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2012年7月26日 第2回国立高度専門医療研究センターの在り方に関する検討会議事録

医政局国立病院課

○日時

平成24年7月26日 13:00~15:00


○場所

中央合同庁舎5号館専用第18~20会議室(17階)


○議題

1 国立高度専門医療研究センターの現状等について
  ・国立循環器病研究センターからヒアリング
  ・国立国際医療研究センターからヒアリング
2 その他

○議事

○猿田座長 それでは、時間が参りましたので、「第2回国立高度専門医療研究センターの在り方に関する検討会」を始めさせていただきます。委員の先生方におかれましては、大変お忙しいところ、また、もの凄く暑い中をお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
 第1回目は、国立がん研究センターと国立精神・神経医療研究センターの方に来ていただいてヒアリングを行いました。本日、早速ですが、まず委員の出欠状況に関しまして、事務局からよろしくお願いいたします。
○片岡国立病院課長 最初に、本日が最初の御出席となられます委員を御紹介いたします。宮城県名取市長の佐々木一十郎委員でございます。
○佐々木委員 宮城県名取市長の佐々木一十郎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
○片岡国立病院課長 また、本日は、祖父江委員、永井委員、新浪委員、福井委員、松本委員が欠席でございます。
○猿田座長 ありがとうございました。今日は、欠席の委員がちょっと多いですね。それでは、お手元の議事次第にあるとおり、国立高度専門医療研究センターの現状につきまして、今日は、国立循環器病研究センターと国立国際医療研究センターのヒアリングを行わせていただきます。
 最初に、事務局から前回の検討会で宿題となりました各センターの収支状況や人員数等について報告をお願いいたします。
○片岡国立病院課長 2点、御報告させていただきます。
 まず1点目は、資料1をご覧ください。各センターの部門別の収支状況、人数についてということで、6センターすべて各1枚でまとまっております。
 1ページ目を開いていただきまして、がん研究センターの状況でございます。セグメント別に研究事業、臨床研究事業、診療事業、教育研修事業、情報発信事業と、それから法人共通に分かれています。
 研究事業というのは、主に研究所です。臨床研究事業というのは、センターによって組織の在り方が違いますが、臨床研究センターとか臨床支援センター、治験管理室でありますとか臨床研究、治験に関する部門の費用であります。診療事業は病院部門でございまして、がんセンターであれば、築地、柏の2病院の分がまとまっております。それから、教育研修事業、情報発信事業、法人共通でございます。
 事業ごとに費用、収益、その損益がありまして、それぞれの資産も計上しております。それから、常勤職員の数をそれぞれ書いております。がんセンターは、教育研修のところがバーになっておりますが、他事業に従事している者が兼務などしていたりしていますので、バーとなっております。収支の状況は23年度、それから人員については今年4月1日現在のものでございます。
 2ページが循環器病センターで、3ページ目は精神・神経医療研究センターです。4ページ目の国際医療研究センターについては、先ほど紹介した事業のほかに、国際協力事業、国立看護大学校事業がありますので、そこについてもそれぞれ部門別に記載しております。 各センターの収支状況及び人員数については、以上でございます。
 もう一つは、資料2でございます。前回、説明が不足しておりましたので、改めて説明させていただきます。現在、ナショナルセンターは独立行政法人という法人形態なのですが、今、独立行政法人制度は政府全体で見直しされて、内閣官房の行政改革推進室から独立行政法人通則法の改正法案が国会に提出されております。この改革は、事務事業の特性に着目したガバナンスを導入して、新しい法人制度にふさわしい規律を整備するということで、現行の通則法を、組織規律、財政規律、目標・評価、国民目線での第三者チェックという個々の項目について、それぞれふさわしい改正をしております。施行日は26年4月1日を予定しておりますが、国会での審議はまだ始まっていない状況でございます。
 次の2ページをご覧ください。現在、104ある独立行政法人について、廃止、民営化、他の法人制度の活用、それから真ん中に「独立行政法人」制度廃止、「行政法人」制度を創設とあります。今、説明した独立行政法人通則法の改正というのは、真ん中のことを言っておりまして、個々の法人について、どれに当てはめるかというのをまず決めた上で、それぞれにふさわしい制度を適用していく形になります。
 ただ、国立高度専門医療研究センターにつきましては、左下の方にグレーで書いてある「法律等により在り方の見直しが予定されている法人」の中に入っておりまして、前回御説明しましたが、ナショナルセンター法の附則において、3年以内に組織全体について見直すこととされておりますので、今はどこに予定されているかではなくて、その在り方を考えた上でどこかに当てはめていく、このような状況でございます。
 次の3ページも基本的には同じものでございまして、各法人がどこに適用されるべきかまとめたものです。繰り返しになりますが、ナショナルセンターは左下にありますように、法律等により在り方の見直しが予定されている法人と位置付けられておりまして、この検討会の御議論も踏まえながら、どの制度に当てはめていくかを決めていく状況になっているということでございます。説明は以上でございます。
○猿田座長 どうもありがとうございました。
今回の資料は、前回の宿題に対する資料1、それから資料2と、資料3「国立循環器病研究センターの現状と展望」、資料4「国立国際医療研究センターのミッションと取り組み、展望」の4種類になります。
 今、説明のあった資料1と資料2に関しまして、委員の方々、どなたか御質問ありますでしょうか。どうぞ。
○荻野委員 資料1の研究事業というところに研究収益というものがありますけれども、これはどこかからの委託研究と理解すればいいのでしょうか。研究事業で利益が出ているところと赤字になっているところと両方あるようですが、この辺はどう理解すればよいのでしょうか。
○猿田座長 事務局からお願いします。
○片岡国立病院課長 受託研究等を行って、それが研究収益として計上されております。センターによっては、黒字になっていたり、赤字になっていたりということかと思います。運営費交付金や補助金、あと大学・企業等からの受託研究という形で収益等は計上されております。
○荻野委員 分かりました。
○猿田座長 どうぞ。
○花井委員 ちょっと確認したいのですが、資料2の2ページ目について、左上の法人はある程度類型化されていて、各センターは左下の個別に見直しを予定されている法人ということで別枠になっていますが、今の御説明だと、この場の検討によって、結果としては上の3つのどこかに落とし込むことがあり得るということなのですか。
○片岡国立病院課長 検討の結果によって、上の3つと言いますか、選択肢としては、廃止、民営化、他の法人制度活用、行政法人、国移管、いずれもあり得ます。
○花井委員 ということは、一般論として考えると、ナショナルセンターに一番近くて親和性が高そうに見えるのは、医療関係法人ということになると思うのですが、そことどういう差があるかということが重要な論点になるということですね。国立病院機構とナショナルセンターがどう違うのか。もし、それが極めて共通するものであれば、国立病院機構と同様の扱いになってもいいじゃないかという議論になっていくということですか。
○片岡国立病院課長 白地で御議論いただければと思うのですが、医療関係法人というのも確かに近いところがあります、もう一つ、行政法人の一番大きいところの真ん中辺に、国立研究開発行政法人とあります。ナショナルセンターはどちらかというと研究が主目的でございますので、目的だけからいくと、こちらの方が近いかなということもありますが、そこは次々回以降、それぞれの制度がどうなっているかということを説明させていただきます。
 ただ、行政法人については、こういう制度ですと説明できるのですが、医療関係法人というのは、別途、新しい法人をどうしようかということで議論していますので、医療関係法人については、こういう制度ですよとお示しすることができないというか、制度自体を今、検討している状況です。いずれ分かりやすい形で資料は提供させていただきたいと思います。
○花井委員 ということは、現時点では、この医療関係法人と国立研究開発行政法人の制度がどのように差があるかというのは明示的ではなくて、並行して検討が進んでいくという理解でいいでしょうか。
○片岡国立病院課長 はい。
○猿田座長 よろしいですか。他の委員の方でどなたか御意見ございませんでしょうか。前回の宿題についてはこれでよろしいでしょうか。
 それでは、特に御意見がないようですので、次に進めさせていただきます。今日は、遠いところ、循環器病研究センターの理事長を初め、皆さんにおいでいただいておりますので、20分ぐらいでセンターの概要を説明していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○国立循環器病研究センター理事長 国立循環器病研究センターの理事長・総長の橋本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。お配りしてある資料3に沿って御説明したいと思います。
 まず、資料3の国立循環器病研究センターの現状と展望の2ページ目をご覧ください。2ページ目の内容を次のページにグラフとして出しております。
 まず、循環器病対策の重要性ということから申し上げたいと思いますが、言うまでもなく、国立循環器病研究センターのミッションは、循環器病の予防と克服、もっと言えば制圧であります。それをするために、まず現状はどうであるかを申し上げますと、医療費は疾患別で第1位でございます。
 入院受療率は、全国同時に調査いたしまして、ある瞬間に日本でどれだけの患者さんがどういう病気で入院しているかを示すものです。3ページ目の図2を見ていただきますとよく分かりますが、1番は精神疾患であります。これは、日本の医療の中で、現在、そして今後問題になってくる部分だと思いますが、その次に循環器疾患でございます。恐らく脳卒中か心臓病と思われます。脳卒中になって後遺症が出ますと、そう簡単に退院できないということから、入院が多くなると理解しております。
 もう一つは、介護であります。3ページ目の図3を見ていただきますと、介護が必要となった原因は、脳血管疾患、いわゆる脳卒中が非常に多い。介護の理由に痴呆というものがありますが、実はその痴呆の中にも血管障害がかなり含まれておりまして、恐らく今後、高齢化社会の中で、この点が非常に問題になってくるだろうと思います。私も団塊の世代ですけれども、団塊の世代というのは、1年間に200万人以上生まれて、それが5年間続いた。その後は徐々に減り、現在は年間100万人程度の出生数ですが、200万人が医療の進歩によって、ほとんど75歳まで生きていくことになります。
 この団塊の世代が75歳を超えるのが、10年から15年後であります。その時、図4を見ていただくとよく分かりますが、平均寿命と介護の必要のない自立できる状態である健康寿命に男性の場合9年、女性の場合13年近くの差がございます。要は、この期間が介護が必要になる期間になります。介護が必要になる原因としては、循環器疾患が極めて多い。そして、団塊の世代が10年、15年後には70歳、75歳を超えるわけですから、循環器疾患の予防と克服ということが極めて重要になってくるということがお分かりになると思います。そのための対策ということでありますけれども、幾つかの視点から対策が必要だと思いますが、2ページ目の?に書きました。
20年ちょっと前に、ある脳梗塞の患者さんが、私のところに何とかならないかと来られました。半身不随で言語障害があって、ほとんどコミュニケーションを取れない状態で奥さんが車いすを押して来られました。我々、何もできることがないということで、時々アドバイスする程度でありましたけれども、去年、その奥様から主人が亡くなりましたと電話がありました。私は20年介護をしてきました。その後の言葉が非常に印象的で、私の人生は一体何だったのだろうかと問われました。
 これは、恐らく一生懸命介護をされてきたのだと思いますが、患者さんは60歳から80歳まで、そして奥様は5歳下だとすると、55歳から75歳まで、看護だけに近い状態でやってこられた。こういうものが、これからの高齢化社会の中で極めて増えていくわけです。そのとき思ったのは、医療に対する教育・啓発ができていたら予防できたかもしれない。あるいは、血圧を計っていて、血圧を下げて予防する手段を取っていたら、この患者さんはそういう20年を過ごさないで済んだかもしれない。もう一つは、脳梗塞になっても、今あるような超急性期の医療で救うことができたかもしれない。
 また、今、リハビリがどんどん進歩しておりますし、再生医療もまだ実験段階ではありますが、少しずつ進んでいる。そういう中では、もしかしたら脳卒中で倒れて麻痺が残って、完全復帰はできなくても、自立した生活ができたかもしれない。そういう幾つものポイントがあると思いますし、それを我々が何とかすれば、この患者さんと奥さんはこうならなくて済んだのではないかという思いが大変強くいたしました。
 循環器病研究センターでやるべきことは、最初の教育・啓発から社会復帰までをどうやってシームレスに、そしてそれぞれの分野でどれだけ日本を先導するようなものを構築するかということだろうと思っております。
 次のページ、4ページ目であります。国立病院は、平成16年に独立行政法人化いたしましたが、ナショナルセンターは、最先端の高度先駆的医療の研究と開発を行い、それを均てん化、広めていくことをする場であって、そういう研究中心のセンターであるため非常に不採算であり、独法化せずにその時には国に残すという方針でした。しかし、国立であることの非常に硬直化した状態の中では研究を推進するのは大変難しいという判断で、6年後の平成22年に独法化したという事実がございます。
 したがって、ナショナルセンターというのは、最初の段階からそういう基で最先端の高度・先駆的医療の研究と開発を行う場で、不採算の部分が極めて大きいと定義付けてこられたと思っております。
 そういう意味で、4ページ目にありますように、ナショナルセンターは高度専門医療機関としての病院と、研究開発法人としてまさに病院が持っている課題を解決する課題解決型の研究所を併設している。これは、大学と、そこにある附属病院とは大きく意味が異なっていると思います。そして、併設されていて臨床と研究をダイレクトに結び付けることがナショナルセンターの強みでありますし、またそれを結び付けることが使命であると思っております。
 もう一つ、世界的に見ますと、ストロークセンターと心臓センターは別々に作られておりますけれども、循環器病研究センターは、心臓血管と脳血管の領域が併設されております。臨床的にも心臓と脳を一緒にやることのメリットは大変大きいと思いますし、また、研究の領域でも血管という視点から多くの共通点を持っておりますので、循環器病研究センターを創設したときのリーダーの炯眼というものは、大変大きいと私は思っております。
 循環器病の特徴として1つ申しますと、急性脳卒中、心筋梗塞は時間との闘いであります。したがって、ナショナルセンターではありますが、地域医療をすることによって一つの大きなモデルを作り、それを国中に広めていくということで、そういう最先端医療、救急医療のモデルを作るということに大きな意味があると思います。もう一つは、高血圧、糖尿病等のありふれた疾患でありますが、個々の患者さんの治療というのではなくて、日本全体を見たときに戦略的にどう行くかという視点、これを国民の健康、ポピュレーションアプローチと言いますが、研究あるいはデータの集積、そして情報の発信をするのが使命だと思っております。
 例えば、日本人の食塩の摂取量を2g減らすと血圧が平均2ミリ(mmHg)減る。そうしますと、計算上は、日本の脳卒中の発症が年間2万人ぐらい減るというデータがございますが、そういう視点からアプローチするというのが一つの大きな役目であろうと思っております。勿論、心臓移植を中心にやってまいりましたし、また、余り知られていないことですが、お母さんに心臓病がある場合、あるいは胎児に心臓病が見つかった場合、普通のところではなかなか出産ができません。しかし、循環器病研究センターではこういう患者さんの出産、その後のケアをやっております。これは、件数でいいますと世界3位の数字であり、こういうところでも寄与していると思っております。
 また、研究開発ということで、色々な新しい創薬あるいは医療機器の開発等をやっており、これは産官学連携の中で積極的に進めていきたいと思っております。
 5ページ目であります。実績で申しますと、心臓移植は本邦で中心的役割を果たしてまいりましたし、色々な医療機器を開発しております。世界で一番小さな人工心臓も開発中で、可能な限り早く、ファーストインヒューマンというところまで持って生きたいと思っております。
 また、先ほど申し上げたような脳卒中に関しては、先導的な役割を持っておりますし、センターでトレーニングを受けたドクターたちが全国に広がって、医療の均てん化に尽力しております。
 また、循環器に関するペプチドというものがありますが、ANP、BNP、グレリン、アドレノメデュリンを世界で最初に循環器病センターで発見いたしまして、例えばANP、BNPについて言えば、世界標準の治療薬、診断薬に既になっております。創薬という点でも大きな実績を残していると思います。
 人材の育成ということでは、5ページに記載の数のとおりです。
 次のページをお願いいたします。現状につきましては、ここにありますような職員数あるいは組織でございますが、これは省略させていただきます。
 7ページに参ります。
 超急性期の医療をやる。国立循環病研究センターは、かつては心筋梗塞で入院した患者さんの20%ぐらいは病院で亡くなっておりましたが、現在は門をたたけば、ほぼ助かるところまで来ております。そういう意味で、医療そのものをよりよくすることが大事ですが、生きて患者さんをセンターまで運べるようなシステムをつくることも、極めて大きなポイントだろうと思いますし、そういう救急医療の在り方、体制を構築して、それを一つのモデルとして日本中に発信していきたいと思っております。
 また、心臓移植あるいは植え込み型の人工心臓ができるようになりまして、それで治療した患者さんは大変よくなることが分かりましたが、逆にそういうことを希望する患者さんが増えて、臓器移植法の改正があった後に移植の数は増えました。しかし、それ以上に増えたのが患者さんの待機時間であり、補助人工心臓を付けて、移植できる心臓が来るまで800日とか900日待たなければいけない。こういう状況が逆に延長しているという事実がありますし、現場でこそわかる問題点を実践していく中で発信していくことが大変重要だろうと思っております。
 もう一つはイノベーションの推進、情報のセンターでなければいけないということで、国の時代で難しかった点について、例えば脳卒中登録事業とか、色々なコホート事業がありますが、そういうコホートを集めて一つの大きなデータとして集積して、情報のセンターという視点でもミッションを果たしていきたいと思っております。
 8ページ目は、循環器病研究センターは大変老朽化しておりますし、今まで申し上げたようなことをやっていく上で、構造的にも非常に古いので、新しいセンターを作りたいと考えております。
 この基本的なコンセプトは、病院は可能な限り単純な構造で業務別に階層立てる。つまり、垂直方向の動きで迅速に対応するということと、もう一つは、救急医療から非常に基礎的な研究まで、これを先ほど申し上げた課題解決型という視点から見れば、一体化する必要がありますので、1つの建物の中にグラデーションを付けて、医療と研究の接点が離れないような構造で作りたいと思っております。
 最後の10ページ目をご覧いただきたいと思います。現行の独立行政法人制度の問題点というのは、既に他のセンターでも恐らくお話があったのではないかと思いますが、独立して自由に研究する、そして新しい医療をやっていく上で、人件費が当然問題になってまいります。これは、医師、研究者だけではなくて、パラメディカル、そして、実は事務作業が非常に多くなってきていて、私はほぼ限界にあると思っております。是非、こういうところで、独法一般での総人件費の削減ということについては御配慮いただきたいと思っております。
 最初に申し上げたように、ナショナルセンターは基本的に非常に不採算部分がありますし、また、そういうところをしっかりやっていくことがミッション遂行の上で大変大きな点だろうと思います。しかし、運営費交付金が平成22年から23年に循環器病研究センターの場合は、59億円から49億円ぐらいに10億円近く減らされております。300億円の10億円ではありません。こういう中で、5年間の中期目標、中期計画どおりに本当に遂行できるのか大変危惧いたしております。
 勿論、経営努力をし、職員が必死になってやっておりますが、こういう来年が見えない交付金の在り方は、少なくとも中期展望を立てる上で大変難しくなっているということがございます。
 もう一つは、独法の大きなメリットは、職員にインセンティブがあるということです。頑張ったらそれが何らかの形で報われるということでありますが、剰余金が中期計画終了時に国庫納付するということでありますと、このインセンティブが働かなくなります。先ほど申し上げたセンターを建て替えることについては、積立金を作ってそれを充てる必要がございますけれども、そういうことに対して是非配慮していただいて、しっかり目的を持ったことに対して積立金を使って、あるべきセンターを作っていきたいと思っておりますので、この点についても、どうぞ御配慮いただきたいと思います。
 駆け足になりましたが、以上で終わらせていただきます。
○猿田座長 橋本先生、どうもありがとうございました。全体的な流れがおわかりいただけたかと思いますけれども、それでは早速、委員の皆様方から御意見を伺いたいと思います。色々な重要な問題を提起していただきました。どなたかご意見ありますでしょうか。花井委員、どうぞ。
○花井委員 ありがとうございます。循環器病センターは大変重要なお仕事をされているということで、今後もっと発展するようになればと思っています。
 資料の10ページで現行制度の問題点を挙げていただいたわけですが、2点教えてください。1つは、総人件費のことについて、各センターとも同じように主張されておりまして、私も確かに不合理な制度ではないかという認識を持っています。また、剰余金を返せというのも、最近の財政状況の中で本当に血も涙もないという思いです。国の交付金に関しては、施設整備は別の枠で回しているので、建て替えの時は重要なミッションをやる施設なのだから国からそれなりのお金が入ってくればよいと思いますが、先ほどの説明だと自力で建て替えなさいという話にもかかわらず、剰余金は返還させるというのは非常に不合理なことだと思うので、もう少し詳しく説明していただきたいというのが1つ。
 もう一点は、イノベーションについて、循環器病センターはデバイスに非常に力を入れておられて、トランスレーショナルリサーチを推進されていると思いますけれども、そういった民間との協働とか外的資金とか、製品に結び付いていくような体制という意味で現行制度に何か問題点があるか教えてもらえますでしょうか。
○国立循環器病研究センター 最初の御質問に対してお答えいたしますが、研究所と病院の建て替えというものを視野に入れておりますけれども、病院の建て替えは、基本的には自前財源で建て替えていくということだろうと理解しております。したがいまして、恐らく国から財投を借りて私どもは返還していく形になろうかと思っております。ですから、積立金を次の中期計画に持ち越して、それで投資的な費用に充てていきたいということでございます。
○花井委員 私の記憶が曖昧なのですけれども、病院部分は医療収入があるのだから、それで賄うことになるでしょうが、例えば教育機関とか研究所は不採算部門なので、ある程度国が助けないと難しいのではないかという整理があったと思います。建物の場合は違うのですね。
○国立循環器病研究センター 済みません、言い足りませんでしたけれども、病院は私どもが自分で建て替えますが、研究所については、国の方の費用でという整理になっております。
○国立循環器病研究センター 後半のイノベーション、特に医療機器に関しての御質問があったと思います。我々のところは、革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略、5年前に立てられましたけれども、あれで指定されましたスーパー特区という取組みをしております。それは、我々がコアに挙がっておりますけれども、全国の大学、全国の研究施設。それから、重要なことは、医療機器というのは製品化されてこそ、医療従事者が使用できる、あるいは国民の方が使用できるということで、産学連携ということを非常に重要視してやってきております。
 独法化とともに、研究所のシーズ、病院のニーズ、外部の色々な企業の皆さんとの連携を強めていくという意味で、そういう役割を持った研究開発基盤センターを研究所と病院の間に作っております。それの成果が色々出てきておりまして、例えば企業との共同研究の数を見ますと、22年度は59件だったものが23年度は99件、ほぼ100件で倍増とはいきませんけれども、かなりの数に増えてきております。そういう意味で、そういうところからの資金が増えてくるというのが1つあります。
 もう一つは、説明の中にはありませんでしたけれども、厚生労働省から資金をいただいて、早期・探索的臨床試験拠点整備ということで、全国でただ1つ、医療機器に関する早期臨床試験ができるようになっています。これは年間5億円ぐらいの予算をいただいているのですけれども、それで体制整備をさせていただいて、勿論、内部から出てきた技術を早く臨床応用することもそうなのですが、外の企業とか研究者と一緒に連携したものも内部に取り込むべく、外部からの委員も招いてシーズを決めていって臨床試験に入っていくという体制の整備もしております。そういうことで、総合的に色々取り組んでおります。
 問題点が何かということですが、1つは、今、人件費枠というものがすごく大きな障害になっていて、そういうところでしっかり働いていただける人材を雇いたいというのが、凄く大きなポイントです。
 更に、今のところは、研究職、医療職、事務職という給与体系になっておりますけれども、それ以外の専門職みたいなものが必要になってくると思うので、給与体系も柔軟に変えていっていただけると、より戦略的に産学連携等を図っていけるのではないかなと思っております。
○花井委員 確認ですけれども、総人件費枠というのがイノベーションに足かせになっているということと、給与体系も現行の独法制度によって、かなり縛られているという理解でよろしいですか。
○国立循環器病研究センター 独法で決めていいのかもしれませんけれども、現状ではそうなっていて、外部からの人材、特に企業で働いておられたような方々をこちらに取ってくるということになったら、給与体系とか処遇が柔軟に運営できていないのではないかなと思っております。
○花井委員 済みません、しつこいのですけれども、柔軟に運営できていないという問題なのか、現行制度で不可能なのかどちらでしょうか。今度、独法制度を改正していくわけで、くびきを外すとしたら制度改正の方ですか。
○国立循環器病研究センター 制度上はやってもいいのかもしれないですが、それは厚生労働省に聞いていただいたらいいと思うのですけれども、独法だから勝手にやってもいいというお答えにはなると思います。
○花井委員 分かりました。
○猿田座長 他にご意見ありますでしょうか。どうぞ、佐々木さん。
○佐々木委員 ちょっと教えていただきたいのは、各施設の収支状況を拝見しますと、運営費交付金なり補助金なりの影響というのはすごく大きいですね。この算定根拠というのはあるのでしょうか。どのような計算でこのような額が出てくるのか、その基準を教えていただければありがたいのですが。
○猿田座長 これは事務局からお願いします。
○片岡国立病院課長 平成21年度までは国立のセンターだったのですが、基本的には、その時にいた人たちの人件費を基準として、交付金という形で移行しています。その中で、新しいミッションが増えたりしていますし、ミッションが変わってきたりしていますので、内容に応じて変えていって交付金が出ています。
 それぞれのセンターの中で、研究と教育研修とか情報発信とか、濃淡があるというか、やる業務の分量が違います。それに応じて事業活動費とか人件費が違ってきておりますので、そういう積み上げで、それぞれつくった形になっています。事業費と活動費と、それを賄えるような交付金を出すというのが、一応の整理です。
○佐々木委員 本来ですと、赤字にはならないはずだと。
○片岡国立病院課長 6センターすべてそうではないのですが、一部、不採算部門のところについては交付金が回りますが、基本的には、診療事業は各センターの診療収入は自己収入でやっていただいて、その他の部分については、受託研究費用とかもありますので、具体的費用がかかった部分から交付金に頼らない収入があって、それを除いたものを運営費交付金として出していくことになります。
○猿田座長 今、6つのセンターがございますね。それぞれ、各疾患領域の特徴があって、その中でも需要が非常に大きいところは、前から人数も多い、お金もたくさんかかる。例えば先ほど橋本理事長がお話になったように、循環器病に関しては費用が非常にかかっていますね。勿論、需要も大きいですから。そういった形で、私たちが見ていると、これまでの流れから言うと、人数の問題、お金の問題は各センターでかなり違いがありますね。
○佐々木委員 実際には、収益事業と非収益事業の部門別の管理というのはやっていらっしゃるのですか。
○松尾大臣官房参事官 セグメントごとに収益事業と非収益事業を厳格に管理しております。収益事業というのは、基本的には病院の経営部分でございます。それ以外は、基本的に非収益部分という整理でございます。
○佐々木委員 主な赤字の原因というのは、何ですか。黒字の施設もありますけれども。
○松尾大臣官房参事官 循環器病センターの例で言いますと、23年度はトータルで赤字でございますけれども、病院部門は黒字でございます。では、赤字の理由は何かと言いますと、23年度に基盤的な人件費とか生活費に充てるような費用である運営費交付金が約10億円削減されまして、その分を経営努力なり、他からの収入の増でカバーできなかったということで、赤字になっているということでございます。
○佐々木委員 最終的な赤字の処理はどうするのですか。
○松尾大臣官房参事官 5年後にどうなるかということが焦点だろうと思います。まだ2年しか経っておりませんし、あと3年ありますのでプラスに転じると考えております。元々の中期計画も5年後で収支相償という構想でございます。循環器病センターは1年目が大幅に黒字だったものですから、1年目と2年目と合わせますと依然黒字という状況でございます。
○佐々木委員 国直轄の時代から10億円減らされても、黒字を通せるということなのですか。
○松尾大臣官房参事官 22年度に比べて23年度に10億円減らされたということです。中期計画の終了まであと3年ございますので、収支改善に努めて何とか黒字に持っていくために色々な手を打っている状況でございます。
○佐々木委員 収支が合うということと、本来的な目的の事業が十分にできるということは別なことだと思うのですが、どうでしょう。
○国立循環器病研究センター理事長 おっしゃるとおりだと思います。本省の方はなかなか答えにくい部分もあったと私は理解していますが、独法化する時に、おっしゃるような視点で我々は積み上げて、運営費交付金というものを、うちのセンターの場合であれば81億円ほど必要であると申請していますが、実際には、そのとおりには勿論ならず59億円で初年度スタートいたしました。
 国立大学等を見ても、1%ずつ交付金を減らしていくというものがあって、それでも大学は生き残れるかというディスカッションに随分なっていたと思うのですが、我々もせいぜい1%ぐらいであろうと理解しておりました。
 ところが、色々な状況があってということでありますが、10億円近く削減されました。つまり、それは将来見通しがある話ではなくて、我々としての希望は、中期目標を立てて中期計画を立てたわけですから、少なくとも中期計画の間の運営費交付金というのは、それに見合ったものが継続的に、しかも確実に保障されるものがなければ、なかなか運営は難しいだろうと思います。
 そういう意味で、22年度は15億円ほど黒字になりました。23年度は、そういう見通しが甘かったということはあるかもしれませんが、運営費交付金が減らされたということと、中期計画全体の中で、24年度に回してもいいのかもしれませんが、23年度中に整備したいものを色々整備しました。これは、余り表に出ないような50万円以下の機器などもかなり整備しましたので出費が多かったということがあります。
 ただ、そういう出費は、23年度中にやってしまいましたので、恐らく24年度はないだろうと思いますが、運営費交付金が今後どうなるかというのは、実は我々自身は全く予測できません。ですから、そういう意味で中期計画終了時に、最初の予定では収支相償で計画を立てておりますけれども、その基本となる運営費交付金が、我々が全く予測できない状況になっていることに対して、非常に危機感を持っているということであります。
○猿田座長 ナショナルセンターの見直しのことを検討するので一番重要なことは、橋本理事長がお話になりましたように、他の国と違っているところは、日本が脳卒中と心臓病を一緒にした循環器病センター、これが非常に大切なことなのです。これをずっと維持して、これから先の発展を考えて新しい病院の計画を立てていただきたいと思います。
 私、実は循環器病センターの建物をどうするかという委員会の副座長を2年間していまして、あそこの場所だけではなかなか厳しいかもしれない、ちょっと噂が出た他の場所もどうも狭いような感じがするなど随分検討しました。その辺りの先の見通しまでしっかりとしたプランを立てて、せっかく脳卒中と心臓病の両方を持つセンターが特徴ですので、それを維持して下さい。
 それから、先ほどの早期探索的臨床研究拠点も、医療機器としてやるところは循環器病センターしかないだろうということで選ばれましたので、そういったことを頭に入れていただいて、将来計画をしっかり立ててもらいたいと思います。
○国立循環器病研究センター理事長 ありがとうございます。センターの建て替えに関しては、先生のおっしゃるような、センターだけを建て替えればいいのではありません。ちょっと端折りましたけれども、1つは、いかに産官学連携をやっていくかです。
 ですから、今、建て替え構想の中に阪大、京大と循環器病研究センター3つで何か循環器に関して新しいものを隣に作れないか、勿論2大学だけではなくて他の大学も入って、新しいもっと有機的に関連が持てるようなものが作れないかということを考えております。1つはセンターが作れて、かつ、企業と連携するような施設を考えています。それは、京大も阪大も東大もそうだと思いますが、既にどんどんやっておりますので、そういう施設も、独法としての限界のあるセンターの外に関連付けたものを持っていく。そういうものが作れる場所であることが必要だと思いますし、そういう一つのエリアとしてイノベーション拠点という形にすれば、その中で循環器病研究センターのプレゼンスも高まりますし、また、そこにあることが非常に有利になると考えておりますので、先生のおっしゃることを重々頭に入れて考えていきたいと思います。
○猿田座長 せっかくの機会でございますから、それをいかにうまく持っていくかが大切だと思います。他に御意見ございませんでしょうか。どうぞ、近藤先生。
○近藤委員 非常に大きな意味を持っていらっしゃるナショナルセンターですので、お金というのはある程度限られていますね。そうすると、これからは寄付金を集めていかないといけないと思います。スポンサーとして、国民目線から見て、ここに寄附をするといいなと思うような御活動を是非なさって、世界から寄附を集められるぐらいにしていただくといいなと思うのです。診療事業の収入というのは、限界があると思うのです。勿論、研究事業は積極的にやらねばならないと思いますけれども、それを埋めるのは寄附かなと思います。
○国立循環器病研究センター理事長 ありがとうございます。これは、我々の在り方ということで、先生に大変大きなポイントおっしゃっていただきました。なかなか進まない部分がありますが、それは小さな寄附だけではなくて、大きな寄附ということも視点に入れて活動しつつあります。
 1つは、大学では寄附講座というものが企業からの寄附によって作られていますが、ナショナルセンターはそういうものがなかったのです。ただ、色々規則を調べてみると、独法化してナショナルセンターも作っていいということになりまして、早速寄附講座を作りました。そういう形で寄附を使って、1つは人件費の問題、そして限られた中でやる研究を広げるという意味で、是非広めたいと思いますし、また、そうでない無償の寄附をたくさんいただけるように頑張りたいと思います。ありがとうございます。
○猿田座長 他に御意見ございませんでしょうか。どうぞ、荻野さん。
○荻野委員 日本の医療機器産業側から見ますと、日本の医療機関は海外勢に巻き込まれておりまして、輸入が非常に多い状態であるということで、何とかものづくり日本の力をもっと出していくということが、将来へ向けて大変重要であるということで、どうやって力を更に強くしていくかということが、最近、色々議論されるようになってまいりました。
 我々としては、医療と工学というものが融合した中でイノベーションというものが生まれていくだろうということを考えますと、臨床現場に工学系の研究機能が一緒になって、離れてあるのではなくて、一つの建物の中に、医療、診断、治療もやりながら、隣で高度な医療機器を開発している。しかも、勿論、安全を確保しながら、非常にスピーディにタイムリーにやれるという環境を、非常に強力なパワーとして作り上げていく拠点がないと、なかなか諸外国に対応した形での医療機器・医療技術のイノベーションは生まれてこないだろうということで、是非そういう核になる機能・施設を作るべきだということをずっと申し上げてきております。
 そういう意味で、循環器病センターの状況は余り詳しくは分りませんけれども、先ほどのお話を聞く限り開発と診療というものが一緒になって行われてきています。しかも、色々な形で成果を出してきておられるということは、将来へ向けて非常に重要なシステムであり、また専門領域で力を発揮されている、非常に有効な機能・施設ではないかと思うわけです。
 ですから、新しく建て直すというお話もあるようですので、先ほど座長からもお話がありましたが、将来へ向けて、医療の臨床現場と医療技術あるいは医療機器の開発というものが、どういう仕組み、環境であれば、もっとパワーが出せるのかという視点を強力に方向として出していかないと、これは予算の面も人材の面も教育の面も、みんなそうだと思います。そういう大きな施策といいますか、戦略をきちっと作って、次のステップを考えるということが、私は大変大事な気がしておるところでございます。
○猿田座長 ありがとうございました。他に御意見なければ、そろそろ時間でございますので、これで循環器病センターからのヒアリングを終わりたいと思います。どうも御苦労さまでございました。ありがとうございました。
(説明者交代)
○猿田座長 続きまして、国立国際医療研究センターからのヒアリングということで、今日は春日理事長ほか、皆さんいらっしゃっていただいています。春日先生、20分ぐらいでセンターの概要をお話いただいて、その後30分ぐらい、委員の方から質問をさせていただきたいということで、どうぞよろしくお願いいたします。
○国立国際医療研究センター理事長 国立国際医療研究センターの理事長をしております春日でございます。本日は、私ども国立国際医療研究センターの概要と取組み、更に展望ということでお話をさせていただきたいと思っております。本日のこの委員会で御指摘いただきました点あるいは議論を踏まえまして、今後ともナショナルセンターとして更なる発展に向けた運営に努力したいと考えておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、お手元の「NCGMのミッションと取組み、展望」という資料に沿いまして少し御説明を申し上げたいと思います。
 まず、最初のページをめくっていただきたいと思います。そこに、国立国際医療研究センター(NCGM)の概要がございます。
 2に理念がございますが、この理念の実現に向けまして、私どもでは、7研究部、糖尿病研究センター、肝炎・免疫研究センターを擁する研究所。4つの部を有する臨床研究センター。更に、771床の病床を持ちますセンター病院、353床の病床を持ちます国府台病院。それから、国際医療協力局、国際看護大学校と、非常に幅広い分野に取り組んでおります。事務部を合わせて、常勤の職員数が1,580名ということで、多様な役割・機能を持つナショナルセンターでございます。
 次のページにNCGMのミッションと基本構造がございます。
 私どもは、1993年に総合病院を基礎に発足したナショナルセンターでございます。先ほど申し上げましたように、44診療科に及ぶセンター病院、それから肝炎・児童精神・精神科救急などの国府台病院を擁しまして、高度で総合医療を実践する病院を基盤としております。すなわち、そこの図にございますNCGMの基本構造の一番下のオレンジの部分に、高度先駆・総合医療ということで、ここを2つの病院が担っているわけであります。
 その上に、国際医療協力と、病院、臨床研究センター、研究所の連携によります臨床研究・橋渡し研究を行う機能をその基軸的なミッションとしております。
 更にその上に、疾患としましては、感染症、糖尿病・代謝性疾患、肝炎・免疫疾患が中心となるミッションと考えております。この感染症に関しましては、ACC、DCCという2つのセンターを有しておりまして、ACCというのはエイズクリニカルセンター、日本語でエイズ治療研究開発センター。DCCは、ディジーズコントロールアンドプリベンションセンター、国際感染症センターでございます。
 糖尿病・代謝性疾患につきましては、糖尿病研究センターがございます。また、肝炎・免疫疾患に関しましては、肝炎・免疫研究センターがございまして、臨床と研究を一体化した構造になっております。すなわち、このような3層構造が私たちNCGMの基本的な構造と考えております。
 しかしながら、このような3層構造が初めからあったわけではありませんで、その時その時の社会的な要請に基づいて徐々にできてきたとお考えいただきたいと思います。すなわち、1996年のHIV・エイズ裁判の和解あるいは、2002年のSARSの勃発、あるいはその後の糖尿病の我が国並びに低開発国における爆発的な流行、そして最近の肝炎の問題等で、このような構造になってきたと考えております。
 次のページを見ていただきたいと思います。以後は、平成23年度における私どもの主な取組みを掻い摘んで御紹介したいと思います。
 その1は、研究・臨床研究に関することでございます。
 ここで強調して申し上げたいのは、一番上の臨床を志向した研究・開発の推進のところの、研究所と病院等、センター内の連携強化の一番最初に、開発医療部の新設ということが載っております。私どもとしましては、この開発医療部を臨床研究センターのもとに新しく設けまして、今後、バイオバンクあるいはCPCによる細胞治療等、これはまた後で御説明申し上げますが、そういう点を重点的に行っていきたいと考えております。
 次のページをご覧ください。その2は、診療の項目であります。
 診療につきましては、高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供ということです。ここでは、我が国の最大のエイズ診療機関でありますACCを中心にいたしまして、現在はHIV・エイズの患者さんに対し、個々人の病態に即した医療を実施しております。すなわち、これはお薬を投与する前に薬剤耐性を検査して投与するということでございます。
 先ほど御紹介申し上げましたDCCは、その次にございますような、インフルエンザの重症化を招く要因を調査・分析いたしまして、重症のARDSの臨床研究を実施しております。そして、このDCCがもう一つ行っておりますことは、特定感染症病棟の管理です。この特定感染症病棟というのは、我が国に8床しかございませんが、そのうちの4床が私どものところにございまして、国家管理機関として機能を有していると考えております。
 その下のその他医療政策の一環としてというところをご覧いただきたいと思います。
 そこに救急医療の提供ということがございますけれども、私どもは都内で最大規模の救急車受け入れの施設でございます。そこにございますように、昨年度、救急車による搬送患者数が1万1,695人となっておりますけれども、これは都内でも有数のものでございます。それから、国府台病院では精神科救急をやっておりまして、特に重症の身体合併症を有する精神科の患者さんの救急を重点的に行っております。
 また、その下にございますように、国際化に伴い、必要な海外渡航前健診あるいはワクチン接種なども私どもで行っております。
 時間の関係で、次に進みたいと思います。次のページをご覧いただきたいと思います。平成23年度における主な取組みのその3でございます。
 まず、教育研修ということでございますけれども、そこにリーダーとして活躍できる人材の育成とございます。
 私どものセンターは、研修医、レジデントの教育施設として、国内で最も人気のある施設でございます。初期臨床研修のマッチングは、そこにございますように、市中病院中、2年連続全国トップでございます。ということは、全国の医学部の6年生が最も研修をしたい病院という意味では、市中病院としては第1位であるということでございます。
 次に、その下にあります災害等への対応について御説明申し上げます。
 今回の東日本大震災への対応は、特筆すべきものと考えております。そこにございますように、宮城県東松島市に医療チームを継続的に派遣したことはもとより、実際の数は、その下に派遣者総数250名と載っておりますけれども、それに加えまして、東松島市における保健衛生の復興対策というものを、開発途上国で保健医療システムを構築してきた経験を有する国際医療協力局が中心になりまして、長期的な復興プロジェクトを展開しております。
 最近、この東松島市との保健衛生活動における復興対策のための協定書を、改めて締結したところでございます。
 更に、国府台病院におきましては、石巻市の教育委員会と連携いたしまして、約1万3,000人の被災児童生徒の方の震災による精神面への影響を調査するコホート研究を始めております。
 次に、国際協力について御説明申し上げます。右下のところでございます。
 国際協力は、アジア、アフリカ等の開発途上国における保健システムの強化と人材育成というのが2本柱でございます。そのための専門家の派遣、あるいは逆にアジア、アフリカ等の開発途上国からの研修生の受け入れを行っております。
 最近、興味あるアンケートがございまして、これは内閣府が昨年、国際協力に係る調査というアンケート調査を行って、今後、国際協力において重点を置くべき分野はどこかというアンケートに対しまして、73%の方が保健・医療とお答えになっているということでございます。このようなことが実行できるのは、私どもの当センターのみではないかと考えておりますので、このような国民の期待に応えるのも当センターの重要なミッションではないかと考えております。
 次のページの平成23年度における主な取組みのその4に移りたいと思います。
 下の業務運営の効率化に向けた取組みなどでございます。この前に少し御説明申し上げなければいけないことがございます。私どものセンターといたしましては、中期計画の累計で経常収支について収支相償ということを目指しております。しかしながら、平成22年では、経常収支で5,400万円の赤字でございます。これは、先ほどのNCGMの概要の一番最初の財務のところにも載っております。そして、平成23年には18.5億円と、かなり大きな赤字が出てしまっております。累積で19億円もの経常損失を計上しております。
 平成23年に非常に大きな赤字が出た原因でありますけれども、収益の方は、診療収益は14億円のプラス、その他の収益としまして、これは例えば研修費とか研究費とか、色々なものでございますけれども、2億円ぐらいございました。しかしながら、運営費交付金が10億円減少したということがありまして、収益としては合計で6億円の増でございました。
 一方、費用の方でございますけれども、平成22年8月に新しい大きな病棟を開いたこともございまして、その建物並びにその時に購入いたしました高額な医療機器の減価償却が10億円、人件費が7億円、材料費が5億円等、費用としまして合計24.5億円の増が平成23年度に生じております。したがいまして、18.5億円の赤字ということになっております。当然のことながら、この経営改善は私どもにとって非常に大きな課題でございまして、役職員全員、危機意識を共有してセンターを挙げた取り組みを行っております。
 平成23年度に行った取組みでございますけれども、今年度はそれに加えまして、この4月から始まりましたDPCに係る請求体制の確立、あるいはICU、HCUの機能強化、手術部門の機能強化に取組みました。更には、個別案件ごとの経営改善チーム等をつくりまして、現在、取り組んでいるところでございます。
 次のページをご覧いただきたいと思います。最後に、NCGMの課題と展望、要望ということでお話をさせていただきたいと思います。
 先ほど御説明申し上げましたように、私ども国立国際医療研究センターは、それぞれの時代の社会的要請に応えまして、進化と言いますか、変革してきたナショナルセンターであります。このような基本的な考え方を基に、本年1月に、そこにございますような「Toward the Evolution~進化を目指して~」ということで、進化・変革するための具体的な重要項目を重点アクションとしてまとめまして、職員へ通知しております。
 具体的には、その次をご覧いただきたいと思います。例えば下から4番目、Further efforts、更なる努力のところには、最初に、経常収支率100%以上、病院の収支相償の実現ということを挙げております。これが最も重要でありますけれども、それ以外に重点と考えておりますのは、一番上のNew built-in system、すなわち新たな体制整備というところで、開発医療部の設置ということを掲げております。
 最後のページをご覧いただきたいと思います。この開発医療部で具体的に何を我々が目指しているかということがそこにございます。すなわち、エイズ・B型肝炎に係る創薬を実現して、First in Human試験も視野に入れた早期探索的臨床試験体制の確立を目指しています。
 もう一つは、6つのナショナルセンターが共同歩調をとりながら行うバイオバンク事業というものがございまして、私どもが中央バイオバンクを担うことになっておりますので、そういう点も含めて、このバイオバンク事業を是非推進したいと考えております。
 最後に、要望ということで、2つぐらいお願いしたいと考えております。前の前のページの一番下のところでございます。
 1つは、研究開発型独法として研究医療を行う上で、優秀な人材の確保が必要であります。その際に、適切な人材確保が可能なような、色々な意味での御配慮を是非いただけたら非常にありがたいと考えております。
 もう一つは、先ほど申し上げました運営費交付金の件でございますけれども、私ども、独立行政法人として、効率的・自律的経営に取り組むことは当然でありますし、また国の財政事情が非常に厳しいことも重々承知しておりますけれども、運営費交付金の中期計画を大幅に上回る削減というものは、安定的・継続的な研究開発に支障を来して、中期計画の達成が困難になる可能性がありますので、この点に関しましても御配慮をいただけたら非常にありがたいと考えております。以上でございます。どうもありがとうございました。
○猿田座長 どうもありがとうございました。全体的な構想、それから特にどういう形でこのナショナルセンターができ上がってきたか、非常に重要な点もお話いただきました。最後に問題点と将来の展望ということもお話いただきました。
 それでは、委員の方々から御質問をどうぞよろしくお願いいたします。
 1つだけ、私の方から言わせていただくと、今、説明を伺わせていただくと、非常に幅広い形で色々な仕事をやらなければいけない。それから、開発から臨床までやっているのですが、国民の目線に立って見た時にこのセンターが特に何をやっているのだろうかということがどうしても見えにくくなってしまっている。それは名前によるのかもしれません。例えば、がんセンターはがんをやっている、循環器は循環器をやっている、精神は精神をやっている、成育は成育、長寿は長寿のことをやっているととれますが、国際医療センターは色々なことをなされていて、国際的な貢献と糖尿病の関係とか、エイズや肝炎など非常に重要な点をやっているのですが、その辺りは国民の立場から見ると全体像が分かりにくいかなと思うのですが。
○花井委員 本当に幅広いという意味ではそうなのですが、まさに座長がおっしゃられたとおりで、研究独法であるから、本来、巨大な病院である必要はないわけですね。だけれども、成り立ちから言って幅広いということです。
 例えば、感染症、糖尿病、肝炎という3本柱があって、それにおいて研究という部分が非常に重要だということになりますので、各感染症研究センター、糖尿病センター、肝炎センターと頭の中で分けて、その研究、イノベーションのパフォーマンスを見ると、勿論1個でやっているのだけれども、他のセンターのように、循環器は人工心臓をやっているみたいな見え方がしないので、国民からすると分かりにくいという部分はあると思うのです。
 そこについて、トランスレーショナルリサーチも含めて、創薬も含めてですけれども、研究に特化した形になる方がいいのではないか、その辺の御意見を聞きたいと思います。
 それから、どのセンターも運営費交付金の話が出てきていて、5年前の計画段階と話が違うじゃないかと言っています。今の話で、それはそのとおりだと思うのですけれども、国民からすると、税金をそこに入れるわけだからアウトカムは何か、そのパフォーマンスが高ければ税金が入る価値があるけれども、パフォーマンスが低くてどこかに消えてしまうという話になると、それは減らせという議論になると思います。
 例えば、感染症のパフォーマンス、糖尿病のパフォーマンス、肝炎のパフォーマンスという形で、その運営費交付金である程度そこが見えて、ああ、感染症を頑張っているから、これは税金を注ぎ込んだ価値があるねとか、糖尿病はもうちょっとじゃないかとか、そういう評価ができないと、一律に5年前と変えないで税金を同じようにくださいというのは、なかなか通用しにくくなりつつあると思うのです。そこの部分をどうお考えなのか是非聞きたいところですね。
○猿田座長 仁科さん、どうぞ。
○仁科委員 一般人としてなのですけれども、一般人として開発とか研究というものがなかなか理解しにくい分野だと思うのです。戸山の場合は本当に総合的な病院ということで、臨床のほうの現場で働いていらっしゃる方というのは大変な思いをしていらっしゃると思いますけれども、救急医療についてもう少し幅広い受入体制とか時間的な短縮ということを、もっときちっと一般人にわかりやすく説明する部分があっていいのではないかなと思うのです。
 座長がおっしゃったように、研究とか分かりづらいネーミングであるために、私どもは病院としか考えていない部分があるので、そこを具体的な区別みたいなものをしていただければなと思います。
○国立国際医療研究センター理事長 今、御質問いただいた件は、非常に難しくて、私どもがいつも考えていることなのですけれども、2語で当センターが何をやっているかを表現するのが難しくて、非常に困っております。
 それから、私どものナショナルセンターができたときは、国際医療協力ということがかなりメインだったのですが、実態としては、今、肝炎を含めた感染症、糖尿病に移っていまして、先ほどお話申し上げましたように、エイズとか肝炎をやっておりますのは、それぞれの時代の社会的要請に応えてやって、言い方は余りよくないのですが、国民の皆さんのために特別に新たにやらなければいけないときに、私どもができる範囲でやらせていただいてきたという経緯で、私どものナショナルセンターができてきたと考えております。
○猿田座長 ありがとうございます。よくわかっていらっしゃる近藤先生どうぞ。
○近藤委員 ここを卒業した者ですのでちょっとその経緯に触れたいと思います。昔を辿れば国立の総合病院だったわけですけれども、ナショナルセンターにならなければならないと決意した時期があって、それがそれを背景にした国際医療協力だったのだろうと思います。また、エイズ、HIVの問題が起こった時に、厚労省の機関でということで総合医療をバックにした国際医療センターに付託されて行ったわけです。さらに、SARS、鳥インフルエンザと感染症については次々に付託され、職員もその中で勇気を持って対処してきたと思っています。それで、先ほど春日先生がお示しになったように、今では高度先駆・総合医療をバックにしながら、高度の先駆的医療開発研究をしようと言う意気込みだと思います。
 それから、救急医療も国民のニーズに乗っていったのですね。これらが全部合わさって、自動的にこういう体制になったと思うのですけれども、改めて国民全体の視点から見ると、余り特徴がないと、私の時から言われていました。逆に言うと、どんなこともできる、どんなミッションも負うことができる病院だと私は思っております。ですから、例えば肝炎の免疫疾患もできる。糖尿病は勿論できる。ですから、いろいろなはざまの研究がどんどんできるところだと思います。
 加えて、これからイノベーションということになってくると、ファーストインヒューマンというのは絶対にやっていかなければならない。ファーストインヒューマンができる病院というのは、こういう救急医療がバックにないと、とてもできないです。しかも、全体でバックグラウンドがなければできませんから、とって付けたようにはできないのです。ですから、これからNCGMが担う役目というのは、こういう先駆的な医療を実際にテストしていかなければならないとか、それから国際医療。世界的にはかなり功績を上げていますから、そういったものをもうちょっと社会に御理解いただくようにしていただく。
 加えて私がお願いしたいことは、さっきの循環器病研究センターにもお願いしたのですけれども、寄附をもらう。寄附というのは、多くの国民の方々が納得して、頼もしいなと思うからするわけでございまして、いろいろな企業も含めて寄附をいただいて、それで国民に還元できるような倫理観の高いところを示してほしい。病院で稼げというのは、なかなか限界があるのです。病床数とか、決まっていますから。
 もっと発展してもらいたいというのは、欧米でもそうですが、基本的には寄附だろうと思います。すべてのナショセンに共通だと思いますけれども、御自分のミッションを明確に社会にアピールしていただいて、こちらに寄附したいと思うような仕組みをつくっていただけるとありがたいなと思います。
○猿田座長 ありがとうございます。その他いかがですか。初期臨床研修が今でも一番ですけれども、私がインターンをやっていた頃から変わらないですね。今、おっしゃられたとおり、国際医療センターは若い医師からの希望が多いところですから、その辺りのことを。どうぞ。
○国立国際医療研究センター 国府台病院の担当理事で院長をやっている上村ですけれども、先ほど花井委員と仁科委員が言われたことは、相反しているわけですね。ナショナルセンターと言ったら研究をやれと。いや、そうじゃなくて、立派な病院で救急をやれと。結局、ニーズが違うのですね。
 私は2年前に独法化して国府台へ行ったのですけれども、まず国府台でのナショナルセンターとしてのミッションというのは、肝炎・免疫センターだけです。精神の救急と児童精神をやっていて、これは日本では唯一なのですが、精神・神経センターにできないことを国府台病院の精神科はやっています。しかしながら、それはミッションではありません。変な話なのです。私には、その辺がよく分からない。
 国府台病院はセンター病院の分院みたいな形ですが、近藤先生がすごくよく御存じなのですけれども、センター病院と何が違うかというと、センター病院は、猿田先生がおっしゃったように日本から270人もの若い医者が集まってくるので、若手を育成しなければいけない病院なのです。日本で今、問題になっている医者が集まる病院です。江戸川を一歩越えると、医者は全く来てくれません。そこで、私たちは、専門分科したものではなくて、内科は総合内科で何でもできるようなもの、外科も総合外科というか、そういった仕組みを作ることを考えました。
 そういうことをなぜ言うかというと、国際医療センターという国際という名前でずっと来たわけですが、怒られるかもしれませんし、多分、近藤先生も前から思っておられたと思うのですけれども、そろそろ名前を総合医療センターとかに変えなければいけないのではないか。総合医療センターなんて、どこにでもあるじゃないかと言われるかもしれませんが、そうじゃないのです。270人の若手医師が全国から集まってくれて、その人たちをきちっとした医療人として全国に輩出できるというものはそうありません。
 そして、すべての診療科を備えていなければ、特科センターであるがんセンター、循環器病センター、その他のセンターではでき得ないのです。だから、そういった特徴を今後認識していただく方が筋だと私は思っています。
○猿田座長 ありがとうございました。貴重な御意見をいただきましたけれども、どうでしょうか。どうぞ。
○花井委員 今の6センターを並べてみると、確かにかなり色合いが違う感がありまして、今の独法の問題もあると思いますけれども、新たな制度に移行する時に、このまま横並びで研究独法の仲間ですっと行く方がいいのか、この特色を生かすのであれば別の独法の枠組みで国際医療センターだけ違うミッションを持って独法化しても構わないと思うのです。そういったことも含めて、何か制度上の御意見があればお願いします。
 あと、国際医療センターはおっしゃられなかったですが、他のセンターがおっしゃるのは、人件費の総枠で縛られるのはおかしいということです。そういうこともあるのであれば、それを含めて制度設計上の御意見があったら教えていただきたいのです。
○猿田座長 この検討会は、6つのナショナルセンターがそれぞれこれからどうあるべきかを検討する場です。今、国際医療センターをある意味で大きく見直して、どういうふうにやっていったら本当にいいだろうかというチャンスなのです。そういった意味で、できるだけ問題を出して良い方向へ持っていければ、これが一番大切だと思います。たまたま私が最初に申し上げたのは、国民にとって名前の点でその仕事内容がちょっと分かりにくいところがあるかなと思った次第です。これからどういうふうに効率的に持っていったらいいかということで、考えているところです。
 がんセンターは、がんをやればいいという形で済みますけれども、先生のところはミッションをどこに一番持って、どういうふうにやっていったらいいのだろうかという点で、大切かなと思っております。
○国立国際医療研究センター理事長 そういう意味で言いますと、今までの成り立ちはともあれ、これからは私どもも今のミッションとされている疾患を中心にした研究開発型の独法ということは、非常に重要なのではないかなと思っています。
 今、私どもの持っております病院の総合医療機能というのは非常に重要なのですが、これは本来、どこのナショナルセンターにも理想的にはあるべきものだろうと思うのです。例えば、がんで入院された方が糖尿病がひどくなってうまくいかないとか、心筋梗塞の時に処置できないと、これは問題なのであって、私どもは臨床的には既にそういうものがあります。
 今後は、感染症というものが非常に大事で、例えばエイズの問題にしろ、肝炎の問題にしろ、非常に重要なわけですけれども、それに関する研究機能という点でも、現在、私どものところは非常に強力になりましたから、創薬に必ず結び付けられるのではないかなと思っておりますし、糖尿病に関しましても、現在、基礎的なデータを集めております。
 この点に関しては、色々な方の御意見をお伺いしてと思うのですが、ナショナルセンターというのは、一般的な大学病院、市中病院では色々な点から扱にくい病気を扱うべきだというお考えであれば、糖尿病の分野にも、例えば?型糖尿病で血糖が非常に上下してしまって、膵島移植とかでなければ日常生活が送れないような重症の糖尿病の方もいらっしゃいますので、糖尿病等に関しては、かなり特殊な、そして難病に近い、難病としての糖尿病というものに重点的にシフトして、今後は研究と臨床、両方やっていくべきかなと考えております。
○猿田座長 ありがとうございます。どなたか御意見ございませんでしょうか。今、春日先生がおっしゃったエイズ以外に、私はもう一つインフルエンザは非常に重要な研究だと思います。日本でこれだけのことができるところはありませんから。それから、肝炎の問題もこれだけ多くなっている糖尿病も非常に大切だと思います。
 今、私は144ある国立病院機構の評価の委員長をやっているのですが、国立病院機構の各病院を見ますと、それぞれが生き残りをかけて、私のところの国立病院はリハビリを中心にやろうとか、糖尿病をやろうとか、それぞれバラバラに各病院の特徴を出すようにやっていて、それをうまく矢崎先生がまとめられていましたけれども、そういうもののもっと大切ところが集まっているところが、私は先生のところだと思うのです。今のところ、大切な疾病領域の4つあるいは5つになるかもしれませんが、それをどういう風に連携を取ってやっていくかということが非常に大切かなと思っております。
 委員の先生方、御意見をどうぞ。佐々木さん、ありませんか。
○佐々木委員 私は医療の門外漢なので、詳しいことはよくわからないのですが、この独法としての生き方というのは、自ら選択していけるのですか。自分たちはこんな目的を新たにつくりましょう、これをやめていきましょうという選択は、自らできるのですか。
○国立国際医療研究センター理事長 基本的には、国民の皆様がどういうふうに考えるかということだろうと思いますけれども、私がさっき申し上げたような形でいいかどうかというのは、色々な方の、例えばここにいらっしゃる皆様の御意見を伺うとともに、実際、それでやってみて、その結果で最終的には国民の皆様に評価していただくということだろうと思います。何かサゼスチョンがあれば、是非それは私どもとしてもお伺いして考慮したいと考えております。
○佐々木委員 我々が期待するのは、一般の病院なり研究所でできないことをナショナルセンターとしてやっていただきたいということです。他でできることをあえてやることはないだろうと。ですから、今の御説明をお伺いしていると難しいなと思うのですね。実際の臨床の技術者がいなければ研究開発にも結び付かない。そういったものを現場に反映させるということで言えば、やっている方にとってみたら非常に理想的な環境にあるのではないかと思うのですけれども、我々から見ると、何でもかんでもやっていて、結局どこを目指していくのですかというのがよく見えないというのは、確かにあるかなと。その辺の交通整理をする必要があるのか、そういった混在した中でやっていくことに意義があるのかというのが、その価値がわからないのです。
○国立国際医療研究センター理事長 今のお話はごもっともなのですけれども、実際の臨床としましては、例えば私どものところが感染症と糖尿病を専門にしましても、そういう患者さんが病院にいらした時には、特にこれからは高齢の方が多いので、1つの病気だけということはないのです。ですから、病院の機能としては、私どものところみたいに全科持っているところが最もいいわけです。糖尿病の方でも、目が悪くなる方もいらっしゃるし、色々なところが悪くなるわけですから。
 そういう意味では、本当は理想的には私どもみたいな病院がナショナルセンター、全部それぞれのところにあって、その上に専門とする領域を更に高くしていくようなものが、患者さんにとっては理想だろうと思います。ただ、それが贅沢ではないかと言われると、そうかもしれないという気はします。
○猿田座長 どうぞ。
○国立国際医療研究センター センター病院の病院長をしております木村と申します。今の話に少し続けさせていただいて、ナショナルセンターができた時は、その領域をどんどん発展させたいという意味で、「臓器」とか「疾患別」に作られて、それが非常に効果があったと思うのです。我々のところは国際医療協力ということで、色々な領域が最初から入っていて現在に至っているわけです。
 それで、総合的なことをやると、患者さんにとって非常に便利であるとか、何でも診てくれるとか、そういうものが基盤として必要であるということが出てきていますけれども、特徴がなくて、これは総合病院に任せればいいのではないかという話も出てくると思います。
 ところが、よく考えてみますと、3つの感染症、糖尿病、肝炎・免疫と言っても、それぞれ独立している疾患ではありません。これは、他のナショナルセンターとは違う部分だと思います。感染症というのは、弱ってきたり、がんがあったりする人に多く合併しますし、糖尿病は合併症だらけです。免疫においては、膠原病であるとか、色々なものが関わってくる。
 それで、この間に疾患の概念というのが随分変わってきました。色々なものをやっているから、患者さんにとって、あれも診てくれる、これも診てくれる、便利であるということだけではなくて、疾患の解析、考え方とか、それを深く突き詰めていく中に、総合的に診ていかなければいけないということで、ナショナルセンターが最初に作られた頃と今とは、疾患に対する考え方が大きく変わってきているのだと思うのです。そうすると、それぞれに対して、遺伝子とかテーラーメイドの治療を深めてやるナショナルセンター、国の機関というのは、絶対ないといけないだろうと思います。
 そういうところが非常に説明しにくくて、がんだけではなくて、あれもこれもということになるのですが、こういう要素というのは、これからの便利とか総合的というだけではなくて、一つひとつの疾患そのものの概念が随分変わってきて、多くの要素を持ったものであるという考え方のもとにやっていかなければいけないのではないかなと思っております。
○猿田座長 ありがとうございました。おおたわさん、何か御意見ございますか。
○おおたわ委員 色々な課題がある医療機関だと思いますので、簡単に結果が出ることではないと思うのですけれども、1つは、総合診療科があるということで、病院としては非常にすぐれていると思います。患者だったらかかりたくなる病院だと思いますし、研修医の志望がこれだけ何年も続いてナンバー1ということは、それだけ魅力があるということは事実だろうと思います。
 ただ、皆さんが先ほどから繰り返し言っているように、それは各地方にある国立病院とか聖路加とほぼ同じではないか。それ以上に税金を使ってやるのであれば、特化するところをどこに持っていくかということが、これから議論されていくことになると思うのです。1つは、感染症に非常に強くていらっしゃるので、エイズ、肝炎を初めとした感染症のようなものにシフトさせていく。
 もしくは、国府台病院さんは、なぜこれが最初に分類されるときに国立精神・神経の方に入らなかったのだろうということすら、疑問に思えてしまうのですね。たまたま独立してここに残ってしまったのかなという気がしますので、その辺のすみ分けも含めて、多分、国立精神・神経と国府台さんで、両方で似たようなことをやって、税金をダブルに使っている部分はあると思います。ないのかもしれないですけれども、おっしゃりたいことは色々あるでしょうから、私の意見としてとどめていただければいいのですが。
 もう一つ、拝聴していて思ったのは、難病に指定されないような、難病から漏れるような、ごくレアな疾患というものが幾つもありますね。ああいったものは難病指定にもなれないので、保険適用がなかったり、医療費が非常にかさんでいく状況になっていて、そういう人たちの受け皿をどこかにつくるのはどうなのか。そんなものは引き受けたくないかもしれないですけれども、そんなことを考えて聞いていました。
○猿田座長 ありがとうございました。手代木先生どうぞ。
○手代木委員 先ほど、ちょっと申し上げようと思ったのですが、春日先生がおっしゃるような研究独法として、とにかくナショナルセンターらしくということを考えると、私も感染症は非常にクリティカルだと思っています。
 実は、これは製薬会社も相当悪いのですが、感染症をやっている会社というのは世界的に極めて少なくなっています。一方で、前回の新型インフルエンザの時も非常に社会不安を増大させて、各会社がそれでビジネス・コンティニュティー・プランを作ったりするのです。その時に、国の中で、少なくとも誰かがそれを見てくれているというのは凄い安心感がある。
 もうちょっと言うと、糖尿病とか高血圧で、明日から1週間で5万人亡くなるということはないのですが、感染症はそれがあり得ますので、そういう意味での社会不安に対する影響が極めて大きいと思います。
 もう一つ言わせていただくと、感染症は明日からやると言っても絶対無理で、例えば菌一つとりましても、継代培養している菌を絶やさずにずっと持っておられるところしか、新しい抗感染症薬をやろうといってもできませんので、一回そこを切ってしまうとゼロからの組み立てにまた10年、20年かかるということです。勿論、糖尿病のこともよく理解はしているのですが、研究独法として非常にクリアに特徴を出されるということからすると、感染症というのは非常にメリットがあるだろうと思います。
 もう一つは、これは国全体の話なので、ナショナルセンター一つではないのですが、昨年度だったと思いますが、新規にHIVに感染した患者が日本でもレコードハイになったということで、実は若い方の中で、エイズという病気をほとんど知らない層も随分増えてきている。そう言えば、ACがテレビでアウェアネスプログラムみたいなものをやらなくなってしまっているので、一時期ほど怖い感染症がある、セクシュアリー・トランスミッティド・ディジーズもそうですけれども、こういったもののエデュケーションというか、プログラムを作られる。
 勿論、政府の広報なりがされたらいいと思いますけれども、どういうアウェアネスをすることがいいのだろうかという医療的なバックグラウンドをお作りになれるのも、感染症のノウハウをお持ちのところしかできないだろうと思いますので、そういったことを特徴にして、研究独法としては前面に出されるのはとても意義があります。
 病院の方は、おっしゃられる点、これはプロコンがあるのはよくわかるので、そんな簡単な話ではないと思いますが、そのように感じます。
○猿田座長 どうもありがとうございました。他に委員の方どうでしょうか。佐々木さん、どうぞ。
○佐々木委員 自治体側からすると、感染症というのはどこか1か所で起きるわけじゃない。全国的にどこで、どのような感染症が爆発するかわからないというリスクがあるわけですね。ところが、現実的に診療所で感染症対策をとっているところは、ほとんどないのです。何とかそういった準備をしたいと思うのですが、せっかくのそういった研究成果を、地方に、このようにあるべきだというアイデアを送っていただけるとありがたいなと思っております。
○国立国際医療研究センター理事長 今、一般的に肝炎とかエイズに関しましては、私どもが中心になりまして、全国に拠点病院みたいなものが幾つかあって、そこを支所みたいな形で全国的に取りまとめも行っておりますし、色々な情報を流すこともやっております。糖尿病に関しましても同じようなことをやっているのですが、まだ各県に1つとか2つ、そういう拠点病院を置くところまでのネットワークはできていないのですが、エイズと肝炎に関してはネットワークができていると思います。
○猿田座長 どうもありがとうございました。もし、委員の方に他に質問がなければ、どうぞ。
○国立国際医療研究センター 感染症の件ですけれども、?類感染症については、感染症法で都道府県は受入れ医療機関を設けることになっていますが、医療機関のスタッフは経験がないということで、そういう医療者向けの研修会を今年も当センターが10月にやることになっていて、全国の自治体に案内しております。そういう研修をやっているということであります。
 その他、当センターの隣に国立感染症研究所があります。国立感染症研究所は、国内外の感染症危機に対して疫学調査、病原体の同定、感染拡大防止策の実施等のノウハウは持っておりますけれども、臨床部分が弱いということがあります。当センターは、感染症についてはフィールドを持っていますし、病棟もありますから、ぴたっと二人三脚ではありませんけれども、感染症危機の場合に情報交換を始め色々なことで今後も協力していく体制を築きつつあるところでございます。
○国立国際医療研究センター 最後に一言いいですか。
○猿田座長 どうぞ。
○国立国際医療研究センター さっき国府台の話をしましたが、少し誤解があるかもしれないですけれども、国府台病院で税金が投下されているのは肝炎・免疫センターだけです。病院には税金は投下されていません。したがって、独法は税金でという認識は少し変えていただきたい。
○おおたわ委員 国府台がなぜ独法の中に入っているのかということ自体が問題だということですね。
○国立国際医療研究センター そこは非常に難しいのですね。研究独法でも、肝炎センターのアウトカムをチェックしています。当然ながら税金が入っているから、国民に還元しなければいけない、アウトカムを全部チェックします。しかし、それには病院部との連携が必要なのです。そういった形というのが、なかなか理解されにくいところかなと思って、最後、発言させていただきました。
○猿田座長 ありがとうございました。どうぞ。
○国立国際医療研究センター 追加させていただきます。先ほどの感染症を軸にやったらどうかという話ですが、私も感染症は広い領域に関係しているので、それでいいかと思います。感染症に関して、情報発信が余りされていないのではないかというお話ですけれども、これはちょっと見えにくいのかもしれません。私どものところにある特定感染症指定施設で4床、デング熱とか?類感染症が発生した時に入れるようになっているのですが、そこの訓練等で全国の色々な病院から人が来られて研修を毎年やっております。
 それから、情報発信もHIVに関してはホームページ等で、それ以外もマラリア等は日本では少ないですけれども、うちで一番扱っている。また、院内感染が起きるとすぐに遺伝子をチェックして、どういうルートで伝わったかというのをやれるのも他とは違うと思います。おっしゃるとおり、余り目立っていないかもしれないですね。そういう努力は、これからもしなければいけないかもしれないと思っています。
○猿田座長 どうぞ。
○荻野委員 一言だけ、感じたことです。イノベーションで今後、特にアジアを中心とする海外へ、日本の医療サービスそのものを展開したらどうかという話が出ております。せっかく国際という名前が付いているので、アジアを中心として遠隔医療の技術を使って、もうちょっと広い医療展開がこのセンターができればどうかなという気がしました。
○国立国際医療研究センター理事長 それは、ちょっと説明が悪くて申し訳ございませんでしたけれども、国際医療協力局を中心にして、例えばエイズであれば、今、アフリカにかなりの人が派遣されて、アフリカの諸国におけるエイズの保健衛生体制確立のために1年2年という長期で行っております。
 それから、今、アジアでは糖尿病がかなり増えてきているのですが、例えばベトナムとか、色々なアジアの諸国に当センターの糖尿病の専門家が行って、向こうの中核となる病院のスタッフと、どのようにして糖尿病の予防とか、その実態調査を進めるとか、そういうことはやっております。
○猿田座長 それでは、時間になりましたので、御協力、どうもありがとうございました。
(説明者退室)
○猿田座長 それでは、事務局の方から今後のスケジュールをお願いします。
○片岡国立病院課長 次回は、近付きましたら、また改めて御連絡させていただきますが、8月30日木曜日の夕方6時からで、場所はこの建物の後ろにあります厚労省の講堂で行います。成育医療研究センターと長寿医療研究センターからのヒアリングです。どうぞよろしくお願いいたします。
○猿田座長 それでは、委員の先生方どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

 医政局国立病院課
  課長補佐  河内(内線2675)
  企画調整官 本橋(内線2610)
 (代表) 03(5253)1111

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