ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班)> 第4回 年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班議事録(2014年11月25日)




2014年11月25日 第4回 年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班議事録

年金局

○日時

平成26年11月25日(火)9:00~11:00


○場所

東京都千代田区霞が関1-2-2
厚生労働省専用第14会議室(12階)


○出席者

植田 和男 (座長)
伊藤 隆敏 (座長代理(専門委員))
岩間 陽一郎 (専門委員)
柿木 厚司 (委員(代理出席))
菅野 雅明 (専門委員)
出口 治明 (委員)
花井 圭子 (委員)
堀江 貞之 (専門委員)
山口 修 (委員)

○議題

GPIFのガバナンス体制について

○議事

○植田座長 それでは、定刻よりちょっと前ですが、出口委員はおくれてということですので、ただいまから第4回「年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班」を開催いたします。

 皆さん、お忙しい中お集まりいただき、どうもありがとうございます。

 それでは、事務局から委員の御出席状況などについて御確認をお願いいたします。

○大臣官房参事官(資金運用担当) おはようございます。参事官の森でございます。

 本日の会議の出席状況でございますけれども、柿木委員と藤沢委員から御欠席との御連絡をいただいております。

 出口委員につきましては、まだいらっしゃっていませんけれども、所用により10時過ぎに御退席されるという御連絡をいただいております。

 柿木委員は御欠席なのですけれども、まだいらっしゃっていないのですが、日本経済団体連合会の阿部参考人が御出席になられるという御連絡をいただいております。

 では、早速でございますけれども、お手元の資料につきまして確認させていただきたいと存じます。

 本日、配付資料でございますが、資料1「論点整理(案)」。

 資料2「これまでの議論における『GPIFのガバナンスについて』の主な意見(未定稿)」。

 資料3「GPIFのガバナンス体制等」。

 資料4「被用者年金一元化と年金積立運用」。

 資料5は前々回、お求めがあってやっとまとまったものでございますが「各共済のガバナンス等について」。

 机上配付資料といたしまして、第3回検討作業班議事録(未定稿)と、いろいろと用語でガバナンスとか内部統制とか、わかりにくいという話がございましたので、御参考までにガバナンスと内部統制という1枚紙。

 あと、先回非常に時間がなくて失礼いたしました。英文の資料をつけさせていただきましたが、私どものほうで仮訳ということで、仮訳でございますので席上配付だけなのですけれども、そういうものを2種類用意いたしましたので配付させていただいております。

 もし不足等ございましたら、適宜事務局までお知らせ願います。よろしいでしょうか。

○植田座長 それでは、カメラの方はここで退室をお願いします。

(報道関係者退室)

○植田座長 議事に入らせていただきますが、前回に引き続き、GPIFのガバナンス体制について御議論をいただきたいと思います。

 初めに、事務から資料の御説明をお願いいたします。

○大臣官房参事官(資金運用担当) では、資料について御説明させていただきたいと思います。

 まず資料1の論点整理(案)をごらんいだきたいと存じます。前回、第3回の検討作業班では、私どものほうで論点1といたしまして合議制か独任制か。論点2としまして、基本事項の意思決定・監督と業務執行との分離。論点3としまして、内部統制について提示させていただいたところでございます。

 先回、熱心な御議論をいただきまして、おおむね合議制という形でまとまったのかなと思いまして、第3回検討作業班での議論を踏まえまして、今回、事務局で論点をさらに次のとおり整理させていただいたところでございます。

 論点1でございますが、運用機関における意思決定・監督と業務執行の分離。これはカナダ等で例えば運用機関における意思決定・監督は大体月1ペースで議論しているわけですけれども、他方、業務執行となりますと日々の執行という形になりまして、そこの分離なりをどうするか。その意思決定・監督機関におきましてどのような執行体制を監督していくかということでございまして、これは別途コンプライアンスとか監査のあり方とか、違う監督の置き方はあるかと思いますが、まさに意思決定・監督機関における監督のあり方をどう考えるかというのが論点でございます。

 論点2は上のほうといいますか、運用機関における意思決定・監督の意思決定・監督機関のあり方ということでございまして、合議制ということでございまして、ではメンバー構成は一体どうしたほうがいいのか。あとは業務執行と分離されていますので、意思決定事項としましてはどういうものがあるのか等々、こういう合議制ということで論点があるかと思います。

 あと、説明責任ということでございまして、合議制の場合どのような形で合議事項につきまして説明をしていくのか。例えば合議体の議長なりが何に対して、どのように説明しているのかという説明責任問題。あと、他事考慮の防止で見ますと、これは受託者責任の忠実義務ということで、当たり前のような話でございますけれども、これは厚生年金保険法、現在の年金におきましても専ら被保険者のためということである。あと皆様から御議論がたくさんございましたように、政治間の独立性もきちんと担保しなければいけないということで、他事考慮の防止というものは一体どのように図っていくかということで、ここの論点に入れさせていただきました。

 論点3としまして、意思決定・監督機関と別の日々の執行機関のあり方ということでございますが、ここはまた別途内部統制についてどう強化していくかということで、リスク管理。これは運用並び体制という話もございますが、リスク管理。あとは別途監査。あと、情報漏えいとかこれは非常に問題でございますので、情報管理をきちんとやっていく。あと、コンプライアンス、法規遵守といいますか、社内規範もございますが、そういうものをきちんと徹底していくということで内部統制の強化というものがある。あと、専門性の確保ということで、ここは日々市場の他のプレイヤーと伍していかなければいけませんので、有識者会議でもきちんと自主性なり創意工夫ということを言われていますので、この専門性をどう確保していくかという論点。

 あと、一番大枠でございますけれども、論点4といたしまして政府・厚生労働省と運用機関の関係ということでございまして、運用機関の役割分担。今、厚生労働省が運用の実施機関でそれを委託しましてGPIFという形になっておりますけれども、その役割分担とそれぞれの責任というものを明確化していく。あと、国民に対しては誰がどういうふうに説明責任を持っていくのか。あとは拠出者の関与。これは合議制に係るメンバー構成にも係るかと思いますが、拠出者の関与のあり方はどうすべきかという形で、新たに論点整理をさせていただいております。

 資料2をお願いします。これまでの議論におけるGPIFのガバナンスに関しての主な意見でございますが、今まで出た意見につきまして今、新たに4つの論点を整理しましたので、それに沿って御説明いたします。ただ、前回とダブると恐縮でございますので、恐縮ですが、第1回、第2回等の論点につきましては省略させていただきます。

 論点1の運用機関における意思決定・監督と業務執行の分離ということでございましては、1ページ目は第1回、第2回の検討作業班で御議論に出ておりますが、2ページ目にまいりまして、第3回の検討作業班でございますが、意思決定・監督機能と執行機能との分離は必要かと思うが、きちんとした意思決定・監督ができる体制をつくるとともに、業務執行側は一任を受けて白紙委任を受けて何でもできるという発想ではないと思う。意思決定・監督機能を果たすというところが上にあっての分離なのだと。委託を受けての執行をやるというのが当然だと思う。

 2つ目の○でございますが、執行と経営の分離という形になっていれば、理事長の責任をある程度はっきり規定する。そこのところの最後でございますが、意思決定から執行部隊を分離するという形に持っていくことが重要ということで、おおむね意思決定と執行の分離という形で御意見をいただいたところだと存じております。

 論点2の意思決定・監督機関のあり方ということで、合議制に関する論点でございますが、3ページの2つ目の○でございますけれども、第3回ということで、合議制か独任制かについて合議のあり方によると思うが、合議制のメンバーの中には拠出者の代表ということで労使あるいは国民年金の代表等、年金財政や年金制度に明るい人、そういう意味できちんとした監督ができるような対象を含めるという前提で合議制でいくべきだ。拠出やさまざまなステークホルダーを幅広く合議制のメンバーにすることが必要という考え。

 1つ飛ばしまして、合議で決定するほうが確率的に独立性が保ちやすいというのは、そうかなと考えている。

 その次でございますが、GPIFの体制を今、変えるのであれば、変える理由というものを共有化しておく必要がある。合議制にすれば完全に政治からの圧力を防げるのか、それは独任制より少なくなるのかとか、きちんと整理された上で、よりベターなものとして将来に向かって今、組織改革をするのがいいというようなことを整理していただきたい。

 下から2つ目でございますが、できるだけPKOの確率を減らすということで合議制がいいと思うということでございます。

 4ページでございますが、めくっていただきまして他事考慮の防止ということでは一番最後の3回目の検討班の作業では、再掲になりますけれども、できるだけPKOの確率を減らすということで合議制がいいという御意見がございます。

 論点3につきましては、内部統制の強化。これは第1回から第2回にもいただきましたけれども、第3回ということになりますと5ページ目でございますが、行動規範というものをきちんとつくって国民に説得、納得してもらうことが必要だと思っているという御意見。

 論点4でございますが、政府・厚生労働省と運用機関の関係ということでございまして、国と運用機関の役割分担につきましては、これも第1回からずっと御意見をいただいているところで、6ページも第1回、第2回という形で非常に御熱心な御議論をいただいているところでございまして、飛びまして7ページでございますけれども、下から2番目、年金制度について大臣が全責任を負うということであれば、運用についても最終的に大臣が責任を負うと考えられるが、ただ、実際の運用の執行はプロがやるのが合理的。全体の制度の中の整理が必要だという共通認識を持っておいたほうがいいと思う。

 あとはその下でございますけれども、年金の財政のところの責任と投資のところの責任の線引きが今まで曖昧だったゆえに、年金部会の先生方に「えっ」という感じの印象を持たれたのではないかというのが個人的な感想。ちゃんとリスク許容度と期待リターンを決めてもらって、その中でリスク許容度を守りながらベストを尽くして少しでも高い控除後のリターンを上げれば、国民に対して非常にいいことになるので、そういう形でマンデートをいただくことが、私は正しい財政と投資の責任の分担の仕方ではないかと思う。

 厚生労働大臣が全責任を負う中で、合議制のあり方というのは厚生労働大臣とGPIFがどのように相互の関係を設計するのかということを、きちんとお互いにシェアしておかなければ議論は進まない。

 ガバナンスを考える上で目的が1つであって、年金の持続性をいかに高めるか、国民に安心してもらえるような体制をやっていくかということで、そういう観点で運用をやっていく側と年金財政をやっていく側がうまくキャッチボールしながらマンデートが出て、それに従って運用を実行して、その結果を財政のほうにフィードバックしていく仕掛けがビルトインされていくようなものであれば、互いに理解できる話だと思う。

 この問題については、厚生労働大臣が年金制度について全責任を負うという、全責任というのは一体何なのか。むしろ厚生労働大臣が全責任を負うためにGPIFに独立性を与える。ただし、独立性という中には2つ大きなポイントがあり、1つは国民に対する説明責任、もう一つは内部での牽制体制をしっかりつくる。大臣あるいは政府の中でキャッチボールしなければならないのは当然で、これは独立性と相矛盾するものではなく、むしろ独立性のもとでそういうものが担保されていれば、むしろ厚生労働大臣が全責任を負いやすい。最低限、厚生労働大臣の責任というのはそういう体制ができ上がっているかどうか、これをチェックするのがまず一番重要ということでございます。

 9ページ目の2つ目の○でございますけれども、国民はGPIFにお金を預けたわけではなく、国が運営しているのは公的年金制度であるからこそ毎月毎月保険料を払っているのであって、それを集めた保険者たる国、厚生労働大臣がそのお金の運用をGPIFに委託している。GPIFは受託機関としてお金の運用の責任を果たし、その説明は政府に対して、大臣に対して行い、大臣は国民に対する説明責任、結果責任を負う。

 理事会の中に公的年金の財政制度に詳しい人が必ず関与していて、運用状況を常にウォッチしていける。加えて理事会の下に年金財政についての委員会みたいなものがあって、その結果が厚生労働大臣に報告される。部会のほうで警鐘を鳴らすといったキャッチボールができる仕掛けを同時にビルトインしていく仕組みがあるという御指摘。

 下のほうの3つ目の○でございますけれども、厚生労働大臣が年金制度について全責任を負う法体系のもとでの独立性のあり方について、キャッチボールを前提にこうした仕組みの中できちんとやっていくことを、我々メンバーが共通で認識した上で箱をつくりますということであれば問題がない。短期的な感情論に流されない独立性というものが非常に重要だと思うという御指摘でございまして、10ページ目、複数の論点に共通する事項ということで第3回に御意見をいただいた話としましては、多様なステークホルダーが構成されるべきだと思う。関与という言い方ももう少し意思が反映できるような考えに変えていただければと思う。拠出者の代表が入るというのは広い観点から意見を言っていく限り結構だと思うという話。

 あと、内部統制なり他事考慮につきまして、11ページに御意見をいただいています。これの第2回なり第1回での御意見でございますので省略させていただきまして、12ページの説明責任のところでは、GPIFというのはマンデート、賃金上昇率+1.7%を実現するために、専門家集団としていかに知恵を発揮して目標を達成するかにかかっている。ここを国民に対し、今の仕組みでこれがベストであると国民に説明する責任があり、そのためにいろいろと内部の牽制が必要となるということでございまして、以上一覧しておりますけれども、時間の都合上、第3回の御意見につきまして下線部のところを中心に御説明させていただいたところでございます。

 本日、今回の資料1で示しました論点につきまして、議論の参考ということでGPIFのガバナンス体制ということで資料も用意してございます。めくっていただきまして現状のガバナンス体制、これは第2回にも出た図でございますが、ガバナンスといいますと誰が、何を、どのようにと決めることが重要でございますので、現状、誰が何をどのように決めているかということにつきまして、右側でございますけれども、厚生労働大臣が実施すべき事項、理事長が意思決定する事項の中で運用委員会が審議しているものにつきまして、箱で整理しております。

 厚生労働大臣が実施する事項でいいますと、年金制度の設計、年金財政の検証、経済前提の設定ということで、これは社会保障審議会年金部会等の関与を受けて実施している。中期目標を策定し、指示。この中で運用利回りなり、リスクについての考え方等も示している。

 あとは人事でございますが、理事長、幹事、運用委員というものを任命している。中期目標を受けましたGPIFの中期計画につきましては、その認可というものを行っておるということでございます。また、現在の独法制度におきましては、厚生労働大臣のもとに独立行政法人評価委員会がございまして、そこでGPIFにおける業務実績の評価をやっておりまして、後ほど説明しますけれども、被用者年金一元化法が施行になりますと、被用者年金の一体性の確保ということで別途、管理運用の方針等につきまして承認もという体制になっております。

 理事長は独法でございますので、執行機関ということで理事長の独任制になっておりますが、ただ、前回も御説明しましたけれども、GPIFにつきましては非常に特殊な仕組みということで、厚生労働大臣が任命しました運用委員会が意思決定に関与する形になっておりまして、運用委員会の審議事項でございますけれども、業務方法書の作成または変更。中期計画の作成または変更ということで、これは今、GPIFの内規によりまして、運用委員会で承認がなければ理事長は実施できないことになっております。そのほか前回も御説明しましたけれども、運用委員会の審議事項、だんだん広がってきておりまして、管理運用方針に関するところの改正、運用受託機関の構成につきましても3段階の審査。あとは運用対象の追加ということで、例えばカナダの年金と共通しましてインフラ投資をやるとか、そういう場合にも、運用委員会で審議をするという形でございます。

 法人としましては、法人運営関係ということで人事ということで職員を採用する。訟務関係、株主として若干、今も案件を抱えていますけれども、そういう訟務関係。あと、情報公開ということで各種ディスクロージャーの実施。年度計画の変更、作成。あとは財務諸表というものを作成する。

 管理運用関係で申しますと、基本ポートフォリオにつきまして検証しまして、これは運用委員会に報告しまして、必要があれば昨年6月のように変更を行う。管理運用方針につきまして制定・改正を行い、運用受託機関、資産管理機関につきまして定期的もしくはその下にございますが、場合によって運用受託機関から3年なりということでなくても資金の回収なり配分を決定する。あと、資金の短期運用の実施方針を決定するとともに、リバランスということで、まさに乖離許容幅を超えた場合にどのように資産を中心に戻すかという形のことを法人が決めているということでございます。

 その次のページに、第1回で伊藤先生からも御説明がございましたが、公的、準公的の昨年11月に御提言いただきました有識者会議でございますけれども、目指すべきガバナンスの仕組みについて図を書いてございます。これは伊藤先生に第1回に御説明いただきまして、この中ではパターン1、パターン2という形で御指摘がございましたけれども、パターン1というのはある種、あのときの説明でもございますけれども、日本的で、理事会の一部の方々というのが執行も行う仕組みでございましたが、伊藤先生からパターン2が目指すべき姿だということでございましたので、今回はパターン2につきまして御説明をさせていただきます。

 担当大臣につきましては、中期的な運用目標・リスク許容度を提示しまして、理事長・理事を任命する。この理事会というのが意思決定を行いまして、執行につきましては全く切り離して、別途CEOなり執行役員という者がございまして、この執行役員なりCEOなりを理事会のほうで任命いたしまして、運用に関する基本的な事項の提示、運用計画での実施方針等を決定いたしまして、執行部が行う運用につきまして評価、執行監視を行う。当然、執行部は運用計画や実施方針について伺い、運用投資の報告等を行う。これはCalPERSとかCPPIBでもございますけれども、理事会の一部理事等で、投資委員会等を設けて別途そこで具体的な運用計画や実施計画について決定することもある。そこで投資委員会のほかにはリスク管理委員会とかガバナンス委員会等の設置についても、検討できるのではないかという形で御提言いただいているところでございます。

 めくっていただきまして、これは先回も出しましたけれども、GPIFのほうで今、リスク管理体制がどういうふうになっているかということでございます。むしろそこに業務の有効性、効率性の確保とか法令の遵守体制とか情報の保存、管理体制とございます、独立行政法人についても内部統制の重要性が非常に指摘されていまして、それに沿って内部統制の仕組みをつくっているということで、各種会議等をつくって管理に努めているものでございます。前回説明しましたので、説明は省略させていただきます。

 4ページ、基本ポートフォリオ、これは本年1034日に公表させていただきましたが、これにあわせましてGPIFの中でやはりガバナンスの強化と運用というのは車の両輪だという大臣のお考えも踏まえまして、理事長に対して基本ポートフォリオの見直しにあわせましてガバナンス体制の強化ということでございまして、建議がございました。その中では内部統制の強化ということで、運用委員会のほうでガバナンス会議をそのもとにつくりまして、そこで投資原則なり行動規範というものを策定していく。コンプライアンスにつきましても、従前コンプライアンス委員会というものがありまして通報制度もあったのですけれども、別途コンプライアンスオフィサーという形で責任者を置く。

 リスク管理体制につきましても、マクロ経済の分析や市場予測、GPIFにつきましては確たる見込みがあれば単なる基本ポートフォリオに厳格に合わせるのではなくて、若干、市場予測を踏まえて乖離許容幅の中でずらすことができますので、そのためのマクロ経済分析や市場予測、あとは財政検証につきましては5年に1回と書いてありますが、その間も経済状況は変わりますので別途独自で運用資産と年金給付、ALMでございますけれども、一体的に分析できるようにする。複線型のリスク管理でございまして、単なる乖離許容幅とかトラッキングエラーとかだけではなく、さまざまな指標によるところのリスク管理。

 あとは専門人材の強化ということで、基本ポートフォリオの変更にあわせましてこのような内部統制、リスク管理体制を強化していくことにつきまして御建議がございまして、こういうものを御参考に今回、御議論いただければと存じます。

 資料4でございまして、先ほど厚生労働大臣の関与ということでございましたが、この被用者年金一元化というものが来年10月施行されますので、その関係でどのような関与が入るのかについて、簡単に御説明させていただきたいと思います。

 被用者年金、これは一番下のところでございますけれども、現在、サラリーマンが加入します、GPIFが扱います厚生年金と、国家公務員が入ります国家公務員共済組合、あとは地方公務員、これは教員の方も入りますけれども、地方公務員の共済組合、あと、私学の教職員の方が加入されています私学の教職員の共済組合がございますが、これにつきましては先ほど申しました平成2710月でございますけれども、2階部分につきましては厚生年金に統一いたしまして、制度的な差違につきましても基本的に厚生年金にそろえる。あと、保険料率につきましても1、2階部分の保険料率につきましては、厚生年金の上限18.3%に統一するという仕組みはいたしておりますけれども、これは効率的な事務処理を行う観点から、これは徴収から給付までそうなのですが、それぞれの今の共済組合や私学事業団を活用するという仕組みになっております。運用もその一環ということでございまして、めくっていただいたもので説明させていただきますが、それぞれ下でございますが、GPIF、国共済、地共済、私学共済で運用させていただくということでございます。

 この各種運用組織の一体性をどう確保するかというのが、1、2、3という形で書いてある仕組みでございまして、まず、主務大臣、厚生労働大臣だけではなくて国共済を所管します財務大臣、地共済を所管します総務大臣、私学共済を所管します文科省大臣、この4大臣におきまして共通の基本指針を作成し、公表する。既に昨年、積立金基本指針に関する検討会というものを開きまして、この報告書にも続きまして本年の7月3日でございますが、基本指針を作成、公表させていただいたところでございます。それに基づいて4つの団体におきまして資産の共通の目標、ポートフォリオのモデル版というものをつくりまして公表する。このモデルポートフォリオと基本指針に基づきまして一番下の3でございますが、それぞれのGPIFなり国共済なり地共済、私学共済なりが自分で管理運用方針を作成いたしまして、それがきちんと基本指針に沿っているか等につきまして各大臣が承認し、必要があれば変更命令をするような形で各主体の運用の統一性を担保する仕組みが導入されているところでございます。

 その次の共済につきまして資料5でございます。各共済のガバナンスにつきまして、今、申しました国共済と地共済と日本私学振興・共済事業団。地共済につきましては地共連そのほか別途いろいろ団体がありますが、ここでは地共連について御説明をさせていただきます。

 それぞれの団体、この団体は別に年金の管理だけやっているものではございませんで、医療保険とか福利とか、そういうものもやっておるところでございますけれども、年金に関しましては運用だけではなく徴収、適用、給付まで一貫して行っている団体でございます。アメリカで言いますと以前、説明させていただきましたCalPERSみたいな団体でございます。

 意思決定機関でございますけれども、それぞれ皆さん理事会がございまして、理事長はそれぞれの大臣が任命する。理事は大臣が任命した方で10名から8名程度。あと、特徴的なのは、その下に運営審議会というものがございまして、運営審議会の委員につきましては半数は組合員。つまり国共済と地共済でございますが、半数は組合が代表する者でなければならならない。私学事業団につきましても三者構成でございまして、7人が加入者、それぞれ学校法人の役員等でならないという組織になっております。

 日常業務執行につきましては、理事長のもとに運用担当理事という、運用をまさに担当される方がいらっしゃいまして、実施する。そこの運用担当理事のもとに資産運用委員会というものが別途設置されるケースがあるという構成になっております。

 資料5までは以上でございます。

 あとは席上配付資料でございますけれども、先ほどの翻訳に加えまして、あとはガバナンスと内部統制ということで参考資料がございます。ガバナンスと内部統制につきましては、かなり似た部分がございますけれども、ガバナンスにつきましては特に1990年代後半からよりよく組織の目的を達成するための手段、コーポレートガバナンスとよく言われますけれども、組織の目的のためによりよい成果を出すことがかなり議論の対象になってきているのかなと存じます。

 内部統制につきましては、これはガバナンスと似た面がございますけれども、1995年ぐらいから結構アメリカのほうで検討されまして、特に2000年ぐらいからエンロンとか不祥事事件もございましたので、特に法律でも採用されることになって、コンプライアンスとか財務諸表の信頼性とか、業務の有効性なり効率性とか、ある意味こう言うと語弊があるかもしれませんけれども、消極的な意味の不祥事防止にある程度重点が置いてあるところがあるかと存じます。

 私からの説明は以上でございます。

○植田座長 ありがとうございました。

 とりあえず、今の御説明に何か御質問等ございますでしょうか。

 それでは、よろしければ資料としていただいた中の資料1に論点整理(案)というものがありますが、これを参考にしつつ議論を進めていきたいと思いますが、前回までで私の見るところで、この中の論点4です。政府とGPIFの関係についていろいろ御議論をいただきまして、いろいろな観点から御意見が出たのですが、1つのポイントは前回ある程度収れんしました財政検証のプロセスで、GPIFも参加ないし情報提供をしつつ、政府サイドからリスクにも配慮しながらの要求利回りのようなものを決めてもらうというプロセスをちゃんとやるということで、ある程度の全体についての信頼感のようなものは担保できるのではないか。その上で、この紙で言えばその他の論点のことを議論してはどうかという感じには多少なっていたかと思っています。

 論点4については前回まででも決着がついていないポイントもありますし、今後さらにといいますか、今後新たに議論しなくてはいけないポイントもいろいろ残っていますが、とりあえず議論をもう少し先に進めてみるために論点4も折に触れて扱いつつ、むしろしばらく1~3の問題をもう少し議論してみてはどうかと思うのですが、いかがでしょうか。

○出口委員 今の座長の整理に特に異論はありませんが、事務局から合議制か独任制かという問題については、ほぼ結論が出たように思うという御指摘、御説明が先ほどあったのですが、私の記憶間違いでなければ花井委員は留保されていますし、藤沢委員の御意見も伺ったことがありませんし、私自身も申し上げたことがないので、そこは本当に簡単に済ませていいのかどうか、ある意味ではこういうすごく大事な問題であれば、ばかばかしいかもしれませんけれども、この点はこれでいいですかという形で決をとるような形、何人が賛成で何人が反対ということをはっきりさせて年金部会に対してきちんと責任を負うということにすべきだと、私は思います。

 私は、今までは論点を議論すると思っていましたので、ガバナンスについては意見を申し上げなかったのですが、有識者会議で提言されたガバナンスの仕組みについても勉強させていただいて、また、堀江委員がこの前言われた、今の体制ではPKOができる可能性を否定できないということもそのとおりだと思いますし、新聞等の論調でも日本銀行を参考にしたらどうなのだろうかという社説も多かったように思いますので、私はたまたま昔、日銀の担当をやっていた関係もあって、日本銀行の方にもいろいろ御意見を聞いてみました。私自身も合議制でいいと思いますけれども、ただ、このGPIF、新しい箱は恐らく常任ではなくて、例えば労使の代表とか年金の専門家とか、諸外国の例を見ても非常勤の理事が多数を占めることが多分妥当だろうと思います。

 そうなったときに、有識者会議で示されたガバナンスの仕組みですが、理事会とCEOを分けるという考え方が本当にワークするのか。これは日本銀行の関係者にも伺ったのですが、政策委員会から例えば総裁と副総裁の3人が外に出てワークできるかというふうにお聞きしたら、できないのではないかという方が全員でした。菅野さんも日本銀行でしたので後で御意見をお聞きしたいと思うのですけれども、そのように考えたら、確かに有識者会議が指摘された理事会とCEOを分けるというのは1つの理想だとは思います。民間企業でもそういう議論はなされておりますけれども、例えば日本銀行の例を見ても明らかなように、しかも非常勤が多いということを考えると、私は最初に目指すべきガバナンスというのは合議制でいいのだけれども、総裁と副総裁が政策委員会に入っているように、執行部の責任ある2~3人が理事会に入るというのが自然な姿であるように思います。

 もう一つの問題で、ガバナンスの中で理事会の担当大臣に対する報告という点がございます。これについてはこの前たしか山口委員と菅野委員の間で、山口委員は今の企業年金についてもむしろリスクをとらない方向にある。これに対して菅野委員から、個人のお金と公的なお金のみがリスクをとることができるという御指摘がありました。私もそのとおりだと思っていて、個人のお金と公的なお金はリスクがとれる。They canだと思います。ただ、それはあくまで法律を改正して、こういう公的なお金でリスクをとるんだということを前提にした議論ですので、今の法体系のもとで大臣が公的年金は全て厚生労働大臣に責任があり、それは不動の原理だと明確に国会でおっしゃっていることを踏まえても、今の法律の枠内でやるということは、should、そうすべきかということは全く違う議論なので、これは前回の年金部会でも複数の委員から御指摘がありましたけれども、リスクがとれるということと、今の法体系のもとでリスクをとるべきだということは、全く別の議論だと思います。

 そうであれば、厚生労働大臣が公的年金制度について全責任を持つという法律を前提にして考えるのであれば、この前、堀江委員も御指摘されたように、例えば利回りやリスクの許容度を大臣が明確に指示をして、その枠内でベストの運用とリスクを少しでも少なくすることが箱の役割であるとこれはもう堀江委員のおっしゃったとおりだと思いますけれども、ではそれで報告だけでいいのかと言えば、今の全責任を持つということ、報告との関係が私は十分整理ができませんので、ここは報告ではなくて承認。ただ、承認は、内容によってもいろいろな幅があると思いますけれども、ここはどうもそういうふうにしか考えられないのではないか。これはまた先ほど御説明いただいた被用者年金の一元化ということもスケジュール的に進んでいるわけですから、ほかの国共済や地共済や私学共済との平仄をとる意味でも、この枠は変わりようがないのではないかと考えます。

 とりあえず以上です。

○植田座長 ありがとうございました。

 最後の承認というのは、基本ポートの承認ですか。

○出口委員 承認のあり方については、最終的にはプロが運用方針を決めて、それについて私は承認をしたらいいと思うのですけれども、ただ、承認の幅にはいろいろあると思いますので、余りいい例かどうかわかりませんが、集団的自衛権の問題でかなり細かく要件を決めましたね。そうすると基本的には承認権は残すのだけれども、100%何でも自由に新しい箱の考えたことをあれこれ注目をつけたいというのでは、この前、堀江委員から御指摘のあったPKOのリスクとも重なりますので、例えばイメージですけれども、年金制度の円滑な運用について、これはどうしてもこのポートではしんどいと思うとか、そういう厳格な要件をつけて、そういう場合には承認をしないことができるという、何でも承認できるというフルの承認と、承認にも幅があると思いますので、そこは知恵を出していけばいいと思いますけれども、やはり大臣が全責任を持つという限りでは、そういう法体系のもとで報告というのを私は法律的にはあり得るのかどうかは理解できませんということを申し上げたのですが、よろしいですか。

○植田座長 出口委員が最初におっしゃった合議制で合意が得られているかどうかという点で言えば、合議制がいいとおっしゃった方の人数は多かったわけですが、おっしゃるように全員がそうだったわけではないと思います。

 今いろいろな論点を提出されましたが、とりあえずもう少し皆さんから自由に発言を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。

○岩間委員 今の出口委員の御意見に沿う話でございますけれども、合議制がいいと私も思っておりまして、それは大前提でございますが、その際の理事会のあり方ということで、先ほど出口委員からお話のございました執行部が入らなくていいのかどうかという問題でございます。

 私は両方あり得ると思っておりまして、執行部が入らない場合には理事会の権限といいますか、そういうものをきちんと決めて、ちゃんとガバナンスがとれる実効性を担保する。それには理事会のメンバーというのが、もちろん常任の方も必要だと思いますし、利益を代表する方々も当然入るということもあり得ると思うわけでございますが、基本的には専門性が担保されなければいけない。そういうことが担保されるのであれば、必ずしも執行部が入らなくてもいいということがある。しかしながら、それができないという場合に執行部も入る必要があるとなれば、執行部の暴走をどういう具合にチェックできるかということを制度的にビルトインしておく必要があるだろう。ですから、そういうことが両方できれば、それは両方の形があり得るのではないかという具合に思います。

 政府の役割というのは基本的にはこういった運用機関に対して与えるものとしては、どの程度の利回りが必要なのか。その根拠はこういうことなんだということで、それがベストな形で執行できるような形に運用機関がなるというのが国民の期待に応える最大のポイントだろうと思いますから、そういうことで厚労大臣は年金制度全体について全体の責任を負われるのは明らかだと思いますが、その運用についてそういう形でやりなさいという枠の中においてGPIFが最大の効用を発揮するということが担保されれば、それでいいのだろうと私は思います。

○阿部参考人 運用機関において意思決定・監督と業務執行の分離は当然ですが、それは直ちに意思決定監督を行う機関に執行側は入らないということにはならないはずです。民間企業のガバナンスを考えてもアメリカ型、欧米型の取締役会であればCEOは入っているだろうし、場合によってはCOOも入っている。運用機関の中で意思決定・監督を行うのは、あくまでも意思決定・監督機関であって、執行はまた別の下部組織が行う。こういう組み合わせでいいと思いますし、そういう意味では資料3に示された2ページ目の図のような形かなと思う。ただ、ちょっと気になるのは、2ページ目の図だと理事会の下にある投資委員会。意思決定機関は例えば運用については基本的な方針とか、やや大まかなことを決めるとすると、投資委員会で決めることは何なのか。具体的なポートフォリオの組み方であるとか、もう少し具体的なことだとすると、ここと執行部門との関係というのはどういうイメージなのかちょっとわかりにくいのですが、何か教えていただければ。

 以上です。

○伊藤座長代理 投資委員会はあくまでも投資についての専門的なアドバイスということで、これも市場環境であるとか商品設計であるとか、海外のいろいろな例であるとかを理事会に対してアドバイスする役割だと理解しています。

○阿部参考人 もっと具体的に言うと、この理事会は投資委員会を含むものなのか。理事会の中の委員会として投資委員会があるのか、理事会の横なり下にあるものなのか。

○伊藤座長代理 理事会の下にあるものと理解しています。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 諸外国の例で御説明しますと、まさに今、伊藤先生おっしゃったとおり、理事会の権限をデリゲートして投資委員会があるということでございまして、おっしゃったように非常に投資は重要でございますので、カナダとかCalPERSとかほぼ親にあたる理事会の方々がそのまま投資委員会のメンバーになっているケースが多くなっています。

○菅野委員 今、出口委員が最初に幾つか問題提起された点、非常にどれも重要だと思いますけれども、まず前回の点で合議制か独任制かというところは、私は前回及び前々回もそうですが、この会に出席させていただいて印象を持ったところでは、先ほどの議長及び事務局の総括のように、多くの方が合議制を支持されたと思いますが、独任制を積極的に支持されるという方があるのであれば、ぜひこの場で次の論点整理に行く前に、早く御発言をしていただくことを希望いたします。

 第2の監督と執行の分離ですけれども、これは既に何人の方もおっしゃられたように、実際に世の中に両方の形態が存在するのは事実だと思います。両方というのは、執行部が理事会なり合議制のメンバーの中に入る形態と両者をはっきり分けるという2つの形態が存在するわけですので、それぞれにその存在理由というものがあると思いますが、この場では一般論を議論するのではなくて、GPIFという公的年金を運用する組織としてどちらがふさわしいかということを議論すべきだと思いますし、その場合にそれぞれの持つメリット、デメリットというものを踏まえ、いかにうまく調和させるかという、むしろそういう各論で議論したほうがいいと思います。

 私の結論は、やはりこの両者をはっきり分けるべきだというのは基本的な考え方です。といいますのも、第1回目の議論でも明らかになりましたし、何人かの委員の方から御発言がありましたように、国民のお金、しかも130兆円という非常に大きなお金を預かっておりますので、まず内部の牽制体制はできる限りしっかり確立させたほうがいいのではないか。すなわちチェック・アンド・バランスをしっかり確立されることが、国民からの信頼を売るために最も重要なのではないか。こういう観点から執行部は合議制の理事会のメンバーにはならないというのをまず打ち出すべきだろうと思います。

 その上で例えば情報の共有とか、確かに実務的に幾つか解決しなければいけない問題があろうかと思いますので、そこはその中で例えば執行部は当然ですけれども、その合議制の理事会の中で発言は適宜行う。ぜひ積極的にやって情報の共有は図る。その上で最終的な判断は合議制の理事会が行うという形にすれば、その情報の共有という問題もかなり実務的には解決できるのではないかと思います。

 先ほど日銀の話が出ましたけれども、総裁、副総裁が出ない理事会があるかというと、これはないと思いますが、むしろ総裁はこの場合は理事長だと思います。国民に対する説明責任を果たすのは総裁の役目です。執行部は日銀の理事以下で、与えられた枠組みのなかでその時々の政策目標を実現するように努力する、という体制だと思います。ただし、私は、日銀の人間ではないですから、日銀の人が何と言うかは責任が持てませんが。

 それから、リスクをとれるかとるべきかという問題提起がございましたけれども、私はここは結論がすでに出ていて、とるべきなのだと思います。というのは、リスクをとらないという結論はもはやあり得ないのです。どんなポートフォリオを持つにせよリスクをとるわけですから、議論すべきはどのようなリスクが最適なのか、という点です。それは、賃金上昇率+1.7%というマンデートを与えられたGPIFの中でどのようにリスクを、それを各資産に配分するかというところなのだろうと思います。

 最後の論点の報告と承認。これはまた後ほどの議論でもいいのですけれども、確かにこれも非常に難しいところがあるかと思います。ただ、承認という形が残る場合には、その承認の範囲をはっきり明文化して定めることが重要で、承認ということだけを書いてしまうと、承認するためにはありとあらゆる情報をとらないとできないという議論にもつながりかねませんので、そうすると政府との関係というのは非常に曖昧になってしまいます。政府は、承認するために何ができるのか、何を承認するのか、そのためには何ができるのかできないのか、これをはっきりと明文化することが必要だと考えます。

○山口委員 独任制、合議制に関して言えば、私も合議制でいいかと思っております。

 この問題で非常に難しいのは、理事会には、先ほどの議論でも拠出者の代表を入れていくという話と、この理事会で基本ポートフォリオとか運用計画を決めることからすると、要請される資質といいますか、専門性といいますか、そういったものが必ずしもうまく調和しない可能性がある、相矛盾する事態もあるということです。つまり拠出者代表でかつ専門家というような人がいれば一番いいのですけれども、そうでない場合もあるわけですから、この理事会の構成は専門性を重視する考え方なのか、あるいは拠出者の代表性を重視する考え方なのかといったところをどのように折り合いつけるかというあたりが、1つのポイントとしてあろうかと思います。

 それから、これはGPIFではこんなことはあり得ないとは思いますが、厚生年金基金では理事会があって、複数の理事がいらっしゃって、そういう合議制の仕掛けになっているのですけれども、皆さんよく御存じのとおりAIJ事件というものが起こりまして、結局は実際に詐欺の被害に遭われた基金さんは随分たくさんあったわけです。合議制であったけれども、そこでのガバナンスがはっきり効いていたのか。特に理事会が運用執行される方の独走をきちんとチェックできていなかった、牽制機能が十分働かなかったのといったことがあったのだろうと思いますが、そういう意味では執行者の行動をきちんと牽制できることがガバナンスで一番求められるということだと思います。

 ですから、先ほど来、出ていますように理事会の構成をどうするのかということ、それから、執行と理事会の役割分担といったことを考えたときに、私はどちらかというとアメリカのコーポレートガバナンスでもそうですけれども、CEOが理事会に入っているというのは普通だと思いますので、そういう運営のほうが現実的にきちんと機能するのではないかと思っていまして、全く完全に理事会と執行部門を100%分離するといったようなことで、果たして現実のマネジメントがうまく機能するのかなということは感じております。

 先ほど運用方針等について、厚生労働大臣に対して、どういう形で報告する、あるいはまたきちんとした形で承認を受けるのかという話があって、それの程度の違いは私も十分理解できていないのですが、年金財政にかかわる情報についてはできるだけ早いタイミングで厚生労働大臣に伝わるような早期警報の情報ルートといったものをきちんと確保しておく事が大事だと思っています。GPIFの運用の中で何が行われているのかといったことが、制度の全責任を持つ厚生労働大臣にきちんと早目に報告されるという仕掛けが絶対に必要だと感じております。そのために前回申し上げましたけれども、理事会の下にそういう財政を検討する小委員会みたいなものがあったほうがいいのではないかという意図は、そういう早目に財政運営サイドにこういった情報が伝わって、保険料とか給付といったものをどういうふうに見直していく必要があるのか、又はないのかといったような意思決定や見通しの判断が十分できるような仕掛け、それがビルトインされていなければいけないと思っておるところであります。

○植田座長 花井委員、いかがですか。

○花井委員 まず、国共済と地共連等の資料を出していただいたことと、前回の資料の翻訳を出していただいたことにお礼を申し上げたいと思います。

 独任制か合議制かということにつきましては、前回私は合議制のほうがよりいいのではないかという言い方をしたのではないかと思っています。明確には覚えていないのですが、積極的に合議制にすべきだとは言っていないと思います。ただ、GPIFが日常的に高度な意思決定、あるいは専門的な業務執行の判断などが大変多いだろうということは想定できます。その意味では、意思決定と業務執行は分離したほうがいいのではないかと思います。ただ、その理由としては、複数メンバーが相互に牽制しながら意思決定する、あるいは業務執行を行うという仕組みが、民主的な統制という観点から必要なのではないかと思います。また、PKOの遮断であるとか、あるいは政治的介入をできるだけ回避するという観点からも合議制がいいのではないかとは考えます。

 ただし、何回も話しているのですが、現在の独立行政法人にするときの議論があったと思います。私がなぜそこにこだわるのかというと、大変な大きな議論をして、イギリスのエージェンシーを参考にして独立行政法人というものをつくり、その上で年金もさまざまな課題や問題があり、そして、現在の組織にしてきたわけです。そういう多くの労力をかけてつくった組織が、今何が悪いのか、何が問題なのか、将来に向かって何をすることが必要なのかということを一旦整理して、その上で合議制という仕組みがいいのではないかという意味で、よりましという意味で合議制と述べたと捉えていただければと思います。

 その上で、理事会をもし設けるとすれば、今のGPIFが扱う厚生年金・国民年金の積立金のほとんどが厚生年金分であることを考えれば、理事会には半数は労使の代表が入るべきだと考えます。その上で、年金制度の専門家であるとか、あるいは経済の専門家、運用の専門家もいらっしゃるかもわかりませんが、そういう形で多様なステークホルダーで構成すべきではないかと思います。

 なお、先ほど来出ておりますCEOが入るべきか、入らないべきかというのは、私は入ってもいいし、入ったほうがむしろ専門性という観点からは、理事会はそれで専門性を確保することができるのではないかと思いますので、入るべきではないかと思います。

 以上、とりあえず。

○植田座長 では、岩間委員。

○岩間委員 山口委員の御指摘、ごもっともな点が多々あると思うのでございますけれども、まず1つは、理事会に、いわゆるガバナンスボードにCEOを入れるかどうかということについては2つ流儀があって、米国では確かにCEOがボードメンバーになっているケースが多いと思います。しかしながら、例えば英国でいいますと、取締役会の議長というのはノンエグゼクティブであるべきだということになっていて、いわゆる指導的立場にある取締役が中心になって監視をするというのが主流というか、英国流だということになっておって、どちらかというとその方向性がいろいろ受け入れられきつつあるのではないかという具合に私は見ております。

 したがいまして、それはどちらもいいのですが、先ほど申し上げましたように、CEOがもしボードメンバーになるのだとすれば、やはりそこが執行部隊を率いているわけですから、それはそういう目で監督が効くように見なければいけないということになるのだろうと思います。

 厚生年金基金の問題で、AIJが私ども非常に多大な御迷惑をかけまして申し訳なかったと今でも痛感しておるところでございますが、ただ、あのときもいろいろな複合的な要因があってああいう事件が起こったということの中に、やはり理事会のガバナンスが効いていなかったという御指摘は非常に重いところがあると思っております。それがなぜそうなったかというと、やはり専門性が基本的に欠けていたという点が上げられると思う。ですから、そこにそういう方たちがおられれば、極めて稚拙な素朴な偽計でございますから、明らかに容易に発見できたということだったと私は思います。これは私の意見でございますので、御批判は承知の上で申し上げる次第です。したがいまして、今度の理事会というのも、基本的には専門性が相当要求される。しかも、経験の深さ、長さというのも必要になるということになると思います。

 先ほど花井委員のほうから、いわゆる労使の代表が当然入っていなければいけないということ、これはそうなのだろうと私も思いますが、その際に、ある程度専門性の議論というと、専門性を伴った議論というものについて、客観的に御参画いただいて判断をしていただくということが必要になってくるだろうと思います。ですから、そういう形での選任というのができるかどうかということが1つのポイントになってくるのではないかと思います。ですから、私はどちらでも方向性としてはあり得ると思いますけれども、必要なポイントはちゃんと押さえたような形にしませんと、後々様々な問題が出てきてしまうのではないかと思う次第でございます。

○堀江委員 今のを整理させていただきますと、まず、独任制か合議制かという観点でいうと、もうリスク管理のこれだけの巨額の資金を運用するという観点でいうと、もう合議制でないとリスクマネジメント上非常に不都合があるということで合議制しかないと思っています。

 理事会の法制と、今、専門性等の議論が出ましたけれども、私は理事会の中にCEO以下の執行部は絶対に入れるべきではないという非常に強い意見を持っています。それはなぜかというと、監督と執行をちゃんと分けないと、これまでも言っていますようにPKOの話もそうなのですけれども、大臣の責任を持つべきところは、やはり目標リターンとリスクの許容度という、そこで大枠をはめて、その後、執行ベースを尽くしていただくというのは執行部の役割であって、そこについての暴走を防ぐ意味で、理事会というのが監督権限を持ってしっかりとチェックをしなければいけないと思いますので、監督と執行はクリアに分けるべきだと思います。

 ただし、CEO以下の執行部の人が理事会に入るかどうか、ここについては、委員会の役割というのが今不明確なままで議論が進んでいるので議論が錯綜していると思うのです。GPIFでも今回のアセットアロケーションを決める場合には検討作業班というのをつくって、これが今回投資委員会に近いようなものだと思うのですけれども、私と米沢先生と武田さんの3人で検討作業班というのをつくって、そこにGPIFの専門家の方が入って素案をつくって、それを運用委員会に上げて、それで承認をしていただくという、そういうプロセスをとったのです。

 これは全く今回のGPIFも同じような形だと思っておりまして、理事会の方に最終的な決定権限は持っていただくのですけれども、それをサポートする専門的な委員会を幾つか設けて、これは例えばリスク管理もそうだと思うのですけれども、アセットアロケーションを決めるようなものについては投資委員会、あと運用機関の選定などというのは下でやってもいいと思うのです。理事会でそんなことを決定すべきではないと思いますけれども、その切り分けをうまく専門委員会のほうに権限移譲をして、そこにCEOとかCIOの人が入っていただいて、それで専門的な議論をしていただいて、その議論の内容がいいかどうかをやはり独立的な目で、いろんな観点でチェックしていただくという役割が最終的には理事会にあると思っていますので、その専門性のところはある程度委員会に移譲していただいて、そこに執行部の方がちゃんと入っていただいて専門的な議論をしていただき、その内容をかみ砕いた形で理事会に上げて、そこで最終的な承認をいただくという形が、私はGPIFのような非常に大きな金額を扱う組織としてはいいと思っています。

 もう一つ、代表制と専門性のところなのですけれども、これは海外の年金でも非常に議論になっているところで、労使の代表の方が理事会の中に入っていると専門性がなかなか担保できない。それについては、やはり担当大臣の方がこの理事会のメンバーを選ぶ場合に、例えば指名委員会のようなものをつくって、代表の方なのですけれども、ちゃんとした専門性を持っているかどうか。これは労使の代表であっても、その労使の機関に属している必要は私はないと思っていますけれども、ちゃんと指名委員会のほうでその専門性もチェックした上で、代表制と専門性をある程度担保するような仕組みを組み込んでいけば何とか理事会でも権限移譲した投資委員会とかリスク管理委員会の決めたことをある程度チェックできる、そういったことが担保できるのではないかなと思っています。

 最後に承認と報告のところなのですけれども、これは出口さんがおっしゃったように、なかなか報告というのは難しいとおっしゃいましたけれども、リークの観点でいうと、承認するとここで全部情報が漏れる可能性があるので、私は報告という形にとどめるべきではないかなと思っているのですが、ただし、一元化法の関係でなかなか難しいような問題もあるので、かなり限定的に承認の機能を特別な場合に限ってでないとリジェクトできないというような形で、情報漏えい等を防ぐ意味からも、そういった限定的な形で承認するというのは場合によってはあるのかなと思いますけれども、基本的には報告という形で、何度も言っていますけれども、先ほどの担当大臣がちゃんと目標と、最終的にどこまで損をしたらいいかというところをちゃんと決めた上でというのが前提条件なのですけれども、それは決めた上であれば最終的には報告という形でも全責任を負う大臣の責任をある程度全うできるのではないかと思います。そこは最後の何をマンデートとして与えるかというところで議論になるということは承知しております。

○植田座長 整理させていただいてよろしいですか。いろいろ御意見いただきましたが、合議制か独任制かという点に関しては、ほとんどの方が合議制でということかなと思います。ただ、花井委員から、現在のGPIFの独任制の体制があるのだけれども、それを変えるからにはどうしてそれのままではいけないのかというようなことについてもう少しわかるといいのになという御意見があったかと思います。

 これに対するぴったりしたお答えはなかなか難しいかとは思いますが、大まかに皆さんの議論からしますと、いろいろ専門性が要求されるような運用環境になってきていて、その中では専門家をたくさん入れるとか、入れた専門家の運用を開始するというような仕組みを担保するには合議制の機関が望ましいというような答えしかないのかなという感じがいたしますが、ほかによりよい御発言をいただければ、それはいただきたいと思います。

 その上で、合議制に皆さん大体賛成されているということ。合議制であればボードと執行部は一応分離ということになると思うのですが、ただ、ボードの構成をどうするかということについていろいろ意見の違いが出ているということだと思います。すなわち執行部をボードに入れるかどうか。入れた場合にどのような役割を持たせるのかということですし、また違う観点で、ボードにどのような方々を入れるか。特に労使代表を直接やるかどうか。その際、運用の専門家であるというような観点をどれくらい重視するか。これはまたボードのメンバーを選ぶ指名委員会のようなものをどうやってつくり、どういうふうにしてボードメンバーを決めていくかという話とも関係してくるわけです。さらに、まだ余り議論になっていませんが、堀江委員が整理してくださいましたが、この組織の中にボード以外にサブコミッティのようなものをつくるとすると、それはどういう役割を果たして、その役割に応じて先ほどのいろいろな論点はどういうふうに影響を受けるかということかと思います。若干違う点として、基本ポートのようなもの、あるいはその他の運用に関して大臣の承認なのか、報告でいいとするのかという論点もいただいております。

 というように整理させていただきましたが、その上で出口委員。

○出口委員 用事があって退席させていただきますので、一言だけもう一回申し上げます。

 私自身はボードメンバーの過半であるかどうかはともかく、労使の代表が入るのは今の仕組み上当然だと思いますし、財政検証を受けて、堀江委員が言われたように、必要利回りとリスクを大臣が指定するわけですから、年金財政の専門家も入るのは当然だと思います。ただ、これは日銀の政策委員と同じように、できるだけ専門性を持って議論ができる人を選ぶことが望ましいというのもまた当然だと思いますし、ただ、1つ思うのは、そんな方がそんなにたくさんいらっしゃるだろうかという問題も考えたら、その理事会の下に確かに理想でたくさん委員会をつくればいいのですけれども、そのメンバーも本当にそんな人がいらっしゃるのかということにもなりますし、やはりもう一つ大事な点は、どんな組織であれ、シンプルな構成、できるだけコストの安い構成というのが大事ですから、確かに頭で考えたら素人の理事会がいても、たくさん委員会があればいいのですけれども、本当にそれでワークするのかどうかということは少し疑問を感じますので、ガバナンスの仕組みというのは牽制ができるだけではなくて、ある程度シンプルでわかりやすいということでないと、やはり国民の納得というのは得られないのではないかと思います。

PKOの点でいえば、これはこんなことを言っていいのかどうかわかりませんけれども、多分一番PKOのリスクが高いのは、株価の上昇とかを見ていると多分日本銀行ですね。日本銀行の金融政策によって、あれだけ株価が上がるということは、PKOのリスクが一番高いのはひょっとしたら日本銀行かもしれない。こんなことを言ったら大変失礼なのですけれども、でも、その日本銀行ですら、総裁、副総裁がちゃんと政策委員会に入って議論をしてワークしていて、そこで多分今の国民は、これはいろんな評価があると思いますけれども、日銀もそれなりによくやっていると、そこで牽制が働いていないとはほとんどの人が思っていないと思うので、そうであれば堀江委員の言うように、必ず分けなければ牽制できないというのは、私には理解ができないところです。

 アメリカ等のグローバル企業でもCEOはボードメンバーに入っているケースが大変多いので、そこの点は本当によく議論しないと、余り大きい組織をつくってもいけませんし、そういう意味では、繰り返しになりますけれども、CEOほか2~3人の常勤役員がきちっとボードメンバーに入って、日銀と同じように審議を尽くすのが一番自然ではないかと思います。

○植田座長 関連した論点。

○菅野委員 先ほど、アメリカの企業でCEOがボードに入っているという議論がありましたけれども、これは企業の場合であって、年金運用の場合ではかなり違うと思います。アメリカでも私の知る限りカルパースなどでは執行部はボードに入っていませんので、アメリカでもむしろそこは分ける、すなわち監督と執行をはっきり分離して、執行部は理事会等のボードに入らないというほうが、もし必要でしたら事務局の方に調べていただいてもいいのですが、より一般的な、世界的な流れだと思います。

 といいますのは、年金運用というのは目的が極めてはっきりして単純で、これは出口さんがおっしゃるように非常にシンプルな組織ですので、そのために何をするかということになると、答えは極めてはっきりして、ボードメンバーと執行部は分けるべきです。むしろ、牽制が効かないことのリスクが非常に大きいということだろうと私は思っていますので、私ははっきり分けたほうが国民が理解し易いし、国民のためになるし、国民が支持すると私は考えます。

 先ほど来出ている専門性ということですけれども、実は専門性というのは幾つかの側面があって、執行部に求められる専門性、それから理事会のメンバーに求められる専門性、おのずから違いがあると思います。理事会のメンバーは何も執行部に要求されるような細かいところまでの理解、英語でいうとボルト・エンド・ナットと言うのですけれども、そういう細かいところまで全てどうなっているかという知識は必要ないでしょう。車で言うと、エンジンから始まってタイヤ、いろんなところの部品がしっかりそろっていないと車は動きませんので、その部品の一つ一つの性能についてもわかる専門家がいないといけない訳ですが、これは執行部にいる専門家に任せればいいわけです。理事会の専門性は、もちろん仕組みは理解した上で全体がどうなっているのかを判断することが必要です。仮にパーツパーツがよくても全体を見ると明らかにこれはおかしいなというところがある。これを判断するのがボードのメンバーの役割だと思います。

 それともう一つ重要なのは、ボードのメンバーは、私は国民に対する説明責任を全うするのが重要な責務であり、これは執行部の役割ではないと思っていますので、むしろ国民の目線、そういう意味で労使の方が入っていただくというのは非常に重要なことだと思いますので、そういう国民の目線で話を執行部から聞いて、それを国民にわかりやすく説明するというのが理事会のメンバーの役割です。執行部の言っていることを全部理解して、そして国民に伝える、自分の頭でそこでチェックして牽制を働かせる、これがボードメンバーの言う専門性だと思いますので、この専門性はボードのメンバー、これが常勤であろうと、非常勤であろうと、全員で共有していただかなければいけないと思います。

 先ほど専門性を持った人がいるのだろうかという御懸念をされた方がおろうと思いますけれども、私が申し上げたような専門性ということであれば、かなりの方がいると思いますし、少なくともボードのメンバーになる方は、その専門性は持っていただかないとなってはいけないと思っております。

○植田座長 阿部参考人、どうぞ。

○阿部参考人 合議制の理事会を置くという前提で1つだけつけ加えさせてください。

 専門性の問題はボードや理事会よりは、むしろ執行側の問題だと思います。そういう意味で理事会の理事長はCEOではない人とし、逆にCEOは専門家の総代表として理事会、ボードにちゃんと入るというような構成が必要になってくるのかなと思います。

○植田座長 花井さん。

○花井委員 これも何回も言っているのですが、GPIFは年金制度の一部ということで、あくまでも厚生労働大臣から目標が示されて、それをいかに実行するかという方針を決めるのが合議制にするのであれば理事会だと思います。

 したがいまして、公的年金という性格を考えたときに、当然理事会には保険料を払っている労使、あるいは受給者等々が入るのは当然だろうと思います。むしろ問題なのは、業務執行機関におけるメンバーをどうするかということが一方であろうかと思います。仮に経団連の代表、連合の代表が意思決定機関に入るとしたら、そこは全く何の利益もありません。むしろインサイダー取引とかが大きく懸念される場合があろうかと思いますので、専門家と言われている人たちが業務執行機関に入るとすれば、完全に企業籍なり団体籍を切るとか、あるいは一定期間務め上げたら同じ業界に何年間か戻らないということはあると思います。むしろそういうことをきっちりきめておいて、国民からの目から見たら透明性があって公平性があるのだということを、そういう形で示す必要があるのではないかと思います。

 以上です。

○伊藤座長代理 幾つかありますけれども、合議制で大体コンセンサスがあるということで、ただし、花井委員から御質問があったのは、独法にするときの議論を整理してくれということで、私なりに考えると、やはり独法にしたときの経済環境と今の経済環境では違うので、それで新しい経済環境、それから、さらにこれからどうなるかということを先にフォワードルッキングを考えた場合に、今の独法では対応し切れないのではないかということで状況が変わったというのが私の理解です。

 ただ、私は独法にするときの議論に参加していたわけではないので、事務局のほうから、なぜ独法にしたのかというそのときの議論をごく簡単にサマリーにして提出していただければ幸いかと思います。年福時代のつらい思いでもあるかもしれないのですけれども、よろしくお願いします。

 そうすると、次は理事会と執行部の関係、大臣と理事会執行部との関係ということになります。大きく分けて2つ、岩間委員が整理されたとおり、仮にアメリカ型、イギリス型と呼ぶと、そういうのがあるということと、菅野委員がおっしゃったように、アメリカ型でもアメリカの会社とアメリカの年金は違うではないかという議論があったと思います。私も完全には整理できていないのですけれども、最低限執行部と理事会を峻別した上で、理事会にもし執行部から参加するとしたら、CEO1人だけでそれは議長にならないというのが1つで、あと堀江委員はそれでもだめだとおっしゃると思うのですけれども、全く峻別するという、この2つかなと。その間で少し議論を深めていければよろしいのではないかと。だから、出口委員、退席されてしまったのですけれども、2~3人入るというのはあり得ないし、CEOが議長になるというのもあり得ないと私は思っています。

 そこが執行部と理事会の関係で、大臣と理事会の関係については、堀江委員から説明があったように、大臣の責任の大半はリスクとリターンを決めたところで達成されていて、あとはできるだけ理事会が決めた上で報告するということで、よほど重要なところは承認というのが残るのかもしれないのですけれども、それはポジティブリストで承認とはこうこうこういうことで、しかも情報管理ということから考えると、理事長と大臣が2人だけで会ってその話をすると、次は絶対入らないというぐらいの縛りをかけるということが非常に重要だということだと思います。

 理事会のメンバーの専門性ですけれども、これはできるだけ幅広い専門性というのが必要で、例えば中東リスクのことがわかっている人であるとか、あるいはインフラの専門家であり、グローバルなインフラについて非常に専門性を持っているとかということで同じような人が集まっても仕方がないと思うのです。プラス、パブリックマインドを持っている人が必要だと。私たちは必ずしも日本人に限る必要はなくて、外国の年金ファンドを経験したとかというような方も外国の年金ファンドの理事会の理事長を経験したというような方、あるいは理事長を今やっていて兼任されてもいいと思うのですけれども、そういった方も含めてグローバルに人材を獲得するということを考えれば、人材がいないということは全くないと思います。

 あとマクロの議論ができる人と、マクロの世界の経済情勢を話せる人、ミクロの原油であるとか、インフラであるとか話せるような人が対応に入るということが重要。独走を防ぐという意味で重要になってくると思います。

 菅野委員が言われた、理事が国民に説明する責任を負っているというのが非常に重要な点だと思います。例えばですけれども、執行部隊がとったポジションによってマイナス10%株が暴落したと、マイナス10%のリターンでしたというときに、誰がどういうふうに説明するかということですけれども、これは執行部隊が説明してもほとんどクレディビリティはないと思うのです。できるだけのことはやったけれども、損が出ましたと、株が暴落したのを予見できませんでしたということになると思うのですけれども、従来であればそこでなんでこんな危ないものを持っていたのだ、売れというような声がどこかから飛んでくるということで、これは資金の運用からすると間違いないのです。だから、10年単位で物を見れば、暴落したときは買いに入るのが当然なのですけれども、そこがどこがというのがわからないので、買いのタイミングというのは難しいというのはそのとおりなのですが、そのときに理事会が執行部隊の投資判断について守りに入る、守って国民に対して説明するのか、執行部隊をとがめて、それは事前に考えてもこういうポジションをとるべきではなかったと言うのかというのがかなり重要で、これが国民に対する説明責任というところが重要になってくることだと思います。

 そういう意味でも世界で何が起きているのか、世界の年金はどういうポジションをとっていたのか、それを今ここでGPIFがそうした損失を出したときに、それは仕方がなかったのか、あるいは暴走だったのかということをまず一義的に判断するのは理事会だと思うのです。だから、そういう意味で峻別して牽制する、暴走を防ぐというのはそういう事前の意味もあるし、事後的な説明ということにもかかってくると思います。

 以上です。

○植田座長 花井さん。

○花井委員 済みません、伊藤先生にお聞きしたいのですが、例えば今は独任制なのですけれども、GPIFが運用しているのは財政検証を行って中期目標をもとにしてプラス1.7%という、そこを獲得する運用だと思うのですが、そのことがこれからも仮に続くのでしょうか。年金制度という関係から言えば、当然財政検証なりどういう利回りをとっていくかということは作業として行われると思うのです。そうすると、今、伊藤先生が仮定としておっしゃったことはどういう場合で想定されるのですか。

○伊藤座長代理 リスクをとるということで議論になってきたと思うのですけれども、完全にリスクがないというのは現金で持つということですね。でも、現金で持つというのは、確実に損をするというポジションですね。当然金利が上がって、金利があると機会費用を逃すということもありますし、物価が2%上がっていけば毎年2%目減りしていく。確実に損をするポジションというのが1つある。このキャッシュです。それから国債を持つ場合はどうか。国債は短期から長期まで、あるいは短期はほとんどキャッシュと同じとすると、長期のポジション、長期国債というのは金利のリスクにさらされていますから、普通は損しないけれども、時価評価ですと、損をすることがある。

 時価評価だから、満期まで持っていればという意見になるわけですけれども、満期まで持っていても、その間、別の運用をしていればもう少しリターンが高かった、あるいは長期国債を買うタイミング、短期国債を持っているか、長期国債を持っているか、どちらにいくかということで違ってくる。さらに、社債であるとか株式であるとかというものを混ぜてくる、分散投資をすると、そこで相関関数が低いもの、あるいはネガティブなものを見つけることができれば、これはもう少しリターンが高くなるかもしれない。確実に損をするポジションをやめて、分散投資というものを生かして、リスクをコントロールした上でリターンを上げてくださいと、これが財政検証を経た後のものになるわけです。

 少し驚かせてしまったかもしないのですけれども、2009年というのはGPIFも損を出しています。カルパースも損を出しています。もちろんGPIFは国債の比率が高いですから、株式の比率が低かったですから、損失の金額あるいはそのパーセントといった損失が限られたものだったのです。だから7%でカルパースが20%。そういうようなものですけれども、翌年、2010年のリカバリーというのはカルパースのほうが高かった。だから、1年ごとに、ことし10兆円損してしまったよねというようなことは、それほど問題ではなくて、問題なのは10年通したときにどういうリターンをとったでしょうかと。最悪の投資パターンというのは、下がったから売る、上がってきたから買うということをやる場合で、これはもうからない。長期投資は個人はなかなか難しいですけれども、究極の相場に対して正しいポジションは、やはり下がったときに買って、上がったときに売るということです。それをどうやって構築していくかというのが最大の問題だと思うのです。だから、短期のリスクに余り振り回されると長期的に見た正しいポジションがとれないということで、そこがやはり理事会がきちんと理解して、理解できる理事を選んで重要な決定をしていくということだと思います。

○植田座長 今の点、一言だけつけ加えますと、前回の財政検証以降やってきたことは、JGB中心のポートを組んだのですが、結果的にうまくいってしまったのです。デフレの時期に来まして、ほかの資産を持っていたら、例えば株をたくさん持っていたら下がってしまったであろう。一方で、JGBはある程度の低いけれども、プラスのリターンですから、賃金も下がった。だから、賃金プラスアルファの利回りは結果的に稼げてしまったのです。ただ、財政検証をやったときに、デフレになるということを予想してそういうポートを組んだわけではないのです。そういうふうに、たまたまうまくいってしまったということがありますので、違う経済環境で同じポートを組んでいたら全くうまくいかなかったかもしれないというようなことを含めまして、運用がだんだん難しくなりつつあるし、ある程度の専門性は、もう少し高い専門性はということを先ほど私申し上げたのですが、それ以上具体的にここは今の独任制でうまく回っていないということをきっちり言うのはなかなか難しいとは思いますが、関連で。

○花井委員 それは独任制の問題として伊藤先生に聞いたのではなくて、財政検証自体が相当長い先を見通した人口推計を入れたり、経済前提を設定したりして行われていると思っているのです。それを受けて今回のGPIFが出したポートフォリオも決して短期的な見通しとして大幅に国内債券の比率を減らしたわけではないと思います。やはり経済状況なりを踏まえてそういうポートにしたのだと理解はできるのですが、伊藤先生のお話を聞いていますと、プラス1.7以上を目指す必要があるというようなことを主張されているのかと、そういう懸念があります。決して年金部会で議論したときもプラス1.7以上のリターンを、という話は出なかったと思っているものですから、そこについて質問させていただいたということです。

○伊藤座長代理 1.7というのは目指せということですけれども、投資ですから、今の段階で見れば確率的にしかわからないですね。リターンが悪いときもあるし、いいときもあるしということで、それで堀江委員の言われたことが多分一番適切だと思うのですけれども、全額債権で運用したときよりも下回る確率がということでいろいろ計算をされているわけで、1.7を上回るのを目指せということではなくて、1.7は目指すのだけれども、それがどういう意味を持つかというのは最低限決められたリスクの中でこれぐらいはとれるだろうという計算をされていると思うのです。

 ただ、もし環境が非常によくて、1.7を超えるようなことが例えば3年目か何かにわかったときに、そこで運用はやめるのかと、全部現金にしてしまうのかというのは、私は違うと思うのです。それでもし決められたリスクで運用していて、もし1.7を上回るようなことができるのであれば、そういう環境になった場合には、どうぞいってくださいということだと思います。これは企業年金と違うのです。前にも申し上げたと思うのですけれども、企業年金は余りにも年金の利益が出てしまうと、今度はそこが会社のうまみのあるところになってしまって、今度はテイクオーバーの危険が増してくるというので、経営者はむしろそこはとめてしまうと、もうそれしか利益を出さないでくれといってとめてしまうというアメリカの企業というのは結構多いのですけれども、それでポイズンビルをつくってみたりいろんなことをやるのですが、そういうばかなことは公的な年金はしなくてもいいでしょうということで、リスクとリターンは事前に決めるものだけれども、事後的にぴったりプラスアルファ1.7にする必要はないと私は考えています。目指すものではないですけれども、事前と事後では違ってきてしまうので、事後的にそれを上回ることがあっても私は構わないと、リスクを取り過ぎたと言われる、事後的にリスクを取り過ぎたのではないかなと、こんなリターンが出てというような責め方はしなくてもいいと思っています。

○植田座長 これは別の大きな論点かと思いますので、もしできればきょう議論が集中した幾つかの点について、もう15分、20分くらいありますので、さらに詰めることはできないかどうか試みてみたいと思うのですが、大きな論点を1つずつやっていきますと、ボードの構成のところで執行部が入るべきかどうかということについて議論が分かれていたと思います。

 1つの主張は、CEOあるいはほかの若干名が入るべきであって、入ることによってボードと情報共有ができて、よりよい意思決定がそこでできる。ただ、そういう場合でもボードの議長をCEOが兼ねるかどうか、兼ねてはいけないのではないかという御意見もあったかと思います。

 他方で執行部は入るべきではないという御意見も複数の方がおっしゃいました。ただ、その場合、情報共有の方法としては堀江委員がおっしゃったように、ボードの下にいろいろなサブコミッティをつくり、そこにボードと執行部が専門性に応じて入っているということで担保するという御意見だったと思います。この周辺についてもう少し御意見をおっしゃりたい方がいれば、どうぞ。

○山口委員 ボードと執行の関係というのは、牽制ということが一番大きいと思うのですけれども、これについては抽象的な議論を余りしてもどうかと思います。執行サイドの暴走を防ぐというのは結果を見て運用パフォーマンスを見て、こういうふうにすればよかったと後で事後的に分析する話ではなくて、実は運用活動、投資行動をやっているプロセスの中でチェックしていかなければいけないと思うわけです。牽制するということは、常時目を光らせてその役割を果たさなければいけないということだと思います。

 例えば具体的な例で、この例がいいのかどうかよくわからないのですが、10月末にGPIFでは新しい基本ポートフォリオに変わりましたということがあります。そして、以前のポートフォリオから新しいポートフォリオに移行していくということになっています。

 ただし、この移行過程においては許容変動幅の範囲内に入らない運営も許容するというか、認めてくださいよということになっております。では今の基本ポートのポジションは、GPIFのポジションはどうなっているのか。それは執行サイドに任されているのですが、運営ルールとして、非常に重要な枠組みである許容限度幅すら守られていないという状態に今なっているわけです。これはあくまでも経過的な取扱いではありますが、そういうふうになっている。このことは、私は前に審議会でも質問したのですが、きちんと今のGPIFではやっておられると信じているわけですけれども、例えば執行と理事会が分離したというときに、執行サイドである時点でこういう許容限度幅という基本ルールを逸脱してでもいいですよという状態は現に起こっているし、今後も起こる可能性があるわけです。ポートフォリオに切りかえるタイミングで出てくる問題ですが、そのときに理事会がどのようにこの暴走をチェックするような具体的な役割を果たし得るのか。それはだから運営の投資活動の日々の中でチェックしていくとするならば、常時ウォッチし、把握しておかなければいけないわけです。

 そうすると理事会の役割として、そういう日常の牽制機能を期待するのであれば、理事会というのも時々集まってやるというだけではなかなか済まないだろうということにもなりますし、これは堀江さんに伺うほうが早いのかもしれないのだけれども、こういった具体的な話に対して理事会と執行部隊の役割といったことを少し議論しておいたほうが現実的な姿になるのではないかと思いますので、そのあたりイメージされているところを教えていただければありがたいと思います。

○伊藤座長代理 今、山口委員がおっしゃられたことは非常に重要な点で、理事会がどれくらいハンズオンで暴走を防ぐというか、執行部隊を監視しているのかということですけれども、今、例に出された許容幅のものに関しては、いついつまでになるべくタイミングをうまく見て、これは売却して、こちらは買い増しをするというガイドラインを出すというのがまず第一だと思うのです。あとは今の話をすれば、恐らく4つのアセットクラスのうち、3つぐらいはほぼ許容幅に入っていって、1つは大きく逸脱していると思うのですけれども、これは時間をかけてそこを調整していくという指示が恐らくどこかから出ているのではないかと予想するのですが、そういった意味で時間をかけてというのは、いついつまでにこれぐらいの時間でというのを決めるのが、理事会として1つの役割だと思います。

 あとは常勤の理事もいるわけですから、そこが日々見ているということが重要だと思います。暴走を防ぐのは、そのプロセスの中で事前に防いでいくというのは全くそのとおりで、だから私が出した例が適切ではなかったかもしれないのですけれども、2009年のことに関しても2007年ぐらいから既に兆候はあったわけで、目利きのファンドとかアセットマネジメントでは2007年から売り始めているところがあるし、2008年から売り始めたところもあるし、最後で捕まってしまったところもあるし、それは幾つか例があるわけで、どうして2007年に兆候を察知して売ることができたのかという成功例もきちんと勉強しておくことも重要ではないか。そういう意味でも、理事というのは広いバックグラウンドを持って、いろいろな情報網を持っている人が入るべきだと思います。

 論点が前に戻ってしまうのですけれども、前回もお話したと思うのですが、厚生年金のあり方にもよるのですが、人口構成がどんどん確定給付の年金にとって不利になっていく。これからそれがしばらく続く、何十年も続くということが既にわかっているので、我々やはり将来世代、それも今、保険料を払っている人ばかりではなくて、これから生まれてくるような世代にも、できるだけ今の大きな127兆円の基金のベネフィットがわたるように考えてあげることが重要で、余り激しくあおるつもりはないのですけれども、世代間の対立というのが根底にはあって、今、給付をもらっている人はリスクをなるべく低くして、我々が給付だけもらって、もらい終わるまでのことを考えてくれればいいというふうに言うかもしれないですし、あるいはまだ生まれていない世代のことまで考えて、きちんと発言してくれる人もいるかもしれないのですけれども、厚生年金の制度を100年これから続けよう。このGPIFを何とかうまく回して、100年先まで将来世代が不利にならないようにしようとしているわけなので、そこに利害を代表する人がきちんと理事会に入る。将来世代のことを考えることができるといような人が入るということが、もう一つ、そういう人ばかりという意味ではないですけれども、それが非常に重要なことだと思います。

○植田座長 山口委員がおっしゃったような例ですと、執行部がボードに入っているかどうかということでは、余りチェックの足しにならないような気がしますね。むしろリアルタイムで変な運用が行われているかいないかを監視する仕組みがあって、例えばサブコミッティの中のリスク委員会とか、そういうところがじっと見ていて、妙な動きがあれば、それをボードに上げて、ボードに臨時会議を招集してもらうとか、そういうような感じになるのかなとも思うのですが。

○堀江委員 補足させていただきますと、今のGPIFの運用委員会というのは、私のイメージで言うと新しい理事会のイメージに近いのです。なぜかというと、経団連の代表の方もおり、連合の代表の方も入っておられて、いわゆる学者の先生もおられて、やはり経営者としての知見のコメントもいただきますし、国民目線の観点から今回のアセットアロケーションについてどうなのかといったような私見も、運用委員会の中でいろいろな議論が出て、アセットアロケーションについても全会一致ではなかったですし、そういう意味でいろいろな観点の意見が意思決定に反映されるという意味では、私は今の運用委員会のようなメンバーは1つの理事会のひな形として、年金財政の方が入っていなかったのでアセットアロケーションについてはいかがなものかという意見もあるのでしょうけれども、やはりいろいろな立場の専門家の方が入っていろいろなコンセンサスを得て、いい意思決定ができるというのは、私は非常に今の運用委員会を見てもそういうふうに思います。ですので、専門性がどのぐらい要るかということに関していうと、運用の専門性ではないです。あくまで監督の専門性なので、そこについては今の日銀の審議委員みたいな金融政策についてのプロがいるというわけではないという、そこについて1点申し上げたいと思います。

 山口先生がおっしゃった点は非常に重要な点で、私どもも過渡期でマーケットインパクト等を考えて今、バウンドを緩やかにして、なおかつ超えてもいいという形にしていますけれども、それは私自身も運用委員として非常に危惧する点なのです。あれをどういうふうにチェックするのかということについて言うと、今の段階で私は既に危惧を持っていまして、それをチェックするには植田先生おっしゃったように、チーフリスクオフィサーみたいな方がボードの中にちゃんといて、リスク管理委員会でちゃんとそれがモニタリングされて、執行に対する牽制機能を効かせて、それが随時理事会のほうに報告されて、それで確認されるという形でないと、今の体制で山口先生がおっしゃったような危惧を払拭する体制には十分ではないというのが、私が今、GPIFの中にいて若干危惧する点なので、その点は今回のこの体制の中でしっかりと執行に対して、今回のものはかなりアライアンスが結構大きいので、執行に対する自由度が高まったという意味で言うと、山口先生がおっしゃったようなチェックを必ず理事会として入れるような仕組みは、ビルトインしていかないといけないと考えています。

○菅野委員 CEOないしCIOがそのボードに入るかどうかということですけれども、別にボードに入らないと理事会での議論に一切参加できないということでは全くないわけで、当然のことながらCIOないしCEOは、ボードが開かれるときには議題にもよりますけれども、基本的には必要に応じて参加する。ただ、問題は最終的な投票権があるかないかということですので、執行部が説明していることに対して自分でまた投票するというのは、明らかにこれは矛盾していますので、やはり投票権は持たせるべきではないと思います。

 本日の会合の冒頭、理事会の開催頻度についてどなたからか御意見があったと思いますけれども、日銀の政策委員会もいわゆる政策決定会合は月に1回ないしは2回ですが、これは植田座長御存じのように、それ以外の会合は頻繁に開かれていますので、そこは週2回でも、あるいはさらに必要に応じて今、堀江委員がおっしゃられたように必要に応じて理事会を招集すればいいのであって、それは議題次第なのだろうと思います。

 あと、花井委員から先ほど御指摘のあったインサイダートレーディングを排除するために、理事会のメンバーは中心母体から一旦籍を外すべきだという点については、私も趣旨は全く賛成なのですけれども、もちろん常勤の人は外すべきだと思いますが、非常勤の人までそこから外すということになってしまうと、これは多分、なり手が余りいないのではないかという気がしますので、インサイダートレーディングの話というのはボードなどに限らず、このGPIFの職員に全員当てはまる話ですから、そこはそこで別途しっかりコンプライアンスを守ればいいのかなと私は考えます。

○阿部参考人 理事会が合議制だとして、それほど大規模な組織である必要はないと思います。シンプルな組織がいいということであれば、拠出者である労使代表や国民年金の代表、財政等の専門家に加え、専門家を執行側にたくさん招くということの総代表として、CEOに理事として参加してもらう方が、私は意味があると思います。理事長はCEOでない方が望ましいと思いますけれども、少人数の理事会の中で執行部と密接な連携をとるという意味では、やはりCEOは理事の1人として入るべきだと思います。

○山口委員 この問題に関連して、できればいわゆる受託者責任についての法制を、この法人の法律をつくるときにきちんと規定しておくべきではないかと思っています。我が国の法体系上、残念ながら忠実義務であるとか注意義務といったようなことをきちんと規定した受託者責任に関する規定というものが、これまで余りはっきり明定されていないのではないかと思います。ですから、まさに今回権限を移譲する、独立性を高めていくという背景には、そういう責任をきちんと果たしていただくような法整備も必要だと思います。もちろん損害賠償請求といったようなことも当然その結果出てくるわけですので、非常に緊張感を持ってやっていくんだというような体系の中で、この仕組みをつくっていくことが非常に大事だと思います。

 ボードメンバーの話は先ほど経団連の方が言われたように、私も情報連絡をきちんとやっていくという意味でも、理事長でなくてもいいと思いますけれども、メンバーにCEOが入っているという仕組みのほうが運営上はやりやすいのではないかと思います。特に受託者責任については一度議論していただければありがたいと思います。

○植田座長 そろそろ時間ですので、ではごく手短に。

○伊藤座長代理 インサイダー取引の話が花井委員と菅野委員から出まして、花井委員のほうは、私はむしろ執行部でインサイダーにならないようにきちんとすべきだという御意見だったと思います。菅野委員はインサイダーということで理事のほうのお話をされたと思うのですけれども、これは非常に重要な点だと思うのです。インサイダーの問題、もう少し広く言うと利益相反がない、あるいは接待攻勢を受けないというような仕組みをつくるというのは非常に重要で、執行部隊にはいろいろなアプローチがあると思うので、普通の年金基金とはそういうところで一部問題があったのではないかと思いますので、利益相反がない、接待は絶対に受けない。基本中の基本だと思うのですけれども、そういうことはきちんと課せられる。あるいは出身母体があるのだったらクーリングオフを置くとか、やめてからもクーリングオフをつけるとか、当然のことだと思うのですが、そういうようなところも少し細かい話に入ってしまいますけれども、重要な点だと思います。

○植田座長 それでは、まだ議論し足りないですが、時間が来てしまいました。きょうは重要な論点についてかなり突っ込んだ議論をいただきました。ただ、まだ結論には至っていないところも多いですし、十分議論できなかったほかの論点もありますので、事務局に次回に向けてきょうの議論を整理していただいて、次回以降、また議論を続けたいと思います。

 それでは、次回の開催について事務局から。

○大臣官房参事官(資金運用担当) きょうは熱心な御議論ありがとうございました。

 伊藤先生から、独法に切りかわったときの経緯ということがございましたが、ちょうど私はそのとき6兆円、市場運用で含み損が出たときで急遽呼ばれまして、担当していまして、御説明は前回岩間先生からお話がございましたように、原則としては独法に変わるという話でございましたが、これは原則でございまして、そのときは前回もお話しましたが、非常に含み損が上がったものですから責任者は誰だという話でございまして、そのまま理事長1人のほうが責任者が明確でいいという御議論をかなりいただいたものですので、これは例えば合議制にする場合には、合議制におけるところの説明責任をどうするかという御議論だと存じます。

 あと、山口先生から受託者責任の話をいただきました。GPIF法にはプルーデントマンルールとか忠実義務とか書いてございますが、確かにアメリカの受託者責任ですと労働省のほうで非常に細かいガイドラインとか、別途労働省におけるところの受託者責任訴訟制度とかございますので、そういうものを御紹介させていただきたいと思います。

 次回の開催につきましては、事務局から連絡差し上げたいと存じます。

○植田座長 それでは、本日は皆さんありがとうございました。


(了)

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