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2013年2月20日 化学物質のリスク評価検討会の「第7回有害性評価小検討会」

労働基準局安全衛生部

○日時

平成25年2月20日(木)14:00~16:00


○場所

厚生労働省 19階 専用第23会議室


○議事

○瀧ヶ平室長補佐 本日はお忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより平成24年度第7回有害性評価小検討会を開催いたします。本日、高田委員が都合により御欠席です。本日の進行は、座長の大前先生によろしくお願いいたします。
○大前座長 今日は議事が3題ありますので、何とか上げたいと思っております。御協力よろしくお願いします。最初に、事務局から資料の確認をお願いします。
○瀧ヶ平室長補佐 資料1は「職場で使用される化学物質の発がん性スクリーニングについて」という冊子です。資料2は「国が行う長期発がん性試験の試験方法について」ということで1枚紙です。資料3は「発がん性評価の推進のためのワーキンググループについて(案)」です。資料4-1は「平成25年度発がん性試験候補物質(案)」についてです。資料4-2は「遺伝毒性試験の結果」について。資料4-3は「フィージビリティテストの実施結果について」。資料5は「リスク評価の実施予定について」。資料6-1はA3の横長です。資料6-2は「DEHPに関するIARCの発がん性評価について」。
 そのあとに参考資料が付いており、参集者名簿、参考資料2は「国が実施する発がん性試験について」。参考資料3-1は「有害性総合評価表」の冊子。参考資料3-2はDEHPの「有害性総合評価表」の冊子です。参考資料4は机上配布にしておりますが、「提案理由書等」が付けてあります。参考資料5は「職場で使用される化学物質の発がん性スクリーニングにおいて動物実験の代替・削減の方針を明確に定めることを求める要望書」を付けております。資料の過不足がありましたら言ってください。
○大前座長 いかがですか。早速、最初の議題に入りたいと思います。「発がん性評価推進のためのワーキンググループについて」、事務局から説明をよろしくお願いします。
○松井化学物質評価室長 資料1と資料2が、昨年の秋から年末にかけて、化学物質の発がん性の評価の加速化ということで御検討いただいたものの最終版です。役所のほうでは、この方針に沿って、来年度から有害性情報の収集とエームス試験などの実施、さらに中期の肝発がん性試験の実施、それに加えて長期の発がん性試験の新しい方法での実施を進めていく予定としております。それに当たり資料3ですが、いろいろなところで専門家の知見を得て進めないと、なかなか難しいところがありますので、昨年末の前回の小検討会で御提案したとおり、遺伝毒性と発がん性の評価、それぞれの御専門の方のワーキンググループを設けて、来年度以降、推進したいと考えており、前回の資料をもう少し具体化した資料をお配りしております。
 資料3の1ページは、今申し上げたようなことを書いており、別紙1が発がん性評価のワーキンググループです。2「検討内容」ですが、併せて資料1の5ページに付いている別紙のフローを参考に御覧いただければと思います。
 検討内容の(1)ですが、発がん性の可能性の評価基準の決定ということで、別紙のフローの左側に真っ直ぐ下りている線がありますが、既存の情報で発がん性の証拠があるものについて、例えばIARCの発がん性評価区分の2B以上に相当するようなものは、指針やリスク評価にそのままいけるのではないかということ。数は少ないかと思いますが、既存の「短期・中期発がん性試験」の報告があるようなものについては、場合によっては「長期発がん性試験」の候補にそのままなるのではないかということで、(1)の発がん性の可能性の評価基準の決定の??は、今申し上げたようなことで検討項目として書いております。
 (2)ですが、そういった評価基準に沿って評価した結果の確認と、物質によっては議論が必要な物質が出てくると思いますので、そういったものの評価をお願いするということです。
 3ページですが、(3)スクリーニング試験対象物質の優先順位の決定等ということで、フロー図の試験の実施ですが、真ん中辺りの遺伝毒性の有無や強さの関係は、別の遺伝毒性の御専門の方のワーキンググループでお願いをするということです。右側にある遺伝毒性のない物質のスクリーニングについては、まだいろいろ議論を頂くべきところがあります。昨年の検討においては、in vitro形質転換試験と遺伝子の発現量測定による発がん性予測試験ということで、それぞれ開発されたり実施されている方に来ていただいてお話を伺いましたが、必ずしもこれという決定をまだできていないということもありますが、まずこういった試験に掛ける物質の優先順位を検討していただくということ。中期肝発がん性試験、伊藤法で陰性となった物質の取扱いについても検討いただく必要があるということがあります。
 3ページの中ほどの注書きにありますが、長期発がん性試験の対象物質の選定は、引き続き有害性評価小検討会においてやっていただいてはどうかと考えております。また、櫻井先生が座長の「リスク評価に係る企画検討会」で、従来は発がん性試験の対象物質を選定していただいていたわけですが、今回こういうスクリーニングを実施する中にあっては、中期肝発がん性試験、伊藤法による試験の対象物質の選定を企画検討会でやっていただいてはどうかということで、来週開く企画検討会に提案したいと思っております。
 (4)の試験方法等ですが、?は先ほど申し上げた非遺伝毒性発がん性物質のスクリーニング試験で、そもそもどのような試験がいいのかということ。あるいは、試験方法の細部について、検討を頂く必要があるということです。付け加えて申しますと、この非遺伝毒性発がん性物質のスクリーニング試験については、来年度からすぐということにはなりませんで、平成26年度以降からの実施を目指して検討いただくというように考えております。
 ?ですが、中期発がん性試験の種類の決定ということで、フロー図の中ほどから少し下の短期・中期発がん性試験の下に、「肝発がん性試験を優先的に実施」と書いた部分があります。ただ、物質によっては標的臓器が肝臓でないことが明らかなものもあるのではないかということで、そういったものも勘案して、肝発がん性試験でいいかどうかという確認と、肝臓以外の場合はどうするかということを検討いただく。
 ?として、中期肝発がん性試験については、用量設定方法とか試験個体数などについても決めておいて、委託の試験に入る必要があるということがあります。
 4ページの?ですが、伊藤法で陰性となった物質については、必要に応じて多臓器発がん性試験などのほかの2段階発がんモデルによる試験を実施するとしておりましたが、この部分について具体にどうするか、こういったものが出てきたときに御検討を頂くことがあります。
 ?として、長期発がん性試験については、資料2で御検討いただいた結果を取りまとめているわけですが、長期の試験、中期の試験、それぞれどういう動物種にするかとか、特に中期の試験の細部の検討が必要になることがあります。
 (5)は、スクリーニング試験及び発がん性試験の結果の評価を頂くということです。下のほうに注書きがありますが、長期発がん性試験全体の結果の評価については、有害性評価小検討会で引き続き行っていただいてはどうかという案です。
 (6)として、発がん性の構造活性相関については、まだ十分に使えないということがありましたので、得られる材料を基にその可能性について、更に検討いただくということがあります。
 (7)のその他は、今は想定できていないですが、ひょっとして必要になるようなことがあったらということです。
 5ページの3「構成」ですが、西川先生に座長をお願いして、そのほかに昨年の秋から年末にかけての検討に加わっていただいた小野寺先生、津田先生、吉田室長、新たに静岡県立大学の若林先生にお願いしております。
 6ページですが、「遺伝毒性評価ワーキンググループの設置について」です。2「検討内容」ですが、遺伝毒性の有り・無しの決定、遺伝毒性の強さを用いて化学物質のスクリーニングをすることにしておりますので、まず遺伝毒性の評価基準を検討いただく必要があるということで、?はそれぞれの試験の「陽性」「陰性」あるいは「強い」「弱い」と。これは既存の判断基準もありますので、そういったものを参考にして検討いただくということがあります。
 ?がかなり難しいのですが、同じ試験で複数の試験結果がある場合とか、複数の種類の試験の試験結果の情報がある場合、こういったものでどれを優先をしてというところの検討、ある程度基準を決めていただくことが必要になります。
 ?として、構造活性相関による評価の基準があります。
 (2)として、今申し上げたような基準を検討していただいた結果、基準に沿って評価をした結果の確認を頂いて、こちらも複数の試験結果があるような場合、個別に判断をする必要がありますので、そういったことを検討いただく。
 (3)として、エームス試験の実施をする場合、恐らくスクリーニングをしていくと、予算的に実施できる試験数よりは、かなり多くの物質が出てくることが考えられますので、どの物質からやっていくかということで、具体的にはその年度に行う対象物質の選定をしていただくということです。
 (4)その他として、同様に今は想定できていないけれども、何か専門家の御判断が必要な場合にはお願いをするということです。
 3「構成」としては、清水先生に座長をお願いして、中災防の荒木課長、東京薬科大学の太田先生、国立衛研の本間部長と山田室長にお願いをしております。
 このようなことで、来年度以降、有害性評価小検討会の中に2つワーキンググループを設けて、発がん性評価の推進について、専門的な知見から御意見を頂くということで進めたいと考えております。以上です。
○大前座長 この委員会の下にワーキンググループを2つ作って、それぞれ遺伝毒性、発がん性です。それで、どんどん進めていこうということですが、何か御意見、あるいは御質問はいかがでしょうか。
○津田委員 中期発がん性試験で陰性となった場合、前回では多臓器発がんにもっていくということでしたが、この場合、今後どのように取り扱われるのでしょうか。
○松井化学物質評価室長 必要に応じて、必要かどうかということを検討いただくのですが、それに当たっては事務的な要因として、予算上等で受入れのところで実施できるかどうかという若干の制約と、ほかの臓器の中期試験を行う場合に多臓器が最も良い候補にはなっているのですが、もっと臓器に関して情報が出てきた場合に、どういう臓器での中期試験を行うかということが想定されます。
○津田委員 IARCの調査によると、評価した動物で発がん性が明らかとなったうちの59%が肝臓が標的であり、残りが肝臓以外を標的とするということです。したがって、その残りが積み残しになるおそれがあるので、それを短く安化に実施する必要があります。動物数の削減ということもあることを考えると、私はやはり多臓器試験が一番安くいけるのではないかと思うのですけれども。
○松井化学物質評価室長 それは取りまとめの中にも多臓器発がん性試験を含むという形で、試験の種類自体は書き込んでおりますが、必ずしもそれに限らないという御意見もありましたので、そこはワーキンググループで議論を頂くということで考えております。
○大前座長 多分、今のは3ページの(4)の?の「中期発がん試験の種類の決定」、この辺のところで海外の何らかの情報があれば、その情報に基づいて標的臓器についての検討を行うということなので、そこのところでこのワーキングで御議論していただくのかという感じでおります。必ずしも全部肝がんをやって、それでという話ではないというようにここは読めるわけですが。必ずしも中期肝発がん性実験のみではない。
○津田委員 もちろん、そうですね。陰性になった物質でも4、5割ぐらい疑いが残るわけで、そこを救うその次の方法としては、動物であれば遺伝子改変動物か、今言ったような2段階法でほかの臓器を見るという方法しかないと思うのですけれども。確かに予算のこともありますが、ある程度分かるように書いておかれたほうが良いと思います。その都度使うモデルが違うというと、また結果の信頼性にも関わると思います。
○松井化学物質評価室長 この部分については、資料1の3ページの真ん中から下よりの(5)のイの3行目ですが、「肝発がん性試験で陰性となった場合は、必要に応じて、げっ歯類を用いた、多臓器発がん性試験を含むその他の2段階発がんモデルによる試験等」ということで、確かに「等」がたくさん付いていますが、想定しているものは一応こういうものだということです。
○津田委員 分かりました。
○西川委員 1つ確認で、ワーキンググループで何をやったらいいかということなのですが、資料3の2ページから、2「検討内容」として(1)から(7)まであるわけです。ざっと見たところでは、(3)と(4)が主な仕事になるのかと思ったのですが、それでよろしいでしょうか。
○松井化学物質評価室長 はい。事務局でもそのように考えておりますが、(1)の既存情報による評価は、数は少ないですが検討の分量といいますか、そういうものが結構あるのかなということもあります。
○西川委員 それもワーキンググループの仕事なのですか。
○松井化学物質評価室長 一応、スクリーニングから外す物質というので、できるだけ。既にIARCの2Bのようなものは、ほぼ何か問題がなければ外していけるのですが、若干境目にあるような、例えばほかの機関の分類で結構上位に入っているものをどうするかというところがあります。
○西川委員 分かりました。飽くまでも案を作っていただいて、それが妥当かどうかを判断するという理解でよろしいでしょうか。
○松井化学物質評価室長 そうですね。それは事務局で作成しまして。ただ、本当に境目のところは、やはり専門家の御判断を頂かないといけないということでお願いしたいと思います。
○西川委員 分かりました。
○大前座長 そのほか、いかがですか。
○西川委員 遺伝毒性試験についてですが、エームスとin vitroの染色体異常試験でスクリーニングするということですが、ケース・バイ・ケースでvivoの試験を取り入れることは考慮されていないでしょうか。
○松井化学物質評価室長 既存情報は、vivoの試験結果があれば相当有力な情報になりますので、収集に当たってはもちろん含めると考えております。実際の試験実施については、今のところエームス試験の実施のみということで、少なくとも平成25年度は考えております。
○西川委員 分かりました。
○大前座長 そのほか、いかがですか。特に御意見がなければ、今回出していただいた案に基づいて、平成25年度から発がん性の評価を加速していくということですが、よろしいですか。
(了承)
○大前座長 どうもありがとうございました。2番目の課題ですが、「平成25年度開始の長期発がん性試験対象物質の選定について」、説明をよろしくお願いします。
○大淵有害性調査機関査察官 説明をさせていただきます。資料は資料4-1、資料4-2、資料4-3、参考資料2です。参考資料2から説明いたします。この資料は今までも何度か使っている資料ですが、若干変更の点がありますので、それを含めて説明いたします。国が実施する発がん性試験ですが、労働安全衛生法に基づいて国の援助ということで行っているもので、従来行ってきている物質については、この資料の最後の4ページにあります。
 この試験の実施に当たってのスキームを簡単に説明しますが、2ページです。発がん性試験の実施から措置までのフローですが、法律に基づいて国が発がん性試験を実施すると。その結果をこちらの有害性評価小検討会で評価いただいて、労働者にがんを生ずるおそれがあるものについては指針を作成することになります。また、企画検討会に提案してリスク評価に進めていくということもあります。
 それの大前提となる発がん性試験の実施ですが、3ページに別紙1があります。実際に発がん性試験は最終的には104週間、2年間の試験を行いますが、その予備試験として2週間試験、13週間試験があります。さらにその前段階として、化学物質が試験用のガスがきちんと一定の濃度で発生することができるかどうかを調べるためのフィージビリティテスト、動物を用いずに、化学物質の発生がうまくできるかどうかだけを調べるテストを行っており、その実施が済んだ物質の中から発がん性試験に進む物質を先生方に選んでいただく、といったスキームにしております。
 3ページの図ですが、従来と異なっている点があります。従来は試験についてはラット・マウスとも2週間、13週間、104週間というスキームで、2種類の動物について同じスキームで動かしてきたわけですが、平成25年度から先ほど松井室長から申し上げた新しいスキームを転がしていくという関係があって、2種類とも104週間試験までということではなくて、1種類については従来どおりのスキーム、もう1種類については中期・短期の試験をするということで進めていく予定としております。具体的にどの物質を長期で、どの物質を中期・短期でやるかということについては、先ほど説明がありました発がん性評価のワーキンググループで4月以降決めていただくことになりますが、本日の検討会においては、このスキームで進める物質の物自体の選定をしていただくということでお願いをしたいと思っております。
 具体的な候補物質については、資料4-1からになっております。資料4-1に全部で7物質記載してあり、こちらは今までにフィージビリティテストを行った物質のうち、もう既に発がん性試験のスキームに進んだ物質はリストから外してあります。フィージビリティテスト済みでまだ発がん性試験に進んでいない物質が全部で7物質あって、こちらにまとめてあります。名前だけ申しますと、1番として酢酸エチル、2番としてエチレングリコールモノエチルエーテル、3番として酢酸ノルマル-ブチル、4番としてアリルアルコール、5番として2-ブロモプロパン、6番として1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、7番としてブチルアルデヒドという物質です。この7物質のうち、ブチルアルデヒドが今回新しく追加された物質ということで、平成24年度にフィージビリティテストが終わったため、こちらに追加しております。
 これらの物質の資料について、1つずつ順に説明します。特に中心的に説明するところとしては、化学物質の物性、特に蒸気圧の辺り、製造・輸入数量、用途、遺伝毒性の状況等で、必要に応じて代謝関係の情報の説明が必要なところは、そういったところもさせていただきたいと思っております。
 1番の「酢酸エチル」ですが、無色の液体で、蒸気圧が12.4kPaです。製造・輸入数量は、化審法で事業者に製造・輸入数量の届出を要求しているもので、平成22年度の実績で300万tということです。用途としては、塗料、印刷インキ等々ということです。遺伝毒性試験の概要ですが、エームス試験は陰性、染色体異常試験が陽性、in vivoの小核試験が陰性となっております。
 詳細の説明は省略するのですが、遺伝毒性に関係しては、今回、日本バイオアッセイ研究センターに詳しい資料を作ってもらい、それが資料4-2です。資料4-2については、遺伝毒性の関係だけの情報を一覧表で1ページにお示ししており、「まとめ」と「バイオアッセイでの試験結果」はエームス試験と染色体異常試験の関係だけですが、「遺伝毒性の概要」はエームス、染色体異常だけではなくて、ほかの遺伝毒性の試験の情報もMEDLINE等で検索して、それを整理したものをこちらにまとめております。資料4-2の2ページ以降に各物質の細かいデータもお示ししておりますので、必要があるときに参考にしていただければと思っております。
 資料4-1の酢酸エチルの続きですが、遺伝毒性試験の概要まで説明しました。項目として最後の留意事項ですが、毒性が比較的低いため、もし発がん性試験をしようとすると、高濃度での試験となるということが1つ。類縁の物質、酢酸イソプロピルという物質については、既にバイオアッセイでの試験が実施済みで、こちらは平成21年にこの小検討会で評価いただいて、雄ラットで閾値のあるがん原性物質であるということです。結果的に陽性ではあるのですが、こういった状況ですので、がん原性指針の対象にはしなかったという状況です。
 2番目の物質、「エチレングリコールモノエチルエーテル」については、無色の液体で、蒸気圧が0.51kPa、製造・輸入数量が1,000t。用途としては、各種樹脂用溶剤、医薬品用抽出剤などとなっています。遺伝毒性の試験は、エームス試験は陰性、染色体異常試験が-S9では陽性、+S9では陰性・陽性の結果、両方があります。留意事項ですが、類縁化学物質であるエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに関して、現在日本バイオアッセイ研究センターで試験を実施中ということです。そういう点から考えると、この試験の結果が明らかになってから、こちらの物質はどうするかということを改めて考えるほうがよろしいかと考えます。
 3番目の「酢酸ノルマル-ブチル」は、透明の液体で、蒸気圧が1.53kPa、製造・輸入数量は5万tです。用途としては、溶剤、人造真珠の塗料、合成ゴムです。遺伝毒性試験の概要は、エームス試験、染色体異常試験とも陰性の結果となっております。1番の物質と同様に、類縁物質が酢酸イソプロピルという状況があります。
 2ページです。4番「アリルアルコール」は無色の液体で、蒸気圧が2.5kPa。製造・輸入数量ですが、化審法に製造・輸入数量を届け出ている会社が2社ないしは1社ということですので、こういったものについては数量を公表しないとなっており、具体的な数字は把握できておりません。用途ですが、ジアリルフタレート樹脂・医薬・香料・難燃化剤などの原料ということです。遺伝毒性試験ですが、エームス試験については陽性・陰性、両方の報告があります。染色体異常試験については、陽性の結果が出ております。D20値としては0.0062、これは国が行った試験結果です。そのほかの試験では、in vivoの小核試験、ここでは2つの試験が出ておりますが、いずれも陰性という情報もあります。留意事項は、この物質は代謝されるとアクロレインとアクリル酸ができるということです。そのうち、アクリル酸については既に試験が終了しており、平成23年の評価で、ラット・マウスともがん原性なしという評価でした。アクロレインについては試験実施中ということです。
 5番目の「2-ブロモプロパン」は、無色の液体で、蒸気圧が28.9kPa、輸入数量は1,000t未満ということです。用途は、農薬・医薬中間体、各種有機合成用ということです。遺伝毒性試験は、エームス試験が陽性です。ただ、最大比活性値は1,000まで行かずに212ということです。染色体異常試験も陽性ですが、D20値が0.58ということで、必ずしもそれほど低くはありません。小核試験の関係では陰性というデータがあります。留意事項ですが、物性的なことで、皮膚吸収が大きいという情報があります。
 3ページです。6番目「1,3,5-トリスグリシジル-イソシアヌル酸」については、他の6物質と異なって白色の固体の物質です。固体ですので、蒸気圧は非常に低い値となっております。製造・輸入数量ですが、5,000t。用途としては粉体塗料、はんだレジストインク等々です。遺伝毒性試験ですが、エームス試験は陽性で、最大比活性が2,640、染色体異常試験も陽性で、こちらも非常に低い値で、D20値が0.00013と、遺伝毒性はかなり強い物質です。こちらの物質は試験の実施上の制約が若干あるということを留意事項に書いてあります。この物質は粉体状の物質で、試験装置としては粉体専門の装置が必要なわけですが、一方でフィージビリティテストについて、平成25年度は酸化チタンを前年度に引き続いて予定しているということで、フィージビリティテストに使ってしまうと、発がん性試験の第1ステップである2週間試験などを行うための施設がちょっと足りないという状況があります。
 7物質目、「ブチルアルデヒド」ですが、今回リストに追加した物質で、物性としては無色の液体で、蒸気圧が14.8kPa、製造・輸入数量はブチルアルデヒド単独ではなくて、アルカナール、炭素C=4から19の合計ということですが、6万tです。用途は、合成樹脂原料、2-エチルヘキシルアルコール原料等です。遺伝毒性試験は、エームス試験は陰性、染色体異常試験が陽性ということで、D20値が0.021です。小核試験は陰性の情報があります。NTPで2週間、あるいは13週間のラット・マウスの経口試験等がやられているのですが、留意事項にあるように、NTPでは13週間試験の報告書は出さないということがNTPのホームページに書かれております。
 補足として、フィージビリティテストの実施結果が資料4-3です。こちらについて簡単に説明いたします。試験用のガスの発生が十分できるかどうかを検討していただいておりますが、今回7物質についての結果を書いてあります。1番から6番の物質については、昨年度までの検討会の資料にもあり、説明は省略させていただきますが、いずれの物質も十分、発がん性試験ができるような状況です。7番目の「ブチルアルデヒド」は平成24年度にフィージビリティテストを行いましたので、その部分だけ読み上げさせていただきます。
 ブチルアルデヒドについては、ばく露目標濃度を30ppmと3,000ppmの2濃度に設定し、6時間のばく露時間で発生検討試験を行った。その結果、被験物質を清浄空気でバブリングし、蒸発させ、清浄空気と混合する方法により29.6±3.8ppmと2,964.9±96.5ppmの精度でばく露できた。なお、目標濃度は、ラットのLC50値が4時間ばく露で6,400ppmと報告されていることから、3,000ppmを本試験の高濃度とし、その1/100の30ppmを低濃度としたということです。
 参考で先ほども申し上げましたが、平成24年度はフィージビリティテストをもう1物質手掛けており、酸化チタンのアナターゼ型をやっておりますが、こちらはまだ検討途中で、平成25年度も引き続き実施する予定です。長くなりましたが、説明は以上です。
○大前座長 今、7物質の説明をしていただきましたが、この中で今日は1つを選ぶ作業をお願いしたいと思います。今までは遺伝毒性があるかないか、もちろんCLPがあるかないかは重要な問題ですが、それプラス遺伝毒性があるかないかということ。それから既に終わっている物質との関連ということで判断をしてきておりますが、今回はどれにしましょうか。
○松井化学物質評価室長 少し補足ですが、資料1でお配りしておりますスクリーニングについて、昨年おまとめいただいた方向ですが、今回は既に吸入試験ができる物質をフィージビリティ試験を行っておりますので、この物質から選んでいただくということです。できるだけおまとめいただいた方向の要素を反映するのがいいのかなと事務局では考えておりまして、資料1の5ページの先ほどのフロー図ですと、「短期・中期発がん性試験」というのが、今回の物質については行われておりませんので、その前段の遺伝毒性の強さというところが、情報としては先ほど説明したとおりです。それから遺伝毒性なしの試験は、当然行われておりませんので、遺伝毒性の強さというところが、1つの要素として残ります。
 それから、4ページの上のほうのイですが、長期発がん性試験は、対象物質の中ではとありまして、試験の結果から、物質の性状(蒸気圧等)から労働者のばく露が大きい可能性のある物質、製造・輸入量の多い物質等を優先して行うことにしておりまして、今の説明の中で、蒸気圧、それから製造・輸入量というところを重点的に説明をしたところです。
 なお、以前に委託試験で行った変異原性試験で強い変異原性が認められた物質については通達でその扱いを指導しておりますが、それが法規制という、資料4-1の右側から少し中に入った所に「強度の変異原性が認められる物質」と太字で書いてある4番目の「アリルアルコール」と7番目の「ブチルアルデヒド」については、強度の変異原性が認められるので、使用に当たってはその管理を通達により指導をしております。
 この基準に照らし合わせますと、6番目の「1,3,5-トリスグリシジル-イソシアヌル酸」は、エームス試験の比活性値が2,640、染色体異常試験のD20値が0.00013ということですので、これは通達の対象ではありませんが、強い変異原性が認められる数値であるということがあります。以上、選定に当たっての御参考までに申し上げました。(後日、5番目と6番目の物質は強い変異原性が認められる物質として行政指導の対象としていることを確認し、資料4-1を修正した。)
○大前座長 いかがでしょうか。
○西川委員 1つ確認したいのですが、7番目の物質について、NTPで13週の試験をやっているけれども報告書は出さないとしていますが、何か理由があるのですか。
○松井化学物質評価室長 これはNTPのほうの計画で、13週間試験を終えているが報告を出さないというカテゴリーがありまして、教えてもらって、よく見てみると、たくさん物質が並んでおり、必ずしも珍しいカテゴリーではないようです。
○西川委員 その試験に不備があったとか、そういうことではないのですか。
○松井化学物質評価室長 そういうことではないようです。それにしては100以上並んでおりますので、試験の不備ということではないようです。
○大前座長 いかがでしょうか。これを見ますと、6番目の物質が非常に強い変異原性があるということで、候補としては非常にいいと思うのですが、フィージビリティの問題で、今年度は酸化チタンがまだ残っているということで、今年度はこのフィージビリティはできないという意味かと思います。したがって、これは来年度は非常に有力な物質になると思います。平成25年度は無理かと思いますが、そういう判断でよろしいですか。残念ながら6番の物質は平成26年度に回します。そのほかの物質はいかがですか。あとの物質は蒸気圧がある程度あるということなので、フィージビリティは大丈夫だということですが。
 1番の「酢酸エチル」から順番に、皆さんの御意見を伺っていきたいと思います。1に関しては、染色体異常試験が陽性である。留意事項としては酢酸イソプロピルの試験が終わっているということで、酢酸イソプロピルは平成20年、参考資料2の4ページに載っていますが、終わっているということになっております。これの類似ですから。
○西川委員 染色体異常ですが、資料4-2を見ますと、この陽性というのは10mM以上で陽性ということで、余りこれは評価できないと思います。
○大前座長 酢酸エステルは体内に入ると、直ちに分解してしまうと考えてよろしいですよね。
○池田委員 そうですね。そういった意味では1番と3番は、ほぼ同じ性質と考えていいですよね。
○大前座長 3番はエームスも染色体異常も陰性で、1番のほうは染色体異常陽性は余り評価できないということですので、1番、3番は外してよろしいですか。
○池田委員 留意事項には、酢酸イソプロピルの参考のデータもあるということですので、1と3は抜いていいのではないかと思います。
○大前座長 2番のセロソルブはいかがですか。これは留意事項の所で、今、それのアセテートをやっている最中だということと、これも身体に入ると、比較的早く分解してしまうのではないかと思います。
○池田委員 そうですね。酢酸エステルというのはすぐ外れますので、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートは、本来は左側の対象にしているエチレングリコールモノエチルエーテルそのものを投与しているのと、割合近いデータが得られると思います。
○清水委員 染色体異常も10mM以上で、余り評価はできません。
○大前座長 そういうことで2番は外してよろしいですか。消去法になって、これはということになっていませんが、取りあえず今のような話で、1番、2番、3番、それから先ほどのフィージビリティの問題で6番を外しますと、残りが4番、5番、7番です。4番については、留意事項でアクリル酸とアクロレインをやっている。アクリル酸は代謝物ですが、がん原性なし。アクロレインのほうは、今試験をやっている最中です。ということになりますと、この物質も試験結果を見てから考えてもいいのではないかという判断でよろしいですか。
○池田委員 それに関連してですが、アリルアルコールは代謝を受けてアルデヒドに変わるわけです。隣に二重結合があるというのは、結構反応性としては違うのですが、要するに脂肪族のアルコールがアルデヒドになって、それがどうかという議論になってしまうわけです。そうすると、4番と7番は全く同じではないのですが、割合似ていると考えることができると思います。ですからアクリル酸、アクロレイン、アリルアルコール、この付近は同じような物質と考えるのなら、7番目のブチルアルデヒドも全く同じとは言えないが、類類していると考えて、4と7はどちらを選ぶこともできないということになると選べないということになって、4と7も抜いてよろしいのではないかと思います。そうすると、5番になってしまうということなのですが。
○清水委員 4番は強度の変異原性があるということで、取扱いに関しては行政指導がされているわけですよね。なるべくばく露しないような取扱いで製造されていると思うのです。
○大前座長 池田先生、清水先生の御発言で4番はいいのではないか。7番も4番と同じようなものだからアルデヒドの代謝を抑えているということなので、似たようなものだという話ですが。7番は強度の変異原性がある物質で、7番は既に毒性にはなっている。消去法でいくと5番ですが、積極的にこれがいいというような御意見があれば有り難いのですが。
○池田委員 やはり有機ハロゲンというのは、何らかの毒性を考えなければいけない化合物で、これを見ますと、代謝経路では可能性は一見なさそうに見えるのですが、類似の物質はやはり危ない化合物質ですね。調べられるのなら調べたほうがいいのではないかという化合物ではないかと私は思います。
○大前座長 いかがでしょうか。この物質は生殖毒性があって非常に有名になってしまった物質ですが、1900年代の終わり頃ですかね。特に御意見がなければ、5番の2-プロモプロパンを候補にしてはどうかと。
○西川委員 最初に確認すべきでしたが、今、選定しているのは長期発がん性試験の候補であって、短期・中期は関係ないということですね。
○松井化学物質評価室長 今、選定していただいた結果を踏まえて、平成25年度から1種類の長期試験と、プラスもう1種類の短期・中期の試験を行うと考えております。
○西川委員 そうですよね。そうすると、ラット・マウスをどのように使い分けるかとか、その辺りの議論はどこでするのでしょうか。
○松井化学物質評価室長 それをワーキンググループのほうでと考えております。
○津田委員 この中にも済んでいるのがありますね。例えば1番、酢酸エチルはバイオアッセイ研究センターで実施済みと。
○西川委員 類縁物質で、そのものではない。
○大前座長 よろしいですか。この検討会としては、2-ブロモプロパンを候補として挙げると。それでは、2番目の議題も無事終了しました。それでは、3番目の議題の「24年度ばく露実態調査対象物質の評価値について」、よろしくお願いします。
○瀧ヶ平室長補佐 資料5を御覧いただきたいと思います。平成24年度委託事業でばく露測定を実施している物質が、そこに書いてある詳細のほうが三酸化ニアンチモン、金属インジウム、DDVPの3物質。初期のほうがフェニルヒドラジン、ナフタレン、酸化チタン、一酸化二窒素、N,N-ジメチルアセトアミド、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、リフラクトリーセラミックファイバー、1,2-ジクロロプロパンといった物質を測定させてもらっております。
 ということで、4月に入ってから、ばく露小検討会の結果と合わせて合同のリスク評価検討会をするのですが、これらの物質についての評価値を設定していかなければいけないということで、資料6-1ですが、本日はナフタレンとDEHPの2物質を提案しております。というのは、ほかの物質は現在中災防で委託事業の有害性評価書を取りまとめている最中ですので、3月27日の検討会で提出させていただきたいと思っております。
 1番の「ナフタレン」は、平成23年度のリスク評価のときに1度やろうとしたのですが、ばく露測定のほうで測定の仕方にいろいろ難があったということで、その後、再度測定の手法等を含めて検討しておりまして、今年度はばく露測定ができたようですので、改めて初期評価をしたいということです。平成23年度のときに、一次評価値、二次評価値も提案済みですが、また改めて説明させていただきたいと思います。
 構造式はそこに書いてあるベンゼン環が2つくっ付いているような形です。特徴的な臭気のある白色固体で、防虫剤等によく使われています。発がん性については、IARCで2Bとなっております。発がん性以外の有害性として、溶血及びメトヘモグロビン血症を起こす。慢性影響として、ナフタレンの分別作業場及び圧搾場で実施された作業員の健康調査報告で、皮膚、目、咽喉頭の刺激及び炎症、胃腸障害、貧血、尿糖及びジアゾ反応陽性、視野狭窄が示されたというものがあります。
 閾値の関係については、in vitro遺伝毒性試験の結果は、哺乳類動物細胞を用いる染色体異常試験では陽性であるが、ネズミチフス菌を用いる復帰試験では陰性だった。in vivo遺伝毒性試験で陰性である。ただしショウジョウバエを用いる特定座位試験では陽性であるということで、判断できないという取りまとめになっています。
 許容濃度ですが、前回の平成23年のときにACGIH等で動きがあるのではないかというお話がありましたが、今のところ変更されておりませんで、TWAが10ppm、日本産業衛生学会は情報がありません。NIOSHで10ppmということになっております。
 一次評価値は、閾値が不明な場合であるということで設定はなし。二次評価値については、ACGIHの提言しているTLVを用いて10ppmということで、前回の平成23年度のときもこのような数値で示しております。
 引き続きまして、2番の裏側の「フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)」です。DEHPという略称で呼ばれております。構造式はそこに書いてあるとおりです。これも特徴的な臭気のある無色から淡色の粘稠液体です。生産量は14万3,000tということで、可塑剤等でたくさん使われているようです。これについてはモノグラフの2012年のもので、2Bに戻っています。もう1枚のペーパーで詳しい説明をいたしますが、一旦グループ3に変わったのですが、またそれが2Bに戻ったということになっております。産衛学会でも2B、ACGIHでもA3ということです。
 発がん性以外の有害性については、動物試験において、胎児の奇形の増加等に生殖・発生毒性が報告されている。動物への反復投与によって精巣、肝臓等への影響が報告されています。
 この物質については、当初、生殖毒性がGHS分類で区分1ということで選定されているのですが、そもそものリスク評価の検討会で物質を選ぶに際して、グループ1とか2Aとか2Bのものを順番に選んできておりますので、本来これが2Bであるということになれば、がんに着目した物質として選ばれている物質であったということがまずありますので、申し添えます。
 閾値の関係です。これは閾値ありということで、根拠としてはin vitro、in vivoがほとんど陰性であり、遺伝毒性はないと判断するというものです。許容濃度の関係ですが、ACGIHのほうがTWA:5?/m3、産衛会のほうも5?/m3となっています。一次評価値については、今回は具体的な数値を出しておりませんので、有害性評価書にある各種試験の結果の中から選び、それで一次評価値として計算しようと考えています。二次評価値は規制の必要があるかどうかという判断になる部分ですが、これについてはACGIHないし日本産業衛生学会が提言している5?/m3を用いてはどうかということです。
 この2物質についての参考資料として、参考資料3-1と参考資料3-2に有害性総合評価表等を付けてあります。
○松井化学物質評価室長 補足ですが、今、御説明しました資料6-1の2物質のうち、DEHPですが、これは企画検討会のほうで生殖毒性があるということで選定していただきましたが、昨年のIARCのモノグラフで発がん性の評価区分が2Bであるということになり、今、御説明したように、一次評価値も発がん性物質として扱って設定してはどうかという提案です。
 その関連で補足ですが、資料6-1のフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の重視すべき有害性が?発がん性。この物質については、以前から動物試験では発がん性の十分な証拠があるということになっておりましたが、ヒトへの外挿ができないということで、2000年に出たモノグラフでは3に分類されておりました。この欄の少し上のほうにありますように、動物試験については、マウスでもラットでも複数の試験結果で肝細胞腺腫あるいは肝細胞がんが増加することが認められておりまして、ほかの物質と比較しても、動物試験については十分な証拠です。
 資料6-2を御覧ください。「モノグラフ77」が2000年に出ております。このときなぜ3になったかということですが、3つ目の○を見ますと、腫瘍のメカニズムがヒトに関係がないことから3という区分になっています。この物質はラット・マウスでペルオキシソームの増生を含むDNAの反応ではないメカニズムによって肝腫瘍を作る。非遺伝毒性の発がん性物質であるということです。
 それから、ラット・マウスの発がん性試験では、ペルオキソゾーム及び肝細胞の増生が認められたということですが、(C)にありますように、同じようなペルオキシソームの反応については、ヒトの肝細胞の培養系、ヒト以外のサルにおいては報告されていないので、ヒトと関係がないということで、このときは3に分類されております。ただ、昨年出たモノグラフでは、やはり2Bだろうということで分類されております。
 資料6-2の2ページを見ますと、モノグラフの報告データのサマリーで、これはメカニズムに関する所ですが、おおむねこのようなことが述べられておりまして、前回の評価以降の研究によってPPARαというペルオキシソームの増殖のレセプターが重要な役割を果たすことが分かったのだけれども、動物のモデルやヒトのデータから、DEHPによるラットやマウスの肝腫瘍発生のメカニズムには、それ以外の多数のメカニズムが関与していると示唆されるので、ヒトとの関係が除外できないとなっております。
 「メカニズムに関する考察」の所を少し抜き書きしたのが下にありますが、げっ歯類の肝臓では、肝臓の実質細胞が反応する主要な細胞タイプですが、マクロファージのようなそのほかの実質細胞ではない細胞も、重要な役割を持っている可能性があるということです。確かにペルオキシソームの増生と肝腫瘍の関係は有力な説であるが、そのほかの細胞増殖の誘起、アポトーシスの抑制、酸化によるDNA損傷など、こういったものも重要な役割を担っていることが提案されています。全般的にいうと、2ページの下のほうの(1)~(10)のいろいろな現象の組合せが関与していると考えられています。
 3ページの2つ目の段落にありますように、前回の判定において重要な根拠の1つは、PPARαを欠損されたノックアウトマウスが、慢性試験において肝腫瘍が増加しないということがあったのですが、その後いろいろな遺伝子組換えマウスを使った試験によって、更にそれは補強されているけれども、一方でそういった試験の中で肝腫瘍形成にはいくつかの細胞タイプ、つまり実質細胞ではない肝臓の細胞におけるようなもの、あるいはシグナルや多数の経路が関与することも明らかになっています。
 3つ目の段落にありますように、PPARαの活性化とペルオキシソーム増殖物質のシグナルのネットワークには霊長類とげっ歯類の種間差が存在するけれども、ヒトの細胞でもPPARαは発現するし、DEHPの代謝物質であるモノエチルヘキシルフタレートを含む多数のペルオキシソーム増殖物質による反応をヒトの細胞が欠いているわけではないということ。それからPPARαの発現に関しては、重要な個体差も報告されているということから、種の間において、量的な差が十分に存在しても、質的な類似性は無視できない。特にDEHP等はPPARαの活性化とは関係のない分子レベルの反応を誘起することが知られていて、このような経路がヒトのリスクに関与する可能性が残されているということで、全くヒトとは関係はないと言えないということで、2Bに分類されている状況です。発がん性物質か否かというのが一次評価値の算定に関係してきますので、少し詳しく補足させていただきました。
○大前座長 ありがとうございました。順番にやっていこうと思いますが、最初の「ナフタレン」の評価値の決定から入りたいと思います。一次評価値に関しては、閾値の有無が判断できないということで、発がんに関する一次評価値は作れない。二次評価値はACGIH、NIOSHが10ppmで共通の数字を使っていますので、10ppmだと。これはこれでよろしいですか。ナフタレンはこの案のとおりです。
 次のDEHPですが、まず二次評価値のほうが簡単なので、こちらから議論したいと思います。二次評価値はACGIH、産衛、NIOSH等々とも5?/m3という数値を出しておりましたので、これはこれでよろしいですね。
○江馬委員 DEHPは多分フタル酸エステルの中で一番毒性が強いと思うのですが、主な毒性は妊娠ラットに投与したときの雄の胎児に発現する抗アンドロゲン作用だと思います。多分NOAELかLOAELが10何mg/kgぐらいのデータが2000年ぐらいから結構出ていると思います。ここに、DEHPは低毒性の部類に属すると考えられるのでと書いてありますが、必ずしもそうではないと思います。というのは、産衛学会の値というのは1995年設定、ACGIHも1996年設定なので、そういうデータが考慮されていないのではないかと思います。
○大前座長 参考資料3-2の有害性総合評価表がDEHPに関してあります。先生がおっしゃった生殖・発生毒性は2ページの生殖・発生毒性ではないかと思いますが、よろしいですか。吸入毒性情報はない。したがって経口でNOAELが14?/?、体重/日、これよりももっと低いですか。
○江馬委員 もっと低いと思います。これは1987年のデータですが、EPAのグレイがフタル酸エステルを用いて一連の仕事をしていまして、その中にDEHPの仕事が結構入っていて、かなり低い値で影響が出ていると思います。
○松井化学物質評価室長 先生、ちょっと教えていただきたいのですが。参考資料の3-2の有害性の評価書の12~14ページの始めにかけて、生殖・発生毒性について今まで得られている報告をサマライズしているのですが、その中に、今おっしゃったようなものはありますか。
○江馬委員 ないと思います。後ろの引用文献で見ると、全部1980年代の論文なので、35番とか36番、37番。37番は1997年ですが、1980年、1988年のデータなどで古いのではないかと思います。
 フタル酸エステルについては、NTPだったと思いますが、文書を作っており、DBPもそうですが、かなりページ数のある文書があって、それが2003年とか2004年でDEHPについては3年ぐらいあとにデバイスされて出されていると思います。
○松井化学物質評価室長 21ページの文献番号38のEuropean Commission Joint researchcenterのレポートですか。
○江馬委員 いや、ヨーロッパの文書ではありません。米国のEPAが作ったものだと思います。NOAELかLOAELが15ミリとか、そのぐらいの値だったと思います。
○大前座長 15?/?/日。
○江馬委員 はい。
○宮川委員 この点に関しましては、産業衛生学会の許容濃度等に関する委員会の中の生殖毒性小委員会で少し議論をしておりまして、そこでいろいろ調べた中で妊娠期ばく露の影響ということでは、AGDの短縮とか生殖器官の重量減少に基づきNOAELが3?/?/日というような報告等、2010年に近くなってから新しいデータが出ているようです。
 この評価書は、それを作った段階で入手できたレビューを基にしていると思います。元になった原著はもう少し古いものが多いので、ギリギリのところの濃度を問題にする場合には少し検討が必要かと思います。産衛学会の許容濃度の設定の基になっているデータよりも10分の1以上低い所で影響が見つかっているという、資料があるようです。
○大前座長 この有害性総合評価表は何年かは私も覚えていないのですが、これを基にしてやっているわけです。それより新しい資料が出ているということで、産衛学会のほうは、今、生殖毒性小委員会で検討中だということなので、その数値を基にしているとしたら、許容濃度が変わる可能性もある。あるいは一次評価値も、発がん性以外の物質で作る場合も、これからやろうということもあったと思いますので、そちらのほうに影響してくる可能性もあるということで、このDEHPに関しては少しペンディングにしたほうがいいということになりますかね。今の新しい資料を事務局に出していただいて、できれば江馬先生か宮川先生にまとめていただいて、生殖・発生毒性はどうなのだということを示していただいたほうがよろしいですね。そういうことでお願いしてもよろしいですか。やるとしたら、どこかの委員会で、例えばリスク評価のほうの委員会で原案を作ってということになると時間的には遅くなる可能性があるので。
○江馬委員 今、食品安全委員会でフタル酸エステルの文書をまとめていまして、それが多分年度末までの仕事なので、それが出てくると思いますので、それを使えばいいと思うのです。
○大前座長 最新のデータが当然入っているというレビューになるわけですね。
○江馬委員 ええ。
○大前座長 いかがしましょうか。
○津田委員 IARCでは第101巻でDEHPの評価がなされたのは2000年ぐらいだと思います。
○松井化学物質評価室長 第101巻は、去年出ています。
○津田委員 去年ですね。実はこれに私は出ていまして、in vitroのデータというのは、そういうことについてはかなり出揃っていて、今になってちょっと待ってもそんなに増えないと思います。ですから、この辺でも十分役に立つデータは出揃っていると思います。
 先ほどおまとめいただきましたが、一言でいうとPPARα経由で発がんするのでそれを書くヒトの肝では安全であるとされていましたが、そうではない別の経路が見つかってきているので、3から2Bに上がったということです。吸入ばく露のデータは、そのときになかったと思います。ですから、これは吸入ばく露で、職場でそれがあれば早急にやる必要があると思います。IARCの評価は全部経口でしたね。毒性がないのです。だから、ものすごい大量投与でやっている。多分、食品安全委員会ではこんな大量には食べることはないので大丈夫だ、となっていくのではないかと想像しますけれども。
○大前座長 食品安全委員会のほうでも、多分経口投与のデータ。
○江馬委員 そうですね。
○大前座長 吸入実験はない。
○江馬委員 なかったと思います。
○大前座長 そうしますと、今の発がん、これは閾値があるタイプの発がんなので、発がんで規格した係数を考えるときの数字と、生殖・発生毒性の両方で計算をしてみる必要があるようなことで、よろしいですか。もともとこの案には一次評価値に関しては、試験でやられた無毒性量に不確実係数を考慮してまとめた値を一次評価値として検討するということで、これは発がんをターゲットにしたものですが、この部分もまだそういう意味では数字にはなっていないので、両方合わせて発がんと生殖毒性で両方集めていただいて検討するということで、今日はペンディングでよろしいですか。今日は決められないですね。
○津田委員 医薬でも高脂血症剤がここを通るのがたくさんありまして、医薬の場合はリスクベネフィットでやっているので、あってもいいということなのですが、この辺はかなりややこしいです。今までのデータが吸入はないということと、医薬では高脂血症剤で、メバロチン酸の経路を抑えるということでコレステロールの合成を抑えるということで使われているみたいです。
○大前座長 そうしましたら、DEHPに関しては、そういうことでペンディングにさせていただくということでよろしいですか。では、ナフレンに関しては決定、DEHPに関してはペンディングという形で今日は終わらせていただきたいと思います。その他何かございますか。
○瀧ヶ平室長補佐 これで議題は終わりですが、参考資料3-2はフタル酸DEHPですが、15ページに、発がんの関係の試験が書いてあって、先生方にどの試験を引っ張ってくればいいかを御相談させていただきたいと思います。それと先ほどお話があった生殖毒性の関係のデータについてもお願いして、それで次回の資料にしたいと思いますので、よろしくお願いします。
 次回ですが、次第に書いてあるとおり、3月27日に、ここの5号館で開催予定です。また御連絡いたしますが、よろしくお願いいたします。 
○大前座長 食品安全委員会の報告書は、3月末。
○江馬委員 3月末です。
○大前座長 それを原稿で使ってはまずいですか。もう一応レビューアップ自体は終わっているのですね。
○江馬委員 まだ終わっていません。厚労省でも食品関係で5年ほど前に文書を作っているはずです。多分それ以降あまり新しいデータはないと思います。最近は余りフタル酸エステルのデータは見ないので、一応は厚労省の食品関係で作った文書で行けるのではないかとは思います。
○大前座長 ありがとうございました。それでは、今日は時間はございますが、予定された審議事項は終わりましたので、これで閉会させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。


(了)

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