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2012年8月3日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会議事録

医薬食品局

○日時

平成24年8月3日(金)15時~


○場所

厚生労働省 共用第8会議室


○出席者

出席委員(14名) 五十音順

 木 村   剛、 佐 藤 田鶴子、 佐 藤 雄一郎、 鈴 木 邦 彦、

 手 島  玲 子、 野 田 光 彦、 林   邦 彦、 古 川   漸、

 増 井   徹、◎松 井   陽、○松 木 則 夫、 村 田 美 穂、

 本 橋 伸 高、 山 田 清 文 

 (注) ◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(5名) 五十音順

 加 藤 総 夫、 千 葉   勉、 成 冨 博 章、 西 澤   理、

 檜 山  行 雄 

行政機関出席者

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 赤 川 治 郎 (審査管理課長)

 俵 木 登美子 (安全対策課長)

 矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 森   和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

 三 宅 真 二 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)

○議題

1 医薬品ロトリガ粒状カプセル2gの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について
2 医薬品ジプレキサ筋注用10mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について
3 医療用医薬品の承認条件の解除について
詳細は資料へ

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会」を開催させていただきます。本日はお忙しい中御参集いただき、ありがとうございます。
 まず、部会委員の異動について、宗林委員及び清水委員が当部会委員を退任されておりますので御報告いたします。また、本日は当部会委員に就任予定の日本薬剤師会理事、豊見雅文先生を参考人としてお呼びしています。
 本日の委員の出席についてですが、加藤委員、千葉委員、成冨委員、西沢委員、檜山委員より御欠席との御連絡をいただいております。また、鈴木委員より、遅れていらっしゃるとの御連絡をいただいております。現在のところ、佐藤雄一郎委員、野田光彦委員がまだお見えになっておりませんが、当部会委員数19名のうち11名の委員の御出席をいただいていますので、定足数に達しておりますことを報告いたします。それでは、松井部会長、以後の進行をお願いいたします。
○松井部会長 それでは始めさせていただきます。本日は豊見委員につきましては参考人ということですが、どうぞ御遠慮なく御発言いただいて結構ですが、議決には参加なさらないでいただきたいと思います。
 本日の審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、報告してください。
○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配付しております。議事次第に記載されている資料1~10をあらかじめお送りしております。このほか資料11「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料12「専門委員リスト」、資料13「競合品目・競合企業リスト」を配付しております。
 続きまして、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。資料13は、各品目の競合品目選定理由についてでございます。
1ページ、「ロトリガ粒状カプセル」です。本品目は「高脂血症」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページ、「ジプレキサ筋注用」です。本品目は「統合失調症における精神運動興奮等」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページ、「ストラテラカプセル」です。本品目は「注意欠陥/多動性障害(AD/HD)」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページ、「スイニー錠及びベスコア錠」です。本品目は「2型糖尿病」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 5ページ、「SBC-102」です。本品目は「リソソーム酸リパーゼ欠損症」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。以上でございます。
○松井部会長 ありがとうございました。今の事務局からの説明に対して、何か御質疑ございますか。よろしいでしょうか。それでは本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、委員の皆様の御了解を得たものといたします。委員からの申出状況について、事務局から報告してください。
○事務局 各委員からの申出状況についてです。
議題1「ロトリガ」、退室委員なし、議決には参加しない委員、木村委員、野田委員でございます。
 議題2「ジプレキサ」、退室委員なし、議決には参加しない委員、木村委員、野田委員、林委員、村田委員でございます。
 議題3「ストラテラ」、退室委員なし、議決には参加しない委員なしでございます。
 議題4「スイニー」、退室委員なし、議決には参加しない委員、木村委員、野田委員、村田委員、山田委員でございます。
 議題5「SBC-102」、退室委員なし、議決には参加しない委員なしでございます。以上です。
○松井部会長 本日の審議事項は5議題、報告事項が5議題でございます。
早速議題1に移ります。議題1について、機構から概要説明をお願いいたします。
○機構 審議事項議題1、資料1-1及び1-2「医薬品ロトリガ粒状カプセル2gの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 まず、審査報告書3ページを御覧ください。本剤の有効成分は、オメガ-3脂肪酸エチルであり、魚の油成分を原料として製造され、イコサペント酸エチル(EPA-E)とドコサヘキサエン酸エチル(DHA-E)を主とした複数の成分から構成されます。これまでいくつかの研究結果により、オメガ-3脂肪酸の血清脂質改善作用、血小板凝集抑制作用等の薬理作用が示されており、EPAやDHAの投与により、トリグリセライド(TG)の低下作用が期待されます。本薬は、海外では1994年にノルウェーで最初に承認され、2012年5月時点で、欧米を含む81か国で、TGが500mg/dL以上の高TG血症、IV型高脂血症等の効能・効果で承認されています。
本邦では、武田薬品工業株式会社により開発され、2011年9月に、国内の臨床試験成績を基に、「高脂血症」を効能・効果として製造販売承認申請がなされました。
なお、本邦におきましては、本薬に含まれるEPA-Eのみを含有する製剤は、既に「高脂血症」を効能・効果として承認されています。
 本品目の審査に関しまして、専門委員として資料12に記載されております委員が指名されました。
 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。
有効性について、審査報告書29ページからの第III相検証試験の項を御覧ください。本試験は、本剤2g及び4g群と、EPA-Eの通常用量1,800mg群のTG低下作用を比較した二重盲検並行群間比較試験です。30ページ表7に、各群の投与終了時におけるベースラインからのTG変化率が記載されています。主要評価項目であるTGの変化率において、本剤4g群のEPA-E群に対する優越性が示され、本剤2g群のEPA-E群に対する非劣性が本試験により示されました。
 次に、安全性について説明いたします。審査報告書31ページ表9を御覧ください。こちらに第III相検証試験における主な有害事象を示しております。本剤4g群では下痢の発現率が若干高くなる傾向が認められましたが、認められた下痢で、重篤な有害事象と判断されたものはなく、また、治験薬の投与中断・中止に至ったものは非常に少数例であったことから、本剤の安全性はEPA-E製剤と大きく異なるものではなく、承認の可否に影響するような安全性に関する重大な懸念は認められないと判断しました。なお、海外の添付文書では、本剤投与によるLDL-C上昇の可能性が注意喚起されていること、また本邦でもLDL-C上昇のリスクについては否定できないと考えられたことから、添付文書の「重要な基本的注意」において、本剤によるLDL-C上昇のリスクについて注意喚起することとしました。
 本剤の臨床的位置付けについて説明させていただきます。審査報告書51ページ「本剤の臨床的位置付けについて」の項を御覧ください。本剤は有効成分としてEPA-Eを含み、有効成分の組成に基づき既承認のEPA-E製剤と本質的に同等の位置付けの薬剤であることを前提として開発が行われてきました。EPA-E製剤は、既に高脂血症の効能・効果で承認されていますが、実際の臨床におけるEPA-Eの主な投与対象が高TGの患者であること、先ほどの有効性の成績で御説明したように、本剤のTG低下作用は、少なくともEPA-E製剤と同程度であることが示されたことから、本剤をEPA-E製剤と同じ臨床的位置付けとして提供することが可能と判断いたしました。ただし、後ほど製造販売後調査の説明の方で詳しく御説明いたしますが、有効成分のオメガ-3脂肪酸について、このTG低下作用による真のエンドポイントは、心血管イベントの抑制であることから、その点については製造販売後において、更に評価する必要があると判断しております。また、効能・効果ですが、審査報告書52ページを御覧ください。こちらの項に記載されておりますように、本剤がEPA-E製剤と同様の位置付けで開発された薬剤であることから、EPA-E製剤と同じ「高脂血症」を効能・効果とすることが妥当と判断しました。なお、本剤の作用としてLDL-Cなどの低下作用は認められていないことから、本剤に期待される効果が誤解されないよう、臨床現場には適切な情報提供を行う予定です。
 本剤の「用法・用量」については審査報告書45ページ「用法・用量について」の項に検討の過程を記載しております。こちらの項の2段落目の一番下に括弧付きで書かれていますが、申請時の用法・用量としては、1回2gを1日1~2回でしたが、本剤の通常用量としては、EPA-E製剤の通常用量に対する非劣性が示された1日1回2gとすることが妥当であり、またEPA-E製剤ではTGの程度によって2,700mgまでの増量が可能であることから、増量が必要な場合の用量として本剤2gよりもTG変化率が大きい4g、こちらは1回2gを1日2回投与になりますが、4gまで増量するという用法・用量とすることは可能と考え、最終的な用法・用量としては、「通常、成人にはオメガ-3脂肪酸エチルとして1回2gを1日1回、食直後に経口投与する。ただし、トリグリセライド高値の程度により1回2g、1日2回まで増量できる。」とすることが妥当と判断しました。
 製造販売後調査については、審査報告書53ページ「製造販売後調査等について」を御覧ください。先ほど申し上げたように、本剤の治療による真のエンドポイントは心血管イベントの抑制ですが、オメガ-3脂肪酸エチルの心血管イベント抑制効果については肯定的な報告や否定的な報告があり、現時点で明確になっているとは言い難いこと、また、EPA-EだけでなくDHA-Eが有効成分に含まれることのメリットやデメリットが不明であることなどを踏まえ、専門協議の結果、製造販売後に、本剤投与による心血管イベント発現への影響を評価する調査を行う必要があると判断しました。評価の方法としては、実施可能性なども考慮した上で適切な規模で評価できるよう、心血管イベントリスクが比較的高い集団を対象に、□□□□□□□□□□□□□□□□□を設定した特定使用成績調査を現在申請者は計画しております。ただし、具体的な調査対象、□□□□□□、症例数や観察期間といったデザインの詳細については今後更に申請者と協議を行い、検討したいと考えております。また、心血管イベントへの影響の調査とは別に、使用実態下の長期投与時の安全性を確認する目的で、観察期間12か月、予定症例数3,000例とした使用成績調査も別途実施し、出血傾向に関する情報、本剤がLDL-Cに及ぼす影響、糖代謝に及ぼす影響、下痢などの消化器症状の発現に関する情報、臨床試験で投与経験が限られている高齢者や腎機能障害者・肝機能障害者、並びにTGが500mg/dL以上と非常に高値の患者などに本剤を投与した際の情報についても、併せて収集する予定です。
 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会において御審議いただくことが適当であると判断しました。
製剤は劇薬・毒薬のいずれにも該当せず、生物由来製品又は特定生物由来製品にも該当しないと判断しております。再審査期間は8年とすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。
○野田委員 効能・効果が高脂血症で、重要な基本的注意に、本剤投与中にLDL-C値上昇の可能性があると記載されているのが、どうしてもやや違和感があるような気がするのですが、もう少しほかの対応の仕方というのはないものかと思いまして、質問させていただきました。
○松井部会長 いかがでしょうか。
○機構 機構よりお答えさせていただきます。そちらの記載の仕方についてはかなり審査の方でも議論が行われまして、まず、効能・効果はやはりどうしてもEPA-E製剤を対照として、さらに本質的に全く同じ薬剤であるということで、この効能・効果を変えることがかなり困難な状況であることが第1点です。その上で、LDL-CについてEPA-Eと比較しますと、若干ではありますが、本剤で増加傾向が認められていることと、海外においても注意喚起されていることで、やはりどこかには、投与中その点を注意していただかなければいけないことを記載する必要があると判断いたしまして、添付文書にこのように記載することとしました。
 本剤がどういった目的で使用される薬剤かというのは、御指摘のように、効能・効果だけで一見すると少し分かりにくい点もありますので、使用上の説明については資料等も用いて医師に説明したり、あるいは臨床成績の項にはTG低下で、本剤の有効性が評価されているということとか、あるいはEPA-Eと同じような薬剤ですので、そのEPA-Eを投与するような対象に本剤も使用していただきたいといった情報提供を行うことで、適正使用を図ってまいりたいと思います。
○野田委員 一応基本的にそういうことにならざるを得ないのかと思いますが、EPA-Eと基本的に同じ薬剤とおっしゃいましたが、DHA-Eも入っていますので、やはり異なる側面がある可能性があるのではないかと思います。
○松井部会長 その辺は、市販後検討するということですか。
○野田委員 市販後の調査等で、また長期的に検討していただきたいと思います。
○機構 DHA-Eが入っていることの影響については、市販後、また情報を収集させていただきたいと思います。
○野田委員 どうしても一般には、高脂血症というと、コレステロールも下がるという印象になると思いますので、先ほどの点を徹底していただければと思います。よろしくお願いします。
○機構 はい。御指摘ありがとうございます。
○松井部会長 ほかに御質疑ございますか。
○木村委員 承認条件に市販後の臨床試験を実施することが加わっているようなのですが、これは心血管イベント予防の有効性を示すことが義務づけられるということでしょうか。その結果に応じて再評価がされると考えてよろしいでしょうか。
○機構 まず、承認条件として指示をしたわけではないということと、臨床試験という形か、市販後調査かという形も、申請者との間で協議を行ったのですが、やはりどうしてもプラセボをこのような対象の患者さんに長期投与して、ずっと無治療のまま長期間放置することもできないということで、今回は試験ではなくて、市販後調査の枠組みの中で、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□を登録して心血管イベントの影響を評価する形を取っております。その結果によって再評価がなされるかというところまでは、現時点では、まずは結果がどのようになるかというところを考えてみてから判断したいと考えております。結果によってどういった情報が提供されるかを、また検討したいと考えております。
○松井部会長 評価については未定だということですね。ほかにいかがでしょうか。
○松木部会長代理 今の点なのですが、やはり心血管イベントに影響するかどうかは興味があるところです。今も既に承認されているEPA-E製剤との関連で、それをどのように評価するかということですね。それを決めないで、やってみてその結果を見て考えるというのは、何か曖昧のような気がするのですが、いかがですか。
○機構 基本的には、やはり内部対照と比較して、この薬を投与したことによってイベントが減らせましたということが示せることがよろしいのですが、そういったことを厳格に評価できるようなデザインで、製造販売後に試験を実施することが非常に難しいのです。今、先生に御指摘いただいたようなことも踏まえて、どういったアウトプットを目指してこの調査をやるかということについても、こちらの方できちんと考えを整理した上で、申請者とも協議したいと考えております。
○松木部会長代理 この製剤に限らず、高脂血症治療薬というものが、本当に心血管イベントとどのくらい関係しているかというところは、ほかの薬もそれほど明確でないところもあると思いますので、その辺の扱いは慎重にしていただきたいと思います。
○機構 はい。
○松井部会長 非常に重要な御指摘だったと思います。ほかに御質疑ありませんか。よろしいですか。それでは議決に入ってよろしいでしょうか。本議題につきましては木村委員、野田委員におかれましては利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございます。異議なしと認めます。承認を「可」として薬事分科会に報告いたします。
議題2に移ってください。機構から概要説明をお願いいたします。
○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品ジプレキサ筋注用10mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査機関の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明させていただきます。
 本剤の有効成分であるオランザピンは、非定型抗精神病薬であり、本邦においては錠剤、細粒剤、口腔内崩壊錠がそれぞれ統合失調症、双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善に対して承認されております。本剤は、オランザピンを有効成分とする速効性注射剤であり、本邦においては20□年□月から臨床試験が開始され、有効性及び安全性が確認されたとして製造販売承認申請が行われました。また、海外における承認状況として、2001年に欧州、2004年に米国で統合失調症及び双極性障害の精神運動興奮に対して承認されております。
 本申請の専門委員としては、資料12に記載されている5名の委員を指名しております。
 審査内容について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。
まず、有効性についてですが、審査報告書20ページの表15を御覧ください。統合失調症の増悪に伴う急性かつ精神病性の明らかな興奮、焦燥、激越を有すると判断された日本人統合失調症患者を対象とし、プラセボ又は本剤10mgを単回筋肉内投与した結果、主要評価項目である初回投与2時間後のPANSS-EC合計点のベースラインからの変化量について、本剤のプラセボ群に対する優越性が示されました。
 次に安全性について説明させていただきます。オランザピン経口剤は糖尿病患者及び糖尿病の既往歴のある患者が禁忌とされておりますが、本剤は基本的には頓用で使用されること、また、本剤の投与対象である精神運動興奮により救急搬送された患者では患者背景の確認が困難な場合も想定されることを踏まえ、糖尿病患者等を禁忌とする必要性について検討いたしました。本剤の国内臨床試験の短期間の検討においては、耐糖能に関して臨床上懸念される問題は認められず、また、オランザピン経口剤の国内承認後、現在までの製造販売後データの検討からは、必ずしも短期間に糖尿病患者において耐糖能異常に関連する有害事象が発現する傾向は認められておりません。審査報告書39ページを御覧ください。以上の点を踏まえて、専門協議において議論した結果、本剤の数回の投与により重篤な高血糖及び糖尿病性急性合併症が発現する可能性は低いと考えられ、経口抗精神病薬による管理が可能になり次第、本剤は投与されなくなることも勘案すると、糖尿病患者及び糖尿病の既往歴のある患者を禁忌に設定しないことは許容できると判断いたしました。1.8の添付文書(案)の警告欄を御覧ください。このような判断を踏まえ、本剤投与前に可能な限り血糖値の測定等を行い、糖尿病等の耐糖能異常のリスクを有する患者には原則として投与しないこと、投与前の血糖値の測定が困難な場合には、投与後速やかに血糖値のモニタリング等を行い慎重に観察するよう注意喚起をしております。また、糖尿病及び糖尿病の既往のある患者、耐糖能異常のリスク因子を有する患者に本剤が投与された場合の安全性については、製造販売後調査において更に検討したいと考えております。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新投与経路医薬品であり、再審査期間は6年、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。野田委員、何かございますか。
○野田委員 この薬剤の性格から、やはり、実際的には、あのような記載になっていくのだろうと、私もそのように考えます。
○松井部会長 ありがとうございます。ほかに御質疑はございませんか。特に御質疑がございませんでしたら、議決に入ります。よろしいですか。それでは議決に当たりまして、木村委員、野田委員、林委員、村田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加は御遠慮いただきたいと思います。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。
よろしいですか。異議なしと認めます。それでは承認を「可」として薬事分科会に報告いたします。
 議題3に移ってください。機構から概要説明をお願いいたします。
○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品ストラテラカプセル5mg、同カプセル10mg、同カプセル25mg及び同カプセル40mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤の有効成分であるアトモキセチン塩酸塩は、選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であり、本邦においては、2009年4月に小児期における注意欠陥/多動性障害(以下AD/HDと省略します)の効能・効果で承認されております。
今回の申請効能・効果である成人期AD/HDに係る効能・効果については、本邦においては、20□年□月より開発が開始され、有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。また、海外における承認状況として、成人期を含めたAD/HDの効能・効果については、米国を含む29の国又は地域で承認されております。
 本申請の専門委員としては、資料12に記載されている4名の委員を指名しております。
 審査内容について、臨床試験成績を中心に御説明させていただきます。
まず、有効性についてですが、審査報告書9ページ表5を御覧ください。DSM-IVに基づき、成人期にAD/HD診断基準を満たし、小児期においてもAD/HDの診断基準を満たすことが確認された18歳以上の患者を対象とし、日本、韓国及び台湾で国際共同第III相試験を実施し、プラセボ又は本剤40~120mgを投与した結果、主要評価項目である医師により評価されたコナーズ成人期注意欠陥/多動性障害評価尺度において、本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証されました。
 次に、安全性についてですが、審査報告書16ページ表13を御覧ください。本剤による有害事象は、小児期AD/HD患者と概ね同様であり、悪心、食欲減退、傾眠、頭痛等の発現が認められておりますが、小児期と比較して排尿困難、悪心、食欲減退等の発現が成人期において高い傾向が認められました。したがって、添付文書において現在の注意喚起を継続することで大きな問題はないと判断しておりますが、適正使用に係る資材等においては、一部の有害事象は成人期で発現リスクが高まることを情報提供するとともに、製造販売後調査において更に検討したいと考えております。
 以上の審査を踏まえ、本剤の成人期AD/HDに対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は、新効能及び新用量医薬品であり、再審査期間は小児期AD/HDに係る再審査期間の残余期間である平成29年4月21日までとすることが適切と判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございます。委員の先生方から御質疑をお願いします。
○佐藤(田)委員 教えていただきたいのですが、8ページ辺りから、かなりいろいろ取り揃えて80%以上ぐらいの有害事象が起こっています。ただし、AD/HDで、例えば凶暴性になっているような患者さんに投与して、それが鎮まることで確かに効果があるのだとしたら、このくらいのという言い方は変ですが、有害事象はいいのかと取るのでしょうか。そこの判断が難しいので教えていただきたいと思います。
○松井部会長 いかがでしょうか。
○機構 確かに有害事象の発現率自体は、かなり高頻度に出ておりますが、いずれの症例も軽度、あるいは中等度で、有害事象のために投与中止に至った症例というのはほとんどございませんでした。したがいまして、AD/HDの症状に対しての本剤の有効性をベネフィットとして評価しております。
○松井部会長 今のお答えでよろしいでしょうか。
○佐藤(田)委員 今何ページの何行目というのが見当たらないので、すみません。
○松井部会長 16ページの表13と考えてよろしいですか。
○佐藤(田)委員 そうではなくて、私の質問の中で先ほどお答えした方に対して、死亡例がなかったからいいよと、ほかのいろいろな多くの、この程度のほてりだとか、その程度だったら軽いと言ったらおかしいですが、凶暴性が落ち着くのであれば、こういう有害事象は80何%あったとしても、あまり問題視とまで考えなくていいのかどうかというところを教えていただきたいということです。
○機構 本剤で最も多く発現している有害事象は、主に悪心や食欲減退になります。これらの有害事象は確かに御指摘いただいたとおり、非常に発現率が高いような数値が出ておりますが、審査報告書18ページ表15を御覧ください。表15に、本剤群における食欲減退の発現割合の推移を示しております。そちらを御覧いただければお分かりになるかと思いますが、投与初期に高頻度に発現はしておりますが、食欲減退のために投与中止に至った症例はわずかであり、多くの症例で投与は継続されております。したがいまして、本剤のリスクとしては高いものではないと考えております。
○古川委員 今の有害事象のことですが、これは小児期からずっと続けて使っていらっしゃる大人の方がいますが、その場合の有害事象の発現率は高いのですか、低いのですか。この表にあるのは、新たに使った成人の方ですね。
○機構 今回の臨床データパッケージは、基本的に成人期から投与された患者さんを対象とした試験となっておりますので、小児期から継続して投与された患者さんに関しては、今のところ、小児の適応の製造販売後調査の中で見ております。その中では、例数は限られますが基本的に小児期から成人期に推移していく中で、有害事象の発現率が高くなる等の傾向は認められてはおりません。
○古川委員 私も多分そうだろうと思いました。ですから、小児期からずっと使っていた成人の方でどの程度有害事象があるのか、参考の資料としてそれを出していただくともう少し分かりやすいのではないかと思いました。
○松井部会長 いかがですか。そういう方はまだ症例数が少ないのですか。
○機構 具体的な例数を今申し上げることができないのですが、もともとこの薬剤は小児に対して承認されているのですが、小児期に投与されて、そこから18歳以上を経過した後も継続して調査を行ってはおりますが、その例数はそれほど多いものではなく数十例程度でございます。そういった中で、現在保険適用上は、小児からずっと18歳を超えて継続して投与することも許容可能としております。製造販売後調査のデータはそれほど多くないので、今すぐどのようなものが出せるかということはお答えできないのですが、基本的にこの薬剤のプロファイルとしては、投与初期の悪心・嘔吐が主な有害事象です。後は心血管系の変動ですので、小児期から継続投与することによるリスクは、基本的には、成人期であろうと小児期であろうと変わらないものであると我々としては考えております。
○松井部会長 古川委員、いかがですか。
○古川委員 そういうデータを、また示していただくのは大切ではないかと思います。
○機構 製造販売後のデータに関しては、資材等に情報提供ができるようにこちらでも検討したいと思います。
○松井部会長 よろしいでしょうか。ほかにございますか。御質疑はよろしいですか。今の古川委員の御指摘は、何等に報告するとおっしゃいましたか、資材ですか。
○機構 医師向けに「適正使用のガイド」を作成しております。そちらの方に小児と成人期を併せて臨床試験のデータ等も掲載することを考えております。
その中に可能な限り小児期から継続服用している患者さんのデータについても含めたいと思っております。
○松井部会長 私が申し上げているのは、古川委員がそういう資料を提供してほしいとおっしゃられたので、数十例で、もし可能であれば初期報告という形でも、私どもに教えていただければと思ったのです。
○機構 現時点での調査内容を後ほど提出したいと思います。
○松井部会長 報告してください。お願いします。ほかに御質疑はございますか。ないでしょうか。それでは議決に入ってよろしいですか。議決に入ります。本議題につきましては承認を可としてよろしいでしょうか。
異議はありませんね。異議なしと認めます。承認を「可」として薬事分科会に報告いたします。
 次の議題4につきまして、機構から概要説明をお願いいたします。
○機構 審議事項議題4、資料4-1及び資料4-2「医薬品スイニー錠100mg及びベスコア錠100mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤は、アナグリプチンを有効成分として含有するDPP-4阻害薬であり、食事摂取により、消化管から血中に分泌されるGLP-1の不活化酵素であるDPP-4を阻害することにより、GLP-1の血中濃度を維持し、血糖降下作用を示す薬剤です。2012年5月現在、海外においては、本剤は承認されておらず、韓国、中国、米国及び欧州において開発中です。
 本品目の専門協議では、資料12に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
 以下、本剤の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。
有効性については、審査報告書57ページを御覧ください。表14に示しましたように、単独療法による第II/III相試験において、主要評価項目とされた投与開始時から最終評価時までのHbA1c変化量について、本剤群ではプラセボ群と比較して有意な低下が認められました。また、本剤とα-グルコシダーゼ阻害薬との併用療法、本剤とチアゾリジン系薬剤との併用療法、本剤とスルホニルウレア系薬剤との併用療法及び本剤とビグアナイド系薬剤との併用療法についても第III相試験がそれぞれ実施され、審査報告書62ページ表20、65ページ表24、68ページ表28、71ページ表32に示しましたように、いずれも主要評価項目とされた投与開始時から最終評価時までのHbA1c変化量について、プラセボ群に対する優越性が検証されました。
 安全性については、76ページ~88ページに記載した(3)「安全性について」の項を御覧ください。低血糖症、胃腸障害、急性膵炎等について個別に評価した結果、大きな問題はみられていないことから、本剤の安全性は許容可能と判断しています。
 製造販売後調査については、99ページ(5)「製造販売後調査の計画について」の項を御覧ください。目標登録症例数6,000例、観察期間3年間の特定使用成績調査が計画され、低血糖症、胃腸障害、心血管系イベント等の安全性に係る情報、腎機能障害患者、肝機能障害患者及び高齢者における安全性及び有効性に係る情報等が収集される予定です。
 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。
本剤の再審査期間は8年とすることが適切であり、原体及び製剤はいずれも毒薬・劇薬に該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございます。それでは委員の先生方に御質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。99ページの製造販売後調査の計画は、最終的には6,000例を目指すことでよろしいのですね。
○機構 登録症例数として6,000例を目指して、3年間で調査が完了できる症例数として3,000例を確保できるように調査を進めていただくということで合意いたしております。
○村田委員 あまり本質的なことではないのですが、ベシケアという薬がありますが、かなり音が近いような気がするのですが、多分チェックを既にされていると思うのですが、十分に判別可能であるということですか。排尿障害の薬でベシケアという薬がありまして、こちらがベスコアなので、シとスと、ケとコの違いで4文字で、ふと見たときに間違いやすいかという気もしました。それがヒューマンエラーの観点から考えて大丈夫であると、既に評価されていることでしたらいいと思うのですけれども、いかがですか。
○機構 お答えさせていただきます。販売名につきましては、機構安全部等とも協議をさせていただきまして、販売名のルール等にも基づきまして、検討させていただいた結果、本剤に関してはベスコアとすることで問題ないと判断をいたしております。
○松井部会長 いかがでしょうか。村田先生あまり納得できないような感じですか。
○村田委員 大丈夫と言われれば、何とも言い難いのですが、私たち電子カルテで見ると、4文字で似たような語感というのは、ほかの先生方も結構間違いやすくないですか。少し気になります。コーワというのがなくなったのですが、本当はベスコアコーワと付いていてくれた方が、逆に間違いはなかったかと思います。多分これは血糖降下剤なので必ずリスクで出てきて、「間違いやすいから注意」というのが、院内で回るタイプのものかと思います。
○機構 補足説明させていただきます。先ほど言いましたように、一定のルールはクリアしているのですが、先生からの御意見を踏まえて、現場で主観的に似ていることについては気をつけるように申請者に指導したいと思います。そういう類似名があるから注意するようにという御指摘だと理解しましたので、販売名としてルールはクリアしているということですが、それとは別に注意するようなことを指導したいと考えます。
○松井部会長 いかがでしょうか。
○松木部会長代理 一般的に学会でも、今のシステムはまだ不十分なので、改訂の提案が結構出されています。要するに、文字数でいくのか、音でいくのか、見た印象とか、そういうのがあるので、またいろいろな論文が出てきていますので、そういうものも参考にしてやっていただきたい。学会発表だと、今あるシステムで類似のものが排除できていないというデータも出てきています。ですから、今あるものはまだまだ発展途上という感覚で見た方がいいと思います。
○松井部会長 委員の先生方、いかがでしょうか。
○審査第一部長 御指摘ありがとうございます。この販売名につきましては、先ほども説明いたしましたが、内部的な検討としては、安全対策の関係の部署といろいろ調整をしてきました。
まず、最初の販売名はベスコアコーワということで、先生はそちらの方が区別しやすいのではないかという御指摘だったかと思います。例えばベスコアとコーワが二つに切れるようなイメージになるということで、逆に安全対策上、そのようなことは好ましくないという関連部署からの指摘もございました。そういうことで、このような短いところにしたという経緯があります。逆にその点が分かりにくくなったという御指摘だと思いますが、私どもとしては、いろいろな安全対策の部署と連携をして、一応、似たものはないかとか、二つ分かれたときに短くしたら逆に間違えるのではないかとか、そういう点をいろいろ加味した上でこういうことになったということです。
○村田委員 もう十分されたことはよく分かっているのですが、松木先生がおっしゃったように、現場としては、まだ不足かという印象があるということです。
○松井部会長 その点、間違いのないような配慮を十分していただきたいということをお願いいたします。ほかにございますか。
○山田委員 添付文書(案)についてお尋ねします。添付文書(案)の19ページ、重大な副作用の類薬で「腸閉塞」と記載がありますが、類薬の重大な副作用には、もっといろいろなことが記載されているかと思いますが、この「腸閉塞」だけがここで記載された何か特別な理由があれば御説明いただければと思います。
○機構 御回答させていただきます。類薬は、重大な副作用に先生の御指摘のとおり、横紋筋融解症であるとか、ほかの副作用について注意喚起されているものもございますが、安全サイドの検討の結果、腸閉塞に関してはDPP-4阻害薬のクラスエフェクトであろうという判断をいたしております。そのため本剤に関して、治験中腸閉塞がほとんど見られているわけではないのですが、クラスエフェクトの一つとして類薬記載ということで重大な副作用に挙げさせていただいております。
 そのほかの点につきましては、クラスエフェクトというよりは、その剤ごとの特性によるものであろうという判断をしておりまして、今後症例が集積されるなどがありましたら、本剤に関しても適切な注意喚起をしていく予定でございます。
○山田委員 分かりました。
○松井部会長 ほかにございますか。よろしいでしょうか。今の議論で、繰り返しになって大変しつこいようですが、この薬の名前、薬剤の名前については、今後とも慎重に議論を深めていただきたいと思います。議決に入ります。よろしいでしょうか。木村委員、野田委員、村田委員、山田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。
よろしいですか。異議がないようですので、承認を「可」として薬事分科会に報告いたします。
 議題5に移ります。事務局から概要説明をお願いいたします。
○事務局 審議事項議題5、資料5「SBC-102を希少疾病用医薬品と指定することの可否について」事務局より御説明いたします。
御審議の対象となる品目は、「リソソーム酸リパーゼ欠損症」を予定効能・効果とするSBC-102になります。
 資料5の機構からの評価報告書を御覧ください。申請者は、Synageva BioPharma Corp.でございます。以下、評価報告書に沿って、希少疾病用医薬品の指定要件である対象者数、医療上の必要性及び開発の可能性について、順に御説明いたします。
まず、対象者数ですが、1989年~2010年までに12例のリソソーム酸リパーゼ(以下LAL)欠損症と診断された症例の報告がございます。また、欧米における発症率の報告を踏まえて、本邦での発症率も同様と仮定した場合には、約1,500人程度と推定されております。これらを踏まえますと、患者数が5万人以下という希少疾病用医薬品の指定基準を満たしているものと考えております。
 続きまして、医療上の必要性について御説明いたします。LAL欠損症は、LALの先天的な欠損が原因となり、リソソームへの多量の脂肪の蓄積が生じ、コレステロールや脂質の代謝に著明な障害を受けます。早期発症型と晩期発症型の二つの臨床型をとりますが、早期発症型では、成長障害や吸収不良等の消化管症状や肝臓における症状が特徴であり、急速に進行するタイプでは1年以内に死亡する場合もあります。また、晩期発症型では肝臓と循環器系が症状の中心となり、肝硬変に至る場合や、心筋梗塞、脳卒中のリスクも高まるとされております。加えて、晩期発症型では合併症を生じる場合もございますが、予後不良であることが多いとされております。これらのことから、重篤な疾患であると考えております。
 本邦において、LAL欠損症を適応症として承認されている医薬品は存在せず、本剤は欠損しているLALを補充するものであり、理論上、有効性が期待されることから、医療上の必要性は高いと考えております。
 最後に開発の可能性ですが、現在、欧米で有効性、安全性及び忍容性を評価する第I/II相試験が実施され、コレステロールやトリグリセリド等の減少が認められたとされております。今後、日本人を組み入れる国際共同第III相試験も実施される予定となっており、本剤の開発の可能性はあると考えております。
以上の3点から、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすものと判断しております。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございます。委員の先生方から御質疑をお願いします。御覧のように大変稀な疾患です。何かございませんか。特にありませんか。それでは、議決に入ってよろしいでしょうか。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございます。御異議がないものと認めますので、指定を「可」として薬事分科会に報告いたします。
 次は、報告事項につきまして説明をお願いします。
○事務局 報告事項議題1、資料6「医薬品ペンタサ錠250mg、同錠500mgの製造販売承認事項一部変更承認について」事務局より御報告いたします。資料6を御覧ください。
本剤の有効成分はメサラジンであり、現在「潰瘍性大腸炎(重症を除く)、クローン病」の効能・効果で承認されております。
今般、杏林製薬株式会社より、寛解期の潰瘍性大腸炎の用法として、1日1回投与を追加する新用量医薬品としての製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。
 続きまして、報告事項議題2、資料7「医薬品グロウジェクト注射用1.33mg、同注射用8mg及びグロウジェクトBC注射用8mgの製造販売承認事項一部変更承認について」事務局より御報告いたします。資料7を御覧ください。
本剤は、ソマトロピン(遺伝子組換え)を有効成分とするヒト成長ホルモン製剤であり、「骨端線閉鎖を伴わない成長ホルモン分泌不全性低身長症」、「骨端線閉鎖を伴わないターナー症候群における低身長」及び「成人成長ホルモン分泌不全症(重症に限る)」の効能・効果で承認されております。
今般、日本ケミカルリサーチ株式会社から、「骨端線閉鎖を伴わないSGA性低身長症」の効能・効果を追加するための製造販売承認事項一部変更承認申請がなされたものです。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。
 続きまして、報告事項議題3、資料8「医薬品プラビックス錠25mg及び同錠75mgの製造販売承認事項一部変更承認について」事務局より御報告いたします。資料8を御覧ください。
本剤は、チエノピリジン系の経口抗血小板薬であり、「虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制」及び「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される下記の虚血性心疾患、急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞)、安定狭心症、陳旧性心筋梗塞」の効能・効果で既に承認されております。
 今般、サノフィ・アベンティス株式会社から、「経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群」である不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞に、「ST上昇心筋梗塞」を追加する効能・効果の一部変更承認の申請がなされました。なお、本申請は、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」により、再審査期間中であることから公知申請には該当しないものの、新たな臨床試験を実施することなく、既存の情報を用いて申請することが適切と判断されたことに基づく製造販売承認事項一部変更承認申請です。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。
 続きまして、報告事項議題4、資料9「医薬品ディオバン錠20mg、同錠40mg、同錠80mg及び同錠160mgの製造販売承認事項一部変更承認について」事務局より御報告いたします。資料9を御覧ください。
本剤は、アンジオテンシンIIタイプ1受容体拮抗薬であるバルサルタンを有効成分とする製剤です。
本剤について、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成24年1月27日に開催された本部会における事前評価を踏まえて、今般、ノバルティスファーマ株式会社から、「高血圧症」の効能・効果における小児の用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。
医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。
○事務局 続きまして、報告事項議題5、資料10「医療用医薬品の承認条件の解除について(ギャバロン髄注)」事務局より御説明します。資料10「承認条件に係る審査報告書」を御覧ください。
ページをめくっていただき、3ページの上段になりますが、「ギャバロン髄注0.005%」等3品目は、平成17年4月11日に「脳脊髄疾患に由来する重度の痙性麻痺(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の効能・効果で承認されており、その際、3ページの下線部のような全例調査の承認条件が付されています。今般、この承認条件に関して第一三共株式会社より使用成績調査の結果が提出され、機構における審査が終わりましたので、御報告します。なお、本剤は、平成19年に小児に関しても承認され、同じく全例調査の承認条件が課されていますが、今回の調査結果では、成人についてのみ提出されています。
 3ページ中程の「調査の概要」でございますが、観察期間はポンプシステム埋め込み手術後1年間までとされ、平成17年12月~平成24年3月までの間に、国内308施設より成人1,218例が登録され、そのうち、スクリーニング時923例、長期持続投与時473例の症例が収集され、調査結果がまとめられています。
 安全性について、4ページ上段を御覧ください。スクリーニング時において副作用が発現した症例は7.2%であり、国内第III相臨床試験で認められた副作用発現率と比較して低く、高くなる傾向は認められませんでした。また、長期持続投与時において副作用が発現した症例は12.9%であり、同じく国内第III相臨床試験で認められた副作用発現率と比較して低く、高くなる傾向は認められませんでした。
 また、6ページ中程で、長期持続投与時における「耐薬性」等の項目が重点調査項目に設定されましたが、その結果も含め、安全性について、新たな対応が必要な特段の問題はないと判断されました。
 有効性について、7ページ中程の「1.抗痙縮効果(Ashworth評点)」を御覧ください。長期持続投与時の有効性について、記載のような成績が認められており、国内第III相臨床試験で認められた有効性と比較して同様の傾向が認められています。これらのことを踏まえ、有効性について、現時点で新たな対応が必要な特段の問題はないと判断されました。
 以上を踏まえ、9ページ、III.総合評価でございますが、成人に関して、承認条件の内容については確認できたものと判断しております。なお、小児については、引き続き全例調査を実施することとしています。報告は以上でございます。
○松井部会長 ありがとうございます。ただ今の五つの報告事項につきまして、御質疑をお願いいたします。
○松木部会長代理 今の最後の資料10の6ページの離脱症状のところで、医療機器破損1件となっているのですが、これは埋め込みポンプが壊れたということですか。
○機構 こちらの事象ですが、離脱症状の報告の中で医療機器の破損の中身が含まれていたということであったと思います。
○松木部会長代理 埋め込んだポンプが壊れたのかということなのですが、これはそういう意味ではないのですか。この医療機器は何なのですか。
○機構 埋め込んだポンプなのですが、詳細な中身を今持ってないのですが、基本的にそのような不具合等でございます。
○松井部会長 よろしいですか。
○松木部会長代理 はい。
○松井部会長 ほかにございますか。よろしいですか。それでは、ただ今の報告事項については、確認をいただいたものといたします。事務局から、ほかに何か報告はありますか。
○機構 すみません、先ほどの審議事項議題3のストラテラに関して、古川委員からの御質問に対してPMDAからお答えした内容について、若干訂正させていただきたいので、よろしいでしょうか。
○松井部会長 はい。
○機構 先ほど小児から継続されて投与された症例のデータについて、使用成績調査の中で集められているというお話を差し上げたのですが、資料3の2.5「臨床に関する概括評価」の21ページの2.5.4.2.5のところを御覧いただきたいのですが、LYDA試験という日本人の小児期AD/HD患者の長期投与試験の中で、18歳以上までの継続使用例が今回の中で参考資料として提出されております。このページの下から3行目のところで、LYDA試験の12例についての安全性について述べられており、文章的には、18歳以降の報告された有害事象の重症度は、「すべて軽度又は中等度であった」と記載されております。ここの内容に関して現時点で詳しい内容が手元にありませんので、その詳細について後ほど御報告させていただければと思います。
○松井部会長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。ほかに御質疑がもしありましたらどうぞ。本日は思いのほか早く進行しております。
○松木部会長代理 資料3の添付文書のことなのですが、この書き方が何かやたら下線が多くて、少し気になっていたのです。資料3の添付文書(案)のところですが、重要だと思われるところと、資料があるところの下線と、よく分からない下線と3種類ぐらいある気がするので、少し紛らわしいと思います。
○機構 下線部が引かれておりますのは、今回、小児期から成人期の効能が追加されますので、それに伴って追加した箇所は下線を引いております。
○松木部会長代理 その変更部分ということですか。
○機構 具体的に申し上げますと、用法・用量の箇所でもともと小児のみの用法・用量が記載されておりましたところを、18歳未満と18歳以上に分けて書くように変えております。それから、今回の承認申請に伴いまして、一部データも追加で毒性などは提出されておりますので、その部分は下線を引いた形で今回御提示させていただいております。
○松木部会長代理 では、実際にはこれは使われないと、下線はもう引かれないということですね。
○機構 はい。
○松木部会長代理 はい、分かりました。
○松井部会長 よろしいでしょうか。ほかにはございますか。ありませんか。事務局から、どうぞ。
○事務局 事務局から補足させていただきます。添付文書に関しましては、改訂された場合に改訂箇所が分かるようにしておりまして、通常下線を引くことで対応させていただいております。今お示ししている(案)では、改訂部分に関しましては下線を引かせていただいておりますので、このままで使われるということです。
○松井部会長 下線を引いたままですか。
○事務局 そのままです。また、このままずっと残るのではなくて、更に改訂が入りますとこの下線が無くなってというように順送りになっていくようになっております。
○松井部会長 御意見はありますか。
○松木部会長代理 分かるのですが、ただ表の中の数字まで全部下線が引いてあるというのは、かえって分かりにくいような気がするのです。ですから、ここの部分は全体が変わっているとか、そのようなことが分かればいいのではないかと思います。見ていて非常に煩雑に見えたものですから、検討いただければと思います。
○事務局 事務局からお答えします。御意見をいただきまして、より良いやり方について検討させていただきます。
○松井部会長 よろしいでしょうか。検討していただくということです。ほかにございますか。ないようでしたら、事務局から次回の予定についてお願いします。
○事務局 次回の部会でございます。既に御案内させていただいておりますが、8月31日(金)午後3時から開催させていただく予定でございます。よろしくお願いいたします。
○松井部会長 それでは、何か特にございませんでしたら、本日はこれにて終了いたします。暑い中、どうも御苦労様でした。


(了)

備考
 本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)

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