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2014年11月27日 平成26年度第3回有害性評価小検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成26年11月27日(木)13:30~


○場所

第5合同庁舎専用第20会議室


○議事

○岸化学物質評価室長補佐 本日は、大変お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより平成26年度第3回有害性評価小検討会を開催いたします。本日は、委員の方全員の御出席を頂いております。それでは、座長の大前先生に、以下の議事進行をお願いいたします。

○大前座長 本日の議事は5つありますが、御協力のほどよろしくお願いいたします。時間は、1330分から後ろが書いてありませんので、終わったところで終わりとなります。事務局から、資料の確認をよろしくお願いいたします。

○岸化学物質評価室長補佐 資料は、お手元に置いております。一番上が議事次第です。今日は、議事としては(1)から(5)まで5つの議題を予定しております。裏面は配布資料一覧です。資料1から5、参考資料が1から6までありますので、ページ数とともに確認いたします。次のページからが、資料関係です。平成26年度ばく露実態調査対象物質の評価値について、右下に通し番号が付いています。資料1-1アルファーメチルスチレンが1ページから、1-22-エチルヘキサン酸が3ページから、1-3、クロロメタンが5ページから、1-4、弗化ナトリウムが7ページから、1-5、リン化水素が9ページからです。続いて資料2は、リスク評価の手法(平成24年改訂版)で、11ページからです。資料3-1は、19ページからです。4-クロロ-2-ニトロアニリンの経口投与によるがん原性試験結果です。資料3-2は、4-クロロ-2-ニトロアニリンのラットを用いた経口投与によるがん原性試験結果の報告書は33ページからです。資料3-3は、4-クロロ-2-ニトロアニリンのマウスを用いた経口投与によるがん原性試験結果の報告書は69ページからです。資料4-1A3横長の資料です。長期発がん性試験(吸入試験)候補物質()です。資料4-2は、遺伝毒性試験の結果(発がん性試験候補物質)は、109ページからです。資料5の「今後の予定について」は、117ページからです。

 続いて、参考資料1は、リスク評価検討会(有害性評価小検討会)の参集者名簿は、1ページからです。参考資料2は、有害性評価書です。参考資料2-1は、アルファ-メチルスチレンで、3ページからです。参考資料2-22-エチルヘキサン酸は21ページからです。参考資料2-3、クロロメタンは37ページからです。参考資料2-4は、弗化ナトリウムで、65ページからです。資料2-5、リン化水素は、83ページからです。参考資料3は、許容濃度等の関係資料です。これは、委員のみの机上配布です。資料3-1、アルファ-メチルスチレンは97ページからです。資料3-22-エチルヘキサン酸は105ページからです。資料3-3は、クロロメタンで113ページからです。資料3-4、弗化ナトリウムは121ページからです。資料3-5、リン化水素は143ページからです。参考資料4は、国が行う化学物質による労働者の健康障害防止に係るリスク評価実施要領で、149ページからです。参考資料5は、リスク評価の手法(平成24年改訂版)で、157ページからです。参考資料6、国が実施する発がん性試験については163ページからです。不足等がありましたら、お申し出ください。

○大前座長 資料はおそろいでしょうか。特にないようでしたら、議事に入ります。最初の議題は、今年度の第一評価値、第二次評価値を決める審議です。5物質ありますので、順番にお願いしたいと思います。最初に、アルファ-メチルスチレンについて、事務局から説明をお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 資料1-1、アルファ-メチルスチレンに関する評価値に基づき、説明いたします。「物質名」、「化学式構造式」については、資料の記載のとおりです。「物理化学的性状」については、外観は特徴的な臭気のある無色の液体。沸点は164℃。蒸気圧は20℃で300Pa。融点はマイナス23℃。比重は0.91。蒸気密度は4.08となります。「生産量等用途」については、生産量が2011年推定で5万トン。製造・輸入量は、平成23年度で39,337トン。用途は、ABS樹脂の耐熱、強化、アルファ-メチルスチレンダイマー、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂の変性、香料、農薬です。

 「重視すべき有害性」で、発がん性については、ヒトに対する発がんの可能性があるとしております。根拠としては、IARC2012年に2Bの分類を与えており、ACGIH2010年にA3に分類しています。IARCは、ヒトの発がん性データは得られていないが、実験動物ではアルファ-メチルスチレンの発がん性には十分な証拠があるとして、Group2B「ヒトに対して発がん性を示す可能性がある」に分類し、ACGIHは、NTPの試験報告書に準拠して、アルファ-メチルスチレンはA3(動物発がん物質であるが、ヒトへの関連は不明)として分類しております。「各評価区分」は、IARC2B、産衛学会、EUNTPでは設定なし。ACGIHではA3としております。

 次に、発がん性以外の有害性については、生殖毒性は判断できない、神経毒性はあり、遺伝毒性については判断できないとしております。そのうち、神経毒性についての根拠は、アルファ-メチルスチレン投与による実験動物への健康影響として、雌雄B6C3F1マウス各群10匹にアルファ-メチルスチレン0751503006001,000ppm16時間、週5日間、14週間吸入ばく露した試験において、1,000ppm群では沈静化(雄のみ)と運働失調が観察されたとしております。また、遺伝毒性の根拠としては、in vitro試験ではバクテリアを用いた復帰突然変異試験、培養細胞を用いた染色体異常試験、ヒトリンパ球を用いた姉妹染色分体交換試験などが行われており、多くの試験で陰性を示すが、CHO細胞を用いた姉妹染色分体交換試験では代謝活性化条件下で陽性を示した。in vivo試験では、マウスを用いた小核試験で雄では陰性、雌では陽性を示したとなっております。

 次に、閾値の有無については、判断できないとしております。根拠は、本物質はin vitroの試験系、及びin vivoの試験系では陰性、陽性の両方の結果を示していることから、遺伝毒性は判断することはできず、遺伝毒性についてはないとは言えないためとしております。次に、神経毒性に関する動物試験データです。動物実験結果で、NOAEL600ppmとした場合、評価レベルは45ppmとしております。下記と同一の試験であります。次に、反復投与毒性に関する動物試験データです。ここでは、LOAEL75ppmとしております。根拠としては、NTPの試験でB6C3F1マウス雌雄各群10匹にアルファ-メチルスチレン0751503006001,000ppm16時間、週5日間、14週間全身性吸入ばく露した結果、75ppm以上の全ばく露群雌雄で、ボーマン腺の萎縮と過形成及び嗅上皮の萎縮と化生を含む鼻腔障害の発生率が有意に増加したことから、LOAEL75ppmであると判断いたしました。これに、労働時間補正として、8分の6、労働日数補正として5分の5、不確実係数としては種差(10)と、LOAELNOAELへ変換(10)を併せた100で計算したところ、評価レベルは0.56ppmとしたところです。

 次に、「許容濃度等」です。ACGIHでは、TLV-TWA10ppm2010年に設定したところです。根拠としては、ACGIHは上部気道への刺激性、腎毒性、生殖毒性を最小限に抑制する濃度として、TLV-TWAとして10ppmを勧告した。勧告値の基礎データとして、ラットを用いるNTP発がん性試験で3001,000ppmの群の雌ラットに腎乳頭の石灰化が見られることから、NOAEL100ppmが導出されたこと、ヒトの眼と上部気道への刺激性は200ppm以上で発現したこと。NTPげっ歯類14週吸入ばく露試験で、腎毒性マーカー増加を指標としたNOAEL300ppmであること、及びマウスの発情周期の延長が600ppm1,000ppmで見られたことが考慮されたとしております。

 日本産衛学会においては、許容濃度の設定はありません。そのほか、他の機関ではDFG MAKでは50ppmNIOSHではTWA50ppmSTEL100ppmOSHAではCeiling100ppmUKではTWA50ppmSTEL100ppmとなっております。以上のことから、「評価値()」ですが、一次評価値としては「なし」としております。理由としては、発がん性を示す可能性があり、遺伝毒性が判断できず、閾値も不明なためです。参考として、反復投与毒性(鼻腔障害)を考慮する場合には、0.56ppmとなります。これは、反復投与毒性に関する動物試験より導き出されたLOAELから不確実係数をを考慮して算定した評価レベルとなります。

 次に、二次評価値は、10ppmとしております。理由としては、ACGGIHが上部気道への刺激性、腎毒性、生殖毒性を最小限に抑制する濃度として、TLV-TWAとして10ppmを勧告していることです。説明は以上です。

○大前座長 アルファ-メチルスチレンの一次評価値と二次評価値をここで決める作業になります。今、お話していただいたように、二次評価値はACGIH10ppmで、一次評価値は発がん性を示す可能性があるということですが、これは数字が決められないということで、「なし」というのが今回の提案ですが、いかがでしょうか。御意見、御質問をよろしくお願いいたします。

○江馬委員 参考値のことですが、神経毒性が見られた場合に、追加の不確実係数は用いないのですか。症状の重篤性ですが。

○大前座長 神経毒性は、今回NOAEL600ppmで、評価レベルが45ppmと書いてありますから、ここの間で少し計算がされておりますが。

○角田化学物質評価室長 参考資料の通し番号の16ページを御覧ください。そこに、神経毒性があります。アルファ-メチルスチレン投与による実験動物への健康影響として、と書かれておりますが、1,000ppm群では沈静化と運動失調が観察されたということですので、600ppmでは影響がなかったという考えの下に、600ppmに労働時間補正の8分の65分の5の、日数補正に更に10分の1を掛けて45を算出しております。数式までは書いてありませんが、この10分の1は動物との種差の関係ですので、神経毒性強度ということは特に考慮はしておりません。

 ただ、この結果自体が45ppmということで、かなり大きな水準でしたので、参考値ということで評価値の所に書いてある数字は、その下にある反復投与毒性に基づく0.56ということで整理をしております。

○西川委員 遺伝毒性試験についてですが、in vitroとマウスの小核で、雌に陽性所見が出ていますが、陽性ではなく判断できないとした理由は何でしょうか。

○角田化学物質評価室長 ここの所は、御指摘のように、一部陽性の部分もありますが、in vitroの関係では多くの試験で陰性を示すこともあるのと、in vivoでもマウスの小核で、雄では陰性と雌で陽性に判断が分かれている部分もあったものですから、遺伝毒性としては判断できないというように整理しております。

○西川委員 おおむね理解できていますが、雌マウスにおける陽性所見というのは結構、重いような気がしますが、いかがでしょうか。

○大前座長 それは、雌ですと重要視すべきであるという御意見になるのですか。重いというのは。

○西川委員 動物を用いた小核試験では陽性で、雌雄を問わずin vivoの試験で陽性であったということは、結構、重要ではないかと思いますが。

○大前座長 参考資料の8ページに、今の遺伝毒性の表が載っておりますが、雌では1,000ppmでプラスという結構、高い濃度でということになっておりますが。

○角田化学物質評価室長 通しページの8ページの下に表がありますが、その部分の一番下に、雌が陽性という形になっております。1,000ppmです。

○大前座長 ここのin vivoの雌だけが1,000ppmで陽性というのは、どのように判断するかということになるかと思いますが。

○西川委員 こういう試験に対して、それほど専門性があるわけではないのですが、高用量で見られた雌のみの変化であるから陽性としないという判断はよろしいのでしょうか。

○清水委員 このときの判断だったと思いますが、in vitroの場合は、ほとんどSCEだけでわずかに1つ陽性であったことと、in vivoのほうで小核が雌だからということで、高濃度で出てはいますが、雄で出ていないと。これは、雌で出たから必ずしも重視するというような判断ではなかったと思うのですが、総合的に小核の出具合いですが、実際のデータはよく分からなかったのです。ただ、プラスマイナスだけで表現していますが、多分そのようなことで総合的に判断できないとしたのだと思います。

○西川委員 結構です。

○大前座長 そのほか、御意見はいかがでしょうか。それでは、アルファ-メチルスチレンに関しては、一次評価値は現段階では「なし」。二次評価値は10ppmということでよろしいですか。

 どうもありがとうございました。

 次に、2-エチルヘキサン酸について、よろしくお願いいたします。

○岸化学物質評価室長補佐 続きまして、資料1-22-エチルヘキサン酸にまいります。「物質名」、「化学式構造式」は、資料に記載のとおりです。「物理化学的性状」ですが、外観は特徴的な臭気のある無色の液体です。沸点は227℃、蒸気密度は5、融点は-59℃、比重は0.9、蒸気圧は20℃で4Paです。「生産量等用途」については、生産量が2011年、推定で4,000トン、輸入量は情報なし。用途は、マンガン、コバルト、銅塩にしてペンキのドライヤーに使用される。マグネシウム、リチウム、アルミニウム塩はグリース製造用に、またバリウム、カルシウム塩として塩化ビニル安定剤に使用されるとなっております。

 「重視すべき有害性」の発がん性については、ヒトに対する発がん性について判断できないとしております。各評価区分については、IARC、産衛学会、EUNTPACGIH、それぞれ設定なしとなっております。発がん性以外の有害性については、生殖毒性はあり、神経毒性は判断できない、遺伝毒性は判断できないとしております。そのうち、生殖毒性についての根拠は、Wistarラット(各群2021)0100300600mg/kg体重/day2-エチルヘキサン酸を妊娠6日目から19日目まで飲用水に混ぜて投与した。高用量群では、母体毒性として母動物の体重増加の抑制が見られたが、低用量及び中用量群に母体毒性は見られなかった。また、この群では胎児毒性として、胎児の平均体重が有意に減少した。低用量以上の群では、骨格奇形(内反足)、変異(波状肋骨、頭蓋骨骨化低下)が見られ、投与用量に対応して胎児への影響が増加していた。以上の結果から、ラットに母体毒性がない用量で催奇形性が示されたとなっております。

 生殖毒性に関する経口動物試験データです。LOEALは、100mg/kg/dayとしております。根拠としては、先ほど説明した右上の内容と全く同じですので、省略いたします。そのデータから、不確実係数を種差(10)LOAELからNOAELへの変換(10)100で計算したところ、評価レベルは6mg/m3 となります。

 次に「許容濃度等」ですが、ACGIHにおいてはTLV-TWA5mg/m3 、吸引性エアゾール及び蒸気として2002年に設定しました。根拠としては、ラットの生殖・発生毒性に関する経口投与実験では、2-エチルヘキサン酸の高用量群で、母動物の死亡例の増加、運動と呼吸の抑制、体重増加の抑制、肝重量の増加が見られた。また、胎児における骨の骨化の遅延や波状肋骨などの弱い発生毒性が見られており、その影響は、母動物に一般毒性(体重減少、臓器重量の変化、臨床症状など)が出現しない用量で報告されている。Fischer344ラットに経口投与した実験では、骨の奇形を指標としたNOAEL100mg/kg/bw/dayと決定できた。このことから、ラットにおける胎児の骨格への影響を指標にしたNOAEL100mg/kg/bw/day前後であることが示唆される。メカニズム解明の研究では、2-エチルヘキサン酸が母動物の肝臓で亜鉛結合蛋白の合成を誘導し、それが胎児の亜鉛欠乏を引き起こすことが示唆された。この亜鉛結合蛋白の誘導は、母動物に一般的な毒性が見られる用量以下で起こり、その閾値は100mg/kg/bw/day以上であることも示された。以上により、動物実験におけるNOAEL100mg/kg/bw/dayと決定する。そして、呼吸による取り込み100%、労働時間の呼吸量10m3 、不確実係数100、体重50kg(女性)を仮定し、TLV-TWA5mg/m3と勧告する。なお、この値は吸引性粒子及び蒸気を合わせた総量に適用するとしております。日本産衛学会においては、許容濃度は設定なしとしております。DFG MAKにおいても設定なしとなっております。

 以上のことから、「評価値()」ですが、一次評価値としては「なし」としております。理由としては、生殖毒性に関する動物試験結果から導き出されたLOAELから、不確実係数を考慮して算定した評価レベルが二次評価値の10分の1以上であるためです。

 二次評価値案ですが、5mg/m3 です。理由としては、ACGIHが胎児における骨の骨化の遅延や波状肋骨などの発生毒性に係る動物実験結果等を踏まえ、発生毒性を抑制する濃度として、TLV-TWAとして5mg/m3 を勧告しているためということです。説明は以上です。

○大前座長 この物質は、発がんに関しては情報がないということで、評価できないと。生殖毒性があるということで、神経毒性に関しては情報がないということです。提案としては、一次評価値はなし、二次評価値はACGIH5mg/m3 を提案しておりますので、5mg/m3 ということでいかがかということですが、御意見、御質問はいかがでしょうか。

○江馬委員 先ほど聞いたのと同じような質問なのですが、症状の重篤性として母体毒性の見られない用量で催奇形性があった場合は、追加の不確実係数は用いないのでしょうか。もう1つは、下の段落の一番左の「生殖毒性に関する経口動物試験データ」と、その隣の「許容濃度」の所で、生殖・発生毒性についての記述が違うと思うのです。左のほうでは骨格奇形、変異が見られ、ラットに母体毒性がない用量で催奇形性が示されたと記載されていますが、許容濃度の所では、胎児における骨化の遅延や波状肋骨などの弱い発生毒性が見られていると書かれていて、表現が違うのですが、この用量で一番低い用量では、内反足は見られなかったのですか。「許容濃度等」の所の表現では催奇形性があるという表現にはなっていなくて、左では催奇性があると記載されているのです。

○大前座長 ここの矛盾については、参考資料26ページの183行目、189行目に記載があります。どうも別の実験で、片方が6日から19日、片方が10週間とか2週間とか、投与の期間が違っているので、別の実験だと思うのですが、その実験の結果を少し書きましたということではないかと思います。片や低用量では見られていますから100でも見られたはずなのですが、片や見られなかったという、そこのところの矛盾が正にこの矛盾につながっているのではないかと思います。今回LOAEL100を使ったということは、厳しめのほうには行っていると思いますが、NOAEL100を使うと、LOAELからNOAELへの変換の101になりますので、数字的には厳しいほうには行っていると思いますが、この実験の差ではないかと思うのです。

○江馬委員 実験は通し番号の26ページの183行目からの実験だと思うのですが、この結果が左のカラムに書いてあって、許容濃度の所に書いてあるのは何でしょうか。

○大前座長 189行目からの実験ですね。

○江馬委員 189行目です。

○大前座長 これですと、300mg/kg600mg/kgでは、しっぽの異常等々があったと書いてあります。でも、100ではなかったということだと思うのですが、ACGIHはこれを取っているのではないかと思いますが。これを見ると、正に矛盾している記述で、整合性のない記述なのですが、そういうことでACGIH100NOAELとし、その上の文章を持ってきて、今回はLOAEL100mg/kg/dayとしたということだと思います。

○江馬委員 母体毒性の見られない量での催奇形性があった場合は、追加の不確実係数は用いないのでしょうか。用いないので、左の結果になっているのですか。

○大前座長 そうですね。

○岸化学物質評価室長補佐 不確実係数は、最大でも1000としていますので。

○大前座長 いろいろな影響、全て動物は10を使っていますので。

○角田化学物質評価室長 ちょっと次の議題に飛ぶのですが、資料2を御覧いただくと、通しページの12ページ、資料21枚めくった2ページの真ん中に、ウ、不確実係数があります。これはこの有害性の検討会で、ルールとして今まで定めてきていたものなのですが、この不確実係数のところを読むと、「無毒性量等が動物実験から得られたものである場合、実験期間・観察期間が不十分な情報から得られた場合又は無毒性量若しくは無影響量を得ることができず適当な最小毒性量若しくは最小影響量が得られた場合の不確実係数は10、がんの重大性に基づく不確実係数を10として補正し、評価レベルを算出するものとする。また、その無毒性量が動物実験から得られたものである場合には、当該実験におけるばく露期間、ばく露実験等の条件に応じて」補正を行うということです。

 ルールは基本的にはこういう形にはなっているのですが、また不確実係数について合理的な知見等がある場合には、別途検討することにはなっております。そういう意味で、今の御指摘等も含めて検討することは可能とは考えておりますが、今のルールはこのような形です。

○江馬委員 はい、分かりました。

○津田委員 「許容濃度等」の所を見ると、全て含めて、この試験は一番長いのでどのぐらいやっているのでしょうか。これだと発がん性なしというのは2年ものがないと理解されるのですけれども。

○角田化学物質評価室長 今おっしゃいました試験というのは、どの部分ですか。

○津田委員 「許容濃度等」の所に、「経口投与実験」と書いてありますね。期間はどのくらいなのでしょうか。資料1-2のこの表です。

○角田化学物質評価室長 ACGIHの根拠になっている例ですよね。

○津田委員 「許容濃度等」の四角の中の文章です。「ラットの生殖・発生毒性に対する経口投与実験では」とありますが、期間はどうなのでしょうか。この資料を見てちょっと分からないのです。

○高田委員 参考資料2-2の通し番号26ページの205行目の「Fischer344ラット25匹に」のパラグラフの後ろに、5)と書いてあるので、ACGIHを引用しているようなのですが、恐らくそれではないかと思います。

○津田委員 ということは、これでは長期毒性実験のデータは全くないということですね。そういう場合、不確実係数はほかと同じでよろしいのでしょうか。

○大前座長 先ほど不確実係数の期間に関しては、ある程度の期間であればということでやっていますので、数字は特に付けておりません。この場合は生殖毒性ですから、その期間ということでよろしいのではないかと思うのですが、確かに長期試験はないと思います。

○江馬委員 発生毒生ですから、一回投与で影響が出ることが多いので、期間の補正は要らないと思います。

○宮川委員 今の御意見はそうではなくて、慢性毒性の試験はないのかと。

○津田委員 そういうことです。

○宮川委員 参考資料2-233ページに表がありますが、反復投与のこれが90日試験です。ただ、評価レベルが高い値しか出てこないので、多分使われていないのだと思います。

○角田化学物質評価室長 今のお話のとおりで、有害性の評価指標の検討をしているときは、この評価表の中に反復投与毒性の試験結果が2つ、33ページにありました。ただ、それぞれの評価レベルが51mg/m3 151mg/m3 ということで、かなり高い数字になり、先ほどの生殖毒性の6mgよりかなり高い水準ですので、これについては特に言及はしておりません。これはもともと平成21年にリスク評価の対象物質として選定したときには、生殖毒性に着目して選定したものです。

○大前座長 そのほか、よろしいですか。二次評価値はACGIHが取っている5mg/m3 、一次評価値に関しては十分な情報がない、若しくは生殖毒性で計算しても二次評価値よりも大きな値になるということで、一次評価値は設定しないということでよろしいですか。ありがとうございました。

 次にクロロメタンをよろしくお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 続きまして、クロロメタンです。資料1-3を御覧ください。「物質名」、「化学式構造式」は資料記載のとおりです。「物理化学的性状」ですが、外観は無色の液化ガス。沸点は-24.2℃、融点は-97.6℃、蒸気圧は21℃で506kPa、蒸気密度は1.8、比重は0.92です。「生産量等用途」については、製造・輸入数量は2011年度で38,165トン。用途は、医薬品、農薬、発泡剤、不燃性フィルム、有機合成(ブチルゴム、シリコーン樹脂、メチルセルロース製造用)、その他の有機合成用各種メチル化剤、抽出剤又は低温用溶剤となっております。「重視すべき発がん性」については、発がん性についてのヒトに対する発がん性については判断できないとしております。各評価区分については、IARCGroup3、産衛学会では設定なし、EUではCarc.2NTPでは設定なし、ACGIHではA4DFGでは3Bとなっております。発がん性以外の有害性については、生殖毒性があり、神経毒性もあり、遺伝毒性もありとなっております。その内、生殖毒性についての根拠ですが、実験動物を用いた吸入生殖毒性試験で、雄のF344ラットに精巣重量減少、精子数の減少、精巣での多核巨細胞、上皮の空胞化、精巣上体尾部の肉芽腫が雌のF344ラットで受精能の減少が認められるためとしております。また、神経毒性についての根拠ですが、ばく露による労働者への健康影響として、中枢・末梢神経への障害が多数報告されているほか、実験動物を用いた吸入反復投与試験で、中枢神経系への影響が認められるためとしております。

 左下ですが、生殖毒性に関する吸入動物試験データです。まず、NOAEL150ppmということで、ラットの二世代繁殖影響があるということです。根拠としては、雌雄F344ラット(各雄40匹、雌80)にクロロメタン01504751,500ppm16時間、週5日を10週間吸入ばく露させた。10週間のばく露後、ばく露は16時間、週7日に変更し、雌雄は12で交配させたところ、475ppm群の産児数は対照群に比べ減少した。ばく露群の雌は交配から分娩後28日にまでばく露、16時間、週7日を続けた。ただし、妊娠18日から分娩後4日まではばく露を休止し、更に児動物は離乳前まで直接ばく露させなかった。離乳後のF1児は、4751500ppm10週間ばく露後、交配させた結果、475ppm群で受精能の減少傾向が認められた。以上からNOAEL150ppmであることを判断し、不確実係数は種差の10を取り、計算をしたところ、評価レベル11.25ppmとなったところです。

 次に、神経毒性に関する動物試験データです。こちらではLOAEL50ppmとしております。根拠としては、B6C3F1マウス雌雄各群120匹とし、0502251,000ppm2年間、16時間、週5日間を吸入させた。体重増加抑制が雌501,000ppm群で見られた。心臓の相対重量増加が雌1,000ppm群で、また同じ用量群で腎臓、肝臓の絶対あるいは相対重量の変化が認められた。一般状態の異常として、うずくまり、震え、麻痺などの神経障害が雌雄1,000ppm群で見られた。また、中枢神経系の変化として、腰髄と馬尾の神経線維の軸索膨化と変性が18か月以降に雌雄50ppm群以上の群で、小脳顆粒層の変性、萎縮が18か月以降に雌雄1,000ppm群で、頸髄、胸髄、腰髄の神経細胞の腫大・変性が22か月以降の雌1,000ppm群で出現していた。本有害性評価書では、腰髄と馬尾の神経線維の軸索膨化と変性を毒性学的に意味するエンドポイントとしてLOAEL50ppmであると判断したところです。 

 労働補正としては、時間補正が8分の6、日数補正を5分の5として、不確実係数は種差の10LOAELからNOAELへの変換が10100として計算したところ、0.38ppmとなったところです。

 次に「許容濃度等」ですが、ACGIHにおいては、TLV-TWA50ppmTLV-STEL100ppm1996年に設定しております。根拠としては、クロロメタンの高濃度の吸入により、肝腎障害を来し、中枢神経抑制と死を引き起こす。500ppm以上の濃度での反復吸入実験では、クロロメタンは生殖毒性と催奇形性を示した。1,000ppm2年間反復ばく露された雄マウスでは、腎腫瘍が有意に増加した。Repkoらによるヒトでの100-200ppmでの反復ばく露では、不可逆性の健康障害を来さなかった。Scharnweberらの報告は、TLV-STEL100ppmを支持しているため、TLV-TWA50ppmTLV-STEL100ppmが勧告されたとなっております。

 日本産衛学会の許容濃度ですが、50ppm1984年に設定されております。根拠としては、(1)MacDonaldは、クロロメタンばく露による8症例の中毒発生について報告しているが、その中には最大許容濃度100ppmを通常上回らない状態で罹患した症例もあることが示されている。(2)Dow Chemical社は多数の工場での調査成績から、塩化メチルの時間加重平均値30ppmばく露では何ら影響は認められず、100ppm以下では十分耐えられるが、安全性を考えて許容濃度を50ppmとするよう提唱している。(3)塩化メチルの許容濃度については、我が国では1965年に100ppmを設定されたが、1984年に上記(1)(2)の理由で50ppmが勧告されたとしております。

 その他の機関としては、DFG MAKでは50ppmNIOSHでは発がん性物質Caとしての評価、OSHAではTWA100ppmCeiling15分間では200ppm3時間のうちのいずれか5分間においてのCeilingとしては300ppmUKにおいてはTWA50ppmSTEL100ppmとなっております。

 以上のことから、「評価値()」ですが、一次評価値としては0.38ppmとしております。理由としては、神経毒性に関する動物試験結果により導き出されたLOAELから不確実係数を考慮して算定した評価レベルとしております。

 二次評価値としては、50ppmとしております。理由としては、ACGIHはクロロメタンによる生殖毒性の予防等のため50ppmを勧告している。また、日本産衛学会は同物質による中毒症状の予防のため、50ppmを勧告しているということです。説明は以上です。

○大前座長 発がん実験に関しては、バイオアッセイがやった発がん実験で、雄では甲状腺の濾胞状腺腫と腺がんの発生率の増加傾向があるということです。それから、生殖毒性、神経毒性、遺伝毒性もある。二次評価値は50ppm、これは産衛学会、ACGIHにおいて、根拠はちょっと違いますが、数字としては同じものである。一次評価値は、先ほどの神経毒性のデータ、LOAEL50ppmを基にして計算すると0.38ppmになりまして、これは50ppmよりも十分小さいということで、一次評価値としては採用するという案ですが、いかがでしょうか。

○西川委員 神経毒性についてですが、マウスの試験で一番低い用量で腰髄と馬尾の神経線維の軸索膨化と変性が見られたということで、病理組織学的変化を伴っていますので、重篤性としては大きいと思うのですが、先ほどの資料2の説明では、がん以外の重篤性というか、重大性については現行の評価では余り考慮していないということなので、今後このようなケースについては、是非検討をお願いしたいと思います。

○大前座長 そのほか、外観ですが、無色の液化ガスというのは多分、製品になると液化ガスなのでしょうけれども、もともと気体ですから、無色のガスだけでいいのではないですか。液化というのはないほうがいいと思いますけれども。そのほか特に御意見がなければ、一次評価値が神経毒性を基にして0.38ppm、二次評価値は50ppmということで、よろしいですか。ありがとうございました。

○角田化学物質評価室長 単なる訂正なのですが、一番右上に「生殖毒性:あり」と書いてある下に括弧書きが書いてあるのですが、これは削除してください。

○大前座長 (左下のデータ関連記述の追加)という所ですね。

○角田化学物質評価室長 要するに、左にあるデータに対応しているということをメモとして入れておいただけです。

○大前座長 これは削除ということですね。

 次の物質は弗化ナトリウムです。よろしくお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 続いて、弗化ナトリウムです。資料は1-4です。「物質名」、「化学式構造式」は記載のとおりです。「物理化学的性状」について、外観は白色の結晶又は粉末。沸点は1,700℃、融点は993℃、密度は2.8g/m3 となっております。「生産量等用途」については、生産量は2011年度で288トン、製造・輸入量は1,0001万トン未満、用途は鉄鋼、アルミニウムなどのフラックス剤、木材防腐剤、殺菌剤、殺鼠剤、リムド鋼の脱ガス剤、水道水の弗素化剤、ほうろうの乳濁剤、家畜類の駆虫薬、ガゼイン接着剤、虫歯予防薬用などとなっております。「重視すべき有害性」で、発がん性は、ヒトに対する発がん性については判断できないとしております。各評価区分については、IARC、産衛学会、EUNTP、いずれも設定なし。ACGIHは弗素化合物としてA4となっております。発がん性以外の有害性についてですが、生殖毒性については「判断できない」、神経毒性は「あり」、遺伝毒性も「あり」となっております。そのうち、神経毒性の根拠ですが、弗化ナトリウム投与による実験動物への毒性影響の中で、中枢・末梢神経系への障害を報じた事例は2件を数える。1、弗化ナトリウムを経口投与した雌ラットに、自発運動量と血液中コリンエステラーゼ活性及び血清、肝臓、骨格筋の全蛋白量には明らかな用量-反応関係が認められた。2、妊娠後期に弗化ナトリウムを皮下投与、離乳期、成熟期に弗化ナトリウムを含む飲料水を強制経口投与したSDラットにおいて、種々の行動指標値の数学的処理から得られたRS値は、血漿中の弗素濃度にほぼ直線的に対応し、このRS値は用量相関性が高いことが判明したとしております。

 次に左下の動物実験データですが、まず神経毒性に関する動物試験データです。調査した範囲では、評価値を設定できる情報は得られていないとしております。また、反復投与毒性に関する経口動物試験データですが、マウスでLOAEL50ppmとしております。根拠としては、雌雄B6C3F1マウス(雌雄各群810)1050100200300600ppm濃度の弗化ナトリウム-脱イオン水溶液を6か月間、自由に飲水摂取させた。大腿骨と脛骨皮質の類骨の増加が雄50ppm群から認められたこと、及び10ppm群雌雄の病理組織所見が報告書に記載されていないことから、LOAEL50ppmであると判断した。50ppm弗素濃度の溶液飲水は10mg/kg/bw/dayの弗素摂取に相当するということです。労働補正としては日数の5分の7、不確実係数としては種差の10LOAELからNOAELへの変換の10100で計算したところ、評価レベルは0.84mg/m3 となったところです。

 次に「許容濃度等」ですが、ACGIHにおいてはTLV-TWAが弗素化合物としてのもので2.5mg/m3 、これは弗素としての数値が出ており、1996年に設定されております。根拠としては、弗素化合物は、目及び気道への刺激性を有する。長期間の弗素ばく露は歯に弗素症を生ずる。骨密度増加の閾値は、弗素として3.38mg/m3 である。刺激性及び障害をもたらす骨変化を最小限にするため、2.5mg/m3 を勧告するということです。日本産衛学会では、許容濃度は情報なしということです。また、そのほかの機関では、DFG MAKでは1mg/m3 NIOSHOSHAUKでは、それぞれ弗素として2.5mg/m3 が設定されているところです。

 以上から、「評価値()」ですが、一次評価値としては「なし」としております。理由としては、反復投与毒性(大腿骨と脛骨皮質の類骨の増加)に関する動物試験より導き出されたLOAELから不確実係数を考慮して算定した評価レベルが二次評価値の10分の1以上であるためです。

 また、二次評価値としては、弗素として2.5mg/m3 としております。理由としては、ACGIHは弗化ナトリウムによる刺激性及び障害をもたらす骨変化を最小限にするため、弗素として2.5mgm3 を勧告しているためです。説明は以上です。

○大前座長 これはちょっと難しいあれで、ACGIHは弗化物として2.5mg/m3 ということです。これは弗化ナトリウムの一次評価値、二次評価値を作らなくてはいけないのですが、そうするとACGIH2.5にナトリウムの分を加えないといけないですかね。

○岸化学物質評価室長補佐 ナトリウム分を加味して換算しますと、5.53ppmになります。

○大前座長 今までこういう例はなかったのですが、これはどうしましょうか。確かにACGIHは弗化物として2.5ですが、弗化ナトリウム換算だと5.53になるのですが、そうしますと二次評価値は弗化ナトリウムとして出すのだったら5.53のほうが妥当ですかね。弗素をflourideで示してしまうと、今度は逆に経口試験データの0.84mg/m3 は、この中にナトリウムが入っているのでナトリウムを引かなくてはいけないということにしないと、ここのところが不整合になってしまうので、どちらかだと思うのですけれども。今回は弗化ナトリウムということなので、二次評価値は2.5にナトリウム分を加えて5.53ということで、よろしいですか。数字を使うとしたらですけれども。これは2.5ではなくて、5.53に換算するということで、よろしくお願いします。そのほかはいかがでしょうか。

○津田委員 重視すべき有害性の発がん性の所で、IARC3と書いてありますが、各評価区分の所では、IARC:設定なしと書いてあります。3の間違いではないですか。

○大前座長 そうですね。

○津田委員 flourideとしては、3ですね。

○大前座長 これもIARC設定なし(flourideとして)と書いたほうがよろしいですか。

○津田委員 そうですね。

○大前座長 弗化物としてというより、そういう書き方で。

○津田委員 ACGIHも同じことです。

○大前座長 同じですね。そこのところは統一をよろしくお願いします。

○角田化学物質評価室長 右上に「神経毒性:あり」と書かれており、根拠ということで実験動物へのデータが2つあると書かれております。左の下の箱の中では、神経毒性に関する動物実験データが調査した範囲内で評価値を設定できる情報を得られていないと書いてあるのですが、先ほどの2つのデータが参考資料の68ページです。68ページの真ん中辺に神経毒性がありまして、そこから2つ黒ポツが書かれておりますが、この2つが今の2つの例です。この2つの有害性評価書の記述からですと、評価値を設定できる情報は得られていないとなるのですが、実際に原著論文でもそういうデータがないのかどうかは、ただいま確認をしておりますので、その上で、もし設定できる情報が得られれば、ここの所に訂正をして追加して、またお諮りしたいと思っています。一応そういう方向でよろしければ、そういう対応をさせていただくことになります。

○大前座長 今の68ページの126行目からと141行目に2つデータがあって、ここには一応、数字が書いてあるので、この数字が書いてあるのを使って、評価値が設定できるかどうか計算してみるということ。それと先ほどの5.53という二次評価値と比べてどうなるかということで、一次評価値ができるかもしれない。若しくはこの論文自体が余り当てにならない、若しくは神経毒性の評価自体がコンピューター認識しても、うんぬんかんぬんということで評価できるかどうかという、エフェクトのほうの評価もこれで大丈夫かどうかというのも、若干ありますよね。これは確か、そういう議論で取らなかったような記憶があるのです。

○宮川委員 追加で言いますと、まず投与方法が母体のほうが皮下投与ですか。生まれた子供に、離乳動物には、飲水投与で、非常に複雑な投与をしていて、そこから計算はしにくいなというのが確かにあると思います。実際に測定したものが行動異常というのは、多分、画像解析してパターンを調べただけだと思うのですが、それがどの程度、神経毒性を表しているかは慎重な判断が必要だと思いますので、是非、原著論文を取ってからにしていただいたほうがよろしいかと思います。

○大前座長 そういう議論で、確か委員会のほうでは取らなかったといいますか、書かなかったと思うので、原著を見ていただいて、それで評価値が出てくるようでしたら、ここに記載をしていくことになるということですが、よろしいですか。とりあえず二次評価値は5.53mg/m3 、これは確定として、一次評価値に関しては今の原著をもう一度精査してみて、出てくるようでしたらお諮りすると。出てこないようでしたら、このままいってしまうということになろうかと思いますが、そのような処理でよろしいですか。

○宮川委員 もう1つ、参考資料168ページの今の所の1つ上の126行からのほうも、併せてチェックをしていただいたほうがよろしいと思います。両方とも原著論文で確認できると思います。上のほうが経口投与なので普通の実験だと思います。

○西川委員 今の発言に関連してですが、この実験で自発運動量の低下と血液中コリンエステラーゼの活性の低下ということだと思うのですが、血液中のコリンエステラーゼは必ずしもアセチルコリンエステラーゼを反映するものではなくて、それ以外のブチリルコリンエステラーゼがかなり入っておりますので、本当にこれが神経毒性を示すものか、その辺りもちょっと疑問に思います。

○大前座長 いずれにしてもこの2件の原著を見ていただいて、もう一度、第一次評価値が出るようであれば御相談すると。出ないようであれば、一応このままでいくということで、よろしいですか。

○津田委員 質問ですが、これは労働現場の話ですが、この使用用途を見ると、口から入る方向で使われていますね。これはまた別の所で、別の基準で規制されるのでしょうか。といいますのは、これは多分、発生頻度は低いと思うのですが、骨肉腫の発生があるとありますね。自然発生で骨肉腫というのはめったにないと思うのですが、そういう意味でちょっと気になったものでお聞きするのです。多分、弗素が骨に沈着するから、その機序が何かあると思うのですが、口から入るとした場合は、例えば食品安全委員会とか、そういうところで別の規制が掛かるわけですね。

○岸化学物質評価室長補佐 医薬品なり、目的に応じた規制になります。

○大前座長 参考資料の121ページにACGIHflourideの提案理由がありますが、それのChronicにかかるヒトのGenotoxicityの所には、「Equivocal evidence of carcinogenic activity(osteosarcoma)」と書いてありますね。だから、「Equivocal」ですから、きっと見られたことは見られたのでしょうね。

○津田委員 自然発生ではめったにないと思います。バイオアッセイの方がお見えなのですが、どうですか。

○大前座長 いかがでしょうか。骨肉腫の自然発生として。

○バイオアッセイ研究センター 大変珍しいです。骨肉腫が見られるというのは、私の記憶ですと、3,000匹に1匹いたかという感じです。今まで30年の中で1匹ぐらいはいたかもしれないですが、そのぐらいの発生率です。

○大前座長 自然発生はそのぐらい「ない」ものだと。

○津田委員 この試験では「あり」と考えたほうがいいということですね。

○大前座長 弗化ナトリウムに関しては、今の神経毒性に関しても精査をして、場合によっては、もう一度お諮りすることがあるということになります。よろしくお願いします。

 それでは、5物質目の「リン化水素」をよろしくお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 続きまして、リン化水素です。資料1-5を御覧ください。「物質名」、「化学式構造式」は記載のとおりです。「物理的化学的性状」につきまして、外観は、無色の圧縮液化ガスです。沸点は-87.7℃、融点は-133℃、蒸気圧は20℃で4,186kPa、蒸気密度は1.17、比重は0.8です。「生産量等用途」につきまして、生産・輸入量は1,000トン未満です。用途は、n型エピタキシャル成長シリコン、ドープした酸化シリコンのデポジション、イオン注入用などのドーパントガス、穀物等の燻蒸となっております。

 「重視すべき有害性」で発がん性ですが、ヒトに対する発がん性については、判断できないとしております。各評価区分につきましては、IARC、産衛学会、EUNTPACGIHのそれぞれが設定なしとなっております。発がん性以外の有害性についてですが、生殖毒性は「判断できない」、神経毒性は「あり」、遺伝毒性は「なし」となっております。そのうち神経毒性についての根拠ですが、半導体製造機械メーカーに勤務する2名が、配管接続作業の際にリン化水素にばく露し、治療を受けた2例が報告されている。症例1は、低濃度のリン化水素(濃度未記載)を約10秒間吸入し、直後から発熱(37.2)、咽頭痛、頭重感、手足のしびれ等が出現した。咽頭痛と手足のしびれは1週間ほど持続した。症例2は、リン化水素に微量ばく露し(濃度未記載)、軽度の呼吸困難、直後より手のしびれ、腹満感、口渇等の症状が出現した。約2週間後から両下腿の鈍痛、両足のしびれ等の訴えが出現し、約5週間の経過で症状は消失したとなっております。

 次に動物試験のデータです。神経毒性に関する動物試験データにつきましては、調査した範囲では評価値を設定できる情報は得られていないとなっております。また、反復投与毒性に関する動物試験データについてですが、NOAEL1.0ppmとしております。根拠としては、7週齢雌雄のBalb/cマウス各群12匹に、0.31.04.5ppmのリン化水素を16時間、週5日間、13週間ばく露した。ばく露終了後の体重増加量は、雌の最大のばく露群でコントロール群より10%少なく、統計学的に有意であった。これよりNOAEL1.0ppmとした。ということで、種差の10を不確実係数としまして計算したところ、0.075ppmとなったところです。

 次に、「許容濃度等」です。ACGIHでは、TLV-TWA0.3ppmTLV-STEL1.0ppmとして1976年に設定したところです。根拠としては、1960年から1961年に船積み用穀物ターミナルでリン化アルミニウムによる穀物燻蒸が開始され、その作業に従事した67名の作業者の自覚症状をインタビューした。その結果、胸部絞約感、心窩部痛、中枢神経系症状が10ppmの濃度で観察されたと報告している。ACGIHはこの結果を紹介し、TLV-TWAとして0.3ppmSTEL1ppmを勧告しています。

 こちらに記載はないのですが追加としまして、ACGIH2014年にTLVの変更提案をなされております。TWA0.1ppmSTEL0.5ppmが提案されております。まだ確定はしておりませんので、提案の段階です。

○角田化学物質評価室長 今のSTELCeilingで、天井値です。

○岸化学物質評価室長補佐 日本産衛学会の許容濃度におきましては、1998年に最大許容濃度は0.3ppmが設定されております。根拠としては、半導体製造メーカーに勤務する2名が配管接続作業の際にリン化水素にばく露し、治療を受けた例を報告している。症例1は、低濃度のリン化水素(濃度未記載)を約10秒間吸入し、事後から発熱(37.2)、咽頭痛、頭重感、手足のしびれ等が出現した。咽頭痛と手足のしびれは1週間ほど持続した。20日後に再度リン化水素にばく露し(発生源においては0.2ppm程度)、足のしびれ、不安感が数十分間持続した。リン化水素の許容濃度を設定するに当たってのデータは、量・質ともに十分とは言えないが、当面、リン化水素による刺激、呼吸循環系・消化器系・神経系に対する急性影響防止を目的とし、最大許容濃度として0.3ppmを勧告しているということです。そのほかの機関としては、DFG MAK0.1ppmNIOSHTLV-TWA0.3ppmTLV-STEL1ppmOSHATWA0.3ppmUKLong-term Exposure Limit0.1ppmShort term Exposure Limitが、15分間で0.2ppmとしております。

 以上のことから、「評価値()」ですが、一次評価値としては「なし」としております。理由としては、反復投与毒性(体重増加量の減少)に関する動物試験より導き出されたNOAELから不確実係数を考慮して算定した評価レベルが二次評価値の10分の1以上であるためです。

 次に二次評価値は、0.3ppmとしております。理由としては、ACGIHはリン化水素による胸部絞約感、心窩部痛、中枢神経系症状の予防のため0.3ppmを勧告している。また、日本産業衛生学会は、同物質による刺激、呼吸循環系・消化器系・神経系に対する急性影響の予防のために0.3ppmを勧告しているということです。

○大前座長 ありがとうございました。2014年にACGIHTWAとして0.1ppmCeilingとして0.5ppmを今、提案している最中だということです。御意見はいかがでしょうか。一次評価値につきましては、反復投与毒性で計算しますと0.075ppmなので0.310分の1を超えているということで、今回は提案しない。二次評価値は0.3ppmACGIHTWA若しくは日本産業衛生学会の最大許容濃度、Ceilingですが、これが、数字が同じですので0.3ということになります。これは、2014年、もし今提案されている数値が採用されますと、この二次評価値は変わる可能性があるということですね。現段階ではまだ採用されていませんので0.3が使えますが、もし採用されますと、これが0.1になる可能性はあるということですが、いかがでしょうか。

○西川委員 細かいことですが、二次評価値の理由の所に、胸部絞約感、心窩部痛、それから中枢神経系症状とあるのですが、これは一体どの試験のことを言っているのか、よく分からなかったのです。例えばその上の「神経毒性:あり」の所にいろいろな症状があるのですが、強いて神経と関係するのは手足のしびれぐらいですので、これをもって中枢神経系の症状の予防と言うのはちょっと飛躍し過ぎるような気がしますけれども。

○大前座長 これはACGIHの提案理由なので、どこかに書いてあるということですよね。

○角田化学物質評価室長 参考資料では、143ページからが、リン化水素になります。サマリーでは冒頭の所で0.3ppmを勧告していると書かれています。「This value is intended minimize the potential for toxic responses」ということでいろいろ、頭痛なり、気道刺激ですか、呼吸困難など、胃腸部の障害とか、こういったものを最小化するということで設定しているというようには書かれています。

○西川委員 「central nervous system effects such as dizziness,double vision」とか、いろいろ並べてあって、tremorsもあります。それがあると納得します。

○大前座長 今おっしゃったような中枢神経系の症状が出ていたということですね、これはジョーンズの報告というので、1960年ですから結構古い報告ですが。そのほかに特に御意見がなければ、今申し上げましたように、一次評価値はなし、二次評価値は0.3ppm、もしACGIHが現在提案している0.1が採択されましたら0.30.1ppmになる可能性があると。そのときは、またこの場に出てくるのではないかと思いますが、そういうことでよろしいですか。どうもありがとうございました。

 それでは、今日の議事の1番はこれで終了になります。弗化ナトリウムに関しては、少し原著論文に当たってみるということで、少し宿題が残っているということです。それでは議事の2番、よろしくお願いします。

○岸化学物質評価室長補佐 続きまして、「リスク評価の手法の改訂」です。資料2を御覧ください。リスク評価の手法では、リスク評価に当たっての手順が細かく記載されているわけですが、そのうちの「評価値の設定」の所です、3ページの(4)からになりますが。ここで一次評価値の検討の際に、閾値がなくて変異原性が認められるもので過剰発がんレベル(1×10-4 レベル)が定まっている場合は、その値を一次評価値として設定しておりますが、前回の有害性小検討会で、オルト-フェニレンジアミンの一次評価値の検討で過剰発がんレベルが定まっていない場合で経口ばく露によるスロープファクターが定まっている場合にはその値を一次評価値とすることが決められましたので、そのことを本検討会のルールブックであるリスク評価の手法に盛り込むものです。

 改訂内容としては先ほどの118行目からですが、「リスク評価の判定方法等」の一次評価の算定に関する規定の所です。具体的には124行目辺りからですが、発がん性の閾値がない場合で、ユニットリスクを用いたがんの過剰発生率が算定できる場合のルールとなります。現状では、「国際機関等において得られた信頼性の高いユニットリスクが得られる場合には、がんの過剰発生率10-4 に対応した濃度を一次評価値として、次により評価する」としております。次のページに(a)として、「個人ばく露測定結果の最大値が、一次評価値を超える場合には、2の二次評価に移行する」。(b)で「個人ばく露測定結果の最大値が、一次評価値以下の場合、現時点での労働者の健康障害に係るリスクは低いと判断するが、各事業場においてリスク評価を行い適切な管理を行う等の措置を検討する」としているところです。今回、先ほど説明しましたスロープファクターが定まっている場合の取決めを盛り込むために下線部分を追加したものです。つまり、「国際機関等において得られた信頼性の高いユニットリスク」、これは「吸入ばく露の場合」に限られるわけですので、その注釈を加えた後、「が得られる場合、がんの過剰発生率10-4 に対応した濃度を一次評価値として次により評価する」と。その後に、「なお、ユニットリスクが得られない場合はスロープファクター(経口ばく露の場合)を用いる」を付け足すものです。これにつきましてお諮りしたいと考えております。

○大前座長 いかがでしょうか、13ページの下線部分を追加ということですが。吸入のユニットリスクがない場合は経口のスロープファクターを使うということをルールブックに加えたいということですが、よろしいですか。では、これはこのようにということで。

○西川委員 今の改定の所はいいのですが、がんの過剰発生率が10-4 という所です。これは以前に合意された数値ですが、これは世界的に見て問題はないでしょうか。というのは、10-5 とか10-6 とか、そういう値を設定している場合もあると思いますので。

○角田化学物質評価室長 経過から御説明します。御承知のとおり、要するに、生涯発がんの発生確率の増加分がどの程度であれば許容できるのかという水準ということで設定していますが、設定時に学識経験者の御意見も踏まえて10-4 としたというところです。設定自体は、少し古いのですが、平成17年の6月にリスク評価の検討会の報告書の判定基準に係るところでは、閾値のない発がん性の場合、がんの過剰発生率の目安を10-4 とするということで、それより大きい場合は詳細な検討を行うというような仕切りにしています。その際に、その前年に中災防で、「リスク評価に関する方法と考え方」ということで、報告書を取りまとめたのですが、その中で、がんの過剰発生率に関する各種データ、これは産衛学会のベンゼンとか砒素とその化合物等の関係資料における過剰発生率とか、環境省が詳細評価を行う発がんの過剰発生率とか、あるいは交通事故等の生涯リスクとか、こういったデータをいろいろ検討して、一般環境のばく露対象者と労働環境における対象者の違いや一般的な交通事故のリスク等を考慮すると、がんの過剰発生率については、おおむね10-4 以上を詳細な評価の対象とすることは妥当ではないかという報告があります。それを受けて、先ほどのリスク評価の検討会(平成176)の中でも10-4 という形で設定したというところです。

 こういった経過がありますので、リスク評価の実施要領とか、ばく露評価のガイドラインとか、今のリスク評価の手法とか、これらは現在、過剰発生率の目安を10-4 ということで整理しています。それに対応した濃度を一次評価値という形にして、それより大きい場合は二次評価に移行するというようにしていると、経緯はそういったところです。

○西川委員 よく分かりました。それで、EUや米国の数値との違いがあるかどうかについてはいかがなのですか。

○大前座長 いかがでしょうか。労働環境で、他国は重要リスクをどれぐらいに見積もっているか、そういう御質問ですね。

○西川委員 念のための確認です。

○大前座長 では、これは後ほど調べていただいてメールか何かで回していただけますか。

○角田化学物質評価室長 はい。

○大前座長 よろしくお願いします。では、議題2の改定に関しては、このとおりということで終了いたします。議題34は、がん原性試験結果と長期発がん性物質の選定になります。ちょっと毛色が違ったテーマになりますので、ここで休憩を入れたいと思いますが、よろしいですか。今、ちょうど3時ですので、10分ぐらいの休憩で、310分から開始としたいと思います。10分間休憩いたします。


(了)

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