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2012年1月27日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会議事録

医薬食品局

○日時

平成24年1月27日(金)15時~


○場所

厚生労働省 専用第21会議室


○出席者

出席委員(15名):五十音順 敬省略

 加 藤 総 夫、 佐 藤 田鶴子、 佐 藤 雄一郎、 清 水 秀 行、

宗 林 さおり、 手 島 玲 子、○永 井 良 三、  野 田 光 彦、 

 檜 山 行 雄、 古 川   漸、 ◎松 井   陽、 松 木 則 夫、

 村 田 美 穂、  本 橋 伸 高、 山 田 清 文

 (注) ◎部会長 ○部会長代理

 欠席委員(5名):五十音順 敬省略

  鈴 木 邦 彦、  千 葉   勉、 成 冨 博 章、  西 澤  理、

 林   邦 彦、 増 井   徹

行政機関出席者

 平 山 佳 伸 (大臣官房審議官)

 赤 川 治 郎 (審査管理課長)

 俵 木 登美子 (安全対策課長)

 内 海 英 雄 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)

 森 和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)

 三 宅 真 二 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)

 佐 藤 岳 幸 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催いたします。
 本日は、お忙しい中御参集いただきありがとうございます。
 本日の委員の出席についてですが、鈴木委員、千葉委員、成冨委員、西沢委員、林委員、増井委員より御欠席との御連絡をいただいております。
 現在のところ、当部会委員数21名のうち15名の委員の御出席をいただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。
 本日のその他事項につきましては、独立行政法人国立循環器病研究センターの山本先生を参考人としてお呼びしております。
 以後の進行は松井部会長にお願いいたします。
○松井部会長 それでは、本日の審議に入ります。まず、事務局から配付資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告をお願いいたします。
○事務局 資料の確認をいたします。席上には議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配付しております。議事次第に記載されている資料1~8は、あらかじめお送りしております。このほかに、資料9「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料10「専門委員リスト」、資料11「競合品目・競合企業リスト」を配付しております。
 次に、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。資料11に沿って御説明いたします。1ページの「ジプレキサ」ですが、本品目は双極性障害におけるうつ症状の改善を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 2ページは「ブレーザベスカプセル」ですが、本品目は「ニーマン・ピック病C型」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤が無いことから、競合品目は「該当なし」としております。
 3ページは「サインバルタカプセル」ですが、本品目は「糖尿病性神経障害に伴う疼痛」を効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
 4ページは「パシレオチドパモ酸塩」ですが、本品目はクッシング病を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。説明は以上です。
○松井部会長 ただ今の説明について、御意見等があればお願いいたします。
 無いようですので、以上の点については、委員の先生方の御了解を得たものといたします。委員からの申出状況について報告をお願いいたします。
○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。議題1「ジプレキサ」は、退室委員は無し、議決に参加しない委員は永井委員、野田委員、松木委員、本橋委員です。
 議題2「ブレーザベスカプセル」は、退室委員、議決に参加しない委員は共にいらっしゃいません。
 議題3「サインバルタカプセル」は、退室委員は無し、議決に参加しない委員は永井委員、野田委員、村田委員です。
 議題4「パシレオチドパモ酸塩」は、退室委員は無し、議決に参加しない委員は加藤委員、永井委員、野田委員、村田委員、山田委員です。以上です。
○松井部会長 本日の審議事項は4議題、報告事項が3議題、その他事項が1議題となっております。本日は参考人として大阪から山本先生に来ていただいておりますので、その他事項から入りたいと思います。まず、事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 その他事項議題1、資料8「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価について」事務局より説明いたします。
 資料8の110ページをお開きください。医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬については、平成21年6~8月に第1回の要望募集を行いまして、374件の要望が寄せられたところです。そのうちの186件については医療上の必要性が高いと評価されましたので、国から製薬企業に開発要請等を行い、承認に向けた取組を進めているところです。
 本日御報告したい2点のうち1点目は、平成23年12月22日の第10回の検討会議までの検討状況を表にしてお示ししております。開発要請は複数に分けて行っておりますので、第1回要請が上の表、第2回、第3回は下の表です。このうち、「実施が必要な試験や公知申請の妥当性について検討中のもの」が、上の表では1件、下の表では6件となっておりまして、検討中は7件のみとなっております。この7件を除いては、承認に向けた方向付けがなされたことになります。
 2点目については、同資料の最後のページを御覧ください。第1回の要望に対する検討と並行して、第2回の募集についても作業を進めてきました。これについては期間中に約80の団体等から、延べ357件、重複をまとめて290件の要望が提出されております。これについても第1回要望と同様に検討することとしており、春ごろから検討会議において必要性の評価を進める予定です。本日は12月の会議で公知申請の報告書をまとめていただいた、高血圧症の小児に対する用法・用量の追加4件の事前評価をお願いしたいと思っております。報告書の内容については、山本晴子先生に御報告をお願いいたします。
○山本参考人 国立循環器病研究センターの山本です。それでは、報告させていただきます。資料8「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価について」です。4成分ありますが、すべて高血圧症の小児に対する用法・用量追加という要望ですので、4成分をまとめて御説明いたします。
 まず、3ページを御覧ください。一つ目は「アムロジピンベシル酸塩」です。要望者は日本小児循環器学会です。
 同じく3ページの「2.要望内容における医療上の必要性について」の項を御覧ください。小児の高血圧は、小児期のうちに重大な臓器障害を合併する可能性は少ないものの、動脈硬化の主要な危険因子であり、長期的には心不全等の心血管系疾患や腎不全など、不可逆的な病態をもたらす可能性のある疾患であるため、早期からの治療が必要とされます。しかしながら、本邦において、高血圧症に対する小児の用法・用量が承認されている薬剤はございません。以上を踏まえまして、検討会議では、医療上の必要性は高いと判断しております。
 19ページの「(3)要望内容に係る公知申請の妥当性について」の項を御覧ください。本薬は外国人小児の高血圧症患者を対象に実施した無作為比較試験で、本薬1日2.5~5mgの有効性及び安全性が確認され、欧米では高血圧症の適応で、小児においても承認されております。また、国内外のガイドラインや代表的な教科書等に本薬の有用性が記載されております。さらに、本邦の降圧薬小児実態調査において、6歳以上15歳未満に対する本薬の投与量及び1日投与回数は、海外での承認用量・用法の範囲と大きな差異は無いと考えられました。以上より、検討会議では、本薬の小児の高血圧症に対する有効性及び安全性は、医学薬学上公知に該当すると判断いたしました。
 同じく19ページの「(2)用法・用量について」ですが、これは「通常、6歳以上の小児には、アムロジピンとして2.5mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。」を追加することが適切と判断しております。アムロジピンについては以上です。
 次に、25ページを御覧ください。2剤目は「エナラプリルマレイン酸塩」です。要望者は小児腎臓病学会及び日本小児循環器学会です。医療上の必要性については、先ほどのアムロジピンと同様です。
 42ページの「(3)要望内容に係る公知申請の妥当性について」が記載されております。本薬の小児の高血圧症に対する適応は、海外で実施された臨床試験成績に基づき、2010年5月現在、23か国以上の国と地域において承認されており、本薬は小児の高血圧症に対して広く使用されております。また、本邦の高血圧治療ガイドラインにおいて、本薬は小児の高血圧症に対しても有効性・安全性が確立された第一選択薬の一つとして位置付けられており、国内の使用実態調査で示されたような使用実績があります。以上より検討会議では、本薬の小児の高血圧症に対する有効性及び安全性は、医学薬学上公知に該当すると判断いたしました。
 同じく42ページの「(2)用法・用量について」ですが、「通常、生後1ヵ月以上の小児には、エナラプリルマレイン酸塩として0.08mg/kgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。」を追加することが適切と判断しております。
 また、海外において、小児の重症腎機能不全患者に対する投与は推奨されていないこと、本邦においても、成人の高血圧症患者に対し、重篤な腎機能障害のある患者に対しては、投与量を減量するか、又は投与間隔を延ばすなど慎重に投与することとされておりますので、それを踏まえて、今回、小児の高血圧症に対する用量を追加するにあたり、腎機能が低下している小児に対しては、原則として本薬の投与は推奨されないものの、投与する場合には成人と同様に用量や投与間隔を考慮する等、慎重に投与する必要がある旨、添付文書にて注意喚起をする必要があると考えております。エナラプリルマレイン酸塩については以上です。
 次に、47ページは「バルサルタン」です。要望者は日本小児腎臓病学会です。医療上の必要性については、先ほどの2剤と同様です。
 69ページに「(3)要望内容に係る公知申請の妥当性について」が記載されております。本薬の小児の高血圧症に対する適応は、欧米で既に承認され、標準的治療としての使用実績が集積されております。日米欧の学会のガイドライン、教科書及び総説においては、バルサルタンを含むARBは標準的な治療薬として位置付けられており、欧州高血圧学会が発行するガイドラインにおいては、小児の高血圧症患者に対する本薬の初期用量が記載されております。また、国内外の公表論文及び国内の使用実態調査の結果で示されたように、本薬は日本人小児の高血圧症患者においても使用実績があります。本剤については、国内外で製剤に違いがありまして、製剤の相対的バイオアベイラビリティに差がありますが、開発企業により、日本人小児を対象とした薬物動態試験が実施されまして、その結果、国内外の製剤の相対的バイオアベイラビリティの差を考慮した上で、海外臨床試験成績を参照することは可能と判断いたしました。以上より、検討会議では、本薬の小児の高血圧症に対する有効性及び安全性は、医学薬学上公知に該当すると判断いたしました。
 70ページの「(2)用法・用量について」の記載を御覧ください。用法・用量については、国内外の成人及び小児の薬物動態試験の結果、成人における本薬の薬物動態に人種差は無く、国内外の製剤の違いによる曝露の差と一致して、日本人成人での承認用量は海外の半量であり、国内の成人と小児及び国内外の小児患者においては、用量1mg/kg当たりの値に換算した本薬の薬物動態パラメータは、類似していることが示されました。海外においては、小児の高血圧症患者を対象とした臨床試験の結果から、小児用量は成人用量の半量で承認されており、また、本邦の小児における降圧薬使用実態調査の結果、日本人小児においては海外と同様に、成人の半量が使用されている実態が明らかになったこと等を踏まえて、「通常、6歳以上の小児には、バルサルタンとして、体重35kg未満の場合20mgを、体重35kg以上の場合40mgを1日1回経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ただし、1日最高用量は、体重35kg未満の場合、40mgとする。」とすることが適切と判断しております。バルサルタンについては以上です。
 続きまして、73ページを御覧ください。4剤目は「リシノプリル」です。要望者は日本小児腎臓病学会です。医療上の必要性については、先ほどの3剤と同様です。
 100ページに「(3)要望内容に係る公知申請の妥当性について」が記載されております。本薬の小児の高血圧症に対する適応は、欧米で既に承認されており、日米欧の学会のガイドライン及び教科書に記載されております。総説にも、本薬は、小児の高血圧症の標準的な治療薬として位置付けられており、国内外の公表論文及び国内の使用実態調査で示されたような使用実績があります。以上より検討会議では、本薬の、小児の高血圧症に対する有効性及び安全性は、医学薬学上公知に該当すると判断いたしました。
 101ページの「(2)用法・用量について」の記載を御覧ください。用法・用量については、「通常、6歳以上の小児には、リシノプリル(無水物)として、0.07mg/kgを1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。」とすることが適切と判断しております。なお、海外において、小児の腎機能が低下した患者には、より低い用量からの開始、又は投与間隔の延長を考慮すること、及び、小児の重症腎機能不全患者に対する投与は推奨されていないこと、また、本邦においても、成人の高血圧症患者に対して、重篤な腎機能障害のある患者に対しては、投与量を半量にする、もしくは投与間隔を延ばすなど慎重に投与することとされていることを踏まえて、今回、小児の高血圧症に対する用量を追加にするにあたり、腎機能が低下している小児に対しては、原則として本薬の投与は推奨されず、投与する場合には成人と同様に用量や投与間隔を考慮する等、慎重に投与する必要がある旨を添付文書にて注意喚起する必要があると考えております。以上です。
○松井部会長 委員の先生方から御質疑をお願いいたします。
○清水委員 情報があれば、教えていただきたいと思います。アムロジピンとバルサルタン、リシノプリルは6歳以上の小児への適応で、エナラプリルマレイン酸塩については1か月の患児からの適応となっておりますが、承認時の剤形は錠剤しかありません。エナラプリルマレイン酸塩について、小児用の剤形の開発等については、何か要望等意見は出ておりましたでしょうか。
○山本参考人 どの薬も小児用の剤形の追加の要望は、小児科の先生方からは出ていたと思いますが、今回は、本邦に既に存在する製剤においての用法・用量の追加ということで、一旦そこで整理をしている状況だと思います。
○松井部会長 そのほかにはいかがでしょうか。
 特に無いようですので、その他事項については委員の先生方に御確認をいただいたものとして、よろしいでしょうか。
 それではそのようにいたします。山本先生、どうも御苦労様でした。
 次に、議題1に移ります。機構から概要を御説明ください。
○機構 審議事項議題1、資料1「医薬品ジプレキサ錠2.5mg、同錠5mg、同錠10mg、同細粒1%、同ザイディス錠5mg、及び同ザイディス錠10mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」機構より説明いたします。
 本剤の有効成分であるオランザピンは、米国イーライリリー社において開発された非定型抗精神病薬であり、本邦では、2000年12月に「統合失調症」を効能・効果として承認されており、2010年10月に「双極性障害における躁症状の改善」に対する効能・効果が追加承認されております。
 海外では2011年10月現在、115の国又は地域で承認されており、今回の申請効能・効果である「双極性障害におけるうつ症状の改善」について、本剤の単独治療が承認されている国又は地域はありませんが、本剤とFluoxetine(FLX)の併用療法又は本薬とFLXの配合剤が米国を含む11の国又は地域で承認されております。双極性障害におけるうつ症状について、本邦においては、2007年8月より臨床試験が開始され、有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更申請が行われました。
 本申請の専門委員としては、資料10に記載されている4名の委員を指名しております。
 審査内容について、臨床成績を中心に説明いたします。
 まず、有効性についてですが、審査報告書5ページの表1を御覧ください。日本を含むアジア地域及び米国で実施した国際共同試験において、本剤5~20mgを投与した結果、主要評価項目であるFASでの最終評価時におけるMontgomery-Åsberg Depression Rating Scale(以下、MADRSと略します)の合計点のベースラインからの変化量は、本剤群で-14.26、プラセボ群で-11.71であり、本剤群とプラセボ群の群間差は-2.15と統計学的な有意差が認められました。
 また、審査報告書9ページの表4を御覧ください。国際共同試験における地域別の有効性について、日本人集団でのMADRS合計点のベースラインからの変化量の群間差は、全体集団での結果と類似しておりました。
 また、同ページの表5を御覧ください。国際共同試験における安全性について、日本人集団での有害事象の発現状況は、日本以外の地域と大きく異なることはありませんでした。
 以上より、当該国際共同試験成績から、日本人における双極性障害のうつ症状に対する本剤の有効性及び安全性を評価することは可能と判断いたしました。
 次に、安全性についてですが、審査報告書14ページ、表12を御覧ください。本剤による有害事象として体重増加が認められており、その割合は双極性障害の躁症状を呈する患者を対象とした臨床試験よりも高くなっております。その要因として、双極性障害のうつ症状の患者では、元々食欲不振を呈しており、本剤投与によりうつ症状が改善した結果、食欲が増加したためと考えられております。なお、食欲亢進及び体重増加については既に添付文書上において、これらの副作用に関する注意喚起を行っているところではありますが、双極性障害のうつ症状に対する情報提供資材において、十分な情報提供を図る予定としております。
 審査報告書21ページ、表26を御覧ください。海外プラセボ対照試験成績の解析結果より、本剤については明確な自殺リスク及び他害行為のリスクは認められておりません。
 審査報告書31ページの「(2)自殺関連有害事象及び他害行為に関する注意喚起について」の項を御覧ください。しかしながら、今回の申請効能・効果は双極性障害におけるうつ症状の改善であり、うつ症状を呈する患者では自殺関連の有害事象及び他害行為のリスクがあり、本邦において既存の抗うつ薬においては注意喚起がなされていること、海外においては単極性のうつ病、双極性障害のうつ症状にかかわらず、うつ症状に係る適応を有する薬剤においては注意喚起がなされていることを踏まえ、添付文書上での注意喚起が必要と判断いたしました。そこで1.8添付文書(案)の2ページの「2.重要な基本的注意」の(4)を御覧ください。本項において自殺及び他害行為に関する注意喚起を図ることといたしました。
 また、審査報告書31ページの「(1)本剤の効能・効果及び適正使用について」の項を御覧ください。本剤は既に双極性障害における躁症状の改善の効能・効果を有することから、今回、「双極性障害におけるうつ症状の改善」の効能・効果を取得することにより、本剤は双極性障害の急性期症状全般に対する適応を有することになります。しかしながら、日本人において、双極性障害の維持療法における有効性及び安全性は明確になっていないことから、急性期症状が改善した後には漫然と投与すべきではないと考えております。そこで1.8添付文書(案)の2ページの「用法・用量に関連する使用上の注意」の項を御覧ください。本項において、躁症状及びうつ症状が改善した場合には、本剤の投与継続の要否について検討し、本剤を漫然と投与しないように注意するよう注意喚起を図ることとしております。
 以上の審査を踏まえ、本剤の双極性障害におけるうつ症状の改善に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本医薬品第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新効能及び新用量医薬品であり、再審査期間は4年とすることが適切と判断しております。薬事分科会には報告を予定しております。
 また、事前に本橋委員より5点ほど、御質問をいただいております。
 1点目は「国際共同試験において、MADRS得点で有意差が出ていますが、平均得点で3点足らずです。この変化は米国で認可されているFLXとの配合剤やクエチアピンでの結果と比べてかなり小さいと思います。米国ではそのために単剤での申請がなされなかったはずです。世界に先駆けて我が国で適応を取得するに足る結果なのでしょうか。」との御質問です。
 この点について、米国で単剤での申請がなされなかった理由としては、変化量の大小というよりは、審査報告書の10ページの表7の中で「OFC」と書いてあるのが、本剤とFLXとの併用の群になるのですが、そのうち海外で2試験実施しておりまして、そのうち試験2ではプラセボと本剤との間に統計学的な有意差が認められたにもかかわらず、試験1では有意差が認められず、本剤について一貫した結果が得られなかったために、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□。
 今回、日本を含む国際共同試験においては、単剤でプラセボに対する優越性が検証されており、海外の臨床試験1試験でオランザピン単剤がプラセボに対する優越性を検証できなかった理由については明確になっていませんが、総合的に判断して、本剤単剤での双極性障害のうつ症状に対する有効性は示されたものと判断しております。
 2点目は「MADRS得点の高い重症例ほどプラセボとの差が大きかったのでしょうか。」との御質問です。
 こちらについては、ベースラインのMADRS合計点別の有効性について確認しましたが、重症例ほどプラセボとの差が大きいということはなく、軽症の患者さんでも本剤の有効性は確認されております。
 3点目は「MADRSのどの下位項目で改善を認めたのでしょうか。食欲や睡眠の改善が主なのであれば、鎮静作用を含めた副作用との関連が想定されます。うつ病を改善していると言えるのでしょうか。」との御質問です。
 MADRSは10の下位項目から構成されており、各項目について確認したところ、御指摘いただいたように、睡眠や食欲、内的緊張という鎮静効果に関わる部分で大きな改善が認められておりますので、抗精神病薬としての鎮静効果が影響した可能性は否定できないのですが、その他の項目についても、改善傾向が認められております。また、その他の副次評価項目である、反応例や寛解例の割合、うつ症状に関する患者の総合的重症度評価においても一貫して改善傾向が認められていることから、うつ症状に対する有効性として、臨床的にも意味のある改善が見られたものと判断しております。
 4点目ですが「国際共同試験において、我が国での結果は比較的はっきりしていますが、中国、韓国と米国での差は無いと考えた方がいいのではないでしょうか。」との御指摘をいただいております。
 先ほども御説明したのですが、審査報告書9ページの表4の内容になるかと思います。本試験については、日本、中国、韓国、台湾及び米国の国際共同試験として計画されておりまして、試験開始前に内因性要因(薬物動態の人種差等)及び外因性要因(医療環境の差異等)が検討された上で実施され、得られた成績として、プラセボと本剤群の対比較において、統計学的な有意差が認められていますので、本剤のプラセボに対する優越性が検証されたと解釈できます。
 その上で、試験に参加した各国におけるプラセボと本剤群との群間差については、ばらつきが認められまして、御指摘のように中国、韓国、米国における結果は、日本及び台湾と比較して相対的に小さいのですが、プラセボとの群間差という観点でいくと、ほぼ一貫して下回っておりますし、日本の成績についても、全体の結果と大きく乖離していないので、本試験成績から本剤は日本人で有効性が認められたと評価することは問題無いと考えております。
 最後の御質問は「国際共同試験において、選択基準にはハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)の得点を用いていますが、臨床評価はMADRSを用いている点は疑問が残ります。副次評価項目であるHAMD-17の得点変化はどうだったのでしょうか。」といった御質問をいただいております。
 この点についてですが、精神疾患領域の臨床試験では、選択基準でMADRSやHAMD-17といった症状の評価尺度が設定されることにより、対象集団の重症度が規定されることが一般的ですが、試験を実施する医療機関の方で被験者を確保しようとして、患者さんを組み入れる時に、軽症の患者さんでも実際より高いスコアを付けてしまうような現象、すなわちベースラインインフレーションがあって、有効性の証明が難しいうつ病領域の臨床試験では、特に近年、ベースラインインフレーションは問題視されていることの一つとなっております。このため、ベースラインインフレーションの軽減と対象患者さんの適切性を評価するために、あえて主要評価項目と選択基準で用いられる症状評価尺度を別々にするといったようなことが、最近ではよく行われております。
 このような理由から、今回もHAMD-17を選択基準として使い、主要評価にはMADRSを使っておりますが、副次評価としてHAMD-17の方にも評価しておりまして、本剤群でプラセボ群よりも大きな改善が認められるという、MADRSでの結果と一致した結果にはなっております。以上が先生からいただいた御質問に対する回答です。
 以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 委員の先生方の御質疑を伺う前に、本橋先生、今の五つの点に対する回答について、御意見はありますか。
○本橋委員 非常にエフェクトサイズが小さいとは思うのですが、確かに差は出ているという点では間違いないと思いますし、ほかに薬が無いという現時点では、やはり承認の必要性があるだろうというのが結論です。
○松井部会長 ほかにはいかがでしょうか。
○佐藤(田)委員 取り違えていたら申し訳ないのですが、少しお伺いしたいと思います。本剤については2010年10月に、双極性障害における躁状態について有効であるということで追加承認されております。従前は統合失調症に使っていた薬であるということでいいわけですね。次に、今回は双極型のうつの状態に効果があるか、ということを承認してほしいということでよろしいわけですか。そうすると、単純に考えますと、今回の双極型の躁とうつがある病態の人に、承認されたとすると、どちらにも効くからというので、例えば1剤で補える薬と考えてよろしいのでしょうか。今回はうつ状態のことについて追加承認を希望しているので、添付文書にはうつ状態が治まったら投与を止めると書いてあります。そうすると本来の双極性の躁うつ病に効く効果をどこで止めるのか、そこのところを教えてください。
○機構 そこのところは私どもも審査の中でかなり議論いたしました。まず、双極性障害の治療というところで、基本的には気分安定薬と言いまして、躁とうつの波をなるべく小さくするような治療を行うということ、そこに用いられる薬剤としてはリチウムやバルプロ酸、昨年承認されたラモトリギンなどが使われることが多いです。その上で本剤については、今、日本人で得られているエビデンスとしては、急性期の症状に対しての有効性は示されておりますが、気分安定薬としての役割は、現在、日本人に対する有効性は示されておりませんので、急性期に対して使うことについては、用法・用量としてきちんとした推奨はできるのですが、それが治まった後、その薬を飲み続けてどうかということについては、今のところエビデンスが得られていない状況です。しかしながら、先生がおっしゃられたように、それではどこでやめるのかという時に、症状が治まったら、いきなりやめましょうというのは臨床的になかなか難しいと思いますので、そこのところは漫然と使わず、本当に必要かどうかをその都度その都度判断していただきたいということで、「用法・用量に関連する使用上の注意」として書かせていただいております。
○佐藤(田)委員 分かりました。もし、先々これが承認されて、使われていいとなると、双極性の躁うつ病に使う薬になってくるのですか。躁にも効果があり、うつにも効果があると捉えていいのでしょうか。
○機構 そうです。両方の症状に対する効果があると捉えていただいていいと思います。
○佐藤(田)委員 分かりました。
○松井部会長 その他何かあればお願いいたします。
○宗林委員 シンプルなことで教えてください。「用法・用量」のところで、双極性障害のうつ病の改善の箇所だけが、「就寝前に投与」となっているのですが、ほかのものはそうした記載がされておりません。それから、併せて、「警告」のところに血糖値の上昇が強く書かれていて、「禁忌」のところにも書かれていますが、どのタイミングで血糖値の測定をしなければいけないのか、用法・用量との関係で少し教えてください。
○機構 用法・用量の点について、うつのところだけ就寝前を規定したのは、臨床試験で就寝前投与がされたということがあるのですが、そもそもそこを設定した理由としては、先ほど本橋先生からの御質問の回答にもあったのですが、本剤は鎮静効果を持っておりまして、夜寝る前に投与すると、副作用とも絡んではくるのですが、傾眠と言いますか、眠気を誘導するようなところがあって、それがうつ症状の改善につながっているというところもあるため、有効性が示された投与方法である就寝前を規定しているということが、1点目の御質問に対する回答になるかと思います。
 血糖値の測定のタイミングをいつ行うかについてですが、特にこの時期に行わなければいけないというところを現時点で規定しているわけではありません。定期的にと言ってしまうと、なかなか難しいと思うのですが、患者さんの体重の推移等その辺りも見ながら、必要に応じて現場では行っていただいていると考えております。
○野田委員 血糖値に関しては、薬剤による治療開始当初は基本的に2~4週間おきぐらいに、維持治療になってからも1~3か月おきに一度程度は測定していただければと糖尿病の立場からはそのように思います。
○松井部会長 そのほか、いかがでしょうか。
○加藤委員 海外ではFLXとの合剤として承認を得ている例が多いということで、この例が国内では単剤としての承認を問うという意味で初めてという御指摘がありましたが、日本でもほかに承認されているSSRI、パロキセチンなどいろいろあると思います。今、添付文書などいろいろ読んでいたのですが、例えば、それと一緒に使ってみたいと考えた場合、どのような方針をお考えなのでしょうか。例えばパロキセチンとこれを使った場合に、その作用がさらに増強されるとか、そのようなことに関して、恐らく似たような処方が適応としてあるもので、それを合わせて使いたい、それもFLXとの合剤が存在している以上は使ってみたいというようなことが、臨床サイドから出てくるのではないかと思うのですが、それに対してどのような知見を持っていらっしゃるか、あるいは方針を持っていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
○機構 海外のガイドライン等においても、この抗精神病薬とSSRIの併用というところが、双極性障害のうつ症状に対する治療法として書かれていることもありますので、国内でもそうした使い方が想定されると思います。それも想定しておりまして、国内の臨床試験で二重盲検試験が終わった後の患者さんなどをそのまま継続投与した時に、抗うつ剤、SSRIとの併用を可能にした試験を実施しておりまして、その結果を審査報告書25ページに記載しております。上の表33が併用薬別の有効性で、下の表34が併用薬別の有害事象となっております。何分、検討された例数がそれぞれ少ないので明確なことを言うのは難しいのですが、いずれにしても、有効性・安全性にそこまで大きな問題があるような結果は得られていないので、様々な抗うつ剤、SSRI、パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリンといろいろなパターンでの併用が想定されるのですが、その辺りは持ち合わせている情報が少ないので、製造販売調査のところでしっかり見ていただく形にしたいと考えております。
○加藤委員 そうしていただきたいと思います。
○清水委員 今の表33と、その下の表34ですが、このHGMS試験のn数というのは、81例ではなかったでしょうか。継続は81例かと思うのですが、これは84症例分の数字になっていませんか。そこがよく読み取れなかったのです。
○機構 少し計算が合わないようですので、確認して、後日フィードバックさせていただきたいと思います。
○松井部会長 それは後ほどということです。その点は全体の評価と言いますか、後でよろしいですか。
○清水委員 結構です。
○松井部会長 そのほかに御意見等はございますか。
 それでは議決に入ります。なお、議決に際しまして、永井委員、野田委員、松木委員、本橋委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは、議題2に移ります。機構から概要を説明してください。
○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品ブレーザベスカプセル100mgの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」機構より説明いたします。
 ニーマン・ピック病C型(NPC)は、ヒト染色体18番のNPC1遺伝子又は14番のNPC2遺伝子が欠損し、臨床的には精神遅滞と失調、不随意運動、嚥下障害等を伴う疾患です。乳児後期発症例では発症早期から言語障害を生じ、2~3年で寝たきりとなり、発症から5~10年前後で死亡することが多いとされております。一方、若年発症例でも知的退行と運動障害を発症し、5~6年で寝たきりとなり、10~20年前後で死亡することが多いとされております。患者数は全世界で約500例と推定されており、本邦では2010年8月現在、16例の患者の存在が確認されております。
 本邦では、NPCの神経症状の進行を抑制する治療薬は承認されておらず、嚥下障害や呼吸不全等に対する対症療法が中心となっていることから、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の検討結果を受け、厚生労働省より申請者に開発要請がなされました。また、本剤は希少疾病用医薬品に指定されております。
 本剤は欧州で2009年1月に承認されており、米国では開発中です。
 本品目の専門協議では、資料10に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。
 以下、本剤の有効性及び安全性について、海外の臨床試験成績を中心に説明させていただきます。
 有効性については、審査報告書31ページの表4を御覧ください。海外の12歳以上の患者を対象としたOGT918-007試験の主要評価項目とされた、水平方向の衝動性眼球運動速度であるHSEM-αの変化量について、本剤投与群と非投与群との間に統計学的な有意差は認められませんでした。この点については、NPC治療薬として世界初の比較対照試験であったこと、現時点においても規制当局のガイドラインも無い状況下で他に適切と考えられる評価項目が見あたらないこと、対象疾患の希少性や病態の特徴等を勘案する必要があると考えました。また、HSEM-αの変化量とNPCの多様な臨床症状との関連性について、現時点で明確にされているとは言えない状況であることも考慮すると、有効性の評価においては、主要評価項目の結果のみでなく、他の試験や海外レトロスペクティブ調査の結果を含めて総合的に検討することが適切と考えました。
 次に、43ページの表19を御覧ください。「主試験」と表記した12歳以上の患者の結果と「小児主試験」と表記した12歳未満の患者の結果から、HSEM-αの変化量は、本剤が投与された群ではそれぞれ-0.431±0.938及び-0.465±0.401と同様であったのに対し、主試験の非投与群では0.074±0.823であり、本剤が投与された群で改善する傾向がみられました。
 同様に、嚥下機能については、表20に示しましたように、本剤が投与された群では悪化した症例の割合が20及び27.3%と同様であったのに対し、非投与群では50%であり、また、Hauser標準歩行指数については、44ページの表21に示しましたように、ベースライン値の違いがNPC患者における評価にどの程度影響するのか不明であるものの、数値の上では、本剤が投与された群では変化量が0.2及び0.4と同様であったのに対し、非投与群では0.7であり、いずれも本剤が投与された群で悪化が抑制される傾向がみられております。
 さらに、41ページの表17に示しましたように、海外レトロスペクティブ調査によって本剤の投与前後のデータが得られた19例(表17では「重複例」と表記)の結果から、各評価項目における診断時~投与開始時までの推移と比較して、投与後に改善又は変化が無い傾向がみられています。
 これらの結果を踏まえると、本剤の有効性が明確に示されたとは言えないものの、対象疾患の希少性や重篤性、NPC治療薬が本邦に無いことも勘案すると、有効性が示されたと解釈して差し支えないと考えました。
 安全性については、46ページの表23に示しましたように、NPC患者と、海外において本剤が承認済みの効能・効果であるゴーシェ病I型患者における有害事象の発現状況を比較すると、検討例数が少ないため明確に結論づけることはできないものの、同様の傾向がみられております。なお、二つの国内第III相試験において6例の患者が組み入れられ、現在も試験が継続されておりますが、投与中止に至るような安全上の大きな問題はみられておりません。
 以上より、添付文書による適切な注意喚起がなされ、かつ製造販売後の国内外における情報収集等の必要な対応がとられることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と考えました。
 製造販売後調査については、56ページの「(5)製造販売後調査について」の項に示しましたように、胃腸障害、神経系障害、体重減少(小児においては成長障害(体重及び身長))、血小板減少を重点調査項目とし、又、用法・用量と安全性及び有効性、腎機能障害患者における安全性及び有効性等について情報収集される予定です。
 なお、58ページの「承認条件」の項に記載しましたように、国内での治験症例が極めて限られていることから、製造販売後、再審査期間中の全投与症例を対象に使用成績調査を実施して、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じる旨の承認条件を付けました。
 以上のとおり、機構での審査の結果、「ニーマン・ピック病C型」を効能・効果として、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本医薬品第一部会で審議されることが適当と判断いたしました。
 本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年が適当であると判断しております。なお、原体及び製剤は、毒薬、劇薬のいずれにも該当せず、また、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。
 薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、お願いいたします。
○松井部会長 ありがとうござました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いいたします。
○永井部会長代理 41ページに、米国で再申請に向けて検討中とありますが、もしアメリカで審査が滞った経緯が分かるのでしたら教えていただけますか。
○機構 アメリカでは、FDAが適切な対照を置いて適切な試験デザインで有効性のエビデンスを出さなければ駄目だということで、ほかの国は結構承認を取っている所はあるのですが、FDAだけは追加データを求めているということです。FDAでも多少柔軟な対応をとるけれど、きちんとした試験を行わなければいけないと、そこはFDAの規則といいますか、そのようなことできちんとしたデータを求めるという非常に厳しい扱いがなされて、一旦取り下げて、今は再申請に向けて検討しているということです。
 本剤は、米国ではゴーシェ病の承認を取っておりますので、物としては市場に存在するという状況があります。日本では、本剤はゴーシェ病での承認も取っておらず、もちろん、今申請しているNPCも承認されておりませんので、日本ではこの薬剤は市場に存在していない、欧州では存在しているという状況の違いがあります。
○永井部会長代理 グルコシルセラミドの合成阻害というのは、セラミドが蓄積して、有害事象を起こすことはないのでしょうか。これは酵素阻害ですから、セラミドからグルコシルセラミドを合成するところで、セラミドの蓄積はおこらないのでしょうか。
○機構 今のところ、事象としては確認されてはいないと思いますが、先生の御懸念の点はどのようなことでしょうか。
○永井部会長代理 セラミドは様々な作用がありますから、代謝が阻害されることによって、副作用が起こらないのでしょうかということです。
○機構 逆に、そこまでも分かっていないと言った方がいいのかもしれませんが、もちろん病態、遺伝子NPCI、IIそこの機能自体もまだ正確には分かっていないと思います。不明な部分があります。ただ、海外を含めて非常に重篤な疾患ですので、この薬剤を投与するしか今のところ方法が無いと言いますか。国内でも、先ほど言いましたように、病態自体は非常に重篤な患者ばかりですが、今のところ薬剤が原因と考えられるような投与中止に至るような状況にはなっていないということです。もちろん、今後長く使われる薬ですから、注意して見守っていく必要はあると思いますが。そのぐらいしか答えられないと思います。
○松井部会長 ちなみに、ゴーシェについては、アメリカではそのようなことは無いと考えてよろしいですか。
○機構 ゴーシェでそのような事象が起きていないかということですか。
○松井部会長 特に知られていないということですね。
○審査第一部長 御質問はセラミドの蓄積と有害事象との関係ということですが、それについては病態の進行の関係と被ってしまうので、有害事象として捉えておくというのは、このデータからは判断しにくいところです。
○加藤委員 今の議論とも関係するのですが、3ページを見ると、イギリス、ドイツ、フランスでは2002年にゴーシェI型、アメリカは2003年にゴーシェI型について承認されているということですが、日本ではどうしてゴーシェを適応とした審査が行われていないのでしょうか。資料を見ると、ゴーシェの方が投与量もずっと少ないですね。半分ぐらい、100mgぐらいで始めることになっているので、安全性等もクリアしやすいのかということが一つです。
 添付文書の一部を拝見すると、ファブリーやゴーシェIII型等様々なものが混ざったデータが出ているので、そのような意味で今後この薬について、NPCはこれで承認の条件が整っていますが、ゴーシェIに関してはこれからどうするつもりなのかを参考までにお伺いしたいと思います。
○機構 ゴーシェについては、酵素補充療法があり、ほかの会社ですが、また開発している部分もありますので、本剤についても、これからの他剤の状況等も見ながら検討するというスタンスでおります。ただ、相対的に他剤の効果の強さや既に臨床現場である程度の薬が揃っている部分もありますので、そういった状況を見ながら検討するということは説明しております。
○松井部会長 ほかの治療法があるというものとは違うということですね。
○審査第一部長 開発の経緯ですが、確かにゴーシェの方が先に海外で承認を取っているのですが、この会社自身が日本にこの薬を自発的に導入しようという形ではなくて、先ほど申し上げたように、未承認薬の検討会でNPCについて開発要請がなされて、それに応えてきたという経緯がありますので、日本はそちらが先になっているという状況です。
○清水委員 添付文書の書きぶりについて1点あります。重度腎機能障害患者に関する注意事項が「用法・用量に関する使用上の注意」の項目の一番最後と「薬物動態」の「6.腎機能障害患者における体内動態」の最後に書かれていますが、「使用上の注意」では、「使用経験が少ない」という書きぶりで、先程の「薬物動態」の項では「使用は推奨されない」という文言になっています。こちらは、どのような意味合いを持たせたのか御説明いただければと思います。
○機構 「推奨されない」という表現は、むしろ海外の添付文書でそのような記載になっています。特に重度の腎機能障害の方に、当初、禁忌にするという説明をしていたのですが、非常に重篤な疾患ですし、ほかに治療薬が無いので、本当に禁忌でいいのかという議論をした上で、専門の先生の御意見もよく聞いて、慎重投与ということです。使えないという形ではなく、慎重に使っていただくということで付けたのですが、先生の御指摘のとおり、文言のニュアンスが違うと言われると、そこは整理しなければいけないと思いますので、検討させてください。
○佐藤(田)委員 事前に委員会の事務局の方にもお伺いしたのですが、このような性質の希少疾患で、手段が無いので、少数例だけれども投与してみるということにも、もちろん患者なりその保護者の承諾下で使うことになるのですが、先ほど言ったように、生存年齢から考えても、これを使ったら成人まで生きるという保証があるわけでもありません。けれど、今何もせず、投与しなければ、何か手が無いかということで本剤を使うとなると、助けてあげなければいけないから倫理上行ってみましょうということになるのですが、ある意味まだ分からないので、臨床結果で見ようということですね。言葉は悪いのですが、逆を言うと試してみようというようにも取れる状況で、これを本当に良いと、この委員会で認めるかどうかを私個人が意見を決める時に大変迷います。ただし、そのようなものは怖いので、危険だから使わないと言うと、薬の製薬上の進歩が無いということから考えるのでしょうが、投与していたけれど、途中で亡くなってしまった方が多ければ、この薬は駄目だったということになるわけですが、逆に、今現在16例ですから疫学とは言えませんが、どのようになったら著効というか、効果があったといえるのでしょうか。ある時期、10年後くらいに判定される予定なのでしょうか。推測で結構ですが、判断基準と言いますか、大変難しい質問で申し訳ないのですが教えてください。
○審査第一部長 大変難しい御質問だと思いますが、最終のエンドポイントを何に置くか、生存期間の延長という指標でみなければならないのか、それとも病態の症状が悪化するのを抑えるということでも効果とみるのかどうかということになってくると思います。おっしゃるように、この疾患であれば、かなり早期に若く亡くなられる方が多いものですから、最終的には生存期間の延長ということになるかもしれませんが、ハード・エンドポイントを生存期間の延長となると、相当のデータ数も要りますし、評価期間もかかります。実際にそれだけのデータを取れるかというと、非常に難しいということになります。
 代替しようというわけではありませんが、病気の進行を抑える、あるいは若干でも運動機能や嚥下反応が良くなるというところで評価してみようということで、現在のデータが出てきたということです。日本は16例ということで、本当に使用経験的なデータしかないのですが、ヨーロッパでは比較試験、確かに使用でかなり良いデータが出た項目と出ていない項目があることはあるのですが、病気の進行をある程度抑える、あるいは若干良くなるというデータが出たということで、この薬については承認してもいいのではないかということでお出ししております。主要評価項目をどこに置くかということで、なかなか難しい問題だと思います。
○機構 少し補足します。16という数字が出たのですが、確認されている患者が16で、今のところ6例に投与されているということです。6例の今後なのですが、先ほどありましたように、全投与例を対象に製造販売後調査を行っていただくということです。それは、希少疾病ですから、かなり長期間の調査になります。具体的に有効性については、神経機能障害スコアということで、歩行、手作業、言語、嚥下機能、発作、眼球運動等のスコアを取って、有効性に対する影響をみていくつもりです。ただ、例数が例数ですから、どこまで見えるかという課題はどうしても残りますが、そこは海外のデータも見つつ、総合的に判断していくしかないであろうと考えております。
○松井部会長 大変評価は難しいと思いますが、もし他にあるとすれば、これは私見ですが、患者あるいは御家族のQOLといったことも今後は考えていく必要があるのかもしれません。ほかに御意見はありますか。
○山田委員 有害事象についてお尋ねします。46ページの資料では、重度の有害事象として下痢と神経伝達検査異常が認められたと記載されておりますが、添付文書の案では下痢しか記載されていないように思います。これは何か、神経伝達異常については重度と記載しない特別な理由があるのでしょうか。
○機構 元々病態として神経がやられる疾患なので、薬のせいか薬のせいではないかの判断が難しいというのがベースにあると思います。
○山田委員 ですが、臨床試験ではプラセボと比較すると重度だという結果が出ているのです。そこを書かなかったということは、何か納得がいかないような気がするのですが。
○審査第一部長 その他の副作用のところで、重大な副作用に出ていないという御指摘ですか。
○山田委員 そうです。審査報告書の46ページでは、重大な有害事象は下痢15%、神経伝達検査異常12.5%と明記してあるので、もしそういうことであれば書いた方がいいのではないかと思ったのです。
○松井部会長 神経伝達のところをどのように取ったかということではないでしょうか。もう一度ページ数をおっしゃってください。
○山田委員 審査報告書の46ページの真ん中辺りです。
○機構 御指摘の趣旨は分かりましたので、少し検討させてください。
○松井部会長 よろしいですか。検討というのは、少し時間を取ってということですか。
○機構 記載した方がよろしいという御指摘と理解しましたので、そのような方向で考えさせていただくということです。
○松井部会長 山田委員、よろしいでしょうか。ほかに御意見はありませんか。これは大変難しい問題だと思いますので、ここで議決に入ろうと思うのですが、異議が無いかどうかのほかに、反対意見があれば聞いてみようと思います。いかがでしょうか。それとも、異議が無いかどうかの議決だけでよろしいですか。
 それでは、お伺いしてみます。本議題について、承認を可として良いとお考えの委員は挙手をお願いします。それでは、反対であるとお考えの方、挙手をお願いします。これで全員だと思います。ありがとうございました。保留という方はいらっしゃいませんね。大多数の御意見が異議が無いと受け取りましたので、承認を可として、薬事分科会に報告としてよろしいでしょうか。では、そのようにいたします。
 それでは、議題3に移ります。機構から概要を御説明ください。
○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品サインバルタカプセル20mg及び同カプセル30mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」機構より御説明いたします。
 本剤の有効成分であるデュロキセチン塩酸塩は、米国Eli Lilly社において合成されたセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であり、海外では2011年10月現在、101の国又は地域で承認されており、今回の申請効能・効果である「糖尿病性神経障害に伴う疼痛」については、98の国又は地域で承認されております。本邦においては2010年1月に、うつ病・うつ状態の効能・効果で承認されております。糖尿病性神経障害に伴う疼痛に対し、20□ 年 □月より臨床試験が開始され、有効性及び安全性が確認されたとして、今回、製造販売承認事項一部変更申請が行われました。
 本申請の専門委員としては、資料10に記載されております4名の委員を指名しております。
 審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。
 まず、有効性についてですが、審査報告書8ページの表1を御覧ください。糖尿病性神経障害に伴う疼痛を有する患者を対象とし、プラセボ、本剤20、40又は60mgを13週間投与した用量反応性試験において、主要評価項目であるFASでの最終評価時における平均疼痛スコアのベースラインからの変化量の用量反応関係について線形性は認められず、本剤各用量群とプラセボ群との対比較において、統計学的な有意差は認められませんでした。
 次に、審査報告書9ページの表2を御覧ください。糖尿病性神経障害に伴う疼痛を有する患者を対象とした優越性試験において、主要評価項目であるFASでの投与12週時における平均疼痛スコアのベースラインからの変化量は、プラセボ群で-1.61、本剤併合群で-2.47、本剤併合群とプラセボ群の群間差は-0.87であり、統計学的な有意差が認められました。
 優越性試験の試験デザインとその結果に関する審査内容について、審査報告書12ページ「1)優越性試験の試験デザインと結果の解釈について」の項を御覧ください。糖尿病性神経障害に伴う疼痛は、夜間に増悪することが多いとされており、用量反応性試験においては、夜間疼痛スコアが4以上の集団では、本剤40mg群において、プラセボ群との間に統計学的的な有意差が認められました。また、糖尿病性神経障害の症状のうち、本剤はその作用機序から、疼痛を主とする陽性症状の改善を目的としており、知覚鈍麻等の陰性症状に対する有効性は期待できないと考えられました。
 これらのことから、優越性試験においては、本剤の有効性がより適切に評価できると考えられる、夜間疼痛や陽性症状を主に有する患者を組み入れられるよう、プロトコルの記載の変更や治験担当医師への説明が行われ、その結果、本剤併合群のプラセボ群に対する優越性が検証されており、機構としては、優越性試験の実施にあたり種々の対策を講じ、適切な患者選択が行われたことについて、特に問題は無いと判断しております。
 しかしながら、用量反応性試験の事後的な解析においては、本剤40mgの有効性が示唆されているものの、本剤60mgの有効性については依然として明確になっていないことから、優越性試験において、本剤40mgと60mgの有効性が同程度と仮定し、40mg群と60mg群の併合群によるプラセボ群に対する優越性を検証することを主要解析と計画したことは不適切であり、本試験成績をもって、有効性が検証されたと結論することは困難と判断いたしました。
 その上で、機構は以下のような判断をいたしております。審査報告書14ページの2行目以降を御覧ください。本剤は海外の治療ガイドラインにおいて、糖尿病性神経障害に伴う疼痛の治療薬としては第一選択薬とされており、本邦の医療現場においては糖尿病性神経障害に伴う疼痛に使用可能な薬剤が限られていること、優越性試験の成績より、本剤40mg及び60mgの有効性は期待できることを考慮すると、当該試験成績より本剤の一定の有効性は示されていると判断し、承認することは可能と考えましたが、本剤各用量の有効性が検証されたとは言い難いことから、製造販売後に本剤の有効性を確認することが適切と判断いたしました。
 審査報告書28ページ、「(1)本剤の有効性について」の項を御覧ください。以上について専門協議での議論を踏まえ、製造販売後臨床試験の実施を申請者に求めた結果、既存薬であるプレガバリンに対する非劣性を検証することを目的とした臨床試験が実施される予定になっております。
 次に、安全性についてですが、審査報告書18ページの表13及び14を御覧ください。本剤投与により、血糖値及びHbA1cの上昇が認められておりますが、その程度は小さいものでした。また、同ページ表15を御覧ください。国内臨床試験における糖尿病に関連する有害事象として、本剤群で口渇等の有害事象が多く認められましたが、多くが軽度又は中等度の事象でした。
 1.8の添付文書(案)の2ページの「2.重要な基本的注意」の(9)の2)を御覧ください。以上を踏まえ、本剤の投与対象が糖尿病患者であることを考慮し、血糖値の上昇について注意が必要と判断し、添付文書上において、注意喚起を行うこととしております。
 また、審査報告書の23ページ表22を御覧ください。本剤の既承認効能・効果であるうつ病・うつ状態においては、抗うつ薬投与による自殺リスクがあることが報告されており、既に添付文書上において注意喚起がなされているところです。糖尿病性神経障害に伴う疼痛を有する患者を対象とした本剤の海外プラセボ対照試験においては、自殺関連の有害事象は認められておりませんが、国内臨床試験においては、自傷行動及び自殺既遂が各1例認められていることを踏まえ、糖尿病性神経障害に伴う疼痛患者を対象とした場合にも自殺リスクは否定できないものと考えております。
 そこで1.8添付文書(案)の1ページの「2.重要な基本的注意」の(1)を御覧ください。そのため、本項において、うつ病・うつ状態以外の適応においても自殺企図の恐れがあるため、慎重に観察するよう、注意喚起を行うこととしております。
 以上の審査を踏まえ、本剤の糖尿病性神経障害に伴う疼痛に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本医薬品第一部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請は新効能医薬品であり、再審査期間は、うつ病・うつ状態に係る再審査期間の残余期間である平成30年1月19日までとすることが適切と判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。
 以上です。よろしく御審議のほどお願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方から御質問、御意見をお願いします。
○佐藤(田)委員 既にうつ病・うつ状態については効果があると言われているわけです。臨床薬理学的というのでしょうか、糖尿病性の神経因性の疼痛だと、痛くて眠れない等、始終ある疼痛により、徐々にうつ状態になっていったものなのでしょうか。それとも全く別にデプレッションになっている人で、かつ、今回投与する目標になると、二つが揃ってくるとなった時には、両方の条件がある人に投与されるのでしょうか。そこを教えてください。
○機構 最初に承認されたうつ病・うつ状態については、その時の患者で糖尿病の神経障害を合併していた患者がどのぐらいいるかの情報は持ち合わせていないのですが、基本的には、うつ病そのものに有効性を発揮したという審査結果になっております。
 今回の糖尿病性の神経障害に伴う疼痛については、薬理作用として、内因の痛覚抑制経路をこの薬で活性化することによって鎮痛作用を示すということになっておりますので、うつ病に対する作用の発揮の仕方とは違うということになっております。数の中には、先生がおっしゃられたように、痛くて、そこからうつを合併するような患者もいるとは思いますが、基本的には作用のメカニズムは違うと考えていただければと思います。
○松井部会長 ほかにはいかがでしょうか。
○加藤委員 まず、今の佐藤先生の御質問に一つコメントをしますと、糖尿病の方がうつ病の合併率が高いか低いかということに関しては両論ありまして、論文的にも文献的にも合併率が高いという論と変わらないという論の両方があると思います。それが現状ではないかと私は思います。
 質問ですが、4ページの前臨床について簡単に伺います。まず一つは細かいことですが、4ページの左下のvon Fray filamentというのは綴りが違っていますので修正してください。正しくは、von Frey filamentです。
 前臨床の試験の神経障害性疼痛ということで、様々なモデルを使って調べておられるのですが、実際に糖尿病、特にI、II型の両方とも糖尿病性の神経障害性疼痛モデルというのは確立していると思いますが、それに関しての試験が一つも出ていないというのはどうしてかということと、今後どうなるのかということについてお伺いしたいと思います。
○機構 先生がおっしゃるように、糖尿病のモデルの動物ができていることを私たちも申請者の方に確認して、なぜそのモデルを使って確認しなかったのかということを聞いたところ、行わなかった理由は余り明確にはなっていないのですが、神経障害性疼痛にこの薬は効いてくるので、ほかのモデルでも評価できるのだという回答でした。行わなかった理由の正当性は弱いかと我々も考えています。作用機序から考えて、ほかの神経障害のモデルから評価したものも読み込めないかと言われると、そこまでではないので、一応許容可能と判断したところです。
○加藤委員 その御判断は私も賛成します。ただ、実際に適応を考える時には、糖尿病性神経障害性疼痛や帯状疱疹後の疼痛などを全部きちんと分けて、我々はここで承認審査をしているということを考えてみますと、モデルが存在しないという場合ももちろんあるのですが、存在するのであれば、それも前臨床のデータに加えていただいた方がいいと思いますが、いかがでしょうか。
○機構 御指摘のとおりだと思いますので、今後十分留意するよう、申請者に伝えたいと思います。ありがとうございます。
○野田委員 追加ですが、うつと糖尿病の関係はいろいろな報告はあると思いますが、メタ解析的に言えば、糖尿病の方では全体にみると、少しうつ傾向の人が多いと言われているのではないかと思います。
○松井部会長 客観的に両論あるということですね。
○野田委員 ただ、総合的にみると、メタアナリシス等をしてみると、そのような結果になっているのでないかと思います。必ずしもすべての報告で多いと言っているわけではありませんが。
○松井部会長 ほかにいかがでしょうか。
○清水委員 この薬剤の説明の中にもあったのですが、用量設定が極めて脆弱で、特に60mgの有用性については、もしかしたら添付文書の用法・用量を変えなければならない可能性も出て、最高用量としての60mgの正当性が何も根拠が無い状況だと思います。それで承認後の臨床試験をオーダーしたのだと思いますが、これは承認の条件にすることはできないのですか。
○松井部会長 用量の設定ですね。いかがですか。
○機構 得られているデータからは、おそらく60mgも40mgと同様に有効だろうという判断をするので、一応承認が可能ではないかと判断したのですが、先生から御指摘のあったように、今度行う試験の結果によっては、そこは変わり得ることは十分あるかと思います。この製販後臨床試験のことを承認条件とするか、承認条件としないかに関しては、こちらでも若干検討をいたしました。海外では60mgで使用されているところもあって、最終的にはこの用量の有効性は説明できるだろうと考えて、さらに、実施されている国内試験の中から、確かに根拠は脆弱ではありますが、40mg、60mgのそれぞれに関して有意差を示していることから、今後実施する製造販売後臨床試験についは、60mgの用量選択に特化したものではなく、むしろ本剤の有効性の検証というところで、広く用量も含めて見てくるというような中身を考えて、その内容としては承認条件とするよりも、指示事項という形で扱うのが適切であろうと我々は判断しました。
○松井部会長 今の点はいかがですか。
○清水委員 確か指示事項になれば、指示事項で添付文書に載りますね。記載はされないのですか。
○審議役 承認条件というのは、薬事法の中でも必要最小限にという規定もあります。ほかのいろいろな状況も判断しながら、付与すべきかどうかは検討する必要があるかと思います。今回の場合については、一応40mg、60mgの用量は担当の方から御説明したとおり、我々の考え方としては、全体的に有効性はあるのではないかということが判断できるということと、それから課すべき製販後の臨床試験については、単に60mgがどうかという話ではなく、もっと大きなところということもありますので、そのようなことからすると、ほかの状況等を鑑みて、条件化するまでのことはないのではないかと私どもは判断したところです。
○機構 いずれにしても、実施した試験の結果については得られ次第、臨床現場に速やかに適切に情報提供することが重要と考えておりますので、そこはきちんと申請者に指導したいと考えております。
○清水委員 できれば期間も、メーカー任せにするようなことのないようにした方がいいのではないかと思います。
○機構 ありがとうございます。
○手島委員 再審査の残余期間が平成30年ということで、6年近くですが、その間に、例えば中間でも報告いただくとか、そのようなことはできませんでしょうか。
○松井部会長 中間報告ということですが、いかがでしょうか。
○機構 スケジュールについても申請者と詰めておりまして、組入れに1年ぐらいを要して、その後、試験期間が13週間ぐらいですので、諸々のものが2年と少しぐらいでいけるのかなと今のところ考えているので、再審査の期間内に結果は出ると想定しています。適宜、試験の進捗状況については、こちらでも確認していかなければいけないと思っています。
○松井部会長 ほかにはいかがですか。それでは、議決に入ります。なお、永井委員、野田委員、村田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 御異議が無いようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 それでは議題4に移ります。事務局から概要を説明してください。
○事務局 審議事項議題4、資料4「パシレオチドパモ酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」事務局より説明いたします。
 資料を2枚めくって、医薬品医療機器総合機構が作成しております評価報告書を御覧ください。
 申請者はノバルティスファーマ株式会社です。
 希少疾病用医薬品の指定要件の対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について御説明いたします。
 まず、対象患者数は旧厚生省の特定疾患の調査研究班によって全国の疫学調査が行われており、その時にクッシング症候群の推定患者数が1,250例、同調査においてクッシング病の患者の割合が、そのうち35.8%と報告されておりますので、クッシング病の患者数は450例程度と推定されております。したがって、希少疾病用医薬品の指定要件の5万人未満を満たすものと考えております。
 医療上の必要性について御説明いたします。クッシング病について、第一選択肢としては下垂体腺腫の外科的切除等が行われるのですが、薬物療法としては、現在、ミトタン、トリロスタン、メチラポン等が承認されています。しかしながら、これらの薬剤については、それぞれ副腎皮質の不可逆的な破壊作用を認めること、有効性が不十分な場合があること、そういった有効性・安全性の観点から問題点が挙げられており、治療の選択肢は十分とは言えないという状況です。本剤は、新規のシクロヘキサペプチドのソマトスタチンアナログでございまして、ソマトスタチン受容体への結合を介して薬理作用を示します。これによってACTHの分泌過剰自体を抑制して、副腎皮質でのコルチゾール分泌過剰を改善すると期待されています。
 これらを踏まえて、本剤の医療上の必要性は高いと考えております。
 開発の可能性についてです。LAR製剤と書いてあるのが本剤ですが、本剤を用いてクッシング病に対する有効性・安全性を評価する第III相試験が海外で行われており、これに日本からも参加しているという状況です。また、本剤ではありませんが、皮下注用の製剤の開発も海外で行われており、これについては海外で承認審査が進められているという状況です。
 これらの状況を踏まえて、本剤のクッシング病に対する開発の可能性はあると判断しております。
 以上、3点の評価の結果、本品目を希少疾病用医薬品として指定して差し支えないという判断になっております。以上です。御審議をお願いいたします。
○松井部会長 ありがとうございました。委員の先生方、御審議をお願いします。
○野田委員 患者数の定義というのは、腺腫に対する手術療法によって治癒した方は除いているということですか。
○事務局 そうではなくて、今回の患者数の算出にあたっては、あくまでクッシング症候群の数からクッシング病の割合を見立てて、クッシング病の患者数を算出してきたというところです。実際に投与される患者としては、当然、手術される患者は除かれるとは思います。
○野田 パーセンテージを掛ける根拠がよく分からなかったのですが。実際には腺腫に対する手術で、いわば根治している人も多いと思いますが、四百数十人というところが、理論的にそれでいいのかなというのでお聞きしたのです。
○事務局 先生の御指摘のとおりでして、先ほど御説明いたしました450例については、手術をされるような方も含めての数字になりますので、そのような意味では、本薬が使われる対象としては、患者数としてはもう少し少なくなると思います。ただ、希少疾病用医薬品の指定要件は5万人未満ということになりますので、その要件は満たしているものと考えております。
○野田委員 印象としては、術後の治療例も含めれば実数としては逆にもっと多いようにも思いますが、いずれにしても5万人より少ないのは分かります。
○松井部会長 ほかにはいかがですか。特に御意見ございませんか。
 それでは、議決に入りたいと思います。なお、加藤委員、永井委員、野田委員、村田委員、山田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただきたいと思います。
 本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。御異議が無いようですので、指定を可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。
 次は報告事項に入ります。
○機構 その前に1点、議題1で、清水委員よりジプレキサ錠の例数が合わないのではないかという御指摘がありました。審査報告書の25ページです。表33、表34のところですが、足すと84例になって、本当は81例だったのですが、なぜ84例になるかということですが、確認しましたところ、気分安定薬は、隣のリチウムも含まれたものを気分安定薬という定義をしていますので、ここが重複していることになります。ですから、リチウムの3例を除くと84-3で81例となり、ぴったり合います。
○松井部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。ほかに無ければ報告事項をお願いします。
○機構 報告事項議題1、資料5「医薬品ジアグノグリーン注射用25mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。資料5を御覧ください。
 本剤は、暗緑青色の色素であるインドシアニングリーンを有効成分とする凍結乾燥注射剤でして、肝機能検査、循環機能検査、乳癌及び悪性黒色腫におけるセンチネルリンパ節の同定について効能・効果を有する検査薬です。
 本薬について、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成23年7月29日に開催された本部会における事前評価を踏まえて、第一三共株式会社から、「脳神経外科手術時における脳血管の造影(赤外線照射時の蛍光測定による)」の効能・効果及び当該効能・効果に係る用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。
 医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。以上です。
○事務局 報告事項議題2、資料6-1、6-2「優先審査指定品目の審査結果について」報告いたします。
 資料6-1「リリカカプセルの優先審査品目の審査結果について」を御覧ください。優先審査の取扱いについては、資料の2ページに概要をお示ししております。この制度は、薬事法第14条第7項に基づき、希少疾病用医薬品やその他医療上特に必要性が高いと認められる品目について、他の品目に優先して審査を行うものです。その指定にあたっては、適応疾病の重篤性、医療上の有用性を総合的に評価して判断されます。
 資料の1ページに戻りまして、今回の対象品目は、販売名「リリカカプセル25mg、同カプセル75mg、同カプセル150mg」、一般名は「プレガバリン」、申請者は「ファイザー株式会社」となっております。
 本剤については、「線維筋痛症」の効能・効果で承認申請がなされたものです。
 事前に取りまとめた医薬品医療機器総合機構の報告書に沿って、本剤の優先審査の該当性について概略を御説明いたします。
 資料の4~6ページを御覧ください。本剤の対象疾患である「線維筋痛症」は、全身に及ぶ激しい持続的な痛み及び機能障害が認められ、日常生活に著しい影響が及ぶとされ、特に、重症度分類でステージIV以上では、痛みのため自力で体を動かせず、ほとんど寝たきり状態になるなど、一定の重篤性が認められる疾患です。
 また、現時点で、日本人患者に対して高いエビデンスを有する治療法は無く、本邦で線維筋痛症に対する承認を取得している薬剤はありません。
 本剤は、現在32の国又は地域で線維筋痛症に対して承認されており、線維筋痛症治療の第一選択薬の一つとされており、また、国内臨床試験では、プラセボ群と比較して本剤群の平均疼痛スコアについて統計学的に有意な差が認められております。
 以上を踏まえて、本剤は、優先審査品目に該当すると判断いたしました。
 本剤については、今後、機構での審査を経た後に、改めてこの部会で御審議いただくことになるかと思いますので、その際にはどうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 資料6-2「イメンドカプセルの優先審査指定品目の審査結果について」報告いたします。申請内容は、抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(CINV)の小児用量の追加です。機構の意見報告書を基に御説明いたします。
 資料の5ページを御覧ください。適応疾病の重篤性について、CINVは患者の生活に著しい影響を及ぼす可能性のある疾患であると考えられますが、基準として考えています生命に重大な影響がある疾患、あるいは病気の進行が不可逆的な疾患であるというところまでは言えないのかと考えております。
 8ページは海外の試験と国内の試験の有効性の成績を表に示しております。海外の第III相試験では標準治療群として、セロトニン受容体拮抗薬とデキサメタゾンを使った標準治療群と標準治療群に本剤を上乗せした本剤群の2群が設定されております。これについては、本剤を併用した時に、確かに有効性が高いような傾向はみられているのですが、統計的な有意差を示したようなものではありませんので、それを踏まえて有効性が優れているとまでは評価し難いと考えております。
 安全性については、上乗せになりますので、そういった点から審査において慎重な検討が必要と考えており、既存の治療法よりも優れているとは判断できないと考えております。
 これらを踏まえて、本品目については優先審査には該当しないと評価しております。以上です。
○機構 報告事項議題3、資料7-1~7-3「医療用医薬品の再審査結果について」報告いたします。こちらはいずれも医薬品再審査確認等結果通知書です。
 資料7-1は、一般的名称はA型ボツリヌス毒素、販売名はボトックス注用50単位及び同注用100単位のものです。
 資料7-2は、一般的名称はアレンドロン酸ナトリウム水和物、販売名はフォサマック錠35mg及びボナロン錠35mgのものです。
 資料7-3は、一般的名称はソタロール塩酸塩、販売名はソタコール錠40mg及び同錠80mgのものです。
 これらの品目について、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査などに基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量などの承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。以上です。
○松井部会長 ありがとうございます。以上の報告事項について、御質疑がありましたら、お願いいたします。
○宗林委員 1点教えてください。資料6-1のリリカの線維筋痛症ですが、線維筋痛症のはっきりとした診断基準は明らかでしたでしょうか。
○機構 優先審査の資料6-1の5ページの「適応疾病の重篤性について」の6行目、厚生労働省研究班の「線維筋痛症診療ガイドライン2011」というものが既に作られておりまして、これは海外での診断基準等を参考にしながら作られたものですが、これを日本での診断のガイドラインにして、現場では使っておられると聞いています。
○松井部会長 いかがですか。
○宗林委員 私もここに書いてあるガイドラインだろうと思ったのですが、血液検査等でも余り分からない病気、そして他のものがなければ、非常に痛い時にこれに区分されるということです。線維筋痛症の専門家の先生の所に行くと、線維筋痛症と診断される傾向が多いと思っていたものですから、申し訳ありません。それが悪いというわけではないのですが、診断基準が明確になっているのか、あるいは症状によって、リウマチのように、そういった形でいくつかの症状を満たせばこの疾患とするというような基準ではないかと思ったものですから、教えていただければと思いました。
○機構 補足させていただきます。確かにこのガイドラインは一定の基準は書いてあるのですが、それで全部が説明できるかというと、恐らく、それで説明しきれない部分もあると思います。患者によっては、なかなか診断がつきにくい方もいらっしゃるとは聞いています。
 実際にこのガイドラインについても、日本中どこでも普及しているというわけでもありませんので、この薬の審査の中で議論することにはなると思いますが、どのような患者にこの薬を使っていただくのか等、線維筋痛症の診断も含めて、どのようにしたら適正使用ができるのかというところは、引き続き議論していきたいと考えております。また、承認審査の部会に上がってきた時には御意見をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 一般的にこのようなガイドラインは、特に最近はかなり注意深く作られていると私は思っております。
 これも含めて、ほかの議題についてもいかがでしょうか。
 それでは、報告事項については御確認いただいたものといたします。
 本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。
○事務局 次回の部会は、既に御案内のように2月24日(金)の午後3時から開催させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
○松井部会長 それでは、本日はこれにて終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 野村(内線2746)

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