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2012年8月29日 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会議事録

医薬食品局

○日時

平成24年8月29日(水)
16:00~


○場所

厚生労働省 専用第23会議室


○出席者

出席委員(19名)  五十音順

○荒 井 保 明、 荒 川 義 弘、 石 井 明 子、 今 井 聡 美、

◎笠 貫   宏、 川 上 正 舒、 倉 根 一 郎、 齋 藤 知 行、

 塩 川 芳 昭、 正 田 良 介、 高 橋 好 文、 武 谷 雄 二、

 寺 崎 浩 子、 中 谷 武 嗣、 西 田 幸 二、 菱 田 和 己、

 松 岡 厚 子、 村 上 輝 夫、 桃 井 保 子

(注) ◎部会長 ○部会長代理

 他参考人4名

 欠席委員(4名) 五十音順

 木 村   剛、 鈴 木 邦 彦、 田 島 優 子、 千 葉 敏 雄

行政機関出席者

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 赤 川 治 郎 (審査管理課長)

 俵 木 登美子 (安全対策課長)

 浅 沼 一 成 (医療機器審査管理室長)

 矢 守 隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 梅 澤 明 弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構副審査センター長)

 佐久間 一 郎 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構副審査センター長)

○議事

○医療機器審査管理室長 定刻になりましたので、ただ今から「薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会」を開催させていただきます。委員の先生方におかれましては、御多忙の中、また暑い中を御出席いただきましてありがとうございます。本日は、医療機器・体外診断薬部会委員23名のうち、17名の御出席をいただいておりますので、薬事・食品衛生審議会令に基づく定足数を満たしておりますことを御報告いたします。
 本日は、医薬品医療機器総合機構より、北条組織運営マネジメント役に御出席いただいております。皆様に御紹介いたします。
○組織運営マネジメント役 どうぞよろしくお願いいたします。
○医療機器審査管理室長 本日の議題の公開、非公開の取扱いについて御説明いたします。平成13年1月23日付の薬事・食品衛生審議会決議に基づき、議題1については会議を公開で行い、議題2以降については、医療機器の承認審査に関する議題であり、企業情報に関する内容等が含まれるため非公開といたします。これより議事に入りますので、傍聴の方によるカメラ撮りはここまでといたします。御協力のほどよろしくお願いいたします。以降の議事進行は笠貫部会長にお願いいたします。
○笠貫部会長 最初に、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
○医療機器審査管理室長 まず、1.公開案件についての資料です。資料1-1「医療機器の認証基準案について」、資料1-2「医療機器の認証基準案に係る基本要件チェックリスト案について」、参考資料1-1「医療機器の認証基準に関する基本的考え方について」、参考資料1-2「認証基準において引用するJIS」です。以上4点ですが、不足分はございませんか。過不足がありましたら事務局までお申し出ください。以上です。
○笠貫部会長 これより議題に入ります。議題1「医療機器の認証基準案について」を事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 2.公開案件、報告事項議題1「医療機器の認証基準案について」事務局より御報告させていただきます。資料1-1、資料1-2、参考資料1-1、参考資料1-2を御覧ください。初めに、参考資料1-1について御説明いたします。認証基準については、平成17年の改正薬事法の施行により、第三者認証の制度を導入しております。現在、我が国には第三者認証機関が13機関あります。厚生労働大臣が、基準を定めた管理医療機器については、この第三者認証機関が、基準に基づいて適合性の評価を行い、認証する形をとっております。現在までに、管理医療機器の一般的名称1,791品目のうち、1,365品目、基準数でいうと823基準が策定されております。裏面には、医療機器のクラス分類について記載されておりますので参考にしてください。
 資料1-1を御覧ください。本日、先生方に御報告いたします認証基準案については、新規制定が1.鍼電極低周波治療器認証基準(案)の1件。改正が、2.低周波治療器・干渉電流型低周波治療器組合せ理学療法機器認証基準(案)~45.義歯床用長期弾性裏装材認証基準(案)までの44件となっております。
 資料1-2は、医療機器の認証基準(案)に係る基本要件適合性チェックリストです。先ほど御説明いたしました、認証基準案の制定1件と、改正44件に対応するものです。また参考資料1-2として、今回御報告させていただく認証基準において、引用するJIS規格を付けております。以上、本日御報告させていただく認証基準に関しては、パブリックコメントの手続を経て発出させていただく予定となっております。内容については、医薬品医療機器総合機構から御説明いたします。
○機構 報告事項議題1「医療機器の認証基準案について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。資料1-1を御覧ください。先生方に今回御報告する認証基準案は、新規制定案が1件と、日本工業規格の改正に伴う改正案が44件です。1の鍼電極低周波治療器認証基準(案)が新規制定案です。1ページの上段を御覧ください。鍼電極低周波治療器です。基準に引用する日本工業規格は、医用電気安全機器の通則規格であるT 0601-1です。使用目的、効能又は効果は、身体に鍼電極を挿入し神経及び筋を刺激し、鎮痛や筋萎縮改善に用いることとしております。また、一般的名称の定義は、使用実態を反映し、鍼電極の文言を追加記載するなどの変更を行っております。
 資料1-1の目次を御覧ください。2~45までが、日本工業規格の改正に伴う改正案です。そのうち2~41までが医用電気機器安全の通則規格である、日本工業規格T 0601-1の第2版から第3版への改正及びこの通則規格を引用する個別規格の制定又は改正に伴う基準改正です。
 42~45までが、歯科材料関連のISO改正に伴い、日本工業規格を改正したことによる基準改正です。今回、基準の日本工業規格に変更があった基準案は、資料1-1の2~19と、21、28、32の合計21件です。
 2ページの上段を御覧ください。2では、現行と記載いたしましたT0601-1-1、T0601-2-10の引用から、改正案のT0601-1を引用することとしております。その他は、各基準案の記載のとおり、基準の日本工業規格を現行から改正案へ変更することとしております。また、今回の改正で、一般的名称の定義を変更するものは、12で示した6名称です。
 13ページの12の下段を御覧ください。基準改正時に現状の使用実態に合わせ、6件の一般的名称の定義を、13ページ~16ページの記載のとおり、現行から改正案へ変更することとしております。
 資料1-2のチェックリストを御覧ください。資料1-2は基本要件適合性チェックリスト(案)です。新規制定1件と、JIS改正に伴う改正44件の基本要件適合性チェックリスト(案)となっております。新規制定の1以外は、JIS改正に伴う文言などの見直し及び修正となっております。御説明は以上です。
○笠貫部会長 委員の皆様方から御質問、御意見をお願いいたします。多くの内容が含まれると思いますが、いかがでしょうか。特に、新規制定案である、鍼電極低周波治療器認証基準の点について御質問、御意見はありませんか。
 特にないようでしたら、報告はお認めいただいたことにいたします。いずれにしても、本日は新規制定案が1件と、44件の改正案をお示しいただきましたが、これで医療機器の認証基準が粛々と進められていくということで、議題1は終わらせていただきます。公開で行う議題は以上です。
○医療機器審査管理室長 ありがとうございました。以後の議題は非公開とさせていただきますので、傍聴の皆様は御退室のほどよろしくお願いいたします。非公開で行う議題2以降の開始時間は16時15分とさせていただきます。
○医療機器審査管理室長 それでは、準備が整いましたので、医療機器・体外診断薬部会を再開いたします。まず、非公開の議題に係る配付資料の確認をさせていただきます。資料2「医療機器『コンテグラ肺動脈用弁付きコンデュイット』の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」。資料3「医療機器『プロマスエレメントプラスステントシステム』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」。資料4「医療機器『AMPLATZERバスキュラープラグ』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」。資料5-1「医療機器『ナトレルブレスト・インプラント』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について(諮問書)」。資料5-2「医療機器『ナトレルブレスト・インプラント』の症例一覧」。資料6-1「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について(冠動脈カテーテル交換用カテーテル)(諮問書)」。資料6-2「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について(中心循環系動静脈カニューレ)(諮問書)」。資料7-1「1片中カスポファギンとして51.2μg以下を含有する体外診断用医薬品の劇薬の指定の除外の可否について(諮問書)」。資料7-2「1容器中デオキシグアノシン5'-3リン酸として1g以下を含有する体外診断用医薬品の劇薬指定の除外の可否について(諮問書)」。資料8「医療機器・体外診断薬部会報告品目」。資料9「競合品目・競合企業リスト」。参考資料2「薬事分科会審議参加規程」。参考資料3「クラス分類ルール(平成16年7月20日付薬食発第0720022号厚生労働省医薬食品局長通知)」。不足等がありましたら事務局にお申し出ください。以上です。
○笠貫部会長 非公開の議題に入らせていただきます。本日はたくさんの審議事項がありますので、御協力をお願いいたします。まず、本日の審議事項に関与された委員の方々と、利益相反に関する申出状況について事務局から報告をお願いいたします。
○事務局 資料9「競合品目・競合企業リスト」、参考資料2「薬事分科会審議参加規程」に基づき、事務局から御説明させていただきます。こちらの報告は、平成20年12月19日付薬事分科会で決定された、薬事分科会の審議参加規程に基づくものです。委員の皆様方から、毎回御報告いただいておりますので概要は御存じかと思います。過去3年度にわたり、寄付金・契約金等の額について、競合企業と申請企業からの額を申告していただき、その結果に応じて審議不参加、もしくは議決への不参加という形を審議会の規程として決めていただいております。
 資料9「競合品目・競合企業リスト」を御覧ください。1ページは議題2関係です。申請者名は日本メドトロニック株式会社で、申請品目は「コンテグラ肺動脈用弁付きコンデュイット」。競合品目として、エドワーズライフサイエンス株式会社のカーペンターエドワーズ生体弁付きコンデュイットが、本品と同様右室流出路の再建及び修復に用いられる弁付きコンデュイットとして申告されております。
 2ページは議題3関係です。申請者名はボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社で、申請品目は「プロマスエレメントプラスステントシステム」。競合品目として、日本メドトロニック株式会社のエンデバーコロナリーステントシステム、アボットバスキュラージャパン株式会社のXIENCEPRIME薬剤溶出ステント、テルモ株式会社のノボリが申告されており、同様の使用目的で、薬剤溶出ステントであることから選定されています。
 3ページは議題4関係です。セント・ジュード・メディカル株式会社から申請されている「AMPLATZERバスキュラープラグ」です。競合品目としては、CookJapan株式会社のクックエンボライゼーションコイル、日本ストライカー株式会社のプラチナコイルバスキュラーオクルージョンシステム、セント・ジュード・メディカル株式会社のAMPLATZER バスキュラープラグIIが申告されています。
 4ページは議題5関係です。申請者はアラガン・ジャパン株式会社、申請品目は「ナトレルブレスト・インプラント」こちらに関しては本邦において承認されている医療機器はないということで申告されております。
 5ページは議題7関係です。申請者名は栄研化学株式会社。申請品目は「酵母様真菌DP栄研(シリーズ)カスポファンギン」。申請者名は栄研化学株式会社の申請品目は同様の「酵母様真菌FP栄研(シリーズ)カスポファンギン」。申請者は極東製薬工業株式会社の申請品目は「酵母真菌薬剤感受性キットASTY(シリーズ)カスポファンギン」です。競合品目として、シスメックス・ビオメリュー株式会社の酵母様真菌薬剤感受性試験用Etest、バイテック2酵母様真菌感受性カードが、カスポファンギン関係の競合品目として申請されております。
 6ページは、栄研化学株式会社の「LoopampマイコプラズマP検出試薬キット」。7ページの栄研化学株式会社の「Loopampレジオネラ検出試薬キットC」については、それぞれマイコプラズマ核酸、レジオネラ核酸を検出する既存の体外診断用医薬品はないということで申告を受けています。
 8ページは、申請者が栄研化学株式会社の「Loopamp結核菌群検出試薬キット」です。競合品目としては、ロシュ・ダイアグノスティクス株式会社の、コバスTaqManMTB、東ソー株式会社の結核菌群rRNA検出試薬TRCRapidMTB。東洋紡績株式会社のジーンキューブMTBが、結核菌群の検査に用いる試薬キットなどとして申告されております。
 本日、審議事項に関する影響企業について、委員の皆様方から寄付金・契約金等の受取状況を伺ったところ、薬事分科会審議参加規程第12条の審議不参加の基準、また第13条の議決不参加の基準に基づき、本日御退席いただく委員及び議決に御参加いただけない委員はいらっしゃいませんでした。以上御報告いたします。
○笠貫部会長 ただ今御説明をいただきました件について、特段の御意見はありませんか。よろしければ議題の方に入らせていただきます。議題2「医療機器コンテグラ肺動脈弁付きコンデュイットの製造販売承認の可否について」審議を行います。本議題の審議に当たっては、参考人として京都府立医科大学小児心臓血管外科部教授の山岸正明先生においでいただいております。よろしくお願いいたします。それでは、まず審議品目の概要について事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 概要について、資料2に基づいて御説明いたします。議題2のコンテグラ肺動脈用弁付きコンデュイットです。一般的名称新設についてという資料2のタグをおめくりください。高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定及び特定保守管理医療機器の指定の要否についてということで、本品についてはウシ由来弁付人工血管として、一般的名称の新設ということで記載しております。
 1.ウシ由来弁付人工血管は、副作用又は機能の障害が生じた場合に、適正な使用目的に従い、適正に使用された場合に限り、人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあることから、適切な管理が必要なものであると考えられるため、高度管理医療機器の指定をするということ。特定保守管理医療機器の指定については、特定保守管理医療機器として指定しないということで、こちらの方で記載しております。
 具体的な品目の説明に入ります。審査報告書の1ページ、一般的名称は「ウシ由来弁付人工血管」、販売名は「コンテグラ肺動脈用弁付きコンデュイット」、申請者は「日本メドトロニック株式会社」です。特記事項のところの説明として、本品については医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会において選定されている品目で、優先審査品目として審査されているものです。
 外観写真は、審査報告書の5ページに記載しております。図1、図2のとおり、三つの弁栓を有するウシ頸動脈を利用しているもので、弁と人工血管の継ぎ目のない完全一体化を可能とした、生体由来の肺動脈用弁付きコンデュイットです。
 使用目的は、審査報告書の3ページに記載しております。使用目的として、本品は以下の臨床的条件のある患者への植込みを目的とする。一つ目は、先天性心奇形、肺動脈閉鎖症、肺動脈狭窄症、ファロー四徴症等における右室流出路RVOTの整復又は再建。二つ目は、ロス手術における肺動脈弁置換術。三つ目として、正常に機能しなくなった植込済み肺動脈ホモグラフト又は破損した人工肺動脈グラフトの置換です。
 また、承認条件として3点挙げております。詳細については機構より御説明いたします。
○機構 審議事項議題2、資料2「医療機器『コンテグラ肺動脈弁付きコンデュイット』の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管理医療機器の指定の要否、生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
諮問書の次のページに差し込まれた別紙を御覧ください。本審査に当たっては、記載しております8名の専門委員の御意見をいただきました。
 本品目の概要について御説明いたします。審査報告書の4ページ~5ページを御覧ください。コンテグラ肺動脈用弁付きコンデュイット(以下本品という)。本品は、図1、図2にお示しますように、先天性心疾患における右室流出路の再建などに使用する、ウシ頸静脈を利用した、生体由来の弁付きコンデュイットです。コンデュイットというのは、写真にありますように、人工血管、もしくは導管のようなものを指す言葉です。
 本品には、弁の変形防止を目的としたリングが付いたサポート付きモデルと、このリングがないサポートなしモデルの2種類のモデルがあります。本邦においては、右室流出路の再建に使用できる弁付きコンデュイットは現在販売されておらず、欧米で標準的に用いられる同種組織であるホモグラフトの入手も困難であるため、現状では主に医師による手作りの弁付きコンデュイットが、限られた施設において用いられております。そのため、本品は医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会において、疾病の重篤性が高く、医療上の有用性が高い医療機器に選定されております。
 外国における使用状況については、審査報告書の6ページにお示ししたとおり、欧州では1999年にCEマークを取得し、米国では2003年にHDE承認を取得しております。現時点において、約□□□本の販売実績があります。
 機構における審査について、まず非臨床試験成績に関する論点について御説明いたします。審査報告書の8ページ~11ページ、(2)流体力学試験の項を御覧ください。模擬試験装置を用いた流体力学試験において、本品は脈圧負荷の増加とともに膨張し、弁逆流量が増加するなど、性能の低下傾向が認められています。本品を用いた臨床試験成績においては、右室収縮期圧が75mm/hgを超える患者において、弁逆流、修復、機器関連のカテーテルインターベンションとの関連が認められる傾向がありましたが、圧力上昇に伴う、これら本品の有効性と安全性への影響は、臨床上許容できると判断いたしました。
 ただし、本品の膨張に伴う性能の変化、及び臨床上のリスクについては、本品を使用する医師が十分に理解することが重要と考えられることから、この旨を教育プログラム及び添付文書にて注意喚起することといたしました。
 次に本品の品質として、本品に使用される生物由来材料の安全性について御説明いたします。審査報告書14ページ中段と、製造方法に関する資料の項を御覧ください。本品には、オーストラリア、カナダ及びアメリカ産のウシ由来頸静脈が用いられています。これら原産国のうち、カナダ及び米国は、反芻動物由来原料基準において、使用可能な原産国は含まれておりませんが、本品の製造に適したウシ頸静脈を確保するためには、使用せざるを得ないこと及び本品の治療上の有用性が高いことから、反芻動物由来原料基準(5)の「治療上の効果が当該原材料を用いることによるリスクを上回る場合」に該当すると判断し、本品のすべての原材料は反芻動物由来原料基準に適合すると判断いたしました。
 審査報告書16ページの下段を御覧ください。動物細胞組織製品原料基準への適合性については、本品のトレーサビリティ及び製造工程中のウイルス不活化工程により、感染性物質に対して一定の安全性が確保されていることから、生物由来原料基準の趣旨を満たすと判断いたしました。以上のことから、本品の原材料であるウシ頸静脈の感染性物質に対する安全性は担保されていると判断いたしました。
 次に、本品の臨床試験について御説明いたします。審査報告書18ページを御覧ください。18歳未満の右室流出路の異常などを有する患者を対象として、本品の有効性と安全性を検討することを目的とした、多施設共同非盲検非対照試験が、欧米18施設で実施されました。本臨床試験には、386例が組み入れられ、このうち374例が有効性と安全性の解析対象集団とされております。
 この臨床試験成績を踏まえた、本品の審査における主な論点について御説明いたします。審査報告書29ページの総合評価の項を御覧ください。本品を用いた海外臨床試験では、主要評価項目として、機器関連不具合の回避率が設定され、本品植込み1年後の機器関連不具合の回避率は、片側95%の信頼区間の下限値で66.9%であり、設定された主要評価項目における基準値である75%を下回る結果となりました。加えて、主要評価項目の選定及び設定された基準値の妥当性も示すことができなかったことから、本臨床試験成績からでは、本品の有効性を検証することはできないと判断いたしました。
 しかしながら、本邦ではホモグラフトが入手困難であり、代替となり得る既承認医療機器も販売されていないため、本品の医療上の必要性が高いこと、また対象疾患が希少かつ重篤であるために、新たな臨床試験を行うことは難しい状況であることを踏まえ、機構は本臨床試験成績と文献報告に基づき、本品の臨床評価を行うことといたしました。その結果、本臨床試験成績における術後1年次の原因を問わない死亡率、原因を問わない再手術、原因を問わないコンデュイット機能不全については、ホモグラフトの文献成績と比較して劣るものではなく、本品はホモグラフトと同様の有効性と安全性が期待できると考えました。
 一方、右室流出路の再建に、本邦で主に使用されている手作り弁付きコンデュイットに関する文献成績との比較も行いましたが、本品の死亡回避率や、再置換回避率は、手作り弁付きコンデュイットに比べても明らかに劣るものではないと考えました。
 以上の検討から、本品は生体組織という製品上の特性として柔軟性や操作性が期待できるものであり、類似の既承認の医療機器が本邦にはないことを考慮し、本品を国内に導入する臨床的な意義はあり、その有用性も期待できると判断いたしました。
 ただし、本邦には本品や、これに類似するホモグラフトの使用経験がほとんどないことから、本品を国内へ安全に導入するための対策が必要と考えました。具体的には、本品の性能上の特性や、臨床上想定される有効性と安全性を十分に理解した上で、本品の使用に際したリスク・ベネフィットのバランスを考慮して、患者ごとに適応の可否を判断できる医師が使用すること。次に、緊急的に生じた不具合に対しても、既存の手作りコンデュイットによる再手術も含めた、十分な対応ができる医師及び医療機関において使用すること。この2点を承認条件で付すことが妥当と判断いたしました。
 また、本邦における本品の治療成績や、本品の長期的な有効性と安全性の情報を得るため、一定の症例数が集積されるまでの間は本品使用症例全例を対象とした、使用成績調査を実施することを承認条件として付すことが妥当と判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。本品は、新構造医療機器であることから、再審査期間は4年と判断しております。本品には、ウシ頸静脈が使用されているため、生物由来製品に該当すると考えます。なお、薬事分科会では報告を予定しております。
 最後に、石井委員、高橋委員、松岡委員よりいただいている質問を御紹介いたします。石井委員から次の質問をいただいております。「本品のエンドトキシン試験が、ロット毎にどの程度の検体数について実施されているのか。また、ロット毎に無菌試験を実施して無菌性を確認する必要がないかの説明をお願いいたします。」
 本品のエンドトキシン試験及び無菌性試験については、双方ロット毎に試験が実施されております。最大□個を1ロットとして、このうち□個~□個を検体として用いて、各試験が実施されております。これらロットの定義や、試験の設定については、一般的なものであり、特に問題ないと考えております。
 次に、本品に使用されるグルタールアルデヒドの安全性について石井委員、高橋委員、松岡委員より御意見をいただいております。まず石井委員からは、「グルタールアルデヒドの残存量が、ワーストケースではラットのLD50の3分の1から4分の1とかなり高くなっています。グルタールアルデヒドの残存量と安全性の関連について、局所濃度の推定と、その影響を含め説明をお願いいたします。また、グルタールアルデヒドを、非反応性物質にする処理をしてから、生体に適用する必要がないか説明をお願いいたします。」
 これについては、グルタールアルデヒドのLD50の文献値は、グルタールアルデヒドを短時間に静注する急性全身毒性試験で得られた値であり、時間をかけて徐々に本品から溶出されるグルタールアルデヒドの毒性評価に直接外挿することは、現時点では難しいと考えております。本品の臨床使用上のワーストケースとして、乳児の循環血液量と、本品が血液に接触する表面比率から推定されるグルタールアルデヒドの安全係数は7.5倍となり、安全係数としては十分とは言いがたい値ではありますが、まず第1に臨床使用時に、本品は約半分程度にトリミングされるため、グルタールアルデヒドの溶出量はさらに少なくなること。第2に、グルタールアルデヒドは時間をかけて溶出されながら、血中蛋白質により不活化されるため、毒性リスクのさらなる低減化が期待できること。第3に、これまでの使用実績において、グルタールアルデヒドの起因する不具合は認められていないことから、本品から溶出されるグルタールアルデヒドのリスクは、臨床上許容できるものと考えております。
 ただし、グルタールアルデヒドの残存量を極力減少させることは非常に重要であると考えるため、設定された洗浄方法を徹底する旨を、添付文書の警告欄等において注意喚起することといたしました。なお、本品外側と直接接触することとなる周辺組織における局所毒性については、本品を用いた埋植試験やヒツジへの植込み試験において、特に問題となるような毒性所見は認められていないため、大きな問題にはならないと考えております。
 次に高橋委員から、「洗浄の仕方が不十分、あるいは不慣れな場合には残留するグルタールアルデヒド量の増大も考えられます。したがって、洗浄3回目の洗浄液中のグルタールアルデヒドの量を術前、あるいは術後に測定することを添付文書等に追加する考えはどうでしょうか。このデータは術者、あるいは患者に対して安心感を与えるとともに、術後に生じた不具合を考察するための試料の一つになる可能性も考えられます。」
 この御指摘については、御指摘のとおり、指定された洗浄が実施されれば、グルタールアルデヒドの残存量を許容可能な範囲まで低下できることが示されておりますので、術前洗浄を徹底することがまずは重要と考えております。指定された洗浄方法の厳守は、承認条件に設定し、添付文書においても注意喚起しておりますが、本品の使用前に必須となる、教育プログラムにおいても情報提供と注意喚起を行う予定であり、申請者に徹底するよう指導したいと考えております。
 最後に松岡委員から、「操作者がグルタールアルデヒドを吸引するリスクを低減させる対応として、添付文書のコンデュイット取扱い及び植込み準備の欄において、当該操作は換気に注意する、又は局所排気設備のある所で等の注意を促す必要はないか」との御指摘をいただいております。
 御指摘いただいた点に関しては、申請企業に伝達の上、協議したいと考えております。機構からの報告は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○笠貫部会長 それでは、参考人の山岸先生から何か加えることがありましたらお願いいたします。
○山岸参考人 小児心臓外科を担当しております山岸です。よろしくお願いいたします。今、PMDAの方から説明がありましたように、先天性心疾患の外科治療のかなりの部分で、肺動脈の再建が必要になってまいります。現在のところ、ここ20数年間日本では置換する有効な材料がありませんでした。欧米ではホモグラフトが使われておりましたが、欧米でもホモグラフトが不足になってきて、それでこのコンテグラがヨーロッパ、米国をはじめ使われております。
 かなりの数が使われておりますけれども、その分、やはり不具合が出てきていることも確かなのです。我が国においてはホモグラフトがほとんど使えない現状で、今のところは我々医師が手作りでePTFE、製品名はゴアテックスですけれども、ゴアテックスを使って肺動脈弁を作って、それで導管にしているというのが現状です。
 私どもの施設では、日本のほぼ半数の施設にePTFEのコンデュイを供給しております。数百本供給しておりますけれども、非売品で、倫理委員会を通してやっておりますけれども、やはりそれにも限界があるということで、是非市販品が欲しいというのが我々小児心臓外科医が熱望していることです。確かに、今報告にありましたように、コンテグラには問題があるのですけれども、かなり厳重な注意事項を付けて、そういう制限を付けた上で使うということであれば、まず問題が起きる可能性は低いのではないかと考えております。
 先ほど、委員の先生方の御質問の中にあった、グルタールアルデヒドのことなのですが、十分に洗浄すれば、急性毒性に関しては今までの経験から出てくることはないと思うのです。慢性的な毒性、毒性といいますか自身の肺動脈に対する影響というのはやはり無視できないところがありますので、これもやはり厳重にフォローアップしていく必要があると思います。ただし、小児に使う場合は、このコンデュイは数年~10年以下の単位で、身体の成長に伴って新しい大きなコンデュイに変換することが必要になってまいります。その際には、成人サイズで使える、また別の製品が選択肢としてありますので、緊急避難的に使う材料としては、我々外科医が10数年間求め続けていた材料ですので、是非御審議のほどよろしくお願いいたします。
○笠貫部会長 各先生の御議論をいただく前に、先ほどの石井先生、松岡先生からあらかじめ御質問をいただいた件について、PMDAの方からお答えをいただきましたが、その点についてはいかがでしょうか。松岡先生、石井先生よろしいですか。
○松岡委員 はい。
○石井委員 はい。
○笠貫部会長 それでは、各委員の先生方から御意見、御質問をいただきたいと思います。
○齋藤委員 このサイズは、結局1サイズしかないということなのでしょうか。サイズバリエーションはないのでしょうか。
○山岸参考人 コンテグラは、12mm~22mmまで、2mm刻みで6サイズあります。
○齋藤委員 そうすると、患児に応じて選択できるということですか。
○山岸参考人 はい、そうです。
○齋藤委員 ただ、成長に応じてはそれに対応できないので、成人になったら何らかの対応をするということになりますか。
○山岸参考人 例えば12mmのものを入れると、身体が大きくなると、太いのに換えないといけないのです。日本人の成人の男性で、大体20~22mm、女性で18~20mmぐらいが、日本人の平均的な人の必要な肺動脈の口径です。ですから、体重が20~30kgぐらいですから、小学校の低学年ぐらいになれば大人サイズが入りますので、それまでの緊急避難的という言い方は悪いかもしれませんけれども、それまでのつなぎの導管としては必須のものだと思います。
○齋藤委員 2種類ありますけれども、その使い分けというのは。
○山岸参考人 これは解剖学的な問題で、ステントが入っている方は、ここに胸骨がありますので、胸骨に押されてコンデュイが変形してしまうような症例には、ステント付きのもの。正常の大血管の関係で、胸骨からの圧迫が避けられるようなものはステントなしのもので使い分けることになると思います。
○齋藤委員 分かりました。
○笠貫部会長 ほかにございますか。
○中谷委員 実際上そのホモグラフトに関しては、我々の所でも、日本でできるような形でやっているのですが、今、山岸先生が言われたように全く数が少ない、それからサイズもそれほど小さい人からの提供がないということで、今言われたような、現実的に小さな子どもさんへの右室流出路へのこういうものがない、ということが一番大きな問題だったのは事実です。今、山岸先生が言われましたように、確かにこれはもう少し検討すべき点はあるかとは思いますけれども、今まで使われているものに比べて遜色ないというのはそのとおりだと思います。一つ問題点があるとしたら、20~22mmを最初から植えた人たちがどこまでいけるかというのが、今後かなり要注意になるかと思いますので、言われていますように、きちんとフォローして、必要に応じて再手術なりということがきちんとできるという体制を組むということで臨めばいいのではないかと思います。
○塩川委員 脳外科の塩川です。承認条件の考え方についてお伺いします。これは、日本で使われたことはないけれども、必要性が高いというもので、かなり厳しい承認条件が総論としては付いています。実施施設と、実施医の基準を設けるとありますけれども、そういう日本で使われていなかったものが、もし承認されるとすると、現実的には小児の心臓手術をされている施設で、要するにどれぐらいの割合でこれが治療されるようなものなのでしょうか。
○山岸参考人 単純奇形を手術している施設は、日本で200ぐらいあると思います。右室流出路を再建するような、複雑心奇形を手術するような症例は、その約半数です。その中でも数を多くやっている施設は大体50弱です。もっと厳密に言えば、20ぐらいの施設に限定されてしまうことになると思います。こういう厳しい制約を付けていただいたのは、やはり欧米の文献を見ますと、かなり手技的な問題で、手技的なものに起因する合併症が出てくる可能性がありますので、あえてこういう厳しい条件を付ける方がいいのではないかと思いました。
○塩川委員 門外漢ですが、これは私も必要だと思います。成長に応じてテンポラリーユースというか、一時凌ぎ的な使われ方だとすると、その学会や、心臓外科の組織として、この治療をされた方を追いかけたときに、大きなものに換える再手術が必要になってくるわけですね。そういう体制というものも、この承認条件の言外にというか、含まれているという認識なのですか。
○山岸参考人 そう考えていただいてよろしいかと思います。胸部外科学会が中心になって、施設認定をしていくと思うのですけれども、代替えのコンデュイを使えるような施設、緊急的な手術に対応できる施設を選んで承認していくことになると思います。
○塩川委員 分かりました。
○笠貫部会長 ほかにはいかがでしょうか。私の方から教えていただきたいのですけれども、欧米では先ほどの報告で□□□例と多く使われており、日本ではなぜ遅れているのかという疑問が出るぐらい、期待されている機器であることは理解できます。ホモグラフトは実際に出てこない、代替品がないので、不具合の問題はあるけれどもという御説明だったと思います。
 □□□例と非常に多く欧米では使われていますが、先ほどの臨床試験として提供されたものではなく、世界的な文献を網羅したときに、一番の不具合、あるいは先生が専門家として、指摘する問題としては何があるのでしょうか。
○山岸参考人 文献からのお話になりますけれども、末梢肺動脈の吻合部の狭窄が起きてきます。そこには末梢肺動脈が吻合部よりも奥の末梢部が肺動脈は細くなってくることと、吻合部自体がピールフォーメーションみたいなのができて、狭窄病変ができてくるということがあります。一つは、手技的な問題があるかとは思うのです。
 もう一点は、先ほどお話いたしましたように、グルタールアルデヒドが慢性的に溶出していくことが、自己の肺動脈の成長を妨げる可能性がゼロではない。ただ、これはエビデンスがあることではありませんので何とも言えないのですが、末梢肺動脈の狭窄が一番の問題になって、そこがブロックして、中枢部の圧が上昇して、コンデュイが過膨張して逆流化してくるという報告がありますので、それが一番重篤な合併症だと思います。
○笠貫部会長 その場合の石灰化の問題は、あまり問題にならないのですか。
○山岸参考人 石灰化も起きてきますけれども、石灰化よりも、やはり吻合部狭窄の方が問題かと思います。
○笠貫部会長 その頻度と、それに対してどう対応をして、どうフォローされていたか、というデータはまだ世界的にもないということですか。
○山岸参考人 詳しいデータはないので、はっきりしたことは申せないのですが、超音波検査で右室圧をフォローしてもらっていますので、それで右室圧が上昇してくれば、狭窄というのは判明してきますから、それはもう再手術の適応として考えるということで対応していかないと仕方がないと思います。
○笠貫部会長 最も重篤な合併症を御指摘いただいたのですが、これは世界でも26,000例使われていて、フォローしていて、これからの解決策を考えていると捉えてよろしいでしょうか。
○山岸参考人 はい。
○笠貫部会長 ほかにございますか。
○倉根委員 原産国がオーストラリアか、あるいはカナダ、米国かということなのですけれども、これを読むと、どちらも基準的には合格しているということなのだけれども、この率はどのぐらいなのですか。つまり、オーストラリアがシェアを、つまりほぼドミナントで米・カナダ産がここだけでは十分需要を賄いきれないのでマイナーになるのか、あるいはそれは五分五分なのか、あるいは全く逆なのか、その辺の率は大体分かるのですか。
○機構 機構より御説明いたします。オーストラリア産の原材料を用いたものに関しては、サイズの小さいもの、12~16mmに関しては100%オーストラリア産のものが用いられております。ただしサイズの大きいもの、18~22mmに関しては、オーストラリアでそれぐらいの体格のウシに育てないという事情がありますので、米国産あるいはカナダ産のものを使用することとなっております。比率に関しては、18mmは米国産、カナダ産が□%です。20~22mmに関しては□%カナダ、アメリカ産のものになっております。
○笠貫部会長 ほかにございますか。
○村上委員 いわゆる血管の直径の選択というのが一つ大事なことかと思うのですが、その狭窄が問題ということだと、一般には大きめを選ぶというのが推奨されているのですか。
○山岸参考人 現在ePTFEのコンデュイを使う場合には、正常の径の大体130~140%ぐらいの血管を選択しているのですが、私たちの出しているデータで、太すぎる血管を入れると、吻合部狭窄が起きます。自己の肺動脈が細いところに、太いのをつなぐと、どうしても自己の血管の成長を妨げることがありますので、必ずしも大きいものを入れるということが得策ではない。ですから、身体の大きさに合わせて、若干大きめのものしか使えないことになります。
○村上委員 その辺のメカニズムも、もうかなり分かっているということですね。
○山岸参考人 はい。
○村上委員 ありがとうございました。
○西田委員 教育プログラムについて、もう少し教えていただきたいのです。どういう教育プログラムなのでしょうか。
○山岸参考人 まだ具体的なものはないのですけれども、今までやった生体弁のものですと、企業が一応用意してくれて、学会も一緒になって、そこにウェットラボといいまして、セミナーみたいな形で手技のレクチャーをします。実際にやってもらう施設の先生に来てもらって、講師の先生が指導するという形になると思います。
○西田委員 こういった過去の手術の経験とか、そういうことは何か条件には入らないのですか。
○山岸参考人 入ると思います。それは施設認定をするときに、きちんと学会の方で選ぶと思います。一つは、胸部外科学会の心臓血管外科の専門医の中で、指導医の基準というのがありまして、右室流出路の手術は、A、B、Cの中のCで、一番難易度が高いのですが、それを何例やっているかということが一つ選択基準になると思います。学会としてはそういうことで、右室流出路の手術を触れる医師を選んでから認定していくことになるかと思います。
○機構 機構から今の教育プログラムについて少し補足させていただきます。教育プログラムについては、今、山岸先生の方から御説明いただいた、その実施医の技量のテクニックのほかに、本品には少し特性がありまして、先ほど説明しましたサポートリングが付いているものと付いていないものでは逆流の起こり方、若しくは圧格差という、その圧力の上昇の仕方のプロパティが若干変わってきます。それによって、その後の沿革期の予後に影響する可能性もありますので、臨床試験の有害事象としてどういう有害事象が起きてくるか、狭窄も含めて、それとともに本品が非臨床試験でどのようなプロパティを持った弁なのかを、先生方によく理解していただいた上で、将来的な治療戦略を踏まえて、そこに反映していただけるような機器本体の性能について理解していただくようなプログラムも組み込まれております。
○武谷委員 確認したいのですけれども、この資料に添付文書というのがあります。添付文書を三つめくりますと「重大な有害事象」というのがあります。先ほど、笠貫先生の御質問にもありましたように、肺動脈狭窄が問題になるというようなお答えだったかと思うのです。この添付文書では0.1%で、1,000人に1人ぐらいで余り大したことはないのかという気がしたのですが、本文の方、審査報告書の19ページを見ますと、374例で、19ページの下段から5行目辺りに、狭窄4例と書いてあります。これは、肺動脈狭窄かどうかよく分からないのですが、少なくとも1%以上は起こっているような気がするのですが、なぜこれが1,000人に1人になってしまうかがよく分からないのです。合併症として、そんなに少ない狭窄なのでしょうか。
○機構 機構から御説明いたします。先生に御指摘をいただきました、添付文書の方の0.1%というデータに関しては、海外における市販後の成績の報告例です。これについては必ずしもすべての有害事象が拾われているわけではありませんので、実際に市販後に臨床現場で起こっているような頻度を表した数字ではないと思われます。臨床試験の方に関しては、本品関連事象として4例が認められたということになっております。
○機構 その辺りの数字については、審査報告書の6ページに記載しております。審査報告書の6ページに、外国における使用状況が書いてあります。こちらで、海外の方でこれまでに使ったのが□□□例で、狭窄は自発報告の分なのですけれども□例ということでこの0.1%という数字が出ております。
○武谷委員 あまり心配するほどではない、1,000人に1人ぐらいであるという理解でよろしいのですか。
○山岸参考人 どの程度のものをもって狭窄と判断するかというのは非常に難しいところなのです。一応臨床的には再手術の基準が、圧格差が50mmHg程度で、再手術の適応となっていますが、そこまで持っていく前の、例えば20mmHgとか30mmHgぐらいを狭窄と取るか取らないかということが、臨床的な判断で外に出てくる資料かどうかというのは分からないのです。ですから、今回ここに書いてある資料は、術後1年後でのデータなのです。これが5年、10年経ってくると、もっとその数が増えてくる可能性もあるかと思うのです。ですから、数字的には正確なものを示しているものではないとは思いますが、決して先生が今おっしゃったように、0.1%という数字ではないと思います。ただ、厳重にフォローしていけば、きちんと臨床的に対応できる数字であると思います。
○武谷委員 この説明書というのがどういう使われ方をするかはよく分からないのですが、専門家の方はよく御存じで、添付文書を読まないで説明すると思うのです。このとおりに説明すると、狭窄は1,000人に1人であって、インフォームド・コンセントを取る際などでも、余り問題にしないというようなことも起こりかねないような気がいたします。この添付文書をどのように利用されるかということではないかというような議論のように思います。
○山岸参考人 その辺に関しては、先生の御心配どおりだと思いますので、学会としてきちんとしたセミナー、術前の資格審査のときにやっていく方針にしていきたいと思います。
○笠貫部会長 0.1%という数字を書くと、これが独り歩きします。学会を中心に、患者さんと家族には、十分インフォームド・コンセントをなさるとは思うのですが、先ほど武谷委員から御指摘があったように、添付文書としては、臨床試験として300何例中4例ということは、もし山岸先生が言われたように、重大かつ重篤な、しかもこれから長期になればもっと出てくる可能性のある合併症だとしたら、そこは添付文書に書くべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○機構 これに関しては御指摘のとおりだと思いますので、添付文書における情報開示については、申請者と協議した上で対応を決めて、なるべく適切な情報提供ができますように対応したいと思います。
○笠貫部会長 この機器はニーズの高い医療機器の早期導入検討会で優先審査にされた機器であるということです。心臓血管外科医の、ニーズの高く、しかもハンドメイクでなされていたものが、製品としてアメリカにこれだけあったのに、どうしてここまで遅れたのかという感じがします。よろしければ議決に入りたいと思います。
 医療機器コンテグラ肺動脈用弁付きコンデュイットについて、本部会として審査報告書にある条件を付した上で、承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間を4年間とし、高度管理医療機器に指定し、また生物由来製品に指定し、特定生物由来製品への指定は不要ということでよろしいでしょうか。御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果につきましては、次回の薬事分科会において報告することといたします。
 議題2は終了いたしました。山岸先生におかれましては御多忙のところ、どうもありがとうございました。
── 山岸参考人退室 ──
○笠貫部会長 次の議題に移らせていただきます。議題3「医療機器プロマス エレメント プラス ステントシステムの製造販売承認の可否等」について審議を行います。本議題の審議に当たっては、参考人として岐阜ハートセンターの上野勝己先生に御出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。まず、審議品目の概要について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 議題3、資料3について御説明します。1ページに諮問書、次のページに審査報告書の1ページ目があります。本品については、一般的名称を冠動脈ステント、販売名はプロマス エレメント プラス ステントシステム。申請者はボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社です。
 本品の外観図に関しては、審査報告書4ページ目を御覧ください。経皮的冠動脈ステント留置術を実施するに際し、血管内腔の確保を目的に病変部に挿入留置して使用するプロマスエレメントシステム、こちらの図1と、病変部に本ステントを伝達させるために使用するデリバリーカテーテルから構成されるステントシステムです。次ページの図2にステントシステムがございます。
 本品の使用目的、効能または効果については3ページ目です。中程に、対照血管径が2.25mm~3.5mmの範囲にあり、病変長34mm以下の新規冠動脈病変を有する症候性虚血性心疾患患者の治療に用いるものであり、承認条件として、その下に3点記載しています。詳細については機構より御説明します。
○機構 審議事項議題3、資料3「医療機器『プロマス エレメント プラス ステントシステム』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
本審査に当たり、専門委員の一覧に記載している3名の専門委員の御意見をいただきました。本申請品目の概要について説明させていただきます。
 審査報告書4ページです。プロマス エレメント プラス ステントシステム(以下「本品」)は、プラチナ・クロム合金製の金属ステント表面に、新生内膜の増殖を局所的に抑制する目的で、免疫抑制剤であるエベロリムスを含有するポリマーをコーティングした薬剤溶出型ステント(以下「DES」)であり、図1に示すように、デリバリーカテーテル先端部にステントが搭載されたステントシステムです。
 本品のステント部は、本年2月8日に承認されたプロマス エレメント ステントシステムと同一のステントですが、審査報告書5ページの表1に示すように、本品には青枠で囲んだプロマス エレメントのステントサイズに加えて、小血管用のステント径2.25mmのステント、こちらをSVステントと言います。及び長い病変用のステント長32及び38mmのステント、こちらをLLステント。このサイズが追加されています。
 また、プロマス エレメント ステントシステムでは、デリバリーカテーテルのバルーンが、ポリエーテルブロックアミドの□□□□でしたが、本品では硬さの異なるポリエーテルブロックアミドを□□□□□□□□□□□□□□□□□□されています。
 審査報告書6ページ~8ページに記載している、本品の開発の経緯について御説明させていただきます。本品には、小血管用の2.25mm径のSVステントが含まれています。一般に、経皮的冠動脈インターベンションにおいて小血管病変は再狭窄率が高く、治療成績が良好でないことが知られています。過去に実施された薬剤のコーティングされていないベアメタルステントの小血管病変における臨床試験において、ステントの成績は経皮的冠動脈形成術用バルーンカテーテルによる拡張術(以下「POBA」)の成績と同等であり、本邦でのベアメタルステントの小血管病変の適応につきましては、POBA治療による血管解離、急性閉塞の治療に対する使用のみに限定されています。
 よって、本邦における小血管病変を有する待機的症例へ用いる血管内デバイスとしてはPOBAのみが承認されており、本品は待機的症例に用いる初めての冠動脈ステントになります。
 一方で、欧米諸国では小血管に対してもDESの留置術が行われており、すでに2.25mm径のDESが販売されております。なお、長い病変用のLLステントについては、すでに同じ長さのDESが承認されておりまして、特段の新規性というのはありません。
 続いて、報告書8ページに記載した外国における使用状況についてです。本品はEUにて、2011年4月にCEマークを取得し、本年6月までに□□□本が販売されております。また、米国においては、ステント長28mmまでの製品が2011年11月に、ステント長32及び38mmの製品が本年6月に承認され、本年6月末までに併せて□□□□□本が販売されております。
 審査の概要についてです。非臨床試験については、審査報告書9ページ~17ページに記載していますが、仕様の設定、安定性及び耐久性、並びに性能に関する資料が提出されましたが、特段の問題点は見られませんでした。
 本品の臨床試験成績については、審査報告書18ページからになります。本品の有効性及び安全性を評価するために、SVステントについてはPLATINUM Japan SV試験が、LLステントについてはPLATINUM LL試験が、その他のサイズのステントについてはPLATINUM WH試験及び薬物動態オープン試験が実施され、その成績が添付資料として提出されました。SV及びLLステント以外のステントサイズについては、プロマスエレメントステントシステムの承認審査において、有効性及び安全性について審査が行われ、既承認品のDESと同等の有効性及び安全性を有することが確認されたことから、本申請においてはPLATINUM Japan SV試験及びPLATINUM LL試験の成績を中心に、審査を行いました。なお、臨床試験は、いずれもバルーンが単層のデリバリーシステムを用いて実施されていますが、非臨床試験によりバルーン構造の違いが十分に検証されており、その差分が認められていないことから、ステント臨床成績の評価には影響しないものと判断いたしました。
 PLATINUM Japan SV試験は、対照血管径が2.25mm以上2.5mm未満で、病変長が28mm以下の新規病変を有する日本人の虚血性心疾患患者60例を対象に実施されました。主要評価項目は、手技9か月間の主要心事故の発現率が設定され、主要心事故は虚血を伴うすべての標的病変血行再建術、Q波及び非Q波心筋梗塞、または心臓死と定義されました。手技9か月間で、主要心事故は1例も認められず、発現率は0%であり、過去のPOBAの臨床成績に基づき、あらかじめ設定された性能指標24.1%より十分に低い値でした。また、手技後9か月間の標的血管再血行再建術、標的病変再血行再建術、標的病変不全、標的血管不全の発現率も、いずれも0%でした。安全性については、重篤な有害事象は60例中11例で、14件認められましたが、いずれも機器との関連性は否定されました。また、手技後9か月間で、ステント血栓症の発現は認められず、良好な成績が得られています。続いて、PLATINUM LL試験は対照血管径が2.5mm以上4.25mm以下で、病変長が24mm以上34mm以下の、新規病変を一つ有する、日本、米国、欧州及びアジア地域の患者102例を対象に実施されました。主要評価項目である標的病変不全の12か月間の発現率は、3.2%であり、あらかじめ設定された性能指標の19.4%より低値であることが示されました。また、その他の評価項目は12か月間の標的血管不全発現率4.2%、標的血管再血行再建発現率は4.1%、標的病変再血行再建発現率は3.1%でした。
安全性については、重篤な有害事象は、102例中34例で、71件認められ、2%以上の発現率に見られた重篤な有害事象は、狭心症、非心臓性胸痛が6.9%、不安定狭心症が4.9%、貧血が2.9%、心房細動、徐脈、低血糖が2.0%でした。機器関連の重篤な有害事象の発現は胸痛が、1例1件、1%でした。手技後12か月までの死亡は、非心臓死の1例のみであり、ステント血栓症の発現は認められず、LLステントでも良好な成績が得られています。この臨床試験成績を踏まえ、本品の審査における主要な論点について御説明します。審査報告書31ページの「総合評価」を御覧ください。
 まず、一つ目の論点である本品を用いた治療の妥当性についてです。小血管用のSVステント及びステント長の長いLLステントについては、先ほど説明したように、臨床試験において良好な成績が得られており、PLATINUM WH試験の成績と比較して同程度であることから、臨床上必要な有効性及び安全性を有しているものと判断いたしました。
 しかしながら、各ステントサイズついて、以下に述べる理由により、より多くの症例において、長期的な成績を評価することが必要であると判断いたしました。
 まず、小血管用のSVステントについては、日本人患者で小血管病変を有する血管の灌流域が、比較的大きく、イベントが発生した場合に重篤化する恐れは否定できず、臨床試験においてイベントが発生していないことから、本問題の評価ができているとは言えないこと。続いて、ステント長の長いLLステントについては、二つ目及び三つ目の論点にも関連しますが、長軸方向の変形及び抗血小板療法の長期化の懸念があるものの、これらは症例数及び観察期間が限られる、臨床試験での評価が困難であること。
 最後に、その他のサイズについては、同一のコーティングを用いた既承認のDESにおいて、大きな安全性上の懸念は認められないものの、DES全般における長期予後について、安全性上の懸念は十分に払拭されているとはいえないこと。
 以上の3点の理由から、本品を用いて行った各臨床試験における対象患者の長期予後について、経年解析結果を報告するとともに、必要に応じ適切な措置を講ずることを承認条件1として、また使用成績調査により長期予後について経年解析結果を報告するとともに、必要に応じて適切な措置を講ずることを承認条件2として付すことが妥当と判断いたしました。
 二つ目の論点である長軸方向の変形については、近年開発された柔軟性の高いステントにおいて、長軸方向の変形を来す確率が高いとする論文報告がなされています。本品は既存のステントと比較して柔軟性が高く、ストラット厚が薄いステントであり、さらに32mm及び38mm長の長いステントもサイズに含まれていることから、より積極的な注意喚起の必要があると判断し、添付文書の改定を指示いたしました。また、実臨床における長軸方向の変形発生状況については、重点的に観察していく必要があると考え、製造販売後調査において、長軸方向の変形に係る調査項目を重点調査項目に加えるとともに、当該事象を適切に把握できるよう、血管造影解析を集約して行う必要があると判断いたしました。
 続いて、三つ目の論点である本品使用時の適切な抗血小板療法については、本品のステント部とプロマスエレメントステントシステムは、サイズ以外が同一のステントであり、現在得られている本品の臨床成績からみて、本品によるステント血栓症のリスクは、既存のDESを上回るものではないと考えられるものの、現時点において検証するに十分なデータの蓄積はなく、より多くの症例において検討すべきであると考え、既存のDESと同様、再審査期間中は、国内において本品を使用してステント血栓症が発生した症例については速やかに報告するとともに、必要に応じて適切な措置を講ずることを承認条件3として付すことが妥当と判断いたしました。
 最後の論点である製造販売後調査については、臨床試験で評価された日本人の症例数は限られており、本品の安全性及び有効性が十分に評価されたとはいえないこと、また本品は柔軟性の高いステントであるため、長軸方向の変形に関する懸念があることから、製造販売後調査では重点調査項目として、ステント血栓症及び長軸方向の変形に関する項目を設定するとともに、調査対象として2.25mm径ステントの使用症例、並びに38mm及び32mm長のステント使用症例を一定数以上登録し、長期間の安全性を確認する必要があると判断いたしました。
 以上の審査結果を踏まえ、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器・体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。再審査期間は3年と判断しております。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと考えております。なお、薬事分科会では報告を予定しております。以上です。
○笠貫部会長 参考人の上野先生から付け加えることがありましたら、お願いします。
○上野参考人 従来の競合品がありますので、長いステントに関しては特にないのですが、現在ある38mmのステントはXIENCEPRIMEといって、非常に硬いステントなのです。長軸方向の変形は少ないのですが、ほとんどの血管は曲がっていますので、そういう硬いステントを入れると血管が非常に真直ぐになります。そうすると、ステントの両端に余分に負担がかかって、ステントと冠動脈とのマッチングが悪いということで、こういう柔軟性の高い長いステントというのは、非常に有用性があるステントであるということなので、それに対する承認はwelcomeです。2.25mmの小血管のステントに関しては適応のことがありますので、よろしく御審議ください。
○笠貫部会長 各委員の先生方から、御意見、御質問をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 私から御質問させていただきたいのですが、欧米のデータに比して、先ほど日本人の場合には小血管病変の灌流域が広いため、そのイベントが重篤化するかもしれないということ、そして日本については有効性、安全性のデータがないという二つの報告をされたのですが、これについては、専門家あるいは学会として、どのように捉えて、これからどのように対応していこうとお考えでしょうか。
○上野参考人 まだ学会の方針というのははっきりとしたものはなくて、今はindicationを模索したところですが、今年の4月からインターベンションの適応表というのが出されました。ですから、左前下行枝の近位部に関しては、ハートチームと相談してステントの適応を決めるということが、徐々に浸透してきていますので、むやみやたらと適応が増えるといったことにはならないだろうと思います。
 それから、日本人のデータが不足しているというのは、分かりにくいお話なのですが、それはどういうところに2.25mmのステントを入れたかなのです。ですから、側枝で狭心症状は出るけれども、MACEを発生するようなものではない、心筋梗塞になったり、急に亡くなったりするような場所でないところに入れて、予後がいいからといって、そのステントが安全だとは言えないと思うのです。
 日本人の場合、特に140cmとか150cmぐらいの、小柄なおばあちゃんの場合は、左前下行枝で非常に灌流域の大きいところでも、血管径が2.5mm弱という方が結構いらっしゃいます。もしそういうところに使うと、これは直接、急性閉塞、即死亡ということになりますので、もっともっとMACEが発生する可能性があると思います。
 今回の60例のデータには、そういった症例が多く含まれていないと考えられましたので、今後とも2.25mmを使うにしても、手術ができないけれども、ここを広げておかないと命にかかわるというケースで使われることがあると思いますので、それを継続的に見ていく必要はあるのではないかと思いました。
○笠貫部会長 日本人の特殊性があり、まだデータが十分ではないということで、先ほどの承認条件で、長期予後について、一定症例数の予後を見なくてはいけないということですね。この一定症例数をどうお考えになっていて、市販後の臨床試験として、どういうプロトコルを組まれているのかについては、何かございますでしょうか。
○機構 PMSに関して、一定症例数ということに関しては、部会資料の一番最後に「製造販売後調査の計画書」というものが付いていまして、2.25mmに関しては、現在のところ300例のPMSを予定しています。こちらに関しては、300例ありますと1%程度の発現率の有害事象を確実に調査することができるということで、統計的に設定されております。また、同様に32mm、38mm長に関しては、200例ということで計算されております。
○笠貫部会長 ほかにございますか。
○塩川委員 私は脳外科ですので門外漢ではあるのですが、今までのものより細いステントであるということからすると、細いから詰まりやすくなるのではないかということが想定されると思いました。そうすると、既存のものとのステント内血栓症のリスクは変わらないから、承認条件では、市販後はよく調べましょうということで出ていると思います。例えば添付文書などにも、いろいろ抗血小板剤の量の話はなくて、期間の話がいろいろ書かれているのですが、ここのところはリスクは増えないから、今までのものと同じリスクというスタンスで添付文書なども書かれているのですか。
○機構 機構から御説明いたします。添付文書上の抗血小板療法に関する注意喚起等については、既存のDESと同一の記載になっております。
○塩川委員 観察を密にしなさいということが、承認の条件ということになっているのですか。
○機構 はい。
○笠貫部会長 それと関連して、適応は新規冠動脈病変に限るのですね。これまでの冠動脈ステントも、すべて「新規」が入っていましたか。
○機構 機構から御説明いたします。こちらに関しては、今までの薬剤溶出型のステントに関しては、すべて「新規冠動脈病変」ということになっておりまして、こちらについては、ステント内再狭窄を除いた狭窄病変ということで、「新規狭窄病変」ということで記載しております。
○笠貫部会長 小血管用はベアメタルステントで、すでにあるということで、DESは新規ということで御議論いただいたと思います。特に御意見がなければ、議決に入ります。医療機器プロマス エレメント プラス ステントシステムについて、本部会として審査報告書にある条件を付した上で、承認を与えて差し支えないものとして、再審査は3年間ということとし、生物由来製品または特定生物由来製品への指定は不要ということでよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会に報告することにいたします。議題3が終わりましたので、参考人の上野先生におかれましては御退室いただいても結構です。ありがとうございました。
○上野参考人 どうもありがとうございました。
── 上野参考人退室 ──
○笠貫部会長 次の議題に進みます。議題4「医療機器AMPLATZERバスキュラープラグ」の製造販売承認の可否等についてです。本議題の審議については、静岡県立静岡がんセンター画像診断科の新槇剛先生にお出でいただいております。よろしくお願いします。
○新槇参考人 よろしくお願いいたします。
○笠貫部会長 審議品目の概要について、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 事務局より,AMPLATZERバスキュラープラグの承認の可否等について御説明させていただきます。資料4の「審査報告書」を御覧ください。本品は申請者セント・ジュード・メディカル株式会社から申請されたもので、販売名はAMPLATZER バスキュラープラグ、一般的名称は中心循環系血管内塞栓促進用補綴材となっております。本品の使用目的及び効能・効果については、審査報告書の3ページを御覧ください。本品は経皮的に動静脈に留置することで血流を遮断させる血管塞栓用デバイスとなっています。また、承認条件として、3ページに示している1、2の承認条件を付けることを予定しています。本品の外観については、審査報告書の4、5ページにあります。詳細については、医薬品医療機器総合機構の審査担当部より御説明させていただきます。
○機構 審議事項議第4、資料4「医療機器『AMPLATZERバスキュラープラグ』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
まず審査報告書に5点修正がありますので、お知らせします。「審査結果」、18ページ下から4行目、19ページ上から2行目及び6行目の3か所の「示せている」を「示されている」へ修正をお願いいたします。また、17ページの(2)「国内臨床試験の対象患者及び成功判定基準の妥当性にについて」を「妥当性について」へ修正をお願いいたします。また、18ページの2)「成功判定基準の妥当性について」の項の13行目の「適切とは言い難く、適応」の「適応」の削除をお願いいたします。申し訳ありませんでした。
 資料4の「専門委員の一覧」を御覧ください。本審査では、御覧の7名の専門委員の御意見をいただきました。本品の概要から説明させていただきます。審査報告書の4ページ以降を御覧ください。
 本品は、心臓及び頭蓋内血管を除く動静脈に経皮的に挿入し、留置することで血栓を形成させ、血流を低下・遮断・改変することを目的に開発され、セント・ジュード・メディカル株式会社より申請されたものです。本品は図1に示すニチノール製のメッシュワイヤーを円筒型に形成した自己拡張型のプラグと、図2のプラグを標的部位へ送達するためのプッシャーワイヤー及び図3のプラグを格納するローダーから構成されます。
 本品の操作方法ですが、プラグを標的部位へ送達し、プッシャーワイヤーを反時計回りに回転させることにより、プラグをプッシャーワイヤーから離脱させ、標的部位に留置します。
 現在、本邦にて経皮的血管塞栓術用に承認され、使用されている医療機器は主に金属製の塞栓用コイルであり、腸骨動脈瘤閉塞、ステントグラフトのエンドリーク閉塞、肺動静脈奇形、術前止血等に用いられます。しかし、塞栓用コイルによる治療は、標的部位を塞栓するために複数のコイルが必要であり、手技時間が長くなることや、機器の移動、遠位塞栓の発生などが問題とされています。また、比較的大口径の血管では、従来のコイル留置は困難となり、コイル脱落の危険性が増すため、より安全で容易に閉塞が可能な塞栓機器が求められています。
 本品では、プラグが円筒状で、血管径に合わせたサイズ選択が可能であるため、血管閉塞に際し本品単独で閉塞できる可能性が高く、塞栓用コイルと同等以上の性能及び安全性が期待されます。また、本品は離脱前であれば回収し、再配置が可能であるという利点があります。
 本品の海外における使用状況ですが、米国及び欧州において、「本品は肺動静脈を含む末梢血管の動静脈塞栓に使用するものである」を適応として、2003年9月にFDAより510Kの承認を受け、2004年1月にCEマークを取得しています。2012年5月31日現在、50か国以上で販売されており、海外における総販売数量は□□□□□本です。
 非臨床試験については、仕様の設定、安定性及び耐久性並びに性能に関する資料が提出されましたが、特段の問題は認められませんでした。
 続いて、本申請に添付された臨床試験成績について説明いたします。審査報告書11ページからになります。本品の使用が想定される部位及び病態における本品の有効性を評価することを主要な目的として、多施設共同の前向きオープン単一群試験が国内8施設で実施されました。主要評価項目は、治療の成功率とされ、表1に示すように、デリバリー、離脱、留置位置の精度、閉塞の4種類の評価項目のすべてで、成功が得られた割合とされました。対象患者は、多様な疾患に対する本品の有用性を評価するため、動脈瘤、動静脈奇形、動静脈瘻、静脈瘤等の血管性病変の閉塞を有する患者、血流改変術の適応患者、出血性病変に対する止血の適応患者をそれぞれ一定数組み入れることとし、表2に示すように、計50例が組み入れられ、77部位に本品が使用されました。
 審査報告書15ページの表5を御覧ください。本臨床試験における主要評価項目の結果を示しております。本品による治療の成功率は、塞栓部位当たりで93.5%と、あらかじめ設定していた臨床試験の成功判定基準である70%を上回っておりました。適応別では、血管性病変の閉塞97.6%、血流改変率85.2%及び出血性病変に対する止血100%であり、従来のコイル等による治療では治療困難な血管性病変の治療において、97.1%でした。肺動静脈奇形及び肺動静脈瘻にコイルを用いたときの閉塞性効率は、それぞれ93.3%~100%及び88%~100%であるとの論文報告を踏まえますと、留置直後における本品の有効性は本臨床試験から示されていると判断しました。また、そのほかの副次的評価項目及び術後1年後のフォローアップについても、良好な成績が得られております。
 安全性についてですが、術後3か月における有害事象発現率は62.0%であり、主な有害事象は、発熱11件、嘔吐3件等でした。重篤な有害事象の発現率は36%であり、そのうち本品との因果関係が否定できない有害事象は3件であり、発熱、胸水、血流の再開でしたが、発熱及び胸水はいずれも軽快しており、血流の再開も予後に影響を与えるものではなく、追加処置は行われていません。
 続いて、審査における論点について説明いたします。審査報告書の25ページの「総合評価」を御覧ください。一つ目の論点は、臨床試験の妥当性についてです。本品は多様な疾患に対して使用されることから、本品の有用性を評価するためにはコイルを用いての治療が困難であるシャントなど、通常よりも血流が速く、流量が多い部位における本品の塞栓性能を評価すること、また留置の正確さや短時間で血管塞栓が可能であることを評価することが必要であると考えます。
 今回実施された臨床試験では、留置の正確さや短時間での血管塞栓が、より重視される血流改変や止血の症例は限られているものの、動静脈奇形等の血管性病変の閉塞において、本品の基本的な血管塞栓性能は評価でき、血流改変術及び出血性病変の止血に関する本品の臨床上の特性についても評価できると判断しました。
 本試験において、血流改変術及び出血性病変の止血に対する評価は限られていましたが、各適応に組み入れられた症例における成績は良好であり、留置の正確さや短時間での血管塞栓がより重視される適応疾患においても、本品の有効性が示唆されていることから、血流改変術及び出血性病変の止血を含めて本品の有効性は期待でき、安全性についても本品の有害事象発生率が既存のコイル塞栓術と比較して、特段高い値を示されておらず、海外の不具合報告を踏まえても、リスクは許容可能であると判断いたしました。
 二つ目の論点は頭蓋外の脳血管を本品の適応血管に含むことの妥当性についてです。頭蓋外の脳血管については、現在動脈瘤等の治療のため金属性コイルを用いて塞栓が行われている部位でもあり、血管の解剖学的構造も、四肢・体幹のほかの動脈と差がないことから、本品のデリバリーのリスクは、ほかの動脈と比較して差はないと考えられること、塞栓性脳梗塞のリスクに関しても、コイルと同等と考えられることから、本品の適応血管に含めることは妥当であると判断しました。ただし、海外では適応外となっていること、今回の治験では登録症例がなかったことから、今後の製造販売後調査において、有効性と安全性に関する情報収集を行う必要があると考えます。
 三つ目の論点ですが、実施医及び施設基準についてです。本品による治療に当たっては、血管撮影装置を用いることが必須と考えます。小児科や血管外科疾患では、合併症への外科的対応の準備が必要と考えられることから、包括的に合併症への対応を含めた十分な体制が整った医療機関で、本品が使用されるように必要な措置を講じることを、承認条件1として付すことが妥当であると判断しました。
 また、本品の適応範囲は、末梢血管疾患、心疾患、腫瘍性疾患、脳血管疾患、外傷等多岐にわたり、病態や適応部位によってリスクが異なることから、対象病変に対して、金属コイル等による十分な治療経験を有する医師のみが、本品による治療を行うよう配慮する必要があります。したがいまして、本品の操作に関する十分な技能や手技に伴う合併症等に関する十分な知識を得た上で本品が用いられるように、座学、デバイストレーニング等の教育プログラムを実施し、必要な措置を講じることを承認条件2として付すことが妥当であると判断いたしました。
 以上の審査を踏まえ、本品を承認して差し支えないとの結論に達し、本医療機器体外診断薬部会で御審議いただくことが適切と判断いたしました。再審査期間は3年と判断しております。また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと考えます。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○笠貫部会長 参考人の新槇先生から加えることがございましたら、お願いいたします。
○新槇参考人 従来コイル塞栓を行ってきた、特に太い血管、high flowな血管において非常に気を遣うものですが、本品はそういった病変に対してピンポイントで塞栓することが可能と考えていますので、非常に有用である、我々としても是非承認をお願いしたいと考えています。
○笠貫部会長 委員の先生方から、御質問、御意見はございませんでしょうか。
○齋藤委員 金属性のコイルですが、最近はMR-angioなど、非侵襲性の血管の検討をしますよね。そういった場合に、こういった影響というのは、MRIの影響はかなり少ないように書いてありますが、そういうことを考えて金属材料を選んだのか、あるいは金属のそういった構造的な面を変えているといったような配慮というのは、このデバイスにはあるのでしょうか。
○機構 機構からお答えいたします。MRIの対応については、本品目の中でMRIの適合性を評価しておりまして、審査報告書の中にも記載させていただきましたように、移動、発熱等を評価していまして、そこで問題等が認められないことから、本品はMRI適応として問題ないと判断しております。
○齋藤委員 確かにそう書いてあって、構造的にそういうものを考えられてつくったという感じがしているのですが、その辺をお聞きしたかったのですが。
○機構 その点に関しては、こちらも明確に確認しておりませんので、申請者に確認した上で先生にお答えさせていただいた方がよろしいかと思いますので、そのように対応させてください。
○塩川委員 適応について「頭蓋内血管を除く」とあるのですが、26ページの2.は「頭蓋外の脳血管で、海外では適応外だけれども、差はないから適応に含めることは妥当である」とありますが、この根拠は何ですか。頸でもそうですが、脳血管は遠位の塞栓というのがあるので、海外で適応外のものが日本だと適応になるという判断の基準をお伺いしたいのですが。
○機構 審査報告書の22ページの(6)「使用目的、効能または効果について」の最上段からのところに、その判断基準について書かせていただきました。審査する上で、こういう血管を単純に閉塞するデバイスに関しては、全身の血管のすべてを網羅して治験を行うことがなかなかできないので、今回治験に含まれたものの血管の評価できるものの中で、できるだけ現場のニーズに応えるためには、それで説明ができるような部位に関しては、その適応について評価を考えるべきではないかと考えました。
 御指摘のありました頭蓋外の脳血管に関してですが、そこに本品を持っていくという上での困難さ、危険さに関しては、ほかの血管と変わらないということが一つです。それから、今コイルで治療が行われているものに関して、本品が使われるであろうということで、その場合に末梢の血栓性の塞栓に関して、コイルに比べて危険が増大することはないであろうという観点から、頭蓋外の部位であれば、脳にいく血管に関しても適応として認めてもいいのではないかと考えております。
○塩川委員 海外では適応外になっているのに、なぜ日本だと適応になるのですか。
○機構 海外の適応外の理由に関しても、企業に確認を取っておりますが、危険であるから適応外という形ではなくて、最初の段階で脳血管の適応を考えていなかったために、最初から適応に含まれていないという形での返答がありました。危険であるから外してあるということではないということで、本邦においては機構の方で、このような形の評価を行いました。
○塩川委員 それはほかの臓器、例えば13ページ、14ページにいろいろ適応ごとの診断名と塞栓部位、その血管の流れていく方に病変があったりして、詰めるというのはいいのですが、頸の血管のときに、必ずしも全例が、その先は全部詰まっていいという状況にはならないように思うのです。要するに、ある部位の血管は閉塞させるけれども、隣の血管から先は脳があるので、そこを守るような、distal protectionということについての何らかの言及がないと、頭頸部も詰めるならやっていいというのは、危険を伴うのではないですか。
○機構 もう一つは、この手技を行う実施医に関する制限も掛ける形になっておりまして、今まで頭頸部、脳血管に関して本品を使う状況であれば、今までコイルを使って同じように治療をしていた医師、多くは脳血管内治療になると思います。そういうものが、同じような状況下で本品を使う形になると思いますので、リスクとしては、どちらかというと軽減する方になるのではないかという印象は持っております。
○塩川委員 その辺を、脳血管内治療学会などに確認された方がいいのではないですか。
○機構 その点は市販後調査のときの実施医というところで、学会と相談する形で、実施医の状況、実施医に関して制限を掛ける、あるいは注意喚起をしていただくことをお願いする方向にあります。
○笠貫部会長 私もそのお答えはどうかという点があります。海外で5万例も使われているという実績があり、海外で適応外の、頭蓋内ではない頸部を含めた血管に対して、どのように使われていて、その結果どうであったかというデータとして見ない限り、企業から大丈夫で、適応外の意味はそうだということだけでは、どうかと思います。
 もう一つは、塩川委員から御指摘があったように、学会にきちんとこの点について、どう考えるかの諮問はされた方がいいのではないかと思います。市販後に学会に依頼するというよりも、市販前から、学会がどう考えているかというお考えをいただけたらと思うのですが。
○機構 御指摘ありがとうございます。頭蓋外の脳血管に関しては、海外では適応外ということで非常に私たちも気にしておりました。この治験をするときに、AMPLATZERバスキュラープラグというのは、もともと血管内塞栓デバイスをずっと造り続けている会社であって、彼らは心臓内に使うものも持ってはいるのですが、このものに関しては、欧米では非中心循環系といって、頸から下というか、そういったところを主に、ニーズもないからということで開発されたようで、そのときにやはりコイルと同じように使えることを見ましょうということで、実は国内治験の対象には入っていたのですが、たまたま登録がなかったということと、後、先ほども申し上げましたが、リスクの点で適応外となっているということではないということと、やはり欧米でもプラグはコイルと比べて少ない本数で済むということで、文献報告等はかなりあるということで、適応外使用されていて、大きな不具合も起こっていないということなどを確認して、今回これは非常に多くの領域に跨って使われるものですから、各専門協議の先生方にいらしていただいた中で、こういう判断をいたしました。
 ただ、先生方の御指摘はもっともだと思いますので、少し学会とも協議をしつつ、情報をどのように取ってくるかということも考えたいと思います。
○笠貫部会長 学会との関係では、実施医師と施設基準を決めるということですが、これは脳外科、消化器、循環器、放射線科、小児科も入ります。実施医師と施設基準の決め方、適応の決め方は、学会とどのような連携が進んでいて、どのようにこれから進めるかについてはお聞きしたいと思います。
○機構 先生の御指摘のとおりでして、各学会が一緒になって基準を作るということは、大変難しいと判断しております。そこの点に関しては、専門協議の中でも議論になりましたが、領域によってはリスクも異なってきますし、そういったこともありますので、まずは教育プログラムを受けていただくということと、後は教育プログラムの中で、どの程度の経験があればこれを使っていいのか、というエントリー基準と言いますか、そういったところをまずはそれぞれの学会と相談させていただいた上で、「それぐらいのものだったらいいでしょう」ということで、certificateしていければと、今のところは考えております。
○笠貫部会長 診療科が多岐にわたるときには、この分野についてはこの学会、この分野についてはこの学会、それで各学会が集まって一つの基準を作るというところまで、ここでお示ししていただかないと、任せていいのかということになります。承認前にどこまで検討されたかが大事になると思うのですが、いかがでしょうか。
○機構 現時点におきまして、申請者が考えている本品に関連する関連学会を挙げてきておりまして、それに関しては六つの学会を挙げてきております。一つ目は日本IVR学会、二つ目が日本小児循環学会、三つ目が日本血管外科学会、四つ目が日本脳神経血管内治療学会、五つ目が日本救急医学会、六つ目が日本心血管インターベンション治療学会です。これらの各学会に対して、申請者からどのような準備をしていけばいいかを相談しに行っていただきまして、それに関して私どもの方に、きちんと報告していただきまして、管理していきたいと考えております。
○笠貫部会長 そういった学会の御協力を得るというところまで、基準を決めるときに当たっての指導をしていただけたらと思います。
○武谷委員 あまり本質的なことではないかもしれませんが、添付資料概要の前に「説明書」「添付文書」が2枚あります。そこに関して確認させていただきます。
 添付文書2の2枚目の右の欄に、市販後調査でFDAの有害事象は0.002とか4とか、これは年間の日本人における自殺する人よりも少ない有害事象ですが、その上の臨床成績では、3か月までの有害事象の発現率が「62%」と書いてあるので、かなり乖離があります。しかも、FDAの10万人に1人、5万人に1人しかないような発現率ということを、あえてここに出すことにどういう意味があるのでしょうか。
 それと、FDAの不具合といっていながら、有害事象ということでのリストを挙げていまして、左のページにはわざわざ「不具合」と「有害事象」を分けているのに、ここでは「不具合発生率」といって、内容は有害事象だと。しかも、これは私の理解するに、不具合と有害事象が一緒になっているということで、ここでの判断としては、不具合とか有害事象というのは、厳密に区別しないで用いているのか。この2点についての確認です。
○機構 機構よりお答えいたします。1点目の、海外でFDAに報告された不具合に関することです。それが非常に少なくて、国内の治験における有害事象が高いということですが、これに関しては、治験においては、細かなことまですべて挙げてくる、本品にかかわらないものに関しても、有害事象が挙がってくるということで、かなり高い値になってきていると思います。また、海外において、すべてに関して不具合として報告しているかというところに関しても疑問点もありますので、こういう結果になっているのかというところが考えられると思います。不具合と有害事象を同じ意味で使っているかという意味でお聞きになられたと思うのですが、ここに関しては違う意味で使っていると考えていただいた方がいいかと思います。治験における有害事象というのは、本品に関与するもの以外のものに起きましても、すべて挙げることになっています。「原疾患によるものがあった」とここにも書いてありますように、そういうものをすべて含めての評価ですので、かなり高い値になってきていると考えていただければと思います。その点に関しては、明確になるように記載整備をさせていただきたいと思います。
○笠貫部会長 どのように添付文書の意味付けをして、添付文書を通してユーザーに伝えるかというときに、FDAの不具合の制度をどう考えるか、この数字と、臨床試験に出てきた数字を、「不具合」「有害事象」と並べられると、どのように判断をしていいか分かりにくいかと思いますので、十分に検討していただくということでよろしいでしょうか。
 510Kで2003年に通っていて、50症例の日本での臨床試験が必要なのかどうかも含めて、臨床試験として検討したと思います。また、海外のデータについても出たと思いますので、御検討いただけたらと思います。それ以外に、今までの経過で御質問、新しいことがございましたら、お願いします。なければ議決に入ります。
 医療機器AMPLATZERバスキュラープラグについて、本部会として審査報告書にある条件を付した上で、承認を与えて差し支えないものとし、審査期間は3年間とし、生物由来製品または特定生物由来製品の指定は不要ということで、よろしいでしょうか。
御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、薬事分科会に報告することにいたします。
 議題4が終了しましたので、新槇先生におかれましては、御多忙のところありがとうございました。
── 新槇参考人退室 ──
○笠貫部会長 次の議題に進みます。議第5医療機器「ナトレルブレスト・インプラント」の製造販売承認の可否等についてです。本議題の審議に当たりましては、参考人として、岡山大学病院形成再建外科教授頭頸部がんセンターセンター長の木股敬裕先生にお出でいただいております。よろしくお願いいたします。
○事務局 議題5「医療機器ナトレルブレスト・インプラント」の製造承認の可否等について、事務局より御説明申し上げます。資料5-1を御覧ください。審査報告書1ページに販売名ナトレルブレスト・インプラント、申請者が申請時コラーゲン株式会社(現アラガン・ジャパン株式会社)となっております。
 本品の使用目的、効能効果については、審査報告書の3ページ後段を御覧ください。本品は乳房の形状を修復又は形成するために、乳房再建術又は成人女性の乳房増大術に使用されることとなっております。4ページの承認条件1~4を付すことを考えております。品目の外観などについては、6ページに記載をしております。詳細につきましては、医薬品医療機器総合機構の審査担当部より御説明申し上げます。
○機構 審議事項議題5、資料5-1、5-2「医療機器『ナトレルブレスト・インプラント』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査機関の指定について」医薬品医療機器総合機構より御説明させていただきます。
諮問書の次のページを御覧ください。本審査に当たり、別紙に記載しております6名の専門委員の先生の御意見をいただきました。また、審査報告書に3点誤記がありますので、その正誤表についても併せて別紙に記載させていただきました。内容の御確認をお願いいたします。お手数をかけて、申し訳ございません。
 本品目の概要については、審査報告書の5、6ページを御覧ください。ナトレルブレスト・インプラント(以下「本品」)は、アラガン・ジャパン株式会社より申請されたゲル充填人工乳房で、図1~3にお示ししますとおり、シリコーンエラストマー製のシェルに凝集性のシリコーンゲルが充填されたインプラントです。サンプルの方を準備いたしておりますので、そちらの方も御覧ください。
 インプラントのデザインは円形のラウンドタイプと呼ばれるタイプで、充填ゲルはレスポンシブタイプと呼称される比較的軟らかいタイプのシリコーンゲルです。充填ゲルの漏失を抑えるバリアシェルが採用されており、バリアシェルを二層の標準シェルで挟み、シェルは三層構造となっています。また、シェルの表面構造には2種類ありまして、表面が滑らかな方をスムーズタイプ、表面に凹凸加工が施された方をテクスチャードタイプと言います。本品は、乳房再建術又は乳房増大術に使用され、適応部位に挿入することによって乳房の形状を修復又は形成することを目的としています。
 本品の海外における使用状況ですが、1995年に欧州でCEマークを取得したことをはじめとして、2012年5月までに64か国において販売、使用されております。2004年~2012年5月までの世界での合計販売数は、105万2,526ユニットになります。本品の非臨床試験としては、米国FDAのガイダンス及びASTMを参考に評価されており、特にインプラント破損のリスクも考慮して、機械的な耐久性やシェルが破損した場合の充填ゲルの安全性についても評価されていることから、機構はこれらの結果を了承しました。
 次に、臨床試験成績について御説明させていただきます。審査報告書の20ページからになります。ピボタル試験として米国で実施されたコア臨床試験は、乳房増大術、乳房再建術及びこれらのリビジョン手術の患者を対象に、本品の埋入したときの有効性及び安全性を評価することを目的として実施された非盲検前向きの試験です。評価項目と観察時期は、21ページ以降の表6、表7を御覧ください。有効性の主要評価項目は、医師及び患者それぞれの満足度です。試験結果について御説明します。有効性の結果について主要評価項目の結果、24ページ表9に示すとおりです。5が最も満足度が高い5段階評価で、いずれも平均値で4.4~4.9の範囲となっております。QOLの結果は26~31ページの表11~13に示すとおり、乳房に対する満足度評価においては術後に有意なスコアの上昇が認められております。
 現在、欧州等で販売されているアラガン社のゲル充填乳房インプラントには、本品のようなラウンドタイプ以外に形状がアナトミカルタイプ、紡錘状でコヒーシブタイプという本品よりもやや硬めのシリコーンゲルが充填されたタイプのインプラントがあり、医学専門家から日本人女性の乳房再建には、本品よりもアナトミカルタイプが望ましいという指摘がありました。このことを踏まえて、本品が日本人女性の乳房再建患者に使用可能であることを申請者に説明するように求めたところ、日本で実施された乳房インプラントに関する疫学調査であるJAMP研究の結果が提出されました。43ページの表22の結果から、日本人女性の乳房再建術において、本品が使用可能であるということが示唆されるものと判断いたしました。一方で、日本の乳房再建患者のニーズを十分に満たすためにはアナトミカルタイプも必要であることから、アナトミカルタイプの日本への導入を早急に進めるように申請者に指示いたしました。申請者は、これを了承いたしました。
 安全性の評価については31ページの表14~16に、術後2年、4年、7年の結果を示しています。表16の結果からも、再手術率や被膜拘縮、乳房疼痛やインプラント摘出などが比較的高率に発生していることが確認されました。一方でこれらのうち、再手術やインプラントの摘出、インプラント破裂を除く合併症のうち、その大半は転帰として治療又は外科的処置なく消失していること。また、再手術の理由は必ずしも機器の不具合や医学合併症ではなく、患者の審美的理由から実施されている場合も認められているということが確認されています。また、患者から摘出後回収したインプラントの不具合等の解析を行った回収試験の結果から、シェルに確認された不具合はインプラントそのものではなく、外科的な手術手技による部分も大きいことが考えられ、トレーニングを積んだ医師による手術が必要と考えました。また、発生率は非常に低いものの、米国FDAからその他の癌と区別して注意喚起が求められた未分化大細胞型リンパ腫、ALCLについては適切に情報収集し、必要に応じて措置を講じることについても検討すべきと考えました。以上の臨床試験成績を踏まえ、本品の審査における主要な論点について、審査報告書52ページの総合評価に基づき御説明します。
 一つ目の論点。本品が日本の乳房再建患者に対して使用可能であるかについては、JAMP研究の結果から日本人女性の乳房再建患者に対して使用可能であることは示唆されましたが、日本人での長期フォローによる合併症等については確認できておらず、長期フォローが必要と考えました。また、ALCLについては継続した情報収集の必要性があることから、承認条件3を付すことが適当であると判断いたしました。
 二つ目の論点である本品の安全性については、本品の使用に際して臨床試験等から有害事象も多く見られていることから、手術手技に由来する合併症等のリスクを低減させるため、必要な設備・環境が整った医療機関において、術式の知識と経験を有する術者が適切なトレーニングを受けた上で使用することが必要と考え、承認条件1及び2を付すことが適当であると判断いたしました。
 最後に、三つ目の本品の乳房再建術又は乳房増大術への適応に関するリスク・ベネフィットバランスについては、本品のベネフィットは特に乳房増大術において事前の見積が困難でありながら、リスクについては前述の基準やトレーニングによって低減しても、なお一定程度存在することから、インフォームドコンセントにおいて術前に本品を使用することで想定されるリスク、不利益について患者が十分に理解し、同意をした上で本品は使用される必要があると考え、承認条件4を付すことが適当であると判断いたしました。なお、委員の先生方には事前に配付させていただいております、このような「ナトレルブレスト・インプラントをお考えですか」というタイトルの文書が、現時点での患者向けインフォームドコンセント用の文書の案になっております。
 以上述べました審査を踏まえ、機構は審査報告書53ページの使用目的で1~4の承認条件を付した上で、本品を承認して差し支えないとの結論に達しました。再審査期間は3年と判断しております。また生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと考えております。機構からは以上です。
○笠貫部会長 木股先生の方から何かありましたらお願いします。
○木股参考人 よろしくお願いいたします。今御説明ありましたが、現在乳癌の患者が年間5万人~6万人発生している状況です。そのうち、乳房再建が適応になりそうな患者さんは年間、大体2,000件弱ぐらい発生している状況です。この乳房再建の率というのは、米国ですと8~45%とばらつきが大きいのですが、米国は再建の説明はほとんどしていないのです。ところが、日本は再建の説明はだんだん義務化していますので、これからどんどん説明していきますと、もっとパーセンテージが増えます。
 再建の方法は簡単に言いますと、自分の組織を使う方法と今回申請させていただいたインプラントの2通りです。自分の組織を使う場合は、例えば背中の脂肪やお腹の脂肪をするのですが、手術時間が長いし、ほかの部位を傷つけてしまう。それから、女性にとって1か月ぐらい社会的な休暇を取らなければいけないといういろいろな問題があります。一方、インプラントは非常に合併症が多いのですが、手術が簡単です。手術時間が短いですし、2、3日ぐらい患者は休んで、すぐに社会に復帰できるという大きいメリットがあります。今までこれが薬事に通ってこなかったものですから、なかなか使えない状況だったのですが、乳房を失った女性にとってこのインプラントが通るということは、ものすごく恩恵が大きいと思います。
 もう一つは、今は乳癌になる人は40代、50代が多いのですが、これがどんどん若年化しているわけです。そうすると、本当に今仕事をしたい人が乳癌になってしまう。でも時間がない。ですから、このインプラントがあると社会に早期に復帰できる。しかも、両側乳癌になっている人も増えてきています。自分の組織で片方ずつやるとものすごく侵襲が大きいですが、インプラントがあればすぐできてしまう。そういった意味でもその需要が大きいと考えております。
 一方、豊胸術の方ですが、調査結果では年間日本で1万件程度、豊胸術にインプラントが使われています。この日本の合併症に対して詳細な報告はないですが、美容外科学会や開業医レベルで聞きますと、いろいろなトラブルが裏に隠れているというのが現状です。その現状としては患者さんもしっかり話を聞いていないのですが、医師の方もしっかり話をしていない。バックは入れてしまって、そのまま等閑になってしまって、アフターフォローもできていない状況が起きているわけです。インプラントを使わない場合は、ヒアルロン酸や今でも非吸収性の素材を注入している所があって、特に後者ではいろいろなトラブルがまだ起きているということで、これが今回のインプラントが薬事に通りますと、こういった一般で使われている医師もしくは患者さんに対しても警鐘になるのではないかと思いまして、これが薬事承認されることは非常に意味が大きいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上です。
○笠貫部会長 委員の先生方から御意見、御質問をお願いします。
○齋藤委員 2点お聞きします。一つは安全性ということで、シリコーンゲルの方はかなり固まって、局所に拡がりを抑えているという話をされていましたが、シェルの部分というのも従前のものとかなり改良されているのでしょうか。
○機構 機構から御説明いたします。シェルの方に関しても、従来1960年代ぐらいからアメリカの方で使用され始めて、そのときに破裂をして中身のジェルがこぼれ出てしまうということが問題視されておりましたので、今回三層構造のシェルになっております。2番目の層がバリアシェルと言っていまして、これが中身のシリコーンゲルの漏出を抑えるような働きを担っていることになっており、この点で改良されております。
○齋藤委員 もう一つ、適応の面で確かに乳癌の患者さんが増えていて、恐らく若い人が多いということで、多分入院期間が短縮できるということで大きなメリットがあると思います。そういった意味で乳房の再建術に関しては、ものすごくメリットがあると思いますが、ただコスメティックな部分があって、美容的な面でこれが保険適用になったら、何かいろいろな問題が起きてくるような印象がありますが、その適用に関してはどのように考えていますか。
○機構 増大術、豊胸術が保険適用になるかどうかというのは現時点では未確定というか、はっきりはしておりませんが、乳房再建術の方についても乳房増大術についても、胸を大きくするという原理、胸の形を元に戻すという原理のところは共通で、アメリカで豊胸術と再建術の臨床試験もそれぞれ実施されていて、その効果が確認をされていることからも、あえて豊胸術を今回認めないという理屈は今のところ特にないかというふうには考えています。
○齋藤委員 手術がかなり容易であるというお話なので、むしろそういった美容的な面での手術が、こういうものを導入することによって逆に増えてくる可能性が大きいのではないかと。その辺を危惧していたものですから、質問させていただきました。
○木股参考人 まさに、そのとおりだと思います。もし保険適用になるとしたら、先生が言われた最初は病的な状態であるというところが大前提だと思います。ですから、乳癌でおっぱいがなくなってしまった人や、例えば若いときに火傷になってしまうと乳腺の発達がひどいことになってしまう。そういった患者さんや、あとはホルモン異常やリセプター異常で乳房がない人や、18歳になっても乳房が全くない人といった診断が付いた人がまず適用になるのではないかと考えております。
○西田委員 今の御質問に関連しますが、豊胸術の方で今現在、美容の方でされているのは多分、自由診療でされている。恐らく未承認のものも使われているということだと思います。これが使いやすくなった場合に、承認条件を守った状態でそれが使われるのか。自由診療の部分で、わりとレギュレーションが、なかなか絞りができないという状況で使いやすくなると、これを守らずに使う例というのがたくさん出てこないかというのが少し危惧されると思いますが、それは大丈夫でしょうか。
○機構 具体的に承認条件のところで考えると、まさに乳房増大術はこれまで未承認品しか使えなかった状況で、今回このものが承認されることで承認条件の1の実施医の基準や施設の基準といったものをしっかり守って使っていくことによって、合併症であるとか有害事象であるといったことはリスクとしては低減できると。このような側面から、今回お配りしておりますようなこういった冊子について、承認が取れた場合には、申請者のホームページにもインフォームドコンセントの文書の様式を出して、実際に承認されたものを使って実施の基準、施設の基準を守っていくことによってリスクが低減できると。また、これまで実施医と患者の信頼関係で行っていた部分に関して、メーカーの方と学会の方にもそれぞれ学会基準というのを作ってもらう形で応分の責任を負っていただいてと考えております。
○西田委員 危惧しているのは、使うときの施設や医師のそういう資格というのは取られるのですが、そうすることによって自由診療の部分ですから、それを満たしていけばどんどんそれが使えるようになる。先ほど木股先生が言われた経過観察をされないというのは、とても問題だと。そういうことがものすごく増えてくるのではないかと思うのです。そこの後の部分も何かレギュレーションで縛れるのか、きちんと経過観察するというのが、そういうことができるのかが心配なのですがいかがでしょうか。
○事務局 事務局よりお話させていただきます。今回、正に乳癌術後の再建と豊胸に関しては全く医療環境も違いますし、対象の患者も異なりますし、またその先生御自身の環境も異なるという形で、実際環境が異なることに関して対策を取らなければいけないという御指摘をいろいろいただいているところと理解しています。学会に関しても、今学会の方で実施施設基準と実施基準を設けていただく形で進めていますが、具体的には形成外科学会、日本美容外科学会、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会の3学会で、それぞれ再建の方と美容の豊胸の方の観点から必要な基準を策定していただいて、それで進めていこうということを考えています。薬事法は物の流通規制ですので、直接医師に対しての何らかの規制を行うことはできないのですが、現在各学会の方に厚生労働省から委託する形で予算化していますので、その予算の中で本品に関しては、そういった学会基準の方をきちんと整備する。それを整備するとともに、今まではある意味、個人輸入も薬事法では規制できない分野で、野方図にいろいろなものが入ってきてそれが使われていたという状況の中で、学会主導でそういったものをお作りいただきながら日本で承認するものができてきた。また、承認された後にも必要な市販後の使用成績調査の方も承認条件として課すことによって、様々な不具合や今まで分かっていなかった有害事象が分かってくる。それをまた学会の方にもフィードバックさせていただいて、適切に使用できる環境を今後とも学会とも連携しながら作っていくということで、間接的ではありますが、そういった情報を的確に流すことによって、実際に使用される医師の方々の意識を変えていただくとともに、患者さんにも十分インフォームドコンセントをすることを徹底する環境ができていくことによって、今の野方図の並行輸入の状態からこの薬事承認があることによって環境が変わっていくと。さらには指示事項としてありましたが、アナトミカルタイプという日本人の女性の胸の形に合ったタイプのものもアラガン・ジャパン株式会社の方に早く申請するようにということで、着実に彼らもこちらも申請の準備を進めているような状況ですので、数のバリエーションを増やしながら的確に使用できる環境を作っていくことをやっていきたいと考えています。
 1点補足で、長くなって恐縮です。保険のお話は本部会では御議論いただくことではないですが、最終的にもし承認されたら保険適用希望書が企業から出てきて、事務局が精査した上で中医協に諮る形になっていますが、保険では機能的な再建みたいなものと審美的な側面を含むものについては、当然保険適用についてどういうやり方かというのを中医協の中で保険の観点から議論の方がなされて、そこで判断がなされるという形になると理解していますので、補足させていただきます。
○笠貫部会長 今の御説明でよろしいですか。何か御質問、御意見はありますか。よろしいですか。医療環境の中で、保険のことを含めていろいろお話いただいたと思います。
○武谷委員 豊胸術、乳房増大術に関して質問です。先天的に形成不全とか、極端に乳腺組織が欠落しているような女性は該当しないと思いますが、多くの乳腺組織がある程度ある方は、御存じのように妊娠、授乳によって見違えるように乳腺組織が発育して、授乳が可能になることがあるかと思います。その場合に、このリーフレットの15ページに「乳房増大で授乳の妨げとなるという医学的証拠はありません」と書いてあるし、この申請書類の資料5-1の36ページの「授乳に関する問題」というのが3.5%と、あまり問題ないような書きぶりですが、実際に授乳に際して、自然のままで母乳が出る女性はかなり少なくて、入念なマッサージや乳房のケアによって初めて授乳が可能になるのであって、母乳の実際の授乳の状況を考えるに、医学的証拠はありませんというのは、やや言いすぎではないのかと。実際に、あれだけの大きなマスがあそこに入ると乳管も変更しますし、赤ちゃんの吸てつ刺激も減弱するし、血流も圧迫するし、これは証拠がないというのは強弁であって、医学的常識からいうと入れないよりは明らかに授乳に対して妨げになるのではないかというので、こういう書きぶりがかなり気になります。
○機構 分かりました。御指摘の点については確かにごもっともだと思っておりまして、恐らく積極的な因果関係が認められないということをかなり強弁して書いているような形になっておりますので、この書き方については現在のところ因果関係は特に認められないけれども、こういったことに関しては可能性としてあるので御注意していただきたいというような記載ぶりの方が適切かと思っておりますので、そういった記載方法に修正していただくことを指導しようと考えております。
○木股参考人 先生が言われたことはもっともだと思います。ただ文献的に見ますと今言われたとおりに、なかなかエビデンスは出ないというのが現状ですが、掲げていることは異物を入れますから、それによって瘢痕ができたり感受性が落ちたりといろいろなことが起きて、恐らく授乳の問題があるのだろう。ほとんどまれですが、そういったことはありますよということは書かなければいけないと思います。
 もう一つは、マッサージによってインプラントが破裂する可能性はゼロではないと思います。そういった注意喚起をここに含めるべきではないかとお聞きいたしました。
○武谷委員 私が危惧しているところは、妊娠・出産していない若い女性が安易にこの乳房増大術に走って、実際妊娠・出産してみると様々な不具合が生じて、こんなはずではなかったと。授乳もできない体になったと後悔してしまうようなケースがかなり出てくるのではないかということで、こういう増大術を希望するのは未婚の女性が多いのかもしれませんが、それだけに余計このような書きぶりが気になるということです。
○木股参考人 おっしゃるとおりです。でも、これが薬事承認になって先ほど事務局の方も言われましたが、ある程度認定した医師、美容外科医がやるようになって、さらにアフターフォローしなければいけないわけですから、そうすることによって本当のデータがまた出だすと思います。それをまた国民や患者さんにいろいろな所で喚起していけば良い方向に行くのではないかと思いますので、そういったことも考えていく形になると思います。
○寺崎委員 シリコーンがあると、その後方はエコーでは撮れないと認識しています。MRIで撮れば見られると思いますが、一般のBモードはブロックされてしまうと思います。そのあたり、説明書に記載しなくてもいいでしょうか。
○木股参考人 私は乳腺外科医ではないので詳しくはないですが、マンモグラフィに関しては明らかにインプラントで病変は隠れてしまうので、その場合はエコーかMRIが望ましい。それから再建の場合は、大胸筋の下に入れる場合が多いです。その場合は、一番下に胸壁のすぐ前ですから、どんな検査にでもリデクトはできると思っています。
○寺崎委員 後方の組織、たとえば、心臓のエコーなどは可能でしょうか。
○木股参考人 そうですね。その辺は少し付け加えた方がいいですね。
○機構 乳房の組織に関して言うと、例えば今言ったようなマンモグラフィは難しいけれども、その代わりにエコーであったりMRIといったことで検査をするという代替手段はありますが、乳房そのものではなくてその後ろ側の見え方に関しては確かに御指摘のとおり、影響を受ける部分があると思われますので、その点に関しては適切に情報提供をすることが必要だと思います。
○倉根委員 有害事象のところで質問いたします。10ページには、例えば乳癌が0.0137%となっていて、余り多くないと思いますが、36ページを見ると乳癌の率が10%あるいは20%、12%で、計算すると1%や5%になる。私は専門ではないのですが、これ自体はなんとなく高いという印象を持つけれども、これは特に問題のある数字ではないのですね。特に36ページです。
○機構 まず10ページの部分に関していうと、インプラント全体の販売量に対する割合になってしまいます。増大術に関しても再建術に関してもという形で、すべての術式で見るとそうなってしまいますが、36ページの部分に関していうと、増大術と再建術とそれぞれ分けて記載しておりまして、再建術では特にもともとあった癌の再発であるとか、そういった部分がありますので、その違いがそのあたりで出てきているものだと思われます。
○倉根委員 この%は特に入れたから、多くなったというわけではないという。
○機構 というものではありません。
○荒井部会長代理 2点発言させて頂きます。第一点は、このような領域それなりの構えで「承認」が介入したことについて異論はないのですが、今日配られたメーカー作成の資料については、その他の有害事象のところに「因果関係がないと考えられています」と記載されています。このままではまずいので、承認にあたっては指導して頂きたい。第二点は、添付文書です。非常にあっさりしており、有害事象関係のことがほとんど記載されていません。御検討下さい。要望です。
○機構 分かりました。ありがとうございます。
○笠貫部会長 癌の患者さんにとっては、これが薬事承認されることは非常に意味があることと思いますし、もう一つの側面としての豊胸術をどのように希望される方に適切かつ安全に提供することが、この承認を得ることによって、実現できるかということが議論されたと思います。よろしければ議決の方に入りたいと思います。
 医療機器「ナトレルブレスト・インプラント」については、本部会として審査報告書にある条件を付した上で承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間は3年間とし、生物由来製品又は特別生物由来製品への指定は不要ということでよろしいですか。
御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会の方に報告いたします。議題5が終了しましたので、木股先生におかれましては御退室いただいても結構です。どうもありがとうございました。
── 木股参考人退室 ──
○笠貫部会長 次の議題に進みます。議題6「新たに追加する医療機器の一般的名称にかかるクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について」審議を行います。今回は2件ありますが、審議品目の概要について、事務局よりまとめて御説明をお願いいたします。
○事務局 審議事項議題6「新たに追加する医療機器の一般的名称に係るクラス分類及び特定保守管理医療機器等の指定について」事務局より説明させていただきます。資料6-1、資料6-2、参考資料3に参考としてクラス分類ルールを載せております。時間も押しておりますので、手短に御説明をさせていただきます。医療機器に関しては、一般的名称と呼ばれる区分がないものについては、高度管理医療機器なのか管理医療機器なのか、一般医療機器なのか特定保守管理医療機器に該当するのかについて審議会の御意見を伺った上で定めることと、薬事法第2条第5項~第8項の規定によって定められているところです。今回、資料6-1と資料6-2の2件の一般的名称の追加をさせていただければと考えております。
 資料6-1ですが、まず最初に資料の誤記の訂正をさせていただければと思います。資料6-1の裏側の表の右下に「特定保守管理」「該当」となっておりますが、2.で「指定しないこと」とありますとおりこちらは「非該当」となりますので、申し訳ありませんがお詫びして修正させていただきます。
 資料6-1の「新設する一般的名称案」について、2ページの表紙を御覧ください。今回創設を考えている一般的名称は、冠動脈カテーテル交換用カテーテルということで、クラス分類ルールに基づいてクラス分類IV、高度管理医療機器に該当すると考えております。本品は、PTCAにおけるカテーテル交換を助成する目的で使用するものですが、この使用目的について新規性を有しておりまして、下の方にある類似の一般的名称の方でこの定義に該当しないことから、今回新設をさせていただければと考えております。参考として2ページの裏側に、新一般的名称が付される予定の品目概要を載せております。
 続きまして、資料6-2の2枚目の表紙ですが、新設する一般的名称が中心循環系動静脈カニューレということで、クラス分類ルールに基づいてクラス分類IV、高度管理医療機器に該当すると考えております。本品は、体外循環回路を使用する開心術において、開胸視野以外の部位から経皮的に動脈に挿入し、動脈側への送血に使用される経皮的挿入用カニューレです。下にある類似の一般的名称とその定義に現在該当しないことから、今回名称の新設を考えております。2枚目の裏側も、同様に新一般的名称が付される予定の品目概要ということで記載をさせていただいております。事務局からは以上です。
○笠貫部会長 今の事務局からの御説明について、御意見あるいは御質問はありますか。よろしいですか。特に御意見がないようでしたら、議決に入りたいと思います。
 1点目は、冠動脈カテーテル交換用カテーテルについて本部会として高度管理医療機器として指定し、特定保守管理機器への指定は不要ということでよろしいですか。
御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。
 2点目は、中心循環系動静脈カニューレについて本部会として高度管理医療機器として指定し、特定保守管理医療機器への指定は不要ということでよろしいですか。
御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会に報告することといたします。
 次の議題に移ります。議題7「体外診断用医薬品の劇薬の指定の除外の可否について」審議を行います。今回2件ありますが、審議品目の概要については事務局からまとめて御説明をお願いいたします。
○事務局 資料7-1、資料7-2をまとめて事務局から説明させていただきます。
 まず資料7-1を御覧ください。今回御審議をお願いする1件目は、1片中カスポファンギンとして51.2μg以下を含有する体外診断用医薬品について、劇薬の指定から除外して差し支えないかどうかをお伺いするものです。この品目は承認に伴い劇薬として指定されておりますが、体外診断用医薬品として用いるものについては1片中に入っている量が51.2μg以下のものは含有量がわずかであり、また人体に直接投与又は塗布されるというようなことがなく、劇薬、劇性が強いとは認められないことから、この劇薬の指定から除外することが適当ではないかと考えております。そこで、1片中カスポファンギンとして51.2μg以下を含有する体外診断用医薬品については、劇薬の指定から除外させていただきたく、案を提示させていただきました。
 資料7-2を御覧ください。2件目は、1容器中デオキシグアノシン5’-3リン酸として、1g以下を含有する体外診断用医薬品について、劇薬の指定から除外して差し支えないかどうかをお伺いするものです。この品目は、プリン化合物及びその製剤として劇薬指定されておりますが、体外診断用医薬品として用いられるものについては人体に直接投与又は塗布されるというようなことがなく、また1容器中の含有量として1g以下であれば劇性が強いとは認められないことから、劇薬の指定から除外することが適当ではないかと考えております。そこで、1容器中デオキシグアノシン5’-3リン酸として1g以下を含有する体外診断用医薬品については、劇薬の指定から除外させていただきたく案を提出させていただきました。以上の2件についての御審議をよろしくお願いいたします。
 なお、今回の部会で御了承いただきましたら部会の案を用いまして、パブリックコメントを実施いたします。事務局からは以上です。
○笠貫部会長 それでは本件について、先生方から御質問、御意見はありますか。これからパブリックコメントにかかるということですので、これでよろしいですか。よろしければ議決に入ります。1件目のカスポファンギンとして、1片中51.2μg以下を含有する体外診断用医薬品を劇薬の指定から除外することでよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。
 2件目、デオキシグアノシン5’-3リン酸として、1g以下を含有する体外診断用医薬品を劇薬の指定から除外することでよろしいですか。
御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会に御報告いたします。
 次に、報告事項に進みます。議題8「部会報告品目について」、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 議題8「部会報告品目について」事務局より御説明いたします。資料8、横向きの資料になります。平成24年4月1日~6月30日までの3か月間に承認された品目のうち、本部会への報告対象となっている品目について資料8でまとめています。1~13ページが医療機器となっていて、1~3ページの11品目と4~13ページの59品目がありまして、医療機器は全部で70品目あります。また、14、15ページが体外診断用医薬品となっておりまして、7品目御報告をさせていただきます。こちらの資料については、事前に委員の先生方にお送りをさせていただきますので、この場で一つひとつの品目の詳細な説明は割愛させていただきます。以上、御報告いたします。
○笠貫部会長 この件について、委員の先生方から御意見、御質問はありますか。よろしければ、これで本日予定された議題はすべて終了いたしました。3時間近く長時間にわたりまして御審議いただきまして、ありがとうございます。新規の医療機器として4件、コンデュイットをはじめ審議させていただきまして、医療機器におけるリスク・ベネフィットあるいは安全対策を含めて、重要な問題について議論されたと思います。事務局から、ほかに何かありましたらお願いいたします。
○医療機器審査管理室長 本日は長時間の御審議、誠にありがとうございました。次回の本部会は、11月7日に開催を予定しております。詳細については、また御連絡申し上げます。連絡事項は以上です。
 これをもちまして、本日の医療機器・体外診断薬部会を閉会させていただきます。ありがとうございました。


(了)

備考
 この会議は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 安川(内線 4226)

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