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2012年3月6日 第4回 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成24年3月6日(火)13:00~15:00


○場所

中央合同庁舎第5号館専用14会議室


○出席者

【委員】 岩村座長、石井委員、大胡田委員、駒村委員、杉山委員、武石委員、田中委員、森委員、山岡委員


【事務局】 中沖高齢・障害者雇用対策部長、山田障害者雇用対策課長、田窪主任障害者雇用専門官、石田障害者雇用対策課長補佐、西川障害者雇用対策課長補佐


○議題

1.他の研究会における検討状況について
2.今後の主な論点「第1 基本的枠組み」について
3.今後の主な論点「第2 障害を理由とする差別の禁止」について
4. その他

○議事

○岩村座長
 それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第4回「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」を開催いたします。今日は、北野委員と野澤委員がご欠席ということでして、田中委員は遅れて見えられるのではないかと思っております。
 まず、会議の開催に当たりまして、前回と同様ですが、会議の進行について皆様にお願いがございます。視覚・聴覚障害をお持ちの方などへの情報保障の観点から、ご発言などをされる際には、発言者は必ず手を挙げていただくと。手を挙げた発言者に対して、座長から指名をさせていただきます。指名を受けた発言者の方は、ご氏名を名乗ってからご発言をいただくという運営を行いたいと思っておりますので、ご協力をよろしくお願いいたします。
 それでは早速、本日の議事に入りたいと思います。お手元の議事次第に沿って進めてまいります。まず第1の議題は「他の研究会における検討状況について」ということで事務局から資料の提出をいただいていますので、まずその説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○障害者雇用対策課長補佐
 課長補佐の西川でございます。よろしくお願いします。資料1をご覧ください。前回の研究会で、杉山委員から他の研究会との関係について、ご質問をいただきました。現在、障害者雇用に関しましては、この研究会を含めて3つの研究会を開催しております。現在、この研究会以外の研究会では、関係者からのヒアリングなどを経まして、検討すべき論点を提示して、今後、論点ごとに議論を行っていくという状況になっております。つきましては、中間的なこれまでの検討状況、それから、この研究会に関連する他の研究会からのご意見などを簡単にご報告させていただきます。
 資料1-1をご覧ください。1つ目の研究会は障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方について検討を行っています。資料1-1がスケジュールになっています。現在、関係者からのヒアリングを経まして、第4回まで議論が終了しております。
 資料1-2をご覧ください。この研究会における論点です。大きく3つありまして、1つ目が「障害者雇用促進制度における障害者の範囲について」の検討、2つ目が「雇用率制度における障害者の範囲等について」の検討、3つ目が「雇用率制度に関するその他の論点」ということで、ダブルカウント、特例子会社などについての制度の検討を行うということになっております。
 続いて、資料1-3です。1つ目の研究会におきまして、この研究会に関連する意見等を一覧としてお示したものです。かいつまんでご説明させていただきます。資料1-3のいちばん上の段ですが、障害者雇用促進法における障害者の定義規定に関しまして、改正障害者基本法を踏まえて発達障害を明記するということと、それから、雇用上合理的配慮を必要とするものを追加すべきではないかというご意見です。また、次のセルは3つとも同様のご意見ですが、合理的配慮と機会均等という権利条約の要請に対応することと、雇用義務制度との関係については、両制度の在り方、関係性を整理すべきではないかというご意見です。その他については、合理的配慮の具体的な内容に関するご意見等をいただいていますので、ご参考にご覧いただければと思います。
 続きまして、資料1-4です。こちらが、我々は3つ目の研究会と呼んでいますが「地域の就労支援の在り方に関する検討」を行っています。スケジュールに関しては、現在、関係者からのヒアリングを経まして、本日午前中に開催されました第5回まで終了しているところです。
 資料1-5です。こちらが、この研究会での論点(案)です。こちらも大きく3つありまして、まず1つ目が、企業が障害者雇用に取り組むために必要な支援に関して、雇入れの前後、それから定着、それから引退過程という、それぞれの段階ごとに、また障害特性に応じて必要な支援というのは何かということが1つ目の検討課題です。2つ目は、そうした必要な支援を整理した上で、それぞれの就労支援機関ごとに求められる役割について検討を行っていくというのが2つ目の課題です。そして3つ目が、それらの役割を踏まえて、地域のネットワークの充実または強化に向けての検討を行っていくということになっています。
 最後に、資料1-6です。細かい表になっていますが、3つ目の研究会において、この研究会に関連する意見などを一覧にしたものです。こちらの研究会では、多数の障害者団体からヒアリングを行っている関係で、抜粋した意見には、それぞれの障害特性に応じた合理的配慮の具体的な内容に関するご意見を多くいただいています。こちらも、説明は割愛させていただきますが、ご参考にご覧いただければと思います。以上、簡単ではありますが、他の研究会における検討状況の報告でございます。
○岩村座長
 ありがとうございました。それでは、いまご説明いただきましたことを踏まえて、ご質問などありましたらお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、続いて、議事次第にあります2番目の議題に移りたいと思います。2つ目の議題は、今後の主たる論点のうちの「第1 基本的枠組み」についてということになります。ここから、この研究会で検討すべき個別の論点についての議論を進めていくということになります。ただ、その前に、前回の研究会において、諸外国の制度に関して委員の皆様からご指摘あるいはご質問などがありましたので、それらの点について事務局から資料を出していただいています。それについて、まず説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○障害者雇用対策課長補佐
 それでは、資料2をご覧ください。前回の研究会で、諸外国制度、ドイツ、フランス、アメリカ、イギリスの制度について説明を行いました。その際、各委員から多数のご質問等をいただきましたので、本日ご回答できる範囲で回答させていただきます。残りについては、次回以降、またご回答させていただきたいと思います。
 まず2頁は、杉山委員からご質問をいただいた件です。アメリカにおける差別禁止法制の導入前後での雇用促進の影響といったものがどうなっているのか、というご質問です。これは、おそらく雇用義務制度が存在しないアメリカにおいて、障害を理由とする差別禁止法、いわゆるADA法で雇用促進が図られているのかというご質問だと考えています。こちらについては、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構により調査が行われていまして、その報告書の抜粋を記載しています。点線の中の下線をご覧ください。まず1行目ですが、ADAの制定前後で、障害者の就業状況に変化がみられたかどうかについて、人々の関心は高く、様々な調査が行われていると。3行目の真ん中辺りですが、Cornell大学の調査報告書によると、1989年、これがADA法の制定1年前になりますが、このときに28.8%であった障害者の就業率は、次の行の最後のほうに飛んでいただいて、2003年に20%を切って2009年には16.8%となっているということです。他方、障害を持たない方の就業率については、1989年の78.2%から、2000年以降は80%前後で推移しているということでございます。この結果から、障害を持たない方の就業率は、若干増していますが、大きな変更点はない、障害を持つ方につきましては、ADA法の制定前後で単純に比較すると、低下しているのではないかと言えるのではないかと思います。
 なお、最終的にこの研究報告書では、最後の行の下線部ですが、この他の調査でも、ADA法の制定前後で大きな変化はないとする調査はあるものの、障害者の就業率がADA法制定後で高まったとの結果が得られたものはないと言われております。
 続いて3頁です。こちらは、前回田中委員から、合理的配慮の提供と雇用義務との関係についてのご質問をいただきました。ドイツとフランスにおいてはその両制度が併存しているということで、ご参考までですが、それぞれその制度の関係性について、ドイツにおいては憲法判断が、フランスにおいては差別救済機関の意見書が出ておりますので、こちらも高齢・障害者雇用支援機構の報告書の抜粋でご説明をさせていただきます。
 まず、上のドイツにおける憲法判断の部分ですが、点線囲みの真ん中辺りの下線部です。ドイツの企業家は外国の競争相手に比べ、障害者雇用義務を課されることにより不利な状態に置かれており、ドイツ国民は欧州法上保障されている権利から排除されている疑いがあると主張して、裁判となったということです。この背景には、ヨーロッパでは「EU指令」というもので障害者に関する雇用機会の均等、差別禁止といったことを求めていまして、ドイツもそれに従う法整備が進められた時期であったということで、そうした法整備と雇用義務制度との関係性について、事業主に対しては過剰な負担となっているのではないかといったことの訴えだと思います。
 雇用機会の均等とか差別禁止という法整備につきましては、障害者は他の労働者と平等な雇用機会が確保されるということになって、それに加えて一定割合以上の雇用を義務づける雇用義務というのは、事業主にとってみれば、そうした法整備があれば、過剰な負担ではないかというような主張だと考えられます。
 判決の結果ですが、最後のパラグラフの「2004年判決は」というところですが、現行制度への異議をまず却下した上で、むしろ雇用義務制度、その枠組みについては、制度の必要性を再確認したという形になっていまして、両制度の併存というのは憲法違反ではないという判断でございます。
 次は、フランスの差別救済機関の意見書です。点線囲みの下線部ですが2010年、HALDEは、この差別禁止と雇用義務制度の原則が両立するかという問題意識に基づき検討を加えたとなっていまして、それ以降は意見書の抜粋を掲載しております。結論から申し上げますと、下線部の最後になりますが「障害者に対する特別規定、ここが雇用義務、雇用割当制度のことを言っていますが、それが障害者の職業参入の各段階をスムーズにする補足的役割を果たすという面では有用である。」という結論で意見書は締め括られております。いずれにしましても、差別禁止法制と雇用義務制度については併存が可能であるという見解だと思われますが、権利条約の中でも積極的差別是正措置を置くことは認められていまして、わが国において権利条約の批准と雇用義務制度の関係性に関して参考になる資料ではないかと考えております。
 4頁は、北野委員から論点の追加の際にご発言をいただいた内容でして、アメリカのJANという総合相談機関についての説明資料になっております。○の3つ目のサービスの特徴等ということで、マル1からマル3番まで簡単にそのJANのサービスの特徴等を記載しております。簡単にご説明しますが、JANとはアメリカの労働省の組織の一部ですが、マル1にありますように、そのJANにはWebサイトがありまして、様々な疾患や障害の情報、職業的なそれらに対する課題、支援・配慮、さらに利用可能な支援機器などが掲載されているサイトです。これがかなりの種類、数の障害種別・疾患ごとに詳細な内容が記載されていまして、充実したサイトになっております。
 また、マル2ですが、JANでは、障害者、家族、企業などから電話での専門的なコンサルティングを無料で実施している。そして、マル3になりますが、こうした相談による情報や支援機器、支援措置などの最新情報というのを、マル1でご説明したサイトを逐次更新するというのがいちばんのサービスの特徴です。つまり、障害者関連の情報や必要な配慮に関する情報というのが逐次更新されて、全米で閲覧可能な状態にあり、かつ、電話で専門家が相談に応じるという仕組みです。
 その下に※を2つ付けています。現在わが国でどうなっているかということですが、独立行政法人の高齢・障害者雇用支援機構におきましては、※の1つ目の3行目になりますが、その事例の数についてはちょっと少ないとは思っていますが、「障害者雇用リファレンスサービス」ということでサイトを設けていまして、業種、障害種別、企業規模などの条件を指定して検索をしていただきますと、それらの条件に該当する企業の概要や障害者雇用管理上のノウハウ、効果、課題といったものが検索できる仕組みを持っております。
 また、次の※に書いてありますように、高齢・障害者雇用支援機構については、全国に出先機関として地域障害者職業センターという出先機関を持っていまして、企業からのホームページの中で見たリファレンスサービスのご質問については、現場のセンターから専門のカウンセラーを派遣しまして、事業所に出向いて、現場で必要な支援や助言を行っているというのがわが国のサービスです。
 なお、アメリカの先ほどご説明したJANですが、こちらの専門家がチームとなって電話相談に応じているということですが、現地訪問は、全米は広いですから行わないということになっております。JAN自体には15名程度のスタッフが常駐していて電話相談に応じるということになっております。企業からの合理的配慮、必要な配慮に関する質問というのが、おそらくメインの電話相談の内容になると思いますが、合理的配慮の内容については、障害種別だけではなくて、障害者が就かれる仕事の内容、事業所の環境整備の状況といったものによって異なるということで、非常に多様性・個別性があるものだと考えています。わが国のデータベースの件数については、これから蓄積を進めていくべきだと思っていますが、実際には事業所を訪問して、事業所に助言を行うという形でサービスをしていますので、わが国の仕組みについても、JANと比べても遜色のない有用な仕組みではないかと考えております。
 それから、前回の研究会でお示しした各国の状況を説明した資料の関係で、参考資料1に補足として資料を付けております。こちらについては、説明は割愛させていただきますが、前回の説明の中で、確認中であると言った部分についてのご回答を記載させていただいていますので、ご確認いただければと思います。資料2については以上です。
○岩村座長
 ただいまご説明いただきました事柄について、ご質問等ありましたらお願いします。
○大胡田委員
 アメリカのADA法の施行前後での就業率の推移に関してです。これはおよそ20年余りで5分の3ぐらいになっているということで、結構驚くべき数字だと思ったのですが、これが下がった理由についての考察をされているのであれば、今後その轍を踏まないように研究する必要があると思うのです。その辺りのデータというか、研究については何か情報をお持ちでしょうか。
○障害者雇用対策課長補佐
 現時点では、この報告以外について分析ができているものはありませんが、関連する資料などを見てみますと、やはりADAによって合理的配慮が企業に義務づけられたといったことが、企業側にとってみれば負担になったのではないかということがあります。ただ、障害者の就業状況というこのデータの対象障害者と、ADAのいわゆる適格性を有する障害者とが違いますので、ADAが障害者全般の就業率の低下に働いたかどうかを一概に言うことは難しいと思っています。
○大胡田委員
 ここで出していただいたドイツとフランスについても、就業率のデータはこの報告書に書いてありますか。こんな質問ばかりですみません。
○障害者雇用対策課長補佐
 実はこの報告書にはドイツ、フランスの状況は書いてありません。また文献を探して次回お示しできればと思います。今回はアメリカの状況だけということで、ご了承いただきたいと思います。
○岩村座長
 少なくともフランスについて言いますと、法定雇用率が6%で、未達成企業からお金を取っているのが実情ですから、現実にはそれよりも実際の就業率は低いということだろうと思います。アメリカのこの障害者の就業率という数字も、ベースになる数字に対してこれが何%かがよくわからないので、たぶん障害者のうち働いている人が何%かという数字のような気がします。よくわかりませんが。その辺も、もしわかればということだと思います。明らかに、1998年の28.4%というのは、全労働力中の障害者という数字としては到底考えられない数字なので。そうすると母数がたぶん障害者という集団、何らかの集団のうち働いている人が28.4%ということではないかと推測はできますが。
○大胡田委員
 これも、全障害者なのか、就業年齢にある障害者なのかもよくわからないので、何と言いましょうか、このデータをどのように自分の中で位置づけていいのか、はっきりわからない部分もあります。できれば、アメリカ、ドイツ、フランスについて、それぞれ就業年齢にある障害者の就業率のような比較のできるデータがあれば、いちばんわかりやすいと思っています。もし可能であればお願いします。
○障害者雇用対策課長補佐
 先ほどご説明したアメリカのパーセンテージに関しては、2行目の終わりのほうに書いてありますが、就業年齢にある、21歳~64歳までの就業率を調べたという形になっています。
○岩村座長
 よろしいでしょうか。私もアメリカは専門ではありませんが、一言申し上げると、大体研究者の方に聞くと、ADA制定後、少なくとも障害者の就業率が高くなったというデータは出ていないというのは非常によく聞きます。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策の山田です。アメリカでの就業率がADAの前後で上がっていないという事実認識については、差別禁止部会でも指摘されています。
○岩村座長
 そのほか、いかがでございましょうか。よろしゅうございますか。
 それでは、今後の主な論点のうちの第1の「基本的枠組み」についての意見交換に入りたいと思います。これについても事務局で資料を用意していただいていますので、説明をお願いいたします。
○障害者雇用対策課長補佐
 まず、資料3を見る前に、参考資料2をご覧ください。前回お示ししました論点に関しまして、前回の研究会でのご意見を、踏まえて、2点修正させていただいています。
 まず1点目です。「第2 障害を理由とする差別の禁止」の1の1つ目の○です。差別には「直接差別」のほか、「間接差別」や「合理的配慮の不提供」とあった所に、大胡田委員からのご意見を踏まえまして、検討すべき事項として「ハラスメント」を「間接差別」の後に入れています。
 2点目の修正点は、2頁の「第3 職場における合理的配慮」の3の2つ目の○です。先ほどご説明した、アメリカのJANについてのご意見が北野委員から出たことを踏まえて、合理的配慮が適切に提供されるための企業以外での相談機関等の仕組み、例えばアメリカのJANについてどのように考えるか。その上の○は、企業内での仕組みとしていますので、その対比関係で、企業以外の相談機関等の仕組みという形で追加しています。
 本日の研究会につきまして、参考資料2の1頁にお戻りください。「第1 基本的枠組み」と「第2 障害を理由とする差別の禁止」の部分についてご議論いただきたいと考えています。
 資料3をご覧ください。今後の主な論点のうち、「第1」と「第2」の部分を抜粋したものに加えまして、第1回から第3回までのこの研究会でのご意見、障害者雇用分科会での中間的な取りまとめ、平成20年に開催しておりました研究会の中間整理、さらに2頁の点線囲みは、前回ご説明した諸外国制度の概要を簡単に記載した資料になっています。なお前回、杉山委員から差別禁止部会の考え方も論点の検討をする際の資料に入れて欲しいというご意見がありましたが、第2回目でご報告したように、現在差別禁止部会では部会としてまとまった意見がない状況にあります。今月中旬の部会で中間的な取りまとめがなされると聞いていますので、それが提出されてから差別禁止部会の考え方を参考として付したいと考えていますので、ご了承いただきたいと思います。
 資料3の1頁をご覧ください。「第1 基本的枠組み」の1「障害者権利条約に対応するための枠組みの全体像」についてです。まず、四角囲みの中の1つ目の論点は、枠組みとして、労働・雇用分野における障害を理由とする差別を禁止し、合理的配慮の提供の義務づけについて、個別法である障害者雇用促進法に位置づけることでよいか。また、その際、差別禁止部会で検討されている「障害を理由とする差別の禁止に関する法律(仮称)」との関係をどのように整理していくかです。
 これまでの研究会において関連するご意見としては、武石委員から、「差別禁止部会では対象範囲や差別の定義について幅広い議論がされていますが、こちらの研究会では、限定して差別禁止の対象を考えていくこともあり得るのではないか」というご意見をいただいています。また、次の○は岩村座長からで、「差別禁止部会での検討は雇用その他、生活一般も含めた非常に広い差別禁止のいわゆる一般法の話であり、この研究会では雇用に特定された問題を検討するため、雇用分野で取り上げる差別とか差別禁止の対象とすべき障害はこの研究会で検討していくことではないか。最終的にどのようにすり合わせをするかは当然両者間で考えていかなければならないけれども、まずはこちらはこちらとして、どう整理するかを考えていくことでよいのではないか」というご意見をいただいています。
 この論点に関しましては、障害者雇用分科会の「中間的な取りまとめ」では、「雇用・労働分野における障害を理由とする差別禁止などについては、実効性を担保するための仕組みを含めて、国内法制に位置づけることが必要であることに異論はなかった」とされました。
 なお、2頁の点線囲みの諸外国の状況は、前回ご報告しました4カ国で見ますと、ドイツは個別法だけではなく、包括的差別禁止法と個別法とで対応しています。フランスは基本的には雇用分野の個別法、労働法典で対応している。アメリカ、イギリスは一般法である包括的な差別禁止法で対応しており、立法の仕方は様々です。
 次に、論点の2つ目です。2頁目の真ん中の四角囲みです。雇用率制度につきまして、積極的差別是正措置として、引き続き存続することとしてよいかという点です。これにつきましては、障害者雇用分科会でも平成20年に開催しておりました研究会でも、「積極的差別是正措置として残すべきとして異論はなかった又はその意見が大勢」でした。3頁目に諸外国の状況を付しています。ドイツ、フランスについては、先ほどご説明したとおり、差別禁止法制と雇用率制度が併存しています。アメリカ・イギリスは差別禁止法制のみで雇用率制度がないという状況です。
 4頁です。2「差別禁止等の枠組みの対象範囲」についてです。四角囲みの中は、差別禁止等の対象となる障害者と事業主の範囲についてどのように考えるかという論点です。第1回から3回までの意見では、山岡委員から、「障害者の範囲については、発達障害だけではなく困難や障害を持つ全ての方を対象とするべきだ」というご意見をいただいています。その他の意見として先ほどご説明したものを再掲しています。
 障害者雇用分科会の「中間的な取りまとめ」では、「障害者の範囲は、雇用率制度よりも広範囲なものとして、障害者雇用促進法第2条に規定する障害者としてはどうかということで、異論はなかった」としています。また、事業主の範囲につきましては、その下の○に、「労働代表委員からは全ての事業主とすべきとの意見」がありまして、「使用者代表委員からは段階的な実施も含めて一定の配慮が必要ではないか」という意見が出されたとされています。なお、5頁に諸外国の制度を掲載していますが、説明は割愛させていただきます。以上です。
○岩村座長
 「第1 基本的な枠組み」という論点につきましては、ただいまの西川課長補佐の説明にもありましたように、まず、条約に対応するための枠組みの全体像に関する項目が2つ挙がっており、もう1つは資料3の4頁ですが、差別禁止等枠組みの対象範囲です。
 順序としましては、条約に対応するための枠組みの全体像にまとめられている2つの項目についてご意見をいただきたいと思っています。1点目は、やや法制上の技術的な問題という側面が強いところですが、何かご意見があれば伺っておきたいと思います。2頁目にあります差別禁止と雇用率との関係についても、どのようなお考えがあるかご意見を伺いたいと思っています。いかがでございましょうか。
○石井委員
 論点の1番についてです。労働・雇用分野における法制度ですので、公労使三者構成の労働政策審議会で十分な検討を行って立法するのが望ましいと思われます。そうすると、差別禁止法を一般法として雇用分野の特別法という形で位置づけるのがいいのではないかと考えています。実効性を担保するための仕組みも含めて、国内法制に位置づけることが必要であるというのが中間的な取りまとめだったようですが、そうだとすると、いま障害者雇用促進法の下で各種支援策が整備されていますので、例えばハローワークによる求職支援等がありますので、これを組み込んで活用していくためにも、やはり労働分野の特別法という形での位置づけが相応しいのではないかと思います。
○田中委員
 後ほど出てきます対象範囲についてです。山岡委員から、「困難や障害を持つ全ての方が対象になるべき」という提案がされていまして、それを踏まえて、合理的配慮の対象を広げたところで展開するとなると、障害者雇用促進法として位置づけると、雇用促進法の対象のほうが少し的を狭くするのではないかと危惧しています。この辺の整理をした上で、位置づけを求めていくべきではないかと思います。合理的配慮のほうを裾野を広くするのがいいのではないかという立場なのですが、雇用促進法での雇用率の検討も含めて、少し整理する必要があると思っています。基本的には雇用促進法のみに位置づけないほうがいいと思っています。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用促進法のみに位置づけることでは足りないとなると、それ以外としては何を念頭に置かれているのですか。
○田中委員
 差別禁止法の中でも触れられる部分だと思いますが、整理をする上で、職業上の合理的配慮というのが雇用促進法だけに位置づけるというのは、狭められるようなイメージがありましたので、ちょっと的外れかもしれませんが、気になったところとして提案させていただきました。
○障害者雇用対策課長
 この研究会と併行して、障害者雇用促進制度の範囲の在り方に関する研究会でも、障害者雇用促進制度なり雇用率の対象範囲について議論していますので、そちらとも議論のやり取りをしなければいけない部分もあります。
 もう1つ、問題なのは、差別禁止の範囲と合理的配慮の範囲というのは、これもまた諸外国でずれているところもあって、いろいろその辺りは整理しなければいけない部分が多々あります。ちなみに、差別禁止部会はまだ中間取りまとめはしていませんが、総合福祉部会の骨格提言には、差別禁止の問題や合理的配慮の問題等については障害者雇用促進法の改正により対応する旨が書かれています。もちろん差別禁止部会がこれと同じ結論を出すかどうかはわかりませんが、また、そういった結論を得た細かい背景については骨格提言には書いてありませんが、そのような言及が一方でされています。いずれにしても後の範囲の問題と絡む問題であることはあると思います。
○岩村座長
 ほかにいかがでしょうか。この点については、よろしゅうございましょうか。もう1つ、差別禁止と雇用率の問題もありますけれども、そちらについてはいかがでしょうか。
○駒村委員
 2頁の下のほうの議論になるのですけれども、「ポジティブアクションとして位置づけられる」という評価です。採用段階での差別禁止はある種、機会の均等ではありますが、実質的な機会の均等を維持するためには、やはり残して継続したほうがいいのではないかと私は思っています。現行の制度の効果がどうなっているのかが、きちんと検証・実証されている必要があると思いますし、次の頁にあるように、イギリスで制度変更があったときにどのような効果があったのか、この辺について前に議論があったのかもしれませんが、調査結果があったら教えてもらいたいと思います。
○岩村座長
 高・障機構でやったところでは、どういう変化があったかについての研究成果の報告はなかったと記憶しています。
○障害者雇用対策課長補佐
 いま座長からお話があったように、実は先ほどの大胡田委員からの意見もそうなのですが、ドイツ、フランス、イギリスについての雇用状況としてフォーカスしたものはない状況で、もう一度研究した研究者まで下りて何とか次回にはご提出したいと思っています。
 もう1つ、駒村委員からは、現行の雇用率制度の効果を見極めた上ではあるけれどもというお話でした。雇用率制度の効果を雇用者数で見てみますと、わが国における雇用率制度が雇用義務として施行されたのは昭和52年です。その当時の雇用障害者数、これは身体障害者のみですが、12万8,429人で、当時の実雇用率で1.09%でした。昭和52年から施行してまいりまして現在平成23年の状況は、こちらは身体障害、知的障害、精神障害を合計した3障害の雇用障害者数は36万6,199人で、実雇用率は1.65%。身体障害者のみの数では28万4,428人で、身体障害者のみで見た場合でも16万人程度の増、3障害を合わせますと24万人程度の増となっています。
○駒村委員
 その後いろいろ政策の変更があったわけですし、1つはトレンドというか、政策の効果なのかどうなのかもあると思いますので、やはり政策変更があったときのインパクトといったものも検証した上で、どういう貢献をしているのかを改めてきちんと検証すること。また、イギリスではこのときに廃止しても大きな騒ぎにならなかったのか、問題が起きたのか、その辺も引き続き調査してもらいたいと思います。
○岩村座長
 西川補佐から可能かどうか当たってみていただきたいと思います。そのほか、いかがでしょうか。
○山岡委員
 雇用率制度についてです。いまおっしゃった中にもあると思いますが、中間報告の中で、現在の障害者雇用率制度については成果を上げてきていると書いていますが、私も同様に思っていまして、これは併存すべきだという意見を持っています。ここについては、例えば知的障害とか精神障害が雇用率に加わったときの効果、その後、そこに対する雇用が実際に進んでいたという効果が実際にあったと思います。また、ちょっと外れますけれども、雇用率を上げてきたときですね、0.2%ずつ上げてきましたが、そのときにそれなりの効果があったと認識しています。それから、国の施策ではありませんが、数年前に達成していない企業の名前が公開されたというようなことがありましたし、企業の社会的責任に対する考え方が上がってきている中で、確かに雇用率を意識して対応している会社が増えていて、それがいまの障害者雇用に対して貢献しているというか、下支えになっていることは間違いないと思いますので、これは併存すべきだと私は思っています。
○岩村座長
 理論的には、差別禁止の法理は結果の平等を保障するものではなくて、あくまでも機会の平等を保障するものだというところで、そういう意味での限界はどうしてもあるということだろうと思います。これは男女雇用差別などでも一緒ですけれども、一定の積極的是正措置を入れていかないと、機会の平等だけではどうしても達成できないものが残ってしまうということだろう。私は、理論的にはそう整理されるのだろうと思っています。まだいろいろご意見もあるかもしれませんが、今日でこうした項目の議論は全部終わりではありませんので、今後の取りまとめの段階、あるいはその前の段階でもご意見がありましたらお出しいただきたいと思いますし、また、個別にお考えがあれば、事務局に寄せていただきたいと思います。
 次の項目に移ります。資料3の4頁の2「差別禁止等枠組みの対象範囲」の論点です。もちろん条約に対応していかなければいけないわけですけれども、その際、その対象範囲をどうするのか。より具体的には、障害者の対象となる範囲、あるいは事業主の対象となる範囲につきまして、ご意見、ご質問などありましたらお願いします。
○石井委員
 まず、障害者の範囲についてです。ご異論はあるかもしれませんけれども、障害者雇用促進法第2条で規定されている障害者というのが、いまの段階では適切ではないかと考えています。範囲を広げるという議論で、過去に障害があっていま差別的な取扱いを受けている場合や、将来の可能性、あるいは障害があるとみなされる者などが議論に上がっているようですけれども、事業主の立場からすると、合理的な配慮を必要とされる者はどの範囲なのかという点について、予見可能性が十分に担保されるべきだと思います。義務の形で立法されるのであれば、やはりそこは客観的な、現時点での障害の有無という形で分けられるべきだと思っています。家族についても、という議論もあるようですが、あまり最初に広げないで、そこはやはり現時点で障害をお持ちの方という形の立法がなされるべきではないかと考えています。
○大胡田委員
 私は石井委員の意見とは逆です。入口であまり絞ってしまうことは、障害者に対する差別をなくしていこうという大きな理念からすると、若干残念な気がしています。例えば、過去において精神病歴があったりする方について現存する差別は実際にあるものなので、やはりこういったことまで法律で禁止していかないと、結局は何も変わらなかったね、何となくちょっと、「合理的配慮」という言葉が付け加わったけれども、結局これまで救われなかった人たちは依然として救われないのだね、ということになってしまうような心配があります。入口は、誰でもウェルカムとは言いませんが、できる限り広く救済を受けられる方たちを増やしたいというのが私の考えです。
○岩村座長
 おそらく、いまの石井委員のご懸念というか、気に掛かっておられたのは、例えば過去に障害があった方といった場合に、事業主がそれをどうやって把握するのか、たぶんそこのところではないかと思うのです。
○石井委員
 はい。
○岩村座長
 知らなかったら、突然、合理的配慮をしてくれないと言って訴えられたというと、それは非常に困るでしょうという、おそらくそういうことなのだと思います。
○石井委員
 事業主として差別禁止や合理的配慮の提供が義務づけられるという観点から見ると、それはある程度、これが事業主の義務の範囲ですというものがないと、企業としては対応できないということです。現在障害がなくても、不当な雇用管理上の問題というのはあり得るとは思いますけれども、それは、現在の労働法理の中での救済ということなのではないかと考えています。
○岩村座長
 ほかに、いかがでしょうか。
○障害者雇用対策課長
 最終的にどういう姿になるのかもあるのですが、きちんと施行できるかどうかという観点は、事務方としては非常に気になるところであります。ある意味、この差別禁止法の枠組みは、障害者と企業、障害者と健常者の間のインターフェイスを規律する法体系になると思いますので、差別禁止法制におけるプレーヤーは健常者・企業も含めて様々な人が出てくる。その意味で差別禁止法制は、自立支援法の障害者福祉の世界とは、やや趣を異にする部分があります。善意の企業であり、善意の同じ職場で働く労働者の人たちがどのように振る舞ったらいいのかが、差別禁止法の体系で、ある程度理解できないと、うまくいきにくい部分はあると思います。
○岩村座長
 逆に言うと、差別禁止の範囲の中に入れるか入れないかで、入った場合には、ひょっとすると障害者の方の行動を変える可能性も出てくるわけです。その辺もどう見るのかということもあるでしょうし、もちろん事業主サイドの行動も変わるわけですので、その中で特に行政側とすると、どうやってそこをコントロール、調整していくかを考えなくてはいけないということだと思います。
○武石委員
 差別を禁止してはいけないという観点から言うと、あらゆる障害を持つ人は差別されてはいけないという基本的な理念はあると思うのですが、この後の、合理的配慮をどのように事業主に求めていくかとか、それを提供しなかった場合にどういう姿になるのかということなど、そことの連携で考えなくてはならない部分かなと思います。差別を禁止する部分がある程度厳しくなっていったとすると、やはり事業主としてあらゆる障害に対応していく、あるいは家族とか過去のところまで対応し切れるかということもあると思います。全体の、後ろの議論との枠組みの中で考えなくてはいけないと思いますが、やはりどこかで一定のわかりやすい範囲を決めていかないと実務的に難しい面があるのかなという印象を持っています。今後の議論との兼ね合いの部分があるという気がします。
○岩村座長
 確かに、先ほど田中委員がおっしゃった、合理的配慮の対象範囲をどうするかということとも裏腹で結びつく問題でもあります。あとは、事業主側の、例えば合理的配慮をするといったときの、対応の能力の問題も他方で入ってくるのです。全体の構造としては、差別禁止の対象になる人が結局、合理的配慮の対象にもなる、ずれるのかもしれないけれども大まかにはたぶんそういうことになるとすると、その辺が全部関係した上で全体の制度設計をどうするかということになると思います。
○山岡委員
 ちょっとわからなくなっているので、どのように考えるのかを確認させてください。企業から見て差別禁止の対象にするとか、合理的配慮の対象にするときに、例えば発達障害で言いますといろいろなケースがあります。例えば、本人が気づいていないケースがあったり、本人は気づいているケースがあったり、医師の診断を得ているケース、何らかの手帳を持っているケースなどがあります。企業側からすると、どのような人たちを合理的配慮や差別禁止の対象にするのかは、何か決めなくてはいけないと思うのですけれども、その辺は何かお考えがあるのでしょうか。
○岩村座長
 既に就職されていて、就職後になって実は発達障害であることが医師の診断などによってわかったというのが、たぶんいちばんわかりやすい例です。そうすると、その人が差別されずにそのまま雇用を維持していくために、その人の障害の状況などに応じて、事業主にはその発達障害に対して合理的配慮が要請されるということなのだと思うのです。他方で、その方に発達障害が仮にあったとしても、わかっていないということだと、わかっていないものに対して差別は考えられないだろうし、仮にあったとしても事業主の責任はそこでは問い得ないでしょうし、合理的配慮も考えられないと思います。
○山岡委員
 ではその場合に、本人が申し出をしなくてはいけない、企業側に「私は発達障害です」とか「こういう障害があります」と申し出なければならない。内部障害もそうだと思いますけれども。ただその後に、企業側としては本人が発達障害とか内部障害とか精神障害とかは見ただけではわかりませんので、何を求めるかということで、医師の診断を求めるのか、手帳なのか何なのかをどこかで決めなくてはならない。その次の段階として基準みたいなものが必要だと思うのです。
○岩村座長
 おっしゃるとおりだと思います。
○森委員
 私の考えはちょっと違うのかなという気がします。合理的配慮が施行できないから対象の範囲から外すのだというのは、ちょっと本末転倒ではないかという気がします。私の理解は違うのかもしれませんが。それともう1つは、いま障害保健福祉部でも一所懸命やっていますし、これがどうなるかはわかりませんけれども、障害者総合支援法ができてきますと、今度はまた新たに難病も入ってくるのです。そのような形で枠が非常に広がってきていることも事実だと思っています。そのような考え方にも配慮した上で、これを整理したほうがいいのではないかと思います。以上です。
○岩村座長
 ちょっと誤解があったかもしれませんが、合理的配慮の中身に何を盛るかということと、仮の話で言うと、過度の負担との間でいろいろ動いてくる要素がある。とりわけ、事業主をどの範囲まで対象にするかということと関連しますが、小規模の事業主になればなるほど、実は合理的配慮の対応はやはり難しくなってしまうという問題があります。事業主の範囲をどこまでにするかということと関係しますけれども、その辺も含めて全体の制度設計を考えないとという話です。
○駒村委員
 いまの話で、過度の負担や合理的配慮に伴う公的支援をどうするかということも考えなくてはいけない。その在り方も当然伴う問題ですので、そちらも同時に考えなければいけません。なるべく広く見たいという考え方もわかる一方で、先ほどの予見可能性、あるいは不確実性というのでしょうか、労働者にも雇用主にもある種の不確実性や情報の非対象性のようなものを生み出してしまうわけです。だから、先ほど山岡委員がおっしゃったように、その不確実性や情報の非対象性を抑えるためにはどうするかという工夫も、考えなければいけなくなってきている。その際には、じゃあ最初にそれを明らかにする義務を負わせるのかとか、そういうことも考えなければいけなくなってきます。企業側に何らかの費用負担を持たせるような形になれば、当然それに対して、先ほど課長がおっしゃったように、企業側も逆に経済合理的な対応をしかねないことになります。そういう意味では、あまりふわっとした形で義務づけや費用がかかるものを組み込んでしまうと、それは求めていなかったのだけれど、思っていた効果と結果的には違うリアクションに全体としてなってしまう。全体を見ながら、思いの議論と、結果で起き得ることも少し考慮しながら、議論を進めたほうがいいのではないかと思います。
○石井委員
 事業主側の範囲についてです。既にお話に出ていますけれども、やはり、できることできないことがありますので、公的な支援機関の整備状況等を、まずそれを勘案していただいて、段階的な実施ということにならざるを得ないのではないかと思います。適用対象となってからも、合理的配慮の内容は、その企業の規模や経営状況に照らして違ってこざるを得ないと思っています。その辺りを考慮していただきたいと思います。以上です。
○岩村座長
 理論的には、障害者の雇用差別の禁止というのが人権の問題であると考えると、事業主の規模で差をつけるという論理は出てこないのです。最終的には事業主によって差をつけないということにならざるを得ないと思っています。ただ、到達目標として、どのようにそこに到達していくかというステップの問題はまた別途あるかもしれません。また、中小事業主はどうしても財政力の問題があるので、そのところで合理的配慮に対する経済的支援を何か考えるという、別途の方策を考えるのか、そういうアプローチは要るのだろうと思っています。人権の問題になると、50人以下の事業所には適用しないというのは、理屈としてはなかなか出てこないので非常に難しいだろうと思います。
○石井委員
 ですので、やはり段階的なと言いましょうか、十分な準備期間を置いていただきたいということ。また、繰り返しになりますけれども、内容については規模が影響してくるだろうなと思います。以上です。
○岩村座長
 たぶんこれは経済学の先生のほうが詳しいのでしょうけれども、雇用の大きさでいうとやはり中小のほうが圧倒的に大きいこと。それから、地域的なことを考えると、やはり、中小企業を取り込んでいかないとなかなか雇用の場は確保できないことは現実問題としてはあるだろうとは思います。ただ、そうなると現行の雇用率とはかなり落差が出ますね。
○田中委員
 皆さんはご承知なのかもしれませんが、ちょっと確認をしたいのです。家族の中に障害者がいるような者についても合理的配慮の対象となることと、諸外国の場合には、直接差別やハラスメントからの保護の対象に、障害者の家族も含まれるという表現においては、主体としては障害がない本人が働いている方で、家族に障害者がいるような場合に配慮の対象となるというのが、最初の検討事項の1つになっているのかという把握の仕方と、当事者に障害があって、家族が直接差別やハラスメントからの保護の対象というのとは、捉え方が違うのですか。私の理解が間違っているのでしょうか。
○岩村座長
 もう一度、ご質問をお願いします。
○田中委員
 5頁の2つ目の○のマル2です。「家族の中に障害者がいるような者についても」という位置づけの場合は、障害当事者が働いているのではなくて、障害のない本人の家族に障害者がいるような場合という捉え方になると思いますが、諸外国の例で「保護の対象に障害者の家族も含まれる」の冒頭に、「ドイツ、フランスの場合、直接差別やハラスメントからの保護の対象には」というのは、障害者の方が働いていて、その家族が差別やハラスメントから、という捉え方なのでしょうか。家族をどのように位置づけているのか、少し幅の広い表記になっているのでしょうか。
○岩村座長
 少なくともフランスについて言いますと、これは法律の根拠は労働法典なので、あくまでも働いている労働者を想定しているのです。ですからここで「障害者の家族」と言った場合には、家族の人が働いているということを想定しているとなると思います。家族の方が働いていて、そのご家族の中に障害者の方がらっしゃる。要するに、家族の中に障害者がいて、そのためにしょっ中、例えば、途中で帰らなくてはいけないとか何だとかで、「お前はクビだ」となったときに、これが直接差別ということで引っ掛かるのか、そういう問題として考えているのです。
○田中委員
 上と表記は一緒なのですか。
○岩村座長
 一緒だとお考えいただいていいと思います。
○田中委員
 わかりました。
○岩村座長
 より一般的なレベルになってしまうと、いま田中委員がおっしゃった後者の問題も入ってき得るのですが、あくまでもこれは雇用の場の問題なので、実際に雇用されている方に焦点を合わせて、その人が差別あるいはハラスメントの対象になっている、そういう問題設定であるとお考えいただくのがよろしいかなと思います。よろしいでしょうか。時間の都合もありますので、ちょっと駆け足ですが、先ほど申し上げましたように、必要があれば個別に事務局にお考え、ご質問などをおっしゃっていただければと思いますし、後ほどまた取り上げる機会がありますので、そのときにまたおっしゃっていただきたいと思います。
 続きまして、今日の議事次第にあります3番目、「障害を理由とする差別の禁止について」に移ります。資料を用意していただいていますので、事務局から説明をいただきます。
○障害者雇用対策課長補佐
 資料3の6頁以降になります。「第2-障害を理由とする差別の禁止」1の障害を理由とする「差別」とは何かです。1つ目の論点として、差別の類型として「直接差別」のほか、「間接差別」、「ハラスメント」、「合理的配慮の不提供又は拒否」といったものについて、どのように考えるのか。また、「労働能力に基づく差異」について、どのように考えるかという点です。これまでのご意見としては、大胡田委員からハラスメントについては、「労働する上で非常に大きな問題である。この研究会で議論することが望ましい」とのご意見をいただいておりますので、論点の中に入れまして、ご検討をしていただきたいと考えております。
 この論点に関する障害者雇用分科会での「中間取りまとめ」においては、「障害を理由とする差別を禁止することについて、異論はない」とされております。2つ目の○ですが、間接差別については、労働者代表委員から、「禁止すべき差別に間接差別も含まれるのではないか」という意見が出ておりますが、公益委員、または使用者代表委員から、「具体的な判断基準を間接差別について示すのは、困難ではないか」というご意見が出されております。
 また、平成20年の研究会の「中間整理」では、6頁の下から2つ目の○になりますが、労働能力を評価した結果として賃金等に差が生じるといった「労働能力に基づく差異」に関して、次の○に合理的配慮の拒否についてのご意見が記載をされております。
 7頁は諸外国の制度ですが、前回ご説明した4カ国とも「直接差別」、「間接差別」、「ハラスメント」を禁止する規定を個々に置いておりまして、4カ国とも共通して「間接差別」については正当化事由を置いております。例としてドイツの例を記載しております。
 合理的配慮の不提供については、フランス・アメリカ・イギリスで差別に該当するという規定が置かれております。
 8頁です。次の論点は差別に関連をしますが、「差別の正当化事由や適用除外」を規定をするかどうか、「差別禁止の効果(私法上の効果)」などについてどのように考えるかという点です。これについては前回、北野委員からご意見をいただきまして、アメリカの場合には障害者の対象範囲が適格性を有する者であるということで、非常に限定的だというようなご議論の中で、ただそれは「ドイツなどの各国でも差別の正当化事由を個別に規定をしているので、実質的には同じ状況となっているのではないか」と。北野委員の最後の文章ですが、「正当化事由のような例外規定を入れるか、それとも対象者の中で規定を限定的に書くかという違いの問題ではないか」というご意見でした。こちらについて、分科会の「中間的な取りまとめ」は、差別禁止の効果についてのみご意見いただいておりまして、労働者代表委員から、「解雇や雇止めなどを無効にするといった、諸法上の効果を規定すべきではないか」というご意見が出されております。
 諸外国の状況は点線囲みの中ですが、ドイツ・フランス・イギリスについては、全ての差別事由に関して、差別的な取扱いについて適用される適用除外という条文を掲げております。例としてドイツを挙げております。差別禁止の効果についてもドイツ・フランス・イギリスの3カ国については差別禁止に反する合意は無効である旨を規定しております。
 9頁です。こちらは差別が禁止される雇用・労働分野における事項として何を考えるのかということです。雇用・労働分野における差別が禁止される事項についてどのように考えるか。雇用に関わる全ての事項を対象とすることでよいかということです。こちらにつきましては、障害者雇用分科会の「中間的な取りまとめ」、平成20年の研究会の「中間整理」、諸外国の状況も含めてですが、「雇用に関わる全ての事項を対象とするということで異論はない」という形になっています。諸外国もそのような状況になっております。説明は以上です。
○岩村座長
 ありがとうございました。いまご説明いただきました資料3の6頁から始まる「障害を理由とする差別の禁止」につきましては、大きく言うと3点の項目があります。1つは障害を理由とする差別というのは何かという問題でありまして、これが2項目ございます。それから、9頁になりますが、差別が禁止される事項がもう1つということになっております。まず順序としまして、障害を理由とする差別というのは何なのかという、差別の定義が2項目、資料3の6頁、8頁にありますが、これについて両者合わせてご意見を伺いたいと思います。
○石井委員
 差別として挙がっている間接差別、ハラスメントは1つ1つですか。
○岩村座長
 まとめて質問をしていただければ結構でございます。
○石井委員
 まず間接差別についてですが、具体的な基準がないことには、法の施行は大変困難だと思われますし、そうは言っても、基準を示すことが実際上かなり難しいのではないかと思っています。均等法に間接差別は入りましたが、入るまでだいぶ時間もかかりましたし、世の中にある事象の中から典型的なものを3つ挙げて定めたと。これ以外にもあるだろうけれども、何しろ中立的な基準でも結果として差が出ているということですから、いろいろなものがあるだろうけれども、それは今後の裁判例の集積をみますということで終わったのが均等法です。均等法は性別で、ある意味単純なのですけれども、障害はもっと多様性もあるし個別性もある中で、これが間接差別だというのができるかどうか、基準が示せるかどうかと。事業主の義務という点からすれば、それが示されないことには対応できないと考えています。ハラスメントについては、さらに定義自体もまだ法令も特段ございませんし、この間、円卓会議で職場のハラスメントについて報告書が出ましたけれども、線引きは必ずしも明確でないという気がしますので、ハラスメントは差別である、となっても、ちょっと対応の仕方がないと思います。ただ、障害者虐待防止法が今年の10月から施行予定ですが、あの中で使用者による虐待ということで暴行ですとか、暴言、差別的言動というのが挙がっておりますので、そちらのほうでの対応ができるのではないか。労働局による行政指導ですとか、企業名公表等も用意されているようですので、そちらの対応の実施状況を見てもいいのではないかと思っております。
 合理的配慮の不提供については、事業主としても、いまは何もしなくていいのだと思っている事業主はそういないだろうと思うのです。コンプライアンスも重視される中で、配慮の必要がありますという点については、受け入れる素地があると思うのですが、ただ差別だと言われると、差別の類型として目新しいといいましょうか、第三の類型ということになるのかもしれませんが、受け止める側として理解が難しいなという気がします。事業主の責務や措置義務がある、配慮義務があるとか、いろいろなところで、例えば均等法等でも出てきますので、わが国の法体系の中でも受け入れやすいと思うのですが、不提供は差別として禁止されているというのは、法体系の中でどのように位置づけられるのかなというのと、同じ法律の中で義務ですというのと、やらないのは差別だというのが両立するのかどうかという気もしまして、合理的配慮を提供する責務がある、義務があるという形にして、中身は非常に多様ですので、ガイドラインを設けるというようなのが、法律実務の立場からいくと受け入れやすい法律の仕組みだなと思います。
○岩村座長
 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
○大胡田委員
 まず間接差別の点については、これは是非盛り込まなければいけない部分だと思っております。多くの差別というのは、おまえは目が見えないから不採用だとは言わないので、普通の文字が読めないから、あなたは雇えませんよというような形で社会参加を阻んでくるわけです。仕事によってはそういうことがやむを得ない部分もあると思います。それは差別の正当化事由を規定することによって、およそ全て間接差別的なものは禁止で、事業者はもうこれで拒否できなくなったと、そんなわけではないので、間接差別の類型はやはり維持した上で、差別の正当化事由というところで、無理のないといいましょうか、納得のいくような規定ぶりを設けるということがいいのではないかと思っております。
 ハラスメントの点なのですが、不明確な概念ではありますが、やはりある程度、特に男女の問題ではハラスメントというのが議論が成熟してきていますので、これを不明確だから規定しないというのは、何となくためらわれるというところがあります。私もまだ不勉強なところがあるのですが、やはり不明確なら明確にする努力をするべきだなという気がしております。
 合理的配慮の不提供の点ですが、これは石井委員も合理的配慮を提供する義務があるという定め方であれば、何となくしっくりくるのだなということだったので、私もそういった定め方の体裁としては、そういったことでもかまわないとは思っております。実質が合理的な配慮を障害者が受けられるということであれば、あとは形式論の問題かなというような気がいたしました。以上です。
○岩村座長
 ありがとうございました。
○杉山委員
 大胡田委員の発言とも少しかぶるかもしれません。私も間接差別は非常に難しいというのは重々承知していて、これまでの法律での経験も見てきて、よく理解しています。ただ、今回の障害者に関する法律をやっていくときに、先ほど大胡田委員も言われていたように、差別の正当化事由、もしくは合理的配慮、過度な負担を含めた配慮の適正度、適格度というものを、どういう仕組みの中でどう判断していくのか。判断したときに、そのことが最終的に間接差別と言われるもの、もしくはハラスメントと言われているものに、ハラスメントとはちょっと違うかもしれませんが、抵触しているのかどうなのか、そういったときに見ていくものとして、やはり項目には入れておくほうが適切ではないのかなと考えています。そういった意味では、この時点で最初に障害を理由とする差別とは何かという項目からまず議論をしていくと、なかなか難しいのですけれども、先ほどの話ではありませんが、もう一度全体的なところを見て、もう一度振り返っても結構かとは思いますが、現時点で間接差別を難しいから外すというスタンスはあまり適切ではなくて、現時点では入れておいたほうがいいのではないか。逆に入れるべきではないかと考えています。以上です。
○岩村座長
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 たぶん間接差別については、おそらく実際に立法化するということになると難しいのは、立法事実があるのかということなのです。男女雇用均等法の場合も、たぶんそこがいちばん問題になっていて、おそらく実際に立法作業をする事務方も、実は立法事実が何なのだというのを問い詰められると、なかなか具体的に答えられないと、そこでもう実は立法作業が止まってしまうという問題もあって、これは石井委員がおっしゃっていた最初の中身に戻っていくのですが、間接差別といったときに、具体的にどのようなものが間接差別に当たるのですかと。そのことが立法事実として明確にされないと、なかなか具体的な立法に持っていきにくいという実質の問題でもあり、ある意味では非常に法技術的な立法的事実上の問題でもあるのですが、その問題が避けて通れないだろうという気がしております。そういう意味では、やはりこれが間接差別でこういうのが当たるのですよという具体的な立法、いろいろな事実の集積が示されると、もちろん立法を進めていく上でも非常に有益でしょうし、事業主サイドのいわば予見可能性というか、どういうものが許容されないのかということがわかるという、両方の意味があるかなと思います。これは難しいので、今日の資料の6頁にもありますように、条約を仮に批准ということになったときに、ではどのような立法にすれば条約が批准できるのかという話と関係してくるので、間接差別の問題のところは、それも含めて検討しなければいけないのだろうと思います。
○武石委員
 ちょっと質問なのですが、合理的配慮を提供するというときのイメージなのですが、障害者の方が個別にこういうのをやってくださいと事業主にお願いをして、それに配慮していただくというのが合理的配慮、そんなイメージなのでしょうか。それを不提供というと、こうやってくれというのが、例えば通勤に車が要るので駐車場を用意してください。でもうちには駐車場がありませんというときに、そういうものなのでしょうか。合理的配慮をする、不提供というのが実際イメージがどういうものか教えていただけるとありがたいのですが。
○障害者雇用対策課長
 実は次の論点の「職場における合理的配慮」と参考資料2の裏面のところで、それ自体はどのように決めてどのように提供するかということの決め方を、企業の中でどうやって仕組んでいくのかということ自体も1つの議論になっています。単に職場をバリアフリー化すればいいというような話で済む人もいれば、以前この研究会でも議論になりましたが、差別禁止部会のほうで、あまり知的障害者、精神障害者が念頭に置かれていないというようなご意見がありましたが、それというのは、ある意味アプリオリに合理的配慮というのは、この人にはこういうものがいいということは決められないので、ちょっとすごくイメージがしにくい。結局企業側と障害者側が話をして、その人の状況に合わせて、あるいはその職場環境がどうあるかということまで踏まえて、決めていかなければいけないので、その設定の仕方そのものがなかなか難しいというところで、あまり全てのステージにわたって、差別禁止を議論しようとする差別禁止部会では、なかなかそこまで踏み込めないという部分だろうとは思いますが、決め方自体がなかなか難しいものではあります。
○武石委員
 次回の議論だと思うのですが、やはり全体がパズルのように入り組んでいるので、こうやって議論しても難しいかなという感じがします。そんなことを言ってもしょうがないのですが、労働能力に基づく差異に関しても、例えば合理的配慮が提供された上でと適切に評価したものであるならば、このとおりだと思うのですが、その合理的配慮が提供されないとか、例えば半分提供されたとか、そういうのをどう考えていくのかという、この辺りの議論はちょっとまた綱引きになるような印象を持ちました。
○障害者雇用対策課長
 実はその参考資料2で見ていただいても、例えば「第3 職場における合理的配慮」の1の基本的な考え方で、「合理的配慮の不提供についてどのように考えるか。(再掲)」と書いてありますように、たぶん振り返りながらやっていかないといけないものではありますが、ただ、一時に全ての案件をやってしまうわけにはいかないので、逆に前回の議論ではこういう考え方だったけれども、合理的配慮の具体的な内容だとか、その提供の仕組みだとかの議論を考えると、前回はこういう意見だったけれども、ちょっとそれは難しいというように思い直したということはあり得ると思いますし、実際先行している差別禁止部会のほうでも、途中で自分の考えが混乱してきたというような発言などをされている方もおられます。確かに言われるようにパズルのような話で、全体整合性を持ってどのように組み立てるかというのは、この差別禁止の問題ではなかなか難しい問題かなと思います。そこはあとからの振り返りで、前回の議論を修正していくということはあり得ると思います。各論を済ませてから全ての議論をもう1回振りかえる形にして、もう1回議論し直していただくということになると思いますので、そこはこの論点について一定の前提を置いた上でのご意見でもよろしいかと思います。
○岩村座長
 いま課長がおっしゃったように、なかなか整理が難しくて、あまりまだ法律家もそうきれいに整理できていないというのが、たぶん現状ではないかという気はいたします。いちばんわかりやすいのは、カテゴリックに、そもそもうちでは合理的配慮なんかしないというのがいちばんわかりやすくて、ただそうなると、それは合理的配慮をしないという差別なのか、それよりはむしろ直接差別なのではないかという問題もあって、また法律的に難しいのは、それに対する法的効果は一体何なのかという問題も絡んでくるので、なかなかうまく整理がつきにくいところはあるので、いま山田課長がおっしゃったように、あとでまた振り返りつつ全体の法制度設計として、どのように整理をするかということを考えていくということになるのだろうと思います。
 ですので、座長としては是非こういうことがあるのだということを、後ほどでも結構なので出していただけると非常に議論がわかりやすいのは、直接差別でも間接差別でもないけれども、合理的な配慮をしてくれないというのがあると、すごくわかりやすいですね。そうだとすると合理的配慮の不提供というのは、直接差別と間接差別の中に入り込まない別途の形態の差別だというのが極めてイメージしやすいかなと思っていますが、そこの辺がどうなんだろうか。なかなかイメージが浮かばないので、もしお知恵があれば後ほどでも結構ですので、お出しいただけると、これまた立法事実の関係で有益かなと思います。
 それから、8頁もございますが、こちらはいかがでしょうか。先ほど私も申し上げましたが、正当化事由の問題、あるいは適用除外の問題、効果の問題ということになりますが。
 たぶん議論の対象となるのは、間接差別もそうですが、つまり別意な扱いをしても、それは差別にならないということがあるのか、あるいは適用除外というのがあるのか。例えばアメリカですと、前回か前々回に議論になりましたけれども、適格者というコールファイルの要件の話がありますけれども、そういったものをどう考えるかということがあろうかと思います。
○石井委員
 よくわからないままの発言ですが、正当化事由というところの、先ほどもありましたけれども、労働能力に基づく差異も合理的な配慮がなされて、公平な評価であれば、それは差別には該当しないというようなことになると思うのですが、差別の正当化事由というか、そもそも差別に該当しない、差はあるけれども合理的な理由、正当な理由があって差別から排除されると、そういう考え方でよろしいでしょうか。
○岩村座長
 健常者の場合も、例えば外回りのセールスで車で回るということであれば、免許証を持っているというのは要件になるので、そうすると免許証がないからということで、仮に雇わない、あるいはその仕事に就けないということがあっても、それ自体としてはたぶん差別にならないということだと思うのです。ただ、ここは先ほどの間接差別の議論と関係しますが、例えば身体障害者の方を考えたときに、車椅子なので、そもそもあなたは車を運転できませんよね、だから雇いませんというのだと、これは差別に当ってしまう可能性がある。というのは、別に車椅子の方でもそのときの状況によりますが、車の運転はできるので、したがって車の運転が免許証の有無にかかわらず、とにかくできませんよねということをやると、これは正当化事由としては到底成り立たないということになってしまうと思うのです。ただやはり前回か何かの北野委員の発言にあるように、業務についてそういう問題があることは確かなのであって、そこにまた今度は武石委員が投げつけた、合理的配慮にかかってくるので非常に難しいのですが、あることは確かだと思います。
○大胡田委員
 私なりの整理を考えてみましたので、今日お伝えしたいのですが。間接差別についての正当化事由の関係なのですが、まず効果として障害者が別意になる可能性がある場合には、まず間接差別の範疇に入ってきて、抗弁として、これは雇い主側が正当化事由、何らかの配慮をしたとしても、この人は要求する仕事ができないのだということを立証できれば、これは間接差別ではないと。訴訟的にはそういう整理ができるのかなと思っていたのですが、結局何といいましょうか。およそ入り口でこれは間接差別ではないとか言ってしまうよりは、企業側にむしろ区別して、業務の本質的な遂行に必要な能力なんだということの立証責任を負わせるということが、何となく情報の格差だとか、いろいろな力のバランス感覚からするといいのかなという感じがいたしました。
○岩村座長
 ありがとうございます。なかなか難しい話なのですが。いまの大胡田委員の整理も1つの考え方だろうと思います。
 もう1つ、すみません、法律家議論の方になってしまって申し訳ないのですが、禁止の効果のほうはいかがでしょうか。差別禁止の効果ですね。それに違反した場合ですね。例えばいちばんわかりやすいのは、解雇なのですが、これも技術論になるのですが、実は解雇権の濫用法理があるので、無理矢理司法上の効果を持たせなくても、そちらで片付くといえば片付くのですが。そうではなくて、やはり司法上の効果を持たせたほうがいいのかという、そこは技術的な話をすれば、要件事実の構成が変わってくる可能性もあるので、そこまで含めて考えたときにどうかということはあるかもしれません。
○石井委員
 まずその点については、いまお話があったように、解雇については解雇権濫用法理がございますので、労働契約法に明文があるのでそれに任せればいいと思いますし、それ以外の処遇についても、結局差別禁止に抵触しているということで、公序良俗違反で無効になるとか、不法行為になるということで、私法上の効果について、この法律に特段の定めを置かなくても、法的には特段問題がないのではないかと思いますが。
○岩村座長
 ありがとうございます。事務局に確認ですが、仮に、これを障害者雇用促進法の中に入れるとして、例えばこういう規定、差別禁止条項が司法的効力を持たせるというのは可能なのかどうかということを、確認させていただければと思います。
○障害者雇用対策課長補佐
 私も全ての法律を把握しているわけではないのですが、この司法上の効果を、あえて民事項を規定するかというと、あまり馴染まないのではないかなと思うのですが、いま石井委員がおっしゃられました不法行為で損害賠償請求の対象になるかどうかというのは、一義的には、やはり個々の事案の裁判所における判断ということなので、一率にこういったものに違反する行為は無効だということは、なかなか書けないのではないかなと思うのです。ただ、例えば男女雇用機会均等法などでもそういった規定はありませんけれども、例えば立法趣旨だとか、法律の趣旨に照らして、公序良俗違反だとか、不法行為だとかということが判断されるわけですけれども、その蓋然性というか、不法行為になる蓋然性というのは非常に高いのだと思いますので、個別に規定を置くというよりは、民法上の裁判の中で個々の事案に応じて判断をしていくというのが、通例なのかなと思います。
○岩村座長
 ちょっとそこは調べていただけますか。私の記憶では、例えば男女雇用機会均等法の解雇禁止規定は、たぶん裁判例上は、直接規定を適用しているのではないか。解雇権濫用法理ではないのではないか。最近例がないのであれなのですが、たぶんそうではないかという気がしますし、それから少なくとも厚労省の解釈上は、高齢者雇用の60歳定年のところも、定めてはならない規定ですが、あれも60歳未満の定年の規定は無効になるというような厚労省の解釈だったと記憶しています。そこは確認をしていただければと思います。無効になるというようには書いていないけれども、しかし司法上の効力はあると解して、厚労省の解している規定はあるのではないかと思います。あと、そういう規定が置かれることによって、損害賠償法上の違法性というのは、肯定されやすくなる。それを根拠に肯定するというのが、裁判例の流れの中にはあるので。
 あともう1つ最後残っているのですが、9頁です。差別が禁止される事項はどういう範囲でしょうかということですが、これは先ほどご紹介があったように、「中間的な取りまとめ」のところで、一応の考え方は示され、さらにそれに先立つ「中間整理」も、一応の考え方は示されてはいるところです。端的に言うと、この障害者雇用分科会の中間的な取りまとめの中で、「主な対象として募集・採用の機会、賃金その他の労働条件、昇進・配置その他の処遇、教育訓練、雇用の継続・終了(解雇・雇止め等)が考えられる」ということなのですが、障害者の方で、いやこれ以外入らないと困るというのがあるかどうかということなのですね。大体尽きているのではないかという気はするのですが。もし何かあとでお気づきのことがありましたら、事務局のほうにお寄せいただければと思います。障害の特性にもよるので、ひょっとして何かこれは入っていないとまずい、というのがあるのかどうか、そこがいちばん気になるところではありますので。よろしいでしょうか。またお気づきのところがありましたら、個別に事務局にお寄せいただければと思いますし、最後、取りまとめるところでも、またご発言いただく機会はあろうかと思います。大体予定していた項目は、一通り今日取り上げることができたと思います。事務局から何かありますか。追加的に。大体一通り予定していたところはやったと思います。
○障害者雇用対策課長補佐
 先ほど課長の山田のほうからご説明をいたしましたが、障害者の対象範囲ですとか、事業主の対象範囲、それから差別、合理的配慮の不提供を差別と捉えるかどうかといった点についても、再掲をして、次回また合理的配慮のところで、もう一度考えていただくという形にしておりますので、今日いただいた意見を次回ご提出する資料の中に組み込みまして、またご議論いただきたいと思っております。以上でございます。
○岩村座長
 ありがとうございました。それでは時間にもなりましたので、特段ご発言がなければ、今日はこの辺りで終了とさせていただきたいと思います。次回の日程などにつきまして、事務局から説明をいただきたいと思います。
○障害者雇用対策課長補佐
 次回は第5回になります。4月17日(火)午前10時から12時の開催になります。場所は追って連絡いたします。以上です。
○岩村座長
 それでは次回は4月17日の午前10時から12時ということですので、どうぞよろしくお願いをいたします。今日はこれでこの研究会を終了とさせていただきます。お忙しい中どうもありがとうございました。


(了)

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