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2014年10月28日 企業経営と女性の活躍推進を考えるフォーラム パネルディスカッション 議事録

雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課

○日時

平成26年10月28日(火)14:00~16:00


○場所

イイノホール&カンファレンスセンター4階RoomA


○出席者

コーディネーター 武石 恵美子氏 (法政大学教授)
パネリスト 板屋 篤氏 (株式会社大和証券グループ本社人事部長)
パネリスト 野原 聖子氏 (中外製薬株式会社人事部ダイバーシティ推進室長)
パネリスト 小林 千恵氏 (日産自動車株式会社ダイバーシティディベロップメントオフィス室長)

○議題

「ライフイベントと女性の活躍推進について -女性が意欲を持ち続けるために-」

○配布資料

資料1 株式会社大和証券グループ本社配布資料
資料2 中外製薬株式会社配付資料
資料3 日産自動車株式会社配付資料

○議事

○司会 大変お待たせしました。続きまして第2部のパネルディスカッションに移らせていただきます。

 本日のパネルディスカッションは「ライフイベントと女性の活躍推進について-女性が意欲を持ち続けるために-」をテーマに行います。

 女性が結婚、出産後も変わらず能力向上への意欲を持ち続け、男女がともに豊かな生活と職業能力向上を両立できる職場環境の整備をどのように進めていくのかについて、既に女性の活躍推進への取り組みが進んでいる企業の方々にお話ししていただきます。

 パネルディスカッションのコーディネーターには、法政大学教授、武石恵美子様。 パネリストとして、平成26年度女性の活躍推進協議会の参集企業である、株式会社大和証券グループ本社より、人事部長、板屋篤様。 同じく、平成26年度女性の活躍推進協議会の参集企業である、日産自動車株式会社より、ダイバーシティディベロップメントオフィス室長、小林千恵様。 そして、本日の均等推進企業部門の表彰企業である、中外製薬株式会社様より、人事部ダイバーシティ推進室長、野原聖子様にお願いしております。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 なお、パネルディスカッションの冒頭、パネリストの皆様の企業における女性の活躍推進の取組について、御紹介いただきます。

 御紹介いただく際には、プロジェクターに投影する資料について、本日の配付資料の中に入れて皆様にお配りしております。大和証券グループ本社様、中外製薬株式会社様、日産自動車株式会社様の資料、3種類の資料がございますので、お手元に御準備ください。

 それでは、コーディネーターの武石様、よろしくお願いいたします。

 

○武石コーディネーター 皆さん、こんにちは。ただいま御紹介いただきました武石でございます。このパネルディスカッションのコーディネーターを務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 今日表彰された企業の皆様、本当におめでとうございます。これから第2部、ライフイベントと女性の活躍推進について、パネルディスカッションに入ります。女性の定着が進んでまいりましたが、ただ勤続が伸びるだけではもちろんまずいわけで、勤続が伸びながらそこで活躍してもらうにはどうしたらいいかということについて、きょう御登壇いただく企業の皆様、いろいろ課題を抱えながら取り組んでおられます。この問題について、会場の皆様と一緒に情報共有をし、何らかのヒントをお持ち帰りいただけるといいかなと思っておりますので、どうぞ御協力のほどをよろしくお願いいたします。

 今日はこれから三社の状況についての御報告をいただき、その後、簡単にディスカッションをします。続いてフロアの皆様からも質問等をいただく時間をお取りしておりますので、何か御質問等があればそのときに御質問、御意見いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 では、早速ですが、パネリストの方にそれぞれの企業の取組について御紹介をいただきたいと思います。まず最初に大和証券グループ本社人事部、板屋様、よろしくお願いいたします。

 

○板屋氏 皆さん、こんにちは。大和証券グループ本社の板屋でございます。

 本日はこのような場にお招きいただきまして、誠にありがとうございます。当社では、女性活躍支援をはじめ、社員のワーク・ライフ・バランスを実現していくことが企業の持続的な成長につながると確信し、経営戦略の中に位置づけて様々な取組を行ってきております。本日は、その取組や、それによって何を目指すのかといった点についてお話をさせていただければと思います。

 まず最初に、大和証券グループの概要についてですが、社員数は1万3,150名、グループ全体で見ると女性の比率が約4割弱となっています。グループの中でも大部分の社員数を占める大和証券では、男女比はほぼ半々となっており、毎年新入社員についても男女ほぼ半々という状況です。

 当社グループの女性活躍推進の取組についてお話しさせていただきますが、3つポイントがございます。

 まず1点目は、様々な制度を充実させるとともに、みんなが気兼ねなく使いやすい環境を整備することです。2点目が、女性だけでなく男女ともに働きやすい会社を目指していくということです。3点目が、経営戦略の一つとして取り組んでいることです。

 経営戦略の一つとして取り組んでいるとお話ししましたが、当社では平成24年度から3ヵ年の中期計画を策定しており、この中で人事戦略として全ての社員がモチベーション高く働き続けられる環境を整備して、高次元のワーク・ライフ・バランスの実現を推進していこうという目標を掲げております。企業が将来にわたって持続的に成長するための鍵となるのは 社員の会社に対するロイヤルティ だと思っています。ロイヤルティというのは、目に見えない資産ですが、企業の健全な発展にとって重要な意味を持っていると考えています。そのためには、社員一人一人がこの会社でずっと働き続けたいと思える、「働きがいのある会社」になっていく必要があると考えています。

 社員のモチベーションやロイヤルティの向上が プロ意識を持った社員 を育て、それがお客様へのサービスの向上に繋がり、それがひいては株主、その他のステークホルダーにも還元されていくと考えています。このような考え方に基づきまして、女性活躍支援やワーク・ライフ・バランスをはじめとする様々な施策に取り組んでいます。

 弊社が女性活躍支援に本格的に取り組み始めたのが平成17年、ちょうど10年前ですが、当時の女性社員にとっては「ライフプランが描きづらい」「重要な仕事や役割を与えられることがあまりなく、期待されていると感じることがない」といった声がありました。

 仕事を続けたくても、結婚や出産、配偶者の転勤といったライフイベントで会社を辞めざるを得ないケースもありました。どの企業でも同じだと思いますが、証券会社の仕事も、入社してすぐに即戦力として活躍することは難しいです。採用して数年かけて教育をして、知識やスキルを蓄積して、やっと一人前になった頃に、例えば結婚や出産で辞めてしまうことは、会社にとっても非常に大きな損失だと考えました。

 特に、働く本人たちにとっても、それまでのせっかくのキャリアをふいにしてしまうことは非常にもったいないことです。そこで女性社員に長く働き続けてもらうためにはどうしたら良いかと考え始めたのが、当社の女性活躍支援の出発点になっています。

 また、ビジネスモデルの変化もありました。ここ10年ほどの間に証券会社の業務は従来の株式を売買するビジネスから、お客様の資産形成を総合的にコンサルティングするサービスに変化してきています。このようなビジネスモデルの中では、女性の持つきめ細やかな丁寧な対応が非常に向いているとも考えました。

 そもそも、能力やスキルには、個人差はあっても男女差はありません。特に入社するまでは学校で同じように教育を受けてきていますので、その女性の力を活用しないというのは人材という経営資源の損失だと考えています。また、「役割が人を育てる」とよく言いますが、女性にも男性と同様に仕事を任せてみることで責任感も強くなっていきましたし、周囲が思う以上に大きく成長していったと考えています。

 当社の女性活躍支援のこれまでの取組を簡単にご紹介します。先ほども申し上げましたとおり、能力に個人差はあっても男女差はありませんが、女性は男性とは異なる「出産」というライフイベントの可能性があります。そういった大きなライフイベントがあってもキャリアを継続できるよう、社員の声を聞きながら様々な制度を導入し、拡充してきました。

 例えば育児休職を3歳まで取得可能にしたり、保育施設の費用補助の制度を導入しました。結婚や配偶者の転勤があっても継続して働くことができる「勤務地変更制度」を導入し、累計で約150名の社員が利用しています。

 また、自宅でも閲覧できる社員専用のワーク・ライフ・バランス推進サイトを設置して、様々な制度や情報を紹介しているほか、掲示板が社員同士のコミュニケーションツールとして活用されており、育児休職中の社員も常に会社と繋がっていると思えるような場にしています。

 さらに、復職をするまでの流れを示した所属長向けのガイドラインを設けて、社員のスムーズな復職を支援しています。先ほども申し上げましたが、とにかく社員が気兼ねなく制度を利用できる環境の整備が重要です。そのためには本人及び上席者は当然ですが、同僚も含めた周囲の社員全体の理解も必要だと考え、社内放送等も活用して全社員への周知をずっと行ってきています。

 女性活躍支援を進めていくにつれて、実は女性の側だけではなく、男性も含めた全ての社員にとって働きやすい会社であることが重要と考え、ワーク・ライフ・バランスの推進に力を入れ始めました。

 まず最初に、平成19年に「19時前退社の励行」をスタートしました。これは毎日どんなに遅くても19時までには全員退社しようというものです。仕事がたまたま早く終わって退社できることと、必ず19時までに退社できるというのでは時間の使い方が全く違うと考えています。どれだけ遅くなっても19時までと決めておけば、社員一人一人がその後の予定を立てられるということになります。仕事も生活も充実させるためには、 時間を自分自身でコントロールできる という意識を持ってもらうことが非常に大切だろうと考えました。

 平成20年からは、毎年夏に「家族の職場訪問」というイベントを開催しています。これは日ごろ社員を支えてくれる家族に感謝を込めて平日に職場に招待しているもので、今年は全国で5,000名強のご家族に来ていただきました。家族同士の交流もありますし、お互いにライフの一面が見える1日で、社員にも家族にもとても好評なイベントです。

 これまで様々な制度を導入していますが、「実際に利用してもらえているか」ということに重きを置いております。利用しづらい制度は全く意味がないと考えて、常に利用できているかどうかをチェックし、制度の改善や、利用しやすい環境の整備をずっと継続して行っております。

 全社員に「仕事と育児に関するアンケート」を実施し、そこで出た意見や要望の吸い上げを制度や運用の見直しに反映しています。その結果を各種研修で説明したり、社内報にも掲載しています。また、社内のサテライト放送で制度の利用者を紹介するなど、対象の方やその上司だけではなく、全社員に活用事例を共有するようにしています。全社員に周知を続けることで、利用している社員だけではなく、その周囲の社員の理解も深まり、サポートし合える環境が整っていくと考えています。

 平成25年から開催している「WLB諮問委員会」では、ワーク・ライフ・バランスの推進における様々な施策について、役員はじめ、部長、支店長、社員が集まり、様々な議論を行っております。

当社の女性の管理職者は、政府が求めている「2030」にはまだ及びませんが、これまでいろいろな取組を行ってきた結果、取組を開始する前と比べて3倍以上に増えてきました。現在、生え抜きの女性役員は5名、女性の部長、支店長が21名となっています。10年間ずっと取り組んできましたが、取組を始めてずっと行ってきたことが、今結果として表れてきていると考えています。

 昨年からは、育児休職中の社員にも昇格の機会を与えるようにしています。これは休職する前まで高い成果をあげていたにもかかわらず、昇格時期にたまたま休職していて昇格できないのは不利だろうということで始めています。その目的は、会社からの期待を伝えたいということと、それまでに会社に貢献し続けてくれていたので当然だと考えています。

 職制転向については、取組を始めてから事務系を中心とした業務職という職制からエリア総合職に転向する社員が増え続け、累計で893名まで増えてきています。

 以上、当社グループの取組についてご説明させていただきましたが、女性活躍支援は女性を優遇するということではなくて、必要な時期には適切な配慮を行い、しっかりと働き続けてもらうということだと考えております。女性だからという理由で不利にならないために、これまでいろいろ体制を整えてきましたが、人材の価値を公平に見て、男性でも女性でも優秀な人材を然るべき役職に登用して能力を発揮してもらいたい。それが人材の力を最大限に引き出して企業価値を高めることに繋がるのだと考えています。

 女性も男性も、ベテラン社員も若手社員も、全ての社員がモチベーション高く、働ける環境を整えていくことが、非常に重要だと考えており、今後も社員のモチベーションを高めることに関して積極的に取り組んでまいりたいと考えています。

御清聴ありがとうございました。(拍手)

 

○武石コーディネーター 板屋様、ありがとうございます。

 大和証券さん、非常に歴史が長いといいますか、女性活躍に関して10年ぐらい取り組んでおられます。最初はトップダウンで19時前退社を開始された、というのは多分皆さんも御存じだと思いますが、非常にインパクトがある取組だったという気がします。ただ、その一方でモチベーションも維持するという、働きがいとおっしゃっておられましたが、そこに向けた様々な取組ということで大変参考になりました。ありがとうございます。

 では、また後ほどいろいろ御意見いただきたいと思います。次に中外製薬株式会社人事部ダイバーシティ推進室長、野原様、よろしくお願いいたします。

 

○野原氏 中外製薬ダイバーシティ推進室、野原と申します。

 本日はこのような機会をいただき誠にありがとうございます。

 弊社では、女性が増えてきたということを背景に2005年より次世代育成の支援の取組ということで、両立支援に向けた環境整備というところを進めてまいりました。2010年からは女性の活躍に焦点を当てて、ジェンダー・ダイバーシティという名前で女性の活躍推進を進めております。現在はジェンダー以外も含めて広くダイバーシティを推進するというところで取り組んでおります。本日は、2010年以降のジェンダー・ダイバーシティ推進活動を中心にお話をさせていただきます。よろしくお願いします。

 最初に、表紙のところにハートマークが3つあるのですけれども、2012年に社内の公募で作りましたダイバーシティマークです。一人一人が協力し合う不ぞろいなハートたちが多様性を表すというようなモチーフになっております。

 会社の概要を少しお話しさせていただきます。

 弊社、中外製薬は医療用医薬品に特化してバイオ医薬品をはじめとした新薬の研究開発、製造販売を行っております。創業は1925年、来年で創業90年ということになります。従業員数は約6,800名ということになっております。

 経営の大きな転機としましては、2001年にスイスの医薬品会社であるロシュ社と戦略的アライアンスを提携しておりまして、2002年よりロシュグループの重要メンバーとして新たなスタートを切っております。ロシュ社は1896年創業のスイスのバーゼルに本社を置く会社で、グローバルに事業を展開している、いわゆるメガファーマーと呼ばれる製薬会社です。ロシュ社について触れますと、ロシュ社が日本に初めて進出した外資系企業ということになっておりまして、薬の学術的説明をするプロパーという現在の製薬会社の営業職、MRと呼ばれております職の前身になる仕事を日本に導入した会社となっております。

 弊社の中外という名前は、国内と国外ということを意味しておりまして、やがては自社製品を海外にも輸出し、人々の健康と医療に貢献したいという創業者の思いが込められた名前で、現在、日本国内やシンガポールの研究拠点なども含めまして国内外で活動を展開しております。

 こちらは弊社の領域別売上高になっております。医薬品もさまざまありますけれども、弊社は医科向け医薬品という、病院で医師から処方される医薬品を扱っておりますので、すぐお店で買えるというものではありません。なかなか馴染みがないかもしれませんけれども、このような製品を取り扱っております。

 当社の売上高の約9割が重点疾患領域と呼ばれます、がん、骨、関節、腎といった領域の医薬品となっております。中でも売上高の45%以上をがん製品が占めるといったところが特徴となっております。

 そして製薬業界では、日本の少子高齢化も背景にありまして、グローバル化というのが加速しております。特に弊社がやっています新薬の研究開発というものはかなり大きな規模で進めなければならない仕事になりまして、グローバルレベルでの展開が必要ということになります。そして、10年前と大きくやり方も変わってきているという変化の早さというのを感じております。このような中、よりグローバルな活動をしていくに当たりまして、ダイバーシティという考え方が不可欠という認識を持っております。

 新薬の研究開発に携わるという会社のミッションとして一番上に書いてあるようなものを設定しておりまして、また、その中でダイバーシティというのを革新ですとか創造、それらを出していくには欠かせない要素として位置づけまして、中期経営計画ですとか人事戦略の1つの柱に置いて進めております。

 ダイバーシティの取組体制を少し振り返ってまいりたいと思います。ダイバーシティの中でもまず女性の活躍推進から取組を始めました。背景としましては、冒頭申し上げました女性が多くなってきたというところがあります。10年前までは女性比率が18%、それが現在2425%ぐらいになってきたということがあります。

 女性が多くなってきたというところなのですけれども、これは製薬業界全体としてもその傾向がありまして、特に一番母数の多い営業職、MRと呼ばれる仕事は、一昔前まで、私が入社したぐらいのところまでは、製薬会社のMRというのは大体男性しかいなかったのです。それが2000年以降、女性が増えまして、弊社でも特に2005年以降に多くの新卒採用をした時期がありまして、そうなりますと男女同等数が入ってくるといったことで女性比率が上がってきました。

 営業職のほか、工場などの製造ライン、薬の開発をするためのデータ収集や解析をしています臨床開発というお仕事で女性が増えました。また、販売後の製品に関する安全性の情報にかかわる情報を取り扱うお仕事など、そういったところでかなり女性比率が高くなってまいりました。

 また、女性においては20代、30代の方が多いというのが弊社の要員構成になっておりまして、このため、現在、結婚や出産などでライフイベントを迎えられる社員というのが非常に多くなっています。そうしますと、やはり就業継続というのが課題になっているということです。

 女性が増えているといった状況があるのですけれども、マネジャー層は40代以上の男性といったところに大きく偏っていったという状況もありまして、そういった背景から、性別による多様性というジェンダー・ダイバーシティの推進に着手したということです。

 そこで、2010年、当時の社長をオーナーとして各部門より女性の幹部社員(いわゆる管理職)を選出しチームを組みました。女性だけでなく人事系のスタッフも入ったので男女混合チームになっておりますけれども、こういったチームでジェンダーにまつわる社内の状況を調査しまして課題抽出、分析を行っていきました。そして、2011年にそれをまとめて経営に答申をしております。そのときに目指す姿ですとか数値目標、アクションプランというのも一緒に答申しております。

 また、中外ダイバーシティガイドというものを作りまして、ジェンダーに関する部分だけなのですけれども、全員にそれを配付して取組を周知するということを行ってまいりました。

 そして、2012年、ワーキングチームの活動は解散しまして、その活動をより広げていくということで専任組織を設置しまして、人事部の中にダイバーシティ推進室ができました。そのほか人事部だけではなくて部門のダイバーシティ推進活動というのも同時に始まりまして、様々な活動を展開しているという体制になっております。

 こちらはジェンダー・ダイバーシティの目指す姿ということになっております。これはワーキングチームの活動で検討してきたものになっております。2010年のときに考えて、5年後の2015年を目指して設定したものということになります。オレンジ色の3つのものが基調となる目指す姿です。

 単に育児、仕事の両立支援だけではなくて、性別の多様性をビジネスに生かしていく取組ということで位置づけて、指導的な立場の女性が増えていることを目指す姿の1つ目に据えております。これに関しましては、女性マネジャーの数を2015年に向けた5年間で倍増とするという数値目標を設定し、それを達成することが目的ではないのですけれども、指標として常に見ているという状態にあります。

 また、多様な価値観を受け入れる職場風土が根づくことを3つ目の柱にしています。女性だけの取組というよりは周囲の方の理解といったことも必要ですので、全体としてダイバーシティを推進していこうという気運が高まる、そういったところを目指しているということになります。こちらの目指す姿のアクションプランとして3つのテーマを据えております。

 こちらは啓発、キャリア支援関連の取組です。

3つのテーマ、アクションプランの柱について、いろいろ取り組んでおりますけれども、「女性の意識・育成」といったところでは、全部門での女性対象のフォーラムというのを開催いたしました。これはキャリアや働き方について女性自身が考え、対話をしていくというフォーラムです。そのほか、社内でのロールモデルの紹介、そういったこともやっております。

 「ライフイベント両立支援」、こちらはさまざまな就業環境の柔軟化をめざして制度導入などを行っております。また、制度だけではなくてランチ交流会というような集まりを頻繁にやりまして、ネットワーク形成ですとか子育てをしながらのキャリアづくり、そういった話をしていただく会になっております。

 このランチ交流会の話の内容も、最初は家事の分担ですとか保育所や習いごとの情報交換、そういったものが多かったのですけれども、最近はキャリアをどうやってつくっていくかというような悩みを話す会として、だんだん変わってきているようにと思います。

 そして「職場風土の定着」といったことにつきましては、ダイバーシティへの理解に向けたe-ラーニングやマネジャーの研修、新たにガイドブックを作って配付するというような啓発活動のほか、長年労使でやってまいりました長時間労働削減などの取組もこちらに位置づけています。

 取組の中から、女性マネジャーのランチフォーラムというものを少し取り上げてお話をさせていただきます。「女性マネジャーが順調に増えてきているね」というところではあったのですけれども、マネジャーに登用されたばかりで経験の浅い方が多かったということ、人数は増えてきたのですけれども、組織で見ると1人、2人という孤立した状態だったといったことから、ネットワーク形成ですとか、さらなる女性リーダーとしての意識を高めてもらうということを目的に企画しました。

 プログラムとしましては、対話の時間がメインになっております。マネジャーという役割を振り返り、周囲からの期待も振り返り、どのようなマネジャーを目指していくかといった自分のマネジャー像を整理していくというようなことをやりました。

 この会の中では、「しがらみなく発言できるのが女性ならではのことです」とか、「自分たちが組織や風土、やり方へ変化をもたらすことができるのではないか」というような発言もみられました。女性の活躍が期待される今だからこそ、自分たちに求められるものを理解して、その役割を果たしていきたいという覚悟に繋がった会になったかと思っております。

 こちらは制度、育成関連の取組です。冒頭に人事戦略の中の1つにダイバーシティを入れていると申しましたけれども、社内的には三位一体の策と呼んでいるものになります。ダイバーシティマネジメントの推進と人事処遇制度、そしてタレントマネジメントという仕組みになります。

 人事処遇制度といいますのは、吹き出しに書いてあるような改定を行ったということです。多様な社員が活躍して成長するための基盤をつくるというところが目的です。タレントマネジメントにつきましては、聞きなれない言葉かと思うのですけれども、能力ベースで人財を発掘して育成を計画的に進める仕組みと位置づけています。能力ベースということになりますので、年齢や性別、そういった属性と関係なく人財を発掘していく、そういったところを目的としております。こうした取組により、性別などの属性にかかわらず多様な人財が活躍するといったところを目指しています。

 また、今年から女性リーダーを対象とした研修を開始いたしました。女性の管理職というのは増えてきたのですけれども、部長職層ですとか上級の管理職になるにつれて女性比率は低くなっております。パイプラインの強化といったことが課題になりまして、継続的にリーダーを輩出していくために導入をいたしました。

 先ほど御紹介しました女性マネジャーのランチフォーラムでは、マネジャーになって初めてわかったことがあるというような発言もあり、視点の拡大ということがキーワードになっておりました。ですので、マネジャーになってからではなく、事前に視点の拡大の機会を与えて上級職の疑似体験というものを通して視座を高めてもらう、そういった目的でやっております。

 こちらは部門のダイバーシティ推進活動の紹介です。ダイバーシティ推進は各部門でもチームができまして、多様な活動をしているというものになります。部門によって若い女性の層が多いところ、シニアの層が多いところというような、人員構成も異なっておりまして、そういったそれぞれの部門の特徴を踏まえて柔軟な活動をしていただくということを目的としております。

 この推進活動なのですけれども、2010年のときに結成しましたジェンダー・ワーキングチームのメンバーだった女性の幹部社員の方々が、ワーキングチーム解散後にそれぞれの部門に戻って女性フォーラムを実施したことが始まりで、その後、男性もメンバーに加わり活動が発展していったということになります。やはりこういった部門の活動は、対話ですとか交流、そういったことが多い取組になります。そのほか妊娠時の女性に対するマネジメントの指針ですとか、そういったものも作っております。

 下の3つの写真は、昨年11月に実施したダイバーシティフォーラムというものの模様になります。各部門のダイバーシティの活動を共有しまして、経営層を含めて新たにコミットする場となったということです。

 一連の取組の成果として最後に少しまとめております。女性の管理職への昇格やマネジャーの登用が進んできました。そして、20代、30代の女性が多い営業職において女性のマネジャーが誕生したというのがあります。20代、30代の方がなったというのではなくて、今までいた方がマネジャーになったということはあるのですけれども、モデルができたことはよかったかなと思っております。

 また、営業職において結婚による退職が少なくなり、育児しながら就業継続する女性が増えてきたということがあります。一昔前は男性ばかりの環境で、その中で女性MRは結婚したら続けられない仕事だと思う人がほとんどだったのですけれども、今はだいぶ意識が変わってきたかなというところです。このほか社内認知度ですとか男性の参画が増えたということも感じております。

 以上、取組の成果をもって御説明は終わりということになるのですけれども、まだいろいろとなすべき課題はあり、すべてが解決されたわけではないといったところがありますので、引き続き取組が必要と日々感じているところです。

簡単ですが、これで御紹介ということで終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

 

○武石コーディネーター 野原様、ありがとうございます。先ほどの大和証券さんもそうなのですが、ビジネス環境が変化していて、これまでのビジネスモデルが相当変化している。その中で、女性だけではないと思うのですが、多様な人材をむしろ活用することが企業にとって非常に重要だという強い認識のもとに取り組まれているという印象を受けました。

 中外さんの場合は、人事評価制度、育成のところもかなりシステム的に踏み込んだ取組をされているというのが大変印象的です。また、女性MRの問題です。製薬業界のMRの方について、私もデータを見たことがあるのですが、女性はほとんどが20代で、30代以上がほとんどいないという状況でした。しかし、近年になって非常に女性が増えているということで、女性営業職について、営業のやり方なども変えながら活躍推進を進められているということでした。ありがとうございました。

 それでは、3つ目の事例ということで日産自動車株式会社ダイバーシティディベロップメントオフィス室長、小林様、よろしくお願いします。

 

○小林氏 こんにちは。日産自動車の小林と申します。

 本日はお招きいただきありがとうございます。先ほどおっしゃっていましたけれども、ダイバーシティはこれで終わりというところはなかなかないと思いますので、弊社もまだ課題は山積みなのです。けれども、これまで取り組んできた内容を含めて簡単に御紹介させていただければと思います。

 会社概要をつけるのを忘れてしまったので簡単に申し上げますと、弊社は連結だと14万人、単独で2万3,000人おります。しかしながら、自動車メーカーですのでほとんどが男性社会といいますか、ものづくりのところでして、女性は8%しかおりませんし、間接部門だけをとりましても13%という、まだまだ女性がマイノリティの企業になっております。

 そんな中で私たちがダイバーシティを進めるにあたったきっかけというのは、1999年に弊社が傾きかけた時にフランスのルノー社とアライアンスを結びまして、そこからダイバーシティの活動が推進されてきております。もう15年前の話なのですけれども、いわゆるベタな日本企業だった日産自動車がほとんどヒト・モノ・カネをすべてフランスの役員に握られた形になって、仕事のやり方も全部変わるという時代だったので、本当に日産にとっては大きなカルチャーショックだったわけでございます。その時に日本とフランスの文化の違いみたいなことが痛いほど、もう上の経営層だけではなくて一般の方々も含めてとても感じるものでした。私も実際にまだ課長にはなっていかなったのですけれども、いきなり37歳のフランス人の部長がやってきて、それまで50歳ぐらいの部長さんが当たり前だったと思うのですけれども、もう本当に驚くほどの仕事のやり方の違い、またやはり37歳にいろいろ言われてしまう40代以降の男性の管理職の方々を目の前にして、本当に違う中で生きていくところを学んだ、私たちの会社の一番の腹落ちはこのカルチャーショックだったのではないかと思っております。

 カルロス・ゴーンがルノーやミシュランなどで経験した後に弊社に来ましたが、なんで日産は出てくる人、出てくる人、男性で、しかも同じような背広の色、同じような髪形、同じような年齢で、おかしいではないかと。これだけ男女世の中にいるのになんで女性がこんなにいないのかと単純に疑問に思い、やはり女性が経営層にかかわらないのはおかしい、という普通のマインドからスタートしています。

 そういうことでダイバーシティが大事だということが会社として方針が出て、特に多様化したお客様のニーズにきちんと応えた商品とサービスを生み出すということを目標に、ダイバーシティを私たちは推進するのだということで進めてきております。

 特に、日本だけではなくグローバルで生き残るためには、やはり強い者でも知的な人が残るわけではなくて、変化に耐え得る、変化に順応にスピーディに対応できる力を身につける必要があり、会社の中で取り組んでいます。

 その中で、アライアンスから5年後にダイバーシティディベロップメントオフィスという私が今見ている部署が立ち上がったのが2004年、ちょうど10年前になります。クロスファンクショナルチームという部門横断の取組活動がありまして、その中で、「ダイバーシティ」というチームができ、話し合った結果、“推進していくためには専門組織が要る”という役員へ提言を受けて設置されております。ダイバーシティオフィスというのは人事部には入っておりませんで外におります。今は人事の役員が見ておりますけれども、設立当初は社長直下におりまして、直接提言できるような形になっておりました。浸透してきたところで人事部の役員が一緒に見る形になっておりますが、部門としては完全にセパレートになっています。

 これのメリットは、既存の組織にというか、既存の制度にとらわれずにブレークスルーのアイデアを出せるという強みと、もう1つは全社員が人事に言うのは抵抗があるのだけれども、ダイバーシティオフィスにだったら言えるということがかなりあるようで、例えば長時間労働にしても両立支援で傷つくようなことを言われたとか生々しい意見が集まってくることです。

 ダイバーシティディベロップメントオフィスは、現在7名。管理職が3名、私のほかにキャリアアドバイザー兼マネジャーが2名、担当が4名おります。担当は設立当初10年前から公募です。会社を変えたい人が手を挙げてくるという制度になっていまして、生産部門だったり開発部門だったり、男性が大体半分ぐらい、今も2名いますけれども、そういった方々が入ってきてくださって、いろんなアイデアを出して会社を変えようと進めております。

 管理職の私たち3名も人事の中のローテーションには入っておりません。私も23年間ずっと海外営業におりまして、ついこの間まで中南米の営業などをしていたのですけれども、様々なバックグランドを持った方々の集まりでダイバーシティオフィスができております。

 活動は7人だけで推進できるわけではないので、各部門の方々に推進はしていただいておりますが、一番大きなパワーとなっているのはダイバーシティステアリングコミッティという青いところの枠に囲ったコミッティになっています。これは年に3回行っておりまして、議長はゴーンか志賀がやっております。つい先週の金曜日も終わったばかりなのですけれども、ここに各部門の役員に必ず入ってきていただいております。副社長レベルが出られている部門もありますし、執行役員ベースに落とされている部門もあります。国籍にしたら何カ国ものメンバーで、これプラス、ゴーンと志賀ということで15名体制で行っておりまして、ダイバーシティのいろんな課題、長時間労働をどうするか、在宅をどうするかという課題から、女性の登用など、全てPDCAを回すために、このコミッティを使って部門に落としていただいています。

 女性の活躍推進にあたって私たちがやっていることを少し御紹介させていただきますと、キャリアサポートという意味では、これはすべて女性だけに特化した活動になっておりますが、先ほど申し上げたキャリアアドバイザーという2名のものが課長一歩手前、二歩手前の女性に対してキャリア面談を行います。

 その下のキャリア開発会議というのが私たちの会社の一番の特色だと思うのですけれども、とても地味な活動をしております。三角の右下にあるポテンシャルウィメンというのは、課長さん候補です。課長一歩手前、二歩手前の女性なのですけれども、彼女が知らないところで四者会議をしております。これはその女性の直属のマネジャーとその部の部長さんと、さらに人事。私たちの場合会社が大きいので、部門人事といって、生産だったら生産の中に生産の人事があるということで、本社の人事ではなくてここの所属している部門の人事が1人と、あと私たちのダイバーシティディベロップメントオフィスから1人ということで、4名でこの1人の女性に対して30分間育成について話し合う時間を年に2回持っています。

 男性も全員行う個人面談は本人とマネジャーがやるのです。本人とマネジャーさんというのは年に4回ぐらいやりまして、1回1時間やるのですけれども、業績の確認が30分、残りは30分キャリアの話し合いを男性も同じように上司とやっておりますが、それとは別の女性用の育成シートをここは作っております。その育成シートに、今の彼女の強みはこれで弱みはこれで、この1年、これから3年間どういうことをさせていきます、アサイメントをこういうふうにします、そういうチャンスを与えますみたいなことをここで上司に書いていただいて、春に書いていただいたことを秋にもう一回確認させていただいて、そこで本当に昇格が予定どおりのものにいきそうかどうかというのも確認しております。

 これを80人ぐらい2人のマネジャーでやっておりますが、これは何がいいかというと、本人のために本当に真剣に育成を考えるだけではなくて、マネジャーさんが本気で育成を考えていただくためには必要だと考えてやっています。女性の推進は大事だよねと総論オーケーと言っていても、実際に腹落ちして実施していくのには工夫が必要です。真剣度合が増しますので、マネジャーのインボルブメントのためにも有効だと思っております。

 あと右上の女性従業員向け研修というのは、課長一歩手前、二歩手前の方々に女性のためだけにやっている研修でして、主にマネジメントとかコーチング力とか、特に女性が弱いと言われているコミュニケーション能力ですね。女性は言われた仕事をきちんとこなす、自分の与えられた仕事をちゃんとやるというのは全然できるのですけれども、他部門を巻き込んでとか、プロジェクトの一緒の人を巻き込んでこちらの目標に向かってやるという推進力みたいなのが弱いのではないかと思っているので、女性に弱いところの研修を受けさせております。

ロールモデルの紹介は、いろんな部門の方々をこういうところで紹介しております。こういうモデルになりなさい、Aさんになりなさい、Bさんになりなさい、あなたはどちらを選びますかというためにロールモデルを見せているのではなくて、いいところ取りをしてくださいという言い方をしています。あんなふうに私はなれない、こんなふうにはなれないというロールモデル探しをするのではなくて、自分でロールモデルをつくっていくために、この人のここは盗んでみよう、この人のこれを取り入れてみようということのためにこのロールモデルは活かしてくださいと言っています。

 エグゼクティブ候補になるような女性に関してはグローバルに育成をしておりまして、全社、これは今アメリカ、ヨーロッパ、日本しか書いていないのですけれども、インドとかブラジルとかいろんなところも含めて役員候補になっている女性に関しては一緒に見ております。

 次に環境づくりのところをお伝えしますと、左上が本人自身のこと、右上はその上司のこと、あと会社のインフラのハードとソフトということをやっております。最近始めたのは、左側の産休前にプレママセミナーというのをやるようにしたというのが違いで、これは育休に入る前にきちんともう一度自分のキャリアプランをリバイスしてもらうようなことをしております。

 右側の上司に関しましては、先ほど大和証券さんもおっしゃっていたのですけれども、育児休暇とかが昇格に影響しないように、育児休職前の昇格試験ガイドというのを設けております。 あと、特色的なのは託児所を3カ所つくっております。 

今年の1月から全従業員向けの在宅勤務というのを拡大しております。それまでは月に1回は誰でも実行できるものがあったのですけれども、月5回もしくは40時間までに拡大適用しました。

 あと最後に、ダイバーシティの推進はビジネスに生かすからやるのだと言い続けておりますので、ビジネスへの影響について御紹介いたします。

例えば、チョコレート色の「マーチ」です。男性社員にはすごく不評で、あんなコーヒーをこぼしたようなものは絶対売れないと言われたのですけれども、意外と女性の意見でやってみたら売れたのです。

 「ノート」の“大きく開く後部ドア”は、85度後部座席のドアが開くというのは今までなくて、赤ちゃんを抱いたままチャイルドシートに容易に乗せられます。アラウンドビューモニターは、上から車がどういうふうに止められるかというのが見られるものなのですけれども、これはもともと「セレナ」などのバンには搭載していたものです。大きい車だったら必要というのはもちろんわかっていたのですけれども、コストが張るということもあって、小さい車に搭載することは当初は考えられませんでした。女性は小さい車でも駐車は不安ですし、そういう配慮を小さい車にも取り入れています。今だと「ノート」だけではなくて「デイズ」という三菱さんと一緒に開発している軽にもアラウンドビューモニターを搭載しており、女性のお客様獲得に活かされております。

 生産のところは本当に工場なのですけれども、エルゴノミクスの向上ということで、女性の視点で高いものとか重たいものを削減することで、男性にもお年をめした方にも優しい職場づくりを推進しております。販売に関しても、ディーラーの販売員さん、あとサービス入庫されたときもやはり女性のほうが対応がよいということもあり、今力を入れております。

 このような活動をダイバーシティスペアリングコミッティで推進しております。2004年に1.6%だった女性管理職が現在7.1%となっております。 ちなみに製造メーカーさんの平均というのは今2.9%ですし、自動車業界7社平均も2%程度です。製造業なりの難しさは多々あるものの一生懸命取り組んでおります。

私のプレゼンは以上になります。ありがとうございました。(拍手)

 

○武石コーディネーター ありがとうございます。日産自動車は本当に網羅的な取組をされ、女性の昇進へのパイプラインをつくって、丁寧な丁寧な育成をされているという印象なのですけれども、やはりゴーン氏がCEOでいらしたというのは大変大きかったのだというお話でした。

 昨年、別の会合で日産のお話をしていただいた時に、うちにもゴーンさんがいてくれたらという方が何人もいらしたので、トップのリーダーシップが重要なのだとあらためてと思います。また、後半の取組の御紹介、ありがとうございました。

時間もあまりないので、ここから少し私のほうから御質問させていただいて、それぞれの取組についてお話をいただきたいと思います。

 たくさんお聞きしたいことはあるのですが、今日は多分人事の皆さんが大勢見えていると思います。女性の活躍推進とかダイバーシティがなぜ必要かというところも重要なのですが、経営者が進める、あるいは人事で進めようとしたときに、現場に落としていくところで現場との温度差があって、取組がそこでストップしてしまう、あるいは反発のようなものがあるというのをよく聞きます。今日おいでの皆様の会社で、制度なり取組をされる中で、現場からのいろいろな課題とか、それはうちでは無理というような意見が出てくると思うのですが、そのあたり、どういうふうに対応されてきたか、あるいは現在も課題なのかもしれないのですが、そのあたりで少しお話をいただければと思います。今の順番で板屋様からよろしいでしょうか。

 

○板屋氏 女性活躍支援に限らず、新しいことを始める時には、現場からの反発はあると思います。なぜかというと、現場のマネジメントの人たちはそれまでの方法で成功してきているので、それと違うことを、多少の変更であればまだしも、大きなことを変えようとすると最初は反発があるのも当然と思っています。女性活躍支援も先ほど説明させていただいたように、10年間取り組んできて振り返ってみた時に思うことは、3つあります。

 1つは、経営課題として取り組むことだと思っています。企業は人材で成り立っていますので、人材活用の観点から、経営課題として継続的に取り組むことだと思っています。女性活躍支援は一朝一夕ではできないと思いますが、例えば、女性管理職を30%にすると言っても、過去に採用していなければいきなり30%になるわけはありません。ただ、何もしなければ5年後も10年後も20年後も決して変わりませんので、継続的に取り組むことが大切だと思っています。

 もう1つは、ここにいらっしゃる方は、人事部門の方が多いと思いますが、人事制度や、その運用の中にしっかり落とし込んでいくことが重要だと思っています。いきなり全体に入れるのは現実的には難しいと思いますが、弊社も毎年少しずつ見直し続けてきており、結果的に人事制度の様々なところにそういう考え方が入っていると考えています。少しずつでも良いので、とにかく継続してやることだと思っています。

 最後の1つは、これがおそらく一番大事だろうと考えていますが、メッセージとして、社員に常に発信していくことです。会社として取り組んでいるのだということをずっと言い続ける。できればトップの方や人事担当役員の方から、常に言っていただく。最初のうちは多少抵抗があっても、10年言い続けていればそれが普通になります。

 

○武石コーディネーター 10年言い続けて、どこら辺で何となく変わってきたなというのがありますか。

 

○板屋氏 平成17年に最初に始めた頃は、この取組が続くと考えている人は少なかったと思います。弊社の場合、色々な制度を少しずつ変えていき、2~3年ぐらい経った頃からだんだん変わっていきました。特に新入社員が入ってくると、毎年その時期にメッセージを伝えますし、新入社員を教える人たちや現場の所属長にも言い続けていると、そういう考え方の中で育っている社員はかなりの数になってきます。また、様々な研修でのトップのメッセージの中にもそういう話を必ず入れていくことで、考え方が浸透してくると思います。

 

○武石コーディネーター ぶれないで続けるということですね。ありがとうございます。

 では、中外製薬の野原さん、いかがでしょうか。

 

○野原氏 今、お話をお聞きしていて、弊社はこういったことをダイバーシティということで取り上げてまだ5年なので、あと最低5年は言い続けなければいけないのかなと思いました。弊社も2015年の目指す姿というものを置いておりますので、社員の中には、「2015年の後はもういいのだよね」というような意見というか、そういった発言もよく聞かれますけれども、こういったものが根づくのには本当に時間がかかるというのを実感しております。制度などを入れても、それが本当に魂の入った運用ができるといったところになるまでは時間がかかるかと思いますので、これを本当にやり続けて言い続けるというのが大事であると考えます。また、トップからのそういうメッセージをことあるごとに紹介していくというのも我々の役割かなと思っております。

 また、トップにそういった考えがあるのだということを、社員は非常にわかっていると思うのですけれども、自分のすぐ上にいる上司は果たしてどう思っているのだろうということに結構疑問というか疑念を抱いている社員も多いのかなといったところがあります。そういったこともありまして、今年、上司に向けてダイバーシティマネジメント研修というのを実施したのですけれども、ダイバーシティとは何なのか、そういったものがなぜ必要なのか、多様な人を活かすにはどういったマネジメントが必要なのかというのを考えてもらいまして、それを職場に戻ってあなたの口から自分のメンバーの人たちに話してください、という宿題をお願いしたところです。現在、各職場で上司から何らかの話がされているかなと思います。ディスカッション、対話をしてください、ということなのですけれども、そういった中で上司が口に出すことで会社としての考えを示していくということが必要かなと思います。まだ結果は出ていないのですけれども、期待をしているところです。

 

○武石コーディネーター その上司の研修というのは全員強制参加のような形ですか。

 

○野原氏 必須参加です。

 

○武石コーディネーター 課長職以上ですか。

 

○野原氏 部下を持つマネジャーが全員参加ということになります。

 

○武石コーディネーター それは1回、全員集まってやるのでしょうか。

 

○野原氏 本人は1回なのですけれども、全国を回りながらやります。

 

○武石コーディネーター 今年から始めるのですね。

 

○野原氏 はい。今年から始めて、来年も実施してきたいと思っています。

 

○武石コーディネーター ありがとうございます。

 それでは、小林さん、日産自動車の取組はいかがでしょうか。

 

○小林氏 私たちもトップが言い続けるというのはベースとしてありまして、たまたまゴーンと志賀が10年間変わらなかったというのも良かったのだと思うのです。また、あの2人はやらされ感なく、別に女性に限らず障害を持った方でも皆さんそういう違いを持って仕事をするのは普通でしょうという方々です。

先ほど申し上げたように弊社はものづくりの従業員が多くて、生産、開発担当がほとんどを占めておりますので、ロジカルに説明しないとダイバーシティを推進していけないのです。男女の脳の違い、行動の違いというのと、ダイバーシティは本当にやると効率的になるわけではないというUCLAの結果とかを出して、やるのは本当は非効率なのだけれども、うまくマネジメントするとすごくイノベイティブなアイデアが出せるということ、だからそこをマネジメントする力は身につけてくださいというトレーニングをやっています。

 

○武石コーディネーター 具体的に、そのトレーニングは例えばどういうやり方をするのでしょうか。

 

○小林氏 今、新任課長には全員やっていますが、ダイバーシティだけを、それも女性の男女の違いだけを丸一日やっています。最初は外注していたのですけれども、今は内製のインストラクターがやっています。また、冒頭、私がダイバーシティはなぜ要るのかとか、最近の日本の動きとかを1時間ぐらい説明した後、直接対話して実際皆さんがどういうことに困っているかというのも聞いたりしています。

 

○武石コーディネーター ありがとうございます。

 今、各社さんからマネジャーの重要性ということでの取組のお話がありました。今日のテーマは、ライフイベントと女性の活躍ということなのですけれども、もう一方の女性側に対して、これまでのお話の中でもキャリア支援とかメンターとかいろんな取組があるのですが、特に女性に対する働きかけとか、特にライフイベントを経験している育児中の女性とか、そのあたりでの課題なり取組なりということで少しお話をお伺いできればと思うのです。すみません、時間が押しておりますので、簡単にポイントを教えていただければと思います。

 いつも順番が板屋さんからで申し訳ないのですがお願いします。

 

○板屋氏 両立支援ですか。

 

○武石コーディネーター 女性がモチベーション高く働くとか、そういう方たちへの活躍支援の取組とか、女性側への働きかけというところです。

 

○板屋氏 弊社も試行錯誤で行っていますが、制度を導入することとあわせて、何のために導入するのかということをよく理解してもらうことと、先ほども申し上げましたが、会社で仕事をしっかりしてもらうために、制度を充実させているということをよく伝えています。また、実際に両立支援制度を利用しながら仕事を頑張っている社員のロールモデルを次々につくり、その姿をそのまま全社員に紹介していくということです。特に、一部の部署等だけでしか制度が使えないという誤解を招かないように、幅広い社員を紹介するように心がけています。それによって、実際に制度を使えること、使いながら頑張ってそのまま働き続けることができるということを、ライフイベントを迎える社員だけでなく、将来的にライフイベントを迎える社員にも早めに理解してもらうようにしています。

 

○武石コーディネーター 女性全体に対する働きかけ、たとえばセミナーとか、そういうものはどうなのでしょうか。

 

○板屋氏 弊社も他の会社を見ながら、良いと思ったことは検討する、ということを常に行っています。女性のキャリア研修をちょうど今週から始めましたが、これも数ヶ月前に他社から聞いた話がきっかけです。自分たちでは様々な制度を進めてきていると思っていましたが、他社の方の話を聞いて、改めてこれもやってみようということで始めました。女性だけ集めて研修するというのは、本人たちにとって抵抗があるのではないかと思いましたが、実際に様子を見てきたところ、支店や部署が違う社員が集まっていろいろ話す機会というのは彼女たちにとってもすごく刺激になりますし、それを見ている我々にとっても、もっと様々なことを行っていく必要があるのでは、もっとできることはあるのでは、と思っていた以上に感じました。

 

○武石コーディネーター ありがとうございます。

 では、野原様、女性への働きかけということでいかがでしょうか。

 

○野原氏 2012年ぐらいまでに女性フォーラムというのをやったのですけれども、その中で女性がそれぞれ3人ぐらいずつ自分のキャリアですとか働き方について語ってもらうというコーナーがありました。マネジャー・リーダーとしてばりばり働いている人や、育児と両立しながら着実にキャリアを伸ばしているという人もいます。そういう等身大のモデル、御本人たちはモデルと言われるのは非常に嫌がるかなと思うのですけれども、こうして頑張っている人たちがこんなにいるのだよというものを出していくということで、少しの力を皆さんに持ってもらったかなと感じております。

 また、ランチ交流会では、育児を両立している人たちの中には、例えば時短制度を使わないでやっている方々もいるということを御紹介するとか、あとは、社内のイントラネットなどでも紹介したりしております。

 あとは動画ですね。復職を支援するのに向けて、働き方を真剣に考えないとキャリアですとかいろいろなところに影響しますよというような動画をつくり、それを産休に入る前に御本人に見てもらっています。また、上司の方にも上司向けの動画を見てもらって啓発に努めています。

 

○武石コーディネーター 営業職、MRの方たち、この方たちはまだ年齢が上の方は少ないと思うのですが、そういう方たちへの対応というのはどういうふうにされているのでしょうか。

 

○野原氏 2010年にまず女性MRを一堂に集めてフォーラムというのをやりまして、その中でいろいろな力を発揮している女性の人たちに語ってもらいました。また、結婚でやめる方が多かったので、結婚時同居サポートプランというものを入れたりしながら、11支店ある支店内でもそういう会を持っていただき、女性の働き続ける環境ですとか意識などに対して自主的な活動に持っていく、そんなことをやりながら支援しております。

 

○武石コーディネーター ありがとうございます。

 それでは、小林様、いかがでしょう。

 

○小林氏 弊社の場合は、女性が8%しかいないと言ったのですけれども、1,900人ぐらいなのです。そのうちワーキングマザーは600人近いのです。基本的に育児とかを理由にやめている人はおらず、復職率99.9%ぐらいです。 ただ、女性が管理職になるかというと、最近多く聞かれるのは、“本人がなりたがらない”。本人が躊躇するというのが一番あって、そのときに私たちが言っているのは、男性というのはポストでキャリアを描ける方々なのですが女性は違うということです。 

女性の場合はこの仕事がやりたいとなったときに、たまたまそこに役職がついていたらお受けしますというような感じなのです。だから、管理職になりたくないわけではなくて、その仕事をやるために必要なのだったら課長さんやりますよということなのですよ、という違いを上司のほうにも伝えます。なので、チャレンジしたい気持ちというのは持っている可能性も高いので、勝手に今子供が小さいから無理だろうとか、そういうことは絶対に思わないで、慮ってオファーしないとかというのは絶対やめてくださいということを口を酸っぱくして言っています。

 実際に私も子供を連れて海外赴任をしているのですけれども、私の後にも10人ぐらい子供を連れて行っている人がいますし、海外赴任も毎年30人ぐらい女性を送っていますので、やれないということはないということがだんだんわかってもらえるようになってきました。女性たちには、きちんと自己表現をして、やりたいときはやりたいと、素直にポジティブに言ってください、ということを女性にも言っています。

 

○武石コーディネーター ありがとうございます。上司も過剰な配慮をし過ぎてしまって、女性側のほうも例えば育児をしているとあまりいろんなことをやるやるとも言う自信が持てないという、両方配慮し過ぎてしまっているというのを感じます。

 ここで、会場の皆様のから御質問をいただきます。パネリストの皆さんに御質問のある方がいらっしゃれば挙手をお願いしたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。せっかくの機会です。

 

○質問者 (業種:電気機器)今日はお話ありがとうございました。

 お三方に伺いたいのですけれども、当社では女性の活躍推進についてプロジェクトで行っておりまして、皆様、当社と同じような形で専任組織というものをつくっていないですし、まだそれは計画がないのですけれども、専任組織があって進めるのと、人事部の中、あるいは人事の近いところで兼務をしながらやるのとで結果に違いが出てくると感じていらっしゃるかどうか、アドバイスを含めてお願いいたします。

 

○武石コーディネーター では、板屋さんからお願いします。

 

○板屋氏 弊社は、最初は人事部の横にワーク・ライフ・バランス推進室を設置して始めましたが、メンバーは専任が2人、それ以外は人事部と兼任していました。様々な制度を考える上で一緒に行っていたほうが良いということで、こうした形をとっていました。会社の中で浸透し始めた後に、人事部の中にワーク・ライフ・バランス推進課という形にしています。

 一長一短あると思いますが、兼任者を選ぶ際に、多くの組織、人事部の中でも制度等の企画を担当している人、異動や評価を担当している人、採用や研修に携わっている人など、様々なところから集めるようにしています。様々な仕事をしている社員を巻き込んで取組を進めていけるように、こうした体制をとっています。

 

○武石コーディネーター ありがとうございます。

 では、野原さん。

 

○野原氏 弊社も人事部の中にダイバーシティ推進室というのがあるのですけれども、やはり発想としては制度ですとかそういったところから着手したので多分人事部の中に置いたのだと思います。ただ、やはり人事部の中に置いた強みということで、制度ですとかそういったところがうまく導入できるのかなと思うのですけれども、女性の活躍といったものをもっとビジネスの面で発揮していかなくてはいけないといったところについては、どうも人事的な課題というものとは少し違うものになります。そこで、もう少し弾みをつけるには人事の外にあったほうがいいのかなと思っているのですけれども、幸いなことに弊社の各部門でそれぞれダイバーシティを推進するチームがありますので、そういったところの協力ですとか一緒にやりながらビジネスの中に落とし込んでいくというのをやりたいなと思っています。 以上です。

 

○武石コーディネーター ありがとうございます。

 小林さん、先程もお話がありましたが、どういうふうにお考えですか。

 

○小林氏 私は人事の外にあってよかったなと思っています。もう一つ思うのは、工場のところの技能員の採用は進んでいるのですけれども、定着がなかなかされなくていないのが課題です。ライフイベント、夜勤、そういった対応もしていかなくてはなりません。現在は製造部門の人事が兼任で担当していますが、専任組織を持って推進が必要と思っています。

 

○武石コーディネーター ありがとうございます。

 多分ほかにも御質問があると思うのですけれども、定刻を過ぎておりますので、本当に申し訳ないのですが質問のほうを以上にさせていただきます。

 3人のパネリストの皆様、大変貴重なお話をいただき、ありがとうございます。大和証券のように事務部門が中心のところと、日産自動車のように工場部門が非常に大きな組織になっているところ、それぞれの状況に応じて取組が違っています。先ほどもロールモデルというお話がありましたが、多分パーツモデルで、この会社さんのこれを使わせてもらおうかなということでご参考にされてください。その前に自社の取組の現状とか課題を分析していただいて、その上でお取組できそうなところ、あるいは有効そうなところをぜひ皆様の会社でカスタマイズをして取り組んでいただけると、今日のこのシンポジウムは有益なものになるのではないかなと思います。

 本当に三社の皆さん、ありがとうございました。拍手でお礼を申し上げたいと思います。(拍手)

 では、以上でパネルディスカッションを終了させていただきます。皆様、ありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省 雇用均等・児童家庭局
雇用均等政策課
〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2

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