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2015年3月13日 第4回東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会  議事録

○日時

平成27年3月13日(金)
15:30 ~ 17:30


○場所

厚生労働省専用第23会議室(6階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

○前田室長 では、定刻より少し早いですが、皆様おそろいのようでございます。

 本日は、大変お忙しい中、御参集いただきまして、まことにありがとうございます。ただいまより、第4回「東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会」を開催いたします。

 初めに、本検討会では全議事カメラ撮影を認めさせていただきますが、議事進行の妨げとならないよう、指定の場所から撮影いただきますよう、報道関係者の皆様へ事務局よりお願い申し上げます。

 本日は、祖父江委員の欠席とのことで御連絡をいただいております。

 それでは、本日も議事進行は森座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○森座長 それでは、本日も円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたします。

 それでは、議事に入ります前に、資料について事務局のほうから御説明ください。

○安井室長補佐 それでは、資料を御説明いたします。

 表紙が次第でございまして、1ページめくっていただきますと、資料1ということで開催要綱がございます。

 もう1ページめくっていただきますと、3ページに資料2で、前回の議事録でございます。

 大分飛びまして、23ページに資料3として「被ばく線量を考慮した緊急作業の考え方について」、原子力規制庁からの資料でございます。

 それから、25ページは、資料4といたしまして「緊急作業に従事する対象者に関する考え方について」、同じく原子力規制庁からの資料でございます。

 それから、27ページが、資料5といたしまして、「報告書案」でございます。

 それから、ずっと飛びまして、参考資料というものをつけてございます。

 参考1といたしまして、第1回資料17をつけてございます。

 それから、参考の5ページに第1回資料19をつけてございます。

 それから、参考の9ページに第3回資料5をつけてございます。

 それから、参考-17として、第3回資料6をつけてございます。

 資料は以上でございます。

○森座長 ありがとうございました。資料の不足等ございませんでしょうか。

 よろしければ議題に入りたいと思います。

 事務局側で前回の議論を踏まえまして報告書案を提示していただいております。資料5に当たります。本日は、この報告書案をたたき台に議論を進めていきたいと思います。

 その他の項目についても御意見があれば、随時お願いいたします。

 まず、資料5のIIIの1、報告書の6ページ、全体の32ページに当たりますが、そこから事務局より御説明をお願いいたします。

○安井室長補佐 それでは、御説明いたします。

 まず、2ページに返っていただきまして、報告書全体の構成を御説明させていただきます。目次がございまして、ここにございますように、Iは開催要綱及び参集者、IIは検討の経緯ということでございます。こちらにつきましては、既存の資料でございますので、説明は割愛させていただきます。

 続きまして、6ページのIIIから説明させていただきます。

 まず、「第1 緊急作業従事者の健康診断等、離職後も含めた長期的な健康管理」でございます。この資料のつくり方でございますが、今回、下線を引いている部分が骨子案から変更になった部分でございまして、そのうち特に御検討いただきたいところにつきましては、「(要検討)」とつけてございます。

 まず、「1 基本的考え方」でございますが、大臣指針で定められている通常被ばく限度を超えた緊急作業従事者に対する追加の健診の内容等につきましてレビューしたということでございます。

 「また」以下でございますが、今後、仮に緊急作業を実施する事態が発生した場合の対応についても検討したというのを入れてございます。

 「2 がん検診等の対象者」につきましては、前回と基本的に変更はございません。従来どおりということでございます。

 「3 2(3)のがん検診等の項目について変更すべき事項」でございます。これは、100ミリシーベルトを超えた方に対するがん検診等でございます。

 まず、(1)でございますが、肺がん検診といたしまして、胸部エックス線、喀痰細胞診は従来からございますが、それに加えまして、医師が必要と認めた場合に、胸部CTを実施するということと。胸部CTは被ばく線量が大きいため、低線量CTの使用を推奨するということでございます。この胸部CTを毎回実施する必要があるか、頻度につきまして御検討いただきたいと思います。

 それから、大腸がん検診でございますが、従来の便潜血検査に加えまして、医師が必要と認めた場合に、大腸内視鏡を実施するということでございます。頻度につきましては、前回、祖父江委員から10年に1回程度でよろしいのではないかという御意見ございました。これにつきましても御検討いただきたいと思います。

 それから、(3)でございますが、感染症検査のうちヘリコバクター・ピロリ抗体検査ということでございます。これにつきましては、検査で陽性であった方に関する適切な治療の勧奨というのを盛り込んでございます。

 (4)でございますが、感染症検査としての肝炎検査でございますけれども、こちらにつきましても検査で陽性であった方に対する適切な治療の勧奨というのが入ってございます。

 (5)でございますが、甲状腺の検査ということで、従来は甲状腺刺激ホルモンなどの検査を先にやって、医師が必要とする場合に頸部超音波検査ということになっておりましたが、これにつきまして原則と例外を逆転させまして、頸部超音波検査をまず実施して、医師が必要とする場合に甲状腺刺激ホルモンなどの検査を実施するという形にしてございます。それから、頸部超音波検査の頻度につきましては、3年から5年に一度ということを入れてございます。

 (6)でございますが、慢性腎臓病の検査として、腎機能検査と血清電解質検査を追加するということでございまして、頻度は年1回。

 (7)でございますが、喫煙者に対する保健指導につきまして、禁煙指導を実施するということでございまして、これにつきましても、希望者に関しましては禁煙外来の紹介というものが入ったところでございます。

 注でございますが、肺がん検診として、非喫煙者に対しては推奨されないという御意見がございましたので、それが入ってございます。

 それから、大腸がん検診で大腸内視鏡につきましても、100ミリシーベルトを超えるような被ばくをされた方に対する追加検査としての位置づけでございます。

 それから、注5でございますが、甲状腺機能低下症というのは一定の被ばくがあった場合に発生するということでございますので、甲状腺等価線量が一定以上の方について実施するという何らかの目安が示せないかということでございます。こちらも御検討いただければと考えてございます。

 それから、「4 ストレスチェックの実施」でございます。こちらにつきましては、前回の御議論のとおり、余り変更してございませんが、緊急作業従事者の事故当時の職場環境を踏まえまして、可能な限り、全員に対してストレスチェックを実施すべきであるということ。

 それから、原子力事業者及び元請事業者は、関係請負人がストレスチェックの集団対応を行う場合に必要な支援を行うことが望ましいということが書いてございます。

 説明は以上でございます。

○森座長 ありがとうございます。

 それでは、順番に、特に要検討のポイントについて御意見をいただきたいと思います。

 まず、第1の「1 基本的な考え方」で、長期的な健康管理の内容については、今回の事故だけではなくて、今後、仮に緊急作業を実施する事態が生じた場合も適用するということを追加で書き加えていただいておりますけれども、これについてはいかがでしょうか、こういうことでよろしいでしょうか。よろしいですか。

 続きまして、「2 がん検診等の対象者」についてです。、特に要検討事項となっているところはございませんが、これについても何か御意見あればお願いします。実際に行われている範囲内なので、よろしければ。はい。

 3は、頻度とか、実際の検査にかかわるところで要検討事項がたくさんございまして、明確な数字が出にくいところも実際はございます。、ここについて、どこからでも結構ですので、こういう考え方でいいのではないかということも含めて、いただければと思います。いかがでしょうか。

 前川委員、お願いします。

○前川委員 前川でございます。ちょっと先走ってしまうのですけれども、3の(1)は肺がん、(2)は大腸がん、(3)は胃がんの背景因子としてのヘリコバクター・ピロリということで、固形がんに関してはこの3つなのですが、その他の固形がんとの関係において検診はしなくてもよろしいのでしょうか。つまり、例えば腹腔内の固形がんを考えるときに、私たちは一般の臨床の現場でやる場合、この肺がん、大腸がん、胃がんだけではなくて、ほかの臓器も必ず念頭に置いて調べるわけですね。

 それで、100ミリシーベルト以上の確率的影響との関係においても、この3つだけではないと思うのです。そうすると、一般的な意味で、例えば同じように検診の項目を挙げるならば、他の固形がんについては、例えば必要に応じて腹部CTを行うとか腹部超音波検診を行うとか、一般に臨床の現場ではやりますが、それは考慮されていないのですけれども、どうなのでしょうか。つまり、肝炎と放射線というのはそんなに直接関係ないと思うのですが、むしろ固形がんとの相関のほうが有意であると思うので、そういう意味でそれをしなくもいいのかなという疑問でございました。

○森座長 ありがとうございます。

 これについて、いかがでしょうか。

○安井室長補佐 今回、挙げさせていただいている項目は、いわゆる一般住民に対する対策型検診というのを原則にしてございまして、これはコストベネフィットから見て、ベネフィットが大きいと認められている検診を選んでございます。そのうち、対策型検診には分類されていないですけれども、ハイリスクグループである100ミリシーベルトを超える被ばくをされた方に対して、追加することが適切であると言われて追加いたしましたのが、胸部CTと大腸内視鏡でございます。一応、そういう整理で前回、前々回、祖父江先生のほうに御意見をいただいて選択したということでございます。

○森座長 よろしいですか。

○前川委員 それならば、甲状腺の急性影響を見るために甲状腺ホルモンを採取するという、侵襲的であり、お金もかかる検査に比べると、腹部CTとか腹部エコーというのは非常に非侵襲的であるし、有意というか、結果の有用性というのは結構大きいと僕は思うのですが、どうなのでしょう。

○安井室長補佐 一般住民に対するがん検診という形では、いわゆる対策型検診という形では現時点では腹部エコーは入っておりませんので、そこは御意見としては承って、もう一回祖父江先生なりの御意見を伺いたいと思いますが、現状の仕切りといたしましては、一般の住民検診の対策型検診をベースに考えているということでございます。

○森座長 一般集団を対象にしたときに有効だという検診と、ある要因に曝露した人にやるべきことは違うのではないかという御意見ですね。

○前川委員 むしろ、喀痰細胞診の診断能と、それから腹部CTや腹部エコーの診断能を考えてみた場合にどうか。つまり、放射線との関連においても、100ミリシーベルトを超えたときの固形がんの相対的なリスクを考えると、どうも優先順位が違うのではないかという気がしたものですから、意見を申し上げました。

○森座長 伴委員、お願いします。

○伴委員 この辺の問題は祖父江先生に伺うのが一番いいとは思うのですけれども、確かに一般住民を対象にした、症状のない方のがん検診として、どれだけエビデンスがあるかというのは非常に参考になると思います。そこに放射線が加わったときに、がんのリスクがどれぐらい上がるかですけれども、線量にもよりますが、そんなに極端に上がるとは思わないので、一般の検診のエビデンスに沿うというのは、1つ重要な考え方だと思います。

 それから、肝炎に関しては、肝炎ウイルスのキャリアだと放射線発がんのリスクも上がるという話がありますので、それはその意味でやる意義はあるのかなと思いますし、あと甲状腺機能低下に関しては、下の注のところで後ほど検討が必要になると思いますが、線量が相当高くない限りは、やる意味はないと思います。

○森座長 ほかにいかがでしょうか。道永委員。

○道永委員 今のがん検診もそうですが、ここの書きぶりが検診項目というのが大腸がん検診までありまして、あとは肝炎ウイルス等、予防ですね。それと、また一般の検査が入っていて、この書きぶりがごちゃごちゃになっているのでわかりにくいのかなと思います。一般の健康診断でCKDとかをここに入れていいのかが、ちょっとわからないということと。それから、喫煙者に対する保健指導が中に入っているので、ここをがん検診ならがん検診だけを一つの枠にして書くということ。あと、喀痰細胞診というのは、恐らく喫煙者だけが対象なので、これをここに入れないで、喫煙者に関しては必要があれば喀痰細胞診をやるという書きぶりになるのかなと思いました。

 これは、もちろん祖父江先生の専門なので、祖父江先生にちゃんと書いていただければよろしいのですが、大腸がん検診も便潜血検診検査に加え、医師が必要というか、便潜血検査が陽性だったら、そのまま内視鏡に行くと思いますので、ここはもう少し書きぶりを変えたほうがいいのかなと思いました。

 それで、ついでに言ってもいいですか。CKDとかが入っているので、ここでちょっと申し上げたいのですが、がん検診にかかわらず、データベースがあると伺っているのですが、従業員の方々が一般の外来を受診して、これから勤務を続けたいのだけれども、いいかということを、産業医の先生あるいは外来でかかりつけの先生のところに行って診断書が欲しいというお話がまだあるそうです。そのときに、先生には患者さんのデータが全くないので、働きたいならいいよとは書けないということがあるのですね。

 ですから、フィードバックというのか、よくわからないのですが、受けた方のデータというのを国が保管するだけではなく、個人の方にちゃんと返してほしいということをどこかに明記していただければと思います。

○森座長 現状をご説明ください。

○安井室長補佐 現状、特に50ミリを超えた方につきましては手帳を交付してございまして、それを相談する場所が都道府県に最低1個ございます。そこに行くと、過去の検診データの一覧とか、全部入手できるというシステムにはなってございますので、それがどこまで周知されているかという議論はあると思います。いずれにしても、この報告書にそういったシステムがあるということは盛り込みたいと思います。

○森座長 児玉委員、何かございますか。

○児玉委員 がん検診についてですが、私の知識はかなり古いので、祖父江先生にぜひ確認していただきたいのですが、以前の考え方ではがん検診が有効であるというのが、たしか5つのがんだったと思います。胃がん、大腸がん、肺がんと乳がん、子宮がん。乳がんと子宮がんは、この場合、該当しないのだろうと思いますので、それでこの3つに重点を置いて書かれていると思います。ただ、その後で有効性に関しては恐らく検討されていると思いますので、そこは祖父江先生に最新の情報はどうなっているかという確認をぜひしていただいたらと思います。

○森座長 ということで、本日は祖父江委員がいらっしゃらないので、その情報をいただいて、次回検討という方向になります。1つ、(3)のヘリコバクター・ピロリ菌の除菌とか、C型肝炎陽性のときの治療とか、たばこの場合の禁煙指導というのは、これは長期的な健康管理というか、スクリーニングした上で医療に結びつけるという理解で基本的によろしいでしょうか。

○前川委員 これは治療に結びつけるのだけれども、精査の上、必要に応じて治療に結びつけるとしないと、例えば肝炎検査でHBs抗原が陽性だったとしても、HBc抗体が陽性でないと、これは単なるキャリアで治療対象にならないので、そこで精査の上、必要に応じて治療するとしたほうがいいと思います。

○森座長 その辺、厳密に書いていただくということですね。

 あと、項目とともに頻度というのは悩ましい問題があって、例えば(2)の便潜血を前提とした便潜血の頻度という意味では、10年に一度というのは余りにも長いので、恐らく毎年ということになると思うのですが、それ以外についても頻度について、もし何かこの段階で御意見ございましたら、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。頻度が書かれているのは、あとは頸部超音波検査、その前に胸部CTですね。胸部CTも、CTそのものの有効性というのが、今、データが蓄積されている段階だと思うので、頻度ということまでは、この時点ではっきりこれがベストだということはないのではないかと私は思っているのですが。では、これについても次回でいいですか。

 あと、7ページの注5、放射線による急性影響を調べるための検査ということで、甲状腺等価線量が一定以上であるということで行うことではどうかということですが、その場合、「およそ●ミリシーベルト」と書いてありますが、どの程度以上が妥当かということについてはいかがでしょうか。

 伴委員、お願いします。

○伴委員 ICRP2012年に出しているPublication 118の数字だと、放射線が甲状腺の組織を破壊することによって起こる、甲状腺機能低下症のしきい線量は、2グレイの分割照射の場合、合計線量として18グレイになっています。では、一発の急性照射があったときにどれぐらいになるのかというとα/β比を相当小さくとったとしても、数グレイを下ることはありません。ちなみに今回の事故で一番高い被ばくをした方については、放射性ヨウ素の吸入によるもので体内摂取ですから、瞬間の被ばくではないわけですね。

 だから、そう考えたときに、この数字をどれぐらいにするかというのはなかなか難しいところですが。さっき言った理屈で言えば、少なくとも数グレイ以上のオーダーにはなるのだろうと思います。

 ただ、もう一つちょっと気になるのは、いわゆる橋本病みたいな自己免疫性の甲状腺機能低下症が放射線で増えるかどうかという話があって、それが増えるという文献と増えないという文献とがあります。比較的新しいところでは、チェルノブイリの子供たちで自己抗体が線量依存的に増えているのではないかという話はありますけれども、そのコホートでも、甲状腺機能低下症、甲状腺炎の発症率は増えていないのです。そうすると、因果関係があるかどうか自体がわからないけれども、あったとしてもそんなに低い線量で起こるとは思えないので、数グレイというのが一つの線ではないかと思います。

○森座長 ありがとうございます。「ミリ」と書いています。「グレイ」でしょうが、そこを少し検討いただく。

 では、明石委員、お願いします。

○明石委員 放医研の明石でございます。7ページの注5ですが、東電の今回の事故のということであれば、もう急性影響とは言えないと思います。いわゆる急性影響の提示というのは被ばくして数週間の間にあらわれる影響ということを指すことになっていますので、この「急性」という言葉は不適当ではないでしょうか。要するに、短時間、高線量率で被ばくしたということの確定的影響ということなのでしょうが、今の時期、今後出てくるものは急性影響とは言えないので、多分「影響」のほうがいいのではないでしょうか。ちょっと本質的ではないことですが、コメントいたします。

○森座長 今後のことも、先ほど基本的な考えで追加したのでということだと思いますが両方にカバーできるような書きぶりのほうがいいのではないでしょうか。

○安井室長補佐 わかりました。ちょっと検討いたします。

○森座長 そうすると、細かいところについては、祖父江委員の御意見を次回までにいただいて、次回検討をするということになります。ただ、医療として行う範囲を明確にすることと、

道永委員からございましたように、がん検診とそれ以外のことが一緒になっているので、ちょっと整理したほうがいいということ、頻度について検討するということですね。

 それから、甲状腺等価線量の単位について、次回までに少し修正いただくということで、「第1 緊急作業従事者の健康診断等、離職後も含めた長期的な健康管理」についてはよろしいでしょうか。事務局、何か追加で議論が必要ならお示しください。

○安井室長補佐 次回整理して、再度お諮りしたいと思います。

○森座長 ありがとうございました。非常に細かいところなので、明確に数字を入れるとか、難しいところもあると思いますがまた引き続き御意見をいただければと思います。

 続いて、「第2 緊急作業従事期間中の健康管理」に参りたいと思います。事務局、御説明お願いいたします。

○安井室長補佐 それでは、35ページを御説明いたします。「第2 緊急作業従事期間中の健康管理」ということでございます。

 「基本的考え方」といたしましては、1Fの事故の期間中は、労働安全衛生法第66条第4の規定に基づきまして、臨時の健康診断実施を法令上の権限で指示したこととなっておりまして、あらかじめ定められた項目などはなかったということでございますので、今後、仮に緊急作業を実施する事態となった場合に備えまして、その期間中、必要となる健康診断の内容を検討したということでございます。

 2が健康診断でございます。

 まず、(1)が短時間に通常被ばく限度を超えて実効線量又は等価線量を受けた労働者に、直ちに、医師の診察又は処置を受けさせるということでございます。これにつきましては、次のページに注1というのがございますけれども、短時間に放射線による急性障害を起こす可能性のある線量として300ミリから400ミリシーベルトというのを書いてございますが、それ以上の線量を受けた者につきましては、直ちに注2に書いてございますような染色体異常の検査、白血球数、白血球百分率の検査、赤血球の検査を行うということでございまして、実施頻度につきましては、大量被ばくがあった直後から6~12時間毎に1回、数日間実施するということでございます。

 ここで、可能であれば、染色体異常の検査は1回でいいのかといったところで御意見いただきたいと考えてございます。

 それから、2の(2)に戻りますが、通常被ばく限度を超える被ばくを受ける作業、これは緊急作業ということでございますけれども、1月以内ごとに1回及び当該従事者が緊急作業から離職した際に、次に掲げる項目について行うということでございます。

 注3に書いてございますのは、問診につきましては、月に1回程度必要だという御議論がございました。その他の検査につきましては、それほど高い頻度でやる必要はないのではないかという御意見ございましたので、後で御説明いたしますが、医師の診断により省略することは可能といたしますが、離職時には必ず実施するという法律上のたてつけにしたいと考えてございます。

 9ページに戻らせていただきますと、項目といたしましては、自覚症状及び他覚症状、これは問診ですね。イとウが血液の関係の検査。エは、甲状腺刺激ホルモン関係の検査でございます。それから、オが白内障に関する眼の検査ということでございます。

 (3)でございますけれども、定期に月に1回行うものにつきましては、医師が必要でないと認めるときには、問診以外の項目は省略できるような規定を設ける。

 それから、当然、健康診断の結果はきちんと保存するというのが(4)。

 (5)は、健康診断と同じでございますが、異常の所見があると診断された労働者につきましては、医師からの意見聴取を行うということでございます。これにつきましては、緊急性があるということもございますので、従来ですと3カ月とか、そのぐらいのオーダーでやっておりますけれども、緊急作業従事者につきましては、診断結果が出た日から速やかに行うという形を定めたいと考えてございます。

 それから、(6)も一般的な健康診断と同様でございますけれども、放射線による障害が生じており、若しくはその疑いがあり、又は放射線による障害が生ずるおそれがあると認める者につきましては、その疑い又はおそれがなくなるまで、就業場所、業務転換等々の必要な措置を講じるというところを義務づけるということでございます。

 説明は以上でございます。

○森座長 ありがとうございました。

 では、「第2 緊急作業従事期間中の健康管理」について、何か御意見ございましたら、お願いいたします。

 杉浦委員、お願いします。

○杉浦委員 染色体異常の頻度ということが10ページの注2にありますけれども、これは染色体異常がある、ないというのは、医療的な目的なのでしょうか。いわゆる生物学的線量評価みたいな意味合いなのか。リンパ球でありますので、物すごく大きな被ばくをすると、1日とかたつとなくなってしまうので検査ができなくなって、目的から教えていただけるともう少し考えられるかなと思うのですが。

○安井室長補佐 これにつきましては、前川委員からの御意見で入れたものでございます。両方ある可能性がございますが、とりあえずは臨床上に必要という理解で入れてございます。線量の評価をここでしようという意図はないのですが、これにつきまして前川委員から御意見いただければと思います。

○森座長 お願いします。

○前川委員 これは(6)ですので、健康診断を受けた結果、どうしても放射線障害が否定できない、あるいは疑いがあるという場合に限って、こういう検査をすることになると思うので、注2がこっちに相当すると思うのです。ですから、ある程度の線量を被ばくしたという限定された方々に対するものと僕は理解していましたが。

○安井室長補佐 おっしゃるとおり、書きぶりが読みにくくて恐縮です。注1は300から400ミリシーベルトを超えた方で、その方について注2の検査ということで、注2に書いてある検査は、高被ばくをされた方に限定された検査です。

○前川委員 そうですね。その意味ですので、直後だと思います。そう頻回にやる検査ではないので。よろしいでしょうか。

 それから、ちょっと質問させていただきたいのですけれども、疫学や産業保健をやっている先生方にお聞きしたいのですが、こういう短時間に通常被ばく線量限度を超えて、実効線量又は等価線量を受けた労働者というコーホートを対象とした、こういう諸検査、自覚症状、他覚症状、診察を含めた。診療までいかない診察。これを健康診断と言っていいのですか。

 私たち現場の人間は、健康診断と言うときは、一般のもともと病気を持っていないけれども、病気を持っているかどうかを背景と関係なく診察するわけですね。こういう非常に限定したコーホートに対して、がん検診をしたりするのを健康診断と言っていいのか。産業保健や疫学の先生方は、皆さん、やっていらっしゃると思いますが、健康診断ということでいいのですか。

○森座長 労働安全衛生法上は、一般健康診断と特殊健康診断というのがあって、特殊健康診断は有害要因の取り扱いをしている人たちを対象にしています。だから、それを曝露したからするというわけではないですけれども、それを取り扱っているという場合も特殊健康診断と言うので、健康診断でもいいのなと思います。

○前川委員 では、これは健康診断でいいですね。ちょっと抵抗を感じたのです。

○森座長 伴委員、お願いします。

○伴委員 確かに健康診断と言っていいのかどうか、私も言葉として違和感があります。ただ、例えば平時であれば、放射線の場合、被ばくのモニタリングがきちんと行われているので、線量が把握できていれば、症状から異常な被ばくを検出するということはあり得ないはずです。だから、そこは本末転倒なのですけれども、緊急時において、どこまでモニタリングがきちんと担保できるのかということを考えたときに、ある程度そういったことも考慮する必要があるのかどうか。多分、そういうバランスの中で考えていかなければいけないのだと思います。

 それと、先ほど問題になった注2の血液検査とか染色体検査ですが、前川先生は、大量被ばくがもし疑われたときに、できるだけ早い段階で線量を推定するための手段として、こういったことが必要だよとおっしゃったのだと私は理解したのですけれども、そういうことですね。ですから、その意味では、染色体検査を何回もやるとか、そういう話ではないと思います。

○森座長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 ニの中には、(3)に要検討というのがございますけれども、ある程度線量に応じて検査、どれを行うかという考え方の中で、基本的にはまず必要な検査を挙げておいて、それを省略するという書きぶりでいいかということです。今、労働安全衛生法である健康診断の関係は、ほとんどこの書き方がされています。または、逆に医師が必要と認めるときに追加するという書きぶりをしている特定化学物質の特殊検診がありますので、どちらかに合わせないと他の制度との整合性がとれないということがあります。そのあたりの事情を踏まえ、現在の事務局の書きぶりでいいですかということですが、よろしいでしょうか。

 伴委員、お願いします。

○伴委員 その辺りの書きぶりは、確かに法令全体としての整合性が関係するのでしょうけれど、趣旨が伝わることが大切だと思います。たしかこの間の議論で、この辺のいろいろな項目というのは、実際にリアルタイムで変化を追うということよりも、むしろ初期の個々人ごとのレファレンスとしてとっておくことが大事だという話があったと思います。特に白内障などに関しては、この短期間に変化が現れるはずもないので、最初の状態を見ておくわけです。そういう意味では、何度も毎月とらなければいけないようなものではないといった趣旨が伝われば、表現はそれでも構わないと思います。

○森座長 例えば、注の中に一つ一つの検査の意味を入れるとか、そういうことでしょうか。趣旨を伝えるのは簡単ではないかもしれない。

○安井室長補佐 注3にざっくりと書いてございますが、先ほどの御議論の趣旨を注3の中に詳しく書き込みたいと考えてございます。

○森座長 では、よろしくお願いします。

 ほかにいかがでしょうか。

 それでは、よろしければ、要検討の2項目、一応御意見いただきましたので、続きまして、「第3 原子力施設内の医療体制の確保」についてです。

 では、説明をお願いいたします。

○安井室長補佐 それでは、11ページを御説明いたします。これに関しましては、前回、有識者ヒアリングの取りまとめを前川先生から御説明いただいた内容をコンパクトにしただけでございますので、特に御議論をいただくという形で要検討項目などは挙げてございません。

 「基本的考え方」といたしましては、1F事故の事故発生時にプラントの中に医師などを派遣することに困難が生じたことを踏まえて、そういった原子力施設の事故に即応するネットワークを構築しようという趣旨でございます。

 2に書いてございますのは、受け手となる原子力施設の中に一定の設備・場所が必要であるということ。

 3番が、原子力施設内に派遣される登録スタッフをどのように募集・育成していくのか。

 4番が、医療スタッフをどのように派遣して、身分保障をどのようにするのか。

 5番が、原子力内外の患者の搬送、受け入れなどの連携の強化のために、協議組織をつくる。それから、訓練をするといったことについてでございます。

 6番が、このネットワーク組織をどのように全国の原子力施設に適用していくのかということをまとめてございます。

 そのような形でまとめているというところだけでございます。以上です。

○森座長 それでは、ここについて御意見がございましたら、お願いいたします。

 少し私のほうからよろしいですか。前回、私も意見を言わせていただいて、いわゆる救急医療以外に、労働衛生とか、場合によっては保健師といった多様な人材をということを前回のレポートでは書いていただいたと思うのですが、今回はこの医療従事者等というところに恐らく含まれているのだろうと考えるのでしょうが、往々にして、予防医学は具体的に書かれていないと忘れ去られる危険性があります。そういう職種なので、どこかに何らかの形でぜひ残していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○安井室長補佐 わかりました。医療スタッフ等の定義をどこかに注という形で入れさせていただきます。

○森座長 お願いします。

 ほかにいかがでしょうか。前川委員、よろしいでしょうか。

○前川委員 はい。

○森座長 それでは、ありがとうございました。

 続いて、「第4、通常被ばく限度を超えた者の線量管理」について、事務局からお願いいたします。

○安井室長補佐 それでは、14ページを御説明いたします。「第4 通常被ばく限度を超えた者に係る中長期的な線量管理」ということでございます。

 「基本的考え方」といたしましては、1F事故発生時に100ミリシーベルトを超えた方が174人おられますので、その方が次期線量管理期間、28年4月からどのように1シーベルトを超えないように管理していくのかということを検討したということと。

 あと、今回追加でございますが、当然、今後、仮に緊急作業を実施する事態となった場合についての対応も、そういう観点からも検討するということを入れてございます。

 「2 生涯線量の考え方」でございますが、実効線量1シーベルトにつきましては御議論がないところでございますが、白内障及び循環器疾患に関する等価線量(組織反応)による健康影響につきましては、御議論があったところでございます。これにつきましては、健康診断及びその結果に基づく事後措置を適切に実施することで管理するという形で入れてございます。

 注1に書いてございますのは、ICRP声明(2011年)で循環器疾患のしきい値として示されている0.5グレイは、心疾患の死亡率が有意に増えることがわかっている値として、0.5グレイというのは知られていますが、ICRP2007年勧告でいう確定的影響のしきい値とは違う概念のようであるということでございまして、その取扱が明確に決まっているわけではないということ。また、白内障に関するしきい値として示されている0.5グレイにつきましては、白内障の発症率が年齢とともに高まるということを踏まえますと、これ1点をとって生涯線量として管理するべきとまでは言えないのではないかといった御意見があったことを踏まえてございます。

 それから、具体的な健康診断につきましては、電離放射線健康診断のうちの白内障に関する眼の検査、一般健診での問診と血圧、血中脂質及び心電図で、循環器系に関する健診項目が含まれてございますので、それを見ながら、それに対する事後措置を行いつつ、放射線業務に従事していただくということで考えてございます。

 「3 事故発生時の次の線量管理期間以降に、生涯線量を超えないように管理する方法」の「(1)基本的考え方」といたしまして、174人の方につきましては雇用事業者が明確でございますので、作業者ごとに個々の対応をするということでございますが、今後、緊急作業に従事する場合に同様な状況ではない場合があった場合、個別管理ができない場合には再検討するということを入れてございます。

 それから、「(2)追加的な線量限度の管理」でございますが、計算の方法につきましては、前回、御説明したとおりでございまして、生涯1シーベルトから累積線量を減じた残余の線量を管理期間(18歳から50年間)から年齢を減じた残余の期間で割ると、1年当たりの数字が出ますけれども、それを5倍する形で特例線量限度を設定するということでございます。

 計算例につきましては、注4に書いてございますけれども、計算の結果、特段の線量制限をする必要がない方につきましては、通常の被ばく限度を適用するということになります。注4の例2はそういった場合になるということでございます。

 それから、イが新しく入れてございますが、1回だけ計算してしまいますと、そこで数字が固定してしまいますので、事業者としては、できるだけ通常の被ばく管理に戻したいという考えがあると伺っておりますので、5年後に再計算して、注4の例2のように、特段の線量管理が必要なくなれば、通常の被ばく限度に戻していくということで、5年ごとに再計算するということを入れてございます。

 それから、いろいろなところから質問がございましたのは、1年当たり線量限度(50ミリシーベルト)はどうするのかということでございます。これにつきましては、特段変更の予定はないわけでございますけれども、当然、ごく一部の方だと思いますが、5年あたりの特例線量限度が例えば50ミリを下回っている場合は、年限限度に達せず働けなくなるということは当然に想定されます。

 それから、4の事故発生時を含む線量管理期間内で、1Fの事故の場合であれば、この5年間で通常被ばく作業に従事される方が、通常被ばく限度と緊急被ばく限度の合算値が100ミリを超えている場合にどうするのかということでございます。これは、新しく検討項目として、今回から入れてございます。

 これにつきましては、次のページ、注1ということでございますが、福島第一原発の対応といたしましては、急性障害防止の観点から、250ミリシーベルトとされた経緯があるということで、短期間でそれを大きく超える被ばくを認めることは望ましくないということ。

 それから、同原発では、内部被ばくの測定が遅れまして、内部被ばくの評価に時間を要しました。また、待機中や移動中の被ばく線量の評価につきましても時間を要しました。端的に言って数年間の時間を要したということもございますので、その間、3で定めるような方法で線量管理をするということは現実、できなかったということと。

 3つ目でございますが、100ミリシーベルトを超えた労働者が174人にとどまりまして、かつ、そのほとんどが東京電力の社員でございましたので、ほかの原子力発電所における運転・保安要員の確保に大きな影響を与えなかった。これは、東京電力が非常に大きな会社で、プラントの数が多かったということがございまして、174人が放射線業務から外れても、東京電力全体として放射線業務に支障がある状況ではなかったといったことがございます。

 ちょっと(2)に戻らせていただきますが、今後、仮に緊急作業を実施する事態となった場合において、同様の考え方を採用するかどうかにつきまして、ICRPの勧告の内容を踏まえまして本検討会で検討いただきたいと考えてございます。主な論点は、先ほど御説明いたしました丸3でございますけれども、小さい原子力事業者になりますとプラントが1個しかないところもございまして、そういったところで基幹要員が全員100ミリを超えてしまって放射線業務につけなくなったときに、原子力事業者全体としての原子力施設の保安に差し支えがあるような可能性もゼロではございませんので、そういった場合にどうするかということでございます。

 注2に、ICRP Publication 75の該当部分を抜き出してございます。61につきましては、先ほどの3番の話でございますけれども、通常被ばく限度を超えて、引き続き被ばくが許される場合は、事業者は、作業者と協議して、かつ規制機関の要件に従って、残りの管理期間に適用される正式な線量制限の制度を確立することが適切。この場合は、線量限度が関係する残りの期間に比例して一時的な線量制限を行うということでございます。先ほどの計算式になるということでございます。

62でございますが、残りの期間内に通常の作業の実務を継続すると合計線量が関連する線量限度を超えるかもしれないような状況では、管理者はこのようなことが起こらないように作業者の業務の変更を決定してもよいということでございます。委員会は、規制機関が線量限度に付与した法的な位置づけを認識している。これは例えば5年、100ということでございますが、そういう認識をしつつも、柔軟なやり方で扱われるべきという勧告をしてございます。

 また、パラ148でもほぼ同一の趣旨でございますけれども、緊急時に受けた線量のために、放射線を扱う作業におけるその作業者の将来の雇用が妨げられるべきではない。これは、雇用という観点から言うと、さまざまな雇用がございますので、当然、高い被ばくをされた方に対して雇用を保障するのは事業者の責務であるとございますが、私の解釈としましては、ここに書いてあることは、先ほど言った保安の観点から問題があるという観点で捉えているということでございます。また、医師にみせるという方法もございますので、継続雇用と医療的な管理というところも両面あるということでございます。

 説明は以上でございます。

○森座長 ありがとうございました。

 それでは、今の4の新たな論点は後でまとめて議論させていただくということにしたいと思います。まず「1 基本的考え方」については、第1と同じで、今回の事故以外の今後、仮に発生した場合においての対応にも同じような考え方を適用するということで、これでよろしいでしょうか。

 続いて、「2 生涯線量の考え方」について、0.5グレイの取り扱いについて、ICRP声明の中ではなかなか明確な取り扱いが決まっていない中で、一方で日本には電離放射線健診とか一般健康診断があって、その中で白内障の検査、心電図検査があるので、そちらできちんと健診及び事後措置を行っていくということで担保してはどうかという書きぶりになっております。

 これについては、いかがでしょうか。伴委員、お願いします。

○伴委員 多分、(2)は白内障と循環器疾患に限るのではなくて、全ての組織反応だと思います。ですから、(1)で実効線量の生涯1シーベルトをまず担保してくださいというのがあって、それプラス大事なことは、それぞれの臓器組織の線量をできるだけきちんと評価して、各臓器組織の組織反応、いわゆる確定的影響に対してもきちんと考慮しなさい、対処しなさいという趣旨が伝わることがまず大事だと思います。というのは、つまり実効線量のベースになっている組織荷重係数が非常に小さい臓器であれば、その臓器がかなり線量を受けていても実効線量として1シーベルトに達しないということもあり得ます。ですから、そういう書きぶりにすべきだと思います。

 それから、その中で、特に循環器疾患と白内障の判断が難しいのですけれども、循環器疾患に関しては、前回、児玉先生もおっしゃったように、まだはっきりしないところがあります。ですから、ICRP0.5グレイぐらいがしきい線量ではないかと言ってはいますけれども、これは言ってみればプリコーショナリー・プリンシプルですから、科学的知見として必ずしも確定したわけではない。そういう状況であるから、むしろ今後の最新の情報にもきっちりと注意しながら対処すべきだという趣旨だと思います。

 それから、白内障に関しては、人間、年をとればみんな白内障になるのですけれども、その発症が少し早まるかもしれない。それをどう捉えるかということですね。0.5グレイを超えたから、もうこれで働けないという一律の措置を機械的にとるべきではないのではないかということを前回、申し上げましたけれども、その前提になるのは作業者自身に対する情報提供です。その情報がきちんと提供されて、作業者自身がインフォームドチョイスを行えるようにしないと、勝手に第三者が決める問題ではないと思います。

○森座長 ほかにいかがでしょうか。児玉委員、お願いします。

○児玉委員 循環器疾患の件ですが、前回も申し上げましたが、まだ放射線が、特に心筋梗塞のたぐいが急増しているかどうかということに対しては、結論が出ていません。ICRPが心配しているのは、心筋梗塞あるいは狭心症のたぐいだと思います。それに対して、結論が出てからというのではいけませんので、できるだけ広目に健康管理をしてさしあげるというのが私はいいと思いますが、そのときの物の考え方は恐らく2つです。

 1つは、放射線以外のファクター、因子で心筋梗塞、狭心症を起こしやすくするもの。これは、危険因子とかリスクファクターと言えますが、それに対してコントロールできるものには対応してさしあげる。

 2つ目は、これはなかなか難しいのですが、早期発見をしてさしあげるということだと思います。

 ここに書かれている健康診断の結果に基づく事後措置ということですが、注2に書かれている血圧の検査、血中脂質検査といったものは、血圧が高ければ治療して下げることができますし、コレステロールが高ければ下げることができるということで、予防に向かって悪い要素をのけてさしあげる。ここに書いていないものが肺がんのところで問題になりましたが、喫煙ですので、これは事後措置の中に禁煙指導が入るのではないかと思います。あと、糖尿病があれば、これも恐らくきちんと事後指導をされると思いますから、そういう形でできるだけ病気になるリスクを下げてさしあげるということと。

 それから、自覚症状及び他覚症状の有無。もしあるということであれば、これは早期発見につながると思いますし、心電図も恐らくそうだろうということで、総合的にできるだけ病気のリスクを減らしてあげるということと、早期発見を可能な限り図ってさしあげるという2つではないかと思います。

○森座長 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。杉浦委員、お願いします。

○杉浦委員 2の(2)の表現上のことで申しわけないのですけれども、多分、1が実効線量のことで、2が等価線量のことだということで、等価線量という言葉が残ってしまっていると思うのですけれども、伴先生の御指摘を踏まえて言えば、白内障及び循環器疾患を含む健康影響(組織反応)についてはということで、特に線量はここで述べる必要はないのではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。

○森座長 事務局、お願いします。

○安井室長補佐 ICRP2011年の声明にフェバリットドーズと書いてあるものですから、それとの関連だけだと思いますが、不要であれば削除します。ただ、等価線量という概念がなくなってしまうと、注1とつながらないとか、そういった問題はちょっとありますが。

○杉浦委員 済みません、こだわっているのですが、等価線量と言うとシーベルトなので、下はグレイでやっています。ですから、少なくとも「等価線量(組織反応)」ではなくて、「健康影響(組織反応)」にしないとおかしい。どうでしょう、等価線量で書くのは。特にこだわっていません。

○森座長 よろしいでしょうか。確かに、循環器の問題を一般健診で持っていく。これは、実行上はそうですけれども、一般健診をやるときにその認識がなく一律省略されることが多いです。例えば、心電図も血液検査も34歳未満、36歳から39歳は医師の判断で省略できる。多くの事業者は省略したままやっているという実態があるので、一般健康診断だけだとそういうことになってしまうので、一定の被ばくがあったことを前提に一般健診との関連で行うみたいなことを強調しておかないと、抜けるのかなと思います。ぜひその辺もお願いしたいと思います。

 よろしければ、「2 生涯線量の考え方」の次の3 事故発生時の次の期間の生涯線量を超えないように管理する方法ということで、まず「基本的考え方」については、この第4全体は、今後、仮に発生する事態にも備えるということでありますが、今回、たまたま非常に大手の事業者の社員だけが100ミリシーベルトを超えたので管理できていますが、そうではない事態が生じたときは、計算を事業者に任せるかどうかということについても、もう一度検討したほうがいいのではないかというのが「(1)基本的考え方」の最初のところであります。これもよろしいでしょうか。

 続いて、(2)のイについては、私はこれに意見をさしあげたことがあるのですけれども、5年当たりの線量限度というのは、次の5年、被ばくが少なければ、次の年、有利になるというか、より広く作業ができることになることもあるので、再計算するということも事業者の判断、管理ができるという範囲内で可能にするのではどうかというのが、イの2番目の要検討です。これについていかがでしょうか。この範囲、よろしいでしょうか。

 それから、注2の計算の方法が、年齢を18歳から50年間で、もともと50年間という考え方でシーベルトが5年当たりになっていた、そのような考え方をもとに、年齢の計算上の上限をとりあえず68歳で計算することを前提にしているのですが、これでよろしいでしょうかというのが注2の要検討のところだと思います。、これはいかがでしょうか。

 はい。

○杉浦委員 15ページのイです。これは、次の期間で被ばく線量が少なかったから、目いっぱい浴びれるようにするという意味合いではなくて、あくまで通常の放射線管理に近づけるためにという意味合いだということは、はっきり1回確認しておく必要があるのではないか。生涯1シーベルト浴びさせるためにこういうことをしているのではないということが大事だと思います。

○森座長 ありがとうございます。最適化原則をきちんと踏まえながら管理しましょうということです。

 ほかにいかがでしょうか。3のところ、よろしいでしょうか。

 それでは、4の新しい論点であります「事故発生時を含む線量管理期間内での通常被ばく適用作業での放射線管理の方法」ということで、今回は緊急被ばく作業と通常作業を合算して250ミリシーベルトを超えない、または100ミリシーベルトを超えないという形で管理したが、そのようなものを場合によっては柔軟なやり方で取り扱うこともあり得るのではないかということだと思います。これについて、いかがでしょうか。

 杉浦委員、お願いします。

○杉浦委員 まさに先ほど説明がありました内部被ばくのことがあったので、緊急時の線量を確定するのに時間かがかったということで、今回はこうなっているかと思うのですけれども、緊急事態が終わった時点で、その緊急時の線量は別に考えて、生涯、均等に浴びるような形で計画被ばくの線量管理をしましょうということですので、5年の1年目できちんと終わってしまったら、次の4年はこの考え方を準用してやっていくのがいいのではないかと思います。

 もしそれがよければ、ちょっともう過ぎてしまっているのかもしれませんが、14ページの(1)のなお書きは要らないのではないか。次にもし新しく起こってしまったときに、3の考え方で次の5年というのはなく、全部、4のほうで考えられませんかということをちょっと考えております。

○森座長 いかがでしょうか。

○安井室長補佐 ただ、線量の確定がどの程度時間がかかるかということもございますのと、通常の被ばく限度というのも、放射線管理上はずっとそれでやってきているということでございますので、事故が発生した5年の管理期間と、そうではない管理期間の考え方を一応分けておいたほうがいいかと考えております。

 その上で、実際問題、一番議論があるのが、緊急作業がまだ実施されているときに、ほかの原発に行かなきゃいけないとか、あるいは緊急作業が終了した直後です。ですので、恐らくそのときは線量が確定していないと思いますので、線量が確定していない段階でどういう柔軟性があるのかというところが、運用上、実は肝になりまして、今回、特に1Fの場合は、まさにそれが非常に大問題になったわけでございまして、免震重要棟の2階を非管理区域外にして、そこにベテラン作業員に入っていただくということをやったという実績があるわけです。

 例えば、そういう線量管理ができないときにどういうやり方ということで、ICRPの柔軟性ということであれば、一定のごく少ない被ばくの枠を特別に与える形で、健康影響のない範囲内で低線量の放射線管理区域に入れるようにするとか、杉浦先生がお調べになったほかの国でも、そういう枠を設けている国もございましたので、そういったところについても御意見をいただければと考えております。

○森座長 枠を設けるというのは、例えばプラス5ミリシーベルトまでとか、ということでしょうか。

○安井室長補佐 例えばそういうことになりますね。緊急被ばくのときは緊急被ばくの枠でやるのですけれども、その人がほかの通常被ばく、例えば既に150ミリシーベルト浴びてしまった方が、ほかの原発で働こうとするときに、5ミリとか、ごく少ない枠を1年間付与して、その範囲でやっていただくといった国もあるということですね。

 もう一つ、ここでICRPの中に医学的な観点というのがございますので、例えば緊急被ばく限度の適用期間中に通常被ばく限度を超えた方が、さらに働くときの医学的な観点からの対応についても、ちょっと御意見いただきたいと思います。

○森座長 少ない線量を付与するという件ですが、いかがですか。

○杉浦委員 安井さんがおっしゃっていることはよくわかって、事故が起きた5年と、そうじゃない5年は分けたほうがいいというのは一つの考え方だと思いますが、その特例を設けようとすると言ったのは、東電さんのようにたくさんいなくて、作業員の確保も必要でしょう。事故が起きた5年後についても、線量限度を超えて100ミリシーベルトを超えてしまっていても、作業につける特例的なことを考えなければいけないと思うのです。

 それで、1回目か何かに私のIAEAの御報告の中で、私の類推で申し上げたことが、それを後で調べたら若干違っていることがあって、そのことと関連づけて訂正等を含めて意見を述べさせていただきたいのです。200ミリを超えたときには、医師の健康診断を受けて、継続的な職に従事するということがあって、それが次の5年の100ミリ、倍を浴びてしまったと言いましたけれども、そうではなくて、前のBSS1996年に出たBSSに線量限度の10倍という書き方がされていました。そのときは今の線量限度と同じですので、5年、100と1年、50とあって、500なのか200なのかがよくわからないということで、新しいBSSでは200という具体的な数字が入ってきたという背景です。

 ですので、線量限度の10倍という意味合いは、何で10倍なのかというのはよくわからないところがあります。そのときに数字としてIAEAで述べている200というのが、その事故が起こった5年で継続して作業ができるかできないかというところの、健康診断をやった上で、さらにやっていいよということもあるかもしれませんが、1つ、200という数字が国際的にも示されているのかなという感じがします。

○森座長 ほかの方はいかがでしょうか。

 伴委員、お願いします。

○伴委員 今の杉浦先生の発言で、200というものの位置づけがわからないのですけれども、それを仮に準用するとどういう形になるのですか。

○杉浦委員 安井さんが先ほどおっしゃっていたのは、緊急時の被ばくとして100を超えて、例えば150にしましょうか。150浴びた人でも、250浴びた人でも、一定の枠を設けるというのは、残りの4年は5ミリずつでやってくださいみたいな一定の枠という御発言だったと思うのですけれども、ICRPも書いているように、緊急時の被ばくは別にして、残りの作業期間について均等にやろうというのが次の5年の線量期間にということで、3年延びていますね。ですので、それをできるだけ事故の起きた期間にも適用したほうがいいのではないか。一定の数値ではなくて、緊急時の被ばく線量でというところが1つ、考え方の根底にあります。

 それを事故の起きた5年の緊急被ばくがあった、限度を超えた緊急被ばくがあった方についての作業につけるのか、つけないのかということの一つの判断で、緊急時の線量が200という判断の数値になるのではないですかという意見でした。

○森座長 お願いします。

○伴委員 ただ、問題は、直後には恐らく緊急時被ばくによって受けた線量を確定することが難しいということです。合算していくのは難しいから、それはペンディングにしておいて、別のもうちょっと小さな枠を設けましょうというのが、多分、事務局側の意図だったと思うのです。それは確かに一つの考え方ですけれども、ICRP勧告で医師の診断とか、そういう言葉で括られている事項は、一律に決めることが難しいのでケース・バイ・ケースで判断しなさいということの裏返しでもあると思うのです。

 だから、そういう枠できっちり縛ることが果たしていいのかどうか。私も今、考えがまとまらないのですが、少なくとも医学的に言うならば、250ミリシーベルトという緊急時の限度があって、医学的に見たときに健康状態に特に問題がない限りは、とりあえずそんなに高い線量でないならば放射線作業に引き続き従事することは構わないだろうと判断されるはずです。そのときに、まさに最適化の原則でできるだけ低くするようにしておけば、急性影響が生じるようなことはありません。。生涯のリスクに関しては、今まで議論してきたような形で管理していくわけですから、果たして小さな別枠を設けることに意味があるのかどうか、ちょっとわからない。

○森座長 ほかにいかがでしょうか。ここは、本日、初めて出てきた論点ですので、意見はすぐにまとまらないという。

○安井室長補佐 ちょっと検討させていただけますか。線量が確定していなくて、枠の計算ができないときでも、できるだけ低くしていればいいというのは、規制の実態としてはなかなか難しくて、そこは規制側からどうしたらいいのですかと必ず聞かれますので、一定の考え方を示さなきゃいけない。一つの考え方としては、諸外国で一定の枠があるというやり方があることと、管理区域の設定基準はもともと年間5ミリでやっていますので、当然ICRPPublication 75でも、5から10の間でモニタリング開始になっていますから、逆に言うと、それを下回っている線量の被ばくというのはあり得るのかなという感じはちょっとしています。

 その程度の線量であれば、もちろん長期の健康影響は、現実問題、ほぼないということもありますので、そういったことも踏まえながら検討させていただきたいと考えております。

○森座長 それでは、ここについても、後で最後のところでお話ししますが、次回の委員会までの間にまた何か御意見があれば、ぜひお出しください。

 よろしければ、続いて「第5 緊急作業従事期間中の被ばく線量管理」に参りたいと思います。事務局、よろしくお願いします。

○安井室長補佐 続きまして、第5、17ページでございます。これは、前回も御議論いただきましたが、1に書いてございますのは1F発生時の適用の経緯でございますが、原子力緊急事態宣言があった後に、労働者の健康リスクと、周辺住民の生命・財産を守る利益を比較衡量した上で、特別な線量限度として250ミリを特例省令で規定したということでございます。

 制定当時は同原発における全ての緊急作業従事者を対象といたしましたが、被ばく低減の観点を踏まえまして、段階的に11月1日に一旦適用を限定した上で、最終的に原子炉の安定性が確保された段階とされているステップ2の完了時、1216日に廃止したという経緯がございます。

 「基本的考え方」でございますが、ICRPの正当化原則ということから考えますと、100ミリシーベルトというのは、従来、緊急被ばく限度として採用されていた数字でもございますし、通常被ばく限度5年、100ミリシーベルトとの関係もございますので、これを超える被ばくというのを正当化する理由がそれなりに必要だということと。

 それから、1F の経験を踏まえて、現時点で250ミリシーベルトを超えるような特例の緊急は要らないだろうということ。

 3つ目が、国際基準で規定されている100ミリシーベルトを超える緊急作業限度が適用される作業というのは幾つかございますが、そこで御検討いただいた中で、いわゆる一般作業従事者、消防とか救急の方を除いた方に最も当てはまるのは、「破滅的な状況」の回避であるということでございます。

 その観点から申し上げますと、特例的な被ばく限度の適用というのは、原子力施設が破滅的な状況に至ることを回避することを主たる目的とする作業のために必要な高度な知識・経験を有することになりますので、原則として原子力事業者に限られるのではないかという議論があったということでございます。

 (2)は、前回、原子力規制庁さんのほうから御説明いただいたものでございますけれども、原子力発電所での「破滅的な状況」の判断基準としては、原災特措法におきまして、原子力緊急事態又はそれに至るおそれの高い事態ということでございまして、具体的には原子力災害特措法で言う15条の事象と、10条事象のうちの一部ということでございます。そういったものがございますが、これは原子力災害に対する危機管理の観点から、直ちに必要な対応を実施するという御説明があったところでございます。

 続きまして、ICRPの最適化の原則を踏まえますと、当然引き上げるとしても、事業者に最適な線量管理をやってきてございますし、規制側としても速やかな適用作業の限定、あるいは段階的な線量の引き下げを実施する必要もございますし、原子炉が安定すれば当然廃止することが必要だということでございます。

 そういったことを前提としまして、今回、御提案させていただくのが3番でございます。

 まず、(1)特例緊急被ばく限度の設定ということでございます。法令上の規制につきましては、詳細は検討しますが、考え方として、厚生労働大臣は、事故の規模、周囲への影響その他の事情を勘案して、緊急作業において100ミリシーベルトの線量限度によることが困難であると認めるときは、250ミリシーベルトを超えない範囲で、線量限度(以下「特例緊急被ばく限度」という。)を別に定めることができる、できる規定を置く。

 その上で、アで定める場合において、原災特措法15条第1項で定める原子力緊急事態が発生した場合又はそれに至るおそれの高い事態(以下「原子力緊急事態等」という。)が発生した場合は、厚生労働大臣は、直ちに250ミリシーベルトを特例緊急被ばく限度として定める。

 その上で、特例緊急被ばく限度が適用される作業に従事する労働者につきましては、原子力防災業務計画で定める原子力防災組織の要員として指定されている者に限るということでございまして、基本的には原子力事業者の社員で、ごく一部、高度な専門業務につきまして請負業者が入るということでございます。

 それから、被ばく線量の最適化につきましては、まず事業者に事故の状況に応じて、労働者が電離放射線を受けることをできるだけ少なくするように努めることを求めるとともに、さらに厚生労働大臣に対しまして、定期的に緊急作業従事者の被ばく状況を報告する。これによって、行政としても適切な監視を行うということでございます。

 さらに、厚生労働大臣は、事故の状況等を勘案いたしまして、特例緊急被ばく限度をできるだけ速やかに廃止するということを規定する。

 当然のことながら、特例緊急作業に従事して、また従事したことがある労働者に対しましては、現在も1Fの方に対して行っているのと同じ長期健康管理を行う必要がございますので、健康診断の結果あるいは線量につきまして厚生労働大臣に提出するということでございます。その上で、厚生労働省のほうでデータベースとして管理するという1Fと同じやり方をとるということでございます。

 注がちょっとたくさんございますが、かいつまんで御説明させていただきます。

 注1につきましては、労働者の保護を所管する厚生労働大臣の判断を担保するために、特例の線量限度は厚生労働大臣が告示で定めるという形をとるということでございます。

 それから、特措法10条に基づく原子力緊急事態に至るおそれの高い事象につきまして、ここに書いてございますが、原子力発電所の敷地境界で放射性物質が漏れ出ている場合といったものでございます。これも、後ほど原子力規制庁さんのほうから御説明いただきます。

 それから、事態に適切に対処するために、厚生労働省としての緊急時対応センターへの派遣などの適切な措置を行う。

 注4がいわゆる要員の限定でございます。ちょっと長い法令の名前でございますが、いずれにせよ、基本的に原子力事業者がやるという中で、緊急対策時の現場での機器の損傷、高度なメカニックでないと直せないような機械が壊れた場合には、一部、請負業者が入るということを事前に明らかにしておくということでございます。

 それから、注5、6は飛ばしまして、注7でございますけれども、当然のことながら、被ばく線量の最適化の観点から、作業の進捗状況、作業員の被ばく推移等々で段階的な引き下げを行った上で、1Fと同じように原子炉が安定した場合には速やかに廃止する。

 それから、注8に書いてございますのは、1Fと同様に、こういった特例緊急作業に従事された方に関しましては、データベースにデータを蓄積していくということでございます。

 説明は以上でございます。

○森座長 ありがとうございました。

 続いて、規制庁のほうからも、緊急時の作業範囲などについての前回の質問について、追加で御説明いただけるそうです。よろしくお願いします。

○佐藤課長 原子力規制庁の規制企画課長の佐藤でございます。本日も説明の機会をいただき、ありがとうございます。

 前回にも私から、危機管理の観点で災害時の対応を御説明させていただきましたけれども、そのときに緊急作業の考え方などについて御質問ございましたので、きょう、改めて、それにつきまして2種類の資料を用意させていただきました。

 まず、1つ目の資料が資料集の23ページに資料3ということで、「被ばく線量を考慮した緊急作業の考え方」というものを御用意させていただきました。これは、被ばく線量がどうしても現状の100で作業することが困難なときというのは、どういった状態のときが考え得るのかというのを規制庁として、少し整理したものでございます。

 まず、1ポツとして、原子力災害対策特別措置法、原災法と言っていますけれども、これの原子力緊急事態というものが参考になり得ると考えております。

 原子力災害対策特別措置法は、原子力緊急事態というものを定義しておりまして、それは何かというと、最初の丸で書いておりますとおり、放射性物質又は放射線が異常な水準で原子力事業所外へ放出された事態、こちらを「原子力緊急事態」として定義しております。前回も私、御説明させていただきましたけれども、「原子力緊急事態」になりますと、5km圏内に住んでおられる住民の方は避難するとなっております。

 それで、この「原子力緊急事態」に先立つ形として、1ポツの2つ目の丸にありますけれども、原災法第10条には、この「原子力緊急事態」の前兆事象というものをまとめております。これは、すなわち原子力事業所の区域の境界付近において、基準以上の放射線量が検出されたこと。あるいは、その他政令で定める事象が発生した場合に、こちらは緊急事態の前兆ということで、10条によりまして、これは一般には原子力発電所の所長が該当しますけれども、原子力防災管理者が国に通報することになっております。

 この10条段階においても、避難につきましては、5km圏内の住民の中で要支援、いわゆる健常の方と違って、避難のときに支援が必要な方々に対しては、この10条段階で避難が開始されるとなっております。

 それで、3つ目の丸ですけれども、原災法の15条に基づいて、この10条の通報事象が異常な水準の放射線量以上である場合、または緊急事態の発生を示す事象として政令で定めるものが生じた場合は、内閣総理大臣が緊急事態を宣言するという段取りになっております。

 それで、2ポツ目として、こうした緊急作業の考え方で、この「原子力緊急事態」の考え方からひも解いてまいりますと、放射性物質または放射線の異常な水準の放出あるいはその可能性が高い事象というものが、この緊急時の被ばく線量限度を分ける一つの目安になり得るのではないかと思います。すなわち、放射性物質が放出されているということでありますので、当然のことながら、その作業環境というのは線量が通常とは違う状態で作業するということでございますので、これが一つの目安になるということでございます。

 少し専門的な説明になりますけれども、2ポツの(1)として、原災法10条の中には、政令で、こういった場合、ああいった場合と詳しく定めてありますけれども、その中でも事業所の区域の境界線付近において、5μSv/h、毎時5μSv以上の放出放射線量を検出する場合は、明らかに区域境界線の外に漏れ出ているということ。あるいは、管理区域外の場所において50μSv/h以上ということ。これも、区域内ではありますけれども、管理区域外ですから、本来あってはならない場所で、こうした高い線量が検出された場合などについては、私、申し上げているとおり、ある程度そういった放射性物質が放出されていることが明らかでないかということ。

 それと、丸2でございますけれども、こうしたある程度線量が目安として定められているものもあれば、10条事象の中には、使用済燃料プールの水位が維持できない場合や、施設以外に起因する事象によって放射性物質又は放射線が事業所の外へ放出される又は放出されるおそれがあるということで、すなわちこれは何を意味しているかと申しますと、敷地内外・管理区域内の作業場で放射線量の増加や放射性物質の放出の兆候を示すものということでございます。

 この一例で挙げています使用済燃料プールの水位を維持できなくなると、使用済燃料がある意味むき出しになると、いわゆる遮蔽効果が失われてしまいますので、放射性物質が外に放出されるということでございます。これは、間違いなく、そういった異常な水準で放出されるということが当然予想されますので、こうしたものも緊急事態の中で、緊急作業の被ばく線量を分ける目安としてなり得ると思っています。

 (2)として、原災法の15条事象というものがございます。これは、緊急事態に該当する全ての事象でございます。一例を挙げますと、この資料に書いてございませんが、先ほど私、申し上げた使用済燃料プールの水位を維持できない場合というのが、この10条事象でございましたけれども、15条事象では、この部分の書き方が、水位が下がって、使用済燃料が2mの長さまで水に浸っていない状態となった場合ということでございます。

10条の事象では、水位が維持できないということで、当然それで放射性物質が異常な水準で出てくるのではないかということが予想されるわけですけれども、15条になると、具体的に2mの長さ以上、水に浸っていないということであれば、これは当然、放射性物質が異常な水準で放出されている。そうした中での緊急作業ということであれば、これはどうしても高線量下での作業がやむを得ないと考えられるかと思っております。

 このように、被ばく線量の100ミリシーベルト、あるいはそれを超えて250ミリシーベルトの中で作業するということを、分け目としては、こうした放射性物質が放出されている、あるいはそのおそれがある場合ということを、原災法でかなり定めておりますので、こうしたものが活用できるのではないかと私ども、考えているところでございます。

 続きまして、25ページに資料4というものを御用意させていただいています。先ほど事務局から御説明ありましたけれども、「緊急作業に従事する対象者に関する考え方」というものでございます。こちらについても、同じように原災法で、ある程度対象者を限定しております。

 原災法では,原子力事業者、いわゆる電力会社とかに対して、原子力事業者防災業務計画(防災業務計画)を作成することを法律で義務づけているところでございます。

 それで、この防災業務計画にどういったものを載せるのかということについても法令で定めておりまして、そこに幾つか書いてありますけれども、原子力防災組織の編成、防災要員の職務、さらには防災教育や訓練の実施等について記載することを求めているところでございます。実際に防災組織の編成ということであれば、具体的に発電班とか放射線班とか、それぞれどういった職員がどういった班に属して、どういう仕事をするのかということも職務として書いていますし、防災教育についても、内容をどういった人たちに、どういった頻度で行うのかということも書き記すようになっています。

 また、訓練の実施についても、同様に規制委員会のほうに実施内容を報告するということも義務づけられているところでございます。

 そして、このように、基本的には防災業務計画は事業者の社員で対応することになっておりますが、防災業務計画の中には、必要な業務の一部については補助的に請負会社に委託することについて認めておりまして、それについてもしっかりと防災業務計画の中に書き記すことを定めております。具体的には、委託先の会社であれば会社名、それと、委託する業務の範囲内ということで、例えば機器損傷時の復旧作業ということで、例えば電源の復旧とかでどうしても必要な場合には、補助的に請負会社に委託することができるとなっていますが、その場合においても業者が決められていて、どういう仕事をするのかということも書き記すことになっております。

 以上のように、原子力災害緊急時の対応場面におきましては、原子力事業者に対して、組織や要員、その役割を含めて、あらかじめ体制を整備していることを求めておるところでございまして、対象となる緊急作業に従事する対象者としても、この原災法の防災業務計画の範疇である方々を対象にするということで、限定はかなりかけられるのではないかと考えているところでございます。

 私からの説明は以上でございます。

○森座長 ありがとうございました。

 それでは、第5は17ページからでありますが、ただ今、ございましたように、18ページの「3 緊急作業期間中の被ばく線量管理(要検討)」というところを中心に御意見をいただきたいと思います。いかがでしょうか。

 明石委員、お願いします。

○明石委員 1点、質問させていただきます。

18ページの今の座長の要検討の1つ前の注1は、先ほどの250ミリシーベルトというのを、「白血球の減少等、放射線の急性障害が発生するおそれのない上限値として設定された」と書かれているのですが、これはそういうことなのでしょうか。と言いますのは、別のところでもこういう議論をされたと思うのですけれども、20年ぐらい前は250ミリシーベルトというのが臨床症状が出る下限とされていたのですが、最近、被ばく医療の世界では、この250ミリシーベルトというのは余り使っていません。

 それから、この250ミリシーベルトがどこから出てきたのかというのは、いろいろな議論があって、炉基法とか障害防止法ができたときからさかのぼるという先生もいらっしゃいますし、私自身が20年ぐらい前に調べたときは、アメリカのY12事故をもとに、この数字を弾き出したと聞いています。アメリカではそういう合意をしているみたいですけれども、250ミリシーベルトの医学的根拠というのは、これくらいしか今のところ、私、見当たらないと思うのですけれども、エビデンスがあって決めたということなのでしょうか。

○安井室長補佐 これは臨床症状としてではなくて、250を浴びると白血球数の減少が見られる。下限値として複数の文献があるということで設定してございます。御案内のとおり、白血球が減少しても、直ちに何らかの病名がつくということではございませんので、そういった意味でICRPなどでは500を使っていくということでございますけれども、1Fの事故のときは、そういった白血球の減少が始まることがないぐらいのレベルで抑えるべきだという議論で、250を設定したという経緯がございます。

○森座長 前川委員、お願いします。

○前川委員 注1の書きぶりを見ると、これはその字句どおり判断すると、250以下では発生しないという理解になってしまって、それでいいのかなという感じがするのです。実は、例えば男性の一過性の不妊というのは150ミリぐらいで発生するという報告もあるぐらいですから、250だから大丈夫という書きぶりでいいのかという、先ほどの明石委員の御指摘と同じような感じがするので、こういうふうに断言してしまっていいのですか。

○安井室長補佐 もう少しきちんと文献を調べまして、正確な表現にさせていただきたいと思います。

○森座長 では、先に明石委員にお願いします。

○明石委員 私は、今、安井さんが言われたようなことを言ったのではなくて、これは250を決めるときに白血球の数が減るという上限値ということで、250ミリシーベルトを設定されたのかという質問です。

○安井室長補佐 これ以下では、白血球が減るという文献はなかったということです。例えば200ミリシーベルトで白血球が下がりましたという文献は、発見できなかったということです。

○森座長 では、伴委員。

○伴委員 今の件について補足しますと、、ICRPは、骨髄機能低下のしきい線量は500ミリグレイ、等価線量で500ミリシーベルトと言っています。しきい線量の定義は、集団の1%の人に影響が発生する線量ですから、厳密に言うと、それ以下でもその症状を呈する人が若干はいる可能性がある。むしろ、非常に敏感な人がいれば、しきい線量以下でも症状は出るわけですね。ですから、その意味で、500より低いところで白血球数の減少が見られたという文献があっても不思議ではないと思います。

 ただ、明石先生が言っておられるところは、私もよくわかるのですが、本当にそれがこの250の根拠になのかどうか。つまり、もともと国際的に言われている500という数字があって、それはまさに今、言ったICRPなどのしきい線量に根拠があるわけですけれども、その500そのものではなくて、多少の猶予をもって250にしたということじゃないかと私は理解しています。そういうことではないのですかという念押しです。

○安井室長補佐 1F250に上げたときの報道発表等を確認しましたところ、先ほど私が御説明したような説明を対外的にはしておりました。

○森座長 ここのところは、次回までに文献を調べて、もう一度整理していただくことでお願いします。

○安井室長補佐 もう少し正確な表現にさせていただきます。

○森座長 では、今の2の注1以外で、特に先ほども申しましたように、3の具体的な要検討の部分についていかがでしょうか。杉浦委員。

○杉浦委員 3のアで書いてある意味は、厚労大臣がというところで意味合いがわかりました。

 そうすると、特例緊急被ばく限度が使われる人は、この原子力事業者の方のみということになって、当初いろいろ議論があった、線源が転がり出したときの人命救助といったことは全然考えていなくて、この報告書の頭から見直していたのですけれども、緊急作業というのがそこしか検討していないよということを明らかにしないと、そっちはどうなってしまうのかというところが少し残るかなと思っています。私は、限定した議論でいいのではないかと思っているのが1つ。

 もう一つ、当初から言っていたのは、ボランティアという言葉があったかと思うのですが、それについては、多分、次のところの教育訓練を受けてあらかじめ指定している中で、そのとき、私が行きますということではなくて、あらかじめ決めておくということで、職務上、やらざるを得ないので、同意をきちんと教育訓練とあわせて指定されるときにするということで、そういうことを考えていますという整理にしていくのかなと、2点、述べさせていただきました。

○森座長 今の点、いかがですか。対象の限定ということですが。

○安井室長補佐 第1点につきましては、18ページの注2に救急救命士、医師、警察官、消防官といった専門職種以外の作業者ということで、先ほど御説明ありました救命行為といったものは入れないという整理にしてございます。

 2つ目の話につきましては、後ほど特別教育のところで御説明させていただきます。

○森座長 では、ほかにいかがでしょうか。

 前川委員、お願いします。

○前川委員 17ページの(1)のイですが、福島原発での経験を踏まえると、「これを超える限度を設定してまで行う必要がある緊急作業は現時点で想定されない」。これは断定してよろしいのですか。例えば、突発的なこと、想定外のことがいっぱい起こる可能性は、これから長い廃炉工程の中であると思うので、こういう書きぶりをすると、本当にそうなのと素直に思ってしまうのですが、いかがでしょうか。

○森座長 規制庁のほうから、お願いします。

○佐藤課長 原子力規制庁でございます。

 危機管理の観点からは、前川先生がおっしゃるとおりだと思います。起こり得ないということを考えずに、対応するときは対応しなくてはいけないというのは、原子力規制庁としてはそのように考えているところでございますけれども、危機管理の観点からはそうしているということでございます。こういった想定外は必ず起こり得るという姿勢で対応しなくてはいけないと思っています。

○安井室長補佐 厚生労働省といたしましては、福島第一原発でかなり複数の原子炉のメルトダウンが同時に起こった場合で、250ミリシーベルトを超えるケースは例外的にしかなかったということでございますので、日本の原子炉の現状を前提にした上で、ここに書いてございますが、現時点では想定されないという表現を使わせていただいてございます。

○森座長 限定すべきかどうかという話ですね。

 ほかにいかがでしょうか。

 そうすると、3番は、今回、行われたことの中で、緊急事態が発生したときは自動的というか、直ちに上げるということと、その対象は限定的であるということを明確にした。それ以外については、状況に応じて適切に管理して下げていくといったことを確認しているということなので、よろしいでしょうか。

 伴委員、お願いします。

○伴委員 だから、「想定されない」と言ってしまっていいかどうか。そこは、言葉の問題、表現の問題かもしれませんが、想定はできると思います。福島の事故で4号機の燃料棒が破損したらどうなったかということを考えると、非常に大変な状況になっていた。そのときに同じようにできたかというと、わからない。だから、あり得ないとか想定されないという表現はふさわしくないのかなと思います。

 そうかといって、全く何も定めないというふうにも、厚労省側としてはいかないでしょうから、そこに一定の仕切りを置こうとする発想はわかるのですが、表現として、あり得ないとか想定されないというのは誤解を招くのではないかと思います。

○森座長 この書きぶりを検討いただくということでよろしいですか。ありがとうございます。

 それでは、よろしければ、この第5につきましては、今の点、次回までに検討いただくということで終わらせていただきたいと思います。

 続きまして、「第6 特例緊急作業又は緊急作業に従事する者に対する特別教育の在り方」について、御説明をお願いいたします。

○安井室長補佐 それでは、21ページの「第6 特例緊急作業又は緊急作業に従事する者に対する特別教育の在り方」を御説明いたします。

 まず、「基本的考え方」といたしまして、先ほど御説明しましたような特例緊急作業のほかに、電離則7条で現時点で定めております100ミリシーベルトの基準がございますので、これは引き続き残るということでございます。そういった緊急作業に従事する者、この2つのカテゴリーの方に対して、放射線による健康影響等のリスクを理解させるとともに、作業内容、保護具の取扱等を教育することによって、作業中の被ばく線量を低減させることを目的とした教育を行うということでございます。

 教育の対象といたしましては、特例緊急につきましては、先ほど御説明したとおり、「破滅的な状況」を回避することを主たる目的とした作業ということでございます。それに必要な知識や技能を有する者のみを対象とするということでございます。

 それから、一般的な緊急作業につきましても、事故対応のために必要な高度な知識及び経験を持つ者を対象とすることを想定してございます。こちらについては、もうちょっと詳しく想定したいと思いますが、現実問題として、エックス線の照射装置の故障とか、線源、ラジオアイソトープが転がり出たような状態が想定されるわけでございます。特例緊急作業及び緊急作業に従事する労働者に対する特別な教育は、原子炉施設又は加工施設等での放射線業務従事者に対する特別の教育の受講者に対して上乗せ実施するということでございます。

 注1は、電離則42条、つまり従来の緊急作業の定義を述べてございます。特例緊急に関しましては、その対象は原子力施設に限られるわけでございますけれども、この緊急作業につきましては、放射性同位体使用施設とかエックス線発生装置を使用する事業場ということでございますので、対象はかなり広いということでございます。

 注2でございますが、緊急作業実施中につきましては、前回御指摘もございましたが、特例緊急被ばく限度を適用しないけれども、とりあえず現場に入っていただきたいという方は必ず出てくるということでございますので、そういった方につきましても、速やかに教育を行った上で作業に従事していただくことになることを想定してございます。

 「教育の実施」の内容でございますが、特例緊急作業又は緊急作業に労働者を就かせるときには、次の項目について、特別な教育を行うということでございますが、ここも今までの検討は全て特例緊急作業のことしか考えておりませんでしたので、それ以外の緊急作業においても同じ教育をする必要があるかどうかにつきまして、今後、精査をさせていただく予定でございます。

 その前提で御説明いたしますと、まず、アは、放射線の生体に与える影響ということで、これはICRP等でリスクを理解させるということで必須の要件として入れてございます。

 あとは、緊急作業を行う際に必要となる知識ということでございますので、被ばく線量の管理、緊急作業の方法、保護具、放射線測定、応急手当といったところについて、まず座学をする。その上で、原子力施設における作業の方法と機器の取扱い。保護具、放射線測定器の取扱い。応急手当の実施につきましては、実技もやるということでございます。これにつきましては、何かほかのつけ加える項目があれば御指摘いただきたいと思います。

 実施の頻度でございますが、従来、特別教育と申しますのは、教育は1回切りであったわけでございますけれども、まず座学につきましては、教育実施後に変更が生じる。こういった緊急マニュアル関係は、非常に高い頻度で変更されると思いますので、そういった変更があったものにつきましては、座学をやり直す。

 それから、実技につきましては、10年前にやって、それきりというわけにはいきませんので、技能の維持ということで、年に1回の再教育というのを義務づけるということを考えてございます。ただ、ふだんから保護具を扱っている方につきまして、全員、もう一回やる必要はございませんので、十分な知識・経験を有している方につきましては、省略を認めるということでございます。これにつきましては、告示で詳細な教育項目と内容及び講義時間を検討する必要がございますので、これは次回までにお示ししたいと考えてございます。

 説明は以上でございます。

○森座長 ありがとうございました。

 それでは、この教育について御意見いただければと思います。

○杉浦委員 先ほどの同意について説明いただきたい。

○森座長 同意の件、お願いします。

○安井室長補佐 同意につきましては、労働法の観点から申し上げますと、雇い入れ時もしくは作業が変更になったときに労働条件を明示した上で、双方合意の上で労働契約を結ぶということを大前提にするということでございます。それに加えまして、この特別の教育を受けるということ自体が、当然、作業に従事するということになるわけでございますので、そちらでその特別教育を受けるかどうかというところの話し合いの中で、意思の確認は同時にできると考えてございます。

 ただ、労働法につきましては、使用者の指揮命令で、もっと言えば使用者の責任において作業に従事させるというところが大事な点でございますので、同意をとったから、あるいはとっていないからといって、そういった事業者の責任を一切揺るがせることはないというところは明確にしたいと考えてございます。

○森座長 それでは、よろしいですか。

○前川委員 これは全て努力目標ですか。

○安井室長補佐 教育は義務づける予定でございます。

○森座長 ほかにいかがでしょうか。

 杉浦委員、お願いします。

○杉浦委員 特例のほうではなくて、緊急作業について、教育の内容を分けるかというところがありますけれども、実際に、これは先ほどの安井さんの説明の中で、特例ではないのだけれども、現場に入っていく人もいるという対象だけでしょうか。それとも、一般のことに広がっているのでしょうか。もし広がっているのだとすると、現行の法令を変える必要があるというのは、かなりすごいことを言うことになると思うので、そこまでの議論は私は参加したくなかったのですけれども、いかがでしょうか。

○安井室長補佐 おっしゃるように、ラジオアイソトープの使用施設とかエックス線の発生装置を使っている事業場において、こういった緊急作業を前提にした教育をするかということにつきましては、現実可能性といいましょうか、というところからかなり問題があるのではないかと考えてございまして、そういったところにつきまして、きちんと整理して、次回お示ししたいと考えてございます。

○森座長 ほかにいかがでしょうか。

 道永委員、お願いします。

○道永委員 今と関連しているのですが、21ページの教育の対象者のアです。「『破滅的な状況』を回避することを主たる目的とした作業のために必要な知識や技能を有する者のみを対象とする」と書いてあります。注2では、もしかしたら、建設重機の運転者などが従事する必要がある場合が想定されると書いてありますので、原則としてそういった有するものを対象とするほうがよろしいのではないでしょうか。可能性がある方は含んでおかないと、速やかに通常の放射線業務従事者の特別教育というのでは間に合わないような気がいたします。

○森座長 いかがでしょう。

○安井室長補佐 御説明が悪くて大変恐縮ですが、注1に書いてございますのは、特例緊急被ばく限度を適用される方については限定しますと。注2に書いてある方は、限度は適用しない前提で現場に入っていただく人もおられますということで、この方につきましては、通常の放射線業務の特別教育ということで、ここに書いてある特別の上乗せ教育ではない、通常の特別教育をやった上で入れようということが書いてございます。表現ぶりがわかりにくくて。

○杉浦委員 そういうことであれば、さっきの私の意見は少しトーンが下がります。

○森座長 では、明石委員。

○明石委員 先ほど同意のことを少し御説明されたのですが、ここで言っていることと全く違うことだと思うのです。福島の事故が起きたときに、緊急作業をする人はあらかじめ骨髄を凍結するみたいな議論をしたことが実はありました。これはそんなこととは関係ないのですが、そういうことが同意の中に含まれるような背景をつくってはいけないような気がするので、何かそこを担保できるような、いい文言が私自身、浮かびませんけれども、入れられたらどうかと、ちょっと感じています。

 以上です。

○安井室長補佐 そういう議論が行われたことは承知してございまして、前川先生なども詳しいと思いますが、結果的にはやる必要がなかったのではないかということでおさまったというのが私の認識でございます。そういう特別な措置をすることと、同意をあえて結びつける必要があるのかどうかが、ちょっとよくわからないところがございます。

○森座長 限度も違いますね。よろしいですか。

 ここは、時間も含めて、それから特例緊急作業との教育内容の関係も、まだ整理が必要だということで、次回までにお示しいただくということでお願いします。緊急時の教育というのは、実際役に立たないと余り意味がないわけですが、全然違う想定で教育を受けても余り役に立たないということから、そのあたり、少し検討いただければと思います。よろしいですね。これは次回へ持ち越しです。

 それでは、ありがとうございました。これで、本日予定されている第1から第6までの議論を終了させていただきたいと思います。事務局のほうで次回までに準備いただくもの、特に第1の3の健診項目の部分については祖父江委員の意見もいただきながら、お願いします。それから第4の4が、本日新しく出てきて、まだ御意見はこの場ではなかなかまとまらなかったものがありますので、特にそこの点についてはぜひ追加の御意見が必要と思っております。

 追加の御意見につきましては、3月27日の月曜日を基本的には期限とさせていただきまして、それまでに事務局にメールなどで提出いただければと思います。

 それから、事務局は、本日の議論、追加の意見、それから、さらに整理が必要な部分について、それらを踏まえて次回までにさらに報告書案を練っていただきまして、次回の検討会までに準備いただければと思います。

 それでは、次回の予定について事務局から御説明をお願いいたします。

○前田室長 次回の予定でございますが、第5回検討会は4月17日金曜日、午後3時30分から開催予定でございます。よろしくお願いいたします。

 以上で第4回「東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会」を閉会させていただきます。本日は、熱心な御議論、どうもありがとうございました。

○森座長 どうもありがとうございました。


(了)

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