9kPaです。生産量等ですが、製造輸入量等は2,261トンです。用途は洗浄剤、合成皮革用、反応用の溶剤、塩素系溶剤用、医薬品用、農薬用という利用です。

 発がん性については、「ヒトに対する発がん性が疑われる」ということで、ヒトへのばく露では報告はないが、動物実験で発がん性が報告されています。IARCでは2Bに分類されているということです。

 生殖毒性は「判断できない」ということで、根拠は胎児毒性としてNOAEL500mg/kgが報告されているが、母体毒性のある濃度での影響であり、生殖毒性ありと判断する明確な証拠とはならないということです。神経毒性は「あり」ということで、根拠はヒトや動物実験で急性の麻酔作用等中心の神経毒性の報告があるということです。遺伝毒性ですが、in vitroin vivoにおいてほとんどが陰性ということで、遺伝毒性は「なし」ということで判断しております。

 左下の閾値の有無は、「遺伝毒性なし」のために閾値は「あり」ということで整理をしております。神経毒性に関する動物試験データですが、調査した範囲内で評価値を設定できる情報は得られていないということです。発がん性に関する動物試験データですが、NOAEL250ppm、ラット吸入の104週間試験です。雄のラットに1,4-ジオキサン蒸気を6時間/日、5/週、104週で吸入ばく露した実験では、鼻腔の扁平上皮がんと肝細胞腺腫が1,250ppm群で、腹膜の中皮腫が250ppm群と1,250ppm群で、統計学的に有意な発生増加を示したということで、NOAEL250として計算をしたところ、評価レベルは6.75mg/m3 1.875ppmとなっております。

 許容濃度ですが、ACGIH20ppmです。1999年の設定ということで、1,4-ジオキサンの職業ばく露の許容濃度として、TLV-TWA20ppmが勧告されています。。この値は肝臓、腎臓への毒性影響、眼・呼吸器系の刺激症状を最小化することを意図しています。Skinの表記は動物(ウサギ、モルモット)皮膚から急速に吸収され、協調運動失調、昏睡を引き起こすことが報告されており指定されました。SEN若しくはTLV-STELを勧告するのに十分なデータは利用可能でなかったということです。

 産衛学会ですが、こちらは10ppmということで設定しております。ラットを1,4-ジオキサン蒸気に111ppm×7時間/日×週5日×2年間ばく露した実験で、催腫瘍性を見出さなかったことから、この10分の1である10ppmを許容濃度として提案しました。さらに、技術的に可能な限り一層、低濃度とすることを求めていると。1,4-ジオキサンは経気道的に吸収される以外に、動物実験によれば経皮的にも中毒量が吸収されることにより皮マークが付されているところです。2015年に許容濃度の1ppmが提案されております。これは暫定値ということです。

 評価値の案です。まず一次評価値です。発がん性があり、閾値がある場合で、発がん性に関する動物試験により導き出されたNOAELから不確実係数を考慮して算定した評価レベルということで、左に書いてあった1.875を一次評価値とする案です。二次評価値ですが、これは20ppm又は10ppm、あるいは暫定値の1ppmというのも産衛学会であるのですが、二次評価値として20又は10ppmということで案を提示しております。これは、それぞれACGIHなり産衛学会に対応する数値ということで設定をしております。以上です。

○大前座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。今ありました産業衛生学会が今年度に1ppmを提案しているということなので、これはまだ暫定値ですから、この1年間の間は正式には10ppmという形になりますが。以前、こういうことはありましたか。産業衛生学会がその年に提案して。

○角田化学物質評価室長 暫定値の段階で評価値が決定したという例はないと思います。

○大前座長 まだなかったでしたか。

○角田化学物質評価室長 一応、決まってから設定するという形にしていました。

○大前座長 私は1ppmの根拠を実ははっきり覚えていなくて、手元に提案理由もないので、今はここは何とも言えないのですが。これは予定としては、ばく露評価が終わっているのでしたか。

○平川化学物質評価室長補佐 平成26年度のばく露調査については、先ほど申し上げたとおり、有機溶剤業務以外のものについては、昨年度中に終了しております。

○大前座長 そうすると、1,4-ジオキサンは終わっているわけですね。平成26年度ばく露評価実態調査で。

○平川化学物質評価室長補佐 すみません、継続しています。

○大前座長 継続しているわけですか。今、継続中。

○平川化学物質評価室長補佐 はい。

○大前座長 10分の1になってしまうので、どうしたものかと。

○宮川委員 二通り考え方があると思うのですが、産衛が暫定でも低い値を提案していて、しかし今ある所から取るのだとすると、低いほうを取るのがいいという考え方が10ppmですよね。

 もう1つは、今度この20ppmを取ると、一次評価値は生き残るのです。10ppmだと、一次評価値が1.875で、二次評価値の10分の1より超えてしまうので、一次評価値がなくなってしまう。そういう状況で、この10ppmだけで、来年だと産衛が1ppmを出すかもしれないところで10ppmだけでやるよりは、初期評価であれば、一次評価値をいかしたまま許容濃度としては20ppmのほうを取っておくという手もあるのかなという。

○大前座長 20ですか。

○宮川委員 二次評価値ですね。

○大前座長 二次評価値を20にするということですか。

○宮川委員 二次評価値を10にすると、一次評価値が消えてしまうわけです。

○平川化学物質評価室長補佐 そうですね。10分の1

○角田化学物質評価室長 発がんで一次評価値を計算しているときは、10分の1のルールはかかってこないのです。

○宮川委員 かかってこないのですか。

○角田化学物質評価室長 「リスク評価の手法」の4ページにイというのがあります。細かくなるのですが、イ「発がん性以外の有害性を中心として評価を行う物質の場合」については、要するに、一次評価値が二次評価値の10分の1以上の場合はそれを設定しないで二次評価に移行すると書いてあるのですが、3ページから書いてある「ア 発がん性を考慮して評価を行うことが必要な物質の場合」は、一次評価値が10分の1以上であれば二次評価値に移行するという記載はないのです。ですから、発がんを重視して、発がんで見る場合は、多少一次と二次の間が近くても、そこは一次も見ていくという考え方で整理していたかと思います。

○宮川委員 分かりました。そうすると、現在ある低いほうを取るのがよろしいかということです。

○大前座長 そうすると、10という御意見ですね。分かりました。よろしいですか。まだ暫定ということになっていますので。そうしましたら、二次評価値に関しては、産業衛生学会の10を採用すると。ACGIHSkin1948は確認していただけますか。84の間違いではないかと一瞬思ったので、これだけ確認をしてください。

○角田化学物質評価室長 はい。

○大前座長 そうしますと、1,4-ジオキサンに関しては、一次評価値は先ほどの発がんの所からUF100を掛けて1.875。二次評価値は10。ありがとうございました。それでは、もう1物質ぐらいできると思います。取りあえず、1,2-ジクロロエタンについてよろしくお願いします。

○角田化学物質評価室長 資料1-6です。物理化学的性状ですが、特徴的な臭気のある粘稠性液体。空気、湿気、光にばく露すると暗色になるというものです。沸点は83.5℃。蒸気圧は8.7kPaです。生産量等用途ですが、生産量が2011年で2921,934トンあります。輸入量が14万トンです。用途についてはここにあるとおり、いろいろな原料や洗浄剤、殺虫剤、医薬品等です。

 発がん性ですが、「ヒトに対する発がん性が疑われる」ということで、IARCではグループ2Bに分類しております。日本バイオアッセイ研究センターで実施したラット及びマウスを用いた吸入試験で発がん性が確認されているものです。各機関の評価区分は御覧のとおりです。産衛学会でも2Bという評価になっております。

 次に、生殖毒性は「判断できない」という整理です。ヒトでの疫学データは少なく、本物質の汚染地域における調査で得られたオッズ比に統計学的な有意性が認められていない。また、動物実験で催奇形性があるとした証拠がなく、吸入ばく露及び経口投与のいずれでも、母動物及び胎児への明らかな生殖毒性が認められていない。ただし、全胚吸収と胎児死亡の報告もあるため、生殖毒性については判断できないという整理です。次に神経毒性です。これは「あり」です。根拠ですが、ラットの吸入ばく露試験では、中枢神経系の抑制作用による挙動変化が認められております。ヒトでは急性及び慢性ばく露で、神経心理学的検査の成績低下や、幾つかの神経系症状が報告されております。次に遺伝毒性ですが、これは「あり」です。in vitroの試験系では、遺伝子突然変異試験や、DNA結合性試験等で陽性を示しております。それから、in vivoの試験系の不定期DNA合成試験、染色体異常試験、姉妹染色体分体交換試験のいずれにおいても陽性を示しているということで、遺伝毒性を有すると判断できるというものです。

左下にいきますと、閾値の有無は、今の遺伝毒性の結果を踏まえて「なし」ということです。生涯過剰発がんリスク、10-4 レベルに相当するばく露濃度ということで、吸入によるユニットリスクから労働補正し、81μg/m3(20ppb)という数値を計算しております。

 神経毒性に関する動物試験データは、調査した範囲内で評価値を設定できる情報は得られていないとなっております。

 許容濃度ですが、ACGIHでは10ppmということで、1980年の設定です。根拠ですが、ヒトにおいて誤飲や自殺目的等による経口摂取での中毒例や、産業現場等で高濃度のガスにばく露された場合には、強い急性毒性を示し、死に至る場合があります。ヒトでの報告で、肝毒性や催眠影響を最小限に見積る許容濃度として10ppmを推奨する。TLV-STELを設定するのに十分なデータは得られていないというものです。

 日本産業衛生学会ですが、これも同じく10ppm1984年提案です。根拠ですが、ラット及びマウスの6978週反復経口投与試験で、ラットでは前胃・乳腺のがんと各種臓器の血管肉腫が認められ、マウスでは肺・リンパ腫の悪性腫瘍、肝細胞がん、子宮がん、乳がんの発生が見られた。マウス・ラットへの吸入ばく露実験では、150ppmを日に7時間、週5日間、計78週反復ばく露しても催腫瘍性は認められなかった。ヒトでも肝毒性、腎毒性が報告されていることを考慮して、許容濃度を10ppmと提案したということです。

 評価値です。まず、一次評価値は0.02ppmで、左下の試算が20ppbとなっていますが、これはppmに直すと0.02ですので、0.02ppmで整理しております。理由は、発がん性を示す可能性があって、閾値がないということですので、1,2-ジクロロエタンの吸入によるユニットリスクのデータから発がんの過剰発生リスク10のマイナス4乗に相当するばく露濃度を算定した評価レベルを一次評価値としております。二次評価値については、ACGIHと産衛学会共に10ppmですので、その値を案として提示しております。以上です。

○大前座長 ありがとうございました。随分たくさん使われている物質ですね。用途の所で塩ビモノマーの「塩」が抜けていると思うのですが、多分、塩ビを作るときの原料なのでしょうね。ですから、こんな大量に使われている。いかがでしょうか。先ほどの生殖毒性の全胚吸収と胎児死亡というのが、参考資料2-1149ページの296行目くらいに書いてあると思うのです。これで、こういうことも起きているので、ほかのデータはほとんどマイナスですが、「判断できない」と判断されたということです。

 遺伝毒性があるということで、10-4 レベルに相当するユニットリスクが求められていますので、これから計算すると一次評価値が0.02。二次評価値は、産業衛生学会もACGIH10ppmですから、これは採用ということでよろしいですか。ありがとうございました。欲張りまして、もう1物質やってから休憩にしたいと思います。それでは、ジクロロメタンについてお願いします。

○角田化学物質評価室長 資料1-7です。ジクロロメタンです。特徴的な臭気のある無色の液体で、沸点が40℃です。蒸気圧は47.4kPa(20)です。生産量等ですが、製造輸入量は51,984トン。用途は御覧のとおり、いろいろな分野で使われているものです。

 発がん性ですが、「ヒトに対して恐らく発がん性がある」ということで、これはIARC2Aですので、このような表現にしております。根拠の所に書いてありますが、20147月の専門家による会議で、ヒトで胆管がん及び非ホジキンリンパ腫を起こす限られた証拠があり、動物で発がん性の十分な証拠があることから、2A(ヒトに対して恐らく発がん性がある)に分類をしております。産衛学会、ACGIHNTPはそれぞれ2BA3Rに分類をしております。MAK3AEU2です。

 生殖毒性は「判断できない」ということです。根拠ですが、中枢神経機能障害で来院した同一工場34名のジクロロメタンばく露作業者の調査のデータでは、8名が精巣、精巣上体、前立腺痛を訴え、精液採取に協力した4名の精子数は明らかに減少していた。運動精子数は2,000万個以下、精子奇形率も高かったということです。動物試験では、調査した範囲で生殖毒性を示す証拠はなかったということです。こういったことを踏まえて、「判断できない」という整理をしております。

 神経毒性は「あり」ということです。根拠としては、中枢神経の抑制作用と麻酔作用です。ジクロロメタン急性ばく露時の標的臓器は、中枢神経系の麻酔作用です。嗅覚閾値は100300ppm2,000ppm30分以上のばく露で吐き気、めまいなどの軽い麻酔症状、7,0001ppmで四肢のしびれ、2ppm30分で深麻酔状態になる。常温常圧における飽和蒸気圧が高く、換気不十分な状況では容易に致死濃度に達するということです。ボランティアによる急性ばく露実験では200ppm1.53時間ばく露で注意力の低下、300ppm95分ばく露で神経系への影響、700ppm1時間ばく露で視覚誘発電位増加が観察されているというものです。

 遺伝毒性は「あり」ということで、in vitro試験では、ネズミチフス菌又は大腸菌による復帰突然変異試験において、ガス状ジクロロメタンばく露の条件下でS9添加及び不添加にかかわらず陽性結果。in vivo試験では、マウスへの腹腔内、皮下投与では骨髄細胞に染色体異常の誘発は見られていないが、吸入ばく露では骨髄細胞及び肺細胞で軽度の染色体異常が観察されているということです。

 左下にいきますと、閾値の有無は、遺伝毒性があるため閾値は「なし」ということで判断をしております。これも先ほどと同じように、生涯過剰発がん、10-4 レベルに相当するばく露濃度ということで、US EPA IRISのユニットリスクを活用して計算したところ、51mg/m3 。これは14.3ppmに当たります。神経毒性に関する動物実験データは、評価値を設定できる情報は得られておりませんでした。

 許容濃度は、ACGIHですが、TLV-TWA50ppmです。短時間ばく露はカルボキシヘモグロビンの増加とよく相関するということです。ACGIHは、非喫煙者においてカルボキシヘモグロビンが3.5%以上に増加すると狭心症、あるいは虚血発現までの運動時間の短縮が起きると結論した。TWA46ppm55ppm66ppmでの平均カルボキシヘモグロビンは2.9%、3.3%、3.6%であり、55ppmまでは心臓血管への影響は十分保護される。ジクロロメタン200ppm以上の3時間ばく露で神経行動学的影響が見られる。ヒトのCNS抑制のNOAELは分かっておりませんが、容量反応曲線の傾きから、安全係数は4で十分と考えられるということで、ジクロロメタンについては50ppmとするよう勧告するという内容です。

 産衛学会です。疫学的には、発がんの証拠は不十分であること。明らかな発がんを示すB6C3F1マウスとヒトでは、発がんの原因となる中間代謝物を産生するGST代謝活性に大差があり、B6C3F1マウスでも観察された発がんをヒトに外挿することは妥当と考えられないこと。ヒトでの遺伝毒性発現はゼロとは言えないものの、発現に要する濃度は非常に高いことから、許容濃度を設定するに当たっては発がんをcritical endpointとすることは妥当性を欠く。しかし、一方では、ジクロロメタンの飽和蒸気圧は400mmHgと高いために、産業現場では容易に高濃度ばく露が発生する可能性があり、その場合にはGSTT1遺伝子が欠損していない労働者の遺伝子毒性リスクが高くなるであろう。以上より、COHb生成による中枢神経への影響を防止し、遺伝子毒性発現リスク及び発がんリスクは実質的に無視できる濃度として、許容濃度を50ppm、最大許容濃度を100ppmと提案するということになっております。

 一次評価値ですが、左にありましたユニットリスクから計算した値の14.3ppmを設定しております。二次評価値は、ACGIHと産衛学会の値である50ppmを案として提示しております。以上です。

○大前座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。胆管がんの原因の1つではないかと言われている物質です。一次評価値はIRISのデータがあるので、これを使って14.3ppm。二次評価値は、産業衛生学会、ACGIH、いずれも50ppmと同じですので、これを採用するという判断ですが。

○津田委員 産業衛生学会の説明の1行目から2行目ですが、「発がんの原因となる中間代謝産物を産生するGST代謝活性に大差があり、B6C3F1マウスで観察された発がんをヒトに外挿することは妥当と考えられない」というのは、一般的なことなのですか。この物質だけのことですか。少し誤解を招く記載ですよね。

○千葉委員 私も同じことをお聞きしたかったのですが。

○津田委員 マウスはGST代謝活性が初めから高いことは分かっているので、もしそれを一般的なことにすると、マウスのこういうデータは全然ヒトに外挿できないということになってしまうのですが。

○大前座長 実はこの提案理由を書いたのは私で、筆者がここにいるのですが。このとき、CYP2E1が飽和するのが400ppmぐらいという情報がありました。それを超えると飽和してGSTのほうにいくという情報がありましたので、この物質の高濃度ばく露に関してはという意味でここに書いております。一般論では決してございません。

○津田委員 それは入れたほうがいいと思います。誤解を招くかもしれません。

○大前座長 この前のほうに本体があるので、ずっと読んでいただけると多分分かると思うのですが、ここだけ取り出すと、確かにおっしゃるとおりですね。

○津田委員 細かいことですみません。発がん性に対して重視すべき有害性の欄ですが、恐らく2014年の6月です。

○角田化学物質評価室長 すみません、ありがとうございます。

○津田委員 それから、各評価区分のIARCが「2A(Lancet)」とありますが、Lancet Oncologyです。

○大前座長 そうですね。ありがとうございます。一次評価値、二次評価値はこれでよろしいですか。ありがとうございます。ちょうど2時間たちましたが、ここで少し休憩を入れたいと思います。

(休 憩)


(了)

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