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2012年5月31日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会議事録

医薬食品局

○日時

平成24年5月31日(木)


○場所

厚生労働省 専用第15・16会議室


○出席者

出席委員(14名)五十音順

 新 井 洋 由、 奥 田 真 弘、 菊 池    嘉、 清 田    浩、

 黒 木 由美子、 佐 藤 俊 哉、 清 水 秀 行、 鈴 木 邦 彦、 

 中 島 恵 美、 濱 口    功、 前 崎 繁 文、 増 井   徹、

 山 本 一 彦、◎吉 田 茂 昭

 (注) ◎部会長 ○部会長代理


欠席委員(7名)五十音順

 庵 原 俊 昭、 大槻 マミ太郎、 櫻 井 敬 子、 田 村 友 秀、

○土 屋 友 房、 半 田   誠、 山 口 照 英

行政機関出席者

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 赤 川 治 郎  (審査管理課長)

 俵 木 登美子 (安全対策課長)

 内 海 英 雄 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 森    和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

 佐 藤 岳 幸 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事


○審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を開催いたします。
本日は、お忙しい中御参集いただきありがとうございます。
 本日の委員の出席についてですが、庵原委員、大槻委員、櫻井委員、田村委員、土屋委員、半田委員、山口委員より御欠席との連絡をいただいております。
現在のところ、清田委員から1時間ほど遅れるという連絡を受けていますので、当部会委員数21名のうち13名の委員の出席をいただいていますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
○吉田部会長 本日の審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告をお願いします。
○事務局 それでは、資料の確認をさせていただきます。本日、席上に、議事次第、座席表、当部会委員名簿を配付しています。
議事次第に記載されている資料1~13をあらかじめお送りしています。このほか資料14「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料15「専門委員リスト」、資料16「競合品目・競合企業リスト」を配付しています。
また、当日配付資料として、資料3-2「シムビコート申請資料の新旧対照表」、資料17「佐藤委員からの御質問」を配付しています。
 続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。各品目の競合品目選定理由については、次のとおりです。
 本日の審議事項に関する資料16「競合品目・競合企業リスト」です。1ページはインライタ錠です。本品目は「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページはジスロマックです。本品目は骨盤内炎症性疾患を適応症としており、同様の適応症を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 3ページはシムビコートです。本品目は気管支喘息、吸入ステロイド剤及び長時間作用型吸入β2刺激剤の併用が必要な場合を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページはオーキシスです。本品目は慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 5ページはベンダムスチン塩酸塩です。本品目は慢性リンパ性白血病を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 6ページは乳濁細胞培養A型インフルエンザHAワクチンH5N1株及びプロトタイプワクチンです。本品目は新型インフルエンザの予防を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。
○吉田部会長 ただ今の事務局からの説明に、特段の御意見等はございますでしょうか。それでは本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものとします。
 次に、委員からの申出状況についての報告をお願いします。
○事務局 議題1のインライタについては、退室委員無し、議決に参加しない委員は清田委員、前崎委員、山本委員です。
 議題2のジスロマックは、退室委員無し、議決に参加しない委員は清田委員、前崎委員、山本委員です。
 議題3のシムビコートは、退室委員、議決に参加しない委員は共にいらっしゃいません。
 議題4のオーキシスは、退室委員、議決に参加しない委員は共にいらっしゃいません。
 議題5のベンダムスチンは、退室委員無し、議決に参加しない委員は清田委員、前崎委員、山本委員です。
 議題6のインフルエンザHAワクチンは、退室委員、議決に参加しない委員は共にいらっしゃいません。以上です。
○吉田部会長 本日は審議事項は7議題、報告事項が6議題です。議題1について、医薬品医療機器総合機構から概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題1、資料1「医薬品インライタ錠1mg及び同錠5mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」機構より説明いたします。
 本剤の有効成分であるアキシチニブは、血管内皮細胞等の細胞膜に発現する血管内皮増殖因子受容体のチロシンキナーゼに対して阻害作用を有する薬剤であり、血管内皮細胞の増殖等にかかわるシグナル伝達を阻害することで、血管新生を阻害し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられております。
今般、本剤は、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対して効果を示す薬剤として承認申請されました。
本剤は、審査報告書の3ページに記載していますように、平成24年3月時点において、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対する適応にて、米国のみで承認されています。本品目の専門協議に御参加くださった専門委員は、資料15にあるとおり、9名の委員です。以下、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対する本剤の承認審査の概要を説明いたします。
 今般の承認申請では、主な臨床試験成績としては、本邦を含む世界各国で実施された一つの国際共同第III相試験成績が提出されました。
有効性については、審査報告書53ページの下から18行目以降、及び96ページの上から13行目以降に示すように、転移を有する腎細胞癌患者の二次治療における本剤の有効性及び安全性を検討した国際共同第III相試験の結果、対照群として設定されたソラフェニブトシル酸塩に対して本剤群の無増悪生存期間が有意に延長し、当該患者に対する本剤の無増悪生存期間の延長効果は示されたと判断いたしました。
 安全性について、本剤の使用において注意すべき有害事象としては、審査報告書57ページの本文上から4行目以降、及び96ページの下から1行目以降に示しますように、高血圧、甲状腺機能異常、血栓塞栓症、出血関連事象、消化管穿孔、可逆性後白質脳症症候群、ヘモグロビン又はヘマトクリット上昇、タンパク尿、肝機能障害、創傷治癒遅延、手掌・足底発赤知覚不全症候群及び発声障害が認められており、注意が必要と考えております。
これらの有害事象については、がん薬物療法に精通した医師による慎重な観察と適切な処置により忍容は可能と判断いたしました。ただし、本剤の日本人における検討症例は限られており、審査報告書71ページの本文上から11行目以降、及び100ページの上から8行目以降に示しますように、製造販売後には目標症例数300例、観察期間6か月の使用成績調査の実施が必要であると判断し、申請者に指示しております。
 以上のような審査の結果、機構は、「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を8年とすることが適当であり、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断いたしました。また、本剤は生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断いたしました。
本剤の製造販売承認の可否等について、御審議のほどよろしくお願いいたします。
 なお、事前に佐藤委員から御意見をいただきましたので、機構から回答させていただきます。資料17にございますとおり、佐藤委員からの御質問は以下のような主旨です。
 「本剤の有効性及び安全性を評価する上で最も重要な臨床試験は、国際共同第III相試験だが、本試験は1回10mgまで増量できることになっており、増量が可能とされた36%(358例中129例)で本剤が増量されたが、専門協議において、本剤を増量した患者における有害事象の発現状況について、情報収集することが望ましいとの専門委員の意見があり、製造販売後調査で対応することになっている。また、国際共同第III相試験では本剤は食後に投与された。一方、本剤と食事との影響について、審査報告書30ページでは、製造販売用製剤と処方が異なる製剤を用いて実施された第I相試験であるA4061006試験の処方A製剤では、食事により曝露量の低下が認められ、また、国際共同第III相試験で用いられた製造販売用製剤では、高脂肪食摂取後と中脂肪食摂取後とでは結果が食い違っている。申請者は、審査報告書30ページで、食事による曝露量の変動は臨床的に意義のあるものではなく、製造販売用製剤は食事摂取状況にかかわらず、本剤の投与は可能であると説明しているが、これらの試験では本剤5mgが用いられ、本剤を増量した場合の食事の影響については検討がなされていない。以上のように、最も重要な試験である国際共同第III相試験では食後投与であったこと、食後投与でないと本剤の曝露量が上昇する可能性があること等から、特に増量時には食後の服用が望ましいことを情報提供した方が良いと考える」というものでした。
 機構の回答としては、本剤の治験のうち、国際共同第III相試験のA4061032試験では、食事に含まれる脂肪量などの具体的な食事内容は特に規定されていませんでしたが、投与時期については、承認後に予定されている製剤とは異なる製剤における情報を基に、食後と設定されていました。また、その後に実施された海外第I相A4061053試験において、中脂肪食及び高脂肪食といった食事内容によって、本剤の曝露量の増減が異なる結果が示されております。このような本剤の薬物動態に及ぼす食事の影響についての検討結果は重要と考え、添付文書の薬物動態の項で「臨床試験において、中脂肪食摂取後ではCmax及びAUCが低下し、高脂肪食摂取後ではCmax及びAUCが上昇した」旨を情報提供させていただいております。
 なお、本剤の有効性及び安全性に及ぼす食事の影響については、空腹時投与と食後投与との間での曝露量の差は、個体間及び個体内変動との比較において、その臨床的影響が大きいとまでは言い難いこと、また、本剤の増量は医師が患者の状態を確認しつつ決定されることなどを考慮すると、当該薬物動態の検討結果については積極的に添付文書により情報提供すべきと考えますが、増量時を含め、「本剤は食後の服用が望ましい」といった使用方法を限定的にするまでの必要性は低いものと機構は考え、専門協議においてもその考え方を支持していただいております。また、これらの治験で得られた食事に関する情報については、より詳細に情報提供するよう申請者に指示したいと考えております。御質問に対する説明は以上です。
○吉田部会長 佐藤先生、今の回答でいかがでしょうか。
○佐藤委員 食事の影響がよく分からないというのは書いてあるとおりだと思うのですが、増量した時の安全性に懸念があるから調査させるわけですね。
○機構 そのとおりです。
○佐藤委員 その懸念がある時に、もしかすると曝露量が食後でなければ上がるかもしれないということを情報提供しなくても大丈夫なのですか。仮に食後ではない時に増量して服用し、安全性に問題が出たらどう対応されるのですか。
○機構 機構の考え方を補足させていただきます。機構の審査の結果の判断としましては、申請者の説明を受け入れ、本剤の曝露量に対する食事の影響は無いという判断をしておりますので、食事に対する規定は必要無いと判断しました。一方、製造販売後に情報収集する内容というのは、食事の影響等にかかわらず増量例に対する情報が不足していると判断し、当該情報を情報収集すべきと考えております。
○佐藤委員 ですから増量すると安全性に懸念が残っているから調べるわけですね。増量した時の食事の影響というのは調べていないわけですね。結果は、はっきりとはしていないわけですが、処方Aでは明らかに食後には曝露量が下がっているわけですから、増量した時には食後でなければ曝露量は上がるかもしれないですね。増量した時に安全性の懸念があって、食後でなければもっと曝露量が上がるかもしれないという懸念がある時に、そのことを国際共同第III相試験がすべて食後服用だったということを含めて、情報提供する必要は無いということですね。
○審査第五部長 補足させていただきます。説明の中にもありましたが、食後の影響について臨床的にどれだけの影響があるのかについては、本剤が個体間と個体内の変動の差があまりにも大きな製剤であることを考えると、それとの比較における食事の影響というのは、個体間、個体内の変動ほど臨床的な影響が大きいとは考えられないと私どもは考えました。したがって本剤は、医師が現場で患者の状態を確認しつつ、用量などを調整される中でコントロールできるのではないかという考えに至りましたので、今回このような情報提供をさせていただくことが妥当ではないかと私どもは考えました。
○吉田部会長 よろしいですか。
○佐藤委員 私は皆さんがそれでよろしければ結構ですが、国際共同治験が食後投与だったということは十分に知らせて、増量の時には食後投与にした方が良いようには思いますが。
○審査第五部長 国際共同治験の試験条件であるとか、中脂肪食、高脂肪食といった食事の内容によって増減の結果は異なってはいるのですが、そのような結果についてのより詳細な情報提供を申請者に指示した上で、現場にも適切に情報提供させようと考えています。
○吉田部会長 私からのコメントです。市販後の解析予定症例数300例と書いてありますが、なぜ行うかといったら、佐藤先生が言われるように、国内の治験に入った症例が少なく、有害事象が心配だからだと思います。その意味で言うと、一番有害事象が出そうな条件の人たちが大丈夫であれば、大丈夫だろうという話になりますね。ですから、高用量を投与した人や食後ではない人については、特に注意して観察してほしい、あるいは、ある程度の症例数を確保して結果を見せてほしいという注文はできるのではないかと思うのですが。
○審査第五部長 御指摘のように、現場の先生方が患者さんの様子を診ながら用量を決定する際にも、食事の影響があるかもしれないということをよく御理解いただいた上で、増量なり、用法・用量を決定することは大事なことだと思いますので、先生方の御指摘を踏まえまして、そういった情報については、より詳細に現場に情報提供したいと思います。
○吉田部会長 そうですね。食後だったか空腹時だったかということと、高用量を使ったか使わなかったかということが後で分かるように市販後調査をしてもらえば、今の疑問はある程度後からでも解消できると思うので、その辺の注文をよろしくお願いしたいと思います。佐藤先生、よろしいですか。
○佐藤委員 はい。
○吉田部会長 ほかの委員の先生方の御意見はいかがでしょうか。
○鈴木委員 61ページの有害事象の「7)消化管穿孔」ですが、これが少し多いということです。62ページには、「適切に情報提供する必要があると考える」と書いてありますが、どのように情報提供されるのでしょうか。
 もう1点あります。同じく61ページの有害事象の「5)血栓塞栓症」について、死亡例があり、こちらも多い傾向があるということで「注意が必要である」とは書いてありますが、どのような情報提供又は注意喚起を行うのでしょうか。
○機構 資料1の「添付文書(案)」という緑のタブが付いているところを御覧ください。2ページの「(1)重大な副作用」では、消化管穿孔は5)です。また、血栓塞栓症に関しては2)に動脈血栓塞栓症、3)が静脈血栓塞栓症ということで、添付文書に記載しております。また、資材等も作成する予定ですので、その中でも、こういった有害事象が発現していることについては、情報提供させていただく予定になっています。
○吉田部会長 よろしいですか。
○鈴木委員 はい。
○黒木委員 添付文書の「8.過量投与」の表現の話ですが、「高血圧を伴うてんかん発作」という記載があるのですが、タブの「外国における使用状況等に関する資料」の英文の原文を見てみますと、11ページの上から3行目に記載がありますが、seizures associated with hypertensionですので、普通に痙攣という表現でいいかと思うのですが、いかがでしょうか。
○機構 症例の詳細について確認させていただいて、表現ぶりについては検討させていただきます。
○黒木委員 今は余り「てんかん」という言葉は使わなくなっていると思います。痙攣か間代性強直痙攣であるとか、確認していただければと思います。
○吉田部会長 ほかにございますか。
○清水委員 審査報告書の33ページに制酸剤、ラベプラゾールとの併用に関する情報が書かれていますが、この内容についての情報提供はどのような対応を検討あるいは指示しているのでしょうか。
○機構 「適正使用ガイド」という資材を作成しますので、そちらで情報提供させていただきたいと考えています。
○清水委員 私は、この内容を何らかの形で添付文書に反映させる方法はないかと思うのですが、添付文書への記載はお考えではないですか。
○機構 検討した製剤が、製造販売後用の製剤ではないということもありますので、添付文書というよりは資材での情報提供の方が適切ではないかと考えております。
○清水委員 相互作用を検討する時に、添付文書の中に注意すべき項目として載っているかどうかというのは、現場としては大きなファクターになるかと思うのです。他科診療等から処方が出ている可能性も考えられる薬剤ですので、薬物治療のチェックをする時に、十分反映できるような情報提供の方法を御指導いただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
○機構 いただいたコメント、従来の添付文書の記載方法等も参考にして検討させていただければと思います。また、添付文書に記載できるかどうかは検討させていただきますが、情報提供はしっかりされるように申請者には伝えていきたいと考えております。
○吉田部会長 添付文書以外の方法で情報提供したいということですか。
○審査第五部長 これまでの添付文書の記載の考え方からしますと、今回のケースについては添付文書に書くというよりも、現場への情報提供資材などを用いる方がよろしいかと思うのですが、念のため、過去の事例との整合性などよく確認した上で、対応したいと考えております。
○吉田部会長 ほかにございますか。よろしいでしょうか。特に御意見も無いようですので、議決に入ります。なお、清田委員、前崎委員、山本委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきます。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 次に議題2です。医薬品医療機器総合機構から概要の説明をお願いします。
○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品ジスロマック点滴静注用500mg及び同錠250mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
 本剤の有効成分であるアジスロマイシン水和物は、米国ファイザー社で開発された15員環マクロライド系抗菌薬であり、細菌リボソームの50Sサブユニットに結合し、細菌のタンパク合成を阻害することにより作用を示すとされています。本邦では、ジスロマック錠250mgが2000年3月に、各種細菌感染症等を効能・効果として、ジスロマック細粒小児用及びジスロマックカプセル小児用100mgと共に承認されて以来、ジスロマック点滴静注用500mg、ジスロマック錠600mg及びジスロマックSR成人用ドライシロップ製剤等が承認されています。
 今回申請されている骨盤内炎症性疾患は、婦人科救急における代表的な感染症であり、救急搬送されるような腹部の激痛等を示す場合や不妊症及び子宮外妊娠等の原因となることがあり、重症例や嘔吐等により抗菌薬の服用が困難な場合では、注射用抗菌薬による治療を行うことが必要とされております。このような状況を踏まえ、今般、骨盤内炎症性疾患に対する本薬の注射剤から錠剤への切り替え療法で国内外臨床試験が実施され、その有効性及び安全性が確認されたことから、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。なお、本剤は海外において、骨盤内炎症性疾患に対し2012年3月の時点で56の国又は地域で承認されております。
本申請の専門委員としては、資料15に記載されている4名の委員を指名させていただきました。審査内容について、臨床成績を中心に説明いたします。
 まず、有効性について、審査報告書23ページの表を御覧ください。国内第III相試験において、主要評価項目である投与終了時、投与開始15日目及び投与開始29日目における本薬投与群の有効率は、それぞれ94.1%、94.1%及び93.5%であり、海外第III相試験2試験とほぼ同様の成績でした。また、審査報告書25ページの上の表を御覧ください。国内第III相試験における骨盤内炎症性疾患の主な原因であるクラミジア・トラコマティス及び淋菌に対する細菌学的効果では、高い消失率が認められており、海外第III相試験2試験と比較して、大きく異なる傾向は認められませんでした。以上の結果を踏まえ、骨盤内炎症性疾患に対する本薬の注射剤から錠剤への切り替え療法における有効性は示されていると判断しております。なお、骨盤内炎症性疾患の原因菌である淋菌及びプレボテラ属については、有効性を期待できると考えたことから、本薬の適応菌種に追加することは可能と判断いたしました。
 安全性については、審査報告書27ページの表を御覧ください。肺炎及び骨盤内炎症疾性患を対象とした国内第III相試験において認められた有害事象は、肺炎で53.9%、骨盤内炎症性疾患で56.6%、大きな差異は認められなかったこと、認められた事象についてもほぼ同様であったことから、対象疾患により本剤の安全性プロファイルに大きな差異は無いと判断しています。なお、安全性については、引き続き製造販売後調査において情報収集を行う予定としています。
 以上の審査を踏まえ、本剤の骨盤内炎症性疾患に対する効能・効果及び用法・用量を承認して差し支えないとの結論に達し、本医薬品第二部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新効能及び新用量医薬品であることから、再審査期間として、ジスロマック点滴静注500mgについては、肺炎の効能承認時における残余期間(平成29年6月30日まで)、またジスロマック錠250mgについては4年とすることが適当と判断しています。なお、薬事分科会には報告を予定しています。以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○菊池委員 元々、申請に上がっていたバクテロイデス、フゾバクテリウム、スフィンゴモナスなどが落ちていますが、妥当だとは思います。資料の45ページに、通った方として、ペプトストレプトコッカス属、プレボテラ属などは、それぞれ一定の症例数を集積した上で記載されていますが、このようなものは、どれぐらいの数ならば一定の症例数を満たすという考え方になるのですか。
○機構 本剤について、「一定の症例数」に関して、具体的な数を明確に提示できるものはありません。本当に珍しい菌であれば、1例若しくは海外での報告においても承認するということもありますし、また、それなりに認められる菌種である場合には、ある程度の例数を確認することが必要だと考えています。それはケースバイケースにならざるを得ないとは考えています。
○菊池委員 最初に申請者からは、四つぐらい様々なものが出ています。それで、661192試験で1例ずつしかなく、その判断が有効だろうけれども、認めないという話ですね。
○機構 はい。
○菊池委員 それはそれで良いと思うのですが、そこら辺の根拠です。感染症を専門としている側としては、珍しい菌にも適応を拡大してほしいような気もするのです。これが例えば2例で有効だったらいいのか、3例で有効だったらいいのか、そこの一定の数という線の引き方です。
○機構 我々も今回の申請において、今回追加が適切ではないと判断した菌種については、国内臨床試験では1例しかいなかったことから、他の周辺情報もいろいろ確認をさせていただきました。その中で、近年の細菌の感受性データ、ほかの疾患領域における有効性に関するデータの有無を確認したのですが、臨床的な有効性等が報告されているものも余り無いということもありまして、今回の適用に関して、本薬にこれらの菌種を積極的に追加することに関しては、困難であると判断しました。その点に関しては専門協議でも御議論いただき、機構と同様の意見で、これに関してこれらの菌種を付けることは厳しいのではないかという御意見もいただいております。
○吉田部会長 結局、in vitroで感受性があると認められた場合は、臨床的な成績が乏しくても、一応はいいだろうという認識で良いということですか。
○機構 そういった考察も可能ということもあるかとは思いますが、本来は臨床試験において、臨床的な有効性に関するデータを出していただくことが必要と考えております。この疾患も含めて、試験だけでは中々集まりきらないところがあれば、臨床研究報告等についても考慮した上で総合的に判断しているところです。
○吉田部会長 前崎先生、臨床側としてはそのような判断でよろしいのでしょうか。
○前崎委員 フゾバクテリウムやバクテロイデスは決して珍しい菌ではなく、このような疾患で出てきておかしくないですし、実際的にはこのような原因菌であっても効くと思います。臨床試験でこれだけしか症例が出ていないので、有効性が確認できないといえばそれまでなのでしょうけれども、現場ではこのような菌であっても、投与されるような気がします。
○吉田部会長 私は門外漢なのでよく分からないので、前崎先生に教えていただきたいのですが、婦人科のこういった骨盤内の炎症、子宮内の感染といったものというのは、通常の感染症とは違うアプローチになるのですか。例えば静注して経口に変えるというのはどうですか。
○前崎委員 そんなことは決してないと思います。ただ、原因菌はどちらかというと、一つは性交為感染症つまりSTDの原因菌と、腸管からの原因菌になるので、腸内細菌あるいは嫌気性菌を含めたものが多くなるということで、肺炎などとは原因菌は違いますが、感染症の考え方としては同じだと思います。
○吉田部会長 特に効きにくいということもないのですか。
○前崎委員 ないと思います。
○吉田部会長 ほかにございますか。
○前崎委員 これは肺炎の時にも言ったのですが、投与期間が5日間しかないわけです。添付文書も5日を超える症例は無いので、「十分に経過観察する」と書いてありますが、何を経過観察すればいいのでしょうか。例えば、肝機能障害であるとか、そこはもっと詳しく書く必要は無いのでしょうか。
○機構 本剤に関しては、半減期が非常に長い薬剤で投与されている期間のみならず、その後も体内に残っている期間があります。そこでこの薬による消化器症状などが認められる場合がありますので、そこを十分に観察していただきたいということではあります。
○前崎委員 そうしたら、例えば「副作用の発現等、経過観察を十分に行うこと」というような文言を入れてもらった方が、分かりやすい気がするのですが、いかがですか。
○機構 こちらに関しては、情報提供資材も作成して、提供する予定ですので、その中でそれらの事象を十分に観察していただきたいということを記載することを考えています。
○前崎委員 もう1点あります。レジオネラ・ニューモフィラが波線になって変わったように記載されているのですが、どのように変わったのですか。
○機構 記載の順番を変えたということで、中身は変えておりません。
○前崎委員 あと、クラミジアは、いわゆる呼吸器の場合は、クラミドフィラ・シッタシとクラミドフィラ・ニューモニエとの二つになっているのですね。今回は骨盤感染の原因菌で、いわゆるクラミジア・トラコマチスが入っているのですが、これはこの薬に限ったことではないのですが、将来的にこの辺の属名は整理していただかないと、例えば肺炎の適応症であれば「クラミジア属」と書くのは好ましくないと思います。肺炎はクラミドフィラでしか起こりません。その辺は、肺炎の適応症のときにいうべきだったのですが、今後は属名そのほかを整理することも考えていただければと思います。
○機構 その点に関しましては、ほかの品目にもかかわってくるところもありますので、今後の検討課題とさせていただきたいと思います。
○吉田部会長 先ほどの経過観察の話ですが、経過観察というと一般的な医師は病状を観察してしまうので、また熱が出るのではないかという方に関心がいってしまいがちですが、そのような意味ではないことをはっきり示した方がいいと思います。ほかにありますか。
○清水委員 今回の適応の拡大は、スイッチ療法に限定されていると理解していいのですか。平たくいうと、何らかの理由で今後経口に変えることができない、難しいと判断される方は、注射薬で治療することが適応から外れるという理解をしていいのですか。
○機構 今回の臨床試験の投与方法が、1日、2日点滴静注をして、その後錠剤に切り替えて治療するというスイッチ療法で、合計で最大7日間の投与をするという臨床試験を実施しています。その投与方法で、有効性及び安全性が示されていますので、用法・用量としてはこのように書かせていただいております。
 ただ、例えば注射で症状にある程度緩解が認められて、半減期のことも考慮した上で、注射剤のみで投与を終了する可能性は否定できないと思っていますが、ここで推奨する用法・用量としては、有効性及び安全性が示された投与方法で記載させていただきました。
○清水委員 審査報告書を読んだ時点では、そのような認識を持ったのですが、添付文書を見ますと、肺炎での承認の流れで書かれているので、この疾患については明確にスイッチ療法で承認したということが読み取りづらいようにも思います。その辺はいかがでしょうか。
○機構 用法・用量について、ジスロマックの錠剤の添付文書ですと、錠剤については用法・用量で特に規定はしていませんが、今回の効能・効果については、成人には「アジスロマイシン注射剤による治療を行った後」と記載していまして、その辺を区別させていただいています。
○清水委員 錠剤はそのように読み取れるのですが、注射の方は切り替えるべきということが読み取りにくく、肺炎の流れがあるので、そのような認識でよろしいのであればいいのですが、そこが違うのであれば、そこは読みづらいかと理解したのですが。
○吉田部会長 例えば7日間注射でしたら、保険診療から外れる等、そこまで厳しい話ではないのですね。
○機構 保険の話に関しまして、我々で答えるのは難しいのですが。
○吉田部会長 領域は違いますが、抗癌剤であったら、使い方まで決めるではないですか。例えば、MTX/5-FUはこれこれこのような投与法がある、ということで全部記載しているでしょう。この場合は、そのように記載されていないので、どのような使い方をされてもいいのだという認識ですか。
○機構 少なくとも用法・用量に関連する使用上の注意に臨床試験の投与方法を書かせていただき、本剤の投与に際してはこの使い方をしてほしいということを、資材等でも、情報提供していく予定です。ですので、方向性としては、臨床試験で行われた使い方をしていただくのが、本剤の有効性・安全性のデータが示されている使い方になるので、そこで使っていただきたいということを資材では提示します。一方で、現場の医師の判断として、ずっと注射剤を使うかに関しては、これも専門委員の先生とも議論させていただいたのですが、本当に激痛で来られた時に、まずは訴えられている状況からすると経口投与も難しい状況で、まずは点滴静注をして、ある程度回復したら、外来通院に変えられることもあるので、そこで錠剤を渡して通っていただくことが想定されるということで、一般的にはこの使い方になるだろうということもご意見としていただいています。
○清水委員 特に注射の方については、きちんとスイッチを考えることという記載をもう少し分かりやすく書いた方がいいと思いますので、御検討をお願いします。
○吉田部会長 では、そのようにお願いします。ほかにございますか。よろしいでしょうか。御意見が無いようですので、議決に入ります。なお、清田委員、前崎委員、山本委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととします。
 本議題について、承認可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、承認可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題3に移ります。医薬品医療機器総合機構から、概要の説明をお願いします。
○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品シムビコートタービュヘイラー30吸入及び同60吸入の製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」機構より説明いたします。
本剤は、合成副腎皮質ステロイドであるブデソニドと長時間作動型β2刺激薬(LABA)であるホルモテロールフマル酸塩水和物(以下、ホルモテロール)を有効成分とする喘息治療用の定量式吸入用散剤であり、本邦では、気管支喘息の維持治療薬として2009年10月に承認されています。
 本申請は、本剤を維持治療薬として定期吸入することに加えて、発作発現時にも本剤を発作治療薬として追加吸入するという治療法に係るものです(以下、本治療法)。本治療法は、発作発現時に本剤を追加吸入することにより、ホルモテロールの迅速な気管支拡張作用による速やかな症状改善が期待できると共に、喘息症状の悪化に応じてブデソニドによる抗炎症治療を強化することが可能となり、急性増悪の発現頻度及び重症度の軽減が期待できることから、開発が行われました。海外において、本治療法は、2006年10月にEUで承認されて以降、2012年4月現在、101か国で承認されています。
本申請の専門委員としては、資料15に記載されております6名の委員を指名しました。
 主な審査内容について、簡単に説明いたします。審査報告書4ページ下段の「(1)国際共同第III相試験(D589LC00001試験)」の項を御覧下さい。本申請における検証試験として、日本人及び外国人気管支喘息患者2,091名を対象に、本剤1回1吸入1日2回吸入(1日当たり、ブデソニド320μg、ホルモテロール9μg)の維持用量に加えて、発作発現時に本剤の要時吸入を追加する本治療法群と、発作発現時に短時間作動型β2刺激薬(SABA)であるテルブタリン0.4mgの要時吸入を追加する対照群(以下、本剤+テルブタリン群)とで、急性増悪発現抑制効果を比較する実薬対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されております。
 まず、試験全体の成績について説明いたします。5ページ中段の図1は、主要評価項目である初回の重症急性増悪までの期間のKaplan-Meier曲線であり、群間比較結果については、6ページ上段の表1のとおり、本治療法群では本剤+テルブタリン群に対し、初回の重症急性増悪までの期間の有意な延長が認められました。
 続きまして、本試験に組み入れられた日本人患者400名の成績について説明いたします。初回の重症急性増悪までの期間のKaplan-Meier曲線は、7ページ中段の図2のとおりであり、群間比較結果については、表4のとおり、先ほどの試験全体の成績と類似した結果が認められました。これらの成績より、機構は、日本人気管支喘息患者において、発作治療薬としてSABAの代わりに本剤を要時吸入することのベネフィットは示されていると判断いたしました。
 次に審査報告書の21ページ中段、「(2)本治療法の位置付け及び用法・用量について」の項を御覧ください。本治療法の申請用法・用量については、海外臨床試験において、本治療法群と、本治療法群の倍量の維持用量を用いた維持療法+SABA群とを比較した場合にも、本治療法群の急性増悪の抑制効果が有意に優れることが示されたことなどから、申請者は、本治療法では承認用法と比較し本剤の平均用量の低減が期待できるとの考えに基づき、22ページ中段のとおり、本治療法の通常の維持用量を1回1吸入1日2回とし、これを超える維持用法を用いている患者が本治療法に切り替える際には、1回1吸入1日2回に減量することを前提として、申請用法・用量を設定しています。しかしながら、機構は、喘息治療においては吸入ステロイドによる維持療法を十分に行うことが基本であり、維持用量の安易な減量は急性増悪を招くおそれがあること、特に本邦では呼吸器の専門以外の医療施設等において、吸入ステロイドの使用量が少ない傾向があり、十分な喘息コントロールに至っていない患者が多いという実態があることを踏まえると、日本人患者では維持療法の減量による急性増悪の誘発が現れやすい懸念があることなどから、維持療法の減量を前提とした申請用法・用量については適切でないと考えております。以上より、機構は、専門協議での議論を踏まえた上で、本治療法の用法・用量を29ページ上段のように変更することが適切と判断しました。また、維持療法として1回2吸入1日2回を超える高用量を投与している患者に対して、減量を行わずに本治療法を行った臨床試験成績は得られていないことから、当該患者に対しては本治療法の適用を推奨しないことが適切と考え、用法・用量に関連する使用上の注意において、29ページ中段のように注意喚起することが適切と判断しました。
 次に23ページ下段、「(3)安全性について」の項を御覧ください。本治療法では、発作治療時に本剤の一時的な増量を要するため、要時吸入回数が多かった症例、要時吸入の期間が比較的長期にわたった症例などにおける安全性を中心に、SABAの要時吸入との比較も含め検討を行いました。1日平均要時吸入回数ごとの有害事象発現状況については、24ページ上段、表17のとおりであり、要時吸入回数が少なかった患者集団と多かった患者集団とで安全性プロファイルに明らかな差異は認められず、本剤+テルブタリン群との比較においても大きな差異は認められませんでした。また、頻回の要時吸入を行った日数が連続1~3日間の短期間であった場合、若しくは連続14日間以上に及んだ場合の有害事象発現状況については、24ページ下段、表18のとおりであり、頻回要時吸入の期間により安全性プロファイルに明らかな差は認められず、本剤+テルブタリン群との比較においても大きな差異は認められませんでした。以上のことから、機構は、本治療法による安全性について、承認用法と比べ特段の問題は示唆されていないと考えておりますが、臨床試験において要時吸入回数が多かった症例は限られていることから、製造販売後調査において、頻回要時吸入時の安全性を重点的に確認する必要があると考えております。
 以上の審査を踏まえ、30ページの「III.総合評価」のとおり、用法・用量を整備した上で、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請に係る再審査期間は4年とすることが適当と判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。
 なお、本品目については、申請資料に一部誤りが認められましたため、当日配付資料3-2として新旧対照表をお配りしております。内容は、有効性の副次評価項目の集計において、投与前値である観察期間の平均値の算出方法に誤りがあったというものです。機構は、エラーが認められた箇所について再度確認を行い、有効性評価の結論に影響しないものであると判断しておりますが、今後、同様の過誤を防止するべく申請者を指導したいと考えております。
 また、部会に先立ち、佐藤委員より1点御質問をいただいております。「審査報告書6ページ、7ページの表2、表5の脚注に、いずれも『治療及び国を要因とし、発現時期をオフセット変数とするポアソン回帰モデル』とありますが、『発現時期をオフセット』ということは、重症急性増悪を発現した試験参加者のみしか解析対象となっていないということなのでしょうか。それとも実際には『観察期間の対数をオフセット変数とするポアソン回帰モデル』ということでしょうか」との御質問です。
当該記載については、御指摘いただいたとおり、正しくは「観察期間の対数をオフセット変数とするポアソン回帰モデル」ですので、報告書を適切に修正させていただきます。また、20ページの表16の脚注にも同様の記載がありますので、こちらも併せて修正させていただきます。御指摘、ありがとうございました。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 佐藤先生、御指摘ありがとうございました。委員の先生方からの御意見、御質問をお願いいたします。
○佐藤委員 申請内容に関することではないのですが、国際共同治験のコントロール群が、日本では未承認のテルブタリンが使われていますね。国内第III相試験でテルブタリンとサルブタモールの比較試験を行っているのですが、この試験は日本人の患者にとってメリットのある試験ではないように思いますので、もしこのような試験を行わなければいけないのだとすると、やはりテルブタリンをコントロールに国際共同治験で使ったこと自体が問題だと思いますし、せめて本薬とサルブタモールの比較試験にするとか、そのような指導というのか、工夫をしていただいた方が、日本人患者にとって余りメリットの無い試験を加えさせるのは良いことではないと思いますので、少し御検討をお願いしたいと思います。
○機構 ありがとうございます。いただいたコメントについては、申請者に伝えさせていただきます。
○吉田部会長 この点についてですが、例えば新薬などの治験の場合は、薬事を一応通してから投与しますが、対照薬の場合はそういった扱いにできないのでしょうか。今後、国際共同治験がいろいろ始まってくるという時に、コントロールアームで使う薬が実は日本では未承認でした。そうすると、もう国際治験には参加できないということで道を閉ざすわけにいかないでしょう。そうかといって、佐藤先生の言うように無意味な治験を日本人相手に何例か行いなさいというのもひどい話ですが、いずれにせよ、国際治験の対照薬についてはそのような扱いをしてあげた方が、もっとスムーズにいくかもしれませんね。
○機構 御指摘ありがとうございます。確かにそういった御指摘いただいたような考え方で、未承認の薬であっても、国際共同治験の場合には使用を認めるということはあると思います。ただ、今回の場合、テルブタリンの効果が日本で使われているSABAと比べてどの程度か明らかでなく、この試験の結果が日本の臨床現場でも再現できるかというところを確認するという意味がありまして、確かに御指摘のとおり、日本人の患者にとってはあまり有益ではない試験にはなってしまうのですが、あえて試験が必要だったということで理解しております。
○吉田部会長 HER2の時のカペシタビンもそうですね。たしかその時は国では認めていなかったのですが、治験としては参加せざるを得ないということで比較試験が行われたように思います。その辺を参考にして国際治験の時のルールをもう少し細かく作ると良いかと思います。これは本件とは関係無いので、これ以上深追いしませんが、要望として聞いておいてください。ほかにありますか。
○事務局 1点、審査管理課から補足させていただきますと、こちらのサルブタモールとテルブタリンですが、どちらも海外では有効性がきちんと確認されているもので、国内で片方の薬剤が承認されていなかったので、比較の治験をさせていただいたわけですが、全く効果が期待できないという状況ではありませんでしたので、患者に特段の不利益があるというものではなかったと考えています。その一方で、国際共同治験を行うためには、薬剤をある程度共通にしていく必要がありますので、そちらとの関係で御協力いただける患者には治験に入っていただいたと考えています。
○佐藤委員 そうではなくて、テルブタリンが有効だというのは、そうではなければ国際共同治験で対照薬群に入るわけではないですからそれはいいのですが、そうだとすれば、テルブタリンとサルブタモールの試験を行って、テルブタリンが日本で承認を取れるわけでも何でもないですね。やはり意味は無いと思うのです。でしたら、小規模であっても本薬とサルブタモールの日本人の試験を行えばいいのであって、できればそのような方向にしていただきたかったと思っています。
○吉田部会長 そのようにしたとしても、厳密に言えば、テルブタリンが未承認薬のままでは国内試験ができないことになります。一般的に新薬が治験に入る場合、予め治験薬としての薬事承認を得ていますが、対照薬についてまでは考えられていません。従って、国際治験に限っては未承認の対照薬も使えるようにするという、何かそのような仕組みを考えてくださいというお願いです。ほかによろしいですか。
○清水委員 教えていただきたいことなのですが、発作発現時投与のブデソニドの役割、ホルモテロール単剤との比較もしていて、両剤、両成分が寄与しているという審査報告書になっていると思うのですが、その中でブデソニドがどのような作用機序といったらいいのですか、役割だとお考えになっているのか教えていただきたいのです。
○機構 回答させていただきます。ブデソニドの役割としては、抗炎症治療を強化するというところですが、御指摘いただいた発作発現時の症状改善効果については、LABAの寄与であると考えられています。一方で、海外の試験で本剤の要時吸入とホルモテロールの要時吸入を比較した場合に、本剤の要時吸入の方が急性増悪発現リスクや発現率が低下したという成績が得られていますので、急性増悪の抑制効果という意味では、ステロイドが寄与しているのではないかと考えております。
○清水委員 作用点というか、どのような役割になっているかというのは、明確にはなっていないということですか。急性時発作に関する寄与については、効果があったというデータは出ているけれども、このような機序で効果が考えられるという、一般的にこれまでずっとステロイドは発作時には有効性は認められにくいと言われてきている中でこのようなデータが出たので、その役割が何か明らかになったものがあるのであれば、教えていただきたいと思ってお聞きしました。
○山本委員 それを今聞いてしまうとあれですが、発作時にステロイドを大量に投与することはよくあります。ですから、それはリーズナブルだと思います。
○機構 喘息の原因となっている炎症症状を抑えることで発作の抑制にも寄与していると考えております。
○吉田部会長 そこをもっと言いますと、何で急性増悪に関して、また改めて申請が出たのかということなのですが、初めはそれを期待していなかったということもあるのでしょうか。その背景のようなものは分かりますか。例えば、今回このようなことがあって、有効性が期待されるので、急性増悪についても申請が出たのだというような、申請の背景みたいなものは御存じですか。それが分かると、ある程度説明がつくかと思うのですが。
○機構 申請の背景というと少しお答えになっていないかもしれないのですが、本剤は最初に長期管理薬として承認をしているのですが、その際には有効性評価として、長期管理した時のトラフの肺機能が改善するというところを確認し、承認をしています。ですので、発作時に使うことによって発作が抑えられるとか、急性増悪が抑えられるといったデータは、その時点では得られていなかったというところで、長期治療薬ということのみで承認をしているという状況で、今回新たに発作時に使った場合にも追加のメリットが得られるというデータが得られたことから、プラスの承認になるということです。そのような経緯です。
○吉田部会長 「市販後調査等について」という所で、例数が書いていないのですが、これはいくつになるのですか。
○機構 報告書には記載していないのですが、2,000例を予定しております。
○吉田部会長 2,000例は、全部、急性増悪例で行おうということですね。急性増悪2,000例は少しきついかもしれないですね。
○機構 そうですね。対象としては、本治療法を適用する患者のうち、観察期間中に要時吸入が必要とされるような患者を組み入れることにしています。
○吉田部会長 でも、本治療法を適用したというのは、本治療法は高用量を含むということです。それが今度の申請でしょう。だったら、高用量となった患者について調べるのではないのですか。
○機構 実際のところは、頻回に要時吸入が必要とされるかどうかは、組み入れてみないと分からないところがありますので、2,000例のうち頻回に要時吸入を行った症例がどの程度集められるかというところは、不確定なところはあるのですが、臨床試験結果としては、6回を超える要時吸入を行った症例が2割程度ですので、2,000例集めたら2割は現在の承認用量を超える頻回要時吸入という形で集まると考えています。
○吉田部会長 括弧して、その時に2,000例でいいのですが、例えば400例なら400例、200例なら200例でもいいのですが、高用量患者は少なくともそれだけは入れておいて欲しいという希望というか、それが入っていなかったら、もう少し調査を続けてもらうというのはいかがですか。今この薬が問題になっているのは、高用量の患者に対してどれだけ安全性があるか、有効性があるかを確認したいということなので、普通の維持療法だけの患者が2,000例入っても意味が無いですね。この薬を使った患者で市販後調査を行う時には、少なくとも何%は入れてほしいということを指導してほしいと思います。
○機構 今のところ高頻度に使った患者の目標症例数は設定していないのですが、2,000例ということで調査をして、頻回使用の患者が十分集積していなかった場合には、調査期間を延長する等の対応を考えたいと思っております。
○吉田部会長 よろしくお願いします。ほかにありますか。御意見も無いようですので、議決に入りたいと思います。
本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 議題4について、医薬品医療機器総合機構からの概要の説明をお願いします。
○機構 審議事項議題4、資料4「医薬品オーキシス9μgタービュヘイラー28吸入及び同60吸入の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」機構より説明いたします。
 本剤は、長時間作用性β2刺激薬(LABA)であるホルモテロールフマル酸塩水和物(以下、ホルモテロール)を有効成分とする定量式吸入用散剤であり、今般、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に係る効能・効果で申請がなされたものです。本邦においては、ホルモテロールを有効成分とする薬剤として、山之内製薬(現アステラス製薬)により開発された錠剤及びドライシロップ剤(アトック錠40μg、アトックドライシロップ40μg)が、気管支喘息及びCOPDに係る効能・効果で、1986年より市販されています。また、ホルモテロールの吸入製剤は、単剤としては承認されていませんが、ステロイド薬であるブデソニドとの吸入用配合散剤であるシムビコートタービュヘイラーが気管支喘息の効能・効果で2009年に承認されています。
 海外において、本剤は、COPDに係る効能・効果では、2002年にEUで承認されて以降、2012年1月現在、約70か国で承認されています。
本申請の専門委員としては、資料15に記載されております4名の委員を指名いたしました。
 主な審査内容について、簡単に説明いたします。審査報告書6ページ中段の「(2)国際共同第III相試験(D5122C00001試験)」の項を御覧ください。本申請における検証試験として、日本人及び外国人COPD患者613名を対象に、本剤4.5μg、9μg、又はプラセボを1日2回吸入投与した際の有効性及び安全性を比較するプラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されております。
 まず、試験全体の成績について説明いたします。7ページ上段の表3に示していますように、主要評価項目である投与4、8及び12週時の平均FEV1のプラセボ群との比は、本剤4.5μg群では1.106、本剤9μg群では1.114であり、いずれの投与群においてもプラセボ群と比較して有意な差が認められています。
 続きまして、本試験に組み入れられた日本人患者324名の成績について説明いたします。8ページ中段の表5に示しているように、投与4、8及び12週時の平均FEV1のプラセボ群との比は、本剤4.5μg群では1.124、本剤9μg群では1.139であり、先ほどの試験全体の成績と類似した結果が認められています。これらの成績より、機構は、日本人COPD患者における本剤の有効性は示されていると判断しました。
 次に、審査報告書の11ページ下段、「(2)用法・用量について」の項を御覧ください。先ほどの国際共同第III相試験において、主要評価項目であるFEV1については、本剤4.5μg群と9μg群で同程度であったものの、診療ガイドラインにおいてCOPDの安定期の管理には、呼吸機能だけでなく、臨床症状の程度も加味し、重症度を総合的に判断した上で治療法を選択すべきとされていることなどを踏まえ、副次評価項目であるレスキュー薬としての短時間作用性β2刺激薬(SABA)平均使用回数及びCOPD特異的な健康関連QOL評価指標であるSGRQ総スコアの結果において、12ページの表9及び表10、13ページの表11に示しておりますように、9μg群の改善効果は4.5μg群より大きかったことなども勘案し、申請用法・用量のとおり、通常、成人にはホルモテロールフマル酸塩水和物として9μgを1回1吸入、1日2回投与とすることに大きな問題はないと機構は判断いたしました。
 次に14ページ下段、「(4)安全性について」の項を御覧ください。COPD患者には高齢者が多く、本剤の主な適用対象は高齢者と想定されることから、15ページの下段の「2)年齢による影響について」の項に示しておりますように、年齢別の有害事象発現率について検討しました。国内長期投与試験及び6か月以上の長期海外臨床試験の併合データにおいて、年齢別の有害事象発現状況は16ページの表13のとおりであり、本剤の安全性に年齢による明らかな影響は認められませんでした。しかしながら、本邦ではCOPD患者に占める高齢者の割合が特に高いとされていること、臨床試験で検討された本邦の高齢患者における検討は限られていることから、高齢者における安全性については、製造販売後調査において、さらに確認する必要があると考えております。
 次に17ページの中段、「3)長期投与時の安全性について」の項を御覧ください。海外併合データにおけるβ2刺激作用に関連する有害事象の発現率については、17ページの表15に、重篤な心血管系有害事象の発現率については、18ページの表16にそれぞれ示しておりますとおり、有害事象の種類及び発現率に本剤群とプラセボ群で大きな相違は認められませんでした。また、COPDに関連する死亡、重篤な有害事象及び増悪の発現状況については、19ページの表17及び18のとおりであり、海外SD-039-0670試験の本剤群でプラセボ群に比べ死亡件数が高い傾向が認められているものの、ほかの海外臨床試験成績及び公表文献に基づき、本剤の投与によりCOPDに関連する死亡等のリスクが高まる可能性は低い旨が説明されております。機構は、現時点までの情報からは、本剤の投与によりβ刺激薬の薬理作用に関連する有害事象、重篤な心血管系有害事象及びCOPD関連死などの発現リスクが高まる可能性は低いと考えておりますが、この点についても、製造販売後調査の中で引き続き情報収集する必要があると考えております。
 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請に係る再審査期間は4年、また製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。
 なお、部会に先立ち、佐藤委員より御質問をいただいております。「審査報告書12ページ8~10行目の記述に、『国際共同第III相試験(D5122C00001)では、SABA(サルブタモール)をレスキュー薬として使用した回数を副次評価項目として設定しており、表9で示すように、本剤9μg群は本剤4.5μg群と比較して有意に減少し、SABA使用回数の減少幅は2倍であった』とありますが、どのような意味なのでしょうか。プラセボ群に比べ、本剤4.5μg群で-0.274回、本剤9μg群で-0.548回であったことを指すのであれば、『SABA使用回数のプラセボ群との減少幅は2倍であった』かと思いますが、使用回数の前後差のプラセボ群との差が2倍ということに臨床的な意味は無いと思いますので、単に『SABA使用回数の減少幅は-0.274であった』とすればいいのではないでしょうか。」との御質問です。
御指摘のとおり、当該記載はプラセボ群に比べ本剤4.5μg群で-0.274回、本剤9μg群で-0.548回であったことを指すものであり、分かりにくい説明ですので報告書の記載を適切に修正させていただきます。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 先生の御指摘されたように、どのように修正するのですか。
○機構 先生の御指摘のように、「SABAの使用回数の減少幅は-0.274であった」という形で、修正させていただきたいと思います。
○吉田部会長 よろしいですか。ありがとうございました。委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○奥田委員 今の御説明を聞いていて思ったのですが、表9の観察期間におけるSABAのサルブタモールの使用回数がプラセボ、本剤4.5μgと9μgの間で、かなり値が違うように思うのですが、これは検定しているのかどうか分からないのですが、標準偏差であれば、もしかして有意差があるのかとも思います。この群間での違いが無いということが前提になるのかとは思うのですが、ここに差は無いのでしょうか。
○機構 今の御指摘は、観察期間のプラセボ群と4.5μg群、9μg群のSABA使用回数に差が無いかということですか。
○奥田委員 そうです。
○機構 こちらについて、有意差はありません。
○奥田委員 投与期間中のSABAの回数には、3群間でそれほど差が無いように見えるので、観察期間の差の方がむしろ大きいように見られるので、そこのところが大きく影響しているというのがこの結果に影響していないのかを疑問に思ったということです。
○審議役 今、奥田先生から御指摘の観察期間が後々に影響するかしないか、審査チーム内で確認させていただきます。少しお時間をいただいて、後で御説明申し上げます。基本的には、それは我々としてないのではないかと予測しています。
○吉田部会長 ただ、確かに4.5μgと9μgの所で、投与期間はほとんど変わらないのに、変化量だけ随分違ってきています。
○審議役 お時間をいただければと思います。
○吉田部会長 よろしくお願いします。ほかにありますか。
○機構 この表の下に小さな字で少し書いているのですが、観察期間のSABA平均使用回数を共変量とした解析を行っておりますので、この観察期間の差を勘案しても投与期間中のSABA平均使用回数について群間で差が見られたという結果になると解釈しています。
○吉田部会長 観察期間の平均値ではなくて、投与期間は変わらないので、観察期間の長さ、長短が差に効いたのではないかという質問です。投与期間が1.52と1.50ではないですか。薬を使っている期間は変わりません。
○機構 観察期間中のSABA平均使用回数が、プラセボと本剤4.5μgと9μgで差が見られていることが有効性評価に影響しているのではないかという御指摘とこちらとしては理解しています。その差を共変量として調整した解析において、本剤4.5μgと9μgでSABA平均使用回数に差が認められています。
○奥田委員 恐らく先ほど御説明いただいたところの観察期間中のSABAの使用回数がプラセボ群と本剤4.5μg、9μgの3群間で差が無いというところが答えなのだろうと思うのですが、差があるように見えたので先ほどの質問になったのですが、差があるとすれば、この3群間で患者の背景が同じではない可能性があると考えて、この3群間で割り振ったのが、要するに偏りを生んでいないでしょうかという意味での質問になったかと思います。
○吉田部会長 要するに問題は使用回数の減少幅が2倍というところなのです。基本的にプラセボは効かないので、SABAの投与回数は増えるでしょうということです。したがって4も9の方も、もっと減ってくるはずです。でも、4.5と9を見ると、余り変わらなくて、観察期間が伸びている。要するに投与期間は同じぐらいなのですが、結局長く見ているか見ていないかの差によって、その期間における回数としては相対的に減っているという風に見えているのではないかというのですが、そのようなことではないのでしょうか。
○機構 表9の記載は、観察期間におけるSABA平均使用回数、投与期間のSABA平均使用回数ということで、それぞれ回数の記載になっています。
○佐藤委員 奥田先生がおっしゃるとおりだと思うのです。観察期間のところは統計的な差は無いでしょうけれども、やはり少し本薬群の方で回数が多いように思います。ただ、そのことを考慮するために、観察期間と投与期間の変化量を見ていますので、観察期間のところで少し差があるように見えても、そこからどのぐらい減ったかということをエンドポイントにしていますから、そこの部分で統計的な有意差があることは確認できているのだと思います。
○奥田委員 質問の補足になるかもしれませんが、要するに、そこの仮定が今の質問で無理があるのかもしれませんが、3群で差があり、SABAを沢山使っている患者ほど本剤の効果が高いということがあるとすれば、ここに偏りが出ている可能性があるので、そこの観点で今回評価する、そこを審査するというか、詳細に見る必要は無いのでしょうかという質問に置き換えて質問した方がいいかもしれません。
○機構 お答えになっていないかもしれないのですが、この試験においてはSABAを使用しなかった患者も一部含まれており、SABAを使用しなかった患者を除いて、SABAを使用した患者のみで同様の解析を行った場合にも、同じように9μg群で、よりSABAの使用回数が減少しているという成績は認められております。
○吉田部会長 生データだと分かりやすいのかもしれません。この観察期間からの変化量という、ポチが1個付いて標準偏差がでていますが、これは要するに一定観察期間の中で、どれだけ減るかといったような話ですか。そうすると、観察期間の差は関係無くなります。
○機構 はい。評価している期間は、観察期間については各群とも最後の10日間の平均値を取っており、投与期間も各群で同一ですので、そこからの変化量を見ているということで、そこは各群で揃っているという状況です。
○吉田部会長 そのようなことだそうです。上の二つは生で、結局プラセボが効かないから沢山投与することになり、4.5μgと9μgに余り差は無いのですが、奥田先生が言うように、これは観察期間の差が、少し変化量に影響しているかもしれないけれども、それ以上に差があるということになってきているのかもしれないです。分かりませんが、一応、観察期間を一定にしているので、観察期間の差は無視できると考えていいのだということですね。
○機構 はい。
○吉田部会長 そのようなことだそうです。
○奥田委員 統計的に見て差が無いというところからスタートしているという先ほどの御説明で、私としては、一応それは了解しております。
○佐藤委員 安全性についてお伺いしたいのですが、国際共同試験の報告書7ページの表4で、上から四つ目、五つ目ぐらいに、気管支炎、肺炎が本剤でプラセボ群より少し多いですね。特に9μgで少し多いのですが、日本人患者だけを見ると、9ページの表6に日本人患者だけを取り出した結果が出ているのですが、プラセボ群も含めて、気管支炎、肺炎が出ている方が肺炎の1名を除いて全部、日本人患者です。日本人と海外の方の違いは、日本人は高齢者が多かったから、訴えが多いのではないかと考察されています。後の国内の長期投与試験の結果が10ページの表7に出ているのですが、こちらを見ると気管支炎は標準治療薬群の方も多くなっていますが、肺炎はやはり本薬の9μgが多いように見えます。この肺炎については、少し注意した方がいいかという気がするのですが、いかがでしょうか。
○機構 御指摘いただいた点について、製造販売後調査等でも注意深く検討するように、申請者に伝達したいと思います。
○吉田部会長 数字で分かる話はある程度信頼性があるのですが、この国際治験というのは、日本、ルーマニア、ロシア、ウクライナですね。そうすると、どれだけ真面目に有害事象や、画像をきちんと評価したのか等、医療レベルの差も出てきてしまう可能性がありますね。例えば、画像をきちんと見ないで、見落としたりということになると、はっきりしたエピソードに関しては問題無いと思いますが、読影力が影響するということになってくると、前の肺線維症の時もそうですが、国際治験の場合、同じ診断基準でなかなかいかないということも影響しているかもしれないですね。それも含めて、これは市販後調査を行うのでしょうか。
○機構 はい。製造販売後調査を予定しております。
○吉田部会長 調査を予定しているのですね。今の御指摘は、日本人に特有のものでないかもしれないけれども、こういった有害事象の中で日本人に現れたものに関しては、重点的にフォローしてくれという注文でいいのではないかと思うのですけれども。
○機構 そのように伝達したいと思います。
○吉田部会長 ほかにありますか。ステロイドが要らなくても良かったのだということが分かっただけでも、大したものだと思ったりもします。要するに、それだけ単剤で有効性が出れば、それはそれに越したことはないわけで、私自身は大変興味がありました。ほかにありますか。御意見が無いようですので、そろそろ議決に入りたいと思います。
本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 議題5に移ります。議題5について、事務局から概要の説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題5、資料5「ベンダムスチン塩酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より御説明いたします。
疾患名はCLLと省略いたします。申請者はシンバイオ製薬株式会社です。機構による評価報告書というタブがございますので、こちらを開いていただきまして、希少疾病用医薬品の指定要件の対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について順に御説明いたします。
 まず、対象患者数は、平成20年患者調査で慢性リンパ性白血病の患者数が約2,000人と推計されておりまして、希少疾病用医薬品の指定基準である5万人未満を満たしております。
次のページの「医療上の必要性」について御説明いたします。国内では、フルダラビン、シクロホスファミド等が慢性リンパ性白血病の適応を有しており、フルダラビンを含むレジメンが、第一選択として用いられつつあります。しかし、腎機能が低下している高齢者や重症感染症を合併している場合等では、フルダラビンが適応とならず、また、海外に比べて選択肢が限定されているというのが国内の現状です。
 最後に「開発の可能性」については、本剤は海外臨床試験で未治療のCLL患者に対して奏効率が68%、無増悪生存期間の中央値が21.6か月という成績が得られており、2012年2月時点では、欧米等38の国又は地域でCLLの適応が承認されております。国内においては、未治療のCLL患者を対象として、本薬の有効性及び安全性を検討する第II相の臨床試験が計画中です。したがって、本剤の開発の可能性は高いと考えております。
以上、3点より、本剤は希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。疾病の重篤性と有効性の期待、さらに開発の期待です。問題無さそうに思いますが、よろしいですか。議論の余地は無いですね。ありがとうございました。
それでは議決に入りたいと思います。なお、清田委員、前崎委員、山本委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございました。
御異議が無いようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
それでは議題6について、事務局から概要の説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題6、資料6-1、6-2「乳濁細胞培養A型インフルエンザHAワクチン(H5N1株及びプロトタイプワクチン)を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より御説明いたします。
資料6-1に機構の評価報告書の添付がございますので、こちらで御説明をさせていただきます。申請者は、一般財団法人化学及血清療法研究所です。本申請の対象疾患である新型インフルエンザにつきましては、まず、対象患者数は、これまで我が国においては症状を伴うH5N1型インフルエンザの感染例は報告されておりません。また、抗体陽性例については、H5N1亜型で5名の報告がございます。また、そのほかH5N2亜型で93名の抗体陽性例の報告がございます。これら合わせても98名という報告で、これらのことから、国内対象患者数の条件を満たしているものと判断しております。
 次に、医療上の必要性についてです。H5N1型高病原性インフルエンザウイルスが人に感染して発症した場合、全身症状等、致死率60%以上ということで、重篤な疾病を引き起こすということで、対象疾患の重篤性は高いと考えております。また、本剤はアヒル胚性幹細胞由来の細胞を用いて製造されるワクチンということで、従来の鶏卵を用いた製造方法に比べて、鶏卵の供給に依存しないといったような利点があると考えており、これらを踏まえて、医療上の必要性はあると考えております。
 3点目の本剤の開発の可能性については、実施された国内第I相臨床試験におきまして、有効性及び安全性に特に大きな問題は無く、また現在第II相の臨床試験が実施中で、今年の8月から免疫原性及び安全性を確認するための第III相試験が開始される予定です。これらのことから、開発の可能性もあると判断しております。
 資料6-2のプロトタイプワクチンについては、パンデミックインフルエンザの流行時に必要に応じて、より広い製造株で変更が可能になるようにということを前提にした開発で行われているワクチンです。こちらもオーファンの指定要件の3点については、H5N1株と同様と判断しております。以上、3点によりまして、これら2剤につきまして、希少疾病用医薬品としての要件を満たすものと判断しております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 それでは委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○濱口委員 アジュバントについてお聞きしたいのですが、以前、この部会でも同じアジュバントを使ったワクチンの検討を行ったというのは記憶しているのですが、日本ではこのワクチンの使用はそれほど多くなかったのかと思います。しかしながら、世界においては相当数の使用がなされていたということだと思うのですが、実のところ余り詳しい使用後のデータというのは把握していません。もしお分かりでしたら、以前このアジュバントを使ったワクチンの言うならば特に安全性の観点から、特段の問題が無かったのかどうか、その辺のところを教えていただければと思います。
○事務局 ありがとうございます。アジュバントについては、手元にデータ等はありませんが、今後申請を予定しておりますので、その中で申請されたら審査の中で、その辺の御指摘も踏まえて、アジュバントの安全性を含めて、しっかり見ていきたいと考えております。
○吉田部会長 今の話はそうではなくて、同じようなアジュバントを使って以前に承認したワクチンのその後の安全情報はどうなっていますかということです。
○事務局 いわゆる以前承認したワクチンのお話ということですが、今、手元にその情報を持っておりません。
○濱口委員 当時、承認した時、やはり臨床での使用数が少ないということで、非常に困惑した経験をしております。今回はそのアジュバントがある意味で表に出てきて、これから使おうという状況になると思うのですが、一応、こういった審査を行う場合には、外国で使われた時の経験をある程度細かく検証する必要があるのかと考えております。もう使ってから数年経っております。使ってまだ半年しかなっていないのであれば、データを集めるのは非常に厳しいかと思っております。是非、そこの部分は検討していただきたいと思っています。
○事務局 ありがとうございます。
○吉田部会長 情報は入りますか。入手できないということだと困ります。
○事務局 お手元の資料で恐縮ですが、資料6-1の添付資料の83ページを御覧ください。今オーファン指定申請のあった製剤の安全性に関する資料はこちらだけですが、第I相試験の結果ということで、安全性の要約があります。こちらでは特段問題になるような情報は得られておりません。また、今後第II相試験等を実施中ですので、御指摘の点は今後審査の中で十分確認はしていきたいと思います。
○吉田部会長 ということは、ある程度すぐ手に入るのならば、濱口先生に見ていただいて、それで最終的に了解としたいのですが、これは手に入りますか。
○事務局 確認をさせていただいて、分かれば御報告させていただきます。
○濱口委員 我々もいろいろ調べているのですが。
○吉田部会長 手に入らないのですか。
○濱口委員 手に入りづらいのだろうと思うのですが、入るのだったら、お願いしたいと思います。
○吉田部会長 その辺、報告を上げる前に、手に入るか、入らないかも含めて、濱口先生と私に連絡をくれますか。
○事務局 確認させていただきます。
○吉田部会長 そのように対応したいと思います。ほかにありますか。パンデミックになってからでは遅いので、患者さんの少ないうちに、こういったオーファンで通して準備しておくという趣旨のようです。よろしいでしょうか。それでは、議決に入ります。
本議題について、先ほどの情報を適応条件として、指定を可としてよろしいでしょうか。
ありがとうございます。御異議が無いようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、議題7、事務局から概要の説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題7、資料7「生物学的製剤基準の一部改正について」事務局より説明いたします。
資料を御覧ください。生物学的製剤基準については、薬事法の第42条第1項に基づく基準であり、保健衛生上、特別の注意を要する医薬品について、品質、試験方法等の基準を定めたものです。具体的にはワクチン及び血液医学的製剤等について、医薬品各条として、それぞれの品質など、基準を定めております。
 今般は、「洗浄人赤血球浮遊液」「解凍人赤血球濃厚液」、また「pH4処理酸性人免疫グロブリン」の各条につきまして、必要な改正を行うものです。3ページ以降に、現行の基準と改正(案)をお示ししております。
 洗浄人赤血球浮遊液につきましては、製剤の開発申請に伴って、有効期間を延長する改正を考えております。また、解凍人赤血球濃厚液につきましては、保存用の添加液を混和した製剤の申請を踏まえて、有効期間の延長など、必要な改正を行うものです。また、pH4処理酸性人免疫グロブリンにつきましては、10%の濃い濃度の製剤の申請を踏まえて、こちらに関係する部分の必要な改正を行うものです。本件、生物学的製剤基準の改正につきましての説明は以上です。よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 それでは委員の先生方からの御質問、御意見をお願いいたします。お聞きしたいのですが、ここに(案)がありますが、例えば、今改正はいいのではないですかとなると、この(案)が取れてしまうのですか。
○事務局 今回、薬事法の42条の基準ということで、改正に当たって、審議会の御意見を伺うということです。
○吉田部会長 また別の審議会でも御意見を伺うのですか。ここでおしまいですか。
○事務局 部会で御審議をいただくということです。
○吉田部会長 ということであれば、濱口先生、解説していただけますか。
○濱口委員 内容については、新しくいろいろな保存液を加えたりとか、変えたりというようなことで、それに合わせて内容が変わり、記載が変わっているというところで、一応、各項目については妥当であるという判断をしております。ただ、これについては私たちは納得しているのですが、一つ、コメントと言ったらあれですが、改正案の4のところに、一応、「承認時に定められた期間とする」と記載があります。やはり、生物学的製剤基準というのは、ある意味でこういった規制をする側、製造販売をする側が拠り所とする非常に重要な規範になるわけです。一方で、一般の人にも、これがすぐに見て取れるものでもあるのです。別を見なさいという書き方というのは、私自身は余り好ましくないのかと思います。できるだけ細かい数字をここに入れることができるのであれば、できるだけそのような方向に努力をしていただきたいと思います。ただ、これに関しては少しコンヒューズしたりすることがあるので、このような書き方をされているというのは了解しておりますが、今後、生物学的製剤基準の書き換えを行う際に、安易に承認書に書いてあるとおりですとか、別に書きますというのは避けていただきたいというのはあります。以上です。
○吉田部会長 いかがでしょうか。
○事務局 御意見をありがとうございます。生物学的製剤基準というところで、ワクチン、血液製剤等の規格をお示しするという観点で、先生の御意見は、できるだけというところかと思います。
 本剤に関しては、今後さらに有効期間が延びることも想定されていますし、こういった書き方で改正をさせていただければと考えております。ここ最近、生物学的製剤基準の方も頻繁に改正をさせていただいておりますので、濱口先生からいただいた御意見等、今後参考にさせていただければと考えております。
○吉田部会長 よろしいですか。少しずつ詳しくはなっているようですが。そのようなことで、お願いしたいと思います。ほかに御意見はございますか。よろしいでしょうか。それでは議決に入りたいと思います。
本議題につきまして、生物学的製剤基準の改正を可としてよろしいでしょうか。
御異議が無いようですので、生物学的製剤基準の改正を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 続きまして、報告事項についての説明をお願いします。
○機構 報告事項議題1、資料8「メイアクトMS小児用細粒10%の製造販売承認事項一部変更承認について」機構より報告いたします。
メイアクトMS小児用細粒10%は、経口用セフェム系抗生物質であり、活性本体であるセフジトレンは、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に広範な抗菌スペクトルを有しております。
本剤は、既存の経口抗菌薬の中でペニシリン及びマクロライド耐性の肺炎球菌、アンピシリン耐性のインフルエンザ菌のいずれにも強い抗菌力を示しますが、原因菌の薬剤耐性化が懸念されることから、小児の急性中耳炎、急性鼻副鼻腔炎及び肺炎に対する本剤の高用量が各種ガイドラインで推奨されております。しかしながら、既承認用量では適宜増減と記載されてはおりますが、高用量投与については具体的な投与量が示されていないことから、薬剤耐性菌による感染症の患児に十分量が投与されず、期待される臨床効果が得られないことが危惧されております。
今般、薬剤耐性菌の関与が大きいと考えられる小児の細菌性肺炎、急性中耳炎及び急性鼻副鼻腔炎を対象に、本剤高用量として1回6mg/kg1日3回投与における有効性、安全性及び薬物動態を確認する国内臨床試験が実施され、有効性及び安全性が示されたことから、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、資料8に記載した効能・効果及び用法・用量にて、承認して差し支えないと判断いたしました。
 報告事項議題2、資料9-1、9-2「医療用医薬品の再審査結果について(シタラビン)、(イトラコナゾール)」について御説明します。
これらはいずれも医薬品再審査確認等結果通知書です。資料9-1は、一般的名称はシタラビン、販売名はキロサイドN注400mg及び同注1gのもの、資料9-2は、一般的名称はイトラコナゾール、販売名はイトリゾール内用液1%のものです。
これらの品目につきまして、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査、製造販売後臨床試験等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち、効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要は無い、「カテゴリー1」と判定したものです。
○事務局 報告事項議題3、資料10「医療用医薬品の承認条件の解除について」事務局より御説明いたします。
2ページからになりますが、ネクサバール錠200mgにつきましては、平成20年1月25日に根治切除不能又は転移性の腎細胞癌の効能・効果で承認されており、その際、全例調査の承認条件が付されております。今般、この承認条件に関してバイエル薬品株式会社よりデータが提出され、機構における審査が終わりましたので御報告いたします。
 3ページ上の調査結果の概要については、本剤の特定使用成績調査については、目標症例数が700例、観察期間が12か月とされ、1,829例の調査票が収集され、調査結果がまとめられております。
安全性につきましては、その下の2.に記載しておりますが、副作用が発現した症例が92.3%、41.2%で重篤な副作用が認められております。発疹等の重点調査項目につきましては、添付文書で更なる注意喚起を要するような問題となる条件は認められておりません。また、承認後に間質性肺疾患の副作用報告が集積したことから、添付文書における注意喚起等の対応を行っております。有効性につきましては、奏効率が23.4%という成績で、本調査の結果を踏まえた添付文書等の改訂、ホームページでの副作用発現状況の公表等が行われております。これらのことから、承認条件の内容については確認できたものと判断しております。以上です。
○機構 報告事項議題4、資料11「優先審査指定品目の審査結果について(マラロン配合錠)」について機構より御報告いたします。
優先審査の取扱いについては、資料の2ページに概要をお示ししております。この制度は、薬事法第14条第7項の規定に基づき、希少疾病用医薬品やその他医療上特に必要性が高いと認められる品目を指定し、他の品目に優先して審査を行うものです。その指定に当たっては、適応疾病の重篤性、医療上の有用性を総合的に評価して判断されます。
 資料の1ページにお戻りください。今回の対象品目は販売名「マラロン配合錠」、一般名「アトバコン・プログアニル塩酸塩」、申請者は「グラクソ・スミスクライン株式会社」です。
 本剤については、「マラリアの治療及び予防」の効能・効果で承認申請がなされています。事前に取りまとめられた医薬品医療機器総合機構の報告書に基づき、本剤の優先審査の該当性について御説明します。資料の10ページの「総合判断」の項を御覧ください。「適応疾患の重篤性」については、本剤の対象疾患であるマラリアは、治療を行わない場合、死に至ることもあり、「生命に重大な影響がある疾患」に該当すると判断されました。
また、「医療上の有用性」については、現在、本邦で承認されている抗マラリア薬に対する耐性化が報告されていることを踏まえて、マラリアに対する新たな薬剤の選択肢が必要と判断されました。また、本剤は、これまでに実施された海外臨床試験の結果を踏まえると、既存の治療薬に耐性を有するものを含め、マラリアの治療及び予防における有効性が示されており、安全性についても既存の治療薬よりも優れた忍容性を示していると考えられました。以上を踏まえ、本剤は優先審査品目に該当すると判断しました。
 なお、本剤の優先審査指定品目への該当性の判断に当たって、優先審査の適用の可否を速やかに決定するために、本剤の申請前に、機構において、医薬品優先審査品目該当性相談が実施されており、その評価を基に、今回の意見が取りまとめられています。本剤の承認の可否については、今後、機構での審査を経た後に、改めてこの部会で御審議いただく予定です。以上です。
 報告事項議題5、資料12「希少疾病用医薬品の指定の解除について(セロスティム注5mg)」について御説明します。
資料を御覧ください。届出者はメルクセローノ株式会社、指定を受けた医薬品の名称は「ソマトロピン(遺伝子組換え)」、販売名は「セロスティム注5mg」です。
 1枚おめくりいただき、別紙の1ページの「2.」です。本剤は、平成7年4月「後天性免疫不全症候群の除脂肪体重の維持・増加」を予定される効能・効果として希少疾病用医薬品に指定されました。その後、本剤は上の「1.」に記載のような効能・効果により、平成11年に輸入承認を受け、本邦での販売がなされていましたが、強力な抗HIV療法の進歩・普及により、現在では本剤が使用されるケースはほとんど無くなったとのことです。そのため今般、届出者は、本剤の製造販売の中止を決定し、「希少疾病用医薬品製造販売中止届書」が提出されたものです。
よって、本剤の本効能・効果に係る希少疾病用医薬品の指定を取り消すこととしました。以上です。
 報告事項議題6、資料13「レフルノミドの安全対策のための用法・用量の変更について」御説明します。
資料の1ページを御覧ください。「1.製品の概要」については、一般名レフルノミド、販売名アラバ錠10mg他は、関節リウマチを効能・効果とし、記載の用法・用量により承認されているところです。レフルノミドについては、「2.」の用法・用量のとおり、初期投与として、1日1回100mgを3日間投与する、いわゆるローディングドーズの投与が行われてきました。一方、最近の臨床試験等において、初期段階から維持投与量を投与した場合においても、ローディングドーズを投与した場合と比べて、有効性は変わらず、むしろ有害事象の発現が低い傾向にあることが明らかになりました。
 (1)の海外市販後臨床試験(LEADER試験)において、ローディングドーズ有り群と無し群の2種類の投与レジメンを比較したところ、主要評価項目である試験終了時におけるACR20反応率は、ローディングドーズ有り群の方が有意に低い結果となりました。なお、副次評価項目では有意差が認められなかったことから、ローディングドーズ有りと無しの有効性の差については、この試験成績のみからは判断し難いと考えております。安全性については、有意な差ではありませんでしたが、ローディングドーズを投与しなかった群において、有害事象の発現率が低い傾向でした。
 また、(2)のとおり、国内で市販後に実施した使用成績調査においても、ローディングドーズを行わない投与例の報告が有り、ローディングドーズの有無で比較検討した結果、ローディングドーズの有無で有効性に大きな違いは認められなかったものの、副作用については、副作用全体の発現率、重篤な副作用の発現率のほか、肝機能障害等の副作用の発現率がローディングドーズ有り群で有意に高いことが明らかになりました。
 「3.用法・用量の変更について」は、欧州では、LEADER試験の成績を踏まえて、用法・用量等の項に「ローディングドーズを行わないことで有害事象発現のリスクを減らす可能性がある」旨の記載が追加されました。米国でも同様の内容が用法・用量に記載されております。本邦においても、より安全性を高める観点から、一律にローディングドーズを投与するのではなく、患者の状態等に応じて初期から維持用量で投与を開始できる選択肢を設けることが適切と考えられました。そのため、資料の4ページ及び5ページに記載のとおり、用法・用量及び関連注意等の記載を変更すると共に、当該変更について医療機関への周知を図りたいと考えております。以上です。
○吉田部会長 それでは報告事項につきまして、委員の先生方から御質問等ございましたらお願いします。
○奥田委員 教えていただきたいのですが、先ほどのワクチンの審議のことで、これを希少疾病用医薬品として指定することの可否についてということで、審議されて了承ということになったのですが、私はよく理解していないのですが、現状として患者さんが少ないので、5万人以下ですから希少疾病医薬品に該当するというのはよく分かりますし、そのことで優先審査に該当して、開発が促進されるというのはよく分かるのですが、実際、患者さんが増えた場合にはパンデミックで5万人をはるかに超えるような患者さんが出てくるのではないかと思うのですが、これを医療上、その必要性が高いということで優先審査をする、そのような意味で開発を促進するのであれば、わざわざ希少疾病用医薬品に指定しなくても良いのではないかと思うのですが。
○吉田部会長 それは資料のどちらでしょうか。
○奥田委員 資料6-1と6-2のところで、希少疾病用医薬品に指定されるということの理由が、どのような考えで指定されるという審議に至ったのかということをお聞かせいただきたいのですが。単に優先審査品目ということで指定するのであれば、わざわざ希少疾病用医薬品に指定しなくても優先審査品目に該当できるのではないかと思ったのですが。
○吉田部会長 今の資料12とは関係無しにというお話ですか。今の資料12で、いわゆる希少疾病用医薬品、HIVのあれが中止になったということと絡んでの話ですか。それとも全く絡まないのですか。
○奥田委員 全く関係ありません。優先審査の取り扱いに関する表記が資料の中に入っていました。
○吉田部会長 マラロンの優先審査の基準に関連してということですね。分かりました。
○奥田委員 はい。
○事務局 先ほどのオーファンの指定の関係になるかと思うのですが、資料6-1の添付資料を御覧いただければと思います。考え方として、化学及血清療法研究所からの提出資料ですが、添付資料の1ページ、アの対象者数に関する資料にいろいろな説明がありまして、下から5行目のところに、そもそも薬事法に基づくオーファンの指定について、その中で「感染症の疾病の予防の用途に用いる医薬品」の区分があります。その中で、今回のオーファンの指定に関しては、一旦発生すれば重大な影響を及ぼすおそれがあるものということで、まだ発生時期、規模等は不明であるというもののワクチンに今回該当するということです。優先の審査ももちろんですが、一つこれを置きますと、短期間に大量に生産をし、また接種する必要があるということで、審査で言えば優先ですが、そのほか、医薬品基盤研究所等での開発の助成やそういったところも指定をされると絡んでくるのです。そういったところも狙って会社としては申請をされてきていると考えております。
○奥田委員 分かりました。ありがとうございました。
○吉田部会長 よろしいですか。要するに、オーファンとして開発するのなら、優先審査項目でもいいのではないかという質問ですが、優先審査では駄目なのだというところをもう一度。
○生物系審査第二部長 優先審査とオーファンの大きな違いというのは、優先審査は申請されてから指定をするというところがございます。すなわち、結果が出て、有効性、安全性が担保できているということで申請され、その品目について優先審査の指定の判断を行います。一方、オーファンは申請前の初期の開発段階からも含めて指定をし、開発のインセンティブをきちんと取ろうというところが異なります。国としては指定する方向で、メーカーとの議論はあったと思いますが、今般正式にオーファン指定申請がされたということです。オーファン指定申請されたので、それについての評価を行ったというのが今日の流れです。そのような整理です。
○吉田部会長 よろしいですか。ほかにございますか。特に無いようですので、報告事項につきましては御確認いただいたものといたします。本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はございますか。
○事務局 次回の部会の予定は、既に御案内をさせていただいておりますが、7月20日(金)午後3時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 よろしくお願いします。それでは本日はこれにて終了させていただきます。ご協力ありがとうございました。


(了)

備考
 本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)

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