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2014年12月26日 第1回東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会  議事録

○日時

平成26年12月26日(金)
14:00 ~ 16:00


○場所

厚生労働省専用第12会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

○前田電離放射線労働者健康対策室長 ただいまより、第 1 回東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会を開催いたします。本日は大変お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。

 初めに、本検討会は全議事カメラ撮影を認めますが、議事進行の妨げとならないよう、指定の場所から撮影いただきますよう、報道関係者の皆様へ事務局よりお願い申し上げます。また、本検討会の委員として放射線影響研究所の児玉先生に就任いただいておりますが、本日欠席とのことで御連絡を頂いております。

 それでは検討会の開催に当たり、まず厚生労働省安全衛生部長の土屋より御挨拶を申し上げます。

○土屋安全衛生部長 安全衛生部長の土屋でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。本日は大変お忙しい中、また年の瀬のこの時期にお集まりをいただきまして、誠に恐縮でございます。どうもありがとうございます。開会に当たりまして、一言御挨拶申し上げたいと思います。

 本検討会、御参集いただいた趣旨ですけれども、御案内のとおり東電福島第一原発におきましては、平成 23 3 14 日から 12 16 日まで緊急作業被ばく限度、これを 100mSv から 250mSv に引き上げてきた経緯がございます。この間、通常の被ばく限度である 5 年間 100mSv 、これを超えることになった方が 174 人に上っており、また、そのうちの 6 人の方は 250 シーベルトを超えるという状況になったということがあります。厚生労働省では、これらの緊急作業従事者の方々に対する長期健康管理のために、厚生労働大臣が指針を定め、被ばく線量に応じたがん検診等の実施を事業者に求めるとともに、離職後は国がこれを実施するということでやってきたところです。

 この検討会では、事故から 3 9 か月が経過したということを踏まえて、今申し上げました大臣指針に定めている健診項目の妥当性のレビューを行っていただくとともに、 100mSv を超えた方々に対して、今後どのような線量管理を行うべきかなどにつきまして検討いただきたいと考えております。

 この検討会、今後月 1 回のペースで御議論をいただき、できましたら来年 5 月中には報告書を取りまとめていただければと考えております。その結果を私ども行政政策に反映したいと考えております。今申し上げましたように、大変タイトなスケジュールの中で御議論いただくわけですが、大変恐縮ですけれども、この検討会での自由闊達な御議論をお願いしたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

○前田電離放射線労働者健康対策室長 なお、土屋部長におきましては、他の公務のために途中で退席をさせていただきます。

 次に出席者を御紹介します。資料 1 2 ページ目に参集者名簿がありますが、この名簿の順に紹介します。独立行政法人放射線医学総合研究所理事の明石真言委員です。公益財団法人原子力安全研究協会放射線影響研究所長の杉浦紳之委員です。大阪大学大学院医学系研究科社会環境医学講座環境医学教授の祖父江友孝委員です。東京医療保健大学東が丘看護学部教授の伴信彦委員です。東京大学名誉教授そして認定特定非営利活動法人災害人道医療支援会理事長の前川和彦委員です。公益社団法人日本医師会常任理事の道永麻里委員です。産業医科大学産業生態科学研究所産業医実務研修センター長の森晃爾委員です。オブザーバーとして、原子力規制委員会原子力規制庁原子力規制部原子力規制企画課長の佐藤暁様です。

 本検討会には座長を置くこととなっています。事務局としては、事業場の健康管理を担当する産業医学の専門家である産業医科大学の森委員に、本検討会の座長をお願いしたいと考えておりますが、よろしいでしょうか。それでは、今後の議事進行につきましては森座長にお願いいたします。

○森座長 それでは、皆さんよろしくお願いいたします。大変僭越でございますが、御指名ですので、今回、検討会の座長をさせていただきたいと思います。今回は既に 100mSv を超えた被ばくをされた方への対応とともに、今後の、いざというときのための様々な準備、その他非常にたくさんの議論をする形になりますので、是非、円滑な議事の進行に御協力いただければと思います。

 それでは、本日の議事に入る前に、事務局から資料の説明、確認をお願いしたいと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。 1 枚目が次第で、 1 ページ目に資料 1 があります。 3 ページ目が資料 2 です。 5 ページ目に資料 3 です。 7 ページが資料 4-1 です。 13 ページが資料 4-2 です。続きまして 19 ページが資料 5 です。 25 ページが資料 6 です。 27 ページが資料 7 です。それから、 31 ページが資料 8 です。 37 ページが資料 9-1 です。 45 ページが資料 9-2 です。 53 ページですが、資料 9-3 です。 61 ページが資料 10 です。 63 ページが資料 11 です。 69 ページが資料 12 です。 73 ページが資料 13 です。 75 ページが資料 14 です。 79 ページが資料 15 です。 81 ページが資料 16 83 ページが資料 17 です。 87 ページが資料 18 です。 89 ページが資料 19 です。 93 ページが資料 20 です。 113 ページが資料 21 です。 117 ページが資料 22 です。 119 ページが資料 23 です。 121 ページが資料 24 です。以上です。

○森座長 資料の不足等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。よろしければ本日の議題に入りたいと思います。まず「本検討会の進め方について」、事務局から説明してください。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 資料 1 2 について、説明させていただきます。 1 ページ、開催要綱です。「趣旨」としては、東京電力福島第一原子力発電所の緊急作業従事者に関しまして、離職後も含めた長期的な健康管理を行うというところですが、その中で、特に通常の 5 年間の被ばく限度である 100mSv を超えた方に対する線量管理の方法について検討を行う必要がある。こういったことに関して検討会を開催するということです。

 「検討項目」ですけれども、 (1) が、離職後も含めた長期的な健康管理の在り方。 (2) が、 100mSv を超えた方々に対する線量管理。 (3) が、より一般的に緊急作業従事期間中の健康管理の在り方。 (4) がその他です。

3 ページ目の資料 2 です。「専門家検討会の進め方」ということで、事務局のほうで案を載せています。日程としては、第 1 回が本日ですが、現状の把握と論点提示、論点に関するフリーディスカッション。第 2 回は 1 15 日を予定していますが、第 1 回で出ました質問等への回答と、論点ごとの検討。第 3 回が 2 20 日ですが、報告書の骨子案を提示し、それに対して検討いただく。第 4 回は第 3 回の議論を踏まえた報告書の原案を提示し、それに対して議論いただく。第 5 回ですが、第 4 回の議論を踏まえて報告書案について、さらに検討いただくということになります。もう 1 つ予備日ということで、 5 月中に予備の日程を確保しようと考えています。報告書の公表につきましては、可能であれば 5 月中にお願いしたいと事務局としては考えているところです。以上です。

○森座長 ありがとうございました。今、説明がありました本検討会の進め方そのものについて、何か御意見、御質問がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。

 それでは、次に本日の議題に入りたいと思います。今回は第 1 回目ということもありますので、委員の皆様と現状を共有することを主な目的と考えております。資料の最後に、 121 ページからですけれども資料の 24 がありまして、ここに大きく 6 つの論点を示して、今回の検討会で順番に議論をしていこうという形になっております。その 6 つの論点について、本日はそれぞれ資料が用意されております。今回はこの資料をそれぞれの担当の方に説明いただきますけれども、資料が非常に多いということもありまして、全てやった後に質問というのは内容が分からなくなってしまいますので、ブロックごとにこちらで指定しながら説明いただき、ブロックでまとめて質問をいただくという形で進めていきたいと思います。また、今日、委員の方にもそれぞれ事務局以外でも説明いただきますけれども、大変量が多いこともありますので、是非、時間厳守でお願いしたいと思っております。よろしくお願いします。

 それでは論点 1 「健康診断等、離職後も含めた長期的な健康管理のあり方」に関して、資料 3 から 7 が相当しますけれども、事務局から説明を 15 分以内でお願いいたします。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 事務局から御説明をさせていただきます。 5 ページの資料 3 です。これは、現時点におきまして東京電力福島第一原発における被ばくの状況を示しているものです。表 1 が平成 23 3 11 日からの累計の線量ですが、実人員で 39,190 人の方が本年 10 月までで従事をされておられます。その中で 100mSv を超えた方は 174 人、そのうち 250mSv を超えた方が 6 人ということでして、最大の被ばく線量は 678mSv です。

 表 2 が「平成 26 年度の作業員の累積被ばく線量」でして、こちらにつきましては、 10 月末現在で 16,360 人の方が従事されておられまして、最高の被ばく線量としては 39.85mSv です。 50mSv を超える方はおられない状況です。

 資料 4-1 を御説明させていただきます。これは、東京電力福島第一原子力発電所におきます緊急作業者の方々の長期健康管理のために作成された指針でして、平成 23 10 月に作られたものです。目的といたしましては、緊急作業期間中に通常の放射線業務の被ばく上限を超える線量を被ばくした方々につきまして、がん等の晩発性の健康障害の発生の懸念があることと、健康上の不安の解消を目的といたしました適切な長期健康管理を実施することを趣旨にしてあります。

 内容につきましては第 2 2 にありますが、「がん検診等の実施」です。 (1) にありますように、 50mSv を超えて 100mSv 以下の方につきましては、次のページですが、細隙灯顕微鏡による白内障に関する検査。 (2) ですが、緊急被ばく線量が 100mSv を超える方につきましては、そこの表にありますように甲状腺検査、胃がん検査、肺がん検診、大腸がん検診を実施しています。

3 「保健指導等」ですが、このがん検査等の結果を総合的に考慮した保健指導を実施するということです。また (2) に書いてありますように、メンタルヘルスケアを含めた健康相談につきましても、十分に実施をしていくということです。

 第 3 にありますのは、厚生労働省が実施しているデータベースの整備です。これにつきましては健康診断結果、イにありますように「線量等管理実施状況報告書」を法令により求めまして、それを厚生労働省に設置していますデータベースにおきまして一元的に管理をしています。このデータベースに登録された旨を証する書面、これは登録証と言っていますが、これを全員に送付しています。

10 ページの (4) です。 50mSv を超えた方々につきましては手帳を交付していまして、そこに被ばく線量と健康診断結果の主要な記載が盛り込まれていて、それを一覧で見られるようにしています。

 第 4 1 で、国が行っている事項です。国といたしましては、第 4 1 に書いてありますように、がん検診等の受診を勧奨する通知を行っていること。 2 ですが、国による保健指導等の窓口を開いて、健康相談又は保健指導を行っています。 3 で、国の援助ということです。 3 のアですが、現に職業に就いていない方、離職された方につきましては、先ほど申し上げました検査に関する費用の全部又は一部の援助を国が行うということです。そういった支援を行っているということです。

13 ページ、資料 4-2 ですが、長期健康管理の実施状況です。 1 で「登録証の発行状況」ですが、緊急作業従事者 19,675 人中 19,338 人、 98.3 %の方に登録証を送付済みです。これを送付できていない方につきましては、引き続き住所等の確認を実施しているところです。

50mSv を超えた方々に配布いたします手帳ですが、これは基本的に申請によるということですの、全員の方に申請の勧奨を行っていまして、現在、その特定、 50mSv を超えた方 904 人のうち 781 人の方に手帳を発行済みです。

3 番、 14 ページですが、平成 24 10 月から平成 25 9 月までの間に行われました健康診断の実施調査の結果です。特殊健診、これは電離則に基づく血液検査等ですが、これにつきましては対象者数 7,325 人につきまして 92.7 %の実施状況です。一般健診につきましては、同じ対象者数のうち 91.9 %ということです。これにつきましては、線量が把握されている方、 2 回以上被ばく線量の報告があったという方を集計していますが、必ずしも連続して働かない、常時従事されていない方も含まれていますので、 100 %にはなっていない状況です。

(2) ですが、これは頂きました健康診断の結果をデータベースに登録している状況です。こちらにつきましては、平成 26 6 月に督促等を行った関係で若干遅れておりまして、登録状況は大体 77 %、 71 %ということですが、これにつきましては順次登録をしているところです。

4 の指針に基づくがん検診等の状況です。表 3 15 ページにありますが、これは現職の方について事業者の方が実施するものにつきましては、白内障の目の検査が 777 人中 67.4 %の実施率、がん検診につきましては 154 人中 96.8 %の実施率です。

 表 5 ですが、これは離職者です。既に離職をされていまして、国による援助を行っている方々につきましては、白内障の検査が 166 人中 40.4 %、がん検診につきましては 20 人中 45.0 %の実施率です。

19 ページ、資料 5 です。これは福島県内において放射線業務に従事している方の健康診断の実施状況です。 19 ページの 3 を見ていただきたいと思いますが、電離健康診断があります。こちらには有所見率を報告いただく形になっています。有所見率と申しますのは、例えば所見欄に何らかの要精密検査といった医師の所見が記載されていることで、判断基準は 95 %の方が含まれるようになっていますので、 5 %程度は出てくるのが自然というものです。これにつきましては、有所見率につきまして、全国平均で 7.32 %、福島県で 7.66 %、富岡署労働基準監督署、これは東京電力の福島第一と福島第二原発を所管している署ですが、 5.84 %です。これは震災前の平成 22 年と比較いたしますと、それぞれ上昇しています。また、平成 24 年と比較いたしましても、若干上昇しているというところです。除染の健診も行っておりますが、これにつきましても平成 24 年と比較いたしますと上昇しています。

 イですが、各検査項目です。最も高いものは白血球数で、有所見率が 2.8 %です。これにつきましても上昇しているところです。

(2) の被ばく実効線量につきましては、平成 25 年の 5mSv を超える割合は 19.9 %、除染等健診が 0.7 %です。これはそれぞれ平成 24 年と比較しまして、被ばく線量につきましては減少しています。推定の平均加重計算で被ばく線量を比較しましたところ、電離放射線、つまりは原発の中で働かれている方の平均加重が 5.27 、除染の方が 2.59 ということで、原発の中のほうが 2 倍ほど高いという状況です。

21 ページの 4 「考察」に飛ばさせていただきます。我々の関心事項として、どうしても放射線の健康影響があるのではないかという項が気になるところですが、平成 22 年と平成 24 年の報告を比較いたしましたところ、富岡労働基準監督署管内のうち 70 %の事業場は入れ替わっておりますので、単純な比較はできないということと、当然のことながら年齢構成とか、禁煙・飲酒、そういったものの既往歴の情報もないということですので、これで直接の比較はできる状況ではありません。

 先ほど申し上げました被ばく線量に関しましては、原子力発電所の従業者の方のほうが線量は約 2 倍高いわけですが、健康診断による有所見率につきましては、除染電離則のほうが高いことになっていますので、線量とは逆相関の形になっていまして、こういったことからも放射線被ばくと有所見率の上昇の関係は明らかではないということです。

 また、それぞれの有所見率で一番高いものは 4 %、「白血球百分率」ですが、これももともと 95 %、つまり 5 %の外れ値があることを前提にしております健康診断のそもそもの考え方から見て、特断の異常ではないとは考えています。さりながら、放射線による健康影響の評価は行う必要があると考えていまして、平成 26 年度後半から疫学的研究を実施しております。それについては、次の資料で御説明をさせていただきます。

 次は、 25 ページの資料 6 です。これは平成 26 6 月に発表されました、疫学的研究のあり方に関する専門家検討会の報告書の概要です。これに基づきまして、今後、疫学研究を実施するということです。

2 で「調査対象集団」ですが、緊急作業従事者約 2 万人全員を調査対象集団といたしまして、それを生涯にわたってトラックするということです。

3 の「研究対象とする健康影響とその把握」です。これにつきましては、各種のがんと白血病等を把握するということですが、健康診断に加えまして、がん登録制度、人口動態調査による調査といったものを組み合わせて調査を行うということです。また、 4 にありますように「累積被ばく線量の把握」も同時に行うということです。

5 ですが、交絡要因と申しますのは、それぞれの健康影響と被ばく両方に影響するものにつきましての影響を排除するということでして、これにつきましても調査を行って、そういったもののコントロールを図るということです。

6 「研究体制」です。研究全体を統括管理する「統括研究機関」を指定して研究を実施することになっていますが、これは本年の公募で放射線影響研究所が実施主体ということで決定をしていまして、平成 26 年度に 2,000 人の予備調査を行うべく、現在、準備中です。私からの説明は以上です。

○井上産業保健支援室長 私から、資料 7 に基づきましてストレスチェックにつきまして御説明したいと思います。本年 6 月に交付されました改正労働安全衛生法によりまして、平成 27 12 1 日からストレスチェック制度が事業者に義務付けられることになっています。

 この制度の目的ですが、一次予防を主の目的とする。労働者のメンタルヘルス不調の未然防止になります。このストレスチェックを行いまして、その結果に基づきまして労働者自身のストレスへの気付きを促す、あるいはストレスの原因となる職場環境の改善につなげことが目的となっております。

 「改正の概要」としまして、ストレスチェックを実施することが事業者の義務となったということです。ただ、労働者数 50 人未満の事業場につきましては、当分の間努力義務となっております。この結果につきましては、非常に機微の情報でもありますので、本人の同意なく事業者に提供されることは禁止されることです。先ほど一次予防と申し上げましたが、高ストレスだ、ストレスが高いという労働者から申出があった場合は、事業者として医師による面接指導を実施することが義務となりますし、それを理由とする不利益な取扱いは禁止される制度になっています。医師による面接指導の結果に基づいて、事業者として必要に応じまして就業上の措置を講じることになっています。

 こういう改正内容につきまして、今回、検討会で検討しました報告書が今月 17 日にまとまりましたので、その内容を 28 29 ページに載せています。この中で、実は先ほど申し上げましたストレス原因となる職場環境の改善につなげるという部分があります。この部分につきまして、 28 ページの下のほうですが、ストレスチェックを改善につなげるために、集団的な分析の実施と分析結果に基づく職場環境の改善を事業者の努力義務とするということで、これにつきましては、省令でこういった努力義務を課すことを規定することを予定しているところです。ストレスチェックにつきましては、以上です。

○森座長 またあとで、今、事務局からの説明については、御質問の時間を取りたいと思います。次に、最近の主な放射線疫学研究についてまとめていただいておりますので、資料 8 9 に基づきまして、祖父江委員からお願いしたいと思います。 15 分以内でお願いいたします。

○祖父江委員 大阪大学の祖父江です。資料 8 は、昨年度の研究班で緊急作業者の方々に対して行った甲状腺の検査に関する研究班の報告です。これは東電でばく露群として、下の図ですが、甲状腺の等価線量 100mSv を超える人たち 1,972 人に対しての甲状腺検査を行うということで、それに対応する線量の低い人約 2,000 人に対して同様の検査を行って、超音波の検査の結果を比較するという研究を計画し、実行したということです。

 次のページをめくっていただくと「研究の方法」としては、甲状腺超音波検査の方法としては、主におおむね福島でお子さんに対してやっている甲状腺検査と同じ判定基準で A B C というものです。結果として、 1,972 人の対象者の方々に対して健診を行おうとしたのですが、受診された方は結局 627 人、受診率は 31.8 %と。対照者 2,000 人を集めようとしましたが 1,437 人、合計 2,064 人の方に対して甲状腺検査を行ったという結果です。ばく露群、対照群、それぞれ健診の結果としては、要精検となる二次検査推奨 B の割合が、ばく露群で 10.7 %、対照群で 9.5 %と。若干ばく露群で多いですが、余り差はないということです。それを年齢別に見たのが下の図ですが、 B となる判断をされる方々は、年齢依存で、年齢によって高齢になるほど増えていくという非常にきれいな感じになっています。

 研究班の中で線量の再評価を行って、直接ヨウ素 131 が実測されている人が A B 、そうでないセシウムから推定したことを C D ということで、全て評価し直して、 A B の方、あるいは緊急作業に従事していない、内部被ばくの恐れがない方、これが #N/A の所です。それの人たち、そのデータを用いてその後の集計をしています。結果、線量との A1 A2 B C との判定の結果が、 A2 となった人の割合が、結果の 2 番目ですが、線量の高い分で高い傾向があったということですが、 B C に関しては特に有位差はなかったということです。

 次のページ、これを cyst nodule 、嚢胞と結節を別に見ると、特に cyst のほうでその傾向が強いことがありました。ただ、結果、中間報告としては、対象者のバイアスとか、あるいは被ばく線量の推計に伴う不確かさなどがあるので、本研究から観察されたのみで結論を導くのは危険であると。特にばく露群において、我々が行った甲状腺検査以前に甲状腺検査を行って、受診されていた人の割合がばく露群で 56.9 %、対照群では 5.6 %と。この結果をきちんと把握した上で解析しないと、やや危険であるということで、今後、これを把握する努力をすることが必要だということです。

 もちろん、今回の結果は精密検査の結果を把握しているわけではなくて、甲状腺がんの発見率がまだ比較できていません。ですから、今後、それをきちんと収集して解析することが重要だということです。これが研究班の報告です。

 資料 9-1 は、本来、児玉先生が出席されて御説明されるところを、私が代役ということでさせていただきます。資料 9-1 が、主に原爆被ばく者コホートの結果です。資料 9-2 が、それ以外のものの研究結果をできるだけレビューしましたと。資料 9-2 は、私が自分でやったというよりは、法医研の吉永先生に手伝っていただいたということです。

 資料 9-1 から説明しますと、主にがん・白血病に関しては、従来の追跡を延長して解析を更に細かく行ったということです。がん・白血病ということですが、第 1 報の小笹先生の中に、がん以外の疾患の死亡の解析もしています。そういう中で「循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患でのリスクが増加したが」という記述もありますが、これはまだほかの研究等々を含めて検討する必要があるということでありました。次の裏の図を見ていただくと、臓器ごとに過剰リスクがそれぞれ異なっていることもありますが、おおむね増えているという感じであります。

2 報目が甲状腺がん。これについても過剰相対リスクが 1.28 ということで、被ばく時年齢が低いほどリスクが高いと。従来言われていたことを更に確認していることだと思います。

 次が皮膚がん。次のページをめくっていただいて、尿路上皮のがんのリスク、肝がんのリスク、こういったものは、交絡要因はきちんと制御した上でもリスクは出ていることを確認している研究だと思います。 6 報目が、白血病・リンパ腫。 7 報目が骨髄異形成症候群 (MDS) に対するリスクと。こういったものが新しく報告されています。

 原爆被ばく者コホートで、がん以外の疾患の放射腺との関係が、割とトピック性のあるところとして報告されていますが、第 8 報目として慢性腎疾患の死亡、第 9 報目として慢性腎臓病と、こういったところが放射腺と関係があるのかどうかというところで、緊急作業者の人たちに対する健診の項目を考える際に、こういうことが少し問題になってくるのではないかということで、腎機能等の検査が必要ではないかということが検討されるべきだと思います。 10 報目が、脳卒中です。こういったがん以外の脳疾患に関する放射腺との影響が検討されているということです。

 資料 9-2 へいきますと、全てをきちんと網羅できていないところはあるのですが、第一の報告としては「原子力施設作業者」ということで、第 1 報目は、ドイツの原子力施設作業者、第 2 報目がカナダの原子力施設作業者、第 3 報目がフランス、第 4 が日本のものです。これが放射線影響協会が行っているものです。第 5 報目がフランスのウラン加工施設作業者、第 6 報目がアメリカ、第 7 報目がフランスの原子力施設、それで第 8 、第 9 といきますが、これも従来から行われている線量との関係を詳細に検討したものを蓄積していることだと思います。

 むしろ今回の緊急作業者に関して知見としてもう 1 つ注目すべきが、チェルノブイリの緊急作業者・事故処理作業者の方々の報告だと思いますが、それが資料 9-3 としてあります。 C- 1、 C-2 、それぞれありますが、チェルノブイリ事故作業者全体としての報告と、エストニアとか、バルチェク 3 国、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアというそれぞれの所から報告があるものがあります。

 おおむねがんに関しては上がるという感じの報告ですが、非がんの報告、特に C-1 などは非がんの疾患として甲状腺の良性疾患、自傷、アルコールに関連する疾患、こういったものの過剰リスクが認められた。あるいは、がんの中でも甲状腺。 C-2 については甲状腺のリスクが全体として上がっているとか。 C-6 、ケースコントロールスタディーを行って、これはきちんとヨード 131 の内部被ばくを評価した上での因果関係といいますか、相関を見ていて、過剰リスクが 0.38 となっているとか。そういう報告もあります。あとは、がんの罹患率が C-3 C-4 、それぞれ増えているところです。 C-5 に関しては、これはケースコントロールスタディーで leukemias を見たと。それから、 B-cell lymphoma を見たのは C-8 と。

 チェルノブイリのがん以外に関しての疾患のリスクが増えているところを少し注目して、健診の項目に関して検討することも必要かと思います。あと、生活習慣といいますか、放射線以外の健康影響が大きいようで、アルコール関連の疾患が増えているとか、メンタルのところが問題になっているとか、そういったところも注目して検討すべきかと思いました。以上です。

○森座長 とても簡潔にまとめていただきました。ここまでで論点 1 の資料整理が終わりました。論点 1 は、先ほどの 121 ページにあります (3) 検討のポイントという項目がアからエまであるわけでありますが、これと照らし合わせて、今、御説明を頂いた資料の 9 までで何か御質問がありましたら、お願いいたします。

○前川委員 教えていただきたいのですが、資料 8 100mSv で切られているのですが、対照群も同じ緊急作業者ですよね。

○祖父江委員 はい、対照群で。

○前川委員  100mSv で切っていて、 100mSv を超えている人はばく露群で、 100mSv 以下が対照群というのは、両方ともばく露群ですよね。

○祖父江委員 これは東電で取りあえず 100mSv という境で対象者を設定して、それ以下のところも含めるということでの対照群です。結局、再評価をして、ばく露と対照という区別はなくして、線量だけで区別をして比較することを後の解析ではしています。

○前川委員 では、一般的には対照群というときには、セックス・マーチ、エイジ・マーチとかを非ばく露群を取ると思うのですが、対照というと全く何もばく露されていないという理解をしてしまったので、あれ、おかしいなと思ったのですが、そうではないのですね。ちょうど 100mSv で切ったというだけですよね。

○祖父江委員 そうです。「低線量群」と言ったほうがいいかもしれません。

○前川委員 低線量群と高線量群ですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 追加で御説明させていただきますが、この対照群は、緊急作業従事者は基本的にはほとんどおられなくて、東京電力及びその一部の協力企業の一般的な放射線業務従事者という形で選んでいます。同じ作業をしている人を選ぶことを優先しましたので、どうしても被ばくはゼロにはならなかったという形です。

○明石委員 明石です。今の対照群は、今回の作業に従事していないということになると、被ばくはほとんど外部被ばくだということですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうです。内部被ばくは基本的にない方々です。

○明石委員 原爆の被ばく者の調査の疫学で、非がん疾患で、私の知識では線量との対応関係、反応がはっきりとしていなかったり、かなり線量が高いところに差があるという理解をしていたのですが、やはりそういうことでよろしいのでしょうか。

○祖父江委員 私も余りきちんとした知識はないですが、従来、割と高線量のところでの影響を注目していたのを、今、非がんの疾患に関しても、低線量で検討されつつあるという感じの流れだと思うのですが。伴先生などはどうですか。

○伴委員 原爆の調査に関しては、死亡診断書に頼っている LSS の研究と、あと、実際に臨床的に検査をしてやっている AHS がありますが、 LSS の場合どうしても誤分類とかが出てくるということが指摘されていて、実際に心血管影響のリスクが上がっているとする研究でも、心筋梗塞では増えていなくて、心不全が増えていたりとか、そういった指摘があります。それから、確かここには出ていないですが、最近の論文で呼吸器疾患に関しても、そういった診断上のあやといいますか、そういったものの影響を受けているのではないかという指摘はあります。

 今の非がんの影響ですが、放射線そのものの影響と、先ほど言ったアルコールも含めた、生活習慣も含めて、ストレス関連も含めてのそれ以外のものは、疫学調査では結構区別されて整理されているのでしょうか。

○祖父江委員 いや、 LSS とかですと、生活習慣の情報がなかなかないので、それは限られた調整になっていると思います。むしろ原子力発電所の従事者に関しても、余り生活習慣に関する情報があるものは少ないのです。ですから、職種とかで調整するというところに限られていて、具体的な喫煙、飲酒、生活習慣というところまで踏み込んで調整しているものは、恐らく少ないと思います。

○森座長 ほかにいかがですか。よろしいですか。よろしければ、続いて論点 2 及び論点 3 の資料の御説明に移りたいと思います。論点 2 123 ページ、論点 3 124 ページですが、「緊急作業従事期間中の健康管理のあり方」及び「緊急作業中の原子力施設内の医療体制確保のあり方」がテーマになります。それでは、事務局からまずお願いいたします。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 それでは、 61 ページの資料 10 について説明いたします。これは、実際に第一原発の事故の際に、安衛法の第 66 条第 4 項に基づき、福島労働局長が東京電力に対して臨時健康診断を指示した内容の一覧です。時系列で並べています。

 まず平成 23 3 16 日に、第 1 回目を指示しております。このときは、対象者としては、緊急作業がそれほど長くなるということを前提にしておりませんでしたので、緊急作業を終了した後の方に健康診断をするという発想です。検査項目についても、自覚・他覚、それから赤血球、白血球、血液検査、皮膚検査、いわゆる特殊健康診断の項目を実施するということです。検査の頻度については、退所後、 1 2 3 5 7 14 21 28 日目でやってくださいという指示でした。

4 10 日で、検査対象の項目の中に体重測定を付け加えています。これは、全身状態の手法として付け加えるべきだということで入れています。検査の日程については、 2 3 5 日目は、医師の判断で省略できるという緩和措置を入れたのが 4 10 日です。

4 25 日、この頃になると、どうも緊急作業がそんなに簡単に終わらないということが分かってきました。まず緊急作業に従事している方も、 1 か月たったら必ず健診を受けなさいというような形の対象者の追加をしています。検査項目については基本的には同じですが、白血球、赤血球については、 2 回目以降の検査を省略できるという省略規定を入れています。検査の日程については、まず出ていった方については、速やかに 1 回実施し、その後は 1 か月に 1 回でいいということ。先ほど指示があった 1 2 3 5 7 日、そういった細かいものは不要であるというようにここで修正しています。それから、従事期間中の場合は月 1 回、原則としてやってくださいということです。これは、作業の長期化に伴うものです。

7 26 日は、 1 か月を超えてというところの解釈が明確でなかったということで、断続的に働かれる方については、実稼働日数 20 日以内、 20 日で 1 か月とカウントしてくださいという解釈を示したものです。

8 5 日は、検査日程の関係で若干の変更をしています。緊急作業期間中は月 1 回、退所してからは 3 か月の間は 1 か月に 1 回行ってくださいということを付け加えたことと、従事期間中は原則として、暦日の月 1 回ということですが、断続的に従事する場合は、 20 日以上働いた段階でやってくださいという、そういった明確な指示に変更したものです。

 平成 23 12 16 日、これが 250mSv の特例省令を廃止した日ですので、原則として、 100mSv を超える被ばくは今後発生しないという大前提の下で通達を整理しており、 100mSv が現に超えた方については、退所後 3 か月までの間、健康診断をやってくださいということ。平成 24 4 30 日までの緊急作業に従事した者、これは、いわゆる経過措置があったので、一部の方については 250mSv を適用しておりましたので、その方に対する対応を取ったということです。

 それが 5 1 日、経過措置の終了ですので、原則としてフォローアップの 3 か月を経た上で、この一連の措置を終了したという流れです。説明は以上です。

○森座長 続いて、資料 11 について、前川委員から御説明をお願いいたします。

○前川委員 私に与えられた課題が、急性放射線障害の事例と検査に関する医学的指針ということになり、まず最初に JCO 事故での急性障害、それからチェルノブイリの急性障害。最後に、急性放射線障害に関する検査に対してどのような医学的な指針があるかということについて申し上げます。

JCO 事故の内容については、皆さん御存じだと思いますので、割愛させていただきます。まず線量評価は、臨床的に急性障害ですから、一番大切なのは線量評価です。線量評価の目的は、第一に治療方針の決定。それからトリアージといって、たくさん傷病者が出た場合、どこの医療機関へ搬送するかということを決定する基本となるものです。

 これは、基本的には、 JCO 3 名の高線量被ばくの患者さんは、その詳細な線量評価は、これは放射線医学総合研究所で行われました。実は、こういう個人線量評価を本当に正しくやるという所は、残念ながら放射線医学総合研究所が唯一です。 JCO 事故のときには、そこで線量評価を行いました。その内容についてはまた後で申し上げますが、こういういろいろな形での線量評価の方法、何分、御存じだと思いますけれども、事故被ばくというのは、均一な被ばくではなくて不均等被ばくというのは特殊で、その事故線量を出すことは非常に難しいところがあります。 3 名の方々の線量はそこに書いてあるとおりです。

3 名の方々が発症したのは、これは一般に急性放射線症候群 (ARS) と略します。これは一般に前駆期、つまり前駆症状が発現する時期。それから潜伏期、症状がなくなる時期。発症期は、症状が出る時期。それから、回復するか、あるいは死亡するかというように大きく 4 つに分けられます。その最初に出てくる前駆症状は、大体全身に高線量率で 1Gy 以上の被ばくがあると、急性放射線症候群を発症すると言われております。つまり、ある一定量の細胞死が起こって、ある臓器の形態学的な変化、あるいは機能不全が起こると、臨床的に観察できるということです。ある程度の被ばく線量が必要だということです。

 前駆症状というのは、一番被ばく線量が高かった A さんは、被ばく直後に一過性で意識喪失し、それから被ばくして 10 分後に嘔吐、被ばくして 70 分後に下痢をしました。前駆症状の発現時期と被ばく後の発現時期、それから被ばく線量というのは、かなり相関するということで、前駆症状では発現時期を、臨床医の線量計というように称することもあります。それから、 B さんは 30 分後に嘔吐し、それぞれ非常に高い被ばく線量であることがこれから分かると思います。

 急性障害ですが、 A さんにおいては、唾液腺障害、唾液腺が比較的放射線の感受性が高いので、被ばく線量とは相関しないのですが、この 3 名の方々とも、血清中のアミラーゼという唾液腺から出る酵素ですが、それは上がりました。血管透過性の亢進、それから骨髄障害は御存じだと思いますが、放射線障害の一番大きなテーマとしては骨髄障害ですけれども、 A さんは非常に早く骨髄障害が起こって、この方には、妹さんを提供者とする末梢血幹細胞移植を行いました。生着しましたが、その後、大量出血、大量輸血、それから血球貪食症候群、つまり赤血球が壊されるというような状態になって、再び骨髄不全に陥っています。

 また、皮膚障害は、この方については、ほぼ全身に広がる皮膚障害があり、後でも出てきますが、被ばく線量に応じて変化するので、大体流れとしては、紅斑、それから腫脹、落屑、水疱形成、表皮剥離、そして、乾性壊死となりますが、それを正に線量依存性に、時間依存性に変化しました。ただ、腸管障害は、大体実験で、動物実験などでは高線量被ばくで下痢が非常に重篤になり、そのために敗血症で死ぬということが実験的には言われておりますけれども、この方では、 26 日頃から大量の下痢が始まり、それから今度は消化管出血に入って、とうとう止血不能でした。

B さんにおいても、骨髄障害、皮膚障害が起こりました。

C さんは最も被ばく線量が低かったのですが、骨髄障害だけは観察され、好中球、つまり白血球が被ばく後 21 日目に最低値になりましたが、 G-CSF というサイトカインを投与することによって自己機能を回復いたしました。この方は、確定的影響の急性障害ではないのですが、急性期の時期に起こる白内障が 2002 年頃から症状が始まり、被ばく後 3 年の 8 月に両側の白内障の手術を受けられています。

 チェルノブイリでは、報告されているものでは、特にリックリーターという方がどうだったかということの、急性障害の報告はほとんど見られないのですが、 On-site で数日間、現場で働かれた方は 1,000 人と言われていますが、その人たちの中で、今、お話したような急性放射線症候群は 237 名が当初疑われまして、キエフの病院、モスクワの軍病院に収容されましたが、最終的には、これは国連の UNSCEAR で、もう最終的にレトロスペクティブに確認したのは 134 例ということでした。このうち、 28 例が事故後 4 か月以内に亡くなられましたが、ほかに 2 例が被ばくと関係なく下敷きになったりして、外傷により事故直後に亡くなられています。

 特に大きな問題だったのは、この被ばく形式では、高線量の全身の被ばくと、ベータ線熱傷、これは消防士の人たちが返り水、つまり火を消した返り水を浴びて、防水の保護衣でなかったため、着衣にベータ線各種が付着し、それでベータ線熱傷というものを起こしたということが非常に問題になりました。初めて臨床の現場でベータ線熱傷が話題になったのは、チェルノブイリ事故でした。

 骨髄障害も全例にみられて、骨髄移植はアメリカから行った専門家がやりましたが、余り成功しなかったようです。それで死亡の内容などは述べられてはおりませんけれども、骨髄移植が 13 例、胎児の幹細胞移植が 6 例行われました。

 ということで、ベータ線熱傷が非常に多く見られて、これが亡くなった主因の原因の 1 つでもあって、急性放射線症候群の重傷度とベータ線熱傷の範囲とは相関したことが報告されております。いわゆるリックリーター、周辺地域で除染処理作業を含む復旧作業に従事した人たち及び一般公衆における急性障害という報告はみられません。

 急性放射線障害に関する検査ですが、実際、医学的な指針というほどのものはないと思いますけれども、これから述べるものは急性放射線障害の診断のための極めてコモンセンスです。目的は先ほど申し上げましたが、被ばく線量の推定。もちろんこの急性放射線障害ばかりではありませんで、同時に、外傷だとか、あるいは内因性疾患を合併していることがあり、そういうことも診断しなければいけない。それから、現場から適切な医療機関へ搬送し治療する必要がありますので、それをトリアージといいますが、それの根拠となるためにこの諸検査をいたします。

 先ほど来述べられていますように、血球検査 (CBC) と一般に申しますけれども、被ばく直後から最初 24 時間は 4 時間ないし 8 時間ごと、その後は 12 時間ないし 24 時間ごとにやって、先ほども述べられていますように白血球分画などは特にやる必要はある。リンパ球というのは最も血球成分の中で放射線感受性が高いものですから、これが早くから減少するということが言われておりまして、リンパ球数の減衰と、被ばく線量との相関があるということは既に知られていることです。これも必ずやる必要があります。

 あとは、血液生化学と申しますが、これは合併疾患、例えば外傷を受けているとか、あるいは内因性疾患、心筋梗塞を起こしているときには、どうしてもこういう検査が必要になります。また、被ばくを受けると唾液腺が非常に感受性が高いということから、血清アミラーゼ値が上昇しますので、血液生化学を必ずする。血液型は当然であります。それから、万が一高線量被ばくで骨髄不全が起こると、幹細胞移植を行うことがありますので、 HLA という、これは免疫抵抗試験ですが、このための採血をする必要があります。

 染色体、これもいわゆる被ばく線量評価のゴールドスタンダードとなっているのは、今もって染色体の異常分析ですので、そのために血液を採る必要があります。

 放射線による臓器障害のマーカーとして、 Flit-ligand 。これは血液が分化していくのを支配するものです。その血液濃度を測ることによって、どれぐらいの骨髄の造血機能が残っているかということが判断できるとか、あるいは血漿のシトルリン値、小腸粘膜の障害の指標ということで、これを調べたほうがいいということは最近言われております。また、サイトカイン、 IL-6 とか、 CRP は、いわゆる炎症に伴って上昇するものですが、被ばく線量と相関するということで、これも取っておいたほうがいいであろうということ。尿や便では、尿の一般検査、沈渣、それから内部被ばくが疑われる場合には、バイオアッセイのために、尿もためる、便もためるということが必要になってきます。

 前駆症状は、一般には、吐き気、嘔吐、下痢、頭痛、発熱、それから一過性で意識障害、あるいは唾液腺障害等を前駆症状と言いますが、これは一時期現われて 48 時間後には大体なくなることが普通なのですけれども、それが現われる時期と被ばく線量、つまり、被ばく線量が高ければ高いほど前駆症状は早く現われると一般に言われております。こういうものをよく聴取し、被ばく線量を推計する。それから、合併損傷による症状。

 全身理学所見、皮膚紅斑、先ほど来出ていますが、高線量被ばくですと、最初に出るのは皮膚紅斑ぐらいで、想像するような皮膚がただれるとか、皮膚がむけてくるようなことは直後にありませんので、せいぜい紅斑です。最初に皮膚障害の兆候として捉える必要があります。

 その他、補助診断法として、いろいろな放射線を含む検査をやっておくことが推奨されます。これらが常識的に、今、急性放射線障害を診断し、線量評価につなげるという意味での医学的なコモンセンスだと思います。

○森座長 ありがとうございました。続いて、資料 12 について、杉浦委員より御説明を 5 分程度でお願いいたします。

○杉浦委員 今、前川先生から 2 番のチェルノブイリの所で御説明があった内容とほぼ一緒でございます。この UNSCEAR2008 年報告書の日本語訳が、放射線医学総合研究所の訳によって出されているものの関連部分の抜粋です。

2008 年報告書の付属書の D に、「チェルノブイリ事故からの放射線による健康影響」とありますが、その中の 49 項から 53 項に今、前川先生から御説明があったようなことの本文があり、次ページの付録の C の所に少し細かいデータが載っております。御参考いただければと思います。私からは、ここについては以上とさせていただきます。

○森座長 ありがとうございました。続いて、資料 13 について、明石委員より御説明をお願いいたします。

○明石委員 健康管理を行っていく上で、急性障害はどのような項目が必要か、どのような内容かということを考えると、論文でいいのが出てこなかったのですが、幾つか少し関連できるかなと思うものを拾ってみました。

 その 1 の所に書いてあるのは、先ほどから出ている放射線の急性障害で、皮膚障害の代表的なものです。これは実際、被ばくされた方側の因子として、こういう病気を持っている、こういう薬を飲んでいると、飲んでいない場合、こういう病気を持っていない場合よりも、皮膚障害がひどく出るという。つまり、感受性を高くしている因子と考えられている。これは、余りこういうことを言う論文はないのですが、こういうことが書かれています。

 例えば、膠原病があるとか、アレルギーがあるとか、代表的なものは、この AT は言うまでもないのですけれども、そのほかに例えば、肥満の人と肥満でない人との皮膚障害の比較なども出ていて、こういう因子も皮膚の障害に関係がある。薬もこういう薬剤を投与されている患者では、投与されていない場合よりも、放射線の影響が皮膚に出やすいといったものもありました。これは恐らく、問診とかでこういう項目を拾うかどうかということの参考にでもなればと思って、こういう内容を記載させていただきました。

 それから、 2 「部位による感受性の相異」というのは、これは当たり前のことなのです。例えば、足の裏や手の平とか、皮膚によっても放射線の影響が出る感受性は違っているというところも考慮する必要があります。

 次の論文は真ん中に書いてある。これは、どこにでも書いてある皮膚障害の閾値ということなのですが、先ほど前川先生の御紹介の中にもありますが、例えば紅斑を見ていくときには、初期紅斑といって被ばくをしてからほんの数時間の間に出る。ただ、初期紅斑というのは数時間以降から消えてしまいます。このような急性症状で言うと、前駆症状みたいなものが皮膚障害にもあって、その後、いわゆる真性紅斑が出てくるのだという、こういうのが皮膚障害の特徴です。

 論文によって多少、閾値と発症の時間とか違っています。これは当然なことなのですが、ほとんどの事故が、実はγ線を使った事故が多いということと、ただ、事故といっても、どの事故も同じものがないということもあり、多少の差、それから幅があるということで、 ICRP103 などでは、かなり幅を取った数字をもって閾値というように考えています。基本的に感受性、それから放射線の被ばく、例えばコバルトであるのか、イリジウムであるかということでも、必ずしも同じわけではありませんので、被ばくというのは、こういう考え方で見ていくのだという参考になるかと思って出しました。

 一番最後は被ばくによって起きる脱毛ですが、放射線被ばくによって、γ線で 7Gy とか、 8Gy では、永久脱毛というように書かれています。この真ん中に書かれている論文もそうなのですが、実は、そうではない方もいらっしゃいます。ですから、この辺はどう評価をするのかということはかなり難しくなってくると思います。一方で、脱毛の原因と書かれている所では、これは確かにこの論文を見ると、こういう病気で、いわゆるびまん性に脱毛が起きている例は紹介されています。それで、やはりここも放射線で起きている脱毛なのか、そうではない病気で起きているかの鑑別診断に必要ではないかと思って、参考に出させていただきました。以上です。

○森座長 ありがとうございました。ここまでで。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 説明させていただきます。資料 14 は、今まで御説明いただいた急性障害等が発生した場合に、原子力施設内において一体どのような医療体制を確保するのかという課題について、現状の原子力防災計画、そういったものについてどういった記載になっているかというところで御説明いたします。

75 ページは、まず原子力基本計画というものがあります。その中に原子力災害対策マニュアルというのがあり、そこの「救助・救急活動関係」で詳しく書いてあります。下線を引いた所ですが、原子力事業者に基本的に被ばく医療を行える体制を整備しておくということを求めていますが、今回の 1F の事故では、現実問題として、医療スタッフの確保が東京電力においてできなかった。厚生労働省が産業医科大学ですとか、労災病院の医師をあっせん、派遣したという経緯がありますので、それを踏まえて、医療機関それから関係省庁との連携をきちんとすることと、二重下線を引いていますが、緊急医療に精通した医師等のネットワークを活用した医療事業者の派遣又はあっせんについて緊密な連携を維持するということで、一定の支援はするということが盛り込まれています。

 それから、防災関係者は主に消防、警察、自衛隊ということになると思いますが、こういった者に関する放射線防護に関する基準ということも、あらかじめ定めることになっています。

 防災の訓練については、計画に出てくるのは住民の参加を考慮してということで、 On-site のことについての力点は余りないということです。

(4) の研修については、まず原子力規制委員会が行うのは、医療機関に対する研修です。防災要員及び協力会社の社員等に対しては、原子力事業者の責任において研修を行うということになっています。

76 ページ、「原子力災害対策マニュアル」ですが、これは下部規定になっています。 7 (2) の丸1に、放射線被ばく医療に関する医療チームの派遣ということで、これも住民の避難等実施をする可能性が高い場合に、地方自治体がチームの派遣を要請するということです。その丸1の下のほうにありますが、「現地医療班の指示する派遣先において医療活動を行う」ということになっています。現時点の解釈では、原子力施設の中にこの被ばくチームを派遣されることは想定されていない。

77 ページの丸3の (ii) ですが、被ばく患者等の搬送に関しては、原子力事業者から要請があった場合については、一定の支援をする。それから、緊急被ばく医療に関する指導・助言についても、原子力事業者から申出があっった場合には、適切な指導・助言を行うという程度にとどまっています。

78 ページの (4) は、事業所内については、まず現地医療班が厚生労働省と連携した上で、被ばく管理等の適切な実施を原子力事業者に指導をする。それから、現地医療班が、原子力事業者単独では原子力業業所内の緊急被ばく医療を行うことが困難である場合については、被ばく患者の応急措置を行う医療従事者の派遣又はあっせんに協力するということにはなっています。ただ、こういったことが円滑に実施できるような体制は、今後必要になってくるということです。説明は以上でございます。

○森座長 今、説明の論点の 2 3 に関わる資料 10 から 14 について、御質問がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。

 ちょっと私から、施設内の緊急被ばく医療について、事業者ができない場合の支援の話が少しありましたけれども、実際、今回の原発の中も、安全衛生の問題というのはかなり重要なテーマだったと思いますが、医療はもちろんのこと、医療以外。それについては、今のところ何の取決めもないですが、通常の事業者責任という範囲以内でやるということになっているのでしょうか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 この防災基本計画は、原子力に関わる部分で書いていますので、特段の記載は現時点ではございません。やらなくていいということではありませんが、記載はございません。

○森座長 ほかにいかがでしょうか。

○杉浦委員 資料 10 61 ページ。緊急作業が進む中で、実際に健康診断は始めは終わってからということでやられていて、 4 25 日から、これは長期化するので超えてしまった人については健康診断を実施したということですが、そのときに、 1 2 3 5 7 日という、こういう細かい日数を区切ってされたというところだと思いますけれども。何が言いたいかというと、後ろの検討の論点の所で、どの頻度で健康診断を長期化した作業のときにするかということで、健康診断をやると人手が取られてしまうのですね。そこの兼ね合いが今後の検討で非常に大事なのかと。もちろん作業者の方の健康というか、安全確保は重要なことだと思います。一方で、緊急事態ですから、作業は進めなければいけないという観点もあるのではないかと思います。

○森座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしければ次の論点 4 及び論点 5 。論点 4 は「通常被ばく限度を超えた者に係る中長期的な線量管理のあり方」、論点 5 は「緊急作業従事期間中の被ばく線量管理のあり方」について、初めに事務局より資料について説明をお願いしたいと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐  79 ページの資料 15 です。これが、福島第一原発でどのような形で緊急被ばく限度が適用されたかという時系列の表です。左側で、平成 23 3 14 日に特例省令を制定し、同原発における緊急作業期間中に限って 250mSv に緊急被ばく限度を引き上げたということです。その後、 11 1 日ですが、 11 月以降に新しく緊急作業に従事される方については、原則として 100mSv に引き下げることをやっています。ただ、トラブル対応に当たって、もし必要がある場合については 250mSv を適用するといった形で、 11 1 日に一時、一部の引下げをしています。

12 16 日がステップ 2 の完了ですので、これは原子炉の長期安定が確保されたということですから、緊急性は基本的になくなったという解釈に基づき、原則として通常被ばく限度を適用する形でやっています。ただ、さはさりながら、原子炉冷却、放射性物質の抑制、設備の機能維持のための作業は引き続き一部において必要であったということであり、この方については全て東京電力の社員ですけれども、現在も 100mSv の適用を受けている方が 50 人ほどおられます。適用の経過措置として、平成 24 4 30 日までに限り 250mSv を適用した時期がありますが、これについては 5 1 日で完全に廃止になっています。

 次に 81 ページ、資料 16 です。これは平成 23 4 28 日に発出された行政指導文書ですが、緊急作業により被ばくした線量と、通常の被ばく線量の合算をどのようにするかについて整理した通達です。記の 1 ですが、被ばく線量が 100mSv を超えなかった方については、緊急作業の被ばく線量と通常作業の被ばく線量を合算した上で、 5 年間で 100mSv を超えないように指導してくださいとなっています。これは裏を返しますと年に 50mSv を超えていいということを言っています。記の 2 ですが、緊急作業において 100mSv を超えてしまった方については、基本的に 5 年間は放射線業務に従事させないように指導することを示した通達です。

 飛ばして、資料 22 117 ページにあります。これは、そもそもどういう緊急作業があったかですけれども、 118 ページにあります注水による冷却作業、汚染水処理作業、水素爆発の防止のための作業、こういった作業については現在でも 100mSv を適用しているということです。説明は以上です。

○森座長 ありがとうございました。続きまして、資料 17 18 につきまして伴委員より 10 分程度でお願いします。

○伴委員 資料 17 ですが、作業者の緊急時被ばくに関して、 ICRP がどういうことを言っているかを Publication の中から抜き出してきました。 83 ページが、一番新しい主勧告である Publication103 、いわゆる 2007 年勧告です。最初に書いてあるのが 187 項で、胚 / 胎児を防護するために、妊娠を申告した又は授乳中であることを申告した女性は、こういった緊急作業に従事させるべきでないことが書いてあります。

247 項で最初のアンダーラインの所ですが、情報を知らされて、要は危険性を知らされて既に被ばくしている個人が自ら志願して人命救助活動に参加するか、又は破滅的な状況を防ぐことを試みている緊急時被ばく状況の場合には、線量限度は適用されないということです。ただし、中ほどのアンダーラインの所にありますが、緊急時被ばく状況であっても、その後期段階である程度状況がコントロールできるようになってきた場合には、通常の職業被ばくの防護基準に従うようにと書いてあります。一番下のアンダーラインは、先ほどの 187 項の繰り返しになります。

 表 8 に、緊急時被ばく状況における職業被ばくの参考レベルをまとめています。これは参考レベルですので限度ではありません。これを超えてはいけないという意味合いではなく、結局、これから何かをさせようというときにオペレーションの計画をするわけですけれども、その計画をするときに予測される線量がこれを超えないように、もしこういうレベルを超えるならば、それを超えないように十分なコントロールをした上で行いなさいということです。

 実際に何かこういったオペレーションをした結果、ここに書かれている線量を超えた場合には、臨機応変に対処することになります。救命活動に関しては線量制限がないということ。救命活動以外の緊急な救助活動については、 1,000mSv 又は 500mSv となっています。この 500mSv というのは後ほど出てきますけれども、 Publication60 1990 年勧告で出てきている数字です。 1,000mSv のほうは、 Publication96 というのがありますけれども、これはテロのような悪意を持って行われた汚染などに対する Publication です。その中で 1,000mSv という数字が出てきています。そういった緊急性のないほかの救助活動に関しては、 100mSv 以下の参考レベルを設定するようにとなっています。

84 ページですが、 Publication103 には本当にこれぐらいしか書いていないので、もうちょっと細かいことが書いているものがないか過去のものに目を通すと、 Publication75 というのがあります。これは基本勧告が Publication60 の時代に作られたものですけれども、現在も基本的なところはこれが生きていると考えて問題ないと思います。その 60 項にありますように、事故や緊急事態の際には、線量が線量限度を超えることがあるということです。

 少し飛ばして、 62 項にありますが、事故の結果としてかなりの被ばくがあったが、関連する期間の全線量が該当する線量限度を超えていない作業者のその後の管理にも、考慮を払う必要がある。これは 61 項でも、その限度を超えてしまった者に対しての措置が書いてありますが、 62 項では、超えていなくてもそういった考慮を払う必要があることが書いてあります。 62 項の一番下のアンダーラインですが、柔軟にやりなさいということが書いてあります。杓子定規に通常時の線量限度の中に収めるようにと考えるのではなく、状況に応じて柔軟な対応をすべきであることを述べています。

148 項のアンダーラインですが、緊急時に受けた線量のために、電離放射線を扱う作業におけるその作業者の将来の雇用が妨げられるべきではない、ということがあります。つまり、放射線の影響、リスクに関する考察は重要ですが、そこにこだわるあまりに、作業者の雇用機会を奪うようなことがあってはならないことが書いてあります。

85 ページで、これは Publication60 ですので 1 世代前の基本勧告になりますが、 1990 年勧告というものです。ここにも 225 項の所で、緊急時の作業者の線量は平常の線量とは区別して扱われるべきであることが書いてあります。ただ、ある程度状況が落ち着いたならば、たとえ緊急事態であろうと通常の職業被ばくの一部として線量管理を行いなさいと書いてあります。

161 項、 162 項は緊急時とは変わるのですが、そもそも線量限度の数字がなぜこういう数字になっているか、 1 つの根拠を示しています。 ICRP 1990 年勧告の中で、線量限度というのは、作業者にとってのリスクをトレラブルとアンアクセプタブルの境界に置くのだと言っていて、その数字が、 162 項にありますように全就労期間中に受ける総実効線量として約 1Sv という線を出してきています。

 以上、 ICRP の勧告から読み取れることは、線量限度というのは、あくまで平常時に職業の一部として受けるリスクが不当に高くならないようにという線を定めたものであって、それを超えたから必ず影響が出るということではない。だから事故に当たってはそこのところは柔軟に対応するようにというのが、ひとつのメッセージです。一部、健康サーベイランスとか医療的なことも書いてありますが、そういった医療的な介入に関しては、いわゆる確定的影響、組織反応が重要になり、その影響としてどういう影響が考えられるかという観点から対応するようにということです。その観点からひとつ重要になってくるのが、次の資料 18 です。

 資料 18 は、 ICRP が最近、確定的影響、組織反応に関するしきい線量の全面的な見直しをしています。それが Publication118 という形で出ていますが、その Publication118 の最初のパートを占めている Statement があります。この Statement の中で (2) の一番下の所にありますが、眼の水晶体に関して、すなわち白内障のしきい線量が従来より低いと考えられ、現在では 0.5Gy と考えられるという数字を ICRP は出してきています。次の 88 ページの (4) で、非常に不確かさは残るけれども、循環器疾患に関してしきい線量が、具体的には心臓と脳に対して 0.5Gy ぐらいであるかもしれないと述べています。ですから、白内障に関しては、従来しきい線量が 1.5Gy ぐらいの数字でしたが、これが 0.5Gy という線が出てきた。循環器疾患に関しては放射線治療患者などで出ることは分かっていましたが、 1Gy を下回るような線量で出るとは考えられていなかった。それを今、 0.5Gy というしきい線量を出してきた。

 さらに Publication118 の中で、これは情報がないのであくまで慎重を期してということではありますが、これらの影響に関しては分割照射の効果を考えないことにすると。ですから、その線量を一度に受けた場合も積算で受けた場合も同じと考えるとなっていますので、この辺りが今後、議論の重要なポイントになるのではないかと思います。以上です。

○森座長 ありがとうございました。続いて資料 19 20 について、杉浦委員からお願いいたします。

○杉浦委員 資料 19 IAEA Basic Safety Standards(BSS) 、いわゆる基本安全基準と言っているもので、資料 19 3 行目に 2014 年と書いてありますが、実際には 2012 年までに、先ほど伴先生から御紹介のあった ICRP 2007 年勧告を受けて改訂されているものです。 ICRP が防護の考え方、原則を考え、 IAEA のこの基本安全基準あるいは安全基準文書のところで、規制にどう反映するか書かれる文書ということで、 ICRP IAEA の文書の違いとしてそういうところがありますが、 2007 年勧告を受けて改訂されたものです。 co-sponsor の承認が取れるのに 2 年かかったということで、正式出版されたのが 2014 年という状況です。

 そこの緊急被ばく状況の所の記述を抜粋したものですが、基本的には先ほど ICRP のほうで御紹介があったものと同じで、 4.15 項であると普通の限度を超えていいのは救命、環境に著しい影響を与えうる重篤な異常事態の進展防止、大規模集団線量回避等が書かれています。

 その細かい数字ですが、本文の附則があって 4.16 項にその説明があります。 90 91 ページに表がまたがってありますが、先ほどは 500mSv ということで、はっきりと実効線量か何かといった線量概念について ICRP は言っていませんが、 IAEA のほうでは Hp(10) というのがガイダンス値の所で見ていただけると思います。これは個人線量当量という測定をする実用量の概念ですが、日本の法令で言うと 1cm 線量当量というものです。ということは、測ってすぐ分かる値でこのガイダンス値を与えていることが、 IAEA の文書では見るべきところなのかなと思っています。

 では、「測れるよ、外部被ばくでしょう」ということですが、 91 ページの表の下にある a のこの値はという所ですが、外部被ばくだけで、基本的に内部被ばくは呼吸保護具等々で緊急時においても防護されているというのが原則であり、パッと見て被ばく量が分かる外部被ばく線量で管理しようというのが根底にあります。

 しかしながら、 6 名の 250mSv を超えてしまった福島の例では、甲状腺の線量がかなり高いところにいっています。内部被ばくで上がっていて、外部被ばくについては恐らく 170mSv とか 180mSv ぐらいが最大であったのではないかと思います。 250mSv という値、 500mSv という値、いろいろ書かれていますけれども、そこら辺は外部被ばくでやれるのか、内部被ばくまできちんと見据えた上で、実際、我が国としては失敗した経験がありますので、そこら辺が BSS のところでは見るべきところだと思っています。

 基本的に書いてあることは、先ほど ICRP で伴先生が説明されたことと一緒ですが、言葉として出てきていなかったのは、緊急時作業に当たってトレーニングされているとか、リスクを認知しているなどいろいろ条件があるのですが、「志願」と書いてあって、英語の volunteer と志願が本当に同じなのか分かりませんけれども、「私、やります」みたいなところは、規制というところでどういうふうに考えられるのかも非常に難しい問題ではないかと思います。その辺が 4.17 に書いてあることです。

 これも先ほど ICRP のところでありましたが、 4.19 については、限度を超えた被ばくをした者であっても、働く権利が欧米諸国は非常に強く言われるところで、その記述があると思います。具体的な数字として 200mSv を超えて線量を受けた場合、また作業者が自分から望む場合には、医師の助言を受けてからまた仕事に戻るようにということで。 200mSv の意味はよく分かりませんが、 100mSv 5 年管理していて、次の 5 年分も浴びてしまったというところが 200mSv という数字の根拠かなと、これは私の想像です。 BSS についてはこのくらいです。

 資料 20 です。今回、線量限度を超えてしまった方の次の期間の管理をどうするかがメインで、諸外国がどうなっているか聞かれて、私も知らなかったのですが、 OECD のテッド・ラゾさんにたまたま会う機会があり、そういう情報があるか聞いたら、彼が「そんなのだったら聞いてやるよ」と、加盟国にクエスチョンネアーを送って聞いてくれ、その回答が 20 ページくらい諸外国の分があります。一応、プライベート・コミュニケーションですけれども、多分、オープンにしていいものですので配っています。

3 つのことを聞いてくれて、諸外国の緊急時の線量限度については調べたものがあるのですが、越えてしまった後のことをどうするかを Q1 で聞いています。先ほど参考レベルというお話がありましたが、限度として決めているのか、そういうレベル的なもので決めているのかということです。かっちりと限度として決めている国は少ないようです。作業者としてやっているのか、今回の福島のように消防、警察、自衛隊などが放射線作業者か、 Category1 Category2 という考え方でその数値も少し違うというのが Q1 です。

Q2 ですが、今後、越えてしまった人をどういうふうに管理していくか 94 ページに書いてあります。英語ばかりで申し訳ありませんが、基本的には仕事に就かせるけれども、何らかの制限をかけるということで、線量の大きさによって若干違うのが大体のところのようです。 94 ページの Question2 と書いてある所のすぐ下に、アメリカでは法令できちんと定めてあることが書かれています。その下で In emergency と書いてある下から 2 つ目のパラグラフですが、 100mSv をちょっと超えたような人たちは、その後は 10mSv 20mSv でやりますと言っている国があり、一番下のパラグラフでは、 200mSv を超えたらちょっと難しいみたいなことが書いてあります。どこまで超えているかというところも、ひとつあるのではないかということです。

Question3 は健康診断のことを聞いているのですが、これについては具体的なことがあまり書かれていないように思います。クリスマス期間中にもかかわらず、これだけのことをまとめていただいて本当にテッドには感謝しているのですが、私も読みこなせていないところがあって報告は以上とさせていただきます。

○森座長 大変な御努力、ありがとうございました。ただいまの論点 4 5 、資料で言いますと 15 から 20 までについて、何か御質問がございましたらお願いします。

○明石委員 先ほどの伴先生の御説明の中で、 Publication118 について分割効果を考慮しないと言っているのは、恐らく全て線量を保守的に考えてしまおうという考えですか。例えば分割すると少し効果は修復されるから、減るかなみたいな感覚は実際はないわけではないと思いますが、それを考えないで、この数字で読む場合には全て保守的に考えるという考えを反映しているということですか。

○伴委員  118 で、しきい線量の一覧が表にまとめられていて、急性被ばくの場合と慢性被ばくの場合で、多くのものはその両方のデータがあれば当然、慢性被ばくのほうが大きな値になっているのですが、この 2 つの白内障と循環器影響に関しては、分割の場合は急性被ばくの場合のしきい値をその期間に応じて割るとだけ書いてありますので、それは分割の効果を全く認めないということになるわけです。その背景にあるのは、心血管影響について言えば、そもそもメカニズムがよく分からない。なぜそんな低いというか、低いと言っても 1Gy あるいはそれ以下ですけれども、その程度の線量でそういった影響が起きるのか、メカニズムを説明しきれずにいることが 1 つ。ロシアの核兵器工場の作業者においてもリスクの上昇が見られる。彼らの場合は瞬間の被ばくではなく長期間にわたる被ばくなので、そういうことを考えると、そういう慎重さを期す必要があるのではないかと、多分そういう配慮だと思います。必ずしもはっきり書いてはいないです。

○森座長 ほかに、いかがでしょうか。

○明石委員 先ほど脳と心臓ですか、 0.5Gy という数字を出していました。防護の言葉でなく医療で考えると、確定的影響のほとんどは急性障害の入る数週間以内に入って、いわゆる晩発性、後発性影響に入る確定的影響と考えられるものとして、最近議論もありますけれども、白内障というのが代表的なものだと思います。ここで 0.5Gy というのをしきい値の可能性として表わすと、どう見てもこれが急性影響、つまり数週間の間に出てくる影響を考えているとは現実には思えないのですが、ここはどういうカテゴリーに入れているのですか。

○伴委員 これは急性影響ではないです。ただ、要はドーズレスポンスに関して ICRP が、いわゆる確率的影響と従来の確定的影響に分けたときに、確定的影響のほうに分類される影響であると。ただ、潜伏期間は非常に長くて 10 年、 15 年たってから出てくるようだというような感じです。

○前川委員 先ほどの ICRP Publication103 もそうですし、 IAEA GRS もそうですが、ちょっと気をつけなければいけないのは、緊急時被ばく状況と線量限度の中で、職業被ばくの参考レベル ( 8) というのがありますが、これは英語で読むと life saving であり、 other urgent rescue operation であり、 other rescue operation ということで、これは職業被ばくと言っても、もし救急隊員が入っていったり、あるいは医療者が入っていったりするときの作業内容で、緊急作業者の内容ではないのではないかと思うのです。 IAEA のほうは確かに急性の確定的影響を防止するための措置とか、破局的条件の進展を防止するための措置ということで、例えば原発内の作業者の作業内容はそうだと思いますが、 ICRP のこの表 8 は原発作業者の作業内容とは違うのではないかと私は思います。それで今、ここで 500mSv とか 250mSv という議論をするのは、私は医療者として「うっ」と思うのですが、どんなものでしょうか。

○伴委員 どこで、どう線を引くかというのは、実際の作業と照らし合わせたときになかなか難しいものがあると思います。本当に青天井になっている救命活動というのは、例えば自分の友人であるとか親族といった人を助けるために、とにかく自分はどうなってもいいから飛び込むというような状況を想定していると思います。その中間の他の緊急救助活動というのは、とにかく誰かが行かなければ破局的、破滅的な状況に陥る可能性があるのでという状況を想定しているのだと思います。そう考えると、その 2 つに該当する状況というのはかなり限られていて、先生がおっしゃるように、多くのオペレーションは一番最後のカテゴリーになるのだろうと思います。

○森座長 ほかに、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。よろしければ次に論点 6 「緊急作業従事者に対する特別教育のあり方」について、事務局からお願いします。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 資料 21 113 ページです。これは現時点で義務付けられている教育の内容で、緊急作業を前提にはしていません。いわゆる通常の放射線業務を行うときに、あらかじめ実施することが義務付けられている規程です。ほぼ内容は同じですが、 115 ページの原子炉のほうで御説明させていただきます。

 学科科目としては、核燃料物質及びそれに汚染された物、いわゆる物に対する知識、作業の方法に関する知識、設備の構造及び取扱いに関する知識、電離放射線の生体に与える影響と関係法令です。時間としては右側の覧に書いてあるような時間となっています。

 実技に関してはトータル 2 時間で、管理区域の出入り、保守及び点検作業のやり方、濃度監視のやり方、汚染の除去等のやり方、設備の取扱い、異常な事態が発生した場合における応急の措置などです。ここにおける異常というのは、通常から若干逸脱した逸脱事象で、今回のような 1F の事態を想定した教育はされていません。

 資料 22 については先ほど御説明しましたが、緊急作業として実際に必要となっているものについては、要するに資料 22 118 ページにありますように、放っておくと直ちに状況が悪化するもので時間の経過が許されない作業のことで、例えば注水による冷却、汚染水が漏れたときの漏出の防止、水素爆発防止のための機能など、一瞬たりともおろそかにすると劇的に事態が悪化するものを前提にしています。こういう運用で、現に 100mSv の方の運用はしています。

119 ページにある資料ですが、これはステップ 1 、ステップ 2 がある中でどういう作業をやったかということで、ステップ 1 、ステップ 2 で行われていたのが分類的には緊急作業と言われていたものです。こういう広範な作業を指していたということですが、ただ、ここに書いてあることが全て真に緊急性があるかというと、必ずしもそうではない。飛散防止剤の散布といったものもありますので、そこは先ほど申し上げたように、かなりきちんと考えていく必要があるということです。資料としては以上です。

○森座長 ありかとうございました。それでは、論点 6 に関する資料の説明について何か御質問がございましたらお願いいたします。

○前川委員 教育内容ですけれども、これが決まったのは平成 12 年ですか。その後、見直されていない。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 これは、 JCO の事故が起きた後に制定されたもので、その後、見直しは行われていません。

○前川委員 やっぱり、もうちょっと見直したほうがいいでしょうね、恐らくね。

○森座長 よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。よろしければ、膨大な資料でしたけれども皆さんの御協力のお陰で資料 23 まで説明が終わりました。こういった資料を基に次回以降、特に細かい点も含めて議論させていただくわけですが、資料 24 をもう一度御覧いただくと、検討に当たっての論点、 1 の「健康診断等、離職後も含めた長期的な健康管理のあり方」に検討のポイントがあります。 2 の「緊急作業従事期間中の健康管理のあり方」に、健診項目も含めての項目が論点として挙がっています。 3 の「緊急作業中の原子力施設内の医療体制確保のあり方」の (4) に検討のポイントがあります。 4 の「通常被ばく限度を超えた者に係る中長期的な線量管理のあり方」、 5 の「緊急作業従事期間中の被ばく線量管理のあり方」、 6 の「緊急作業従事者に対する特別教育のあり方」、こういう枠組みで今日も説明がありましたし、基本的に事務局からは、この項目立てで今後は議論していきたいということで準備いただいているわけです。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 先生、論点の検討のポイントだけ簡単に御説明させていただきます。 121 ページです。 1 の「健康診断等、離職後も含めた長期的な健康管理のあり方」ですが、検討のポイントとしては大きく 4 点あると考えています。アは指針に基づく健診の対象者に変更の必要はあるかです。そもそも論ですが、 50mSv を超えた方の眼の検査、 100mSv 超でがん検診という枠組みは問題ないと思います。イは現行のがんの検診について、検査項目の追加はないか、また、不必要な検査項目はないかです。ウは現行の非がんの検査項目について、追加の必要があるか、また、不必要な検査項目はないか。これは一般健診と電離健診実施分を含んで考えていただくことになります。エはストレスチェックをどのように運用すべきかです。これについては 2 つの対応が検討されました。丸1が「個人対応」で、労働者個人に対してストレスチェックを実施し、結果を本人に通知し、高ストレス者に面接指導を行い、必要に応じて就業上の措置を行う。丸2が「集団対応」で、労働者個人の結果を集団的に分析し、職場環境改善に活かす。どちらができるのかということがあります。

2 「緊急作業従事期間中の健康管理のあり方」については、検討のポイントが 2 つあると考えていて、アは緊急作業期間中の検査項目です。これについては当然のことながら急性の放射線障害の把握になりますが、そこにどのような検査項目が必要なのか。検査の頻度をどうするのか。人によって被ばくの線量が違う、あるいは作業の内容が違うことがあり得ると思いますが、こういった人々に分けた議論をするのかしないのか。イは緊急作業が長期化した場合の一般的な健康管理に必要な項目で、例えば睡眠、食事、疲労といった問題を把握するための検査、あるいは検査の頻度をどのように定めるか。

3 の「緊急作業中の原子力施設内の医療体制確保のあり方」については、先ほど防災基本計画で御説明させていただきましたが、基本的に原子力施設内の医療体制の確保は、本来、事業者の責任ですので、関係事業者とどのような費用分担をするのかも必要です。こういったこともあって救命救急の専門家、事業者から別途意見を聞く必要がありますから、前川先生を中心に、事務局で別途ヒアリングを行い、その結果をこの検討会にフィードバックさせていただきたいと考えています。

 検討のポイントとしては大きく 5 つあると考えています。アは緊急時対応の準備状況はどうなっているのか。イは医療の専門人材をどう育てていくのか。ウは原発内外の患者の搬送等の連係を強化するために、どうやって外の医療機関と協議していくのか。エは訓練をどうするのか。オは医師の派遣等を実施する「ネットワーク」をどうやって永続的に確保していくのか。こういった論点について議論させていただきたいと考えています。

4 5 が被ばく線量管理で、 4 は通常被ばく限度を超えた方々に関する線量管理です。これについては 2 つ検討ポイントがあると考えていて、アは生涯線量の考え方です。生涯線量として、 Publication60 に書いてある 1mSv を目安とするという ICRP 勧告に準拠してよいか。イは、それが良しとした場合に、 100mSv 超の方の生涯線量をどのようにコントロールしていくのかという問題があり、その方法をどうするのか。もう 1 つの問題として、実効線量による管理なのか、等価線量の管理をどうするのかという議論があります。

5 が「緊急作業従事期間中の被ばく線量管理のあり方」です。これは杉浦先生からも御説明がありましたが、大きく 3 点あると考えています。アは ICRP の正当化原則を踏まえた緊急被ばく限度の考え方で、平たく言えば、どういった場合に 100mSv を超える被ばくが許容されるのかです。これは ICRP 等の国際文献、あるいは諸外国はどういったことをやっているのかという諸外国の方法、もう 1 つは判断主体で誰がこの被ばく限度を適用するのか、スイッチを押すのかというところも重要な問題だと考えています。イは、正当化できる状況であったとして、いかにして被ばく限度を最低限にするのかについて諸外国のやり方ですが、これは先ほど御説明がありましたようにグループ分けをするとか、作業の緊急性によって分けるといったことが諸外国で行われています。こういったことを踏まえた上で、ウは ICRP の線量限度の原則を踏まえて、日本国内をどうするかですが、前回の対応としては個別具体的な特例省令で引き上げを行いました。こういったことについて御議論いただきたいと考えています。

6 が特別教育の関係です。アは教育対象者の選定プロセスで、これについては、そもそも論として緊急作業従事者はどういう役割があって、どういう資質が求められるのか。それをあらかじめどのように選定するのかという問題があります。イは教育実施時期です。訓練のように定期的に実施するのか、 1 回だけやればいいのか。ウは特別教育の内容です。現在行われている一般の放射線業務従事者教育に付け加えて行うべき点は何かについて、御議論いただきたいと考えています。以上です。

○森座長 ありがとうございました。ただいま御説明いただきました今後の検討ポイントについて、御意見がございましたらお願いします。

○明石委員  1 点、お伺いしたいのですが、局所被ばく線量については皮膚のところで少し議論が出ましたけれども、そこは今回はあまり触れないということですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 局所被ばくについては、前川先生からも御説明がありましたように、緊急作業期間中の検査項目というか、急性放射線障害をどうやって探知していくのかという観点の中に入ってくるというのが、我々の認識です。もしほかに入れるべきだということであれば。

○明石委員 いや、そうではなくて、例えば今までの 100mSv という中には皮膚線量と眼の線量が別に書かれていたのでと、そういう意味です。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 それは、先ほど申し上げましたように等価線量の限度についても議論いただきたいと考えています。

○森座長 ほかに、いかがでしょうか。

○杉浦委員 先ほども御説明の中で申し上げましたが、一番最後のページのその他検討すべき事項で、志願の話をどういうふうに扱っていくか。もちろん、ここでは範囲を超えているということでも構わないのですが、どこかにテイクノートしておいていただければと思います。

○伴委員 緊急作業における線量限度という言い方がされていて、 ICRP は先ほども言ったように、そこに限度という考え方は持ち込んでいないのです。規制側として限度という形で縛りたいというのは分かるのですが、突然振って申し訳ないですけれども、杉浦先生が海外の事情をいろいろお調べになったと思うので、海外でこういう緊急作業に対して限度という形で本当に設定しているのか。それとも参考レベルという柔軟なやり方をしているのか。その辺について情報がおありでしたら教えていただきたい。

○杉浦委員 資料 20 で若干のことは書いてあるのですが、幾つかの国では限度という形で入れているようです。ただ、大半はガイダンスレベルあるいはレファレンスレベルという形のようです。もう少し次回までに情報を整理してお出しできればと思います。

○森座長 いかがでしょうか。道永委員、何かございますか。

○道永委員 緊急作業をやっている方々の健康診断というのが、そもそもの話だと思いますが、一番最初にありました説明の中で、健康診断を受けている方々のデータベースが完全にできていないというのが非常に問題なのかなと思っています。できましたら、そこはきっちりやっていただければと思います。

 あと教育という部分が出てきましたけれども、もちろん東電の社員の方々は緊急のときの教育は受けていると思いますが、子会社という形で急遽呼ばれた方もいらっしゃると思います。そういう方々に、簡単ではあってもこういった教育が行われたのかどうか教えていただければと思いました。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 データベースに関しては、データベース自体は完成していて、随時データを投入しています。先ほど 77 %と申し上げたのは、報告は来ているのですが、まだデータベースに投入することが delay と言いますか遅れが生じているということで、データベースそのものは稼働しています。

 もう 1 つの教育の関係ですが、これについては 5 月、 6 月頃までは正直なところ、 1 人当たり 30 分ぐらいの教育しかできなかった実態がありますが、その後、継続して雇用される方については全員の法定健診を実施していますので、ほぼ全員、正規の教育を受けなければ入域できないような体制が夏頃には確立しています。

○森座長 内容が、本当に緊急作業に合っている内容かどうかという課題は非常に大きかったと思います。今後、そこのところも更に具体的にということだと思います。ほかにいかがでしょうか。

 私のほうから 1 点だけ、先ほどもちょっとお話しましたが、医療体制の確保というのが医師を集めるだけでなく、恐らくそれをどう運用するのか。それから、原発の中だけの問題にとどまればいいですが、外部の問題も当然あって、そことの連携をどうするのかという運用そのものが大事なのと、先ほどお話したように医療というのは起こったときの対応ですけれども、予防するための対応が、そこの事業者のもともとあった安全衛生管理体制で、たくさんの人が入ったときに本当に機能するのか。恐らくそうでない緊急事態が発生するので、医療だけでなく予防体制、その人材の確保というところまで広げて検討できればと思っています。またちょっと御検討ください。よろしいでしょうか。

 それでは、今、先生方から論点について御議論いただきましたけれども、議論が基本的に出尽くしたと思います。ただ、今日は資料が膨大でしたので持ち帰っていただいて、また質問とか御意見がございましたら、次は 15 日が予定されていますので、その 1 週間前の 8 ( ) までに事務局にメール等で提出いただければと思います。よろしくお願いします。事務局のほうには、今日の御意見と追加の意見を踏まえて資料を作っていただき、次回、具体的な議論に入っていきたいと思っています。次回の予定について、事務局から御説明をお願いいたします。

○前田電離放射線労働者健康対策室長 次回の予定ですが、第 2 回検討会は、来年 1 15 ( ) 、午後 3 30 分から開催予定です。よろしくお願いいたします。

 以上で、第 1 回東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会を閉会いたします。本日はありがとうございました。


(了)

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