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2012年6月28日 平成24年度第2回化学物質のリスク評価に係る企画検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

○日時

平成24年6月28日(木)14:00~16:00


○場所

厚生労働省労働基準局第2会議室


○議事

○瀧ヶ平化学物質評価室長補佐 ただいまより「第2回リスク評価に係る企画検討会」を開催いたします。櫻井座長、以後の進行をよろしくお願いいたします。
○櫻井座長 議事進行を務めます。よろしくお願いいたします。まず、事務局から今日の議事予定と資料の確認をお願いいたします。
○瀧ヶ平化学物質評価室長補佐 「化学物質のリスク評価に係る企画検討会(第2回)」ということで、議事としては「有害物ばく露作業報告対象物質の選定について」を予定しております。
 裏面に「資料一覧」がございますので、それを見ながら確認をしていただければと思います。資料としては「平成25年度有害物ばく露作業報告対象物質の選定について(案)」。参考1として「化学物質のリスク評価に係る企画検討会開催要綱及び参集者名簿」。参考2として「リスク評価の推進体制について」。参考3が「リスク評価対象物質・案件の選定の考え方」。参考4として「有害物ばく露作業報告制度及びこれまでの選定経緯・対象物質について」。参考5として「これまでのリスク評価の進捗状況一覧」。参考6として「有機溶剤中毒予防規則関係資料」です。参考7が同じく規則の条文を書いているものでございます。参考8として、平成24年4月17日の第1回企画検討会の資料の「労働者の健康障害防止にかかる化学物質のリスク評価方針(平成24年度)について」です。もう1枚、リーフレットを付けております。過不足がありましたらお申し付けいただければと思います。
○櫻井座長 皆様、お手元に資料が全部そろっておられるようですので議事に入ります。議題1について事務局から説明をお願いいたします。
○松井化学物質評価室長 「資料」と右肩に書いている資料をご覧いただきたいと思います。
 今日の議題としては、リスク評価の今後の対象物質を選定していただくのですが、今日選定いただくものは「平成25年有害物ばく露作業報告対象物質」ということになると考えていただければと思います。話の成り行きが若干ややこしい所がありますので、そもそも、有害物ばく露作業報告はどういうものかというところから簡単にご説明をしたいと思います。
 (1)の「目的」をご覧ください。労働基準局のほうでリスク評価をしているわけですけれども、(1)の第2段落のとおり、有害性の情報と労働者の化学物質へのばく露の状況を調査して、両方を比較することでリスクの判断をしてきています。3つ目の段落にありますように、労働者のばく露の状況を調査するに当たっては、対象となります化学物質の製造・取扱の状況をある程度網羅的に把握して、その全体像の中からいちばんばく露があってリスクが高そうな所を調査することが必要になってまいります。まず、前段の製造・取扱の状況の全体像の把握に当たり、これは法令に基づいた規定で、下線部にありますように、対象の化学物質を年間500kg以上製造・取扱をする事業場は、対象物質の用途や労働者が行う作業の種類、それから取扱の状況について、量ですとか物理的な性状、温度など、こういったものを報告しなければならないと制度で決めており、事業者は報告しなければいけないというものでございます。こういったものをまず入口として、リスク評価をやってきているわけでございます。
 (2)にありますように、今回選定していただく物質については、本年内に告示し、事業者の方に知っていただきます。来年の1月から12月の間に製造・取扱をしました先ほどの用途や作業の種類、どういうように取り扱ったかを報告いただく。報告の期間が再来年の平成26年の1月から3月で、その間に労働基準監督署のほうに報告をいただく。このような制度に基づく報告でございますので、予め事業者の方に知っていただいて、それから報告期間があって報告をいただくという形になりますので、単純に考えてイメージするようなスケジュールより実際にリスク評価するのはちょっと先になるという実態がございます。
 (3)ですが、提出されたものをどうするか。こういった対象化学物の取扱の状況が出てまいりますので、そのうちからいちばんばく露が大きそうな事業場を抽出し、実際にどのぐらいの濃度のばく露があるかを測っております。これが初期リスク評価に使われて、さらにリスクが高ければ、具体的なリスクの高い用途や作業を特定して、さらに詳細にリスク評価をしているということでございます。今回、選定いただく物質については、平成26年度以降にこの調査をやっていくということになります。
 (4)のところに書いておりますのは、事業者の方にこういった報告をしていただくに当たっては、事業者がその物質を使っていることを知らないといけないので、事業者がほかの事業者から譲渡を受けるときに、こういう物質が入っているということを知らないといけません。そのために情報伝達の方法として、SDSと略して言っておりますけれども、化学物質の安全性についての情報を提供するという制度がございますので、この制度の対象になっている物質をいまのところリスク評価の対象にしているということがございます。ちょっと長めでしたが、そもそもこういうようなことで選んでいただくというものでございます。
 2頁にまいります。いままで、平成18年度からリスク評価をしてきておりますが、どのようなことで選んできたかを簡単に整理しております。大きく2つの時期に分かれておりまして、(1)の平成20年度までの選定物質ですが、まずいちばん重篤な健康障害を引き起こすと考えられる発がん性に注目して、下線部にありますように、IARCの発がん性の評価で1から2Bになっている物質を中心に選定しました。平成20年度まではがん原性に着目して選定しまして、(1)の下の2行にありますように、この間に78物質を選んでおり、そのうち70物質がリスク評価終了、あるいはばく露作業報告の提出がなかったので取扱が非常に少なく、これはやらなくていいだろうという判断をしたという状況です。
 その他の8物質については1回、先ほどの有害物ばく露作業報告の提出を求めたところ、どこからも出てこなかったものをもう1度告示をして、提出をしていただく。今年の1月から3月に再告示の結果、出てきた物質が4物質ほどあります。あとは事業場での測定方法が確立するのに少し時間がかかった物質、こういった8物質が残っているということでございます。
 (2)ですけれども、平成21年以降、実際には平成21年から企画検討会という体制になってきているわけですが、平成21年以降は発がん性に限らず、重篤な健康障害のおそれのある物質を対象として選定しているということで、委員の皆様方、それからパブリック・コメントをかけて出てきたものから選定してきております。実際には生殖毒性や神経毒性が重要だろうということで、GHSの区分1になるリストをお配りして、そういったものを参考に選定していただいております。
 これらに限らず、発がん性について言うと、平成21年以降選定していただいた物質が6物質あります。これは後で出てまいりますけれども、国の委託試験でがん原性試験をして、その結果が陽性であった物質については厚生労働大臣が指針を公表しております。こういった物質を4物質、既に選定しており、1,2ジクロロプロパンなど4物質ございますが、そのほかにも発がん性のある物質を選んだことがありまして、6物質ございます。生殖毒性につきましては18物質、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、略してDEHPと言っております、ポリ塩化ビニルの可塑剤などに使われている物質など18物質をいままで選んでいただいています。神経毒性については、2-アミノエタノールなど32物質です。これは1つの物質で複数の有害性があると着目した物質がありますので、合計すると、この延べよりはもう少し少なくなります。そのほかにメチレンビス(4・1フェニレン)=ジ イソシアネート(MDI)のような呼吸器感作性などに着目して選んでいただいた物質がある。この外数として、ナノマテリアル5物質がございます。
 こういったことで、下の下線部にございますように、平成21年に選んでいただいた物質は早いものは平成23年度から調査に入っていて、平成23年度で初期評価に入っており、そのうち2物質がリスク評価を終了している。選んでいるペースから言うと、10物質ぐらいが、いままでに終わっていないといけないのですが、少し測定法の確立に手間どったり、あるいは調査したけれども、もう少し調査しないといけないということもありました。とりあえず、平成21年度以降は2物質終わっていて、残り46物質をリスク評価する必要があるということでございます。
 先ほどのスケジュールでいきますと、46物質を一気にやるのではなくて、来年の1~3月に有害物ばく露作業報告が出てくる物質も含めて46物質ですので、3年ぐらいにまたがった物質が46物質ぐらいあるということでございます。
 3が今回の選定に当たっての案でございます。まず、(1)「新たに選定する物質」が○1○2○3ということで次の頁までまたがっておりますが、大きく3項目ございます。○1として、有機溶剤中毒予防規則、有機則の対象物質で、発がん性のおそれのあるものということで、これは事務局から提案させていただきます。既に有機則の対象になっている物質というのは、この規則でどういう業務の場合に規制がかかるかというものを指定しまして、その業務については、蒸気の発散の抑制措置、作業環境測定、あるいは特別の項目の健康診断など、一揃いの規制をかけております。
 ただ、この規則自体は発がん性に着目したというよりは、有機溶剤の一般的な毒性であります神経系への影響や肝臓への影響、いわゆる有機溶剤中毒に着目した規制ですので、発がんのおそれのある物質について必ずしも十分かというような懸念はございます。そういうことがありますので、発がん性のある物質については、規制対象業務以外の業務であってもリスクがある可能性がある、その辺の検討ですとか、あるいは遅発性の疾病に対しては作業記録や健康診断の記録を30年間保存するように、別の特化則の中では位置づけているような物質があります。そういったことの必要性も検討して、必要がある場合には規制を拡充していったほうが労働者の健康障害防止には良いのではないかということで、あえて規制の対象物質に既になっているのではありますけれども、少しリスク評価の対象として考えてはどうか。
 ちょうど今年、政省令改正を行う予定の3物質の中にエチルベンゼンがございます。エチルベンゼンは有機溶剤として使用されていて、かつ発がん性も動物実験で確認されている物質です。こういう物質を安衛法の特別規則の中でどういうように規制していくか、というところをちょうどいま、内閣法制局の審査を受けているところでございます。これは規制はされる予定で、どのように規制するかというのがまだ政府部内で議論をしているという状況でございます。ただ、この規制の方向がある程度定まって、エチルベンゼンの規制が公布され、施行されると、有機溶剤であって発がん性のおそれのある物質にはこういう規制をかけたらいいのではないかということが道筋として見えてまいります。ちょうど、このタイミングでリスク評価の対象として選んではどうかという提案です。
 中身としましてはIARCの発がん性評価が2Aのもの、2Bのもの、それから先ほどの国の委託のがん原性指針で陽性であって指針を公表しているもの、こういうものについてはこのような検討を行って、必要に応じて規制の見直し等を行ってはどうかということでございます。
 先ほど、平成26年度からリスク評価の調査と申し上げました。これについては既に規制がかかっている部分もありますので、リスク評価のやり方、あるいは規制の考え方は、またリスク評価検討会、あるいは健康障害防止措置に係る検討会で検討いただいて、場合によっては一部をもう少し早めて規制を検討することも含め、検討いただくことでどうかと考えております。
 ○2として、この有機則の対象ではないのですが、やはりがん原性の指針を公表しているものというものがございます。このがん原性の指針なのですが、もともとは国の委託試験であるがん原性試験で陽性になったものの扱いについて、かなり遡るのですが、昭和49年から平成16年度まで職業がん対策専門家会議というものが、労働基準局長が諮問する有識者の会合としてございました。その中でいろいろな職業がん対策の重要な検討をしていただいたわけですけれども、いろいろながん原性のおそれのある化学物質の規制あるいは行政指導の仕方について一度整理をしていただいたことがございます。そのときには動物を用いて、がん原性が試験で確認されたもののうち、労働者に発がんを誘発するおそれが特に高いもの、強いおそれのあるものについては特別規則なりの規制をかけて、それ以外のものについては行政指導でいろいろな項目の指導をするという整理をしております。
 そのときの基準として並んでいるのが、まず動物試験で陽性であって、その動物試験の結果、発がん性の評価、あるいはそれに加えてヒトの症例の報告や疫学調査、労働者のばく露の状況等を勘案して、労働者にがんを起こす可能性が強いものについては制度による規制をかけるというようなことになっております。動物試験で陽性になったものでがんを起こす可能性があるというものについては、いままでは安衛法の第28条第3項に、大臣が重度の健康障害を労働者に引き起こす可能性のあるものについて、技術的な指針を公表するようになっていますので、その制度で指針を公表し、大臣が指導をするということで扱ってきています。ですから、必ずしも国が行った試験でがん原性が確認されたからといって、そのまま特別規則の対象にしているわけではなくて、指針があるという状況の物質があるわけです。ただ、いまリスク評価の仕組みができてきていますので、こういった物質についてもリスク評価をして、労働者のリスクが高いということであれば特別規則の規制対象にしていくこととしてはどうか。
 ここの議論については、既に平成22年に先ほど申し上げましたがん原性の対象になっている4物質、これを選定いただいており、今年度からその物質を順次、実際のばく露実態調査をやっていくことにしております。さらにMSDSの交付義務のある物質で、3物質ほど残っているものがありますので、今回これも選定していただいてはどうかという提案でございます。
 ○3ですが、これは委員の方からご提案をいただいているものです。発がん性のおそれのある芳香族アミンです。これには、アゾ染料を使った繊維製品を消費者が使用するとき、アゾ染料が繊維製品などから溶出して、それが分解して芳香族アミンが生じ、その芳香族アミンが発がん性の場合には消費者に影響がある可能性があるという議論がございます。既に業界団体では自主的な検査を行って、自主的に規制を行っている状況です。厚生労働省のほうでも、来月の審議会の部会で、今後、そういった製品についてどう考えていったらいいかという検討を行うことにしております。これは繊維製品等、消費者が製品を使用する段階のリスクの関連です。ただ、同じ化学物質を労働現場でも使っておりますので、ばく露の経路なり、管理の仕方は全く違うとはいっても、必要なものは検討しないといけないのではないかというご提案でございます。IARCで、発がん性のおそれとあるという評価区分で1から2Bに当たっている物質で、EUなどでは既に繊維製品等を使ったときに溶出のおそれがある芳香族アミンは、一定の溶出量以上があるような場合には使ってはいけないとなっています。こういったものをチェックしますと、安衛法の規制がかかっていたり、またリスク評価の対象として既に選んでいるものが大半なのですが、パラ-クロロアニリンについてはまだ規制の対象でもないし、リスク評価の対象としても選定していないので、今回選定してはどうかということでございます。
 その下の※があります。発がん性については、IARCの評価を基準にして、いろいろな物質のリスク評価が相当終わってきています。先ほどの国のがん原性試験で陽性であった物質も選んでいくというようなことを考えています。こういったことを考えていくと、国のがん原性試験がもっと早くがん原性の評価をして、それをリスク評価にかけていったほうがいいのではないかというようなことがございます。いま委託でやっているがん原性試験の手法の効率化、がん原性の評価の効率化についてリスク評価検討会のほうで検討いただいて、こういったものも合わせて早めてはどうか。ちょっと、これは物質選定と直接の関係ではないのですが、合わせて提案をさせていただきます。
 4頁の(2)のナノマテリアルについては、既に5物質、酸化チタンのナノ粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、ナノ銀の5種類をリスク評価の対象として選んでいただいて、今年度から酸化チタンのナノ粒子のばく露実態調査を開始することにしております。後続物質のうち、カーボンブラックについてはMSDSの対象義務がありますので、平成25年有害物ばく露作業報告の対象としてはどうか。実は、そのほかの物質につきましてはMSDSの交付義務がないか、あってもナノサイズのものを切り分けて譲渡するときに知らせるという仕組みにまだなっておりません。ところがナノマテリアルについては製造している事業者、使用している事業者が相当程度わかっておりますので、こういったところからたどって調査をすべき事業場を調べてリスク評価をしていくという手法を取れるであろうということをいま考えています。とりあえず、ナノマテリアルについてはカーボンブラックを平成25年の有害物質ばく露作業報告の対象としてはどうかということです。
 (3)の再告示物質というのは、既に選んでいただいて報告を受けたのですが、どこからも出てこなくて、ただ、ひょっとして、たまたま報告期間で使われていなかっただけかもしれませんので、もう1度報告を受けて、そこでなければあまり使われていないと判断してはどうか。1物質ジボランについては、再告示をしてはどうかという案です。
 (4)のパブリック・コメントなのですが、あとで一覧表でご説明しますけれども、ピロールと炭酸ジメチル、エチレングリコールジメチルエーテルの3物質の提案がありました。個々にはのちほど説明しますが、いずれもMSDSの報告義務の対象となっていないので、とりあえず今回の選定は見送って、今後検討することとしてはどうかという案でございます。
 5頁です。先ほどちょっと物質の状況を説明しましたが、数だけを整理したのがこの表でございます。リスク評価の未了が合計で、いま54ありまして、平成24年度は12物質、平成25年度以降は27物質、それから平成25年度の有害物ばく露作業報告が15物質あります。平成25年度以降のばく露実態調査予定の27という数字がちょっと多いので、これは予算の確保の努力も含めて役所のほうで取り組んでまいりたいということでございます。
 6頁以下に、先ほどの候補物質のリストを挙げております。6頁から7頁にかけて、IARCで2B以上の評価を受けていて、かつ既に有機則の対象である物質が並んでおります。最初のテトラクロロエチレンから、次の頁のジクロロメタンまでが塩素系の有機溶剤です。
 テトラクロロエチレンは、代替フロン合成原料とか、ドライクリーニングの溶剤などに使われているもので、発がん性の評価はIARCで2Aです。ほかの毒性として神経系への毒性など、有機溶剤としての毒性があるということです。あと、授乳影響を通じた生殖毒性があるということで、女性則の危険有害業務ということで女性の就業規制の対象となっています。
 トリクロロエチレンもやはり代替フロン合成原料などに使われ、これも生殖毒性が指摘されております。女性則の危険有害業務の対象となっております。
 クロロホルムはいろいろな用途に使われておりまして、化審法の報告によると製造・輸入量年間8万tと相当使われている物質でございます。発がん性以外にもいろいろな有害性の指摘がされているところで、これは化審法の優先評価化学物質でもございます。
 四塩化炭素につきましては、モントリオール議定書の対象物質で、オゾン層保護のための規制によって、国内ではほかの物質の原料として使用される場合、あるいは試験研究又は分析用途に限ってということで、これらの用途に使われることを証明して経済産業省に届け出た人だけが使用しております。ひょっとしたら相当使われていないのですが、一応有害物ばく露作業報告の対象として告示をして報告を取って、どういう状況かを確認はしたいということでございます。
 1,4-ジオキサンもいろいろな溶剤に使われています。中枢神経系等への影響があり、やはり化審法の優先評価把握物質になっています。
 次の頁です。1,2-ジクロロエタンは、合成原料などに使われています。化審法の事業者の報告によると、年間で約30万t使われているということでございます。発がん性以外にもさまざまな有害性が指摘されており、やはり化審法の優先化学評価化学物質です。
 ジクロロメタンは洗浄剤等に使われております。発がん性がIARCの区分で2B、中枢神経系等への有機溶剤としての毒性があって、やはり化審法の優先評価化学物質です。
 スチレンですが、これはポリスチレンなどの合成原料として相当広く使われております。化審法による事業者からの報告によると、年間約300万t使われているということであります。IARCで2B、生殖毒性、中枢神経等への影響があって、生殖毒性がありますのでこれは女性則の危険有害業務の対象物質であり、化審法の優先評価化学物質でもあるということでございます。 
 いちばん下のメチルイソブチルケトンは、最近、IARCの評価が2Bに上がりまして、モノグラフがまだ準備中ということでございます。神経系への影響もあります。
 8頁です。最初のN,N-ジメチルホルムアミドと1,1,1-トリクロロエタンが有機則対象ではあるけれども、IARCの評価では3、国の委託試験によって陽性の結果が出て、がん原性指針を公表しているものです。N,N-ジメチルホルムアミドはウレタン系の合成皮革、人工皮革等、そのほかさまざまな用途に使われております。生殖毒性もあるということで、女性則の危険有害業務の対象で化審法の優先評価化学物質でもあるということでございます。1,1,1-トリクロロエタンについては、やはりオゾン層保護のための規制がかかっています。ただ、先進国では原則全廃ですけれども、開発途上国はあと何年か使ってもよいということになっておりますので、開発途上国の基礎的な需要を満たすための輸出用として製造する場合と、先ほどの四塩化炭素と同じ場合については製造ができるという状況にあります。発がん性以外の影響については中枢神経系等への影響がある。これら2物質については、がん原性についての改めての評価を含めてリスク評価をしていただくことになるのかなと考えております。
 次のパラ-ニトロクロロベンゼン以下3物質はがん原性指針は対象物質です。パラ-ニトロクロロベンゼンについては特化則の対象ではあるのですが、がん原性に着目した作業記録の30年間保存等の規制はかかっていないということがありますので、その辺などを検討する必要があるのかなということがございます。化審法の優先評価化学物質です。
 ビフェニルは製造・輸入量約2,000t、がん原性指針を出しており、そのほかの神経系等への影響もある。
 2-ブテナールですが、これもやはり製造・輸入量が2,000t程度、IARCの評価ではいまのところ3という物質です。
 9頁、パラ-クロロアニリンですが、これは染料の中間体などとして使われております。一応、化審法の報告では製造・輸入量1,000t未満ということでございます。IARCの発がん性評価では2Bということでございます。
 10頁は先ほど申し上げました、アゾ染料が使われている繊維製品の関係で、消費者への影響の可能性が指摘されている物質で、IARCで2B以上、EUで規制しているもののリストを挙げております。これはベンジジンから始まりますので、既に発がん性の評価が相当定まっているものが上のほう3つなり、並んでおります。製造禁止物質、製造許可物質等が7まで規制対象で、8以降、16まではリスク評価の対象としてリスク評価をいままでやってきているか、有害物ばく露作業報告を求めたけれども出てこなかったというような物質です。17から19は今度評価をする物質で、今回パラ-クロロアニリンを選定してはどうかということでございます。
 11頁です。先ほどのパブリック・コメントで提案のあった3物質ですけれども、ピロールについては急性肝障害の発生、これは特定の事業場でこういう報告があるということでございます。それから炭酸ジメチル、エチレングリコール ジメチルエーテルについては、それぞれ代謝物などから勘案して有害性が予想されるというような指摘でございます。ピロールにつきましては、ピロールを扱っている行程で急性の肝障害の発生が見られています。当該事業場に対しては、ピロールの扱いを含む作業行程について、再発の防止の指導をしているところでございます。先ほど申し上げましたように、いずれもMSDSの交付義務の対象外ですので、今後、継続検討という形にしてはどうかという形で考えております。
 以下、参考資料にいままでご説明したところの関連がいくつかあります。参考2に「リスク評価対象物質・案件の選定手順」というものがあります。いちばん最初にご説明したものを流れの図によって説明をしているものです。物質の選定が7月になっておりますが、今年の場合は若干早くて6月の今日ということでございます。参考3が「リスク評価対象物質・案件選定の考え方」で、平成21年以降、この考え方に沿って選定をしているということです。参考4が、いままで選定した物質の選定理由と選定された物質を少し詳しく書いています。参考5が、さらに詳しく物質の状況について整理した表でございます。参考6が「有機溶剤中毒予防規則」の概要で、規制内容が縦の欄にあります。先ほど申し上げましたように発散の抑制のための設備ですとか、作業主任者の選任などです。それから作業環境測定をして、評価して、それを記録する。記録期間は少し短いですがそういう規定。それから、健康診断などの規制がかかっているということでございます。参考7は有機則の条文です。最初の頁の右側、六の「有機溶剤業務 次の各号に掲げる次の業務をいう」という部分がありまして、イからヲまで並んでいますが、こういう業務には規制がかかっているということでございます。
 事務局からの対象物質の選定についての説明は以上です。
○櫻井座長 ただいまリスク評価対象物質の選定の考え方、これまでの経緯について、簡単な説明の後、平成25年の有害物ばく露作業報告対象物質の案について、細かく説明がありました。ご質問、ご意見等がありましたら、ご発言をよろしくお願いします。
○藤冨委員 ご説明、どうもありがとうございました。今回の議論とは直接関係はないかもしれないのですが、1点だけ確認です。物質名を見ていて、2頁の中段にある、発がん性ということで、1,2-ジクロロプロパン、あと今回の選定物質の対象となっている、3頁の中段に記載のあるジクロロメタン。これらの物質は、印刷業界で、今般話題になっている胆管がんの原因と呼ばれている物質だと思うのです。今回の中身の話に入る前に、現在の胆管がんの状況と今後の動きについて教えていただければと思います。
○瀧ヶ平化学物質評価室長補佐 報道にされているのは、産医大の先生が大阪のある事業場でそういった方がいたと。それと、そういう方々から聞いたところ、そういった物質を使っていたということで発表されたものが、報道のもとになっています。いずれにしても今週月曜日に宮城のほうで労災の請求が2名出たということもありますが、中身というか原因等については現在調査中で、何がどうだということを説明できる状況にはまだなっていません。今後、引き続き安衛研の協力もいただきながら調査を進めていく状況になっています。
○石井委員 まだいろいろよく分からなくて検討違いなことも話すかもしれないのですが、教えていただきたいのは、今回選定される物質は発がん性を主体ということですので、慢性毒性と発がん性についてのデータを中心に整理されるということでしょうか。資料の6頁に「管理濃度」がありますが、こちらはもともとある管理濃度で、それに対して今後発がん性試験データ等を加味した上で評価されるということでしょうか。そこのところを教えていただけたらと思います。
○松井化学物質評価室長 評価に当たって着目する有害性の種類ですが、当初発がん性について第一に着目すべきであろうということで、平成20年度までは国際機関の発がん性評価を基準にして選定してきました。一通りその基準に沿って考えると選定をしてきたので、生殖毒性とか神経毒性といった物質も選定していこうというのが、ここ平成21年~23年の方針でやってきたということです。
 今回発がん性がまた中心になっているのは、1つはエチルベンゼンが有機溶剤でもあり、発がん性も指摘されている物質ですので、その規制の仕方がほかの物質の参考にもなるので、この機会に有機溶剤中毒予防規則に入っている物質も、その仕組みにエチルベンゼンと同じような規制を検討するということにしてはどうかということで、このタイミングでご提案をしているということです。併せてがん原性指針についても少し残っている物質があるので、提案をしているということです。
 管理濃度と書いていて入っているのは、有機溶剤中毒予防規則で選定をしている管理濃度で、この濃度を基準として発散抑制措置はきちんとやっていただいていると。いま現状はそのように管理をしていただいているところなのですが、全体を検討していただいて、少し発がん性の観点から抜けているところがあれば、そこは少し規制の拡充なりを検討してはどうかと。有機溶剤中毒予防規則の対象になっていない物質については、従来の発がん性物質のリスク評価と同じですが、1つ違うのは、IARCで必ずしも2B以上にランクがなっていない物質もあって、そこは国の委託試験の発がん性試験の結果からを勘案して、少し評価をしていただかないといけないというところがあります。
○石井委員 そうしますと、今後発がん試験のデータ、特に遺伝毒性、変異原性がある発がん物質ですと、閾値がないという評価をもって管理濃度と比較をするということでよろしいのでしょうか。
○松井化学物質評価室長 そこはいろいろ議論があるのですが、いままでここでやっているリスク評価の手法では、労働安全衛生の分野では、これは諸外国も含めて管理する一定の濃度を定めて、それは発がん性以外の有害性で設定されている場合もあり、発がん性の過剰発がんリスクを根拠に設定されている場合もあるのですが、一定の濃度をばく露限界として定めて、それで管理するという考え方です。それと比較するという手法をいままで取ってきているということです。
 あと、閾値がない発がん性物質は相当あるのですが、それらについては10-4の過剰発がんリスクを計算し、それをもう1つの尺度として置きます。両者の間には少し差があります。ACGIHで出しておられる濃度の基準になっているものは、発がん性から導かれているものは、許容発がんリスクですと10-3とかそういうレベルの数値を使われている場合が多いので、10-4を取った場合に当然少し差があります。
 両者の両方を使い、10-4の発がんリスクについては一次評価値と置いて、管理濃度などに相当するACGIHのTLVとか、産衛学会の許容濃度を二次評価値と置いて、二次評価値を超えた場合は、これは制度による規制が必要だと思います。一次評価値と二次評価値の間の場合は、行政指導によってきちんと管理が必要ですということを言っている、というところが今までの取組み状況です。
○宮川委員 いまの評価の基準の値のことですが、この国のリスク評価作業では一次評価値と二次評価値を定めていて、一次評価値は一定の方式で、場合によってはかなり低い値が出ても、それはそれとしてもとめており、片や二次評価値ではかなり実態に沿ったところということで、2段構えでやってきたということで、それは非常に結構なやり方だと思います。それは是非そのままきちんと、一次評価値を出すものは出すということでやっていただければと思います。
○山口委員 芳香族物質で9頁のパラ-クロロアニリンに関しては、管理濃度は記入されていないというのか、まだないと。これを評価する場合に、この値をどういう形で決めるということになるのですか。
○松井化学物質評価室長 これは、いま調べたところ、ACGIHのTLV、産業衛生学会の管理濃度の勧告は、いまのところないようですね。こういう物質については、考え方として、外国の関連機関等が出している数値を参考にして設定するか、あるいは動物試験のNOAELから外挿して設定をするか、構造が似ていて有害性も似ていそうな物質から援用してきて設定するか、ある順番からこれがなければ次、これがなければ次ということでいままでの決めがあるのですが、これは有害性の小検討会で検討していただくということになります。
○櫻井座長 ほかにはよろしいでしょうか。十分詳細にわたった説明もありました。いま、それぞれ適切なご質問、ご意見等がありましたが、その他特段のご異存もないようですので、平成25年度の有害物ばく露作業報告対象物質の選定については、案のように進めていただくことでよろしいですか。
(異議なし)
○櫻井座長 では、そのように進めていただきたいと思います。ありがとうございました。次の議事に入ります。
○山口委員 1点よろしいでしょうか。
○櫻井座長 どうぞ。
○山口委員 いまの物質の選定の考え方に関して、以前、この検討会で決め、承認しました「リスク評価対象物質・案件の選定の考え方」がありますよね。これについて何か修正点があれば修正すべきとは思うのですが、特に私が聞いた範囲だとないように思うのですが、そこら辺の解釈はどうなのでしょうか。参考3がありますよね。
○松井化学物質評価室長 基本的に今回はがん原性に係るものですので、(1)の(ア)の部分で、今回提案をしている物質については、IARCの評価が定まっているか、国のがん原性試験で陽性であった物質でありますので、1の(1)の(ア)の列挙のいずれかには該当をしているということで、これ自体は変える必要はないのかと考えています。
○山口委員 という理解でよろしいですね。
○松井化学物質評価室長 はい。
○櫻井座長 ほかになければ次の議題、2「その他」に入りたいと思います。事務局から説明をお願いします。
○瀧ヶ平化学物質評価室長補佐 平成23年度のばく露測定をやった物質のリスク評価の状況ですが、リスク評価検討会で5月に一応一定の結論をまとめていただきましたので、現在報告書の準備をしているところです。具体的な物質の話は、参考5の一覧表を見ていただきたいのですが、参考5の一覧表の2頁の平成21年ばく露作業報告の20物質があるのですが、そこにインジウム及びその化合物、エチルベンゼン、コバルト及びその化合物という欄がありますが、インジウムについてはインジウム化合物ということで症例への組込みを考えています。先ほど室長からも説明がありましたエチルベンゼンについても、同じくです。コバルトおよびその化合物については、コバルトおよびその無機化合物としての規制をするように、いま事務方で調整しているところです。
 アンチモンおよびその化合物というのもあるのですが、それは酸化アンチモンについて詳細評価に移行するということになっています。それ以外の物質についてはリスクはそれほど高いとは言えないということから、事業者の自主的な管理の徹底を指導していくことにしています。
 また、DDVPとDHPについては、ばく露測定のデータを少し追加して、あらためてリスク評価をすべしという検討会での意見でしたので、今年度追加の測定をしまして、リスク評価をすることにしています。
 インジウムについても、金属インジウムについての取扱いについて、再度もう少し詳細に詰めなさいというご意見でしたので、ボンディング関係なのですが、改めて今年度ばく露測定を行い、リスク評価を行うことにしています。以上、現在の状況でした。
 企画検討会ですが、通常だと年度末ごろにまた開催をすると考えています。後日、連絡、日程調整等をしますので、よろしくお願いします。
○櫻井座長 何かご質問等はありますか。よろしいですか。それでは、一応今日の予定はすべて終了しました。これで閉会とします。今日はどうもありがとうございました。


(了)

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