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2012年10月15日 第11回厚生科学審議会感染症分科会感染症部会議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成24年10月15日(月)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎5号館 厚生労働省専用第15-16会議室


○出席者

【出席委員(五十音順)】

味澤委員 磯部委員 大石委員
岡部委員 小野寺委員 賀来委員
北村委員 倉田委員 小森委員
澁谷委員 白阪委員 竹内委員
廣田委員 深山委員 古木委員
前田委員 蒔田委員 皆川委員
南委員 山川委員 山田委員
渡邉部会長 庵原参考人

○議題

(1)麻しんに関する特定感染症予防指針の改正について
(2)ヒブ、肺炎球菌ワクチンの接種に伴うサーベイランスの変更等について
(3)規制除外病原体等の指定手続きについて

○議事

○結核感染症課課長補佐(難波江) ただいまより、第11回厚生科学審議会感染症分科会感染症部会を開催させていただきます。開会に当たりまして、矢島健康局長よりご挨拶を申し上げます。
○健康局長 このたび、健康局長を拝命いたしました矢島でございます。よろしくお願いいたします。本日は委員の先生方には大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。また、日ごろから感染症対策につきまして、いろいろな意味でご指導、ご支援をいただいております。この場をお借りして厚くお礼申し上げさせていただきます。
 前回、この会議を開催いたしましてから1年が経過をしたということです。新型インフルエンザ対策特別措置法の制定など、法令の整備があったほか、予防接種部会からの予防接種制度の見直しに向けてのご提言とか、ポリオワクチンの生ワクチンから不活化への変更など、感染症については話題に事を欠かない1年間だったかと思います。この間、委員の先生方には折に触れご指導を賜りました。誠にありがとうございました。
 今回の会議でご審議をいただきたい議題ですが、まず、麻しんに関する特定感染症予防指針についてです。こちらは感染症部会の下に、麻しんに関する小委員会を設置し、これまで4回議論をしていただき、改定案をまとめていただきました。それを基に、厚生労働省としての改正案を作成いたしましたので、こちらについてご審議をいただきたいと思います。
 そのほかの議題として、ヒブ・肺炎球菌ワクチンの接種に伴うサーベイランスの変更と、規制除外病原体等の指定の手続きについて、ご審議していただくことになっております。いずれもこの感染症部会でご審議していただいた後、まとまりましたらパブリックコメントを行い、症例や告示改正を行うこととしております。委員の皆様方には真摯で活発なご議論をいただきますようお願いを申し上げまして、簡単でございますが私の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○結核感染症課課長補佐(難波江) 前回の部会から委員の交代がありましたので、ご紹介させていただきます。退任されました委員からご紹介させていただきます。木村委員、相楽委員、東海林委員、高橋委員、丹野委員、保阪委員におかれましては退任されていらっしゃいます。
 続きまして、新たにご就任いただきました委員を紹介させていただきます。慶應義塾大学大学院法務研究科准教授の磯部委員です。国立感染症研究所感染症情報センター長の大石委員です。東北大学大学院医学研究科教授の賀来委員です。社団法人日本医師会常任理事の小森委員です。国立病院機構大阪医療センター臨床研究センターエイズ先端医療研究部長の白阪委員です。東京都福祉保健局技監の前田委員です。愛知県衛生研究所長の皆川委員です。東京大学大学院農学生命科学研究科教授の山田委員です。
 続きまして、事務局にも異動がありましたので、紹介させていただきます。局長の左隣、大臣官房審議官の高島審議官です。結核感染症課課長補佐の梅木です。同じく結核感染症課課長補佐の西川です。結核感染症課予防接種室ワクチン対策専門官の喜多です。結核感染症課課長補佐の福島です。結核感染症課医療調整係長の田村です。私は結核感染症課課長補佐の難波江でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、事務局より本日の委員の出欠状況について、ご報告いたします。本日は、青木委員、林委員からご欠席との連絡をいただいております。また、本日は参考人として、国立病院機構三重病院院長の庵原先生にご出席いただいております。
 現時点で、定足数以上の委員にご出席いただいておりますので、会議が成立しますことをご報告いたします。
 ここより、渡邉部会長に進行のほどお願いいたします。
○渡邉部会長 おはようございます。議事に先立ちまして、事務局より資料の確認をお願いいたします。
○結核感染症課課長補佐(難波江) お手元の資料を説明させていただきます。座席図、議事次第、配付資料一覧、部会委員名簿、資料1-1「麻しんに関する特定感染症予防指針の改正案の概要」、資料1-2「麻しんに関する特定感染症予防指針改正案 新旧対照表」、資料1-3も新旧対照表の縦書きのものです。資料1-4が参考資料です。資料2-1「ヒブ・肺炎球菌ワクチンの接種に伴う患者サーベイランスの変更等について」、資料2-2「ヒブ・肺炎球菌ワクチンの接種に伴うサーベイランスの必要性について 」、庵原参考人提出資料です。資料3、「感染症法に基づく『病原体等管理規制』から除外する病原体について」です。資料の不足がありましたらお申し付けください。
 申し訳ございませんが、もしカメラ撮りをされている方がいらっしゃいましたら、ここまでとさせていただきます。
 部会長、よろしくお願いします。
○渡邉部会長 本日は皆さんのお手元にありますように、議題として3議題あります。(1)としては、「麻しんに関する特定感染症予防指針の改正について」です。これは感染症部会の下に、麻しんに関する小委員会を設置して、平成24年5月から4回議論していただき、改正案をまとめていただきました。本日は、その小委員会の改正案と厚生労働省案を出していただき、議論を行いたいと思います。(2)として、「ヒブ・肺炎球菌ワクチンの接種に伴うサーベイランスの変更等について」の議論をいただきたいと思います。(3)として、「規制除外病原体等の指定手続きについて」の議論を行いたいと思います。時間が限られておりますので、皆さんのご協力をよろしくお願いいたします。
 第1に移ります。事務局から説明をお願いいたします。
○結核感染症課課長補佐(梅木) 事務局より説明をいたします。資料1-1から資料1-4までの内容になっており、資料1-1が「麻しんに関する特定感染症予防指針の改正案の概要」、資料1-2が「麻しんに関する特定感染症予防指針改正(案) 新旧対照表」、以上の2つについては麻しんに関する小委員会において取りまとめられたものになります。資料1-3「麻しんに関する特定感染症予防指針改正案 新旧対照表」について、これは厚生労働省の案となっております。そのほか、資料1-4については参考資料になります。
 説明については資料1-4から行って、その後、資料1-2、資料1-3の新旧対照表について行います。先ほども申しましたように、資料1-2については、麻しんに関する小委員会で取りまとめた改正案で、感染症部会への報告事項ということです。資料1-3は、小委員会がまとめた改正案を受けて、厚生労働省として作成した案となっております。内容的には小委員会の改正案とほぼ同様の内容となっており、一部に若干の文言の違いがあります。感染症部会で厚生労働省案についてご審議願えればと存じます。
 また、資料1-1について、これは概要なのですが、今回の改正部分をまとめたものになります。何回も説明をすることになってしまいますので、今回説明はいたしませんが、ざっとご覧いただければと思います。
 資料1-4の説明から入ります。1頁は麻しんの報告数になりますが、2008年に全数報告になってからの推移です。2008年は1万1,013件、2009年は732件、2010年は447件、2011年は442件と順調に減少しております。
 2頁です。麻しんの定期予防接種の各期毎、年度毎のまとめになります。これまでの4年間、平成20年度から平成23年度の定期予防接種者数をまとめております。年度毎、各1期から4期まで、上方の数字が接種者数、下に対象者数を書いており、括弧内には未接種者数を書いております。第1期は1歳時に受けるもの、第2期は小学校入学前の1年間、第3期は中学校1年生、第4期は高校3年生相当で接種することになり、第3期、第4期は、これまで1回しか接種機会がなかった世代に2回目の接種機会を設けるために、5年間の時限措置として行われているものになります。これらの接種数をまとめた数字も記載しており、いちばん下の段は4年間の接種者数の合計を示しており、第1期については413万人程度、第2期については411万人程度、第3期については415万人程度、第4期は381万人程度が接種済みとなっております。
 3頁は、各年毎の100万人当たりの年間罹患率になっております。2008年のみがスケールが右軸となり、その他の年については左軸のものとなっております。2008年には15~19歳にかけて非常に大きなピークを認めておりますが、2009年以降は順調におおむね幅広い年齢層で罹患率自体が減っており、10代の罹患率もその他の年齢層と差が見られない状況です。
 4頁、5頁は感受性者数になります。この表は感染症流行予測調査事業として実施している麻しんの抗体価の測定をしておりますが、その抗体価が16未満を感受性者として、その割合から推計を出しているグラフとなっております。一部のデータでは政令指定都市のものが入っていないということもありますが、あくまで推計として考えていただければと思います。また、色やドットの違いによって、どの年齢層が何回予防接種を受ける機会があったかも示しております。
 4頁は2007年度採血時点の感受性者数、5頁は2011年度採血時点の感受性者数となっております。どちらの表も0、1歳に多くの感受性者がおりますが、これについては定期予防接種が12カ月以上24カ月未満を第1回の対象として定めていることから、数字が多くなっているものと考えられます。また、接種機会が2回設けられた世代については、感受性者がこれらを比較することによって、減少を大きく認めていると思います。また、2011年のものを見ていただければ、特定の年齢層に限らず、すべての年齢層に薄く広く感受性者が存在している状況となっているかと思います。
 以上が資料1-4の説明となります。10代に対して時限措置を行っております第3、4期の予防接種についての効果が、こちらから見られるかと思います。
 続きまして、資料1-2、改正案、麻しんに関する小委員会案に移ります。こちらは、先ほども申しましたように小委員会からのご報告です。左の部分が改正案、右の部分が現行の指針について記載してあり、下線部分が今回の改正に関する部分となっております。
 初めに前文ですが、指針策定後、現状が変わってきていることを踏まえた修正をしているところです。また、最初の「全身性ウイルス感染疾患」に関しては、ウイルス感染を明記したものになっています。その下の下線部ですが、「国は、麻しん対策を更に強化するため、平成二十年に麻しんに関する特定感染症予防指針(平成十九年厚生労働省告示第四百四十二号)を策定し、時限的に予防接種法第三条第一項に基づく予防接種(以下「定期の予防接種」という。)の対象者を拡大するなどの施策を推進してきた。こうした取組の結果、平成二十年には一万千十三件あった麻しんの報告数も、平成二十三年には四百四十二件と、着実に減少し、高等学校や大学等における大規模な集団発生は見られなくなったところである」という、これまでの記載について書いてあります。
 次の段落は、麻しんの排除の定義について変更がありますので書いているものです。読み上げますと、「麻しん排除の定義は、平成二十年には『国外で感染した者が国内で発症する場合を除き、麻しんの診断例が一年間に人口百万人当たり一例未満であり、かつ、ウイルスの伝播が継続しない状態にあること』とされていたが、遺伝子検査技術の普及により土着株と輸入株との鑑別が可能となったこと等を踏まえ、平成二十四年に世界保健機関西太平洋地域事務局より新たな定義として『適切なサーベイランス制度の下、土着株による感染が一年以上確認されないこと』が示され、また、麻しん排除達成の認定基準として『適切なサーベイランス制度の下、土着株による感染が三年間確認されず、また遺伝子型解析により、そのことが示唆されること』が示された。世界保健機関は、平成二十四年九月に、西太平洋地域の三十七の国及び地域のうち、我が国を含めすでに三十二の国及び地域で土着株の流行が無くなっている可能性があることを表明しており、同機関による排除認定作業が行われている。本指針はこのような状況を受け、平成二十七年度までに麻しんの排除を達成し、世界保健機関による麻しん排除の認定を受け、かつ、その後も排除状態を維持することを目標とし、そのために、国、地方公共団体、医療関係者、教育関係者等が連携して取り組んでいくべき施策についての新たな方向性を示したものである。」という形にしております。
 3頁に移りますが、第一の「目標」については、「平成二十七年度までに麻しんの排除を達成し、世界保健機関による麻しんの排除の認定を受け、かつ、その後も麻しんの排除の状態を維持することを目標とする。」と書いています。
 4頁に移ります。「三 麻しんの届出基準」です。「麻しんを診断した医師の届出については、法第十二条に基づき、診断後七日以内に行うこととされているが、迅速な行政対応を行う必要性に鑑み、可能な限り二十四時間以内に届出を行うことを求めるものとする。また、我が国における麻しん患者の発生数が大幅に減少したことを踏まえ、風しん等の類似の症状を呈する疾病と正確に見分けるためには、病原体を確認することが不可欠であることから、原則として全例に検査の実施を求めるものとする。しかしながら、迅速な行政対応を行うため、臨床診断をした時点でまず臨床診断例として届出を行うとともに、血清IgM抗体検査等の血清抗体価の測定の実施と、都道府県等が設置する地方衛生研究所でのウイルス遺伝子検査等の実施のための検体の提出を求めるものとする。臨床症状とこれらの検査結果を総合的に勘案した結果、麻しんと判断された場合は、麻しん(検査診断例)への届出の変更を求めることとし、麻しんではないと判断された場合は、届出を取り下げることを求めることとする。また、都道府県等は、届出が取り下げられた場合は、その旨を記録し、国に報告するものとする。」としております。
 四については、日本医師会との協力において、「三『麻しんの届出基準』に即した対応を行うよう依頼するものとする。」としております。
 5頁に移ります。「五 麻しん発生時の迅速な対応」です。「都道府県等は、麻しんの患者が一例でも発生した場合に法第十五条に規定する感染経路の把握等の調査を迅速に実施するよう努めることとし、普段から医療機関等の関係機関とのネットワーク構築に努めるものとする。また、国は、国立感染症研究所において、当該調査の実務上の手順等を示した手引きの作成や職員の派遣要請に応えられる人材の養成を行うものとする。」としております。
 「六 ウイルス遺伝子検査等の実施」です。これは新設となっており、「都道府県等は、医師から検体が提出された場合は、都道府県等が設置する地方衛生研究所において、原則として全例にウイルス遺伝子検査等を実施するとともに、その結果の記録を保存することとする。検査の結果、麻しんウイルスが検出された場合は、可能な限り、地方衛生研究所において麻しんウイルスの遺伝子配列の解析を実施する、又は国立感染症研究所に検体を送付し、国立感染症研究所が遺伝子配列の解析を実施することとする。国立感染症研究所は、解析されたウイルスの遺伝子情報を適切に管理し、流行状況の把握や感染伝播の制御等に役立てることとする。」と書いております。
 「第三 発生の予防及びまん延の防止」です。これまで一では、旧のところで「平成十九年の流行の原因分析」としていたところを「五年間実施した時限措置の終了と総括」とタイトルを変えております。
 6頁です。「平成十九年に、十代及び二十代の年齢層を中心として麻しんが流行した主な原因は、当該年齢層の者が、麻しんの予防接種を一回も受けていなかった、若しくは一回は受けたものの免疫が獲得できなかった又は減衰した者が一定程度いたからであると考えられている。このため、国は、平成二十年度からの五年間を麻しんの排除のための対策期間と定め、定期の予防接種の対象者に、中学一年生と高校三年生に相当する年齢の者(麻しん及び風しんに既に罹患したことが確実な者及びそれぞれの予防接種を二回接種した者を除く。)を時限的に追加する措置(以下「時限措置」という。)を実施した。その結果、麻しんの予防接種を二回接種した者が大きく増加し、当該年齢層の麻しん発生数の大幅な減少と大規模な集団発生の消失、抗体保有率の上昇を認めたことから、時限措置を行った当初の目的はほぼ達成することができたと考えられる。一定程度の未接種の者の存在が課題として残るが、時限措置を延長することで得られる効果が限定的と予想されることや、海外からの麻しんの輸入例が中心となりつつある現状及び特定の年齢層に限らず全ての年齢層に感受性者が薄く広く存在することが示唆されている現状等を踏まえ、時限措置は当初の予定どおり平成二十四年度をもって終了し、今後は、麻しん患者が一例でも発生した場合に、積極的疫学調査の実施や、周囲の感受性者に対して予防接種を推奨することも含めた対応を強化することが必要である。」と記載しております。
 「二 基本的考え方」です。「感染力が非常に強い麻しんの対策として、最も有効なのは、その発生の予防である。そのため、定期の予防接種により九十五%以上の対象者が二回の接種を完了することが重要であり、また、これまで、未接種の者や一回しか接種していない者に対しては、引き続き、幅広く麻しんの性質等を伝え、必要に応じ、予防接種を受けるよう働きかけることが必要である。」と書いています。
 三の記載については、3期、4期のところが削除されています。2の8頁記載部分は、「学校保健法」という法律の名称が変わったことによる変更です。その他、「必要回数である二回」と明記している部分です。3については、「厚生労働省は、文部科学省に協力を求め、就学時健診の機会を利用し、定期の予防接種の対象者の罹患歴及び予防接種歴を、原則として母子健康手帳や予防接種済証をもって確認し、未罹患であり、かつ、麻しんの予防接種を必要回数である二回接種していない者に接種勧奨を行うものとする。」と変更しています。
 4ですが、3期、4期の終了に伴う変更になります。
 10頁です。「四 予防接種法に基づかない予防接種の推奨」です。2、3は先ほどと同様の修正、4に追加記載をしている項目があります。これは旧の第三の五の2の記載が含まれているものになり、「厚生労働省は、文部科学省に協力を求め、母子保健法第十二条第一項第二号に規定する健康診査及び学校保健安全法第十三条第一項に規定する児童生徒等の健康診断及び第十五条一項に規定する職員の健康診断等の機会を利用して、学校の児童生徒等や職員の罹患歴及び予防接種歴の確認並びに未罹患であり、かつ、麻しんの予防接種を必要回数である二回接種していない者に対する予防接種を推奨し、学校の管理者に対し、推奨を依頼するものとする。」と修正しています。
 11頁です。5が新設として書いているものになります。「国は、国立感染症研究所において、麻しん患者が一例でも発生した場合に、周囲の感受性者に対して予防接種を推奨することも含めた対応について検討し、具体的な実施方法等を示した手引きの作成を行うものとする。また、国立感染症研究所は、都道府県等から要請があった場合に、適宜技術的支援を行うものとする。」としています。
 その下の五ですが、「(第三 四 4に記載)」とありますが、先ほど申しましたように旧の五の2が移動しているものとなります。
 12頁です。「4 厚生労働省は、本省、国立感染症研究所又は検疫所のホームページ等を通じ、国内外の麻しんの発生状況や予防接種についての情報提供を行うとともに、国土交通省に協力を求め、旅行会社等に対し、外国へ渡航する者に、これらの情報提供を行うよう依頼するものとする。」と現状に即した記載に修正しております。
 14頁です。旧の「三 情報管理における研究開発の推進」については、新の第七の一に記載しています。
 15頁の「第六 国際的な連携」の「二 国際機関で定める目標の設定」において、現状に即した修正としています。「世界保健機関においては、二回の予防接種において、それぞれの接種率が九十五%以上となることの達成を目標に掲げているほか、平成二十四年(二千十二年)には西太平洋地域から麻しんの排除を達成することを目標に掲げ各国に対策の実施を求めており、同機関において、麻しんの排除の認定作業が実施されている。」という形に変えています。
 「三 国際機関への協力」は、現在、我が国の現状からは麻しんの輸入国になったであろうことから、これまでの対策を踏まえ、国際貢献できることから追加記載しているものです。16頁ですが、「国際機関と協力し、麻しんの流行国の麻しん対策を推進することは、国際保健水準の向上に貢献するのみならず、海外で感染し、国内で発症する患者の発生を予防することにも寄与する。そのため、国は、世界保健機関等と連携しながら、国際的な麻しん対策の取組に積極的に関与する必要がある。」と新設しております。
 「第七 評価及び推進体制と普及啓発の充実」と名前を変更しております。一の最後ですが、旧で当たる第五の三を移して記載しているものになりますが、「また、市町村等は、予防接種台帳のデータ管理のあり方について、個人情報保護の観点を考慮しつつ、電子媒体での管理を積極的に検討する。」となっています。
 二は、「麻しん対策推進会議及び排除認定会議の設置」というタイトルに変更しているものです。「国は、平成十九年度より、感染症の専門家、医療関係者、保護者、地方公共団体の担当者、ワクチン製造業者及び学校関係者からなる『麻しん対策推進会議』を設置している。麻しん対策推進会議は、毎年度、本指針に定める施策の実施状況に関する評価を行うとともに、その結果を公表し、必要に応じて当該施策の見直しについて提言を行うこととする。また、国は、麻しんが排除・維持されているかを判定し、世界保健機関に報告する排除認定会議も設置することとする。」と記載しています。
 17頁の「三 都道府県等における麻しん対策の会議とアドバイザー制度の設置」という形で、タイトルの変更がなされています。下線部ですが、「また、都道府県等は、必要に応じ、医師会等の関係団体と連携して、麻しんの診断等に関する助言を行うアドバイザー制度の設置を検討する。」と追記しています。2については「生徒」を取ったものになっています。
 四は、これまでの修正と同様、「学校保健安全法第二十条」と修正しております。
 18頁の「五 普及啓発の充実」です。これは新設としておりますが、「麻しん対策に関する普及啓発については、麻しんに関する正しい知識に加え、医療機関受診の際の検査や積極的疫学調査への協力の必要性等を周知することが重要である。厚生労働省は、文部科学省や報道機関等の関係機関との連携を強化し、国民に対し、麻しんとその予防に関する適切な情報提供を行うよう努めるものとする。」という形で終わっているものです。新旧対照表については以上です。
 資料1-3については、厚生労働省案になりまして、内容的には、先ほど説明した資料1-2の麻しんに関する小委員会案とほぼ同様ですが、一部に若干の文言の修正がある程度です。資料1-3について、感染症部会でご審議いただければと存じます。以上で説明を終わります。
○渡邉部会長 麻しんに関する小委員会の座長をやられました岡部先生、追加発言があればお願いします。
○岡部委員 小委員会の委員長をお引き受けしていた岡部です。補足することは特にないのですが、5年前に特定疾患予防指針が議論されたときは、本当に麻しんが我が国でエリミネーションまでできるかどうかと、いろいろなところから質問等々がきたわけです。確かにこの5年間、簡単にできることではなくて、いろいろなことがありましたが、臨床部門、公衆衛生、研究部門等々、いろいろな分野の協力をいただいて、かなりの良い線を行ったという言い方ができるのではないかと思います。現場でのご協力が各方面からいただけたということがいちばん大きいと思うのですが、さらには国が本気を出してやり始めたということが強いきっかけになったということは言えると思います。ただ、今後これを維持しなくてはいけないということと、やはりかなりの課題はあるので、それを解決しながらきちんと維持し、さらに本格的なエリミネーションに向けていかなくてはいけないと思うのです。これについても、数が少なくなってくると、だんだんだんだん関心が薄れていきますから、それにめげずにきちんとやっていくことが委員会、あるいは現場、国にとって必要なことであろうということが委員会でも議論されました。
 数が少なくなってくると、どうしても丁寧な診断が必要なので、それについても指針に盛り込まれていますが、それとともに、数が少なくなるとどうしても一人ひとりの特定であったり、注意であったりするのですが、そのときにはやはり個人情報に対する注意点はそれぞれが気にしておかなくてはいけないことだろうと思います。かつては輸出国と言われていたのが、エリミネーションにほぼ近くなり、逆に輸入国になってきたために、この委員会でも国内のことだけではなくて、今度は逆に国外に対してコントリビューションするということも強く打ち出した、そういったことが委員会で議論されました。本当に各方面の努力、ご協力に対して、厚く御礼申し上げたいと思います。ありがとうございました。
○渡邉部会長 関係者の皆さんのご協力により、資料1に示されたように麻しんの患者数が激減してきたということと、土着株がほとんどなくなって、輸入株に置き換わってきているという現状を踏まえて、先ほど説明がありましたような予防指針の改定案が示されたわけです。
 変更点で大きなところは、1つは2頁の遺伝子検査の導入と、エリミネーション達成を平成27年に設定したということです。4頁のIgM抗体測定を実施するということと、地方衛生研究所でウイルスの遺伝子による検査を行う。もう1つ大きいのは、麻しんの届出の取下げをできるようにするということです。5頁の感染経路の把握のためのネットワークの構築ということです。ウイルスの遺伝子の解析を行って、先ほどの土着株かどうかを見わつけるということです。6頁の時限措置として行われた第3期、第4期をやめるわけですが、その代わりに積極的疫学調査の実施等で、ほかの面からの強化を行うということです。あとは95%の接種率を維持し、2回接種を維持させるようにするということと、8頁の母子手帳や予防接種済証などを利用して、きちんと自分が2回接種しているかということを把握していただくということです。10頁の文部科学省との協力を行うということが前面に出されているということと、11頁に感染研の義務というか、感染研の関与を明確にさせるということです。12頁に、感染研のホームページ等に情報を出させるということです。15頁の麻しん排除の認定作業を行うようにするということと、国際的な連携ということで、世界保健機関等への協力を強化するということと、啓発等、予防接種台帳のデータの管理及び、麻しんの対策会議等、排除認定会議を設置する。地方においてはアドバイザー制度の設置を行うということ。最後、18頁に麻しんの啓発の強化を行うというところが、いままでのものと大きな違いかと思うのです。まず、ご質問またはコメント等がありましたら、委員の先生方から全体を通じてお願いします。
○皆川委員 大きな話ではないのですが、資料1-2の15頁の「第六 国際的な連携」の最後の行なのですが、「その目標の達成及び維持に向けて取り組むものとする。」の「及び維持」のところは新たに加わる文言だと思いますので、下線を入れていただくほうがよろしいかと思います。
○渡邉部会長 資料1-2の15頁の二の、いまのところに下線を入れるということ、ありがとうございます。ほかにありますか。
○小森委員 私も小委員会の委員でしたので、小委員会の報告については承知をしておりますが、事務局の説明によりますと、一部を改正する案等については若干の修正があるということをお聞きしています。私も事前にいただいて一生懸命見たのですが、よくわからなかったのです。したがって、おおよそ問題はないのだと思うのですが、若干の修正をされたところだけ指摘をして教えていただきたいと思います。
○結核感染症課課長補佐(梅木) 資料1-3の1頁になりますが、上段が改正案で、下が現行のものになります。改正案の1段落目の真ん中付近「鑑みると」が漢字になります。また、最後のほうの下線部の中に、「こうした取組の結果、同年には一万千十三件あった麻しんの報告数も」というところで、「同年」が追加されていることになります。
 2頁の下線部の真ん中付近、「世界保健機関は、平成二十四年九月に、西太平洋地域の三十七の国及び地域のうち、我が国を含め既に」の「既に」が漢字になっているものです。次の段落「本指針はこのような状況を受け」、「麻しん排除の認定を受け」で線が追加されて、あくまで「麻しんの排除を達成し」が下線部が追加されているものになります。
 3頁です。「三 麻しんの届出基準」ですが、これも下線が追加されているものです。「四 日本医師会との協力」ですが、「三 麻しんの届出基準」が少し空間が空いているという違いです。こういった形で、法令的な修正が加わっているということでよろしいでしょうか。
○小森委員 わかりました。つまり、内容等については、言葉を少しでも変えることによって趣旨が変わりますので、てにをはであっても最終ですから、確認をしたかったということです。ありがとうございました。
○北村委員 あまり本質的でないので、無視してくださっても構いませんが、11頁に「5 国は、国立感染症研究所において麻しん患者が一例でも発生した場合に」という件があるのですが、「国立感染症研究所において」の位置が、ちょっと違うのではないかと。これは本質ではありません。「国立感染症研究所において麻しん患者が一例でも発生した場合に」という読取りができてしまうので。
○渡邉部会長 それは言葉の並びですね。
○北村委員 そうです。ですから、「国は、麻しん患者が一例でも発生した場合に、国立感染症研究所において、周囲の感受性者に対して」ではないでしょうか。
○渡邉部会長 そうですね。国語の問題になる。順番を変えていただくと、よりわかりやすくなるということだと思います。事務局、よろしいでしょうか。
○廣田委員 一旦、届出をして、そのあと届出を取り下げるということを取り決められました。ほかの感染症では、届出を取り下げるというシステムがないばかりに、今度は届出が遅れて対策が滞るということが起こっておりますので、私は、この一旦取り下げるという形がとられることは大変効果を発揮するだろうと思います。ちなみに、例えばそういった届出の仕組みにすることによって、従来の届出よりどのぐらい増えるかとか、あるいはどのぐらい取り下げられるかといった大体の予測といいますか、そういったものはありますでしょうか。
○渡邉部会長 事務局、データとか何かありますか。
○結核感染症課課長補佐(難波江) 予測そのものはないわけですが、いまでもどのぐらい取り下げられたのかというのは把握するようにはしております。今日、そのデータを持ち合わせていないのですが、後日、先生にご報告いたしたいと思います。
○廣田委員 そう多いものではないとか、そういうところで結構ですから。
○結核感染症課課長補佐(難波江) はい、そういうことです。
○渡邉部会長 これはIgM等でやると、かなりクロスリアクティブなものがあるので、そこでいくつかほかの疾患との鑑別ができるというデータはあります。
○岡部委員 いまのは、WHOも否定例がどのぐらいだというのは一応求めていますので、特に検査診断を行ったときに陽性例だけではなくて、これだけのものはやったけれども陰性であったということを、きちんと記録しておいていただいて、それも法律に基づいたものではないけれども、数としてきっちりしておいてほしいということも委員会の中で検討されました。
○前田委員 16頁に接種率等の「電子媒体での管理を積極的に」という話があるのですが、市町村ではこうしたものは今は住民基本台帳とかなり連動してやる形になっていて、なかなか簡単な話ではないのです。そうなりますと、これを単に市町村に頑張ってくださいという話なのか、例えば技術的にこういう方法でということをお示しいただけるのか、あるいはそれをやりますと、住基にアプリケーションを付けたりとか、予算的にもかなりかかわってきますので、そういうところの支援が今後あるのか。その辺については、いかがでしょうか。
○渡邉部会長 いかがでしょうか。予防接種台帳の管理、また、そこに資金的な援助も含めて、地方自治体に対して何か取組みが国として行われるのか、その辺はいかがでしょうか。
○結核感染症課課長補佐(難波江) 実は電子媒体で進めるというのは、14頁の「三 情報管理における研究開発の推進」の中で、現行の指針ですが、「予防接種歴に関する情報を提供できるようなソフトウェアを、国立感染症研究所において開発し、提供し、及びその利用を促すものとする。」と。前回の指針でこのように記載されていて、実際にいま開発されて、自治体に普及されております。希望のある自治体にはそのような普及をし、物をお配りして、サポートなどを行ってきたところです。
○山田委員 新人で、いままでの流れがよくわからないので、とんちんかんな質問かもしれないのですが、遺伝子検査を行うということですが、その検査法の標準化とか、バリデーションなどというのは、やはりコンタミネーションの問題とか、センシティビティの問題などがあると思うのですが、その辺はどのようになっているのか教えていただければと。
○渡邉部会長 事務局、誰か答えていただけますか。
○結核感染症課課長補佐(難波江) いま厚生科学研究班で、そのような麻しんの診断技術の向上をするような取組みを行ってきており、今年度で終了ですが、これは重要な課題と認識しております。
○渡邉部会長 いま感染研と地研で、その辺のところを研究班でやって、それなりの結果は出ていると思いますけれども。
○山田委員 わかりました。地衛研以外の民間の検査所とか、そういうところはインボルブされないですか。
○渡邉部会長 これはいかがですか。
○結核感染症課課長補佐(難波江) もし認識が間違っていれば訂正いただきたいのですが、基本的にPCRの検査については衛研でやられているものと考えております。ただ、IgM検査については民間でやられていて、その辺りバリデーションのようなことを研究班でもやっていただいて、その結果などは示して、診断の場合、特にIgM擬陽性が出るということで、添付文書のIgMの値で陽性というのではなくて、具体的には8以上とか、その辺りがかなり濃厚であるというガイドラインを感染研で作っていただいて、これを臨床現場にお配りするようにしております。
○渡邉部会長 研究班の委員の皆川先生、何かコメントはありますか。
○皆川委員 いまの事務局の発言で結構だと思います。
○渡邉部会長 いまの件、山田先生よろしいですか。
○山田委員 はい。
○蒔田委員 届出の基準で、今回、血清IgMの抗体検査が示されているのですが、実際、発生の対象年齢としては、資料1-4にあるように低年齢のお子さんが多い中で、これは義務として報告するものなのか、それとも保護者の同意があった方のみの採血となっていくのかというところを、ちょっと示していただければと思います。
○渡邉部会長 報告が。
○蒔田委員 そうですね。届出で血清IgMの抗体検査の結果が必要という形になってくるようなのですが、アレルギー検査なども含めて、いま保護者の方たちも採血自体に同意をしないケースがかかわっていると見受けられるので、これに関しては義務なのか、ただ、保護者同意が取れた方のみなのかというところをお示しいただければと思います。
○渡邉部会長 血清を採るのは、親または患者の同意が必要なのか。その辺に関して、いかがですか。
○結核感染症課課長補佐(難波江) ご指摘の点、小委員会でもご議論いただいた点です。いま、臨床診断例が2割ぐらいありまして、これは麻しんでない可能性も十分あるので、しっかり検査をやっていただく必要があるだろうということです。ただし、検査の検体採取が非常に大変なので、検査が必要なのだということを、国としても積極的に国民に呼びかけていく必要があるのではないか、というご議論をいただいております。そういうことも踏まえて、新旧対照表の18頁のいちばん下の「普及啓発の充実」に「麻しん対策に関する普及啓発については、麻しんに関する正しい知識に加え、医療機関受診の際の検査や積極的疫学調査への協力の必要性等」ということで、今回の指針では基本的にすべて検査例と、検査をやっていただく必要があると。ただ、同意がないのに無理矢理できるかといったら、それは難しいのだとは思います。そこはご理解いただいて協力いただくということになります。
○渡邉部会長 よろしいでしょうか。
○蒔田委員 ありがとうございました。
○賀来委員 今回、臨床症状、血清IgM測定、それから遺伝子診断を加えて総合的に対応するというのは確実に麻しんを診断するという意味では、非常に素晴らしい小委員会の先生方の判断だと思われます。届出を取り下げることもあるということで、それも含めてなのですが、そういった場合に17頁のアドバイザー、いわゆる地域において専門的なアドバイザーを置いて、そういった診断のサポートを行うということで理解してよろしいでしょうか。

○岡部委員 委員会でも随分議論されたのですが、結局、疑わしい診断のときに保健所の担当の方と診断をされた臨床医との直接のやり取りは、かなり問題点ができるところがあって、患者を実際に診ていないというのもあります。ただ、先般、地域における感染症にかかわっている方、あるいは小児科の先生方の複数の意見で、これはどうも麻疹ではないと客観的に見られるならば、そのような判断ができるであろうというように、個人個人の判断ではなくて、あるグループの中での判断を尊重すれば、より正しい診断にいくのではないか、あるいは定義に一致するのではないかということで決められたことです。
○賀来委員 現在、地域において感染症診療コンサルテーションを実践しておりますが、このような診断に関する判断やご質問もかなりあるということも踏まえて、こういったことを今回取り上げるというのは、非常に素晴らしいことであると思います。
○磯部委員 資料1-2の6頁の「第三 発生の予防及びまん延の防止」の「基本的考え方」で、旧指針であった「強く一度発生するとそのまん延の防止が非常に困難である」という部分を削除したことの意味がどこにあるのかということを伺いたいと思いました。というのも、前書きではやはり麻しんについて、感染力と重篤性と肩を並べる形で、流行した場合に社会に与える影響といったことは既に述べられているわけですし、そもそも法の趣旨としてもまん延防止、公衆衛生といったことはあるわけです。そういったことも含めて、7頁にかけて書いてある麻しんの性質を幅広く伝えるということが必要なのではないかと思ったものですから、あえて落としたとするなら何か意味があるのかということを伺いたいと思います。
○渡邉部会長 これは事務局、よろしいですか。
○結核感染症課課長補佐(難波江) 現行の指針にある「一度発生するとそのまん延の防止が非常に困難である」と、これは事実かと思いますが、今回の指針のポイントの1つが、一例でも出れば積極的疫学調査等を行って、迅速に対応するということで、非常に困難ではあるけれども、やはりもうそれをやるステージに来ているのではないかという状況です。ここに「非常に困難である」ということで、逆に、なのでやらないみたいな文脈にいくおそれもありましたので、非常に困難であるけれどもやるという意味で、あえてこちらを削除した次第です。
○岡部委員 補足みたいですが、委員会の議論であったのは、ハードイミュニティなどが低いときには非常に困難であると。しかし、免疫がちゃんと保持されて、なおかつ積極的な疫学調査と対応をやるならば、前に書かれているほど困難なことではなく、フィージビリティとしてはあるという意味で、この部分が削除されています。
○渡邉部会長 排除するのだという意気込みが出ているのだと思います。ほかにいかがですか。
○白阪委員 接種の目標値を95%と数字を書き込んでいただいているのは非常に素晴らしいと思います。これはWHOもそう言っておられるからということと、資料1-4の2頁を見ると、1期については95%行きそうなのですが、2期については、これを95%にしていただく上で、いろいろな今後の対策等、また今回やっていくと理解しておりますが、それでよろしいでしょうか。
○結核感染症課課長補佐(難波江) そのとおりです。1期は95%を超えていますが、2期は平成23年で92.8%と、もう一歩のところです。委員会の中でもご議論いただいたのですが、重要なポイントは就学時健診。就学時健診のときに2期目を打たれていない方がいれば、そこで勧奨いただくと。実際に研究班で調査いただいたところでは、75%ぐらいの自治体では就学時健診での接種勧奨をやられているというところですので、あと4分の1の所に実際にやっていただければ、何とか95%を達成できるのではないかと考えております。
○山田委員 先ほどの、一例でも出たということなのですが、その一例でも出たというものは確定されたものなのか、それとも臨床診断なのか、そこにギャップがあると対策に時間がとられる可能性もあると思うのですが、いかがでしょうか。
○岡部委員 かなり疑わしい症例という意味で、先ほどのように取下げをどうするという例まで一度動いてしまうと、かえって大変になるので、そこは現場の判断があると思いますが、疑わしい症例が出た場合にはやはり対応を。対応のほうが先に来るということだと思います。
○渡邉部会長 ほかにありますか。大体議論は出尽くしたかと思います。現在ほとんど土着株がなくなって、日本では輸入株が占めているということで、あと3年の期間、平成27年までには日本もエリミネーションを達成して、世界に向けて宣言をするのだという意気込みが、この予防指針には表れていると思います。この感染症部会においては、先ほど少し文面の修正、入れ替えるとか、線を引くとか、そういう細かいところは訂正していただいて、これで了承していただくということでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○渡邉部会長 ありがとうございます。皆さん異議がないということですので、当部会としてはこの案を了承ということで処理いたします。
 続きまして、議題(2)の「ヒブ、肺炎球菌ワクチンの接種に伴うサーベイランスの変更等について」、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○情報管理室長 資料2-1について説明させていただきます。表紙にある1、2、3で、ヒブ・肺炎球菌の接種に伴うサーベイランスの変更の案、表紙の4で、髄膜炎菌性髄膜炎の今後のサーベイランスの案を説明させていただきます。
 1頁で概要をまとめてみました。1つ目、感染症法に基づく患者サーベイランスでは、予防接種法の対象となっている疾病について、その発生動向等を継続的に把握し、予防接種の有効性の評価に資する情報を得るために各疾病ごとに届出を求めています。
 一方、平成22年度より新たにヒブ、小児用肺炎球菌ワクチンについて基金事業で接種が実施されており、今般、予防接種法の対象疾病として追加が検討されているところです。
 しかしながら、現行の感染症法に基づく患者サーベイランスでは、種々の細菌による髄膜炎(細菌性髄膜炎)に対する届出を全国の基幹定点に求めているのみであり、今後はヘモフィルスインフルエンザ菌及び肺炎球菌による疾病それぞれについて、個別にサーベイランスを実施する必要があると考えられます。
 これを踏まえまして、どのような患者サーベイランスを実施するべきか、これまで国立感染症研究所及び厚生労働科学研究費補助金による研究事業、これは後ほどご説明いただきます庵原先生たちの事業ですが、検討してきたところ、今後、1点目、ヘモフィルスインフルエンザ菌及び肺炎球菌による疾病のうち特に重篤な、侵襲性の感染症を対象疾病とすること(侵襲性とは、ここでは病原体が通常みられない血液又は髄液に認められるものです)、それから2点目、全国の医療機関に、この2つの侵襲性の疾病の患者の発生を届出いただくよう、5類全数疾患に位置づけることとしてはいかがでしょうか。
 なお、ヘモフィルスインフルエンザ菌及び肺炎球菌による侵襲性の感染者数は、ワクチン導入以降減少が、研究班の結果でも確認されております。したがって、定期接種化に移行する前に患者の発生状況や病原体の血清型等を調査する新たな体制を構築することが望ましいと考えられ、この実施時期については来年の4月を目途としてはいかがかというところです。
 最後のポツですが、これはヒブ・肺炎球菌の話とは違いますが、ヘモフィルスインフルエンザ菌と肺炎球菌の2つの侵襲性感染症の導入を踏まえて、髄膜炎菌による感染症についても髄膜炎のみならず、敗血症も含めて侵襲性髄膜炎菌感染症として報告を依頼することとしてはいかがかということ。これについて資料2頁以降で、ご説明をさせていただきます。
 2頁です。1.「細菌性髄膜炎として報告を求めている現状と課題」です。まず、現行のサーベイランス、先ほど申しましたように、ヘモフィルスインフルエンザ菌と肺炎球菌を含む細菌による髄膜炎患者数は、「細菌性髄膜炎」として定点で、5類疾患として把握を行っています。なお、ここからは先ほどの髄膜炎菌性の髄膜炎は除かれております。
 2つ目の□のところで、併せて、国が行うサーベイランスと平行しまして、研究班で特定(10地域)の医療機関にご協力いただき、小児におけるヘモフィルスインフルエンザ菌感染症と肺炎球菌感染症の発生動向を調査し、ワクチンの効果を検証しています。
 「サーベイランスにおける課題」。国が行うサーベイランスにおける課題としては、今後、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンが定期接種化されていくとすれば、その発生動向を正確に把握していく必要があること。しかしながら、現行では、ヘモフィルスインフルエンザ菌・肺炎球菌の感染症例は、細菌性髄膜炎として報告されるため、両病原体による患者の発生動向が明らかではないこと、それから、ワクチン動入後、ヘモフィルスインフルエンザ菌感染症・肺炎球菌感染症の患者数が減少していると推定され、定点把握のみでは両感染症の傾向が掴みにくくなることが想定されること、それから、ワクチン導入後、流行する血清型の変化を把握する必要があること、これらのことから、現在の疾病分類及び定点での届出では、発生動向の十分な把握が困難と考えられます。
 3頁です。「ヘモフィルスインフルエンザ菌感染症及び肺炎球菌感染症の患者発生動向把握に対応したサーベイランス」として、現行のサーベイランス。疾病名は細菌性髄膜炎ということで、基幹定点医療機関で届出いただいているものを、届出基準の変更として、下の四角ですが、侵襲性ヘモフィルスインフルエンザ菌感染症及び侵襲性肺炎球菌感染症。※の1つ目として下に書いていますが、一般に、本来無菌的な部位から菌が検出された感染症を「侵襲性」としておりますが、ここでは「侵襲性感染症」のうち、髄液又は血液から菌が検出された場合に限定ということで、届出対象の医療機関を、全ての医療機関で、必要な検査所見としては病原体の検出ということでいかがかと。
 それから、※2ですが、細菌性髄膜炎については、この場合、髄膜炎菌、ヘモフィルスインフルエンザ菌、肺炎球菌を原因として同定された場合を除きまして、引き続き基幹定点医療機関でご報告いただくことでいかがかと考えた次第です。
 「その他のサーベイランスの充実」ということも記載させていただきましたが、これらと併せまして、抗体保有状況の調査を「感染症流行予測調査事業」で、これは結核感染症課の予算事業ですが、恒常的に行えるように検討しているところです。また、併せて原因血清型の把握も、現在研究事業で調査いただいていますが、今後「感染症流行予測調査事業」で感染源調査対象として恒常的な実施ができるかということを、いま検討しているところです。
 4頁の「サーベイランスの変更案」です。以上のことを取りまとめますと、今年度まで、細菌性髄膜炎を基幹定点把握で行っていたものを、ヒブ・肺炎球菌の全数化、残りの細菌性髄膜炎を捕捉ということで、来年度からは侵襲性ヘモフィルスインフルエンザ菌感染症と侵襲性肺炎球菌感染症は全数把握として、細菌性髄膜炎(上記2疾患、髄膜炎菌性髄膜炎を除いたもの)を、引き続き基幹定点把握をいただくと。これについては、感染症法施行規則第6条の改正、省令改正というところでの対応になります。まずは、以上のところが、ヒブ・肺炎球菌ワクチンの定期接種化を踏まえた概要ということです。
 5頁目以降は、髄膜炎菌性髄膜炎としてのサーベイランスについてです。現行のサーベイランスでは5類疾患の全数届出対象疾患として、「髄膜炎菌性髄膜炎」として届出をいただいております。このサーベイランスにおける課題として、※1ですが、昨年、平成23年4月から5月にかけて、ある地域の高校の寮生活で、集団的な髄膜炎菌の感染症の発生がありました。4例が発生し、うち1例は死亡されるという事案で、すべてB群の髄膜炎菌でした。この確定した4例のうち、髄膜炎2例、敗血症が2例で、このサーベイランスにおける課題の□の1つ目として、平成23年に発生した宮崎県での集団発生では、髄膜炎以外の症状を呈する患者の情報も、危険性を評価するに当たって重大。しかしながら、現行では髄膜炎菌による髄膜炎のみが届出対象となっていまして、敗血症などの必要な疾病が届出されていない現状がございます。したがいまして、現行の疾病名では必要な情報を十分に収集、評価することが困難と考えられます。
 ということで、6頁ですが、「髄膜炎菌感染症の患者発生動向把握に対応したサーベイランス」として、現行の疾病名の「髄膜炎菌性髄膜炎」というものを、届出基準の変更として「侵襲性髄膜炎菌感染症」と改めて、髄膜炎だけではなく、敗血症も含めて届出いただけるように変更を考えた次第です。
 「その他のサーベイランスの充実」としては、先ほど紹介した4例の集団発生の確定例、ここでも積極的疫学調査を実施しましたが、患者の発生時には積極的疫学調査を実施し、患者由来菌株等について、原因血清型の判別を行っていきたいと。以上のように考えております。
 7頁以降については、参考資料としてまとめさせていただいております。「定期接種対象疾患に対するサーベイランスについて」。8頁の疾病分類の表と見比べていただければと思います。感染症類型を、感染症法では1類から5類等に分類いたしまして、それぞれに届出を、医師又は医療機関からいただいているところです。網掛けのものが、現在、定期接種対象疾患に該当する部分です。
 7頁の患者発生サーベイランスンについて、新たな届出対象として、侵襲性ヘモフィルスインフルエンザ菌感染症・侵襲性肺炎球菌感染症の追加を検討。なお、子宮頸がんについては、感染症としての届出には馴染まないため、人口動態統計やがん登録を活用するということでいかがかと。
 それから、「感染症流行予測調査事業」については、調査対象に、抗体を調べる感受性調査、病原体を調べる感染源調査に、ヒブ・肺炎球菌・HPVの追加の検討をしているところです。この下のほうは、予算事業となっています。
 9頁は、先ほど「定点」と申したところなのですが、定点について紹介させていただいた資料です。これまで細菌性髄膜炎は、ヒブ・肺炎球菌を含むものを、基幹定点として全国500カ所で調査を行っております。
 10頁、11頁は、「現状の細菌性髄膜炎の届出基準」と「現状の髄膜炎菌性髄膜炎の届出基準」を紹介したものです。以上です。
○渡邉部会長 続いて、同課題に関して研究班の班長で、いままで調査していらっしゃいます庵原先生から、資料2-2に基づいて説明をお願いいたします。
○庵原参考人 国立病院機構三重病院の庵原です。資料2-2について説明いたします。1頁ですが、そこの四角の枠で囲んである1、2、3、4について、いまからお話をしたいと思います。
 まず、インフルエンザ菌と肺炎球菌には多数の血清型があります。特に莢膜を持つ細菌は侵襲性感染症を起こしやすいということと、莢膜を持つことで好中球の貪食から免れていることが特徴です。
 2頁です。要するに、莢膜を持つ細菌に対してどのようなメカニズムが感染防御に働いているかということですが、そこに絵でお示ししましたのは、主に肺炎球菌のメカニズムです。莢膜に対する抗体ができて、そこに補体が付くことで、好中球に貪食されるようになる。これをオプソニン化と呼びます。もう1つ、インフルエンザ菌b型とか髄膜炎菌などは、抗体と補体が付くということで、菌が溶解するという、いわゆる補体溶菌というメカニズムもあります。ですから、このようなメカニズムで菌が体から排除されていくということです。いずれのメカニズムにしましても、抗体と補体という2つが存在することが大事になります。
 3頁です。肺炎球菌ないしインフルエンザ菌bもそうなのですが、どういう形で菌血症とか細菌性髄膜炎、すなわち侵襲性感染症を起こすかを模式的に表したものです。中耳炎といった上気道で増えたのが血液の中に入って、菌血症、細菌性髄膜炎を起こしてくる、ないしは一部肺炎を起こして、肺炎から菌血症を起こしてくるということが起こっております。
 4頁です。これは結核研究所のデータ、研究班のデータ、感染研のデータを基にして、大体0から4歳ぐらい、5歳未満児の年間の推定患者数です。結核に関しては全数サーベイをされた数字です。このような患者数があるということです。
 一般的にサーベイランスの規模というのは、患者数の規模に応じて調査する区域が大体推定されてくると。要するに、人口どのくらいでサーベイをやればいいかということだと思います。結果、このように減ってくると全国サーベイが要るようだろうと。ヒブ・肺炎球菌に関しては、ワクチンの普及によってこのぐらいの数字に減るだろうということが予測されますので、全国サーベイが要るのではないかというのが、今回の提案かと思います。
 5頁です。これはワクチンの視点から見た抗体産生についてです。現在、肺炎球菌とかインフルエンザ菌bの莢膜を持っているものは、その莢膜だけを接種しましても抗体刺激が弱くて、特に問題なのは4歳未満児は抗体産生力が弱いですから、刺激が弱いところに、さらに産生力が弱いという二重の問題点がありまして、十分な抗体を作ることができない。ただ、その下に模式的に書いていますのは、インフルエンザ菌bの現在使っているワクチンですが、この形で接種するとT細胞というのが働いて、強い抗体が出てくると。ただ、年齢が小さいと、繰り返し刺激をする必要がありますし、1歳を超えると1回のワクチンでもいいという、年齢によった抗体産生力の成熟がそれに伴ってくるという形になっています。
 6頁は、現在使われている7価の肺炎球菌の、結合型肺炎球菌ワクチンの作り方というか、いずれも莢膜を採ってきて、それにキャリアたん白と言いまして、結合型にしているという、要するに、インフルエンザ菌bと肺炎球菌は同じ作り方のワクチンであるということを示しています。
 7頁です。諸外国はそこに示してありますように、1980年代、1990年代に、インフルエンザ菌bワクチンの定期接種を開始しています。そうしますと、インフルエンザ菌bによる髄膜炎の患者発症率が約90%以上、多い所ではアイスランドのように100%減少したということと、さらにそこの鼻咽頭コロニー率というのは、インフルエンザ菌bの接種率が高まりますと、鼻咽頭でインフルエンザ菌bを持っている子どもの割合が、ほぼゼロに近付いていくと。フィンランドのように、インフルエンザ菌bを排除宣言したという所も出てきています。
 いちばん下に「日本」と書いていますのが、2008年から補助事業が始まって、2011年の段階では57%減っていると。これは現在の研究班のデータで、今年はもう少し下がることが期待されているということです。
 8頁はアメリカのデータですが、肺炎球菌ワクチンを使うことによって患者数はきれいに減っているのですが、2002年のところから、「全血清型」と書いてありますが、肺炎球菌は90種類以上ありまして、現在使っているのは7価と言いまして、大体75%カバーできるところです。Allというのは、ワクチンに含まれていないものを含んでいまして、2002年以後はほぼ横ばいになっているという。要するに、7価では抑えきれないものがまだ残っているということです。国によっては、これが少し上向きになっている国もあります。そこで一部の国では、7価からもう1つ数の多い菌に変えていくということです。
 ただ、9頁を見ていただきますと、肺炎球菌の集団免疫効果というか、7価のカバーされる肺炎球菌の数が5歳未満で発症率が94%減少しますと、それに伴って、高齢者の肺炎球菌感染症も65%減ってくると。これが、いわゆるワクチンによる集団免疫効果と言われているものです。ですから、肺炎球菌ワクチンというのは小児だけではなくて、地域への肺炎球菌感染症にまで効果が出てくるということを表しているのが、9頁の図です。
 10頁は欧米諸国の現状をまとめたものです。インフルエンザ菌bの感染症は明らかに減っているということと、いま問題になっているのは、非莢膜型のインフルエンザ菌とかインフルエンザ菌b以外の莢膜を持ったタイプの侵襲性感染症が少しずつ増えている、ないしは、これが減らないということが証明されたということ。それから、肺炎球菌に関しても、7価でカバーされるものは減ってきているのですが、7価でカバーされないものが増えているということ。それから、日本でも現在一部では認められているのですが、ヒブではそうですが、結合型肺炎球菌のワクチンを接種したけれども、侵襲性肺炎球菌の感染症になったという症例が、少しずつ認められています。このようなことがありますので、やはりしっかりとしたサーベイランスが要るのではないかというのが、諸外国のデータから認められることです。
 11頁です。現在行っている研究班のデータをお示ししますが、これは昨年亡くなられました神谷先生が2007年から立ち上げられた研究班で、2011年に亡くなられましたので、私が引き継いだということで、通称「庵原班」となっていますが、敬意を表しまして、「庵原・神谷班」という名前でつないでいます。
 先ほど事務局から説明がありましたように、10道県というのは「対象地域」と書いている、北海道から沖縄までのこの10道県で、肺炎球菌とインフルエンザ菌、B群連鎖球菌の侵襲性感染症、いわゆる髄液、血液、関節液も含めて、無菌的と思われるところから菌が採れた場合、患者を報告するということです。それから、菌が採れた場合は、それを感染研の大西先生、柴山先生にお願いして、血清型と薬剤耐性を検査している。これがメインとなっている研究です。
 そのほかに、研究テーマの中にロタウイルスワクチンのサーベイランスもやっていますし、パピローマワクチンの登録制度に関してとか、ワクチンの皮下注と筋注の安全性に関する研究という、この4つがいま現在走っていますが、1番のところだけがマスコミ受けし、いろいろなところで取り上げられていまして、うちの研究班は1個しかしていないと思われていますが、いろいろなことをしているということです。
 ちなみに、12頁がそのデータです。2007年はレトロスペクティブと言いますか、10道県のキーとなっている先生方に、その県での報告をお願いしたという、いわゆるパッシブサーベイランスと言われている形なのですが、それをしますとそのような数字であったということです。2008年からアクティブサーベイランスと言いまして、患者が出れば随時報告するという、前向き調査に変わっています。前向き調査に変わりますと、2007年から2008年にかけて、疾患によって違うのですが、報告数が約2倍ほど増えています。それから、2008年に、肺炎球菌非髄膜炎が増えたのは、沖縄が参加することによって、数字が上がってきています。2008年から2010年にかけては、ずっとアクティブサーベイランスでほぼ数字が横ばいであるというか、このくらいの頻度であろうと判断しています。2010年から2011年の大きな違いは、2010年12月に促進事業が開始されて、2011年4月ぐらいから、多くの所では、広くワクチンが、ヒブのワクチンと肺炎球菌のワクチンが接種されるようになったということです。そこで患者報告数が、2010年から2011年にかけて、インフルエンザ菌関係が約50%、肺炎球菌が約20%減少しているということです。
 見ていただきたいところは、B群連鎖球菌のほうの報告数は全然変わっていないと。ですから、これは、サーベイランスはきちんと行われていて、しかも患者数が減っていることを表していると解釈しております。
 13頁の左側の図だけを見てほしいのですが、当院の耳鼻科で中耳炎を訴えて受診された方で、中耳腔から肺炎球菌の菌株数がどれだけ採れたかというか、分離されたかという数字です。2011年は1歳未満、1~2歳未満、2~3歳未満のところで、中耳炎を起こす子どもが減ったというか、中耳炎を起こした子どもから分離される肺炎球菌の菌株数がこれだけ減っているということで、侵襲性感染症以外にも、肺炎球菌のワクチンはこういった効果が認められてくるのではないかということです。ただ、これに関しても、もう少しサーベイを続けていかないとわからないかと思います。
 14頁です。感染研の和田先生、和田先生のあとはチャン先生が引き継がれて、研究班の班員から送られた肺炎球菌の血清型を調べていったものです。2007年から2010年というのは最初の研究班で、2010年から2011年、こういう形で3期に分けています。2011年4月以降が、多くの所で助成事業が始まって接種率が上がったということです。その結果、ワクチンのカバー率が以前は75%あったのが、ワクチンを接種することによって60%ぐらいに減ってきているということです。ですから、菌株も減ったし、ワクチンでカバーされる菌が減ってきたということを表しています。
 ただ問題なのは、「19A」とか「その他」というところがあるのですが、「その他」というのは15型血清型とか、そのほかの血清型で、こういったワクチンでカバーできないのが残っているというか、少しずつ増えているというか、このような現象が認められています。チャン先生は、「残っている」という表現で、相対的に割合は上がっているけれども、菌株数は変わらないと言っています。こういった現象が起こってきているということです。
 15頁からまとめに入っていきます。現在の庵原・神谷班が対象としているワクチン予防可能疾患というのは、ワクチンをすることによってすべての菌ないしはウイルスをカバーすることはできないというのが特徴のもので、そこにもありますように、子宮頸がん70%、ヒブは95%、肺炎球菌は75%、ロタの場合もすべてをカバーできないということで、きちんとしたサーベイランスが要るであろうと思います。いわゆるアクティブサーベイランス及び、こういうワクチンを受けたけれども発症したという人に対してのアプローチが要るだろうということです。
 16頁がそうです。現在、研究班で主に取り組んでいますのが、インフルエンザ菌bとか肺炎球菌のワクチンを1回受けた、2回受けた、きちんと3回受けた、4回受けたという人から、こういう感染した人がなぜ感染するかという要因を調べています。最初にも言いましたように、諸外国と同様に、インフルエンザ菌の場合はb型以外のものが少し見つかるようになっているということと、肺炎球菌も血清型でカバーできないものが見えてきているということです。
 17頁が、先ほどの事務局からの説明を補足する形になると思いますが、全数調査は必要だろうということです。ただ、これはパッシブですので、問題点は、報告数が少なめに報告される危険性があります。ですから、アクティブサーベイランスをやりながらパッシブサーベイランスをやって、アクティブサーベイランスの数字とパッシブサーベイランスの数字が一致すれば、アクティブサーベイランスは要らなくて、しっかりと全数報告のほうへ一本化できるのではないかと思います。ただ、先ほど言いましたように、ワクチンでカバーされない菌の感染というのが、絶えずインフルエンザ菌b、肺炎球菌、ロタもそうですが、こういったものに対するサーベイランスは残しておく必要があるのではないかということが1つです。それが17頁です。18頁は、先ほどと同じことを繰り返しますので省略します。
 ですから、パッシブもいるしアクティブも要って、最終的には、ワクチンを受けたけれども発症したという人のサポートというか、それに対する研究も必要だろうということがまとめです。以上です。
○渡邉部会長 ヒブと肺炎球菌ワクチンが導入され、今後、その接種率もどんどん向上していくことが予想されるわけです。その過程において、侵襲性疾患が減少しているのかどうか、その辺の国のデータをきちんと整えるということで、今回感染症法の中で、特にヒブ・肺炎球菌の侵襲性感染症に関してのサーベイランスの強化を行うということで、先ほど事務局からお話があったような形での提案があったわけです。そのデータを補完する意味で、いま庵原先生から研究班のデータの報告がありましたが、現実的にワクチンに含まれる血清型の菌の分離率は減ってきていると。ただ、今後そこに含まれていない血清型のものが増えてくる可能性もあるということを踏まえて、こういうサーベイランスの重要性は指摘されるところであると思います。
 先ほど事務局から提案のあった新しいサーベイランス体制について、ご質問、コメント等がありましたら、よろしくお願いいたします。
○岡部委員 私は予防接種部会にも入っているので、予防接種部会の取りまとめのときも、ヒブあるいは肺炎球菌ワクチンの導入のときには、やはりこのサーベイランスがパラレルにいかないと、効果等の判定あるいは効果がなかったということかもしれないし、そういったことの判定に絶対に必要なものであるということで提言をしたと思うのですが、それが現実に今回のサーベイランスの変更ということで、事務局が提案されたことは非常に歓迎すべきことではないかと思います。
 ただ、せっかくやっていただいたところにケチを付けて申し訳ないのですが、今後もワクチンで防げる病気を、どうやって導入が必要なのか、必要ではないのかについて、サーベイランスデータというのは非常に重要になるので、それについて国レベルで把握できるということを今後も是非検討を続けていただきたいと思います。それは臨床側あるいは保健所等に負担がかかるかもしれないのですが、きちんとすることによって、感染症対策をやっていくという意味で、非常に重要なことではないかと思います。提案には非常に賛成します。
○渡邉部会長 いま岡部先生から、ナショナルサーベイランスの重要性が指摘されましたが、ほかにご質問等はございますか。
○大石委員 感染研の大石です。資料2-1の3「サーベイランス変更案のまとめ」のところで修正したほうがいいと思うのは、「ヒブの全数化」という言葉がありますが、これはタイプbだけではなくて、肺炎球菌に対応して「インフルエンザ菌の全数化」と。
○情報管理室長 改めさせていただきます。
○澁谷委員 このサーベイランスの案は非常に重要なことだと思いますので賛成です。この部分については規則を改正してという位置付けとのことですが、先ほどのご説明の中で、「その他のサーベイランスの充実」という内容の部分がありましたが、恒常的に実施する感染症流行予測事業というのはおそらくまだ改正ということではないので、予算事業を何か考えられるのか。これまでのさまざまな審議会の中の提案でも、例えば今回、ポリオの不活化ワクチンに変更になるような場合は、サーベイランスはしておかなくていいのかとか、いろいろな意見が出ていたと思うのですが、この「その他の充実」というのはもう少し何かあるのでしょうかということで、もしあればお考えをお聞かせいただきたいのですが。
○情報管理室長 3頁の下のほうにあります「その他のサーベイランスの充実」ですが、いずれも結核感染症課の「感染症流行予測調査事業」、予算事業で行っているところです。その他の定期接種化も、すでにされているものについて抗体を調べたり、病原体を調べたりしているのですが、今回導入が進んでいるヒブ・肺炎球菌のものに対して、先ほど庵原先生からご紹介がありました血清型等の調査についても、これもなるべく将来的には国の事業として継続して行えるように、いま予算要求等を考えているところです。
 それから、子宮頸がん予防ワクチンの導入を踏まえたHPVの血清型のサーベイランスについても、すでに研究事業で感染研で行っているところなのですが、それについても将来的に国の事業とできないか考えているところです。
 ポリオのお話がございましたが、先進して不活化が進んだ国で行われているような、例えば下水道で病原体が見つかるかどうかというような調査方法についても、いま研究班で検討していただいているところで、いくつかの自治体にも協力いただいております。こういったものについても、成案がまとまり次第、対応をしていきたいと考えています。以上です。
○岡部委員 先ほど確認し忘れたのですが、文章として入っていないので確認だけなのですが、これは5類の全数把握にするということですね。
○情報管理室長 そのとおりでございます。
○味澤委員 大人の場合は、このウイルスはあまり多くないのですが、肺炎球菌はかなり、特に肺炎だと教科書的には3分の1とか、3分の2ぐらいは血液培養が陽性になりますから、どのぐらいのnを想定しているのでしょうか。そうすると、かなり保健所や臨床現場には負担がかかるので、先ほど言っていたように、かなり少なめになってしまうという可能性もあるのではないかと思うのですが。
○情報管理室長 まずは、小児の対応については、そのような患者がいらっしゃった場合には必ず血培等で調べるというところで、ある程度のご報告はいただけるものと考えているのですが、高齢者のもの等については、確かにおっしゃるとおり、実数がそのまま反映されるというところではないかもしれないとは考えております。
○味澤委員 そもそも肺炎自体は、子どもより成人のほうが圧倒的に多いわけなので、その何十パーセントかできちんと血液培養を採れば陽性になるという可能性があるので、やはりその数というのは大体想定しておいて、臨床現場にいちばん負担がかかるわけですから、よく宣伝をしていただく必要があるのではないかと思うのです。やるのは私たちですから。
○大石委員 現在、成人の侵襲性肺炎球菌感染症のサーベイランスについても準備中です。味澤先生の施設では肺炎の症例に血液培養検査を適切に実施されていると思いますが、一般の病院では血液培養検査が実施されずに、菌血症を伴う肺炎例があまり検出されていないのではないかと心配しております。このため、今後は内科医、呼吸器科医の先生方に血液培養で侵襲性感染症を検出していただくよう周知徹底していきたいと考えております。
○廣田委員 ヒブ・肺炎球菌・HPVを感染症流行予測調査に追加を検討ということでした。かねがねいつも言っているのですが、この感受性調査で抗体保有者の割合が、歴年ごとに年齢別に示したデータが毎年公表されています。歴年があって、年齢があると、出生年が計算できるわけですので、出生した年によって、何歳になったら抗体が何パーセントに上がる、何歳から何パーセントに下がり出す、こういったbirth cohort analysisを是非やっていただきたいと思います。このデータは感染研にしかありませんので、是非ともそういう方向で進めていただきたいと思います。
○情報管理室長 廣田先生のご指摘を踏まえまして、今後そういった対応についても検討していきたいと考えております。
○渡邉部会長 いま味澤委員から、肺炎球菌感染症の数が多くなって、現場に負担がかかるのだろうというお話がありました。確かに、老人性の肺炎球菌感染症は老人病院等では出る可能性があると思うので、その辺のケアは厚生労働省でやっていただけたほうがよろしいのではないかと思うのです。
あと、これに関しては、研究班においても、成人型の肺炎球菌の侵襲性疾患の割合等に関しては、アクティブサーベイランスをやる方向での話が出ていると思うのですが、全体としてどうかということのデータは、出ているのだと思います。ほかにございますか。
○皆川委員 言葉の定義で質問させていただきます。3頁に「必要な検査所見」とありますが、髄液または血液からの病原体の検出が何らかの理由でうまくいかなくて、髄膜炎の所見があり、ほかに感染病巣があるような患者の届出というのは、原則として今回は外れるという理解でよろしいのでしょうか。
○情報管理室長 考えておりますところは、病原体が検出されて、菌血症なりが確認されたものの届出をいただくということで考えております。
○渡邉部会長 これについては臨床の先生にお伺いしたいのですが、ヘモフィルスとか肺炎球菌は、最近は莢膜抗原の検査をラテックスまたはいろいろな免疫反応でやるような診断薬が、体外診断薬として、今年の3月に承認されているのだろうと思うのですが、そういうものの使用頻度とか、その辺はいかがでしょうか。大石先生なり。
○大石委員 肺炎球菌による髄膜炎では、肺炎球菌の共通抗原であるC-ポリサッカライドに対する抗体を用いた尿中抗原検出用のイムノクロマトキット(BinaxR)が、髄液からの抗原検出にも使用されます。また、パストレックスメニンジャイティスという凝集キットも市販されていますので、抗原検出法についても検討する必要があると思います。
○庵原参考人 現在私たちが行っている研究班では、ラテックス凝集の方法を用いて、髄液等で陽性になった場合も、一応検出陽性としてアクティブサーベイランスの中には加わっています。ですから、現在のところいくつかメーカーがあるのですが、肺炎球菌、インフルエンザ菌b、髄膜炎菌の3つに関しては、迅速検査も併用して判断しています。
○賀来委員 先ほど2人の先生が言われたように、臨床現場では、特に昨年の震災後の被災地の医療施設などでは全く培養検査ができない場合に、尿中抗原などを利用して肺炎球菌を検出していました。現状では、抗原検出系を利用している施設がかなり多いのではないかと思います。
 肺炎球菌の場合は尿中抗原だけではなくて、喀痰から直接検出するような試薬も出てきていますので、そういう意味では抗原検出系の診断法も今後検討に加えていくというのは、非常に重要なことだろうと思います。
○渡邉部会長 特に体外診断薬としても承認されているキットがある場合には、皆さん臨床で使いやすいと思うのです。PCRに関しては、文献的には出ていると思いますが、まだ体外診断薬として認められているものはないと思いますので、そういう抗原検出系が有用である場合には、それも可能なようにしておいたほうがいいのではないかなと私も思いますし、いま、いろいろな先生からそういう案も出ましたので、その辺は事務局で検討していただければと思います。よろしくお願いいたします。ほかに何かコメントはありましょうか。
 1つ臨床の先生にお聞きしたいのですが、髄膜炎に関して、ここは「侵襲性髄膜炎」という言葉が出てきたのですが、そもそも髄膜炎菌感染症自体身が、ある意味では侵襲性を含んでいるのだと教科書的には習っていますし、そのように理解していたのですが、この辺はいかがでしょうか。おそらく事務局は、いままで細菌性髄膜炎ということでやった場合には、血液から病原体が検出されある場合に、それが報告されていないということを踏まえて、こういう言葉にしたのだと思うのですが、その辺に対してのコメントはいかがでしょうか。
○賀来委員 事務局がご指摘のとおり、髄膜炎菌感染症は髄膜炎症状だけではなくて、いわゆる敗血症の症状あるいは皮膚症状も示しますので、当然、血液培養からの髄膜炎検出例も侵襲性髄膜炎感染症とするということについては、非常に重要だろうと思います。
○渡邉部会長 言葉として、「侵襲性髄膜炎菌感染症」と使ったほうがよろしいですか。
○賀来委員 はい。
○渡邉部会長 ほかの先生方はよろしいでしょうか。では、これはこの言葉でということに。ほかに何かご示唆、コメントはございますか。よろしいでしょうか。
 もしなければ、いま各委員から出されました意見を踏まえた形で、一部修正すべきところは修正し、この委員会で承認という形を取らせていただきますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○渡邉部会長 ありがとうございます。
 続きまして、資料3に基づいて、「感染症法に基づく『病原体等管理規制』から除外する病原体について」の説明を事務局からお願いいたします。
○結核感染症課病原体等管理対策専門官 それでは、資料3でご説明いたします。まず1頁で、今回のこの議案の概要について説明いたします。感染症法に基づく「病原体等管理規制」では、人への病原性や生物テロに使われる可能性等を踏まえ、病原体等を選定し、一種から四種に分類した上で所持等に関する規制を行っています。規制対象の病原体は属・種で規定されていますが、人を発病させるおそれのない特定の株(ワクチン株等)については、本規制の対象から除外することができるとされています。これを踏まえ、これまでもいくつかの病原体を規制から除外してきたところです。
 今般、国内学会より、一種病原体等に指定されているフニンウイルス、これは南米出血熱の原因ウイルスの1つですが、これについて、ワクチン製造用に弱毒化されたワクチン株(名称Candid#1)を規制から除外してほしい旨の要望がなされました。このCandid#1株を用いて製造された生ワクチンは、アルゼンチン国内において、これまで、南米出血熱対策のため、同国民約26万人に接種され、重篤な副反応や病原性の復帰は報告されておりません。なお、国内学会の要望書によれば、各大学等の研究機関において、Candid#1株を入手後、南米出血熱の基礎研究、検査・診断法等の開発を行いたい意向とのことであります。
 厚生労働省としてCandid#1株に関する情報を確認したところ、人への病原性がないと判断され、規制対象から除外することとして差し支えないと考えております。しかしながら、これまでに、一種病原体等に分類された病原体から特定の株を除外した事例がないことから、今回の感染症部会に諮ることとし、今後、一種から四種に分類される病原体から特定の株を除外する手続きについては、後ほどご説明をいたします別記の事務手続きとしてよろしいか諮らせていただきたいと思います。
 2頁は「感染症法に基づく『病原体等管理規制』の概要」を示しております。ご覧のように、左から一種病原体等から四種病原体等と分類しておりますが、上に書かれているとおり、一種病原体等については所持の原則禁止、二種病原体等については所持の事前の許可、三種病原体等については所持後の届出、四種病原体等については所持者の基準の遵守ということで分類されております。下の四角に書かれているとおり、その分類ごとに、所持する場合の施設基準や、保管、使用、運搬、滅菌等の基準が設けられております。今回、除外申請のあった株については、青字で示しているとおり、一種病原体等の南米出血熱ウイルス1つとなっております。
 3頁は、「特定の病原体を『病原体管理規制』から除外できる規定及び対象となる病原体の考え方」について示しております。(1)の「除外できる規定」は、感染症法第6条「定義」に記載されております。「薬事法の承認を受けた医薬品に含有されるものその他これに準ずる病原体であって、人を発病させるおそれがほとんどないものとして厚生労働大臣が指定するもの」、これを規制対象の病原体等から除くこととしております。
 (2)では「除外の対象となる病原体の考え方」について示しております。この考え方については、平成18年6月の病原体管理規制の施行前になりますが、感染症分科会で了承をいただいております。1)、2)、3)と例がありますが、どれも「人を発病させるおそれがほとんどないもの」が共通の条件となっておりまして、1)の薬事法の承認を受けた医薬品に含有される病原体、2)の薬事法の承認に向けて開発中の生ワクチン株若しくはワクチン製剤、3)の弱毒株と認められるもので、基礎又は応用研究、診断検査の開発、ワクチンや治療法の開発等に用いられるものは除外ができることになっております。
 4頁は除外する考え方を基に、いままで一種から四種病原体等ということで除外をしてきた株について一覧表に示しております。色付けをしている一種病原体等は、これまで除外の実績はありません。二種病原体等は6種類、三種病原体等は2種類、四種病原体等は23種類、計31種類の病原体等(特定の株)を除外しているところです。最近ではインフルエンザウイルスH5N1のプレパンデミック用ワクチン株を、平成22年4月に3種類、平成24年7月に5種類、新たに除外してきたところです。
 5頁から、今回除外申請のあった株についてご説明いたします。まず、南米出血熱とその原因ウイルスですが、(1)として、南米出血熱は、感染症法の疾病分類の「一類感染症」に分類される疾患です。また、右側の地図に示しているとおり、発生地は南米大陸です。さらに、原因ウイルスは下の表の5種類となります。(2)で、フニンウイルスによる南米出血熱をアルゼンチン出血熱とも呼んでおります。(3)で、ご存じのとおり、「病原体等管理規制」では、南米出血熱の5種類のウイルスについて「一種病原体」に指定しております。
 6頁に入りまして、弱毒生ワクチン株(Candid#1)について説明いたします。(1)に書かれているとおり、アルゼンチン出血熱に対する生ワクチンの製造株ということになっております。(2)のとおり、動物や細胞に継代して得られた弱毒株であり、遺伝子学的に野生株との鑑別が可能です。(3)~(7)に示しているとおり、1979年から国連等の援助を受けて、アルゼンチン政府と米国陸軍感染症医学研究所(USAMRIID)の共同プロジェクトにより開発したものです。有効性、安全性も確認されておりまして、2006年のアルゼンチン政府の承認の下、同国立ウイルス病研究所で製造を行っております。この生ワクチンは、アルゼンチン国民約26万人に接種されておりますが、重篤な副反応も報告されておりませんし、動物実験では病原性の復帰も確認されておりません。米国等では、BSL2での実験室の取扱いが可能となっております。また、アルゼンチンは、PIC/Sの加盟国でして、国際的に一定以上のワクチン製造の技術を有している国となっております。
 7頁は国内学会からの要望書で、日本ウイルス学会から提出されております。
 8頁は、いままで説明してきたCandid#1株についてまとめております。これらの情報について確認をしたところ、厚生労働省としては、Candid#1株については、人への病原性は認められないこと、国内における南米出血熱の診断検査の整備等に資することから、規制から除外しても差し支えないと考えております。
 9頁では、今後の除外の手続きについて、過去の除外事例を踏まえて分類を作らせていただきました。今後は、この分類を基に対応していきたいと思っておりますが、Aのような、生ワクチンとして国内で承認され、人への安全性が確認されている病原体についてと、Bの、プレパンデミックワクチンとしてWHOが公認した病原性を示さない病原体のようなものは、申請がありましたら除外の手続きを行っていきたいと思います。また、Cの分類のように、AやBに該当しない二種、三種、四種病原体等については、専門家の知見を踏まえて、問題がなければ除外の手続きを行っていきたいと思っております。色付けしているDの分類のところ、今回除外申請のあった一種病原体等のものについては、専門家の知見を踏まえて、さらに感染症部会の了承をいただいてから、除外の手続きを行っていきたいと思っております。
○渡邉部会長 ただいま事務局から説明がありましたように、フニンウイルスは一種病原体ですが、その中の特定なワクチン株であるCandid#1を除外として扱っていいかどうかということと、その手続き等について、9頁にあるように、今後はこのような手続きで行うことに対しての諮問が出ておりますので、各委員の先生方からコメントをお願いしたいと思います。
 まず、8頁のフニンウイルスワクチン株の除外について、いかがでしょうか。
○倉田委員 これは既に米国では、95年のBMBL第4版から、もちろん、いちばん扱っているのは米国ですけれども、そこで既にレベルを下げてあります。ワクチン株は同じようにチクングニアやリフトバレー、ベネズエラウマ脳炎等、それから黄熱病、黄熱は既にワクチンをBSL-2で扱っています。使っている所は既にそのようなレベルでやっているのですが、いままで日本では扱う人がそれほどいなかったと思うのです。ワクチン株ではなくて、ウイルス自体を扱うのも、既にレベルを下げています。米国のBSL3というのは、いわゆる構造の基準が非常に甘くて、排気にHEPAフィルターを付けなくてもいいことになっていたり、ウイルスの分類自体はレベル4になっているものでも、実験室で働く人がワクチンを接種することと、BSL3実験室の排気のところにHEPAフィルターがあれば、それはレベル3でやっていいことに既に95年になっているのです。
 その再確認が2009年のBMBL第5版でもきちっとされていますし、さらに病原体がBSL4、日本で言うと一種ですが、そこに上げてあったものでも、扱い方や疫学的な証拠、あるいは実験室における動物での感染性の問題などを総合して、下げられるものは下げていく方向にあります。ですから、この点に関しては全く問題がないのですが、もし、いろいろ研究に資するのであれば、BSL-3で十分です。日本の3の基準は非常にうるさく、アメリカの3よりも遥かにきついし、WHOよりもきついですから、その基準さえ守れば、別に問題はないのではないかと思います。
 これは、今後いろいろな問題で起きてくると思います。ただ、その場合、日本の感染症法は数字の低いほうが、これは内閣法制局の責任ですが、低いほうがうるさいという話になっていて、世界の流れ(バイオセーフティの基準)とは逆になっているのです。世界は1、2、3、4で、4のほうがリスクが高い。そこでその度に翻訳が必要になるのです。1はまだいいのですが、2種、3種、4種のところにくると、世界はBSL-3で扱わなければいけないのがBSL-4に入っていたりして、そういうBSLの基準と感染症法の基準がばらばらなのです。そこはいちいち翻訳してきちんとしておけばいいのですが、研究者が扱っている実験室の扱い方は全部世界の基準に基づいていますから、この点に関しては全く問題がないと思います。
○渡邉部会長 ちょっと確認したいのですが、フニンウイルスのワイルド株でも、アメリカではBSL-3だということですか。
○倉田委員 そうです。先ほど言ったHEPAフィルターを付けておけばBSL-3でいいと。その代わり、扱う人は必ずワクチンを打っておけという基準があります。
○渡邉部会長 フニンウイルスのワクチン株のCandid#1は除外して、これはBSL-2で扱って差し支えないということですね。
○倉田委員 結構です。yellow feverの17Dと同じ扱いです。
○渡邉部会長 わかりました。ほかの先生方からいかがでしょうか。特にご意見がなければ、事務局の提案どおりの形で処理したいと思います。
 9頁の今後の手続きについてですが、このような形で除外の手続きを行うことに関してのご意見はいかがですか。
○倉田委員 このやり方は非常にいいと思います。これをやっていかないと、いろいろな研究のたびにぶつかってしまい、動けないような基準となってしまいます。感染症法をもろに適用しますと。ですから、必要なことができなくなる可能性があるので、このようなことは柔軟にやればいい。その代わり、世界中で扱っている人たちの情報もきちっと取っていけば、問題はないのではないかと思います。
○山田委員 昨今の原発の問題で、専門家というのが国民の目から厳しく見られていると思うのです。専門家の知見を踏まえて判断をするというときに、どのような専門家に聞いたのかが国民に全く伝わらないというのが若干問題のような気がしますが、その辺はいかがでしょうか。
○渡邉部会長 専門家の定義ですが、いかがでしょうか。
○情報管理室長 まずは国立感染症研究所の担当の部局の方々にお諮りした上で、そのほか知見をお持ちの関係の先生方の意見も踏まえて対応を進めていきたいと考えております。
○倉田委員 山田さんの指摘はよくわかるのですが、専門家というのは実際に実験室でやっている人を言うので、「いわゆる」という括弧付きは要らないと思うのです。そういう情報を世界中から集めるのは難しいことではなくて、電話1本あればファックスでもメールでも何でも簡単に集まる時代ですから、緻密にやればいいだけだと思います。
○山田委員 透明性などといった点について、例えばどのような方に聞いたか、聞かれたら公開する用意があるかとか、基本的にはそういうことです。
○渡邉部会長 実際に誰に聞いたかということがどこかの議事録等に残って、情報公開の要求が出たときには、それがおもてに出るというシステムはきちんとすべきであるということで、それについては、事務局としてはよろしいですね。そのほか、いかがでしょうか。
○磯部委員 いまの透明性というのは非常に大事なことだと思います。この除外手続きというのは、具体的に根拠法令のようなものがあるのか、それとも単なる内部的な基準ということなのでしょうか。根拠がどこにあるのか、そして基準は何なのか、それは先ほどの感染症分科会が定めたいくつかの基準で除外を考えることになるのか、そして誰に聞いたかという議事はどのように公開されるのか。やはり、この3つは仕組みとしてきちんとしておかなければいけないのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。
○情報管理室長 ご指摘のとおり、3頁で感染症法に除外できる規定というのがありまして、分科会のほうで導入前に除外できる対象の病原体の考え方というのが示されております。これについて、我々として判断を行い、その上で、先ほど山田委員からご指摘があったようなところで手続きを進めさせていただければと考えております。
○磯部委員 そこはわかっているのですが、9頁のA、B、C、Dの表については、どのような位置づけになっているのですか。
○渡邉部会長 これがおもてに出るかどうかということですね。
○磯部委員 そうです。
○情報管理室長 A、B、C、Dの位置づけについては、これも3頁の「除外の対象となる病原体の考え方」と同様に、この分科会でのご判断ということでいただいて、今後は進めさせていただければと思います。
○渡邉部会長 これの議事録ですかね。これが承認されれば、承認されたときに議事録にきちんと載ると。議事録は公開ですから、という話ですがいかがでしょうか。それではまずいですか。
○磯部委員 どういう手続きで指定したり、除外したりしているのかということが、それで十分なのかということだろうと思うのです。
○渡邉部会長 Dの場合は感染症部会に諮るので、これはいいと思うのですけれども、そのほかA、B、Cに関しては、そのようなものが諮られたというプロセスなり、その結果なりをどこかに報告というか、ホームページ等に公表するということでよろしいですか。
○情報管理室長 9頁の備考欄に少し書いてあるのですが、Dの一種病原体については、「感染症部会の了承後に除外」ということで、ここの部会で諮らせていただきます。また、例えば生ワクチンに含まれているものとA、B、Cのところについては、感染症分科会のほうに開催の都度報告させていただこうかと考えております。
○渡邉部会長 備考にあるように、感染症部会に報告して、そのときは報告内容等が議事録にもきちんと載りますので、おもてにも公開されるということでよろしいですか。
○磯部委員 結構です。
○渡邉部会長 いまの件に関して、何かご意見があればお願いいたします。いまのようなプロセスでよろしいでしょうか。公平性または透明性をきちんと図らないといけないというのはもちろんだと思いますので、そこのプロセスをどのような形で行うかということだと思いますけれども、部会に報告するということで、よろしいでしょうか。
○山川委員 1つ質問ですが、「病原体等管理規制」というのは省令ですか、規則ですか。
○情報管理室長 「病原体等管理規制」は法律です。
○山川委員 「管理規制」という法律ですか。
○情報管理室長 先ほどの資料の2頁をご覧いただくと、これは「感染症法に基づく『病原体等管理規制』」となっておりまして、例えば二種病原体については、ここにあるように厚生労働大臣の許可を受けることになっており、このようなことが法律事項として挙げられております。その総体として「病原体管理規制」と。
○山川委員 わかりました。そうすると厚生労働大臣が指定するもの、その基準のようなものとしては、例えば規則とか告示とかで決まっているのですか。そこの仕組みはどのようになっているのでしょうか。ケースバイケースでやっているわけですか。ケースバイケースの根拠というのは感染症分科会の決定とか、そういうことですか。大臣が指定するものという、その指定の根拠というのがどのようになっているか、たぶんこれが先ほどの質問の趣旨だと思います。
○情報管理室長 今回も除外できるということは、告示を改正することになります。
○渡邉部会長 そのほか何かご質問があればお願いいたします。
 ないようですので、いま事務局から提案された9頁のことを、透明性、公平性がより保てるよう担保した上で、皆さんがこの部会で認めたということで処理させていただきます。
 以上で本日の議題はすべて終了いたしました。事務局にお返しいたします。
○結核感染症課課長補佐(難波江) 本日ご審議いただきました3つの議題につきましては、今後パブリックコメントを行いまして、議題(1)と(3)については告示改正、議題(2)については省令改正の手続きを進めていきたいと考えております。
○渡邉部会長 司会の不手際で時間を少しオーバーいたしまして、申し訳ありませんでした。以上で本日の部会を終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)

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