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2012年4月25日 第2回雇用政策研究会(議事録)

職業安定局雇用政策課

○日時

平成24年4月25日(水)
16:00-18:00


○場所

厚生労働省9階省議室


○出席者

委員

阿部委員、加藤委員、玄田委員、小杉委員、白木委員、諏訪委員、鶴委員、
樋口委員、橋本委員、宮本委員、三菱UFJリサーチ&コンサルティング横山主任研究員

事務局

太田厚生労働審議官、森山職業安定局長、黒羽職業安定局次長、酒光労働政策担当参事官、土屋職業能力開発局総務課長、大西職業安定局総務課長、藤澤雇用政策課長、
久知良若年者雇用対策室長、宮本地域雇用対策室長、藤井雇用政策課労働市場分析官、弓雇用政策課企画官、武田雇用政策課長補佐  他

○議事

○樋口座長 第2回雇用政策研究会を始めます。まず、今日から2回にわたって、「若年者等の就労支援」というテーマでご議論いただきたいと考えております。本日は、資料1で今回の論点・課題、資料2「若者を取り巻く雇用環境と課題について」を事務局から説明していただき、皆様にご議論いただきたいと考えております。また、後半部分では、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの横山主任研究員から、厚生労働省が委託している調査について報告をいただき、ご議論いただきます。まず、事務局から説明をお願いします。
○武田雇用政策課長補佐 資料1に基づいて、今回の論点(案)についてご説明いたします。資料1をご覧ください。
 まず、「新規学卒者の年代間格差の是正」です。大卒者の就職率が就職活動期の雇用情勢に大きな影響を受けることによる年代間の格差については、どのような是正の方策が考えられるか。景気の波による就職活動への影響をいかになくしていくか、平準化していくべきかということです。
 それから、「新規学卒者と求人のミスマッチ等の解消」です。新規学卒者と求人の間に見られる、?企業規模別の求人倍率の格差、?大学ごとの就職率の格差、さらに?通学する学部による就職率等の格差といった問題については、どのような是正の方策が考えられるか。大学進学率が高まる中で、大学生の就職支援はいかにあるべきかということです。
 3点目は、「企業が求める人材の確保」です。企業が求める人材像と、未就職で卒業を余儀なくされる方の能力については、どのような方法によって接続していくことが望ましいか。具体的な方策は考えられるか。また、学校教育をより産業が求める能力を習得できるものとしていくには、どのような方策が考えられるかということです。
 4点目は「就労に対する理解の向上」です。職業意識・理解の向上のためのキャリア教育の推進、企業理解のためのインターンシップの活用等にあたり、具体的にどのような方策が考えられるか。また、推進にあたり留意すべき事項はあるかということです。
 最後が、新卒一括採用システムの評価等です。第1回でもお話が出た問題ですが、失業率低下に寄与する新卒一括採用システムのメリットを活かしつつ、新卒時に就職できなかった世代がフリーター等に固定してしまうという問題点を解決するために、具体的にどのような方策が考えられるかということです。また、若者に関したグローバル人材についても大きな論点ですが、今回の委託調査の報告で触れることとしておりますが、主に次回以降の議論として取り上げさせていただきたいと思っております。
 次に、こうした論点に沿ったいろいろなデータを、資料2としてご用意しております。1頁は、新規大学卒業者の内定率の推移です。2月1日現在の就職内定率は80.5%、前年同期差は3.1ポイント増です。就職内定者数は32万7,000人、前年同期比6.5%増です。昨年から比べると改善しておりますが、依然として厳しい状況であると考えております。
 2頁は大卒者の就職率と雇用人員判断の関係です。ご覧いただきますとおり、就職率と雇用人員判断を年ごとにプロットしたものですが、強い相関があることが見て取れます。青い点が平成3年から平成12年まで、赤い点が平成13年から平成23年ということですが、同じ雇用人員判断でも就職率が低いという状況になっていまして、企業の景気の先行きに対する懸念から、積極的な採用に踏み切れないでいるということが生じているのではないかと考えています。
 次に、企業規模別の求人倍率です。規模が小さいほど求人倍率が高いという状況で、平成24年の300人未満の企業は3.35倍、1,000人未満は1.86倍、1,000人以上が0.65倍という状況です。
 4頁は全国の大学数の推移です。平成元年は499校でしたが、平成23年度は780校ということで、特に私立が増加していることが読み取れます。
 5頁は大学進学率の状況です。平成元年は30.5%だったものが、直近の平成23年は54.4%ということで、急増しています。
 6頁が地域的な状況です。東京、愛知、大阪といったところが、大学が多いということで、増加率も大きい状況になっています。
 7頁が大学による就職率の格差です。左が創立年に応じたものですが、卒業者に占める未就職の割合について、10%未満、10~30%未満、30%以上ということで、右側の黄緑色が未就職者が多いということですが、私立の比較的新しい大学が未就職の方が多いという状況です。規模では200人未満ということで、規模が小さくなるに従って未就職の方が多くなっています。さらに地域的には、南関東、近畿で未就職の多い学校が多いということです。
 8頁が、未就職のまま卒業する方の状況です。これも未就職の方の割合をパーセンテージで示しています。10%未満の低いところと、30%以上の高いところを比べて、特に差があるところに黄色のマークを付けています。「学生の無気力さが原因である場合が多い」、「学生の学力の低下が原因である場合が多い」、「大学の指導が不十分なことが原因である場合が多い」、といったことが未就職の方の多い大学の特徴として見られるのではないかということであります。
 9頁が未就職卒業者の特徴です。大学側の感じる未就職卒業者の特徴ということで、「多い」「やや多い」が多いところをピックアップしますと、「自分の意見や考え方を上手く表現できない」「何をしたらいいか分からない」「エントリーシートが書けない」といった問題が多くなっておりまして、就職活動の初期からつまづいている部分があるのではないかと考えております。
 10頁は企業と学生の意識の関係です。社会に出て必要だと考えられる要素が左でして、企業がオレンジ色、学生が紺色です。「人柄」「コミュニケーション力」というのは、企業も学生も必要だと考えております。右側が「自分に不足している能力要素(学生)」「学生が不足していると思う能力要素(企業)」です。企業は、学生には「主体性」、「粘り強さ」、「コミュニケーション能力」が欠けているのではないかと考えている一方、学生は「語学力」、「業界に関する知識」、「簿記」といったものに不足を感じているということで、ギャップが生じています。
 11頁は就職も進学もしない方の割合の推移です。文系の学部が理系の学部に比べて、そういった方の割合が高くなっているということです。
 12頁が、その学部ごとの入学者の推移です。1970年代から比べると、理系学部に比べると文系学部が増えているということです。
 13頁は、学科別の職業別就職者数です。理学、工学は専門的・技術的職業等に就き、勉強したことを活かしている部分が多いと考えておりますが、社会科学、人文科学は専門技術的職業に就く者は少なく、事務や販売が多いということです。
 続いて、14頁は学科別の産業別就職者数です。理学、工学は製造業、通信業、建設業が多くなっていまして、社会科学、人文科学はかなりばらけておりまして、いろいろなところに就職されているということです。
 15頁は大学を卒業した就職者の職業別割合です。専門的・技術的職業や事務が減っている一方、販売、サービス、生産・労務といったところがわずかながら増えている状況です。
 16頁は、若者の希望とのミスマッチの状況です。深いピンク色の36.5%が、「希望する職種・内容の仕事がない」ということで、この辺がミスマッチの原因として多いという回答です。
 17頁は、正社員になれない若者の増加です。正社員になれない若者が増加しております。初職における正規比率が昔に比べて下がっており、男性の57.6%、女性の48.4%が高卒の正規比率です。大卒が、男性は76.3%、女性が72%です。
 18頁は前回お出しした資料と同じで、フリーターとニートの推移です。フリーターが、平成23年は176万人、ニートは60万人です。
 19頁も前回お出しした資料と同様ですが、小杉先生から最新版の資料のご提供がございました。「正社員になろうとした者」「正社員になった者」に乖離があるという資料です。
 20頁は、高等教育中途退学後の就業の状況です。正社員に定着されている方の59.7%が卒業生ですが、非典型に一貫して就いている方は、卒業した方は11.7%、退学をされた方は47.5%と多くなっているということです。
 21頁は初任給の推移です。平成22年の初任給の全国平均は、大卒で19万7,400円、高卒で15万7,800円です。
 22頁は、若者の収入変化の要因分解です。いちばん左が中学高校卒の男性で、これは年収ですが、1992年が192万3,000円、2002年にかけて170万円まで下がっています。この要因を分解しますと、正社員・労務・大企業、正社員・労務・中小企業が下がっています。正の寄与を示しているのが、非正社員・労務・中小企業、非正社員・サービス・中小企業ということで、これは正社員・労務の就職をされる方が減って、正社員・中小企業の就職をされる方が増えるシフトが起きていることを表しているということです。
 大卒は1992年に比べて2002年の年収が減っていて、この要因を分解してみますと、正社員・専門・大企業や正社員・販売・大企業が減っていまして、正社員・労務・中小企業、正社員・サービス・中小企業に大卒の方も就くようになってきているということです。
 23頁が、フリーターと正社員の生涯年収の格差です。前回お出しした資料と同じです。年齢がいっても、非正規の方の給料が増えない、中年層になると差が半分ぐらいになるということです。
 24頁はインターンシップです。左側が高校で、公立の全体は紺色ですが、平成22年の学校としての実施率は79.6%、生徒の参加率が30.2%です。少し古いのですが、右側が学校形態別に見たもので、平成19年は公立高校が生徒の参加率27.4%に対して、大学は黄緑色で、8.3%に留まっているということで、大学の方の参加率が低いというものです。
 25頁が、学校での学びに対する目標意識、進路意識に関する課題です。左側が国際比較で、高校1年生の数学・理科の学習と自らの将来との関係です。数学が自分の将来と関係しているかどうかというところで、日本の意識が赤い折線グラフですが、諸外国に比べて低いということです。理科も同様です。
 右側が大学1年生が職業を意識した時期です。右側の青色までの部分が高校3年までに意識したということで、6割ぐらいです。大学に入って意識したという方が3割です。
 その下が、進路を選択するときの悩みです。いちばん下の紺色が、「まだ考えていない」ということで、比較的職業を意識することが遅れた方です。そういった方に、「適性がわからない」「就きたい仕事がわからない」「専門分野がわからない」という悩みが大きいということです。
 26頁が、職業教育についてです。左側の学校に通うことの意義として、「職業的技能を身に付ける」を選択した割合の国際比較は、日本が低い状況です。右側が、キャリア教育等を取り入れている状況ですが、授業科目や特別講義の開設が合計63.2%です。勤労観等の特別講義は65.0%で、そういう授業を取り入れる学校が一定程度増えてきています。一方、いちばん下が、教職員のキャリア教育への理解度の変化ですが、残念ながら30%が「ほとんど変わらない」という返答です。
 27頁が、大学の取組みと学卒者の関係です。これはリーマンショック前の学生と比べて、現在の学生の就職活動が変化しているかというものです。未就職者が10%未満と少ない学校は、「大学主催の就職支援行事への出席率が高くなった」と回答しているところが比較的多いのに対して、未就職者が多い学校については、それが少し低いという状況になっています。
 28頁は、キャリア・コンサルティングの事例です。首都大学東京、成城大学、京都産業大学の3つの学校について、事例を並べています。首都大学東京は個別相談のほかに、就職支援行事やセミナーの企画等をされています。また、成城大学は個別相談、カウンセリング、エントリーシートアドバイス等、就職関連の講座の企画運営、インターンシップの準備、保護者の相談等も行っています。京都産業大学も、ご覧のとおりです。
 29頁は、ジョブサポーターの活動効果です。ジョブサポーターをハローワーク等に配置しておりまして、平成24年度予算は2,300人と増員をし、きめ細かい相談を行っています。実績として、大卒の就職者数が平成23年度は6万強の方、そのうち現役大学生が2万人以上となっております。これは少し古いのですが、平成22年の効果で、1万4,000人の現役大学生の就職を支援し、内定率にして3.9ポイントの押し上げ効果があったと考えています。
 なお、メインテーブルの方には、差替後の資料をお配りしていますが、傍聴の方はいちばん最後に、差し替えたものを添付しておりますので、ご覧いただきたいと思います。「大卒等」となっているのを「大卒」と修正しているところです。
 30頁が、ジョブサポーターによるきめ細かな支援事例です。先ほど大卒の数字を申し上げましたが、高卒等も含めますと、平成23年は年間13万人以上の支援をしております。
 左側が、当初アパレル関係を希望していた方です。ジョブサポーターと相談する中で、中学時代にロボット作りのコンテストで優勝したということで、ものづくりの分野への関心を発見されまして、特殊機械を扱う製造業の製造職として採用されたという事例です。真ん中が、やみくもに営業の応募をしていたが、高専卒で機械工学系の専門知識があり、機械工学系の技術営業に絞って就職活動されて、電機メーカーのルート営業の就職をされたという事例です。それから、右側が当初からシステムエンジニア希望だったのですが、どうしたらいいかわからないという方が、ジョブサポーターの援助で、資格取得に向けての活動をしたり、応募書類の添削を差し上げたりといったことをしまして、情報サービス関係のシステムエンジニアとして採用されたといった事例です。
 31頁が、主要国の若年者失業率と就職活動の特徴です。日本と韓国が新卒一括採用慣行があります。日本は15~24歳の失業率は9.1%、韓国は9.8%で、そのほかの国に比べると比較的低いということです。
 32頁は、新卒一括採用を行う理由です。左側が単純に聞いた理由で、「社員の年齢構成を維持できる」「フレッシュな人材を確保できる」「定期的に一定数の人材を確保できる」等を、理由として挙げています。右側が規模別に聞いたものですが、企業規模が大きくなるに従って、優秀な人材を確保したいという理由が多くなっています。
 33頁は、新卒一括採用のメリット・デメリットを厚生労働省の方で整理したものです。メリットとしては、一般の労働市場とは別に新卒者の労働市場が成立していますので、スキルのない新卒者であっても失業を経ることなく就職することが可能である。それから、仮に廃止した場合には、一般労働市場の中で競争となり、失業者が発生するおそれがある。一方で、極端な新卒一括採用の場合には、就職環境が厳しかったため新卒時に就職できなかった世代のフリーターが固定化してしまう。新卒一括採用については、企業内教育が効率的に可能である、安定した年齢構成の維持が可能であるということで、合理性を判断し、各企業は採用しておりまして、経済界や労働組合の多くがこの慣行を評価しています。
 最後に、34頁が卒業後3年以内の既卒者の募集状況です。前回お出しした資料と同じですが、新卒採用枠、既卒者を募集した企業は約6割で、平成22年の調査と比べると、こういう企業が平成23年の調査では増えていることが下の図です。私からは以上です。
○樋口座長 いろいろなところで「新卒一括採用」という言葉が出てきているのですが、これはどのような定義ですか。どのような状況が新卒一括採用という用語として使われているのですか。例えば一斉に4月から働き出すということを一括採用といっているのですか、それとも学生時代に就職を決めていくというのが一括採用なのですか。例えば通年採用に対する新卒。いろいろな意味があると思うのですが、定義しないと良いか悪いかという議論もできないと思います。
○久知良若年者雇用対策室長 この資料のいっているところの新卒一括採用というものは、在学中に一定の就職活動をするということを前提にして、基本的には卒業のタイミングで企業が集中して採用する慣行という意味で使っています。
○樋口座長 「この資料」というのは32頁の資料ですか。
○久知良若年者雇用対策室長 33頁の資料です。
○樋口座長 32頁に「新卒一括採用を行う理由」とありますよね。
○武田雇用政策課長補佐 32頁はどういう定義で使っているか、十分に確認できていませんので、確認をしてご報告したいと思います。
○樋口座長 そうすると、例えば34頁の、既卒3年以内の採用をしているところは、新卒一括採用をしていないと読むのでしょうか。
○久知良若年者雇用対策室長 卒業3年以内の既卒者のところで、「新卒枠で既卒者の応募を受け付けている企業」と聞いていますので、私どもがいろいろなところで説明するときには、新卒一括採用という慣行をしている中で、既卒者も含めて新卒枠に応募を可能としている企業というような説明をしております。
○鶴委員 いまの点ですが、31頁に国際比較があるのです。いつも思うのですが、ここで新卒一括採用慣行が「あり」と「なし」で、非常にはっきり分けられているのですが、ここも海外と比較したときに、どこを基準にしてある、ないとするのか、かつての終身雇用というのが世界的に見てどうなのかということと同じような問題が、ここに絡んでいるような感じがして、程度問題で、非常にグレーな部分があるのか、その辺も含めて基準があれば教えてください。
○樋口座長 これはどなたが作ったのかわかりませんが。
○小杉委員 私は程度問題だろうとは思います。ただ、メインにそれを押し出しているかどうか。今年卒業予定の人を対象にした大きな枠を持っているかどうか、その大きさという意味では、確かに違いがあると思います。
 イギリスなどでも、特別の新卒用の枠というものもありますが、それはごく僅かで、一部のエリート層向きの入口としてあるだけで、それ以外の大卒の多くの人はそうではない入口から入るという意味で、程度差ではないかなと思います。
○樋口座長 ということは、いまの定義は新卒と既卒を分けて採用することを「新卒一括採用」という話ですか。
○小杉委員 卒業予定の人用の特別の枠組みを持っていると考えればいいのではないでしょうか。新卒採用というのは新卒採用で、一括というのはまた違う意味がありますよね。一括というのは一括りでという意味ですので、事務系、技術系など、一つひとつのジョブに応じた採用ではなくて、大きな枠組みでというもので、これが日本型雇用慣行と連動しているところだと思いますが、ここではそれを一緒にしていっていると思っていいのではないかと思います。
○樋口座長 逆に、どこを議論するのかによって。メリットとデメリットの議論しろというのがあったので、新卒採用というのと、新卒一括ということで、要するに職種別の採用はしていないという話は、少し違う次元の話かなと思っているのですが、厚生労働省的な言葉の新卒一括採用というのは、職種別採用といったものは分けているのですか。
○久知良若年者雇用対策室長 最近、雇用戦略対話等でも資料を作るときに、内閣府等とどういう意味で使うか話はしているのですが、雇用戦略対話のほうの資料として作ったときには、在学中に一定の就職活動をするという前提で、卒業時に企業がある程度まとまった人数の採用をするというようなものとして使っておりますので、最も最近使った資料の中では、事務職、技術職という意味まで含めていない形での意味で使っております。
○加藤委員 例えば34頁に「卒業後3年以内の既卒者の募集状況」とありまして、これも前回拝見いたしましたが、あるいはこういったことで既卒者と新卒者の違いはないのかもしれませんが、現実に企業では既卒者と新卒者というのはある程度分けていて、既卒者であっても新卒の枠内で募集をやり、実際に募集はしているのだけれども、本当に採用しているのかというところまでの資料は果たしてあるのでしょうか。そして、そういった企業が既卒者、新卒者を区分けする何らかの理由があるのかないのか、そういったところの調査は存在するのでしょうか。
○久知良若年者雇用対策室長 この労働経済動向調査の中で、「応募可能だった」「応募不可能だった」という企業の分類があるのですが、応募可能だった企業の中で、実際に既卒者を採用したか、していないかというところまでの調査をしております。手元に数字はないのですが、応募可能だった企業の半分以上は、実際に採用したと回答しております。
○加藤委員 そのときに、新卒者と既卒者の間で有意に差があるとすると、それは何らかの問題があるのか、それとも既卒者であるということ自体に何らかのレッテルが貼られてしまっていると解釈することも可能なのでしょうか。その点がわかれば教えていただきたいのですが。
○久知良若年者雇用対策室長 データとしては、どの程度の既卒者が応募したかがわからないデータになっていて、要するに、その企業が既卒者を採用したかどうかですから、母集団としてどれぐらいの人がいて、どれぐらい採用されたかが、卒業予定者と既卒者の間で比較できない形のデータになっています。このデータからは既卒者が不利を受けているということは一概には言えないということになっておりますが、基本的に応募可能、応募不可能の時点で、4割ぐらいの企業が応募不可にしているという状況でもありますので、一般的に応募という就職活動において、現時点では卒業予定者に対して既卒者のほうが不利だという認識はいたしております。
○樋口座長 そこのところが重要なポイントになってきて、文科省のだからどこの大学も同じだと思うのですが、卒業単位を取得したら卒業しなければならない、自主的に留年することは許されないというようなシステムになっていたのか、いまもそうなのか、少なくとも数年前まではそうなっていたわけです。それで、自主留年というものをどう考えるのかということで、既卒者であっても、3年以内であれば新卒と同じように見てくれというような話だったと思います。要は大学に対して補助金を出すのに、もう修学し終わった者に対して、なぜ補助金を出さなくてはいけないのかというような議論から、そのようなところがあったのだろうと思いますが、それについて議論していったほうがいいということなのですかね。その制度自身をどう考えるか。
○久知良若年者雇用対策室長 いまおっしゃっているのは大学のほうの制度の議論ということですか。
○樋口座長 個別大学の制度ではなくて、国でやっている補助金制度です。
○宮本委員 座長のおっしゃりたかったことなのかと思いつつ伺うのですが、34頁のメリット・デメリットの評価です。これはおおむね賛成なのですが、おそらく2つの問題が混在していて、1つは短期的に、現状を踏まえるならばリアルな対応策としてはこれであるということと、長期的にスキルの要素が労働市場の中で比重を増していった先での展望というのが、もう少し区分けされて、メリット・デメリットという形で議論される必要があるのかなというのが1つです。
 2番目には、これも座長がおっしゃったこととかかわりますが、新卒一括採用には2つの要素があって、まさに新卒一括採用と一括採用は分けて然るべきであろうということです。そして、いわば新卒時一括採用という形で、新卒にタイミングを合わせて、それほどスキルに重きを置かない一括採用のシステムを維持していくなら、新卒と一括採用をもう少し切り離して議論できるのではないか。この2点を加味して、メリット・デメリットをもう少し整理すると、見通しがよくなるかなと思います。
○橋本委員 新卒一括採用のメリットとして23頁のアンケートや33頁の下のほうにも、「安定した年齢構成の維持」とあります。ここが少しわからなくて、例えばその年によって何人採るかはかなり変わるわけですが、多く採った年の人は、いまの日本企業の慣行の下では、そんなに解雇されることもなく定年まで維持するとなると、その人たちが年をとればその年代は非常に多いということになるので、この意味がどういう意味なのかというのを疑問に思っていますので、教えていただければ幸いです。
○久知良若年者雇用対策室長 一定の人数を新卒として一定の期間採っているという前提で書いている姿です。もちろん個別の企業において、業績の変動において、ある時期の人たちが多いという人員構成の不均衡が生じるわけですが、ここは一般的な知識としてそういうことを書いています。
○樋口座長 逆に中途採用をしたほうが、年齢構成は一定に保てるような気もするのですが、どうなのですか。
○玄田委員 会社によっては、年齢構成のバランスを取るために中途採用をしています。
○樋口座長 そうですよね。
○白木委員 新卒一括採用といっていますが、この場合には正社員での一括採用ですね。ですから、先ほど韓国のデータがありましたが、正確なデータはいまは持っていませんが、韓国ですと卒業時に正社員として就職できる人は従来は5割ぐらいだったのですが、いまは3割に達しているかどうかという話を聞いています。その場合ですと、一括採用は特定の企業はやっているけれども、大多数はほとんど採用しないという状況もあるわけですから、ここで一括採用をやっているといっても、正社員としてどのくらいの比率があるかという内容を加味しないと、実態を反映していない場合もあるのではないかと思います。
○小杉委員 初職が正社員であったかどうかという話は、17頁で、初職正社員というのは大半が新卒一括採用であろうと理解できるわけで、この新卒一括採用の比率が近年落ちていまして、これも明らかなことだと思います。
 最近落ちているが、非常に景気のいいときであっても、2割ぐらいは乗っていない。つまり、新卒一括採用というのは、これまでもすべての人をカバーしているわけではなくて、一定の数はこれまでもそこから排除されていたし、現在はそれが3割、4割とか、排除される比率が増しているという状況があって、その中で考えるべきことだと思うのです。
 メリット・デメリットというか、日本の場合には新卒一括採用が、ある意味では人を企業内で育てる仕組みとして定着していたために、デメリットとして本当はあった、2割の排除された人がこれまで十分に考慮されていなかった。この部分を改めて議論したほうがいいのではないか。
 新卒採用から排除された人が多くの場合には非正規雇用に入っている。初職非正規、初職無職という人たちのキャリアをどう支援するか。メリット・デメリットだけではなくて、排除された人に対して、どういう支援が必要かという議論のほうが。良い悪いというよりは、これまでも排除されていた人がいたし、その人たちに対しての仕組みが全くなかったことが問題ではないか。そういう捉え方で、廃止するかしないかという議論ではないのではないかと思うのです。
○樋口座長 全体的に見たときに、前のほうでは、むしろ大学生のときからもっと職業を意識しろというようなメッセージが送られているわけです。それでいて、一括採用というところは、逆に職種はあまり重視しないで、どこの企業に就職するかというような、何となく裏腹のところがあって、それがメリットかデメリットかわかりませんが、日本の大学生があまり仕事のことを意識して勉強していないというようなことは、逆に就職のときにそれが問われない。一括で、どの職種か、どういう仕事をするのかはわからないまま採用が決まっていくという、コインの表と裏のような気がするのです。
 片方で仕事のことをもっと意識しろといいながら、採用のところでは企業がどういう人を採るといったときに、潜在的能力ということになると、これは意識をするとますますミスマッチが拡大してしまうという矛盾があったりするわけで、それをどう整理していったらいいのか。
○小杉委員 おっしゃっているとおりで、新卒一括採用という仕組みの前後は、ある意味では一貫しているのです。日本企業の雇用慣行と、大学が非職業的な形で発展してきたということは、これはコインの裏と表で、それなりにうまくいっていたということで、8割の人がうまくいっていたときにはそれなりの認識があると思うのです。それが8割ではなくて6割になった、それ以外の人が増えたという中で、大きな課題になってきているというのは1つあると思います。
 もう1つは、高等教育の拡大というところが大きな要因で、その中でこれまでと同じ高等教育でいいのか。高等教育が一部の人たちだけだったときには職業を前面に出す必要は別になかったわけですが、そうではない人たちが多くなってきたときに、高等教育のあり方というのが改めて問われるという状態になっているのだと思います。そこで、高等教育の質の話が、ここで随分出ているのですが、ここで高等教育の質の話をそんなに突っ込んでするべき議論なのかなという疑問を持っています。
 新卒がうまくいかない現状は、第1の要因は需要の問題があって、第2が学生とか生徒の質の問題、第3はマッチングの仕組みの問題があると思います。2番目の職業的ではないといった高等教育の質の問題というのは、基本的には文教行政のマターで、それに対してやることはあるのですが、文教行政はいまそういう方向に変化していますので、ついこの間出た大学教育分科会の中でも、大学が育成すべき能力は何かということで、答えのない課題を解くための力、知的な基礎に裏づけられた技能や技術を身に付ける力ということを、大学教育がやるべきこととして前面に出してきている。そういう中で、文教行政もある程度そちらのほうに向かっているので、その辺については、それをどうサポートしていくかという立場のほうが大事なのではないか。
 むしろ大事なのはマッチングのところで、ここがうまくいっていないという問題が、ここでの議論すべきことだと思いますし、対策としてできることだと思います。先ほどの中長期と短期でいえば、マッチングは短期、中長期は文教行政と一緒に仕組みそのものを変えていくというところだと思います。
 第3のマッチングのところは、日本の新卒就職の仕組みの大事なところは、マッチングの仕組みに学校が強く関与していて、非常に効率的な配分をするというところだと思いますが、それが崩れてきている。ここがポイントで、私はここをどう立て直すかが大事な点ではないかと思います。
○玄田委員 小杉さんのおっしゃったマッチングの部分に関連して、2点ほど申し上げます。前回も発言しましたように私自身は、若年支援に関するキーワードは「手間暇をかける」ということだと思っております。就職協定の時期を多少変更しても、小手先の効果しかなく、また学生本人の努力を求めても限界があるし、同じ意味で企業に努力を求めることにも、実効性は多く問われる。大事なことは、若年者支援というのは、非常に労働集約的で、人の関与を強めない限り就職はおぼつかないという現実があることを、はっきりと認めるべきだと思うわけです。
 そう考えますと、29頁の資料はある種画期的な資料でして、ジョブサポーターの手によって、2,400人のご尽力によって、就職内定率が3.9ポイントも上がったというのは、極めて大きな数字だろうと思っております。
 平成25年度にはジョブサポーターを倍増するとか、少なくとも3,000人に拡大するとか、いま考えられる手というのは、きめ細かい、人の手による支援をしていかない限り、若者の就職は苦しいということを考えて、雇用政策、特に財源面の配分を考える時代になっているのだろうと思うわけです。そういう意味で、ジョブサポーターをより充実させることは極めて重要なマッチング対策だろうと思っております。
 ただ、この増員をどこまでできるかは、限界があるだろうとも思っております。それは予算面の問題だけではなく、現実的にハローワークが雇用管理等の対象になるでしょうから、いまのハローワークのキャパシティの中で、ジョブサポーターだけを突出的に増やすということは難しいのではないか。
 そういう意味で2点目に申し上げたいのは、そろそろ産業雇用安定センターの若年版を考える時期にきているのではないか、少なくとも検討を始める時期にきているのではないかということです。
 若年雇用が深刻になる度に、そのうち景気が回復すれば、若年の雇用は戻るのだという、景気感応性に期待をして市場動向ということを考えきたわけですが、いくつか資料にあるとおり、かなりもう若年の雇用は厳しいというのが構造的、趨勢的な原因であるとするならば、何らかのシステマチックな対応を考えざるを得ないとすると、過去に中高年の就職困難に対して官民が連携して出向、転籍を促進するシステムを作った産業雇用安定センターが一定の実績を果たしているのと同じように、いまは若年の雇用を促進するセンターを作っていかなければ難しいだろうと。
 具体的に何をするかというと、カウンセリングとコンサルティングのダブル支援です。学生自身に対しては、きめ細かいカウンセリングをしていく。加えて、その情報をもって、学生の知らない中小企業等に個別にコンサルタントの方々が営業すると。こういう仕組みを導入していかないと、個人の努力だけでは限界があると。
 そして、極めて大事なのはマンツーマン支援です。27頁の資料にあるとおり、就職に困難している学生は、極めてインターネット依存的な状況であって、リアルな世界でファイトしていないわけです。やはりマンツーマンの支援をするということが、もっとなされていかないと難しいだろうと。実はそういう面に関しては大学も愚かではありませんので、一生懸命対策は立てていると思います。ただ、それができている大学とできていない大学があるわけで、大学の努力だけに任せることは難しく、やはり若年雇用安定センターのようなものと大学との連携によって、やっていくしかないだろうと。
 それから大事なことは、いまのように企業訪問とか、エントリーシートを無為に作成して、貴重な4年間の時間を費やすのではなく、むしろ徹底的に信頼できるカウンセラーと時間を集中して使う、そちらに集中するほうが、おそらく学業との連携もできるだろうと。私自身はいまそういうものをこれから考えていかない限り、若年の雇用対策は進まない。そういうものができる中で、先ほど出てきたような新卒採用、一括採用の意義づけも変わってくるし、官民連携でそういうセンターのようなものを作る、いまは学生だけに努力を強いているわけで、中高年に対してはさまざまな施策がある反面、いまだに学生に関しては本人の努力、企業の頑張り、システマチックなマッチング対策がないという状況を変えていかない限り、状況は変わらないのではないかと思います。
○加藤委員 前の話に戻ってしまうのですが、例えば33頁のところで、メリット・デメリットで、この資料としては新卒一括採用の廃止について、廃止は非現実的だという結論を出されています。実はこの新卒一括採用は採用される若者だけの話ではなくて、企業も苦しんでいるという状況もあるわけです。世代効果というのは若者だけではなくて、企業だって採れないときは採れないということもあります。このシステムをそのままにしていいのかという議論があって、廃止をするとかしないとかではなくて、このシステムそのものが若者にとっても、学生にとっても、あるいは企業にとっても、幸せにするシステムなのかと考えたときに、どうもそれは変わってきているのではないでしょうか。
 特に、日本の大学進学率が60%近くになっているこの時代の中で、過去と同じような大学生ばかりいるわけではない。その中で、構図は変わったのにいままでのままデメリット、デメリットで考えていいのかというのがあります。
 それと小杉委員のご意見もありましたが、これを大学教育の中で考えていくとなると、どうしても雇用政策ということだけではなくて、文部行政との連携は大事ですし、例えばキャリア教育の話、インターンシップの話などを文科省がいろいろやっているわけで、それは直に雇用政策と関連するのであれば、是非この場でも議論していくものではないかと思います。
○阿部委員 いろいろお話を聞いていて、今回は若年雇用対策ということなのですが、若年雇用だけを考えていても埒が明かないのではないかと思います。これは高齢者雇用対策と併せて考えるべきではないかと思うのです。それは先ほどお話を聞きながら、私の学生時代に、樋口先生が丸い円を黒板に描いて、経済のパイをどうやって分配するかというお話をよくされていました。これから高齢者雇用も考えなければいけない、経済成長はあまりしない。その中で若年雇用はどうするのだといったら、高齢者雇用と若年者雇用をどうバランスさせていくかというのが、大事な論点だと思うのです。
 それなので、今回は若年雇用のことで玄田さんの話もいい案だろうと思いますし、小杉さんが言っているのもいい案だと思います。皆さんが言っているのもいい案だろうと思うのですが、高齢者のことを考えないと若年雇用はうまくいかないのではないかと思います。今回は若年雇用だと思うのですが、高齢者雇用と併せて考えないといけないような気がいたします。
 もう1つは、今回はジョブサポーターの効果はあった、それはそれでいいのですが、ジョブサポーター1人で10人程度しか見られないのではないかと思うのです。実際に人数を割ると、大体10人ぐらいになります。2,000人で2万人ですから。これを大学でやれといったら無理だと思います。
 なぜかというと、特に私立大学の経済学部は大教室で授業をやって、教員1人当たりの学生数は1学年で20人前後だろうと思います。プロのジョブサポーターでさえ10人だといっているのに、アマチュアの教員1人当たり20人も持って、うまくいくかどうか不安ですよね。その分教員を増やせばいいかというと授業料に撥ね返りますから、国立大学の授業料が抑えられている上で、私立大学の授業料を上げることはできないことなので、制約としてはいろいろあって難しい。加藤さんは大学で考えるべきだと言いますが、大学ができる範囲というのは決まっているのではないかと思います。だから、私はあまり大学に期待するのはよろしくないのではないかと思います。
 ただ、大学で期待できるとしたら、OBなどはあると思います。私自身も学生のときに就活をして、そのときに樋口先生よりも樋口ゼミのOBとか、そういう人たちによくお世話になった思いがあります。たぶん大学のシステムというのをOBまで含めて考えれば、そうだろうと思いますが、そのようなことをやると、いま社会では袋叩きに遭うだろうと思います。だから、私は大学はあまり期待できないと思います。ジョブサポーターを大幅に増員するのはいいのですが、そんなに規模の効果は出ないような気がします。
○小杉委員 その辺は、何が効果的かというのは大学によってかなり違いがあると思います。ここで引いてもらった調査は、実は前にやった調査と比較しながら分析しているのですが、やはり私立の入学難易度の低いところほど大学の支援というのが効果的で、内定に結び付くという分析結果があります。
 阿部さんのおっしゃった樋口先生のゼミは放っておいてもいいところで、ここに全然お金をかける必要はないです。お金をかける必要があるのは、そのままでは学生たちが何をしていいかわからない、右往左往してしまっている、学力的にもあまり学力を問題にされることなく大学に入ったような人たちに対して、どう方向づけていくかというところなので、その辺はどこに資源を投じるか。放っておいてもうまくいくところには資源を投じる必要がないので、そのままでは難しい、未就職者をたくさん出しがちな大学を支援していくジョブサポーター、そういうところで十分に支援が得られない、大学の中でチャンスが得られない人たちに対して、大学外での新卒応援ハローワークを拡充するような形での支援、この2本立てが効率的なのではないかと思います。
○久知良若年者雇用対策室長 阿部先生のお話の関係で、資料の作りが悪くて誤解を与えている部分があろうかと思いますので、補足させていただきます。
 現役大学生の2万2,000人をジョブサポーターの2,000ちょっとで割ると、1人10人というカウントだったのだと思うのですが、ジョブサポーターでも、主に大卒担当というのが1,000人ちょっとでして、この人たちは大学生、専門学校生、短大生それぞれの既卒者を担当しておりますので、それを全部合わせると、年間でいうと8万とか9万ぐらいの就職数になってくるだろうという状況です。
○加藤委員 誤解を受けたような気がするので、1点だけ申し上げたいのですが、大学でたくさんの人手をかけてというのも大事だと思うのですが、それを大学ができるかどうかという問題があって、どのように力を入れるか。まさに小杉先生がおっしゃったような形でやっていかないと難しいでしょう。私自身もインターンシップ先を探したり、学生の就職相談などをずっとやっていますが、これは非常に厳しいことで、大学の教員に全部任せるということには限界があります。新卒一括採用だからこそやらなくてはいけない教育があるかもしれないけれども、そのシステムがなくなったときには、もしかしたらもう少し違う形での教育というのがあり得るのではないか。もっと大学の外の人たちと連携するようなこともできるのではないか。そういう趣旨で申し上げました。
○鶴委員 いろいろ皆さん方の処方せんという話も、私も非常によく理解できるのです。ただ、問題のサイズというか、ボリュームみたいな話というのは、私もよくお話させていただくのですが、とにかく少子化の中で大学生の数がものすごく増えているわけです。まずそこがきて、ちょうど1990年代の同じ時期に、経済自体もものすごく大きな変動をするようになったわけです。かつてないほど、経済活動の水準が下がるとか。その2つがダブルできてしまうと、そういう経済の変動がなくてもあぶれる人たちがもともと出てくるような構造の中で、需要側の要因でもそれだけ大きなことが起こっています。これまでそういうことがなければ、一括採用云々ということも大きく議論されることはなかったわけです。
 そうなると、これだけのサイズというか、ボリュームの大きさからいうと、例えばいろいろなことをやらなければいけません。マッチングの話もそうですし、私は皆さんのおっしゃることに全く同意なのですが、どれぐらい大変なことが起きているのかという、まずそこから感覚的に理解していかないと、どれぐらい大変なことなのかというところに行き着かないのだと思うのです。
 個別の話ですと、玄田先生のおっしゃっているような人材サービス業が、やはり大学だけでは無理だし、学生だけでは無理だし、そういうものがそこの中に入って、学生の間、それから大学の中に入ってやられるという提言は非常にいい話で、私もずっとその話がうまくいかないかなと考えているのですが、そこの話も、少し先生もおっしゃったのですが、誰がどういう費用の負担をしていくのか、非常に困っている学生が全部負担をするのか、もう少し大学も負担をするのか、大学が負担するということは、そんなのに頼らなくても自分は就職ができるというような学生も、入学金や授業料の中で負担するような形になっていくのか、誰がそういうことでお金を負担していくのかという話も、次を考えると非常に難しい問題なのです。
 いずれにしても、サイズ、インパクトとしても非常に大きな話だし、個別の話をしていくと、一歩中に入るとまた非常に難しい問題が入っていくということで、最初はその認識として、大きな認識の中から入っていかないと、この問題というのは解決できないなと。最後は感想になって恐縮です。
○樋口座長 皆さんのお話を伺っていて1つ感じるのは、確かに未就職率が上がったとか、あるいは内定率が下がったこと自身、数値的に問題だなと。それはどうして問題なのだろうかということを考えてみると、個人の意欲、能力が発揮できないような仕組み、あるいはそういった問題が起こる、内定率が下がるとかというところでそれが起こってきているのだろうと思うのですが、従来のままで内定率が上がったり、あるいは未就職率が下がれば、問題は解決したと考えていいのかなと。例えば職業能力といったもの、大学時代からいろいろなものを蓄積して、基礎的なものを蓄積して、今度は会社に入ってそれを発揮できる、あるいはこういう仕事を通じての社会貢献ができるということを考えていったときに、果たして従来のようなマッチングシステムというか、比率さえ上がれば、それで日本は大丈夫だといえるのかというと、そうではないのではないかという気が少ししています。例えばその1つが、どういう企業で働きたいのかということは言えながら、どういう仕事をしたいのか、その準備のしようがないことが起きてきたときに、果たしていまのような、先ほどから出てきている一括ということにこだわっているのですが、その仕組み自身で大丈夫なのかなという感じがしています。それは質的なところかもしれません。
 例えば阿部さんがいったコンサルティング、カウンセリングという人たちを配置しても、いまの就職、就社という仕組みの下で何ができるのだろうかというと、会社選びという話にしかなってこないところがあって、本当はどういう仕事がしたい、そのためにはどういう能力を、いまのうちから基礎的なところについて勉強しろということが、なかなかアドバイスできないのです。先ほど出てきた、数学とか理科が仕事にはつながらない比率が日本は高いと出ていること自身、どう考えていったらいいのか。まさに職業への移行というのか、単に学校から職場への移行というよりも、人間の能力開発あるいは意欲の達成、希望の実現を考えたときに、その問題はないのでしょうかと感じてしまうのです。コンサルティングあるいはカウンセリングをやっている話を聞いても、学生のカウンセリングはものすごく難しいということです。何しろ、こういう仕事があるということも言えないし、どういう企業があるというところで止まってしまう、という問題を提示する人がかなり多いのですが、どうなのでしょうかね。諏訪先生もいろいろなところで能力開発、人間力というようなことをやってらっしゃいますが、いかがですか。
○諏訪委員 先ほどの新卒一括採用の定義の議論はすごく大事で、皆さんの議論を聞いていると、要するに正規の雇用として採用するのだというのが1つで、新卒というのはイコール未経験者、職業経験がほとんどないか、全くない人を採用するのだということが関連しています。それから、小杉先生がいみじくもご指摘のとおりで、一括というのは大括りの、理系とか事務系あるいは現業系という大括りの採用だとなり、職種別、職業別という要素がないか希薄な場合が多いということもあります。もう1つは、多くの求人、求職者が、ある時期に集中して、集中豪雨的に一斉に進めている。そういう要素が全部あって、これがシステムと呼ばれているように、繰り返しなされるように、年中行事のように出来上がっている。
 その先には何があるかというと、新入社員の研修も一括してやるようになっているし、さらに多くの企業は年次管理、少なくてもある一定年齢までは、1次選抜、2次選抜、このぐらいまではやっている企業があります。こういうもの全部が結び付いているうちの、キャリアの始まりの出発点の部分を、どのように円滑に進めていったらいいのだろうという議論を、いままで皆さんされてきたのだろうと思います。
 そのときには、座長がおっしゃられたとおりで、職業という部分でいくのか、あるいは組織帰属というか、それがあって、日本の場合は失業なき労働移動的に、ある組織に属していた人が間断なく次の組織に属し続けることがいいことだという感じの考え方があって、だから、学校という組織の中にいる間に、次の組織に移行する準備をして、それで次の所属組織である企業へすんなり入るのがいいのだとする観念が強いです。だから転職するときでもそうで、このように間断なくいくことがいいのだと思われています。
 でも、こうなると、生涯学習などをしながら、つまり教育訓練等をミッドキャリアで受けながら充電期間をはさむという余地など、ほとんど入ってこなくなってしまうのです。ある時期は職を離れ、充電、ブランクの時期があってしようがないのだし、それがむしろ望まれることさえあります。ですから、これまでの議論は、再訓練をして、20歳ごろから70歳まで半世紀、しっかりと生き甲斐を持って、働き甲斐を持って、社会に貢献していくような、こういう働き方ができるようなシステムをどう作るかというの中の出発点の議論なのだろうと思います。
 それで、先ほどの新卒一括採用のときのメリット・デメリットというのは、専ら失業を生まないという部分だとか、間断なく進むという部分でやられているけれども、長い目で見たときの職業キャリアの展開の出発点として、本当にこれでいいのかどうか、これが樋口先生の問題提起だったと思います。
 私も同じように感じておりまして、例えばデメリットという中に、我々でしたら当然の如く、大学3年の後半からの時期にちゃんと勉強に集中できない、知的能力あるいは知的な技術や技能を開発すべきときにできないというデメリットは、どうなるのだろうかとか、こういうやり方でいって、組織依存型で、自分でキャリアを決めないで、何でも人に言うとおりにしたりしたときに、順調に組織の中で行った人はいいけれども、そうではなかった人の場合にどうするのだとか、改めて指摘するまでもなく、いろいろそういう問題があるのだろうと思います。
 それで、こういう問題というのは大昔から意識されていたようで、変な話なのですが、いまから2,000年以上前のローマのキケロという人が、「アルキアス弁護」の中でこの問題について発言しているのです。何と言っているかというと、組織的訓練と学問的なものの両方がないと、人材というのは人材として活躍できない。組織的訓練というのは、分業と協業のうちの協業の仕方の訓練です。日本の場合は、ここの部分が、いい大学へ入って運動部でしっかりと訓練すると、こういうところがよくできるから使えるとなるのだと思うのですが、もう1つ学問的陶冶というのが、知識社会の中で水準の高い分業をやっていくという能力です。日本のいまの制度のままだと、こちらのほうが、いろいろなところで、一括採用という形の中で落ちていくのが、グローバル化していく知識社会の中で本当にやっていけるのか、あるいは長期化していくキャリアの中できちんとやっていけるのか、こういう問題と結び付いて問題視されているのかなと見ています。
○小杉委員 私は一括採用の中を論じるのではなくて、一括採用ではない外側をきちんと作ることが大事だと思っています。それを壊すの何のという話ではなくて、一括採用に乗らなくても何の問題もないという社会を作るほうに力を注ぐべきだと。
 企業の外で、一括採用されなくて、非正規で、無業でというときに、きちんと自分の能力を付けられて、それを証明できて、需要がある程度拡大したらちゃんと市場に入れると。そちらのほうを整備していくほうが大事ではないかと思っています。
○玄田委員 再び小杉さんの話に関連してですが、一括採用されなかった若者の状況ということを、もう少し丁寧に事実を収集する必要があるのではないか。そういう意味では、この研究会に間に合えばということで要望が1点ありまして、求職者支援制度に関する既卒も含めた学卒者の、利用状況と就職実績等に関することを、そろそろ年度末のデータが出始めるのではないかと思うので、それは大事な材料になるのではないかと。
 もともと求職者支援制度は、非正規雇用で雇用保険の非加入者が対象でしょうけれども、雇用保険に入っていないということと、場合によっては生活に困窮している場合もあり得るということでは、学卒後一括採用からこぼれ落ちた若者にとって、極めて有効に機能するべき制度だろうと思います。そのためには、ハローワークへの適切な誘導というものがまずなされなければ、この制度がうまく利用されていない可能性もなきにしもあらずですので、まずは求職者支援制度が一括採用から漏れた人たちをサポートする仕組みとしてよりよく改善していくと。見直しは3年後か5年後かは忘れましたが、求職者支援制度は常に改善していかなければならない制度なので、特に学卒でうまくいかなかった人にとって、いま十分に機能しているかということは、できれば研究会の中でも、データを踏まえて議論されるほうがいいのではないかと思いますので、可能であればということで要望です。
○樋口座長 可能であれば、よろしくお願いします。
 時間も過ぎておりますので、次の三菱UFJリサーチ&コンサルティングで調査した結果について、お話があるということですので、お願いしたいと思います。横山主任研究員からお願いいたします。
○横山主任研究員(三菱UFJリサーチ&コンサルティング) お手元の資料3をご覧ください。委託調査で行いました中で、企業向けのアンケートと従業員向けのアンケートをしています。それらについて、時間も限られていますので、かいつまんでご報告いたします。
 最初に1頁をご覧ください。まず、調査の概要です。国内の企業のうち、上場企業全社、未上場企業につきましては加工組立の製造業を中心に何社か、全体で5,000社に対して調査を実施いたしました。併せて、紐付けするような形ですが、従業員の、主に正社員にもお伺いしています。今日は、主に企業の結果のご報告となります。
 以下のグラフの分析軸についてです。従業員規模は、いろいろな定義とは違いますが、ここでは1,000人を区切りとして大企業・中小企業、それから、製造業・非製造業という、4つのカテゴリーに分けて見ています。
 回答企業の属性については70頁です。全体の回答の6割が製造業、4割が非製造業です。製造業につきましては、投げる出し方にもよりますが、加工組立が多い。非製造業につきましては、建設、卸・小売、サービス業が多いという属性の特徴があります。
 71頁をご覧ください。そもそもいわゆる大手に投げていますので、従業員規模は全体として大きな企業の回答が中心になっています。「中小」と区切った中でも300人以上のところも比較的多い回答になっています。
 2、3頁にお戻りください。これは前回の研究会でも出ていると認識していますので、かいつまんで説明いたします。企業が置かれている事業環境が中期的に過去3年あるいは今後3年どのように変化していくか、どのような地域別の販売になっているのかを見ています。3頁のグラフの左側が過去3年間、右側が今後3年間で、地域別に参入するあるいは拡大していくという意向の割合です。過去3年を見ますと、日本で拡大・参入というのは非常に小さい。参入はないかもしれません。大手の製造業を中心に中国、東南アジアで伸びてきた現状が見て取れます。右側の今後3年間は、その傾向がますます強くなっています。製造業の大手では、中国、東南アジア、インドに目が向いている現状です。非製造業は緑色と紫色の棒グラフです。日本で拡大していく割合は6割と高いのですけれども、一方でやはり中国、東南アジアなどで、4割ぐらいが今後そこに拡大していくと出ていますので、海外へのシフトがますます強くなるということだと思います。
 9頁です。繰り返しになりますが、今後3年程度の販売拡大先として最も重視したい市場を見ています。大企業の製造業ですと、中国がいちばん多い。その次が東南アジアで、日本は1割程度です。中小企業ですと、4割強が日本と言っているのですが、逆に言うと、過半数は海外が今後最も重要だと認識しているということです。非製造業についても、高いと見るか低いと見るかは難しいですが、3割以上が海外であると考えています。
 16頁です。「グローバル人材」、ここでは簡単に、海外事業の拡大や参入によって海外の事業所で中心的に活躍できる人材と定義していまして、そういった人材がどのようなところで必要かという問いをいくつかしています。まず、どういう職階、クラスで必要かを聞いたものです。赤色が部・課長で、どのカテゴリーで区切っても部・課長クラスに対するニーズが非常に高いことがわかります。
 17頁では、今後どのような部門でグローバル人材が必要かを聞いています。当然、中小企業では「ニーズがない」というのが黄色で出ていますが、ニーズがあるところを見ますと、製造業では、もともとの生産もありますが、むしろ営業・販売も出ています。製造業では、大企業、中小企業でも、今後3年について見ますと、まだ一部ですが研究・技術についてもグローバル人材を求めている姿が見られます。
 そのようなグローバル人材、海外で活躍するような人材にどういった人材を充てていこうと考えているかをクラス別に見ています。青色が主に日本人の内部登用。こちらは、役職が上がっていくに従って日本人での内部登用を中心に考えている。一方で、担当者クラスといいますか、役職が下になるほど現地で、主に外国人の現地採用によって、そういった方を活用していくということです。これは別途ヒアリングをしたところ、役員クラスの方でも当初は日本人なのだけれども徐々に現地の人に移していくというところが複数ありました。
 19頁の図表18は、そういった人材が不足しているのか足りているのかを見たものです。製造業(大企業)ですと、「やや不足している」が4割と多いのですが、「ある程度いる」などもあり、全体としては少し不足感があるという印象です。
 20頁です。日本人がグローバル人材になるためにどのような要素が必要かを聞いています。グラフは回答全体なので業種が混じっています。青色が「非常に必要である」で、???の辺り、海外の事業所において自主的に発言・行動ができるなどのいわゆる行動レベルで非常に大きい割合を示しています。一方で、??といった専門分野や専門技術に関するスキル、あるいは言語スキルが高くなっている特徴があります。
 21頁は、「非常に必要である」を業種あるいは規模で見たものです。グローバル展開が特に進んでいる大企業の製造業では、???辺りの重要度、先ほどのどういう部門で必要かという点と考え合わせますと、営業・販売などで、比較的クラスの高い方が自分で市場を開拓していくような役割として、自主的な行動や外国人を巻き込んで事業を進めていくことが求められていると考えられます。
 次に、国内に目を転じたものです。25頁の図表26です。今後、日本で少子高齢化が進む中で、日本国内での人材の過不足についてどう考えているかです。「どちらともいえない」が半数近くありますが、一方で、残りの半数ぐらいは「やや人材不足が生じる」、1割程度は「深刻な人材不足が生じる」という考えを持っています。
 26頁の図表27は、人材不足と回答した人が、どのように人材確保を進めていこうと考えているかを見たものです。全体としては、「新卒者を積極的に採用する」あるいは「転職者を積極的に採用する」「現状の人材の生産性の向上を積極的に進める」などが多くなっています。非製造業では、「転職者を積極的に採用する」が製造業に比べて多いという特徴が見られます。
 ここまでは、ある種、中長期の変化を見たものです。一方で、このアンケート調査では、短期的なショックが企業の雇用にどのような影響を及ぼしたかを見ています。34頁をご覧ください。昨年の半ば以降の、1ドル80円を超えるような円高が今後とも続けばどのような影響が出るかを聞いたものです。「現時点」というのは聞いた当時の今年1~2月で、この辺りは「横ばい」という回答が多く、一部、若干減少するというところがあった。これが、3年後になりますと、売上・営業利益が出たところでは「減少の程度が大きくなる」と回答しています。従業員については、全体としては「横ばい」という回答が多くなっていました。
 36頁のグラフは、それがどのような部門に影響を及ぼすのかを見たものです。3年後のところをご覧ください。赤色あるいは青色の部分、製造部門あるいは本社部門で減少していくという傾向があります。全体としては1割程度ですが、そのような結果となっています。
 47頁です。このアンケートの中で、過去3年間に実施した雇用調整について確認しています。回答全体としては、製造業では大体4割ぐらいの企業が雇用調整をした、非製造業では2割程度が行ったと回答しています。
 48頁は、その原因です。複数回雇用調整をしている企業もあるのですが、ここでは最近の最も大きかった雇用調整について答えていただいています。最近の最も大きかった雇用調整としては、「リーマンショック」が圧倒的に多いということです。その背景となる理由は、下のグラフで、「国内企業との競争の激化」が大きな割合を占めています。製造業(大企業)で「その他」が大きくなっていますが、こちらについて自由記述を見ますと、海外企業との競争なども見られます。
 50頁は、雇用調整としてどういったことをしたのかです。製造業は赤色の棒で、いわゆる非正社員あるいは派遣・請負社員の雇い止めや契約解除などが非常に多い。非製造業は紫色と青色の棒で、希望退職なども多くなっていて、比較しますと、非製造業では非正規・正規を併せて雇用調整をしている姿が強く見られます。
 52頁は、どのような部門で雇用調整による雇用量が削減したのかです。少し煩雑なグラフです。部門別に見ています。青色の線が、あまり雇用量が削減しなかったことを示しています。赤色や緑色が多いところでより雇用量が削減しているということです。製造業では、事務、現業部門など、あるいは研究や技術部門でも多くなっています。非製造業では、事務・営業などで大きな影響があったということでした。
 53頁です。最近の最も大きな雇用調整の特徴について聞いています。とりわけ製造業では、「需要減少の規模が多かった」「需要減少のスピードが速かった」など、言われていることですが、ここで確認しています。それから、非製造業の真ん中辺りで、「正社員の人員削減の雇用調整が大きかった」というところもかなり出ていました。
 56頁は、こうした事業環境の変化が会社の人材活用にどのような影響を及ぼしたかを見ています。これを見ますと、全体としてはあまり変わっていない状況ですが、いくつか特徴的なものとしては、先ほどの結果とも通じるのですが、自立的な人材育成の重要性が高く、多いという結果になっています。それから、職務責任の範囲も重要性を増しているという回答が出ています。
 ここまでが企業調査の結果です。併せて、従業員の調査結果につきましても1つだけご紹介いたします。
 88頁です。これは先ほどのグローバル人材のところとの裏腹といいますか、裏返しの問いで、従業員に対して、海外事業所で勤務することになった場合に自分のスキルや知識や行動特性に自信がありますかというものです。先ほどとは少し違いまして、圧倒的に不安がある。紫色の「不安である、自信がない」が大きいのは、言語スキルという状況です。もちろん、どういった企業に勤めているかによっても全く違いますが、そのような特徴が強く出ています。簡単ですが以上でございます。
○樋口座長 それでは、ご質問、ご意見をお願いします。結局この調査結果の結論は、グローバル化が進展したり円高がこう続くと国内雇用は減るよというメッセージなのですか。
○横山主任研究員 言うまでもないことで、ヒアリングでもどこでも言われることですが、企業の目がもう圧倒的に海外に行っている。人材も資源もすべて海外に目を向いている。そういった中で、国内にどんなものが残っているのかというのは、結論なのか感じるところなのかはわかりませんが、1つあります。それと、当然ですが、グローバルの中の1つの国として日本が完全に位置づけられていて、日本があって海外があるというよりは世界があって日本があるというのがはっきりした、いままでもはっきりしていたのかもしれませんが、ということが1つですね。
 先ほどの樋口先生のご質問に答えることになるかどうかわかりませんが、77頁に、今後3年間の経営の変化の見通しをしてもらっています。回答全体で見ても個別に見てもあまり変わらないのですが、販売や生産については1割程度ですが増えると言っている企業が5割ぐらいです。一方で従業員数は、国内ではほとんどが横ばいです。これをどのように評価するのかについては、生産性を高めていくのか、いまある人材を活用していくのか、あるいは採用する企業としない企業があるのかはちょっとわかりませんが、雇用については当面は非常に厳しい状況だと感じています。
○樋口座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
○鶴委員 グローバル人材はまた今度扱うと書かれているのですけれども、それについての質問でもよろしいですか。22頁から、業種と規模別で「グローバル人材になるために必要な要素」というのがあります。この4つに分けたときに、当然、グローバル化がいちばん進んでいるのが製造業・大企業だと思うのです。これを見て面白い特色だと思ったのは、言語スキルです。人のほうから見ると、それを非常に心配に思っていらっしゃる方が多いということなのですけれども、むしろグローバル化が進んでいるところは、言語スキルよりも、海外の事業所において自立的・自主的に発言できるとか、多様な考え方の向こうの人材とうまくやっていけるか、彼らのローカルの情報をきちんと自分たちの経営決定に応用できるか、そこが非常に重視されているのです。これからのグローバル化というのは、語学力とか何とかはもちろん大事なのですけれども、その次に何があるのかがいちばん勝負だと思います。いま徹底した現地化、これは韓国企業などはアジアの国のボリュームゾーンでやっている典型的な戦略ですけれども、徹底的に現地の思考とか需要に合わせて、現地の人たちを活用しながら、それをどれだけ早く経営にその情報を持ってきて意思決定できるかだと思うのです。ここを見ると、やはりグローバル化の高い製造業・大企業ほどそこの割合を相対的に重視している傾向が見られるので、これは非常に面白いと思った点です。
○横山主任研究員 まさに、実はここは申し上げたかったところでもあったのです。ただ、ここで1,000人以上の大企業の製造業は大体語学レベルが高い人がたくさん入っているということもあります。その前提で、後で何とかなりますという回答が非常に多い。下の3つのところに出ていますが、ヒアリングでも、最近は若いうちから海外に出している。単純に見学をしてくるような研修とか座学の研修ではなくて、まさに実際に営業担当として、研修が終わった後も即戦力で現地に入っていくような研修などが、一部ですけれども見られます。実際にどう活動していくかにウェイトが置かれているという印象は持ちます。
○白木委員 いまのお話の関連です。要するに、製造大手は既に出ているということですね。問題意識の中心はそちらに移っているということだと思います。
 もう1つ、この調査で明らかになっていますが、日本の企業はもうグローバルの中でしか考えようがないということは如実に出ていると思うのです。それに対して、個人調査のほうでは、感想ですが、どうしていいかわからないというのが、失礼ながら情ない状態が露骨に出ている感じなのです。この基本にあるのは、それに対応していくというマインドセットの準備ができていない。これが、大卒、高卒もそうかもしれませんが、これから若手のことを考える場合には、そういう時代に入っているのだという気付きを早期に持っていかないと、ゆとり状態の人を生み出していてはもう通用しない。いまそういう質問をされると、「どうしていいかわかりません」という回答をする、という印象を受けます。
○横山主任研究員 1点だけ、ヒアリングの結果です。ここはよくわからないところですが、実際に海外に出ていくチャンスがある日本人は実はそんなに多くないということも一方であると思います。例えば製造業であっても、若手の従業員クラス、普通の人たちはもうすべて現地人であって、その中で一部の人が日本人で技術指導をしたり、営業でやっていくとか、経営に近いところに入っていくということなのです。実際にどれぐらいの人たちにこの企業側のマインドを求めているのかは微妙なミスマッチがあるかもしれません。
○白木委員 実際、外務省のデータでは、長期に派遣されている人は23~24万人です。数からいうとそれぐらいかと見えるのかもしれないですけれども、これは数年でローテーションしていきますし、ビジネスがそうなっていることがわかっているかどうかがポイントだと思うのです。ですから、いま行っているかどうか、あるいは海外業務に従事しているかどうかだけではないと思います。そういう状態にあることをわかるかどうかが重要だと思うのです。
○樋口座長 これこそ学校教育の質が問われているところですね。
○白木委員 当然、関係すると思います。
○樋口座長 就職してから語学のために海外へ出すという企業もときどき新聞には出ていますけれども、ちょっと寂しい限りですね。
○久知良若年者雇用対策室長 グローバル人材になるために、学生は大体語学があれば行けると思っている。語学なのでしょうけれども、それだけでなく、やはり海外のことを知りたいと思って、大学生活の中で海外に行く。そうなると同年代の就職活動から遅れてしまう。いまのこういった雇用システムが、まさにグローバル人材にならないようなシステムになっているのではないかという危惧が若干あるような気がします。これを見てそう思いました。
○樋口座長 いろいろな学生がいて、1年遅れても海外に行きたいというのもいるけれど、かなりのところは遅れるのが嫌で海外に行かない。
○久知良若年者雇用対策室長 諦めてしまう。
○樋口座長 そういう学生もいるのでしょうね。
○玄田委員 88頁以降の従業員に関するアンケートについてです。海外に出ていくことに対して非常に不安感が強いというのは、非常に印象的というか、大きな数字だと思って見ていました。特に、89頁以降を見ると、製造業の中小企業で働く人たちが、海外に出ていくことに対して語学を含めて懸念を抱いている。一方で、9、11、13頁と、企業に聞きますと、製造業の中小企業でも、3年後には何らかの意味で半分ぐらいは海外ということを意識している。企業の「出て行くぞ」という感覚と中小企業で働く人たちの尻込み感のミスマッチはものすごく大きい。このギャップをどのようにいま埋めることができるのか。先ほどの例では、大企業の場合には事前にいろいろな新人研修などを通じてということがあっても、中小企業、特にこれから海外に出て行く人たちにとっては、海外に出て行くためのノウハウ、言語とか法知識とか、それを公的な形か商工会のようなものかはわかりませんが、オンザジョブで、既存の就業者に対して海外に出て行くためのノウハウとか知識を提供するプログラムは果たして現状の施策の中でどのぐらいあるのか、ないとすれば考えられるのか。この辺は白木委員がいちばん詳しいかもしれません。製造業が出て行く意欲と従業員の躊躇感は非常に気になるところだと思いました。
○樋口座長 経産省が今度その中小企業に対する支援をするという、あれはどうなったのでしょうか。先ほど出てきた話で、大企業に就職できた人たちとは別に一括採用から漏れた人たちのところが重要ではないかというようなご指摘がありました。グローバル化の話も相通じるところがあります。気付いて自分で努力して、自己啓発なり何なりサポートしながらやっていける人はいいとして、そうではない人をどうするかというのも重要だということですよね。アメリカで80~90年代に叫ばれたそのままの問題、まさにその後、格差の問題がクローズアップされて出てきたわけです。厚労省的にというか、我々は両方考えていかなければいけないと思うのです。
○小杉委員 私は、グローバル人材問題が部・課長問題になっていることが非常に印象的でした。グローバル人材問題といのは、「若者、若者」みたいな話になりますが、実際に足りていないのはそちらではない。中高年レベルに対する能力開発と言いますか、先ほど話にもありましたが、その部分を企業に任せていくだけでは不安なところが随分あって、そこをどうサポートしていくか。これは時間をかけて若者を育てるよりも、もっと先にすぐ対応しなければならないことではないかと思います。
○樋口座長 若年問題というよりもミッドキャリアの問題。
○白木委員 いまの現場の中高年のミドルは致命的な状況にあると思います。それはまた別途のシステムで考えなければいけないと思います。先ほどの話に戻りまして、一括採用でいった人と、一括採用から漏れた人たちをどうするかについて、漏れた人たちの中にもいろいろなスペクトラムがあります。東南アジアなどで独立して働いている女性などは、ほとんど女性なのですが、この人たちは一括採用から外れて、自ら仕事を求めて香港なり大連なりシンガポールで働いている。インドにもいました。そういう逞しい人たちも育っているのですから、その中にもいろいろな人たちがいるので、芽を見出したいですね。しかも、それを長期的な観点で。キャリアというのは40年、50年なのです。ですから、テクニカルに就活でどうやったらうまくいくかなど、そういう話ではないと思います。40~50年先を考えた上でのディスカッションが必要ではないかと思います。
○横山主任研究員 現地で急速に外国人化というか、管理職も含めて外国人に置き替わっていっている印象は受けました。タイで、そもそも技術指導するような人材を育成して、それを次の違う国での海外展開のときに入って行く。日本人かどうかはあまり問われていない面があるので、グローバルに見たときに本当にその役職が不足しているかは、また少し違った議論かもしれません。日本人としてはいないのだけれども、世界で見ればひょっとしたらいるかもしれない。ますます置いて行かれる感は少しあるかもしれません。
○樋口座長 海外に出て行く企業とかグローバル人材を支援するというのも重要だと思うのですが、その一方で、国内の雇用をどう作っていくのかが、支援するという視点でもやはり重要なことになってきている感じですね。
○阿部委員 いまアメリカの大統領選ではミドルクラスの復活をオバマ政権は言うわけです。日本よりも10~20年先をアメリカは進んでいるのではないかと思うのですが、ニューヨークタイムズで今年1月に取り上げられて興味深いものがありました。いま、時価総額のいちばん高いアップルという会社があります。あそこはアメリカ国内に4万人の従業員を抱えているのです。時価総額ではGMとかフォードよりも大きい。GMやフォードは国内雇用にものすごく貢献している。アップルはたった4万人なのです。ところが、全世界で、部品まで含めると雇用の誘発は70万人以上あるというのです。それがなぜアメリカ国内に持って来れないのかという議論をスティーブ・ジョブスとオバマがやったらしいのですが、結論は「持って来れない」。アメリカでいま悩んでいるのは、アップルのように時価総額が高く従業員の給料がものすごく高い、そういう企業が増えているのです。その一方で、雇用をたくさん持っている会社、サービス業でウォールマートとかターゲットとか、そこは低賃金なのです。その間を埋めるためにと言うのですが、なかなか策が見付からないというのが、いまアメリカの雇用情勢で厳しいところだろうと思います。何か策がないだろうか。日本もそれが大事な政策の1つになるのだろうと思うのですけれども、私にはよくわかりません。何なのでしょうか。
○樋口座長 ここはきちんと考えていかないと本当に大変なことになると思います。
○阿部委員 もう1つ言わせていただきます。外に出て行った理由は、最初は単純な仕事が出て行ったけれども、言われていることですが、徐々に複雑なものが出て行くのです。イノベーションが起こるためには製造とデザインとが一緒にいないといけない。けれども、製造が先に出て行ってしまって、イノベーションが起こらないのでデザインも外に出て行って、結局、国内雇用の誘発が少なくなってしまったというのがアメリカの例だそうです。では、国内で製造をずっと抱え続けていけるのか、それでもいいのか。そうすると、非正規雇用などのそういった問題が国際競争の観点から出てくるのではないかと思うのです。わかりません。
○樋口座長 90年代のアメリカでいちばん懸念されていたのが日本でも出てきていると思うのは、競争力のある、海外へ出て行くことのできるところは出て行く。人材も同じ。逆に、出て行けないところだけが国内に残っているということになると、結果として、所得1人当たりで見ると下がる。それを、どう付加価値を付けてというのだけれども、デフレの下でサービス産業の付加価値はどう付ければいいのか。新しいサービスが出てもなかなかというところですね。何か段々暗くなってきていますね。この後こういったテーマもこの雇用政策研究会でも議論していかなければいけないものになっているのではないかと思います。皆様から是非発言しておきたいというものがございましたらお願いします。
○小杉委員 若者の雇用の問題に返って1つです。学校教育での話では、文科行政はそれなりにやっているという話をしましたが、文科行政では決定的に欠けてしまう部分として、ワークルールなど、そういう視点が全くないのです。これは絶対に厚労行政から言わなければならないことです。それから、この中でもインターンシップなどは、就業体験は非常に重要だから政策の中で重視していくのだと思いますが、一方で、そのインターンシップが場合によってはただの無給労働に終わらせられているようなことも最近しばしば出てきています。そういう面も含めて、文科省はそれなりにやるけれども、厚労省でなければ絶対にわからないところがあるので、是非そういうところに力を込めてほしい。学校教育の中での文科行政に対して厚労行政の役割というのは、そこが大きいのではないかと思います。
○樋口座長 義務と権利というものが全然わかっていないと仕事にならないという話ですね。
○玄田委員 たまに高校に行くときに必ず言って帰るのは、「総合労働相談コーナー」の存在だけです。義務と権利の教育はとても大事だと思いますが、私は、労働法は難し過ぎてわかりません。ただ、総合労働相談コーナーという、ただで何でも質問に乗ってくれるところがあるから泣き寝入りだけはしてはいけない。ほとんどの学校の先生方がご存じないことが多いのです。権利とか義務の教育はもちろん大事だと思いますけれども、具体的にトラブルに遭ったときにどこに行けばいいのかをもっと徹底しないといけない。以前であれば、学校を通じて、ハローワークとか労働局を通じてワークルール違反に対する是正ができたのですが、いまはそういうルートがないわけですから、もっと個別の生徒や教員に、泣き寝入りをしないで済むような情報を、だいぶ考えていただいていると思うのですが、そこの周知徹底を考えるべきではないかと思います。
○白木委員 細かい点にこだわっているようで恐縮です。今日の資料2の12、13頁で、理系と文系に分けたデータを出されていまして、理系は専門的な仕事に就いている。理系と文系に分けるのが正しいかどうかわかりません。海外ではやっていないみたいですが、日本では理系と文系に伝統的に分けている。文系では専門が要らない事務とか販売に行っている。極端に言いますと、専門技術が要りませんということになるのです。しかし、これは分類の仕方がそうなっていることを十分に認識する必要があると思うのです。企業も文系の採用はみな事務職、「事務」といっているのです。営業・販売という採り方をしているものですから勢いここに入ってしまうのですが、この分類をしていますと、あまり考えない学生は「事務職になりたい」というのが多いのです。これは大変なミスリーディングでありまして、大卒を採るのに、事務職でクラークの仕事で採っているという誤解を受けるわけです。社会科学系の学生も、必ずしもクラークの仕事に就いているから事務職という意味ではないという、統計のこの辺のミスリーディングなところを将来的には変えていく必要があると思っています。以上、コメントです。
○橋本委員 少し抽象的ですが、この研究会にお願いしたいことです。これから超高齢化が進むわけですが、社会保障も視野に入れて、それを維持するためにいろいろな負担があると思います。それを賄うためにどのぐらいの雇用が必要なのかというか、それが可能なのか、そのような議論ができればと思っています。私はドイツを研究しているのですが、最近読んだドイツの論文でショックを受けたものがありました。ドイツも日本と同じように、年金がもらえる年齢まで雇用を維持しようという施策を取って、手厚い労働法の水準を判例法理も含めて維持しています。若い人の書いた論文で、このように中高年を保護し過ぎでは40歳以下の人間にはもう耐え切れない、これから先とてもやっていけないというものが出て、ちょっと驚きました。そういう問題意識を持っています。
○樋口座長 わかりました。今日、資料1で配られた論点を必ずしも全部網羅しているわけではないので、また次回、若年者就労支援についてご議論いただきたいと思います。
 そろそろ時間がきていますので本日の研究会はここまでとしたいと思います。次回以降について事務局からお願いします。
○武田雇用政策課長補佐 次回、第3回の雇用政策研究会の日程は現在調整中です。ご案内は後日お送りいたしますのでよろしくお願いいたします。加えて事務的な連絡です。各委員の連絡先等について封筒の中の内容をご確認いただきまして、変更がありましたら事務局までお申し出ください。以上です。
○樋口座長 本日は以上で終了します。どうもありがとうございました。


(了)
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