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2012年11月2日 第1回 厚生年金基金制度に関する専門委員会 議事録

年金局

○日時

平成24年11月2日(金) 18:00~20:00


○場所

中央合同庁舎第5号館22階専用第14会議室


○議題

(1)代行制度について
(2)厚生年金基金制度の見直しについて
(3)その他

○議事

○神野委員長 それでは、定刻でございますし、駒村委員も追って御出席との御連絡をいただいておりますので、ただいまから第1回「社会保障審議会年金部会厚生年金基金制度に関する専門委員会」を開催したいと思います。
 委員の皆様方には大変お忙しいところ、また、夜のとばりがすっかりおりてからお集まりいただきまして、深く御礼を申し上げる次第でございます。
 本日は初回でございますので、委員の皆様方の御紹介をさせていただきます。五十音順にさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 日本経済団体連合会社会保障委員会年金改革部会長、柿木厚司委員でございます。
 早稲田大学法学学術院教授、菊池馨実委員でございます。
 遅れていらっしゃることになっておりますので、追ってまた御紹介させていただきますが、慶應義塾大学経済学部教授の駒村康平委員でございます。
 日本労働組合総連合会総合政策局長、花井圭子委員でございます。
 JAM書記長、宮本礼一委員でございます。
 きょうは御欠席でいらっしゃいますけれども、慶應義塾大学大学院法務研究科教授、森戸英幸委員でございます。
 横浜国立大学経営学部教授・付属図書館長、山口修委員でございます。
 きょうは御欠席でいらっしゃいますが、日本商工会議所社会保障専門委員会委員、山本𣳾人委員でございます。
 なお、今も申し上げましたように、本日は森戸委員と山本委員から御欠席との連絡を頂戴しております。
 欠席されている委員にかわって御出席をしていただく参考人をお認めいただければと思っておりますが、山本委員の代理として杤原参考人が御出席いただけるということでございますので、御承認を頂戴できればと思います。よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○神野委員長 それでは、承認をさせていただきます。どうもありがとうございました。
 事務局の出席者につきましては、お手元に座席表をお配りしていると思いますが、そのとおりでございますので、これをもって紹介にかえさせていただきたいと存じます。
 それでは、議事に入らせていただきますので、カメラの方は恐縮でございますけれども、ここで御退室を頂戴できればと思います。よろしく御協力方お願いいたします。
(カメラ退室)
○神野委員長 繰り返すようでございますけれども、本日は本委員会の第1回目、キックオフでございますので、制度に関する基本的な資料を含めて事務局から資料を用意していただいております。
 まず、事務局から資料の御説明をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 それでは、まず資料の確認をさせていただきます。
 本日たくさん資料をお配りしておりますが、資料1「社会保障審議会年金部会『厚生年金基金制度に関する専門委員会』の設置について」という、本委員会の設置要綱と委員のメンバー表でございます。
 資料2は後ほど御説明いたしますが「代行制度について」という資料でございます。
 資料3-1、資料3-2は「厚生年金基金制度の見直しについて(試案)」とその参考資料。これも後ほど御説明をさせていただきます。
 資料4は、本日は菊池委員から「厚生年金基金の方向性」という資料を御提出いただいておりますので、配布させていただいております。
 参考資料といたしまして「厚生年金基金に関する基礎資料」「厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する有識者会議報告」。
 参考資料3といたしまして、第7回厚生年金基金等の資産運用・財政運営に関する特別対策本部資料等ということでつけさせていただいております。
 もし過不足等ございましたら事務局にお申しつけいただければと思います。よろしゅうございますか。
 それでは、続きましてお手元の資料2、資料3-1、資料3-2につきまして、一括して事務局から御説明をさせていただきます。
 本日は第1回ということもございますので、この厚生年金基金制度の基本的な枠組みでございます代行制度について、資料2に沿いまして御説明させていただきます。
 2ページからです。そもそもこの代行制度がどのようにして創設されたかという経緯を簡単にまとめております。
 代行制度の議論の契機は、昭和40年の厚生年金の制度改正でございました。この際、大幅な給付改善を行ったわけでございますけれども、これに伴う保険料引き上げに反対をする事業主側が、国に納める公的年金の保険料の一部に自らの退職金原資を加えて自主的に運用するという仕組み、当時はこれは調整年金構想と言われておりましたが、こういう提案がございました。
 これを受けまして、当時は社会保険審議会というものがございまして、ここで調整年金構想について議論が行われました。昭和38年からスタートしたわけでございますが、当初からかなり労使の意見が対立したということもありまして、この審議会の下に研究会をつくって、具体的な調整の方法について検討したということでございます。その際に適用除外というイギリスなどでとられております方法と、現行の代行という仕組みが提案されたわけですが、次の3ページ目にまいりまして、昭和39年1月に当時は厚生省でございますが、厚生年金保険法の改正案を部会に提出した際には、現行の代行方式による厚生年金基金制度の創設という形で調整年金構想を具体化しております。
 ただ、依然として労使の意見対立は非常に激しく、結局部会としては並行答申でございました。当時の被保険者側の意見としましては、こういった調整年金という考え方は厚生年金制度の基本に触れる問題であり、今後さらに慎重に検討すべきだという意見。一方で事業主側は調整措置を前提としない給付改善は認めがたいということで、最後まで両者の意見対立は激しかったわけでございますが、最終的にこの答申を経て39年4月に厚生年金保険法の改正案という形で厚生年金基金制度の創設を閣議決定し、41年10月から施行されたということでございます。
 4ページ、このような経過を経て生まれた代行制度でございますが、この代行制度は公的年金の一部を基金という国以外の者が管理・運用するということで、特にイギリスの適用除外との違いは、あくまで公的年金としての性格を持ち続けるというところでございます。下の図にございますように、平均的に見ますと、厚生年金からは2階部分として約10万円の給付がされておるわけですが、基金に加入している場合には7万円分については、これは物価スライドとか賃金スライドとか世代間の助け合いの部分ですが、これは本体から支給され、いわゆる代行部分と呼ばれるもの、現在これは平均月額約3万円でございますが、ここと基金の上乗せ分、これは現在約8,000円でございますけれども、これは基金から支給をされるということでございます。
 この代行給付は公的年金でございますので、当然給付設計は公的年金と同じで減額はできない。また、掛金は労使折半でございます。一方、上乗せ部分につきましては、現状としましては事業主が全額負担しているというところが大半です。最終的に基金が解散した場合でも代行部分の給付責任というものは、最後まで厚生年金本体が負うという仕組みになっております。
 5ページ、以上のような経過を経て生まれた代行制度、厚生年金基金制度でございますが、その後のいわゆる右肩上がりの経済成長のこともありまして、企業年金の普及について大変大きな役割を果たしました。代行部分の積立金を退職金原資などのプラスアルファの積立金とあわせて市場運用するということが、スケールメリットを生かした効率的な運用を可能にしたということもございますし、基金という特別な法人がつくられて、そこで民主的な運営が行われていたということで、現場の方々の努力ということもありましてこの企業年金の普及という点では大きな原動力になったということがございます。
 6ページ、この代行制度の普及を支えた制度的な枠組みとして、ここには3つほど挙げておりますが、1つは厚生年金基金を設立した場合に国ではなくて基金に納める保険料、これは本体の側から見ますので免除保険料と呼んでおりますけれども、この料率が全ての基金一律に設定されていたというのが当初でございました。したがいまして、国ではなくて基金に入ってくる免除保険料よりも、実際にはコストが低く代行給付を賄えるところにとっては、これが1つの代行メリットになったということがございます。
 また、この保険料の集積を上乗せ部分の資産とあわせて運用するということで、当時は予定利回りが5.5%ということで、一律に全基金設定されておりましたが、それをはるかに上回る利差益があったということ、また、さまざまな税制上の措置があったということも、この普及を支えた枠組みでございます。
 7ページ、しかし、時代を経るにしたがいまして代行制度の普及を支えた枠組みというものも変化してまいりました。特に免除保険料率につきましては実際に基金がふえて、基金の構成が多様化するにしたがいまして、一律の免除保険料ではそれよりも代行コストがかかってしまうという基金からは、むしろこれを実態に合わせてほしいという声がある一方で、企業年金を持たない厚生年金被保険者等との公平性という観点から、逆にこの代行メリットへの批判というものもあったということもありまして、さまざまな経過も経て、平成8年度から免除保険料率についてはそれぞれの基金の代行コスト、実態に合わせて設定をするという個別化が実施をされております。その意味では免除保険料率による損得というものは基本的になくなっているということでございます。
 その後、基金を取り巻く市場運用環境というものも大きく変わりまして、いわゆる平成バブルの崩壊以降はむしろ利差益が利差損に転じたこともありまして、積立不足も発生し始めたということでございます。
 基金制度を支える母体企業との関係で申しますと、企業会計基準の見直しが平成14~15年ぐらいにありまして、これによりまして代行部分も含めた年金債務がバランスシートで認識されるようになったということで、特に大企業を中心とする上場企業では、この代行部分を国に戻して上乗せだけの新しくできました確定給付企業年金に移るという、いわゆる代行返上と言っておりますが、こういうことが進んだということがございます。
 この結果、現在の厚生年金基金の大半、約8割は中小企業が集まってつくる総合型という形になっております。ただ、総合型の場合は大半が不況業種であるということもありまして、なかなかこの積立不足を補填するといいますか、追加の事業主拠出が厳しいという状況が続いております。
 8ページ、そうした中で現在、厚生年金基金の財政状況というのは非常に厳しいものがございまして、3階部分もさることながら、いわゆる2階部分の公的年金でございます代行部分に必要な資産を持たない、俗に代行割れと言っておりますが、こういった基金がふえております。下の図にございますように、年によってかなりの違いがございまして、折れ線グラフは代行割れの基金数、棒グラフは総額でございますが、直近でごらんいただきますと平成23年度の速報値で、557基金のうち約半数の287基金が代行割れということで、代行割れ総額は23年度末で見ますと約1.1兆円という状況でございます。
 9ページ、代行割れの度合いというのは基金によって違いまして、これは代行割れ基金のうち、先ほどの287のうち代行返上中のものを除く285基金を積み立て水準の低い順に左から並べたものでございますが、一番左をごらんいただきますと、かなり厳しいところではいわゆる代行に対する積立率が0.3~0.4の間ということで、逆に割れ率ということで言えば6~7割が割れている状況でございます。
 10ページは、今の287基金を業種別に見たものでございます。一番左がそもそもの基金数、真ん中がそのうちの代行割れ基金数、さらにその右にうち総合型というふうに載せておりますが、ごらんいただきますように上から4つ目の繊維業ですとか、その2つ下の建設、運輸はトラックとかタクシーの業界でございますが、下のほうから4つ目の石油、これはガソリンスタンドなどでございますけれども、こういった業種が非常に厳しい状況にあるということが見てとれるかと思います。
 11ページは同じことを業種別ではなくて、加入員の規模別に見たものでございまして、これは上に行くほど加入員規模が大きいということですが、これをごらんいただきますと必ずしも小さいところが厳しいというわけでもなく、ここは加入員規模というよりはいろいろ個別の状況もあると思いますが、規模の大きいところでも代行割れ基金数が6割というところもございます。
 12ページは代行割れ基金の現状というものを成熟度といいまして、一番左にございますが、加入員数分の受給者数、現役に対するOBの割合ということでそれぞれ見たものでございますけれども、上のほうがいわゆるOBの割合が高いところでございますが、ごらんいただきますと、やはり成熟度の高いところが代行割れ基金数の割合が高いということが見てとれるかと思います。
 13ページ、こういう代行割れというのはもちろん運用環境によって違うわけでございますが、この13ページの図は平成12年度以降の全基金の実績データをもとにしまして、左の軸はある年度の積み立て水準、これは代行に対しての積立水準でございますが、それが翌年度になるとどういう積立水準になっているかということを全体、散布図で示したものでございます。例えば左のほうの丸をごらんいただきますと、あるX年度の積立水準が0.6であった基金というものが楕円の中に含まれているわけですが、翌年度の積立水準を見ますと大体0.4~0.8のところに分布している。つまり、ある年の積立水準、代行に対しての積立水準が0.6ぐらいですと、なかなか翌年代行割れを解消するのは難しいというのが過去の実績データから見てとれるかと思います。
 こうしたことを整理いたしまして、次の14ページでございますが、今の全基金の実績データを分析しまして、1年間の運用環境の変化等である意味ぎりぎりに代行割れとならない、言わば運用環境の変化に耐え得る最低ラインとして、どれぐらいのバッファーを最低責任準備金に対して持っていればいいかということを見ようとしてつくったものが、この図でございまして、横軸はある年度の積立水準、縦軸は翌年度に代行割れとなった基金の割合、言わば代行割れとなるリスクということで見ていただければと思いますが、そうしますと翌年度に代行割れしないというものは右のほうでございますが、大体1.3以上ぐらいのラインであるとほぼゼロパーセントということが見てとれるかと思います。
 同じことを2年で行ったのが次の15ページでございまして、これは下のゼロパーセントというところになるラインというのは、大体1.7以上というところでございます。
 こうしたことを念頭に置きまして、次の16ページでございますが、今の厚生年金基金の全体の積立状況を見たのがこの図でございます。これは全基金、代行返上中の基金を除いた562基金を積立水準の低い順に左から並べておりまして、縦軸は最低責任準備金に対する積立比率でございます。一番下の実線の横線が1でございまして、これがいわゆる代行のぎりぎりのところ。その上は先ほど見ていただきました1.3、その上が1.7というラインでございます。
 真ん中から左の部分が代行割れで、これが約半数ぐらいということでございますが、それ以外の残りの半数というところも、分布としてはかなり1.0のラインに近いところに分布をしておりまして、1.3のラインを超えるのは63基金、1.7のラインを超えるのが35基金というのが23年度の推計値でございます。
 17ページは厚生年金基金全体、この厚生年金基金制度、代行制度が始まりまして約半世紀たとうとしておりますけれども、これまでの基金あるいは加入員規模の動きを市場の動きとあわせながら見たものでございます。ピーク時には基金数が1,888、2,000近くありまして、加入者数も1,200万近くございましたが、当時はそこにございますように国債利回りも10%近い利回り、また、日経平均も4万円近いとこまで上がったときもございましたが、現在の状況は加入員数、基金数ともピーク時の約3分の1、そしてその8割は中小企業がつくる総合型でございます。
 18ページ、以上のような代行割れというものが、今の厚生年金基金の財政が抱える最大の課題でございますが、そもそもこの代行というものの債務でございます最低責任準備金につきまして、後でも申し上げますが、有識者会議がこの4月から7月までございまして、その中で最低責任準備金というものについてもう少し精緻化をする必要があるのではないかという御報告もされております。そうしたこともありまして、後ほどごらんいただきます資料3-1、資料3-2の前提として、少し最低責任準備金の考え方を御説明したいと思います。
 最低責任準備金というものは、基金が解散するときに国に返還しなければならない積立金の額ということですが、この考え方とか計算方法が平成11年の厚生年金全体の改正のときに大きく変化をしております。この11年10月の前までは、最低責任準備金というものは左にありますように将来法という方法で計算されておりまして、簡単に言いますと加入者とか受給者のこれまでの加入期間に見合う将来の給付を予測しまして、それを予定利回りや死亡率を使って現在価値に割り引くという方法で出しておりました。
 ところが、平成11年の改正によりまして、こういった方式から離れまして、仮に代行部分が外ではなくて厚生年金の本体の中で積み立てて、そして厚生年金本体の実績運用利回りで回っていたらどのぐらいになっていたかということを元利計算方式で出す。過去法と言われる方式で計算されるようになりまして、その意味ではかつての将来法のように、将来の給付とはリンクしない、言わば国からの預かり金を運用するという性格が強まっているというのが現在の最低責任準備金でございます。
 ややテクニカルになりますが、19ページでございますけれども、この最低責任準備金は今、元利計算方式でやっておるわけですが、具体的にこの計算方法にかかわってきますポイントとしましては、もとの元金にかける利子は厚生年金本体の実績の運用利回りを使っております。それから、ある期間とある期間の間に収入、支出があるわけでして、収入は免除保険料、支出は代行給付費相当額ということでございますが、実はこの最低責任準備金の計算方法について、これまで指摘されている課題としまして、この代行給付費の計算にかかわる係数の問題、それから、実績利回りの言わば期間のとり方という、この2つが指摘をされておりました。有識者会議の中ではこういったところの計算をもう少し精緻化していけば、この代行割れという状況についてももう少し違った姿が見えてくるのではないかという御指摘もございました。
 この2つの問題というのはどういうことかといいますと、次の20ページでございまして、まず支出の部分に当たります代行給付費を計算するときの係数、俗に0.875問題と言っております。これは何を意味しているかといいますと、代行部分というのは公的年金の厚生年金の一部でございますので、いわゆる在老による支給停止というものがございます。この支給停止分を簡便法で推計する係数としまして、現在一律に0.875と、いわゆる支給率が0.875であるというふうに簡便法でみなして計算するという係数がございます。
 ただ、この係数につきましては平成16年の制度改正の際に、もう少し基金の実態データを収集分析して、この係数の一律ということも含めてよいかどうか検討するということが課題になっておりました。その下のグラフは平成17年度から23年度の、そういった指摘もありましたので実績データをとりまして、実際に代行部分の支給率というものが年齢によってどう分布しているかということを見たものでございます。
 ごらんいただきますと、大きく65歳、75歳のところを契機に支給率が大分変っているというものが見てとれるかと思いますが、75歳以上になりますとほとんど支給率は100%、つまりほとんど在職者はおりませんので、支給停止はされていないというものが見てとれるかと思います。一方65歳、いわゆる60歳代前半になりますと、それなりに支給停止がされているということで、このあたりを平均的な支給率で見ますと0.69ということでございまして、全体をマクロで見ますと0.875という今の一律の係数というものは整合性はあるのですが、例えば高齢の受給者の多い基金では本来は100給付しているのに、それがこの掛目によって87.5になっているということで、結果的には最低責任準備金がある意味過大評価をされているところがある可能性があるということが、この実績データでもわかっております。
 21ページはもう一つの課題でございました元利計算をするときの利子でございまして、これは厚生年金本体の実績運用利回りを用いております。ところが、実際にこの基金が解散しまして最低責任準備金を計算するときには、まだその年度の実績が確定していない。例えば23年4月の時点では当然23年度の実績というのは確定していませんので、そういうこともありまして現行では、ある種これも簡便法でございますが、前々年度の運用実績を用いて計算をしています。最近は厚生年金本体も市場運用しておりますので、年によってかなりプラスマイナスがあり、期間によっては、かなりのずれが生じるということでございます。
 実際には次の22ページにもございますように、年によってプラスにもマイナスにも働く可能性があるということで、長期間をとれば期ずれの影響というものはある意味均てん化をされるわけでございますが、部分的にとりますと期ずれのない場合の債務計算をした最低責任準備金との乖離というものがかなり広がっている場合もあるということで、先ほど申しました0.875問題と期ずれ問題というものをどうするかということは、代行を見る上での1つの課題ではございました。
 そうしたことも含めまして、今回この厚生年金基金制度全体の見直しについてこれから御議論いただくためのたたき台ということで、次の資料3-1でございますが、私ども厚生労働省のほうでこれまで有識者会議での御指摘等もございました。先ほどの計算方法なども含めまして、私どものほうで議論のたたき台をまとめさせていただいたものでございます。
 これはあくまでも議論のたたき台ということでございますので、内容の是非も含めてここでこれから御議論いただければと思います。
 2ページ、この試案の基本的な考え方でございますが、代行部分は公的年金の一部であるという基本認識に立ちまして、この試案では大きく3つの観点、すなわち、早急な対応が求められる代行割れ問題への対応、それから、いわゆる3階部分であります企業年金そのものの持続可能性を高めていくための選択肢の多様化、そして、代行制度自体の持続可能性の検証と、それを踏まえた代行制度の見直しという、こういう大きく3つの観点から今後の方向性と具体策の案をとりまとめさせていただいたというものでございます。
 3ページ、1つ目の柱でございます代行割れ問題への対応でございます。この代行割れ問題につきましては、これまでも特例解散制度というものがございまして、これはかつて平成17年から19年まで3カ年の時限措置として行われたものを、去年、法改正で再び5年間の時限措置として復活させている制度でございます。
 これはどういうことかといいますと、通常、代行割れをしている場合は解散するためには代行割れの不足を一気に埋める、そして国に返すというのが原則でございますが、この特例解散制度のもとでは分割納付ができるということ、それから、厚生年金本体への納付額を計算する際にも一定の特例措置があるということでございます。こういった特例措置を時限措置として導入したわけでございますが、産業構造の変化等によって母体企業の負担能力が相当程度低下しているところでは、この特例措置を用いても解散できない状況になっております。
 もちろん、代行部分の積立不足というのは母体企業が負担することが大原則でございまして、これは現行の特例解散制度の基本的な考え方、枠組みでございますが、こういう枠組みを維持しながら、しかし一方で母体企業そのものが倒産してしまうことになりますと、これは地域経済、雇用への影響もありますし、また、結果的には最終的に責任を負うのは厚生年金本体でございますので、そういった将来への財政リスクを軽減するという観点から、一定の見直しを行ってはどうかということでございます。
 後ほど申し上げますけれども、見直しに当たっての基本原則としましては、基本的には厚生年金本体との財政中立ということを要に、また、これまで代行返上した基金あるいは解散した基金、さらに厚生年金全体の被保険者との公平性ということも重要でございますし、モラルハザード防止という点に留意をしながら、後ほど御説明しますけれども、5年間の時限措置として手直しをしようということでございます。
 基本原則としましては、そこにございますようにまずは先ほど申しましたように母体企業が責任を持って負担するということが前提ですので、厚生年金基金自身の運営努力を求めていくということでございます。これは今の特例解散もそうでございますけれども、基金の運営努力を求めるということでございますが、それに加えまして今回は受給者の方にも一定のルールのもとに負担を求めていくということ、さらに基金全体の平均的なポートフォリオを大きく外れた運用、いわゆる大きな運用の失敗という部分については、これはあくまでも母体企業の負担原則を貫くということを第一に掲げる。その上で先ほど申し上げましたような一定程度母体企業への経営への影響にも配慮するということで、全体としてこの特例解散はこれまでと同様に、5年間の時限措置ということで考えております。
 具体的な内容は4ページからでございますけれども、まずこういった今度の見直し後の特例解散のプロセスということでございますが、現在の特例解散も基本的には基金自身が申請をしてきて、そしてそれを厚生労働大臣が認可をするという、言わば自主解散というものを基本としておりまして、これは今後も変わるものではございませんが、ただ、先ほど少しグラフでもごらんいただきましたように、基金によってはかなり代行割れの度合いが進んでいて、資金の枯渇の危険性があるようなところもございます。そういったところがなかなか自主解散の申請をしてこないという場合に、厚生労働大臣が後ほど申します第三者委員会の議決を経て、一定程度解散を促すような、そういう言わば清算型解散を導入してはどうかということでございます。
 具体的なプロセスにつきましては、後ほど申し上げますようなさまざまな適用条件あるいは今のような清算型解散に指定をするという要件を審査する場として、第三者委員会的なものとして社会保障審議会のもとにそういう審査会を置く、ここで審査をしていくということでございます。
 特例解散のプロセスにおきましては、代行資産を国に返還するということになりますが、現在では解散を申請した後、年金記録の整理は当然きちんとやる必要がありますので、これに大体1年から1年半ぐらいかかっているということがございます。その間に代行資産が目減りしてしまうということは、厚生年金本体の債権管理リスクという観点からも、できるだけ防いだほうがいいということで、今回は特例解散の申請時点以降、今後の給付に必要なある程度のキャッシュフローを残した以外のものについては、国に先行的に返還することができるという仕組みを導入してはどうかということでございます。
 以上が解散のプロセスでございまして、次に具体的にどういう特例措置をとるか、その適用条件と内容でございます。
 まず、特例措置の適用条件につきまして、現行でももちろん現行の特例解散の適用を受けるに当たりましては、一定の条件がございます。そこにございますように、過去における相当の運営努力を評価する基準として、掛金の適正な設定を行っているとこと。それから、給付抑制のために必要な措置を実施してきたかということ、これが認められれば分割納付の特例あるいは納付額の特例が受けられるという仕組みになっております。
 今回はこれに加えましてもう一段、特例措置を少し拡大しようと考えておりますが、その際にはこのアの条件を満たしていることは当然でございますけれども、それに加えまして、もう少しその努力の結果としての例えば健全努力の結果としての掛金の状況とか、給付の状況というものについて客観的な数字による指標を設定しまして、そしてそれをクリアした場合に限って一定の新特例措置を認めてはどうかということでございます。
 5ページ、その新特例措置の中身に入ります前に、現行特例につきましても実はかねてより幾つか課題が指摘されておりました。特に分割納付に関しましては現在、最長15年まで分割納付ができますが、その期間中に例えば複数の事業所のうちの1つが倒産すると、残りの事業所で倒産社分を負担していくということで、倒産が相次ぎますとだんだん残ったところに負担がかかるという、連帯債務と言われておりますが、これの見直しがさきの有識者会議でも指摘をされておりました。
 今回それも踏まえまして、各事業所の債務につきましては解散時にそれぞれ確定をして連帯をしないという形、これを分割納付の方法として見直すということ。それから、今、分割納付にかかる利息につきましては、厚生年金本体の実績運用利回りに応じて変動する変動金利になっております。今などは例えばゼロなのですが、ある年また6%になったりということで、企業の側にとってみると資金調達の予見可能性が立てにくいということで、これを一定の指標を用いて固定金利にしてはどうかということでございます。
 以上、現行特例の見直しといいますか、手直しでございますが、さらに先ほど申し上げましたような、もう一段厳しい基準をクリアした基金に限って新しい特例措置を適用するということで、具体的な新しい特例措置の内容としては次のような2つの考え方でそれぞれ案を提案し、ここで御議論いただいてはどうかと思っております。
 下の表をごらんいただいたほうがわかりやすいと思います。現在の特例措置というのは最低責任準備金というものを納めるのが原則でございますが、この最低責任準備金というのは先ほど御説明しましたように、平成11年10月からは厚生年金本体の実績運用利回りでかけ算をしていくという方法をとっておりますが、これよりも、基金の設立したときから厚生年金本体の実績運用利回りを用いて計算した額のほうが低ければ、そちらを使ってもいいというのが現在の特例でございます。
 また、分割納付として先ほど申しましたように最長15年までできるということでございますが、今回の特例のもう一段の拡大をしようということで2つの案を示しています。A案は、納付総額は現行の特例解散と同じなのですが、母体企業の単年度の負担を軽減するという観点から、最長納付期間をもう少し長期に延長するという考え方でございます。
 B案は、分割納付期間は変えずに、納付額について見直しをするということでございまして、ここでは新特例基準額と言っております。具体的には次の6ページをごらんいただければと思いますけれども、下の図も御参照いただきながらお聞きいただければと思いますが、基本的にはこの最低責任準備金と資産に不足する部分というのは、母体企業が負担するというのが大原則でございまして、これは当然厚生年金本体との財政中立ということであれば原則でございます。ただ、先ほど申しましたような一定の条件、具体的には先ほどのアとイの両方の条件を満たす基金に限って、ここの部分に一定のある種の負担上限を設けてはどうかということでございます。
 負担上限の考え方の具体例としては、例えば当該基金の給与の総額に基金全体の上乗せ掛金の平均、これは今、大体2.4%ぐらいでございますが、これを乗じた額のおおむね何年か分、つまり、代行割れ基金でも上乗せ分の給付のための掛金というものは今でも納めているのですが、それをある程度の年数続けるところぐらいまではきちんと払ってもらって、そこである程度打ちどめをするといいますか、負担上限を設けるということを、先ほど言いました一定の条件を満たした基金に限って認めるということを考えてはどうかというのがB案でございます。
 ただし、その下の図にございますように、いわゆる運用の失敗といいますか、基金の平均的なポートフォリオで運用していたら、このぐらいは当然持っているはずだというものを、さらに食い込んでしまっているような場合については、そこの部分についてはモラルハザード防止という観点からも、あくまでも母体企業の負担にするという、言わば下の部分の歯止めはつけるということですが、一定の負担条件を設けるということを考えてはどうかということでございます。
 7ページ、今回のこういった特例解散の手直しとあわせまして、冒頭のところでも少し申し上げましたが、やはりそれぞれの基金の運営努力を求めるという点では、受給者にもある程度の御負担を求めるということで、具体的には、もちろん代行給付というものは解散後も減額をすることはなく、絶対保全されるわけですが、いわゆる3階部分の上乗せ給付につきましては特例解散の申請時点、清算型解散の場合であれば指定の時点から支給を停止することもあわせて行うということでございます。
 以上が1つ目の柱の特例解散の見直しでございます。
 8ページ、9ページは2つ目の柱でございます企業年金そのものの持続可能性を高めていくための選択肢の多様化、さらには厚生年金基金から他の企業年金へできるだけ移りやすくするための特例措置を幾つか提案しております。
 まず、最初の企業年金の選択肢の多様化でございますが、現在、上乗せの3階部分の企業年金制度としては、確定給付企業年金(DB)あるいは確定拠出年金(DC)というものがございます。この枠組みの中でできるだけ制度運営コストが低く、かつ、企業の追加負担が少ない選択肢をふやしていこうということで、ここでは2つ挙げております。資料3-2が参考資料でございますので、これも御参照いただきながらお聞きいただければと思いますが、まず1つ目は今のDBの中の給付設計の1つにキャッシュバランスプランというものがございます。2ページの図にもございますようにキャッシュバランスプランでは毎月の報酬額の一定率と利子を仮想個人勘定に累積していって、そしてそれを年金化していくということですが、個人勘定に積み立てていくときの基準利率としまして、今、参考資料の2ページの左のほうをごらんいただきますと、国債利回りですとか消費者物価指数とか、最近新しく東証株価指数のような客観的なベンチマークもよいということにしましたが、さらに一歩進んで企業年金自体の運用実績というものも指標として認めてはどうかということでございます。
 また、こういった利率ないしは年金化するときの年金原価率の下限についても今、さまざまな規制がございますが、基本的には基準利率については全体、通算でゼロ以上になっていれば単年度ではある程度下回ることも許容する。通算でゼロ以上でないと元本が保証されませんので、そこはDBですので保持をすることになりますけれども、かなり利率とか下限について規制緩和をして弾力化をしていくということが1点目でございます。
 2つ目はDCでございまして、参考資料で申しますと次の3ページにポンチ絵が載ってございますけれども、今、確定拠出というのは名前のとおり、掛金負担を固定して給付は運用成果次第ということでございまして、実際には各個人が提示をされますさまざまな運用商品の中から選択肢を選んでいく。ですので、そのために事業主は各加入者に対して投資教育をするということが大きな体系になっています。ただ、なかなか個人の場合も多種多様なところから選んでいくというのは難しいところもありますし、また、投資教育について特に中小企業などではなかなかコストもかかるということもありまして、そういったところが言わば集団でこの図にもありますような資産運用委員会のようなものを企業で設置して、そこがある意味、スクリーニングをして従業員に対して運用商品を提示する。これを言わば投資教育の代替という形にするという、集団運用型DCという名前が適切かどうかというのはありますが、そういうタイプのものを新しく類型として加えてはどうかということでございます。
 9ページ、今のは3階部分の選択肢の多様化ということでございますが、今度は厚生年金基金から代行返上して、他の企業年金へ移行しやすくするための幾つかの措置を掲げております。
 1つは代行返上してDBに行った後、3階部分の不足金を償却していくわけですが、それを今は原則20年になっておりますけれども、これを30年に延長してもう少し緩やかに償却できるようにする。これはかつて適格退職年金制度を10年かけて廃止をしておりますが、その際にも移行の特例として認めた措置でございます。
 2つ目が代行返上支援事業と言っておりますが、今、企業年金連合会というところが解散基金の加入員を対象としまして、上乗せ部分の給付を一定程度の基準のもとに補填するという支払保証事業というものを基金の拠出金でやっておりますが、これにつきましてむしろ解散基金の加入員というよりは、これから代行返上して3階を維持していこうというところを支援するための事業として模様がえをしてはどうかということでございます。
 3点目は先ほど御説明しました先行返還制度でございます。
 4点目は厚生年金基金の厚生事業所がなかなか単独では解散した後DBをつくりにくいというときに、事業所単位で既存のDBにできるだけ加入し、移管しやすくする。そのための簡易な手続で加入することができるような仕組みを導入してはどうかということでございます。
 5点目は現在でも認めておりますけれども、いわゆる代行返上のときの市場インパクトをできるだけ緩和するということで、もちろん一定の条件のもとでではございますが、現物納付も認めていくということでございます。
 10ページが最後3番目の柱でございます。代行制度の見直しというのは大きく3つの柱を立てておりますが、まず1点目は10ページの(1)にございます、先ほど御紹介をいたしました最低責任準備金の計算方法の見直しということでございます。
 1つ目の代行給付費の計算に用いる係数、先ほど0.875という御紹介をしましたが、これは今、一律に設定をされておりますけれども、先ほどの実質的データでもごらんいただきましたように、年齢によって違いがあるということで具体的には2つ目の○にありますように、受給者の年齢によって3区分に分けた係数へと見直しをする。そして、この実績データをとり始めました平成17年4月に遡及して適用するということを考えています。実態に即した形で精緻化をすることが1点でございます。
 2点目の期ずれの問題でございますけれども、これもできるだけリアルタイムに近い形にしていこうということで、これは具体的には参考資料の4ページでございますが、厚生年金本体の実績がわかっている期間については実績を適用するということになるわけですけれども、解散時点でまだ実績が出ていないというところがございます。そこにつきましては厚生年金本体の基本ポートフォリオをもとに各資産の市場ベンチマーク、例えば厚生年金本体は67%ぐらい国債でございますが、それのベンチマークとしておりますNOMURA-BPIというものを使って、株式であればTOPIXとか、そういうことで複合的なベンチマークをつくりまして、一定の見込み利率を使っていくということを考えてはどうかということでございます。
 以上のような言わば最低責任準備金の計算方法を精緻化した上で、先ほど最初の資料2でごらんいただきました代行割れなり、全体の積立状況がどう変わるかというものを見たのが資料3-2の5ページ以降でございますが、まず0.875の計算方法を見直したことによりまして、代行割れ基金数については若干減少しておりますが、それでも278基金が代行割れという状況でございます。
 次の6ページでございますが、今ごらんいただきました0.875にプラス期ずれの調整をあわせて行うとどうかということでございまして、285基金の代行割れが211基金ということになりますけれども、それでも200を超えているという状況でございます。
 7ページも先ほど資料2でごらんいただきましたが、厚生年金基金全体の積み立て状況ということでございますけれども、こういった言わば土台修正といいますか、代行を精緻化た上でも、代行割れのリスクを防げるというところで残るところは、例えば1.7倍以上で見れば40基金ということでございます。
 その中には右端にありますように、代行に対して厚い5倍とか6倍という上乗せを持っているところもあるわけですが、こういったところは代行部分に頼らなくても、先ほどのようなさまざまな代行返上の支援措置を通じて上乗せの部分を維持していくということもできるだろう。逆に上乗せが厚くないところは、どうしても代行割れのリスクということを抱えたままの運営になるということで、こういった全体の代行制度の今の実態、持続可能性あるいは公的年金財政への影響を含めて見た場合に、やはり代行の持続可能性というものはなかなか厳しいものがあるということで、この試案の中では10年間という移行期間を置いて、代行制度については段階的に縮小し、廃止していくということを提案しております。
 具体的には11ページでございますけれども、これは法律改正が必要になりますので、法律の改正をすることが前提でございますが、改正法の施行日から10年間の移行期間をもって段階的に縮小・廃止するということでございます。ただし、ここで重要なことは、この代行部分の給付というのは2階部分でございますので、これは基金が解散した場合にも先ほど厚生年金本体から支給されると申し上げましたけれども、制度そのものが仮に廃止されたとしても、ここは当然保証されるということでございます。今、月額で平均3万円ぐらい出ておりますけれども、これは保証されるということでございます。
 その上で具体的にどうやって廃止に向けたプロセスを踏んでいくかということで、参考資料の8ページに少し図もありますので、それとあわせてごらんいただければと思いますが、まず施行日は今、実は厚生年金基金は過去十数年にわたって新設というものが実態としてはございませんけれども、制度としても順次縮小していくということで、まず施行日以降は新規設立をとめるということでございます。10年と言いましても前半5年ぐらいでできるだけ代行割れ基金については整理をしていくということで、まず代行割れしていない基金につきましては、先ほど申し上げたような代行返上をできるだけ支援していくことになりますが、確定給付年金等へ移行するとか、あるいはもちろん解散ということもあるわけですけれども、そういう形で移行をしていくということでございます。
 今、解散の場合は代行部分の給付義務は一たん企業年金連合会というところが引き取る形になりますが、ちょうど申し上げましたように企業年金連合会自体も10年かけて代行部分を国に返してしていくことになりますので、基本的には厚生年金本体に直接移していくということでございます。
 代行割れ基金につきましては、先ほど申しましたように特例解散制度を使って、できるだけ解散を促していく。この間、モラルハザード防止の観点から、基金の財政運営、資産運用についての情報開示をより徹底していくということでございます。
 5年を経過したところで、この代行部分には今も免除保険料という形で、言わばニューマネーが基金に入っていっているわけでございますが、ニューマネーが入ると同時に当然、債務も将来に向かってどんどん延びていくということになりますので、5年間を経た時点で将来期間分の債務を縮減するという観点から、代行部分の保険料については厚生年金本体に戻すということで、いわゆる代行の将来期間分を返上するということで将来返上と言っておりますが、これを5年後から施行する。その後はできるだけ代行割れをしないように、保有資産が最低責任準備金の一定倍を下回った場合には代行資産をすぐに返還するというような形をとりながら、最終的に次の12ページでございますが、10年経過後に残存しているところがもしあれば、そこの代行資産は厚年本体に納付をするという形で、代行制度全体を10年後にたたむということでございます。
 なお、先ほど言いましたように企業年金連合会についても同様に代行資産を国に返していくことになりますが、企業年金連合会は厚生年金基金だけではなくてDBとかDC年金などの通算事業というものもやっておりますので、厚生年金保険法が根拠法となっておりましたが、これをDB法に基づく組織として再編をするということでございます。
 そのほか10年の移行期間中の制度運営の見直しとしまして、これも有識者会議の中で御指摘をされていましたが、解散認可基準の緩和ということで手続要件を緩和したり、あるいは解散認可申請に際しての理由要件というものを撤廃する。同様に合併等の場合の認可基準につきましても同じような手続規制の緩和ですとか、合併後の積立不足の償却をもう少し緩やかにできるようにといった制度運営の見直しを行っていくということでございます。
 以上が厚生労働省としての厚生年金基金制度の見直しについての言わば議論のたたき台としての試案ということでございまして、今後また次回以降、この試案につきまして一つ一つのパーツを御議論いただければと思っております。
 大変長くなって恐縮でございます。以上でございます。
○神野委員長 どうもありがとうございました。
 今、御説明がありましたように、厚生年金基金制度の基本的な枠組みである代行制度について、経緯及び現状について御説明をいただいた上でもって、厚生労働省でおまとめになりました厚生年金基金制度の見直しについての試案、これは議論のたたき台として御説明いただきました。
 これをもとにこの委員会、委員の皆様方から御議論を頂戴したいのですが、少し議論の進め方についてお諮りしたいと思います。
 今、御説明をいただきましたように、具体的に言えば資料3-1及び資料3-2として御説明いただいた試案、参考資料を含めて議論のたたき台として提示いただいた試案に基づいて議論をしていただくことになるわけですが、何分にも論点が多岐にわたっております。ここについては今ちょっと渡辺課長お触れになりましたけれども、次回以降、これは大きく3つの論点に分かれているわけです。1つは代行割れ問題への対応、企業年金の持続可能性を高めるための施策、代行制度の見直しと3つに大きく分かれております。これはこの委員会の設置要綱である検討項目に対応しているものでございますが、この3つの論点をそれぞれ分けて次回以降、議論をしていければと思っておりますので、そうした進め方でいいかどうかということを1つお諮りしたい。
 そうなりますと、きょうの議論については最初に御説明をいただいた代行制度について、これは経緯、現状その他御説明いただいておりますので、ここについて議論を頂戴した上でもって、次回以降の議論を生産的に進める上でざっと見ていただいて、こういう資料等々を準備していただけないかとか、あるいは全体を俯瞰していただいた上で構成その他について、きょうはざっと御意見を頂戴して、次回以降の議論を進める上で問題意識を共有しておきたいと思っておりますが、そうした進め方でよろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○神野委員長 それでは、そのようにさせていただきます。
 それと、今、目が合って気がついたのですが、先ほどの委員の紹介のところで駒村委員を事情によって遅れていると御紹介いたしました。お見えでございますので、駒村委員を紹介させていただきます。
○駒村委員 交通機関の関係で遅参しました。よろしくお願いいたします。
○神野委員長 それでは、議事の進め方について御了解をいただきましたので、本日まず初めに資料2、厚生年金基金制度の基本的な枠組みであります代行制度について、経緯を含めてる現状の問題点を示す資料を提示していただいたのですが、これについて何か御質問、御意見がございましたら頂戴できればと思いますけれども、いかがでございましょうか。
○宮本委員 資料2に記載をしていないのかもしれないのですが、総合型基金に加入している企業の状況を教えていただければと思います。
 先ほどの説明があったとおり、代行割れに陥っている基金のほとんどが複数の中小企業で構成をしている総合型基金ということですが、代行割れしている基金のほとんどがこれまで代行返上できずに、現在に至っていると思っております。このような基金を構成している中小企業のほとんどが、産業構造的に見るとこれからも縮小傾向ある業種が非常に多いと思います。総合型の設立要件では、設立時に5,000人以上を満たしていなければならないことになっていますが、産業構造的に例えば起業をする事業所よりも、今は廃業する事業所の数が上回っている業種が非常に多い状況ということで、既に設立要件の5,000人を下回っている基金も大分あるのではないか。受給者は先ほど成熟度の説明があったように逆にどんどんふえていく。そういうところもあるのではないかと思いますが、現在加入者が5,000人を下回っているような総合型の基金数というのはどれぐらいあるのか。あるいはその中で代行割れをしている基金が幾つあるのか教えていただければと思います。
○神野委員長 総合型基金の現状について、今、回答可能でございましょうか。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 5,000人を下回っているところは、資料2の11ページでございますけれども、これが加入員規模別ということでございまして、左が単位万人でございまして、5,000人という刻みがなくて恐縮でございますが、一番下が0~2,000人、その下が2,000~4,000人、その上が4,000~6,000人ということで、基金数で申しますと6,000人未満というところでごらんいただきますと、総合型が99と145と36ですので、これを足したものが、5,000人という区切りではすぐ出てこなくて恐縮でございますけれども、ですのである意味ではほとんどかなりの部分が下回っているということかと思います。
○神野委員長 よろしいですか。特に何かよろしいですか。
 ほかいかがでございましょうか。
○山口委員 資料2ということではないのですけれども、私は実は有識者会議の取りまとめをやらせていただきまして、その関係で少し最初に申し上げたいと思います。
 花井委員や森戸委員にも有識者会議に御参加いただきまして、ありがとうございました。7月6日に有識者会議の報告書が出されまして、その後、直ちにこの報告書を受ける形で厚生年金基金規則及び資産運用に関するガイドラインの改正に関する意見募集が行われまして、その後、所要の変更が行われております。あわせて財政運営基準についても報告書の趣旨に沿った見直しが行われました。さらに、今回の試案の中でも代行給付費の計算に用いる係数、先ほど御説明がございました0.875の見直しでありますとか、運用利回りの適用時期のずれの問題、さらには連帯債務の見直しなど、有識者会議での指摘事項につきまして、その適正化に向けて前向きな検討がなされたものと評価をしております。
 一方、代行制度の今後のあり方につきましては、有識者会議では代行制度が公的年金である厚生年金保険の財政に与える影響という観点からの意見と、代行制度が中小企業の維持・普及に果たしてきた役割という観点からの意見が併記されておりました。
 今回の試案では代行割れ基金の早期の解散によって、将来の本体財政への波及を防止するとともに、財政状況が比較的よい基金については、3階部分に関して持続可能性の高い制度への移行を促進させることによって、受給者の給付水準の維持という観点から、実質的な制度の継続を図るという内容になっているものと理解しております。
 その意味で、有識者会議の2つの観点からの意見が実質的に取り入れられた内容になっているものと判断しておりまして、基本的な方向性については私としては賛成するものでございます。
 ただ、ここから先は次回以降にテーマとなる話ですけれども、只今は座長として申し上げたのですが、私個人としての意見としましては、今回の試案の中で一番気になっております点は新特例基準額の中のB案といいますか、そこの中に出ている負担上限額の設定という部分でございます。これは何が気になっているかといいますと、不公平という観点、そういう視点から見た場合に果たしてこういう上限の設定というものが、妥当な方法であろうかと言う点でございます。
 不公平の視点には3つの比較対象がございます。過去との比較による点、現在そして将来それぞれの比較においてどうか。過去との比較における不公平というのは先に解散した基金でありますとか、あるいは代行返上した基金との比較においてどうか。この中には前回の特例措置の適用を受けて、現在やりくりをしながら一生懸命代行割れの不足を返済している基金もあるわけでございます。要するにまじめにルールどおりやっている基金が新しい基準ができたために、結果的に馬鹿を見るような制度であってはならないということが、その趣旨でございます。
 それから、現在という意味での比較は、今度この基準に従って同時に代行割れになっている基金が特例解散していくわけですけれども、それらの基金の間で一部は上限規定によって免除される基金があり、他方に全額負担しなければならない基金があるといったようなことが出てまいります。さらに、こういうことはないと思うのですが、万が一上限適用基金の中に例のAIJで損失を被った基金が含まれるといったような場合には、非常に大きな不公平が出てまいります。さらにこの基準自体が現在の加入者をベースにして計算するようになっていて、実際に不足が出ているのは過去の加入者の変動等がその要因だったわけですので、過去の実態を反映しないような基準でもって上限を決めるということになりますが、これはいかがなものかという点がございます。
 加えて、将来との比較においての不公平というのは、いずれ上限を超える負担については全て厚生年金本体の負担になるわけでございますので、金額的に本体財政にとって軽微といった面はあると思いますが、年金財政上、将来の掛金アップであるとか、本体の給付ダウンの方向を助長する効果を持つという点は事実だと思いますので、その面での公平性はどうかということであります。
 そういう意味で、この上限の設定というのは、私は不公平という観点で、過去、現在、将来、3つの比較の観点においていささか問題なしとはしないと見ています。特にこういう上限が設定されますと、いわゆるモラルハザードの問題も出てくるわけでありまして、リスクが制御されている場合に上限がセットされることによりダウンサイドがヘッジされれば、どんどんリスクをとって、収益拡大を図るというようなことが起こります。このことは、個別効率性の観点からは合理的な行動になるわけですけれども、全体からすれば非常にそれはまずいという状況になりますので、そういった問題も出てまいります。
 そういうモラルハザードのようなことを考えますと、これはもう少し検討していただきたいと思います。そして、これはお願いなのですが、こういう上限設定方式ではなくて、前回の特例基準額で示されたような過去にさかのぼって、ここでは過去法と書いてありますが、転がし方式で計算する方向の言わば延長線で、計算に用いる過去の利率を見直して、実質的に最低責任準備金を引き下げるような方向が考えられないのかということを少し考えておりまして、もし可能であればそういった計算もお示しいただければありがたいと思います。
 この方式でありますと、イメージで言えば債務超過になった企業の再建をする場合に、金融機関が金利の減免を行うといったようなことがよくあるわけですけれども、その金利の減免に当たるようなことでありまして、元本プラス若干の金利を含む債務をきちんと返済していただく。一部分について免除するといったことではなくて、全部返済していただく。国から借りた債務は最低でも元本だけはきちんと耳をそろえて返済するという姿勢があれば、厚生年金本体の被保険者の納得も得られやすいのではないかと私は感じております。そのあたり、もし可能であれば次回かその次でも結構なので、お示しいただければありがたいと思います。
○神野委員長 次回取り上げる論点ですが、まず有識者会議をおまとめていただいて、非常にありがとうございます。御苦労様でしたということと、その報告書を適切に基本的には反映した案になっていて、併記した論点についても取り入れられているという御指摘をいただいた上で、今の論点ですと次回すぐに取り上げる論点にかかわるA案、B案といいましょうか、つまり上限設定方式ではなく過去法等々の別途のことが考えられないかということですが、もちろん次回以降、委員の皆様方からこの点についても御議論を頂戴しますけれども、今の時点で事務局からコメントがあれば。いいですか、次回議論をしていただくと。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 次回に向けていろいろデータ等も用意したいと思います。議論していただけるような材料はそろえたいと思っております。
○神野委員長 よろしいですかね。準備をさせていただく。今のように事務局のほうで資料を作成していただくような論点を含めて頂戴できればと思います。いかがでございましょうか。
 今、逆に試案のほうに入りましたが、資料2についてはよろしいですか。駒村委員、いいですか。
○駒村委員 公的年金を研究していて、厚生年金にこの問題がいかに影響を与えないようにするかという視点でこの議論に参加しているわけでありまして、後で菊池先生の御意見も配付されていますので出るとは思いますけれども、後知恵的な評価かもしれませんが、甚だ困った制度が存在するねと思います。
 その上で、お聞きしたいところはあるのですけれども、一方では代行部分は給付の責任は本体が負うという規定がある。資料2の中にそう書いてある。一方では、ある種3階部分を持っているグループが出ていってくださいとお願いして代行部分をつくったわけではなくて、みずからつくっている。そして自治のもとで運営してきた。その自治での運営をするための権利と責任の対応関係がどうもずれているような気はしているのです。
 つまり、代行部分の責任は本体が負いつつ、しかし、自治で権限はあるというギャップがどうも過去の経緯を見ても釈然とはしないのですけれども、大企業の厚生年金基金についてはガバナンスがきちんと効いて、早く離脱できた。状況が変われば離脱したということで、それはガバナンスがちゃんと効いていたと評価できるわけですが、総合型における労使の自治というのはどういう実態だったのかなというのが非常に気にはなります。ちょっと抽象的ですけれども、そういう資料がわかればなと思っております。
○神野委員長 これは可能か、あるいは言わばどの論点というよりも、全体のこの問題に関する基本的な視点みたいなことですね。
○駒村委員 ある種そういう制度をつくった現在における評価でありますけれども、こういう制度ができた経緯はわかりましたが、こういう展開になった原因は何らかの形で厚生年金の加入者に負担をかける可能性があるわけですから、説明をしていただきたいと思います。
○神野委員長 これは議論にかかわる資料と、あるいは先ほど論点を3つ分けましたけれども、関連する論点は相互に、第1の論点をやっているときに関連する限りで2、3の論点に触れていただいても構いませんし、今は言わば通底するような論点になるかと思いますので、それについてはそのつど問題提起をしてもらっても構いませんが、事務局のほうでその手の自治に関するような資料などは可能ですか。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 どういうものが用意できるか考えてみます。また駒村先生と御相談させていただいて、御用意できるものは用意したいと思います。
○神野委員長 菊池委員、どうぞ。
○菊池委員 資料4で出していただいてありがとうございました。
 なぜ第1回でこんな早まってペーパーを出すのかと怒られるかもしれませんが、私は企業年金の専門家ではございませんので、技術的な制度論あたりになりますとなかなか貢献できませんので、厚生年金基金をどう考えるかという大枠の議論はできるかと思いまして、さらに第1回目から試論が出ると伺いまして、急遽まとめたものなので誤りなどがあるのではないかと恐れておりますが、大枠といたしましては私はこの試論の結論といいますか、方向性にはおおむね賛成であります。
 私は先ほど駒村委員のおっしゃったお話で言うと、自治と責任を、その兼ね合いをどう折り合いをつけてこの制度を、私はこの制度は社会的な使命というのは終えつつあるのではないかと考えていますので、その中でどう自治と責任の折り合いをつけて、うまく説明をつけて、新しい枠組みの中に落とし込んでいくかという視点から書いてございます。
 ただ、先ほど山口委員おっしゃったような、どこまで財政的に譲れるのか譲れないのかとか、そういったことについては別途議論がいろいろあるのではないかと思います。
 もう一つ感じますに、公的年金との兼ね合いで、広い意味で老後の所得保障をどう考えていくかという視点で考えますと、このペーパーにも書かせていただきましたが、年金部会でもいろいろ議論してまいりましたけれども、方向性としてはうまく通らなかったものはありましたが、低所得者、低年金者への支援を拡充する一方で、中高所得の年金受給者を少し抑制していくという方向性があったかと思います。
 さらに全体として見ましても、マクロ経済スライドは基礎年金にもかかっているわけですので、私は中長期的には公的年金の役割というものは、少しずつ相対的な位置づけというのは縮減とまで言えるかどうかわかりませんが、なかなか公的年金だけでは厳しいという部分が出てくるのではないかと思っているわけです。
 そうすると、私的な所得保障手段のあり方というのも一方で考える必要があって、この場もその一環だと思うのですけれども、ただ、公的年金のあり方を正面から考えますと、今回2番目の論点だと思うのですが、移行に関してかなり丁寧な新しい企業年金の枠組みを含めてお考えになられているなと思うのですけれども、他方でそういった配慮がまだ行き届いていない、例えば個人型のDCですとか、国民年金基金ですとか、そういったもののあり方というのはどうなるのかなというのが気になるところです。
 それは今回の委員会の直接の枠組みでないことは承知しているのですが、少なくともこの移行にかかわる部分で企業年金のあり方を考えるに当たって、参考資料としてでも結構ですので、例えば個人型ですとか国民年金基金の状況がどうなっているのかというあたりも見据えながら議論するというのもあり得るのではないかと思いますので、その点は要望させていただければと思います。
 以上です。
○神野委員長 今の資料は大丈夫ですね。それでは、その資料をお願いいたします。
 あといかがでございましょうか。資料2についてでも構いませんし、今のような資料あるいは2回以降の議論を生産的に進める上で、きょう準備しておかなければならないようなことについて御発言ございませんでしょうか。柿木委員、どうぞ。
○柿木委員 資料3なのですけれども、企業年金の持続可能性を高める施策の推進ということで、私ども経団連では企業年金の選択肢、この多様化につきまして、かなりいろんなことを言ってきたわけですが、今回こういった一歩踏み込んだ内容が出たということで、今回の案については非常に評価したいと思っております。
 ただ、1つ申し上げたいのは特にDCにつきまして、税制面の対応、現行制度のいろんな不備、例えばDCの拠出限度額の引き上げだとか、中途の引き出し要件の緩和だとか、できればそういったところも我々経団連の企業からもいろんな要望を募って、今回の改正案にそういった要望を取り入れていただければと思っておりますので、これは今、成案はありませんけれども、今後こういった点について議論させていただければと思っております。
○神野委員長 ありがとうございます。
 そうすると、当面、今は第2番目の論点について御意見を頂戴したということで伺ってもよろしいですね。
○柿木委員 はい、結構です。
○神野委員長 花井委員、どうぞ。
○花井委員 私も山口先生と一緒に有識者会議に参加させていただきました。今回の方向性については賛成するということをまず述べたいと思います。
 今回の試案で今の時点でわからない点について質問をしたいと思います。
 4ページ(3)?のア、特例措置の適用条件のところですが、現行特例の適用条件は分割納付の特例及び納付額の特例となっていますが、冒頭に「過去において相当の運営努力を行っていること」というのが条件に挙げられています。行っていなかったところについての扱いはどうなるのでしょうか。
 8ページの一番下の○のDCの問題について、資料3-2の3ページで集団運用型DCの創設となっていますが、真ん中の資産運用委員会をつくるとあり、これを8ページの下の2つ目の○と突き合わせて見ますと、事業主の責任はどういう形で出てくるのか見えない。投資教育は行わなくてもよいこととするとなっていますが、先ほどの説明ではDCのところでは投資教育という言葉が出てきていたと思います。その辺は今後どうなるのかわからないので、事業主の責任のあり方はどこでどのように出てくるのか教えていただければと思います。
 同じ資料の最後のページですが、下の代行割れのところが5年後で右側に移っていっています。5年以内に申請するということだと思いますが、例えば5年ぎりぎりに申請して、そこから手続が始まった場合、10年の間というのは当然出てくると思うのですが、その辺の扱いはどのようになるのか、イメージでもいいので教えていただければと思います。
 最後に、厚生年金は中小企業の労働者を含めて、企業年金がない人たちも、全て払った、ある意味では国民の財産でもありますので、厚生年金本体に財政穴埋めすることや、税はもってのほかですが、できる限り避けるべきだということを、あえて述べさせていただきたいと思います。
 以上です。
○神野委員長 とりあえず3点の質問について、一番初めの相当の経営努力をしなかった場合とか、8ページに関連する点で2点ばかりございますので、お願いできますか。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 まず1点目の御質問ですが、現在の特例解散の場合の適用条件として、先ほど御指摘のありました4ページの相当の運営努力ということで、これを具体的に見る基準として先ほど申し上げました掛金の適正な設定とか、あるいは給付抑制のための必要な措置を実施しているかどうかという資料を事前協議という形で上げてきていただいて、チェックをしています。ですから、それに満たない場合というのは特例解散の対象にならないということでございます。
 2つ目の集団運用型DCの事業主の関与といいますか、責任というところでございますが、資料3-2の3ページをごらんいただきますと、今のDC法のつくりは事業主が各従業員に対して投資教育の責任を負うという形になっておりますけれども、言わば個々の従業員に対する投資教育に替えて、資産運用委員会をつくる、ということです。それをつくる過程においては事業主ももちろん関与していくというイメージだと思いますが、そういうことを通じて運用商品をスクリーニングをしていくという意味で、これをもって事業主の投資教育責任を果たしたとみなすというか、法律的に見ますとそこをある種代替として、事業主としては投資教育の責任を果たしているのだということを見なすというものを、こういう集団運用型の中では考えているということでございます。
 最後のプロセスのところで、5年ぎりぎりの申請というところでございますけれども、通常、先ほど説明の中でも申し上げましたが、申請があった後いろいろ記録の突合とかありますが、大体1年から1年半ぐらいですので、できるだけこの5年間ぎりぎりにならないように、先ほど清算型解散という新しい仕組みを入れると申し上げましたが、そういう中で余りぎりぎりにならないようにできるだけ整理をしていくということでございます。申請期限が5年間ありますので、場合によっては解散の認可そのものが少しまたぐ場合もあり得ることはあり得ると思います。
○花井委員 私が想定しましたのは、相当の努力を行っているところではなくて、努力を行っていないところは、例えば長野は異例で特別だと思いますが、全然代議員会にも報告しないとか、いわゆるずさんな運営をしてきた基金がもし仮にあったとしたら、それはずっと残るということになるのでしょうか。そこがどうなのか見えなかったので伺います。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 もちろん、そこはできるだけそういう努力を促していくということの指導をやっていくのですが、現行法の中でも最後に解散命令という、発動されたことはございませんけれども、非常に強いものがありますので、できるだけそういう事態にならないようにある程度運営努力を促しながら、自主解散なり清算型解散で整理をしていくということかなと思っております。
○神野委員長 わかりました。どうもありがとうございました。
 あといかがでございましょうか。参考人でももちろん何かありましたら。
○杤原参考人 参考人で恐縮でございます。
 私どもは会員に中小企業が多いものですから、倒産する前に解散する場合のソフトランディングをかねてお願いしてきておりました。内容を拝見しますと非常に熟慮されてたたき上げられた案だということは拝察いたしております。
 この代行割れ問題につきましては、今ちょうど税と社会保障の一体改革をやっている最中でございますので、年金制度の抜本改革の前にどうしても片づけておかなくてはならない大切な問題だと思っております。
 ただ、1点御質問がございますのは、廃止の方向は多分やむを得ない方向なのではないかと拝見をいたしますけれども、いかんせん当事者がおられますので、特に健全な基金の皆様がどのように思われているのかということを、もし資料なりがあれば、あるいは感触なりがあれば教えていただければ、今後の議論の参考になるのではないかと思っておりまして、そこのところだけ御確認でございます。
○神野委員長 ヒアリングなども考えたいと思っておりますが、何か事務局、いいですか。ヒアリング等々でそこは対応していきたいと思っております。
 柿木委員、どうぞ。
○柿木委員 今のに関連してですけれども、私ども経団連の中でもいろんな意見があるので言い難いのですが、中には非常に健全に運営している基金、健全化に向けて努力している基金があって、代行制度が長い歴史の中で果たしてきた役割を考えると、どうしても廃止しなければいけないのか。廃止でない選択肢は残らないのかという意見が中にもございます。これは必ずしも経団連内部の一致した意見ではございませんけれども、そういったことについてぜひこの中でも少し検討してほしいという意見があることを申し添えたいと思います。
○神野委員長 ありがとうございます。
 ヒアリングを含めて、少しそういう声については対応していきたいと思っております。あとはいかがでしょうか。
○駒村委員 これは資料3-1の内容、書き方について言及してもいいわけですね。先ほど山口先生がおっしゃった部分にも重なるのですけれども、3ページ目ですが、やはりもう少し強めに基金の運営努力についても強調してもらいたいという感じはします。例えば?で基金の運用状況を可能な限りと、もっと強めていただきたいなと思いますし、その下の段についても国力。こう見ると厚生年金本体の将来財政の影響という観点からと、これは影響がある可能性を言及しているわけですから、先ほどの山口先生の御意見とつながりますけれども、2つ案があるならば、どちらを選ぶかというのは当然最小限の影響の選択肢を選ぶべきなので、これも可能な限り回避すべきだろうと思います。その考え方は選択肢が幾つかあるならば、年金本体への影響をまず回避する。
 その次はなお書きからがもう少し強めていただいて、その上で倒産というのは避けていかなければいけない部分もあると思いますので、これは産業政策の性格もありますので、連携というよりは政府が責任を持って他省庁からの支援をきちんと求めていくなり、もう少し強く書き方ができないのかと思います。借りたお金を返すというのがまず基本でありますので、これまでもそうだったわけですので、まずそこの部分はきちんと踏んだ上で5ページの案については先ほど山口先生がおっしゃったように、やすきのほうに流れないように十分な案を考えたほうがいい。ただ、原則は本体に影響を与えないということを強調したほうがいいと思います。
○神野委員長 御意見だということで頂戴しておいて、また各論点にいったときに、ほかの委員の皆様方の御意見も頂戴したいと思っております。
 ほかいかがでございましょうか。
○宮本委員 具体的な論点に入る前に申し上げたいと思うのですが、先ほど駒村委員が先におっしゃった労使自治について、私どもも、各企業ごとに基金の状況がどうなっているのかということを調べても、実は労働組合側、つまり労働者側から経営側に情報提供を求めても、情報がほとんど入っていないというのが事実です。先ほど事務局がデータを提出していただくということでしたので、私もぜひ見たいと思うのですが、私どもが組織している労働組合ですら総合型のところで情報がほとんどない。昨年秋、私どもの組織で調べても、代行割れしているのかしていないのかすら情報が労働者に入っていない。私はこの専門委員会がスタートしたことを機に、基金の皆さん方もしっかり加入企業に対して情報を開示してもらいたいし、そして、加入されている企業側も従業員代表の皆さん方に情報を開示して、みんなで議論をしてもらうという雰囲気ぜひつくってもらいたいと思っています。
 私は今、こういう労働組合の組織の事務方の責任者をしておりますが、私自身もその昔、100人少しぐらいの企業の責任をもつ立場にあって、私も総合型の企業年金を導入するときにかかわりました。しかし、そのときも先ほど申し上げたとおり、加入者を5,000人以上何としても集めなければならないから、とりあえず従業員代表さん、判を押してくれ、細かいことを言うなといわれて集められた記憶が実はあります。私の仲間の企業のところでもそういうところが多くあったというのが事実であることを考えると、当時からガバナンスとか労使自治ということについては、この制度が導入されたときから少し足りなかったという反省も含めて、私は今回の検討会は賛成の立場でぜひ前向きに考えていってもらいたいと思いますし、関係する皆さん方も情報公開はすべきだと思っております。
○神野委員長 自治の決定に参加することが不十分だったということであれば、責任と言われてもということですかね。その点は何か資料と言っても難しいかもしれないのですが、この機会に少しそうした問題点も喚起できるようなことができれば。何かありますか。
○駒村委員 先ほど柿木さんがおっしゃった、まだ制度廃止について釈然としない、優良なところは残したいという会員企業の御意見もあるという話も今の話につながるわけですが、では労働者は理解をしているのか。加入者がちゃんと代議員会でそういう理解をした意見なのか、ガバナンスが今のお話を聞いてもかなりあやふやな感じをするわけですが、誰の御希望なのかがいま一つ見えてこない。
 基本的には私はこの報告書の考え方、基本的なラインは賛成でありますけれども、一部にまだ良好なところを残せるのではないかという御意見もあることは承知していますが、それは誰の意見なのかいま一つわからないので、その辺もあわせてヒアリング等でお聞きできればなと思うのですけれども、今のガバナンスの状態が少なくとも総合型については不透明なので、先ほど言及したわけです。
○神野委員長 いずれにしても健全な基金の要求と言っても、その要求はどういうガバナンスに基づいた要求なのかということでしょうか。何かありますか。山口委員、どうぞ。
○山口委員 これは純粋に質問なのですけれども、先ほど資料2に基づいて代行割れのリスクと積立水準という、14ページとか15ページでお話いただきましたこととの関連で、資料3-2の最後のページで代行割れになっているところと代行割れになっていないところの取り扱いが書いてある資料、これら2つの資料を重ねて見るときに、1.3倍とか1.7倍ぐらいのバッファーがいるから、例えば1.3倍というものを取ったとしたら、1.3倍以下のところは要するにバッファーとしては不十分である。したがって、そういうところはどちらかと言えば特例解散の適用にするというようなニュアンスが含まれているということですか。それとも、やはり代行割れにならないと、バッファーのところにいても代行割れになって初めて特例解散になるのかという辺りについて確認させていただきたいのです。もし特例解散が有利な方法であれば、それでバッファーのところは普通の解散だとすれば、特例解散になるためには代行割れになったほうがいいわけですね。その辺がこの資料とこの資料とつなげて、どういうふうに読めばいいのかというのがよくわからないので、教えていただきたいのですが。これは意見ではなくて単なる質問です。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 まず、これは試案のイメージということでございます。8ページのプロセスで申し上げますと、基本的に特例解散というのは5年以内の時限措置というイメージでございますので、5年以降のところについては特例制度はない。そういう意味では特例的にやるのであれば、5年間という期間が適切かどうかという御議論はあるかと思いますが、ある程時間的な限度は必要だろうということでございます。
 その上で、最初の5年間の間に例えば非常に無理な運用をして、かなり基金の平均から外れたことをやって運用で穴をあけた。それが結果的に代行割れになったということに関しては、もちろん先ほど申しました特例そのものの拡大の対象を入口で絞るという条件もございますし、先ほどちょっと説明の中で申し上げました、基金の平均的な言わばポートフォリオで市場に連動して回したとしたら、このぐらいは持っているはずだという一定水準をつくりまして、そこよりも割ってしまっているような場合は、そこは完全に母体企業が責任を持って負っていくというある種のモラルハザードといいますか、俗に言う「あるだけ解散」ということは認めないという仕組みを考えてございます。
○神野委員長 山口委員よろしいですか。何か再度あれば。
○山口委員 1.3倍とか1.7倍というのは、特例措置の適用問題とは直接リンクしていないわけですね。これはだから基金の財政状況の実態を説明されているものと理解すればよいということですね。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 はい。実績データに基づく1つの分析ということでございます。
○神野委員長 ほかいかがでございましょうか。よろしいですか。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 先ほどの補足でございます。
 1.3とか1.7というのは、もちろん1つ実績データから出たものでございます。先ほど何人かの委員からもお話がありましたように、健全というものを何をもってはかるかという課題がありますし、そういうことも1つの材料としてお使いいただければということで用意をさせていただいております。
○神野委員長 菊池委員、どうぞ。
○菊池委員 1点だけなのですけれども、私のペーパーの最後のほうで書いているのですが、基金制度を廃止すべきではないんだ、そこは選択に委ねて残りたいところは残ってもいいということができないかと私も考えたのですけれども、ある意味、本体部分から見ますと、どこで区切りをつけるかはありますが、ある程度割り引いてあげるので戻ってきてもよいということでやるとすれば、その中で戻らない、戻りたくないという決断を尊重するとしても、でも将来的に何かあって代行割れになったら戻ってきてもいいよという、そういうことは無理だと思うのです。それは片道切符で行かざるを得ない。ただ、そうすることが厚生年金という制度の中でできるかというのは、非常に無理があるというか、例えば先ほど資料にもありましたけれども、厚生年金部分全額を基金で出しているわけでもありませんですし、つまり本体部分で基金の方の厚生年金を出している部分もあるわけですし、さらに障害、遺族という大きな公的年金の枠組みの中での一部分を独立させて運用することを今まで認めてきたわけですから、その意味で、ではそれ以外の公的年金部分も含めて出ていくのですかという話も原則的にはしなければいけないのかもしれないですし、その辺、一部の基金だけ残すという理屈を考えるのは私はなかなか厳しいのではないかと思います。
 ある意味で集団的なコントラクト・アウトというか、そういうものを認めるということですので、それは日本の国民皆年金の姿を少し変えることにもなると思いますし、私は非常に難しいと思っております。
 以上です。
○神野委員長 どうもありがとうございました。これも駒村委員と同じような発想方法ですね。つまり社会の構成員を全て排除しないという公的な年金の性格から言っていかがなものかという御意見ですね。駒村委員、何か補足はありますか。
○駒村委員 菊池先生の御意見とほとんど一緒で、60年前にこの制度をつくったときには、時代の社会背景があって年金を充実する中でできてしまった制度に、どういうタイミングで総合型の方が入っていったのか、過去の個々のあれはわかりませんけれども、改めて今この制度を続けるか続けないかという判断をしたときに、もし続けるとすれば先ほどの菊池先生のような問題をよく整理しなければいけないわけですし、続けた場合については当然同じことを繰り返してはいけないので、代行部分は保証しませんよというところも改めて制度をそれに合せて変えていかなければいけない部分もある。だけれども、それは原則論から見れば公的年金にひびを入れてしまうことになってしまいますので、望ましくないのではないかと思います。
○神野委員長 ありがとうございます。あといかがでございますか。よろしいですか。
 そうしましたらば、どうもありがとうございました。議事運営に御協力をいただいて、かなり生産的に、建設的に御議論を頂戴したことを深く感謝申し上げます。途中でも申し上げましたように、次回以降は3つの論点、したがって最初の代行割れ問題の対応ということから次回以降の議事を進めてまいりたいと思っております。
 ほかに御意見がないようでございますので、本日はこれで終了したいと思いますが、事務局から次回以降の連絡事項がございましたらお願いいたします。
○渡辺企業年金国民年金基金課長 御要望のございました資料につきまして、でき得る限り御用意させていただきたいと思います。
 次回は11月19日月曜日、午前10時からを予定しておりますが、詳細は追って御連絡させていただきます。
○神野委員長 それでは、どうもありがとうございました。本日の審議につきましてはこれにて終了させていただきます。
 御多用のところ、また、夜遅くまでお集まりいただいたことに重ねて感謝を申し上げる次第でございます。どうもありがとうございました。


(了)

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