ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 平成23年度化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会)> 平成23年度化学物質のリスク評価検討会(第4回有害性評価小検討会)議事録




2012年3月22日 平成23年度化学物質のリスク評価検討会(第4回有害性評価小検討会) 議事録

労働基準局安全衛生部

○日時

2012年3月22日(木)14:00~16:00


○場所

経済産業省別館 8階 825号会議室


○議事

○瀧ヶ平室長補佐 本日は大変お忙しい中、ご参集いただきまして誠にありがとうございます。ただいまより、第4回化学物質のリスク評価検討会有害性評価小検討会を開催いたします。高田委員がご都合で遅れるとのことです。以下の進行につきましては座長にお願いいたします。
○大前座長 それでは皆様、今日はご協力よろしくお願いいたします。まず最初に配布資料の確認をよろしくお願いします。
○瀧ヶ平室長補佐 お手元に議事次第と、その裏に配布資料一覧を書いていますので、それを見ながら確認をお願いいたします。
 資料1-1「第1回有害性評価小検討会の検討結果概要」、資料1-2「ジフェニルアミン経口投与によるがん原性試験結果」、資料1-3「ジフェニルアミンの変異原性」資料1-4「がん原性が示唆されたものの、がん原性物質指針の対象とならなかった物質のがん原性試験結果概要」、資料1-5「酢酸イソプロピルのがん原性試験の評価結果について」、資料1-6「発がん性に係るNOAELと許容濃度のレベルの関係(ジフェニルアミン)」。資料2-1「リスク評価対象物質の選定基準が発がん性以外の場合の一次評価値に関する対応(案)」、資料2-2「リスク評価の手法(改訂版)再改訂(案)」、資料3-1「2-アミノエタノール有害性評価関係」、資料3-2「メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネート(別名MDI)有害性評価関係資料」、資料3-3「2-アミノエタノール有害性評価書、有害性総合評価書」資料3-4「メチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネート(別名MDI)有害性評価書、有害性総合評価書」。
 参考資料として、参考1「がん原性試験の試験結果、対応状況等」、参考2「ACGIH提案理由書(ジフェニルアミン)(机上配布)」、参考3「提案理由書(2-アミノエタノール、MDI)(机上配布)」、以上です。
○大前座長 過不足、いかがでしょうか。よろしいですか。それでは本日の議事に入りたいと思います。最初の議事ですが、がん原性試験結果の評価について、事務局からご説明をよろしくお願いいたします。
○大淵有害性調査機関査察官 説明させていただきます。資料は、資料1-1、1-2、1-3のセットになったもの、それと参考1、参考2が関係の資料になっています。資料1-1から説明させていただきます。昨年10月18日に第1回有害性小検討会を開催し、そのときに3物質について、国が実施したがん原性試験結果の評価を先生方にしていただきました。その結果の概要からご説明させていただきます。
 3物質は、ジフェニルアミン、2-アミノエタノール、アクリル酸ですが、1物質目のジフェニルアミンの経口投与試験の評価ですが、ラットの雌雄及びマウスの雄でジフェニルアミンによるがん原性が示された。技術指針、いわゆるがん原性の物質の指針の関係ですが、そのがん原性の指針の作成の要否に関連して、1.がん原性の閾値の有無の判断に当たって、変異原性に関する情報が不十分である。2.がん原性の閾値があるとすると、腫瘍の発生が増加している用量が、許容濃度に比較して高いレベルにある。国の変異原性試験結果だけでなく、他の変異原性試験の結果も含めて検討することとした、ということです。このジフェニルアミンが本日の議題になるわけですが、このような形で判断がまだ保留されていますので、引き続き先生方にご検討いただきます。
 試験結果報告書については、資料1-2に付けていますが、エッセンスのところは資料1-1でも抜粋させていただきました。具体的な試験結果の腫瘍の発生状況につきましては、資料1-2の5頁がラット、6頁がマウスという状況です。2-アミノエタノールは経口投与試験、アクリル酸は吸入ばく露試験ですが、これについてはラット、マウス共にがん原性は認められなかったという結果です。
 本日、ご議論いただくジフェニルアミンの関係ですが、前回の検討会で指摘された問題点を踏まえ、本日は少し補足の資料を追加させていただきました。資料1-3がジフェニルアミンの変異原性です。前回お配りしている資料1-2の試験結果報告書の中では、変異原性について、国が実施した培養細胞を用いた染色体異常試験のことだけ記載されていたわけですが、それ以外の情報についても日本バイオアッセイ研究センターで文献検索をしていただき、資料整理していただきました。これについては後ほどバイオアッセイ研究センターからご説明していただきます。
 資料1-4は、これまで国で実施したがん原性試験の中で、がん原性が若干示唆されたものの、がん原性物質の指針の対象とならなかった物質について、計7物質ですけれども、これについてどういった試験結果だったかの概要を簡単にまとめています。今回のジフェニルアミンについても、がんの出方が必ずしも強いがんということではないので、その参考ということでまとめました。1.1-クロロ-2,4-ジニトロベンゼンから、7.アクリル酸=2-ヒドロキシエチルまでです。これらの物質についてはがんが弱かったということ。それから4頁の最後に※で書いていますが、7物質は、いずれも国による変異原性試験の結果を踏まえて、「変異原性が認められた化学物質」として労働基準局長名で行政指導通達が行われたことを踏まえ、必ずしもあの指針で措置を事業者に求めるところまではいかないだろうという判断で、指針にはならなかったというものです。
 資料1-5は、平成22年1月に開催したリスク評価の企画検討会の中の資料です。内容としては、この有害性小検討会からリスクの企画検討会へ意見を提出したもので、具体的には「酢酸イソプロピルのがん原性試験の評価結果について」です。酢酸イソプロピルについては、以前にこの小検討会で評価いただきましたが、この物質について評価結果の概要のところを見ていただきたいと思います。
 1.評価結果の4行目、酢酸イソプロピルの2年間の吸入試験の結果ですが、ラットの雄で高濃度ばく露(4000ppm)で背景データを超える腹膜中皮腫が発生し、傾向性検定で有意であることから、がん原性は否定できないと判断される。一方、雌のラット、雌雄のマウスにおける同様の試験においては、腫瘍の発生増加は確認されなかったという試験概要です。変異原性の関係については、「なお」書きのところになりますが、なお、がん原性試験に先立って実施された、細菌(ネズミチフス菌及び大腸菌)を用いた変異原性試験の結果はいずれも陰性であり、当該発がん性は遺伝毒性に基づくものではないと考えられた。これらを踏まえ、当検討会は、当該試験の評価結果として、酢酸イソプロピルは、雄ラットに対し閾値のあるがん原性を有すると判断した、というのが試験結果の評価そのものです。
 2.評価結果を踏まえた意見ですが、この酢酸イソプロピルについては既に「有機溶剤中毒予防規則」で規制されている物質で、それを踏まえた意見になっています。当該物質については、吸入ばく露により動物種・性に特異性の高い中皮腫の増加が認められたものの、当該ばく露濃度は、現行の特別則(「有機溶剤中毒予防規則」)の規制において設定された管理濃度(100ppm)に比べ、40倍の高濃度であった。また、当該中皮腫及び刺激症状に随伴した鼻腔病変以外に毒性所見はみられず、寿命短縮も認められなかった。一方、当該がん原性試験に先立って実施された変異原性試験の結果からは、遺伝毒性に基づく発がんではないと考えられた。これらを総合して、当該物質が現行の規制の下で適切に製造され又は取扱われる場合におけるリスクは低いと考えられ、当該試験結果をもって、直ちに、健康障害を防止するための指針を発出するなど、新たな対応を採る必要は低いと考えられる。しかしながら、当該がん原性試験の評価のみをもってリスク管理を不要と判断することは早計であり、当該物質については、すみやかにリスク評価対象物質とし、発がん性等の有害性に関する情報を収集し、これらをもとに有害性評価を慎重に進める必要がある、ということです。
 簡単にまとめますと、酢酸イソプロピルについては閾値のあるがん原性ということで、行政の対応としては、がん原性物質指針にする必要はないけれども、リスク評価を行っていく必要はあるということで意見書としてまとめていただき、企画検討会に報告したものです。
 資料1-6ですが、これも本日、議論していただく際の参考として整理しました。いま、酢酸イソプロピルの場合に閾値のある発がん性ということで、そのときに管理濃度との比較を行っていますから、今回、ジフェニルアミンの場合にも同様に許容濃度との比較をということで整理したものです。ジフェニルアミンについて、日本バイオアッセイ研究センターで行った試験の結果から、がんに関係してのNOAELということでいくつか考えられるかと存じます。1.雄ラットの血管性腫瘍の発生の関係では、4,000ppmのところで発生していることを基にするとNOAELとしては1,000ppm、2.雌ラットの子宮における腺がんの発生では、4,000ppmで発生しているということでNOAELとして1,000ppm、3.雄マウスの血管性腫瘍の発生では、1,000ppmで発生していますのでNOAELとして250ppmということです。
 (注)で書いているのは参考情報で、血管肉腫のみを単独で見ると有意な増加は認められていない。4,000ppm投与群では生存率が低下した影響もあると考えられるが、1,000ppm投与群よりも発生が減少しているところもあります。
 こういったNOAELをベースにして、これは経口投与の試験で行っていましたので、それを気中濃度に変換し、その数値を許容濃度として、現在、ジフェニルアミンについてはACGIH TLVが設定されていて、それが10mg/m3ということで、それとの比較を行っています。雄雌のラットの関係で100ppmを気中濃度に換算すると、雄ラットで403mg/ m3、雌ラットで504mg/ m3、それとACGIHの10mg/ m3を比較すると、その値は40倍あるいは50倍ということになっています。また雄のマウスについてNOAELを250ppmとした場合に、それを気中濃度に変換すると244mg/ m3、同じくACGIHの10mg/ m3と比較すると24倍というところです。ちなみにということで、先ほどの酢酸イソプロピルの場合にはNOAELが2,000ppm、これは吸入試験ですので特に数値の換算は必要ありませんが、それを管理濃度の100ppmと比べると20倍という状況でした。
 次の8頁に参考ということで、バイオの試験結果報告書の中では、がん以外をエンドポイントとしたNOAEL又はLOAELも報告されていて、それを参考に示しています。血液/造血系及び肝臓への影響をエンドポイントにした場合に、雄ラットでNOAELが250ppm、雌ラットでNOAELは求められずにLOAELで250ppm、マウスの雄雌でいちばん低い濃度でも毒性が出たということで、LOAELで250ppmということです。9頁は先ほどご説明した経口濃度を吸入の濃度に換算したときの変換式です。
 以上が資料1-3から資料1-6ですが、あとは参考ということで、これまで国で試験を実施したものの一覧表が参考1です。参考2は、ただいまご説明したACGIHが10mg/ m3というのを提案していますが、その提案理由書が参考2です。どういった情報をもとに10mg/ m3を提案しているかというのが、参考2の2頁の右側で、真ん中辺りにTLV Recommendationと書いてあります。これを見ると4行目の終わりに雌のラットが書いてあり、その試験で体重当たりに換算すると11.875mg/kgという値が出ています。それを70?の労働者で8時間労働で換算すると83mg/ m3という値が出てきています。これを基に10mg/ m3を出しているわけですが、対象としている毒性としては腎臓、肝臓、血液系といったところへの影響を防止することの観点等から、この10mg/ m3を出してきているところです。その少し下になりますが、がんの関係ではイヌ、ラットでのがんの試験が行われていて、そちらのほうはがん原性は認められなかったという情報の記載もあります。
 私からの説明は以上ですが、先ほど説明を飛ばしている資料1-3、日本バイオアッセイ研究センターでまとめていただいた資料について、バイオの野口さんから説明していただきます。
○野口氏(日本バイオアッセイ研究センター) ジフェニルアミンの変異原性試験について説明させていただきます。既にジフェニルアミンについては日本国内でCERI、またEU及びIPCS等で有害性の評価がなされています。その報告書を中心にこの表をまとめています。そのほかにNTP及び厚生労働省が行った、昭和56年の労働安全衛生に関する委託研究の結果も併せて記載してあります。この表からわかりますように、in vitroの試験系ではネズミチフス菌、大腸菌を用いた遺伝子突然変異試験、酵母を用いた遺伝子組換え試験、マウスの肝臓細胞を用いたDNAの不定期合成の試験などで、多くの陰性の結果が報告されています。
 そのほかに、マウスのリンパ腫細胞、L5178Y細胞を用いた遺伝子突然変異試験、これは用量依存関係は認められませんけれども、弱い陽性結果が報告されています。そのほかに、CHL細胞を用いた染色体異常試験、これはバイオで行った試験ですが、S9+の短時間処理で、またS9-の24時間、48時間処理で陽性の結果です。この陽性結果から染色体のD20値を算出すると0.024mg/mLとなり、強い陽性と判断されています。その結果を基に安衛法では、強い変異原性が認められた既存化学物質ということで公表が既になされています。
 in vivoの試験系では、MTD投与の経口投与によるマウス骨髄細胞を用いた小核試験、また腹腔内投与によるマウス骨髄細胞を用いる姉妹染色分体交換試験、SE試験です。そのほかに、ラットを用いた慢性経口投与による骨髄染色体異常試験等で陰性結果がなされています。したがって、in vitroの試験では陰性結果ということになっています。
 これらの結果を基にCERIでは有害性評価を行い、CHL細胞を用いた染色体異常試験では陽性という結果がありますけれども、ジフェニルアミンは遺伝毒性はないものという判定がなされています。全体のジフェニルアミンの変異原性試験の結果については以上です。
○大淵有害性調査機関査察官 こちらからの説明は以上です。
○大前座長 前回も一度検討して、このジフェニルアミンの変異原性をどう評価するかで結論が違ってくるということで、今回、もう一度議論に乗せている物質です。先生方、ご意見はいかがでしょうか。変異原性については、バイオアッセイがやった染色体異常試験のみが強い変異原性を示し、ほかの報告ではほとんど陰性で、一部弱いというのがあります。こういう状況に全体の評価としてなっていますが、いかがでしょうか。資料1-3のような全体の変異性試験の結果を見て、このジフェニルアミンは変異原性に関してはないというか、そういうふうに判断してよろしいかということですが。
○清水委員 難しいですね。バイオでやったのだけ、いわゆる原核細胞ではほとんど出ないですね。真核細胞でも唯一、バイオでD20値から見ると非常に強い変異原性です。これをサポートするのに別に何かあればいいのですが、これしかないというのが判断が非常に迷うところです。ただ、in vivoの小核などでは出てこないというので、変異原性をオーバーオールに考えると、「あり」と表現するにはちょっと難しいのですけれども。マウスリンパ腫で弱い陽性というのが1つ、1992年、これは下のほうのも同じものですけれども、唯一、これだけですね。あと、ノルハルマンを添加したものでプラスというのが10番にありますが、in vitroですね、これはあまり意味のないプロモーター作用を見ているのかなと思います。
○大前座長 そうしますと、1実験のみで変異原性があるとは少し言い難いと。ないと断定するのは難しいけれども、あるというふうには言えないだろうという清水先生のご意見ですが、そのほかの先生方、いかがでしょうか。
○西川委員 in vitroでの染色体異常試験で陽性で、マウスの小核では陰性であると。マウスの小核試験というのは基本的に染色体異常を見る試験ですので、vivoで陰性であるということは、通常、こういう場合、生体にとって特段問題となる遺伝毒性はないという結論を下すことが多いと思いますので、そういう意味で総合的に遺伝毒性はないという結論でいいのかなという気がします。
○清水委員 小核試験の場合には、骨髄にどの程度達しているかというのが1つ大きな問題で、いつもそれがネックになるのです。十分に達していて、なおかつ陰性であるのかどうかということが問題になるかと思います。
○大前座長 vivoのほうでネガティブだから、いま清水先生がおっしゃった骨髄まで達しているかどうかという問題は、若干あるということですが、in vivo、小核染色体異常、姉妹染色分体交換、いずれもネガティブということで、トータルとして現段階で変異原性に関しては、あるとは言えないと。ないということですけれども、表現は難しいですね。そういうことでよろしいですか。
 それを前提として今度は実際の濃度、7頁の資料1-6です。NOAELをどう考えるかということと、そのNOAELから計算された気中濃度への変換の値と実際に使われている許容濃度、この間のマージンをどう見るかということで、このマージンが十分大きければ改めて付け足す必要はない、となるでしょうし、マージンが小さければ注意しなくてはいけない、となると思いますが、この辺はいかかですか。
 酢酸イソプロピルのことが出ていますので、何か誘導されるような仕様になっていますけれども、酢酸イソプロピルの前例を見るとマージンは十分あるのかなと思います。7頁の比率のところがマージンになっていますけれども、少なくとも1桁はマージンがある。250を取った場合でも1000を取った場合でも、少なくとも1桁のマージンはある。それは前例よりも、少なくともマージンの大きさだけに関して少し大きい。小さくはないということで、要するに許容濃度レベルでちゃんとコントロールすれば、発がんの可能性のリスクは小さいのではないかと思います。
 これはまだ管理濃度は決まっていない。もし管理濃度を決めるとしたら、たぶんACGIHの濃度が参考になるのでしょうから、管理濃度を決めると、ばく露濃度のほうは、これの半分くらいにならないと管理区分1にはならないので、管理区分1にするためには、ばく露レベルはもっと小さくなるだろうということで、その分、マージンは大きくなるわけですから安全側に傾くということで、いいことですけれども、ご意見はいかがでしょう、そういう考え方でよろしいですか。
○西川委員 腫瘍をエンドポイントとした際のNOAELを記載していますが、もちろん腫瘍以外の非腫瘍性病変、あるいは生化学的検査でのNOAELやLOAELは取れると思いますけれども、それを考慮していない理由というのは何かあるのですか。
○松井化学物質評価室長 こちらの資料は、先ほど説明した酢酸イソプロピルの前例と比較するとという意図で作っています。先ほどの酢酸イソプロピルのときの企画検討会への報告資料の中では、LOAELと管理濃度を比較していますので、それと比較したらどうなるかという意味の資料にしています。
○西川委員 資料1-5の酢酸イソプロピルの「1.評価結果」を見ると、鼻腔の呼吸上皮の変化をエンドポイントとして、LOAELを推定しているということですね。そうすると、これに合わせる必要はないでしょうかという質問です。
○松井化学物質評価室長 資料1-5の「2.評価結果を踏まえた意見」の部分で、「当該物質については、吸入ばく露により動物種・性に特異性の高い中皮腫の増加が認められたものの」ということで、当該ばく露濃度は100ppmに比べて40倍という部分を取っています。
○西川委員 酢酸イソプロピルはいいのですが、ジフェニルアミンについて、非腫瘍性病変に関するNOAELやLOAELは考慮しないのですかという質問です。
○松井化学物質評価室長 そこのところは8頁の参考のところに出ていて、この辺も含めてご検討いただければと思います。あくまで7頁は、酢酸イソプロピルのロジックと比べると、こんなふうですよということを参考に整理しています。
○大前座長 8頁には、がん以外をエンドポイントとするNOAEL又はLOAELというのがあり、血液/造血系及び肝臓への影響をエンドポイントとした場合は、これはバイオの試験結果報告書に記載されている値で、今日の資料の中にはないわけですね。今日の資料は腫瘍の発生の結果のみですね。
○西川委員 資料1-2のがん原性試験の結果についてですが、3頁の2つ目の段落を見ると、例えばメトヘモグロビンの高値が、雌の全投与群に見られたという記載があるのです。ほかにも投与群でというのは、おそらく全投与群でという意味だと思いますが、それが資料1-6の3の参考に考慮されているかどうかについて確認したい。
○松井化学物質評価室長 いま8頁をご覧いただいているということで、よろしいですね。
○西川委員 はい。
○松井化学物質評価室長 最初の参考のいちばん上の○の雄ラットのNOAELが250ppmというのは、資料1-2の3頁の3つ目の段落で、「雄では血液/造血系及び肝臓への影響」云々とあって、「雄は250ppmであり」、これはLOAELですね。
○大淵有害性調査機関査察官 雌のほうはNOAELは出なかったので、LOAELということです。雄はNOAELで大丈夫です。
○松井化学物質評価室長 第3段落の1行目の無毒性量(NOAEL)は、2行目にありますように、雄は250ppmということです。雌ラットではNOAELは求められずに、LOAELが250ppmということです。8頁の3つ目の○の「マウスの雄、雌のNOAELは求められず、LOAELが250ppm」というのは、資料1-2の4頁のまとめの直前の段落です。3行あって、「雌雄とも最低投与濃度の250ppm群で血液/造血系への影響がみられた。従って、LOAELは250ppmであると考えられた」ということで、説明が手間取りましたが、ここの部分を抜き出しているということです。
○西川委員 大体わかりました。資料1-2の3頁に戻りますが、2つ目の段落の文章で、メトヘモグロビンの高値が雌の全投与群に認められた、とありますね。雌について認められたのでLOAELになっているということですね。
○松井化学物質評価室長 そうですね。血液/造血系の影響ということです。
○西川委員 そういう理解ですね、わかりました。
○宮川委員 確認ですが、酢酸イソプロピルの例が引かれているのは、資料1-5にあるように、中皮腫が見られたけれども、管理濃度に比べて40倍という値で、これについてはそもそもがん原性物質に関わる指針の対象として、指針は出さなくてもいいという判断をしたという趣旨ですね。
○松井化学物質評価室長 はい。
○宮川委員 現在、問題になっているジフェニルアミンについても、発がん試験の結果を得て影響が見られたけれども、それについて、がんに基づいて指針等を出す必要があるのか、現在の許容濃度と比べて相当高い濃度であるので、同じくがんに関する指針としては、先ほどの酢酸イソプロピルと同じように扱ってもよろしいかというのが、いまの論点という整理でよろしいでしょうか。
○松井化学物質評価室長 一応、特に事務局からそれを誘導する意図は全くないのですが、前回の議論が資料1-1にありますけれども、資料1-1の1の2つ目の○の2.にありますように、腫瘍の発生が増加している用量が許容濃度に比較して高いレベルにある、というご指摘があったものですから、そうすると、これの考え方として似ているのが酢酸イソプロピルであるので、それと比較するとこんなふうなレベルになっています、という判断材料として整理している資料です。
○宮川委員 たぶん西川先生が気にされたのは、がんのことでなくて、リスク評価一般だとすると、ほかのエンドポイントも見なくてはいけないというご趣旨だと思いますが、いまの議論は、少なくとも、がんに関わる指針に関した議論という理解でよろしいですかというのが私の聞きたかったことです。
○松井化学物質評価室長 そうです。説明の順序が逆かもしれませんが、もともとこの扱いについて、安衛法28条の3項に基づく技術指針を公示すべきかどうかというところと、あともう1つは、リスク評価の対象とすべきかどうか。その辺のご判断をいただくということで、前回、その判断に当たって、資料1-1の先ほど申し上げたところにありますように、技術指針の作成の要否に関連して1.2.のご指摘があったということで、それを数値として見るとどんな状況かを説明したのが資料1-6ということです。
○大前座長 したがって、発がんに関しては特段急いで出すことはないだろうと、そこら辺はよろしいですね。そのほかの発がん以外の影響について、これを読みますと、ほとんどメトヘモグロビンができることだけみたいな感じに読めるのですが、それについては、また別途リスク評価等をする必要があるということで、よろしいですか。これを見ると、必ずこの種の物質はメトヘモグロビンができるので、コントロールと比べたら多くなるに決まっているという気がするものですから、250でも増えているのは当たり前かなという感じがしました。
 NOAELのレベルがどれくらいかはここに書いていないのですが、そこのところは重要なことだと思いますので、リスク評価するときはそこもちゃんと調べて、影響があって低酸素になるようなレベルのメトヘモグロビンになっているのか、あるいは全然そうではないのか。そこは今日の資料からは読めませんので、リスク評価の上でしっかり見ていく必要があるということだと思います。決してこのメトヘモグロビンを無視するわけではなく、それはリスク評価のほうでしっかりやりましょうという扱いになろうかと思いますが、よろしいですか。
 確認ですが、この物質については、がん原性試験でマウス、ラットにがんは生じていますけれども、変異原性に関して陽性結果が得られたのは1実験だけであるということで、閾値があるタイプのがん原性物質であろうと判断する。したがって、この結果をもって、発がんに関して直ちに健康障害防止指針を発出する必要はないだろう。ただし、がん以外の影響は出ていますので、これに関しては有害性情報を幅広く収集した上でリスク評価をしなければいけない物質であるというのを、この小検討会の結論としてよろしいですか。
                  (異議なし)
○大前座長 ありがとうございました。
○大淵有害性調査機関査察官 そうしますと、酢酸イソプロピルのときと同様に、この物質について企画検討会のほうに提案する形を取らせていただきたいと思いますので、その企画検討会への提案のペーパー等については、また事務局で案を作成し、先生方にご確認いただくような作業を、今後、進めさせていただきたいと存じます。よろしくお願いします。
○大前座長 それでは、この物質につきましては通常の管理をしっかりしていれば、労働者にがんを生ずる恐れはないだろうということで終了したいと思います。これで1つ目の議題は終わりまして、2つ目の議題です。これは前回から継続していますけれども、「発がん性以外の有害性を中心として評価を行う物質の場合の対応等について」を事務局から説明をよろしくお願いします。
○瀧ヶ平室長補佐 資料2-1です。前回提出しておりますが、「リスク評価対象物質の選定基準が発がん性以外の場合の一次評価値に関する対応」ということで、前回、2を神経毒性プラスその他としましたが、生殖発生毒性、神経毒性、それ以外と分けたほうがわかりやすいということで分けております。
 1として、「選定基準が生殖発生毒性の場合」の対応として、「生殖発生毒性試験(原則は吸入ばく露試験とするが、吸入試験結果を使用できない場合は、経口投与の情報も使用)が下記(1)、(2)の条件を満たす場合、得られたNOAEL等が妥当であることを、リスク評価検討会(有害性小検討会)で確認し、一次評価値を算定し、その数値が二次評価値の10分の1以下である場合は、リスク評価に活用する」として、(1)がGLP等を満たした実験施設で、OECDのガイドラインに則って行った治験によるデータであること、又はヒトに対する影響について信頼できるデータであること。(2)として、発生毒性については、母性毒性がなくて、子どもに対する毒性が出ているものであること。
 2として、「選定基準が神経毒性の場合」、毒性試験がGLP等を満たした実験施設で、OECDのガイドラインに則って行った試験または、信頼できる試験もしくはヒトへの健康影響のデータである場合、得られたNOAEL等が、妥当であることをリスク評価検討会(有害性小検討会)で確認し、一次評価値を算定し、その数値が二次評価値の10分の1以下である場合は、リスク評価に活用する。
 3として、「選定基準が生殖発生毒性、神経毒性以外の毒性の場合」、選定基準が、生殖発生毒性、神経毒性以外の場合、2に準じ、毒性試験がGLP等を満たした動物実験施設で、OECDのガイドラインに則って行った試験、もしくは信頼できる試験、もしくはヒトへの健康影響のデータである場合、得られたNOAEL等が、妥当であることをリスク評価検討会で確認し、一次評価値を算定し、その数値が二次評価値の10分の1以下である場合は、リスク評価に活用するとしています。
 それを踏まえて資料2-2です。「リスク評価の手法」、現行のものです。目次を抜き出しておりますが、従来、一次評価値については、これまで発がん性を考慮してリスク評価を行っておりましたが、いまのように発がん性以外の有害性からリスク評価を行っていく物質が出てくるということで、(4)の1.の一次評価に、アとして発がん性のもの、イとして発がん性以外のものということで、発がん性以外のものについての一次評価値の項目を立てたということです。
 本文ですが、1頁に書いていることは一緒です。変更点だけ読んでまいります。2頁の「量-反応関係等の把握」ですが、現行のものには臓器毒性・全身毒性又は生殖毒性のところに、ばく露限界がある場合、ない場合ということで括っているのですが、今後、毒性が発がん性以外のものもということになりますので、そこに当該対象物質をリスク評価の対象として選定した際に着目した有害性の種類等を勘案し、次により無毒性量を把握するということで、把握について書いてあります。ウの不確実係数ですが、現行の手引だと不確実係数について追加にしていますが、不確実係数で合理的な知見等がある場合については、上記によらず当該知見に基づく係数とすることができるものとする、ということを書いてありませんので、こういうことが可能だということで文言を加えております。3頁は特段、変更点はありません。
 4頁です。先ほど申し上げましたとおり、一次評価については、発がん性を考慮して評価を行うものと、それ以外のものと分かれるということで、項目を立てております。1とかaとか項番は若干手直しをしているので、そういった項目番号が変わっていたりするのでそういう修正もあります。
 5頁のイの「発がん性以外の有害性を中心として評価を行う物質の場合」ということで、先ほど説明した資料2-1の対応案ということで、それをここに記入しております。5頁・6頁はそういったことで、それを追加しております。
 7頁は二次評価になっております。二次評価も、(ア)「許容濃度又はTLVが設定されている場合」ということで書いているのですが、日本産衛学会とACGIHを中心としてはいるのですが、最新の知見から判断して、それ以外の値を使ったほうがいいという場合には、(2)のやり方でやってもいいということで追加しております。
 その下の2.のアの(イ)のbに、「aの値が設定されていない場合は、一般環境に関する濃度基準が定められている場合に、最新の知見を考慮してその値を用いる」と書いているのですが、これは平成20年の訂正のときに1回直して、「用いる」が「参考にする」になったのですが、事務局の手違いでその修正がまた元に戻っていて、「用いる」というのを資料で出していましたので、既に修正している部分について改めてちゃんと直しております。そういう意味で、これは前の議論で直っているところです。
 8頁のいちばん上の「参考にする」も同じ意味で、事務局の手違いで「用いる」になっていたので、改定したものに変えているものです。リスク評価の手法の再改定については以上です。
○大前座長 前回、前々回辺りから議論していただきました発がん以外のエンドポイントで評価しようと。その場合どういうルールを作るかというもののまとめといいますか、それを資料2-1にしていただきました。これが資料2-2にも反映されているということなので、資料2-1について、前回のご議論も踏まえた上で、ご議論はいかがでしょうか。神経毒性の場合は、必ずしもGLP等ガイドラインがないということで、その場合は信頼できる知見、もしくはヒトへの健康データがある場合ということで、ここで一応、大学・研究機関等々でやられたものも拾うことにするという意味で、2行目でそういう文言になっております。
 3は選定基準が「生殖発生毒性」と言葉で言われましたので、「発生」が抜けているということで、これは加えていただきたいのです。おっしゃるときは「発生」という言葉を入れられましたので、単なる抜けているということです。二次評価値の10分の1以下に計算値がなった場合は、それは一次評価値として用いると。1桁違ったら一次評価値にしましょう。1桁違わなければ、あまり意味がない。もちろん、逆に大きかったら、もともと二次評価値を超えたら意味がないわけですから、このような考え方でやりましょうということですが、いかがですか。
○西川委員 「GLP等」の「等」というのは、どういうことをイメージしているのか、よくわからないのですけれども。
○大前座長 これはいかがでしょうか。要するに絶対GLPでなくてはいけないかとか、おそらくそういう意味合いだと思うのですが。
○西川委員 それに準ずるものというのはどういうものがあるかですが。
○瀧ヶ平室長補佐 これは実際の評価値を用いる実験をずっと見比べて、それが妥当かどうかを判断してもらうという作業を、おそらく今後してもらうことになるので、この「等」は、実際にその試験がどういう試験だったかというのを見るときに、GLP以外のものもあるかもしれないということで、いま入れているということで、具体的にどういう試験があるかというところまでは詰めておりません。
○大前座長 GLPが言われ出したのは、何年ぐらい前でしたか。
○西川委員 医薬品の場合は、1984年ぐらいからやっています。
○大前座長 医薬品の場合は。我が国の場合はもう少しあとになりますか。それ以前のデータの場合は、全部GLPを満たしていないということをやっている。
○宮川委員 具体的なことを知らないので、すみません。アメリカがNTPで試験をするときには、あれは国自らやっているのだと思うのですが、GLPの査察などを受けているのでしょうか。NTPはGLPの適合機関なのか、あるいはもしそういうものを受けていないのであれば、そういうものをGLP等と言ってもいいのかと。
○大前座長 なるほど。もう古いデータしかない物質もあるでしょうし、いまおっしゃったように具体的にNTPがどうなっているか。バイオはもちろんGLP機関になっているのはよくわかっていますが、必ずしもそれは論文には書いていないですね。
○西川委員 逆にガイドラインはOECDしか駄目みたいに読めるのです。いろいろガイドラインはあると思うのですが、もう少し柔軟に記載しなくていいのかという気がしますけれども。
○大前座長 その辺はいかがでしょうか。OECD、あるいはそれに準ずるみたいな形で少し枠を広げようというご提案だと思いますが。具体的にどういうガイドラインがあるのか、私もよくわかっていないものですから、あまりクリアなことが言えないのですが。
○宮川委員 「等」を入れる。
○大前座長 「等」を入れますか。
○宮川委員 医薬品関係のガイドラインも、入れるという議論があった上で「等」を入れるということにしておけば、よろしいのではないですか。
○西川委員 農薬などにもガイドラインがありますし、食品添加物にもありますよね。
○大前座長 ここも「OECD等」、「等」の中にはいま西川先生がおっしゃったようなガイドラインを含むと。少なくとも勝手にやったものは駄目です、それなりのガイドラインに沿ったものをということですね。そういう意味合いだということで、「等」を「OECD」のあとに入れていただく。
○池田委員 ガイドラインのあとのほうがよろしくないですか。「OECDのガイドライン等」。
○大前座長 「ガイドライン等」ですか。この資料2-1がそのまま、番号は(1)(2)がa、bになったりしていますが、資料2-2にコピー・アンド・ペーストしてあります。いま資料2-1で修正したところは、当然あとで修正をしていただくとして、いかがでしょうか。今回、資料2-2の2頁のいちばん下で、「なお、不確実係数について、合理的な知見等がある場合については、上記によらず、当該知見に基づく係数とすることができるものとする」。要するにデフォルトだけではなくて、それなりの根拠があればデフォルト値を使う必要はないという意味合いだと思います。
○宮川委員 いま気が付いたのですが、リスク評価事業では、たしか影響が重大な場合は、発がん性の場合にはUF10で使っていたと思うのですが、その部分についての具体的な記載がないものですから。2頁の64行からの所は、すべての場合ですよね。発がん以外の部分ではなくて、がんも含めての不確実係数の話だと思うので、重大な影響についてのUF10を、事実上これまで使っていたと思います。
○大前座長 使っていましたね。そうですね。これは動物実験の場合と、期間の不確実係数とNOAEL、LOAELの不確実係数しかここにないですね。閾値がある場合、がんの重大性、影響の重大性ですか。これはいままで10を確かに使っていましたね。これは抜けていたということですね。というか、我々はこれを見ないで確認したということか。
○宮川委員 もう1つ、それが入るとすると、全部に該当する場合に104だったかというと、マックス103までということもやっていたような気もいたしますが。
○大前座長 最大がですね。
○宮川委員 最大1,000までと。
○大前座長 不確実係数の最大値ですね。
○宮川委員 そうですね。はい。
○大前座長 いままでマックス1,000まででしたね。103でしたね。それも入れていただくと。がんの重大性で10。トータルの不確実性はマックス最大1,000までとすると。そのほか、いかがですか。資料2-1、資料2-2、両方合わせてですが。特にご意見がなければ、今日出ました修正を入れて、リスク評価の手法の再改訂をしていただくということで、よろしいですか。どうもありがとうございました。
 今日の3つ目の議事です。「リスク評価に係る、評価値について」、事務局からご説明をよろしくお願いします。
○瀧ヶ平室長補佐 資料3-1です。2月の会議の際に、発がん性に基づいて選んだ物質については二次評価値を説明しているのですが、発がん性でないもので選んだものについては、2回、3回と検討いただいているところです。それを踏まえて、4月から具体的なばく露状況を踏まえたリスク評価をしていくことになりますが、その際の二次評価値ということで、1つ目が2-アミノエタノールです。物質名として、別名がモノエタノールアミン等です。
 物理的・化学的性状としては、特徴的な臭気のある無色で、沸点が171℃、融点が10℃。蒸気圧が53Pa(20℃)。
 生産量については4,300t(2010年)。これはモノ,ジ,トリエタノールアミンの合計ということです。輸出が1,668t、輸入が3,374t。これはモノ、要は2-アミノエタノールとしてということです。用途としては、合成洗剤、乳化剤、つや出し、ワックス、農薬など、有機合成材料ということです。
 重視すべき有害性ということで、発がん性の場合はここに発がんの項目を入れていたのですが、発がん以外ということでこの物質を選んだ理由として、神経毒性ということでしたので、この神経毒性に対応する、資料3-3の有害性総合評価表をまとめていただいておりますので、ここから引っ張ってきております。神経毒性の試験については、ラット、モルモット、イヌを本物質蒸気5~25ppmに40~90日間吸入ばく露した実験で、自発運動の抑制、脱毛、表皮の菲薄化が観察されているということで、このような試験結果があるということです。
 それ以外の毒性については、動物実験、ヒトの事例で皮膚刺激性・腐食性が示されている。眼に対する重篤な損傷性/刺激性因子では非常に強い刺激性があり、ヒトの事例で非常に強い眼刺激性が示されている。皮膚感作性については、ヒトの事例で皮膚感作性が示されている。呼吸器感作性については、ヒトの事例、試験で、喘息・鼻炎等が示されている。反復投与毒性について、神経毒性と同じ項目ですが、神経毒性以外のことが書いていましたので、再度ここに書いてあります。
 下段は同じく有害性総合評価表から持ってきているのですが、ラットを本物質蒸気120、160ppmにばく露した実験で、120ppmの投与群に体重の減少、120ppm以上で蛋白尿、160ppm群で呼吸抑制、肝臓機能異常の報告があった。もう1点は、ラットに妊娠6~15日まで強制経口投与した結果、500mg/kg/day群の母動物では、投与後1時間以内に興奮過活動が見られ、その後嗜眠を示したが、8時間後には正常に戻った。胎仔では50mg/kg/day以上の群で、低体重、吸収胚、又は胎仔死亡、奇形の発生率等が用量依存的に増加した。なお、有意な変化は50mg/kg/day以上の群では、低体重、胸骨の変異、300mg/kg/day以上の群では肋骨の変異、500mg/kg/day群では吸収胚又は胎仔死亡、50、300mg/kg/day群では、水腎症/水尿管症の発生率に~有意な変化が見られたということです。発がん性については、吸入ばく露について調査した範囲内では報告が得られていない。経口投与/経皮投与、その他の経路についても報告が得られている。遺伝毒性については、なしということです。
 許容濃度については、ACGIHのほうで3ppm、mg換算で8mg/ m3。これはTLVで1965年に設定されています。根拠としては5~6ppmで24時間、60日間イヌにばく露したところ、5ppmがおよそ、その閾値と考えられる。しかし、ラットにおいて急速な排泄が認められていることから、上記の値が推奨された。日本産衛学会におかれましても同じ年に提案されておりまして、3ppmで、ただmg換算が小数1桁まで取っていて、7.5mg/ m3。根拠については、上述の実験データ並びに12人の被験者の50%が感知していた濃度は2.6ppmということで、評価値としては、一次評価値については先ほど議論いただきましたとおり試験結果の情報を踏まえて検討するということで、平成24年度の早い段階でさせていただくことにして、二次評価値については日本産衛学会の3ppm(7.5mg/ m3)、ppmは同じなのですが、mg換算でいくと産衛学会のほうが7.5ということで、その数値ということではいかがでしょうかということで提案しております。
 併せて、裏面のメチレンビス(4,1-フェニレン)=ジイソシアネートです。別名としては、一般的にMDIと言われています。外観としては白から淡黄色の結晶または薄片です。沸点が314℃、融点が37℃ということです。生産量については、42万1,000t、輸入量が6,785t。用途としては接着剤、塗料、スパンデックス繊維、合成皮革用、ウレタンエラストマー、硬質ウレタンフォーム、断熱材などの原料ということです。これはリスク評価の対象として選んだのが呼吸器系への毒性ということで、ラットを用いたMDIの濃度で1日7時間、週5日、24カ月ばく露を行った。その結果、ばく露濃度に有意に関連した肺胞・細気管支上皮の間質の線維症、粒子を貪食したマクロファージの集積の肺病変が認められた。肺胞上皮細胞の増生は高濃度群で発生率が有意に増加し、量-反応関係を示す傾向があり、高濃度群では呼吸機能の低下と関連していた。すべての群の各評価時点で、肺相対重量は有意に増加した。各ばく露濃度で肺相対重量の増加が認められた。呼吸器感作性として、ヒトにおいてはMDIばく露者で過敏性肺臓炎と喘息が観測されている。
 呼吸器以外の毒性ということで、ヒトへの影響を急性毒性、MDIばく露を受けた作業者では、喘息症状や胸部絞扼感が認められる。皮膚刺激性/腐食性について、ウサギの皮膚に対して皮膚刺激性がある。眼に対する重篤な損傷性/刺激性、ヒトの眼・鼻・喉の刺激作用がある。ウサギの眼に対して刺激作用がある。皮膚感作性、ヒトではMDIばく露者で接触性皮膚炎が観察された。モルモットで皮膚感作性が見られ、マウスではMDI0.6mg/kgから37mg/kg範囲の適用で、量-反応関係を示した。
 その続きとして、安全衛生法有害性調査制度に基づく既存化学物質変異原性試験の結果、「変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」の対象物質になっている。発がん性については、調査した範囲では報告はない。許容濃度については、ACGIHのほうがTLV-TWAで0.005ppm、今度はこちらも少数以下が0.051/ m3となっており、1988年の設定となっています。根拠としては、MDIが特に呼吸器官に対する感作性や呼吸機能低下に対して、TDI(トリレンジイソシアネート)(特化物)によって引き起こされる毒性との違いが明確ではない。TDIと毒性が類似していること、さらにMDIの明らかなばく露データがないことから、MDIのTLV-TWAはTDIのTLV-TWAである0.005ppmを勧告する。勧告されたMDIのTLVは必ずしも感受性の高い労働者に対して感作性やアレルギー反応を防ぐものではなく、できる限りMDIのばく露濃度は勧告されたTLVよりも低く保持すべきである。
 産衛学会のほうは、同じく0.05mg/ m3、気道感作性物質ということで、1993年に設定されています。根拠としては、MDIは常温常圧での蒸気圧がTDIより低く、TDIをMDIに代替すると、見かけ上、刺激症状、喘息発作頻度、呼吸機能影響は小さくなるために使用量が増加しているが、同一ばく露レベルにおけるMDIとTDIの健康影響を比較した報告はない。一方、ばく露レベルは不明であるが、高濃度における反応性の強い有機粒子として過敏性肺臓炎を起こすことは明らかであり、また、DNAにより影響を与える可能性も示唆されている。以上より、MDIの許容濃度設定に当たり、TDIの許容濃度より低い値に設定する根拠はなく、TDI許容濃度と対応する等モル濃度の勧告が妥当であるとし、0.05mg/ m3を勧告した。
 一次評価値については、同じく平成24年度早期にということで、二次評価値については日本産衛学会の数値0.05mg/ m3、こちらのほうが新しいのでこの数値でいかがかというものです。以上です。
○大前座長 この2物質についての二次評価値を検討するということですが、最初に2-アミノエタノールです。一次評価値については、先ほどのルールに従って平成24年度、早期に検討するということなので、今回は一次評価値に関しては議論はしません。二次評価値についてですが、いかがでしょうか。一応、案としては3ppm、7.5mgですから産衛のほうをとっていますが、これはいずれも1965年と、もう50年ぐらい前の数字なのですね。MAKのほうが2ppmで、少し小さいのですが、これは年度が書いていないので、いつのデータだかわかりませんが、いままでのルールですと産衛もしくはACGIHで、どちらか正しいほう、妥当なほうということで選んでいるわけですが、今日改訂した二次評価の手法、資料2-2の7頁の二次評価値の決定ですが、「なお、最新の知見から判断し、(イ)による決定方法のほうが適切な場合は、(イ)の方法によるものとする」ということで、米国のRELとかWELとかMAKとか、こちらも使ってもいいということになっています。2-アミノエタノールの場合は、産衛、ACGIHとも1965年と非常に古いので、これを使うか、あるいはMAKが少し小さめの値になっていて、これは何年かわからないので、その辺の情報はないのですが、こちらを使うか、その辺の判断だと思います。いかがでしょうか。いままでどおりの値でよろしいでしょうか。二次評価値の案として、3ppm(7.5mg/ m3)。古い数字ですが、それ以降、産衛もACGIHも数字が変わっていないということは、そんなに情報がたくさん出ているわけでもないし、新たに数字を下げなくてはいけないようなこともないということだと思います。したがって、これはこの数字でよろしいですか。特にご意見がなければ、2-アミノエタノールに関しては、二次評価値は3ppm(7.5mg/ m3)ということにさせていただきます。
 次は裏側のMDIです。これも先ほどと同じように、発がん以外のもので必要があれば、また後日、一次評価値、早期に情報収集して検討しろということで、今日は二次評価値をどうするかという議論です。この場合は、ACGIHも産衛もMAKも、みんな同じ数字を出している。MAKは何年かわかりませんが、産衛とACGIHでは、産衛のほうが5年ぐらい新しいということで、しかも同じ数字が出ているということなので、これは産衛のほうの0.05mg/ m3を二次評価値としてよろしいですか。
 この提案理由書は私が書いた記憶があるので、何か間違っているとまずいのですが、決してACGIHを真似たわけではなくて、それなりの根拠をちゃんと作って書いたつもりではいるのです。いずれにしても、結果としてはTDIから甘くする、もしくは厳しくするような情報はないということで、TDI並びということで、産衛もACGIHも0.05mg/ m3、あるいは0.005ppmとなっていますが、よろしいですか。MDIの二次評価値については0.05ということで、ここでは決めさせていただきます。どうもありがとうございました。
 今日の議事次第の予定は以上です。今後の予定について、事務局からご説明をよろしくお願いします。
○瀧ヶ平室長補佐 どうもありがとうございました。本年度、3月はこれで終わりです。年度を明けて、4月12日の午後から合同の会議を予定しております。ご案内等は改めてお出ししますので、よろしくお願いいたします。
○大前座長 少し時間は早いのですが、今日はどうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 平成23年度化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会)> 平成23年度化学物質のリスク評価検討会(第4回有害性評価小検討会)議事録

ページの先頭へ戻る