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2012年5月10日 第85回労働政策審議会職業安定分科会議事録

職業安定局総務課

○日時

平成24年5月10日(木)10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 厚生労働省職業安定局第1・2会議室(12階)


○議題

(1)労働者派遣事業における専門的な知識等を必要とする業務について
(2)その他

○議事

○大橋分科会長 定刻になりましたので、ただいまから第85回「労働政策審議会職業安定分科会」を開催いたします。本日の委員の出欠状況は、公益委員の清家委員・樋口委員・宮本太郎委員、労働者代表の澤田委員・住野委員、使用者代表の上野委員・河本委員・久保委員・田沼委員が欠席です。
 議事に入ります。本日の議題は「労働者派遣事業における専門的な知識等を必要とする業務について」、及び「その他」です。最初の議題は、労働者派遣事業における専門的な知識等を必要とする業務についてです。本件については、4月25日付で、厚生労働大臣から労働政策審議会長宛に、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律施行令の一部を改正する政令案要綱」の諮問を受けており、25日の労働力需給制度部会において、あらかじめご議論をいただいております。資料及び労働力需給制度部会での議論について、事務局から説明をお願いいたします。
○需給調整事業課長 派遣法施行令改正の諮問についてご説明させていただきます。資料1-1が政令案の要綱、1枚めくって諮問文です。この内容をご説明する前に、今回の政令改正案を諮問するに至った経緯などについてご説明させていただきます。
 資料1-3の1頁目ですが、労働者派遣制度では、業務によって、派遣先が同一の業務に派遣を受け入れる期間に制限が設けられており、物の製造、軽作業、一般事務などの業務は、派遣受入期間が原則1年、最長3年となっております。専門的な知識・技術又は経験を必要とする業務や、特別の雇用管理を行う必要が認められる業務として、政令で定める26業務などについては、派遣受入期間の制限がありません。この政令で定める26業務については、この資料の2頁目に掲げております。このような業務が政令で現在定められております。
 この資料の21頁目にあるように、この専門的な知識等を必要とする業務、政令で定める26業務については、法施行後以来、必要に応じ適宜見直しを行ってきております。これらの専門的な知識等を必要とする業務に関し、昨年3月の東日本大震災の発生を受け、震災関連の業務としてニーズが高まっており、また緊急の対応が求められている、一般廃棄物処理施設、下水道処理施設、水道施設の運転、点検又は整備の業務と非破壊検査に必要な機器の運転、点検又は整備の業務について、震災からの早期の復旧・復興や、今後の災害防止の観点から、政令で定める業務に追加してほしいとの要望が出されております。要望については、15頁から要望書を付けております。
 こういう要望があったことから、労働力需給制度部会の委員から、これらの業務を政令26業務に含めることについて緊急的に検討してはどうかとのご提案があり、これら業務の取扱いについて、同部会においてご議論いただきました。これらの業務、業務のそれぞれの概要、専門性等については3頁から12頁まで、それぞれ業務ごとに整理をしております。例えば、「一般廃棄物処理施設において必要な設備の運転、点検又は整備の業務」では、燃焼設備とか排ガス処理設備の運転、点検整備が業務としてあり、これらの業務について、例えば燃焼設備や排ガス処理設備などについては、燃焼に使用する空気の温度や排ガス温度、焼却炉へ入れるごみの量、焼却炉内の内圧等、様々な状態を把握し、適正な範囲に保つ必要があって、これには専門的な知識・技術・経験が必要とされる業務ということで、3頁の専門性のいちばん最初の○にそのようなことを記述しております。そういう専門性の高い業務が認められるというものです。
 部会においては、こういう専門性についてのご確認とともに、震災からの早期の復旧・復興に絡んで緊急性があるということ。これらの業務については、常用代替がなかなか起こりにくく、政令で定める26業務に含めることで、雇用の安定に資することも認められることのご発言がありました。こういうことから、政令に含めることで検討することを容認するとのご発言があり、部会事務局で、法令的な観点から整理をし、案を作成すべしとのご結論を部会でいただきましたので、そういうことを受け、今般事務局で政令改正案を作成し、分科会にお諮りすることとなりました。
 政令改正案の内容は資料1-1の2頁で、第1として労働者派遣法第40条の2第1項第1号の政令で定める業務、これが先ほどご説明いたしました、専門的な知識等を必要とする業務として定められている26業務ですが、この業務として、非破壊検査用の機器の運転、点検又は整備の業務及び水道施設、下水道又は一般廃棄物処理施設の管理に関する技術上の業務を加えることとするものです。第2として、この政令は公布の日から施行することとするものです。
 この政令案要綱については、分科会長からも冒頭にお話がありましたとおり、4月25日の労働力需給制度部会において、あらかじめご議論いただいております。そのときのご議論では、政令改正の必要性などについて再度確認がされた後、政令案要綱については了承したいとのご発言があり、部会として政令案要綱を妥当と認めることとし、その旨分科会長宛報告することとされたものです。分科会長宛の報告文は、資料1-2にお付けしているとおりです。私からの説明は以上です。
○大橋分科会長 本件についてご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
○吉岡委員 質問です。今回の政令案要綱の中に、特にごみ処理のところですが、括弧書きで「1日当たりの処理能力が10トン以上のものに限る」というところの、「10トン以上」というところの理由についてお伺いいたします。特に資料1-3の4頁に「ごみ焼却施設における対象設備」ということでイメージが書かれているのですが、この中で「10トン以上」と「10トン未満」で違いがあるのであれば、この表の中でもわかったのですが、そのようなことの記載もありませんので、是非その辺のところについてお伺いいたします。
○需給調整事業課長 ごみ処理施設については、10トン以上のものに限るということにしておりますけれども、これは機器の操作の専門性に着目し、10トン以上の施設では、通常、連続運転の中で、ごみを焼却していくということで、専門性が高度な業務です。他方10トン未満の施設では、一旦ごみを投入し、燃やした後施設を止めて、その後また必要に応じて施設を動かすということで、いわゆるバッチ処理がとられているのが通例です。
 そういうことから、それぞれの施設の運転に関する専門性が違うということであり、この26業務については、専門的な知識・技術・経験を必要とする業務ということで、政令で定めさせていただいているものですので、そういう観点からこういう取扱いとすることとしているものです。
○大橋分科会長 よろしいでしょうか。
○吉岡委員 はい、ありがとうございました。
○大橋分科会長 そのほかにいかがでしょうか。
○林委員 いまの説明の中でも若干触れていましたし、また資料1-3の15頁の要望書のところにも記載されておりますように、そもそも今回の政令改正は、東日本大震災で大きな被害が出ている施設もあるということで、早期の復旧・復興というものの対策が主たる理由のように書かれています。そうであった場合に、この政令案要綱において有効期間というもの、例えばこれが時限立法的なものなのかというところ、それから東北地方に限るという対象地域の限定がされていないように見受けられるのですが、この辺りについて、もし理由があれば説明していただけますか。
○需給調整事業課長 いまのご指摘ですが、資料1-3の3頁の緊急性のところをご覧ください。特にがれきの処理などについて、被災地で処理能力が不足しているということで、これは全国的に処理をする、ということでマスコミ等でも報道されております。被災地に限らず、全国でこういうごみ処理施設の運転、点検・整備の業務のニーズが増大していることが認められる、被災地に限定せず、全国的にこういう業務を認めることが適切ということで、地域の限定は付けないことで考えております。
 それから期間の限定ですが、膨大ながれきが発生しております。早期の復旧・復興ということで、政府として最大限努力していることは当然のことですけれども、期限を切ってという形で、現段階で目処が立たない状況であり、あくまで、派遣法上の専門的業務として、今回の政令案においては、期間の限定は付けずに、こういう業務を認めるということで整理をさせていただきたいと思っております。なお、業務の必要性なりを踏まえ、必要に応じて見直しをすることは当然のことだと考えております。
○大橋分科会長 よろしいでしょうか。
○林委員 はい、ありがとうございました。
○大橋分科会長 その他いかがでしょうか。
○宮本(み)委員 いまのご質問に続いてなのですが、当面いつまで復旧・復興の期間が続くか目処が見えないということで、期限限定でなく、このような形で改正をするということです。もともと、2枚目の表に「原則1年間」としたものと、26業務に関してだけ「なし」としてきたというのは、根拠があってこうしてきたものが、今回の被災にかかわってこれを改正するということです。そうすると、当面いつまで復興のための業務が続くかどうかわからないということはありますけれども、それにしても「必要に応じて見直し」というような曖昧なことでいくと、このままこれが一般化していく可能性は十分あるわけです。その辺りはどうやって歯止めをかけていくのか、その辺りのところがいまひとつわからないので説明してください。
○需給調整事業課長 どういう業務を政令で指定するかということについては、これまでもその時々の業務のニーズなり、こういうものについて専門的な知識・経験等を必要とする業務として指定するかを審議会でご議論いただきながら定めさせていただいているものです。今回は、26業務に震災関連のニーズの高い業務、緊急性のある業務を含めるということでご議論いただき、期間限定、地域限定をせずに含めるということで指定をしていただきました。
 部会の場でも、そういう政令の施行の状況などを注視し、問題がないかどうかを事務局としてもしっかり把握をするようにというご指摘をいただいております。施行の状況を見て、もしこれらの業務を政令の26業務として指定する必要性がないということで判断するような事態が生じれば、またそういうことも部会の中でご議論いただくことになると考えております。当面は、そういう施行の状況を、私ども事務局でしっかり見ていきたいと考えております。
○宮本(み)委員 議事録にとどめておいていただくことが重要だと思います。「震災復興という」という名称のまま制度改正がなし崩し的に広がっていかないように、その辺りのところはきちんと押さえておくことを希望いたします。
○黒木委員 そういう意味では、労働側としても労働力需給制度部会においても意見と要望を申し上げておりますので、今回諮問された政令案要綱については了承したいと考えております。
○大橋分科会長 その他いかがでしょうか。
(特に発言なし)
○大橋分科会長 特にないようでしたら当分科会は、厚生労働省案を妥当と認め、その旨を私から労働政策審議会長にご報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○大橋分科会長 それでは、報告文案の配布をお願いいたします。
(報告文案配布)
○大橋分科会長 お手元に配布していただきました報告文案により、労働政策審議会長宛報告することとしてよろしいでしょうか。
(異議なし)
○大橋分科会長 それでは、そのように報告させていただきます。次に移らせていただきます。議題「その他」として資料が配布されています。まず「出先機関改革に係るアクション・プラン(ハローワーク)の進捗状況について」です。事務局から説明をお願いいたします。
○派遣・有期労働対策部長 参考資料1「出先機関改革に係るアクション・プランの進捗状況について」を使ってご説明させていただきます。地域主権改革については、一昨年の年末にアクション・プランが閣議決定されましたが、それを4頁に付けております。4頁の2の(3)のハローワークの記述の部分については大きく2つに分かれています。一体的運営について、国の行う無料職業紹介、あるいは自治体の行う福祉等の業務を一体的にやる、というのを3年程度やった上で検証していくというような記述があります。
 このアクション・プランを受け、昨年の年末に5頁にある今後の取組方針が、地域主権戦略会議で報告・了承されました。その中で、ハローワークについては自治体の協力も得て、国・地方の一体的取組みを全国的に進める。同時に、特区制度を活用し、試行的に東西1カ所ずつハローワークが移管されているのと実質的に同じ状況をつくり、移管可能性の検証を行う。これを「ハローワーク特区」と名付けるということです。具体的な内容は、国と地方が協議して決定するとなっております。
 本日のご報告は、ハローワーク特区について、5月7日に地域主権戦略会議の下にあるハローワークチームの中で大枠が了解されたということで、その内容のご報告です。具体的な内容は3頁にハローワーク特区の図があります。このハローワーク特区については、埼玉県、佐賀県が特区として対応することを知事会の中で決めて、東西2カ所、ハローワーク浦和と、ハローワーク佐賀について特区を設けることが前提です。その上で大きな枠組みとして、厚生労働大臣と知事が特区協定を締結すること。特区の中身については、雇用対策法施行規則において、基本的な枠組みを規定すること。
 その下の枠にありますように、知事が労働局長に対して、ハローワークの業務に関して必要な指示ができるのですが、どういう業務に関して必要な指示ができるかということについては、協定の中に書き込むということです。いまの段階での具体的な内容としては、その下の点線の枠の中に人事交流、求人情報提供端末の配置、若年者雇用、障害者と書いてありますが、こういう指示が可能な事項について協定に書き込み、その範囲について指示ができるということ。
 指示については、法令・予算に反するなど合理的な理由がない限り、事業の実施に当たり反映すること。労働局長が知事の指示に合理的な理由がなく従わない場合は、大臣に対して知事の指示に従うように要請ができる。このようなことが大枠として定められました。
 事業の実施については、今年の10月1日開始を目指しております。それまでの間にさらに埼玉県、佐賀県とも調整を進め、雇用対策法施行規則については、当然施行規則ですので、労働政策審議会職業安定分科会でもご議論いただくという考え方です。
 この指示の位置づけとして、法令ではいろいろな用例がありますが、上級機関から下級機関に対する指示という意味合いではなくて、対等な関係にある機関相互間の指示ということを前提に、法的拘束力があるというものではなく、相手方の自主的な遵守を期待するものという整理です。法改正をせずに対応するということですので、法的拘束力が生ずることは考えていないということです。その上で、先ほどの上の段の真ん中にありましたように、法令・予算に反するなどの合理的な理由がない限りは反映することを考えております。
 ハローワーク特区の枠組みのご報告とは別に、一体的実施のいままでの実施状況についてご報告させていただきます。一体的実施については、資料の9頁に一体的実施の実施状況について整理がしてあります。9頁の2の「提案の状況」のところの(1)が一体的実施の提案についての記述です。都道府県のところに「29道府県」と書いてあり、市区町村のところに「49市区町」と書いてありますが、これだけの提案がありました。その中で(1)の2行目にあります「25道府県31市区」が既に事業を開始しております。
 事業を開始している所の具体的な実施状況については、一覧表が10頁以下にあります。具体的な例をいくつかピックアップしておりますので、そのご説明をさせていただきます。20頁に所沢市の例、23頁に総社市の例があります。この2つの例については、特に生活困窮者の就職支援ということで、市の福祉部門とハローワークが一体的な事業運営をする例です。
 20頁の所沢市については、上の枠の中に書いてありますように、市の庁舎の福祉部門に、ハローワークの窓口を設けるという形で一体運営を実施していて、生活保護受給者の就職の実現が相当進んでいるものです。23頁の総社市は、上の枠の中にありますように、ハローワークのほうに市の福祉部門の窓口を設けていただいて対応するものです。こちらについても、当初の計画を超える成果が上がっています。
 県の事例として青森県の事例が27頁にあります。青森県の事例は、若者の雇用対策について、県の施設と国の施設を1カ所に集めて一体運用することで、若者支援が進められています。
 自治体の首長からも、評価をいただいておりますので、その例も付けてあります。例えば25頁に総社市長からのコメントが書いてあります。コメントの真ん中辺りがいちばんのポイントだと思います。「今回、ハローワークとの連携により、市だけでは十分な対応ができなかった就職困難者への自立に向けた支援がワンストップサービスとして強化され、市民サービスの向上につながったと実感しています」ということです。ワンストップで、就職困難者の就職の実現が進めやすくなったという評価をいただいております。
 29頁に青森県知事からのコメントがあります。上から2段落目に、「東日本大震災や急激な円高の影響等により、厳しい雇用情勢が続く本県においては、ハローワークの全国ネットワークを活かしながら、国と県とがお互いに協力して、雇用対策を進めていくことが大変重要であると考えています」ということを前提に、いちばん下に「一体的運営のメリットを最大限に活かし、本県の未来を担う若者が、1人でも多く就職できるよう、今後とも全力で取り組んでいきたいと考えています」ということで、若者の就職支援に非常に効果が発揮できているのではないかという評価をいただいております。
 厚生労働省としては、こういう一体運営の取組みについては、引き続き取り組んでいきたいと考えております。ハローワーク特区についても、職業安定分科会で十分ご相談しながら取組みの方法を決めていきたいと考えております。以上です。
○大橋分科会長 本件についてご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
○新谷委員 いま、国の出先機関改革に係るハローワークの進捗状況についての説明をしていただきましたが、我が国では職業を持つ人の数が6,200万人おられて、そのうち雇用されて働いている方が5,500万人弱おられると思います。そういう意味でいくと、職業を持っている人の8割以上が雇用労働者であるということです。雇用の安定なり、失業した際のセーフティネットをどう張っていくかというのは、国の重要な施策だと思います。
 我々労働者にとって最大のリスクは失業でありますので、その失業状態から早く脱出して、再び労働市場に戻っていくためには、全国に張り巡らせたハローワークのネットワーク、まさしくユニバーサルサービスとして、国が責任を持ってネットワークを張っていくことは大事なことだと思います。
 かつて、この出先機関改革については、労働政策審議会においても、過去2回意見書を取りまとめ、厚生労働大臣に意見を申し上げていると思います。その内容は、国としてのネットワークを維持しながら、地方自治体のきめ細かなサービスを展開していくということであったかと思います。それが、まさしく本日提示していただいた資料の4頁にあった、閣議決定されたアクション・プランの具体化につながってくると思っております。そういう意味で、今回のハローワーク特区の行方については、私どもとしても非常に関心を持って見ているところです。そういう観点から何点か質問・確認をさせていただきます。
 本日報告していただいた中身は、ハローワーク特区の話と、アクション・プランに基づいて国と地方の一体的実施について提案があった自治体の具体的内容についての2つです。まず、ハローワーク特区について質問させていただきます。3頁に、これは東西2カ所ということで、同じ協定の内容を埼玉県と佐賀県から提案があったということです。
 国のネットワークを一体的に運営していく中で、県知事から労働局長に対して指示することができるということがあるのですが、我々がいちばん気になるのは、県知事の指示によって、現場のサービスがどのように影響を受けるかということです。いまでもハローワークはかなり混雑していて、現場の職員には随分ご苦労いただいております。県知事から、対応困難な指示が来た場合に、労働局長としてはどのように対応するのか。その指示の法的拘束力、先ほど「法改正ではないので」という説明がありましたが、この法的拘束力の意味合いをもう少し説明していただきたいのが1点目です。
 2点目は、後の具体的な一体的改革の、都道府県並びに市町村からの提案内容とも絡みます。やはり、我々として気になるのは、行政機関同士の運営協議会の中で、その業務の割り振りを考える際に、「利用者の様々なニーズにきめ細かく応えることが可能になるよう」という表現が4頁のアクション・プランの中にも書かれてありますが、一体、利用者の声をどのように反映させるのかということで、そのあたりをお聞きします。
 これは、今回のハローワーク特区の協定の中身が、具体的な協定に基づく指示ということで、窓口の開設時間等々の細かな指示が出てくると思うのです。そのときに、利用者に対してどのようなサービスをするのか、我々はどういうことを利用者側として申し上げたらいいのか。その場をどのように考えるのかを、ハローワーク特区についてお聞きしたいということです。
 それから、29道府県と49市区町から具体的な提案が上がってきている中で、実際に動いている部分があります。私どもにも、地方連合会から、実は一体的運営の中で、行政機関同士でサービスの中身を決めてしまって、労使団体が参画して意見を言う場がないというクレームが上がってきております。先ほどの個別具体的な事例として、所沢市、総社市、青森県の説明がありました。所沢市と青森県には、運営協議会の中に労使団体のメンバーを加えるということが書いてあります。こういう先行事例にあるように、労使団体の代表を、行政機関同士のサービスの有り様を検討する場の中に是非加えていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。以上、質問と意見とさせていただきます。
○派遣・有期労働対策部長 ハローワーク特区に関連し、知事からの指示の内容が、現場の業務が回らないような、混乱するような指示が出たらどうなるのだという趣旨のご質問がありました。これについては、先ほどご説明いたしました枠組みの中で、「指示は、法令・予算に反するなど合理的な理由がない限り、事業の実施に当たり反映」と書いてあります。「現場が回らない」というのは、非常に合理的な理由だと私どもは考えております。そういう指示がされないようにする必要があるのではないかと思っております。
 この枠組みの中で、「連携・協力」という矢印がいちばん下にあります。その中で「業務を円滑に遂行するための事務レベルの会議を設置」と書いてあります。現地の労働局と県との間で、事前に十分調整をし、内容として無理があるような指示がなされないようにしていくということに心掛けるとともに、もし仮に万が一現場が回らないような指示があった場合については、合理的な理由がないと私どもとしては考えますので、そういう対応をしていきたいと考えております。
 今回の対応の中で、利用者のニーズをどのように反映していくのかという問題があります。ハローワーク特区については、先ほど申し上げましたように、ハローワーク特区の根拠となる厚生労働省令、雇用対策法施行規則については、この安定分科会でご議論いただくことを想定しております。協定自体も、大臣と知事との協定になりますので、協定についてもご議論いただくとともに、実際の現地での業務の実施状況も含め、この職業安定分科会にご報告をし、ご議論いただいて、ご意見をいただきたいと考えております。
 現地の利用者同士のご意見を反映する方法について、私どもといたしましては、できるだけ先ほどの運営協議会の場に、現地の労使にも参画していただいて、直接ご意見を反映するのがいちばん理想であると思っております。ただ、4頁のアクション・プランの(3)の3行目に、「地方自治体の主導の下、運営協議会の設置などにより一体的に実施され」るということになっております。どうしても自治体主導で整理されるということですので、自治体の意向に反して、労使の参加を強要することはなかなか難しいということもあります。できるだけ運営協議会の場に、労使に参加していただけるようにはしたいと思いますが、難しい場合もあると思います。
 47労働局に、すべて地方労働審議会が設置されております。地方労働審議会は、地方労働審議会令という政令に基づいて、労使同数が参画する形で運営されております。そこでは、現場のきめ細かな運営状況についてご意見を伺い、あるいはこういうことをしたらいいのではないかという御提案も伺って議論していただくことができるのではないかと思っております。そういう対応を、ハローワーク特区につきましても、一体運営の取組みにつきましても、47労働局の地方労働審議会でしたいと思っております。その場を通じ、労使の方々のニーズを吸い上げていきたいと考えております。
 1点説明を飛ばしてしまいましたが、3頁にある「協定に基づく指示」の法的な位置づけの関係です。先ほどご説明いたしましたように、指示については、法令上いろいろな用例があります。今回参考にいたしましたのは、災害対策基本法で用いられている用例です。これについては、上下の関係機関にかかわるようなものではなくて、法的拘束力があるようなものではないことを前提に、指揮・監督のような法的拘束力を有するものではなく、相手方の自発的な遵守を期待するという整理になっております。私どもといたしましては、これを前提に埼玉県、佐賀県と調整を進めてきました。この内容から外れることのないように運営していくつもりです。以上です。
○大橋分科会長 よろしいですか。
○新谷委員 はい。説明していただいて大体は理解いたしますけれども、地方自治体の主導の下で、この一体改革なりハローワーク特区が進むというのが、アクション・プランの前提になっているのですが、利用者の目線を大事にしていただきたいのです。どうしても、行政機関と行政機関の縄張り争いみたいなように私たちには映ってしまいますので、利用者の声をどのようにこの中に組み込んでいくのか、ということを大事に運営していただきたいと思います。対等な機関ではありますが、提案される地方自治体にもご理解いただいて、労使団体の参画を是非実現していただきたいということを、重ねて要望しておきます。以上です。
○大橋分科会長 その他いかがでしょうか。
○岩村委員 簡単にコメントですが、ハローワーク特区の枠組みの中を見ていて思うのは、県側でやろうとして挙がっている、例えば障害者の就職支援であるとか、生活保護といったものというのは、確かに非常にローカルなもので、地域を中心にやらないといけないものであるのは確かです。
 他方で、例えば埼玉県についても、佐賀県についても考えてみると、職業紹介というのは県境で区切ってそこでやるというのはあまり意味のないことだろうと思います。ここははっきりと区別する必要があって、この特区の議論というのが、そのままハローワークの地方への移管というような話に結び付くということではないだろうと、この中を見ると思います。我々も意見書を出したりしていますが、その辺のところを気をつけながら対応していただければと思います。以上です。
○派遣・有期労働対策部長 いまお二方からご意見がありましたけれども、労政審で2回ご意見をいただいております。ハローワークについては、全国ネットワークで職業紹介をすることを前提に、地方に移管することは難しいことだと思っております。今回のハローワーク特区の業務の在り方についても、全国ネットワークでナショナルミニマムとして、あるいはユニバーサルサービスとして、最低限のものを全国でやっているわけです。これについては、当然従来どおりやることが前提だと考えております。この指示については、あくまでそういう前提の上に上乗せの措置として、何か地域のニーズに合ったようなことでやる必要があるものについて指示があるという形で私どもは理解しておりますし、そうなるように対応していきたいと考えております。
○岩村委員 ありがとうございました。
○高橋委員 ハローワーク特区に関してです。私が気になるのは、移管可能性の検証の在り方といいますか、どの程度の期間に、どの程度の方が参加して、どういう基準で移管可能性を検証していくのか、というところが非常に気になるところです。今回の資料の3頁のように、今後協定が結ばれていくと思いますが、その協定の内容について、特段の問題がなければ移管していくのだということになると、非常に気にかかる部分があります。その辺りについて、現時点においての考え方などを教えていただければと思います。
○派遣・有期労働対策部長 移管可能性の検証については、4頁のアクション・プランに書いてありますように、一体的な取組みを3年程度行いと書いてあります。私どもといたしましては、ハローワーク特区については、少なくとも3年程度はやる必要があるのではないか、それを前提として評価する必要があるのではないかと思っております。
 その成果と課題の検証については、その下にありますように「ILO88号条約との整合性、都道府県を越えた職業紹介の適切な実施、雇用対策における機動性の担保、保険者の変更等雇用保険財政の根本に関わる議論等に留意する」となっておりますので、こういう前提は外せないということです。これは必ず議論することになると思っております。私どもの考え方としては、これによって、絶対移管はできないと思っています。検証の仕方としては、3年程度やった後、その事業の実施状況、実績だけではなく、労使も含めた評価も併せて検証していく。必ずしも移管ありきではなくて、この特区を工夫して充実させていくこともあるでしょうし、いろいろなことが考えられるということです。
 いまから結論の決め打ちはできませんけれども、言えることは4頁のいちばん下に書いた大前提は外せない。それを前提として、より利用者のサービスが向上する観点で、どのようにしていくのかを議論していただくというのが私どもの考え方ですし、私どもとしてはそう対応していきたいと考えております。
○大橋分科会長 埼玉県所沢市の例とか岡山県総社市の例のように、例えば生活保護受給者等の職業紹介。生活保護自体は県の仕事で、職業紹介自体はハローワークの仕事で、これをつなぐような試みが出てきたということで、ちょっと新しい動きも出てくる可能性もあると思うのです。そういう点では、これからどういう状況が展開されるかは、見てから結論を得たいと思います。少し事態の展開を見守っていきたいと思います。
○派遣・有期労働対策部長 生活保護受給者の就職支援の関係については、後ほど就労支援室長から別の資料でご説明させていただきます。私どもといたしましては、市の福祉事務所の仕事としてやられている生活保護と、ハローワークが職業紹介をするということを一体的に組み合わせてやるのは非常に効果があるのではないかと思っております。こういう取組みは、先ほどのハローワーク特区とは違う枠組みですので、効果があると明らかなものについては伸ばしていきたいと考えております。全体を総合的に見て、一体的運営がどのように評価されるのか、特区はどういうふうに評価されるのかという全体を見ながら、今後の方向についてご議論いただきたいと思います。この分科会の場でもご議論いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
○大橋分科会長 次に、「生活支援戦略(仮称)の検討及び生活困窮者の就労支援強化について」に関して事務局から説明をお願いいたします。
○就労支援室長 その他報告事項2について、参考資料2「生活支援戦略(仮称)の検討及び生活困窮者の就労支援強化について」に基づいてご報告させていただきます。前回3月の安定分科会においても、生活保護受給者等生活困窮者の就労支援、それに係る生活支援戦略(仮称)が、社会保障・税一体改革上位置づけられていることについて概要をご報告させていただきました。表紙をめくったところの上半分が、前回ご報告させていただいた内容と重なるものです。本日は、本年度に入ってからの、このことに関わっての新たな議論なり、最新の実績等について改めてご報告させていただきます。
 生活支援戦略に関しては、上半分にある社会保障・税一体改革の中でも、生活困窮者に対する支援体制整備、人材確保等を進めるための国の中期プランといったことでの大枠の位置づけがなされております。去る4月9日に開催された国家戦略会議において、生活保護受給者など生活困窮者に対する支援の体系のポイントについて、厚生労働大臣から説明・報告をしております。2頁から4頁にかけてが、大臣から国家戦略会議で説明した資料そのものです。
 そのポイントを、1頁のポンチ絵の左下に示しておりますので、併せてご覧ください。生活支援戦略に関して、生活困窮者対策、生活保護制度の見直しについて、総合的に取り組むための平成25年度から7カ年の計画、生活支援戦略ですが、こういう位置づけの下で、その困窮者支援体系のポイントとして、孤立者の問題なども踏まえての生活困窮・孤立者の早期把握、ステージに応じた伴走型支援、民間協働、多様な就労機会の確保、家計再建、住居確保、中高生支援といった課題に併せ、こうした困窮した方々の自立支援の出口に相当するものとして、ハローワークと自治体が一体となった就労支援の一層の強化ということが重要な検討課題の1つに位置づけられているところです。
 これに関しての現在の取組み、自治体とハローワークとの間での協定等に基づく一層の連携強化の下での就労支援に関わり、昨年度から「福祉から就労」支援事業へ取組みをしております。前回の会議でも、その時点での実績見込みについてはご報告しておりましたが、今回は資料の7頁に、「福祉から就労」支援事業の、平成23年度の実績確定値が出たところですので、改めてご報告させていただいております。
 各年度の左側の濃い網掛けが支援対象者数で、右側の薄い網掛けが就職件数です。平成23年度に関しては、このスキームによる困窮者支援対象者が約4万5千人です。平成23年度からは、就労意欲等について、過度に厳格に判断しないということで、支援対象者の幅を広げました。就職実績に関しても約2万5千人、就職率55%といった水準も、これまでの生活保護受給者就労支援事業と遜色ない水準となっております。
 8頁は、先の議題のほうでご紹介いたしました一体実施の中で、生活保護受給者等を主な対象としたもの。いま現在は全国で14市区あります。そのうち昨年10月までに開設した代表的な5つの事例に関し、それぞれの目標と現時点で把握しております実績について改めて整理をした資料です。先ほど生田のほうからご報告申し上げましたように、スキームとしては別のものではありますけれども、いまご報告申し上げております生活保護受給者等困窮者の、自治体と一体となった効果的な就労支援という観点でも、先進的な意義ある取組みと私どもは考えております。ここにありますように、それぞれ所期の目標を上回る実績を昨年度の段階でも上げております。
 こういう関連する事業の実績、そこで把握された課題なども踏まえ、1頁の右下に、いまほどご説明いたしましたような困窮者の総合的な支援プランである、生活支援戦略(仮称)の一環としても、支援対象者の的確な、また早期の把握等の観点から、福祉事務所など自治体とのより一体的な支援体制を整備した上で、生活保護受給者はもとより、その一歩手前の、リスクの大変高いボーダー層なども含め、広く困窮者を対象に、それぞれの方々の抱える多様な課題に対応した支援プログラム、能力開発等も含めてですけれども、就労支援プログラムを整備するなど、量・質両面にわたる、これら困窮者就労支援の抜本的強化を図ることといったことについて、これからさらに検討を具体化していきたいと考えております。
 この生活支援戦略そのものに係る今後の検討の具体的な枠組みについては、資料の5頁、6頁にお示ししております。この度、社会保障審議会に、「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」が、連休前に設置されました。名簿は5頁にお示ししております。本分科会委員から、本日はご欠席ですが宮本太郎委員がこの特別部会の部会長、岩村委員がこの特別部会の部会長代理、また宮本みち子委員が、それぞれこの特別部会の委員としてご参画されておられます。今後、国家戦略会議の場でも、再生戦略の一環として、生活支援戦略の在り方について議論が行われ、一定の中間的まとめ等も行われる運びと承知しております。それらの方向性も踏まえながら、この特別部会を中心に、生活支援戦略に係る具体的な検討がなされ、これを踏まえて本年秋を目途にこの戦略の策定がなされる計画になっております。
 こういう生活支援戦略の検討スケジュール、あるいはコンセプトも踏まえ、先ほど申し上げましたように、その中での重点課題として位置づけられております、平成25年度以降の生活困窮者の就労支援の更なる抜本強化といったことに関しても、本分科会におけるご意見、ご指摘も十分踏まえた形で事業計画の具体化を図り、当面は次の概算要求ということになってくるかと思いますが、さらにはいま申し上げました秋を目途としております戦略にも反映してまいりたいと考えております。ただいま申し上げましたように、この度生活支援戦略検討全体の枠組みが具体化してきたということで、その方向性も含めてご報告申し上げます。
○大橋分科会長 ただいまの報告についてご意見がありましたらお願いいたします。質問ですけれども、7頁の棒グラフを見ますと、支援対象者が増えたことについて先ほど少し触れられましたが、そのことと、就職件数も増えていますが、その辺の実態について説明していただけますか。
○就労支援室長 今回、平成23年度「福祉から就労」支援事業ということで、いま分科会長からもご紹介いただきましたように、これまでの「生活保護受給者就労支援事業について」との比較で、支援対象者、就職実績ともに倍増となりました。支援対象者が、このように大幅に伸びたことについては大きく2つの要因があると考えております。1つは、この事業の目的・目標として、従前は基本的には生活保護受給者、一部児童扶養手当の受給者で生活保護受給者と同等の困窮状態にある方も対象にしていました。今後の困窮者対策に当たっては、生活保護に至るリスクの非常に高いボーダー層に対する支援を早期に開始することが一層重要であるという考え方の下で、平成23年度から第2のセーフティネットの一環である、住宅手当の受給者等に関しても、福祉から就労支援事業の支援対象にしっかり位置づけをしてということもあり、狭い意味での生活保護受給者以外の、いま申し上げました住宅手当受給者、あるいは児童扶養手当受給者の中で、困窮度の高い方についても支援対象に位置づけたことが1つの要素です。
 2つ目の要素は、平成23年度から困窮者支援に関して、労働局又はハローワークと自治体との間で、事業推進に係る協定を締結する仕組みを設けました。支援対象の重点、具体的な数値目標、あるいは連携の手法について、ハローワークと基礎自治体との間で、協定といった形で具体的に共有化を図ることにより、支援対象者の像を明確化し、困窮者を把握する福祉事務所からハローワークに推薦をしていただき、支援対象者を決定する仕組みです。そうした送り出しの仕組みが大変円滑化し、また、双方その事業全体についての目標管理の意識なり仕組みが強化した、ということも今回この支援対象者が大幅に増加したということの大きな要因になっていると思います。
 就職実績については、先ほど申し上げましたように、より幅広い困難度の高い方も含め、この支援対象に位置づける中で、就職率が、過去3か年の平均実績、55%に比べ低下をしなかったということについても、いまほど申し上げましたような自治体との大枠又は実務的な連携強化が非常に功を奏しているものと、私どもは現時点で分析しております。
○大橋分科会長 その他ご意見はございませんか。
(特に発言なし)
○大橋分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了させていただきます。本日の会議に関する議事録については、労働政策審議会運営規程第6条により、会長のほか2名の委員にご署名をいただくことになっています。つきましては、労働者代表の林委員、使用者代表の坂倉委員にお願いいたします。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

職業安定局総務課

職員厚生係: 03(5253)1111

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