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2012年11月20日 第67回労働政策審議会安全衛生分科会

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成24年11月20日(火)17:00~19:00


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館9階)


○出席者

委員:五十音順、敬称略

相澤好治、明石祐二、犬飼米男、小野真理子、小畑明、新谷信幸、瀬戸実、角田透、中村聡子、半沢美幸、三浦武男、三柴丈典、山口氏(春山委員代理)

事務局

宮野甚一 (安全衛生部長)
井内雅明 (計画課長)
半田有通 (安全課長)
椎葉茂樹 (労働衛生課長)
奈良篤 (化学物質対策課長)
木口昌子 (調査官)

○議題

(1)第12次労働災害防止計画の骨子案について(その5)
(2)その他

○議事

○分科会長 皆さん、こんばんは。
 それでは、大変遅い時間からで恐縮でございますけれども、第67回「労働政策審議会安全衛生分科会」を開催いたします。
 本日は、公益代表委員では、浅井委員、日下部委員、土橋委員。労働者代表委員では、縄野委員、辻委員、勝野委員。使用者代表委員では、高橋委員、大山委員、春山委員が欠席されておりまして、春山委員の代理といたしまして、日本化学工業会環境安全部長の山口様が参加されております。よろしくお願いします。
 労働者代表委員の犬飼委員が10~15分くらい遅れるという連絡が入っております。
 また、公益代表委員の角田委員が1時間ほどで御退席されるということでございます。よろしくお願いします。
 まず、議事に入る前に、宮野部長から発言を求められておりますので、よろしくお願いいたします。
○宮野安全衛生部長 それでは、議事に入ります前に、1点御報告を申し上げたいと思います。
 御案内のとおり、先週16日で衆議院が解散となりました。これによりまして、国会に提出をしておりました労働安全衛生法の一部改正法案でございますけれども、これは解散となりますと国会にあります全ての法案は廃案となります。解散の場合には継続審議という仕組みはございませんので、したがいまして、誠に残念ではございますけれども、労働安全衛生法の一部改正法案につきましても、廃案という事態に至ったということでございます。
 そして、今後それではどうするのかという点でございます。これにつきましては、もちろん選挙の後、新しい政権におきます御判断をいただく必要もございますし、その他さまざま不透明な要素ももちろんございますけれども、一方でこの分科会、審議会におきまして、この労働安全衛生法の改正法案については御建議をいただいて、それに基づいて法案を作成したということ。そして、法案を作成するに至った必要性につきましては、基本的には現時点においても変更はないと私どもも考えております。
したがいまして、今、申しましたとおり、いろいろ不透明な要素がございますけれども、私どもとしては、この法案については再提出という方向で検討していきたいと考えておりますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。
なお、今、御議論をいただいております12次防の内容でありますけれども、これにつきましても従前から申し上げているとおり、この法案の行方によりまして、やはり書きぶりが大きく変わってくる部分がございます。現時点においては、今、申し上げたような状況でありますので、法案の成立を前提にした書き方は少なくとも難しいであろうと考えておりまして、この12次防の書きぶり、内容につきましては、法案の成立を前提としない内容で書かざるを得ないと考えております。これにつきましては、文書そのものについては、修正をさせていただきたいと考えております。
とりあえず、以上でございます。
○分科会長 ありがとうございました。
 それでは、議事に移らせていただきます。本日の議題は「第12次労働災害防止計画の骨子案について(その5)」になります。審議は3つに分けて行いたいと思います。
1点目は、目標設定の修正案でございます。
2点目は、小売業と陸運業からのヒアリングを踏まえまして、骨子案の5の(1)に関して修正案が示されておりますので、その修正案について審議をお願い申し上げます。
 3点目は、前回の分科会で骨子案、修正案の審議が5の(1)までで終わっておりますので、その続きといたしまして、いまだ審議をしておりません(2)~(5)までの審議をお願いしたいと思っております。
 それでは、まず、目標設定の修正案について、事務局から説明をお願いいたします。
○木口調査官 それでは、資料1に基づきまして、説明させていただきます。
今回、再修正する目標として7点挙げてございますが、2ページ目から順次説明いたします。
2ページ目、死亡災害全体の目標でございます。死亡災害の目標につきましては、再修正案の時点で新成長戦略に基づいて計算いたしました平成32年の目標、これを平成29年に前倒しをして計算していくという形にしておりましたが、こちらを改めまして、目標の冒頭の「死亡災害の撲滅を目指して」という文言を入れました上で、目標値としては平成32年そのままにおいて5年間の削減率を計算するという形にいたしました。削減率は計算いたしまして13.6%となりますが、これを丸めまして、15%以上減少させるという目標値にしております。
3ページ目、休業4日以上の死傷災害の目標でございます。休業4日以上の死傷災害の目標は、考え方は前回と変わっておりませんが、災害統計の速報値が更新されましたので、前回16.8%減少となっておりましたのが、削減率16.2%と若干数値が改まっております。こちらも数値を丸めまして、15%という形を採用いたしまして、死傷者数の数を15%以上減少させるといった目標値にしております。
4ページ目、第三次産業の目標でございます。前回、第三次産業の目標ということで掲げておりましたが、第三次産業というくくりがあまりに大きいということで、もう少し細分化すべきではないかという御意見をいただきました。これを踏まえまして、今回の計画で重点といたします小売業、社会福祉施設、飲食店、この3つの業種につきまして、それぞれ目標値を設定するという形で計算をし直しております。
この3つの業種につきましては、雇用者数が増加傾向にあることも踏まえまして、過去10年間の雇用者数から平成32年にどれくらいの雇用者数になるかを推計いたしまして、この増加率を踏まえて、平成32年の目標値を若干修正いたしました上で、平成24年の推計値から直線を引いて5年間の削減率を求めるといった形をとっております。
小売業につきましては、このような計算をいたしますと、平成24年~29年の5年間で削減率19.7%という数字が出ますので、こちらを丸めまして20%以上減少させるという目標を置いております。
5ページ目、社会福祉施設でございます。社会福祉施設も同様の考え方をしまして、こちらはかなり雇用者数が増加傾向にございますが、同じく平成32年の目標値を補正いたしまして、平成24年~29年の5年間で6.9%、丸めまして7%以上の減少という数値を出しております。
飲食店につきましても同様の考え方でございまして、5年間で18.4%、これを丸めまして20%以上減少という目標値にしてございます。
6ページ目、陸上貨物運送事業でございます。こちらも同様の考え方でございまして、雇用者数の平成32年の推計値から目標値を補正いたしまして、5年間で7.0%の削減、7.7%以上を減少させるという目標を掲げております。
7ページ目、建設業の目標でございます。建設業と次の製造業につきましては、労働災害の死亡者数を指標にするということで前回説明いたしました。前回は建設業については300人以下、製造業については160人以下ということで、実数でもって目標値を挙げておりましたが、これにつきまして各実施主体で計画が立てやすいという意味もございまして、パーセンテージで減少目標を掲げるという方針に改めております。建設業につきましては、平成24年と29年の比較で計算しますと18.5%、これを丸めまして20%以上減少させるという数字を出しております。
8ページ目、製造業の目標でございます。製造業につきましても同様の考え方で計算をいたしますと、5年間で削減率4.6%。これを丸めまして、5%以上減少させるという数字になります。
9ページ目、腰痛予防対策の目標でございます。腰痛予防対策の目標につきましては、これまでの災害データをもとに、ほかの休業4日以上の災害などと同じように計算をして12.9%減少という形で出しておりましたが、今回、第三次産業の目標を細分化いたしまして、社会福祉施設に関する目標を新たに定めたということ。今回の計画で腰痛予防対策の大半が社会福祉施設での介護作業を念頭に置いた対策として打っていることもございますので、こちらにつきましては、社会福祉施設の労働災害による休業4日以上の死傷者数を7%以上減少させるという目標を再掲という形で、この腰痛予防対策の目標といたしたいと考えております。
最後に、再修正しない目標として5点挙げておりますが、このうちメンタルヘルス対策につきましては、冒頭部長から申し上げましたとおり、安衛法の状況もございますので、実施事項もあわせて次回、計画の本文案をお示しするときに改めてお示ししたいと考えております。
4点目の熱中症対策につきましては、平成25年~29年までの5年間の合計値でもって比較していくという指標にしておりますが、この合計値であることがわかりにくいという御指摘がございましたので「死傷者の数(各期間中(5年間)の合計値)」という形で追記をしております。
目標値に関しましては、以上です。
○分科会長 どうもありがとうございました。
 前回いろいろ御議論をいただきましたことを反映して、今回の修正案が出てまいりました。これについて御意見がございましたらお願いいたします。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 まず、冒頭に宮野部長から御報告のありました労働安全衛生法改正法案の廃案につきまして、この分科会での建議を踏まえて内閣提出法案として国会での御審議をお願いしていたわけでありますが、これが廃案となったことは、私どもとしても非常に残念でございます。改正法案に盛り込まれていたメンタルヘルス対策の強化や、受動喫煙防止対策、東日本大震災からの復興作業に関連する電動ファン付き呼吸用保護具の型式検定はいずれも非常に重要な内容となっております。国会再開後、どのような形で法案提出をするのかはわかりませんけれども、改正法案に盛り込まれた内容について、速やかに法案化して提出いただけるように、国会での対応をぜひお願いしたいということを冒頭に申し上げておきたいと思います。
 その上で、今ご説明いただいた目標設定に関して、まず目標値全体について申し上げます。今回は直近のデータを把握した上で、目標として数値を丸めるという作業もしていただいて、わかりやすさというのは確かに出てきたと思います。ただ、前回も申し上げましたように、ここで掲げる目標は国としての目標ではありますけれども、これを受けて各産業、各職場でこの目標に従って、各企業の労使がこの目標に向けて頑張ろうという数字でございますので、やはりわかりやすさをあわせ持つほうがいいのではないかと思います。
 その上で、前回も論議になりました死亡者数の扱いについては、今回はこれを丸めて削減率ということになっていますが、例えば7~8ページにあるような死亡者数の扱いについては、「20%以上削減させる」という記述の横に括弧して、「多くとも300人以下に抑える」といったようなわかりやすい目標も併記することによって、それで一歩でも二歩でも取り組みが進むのであれば、記載の検討をしていただきたいと思います。御懸念も確かにわかります。300人まで亡くなることを容認するのかということや、各地域に割り当てをしていった際、都道府県毎に人数の目標設定をしても意味がありませんので、そういった意味で具体的な実数値と削減率との組み合わせによって、わかりやすい取り組みの指標となるような工夫をもう一度考えていただければありがたいと思っておりますので、冒頭にそれをお願いしておきたいと思います。
 以上です。
○分科会長 ありがとうございます。
 実数と削減率ということで、いろいろと御意見が出ましたけれども、何かこれについてはいかがでしょうか。
 明石委員、どうぞ。
○明石委員 ここに12次防の目標値が新たに修正されておりますが、安衛法が廃案になったことを含めて再精査をさせていただきたいと思います。また、先ほど宮野部長がおっしゃられた法案に関してですが、その元となった建議を検討したのはもう2年前ですし、具体策を議論した検討会は3年前になりますので、今とは環境がかなり違っています。そこはきちんと精査をしなければならないと思います。
○分科会長 それでは、削減率に併記するようなことも考えていくような、必ずしも実数だけではないということでよろしいですかね。事務局はそういうことでいかがですか。
○木口調査官 それも含めまして、整理いたします。
○分科会長 ほかにはいかがでしょうか。
 犬飼委員、どうぞ。
○犬飼委員 今回、目標値の再修正案が示されたのですが、第65回の安全衛生分科会では修正案がまず出ていました。そのときには死亡災害の目標値は、新成長戦略の目標を前倒しで達成したいという大変積極的な取り組みになっていましたので、厚労省さんの意気込みというか、安全に対する大変強い思いがあるなと感じていました。しかし、今回の最終案では、ほかの目標と同じ時間軸になってしまっております。12次防は重篤な災害を防止するという観点を含むものでありますので、死亡という最悪の結果を避けるための対策について、新成長戦略の目標を前倒しで達成するという再修正前の目標に戻すべきではなかろうかと思っているのですが、その点についてはいかがでしょうか。
○分科会長 これはいかがでしょうか。ほかの委員から御意見あるいは事務局。これについては前にいろいろと御意見があって、今までどおり5年間の計画でいくということになったのですけれども、もう一回考えてみようということですね。ほかの委員から御意見はございますか。
○木口調査官 死亡災害の目標に関しましては、前回29年度に前倒しということで数字をお出ししておりますが、2ページにありますように前倒しをいたしますと24.2%ということで、これまでになく高い数字になるということで、確かに意気込みというよりも、この数字が実現可能性ということで、ちょっと高過ぎるのではないだろうかと事務局でも考えまして、修正案の中の冒頭に死亡災害の撲滅を目指してという、とにかく重篤な災害をなくしていくという考え方を残した上で修正させていただいたものでございますので、御理解をいただければと思います。
○分科会長 いかがでしょうか。実現可能ということで、15%以上減少するということです。
新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 この検討が始まったときに、12次防については具体的な数値で目標設定していくという方針の中で、しかもそれは前倒しで達成するのだということで論議が始まったと思います。当初、事務局がお考えになった意気込みは非常にすばらしいことだと思っていまして、労働の現場から災害を追放するのだという強い意気込みを感じてスタートしたはずなのに、ここにきて後退してしまったなと感じております。
 ですから、労働災害の撲滅に向けての当初の強い思いをずっと継続して、これを12次防の中にぜひ活かしてほしいことを、重ねて労働側の意見として申し上げておきたいと思います。
 以上です。
○分科会長 これについて、2ページですね。特に死亡災害の目標値設定についてはいかがでしょうか。御意見は特にございませんでしょうか。
 それでは、今の御意見を反映するというか、考えていただけますか。この目標については、きょう最終的に決めるということですか。
○木口調査官 一応ここで大まかな方針については道筋をいただいて、次回は本文に落としていくという形で進めさせていただければと思っております。
○分科会長 いかがでしょうか。どうぞ。
○小畑委員 私からは6ページの「陸上貨物運送事業の目標」について申し上げます。今回14.2%から7%以上と目標値が大幅に下方修正されているという点についてです。
先ほどの御説明によりますと、労働力調査における雇用者数の過去の伸び率から平成32年時点の雇用者数を推計しているということですが、このデータはタイトルからあるように、そもそも運輸業、郵便業という括りであり、郵便業が含んでいるということが一つ問題としてあります。また、運輸業そのものの内訳を見ても、これは陸上貨物だけではなく、鉄道業や雇用者数の多い旅客運送業も含まれています。このほか、水運業、航空業も含まれており、必ずしも陸上貨物の雇用者数を正確に反映しているとは言えないと思います。目標値の補正のために雇用者数を推計するのであれば、より正確なデータを使うべきだと思います。
ちなみに、国勢調査から道路貨物運送業の就業者数を見ると、平成17年は176.5万人。これが平成22年で163.6万人となっており、減少しております。今回の資料として出ている総務省の労働力調査でも、道路貨物運送業に絞った人数は175万人となっていますし、これは傾向で見ていくと直近3年間で横ばいです。しかも平成22年~23年にかけては減少しているので、恐らく平成32年にかけての雇用者数はむしろ減少傾向に転じるのではないかと思われます。こういった状況を勘案した上で目標値の補正をすべきではないかと思います。
以上です。
○分科会長 どうぞ。
○木口調査官 統計につきましては、過去10年間の数字を追うということで労働力調査から引っ張ってきたのですけれども、御指摘のありました道路貨物で単独でとるというものに関して、10年間のデータはかなり過去の分の数字が追えなかったことがございまして、それで運輸業、郵便業という大きなくくりで使ったということでございます。
 あとは国勢調査につきましては5年間に1回ということで、例えば5年前、10年前の2点なり3点で推計していいものか判断がつきませんでしたので、このときは毎年数字がとれます労働力調査の数字をとったということでございます。ただ、現状としてはほかのデータがかなり入っているという御指摘もございますので、どういったとり方がより適切かどうかは、また精査をしなければいけないかと思います。
○分科会長 小畑委員、どうぞ。
○小畑委員 先ほども述べましたように、労働力調査の330万人のうち、陸上貨物と思われる数字は約半分です。この数字からすると、達成すべき目標が半分以下になってしまうわけですから、これは適切ではないように思います。
もう一つは、産業の実態として、人が足りないけれども、募集してもなかなか集まらないという状況があり、これから先、平成32年に向かって急激に改善されるかどうかは分かりません。過去の積み上げで未来の予測を行うことはわかるのですが、実際には、恐らく予測のようには増えないだろうと思われます。それが現場の実態でありますので、現場の感覚からすると、雇用者数がおおよそ330万人の現在から今後371万人まで増加することが見込まれるため、目標としての削減率を14%から7%に変更するということについては、容易に首を縦に振ることはできないなという感想を持ちますので、よろしくお願いしたいと思います。
○分科会長 計画課長、どうぞ。
○井内計画課長 今の点と違うのですが、その前に御意見がありました死亡災害の目標についてです。今、労働側の委員お二人から御意見がありましたけれども、私どもはこれをまとめて、議論を収束していかなければいけないと思っています。
今、御意見があったポイントについて、公益委員の先生方あるいは使用者側の委員の方々はどのように考えておられるのか。私どもも、これは御意見が出たからそのとおりにやるのかどうかは、ほかのお立場の委員の方々の御意見も踏まえて考えたいと思っておりますので、御意見をぜひお聞かせいただければと思っております。
○分科会長 いかがでしょうか。
 角田委員、どうぞ。
○角田委員 目標値をどのように設定するかは、実際問題として大変な作業であると思います。過去の蓄積のデータから、例えば将来はどうなるかを推定計算する手法もございます。放っておいても、このようになっていくだろう、ということは推計学上可能なところとは思います。
皆様方の御存じの通り、何か有意な作用が働いて、結果として数値が変わったということを統計的な手法を用いて証明することができます。そうしますと、過去の資料からある程度の変動幅を考えまして、放っておいたときの変化を予測し、それが、これくらい変化すれば、何かが作用して放っておいた時の予測の幅を超えて有意に変わったのだ、と、言い換えれば、対策や事業を行って改善させることができた、ということを示すことも可能ではないかと思います。
ただ、ほかの実際のいろいろな目標値の設定について見てみますと、そのようなことをして決めたという確かな証拠があるようなものを私は見たことがございません。参考にできるものということになりますが、多分米国のヘルシーピープル2000というのが目標値を設定する最初の頃のことだったのかなという気がいたしますが、労働衛生の分野ではございません。
少なくともこうありたいという目標設定があれば、あるいは新成長戦略という国の大きな方針の中で何か目標をお決めになっているのであれば、それに沿うというのが、どちらかと言えば、日本全体から見ると、労働災害防止もそれに含まれることですから、それに従うというのもひとつの進め方ではないかと思います。お答えになっているかどうかはわかりませんが、コメントとして申し上げました。
○分科会長 ありがとうございます。
 ほかの先生方、御意見はいかがでしょうか。
○小野委員 目標についてどうするかについては、私も前回以降、考えてはおります。前回のところから新成長戦略ではなくというか、前倒しはしないという形で、この会でぱっと変わったところがあります。目標は現実的であることはもちろん大切ではありますが、一般的に考えまして、国民を守るということからすれば、目標は当初あったような形のほうが望ましいのかなという気はしております。
ただ、あくまでも統計的な計算から導いていくものですし、今後経済がどうなっていくのかがかなり不透明な状態であるところで、統計のとり方が極端に今2つに分かれている状態で、根拠をどこに持っていくかというところだと思います。
経団連さんから、もう一度、さらに見直しを行いたいというお話が先ほどございましたが、今の経済の状況からすると、ちょっと後退したところよりもさらに良くなることは、恐らくあまり考えにくいところがございます。ですから、そうなってくると、今ある目標のところまでが精一杯というお答えになってくるのかなという懸念はございます。
答えをどこに持っていくかというところですが、一般的に考えれば、厳しいほうがよい。ただ、実行性がなければ困るというところで、中間というわけにもいきませんが、私としては、現状のところで実行可能なところは最低限守る。雇用者数についてもあまり細かい1割くらいしか増えないところまで全部トレースしていく必要はないような気もいたしまして、明らかに社会福祉のように倍まで増えるところでしたら検討の余地はあるかと思いますが、細かい数字にこだわるよりは、今パーセントで表示をして15とか、そこで低いほうにそろえるのではなくて、丸めるときにその辺は上目でまとめていただいているところもあるとは思いますが、そういった形で中間という形になってしまうのですが、私としてはその辺が実行性のある最大限ということになるのではないかという印象がございます。
以上です。
○分科会長 どうもありがとうございました。
 公益委員の先生方お二人とも、ある程度その実行可能な数値を求めないと、あまりかけ離れてしまっても仕方がないのではないかという御意見がありましたし、恐らくこれはPDCAサイクルを回すためにある程度目標値が必要なわけです。これが最終目標ではもちろんないと思いますし、それ以下ということでございますので、今回提出された案について、一応御了承いただくということでいかがでしょうか。
 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 もう少し検討をお願いしたいというのが私どもの意見でございます。もう一点これに関連して、雇用者数の増加見込みが織り込まれたものが今回の案で示されましたが、これが本当に労働災害を減らすための目標としてふさわしいのかについて改めて提起を申し上げたいと思います。
 例えば、4ページの第三次産業の目標として、修正前は「休業4日以上の死傷者数を20.9%減少させる」と記載がありました。その前に示された目標が死傷者数を22.5%減少させるというものでした。この数値の違いは、直近の数値に入れ替えたことによるものでしたが、今回提起されているのは、第三次産業について、小売業と社会福祉施設と飲食店に分解をしたということです。そして、特に社会福祉施設については7%という数字が出てきて、この根拠が、5ページにあるように、雇用者数が増えるからということが理由です。
このときに考えなければならないのは、雇用者数が増加するという環境変化を考慮した上で労働災害を減少させるというマクロの目標と、既存の社会福祉施設の労働災害を減少させるというミクロの目標との間に乖離があるのではないか。つまり、この計画を見たときに、小売業が20%、飲食店が20%であるのに対して社会福祉施設が7%であるとしたときに、これが発するメッセージをどう受け取られるのかということです。計画の意図としては、社会福祉施設は雇用者数が増えているから、結果としてこの数字であればいいのだということであるとしても、受け取ったほうの個別の社会福祉施設は7%でいいのだと受け止めかねないということです。
ですから、確かに国全体としてマクロの視点からは、結果として社会福祉施設では労働災害を7%減らすというのはわかるのですが、ミクロの目標はもっと違うところにあるのではないか。要するにミクロの目標とマクロの目標を切り分ける必要があるのではないかというのが、わかりやすい目標という観点から言えるのではないでしょうか。ここも検討の余地があるのではないかと思いました。
もう一つ、これは重要なポイントです。5ページの介護職員の雇用者数が、平成22年度の133万4,000人に対して、平成32年度は倍近くの221万6,000人と推計しています。この221万6,000人という数字は一体どのような根拠で出てきたのか。先ほど公益委員の先生方がおっしゃったように、科学的な分析に基づくデータが基本的にあるのかどうか。何に基づいてこの数字を出したのか。たとえば産業連関表を回して、この分野の就業者数がこのくらい増えるから、こういう数字なのですという科学的なものがあるのかないのか、根拠を教えていただきたいです。
○木口調査官 推計値につきましては、連関表を回すようなところまではやっておりませんで、過去10年間のトレンドから線形近似をして32年に引っ張ったところで数字を推計値ということです。
○分科会長 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 これは公益委員の先生にお聞きしたいのですけれども、過去のトレンドから平成32年の221万6,000人を算出し、それに基づいて雇用者数の増加を見込んで7%と設定した、という点は非常に単純でわかりやすいのですが、これは科学的な目標設定と言えるかどうか、コメントがあれば、お聞かせいただきたとい思います。
○分科会長 いかがですか。
○角田委員 きちんと説明できるかどうかはちょっと自信がないのですが、もともとの対象となる集団の実数が増加基調の状況において、ある年限までに○○パーセントを減らそうというような場合、そのパーセントと実数と両方ともに意味が出てくるような気がいたします。対象集団の人数が大きく増加すれば、ちょっとしたパーセントの変化でも実数として大きくなります。労働災害の保険料率や損害等について計算するのでも、業種別にみるようなとき、対象集団の大小により、金額的な計算をしたときにちょっとした率でも大きな金額となったり、あるいは大きな人数になるということがあります。数字は少し注意深く見る必要があるとは思います。
 新谷委員の御指摘ですけれども、科学的な根拠とおっしゃいますが、いろいろな計算のベースがあって、それぞれに根拠があるのではないかと思います。実際には、そういうことが多いという印象を私は感じています。ですから、今は詳細にお聞きしておりませんが、それなりに計算の根拠はあったのではないかと思います。
○分科会長 社会福祉施設は恐らく老人のほうですね。高齢者の施設なので、今後、数はふえていって、これ以上にふえるかもしれませんね。
○山口氏(春山委員代理) 目標に関して見ますと、全て何%以上という設定になっているわけです。その、以上という読み方をこれ以上頑張ると読むのか、下げて見るのかということで見ますと、少なくとも以上というところには意気込みが出ている。目標を幾ら議論しても、金メダルをとるのか、銀メダルをとるのか、銅メダルをとるのか、そんなに議論をするよりも、どうやってこの目標を達成するのか。何が問題なのかという解析をして、これから何をやっていくか。そちらの議論のほうが大事だと思います。あまりにもかけ離れた目標であれば、それは見直しをする必要がありますけれども、私はそれほどかけ離れている部分はないと。
ただ、先ほどおっしゃられたように、統計的におかしい手法であれば、それは見直す必要がありますけれども、細かい数字を云々するよりも、将来的にこれから何をやっていくか。そのお陰でどう減っていくかということが大事なわけです。将来の何をやっているかということが見えないのに、何%減るのだという見込みは立たないと私は思います。
ですから、これからどうやって何をやっていくか。そこでしっかり議論をすべきだと思いますけれども、どうでしょうか。
○分科会長 三柴委員、どうぞ。
○三柴委員 私は法律が専門ですので統計については詳しくございませんけれども、確かに統計学的に明らかにおかしいというような前提はとるべきでないにしても、未来予測という性格上、恐らく幾ら細かい議論を詰めても、その時々の事情に応じて外れてしまうことは当然にあり得ると思います。我々の分野の感覚ですと、こういう目標設定は結局、最終的には合意を重視する課題だろうと。合意は当然、誰が主導するかという問題に帰結すると思いますけれども、ここまでのこの場での議論を踏まえて、事務局の方がこういう案でどうかと出してこられたことについては、私は尊重すべきかと思います。
○分科会長 いかがでしょうか。
 犬飼委員、どうぞ。
○犬飼委員 統計のいろいろなとり方があるのですけれども、新谷委員が言われているように、過去10年間のトレンドだけを見ることで足りているかどうかということです。社会福祉業界の方とか経済とか、もう少しソースを加えて見られたらいいのではないでしょうか。単純に過去10年間のトレンドで増えてきたから、今後10年間でも増えると言われてしまうものですから、乱暴かなというイメージがあります。他にも実はいくつか分析の方法はあるが、この推計値がベストだと思いましたと言われると納得はできるのですが、過去10年のトレンドから引っ張ったとだけ言われると、それでは直ちには納得できませんので、そういったようなことをお聞かせ願うと、もう少し納得できます。
○分科会長 どうぞ。
○宮野安全衛生部長 確かに雇用者数の見通し予測のところは、過去10年間の伸びをそのまま引っ張っているだけですから単純だと言えば単純ですし、それは社会福祉施設以外のところで飲食店でも小売でも、先ほど小畑委員からお話がありましたように陸上貨物のところでも、これは正直に申し上げれば、いろいろな推計のやり方があると思いますし、ここにあるように果たして逆に言うと、飲食店や小売店もこうしたトレンドでいくのか。あるいは大きく減るかもしれませんし、増えるかもしれないところはあると思います。ですから、こうしたそれぞれの産業の雇用者数の伸びについては、確かにいろいろと私どもでも推計をしたものもありますので、もう一回そういったものも参考に少し見てみたいとは思います。
ただ、ここは1点申し上げたいのは、私どももこういった雇用の分野の専門家ではありませんし、この分科会はそれを議論する場でもないと思っております。これは前から申し上げているとおり、この目標そのものが一人歩きをする形で、あまりに過大あるいは過小な目標になることは避けなければならないと思いますけれども、いずれにしても雇用者数の動きも含めて、今後の経済の動向等々によって大きく周りの環境が変化をする可能性は十分あるだろうと思います。
それについては前から申し上げておりますとおり、目標は目標として設定をしなければなりませんけれども、実際にこの後、この計画を遂行していく時点でその時々の状況に応じて、また実際の目標に応じた施策を見直していくことも十分あると思いますし、そうした正確のものでお考えをいただかなければならない。今の時点で幾ら逆に言うと精緻なものをつくったとしても、そこは恐らく今後の5年、10年の中で状況とすれば大きく変わってくるものだろうと思っておりますので、いま一度そこのあたりのところはきょうの御議論を踏まえて精査をしてみたいと思いますが、基本的にそこはあまりに精緻な議論にはならないのではないかと思っておりますので、その点はよろしく御理解をいただきたいと思います。
○分科会長 どうぞ。
○新谷委員 もうまとめに入っていますので、これ以上論議するつもりはないのですけれども、御説明をいただいた内容も含めて、余り精緻な論議をやっているつもりはないです。ただ、今回ここに出てきた数字を見ると4ページですが、小売業と飲食店が20%であるのに対して社会福祉施設が7%という数字が出ていることについて、私は違和感を覚えているわけです。それは雇用者数の増加を織り込んだから、こういう数字になっているわけですが、そのベースはさっきおっしゃったような過去10年間のトレンドから線を引いたということなので、先ほど申し上げたように、雇用者数の増加を織り込んでマクロで見ると7%なのだけれども、既存の社会福祉施設がこの数字を見たときにどう受け止めるのか。自分の社会福祉施設は小売業よりも低い目標で足りるのだというメッセージを発しないのか。要するにマクロとミクロの目標は分けたほうがいいのではないかと申し上げていますので、これも含めて検討をいただきたいと思っております。
 以上です。
○分科会長 ありがとうございます。
 山口さん、どうぞ。
○山口氏(春山委員代理) 雇用者数の関係するデータに関しては、人数ではなくて千人率なり度数率でやれば避けられるわけです。そういう意味では、単に絶対数ではなくて、千人率なり何なりであらわして、それで何パーセントという表現の仕方もあるのではないかと思いますので、そこら辺は検討としてはどうなのでしょうか。
○木口調査官 度数率に関しましてはサンプル調査ということもありまして、年によってかなり変動が激しいということで、一度これを指標に使えるかどうか検討したこともありますが、あまりに変動が大きいので指標としては使えないだろうといたしました。千人率につきましても母数となる労働者数の数字が必要ということで、同じ議論になってくるかと思います。
○分科会長 犬飼委員、どうぞ。
○犬飼委員 事務局に1点だけお聞きしたいのですが、目標の達成を前倒ししろとこちら側から強く求めた覚えはあまりありません。ただ、事務局が恐らく目標値として実行可能だと思って前倒しの目標を立てられたのだなという認識をしていたものですから、それが変わったということで違和感を覚えただけです。事務局としてはあくまでも実行可能な数字にしたいのだというご説明ですが、それでは、最初に示された事務局案は何だったのかという思いであります。最初の事務局案には恐らく実行可能性も含めて、意気込みもあったと思いますので、そこは別に強く思っていただいて結構な部分ですから、そういうことも含めて検討をお願いしたいと思っております。
○木口調査官 死亡災害につきましては、2ページのグラフをごらんいただきますとわかりますとおり、平成23年の確定値が1,024人ということでかなり小さい数字が出ておりました。当初この計画の検討をしておりましたときに、これだけ小さくなったということで、24年間目標値を引っ張るに際して32年まで引っ張るというと、ほとんどフラットのような状況になるのではないかということでやっていたのですが、平成24年現在の時点で、速報ベースで増加傾向にあることもありまして、実際に削減率を計算するときには24年を基点に引きますので、そういうことだと総合的に考えまして、前倒しというのは現実的ではないかということで、考え方を改めたということがございます。
○分科会長 よろしいですか。
小野委員、どうぞ。
○小野委員 収束しなければいけないところであれですが、確かに数字的に社会福祉施設のところが目立つのははっきりしておりまして、これは雇用者数が約倍になっていることを考えて、ただ、そうだとしても削減率は倍に考えたとしても15%いくかどうかというところだと思います。
 このグラフを見ていきますと、当初の目標に対しまして、削減したいという数字の傾きが、新規参入がふえる部分もあると思いますが、ほぼ横ばいで削減を目標としているという印象があまりないのですが、この辺の目標設定について、もし簡単に御説明をいただけるのでしたら、お教えいただけますでしょうか。ほかのものに比べまして、傾きが小さいような印象を持ちますので、その点だけお願いいたします。今は時間があれですので、次回に目標をもう一度お考えになるときの説明でも構いません。
○木口調査官 社会福祉施設につきましては、雇用者数の伸びと災害の伸びと両方のグラフが同じところに書いてございます。ご覧いただきましてわかりますように、雇用者数の伸びに比べまして、災害の増加率のほうがかなり伸びが急だという現実がございます。この急カーブでのぼっているものをとにかく削減の方向に持っていかなければいけないということで、それだけでもかなり大変なことではないかということで考えております。かなり右肩上がりになっているものにブレーキをかけて、なおかつ下げていく方向に持っていくという、そもそもの増加率がかなり急激だということの裏返しであることで御理解をいただければ大変ありがたく思います。
○小野委員 ありがとうございます。横並びに並んで記載されているところで、気になる書き方になっている部分もあるのかなと思いますので、そういう見た目でごまかすわけではないですが、実際にこういう目標があってということがもっと伝わるような表現のほうが受け入れやすいのかなと思います。
○分科会長 三柴委員、どうぞ。
○三柴委員 既に部長がおっしゃられたことについての確認の趣旨になるかもしれません。もし2点だけお願いできるとすると、1点は、現在、推計の前提になっている雇用者の伸びにもし変化が生じた場合、計画そのものを見直さないまでも、施策の重点をお考えいただく上で御考慮いただけないかという点が1つです。
 もう一つは、これはもう既に部長がおっしゃられたことですが、その時々の状況で例えば災害率が高まっているなどの変化があった場合には、これまでもされてきたと思いますけれども、そこを注視して、施策を打つことを検討するという、この2点について事務局のほうにお願いできるのであれば、させていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○分科会長 どうぞ。
○宮野安全衛生部長 今の点ですけれども、これは先ほども申し上げたとおり、いずれにしても状況が大きく変化をして、それぞれの産業における、また災害の発生率等々が大きく変わったときには、当然ながらこの計画の期間内であっても、計画自体の見直しかどうかはともかくとして、その対策については当然ながら検討して、例えば重点化をするというようなことで見直しをしていくことは当然のことだろうと思っています。
 また、雇用者数の動きが大きく変わって、それでというのは、ストレートにはそういうことはないと思いますが、例えば大きく雇用者数が増えてきた業種において、災害が発生する件数が増えてきたとすれば、まさに今の社会福祉施設が逆に言うと典型の状況にあるのだろうと思いますが、そういう状況であれば、それを踏まえてそういった業種については重点的な対策をとることに、当然なるのだろうと思います。
 確かに今、新谷委員がおっしゃっているとおり、全体のマクロで見れば、労働災害が一番急激にふえている社会福祉施設の目標が一番低い。それだけを見ると非常に奇異に感じるではないかという、恐らくそれが、一番見た目がおかしいということだろうと思います。それはおっしゃるとおりだろうと思います。
 一方で、ただ、そうなっておりますのは、縷々申し上げているとおり、雇用者数、事業者数が極めて大きく伸びてきている中で、それが例えば度数率等々は一緒だとしても、労災の事故の件数だけから言えば、それによって大きく増えているということで、そうなっているということではあります。
したがって、目標については再度また、きょうの御議論を踏まえて検討いたしますが、そういった点も含めてミクロでどういったような目標があり得るのかは、にわかには考えつかないのですが、いずれにしても最低限、例えばこの目標はそういうものであるということも含めてお示しをすることは検討したいと思います。
○分科会長 ありがとうございます。
 犬飼委員、どうぞ。
○犬飼委員 長くなって申しわけないのですが、腰痛予防対策の目標のところで、社会福祉施設の目標に変更された。第三次産業全体の目標が、小売業、社会福祉施設、飲食店に分けられたわけですけれども、社会福祉施設の労働災害がほとんど腰痛ということですが、「業務上疾病発生状況等調査」によれば、平成23年は社会福祉施設を含む保健衛生業の業務上疾病1,629件のうち1,329件が腰痛ですから82%が腰痛で確かに割合は高い。
しかし、同調査によれば、腰痛全体が4,766件で、社会福祉施設を含む保健衛生が27.9%、約3割です。商業、金融、広告で889件、製造業で774件、運輸交通業で670件、他業者でもかなり腰痛が発生しているということです。今回腰痛予防対策として提示されたものについては、社会福祉施設の労働災害による休業4日以上の死傷者数を7%以上を減少させるという目標で、再掲になっています。果たして腰痛予防対策の全体を、この社会福祉施設対策の目標の再掲だけでカバーできるか。
腰痛予防対策を本当に実施したいのであれば、もちろん社会福祉施設もそうですが、それを単体で取り上げるのではなくて、今申し上げたような商業、金融、公告、製造、運輸交通などの他の業種も含めた目標にするべきです。腰痛を減らしたいという思いからみて、これで果たして目標と言えるのでしょうか。前の目標のほうが目標らしかったと思いますので、ご検討を願いたいという思いです。
○分科会長 労働衛生課長、どうぞ。
○椎葉労働衛生課長 労働衛生課長でございます。
 腰痛の目標について検討したところ、実は10年前の平成14年と平成23年のトレンドをいろいろと調べておりますが、社会福祉施設の腰痛につきましては、23年では977件発生しておりますが、10年前の平成14年は360件でございまして、2倍を超えて増加しております。ほかの建設業や製造業や交通運輸業などは減少しておりまして、このように2倍を超えて増加しているような業種が社会福祉施設しかないというところでございます。
 社会福祉施設の労働災害の腰痛の占める割合が16.1%ということで、ほかの業種は大体1%~6%くらいでございまして、腰痛の発生割合やら増加率ともに突出していることから、腰痛対策につきましては社会福祉施設に集中して取り組むことを目標としたということで、今回こういう設定にしたわけでございます。
○分科会長 よろしいですか。
 半沢委員、どうぞ。
○半沢委員 別件で申し訳ありません。質問ですが、「再修正しない目標」の中で、先ほど安全衛生法改正法案の廃案に伴ってメンタルヘルス対策については今後変更するというお話でしたけれども、私が聞き逃したのかもしれませんが、受動喫煙防止対策についてもそのようにお考えなのでしょうか。
 また、修正についてはどのような方向で考えているのでしょうか。つまり、現状は労働安全衛生法の改正を前提にしているので、この目標が消極的なほうに動くのでしょうか。先ほど、状況が変わったらというお話もされましたが、法案については再提出を検討するということで、もし労働安全衛生法の改正に動きがあった場合には、改正内容も含んだ形で、PDCAサイクルでの見直しをされるというお考えなのでしょうかという質問です。
○分科会長 労働衛生課長、どうぞ。
○椎葉労働衛生課長 資料1の9ページに「再修正しない目標」ということでまとめております。まず、メンタルヘルス対策につきましては、先ほど部長の挨拶と木口さんの御説明にもありましたけれども、安衛法の状況を見つつ検討するということで、次回に再度お示しさせていただきたいと考えています。
 受動喫煙のくだりでございますが、一番下でございます。こちらにつきましては29年までに職場で受動喫煙を受けている労働者の割合を15%以下にするという目標は変更ございません。
○半沢委員 わかりました。受動喫煙についてはメンタルヘルス対策について記載があるような変更はないということですね。
○椎葉労働衛生課長 再度追加で御説明させていただきますと、職場の受動喫煙対策につきましては、現在、何らかの受動喫煙対策に取り組んでいる事業所につきましては、19年度調査で既に75%を超えているところでございますが、同じ調査で受動喫煙を受けていると回答した労働者が65%ということで、いまだ半数以上を占めておりまして、事業者の対策の実施そのものが労働者の受動喫煙の防止に十分に結びついているとは言いがたい状況にあることから、こちらにつきましてはこれまで日本再生戦略でありますとか、労働政策審議会の点検評価部会において、受動喫煙を受けている労働者の割合を目標に設定したわけでございまして、12次防の目標はこれらと整合性を図ってやりたいということで、変更はせずにこのまま行きたいということでございます。
○半沢委員 わかりました。そうしますと、メンタルヘルス対策だけ変更ということで、どのような変更がなされるのか今のところはわかりませんが、メンタルヘルスの研修・情報提供については、取り組めば容易に達成できることだと思いますので、ぜひ積極的な目標でお願いしたいと思います。
○分科会長 どうぞ。
○明石委員 受動喫煙については再修正しない目標に入っています。以前から何度も申し上げていますが、この目標は新成長戦略に掲げている項目とかなり差異があるのではないかと思います。12次防の目標では、受動喫煙を受けている労働者の割合を聞いていますが、新成長戦略の目標は、受動喫煙のない職場の実現です。労働者に対する質問と事業者に対する質問は、まったく違ったものです。もう一度お考えをいただけないでしょうか。
○椎葉労働衛生課長 受動喫煙につきましては先ほど御説明したとおりでございますが、次回お示しするときに、こちらの考えなども含めて御説明させていただきたいと思います。
○分科会長 目標については、ほかに御意見はございませんでしょうか。
 それでは、御意見がたくさん出ましたので、事務局では再度検討していただきまして、大枠はこういった考え方でよろしいということでございますので、事務局でもよろしくお願いいたします。
 それでは、その次は小売業、陸運業のヒアリングを踏まえた5の(1)の修正案について、事務局から説明をお願いいたします。
○木口調査官 それでは、資料2を御説明いたします。
 (1)につきましては、前回も御議論をいただきましたが、第三次産業と陸上貨物運送業につきましては、ヒアリングの結果を踏まえて見直すということで前回飛ばしておりましたので、この関係の修正箇所を御説明いたします。
 1ページ目「安全面を巡る課題」ですが、3行目「昨年来増加傾向が続いており」云々を外しております。これは建設業と製造業につきまして、後半のパラグラフで詳しく書いてございますので、2つの業種について大幅に減っているということだけを説明するということで外しております。
 4行目、第三次産業の次に「特に」云々を外しましたのは、いわゆる第三次産業全体のマクロの数字として増加率を示しておりまして、このうちということで今回重点対象といたします3つの業種の労働災害の増加傾向について詳しく書いてございます。この中で災害の増加傾向とあわせまして、それぞれの業種における雇用者数の増加率も書きまして、この増加率を上回って災害が増えていることを説明しております。
 先ほど申しました小売業、社会福祉施設、飲食業を以下束ねまして小売業等といたしまして、これ以下、第三次産業と書いておりましたのは、全て小売業等に置きかえて説明をしてございます。
 2つ目のポツでございます。こちらは文言の整理ですが「生命に関わる度合いの小さい」という部分を「重篤度の低い」と直しております。建設業や製造業の設備対策などを主体として対策を講じているものとの対比という意味で、労働者個人の行動に着目した新たな手法が必要ということを追加しております。
 「また」以下は、いわゆる第三次産業の市場の拡大について書いているものでございます。製造業の市場云々は将来のことはまだわからないこともございますので、高齢者の増大による医療介護関連産業の拡大などで、このフィールドで雇用者の増加が見込まれることに絞って書いてございます。
次のポツが、陸上貨物運送事業でございます。こちらは前回、前々回にヒアリングのときに、荷主には発荷主と着荷主の2種類あるという御指摘がございましたので、これを書き加えました。あとは後段のほうでも発荷主と着荷主がそれぞれあるという前提で書き換えをしております。災害の種類につきまして、墜落、転落だけのことを書いておりましたが、そのほかにフォークリフトなどの荷役運搬機械やロールボックスパレット等の人力機械による災害も発生しているということで、現状認識に追加をしております。
2ページ目につきましても、運送事業者と荷主先との連携につきまして、労働災害発生場所を管理するとありましたが、これは荷役作業場所を管理する荷主先との連携ということで文言の整理をいたしております。
アの「(ア)労働災害件数を減少させるための重点業種対策」ですが、目標の部分は先ほど資料1で御説明いたしました再修正案に置きかえてございます。?の小売業・社会福祉施設・飲食店対策でございます。
?-1の2つ目のポツの3行目以下、こちらは前回のヒアリングのときに好事例を踏まえた指導は、その企業によってそれぞれやり方が違うので、好事例を踏まえてというのは現実的ではないのではないかという御指摘がありましたので、この部分を落としております。
?-2のaの1行目、労働者の不安全行動に起因するとの意識が強くなりがちな転倒災害という書き方をしておりましたが、これが説明として適切ではないという御指摘をいただきましたので、3ページの1行目から「一般的に、労働の現場のみならず日常生活においても起こりうるものと考えられていることから、労働災害、特に転倒災害の防止についての意識が事業者、労働者の双方とも希薄になりがちでありということで、説明ぶりを改めております。
5行目の後半からですけれども、大規模店舗、多店舗展開に対する重点的な指導という書き方をしておりましたが、大規模店舗などでかなり取り組みがなされているということを前回のヒアリングで御指摘がございましたので、大規模店舗、多店舗展開をしている企業を重点として労働災害防止意識の浸透・向上を図るという形に改めております。
「b バックヤードを中心とした作業場の安全化」でございます。3つ目のポツで、安全靴や安全手袋など保護具の開発の促進普及がございましたが、これに対しましてヒアリングのときに、この保護具を使うのは費用対効果等々の面であまり実用的ではないのではないかという御指摘がございましたので、外しております。
?-3でございます。これは介護労働者、介護事業者に関する施策のみということでしたので、小見出しを外したということでございます。
?-5につきましては「第三次産業に対する」という言葉を外しただけでございます。
4ページ、陸上貨物運送業ですが、3行目、4行目、荷台からの墜落防止措置を装備したトラック、荷主先に備える移動式プラットホームの普及につきましては、作業性を阻害する等との問題があるとの御指摘がございましたので、原案から外しております。
「c 荷主による取組の強化」でございます。こちらで荷主の概念として発荷主、着荷主があるという御指摘がございましたので、1行目、2行目は陸上貨物運送事業者側と運送を依頼する側で役割分担をモデル運送契約書の普及で明確にするという書き方にしております。
なお書き以降ですけれども、着荷主が多くの場合には陸上貨物運送事業者と運送計画を締結する関係にないということを踏まえまして、荷卸しのときの役割分担については発荷主さんと着荷主さんとの調整によって契約の中に盛り込むことが適当であるということを追加しております。
(1)の修正点は以上でございます。
○分科会長 ありがとうございました。
ヒアリングの結果から再修正案をつくっていただきましたけれども、これについて何か御意見がありましたらお願いいたします。
新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 ヒアリングを踏まえた修正案ということですが、1ページの分析に「安全面を巡る課題」の3行目で、「一方で安全衛生行政の重点対象としてこなかった第三次産業は14.3%の増である」という分析がされていて、そのうち先ほど御説明があったように、特にということで小売業、社会福祉施設、飲食業の分析をされているのですけれども、ここは今まで安全衛生行政の対象として重点的な扱いがされてこなかったのは第三次産業全体であったと思います。
今回の検討が始まったときも安全衛生部長から、この第三次産業の対策は重要であるという認識が示されていますので、そのとおりだと思っていたのですが、2ページ以降は第三次産業という言葉が消えてしまって、小売業・社会福祉施設・飲食店対策に特化してしまっている書きぶりになっています。ここに絞り込んで重点化するということであれば、わからなくはないのですが、それ以外の第三次産業対策がこれまでも重点対象としてこなかったわけですから、そこが落ちてしまうという懸念があります。
そういった意味では、例えば2ページのア(ア)?のリード文「第三次産業については特に労働災害発生件数の多い小売業、社会福祉施設、飲食店に重点的に取り組む」という記載があればわかりますが、ここも全部削除してしまって、小売業と社会福祉施設と飲食店で対策を実施するというのであれば、今まで話してきた第三次産業全体に網をかけて、その中でも特化してやるという趣旨が曖昧になり、これ以外の第三次産業はこぼれ落ちてしまうことになりますので、このリード文については基本的に残し、また、タイトルについても第三次産業対策という形に戻し、対策をとるのはこの3つでもかまいませんが、第三次産業全体への目配りはしているという書きぶりに書き換えたほうがいいのではないかということを申し上げたいと思います。
以上です。
○分科会長 ありがとうございました。
 計画課長、どうぞ。
○井内計画課長 今、御意見をいただきましたけれども、確かに第三次産業、その中でも特にこれまでの御議論の中で、小売、社会福祉施設、飲食店といったものに重点化をしていこうという御意見もあって、それも受けてこういった形の修正をしたわけであります。今おっしゃった2ページ目の(ア)の?の冒頭リード分については、重複するかなということで落としたところもありますが、今の御意見ですと第三次産業、その中でも特に災害発生件数の多い小売、社会福祉施設、飲食店に重点的に取り組むというのは、第三次産業の中での位置づけをもう一度ここでは残しておいたほうがいいのではないかという御意見については一つの御意見だと思っておりますので、ほかの委員の方々の御意見もお伺いしたいですけれども、私どもも今の御意見についてはそういう流れで検討してみたいと考えております。
○分科会長 これについては修正するということでよろしいでしょうか。
○小畑委員 3ページの「b バックヤードを中心した作業場の安全化」ですが、3つ目のポツの記載の2行が削除されています。前回の分科会で実施したヒアリングを踏まえての修正でしょうけれども、さまざまな事業主団体がある中で、日本チェーンストア協会さんからのヒアリングのみでこの記載を削除するのはいかがなものかと思います。
 特に安全靴、安全手袋などの保護具の開発の促進普及といった記載を当初案に盛り込んでいたことには、恐らく厚労省としての思い入れ、意図があったのだろうと推察しますので、まずその意図を明確にしていただいて、ヒアリングの意見も踏まえて、削除すべきかどうかをもう少し慎重に、詳細に検討をしてはどうかと思います。
 以上です。
○分科会長 これはいかがでしょうか。
 計画課長、お願いします。
○井内計画課長 私どもは前回ヒアリングをさせていただいて、ヒアリングをさせていただくというのはすなわち、そこの業界あるいは労働組合の方々の取り組みを直接お聞きして、この分科会として委員の方々にも御理解、御承知いただいて議論を進めるというつもりでお呼びして、ヒアリングをさせていただいたわけです。
 そのときに御説明がいろいろとあった中で、ものによっては質疑をしていただいて、質問に対してもお答えいただいたりしたわけですが、私どもはここの中でヒアリング対象の方から、保護具の開発等々については費用対効果の関係で効果はそれほどないのではないかというようなお話があって、それについてはそのときは特に質疑はなかったものですから、ヒアリングを踏まえて修正するということで言えば、そのヒアリングの中で出た話として対応すべきなのかなと、今回こういう形で修正したのですが、ほかの委員の方々も含めて、この部分について御意見があれば、いただければと思っております。
○分科会長 バックヤードの安全靴とか保護具の開発、使用についてはいかがでしょうか。
 犬飼委員、どうぞ。
○犬飼委員 安全靴や安全手袋の保護具を汎用性も含めて開発する事業をやっていらっしゃる方が実際にいると思います。そういった観点も含めてこのくだりを見ますと、チェーンストア協会さんが心配された、安全靴などをすぐに企業側が労働者に対して買い与えなければいけないという趣旨ではなく、「安全靴や安全手袋の開発を促進し」とあるわけですから、それがいいものであれば、その企業へ普及させていくという趣旨です。この表現であれば、決して企業にとって重荷にはならないし、問題はないかと思います。また、開発に携わっている方の意欲を高めるためにも、私は、これは必要だと思っていますので、お願いします。
○分科会長 明石委員、どうぞ。
○明石委員 ヒアリングからすれば、ここは自主的にやられるというところだったので、必要がないと思います。
その前のaの3ページの上のほうですが「まずは大規模店舗・多店舗展開企業を重点として」ですけれども、ヒアリングではここは十分やられているということだったので、重点をするのであれば、中小とかそういうところを重点にすべきだと思います。
○分科会長 半沢委員、どうぞ。
○半沢委員 第三次産業での議論ですけれども、例えば製造業などでは転倒や災害の防止に靴を用いて防止するといった対策は行っておりますし、実際に効果もあるものだと思います。1ページで加筆された、「個人の行動に着目した新たな手法」という記載もありまして、可能性のあるものについての開発を促進する、研究していくこと自体はよいことかと思っています。
○分科会長 小野委員、どうぞ。
○小野委員 保護具などの研究をしている側からの意見ということで申し上げさせていただきますと、やはり転倒に関しては靴が重要であることは統計的にも明らかになっておりますし、そういった靴に関しましては特に製造業のほうではほとんどの場合、靴は貸与というか支給になっておりますので、そういう情報が大分取り入れられているのが実情だと思います。
小売業等に関しましても作業によりましては、恐らく靴は貸与していらっしゃるケースが多いと思われますので、完全にこのように消してしまうというよりは、製造業とかで活用されている情報を小売業とか第三次産業の方にも提供できることも含めまして、完全に削除ではなくて、科学的根拠からこういうものがあるというのをできれば、普及促進という形で進めていただけるようにしていただくとありがたいと思います。
以上です。
○分科会長 ありがとうございます。
 使用者側の方はよろしいですか。計画課長、どうぞ。
○井内計画課長 今、公益委員の小野委員から御意見をいただきまして、確かにそういう面もあるかと思いますので、今の御意見も踏まえて検討させていただきたいと思っております。
先ほど大規模、大きな柱として2ページの「?-2 小売業に対する集中的取組」の中で「a 大規模店舗・多店舗展開企業を重点とした労働災害防止意識の向上」を進めていくということについては、これは労働災害の発生の状況とか比較をすれば、それは大規模のところ、あるいは多店舗展開をしているところが多いわけでありまして、そういったところを重点的にまずいろいろと指導していくというようなことが、これまでの議論の中でも出たわけであります。
それでこういうような記述をさせていただいておりますので、それについては重点として何を置いていくかについては、重みをそこにつける必要があるのではないかと事務局では考えております。したがって、こういう原案になっていることを御理解いただきたいと思います。
○分科会長 明石委員、よろしいですか。
○明石委員 ヒアリングを聞いた時点では、そういうことではなかったはずです。まずそこからやるということであれば、その時点でそのような指摘をすべきではないでしょうか。ヒアリングでは中小の方をやったほうがいいということだったと、私は理解をしています。
○分科会長 これについては何か御意見はございますか。
 山口委員、どうぞ。
○山口氏(春山委員代理) この文章の読み取り方ですけれども、その前のところに、業務の合理化、効率化にもつながるという観点に立ち、まずはやるということで、ここを中小に理解するためにやるのだと。これが議論の中で、経営者も含めて中小がこういう理解が足らないのではないかという議論があったので、これをベストプラクティスとして中小に広げておくというところが大事かと思いますので、そこら辺を考慮いただければと思います。
○分科会長 安全衛生部長、どうぞ。
○宮野安全衛生部長 ここの点ですけれども、確かにヒアリングでは恐らくチェーンストア協会さん、お出でいただいた企業ではきちんとされているということであったのだろうと思います。ただ、私どもはデータで見ますと、やはり件数的には、大企業、大規模店舗、多店舗展開しているところでも、この災害の件数は実数から言うとかなり多いという実態はございます。そうした点を考えて、かつ、こうしたところは逆に言うと、体制さえきちんと整えていただければ、件数自体は恐らく大幅に減ってくるだろうと思います。
ですから、私どもとしては、まずこういったところから重点にお願いをしていくということがいいのではないかと考えまして、こういう書き方をさせていただいているというところであります。
もちろん、中小企業も含めて取り組んでいただかなければならないわけですが、従前から申し上げておりますとおり、特に小売業等々においては、まだまだ全体として体制面という点では進んでいるところももちろんありますけれども、必ずしも十分ではないと私どもは認識しておりますので、こうしたところから、まず始めたいということであります。
○分科会長 よろしいですか。
 瀬戸委員、どうぞ。
○瀬戸委員 2ページの?-1の下から2行目で「これらの実態や好事例を踏まえつつ」ということで、その好事例を削除した理由を先ほどおっしゃっていただいたかと思いますが、3ページのbの2つ目のポツの「国内外の好事例を収集し、意識啓発・指導に活用する」とか、?-3の2つ目のポツの「好事例や情報に基づき、マニュアル等を見直し」云々、ここら辺の好事例、要するに2ページの好事例を削除した理由と3ページに記載されている「好事例」との整合性はどのようなものなのかをお聞きしたいと思います。
○分科会長 いかがでしょうか。
○木口調査官 ?-3につきましては社会福祉施設の項目でございますので、こちらにつきましては好事例の収集によって、いわゆる腰痛を起こさないような作業の普及といった形で生かしていけるものと思っております。bにつきましては、私どもはもう一度整理をさせていただきたいと思います。申しわけありません。
○分科会長 次回ということでお願いします。そうしますと、3ページのbのバックヤードの3番目のポツは少し文章を変えて、生かしていただくような形ということでよろしいですね。
 犬飼委員、どうぞ。
○犬飼委員 議論の中で削られた「好事例」の記載は、非正規労働者に対して実施されている安全衛生活動の好事例といっても、まずは非正規労働者に対する安全衛生活動の実態を知らなければ、その好事例などはないのではないか、という議論があり、これを受けて削除されたわけです。まずは実態把握が第一段階ということで、好事例は削除したのです。ですから、後のところは気になさらなくていいのではないでしょうか。
○分科会長 では、確認した上でよろしいでしょうか。
 ほかにはいかがでしょうか。
それでは、最後でございますけれども、前回の分科会で審議できませんでした骨子案・修正案の5の(2)以降の御審議をお願いいたします。事務局からの説明は前回済んでおりますので、早速ですけれども、御発言のある委員の方からお願いいたしたいと思います。5ページから最後です。
新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 前回の積み残しということで、前回いただいた新旧対照表でいくと23ページ、今回の資料2では6ページの一番下、「意識変革の促進」ということで「経営トップの意識」となっています。修正前の記述は「その取り組みの有無が企業経営に直接影響するような仕組みが必要である」という制度論が、こういう精神論といいますか、トップの意識ということに書き換えをされております。
 これは先ほどの論議でもあったように、目標設定だけではいけないのではないか。何をやるかが大事だというのは全くそのとおりです。しかし、何をやるのだと言ったときに、またこれで精神論かという印象です。当初提起された内容から比べると、大きく後退をしている印象が否めないと思います。やはり、これは前回記載をされていたように単なる精神論ではなくて、安全衛生対策と企業経営が本当にリンクして結びついているのだといった当初の提起のとおりに、元に戻すよう考えていただきたいと思います。
 それに関連して、7ページの?、以前から論議になっている「重大な労働災害を発生させ改善がみられない企業への対応」の記述であります。ここも前回から大きく中身が変わっておりまして、前回までは「長時間労働が横行し過重労働による健康障害が複数発生している」というものから、今回書かれたような「法令違反により重大な」という書き換えがされているのです。これについても以前からありましたように、「企業名などをホームページ等で公表することを含め」ということについては、その公表の基準についてはこれから検討するとの答弁をいただいていたと思いますが、要件的な「法令違反により」という新しい表現が加わり、中身が書きかわってしまっているということがございます。
 「一定基準を設け」という記載があり、12次防は今後要件について検討するということでありますので、加筆された「法令違反により」という点も検討する一定基準の中身に入ってきます。「法令違反により」と加筆されたことについては、枠組みを限定しすぎているのではないかと思います。ですから、これはもとの修正前の文章を踏まえて、もう少し枠組みを広範にとらえる書き方のほうが今後の検討の余地としてはいいのではないかと思いますので、御検討をいただきたいと思います。
 以上です。
○分科会長 2点ございましたが、前回の前のがわからないですが、いかがでしょうか。
 明石委員、どうぞ。
○明石委員 今まさに新谷委員が言われたところですけれども、6ページの一番下の企業経営者の部分です。精神論以前に企業経営者がそもそも性悪説というか、企業経営者は意識づけをしないと何もしないのだ、みたいな書き方をしているように読めます。こういう書き方はとても看過できないので、もっと考えていただきたいと思います。
 これも新谷委員がおっしゃられた、重大な災害を発生させ改善が見られない企業への対応ですが、まずは法令違反によりということが書かれています。この法令が何を示しているのかがわからないのと、大事なのは最後の着実に労働環境の改善を図られる方策を検討することがあって、そのために企業名を公表するなり何なりの方策があるのだと思います。
 これは以前に部長からも大分御説明をいただいたのですが、改めて事業者側から申し上げておくと、企業が幾ら対策をしても、例えば労働者の不安全行動とかそれだけでも労災は起こりますし、それで労災認定されます。そこはよく見ていただき、考えていただければと思っています。
○分科会長 お二人から御意見が出ましたけれども、よろしいですか。
 計画課長、どうぞ。
○井内計画課長 2点目について御議論がありましたけれども、私どもは今回7ページの?について、これまで御議論をいただいて、こういう形で進めてきたわけですけれども、行政による企業名の公表は社会的制裁という性格を有しておりまして、企業には多大な影響が及ぶ可能性があると思っています。もしもこういう制度を作るのであれば、その要件は明確化する必要があると思っておりまして、その要件にはある程度法的な根拠が必要だと考えております。
これまでも何度か御説明させていただいたこともありますけれども、例えば類似の制度として障害者雇用促進法による障害者雇用率を満たしていない企業について、雇い入れ計画を作成させて、その計画の実施自体が悪い企業に対して勧告を行って、さらに特別指導を実施して、それでも改善が行われていないというような企業は、そこで企業名を公表するというような制度がございます。
したがって、労働災害を繰り返すような企業について具体的な基準は今後検討させていただきたいと思っておりますけれども、法令違反というような明確な要件がないような事案について公表対象とすることはかなり難しいのではないかと考えておりまして、それで今のところは「法令違反により」という形で表現をしたところであります。そういう違反のないようなところについての公表は、なかなか難しいのではないかということで考えているということを御説明いたします。
○分科会長 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 説明いただいたのですが、この修正前の表現が、「長時間労働が横行し過重労働による健康障害が複数発生している企業などについては、一定の基準を設け」るという表現だったのです。今のご説明だと、法令違反に絞ったものに変わったわけですが、前回の御提案と今回の御提案が変わった理由があれば、教えていただけませんか。
○分科会長 計画課長、どうぞ。
○井内計画課長 私どももいろいろな段階で御意見をいただきながら検討してきているわけでありまして、第1次案とか当初の案と、実際に具体的にどのような形でやっていけばいいのか。もちろん、これは計画ができた後、実際にそういう新しい措置をとるかどうかとなると、関係者の皆様方と検討し、私ども役所の内部でも検討していく必要があるのだと思いますが、今のお話については私どもも内部でこの12次防を検討していく中で、検討した結果として表現としては変わってきた、ある程度一定のほかの類似の制度なども検討してみますと、調べてみますとかなりの要件がかかっていることが私どもでもわかってきたところもありまして、それで表現の変更をさせていただいている次第であります。
○分科会長 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 要件がわかってきたという御説明ですけれども、「法令違反により」というのは、まさしく第一の要件として入ってきたわけです。今後その一定基準についてはこれから検討するとおっしゃっています。先ほど使用者側委員からもこの法令違反は何かという御質問もあったように、これも含めて一定基準は何なのかを検討されたらどうかと思っております。そういった意味でこの「法令違反により」は削除してはどうかということを申し上げておるわけです。
 以上です。
○分科会長 三柴委員、どうぞ。
○三柴委員 通常、我々は法令と言うと監督取締法規などの強制力を伴う法規と、それを具体化するような政省令であるという理解をします。したがって、民事の法であるとか、あるいは安衛法などでも努力義務を定めるようなものとか、そういうものは除外して、安衛法だったら、いわゆる危害防止基準と言われるようなものを中心にイメージしますが、広義には、国法に属する全ての法を言う、と理解することもできますし、ここでは公表制度をどういう趣旨で設計するかという問題を考え、法令の意味もそれとの関係で理解すべきではないかと思います。
 つまり罰則を科すような事例に対して、さらに加重する意味で企業名を公表することになるのか。それとも例えばこれは安衛法規に限りませんけれども、いわゆるグレーゾーンを綱渡りするというような事業者さんが残念ながらいないではない。そういうときにそういう事例が重なったようなときにどういう対処をするかという問題は、残念ながらあると思います。もちろん、そういうことを繰り返していると結局どこかで具体的な危害防止基準に触れてしまうことはままあるわけです。しかし、予防を本旨にすることを考えると、少しきつめの発想をとることがあってもいいかなというところでは、客観基準を設けるところとの整合性が難しいところがあるとは思いますが、企業名の公表の趣旨をどう設計するかが問われる気はいたします。
○分科会長 ありがとうございます。
 明石委員、どうぞ。
○明石委員 趣旨が伝わっていなかったようですが、私が、法令違反がよくわからないと言ったのは、この法令は安全衛生関連の法令を意味するのでしょうかという意味で申し上げたので、当然そうだと思って聞いたものです。
○分科会長 これについてはほかにも御意見がございますか。
 瀬戸委員、どうぞ。
○瀬戸委員 別の案件ですけれども、6ページの問題意識の1つ目のポツの2行目「安全衛生対策は、企業の中でも広く共有されておらず」と断定的に書かれておるのですが、安全衛生対策をきちんとやっている企業もあるわけなので、企業の中でも広く共有されておらずと断定的に書くのはいかがなものかというのが1点。
 7ページの?のbの2つ目のポツで「大学教育への安全衛生教育の取入れ方策を検討する」と書かれてありますが、この大学教育への教育の取れ入れ方策の検討というのは、文科省と連携しながらやっていかなければいけない問題ではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。
 もう一つ、6ページに戻って恐縮ですけれども、?のbの外部専門機関の活用がありまして、ここで書いてあるのは「企業で安全衛生を担ってきた人材や労働安全・衛生コンサルタントを含む、安全衛生に関する専門人材を集約化し、企業の安全衛生管理責任を側面支援する外部専門機関として育成する」と書いてあるのですが、こういう方々を集約して外部専門機関として育成するということですか。もう既にあるということではなくて、これからこういう外部専門機関としてつくっていくのだということなのかお聞かせください。
○分科会長 3点ございますが、安全課長、お願いします。
○半田安全課長 安全課長でございます。
 6ページの?のbから御説明させていただきたいと思います。外部専門機関といいますか、専門家としては御存じのとおり、コンサルタントが既にあるわけでございますが、法体系上は、コンサルタントはあくまでもアドバイスになってございます。このあたりは中小企業の皆さんの安全衛生管理をさらに促進するためには、もう少し深く関与していくことができないだろうかを少し考えてございまして、そういったことの検討もしていきたいと思っているところでございます。
 7ページの?のb、大学教育でございます。文部科学省との連携は御指摘のとおりだと思いますが、今のところは大学でどういうことができるのかということで、私どもは大学の先生に少しお話を聞いたり、あとは幸いに大学側からもこういったことでの協力要請がちらほらと来てございます。そういった中で、まずはできることをやっていこうと思ってございますが、御指摘のとおり、文部科学省との連携についても視野に入れつつ、検討していきたいと思います。
○分科会長 ありがとうございます。
○木口調査官 文言の整理につきましては、広く共有されておらずの部分は、事務局でもう一回整理をいたしたいと思います。御指摘ありがとうございました。
○分科会長 先ほどの法令違反については、少し修正するということでよろしいですね。
○宮野安全衛生部長 この部分については、今、私どもで抱いているイメージを申し上げれば、当然この重大な労働災害を繰り返すというところにかかわってくる法令であると申し上げられると思います。三柴先生がおっしゃったとおり、そもそも仮にこういう仕組みを設けるとして、その性格をどう位置づけるかは確かに非常に大きな問題だろうと考えております。
 ただ、この部分は確かに最初の書き方自体は、やや気持ちが先走った部分が正直言ってあったのだろうと思っています。具体的に私どもが抱いているイメージは、同じことを私は2~3回この場で申し上げましたけれども、基本的に抱いているイメージとしては、これまで申し上げてきたようなイメージのものを考えています。
 そして、明石委員からお話がありましたとおり、確かに労働災害が仮に非常に重篤な災害、重大な災害が繰り返されたとしても、可能性としてそれが全て労働者側の不安全行動から来るものであったとすれば、それを企業に対してのペナルティー的な措置をとるのは、基本的に妥当ではないだろうと思っています。現行労働安全衛生法を中心にして、この安全衛生については企業の皆さんにさまざまな義務をお願いするということで、基本的には体系がなっております。
したがって、私どもが抱いているイメージとしては、やはり事業主側に何らかの法令違反があり、かつ軽微なものではなく、そうしたものが原因として重大な労働災害が発生したという事実をもって、何らかの公表も含めて措置がとれないだろうか。また、そうしたような仕組みを設けることによって、こうした労働災害の抑止効果ができないだろうかという基本的には問題意識を持っています。
平たく言いますと、イエローカードは最低2枚を一つのこういったペナルティーの原則とするということになるのではないかと思います。もちろん、レッドカード1枚も可能性としてあると思いますけれども、その辺は基本的には御議論をいただきたいと思いますが、事業主に対するペナルティーを考えますと、事業主側に何らかの原則に言えば、恐らく法令違反ということになると思いますが、そういったものは必要なのではないかと考えております。
いずれにしても、この点は非常に重要な点だと考えておりますので、引き続き御議論をいただければと思います。
○分科会長 新谷委員、どうぞ。
○新谷委員 重要な点ですので、重ねて申し上げたいと思います。前回までの表現だと「長時間労働が横行し過重労働による健康障害が複数発生している企業」を公表するということだったのですが、この例だと法令違反になるのでしょうか。今の部長の説明だと検討が足りなかったということでありますが、前回の例示では、「長時間労働で過重労働、健康障害が複数」というのが要件でした。
○宮野安全衛生部長 ですから、ぎりぎり申し上げれば、仮にそれは少なくとも私どもが抱いているイメージとしては、例えば全く事業主側に法令違反がなかった場合においてまで、こうした措置がとれるかというと、そこはなかなか難しいのではないかと思います。
○新谷委員 お聞きしているのは、要件についてです。過重労働によって健康障害を発生させて、それが複数であるという要件が書いてあります。これは法令違反に当たるのかどうかを教えていただきたいです。
○宮野安全衛生部長 ですから、そこを申し上げれば、前の表現そのものは、少し気持ちが先走り過ぎた部分は正直言ってあったのだろうと思っています。むしろ私が先ほど申し上げたとおり、2回、3回考えておる内容については説明させていただきましたので、そうしたものを前提にお考えをいただければと思います。
○新谷委員 三柴先生もおっしゃっていたように、公表制度は何のためにあるのか、これから検討を深めていく段階だと思います。そういった意味では、今日の段階で「法令違反により」という要件だけ定めてしまうのは、枠組みを限定しすぎてしまうわけです。一定の基準についてはこれから検討すると言っているわけでありますから、その一定基準の中には、法令違反であることも検討の範囲に入ってくると思いますので、現時点ではこの記載は削除して、一定基準の検討の中に含めて、丸めて考えるべきだと思います。要するに、そういった広範な方針を12次防の中では固めるべきではないかということを申し上げたいと思っています。
○分科会長 どうしましょうか。
 山口さん、どうぞ。
○山口氏(春山委員代理) 少なくとも今、挙げられた事例に関しては経団連でもいろいろと勉強会がありまして、安全配慮義務違反にはなると私は解釈していますので、少なくとも法令は、労働安全衛生法ではありませんが、安全配慮義務として何らかの義務は違反していると解釈できると思います。
○分科会長 何か事故が起きれば、そうなるのでしょうけれども、長時間労働だとどうでしょうか。
○新谷委員 せっかくおっしゃっていただいたので申し上げます。安全配慮義務は労働契約上の付随義務ですので、法令かと言われると取締法規ではないわけです。私が確認したかったのはそれです。要するに安全配慮義務違反も公表の対象に入るのかどうか。法令といってしまった場合、契約上の付随義務だと「法令」違反になりませんので、公表の対象にならないわけです。
ですから、私はここの範囲をどうするかということについては、一定の基準の中でこれから検討する事項として扱うべきだと思います。使用者側の委員からもそうおっしゃっていただいているので、それを当然含めるべきだと私は考えています。ここで法令違反と書かれてしまうと対象外になってしまいます。そこは一緒にこれから考えていけばいいわけですから、ここの要件としては落としていただきたいというのが1点です。
○分科会長 明石委員は落とすという御意見でしたか。
○明石委員 別にこの書き方で悪いと思いません。ただ、法令をはっきりさせてほしいと言っているだけの話です。
○分科会長 三柴委員、どうぞ。
○三柴委員 非常に難しい課題だと思いますけれども、確かに歴史を言ってしまえば、労基法から安衛法が分かれてきたという経過があって、労基法上の労働時間規制についても、逸脱や危険認識の基準は違うけれども、健康を保護するという側面はあるわけです。しかし、実際に長時間労働など、安衛法以外で規制されているが、衛生・健康にかかわるような問題について、安衛法上、どういう施策を進めていくのかは、少し時間をかけて検討していく必要があるように思います。現状は安全配慮義務などに関する民事の判例が先に発展して、その後から監督取締の根拠となる法令が形成されていくという系譜をたどっているように理解しているのですが、衛生・健康という観点に立つと、却って単に長時間労働のみでは図れない面もあり、いずれにせよ、一気にはいかないだろうと思います。
確かに、まさに労働時間の制限を、安衛法の中で、あるいはそうした観点で、かなりダイレクトに規制するような国もあるわけで、そういう方法もあるかもしれません。ただ、この計画の中でどこまで半強制措置につながるような方法をとるかは別の問題だろうと思います。
○分科会長 これは議論が長くなりそうなので、次回の報告書ができたところで議論をするということでよろしいでしょうか。
 小畑委員、どうぞ。
○小畑委員 7ページの下、?bの2つ目のポツで、先ほどお話のあった大学教育における安全衛生教育の取り入れ方策の検討についてですが、文科省と連携をとり合っていただく上で、補強の意見を申し上げたいと思っています。この取り組みは、若年層の安全・健康意識の醸成につながる大変重要な取り組みであると思います。
一方で、中学、高校を卒業して社会に出る若者も数多くいるわけで、数字的には平成25年3月に卒業する生徒の求職状況を見ると、中学校卒業者に対する求職者数が1,521人、高校の場合は約19万3,000人おります。そして、こうした若者の就職先を見ていくと平成23年版の子ども若者白書によれば、大卒者に比べて高卒者は、今回議論している第12次防の骨子案にもあるように、重篤度の高い労働災害の発生が懸念されている製造業、建設業に多いという実態になっております。こうした点を考えると、大学教育のみならず、中学・高校における安全衛生教育の強化・充実もあわせて検討する必要があると思います。
この点について、現行の中学・高校における安全衛生教育の実態も含めてお伺いしたいと思います。
○分科会長 安全課長、どうぞ。
○半田安全課長 高校に関しましては、教育指導要領の保健体育の中で、ある程度言及することになっていると理解してございます。実は私自身がかつて災害防止計画の担当補佐をやっておりましたときに、この文部科学省の初等中等教育局と大分お話をしたのでございますが、基本的にいろいろなところからの御要望があるということで、教育指導要領になかなか盛り込んでいただけない部分がございました。高校の部分でそういうことは一点進歩しているわけでございますが、中学等々についてはどの辺までやれるか御相談をしてみたいと思います。
 他方、私どもの労働行政の枠組みの中でも、若年者の雇用促進といったことはいろいろな取り組みをやってございますので、そういった部局との連携が考えられないか、検討してみたいと思います。
○分科会長 よろしいですか。
 犬飼委員、どうぞ。
○犬飼委員 同じ7ページで、?aですが、事務局の説明によりますと、現在は「職長も含めた現場の労働者に情報提供を推進する」という表現になっています。修正前は「体験・体感型の教育手法やIT端末を用いて個々の業者に直接浸透できるよう教育用教材を開発する」と具体的に書かれていました。キャンペーン活動についての項目ですので、包括的な表現になるのはわかるのですが、教育教材を開発するというのは能動的に厚労省ができることです。その意識は落ちていないというのならかまいませんが、文言から落ちてしまうと誰が覚えているのだという話になってしまいますので、私は前のような具体的表現にしたほうが、対策をとりやすいのではないかと思います。
○分科会長 安全課長、どうぞ。
○半田安全課長 非常にありがたいお言葉でございますが、同時に私どもはここに書きますと、それなりの裏づけがないとなかなか書きづらいところもございまして、微妙な言い方でございますが、そういうところもございます。もちろん、気持ちとしてはそういう方向で取り組んでまいりたいと思っておりますので、御理解をいただければと思います。
○分科会長 ほかにはございませんでしょうか。どうぞ。
○小野委員 8ページの「(4)科学的根拠、国際動向を踏まえた施策推進」ですけれども、研究所の名前が大きく出てきているのですが、?のaで「一体的取組」という形で、科学的根拠に基づく一体的取組という、要するに行政の施策と研究が一体となるということは、研究者倫理的には難しい課題だと思います。あくまでも研究は基礎的に施策を支えるべきものでありまして、施策があって、そこから研究ということには、基本的には形にはならないと思われます。
そういうこともございまして、一体的取り組みというよりは、本文の中の1番目のポツにもございますけれども、連携を強化するという連携の強化くらいまでが可能性としてはあるかという気がいたします。
1つ目のポツにつきましても、文章の最後が「科学的根拠に基づいた施策を推進する」といって、見出しを繰り返している形になっていますので、連携を強化するとか、情報を取り入れるとか、そういう形の具体的な内容にしていただいたほうがいいかと思います。
2番目のポツですけれども、「安全衛生分野の研究について、労働安全衛生総合研究所が中核的役割を」となっているのですが、たかだか100人で労働衛生分野、安全衛生分野の全てを網羅することはでき得ませんが、これはどちらかといいますとbのほうに入れていただきまして、研究の振興の側で中核となり得るようにしたいと思います。
研究振興の一翼を担うという位置づけにしていただいた方が、要するに施策を決める際に事前にある程度のこちらとしても下準備がないと、そこからすぐに施策につながる情報という形にはまいりませんので、連携を強めて、かつ、振興することを含めて、その一部も担うし、裾野を広げるとか、そういったことも含めてということで、2番目のほうに移していただいたほうが実際的ではないかと考えますので、少しお考えいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○分科会長 よろしいですか。
○木口調査官 御意見をありがとうございます。それも踏まえまして、事務局で整理させていただきます。
○分科会長 ありがとうございます。
 そろそろ時間が来てまいりましたが、どうぞ。
○半沢委員 10ページ以降、特に11ページの「原子力発電所事故対策」に関して、「廃炉に向けた作業の被ばく防止対策」や「緊急作業に従事した労働者」という表現があります。福島第一原発では、現状も数多くの労働者が作業に従事をしており、この被ばくというのは、今も増えている、積もっているという状態にあるという認識であります。
 そういった中で、報道でもありますように、被ばく隠しや偽装請負、未成年の作業従事等、看過できない問題、数多くの違反が発生しているという状況があり、被ばく防止対策はもちろんですが、労働者の安全衛生管理の徹底が改めて求められていると思います。
福島第一原発での作業は事故直後から現在に至るまで、また今後も継続していきます。さらに、これからは燃料棒のある原子炉の中心に近づいていくので、さらにこれまでとは異なる次元で被ばくしていくことになります。目に見えない放射線の恐怖を労働者は日々感じています。これは労働者だけでなく、労働者を支える家族もそうだと思っています。長期的な健康管理としての被ばく線量の管理に加えて、メンタル面での障害も懸念されますので、メンタルヘルス対策について、「原子力発電所事故対策」の項目に盛り込んでいただきたいと思います。
報道を見ますと、いろいろと揶揄されるようなものもあり、ネガティブなイメージにとられかねないものもあります。放射線についての正確な知識を持っていただくよう現場でも教育を行っているのですが、被ばく防止の観点やメンタルヘルス対策の観点も含め、安全衛生教育の強化、特に放射線教育の強化といったものを広く行政として支援いただきたいと思いますので、こういった記載もぜひお願いしたいと思います。
○分科会長 いかがでしょうか。
 労働衛生課長、どうぞ。
○椎葉労働衛生課長 労働衛生課長でございます。
 原発作業員の被ばく防止対策につきましては、線量管理につきましてはきちんと徹底をさせていただきたいということで、現在もやっているところでございます。メンタル対策でございますが、労働者の長期的健康管理はこちらの会議の中でも一度お示ししましたけれども、指針の中でメンタルヘルス対策も行うようにということで、やっているところでございます。正確な知識につきましては、関係省庁とも連携しながら、放射線についての正確な知識が浸透するように努力していきたいと思います。
 以上でございます。
○分科会長 よろしいですか。
 犬飼委員、どうぞ。
○犬飼委員 指針で掲げられているからいいというのではなくて、12次防の中で原発労働者に対するメンタルヘルス対策についての項目が必要ではないかと半沢委員は言われているのではないかと思います。
 これに関連して、原発労働者のメンタルヘルス対策はわかりましたが、東日本大震災で被災した労働者も数多くいるわけです。家族、友人、知人を失ったり、職場で惨事に遭遇して強いストレスを受けた方がいると思います。また、慣れない仮設住宅で暮らしながら、働かなければいけない人がたくさんいます。全国労働衛生団体連合会が去年7月~10月にかけて、東日本大震災で被災した300人未満の中小事業およそ8,000事業場の労働者約11万人に緊急健康診断を実施しました。その受診者のうちストレスチェックを希望したのは約3万人です。この約3万人に行ったアンケート調査によれば、7割を超える労働者が会社の将来や経済問題、子どもの教育など、将来に対する不安が増したと回答しています。
 こうしたことを踏まえると、震災で被災した労働者のメンタルヘルス対策は、先ほど申し上げた原発労働者のメンタルヘルス対策に加えて重要だと思います。12次防の議論の過程で新たに6つ目の柱として掲げられた東日本大震災・福島第一原発事故を受けた対応については、現在、復旧・復興工事、原発事故の収束作業、除染作業に特化されていますが、メンタルヘルス対策をぜひ盛り込んでいただきたいと思います。
○椎葉労働衛生課長 検討させていただきます。
○分科会長 ほかにはいかがでしょうか。少し時間が延びましたけれども、よろしいですか。
 それでは、大変活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。皆様の御協力をもちまして、骨子案の審議は一とおり終えることができました。ありがとうございます。
 最後にまだ予定がございますので、事務局から今後のスケジュールについてお願いいたします。
○井内計画課長 本日は遅い時間まで長時間の御議論をいただきまして、ありがとうございました。いろいろと論点が出た中で、委員の皆様方に御協力をいただきまして、ありがとうございます。
 次回は12月の後半を予定しておりますが、これまでの御議論を踏まえて計画本文の案をお示ししたいと思っております。年内取りまとめという当初のスケジュールからは若干ずれ込みまして、最終取りまとめが来年1月以降になる見込みではございますけれども、委員の皆様方におかれましては、引き続き、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
 以上です。
○分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。議事録の署名につきましては、労働者代表委員は犬飼委員、使用者代表委員は三浦委員にお願いいたします。
 本日は長い間を御議論いただいて、どうもありがとうございます。これで終了いたします。


(了)

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