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2013年3月29日 社会保障審議会年金数理部会(第54回)議事録

○出席者

山崎部会長、宮武部会長代理、牛丸委員、翁委員、駒村委員、佐々木委員、田中委員、野上委員、林委員

○議題

公的年金財政状況報告-平成23年度-について

○議事

○清水首席年金数理官
 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第54回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
 審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。座席図と議事次第のほか、次のとおりでございます。
 資料1は、1-1、1-2、1-3、1-4の4つに分けておりますが、「公的年金財政状況報告-平成23年度-(案)」でございます。
 資料2は、「公的年金財政状況報告-平成23年度-要旨(案)」でございます。
 配付資料は以上でございます。
 次に、年金数理部会委員の異動について御報告いたします。
 山崎泰彦委員、駒村康平委員におかれましては、社会保障審議会の委員の任期が1月28日までとなっておりましたが、1月29日付で御再任となっております。
 翁百合委員におかれましては、社会保障審議会の臨時委員の任期が1月28日までとなっておりましたが、1月29日付で御再任となっております。
 そして、山崎委員、駒村委員、翁委員におかれましては、1月31日付で年金数理部会の委員への指名を受けておられます。
 また、部会長の選任についてですが、社会保障審議会令第6条第3項に「部会に部会長を置き、当該部会に属する委員の互選により選任する。」と規定されています。年金数理部会においては、お二人の社会保障審議会の委員がいらっしゃいますが、山崎委員に引き続き部会長をお願いすることとなりましたので、御報告いたします。
 次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は全委員が御出席でございます。
 それでは、以後の進行につきまして山崎部会長にお願いいたします。

○山崎部会長
 委員の皆様には、御多忙の折り、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。
 本日は、平成23年度の公的年金財政状況報告に関して審議を行いたいと思います。
 カメラの方はここで退出をお願いいたします。

(報道関係者退室)

○山崎部会長
 平成23年度の報告書の作成にあたっては、検討作業班、技術作業班の2つの作業班において作業を行い、本日の資料である報告書案を作成いたしました。
 それでは、事務局から本年度の報告書案につきまして、そのポイントになる点の読上げをお願いいたします。

○清水首席年金数理官
 それでは、ただいま部会長から御紹介いただきましたように、それぞれ2回ずつ作業班を開催いたしまして、検討いただきました財政状況報告の案について、事務局から報告を申し上げます。
 まず、資料1-1、1ページめくっていただきますと、部会の委員の先生方の名簿が掲載されております。その後、目次がありますけれども、第1章が「公的年金の概要」、第2章が「財政状況」、第3章が「平成21年財政検証・財政再計算結果との比較」という3章建てになっておりまして、その後ろに付属資料、参考資料がつくという構成になっています。
 1ページ目は「はじめに」です。ここでは、第4段目で、「本報告では、平成23年度の財政状況の報告をもとに、各制度の財政状況を横断的に一覧できるようにまとめ、年金財政の仕組みやこれまでの経緯などをわかりやすく解説した上で、平成21年財政検証・財政再計算との比較により、各制度の財政状況を分析・評価している」と、本報告書の概略が述べられております。
 3ページからは「第1章 公的年金の概要」です。1が「公的年金とは」、2が「体系」、3が「被用者年金制度の一元化」です。ここは、昨年8月に被用者年金一元化法案が成立したことを受け、これまでの経緯、あるいは成立した法律の内容につき記載されているところです。
 概略を申し上げますと、「(1)これまでの経緯」ということで、まず5ページでございますが、昭和59年2月に「公的年金制度の改革について」という閣議決定がされ、昭和60年に法律改正が行われ、昭和61年に基礎年金制度が導入されました。1階部分が全国民共通の給付体系になるとともに、国庫負担は基礎年金部分に集約されたということが記載されています。また、平成元年に被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法が成立し、平成2年度から8年度までの間、被用者年金制度間の費用負担調整が行われたということが記載されています。
 その次でございます。平成6年2月に一元化懇が設置され、翌年平成7年には基本的な考え方がとりまとめられ、平成8年3月にその考え方を踏まえまして、被用者年金制度の再編成については、マル1財政単位の拡大、共通部分の費用負担の平準化を図ることを基本としつつ、マル2旧三共済を厚生年金に統合すること、マル3制度の安定性、公平性の確保に関し、社会保障制度審議会年金数理部会が財政再計算時ごとに検証を行うものとすること等を内容とした閣議決定がされたということです。
 6ページですが、平成12年5月に一元化懇が再開され、翌年2月に報告が取りまとめられ、同年3月、一元化懇が取りまとめた方向性を踏まえて、公的年金の一元化については、マル1財政単位の拡大及び共通部分についての費用負担の平準化を図ることを基本とし、当面は、旧農林年金の厚生年金への統合、国共済と地共済の財政単位の一元化、私学共済における保険料引き上げ前倒し等の検討を進めること、マル2厚生年金保険等との財政単位の一元化も含めて、21世紀初頭の間に結論が得られるよう検討を急ぐこと、マル3社会保障審議会に年金数理に関する部会を設け、被用者年金制度の安定性、公平性の確保に関する検証、毎年度の報告、一元化の具体的措置が講じられる際の費用負担の在り方等についての検討、検証を要請すること、等を内容とした閣議決定がされました。
 これを受け、平成14年度に農林年金は厚生年金に統合されました。国共済、地共済に関しては財政単位の一元化が図られ、私学共済では掛金率を従前よりも前倒しして引き上げていくこととされたことが記載されています。
 それ以後ですけれども、「被用者年金制度の一元化を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案」が平成19年4月に国会に提出されましたが、審議入りすることなく、平成21年7月の衆議院解散に伴い廃案となりました。
 そして、次の段落でございますが、平成24年4月に、平成19年に提出された法案と基本的に同じ内容の法律案が国会に提出され、同年8月に成立、平成27年10月に施行されることとなった旨、記述されています。
 最後の部分ですが、「なお、年金数理部会は、このような被用者年金制度の一元化の流れの中で、そのときどきの要請に応じ、制度の安定性や公平性に関する検証や評価を行うなど、一定の役割を果たしてきた」と記載されています。
 8ページ以下では、被用者年金一元化法の概要が簡略にまとめられています。「共済年金の厚生年金への統合」、「制度的差異の解消」、「保険料率の統一」、「事務組織の活用や情報開示等」、「積立金の仕分け・運用等」ということで、この積立金の仕分けの部分に関しては費用分担の式が記載されております。
 10ページは、この積立金の仕分けの考え方が図によってわかりやすく表現されています。 以上が第1章の内容でございます。
 次に資料1-2「第2章 財政状況」をごらんいただきたいと思います。この「第2章 財政状況」では、財政収支、被保険者、受給権者、財政指標の4つについて、現状及び推移がまとめられており、その後に「保険料収入の増減要因の分析方法について」、「財政指標の定義及び意味」、「詳細統計表」が参考として付けられているという構成になっております。
 まず、12ページの1節が「財政収支の現状及び推移」ということで、ここはサブセクションが6つありまして、概況、収入、支出、運用損益分を除いた単年度収支残、積立金、基礎年金と、これらについてまとめられております。
 まず、概況でございますけれども、14ページをごらんいただきますと、平成23年度の財政収支状況がここにまとめられています。収入に関しては、保険料収入が29兆4,019億円。国庫・公経済負担が11兆4,963億円。追加費用は国共済、地共済に係るものですが、1兆5,143億円。運用収入が、簿価ベースで7,434億円。積立金からの受け入れが5兆6,272億円で収入総額は49兆5,279億円。一方、支出総額は、給付費の48兆8,675億円などを含め、49兆2,274億円。収支残が3,005億円のプラスになっています。運用収入は時価ベースで3兆6,315億円、年度末積立金が167兆8,694億円となっているということです。
 以上の内容につき、12ページから13ページにかけてまとめられているということです。
 16ページは、平成23年度の単年度収支状況です。ここは、運用損益分を除いた単年度収支残と運用による損益の2つに分けて財政収支が分析されている部分です。
 17ページをごらんいただきますと、収入が公的年金制度全体で43兆1,573億円、支出が49兆1,168億円。運用損益分を除いた単年度収支残が5兆9,594億円のマイナスになっております。これに、運用による損益が時価ベースでプラス3兆6,315億円となっており、前年度末に比べた年度末積立金の増減はマイナス2兆8,509億円になるということがまとめられております。以上の内容が16ページに記載されております。
 18ページからは「収入の推移」です。先ほどの保険料収入につきまして、合計で29兆4,019億円というものの制度別の内訳及び推移が図表2-1-4にまとめられています。厚生年金23兆4,699億円を始めとして、制度別の内訳が示されており、また、その前年度に対する増減率が示されているというものになっております。保険料収入については、保険料率が引き上げられたこと等が大きな要因となって増加しているということです。
 19ページの図表2-1-5では、保険料収入の増減についての要因分析が示されています。この図表は、平成23年度の財政状況報告において新たに加えられたものです。
 一方、国民年金につきましては、被保険者数の減少や納付率の低下等によって保険料収入が減少しているということです。
 20ページは「国庫・公経済負担」ということで、これは図表2-1-7に示されておりますが、21ページに記載されているとおり、基本的に基礎年金の拠出金にリンクしております。
 その点につき、図表2-1-8の「基礎年金の国庫・公経済負担割合の引上げ」に示されております。21ページでは、平成21年度の国庫負担2分の1への引上げが、図表2-1-7の下段に示されているとおり、各制度とも大幅な増の要因になっていること、決算ベースの基礎年金拠出金は、概算額と精算額の合計になっていること、それから、概算額算出に用いる国民年金の納付率の変更によって影響が出ていること等が記載されています。
 次に、22ページの「追加費用」です。追加費用につきましては、図表2-1-9に金額と対前年度増減率が示されており、平成20年度に大幅減となり、平成22年度には大幅増となっているが、被用者年金一元化法案の廃案等の環境下で、そういった状況が生まれているということが記載されています。
 次に、「運用収入」については、23ページの図表2-1-10に制度別の内訳がまとめられています。
 24ページは「運用利回り」で、平成23年度は各制度とも時価ベースで2%前後の水準になっているということが図表2-1-11に示されています。
 次は、支出の推移です。まず、給付費につき、25ページの図表2-1-12に示されています。公的年金制度全体で、先ほど申し上げました48兆8,675億円という数字の内訳が、図表2-1-12上段の表の一番下の行に示されています。下段の表では、対前年度増減が制度全体では0.1%の増、被用者年金では0.8%の減となっていることが示されており、本文中ではこうしたこと等について記載されています。
 26ページは、「運用損益分を除いた単年度収支残」です。これは、先にありましたように、公的年金制度全体でマイナス5兆9,594億円となっているわけですが、それにつきまして、制度別の数字が示されており、基礎年金勘定を除き、いずれもマイナスの状況となっています。
 次の27ページでは、積立金につき、制度全体で時価ベース167兆8,694億円となっているものにつき、制度別の金額が上段の表の一番下の行に示されています。下段の表には、対前年度増減率も示されています。被用者年金制度については、私学共済を除き、元本が取り崩される状況になっていることが示されています。
 28ページから29ページでは、積立金の資産構成が示されています。このうち、29ページのカラーの棒グラフは、資産構成を各制度別に比較できるようにしたもので、今年度新たに加えられたものです。
 30ページからは「基礎年金制度の実績(確定値ベース)」ということで、精算の影響を除いた確定値ベースの数字が示されています。最初の図表2-1-17は基礎年金交付金の推移を示したものであり、これは各制度とも減少を続けています。
 同様に基礎年金拠出金の推移を示したものが31ページの図表2-1-18です。被用者年金各制度では増加、国民年金勘定では低下していることが示されています。
 その基礎年金拠出金の増減につき、基礎年金拠出金単価の要因と基礎年金拠出金の算定対象者数の要因に分解して示したものが図表2-1-19です。拠出金単価は、前年度に比べ2.1%の上昇となっていますが、拠出金算定対象者数が私学共済を除いて減少しているということから、その2つの要素の合計として、基礎年金拠出金算定対象額の動きが説明されます。図表2-1-19は、そのことがわかりやすく示されています。
 34ページには基礎年金拠出金算定対象者の内訳が示されています。この図表2-1-20には、被用者年金制度において第2号被保険者に対する第3号被保険者の比率が異なる状況が示されています。
 第2節は、「被保険者の現状及び推移」です。この節は、「被保険者数」、「年齢分布」、「男女構成」、「1人当たり標準報酬額(月額)」、「標準報酬総額」、「被保険者のコーホート分析」という6つのサブセクションで構成されています。
 まず「(1)被保険者数」は、公的年金制度全体で6,774万7,000人となっております。これについて、国民年金あるいは被用者年金の各制度別の内訳が図表2-2-1に示されており、公的年金制度全体では前年度に比べ0.7%の減少となったこと等、前年度に対する増減が図表の下段にまとめられています。
 時間の関係から「(2)年齢分布」、「(3)男女構成」は省略させていただき、38ページの「(4)1人当たり標準報酬額(月額)」に進みたいと思います。図表2-2-5が「1人当たり標準報酬月額」、下の図表2-2-6が「1人当たり標準報酬額(総報酬ベース・月額)」です。上の図表2-2-5には、制度別に厚生年金が30万4,589円、国共済41万861円、地共済42万8,670円、私学共済36万6,072円といった数字が示されています。下の図表2-2-6では、同様に総報酬ベースで月額の数字が示されております。
 1人当たり標準報酬額(月額)の推移は、次の40ページの図表2-2-7に示されており、厚生年金については平成23年度は0.2%のプラスでしたが、共済については3制度ともマイナスになっているという状況が示されています。
 次に41ページの「(5)標準報酬総額」では、被用者年金制度計の178兆4,781億円という金額の制度別内訳が図表2-2-8の上段に示されており、また、下段にはその増減が示されています。被用者年金全体では平成23年度は0.3%の増になっているけれども、国共、地共では若干マイナスになっているという状況が示されています。
 2節の最後は「(6)被保険者のコーホート分析」です。43ページから44ページにかけてグラフが出ていますが、この横軸は平成23年度末における各年齢集団(コーホート)の年齢です。それぞれの年齢集団について、その1年前の人数が1年後にどう変わったか、つまり平成22年度末から23年度末に向けてどのように増減したかをプロットしたグラフになっております。例えば、厚生年金の男性ですと、23歳のところで新規加入が多く、急激に増加しています。そして、60歳と65歳のところで減少が大きくなっています。43ページから44ページの図表は、こういった状況が制度別、性別にごらんいただけるものとなっています。
 45ページからは3節「受給権者の現状及び推移」です。3節は61ページまで記載があり、「受給権者数」、「年金種別別にみた状況」、「年金総額」、「老齢・退年相当の受給権者」という4つのサブセクションから構成されています。
 まず、「(1)受給権者数」につきましては、図表2-3-1に示されていますように、厚生年金が3,303万4,000人、国共済121万人、地共済283万人、私学共済38万9,100人、国民年金が2,964万9,000人で、それらのうちダブルカウントを除くと、上の本文中にありますように、3,867万人が何らかの公的年金の受給権者になっているという記載になっています。
 受給者数につきましては、46ページの図表2-3-2に示されているとおりでございます。
 「(2)年金種別別にみた状況」につきましては、時間の関係から省略させていただき、50ページの「(3)年金総額」に進みたいと思います。図表2-3-5には、受給権者ベースの年金総額の推移が示されています。公的年金制度全体で54兆3,878億円という年金総額の制度別の内訳が示されています。
 51ページは「年金総額の年金種別別構成」です。これは時間の関係から省略させていただきたいと思います。
 52ページからは「(4)老齢・退年相当の受給権者」ということで、まず図表2-3-7により、受給権者数と平均年齢が制度別、性別に示されています。
 53ページは「老齢・退年相当の平均年金月額」で、図表2-3-8により、厚生年金の平均14万9,687円以下、制度別に平均年金月額が示されております。一番下の行には、繰り上げ、繰り下げ等を除いた額が示されています。
 55ページの「1人当たり保険料と平均年金月額」については省略をさせていただきたいと思います。
 56ページの「本来支給、特別支給の平均年金月額」についても省略させていただきます。
 58ページに「老齢・退年相当の平均年金月額の推移」が記載されております。この表の下段に対前年度増減が示されており、平成23年度は被用者年金各制度では減少、国民年金で若干の増になっているということが示されています。
 60ページの「老齢・退年相当の平均加入期間」、61ページの「平均年金月額の減少要因」につきましては省略をさせていただきたいと思います。
 62ページ以降は4節「財政指標の現状及び推移」です。4節は74ページまでです。4節は、「年金扶養比率」「総合費用率」「独自給付費用率及び基礎年金費用率」「保険料比率及び収支比率」「積立比率」ということで、5つのサブセクションで構成されております。
 まず、「(1)年金扶養比率」は図表2-4-1示されており、厚生年金2.33、国共済1.52、地共済1.47、私学共済4.09、国民年金2.33となっています。年金扶養比率という比率は、分子に被保険者数が来ますので、比率の高いほうが成熟度が進んでいないということになります。この推移が63ページの図表2-4-2に示されていますが、各制度とも着実に成熟が進んでいる状況が示されているかと思います。
 「年金種別費用率」については、年金扶養比率を補うものとして、ここに記載されているものです。説明のほうは省略させていただきます。
 次は、65ページの「(2)総合費用率」です。総合費用率という比率は純賦課保険料率に相当するものです。図表2-4-6の上段に、厚生年金19.3%をはじめとして、制度別の総合費用率が示されており、下段には、推移としては、平成23年度は厚生年金が若干の低下、その他の制度は少し高くなっているという状況が示されています。
 総合費用率と保険料率を比較して、保険料でどのくらいカバーできているかがわかるように工夫されたものが66ページの図表2-4-7です。ここで、厚生年金の実績推計は、保険料率と比較できるように、代行部分も含めたものとなっています。共済グループに関しては、それぞれ総合費用率と保険料率が比較できるようにまとめられています。
 67ページの図表2-4-8には、被用者年金のうち共済グループには職域部分がありますので、厚年相当部分について総合費用率が示されています。
 68ページからは「(3)独自給付費用率及び基礎年金費用率」ですが、この部分は省略させていただきます。
 70ページからは「(4)保険料比率及び収支比率」です。
 まず、保険料比率です。保険料比率といいますのは、実質的な支出から国庫・公経済負担を除いたものに対して保険料でどのくらいカバーできているかという数字です。100を超えると保険料で十分カバーできているということになるわけですが、図表2-4-11にありますように、厚生年金で81.1%。以下、被用者年金でいずれも100を下回った数字になっていること等が示されています。
 国民年金につきましては、比率の変動には概算と精算の影響もあるということが71ページに記載されています。
 次に72ページの「収支比率」ですが、これは、積立金の運用収入も含めた収入を分母に置き、実質的な支出から国庫・公経済負担を除いたものを分子に置いた比率ということで、100を下回っていれば積立金の取り崩しがなくても給付が賄えるということがわかるものになっています。14ページをごらんいただきますと、被用者年金の中では、私学共済を除いては元本の取り崩しが生じている状況になっています。この収支比率については運用収益の状況が比率に大きく影響しますので、72ページ図表下段の対前年度増減には市場環境も影響しているということです。
 73ページの「(5)積立比率」につきましては、前年度末の積立金と当年度の実質的な支出、これは国庫・公経済負担を除いたものを比べて、積立金がその何倍あるかを見たものです。厚生年金3.9から、私学共済8.6、国民年金5.2といった数字が示されており、平成23年度はそれぞれ対前年度で比率が低下していることが示されています。
 75ページからは、参考ですので説明は省略させていただきます。
 以上が第2章でございます。
 次に、第3章、資料1-3をごらんいただきたいと思います。第3章は「平成21年財政検証・財政再計算結果との比較」ということで、内容としては、財政収支についての比較、財政指標についての比較、積立金についての比較、そして、財政状況の評価ということで、4つの節で構成されております。
 まず、98ページ以降は、第1節の「財政収支の実績と将来見通しの比較」です。ここでは、被保険者数等、経済的要素、収入、支出、積立金と5つの項目について比較が行われています。
 (1)被保険者数等につきましては、まず図表3-1-1「被保険者数の実績と将来見通しとの比較」をご覧いただきますと、厚生年金では実績が将来見通しを下回っているけれども、他の制度では実績が将来見通しを上回っている状況が示されています。
 標準報酬総額につきましては、100ページの図表3-1-2になりますが、被用者年金各制度とも実績が将来見通しを下回っている状況が示されています。
 「受給者数の実績と将来見通しとの比較」は101ページの図表3-1-3で、受給者数については、被用者年金各制度とも実績が将来見通しを下回っている状況が示されています。
 102ページは「(2)経済的要素の実績と将来見通しの比較」です。まず、物価上昇率が図表3-1-4に示されており、将来見通しの前提を下回っています。
 賃金上昇率については、図表3-1-5に、名目賃金上昇率でみたものと実質賃金上昇率でみたものの2つが示されております。いずれも実績が将来見通しを下回っているけれども、乖離の程度は実質賃金上昇率でみたほうが小さいことが示されています。
 運用利回りについては、104ページの図表3-1-6に、名目運用利回り、実質的な運用利回り、実質運用利回りの3つが比較されております。このなかで、財政評価の観点からは、中ほどにある実質的な運用利回り、すなわち賃金上昇率とのスプレッドを見ることが適当であるということす。それで見ますと、各制度とも実績が将来見通しの前提を上回っている状況が示されています。
 105ページからは、「(3)収入の実績と将来見通しの比較」です。図表3-1-7は「保険料収入の実績と将来見通しとの比較」ですが、各制度とも実績が将来見通しを下回っていますが、特に国民年金で乖離が大きくなっている状況が示されています。この点については、本文で、納付率の実績と前提の乖離の関係が影響している旨の記載がされています。
 106ページは、「国庫・公経済負担の実績と将来見通しの比較」ですが、図表3-1-8をご覧いただきますと、被用者年金制度では実績が将来見通しを上回り、国民年金では下回っていることが示されています。これについては、本文に基礎年金拠出金の実績と見通しの乖離の影響であるということが記載されています。
 図表3-1-9は「運用収入の実績と将来見通しとの比較」です。平成23年度については、私学共済を除いて、実績が将来見通しを上回っています。私学共済については、本文に、実質運用利回りでは実績が将来見通しを上回っているけれども、名目では下回っているといったことが記載されています。
 108ページからは「(4)支出の実績と将来見通しの比較」です。まず、図表3-1-10に、給付費の実績と将来見通しの比較が示されており、各制度とも実績が将来見通しを下回っています。
 基礎年金給付費等につき、実績と将来見通しの比較をしたものが109ページの図表3-1-11です。平成23年度は基礎年金給付費の実績が将来見通しを下回っているということですけれども、右下の拠出金単価でみると、実績が財政検証の数字を6%上回っていることが示されています。
 拠出金算定対象者数について比較していますのが図表3-1-12です。被用者年金制度については、私学共済を除いて実績が将来見通しを下回っていますが、特に国民年金の乖離が大きくなっていることが示されています。
この2つを踏まえて、基礎年金拠出金の実績の将来見通しの比較が行われているのが図表3-1-13です。
 110ページ以下は、「実質的な支出の実績と将来見通しとの比較」です。「実質的な支出」というのは、脚注にありますように、独自給付費と基礎年金拠出金の合計ということです。これにつきましては、図表3-1-14をご覧いただきますと、被用者年金については実績が将来見通しを上回っている一方、国民年金では実績が将来見通しを下回っている、そういった状況が示されています。
 111ページ中程からは、「積立金の実績と将来見通しとの比較」です。これにつきましては、112ページの図表3-1-15をごらんいただきたいと思います。平成23年度末の積立金は、厚生年金では実績が財政検証の見通しを2.9兆円、2パーセント下回っています。国共済+地共済は実績が見通しを5.6パーセント下回っています。私学共済については実績が見通しを3.6パーセント下回っています。国民年金については実績が見通しを1.7ポイント下回っています。図表3-1-15には、こうした数字が示されています。
 実績と見通しの乖離については、111ページの本文に記載があります。すなわち、単純に実績と将来見通しを比較して、そのときの「実績と将来見通しとの差のすべてが年金財政に影響を与えるものとはならない」ということが注意として記載されています。そのほか、共済制度については、簿価ベースで財政再計算が行われており、「簿価ベースと時価ベースで違いがある」ということに留意が必要ということが述べられています。
 113ページからは2節に入り、財政指標について実績と将来見通しを比較している部分です。年金扶養比率、総合費用率、保険料比率、積立比率の4つの指標について、それぞれ実績と将来見通しとの比較がされています。
 まず、年金扶養比率について図表3-2-1に示されており、厚生年金、国民年金ではおおむね同水準となっているが、国共済+地共済、私学共済では実績が将来見通しを上回っている状況が示されています。
 次に、総合費用率について、114~115ページの図表3-2-2を後らにただしますと、被用者年金各制度とも実績が将来見通しを上回っておりますが、この点については、本文に、基礎年金費用について実績が将来見通しを上回ったこと、あるいは分母である標準報酬総額について実績が将来見通しを下回ったこと、が要因であるという説明がされています。
 図表3-2-2では、独自給付費用率や基礎年金費用率についても示されています。たとえば独自給付費用率については、被用者年金制度のうち、私学共済を除いて実績が将来見通しを上回っている状況になっています。
 116ページは「(3)保険料比率の実績と将来見通しとの比較」です。平成23年度については、被用者年金各制度では実績が将来見通しを下回っているが、国民年金では上回っているという状況がこの図表3-2-3に示されており、本文中でその要因が説明されています。
 117ページからは、「(4)積立比率の実績と将来見通しの比較」です。117~118ページの図表3-2-4をご覧いただきますと、被用者年金各制度では実績が将来見通しを下回る一方、国民年金では実績を将来見通しが上回っている状況が示されています。117ページの本文中に、その要因についての記載がされています。
 119ページ以降が3節の「積立金の実績と将来見通しとの乖離の分析」で、ここが乖離分析について記載してある部分です。
 (1)が「乖離分析の方法」、(2)が「乖離分析の結果」ということで、2つのサブセクションで構成されています。
 乖離分析の方法については、119ページ(1)の第2段落に、「積立金の実績と将来見通しとの乖離を、人口要素及び経済要素の乖離並びにこれらの乖離の発生年度別に分解することにより、乖離分析を行う」と、乖離分析の概略が示されています。
 まずは、積立金の乖離を、名目運用利回りの実績が将来見通しと異なったことで発生した乖離とそれ以外、すなわち運用収入以外の収支残が将来見通しと異なったことで発生した乖離に分けるということです。
 さらに、120ページに記述されていますように、名目運用利回りが将来見通しと異なったことの寄与分については、実質的な運用利回りが将来見通しと異なったことの寄与分と、被用者年金制度全体の名目賃金上昇率が将来見通しと異なったことの寄与分に分けます。運用収入以外の収支残が将来見通しと異なったことの寄与分については、名目賃金上昇率、名目賃金上昇率以外の経済要素、人口要素等の3つに分け、それぞれの寄与分を計算したということが記載されています。以上の内容をわかりやすくまとめてありますのが図表3-3-1です。
 乖離分析の結果は122ページに記載されており、具体的な数字は図表3-3-2にまとめられています。例えば、厚生年金につき図表の上段で見ていただきますと、平成23年度末積立金の将来見通しとの乖離が2.9兆円あることについては、平成21年度末の乖離が4.4兆円のプラスであって、平成22年度に係る乖離がマイナス6.5兆円、平成23年度の乖離がマイナス0.9兆円、これらを全体合計すると平成23年度末の乖離マイナス2.9兆円になります。こういったことが各制度別に示されており、平成22年度及び23年度については、いずれも各制度ともマイナス方向の寄与になっていることが示されています。
 同図表では、その年度別の乖離を要因別に細かく見ていますが、例えば上段中ほどの平成23年度のところをごらんいただきますと、左端の列は厚生年金でございますけれども、寄与について見ますと、名目運用利回りに係る部分が1.0兆円、運用収入以外の収支残に係るものがマイナス1.9兆円で、その2つの合計でマイナス0.9兆円となるといった数字が制度別に示されております。こうした結果を踏まえて、本文中では、122ページの一番下に記載の部分ですけれども、「23年度に発生した積立金の乖離について発生要因別にみると、名目運用利回りは、厚生年金、国共済+地共済、国共済及び地共済ではプラス方向に寄与しているが、私学共済はマイナス方向に寄与していること。名目運用利回りのうち、名目賃金上昇率のマイナス方向の寄与が大きく、実質的な運用利回りによるプラス方向の寄与を打ち消していること。運用収入以外の収支残は、各制度ともマイナス方向に寄与していること」等が記載されています。
 図表3-3-2の分析結果を図で示したものが124ページから125ページのグラフですが、これについては省略させていただき、4節の「財政状況の評価」、126ページからの部分について進みたいと思います。
 4節の「財政状況の評価」は、「評価の考え方」、「評価の方法」、「評価結果」の3つのサブセクションで構成されています。
 まず、評価の考え方については、第1段落ですが、「公的年金では、通常の場合、保険料や給付費が名目賃金上昇率に応じて増減することから、積立金が財政検証・再計算の予測から乖離しても、それが名目賃金上昇率の予測と実績の乖離の範囲内にとどまっている限り、長期的な財政の均衡には特に影響しないと考えられる」ということで、従来は、「名目賃金上昇率の前提と実績の当該年度までの乖離の影響を反映させた場合の積立金の推計値」を算出して、「実績の積立金をこれと比較することにより、財政状況を評価してきた」と記載されています。
 しかし、第2段落で、「給付費(総額)が名目賃金上昇率に応じて増減するという前提は必ずしも成り立たない」ということで例が挙げて説明され、第3段落では、「このため、平成22年度から、財政状況の評価は、『名目賃金上昇率の前提と実績との当該年度までの乖離を反映させた積立金の推計値』を算出した上、さらに給付費等のうち賃金上昇率に連動しない部分の将来にわたる影響を推計して補正し、これを改めて『評価の基準となる積立金額』として、実績の積立金と比較することによって行うこととした」と述べられています。ただし、この評価につきましては、「マル1今後の期間に係る経済前提や死亡率等の基礎率は、一切変更がない」こと、「マル2評価の対象とする期間は、直近の財政検証で設定された平成117年度までの期間とする」ことを前提としているため、「この前提を変更した場合には、評価の結果も異なったものとなり得ることに留意が必要である」と記載されています。
 なお、その基礎率については、3つの経済前提や、死亡率、そのほかに脱退率や国民年金保険料の納付率などがあるという旨の注意書きが126ページの脚注に記載されています。
 128ページに記載されている(2)財政状況の評価の方法」につきましては、これはちょっとテクニカルな部分ですので説明は省略させていただき、「(3)評価結果」というところをごらんいただきたいと思います。具体的な数字は図表3-4-2にまとめられています。この表の上の段2つが平成23年度の分、下の段が平成22年度の分ということです。例えば厚生年金について見ていただきますと、実績と「評価の基準となる積立金額」との差はマイナス1.3兆円となっています。それは、将来見通しの数字を100とした場合に、0.9パーセントポイントの乖離であるということですが、平成22年度について同様に見ますと、マイナス1.1パーセントポイントであったということで、平成22年度から23年度にかけて乖離が若干縮小する状況が見てとれるということです。
 同じ部分を各制度について見ていただきますと、22年度に比べ23年度はそれぞれ乖離が縮小する方向に動いているということが示されています。そうした状況を踏まえて、128ページの(3)では、「各制度とも『評価の基準となる積立金額』と積立金の実績額とは、概ね同水準で推移してきていると評価できる。ここで、国共済+地共済において乖離がやや大きくなっているが、これは、財政再計算を簿価ベースにより行っており、積立金の初期値の時価と簿価の差が大きいことの影響が大きい。なお、この評価は、平成24年度以降は、平成21年財政検証・財政再計算の経済前提や死亡率等の基礎率に従って推移すること及び財政均衡期間は平成117年度までとすることを前提としたものであるため、この前提を変更した場合には評価の結果も異なったものとなり得ることに留意が必要である。また、経済前提や死亡率等の基礎率の現時点における妥当性については評価を加えておらず、今後の実績の推移を注視してく必要がある」と述べられています。
 130ページから131ページは、以上の比較について、グラフが示されているものです。
 132ページから137ページまでは、実績と将来見通しの比較、乖離の要因分析に関する技術的な内容が参考1、参考2として記載されており、138ページからは参考図表です。
 資料1-4は付属資料ですので、説明は割愛させていただきます。
 次、資料2の要旨案をごらんいただきたいと思います。要旨案の構成は、1が「財政収支」、2が「被保険者」、3が「受給権者」、4が「財政指標」、5が「実績と平成21年財政検証・財政再計算との比較」となっています。
 1の「財政収支」につきましては、まず、先ほど資料1-2、第2章で説明いたしました財政収支状況の制度全体の表を図表1に掲載し、その内容を1段落目で解説するという構成になっています。
 次に、保険料収入と給付費につきましては、図表1の制度全体の数字の制度別の内訳を記述するとともに、前年度に比較した増減についての記述になっています。
 次に、積立金につきましては、図表1に示された制度全体の金額の制度別の内訳を一番下の段落に記載すると同時に、2ページ目の図表3で、前年度に比較した具体的な増減も制度別に示すという形になっています。
 最後が、2ページ目の一番上の「単年度収支状況」です。ここは、第2章1節で出ておりました単年度収支状況の制度全体の数字を図表2として掲載し、その内容を文章にて解説するという構成になっています。
 次に、2が「被保険者」ということですが、公的年金制度全体で6,775万人という被保険者数につき制度別の数字を示すとともに、その増減について記述されています。
 また、1人当たり標準報酬総額については、制度別の数字を示すとともに、その増減についても記述し、あわせて、標準報酬月額についての記述もしているということです。
 3の「受給権者」につきましては、受給権者数の制度別の数字を示すとともに、増加が続いているという記述が加えられています。老齢・退年相当の年金の平均年金月額についても、制度別の数字を示すとともに、前年度と比べた増減について記載されています。
 4の「財政指標」については、年金扶養比率と総合費用率について制度別の数字とともに、前年度に比べた増減が示すという形になっています。
 最後は「5 実績と平成21年財政検証・財政再計算との比較」です。ここでは、実績と将来見通しとの比較ということで、まず、どれだけの乖離があるかを図表4に示し、そして、本文の第2段落目では、乖離分析の結果として「名目賃金上昇率の実績が将来見通しの前提を下回っており、積立金の実績が将来見通しを下回る方向に作用している」こと等が記載されています。
 財政状況の評価の部分は、先ほど第3章の最後のところで読み上げました部分の要約になっているわけですが、読み上げますと、「公的年金では、保険料や給付費など収支両面とも長期的には概ね名目賃金上昇率等に応じて増減することから、積立金に名目賃金上昇率の違い等による乖離が生じても、全体の財政規模が相似的に拡大、縮小するだけであり、長期的には財政的にあまり影響がないと考えられる。そこで、積立金の将来見通しを名目賃金上昇率の違い等について補正し、評価の基準となる積立金額(推計値)を算出、これと積立金の実績とを比較し実質的な乖離をみることにより、財政状況の評価を行った。すべての被用者年金制度において、評価の基準となる積立金額と積立金の実績とは、概ね同水準で推移してきていると評価できる。ここで、国共済+地共済において乖離がやや大きくなっているが、これは、財政再計算を簿価ベースにより行っており積立金の初期値の時価と簿価の差が大きいことの影響が大きい。なお、この評価は、今後の経済前提や死亡率等の基礎率を変更しないことを前提としたものであることに留意が必要であり、今後の実績の推移を注視していく必要がある」と述べられています。
 以上でございます。

○山崎部会長
 どうもありがとうございました。お疲れさまでございました。
 ただいまの説明につきまして、御質問、御意見ございますでしょうか。
 野上委員、どうぞ。

○野上委員
 ありがとうございました。
 報告書に関しては、今まで作業班で事務局の方ともいろいろ意見交換させていただきましたので、私としては了承させていただきたいと思います。
 蛇足ではございますが、若干わかりにくいようなところもあるかもしれませんので、補足的に意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、結論部分ですけれども、今後の推移などを注視していく必要があるというところですが、ここは一般論としてはさっと聞き流されるようなものでございますが、若干コメントを付したいということでございます。
 まず、今回の3年間は、リーマン・ショックの直後の2009年から始まったということでございまして、ある意味では、運用利回りに関しては非常にやりやすいといいますか、マイナスの大きな幅の中からスタートしましたので、運用に関しては比較的回復しやすい期間だったと思います。
 一方、賃金とか、よく話題になりますが、いわゆる納付率とかに関しては、まだまだ回復途上にない。特に実質賃金上昇率に関しては、ここ3年間、シミュレーションに比べますと、差でいいますと5ポイント以上の乖離が生じているということでございます。納付率をみても、働く世代といいますか、年金の制度でいいますと、支える世代が非常に弱っているということでございます。これが将来的にどういう影響をするかを考えてみますと、いわゆる支える世代が弱くなっている一方で、年金受給者といいますか、それは引退して年金を受け取っておられるだけなので、寿命が延びるに従って受け取る額は基本的には変わらないということでございます。
 今、御説明がありましたように、受給者に関しては、基本的に物価に連動して変動している。支える世代はどれだけお金を払うかといいますか、保険料を払う、あるいは税金を払うということでございますが、そっちの力が弱っているということは、年金制度でいいますと、いわゆるマクロ経済スライドの適用年限が、前回行ったシミュレーションよりもさらに長期化するおそれがあるのではないかということを懸念いたします。こういうことに関しては、今の手法では、大丈夫ですと言い切れるようなものではないかなと思っております。その点に関しては、次回のシミュレーションが2014年に始まりますので、その段階でちゃんと検証する必要があるということだと思います。
 ここから先は参考の話なのですけれども、他の国でこういうことをどうやっているかちょっと調べてみたのです。アメリカでは、実は我々がやっているようなシミュレーションを毎年やっております。これはインターネットでダウンロードしたものをプリントアウトしてきたのですけれども、まさに2011年12月末段階で、今、我々が報告しているのとほぼ同じ、3カ月ずれですけれども、アメリカではこれを2012年4月に報告しておりまして、かなり早く、3カ月ちょっとでシミュレーションを含めてやっている。しかも、毎年やっている。多分、毎年やっているから、効率的にできるという面もあるかと思うのですけれども、こういう形でやりますと、結果が非常にわかりやすいというのが最大のメリットかと思います。
 ちょっと長くなりますが、例えば彼らの結論としては、シミュレーションは老齢年金と障害年金を分けてやっておりまして、老齢年金の積立金は2033年になくなりそうだ、障害年金は2016年になくなるので早く何とか手当しろという結論を出しておりまして、非常にわかりやすい。隣の芝生が青いということはあるかもしれませんが、参考にすべきような制度ではないかと思います。
 毎年、計算、シミュレーションをするのは大変だというのは、今までは公的年金というのは4制度に分かれておりましたので、仮にやりたくてもできなかったというのが言えると思うのです。今後、被用者年金に関しては少なくとも一元化されますので、やりやすい環境にはなりつつあるのかなと。いろいろな面で違いはありますが、高齢化とかの面ではアメリカよりも日本の方がシビアでございますので、そういう意味では、アメリカ以上にこういう体制に関しても整えていく必要があるのではないかなということでございます。
 以上でございます。

○山崎部会長
 ありがとうございました。参考になるかと思います。
 そのほかにございますでしょうか。
 田中委員、どうぞ。

○田中委員
 まず、若干質問をしたいと思います。3点ほどあります。
 1つは、40ページで、厚生年金の1人当たり標準報酬額が増加しているのですが、他の制度では増加をしていないのです。ずっと下がってきて増加をしたということなのですが、考えられる理由を教えていただきたい。
 2点目に、厚生年金もそうなのですが、被保険者数が増えている制度があるのですが、基礎年金拠出金の対象者数は減っているのです。この乖離というのは、単身者が増えたと解釈してよいのかという点です。これが2点目です。
 101ページの受給者数の実績と予測との差異なのですけれども、私学共済だけ見込みとの差が非常に大きいのですね。33%ぐらいの差があると記載されておりますが、この理由もちょっと教えていただきたい。
 この3点でございます。

○清水首席年金数理官
 今の田中委員の御質問でございますけれども、最初は40ページのところでございます。これは、1人当たり標準報酬額ということでございますので、月額に直してございますが、ボーナス込みの年収でございます。それが実績として増えたということでございます。その理由は何かと言われれば、増えたとしか申しようがないということでしょうか。

○田中委員
 景気回復というのはまだおくれているという話だったのですけれども、増えているのはなぜかということでございました。

○清水首席年金数理官
 もう一つは、基礎年金の拠出金の・・・。

○田中委員
 まず被保険者数は厚生年金は増加しているのですね。ところが、基礎年金拠出金の対象者数は、第3号被保険者も対象となっていたと思うのです。つまり、第2号と第3号の合計は減っているのですね。つまりは、第3号被保険者の数が減っているのかということなのです。つまり、単身者世帯が増えているのかなという疑問です。

○山崎部会長
 何ページでしょうか。

○田中委員
 基礎年金拠出金のところです。

○清水首席年金数理官
 33ページに、分析というわけではないのですが、実績の数字が出てございまして、基礎年金拠出金算定対象者数ということで見ましたときに、私学共済はちょっと別でございますけれども、減少傾向が続いている。そういったところがごらんいただけるということで、それが何で減っているのかというご質問でしょうか。

○田中委員
 いや、被保険者数が増えているけれども、対象者数が減っている傾向なので。基礎年金拠出金対象者というのは、第2号と第3号の・・・。

○清水首席年金数理官
 算定対象者数というのは、基本的に20歳から60歳までの部分でございますので、全体の数字とは違ってくる部分もあろうかと思います。

○田中委員
 そういうことなのですか。

○清水首席年金数理官
 はい。

○山崎部会長
 60歳以上がきいてきますかね。高齢者の雇用が進めば、被保険者数は増えても20歳から60歳は増えないと。

○田中委員
 誤解しておりました。傾向が違うということでよろしいですね。

○清水首席年金数理官
 最後は、101ページの受給者数の実績と将来見通しの比較というところで、私学共済でこれだけ乖離があるのはなぜかという御質問だったかと思いますが、これは、財政再計算のときの前提の置き方が影響しているのではないかと思われます。保守的な前提を置けば乖離が大きくなる場合もあります。本当に自然体の前提を置いた場合と、そこはどうしても違いが出てくるということです。(注:待期者をすべて受給者にしていることが原因と思われる。)
基礎率の置き方に関する考え方については、制度によって今のところ違いもあって、そういったことが出ている部分の1つではないかと思われます。

○田中委員
 ほかの制度と比べて乖離がちょっと大き過ぎるので改善してほしいということです。
 以上です。

○山崎部会長
 では、佐々木委員、どうぞ。

○佐々木委員
 報告書については、まとめていただいたので特にないのですが、今後の実績を注視していくということで、例えば138ページの参考図表の図表1に「物価上昇率と名目賃金上昇率の推移」ということで8年間出ているのですけれども、これを足し算しますと、物価が8年間の累計でマイナス1%。賃金は、マイナス4.1%というのは恐らくリーマン・ショックでちょっと異常かもしれませんが、要するに物価とほぼ同率ぐらいの下落というのですか。今、平成21年財政検証では、物価が1%で賃金が2.5%ということで実質1.5ですね。来年、平成26年がちょうど財政検証の年になると思うのですが、ベースをどう置くかということも必要だと思うのです。先ほど乖離分析がありましたように、感応度というのですか、物価に対して全然上がらない場合はどうなのか。0.5で上がればどうなのかということですね。そういった分析をぜひやっていただいて、制度の安定のための財政構造を来年度ぜひ取り組むことが必要ではないかということで、1点だけお願いしたい。
 以上です。

○山崎部会長
 牛丸委員、どうぞ。

○牛丸委員
 報告書の内容に関しては、私も事前にいろいろコメントをさせていただいて、修正されておりますので、今回提出されたもので問題ありません。毎回といいますか、毎年、この公的年金財政状況報告書が出されるときに同じような意見を申し上げるのですが、今年も新しい内容が若干入っております。我々もそうですけれども、とりわけ、事務局の方が苦労されてつくり上げたわけですので、ぜひこれをいろいろな意味で活用していただきたい。実際には、どこの審議会でどうなるかわかりません、実務的というか、そういうところでも活用していただきたい。加えて、一般の方々にもなるべくわかっていただけるように、そういう手だてをできるだけ考えていただきたい。我々ももちろんですけれども、先ほど言いましたように、事務局の方がこれだけ苦労されて、これだけいいものができておりますので、ぜひそれを何らかの方法で多くの方々に読んでいただけるようにしていただきたい。お願いいたします。

○山崎部会長
 よろしいでしょうか。
 今後に向けていろいろ貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。報告書そのものにつきましては、修文が必要との御意見はなかったわけでございますので、これをもちまして、本部会の平成23年度公的年金財政状況報告とさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○山崎部会長
 異議ないものと認めます。
 それでは、本部会の報告とさせていただきます。
 事務局より今後の日程等についてお願いいたします。

○清水首席年金数理官
 今後の日程につきましては、調整して御連絡申し上げますので、よろしくお願い申し上げます。

○山崎部会長
 本日はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)

照会先
厚生労働省年金局総務課首席年金数理官室 (代)03-5253-1111(内線3382)

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