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2014年8月1日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

○日時

平成26年8月1日(金)17:00~


○場所

厚生労働省専用第23会議室


○出席者

出席委員(15名) 五十音順

  奥 田 晴 宏、 加 藤 総 夫、 川 上 純 一、 神 田 敏 子
  鈴 木 邦 彦、 武 田 正 之、 内 藤 幹 彦、 野 田 光 彦、
  林    邦 彦、 古 川    漸、 増 井    徹、◎松 井   陽、
○松 木  則 夫、 村 田 美 穂、 山 田 清 文
(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(6名)

小 川    聡、 木 村   剛、 佐 藤 田鶴子、 佐 藤 雄一郎、
平 石 秀 幸、 本 橋 伸 高

行政機関出席者

神 田 裕 二 (薬食品局長)
成 田 昌 稔 (大臣官房審議官)
森    和 彦 (審査管理課長)
宇 津    忍 (安全対策課長)
矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
中 野    惠 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催させていただきます。本日は大変暑い中、お忙しい中を御参集いただきましてありがとうございます。

 まず、部会の委員の交替がありましたので御報告いたします。豊見委員に替わりまして、公益社団法人日本薬剤師会常務理事の川上委員です。本日の委員の出席については、小川委員、木村委員、佐藤田鶴子委員、佐藤雄一郎委員、平石委員、本橋委員より欠席との御連絡を頂いております。現在のところ、当部会委員数21名のうち、15名の委員の御出席を頂いていますので、定足数に達していることを御報告いたします。

 事務局に人事異動がありましたので御報告いたします。厚生労働省で、医薬食品局長の神田はただ今、国会の対応中で、後ほど参る予定です。安全対策課長の宇津です。機構の安全管理監の俵木は、本日海外出張のため欠席しております。新薬審査第一部長の野村です。新薬審査第二部長の山田です。新薬審査第三部長の猿田です。私は、審査管理課長に就任いたしました森です。

 以降の議事の進行は松井部会長にお願いいたします。

○松井部会長 本日の審議に入ります。まず、事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告してください。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、委員名簿を配布しております。議事次第に記載されている資料1から資料9をあらかじめお送りしております。この他に資料10「審議品目の薬事分科会における取扱い等の()」、資料11「専門員リスト」、資料12「競合品目・競合企業リスト」を配布しております。

 本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。資料12を御覧ください。1ページで、ベルソムラ錠15mg、同錠20mgですが、本品目は不眠症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 2ページで、リツキサン注10mg/mLです。本品目は、難治性ネフローゼ症候群を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。

 3ページで、asfotase alfaです。本品目は低ホスファターゼ症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。

 4ページで、リツキシマブ(遺伝子組換え)です。本品目は、後天性血栓性血小板減少性紫斑病を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。

 5ページで、ISIS420915です。本品目はトランスサイレチン家族性アミロイドポリニューロパチーを予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 6ページで、BG00012です。本品目は多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑性を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。

○審査管理課長 医薬食品局長の神田が参りましたので御紹介させていただきます。

○医薬食品局長 医薬食品局長の神田です。初回から遅参いたしまして大変申し訳ございませんでした。大臣説明があり、遅れてしまい失礼いたしました。何とぞよろしくお願いいたします。この後また公務で中座することになりますけれども、何とぞよろしくお願いいたします。

○松井部会長 事務局からの説明に対し、特段の御意見等はありませんか。それでは、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、委員の先生方の御了解を得たものといたします。委員からの申出状況について報告してください。

○事務局 御報告いたします。各委員からの申出状況については次のとおりです。議題1、ベルソムラ錠、退席委員は内藤委員、議決には参加しない委員は武田委員、野田委員。議題2、リツキサン注、退席委員はなし、議決には参加しない委員は加藤委員。議題3、asfotase alfa、退席委員はなし、議決には参加しない委員はなし。議題4、リツキシマブ(遺伝子組換え)、退席委員はなし、議決には参加しない委員は加藤委員。議題5、ISIS420915、退席委員はなし、議決には参加しない委員は武田委員、野田委員。議題6、BG00012、退席委員はなし、議決には参加しない委員は野田委員、山田委員。以上となります。

○松井部会長 今の説明に特段の御意見等はありませんか。よろしいでしょうか。それでは御確認いただいたものとします。議題に入ります。本日は審議事項6議題、報告事項が3議題、その他の事項が1議題となります。審議事項の議題1に移ります。内藤委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、審議1の審議中は別室で御待機いただきます。

                                ( 内藤委員退室)

○松井部会長 それでは、議題1について機構から概要の説明をお願いします。

○機構 議題1、資料1、医薬品ベルソムラ錠15mg、同錠20mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤の有効成分であるスボレキサントは、米国メルク社により創成されたオレキシン受容体1及び2に対する拮抗作用を有する新規化合物です。海外においては200712月から、本邦においては200811月から臨床開発が開始され、20128月に米国、201212月に本邦で製造販売承認が行われております。なお、米国では審査を継続中であり、現時点で本剤が承認されている国又は地域はありません。本申請の専門委員としては、資料11に記載されております10名の委員を指名しております。

 審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。まず有効性についてですが、審査報告書50ページの表22を御覧ください。国際共同第III相試験では、患者日誌を用いて、被験者自身が主観的に症状を評価する方法と、ポリソムノグラフィ(以下、PSGと略します)を用いて、脳波等のデータから客観的に症状を評価する方法の二つの方法が用いられました。更にそれぞれの方法を用いて、入眠効果と睡眠維持効果の有効性を評価しております。

 表22の上からsTSOmと記載しているものが、入眠までの時間を主観的に評価したもの、次のLPSがPSGにより客観的に入眠までの時間を評価したもの、sTSTmが実際に眠りに就いていた時間を主観的に評価したもの、WASOがPSGにより客観的に就寝中に目が覚めていた時間を評価したものです。また、本試験では非高齢者と高齢者で血漿中薬物濃度をそろえるために、異なる用量が設定されており、本剤高用量群では、非高齢者に40mg、高齢者に30mgが投与され、本剤低用量群では非高齢者に20mg、高齢者に15mgが投与されております。

 表22の一番右の「名目上のP値」の列を御覧ください。網掛けしていない部分が主要評価項目に設定された項目です。全ての主要評価項目において、統計学的な有意差が示されており、更に網掛けをした副次評価項目についても、多くの項目で統計学的な有意差が示されております。以上より、不眠症に対する本剤高用量の有効性が示され、低用量についても有効性が示唆されたと判断しております。

 次に安全性についてです。審査報告書74ページの中ほどの「機構は」で始まる段落を御覧ください。第III相試験においては傾眠を除けば明確なリスクは示されておらず、非高齢者と高齢者で安全性に大きな差異は認められませんでした。一方で発現割合は低いものの、高用量群で重度の睡眠時随伴症や、カタプレキシーを疑わせる症状が1例ずつ認められていることなどから、一部の患者において、本剤の用量に依存してこれらの事象の発現が増加する可能性は否定できないものと考え、用量設定に際し考慮いたしました。

 本邦での承認用量について、審査報告書86ページの3.本剤の用法・用量に係る機構の見解の項を御覧ください。本剤高用量については、過剰な眠気や、入眠時幻覚、睡眠時麻痺、自殺関連事象など、本剤の用量に依存した一定のリスクを考慮した場合に、低用量と比較してリスクを上回るベネフィットが示されているとは言い難いことから、承認用量に含めず、本剤低用量、すなわち成人には20mg、高齢者には15mgのみを承認用量として設定することが適切と判断いたしました。

 なお、審査報告書93ページの図8直下の「機構は」で始まる段落を御覧ください。米国の審査においては、自動車運転能力から、服用翌日の運転能力に影響を与えないと推定される10mgを推奨用量とするようFDAが求めております。機構としては、臨床試験での10mgのデータは極めて限られ、有効性は明確でないこと、現在得られている試験成績からは、10mgであっても自動車運転能力に対する影響を完全に否定することは困難であり、また、その他の安全性データも十分に取得されていないことから、10mgを推奨用量に設定することは困難と判断いたしました。

 なお、自動車運転能力試験からは、既承認の類薬であるゾピクロンを上回るリスクは示唆されていないことも考慮すると、添付文書において、自動車運転等の危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意喚起することを前提とすれば、成人に20mg、高齢者に15mgを投与した場合に、服用翌日の日中の機能に及ぼす影響が臨床上大きな問題になる可能性は低いと判断しております。

 以上の審査を踏まえ、本剤の不眠症に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体及び製剤は毒薬又は劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品又は特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。

○松木部会長代理 オレキシンニューロンとナルコレプシーのことはよく知られていて、この受容体を完全にブロックするとナルコレプシーになってしまうと思うのです。それが起こらないということは、これはロックが不完全なのか、あるいは視床下部のいろいろなオレキシンの受容体があるので、それとの相互作用としてナルコレプシーが見掛け上マスクしているのかというのは、どちらの判断をしているのでしょうか。

○機構 我々としては、臨床試験の中ではナルコレプシーは起きておりませんが、例えばナルコレプシーの既往がある患者であるとか、リスクの高い患者は除外されていたので、本剤でナルコレプシーが起きないとまでは考えておりません。したがって、ナルコレプシーの既往のある患者などは慎重投与に設定しております。

○松木部会長代理 新しい薬なので副作用がちょっと気になります。例えば80ページの表47で挙げられている事象が、全部中枢神経系のものを想定しています。その他の末梢系のものは載っていないのではなくて、全く見ていないのでしょうか。視床下部に影響すると、摂食とか水分含量にも影響するのではないかと予想されるのですが、そのようなデータはあるのでしょうか。

○松井部会長 末梢神経障害ということですか。

○松木部会長代理 いや、中枢を介して末梢に影響が出てくるようなことはないかということです。

○機構 オレキシン受容体を介した非特異的な作用については、まず非臨床試験で検討されております。審査報告書の13ページを御覧ください。14行目から「申請者は」と始まる段落で説明しております。松木委員からも御指摘があったように、摂食であるとか、自律神経系制御、記憶及び報酬の行動にもオレキシン受容体が関与すると言われておりますが、摂食行動については、まず食餌誘発性肥満モデルマウスを用いた薬理試験を実施しており、自律神経系制御については安全性薬理試験や、毒性試験全般などで検討しております。また、記憶障害についても、イヌを用いた薬理試験を行っており、報酬行動についても依存性試験などを実施しておりますが、全てについて本剤の影響は認められていないことになります。

 続いてナルコレプシーについて記載していますが、更に下の方へ行くと、末梢組織での薬理作用として、心拍数及び血圧、インスリン遊離刺激及びグルコースレベルの調節などの作用も考えられますが、毒性試験の試験成積からは、そのような変化は認められていないことから、恐らく臨床用量の中では作用は睡眠にある程度限定されてくるものではないかと考えております。

○松木部会長代理 非臨床の試験を重視してくれるのは有り難いのですけれども、ただ摂食とかそういうものは動物を使って抗肥満薬を開発しても、ヒトには全然効かないとか、そういうことが結構多いので、逆に動物に余り効果はなくても、ヒトではどうかという興味もあって質問しました。

○野田委員 私も、同じようなことを思いました。検査データとか、そういったものはないのでしょうか。体重とか、血糖値とか、そういったものがあると納得できるのですが、見た範囲ではないなと。先ほど御指摘の所で、確かにラットでは影響はなかったとありますけれども、実際に服薬した人はどうだったのかというのが分かると、より良いのかと思いました。

○機構 摂食行動に関連する有害事象の発現割合というのは、審査の中でも見ておりますが、プラセボ群で0.7%です。

○松井部会長 資料はどこですか。

○機構 すみません、資料には今回はありませんが、審査の中で申請者に確認した数値になります。低用量群では1.2%、高用量群では2%認められております。数値上は、高用量群で高い数値が認められておりますが、発現例数自体が少なく、1例当たりの寄与が大きいので、この数値から本剤群でリスクが高いとまでは言えないと考えております。

○野田委員 高用量群で2%でしたか。

○機構 2%です。

○野田委員 プラセボ群では。

○機構 プラセボ群で0.7%です。低用量群で1.2%です。重篤な有害事象であるとか、投与中止に至ったような有害事象は認められておりません。

○野田委員 摂食行動への影響というのは、具体的にどういう内容かは分かりますか。

○機構 例えば、体重の増加であるとか、体重低下であるとか、そういうところも含めます。

○野田委員 数字だけ見ると、有意差があるのかどうか、そのNの数にもよりますけれども、用量依存的に増えているように聞こえなくもないと思ったのですが。

○機構 今の発現率の話ですけれども、プラセボ群の0.7%というのは、1,025例中7例、それから低用量群が493例中6例、高用量の方が1,291例中26例です。ある程度の数字は持っておりますけれども、今回の審査の中で、私どももオレキシン系のリスクを鑑みて、高用量群は承認用量には含めておりません。したがって、低用量とプラセボとの比較になりますけれども、プラセボが1,025例中7例、低用量群は493例中6例ということで、そこが数値上高いところはありますけれども、明確なリスクとまでは言えず、ここは製造販売後に調査をして、リスクを明確化する必要がある部分だと考えております。

○野田委員 「製造販売後調査等について」の項目、93ページの下辺りからですが、そうなっているという理解でよろしいでしょうか。その項目で、摂食行動も93ページ、94ページに記載のある製造販売後調査の中に含まれている項目と考えてよろしいでしょうか。

○機構 そのように考えていただいて結構です。こちらは審査報告書の中には書いておりませんが、実際の調査の中では、摂食行動に関連した有害事象の発現割合なども調べることになっております。

○野田委員 分かりました。

○松井部会長 鈴木委員お願いします。

○鈴木委員 2点あります。1点目は、この薬は米国では開始推奨用量が1日10mgからに対して、我が国では成人で20mg、高齢者で15mgということで、日本の方が用量が多くなっています。通常はアメリカの方が体格が平均して大きいので、日本の方が少ないのが普通ではないかと思うのですけれども、どうしてそうではないのかという理由を聞かせてください。

 2点目は、先ほど説明のあった9293ページにも書いてあるのですが、「米国は日本と比較してより車中心の社会であり」と書いてあります。大都市部はそうかもしれませんが、日本でも地方では車は必需品で、高齢化率を考えればアメリカ以上かもしれません。1人1台という感じで、高齢者も移動に車を使っております。その中にはそういう眠剤を飲んでいる人もいるかもしれません。服用したら運転するなと言っているから大丈夫だというのは、何か言い訳のような気がします。車社会が日本とアメリカと比べて、日本はアメリカほどではないから大丈夫だというのは言いすぎというか、書きすぎだと思いますが、それについての意見を是非お聞かせください。

○機構 1点目の御質問の、アメリカよりも日本の方が高い用量であることについてですが、アメリカでは、運転能力試験が重視されていて、運転能力に全く影響を与えないとされる用量を開始用量にするという考え方を採っています。我々としては、10mgについても運転能力に全く影響を与えないとまで断言できるほどのデータは得られていないと考えております。

 また有効性についても、アメリカは独自の解析を行い、一部の患者では有効性が認められるだろうという考え方を採っています。一部の患者に有効性を認められるだけであって、多くの患者において有効性を認められるわけではありません。本邦の臨床現場の中で、初回用量からきちんとした有効性が認められないと、患者が治療をやめて来院しなくなるなどのことから、きちんと有効性が示される用量から投与を開始すべきだというところも、専門協議の中で専門委員から意見を頂いています。このような理由から、アメリカでは10mgを開始用量としておりますが、本邦では非高齢者では20mg、高齢者では15mgを推奨用量とすることが適切と考えております。

 2点目の御質問の、アメリカの方が車中心の社会であるという点については、車中心の社会ではないから大丈夫だというのはあくまで申請者の見解であり、我々としてはその点よりも既承認の睡眠薬であるゾピクロンと比較して、本剤で自動車運転に対するリスクが高くはないというところを重視しております。

○鈴木委員 よく理解できないお答えですが、我が国でも高齢者を含めて服用するわけですから、通常は低用量から始めて、効果が少なければ増量していくのが普通だと思います。いきなり高用量にしないと患者が来なくなるからというのは、どんな先生がおっしゃっているのでしょうか。一般の臨床から考えて理解に苦しむようなお考えだと思います。そういう意見を基にして、こういうものを決めたということであれば、臨床の現場の感覚からはずれているのではないでしょうか。

○機構 審査報告書の56ページを御覧ください。表26の所に国際共同第II相試験の成績が記載されております。10mgが投与された試験成績はこちらです。入眠効果の所でsTSOmの方でプラセボとの群間差が示されております。10mgというのは、他の用量と比べて弱い。右側の睡眠維持効果の所は、プラセボとの群間差においては全く差が付いていないというのが、10mgの試験成績です。

50ページの表22の国際共同第III相試験では、10mgというのは、この試験の中では設定されておりません。したがって、日本人が入っている、そもそも国際共同で全体でもこれだけしか試験成績はないのですけれども、10mgの有効性を評価できるデータというのは、実際ほとんど何もないという状況です。

 一方でアメリカの審査の中で、資料の93ページの図8に提示されている自動車運転能力試験をやっています。これは、アメリカの高速道路で、全員が治験薬を服用し、それからずっと車を走らせて、どれだけずれが生じるかを評価した試験です。こちらの中で、20mgあるいは40mgのいずれもずれているところで、ここからずっと推定していって、最終的に10mgというものが、多分ずれを生じないだろうと。そういう結果に基づいて、アメリカでは10mgというものを推奨用量として設定しています。

 私どもとしては、この10mgの有効性のデータも不十分ですし、この自動車運転能力試験から、日本人で10mgを投与したときに、自動車を運転してよいという用量と言えるかというと、決してそのようなわけではなくて、そこは自動車運転をしてもよいと結論付けるにはそれなりの臨床試験が必要だと考えておりますので、10mgは臨床用量に含めることはできないと考えております。

 日本とアメリカの違いですが、現時点で私どもとしては、アメリカとは異なって、自動車運転の危険を伴う機械の操作に従事させないというような、睡眠薬はそのような注意喚起の下で承認しております。そのリスク感に基づけば、非高齢者では20mg、高齢者では15mgを承認用量として承認しても差し支えないと考えています。

 一方で先生から御指摘のとおり、自動車運転は、別に日本とアメリカとそれほど違わないと私どもも考えております。今後開発する睡眠薬などにおいては、そういう自動車運転なども考慮した、それぞれの患者さんの利便性をより向上させるような開発も重要だと考えておりますので、そういうものに関しては今後の開発において、そういうデータが得られるような形で助言などもしていきたいとは考えております。

○鈴木委員 最後にそのようにおっしゃると、そういうことになるのでしょうが、それがきちっと文章に残らないと、結局ここで言いつくろうために言ったということで終わってしまうのです。薬食審にはそういう傾向がありますので、きちっと文章に残してください。眠剤を飲んだ高齢者の運転問題というのは日本も同じだと思います。調べていないだけであり、運転の試験もしていないだけであって、問題は同じだと思います。高齢化は日本の方が進んでいるわけですから、高齢者の問題というのは日本の方がより深刻です。地方では、公共交通機関などほとんどない所がありますから、そういう所の問題もきちんと考えていかないと、今のような説明だけでは現場は非常に不安だと思います。責任逃れで、個人の責任で片付けようという感じがしますから、そういう課題があるのでしたら、それをしっかり書いていただいて、これ以降の審査に反映されるようなことをしていかないと、いつまでも同じことを繰り返すだけだと思います。アメリカに比べて日本の方が高用量からスタートする、特に高齢者がアメリカの成人よりも高用量というのは、私には理解できません。

○松井部会長 他の委員の先生方はいかがですか。これは重要な問題になり得ると思ったので議論していただいています。先ほどPMDAの方から、「米国は日本と比較して車中心の社会であり」というのは、申請者の意見であってとおっしゃいましたか。

○機構 93ページの冒頭の所だと思いますけれども、申請者が説明する部分です。私どもとしては、この根拠自体はそれほど重視しておりません。

○松井部会長 この部分は、申請者の記述なのですね。

○機構 92ページの下の方から、「申請者は以下のように説明した」のパラグラフの中に入っていると解釈していただければと思います。

○松井部会長 分かりました。委員の先生方はいかがですか。松木先生はどのようにお考えでしょうか。

○松木部会長代理 これから経過観察ということでいいと思うのです。この書き方は前にも私が指摘したと思うのですが、主語がよく分からないのが非常に多いので、「申請者は」とか、どこかに入れておいてくれると分かりやすいと思います。その前の段落の所は、「申請者は以下のように説明した」と一応は書いてあるのですけれども、その上は「機構は」と入っていて入れ子になっているので分かりにくいところがあります。

○機構 分かりにくい記載で申し訳ございません。

○松井部会長 他に御意見はありませんか。この点について、委員の先生方はよろしいですか。

○野田委員 常識的な意見だと思うのですけれども、他の薬でも少量から始めて効果を見るということがよくあるというか、常識的な投与法だと思うのです。特に不眠症のお薬についても、そういうことが言われていると思うのです。私はそういった薬剤の専門家ではないのですけれども、少なくとも糖尿病の薬では少量から開始して増やしていくということですが、それと同じような発想はないのかと思っています。

○機構 先ほどの私の発言は少し誤解を与えてしまったかもしれないのですけれども、承認された用量の中が複数あった場合に、高用量から始めるということではなくて、あくまで有効性があるときちんと示された用量から始めるということであって、今回10mgは有効性がきちんと示されたものではないので、そこのところから始めることはしないということを申し上げたつもりです。ですので、睡眠薬の領域においても、もちろん日本の医療現場では、きちんと有効性が示された中では低用量の方から治療を始めております。

○鈴木委員 蒸し返しみたいですが、アメリカでは10mgで有効性が示されたのでしょう。日本人が入った国際共同治験では10mgが入っていなかったというだけなのではないのですか。

○機構 アメリカで実施された試験も、第III相試験では10mgは設定されておりません。アメリカでも、今回日本で出された試験と同じデータで評価をしております。その中で、アメリカでは独自の解析をして、一部の患者では10mgでも有効性が認められるかもしれないという形で結論しているということです。

○鈴木委員 私は、一般的な臨床医の常識としては、特に高齢者は少量から始めて、効果をみながら、徐々に増やしていくのが当たり前だと思いますので、今の説明だけでは納得できません。それで押し切るということであれば、その説明を文章として残していただいて、次以降の類薬の審議のときに反映していただきたいと思います。高齢者の社会的な背景も考えなければ、これからの薬の承認というのは難しいと思います。特に高齢者の問題というのは、これからは我が国の方が深刻になっていくわけですから、そういうことを一切無視して、限られたデータだけで判断すればいいというような考え方自体が、私は問題だと思います。このままお通しになるというのであれば、何らかの形で文章として残して、高齢者の運転にはもっと安全性を担保するような試験が必要だとか、薬との関係も、もっとはっきりアメリカのようなエビデンスを出すべきだとか、それを是非書いていただきたいと思います。

○松井部会長 それは、議事録に書くということですか。

○鈴木委員 報告書とか、後の方が分かるような形で残していただきたいと思います。議事録には私の発言が載っているわけですから、それについてPMDAか審査管理課か知りませんが、厚生労働省としてもこの問題について問題意識を持っています、ということは残すべきだと思います。それでないと無責任です。

○審査管理課長 審査管理課長の森です。ただ今の御議論は非常に大事なポイントを押さえられたお話だと思います。ただ今の鈴木委員からの御提案について、本日の議論を整理した形でペーパーにして、次回の部会に配布させていただくようなことで対応させていただきたいと考えております。確かに先生がおっしゃるように、日本は高齢人口の割合が世界的に一番高い国です。例えば80代の高齢者はこの治験の中には含まれておりません。そうした非常に高齢の方でも、睡眠障害をお持ちになって、こうした薬をお使いになる事態が想定されます。これは別の理由ではあるのですが、審査報告書の94ページなどに、他剤との併用という事態を考えて、そうした際の減量のためのより低用量の製剤を準備するというようなやり取りもしております。つまり、10mg製剤を日本でも用意しようということで今やっておりますので、こういうものが揃うと、高齢の患者さんの場合にもっと低い用量を使うことも現実に可能になってまいります。

 そうしたことも視野に入れて、今後の市販後の実際の使用経験の中で、高齢の患者さんにおける睡眠の問題は、効き目もそうですが、その後のふらつきとか、後に残る問題をしっかりデータとして収集し、そうしたケースを踏まえて、より低用量の使用についても検討するということを、きちんと課題として掲げて、企業にも検討を求めたいと思っております。そうしたことを一応整理して、次回の部会までにこの場で配布できるように準備したいと考えております。

○松井部会長 課長がおっしゃるのは、次回の会までに、本日の結論を保留するという意味ですか、そうではない。

○審査管理課長 ここは、鈴木委員から御提言のあったのは、本日の議論についてきちんと紙に残してくれということを条件とするというような御提言だったと考えております。

○松井部会長 そうですね。

○鈴木委員 今の課長の提案であれば、それでいいと思います。今のお話の中に、80代の方の成績がないという話がありました。アメリカもそうでしょうが、地方では、他に移動手段がないわけですから、日本でも80代の方が運転するのは当たり前です。この話は後でいろいろな事故が起きて、なぜこんな高用量を認めたのだということになってから問題になるのではなくて、リスクは事前に分かっていたということが、この議論の中で明らかになったわけです。ですから、事前にできるだけ避けられるリスクは避けるべきであり、常に社会的な背景も考えた上で審議をしないと、承認のための単なる机上の議論では済まされないと思いますので、是非そのようにしていただきたいと思います。

○松井部会長 ありがとうございます。他の委員の先生方もそれでよろしいでしょうか。

○村田委員 教えていただきたいのですが、用量に関して20mgということで、10mgは効果が認められていないからということだったのですが、それはこの治験をやった人で、こういう治験の場合この人数で、これでP値が0.05を切るということが必要なので、もちろんそうなのです。医師の方とすると、患者さんは体重も様々ですし、年齢も様々です。例えば20mgが承認されていて、10mgと半分で飲む患者さんもいるものですから、飲んでよかったら、それでいいのではないかと現実的には考えるのです。

 ところが、例えばアリセプトもそうなのですけれども、少用量で出そうとすると保険で切られます。使ってはいけないと言われるのですが、それは今のように10mgでは、この集団で効果が少ないけれども、効く人たちは必ずある部分の人はいます。それを使って、アメリカではある部分の人は効くと言っているのだと思うのです。そういうのは許されないものなのですか。20mgで効果が出ました、ですから20mgを至適用量として承認いたしますというようにやったときに、10mgを使って患者さんが安全で、しかも効果があったら10mgを使うということは、それは日本国としては許されないものなのでしょうか。

○松井部会長 課長からお願いします。

○審査管理課長 村田先生がおっしゃることは私も同感です。低用量から始めることに関して、基本的には本来有効性があると期待される用量を使う、薬でやるからにはそのような治療をするというのが一般的な理解だと思っております。患者さんによっては、プラセボ効果で十分臨床効果が得られるようなことがままあるということも、これまたよく知られている話です。

○村田委員 プラセボ効果で効くわけではない人もたくさんいます。少ない用量でも。

○審査管理課長 先ほど言いましたように、80代ぐらいの高齢の方になると、かなり少ない用量で効果が出ることも想定されます。ただ、そこは全く検討がまだ十分されていない領域なので、そういうところが今後、市販後の段階でデータが集積されることになるという課題として明らかにあると思います。そういう中で、より低用量で使われるような事態が現場へ出ると起きる。本来、それを許容しないということを言っているわけではないと思うのです。

 現実に現場でアリセプトがもっと低い用量で使われないと、副作用が出て大変だという形で、これは安全対策課に私がおりました時に、そこについて、もう少し用量についてのフレキシビリティをというような、現場からの要請がありました。それに対して添付文書中の用量に関する記載を改める対応をしたこともあります。そういうことからしても、先生が今御指摘になる点については非常によく分かります。ただ、基本的には有効性を十分発揮する用量を使ってほしいということを、審査をしている中ではそのように思っているということも御理解いただきたいのです。

 治験の中で検討されている年齢幅、あるいは組入れ基準に該当する患者さんでは、それなりの量を使わないと効かないということが一般的で、現場に出るともっと少ない用量で効いてしまう方がいるということを、十分に事前に調べきることはなかなかできないので、現場へ出てからそういうケースで効くということを、次第に集積し、それを実際の承認内容として反映させていくようなことが、市販後の対応として将来的には必要になってくるということが現実問題としてはあり得ると思っています。それに対して審査側、あるいはデータを集める企業側にも速やかに対応するための相当な努力を求められることだとは思っておりますが、現状はそういう個々のケースにおいては、現場の変化になかなか対応しきれていないこともあるのだと理解しております。

○松木部会長代理 高齢者のことに関して、添付文書はまだ案の段階かもしれないのですが、1-8の添付文書で、1ページの右上の「慎重投与」の()高齢者に「高齢者への投与の項参照」とあるので探してみると、次のページの左下に「5.高齢者への投与」ということで、「一般に高齢者では生理機能が低下しているので、患者の状態を観察しながら注意して投与すること」とありますが、これは当たり前なのです。これを書くのだったら、全ての薬に書かなければいけないし、その後に「慎重投与の項参照」というのでまた戻ると、「高齢者の投与の項参照」というのは非常に不親切です。なぜ高齢者が15mgで、普通の人が20mgなのだろうというのは、みんな普通に使うときに思って添付文書を見ても、それに対応する答えが出ていないわけです。臨床試験では特に問題はなかったけれども、慎重を期して15mgにしたとか、そのようなことが分かれば、実際の現場でもっと使いやすいと思いますので、そのようなことも考慮してほしいと思います。

○松井部会長 添付文書の記載を工夫してほしいということですね。

○松木部会長代理 はい、そうです。

○機構 高齢者の用量ですけれども、これは、もともと曝露量に基づいて、非高齢者と同じ曝露量になるように用量設定をして、ですから、もともと高齢者である程度代謝などが落ちてくることを考慮して15mgを設定しています。これまでの医薬品とは若干異なって、高齢者のデータを積極的に評価して設定しているものであるところを御理解いただければと思います。

○審査管理課長 そこは十分御理解いただいていると思うので、添付文書の記載中では、そういう動態の部分のデータが添付文書の年齢といったところに、動態のデータとして15mg20mgのそれぞれのばく露のデータを載せているので、こういうところの記載を、更に高齢者の所にも引用するようにするとか、理解がしやすいように対応する工夫はできると思うので、そのように検討するということでいかがですか。

○機構 検討させていただきます。

○松井部会長 松木委員、よろしいですか。

○松木部会長代理 はい。

○松井部会長 他の先生方、ちょっと議論に手間取りましたけれども、非常に重要だと思いましたので、どうかお許しいただきたいと思います。他に御意見がなければ議決に入ろうと思いますが、よろしいでしょうか。今の議論を踏まえた上で、すなわち議事録あるいは添付文書案に記述を加えると。特に高齢者に関して記述を加えるということで議決をしようと思いますが、よろしいでしょうか。なお、武田委員、野田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただきます。残りの先生方、本議題について、今のような条件下で承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、承認を可として薬事分科会に、手続の上で報告をすることにいたします。別室で御待機の内藤委員をお呼びください。

                                ( 内藤委員入室)

○松井部会長 それでは議題2をお願いします。

○機構 議題2、資料2、医薬品リツキサン注10mg/mLの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について機構より御説明申し上げます。

 小児期に発症するネフローゼ症候群の多くは、ステロイド薬単剤による治療で一度は寛解に至るものの、その後は、比較的短期間に再発を繰り返す頻回再発型や、ステロイド薬の減量や中止に伴い再発するステロイド依存性に至ります。これらの症例に対しては免疫抑制剤が用いられますが、免疫抑制剤に反応しない難治性の患者が存在し、これらの患者が腎不全に至る場合も少なくありません。患者の大半は、ステロイド薬を長期継続する必要があるため、ステロイド薬の副作用が問題となることが多く、特に成長期にある小児においては成長障害が問題とされ、また、免疫抑制剤も、その副作用から使用を中止せざるを得ないことが多いのが現状です。

 本剤の有効成分であるリツキシマブ(遺伝子組換え)は、ヒト成熟B細胞に発現しているCD20抗原への結合を介した細胞傷害作用を有しており、B細胞に対する作用から特発性ネフローゼ症候群に対する効果が期待され、臨床使用成績が国内外から報告されております。今般、国内医師主導治験により小児期発症の難治性のネフローゼ症候群(頻回再発型又はステロイド依存性)に対する有効性が確認されたとして、医薬品製造販売事項一部変更承認申請が行われました。本剤は、本邦においては2001年6月に承認され、現在は、CD20陽性のB細胞性非ホジキンリンパ腫など、四つの適応を有しています。

 なお、内藤委員より事前に御質問を頂いております。諸外国での難治性ネフローゼ症候群に対する承認申請の状況についての御質問です。

 海外においては、201311月時点で126の国又は地域で承認されていますが、ネフローゼ症候群の効能・効果で承認されている国又は地域はありません。申請状況についても同様で、海外においては、承認申請は現時点ではなされておりません。

 なお、本剤は2012年9月13日付けで、難治性ネフローゼ症候群を予定される効能・効果として希少疾病用医薬品に指定されています。本品目の専門協議では、本日の配布資料11に示します専門委員が指名されております。以下、本剤の有効性・安全性について、臨床試験成績を中心に御説明させていただきます。

 主な臨床試験成績として、国内医師主導治験として実施された第III相検証試験及び薬物動態試験の2試験の成績が提出されています。有効性に関しては、報告書11ページの表5を御覧ください。小児期発症の難治性のネフローゼ症候群の患者を対象とした第III相検証試験の主要評価項目の無再発期間を示しています。表5より、プラセボ群と比較して本剤群で統計学的に有意な延長が確認されました。

 また、報告書12ページの表6を御確認ください。同じく第III相検証試験の評価項目とされた再発率及び再発発生までの期間について、いずれも、プラセボ群と本薬群との間に統計学的な有意差が認められました。

 安全性に関しては、報告書20ページの表16を御覧ください。今般提出された第III相検証試験及び薬物動態試験における有害事象の発現状況を示しております。感染症に関連する事象及びinfusion reactionに関連する事象が比較的多く認められましたが、重篤な副作用は少ないこと、既承認の効能・効果で報告されている有害事象以外に新たな有害事象の発現は認められていないことから、緊急時対応が可能な医療施設において、十分な知識・経験を持つ医師のもとで使用されるのであれば、本剤の安全性は許容可能と考えました。また、国内の治験症例数は極めて限られていることから、製造販売後調査では、一定数の症例に係るデータが蓄積されるまでの間は全症例を対象にして本剤投与時の安全性情報を収集する必要があると考えました。

 以上、機構での審査の結果、小児期発症の難治性ネフローゼ症候群(頻回再発型又はステロイド依存性)に対する本剤の有効性は期待でき、安全性は許容可能と考えられたことから、一定数の症例に係るデータが蓄積されるまでの全症例を対象とした製造販売後調査に係る承認条件を付した上で本剤を承認して差し支えないと判断し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。以上になります。御審議、どうぞよろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。委員の先生方から御質疑をお願いいたします。内藤先生、いかがでしょうか。

○内藤委員 日本で先行して審議されたのは、例えば、日本だけ患者さんが多いなどの事情があるか、もし日本だけで非常に特異的に患者が多いという場合、民族的な差異などであれば問題ないのですが、診断基準が日本だけ違っているために、この患者さんが多いとかというような病気の場合も考えられますので、そういう何か特段の事情があるかと思って質問させていただきました。そういう事情がないようですので、特に問題ありません。

○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。

○松木部会長代理 感染症の発現事象の数は変わらないようです。ただ、B細胞がガクンと減るので、多分、免疫とか、回復に時間がかかると思うのですが、そのかかったか、かからなかったかだけではなくて、回復が速やかだったかどうかとか、そのようなデータはあるのでしょうか、治癒までの時間とか。

○機構 グレード3以上の感染症及び重篤な感染症は、いずれも回復しているということを確認いたしました。また、感染症の多くはグレード2以下であることも確認しております。既承認効能・効果と同様に、感染症に関する添付文書上の注意喚起について遵守されるのであれば、本剤の安全性は許容可能と考えました。

○松井部会長 よろしいですか。

○松木部会長代理 はい。

○松井部会長 ほかにいかがですか。

○山田委員 従来の対象疾患に対する場合には、成人量で1回375mg/平方メートルという投与量になっていますが、今回の難治性ネフローゼ症候群では、多分、もう少し若い小児の方かと思うのですが、この用量について特に安全性等で考慮する必要はないのでしょうか。

○機構 今、先生から御指摘いただきましたように、機構としても既承認の効能・効果と比べまして、今回の効能では小児の患者さんが多くなるということに留意して審査しました。今回のネフローゼ症候群の用法・用量では、既承認の効能・効果と同じように体表面積当たり375mgとしているのですが、上限を1回当たり500mgまでとしております。これは、疾患の背景としましても、小児患者で浮腫により体表面積が増加して本剤の過剰投与が懸念されるということもありますので、安全性などを考慮して最大量500mgと設定した背景があります。

○山田委員 分かりました。それで、臨床試験中も特に問題となるような副作用はなかったということでよろしいですね。

○機構 はい、特にございませんでした。

○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。古川委員、よろしいですか。

○古川委員 これは難治性のネフローゼで、子供ですからステロイドを長い間使うというのは非常に問題がありますし、たとえ効いても、何回も再発するのでずっと長い間使うし。あるいは、子供さんによってはステロイドをずっと切れないこともある。そういうときの、言葉は悪いのですが、応急的な処置でこういう治療法をやってステロイドから一時、脱却させようというようなことなのだと思うのです。ですから、こういう治療法も必要ではないかと私は思います、小児科医の立場から。

○松井部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

○内藤委員 悪性リンパ腫の場合に、最大投与回数8回というように制限がありますが、この難治性のネフローゼの場合に最大投与回数の制限は掛けなくても良いのですか。

○機構 悪性リンパ腫に用いる場合は、1サイクル8回までとされています。今回のネフローゼ症候群に関しましては、臨床試験の方では1サイクル当たり4回投与までとされていました。当該試験に基づき、承認用法・用量も1サイクル4回までとさせていただいております。その後の再発した後の再投与につきましては、治験に組み入れられた症例で再投与が確認された患者が3例しかいませんでしたので、ネフローゼ症候群に対する再投与における有効性や安全性は、現時点では詳細に検討できませんでした。ですので、製造販売後調査の方で再投与された場合の有効性及び安全性について情報収集をし、必要に応じて適切な注意喚起をしていきたいと考えております。

○内藤委員 確認ですが、悪性リンパ腫の場合は8回を1サイクルとして、休薬した後、また8回を投与することは可能なのですか。

○機構 はい、そのとおりです。

○内藤委員 分かりました。

○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは議決に入ろうと思いますが、よろしいですか。なお、加藤委員におかれましては利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは議題3に移ります。お願いいたします。

○事務局 審議事項議題3、資料3、asfotase alfaを希少疾病用医薬品として指定することの可否について、機構からの評価報告書に沿って事務局より御説明いたします。資料3の評価報告書のタブをお開きください。申請者は、アレクシオン・ファーマ合同会社、予定される効能・効果は、低ホスファターゼ症となります。希少疾病用医薬品の指定要件である対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について、順に御説明いたします。

 まず対象患者数ですが、現在の低ホスファターゼ症の総患者数は約200人程度と推測されております。

 次に、医療上の必要性についてです。低ホスファターゼ症による骨変形がもたらす永続的障害等は生命予後に影響を及ぼす場合もあり、現在、本疾患に対して承認を有する医薬品はなく、十分な効果を期待できる治療法もないことから、医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に、開発の可能性についてです。海外において第II相試験が実施され、X線画像評価により、骨の石灰化の改善とくる病の改善が認められています。また、日本を含む6か国で第II相試験が実施されていることから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。以上です。よろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から御質問、御意見を頂戴したいと思います。特に御意見はございませんか。よろしいでしょうか。もし御意見がなければ議決に入ろうと思います。

 本議題につきまして指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは議題4に移ってください。お願いいたします。

○事務局 審議事項議題4、資料4、リツキシマブ(遺伝子組換え)を希少疾病用医薬品として指定することの可否について事務局より御説明いたします。

 資料の評価報告書のタブをお開きください。申請者は、全薬工業株式会社、予定される効能・効果は、後天性血栓性血小板減少性紫斑病です。御覧のページの一番下に記載のとおり、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、血小板凝集主体の血栓が全身臓器で形成されることにより発症し、溶血性貧血、血小板減少などの症状を呈する全身性の疾患です。

 次のページですが、対象患者数です。TTPは先天性と後天性に分類され、後天性TTPは、TTP全体の95%を占めるとされています。厚生労働省による平成23年度の患者調査では、TTPは血栓性微小血管障害として集計されており、本邦における患者数は500人未満であるとされております。したがって、本薬の対象である後天性TTPの患者数は5万人未満を満たしていると考えます。

 続きまして、医療上の必要性です。現在のところ、後天性TTPの治療として、血漿交換療法やステロイド療法、新鮮凍結血漿輸注を用いる補助療法等がありますが、抵抗性を示す難治例や再発例が出ている状況です。本薬は、B細胞を損傷することにより後天性TTPの原因として考えられている抗ADAMTS-13自己抗体の産生を抑制すると推測されており、後天性TTPに対する新たな治療法として、医療上の有用性は高いと考えられます。

 最後に開発の可能性ですが、資料の次のページになります。海外では第II相試験が実施されているほか、TTPに対する本薬のシステマティックレビューでも有効性が報告されています。さらに、本邦では多施設共同オープンラベル試験が医師主導治験として本年1月より実施されており、申請者は、当該試験の成績を使用して承認申請を行う予定としております。

 以上から、本薬の開発の可能性は高く、希少疾病用医薬品の指定要件を満たしているものと考えます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。ただ今の議題につきまして御質疑をお願いいたします。

○松木部会長代理 どんどん効能追加という感じですが、ステロイドしか効かないような希少疾病に全部、この適応などを考えているのでしょうか。

○事務局 申し訳ございません、開発計画を全て把握しているわけではありませんが、幾つかの疾患について、効能追加を目指して医師主導治験等が実施されているということは聞いております。

○松井部会長 ありがとうございます。ほかに御質問、御意見はございませんか。よろしいでしょうか。それでは議決に入ろうと思いますが、御異議はありませんか。なお、加藤委員におかれましては利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。そのほかの委員の先生方にお聞きします。本議題につきまして指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告いたします。

 それでは議題5に移ります。お願いいたします。

○事務局 審議事項議題5、資料5、ISIS420915を希少疾病用医薬品として指定することの可否について、機構からの評価報告書に沿って事務局より御説明いたします。評価報告書のタブをお開きください。申請者は、グラクソ・スミスクライン株式会社、予定される効能・効果は、トランスサイレチン家族性アミロイドポリニューロパチーとなります。希少疾病用医薬品の指定要件であります対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について、順に御説明いたします。

 まず、対象患者数についてです。本邦における家族性アミロイドポリニューロパチーの有病率は、100万人中0.871.1人程度、患者数としては、111135人と推定されていることなどから、患者数が5万人未満という希少疾病用医薬品の指定要件を満たしているものと考えております。

 次に、医療上の必要性についてです。本疾患は20歳から40歳代で発症することが多く、最終的には、感覚消失、四肢末端の萎縮、脱力及び反射消失に至り、発症後、平均10年から13年で死に至る疾患とされています。治療法としては、これまで、対症療法及び同所性肝移殖に限られており、昨年9月に治療薬としてタファジメグルミンが承認されたところですが、本邦における使用経験が限られているというのが現状です。本剤はタファジメグルミンとは異なる作用機序を有しており、新たな治療の選択肢の一つになることが期待されることなどから、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に、開発の可能性についてです。本疾患の患者を対象とした国際共同第II/III相試験が開始され、現在、進行中であるほか、国内におきましては、今後、第III相試験の実施が計画されていることなどから、本剤の開発の可能性は高いと考えております。

 以上から、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすものと判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 ありがとうございます。委員の先生方から御質疑をお願いしたいのですが、いかがでしょうか。

○内藤委員 この薬剤のDDSはどのようになっているのでしょうか。

○松井部会長 ドラッグ・デリバリー・システムですね。

○内藤委員 ええ。

○事務局 現時点では、予定される用法・用量としては、1週間に1回皮下投与するというデータしか手元にありません、今後、申請されたときにそういったところを審査していくことになると思われるのですが。そういったことでよろしいでしょうか。

○内藤委員 はい。

○松井部会長 先生、差し支えなければ、今の御質問の趣旨といいますか。

○内藤委員 本文を見ると、主に肝臓で代謝されるということが書いてありましたので、裸のままのオリゴヌクレオチドを投与している可能性も高いかと思ったのです。その場合に特段の工夫もなく細胞に取り込ませているのかどうかということを確認したかっただけです。

○松井部会長 参考にしてください。ほかにございませんか。特に御質疑がございませんようでしたら議決に入ろうと思います。なお、武田委員、野田委員におかれましては利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。残りの先生方、本議題につきまして指定を可としてよろしいでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告といたします。議題6をお願いいたします。

○事務局 審議事項議題6、資料6、BG00012を希少疾病用医薬品として指定することの可否について、機構からの評価報告書に沿って、事務局より説明いたします。事前評価報告書のタブをお開きください。申請者は、バイオジェン・アイデック・ジャパン株式会社。予定される効能・効果は、多発性硬化症の再発予防及び身体的障害の進行抑制となります。希少疾病用医薬品の指定要件であります対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について、順に説明いたします。

 対象患者数について、多発性硬化症の平成24年度における特定疾患医療受給者証交付件数は、1万7,073件と報告されており、現在の患者数としては、約1万7,000人~2万人と推定されております。したがって、患者数が5万人未満という希少疾病用医薬品の指定要件を満たしているものと考えております。

 次に、医療上の必要性について、多発性硬化症の典型的な症状としては、脱力、感覚消失、視力障害、平衡機能不全などがあり、再発を繰り返すうちに回復が次第に困難になる傾向とともに、約半数の患者は初回診断から15年以内に介助なしでの歩行が困難になるとされております。

 本邦における多発性硬化症の治療薬としては、インターフェロン製剤、フィンゴリモド及びナタリズマブがありますが、本剤は炎症や酸化ストレスなどの有害なストレスに対する防御的な反応を促進する内因性の細胞防御機構を活性化させ、多発性硬化症に効果を発揮すると考えられており、安全性の面では臨床試験において胃腸障害や皮膚症状がみられておりますが、いずれも非重篤であったことから、新たな治療の選択肢の一つになることが期待され、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。

 最後に、開発の可能性については、米国、欧州で既に多発性硬化症の治療薬として承認されているほか、日本人を含む国際共同第III相試験が進行中であり、本剤の開発の可能性は高いと考えております。以上から、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすものと判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○松井部会長 委員の先生方から、御質問、御意見をお願いいたします。よろしいでしょうか。もしなければ、議決に入ります。野田委員、山田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきます。それでは、本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、指定を可として薬事分科会に報告いたします。

 次に、報告事項3件に移ります。よろしくお願いいたします。

○事務局 報告事項1、資料7、医薬品ラミクタール錠25mg、同錠100mgの製造販売承認事項一部変更承認申請について報告いたします。本剤は、ラモトリギンを有効成分とする抗てんかん剤で、現在、他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)、強直間代発作及びLennox-Gastaut症候群における全般発作、双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制に関する効能・効果で承認されております。

 今般、グラクソ・スミスクライン株式会社から、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)及び強直間代発作に対する単剤療法に関する効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断をいたしております。

 続いて、議題2、医薬品ビクトーザ皮下注18mgの製造販売承認事項一部変更承認について、報告いたします。資料8です。本剤は、リラグルチド(遺伝子組換え)を有効成分とするGLP-1受容体作動薬であり、既に本剤の単独使用、スルホニルウレア系薬剤との併用療法について承認がされているところです。

 今般、ノボノルディスクファーマ株式会社から、本剤とほかの経口血糖降下薬とを併用投与した際の成績が追加され、2型糖尿病へ効能・効果を変更する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。機構における審査の結果、本剤と他の経口血糖降下薬を併用した際の有効性、及び安全性が確認されたことから、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。

 続いて議題3、医薬品メトグルコ錠250mg及び同錠500mgの製造販売承認事項一部変更承認について報告いたします。資料9です。本剤は、メトホルミン塩酸塩を有効成分とする経口血糖降下薬であり、現在は成人の2型糖尿病について承認されているところです。

 今般、大日本住友製薬株式会社から小児の2型糖尿病患者を対象とした臨床試験成績が追加され、小児2型糖尿病患者の用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。機構における審査の結果、小児の2型糖尿病患者における有効性及び安全性が確認されたことから、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。以上です。

○松井部会長 議題7について、村田先生、何かありますか。特によろしいですか。では、鈴木先生、どうぞ。

○鈴木委員 これは報告事項ですが、この薬はもともとは類薬との併用療法で薬事承認を取ったようです。今回は、単剤での効能・効果の申請ですが、この試験の結果を見ますと、事前に設定した閾値40%を大幅に下回っています。本剤の有効性が検証されたとは言い難いという記載もありますが、それにもかかわらず追加の効能を認めるに至った理由について、説明をお願いいたします。

○機構 審査報告書の1617ページを御覧ください。2)国際共同第III相試験における有効性についての項で、本剤の有効性について議論しております。まず、第III相試験の事前の設定の閾値ですが、海外で行われたカルバマゼピンを対象とした試験での有効性が、発作消失維持率が60.4%であったことを参考に、閾値を40%に設定しております。一方、それ以外の本剤の海外臨床試験や、海外で単剤の効能・効果を持っている抗てんかん薬での臨床試験などを広めに調べてみますと、発作消失維持率としては、低いものでは36%でも有効性が認められたとされており、海外で実際に使用されております。したがって、今回の国際共同試験で認められた有効性である43.1%は、決して低いものではないと考えております。

 では、なぜ参考にした海外臨床試験と今回の試験で有効性に差が認められたかについては、17ページで考察しております。一つには、除外基準の差異が考えられております。治験薬投与開始前6か月のうち、いずれかの期間で月当たり30回以上の発作を発現した治験の評価には不適格と考えられる重症度の高い症例が、今回実施された試験では除外基準を設定しておりませんでしたので、6例組み入れられていた点です。もう一つは、2.で示しました中止基準の差異で、今回実施された試験では因果関係の否定できない発疹が発現した場合には即座に治験を中止することが規定されており、治験を中止した患者に関しては発作消失維持率を換算するに当たり失敗例として扱っておりますので、発疹による中止例が多かったことについても、今回実施した試験で海外の参考とした試験よりも有効性が低くなったものだと考えております。以上のような点に加え、本剤の併用療法の有効性については既に検証されており、単剤療法についても同様の作用機序により薬効を発揮すると考えられていること、また、海外臨床試験においては、本剤はカルバマゼピンと同程度の有効性が認められていることなどを踏まえますと、今回の試験の結果からでも日本人てんかん患者において有効性は期待できると判断しております。

○鈴木委員 そういうことなのでしょうが、結局は治験の閾値の設定が不十分だったということだと思います。しかし、治験の結果はそれほど軽いものなのでしょうか。しかも、ぎりぎりではなく、かなりかけ離れた数値ですが、それでも通してしまうのでは、この国際共同試験というのは何なのでしょうか。そんなことをやらなくても、結果はどうであれ、海外で一定の効果があれば認めてもいいのではないかという話にも聞こえます。その辺りはもう少しデータを集めて説明をしてもいいのではないかと思いますし、この薬は報告ですから承認ということになるのでしょうが、市販後に臨床試験などは予定されているのでしょうか。その辺りについても教えていただけますか。

○機構 本剤については、製販後の臨床試験の実施の予定はありませんが、製販後調査を行いますので、その中でも有効性は見ていきたいと考えております。

○鈴木委員 ここを通すための言い逃れとか言い訳だけで、後はもうそれで終わりではなくて、それは議事録なり報告なりの文書はしっかり残して次へ伝えていく必要があると思います。例えば、価格を決める際に有効性のレベルが低かった場合は、費用対効果の観点で価格に反映させていかないと、何でもかんでもどんどん通してしまえというスタンスだけでは、これからは厳しいのではないでしょうか。今後のPMDAや審査管理課の姿勢として、現在は、非劣性とか有意性とか結果に差がありながら、承認のレベルに差がないのですが、後にそれが伝われば、価格を決定する際に一つの参考になると思いますので、承認レベルの分類などもう少しきめ細かい対応をされたらいいのではないでしょうか。この薬だけのことではありませんが、今後は審査の在り方をもう少し緻密にしていく必要があるのではないかと思いますので、是非御検討をお願いいたします。

○松井部会長 ほかにありますか。

○鈴木委員 課長、議事録に残るようにお言葉を頂きたいです。

○審査管理課長 ただ今の御指摘も踏まえて、記録に残るように対応いたします。

○松井部会長 ほかに、委員の先生方から御意見はありませんか。それでは、報告事項については御確認を頂いたものと。

○松木部会長代理 8についてはよろしいのですか。

○松井部会長 失礼いたしました。8、9ですね。8についていかがでしょうか。

○松木部会長代理 ちょっとよく分からないのですが、下線部のただし書きを削除するということですね。効能として、2型糖尿病だけというので、この食事療法、運動療法で効かないときに使うのは当たり前だと思うのですが、これを外してしまうというのは、全てこれから2型糖尿病の薬はこういうような書き方にするのでしょうか。このことは書いておいても、全然問題ないと思いますが、いかがでしょうか。

○機構 既に本部会において、7剤程度同じような申請を出させていただいておりますが、審査報告書の3ページの一番下、脚注の1を御覧ください。2型糖尿病については、平成22年に経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドラインが公表されております。こちらのガイドラインにおいて、現時点で医療現場で本剤との併用が想定される他の経口血糖降下薬との併用療法に係る長期試験が実施され、当該試験成績と既承認効能・効果に係る臨床試験成績をもって、有効性及び安全性を評価した場合には、2型糖尿病という効能・効果を付すことで問題ないというようなガイドラインになっております。本剤については、経口血糖降下薬ではありませんが、本ガイドラインのQ&Aにおいて、インスリン以外の注射剤においてもこのガイドラインに準じて開発をするようにとの方向性が出されており、それに従って本剤は開発をされたとなっております。ですので、今御指摘を頂いた下線部が削除され、そのほか単独、併用にかかわらず、2型糖尿病であれば本剤を使用できる効能に変更することが妥当と判断しております。

○機構 補足いたします。今、先生からは、薬を使う前に食事あるいは運動の療法をきちんと行った上でという点が大事であるとの御指摘と理解しております。この点については、別紙2に添付文書の案があります。2番目の「重要な基本的注意」の()で、こういった旨の注意喚起をしております。()で、本剤の適用はあらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で、効果が不十分な場合に限り考慮すること、ということで、適用に関する注意喚起をさせていただいております。

○松木部会長代理 今後、全部それで統一するならば、資料9は変えないのはどういう理由なのですか。

○機構 資料9のメトグルコ錠については、こちらは今回、効能・効果は変更されないため、投与対象は同じなのですが、用法・用量として小児の用法・用量を追加いたしました。2型糖尿病への変更の臨床試験は実施されていないこともあり、申請時の効能・効果のままとなります。

○松木部会長代理 その辺りは、統一をした方がいいと思います。添付文書の責任がどこにあるかという議論にもなってしまうかと思いますが、言われたら直す、言われなければ直さないというのでは、ちょっと統一性に欠けますので、検討いただきたいと思います。

○機構 併用投与の試験が追加でやられているかどうかの違いで、ビクトーザは他の血糖降下薬との併用投与試験を今回追加で提出されましたので、それをもって2型糖尿病という効能・効果に変更いたします。メトグルコ錠は、他の血糖降下薬との併用試験は今回なされていないという違いがあり、今回は効能はそのままです。

○松木部会長代理 野田先生にお聞きした方がいいのかもしれませんが、どうも納得できません。どういう状況であれ、食事療法と運動療法に効く人には使うべきではないというのは正しいと思いますので、それが書いてあったり書いていなかったりするのが、併用療法として効果があったかなかったかで判断するのは、何か非常におかしい気がします。

○松井部会長 野田先生、何か御意見はありますか。

○野田委員 これは、結構ややこしい問題で、経口血糖降下薬の臨床評価の新しいガイドラインになるまでは、糖尿病の薬は、相手方というか、併用できる同効薬が決まっていたのですね。それは問題があるのではないかということで、一般的な2型糖尿病として効能を認める方策が出されました。その試験を行った薬剤については、2型糖尿病という効能を認めることになりました。食事・運動療法の徹底に関しては、いずれにしてもどこかには記載されていると思います。つまり、これまでは、これとこれはよいけれども、これとこれは駄目というのがあったのですね。薬剤クラスの種類がここまで増えてきますと、煩雑になるということもありますので、2型糖尿病として効能を認めようと。そのための試験を行った薬剤については、2型糖尿病の効能・効果を認めることになりました。

 ただ、メトグルコに関しては、以前からの薬なので、新しい薬剤の効能が全て2型糖尿病ということになってきますと、事実上併用が可能になってきます。相手方から寄ってくるような形になるので、新たな試験は行わずにそのままになっていると私は理解しています。これはなかなか複雑で、2型糖尿病という効能を認めるための一つの枠組みに乗っているかどうかの違いで、そのことが出てくることになってくると思います。

○松井部会長 その他に御発言はありますか。よろしいですか。どうも、手続上のことのようですね。ほかにありませんか。それでは、今のことも含めて御確認いただいたものといたします。

 最後に、その他の事項について説明をお願いいたします。

○事務局 続いて、当日配布資料1、医薬品リスク管理計画に係る承認条件の付与について報告いたします。当日配布参考資料1-1を御覧ください。医薬品リスク管理計画(RMP)は、医薬品のリスクを適切に管理し、安全性確保を図るため、個々の医薬品について得られた治験に基づいて、安全性検討事項を明らかにし、それを踏まえて安全性監視活動の計画及びリスク最少化活動の計画を策定・実施することにより、安全対策の充実強化を図ろうとするものです。

 医療用医薬品を対象として、平成25年4月1日以降に製造販売承認申請される新医薬品及びバイオ後続品から適用されており、策定されたRMPは、PMDAのホームページにおいて公表されております。なお、御参考までにRMPの具体例を当日配布の参考資料1-3として配布いたしました。

 また、RMPの策定及び実施の確実な履行の確保を図るため、「医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の製造販売後安全管理の基準に関する省令」(いわゆるGVP省令)及び「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令」(GPSP省令)が平成25年3月11日に改正され、平成2610月1日から施行されます。

 参考資料1-2を御覧ください。改正後のGVP省令において、RMPは薬事法第79条の規定に基づく承認条件として付与され実施されます。新医薬品などの場合、承認申請の過程において、RMPの策定の必要性を判断し、その内容についても審査されます。改正省令の施行以降に承認される新医薬品などについて、RMPが必要と判断された場合には、承認条件が付与されることになりますが、これについては市販直後調査と同様に、本部会において御確認いただくことといたします。なお、既に製造販売されている医薬品について、改正省令の施行以降に新たに安全性の懸念が判明した場合には、RMPの策定の必要性を判断し、そこで必要と判断された場合には、承認条件として追加又は付与し、策定・実施されることになります。その場合は、安全対策部会にて報告することといたします。RMPについての報告は以上です。

○松井部会長 御質問はありますか。これは重要なことだと思いますが。

○武田委員 参考資料1-1で、後発医薬品について適用時期は別途通知と書いてあります。これは、どのような予定になるのでしょうか。

○事務局 資料1の裏面の3「その他」に記載しております。後発医薬品についても、新医薬品などに準じ、RMPが策定・公表される先発医薬品に対する後発医薬品を申請する場合、及び製造販売後に新たな安全性の懸念が判明した場合に、RMPの策定実施を求めることを予定しております。近く、指針適用に係る運用通知の発出を予定しております。

○松井部会長 よろしいでしょうか。ほかにありますか。

○加藤委員 このRMPの計画を見ていますと、いろいろなことをこういう予定で行うということが一つずつ書いてあります。これの実効性や有効性、例えばここに書いてあることがその後どのように適正に情報収集され、あるいは適切な評価がなされたのかの評価は、どのようにして行うのでしょうか。つまり、この管理計画が実際にどのぐらい実効性があったかの事後評価はどのようになされるのかを教えていただきたいと思います。

○事務局 ただ今、いろいろとワーキングチームを結成しており、その中でこの後どのように評価していくかを議論している最中です。また、それについては報告いたします。

○松井部会長 よろしいですか。重要なことだと思います。

○審査管理課長 これは、安全性監視計画という呼び名ですが、リスクとベネフィットと両方について、市販後に計画的にデータを収集していくグランドプランをRMPとして作り、公表しています。これを出した上で、制度上、市販後に定期的な報告を取ることになっております。それが、一昨年の5月に通知をされており、定期的にリスクとベネフィットについてのエバリュエーションレポート、Periodic Benefit-Risk Evalution Reportを厚生労働省に出せということが制度上仕組まれておりますので、その中でこれがきちんとやられたかどうかが随時報告されることになっております。それを見ていく中で、リスクとベネフィットのバランスがどうなっているかをずっと見守り続けることが、再審査期間中の私どもの役割です。

 したがって、加藤先生がおっしゃられたような、それぞれの計画がいつどのようになったのかが、定期的報告の中で出されることが基本的には予定されています。さらにこういうプランをPMDAのホームページに公表している趣旨は、医療現場の先生方に、この薬はこういう安全性上の課題あるいは有効性についての宿題が付いており、これをやることになっているということを簡潔に見ていただけるように、比較的簡素な形で出しております。それを御覧いただいている先生方からも、これはどうなったかと聞いていただけるようにオープンにしているという意味でもありますので、御懸念や御疑問はもっともですし、それはいつでもPMDAや厚生労働省、企業に対してお問合せいただくことができるようにという意味でもあります。

○加藤委員 我々はたとえば本部会のような会議でこのように承認をするときには、きちんとした資料や様々なものを全部検討し、リスクなりを評価して考えてしているわけですが、それがたまたま、先ほどおっしゃったように宿題という形でいろいろな問題点を市販後販売後調査をするようにとなっております。その宿題の答えに対しても、同じような厳密さをもって評価していくシステムがある程度必要かと思います。今までにない新しい重要な考え方ですので、それに対してどのような体制が可能かも検討いただき、有益な制度としていただければと思います。

○松井部会長 ほかに何か御発言はありますか。特にないようでしたら、本議題、その他の事項については、御確認いただいたものといたします。今日の会議で、具体的には挙げられませんが、この会の在り方についてももう少し考えなければいけないことも出てきたように思います。そういう御批判は、私への批判でもありますので、できることを私なりに検討して、また御相談させていただきたいと思います。事務局から、何か報告はありますか。

○事務局 次回の部会は、9月4日()午後3時から開催予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。

○松井部会長 それでは、本日はこれで終了といたします。どうも御苦労様でした。


(了)

備  考
 本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 井本(内線2746)

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