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2012年7月6日 第7回雇用政策研究会(議事録)

職業安定局雇用政策課

○日時

平成24年7月6日(金)
14:00−16:00


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

委員

加藤委員、玄田委員、小杉委員、諏訪委員、鶴委員、橋本委員、樋口委員、宮本委員

事務局

太田厚生労働審議官、森山職業安定局長、黒羽職業安定局次長、酒光労働政策担当参事官、土屋職業能力開発局総務課長、大西職業安定局総務課長、藤澤雇用政策課長、
久知良若年者雇用対策室長、宮本地域雇用対策室長、弓雇用政策課企画官、藤井雇用政策課労働市場分析官、武田雇用政策課長補佐、坪井地域雇用対策室補佐  他

○議事

○樋口座長 ただいまより、第7回雇用政策研究会を開催します。お忙しい中ご参集いただきまして、ありがとうございます。今回は地域雇用対策についてご議論いただきたいと考えています。本日は、事務局から地域雇用対策の論点を説明していただいた後に、職業安定局の宮本地域雇用対策室長より、地域雇用対策の現状と課題等についてお話いただきます。そのあとご議論いただきたいと思いますので、よろしくお願いします。事務局からお願いします。
○武田雇用政策課長補佐 資料1に基づいて、第7回の論点(案)について説明いたします。
 1点目が「地域雇用対策の方向性」です。リーマン・ショック以降、地域の産業構造を転換させていく自治体が見られることなどから、地域の産業政策と一体となった雇用対策を支援していく必要があると考えて良いかということです。また、地域雇用対策による支援が必要な地域は、地域の雇用構造を改善していく必要がある地域であり、?従来から雇用情勢が厳しい地域、?リーマン・ショック以降、雇用情勢の回復が遅れている地域などが考えられますが、そう考えて良いかということです。また、地域で雇用を創出していくためには、地域の‘やる気’が重要であると考えられますが、地域のやる気をどのように引き出して支援していくかということです。
 2つ目の柱としては、「今後の地域雇用対策」です。地域の産業政策と一体となった雇用対策を支援するためには、どのような観点からの支援が考えられるかということです。まず、自治体が雇用創出に取り組むための課題として、人材や雇用創出のノウハウが不足している点が挙げられられることについて、どのように考えるか。また、地域で雇用創出の取組事例を見ると、地域の雇用創出の中核となるキーパーソンと呼ばれている人物が存在しますが、このような人材をどのように確保・育成していくべきかということ。それから、リーマン・ショック以降、事業主は新製品の開発や製品の高付加価値化への取組みに力を入れているが、事業主に対する雇用面からの支援として、どのような支援が考えられるかということです。
 また、リーマン・ショック以降、地域の産業構造が大きく転換していく中で、これに合わせた必要な地域雇用対策は、これまでは市町村中心に行っていますが、どのような圏域、例えば都道府県単位等で実施していくべきかということです。また、多くの地域が雇用創出のための戦略的な産業として製造業を位置付けているが、地域で良質かつ安定的な雇用創出をしていくためには、どのような分野での雇用創出あるいはそれに向けた人材育成を図るべきかということ。また、地域での雇用創出・人材育成に当たっては、まずは地域の置かれた状況や特性をよく把握し、関係者が共通のビジョンをもって取り組む必要があると考えて良いかということです。
 最後に、「現在の地域雇用対策」ということで、実践型地域雇用創造事業、また雇用創出基金事業について行っていますが、どのように評価するべきか。また、今後の地域雇用対策にどのように活かしていくことが考えられるかということです。これらの点について、ご議論願えれば幸いです。
○宮本地域雇用対策室長 資料2「新たな地域雇用創出の推進に係る現状と課題等」について御説明します。1頁から3頁については、第1回研究会に提出した資料を再度提出しています。1頁は「地域の雇用失業情勢」についてです。上位4都県と下位6道県の失業率の推移を示したものです。ご覧になっていただくとわかりますように、リーマン・ショックの後、全国的に雇用情勢が悪化し、格差が縮小しておりますが、近年再び格差が拡大する傾向にあります。
 続いて2頁ですが、「都道府県別有効求人倍率の状況」です。赤のグラフが、全国的に直近の最低であった平成21年7月のものです。青のグラフが平成24年1月のものです。平成24年は上昇しておりまして、特に、富山県、石川県、福井県といった、北陸地方での伸びが大きくなっている状況にあります。
 3頁ですが、「都道府県別の新規求人倍率順位」です。都道府県ごとの平成23年11月から平成24年1月までの新規求人倍率の平均と、直近最低であった平成21年5月から7月の新規求人倍率の平均を比較しています。左側の枠が、上位10都道府県です。上から順番に県名が並んでいますのが、現在平成23年11月から平成24年1月の順位で、その県名の右側の括弧の中の数字が、直近最低であった平成21年5月から7月の順位です。右側の枠の中は下位10都道府県のものです。いま申し上げた括弧の中の数字が赤い文字になっているのは、移動があったものです。新規求人倍率は、全国的に改善していますが、下位と上位の顔ぶれはほとんど変わっていないという状況が見て取れると思います。
 4頁以降は、「都道府県の雇用創出の取組み」についてのデータです。これはJILPTのアンケート調査の結果です。4頁は都道府県の行う雇用創出の取組みの結果ですが、「知事のマニュフェスト・公約に雇用創出が挙げられている」「雇用創出のビジョン・計画をとりまとめたり、総合計画に雇用創出のための取組みを掲げている」が最も多くなっていまして、続いて「企業誘致のためのトップセールスを行った」となっています。
 5頁は「市区町村の雇用創出の取組み」で、同じくJILPTの調査によるものです。「雇用創出のビジョン・計画をとりまとめたり、総合計画に雇用創出のための取組みを掲げている」が最も多くなっていまして、以下「雇用創出のための施策を実施した」「雇用創出のための施策を新たに実施した」が続いています。
 6頁は、「都道府県における雇用創出を目指す戦略的産業」についての調査結果です。都道府県が雇用創出を目指す戦略的産業については、上のグラフです。いちばん左端にあるように、「特定の業種にこだわらない」が最も多くなっていますが、以下、「製造業」「農林漁業」などが続いています。
 下のグラフですが、製造業を戦略的産業とする場合の具体的な業種です。「食料品製造業」「電子部品・デバイス・電子回路製造業」が最も多く、以下「輸送用機械器具製造業」が続いています。
 7頁は、「市区町村における雇用創出を目指す戦略的産業」です。市区町村において、いちばん多いのは「特定の業種にこだわらない」です。以下、「製造業」「農林漁業」が続いています。下の図ですが、製造業を戦略的産業とする場合の具体的な業種については、「食料品製造業」が最も多く、以下「電子部品・デバイス・電子回路製造業」が続いています。
 8頁は、雇用創出に取り組むための自治体の課題です。上のほうが都道府県のもので、下のほうが市区町村です。都道府県、市区町村ともに、雇用創出に取り組むに当たって直面する課題は、「雇用創出に取り組むための財源がない」が最も多くなっています。以下、都道府県では「雇用創出を担当する職員が不足している」が続いていまして、市区町村では「雇用創出のノウハウが不足している」が続いています。
 9頁は、都道府県、市区町村が雇用創出に取り組むに当たって「国に期待すること」です。上のほうは都道府県、下のほうは市区町村です。ともに「雇用創出のための補助金や助成金の整備・充実」が最も多くなっていまして、以下、都道府県では「雇用創出に関する成功事例についての情報提供」、市区町村では「地域の置かれた環境別の雇用創出の情報提供」が続いています。
 10頁は、「世界同時不況から東日本大震災までの期間の事業所の経営、生産面の取組み」です。結果を見ますと、いちばん多いのが「新製品の開発」で、以下、「製品の高付加価値化」「『見える化』等への取組みによる業務の効率化」「営業部門の強化」が続いています。
 11頁以降からは、世界同時不況以降の各県の雇用創出の取組事例をご紹介させていただきます。静岡県、島根県、富山県、それぞれの事例をご紹介させていただきます。
 11頁からは静岡県です。左上の表の静岡県の県勢のデータにありますが、静岡県は人口377万人で全国第10位、全人口の3%を占めています。県内総生産も全国10位です。静岡県の製造品出荷額等の合計額は16兆円で、我が国の総出荷額の5.5%に当たっています。
 左下のグラフを見ていただきますと、「製造品出荷額等全国順位」がありますが、静岡県は、愛知県、神奈川県に続いて、全国3位です。ものづくりの大変盛んな県です。
 右側の円グラフは、製造品出荷額の内訳です。右上の水色の部分ですが、輸送用機器の比重が大変高くなっています。
 12頁です。左側の円グラフが静岡県、右側の円グラフが全国のそれぞれのGDPの内訳です。左側の円グラフの緑の濃い部分に「33.0」と書いてありますが、これが静岡県の製造業の割合で、33%です。右側の円グラフは全国ですが、18%です。下のグラフは、静岡県の製造品出荷額の推移です。右の方を見ていただきますと、リーマン・ショックのあと、平成21年に大きく落ち込んでいる状況がわかります。このように、静岡県は全国に比べまして、製造業のシェアが大変大きい地域で、それから、輸送用機器、電気機器といった産業の集積が厚いことから、輸出関連などの景気の動向に反応しやすい構造であり、リーマン・ショックやその後の円高等では、産業・雇用情勢に大きな影響を受けています。
 13頁が、静岡県の雇用の情勢です。青い棒グラフが有効求職者数、赤い棒グラフは有効求人数です。平成20年9月のリーマン・ショック以降、有効求人倍率は減少傾向が顕著になる一方、有効求職者が急増し、有効求人倍率が急落しています。これは黄緑色の線グラフを見ていただけるとわかると思います。黄緑色の線グラフが静岡県の有効求人倍率でして、紫色の線グラフが全国の有効求人倍率です。静岡県の有効求人倍率は、それまでは全国を上回って推移していましたが、平成21年2月期には全国を下回りました。8月を底として上昇傾向に転じましたが、平成24年1月まで、全国水準を下回り、2月にようやく全国水準を上回ったという状況です。
 14頁は「静岡県の雇用創出に向けた取組み」です。左の枠をご覧ください。静岡県では、産業界、労働界、福祉・医療界、教育界、国、県、政令市、市町村等が、静岡県雇用創造県民会議を設置して、雇用創造アクションプランを作成しています。また、上から3つ目の○にありますが、副知事を部会長とする雇用創造部会を設置して、全庁挙げてプランを推進し、進捗管理などについても実施しています。右側の枠をご覧ください。雇用の創出、人材の供給を2つの柱としまして、あらゆる分野が連携、協力し、平成25年度までに3万人の雇用創造を行っていくということを目標にしています。
 15頁は取組事例です。左の図ですが、静岡県は、従来は輸送機械、電気機械を中心とした産業構造でした。それがリーマン・ショックのあと、右の図になりますが、輸送用機器、電気機器を主要分野と位置付けつつも、5つほどありますが、成長が期待される分野を支援し、多極的な産業構造を目指すということで、急激な経済情勢の変化に対応できる力強い労働市場の基礎を築くという方向を打ち出しています。
 そのための取組例が16頁です。新産業集積クラスターの取組みとして、県域を東部、中部、西部の3つに分けまして、それぞれの取組みを行っています。東部では、医療・健康関連産業ということでファルマバレー、中部では食品関連産業ということでフーズサイエンスヒルズ、西部では光・電子技術関連産業ということでフォトンバレーの集積を進めています。このうち西部のフォトンバレーの取組みをご紹介します。
 真ん中に「企業」とありますが、浜松ホトニクスという企業がありまして、この企業を中心とした光技術・光産業の企業群があります。左の枠にありますが、光産業創成大学院大学という大学があります。右のほうですが、これは県の工業技術支援センターなどがあります。こういった産官学が連携して、フォトンバレー構想に沿った人材養成の取組みを実施しています。
 浜松ホトニクスを少し紹介させていただきます。小柴東大名誉教授が素粒子のニュートリノを発見して、2002年にノーベル物理学賞を受賞されたことはご存じかと思いますが、このニュートリノは東京大学宇宙線研究所、神岡地下研究所のカミオカンデと呼ばれる測定装置を使って、観測されました。このカミオカンデに浜松ホトニクスの開発した光電子倍増管が使用されているという、光の分野では高い技術力を持っている企業です。
 光産業創成大学院大学は、左側の枠内ですが、浜松ホトニクスの資本で開校した大学です。光技術を活用して起業を目指す方々のための大学です。平成17年度の開学より25社が創業しています。また、レーザーによるものづくり中核人材育成講座などを実施しまして、地域の人材育成にも貢献しています。
 右側の静岡県工業技術研究所浜松工業技術支援センターですが、こちらは静岡県のフォトンバレー構想の推進拠点になっています。光産業のクラスターと連携しながら、企業との共同研究、企業からの技術相談への対応、センター内の機械設備の企業への貸出しによる企業支援を行っております。また、人材養成としては、在職者の研修コースの開発、また開発した研修コースによる人材育成、企業からの研修生の受入れ、講習会の実施などを行っております。大学とこの技術センターの連携としては、浜松医科大学と連携しまして、レーザー装置による医療技術の開発などを行っているということです。
 17頁からは島根県の取組事例です。左側が、島根県と全国の有効求人倍率の推移です。リーマン・ショックの影響を受けて、有効求人倍率は悪化していますが、全国平均と比較しますと悪化幅が小さかったことがわかります。右側のグラフに島根県の産業構造をお示ししていますが、全国に比べて島根県は製造業などの割合が低く、建設業等の割合が高いといった産業構造も影響したものと考えられます。
 18頁以降が、島根県の人材育成のための取組みです。島根県では、ものづくり、IT産業などを重点業種と位置付けまして、必要な人材の育成に取り組んでおります。それから、雇用創出効果の高い企業誘致を県政の最重要課題と位置付けておりまして、誘致を成功させるために、企業が必要とする有能な人材の確保に取り組んでいるということです。
 19頁が、具体的な推進体制です。人材育成推進体制を確立するために、関係者で構成する会議を開催しています。左側にある枠の2つの枠ですが、真ん中、下あたりに雇用対策推進会議、産業人材育成ネットワーク会議を開催して、体制整備をしています。産業人材育成コーディネーターとありますが、地域の関係者、企業とのネットワークを持つ産業人材育成コーディネーターを県内の2カ所に配置しているということです。それから、右下の方にありますが企業誘致・産業振興スタッフの配置により、関係者間のネットワークを構築しています。そのほかふるさと島根定住財団などが関係者ですが、こういったさまざまな関係者が一体となって、雇用創出のための取組みを実施されています。
 20頁が具体的な取組みです。いま申し上げた産業人材コーディネーターですが、この方の活動例が、左側にある活動例?、活動例?です。これは実際に島根県が実施しているものです。例えば「高度技術校のニーズに合わせた人材(講師)の確保」ということで、このコーディネーターの方がネットワークを活かして、ものづくりの高度な技術を有する企業、例えばデンソーといった企業の技術者を講師として招聘するようにコーディネートする、また競争力のある技術を持つ企業とネットワークを構築し、そのネットワークを活かして、県内企業から直接その企業に出向することによる人材育成をコーディネートするということです。
 それから誘致活動が大変盛んですので、右側に誘致活動の例を書いています。独自のネットワークを活用し、競争力や技術力のある企業に対して、誘致活動を実施しています。首都圏、中京圏などに企業誘致専門員を配置し、誘致活動をしています。それから、県のさまざまな誘致優遇施策があります。立地企業は、県内の各域にありますが、大きなところで言いますと、村田製作所、富士通等があります。
 21頁から富山県の事例を紹介いたします。左上に、富山県と全国の有効求人倍率の推移があります。富山県はリーマン・ショックの影響を受けて有効求人倍率が悪化しましたが、全国と比較して回復が早かったということがわかります。右上のグラフを見ていただきたいのですが、製造業に占める医薬品の割合が高いという状況で、医薬品製造業・関連産業が集積している地域です。この産業は不況に強い産業であることから、リーマン・ショックの影響を受けなかったと考えられております。
 22頁以降が、富山県で医薬品産業が好調である理由です。時間が押してきましたので、説明を割愛しますが、法改正、政策、産業の性質による要因があるということです。課題としては、薬剤師が不足しているといったことです。
 23頁が、富山県の医薬品産業活性化懇話会の報告です。この報告書を見るとわかりますように、県全体として、医薬品のさらなる競争力強化のために戦略的に取り組んでいます。この資料では少しわかりにくいのですが、産官学の連携の取組みが非常に進んでいます。
 24頁以降から、県の支援策をいくつかご紹介させていただきます。まず、医薬品産業活性化推進事業ということで、大手メーカーの製造管理者を富山県に招くなどしまして、製薬会社と富山県の会社のビジネスマッチングの場を設置しています。25頁は、薬事研究所を活用した富山県薬業連合会との連携による技術支援の例です。26頁は、産官学連携による研究の取組みです。大学に寄附講座を開設する形で企業を支援するという事例です。
 27頁は人材養成の取組みで、県内の製薬企業のニーズを踏まえて、県の薬事研究所と富山大学が連携し、薬学部学生に対する、より製造現場に近い製剤に関する講義・実習等を実施しているという事例です。
 28頁以降は、現在厚生労働省が実施している地域雇用対策について、ご紹介させていただきます。まず1つ目が、「実践型地域雇用創造事業」です。これは従来「パッケージ事業」と「実現事業」と言っていたものを統合しまして、平成24年度から、新たに「実践型地域雇用創造事業」として実施しているものです。地域活性化の取組みと、それに即した実践的な人材育成とを一体的に進めることにより、雇用創造効果の向上を図るというものです。
 事業のスキームですが、まず、市町村に地域の関係者からなる協議会を作っていただきまして、その協議会で地域の課題、地域の資源等を検証していただいて、その上で具体的な事業を組み立てていただくというものです。
 事業の中身については、右側の「事業内容」にありますが、「雇用拡大メニュー」「人材育成メニュー」「就職促進メニュー」「雇用創出実践メニュー」の4つのメニューがありまして、これらのメニューを組み合わせて、全体の事業構想をつくっていただきます。その事業構想を都道府県労働局を経由して、厚生労働省に提出していただきます。厚生労働省は、有識者や労使からなる第三者委員会にお諮りし、そちらで採択されたものについて、市町村を中心とした協議会で実施していただくというものです。29頁は、これまで取り組んでいただいた地域の実績です。
 30頁からは事例紹介です。4つ準備していましたが、時間の関係で1つだけ紹介させていただきます。33頁をご覧ください。高知県の土佐清水市の例です。土佐清水は高知市からさらに西に車で4時間という地の利の悪い所でして、流通面でも大きなハンデを負っています。リーマン・ショック以降、製造業などの企業撤退もあり、もともと脆弱であった地場産業も衰退し、雇用の場が失われていたというところです。
 市内の製造業は宗田節という鰹節の工場が1社だけあるという現状でした。土佐清水は海の幸はたくさんありますが、それらを加工するノウハウ等はありませんで、すべて市外へ材料として提供していたということです。
 こういった土佐清水市ですが、パッケージ事業により、人材育成ということで、新商品の開発、製造、技術、販売のスキル等を、セミナーを開催し、人材養成をしました。真ん中にありますが、土佐清水ブランドをつくっていくという事業に取り組みまして、右側にありますが、サバ漬丼とか、水産加工品を、実際に商品開発して、販路拡大についても行ったということです。
 結果、市が中心となって第三セクターを立ち上げ、パッケージ事業の事業継承と雇用を創出したということで、下に「成果・効果」とありますが、このセミナーを受講した地域の求職者282人が就業しました。それから、第三セクターに100名が就職し、さらに従来市内に就職先がなかったことから、卒業した高校生がすべて市外に就職していたのですが、この第三セクター等が出来上がったことにより、10名が市内に就職できたという実績がありました。
 34頁以降は、パッケージ事業に関する効果等に対する市町村へのアンケートの結果です。こちらを見ていただきますと、地域人材の育成については、「効果があった」「どちらかと言えば効果があった」との回答が80%です。既存の地元企業における雇用創出効果については、65%を超えています。
 35頁が、パッケージ事業の雇用創出以外に関する効果についてのアンケート結果です。3つアンダーラインが引いてありますが、「雇用創出策の企画・立案のノウハウの蓄積」「地域が持つ資源の再発見、活用」「国、労働局、ハローワークとのネットワークの形成」などに効果があったとの回答結果であります。
 36頁がパッケージ事業の成果の総合的な評価です。総合的な評価としては、「概ね期待していたとおりの効果があった」、または「期待していた以上の効果があった」が8割を占めています。ただ、事業実施期間中のアドバイス、終了後の支援を求める声があります。
 37頁がパッケージ事業終了後の課題です。上から見ていただきますと、「雇用創出のための取組みを実施するための財政的な制約があること」「雇用創出のための取組みの効果がわかりにくいこと」「雇用に対する効果が現れるまでの時間がかかること」などがあります。
 38頁からが、厚生労働省が実施している雇用創出基金についての資料です。38頁は「雇用創出基金の変遷」です。こちらを見ていただきますとわかるように、リーマン・ショックのあと、累次にわたる積み増しを行っています。
 39頁が、雇用創出基金の一覧表です。たくさんありますが、大きく2つに分かれまして、1つは「ふるさと雇用再生特別基金事業」です。これは趣旨にありますように、継続的な雇用機会を創出するための基金事業です。もう1つは、一時的な雇用機会を創出するための基金事業ということで、その隣の「緊急雇用創出事業」と、その隣の「重点分野雇用創造事業」です。この重点分野雇用創造事業の中に、いくつかのメニューがあります。いずれも国が交付する交付金により、都道府県が基金を造成し、都道府県または市町村が自ら直接、または民間企業などに委託して実施する事業です。
 40頁が、「雇用創出基金事業の実績」です。ふるさと雇用再生特別基金事業では8万6,000人で、これはいちばん下の「合計」の欄をご覧ください。緊急雇用創出事業では52万4,000人の雇用創出が図られています。重点分野雇用創造事業では、38万2,000人の雇用創出が図られていまして、この重点分野は現在も自治体において順次事業が実施されているという状況です。
 41頁以降は、基金事業についてのいくつかの事例です。たくさんありますので、2つだけ紹介させていただきます。1つ目が41頁で、北海道旭川市のIT・産業人材育成事業です。これは重点分野雇用創造事業のうちの地域人材育成事業を活用したもので、一時的な雇用の場を提供するという基金事業のスキームの中で実施された事業です。まず、事業背景としては、学卒未就職者、首都圏からのUターン技術者などの地場産業への就職促進及び定着が課題でありました。また、技術者を雇用して人材育成を行うということは、企業にとってはコストの負担が大きいのだけれども、専門技術者の雇用・養成のニーズがあるということでした。それから、地場産業全体として、従業員のIT技術の向上により、経営効率化を図ることが必要であったということです。
 こういった背景の中、事業が実施されたのですが、内容としては、旭川市が、まず旭川情報産業事業協同組合に事業委託し、この協同組合が学卒未就職者を雇用します。その雇用された学卒未就職者に対して、OJT、OFF-JTを組み合わせ、専門技術者として必要な能力を習得させ、IT産業への就職のマッチングをするといったことです。いちばん下の「事業効果」が、15人を雇用され、この15名のうち11名の雇用が、事業終了後も継続されているということです。内訳については括弧の中です。
 42頁は、ふるさと雇用再生特別基金事業の事例です。青森県五所川原市の地域ブランド商品開発販売事業です。この五所川原市ですが、シジミ、リンゴ、馬肉などの地域資源、立佞武多といった、さまざまな観光資源が存在するにもかかわらず、こういった資源が地域イメージをアピールするには至っていないという現状がありました。このため、地域の資源を素材とした商品を企画開発しまして、ブランド商品として確立するための販売戦略を展開し、雇用機会の創出と地域経済の活性化を図ることが必要ということで実施されたものです。
 事業の中身です。受託者である株式会社トーサムが、地元の住民2名を雇用し、その2名の方により、例えばシジミを使った商品、野菜を使った真空パック加工といった商品を開発し、道の駅で試食展示会や特別販売会を実施するといった事業を展開されたというところです。
 事業終了後の事業効果です。事業の実施による新たな雇用創出は、2名のうち1名が株式会社トーサムに継続的に雇用されたということです。また、五所川原市が地域ブランド推進協議会を新たに立ち上げまして、ブランド商品の認定、商標の使用許可、商談会出品への経費助成や広報面での支援を引き続き実施するという取組みが行われています。
 最後に、47頁以降ですが、「雇用創出基金事業に対する自治体の評価」について説明させていただきます。47頁に、それぞれの事業の課題と、効果についてのアンケート調査があります。総括しますと、自治体はおおむね肯定的な評価ですが、特に地域のニーズに沿った雇用の拡大や人材育成がなされている点で、評価がされているということです。一方で、創出された雇用の継続性が不確実といった点が課題に挙げられております。
 49頁は、自治体に対して、基金事業について評価している点と評価していない点について、自由記述で回答を求めた結果です。評価している点としては、雇用創出や人材育成の面です。一方で、雇用期間が短く、十分に人材育成ができなかったことが評価されていないということです。私からの報告は以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。ただいまの報告についてご質問、ご意見がありましたらお願いします。
○鶴委員 ご説明ありがとうございました。今回、雇用政策研究会で扱われている論点の中で、地域の雇用をどう考えるのかという点について、個人的なところからすると、問題意識がほかの論点に比べて若干わかりにくいかなという感じを抱いていました。今日の説明を聞いて少し考えたのは、今回の研究会では、産業政策や産業構造の転換という観点を重視して、そこから雇用創出を考えていこうということだと思うのです。
 先ほどの事例を見ていくと、いろいろな事例があるのですが、もともと強みのある産業、また産業集積を強化していくと。もう1つは、これまでなかった新しい産業集積を作る、ないしは先ほどの土佐清水の例のように非常に小さいのですが、それでもそのようなサバ漬けのようなものを開発されて、これも1つの産業というと大げさなのですが、そのような新しいものを作り出していくことだと思うのですね。それに雇用創出を結びつけるということだと思うのですが、もう少し踏み込んで考えると、産業集積や新しい産業は、誰かがそういうものを作ってくれればいいのですが、たぶんこの雇用創出事業ということで、むしろ雇用を創出するという観点から、逆に言うとそのようなものを作っていくというようなイメージを強調されているのかなと。そのようなことになれば、新しい産業が出てくればいいかなとか、誰かが企業を誘致して新しい産業が出てくればいいかなということではなくて、雇用創出をやる事業というか、むしろそのようなものを作っていくという発想が非常に大事なのかなという印象をもちました。
 その中で非常に重要な点が2点あると思います。これも説明の中に出てきたある程度高度な技術を要求されるようなものについては、その地域の大学が大きな役割を果たしていると。これは、アメリカのいろいろな産業クラスターなどを見ても、その中心にはやはり大学が機能しているのですね。これが1点です。それから、ほかの地域の雇用創出の例で、たぶんそれぞれの地域がいろいろ勉強したり、またそのようなことをサジェストする適当なアドバイザーという方がいらっしゃれば、その地域に合ったいろいろな事業を創出することができるのだと思うのですね。そうしたときに、この論点にキーパーソンと呼ばれる人物が存在することを指摘されているのですが、やはりそういう人がしっかりいて、その地域に合ったやり方をアドバイスする人がいるかどうかが、いちばん大きなポイントになってくるのだと思うのですね。いま申し上げた2点は、この論点を考える中でも非常に重要な点かと思いました。
○樋口座長 ご意見として承ります。
○宮本委員 1つお伺いしたいのですが、各種の事業に対する自治体からの評価に関しては、やはり雇用の継続性についての不安、あるいは厳しさの実感があると思います。これは、各事業の評価をめぐって、先ほどいくつかの事例で事業終了後何名の雇用が決定したという言い方をされていましたが、例えば1年後、2年後の段階での雇用の継続状況等についてのデータがおありかどうか。それから、何らかの形で雇用が継続する事例と、事業終了後で終息してしまう事例の分岐点といいますか、継続する事例についてどのような要因が作用したのかについて、何か分析はおありでしょうか。
○樋口座長 お願いできますか。
○宮本地域雇用対策室長 ご質問は2点あったかと思います。1年後、2年後の雇用の継続についてはデータがありませんが、半年後のデータがあります。いま探していますので、後ほどお答えさせていただきます。それから、雇用が継続したかしなかったかということですが、これはふるさと雇用再生基金事業についての質問ではないかと思っています。
 ふるさと基金については、以前厚生労働省版提言政策仕分けのときにもふるさと雇用再生事業で事業が継続できた事例、それから事業が終了してしまった事例について分析してくださいという指摘がありまして、その際に準備した資料があります。平成23年度のA県B市の事例ですが、事業が継続できた事例を検証しますと、地場の特色を生かした商品、サービスを観光客などに有料で提供したケースについては、事業終了後も事業が継続されています。具体的には、地場産品を活用した特産品の研究開発・販売、伝承文化の体験学習施設の運営事業は、開発商品の販売や観光客の施設利用による収入を得られたことから、委託先により事業や雇用の継続が可能になったということです。
 それから、事業が終了してしまった事例ですが、これは新技術を用いて窯業の商品開発を行う事業をしようとしていたものです。事業の実施期間中に、雇用者が新技術を習得するまではできたが、商品開発までには至らなかったということです。このため、当初は基金終了後は雇用を継続して商品開発をする予定でしたが、事業終了とともに雇用者が退職してしまい、事業継続が困難となったということです。これは、商品開発に高度な技術が必要であるので、期間中にそこまで至らなかったということで、目標といいますか、事業で設定する目的が少し高過ぎたということで、雇用継続に至らなかったということだと思います。
○樋口座長 よろしいですか。もし1点目で何かありましたらお願いします。
○坪井地域雇用対策室補佐 1点目のご質問ですが、必ずしも十分な回答にならないかもしれませんが、各雇用創出基金事業別に申し上げますと、ふるさと雇用再生特別基金事業に関しては、平成23年度末までやっていたものですから、今年度の4月1日以降も継続して雇用されている割合を調査した結果、49.1%と大体半分の方が事業を委託されていた事業所に引き続き雇用されている形になっています。それから、ふるさとではない、いわゆる緊急雇用創出基金事業ですが、就労状況としては、その事業が終わってからの半年後どうなっているかのアンケート調査、これは抽出の調査の形で実施していますが、全体としては2割程度です。もう1つ、重点分野雇用創造事業に関しては、大体37%が半年後も継続して就労しています。
○樋口座長 名前がいろいろ似ていて複雑なので、どこがどう違うのかは1回聞いただけではなかなかわからないのが多いと思うのですね。いまのお話ですと、緊急雇用創出事業は、自治体に助成金を出して、例えば自治体で直接雇ってもらうという事業ということで、よかったのでしたか。簡単な説明で結構なのですが。
○宮本地域雇用対策室長 資料の39頁をご覧ください。こちらに、平成20年度以降に造成しました基金の一覧表があります。先ほど簡単にしか説明しませんでしたが、少し説明いたします。まず基金のスキームとしては、国が交付金を自治体に交付するということです。都道府県は、交付金をもとに基金を造成します。都道府県は、自らが県の臨時職員の方を雇用することもできますし、民間企業に委託して、そこが人を雇って事業を実施していただくこともできます。さらに、県から市町村に補助金、これは10分の10、全額補助になりますが、補助金という形で市町村にお金を交付することができます。今度は、市町村が自ら臨時職員などを雇用するということで、直接雇用をしたり、またはNPOや民間企業に事業を委託して、そちらで人を雇って事業をしていただくということもできます。これが、スキームです。左端の「ふるさと」は、継続的な雇用機会の創出を目的としていますので、雇用期間についても1年以上、雇用の場を作っていくというものなので、自治体の直接雇用はなく、基本的には民間企業やNPOに委託して事業を実施していただくことになります。
 次の緊急雇用創出事業ですが、これはふるさと雇用再生特別基金事業と同時期に設立されたものです。一時的な雇用機会を創出するということですので、雇用期間は原則として6カ月以内、更新1回まで可能です。この緊急雇用創出事業は、どのような事業を行ってもいいことになっていました。その後、実はこのふるさとと緊急は自民党政権下で造成された基金で、その後政権が変わりまして少し基金の色合いも変わりました。緊急雇用創出事業は、実施する事業は何でもいいとしていましたが、その実施する事業について重点化を図るとか人材養成をするとしたものが、重点分野雇用創造事業です。重点分野雇用創造事業のうち、重点分野雇用創出事業は、介護、医療などの成長が期待される分野での一時的な雇用の機会の場を提供するということです。地域人材育成事業は、企業で雇用してもらいながら研修を行っていただくということで、これは介護の分野での人材養成に非常に貢献したと言われています。
 右側の震災等緊急雇用対応事業や雇用復興推進事業は、平成23年度の補正でつくられた被災地向けのものですので、この場では説明は控えさせていただきます。
○宮本委員 先ほどの説明は、要するに創出分野に引き付けての説明でしたが、それはそれでよくわかりました。実は、厚労省などにもお世話いただいて、この前被災地の宮城県で聴き取りをさせていただきました。そこでも感じたのは、特にふるさと再生等では協議会形式とでもいいますか、地域に協議会を作ってもらって、事業者や組合や公共職業訓練機関等のネットワークを作ってもらって、それを受け皿に雇用創出を図ってもらう形で、これはこれで正しいアプローチなのかなとは思います。聴き取りの中でちょっと感じたのは、先ほどもキーパーソンという話がありましたが、地域にあるボランタリーなネットワ
ークと、上から落としていくというか、フォーマットとして出していく協議会がずれているようなところがあります。県庁の中で自他ともに認めるキーパーソン的な人が、どうも自分が感じているネットワークと定職的に出なければいけない協議会が違っていて、むしろ仕事が増えてしまっているというようなお話でした。特に宮城の場合は、地方振興事務所が7つぐらいあり、そこに業種ごとの自然なネットワークがあるのですが、そこと落ちてくる協議会がずれていって、その歯痒さみたいなものを表明していたので、所与としてあるキーパーソンを含んだネットワークをどうすくい上げるかが1つ課題なのかなと思いました。
○加藤委員 先ほどの鶴委員の話の続きなのかもしれませんが、今回の雇用政策研究会の考え方の中でいままでずっと議論してきた、例えば若者やグローバル化という観点から、地域雇用との関係を少し考えていく必要があるのかなと思っています。1つは、いまの説明の中にありました戦略産業を見ますと、製造業が重要視されているところが最初の資料にあったかと思います。ところが、いままでの何回かの研究会の中で、製造業そのもの自体の就業者数が減少してきている背景には、生産性が上昇してきているという話もありました。さらに、製造業は地域にあると考えたときに、その相手先はやはり海外ということになってきますと、地域雇用というもの自体をどのように製造業とリンクさせて考えていくかは非常に難しいのかなというのが1点目です。
 2つ目は、前回の研究会でも話題になったかと思うのですが、今後の雇用創出する産業として、健康・観光コンテンツ、医療介護等という話がありました。もちろんそういった話の中身もいろいろあるかと思うのですが、ただ、地域の雇用創出の中では、なかなか旧来的な製造業に偏っていて、観光、健康、介護、医療、医療は先ほど医薬品ということで富山県の話があったのですが、そういったものについていかに地域の中で創出していくのかを考えていかないと、何となく地域の話だけがいままでの議論とずれてしまうというか、どう位置付けするかを考えていくと、そういう点を考えて整理していく必要があるかと思いました。
○樋口座長 ほかにいかがですか。
○玄田委員 地域雇用対策の本質とは何なのかを考えると、地域をローカルエリアの雇用問題というようなまとめでいいとするならば、たぶんそれは他に代替的な就業機会が極めて乏しいことが1つの大きな特徴なのかなと思います。例えば、東京でも雇用問題が起こったときに、簡単ではないかもしれないけれども、探せば別の就業機会を同じ地域の中で比較的見つけやすいと。それに対して、今回事例で上がった多くの県などの場合には、そこで雇用が失われた場合に、就業者は地理的な要因と多くの場合家庭的な要因によって極めて移動が困難な状況であることから、他に代替的な就業機会を得られない人たちに対して、どのような施策が必要かということは、常にこういう問題を考えるときに大事な視点なのだろうなと思っています。
 そういう意味で、今回の論点のまとめと説明の中に、もう少し具体的に踏み込んだほうがいいなと思ったのは、地域の雇用対策には緊急性を要するものと持続性を要するものが2つあるのだということを、常に明確に分けて論点整理をすることがとても大事なのではないでしょうか。特に、先ほどの基金事業の場合には、明らかに緊急性を伴う問題であったわけで、リーマン・ショック、東日本大震災以降いちばん大きかったのは、やはり雇調金と今回の基金事業がなければ、地域の雇用は本当に破滅的な状況であったと思っています。そういう意味では、緊急時にほかになかなか仕事に移ることができない人たちに、何とか生活を維持するという意味で、緊急性という観点から基金事業、雇調金は大事なのだと。しかも、今後そういうことが起こり得るときに、この辺りの制度が財源的にも十分に整備されているかを常に考えておかなければいけないというのは、前々からこの研究会でも繰り返し申し上げている点です。そういう意味では、きちんとその辺りの総括、緊急性のある対策としての重要性はきちんと書かなければならないと。
 なぜそのようなことを申し上げるかといいますと、費用対効果からすると、緊急性事業は必ずしも数字だけ見ると華々しいものにならないからです。非常に厳しい見方をするならば、この基金事業や実践型パッケージ事業がこれだけのお金を使って、これだけの就業者数かということは当然言われかねない数字にならざるを得ないと。ただ、何度も繰り返しますが、これは採算性の問題ではなくて、移動が難しい人たちの生存が関わっているのだということ、こういうことが大事だということを、きちんと論点として整理していかないと、常にこういう事業については必要であるかどうかが大きく問われてしまうのではないかということを、もう少しお書きになるべきではないかと思っています。
 そのうえで、先ほど加藤さんもおっしゃった製造業が大事だというのは、私は宮本さんほど全国へ行っていないのでわかりませんが、いろいろな自治体や県が意識されていることですが、やはり厚労省の対策としては日本は土建国家が終わって医療福祉国家になっているのです。特に地域のもう1つの大きな問題は、高齢化、人材不足が先駆けて非常に緊急的な問題になっているということで、そこに就業機会をつくっていくのでしたら、やはり医療福祉の分野がもっと隅々まで雇用機会として行き渡っていくことをもう少し考えないといけないのではないかと。そういう論点が少し弱いのではないかと、説明も伺いながら正直思いました。
 例えば、数年前に経産省が製造業の新規設備投資、立地補助金を行って、それなりに地域で評価されていると思います。だとすれば、厚労省としては、いわゆる医療福祉分野において何らかの高度化のための設備投資等をするような場合には、それは当然、医療福祉分野の高度化は就業者の労働条件の改善にもつながりますし、就業機会だけではなくて、実際そのサービスを必要としている人たちにも大きなメリットになるわけですから、そういう面でのサポートは十分であるかと。ものづくりの大切さは全く否定しませんが、これだけ日本が確実に医療福祉国家になってきたことへの体制として、サポートする体制が地域で十分であるかという論点を是非ご検討いただきたいと思います。
 先ほど冒頭で申し上げた、移動が非常に困難な人たちに関わる問題であることを考えたときに、場合によっては移動をサポートすることもいまの体制で十分であるかという論点はいかがなのでしょうか。もちろん、いま求職者に対する移動に関する助成金や給付金があることは存じ上げています。しかも、それが震災対策などで一部有効に使われたこともわかっていますが、果たしてそれがうまく移動を連携するようなことができているのでしょうか。
 これはなかなか客観的には言えませんが、例えば同じ県内のハローワーク間でも移動者を送り出し、受け入れることに対して、単に助成金だけではなくて、きちんと連携が取れていてベストだと言えるかというと、私は若干心許ない感じがします。また、これは小杉さんの分野ですが、例えばハローワークなどサポートセンターがいろいろできましたが、いまでも同じ都道府県内でも移動の電車賃が出せないためにそこに行けない人たちは、相変わらずたくさんいるわけです。移動というのは、移ってしまって地域を捨ててしまえばいいということはもちろん申し上げませんが、そうであったとしても地域の問題を考えるときに、移動のあり方がよりご本人や地域全体にとってプラスになるためにまだ改善できる余地がないかということは、私自身は本日の論点の中で必ずしも十分に感じられませんでしたので、ご検討いただければと思います。
○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。
○小杉委員 最初に鶴さんがおっしゃったことと重なるのですが、高等教育との関係で、地域人材の育成や、地域の産業を興すという話で核になるのが高等教育という方向はあると思います。若者雇用戦略の中で、地域コンソーシアムの話があちこちから出ていて、結局書かれ方はキャリア教育協議会に落ちてしまったのですが、コンソーシアムという発想はキャリア教育のインターンシップの場所を探すだけの話ではなく、教育と地域の産業労働が一体化して、在学中から職業人になる過程全体での能力開発全体の支援でもありますし、あるいはそこで新たな革新用のネタになるようなものと、高等教育におけるシードと、産業界のニーズとをどう組み合わせていくかという意味でのコンソーシアムがあります。本当は、若者雇用の話の中には、そこで新しい産業を興していく、新しい若者の雇用先をつくっていくことまで含めて、コンソーシアムだと思うのですね。そこで、高等教育は非常に大きな役割を果たすので、地域産業政策という話の中には、やはり教育機関を巻き込むような仕組みが必要です。これまでもあった能力開発、人材育成をする能力開発機関だけではなくて、こういった高等教育は人材の輩出元でもあり、革新のシーズでもあると。そういうところを巻き込んだ仕組みでコンソーシアムは考えなければいけないのではないかと。若者雇用戦略の中にあった考え方をもっと広げて、地域雇用の柱にしていけるようなものがそこにあるのではないかということが1つです。
 もう1つは、いま玄田さんがおっしゃっていた移動できない人の話です。いわゆるグロ
ーバル経済の中で、トップの人たちの移動はかなり頻繁になりますし、競争力のある人たちはそちらで移動して、さまざまな世界的な移動をされると思うのですが、一方で移動できない人たちの層は、グローバル経済の下では、その地域でかなり厳しい競争に晒されることになるわけですね。これまでやってきたその地域にある産業では、ほかの生活水準が違う所の産業とも競ったときには、機会がすごく少なくなってしまうという地域問題が構造的に出てきているのだろうと思います。そういう移動できない地域の中にずっと暮らしていく人たちの生活をどうしていくかというところに出てくるのが、たぶんコミュニティワークなど、コミュニティをベースにしてそこで暮らしていく人たちの生活をどうするか、その労働だと思います。その辺りの話は、この重点分野創造事業の中の地域社会雇用という言葉で書かれているものなのだと思います。この辺りの視点が、今回の議論の中では抜けているので、できればコミュニティワークというような働き方も位置付けていくべきではないかと思います。
 3点目は、すごく迷っていて、考えても答えがないところなのですが、介護、医療が大事なのは間違いなくて、これが産業として柱なのです。その産業が、介護を中心として非常に生産性が低いというか、賃金が低い状態に留まっています。対人サービスのこの業界の生産性を高めて賃金を高めることとセットでなければ、ここを重点分野として柱にしていくのはうまくいかないのだろうと思います。
 この間、アメリカの若い学者と話をしていて、日本のサービス業の生産性が低くて、でも最近よくなってきたのではないかという指摘をされていました。そこで、彼らの言っているサービス業の生産性が上がるというのはどういうことかというと、競争が激しくなる中で富裕層との格差が大きくなって、この富裕層に対人サービスのニーズが高まると。富裕層に対して、対人サービスを提供する所が、実はどんどん高い賃金を取っていって、非常に高付加価値なサービスをつくっていくと。富裕層向けのサービスがどんどん高付加価値になって、富裕層を中心とした地域の周りにより低賃金のサービスを提供する人たちの場所ができると。このように、サービスの質が高まっていくのだという話をされていたのです。
 日本はアメリカの形と違って、サービスが社会的な形で、ずっと福祉が進んでいる国なので、福祉の枠の中でサービスを提供することを中心に考えていくと、富裕層向けのサービスを切り出して、そこをどんどん高めていくというような発想では、日本社会は分断してしまいます。それはないのではないかと思うと、地域雇用の中でもサービスが大事で、サービスを軸に1つの柱を持たなければならないのは間違なくそうなのです。それと、いまの日本の福祉の仕組みとの間の軋みの中で、一体道があるのかと。これは先ほどから言おうかどうかと思っていたのですが、必要な道なのだがそこを高度化するのは、アメリカのように単純な議論ではできない議論があり、これから研究しなければいけない分野かなと思いました。
○樋口座長 いかがですか。今回、地域雇用のテーマを研究会として取り上げたほうがいいのではないかと申し上げたこともあり、そのときは玄田さんがおっしゃったように、1つは景気循環的に景気が悪化して、特に地方における雇用が喪失してきて、これに対する対策をどうしていくのかという問題。もう1つは、景気というよりもむしろ構造的に何か地方の雇用が停滞しているような流れがあって、それに対する対応をどう考えたらいいのかという2つがあるのかなと思いました。前者の景気の後退に伴うというのは、やはり緊急性が必要なわけですから、そこで自治体が求めていくというのは、やはり資金の提供だろうと思っています。すぐにやらなければいけないということですから、創意工夫によって雇用がつくられますといっても、なかなか自治体は時間をかけずにすぐにできるわけないということになりますから、どうしてもいまのような従来型の資金提供による政策が効果をもってきますし、自治体としてもそれに対する評価はありがたいと思いますでしょうから、評価も高くなっているのかなと思います。
 それはそれで、いままでは公共事業でかなりやってきたようなところを、どのように姿を変えていくのかですが、構造的なところは相当根が深い感じがするわけです。1つは、グローバル化というような流れの中で、工場の誘致が難しいでしょうし、中には誘致した所が海外に工場を移転させるというようなことが起こってきています。
 2番目の構造要因は、やはり少子高齢化の中において、現実に長男・長女社会になってきているということで、若者も含めた移動がすごく下がってきていることがあると思います。特に、県を越えた移動が、年齢別に見ても若者のところで下がってきて、地元に親が置いておきたいということもあるのかもしれませんし、子どもも親の近くで何とかなるのならということで、ここの移動率が下がってきています。従来のように産業が来なくても何とか都市部に人が移動していけばというような、次男、三男の時代とは相当違った対策が必要になるのかなと思います。
 これは、かつて公共事業を削減したときに、ある役所で当時大臣だった人が言ったのを覚えていますが、高知で建設の需要がなくなったら、その人たちが東京に出てきてタクシ
ードライバーをやればいいじゃないか、というような転換が政策としてあり得るのではないかと。これもあると思いますが、なかなかいまの構造の変化の中においてはできない事情が起こってきているのかなという感じがします。
 同時に、これは構造変化と言っていいのかわかりませんが、先ほどの言葉で言えば土建国家という言葉が出ていましたが、そういったものに期待していくことがもうできない、あるいは期待したとしても、長期的な建設による有効性が期待できないとなると、やはり持続可能な雇用を地元密着型でつくっていくしかないのかなと。これは、いろいろなチョイスがあり、その結果としてこれがいいというのではなく、ほかにないのかもしれないという切羽詰まった思いでの提言になるかもしれません。それを考えたときに、新しい業種を興してくることも、どうしても雇用政策としても考えなければいけないようなところになってきているのかなと思います。
 従来の産業であれば、いままでいろいろ経験してきた人たちが地元にいるわけですから、特段業種転換も必要なく、また能力開発なども必要ないわけです。そういった構造改革あるいは構造的な転換に対する対応を考えるうえでは、どうしても新しいものを作り出していかなければいけないとなると、そこで雇用をつくると同時に、やはりそこで働ける能力を持っている人たち、備えている人たちをつくっていくというような、ある意味でのパッケージ、支援が必要になってくるのかなと。それを誰がやるのかは別の話かなと思います。緊急の対策であればお金ということでしょうが、そういった構造変化に対する対策であれば、お金と同時に手間暇をどうかけていくのかがどうしても必要になってきます。自治体は忙しいというようなこともあってなかなかやらないとすれば、誰が手間暇かけるのですかというようなところも含めて、政策として考えていかないといけないと。おっしゃっているようなNPOもあれば、産業界のリーダーが地元でそういったものを展開していくことも、サポートするのもあるのかなと、お話を聞きながら思っていました。
○諏訪委員 地域雇用の問題を取り上げてくださいまして、大変ありがとうございます。私どもの大学院も、この問題で関連する授業科目を置いておりますが、先ほど少し出たキーパーソンの問題は極めて重要だろうと思っております。例えば、馬路村は1,000人ほどの非常に辺鄙な村であって、高校さえもないわけですが、ここは昼間人口のほうが夜間人口よりも高いです。というのは、ユズ関連の産業で大変に成功しているからです。中心になってやったのは、昔の農協の理事長さんだったか誰かと、村長さんなどが地域を興していったわけです。そうすると、1,000人ぐらいの村ですが、「平成の合併なんて冗談じゃない。合併なんてしない」と言ってやっているわけです。
 海士町も有名ですが、ここも町長選に勝った現町長がイニシアティブをもって、地域を新たに再活性化させた。新しく開発された冷凍技術を使ったという有名な話がありまして、それによって距離の暴虐に勝てなかった地域の海産物を、先ほどの土佐清水などという問題もありましたけれども、味を落とさずに全国に送れるようになったことで成功したとか、あるいはもっと有名なのが、「そうだ、葉っぱを売ろう」という徳島県上勝町の横石さんです。農業指導員の方が地元で葉っぱを売る、つまもの産業をやって、いま日本のつまもの市場の7割を押さえている。
 これらを見ますと、みんな大学などない所なのです。キーになるパーソンが非常に苦労しながら地域の人びとを動かしていく。上勝町などの場合は、葉っぱなど誰が買うかと言って、地元のほとんどの人が相手にしてくれなかったけれども、ある程度伸びていくと、そして儲かるとなるとどんどん寄ってきました。しかし、最初の1億円を売り上げるのに7年かかっています。次の1億円、つまり2億円を売り上げるのに、また7年かかっています。発端は小さいけれども、それを育てていくのに、やはりハーフジェネレーションぐらいはかかってしまう。これを緊急対策のようなものとどううまくやっていくか。つまり、緊急にやらなければいけないものと、小さな芽を作りながら、それを育てていく持続的なものの2つです。
 日本ではなかなかそういう例はないのですが、おそらくYKKなどがそうかもしれないですし、ユニクロが今後そうなっていくかもしれませんが、地方発の世界企業というのが生まれてくることが大事です。この点で有名なのは、ZARAのInditexと言いましたでしょうか、あの会社です。ア・コルーニャという、マドリードとの間を1日に数本しか汽車が走っていないというスペインの辺鄙な場所、西北の町です。人口も25万人くらいの市の周辺にある町から1970年代に生まれて、ファストファッションの分野では、いま世界一、二をGAPとかH&M辺りとやっているという会社で、1位にもなったことがあります。この会社を偉いなと思っている部分は、ア・コルーニャにも大学などはなかったのですけれども、この会社がだんだん伸びていって、いま世界中で10万人ぐらい雇用しているのですが、そのうちの4万5,000人の雇用はスペイン本国だということです。つまり、地域の中から生まれて育っていったところというのは、逃げないのです。その周辺に人を集めていって、いま大学もできています
 同じようなこととして、ベネトンがそうです。トレヴィーゾという10何万人しかいないベネチアの近くの町ですが、やはり大学などなかった所です。ここでUNITED COLORS OF BENETTONという標語で知られる会社を創って大きくして、いまや、あそこには大学が2つあって、会社もデザインとかの研究所をつくっている。地域に工場などを誘致してくるというのは1つの考え方ですが、世界を相手に、つまり世界の伸びゆく市場をどう地域が取り込んでいくかの視点も重要ではないかなと思います。
 地域の維持だけでなく発展という視点になっていくと、私は大学は必要だと思います。高等教育機関との連携というのは、やはりボストンのルート128号線のそばもそうですし、シリコンバレーは有名ですし、ユタのサイエンスパークなどもそうですが、みんな大学が核となっております。いま元気のないNokiaのあるオウル市(人口14万人)などもそうですが、みんな大学が核になって連携をしています。そうでない所ですと、専門学校や工業高校などが核になっておりまして、そのような教育研究機関との連携をしていかないと持続できないし、そのあと拡大もできないのではないか。そのように考えると、例えば地方に語学学校をもっとつくったり、あるいは地方が海外から来ている留学生にインターンシップの機会や、夏のホリデーワークのようなものの場をもっと作るとか、いろいろなことをするという視点など今までとは違った、つまり伸びゆく市場と自分たちの地域をどのように結び付けていくかという視点での工夫が必要ではないか。
キーパーソンとしては、それらを推進するプロデューサー型人材やコーディネーター型人材が必要ではないかと思っております。
○樋口座長 従来OECDが、いまもそうだと思いますけれども、雇用問題はエルサーを中心にやってきたわけですが、90年代にリード(LEED)という部局、セクションを作ったと思います。Local Economy and Employment Development、ちょっと逆かもしれませんけれども、LEEDはまさに地域の雇用をいかに興していくかといったことを、世界的なグッドプラクティスを集めて、それを紹介しながら他のところでそういったものを発展させていくというものです。資金をOECDに出して、LEEDに出したところだけが参加できるという仕組みになっているわけです。日本は入っていなかったのですが、たしか10年前ぐらいに厚生労働省が入るということで、毎年年次大会などといったものにも出てきているのだろうと思います。
 そこで紹介されたのが、まさにイタリアの例で、初代の局長というのがイタリアのボッコニー大学の先生なのです。なぜイタリアなのかと聞いたときに、ここではイタリアが、特に財政の抑制の中において公共事業ができなくなってくる中、それに代わるものを作り出すいろいろなグッドプラクティスがあるということで、その人がなったのだという話を聞きました。しかし、どうも従来のような転換ではできない地域問題というのが、特に拡大しているという中で、地域の問題、雇用の問題をどう考えていくかというのは、緊急性を要さないということではなくて、非常に喫緊の問題になってきていて、ただの景気循環ではないというところになってきているのかなという感じがします。
○玄田委員 お二人の話に関連して、先ほど座長が構造的とおっしゃったのは、やはり、地域雇用問題には緊急的な対策と構造的な対策が必要だろうと。構造的な対策として考えていることを少しお話させていただきたいのですが、いま諏訪先生も言われたキーパーソンですけれども、おそらく大事なのはキーパーソンだけではなくて、キーパーソンズではないかなと思うのです。何カ月か前の労働研究雑誌にちょっと書いたのですが、これから地域ではキーパーソンズというか、企業でもいいのですけれども、複数のグループに支援をしていったほうが地域の雇用につながるのか、それとも代表的な強い個人なり、企業に集中的に支援をしたほうが活性化なり、雇用にいくのかというのは、実は非常に大きな論点ではないかと思っております。
 私個人としては集中的支援、昔で言えば、選択と集中のほうが効果があるのではないかなと思ってはいるのですが、心がちょっと揺らぐところもあって、もしかしたらグループ支援というのも大事かなというのは、今回の震災対策でも、中小企業庁がかなり積極的に例のサプライチェーン問題というのがありましたので、グループ的な企業の支援をすることでいろいろな対策をやったと。きちんとフォローしていないのでわかりませんけれども、フォローしたときに、それなりに大きな効果があったというのであれば、やはりある程度グループ的な支援というのを、キーパーソンの複数の集合体に対して資金なり、助成するという論点は、もしかしたら非常に大事かもしれない。
 特に今回はワードで出てきませんでしたけれども、このような地域問題のときに、いろいろなところでマイクロビジネスのようなことに思いを持っている方が現場にもいるし、専門家の研究者にもいらっしゃるし、マイクロビジネスを支えるのは、たぶんキーパーソンズではないのでしょうか。ある種の連帯責任、例の有名なユヌスさんのグラミン銀行ではないですけれども、そういう連帯責任のチームをうまくサポートしていくことを、何らかの雇用対策、パッケージ版であったり、基金事業の次のステップとして、先ほどコミュニティと言われましたが、いわゆるキーパーソンズを支えていくということがうまくいくと、ある意味、地域雇用対策の非常に革新的な動きになるかもしれないというのが1点です。
 それを踏まえて申し上げると、持続的対策として今いちばん可能性があるのは、まちづくり会社ではないかなと思っております。先ほどの海士町のように、非常にバイタリティのあるリーダーたちが引っ張っていくケースと、地域でまちづくり会社という、いろいろな会社の形態はありますけれども、まちづくり会社を作って、それによって集合的に、まさにビジネスとしてまちづくりをやっていくというのが少し見られつつある。近くでは埼玉県の川越だったり、滋賀県の長浜であったり、香川県の丸亀とか、被災地の石巻にもそういう動きがあったりするわけです。資料6、7頁に、これからの戦略的産業として、「特定の業種にこだわらない」というのがいちばん多くなっているけれども、やや穿った見方をすると、地域の再生につながるのであれば何でもいい、むしろ総合的にやっていくという強い期待を持って、既存の業種形態にはこだわらないということがあり得るのかもしれない。
 まちづくり会社については、他の省庁はだいぶコミットしているように見えます。省庁だけでなく政党議員なども、かなり強く動き出そうとしているので、そういう点で厚生労働省は乗り遅れているようにちょっと見えますが、「違う」と言うのであれば、反論してほしいと思います。厚生労働省がまちづくり会社の何に関われるかと言うと、現実問題としては難しく、まちづくり会社のいちばんのポイントは、たぶん土地の利害調整なので、これについては厚生労働省が何らかの責任を持ってやっていくのは難しいと。ただ、土地の利害調整をした上で何を目指しているかと言うと、もう1回地域のコンパクト化を目指すということです。人がもっとぐっと集中して住める地域をつくるということと、ライフスタイルを産業化し、ブランディング化して雇用を創り出すということなので、コンパクト化とブランディング化は、もちろん就業が必要だから、すごく関わってくるだろう。
 そうなったときに、ここからは全く想像の世界ですけれども、ハローワークにもそろそろまちづくり人材課みたいなセクションを作って、ここに行けばまちづくりに関係したいという人の求職をぐっと集めたり、こういうところがほしいという求人がわかるようなものもあったほうがいいのではないかなと思うし、いま話題の労働者性の部分も非常に関わってきます。まちづくり会社をやるときには、たぶん既存の雇用形態では合わないので、雇用者のような自営業者のような、一体何なのだろうみたいな人たちとか、「給料はどうでもいいんだ、とにかく変わりたいんだ」という、いま最低賃金をどうするかとか、また地域再生の中には、一部危険とは言いませんけれども、事故も伴うから、そうしたときに今の労災の仕組みがどうなるか。
 例えば福井県の東尋坊という自殺が非常に多い所で自殺対策をしている方に、何がいちばん役立ったかと聞いたら、500円だと言うのです。要するに、NPO保険に500円というのがあって、すごく助かった、それを払っておけば、何かあったときに非常に助かると言うのです。実はあれは厚生労働省が主導したのではなくて、NPOと損害賠償会社が一生懸命知恵を出して作ったものなはずです。そのようなことを含めて、まちづくり会社に必要な人材が集まりやすいとか、働いたときに何かしやすくなるような環境づくりという面で言えば、やるべきことが実行対策としてあるのではないかなという気がします。
 それはちょっと法律的に無理ならば、どうしようもないのですが、まちづくりという既存の産業でないものが、もしかすると地域の持続的再生の1つの足場になるとするならば、ある種の雇用、法律の部分の、一部例外措置なども含めて検討するところまで踏み込んでいくぐらいのことがあると、まちづくりに厚生労働省とか労働政策などが、ものすごく深くコミットしているという感じもするし、非常にいい循環ができていくのではないかという気がします。
○樋口座長 新しいものを始めるというのは、必ずリスクが伴うわけで、リスクをベンチャーというか、単なる危険と言うだけで終わらないで、危険をどのように緩和できるかという社会的なシステムを作っていくことも重要かもしれないです。我々は直接のプレイヤ
ーにはならないわけですが、逆に、そういったインフラ、物のインフラではなく、社会的インフラというものを用意していくといった視点というのも重要なことになってきていると思います。
○鶴委員 2点あります。いままでの話の関連で、樋口座長が言われたのは、公共投資に頼らずに何か新しい産業ということだと思うのですが、地方単位でものを考えるほうがいいとよく言われます。なぜ、地方分権がいいのかというときに、非常にローカルなこと、ローカルな情報というのは、やはりいちばん現場に近い人でないと、逆にわからないという問題があるからだと思います。つまり、先ほど五所川原やいくつかの村の話もありましたけれども、そこはそれなりにいいものを持っているのだと思うのです。現場というかそこの場所にいる方が、ある意味では理解できるし、活用の仕方も非常によくわかっている。だからこそ、そういう所で潜在的に眠っているものを掘り起こしながら新しいものを作り上げていく可能性というものは、非常にあるのだと思うのです。ただ、先ほど玄田さんが言われたように、キーパーソンズというのは、先ほどネットワークという話もありましたけれども、現場でずっとやっていた方と、外から入ってきてある程度客観的に現状を見てアドバイスできるような、そうした協働関係というのが、新しいものを作り出していくときに非常に重要かなと、キーパーソンズというお話があったときにそういう感じを持ちました。
 2点目は、たしか移動の話がいくつか出てきていて、非常に重要な視点だと思うのです。樋口座長から、最近は若い人たちも移動しないという話がありましたが、何回か前のこの雇用政策研究会で、JILPTのほうからグローバル人材ということで話があって、非常に印象に残ったのは、中小企業が県外から卒業した高校生を採っているということでした。地元にいるよりも、他の所に出てみるという気持が持てる人を、グローバル人材として採るというのです。そのようなことを考えると、確かに雇用情勢の厳しい中高年の人たちを動かすというのは、それは厳しいかもしれないけれども、若い人たちはどうなのか。グローバル人材育成ということもこの中で議論しているので、そこが全部移動できないという仮定で地域の雇用政策を考えてしまうというのも、ちょっと極端なのではないか。そこは少し分けて考えたほうがいいのではないかなという印象を持ちました。
○加藤委員 実は、鶴委員と同じようなことを言おうと思って考えていたのです。1つは若者の話ですが、移動ができないという話と、座長が言われた長男・長女時代の話を考えたときに、地域でなかなか動けないような若者がたくさん出てきて、鶴委員は動かすことも必要だと言われましたが、現実問題として地域に根ざしていく人たちの中で若者をどう育てていくか。そのときに若者のための雇用をいかに創出していくというのが、ある意味で戦略的にいちばん大事なところかなという感じがします。世代効果という話で大学卒業生の話はよく出てくるのですが、地域における高校卒業生の就職状況の厳しさというのは大学生以上だと聞いておりますし、これから地域に根ざしていって、そこで活躍していく人たちの雇用を、いかに考えていくのか。それはグローバル化との関係もありますし、いろいろな形があると思うのですが、まず、そこで若者が働くことができなければ地域が駄目になってしまうわけですし、その先の雇用もなくなっていくということを考えたときに、一時的であり、かつ長期的な視点からいっても、まずは若者の雇用を中心に戦略的に考えていくことが必要なのかなという感じがしました。
○樋口座長 この問題を考えたときに、地域をよく知っている人たちをということがあって、その人たちが考えるのがベストだと言われます。それはそうかもしれないけれども、任せっぱなしできちんといくのだろうかという問題が片方で出てくるわけです。そこにおける国の役割とは一体何だろうか。国は資金を提供すれば、あとは自治体で、あるいは地域で考えてくださいというやり方でいくのか、それだけではなくていろいろな情報を提供するということが、非常に重要になってくるのかなという感じがしました。
 いくつかの地方に行って話をしたときに、例えば宮崎県ではこういった農産物をやっている、これでまち興しをやろうと思っているのだけれども、何かつまずいている、同じような問題を他の地域でも持っているに違いない。うまくいっている所を紹介してください、それが非常に重要で必要な情報だと言うのです。しかし、それがなかなか提供できていないというか、そうしたネットワークがないので、私はJILPTがやったほうがいいと以前言ったことがあるのです。研修制度もあるのだから、お互いに困っている問題を話し合う場といったものを用意していく。ネットワーク作りも個別の自治体ではなかなかできないことになっているので、そういったものも1つのやり方かなとは思いました。
○宮本委員 私だけが知らないのかもしれないのですが、2000年の機関委任事務制度の廃止のときに地方事務官がなくなって、その代わりに各自治体、特に商工部局に雇用担当のセクションがたくさんできたと思うのです。いま座長が言われたような形で、それが全国的に交流する機会などはあるのでしょうか。
○樋口座長 どうでしょうか。それぞれの自治体における担当者の情報交流の場ということですね。
○玄田委員 私が知っているのは、10県で「ふるさとネットワーク」というのをやっているということです。特に雇用状況が厳しい青森とか、福井も入っているのですけれども、47都道府県ではなくて、いくつかの県でネットワークを作って、地域からいろいろな発想をする中ではそういうセクションも作られてやっているから、国が主導してやるというよりも、そのような思いのあるいくつかの自治体がネットワークを組んでという動きは、いま言ったふるさとネットワークなどいくつかあるとは思います。
○森山職業安定局長 委員がおっしゃったように、各県にいろいろな部局がありますので、国としても年1回か2回集まっていただいて、国の施策の説明会や情報交換、その場合の部会などをやったりしております。全国から集めまして、最低年1回はやっております。
○樋口座長 宮本さんとしては、もっと何かご意見があるのでしょう。
○宮本委員 いま玄田さんが言われたように、国というよりは、やはり横のつながり、もっと大きなリージョンごとの特徴もありますから、どのように共有していくのかがポイントかなという気がします。
○樋口座長 やはり、失敗に学ぶところが非常に多いと思うのですが、失敗というのは他のところになかなか出てこなくて、しかし話を聞くと、お宅も同じ失敗をしたのですかということが、ときどきどうもあるようです。アメリカならば、大学が中心になって経験者についてレクチャー、たぶん法政はやっているのかもしれませんけれども、スタンフォードは、まさにそれでシリコンバレーができたという感じがします。そこにいると、もうそういう話ばかりです。
○諏訪委員 先ほどのキーパーソンズは当たり前で、いろいろな人が出てくる中から、だんだんに力のある人が出てくるということだろうと思います。先ほどは典型例をお話しただけであって、最近コミュニティデザインとかいろいろな形で、さまざまな人たちが寄り集まりながらやっている例がたくさんあるということは、おっしゃるとおりだと思います。ちょっと別の観点で気になるのは、雇用政策の基本を考えれば、究極的に言うと2つになるわけです。どれだけ人的投資をして、人材をいかに豊富に供給できるようにするかということと、もう1つはそれに対する需要をどれぐらいつくっていくか、そしてその間のマッチングをいかにするか、これに尽きるわけですが、人材の育成とマッチングとの間、あるいは産業の誘致みたいなものとの間の連携がもう少しうまくいかないか。
 例えば、1960年代にアメリカのジョージア州などがやったクイックスタートプログラムは有名ですね。すなわち、企業を呼ぼうとすると同時に、その企業にどんな人が必要か、どんな人材がほしいかということをよく聞いて、それに合わせてこちらでも人材を訓練していきますというものです。進出してくるであろう企業に合わせて人材を用意していって、向こうが工場を建ち上げて、建家が立ったころには、こちらでも人材が用意できる、このようなパターンができるかどうか。例えば起亜自動車を呼ぶときなどというのは有名な例として言われるのですが、日本で工業団地を造って、売れなくて困って何とかと言っているときに、人材の育成との間で対応を図った例というのは、熊本県の例とかは聞くのですが、それほどたくさんはないようです。ここら辺をもうちょっとどうかということと、風力発電やグリーンエネルギーなどといろいろなことを言っていますが、聞くところによると、風力発電は非常によく壊れるそうですので、地域に風力発電に対応できる技術者が必要になってきます。風力発電をやる所は大体辺鄙な所ですから、そこに非常に重要な雇用の場ができてくる、こういったのをどう考えていくか。
 また、大連に日本から仕事がたくさん取られてしまっていますけれども、大連はどうやって日本から仕事を取ったかと言うと、朝鮮族の人がたくさんいて、日本語を話すのがそれほど大変ではないということで、大学などで日本語のできる人をたくさん養成し、それが日本から仕事を取ることを可能にしました。地域でそのようなことをいろいろ考えていく、つまり国内市場も伸びていくし、海外市場も伸びていく時代と、国内市場はなかなか伸びていかないけれども、海外は伸びていくという時代では、やはり雇用戦略、産業戦略は違ってきて当然だろうと思いますから、それらに対してもう少し積極的に打って出るような地域、つまり地域が知恵を出して、汗をかいて、少し先を目がけて人材を育成し、産業の可能性をつくっていく、そして地域から世界的な企業を生んでいく、場合によっては呼んでくるとか、こんなような構図がないと、やや悲しい地域雇用論になるのではないかという気がしております。
○玄田委員 別に論争するつもりはないのですが、私が言いたかったことは、今回の「実践型地域雇用創造事業」のことは知らなかったので、こういうのはあっていいなと思ったのです。しかし、私がイメージする助成金事業というのは、単体の個人事業主に対する助成金が多いのではないか、何か事業をしたいという複数の、ある種共同責任の事業体に対して助成するなどというのは、雇用創造事業とか政策として今まであったのかなと思ったのです。これは地域に対する助成ですよね。地域とか個人というのがあって、間にあるのは何かをやりたいという複数の、担保とかはあまり持たないけれども、やる気のある個人の集団に対する助成のようなことが、先ほど少し言ったマイクロビジネスの1つの形かなと思ったのです。つまり、申し上げたかったのは、こうした助成事業の形が、地域雇用政策を考えるときの、もう1つ論点かなと思ったということです。
○樋口座長 実践型の説明をしたほうが、このように今やっていますというのがありましたら、お願いいたします。
○宮本地域雇用対策室長 資料28頁をお開きください。先ほどは説明が不十分だったようですので、追加でご説明いたします。まず、この「実践型地域雇用創造事業」は、正確に申し上げますと助成ではなく、市町村を中心とした協議会の作成した構想書に基づいた事業、この事業が第三者委員会で適正なものと採択されますと、その事業内容を実施していただくために協議会が都道府県労働局と委託契約を結び、委託事業を実施していただくというものです。委託期間は3年間でして、1地域当たり年間2億円を上限に事業が実施できることになっております。ただ、この事業費については、事業における就職件数と目標を設定しておりますので、その就職件数とリンクする形で事業費についても設定することになっております。
○玄田委員 協議会に対する委託事業というのは、地域雇用政策として比較的やられる方策ですか。それとも、これはかなりユニークな新しいやり方なのですか。
○宮本地域雇用対策室長 私どもで把握している限りはなかったと思っております。
○玄田委員 わかりました。
○樋口座長 よろしいですか。そろそろ時間ですが、何かあればお願いいたします。もし、よろしければ、本日の議論は以上といたします。次回について事務局からお願いいたします。
○武田雇用政策課長補佐 今後のスケジュールについてですが、資料3にあるように、次回は第8回雇用政策研究会です。日時は7月11日(水)、10時半から研究会の報告書(案)の検討を予定しております。また、第9回雇用政策研究会は7月23日(月)、11時から研究会報告書の取りまとめを予定しております。
○樋口座長 以上で本日は終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)
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