ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班)> 第1回 年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班議事録(2014年11月4日)




2014年11月4日 第1回 年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班議事録

年金局

○日時

平成26年11月4日(火)9:00~11:00


○場所

東京都千代田区霞が関1-2-2
厚生労働省専用第22会議室(18階)


○出席者

植田 和男 (座長)
伊藤 隆敏 (座長代理(専門委員))
岩間 陽一郎 (専門委員)
柿木 厚司 (委員)
菅野 雅明 (専門委員)
出口 治明 (委員)
花井 圭子 (委員)
藤沢 久美 (委員)
山口 修 (委員)

○議題

GPIFのガバナンス体制について

○議事

○大臣官房参事官(資金運用担当) では、定刻より多少早うございますが、委員の方、おそろいでございますので、ただいまより第1回の年金積立金の管理運用に関する法人の在り方検討作業班を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、御多忙の折、そして急な日程調整であった中お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。

 本日は、塩崎厚生労働大臣にお越しいただきましたので、御挨拶をいただきたいと存じます。

○厚生労働大臣 皆さん、おはようございます。国会の都合で順を変えて先に御挨拶をさせていただくことをお許しいただければと思います。

 本日は、社会保障審議会年金部会設けられました「年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンスの在り方検討作業班」の第1回会合として、委員の先生方におかれましては、大変お忙しい中御出席を賜りましてまことにありがとうございます。また、専門委員としてこの検討作業班に加わっていただいた先生方には、改めて御礼を申し上げたいと思います。

1015日の年金部会におきまして私から一言御挨拶を申し上げましたけれども、年金積立金運用を担うGPIFの改革につきましては、本年1月のダボス会議で安倍総理よりフォワードルッキングな改革を行うとの国際発信も行われた、いわばアベノミクスの最重要改革の一つでもございます。

 先週1031日に、GPIFより基本ポートフォリオの見直しが発表されましたけれども、まさに運用改革とガバナンス改革は車の両輪だということで、国民からお預かりをいたしました年金資金を確固たるリスク管理や内部統制のもとで安全かつ効率的に運用できるよう、ガバナンスを強化することは極めて重要な課題だと思っております。

 安倍内閣として閣議決定をいたしました本年6月の日本再興戦略改訂2014におきましては、有識者会議の提言を踏まえ、厚生労働省において当該資金の規模、性格に即して長期的な健全性の確保に留意しつつ、主たる事務所の所在に関することに加え、年金制度、法人の組織論等の観点から、今後の法改正の必要性の含めた検討を行うなど、必要な施策の取り組みを加速すべく所要の対応を行うとされております。

 この閣議決定に基づいて有識者会議の提言を踏まえて、法人の組織論等の観点から検討を行うために、この検討作業班には年金部会の先生方に加えまして、この専門委員として伊藤先生を初め内閣官房の有識者会議のメンバーであられた先生方、そして年金資産等の運用を実際に担ってこられた専門家にも加わっていただきまして、国民の皆様方に安心していただける年金制度の確立のためにも、今後、検討作業班の先生方には精力的な御議論を賜りたいと思っております。

 この年金部会において、法改正に向けた新たな法人のガバナンスの骨格につきまして、年内に結論を得られるよう、何とぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 以上でございます。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 恐縮でございますが、公務のため、大臣は御退席いたしますので、そのままお待ちください。

○厚生労働大臣 恐縮ですが、予算委員会がございますので失礼いたします。

(厚生労働大臣退室)

○大臣官房参事官(資金運用担当) では、先ほど大臣から御紹介がございましたように、この検討作業班のメンバーにつきましては、神野年金部会部会長が大臣、事務方と相談の上、植田部会長代理に座長をお願いするとともに、年金部会の委員の方に加えて外部の有識者としまして4名の方にも御参画いただくこととなりました。それぞれ外部の方につきましては、新たに社会保障審議会の専門委員として委嘱をお願いしたところでございます。

 まず、この4名の方を含めまして検討作業班に御参画いただく委員を私のほうから御紹介させていただきます。

 神野部会長の御指名により座長を務めさせていただく植田和男先生。

 同じく部会長の御指名により座長代理を務めさせていただく伊藤隆敏先生。

 残りの方は「五十音順」で御紹介させていただきます。

 岩間陽一郎先生。

 柿木厚司先生。

 菅野雅明先生。

 出口治明先生。

 花井圭子先生。

 藤沢久美先生。

 山口修先生でございます。

 なお、本日御欠席されておりますが、堀江貞之先生にも御参画いただくこととなっております。事務方からの出席者につきまして、お手元の座席図のとおりとなっておりますので、これをもって紹介にかえさせていただきたいと思います。

 それでは、これからの議事進行につきましては、植田座長によろしくお願いいたしたいと存じます。

○植田座長 植田です。よろしくお願いいたします。

 それでは、議事に入る前に、この作業班の役割について改めて整理、確認させていただきます。

GPIFのガバナンス体制について多くの論点があることですので、年金部会において行っている年金制度の見直しの議論のスケジュールに影響を及ぼさないよう、また今後の部会の検討を効率的に進めるために議論を整理する場として、この作業班が設置されたものであるわけです。この作業班の議論の内容を部会の求めに応じて報告することとさせていただきます。

 議事については原則公開とさせていただきます。

 それでは、事務局から資料の確認をお願いいたします。よろしくお願いします。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 事務局から、お手元の資料につきまして確認させていただきます。

 本日、配付資料といたしまして、資料1でございますけれども、開催要綱。

 資料2でございますけれども、皆様委員の方の御名簿。

 あとは資料3でございますが、有識者会議の提言の概要でございまして、資料4で有識者会議の提言、本体がございます。

 あと参考資料1でございまして、GPIFのガバナンス体制につきまして、第26回の年金部会に提出した資料、そして、そのときに参考資料でつけたものが参考資料2、あと机上配付の資料でございますが、第26回の年金部会の議事録を配付させていただいております。よろしく御確認いただきたいと存じます。よろしいでしょうか。

○植田座長 それでは、カメラの方はここで退室をお願いいたします。

(報道関係者退室)

○植田座長 では、議事に入らせていただきますが、本日より御議論いただくことになっていますけれども、まずは先日の年金部会に塩崎大臣から有識者会議の提言を念頭に置いて検討するようにと依頼されておりますので、同会議で座長として提言をおまとめになられた、この会議の伊藤座長代理から有識者会議でどういう議論が行われたのか、及び提言の内容について、まず御説明いただきたいと思います。

 それでは、伊藤先生、よろしくお願いします。

○伊藤座長代理 ありがとうございます。今、御指名をいただきました伊藤隆敏です。

 昨年11月に有識者会議提言というのを行いましたので、それについて説明させていただきます。

 先ほど森参事官から説明がありました資料3の10ページをお開きいただくと、GPIFのガバナンスに関する最近の議論という箇条書きのものがありますので、これを中心にお話ししたいと思います。同じものが有識者会議報告書の6ページ、7ページに出ておりますので、そちらをごらんになっていただいても結構です。

 まず、昨年の有識者会議報告というのは、公的・準公的資金運用のリスク管理等の高度化に関する有識者会議という長ったらしい名前がついていたのですけれども、その中で特にGPIFが資金量から言っても圧倒的に多いということもあり、GPIFを念頭に置いた提言を幾つか出しております。有識者会議報告の中では、全体の公的・準公的資金にかかわる提言と、GPIFを特出しした提言というものが書いてあるのですけれども、ここでは特にGPIFに絞った議論をお話し、説明させていただきます。

 それでは、本日の資料3の10ページのところで、箇条書きに沿って説明していきたいと思います。

 リスク管理体制等のガバナンスの見直しというところで、1、大臣は理事長等の任命責任を負う。

○植田座長 参考資料1の資料3ですね。

○伊藤座長代理 これの10ページ。

 大臣とGPIFの関係ですけれども、大臣は当然理事長等を任命して、その任命責任を負うけれども、運用機関としては大臣から受託者責任を負うという形で、受託者責任の範囲内で自主性や創意工夫を十分に発揮し得る体制とすべきであるということで、平たく言うとがんじがらめに運用を規定する、あるいはこれを買え、これを売れという指示を大臣からするようなことはないということになります。したがって、目標利回りとか、あるいは許容乖離幅のついた基本ポートフォリオということについて相談するのは構わないけれども、その中で実際にどういった運用をするかということについては自主性、創意工夫、どういった手段を使うかということについて創意工夫があるべきだ。これがまず第一点、重要な点になってきます。

 というのは、年金基金ですから長期の運用を考えているわけです。したがって、四半期の利回りとか、あるいは1年単位の利回りというものに振り回されることなく10年単位でどういった資産をどのように買っていくのが重要かということを運用専業機関であるGPIFが判断できるという体制をつくりましょうということであります。長期運用の利点を生かせるガバナンス体制にしましょうということであります。

 次に、資金運用の重要な方針等については、利益相反にも配慮した常勤の専門家が中心的な役割を果たす合議制により実質的な決定を行う体制が望ましい。これは現在のGPIFが独法という組織形態であるために、理事長が1人で決めて1人で責任を負うという形になっています。我々は、それは好ましくない、複数というか、通常、理事会と呼べば多分6名~10名ぐらいが念頭に置かれると思うのですけれども、こういった異なる専門性を持った人たちが集まって、そこで合議することによって、広く世界情勢から日本経済の先行きから、あるいは特定の金融市場、資本市場の特性をよく理解した人たちが集まってそこで合議することによって適切な判断が行えるようになるだろうということを前提に、この合議制ということを強調しております。

 3番目として、運用対象の多様化やリスク管理の高度化を図るために第一線の専門人材が必要であり、報酬体系の見直しを含めた政策が不可欠であるということで、理事の下に執行部隊というのが来ると思うのですけれども、そこで実際にどういった運用をしたらいいかというようなことについて専門的に日々判断できる人、人材が必要であるということで、これはやはり相当の報酬を払わないとそういった人材は得られない。あるいはその報酬体系という場合には、給与制がいいのか、あるいはボーナスをどうするのかとか、成果をどう反映させるのかということが入ってくると思うのですけれども、そういった体系を考え直さなくてはいけないということであります。したがって、これまでの独法の中で縛られている給与体系を考え直してくださいという意味であります。

 その次は、公的年金については保険料拠出者である労使の意思が働くガバナンス体制が求められる。これはそのとおりであります。

 その次に、独立行政法人は独任制の組織であるほか、人員数、給与水準、経費面で制約を受けている。規模の大きな資金運用専業機関(GPIF)については、その規模、性格に照らして改革の必要性か高いという意味は、この人員を増やし、給与水準を成果報酬も含めた意味で体系を考え直し、あるいは経費は多少膨らんだとしても、それを余りある効率的な運用ができるという可能性が高いので、組織改革をすべきであるということが我々の提言に入っています。

 そのために新たな立法を行い、その法人形態を固有の根拠法に基づき設立される法人に変更した上で、合議制機関である理事会に重要な方針の決定を行わせるとともに、その専門性を重視して適切な情報開示を前提に高い自主性、独自性を認めるべきと考えられるということで、ここで明確に今の独法のままではだめですよということを言っております。

 法人形態、幾つか選択肢はあると思うのですけれども、合議制である理事会が独立性を持って決定するということをそこで重要なポイントと挙げています。

 では、理事会メンバーはどういうメンバーが望ましいと我々は考えたのかというと、金融や投資について十分な知識を有する者の中から、透明性のある方法で選考することが求められるということで、知識を持って理事会の議論に参加し、貢献することができる人材を広く求めなさいということがそこで書かれています。したがって、どこどこの組織に属するからそこから派遣を審査なしに受け入れるということは好ましくないでしょうと。出身母体がなんであれ、送られてくる人がはっきりとした知識を持っているかどうかということが重要だということで、その母体となる組織だからこの人というのはまずいけれども、それを専門知識がある人であれば排除するわけではないという読み方が適切であります。

 その際、年金基金ガバナンスに関するOECDガイドライン等に照らせば、理事会の長である理事長とは別に、業務執行の責任者を置き、理事会の監督機能と業務執行機能を分離することが望ましい。

 その後、過渡期の話があるのですけれども、したがって、我々が望ましいと考えるのは、監督機能と業務執行機能を分離するということで、そこから2枚めくっていただきまして、組織図が書いてあると思うのですけれども、この組織図に沿って見ると、我々が望ましいパターンと考えているのはパターン2、右側のほうの組織になっています。

 この右側の組織というのは、意思決定は理事会で行われ、そこの意思決定に基づいて執行の指示を出す。CEOその他執行役員がそこで執行を行っているということで、そこに会社組織でいうとCIOCOOCFOというのがそこの執行部隊の執行役員というところに入ってくるという構図になっていまして、そこが実際に細かい運用指示を出してそれを昼の取引につなげていくという職員がいるということであります。

 したがって、理事会の下には、投資委員会というふうに具体的な名前が出ていますけれども、投資委員会以外に例えばコンプライアンス委員会であるとか、運用システム委員会であるとか、こういった委員会が幾つかぶら下がるという形で、普通の会社形態でいうと、委員会設置会社というようなものに近い形を想定しております。

 このような形が、そこにOECD報告に基づきと書いてありますけれども、そういった公的年金基金はこういうことが望ましいというガイドラインがOECDから出ている。これに基づいているということと、実際に海外のうまく運営されていると言われている公的年金基金、カナダに幾つかありますし、オランダ、スウェーデンとありますけれども、そういったところは大体このような形、形態をとっているということであります。

 戻りまして、10ページのほうを続けますと、理事会がこのような形で設置できるのが望ましいわけですけれども、我々が昨年11月に書いたときには一気にそこに行くのは難しいかもしれないので、立法化が始まるまでの間にできることとしてパターン1というのを用意しまして、理事長に業務執行権を委ねてしまうという形も過渡期としてはあり得るよねという形をしています。

 後ほどお話ししますけれども、我々のロードマップの中ではすぐにやってくださいということ、すぐにできることと、1年をめどにできることと望ましい姿と考えていたわけですけれども、左側のパターン1というのは、1年をめどにはできるのではないでしょうかというようなこと。パターン2のほうは望ましい姿、立法するときにはこういったことをパターン2に基づいて立法してくださいねという書き方をしておりますので、今ここで立法化の議論をするのであれば、我々と有識者会議、提言としてはパターン2を目指してくださいということを念頭に置いてあります。

 次に、新たに立法による体制整備が完了するまでの過渡期的な姿としてというのは、今言ったように我々が念頭に置いていたのは立法化するには時間がかかるから最低1年~1年半ぐらいはかかっても仕方がないということを昨年の11月の時点で思っていましたので、今はもう11月ですからちょうど1年たったところでありますけれども、本当はこの1年の間にもう少しやっておいてほしかったということはあるのですが、もう1年たってしまったので、今となっては望ましい姿ということを目指して立法化していただきたい。1年たったわけですからということを今この時点では我々としては考えています。したがって、過渡期のところは詳しくは説明いたしません。

 最後は、本拠地は東京都に置くべきという意味は、今の独法の中では本拠地を神奈川県に置くと書いてあるのですけれども、これは何年か前に独法改革のときにそういうことになったわけですけれども、それはどう考えても適切ではないということで、その本拠地、どこに置くというのを立法化の中でもう一度きちんと東京都と書いてほしいということがそこに書いております。

 以上が大体形態についての我々有識者会議の中で話してきたことですが、もう一点、1枚めくって11ページのところに先ほど少し触れましたロードマップということ、我々は呼んでいたのですけれども、工程表についてそこに書き出してあります。これは右のほうに行くにしたがって時間がたった姿になっています。縦に見ると、それが機能についてどうするかということが書いてありますので、一番下の行、ガバナンス体制の見直しというところを右のほうに見ていくと、すぐにすべきこと、それから立法化で目指すべきことといいうところまで時間を追ってこういうふうに改革が進んでいくだろうと読めるようになっています。

 まず、法律を変えなくてもできることということで我々が考えたのは、中長期的に運用成績に連動した受託機関報酬の導入ということと、専門性の高い人材の確保についての検討を開始するということでありますけれども、検討は開始していただいたと理解しています。どういった報酬体系が望ましいかということについて、委託をして、その報告書をもらったと理解しています。

 その次の段階として、1年をめどに取り組むべき課題としてガバナンスは人員数、給与水準及び経費等にかかわる制約の緩和を受けた運用委員会委員の常勤化、これはまだできていません。及び専門性の高い人材の採用、これもまだできていないというのが私の理解です。

 その次に、一番右下隅のセルでありますけれども、法人形態の変更による理事会の設置及び専門性の高い運用体制の整備。これが今まさにこの作業班で議論していただきたいことにかかわっています。したがって、ここの作業班で検討していただきたい我々の有識者提言の中身というのは、法人形態の変更による理事会の設置及び専門性の高い運用体制の整備ということであります。

 ここではポートフォリオの話は議題ではありませんし、作業班のマンデートではないわけですけれども、当然基本ポートフォリオの改革を受けて、より専門性の高い人材を必要とするポートフォリオにシフトしていくということが決まったわけですので、その意味からも早くガバナンスの体制を整えることによって有効なポートフォリオを構築していくということができるし、その方向に行ってほしいということで、そこでガバナンスとポートフォリオが密接に関係しているということを最後に一言つけ加えて、私からの説明を終わりたいと思いますが、御質問があればまた補足して説明したいと思います。

 私からは以上です。

○植田座長 ありがとうございました。

 それでは、きょうは第1回目ですので、さまざまな観点からいろいろ御意見をいただきたいと思いますが、まず、最初の御報告いただきました伊藤先生の話を中心に御質問、御意見等をいただけたと思いますが、どなたからでもお願いいたします。

 どうぞ。

○岩間委員 私は運用の担当を長らくやって年金の運用もやらせていただいたということも若干ございますけれども、どちらかといいますと運用部隊の監督経営というか、そういう観点で仕事をしてまいりましたので、そういう観点で先ほどの伊藤先生のお話を踏まえて私の考えといいますか意見を言わせていただきたいと思います。

 年金の運用というのは御指摘のとおり、非常に長い時間軸で考えなければいけないということで、当然ながら長い時間軸を生かして最大限のリターンがとれて、最終的に受給者が満足できるような水準を確保するということが大目的であるし、それを専一に考えなければいけないということだと思いますが、むやみやたらにリスクをとってもいいということではなくて、そこをどういうぐあいにコントロールしていくかというのは非常に大きなポイントの1つになるということだと思いますが、一方で、執行する機関というのは、いわば最強の部隊をそろえて、最大の効果が出るような仕組みをとって、それをしっかりと監督できるような体制を同時につくり上げる。多分世界の年金運用の今主流になっているのだろうと思います。年金運用というのは市場運用から逃れることはできないわけで、市場の動きというのをどの程度本当にしっかり見て、それに対して適切なフォワードルッキングな対策が打てるかということがキーになると思うので、そういうことができるような体制であるのかということを考えなければいけないのではないかとつねづね思っております。

 そういう観点で考えますと、GPIFの皆様方は枠の中で最善の努力をされておられるし、私としては仕事のやり方については日ごろリスペクトをして見させていただいておるわけでございますけれども、その枠を今のままですと年金の長期の時間軸と、世界最大の規模であるという規模というものの優位性を完全に生かし切れるということが今の体制ではなかなか難しいのだろうと。最善の努力をやりたいと思われても、それにちゃんと向かってやれる体制がとれていないというのが多分我々が拝見している一番大きな問題点ではないかと思います。

 そういう観点で言いますと、やはり有識者会議が御提言になられた基本的な方向というのは正しい方向であろうという具合に思います。ですから、そういう観点でいいますと、それに向かって着実に具体的なロードマップが示されているわけなので、それに沿って着実に進めていくというのがいいのではないかなと思っております。

 いろいろな例があって、もちろん国の特異性というのは当然あるわけで、全てを外にそろえればいいというものでは私はないと思いますけれども、基本的に通底する価値といいますか、あり方というのは普遍的なものが示されつつあるだろうと思っておりますので、そういう観点で私としては議論に参加させていただきたいと思っております。

○植田座長 出口さん、どうぞ。

○出口委員 今のお話にもありましたように、年金運用はどの国にもあることですから、世界に通底するというお話がありましたけれども、やはり市場でこれだけ大きいお金を運用するわけですから、よく諸外国の例を見て、本当に学ぶべきものは学んでいったほうがいい。それは今岩間委員が言われたとおりだと思います。

 ガバナンスの話で少し議論させていただきたい、教えていただきたいと思うのですが、民間の普通の金融機関の立場であれば、例えばリスク運用をやるときには、まずガバナンスの体制をちゃんとつくって、それから運用の多様化に進むというのが多分普通だろうと思います。でも、たまたまGPIFの場合は、11月1日の新聞にもありましたけれども、既に運用の多様化ということは、これはもう方針となって進んでいるわけです。そこでガバナンスという中身を考えたときに、今、伊藤座長代理から御説明があった立法措置を講じた上でちゃんとした箱をつくる。それはそのとおりで、ちゃんとした箱をつくる必要性があるというのは、そのとおりだと思いますけれども、多分今から通常国会にかけても箱ができるまで恐らく1年後ぐらいになる気がするのです。

 ところが、箱をつくることと離れて、今、既にGPIFでは運用の多様化が、1日の新聞によると決定されたわけですから、そうすると、恐らく国民としてはちゃんとした箱ができるまでのリスク管理、ガバナンスはどうなっているのかということがすごく気になると思うのです。そうすると、しかも新しい箱もゼロからつくるのではなくて、恐らくGPIFを継承していくことになると思いますので、やはり議論するときにはガバナンスの問題は2つあると思っていて、どういう箱が本当に一番望ましいのかという議論と、現在運用は多様化したわけですから、そこのリスク管理が国民から見て本当に心配がないのだろうか。今のリスク管理体制と新しい箱がきちんとドッキングできるのだろうかということを見ていかないと、国民は安心しないのではないか。

 そういう意味では、もう既に運用の多様化に踏み切られたわけですから、これは事務局にお願いしますが、運用の多様化を進める中で現在のGPIFのリスク管理がどうなっているのかということを一度御説明いただければ非常に議論がしやすいなと思います。それが1点。ガバナンスは2つあるのではないかと。

 たまたま11月1日の新聞を持ってきたのですけれども、普通の人がどういうふうに考えているのかということを考えたら、これはある新聞にあったのですけれども、読んでみますと、もちろん運用の多様化ということはいいと思うのですが、「運用が失敗した場合は高齢者の年金を減額したり、保険料を引き上げたりするなど将来につけ回しをしない仕組みが必要」だと有識者の方がコメントされています。これは私も全く同感で、年金を考えるときには、やはり将来の世代につけ回しをするということは絶対に避けなければいけないことだと思っていますので、リスク管理に当たっては、もしリスクが仮に生じた場合、将来世代につけ回しをしない仕組みをどのように考えていくのかということも、やはり国民は注視しているのではないかと思いました。

 もしよければ、事務局のほうで現在運用の多様化を進めていく中で、どのようなリスク管理体制をこれから行っていこうとしているのかを教えていただければ、次回以降で結構ですので、議論にも資するのではないかと思った次第です。

 以上です。

○植田座長 これは伊藤先生か事務局のほうで今の時点で何かコメントありますか。

○大臣官房参事官(資金運用担当) しっかりと御説明させていただいたほうがよろしいと思いますので、次回以降御説明させていただきます。

○植田座長 伊藤先生はよろしいですか。

○伊藤座長代理 有識者会議報告から離れて私の個人的な意見を申し上げたいと思いますけれども、今回の基本ポートフォリオの改定というのが金曜日に発表になりました。国内債券を基本ポートフォリオでいうと60%から35%に下げる。国内株式を12%から25%に引き上げる、海外株式も同様に12から25に引き上げる。海外債券を11から15に引き上げる。これが基本ポートフォリオの改定ということで、これがよりリスクをとる方向に運用の多様化という言葉で出口委員が表現されたことですけれども、リスクのより高い資産に運用の比重を動かすということだと思います。

 私、個人の考えとしては、基本ポートフォリオの割合を株式にシフトするというのは今の体制でもできないことはない。というのはなぜかというと、株式といってもほとんどがパッシブ運用という形でインデックスに連動して運用してくださいということですので、株式市場全体を買っているということになります。したがって、債券か株式かという割合についてのもちろんリスク管理、乖離寄与幅というのがありますから、乖離寄与幅のどこにいるかということについての売り買い判断というのは確かにリスク体制になるわけですけれども、今のガバナンス体制でもウェイトをそのような形で変えるということは、それほど不自然ではないではないかというのが私の判断で、今説明したガバナンス体制をしっかりしなければいけないというのはもう一歩先の、では、本当にインデックスだけ買っていていいのか。あるいはインデックスと言ってもいろいろありますから、どのインデックスにするのか。それから、外国株式と言ってもどこの国なのか。外国債券、どこの国なのか。新興国はどうするのかといったことについては理事会をきちんとつくって、そこで合議をした上で決めていくということが重要になってくると。そういう意味で、今回の基本ポートフォリオの改定は今の体制でもできないことはない。ただ、基本ポートフォリオを変えたということを最大限生かすということをするためには立法と理事会が必要だと。だから2段階で考えられるのではないかというのが私の理解です。

○出口委員 先生のお考えはよくわかりましたけれども、ただ、それであっても、やはり今先生の言われたように、今のリスク管理で大丈夫だということをちゃんとつまびらかにして、国民が納得しなければそこは安心しないと思いますので、そういう面では私自身もこれから勉強させていただきますけれども、やはり今のGPIFの運用体制で十分リスク管理が可能で、先生が御指摘になったこの程度のものであれば本当に大丈夫だと、マネージできるということはきちっと説明いただいて、それを国民にわかってもらって初めて議論が進むと思います。

○植田座長 関連して私から。伊藤先生、先ほど新しい基本ポートを生かすためにも新しいガバナンスが必要だとおっしゃったと思うのですけれども、今の点に関連していると思うのですが、その意味は例えば株への割合を大きくふやしたわけですけれども、現状では先ほどおっしゃったように、パッシブ運用中心である。そこをもう少し高くした株へのアロケーションの中で工夫をする余地があって、そのためには新しいストラクチャーが必要だとか、そういう意味でおっしゃったのでしょうか。

○伊藤座長代理 はい。パッシブでも完全パッシブとスマートベーターとか、トピックスなどはJPX400なのかとかという話があって、その程度と言っては怒られるかもしれないのですけれども、その程度であれば現在の体制でも頑張っていただいて、本当はそこまで行くのであれば運用委員会委員の常勤化とか、給与水準を専門性の高い人材の採用とか、この辺まで本当は1年めどの中のものをやった上で今のポートフォリオまで行っていただきたかったのですけれども、理事会をつくるまでしなくてもできないことはないかなという範囲内だと思うのです。スマートベーターとか、どのインデックスかとか、先進国の株式ぐらいだったら大丈夫だろうとかというぐらいの話だと思うのですが、理事会をつくってきちんとやらなければいけないと言ったのは、やはり例えばトピックスマイナス幾つかの銘柄とか、そういった判断をするとか、あるいは新興国の株式、新興国の債券というのは相当の専門性があって、それも入る時期と出る時期とタイミングというのは物すごく重要だと思うのです。

 だから、パーセントを決めていっても入っていくタイミング、出るタイミングというのを議論するのは理事会だと思うのです。だから、乖離幅の中でどう動いていくかというあたりを議論していただく。その先は、あとはデリバティブを使ってヘッジをするとか、ディープアウトザマネーのものを買うかどうかとか、そういった話にどんどん入っていくので、そこは理事会だと思うのです。

○植田座長 では、局長に。

○年金局長 2点整理を。今回のポートフォリオの見直しに関してですが、これは大臣も国会答弁等で何回も申し上げていることですが、今度のポートフォリオの見直しは確かに外国債券の比率や株式率が上がっているわけですけれども、よりリスクをとった運用をするようにポートフォリオを見直したという、今、若干伊藤先生は御発言の中でそういうご趣旨のことをおっしゃったような気がするのですが、私どもはそういう考え方でポートフォリオの見直しをしたということは申し上げておりません。これは年金部会及び専門委員会で示された運用の方針の中には、引き続き巷間言われる全額国債で運用した場合の下振れリスクをクリアしたリスクの中でのポートの見直しということを考えていますので、その意味でいえば基本的にリスク管理、リスク許容度の考え方を変えているということはないということ。

 これも御専門の皆さんの前で恐縮ですが、株式と債券あるいは国内、国外のバランスの中で分散投資を行うということで、全体のリスクを下げて必要な運用利回りを確保するという考え方ですので、株式それ自体を単品で見たときのリスクという問題がありますが、これも大臣が答弁していますが、分散投資全体の中でリスクをコントロールするという考え方なので、株式の比率を上げるのでリスクが高くなるので云々ということでの議論ではないと私ども理解しております。

 ただ、これもこの専門委員会の報告書にも、伊藤先生の報告書にもありますが、市場環境が大きく変わる中である程度機動的な運用をこれから考えていかなければいけないということになりますと、その意味ではさまざまなアセットについて必要な知識や現実的な運用の専門性等々を含めて運用の体制を強化する。あるいはそういったような運用を行った場合に対国民あるいは拠出者である政府に対してどういう形でできますかということでガバナンスの議論があるのだと基本的には理解しております。

 もう一つは、先ほどのお話にもありましたが、執行と監督の分離というお話が伊藤先生の報告書の中にもありまして、今、伊藤先生のお話になった幾つかのことは執行の部門で、いわば執行のガバナンスの問題として考えなければいけないところと、理事会とか運用委員会とかといった運用の意思決定をする場面でどういうことを決めて、それについてどういう責任を持つかということが入っていると思いますので、そこはこれからの御議論だと思いますが、幾つか私どもいただいた資料がございますので、現状でどういう運用の改革で見直して、あわせたガバナンスの見直しをしたかという御説明を次回資料を用意いたしますけれども、その中でも少し今のような御議論はありましたので、そこも含めて御説明を次回いたしたいと思います。

○植田座長 山口委員と藤沢委員は先ほどの論点ではないですか。先ほどの論点ですか。では、もう少しだけいいですか。

○出口委員 私はもう1点だけで、たまたま先ほど伊藤先生のほうで運用委員の常態化と専門性の高い人材の採用がまだですという御指摘があったので、そのまだの中で普通の国民は運用の多様化が大丈夫かと思うのではないかというのがもともとの言いたいところだったので、その点だけです。

○植田座長 岩間委員、どうぞ。

○岩間委員 先ほどの出口委員のお話の関連でよろしいわけですね。次世代につけ回しするということは避けなければいけないという観点でのあれですけれども、それは法律ではっきりさせるのか、どういう形なのかわかりませんけれど、次世代というのは今の人たちの給付もある程度下げなければならないし、現在まだ受給していないけれども、将来受給するであろう保険料を払っている人の負担をふやさなければいけないということも当然出てくるわけで、失敗した場合ですね。そういうことについても考えなければいけないというのはそうだと思います。やはりちゃんとしたより効率的なリスクをどの程度とるのかというのは正確にとれる限度というのは見なければいけないのだと思いますが、それをしっかりとユーティライズしていいリターンを出すという反対に、リスクは当然あるわけで、失敗する可能性もないとは言えないわけで、そのときの対応というのは考えなければいけないということだと思います。

 もう一つ、質問なのですけれども、今回の議論というのは、要するにガバナンス体制をどうしたらいいのかというのがメインだという具合に私は理解しておるのでございますが、そういう観点でいいますと、いろいろなリスクアセットに対して広く分散投資をして、さらに規模の大きさというのを最大限に生かして時間軸、効果も出すということになれば、当然ながら質管理なので相当重装備のITのインフラもつくらなければいけないでしょうし、どういう観点でリスク管理をしなければいけないかということについては、全く新しいレベルで考えなければいけないのだろうと私は思います。そういう意味では、今の段階では非常に大きな努力をされていて、それなりの効果を出されていることは、私は全くそうだと思いますけれども、こういう領域に踏み出すとなったときには、そういう観点でやはり見なければいけないというのはありますので、その課題というのは整理しなければいけないのだろうと、それぐらいに思います。

○伊藤座長代理 香取局長から今回の新しい基本ポートフォリオはよりリスクをとることではなく、全額国債運用でした場合と同様のリスク量でより高いリターンを目指すことができるのだという計算をしたという説明で、それはそのとおりだと理解しています。私は先ほど言ったのは誤解を招いたかもしれませんけれども、一般にリスクがあると言われている株式の比率をふやしたというのは事実だと思いますので、国民に誤解を与えるという点では、そこは国民が心配するという点ではそのとおりだと思います。

 その分散の仕方によっては全額国債と同じリスク量に持っていけないかもしれないので、そこもどういう分散かというところは専門家の知識が必要かと思います。そこをクラリファイさせてください。

 運用が失敗した場合、新聞記事を引用されて御質問、コメントされた出口委員のお話なのですけれども、私は運用が失敗したというのはどういう意味かということにかかわるのですけれども、例えばリーマンショックの後、2009年に各国の公的年金基金の収益率は全部マイナスになったのです。GPIFもマイナスでしたけれども、GPIFのマイナスの程度というのはほかの年金基金に比べれば規模は小さくて、たしかマイナス7兆円か7%だったかと思うのですけれども、マイナス20%というところもあったわけで、ではほかの金融機関、ほかの公的年金基金、カルパースとか、カナダとかは失敗したのかというと、必ずしもその1年だけとって失敗とは言えない。その次の年に今度はプラス20%で取り戻せばいいという観点から、1年ごとに運用成績によって給付水準、保険料を変えるというのはすべきではないと思うのです。やはり5年単位、10年単位で考えて、それで目標利回りを達成しましたと、それはGPIFのほうに説明責任が発生しますけれども、少なくとも10年単位でGPIFがきちんと言われたことをやったかということを評価した上で保険料、給付水準という話に行くので、ただ、それは財政検証の話になって、GPIFの役割としては、言われた目標利回りと、それからリスク量でできるだけ効率的にやるということなので、ここでは保険料とか給付水準という話はしなくていいのだと理解しています。

○植田座長 ちょっとお待たせしていたので、まず山口委員。

○山口委員 今のお話だと、伊藤先生の財政検証とGPIFは別のようなお話で聞こえたのです。私はまさにこれは一体のものだと理解しております。先週の金曜日にGPIFの新しいポートフォリオ、先ほど出口さんがおっしゃった運用比率、基本ポートフォリオが示されたのですけれども、それだと債券を35%にして、その他のリスク資産を65%にするといったような中身だったわけです。私が一番心配をしておりますのは、今回の財政検証で賃金上昇率を1.7%上回る、そういった運用利回りが必要だというところから今回の結果が出ているわけですけれども、国民から見た場合に、これほどのリスクをとらないと財政が維持できないのかといったような印象のほうが強いのではないか。年金財政の持続可能性に危惧を持たれるといったような状況になったら、これは非常に重要な問題でありまして、それを私は一番危惧しておるところであります。そういう意味では、そういった誤解を持たれないような情報開示といったようなことをきちっとやっていくことが必要だと思います。

 先ほど申し上げましたように、年金の財政検証と、GPIFの運用というのは一体のものでありますから、そういう意味で今回このガバナンスに関する検討会が開かれているというのはまことに時宜を得たものだと思っております。

 その方向というのが、私はほかのメンバーの方と違うのかもしれないのですけれども、むしろ専門家を含めた多面的な検討を行って、意思決定プロセスをより慎重にして、リスクを小さくするといったような観点で今後のガバナンスを強化するということが非常に重要であると考えているところであります。

 先ほど岩間先生がおっしゃいました「将来につけ回しをしない」と。それについて、これは考えていかなければいけないのだということをおっしゃいましたけれども、まさにそれを考えるのが年金部会であり、そして、その下部組織であるこの検討会だと思っています。それは将来考える話ではなくて、今、ここで考えるべきテーマだと思います。ですから、リスクをむしろ積極的にとっていくのだというのはどのような根拠によってそういうような考え方が出てくるのか。私は、GPIFはエージェントにすぎないと思っていますから、プリンシパルの利益のために何をするのかといったような共通認識を持った上でこの問題を検討していかなければいけない。そういう意味では、加入者であるとか、受給者であるといったような人のために何がベストかといったようなことについて、まず共通の認識をこの中で持った中で議論を進めていかなければ話はどうもなかなかうまくまとまらないのではないかといったような気がしております。

以上です。

○植田座長 それでは、藤沢委員。

○藤沢委員 ありがとうございます。不勉強なので少しピントがずれているのかもしれないのですけれども、一応国民としてこの議論を聞いていると、技術論的な議論と、もう一つは国民、感情的、心理的議論と両方していただきたいなと思って、今まさに山口委員がおっしゃったように、年金財政に対しての不安を感じるというようなことがあるとよろしくないのだと思います。結局払わないでおこうという逆のプレッシャーにも働いていくような気がするので、技術論的にしっかり議論をプロの人たちがするというのは大事なのですけれども、同時に国民に対して心理的に安心感を与えるような説明責任があるのか、仕組みがあるのかというのもぜひ議論しなくてはいけないのではないかと思っています。

 その上で、大きなくくりの中でぜひ教えていただきたいのは、国民が自分たちの財産をある意味運用していただくわけなのですけれども、どなたが国民に対しての責任、そして説明責任をもってらっしゃるというふうなパターン2だとなるのかというのをぜひ教えていただきたくて、先ほど伊藤先生がおっしゃったGPIFは言われた目標利回りでやるだけだという御説明があって、そして、担当大臣は理事会の理事や理事長を任命すると同時に、GPIFは受託者責任がある。そうなると、一体誰が国民に対して責任を持って、国民に対して説明をするという仕組みに、枠組みになるのかよくわからなかったので、そこを教えていただけますでしょうか。

○植田座長 花井さん、続けていかがですか。

○花井委員 少し近い質問になるかと思いますが、今回のGPIFのガバナンス体制の見直しは、年金制度改革の一環だと認識しております。日本の公的年金制度は賦課方式であって強制加入なわけです。そこはほかの企業年金とは全く違う性格を持っています。その中での運用のあり方をどうするか、ガバナンス体制をどうするかということで言えば、あくまでも年金制度改革の一つであると考えており、そこで再度確認させていただきたいのは、今回の作業班の会議を全面公開にしていただきたいということと、議事録はそれこそ説明責任という意味で全面的に公開していただきたいということです。そのことを改めて強く要望しておきたいと思います。

 その上で、これは座長なのか事務局なのかわかりませんが、スケジュール感です。先ほど大臣から「年内に」というお話がありまして、伊藤先生からも昨年の11月にまとめて既に1年たっているといったお話がありました。次期通常国会というお話もされていたわけですが、このような大きな改革をこんなに拙速に議論していいものだろうかという不安が大変あります。

 といいますのは、年金部会の中に設けられた作業班なわけですから、年金制度改革の一環だという位置づけであれば、当然年金部会で議論する時間が必要ではないかと考えます。その意味で、先ほど出口先生も山口先生もおっしゃったように、あのポートフォリオの変更を見て、多くの国民は、本当に大丈夫なのだろうかという、その不安は非常に高いものがあります。そのことについても、ポートフォリオですから事前の説明はあるはずもなくて、ある日突然発表され、その結果を見て驚いているというのが正直な気持ちだと思います。そうような状況の中にあって、ガバナンス体制の見直しをこんなに拙速に進めていいのだろうかということを再度申し上げておきたいと思います。少し時間をかけるべきで、きょう出されている有識者会議の資料を見ても、最低でも半年ぐらいの議論はしているわけですから、そこは丁寧な議論を重ねていく必要があるのではないかと思います。

 以上です。

○植田座長 菅野さん、どうぞ。

○菅野委員 各委員の方々からいろいろな御意見が表明されました。最初に、出口委員から本件に関する国民受けとめ方という非常に重いテーマが出されたましたし、山口委員からも、藤沢委員からもその点に言及されました。この点に関しましては、私も全く賛成でございます。

 「国民の不安」という表現があったかと思いますが、、それが果たしてどういうようなものなのかというのは我々の中で十分に考える必要があると思います。我々はGPIFのガバナンスをこれから議論するわけですけども、実はGPIFのガバナンスの一つの大きな役割が国民に対する説明責任ということだと思います。これは有識者会議の報告書に書いてあるわけですが、GPIFが独立性を得るという、その裏返しというか、むしろその前提条件として、国民に対する説明責任があるのだということだと思います。果たして現在のGPIFがそれを十分にやっているのかという点も含めて、議論しなければいけない点だと思います。

 そして、国民にもし不安があるとすれば、それはきちんと一つ一つ説明して不安を取り除く必要があります。出口委員から海外のいろいろな事例を教えてほしいという要望がありましたけれども、海外の公的年金のガバナンスについても、実は私も不勉強ですけれども、少し勉強するにつれ、早いテンポで変わっております。むしろ日本だけが取り残されているような状況といっても良いかもしれません。、例えばカナダでは、国民との間で直接公開討論会をやっています。これは法律で決まっているとのことです。ですので、いかに国民に対して直接対話していくか。このプロセスが一番大事なのだろうと思います。

 今回のポートフォリオの見直しに関し、ハイリスク、ハイリターンというように一部の人々は捉えがちかもしれませんけれども、運用の有効フロンティアを上げて、少ないリスクでより多くのリターンあるいは一定のリターンでリスクをより少なくするということが今回のGPIFに求められているわけですので、むしろ今回の改革は、国民に対して直接対話をする非常にいい機会だと思うのです。これは決して目的ではありませんが、あくまでも結果として国民全体の経済リテラシー、金融リテラシーが高まるようにする、これは非常に重要なGPIFの役割であり、それに資する体制をつくっていただく必要があると思います。

 その中で、将来への損失のつけ回しという議論がなされましたが、これは一体何を意味するのでしょうか。例えば企業年金であれば、企業は倒産するリスクがありますから、あるところで損切りしなければいけません。もちろん公的年金だからといって野放図に次世代にどんどん損をつけ送りすることは許されるわけではありません。

 ただ、我々のこの中で議論すべきは、どういうガバナンスであればそれを最小にすることができるかという視点が一番重要な点だと思います。それは海外の例を見ても、例えばディスクロージャーをきちんとやるとか、それを国民の目に見えるところで常に議論して、ある一定の部分、全部である必要はないと思うのですけれども、そういう議事録のようなものは公開してもいいかもしれません。そういう形で国民の理解を得ながら運用体制を整備すれば、リスクは自ずからかなり小さくなります。

 スケジュール感について言いますと、私は花井委員とは逆の意見で、遅すぎると思うのです。有識者会議の報告書が発表されて1年が経とうとしていますが、先ほど伊藤委員からもあったように、1年をめどに実施するという目標は余り進んでいないように見えます。

 もう一つは、リスク管理のことについて果たしてGPIF内部でどれだけ議論が進んでいるかという点が不透明です。リスク管理はかなり費用がかかります。運用が多様化し、リスクが複雑になれば、当然それに見合ったリスク管理システムをつくらなければいけない。そのためには、経費やリスク管理に関する人員も含めて、早急に対応する必要があると思います。この点に関し、もし私の解釈が誤っていればぜひ事務局のほうから御訂正いただきたいと思います。

 最後に1点申し上げたいと思うのですけれども、GPIFは公的年金です。公的年金というのは言い得て妙で、公的というところと年金というのが2つ組み合わさっているわけです。公的というのは「国」ということですが、「的」というのがついているので「国的」なのです。一方、年金資金の運用をするというのはまさにマーケットの中のプレイヤーになるというわけですので、ここをいかにうまく調和させていくかというのが実は重要な議論のポイントになります。

 そうなるとGPIFと国との関係というのが非常に重要な議論のテーマになってきます。そして、ややもすると、GPIFに独立性を与えるというのは、受託者責任という概念から相反するように聞こえるかもしれないのですが、私はそうは思っていません。すなわち、それは先ほど言った説明責任というかかわりとしての独立性であり、むしろ受託者責任を全うするためには独立性が必要であり、そこで独立性とは何かという点をはっきり定義する必要が出てきます。はっきりというのは、あやふやではなくて、具体的に何を意味するのか、同時に国の役割というのは何なのか。これをはっきりさせる必要があります。また、年金ファンドという意味では、GPIFは市場の中の重要なプレイヤーですので、私的年金、投資ファンド、個人、いろいろなお金がある中で非市場を乱してはいけないという問題もあります。これは決して簡単な話ではないのですが、ここをぜひこの検討会で議論していけたらいいなと思っています。

 以上です。

○植田座長 では、花井委員、どうぞ。

○花井委員 厚生年金と企業年金は一緒だとは全く思っていなくて、やはり公的年金は強制加入であるということと、そして、国が運営しているからこそみな信用して保険料を払っているのだと思います。そこは私的年金とは全く違うと思っております。その国への信頼が揺らいでいるからこそ、未納などが起こっているのだろうと思います。市場のプレイヤーではないと思います。

 そして、先ほど言い方が悪かったのですが、ここでの作業班の議論というのは、その後に年金部会で検討されると考えてよろしいのでしょうか。そこは事務局にお尋ねしたいと思います。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 資料1で社会保障審議会年金部会のこの作業班の開催要綱がございます。「1.趣旨」でございますけれども、年金積立金の管理運用に係る法人のガバナンス体制のあり方について、年金部会の検討を効率的に進めるために社会保障審議会年金部会作業班を開催するということでございまして、これの設置が決まったときにも年金部会の先生方から御意見ございまして、この部会でも検討すべきというお話もございましたので、効率的に検討していただいた後、年金部会でも検討されるものと事務局としては考えております。

○植田座長 柿木委員、どうぞ。

○柿木委員 では、私からも一言意見を言わせていただきます。今、説明があったように、ガバナンスの構造見直し、これは非常に大事な課題だと思うのですけれども、ただ、ガバナンスの構造を変えたということで万全かというと必ずしもそうではない。もちろん皆さん御承知だと思います。我々、経団連の中でもいろいろ議論があるのですが、国民の多くがそもそも年金をGPIFで運用しているといったことすら知らないというのが現実だと思うのです。それが株式とかそういうリスク資産の運用に非常になじみの少ない人も多いわけで、現実的な企業年金の話が出ましたけれども、企業年金でも我々議論していますが、確定拠出年金、少しそれますけれども、運用の教育をやっているのですが、これはなかなか実態を理解しない人が多いというのは、今の現実ではないかと思います。

 そうなりますと、出口委員とか岩間委員も言いましたけれども、リスクが生じた場合に将来世代につけ回しをしないと、これは非常に大事なことだと思うのですが、先ほど伊藤先生のほうからもありましたが、長期の運用だから短期では判断しない、こういうことではあると思うのですが、いずれにせよ財政検証かGPIFが説明するかは別にして、最終的に運用の結果損失が発生するということはないとは言えないと思います。そのときに、やはり年金の負担と給付という問題を前提に考えると、最終的には損失が発生すれば年金の給付か、税も入れていますから、税で見るか、それから、給付額を下げる、そういったことで影響があるということは最終的には起こり得るということだと思います。それをやはり国民にきちんと説明すべきではないか。菅野先生がおっしゃったように、今回国民にこういったことの理解を高めてもらう1つの大きな機会なのかもしれませんが、いずれにしてもこういった説明をきちんとして、このハードルを乗り越えるということは非常に大事なことではないかと思います。

○植田座長 岩間委員、どうぞ。

○岩間委員 この問題といいますのは、何度も過去に繰り返された議論でもあると私は思っております。同じような趣旨の提言が何回もされておったと理解しておりまして、そういう意味でいいますと、そういった映像が再現されているという感想も若干あるのでございますが、例えばカナダだとかオランダがどうして今のような状況に変えてきたのかというと、年金の運用ということについてやはり彼らも行き詰ったわけです。それについて、どうしたらサステーナブルな年金の運用もできて、持続可能性ができるかということが基礎にあって今のような見解があったということだと私は理解しておりまして、そういう意味でいうと、もちろん柿木委員がおっしゃったように、国民あるいは受給者のそういうことに対する理解というのがどの程度得られるのかというのは非常にあるのですが、非常に限られた資源、しかしながら、非常に大きな規模のプール、これを時間軸がある。要するに短期の決算で時価評価して損失を確定しなければいけないという性格のお金でないというのは、個人のお金と公的年金しか私はないと思います。要するに、その時間軸をしっかり生かしてリスク管理もやってどの程度やるのかということを本当に最善の仕組みを組み立てるというのは我々のある意味では国民に対する義務なのだろうと。そこのところをガバナンス体制をとるにしても基礎に置かないといけないのではないかというぐあいに思います。

○植田座長 先ほども今の点を発言されたと思うのですが、長い時間軸を生かして、規模は大きいというところも生かすガバナンス体制。もう少し具体的に現在のガバナンス体制ではどうしてだめかということを何かおっしゃれますでしょうか。

○岩間委員 これは先ほど柿木委員のほうからも御指摘がありましたけれども、ガバナンス体制というのはどういうのがいいのかということについてはいろいろ議論があろうかと思います。ただ、決定的に言えますのは、執行部隊の持つリスクといいますか、オペレーションに対して、どういった形でチェックができるかということが1つガバナンスの要素だと思いますし、執行部隊というのはマンデートというか、どういうことをやれと言われてそれを実行するということになるでしょうが、ガバナンスをとるほうは長期の戦略と暴走を防ぐ、リスクマネジメント、この2点に集約されると思います。ですから、長期の戦略について、例えば年金でいえば長期の運用のあり方あるいは財政状態の検証と、それに対しての見直しということと、それから実際に自分たちが選んだ執行部隊がベストパフォーマンスを出しているかどうかということについて、リスク管理も含めながら見ていくということだと思います。そういう意味でいうと、私は2つが分離されている必要があるのではないかと思います。

 細部にわたりますが、報酬体系などを見てみましても、いわゆる理事会のメンバーというのは非常に経験値があるけれども、そんな高い報酬をとっておりません。むしろ執行部隊がどれだけのパフォーマンスを長期にわたってあげるかということについて妥当な評価をするというのが多分キーポイントになるだろうと思います。しかも上位者ほど長期のパフォーマンスがよくなければ報いが少ないということになります。管理者のほうは短期のパフォーマンスをかなり見られると思いますが、ベースの給与があって、短期のパフォーマンスがあって長期のパフォーマンスがある。それの組み合わせをどうやってやるかというのが多分今の世の中でハイパフォーマンスを上げているところの1つの仕組みなのではないかと、私の乏しい知識でございますが、認識しております。

○植田座長 よろしいですか。技術論に入ってしまって恐縮ですが、今のお話ですと、伊藤先生のパート2という項目ですか。理事会があって、執行部が別にあって、さらに執行部にかなりの運用の自由度があるとうかがえたのです。

○岩間委員 おっしゃるとおりです。

○植田座長 現状ですと、基本ポートをどこかで決めて、それでおしまいに近いのですけれども、その自由度というのは。

○岩間委員 よろしいですか。若干技術論になると思いますが、例えばパッシブ運用、インデックス運用がございますね。これもそれだけをやるということがエコノミカルだということなのかもしれませんが、例えばカナダの例でいうと、参照ポートフォリオというのを示しまして、それにどうやって工夫をすればさらにプラスが出てくるかということを執行部隊にも考えさせてやらせるのです。それがいわば収益の源泉になっているということが言われているわけです。

 もちろん、リーマンショックの後、どんといったということはありますが、ただし、これも伊藤先生のおっしゃるように、短期では回復して、通期で見ると非常にいいパフォーマンスがあって、しかもカナダの改革の前と比べると全然違うという状況になっているというのは事実としてなされているところです。日本でそういうことが再現できるかということはまた別問題だと思いますが、そういういわゆるベストプラクティスというか、非常にいい形で流れているところと比較をして、どういうことが言えるのかということは過去にもやられていると思いますけれども、多分フォーカスするところは絞られてきているのではないかと思います。そういう観点でガバナンス体制が必要なのではないかと私は思っている次第でございます。

○植田座長 それは日本の例えば基本ポートみたいなものはまずあって、参照ポートフォリオとおっしゃった。執行部はそこからさらに高いリターンを同じくらいのリスクでとれるとか、逆にリスクを減らすことができる、そういう努力をするという位置づけになっているということですか。

○岩間委員 多分投資の機会を全地球規模で見て、どういうものがあるかというのを常にウォッチしているという体制ができていると思います。それがあって初めてこういうことができるということがあると思います。それは最初から決められた箱の中でそこしか見ないということになると、もちろんマクロの経済の醸成だとか、そういうことをごらんになると思いますけれども、やはり相手は市場でございますから、中長期に見ると言ってもそういう観点で何が新しい機会として出てくるかということは常にウォッチしなければいけない。しかもリスクもはからなければいけないということだと思います。

○植田座長 済みません、技術論に深入りしてしまいました。

 花井さん、どうぞ。

○花井委員 大変単純な質問をさせていただきたいのですが、伊藤先生を中心にまとめられた報告書を読ませていただきまして、きょうも御報告いただきました。その中でどうしても気になるのが、私どもは労働組合で来年の賃上げをどうしようかということで、今産業別の平均賃金ですとかいろいろ見ているわけです。その一方で、報酬について今の独法の縛りをもっと柔軟にして、とおっしゃられているかと思いますが、報酬はどの程度を想定されているのか。この運用の世界の報酬水準というものがなかなかわからないので。また、人員体制といった場合、どのぐらいの規模を考えられているのか。米国のカルパースは大体資金規模30兆円ぐらいで、そこからすると4倍近い資金を持っているGPIFですが、そのあたりはどのようなお考えなのか、お聞かせいただければと思います。

 

○大臣官房参事官(資金運用担当) 私ども結構諸外国についても勉強させていただきましたので、簡単に御説明させていただきます。

 カナダでございますと、まさに岩間先生おっしゃったとおり、非常勤の理事でございますので、この方々は基本ベースが大体日本円でいうと200万円ぐらいだと理解しています。ただし、その下のCEO、実際の執行部部隊でいきますと数億円レベルでもらっている。これは当然業績比例の部分も含めてということでございます。

 また、人員の話でいいますと、実は自分でやる、つまりインハウスでやるか、委託運用でやるかということで大きく変わっておりまして、例えばGPIFにつきましては委託中心でございますけれども、カナダでいいますと、海外にもいろいろ拠点を持っていることもございまして、1,000人ぐらいでございます。あと先ほどCPPIBの話がございました。まさに岩間先生おっしゃるとおり、理事会で参照ポートフォリオをつくって、そこから理事会のほうでアクティブリスクを決めまして、それで執行部が運用しているところでございます。

 有識者会議にも資料で出されましたけれども、残念ながらCPPIB、パッシブに比べて勝ってはいませんが、そういうガバナンス体制でやっているところでございます。

○出口委員 菅野委員が言われたリテラシーの点というのはすごく大事だと思いますので、これは花井委員も言われましたけれども、資料1を見ますと、この部会は市場に影響あるときには非公開ですることができるという規定になっていますけれども、この専門部会のマンデートは主にガバナンス体制でポートフォリオ云々ではないと理解していますので、希望を申し上げれば、リテラシーを高めるためにも、この専門部会というのはできるだけ全部公開で議事録も公開する方向で座長には運営していただければありがたいという希望を一言申し上げます。

 もう一つ、リスクの問題。もし損失が出たときにはどうするかという問題。これについては、普通の民間の立場から考えても、運用とリスクは裏腹なものですから、例えば伊藤代理が先ほどの説明の中で10年単位で収益を上げていくように見るのですという御説明がありましたけれども、別にこれは5年でも10年でもいいのですけれども、もし10年単位で運用を見るのであれば、例えば10年単位で損失が出たときにリスクはどういうふうに負担するということを決めておけばいいので、これは年々見るというのではなくて、運用のスパンと、それは裏腹、セットだと思います。

 ただ、これは私の理解が間違っているのかどうかですが、確かにこの部会のマンデートはガバナンスをちゃんと議論して、そのたたき台をつくって年金部会に上げて、そこで決めていただくための材料をつくるということはよく理解できているのですけれども、ただ、私も少し資金運用はやってきましたけれども、資金運用で一番大事な原則の一つはマッチングですね。どのような性格の資金を運用するのかということが基本ですから、これは公的年金のお金なので、ガバナンスの体制さえちゃんとすればいいということではなく、やはりガバナンスの箱もリスクの取り方によって変わってきますし、先ほど岩間委員が言われたように、本当に本格的な運用をこの規模で、この金額、130兆でやろうとしたらシステム投資もかなりのものになると思いますので、やはり運用の多様化、分散化とガバナンスの体制というのは不即不離だと思いますし、しかもこのお金は年金のお金ですから、ガバナンスだけを議論してもし損失ができたときの議論はほかのところでということであれば、やはり国民の納得は到底得られないと私自身は思いますので、こういうふうなルールでこういうふうに運用するということが公的年金の議論をしている以上は、不即不離なものだと思います。

○植田座長 ですから、ガバナンスだけを抽象的に議論しても決めようがないわけで、結局GPIFである種の哲学でどういうところまでリスクをとって運用するのかということと表裏一体なのだと思うので、技術論にも時々踏み込まざるを得ないのだと思います。

 では、山口委員から。

○山口委員 これは御参考までということなのですが、私自身、大学に移る前は信託銀行で年金の運用をやっていたりしたのですけれども、先ほど来出ていますが、企業年金の流れはどうなっているのかということも確認しておきたいのです。企業年金の場合は、企業が年金をつくってそれを市場運用しているわけですけれども、そのときにどの程度のリスクをとるのかといったようなことは、結局運用に失敗した場合に掛け金が上がるという形で企業に跳ね返ってきますから、これは企業が決めているわけです。ですから、アセットアロケーションをどういうふうにして、そして、どのぐらいリスクをとるかというのは最後にリスクを負担する企業が決めている。だけれども、よく考えれば、企業は誰のものかというと、株主のものなわけです。ですから、企業の立場としては、最近の流れとしては、特に会計ルールの変更で退職給付債務の即時認識といったような流れになってくればくるほど、どちらかといえばリスクもとらない方向に変わっていっている。どんどん変わっていっているというわけです。

 そして、さらに制度設計そのものも基本的に企業がリスクをとらなくていいように、DB制度からDC制度に移っていっている。というのは、これは日本だけではなくて世界の流れですね。ですから、DB制度が凍結されたり、閉鎖されたりといったような流れになって、結局リスクをどうするのだと、リスクをとる人がとれないのだという流れの中で、今、世界の企業年金はそういう方向に来ているわけです。ですから、これは日本だけではないです。よく見ていただくと、アメリカでもイギリスでもそうなっているわけです。ですから、私は、リスクを最終的にとる人がこの問題を考えるのだという、この点は絶対ゆるがせにしてはいけないと思っています。

 そのときに、先ほど花井委員もおっしゃったように、公的年金は国を信用して、信頼して、それでみんな入っているわけです。ですから、いわば厚生労働大臣が責任をきちっととるという体制のもとでやっているわけで、GPIFに運用委託するということを最初から国民がそれをベースにして年金制度に入っているわけではないわけです。あくまでも厚生労働大臣が国民から受けている付託を一部分その範囲の中でGPIFは受け持っているだけにすぎない。だから、GPIFが独自に独立性を持って判断するとか、リスクをとるとかといったような根拠について、私はなかなか理解できないわけです。先ほど来話がありますけれども、全体としての構図はリスクをとる人が、最終的なリスクを負担する人が決めるべきであって、そういう流れの中でいえば、これは大臣の責任とGPIFの責任というものをもっときっちり説明、整理した上で議論を進めていかないといけないと思います。なぜ、GPIFはそういう責任もとれない立場にあるにもかかわらず、リスクをとろうとするのかということについて私は十分理解することはできないということであります。

○植田座長 菅野さん、どうぞ。

○菅野委員 ただいまリスクをとらない方向に行くのが流れだとおっしゃってらっしゃいましたけれども、企業年金と公的年金は明らかに違うと考えます。それは企業の場合はとれるリスクととれないリスクがあります。もちろん、公的年金もとれるリスク、とれないリスクがありますが、これはおのずから性質がかなり違います。

 これまで行ってきた運用との対比で見ると、これは昨年の有識者会議でもかなり時間をかけて議論いたしましたけれども、これまでのような国内債の比率が極めて高いポートフォリオが本当に一番リスクをとらないかというと、全く違うと有識者会議では考えて、そのような提言を行った次第です。むしろ分散投資をしたほうが全体のリスクリターンのバランスはよくなると考えてそのような提案をし、私はこれは国民のためになると思います。

 問題は、山口委員がおっしゃるように、それが果たして国民の理解を得られるかどうか、ここは非常に大きな点だと思いますので、我々はなぜこれが国民の、しかも次の世代、さらにその世代にまで一番利益をもたらす運用の仕方なのか、そして、それはポートフォリオの資産比率だけの話ではなくて、そのガバナンス体制をまず国民に理解してもらうことが重要と考えます。今回の作業班での議論はそのためには非常にいい機会だとまさに思います。これが一番重要だろうと思います。

 ちなみに、説明責任といってもなかなか非常にわかりづらい点があります。カナダの例を1つ申し上げると、私はカナダの公的年金の人に、一体リーマンショックのときのように、多額の損失を計上してもどうしてカナダ国民がそれを受け入れ、リスク資産の運用を続けられるのかという質問をしました。そのときの答えを簡単に申し上げると、まず新年度の運用を始める前にこのポートフォリオでいくと、普通に考えられるロスと超過リターンの大きさを提示いたします。その年度の運用結果は、通常はその間におさまります。ところが、10年に1回ぐらいは、外れてしまうことはあります。ただ、このような説明を国民に対し毎年繰り返し行うことで、国民は徐々にリスクとリターンという考え方を理解するようになったとのことです。ただ、リスクが絶対的に多いか少ないかというのは、必ずしも適当ではありません。リスクとリターンということに対して国民に理解を求める必要があります。足元ではむしろ国債のほうがローリターンでリスクは高いです。ですので、そのような高い国債のリスクからよりリスク、リターンが大きくてリスクが相対的に低くなっているリスク資産のほうに、しかも今の日本の現状を前提とした場合、海外資産を多く持つということは極めて日本にとって私は重要なポートフォリオだろうと思います。これはまさに自分の子供、孫の世代を考えれば、これが私は一番いいと思いますし、これを国民に理解してもらうようにするのがGPIFの非常に大きな役目だと思っております。

○植田座長 伊藤先生、何か。

○伊藤座長代理 いろいろ質問とコメントを伺ったわけで、有識者会議の立場から幾つか、あと個人の立場で幾つかお話ししたいと思います。

 まずGPIFと財政検証の関係ですけれども、これは多分香取局長か森参事官から御説明いただければ一番いいと思うのですけれども、財政検証でいろいろなシナリオを検討されていて、ケースAからケースHまで出ている中で真ん中あたりだとケースEというのがあるわけですけれども、その中で財政検証とGPIFの関係というのがきちんと説明されているわけで、それをもとにしてGPIFは運用専業機関ですから、与えられた利回りと基本ポートフォリオの中でベストを尽くせよというマンデートをGPIFが受けている。任せるからやってくれと言われているので、財政検証の中身についてGPIFは何か物を言う立場にはないという理解ですけれども、それでよろしいですか。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 確かに財政検証につきましては先生のおっしゃるとおりでございますが、今回財政検証に先立ちまして、経済前提及び積立金のあり方ということで、それを考える際には運用のあり方も財政検証の際に重要だということでございまして、GPIFのメンバーに入っていただきまして2年余り検討させていただいたところでございます。

○伊藤座長代理 それで財政検証が出たわけで、その財政検証を前提にGPIFの運用と運用を達成するためのガバナンス体制を検討するというのが、この作業班のマンデートと受け取っています。

 藤沢委員から、どなたが責任を持つか、あるいはほかの委員から、そのリスクで損失が生じたときにどうするのかという質問、意見が出されたわけですけれども、これは事務局から説明していただいてもいいのですけれども、当然厚生労働大臣が最終責任は負う。厚生労働大臣は内閣の一角ですから、事実上政府が責任を持つということになるかと思うのですけれども、どうして予定の利回りを達しなかったのか、あるいは予定利回りを上回ってしまったのかというのは説明責任なわけで、GPIFの理事長がそれは説明するということだと理解しています。

 当然、公的年金強制加入というのはそれなりの責任があるわけですけれども、これは菅野委員からも意見、コメントがありましたように、今の世代、今の受給者だけではなくて将来の受給者、その先の将来の受給者まで考えて財政検証というのは行われているわけで、100年後の姿まで考えているわけだと思います。

 リスクが何かということに関係してくるのですけれども、例えば極端な話、今、全て全部国債で運用しましょうということをしたとすると、0.5%なわけですね。0.5%でも上がっていって、一方、財政検証によればこれから何年かはキャッシュアウトという形でGPIFから年金財政のほうにお金を払い出してくださいという要請があるとなっていますので、0%で回っていたとすると、どんどん元本が目減りしていくということで、人によっては25年とかというところで枯渇しますよということを言う人がいる。それは0.5%で回していけば多分25年から30年で枯渇する可能性もあると思うのです。そうすると、その先というのは完全にペイ・アズ・ユー・ゴーの世界になりますから、保険料を払った分しか給付が出ないあるいは税金で補填するかということで、まさに1対1の関係がそこで保険料と年金給付にかかってくる。

 今の日本の状況というのは人口がどんどん減っていくというか、保険料を払う人口と受け取る人口がどんどん受け取るほうが多くなっていっていますから、保険料はどんどん高くなるか、年金がどんどん減っていくかということしかあり得ないわけですね。逆に、今ここでGPIFがこれだけ持っているというのは非常によかったというか、先見の明があったというか、これを何とかうまく運用すれば、今言ったようなどんどん年金の給付が減っていく、あるいは保険料が高くなっていくというのをある意味時間稼ぎというか、緩衝剤というか、時間をかけてならしていくことができるということなので、むしろ今リスクをとらないというのは将来将来世代にとっては物すごいリスクなわけです。だから、今のリスクをとらないというのはこれから20年、30年年金をもらって、それで死んでしまう人にとっては物すごくいいのだけれども、将来将来世代にとっては物すごく逆にリスクが大きいということだと思うのです。だから、もともとの根幹が人口の比率が保険料を払う人と年金を受け取る人の比率がどんどん変わっていく、悪くなっていくということが根本にあって、それをどうやって痛みを和らげて各世代に広く薄く痛みを分けてもらうか。そこでGPIFというものが1つ役割を果たせるというのが私は正しい理解だと思う。

 だから、経済成長が物すごくあって、人口がどんどんふえている経済だったら余りこんな面倒くさいことは考えなくてよかったかもしれない。ただ保険料を払ってそれをそのまま給付に回していっても十分回るわけですけれども、今の年金設計で保険料の前提と給付の前提だと、これは今言ったような形でこれからどんどん比率というのは、GPIFがなかったとしたらどんどん悪くなっていきますよと、今の給付水準ですら賄えないのですよということをまず押さえないと、このGPIF、どうやってうまく使いこなしていくかというところにつながらないと思います。だから、全くリスクをとらないというのは、逆に将来世代にとっては大きなリスクだと私は思っています。

 以上です。

 以上です。

○山口委員 今、伊藤先生がおっしゃった話は、基本はそうだと思うのですが、そのために財政検証をして、人口動態を見極めて、そして所得代替率が50%を切らないような、そういう水準で運営していくためにはどうしたらいいのかということをさんざんこれまでやってきているわけですね。その中で、運用について要請されていることは、賃金上昇率を1.7%上回るような運用利回りをとってくださいよということを申し上げているわけですね。その結果、金曜日に出されたGPIFの新しい基本ポートフォリオが出てきたという状況になっていて、ある意味で、これでもって非常にリスクが大きくなっているのですけれども、一応このポートフォリオでもっとやっていけば逆に財政検証で求められているものは達成できますよということになっているわけです。さらにそこからリスクをとれとか、そういう議論はそこからは別にその中に含意されていないわけですので、基本的には基本ポートフォリオを決めましたという中で財政検証と整合的になっていると私は理解しております。

 先ほど伊藤先生がおっしゃった話は、全部財政検証の計算の中に織り込まれているものと思います。人口動態の変化、将来どんどん人口が減っていく、我が国の人口は今減っているわけですけれども、年金制度の支え手が減っていく、その中で所得代替率を一定にするためにどういうふうにしたらいいかということは全部計算としては織り込み済みになっているわけです。その答えが先ほど申し上げたような賃金上昇率プラス1.7%をクリアしてくださいという話になっています。それでつくられたのが金曜日のポートフォリオであったということで、そのこと自体が国民に非常に大きな不安を与えてしまうかもしれないという危惧を持ちつつも、とりあえずそれで一応財政検証が求めている水準というのは示され、そして、今後、そういう運用をしていけば財政検証と整合的であるということになっているのだと理解しております。

 したがいまして、さらに加えてそこからリスクをとるのだということを財政検証が求めているわけでは全然ないのだと理解しています。

○植田座長 菅野さん、どうぞ。

○菅野委員 非常におもしろい問題提起を今山口委員のほうからしていただきましてありがとうございます。

 多分ここで今浮かび上がってきた論点というのは、GPIFを初めとする日本の公的年金というのは世界の中でもかなり異質な存在です。申し上げるまでもなくGPIFは巨額のお金を運用しています。私も金融の世界の端っこに籍を置く人間の一人として痛感するのですけれども、実はこのお金をうまく使うことによって世界から非常に多くの情報を得ることができます。金融と言ってもいろいろ幅広いですけれども、この資産運用という業界というのは、いかに情報というインプットをうまく利用して、それを1つの生産関数でアウトプットに変換して運用収益という形でリターンを得るという、そういう産業だと思っています。

 私の個人的な感想ですが、日本人は多額の貯蓄を保有しながら情報の使い方を十分に理解しているのかどうか、疑問に思うことがあります。逆に言うとお金を有効利用していないとも言えます。これが本当に国民からの受託者責任というのを全うしていると言えるのでしょうか。私は違うと思います。無駄遣いしています。せっかくある資源を使っていなくて、結果として日本の成長率を低めています。

 アベノミクスというのは、これまで使われていなかった資源をいかに有効活用して、それで日本の成長率を高め、これが日本の次の世代さらにはその次の世代に生かされていくという大きな政策の枠組みだと思っていますけれども、その中の1つの目玉がGPIFで、GPIFが保有する資源は、これまで本当に有効利用されてきたのだろうかと言う点を問うべきだと思います。そのかわり、情報をとるためにはそれなりのコストも必要です、人員も必要です、システムも必要です。そして、もう一つ重要なのはガバナンスです。私は受託者責任を全うとするということは、基本ポートフォリオを与えられたら全てパッシブですればいいということではないと考えます。このような大きなファンドをパッシブでやることは、むしろ弊害のほうが大きくなると思います。

 それ以上に、これをプラスに変えることができるか。これが受託者責任を全うするということであり、日本の国民に対する責任を全うすると考えております。

○植田座長 どうぞ。

○伊藤座長代理 財政検証もケースA~ケースHまであって、将来の出来事というのは全く不確実なわけですね。その中でいかにリスクをとるのではなくて、リスクを減らすように運用を臨機応変、機動的に変えていくかということは非常に重要なポイントだと思うのです。だから、経済状況が変わっていく中で、ただポートフォリオを35251525にとどめておけばいいのかということは違うと思うのです。その状況、状況によって、どこかの国にバブルが発生した、ではどこで売り抜けようかとか、あるいは物すごく大きく株式が下落した、では、そのときは買いなのか、売りなのか、売りではなくて買いだろうといか、そういった判断をして、それを国民に対してきちんと説明できるということは、そういう体制を今つくっておくということは非常に重要なことであって、これがガバナンス改革だと思います。

 だから、もう賃金上昇率プラス1.7、それでポートフォリオ改革をしたと。では、これでもう万全なのか。これを80人でやっていけば確実に賃金上昇率プラス1.7がとれるのかといったら、そういうことではないと思うのです。将来変わっていく経済状況に応じてきちんと判断できる体制をつくりましょうということだと思うのですけれども、局長、違いますか。

○年金局長 議論が錯綜しているみたいなので、私のほうから。

 現在のGPIFの仕事、ガバナンスも含めてどういうふうにものを決めているか。これは年金部会の先生方はもう御案内なので当たり前ですが、先ほどお話がありましたようにGPIFは年金制度の一環、一部ということなのです。年金の資金の運用について専門的に行う独立行政法人ですから、行政執行機関として置かれています。今のたてつけは、資金運用の目標、目標利回り、許容リスク。これは国が与えます。年金部会で議論していただいて、国が与えます。与えられた目標と運用リスクに沿ってGPIFは現状の状況の中で最適と思われるポートフォリオを検討いたします。それを国が認可するという形で動きをつくることになっています。

 参考資料にありますが、その昔はポートフォリオそのものを国の側でつくる。今の運用委員会に相当する機関が国にあって、国のほうで与えるということをしてきましたが、独法制度をつくったことに伴って、これは独法が自分で決めるという形にいたしました。

 運用目標とリスクの与え方ですが、さまざまな与え方があるのですが、これまでは具体の運用の方針に係る部分、例えばパッシブ中心でやりなさいとか、そういうようなことも含めて指示をするという形をとっていましたが、今回は運用目標とリスクのみを与えて、具体のいわばポートフォリオの中でどういう資金運用をするかということについてはGPIFの判断に任せるということにしました。さらに確たる根拠がある場合には一定のアクティブの運用も行ってもよいと、そこまでGPIFには自由度を与えるということになっています。

 運用結果の責任のお話ですけれども、これはもうお話がありましたが、いわば最終的に影響を与えられるのは年金財政に影響が与えられるということになります。したがって、GPIFは今回ですと20年だったか30年だったかのタームで長期のポートを組んで回しているわけですけれども、5年ごとに財政検証を行うときに、結局その時点での運用の結果が当然出てくることになりますから、いわば5年ごとにその結果を踏まえて年金財政の見直しを行うというのが財政検証ということになりますと、そこの運用の功拙はその次の財政検証に反映されるということになります。

 その時点で5年以内に50%を切るという事態になれば、その時点で保険料の引き上げ、ないしは給付水準の見直しが行われるというのが法律上の決まりになっています。その意味では、運用の結果はその時々の保険料ですとか、その時々の給付に反映するということではなくて、文字どおり将来のための給付、将来のための財源として運用されることになります。ここは実は諸外国では3年ごとに運用の結果で、その時々の保険料や給付を動かす。つまり、当該現役時代に直接利害が生じるというつくり方をしている国もありますので、ここは日本と諸外国では運用の結果と財政の関係あるいはその時々の拠出者への影響のとり方が違っているということになります。

 もう一つは、若干技術的なお話もありましたが、GPIFは与えられたポートフォリオを踏まえて実際の運用を行っているわけですが、いわばそれはGPIFの内部統制の問題として、個々具体の日々の例えば受託機関の選定をどうするか、選定基準をどのようにつくる、あるいは一部、ほとんどやっていませんが、インハウス運用するのであればインハウス運用に当たっての商品選択あるいは投資行動の判断等々の日々日常のいわば与えられたリスクと目標の範囲内での投資判断についての行動は基本的にはGPIFの内部で行われています。ここは既に議論がありましたように、いわば与えられた目標を執行という意味で運用するに当たって体制が十分かどうか、あるいはそれについてガバナンスが効いているかどうか、あるいはそこについて誰がどういう判断をしているかということが十分でないという御指摘はかねて報告でもありますし、今回の伊藤先生の報告書にもありますし、閣議決定でもそこは言われているので、今まさにそこは職員の処遇や体制も含めて議論しているということになってございます。

 ということで、運用の実務の話と年金制度上誰がどういう責任を負うかという話が混合しているような気がしましたので、一応ガバナンスの議論をするときはおっしゃるように年金制度の側から見たときに当該受託機関であるGPIFが年金制度なり政府に対してどのような責任を負う。あるいは政府自身が国民にどのような責任を負うという意味でのガバナンスの話と、実際に運用するGPIFがどこまで責任を持って運用できるか、投資判断についてどういう専門性が確保できるか、少しディメンジョンが違っているという気がしますので、若干整理をして議論していただいたほうがいいと思います。

○出口委員 きょうの議事次第を見ていますと、GPIFのガバナンス体制についてというタイトルになっていますけれども、普通、これを見たら、まず最初は今のGPIFのガバナンス体制がどうなっているのかを説明いただいて、あるべき姿を議論していくのかなと思ったのですが、きょうはある意味では有識者会議のお考えを伊藤代理から情報を伺いましたので、今、局長の言われたことで論点を明確にするためにも、今のGPIFがどういうガバナンスをやっていて、そのリスク管理がどうなっているかということを事務局のほうで整理していただいて、次回以降議論したらもっと論点がクリアになるのかなと思いました。

 今、局長のほうからもお話があった、私もこれから勉強しますが、不勉強で申しわけないのですが、3年で例えば損失が出たときには、何か給付や保険料負担に影響を与えているというお話もございましたので、やはり年金の運用というのは世界共通だと思いますので、きょう、皆さんのお話の中ではカナダの例が頻出していましたけれども、カナダだけではないと思いますので、そういうふうにいろいろリスク運用した中で損失が出たときにどのようなルールをやっているのか、個人的にはマクロスライドと同じように、単位は3年でも5年でも10年でもいいのですけれども、やはりリスクが出たらそれは将来世代につけを残さないようにやっておいたほうがいいとは思いますけれども、そういう諸外国の例なども一度整理していただいて議論させていただければ、これは要望ですけれども、大変ありがたいと思いました。

 以上です。

○植田座長 では、ほかによろしいですか。

 山口先生から、ちゃんと財政検証をやって、その上でGPIFはそれを踏まえて運用の方針を決めているので、それに何かつけ加えることがあるのかという御趣旨の御意見をいただいて、貴重な意見だったと思うのです。

 私なりに今回の先週発表されましたポートの考え方をそういう観点から見てみますと、まだ資料を精査したわけではないので誤解もあるかもしれませんが、経済前提のところの議論にも一部かかわった者としての印象ですが、賃金上昇率プラス1.7、これは経済前提のモデルをつくっていた途中の議論からしますと、基本的には債券並みのリスクで達成できるという話なのです。プラス若干の分散投資です。

 その場合中心的なケースでは債券の絶対リターンが4~5%前後にいくのだと思うのですが、では、債券ポートフォリオ、今もそのまま持っていればうまくいくかというとそういう問題でもないのだと思うのです。つまり、足元から長期的な姿に行く途中で何が起こるかというところが非常に不透明である。財政検証でもそこは内閣府の見通しと木に竹をつなぐような形で持ってきて全体の見通しをつくっているということだと思います。

 そういう中で今回の基本ポートは、その当面の短期、数年から10年くらいまでのところについて多少なりとも、あるいはかなりの程度債券価格が下落する、そういうリスクがある。アベノミクスの政策に乗ってインフレ率がちゃんと上がるということであればそういうリスクが非常に高い。したがって、その短期に限ると、長期の姿である債券中心のポートであれば大丈夫だという議論は成立しない。債券はある意味ではかなりリスクの高い資産である。ふだんならもっと理屈の高い資産である株あるいは外貨建ての資産を持っているよりもリスクが高い面もあるかもしれないという中で出されてきた姿が今回の基本ポートであると理解しています。

 ということで、先ほどの議論と関連はあるのですけれども、なかなか難しい構造であるというところを一言申し上げたいなと思います。

 それでは、予定の時間にほぼ達しましたので、きょうの審議はこれまでにさせていただければと思います。伊藤先生から冒頭、有識者会議の提言について丁寧に御説明いただき、非常に活発にいろいろな御意見をいただきました。また、途中でも花井委員中心に議論が出されましたように、当然年金部会の議論を経て、そして年金部会に後で上げていくというプロセスですので、年金部会でまずこれまで出された意見も含めて事務局に整理していただいた上で次回以降論点の整理を行いたいと思います。そして、必要に応じて年金部会でも今後報告を行うということにしたいと思います。

○大臣官房参事官(資金運用担当) 次回の開催日時につきましては、また直前かもしれませんけれども、追って連絡させていただきますのでよろしくお願いします。

○植田座長 それでは、きょうはこれまでにさせていただきます。お忙しい中、どうもありがとうございました。


(了)

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